過去ログ - 神崎蘭子(24)「闇に飲まれよ!」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/07(日) 20:51:50.89 ID:FhmYjF9Do

『闇に飲まれよ!』

 テレビからはいつものように元気な声が聞こえてきます。

 もちろん、あの独特の言葉を発しているのは、神崎蘭子さん。
 いまもアイドル業界でトップを走り続ける女性。

 そして、私の仲間であり、大事な友人でもあります。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 20:53:30.31 ID:FhmYjF9Do

 テレビでは彼女のデビュー十周年記念ライブをはじめとした様々な映像が流れていきます。
 当人や他のタレントさんがそれを見て、いろいろとコメントしていく形ですか。

 考えてみれば、彼女とのつきあいももう十年になるんですね。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 20:55:38.32 ID:FhmYjF9Do

「お前たちをデビューさせてから十年。CGプロの大分裂で、お前たちを連れて独立してからでももう八年になるな」
「ええ、そうですね」
「果たして俺のプロデュースは正しかったんだろうか?」
「はぁ?」
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 20:56:31.22 ID:FhmYjF9Do

「俺には夢があったんだ」
「夢」

 あの人は急にまじめな顔になります。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 20:57:44.41 ID:FhmYjF9Do

 小気味良い音がはじけます。
 それは私が、手を打ちながらはやし立てる彼の頭をハリセンでフルスイングしたために生じたもの。

 ……なんで、この人、ツッコミ用のハリセンまで用意しているんでしょうかね?
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 20:58:50.90 ID:FhmYjF9Do

 十年という年月は実に長いものです。
 そして、その間に、数え切れないほどのアイドルたちが新たにデビューしてきます。

 その中で、アイドルを、しかも高ランクのアイドルを続けていられる人というのは実に限られてきてしまうのです。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 20:59:41.35 ID:FhmYjF9Do

『ところで、ボク、最近、ようやく蘭子さんの発言がわかるようになりまして』
『お、さすがやな。この業界、蘭子ちゃんをさばければ司会も一人前言われてますからね』
『くくく。貴殿の<<瞳>>も開くときが来たか』

以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:00:43.15 ID:FhmYjF9Do

「変化というのは、あってしかるべきものなんじゃないだろうか?」
「はい?」
「お前が変わったように、蘭子も変化させてやるべきだったんじゃないか、とな」

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:01:36.01 ID:FhmYjF9Do

「はあ……」

 曖昧にうなずきながら、私は考えをまとめようとします。

以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:02:32.88 ID:FhmYjF9Do

 それでも、プロデューサーさんは折れませんでした。
 他の人間の気まぐれで、私たちが苦しむことが二度と起きないようにとがんばってくれたのです。

 そうしてがんばって、事務所の経営が軌道に乗っているいまだからこそ、不安になったのでしょう。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:03:08.14 ID:FhmYjF9Do

「昔はどうでした?」
「そんなに落ち着いた静かな笑顔を浮かべることはなかったな。いや、当時の笑顔がかわいくなかったというわけじゃないぞ?」

 慌てたように付け加えるのに一つ笑って、私はなおも問いかけます。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:03:46.88 ID:FhmYjF9Do

「ああ、そうそう。それに、あの頃は、ボクって言ってたろ、幸子」
「ええ、そうでしたね」

 そこで私は立ち上がり、くるりと一回転して見せました。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:05:45.19 ID:FhmYjF9Do

 私はにっこりと笑います。
 私に合わせているのではなく、この人が本気で言ってくれているのがわかったから。

「でも、プロデューサーさんは、私が十四歳の頃……。ボクと言ってたころと変わった、と思ってるんですね?」
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:06:25.76 ID:FhmYjF9Do

「プロデューサーさんはいまの私をカワイイと思いますよね?」
「ああ、綺麗だし、かわいいと思うよ。仕草やらも含めてな。それに外見だけじゃなくて、俺はお前の努力を知っている。その姿勢がなによりも……」
「褒めてくれるのは嬉しいですが、大事なのはここから先です」

以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:07:26.03 ID:FhmYjF9Do

「つまりですね、いま、こうして落ち着いて話すのが、一番私をカワイク見せられる。だから、そうしているってことですよ」
「なに?」
「ボクと言うよりも私と言うほうがいまの年齢ではイメージがいいでしょう?」
「そりゃそうかもしれんが……」
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:08:23.20 ID:FhmYjF9Do

「ああ。俺はあの子が変わるきっかけを奪ってしまったんじゃないか」
「私の変化を見て、そう思ってきたと」
「ああ」

以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:09:10.31 ID:FhmYjF9Do

 彼女の姿を思い浮かべるといつも感じるのは、当人が思い切り楽しんでいることです。

 自分の楽しさを、観客に何倍にも増幅して伝えることが出来る。
 きっと蘭子さんはそういう人なのでしょう。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:09:47.51 ID:FhmYjF9Do

「だから、蘭子さんが、なにを考えているか、そのあたりが全部わかるわけじゃありません」

 当たり前のことです。
 どれだけ親しくても、その人が隠していることの全てがわかるわけがありません。
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:10:38.64 ID:FhmYjF9Do

 それに……。

「堂々たる魔王の帰還!!」

以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/07(日) 21:11:18.04 ID:FhmYjF9Do
以上です。
中二病卒業とかしなくていいから、十年後も楽しく過ごしていればいい。うん。


21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/07(日) 21:12:07.38 ID:n77D0dONo
おつおっつ。
さっちゃんがいいキャラだったわ。


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