【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 21:54:57.68 ID:u1xI7N2CO
 映画館自体には十分程度で着いた。
 大きく横に長いショーウィンドウには上映中の映画のポスターが並んでいる。
 今人気なのはCMもバンバン流れているハリウッドのアクションものと少女マンガを原作とした青春恋愛ものだ。
 しかし四人が選んだのは公開から既に大分日の経った、あまりぱっとしない国内のアクションものの映画であった。

「高校生四枚ください」

「はい。間もなく始まりますのでお急ぎになってください」

 千足がまとめてチケットを買い、上映されるフロアへと向かう。
 映画館特有の重たいドアを開けると上映直前だというのに客はまばらであった。

 兎角達はごく自然に場内を見渡し最も人のいないエリア、最後列の一角に座った。
 席順は今回は晴が一番右端。その横に兎角が座り、一つ席を開けて千足。そして左端が柩であった。

 席についてすぐに場内は暗くなった。
 スクリーンに他の映画の予告や注意事項が写し出される。この間兎角らは誰も一言も喋らず、身じろぎひとつしなかった。

 やがて本編が始まる。
 画面にまず写ったのはどこかのビルのダクト内を進む主人公の姿。しばらく進んだ主人公はやがて大きな部屋に出てパソコンを操作し始める。
 内容はスパイアクションもの。ただし兎角達は映画には初めから興味はなかった。兎角達が待ち望んでいたのはタイミング。日常空間から抜け出してもいいというタイミングであった。

 スクリーン内で警報装置が作動した。
 けたたましく鳴るベルに赤いランプ。
 そして近付く足音。
 主人公は冷静に爆弾をセットしてダクトから戻っていく。
 カウントダウンをするデジタルタイマー。やがてそれがゼロになり大爆発が起こる。
 スクリーン上に赤い爆炎が眩しいくらいに写し出されスピーカーからは骨に響くほどの轟音が鳴り響く。

 それを合図としたのだろう。晴の手が兎角の太ももの上に置かれた。
 兎角は早鐘のように鳴り響く自分の心臓の音を聴いていた。


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