4: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/11/30(水) 18:43:05.76 ID:7FZgc2Oz0
意味のない会話をして笑い合う。ああ、愉快。そしてカラフルなやり取りは心地いい。
フレデリカとはかれこれ十年来のつきあいになるけれど、こいつの笑顔は昔と変わらぬまま、ぼくの心を惹きつける。恋愛感情はない。でも、時折こうして見かければ嬉しくなるぐらいには、こいつのことが好きだ。幸い家が近いこともあって、中学卒業から四年経ったいまでも親交は続いている。
どちらからともなく歩きだして、ぼくたちは同じ方向にゆっくり進む。たぶん、自然と息の合う感じが心地いいのだろう。
「最近見なかったねー。大学って忙しいの? 短大と比べたら楽だって聞いたけど」
「うーん、どうだろ。いまは必修が多いから自由がない感じかな。でも三回生ぐらいになれば、少しは暇になるかも」
「三回生かぁ。その頃にはアタシ、もう働いてるねー」
空を見上げながらぼんやりと言うフレデリカ。吐き出された息は白く消えていく。こいつの横顔にも消え入りそうな儚さが見えて落ち着かなかった。
不安なのかもしれない。だけど、フレデリカのそんな表情は見ていたくなくて、ぼくは努めて明るく笑い飛ばす。
「お前が働いてる姿なんて想像できないな。適当なこと言って怒られそう」
「えー! アタシだってやるときはやるよー? まだやるときが来ないだけだよ」
「見逃してるだけだろそれ」
フレデリカはころころ笑う。たとえその場しのぎの笑顔だとしても、こいつには笑っていて欲しいと、ぼくは身勝手に思った。笑顔でいて欲しいと願った。
たあいない談笑は分けれ道まで続いた。
「じゃあ、また」
「うんまたねー」
約束なんてしなくて、だけど疑わずに「またね」と言った。
それぞれ自宅に続く道を歩く。たったそれだけの話。なのに、まるでぼくたちの未来を暗示しているように思えて、無性に不安になった。
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