10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 00:37:04.26 ID:b4qt7MSMo
―
――
――――
――――――
気が付くと、目の前にはまた観覧車があった。
立ち尽くす小さな私と、眼前にそびえる白と赤の大輪花。
外側についた色とりどりの花びらが、音もなくゆっくりゆっくり外縁を流れていく。
やがて、ひとつの赤いゴンドラが私の前で静かにとまった。
私の番だ。きぃと開いたガラス張りの扉から中に入り、いつもの固いクッションに腰を下ろした。
今日もここは、キャラメルシュガーの香りがほのかに漂っている。
『いらっしゃ〜い』
綾乃「えっ」
どこからか、いつもはしないはずの声がした。
ふと目の前をよく見ると……正面の座席に “おかしな何か” がいる。
『どないしたん? そんなまじまじと見られたら恥ずかしいわぁ』
綾乃「え……えええっ!?」
私の目の前の座席には……見慣れない動物がちょこんと座っていた。
しかも……驚くことに、はっきりと人語を喋っている。
ベージュと茶色を基調とした毛。鼻先の周りだけ白くて、目の下から頬にかけては特に色が濃い。まるで大きい “くま” のようになっている。
そしてこの遊園地の従業員のものなのだろうか、その動物に合うように小さく作られた制服のようなものを着ていて……頭には制帽、鼻先には小さいメガネまでつけている。
綾乃「……た、たぬき?」
『ん〜、よく間違えられるけどちゃうねん。ウチこれでもアライグマやねん』
綾乃「あ、そうなの……」
75Res/105.50 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。