過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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21: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/09(水) 15:33:31.25 ID:WBahAE5V0
すっかり回復した男は、ピンク色の看板が立ち並ぶ大通りで老人を待っていました。

冷たい風がぴゅうと男の首元を通り抜けます。男は身震いしました。寒さはあまり得意ではありません。

ったく、いつまで待たせるつもりだ。男は眉間に皺を寄せて悪態を付きます。

もう三時間は待っています。右手の指先が、左手の甲を忙しなくトントンと叩きます。

ふと目をやると、二人の男性が店に入って行きました。

女の何が良いんだか。男はつまらなさそうに彼らを一瞥します。

(しかし、こんな所にもこの草は生えてんのか。不気味なくらいの繁殖力だな)

男は「イサクラ」全域に大量に生息する、ギザギザとした葉を持つ草を眺めます。

この草には弱い毒があり、口にする者はめったにいません。

ワタクシは大好きなのですが……フフフ。

おや、ようやく老人が出てきたようですよ?

「遅ぇんだよ! 一時間って言っただろうが!」

「いやぁ〜、なかなかええ店じゃったぞぉ〜……ああキモチ良かったぁ〜……ひひっ!」

老人はにたぁっと厭らしい笑みを浮かべます。随分と機嫌が良い様子です。

「この身体は精力があってええのぉ……お主も行ってみると良い。癖になるぞおぉ?」

「あーはいはいそうですか、っと」

男の鼻が、老人から溢れる精液臭さと女の香りを嗅ぎ取ります。

だからこの大通りを歩くのは嫌なんだ。男は顔をしかめて、老人と共にピンク色の夜の道を歩きます。

どこかで鼠がちゅうと鳴きましたが、心なしか厭らしい声色でした。


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