過去ログ - 最初のファンから、駆け出すキミへ(小日向美穂If小説)
1- 20
13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:23:47.81 ID:3RRQd8Ra0
翌日、放課後二人で電車に乗って美穂の通う養成所に向かった。高い建物と多くの店が立ち並ぶそこは、普段学校の帰りに友達と寄り道する商店街と比べて都会に感じた。
「ここだよ。」
美穂が足を止めたのは五階建てのビルだった。
「いつもここで……?」
「そうだよ。ほら、入ろう?」
慣れた様子で窓口の女性に挨拶をして、美穂は階段を上がっていく。二階のロビーの隣にある応接室に背の高い男性が待っていた。
「鈴木さん、お待たせしてすみません!」
鈴木と呼ばれた男性はこちらを向き、淳に気付くと僅かに片眉を上げたように見えた。
「こんにちは小日向さん。そちらの方は?」
「あっ、えっと、彼は私の幼馴染の坂門淳と言う者で……今日の説明を一緒に聞いてもいいですか……?」
「なるほど……分かりました、初めまして、坂門さん。お二人ともどうぞ、おかけになって下さい。」
それからは二人は淡々と、淳に触れること無く会話を進めていった。美穂は新年度から都内のプロダクションの女子寮で寮生活になること。恐らく今後多忙になり地元に仕事以外で来れるのは年に数回だろうと言うこと。そして、
「坂門さんには大変申し訳ないのですが……小日向さんがアイドルになる以上、スキャンダル等の防止の為、親族以外の異性の方とのプライベートでのやり取りは極力控えて頂きたいのですが……お二人共、ご理解頂けますか?」
「はい。」
即答した淳を美穂は驚いて横目で見てきた。
「……はい。」
「……ありがとうございます。」


説明が一通り終わった後、鈴木は美穂に思わぬ事を頼んだ。
「小日向さん。少し、席を外して頂けますか?」
「えっ?は、はい。分かりました。」
美穂が部屋を後にすると応接室は机を挟み、ソファーに座る淳と鈴木の二人きりになった。
「淳くん。」
明らかに先程とは違う優しい鈴木の声色に驚いた。
「は、はい。」
「これで、いいんだね?」
全てを見透かした鈴木の質問に、胸がいっぱいになった。

美穂と一緒に居たい。

これからも朝、一緒に登校したい。

あの桜並木を一緒に通りたい。

そしていつかは、この思いを伝えて、一緒になりたい。

――だけど。美穂の夢がそこにあるから。
アイドルの小日向美穂が笑顔にする人がきっと未来で待っているから。
坂門淳という一人は、幼馴染として、そして「最初のファン」として。
彼女を送り出すんだ。


「…………はい。」
気が付かないうちに泣きじゃくっていた。
「君は最高のファン一号だよ。……本当にありがとう。」
鈴木が隣に座り、ハンカチを渡してくれた。淳の背中をさする手はとても頼れる大きな手に感じた。
「美穂の夢……叶えてあげてください。」
「あぁ。君達の夢、確かに任されたよ。」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
18Res/18.56 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice