過去ログ - モバP「白菊ほたると俺が二人まとめて鷹富士茄子のものになるまでの顛末」
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3: ◆agif0ROmyg[saga]
2016/04/30(土) 22:26:07.06 ID:VvhSzome0
 その日、俺は茄子とほたるを連れて通りを歩いていた。

 談笑しながら角を曲がりかけた瞬間、後ろの方から凄まじい轟音が聞こえる。

 とっさに振り向くと、信号を無視して猛然たる勢いでこちらに突っ込んでくる大型トラック。

 もしや居眠りか、それとも薬か何かやっているのか。

 俺と茄子はとっさに脇に飛び退くことができたが、ほたるの反応は遅れた。

 ほんの一秒動けなかっただけで、暴走した鉄塊がすぐそこまで迫ってきている。

 白菊ほたる、度重なる不幸と不運にもかかわらずに己の夢を諦めなかった、13歳とは思えないほどに芯が強くてタフな少女。

 そんな彼女の命が、こんなところで尽きていいはずはない。

 大声で叫んで逃げてもらおうとしたのを覚えている。

 後ろを振り向いたほたるが暴走トラックを見て、「ああ、やっぱり」とでも言いたげな、ふっと糸の切れたような諦めの表情を浮かべたあたりからは記憶が曖昧だ。

 ほたるにそんな顔をして欲しくない、ただその一心で俺は飛び出した。

 あえて車道、トラックの真ん前に飛び込み、ほたるを全力で突き飛ばして道の反対側へ避難させることに成功したのは、ひとえに幸運だったとしか言えない。

 その幸運の代償として俺は車に跳ね飛ばされたわけだが、アイドルを守れたのだから後悔などあろう筈もない。

 二人の叫び声を聞きながら意識が遠のき。

 次に気がついた時には病院のベッドの上だった。

 視界に飛び込んできたのはほたると茄子の泣き顔。

 わんわん泣く声が頭のなかに響く。

 思考と記憶が混濁する俺の前に現れたのは千川ちひろ。

 良かった良かったと繰り返す茄子や泣きながら何度も謝るほたるを一旦退かせ、彼女は俺達の現状や事故の顛末、今後の善後策などについて説明してくれた。

 大きなトラックに跳ねられた割には、そう長い間倒れていたわけでもなさそうだし、記憶も損なわれていない。

 飛ばされた先がコンクリートではなく生け垣だったことが功を奏し、事故の規模の割に怪我はかなり軽く済んだとのこと。

 寝こけていたトラック運転手が衝突直前に目を覚ましてブレーキを踏んでいたということもあり、骨も折れていない軽傷だった。

 それでも交通事故に遭ったことには変わりないし、脳が傷ついている可能性もある。

 入院して安静にして、検査を受けて療養してください、と千川ちひろは言った。

「見ての通り、なかなか悪くないお部屋ですよ。個室ですし。
 プロデューサーさん、ここ最近働き詰めでしたからね。
 いい機会だと思ってしばらく休んでください」

「しかし、いいのですか。仕事が滞りませんか」

「ある程度なら、私達でなんとかしますよ。まあ多少の損失は避けられないでしょうが……
 そこはそれ、入院費用やなんやかやも含めて、然るべき人に責任を取ってもらいます」

 そういうと、千川ちひろは笑みを浮かべた。

 いつも俺たち職員やアイドルたちや事務所への来客などに向けるような明るい笑顔とは全く異なる、暗くて深い笑み。

「私の身内に怪我をさせて、仕事を邪魔して、アイドルたちを悲しませて……
 絶対に許しません。
 久々に腕が鳴ります。プロデューサーさんが退院するまでに、徹底的にやります。
 プロデューサーさんは体力の回復と、アイドルのケアに専念してください」

 そうだ、それがあった。

 所属したプロダクションが何度も倒産し、長い間逆境に置かれ続けていたほたる。

 我が事務所にスカウトされてからは、幸運なる鷹富士茄子のご利益もあってか酷い不幸は無かったのだが。

 ここへ来て担当プロデューサーが事故に遭うとは、これはまたネガティブな方に思いつめてしまう可能性もあるだろう。

 千川ちひろとの仕事の話が済むと、また二人のアイドルが駆け寄ってきた。

「プロデューサー……意識が戻って、本当に、本当に良かったです。どうですか? 痛いところありませんか?」

「ああ、まあ、特には……」

「……ごめんなさい!」


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