過去ログ - 【ゆるゆり】綾乃「観覧車」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 00:36:08.64 ID:b4qt7MSMo
予想外の展開をまだ飲み込めていない私の胸に、ぽんと体操着を押し付ける歳納京子。

そして教室の時計を見て「うおっ、もうこんな時間じゃん!」と慌てた。


京子「ほらほら、早く行こうぜっ」

綾乃「えっ、ええ!」


歳納京子に片手を引かれるまま……本当は走っちゃいけないけれど、体育館までの道のりをふたり並んで小走りで駆け抜けた。

小さなラッキーを作れた嬉しさなのか、単純にいいことをしたきもちよさなのか、

歳納京子はピンチを救ってもらった当の私よりも、ずっとずっと笑顔だった。


綾乃(本当に……あなたって人は……)


……現実はいつだって、私の予想外のことばっかり起きる。けれどそれは悪いことばかりでもないようだ。

私の予想を軽々と超えてくるこの未知数少女は、持ち前のラッキーで今日も私を救ってくれた。

本人にとってはただ偶然が重なっただけのことと思っているかもしれないが、今の私にとってはまるで救世主様だった。

さっきまで悪いことしか思い浮かばなかった目先の暗いビジョンに、明るい光が差し込む。

廊下の窓から見える今日の青空は、いつもより何倍も眩しく透き通って見えた。


貸してもらった体操着を抱きしめ……胸の奥につっかかって素直に出てこられない言葉を、頑張って歳納京子にかけてみる。

とっとっとっと…………小走りで走る、足のリズムに合わせて。


綾乃「とっ、歳納京子!」

京子「ん?」


綾乃「その……あ、ありがと! 貸してくれて……!」

京子「まっ、次からは忘れないようにしなよ? 私もいつも二着持ってるとは限らないんだからさ」

綾乃「わ、わかってるわよっ///」


残念だけど、きっと私はこの先もう、体操着を忘れることなんてほとんどと言っていいほどないだろう。

体育のある日が来るたびに、あなたのその笑顔を思い出すはず。


胸に大きく書かれた『歳納』の字を千歳に見られてからかわれ、

南野先生にも「次は忘れないようにね」と言われ、

ちょっとサイズの小さいこの体操着は、動くたびに少々のきつさを感じさせ、

そのたびに少し恥ずかしくなったけれど……


この日の体育の授業は、今までで一番楽しかった気がした。



そして私は……まさかこの授業の後半で “とんでもないこと” が起こるなんて、想像する余地すら持っていなかった。



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