12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 00:39:04.56 ID:b4qt7MSMo
アライグマさんは外を見渡した。今は時計でいうの9時あたりだろうか。遠くにはいつもの海がきらめいている。
『お嬢さん……好きな人はおるん?』
綾乃「う……ええっと……」
『好きな人っていったって、お母さんとかやあらへんで。お嬢さんが “恋してる人” や』
綾乃(うぅぅ……///)
頭の中には……歳納京子の顔しかでてこなかった。
さっき体操着を持ってきてくれた時の笑顔。 廊下を一緒に走った時の、あの横顔。
『その子の名前、教えて欲しいなぁ』
綾乃「…………」
なぜだろう。ちょっとびっくりはしているけれど、私はちっとも嫌な気はしていなかった。
この子になら……アライグマさんになら、心置きなくどんなお話でもできてしまう気がする。そう思わせてくれる特別な安心感が、この子にはなぜかあった。
まるで……私の一番の親友とお話をするときみたいな、安心感が。
綾乃「……歳納、京子……っていう子なの」
『ふんふん、京子さん……お嬢さんは、京子さんのことが好きなんやね』
綾乃「…………」
私は、歳納京子のことが好き。
好きなんてもんじゃない。大好きだった。
にこにこ微笑んでいるアライグマさんに向かってもう一度、小さく心を込めて伝える。
綾乃「わ、私ね……歳納京子に、恋してると……思う……」
『うんうんっ』
アライグマさんは、顔をこくこくとゆっくり振ってうなずいた。
からかったりするような雰囲気は全くなく、その優しいまなざしは……私の心をじわじわと温かくしてくれた。
なんだかとてもうれしかった。歳納京子が好きだというきもちを打ち明けられたこと……それをこのアライグマさんに伝えられたことが、無性にうれしく思えた。
歳納京子を好きでいる自分……この想いに素直になること。
それは私にとって、何よりも心を満たしてくれることだった。
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