1: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/05/06(金) 19:06:33.62 ID:J9K9lNQH0
「おはようござい、まー……す」
とある冬の日。
ドアを開けながら元気よく挨拶をして……その声は段々萎んでいった。
ゆっくりと中に入って、静かにドアを閉める。
「すぅ……………………」
今日はそれなりに早く来たつもりだったけど、美穂ちゃんのほうが早かったらしい。
ドアの方を向いてソファに座って、熊のぬいぐるみを抱きしめながら眠っていた。
私が近づいて向かいのソファに座っても起きる気配はない。
「美穂ちゃんの寝顔、久々に見たなぁ……そうだ」
音を立てないようにバッグの中に手を入れる。
お目当ての赤いカメラは取り出しやすい場所にしまってあるから、すぐに見つかった。
「はい、美穂ちゃん。起きないでくださいねー……」
パシャ、と静かな部屋にシャッター音が響いた。
「…………ふみゅ」
これくらいでは起きないみたい。
「それじゃあ、もう一枚――」
「おはようございます♪」
写真を撮ろうとしたところで、ドアの開く音と共に明るい声が聞こえた。
「んぅ……」
「ちょ……卯月ちゃん」
少し身じろぎをする美穂ちゃんを見て、勢いよく振り向いてしまった。
「どうかしたの? 藍子ちゃん?」
そのまま無言で後ろを指差す。
「あっ、美穂ちゃんがお昼寝中だったんですね。ふふっ、かわいいです♪」
卯月ちゃんがそのままそっと歩いて近寄ってきた。
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