過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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6: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/03(木) 20:40:04.88 ID:LfWmyaZi0
男と老人は小さな店の前にたどり着きました。

店はかなり古く、灰色の朽ちた看板の文字は読むことが出来ません。

男が雑にドアを開けると、中は夥しいほどの本で埋め尽くされていました。

奥にはやはり本が積まれた小さな机があり、何者かがそこで頬杖をついています。

「なんや、ジャバ助やないか。後ろの兄ちゃんは?」

「あのジジイだよ」

「えっ蠅王サン!? めっちゃ若返っとるやんけ! ……まあええわ。何を探しとんや」

「おう、呪いについての情報が必要でな。ほら金」

「あいあい、ちょっと待ってな」

そう言うと、声の主は身軽な動きで飛び出しました。

細い尾がしゅるりと伸び、緑色の本を抜き取ります。

その尾の持ち主の姿は小さな猿でした。無論ただの猿では御座いません。

猿は指をぺろりと舐めると、本を開きました。中には何も書かれておらず、白紙のページが広がっています

「呪い……これやね」

猿はそう言うと、右手を開きました。手のひらに謎の黒い模様が広がっていきます。

いえ、あれはただの模様ではありませんね……そう、文字で御座います。

猿がぺたりと手のひらをページに付けると、敵から逃げる蟻の群れのように、大量の文字がすうっとページ中に散らばっていきます。

この猿は文字を盗む能力を持っているのです。自身が調べた情報を書き記し、その本の内容を自分で管理しています。

これによって本が盗まれる事もなく、店を燃やされようが情報は消えません。

彼が旅をしていた時に自分で調べた情報のため、此処の本の信憑性は非常に高いです。

そのようにして経営している「情報屋 猿の浅知恵」は、多くの大物が贔屓にしています。

ちなみに、この夥しい数の本は、すでに文字を抜いているのでほとんど必要ありません。

わざわざ揃えている理由は、「それっぽい雰囲気になるから」だそうです。

「……」

「なんやジャバ助、えらい顔しとんで?」

「いや……少し特殊な呪いを掛けられてな」

「どんなん? 見せてみ……うわぁ、えげつないな自分! 何でその身体で普通に歩いてんの!?」

「ひっひっひ……さすがはジャバウォック様じゃあ〜」

「……チッ」

男は老人の皮肉を背中に浴びながら、ページをさらにめくります。

しかし、あまり役立ちそうな情報は無かったようです。何しろかなり強い呪いのようですからね。

やはり駄目か、と男が声を漏らしそうになった時です。一つの項目が目に留まりました。

「呪いを喰う種族……?」


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