過去ログ - フレデリカの真冬のダンス
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2: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/11/30(水) 18:40:11.22 ID:7FZgc2Oz0
 偶然と言えば偶然だ。

 だけど、その日はなんとなく会える気がしていたのも事実だった。

 しんと冷え込んだ夜だった。駅の外に出ると針のように鋭い風に吹かれて、ぼくは周囲の例に漏れず長めのマフラーに顔を隠す。駅周りは黒さを誤魔化すみたいに、暖色系のイルミネーションに彩られ、一年を通して一番の鮮やかさと暖かみを演出していた。どうせなら本当に暖かくしてくれればいいのに。なんて、益体のない独り言を呟いてみる。でも、きっと暖かくなったらなったで情緒がないとか文句を言いそうだから、このままでいいのかもしれない。

 冬は嫌いじゃない。寒いのも嫌いではない。嫌いなのはたぶん、この物寂しい雰囲気だ。年末だからか、あるいはイルミネーションのせいか。いずれにせよ、寂しさを誤魔化そうとする雰囲気がより寂しく見える気がして、本当のところはそこまでの意図なんてないのかもしれないけれど、ぼくの問題なのかもしれないけれど、きらきらと輝く街が好きではなかった。

 息苦しくなってマフラーから顔を出す。白いため息を吐いてから駅に背を向けて歩道橋を渡り、五分も歩けば、イルミネーションはとんと姿を見せなくなった。街灯やコンビニ、飲食店の灯りがあるから暗くはない。だけど、彩りのなくなった景色は、より寂しく見えた。

 いつも通りの光景が寂しく見えるなんて損だよなぁ。光が強くなれば影を際立せてしまう。活気のなかにあって、独りでいることが寂しくなる感覚。なにも変わらないのに、置き去りにされてしまったような気分。


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