11: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 23:18:43.58 ID:ey41gLLW0
「荒木こそ、あの日の夜会わなかったか?」
「あの日の夜……?いつの話っスか?」
記憶を探るも、阿良々木さんに会ったのは道を訊かれたあの日だけだ。
ましてや夜なんて大体部屋でマンガ描いてるかネットやってますし。
「荒木とはじめて会った日の夜だよ。繁華街で外見も話し方も荒木そっくりの女の子と話したんだけど、違うって言われてさ」
「そりゃ別人っスよ」
大体あの日は、あの後お風呂に入って即効で泥のように寝たんスから。
目覚めたのは次の日の夜だ。
我ながら酷い生活サイクルだと思う。
「……そうか」
それでも阿良々木さんは納得行かないのか、首を傾げて唸っていた。
いくら首を傾げられても事実は事実ですしね。
「まあいいか。世の中似てる人が三人はいるって言うしな」
「変な話と言えば……なんか、最近夢で阿良々木さんに良く会う気がするんスよねぇ」
「そうか、それはきっと僕のことが好きなんだ」
「いや、そりゃないっス」
と、その時、阿良々木さんの携帯がけたたましく鳴った。
「もしもし。ああわかった、すぐ行くよ」
それじゃ僕は仕事だから、と残りのポテトとバーガーをコーヒーで流し込み、トレイを早々に片付ける阿良々木さん。
そのまま出て行くのかと思いきや、思い出したようにアタシの元にとんぼ返りでやって来る。
「もしアイドルやりたくなったら、そこの番号に電話くれよ」
はあ、なんて生返事を返す。
そんな事態、一生ないと思うっスけど。
「アイドル……ねえ」
鼻眼鏡の自称アイドルのプロデューサーにそんな事を言われても現実味がある訳もない。
それでも、湧き上がってくる自分でも良く分からない感情が何かを訴えていた。
ちょっとだけ、可愛いって言われたのは嬉しかったりして。
照れ隠しなのか、それとも出処のわからない感情を抑える為なのか、無意識に頭を掻く。
「……な」
ふと自分の手を見て、思わず言葉を失った。
今まで阿良々木さんと話していたことも吹っ飛ぶ程に、それは衝撃的だったのだ。
爪の間にびっしりと詰まり、指先を染める『それ』は、紛うことなく、灰そのものだったのだから。
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