過去ログ - クリスタ「ユミルを好きになるお話」ユミル「ほう」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/07(金) 01:19:14.94 ID:uskRd4wD0
『クリスタ―――』



錆びついた鉄の匂いと、火薬の匂い、それと生臭さの中でわたしは目が覚めた。



今は朝だろうか、昼だろうか、それとも夜だろうか。暗闇の中では時間の経過は分からなかった。
そう言えば、どうして自分はここで寝転がっていたのだろうか。なぜ、みんな同じように転がっているのだろうか。


なぜ、転がっていると理解できるのだろうか。


視界の隅に、窓から差し込む光が過った。光が過った床面は赤黒く染まっているように見えた。
なぜ、この部屋はこんなにも気持ちの悪い匂いで満たされているのか。光はすぐに消えた。やはり、光の中でみんなが転がっているのが見えた。


今更ながらに、怖くなった。わたしは立ち上がろうとして、足が異常に重たいのを感じた。足が動かなければ、戦えない。


戦う?



――――あいつらと、戦う?



そうだ、やらなければ食べられてしまう。クモの糸に絡まれるチョウのように、カマキリに噛り付かれるイモムシのように。
私たちは食べられる側なのだ。だから、いつも周りを見ておかなくてはならない。それが、壁の中だったとしても、やつらは壁を越えてくるのだから。ひと時たりとも安心できるはずなどないのだから。



―――壁よりも大きなあいつらと、戦う?



こんなに不安を抱いていて、今にも張り裂けそうな心臓しか持ち合わせていないのに?


こんな筋肉のついていない身体で?


一人で?



―――君は一人じゃない―――



誰かが、最後に言い残して言ったような気がする。耳元に残ってはいたけれど、すぐに消えてしまうような、そんな砂礫のような印象。

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