5: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/11/30(水) 18:44:54.77 ID:7FZgc2Oz0
金曜日の夜に降りだした雪は、そのまま翌朝まで続いた。
寒さに目を覚ましたぼくは、カーテンを開けて驚いた。暗い曇り空はどこまでも広がっているのに、辺りは一面の雪化粧。黒と白のコントラストに染められた景色は、どことなく神秘的で、そして退廃的だった。
時計を確認すると休日の朝にしては早起きな時刻。損をした気分になる。もう一度寝直そうか。なんて布団に入ったとき、枕元のスマートフォンが振動した。
ディスプレイに表示された名前はハーフで金髪な女子の名前だった。会えば挨拶をするし、ときにはメールでのやり取りはあるけれど、しかし、電話をかけてくるのは珍しい。先日のフレデリカの横顔を思い出す。どこかに行ってしまいそうな儚さ。なにかが変わりそうな予感。
根拠はないけれど、この電話をとれば、もういままで通りにはいられなくなる気がした。
でも見なかったふりをするのも無責任に思えて、ぼくは電話にでた。
「雪! 雪だよ雪! スノウスロウスロー!」
スピーカー越しでも、楽しそうなフレデリカの顔が浮かぶほど、声音は明るく跳ねていた。ただし、言葉の意味は文字通り投げられていて、理解不能だったけれど。
色々考えるのも馬鹿らしくなって、ぼくは笑った。だって、電話にでてしまった以上、もう笑うしかないから。
「雪だなぁ。白いな」
「白! つまりは雪! ねえねえ、公園行こうよ!」
「良いけど、寒いよ」
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