3:名無しNIPPER[sage saga]
2016/08/20(土) 22:53:07.22 ID:Ljuzcmhc0
「映画、観に行こうと思ってさあ。こんな日だから空いてると思って」
台風、来てるんですけど。バカなんじゃないの、この人。
口には出さず、薄く細めた視線だけを向けた。
接近中の台風13号は、今夜近畿地方に上陸する。
まだ雨は降りだしていないとはいえ、風は相当に荒っぽい。街路樹の周囲には折れた枝葉がちらばって、風に飛ばされて道路にまで散っている。こんな天気だからせっかくの休日の午後だというのに、街を行く人影はまばらだ。道路に行き交う車も少なく、閑散としている。
律先輩はさっきから、右手に持ったビニール傘を、こんこん、とリズムよく地面に叩きつけていた。風の音よりよっぽどやかましい。わたしはこれ見よがしにため息をついた。バス来ないなー、遅れまくりじゃねーか、道混んでねーのになんでだよ…と律先輩は言った。どうやらわたしのため息の意味を勘違いしたらしい。
「弟も誘ったんだけどさ、アイツ怖がって来ないんだよ。ビビりだよな。
澪はさ、夏期講習だって。台風の日にも勉強だぜ? 学校だって台風なら休みなのにだぞ? まったくご苦労なこって」
ご苦労なのは律先輩の頭ですよ。
それも口に出さず、わたしは視線を先輩から背けた。
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