14: ◆3jMo9iZPSE[sage saga]
2019/09/19(木) 22:48:06.25 ID:RSNyvt7K0
外に出ると、すっかり日は暮れていた。
あたしは夕美ちゃんを駅まで送っていくことにした。少しでも長く、いっしょにいたかったからだ。
あたしが縮んでいるせいで、並んで歩くと夕美ちゃんのほうが少し背が高い。なんとなく、それを残念に思った。
「周子ちゃん、私のうち来る?」
道すがら、夕美ちゃんが言った。
あたしの家は女子寮だ。自室に帰るまでに誰かに見つかったら騒ぎになるんじゃないか、と心配してくれているんだろう。
「んー……いや、帰っとく。たぶん見つからないから」
寮暮らしも長いことだし、あの建物のことは熟知している。タイミングや経路をうまく選べば、誰にも見られずに部屋に戻れる自信はあった。
そっか、とつぶやいて、夕美ちゃんが足を止める。
「ここまででいいよ」
ここまでって駅もうすぐやん、なぜにこんな半端なところで――
と振り返ったあたしの顎を起こして、夕美ちゃんがちゅっと唇を重ねてきた。
「……あのね、夕美ちゃんアイドルなんだからね。外でこんなことして、撮られたらどうすんの」
「養ってくれるんでしょ?」
夕美ちゃんが笑って手を振り、身を翻して駆けていく。
あれ、ぜったい見えなくなったところで恥ずかしがるやつだよなあ、なんて思いながら夕美ちゃんが角を曲がっていくのを見送り、あたしは踵を返した。
顔が熱くて、夜風が気持ちよかった。
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