3: ◆JfOiQcbfj2
2018/03/14(水) 23:56:25.38 ID:IScO5bqg0
「うわっ」
「よく出来てるよねー、私もちょっとびっくり」
ただのグッズだからてっきりプラスチックか何かかと思えばゴムのような柔らかい感触が返ってきて慌てて指を引っ込めた夕美を志希はケラケラと笑う。
「協力したって、何をしたの?」
「うーん?何か香りづけ用の薬と用途のわからない薬品の提供ー」
「え?ちょっと怖いんだけど」
「危ない物は使ってないよ?」
少し嗅いでみたら?と言われて夕美は一瞬躊躇ったが、好奇心が勝ったのか少しだけ鼻を近づけて嗅いでみる。
「……?」
甘い、というより甘ったるい香りだろうか。花のそれとは違う人工的な匂いが鼻をくすぐる。極端に不快な感じはなく、近づかないとわからないことから部屋の匂いを置き換えてしまう程ではなさそうだ。
「売れるのかな、これ」
「需要はあるらしいよー」
何でも本体(?)がアイドル事務所にあるという事実が商品価値を高めるらしい。夕美は何となく理解しながらもやはり小さいうえきちゃんを訝し気に眺めていた。
そんな様子を見ていた志希は夕美の肩に顔を載せるように覆いかぶさると提案した。
「そんなに気になるなら、持って帰っちゃう?」
「へ?」
「実は家に置いてみた感想が欲しいらしいんだよね。所謂お試しみたいな?実際において見た目は大丈夫かーみたいな」
それって被験じゃない?という言葉を夕美は何とか飲み込んだ。
「あたしも一個渡されたんだけど、しきちゃんの家っていうか部屋は一般ピーポーと比べると、あれじゃん?」
「ああ、まあ」
実際に見たことはないが彼女の部屋が薬品で溢れていることは周知の事実だ。恐らくそんな部屋にこれを置くとホラー映画のワンシーンにしかならないだろう。
「そんなとこにおいても一般的な感想は得られないだろうし、ちひろさんからもう一人信頼できそうな"普通の家に住む人"に渡して欲しいって言われてたんだよね」
結局、テーブルの上に置いてあったこれは誰かに渡すためにそこに存在していたという事らしい。
「そして栄えあるお試し第二号は夕美様に決まりましたー!おめでとー!」
「まだ受け取るなんて一言も言ってないけど……」
まぁまぁどうぞどうぞ、と志希はテーブル上のうえきちゃんを手に取ると夕美に渡す。
小さな見た目通りの重さで、当然の如く用意されていた紙袋にすっぽりと入る。
「お試しだからさー、気に入ったら貰えるかもだし、そうじゃなくても返せばいいじゃん?アタシもやるんだしさ」
「んんー、まぁ、いいけど。明日もレッスンだからその時にでも感想を言えばいいのかな?」
「それでいいんじゃないかなー」
じゃあ、志希ちゃんは今からレッスンだから失踪するねー、と去っていく彼女を見送って夕美は紙袋に包まれているうえきちゃんをもう一度確認して、気づいたように顔を上げた。
「いや、失踪しちゃダメだよね!?」
彼女を連れ戻すのに他のアイドルと協力したがそれでもだいぶ時間を食うことになった。
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