鷺沢文香「特別な一日にこそ、何でもないひとときを」
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6: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2018/10/27(土) 12:02:05.85 ID:kQQBGx/C0



取り留めのない話を一つ、二つと交わし、ゆるやかに流れ出す景色。

そのさまを、ぼうっと眺めていたところ、プロデューサーさんが口を開きました。

「それにしても、ごめんな。今日は」

「いえ、先ほども申し上げたように、プロデューサーさんのせいではありませんから」

「んんん。それはそうなんだけど、やっぱりほら、気持ちの問題で」

「……おそらく、の話になる上に、そうでなければ、勝手な思い上がりで少しお恥ずかしいのですが」

私のそんな前置きに、プロデューサーさんは「ん?」という気の抜けた声と表情で返してくださいます。

「今日という日がお仕事であっても、そうでなくても、プロデューサーさんは……その、お祝いしてくださいましたよね」

「そりゃもちろん」

「であれば、あまり変わりはないように思うのです」

「どういう?」

言わなければわかりませんか、と聞きたくなりましたが、言わなければわからないようであれば、言う他ありません。

心の準備のために一息吸い込み、ふぅと漏らします。

「こうして、プロデューサーさんにお祝いしていただける、というのはそれだけでこの上ないほど嬉しく思いますので」

顔を直視するのが気恥ずかしく、車のダッシュボードに向けて、そんな言葉を吐きました。

するとプロデューサーさんは、こちらを向いて「文香……!」と泣きそうな顔で言うのでした。

「あの……大変嬉しいのですが……その、前を向いて運転していただけると」

「ごめん」



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