4:名無しNIPPER
2018/03/25(日) 15:26:06.65 ID:2/v3E0jz0
「あぁ、今日は入学式がある。朝ごはんは作るけど、昼ごはんは自分で作ってくれないか」
「……にゅうがくしきってなに?」
「小学校の時に一度だけ体験しただろ?」
「……がっこうについての記憶はぜんぶわすれました。おーるでりーと済み」
自分のこめかみに人差し指を当て、とぼけたふりをする妹。
数年前にイヤイヤ言いながら通ったはずなのにもう忘れるとは、かなり都合のいい頭をしているようだ。
……それにしても、こんな話し方をする妹だったかな。
ネットの影響を受けすぎてしまったのだろうか。
「とりあえず、これからぼくは高校に行く。泥棒には気を付けるんだぞ」
「……どろぼうがきたら、メールする」
「メールしても学校から家に来るまで、だいぶ時間がかかるだろう」
「……じゃ、がっこういかないで……」
ぎゅ、と妹はぼくの服の裾を掴んだ。
……昔はもっと、素っ気なかったような。
いや、ぼくの記憶違いだったのだろうか。
「悪いけど、そういうわけにはいかないんだ。なるべく早く帰ってくるから、大人しく待っていてくれ」
ぼくがそう言いながら手を握り返すと、妹は少し考え込んでから
「……わかった。まつ」
と、呟き、部屋の中へとゆっくりと戻っていった。
……なんだかんだで、こういう風に妹に甘えられたのは初めての体験だった。
誰かに感謝されることなんて、数年ぶりだろう。
久々に味わった感情に浸りつつ、ぼくはそっと扉を閉じ、学校へ向かう準備を始めた。
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