5: ◆ao.kz0hS/Q[sage saga]
2017/07/14(金) 02:28:58.08 ID:Vq3CUo2i0
「私…ずっと不安だったんです…プロデューサーさんに見つけてもらってアイドルになれてからもずっと…」
震える小さな手を握ると、彼女も握り返してくる。
「いつかあのお仕事のことがバレてしまうんじゃないかって…不安で、怖くて…夜も眠れない日もあって……」
「菜々さん…」
「でもプロデューサーさんに大丈夫だって言ってもらえて、胸に刺さっていた棘がやっと抜けた気分です……プロデューサーさんの言葉なら信じられますからぁ!」
僕の手を離れた彼女は、顔の横で斜めにピースサインを作り
「新生ウサミン爆誕です! ブイッ♪」
そう宣言した。
見惚れてしまうくらいに素敵な笑顔で、もちろん既に手の震えは止まっていた。
やっぱり菜々さんにはこんな弾けるような笑顔でいてもらいたいと、心からそう思う。
「よし! もう結構遅いですけど、お祝いに一杯だけ飲みに行きましょうか!」
「行きます行きますぅ! でも、菜々はジュースですヨ…?」
「分かってますって。永遠の17歳ですもんね」
「はいっ! キャハ☆」
本当に清々しい気分だった。
そうと決まれば一刻も早く祝杯をあげたくなり、早速ビジネスバッグを開いて帰り支度を始める。
だけどそこで、ワンテンポ遅れてはいたが、ある意味では当然の質問を彼女が投げかけてきた。
「そういえばですけど〜、プロデューサーさんはどうしてあの音声作品のことを知ってたんですか?」
「ギクぅっ!」
バッグにしまおうと手に取っていたレザー製のペンケースがフロアタイルに転がり、なんとも気の抜けた音がした。
そこでやっと自分が極めて迂闊なことをしていたことに気付いたのだ。
「プロデューサーさん? どうしたんですか、って、わわわ、すごい汗ですっ」
アレを入手した経緯を話すということは、それはつまり僕の性的な趣味の暴露に繋がるわけで…しかもよりにもよって菜々さんに…。
…出来るわけがない。
「そそそそそれは…色々あって…この話ははもういいじゃないですかっ! さっさと忘れてしまいましょう…?」
「あぁっ、そんなぁ…いくら大丈夫といっても、どんな風にアレが出回ってたのか気になるんですよぅ〜」
「あ…えぇ〜〜…その…友人から…データをもらいまして…それで……」
「プロデューサーさんのお友達からですか? へぇ〜そうだったんですかぁ〜…」
巧いはぐらかし方が思いつかないまま出所をこぼしてしまい、そしてすぐにミスったことに気付く。
普段は専ら菜々さんがテンパるから忘れていたけど、僕も彼女と大差ないぐらいに墓穴を掘るタイプなのだった。
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