過去ログ - 垣根「君が教えてくれた花の名前は――」
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1: ◆1yXtrQq8OHOj
2012/11/19(月) 13:27:48.60 ID:di8qSD40o

少年が泣いている。
髪は少し茶色がかった少年。

その少年を困ったように見つめる女の子がいた。
女の子は少年よりあきらかに幼い。
女の子の目には涙は浮かんでいない。
その代わりに強い意思が浮かんでいた。

――絶対に泣くもんか、私は強いんだ。

そんな意思が燃えている。

女の子は少年の柔らかそうな髪の毛をくしゃくしゃと撫でる。
泣かないで、と言うように無言で撫でる。

超高層ビルが立ち並ぶ街の中、二人の存在はあまりにも小さすぎる。
小さく丸まる少年はまるで自分の存在を確かめるように、そして失わぬ様にしているようにも見えた。

女の子が少年に何かをつぶやく。
そしていい終わると少年から離れた。
迎えだろうか、無表情の男達に無言の圧力をかけられているようだ。

――速く来い。

と。

その日から七年が過ぎた。

幼い女の子は少女となり、少年は青年へと成長した。

少女は脆い強さで自分を作り、少年は絶対的な強さで涙を捨てた。



心に大きな穴をあけたまま。



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