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【安価進行】幼馴染「ねえ、用事無いなら切るよ?」inGEP -
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1 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/06(土) 20:46:57.25 ID:YeXwLaQo
VIPから引っ越してきました。
安価で進行する参加型恋愛シミュ風SSです。
引越しにあたって最初から書き直しの形で再掲していきます。
安価はリアルタイムで進行していた時にとられた時のものなので、ご了承下さい。
人物紹介等々があるので、再掲分は少し↓からになります。
遅筆なので、投下ペースは遅いですがぬるい目でお見守り下さい。
製作はVIPより流れが緩やかだそうなので、安価が出る時は少し前のレスから告知します。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
朝顔 @ 2024/05/06(月) 00:25:05.84 ID:AB/bv7Jv0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714922705/
オゾン層依存症って3回 @ 2024/05/05(日) 18:17:43.14 ID:JwHCDSU70
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714900662/
【安価スレ】あかるくたのしい傭兵生活 @ 2024/05/04(土) 01:17:50.63 ID:3fwRECJNO
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モバP「コンマ1桁が0でカオス・マジキチ化する安価SS?」 @ 2024/05/02(木) 12:55:16.10 ID:lZ9SQusw0
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酸 @ 2024/05/01(水) 23:00:19.57 ID:lK9RWrTc0
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【進撃の巨人】俺「安価で巨人を駆逐する」 二匹目 @ 2024/05/01(水) 21:08:53.38 ID:iiJDb4My0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714565332/
旅にでんちう @ 2024/05/01(水) 14:47:47.55 ID:KgjR8ljxO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714542467/
【クリスマス・年末・年始】連休暇ならアニソン聴こうぜ・・・【避難所】 @ 2024/04/30(火) 10:03:32.45 ID:GvIXvHlao
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714439011/
2 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 20:49:38.85 ID:TauWllso
まってました
3 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 20:50:30.93 ID:X6p.E9s0
>>1
乙
出来れば引越してほしくなかったけど
4 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 20:51:20.82 ID:u/KMSkSO
>>1
乙
5 :
なすーん
[なすーん]:なすーん
__ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
``ー// |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|! | `ヽ=='´
l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ| | |
┏┓ ┏━━━┓ | || `Y ,r‐、 ヽl,_)ヽ ゙、_ | | |. ┏━┓
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┗┛ ┗━┛┗━┛ ノ ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、 ┗━┛
r|__ ト、,-<"´´ /ト、
| { r'´ `l l /|| ヽ
゙、 } } | _|___,,、-─‐'´ | ゙、
`‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/ | | |、__r'`゙′
| |/ i |
| | |
6 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 20:54:16.97 ID:Oc1Zjdk0
どう考えても引越は正解だろ
あのままだと間違いなく荒れていた
とりあえず
>>1
乙
まぁ気長に書いてくれや、ここまできたら中々の長編を期待してる
7 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 20:54:22.95 ID:htwJknwo
>>1
乙
8 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 20:58:12.07 ID:M5XgREDO
>>1
乙
9 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 21:00:19.26 ID:D3cJmO6o
楽しみにしてるよー
10 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 21:12:58.54 ID:VVoxGHs0
これは
>>1
乙じゃなくてどうのこうの
前950
ありがと
無事たどり着いたよ
11 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 21:15:33.14 ID:D51LeESO
>>1
乙
トミーかわいいよトミー
12 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 21:19:23.12 ID:du1i2cAO
>>1
乙
13 :
なすーん
[なすーん]:なすーん
__ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
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14 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 21:21:20.69 ID:4GWVIe60
楽しみ
15 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/06(土) 21:30:54.22 ID:YeXwLaQo
【あらすじ】
家がお隣同士の幼馴染の「サナミ」と「男」。
”幼馴染”という二人の関係は、突然の男の告白から変わり始める。
そんな中、同級生で親友の元気なちびっこ「トミー」とも急接近。
揺れ動く気持ちに悩める「男」だが、更に悩める事態が重なる。
淑やかだが変わり者と評判の料理部部長「アマネ」ともあんな事に……・!?
作者さえも予測不能!
笑える?切ない?
ほんの短い間の、青春の1ページ。
貴方も安価、取ってみませんか?
16 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/06(土) 21:46:18.91 ID:YeXwLaQo
【人物紹介】
・男
このお話の主人公で、高校三年生。
少しだらしない所もあるが、ごく普通の青年。
時折閃光の様にとんでもないアイディアや馬鹿な行動を起こす癖が…?
人生初のモテ期(?)の到来で、迷える気持ちは何処へいくのか。
・サナミ
男の幼馴染で、さっぱりした性格の女の子。口癖は「ばか」
料理部に所属する等家庭的な一面もある。
カジュアルな服装が好きで、スタイルは良い。
男の姉であり妹であり、親友でもある彼女だが、
その気持ちは少しずつ変わり始める……?
・トミー
学食をぶちまけた回数学内ナンバー1。
ころころ変わる口調と一人称が特徴的な、元気なちびっこ。
誰からも好かれる明るい性格。意外な事に部活は茶道部に所属している。
親友の男に隠れた恋心を抱いているとかいないとか。
可愛いポンポンがついたふわふわ帽子がお気に入り。
・アマネ
料理部部長で、独創的なスイーツ(?)発明家。
甘い物に目がないため、いつの間にかアマネが本名のようになってしまった。
淑やかで美しい外見とは裏腹に、スイーツの事になると暴走してしまう。
男を毒見係のように扱うのだが、その裏には隠れた気持ちが……?
すらりと細い黒髪美人。コアなファンもちらほらいるとか。
17 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 22:18:31.44 ID:oNhBgXM0
再掲ってほんとの最初から載せなおすのか?
18 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/06(土) 22:25:00.79 ID:YeXwLaQo
【人物紹介続き】
・母
男の母。
夫とは男が幼い頃に死別。
仕事をしながら女手一つで男を育てた強い女性。
男のバカな行動にも笑ってスルー出来る良い性格。
・ヤリダ先生
男の通う高校のゆるい英語教師。
どう見ても教師には見えない風貌で、男によく絡んでくる。
時折真面目な顔を見せる事がある。
本名は「ヤリタ」だが、「やりたいだけだ」と女学生を中心に言われ続けたため、
ヤリダという不名誉なあだ名がついた。本人は気に入っているらしい。
19 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/06(土) 22:26:08.11 ID:YeXwLaQo
>>17
一応そのつもりです。
再掲とは言っても、構成とかその前の話とかを練り直すので、
一度読んだ人でもそれなりに読めるようには書いていくつもりです。
気長にお待ち下さい。
20 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 22:50:23.51 ID:du1i2cAO
C
21 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 22:54:14.25 ID:tpmM9hM0
ずっと読んでた
C
22 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 22:58:18.90 ID:5G7dKmko
楽しみ
サナミかわいいよ!
23 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 23:03:21.92 ID:IbAVEUSO
ずっと楽しんでるよー
わくわくしてしゃーない
24 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:04:13.37 ID:2Mscf2U0
にゃん
25 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:06:30.03 ID:2Mscf2U0
すまん誤爆orz
最初から読んでるよ!がんばれ!
サナミかわいいぃぃ
26 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:09:20.05 ID:oNhBgXM0
>>19
こっちは落ちる心配もないし、まったり待つよ
無理しないペースで書いてくれ
27 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/06(土) 23:28:59.88 ID:YeXwLaQo
【追記】
雑談なんかもガンガンしてもらって全然OKです。
イラストあげてくれてた人も居たみたいだけど、一個も見れてません……
「ぼくのかんがえたさいきょうの○○ちゃん」みたいなイラスト超みたいです。
創作板なのでどんどんうpって下さい。そういうのも楽しみにしてます。
28 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:36:23.35 ID:M5XgREDO
前スレ
>>1000
は見なかったことにしよう・・・
29 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:37:06.21 ID:Z07x4y6o
1000 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:34:58.88 ID:8tkGJnqDO
>>1000
なら母√
30 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 23:49:52.38 ID:INsWIhko
ここはsageた方がいいの?
安価進行だからage?
31 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:53:45.42 ID:D3cJmO6o
1000 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 2010/03/06(土) 23:34:58.88 ID:8tkGJnqDO
>>1000
ならトミー√
32 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/06(土) 23:57:35.62 ID:OlehrhMo
1000 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/06(土) 23:34:58.88 ID:8tkGJnqDO
>>1000
ならサナミ√
33 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/06(土) 23:57:40.92 ID:TWBshXg0
最初っから見てるけど
>>1
の文章好きだわ
がんばって完結させてな!
サナミもトミーもかわいいよww
34 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 00:18:10.85 ID:UdglqQDO
俺も最初からみてるが、
>>1
が本当に同一人物かってくらい
>>1
の態度が変わったと思う
35 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 00:39:46.47 ID:/Xe58.AO
>>34
そういえば初期の頃は「あなたの雑談なんてどうでもいいです」的なこといってたなww
36 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 00:55:05.16 ID:U38cyWco
あれは安価で操られていたのです。
今導入部をちょっとだけ書き溜めてます。
37 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 01:09:23.57 ID:/Xe58.AO
>>36
操られてたのかよwwww
38 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 01:14:12.43 ID:u//DmQDO
>>1
お茶目だなw
39 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 01:20:38.64 ID:U38cyWco
【始まり】
―――二歩、それが俺達の距離。
幼馴染のサナミと俺は、いつもと同じ様に、藍色に染まる帰り道を歩いていた。
高校三年らしく、最近の会話は、ほとんどが進路の事ばかりだ。
サナミ
「進路、どうするの?」
大寒という季節に相応しい風が、振り返る彼女の髪を揺らす。
男
「んー……俺はそのまま上がるよ」
サナミ
「ふーん……。あたしも、そうしよっかな」
男
「違う所、受けるんじゃなかったのか?」
俺の言葉に被るように、また歩き出した彼女が続ける。
サナミ
「でーも楽だよねー。高校から大学にエスカレーター!ってさ」
少し前を歩くサナミが、大袈裟な手振りをつけて笑った。
俺達の通う高校は、高・大一貫教育が”ウリ”だ。
40 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 01:21:36.16 ID:U38cyWco
大学への進学希望者は、簡単なテストでそのまま大学に上がる事が出来る。
飽きるほどしてきたわけじゃないが、今更試験勉強なんて出来そうに無い俺は、
随分と早い段階でエスカレーターに乗る事を決めていた。
男
「まぁ、それが良くて入った高校だしな」
サナミ
「それも、そうだけどね。ばかなのに入れてよかったじゃん」
男
「うるせー!」
サナミ
「あはははっ!」
サナミの大きく口を開ける、気取らない笑い方。
その笑い声に、いつもつられて笑ってしまう。
もし彼女が同じ様にそのまま大学に上がれば、
俺達はいよいよ15年以上一緒に学校に通う事になる。
俺の少し前を歩くサナミの後姿。
それは、ずっと変わらない距離だと思っていた。
でも、一体いつから、俺はこの距離を縮めたいと思い始めていたんだろう。
学校から歩いて15分、俺達は家の前に到着した。
サナミ
「それじゃ、また明日ね」
男
「おう、また明日」
41 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 01:22:15.39 ID:U38cyWco
―――ガチャン…
―――ガラガラガラ…
サナミは左、俺は右。
それぞれ左右に別れて、玄関を開く。
隣り合う洋風家屋と、和風家屋が、俺達の家だ。
家まで本当に隣同士とは、絵に描いた様な幼馴染だ。
玄関に入ると、暖かい夕食の香りが立ち込めていた。
母
「おかえりー!いやー今日は暖かかったわね?」
俺は厚いジャケットにマフラーという重装備だというのに、
台所から現れた母は髪を束ねて薄い半そでにデニムと、なんとも涼しそうだ。
男
「そりゃ家から出てなけりゃ寒くもなんないでしょ……」
母
「あーそれもそうねー。頭いいじゃない。ご飯食べるでしょ?」
男
「うん、食う」
WEBデザイナーをしている母は、一日家から出ないなんて事はよくある。
パソコンなんてのに疎い俺からすれば、随分”ハイソ”な仕事だ。
身内褒めをするわけではないが、そのせいか、他の”母親”に比べて、幾らか若い。気がする。
42 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 01:24:59.75 ID:U38cyWco
年季の入ったコート掛けに上着を放って、俺は一段飛ばしで階段を駆け上がった。
自室のドアを開けると、当然だが空気は冷たい。
俺の部屋は和風の家にも関わらずフローリングなのだが、掃除が便利な反面冬が辛い。
鞄とマフラーをベッドに放り投げて、俺は乳白色のカーテンを開いた。
男
「……ん?まだ部屋に居ないのか」
隣り合うベランダの向こうの部屋に、明かりが点いていない事を確認する。
窓までの距離は約3メートルといったところか。
帰ってくるなり隣人の部屋を眺めるとは、覗き魔のようだが、
向かい合うベランダの先にあるのは、サナミの部屋だ。
子供の頃は、よく両親に内緒でベランダを越えてお互いの部屋を行き来したりした。
思えば、これだけ近い所に向かい合う形でベランダとは、おかしな造りの家だ。
暗いままの窓を眺めながら、俺はサナミの事を考えていた。
男
「……言えるのか……俺……」
俺が今日、やろうとしている事は、たぶん間違ってはいない。
ただ、それは行ったが最後、もう戻れない道に進むのと同じ様にも思えた。
小さなため息を吐きながら、カーテンを閉めると、階下から母の声。
母
『おーい、ご飯冷めちゃうわよー!』
男
「あーわかった!今降りるよ」
腹が減っては戦は出来ない。今晩は腹十分目まで食べてやろう。
43 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 01:51:02.02 ID:U38cyWco
台所に下りると、すっかり夕食の準備が整っていた。
母
「ご飯、どれくらい食べる?」
しゃもじとお茶碗をひらひらと振る母。
男
「じゃあ、”昔話盛り”で」
母
「そんなにお腹空いてたの?」
呆れるように笑いながら、俺用の青いお茶碗に湯気を立てるご飯を盛る。
向かい合わせに並べられた二膳の箸。
この光景を見る度に、俺は母への感謝と、記憶の奥に眠る父への懐古の気持ちを感じる。
俺の家庭は、俺と母、二人だけだった。
父は俺がまだ幼い頃、ランニング中の交通事故で亡くなった。
悲しい事だが、俺にはもう写真を見る事でしか父の顔は思い出せない。
母
「んじゃ、食べようか」
男
「うん、いただきます!」
母
「どーぞおあがんなさい」
それでも俺は、なんでも笑い飛ばす母の明るさに、
寂しさなんてものは感じた事がなかった。
44 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 01:52:24.08 ID:U38cyWco
書き溜めここまで。
こっからはいつもの超スローペース更新+前スレのリライトになるので、
たまーに覗きにきてやってください。ヒロイン談議もどうぞ。あとイラスト。イラスト。
45 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 02:07:51.17 ID:2Vxi4ISO
確かにササミのエロ画像が欲しいな
46 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 02:18:18.92 ID:YGHTmADO
サナミでもないし、えろくもなくてすまんが。
http://imepita.jp/20100307/079830
あとイメージぶち壊しだったらすまん
>>1
がんばれ
47 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 02:34:53.87 ID:/Xe58.AO
俺はトミーの髪型はストレートロング(といっても肩よりちょい長めくらい)のイメージだった
やっぱり個人差あるねwwww
48 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 02:36:05.88 ID:/Xe58.AO
書き忘れ
>>46
GJ
49 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 02:49:12.19 ID:rv1W5xI0
>>47
トミーはショートカットのイメージだったな
>>46
GJ!!できたらふわふわ帽子のトミーも描いて欲しい
50 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 02:50:44.48 ID:wQIrQhc0
>>46
ほう。なかなかお上手ですね。
51 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 03:23:02.37 ID:YGHTmADO
http://imepita.jp/20100307/119510
コメントをくださった皆さんありがとうありがとうありがとう
失礼しました
52 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 03:32:15.07 ID:U38cyWco
こういうのもっとください。皆ほら頑張って。頑張りますから。
53 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 03:33:46.03 ID:2oNh2USO
うむ、絵上手いとは思うが自分の中のイメージ壊したくないので見ないことにしよう
54 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 03:38:31.85 ID:8Yy.fdUo
.
>>46
GJ
ところでどうでもいいけど
>>46
は女?
55 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 03:41:18.14 ID:rv1W5xI0
>>51
帽子十分かわいいぞ
なんか要求聞いてもらってありがと
56 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 04:26:13.52 ID:YGHTmADO
>>54
すまんこ ♀だ
眠れないので
http://imepita.jp/20100307/157470
でも寝る。おやすみなさい。
57 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 04:31:49.44 ID:U38cyWco
母
「そういえば、サナミちゃんは進路どうするって?」
男
「んー、そのままあがるかもって言ってた」
俺は母ではなく、熱々の味噌汁を見つめたまま答える。
随分とタイムリーな質問に思わず噴出しそうになった。
母
「そっかー……。サナミちゃんなら、私、”いい”わよ?」
男
「なにが”いい”んだよ……」
母は昔から、随分サナミを気に入っている。
なんでも、本当は一緒に遊べる女の子が欲しかったそうだ。
そう言う度に俺が抗議すると、あんたは別よと笑うのだが。
母
「あれ?もしかして照れてる?」
こういう悪戯な目をしている時の母は、戸惑っている俺を見抜いて延々とつっこんでくる。
俺はこれ以上からかわれるのを恐れて、残りの夕食を一気に平らげた。
58 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 04:46:52.62 ID:8Yy.fdUo
>>1
キタ!! wwktk
>>56
いやいや謝らなくてもwwww
絵が女っぽかったもんでつい訊いてしまった
59 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 04:52:27.10 ID:U38cyWco
―――30分後
男
「あっちい……!」
火照る体をベッドに放り投げて、俺は自分の意思を再び確認する。
俺はこれから、幼馴染のサナミに告白する。
何度も何度も、確認する。
いつから彼女にそんな感情を持ったのかは、自分でも判らない。
もしかしたら、ずっと前からあったのかもしれない。
どくん、どくんと大きく跳ねる胸を落ち着かせようと思うのだが、
考えれば考えるほどその強さは増していった。
右手に握り締めた携帯の液晶には、サナミの文字。
後は通話ボタンを押すだけだ。
男
「……あー……くそ……」
親指が固まってしまったように動かない。
しかし、いつまで悩んでいても仕方ない。
なにより、俺は悩むのが苦手だった。
深く息を吸い込んで、通話ボタンを押す。
携帯を耳に当てると、ひんやりと冷たい。
―――ルルルル……
無機質なコール音を聞くと、異常に緊張が増してきた。
俺は昔から極度の緊張状態になると、
自分でも意味不明な言動や行動をとってしまう癖がある。
こんな時に悪癖が出てしまわないように、心から祈った。
60 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 05:39:35.92 ID:U38cyWco
サナミ
『……もしもし?』
男
「あ、もしもし、サナミ?」
突然聞こえてきたサナミの声に、鼓動が急激に加速する。
サナミ
『どしたのー……?』
まだ9時過ぎだというのに、サナミの声は随分と眠そうだ。
男
「いやー…あの……」
あれほど自分に言い聞かせたにも関わらず、何も言い出せない。
サナミ
『ねえ、用事無いないなら切るよ』
言葉に詰る俺に痺れを切らせたのか、少し苛立たしげにサナミが言う。
まずい、切られては肝心の話が伝えるどころではない。
焦りと緊張がどんどんと俺の思考能力を奪っていく。
サナミ
『……もう眠いんだから、用事があるなら早く言ってよ』
>>3
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 06:20:33.94 ID:F97+pPvP0
あうあうあ
61 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 05:41:55.80 ID:U38cyWco
やっとここまできた……
文才ゼロだと書いて消し書いて消しの繰り返しだから時間かかって申し訳ない。
>>56
可愛い……。別にもっと書いてくれてもいいです。
他の人も落書きでもなんでもうpってくれたら書く元気になります。
62 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 06:04:09.12 ID:wnQtI/Yo
遅筆でも面白いから全然いいよ!
ここはスレが落ちる心配もないから、
>>1
のペースで書いてて問題ないっしょ
63 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 07:47:29.87 ID:bvRldgAO
でもあんまり時間かけてると、いざ話のつづきがはじまるころには
みんな熱がさめていなくなってたりしてね
64 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 10:03:29.74 ID:GJjx.Eoo
>>63
それはない
でも出来れば早く続きまで到達してほしいなwwww
65 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 10:04:25.81 ID:UdglqQDO
それはあるかもな
やっぱり早く続き読みたいやつは多いだろうしな
66 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 10:28:28.14 ID:SY2T4YSO
>>1
のペースでやればいいと思うけどな
俺はマターリ進行でも完走するまでついてくぜ
67 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 10:29:50.78 ID:/Xe58.AO
俺はいなくなったりしないぞ
68 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 11:36:55.15 ID:SPR6FkAO
俺もだ
69 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 12:12:28.92 ID:8Yy.fdUo
>>1
がんばれ
いつまでも待ってるよ
70 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 12:23:35.50 ID:3A63RISO
待ってるよwwww
たまに絵も投下しようかな…
下手なんだけど。
71 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 12:32:56.02 ID:UdglqQDO
煽り耐性0の俺は上達したらまた絵かこうかな
72 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 14:30:06.34 ID:YuxXqnA0
最初に載せられたドーナツ食べてるトミーは可愛いかったけど、それ以外は・・・
73 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 14:32:28.01 ID:dBAwcMIo
>>72
俺もこれまでに出てきたトミーの絵かわいくないと思う
74 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 15:16:08.25 ID:/1xyoUY0
お前らさ、せっかく絵師さんが描いてくれてるのに可愛くないとか言うなよ
後から描く人が投下しづらくなるだろ…
人によって絵の好みだって違う
だから上手い下手なんて描けない人間は言う権利はないよ
せっかくなんだから盛り上がろうぜ、製作板なんだし
駄レスと分かっていたが書かせてもらった
ROMに戻る
75 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 15:35:40.23 ID:vEugx.AO
>>1
が壊死歓迎な一方、住人が壊死廃除しようとするのはありがちなこと
そんな俺は画をみないからどうでもいい
76 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 15:38:13.75 ID:aC3hXr.o
絵なんて別に欲してるわけじゃないし多くの場合盛り下がったりおまえみたいのが出たり荒れだす原因なんだよね
別にイメージだけ借りて描くな、なんて言わないけどそれを張り付けて馴れ合いの流れになるのはごめんだしオナニーの舞台にしないでくれって思うんだよね
77 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 15:45:36.86 ID:8Yy.fdUo
. ____
/ \
/ ー ー ヽ
| ( ●) (●)|
| (__人__) i
.. | `⌒´ i お前らちょっと落ち着け
i i
! !
ヽ ._ __.ノ
| ̄ ̄ ̄ ̄| / ヽ,.ノ \
|____| / , }
_||.____||_____ (. ( _{ ヽ,____.ノ.- ノ_.,:-y-、_
/ __)_)__ \___ヽ と)_/ /,.:':/| .\
/ 6{””””}.、 ヽ;シ /,.:':/ ::::|--、 .\
/ (. ゙.ー '゙ ) .:i⌒⌒i:::: / ./ .\
/ ゙ ー― '´ /i__i/ ./ .\
78 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 16:03:10.72 ID:U38cyWco
男
「あうあうあ」
サナミ
『……はぁ?もう切るよ』
しまった。
俺は何を言っているんだろうか。
サナミと電話をする時、よく意味の判らない冗談を言う事があるが、
今はこんなにくだらない事を言うために電話したのではない。
>>6
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 06:23:13.57 ID:se7bTB4g0
パンツの色だけパンツの色だけ教えてプリーズ!
男
「パンツの色だけパンツの色だけ教えてプリーズ!」
サナミ
『…………』
あ、切られる。
思いつきを脊髄反射のように口に出してしまった。
時が止まったような沈黙。
間違いなく切られる。
サナミ
『……ふふっ……それ、たまに聞くけど知りたいの?ばーか』
呆れたように鼻で笑われた。
どうやら冗談だと思ってもらえたらしい。
緊張するといつも大事な事を言いそびれるのは、悪い癖だ。
あの事を、ちゃんとサナミに伝えなくては。
>>11
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 06:28:43.22 ID:xMwtSlK4O
アナルは名詞とちゃうんやで
79 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 16:09:37.67 ID:UdglqQDO
初期の鬼畜安価懐かしいなwwwwww
80 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 16:15:58.20 ID:U38cyWco
サナミ
『じゃ寝るからー』
男
「アナルは名……」
―――ツーツー……
電話は唐突に切れた。
切られて当然の事を言ったわけだが。
不快な電子音を立てる携帯を眺めて、ため息をつく。
俺の思考はまだこんな時間にも関わらず、
緊張のあまり告白どころか馬鹿で下世話な冗談しか思い浮かばないとは。
俺はリダイヤルボタンを押して、再びサナミの名前を表示させる。
もう一度、かけるべきだろうか。
>>16
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 06:32:53.67 ID:QrEN5m0K0
直接家に行っておちんぽミルクをかける
81 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 16:30:20.65 ID:U38cyWco
自分の気持ちを伝えるだけの事が、これほどまでに難しいとは。
俺は直面した現実の前から、逃げるように妄想にふける。
もし告白が成功すれば、俺達の関係は幼馴染から恋人へと変わる。
男
「……ふふっ……」
ベッドに転がりながら、一人気味の悪い笑いを漏らす。
枕に顔を埋めたまま、俺の妄想は加速していく。
ついさっきまでサナミの声を聞いていた事もあってか、
頭の中では、鮮明なイメージで彼女が俺を誘っている。
俺は少しずつある部分に血流が流れるのを感じながら、ふと窓を見た。
男
「……そうだ……行けばいいじゃないか」
勢いよくベッドから立ち上がった。
幼い頃と同じ様に、ベランダから本人に会いにいけばいい。
閃光のように思いついたアイディア。
電話が上手くいかないのなら、もういっそ、この猛る気持ちと興奮を本人にぶつければいい。
俺はTシャツと下着だけの姿から、ものの1分ほどで身支度を整えた。
身支度とは言っても、ジャージを履いて、黒いニットキャップを被っただけだが。
男
「……10時過ぎ。寝てるんだろうな」
性的な欲望に駆られた時、人間は著しく理性が低下すると聞いた事があるが、
あれはどうやら本当らしい。俺は眠っているサナミを想像して更に興奮してしまう。
音を立てないように、ゆっくり窓を開けると、2月の冷たい空気が頬を撫でた。
82 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 16:35:34.26 ID:U38cyWco
もうちょっと進めば軽い手直しだけであげれそうなんで若干ペースはあがると思います。
ほら恥ずかしがらずに絵も書いちゃってね。こっそり見せてください。
83 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 16:37:44.11 ID:dBAwcMIo
>>82
無理せずにがんばってねー
84 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 17:13:38.94 ID:U38cyWco
窓を乗り越えてベランダを出ると、もう目の前はサナミの部屋だ。
俺が突然部屋に尋ねてきたら、驚くだろうか。
男
「……待てよ……」
冷たい夜の風が、興奮で火照った頭を冷やす。
普通に考えれば、告白を飛び越えてこんな夜這いにも近しい行為、
きっとサナミは怒るだろう。怒るどころか、口も聞いてもらえないようになるかもしれない。
想像していたような甘い日々は、もう望めないかもしれない。
そんな事が、本当に望んでいた事なのか?
>>22
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 06:40:54.15 ID:QrEN5m0K0
冷静になって考え、電話をかけることにした
85 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 17:31:07.06 ID:U38cyWco
男
「…………」
考える、考える、ひたすらに考える。
人の家のベランダ、ジャージに帽子姿で頭を抱える自分の姿を客観的に見る。
何処からどう見ても、立派な不審者にしか見えない。
もし今パトロールをしている警察官にでも見られたなら、即職務質問だ。
いや、もしかしたら即逮捕なんて事もあるかもしれない。
”告白しにいこうと思っていたんです”なんて誰も信じてくれはしないだろう。
母やサナミにも軽蔑され、俺は暖かいカツ丼を食べながら涙を流し……
男
「ちがうだろ!」
余りにピントのずれた妄想に、思わず自分でツッコミを入れてしまった。
自分の大きな声に、自分で驚く。俺は何をやっているのだろうか。
今の声でサナミが起きてくるかもしれない、こんな所を見られたら全て終わりだ。
俺は音を立てないように出来るだけ急いで、ベランダを超え自分の部屋に戻った。
男
「……やっぱり、もう一度電話しよう。ちゃんと言わなきゃ」
今時の若者らしからず、サナミは余り携帯電話に依存心が無い。
眠って居たら恐らくは出ないだろう。しかし、かけないよりはましに思えた。
リダイヤルボタンを押して、通話ボタンをゆっくりと押した。
もしサナミが出たら、なんと言えばいいのだろうか。
>>32
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 06:50:59.41 ID:0BfucSFN0
生きても後2、3年!![
ピーーー
]!死にさらせ!!
86 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 17:31:55.40 ID:2oNh2USO
こりゃ続きはかなり先か
続き来たら呼んでね☆ミ
87 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 17:55:13.27 ID:U38cyWco
二度、三度、四……。
コール音が重なるほどに、俺の緊張と体温が上がっていく。
男
「なんで出ないんだよ……」
しかし、いくら鳴っても出る気配は無い。
男
「くそおおお……!」
極限の緊張は段々と怒りにも似た感情に変わってくる。
俺が必死の思いで告白しようとしているのに、寝ているとはどういう事か。
サナミが電話に出たらとにかく一言、少し文句を言ってやろう。
待てば待つほど、俺の緊張は怒りへとベクトルを曲げていく。
サナミ
『……んー……もし…も…し…』
携帯を握る手の力がほぼ限界に達した時、サナミの眠そうな声が聞こえてきた。
男
「生きても後2、3年!![
ピーーー
]!死にさらせ!!」
―――ツーツー……
男
「うおおおおおお!!何言ってんだ俺えええ!」
通話を終了する音に、ハッと我にかえる。
終わった、俺の告白は、最悪の形で終わりを迎えた。
俺はさっきまでの爆発しそうなほど高い興奮とは打って変わって、
枕に顔を埋め、情け無い格好のままで叫んだ。
極度の緊張を感じると、わけのわからない事を叫んでしまうのも、俺の悪癖の一つ。
汗ばむ携帯を放り投げる。
もういい、朝なんて来なくても。
目も合わせてくれない幼馴染を思い浮かべて、俺は布団に潜り込んだ。
もう、顔も合わせられない。
俺は自分の馬鹿さを心の底から呪いながら、目を閉じた。
―――翌朝
男
「……行ってきます」
母
「何とぼけた顔してんのよ!しゃきっとしなさい」
―――ゴツン
88 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 17:56:23.55 ID:U38cyWco
言ってみたものの、自分でも先が長い事に気づきました。
出来るだけ早く頑張るのでどうかお待ち下さい……。
89 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 17:57:03.45 ID:z4sa3xgo
wwktk
90 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 17:59:48.56 ID:YuxXqnA0
このスレじゃ追いつかないんじゃね?vv
91 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 18:32:44.53 ID:U38cyWco
男
「いってえ!いてーな!……行ってきます」
学校など行けるわけがないと思っていたが、結局いつも通り玄関を出た。
しかし、母から拳骨を貰うほどに情けない顔をしていたらしい。
それもそうだ、一世一代の告白を失敗に終えた今、俺には生きる希望さえ見つからない。
俺はサナミが玄関から出てこない事を確認して、足早に歩く。
周りを見渡しても、彼女の姿は無い。
男
「……よかった……」
いつもは俺が出てくるのを待っていたりするのだが、今日は違ったらしい。
胸を撫で下ろしながらも、悲しい気持ちが押し寄せてくる。
ともあれ、今日は一人で登校しよう。
壁にもたれ掛かかり一人で打ちひしがれていると、
サナミ
「ねえ、何してんの?」
男
「……!!」
後ろから突然サナミが現れた。
不思議そうな顔でこちらを見ている彼女の姿に、背中から汗が噴き出す。
何て言えば良いのか、わからない。
>>42
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 07:04:12.58 ID:QrEN5m0K0
昨日はすみませんでした
男
「昨日はすみませんでした」
謝ろう。とにかく謝ろう。
未遂には終わったが不法侵入、奇怪な言動、暴言。
少なくとも謝らなければ、俺は人間として終わってしまう。
下ろした頭が上げられない。怒ってるあいつの顔は、とても怖い。
サナミ
「……へ?何が?」
首をかしげ、目を丸くする。
男
「……え?お、覚えてないの?」
92 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 18:33:25.55 ID:U38cyWco
サナミ
「電話の事?パンツがどーのってとこあたりから全然覚えてない!何、何か変な事言ってたの?」
助かった。全身の力が抜ける。神様はまだ俺を見放しては居ないようだ。
眼球に突き刺さる太陽も、冷たい風も、全てが美しい。
男
「い、言ってない言ってない!!い、いこーぜ!」
なんだか猛烈に照れくさくなって俺は目線を反らして歩き出した。
サナミ
「……?変なの。あ、あたしコンビニ寄ってから行くね」
男
「お、おう。じゃあ先に行ってるから」
乾いた風に揺れる綺麗な髪。赤いチェックのマフラー。
軽く手を振りながら歩いていく姿は、いつもより数段も可愛く見えた。
交差点で別れて、横断歩道を渡る。
子供の様に、白だけ渡れば上手くいく、なんてジンクスをかけながら。
すると横断歩道の向こうから、朝の喧騒を掻き分けて、大きな声が響いた。
サナミ
「あ、そーだー!今日はねー、白ー!」
男
「なっ……!ばかやろ……!」
行き交うサラリーマンや学生が声の方を見る。
満面の笑みで手を大きく振っているサナミ。
何故かこっちが恥ずかしくなってしまう。
利発で、活発な彼女の時折見せる可笑しな行動。
そういう所に、俺は魅力を感じている。
男
「……よし、今日こそ……!」
曲がり角に消えていく彼女を見ながら、俺は拳を固めた。
今日こそ、ちゃんと気持ちを伝えよう。
問題なのは時間だ。夜にすれば、また昨日のような失態を繰り広げるかもしれない。
学校へ足を向けながら、俺は悩んだ。
>>53
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 07:21:48.90 ID:7PmUItgU0
今だ!!!
93 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 18:47:13.28 ID:U38cyWco
男
「今だ!!!」
突然の声に前を歩いているサラリーマンにぎょっとされてしまった。
俺は苦笑いを浮かべて、少しだけ頭を下げる。
すいません、いつもお仕事ご苦労様です。
昨晩の事も覚えていないようだし、今日はサナミの機嫌も良さそうだ。
俺自身が不安定な夜に比べれば、もしかしたら、
今言ってしまう方が、よほど良いのではないだろうか。
男
「……よし…!」
上手く渡りきれた横断歩道に、もう一度向き直る。
赤く光る信号機。この信号が変われば、歩き出して、追いかける。
昨日の”修羅場”を乗り越えたせいか、俺は妙に落ち着いている。
告白なんて、どうなるかわからないけれど、きっと何かは変わるはずだ。
俺は”幼馴染”という距離を、変えようとしている。
幾ら深い呼吸を繰り返しても、緊張する。
信号よ、まだ変わらないでくれと、願う。
それにしても、告白というのは、何かプレゼントの様な物が必要なのだろうか。
ポケットを漁っても、携帯と財布(中身は1万)と、包み紙に包まった食べ終わったガムぐらいしかない。
もう信号が変わる。
何かを買っていくのか、そのまま行くのか。
>>61
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 07:34:35.70 ID:0BfucSFN0
包み紙に包まったガムを幼馴染の顔面に投げつける
手の平の上で、ポケットから取り出した包み紙を転がす。
まず、この包み紙に包まったガムを顔面に……・
男
「……違う!」
又も緊張のあまり、意味不明な妄想にふけってしまっていた。
気がつけば信号は青に変わっている。ゴミ箱にガムを放り投げて、俺は急いでサナミの後を追いかけた。
白い部分だけを踏む事は、忘れずに。
―――数分後
男
「……居た……」
94 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 19:01:48.62 ID:U38cyWco
大きな数字が書かれた近所のコンビニから、小さな袋を提げて出てくるサナミを見つけた。
先に行くと言った手前、俺はごく自然に振舞おうと心がける。
サナミ
「あれ?何やってんの?先に行ったんじゃなかった?」
男
「あ、あぁ……。俺も何か買おうと思ったんだけど……、まぁいいや」
サナミは可愛らしい小さなパックのジュースを飲みながら、
大きな瞳をきょろきょろさせている。
俺は懸命に心を落ち着かせる。どうやって切り出すか、ここが一番大事だ。
ともかく、雰囲気もムードも無いコンビニの前じゃ、そんな話が出来ない事は判っている。
何処で伝えるのが、良いのだろう。
>>67
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 07:44:23.66 ID:0BfucSFN0
幼馴染の友達の親戚の家
男
「そうだ……」
俺は様々な場所を思い巡らせながら、ある一軒の家を思い出した。
確か昔サナミと一緒に歩いている時、彼女の友達の親戚の家の前を通った。
その家は随分と古めかしい屋敷で、庭には不気味な垂れ柳が生えていた。
天然のお化け屋敷のようなあそこなら、ムードがあっていい。
垂れ柳といえば、幽霊や物の怪を想像してしまうが、
あれは確か、垂れ柳の揺れる様が、女性の長い髪を連想させ、更にそこから……
サナミ
「ちょっと!どしたの?ぶつぶつ言って……」
男
「え、えっ!?いや怪談が……」
サナミ
「はぁ?いつもだけどさ、頭大丈夫?」
まただ、俺は突然の閃きからまたも妄想の世界へ踏み込んでいた。
何故俺は時々、意味不明な思考回路が働くのだろうか。
不思議そうな目で俺を見るサナミの顔が、恥ずかしくて直視できない。
サナミ
「……あ、ねぇ。ちょっとさ、寄り道しない?」
そんな俺を知ってか知らずか、彼女は微笑んで言った。
95 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 19:12:46.96 ID:U38cyWco
男
「寄り道?寄り道ったって……」
突然の提案に、戸惑う俺の腕を半ば強引に引っ張って、サナミは歩き出しす。
細い指の感触と、ふわりと香る甘い香りに、俺はなすがまま引っ張られていった。
歩くこと数分、見覚えのある細い道を通って、俺達は目的の場所にたどり着いた。
サナミ
「んー……!はぁ」
背を伸ばし、真っ白な太陽の光を浴びながら、白い息を吐く彼女。
連れて来られた場所は、幼い頃よく二人で遊んだ、街を見下ろす小さな空き地だった。
サナミ
「なっつかしーねー?この土管、まだ入れるかな?」
はしゃぎながら、俺が腰掛けた小さな土管を覗きこんでいる。
枯葉の積もった土管には、今ではもう、とても入る事なんて出来そうにない。
幼い頃の記憶が少しずつ蘇ってくる。
男
「なっつかしいなぁ……。全然変わってないな、ここ」
サナミ
「……で!どうした少年!何を悩んでいるんだい?おねーさんが聞いてあげよっか?」
俺が腰掛けている隣に、サナミが座る。
少し小さく見える空き地は、何も変わっていない。
だが、俺の中での彼女は、少しずつだが、確かに変わった。
微笑みながら俺の顔を覗き込む彼女。
俺は胸に秘めた想いを見透かされているようで、なんだか顔が熱くなった。
男
「なんだそれ……。悩み……ていうか……」
サナミ
「ん?ほらほらー、言っちゃえ言っちゃえ!」
言うなら、今しかない。
男
「俺……実は……」
>>76
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 08:18:21.14 ID:or/Zu4d10
すきだあああああああああああああああああああ
96 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/07(日) 19:24:20.47 ID:U38cyWco
サナミ
「実は……?」
いつからか、彼女は幼馴染から気になる人になり、
そしていつからか……。
溜め込んだする気持ちが、喉元まで押しあがってきた。
男
「すきだあああああああああああああああああああ!!!」
サナミ
「……!!」
青い空に、フェードアウトしていく俺の叫び。心からの、叫び。
気取った事は出来そうにないから、俺は、叫んだ。
男
「…………好き……なんだ、お前の事」
サナミ
「………………あ……えと……」
肩で息をする俺を見上げながら、彼女は目を丸くしていた。
幼馴染から突然の告白、それも、大絶叫ときたら、唖然とするに決まっている。
俺は想いを吐き出したおかげで、幾分か心が軽くなっていた。
もう後は、なるようにしかならない。
男
「……いつから…とか…、そういうのはわかんないけど…、好きになってた」
無音。何も聞こえない。
目の前に居る少女と、想いをぶつけ続ける俺しか、その場にはなかった。
男
「いきなり、ごめん。お前がどう思ってるかはわかんないけど……」
そこまで言うと、俺は言葉が続かなかった。
俯いて、黙り込む彼女を見てしまったから。
その姿を見て、俺の中にたぎっていた炎は、もやもやと白い煙だけを残して、消えた。
男
「…………」
幼馴染
「…………」
沈黙と、白くなっては消えていく吐息。
彼女が口を開くまでの間は、一秒にも、何十年にも感じられた。
97 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 19:24:33.80 ID:H5bGWSc0
続きが出たらageてくれ
それまで寝てるわ
98 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 19:32:20.22 ID:U38cyWco
あ、そうしたほうがいいな。続きになったらageます。
今更投げれないので超頑張ります。二日ほど寝てて下さい。
99 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 20:12:52.47 ID:2oNh2USO
サナミと幼馴染がごっちゃになってるぞ。
途中から変えたから混乱したか
100 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 20:13:55.71 ID:8Yy.fdUo
がんばれ
101 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 21:09:24.68 ID:EfWhg2go
[
ピーーー
]とかはsagaにすれば表示されるんだっけか?
102 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 21:31:49.04 ID:o4MMsADO
サーガにするってお前…
103 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 21:40:30.19 ID:XOBg9wDO
>>102
?
104 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 21:54:33.49 ID:2Vxi4ISO
>>101
そうだよ
105 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 22:00:06.27 ID:vb.lR1k0
segaだろ
106 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 22:44:14.17 ID:peH1DNAo
gaseだろ
107 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 22:45:13.33 ID:3A63RISO
segeか
108 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 23:02:57.37 ID:ZJBhuE2o
初期から見てるけどまさかここまでの大長編になるとはな
>>1
ここでも応援するぞ
109 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 23:12:31.17 ID:U38cyWc0
>>99
うわぁ…。誤字脱字なおしたくてやってるのに引くわぁ…
もし次間違えたら書き終わってから死にまし
110 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 23:15:34.05 ID:GJjx.Eoo
>>1
お前面白いなwwwwwwwwww
111 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/07(日) 23:33:35.80 ID:V93u5tc0
死ぬなよwwwwww
112 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/07(日) 23:39:45.55 ID:KsKTdS2o
書き終わる前に死ねよ
113 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/07(日) 23:53:43.66 ID:U38cyWco
サナミ
「…………寒いから」
静寂は、サナミの消え入るような声で途絶えた。。
俺はその時初めて、自分が呼吸をしていない事に気づいて慌てて深く息を吸い込んだ。
男
「……え?」
相変わらず彼女は俯いたまま、こちらを見ようとしない。
サナミ
「………寒いからさ、こっち……来てよ」
俯いた顔を、自分の膝に押し付けて呟く。
いつになく、小さく見えるサナミの姿に、俺は戸惑う。
>>98
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/23(火) 08:40:29.14 ID:rPiN4Afm0
むしゃぶりつく
髪の隙間から覗く耳が赤いのは、寒さのせいか。
いじらしく静かに俯くサナミ。
今すぐ駆け寄って、抱き崩してしまいたい。
俺はゆっくりと彼女の隣に座る。
早くなる鼓動は、彼女にまで聞こえてしまいそうだ。
サナミ
「…………」
男
「…………」
痛い。心臓が痛い。
この静寂ほど、俺の胸を痛めつけるものは存在しないだろう。
俺は出来る限るゆっくりと息をして、
俯いたままの彼女の後ろに、ゆっくりと手を回す。
サナミ
「……っ」
細い肩に指先が触れた時、俺は理性のブレーキが少しだけ緩んだ。
―――ギュッ……!
114 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/08(月) 00:07:03.76 ID:scJtzCco
サナミ
「……きゃっ…!」
思わず抱きしめた身体は思っていたよりもずっと細い。
この腕の中に半ば強引とはいえ、彼女が居るという事に強烈な違和感と興奮を覚えた。
興奮で火照った頬に、艶やかで冷たい髪の感触。
鼻腔をくすぐるゆるやかに甘い香り。
俺はその幸福に浸る事に夢中で、一瞬我を忘れてしまった。
サナミ
「……ちょ…っと、い、痛いよ…!」
抗議の声をあげるサナミは、顔を背けて俺の身体を押している。
俺はやっと、自分が度を越えていた事に気づかされた。
男
「ごっ……ごめん…!」
ぱっと手を離すと、二人同時に立ち上がる。
そして、ゆっくりと俺の顔を見上げる彼女。
頬は赤く、髪の隙間からちらりと見える耳も、同じように赤かった。
サナミ
「……ばか……!ばか!」
いつものそれとは違う、 潤んだようにも聞こえる声。。
瞳に溜まった光の粒を見た時、俺は自分の行いを心底後悔した。
嫌われたかもしれない。
最悪の事態が、脳裏をよぎる。
また、長い長い沈黙。
俺は一体、どうすればいいんだ。
サナミ
「……学校……いこ」
先に口を開いたのはサナミだった。
視線を落として、足先に積もる落ち葉を踏んでいる。
男
「そ……だな。もう、遅刻だけど……」
腕時計を見れば、9時近く。
どんな勢いで走ろうとも、遅刻は間違い。
想いは伝えた。後はどうなるか、わからない。
俺は少し先を歩くサナミの背中を見て、一つ、大きなため息を吐いた。
なんて声をかければいいかわからない。
いつもと同じ、二歩後ろを歩く。
縮めたかった距離のはずなのに、今はもっと、遠くに感じた。
115 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/08(月) 00:17:13.14 ID:scJtzCco
今更急いでも間に合うわけがなかったからか、
俺達はゆっくりと、無言のまま歩き、学校に着いた。
授業中の静かな下駄箱で、俺はサナミの声をかける。
男
「……完全に遅刻だな」
サナミ
「……うん…」
当たり障りの無い、社交辞令のような言葉だったが、サナミは小さく頷く。
誰もいない静かで、少し冷たい廊下をお互いの教室に向かって歩く。
告白は、思った以上の溝を作ったのかもしれない。
そんな事を考えていると、前を歩くサナミが、急に立ち止まる。
ニ、三度、大きく肩が上下に動く。
サナミ
「………ねえ!」
大きな声と共に、突然サナミが振り向いた。
驚いて、後ずさる。
男
「な、なんだよ」
サナミ
「……おねーさんに話して、すっきりした?」
差し込む日差し。笑顔。
駆け出していく後姿は、いつも通りの、サナミだった。
男
「……すっきりしねーよ、ばーか」
足音を響かせて、走り去っていく背中を、俺は見えなくなるまで、見つめていた。
―――昼休み
男
「……腹減った……」
告白をした後は、異常な空腹感を味わう。
生まれて初めての経験をした俺は、新たな法則に気づき、へたり込んでいた。
運の悪い事に、仕事で徹夜の母は朝方に撃沈してしまって、今日は弁当がない。
そして、空腹のために学食に行く元気も、ない。
116 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/08(月) 00:19:26.91 ID:nuEc1MDO
遅刻は間違いない
では?
俺の勘違いならすまん。
死ぬなよwwww
117 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 00:31:08.25 ID:scJtzCco
そしてなにより、俺の精神を最も挫かせているのは、
朝別れてからまだ一度もサナミと擦れ違ってさえ居ない、という事実だった。
彼女とはクラスが違うが、一度も会わない日など今までなかった。
もしかしたら、避けられているのかもしれない。
男
「はぁ………」
重い気持ちと空腹で、机につっぷしていると、後ろから忍び寄る足音。
男
「……きたか」
???
「……わっ!!!!!!!!!!」
騒がしい教室の中、耳の奥にまで響くようなよく通る声。
振り返ると、小さな少女が立っていた。
男
「……なんだよ、トミー」
トミー
「あっれえー?びっくりしてないのか!?」
男
「……毎日のようにやられて、びっくりするほうがどうかしてるよ」
残念そうな顔でうな垂れる彼女は、トミー。
中学生、ひょっとすればもっと下にも見られるかもしれない小柄な体格と、
ころころと変わる口調が特徴のクラスメイト。
少し変わっているが、誰からにも好かれるいい性格をしている。
トミーという名前は、本名の「トモミ」からつけられた。シンプルで、本人も気に入ってるらしい。
トミー
「あっれえー?元気ないの?わかったお腹空いたんだな!うんうん、ご飯だ!ご飯にしよう!」
大袈裟な身振り手振りを交えて話す彼女は、なんとも騒がしい。
この学校に入ってから3年間同じクラスで、腐れ縁とでもいえるかもしれない。
ただ、親友は誰かと聞かれれば、俺は間違いなく彼女の名を挙げるだろう。
小動物のような外見で、黙っていれば可愛いのに、なにせこの騒々しさだ。
男達からの人気は、あまり無い。
男
「男にはなぁ!……黙って浸りたい時もあるんだぜ……」
決まった。
彼女の手前、努めて明るく、渋く決めた。
つもりだったが、彼女は全く聞いていない。
118 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 00:31:53.23 ID:scJtzCco
>>116
まだしにたくないです……
119 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/08(月) 00:33:58.14 ID:Nfb059.0
そろそろトミーが登場だな!!
120 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 00:36:18.44 ID:v6nbxKg0
トミーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
だが俺は
サナミ√を望む
121 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 00:38:53.02 ID:scJtzCco
もう当たり前の光景になっている漫才に、周りは反応さえせず、平然と弁当を広げ始めている。
男
「うわっ」
小さな手で俺は頭を掴まれた。
トミー
「ねぇねぇ、学食いこーよーねーねー」
男
「あーもー目が回る……」
俺の頭はトミーの手で容赦なくシェイクされる。
……普段なら何の抵抗も無く一緒に行く所だが、今日は違う。
告白をしたその日に、違う女と昼食をとっている所など見られたら、それこそ終わりだろう。
下駄箱でのサナミの様子から考えれば、案外考えすぎかもしれない。
だが出来るだけ、これ以上の溝は作りたくなかった。
トミー
「ほらほら、お腹なってるよっ?ねっ?」
>>180
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 00:58:28.66 ID:6nQTOnht0
トミーを食う
トミー
「いぃーこぉーおぉーよぉー!!いーくーじーなーしー!」
意気地無しとは随分な物言いだ。
俺は今朝ありったけの意気地を出し切ったのに。
男
「うぅー…」
トミー
「うにうにうにうに……」
頭の次に、俺は頬をこねくり回される。
空腹で意識がぼぉっとする。
―――ガリッ……
トミー
「……っ!!!!いったぁーーー!!!」
122 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 00:41:31.82 ID:yXKTEyc0
sageないやつバカなの?
>>1
が続きになるまでageないっつってんのにさ
欄にチェック入れることすらできねード低脳なのか?
123 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 00:43:56.87 ID:scJtzCco
いいんですいいんです。雑談とかは活発にやってもらっていいので、はい。
誰にも気づかれないよりは一目についたほうが嬉しいですし。
124 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 00:50:25.32 ID:scJtzCco
教室に轟き渡る叫び。
男
「あっ、悪い!つい……腹が減って……」
俺は思わず口元に現れたトミーの手を齧ってしまった。
トミー
「えー!こわぁー!こわぁー!この……あれだ!あのー…カニなんとか!なんとか博士!」
手を抑え、目を白黒させながら大袈裟に後ずさる。
周りからは若干の笑い声。
つられて俺も笑ってしまった。
このまま教室に居ても仕方が無い。
俺は鋭い眼で威嚇を続ける小動物を、呼び寄せた。
男
「”カニバリズム”な。それから、ハンニバル=レクター博士。……いこうか」
目を輝かせながら走りよってくる。
トミー
「行こう行こう!これ以上食べられちゃったら困るからなー!」
彼女は楽しそうに鼻歌なんかを歌っている。
鞄から財布を取り出して、俺たちは騒がしい教室を出た。
軽やかなスキップで人の間を抜けていくトミー。
その姿を見ながら、俺はある事に気づいた。
男
「おーいトミー!財布。忘れてんぞ」
トミー
「え……?えっ?」
ピタリと立ち止まり心底驚いた顔。
トミー
「……ごちそうさまです?」
なぜ疑問系なのだ。
彼女と学食に行くといつもこうなってしまうから、嫌だ。
男
「……わかったからはよいけ」
トミー
「おー!!」
125 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 01:16:06.09 ID:04jhLUAO
やっぱりトミー欲しい
126 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 01:17:06.09 ID:scJtzCco
―――学食
学食はいつも通り、昼食や談笑中の学生達でごった返していた。
この学校の学食は、客観的に見てもかなり広くて綺麗だ。
オープンテラスの様な席もあり、狙った様な造りだが、入学した頃から結構気に入っている。
トミー
「……今日もライバルが多い!」
男
「誰も戦ってはいないけどな」
トミー
「へへへー…。何食べようかな?」
男
「食べさしてもらおうかな、だろ」
トミー
「それはきべんだよ!」
男
「……意味わかって使ってるか?」
俺は広い学食を入念に見渡してサナミが居ない事を確認すると、空いたばかりの窓際の席に腰掛けた。
トミー
「うー……悩む…。あ、メニュー、見る?」
男
「いや、いいよ。大体覚えてるし……」
トミー
「じゃ、一緒に見よう!しっかたないなーもー」
俺の隣に移動してきて、メニューを広げる。
傍から見れば、カップルにでも見えたりするんだろうか。
この学食、広さや綺麗さだけでなく、そのメニューもすごい。
空腹の学生が思いつきそうなものなら、なんでも揃っていると言ってもいい。
しかし、学食の割には値段が少し高いのがネックだが。
頭の中で浮かんでは消えていく色とりどりの食べ物たち。
……今日は何にしようか。
>>193
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 01:23:32.55 ID:zePxuuLB0
サナミ
127 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 01:18:13.88 ID:nCX9Ljw0
じゃあサナミ貰う
サナミかわいいよサナミ。はぁはぁ
128 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 01:39:50.65 ID:scJtzCco
トミー
「あっ!ぼくこれにしよっかな!」
男
「安いのにしてくれよ?」
トミー
「ケチな事言わない言わない!ワタクシはこれにします!”愛と友情のすごい海鮮丼!”」
鮮やかに魚介が盛られた丼を指差す。
この学食、値段の他にもメニューのネーミングセンスもすこぶる悪い。
さっきからトミーの一人称がころころ変わるのは、入学した時から変わっていない。
最初こそ気にはなったが、今ではもうすっかり慣れた。
個人的には、一番多用してい”ぼく”がいいと思っている。
トミー
「きみは?何にしたの?」
男
「…………ミ…」
トミー
「へ?」
男
「………サナミ……」
トミー
「え……えぇ?」
最悪だ。
トミー
「まっ、またか!?また人を食うのか!?」
会いたいとは思っていたが、今だけは一番会いたくない人、サナミを見つけた。
隣で野蛮だとかなんとか騒いでいるトミーの口を塞ぐ。
トミー
「んー…!んーんー……!」
何人かの友達と、いつもと変わらぬ笑顔のサナミが学食に入ってきた。
その姿に少しだけほっとする。
トミー
「……ぷはあぁっ!な、なにするのさっ!ぼ、ぼくがいくら可愛いからって……」
俺の手を振り解き、自分の身体を抱きながら言う。
そういえば、あまりに必死になりすぎて力を入れすぎていた。
129 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 02:10:37.23 ID:scJtzCco
男
「わ、悪い……」
トミー
「そ、そりゃぼくだってこう見えても最近大人の色気も出てきたし……そ、その……」
一人芝居を続けるトミーなど気にならないほど、俺は焦っている。
落ち着け、大丈夫。
学食で女友達と昼食をとる事の、何処に後ろめたさがあるのか。
まして、サナミは彼女でもなんでもないのだ。
今は、まだ。
男
「よし、ほら買いにいこーぜ」
トミー
「え?う、うん……」
幸いまだサナミはこっちには気づいていないようだ。
このままさっさと食べ終わって、気づかれないまま学食を出よう。
俺は不思議そうな顔のトミーを連れて、足早に食券機へ向かった。
5人ほどの列に並ぶと、出来るだけ目立たないようにサナミを盗み見る。
トミー
「おーい、買わないのかー?」
サナミの視線に集中していると、気がつけば自分の番になっていた。
俺はパッと目に付いたサナミフライ……ではなくて、ササミフライ定食のボタンを押した。
食券をカウンターに出して、料理を待つ間も、サナミの方をちらちら見ながら、気が気じゃない。
トミー
「どっしたのー?」
カウンターに掴まってぴょんぴょんとはしゃいでいるトミー。
お前が居るからだよ、無理だろうが、気づいて欲しかった。
待つ事数分、トミーの海鮮丼が先にカウンターから差し出された。
海老やマグロ、イカにホタテなど豪華極まりない。
トミー
「おぉ!これはうまそうじゃのー…!じゃっ、わらわは先に行っておるぞえ」
よく判らない笑い声をあげながら、嬉しそうにトレーを運ぶトミー。
その足取りはどうにも危なっかしい。
彼女が定食をぶちまけた回数は恐らく校内で一番だろう。
男
「こぼすなー……こぼすなー……」
130 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 02:15:13.86 ID:scJtzCco
まずい。
気がつけば、トミーの足元には謀ったように水が零れている!
このままでは間違いなく、海の幸が空中に舞い踊る事になるだろう。
どうする……!
>>208
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 01:58:37.89 ID:6nQTOnht0
ぶちまけたものを落ちる前に空中で踊り食い
―――ツルッ…
男
「あっ……!」
ふわり。
小柄な身体が空中に舞う。
俺は全ての光景がスローモーションで見えている。気がする。
予想道理、綺麗に空中を舞い踊る魚介類達。
トミーはコケる事に関してはプロフェッショナルだ、きっと大丈夫。
しかし、あの海老さんやイカさんやマグロさんは飛ぶ事に慣れていない!
更に言えば、あれは俺が痛い出費をして買ってやったものたちだ。
このまま地べたに這い蹲らせるわけにはいかない。
そして、俺が導き出した結論は……
男
「……食うっ!」
この間ものの1秒にも満たなかっただろう。
俺は右足に渾身の力を籠め、身体を弾丸のように撃ち出した。
どれだ……!どれから救うんだ!
海老は好物だから絶対に食べたい。しかし丼の中ではマグロが一番高級だ。
イカは一番近い位置にあるが、それほど好きでもない……!
俺は叫びと共に口を大きく開き、空中に踊る魚介類を救うために首を高速で動かした。
男
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」
が。
―――ボタボタボタッ…ペタッ…
トミー
「あいてててて……」
結果はおでこにシソの葉が張り付いただけで終わった。
131 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/08(月) 02:30:51.18 ID:5ID7CcSO
やっぱこのころのとみーかわいいなぁ
132 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 02:36:15.35 ID:MeEvQMDO
馬鹿言えトミーはいつでも可愛いわ
133 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 02:50:43.17 ID:scJtzCco
静寂。
嫌な汗が背中にじわじわと噴き出す。
どうしてこう、静寂は俺の胸を痛めつけるのだろう。
お尻にまるい染みを作って半べそをかいているトミー。
その隣にはおでこにシソを貼り付けた絶叫男。
こんな光景を目の当たりにすれば、当然……。
あたり一面は、爆笑の渦に包まれた。
近所に座っていた友達には”お前ら面白いな”と言われた。
どうやらウケ狙いだと思われたらしい。
助かったと、俺はほっと胸を撫で下ろしそうになるが、いや、全く助かってない。
ともかく、尻餅をついているトミーを引き起こす。
男
「だいじょうぶか、トミー」
トミー
「うー……うぅ…。かいせんどんー……」
男
「……泣くなよ…」
涙を浮かべて地面に無残に散らばる魚介類を見つめている。
その姿を見ながら、俺は自分の胸が少し跳ねるのを感じた。
俺は、こんな時に何を考えているんだ。
泣き出しそうなしおらしいトミーが、妙に可愛く思えてしまった。
頭の中で、浮かび上がりそうになる気持ちを否定する。
一通りの笑いが収まると、キッチンから学食のおばちゃんが出てきて、手際よく掃除をしてくれた。
それをトミーと二人で眺めていると、ふと、後ろから視線を感じた。
サナミだった。
暖かくも、冷たくも無い、何の感情も感じ取れない目でこっちを見ていた。
見てはいけない物を見た様に、即座に目を反らす。
俺はまた、ねばつく汗が、背中から滲み出るのを感じた。
おばちゃん
「あーぁ、もったいないねー。またやったのかい。もう一個作ったげるから、泣くんじゃないよ」
顔に皺をいっぱいつくって暖かい笑顔を見せてくれるおばちゃん。
全くどうしてこう、”学食のおばちゃん”という生き物は優しいのか。
トミー
「ほ、ほんと?おばちゃあぁーん……!」
おばちゃんにしがみ付いてべそをかいているトミーを尻目に、
俺はカウンターに置かれていた定食を取って、一足先に席へ戻った。
サナミが座っていた席を覗いてみると、もう彼女は居なくなっていた。
どんな気持ちで、俺の事を見ていたのだろう。
134 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 03:01:35.31 ID:scJtzCco
男
「……もう……駄目かな……」
深いため息を吐いて、少し冷めた味噌汁をすする。
俺は自らの馬鹿さ加減に嫌気が差していた。
パニックになるとわけのわからない事ばかり、その上……、
トミー
「はーっはっはぁー!みよ!この素敵な海鮮丼を!」
このうるさい少女の居心地の良さを、少しずつ好きになり始めている俺が居た。
こんな奴が、好きになってもらえるわけがない。
俺はただの幼馴染。そこから抜ける事はきっと、無い。
今度は無事に席までたどり着き、少し赤くなった目で大はしゃぎするトミー。
今はこのうるささが、心地よかった。
―――放課後
流石に2月ともなると、下校時間になる頃には、外は既に暗くなり始めている。
そして、俺の気分も同じように暗い。
「またねー」
「おつかれー」
「ばいばーい」
一人、また一人と教室から立ち去っていく同級生達。
俺は独りで窓の外、夕暮れのグラウンドを眺めていた。
男
「…………はぁ」
口を開けば、ため息しか出ない。
いつもなら、特別な事でもない限りサナミと一緒に帰っていたのだが、
今日はその”特別な事”があった日のようだ。いつまでもサナミは現れない。
もっとも、現れた所で、今の俺になんと言えばいいのかなんてわかるはずもなかった。
誰も居なくなった教室に、薄黒い影が、一つだけ伸びている。
男
「……帰ろう」
もう一度深いため息を吐いてから、マフラーを巻き、帰り支度をする。
ポケットから取り出した携帯には、当然何の履歴も残っていない。
今朝の告白は、どうやら致命的な溝を二人に作ってしまったのかもしれない。
そういえば、独りで帰るのは随分久しぶりだ。
今は、それもいいだろう。
頭にこびりついた、サナミの眼を振り払うように、俺は勢いよく教室の扉を開けた。
135 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 03:18:23.78 ID:scJtzCco
トミー
「きゃっ!!!」
男
「うわっ!!!!!」
大きな音を立てて開いた扉の前には、可愛いコートに身を包んだトミーが立っていた。
トミー
「びっくりするなぁ!もう!ふざけろ!」
男
「え…?ふざ…あ……ごめん…え?」
何故だかわからないが、俺が謝ってしまった。
ふわふわした帽子を被って、大袈裟に腕組みする彼女は、一見すれば本当に子供のようだ。
男
「な、何してんだ?」
トミー
「ぶ、部活の帰りだっ!そしたら独りで教室で黄昏てる寒い人がいてさぁー」
男
「……悪かったな」
トミーは確か茶道部だったはずだ。こんな時間まで活動しているとは知らなかった。
しかし、こんなに騒がしい彼女が茶道とは、人というのはよくわからない。
そういえば俺も、暫く部活に顔を出していない事に気づく。
きっとまた、部長のお叱りを受けるだろうが、明日にでも顔を出してみよう。
トミー
「あ、そーいえばさっきサナミちゃんが下駄箱でぼーっとしてたよー」
男
「え……サナミが?」
振り払おうとしていたサナミの名前が出てきて、心臓が一度どくりと跳ねた。
いつも帰る時間はとっくに過ぎているし、今日は部活もないはずだ。
こんな時間に下駄箱で何をしているんだろう。
もしかして、誰かを待っているのだろうか。もしかして……、俺を。
違う、そんな訳が無い。頭に浮かんだ考えを即座に否定する。
トミー
「……サナミちゃんと仲いいね、ちみ」
男
「え、えぇ?いや……、ただの幼馴染だよ。特にそんな……」
唐突な言葉に少し戸惑ってしまう。
136 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 04:14:54.04 ID:scJtzCco
トミー
「ふーん……。一緒に……、帰ってあげなよ。まだ居ると思うよ?」
下を向いたまま足をぶらつかせているトミー。
彼女もこれから独りで帰るんだろう。
夕暮れの廊下、伸びる二つの影。
俺は、サナミを追うのか、独りで帰るのか、それともこの小さな少女と一緒に居るのか、
正直迷った。
男
「………俺は……」
>>243
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 02:59:54.74 ID:AH6Yss4X0
サナミと帰る
俺を待っているなんて保障は無い。
居たとしても、一緒に帰れるかどうかはわからない。
でも今追いかけないと、きっと駄目になる。
男
「……俺は……、サナミと帰るよ」
暫くの沈黙の後、トミーは俺の方に向き直った。
トミー
「……そーだ!それはいい選択じゃな!さすがワシの弟子じゃわいー」
にっこりと微笑んでいる彼女の声は、少しだけ硬いような気がした。
男
「俺がいつ弟子になったんだよ。じゃあ、気をつけて帰れよ」
トミー
「おまえさんも…なー……」
寂しげな彼女を残し、俺は走り出した。
廊下の影は、一つになり、すぐに見えなくなる。
俺は少し胸に引っかかるものを感じながら、下駄箱へと急いだ。
男
「頼む、まだ、居てくれ……」
137 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:19:11.80 ID:scJtzCco
祈りながら、ひたすらに走る。
教室から下駄箱までの数分が、とても長い。
俺は残った体力を使い尽くす勢いで、走った。
男
「……はあっ…はぁっ…」
やっとの思いでたどり着いた、下駄箱。
見た目にも新しい増築部分とは違い、ここだけは昔の学校の姿を残している。
響くのは俺の荒い呼吸だけ。
荒い息を整えながら、一つずつ列の間や、柱の影を探して回る。
男
「……居ない……か」
どこを探してみても、サナミの姿は見当たらない。
一体、俺は何を期待していたんだろう。
サナミが俺を待っていて、一緒に帰ってくれるとでも思っていたのか。
いや、それだけじゃない。
俺は、実はサナミも俺を好いてくれていて、相思相愛、最高の結末。
そんな事さえも心の奥底では考えていた。
でも、現実とはこんなものだ。
俺の気持ちを写すように、伸びた影の色は、より濃さを増したように思えた。
グラウンドは鮮やかなオレンジ色から、深い濃紺へと変わり始めている。
靴を履き、歩き出す。
扉を開くと、隙間から流れてくる冷たい風に包まれる。
俺はどうしてこんなにも、不器用なんだろう。
男
「……はぁ」
とぼとぼと歩くとは、正に今の俺の姿だろう。
早く家に帰って、熱い風呂に浸かりたい。
校門を抜け、大通りに出た時、俺の後ろから突然声がした。
???
「……遅い」
男
「え……?」
少々の怒気を孕んだ声に、慌てて振り返る。
そこには、居ないと諦めた、サナミが立っていた。
男
「あ……!え……サナミ……」
138 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:20:54.66 ID:scJtzCco
心臓がどくりと跳ねた。
俺は予想外の待ち人に、平常心を失いそうになる。
落ち着かなければ、また意味不明な行動を取ってしまいそうだ。
焦れば焦るほど、俺の心臓は暴れようとする。
動揺を隠せない俺を見つめたまま、サナミがゆっくりと近づいてきた。
サナミ
「……遅いよ、ばか」
寒さで少し赤くなった頬。
ふんわりとした笑顔に、俺の心臓は暴れるのを止めた。
男
「ご、ごめん……。先……帰ったんだと思ってた」
サナミ
「帰ったよ!帰ったけど……途中でまた……帰ってきた」
サナミの言葉が上手く飲み込めない。
一度は先に帰ったにも関わらず、俺のために戻ってきたのか。
前髪に触れながら、目が右に左にきょろきょろと動く。
彼女が恥ずかしい時にやる、小さい頃からの癖だ。
男
「それって……」
サナミ
「いーから!ほら、かえろ?寒いしさ」
俺は今朝と同じ様に、半ば強引に腕を引っ張られた。
不自然な居心地を感じながら、俺は彼女の少し後ろを歩く。
先を行く彼女の様子は、いつもと変わらない。
サナミ
「でさ、今日学食で何やってたの?」
男
「え……!あ、あれは……」
絶対に触れてほしくなかった事を、サナミが切り出す。
覚悟はしていたが、改めて聞かれると、猛烈な恥ずかしさと、心苦しさを感じる。
男
「あれはー……ほら、あの…」
139 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:22:07.49 ID:scJtzCco
どうしよう。
俺は完全に答えに困ってしまった。
降ってくる魚介類を必死に食べようとしていたなんて、言ってどうする。
サナミはあの時、本当に言い表せないような目で俺を見ていたのに。
サナミ
「……ふっ……ふふ」
男
「……え?」
サナミ
「あはははは……!我慢してたけど、学食の外に出た後すっごく笑っちゃったよ」
俺の予想に反して、笑い出すサナミ。
男
「えっ……笑った……の?」
不自然なポーズで固まってしまう。
そうだったのか、あれは、笑うのを我慢していたのか。
俺はもしかすると、全てを悪く考えて過ぎていただけかもしれない。
サナミ
「もー笑ったよー、大笑い。あんな馬鹿な事されて、堪えるほうが難しいって!ほんっと、ばかだね」
なおもくすくすと笑う彼女の笑顔に、俺の不安やもやもやが洗い流されていく気がする。
男
「わ、笑うなよ!あの時はあの時で必死だったんだからな!」
俺の必死の訴えに、更に笑い声が大きくなるサナミ。
最後の方には、もう、大声をあげて笑われてしまった。
それにつられて、俺も笑う。
日暮れの交差点に、二人の笑い声が響く。
そんな調子で、俺たちはすっかり、何事もなかったかのように笑いあった。
本当に、何事もなかったように。
サナミ
「はぁー…。ほんとに、あんたってばかだけど面白いね。ばかだけど」
男
「なんで?なんで二回言った?」
サナミ
「大事な事だから二回言いましたー!」
無邪気な笑顔。
何も無かった事にしようって、そう言いたいのか?サナミ。
140 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:23:24.63 ID:scJtzCco
他愛もない話をしながら歩いていると、いつのまにか俺たちは、互いの家の前に立っていた。
結局、サナミからは何も聞けなかった。
何も言わないという事は、何も言いたく無いという事。
彼女は、これでいいと、そう思っているのかもしれない。
サナミ
「じゃあ、また明日ね」
男
「おう……また明日」
サナミ
「そういえば、さ……」
唐突に切り出すサナミ。
男
「な、何?」
聞きたい、サナミの考えが、彼女の答えが。
だが、聞きたくない。
まだ彼女が何を言うかもわからないのに、俺はどんどん想像を先走りさせてゆく。
サナミ
「……一緒にいたの、トミーだよね」
変わらない表情で言う彼女の瞳に、ほんの少しだけ、寂しさの色が移った。
男
「あぁ……それは…」
言葉が、出ない。
サナミ
「よく、一緒に居るみたいだね」
男
「そんな事……。クラスもずっと一緒ってだけで……別に……」
別に特別な感情は無い。
喉元まで持ち上げた言葉を、俺は発する事が出来なかった。
サナミ
「トミー、あんたの事好きって噂だよ」
男
「え……?」
全身の血流が、激しい音をたてて巡る。
141 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:24:33.76 ID:scJtzCco
耳に届いた彼女の言葉を、脳が受け取ろうとしない。
トミーは、彼女は俺の親友で、それ以上の事は、何も。
サナミ
「……じゃあ、またね」
サナミはくるりと背を向ける。
俺は声を出す事も出来ずに、その後姿を見つめていた。
男
「あ……ぁ…」
―――ガチャン…
閉まる扉。
その音は、二人の間に出来るかもしれない、大きな壁を連想させた。
男
「……トミー……が……?」
一人になった家の前で、サナミの言葉が何度もリフレインする。
俺は、戸惑う自分の心を落ち着かせるのに必死だった。
そして、俺は向けられた好意に、流されそうになる自分の浅はかさに、怒りにも似た何かを感じていた。
―――ガラガラ…
軽いはずの、玄関さえ重く感じる。
ふんわりと漂ってくる夕飯の香り。今晩はカレーのようだ。
男
「ただいま」
母
「おかえり。遅かったわね。部活?ご飯は?」
何も知らない母の優しい言葉が、暖かい。
男
「まぁ、そんなとこ。飯はもうちょっと後でいいよ」
靴を脱ぎ、足早に自分の部屋へと向かう。
今日は本当に、疲れた。
怪談を駆け上がり部屋へ入るなり、俺は上着も脱がず、ベッドに倒れこんだ。
カーテンの閉まった窓から、意識的に視線を外す。
色々な事がありすぎて、頭が重い。
こんな時は、ランニングで汗をかくのが、自分なりのストレス発散法だ。
汗をかいて、風呂に入って、カレーを食べる。考えただけで、唾液が口の中に溢れた。
枕元のデジタル時計は、8時丁度を示している。
142 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:25:26.50 ID:scJtzCco
俺は、暗い街を走る自分を思い浮かべながら、迷った。
男
「……久しぶりに……走るか……」
>>298
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 06:08:18.52 ID:b4DY4WFw0
トミーに会いに行く
―――トミー、あんたの事好きって噂だよ
忘れようとしても、何度も何度も、サナミの言葉が蘇る。
まるで、今耳の傍で囁かれているように。
考えまいとすればするほど、サナミの声と、トミーの姿が脳裏に浮かぶ。
俺は今日、自分の想いをサナミに伝えたはずだ。
いつのまにか、俺の中で大きな存在になっていた彼女に。
男
「……俺……最低だ……」
それなのに、心の中の深い所で、俺は揺れ動いていた。
呆れるほど、滑稽で、自分が安い恋愛小説の主人公になった気さえする。
いや、小説ならまだいい。悩める男も、女も、実在しないのだから。
ゲームの様に、いつでも中断して、やり直せれば、どれほど楽なんだろうか。
ベッドに転げ周りながら、俺はそんなありもしない想像に逃避した。
男
「………………」
時間と共に、心のもやは濃くなっていく。
男
「……だぁああ!!!……走ろう!」
駄目だ!俺は勢いよくベッドから立ち上がり、頬を張った。
こんな事じゃ、いつまで経っても答えなんて出そうに無い。
俺は手早くランニングウェアに着替えて、お気に入りのキャップを被った。
忘れずに、携帯音楽プレーヤーをポケットに押し込む。
男
「……………」
カーテンを開けると、サナミの部屋の明かりと、酷く輪郭のぼやけた男が映っていた。
143 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 07:26:43.53 ID:scJtzCco
玄関でランニングシューズを履いていると、後ろから母の声。
母
「あれ?走りに行くの?」
男
「うん、最近運動不足だし……、ちょっと行ってくる。飯は自分で食うから寝てていいよ」
つかなくても良い小さな嘘をつく。
母
「そう…。気をつけていってきなさい。あ、鍵持った?」
男
「持った盛った。じゃ、行ってきます」
母の後ろ、ちらりと見える台所のテーブルには、綺麗に盛られたサラダボウルが見えた。
少し寂しそうで、心配そうな母の顔を見ると、胸が痛んだ。
男
「んじゃ、行ってきます」
母
「……今のあんた、お父さんに良く似てる。いってらっしゃい」
男
「似てて当然だろ、子供なんだから」
―――ガラガラ……
玄関を開けると、透き通った夜の空気が、ぼおっとした頭を引き締めてくれる。
夜は、やはり昼間とは比べ物にならないくらい、風が冷たい。
身体を伸ばす後ろで、鍵を閉める音がした。
俺はポケットに手をつっこんで、家の鍵の所在を確認する。
よし、大丈夫。
男
「……父さんか……」
俺がランニングに行く時は、決まって母は、ああいう顔になる。
父が死んだのは、日課にしていたランニングの最中だったから。
母が心配するのは当たり前だ。
俺はせめて、少しでも安心するように、自らのランニングウェアとシューズに、
これでもかというぐらい、反射板をとりつけた。
最初にそれを見せると、幾らなんでもやりすぎだと笑われたが。
その時母が小さく言った”ありがとう”は、今でも鮮明に覚えている。
144 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 09:21:15.14 ID:CamJHHUo
再褐か
145 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:33:16.09 ID:scJtzCco
靴紐を少しきつめに結び直して、俺は軽いストレッチをしてから走り出した。
緩いペースで流しても、耳に当たる風が痛い。
男
「何が流れるかな……」
ポケットから取り出した白いイヤホンをもう、少し感覚の鈍くなった耳につっこむと、再生ボタンを押す。
完全なランダム再生しか出来ない仕様のプレーヤーなので、何が流れるか俺でもわからない。
時々、分かっているかのように聞きたい曲が連続で流れたりするのが、不思議で心地よいから気に入っている。
イヤホンから流れてくる切なげなピアノのイントロ。
男
「これは……」
サナミに無理やり渡された、切ない、恋の歌だった。
俺は一度、もう小さく見える家の方を振り返る。あのベランダに、サナミが立っている気がしたから。
暗い街と、星、ピアノ。
全てが妙にマッチしていて、不思議な感覚だった。
長いストレートを全力で走る時には、宙に浮くようにさえ感じた。
もう渡る人など居ないのに、律儀に仕事をする信号機の前で止まる。
背中に少し、汗をかくぐらいの速さで走ったのに、まだ俺のもやは晴れない。
荒くなる呼吸を整えながら、俺はまた、サナミの言葉を思い返す。
男
「……トミー…」
会いたい。
そう思ってしまう自分を、嫌悪した。
あいつは友達じゃなかったのか。好きなのはサナミで、あいつは友達だろう。
自問自答を繰り返して、自分に言い聞かせる。
会って気持ちを確かめたい。
確かめてどうなる。何を求めてるのだと、また自分に言い聞かせる。
気がつけば、横断歩道は青緑の光に染まっていた。
まるで、俺の悩みにゴーサインを出すかのように。
男
「……行けって……ことかよ」
一つ、ゆっくりと息を吸い込んで、俺は脚に力を籠める。
冷たい空気が、火照った頬を冷ましてくれた。
幾らか前、ランニング中に一度だけ、トミーに出会った事がある。
その時の記憶を必死に思い出しながら、俺は走った。
行ったところで、会える保障も、会ってからどうするのかも、何もわからないけれど。
146 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:34:17.89 ID:scJtzCco
―――数十分後
男
「はぁ……はぁ…」
全身がまんべんなく温まり、ほどよく汗をかいた頃、俺は目的地に到着した。
新築らしい、綺麗な家が立ち並ぶ静かな住宅街。人の気配はない。
冷たい空気を肺いっぱいに吸い込みながら、俺はゆっくりと歩く。
男
「この辺り……だったはずだけど」
走っている間は、何も考えなくてよかったが、
実際に着いてしまえば、家もわからないし、どうしたらいいか全くわからない。
表札でも一つずつ見ていけば、いつかは突き止められるかもしれないが、
そうまでして、俺はトミーに会ってどうする気なのだ。
手持ち無沙汰になり、携帯を取り出す。開くと明るい液晶画面が、暗闇に慣れた眼球を刺激した。
時刻はもう9時を回っている。
彼女の電話番号も知っているが、俺はここまで来て、いよいよ迷った。
どうすればいい……。どうすれば、正解なのだと。
>>363
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 17:59:40.84 ID:ypDGcg7w0
トミーを呼び出す
ぼんやりした光の下、街灯にもたれながら、俺は携帯を眺める。
ボタンを押す指の感覚が鈍い。
何ページか電話帳をスクロールして、トミーの名前を見つけた。
久しぶりに見る彼女のフルネームに、何故か妙な緊張感を感じる。
冷たいはずの指先が、少し汗ばむ。
男
「……あー……くそっ…」
俺は今日使い果たした勇気を、もう一度だけ奮い立たせて、通話ボタンを押した。
携帯を耳に押し当てる。
男
「なんだこれ……」
聞いたはないが、妙に頭に残りそうな軽快なメロディーが流れている。
いかにもトミーらしい、そんなメロディー。
俺はその音楽を聴きながら、何度も出るな出るなと、祈ってしまう。
どうすればいいか、まだ何もわかっていなかったから。
147 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:35:21.41 ID:scJtzCco
十秒ほどが経っただろうか、音楽突然鳴り止んだ。
そして、携帯の向こうから、音楽に負けないほどの軽快な声が聞こえてきた。
トミー
「はいはぁーい!トミーちゃんだよ?どったの?」
男
「あ……おぉ」
今になって、放課後に別れた彼女の顔が鮮明に浮かんでくる。
夕焼けに照らされる寂しげな顔が。
トミー
「もっしもーし?おーいおーい!おうとうせよー!」
どうしよう。全く言葉が浮かんでこない。
俺は一体何を話すために、彼女に電話なんかしたんだろうか。
普通なら、こんな時間に家の近くまで来られたら気味悪く思うだろう。
男
「ごめんごめん……、いや……俺さ……」
>>373
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 18:39:43.53 ID:GBF9Wbx80
トミーって俺のこと好きなんだろ?wwwwwwwwww
彼女の声は、明るい。
その声を聞いているだけで、何故か輝き続ける太陽を連想してしまう。
トミー
「……何か、あった?」
言葉に詰る俺を心配するように、突然彼女の声のトーンが、低くなった。
そのギャップに、俺の心臓は、更に早さを増す。
俺はそんな空気を打ち破るつもりで、無理やりにテンションを上げた。
男
「隊長!なんでもないであります!」
静まった住宅街、迷惑にならない程度の声で、勢いよく言った。
暫くの沈黙が続く。俺は彼女の返答を息を呑み、待った。
トミー
「……うむ!苦しゅうない!楽にしたまえー」
148 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:36:09.33 ID:scJtzCco
よかった。俺は安堵の息を漏す。
彼女の声は普段と同じ、明るい声に戻った。
俺達はいつも、こうして冗談めいた事ばかり話す、そんな緩い関係だった。
俺はそんな関係を思い返して、あくまでも軽く、彼女に気持ちを聞いてみる事を思いついた。
あくまでも、いつもの”冗談”のように。
深く受け止められても、笑って済ます逃げを用意する自分に、また少し嫌気がさした。
男
「あ、あのさぁ!」
俺は努めて軽い調子を崩さないように気をつける。
トミー
「んー?なんだー!」
喉がカラカラに乾く。
言葉が喉から出る直前、またサナミの言葉を思い返した。
男
「トミーって……、俺のこと好きなんだろ!?」
言ってしまった。
俺は自分の声が想像以上に震えている事に驚いた。
痛いほどに鼓動が速い。
きっとまた、長く苦しい沈黙が続くのを想像する。
そして、その後に、彼女の戸惑いの声。 笑って誤魔化す、俺。
しかし、俺の予想は想定外の形で裏切られた。
トミー
「へ?ぼく、きみの事すきだよ?」
男
「あ……え?」
体中の力が抜けそうになる。というより、本当に抜けて、
俺はなんだかわからないまま、その場に座りこんでしまった。
男
「あ……えっと、それって……」
違う。たぶん冗談を冗談で返されただけだ。
彼女の言う事に振り回されるのは、もう慣れてるはずなのに。
予想を超えた言葉に、俺のテンションは完全に素に戻ってしまった。
トミー
「こら!うぬぼれるなにとーへー!」
耳をつんざく大声。
鼓膜がびりびりと痛い。
149 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:37:24.94 ID:scJtzCco
男
「い、いやうぬぼれるとか……」
彼女の言動には、毎度毎度、本当に飽きない。
俺は思わぬ告白と、その明るさに強張った顔がいつのまにか笑顔に変わっていた。
トミー
「まったくー。近頃のにとーへーは冗談と本気の区別もつかんのかー!」
なんだ、やっぱり冗談だ。
安心した反面、がっかりしている自分も居る。
だが、やはりトミーはトミーで、俺の大切な親友には変わりなかった。
俺の緊張感は汗と共に流れ出た。
大きなため息を吐くと、いつもと変わらぬ調子で会話を続ける。
男
「すいません隊長!以後、気をつけます!」
誰も居ないのにも関わらず、電灯の一人で敬礼をする。
我ながら、ノリが良い。
トミー
「きをつけたまえよ!……ちなみに今のは本気だ」
一瞬わが耳を疑う。
俺の心臓は暴走と沈静を繰り返してもうくたくただ。
男
「……え、ええ!?」
トミー
「うぬぼれるなー!冗談だ!こまったさんとーへーだ」
階級も下がり、俺はもう笑うしかなかった。
そして、自分の笑い声と、トミーの明るい声で、俺は自分の中に生まれた気持ちを、確信した。
どうやら、俺は向けられた好意に対して想いを持ったのではない。
これは、この気持ちはずっと前から俺が持っていたものだったのだ。
彼女を親友以上の存在として受け入れると、心のもやが、一気に晴れた気がした。
男
「あー……ほんとにお前と話してるとすっきりしたよ」
トミー
「ん?ほんとになんかあったのかー?」
男
「……なんでもねーよ」
150 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:38:59.09 ID:scJtzCco
本当は、いっその事言ってしまいたかった。
気付いてしまった気持ちを。
でも、言えるわけがない。
俺は今日、サナミに好きだと伝えたのだから。
トミー
「そうかそうか!ならよかった!あ、ねえねえ、ちょっと聞いておくれ!」
男
「ん?なんだ?」
どうせまた、アニメの話かなにかだろう。
そういえば、勧められて買ったゲームも、まだほとんどやっていない事を思い出した。
トミー
「あのねー、今部屋から外みてるんだけど、なんか変な人がいるのだよ……」
男
「え……?それ、ほんとか?」
辺りを見渡して、不審な人影がないか確かめる。
そもそもトミーの家がこの通りかどうかも確かではないが、近所ではあるはずだ。
トミー
「うむ……さっき気付いたんだけど、ずっと同じ場所に座っておるのだ」
俺は立ちあがって少し歩きまわる。
電柱の陰や花壇の脇なんかに不審な人影がないかを確かめながら。
なんだか、自分の彼女の事のように心配になって、呼吸が荒くなる。
トミー
「わ……なんかさがしてるぅー……こわあー……」
なんだ、何を探してるんだ?まさか、ストーカーの類か。
行き過ぎた妄想がどんどん広がっていく。
トミー
「怪しい奴めー……。ずっと電話してるんんだー……仲間でも呼んでたらどうしよう……」
何か引っかかる。
俺はもしかしたら、そいつに心当たりがあるかもしれない。
男
「なぁ、もしかしてそいつキャップ被ってジャージ姿じゃないか?」
トミー
「な、なんでわかるんだ!ま……まさかお前は、エスパーかっ?」
151 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:40:00.15 ID:scJtzCco
……俺だ。
どうやら俺は完全に不審者と間違えられていたらしい。
漫画の様なオチに、乾いた笑いが漏れる。
彼女から俺が見えるという事は、トミーの家はこの並びの何処かにあるはずだ。
男
「……俺だよ、トミー。どの家?」
トミー
「……え?うそ。ほんと?」
驚いて素に戻ってしまう彼女の声に、思わず噴き出してしまう。
トミー
「わ、笑うなぁ!ちょ、ちょっとこわかったんだからなー!」
男
「ほら、何処だー、おーい」
並んでいる家々の方に向かって手を振る。
その中に一つだけ、カーテンの隙間から光の漏れる部屋を見つけた。
こっそりとこっちを眺める怪しい人影。どっちが不審者なんだかわからない。
トミー
「あっ……」
男
「見つけた?」
トミー
「……じゃあ切る」
男
「えっ?」
―――ツーツー…
唐突に不愉快な音が鳴る携帯。
一体、どうしたというのだ。
もしかして、本当に引かれてしまったのだろうか。
通話終了と表示された画面を見つめる。
理解し難い一方的な遮断の前に、呆然と立ち尽くす。
すると、何処かから扉の開く音がした。
トミー
「よっ!ふしんしゃくん!」
失礼な声に振り返ると、そこには暖かそうなコートに身を包んだ、トミーが居た。
コートの下からは、上下お揃いだと思われる可愛い柄の寝巻が見えている。
突然現れた彼女に、俺は心底驚いた。そして何より、嬉しかった。
152 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:41:03.82 ID:scJtzCco
男
「びっくりしたー。不審者じゃねーっつーの!」
トミー
「うそつけー!ほんとはトミーちゃんに会いたかったくせにー?」
彼女が本気でそう思ったのかどうかはわからないが、
ここに来た理由をいきなり的中させられて、戸惑いを隠しきれない。
男
「ち、ちがっ……!た、ただのランニングだって」
トミー
「ふーん……。こーんなさっむいのにランニング?へー……?」
大きいコートの袖で口元を隠しながら笑う姿が、とても愛くるしい。
汗も引き、一度は冷えてしまった身体が、暖かくなる気がした。
トミー
「で、ほんとのりゆーは?探偵のぼくの眼はごまかせないぞ?」
どうしよう。言えるはずもないだろう、トミーに会いに来たなんて。
どう答えようか、迷ってしまう。名探偵の眼光は鋭く光っている。
男
「ほんとの理由って……」
>>440
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
440 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/24(水) 22:11:15.41 ID:kTL5GYwP0
(何も言わず抱きしめる)
言葉が、出ない。
よく動く瞳で、微笑みかけるこの少女が、愛らしくてたまらない。
俺は、考えるよりも先に、身体が動いた。
―――ギュッ…
トミー
「わっ……!」
俺は、出てこない言葉の代わりに、彼女を抱きしめた。
胸の中で驚きの声をあげる、彼女の 揺れる髪からは、子供のような香りがした。
トミー
「うぅー……なんだよぉー……もぉー……」
153 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 09:53:16.64 ID:scJtzCco
やっと前々スレの半分……。長い……。
幸い1000の内の半分くらいが保守の方々のレスで助かってます。
ほんと、気長にお待ち下さい。絵でも描いて。
154 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 10:11:46.77 ID:AMfImoSO
見てるぞ頑張れ
支援
155 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 10:29:05.59 ID:scJtzCco
胸に顔を埋めたまま、小さな抗議の声。 抵抗はなかった。
男
「…………」
本当はこんな事、していいはずがない。
だが、冷えた身体に感じる彼女の体温は、はとても暖かくて、心地よい。
腕の中で静かに肩を上下させる彼女は、 普段のイメージからは想像も出来ない程、大人しい女の子だった。
トミー
「…………」
男
「…………」
二人とも、言葉はない。
俺は彼女を抱きしめながら、サナミの言葉をまた思い出した。
―――トミー、あんたの事好きって噂だよ
あの言葉は、本当だったのか。
胸の底から湧きあがる喜びと、サナミに対する罪悪感、自己嫌悪。
あまつさえ、このままずっと時間が止まればいいとさえ、思っている。
長い長い沈黙を破ったのは、トミーだった。
トミー
「……わぁー!!」
大きな声と共に、俺の腕からするりと抜けていく。
温もりがあった場所に、冷たい空気が満ちる。
トミー
「おっ、おわり!もーだめ!これ以上はおかねがひつよーです!」
照れ隠しか、背を向けて大袈裟に自分の身体を抱く姿を見て、
俺は自分がした事に、段々と生々しい現実感が湧いてきた。
男
「わ、悪い……。なんか……さ、寒かったから……」
言い訳にもならないような言葉しか、出てこない。
自分でも恥ずかしいほどに顔が熱くなる。
彼女がとても可愛い女の子なんだと気づいた瞬間、友達は、異性に変わった。
トミー
「……今日……」
彼女は背を向けたまま、聞き取れないほどの小さな声で話し出す。
156 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 10:30:18.23 ID:scJtzCco
男
「き……今日?」
俺は必死に声を絞り出す。
もう、唾液さえも出ない程喉は乾いていて、
さっき走っていた時よりも速く、心臓は高鳴っていた。
トミー
「実はさぁ……ほーかご……、まってたんだ」
オレンジ色に染まったトミーが一瞬でフラッシュバックする。
男
「待ってたって……俺を……?」
見えないが、今もたぶん、あの時と同じ寂しげな顔をしているのだろう。
彼女の肩は、小さく震えているようにも見えた。
少しだけ長いコートの袖を、顔の辺りで何度か動かすと、
彼女はひらりとこちらに振り返った。
トミー
「……うーーーそ!!だまされた?」
男
「え、えぇ?」
どこまでが冗談で、どこまでが本気かわからない。
たぶん、そのどちらもが彼女で、二つとも、本当のトミーなのだろう。
トミー
「……ぼくがかわいいからつい抱きしめちゃったんだね?わかるわかる」
腕組みをしてうなずく彼女。
馬鹿な俺でも、すぐにわかる。
トミー
「あはは……でも駄目だよっ?ほら、ちみには……かわいー幼馴染ちゃんがいるじゃないか!」
これは……、強がりだ。
小さな彼女なりの、精いっぱいの。
トミーの口から出た幼馴染という言葉に、呼吸が苦しくなる。
本当に自分が分からない。誰を好きで、誰が大切なのか。
トミー
「あっ、もうこんな時間だっ!ほら、良い子は寝る時間だぞっ?さーおうちにかえろー!」
男
「あ……、ほんとだ…。ごめん……」
157 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 10:30:59.13 ID:scJtzCco
トミー
「いーよいーよ!あはははー……」
携帯を開いて見れば、もう10時を過ぎた所だった。
随分と長い間、話していたみたいだ。
男
「遅くまで……ごめんな」
トミー
「ううん……!じゃっねー!気をつけて……かえってね」
そう言うと、玄関まで走り、大きく手を振る彼女の姿に、
俺は何も言えず、ただ小さく、手を振り返す事しか出来なかった。
―――自宅
玄関の奥に消えていくトミーを見送った後、
どんな道を通って帰ってきたかは覚えていない。
ただ覚えているのは、去り際の、少し赤くなった瞳だけだった。
男
「……はぁー……」
疲れた。
風呂上がり、満腹、疲労。
この三つが揃えば、当然召喚されるのは、睡魔だ。
もうとうに電気の消えた隣のベランダを眺めて、俺はベッドに飛び込んだ。
冷たくなった枕と、羽毛布団の感触が心地よい。
トミー。 サナミ。
選ばなければならないのか。
でも、どちらを選んでも、正解でも、間違いでもないような気がした。
またもやのかかり始めた頭を振るい、布団に潜り込んで眼を閉じると、
俺は引きこまれるように眠りの世界へと沈んでいった。
―――深夜4時
あんなにも疲れていたというのに、人間というのは不思議だ。
喉が渇いたくらいで眼が覚めるなんて。
俺はコップに注いだ清涼飲料水を一息に飲み干し、再び暖かい布団に潜り込んだ。
男
「……なんか……すごい夢みてた気がするな……」
158 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 10:32:08.75 ID:scJtzCco
思い出そうとしても、思い出せない。
夢のメカニズムを解明すれば、娯楽なんて必要なくなるのに。
俺はせめていいあと数時間、いい夢を見ようと色々な事を考えながら、眼を閉じた。
また夢の世界に入る直前、俺が考えていた事は……
>>518
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
518 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 01:32:56.26 ID:7dkN9wTi0
朝メシのこと
母
『ほら、ゆっくり食べなさい』
なんということだ。
朝食だというのにこんなにも豪華な料理が並んでいるなんて信じられない。
食卓に並んでいたのは、全て俺の大好物で、それも食べても食べても食べきれない程の量だ。
立ちこめる香りに俺は唾液が溢れ出るのを抑えられない。
男
『これ…全部つくったの?』
母
『いいからいいから、冷めないうちに、さあ』
幸せだ。
俺はまず唐翌揚げに手を伸ばす。
―――サクッ…
カリっと揚がった衣を噛むと、中からあつあつの肉汁が溢れ出る。
ほどよく効いたスパイスの味がたまらなく食欲をそそる。
よし、次はラーメンだ。
鉢一面の油の乗ったチャーシューに、たっぷりのネギ。
濃い目のスープは飲んでも飲んでもまた飲みたくなる旨さ。
スープによく絡んだ麺をすすると同時にチャーシューをかじる。
朝から本当に最高の日だ。
俺は様々な好物を次々と平らげて、最後の好物に取り掛かった。
母
『あなたの一番の好物よ』
男
『うわあ……なんて旨そうな目覚まし時計だ』
丸いフォルムに誰もが一目でそれだとわかるデザイン。
俺はドライバーを片手にまずは裏面を分解する事から始めた。
なかなか難しいが、こうでなくては目覚まし時計はおいしく頂けない。
159 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 10:37:10.07 ID:scJtzCco
今日中には前々スレ分は終わらせたいと思います。
160 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 11:11:30.38 ID:NA0ohGwo
はーい
161 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 11:33:25.55 ID:o5kJy6co
うん
162 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 11:40:20.07 ID:SLQ9vkY0
SSの男が母親と
仲良いって
実は斬新だよなw
163 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 11:41:29.19 ID:Hrgheloo
えっ
164 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 11:54:00.21 ID:w3wkgPgo
いい調子どすなぁ
165 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 12:16:03.35 ID:nuEc1MDO
2回目でサナミ一筋と決めて読んでいるからか、男に苛々してきたwwww
166 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 12:43:15.07 ID:Nfb059.0
この頃のトミーは最強だな
167 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 12:59:58.99 ID:851f/4so
好意をもたれたら意識しちゃうのが男でしょ
もてない男なら特に
つまりトミー最高!!
168 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 13:06:44.60 ID:mwZhJqs0
トミーが可愛過ぎて生きてるのが辛い
169 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/08(月) 13:23:25.59 ID:vLVU/4A0
初期からサナミ一筋な俺に死角はなかった!
170 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 14:10:32.46 ID:04jhLUAO
「うぅー……なんだよぉー……もぉー……」
前々スレのこのセリフでトミーに心を奪われたwwww
171 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 15:37:29.02 ID:4KKZ9jE0
トミーもアマネも魅力的だがサナミがいいっ
172 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 15:51:32.58 ID:Bk5mJ160
俺の嫁さんの登場はもう少しあとだな
173 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 16:43:38.63 ID:Nfb059.0
>>172
ヤリダのことかww
174 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/08(月) 17:07:34.69 ID:E25AecDO
トミーかわいいよトミー
175 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 17:31:46.89 ID:scJtzCco
トミー
『あっれえー?ねぇねぇ、ぼくにもちょーだい?』
男
『なんだ、トミーか……仕方ないなぁ。ほら』
トミー
『へへへ……あー……』
喜々としてあんぐりと口を開けるトミーに、食べやすい大きさのネジを放り込もうとすると、
何処から現れたのか、今度はサナミが目の前に立っている。
サナミ
『酷い!あたしだってずーっと食べたかったんだからね!』
男
『サナミまで来たのか。今日の食卓はほんとに賑やかだなぁ』
母
『ほんとねぇ。あら、これで食べなくちゃだめよ』
男
『あぁ、そうだったそうだった。これでないと』
うっかりしていた。
俺は愛用のリップスティックを忘れていた。
これで食べなければ何で食事をするんだろうか。
二人を前にして緊張したんだろうか、俺はすごく恥ずかしくなった。
にゅるにゅるとした食感が口いっぱいに広がり、
飲み込んだ後腹の中で鳴る目覚まし時計が―――……
―――ジリリリリリ!!!!
男
「……!!」
枕元の目覚ましを乱暴に叩いて止める。
なんだかよくわからない夢を見ていたような気がするが、いまいち思い出せない。
男
「……?まぁいいか……」
俺はなんだかすごく口の中がねばつくような気がして、さっさと顔を洗う事にした。
きっと昨日喉が渇きすぎたんだろう。
俺は明るい日差しが差し込んでくる窓の向こう、幼馴染の部屋べランダを眺める。
今日もあいつとは、”何事もない”一日になるんだろうか。
ともかく、今日もなんだか大変な日になる、そんな気がした。
176 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 17:32:57.08 ID:scJtzCco
身支度を済ませて台所へ行くと、一枚のメモが置いてあった。
『ごめん!締め切り近くて寝てないから朝は買い食いで頼む』
達筆なはずの母の字が、後ろにいくにつれて歪んでいる。
文字からは疲れが伝わってくる。よほど眠かったのだろう。
男
「……そっか、お疲れ様でーす」
ひとりごちてメモをめくると、下には一枚の紙幣が。
山折谷折の折目をつけられた野口さんが笑っていた。
眠い目をこすりながら、こんな手間のかかる事をしている母の姿を想像して、
なんだか微笑ましく思う。
仕事柄、母は締め切りが迫るといつも徹夜続きだ。
父が死んで、母の手一つで育ててくれるのは感謝しているが、身体には気をつけてほしいものだ。
珍しくもない事だが、今朝はすっきりと片付けられた食卓を見ると、すごく残念なような、消失感を感じた。
男
「……まいっか。いってきまーす……」
寝ている母を起こさないようにこっそりと玄関を出る。
もっとも、今ならどんな物音がしても起きやしないだろが。
今日も随分いい天気だ。
時計を見ると8時ちょっと前。
そろそろサナミが玄関から出てくる時間だが……。
俺は昨日の事を思うと、なんだか顔が会わせ辛い。
先に行くか、どうしよう。
>>553
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 04:02:29.45 ID:1821PMSD0
サナミを待つ
待とう。
今日は、ちゃんとサナミと話をしよう。
順序がまるっきり逆だが、俺は自分の気持ちをちゃんと確かめたい。
誰が大切で、誰と一緒に居たいのか。
―――5分
サナミの家の玄関はまだ動かない。
まぁ、もう少し待とう。
177 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 17:34:04.36 ID:scJtzCco
―――10分
時計はもう8時を指している。
あと三十分で行かなければ遅刻なのだが……。
―――15分
まずい、経験上もう時間はデッドライン近くだ。
俺は少々焦りだした。もしかして、もう先に行ってしまったんだろうか?
そうだとすれば、俺は無駄な待ちぼうけをしている事になる。
かといって、今まで呼び出してまで一緒に行った事はない。
だから、今更電話電話をかける事は気恥ずかしくて少し憚られる。
このままでは遅刻してしまうが、どうする。
幸い足には自信がある。俺一人なら走ればまだ間に合うが……
562>>(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 04:19:46.89 ID:SXqAsXBx0
落ち着くためにサナミ宅玄関前で自慰行為
玄関の前を右往左往する俺の焦りは、実際の所、少々などではなかった。
今朝一発目の授業は、”鬼教官”の異名を持つ教師で、通り名の由来は言うまでも無いが、
あの教師に絞られた生徒は一週間飯が食えなくなるという都市伝説さえあるほどだ。
男
「あー……もう……!」
先に行ってしまえばいいだけの話ではある。
しかし、学校に着いてしまえば自分から探すでもなければ、クラスの違うサナミとは話す機会があまりない。
普段から毎日のように顔をつき合わせているために、学校ではこれといって話す事がないのだ。
そうこうしているうちに、どんどん進む時間。
俺の焦りはもう頂点に達していた。
男
「落ち着け……!落ち着け……!」
こんな状態では、サナミが出てきた時にまた何を言ってしまうかわからない。
最近の俺はどうも自分の行動に自信が持てなくなってきていた。
男
「そうだ……!」
俺は心を落ち着けるために、ある事を行う事にした。
178 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 17:34:40.41 ID:scJtzCco
辺りに誰も居ない事をよく確認して、俺は服を脱ぎ始めた。
冷たい空気が素肌に触れて、少しずつ頭が落ち着いてくる。
男
「よし……!」
玄関から出てくるサナミを想像して、俺は自らを高めていく。
―――ググッ…
俺は最初こそ抵抗があったが、始めてみれば思っていたよりも心地よい。
なにより、人の家の前で、こんな事をするなんていう状況と、
後ろめたい気持ちが、俺自身の硬直と動きを加速させていく。
男
「くっ……!はぁ……ぁあ……はあ……!」
サナミにこんな所を見られたらどうするんだ?
―――シュッ、シュッ…!
自問自答を繰り返しながら、俺は手の動きを早めていく。
男
「くっ…あぁ……!」
限界が近づくにつれて、雑念が消え、高まりだけが残る。
男
「くっ……!うぁあああああ!」
俺の限界が頂点に達した時、
―――ガチャ…
サナミ
「きゃああああ!!!!!!!!」
空が、青い。
限界を向かえ、仰向けになって倒れている所に、サナミが現れた。
俺の鼓動は爆発しそうなほど速いが、何故か妙に落ち着いている。
サナミ
「……ねえ、人んちの前で何やってんの?」
俺は心地よい疲労感の中で、自らの膨張が少しずつ収まっていくのを感じていた。
こんな姿を見て、サナミはさぞかし驚いている事だろう。
俺は起き上がり、大きく深呼吸をした。
179 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 19:16:23.72 ID:MeEvQMDO
今思えばこの辺りもひどい流れだったなw
180 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 19:30:48.56 ID:Bk5mJ160
それでも回避する
>>1
の抜群なセンスwwwwwwww
181 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:32:15.90 ID:scJtzCco
皆ずっと酷いです……。それが楽しいからこんなに長く遊んでるんですけどね。
がんばるよ!
182 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:34:13.39 ID:scJtzCco
男
「何って……筋トレだよ」
パンパンに張った二の腕の膨張は次第に収まり、
俺は額から落ちる汗を拭った。
落ち着くためには自慰行為に限る。
俺は筋肉トレーニングこそ最大の自慰行為だと思っていた。
自らを慰める行為という意味は、何も一般的に想像される自慰だけとは限らない。
サナミ
「……時々あんたの事ほんとにばかなんじゃないかって心配になるよ」
玄関から出てきたサナミは、少し大きめの寝巻きに、マスク姿だった。
寝癖のついた髪と眠そうな顔が、少し可笑しい。
女の子のこんな姿が見られる幼馴染という立場に、俺は少し感謝した。
自慰行為のおかげか、俺の頭は思ったよりもすっきりとしていて、硬くならずに話せそうだった。
男
「あれ、風邪?一緒に行こうと思って待ってたんだけど……」
サナミ
「んー……急に熱出ちゃったんだぁ。それより、上着なよ、風邪引くから。あ、引かないか、ばかだし」
男
「子供は風邪の子って言うだろ!」
サナミ
「……やっぱりばかだわ…」
サナミが俺をばか呼ばわりした理由はいまいちわからなかった。
ケホケホと小さな咳をしながら額に手を当てる彼女の赤く火照った顔が、体温の高さをうかがわせた。
普段どおりに話してはいるが、声に弱々しさが滲み出ている。俺は手早く服を着なおす。
男
「……大丈夫か?ちゃんと寝てろよ…。あ、そういえばなんで出てきたんだ?」
風邪で寝ていたのなら、わざわざ玄関まで出てくる意味はないはずだ。
サナミ
「……もし…ま、待ってたりしたら可哀想かなー、と思ったから……ばーか」
玄関にもたれたまま、前髪を触るサナミ。
照れくさそうに悪態をつく。
俺はサナミの言葉に、安い言い方をすれば、ときめいた。
照れた顔は、小さい頃から見ているサナミと何も変わっていない。
よく動く瞳は冬の空を映して、きらきらと光っているように見えた。
183 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:35:04.91 ID:scJtzCco
男
「なんか悪いな、寝てるのに」
サナミ
「いいよ、いいけど……時間、大丈夫?」
―――8時20分
俺は落ち着きの余り、自分が何をしていたかさえすっかり忘れていた。
男
「あ……!や……やばい!悪いサナミ、行くわ!」
全身の血の温度が下がっていくのを感じる。
サナミ
「あ、ごめんね、待たせちゃって……」
男
「いいっていいって!じゃあ、ちゃんと治せよ!」
そんな顔で謝られたら、誰だって許してしまう。
俺は振り返りながら叫ぶと、乳酸の溜まった両足にもう一度鞭を打った。
謝るサナミの手前、遅刻するわけには、いかなかった。
―――学校
男
「うわっ……ぷ」
舞い散る埃に咳き込む。
俺は一人、当たり前の様に埃がそこらじゅうに積もる、資料室の整理をしていた。
軽く10分以上の遅刻の罰則として。
男
「……怖かった……」
思い出すだけで、余りに恐ろしい。
この歳で”大人に叱られる”という事自体中々に精神を疲弊するが、
鬼教官の説教は、俺のテンションを地面どころか、地下深くまで急下降させた。
何冊目かもはや覚えていない分厚い本を、掃除したばかりの本棚に納めると、遠くに鐘の音が聞こえてきた。
男
「……やっとか……」
俺は埃まみれの服を払うと、山積みになった残りの本を、棚に押し込んだ。
タイトルさえ擦り切れて読めない本を、一体誰がこの先使うというのか。
いっそ、資料室から”仕置き部屋”と名前を変えたほうが良さそうにも思えるが。
184 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:35:37.06 ID:scJtzCco
咳き込みながら資料室の鍵を掛けて、陽射しに満ちる廊下で大きく伸びをする。
身体の奥でポキポキと骨のきしむ音が聞こえた。
喉の奥が張り付いて気持ちが悪い。
やっとの思いで仕置き部屋から開放されたが、俺にはまだ仕事がある。
教員室まで、この鍵を返しに行かなければならなかった。
男
「……めんどくせえ……」
遠い道のりを思い浮かべながら、指先でくるくると鍵を回す。
悩んでいても時間だけが過ぎるだけだ。俺は渋々長い廊下を歩き出した。
この学校は、広い。
どのくらい広いかといえば、とにかく広い。
増改築を繰り返した校舎は入り組んでいて、 入ったばかりの頃は随分と迷わされた。
学生獲得競争が激化している昨今、広さに値する膨大な生徒数を誇る我が校は、勝ち組の部類に入るのだろう。
職員室までの長い道のりを早足で歩いていると、部室の並んだ廊下に差し掛かった。
男
「あ……部活」
ずらりと並んだ部室を見て、そういえば暫く部活に顔を出していない事を思い出した。
何を考えているのかは分からないが、うちの学校は部活に関しても特に力を入れている。
しかし力の入れ方を間違えているのか、とにかく誰でも簡単に部活動を始められるようになっていて、
校内には多種多様な部活がひしめきあっていた。
定番の野球部やサッカー部はもちろんの事、囲碁や将棋の文科系の部活や、
麻雀部なんてのもある。変り種ではUFO研究部や昼寝部なんてふざけたものあったはずだ。
唯一の強豪と言える部活が、”タオリング部”だという実績が、ずれた方針を物語っていた。
もちろん、何をやる部活かは知らない。
男
「……部室、多いだろ」
小さな部屋ではあるが、大量に並ぶ部室。
俺が所属している部室も、そこにはあった。
>>596
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 05:51:36.75 ID:WKXHWcXP0
サナミと同じ部活
サナミに誘われて入った部なのだが、俺はある理由から、もはや幽霊部員となっていた。
総じて”緩い”か”特殊”な部類が多いうちの部活の中では、比較的まともな部活だとは思う。
男
「…あ!やばい、時間!」
185 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:36:38.70 ID:scJtzCco
時計を見ればもう次の授業が始まる3分前だ。
知らない間に増えている見たことも無い部室の表札を眺めていたら、時間を忘れていた。
急げばまだ間に合う。
俺はまたも、走るはめになった。
―――教員室
男
「鍵かえしにきましたー!」
俺はだだっ広い教員室の入り口で勢いよく叫ぶと、鍵用のボードに鍵をかけ、急いで踵を返した。
間に合う、そう思った直後。
???
「ちょーっと待った!」
トミーに負けないほどの声が響く。
聞き覚えのある声に振り返ると、ストライプのスーツ姿の男性が、俺を指差していた。
男
「……なんですか、ヤリダ先生」
にやにやと俺を見ている彼は、れっきとした英語教師のヤリダ先生。
一見すればとても教師にみえないような風貌。
男の俺が見ても整った顔立ちなのは間違いないが、どうにも調子が軽い。
本当は”ヤリタ”なのだが、皆がその風貌と調子から”ヤリたいだけだ”と言い出したから、ヤリダと呼ばれている。
厳しいリングがいくつかついた手が肩にまわされた。
スーツの袖口からは、男性者の香水が香ってくる。
男
「な、なんですかもう!」
ヤリダ
「ん?なんだお前急いでんのか?」
男
「時間見て下さいよ!急いでるに決まってんだろ!」
ヤリダ
「うん、わかってて止めてんだよ」
絶句。
俺は彼のこういう教師然としない所が気に入っている反面、嫌いでもある。
ヤリダ
「あ、そだ。お前部活何やってんだ?今度部室遊びに行ってやるよ」
186 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:37:47.23 ID:scJtzCco
同じ質問を何度もされた覚えがあるが、彼の場合本当に忘れている事も多々ある。
今回は俺を遅刻させようという意図がみえみえなのだが、さっさとこの問答を終わらせるために答えた。
>>608
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 06:26:29.91 ID:WKXHWcXP0
料理部
男
「料理部です!りょーりぶ!じゃ、俺行きますから!」
男の割りに甘い物が好きな俺は、学校でも美味しいものが食べられるというサナミの誘い文句にまんまとはまり、
部員が数名しか居ない料理部に2年の時に、のこのこと入部した。
ヤリダ
「りょうりぶぅ〜?お前料理なんか出来んのかー?あ、そういやこの前な」
答えてもなお、俺の肩に回された手は離れない。
聞いてもいない内容の無い話をだらだらと垂れ流すヤリダ先生。
男
「勘弁してくださいよもう!あ…!チャイム……!」
ヤリダ
「ははははは!いやーわりーわりー遅刻だなー!」
生徒という立場上、振り払って走るわけにもいかず、抵抗空しく俺はスピーカーから流れてくる鐘の音を聞いた。
俺の背中をバンバンと叩きながら笑っている彼が、何故教師になれたのかは、この学校の七不思議の一つに違いない。
教頭
「……笑っておられますが、ヤリダ先生も授業じゃありませんこと?」
俺達のやり取りを静かに見つめていた教頭が、黒縁眼鏡の奥で鋭い眼光を光らせた。
助け舟を出すなら、もっと早くに出して欲しいとも思ったが、ないよりはましだ。
唖然とした顔で硬直するヤリダ先生の腕から抜けた俺は、一礼して部屋を飛び出した。
ヤリダ
「退けって!おいお前邪魔すんなよ!ばーかばーか!!」
教材を引っつかんで遅れ気味に後ろから走ってきた彼は、先を行く俺を追い越す。
男
「……ほんとに教師かよ」
俺はその情けない後姿を追いかけるように、スパートをかけた。
187 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:39:01.07 ID:scJtzCco
―――昼休み
男
「……やっと……か……」
疲弊した身体を机に投げ出す。
今日は朝から走りっぱなしの様な気がする。
気がするどころか、実際に走りっぱなしだった。
朝の遅刻騒ぎで、ただでさえ疲れている所に、ヤリダ先生と教室までのデッドヒート。
結果は二人とも周回遅れで終わったが。
そして今日も、弁当が無い。
悪い事は重なるというが、これ以上何かあったらたまったものではない。
例によって後ろから忍び寄る足音に、俺は先手を打った。
男
「わっ!!!!!」
トミー
「うわあ!!なんだ!びっくりするだろ!!」
俺の奇襲は見事に成功し、目を白黒させたトミーが慌てている。
昨日の事があったせいか、なんだか話辛くて今日はまだ挨拶しかしていなかったが、
変わりなく襲撃してくる彼女に、少し安心した。
男
「たまには逆襲だよ逆襲」
トミー
「ぬぬぬ……!こしゃくな……!」
俺の心情に反して、彼女は全くいつもと変わらない様子だった。
大袈裟すぎる素振りが、いつにも増して可愛く思える。
トミー
「ふーん、そゆことするならー、昨日のことぉー言っちゃおっかなー?」
男
「えっ……!」
女
「ね、昨日のことってなに?」
女
「なんかあったの?」
俺が過剰に反応したせいか、彼女の周りに居た女の子が口々に言う。
女の子特有の、こういう時にだけ見せる異常なほどの食いつき方に心臓が冷える。
188 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 19:46:00.30 ID:Bk5mJ160
なぜか
>>181
の前半でキュンっときた
189 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:51:08.06 ID:scJtzCco
トミー
「あのねぇー、実はぁー……」
女
「なに?なに?」
男
「ない!何もない!ほらトミー食堂行くんじゃないのか!?」
俺は口止めをしようと必死になりながらも、昨日の事を冗談の様に話せるトミーに半ば関心さえした。
それに、なんだか二人だけの秘密を作ったようで、嬉しくも感じてしまう。
トミー
「えー?ぼくきょうおべんとーだよー?」
にやつきながら可愛いハート柄のお弁当箱を揺らす。
二人だけしか踏み込めない雰囲気に、もう少し浸っていたかったが、あんな事を話されたらたまったものではない。
こうなったら仕方が無い、俺は奥の手を使う事にする。
鞄の中から今朝大急ぎで買った大好物である菓子パンを取り出した。
トミー
「お……おぉ!」
明らかな反応を見せるトミー。
男
「これなーんだー」
トミー
「ば、ばいしゅーか!?ふてえやろーだ!」
毎度毎度俺の菓子パンをねだるせいで、こいつの好みはわかっている。
あんぐりと開いた口は、今にもよだれが落ちそうだ。
なんと罵られようとも、ここだけは引けない。
男
「……いらないなら食うけど?」
トミー
「……な、なに!し、仕方がない!おぬしもわるよのぅ…」
俺の手から唯一の食料をひったくると、見せびらかしながら子供のようにはしゃいでいる。
興が削がれたような同級生達の顔。どうやら上手くもみ消せたようだ。
トミー
「わーい!おっかしー!おっかしー!へへへーいいでしょー」
昨晩のしおらしい姿を思い返して、そのギャップに思わず微笑んだ。
しかし、これで食料は無くなったわけで、俺は食堂に行かざるを得なくなった。
190 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/08(月) 19:52:41.23 ID:PILdA.I0
最初からやってんのね
191 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 19:56:56.58 ID:scJtzCco
人集め兼書き直しです。結果的には人減っちゃってますけどね…。
まったりお待ち下さい。ご飯つくってきます
192 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 20:09:11.17 ID:EivmRHco
トミーかわいいよトミー
トミーかわいいよトミー
193 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 20:16:39.72 ID:2MKh9sAO
トミーの紹介で『他の男子からははっきり言って人気はない』って書いてたのにこのスレで人気出過ぎたために消したんだなwwwwww
194 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 20:18:58.70 ID:etMAIiYo
>>1
はずっとスレに張り付いてるけど他にやることないの?
195 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 21:08:03.27 ID:.Cz4WE6o
顔が残念なんだろきっと
196 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 21:29:50.37 ID:AMfImoSO
トミー好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
197 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 21:31:59.31 ID:4tswTS.o
,, - ,,= 、
, " / ヽ、
./ ! ヽ
./__ ,, ,,,!, _ |
./i.!/ _ ノ !| ゛ '' ,、 !
,! w''"_''、 .!-=ァ.、! ッ 、!
' !.l!." ゛!"'l '"_, i.|/. !|ヽ、
'|゛''''' ツ `‐ メ./ !"l/- ''
i __ __ _ ,_/ノ 皆応援ありがとう!
.ヽ, .ゝ_ .ノ ./ .|"
l 、 .イ .|
, .ッi! " ゛ '' " / iヽ.
___,, - "//.! ' /,.!| ヽ、
,, " ./ !.!i .!- 、 _ ,,, ./,/ !.! ヽ- ,,
/ / !.! ''i 、 '" ,,/" .!.! ! ヽ、
./ / !.! ゝ ゛'' '' .シ !.! .| ヽ
| ヽ / .!.! ゝ,,/ !.! ! .Y
| ! / .!.! i'0 l .!.! ! / .|
./! .Y !.! ゛" .!.! ゝ / |
198 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 21:55:30.36 ID:WaEGOwDO
初期と見比べると細いとこ書き直してるなwwwwww
どんだけ律儀なんだwwwwww
>>1
ちゃんちゅっちゅ
199 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 22:33:36.56 ID:o5hSE1A0
再編集して掲載とか…乙
まってるぜ
200 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 22:43:28.82 ID:Bk5mJ160
加筆修正+結末書き下ろし
完全版だな
201 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/08(月) 23:06:58.60 ID:scJtzCco
男
「じゃあ俺食堂行くわ。大事に食えよ?」
鞄から財布を取り出し振り返ると、
トミーは弁当を広げたまま口いっぱいにパンを頬張っていた。
膨らんだほっぺたが、ハムスターを連想させる。
トミー
「もふふぁへへふふぉー」
男
「……飲み込んでから喋りなさい」
トミー
「んっ…ん…。もうたべてるよー!」
既に半分ほどにまでなっているパンを片手に、微笑む彼女。
この愛くるしい小動物を一撫でしてから、俺は教室を出た。
騒がしい廊下は教室よりも随分と冷たい空気に満ちている。
この寒い中食堂まで行く元気が果たして俺にあるだろうか。
男
「……めんどくせえぇー……」
すると、途方にくれている俺の後ろで、久しぶりに聞く声がした。
???
「誰かと思えば、幽霊部員さんじゃないですか」
少しだけ低い、落ち着いた声。
長い黒髪とすらりとした女の子が、にっこりと微笑んでいた。
男
「……あ、アマネ部長……」
やはり今日は、都合の悪い事が重なってしまうようだ。
アマネ
「もう、どうして来てくれないんですか?貴方が居ないと、味見役が居ないから困ります」
彼女はアマネ部長。我が料理部の部長で、少しだけ、変わっている。
本名はアカネ、だったと思うのだが、甘いものに目が無く、
いつもスイーツばかり作っているせいでいつのまにか、アマネに改名された。
彼女の本名を覚えている人間は、あまり居ないだろう。
男
「いや……、ちょっと最近忙しくて……」
実は、俺は彼女が少し苦手だった。
202 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/08(月) 23:22:52.79 ID:WaEGOwDO
アマネちゃんキター
思えばずっと男の事好きなんだよな。可愛いじゃないか
>>200
的をえてるなwwwwwwこれで挿し絵があれば完璧なんだがなー
しかし
>>1
の文章って冷静に評価したらどうなんだろね
203 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/09(火) 00:11:30.77 ID:TbM/f3M0
>>202
正当な文学としての評価は低いと思うよ
ただキャラクターがちゃんと生きてるから面白い要素が必然的に生まれてる感じ
204 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/09(火) 00:33:59.59 ID:AF8CU2SO
先は長いな
気長に待つよ
205 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 00:39:47.05 ID:S4zU66DO
>>203
キャラが生きてるのはわかる。キャラが動いてる所が頭にちゃんと浮かんでくる。
こんな小説なら読みたいのに売ってるやつは難しい。ラノベも苦手だし
206 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 00:50:19.40 ID:Js4aayco
>>1
の文章力すごいよな
こんなに読みやすいのはリアル鬼ごっこ以来だよ
207 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:22:33.13 ID:ZlKgEwAO
C
トミーやばい
208 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:25:10.35 ID:S4zU66DO
難解な表現がないから読みやすいよなー
これ終わったらなんか本気でなんか書いてほしい
209 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:26:47.19 ID:TpkXmsDO
サナミ派が減った気がするな・・・
210 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:27:44.06 ID:IyTM1YSO
断然サナミ派だ
211 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:31:51.58 ID:t85nzsSO
読みやすいし情景が
想像しやすいよね。
常にサナミ派ですけども。
でもなんらかで皆幸せになれ
212 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:36:13.54 ID:f5SKfcDO
どのキャラもいい子すぎる
213 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/09(火) 01:45:18.67 ID:J6Eikx.0
しがない出版社のぺーぺーだけど最後まで面白かったら企画案書き上げてみるか
間違いなく大目玉食らって左遷されるだろうが
214 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 01:51:18.95 ID:XVqih9oo
アマネ
「時に貴方、もしかして空腹じゃありませんか?」
背筋に嫌な汗が流れる。
男
「そー……んな事もあるようなないような……」
アマネ
「その……、新しいスイーツを考えたんです。久しぶりに味見をお願い出来ますか?」
わざとか無意識か、軽い上目遣いで、少しずつ俺に近づいてくる。
男
「いやぁー……これからちょっと食堂に行こうかと……」
アマネ
「あら!じゃあやっぱり空腹だったんですね。じゃあ是非!」
男
「い、いや……俺……」
料理が出来て、淑やかな言葉遣い、整った顔立ち。
これだけの要素が揃っている彼女を苦手に思うのは、彼女が考案するスイーツにあった。
それがどんな物かは……、今は思い出したくない。
アマネ
「私の料理……お嫌いですか?」
気がつけば、俺は壁際まで追い詰められていた。
そんな潤んだ瞳で見られたら、嫌いなどと言えるわけがない。
男
「そ、そんな事ないですよ!全然……」
アマネ
「ほんとですか?よかったぁ……。では、部室で待っていますから」
長い髪をなびかせて向き直ると、甘い残り香を残して、足早に歩き去ってしまった。
俺は彼女の丁重なんか強引なのかわからないあのテンションが、苦手だった。
独特の雰囲気を持つ彼女は、何処か近寄りがたい雰囲気さえある。
ふと周りに目をやると、痴話喧嘩か何かと間違えて見物していたのか、数人の学生がこちらを見ていた。
俺は少し気恥ずかしさを感じながら、彼らの間を抜けて、その場から離れた。
男
「……しっかし……困った」
俺は、どう見ても凶器にしか見えない、愛用の大きなフライ返しを片手に怒るアマネ部長を思い出す。
部活を無断でサボると、彼女は非常に怖い。
215 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:52:11.27 ID:jZAKSMSO
サナミ派ですが何か?
216 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 01:53:26.84 ID:S4zU66DO
>>213
何その夢のある話
あんま詳しくないけど考えたらこういう形式の話って本になったことないよな?
SSってまだ未開拓の市場な気もする
217 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/09(火) 02:06:53.12 ID:8HI31Cs0
>>216
確かに市場開拓的な意味では完全に手つかずだから成功すりゃシェア取れるかもしれんが
何分紙媒体はもう終わりに近づいてる
採算がつかない未開拓の分野に投資をするなら今ある程度見込みがついてるのに投資したほうが良いと考えるのが普通の企業
まぁ夢のまた夢だよ
電車男でもあるまいしww
でも面白かったら左遷覚悟で出すさ
完全にスレ汚しすまん、寝るノシ
>>1
お疲れ
218 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 02:41:19.09 ID:XVqih9oo
俺はさんざん迷った後、足の向く先を決めた。
>>628
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 08:10:33.76 ID:eMeOURIw0
無視することにした。
男
「……アマネ部長、ごめん!」
俺は心苦しく感じながらも、彼女の誘いを聞かなかったことにした。
後が怖い上に、訴えるような瞳を思い返すと、申し訳ないとは思うが、
彼女の新作スイーツを食べさせられるのも、それはそれで後が怖い。
背に腹は変えられないと言うが、何より今はこの空腹を満たす方が先決だ。
心の中でもう一度謝ってから、俺は歩き出した。
―――学食
相変わらず昼の食堂は大賑わいだ。
俺はお気に入りの窓際の席に向かうと、上着を放り投げるた。
この混雑具合でこの席が開いているとは、今日唯一の幸運に思える。
広いとはいえ、席取りをしないと料理を持ったまま右往左往する事も多い。
席の確保を済ますと、俺は食券機の列に並びながら悩んだ。
男
「……今日は何を食おうかな」
>>672
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
672 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 16:33:59.00 ID:0y5G+Nqj0
トミーの弁当
こうして列に並んでいると、昨日の豪快にすっ転んでいたトミーを思い出した。
今となれば笑い話として思い出せる。込みあがってくる笑いを俺は必死で噛み殺した。
様々な食べ物が浮かんでは消えていくイメージに、トミーが現れた事で、俺の脳裏に一筋の光が走った。
男
「そうだ……いつも食われてばっかりなら……」
彼女には何度俺の好物を誘拐されたかわからない。
そのお返しに弁当の一個くらい横取りしても、お釣りがくるくらいだ。
俺の閃きとは、トミーの弁当を強奪する事だった。
219 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 02:42:08.02 ID:XVqih9oo
男
「……あー……教室……」
しかし、この強奪計画を実行には大きな問題があった。
そう、実行するにはまた長い道のりを歩いて教室に戻らなければならないのだ。
立ち込める美味そうな昼の香りで、俺の空腹感はもはや限界近くになっている。
だが、ここで諦めては男がすたる。
自分でもよく判らない所で”男”を出してきたものだが、
今日の俺は朝のトレーニングのおかげか、やる気に満ちている。
そうとなれば、次に問題になるのは時間だ。
早く行かなければあの小動物に弁当を全て食べられてしまう。
俺は足早に自分の上着のある席へと走った。
ヤリダ
「ん?よぉジャリタレ。なんだこれお前のか?」
男
「……ヤリダ先生」
席に戻ると、俺の上着をスーツの上に無理やり着込んでいるヤリダ先生が居た。
男
「……何やってんですか。それからジャリタレはやめてくださいよ」
ヤリダ
「あー……これいいなぁ。俺も買おうかな」
俺の声が聞こえていないのか、上着のタグや手触りを確認しながら呟いている。
彼の場合殆どが聞こえないフリをしているだけなのだが。
スーツさえ着てなければ、どうみてもただの学生にしかみえない。
ヤリダ
「いいじゃん、”ジャニタレ”みたいでよ。ひゅーこのイケメン!」
ひとしきり俺の上着を値踏みした後、つっこみ様のない冷やかしの声を上げる。
時間がある時ならば、一緒になって馬鹿な話に興じていたかもしれないが、今は違う。
男
「……すいません遊んであげられないんです。俺、急いでるんで」
俺は大きい子供に構っている暇など、数分たりとも無かった。
ヤリダ
「なんだよ最近つれねーなー」
ふくれた顔で上着を投げ返された。
俺はこっそり奮発した上着に汚れがついていないかを確認する。
220 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/09(火) 03:04:53.15 ID:ij.urO.0
しえn
221 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 03:09:39.16 ID:S4zU66DO
たまに支援してる人いるけど落ちないから大丈夫だぞー
そんなこと書くなら
「書籍化おめでとうアマネちゃんちゅっちゅ」
と書き込もうね
222 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 03:16:08.89 ID:N7n07J2o
書籍化するにはいろいろ足りないと思う
トミーちゅっちゅ
223 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 03:20:39.22 ID:H5N.Zkoo
落ちないっていうのは想像以上にありがたいな・・・。
俺は明日から2日間でかけるんだ。
サナミちゃんちゅっちゅww
224 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 06:09:55.53 ID:dziBpLko
なんかトミー派多いな・・・
サナミちゃんちゅっちゅだろjk
225 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 06:24:36.77 ID:S4zU66DO
ヒロインが出るシーンになるとその子の支持派が増えるのは、
キャラがしっかり立っているということに他ならない
つまりアマネちゃんちゅっちゅ
今ふと文字数カウントしたら1レス毎に700前後だった。
226 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 07:45:55.37 ID:/VdTmFM0
僕はサナミちゃんとちゅっちゅし続けます!
ちゅっちゅちゅっちゅ
227 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:20:01.14 ID:XVqih9oo
ヤリダ
「あ、お前そういえばさっき探されてたぞ。ほらあの、ちょっとこえー子……アカだかアマだか」
俺は背中に冷たいものが走るのを感じた。
今日はやはり、ついていない。
興味なさそうに話すヤリダ先生は、胸ポケットから取り出したジッポライターで遊んでいる。
男
「あ……アマネ部長ですか……」
ヤリダ
「それそれ。えれー怒ってたぞー。なんだ、痴情のもつれか?やるねェーこのー!」
そう言ってまたいつものように背中を叩いてくる。
男
「痛い!痛いですって!違いますよもう!じゃあ行きますから」
ヤリダ
「つまんねーなー。女の相談なら俺にしろよー」
大きな声で叫ぶ彼に、周囲の女子学生が冷めた視線を送っている。
こんな事ばかり言っているから、ヤリダなんて呼ばれるのだ。
男
「あ、食堂は禁煙ですよ」
ヤリダ
「わーってるよ、うっせーなー」
椅子にもたれたままにやにやと笑うヤリダ先生に背を向けて、
俺は教室に向けて最後の力を振り絞って走った。
どうにかアマネ部長に捕まることなくたどり着ける事を祈りながら。
走れば走るほどに見る見る俺の体力はなくなっていく。
容赦なく進む時計の針に、俺は焦っていた。
今は無駄としか思えない広い校舎を恨む。
そして、何度目かの曲がり角を曲がった後、
俺は難しい選択に迫られた。
男
「……右か左か…」
左右に分かれる廊下の前で、俺は立ち止まる。
右に行けば回り道にはなるが部室の前を通らずに済む。
アマネ部長に捕まらずに済むかもしれない。
左に行けば部室の前を通るがかなりのショートカットになり、
俺の弁当生存率が飛躍的にアップする。
俺はさながら最後の決断を迫られた爆弾処理班のような形相で、迷った。
228 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:21:13.54 ID:XVqih9oo
男
「……どっちだ…!」
>>696
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
696 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 17:34:01.73 ID:/svoSjH40
とりあえず部室に入る
男
「う……」
真剣な空気をぶち壊すように、腹が鳴る。
全速力で走ったせいか、眩暈までもしてきた。
これはもしかすると、教室にたどり着く前に力尽きてしまうかもしれない。
不安な想像が広がっていく。
そんな中、空腹と酸欠で疲弊した俺の脳が導き出した結論は……
男
「……部室……部室に何かあるかもしれない……」
部室に眠っているであろう食料にありつく事だった。
俺はふらつく体に鞭を打って、左のルートを選んだ。
男
「腹……減った……」
そういえばさっきから猛烈に唐翌揚げとラーメンが浮かんでは消える。
俺の脳よ、余計に腹が減るのだから、そんな事を考えさせないでくれと願う。
やっとの思いで部室の並んだ廊下にたどり着くと、俺は最後の力を振り絞り部室の扉にしがみ付いた。
―――ガチャ…
男
「着いた……!」
もたれかかるようにして部室の扉を開くと、バニラやチョコレート、果実の甘い香りに満ちていた。
その香りに俺の腹は大きな音を立て続け、食べ物を要求する。
早く、早く食べ物を探さなければ!
俺は一直線に冷蔵庫に向かうと、一気に扉を開いた。
ひんやりした冷気が顔に触れて、朦朧とした頭が少しすっきりする。
男
「……あった!!」
淡い色の光の中に、俺は宝物を発見した。
男
「ケーキ……!」
229 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:22:03.59 ID:XVqih9oo
俺は可愛らしい皿に盛られたお宝を手に入れた。
喜びの余り皿を持つ手が震える。
部員の誰かが作って置いておいたのだろう。
何も言わずに食べるのは気が引けるが、こっちは命がかかっている。許してくれるはずだ。
花柄のクロスがひかれたテーブルにケーキを置くと、俺はフォークを装備した。
少し赤いクリームは苺味だろうか。盛りだくさんの果物達が、俺を呼んでいる。
男
「いただきます……!」
―――パクッ……
俺はもはや味わう余裕すらなかった。
一口、二口、三口と一気にケーキをかきこんでいく。
美味い……!かどうかは正直わからないが、
大皿に盛られたケーキがみるみるうちに無くなっていく。
最後の一口を放り込むと、俺の体力はほぼ満タンまで回復した。
指先で口の横についた赤いクリームをふき取り、舐める。
男
はぁ……ごちそうさまでした……」
満腹になったからか、身体もどこかぽかぽかと温まってくるのを感じる。
やはり、疲れている時に甘い物は体力回復に抜群の効果を……。
そこまで考えた所で、俺はある事に気がついた。
男
「甘い物……あま……あまかったか?これ……」
そう、どうにもこのケーキ、あれだけ食べた後だと言うのに口に甘さが残っていない。
それどころか、口の中には何か生臭いような臭いが残っている。
男
「……まさか……!」
俺は背中から滲み出る冷や汗を抑えられない。
綺麗になった皿を裏返すと、そこにはなんと……
アマネ
「……私のスイーツ、食べましたね」
男
「ひっ……!」
達筆に書かれたアマネ部長の名前を見つけるのと、彼女が部室に現れたのは同時だった。
俺は生臭い生唾を飲み込んだ。
230 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:22:31.82 ID:XVqih9oo
低い声に顔を上げると、眉間に皺を寄せたアマネ部長が立っていた。
こんな顔を見るのは、部活中に買ってきたほうが美味いと俺が発言した時以来だった。
俺が食べた甘くないケーキは、相当に重要な物だったらしい。
男
「ア、アマネ部長……いや、これには訳が……」
慌てて立ち上がると、勢いで椅子が後ろに倒れて大きな音を立てた。
直す余裕もないまま、俺は後ずさりで距離を取り、
引きつった笑いを浮かべながら、冷や汗を拭う。
その間も、無言でじりじりと近づいてくる部長。
俺はさながら、ホラー映画の主人公にでもなった気分だ。
距離を詰める彼女が、愛用のフライ返しを握るのが見えた。
このまま詰められれば、恐らく俺の命は無い。
緊張と恐怖で俺の心拍数は上昇し続ける。
彼女が迫ってくる恐怖よりも、俺は彼女が創ったスイーツを食べたという事実の方が恐ろしかった。
俺が彼女を苦手に思う理由。
それは、彼女の創るスイーツが、独創性に”富みすぎている”という事だった。
アマネ
「…………」
無言のまま近づいてくるアマネ部長の表情は、
揺れる髪に隠れて、窺い知れない。
テーブルを盾に、彼女との対角線をキープしたまま、俺は開いたままの部室の扉前までたどり着いた。
助かる……!背中を向けるのは恐ろしかったが、俺は踵を返して扉へと走った。
しかし……
―――ツルッ…
男
「うわっ……!」
俺はギャグ漫画よろしく、誰かが床に捨てていたバナナの皮を踏んで、吹っ飛んだ。
流れていく景色が、不思議とスローモーションに見えた。
男
「……いてて……」
後頭部がズキズキと痛い。
俺は頭を打ったようで、少しの間軽い脳震盪を起こしていたようだった。
背中に感じる冷たい感触で、仰向けに倒れている事を知る。
男
「ん……?」
立ち上がろうとすると、身体が金縛りにあったかのように重い。
まだ朦朧とする意識の中、ぼやけた眼のピントを凝らすと、信じられない光景が広がっていた。
231 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:23:37.64 ID:XVqih9oo
男
「う、うわあ!!」
仰向けになった俺の身体の上に、アマネ部長が跨っている。
俺の意識は一気に回復した。
アマネ
「……大丈夫ですか?」
男
「あっ……あの……」
俺は意味不明な光景と、その重みで身体が硬直してしまう。
彼女の表情は逆光になってよくわからない。
すると俺のおでこに、少し冷たい手が触れた。
アマネ
「やっぱり、少し体温が上がっていますね。よかったぁ……成功です」
髪を掻き揚げた部長の顔は、今までに見た事がないほどの妖艶な表情に見えた。
その表情に心臓がどくりと跳ねる。
男
「え……あ、え?」
全く状況が飲み込めない。見れば見るほど混乱が増していく。
何故だか判らないが、火照るような身体が熱さと、
身体に感じる彼女の重みに、場違いな興奮さえ覚える。
アマネ
「味は……?味はどうでしたか?ねえ、味は?」
俺に顔を近づけて問い詰める彼女からは、クリームのような甘い香りがした。
昼休みの部室前には、いつも全く人気が無い。
いかがわしいゲームのような展開に、俺は妄想と、ある部分が膨らんでしまいそうになる。
男
「ちょ、アマネ部長!お、降りて!」
とにかく、このままではまずい。
俺がアマネ部長の身体を退けようと両腕で押さえたその時、
曲がり角から一つ、小さな人影が現れた。
男
「ト、トミー……」
その人影は、コンビニの袋を抱えたトミーだった。
232 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:24:40.60 ID:XVqih9oo
どう見ても淫らな姿勢で身体を密着させる俺とアマネ部長を見て、
彼女は驚きではなく、とても悲しげな顔をした。
俺は体中から冷たい汗が流れるのを感じる。
トミー
「あっれえー……。ぼく、邪魔……だったね」
消え入りそうな声で俯いて、小さな足音を立て走り去っていく。
男
「ちょ……、トミー!」
アマネ
「きゃっ……!」
俺は少し乱暴に部長を身体から下ろすと、立ち上がって、後を追う。
しかし、曲がり角の先に、もうトミーの姿はなかった。
何もやましい事をしていたわけではないが、胸が苦しい。
やはり今日は、ついていない。
アマネ
「あれ?私……」
立ち尽くす俺の後ろで、アマネ部長の声がする。
押しのけられへたり込んだ彼女は呆然としていた。
男
「……大丈夫?」
アマネ
「……ごめんなさい……少し、暴走してしまいました」
彼女はスイーツの事となると、熱くなりすぎるというか、
人格が豹変してしまう事がある。
彼女が少し変わり者だと言われているのは、この性格に起因している。
アマネ
「私……、何かしてました?」
男
「……襲われかけたよ」
アマネ
「そ、そんな……どうしていつも……私……」
先ほどの様子とは打って変わって、顔を赤くしてみるみる小さくなっていく。
トミーの事ももちろん気にかかるが、今回の事は俺にも原因がある。
縮こまってへたり込んでいる彼女に、手を差し伸べた。
233 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 09:25:41.77 ID:XVqih9oo
男
「ほら、大丈夫?」
アマネ
「あっ……、はい……」
差し伸べた手を掴ませて、立ち上がらせる。
アマネ
「あ、ありがとう…ございます……」
俺は俯く彼女に、最も聞きたくはないけれど、聞いておかなくてはならない事を聞いた。
男
「……で、今回は何を入れたの」
それを聞いた途端にこちらに向き直る彼女は、一瞬で元のアマネ部長に戻った。
流石にスイーツ命なだけはある。
アマネ
「あぁ、あれですか。あれは疲労回復スタミナ増強スイーツで、マムシの血を大量に使いました」
男
「マムシ…………」
ぎゅうぎゅうに瓶詰めにされたマムシを想像して、全身が、下から上へとあわ立った。
どうすればそんな物が手に入るかは知りたくもないし、
スイーツとスタミナがどう考えれば結びつくのか全くわからないが、
この妙な身体の火照りの原因は、これではっきりした。
俺の体力もばっちり回復しているから、部長の試みは成功したという事にはなるだろう。
男
「どうしてそんなもの……」
アマネ
「そ、それはその……試作……です」
何故か恥ずかしそうに話す彼女。
あれの完成品がどんなものかは想像もしたくなかった。
なにはともあれ、大きな被害を出しながらも、空腹を満たすという当初の目的は、どうにか達成する事が出来た。
本当に、色んな被害を出しながらではあるが。
男
「じゃあ部長、俺教室に戻るよ」
アマネ
「あら、そうですか?じゃあ、私はもう少し部室に居ますね。片付けもありますし……」
234 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 10:08:14.64 ID:XVqih9oo
普通にしていれば、どこからどう見ても淑やかなで美しい女の子だ。
俺は緩やかに微笑む彼女の、妖艶な表情を思い出して、少し気恥ずかしくなった。
アマネ
「次の活動には必ず来てくださいね。また……、味見をしてもらいたいですから」
男
「あはは……、味見ね。わかった」
味見ではなく、毒見といった方が正しいのではないのか。
喉元まででかかった言葉をぐっと堪えて、俺はまだ少し痛む頭を擦りながら、教室へと足を向けた。
先ほどトミーが現れ、走り去った曲がり角を曲がる。
あの時の彼女の寂しげな顔が、蘇る。
誤解を受けた事がこんなにも胸を締め付けるのは、たぶん俺が、
彼女を完全な異性として見始めたからだろう。
まだ本気かどうかは判らないが、彼女は俺の事を”好き”だと言ってくれた。
その事実が、更に俺を迷わせた。
―――教室
教室へ着く頃には、もう授業が始まる直前で、皆席についていた。
心なしか、皆俺の事を見ているような気もしたが、気にせず席につく。
座り際に、後ろの方に座ったトミーと一瞬だけ眼が合った。
その時間はごく短いものだったが、すぐにそっぽを向く彼女の眼には、
いつもとは明らかに違う、寂しげな色が見えた。
男
「ん?なんだ……」
机の横に、見覚えのあるコンビニの袋が提げられている事に気づく。
俺はすぐにトミーが抱えていたものだと判った。
中身を開けてみれば、俺の好物の菓子パンが数個と、苺牛乳。
もしかして、これを届けようと俺を探していたのだろうか。
俯いた彼女を思い返して、更に胸が苦しくなる。
袋の中には、それ以外に一枚の薄いピンク色の紙が入っていた。
『ふしんしゃはきらいだ!』
たった三文字の言葉が、深く突き刺さる。
殴り書きのように書かれた文字の上には、ぐしゃぐしゃと黒く塗りつぶした跡があった。
擦れてほとんどが読めなかったが、かろうじてうっすらと、”昼”と、”礼”という言葉だけが見えた。
俺は、彼女の方に振り返る事が出来なかった。
235 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 10:16:38.50 ID:XVqih9oo
全然終わらない……。こんなに長いの書いてた自分と間違いだらけの自分を恨む……。
>>213
おこがましすぎて涙でそうです……。ていうか出た
有り得ない夢物語でもそんな事言ってもらえるだけで頑張れます。
236 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 10:48:08.92 ID:XVqih9oo
―――放課後
結局その後、トミーに話しかける事は出来なかった。
何度か話しかけようと試みたのだが、避けるように立ち去ってしまった。
せっかく俺のために買ってきてくれたものなのに、休み時間に食べたパンに、全く味はついていなかった。
誤解は解けぬまま、俺は渋々帰り支度を済ます。
教室にトミーの姿はない。
空になった彼女の席を見て、深くため息を吐いた。
ふと窓を見れば、鮮やかなオレンジ色薄い藍色が混じり合う空。
昨日の帰り道、校門で待ってくれていたサナミを思い出す。
男
「……あいつ、大丈夫かな……」
健康には人一倍気を使うサナミが風邪を引くなんて、随分珍しい事だ。
今流行りのきついインフルエンザではなければいいのだが。
男
「……かえろう」
まだ教室に残る数人の友人に挨拶をしてから、俺は教室を出た。
伸びる影と、オレンジ色の廊下は、何故か心が揺れる。
今日は昨日にも増して疲れが濃い。
このまままっすぐに家に帰ろうか。
>>783
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
783 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 19:35:57.21 ID:BCwbNJDI0
家に帰ってアナルオナニー
しかし、コート無しには外も歩けない気温だというのに、
俺の身体はぽかぽかと暖かい。熱いくらいだ。
アマネ部長のマムシケーキのせいに違いなかった。
全身の血流が激しくて、どうもむらむらする。
そうだ、今日は家に帰ってゆっくり久しぶりの自慰にでもふけろう。
友人から聞いた尻のある部分を使った自慰がとても”やばい”らしい。
少し気は引けるが、そういうアブノーマルな事も大人への階段ではないのか。
そんな事を考えていると、後ろから大きな声がした。
ヤリダ
「おーいジャリタレ。かえんのか?」
呼び止てきた声の主は、トミーでもアマネ部長でもなく、ヤリダ先生だった。
237 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 11:12:16.22 ID:XVqih9oo
男
「帰りますよ、放課後ですから」
珍しく大量の資料や袋を抱えた彼は、少しだけ教師に見えなくも無い。
ヤリダ
「んだよ手伝えよー。帰宅部がー」
男
「だから料理部ですって。じゃ、失礼します」
自慰、尻と考えていた矢先にヤリダ先生の顔を見ると、なんだか高まっていた性欲は一気に萎えてしまった。
魅力的な自慰はまた今度にしよう。
悪態をつくヤリダ先生を尻目に、俺は靴を履き替えたが、まっすぐ帰ろうかどうか、迷っていた。
>>795
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
795 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/25(木) 19:50:36.62 ID:/svoSjH40
サナミのお見舞いをする
いや……。
やっぱり、サナミのお見舞いに行こう。
俺が風邪で寝込んでいる時、サナミはよくお見舞いに来てくれた。
といっても、母さんと話し込んでいるばかりで、俺は放置がほとんどだったが。
見舞いといえば、何か持って行ったほうがいいだろう。
男
「あ、ヤリダ先生!」
ヤリダ
「ん?なんだよ、手伝う気になったか?」
こぼれそうなプリントと格闘している先生に、俺は聞いてみる事にした。
男
「あの、女の子のお見舞いに行く時って何持ってたらいいですかね」
―――バサバサバサッ!
ヤリダ
「あぁー!!お前急に話し掛けんなよーあーもう……ほら手伝え!」
結局ふらついたプリントの山はもろくも崩れ去った。
急にではなかったはずだが、俺のせいも少しだけはある気がして、拾うのを手伝う。
238 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 11:32:25.81 ID:U5O2ysIo
>>1
働けよ
239 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 11:35:51.79 ID:Yj2Pgy.o
>>238
大学生
高校3年生
ニート
好きなの選べ
240 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 12:05:17.79 ID:r4GG0ADO
ゆとりうざいゆとりうざい言ってたからニートかな
241 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 12:59:00.38 ID:fj8lU320
>>1
がなんだろうとどうでもいいわ
それよりサナミカワイイよサナミ
242 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 12:59:35.78 ID:J1vsTlw0
ついに俺の嫁きたか
243 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 16:41:28.98 ID:xit1PgAO
>>242
ヤリダ派なのか?
確かにいい先生だとは思うが…
244 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 17:03:46.46 ID:J1vsTlw0
>>243
昨日もそう言われたwwwwww
245 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 19:01:27.90 ID:XVqih9oo
ヤリダ
「で、見舞いってのは誰のだよ」
プリントを気だるそうにかき集めながら、 意外にもヤリダ先生は相談に乗ってくれるようだった。
男
「……幼馴染です。隣に住んでる」
ヤリダ
「幼馴染……ねえ」
何処か遠い眼で呟く。
そんな顔のヤリダ先生は、あまり見たことがなかった。
男
「はい……それで、あの……」
ヤリダ
「………で、お前はどう思ってんだよ」
男
「えっ……どうって……」
プリントを集める手が止まる。
黙々と拾いながら、いつもよりも小さな声の調子で、彼は続ける。
ヤリダ
「そいつの事だよ。大事なんだろ」
俺は、彼をただのお調子者だと思う部分もあったが、
彼に人を見抜く力のような物があることを、本能的にはわかっていた。
男
「サナミは……」
好きとか、嫌いとか、そういう事ではなく、
俺はサナミの事は大切に思っている事だけは確かだ。
男
「……大事…です」
ヤリダ
「青春だねー…。じゃ、何もいらねーよ」
男
「何も?」
ヤリダ
「お前が大事に思ってんなら、それだけでいいってことだよ。案外想いなんてのは、伝わるもんだぜ」
246 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 20:53:36.85 ID:dziBpLko
そろそろサナミくるっ!
なかなかサナミの絵が貼られないのはどうしてなの
247 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:27:59.73 ID:XVqih9oo
男
「先生……」
冗談でも、諭すようにでもなく言う。
ヤリダ
「それが、いい想いでも、そうじゃなくても、な」
オレンジ色に染まった横顔は、何処か寂しげにも見えた。
ヤリダ
「うーし、終わったー」
集め終えたプリントの束を拾い上げて、彼はまた教師に戻った。
ヤリダ
「んじゃまた明日な〜。気をつけて帰れよー」
へらへらと笑いながら、歩き去っていく後姿。
俺はその背中に軽く一礼すると、一呼吸して、少し重い扉を開いた。
居るわけがないのに、校門を抜ける時はサナミの声が聞こえてきそうだった。
吹きつける風に、まだ春の香りは感じられない。
俺は自分の影を追うように歩いた。
―――何もいらねーよ
あのとぼけた先生の言葉が、妙に耳に残っていた。
俺がサナミに想いを告げてから、まだ一日しか経っていないなんて信じられない。
気の遠くなるほどの長い時間、俺は悩み続けているように感じる。
男
「何もいらない……ったってなぁ……」
たぶん、彼の言う何もいらないというのは、”気にするな”という事であって、
やはりお見舞いというからには、何か持って行った方がいい気もしていた。
もうすっかり日も暮れて、街は藍色に染まっている。
幸い、帰り道には商店街を通るから買うものには困らない。
果物、花、ケーキなんかもいいだろうか。
信号を待つ間、俺は悩みながら我先にと空に輝き始める星を見上げていた。
>>847
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
847 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/26(金) 00:01:58.63 ID:isrdshQW0
りんご
248 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:28:34.93 ID:XVqih9oo
学校から数分ほど歩いた場所に、商店街はある。
夕飯の買い出しだろう、商店街は随分賑やかだった。
ここには今でもお使いがてら、よく買い物に来る。
最近ではシャッター通りなんて商店街がそこかしこにあるらしいが、
この様子を見ていると、そんな心配は無用のようだ。
男
「……さて」
俺はきょろきょろと辺りを見回しながら、商店街を歩く。
八百屋に並ぶ赤い果実を眼にして、彼女の好物がリンゴだった事を思い出した。
お見舞いにリンゴとは何ともベタで無難な選択にも思えたが、好物なのだから構わないだろう。
俺は通りの中でも一際装飾がファンシーな果物屋に入る事にした。
―――カラン…
店員
「いらっしゃいませ〜」
この店には初めて入るが、新しく出来た店舗なのか、随分綺麗だった。
店内には甘ったるい果実の香りが満ちている。
並べられている果物も、リンゴやバナナ等の一般的なものから、
ドリアンやスターフルーツなんて比較的珍し物も置いてある。
果物に関していまいち知識のない俺は、暫く色々なリンゴを手にとってみたが、
やはり諦めて店員に声をかけた。
男
「あの、すいません。この中だとどれが一番おいしいですか?」
俺の声に大学生くらいと思しき、物腰の柔らかそうな店員が振り向いた。
店員
「んー…うちのはどれも味自慢ですよ?」
乱れた果物の列を直しながら、明るい笑顔だ。
こういうフレンドリーな接客が出来る店は、気分がいい。
男
「お見舞いに持って行きたいんで、お勧めのやつをいくつか包んでもらえますか」
店員
「喜んで!なら、栄養があってあまーいやつ、選びますね」
男
「どうも」
手際良くリンゴの香りやつやなんかを見ながら、丁寧な手つきで籠に入れられていく。
それを眺めながら、俺はサナミの喜ぶ顔を思い浮かべた。
249 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:29:39.99 ID:XVqih9oo
店員
「お見舞いでしたら、ラッピングも出来ますけど、どうしますか?」
リンゴの選別を終えると、彼女はカウンターの下から三つの籠を取り出した。
小さくて可愛らしいもの、大きさは普通だが、より豪華なもの、とても大きくて、立派なもの。
リンゴの量も変わるので、値段はもちろん段々高くなるわけだが……。
>>858
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
858 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/26(金) 00:36:47.87 ID:KT9weUU00
とても大きくて、立派なもの…ゴクリ
よし、俺も男だ。こういう時に頑張らなければ、どこで頑張るというのだ。
俺は少し胸を張りながら、一番大きな籠を指差した。
料金が少し心配ではあったが、ただの籠にリンゴだ、高くても3000円程度だろう。
男
「これにしてください」
店員
「これですか?リンゴだけ詰めるとなると……全部で9000円くらいになります」
男
「えっ……」
予想外の値段に、俺は情け無い声を出してしまった。高い。
俺の財布には今一万円程度しか入っていない。
店員
「どうされます?小さな箱ですとその半分より下ぐらいにはなりますけど……」
明らかに狼狽している俺を心配したのか、彼女は小さな籠を指差して言う。
可愛らしい装飾と値段に少し心が揺らいだが、これも大切な幼馴染のためだと思い、
俺はあくまでも平静に、大きな籠で包んでもらうことにした。
―――カラン…
店員
「ありがとうございましたー!」
両腕にずしりとかかるリンゴの重み。
荘厳な飾りがつけられた籠には甘い香りを放つ果実がひしめき合っている。
幾度となく小さな子供に指差され、俺は顔をリンゴのように赤くしながら急いで帰った。
250 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:30:05.67 ID:XVqih9oo
自宅までの最後の坂を死に物狂いで上がりきる頃には、
俺の両腕の疲労はピークに達していた。
男
「つ……疲れた……!」
やっとの思いで自宅の玄関までたどり着くと、リンゴの山を一旦置いて、へたり込んだ。
疲労で震える手を軽くマッサージしながら、サナミの部屋のベランダを見上げる。
明るい光が漏れている部屋。サナミは居るようだ。
ここまできて”居ませんでした”ではきっと体力的にも、精神的にも、金銭的にも立ち直れない。
震える腕を騙しながら、彼女の家のインターホンを押した。
―――ピンポーン…
軽快な音の後、すぐにサナミの母の声が聞こえてきた。
サナミ母
「はーい」
特徴のあるおっとりとした話し方を、久しぶりに聞いた気がする。
男
「あ、おばさん、俺です。サナミのお見舞いに来ました」
サナミ母
「あらー、悪いわねぇ、今あけるからね」
最近のインターホンには一目でそれと判るカメラが付いているから、見られていると思うと少し気恥ずかしい。
俺はすぐに現れたサナミの母に招かれて、久しぶりに幼馴染の家へ入った。
ドアを抜けると、当然の事だがサナミの家の香りがした。
家というのは、その家その家で必ず香りが違う。
俺は懐かしい香りを、いっぱいに吸い込んだ。
サナミ母
「わざわざごめんねぇ」
口元に手を当てて話すサナミの母は、目元がとてもサナミに似ている。
男
「いえ、あの、ちょっとドア開けといてもらえますか?」
首を傾げるサナミの母にドアを頼んで、俺は置いておいた巨大な籠を持ってきた。
男
「こ……、これ、お見舞いです……」
それを見て眼を白黒させる。当然の反応だ。
踵を引っ掛けて靴を脱ぐと、そのまま階段へ向かう。
251 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:30:38.12 ID:XVqih9oo
サナミ母
「ね、ねえ本当に大丈夫?置いていったら?」
男
「いえ、だいじょ……うぶ…です!せっかくです……から!」
ハラハラとした面持ちで俺を見るサナミの母に、軽く頭を下げながら、ゆっくりと階段を上る。
ここまで来たのなら、このラッピングを解く前にサナミにも見せてやりたい。
両足と両腕に渾身の力を籠めて上った。踏み外せばきっとリンゴの雪崩が起きる。
注意深い足取りで上り切り、やっとの思いでサナミの部屋の前までたどり着いた。
男
「ついた・…」
『Sanami's Room』
見覚えのあるネームプレートは、小学生の頃からずっと変わらないままだ。
俺は荒くなった呼吸を整えようとするが、妙な緊張で速い鼓動は一向に収まらない。
何度唾液を飲み込んでも、喉が渇く。
震えながらも片足で上手く籠を抑えながら、空いた手で二度、ノックをした。
―――コン、コン
サナミ
『はーい。どーぞー』
ドアの向こうから聞こえる声は、少し鼻声だ。
冷たい感触のドアノブに触れると、いよいよ俺の心臓は大きく高鳴った。
ゆっくりと開くドアの隙間から、暖かい空気と、 言い表せないようなくすぐったい香りが溢れてくる。
久しぶりに入る部屋と、その香りに、俺は猛烈な照れくささを感じる。
サナミ
「うわ……」
驚きの声が聞こえる。反応は上々だ。
行儀が悪いが、後ろ足でドアを閉めると、やっとリンゴ山を床に降ろす事が出来た。
男
「……よっと……。ほい、お見舞い」
パジャマ姿でベッドに横になるサナミに声をかける。
初めて見る姿ではないのに、少し火照った顔を見て心臓が大きく跳ねた。
サナミ
「……………」
大量のリンゴを見つめたまま、彼女は何も言わない。
きっとこの凄さに驚き、声も出ないのだろう。
252 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:31:09.14 ID:XVqih9oo
男
「すげーだろ」
俺は少し得意げに言った。
しかし、思った以上に彼女の反応は薄い。
サナミ
「ねえ……、リンゴ農園でも始めたの?」
咳き込みながら起き上がるサナミの目は、 今朝玄関の前で俺と出会った時と、ほぼ同じに見えた。
どうしようもないという呆れ顔。
おかしい。俺の予想ではもっと驚いて、俺の懐の深さに感動するはずだったのに。
男
「い、いや……お前リンゴ好きだろ?だから……」
必死の弁解を口にする。
サナミ
「それでこんなに?」
男
「う、うん……」
しまった。どうやら、完全に外してしまったようだ。
こんな反応をされるなら、初めから一番小さな籠にしておけばよかったと後悔した。
ピンク色の絨毯をいじりながら、うな垂れる。
こんなに手痛い出費をしてまで、俺は彼女に笑顔一つ作れないのか。
―――ポフッ…
男
「いてっ……!」
意気消沈している俺の頭に、何かが当たった。
足元に落ちた何かを拾い上げると、縦長で目つきの悪い、
猫だかなんだかわからないぬいぐるみだった。
飛んできた方向、サナミのベッドを見て、俺の胸は痛いほど脈打った。
サナミ
「……ほんと…ばかなんだから…!」
そこには、先ほどの表情とは一変して、前髪を触りながら、顔を真っ赤にしているサナミが居た。
少しはだけたパジャマから覘く素肌が、妙に色っぽい。
……可愛い。いや、綺麗だ。
俺は今まで、こんな女の子と一緒に育ってきたのか。
改めて感じるサナミの姿に、俺は自分でも赤くなっていくのがわかる。
恥ずかしいのか、サナミはまた俺に背を向けてベッドにもぐりこんでしまった。
253 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:31:52.95 ID:XVqih9oo
どうやら彼女は、俺のプレゼントを喜んでくれたようだった。
俺はサナミの背中に声をかける。
男
「リンゴ……食わないの?」
サナミ
「……食べるよ。食べたい」
振り向かずに答える。
男
「じゃあ、おばさんに剥いてもらってくるな」
俺がリンゴの籠に手を伸ばそうとすると、急にサナミが振り返った。
サナミ
「あ、待って!……写真、取りたいから……ラッピング崩さないで欲しいな…」
顔の半分近くまで布団に潜ったまま、サナミは少し恥ずかしそうに言った。
彼女が俺が買ってきたお見舞いに対して、そこまで興味を示してくれた事が嬉しい。
男
「わかったわかった……」
薄い包み紙の間を縫うようにして、赤い果実を数個取り出した。
男
「んじゃ行ってきます」
こくこくと小さく頷くサナミ。
俺はその姿に小さな笑いを漏らして、部屋を出た。
勝手の知った幼馴染の家なのに、何故こんなにも胸が苦しいのだろうか。
それはたぶん、あの本当に嬉しそうなサナミの顔を見たからだ。
男
「……はぁ」
数分後、俺はサナミの母に剥いてもらった大量のリンゴを持って、
再びサナミの部屋の前に立った。
気付かないうちについた傷は、見つけるまで痛みを感じない。
幼馴染への恋心は……それに似ている気がする。
―――コンコン
男
「入るぞー」
254 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 21:59:44.89 ID:XVqih9oo
サナミ
『あー待ってー!入っちゃだめー!』
扉の向こうからは焦るようなサナミの声が聞こえてきた。
耳を澄ませばバタバタという足音と、布が擦れるような音がする。
着替えでもしているのだろうか。
なににせよ、入るなと言われたからには、入ってはいけないのだろう。
しかし、実際の所、俺の中では天使と悪魔がせめぎ合っていた。
>>882
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
882 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/26(金) 02:15:49.91 ID:WCsW0jDf0
しかし、入るなと言われると入りたくなるのが人間というものである
”入るな”と言われれば、入りたくなるのが人間である。
俺の心の中では、もはや悪魔が天使を打ち負かしていた。
これはアマネ部長のマムシケーキのせいで、思考が乱れているんだ。
そんな言い訳を自分に言い聞かせながら、 俺は扉の向こうから聞こえる制止の声を、右から左へ受け流す事にした。
はだけたパジャマ姿のサナミが脳裏に浮かぶ。
怒られる事や、引かれる事に対する不安はあったが、
その時は聞こえなかったとでも言えばいい。
俺は右手の上で震えるリンゴ達に気をつけながら、 秘密の園への扉に手をかけた。
―――ガチャ…
サナミ
「あっ……!」
ドアを開こうとする音に気付いたサナミが、驚きの声をあげている。
俺は激しく鳴る心臓を抑える事も忘れて、一気に扉を開けた。
男
「リンゴもってきたぞー!!」
あらゆる事を想像しながら、部屋に入ると、そこには……。
男
「あれ……?」
想像していたようなものは、なにもなかった。
それどころか、さっきまでいたはずのサナミの姿さえない。
拍子抜けした俺はリンゴを机に置いて、そう広くない部屋の中を見渡した。
255 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:00:32.58 ID:XVqih9oo
男
「ん……?」
シンプルな白いカバーがかけられた布団が、動いている。
どうやらサナミは布団に潜り込んだようだった。
男
「お前……何やってんの?」
暫くの沈黙の後、サナミが鼻のあたりまで布団から出てきた。
サナミ
「……入るなって言ったのに」
男
「あ……悪い、聞えなかった」
用意しておいた言い訳を早速使う。もちろん、嘘だとバレているだろうが。
サナミは恨めしそうな顔でこちらを睨んだままだ。
やはり、これは怒らせてしまったかもしれない。
男
「悪かったって、ほら、リンゴ食おうぜ」
機嫌を直そうと、俺はリンゴを指差した。
サナミ
「……無理」
男
「なんで、寒いのか?」
サナミ
「………服」
布団に隠れたまま話すサナミの声は、怒っているようにも、
なんだか恥ずかしがっているようにも聞こえる。
男
「服……?」
睨みっぱなしのサナミの目が、ちらりと床に移動した。
その視線の先で、俺は彼女が何故布団に隠れているのかを全て理解した。
男
「……これ……」
256 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 22:00:38.62 ID:EykShrEo
ふおおおおお
257 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:02:45.20 ID:XVqih9oo
背筋に冷たいものが流れると同時に、俺の脈拍は急上昇した。
ピンクの絨毯の上に見つけたのは、シンプルなデザインのブラと、新しいパジャマの上着だった。
男
「あー……えっと……」
サナミ
「…………」
男
「…………」
フリーズ。完璧な静止。
俺は文字通り思考も動きも完全に止まってしまった。
次に何をすればいいか、全くわからない。
硬直した体に、どくどくと鼓動だけが響く。
サナミ
「……もー……だから入るなって言ったのに…」
サナミはため息交じりに言うと、頭まですっぽり布団を被ってしまった。
あの下には、恐らく上半身裸のサナミが居る。
そして、この下に落ちている下着は、間違いなくサナミのものだ。
俺はこのよくわからない状況に、力が抜けて座りこんだ。
変な興奮を起こさないように、なるべく下着を視界に入れないようにする。
―――スッ…
すると布団の中からサナミの白く細い腕が伸びてきた。
サナミ
『……あんまり見ないで、とって』
確かに、このまま布団の中で着替える事が今出来る最善の解決策だ。
男
「う、うん……」
俺は生唾を飲み込んで、恐る恐るサナミの下着達に手を伸ばす。
こんなにドキドキするのは、中学生の頃友達といかがわしい本を拾った時以来かもしれない。
想像以上に”うぶ”な自分に気付いて、なんだか恥ずかしい。
サナミ
『……へ、変な事しないでよ?』
男
「わ、わかってるよ!」
258 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:07:46.95 ID:XVqih9oo
サナミの声に返事を返したが、変な事とは、一体どんな事なのだろうか。
これを自らの鼻に押し付け、嗅いでみるとか、そういう事か。
しかしこれは、サナミが汗をかいたために着替えようと用意した新しい衣類であって、
嗅いだところで香るのはせいぜい柔軟剤の香りぐらいだろう。
サナミ
『…さ、寒いんだから早くとってよー!』
脱線した妄想にふけっていると、催促するサナミの声。
はっとして、俺は指先でブラとパジャマを掴むと、そっとサナミの手の上に置いた。
触れると同時に引っ掴んで、布団の中に引っ張り込まれる衣服。
その動きはなんだか食虫植物を連想させた。
―――ゴソゴソ…
男
「…………」
サナミが布団の中で着替えている間、 俺は恐らく人生の中でも三本の指に入るほどの妄想力が働いた。
狭い布団の中で、上半身裸のサナミが……。
浮かび続けるイメージを掻き消しながら、無駄な精力をつけてくれたアマネ部長を恨んだ。
待つ事数分、サナミが布団から赤い顔で現れた。
サナミ
「ぷはぁ……あっつい……」
額にほんのりかいた汗で、前髪が少し貼り付いている。
片手でその髪をざっと掻き上げると、立ちあがって俺の方へ向かってきた。
そして……
―――ゴンッ!
男
「いってええええ!!」
俺の脳天に強烈な拳骨が落ちた。
女の子の骨ばった手は、こういう時に十分破壊力があると思う。
サナミ
「ほんっ……とに!ばかなんだから、もう……」
腕組みをして俺を見下ろすサナミだが、可愛いパジャマのせいでいまいち迫力がない。
俺に暫くの説教をした後、彼女はため息をつきながら俺の隣に座った。
―――シャリシャリ…
リンゴを齧る音が部屋に響く。
259 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:18:40.35 ID:XVqih9oo
男
「熱は?」
サナミ
「ん、今は下がってるよ」
男
「病院は?」
サナミ
「行ったよ、昼間に。薬も飲んだし」
二人で並んでリンゴを食べながら、他愛もない話を交わす。
肩が触れる距離に座る事なんて、今まで何とも思わなかったはずが、
今では身体の触れている部分に、意識が集中してしまう。
意識しているのに気づかれないように、俺は普段と変わらないように振舞う。
男
「甘いなー、これ」
サナミ
「うん、甘い!でも、量多すぎるよ、ばーか」
男
「サナミならこれくらい食べるかなと思ってさ」
サナミ
「食べないよ!ばか!」
二人して笑いあう。何度も繰り返してきた光景。
いつもと同じように、笑う彼女。
俺も勤めていつもと変わらない調子で話す。
彼女が、それを望んでいるように思えたから。
サナミ
「……お腹いっぱい」
男
「……俺も。今なら汗がリンゴジュースの味しそうだ」
サナミ
「あはははは!あたしもそう思う」
学校の事なんかを話しながら、恐らく二人で5〜6個は食べた。
もちろん、その程度の消費ではリンゴ山を陥落させるにはあまりにも少なかったが。
260 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 22:22:52.19 ID:S4zU66DO
>>246
確かにそれは思う。俺も絵描けたら描きまくるのになぁ
>>1
はがまとめて投下する小技を使い出したなwwwwww
台詞増えててほんとにいい
261 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:23:45.58 ID:XVqih9oo
サナミ
「でもさぁ、いくらなんでもこんなに買うばかが何処に居るのよ」
男
「……」
ここに居る。俺は黙って手を上げた。
サナミ
「…………ぷっ……!」
それを見て笑いのツボに入ったのか、床に突っ伏してまで笑われた。
明るい笑い声に、つられて俺まで笑ってしまった。
ひとしきり二人で笑った後、パジャマの袖で涙を拭きながらサナミは起き上がった。
サナミ
「はぁー…もう、お腹痛いよ。半分くらい持って帰りなよ。食べきれないし」
確かに、こんな量なら消費するまえに駄目になってしまう。
男
「うん、そうする。あ、部活に持っていってもいいな」
何気なく言った一言に、サナミは一際の反応を示した。
サナミ
「あー!それもいいね。アマネちゃん喜びそー……」
自分で振っておいて、アマネ部長を聞いて、昼休みのアクシデントがフラッシュバックする。
あの事をサナミが知っているはずもないのだが、何故か俺は眼をそらしてしまった。
そして、その話を境に、俺達の会話は途絶えてしまった。
手持ち無沙汰に髪を触るサナミ。もう食べる気もないリンゴを齧る俺。
ここまでは、俺の頭でも十分予想出来る、言わば予定調和的な会話だった。
そして、意味ありげな沈黙が、果実の香りが満ちる部屋に訪れた。
男
「……」
サナミ
「……」
―――カチ、カチ、カチ…
アナログの古い壁掛け時計が、時を刻む音。
二人の呼吸と、その音だけが部屋にある。
肩から伝わるサナミの体温は、熱のせいか、すこし熱かった。
262 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:27:08.49 ID:XVqih9oo
ちょと休憩。相変わらず遅くてほんとに申し訳ない。
こんなんじゃリアルタイムになる頃にはすっかり忘れ去られてそうですね。
今vip覗いたら規制きてたから本当に製速移ってよかったです。あとサナミのイラストには期待してます
263 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 22:32:13.64 ID:dZlMp62o
>>262
忘れないからとっとと書け太郎
264 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 22:32:55.52 ID:J1vsTlwo
俺も規制かかってる。こっちだとシエン出来るから良いなww
絵は描けないけどずっと見てるからな!
265 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:35:32.92 ID:XVqih9oo
サナミ
「……昨日」
完全に均衡の保たれていた部屋、バランスを壊したのはサナミだった。
”昨日”という言葉に、俺は胸の辺りがどくんと一度跳ねるのを感じる。
男
「うん……」
サナミ
「………」
身構えていても、それから言葉が続いてこない。
―――カチ、カチ、カチ…
沈黙の時がまた流れていく。
お互い同じ壁を見つめたまま、何も言わない。
俺はサナミが話してくれるのを、待った。
―――カチ、カチ、カチ……
何十回、何百回も、古ぼけた秒針は、時を刻んでいく。
もう、どれほど時間が経ったのかもわからなくなった頃、
隣で、小さな小さな、本当に小さな音が聞こえてきた。
いや、聞えてきたのではなくて、”感じた”のかもしれない。
俺はサナミを方に向き直る。
男
「………お前……」
サナミの頬には、一筋の濡れた線が描かれていた。
細い顎を伝って、光る雫が、淡い色のパジャマに落ちて、染みを作った。
サナミ
「……ごめん…ごめんね」
何に謝っているのか、わからない。
俺は、沈黙の末に見るサナミの涙に、胸が苦しくなる。
男
「……大丈夫か?」
涙の理由も分からない、俺はありきたりな言葉を投げかける。
サナミは俺の言葉に数度頷くと、そのまま下を向いてしまった。
266 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/09(火) 22:36:01.08 ID:PAx4WOk0
アクティブは少ないが早く先が気になる人間がいるんだ
>>1
には期待してるから頑張れ
267 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 22:46:39.01 ID:XVqih9oo
サナミ
「……昨日…ね…。嬉しかったの……」
震える声で、絞り出すように話しだす。
その間も、髪で隠れた瞳からは、幾粒もの滴が流れ落ちている。
俺はどうする事も出来ず、ただその横顔を見つめている。
サナミ
「……好き……って…言ってくれて……」
俺の想いを、嬉しいと言ってくれた。
ただそれだけで、俺の胸は更に脈動を増す。
サナミ
「でも……あたし、困っちゃって……何も言えなかった……」
手をきゅっと握り閉めて、途絶え途絶えに話す。
サナミ
「あたしね……わかんないんだ……自分の、気持ち……」
自分の気持ち。
それは、想いを告げたはずの俺にだってわからなかった。
話せば話すほど、吐き出せば吐き出すほど、 サナミの声は水っぽさを増していく。
サナミ
「嬉しいけど……わかんないの……どうしたいのか……。あんたの顔みたら…余計に……っ」
―――トンッ…
男
「っ…!サナミ……」
胸に感じる重み。
サナミは、俺の胸にもたれかかって、声を上げて泣いた。
”想いは伝わる”。夕暮れの学校で、彼が言った言葉の意味が、少しだけわかるような気がした。
男
「……サナミ……。いいよ、わかんなくて、当たり前だって……」
俺達は、まるで不器用な子供のままだ。
俺は泣きじゃくるサナミの艶やかな髪を、何度も、何度も撫でてやった。
時を刻む音は、もう聞えなかった。
268 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 22:47:51.98 ID:S4zU66DO
もう読んだからいいやと思ってたら加筆多いから読み飛ばせないのが憎い
269 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 22:50:36.18 ID:J1vsTlwo
完全版だからなぁ
270 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 23:17:03.19 ID:XVqih9oo
どれくらい経っただろうか、サナミは鼻を啜りながら、俺の胸から離れた。
男
「……大丈夫か?」
サナミ
「………うん」
袖で目元を拭いながら、答えるサナミ。
その瞳は赤く充血している。
想いを吐き出したサナミの涙をきっかけに、俺達の間にはまた沈黙が訪れた。
サナミ
「………よし!」
三角に折った膝をぱんと叩くと、サナミが少しよろけながら立ち上がった。
男
「お、おい大丈夫か…?」
サナミ
「ね、写真撮るから、それ持ってくれる?」
ベッドの枕元に置かれていた携帯に手を伸ばして掴むと、
彼女はリンゴの山を指差しながら言った。
男
「これ?リンゴだけ撮るんじゃ駄目なの?」
突然明るく振舞うサナミに、戸惑いながら聞き返す。
サナミ
「……こんなの持ってきたばかの、証拠写真にするの」
赤い眼で微笑む彼女の表情には、涙を引きずらない強さが見えた。
俺は立ち上がって、大きな籠をもう一度抱えた。
男
「おっもてえー……!」
サナミ
「あはははは!こっち見て、こっち!」
―――カシャ…
シャッターを切る音と同時に、籠を床に下ろす。
こんなに重い物をよくここまで運んだものだと、俺は自分に感心した。
271 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 23:29:34.79 ID:XVqih9oo
男
「それじゃあ、ゆっくり寝ろよ」
大きな紙袋に分けられたリンゴを持って、玄関を出る。
外の空気はすっかり夜のそれに変わっていた。
淡い光を放つ月が、俺を見下ろしている。
サナミ
「……ん」
暖かそうな上着を羽織って、瞳と鼻先を赤くしたサナミが玄関まで見送りに来てくれた。
サナミ
「……あのさ」
前髪を触りながら、小さな声。
男
「……どした?」
サナミ
「……今日は、ありがと」
月が、全てを青白く染めている。
淡い光を受けて小さく手を振る彼女は、とても幻想的に見えた。
男
「……いいよ、ほら、寒いから早く入れ」
サナミ
「……うんっ、おやすみ……」
男
「……おやすみ」
―――ガチャン…
冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んで、俺はほんの数歩先の玄関に向かった。
272 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 23:41:25.91 ID:XVqih9oo
男
「……はぁ……」
風呂上がり、髪も乾かさぬままベッドに倒れ込む。
家に帰った時、大量のリンゴに母は驚き、変な金の使い方をするなと、小言を言われた。
しかし、さっき台所に降りると、ちゃっかりパイシートなんかが用意されていた。
明日にはおいしいアップルパイにありつけそうだ。
男
「…………」
窓から見える、丸い月。
こんな夜は、カーテンを閉めない。
月の光が照らす部屋が、好きだから。
俺は昔から、ずっと変わらぬ距離で回り続ける月に、どこか寂しさを感じていた。
もし、もしも月が、この星を愛していたなら、
近づかず、遠ざからないこの距離は、幸福か不幸か、どちらなのだろう。
―――わかんないんだ
サナミの言葉が、耳に残る。彼女の温もりが、まだ胸に残っている気がした。
答えなんて、何処にあるのだろう。
男
「……おやすみ」
今はもう、不思議と疲れは感じない。
儚げな光を放つ月と、サナミが眠る部屋に向かって呟き、俺はゆっくりと、瞳を閉じた。
273 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 23:42:37.14 ID:XVqih9oo
やっと前編終わった……。後編は手直しが少なそうなので早く仕上げられるよう頑張ります。
追加の話とかも入れていくと思うので、楽しんでもらえれば幸いです。
274 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/09(火) 23:45:01.32 ID:OYZ28ls0
前に適当にかいた絵なんだがなんかサナミのイメージに合ってる気がするんでちょい手を加えてあげてみようか
書いたは良いがなんかのキャラに似てるって言われたヤツだけど汗
仕事あるから明後日くらいには。。。
275 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/09(火) 23:47:03.60 ID:XVqih9oo
額を用意して待っています
276 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 00:23:52.97 ID:hCv.FQI0
二日寝てたけど新作出てないじゃん!
>>1
の嘘つき//////
277 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 00:43:45.53 ID:UEhV5qso
追加の話とか入れられてもどうせ読み飛ばすし
278 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 00:55:18.62 ID:xgbOoMDO
俺は読む
279 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 01:04:25.89 ID:rCTYbIo0
ごめんなさいごめんなさい遅くてごめんなさい……
>>276
もうしばらく布団から出ないでください
280 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 01:10:32.75 ID:s8xlm.SO
明日また仕事中に全部読み直すかもしれない
281 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 01:22:58.24 ID:pkeoT/Y0
>>279
いや冗談だよwwwwww
気長に待ってるから//////
282 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 01:24:50.27 ID:plWBu2SO
やっぱりサナミしかないよ
かわいすぎるよサナミ…
283 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 01:25:23.10 ID:dQFOOZ2o
ついにサナミの絵きたか、唇が疼くな・・・
284 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 01:27:07.69 ID:.pD.PUSO
読み返したけど、おれにはやっぱりサナミしかいないわ
285 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 02:42:57.85 ID:XTYKJ.DO
どんな絵晒しても叩かれないの?
286 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 03:08:16.58 ID:1l/XGcAO
なんかもうサナミでもトミーでもどっちでもいいや
287 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 03:14:44.96 ID:94xFn1Mo
生まれて初めてキーボードに突っ伏して寝てた。焦った。
後編は直し前で4万字弱でした。気が遠くなる……
>>285
ここは製作速報vipですよー なんでもOKです。超みたいです。
288 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 03:18:30.79 ID:JBGqYADO
どんな絵でもいい!
きゃあきゃあ騒いでるちびっこいキャラみたいなの欲しい。デフォルメばりばりの
289 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 03:47:51.65 ID:XTYKJ.DO
ほんと下手糞ですがサナミかいてみた。みんなとイメージかなり違うと思われます
http://imepita.jp/20100310/134620
290 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 03:57:37.65 ID:jJtWlEDO
まさに俺のイメージ通り…っ!
291 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 04:16:57.23 ID:JBGqYADO
>>289
さて色をつける作業に戻ろうか。この調子でもっとイラストきたらいいなー
ちょっと思ったんだけど、書籍化の話は夢のまた夢としても、これシミュ風とかいわず普通にゲームには出来るんじゃね
その方がもっと楽しめそう。せっかく製速にきたんだし誰か企画してくれないか
292 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 04:17:20.19 ID:xgbOoMDO
上に同じ
293 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 04:19:09.06 ID:xgbOoMDO
>>290
へのレスな
294 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 07:18:28.68 ID:HLyIDygo
>>289
ササミかわいいじゃねぇか・・・
でも!俺は!!アマネ一筋と決めたんだ
295 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:37:16.19 ID:94xFn1Mo
【二章】
―――2月上旬、食堂
腹を空かせた学生達で賑わう食堂。
俺は、いつにも増してやかましいヤリダ先生と昼食をとっていた。
今日の彼は、非常に機嫌が悪い。
ヤリダ
「お前ってさ、しれっとした顔で幾つか確保してそうだよな」
向けられた箸の先で蕎麦が跳ねる。
男
「うわっ!もうダシが飛んでますよダシが!」
ヤリダ
「いーじゃねーかダシくらい!せこい男だな!じゃあくれよそのジャケット!」
男
「あげませんよ!何言ってんですかもう……」
2月中旬、それは最後の歳を迎えた学生にとって非常に忙しい時期だ。
受験、卒業、そして……
ヤリダ
「おもしろくねーなー……何がチョコだよ、浮かれやがって」
そう、男も女も一様に浮かれる、”バレンタイン”だ。
俺は一人で食堂に向かう途中、窓から何やら言葉にならない言葉を叫んでいた彼に捕まってしまった。
女生徒にチョコをねだった所、本気で嫌がられたそうで、俺は今、その八つ当たりの的になっている。
男
「ヤリダ先生、貰った事ないんですか?」
ヤリダ
「……ねえよ」
箸が止まり、鋭い眼光がこちらに向けられる。
しまった。 彼の地雷を踏んでしまったようだ。
ヤリダ
「俺も最初はさ、貰えると思ったんだぜ?しっかし蓋を開けたらどうだ。”チャラい”だの”怖い”だの……清純か!」
捲くし立てるように話すヤリダ先生。
しかし、確かにどちらの言葉もすんなりと納得出来る。
色のついた髪、厳ついリングにストライプスーツ。
どこからどう見ても教師には見えない上に、実直そうにも見えない。
296 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:37:44.53 ID:94xFn1Mo
男
「ま、まぁ落ち着いて……。俺だって貰えないですって」
ヤリダ
「嘘つけ!お前あれだ、あのちっこいのがいんじゃねーか。仲いーんだろ?」
男
「ちっこいの……」
そのちっこいの、トミーとは、あの事があってから今日で丸三日、まともに喋ってはいない。
今朝は挨拶だけは返してくれたが、その態度に余所余所しさが滲み出ていた。
誤解を解きたいのだが、今のままではその機会さえ作るのが難しい。
ヤリダ
「あ、それにお前調理部?かなんかだろ?そこでも貰えるんだろどーせ」
男
「料理部ですって」
ヤリダ
「なんだっていーだろ。男の癖にそんなトコ入るやつぁ、チョコ目当てに決まってる!」
箸を銜えたまま指を勢いよく指をさされた。
ここまでくだを巻かれると、もはや酔っているようにも見える。
アマネ部長のチョコか……。
この間の恐ろしいケーキを思い出して、少し寒いものを感じた。
ヤリダ先生の指摘は、実の所あながち間違いでもなかった。
俺はサナミから紹介された彼女を初めて見た時、美しい彼女から貰えるチョコに甘い妄想をした。
だが、蓋を開ければ去年も一昨年も貰えていない。
もっとも、貰えた所で彼女の創るであろう独創的なチョコには、大分気が引けるが。
男
「あ……」
ふと辺りを見渡せば、昼食と談笑を終えた学生達が帰り始めている。
このままでは午後からの授業に遅刻しそうなのだが、まだ彼の甘くないチョコ談議は終わりそうに無い。
ヤリダ
「前言ってた幼馴染にも貰うんだろ。ほれみろ、それで三つは確保だ。な?」
男
「な?って言われても……」
返しようの無い八つ当たりのラッシュに、戸惑う。
異性の幼馴染というのは良いもので、男女の感情など無くても当たり前のようにチョコをくれる。
一つも貰えないという最悪の事態を回避させてくれる幼馴染のサナミには、毎年感謝してもしきれない。
彼女が涙を見せた夜以来、俺達の仲は少しだけ近づいたような気がする。
今年のバレンタインは、例年よりも特別なものになるかもしれない。
297 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:38:12.78 ID:94xFn1Mo
ヤリダ
「……おい!きいてんのかジャリタレ!」
男
「え?あ、聞いてますって!」
ヤリダ
「お前……今”あ、こいつモテなそうだなぁー”とか考えてたろ!」
テーブル越しに拳骨が飛んでくる。
男
「考えてないですって!痛い痛い!」
そんな一方的なやり取りしていると、遠くから昼休みを告げる鐘の音が聞こえてきた。
彼のせいで、俺はまだ牡蠣フライ定食を食べきれていないというのに。
男
「ほ、ほら鳴ってますよ!行かなくていいんですか!」
ヤリダ
「だってぇー俺午後授業ないもーん」
唇を突き出して頭の後ろで腕を組みをしている姿は、子供のようだ。
ため息をつきながら、最後の牡蠣フライに箸を伸ばそうとすると、
俺よりも先に向かい側から箸が伸びてきた。
ヤリダ
「あ、残すなよなーもったいねーなー」
素早い動きで、俺の牡蠣フライは彼の口の中へと消えていった。
男
「あ……。残してたんじゃなくて、食べる暇がなかったんですよ……」
ヤリダ
「マジで?まだちょっとしか噛んでないけど出そうか?」
薄い笑いを浮かべたまま大きく口を開ける。
男
「だー!開けなくていいですって!……もう授業いってきます……片付けよろしく」
ヤリダ
「ういーっす。がんばれワカゾー」
どっちが若造なのか、わからない。
冷めてもなお美味しい学食の牡蠣フライを惜しみながら、俺は教室へ向かって走り出した。
298 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:38:40.66 ID:94xFn1Mo
もう遅刻なのは、言うまでもないが。
ヤリダ
「……うめぇなこれ……あ、おばちゃーん!これまだ作れるー!?」
―――放課後
今日十数度目に聞く鐘の音と共に、今日も長い一日が終わった。
しかしまだこれからあの寒い帰り道を歩いて帰るのかと思うと、ため息が出る。
男
「疲れた……」
休みの前の学校というのは、何故これほどまでに疲れるのか。
明日からうちの学校は週末と創立記念日と合わせて三連休に入る。
諸手を挙げて喜びたい所だが、どうにも気が重い。
机に突っ伏したまま先日の事を思い返す。
―――ごめん、ぼく邪魔だったね…
誰だって、人気の無い廊下で女の子とあんな風に身体を寄せ合っているのを見れば、
普通の間柄では無いと思うだろう。
何度説明しようとしても、トミーは逃げていく。
逃げられて諦める俺も悪いのだろうが……。
―――ブゥゥゥン……
男
「ん?」
途方にくれていると、太ももに振動を感じる。
ポケットから取り出した携帯を開くと、メールの着信だった。
何度かボタンを押してメールを開くと、送り主はアマネ部長だった。
件名:
『本日の部活動! 』
本文:
『本日は料理部です。く、れ、ぐ、れ、も!逃げないようにしてくださいね。 』
チカチカと点滅を繰り返すデコレーションの数々。
それ自体は女の子らしいのだが、文面から恐ろしい気配が漂っている。
そういえばあれ以来全く部活に顔を出していない。
部室にはサナミも居る事もあって、どうにも行きにくい。
あの一件ですっかりアマネ部長を意識している自分にも、嫌悪感に似たものを覚える。
男
「……部活……かぁ……」
299 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:39:26.24 ID:94xFn1Mo
光る携帯を机に放り出して、頭を抱える。
これ以上部活に顔を出さないと、またアマネ部長に何を食わされるかわからない。
そもそも、卒業が間近に控えたこの時期まで3年が部活動をしているのは、うちと、マンホール研究部ぐらいだ。
行くべきか行かざるべきか、俺は迷った。
男
「うーん……」
トミー
「お、”彼女”からメールきてるよー?」
男
「うおっ!と、トミー!」
突然の声に驚きの余り椅子からずり落ちてしまった。
すっかり帰り支度を整えた”ちっこいの”がひらっきぱなしの携帯を覗き込んでいる。
トミー
「……ぼくにみられたら困るわけだー」
男
「そ、そういうわけじゃ……!」
椅子に座り直しつつ、すぐに携帯を閉じる。
心臓は驚くほど速い。
彼女が突然話しかけてきた状況が、全く理解できなかった。
こんなに近くで話すのは随分久しぶりに感じる。
トミー
「どーゆーわけだね!説明してみたまえ!」
大袈裟に机を叩く。
その衝撃で彼女の帽子のてっぺんのふわふわした丸い塊が揺れた。
今日は何故か、いつものトミーに戻っているような気がする。
理由はどうあれ彼女の方から近づいてきてくれたのだ、
これは誤解を解くチャンスかもしれない。
だがまず、俺は彼女が話しかけてきた理由を聞くことにする。
男
「説明っていうか……俺、避けられてたんじゃないの?」
トミー
「えっ、あー……。避けてたけど、なんかちみと話さないとつまんないなーと思って……」
そういえば、といった様な顔で照れくさそうにもじもじしている。
彼女が俺を必要に思ってくれたのなら、この数日の空白には感謝しなければならないだろう。
300 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:40:15.45 ID:94xFn1Mo
トミー
「あっ……!それより!説明はどーしたっ!」
男
「しますします!しますからちょっと座って下さいよ、トミー先輩」
久しぶりの緩い空気を壊さないように、俺もごく軽いノリで隣の席の椅子を引く。
トミー
「……しかたない奴だなー。5分ですませたまえよ」
椅子に座ると、眉間に皺を寄せ腕組みをしてこちらを向く。
彼女の場合そんな仕草さえどことなくコミカルだ。
久しぶりのこの距離と空気に、なんだか嬉しくなってしまう。
トミー
「まだかねきみー!皆帰っちゃったじゃないかぁーもー」
男
「あ、ほんとだ……」
終業からまだ15分と経って居ないというのに、 教室内にはもう俺と彼女しか残って居ない。
連休の威力というのは凄まじい。
男
「いや、あれはな……」
それから俺は事細かくあの日の事情を説明した。
その間彼女は珍しく黙って俺の話を聞いてくれていた。
誤解を解きたい一心で、一通りの経緯を必死に伝える。
男
「……というわけで、あれは完全なる誤解だったんだって」
トミー
「…………」
沈黙、静寂、緊張。
眼を閉じ真剣に考えている彼女の口が開くのを、背を伸ばして待つ。
―――バンッ!
沈黙を机を叩く音で破られた。
俺はその驚いて少し飛び上がってしまう。
トミー
「………じゃー!」
301 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:40:48.99 ID:94xFn1Mo
男
「……え?ジ、ジャー?」
トミー
「……じゃあ、なんでぼくの誤解を解こうとおもったの?」
責められる事や、信じてもらえない事を予想していた俺は、
その質問に面食らってしまった。
彼女の眼からは、冗談っぽさが消えている。
トミー
「……君はぼくの…、その……、かれし……でもないんだし」
少し口ごもりながら話す彼女のいじらしさと、
”彼氏”という言葉に心臓が反応を示す。
トミー
「…………ずるいよ」
男
「トミー……」
なんで、なのだろうか。
何故俺はトミーの誤解を必死になって解きたかったのか。
あらぬ噂を立てられないためか、単に恥ずかしかったのか。
どれも当てはまる事だとは思う。
だが、本当に誤解を解きたかった理由は……。
男
「……ごめん」
誰にも嫌われたくない、そんな俺を見抜いて、彼女はずるいと言った。
本当の理由は、自分でもわからない。
誰が好きで、誰が一番大切なのか。
トミー
「……もーーー!!」
男
「え、ええ!?」
トミー
「ぼくに謝るのはなし!」
唐突に彼女の空気が元の調子に戻った。
この切り替えのスピードは、彼女じゃなければ不可能だ。
俺の目の前に立つトミー。こうしてみると随分小さい。
302 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:42:19.54 ID:94xFn1Mo
男
「な、なに?」
トミー
「きりーつ!」
男
「え……え?」
トミー
「ほらたつのー!きーりーつー!」
促されるままに立ち上がる。
彼女の行動は本当に予想がつかない。
そういう所が、素敵な魅力の一つなのは間違いないが。
男
「……なに?」
トミー
「…………」
俺を見上げる恨めしそうな顔。
―――ギュッ…
男
「うわ……え?」
トミー
「ぎぅぅぅー………っ!」
そして、突然の抱擁。
頬に当たるふわふわした帽子がくすぐったい。
あまりに予想外の出来事に、どうしていいかわからない。
俺
「ちょ……トミー?」
不恰好に挙げた手は居所を失って中空を漂う。
これはどういう事だろうか、またいつもの冗談なのだろうか。
誰も居ない教室で、気になる女の子に抱きつかれる。
こんな状況は、漫画くらいでしか見た事が無かった。
男
「ちょ、ちょっと……」
恥ずかしさからか、俺は彼女の肩を少しだけ押す。
303 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:42:54.39 ID:94xFn1Mo
トミー
「まだだめー……」
あの日の夜のように、俺の胸に顔をうずめたままの彼女は、更にきつく抱きつく。
ふんわりと香る、子供のような香り。
俺は、どうすればいいのだろう。
>>51
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 07:11:18.09 ID:zG9D1agqO
キスする
トミー
「……しんぞー、はやい……」
高鳴る胸の鼓動は、彼女にも伝わっていた。
男
「……」
深く息を吸い込むと、俺は居場所の無かった両手を彼女の小さな肩に置いた。
驚いたのか、一瞬、その両肩が少しだけ跳ねたが、彼女は離れようとはしない。
トミー
「…………」
何度も何度も頭の中でシミュレーションを繰り返す。
そういえば、昼食に食べたのは何だったか。
もし嫌がられたらどうしようか。
様々な事が脳を駆け巡っていく。
荒くなりそうな息を堪えて、俺はそっと小さな身体を押す。
背中の後ろでするりと手は解けて、二人の身体は離れた。
俺
「トミー……」
トミー
「……」
何も言わず、ただこちらを見つめる彼女。何をするのか、わかっているのだろうか。
俺の心臓は破裂しそうなほど速くなる。
彼女の形のよい唇は、程よく潤っていて、更に緊張が増す。
荒くなりそうな呼吸をこらえながら、ゆっくりと顔を近づけ、 唇を重ねた。
触れた瞬間に感じる、思ったよりも冷たい感触。
この季節だ、唇だって冷えるだろう。
抱き寄せる力を強める。
それにしても、少し平たすぎる気もする。
304 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:43:22.67 ID:94xFn1Mo
彼女はそんなに薄い唇だっただろうか。
男
「……ん?」
薄く眼を開けると、目の前に居たのはトミーではなく、
間抜けな表情をしたよくわからないキャラクターだった。
トミー
「はーいそこまでー!ざんねんでしたっ」
トミーの声に慌てて唇を離す。
彼女の顔の前に掲げられたノート。どうやら俺は、まんまと騙されたらしい。
男
「な……え?」
トミー
「いきなりそんな事するとはー……、ごーいんなのは嫌われるぞ?」
悪戯な笑みで俺を見つめる彼女。
トミー
「……これは、この前のお返しだよ。びっくりした?」
苦笑いを浮かべたまま、何も言い出せない俺に彼女は言った。
その頬は少し赤い。
トミー
「……あと、誤解してたおわび。かっわいートミーちゃんにくっつかれて、嬉しかったでしょ?」
恥ずかしそうに笑う彼女につられて、こっちまで笑ってしまう。
これはただの悪戯だと、自分に言い聞かせてもなお、 早くなった鼓動は収まりそうになかった。
男
「……はい、嬉しかったですよ」
トミー
「ぷっ……はははは!素直でよろしい!」
俺は素直に認めた。事実、本当に嬉しかったから。
静かだった教室に、二人の笑い声が響く。
たった数日の間のわだかまりが、解けていく音。
トミー
「んじゃっ、これで仲直りだね!」
305 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 08:44:37.34 ID:94xFn1Mo
男
「仲直りってー、喧嘩だったのか?これ」
トミー
「んー……、ふりん?」
男
「不倫!?」
トミー
「あはははは……っ!それじゃーぼくは、そろそろかえろっかな?」
彼女の笑い声には、周りまで巻き込む不思議な力がある。
男
「……おう。俺はちょっと部室に顔出して帰るわ」
一瞬、部室という言葉に表情が少し曇った様に見えたが、すぐに元の表情に戻った。
トミー
「……うん!でーもー、やらしーのはナシだぞ!ふしんしゃくん!」
男
「わかってるよ!んじゃ……気をつけて帰れよ」
トミー
「まかせろっ!トミーちゃんつよいよっ?」
開いた手を握って、力こぶを作る。もちろんそんなものはない。
彼女の一つ一つの動きは見ていて本当に飽きない。
もう暗くなり始めた廊下に二人で出ると、冷えた空気が頬に触れた。
トミー
「あ、ちみちみ、一個きいてもいいかね?」
部室と下駄箱への分かれ道に差し掛かった時、唐突に質問が飛んできた。
男
「ん?なんでしょーか」
立ち止まって、聞き返す。
トミー
「んー……、あまいのってへーき?」
男
「え…?甘いのって……甘いの?」
306 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 08:58:39.72 ID:HLyIDygo
(~)
γ´⌒`ヽ
{i:i:i:i:i:i:i:i:}
( ´・ω・)
(:::::::::::::)
し─J
トミーの帽子だけでしまむらくんを再生してしまう
307 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 09:14:34.23 ID:94xFn1Mo
トミー
「う、うん。あまいの」
こくこくと何度も頷くトミー。
俺は一瞬で彼女の質問の意図を理解した。
巷でよく見かける”キター”というのは、きっとこういう時に使うのだろう。
これは間違いなく、あの日に関する質問だ。
俺は驚きと喜びが顔に出ないように気をつけながら、努めて平静に答える。
男
「あまいの?平気どころか、全然大好きだよ」
トミー
「そーなのかー!よしよしいい子だなあ」
頭を撫でたいのだろうが、俺の顔に向かって手を思い切り伸ばす彼女。
トミー
「よっ…!ほっ!……もー!」
しかし彼女の身長では、頭にはなかなか届かない。
不満そうに頬を膨らませる彼女をもう少し見ていたかったが、俺は腰を落とした。
トミー
「よーしよーし……。うむ!くるしゅうないぞっ」
自然とひざまずくような格好になる俺の頭を、わざとらしく乱暴に撫でる。
なんだか少しくすぐったいが、彼女は満足そうだった。
男
「えーっと……、それはつまり、期待してても良いって事かな?」
トミー
「うぬぼれるなー!それは君次第だばかもの」
男
「そうですか……。すいません」
指先を突きつけられる。
君次第。
俺の気持ち次第という事なのか。
それは、俺が一番わからない事だというのに。
トミー
「……じゃっねー!またらいしゅー」
大きく手を振った彼女の笑い顔には、少しだけ夕暮れにも似た寂しさが見えた。
寒い冬の街を一人で歩く彼女を想像して、少し胸が痛い。
308 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 09:15:48.21 ID:94xFn1Mo
この調子なら結構早く終わりそうです。
サナミのイラスト可愛すぎて2回保存した。意味は無かった。
309 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 09:19:31.42 ID:EAOlJPwo
トミーがかわいすぎて生きるのがつらい
310 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 09:20:58.41 ID:xgbOoMDO
サナミとトミーのどちらかを選ぶなんて俺にはできない…
311 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 09:28:14.25 ID:94xFn1Mo
階段を降りて行く後姿を見送った後、もう一度ポケットの携帯を取り出した。
気が付かなかったが、もう一件新着メールがきていた。
送り主はサナミだった。
件名:
『こないの?』
本文:
『おーいばかー。こないのー?』
アマネ部長の次はサナミからも催促メール。
いつものことだが、女の子らしい絵文字なんかはなく、むしろ男っぽい。
さっぱりとしたサナミの性格がよくわかるメールだ。
二人から催促され、これはいよいよ行かざるを得なくなってきた。
トミーの誤解は解けたとはいえ、 部長とサナミの二人と同時に会うのはなんだか気が引ける。
俺は頭の中で寂しげなトミーの後姿と、怒る部長とサナミを並べ、
静かな廊下で光る画面を見つめながら、悩んだ。
男
「……どうしようか」
>>61
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 18:28:43.46 ID:YT73jSy80
愛するサナミが待っているんだ
行くしかない
男
「……行くか」
悩んでいても身体が冷えるばかりで仕方がない。
よくよく考えれば、アマネ部長と二人で会うよりは、サナミが居た方がいい。
もしかしたら今顔を出しておけば、 アマネ部長からもチョコが貰えるかもしれない。
貰った後で後悔しそうだが、それはそれだ。
ともかく、少し遠いが、俺は部室へと足を向けた。
男
「一応、返信しとこう……」
俺が行っても行かなくても、恐らく部長の機嫌くらいしか変わらないが、
とりあえず俺は行く旨を伝える事にする。
歩きながら携帯を開いて、先ほどのメールを見る。
アマネ部長と、サナミ。
どっちに返信してもいいのだが……どっちに何と、送ろうか。
312 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 09:32:47.35 ID:94xFn1Mo
>>72
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/03(水) 18:45:28.91 ID:+52opGh60
お前の実験に付き合わされるのはもうごめんだ
ってアマネに送る
しかし待てよ、そもそもおかしい。
携帯を握ったまま、俺はふと思った。
何故俺はアマネ部長のご機嫌取りのために、 部活に行かなければいけないのか。
何か大した目的があったわけでもないが、 少なくともそんな事をするために料理部に入ったわけではないはずだ。
第一、俺が来ない事にそこまで立腹する理由も謎だ。
そう考えると、なんだか俺は無性に腹が立ってきた。
男
「……なんで俺が怒られるんだよ」
毎度毎度よくわからない物を食べさせられ、
挙句の果てに部長のせいで大切なトミーとの仲を失う所だった。
男
「…………」
俺は今までの事を思い出しながら、ふつふつと湧き上がる怒りを堪えきれず、
その思いを携帯のボタンに打ちつけた。
件名:
『ごめん』
件名:
『お前の実験に付き合わされるのはもうごめんだ!』
―――送信完了しました。
点滅する画面。
指先から嫌な汗がじっとりと染み出してくる。
男
「……やっちまった……!」
感情が昂ぶると自分でもよくわからない行動に出る癖が、
最悪の形で出てしまった。
何度画面を確認しても間違いなく送信済み。
今まで面と向かってアマネ部長に歯向かった事は一度もない。
313 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 09:35:35.92 ID:94xFn1Mo
もちろん、あんな物やこんな物に、果てはそんな物まで食べさせられた日には、
怒りを堪えられない事もあるにはあったが、その淑やかな雰囲気と容姿に騙されて、それを押し殺してしまっていた。
男
「…………」
冷たい廊下に立ち尽くす。
俺はこれから起こるであろう身の不幸を想像して背筋が震えた。
何処かからから聞こえてくる運動部の掛け声が、
暗くなる廊下により物悲しげな空気を満たしていく。
―――ブゥゥゥン……
男
「ひっ……!!」
来た、来てしまった。
震える携帯の画面に表示された文字はもちろん……。
男
「あれ……?これは……」
俺の予想に反し、画面に表示されていたのは、アマネの名前ではなく、
サナミの名前で、メールではなく、電話の着信だった。
男
「え……?サナミ?」
思わず拍子抜けしてしまう。
あの部長の事だ、俺のメール等お構いなしに料理に夢中になっているのだろう。
俺は胸を撫で下ろして、携帯の通話ボタンを押した。
男
「あ、もしも……」
サナミ
『ちょっと!あんた何したの!?』
あまりの大声に右耳の奥で不快な耳鳴りがする。
一体どうしたのいうのか。サナミの声には怒気が含まれている。
男
「ちょ、え?何?どうしたんだよ」
とにかく話を聞かなくては始まらない。
俺はばくつく胸を押さえながら、サナミをなだめる。
314 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 09:42:06.13 ID:uaXG5/Qo
>>289
うまひ!うまいぞ!!
315 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 09:56:01.64 ID:JBGqYADO
読ませるの上手いよなあ
316 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 10:10:59.13 ID:/Le.xbM0
先越されちゃったんで朝飯食べながらかいた
過度な期待はしないでね
タイトルは「え、今日カレーなの?」
ガッツリかきたいけどこれで汗
あとiPhoneでとったから画像のサイズよくわかんない。。。
でかいかも
http://beebee2see.appspot.com/i/agpiZWViZWUyc2VlchQLEgxJbWFnZUFuZFRleHQY6oAsDA.jpg
317 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 11:01:22.21 ID:JBGqYADO
ラインの細い絵がサナミにはあってると思うかわいい
出来たら作中のどっかのシーン欲しい
318 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 13:26:56.49 ID:X4ymroAO
布団から鼻くらいまで顔出して恥ずかしがってるシーン希望
319 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 13:33:16.29 ID:HLyIDygo
アマネっちのイラストが出ないから出かける
320 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/10(水) 13:52:54.70 ID:PgiRfASO
>>316
GJ!
できればガッツリめのも頼む
321 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 13:59:12.25 ID:p1MbKt.o
サナミ・・・FF7のティファ
トミー・・・FF8のセルフィもしくは7のユフィ
で脳内変換してるんだが、FFだとアマネが思いつかねー
322 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 14:31:03.69 ID:J1H..zc0
うーん、見直してみると色々納得いかんところがあるな。。。
ガッツリいきたくなってくる。。。
でもこういうの面白いね
>>289
のサナミもサナミ!って感じするし。てかうめぇ
もっと絵師来ないかなー
シーン絵はリクエストあった方が書きやすいしどんどん言って欲しいかも
>>318
のかいて見たいわw表情が難しそうだが。。。
無事サナミEDになったらセクロスシーンとかww
アマネもイメージはあるんできが向いたら
でもアマネ命の人(ry
トミーがいまいちつかめないんだよなぁー
セルフィは結構合ってると思うけども
323 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 14:34:40.10 ID:1l/XGcAO
>>316
俺のなかではサナミはその体制では谷間はできないくらい(Cくらい)のイメージだったな
とはいえGJ!
324 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 14:35:31.53 ID:3pEOT76o
ヤリダは特技のない秋生
325 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 14:43:07.37 ID:HLyIDygo
>>322
さぁアマネを描くんだ
君が書き終わるまで俺は働かないぞ
326 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 15:15:31.90 ID:XTYKJ.DO
>>322
>>289
ですけど全然うまくないです;綺麗に描けて羨ましいです。俺もアマネのイメージはあるけど、トミーがなんか場面場面でイメージ変化しますwwww
327 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 15:33:01.67 ID:uaXG5/Qo
>>326
うるせーさっさともっと描いてうpしろいやしてくださいお願いします
328 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 15:33:40.85 ID:JBGqYADO
で、ヤリダの過去を描いたスピンオフ作品が出来るわけだな
329 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 15:40:53.03 ID:l5cNMkg0
地味にヤリダ人気でワロタ
330 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 17:25:45.55 ID:JBGqYADO
地味に人居てワロタ
331 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 17:51:43.53 ID:XTYKJ.DO
お前の実験に付き合わされるのはもうごめんだ、をみた直後のアマネかいたwwww
もっと巻き巻きしようと思ってたけど失敗して、サナミと似てる感が否めないorz
http://imepita.jp/20100310/636370
332 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 17:52:57.03 ID:HLyIDygo
>>331
さぁ顔を見せたまえ
333 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 17:55:46.34 ID:XTYKJ.DO
>>332
横顔に逃げてごめんなさいwwww
334 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:16:30.93 ID:plWBu2SO
トミー
http://imepita.jp/20100310/657100
335 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:31:09.68 ID:.pD.PUSO
>>334
おいwwwwwwww
336 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:36:15.18 ID:V6azjwSO
俺の嫁馬鹿にすんなwwwwwwwwwwww
337 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:38:24.48 ID:V6azjwSO
>>336
は
>>334
に
338 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:52:58.92 ID:vl4L6gDO
このトミーなら
>>334
に譲るよ
ちゃんと幸せにしろよ
339 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:53:36.61 ID:JBGqYADO
>>1
が手直しまでしてやってんのにお前らwwwwwwwwwwww
くそう俺にも才能があれば……
340 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 18:57:03.54 ID:plWBu2SO
>>338
僕はサナミ一筋なので結構です
341 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 19:03:46.22 ID:XTYKJ.DO
やっぱり真のヒロインはサナミだよな
342 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 19:03:54.09 ID:uaXG5/Qo
>>334
トミー・ロッド乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
343 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 20:58:22.24 ID:xgbOoMDO
アマネさんは何故かぱっつんのイメージがある
本当何故だろう
344 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 21:30:56.90 ID:Oyrf8LAo
未だにトミーを外人でイメージしてしまう・・・・・
死にたい
345 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 21:35:48.99 ID:JBGqYADO
>>343
奇遇だな俺もそう
一緒にアマネちゃんちゅっちゅしようぜ
346 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/10(水) 22:14:15.75 ID:1qQ1PC20
なにこの良いカンジに気持ち悪いスレ
347 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/10(水) 22:20:09.39 ID:94xFn1Mo
暫く離れてたらイラストキテタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!かわいいのう
製速なのでこんな空気でいいのです。頑張って書いてきます
348 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 22:21:56.29 ID:95ixFuYo
>>346
「良いカイジ」に見えた
まだスレは半分……
ここからが正念場……ッ!
349 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:15:50.95 ID:7dDhXnQ0
>>323
あー、谷間は特に考えてなかったw
脳内補正でw
>>326
十分上手いけどwww
まぁいまんとこ絵師少ないし、頑張ろう
ほんともっと来ないかなー
>>334
ちょwwwおまwww
俺もアマネはぱっつんかなー
今日は眠いからちょいまってちょ
>>1
頑張れ
350 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:15:58.19 ID:JBGqYADO
あの殺伐とした
>>1
は何処へ
351 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:29:33.35 ID:AKNbtcDO
俺はあの頃の
>>1
のほうが好きだった
352 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:29:54.12 ID:1l/XGcAO
>>343
すげーわかる
353 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:42:22.06 ID:JBGqYADO
荒れないように気をつけてるんだろ
ここで俺は
>>1
女説を推したい
354 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:43:05.08 ID:uaXG5/Qo
>>353
そういうのが荒れる原因
355 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/10(水) 23:43:40.25 ID:HqKO1gAO
安価で操られてたんだろ?
356 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 00:44:15.56 ID:.dfFfjY0
どうでもいいけどペンタブ使いはいないの?
ノート落書きは嫌いじゃないがペンタブのデジタルが一番見たい色つきで
357 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:06:13.41 ID:QIJRUuwo
サナミ
『どうしたもこうしたもない!アマネちゃん、部室飛び出していったよ!?』
男
「…………え?」
特大フライ返しを片手に部室を飛び出すアマネ部長を想像して、間違いなく俺の心臓はこの時一瞬止まった。
あの部長の事だ、本当に心臓を止められる料理なんか簡単に作れるはずだ。
脳裏に小さい頃のサナミと俺が浮かんでは消えていく。
あぁ、そういえばあんな事やこんな事もあった……。
サナミ
『ちょっと、ばか!聞いてるの?』
軽い走馬灯を見ていた俺は、サナミの声で現実に引き戻された。
男
「え……?あ、ごめん。お、俺は逃げた方がいいね?」
サナミ
『何言ってんのよばか。とにかく、部室に来て?』
男
「わ……わかった」
一方的なサナミの言葉に、俺は死地へと赴かなくてはならなくなった。
サナミ
『それから……』
電話を切ろうと親指をボタンにかけると同時に、サナミの小さな声が聞こえてきた。
サナミ
『……アマネちゃん、泣いてたよ』
男
「え……?」
サナミ
『……じゃあ』
―――ツーツー……
それだけ告げると、電話は一方的に切れた。
男
「泣いてた……って……」
358 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:06:42.23 ID:QIJRUuwo
泣いていた。
サナミの言葉に胸が締め付けられる。
今までアマネ部長が泣いた所など見たことがなかった。
それなのに、自分が送ったメールが原因で、彼女を泣かせてしまった。
今は彼女に対する恐怖よりも、後悔の方が強い。
何度も何度も自分が送ってしまったメールを思い返しながら、長い廊下を歩いた。
普段の倍ほどの時間をかけて部室に着くと、俺はゆっくりとドアに手をかける。
―――ガチャ…
男
「……うっす…」
サナミ
「あ!遅いよ……ばか!」
部室の中にアマネ部長の姿は無く、居たのはサナミ一人だった。
少しだけ緊張がほぐれる。
男
「他の部員は?」
サナミ
「もう随分前に帰らせたよ……。ねえ、アマネちゃんに何て送ったの?」
捲くし立てるように詰め寄ってくるサナミ。
男
「そ……、それは…!」
サナミ
「なに?」
詰め寄られ、壁際に追い詰められる。
力の篭った瞳には、有無を言わさぬ迫力があった。
彼女は昔から友達の事には熱くなるタイプだった。
自然と近くなる距離に、状況はどうあれ少しどきりとする。
鼻をくすぐる香りは、果実のものか、サナミのものか。
男
「いや……ちょっと……。もう付き合いきれない…かなーみたいな事を……」
俺はその剣幕に負けて、こうなってしまった経緯を、口にした。
暫く黙って聞いていた彼女だったが、話終える頃にはその表情は怒りが消え、寂しげなものに変わっていた。
サナミ
「……はぁ……。あんたってもう……、ばか!」
359 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:07:11.80 ID:QIJRUuwo
サナミの口癖になっているの”ばか”。
今顔を覆いながらうな垂れるサナミの口から出たそれは、
明らかに普段とは別の、本当の意味で俺を情けなく思う気持ちが篭っていた。
サナミ
「……アマネちゃん、あんたに”ごめんなさい”って伝えといてって言い残して、出ていったんだよ」
こちらを見ずに話す横顔は、悲しいような、苦しいような、複雑な表情に見える。
男
「ごめんって……」
それは逆だ。
謝るのは俺の方なのに。
サナミ
「……出て行っちゃう前ね」
机に出しっぱなしになっていた調理器具を触りながら、彼女は背を向けたままで話す。
サナミ
「……あんたに……チョコ、あげてもいいかなって聞かれた」
男
「……え……?」
言葉が出ない俺に、更にサナミは続ける。
サナミ
「……あたしに……遠慮してたんだって」
男
「それって……」
サナミ
「……おかしいでしょ…?あたしは……ただの幼馴染なのにね」
揺れる肩、彼女の後姿は、俺の胸を締め付ける。
男
「サナミ……」
サナミ
「なんか……よくわかんないけど……、怖い」
広くは無い部室を満たす、重苦しい空気。
その原因が、自分にあると思うと、押しつぶされそうだ。
360 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:08:59.78 ID:QIJRUuwo
サナミ
「ねえ…!これって……、”やきもち”なのかなぁ…!」
振り向いたサナミの瞳から、光の粒が一筋、流れ落ちた。
幼馴染の笑顔と涙。
胸が痛い。
両方の手のひらで、顔を拭う彼女の声は、 泣いているのか、笑っているのか、もはや判らない。
ただ、俺はその時彼女をとても可愛いと思った。
サナミ
「あははっ…、なんだろ、あれ?もう……あたし……ばかみたい」
拭えば拭うほど、彼女の頬に雫が流れていく。
男
「なんで……お前が泣くんだよ」
サナミ
「わかんない……!わかんないの……。あんたのばか…、移っちゃった」
涙をすする水っぽい音が、静かな部屋に満ちる。
俺はそれを黙って見ている事しか出来なかった。
ぶつけられる想いに対して、俺は何も出来ない。
出来ないどころか、その想いを無下にする事ばかりだ。
それが悔しくて、自分が恥ずかしくなる。
サナミ
「……っ!はぁー……!もう……、顔くちゃくちゃだ」
暫くの沈黙とすすり声の後、
両手で必死に涙を拭い、笑う。
赤い眼でこちらを見つめる彼女の瞳からは、 昔から変わらぬ強さがあった。
男
「……サナミ……、俺……」
サナミ
「なんか……最近泣いてばっかだな、あたし」
言葉が続かない。
サナミの気持ちも、自分の気持ちさえわからない。
彼女は戸惑う俺を見て、一度だけ大きく息を吐く。
サナミ
「……アマネちゃん、探してきてあげなよ」
幼い頃から彼女は、本当に友達を大切にする女の子だった。
それでも、どうして、どうしてそんな事が言えるんだろう。
361 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:09:44.49 ID:QIJRUuwo
こんな時にまで、自分ではなく、友達を気遣えるのだろう。
男
「でも……、俺……」
サナミ
「早く……行ってあげて」
―――ポツ…ポツ……
藍色を移す窓に、一つ、二つ、雫が張り付いては流れ落ちていく。
それはまるで、涙のように。
俯いて、小さく肩を震わす彼女に近づき、抱きしめてやりたい。
一気に強くなり始める雨音が、部屋に満ちていく。
俺は……
>>180
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 01:47:10.66 ID:vbe4Ly3V0
抱きしめて「俺はサナミのことが大好きだよ」
―――ギュッ…
サナミ
「……っ!」
俺はやっぱり不器用だから、 言葉よりも早く、サナミを抱きしめた。
彼女はただ静かに俺の身体に頬をつけて、何も言わない。
涙を流してまで友を思いやる彼女の強い部分と、
自分の事がわからなくて、戸惑うけなげさが、俺は好きだ。
男
「……サナミ……、俺は、お前の事が大好きだよ」
二度目の告白は、すんなりと言葉になった。
―――ザァァァァ……
雨音は強くなる。
そうだ、これでよかったのかもしれない。
最初から、俺はサナミの事が……
サナミ
「……違うよ」
362 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:10:40.06 ID:QIJRUuwo
男
「え……?」
腕の中に居たサナミは、俺の腕の中から温もりを残して、抜け出した。
男
「え……?」
固まったと思った想いを否定され、戸惑う。
サナミ
「ごめん……ごめんね、でも……違うよ」
流れる髪に隠れて、表情は見えない。
サナミ
「……嬉しいよ……。でも…、ほんとはわからないでしょ?自分の気持ち……」
男
「……」
いつも、サナミには心を見透かされる。
サナミ
「……それに、こんなのずるいよ。あたしだけ、こんなの……」
男
「サナミ……」
サナミ
「……あんたって、ほんとに優しいね……。そういうとこ、好きだよ」
いつもと変わらぬ笑顔のサナミが、そこに居た。
初めて聞く、”好き”の言葉。
まっすぐな瞳から伝わってくる、
幼い時のそれや、冗談ではない、本当の”好き”。
サナミ
「でも……」
男
「……でも?」
サナミ
「……泣いてる女の子をほっとくあんたは、好きじゃない」
男
「…………お前だって……」
363 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:12:10.45 ID:QIJRUuwo
サナミ
「あたしは!……もう泣き止んだよ。だから、ほら。行って?」
いつも俺の少し前を歩く。
彼女は、俺の姉であり、妹でもあり、大切な人で、幼馴染だ。
サナミ
「ほら!元はといえばあんたが悪いんでしょ!ほら早く探して謝ってこい!ばか!」
男
「わ、わかったって!行くよ、行く!」
背中を押され、廊下まで押しやられる。
サナミ
「うん、それでよし。あたしも探しに行くから、見つけたら連絡してね」
男
「……わかった!じゃあ、行ってくる」
ごめんな、サナミ。
俺は微笑むサナミに背を向けて、冷たい色の蛍光灯の下を走り出した。
サナミ
「…………ばかだな、あたし」
殆どの学生が帰った後の学校というのは、少し気味が悪い。
甲高く響く自分の足音と、窓を打つ雨。
こんなに広い学校を闇雲に探しても仕方がない。
それに、もしかしたらもう帰っている可能性もある。
男
「……電話……」
一旦足を止めて、ポケットから携帯を取り出した。
電話帳から、アマネ部長のアドレスを開く。
後は、通話ボタンを押すだけなのだが、押せない。
一体、俺は彼女に何と言えばいいのか。
悪い事をしたら謝る。幼い頃から教えられてきた当たり前の事が、 出来そうにない。
だが、迷っていても解決にはならない。
俺は覚悟を決めて、通話ボタンを押した。
―――ルルルル……
無機質なコール音が十数回を超えたあたりで唐突に途切れ、
携帯の向こうからも、小さく雨音が聞こえてきた。
364 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:12:49.07 ID:QIJRUuwo
男
「も、もしもし?アマネ……部長?」
アマネ
『……………はい』
長い沈黙の後、消え入りそうな声で彼女は応えた。
男
「あ……あの、さっきは……悪かったよ。遂、勢いでさ……」
彼女に言い放った事は、どう弁解しても消える事は無いし、
言葉というのは、送る方と受ける方が必ずしも同じ価値観だとは限らない。
軽いつもりの俺の言葉は、彼女に重く圧し掛かり、酷く傷つけた。
―――探して、謝って
沈黙の向こうで、サナミの言葉がリフレインする。
そうだ。ちゃんと顔を見て、謝ろう。
男
「アマネ部長…、今、何処に居るの?」
アマネ
『……………迷惑に……なりますから』
やかましい雨音に紛れて、涙声がはっきりと聞こえた。
アマネ
『……それじゃあ…』
―――ツーツー……
男
「もしもし……?くそ……」
あんなに小さなアマネ部長の声は聞いたことがない。
不愉快な音を発する携帯を握りながら、俺はため息をついた。
リダイヤルを押そうとして、止める。今かけてもきっと出ない。
俺は電話の向こうから聞こえた音を思い返した。
金属の板の上を歩くような、重く鈍い響きと、大きな雨の音。
男
「……東棟の渡り廊下…」
増築された渡り廊下の床は鈍い色の金属で出来ていて、 雨の日は雨音がとても響く。
365 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:13:28.15 ID:QIJRUuwo
男
「……まだ居てくれよ……!」
携帯をポケットにつっこんで、俺はまた走り出した。
目的の東棟までは、三分程度で到着した。
途中何人かの学生と擦れ違ったが、もう校内には殆ど人が居ない。
日中は日当たりの良い洒落た渡り廊下も、淡い照明が今は物悲しい。
鈍い音を立てる階段を昇る。
男
「……やっぱりここだった」
階段を上りきると、騒々しい雨音の中で、備え付けのベンチに腰掛けたアマネ部長を見つけた。
アマネ
「……っ!」
驚いた顔で、俺を見上げる彼女の眼は少し赤く充血していた。
学生鞄を胸に抱く姿からは、いつもの不思議な圧力を感じない。
男
「……アマネ部長……、俺……」
彼女は俯き、押し黙っている。
言おうと思っていた謝罪の言葉も、出てこない。
渡り廊下にはただ雨音だけが響く。
アマネ
「……サナミさんに、言われたんですね」
男
「それは……」
本当の事だ。
見つけたのは自分だが、きっかけを作ったのはサナミだった。
だが今は、自分の意思で謝りたいと思っている。
男
「……ごめん。……酷い事言って」
長い長い沈黙。
冷たい空気が全てを冷やしていく。
アマネ
「……私こそ……、ごめんなさい」
長い沈黙の末、彼女は謝罪の言葉を返した。
憂いに満ちた横顔。視線の先には窓を流れる雨粒。
366 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 01:14:38.05 ID:QIJRUuwo
アマネ
「……貴方の迷惑も、考えていませんでした」
聞いているだけで、乱れた心が落ち着くような少しだけ低い声。
俺は、彼女の事を初めて見たような感覚に襲われる。
男
「……隣、いいかな」
小さく頷く彼女の、綺麗に切り揃えられた髪が緩やかに流れた。
近すぎず、遠すぎない距離で、暖色のベンチに腰掛ける。
暫くの間、並んで流れていく雨粒を眺めた。
アマネ
「……私、男の方と親しくなった事があまりなかったんです」
暗い窓の外を眺めたまま、彼女は話し出した。
男
「……うん」
確かに、彼女が男と親しげに話している姿は見たことがない。
アマネ
「興味もありませんでしたし…、どう接していいかわからなくて……」
彼女自身の話に、隣で静かに耳を傾ける。
アマネ
「でも……、貴方と、サナミさんを見て……すごく……羨ましいって思っていたんです」
男
「サナミと……俺が?」
いつも他愛ない事をやかましく話しているだけの俺達を、彼女がそんな眼で見ていたなんて、意外だった。
アマネ
「…はい。というより……その……貴方と親しい、サナミさんが羨ましかったのかもしれません」
落ち着いた声に、少しだけ恥じらいが混じるのを感じた。
また俯いてしまう静かな彼女の姿に、どきりと心臓が跳ねた。
アマネ
「でも…、私はサナミさんみたいに綺麗でもないですし……、料理ぐらいしか……その…」
男
「そんな事……」
367 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 01:31:50.52 ID:o/452UDO
>>356
確かに。
すっげーみたい
この調子なら明日くらいにはリアルタイム更新かな
368 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 01:45:41.73 ID:gFvH1LI0
ペンタブあるんだが時間がない
色まで塗るとなると結構時間かかるからなぁ。。。
あ、俺の言うガッツリってのはデジタル絵の事ね
んなこたどーでもいいんだが出来れば描きたいと思ってる
でももっと絵師欲しい
369 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 02:23:14.49 ID:9Qz9wEDO
>>368
に同じく時間がないorz
色塗るとなるとけっこう時間かかるからなー
370 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 02:25:55.83 ID:QIJRUuwo
そんな事は決して無い。
淑やかな雰囲気の彼女は、近づき難さすら感じるほど整った顔立ちで、
今、こうして”本当の顔”を垣間見せる彼女は、尚更綺麗に見える。
アマネ
「私の料理を食べた反応とか楽しくて…、それで、つい張り切った料理や振る舞いを……」
創造力豊かな料理を、”張り切った料理”と表現した事に少しばかり引っかかったが、
あれは彼女なりのコミュニケーションだったらしい。
俺はそんないじらしい彼女に対して放った言葉を、心から後悔した。
男
「……なんか、もう二年近くも同じ部活にいたのに、アマネ部長の事全然知らなかったみたいだ」
アマネ
「それは……、貴方が幽霊部員さんだからですよ」
男
「面目ない……」
そう言うと、彼女は少しだけ笑顔を見せた。
冷たい二人の間の空気が、温まる。
俺もつられて、笑い出した。
男
「……帰りますか」
アマネ
「…………はい」
その後は、下駄箱に向かって歩きながら二人で色んな事を話した。
今まで気付くことの無かった、彼女との空白を埋めるように。
人気の無い学校の廊下に、明るい談笑が響いていた。
―――ブゥゥン…
男
「ん…?」
ポケットの中で携帯が震える。
俺はその振動でまだサナミに連絡を入れていない事を思い出した。
男
「ちょっと、ごめん」
取り出した携帯を開くと、サナミからのメールだった。
371 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 02:26:31.55 ID:QIJRUuwo
件名:
『ごめん』
本文:
『先帰るね』
白い画面に映し出された短いメール。
溢れる涙を拭う彼女を思い返して胸が痛い。
アマネ
「……サナミさん、ですか?」
アマネ部長の声に、俺は慌てて携帯を閉じた。
自分でも何に焦っているのかは、わからなかったが。
男
「あ、あぁ……うん、見つかったか?ってさ」
正直に中身を話せば、きっとまた彼女は気負ってしまう。
俺は嘘をついた。
アマネ
「ご迷惑……おかけしました」
男
「大丈夫大丈夫、悪いのは……俺だしさ」
アマネ
「……お二人は……」
俯いた彼女が、吐き出すように口を開く。
男
「ん……?」
二人とは俺とサナミの事だとすぐに判っが、彼女がそれ以上言葉を続ける事は無かった。
俺達は再び訪れた居心地の悪い沈黙を保ったまま、再び歩き出す。
寒々しい廊下を暫く歩いて下駄箱に着くと、そこに俺達以外の生徒は誰も居なかった。
アマネ
「雨、止みませんね」
丁寧に折り畳傘を広げながら、彼女はすっかり暗くなった空を見上げている。
男
「……アマネ部長」
俺聞きそびれていた肝心な事を聞いてみる。
372 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 02:27:27.18 ID:QIJRUuwo
男
「あのメール……許してもらえるかな」
アマネ
「んー……」
空を見上げたまま、考えるアマネ部長。
答えを待つ俺の鼓動は速い。
アマネ
「……許しません」
やはり、俺の謝罪は断られた。
男
「そう……か」
当然と言えば、当然か。
涙を流すほど傷つけた事実は、そう許せるものではないだろう。
アマネ
「……じゃあ、一つだけお願いしてもいいですか?」
男
「え?な……なんでしょう」
アマネ
「その……”部長”って、取ってもらえませんか」
男
「へ?」
緊張して待つ俺に出された願いに、俺は情けない声を出す。
アマネ
「もう、部活動も終わりますし……。私は”部長”ではなくなりますから」
手持ち無沙汰に傘をいじりながら、恥ずかしそうに下を向く。
この大人しい女の子が、彼女の素顔なのかもしれない。
男
「そういえば、そうだな……。わかった。そうするよ」
アマネ
「……じゃあ……許してあげますっ」
艶やかな髪を揺らして向き直る姿に、俺の胸は、また一つ跳ねた。
もうすっかりと暗いグラウンドに、二つの傘が咲く。
373 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 02:28:13.89 ID:QIJRUuwo
アマネ
「それじゃあ」
男
「うん。それじゃあ、気をつけてな。アマネ部長」
アマネ
「部長?」
瞳の奥に鋭い光が見える。
男
「あーあー……。気をつけてな、アマネ」
努めて平静に言ったつもりだが、とても恥ずかしい。
あだ名ではあるけれど、彼女にぐっと近づいた気がする。
アマネ
「……想像以上に、嬉しいです」
名前を呼ばれた彼女は、振り続ける雨も晴れてしまうかのような、笑顔になった。
その顔は、とても同い年とは思えない美しさがあった。
男
「……想像以上に恥ずかしいよ。じゃあ、またね」
アマネ
「……はい。貴方もお気をつけて」
雨の歩道にゆらゆらと揺れて、小さくなっていく花柄の傘。
遠ざかる後姿を見送って、俺は家路についた。
鞄から携帯プレーヤーを取り出して、再生ボタンを押す。
傘を叩く雨音も、水を跳ねる車の音も、何処か遠くへ消えていく。
―――わからないでしょ?自分の気持ち
緩やかなピアノの向こうで、サナミの声がした。
男
「………」
雨よ、どうかこれ以上降らないでくれ。
お前は誰かの涙を思わせるから。
―――ガラガラ……
男
「ただいま」
374 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/11(木) 07:59:57.81 ID:wNNfKyI0
時間ないといいつつ準備に抜かりない絵師に期待
375 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 11:06:21.98 ID:JtijasA0
相変わらず面白いな
がんばれ
>>1
376 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 16:00:40.82 ID:o/452UDO
所々誤字ってるけど死ぬなよ
377 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/11(木) 17:12:12.53 ID:Px3VuwDO
>>1
がんばれ
378 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 17:32:10.58 ID:l0hvOnw0
今日中に追いつきそうだな
新作に期待せざるを得ない
379 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 18:02:55.95 ID:69GsZIDO
がんばれ
>>1
見てるぞ
380 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 18:05:27.26 ID:o/452UDO
製速のゲーム製作企画スレに
>>1
の姿がげふげふ……
381 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:15:37.91 ID:QIJRUuwo
なんでバレたしにたいです
382 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:19:49.03 ID:QIJRUuwo
雨は止む事なく振り続けて、家に着く頃には俺の服は随分と濡れていた。
母
「おかえりー。うわ、あんたすごい濡れ方じゃないの!」
母は傘が下手だとか言って、俺を笑った。
そんな事は初めて言われたし、母も初めて言ったらしい。
その後俺は、丁度出来上がった所の暖かい夕食を食べ、熱めに入れた風呂に入った。
冷え切った身体に、熱いお湯の温もりは、痛いほどだった。
男
「あー……っちい……」
自室の床に大の字に寝転がる。
フローリングのひんやりとした感触が心地よかった。
眼球を刺激する電灯見上げながら、ため息を吐く。
明日からの三連休は、何をして過ごそうか。
誰かと居るのも疲れる気がする。
でも、一人にはなりたくない気もした。
―――ブゥゥゥン……
男
「ん……?」
騒々しい振動で眼を覚ます。
身体が随分と冷えてしまっている。
どうやら少し、眠っていたようだった。
男
「さむ……。誰だろ……」
しょぼつく眼をこすりながら携帯を開くと、 サナミからのメールが届いていた。
液晶の光が眩しい。
件名:
『まど』
本文:
『』
男
「ん?なんだこれ……」
メールにはただ一言だけで、他には何も書かれていなかった。
時計を見れば、寝ぼけるにしてはまだ早い時間だ。
383 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 18:20:17.58 ID:9Qz9wEDO
ほんとだwwww
384 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 18:20:28.13 ID:/w4nenko
>>381
なにがバレたしなないで
385 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:20:41.49 ID:QIJRUuwo
男
「……まど?……あ」
もしかすると、そう思い立ち上がり、乳白色のカーテンを開いて、窓の前に立った。
小降りにはなったが、窓には水滴が幾粒も張り付いては流れていく。
隣り合ったサナミの部屋からは、光が漏れていた。
メールの通り窓に近づいてみたが、特に何も無い。
男
「……どういう……」
予想が外れたのか、いくら待っても何も無い。
諦めて電話でもしようとした時、向かい側のカーテンがさっと開く。
可愛らしい寝巻き姿で、サナミが手を振っていた。
その姿に、この間の”ハプニング”を思い出して少し恥ずかしくなる。
アマネの事があったせいで、きちんと眼を見ることが出来ない。
晴れている日なら、窓を開けて話す事もあるが、今日は生憎の雨だ。
窓は開けられない。
とりあえず手を振り返してみると、突然サナミがしゃがみこんで、見えなくなった。
男
「あれ……?なんだよ一体……」
暫く雨と窓を眺めていると、サナミの頭がひょっこりと出てきた。
男
「お…でてきた」
彼女は一度にっこりと微笑むと、両手で持った板のような物を掲げた。
それは、俺にもはっきりと見覚えのあるものだった。
男
「あ……あれは……」
サナミ
『これ、まだ持ってる?』
古めかしいホワイトボード。そこに書かれた、可愛らしい文字。
幼い頃の記憶が、蘇ってくる。
まだ俺達が小さな頃、”文通ごっこ”に夢中になった事があった。
お互い親に買ってもらった小さなホワイトボードで、窓越しに会話する遊び。
晩御飯に何を食べただの、宿題をやったかどうかだの、なんでもない事を書いては、見せる。
それは俺達にとって、窓越しのキャッチボールだった。
でも、いつの間にか、そんな子供じみた事はやらなくなっていたし、
今の今までそんな物があった事すら忘れかけていた。
386 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:21:22.93 ID:QIJRUuwo
男
「ちょ、ちょっとまって!」
身振り手振りで合図する。
俺は慌ててあちこちの引き出しや押入れを引っくり返す。
男
「どこだ、どこだっけ……!」
俺は小さな頃遊んでいたおもちゃも大事に取ってある。
それに、あのボードを捨てた記憶は無い。
必死になって記憶の引き出しを引っくり返す。
男
「あ……!あった…!」
探し物は、押入れの奥の、古びたおもちゃ箱の中に眠っていた。
マグネットで張り付いた黒板消しに、小さなマジック。
インクこそ切れてはいたが、綺麗なまま大事に閉まっていた幼い頃の自分を、俺は心の中で褒めた。
水性のマジックを取り出して、俺は早速懐かしいボードにサナミへの返事を書いた。
男
『あった!』
待ちくたびれたのか、サナミは窓枠にもたれて座っていた。
聞こえるわけはないのだが、背中に向かって呼びかける。
何度目かの呼びかけで、やっと彼女が振り向いた。
眼を丸くして驚いている。本当にあるとは思っていなかったらしい。
下を向いて返事を書いている姿は、背丈こそ変わったが、”文通ごっこ”をしていた頃と、何も変わっていない。
サナミ
『おそい!ばか!』
懐かしいやり取りに、思わず頬が緩む。
隣に怒っている顔のイラストまで添える所も、変わっていない。
男
『ごめん!』
サナミ
『懐かしいでしょ?』
男
『懐かしいな』
サナミ
『まだ持ってたんだ、エライ』
387 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:22:29.07 ID:QIJRUuwo
男
『褒めてもいいぞ』
サナミ
『ばーか』
言葉の無い会話が続く。
二人とも昔を懐かしんで、他愛も無いやり取りを繰り返した。
顔を向き合わせて話すとも、顔を見ずに済むメールとも違う感覚。
気まずさはとうに感じなくなっていた。
ひとしきりそんなやり取りを続けていると、サナミのホワイトボードに、心苦しい言葉が現れた。
サナミ
『アマネちゃん、大丈夫だった?』
正直、なるべく触れないでおきたかった話に、サナミから触れた。
メールなんかの無機質な文字ではなく、 彼女自身が書いた文字から、生々しい現実味が伝わってくる。
男
『大丈夫だった』
ノスタルジックな時間が、今に飲み込まれていく。
そして、一定のリズムで繰り返されたキャッチボールは、サナミの元で止まった。
聞こえなかった雨音が、又聞こえ出す。
幾らかの沈黙の後、サナミはまた何かを書き始めた。
サナミ
『アマネちゃんの事、どう思ってるの?』
余りにもまっすぐすぎる言葉。
サナミの眼は真剣さに満ちている。
どう思っているかなんて、俺自身わからない。
今日初めて見た彼女の素顔は、とても綺麗だった。
だが、また向けられた好意に対して淡い想いを持ってしまいそうな、自分を責めてもいる。
ペンを握ったまま、右手は動かない。
サナミの視線に、胸が苦しい。
わからないけど、わからないから何か伝えなくてはいけない。
俺はゆっくりとペンを動かした。
>>361
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 20:06:25.46 ID:vbe4Ly3V0
>>358
358 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/04(木) 20:05:57.37 ID:7XchwNfNO
ただの部長としてしか見てないよ
俺はサナミが好きだから
388 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:23:11.63 ID:QIJRUuwo
一文字一文字を書きながら、
俺は自分が一つずつ一つずつ嫌いになる。
自分でも、本心が何処に埋もれているかなんてわからないのに、ただその場しのぎを繰り返す。
男
『ただの部長としか見てないよ』
ボードを上げる、手が重い。
サナミの視線を見つめて、読み終わるのを待つ。
書いた文字を消してから、また書き始める。
文字は消えても、事実は消えない。
もう十分わかっているはずなのに、俺は繰り返す。
男
『俺はサナミが好きだから』
サナミは、窓に押し付けたボードを表情を変えること無く眺めている。
サナミの事は、好きだ。
それはずっと昔から、変わらない。
でも、好きという気持ちに、形は無い。
形が無いから、ふわふわと漂って、俺を迷わせる。
俯いて、何かを書いているサナミを見て、俺は深く息を吸い込んだ。
サナミ
『好きは、大事な時にとっとけ!ばか』
掲げたボードで、顔を隠しながらサナミからの返事が返ってきた。
サナミらしい、元気のいい文字。
ボードの後ろで、顔を真っ赤にしている姿が、簡単に想像できる。
やっぱり、サナミはサナミだ。
何をやっても、全部わかってくれている。
俺の駄目な所も、全部。
男
「……かわいくねーの」
その言葉が聞こえたのか、ボードを下げるサナミ。
サナミ
「(ばーか)」
大きく開いた口の動きで、何と言ったかすぐに判る。
もっとも、例え顔なんか見えなくても、彼女が返してくる言葉は予想出来ていたけれど。
かわいくない所が、かわいいと思う。
窓越しに、また二人に笑顔が戻った。
389 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 18:24:21.86 ID:VG3WWqAo
かなり追いついてきたな
390 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:24:58.72 ID:QIJRUuwo
サナミ
『週末、なにしてるの?』
まだ三連休の予定は決まっていない。
俺は急いで返事を書く。
男
『なーんも予定ナシ』
窓越しに声をあげて笑っているのが分かる。
失礼な奴だ。
サナミ
『じゃ、映画でもいく?みたいのあるから』
サナミから、デートの誘い。
一緒に映画を観に行くなんて随分久しぶりな気がする。
俺は嬉しい提案ににやついてしまうのを堪えるので必死だった。
男
『OK!』
万歳をするように、高々とボードを掲げた。
返事を受け取ったサナミは、親指を立てて、こちらに腕を突き出した。
サナミ
『(おっけー!)』
どちらの目も瞑ってしまいそうな、余り上手くないウインクが微笑ましい。
サナミ
『そろそろ寝るね』
サナミからの言葉で時計に目をやると、時刻はもう頂点に差し掛かっていた。
男
『わかった』
サナミ
『実はあたしも予定ない。日取りはまかせた!』
人の事を笑ったくせに、なんて奴だ。
俺はせめてもの反撃を書く。
男
『お前も暇じゃねーか!』
391 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:25:37.88 ID:QIJRUuwo
サナミ
『うるせーばーか!』
笑い声と共に、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
急にボードを窓枠に置いたサナミが、窓を開けた。
男
「あれ……雨は…?」
俺も窓を開けてみる。
冷たく心地よい夜の風が、吹き抜けていく。
雨はいつのまにか、止んでいた。
サナミ
「……止んだね」
男
「……止んだなあ」
長い時間文字で会話していた分、声を聞くのが少し気恥ずかしい。
雨上がりの空気は澄んでいて、吸い込むと身体が洗われるような気がする。
サナミ
「……じゃあ、連絡してね」
男
「…ん。……んじゃ寝るか」
サナミ
「うん。あ、歯、みがけよっ!」
古いテレビ番組で見た誰かの物真似。
似ているわけもないのだが、それでも俺は、笑ってしまう。
男
「お前もな!」
サナミ
「とーっくに磨いたもんねー」
笑いながら舌を出すサナミの姿は、小さな子供に見えた。
サナミ
「……おやすみ」
男
「ん……。おやすみ」
392 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 18:26:03.69 ID:QIJRUuwo
二人同時に、静かに窓を閉めた。
カーテンを引く手が、なかなか動かない。
それはサナミも同じだった。
鏡と向き合う様に、同じ格好でカーテンを握ったまま、視線が合う。
すると彼女は立てかけてあるボードに、素早く何かを書いた。
サナミ
『マネすんな!ばか!』
最後のボールを投げて、サナミはすぐにカーテンを閉じる。
男
「……かわいくねーなぁ」
にやつく頬を片手で軽く叩きながら、俺は冬の夜に幕を引いた。
ベッドに倒れこむ。
今更ながら、サナミとのデートを楽しみにしている自分に気づいた。
明日はいつもの休日より少しだけ早起きをしよう。
家が隣だと、誘いに行く手間や待ち合わせの必要が無いからいい。
男
「……サナミかぁ……」
投げ出したホワイトボードに、無意識のうちに幼馴染の名前を書く。
卒業を前にして、こんなにも悩む事が出来るとは思ってもみなかった。
―――ぼく、きみの事すきだよ
―――サナミさんが羨ましかったのかもしれません
―――そういうとこ、好きだよ
胸の中で、形の無い何かが揺れている。
縁取ろうとしても、上手くいかない。
本当はもっと、この気持ちと必死に向き合わなければならないのだろう。
でも今は、暖かい余韻に包まれたまま、ぐっすりと眠りたかった。
男
「……おやすみ、サナミ……」
リモコンを使って、部屋の照明を落とす。
俺の意識は、あっという間に暗闇の中へと溶け込んでいった。
393 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 19:50:15.44 ID:QIJRUuwo
こっからやっと三章デート編。もうすぐ追いつきそうです。
↑にも書いたけどリアルタイム更新になったら安価が出る前時間指定で予告します。
何時に書き込むレスには安価あります的な。
あとバレちゃってますがどうせならという事で簡単なノベルゲー計画練ってます。
もし何か協力してくれる人が居たら是非。
394 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 19:55:08.25 ID:Ttu8aTs0
>>1
乙
ようやっとここまできたか
395 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 19:56:27.46 ID:bX0LCL60
>>1
が利益目的じゃなくて純粋にゲーム作りたい、ノベゲにしたいと言うなら協力してもいい
エロゲなら尚更協力してやっていい
396 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 19:57:08.20 ID:GVRQygSO
愛娘…
397 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:05:07.17 ID:9Qz9wEDO
3連休の3日目をサナミにするのが俺の役目だな
398 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:12:03.63 ID:LK9leEAO
じゃあ俺は2日目をサナミに(ry
399 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/11(木) 20:16:27.36 ID:QIJRUuwo
>>395
利益なんてとんでもないです。せっかくなので記念として、です。ありがとう
ノベルゲ製作には興味もあったのでやっちゃおうかなと。エロにいくかどうかはわかりませんが、
とりあえずスレが終わってからシナリオを整えて、となるので結構先の話になりそうです。
400 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:18:11.49 ID:cQ0xYFco
まあどれだけ時間かかったとしても待つけどな
401 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:25:56.34 ID:o/452UDO
ここだけ見てるととてもVIP発とは思えないけど安価内容で吹くwwwwwwwwwwww
ゲーム化とか楽しみすぎるんだが
402 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:33:33.09 ID:jJeFQ/k0
とりあえず
>>1
はさ
ゲーム化云々はストーリーを完結してからにしようぜ
簡単にゲーム化って言えるけどエロゲの延期祭くらいは知ってるよな
正直このSSの倍以上、かつ絵師やプログラムを組む人
他にも色んな支援が必要になってくる
まず
>>1
は集中してシナリオを書き上げてそれからでも遅くない
だからお前は今は余計な事を考えずに書くんだ
403 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:40:49.01 ID:o/452UDO
>>1
は書いてからやるって言ってるのに……
404 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 20:46:28.21 ID:9Qz9wEDO
>>398
確か2日目はト○○にとられてたはずだ
405 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 21:54:42.33 ID:FC.2txo0
サナミが可愛すぎる…文通ごっこと下手なウインクがツボすぎる
406 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 22:27:59.60 ID:GVRQygSO
ト○○は恋愛対象ではない
407 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 22:31:31.49 ID:VG3WWqAo
トミーは[
禁則事項です
]か
408 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 23:16:16.69 ID:jg.Dtl.o
協力したいけど俺にそんなスキルはない・・・このもどかしさはなんだ・・・
409 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 23:17:10.59 ID:jg.Dtl.o
ID短すぎわろた
410 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 23:33:08.73 ID:o/452UDO
三日目はアマネ以外ないな。お前等空気読めよ
411 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/11(木) 23:44:36.17 ID:jb3BUEs0
三日間全てサナミだろ
他はすっこんでろ
412 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 23:56:11.08 ID:9Qz9wEDO
>>411
完全同意。
2日目も取り消しでサナミでおkだよな
413 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/11(木) 23:59:10.09 ID:yh6tBwIo
おまえらトミーのかわいさをまだわかってないのか
414 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 00:01:39.90 ID:NweNwwAO
トミーもササミも飾りですよ
アカネちゃんこそ主役なのです
415 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 00:02:24.38 ID:9IXSfUAO
早くも安価争奪戦の空気だなおまえらww
まぁ俺はサナミとトミーどっちかならいいや
416 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 00:09:49.43 ID:1zJqlok0
トミー(笑)が好きなヤツって絶対咲のタコス好きだろ
417 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 00:11:08.50 ID:guykeTwo
俺はタコス大好きだがそれほどトミーが好きなわけではない
418 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 00:42:05.49 ID:TvT8y6Io
>>416
なぜ俺のイメージが分かったwwww
419 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:12:33.01 ID:exb/oCso
【三章】
―――三連休、一日目
男
「ん………あぁー」
休日の朝ほど早く目が覚めるのはどうしてだろうか。
時計を見ればまだ午前九時過ぎ。
平日からすれば遅すぎるが、ゆっくり寝るにしては早すぎる。
もう一度目をつぶってみても、とうに睡魔は逃げ去ってしまっていた。
男
「……起きるか……」
仕方なく暖かい布団から抜け出すと、ピンと張った冷えた空気が清々しい。
カーテンの隙間から漏れた日差しが、フローリングに白い帯を作っている。
太陽の光に目を細めながら、両手で一気にカーテンを開くと、部屋は明るい光で満たされた。
向かい側に見えるサナミの部屋の窓は、まだ閉じたままだ。
昨晩の事を思い返しながら、軽いストレッチをする。
男
「電話するには……まだ早いな」
今日は連休の一日目だ。
約束のデートの日取りを決めなくてはならない。
身体を動かしていると、頭は徐々にすっきりとしてきた。
俺は大きなあくびをしながら、洗面所に向かった。
冷たい水で顔を洗い終えると、台所から母の声。
母は仕事に追われいる時でもない限り、極力朝から食事を作ってくれる。
包丁がまな板を叩く音は、いつ聞いても心地よい。
母
「おーい、パンかご飯!どっち?」
冷たくなった両手に息を吐きながら考える。
こういう悩みならなんの気兼ねもなし考えられるのに。
男
「どっちでもいーよ!」
母
「もー!どっち!」
酷い寝癖を直しながら答える。
>>569
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
420 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:12:59.26 ID:exb/oCso
569 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:29:27.04 ID:VBr4jpRm0
もちろん母さんさ!
男
「もちろん母さんさ!」
開けっ放しの風呂場に声が響く。
朝食を作る心地よい音が止まった。
母
「……次聞いてふざけたらもーしらないわよ!」
明らかに声のトーンに怒りが含まれている。
俺の冗談は朝から勢い良く地雷を踏んでしまったようだ。
いや、まだ大丈夫だ。
地雷は踏んでも足を退けなければ爆発しない。
上手く処理すれば爆発せずに済むのだ。
母
「どっち!」
母の機嫌も直しながら、更に笑いも取れるような冗談を考えねば。
パンかご飯、難しい選択だ。
パン、ご飯……。
>>576
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 19:41:27.39 ID:bE5ZShFl0
パンパンここジャパーン!!
―――!
男
「パンパ……んぐ!」
自分の口を冷えた手で塞ぐ。
とんでもなく素晴らしいくだらないギャグを思いついて、脊髄反射で口に出してしまいそうになった。
たぶん、口に出していたら朝食どころか命が危なかった。
母
「パン?……あ、ごめん今パン切らしてるんだった」
男
「……………」
421 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:13:45.29 ID:exb/oCso
じゃあ聞くなよと、当然の疑問をぐっと飲み込んで、俺は食卓に向かった。
母
「おはよ、さっさと食べちゃって」
豆腐とワカメの味噌汁、焼き鮭に浅漬け。
食卓に並べられた朝食はよほど前衛的に考えない限りご飯しか合わなそうだった。
湯気を立てる味噌汁をすすりながら、母と向かい合って食事をする。
母
「そういえば、三連休なんでしょ?あんた」
後ろに纏めた長い髪をほどきながら、母が言う。
男
「ん、そうだよ」
母
「どっか行くの?」
母の問いかけに、サナミとの約束を思い出して少しどきっとした。
男
「まぁ……一応」
母
「デート?ねえデート?あ、どうせサナミちゃんでしょ」
男
「どうせってなんだよ!」
母
「手堅くいくわねーあんたも」
ピタリと的中させられてしまった。
大きくなるにつれて、親との会話というものは、なんだかくすぐったくなっていくものだ。
食事を終えて部屋に戻ると、時刻はまだ昼前だった。
ほどよい満腹感を味わいながら、ベッドに座る。
カレンダーには、三つ並んだ赤い数字。
その後ろに控える十四の黒い数字。
男
「はぁー……トミーに……アマネぶち……アマネかぁ」
サナミは必ずくれるだろうから数に入れないとして、期待出来るのは二つ。
トミーは今のままでは少し怪しいかもしれない。
422 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:15:38.86 ID:exb/oCso
男
「……モテ期……」
人生には三度の異性にモテる時期があるというが、
こんなにも一気に好意を向けられるとは、今がその一つなのかもしれない。
しかし、せっかくの連休なのに予定が一つしか無いというのも寂しい。
サナミはいつでも良いと言っていたから、違う誰かと遊ぶ事も出来る。
揺らいでいる気持ちに開き直り始めた自分が、少し嫌になる。
男
「……連絡……してみようかな」
俺は携帯をぼうっと弄りながら、頭に三つの連絡先を思い浮かべた。
>>590
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
590 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:23:51.13 ID:UQ0sD6x00
サナミ
画面に表示されるサナミのアドレス。
昨日の今日、しかも午前中に早速電話したら、がっついている印象を与えないだろうか。
男
「……ふっ……」
サナミに電話をするというだけで、そんな事を考えるようになった俺自身に思わず笑ってしまう。
一呼吸ついてから、ゆっくりと通話ボタンを押した。
―――ルルルル……
コールを聞きながら立ち上がって窓の前に立つと、サナミの部屋のカーテンはまだ閉まっている。
まさかとは思うが、まだ寝ているのだろうか。
三度、四度とコール音が続くが、出る気配が無い。
男
「……まだ寝てんのか……?」
十数度目のコールの後、俺は諦めて携帯の赤いボタンに指を伸ばす。
その瞬間、聞き飽きた電子音が止まった。
サナミ
『………んー……おは…よ……』
少し擦れた、寝起きの声が聞こえてきた。
いつも聞く声とは違う気の抜けた声に、彼女から気を許されているのだと感じて、嬉しくなる。
423 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:16:04.69 ID:exb/oCso
俺はまだ閉まったままのカーテンを見つめながら、
寝ぼけたままのサナミに、朝の挨拶をした。
>>609
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
609 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 20:46:50.15 ID:AP+ViobA0
よう、雌豚
しかし、気を許しているとはいえ、いくらなんでも寝すぎじゃないだろうか。
俺は早くから起きて一日の事や、もちろんサナミの事も考えていたというのに、こんな時間まで寝ているとは。
なんだかそう考えると俺は少し腹が立ってきた。
どうせなら何か文句の一つでも言ってやろうかと考えていると、ふと机の上に置いてある物に目が止まった。
そこで俺の脊髄反射スイッチが反応した。
男
「よう、雌豚」
終了。
頭に浮かぶ二文字。
全身の毛が逆立つ。
目に入ったのは豚の貯金箱だった。
そこから連想する文句が”雌豚”とは、我ながら余りにも酷い。
携帯の向こうからは布団の擦れる音しか聞こえない。
もう、怒るのも通り越して呆れられているのか。
サナミ
『……うぇ…?なんてー……?』
聞こえてきたのは、さっきにも増して寝ぼけた声だった。
強張った身体の力が抜ける。
男
「……お前……、また寝てたろ」
サナミ
『……んー……ねちゃった……』
人格さえ疑われかねないとんでもない暴言を聞かれなかった事に、胸を撫で下ろす。
時折閃光の様に舞い降りる愚考は、一体なんなのだろうか。
男
「おーい。起きてるかー……」
恐らく枕に埋まったまま話しているのだろう、携帯の向こうからはサナミの小さな呼吸音が聞こえる。
424 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:16:32.29 ID:exb/oCso
サナミ
『んー……あぁ……あんただったの……だれかみてなかったぁ……』
やっぱり怒ってもよかったかもしれない。
先ほどの小さな喜びを返して欲しかった。
携帯を耳に当てたまま少しうな垂れる。
サナミ
『……もーにんぐこーる…?』
男
「……もう昼だけどな。おはよう」
サナミ
『……おはよぉ……ばぁか』
力の抜けた甘ったるい声に、俺は背筋がぞくぞくとあわ立った。
こんな不意打ちは卑怯だ、俺の溜飲は一気に下がった。
向かい側のカーテンがさっと開いて、目を細めたサナミが手を振っている。
昨日とは違い、お互いの顔を見ながら声を聞く。
日光に照らされて透ける髪がキラキラと輝いていた。
サナミ
『まっぶしー……』
男
「寝すぎだっつーの」
言いそびれた文句を言ったが、猫のように背を伸ばして、全く聞いていない。
サナミ
『んー……!顔洗ってくるからかけなおしていい?』
男
「お、おう……。わかった」
もう少しこの甘い声を聞いていたいとも思ったが、渋々携帯を切った。
サナミは窓の向こうでひらひらと携帯を振ると、足早に部屋を出て行く。
今更ながら、こんなにも近くに彼女が居る事に感謝した。
ベッドに寝転がりながら待つ事十数分。
枕元に放った携帯が震えた。
男
「ういーす」
サナミ
『ういーっす。こんな時間にどしたの?』
425 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:16:59.50 ID:exb/oCso
聞こえてくるにもう先ほどの甘さは無かったが、いつもの元気の良いサナミの声も、気持ちが良い。
男
「どーしたのって……」
映画に行きたいと言ったのはサナミの方だが、もしかしたら忘れているのだろうか。
>>633
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:01:38.89 ID:UQ0sD6x00
デートしようぜ
もう一度窓の前に立つと、俺の姿に気づいたサナミがこっちを向いた。
ヘアバンドで束ねた髪が健康的だ。
サナミ
『なに?』
男
「デートしようぜ」
二人で遊ぶ事をそんな言葉で呼んだ事は、これが初めてだった。
言った途端に俺の心拍数は上がっていく。
サナミ
『お、今日行くつもりだったの?いいよー』
”デート”に関してつっこまれると思っていたが、そこはさらりと流された。
向こうもそう思っているんだろうか。
サナミ
『んー……じゃ待ち合わせは一時ね』
こちらに人差し指を立てるサナミ。
時計を見ると、まだ時刻は十一時になったばかり。
随分と遅い待ち合わせ時間に思える。
男
「いいけど……えらく遅いな」
男女のデートの待ち合わせにしては早いかもしれないが、
家が隣同士の俺達は、午前中から遊ぶなんて事も多かった。
男
「映画の時間も調べてないし……」
426 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:21:05.03 ID:exb/oCso
サナミ
『うるさいなぁー』
男
「え?」
向かい側のサナミはしかめっ面だ。
何か気に障ることでも言っただろうか。
サナミ
『”デート”なんでしょ?』
デートの部分を強調して言う。
サナミ
『だったら、おめかししなきゃ、ね?』
男
「な……できてねーよ」
上手くないウインク。俺は眩しい彼女の姿に照れを隠すのが必死だった。
どぎまぎと上手く言葉が出ないのが余計に恥ずかしい。
電話は準備をするからと言われ、半ば一方的に切られた。
向こう側には、軽い足取りのサナミが見える。
くるくると回りながら随分と楽しそうだ。
男
「……お……!」
まだ寝ぼけているのだろうか、
サナミはあろう事かカーテンを開きっぱなしにしたまま、
その可愛らしい寝巻きのボタンに手をかけている。
男
「ちょ……!あ……!」
一つ目、二つ目とゆっくり外されていくボタン。
このままでは完全に覗き、変態扱いされてしまう。
俺は自分の部屋のカーテンに手をかけた。
さすがにこれは……まずいだろう……。
>>646
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
646 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 22:38:37.15 ID:pUddFELz0
シコる
427 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 01:31:38.07 ID:ciqKAwSO
サナミ…いやらしい子…
428 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:31:53.35 ID:exb/oCso
三つ、四つ……少しずつ外されていくボタン。
俯いたままのサナミはこちらに気づかない。
いやらしい目で見れば、いや、見なくともサナミの胸は一目で見て分かるほど形が良い。
彼女の部屋で起こったハプニングがフラッシュバックする。
俺は自分のある部分に血流が流れていくのを感じた。
男
「あー……」
たぶん、大きな動きでもすれば流石にこちらに気づくだろう。
しかし俺は大きな動きどころか、恥ずかしい事に、主張しはじめたある部分を小さく触る事しか出来ない。
服の上から少し触るだけで背中に寒気が走る。
こんな所で、幼馴染がこれから俺とデートをするために着替えているというのに、俺は何をしているのか。
後ろめたい気持ちが更に血流を加速していく。
男
「……やば……いな……」
男は恐らく、こういう場面に出くわしたら無意識にある部分を触ってしまうと思う。
きっとそうだ、そうでなければ俺がただの変態という事になってしまう。
幸い、窓枠からは俺の上半身しか見えない。
俺は、生唾を飲み込み暫くしていない、久しぶりの行為にふけろうとしていた。
ゆっくりとスウェットを脱ごうとしたその時…
男
「うわっ!」
サナミがこちらを向いた。
ほぼ全てのボタンが開いた寝巻きを抱くようにして隠して、
怒っているのか恥ずかしいのか、複雑な表情で窓に近づいてくる。
恐らく俺が何をしようとしていたかまでは見えていないはずだろうが、
驚きの余り両方の手を降伏するかのように上げた。
サナミ
『(ばか!!!へんたい!!)』
聞こえないが、何を言っているかはわかる。
片手で力いっぱいカーテンが引かれ、楽園の覗き窓は一瞬で閉じた。
男
「……自分が閉めてなかっただけじゃん……」
両手を下ろした俺のある部分も、両手と同じようにうな垂れた。
これで今日彼女に会った時の一言目が、”変態”か”ばか”、それともその両方に決まった。
男
「…………はぁ」
429 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:32:34.62 ID:exb/oCso
いつまでも萎えていても仕方がない。
気がつけば約束の時間まであと三十分ほどしかない。
俺は急いで身支度を整える事にする。
母
「おー気合はいってるわねー。青春はいいけどうるさいから静かに用意しなさい」
上へ下へと駆け回っていると、仕事中の母から冷やかしとお叱りの声を貰った。
しかし困った。
サナミはおめかししてくると言っていたが、俺はどんな服で行けばいいのだろう。
特に決まった系統を好んでいるわけではないから、クローゼットには大体の種類がある。
浅く広くというやつだ。
あまり気合を入れすぎても引かれそうだが、一体どんな服がいいのだろうか。
時間が無い、早く決めなければ。
>>668
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
668 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/05(金) 23:17:37.69 ID:AP+ViobA0
パイロットスーツ
男
「……そういえば……」
―――!
また来た。俺の脳に閃光が走る。
昔彼女と一緒に、空軍が舞台の映画を見ていた時、パイロットスーツでデートに来る空軍パイロットを見て、
”こんな格好で来られたら、かっこいいに決まってる”と言っていた。
確かに、男の俺から見てもそのパイロットから溢れるオーラはかっこいいと感じた。
男
「……これだ」
土壇場で起こるこの奇跡的な閃きは、さながらアニメでいう”ニュータイプ”ではないのかとさえ思う。
残念ながらアニメの中のパイロットスーツは持っていないが、
感化されて衝動買いした空軍のパイロットスーツのレプリカなら持っている。
俺は急いでクローゼットの中からカーキ色のつなぎを引っ張り出した。
男
「あとは……これだ!」
引き出しから取り出したのは、ティアドロップ型のサングラス。
これがないとパイロットとは言えない。
全て身につけて、鏡の前に立つ。
俺はサナミという戦闘機を駆る大空の支配者だ。
430 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:33:00.02 ID:exb/oCso
男
「……よし!」
待ち合わせ時間、十分前。
やはりここは先に行って爽やかに待っていたほうがいいだろう。
俺は急いで階段を降りる。
母
「うるっさいわねー……」
リビングの前で不機嫌そうな母とエンゲージした。
俺はどうやら彼女の領空を侵犯したようだ。
母
「うわ……!何その格好!それで行くの!?」
目を丸くする母から失礼な言葉がFOX2。
男
「似合ってるだろ?」
だが俺はそのミサイルを華麗に回避した。
俺の放つ大空の偉大がわからないのだろうか。
母
「に……、似合ってないとは思うわよ…?」
全く、女というものは、いつだって男のロマンにはついて来れない。
そう、男のロマンは音速を超えるのだ。
俺は母に鋭い敬礼をする。
男
「テイク・オフ!」
俺は滑走路を飛び立った。
母
「……本物のばかだわ」
なるほど、これは良い。
本格的なティアドロップのサングラスは、眩しい太陽の光線をしっかりと遮断してくれる。
これで眩しい彼女を見つめても、安全だ。
待つ事十分、背後で玄関の開く音がした。
ゆっくり近づいてくる足音。
俺は柱の影からさっと飛び出した。
男
「よう!」
431 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 01:35:54.64 ID:9bSL.gY0
上で話題になった製作スレから来ました
おおおおおすげえ、更新きてる、超きてる、エロくなってまいりましt…ふぅ
読んでみた個人的なイメージでラフ描いてみました
とりあえずサナミさん
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org717505.jpg
432 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:39:28.26 ID:exb/oCso
あの日見た映画のように、限りなく爽やかな挨拶。
とろけるような目で俺を見つめるサナミが目に浮かぶ。
ところが……
サナミ
「……ぶっ……!!!」
男
「……え?」
サナミは両肩を震わせながら口元を押さえている。
どうしたんだろうか、鼻血でも出たのかと心配になる。
サナミ
「な……なにそれ……!ぷっ……あはははは!!!」
玄関の前にしゃがみ込んでお腹を抱えるサナミ。
大きな笑い声は、正に”爆笑”という言葉に当てはまるほどだ。
男
「え……え?」
笑い転げるサナミを見て、
俺は少しずつ自分の意識がはっきりしてくるのを感じた。
失敗したのか。
そんなはず無い。これがかっこいいと言ったのはサナミのはずだ。
俺は背中に冷たいものが走る。
サナミ
「もう……お腹いたいよぉー……!あははは…!」
肩で息をしながら、サナミの笑いは段々と収まってきた。
立ち上がった彼女の眼には涙さえ浮かんでいる。
サナミ
「はぁー……だっさい!」
男
「……!」
俺は全身の血が引いていく音を、はっきりと聞いた。
ださい……、だと。
サナミの一言で、俺は憑き物が取れたかのように突然恥ずかしくなる。
男
「いや……、これは…!」
433 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:40:28.12 ID:exb/oCso
サナミ
「あんたってほんっとばかだね!もー……怒る気も失せちゃった!あははは!」
どうやらサナミは、さっきの事を誤魔化すためのギャグだと思ったらしい。
それもそうだ、冷静に考えればここがアメリカならばまだしも、
こんな格好でデートする一般の日本人が何処に居るのか。
考えれば考えるほど血の気が引いていく。
不幸中の幸いは、サナミが勘違いしてくれた事だ。
俺はその幸運な勘違いにのっかる事にする。
男
「よ、よかったぁー!受けなかったらどうしようかと思ったよ!」
真剣に引かれる様子は想像さえしたくない。
サナミ
「もー……また笑っちゃうから早く着替えて来て!ばか!」
男
「お、おう!ちょっと待っててな!」
離陸したばかりの俺は、一瞬で墜落し、帰還した。
母
「あら、帰ってきたの?」
半笑いを浮かべる母をスルーして部屋に戻ると、もう一度冷静になって鏡の前に立つ。
ブカブカのスーツに、似合わないサングラス。
テレビで似たような格好のお笑い芸人を見た事があった。
男
「……きんめぇ」
サングラスを放り投げて、俺はすぐに空軍を引退した。
急いで変わりの服を探す。
爆笑してくれたおかげで、ハードルは下がったはずだ。
俺は普段から愛用しているデニムとジップアップに着替えると、上着を持って階段を駆け下りた。
母
「あれ?帰ってきたの?」
男
「あ、あぁ、さっきのはギャグだったし」
母
「そうよねぇ?私だったら殴ってるわ」
434 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:41:00.06 ID:exb/oCso
男
「…………行ってきます」
やはり司令の言う事は聞いておくべきだった。
急いで靴を履き、玄関を飛び出す。
男
「悪い悪い!おまたせ」
サナミ
「早かったじゃん。マッハ?マッハ出した?」
玄関の前には、完全に馬鹿にした目つきでくすくすと笑うサナミが待っていた。
俺は本当に顔からアフターバーナーが出た。
男
「これならいいだろ?」
サナミ
「んー……合格かな?じゃーいこっか!」
未だくすくすと笑うサナミと一緒に、俺は歩き出した。
サナミは冬らしい白を基調としたカジュアルな格好で、シンプルだがスタイルの良さが際立つ。
さっきはそれどころじゃなかったが、改めて見ればとても可愛い。
ごくナチュラルなメイクもよく似合っている。
もし俺がタレントか何かのスカウトマンなら、名前ぐらいは聞きにいくだろう。
サナミ
「ん?何?」
突然振り向かれて、思わず目をそらす。
男
「いや……なんでも」
サナミ
「ふーん……」
男
「………」
サナミ
「……せっかくお洒落したのになー」
少し不機嫌そうな顔で、サナミは聞こえるように不満を漏らした。
やっぱり、ここは褒めたほうがいいのだろうか。
435 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 01:44:35.76 ID:X2j.XjYo
>>431
いいよいいよー
436 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 01:46:03.05 ID:GSYkbUDO
>>431
製速住人すごすぎワロタwwwwww
さあ大変な事になってまいりました
437 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 01:48:07.74 ID:yPiJhGY0
人が減ったから他のスレで宣伝してまた集めてきたのか
438 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 01:56:49.91 ID:exb/oCso
もうちょっとで追いつく……。
>>431
仕事速いです……。まさかこっちにあげてくれるとは思わなかった。
終わってシナリオとスクリプトってなるとかなり気が長い話になるので、気長に待ってて下さい。
絵の方は全く問題ないどころかもう言う事ないです。
恐縮ですがしいて言うなら、もう少し強い(物理的にではなく)イメージが足されてもいいかと思います。
439 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 02:01:04.45 ID:9bSL.gY0
イメージがつかみやすかったのでトミーをラフってみた
「違うんだよ、もっと、こいつ等はこうでなくちゃ」とかありましたらお願いします
先に投下されてたらしいイラストが見れないのがあって、皆さんがどんなイメージしてるのか分からなくて
自分の趣味詰め込みました
他のキャラは悩み中
http://pc.gban.jp/?p=17932.jpg
440 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 02:02:16.07 ID:9rza7YDO
>>431
やべえ、うめえwwww
自分がサナミかいて晒してたの恥ずかしいわwwww
441 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 02:06:53.17 ID:9bSL.gY0
>>438
物理的にではなく強いイメージとな
上でうpされてる絵がおしとやか多めだったから、てっきりでしたぁぁぁゴメンナサィィ
精神的な強さがにじみ出る感じでしょうか?
442 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 02:09:17.16 ID:GSYkbUDO
下げて下げて!原画さん出来たら下げて!
トミーは黒髪のイメージだったけどこれはかわいい
443 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 02:13:59.40 ID:exb/oCso
男
「えっと……」
>>728
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
728 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 00:29:13.97 ID:qXOsgQNF0
トミーに明日デート仕様とメールスル
俺の言葉を待ち構えるような表情でこちらを見るサナミ。
俺はその後ろに、ふと見覚えのある人影が横切るのを見た。
小さな身体に、ふわりとした帽子。
突然現れたトミーの影に、心臓が跳ねる。
サナミ
「ん?誰か居たの?」
サナミは振り返って俺の視線の先を見る。
だがよく見れば、似た帽子を被った少女だった。
サナミと遊んでいる最中に、人違いといえトミーの事を考える自分がすごく嫌いだ。
だが、この不安定な気持ちを確かめるには、彼女に会わなければ。
サナミ
「……?」
思い立ったが吉日という言葉があるくらいだ、首をかしげるサナミを尻目に、
俺は立ち止まってポケットから携帯を取り出す。
サナミ
「……何してんの?」
耳から入るサナミの言葉は、俺の思考中枢まで届かない。
あまりに不自然なタイミングで携帯を握っている。
何をやってるんだ、俺は。
自分でも情けなくなるほど愚かだとは判っている。
それでも誰にも嫌われたくない俺は、持てる力を全て使って、壮絶なスピードでトミーへのメールを作成した。
件名:
『俺だけど』
本文:
『トミー!明日暇かな。よかったら、何処か行こうぜ』
点滅する送信の文字。
怪訝そうなサナミが近づいてきた。
444 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 02:15:13.59 ID:exb/oCso
サナミ
「……ねえ、誰にメールしてんの?」
男
「いや……これは……」
どうして……。
どうしていつも俺はこうなのだろう。
大事な時に、いつも選択を間違える。
サナミ
「……女の子と居るのにメール?」
半ば呆れ顔のサナミ。
俺は彼女を褒めようと、そう思ったのに。
楽しい時間を台無しにしたくない。サナミに、嫌われたくない。
右手に光る送信完了の画面。
―――!
俺は本当にずるい男だ。
サナミをなだめながら右手でメールの作成画面を開く。
嫌な汗が背中に走る。
サナミ
「ちょっと!何やってんの!?」
握っていた携帯は、次の瞬間サナミの手に収まった。
サナミ
「…………」
黙って携帯を見つめるサナミ。
心臓が痛い。
サナミ
「………ばか……回りくどいって……」
そっぽを向いて、携帯をつき返される。
携帯の画面に表示されていたのは、新しいメール作成画面。
件名:
『』
本文:
『すっげーかわいいよ』
445 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 02:18:33.50 ID:exb/oCso
トミーへのメールを誤魔化すために、思いついた手段。
それは文字で気持ちを伝える事だった。
書いた事は本当に思った事だったが、耳を赤くする彼女の姿に俺の胸はつぶれそうなほど、痛んだ。
またその場しのぎを繰り返した。
こうして俺はどんどん自分が嫌いになっていく。
サナミ
「……頑張ってよかったかな?」
照れくさそうに微笑むサナミ。
男
「うん、大正解」
サナミ
「さっきのパイロットも、正解だったよ!」
また声をあげて笑う。
俺もつられて笑う。
俺が誰を好きかなんて、今は関係ない。
ただ今日は、今日という日をしっかりと二人で楽しむべきだと思った。
―――映画館
ここ最近、近くに出来たばかりのシネコンがある。
電車で数駅ほどの距離にあるのだが、俺はまだ来たことが無かった。
男
「うわぁー……でっけえ」
サナミ
「あれ?来たことないの?」
男
「一人で映画なんて観ないからな。サナミは来たことあるの?」
サナミ
「あるよー。一回だけ友達とね」
広々とした空間は淡いブルーにライトアップされていて、さながら宇宙船の中に居るような雰囲気さえある。
SF好きの俺としては、映画を見る前からわくわくしてしまう。
男
「しっかし……」
辺りを見渡して、俺はため息をついた。
446 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 02:19:10.08 ID:R7mSGvI0
>>431
待望の絵師キター!てかうまww
>>316
だけどもう
>>431
あとは任せた
447 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 02:19:20.77 ID:exb/oCso
サナミ
「うん、わかるよ……」
さすがの三連休初日とあって、かなりの数のカップルや家族連れでごった返している。
右を見ても左を見ても、二階建ての建物の上を見ても、そこら中に人、人、人。
あまりの人の多さに、俺は圧倒されてしまう。
その人の多さに、二人の距離は必然的に近くなる。
肩と肩が触れ合うのは、恥ずかしいがなんだか嬉しい。
サナミ
「で、どれ観よっか?」
上映スケジュールを見上げながら、サナミが言う。
男
「あれ?観たいのあったんじゃなかったのか?」
サナミ
「んー……あったけど、迷ってる」
男
「この時間だと……そうだなぁ」
周りを見れば、同じようにスケジュールを見上げるカップルが数組。
その中に混じってこうしていると、自分達までカップルのように思えてくる。
サナミ
「ねぇねぇ、あれは?あれ!」
俺の腕をぐいぐいと引っ張り、サナミが指差した映画は……
男
「……”死霊達の孤島”?思いっきりホラーじゃん……」
そうだった。
サナミは映画といえばホラー、
ホラーといえば映画というほど、ホラー映画が好きなのだ。
サナミ
「すっごい面白そうなのにー。ゾンビだよ?ゾンビ。孤島だよ?」
熱く解説をするサナミ。
要約すると自家用ボートでバカンスを楽しんでいた男女達が、荒波に飲まれて難破する。
気が着けば死霊だらけの孤島に流れ着いて、疑心暗鬼に満ちたサバイバル、というベタなものだ。
なんでもゾンビ映画の巨匠の作品だとかで、前評判がすごいらしい。
男
「……他に候補は?」
448 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 02:22:56.22 ID:9bSL.gY0
>>442
うあああ忘れてましたぁあぁああごめんなさいごめんなさいorz
449 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 02:23:37.50 ID:exb/oCso
俺は別にホラーが嫌いだというわけではないが、どうにもデートとホラーが結びつかない。
サナミ
「んー……あと面白そうなのは……あんたなんかないの?」
男
「そうだな……、あ、あれ!あれ観たかったんだよ!」
サナミ
「えー……”ドリーム・トラベラー”?SFかぁー……」
俺のイチオシが難色を示されてしまった。
ホラーも一種のSFみたいなもんではないのか。
俺はイチオシ映画の面白さを必死にサナミに説明した。
夢がコントロール出来るようになった未来で、夢の中に閉じ込められてしまう新病が人類を襲う。
閉じ込められた人の脳に入り、様々な夢から人々を救出するドリームダイバー達の物語だ。
圧倒的なCGとハイテク演出、取り入れられた東洋のテイストが絶妙にSF心をくすぐる。
サナミ
「……ちょっと本気すぎて怖いよばか」
大袈裟に身体を引くサナミ。
少し必死になって解説に力を入れすぎた。
同じ時間帯で残る映画はあと一つ。
男
「あとは……」
サナミ
「……”近恋”かぁ」
携帯小説が原作になっている、ラブストーリーだ。
幼馴染に恋をしてしまった少女が、色んな壁にぶつかりながら、近くて遠い幼馴染と結ばれるまでを描く青春映画。
有名な俳優やモデルが出る人気の作品だけあって、内容はもちろん知っていた。
でも、わかりやすいほどに当てはまる内容過ぎて、リストから見て見ぬふりをしていた。
サナミ
「……どれにしよっか」
男
「……そうだな……」
>>801
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
801 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 02:17:07.28 ID:zmweF1jc0
死霊達の孤島
450 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 02:24:55.16 ID:9bSL.gY0
ぃあぃあdfはえpはえtrh
初心者丸出しサーーーーーーセンもうROMるごめんなs
それにしても男、読んでてモヤモヤするぜ…だがそれがいい
451 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 02:31:25.23 ID:QPeBBkDO
なんか可愛い人だな
452 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 02:34:15.09 ID:exb/oCso
>>450
サナミもトミーも大枠で100点以上の出来です。
サナミに関してはもう少し目元がキリッとしてる方が良いかと思います。
サンプル画とかあげるのは企画スレの方でもいいみたいなんで、そっちでやりましょう。
一応まだ進行中のスレですのでここで相談してると色々と……。申し訳ない。
ぼくのかんがえたさいきょうの○○ちゃんイラストももっと見たいです。
皆さんが居ないとここまで来てなかったので、皆さん今後もがんがん意見お願いします。
453 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 02:35:58.94 ID:9bSL.gY0
>>452
はーーい、わかりましたー!
お騒がせしました…ですorz
454 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 03:07:44.35 ID:exb/oCso
やっぱり、サナミから誘ってくれたのだから、彼女の好きなものを観よう。
男
「じゃあ、ホラーにするか……」
サナミ
「ほんと!?びびんなよー?」
男
「びびんねーよ!」
サナミ
「パイロットだもんねー?」
男
「あれはもう忘れてくれ!」
今朝の事は、たぶんこの先暫く弄られ続けるだろう。
よっぽど嬉しいのか、サナミは子供のようにはしゃいでいる。
俺は大味な展開のホラー映画を想像しながら、列に並んだ。
―――十分後
係員
「いらっしゃいませ!どちらの映画でしょうか?」
列を抜け、チケットカウンターの前までたどり着いた。
随分と長い列に思えたが、サナミと話しているとあっという間だった。
並んでいる途中、行き交う男女がちらちらとサナミを横目で見ていくのが、少し痛快な気分だった。
隣に居る俺は、吊り合いが取れていないと笑われていたのかもしれないが。
男
「えっと、”死霊達の孤島”を、学生二枚」
係員
「はい、少々お待ち下さい」
さすがに大手のシネコンとあって、ハキハキと元気の良い接客だ。
暫くすると、発券を行う作業を止めて、係員がこっちに向き直った。
係員
「お客様、ただ今”近恋”の上映に合わせまして、”ラブムービー”というキャンペーンを行っております」
男
「は、はい……」
サナミ
「あ、知ってる!」
455 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 03:11:31.22 ID:exb/oCso
なんともくすぐったい名前のキャンペーンは、どうやらカップルを対象に抽選を行って、
優先的にカップルシートと呼ばれるペアシートに座らせてくれるものらしい。
係員
「よければ、抽選の方いかがですか?」
いかがですか、と聞かれても。
サナミはといえば、前髪を触りながらキョロキョロ落ち着かなさそうだ。
男女のペア全員に言っているのだろうが、確かにカップルという言葉に妙な落ち着かなさを感じる。
係員
「いかがなさいますか?」
>>811
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
811 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 03:00:46.32 ID:+OL3481R0
お願いします
まるで聞こえないフリをするかのようなサナミを横目に、俺はせっかくなのでやってみることにした。
係員が持ってきた座席表を見れば、あと数席しか残っていないが、これでもし引き当てれば儲けものだ。
男
「お願いします」
係員
「はい!ではこちらの箱の中からクジをお引き下さい」
横に並んだ人たちがちらちらとこちらを見るのがすごく恥ずかしい。
俺はサナミの腕を引っ張る。
サナミ
「え、え?な、何?」
男
「俺くじ運ないからさ、サナミが引いてくれよ」
サナミ
「えっ、あたしが!?」
男
「うん、任せた!」
サナミ
「もー……」
456 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 03:11:56.93 ID:exb/oCso
俺にクジ運が無いのは本当だった。
小さい頃からくじという物に全く持って当たった記憶が無い。
どうせ恥ずかしい思いをしてまでやるのだから、当てたい。
男
「頑張れよ!」
小さく頷き、箱の中を探るサナミ。
サナミ
「んー……これ!」
引き抜いた手の先に握られたクジを、恐る恐るめくる。
サナミ
「……あ!見て!!」
驚きに満ちた目で俺を見るサナミ。
その手の中には、二重に描かれたハートマークの中に、”当”の文字が書かれたクジがあった。
係員
「おめでとうございますー!二重ハートですので、中央後列のシートになります!」
当たった。しかも残り一枚しかなかった一番観やすい席だった。
やはりサナミに頼んで正解だった。
俺が引いていたら残念賞のポケットティッシュになっているところだ。
男
「一番いい所じゃないか!すげーなサナミ!」
サナミ
「え、ほんと?すごいすごい!やったぁ!」
俺も嬉しいが、引き当てた本人が一番喜んでいる。
はしゃぐ声に周囲の客達が皆こちらを向いている。
薦めてくれた係員にお礼を言いチケットを受け取ると、俺達は早足で視線の中心から離れた。
サナミ
「へっへー!偉い?偉い?」
特別な模様の書かれたチケットをちらつかせながら、サナミは嬉しそうに微笑んでいる。
男
「偉い!ほんとに当てるとは思わなかった」
俺も嬉しくなって、一緒になって喜んだ。
ひとしきりはしゃいだ後、今度は売店の列に並ぶ。
最初は鬱陶しかった人ごみも、サナミと一緒なら苦にはならない。
457 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 03:13:16.56 ID:exb/oCso
男
「映画館といえば……?」
メニューを見ながら聞いてみる。
サナミ
「……ホラー!」
男
「違うだろ!今売店に並んでるんだぞ?」
元気で利発なサナミも、ごく稀に本気ですっとぼけた事を言う時がある。
俺は思わず笑ってしまった。
サナミ
「ポップコーンでしょ?わかってるわかってるって!あ、あたし塩味ね?」
男
「絶対素で間違えたくせに……」
そんなやり取りをしていると、俺達の番が回ってきた。
係員
「いらっしゃいませー!ご注文お決まりでしょうか?」
ポップコーンにホットドッグ。ポテトにクレープ……。
色んな物がおいてあるが、とりあえず、定番のものが一番良いだろう。
男
「じゃあ、ポップコーンの塩味と、アイスティーのレモンを」
何が飲みたいのか聞こうと思い振り返ると、サナミは少し恥ずかしそうに言う。
サナミ
「あ、飲み物Lにして下さい。以上で」
係員
「かしこまりましたー!少々お待ち下さい」
サナミの言葉が一瞬、どういう意味かわからなかい。
係員は商品を取りに、俺達の前から足早に動いた。
男
「ん?何もいらないの?」
サナミ
「う、うん。一つ頼んでも、一人で……飲みきれないし」
458 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 03:21:44.84 ID:exb/oCso
そういう事か。
一つを二人で飲むという事。
合理的と言えば合理的だが、よく考えれば……恥ずかしい。
俺はあくまでも平静な顔で、返事をする。
男
「そっか、それも……そだな」
少しよくわからない沈黙。
こんな事で照れてしまうようでは、ペアシートになんて座れるのだろうか。
我ながら自分の”うぶ”さに苦笑いが出る。
サナミ
「……ねえ」
ふと、サナミがこちらを向いた。
サナミ
「あたしたちってさ……、やっぱり、カップルに見えるのかな?」
微笑み、少しだけ首をかしげるサナミ。
その赤い顔に、こっちまで恥ずかしくなる。
男
「……そりゃあ……」
>>827
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
827 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 03:43:23.76 ID:3j558zb00
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
も・ち・ろ・んだぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!
”うおおおお!!! も・ち・ろ・んだぁあああ!!!!”
俺は腹の底から叫びそうになるのをぐっと堪えた。
可愛い……。
いつも強気なサナミが照れている姿は、ずるい。
そんな質問されたら、叫びたくなって当然だ。
だが、こんな所でそんな事叫んだら、たぶん嬉しさや冗談を通り越して、迷惑な上きっとサナミは怒り出す。
気持ちを落ち着けて、俺は答えた。
男
「もちろんだ!」
459 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 03:43:18.21 ID:exb/oCso
みるみる赤くなっていくサナミの顔。
サナミ
「そっかぁ……そーかなぁ……迷惑な話だよっ、ばーか!パイロット!」
照れ隠しなのか、声が大きい。
男
「パイロットかんけーねーだろ!」
今朝を思い出したのか、また口を抑えて笑い出すサナミ。
係員
「お待たせしましたー!ごゆっくりどうぞー」
またツボにはまっている彼女は放っておいて商品を受け取ると、
チケットの番号を確認して俺は歩き出した。
サナミ
「ちょっと置いてかないでよ!ばか!」
男
「受けすぎだっつーの!ほら、いこーぜ」
傾斜状になった劇場に入ると、既に席はほぼ満員状態だった。
チケットの番号を確認しながら、席へ向かう。
男
「……あれか」
サナミ
「うわぁ……」
思わず声が漏れてしまうのも仕方ない。
シックな色で統一された劇場のシートとは違い、
目的の”カップルシート”は濃いピンクと赤色で彩られ、これでもかといわんばかりに存在を主張していた。
満員の劇場で、ぽつんと開いたピンクのシート。
これで目立たないはずがない。
男
「……座るか」
サナミ
「……か、かわいいよね?」
人の間を通り抜けて、やっとの思いで席に座る。
見た目はどうあれ、新しく作られたシートは柔らかく、他の座席よりも間がない分広い。
おまけに中央の後ろ側という事で、見晴らしも抜群だ。
460 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 04:10:02.38 ID:ciqKAwSO
ついに追いつくか…
461 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 04:21:40.58 ID:exb/oCso
先に座ったサナミは、すわり心地を堪能している。
サナミ
「うわ、これ寝ちゃいそう……」
男
「寝たら手話で起こしてやるよ」
サナミ
「聞こえないじゃん!じゃあたしはジェスチャーで起こしてあげるね」
男
「それも聞こえないだろ!」
漫才のようなやり取りに、隣に座っていたカップルがくすくすと笑っている。
俺達は少し恥ずかしなって、小さな声で笑った。
―――ビー……
いつのまにか、上映を告げる合図。
ホルダーに飲み物を置いて、深く腰掛けた。
ペアシートとは言うものの、広いシートだけあってどちらかが近づかないと、触れ合う事はない。
劇場の照明が落ちる。
隣に座るサナミの顔が少しずつ見えなくなっていった。
大音量で流れる映画の広告が始まる。
まだ暫く本編は始まらないはずだ。
俺の右手側にあるカップに手を伸ばそうとすると、左肩に温もりを感じた。
その直後、耳元でサナミの声。
サナミ
「あたしも、のみたいー」
思ったよりも早く、二人の距離は無くなった。
今日のサナミは、妙に懐っこい。
いや、俺が意識しすぎなのかもしれない。
俺は流れる予告を見ながらカップを持った手をサナミの方へ伸ばす。
しかし、無くなるはずのカップの重みがいつまでも無くならない。
ふと隣を見ると、サナミは俺の手をホルダー代わりに、そのままストローを咥えている。
男
「あ……」
横着者め。
ただ、そんな仕草の一つ一つに胸が跳ねる。
462 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 04:39:20.03 ID:exb/oCso
サナミ
「ありがと」
耳元で囁くように言われると、背筋がぞくぞくする。
俺はサナミが飲み終わると、ごく自然な風に、一口アイスティーを飲んだ。
サナミは、もう俺の左腕にぴったりと寄り添うように座っていた。
『……しっ…!静かに……!』
『いや…!あいつらの声が聞こえる……!』
想像通りベタな導入部から始まり、ベタな展開を経て、映画は中盤の緊迫したシーンに差し掛かっていた。
巨匠の作品というだけあって、迫真のカメラワークに来るとわかっていてもドキドキしてしまう。
それは俺だけではないようで、ホラー好きを公言するサナミも、首をひっこめて薄目がちにスクリーンを眺めていた。
『……いいか…!絶対に音を立てるなよ……!』
ホラー映画の音量はオンとオフの切り替えが非常に激しい。
劇場内に主人公たちの荒い呼吸と、草を踏む音だけが響く。
緊張感が高まっていくにつれて、サナミの距離もこれ以上近づけないほど近くなり、
柔らかい腕の身体の感触が伝わってくる。
サナミ
「……ぜったいわーってくるよね……」
俺が無言で頷くと、不安そうな表情をするサナミ。
サナミ
「こーわーいー……」
怖がるサナミを落ち着かせようと、俺は……
>>845
(前スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1266873602/l50
)
845 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/06(土) 04:59:51.53 ID:3j558zb00
グヘヘヘヘヘと笑いながらサナミのおっぱいをつんつん
ここは一発、和ませるために改心の冗談でもかましてやろうと、劇中に出てくるゾンビの真似をしながらサナミに近づく。
男
「グヘヘヘ……」
サナミ
「…………」
463 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 04:40:14.95 ID:exb/oCso
駄目だ。映画に集中して全くこっちに気がついていない。
しかし、さっきからぐいぐいと身体を押し付けられるせいで、俺はある事がずっと気になっていた。
劇場の中は暖房が利いているので上着は当然脱いでいるのだが、サナミが着ている服のフィット感が非常に良い。
つまるところ、気になるのはその形の良い胸だった。
横目で見れば見るほど気になってしまう。
その間にも、サナミはびくりとする度に無意識に身体を押し付けてくる。
悶々とする俺の脳に、あるアイディアが閃いた。
ゾンビが出てくると同時に俺もゾンビの真似をして飛び掛れば……。
あわよくばどさくさにまぎれてワンタッチくらいなら出来るかもしれない。
我ながらくだらない事を思いつくものだが、やってみる価値はある。
俺は映画の画面に集中しなががら、そのシーンを待った。
『ギャアアアアアアアアアアア!!』
茂みから大量の亡者達が飛び出してくる。
今だ!!!俺は渾身の物真似を披露しながら、右手をサナミの胸の方へ伸ばしていった。
サナミ
「……!!!」
―――ギュッ…
男
「ギャアアあ……あ……え?」
俺の右手が胸に到達する前に、声にならない声を上げてサナミは俺の身体にしがみついてきた。
画面では目を覆うような惨劇が繰り広げられているが、俺はそれ以上の事態に直面して心臓が乱暴に跳ねている。
サナミは俺にしがみつきながら、細目を開けたまま映画を見ていた。
男
「…………」
試みは失敗に終わったが、しがみついてくるサナミの胸が、俺の左腕を挟みこむように押し付けられている。
柔らかくて暖かい感触に、俺は一人だけとても幸せな映画を見ている気分になった。
『うわあああああ腕があああ!俺の腕がねええええ!!!』
『ぎゃああああ!やめろろおおおお!!!!』
―――ギュウウウウ……
頼む。主人公たちよ、もう少し頑張ってくれ。
願いも空しく、凄惨なシーンがひと段落すると、彼女は我に返ったように俺の身体から離れた。
左腕に残るぬくもりがただ懐かしい。
俺は安心して休憩している主人公たちを睨んだ。
464 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 04:46:27.12 ID:exb/oCso
サナミ
「びっくりしてとびついちゃった」
耳元でサナミの声。
顔色は伺えないが、髪を触っているのが少しだけ見える。
男
「お前の方が、びびってるじゃん」
サナミ
「……うるさいばか。こんなに怖いと思ってなかったもん」
しがみつきはしなくなったが、肩が触れる距離は相変わらずだ。
もうなんだかこの距離が普通に思えてきた。
それは慣れじゃなくて、俺達が一歩前に進んだ事を感じさせた。
暫くそのまま映画を眺める。
そろそろ時間と展開的にはクライマックスという所だろう。
サナミ
「ねえ」
男
「んー?」
また、耳元でサナミの声。
サナミ
「………貸して」
男
「ん?飲み物?」
大分汗をかいたカップに手を伸ばす。
サナミ
「ちーがーうー」
男
「ん?なに?」
サナミ
「………手」
たった一文字の言葉に、俺の心臓はどくんと脈打つ。
465 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 04:52:51.43 ID:exb/oCso
男
「あぁ……」
サナミ
「…………」
どちらともなく、ゆっくりとお互いの手に触れる。
俺は自分の手が緊張で汗ばんでいる事を気にしたが、サナミの細い手も、ほんの少しだけ汗ばんでいた。
―――キュ…
目は合わさない。
映画を観たまま、俺達は左手と右手を、しっかりと握り合った。
―――本日は、ご来場……
暗かった劇場にオレンジ色の照明が灯る。
男
「んー……!」
サナミ
「はー……面白かった……」
劇場は半数以上の人がエンドロールの間に退出したようで、
俺達の周りにはもうほとんど人は居なかった。
映画は最後のエンドロールまで観る事が、製作者に対する礼儀だと俺は思っている。
なんて事をサナミに話すと、右から左に流されたが。
サナミ
「……もう、離していいよ?」
男
「え……?あ、あぁ…!」
まだ手を握ったままだった事に、サナミの言葉で気がついた。
最初こそ緊張したが、長い間握っていると、なんだ懐かしいような暖かい気持ちになって、つい自然と握りっぱなしだった。
俺は慌てて手を離す。手のひらに当たる風が冷たく感じた。
サナミ
「あんたの手、あったかいから眠くなりそうだったよ」
前髪に触れながら、サナミは微笑んだ。
466 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/12(金) 04:57:13.30 ID:exb/oCso
やっと追いついた……。
ここからリアルタイム更新になります。頑張りますよー
続きの書き込みは基本ageで書きますが、age進行推奨というわけではないです。
安価付近になったらageるのもsageるのもご自由にどうぞ!
467 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 05:04:21.66 ID:QPeBBkDO
よしきた
468 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 05:34:18.82 ID:k.YC.QAO
>>1
乙!!
激乙!!!
469 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 08:30:05.93 ID:pNVdiPI0
とりあえずここまで
>>1
乙
絶対安価取ってやるぞ!!
470 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 08:39:08.61 ID:IKyE2yoo
ついに追いついたなww
未だ俺の嫁ことアマネの画像なし
471 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 08:51:04.63 ID:9.2VajU0
これから安価争奪戦か
まぁサナミ支援者は多いからサナミ確定だな
472 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 09:21:29.42 ID:DXmeNLU0
>>1
乙
VIPでは参加できなかったが
ここでは頑張って参加する
473 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 11:40:02.02 ID:G9bF3MSO
サナミ>>>>>>>>>ロッド>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>アマネ
474 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 11:42:00.35 ID:/Xn0H.c0
二日目をロッドから取り戻さなきゃな
475 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 11:46:46.97 ID:CC1yAg60
だが断る
476 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 11:54:35.62 ID:OlPA63s0
追いついたー!!
サナミ支援だ!!
477 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:07:40.17 ID:X2j.XjYo
やっと追いついたか!
サナミ√支援
478 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:25:14.84 ID:9rza7YDO
サナミこそ正義
479 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:31:11.55 ID:H7wqspgo
サナミしかありえない
サナミ以外の√なんて今の[
たぬき
]を見てるようなものだ
480 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:33:45.47 ID:G9bF3MSO
ここまできてサナミじゃなかったら萎える
481 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:36:29.76 ID:IKyE2yoo
そうやって誘導しようとするなよ・・・
まだ√確定してないって
>>1
も言ってるんだから
482 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:47:26.23 ID:0i2J2YAO
まあ今はサナミのターンだからな
明日のトミーのターンなったらお前らトミー派になるだろww
483 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 12:47:52.35 ID:QPeBBkDO
俺がトミーだ
484 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 13:29:16.43 ID:ZlQ8EbEo
おまえらがいくらサナミサナミ言っててもおれはトミー√一筋
485 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 14:23:16.26 ID:3Pw/i/w0
ついに追いついたか
サナミ√しえn
486 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 14:31:58.09 ID:P0GR7i2o
とみー以外ならどっちでも
487 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 14:52:46.14 ID:4bXvuQAO
3人とも捨てがたい……っ!
488 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 15:26:01.77 ID:0hCvyVgo
たとえどんな状況であろうとサナミルートへ誘導する
489 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 16:13:48.50 ID:6yzQ0sU0
サナミ支援多すぎだし、もう確定的だな
絶望にひたれよ他ヒロイン支持者wwwwww
490 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 16:31:38.75 ID:W9.Ok2AO
そんなことより、1乙乙
491 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/12(金) 17:42:50.15 ID:exb/oCso
掃除の係員に急かされるように劇場を出ると、館内は来た時の半分ほどにまで人が減っていた。
サナミ
「うわー人減ったねー」
男
「ほんとだなぁ」
凝った内装や様々な映画の展示物を見ながら歩く。
サナミ
「あ!これ……」
サナミは、俺には少しよく判らないキャラクターのフィギュアを眺めて、目を輝かせていた。
彼女の趣味は人と少しずれているような気もする。
サナミ
「ね、今何時?」
サナミに聞かれて腕時計に目をやると、時刻はもう五時をとうにすぎていた。
男
「え!あの映画三時間以上あったのか……」
サナミ
「あれ?知らなかったの?あの映画三時間ちょっとだよ」
三時間を越えれば映画としては長編ものだ。
しかし飽きずに見られたのは、きっとサナミのおかげだろう。
サナミ
「これからどうしよっかー」
男
「んー……とりあえず、出ようぜ」
変わった展示品ばかりいつまでも眺めても仕方が無い。
少なくとも、俺は。
サナミ
「あ……ちょっと待って!」
出口に向かおうとすると、唐突にサナミが声をあげた。
男
「ん?どした?」
492 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 18:39:11.78 ID:LQR/0W.0
先生って、男?
男に絡んできてあだ名がヤリたいだけだとすると女?
493 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 19:06:41.90 ID:89lblN20
>>492
チョコもらったことないって言ってたろ
494 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 19:17:32.15 ID:LQR/0W.0
>493
そうか、そうか!
ありがとうー!
495 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/12(金) 19:50:32.36 ID:exb/oCso
サナミ
「……男なら、野暮な事聞かないの!ばか」
悪戯に舌を出すと、キョロキョロと辺りを見回して何処かへ歩いていってしまった。
向かった先、サナミの頭の上には赤と青の案内板が下がっている。
男
「あぁ……、そういう事か……」
気遣いの足りない自分が、少し恥ずかしくなった。
ふと周りを見れば、自分と同じように柱にもたれて誰かを待つ男性が数人。
恐らく俺と同じだろう。
サナミを待つ間、俺は切っておいた携帯の電源を入れた。
真っ黒の液晶に明るさが戻る。
待ち受け画面が表示されると、待ってましたとばかりにメールの着信があった。
男
「お……」
手早く開くと、送り主はトミーだった。
件名:
『ぼくだけど!』
本文:
『明日は暇だぞー!仕方ないからあそんであげる!』
一般的な可愛いとは少しベクトルの違う絵文字が並んだメールが、如何にもトミーらしい。
送信時間を見れば、俺がメールを送った直後に返ってきていた。
すぐに返信をくれた事に、俺は少し嬉しくなった。
「おまたせー!」
突然の声に驚く。
サナミかと思ったが、隣に居た男性の彼女だった。
そういえば、サナミもそろそろ戻ってくる頃だろう。
今朝の様子から察すると、トミーへの返信は帰ってからの方がよさそうだ。
サナミ
「ただいまー。待ちくたびれた?」
携帯をポケットに放り込んですぐ、サナミが戻ってきた。
496 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 19:54:07.28 ID:GSYkbUDO
続きキテター
ここ雑談スレ別に立てたほうがいいんじゃないか?
ヒロイン談義したいがそれで埋まるのも不毛だろ。原画の人も来たみたいだし
PCの奴立ててくれ
497 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 19:56:07.15 ID:5I2EQoAO
諸君、私はトミーが好きだ。
498 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/12(金) 19:57:23.29 ID:exb/oCso
男
「んー…ちょっとだけ」
サナミ
「そーゆー時は”待ってない”って言うもんじゃない?」
男
「なら、待ちくたびれた?って質問の必要が無いじゃないか」
サナミ
「屁理屈ばーっかり言っちゃってー。行こっか?」
理不尽なロジックを二人して笑って、俺達は映画館を出た。
外に出ると日は既に傾き始めていて、暫くぶりに感じる外気は冷たかった。
サナミ
「さっむー…い」
男
「最近どんどん寒くなるなぁ……」
道行く人の服装も、日増しに厚くなっている気がする。
しかし、唐突に暖かい日もあったりと、最近は気候が不安定極まりない。
まるで俺自身の気持ちの様に。
サナミ
「これからどうしよっか?」
確かに、帰るにしては少し早すぎる。
男
「どっか行きたいトコある?」
サナミ
「んー……せっかくこの辺まで出てきたんだし……」
―――――――――――――――
※次回レスで安価有ります※
書き込み予定時間20:05
―――――――――――――――
499 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:03:20.98 ID:X2j.XjYo
よし、こいやー
500 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:04:19.06 ID:Rj7unAMo
ゴクリ・・・
501 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:04:39.40 ID:yPiJhGYo
これ時間予告する必要あんの?
502 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/12(金) 20:05:22.60 ID:exb/oCso
俺達が住んでいる住宅街とは違って、少し足を延ばしたこの辺りには色んな物がある。
サナミは腕組みをしながら悩んでいる。
サナミ
「どこでもいーよ?強いて言うなら何か飲みたいかな?」
男
「わかった。なら……」
この辺りで何か飲める場所と言えば、幾つか候補はある。
今や知らない人は居ないであろう有名なコーヒーチェーン。
それからまだ行った事はないが、最近出来たという落ち着いたカフェ。
他にもファーストフードや幾つかの飲食店が立ち並んでいる。
何処に行っても大した差は無いようにも思えるが、案外こういう選択は大事かもしれない。
>>511
503 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:06:46.33 ID:smMfvyU0
ショットバー
504 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:06:58.02 ID:yVTw6fQo
遠すぎやしないか?
ksk
505 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:07:13.96 ID:GSYkbUDO
>>501
もっと投下時間が先なら必要になるだろ。5時間後とか
人居ない時に安価でてもたまたま居た奴の好きになっちまう
コーヒーショップ
506 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:07:26.94 ID:SwrYHcUo
8分後に安価出す予告されても意味はないかもしれないksk
507 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:08:04.37 ID:Rj7unAMo
ksk
508 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 20:09:03.07 ID:ItPIn.DO
近恋見ようぜ
509 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:09:31.30 ID:exb/oCso
確かに意味なかったかも。深夜に書き込む時だけにしましょうか
避難所はあってもなくても良いですよー あれば便利かもしれないですが
安価下
510 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:09:42.92 ID:5unw/Sco
加速して
511 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:09:44.23 ID:SwrYHcUo
最近出来たという落ち着いたカフェ
512 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 20:10:15.03 ID:5I2EQoAO
水道水でものんでろよ鶏胸肉
513 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:28:22.34 ID:GSYkbUDO
鬼畜安価ワロタwwwwww 避難所
>>1
が立てればいいじゃん
514 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:37:10.30 ID:H7wqspgo
安価+5とかでちょうどいいんじゃない
515 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 20:40:20.52 ID:0hCvyVgo
あぶねえwwwwww
>>511
gj
516 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 20:52:13.27 ID:5I2EQoAO
安価取る気ならもう少し頑張ってるわwwwwwwwwww
雑談スレ? 避難所?とか建てたら
事情をしらないひとや、せっかくの新規にも自治厨が高圧的な誘導をして
無駄に殺伐となる、を延々くりかえしそうだよね
パー速まできてレス数が増えるのを気にするのもおかしなかんじ
>>1
がしたいようにするのが一番だとはおもうけど
517 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 21:16:09.43 ID:jd5TjkAO
まとめからきたら早速鬼畜でふいた
518 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 21:16:53.57 ID:IKyE2yoo
ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョを注文してくれると信じてる
519 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 21:18:13.04 ID:ItPIn.DO
まとめあんの?
520 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 21:20:46.18 ID:IKyE2yoo
途中で切れてしまった
ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノ
521 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 21:20:57.57 ID:GSYkbUDO
言われてみたら確かにそうか……
ごめんよ
>>1
ちゃんちゅっちゅ
ちがうアマネちゃんちゅっちゅ
522 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 21:38:02.20 ID:jd5TjkAO
>>519
ななばつにあるよ
523 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 22:06:07.14 ID:9IXSfUAO
>>505
>人居ない時に安価でてもたまたま居た奴の好きになっちまう
だからこそ今まで話がぶっとんで面白かったんじゃないかな?
時間予告して毎回同じスナイパーによって話が進んでも面白くないと思うよ
長文スマソ
524 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 22:12:29.54 ID:ItPIn.DO
>>522
いや、別に作者がまた1から載せてくれてるんだからまとめの意味なくない?って意味だったんだ
どっちにしろすまない
525 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 23:02:44.86 ID:LQR/0W.0
>>524
所々修正してあるらしいよ
526 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/12(金) 23:05:52.49 ID:6kLBH9Q0
どうでもいいけど余命一年の俺から一言
早く続き書いて
>>1
527 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/12(金) 23:11:30.29 ID:GSYkbUDO
修正に加筆部分も大分あるからもっかい読むのお勧め
しかし
>>526
ざまあwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwゲーム化してもまにあわねえなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
俺
>>1
探してくるよ
528 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 00:25:33.85 ID:cJP4F96o
どうせ行くのなら、雰囲気のいい所が良い。
男
「最近出来たって前言ってたとこ、行ってみないか?」
サナミ
「あー!そういえば近くだったっけ?いいよー、じゃあそこいこっ」
確か地域雑誌によればこの映画館から数分の所にあったはずだ。
俺は頭の中で地図を思い浮かべながら、歩き出した。
何度か横断歩道を渡り、幾つかの角を曲がって目的のカフェには、十分ほどで到着した。
少々迷いはしたが、あっちだ、こっちだと二人で言い合っている時間も楽しく思えた。
男
「あ……。ここかぁ」
サナミ
「うわぁ……。すご……」
人通りの少ない場所にあった店は、とても新築とは思えない雰囲気があった。
西欧を思わせるレンガ造りで、静かな通りにとてもマッチしている。
休日ともあって満員御礼を予想していたが、窓から覗くと人入りはまばらだ。
少しばかり緊張しながら、俺はドアを開いた。
―――カラン…
柔らかいベルの音。
店内はほろ苦いコーヒーの香りと間接照明でとても雰囲気が良い。
店員
「いらっしゃいませ」
すぐに現れた店員に案内され、俺達は奥まった二人席に案内された。
革張りの椅子は映画館のソファーとは比べ物にならないほどすわり心地がいい。
店員
「ご注文がお決まりになりましたら、お呼び下さいませ」
綺麗なお辞儀をして、店員はカウンターの奥へ消えていった。
それを確認すると、向かい側の席からサナミが身を乗り出してくる。
サナミ
「ねぇ……、ここ、すっごくいい雰囲気だね」
男
「だな、俺もびっくりした」
静かにクラシックの流れる店内、カウンターの奥には洋酒の瓶も見える。
529 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 00:26:31.38 ID:vMQrZ.AO
きた
530 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 01:36:09.63 ID:cJP4F96o
夜になればバーにもなるのだろうか。
グラスを磨くマスターと思しき男性を見ていると、さながら映画のワンシーンのようだ。
サナミ
「映画の中みたい……ほんとに新しく出来た店?」
考える事は同じか。
確かにどう見ても新しいようには見えない。
とはいえ、いつまでも店内をキョロキョロしていても仕方が無い。
俺はメニューをサナミに手渡した。
男
「ん、先に決めな」
サナミ
「ん?あぁ……、ありがと。優しいじゃん」
男
「レディーファーストだよ、レディーファースト」
サナミ
「慣れない事しちゃって……」
微笑んでメニューを眺めるサナミの横顔を、眺める。
薄暗い店内で見る彼女は、いつもより随分大人びて見えた。
暫く二人でメニューを眺めて、サナミはカプチーノ、俺はオレンジペコーを注文した。
サナミ
「コーヒーとか紅茶って、多すぎてよくわかんないね」
メニューを元に戻しながら、サナミは小さく息を吐く。
サナミ
「あんたが頼んだのなんだっけ…?オレンジ……」
男
「オレンジペコー?」
サナミ
「そうそう、それ。オレンジのお茶なんてあるの?」
男
「アップルティーは知ってるだろ?あれと同じフレーバーティーの一種だよ。茶葉に香りがつけてある」
サナミ
「ふーん……詳しいじゃん」
俺が自分の知らない事を話すと、いつもサナミは面白くなさそうなな顔をする。
531 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/13(土) 01:52:51.69 ID:NGPhTa.0
一介の紅茶好きとして言わせてもらうとオレンジペコーは茶葉の等級のこと
532 :
日本 ばかやろう
[日本 ばかやろう]:2010/03/13(土) 01:59:29.98 ID:1pcjVsw0
日本 ばかやろう
533 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 02:10:18.32 ID:cJP4F96o
そういえばそうだった。
ありがちな間違いとしてオレンジティーに変換して読んで下さい……恥ずかしいしにたい
全然筆進まないから困る
534 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 02:12:20.64 ID:VefBbUDO
>>1
カワユスなあ
535 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/13(土) 02:31:29.06 ID:hQy/9sAO
がんばれがんばれ
536 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 02:40:06.90 ID:W4yjDIDO
>>534
確かにちらほら
>>1
可愛い
母デザ可愛すぎてゲーム化期待してる俺歓喜
537 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 05:57:00.22 ID:cJP4F96o
おぼろげなにわか知識で少し天狗になれるとは、サナミの横顔を見ながら、俺は紅茶好きな母に感謝した。
等級がどうのとか細かく説明を聞いた事もあったが、詳しい事は忘れた。
サナミ
「はぁー……。落ち着くねー…」
男
「寝るなよ?」
サナミ
「ふふ……寝たら、手話で起こしてくれるんでしょ?」
暫く店内の緩やかな雰囲気に浸っていると、店員が飲み物を持ってこちらにやってきた。
店員
「お待たせしました。オレンジティーとカプチーノで御座います」
緩やかに湯気を昇らせるカプチーノと紅茶が、二人の前に置かれる。
サナミ
「うわぁ……見て見て、かわいー……」
男
「ん?……おぉ、すげえな」
サナミが嬉しそうに見つめている先、テーブルに置かれたカップを覗くと、
泡とパウダーで細やかに描かれた大小様々なハート模様が浮かんでいた。
サナミ
「すごぉい……すごいですね!」
店員に感嘆の声を漏らすサナミ、確かにどうすればこんなに細かな模様が描けるのか不思議だ。
店員
「喜んで頂いて光栄です。バレンタインも近いので、少し凝らせて頂きました。お熱いのでお気をつけて」
爽やかな笑みで去っていく店員と、その姿を目で追うサナミ。
俺は少しだけもやもやしたものを感じてしまう。
サナミ
「わー……飲むのもったいないなぁ」
男
「じゃあ飲まなきゃいいじゃん」
大人げないとは頭の中で判りつつも、つい恨み言が口から出てしまった。
538 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 06:02:47.51 ID:VefBbUDO
サナミカワユスなあ
539 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 09:31:51.08 ID:cJP4F96o
サナミ
「何それ、わかんない奴ー」
サナミは少しむっとした様な表情でそっぽを向く。
男
「そんぐらい……俺でも出来るよ」
嘘だ。
俺にこんな器用な事出来るわけがない。
しかしこういう時は、つい続けて余計な言葉が出てしまう。
サナミ
「………あ」
男
「……なんだよその目は」
サナミ
「もしかしてー……やきもち?」
不敵で悪戯な微笑み。
判りやすい反応をしてしまった自分を恨んだ。
男
「なっ……!」
サナミ
「図星なんだ?ふふふふ」
ぐうの音も出ない。
どうしていつもいつも、俺は彼女に勝てないのだろう。
サナミ
「ばーか、子供か」
男
「……じゃー大人か!」
サナミ
「子供だよーだ。いっただきまーす……あちちち…」
両手でカップを持つ仕草は、彼女の言う通り子供のようだ。
何を言っても彼女には勝てそうに無い。
俺は情けなく首を振りながら、甘い湯気を立てるカップを口元に運んだ。
男
「ん……おいしい」
540 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 11:37:40.88 ID:cJP4F96o
口に含んだ瞬間にふわりと広がるオレンジの甘い香り。
砂糖など入れなくても十分に甘い。
素人の俺でもこの店のすごさがわかる味だった。
サナミ
「んー!!すっっっっごくおいしい!」
カップを置いたサナミが目を輝かせている。
よほどおいしかったらしく、満面の笑みだ。
しかし……
男
「……ぷっ……」
サナミ
「え?な、なに?」
男
「……あはははは!」
サナミ
「な、なにを……あっ……!」
何故俺が笑っていたのかにやっと気付いたサナミは、慌ててお絞りで口元を拭いている。
真っ白なヒゲを作って無邪気に笑われたら、笑うしか無いだろう。
サナミ
「うー……ばかっ!わらうな!」
顔を赤くして俯く彼女を少し気の毒にも思ったが、お互い様だ。
珍しく俺の小さな反撃は成功した。
男
「だって……普通気付くだろー…あははは…」
サナミ
「……ふふ……ははは……あははは…!」
自分でも可笑しかったのか、堪えてた笑いを吐き出すサナミ。
こんな事で笑い合える俺達は、やはり子供に違いなかった。
541 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 12:32:23.68 ID:TMgiP2c0
ずっとずっとずっとサナミターンで
542 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 12:49:32.99 ID:Gu9zT2DO
>>541
でも次の日はトミーのターンだぜ。
543 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 13:05:03.16 ID:W4yjDIDO
>>1
の遅筆ぶりも製速だと普通に思えるなwwwwww
はやくキャラの立ち絵がみたい
544 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 13:30:48.43 ID:DC/RHbIo
>>543
VIPだと一文字保守とかであっという間に何十と埋まるしな
545 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 13:56:30.77 ID:9N/JI2AO
追いついた
トミーまだ〜?
546 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 14:41:08.06 ID:a4K/gaE0
ニヤニヤしっぱなしの俺きめえ
547 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 14:56:13.37 ID:oUbXOcDO
wwktk
548 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 15:54:22.38 ID:HOfqVmgo
てす
549 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/13(土) 15:58:14.04 ID:b82Qnzw0
これがジャンプなら
>>1
は富樫と言われても何も言えないレベルに遅いな
550 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 16:02:26.71 ID:W4yjDIDO
でたまにどかっと一気に投下したりなwwwwww
まあゲームも含めて気長に待とうぜ
551 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/13(土) 16:45:31.86 ID:KUv6kDo0
>>1
のコテは富樫でいいよ
552 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/13(土) 18:21:42.58 ID:A7c.DsAO
富樫じゃねえ冨樫だ
553 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:32:24.13 ID:hlFTR0M0
物語が書けない自分にとって、>>1が遅筆だと思えないワナ
554 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 18:38:22.17 ID:cJP4F96o
サナミ
「ねえ、今日の映画、面白かったね?」
男
「あぁ、ベタだったけどなかなか面白かった」
サナミ
「やっぱり映画はホラーじゃないとねー」
男
「女の子でその感覚もよくわかんないけどさぁ……」
俺の当然の疑問はスルーして、サナミが少し身を乗り出す。
サナミ
「あ、ねえねえ……」
男
「ん?」
サナミ
「もし、あたしが映画のヒロインみたいな状況になったら、どうする?」
映画のラストシーン付近、ヒロインは一人っきりでとある場所に閉じ込められる。
それを知った男は、せっかく見つけた脱出の道を捨て、たった一丁の銃を片手に死霊達で溢れかえるそこへ駆けつけるのだ。
―――――――――――――――
※次回レスで安価有ります※
―――――――――――――――
555 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:41:27.71 ID:.u4QDako
おい速くしろ
ご飯の時間だ
556 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 18:49:11.68 ID:cJP4F96o
サナミ
「わかってたけど、あの人が死んじゃうのはちょっときつかったなー……」
ヒロインを助け、命を賭して脱出させた男は、彼女への愛を叫びながらその命を散らせた。
男らしい彼の姿には、俺でさえも胸にくるものがあった。
映画を思い出してか、サナミは苦々しい表情だ。
男
「んー……そうだな……」
確かに彼女なら、今すぐにでも映画のヒロインになれそうに思うのは、幼馴染に贔屓だろうか。
答えを待つ彼女に、俺は言った。
>>562
557 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:51:08.65 ID:DC/RHbIo
サナミのためなら命なんて惜しくない
すきだああああああああああああああああああ
558 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:51:47.14 ID:DC/RHbIo
ksk
559 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:52:11.12 ID:8ZLs5V6o
ksk
560 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:52:20.05 ID:DC/RHbIo
ksk
561 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:53:05.06 ID:DC/RHbIo
>>557
562 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:53:14.92 ID:8ZLs5V6o
>>557
563 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:53:18.65 ID:DC/RHbIo
>>557
564 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:53:58.91 ID:DC/RHbIo
よしよし
565 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:54:42.86 ID:W4yjDIDO
出遅れたwwwwww
洒落た茶店だぞ空気読めよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
566 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:55:43.27 ID:m4G/70Eo
見過ごすぜ
567 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:56:29.30 ID:m4G/70Eo
これは酷い
568 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 18:59:50.33 ID:W4yjDIDO
しかも参加者二人かよ
なんでアマネなら助けたにしなかった
569 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 19:02:22.33 ID:xQqhXKso
サナミは好きは本番にとっとけとか言ってたから逆効果にもなり得る発言だな
570 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 19:10:09.75 ID:Thqi0kAO
流石だなオマエラwwwwww
571 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 19:21:27.37 ID:B9YULUDO
よくやったGJ
572 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 20:15:41.70 ID:W4yjDIDO
ここ見てたら彼女出来ない理由がよくわかるな
573 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 20:34:58.72 ID:oUbXOcDO
もうサナミ√確定じゃねーかwwwwww
574 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 20:40:59.97 ID:sfMndYDO
>>572
鏡見たほうがよくわかるよ
575 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 21:17:14.78 ID:Ov0I8e.0
サナミ萌えす。。。
ちゅっちゅちゅっちゅ
576 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 21:31:38.03 ID:wtNiNNIo
>>542
潰す
577 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 22:11:10.23 ID:.u4QDak0
この安価、吉と出るか凶と出るか
578 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 22:31:07.66 ID:W4yjDIDO
>>1
テラ富樫
579 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 22:32:06.48 ID:8ZLs5V6o
女相手にはとにかく好きだ好きだと押しまくればいいってゲンさんが言ってた
580 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 22:52:59.36 ID:BMwGTkYo
>>576
させねえ
581 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 22:57:03.04 ID:Gu9zT2DO
>>576
トミーの名前だしたけど俺サナミ派なんだ
582 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:09:56.76 ID:W4yjDIDO
トミーのターンになったらトミー派急増するんだろwwwwww
浮気らめぇwwwwwwwwwwww
>>1
原画アップしてくれよ
583 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:17:20.20 ID:9jW4Nno0
そんなにトミーロッドが好きか・・・
584 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/13(土) 23:20:17.84 ID:cJP4F96o
すいません遅くなりました。富樫ワロタ
原画うpの声がありますけど、保存はしてるもののまだ企画段階だし皆のイメージもあると思うので……
それに無断で上げるの悪いし原画さん次第です。申し訳ない
今日は頑張ってピッチあげます
585 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/13(土) 23:51:14.28 ID:ZD1GvUSO
二人とも助かる道を選ぶ方が女は喜ぶ
したがってお前らは……
まぁ分かるよな
586 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/13(土) 23:53:26.73 ID:O88bHJE0
おい富樫仕事しろ
587 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/13(土) 23:56:37.19 ID:cJP4F96o
男
「サナミのためなら命なんて惜しくない」
サナミ
「えっ……?」
俺の言葉に硬直するサナミ。
淡い光を映して俺を見つめる彼女の瞳は、吸い込まれそうなほど綺麗だ。
叫びたくなるほどに。
男
「す……すきだああああああああああああああああああ」
静かな店内の空気を壊してしまわないように、囁くように叫ぶ。
硬直したまま、頬を赤くする彼女の事が、俺は好きだ。
それがどんな”好き”なのかは、自分でも判らないが、その気持ちに嘘はない。
サナミ
「…………なんで?」
どくりどくりと早い自分の鼓動を聞いていると、俯いたままで、彼女は言った。
男
「え?」
サナミ
「……何に……」
静かなクラシックの音にかき消されてしまいそうなほど小さな声。
こんなはずではなかった。
俺の言葉を聞いた彼女は、またいつもの調子で口癖を。
そんな想像をしていたのに、俺の目の前には、ただ俯いて小さく手を握り締めるサナミが居た。
サナミ
「……何に、焦ってるの……?」
彼女の声がきつく胸を締め付ける。
焦り。
その言葉で、初めて気が付いた。
俺は焦っている、と。
見えない自分の気持ちがもどかしくて、ただ闇雲に、乱暴に。
無意識のうちに俺の心は、彼女に対して焦りを感じていた。
サナミ
「…………」
二人の間に薄暗い沈黙が訪れた。
カシャリ、カシャリと音を立て、悲しげなピアノが流れ始めた。
588 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:00:56.19 ID:XHD6AoDO
富樫キター
サナミオワタ
589 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:02:07.81 ID:1hiE0kDO
/(^o^)\
590 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 00:03:09.48 ID:WsMOFoDO
う、うそだ…orz
591 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:05:05.74 ID:JaPqvEg0
フラグクラッシャー乙
サナミにフられて傷心の息子をなぐさめる母ルートですよね、わかります
592 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 00:05:10.81 ID:E2pmVE.0
おい富樫、サナミ泣かしたらどうなるか…わかるな?
593 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:07:01.00 ID:akqB2TEo
Oh...
594 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:07:44.00 ID:8uyF9UUo
サナミ泣かしたのはお前らだろ
これでトミー√が近づいてきた
595 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:08:07.76 ID:nkfdqw6o
うーむ・・・次からは「でかい声で叫ぶ」を付け加えよう
596 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:09:46.27 ID:De3JrzAo
よっしゃーサナミ√決定サナミ√決定言ってれば絶対に
>>1
がフラグ折ってくれると信じてたぜ
597 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 00:17:30.09 ID:PoeUqZY0
まぁ
>>1
はいつも好きだ!とかキスするとかじゃいつも全然進展しないようにしてるもんな
598 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:18:09.18 ID:paxyoHI0
まぁ焦る気持ちはわからんでもないかなぁ
結局返事もはっきりとは貰ってないわけだし
でも当初よりだいぶ長くなりそうだなw
599 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:22:53.69 ID:kJGSaQDO
男より焦っていた俺達が原因かorz
600 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:22:57.45 ID:/hizVoAO
サナミかトミーかでここ二週間揺れているんだがどうすりゃいいんだ
どっちも選べないよ(´・ω・`)
601 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:23:35.02 ID:m.Q2/gso
確かに返事まだ貰ってないんだし焦って当然だな
602 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:23:51.20 ID:kJGSaQDO
サナミにしとけ
603 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:24:08.46 ID:N2jt/AAO
誰もいらないみたいなので
アカネは私が貰いますね
604 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:25:14.16 ID:XHD6AoDO
>>603
え?アマネちゃんなら今俺の膝の上だよ
605 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:39:53.09 ID:nkfdqw6o
え?風音なら俺の横にいるよ
606 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 00:42:51.73 ID:/hizVoAO
>>604
マジで?
俺今アマネの膝の上なんだけどww
607 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 00:54:28.65 ID:muiPE1wo
え?俺アマネなんだけど
608 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 00:58:10.54 ID:.ytmX360
最初から見てるけど
>>1
は遅すぎ
読者飛ぶぞ
609 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 01:08:07.79 ID:pKMIukDO
サラミ…
610 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 01:16:53.99 ID:vRSQ6MAO
しかし俺は飛ばない!
611 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 01:19:00.97 ID:ekA7Huo0
ゲーム楽しみだけど、完全に書き終わってからがいいと思うんだけど・・・
今はゲームは何も考えないで本編かいてほしい
612 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 01:19:11.08 ID:6eb/dW.o
男
「……うん」
それ以上の会話は無かった。
サナミはカプチーノのお金を置いて、先に店を出る。
―――カラン…
音を立てるベルの響きには、もう温もりは感じなかった。
後を追うように、俺は会計を済ませる。
静かな目でこちらを見ていたマスターに軽く頭を下げて、店を出た。
サナミ
「…………」
外はいつの間にか、すっかり夜に変わっていた。
白い吐息を吐きながら、壁にもたれ掛かっていたサナミが、一度だけこちらを向く。
何か言おうと口を開いたが、彼女は逃げるように背中を向けて、歩き出した。
男
「………」
サナミ
「………」
風に揺れる彼女の髪と、小さな背中を見ながら歩く。
どうして俺は、いつも間違えるのだろう。
人を好きになる事が、こんなにも難しいなんて思わなかった。
何でも分かり合えると思っていた彼女が、遠い。
言葉も無い、目も合わせないまま、駅から少し混んだ電車に乗る。
電車の揺れに押されて触れた彼女の肩には、昼間のような温もりを感じなかった。
黒い窓に反射する俺自身の姿は、ぼやぼやと揺れて、誰だか判らない。
長い長い沈黙が途切れたのは、家の近く、見慣れた道を歩いている時だった。
サナミ
「…………ねぇ」
男
「ん?」
久しぶりに聞く声に、俺の心臓は跳ねた。
サナミ
「……こっち、通ってかえろ」
真っ直ぐに歩けば、もうすぐお互いの家に着く。
しかしサナミは、少し遠回りな遊歩道に向かって歩いた。
613 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 01:29:57.98 ID:D9xfWQo0
確かに誰かが書いてたがゲームとかは書き終わってから視野に入れるべきだな
同時進行は厳しい
ただでさえ富樫は読者待たせまくりなわけだし
まぁ俺は気長に鼻くそほじりながら待ってるけど
614 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 01:36:37.12 ID:XHD6AoDO
富樫は終わらしてからやるって言ってたじゃん
俺も座禅しながら待つけど
615 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 01:37:07.14 ID:nkfdqw6o
ゲームと同時進行でやってんの?
それで遅くなってるんだったら・・・なんだかなー
どっちか片方に集中したほうがいいんじゃね
616 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/14(日) 01:40:18.04 ID:6eb/dW.o
あのっ、あの。同時進行ではやってないです……
ただ頭が回らなくて遅いだけです……ごめんなさいがんばります。
617 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 01:51:58.29 ID:sVlQtoc0
>>616
かわいいな
萌えたわ
618 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 01:53:19.48 ID:Tq/E41Yo
富樫かわいすぎだろ
萌えた
619 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 01:55:15.10 ID:XHD6AoDO
富樫√開拓か………
620 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 01:56:08.17 ID:n8yEi5.0
冨樫がんばれ!!
621 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 02:02:04.47 ID:6eb/dW.o
また言葉が途切れてしまわないように、俺は出来るだけ明るく声を出す。
男
「なっつかしいなぁ……こっちの道」
光る月が夜の遊歩道を照らしている。
この道は俺達がまだ小さかった頃、よく通った回り道。
お互いが大きくなってからは、すっかり寄り道して帰る事が無くなったが、
冷たい風に流れる落ち葉も、淡い色の街灯も、何も変わっていない。
サナミ
「……」
ぽつりと一本だけ立つ街灯の前で、サナミは立ち止まった。
乾いた音を立てて、風が吹く。
サナミ
「はぁ……!黙ってるのも、疲れるね」
淡いオレンジに光る髪をなびかせて振り向いたサナミは、少し寂しげな微笑を浮かべていた。
男
「ん……なんか……ごめんな」
俺の言葉のせいで、こんなにも苦しい沈黙が訪れた。
他に何も言えず、俺はただ謝る。
サナミ
「……あやまってばーっか」
深い藍色の空を見上げながら、サナミは言った。
男
「え…?」
サナミ
「ごめんごめんごめんって……いつも謝ってばっかり」
それはよく判っている。
自分の愚かさに、いつも謝ってばかりだ。
男
「……ごめん」
サナミ
「ふふっ……ほらまた」
622 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 02:19:47.99 ID:6eb/dW.o
小さく微笑む。
笑っている所を見るのなんて、すごく久しぶりに思えた。
サナミ
「…………どうせ、悩んでるんでしょ」
こちらを見ないまま話す彼女の言葉に、俺は何も言い返せない。
サナミ
「わかるよ……。あんたの事だもん」
何もかも、彼女にはお見通しだ。
俺の浅い考えなんて、全部。
ゆっくりと視線をこちらに向ける彼女の眼は、優しくて、包み込むような色だった。
男
「…………俺……」
言葉にならない。
男
「俺はっ……!」
サナミ
「悩めばいいじゃん」
俺の声を遮ったサナミは、一際明るい笑顔で言った。
男
「……サナミ……」
サナミ
「……あたしだって、悩んでるから」
どくりと心臓が跳ねて、俺は唇を噛む。
サナミは下を向き、足先で舞う落ち葉を撫でている。
悩んでいるのは、俺だけではなかった。
常に俺の前を歩いて、なんでもお見通しの彼女も、同じ様に悩んでいる。
彼女に気持ちを伝えたのが、もう遠い昔に思える。
だが、俺はまだ彼女から何も聞いていない。
聞きたくないのが、本心なのかもしれないけれど。
男
「……サナミは……」
サナミ
「…………」
623 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 02:23:17.34 ID:PJAPR3U0
不意に俺が富樫と言ったら富樫富樫と
>>1
が言われるようになった…
責任とってサナミを嫁にもらうわ…ごめんな、変なあだ名つけて
>>1
624 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 02:24:33.41 ID:n8yEi5.0
>>623
お前はポンズでももらっとけ
サナミは俺の嫁だぞ
625 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 02:25:54.00 ID:ekA7Huo0
雲行きが怪しいでござる
626 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 02:26:23.31 ID:Tq/E41Y0
>>623
サナミは今俺の隣りで寝てるから無理だ
他のやつにしろ
627 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 02:29:54.17 ID:50PtBqMo
これはわざと長引かせてるんだな?
そうだよな?
628 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 02:39:12.46 ID:6eb/dW.o
彼女はそのままで俺の声を聞いている。
男
「サナミは……、俺の事……どう思ってるんだよ」
聞きたくない、でも、知りたい。
俺は痛いほどに鳴る胸を抑えながら聞いた。
静かな時間が、夜の遊歩道に流れていく。
サナミ
「……ずっと……」
俺に背を向けて、サナミを口を開いた。
強く握りすぎた拳が痛い。
サナミ
「あんたとは……」
男
「……うん……」
サナミ
「……ずっと……、幼馴染で居たい気もするんだ」
ふっと、身体の力が抜けた。
吹き抜ける風が俺の体温を奪っていく。
629 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 02:42:58.49 ID:Tq/E41Y0
えっ
630 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 02:44:19.46 ID:m.Q2/gs0
ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima002478.jpg
ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima002479.jpg
ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima002480.jpg
631 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 02:51:16.31 ID:vYYf.EE0
そうだ明日退職届けを出そう
理由はサナミが振り向いてくれなかった
その後、総武線にダイブしよう
632 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 02:53:18.63 ID:ekA7Huo0
この展開で二日目トミーといちゃいちゃしたら男[
ピーーー
]
633 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 02:54:02.55 ID:dJIX1pMo
なんという・・・
あきらめないぞ
634 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:03:19.79 ID:XHD6AoDO
これは本格的にオワタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
筆は遅くて展開が上手い!冨樫状態wwwwww
635 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 03:05:35.62 ID:babw8AE0
富樫はサナミファンを高確率で敵に回したな
とりあえず明日のトミー安価をぶち壊すことで頭が沸いてるぜ
636 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 03:07:29.27 ID:n8yEi5.0
元々冨樫はトミー派だからな……
637 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:13:48.86 ID:kJGSaQDO
読んでて男に苛つく
638 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:14:39.98 ID:1jrbo.DO
これで傷ついた男を明日トミーが元気づけてトミーの好感度アップか
さすが
>>1
先のほうまで考えてるな
639 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:15:01.70 ID:8uyF9UUo
トミー派の冨樫はどんな鬼畜安価も回避するはず
640 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:17:15.14 ID:kJGSaQDO
そういえばトミー可愛いよトミーみたいなかいてたなorz
641 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:31:47.92 ID:1hiE0kDO
やりすぎたんだよ…俺達は
642 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:32:12.42 ID:yfcP1wAO
前スレから全部見た
ここから先の展開に期待
643 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 03:43:35.28 ID:PyiR0DE0
さて暇だしニートだし今日スロで勝った金で買ったペンタブでサナミを書くか
今までちょっと正統派が出てるからちょいエロで書くか
644 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 03:46:20.22 ID:XHD6AoDO
キーボードの前で膝かかえる冨樫かわいい
>>643
原画は別にして超見たい
645 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 03:54:42.00 ID:6eb/dW.o
サナミ
「……一度近づいちゃったらさ……」
何も言えないし、何も聞きたくないはずなのに、サナミの小さな声は鮮明に耳に届く。
サナミ
「もう……この距離には……戻れないから」
俺と、彼女の距離。
長い時間を共に過ごした、幼馴染という距離。
たった二歩の距離は、思っていたよりもずっとずっと遠かったのか。
サナミ
「……でも、それは逃げてるだけ……なのかな……」
冷え切った身体に、少しだけ体温が戻るのを感じた。
しかし、逃げているのは俺だ。
自分の気持ちも判らないで、彼女を、皆を振り回す。
サナミ
「あーあ!なーに言ってんだろ……あたし……あはは…」
手を後ろに組み、振り返るサナミ。
サナミ
「……かえろっか?」
精一杯に笑う彼女の眼には、何かが小さく光っていた。
男
「……そう……だな」
結局俺は、自分の想いを告げてくれた彼女に何も言う事が出来なかった。
前を歩くサナミの背中が、いつもより遠くに感じる。
俺は未だ揺れ続ける自分の心を、押し潰して消し去ってしまいたかった。
646 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 04:01:41.58 ID:YfaxNUAO
思い通りに進まないとわめきだす低悩はゲーム化まで待ってろよ
√潰すだの、作者はどっち派だからだの、
せっかくの安価の意味がねーし書きづらくなるだけだろうが
少しは
>>1
のことも考えてやろうぜ
ねこだいすき
647 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 04:02:37.23 ID:YFDaUE60
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2010/03/14(日) 00:09:56.01 ID:JaPqvEg0
幼馴染安価SSスレの主さんへ
制服が決まらないです−ーーー!!!!個人的にブレザーだと思ったんですが
ちょっと変化球の襟付きセーラーとか前掛けみたいなのが付いたエロゲ風?とか
色々捨てがたくなってきました
色や細かいデザインは後ですが、制服の形態だけドウシヨウと悩んでます
ttp://u4.getuploader.com/vip-rensyu/download/72/%E5%88%B6%E6%9C%8D%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%82%E3%81%B5%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%AA.jpg
こういうのがいい!!とかあったらお願いしますですよー!
648 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 04:05:35.62 ID:YfaxNUAO
>>647
携帯じゃ見れないよおおおおおおおにゃああああああああああん
649 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 04:13:04.05 ID:XHD6AoDO
>>647
せっかく冨樫が皆のイメージ考えて誘導したのになにやってんのお前
650 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 04:31:43.52 ID:YfaxNUAO
>>649
651 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 04:33:05.43 ID:YfaxNUAO
途中送信すまん
>>649
>>1
の気遣いも、そういう考え方もわかるけど、
イメージが、ってひとは見なきゃいいんだよ
普通はそうしてる
652 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 04:47:02.87 ID:XHD6AoDO
普通は貼らない
653 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 04:51:36.44 ID:YfaxNUAO
専用スレはまだ建ってないんだし、
いいんじゃねーのそこまで目くじら立てなくても
貼られたのがリンクだけだったら
見たくないのに踏んじゃうひとも出てくるかもだけどなー
654 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 06:08:20.85 ID:6eb/dW.o
静かな遊歩道を二人で歩いて、俺達は家の前にたどり着いた。
サナミ
「……今日は、楽しかった!」
玄関の前で、向かい合って話す。
沈黙が続いていたからか、少し照れくさい。
だが、今日一日の事を楽しいと思ってくれたのなら、俺も嬉しい。
男
「うん……。俺もすげー楽しかった」
サナミ
「……パイロットだしね?」
男
「それはもう忘れてくれ……」
サナミ
「ぷっ…あはははは!」
月明かりが照らす彼女の笑顔は、もういつもと変わらないようにも見えた。
静かな時間が、二人の間に流れる。
サナミ
「……月……綺麗だね」
彼女が見つめる先に浮かぶのは、淡い光を放つ月。
男
「……月ってさ、綺麗だけど、なんか……寂しいよな」
サナミ
「うん……判る気がする」
二人で同じ場所を見つめている。
離れていた距離が、少しだけ近づいた様に感じる。
サナミ
「あたしも……、同じ事、考えた事あるよ」
男
「ほんと?」
サナミ
「綺麗なのに、寂しい。あんなに近くに見えるのに、誰にも触れてもらえない」
655 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 06:17:48.99 ID:YfaxNUAO
こういうシーンはくすぐったい
656 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 06:57:54.19 ID:1jrbo.DO
ID:YfaxNUAOが痛い
657 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 07:13:03.03 ID:YFDaUE60
>>649
読んでなかった
ごめんなさい
658 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 07:39:36.90 ID:6eb/dW.o
遠い目で見つめる彼女の横顔は、月に似た儚さがあった。
男
「………もし」
サナミ
「ん?」
男
「もし、地球が月の事を……好きだったら……」
俺は取りとめも無いただの空想を、口にする。
サナミ
「……うん」
男
「離れもしないけど、近づけないこの距離は……幸せなのかな、不幸……なのかな」
いつまでも変わらない距離。
俺達と同じ様に。
サナミ
「ふふ……なんか、ロマンチックな事考えるね」
男
「あ……いやっ、これは……」
当然の指摘に顔が赤くなる。
普段の俺なら、こんな事言わないのに。
サナミ
「……一人になるくらいなら、ずっと変わらなくても……いいかなぁ」
彼女の言葉に、俺の胸がとくりと動く。
俺も、同じ事を思っていた。
変わることが怖くて、何もしない、何もしようとしない。
男
「………」
サナミ
「それに……生まれた頃からずっと変わらないなら……”運命なのかな”って、諦めちゃうかも」
二人の関係を重ね合わせているのは、きっと俺だけじゃない。
男
「……そっか」
659 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 07:42:33.90 ID:6eb/dW.o
俺はゆっくりゆっくり、その言葉を飲み込んでいく。
サナミ
「……ねぇ、そんな事ばーっかり考えてたの?」
こちらに向き直って、彼女は笑う。
なんだか馬鹿にされたようで、気恥ずかしい。
だが、ムキになって否定した所で、彼女には適わない。
男
「そうそう。地球と月のロマンスの事しか考えてませんよー。俺宇宙船のパイロットだから」
俺は少し重くなった空気を軽くしようとおどけてみせた。
サナミ
「ぷっ……あはははははは!あれ、宇宙船だったんだ!」
男
「そう、宇宙船。超偉いんだぜ。ワープ!!つったりしてな」
サナミ
「もう……!あんたってほんっとばかだね!」
彼女の笑い声に、俺もつられて笑った。
大きな声で、何もかも吹き飛ばすように。
サナミ
「あー……もう笑い疲れたよ」
男
「……お前が一人で笑ってたくせに」
肩で息をしながら、服の袖で目尻を拭うサナミ。
サナミ
「”誰かさん”のせいでね。……じゃあ……帰りますか?」
時間の事などすっかり忘れていたが、時計を見ればもう九時近くだった。
きっと夕飯もすっかり出来上がっている頃だろう。
男
「そうだな……気をつけて帰れよ?」
サナミ
「あはは……っ!あんたもねー」
手を振って後ろを向くと、数歩先の玄関まで歩く。
すると、後ろからサナミの声がした。
660 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 07:45:00.42 ID:n8yEi5.0
切なすぎるだろ…こういう感じいいなあ
661 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 07:47:31.23 ID:6eb/dW.o
サナミ
「ねえ!」
男
「んー?」
振り返って彼女の方を見ると、口の横に手を当てている。
サナミ
「待ってるよ!」
男
「……何を?」
俺も負けないように、大きな声で聞き返す
サナミ
「あたし、あんたが答え出すの、待ってるから!おやすみ!」
―――ガチャン…
男
「あ……。あいつ……」
言いたい事だけ叫んで、彼女は玄関の奥へと消えていった。
俺の答えを待っている。
彼女は確かにそう言った。
それだけで、一気に俺は背負っていた重荷が軽くなるような気がした。
きっと、焦って答えを出しても、彼女は喜んではくれないだろう。
この心のもやは、自分自身で払うしかない。
男
「………ふーっ…」
冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んで、白く煙る息を吐き出した。
俺はもう一度月を眺めて、玄関の戸を引いた。
―――ガラガラ…
662 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 07:57:11.94 ID:YfaxNUAO
かわいいなあ
663 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 08:11:02.79 ID:pKMIukDO
そういえば月って毎年離れていってるんだよな
664 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 08:21:14.52 ID:6eb/dW.o
男
「ただい……うわあっ!!」
玄関を閉めて振り返ると、目の前には相変わらず薄着の母が立っていた。
腕を組みにやにやとした顔で、俺を見下ろしている。
母
「ふっふっふ……随分青春してるじゃないのー」
男
「たっ……!立ち聞きかよ!」
俺の心臓はばくばくと大きく脈打っている。
ついさっきのやり取りを聞かれていたのかと思うと、恥ずかしいどころではない。
母
「だってー、玄関の前でうるさいんだもん。聞こえるわよ普通」
聞こえたからって、聞くものじゃないだろう。
俺はため息交じりにうな垂れて、靴を脱ぎ家に上がった。
母
「まー私の息子も大きくなったもんねー。ご飯食べるでしょ?」
男
「食べるよ!ったく……いい歳してそのかっこはないだろ……」
母
「ちょっと待った」
男
「っ……!」
ギリギリと肩に細い指が食い込む。
しまった。
俺は照れを隠すために言ってはならない一言を口にしてしまった。
どれほど足に力を籠めても、ぐいぐいと俺の身体は引き寄せられていく。
母
「つーかーまーえーたー…」
男
「ぐっ……!くる……し…!!」
首筋に巻きつく細い腕と、後頭部に感じる柔らかな感触。
母の得意技であるヘッドロックにかかったら最後、抜けられる術は無い。
665 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/14(日) 09:23:34.80 ID:6eb/dW.o
母
「誰がいい歳だって?これでもねー、まだ二十代で通るのよ!?」
男
「ギ……ギ…ブ……!」
母
「こないだだって買い物してたらおねーさーんなんて声を……」
男
「……………」
母の声が段々と遠くに聞こえる。
視界も暗くなっていく。
ふと台所の食卓の上に、横倒しになった缶ビールを見つけた。
そういう事か。
俺は母のアルコールに弱い体質を作った神様を呪った。
母
「でー……って聞いてんの?……あれ?」
息苦しさと柔らかい感触が心地よくなり始めた時、
ふっと首に巻きついていた力が無くなって、俺は廊下に這いつくばった。
男
「はぁー……はぁー……死ぬとこだった……」
母
「なによ大袈裟ねー。弱い男は嫌われるわよ?」
それはそうかもしれないが、物理的に強い女がモテるというのも聞いた事が無い。
俺はふらつきながらも立ち上がって、部屋へ向かう。
男
「アルコールは……はほどほどにして下さい……身体が持たない」
母
「いーでしょ別にー。仕事明けなんだから。あ、ご飯冷めるから早くおりておいでよー」
男
「……へいへい…」
若さを忘れない母というのも、それはそれで大変だ。
母
「ふー……。うちの息子も、大人になったって事かしらね……。さ、ビールビールっと」
666 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 12:15:51.17 ID:pc4yEwo0
答えねぇ。。。どうやってみつけさせるのか
>>1
に期待
667 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 12:48:27.61 ID:JpjC4Owo
母がかわいすぎて生きるのがつらい
668 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 12:56:38.49 ID:aSftdUSO
母は美人なんだろ?おばちゃんじゃないんだろ?母が可愛くなってきたよ
669 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 13:20:22.57 ID:MgfPYUc0
まさかの母√か
近親相姦らめぇぇぇ
670 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 13:33:42.42 ID:nkfdqw6o
母いいなwwwwww
671 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 14:02:10.90 ID:ITRqgHQ0
どうでもいいけどアマネまだかよ
672 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 16:19:07.80 ID:dJIX1pMo
ああ、やっぱりサナミがいいなあ・・・
でも、もし安価が取れても俺じゃうまく運べない
673 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 16:28:49.73 ID:WsMOFoDO
安価に
『すっきりした笑顔でサナミに好きと言う』
とか書けば良いんじゃね?
674 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 16:29:44.88 ID:qon.vOUo
デート服はパイロットスーツ
675 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 17:10:02.67 ID:8uyF9UUo
でもまだ√確定はできないだろ
トミーとアマネのイベントを消化しないと
サナミ派があせって自滅したからトミーのときは成功させたい
676 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 17:16:52.01 ID:kJGSaQDO
トミーは俺がぶち壊す
677 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 18:18:18.35 ID:/e1j/HA0
ついに俺の恋旗破壊[フラグブレイカー]の能力を使うときがきたか
678 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:24:53.93 ID:4Vnpp2Q0
もうやだ母えろかわいい、俺も後頭部にぽよんとした感触を味わいたい
絶対、軽くのぼせるまで風呂に浸かってから風呂上りにビール飲むタイプだよな!とか妄想してる
クテンクテンになった所で「え〜?若い〜?もうおっぱい少しタレはじめてるよー?」
なんて言っていじめたい
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org724221.jpg
とりあえずストーリーが終わるまでラクガキしつつ傍観しようと思うの
ラクガキ量産するだけならいいよね、いいよね
679 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:29:37.88 ID:GDfCIRo0
いいね!gj!
俺もそんなイメージだ
680 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 18:30:33.38 ID:S79A0to0
トミーマダー?
681 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:32:25.40 ID:/IMKyO6o
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/14(日) 17:35:52.38 ID:4Vnpp2Q0
トリのつけ方が分からないフヒヒサーセン
幼馴染SSのラクガキ担当です
ゆっくりまったり描いてるので大丈夫ですよ、妄想してキャッキャウフフしてるだけですよ
寒色系メインでブレザーorワンピースですね
シンプルでありながら可愛いをモットーにデザインしてみます、ありがとうございます
それにしても母が予想外に可愛い行動するから惚れそうになってる自分がいる
ちがう、ちがう、お、俺はともみが、とみーが、ウォォオォオオ
物語の季節が冬みたいなので、ここぞとばかりにトミーにもっふもふ装備させたい
ジュニアブランドが似合いそうなので、ちょっと百貨店行ってカタログもらってきた
店員が不審者を見るような目つきだった気がしないでもない
絵に贔屓が出ないようにがんばぅ
長文スマソ
682 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:34:01.89 ID:qon.vOUo
>>681
そういうのイチイチ貼り付けなくて良いから
683 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:41:48.16 ID:4Vnpp2Q0
なぜかアッチでしたレスがコッチに来てる不思議
スレ間違えたかと思ったじゃないか
>>680
トミーは俺のPSDファイルの中で、あんなことやこんなことぐぐぅふへへへへへになってるよ
でも一番エロいことになってるのはあ(日記はここで途切れている
684 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/14(日) 18:47:41.10 ID:6eb/dW.o
またキーボードの前で朽ち果ててました。頑張らないと
あの、出来たらでいいんですけど企画の方のレスはこっちに張らないでくれるとありがたいです…
色々とややこしい事になるので…ごめんなさい
685 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 18:47:53.60 ID:P4bGDRc0
このスレ面白いけど時々頭沸いてるやつのレスがあるからすげぇ残念だと思ってるのは俺だけじゃないハズ
686 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:48:19.87 ID:8uyF9UUo
>>683
さあみんなで共有しようではないか
687 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:49:48.69 ID:m.Q2/gso
>>685
たぶん本人は気付いてない
688 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 18:50:49.89 ID:WgslOhE0
富樫早く書け、新作になってから全然進んでないぞ
689 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:52:28.19 ID:qon.vOUo
>>685
同意
ゲーム化とか正直どうでもいい
690 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 18:59:46.09 ID:XHD6AoDO
なんか冨樫が可愛く思えてきた
無理すんなよー
頭湧いてるのたぶん俺だな。なるべくROMるわすまんかった
691 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 19:40:40.04 ID:/hizVoAO
トミー√潰すとか言ってるやつなんなの?
サナミ√の時はおまえら空気読めよな?とか言ってるやつもいるしさ。
全員ではないけどサナミ派たちわるい人多いよね。
すいませんここに書き込むような内容じゃありませんでしたメモ帳にでも書いてきます
692 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 19:45:38.66 ID:1jrbo.DO
サナミ派はクズばっかだよな
サナミと話しているときにトミーをデートに誘ったトミー派を見習ってほしいぜ
693 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 20:06:08.76 ID:Z3jIz6Ao
向こうのスレも見てるんだが絵師がただの荒らしにしか見えない
694 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 20:15:08.89 ID:Tr72Jnw0
確かにSSとしては長すぎるが面白い
だけどゲーム化やれモラル欠如のあうあうあーのせいで若干冷めつつあるわ
ゲーム化も一部が勝手に盛り上がってるだけだし
いくら書き上げてからやるよと言ってようが気になるものだろうよ、向こうのスレも
絵師が動いているなら尚更、自ずとそっちの対応にも時間をとるだろう
俺はゲーム化は一度白紙にして
>>1
が執筆に集中出来る状態が一番望ましいと思うんだが
695 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 20:40:53.80 ID:XHD6AoDO
冨樫がんばってんだからあんまり俺らがやいやい言い合うのやめようぜ
最後まで読みたいからやりたいようにやらせてやろうよ
696 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 20:49:51.51 ID:kJGSaQDO
>>691
ここメモ帳じゃないんだけど?大体、安価なんだから何言おうが人の自由だろ。
697 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 20:50:06.69 ID:8uyF9UUo
>>694
ゲーム化は書き終わってからって何度も言ってんのに・・・
698 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 20:55:32.02 ID:nkfdqw6o
>>691
一々そんなこと書き込んで雰囲気悪くするお前の方がよっぽどタチ悪い件
予防線張ってまで書き込んでんじゃねえよ
699 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 21:12:30.06 ID:J7QBaCQ0
なんか普通にエキサイトしててワロタ
まぁ富樫にも住民にも責任とか落ち度があるわな
まぁちょいと落ち着いて抹茶飲めお前ら
700 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 21:21:29.84 ID:Le7OJos0
>>692
の皮肉で十分
701 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 21:22:00.89 ID:zVUoQYAO
ギスギスしすぎww
もう少し、和やかにやろうぜ
702 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 21:29:23.87 ID:H5ZSSbo0
追いついた
おいおい争いごとはなしにしようぜ
703 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 21:38:47.58 ID:/hizVoAO
>>696
じゃあ「お前ら空気よめよな」って言ってるやつはなんなんだよ
空気壊してすいませんでした
もう何言われようとROMります
704 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 21:43:49.62 ID:OdF3crs0
追いついた なんかまた荒れてきた?
705 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 21:44:09.08 ID:qon.vOUo
冨樫とか言ってるのも気持ち悪い
706 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 21:49:43.96 ID:Y8Odi2SO
まぁみんな俺の嫁なんで誰√でもいいんですけどね
707 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 21:53:15.62 ID:W6cE7.AO
正直
>>1
が気持ち悪いお(^ω^)
>>616
とか寒気したお(^ω^)
何?キャラ作りでもしてるのかお?(^ω^)
708 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 21:57:24.60 ID:dJIX1pMo
冗談のつもりだったんだけど、潰すとか言わない方がよかったのかな。
仲良く安価取り合いたいです。
709 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 22:06:20.09 ID:Mihjy020
おめーら、お茶でも飲んでリフレッシュしろ!
旦~ 旦~ 旦~ 旦~
旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ ドドドドドド
ヽ )ノ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~
旦~ ⌒(゚д゚)ノ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~
/. ( ヽ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~
旦~ 旦~ 旦~ 旦~ 旦~
旦~ 旦~ 旦~
710 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 22:07:40.00 ID:kJGSaQDO
以下恒久平和
711 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 22:09:08.43 ID:zVUoQYAO
>>703
〇〇派の一人の意見が〇〇派の総意なわけないだろ?
>709
ありがとう
712 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 22:11:22.50 ID:/hizVoAO
>>711
もちろんです
>>691
をよく読んでもらえると助かります
>>709
おいしいです
713 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 22:15:40.00 ID:H5ZSSbo0
>>709
うめぇ〜な〜
714 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 22:19:35.83 ID:ovYw4HI0
どうでもいいけど余命一年しかない俺からしたら一年以内の完結を求める
715 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 22:24:49.70 ID:q6hTi.AO
つかVIPのときより荒れてるね
716 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 22:28:09.99 ID:H5ZSSbo0
余命一年いっぱいいるな
717 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 22:38:57.61 ID:kJGSaQDO
>>712
何言われてもROMってるんじゃなかったのか
718 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 22:49:12.67 ID:/hizVoAO
>>717
面目ないです
719 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 23:00:41.74 ID:8uyF9UUo
∧ ∧
( ´・ω・) < みんな落ち着いて。 差し入れですよ
( ∪ ∪ ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
と__)__) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■)
梅干 高菜 おかか こんぶ ごはんですよ わさび漬け 焼たらこ
,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
(,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■)
鶏飯 明太子 ちりめんじゃこ ゆかり 柴漬 塩辛 牛肉しぐれ
,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
(,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■)
鮭 鶏ごぼう 野沢菜 天むす ツナマヨ エビマヨ 鮭マヨ 具なし
720 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 23:11:41.16 ID:Mc6dJnAo
>>719
明太子ください
721 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 23:15:24.95 ID:ymuVh/k0
>>719
ん?
なんか生臭いドロドロしたのはいってんだけど
722 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/14(日) 23:30:25.79 ID:rZLKcDUo
∧ ∧ おにぎりとお飲み物です。御自由におとりください。
(´・ω・)
( ∪ ∪ ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
と__)__) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (;;■)
南高梅干 高菜 おかか こんぶ ごはんですよ わさび漬け 焼たらこ 焼きおにぎり
,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
(,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■)
鶏飯 いくら ちりめん 豚生姜焼き 柴漬 塩辛 牛しぐれ かにめし
,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
(,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■)
鮭 鶏ごぼう 野沢菜 天むす ツナマヨ 焼肉 鮭マヨ 松茸御飯
,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、 ,.-、
(,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■) (,,■)
エビマヨ ネギトロ 田螺 うなぎ 辛子明太子 スモチ ゆかり お茶漬けのもと
__ ジャー ____
/⌒ヽ |;;lヽ::/ コポコポ ∧_∧ /__ o、 |、
( ^ω^)∫. |;;|:::|~ ( ´・ω・)ノ .ii | ・ \ノ
( つc□ i===i=i c□c□c□~~ 旦旦旦旦( o .旦| ・ |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| コーヒーの方はこちらへ | | お茶の方はこちらへ .|
723 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/14(日) 23:36:26.28 ID:muiPE1wo
∧ ∧ これは俺のものです。
(´・ω・)
( ∪ ∪ ,.-、
と__)__) (,,■)
トミー
724 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 00:16:25.28 ID:uGEJAlE0
残業から帰ってきたが全然進んでないワロタ
725 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 00:23:43.59 ID:uuuCFUDO
>>723
アマネ×トミーとな
726 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/15(月) 00:32:29.60 ID:xVFspSIo
遅筆な上、どうも荒れる原因作ってしまったようで、本当に本当に申し訳ないです。
完結に向けて集中して頑張るので、どうか皆さんまったりしてください…。お腹いたくなります。
今日は忙しかったので、遅くなりました。これから書いていきます。
727 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 00:37:42.46 ID:uGEJAlE0
>>726
お疲れ
俺は明日仕事だからもう寝るわ
体気ぃつけろよ
728 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 00:38:58.75 ID:8eEl3/Io
おれは遅筆だとは思わないよ
あせって雑なもの作るより納得できるもの書いてほしい
∧ ∧
(´・ω・)
( ∪ ∪ ,.-、
と__)__) (,,■) 旦~
梅干し
729 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 00:56:42.57 ID:c7ST8YAO
>>728
同意
>>1
まったりしてるよ
730 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 01:03:51.86 ID:G.AOOYDO
>>1
がんばれ
731 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 01:19:01.62 ID:pUQlW0U0
>>1
が来ると大抵事態が収拾する、良いことだ。
732 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 02:11:34.54 ID:xVFspSIo
その後は俺の予想通り、夕食を食べながらほろ酔いの母に、散々いじられ倒した。
彼女は料理を作れる人にしろとか、可愛げのある子がいいとか。
そんな状態で食べた夕食の味はほとんど覚えていない。
母の作るものだから、美味しかったのには間違いないのだろうが。
男
「おーい母さん……。ちゃんと布団で寝ろよー……おーい」
母
「んー……」
俺が後片付けをしている間に、母はソファーで眠りこけてしまった。
仕事明けにこうなるのはいつもの事だが、起こす方の身にもなってほしい。
男
「ったく……おーい……起き……うわっ!」
寒々しい格好で寝ている母に、毛布でも掛けてやろうと近づいた時、
俺は首にまた腕が絡みついてきた。
母
「よーしよーし…ふふふ……」
男
「ちょ……酒くせーなぁ…」
さっきと違い、今度は攻撃ではなく、抱擁だった。
暖かい腕に抱かれて、俺はとても恥ずかしくなる。
母
「ねーえ…?……まちがってもー……いーのよ?」
男
「……え?」
母
「わたひもー……いーっぱい…まちがってきたからぁー…」
上手く回らない舌で、寝言のように呟く。
耳にかかる息がくすぐったい。
母
「まちがうのはー……まちがいじゃないのよー……ふふ…」
男
「………母……さん……」
733 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 02:49:24.01 ID:8eEl3/Io
母√突入かと思った
734 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 03:48:22.46 ID:xVFspSIo
ふらつく俺を、見抜いていたのか、それともただ、寝ぼけていたのか。
それだけを言うと、母はまた深い寝息を立てて眠ってしまった。
起こさないように腕からすり抜ける。
もっとも、今ならゆすっても起きはしないだろうが。
男
「……ほんと、この人幾つだよ……」
ほんのりと赤い顔で寝息を立てる顔は、確かに俺ほどの子供が居るようには見えない。
我が母ながら、可愛い寝顔だ。
俺はそっと厚めの毛布を掛けて、自分の部屋へと戻った。
男
「ふー……」
ベッドに身体を放り投げる。
白い蛍光灯の光が目に染みた。
男
「間違うのは……間違いじゃない……かぁ」
母の言葉が胸にじんわりと広がっていく。
―――待ってるから
俺の答えは、何処にあるのか。
今日一日を振り返りながら、天井を見つめていると、不意に枕元の携帯が震えた。
こんな時間に電話が鳴る事はあまりない。
男
「……誰………あっ!」
慌てて携帯に手を伸ばす。
開いた液晶がメールの着信を知らせていた。
件名:
『いくじなし』
本文:
『もうねる』
男
「あっちゃー……やっちまった……」
送り主はもちろん、トミーだった。
彼女には申し訳ないが、今日一日のごたごたで完全に失念していまっていた。
自分で誘っておいて、何の連絡もしないとは。
誰だって怒るに決まっている。
735 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 04:34:50.29 ID:xVFspSIo
時刻は午後十時過ぎ。
俺は何度か操作を間違えながら、すぐに彼女に電話を掛けた。
―――ルルルル…
ほんの数分前にメールを送ってきたのだから、まだ眠ってはいないはずだ。
しかしなかなかコール音は鳴り止まない。
男
「……出てくれー……」
祈る気持ちで耳を澄ませていると、十数度目で応答があった。
男
「も、もしもし…!」
トミー
『……おかけになったでんわばんごーはー』
男
「あ、あれ…?」
よく耳にする留守番電話サービスのガイダンスが聞こえてきたが、どう聞いてもこれは。
トミー
『ただ今持ち主がふきげんのためー、おつなぎしたくありませんー』
トミーだ。
予想通り、不機嫌らしい。
男
「も、もしもし…?トミー?ごめん!」
トミー
『…………』
電話を片手に頭を下げるが、携帯の向こうからは何も聞こえてこない。
男
「……怒ってる…?」
トミー
『………きげんを直したいかたはー、モノマネを披露してくださいー』
男
「も…モノマネ!?」
突然の無理難題を押し付けられて困惑してしまう。
736 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 06:37:15.24 ID:uuuCFUDO
安価クルー?
737 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 07:32:55.19 ID:MhAZ6.DO
安価のよかん…ゴクリ
738 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 07:35:21.03 ID:YGGyrADO
トミーがかわいくて会社にいくのがつらい
739 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 07:45:58.94 ID:xVFspSIo
トミー
『…なーおー、この電話はあとじゅーびょーで切れちゃうかもですー』
男
「わーかったわかった!やる!やります!」
どうやらやるしか道は残されていないようだ。
俺は数少ないモノマネのレパートリーの中からとっておきを披露する事にした。
男
「……”か、か、か……髪切った”?」
お昼の顔、「ドモリ」さんのモノマネだ。
少しどもり気味の特徴的な話し方が、非常に良く似ていると我ながら思う。
トミー
『…………………さんてん』
男
「……何点満点ですか」
トミー
『………………せんてん』
評価は非常に低かったが、なんとか電話は切られずに済んだようだ。
男
「ごめんな、ちょっと今日忙しくてさ……」
トミー
『……いいわけはらいせできく』
言い訳さえさせてもらえないとは、これは機嫌を直すのに時間がかかりそうだ。
男
「すまん…。でさ、明日の事なんだけど……」
トミー
『こらー!流すなー!』
突然のボリュームに耳が痛い。
やっぱり何気なく話しを進めるのはまずった。
トミー
『今何時だと思ってるんだ!もーよい子は寝る時間だよ?』
いくらなんでも高校生がそんな早く寝るとも思えないが、彼女の場合有り得る。
というか事実彼女はかなり寝る時間が早かった。
740 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 08:09:58.48 ID:xVFspSIo
以前十一時頃に電話した時には、かろうじて電話には出たものの、
すぐに寝息しか聞こえなくなり、仕方なくこちらから電話を切った覚えがある。
トミー
『せーーーっかく!可憐な美少女トミーちゃんが遊んであげるって言ってるのに……』
男
「悪かったって……。どうしたら許してもらえんだ?」
いつの間にか俺はベッドの上で正座だ。
トミー
『………明日、あそぶ?』
男
「遊ぶ遊ぶ、遊ぶよ」
小さくて、ふてくされたような声。
まるで子供のようだ。
こっちから言い出したのだから、遊ぶに決まっている。
トミー
『んー……じゃあ、ぼくの行きたい所に行きたいなー』
少しずつだが彼女の機嫌は上向いてきている。
この調子なら大丈夫そうだ。
男
「そのトミーの行きたい所は何処なんだ?」
トミー
『……なんだーそんなのもわかんないのー?』
彼女が行きたがる場所とは何処だろうか。
ケーキの食べ放題、映画、釣り……?
全く判らない。
男
「すまん、全く思いつかない」
トミー
『もー駄目だなぁー……じゃあヒントそのいちー!身体をうごかしまーす』
男
「ほうほう。身体を使う」
アウトドアだろうか?
俺は色々な場所を思い浮かべる。
741 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 08:22:24.50 ID:xVFspSIo
ちょっと休憩しますー。
―――――――――――――――
※次回レスで安価有ります※
書き込み予定時間12:00頃
―――――――――――――――
742 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 09:02:16.72 ID:LGyqEQAO
おっつおっつ
743 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 09:44:44.15 ID:oWzoEQDO
母が可愛すぎてもう……
744 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 09:54:52.66 ID:fSM0ieA0
体を動かす・・・・・ゴクリ
745 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 10:10:32.94 ID:Nke/VgSO
体を動かす…安価…
本気で行くか
746 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 11:57:26.30 ID:9thrmoSO
おぅ、そろそろじゃん
747 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 11:57:29.66 ID:E0a6REDO
2月なら海、プールは無しか…
いや、でも温水プールなら…!
748 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:05:15.27 ID:uWapXWoo
お城と勘違いしてラブホに直行
回避不可
749 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:25:33.68 ID:G.AOOYDO
かむあーりー
750 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:27:18.82 ID:qWWUY260
にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃん
751 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 12:37:20.83 ID:xVFspSIo
トミー
『ヒントそのにー!ながくてかたいものをつかいまーす』
長くて、硬いもの。
まだ判らない。
男
「んー……すまん、まだ判らん」
トミー
『えー?もー…。ヒントそのさーん!好きだけど、ぼくはちょっとこわいかなー』
トミーが怖がる事?
昼食をひっくり返す事と幽霊以外思い浮かばない。
男
「…………うーん…」
トミー
『もーどーしよもないなー。当たるまでやるよっ!ヒントそのご…あっ、よーん!』
彼女と話していると、本当にちょっとした悩みなんてどうでもよくなってしまう。
段々と笑みがこぼれる。
トミー
『上手く出来るとー……すっごくきもちいい事でーす』
男
「うーん……」
身体を動かして、長くて硬いものを使う。
それから女の子のトミーは少し怖くて、上手く出来ると気持ちがいい。
トミー
『チチチチチチ……じゅー!きゅー!』
男
「え、えぇ?制限時間付き!?」
トミー
『はーち!ななー!』
トミーが行きたい所、それは……
>>757
752 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:39:49.31 ID:BkRUFZQo
ksk
753 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:40:18.95 ID:uWapXWoo
ksk
754 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 12:41:13.12 ID:mVRwipko
ksk
755 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:41:25.21 ID:oWzoEQDO
わかった!バッティグセンターだ!
756 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:41:35.43 ID:c7ST8YAO
棒高跳び
757 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:41:38.87 ID:uWapXWoo
>>748
758 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:41:59.05 ID:klaVkAMo
>>755
759 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:42:26.84 ID:9thrmoSO
ダーツ
760 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:43:10.28 ID:oWzoEQDO
回避不可とか言い出したら根本から覆っちまうだろ
それはねーわ……
761 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:44:49.20 ID:nItbTRs0
全俺が泣いた
762 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:45:18.47 ID:9thrmoSO
これは…ないだろ
763 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:45:26.45 ID:uuuCFUDO
まあ待て
ラブホで何をするのかまでは指定されていない
764 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:47:17.07 ID:uWapXWoo
そもそも回避できるなら安価なんて必要ないだろ
765 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:47:39.44 ID:oWzoEQDO
回避不可はまじでないだろ……
これがおkなら今までの
>>1
の頑張りなんだったんだよ
766 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 12:50:28.97 ID:mVRwipko
こういう痛いのはスルーでいいだろ・・・
767 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:50:39.32 ID:uuuCFUDO
>>765
落ち着いて初期の安価見直してこい
768 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 12:51:17.86 ID:LGyqEQAO
この流れで城と勘違いしてってなんだよ・・・頭おかしいのか?
会話にすらなってないんだから再安価でもいいんじゃね
馬鹿を真面目に相手してたらキリがねえよ
769 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:52:08.41 ID:zYLSSkDO
大丈夫だ今まで
>>1
は真の意味で安価を回避したことなど無い
>>1
ならやれるはずだ
たやすい事ではないが
770 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/15(月) 12:52:21.08 ID:xVFspSIo
これは……一番困った……
昼食とりながらちょっと悩んできます…
771 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:59:10.19 ID:9thrmoSO
がんばれ
772 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:59:18.22 ID:oWzoEQDO
>>767
内容じゃなくて二行目の話な
だいたい城ってなんだよ……あほすぎる
これはスルーしとかないと後々大変だぞ
>>1
……
773 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 12:59:47.30 ID:Yay7UQUo
安価自体は構わんと思うけど
せめて話の流れにあってる時にしてやれよww
一緒に居るわけでもないのに何をどうやったら城と間違えてラブホ行くんだよwwwwww
774 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:00:36.50 ID:G.AOOYDO
回避不可ワロタwwwwww
775 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:01:18.91 ID:MhAZ6.DO
ksk
776 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:02:18.77 ID:zYLSSkDO
>>1
は意地でもスルーしないだろうな
アホを文章でひねり潰す、なかなかいいじゃないか
777 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:06:21.36 ID:oWzoEQDO
見れば見るほど日本語でおk状態だな
間違いなくリア消
778 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:08:14.05 ID:a86y9QQo
トミーと話している途中だが急に城に行きたくなり、1人で城へ向かうが間違えてラブホに行ってしまったっていうことでおk
779 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:18:08.55 ID:uuuCFUDO
>>772
言おうとした事が
>>769
に言われてました
780 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:19:29.05 ID:wBpSGYko
>>779
IDすごいなwwww
781 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:30:51.67 ID:uIPjAsDO
悉く安価のタイミング逃す俺カッコイイ
782 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:38:41.42 ID:Gu3Oujgo
なんてこった安価終わってた・・・
でもトミーの問題に答えてる段階だからどうにでも出来るな
783 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 13:41:56.45 ID:xVFspSIo
様々な回答が脳を駆け巡ったが、俺はある一つの答えを閃いた。
眼の奥に浮かぶネオン輝く妖しい建物。
彼女がそんな所に誘ってくるとは、かなり意外だった。
男
「はい!わかった!」
トミー
『はい、二番のきみ!答えはなんだっ!』
男
「答えはー……”お城”か!?」
トミー
『………え、ええ…?おしろ?』
携帯の向こう側で、少しうわずった声を上げるトミー。
男
「そうそう、だから……”お城”だろ?」
俺は閃光の様に舞い降りた答えに確信があった。
にも関わらず、彼女の反応はあまり良くない。
トミー
『お、おしろってー……あのおしろ?』
男
「あの”お城”じゃないのか?長くて硬いものを使って身体を動かして、怖いけど気持ちいいとなったら……」
トミー
『ぼ、ぼくおしろが何か全然わかんないんだけど……』
男
「あれ?わざとそう呼んでるのかと思ったんだけど……」
もしかしたら、間違えているだろうか。
俺は閃いた答えをきちんと彼女に伝えた。
男
「だから、行きたい所って……ラブホだろ?」
トミー
『らっ……!』
784 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:44:08.05 ID:zYLSSkDO
>>781
涙ふけよ
kskst
785 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:52:54.27 ID:0qcnKASO
トミーには変質者扱いされてるからラブホ直行だろって言うくらいは余裕のはず
786 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 13:54:34.07 ID:2/8QHMQ0
あわよくばにゃんにゃんですね。
こうですか!わかりません!
787 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 14:01:25.17 ID:xVFspSIo
素っ頓狂な声をあげて暫く沈黙した後、彼女は明らかに様子がおかしくなった。
トミー
『へ……へんたいー!!!ぼっ……、ぼくをそんなとこに連れてって…どうする気だぁ!』
どうやら俺は答えを間違えたらしい。
トミー
『そ、そんなや……やらしい奴だとは思わなかった!もーいい!切るから!』
やらしい呼ばわりされるはずはないのだが、何か誤解が生じているようだ。
せっかく機嫌を直したのに切られたら元も子もない。
男
「ちょ、ちょっとまって!やらしいってなんだ?ラ……、”ライブホール”の事じゃないのか!?」
トミー
『…………………へ?』
男
「だから……”ライブホール”……。ラブホって……言うだろ?」
ここからは少し遠い所にあるのだが、その荘厳な外見から、通称”お城”と呼ばれるライブホールがある。
”お城”が特殊なのはその外見だけではなくて、誰でも簡単にライブが出来るという変わったサービスがあった。
トミー
『……………そ、そっちかぁー……』
ライブなら身体を動かすし、長くて硬いのはスタンドマイク、女の子だから少し怖いだろうが、叫ぶのは気持ちがいい。
これだけのヒントを得て、俺はラブホに答えを直行させたのだが、この反応を見る限り違うようだ。
男
「そっち…?どっちだと思ったんだ?」
トミー
『……っ!知らないもん!それにっ、ふつーそんな略し方しない!』
慌てて恥ずかしそうに叫ぶトミーの声で、俺はこの勘違いの意味に気がつき、強烈な恥ずかしさに襲われた。
そうだ、普通は”そう”言えば、あっちを想像してしまうだろう。
母譲りの人ずれた略し方と、変わったお城が、こんな間違いを生むとは。
やっと会話の”ズレ”に気付いた俺は、低いうなり声を上げているトミーに必死に弁解をした。
トミー
『うぅ〜……!』
男
「違うな!違う、悪い間違えた。つ、疲れてるのかなー……はは…。トミーが”お城”なんて行かないよな?」
788 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 14:18:48.60 ID:oWzoEQDO
鮮やかすぎて鼻血出た
789 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 14:21:37.49 ID:/LPvqUAO
トミーかわいすぎ
790 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 14:33:48.19 ID:xVFspSIo
気まずい沈黙。
俺はあの言葉を、完全に”ライブホール”の略称だと思っていた。
我ながらとんでもない勘違いをしたものだ。
これでまたトミーの中で変質者としての株が上がった事だろう。
沈黙の中で、俺はもう一度ヒントを考え直す。
硬くて長い、身体を……。
男
「……バッティングセンターか!」
トミー
『おそい!きみのばかっぷりにはあいそがつきました!ゼロ点だばかもの!』
機嫌を直すどころか、より悪化させてしまった。
そういえば、彼女が熱心な野球ファンだった事をすっかり忘れていた。
紛らわしいヒントを出す方にも問題があると思うのだが、その疑問はぐっと飲み込む。
男
「すいません……。以後気をつけます……」
トミー
『………もーいいよっ。でーもー、明日は覚悟しておくよーに!』
男
「…了解です」
誤解は解けたが、少し明日が怖い気もする。
ともかく、どうにかこうにかトミーの機嫌を元に戻す事には成功した。
トミー
『じゃー集合場所は、ちみが決めてもいーよ?』
男
「そうだな…、じゃあ駅前に一時でどうかな?」
トミー
『うむ!おーいにけっこー!』
底抜けに明るい声は、いつ聞いても笑いが漏れる。
彼女との会話は常に笑いが絶えない。
トミー
『ねーねー……ぼくおめめがおもくなってきたぁ』
他愛も無い会話を暫く続けていると、あくび交じりの声。
ふと時計に目をやれば針は十一時丁度を示していた。
笑いすぎて時間の事をすっかり忘れていた。
まだ風呂にも入っていない、そろそろ電話を切ったほうがいいだろう。
791 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 14:42:45.44 ID:ifNyXko0
トミーは野球好きか…ポイント高いな
792 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 14:52:25.06 ID:xVFspSIo
男
「もうこんな時間かぁ。じゃあそろそろ切るな」
トミー
『それはめいあんだなー……さすがわが弟子だぁー…』
電池の切れかけたおもちゃのように、みるみる声に眠気が篭る。
これはまた寝息が聞こえてくるのも時間の問題だ。
男
「お褒め頂いて光栄です、お師匠様。んじゃ、明日な」
トミー
『あー!』
男
「うわっ!な、何?」
いきなりの大声に驚いた。
まだこんな大声を出す力が残っていたのか。
トミー
『あしたぁー……たのしみにしてるよー』
寝言のように呟く声に、俺の胸はどくんと揺れた。
男
「……おう、俺も楽しみだ。じゃあ……おやすみ」
トミー
『ほんとー?へへへ……。じゃぁぐんなーぃ…』
―――ッツーツー…
よほど眠かったのか、最後の方はもう聞こえないほどの声だった。
余韻に浸るように、俺は暫く携帯を耳から離さなかった。
男
「はー……!」
大の字でベッドに転がって、全身の力を抜く。
バッティングセンターなんて、一体どれくらい行っていないだろう。
軽快な音でボールを打ち返すトミーを想像して、少し緊張した。
男
「……風呂でもはいるか」
俺はゆっくりと起き上がって背筋を伸ばすと、着替えを持って階段を降りた。
793 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 15:06:19.59 ID:YBTmRsE0
むー…サナミいちゃついた翌日になんとふしだらなヤツだ…
いや代わって下さいお願いします
794 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 16:31:23.05 ID:cJZigmEo
今までサナミ派でごめん・・・俺、トミーに目覚めちゃったよ
これからは改心してトミー好きになる
トミー・ロッドじゃないぞ
浮気性でごめんなさい
795 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 16:33:23.41 ID:oJGJ3Y.0
>>794
構わんが二度とサナミ側には来れないということを覚悟しろよ
796 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 16:37:11.12 ID:zYLSSkDO
畜生、なんだこのジゴロ
[
ピーーー
]ば良いのに……
797 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 16:40:34.86 ID:oWzoEQDO
>>1
驚異の回避性能
さあ何人サナミ陣営離反者が出ることやら…
798 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 16:44:51.22 ID:cJZigmEo
>>795
そ、そうかそうだよな
んー・・・でもトミーの方がこうなんていうか
なんか迷いますね!
あぁ悩ましい
799 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 16:57:37.25 ID:NYtqVs60
僕はサナミ一筋でいくますお!
800 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 17:04:05.08 ID:wnOu0IE0
今のところ各ヒロインの総力図的にはこんな感じ?
あくまで客観的なファンの定着イメージだけど
サナミ ― ■■■■■
トミー ― ■■■
アマネ ― ■■
801 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 17:08:19.07 ID:E4VIQISO
本格的に頭の中でトミーがみのりんになってきた
802 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 17:14:02.98 ID:Zfwgrewo
あのいきなりキレる池沼か
803 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 17:18:05.89 ID:Djg9O/so
本命、対抗、大穴といったところか
804 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 17:33:40.21 ID:oWzoEQDO
おいダークホースの母はどうした
805 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 17:54:41.73 ID:LfYBUv60
ママは僕のうちにいるよ
806 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 20:15:28.32 ID:G.AOOYDO
確かにトミーも可愛いが、サナミ一筋です
807 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 20:39:10.66 ID:Nke/VgSO
最初からトミー以外眼中にない
808 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 20:41:42.40 ID:uIPjAsDO
トミーって、トミーロッドとトミーリージョーンズとトミーズ雅のうち誰に似てるの?
809 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 20:43:31.27 ID:5pUS9ISO
>>808
トミーズ雅
810 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 21:05:18.39 ID:xVFspSIo
下に降りると、ソファーで寝ていた母はいつの間にか自室で眠っていた。
あられもない格好で寝ている姿に、ため息をつきながら布団を掛けてふすまを閉める。
この様子だと明日の朝食は無いかもしれない。
早く眠りたかった俺は、シャワーだけで風呂を済ますと、足早に部屋へ戻った。
男
「……寒い」
冷たい部屋の空気に暖房をつけていなかった事を後悔する。
少しだけカーテンを開けて外を見ると、もう向かい側の窓に光は無かった。
目覚ましをセットして、ベッドに寝転がると、大きなあくびが出る。
天井を眺めながら、色んな事を考えていたつもりなのだが、
布団をかぶると、俺は吸い込まれるように眠りに落ちた。
―――三連休、二日目
男
「……これか?こっちか……」
ベッドの上にはもう五着以上の服が放り投げられている。
着る、鏡、脱ぐの繰り返し。
昨日の事があったせいか今日は服が全く決まらない。
男
「……………悩んでもしょうがないか……」
迷いに迷った挙句に、結局俺は普段とそう変わらない服を選んだ。
強いて言うなら、変わった所といえば昨日よりも少しだけ動きやすいぐらいだ。
ファッションの事なんてあんまり興味がないのだが、悪くは無いと思う。
悪い服を着ていたらあの母にこっぴどく笑われるから、自然と酷い服は淘汰されて行くからだ。
男
「……うし」
メッセンジャーバッグに薄手のスポーツタオルと財布を放り込んで、部屋を出る。
待ち合わせ時刻まではまだ余裕で間に合う時間だ。
しかし思ったよりも寝すぎたせいで、ゆっくり朝食を食べるほどの時間はない。
部屋をそっと覗くと、こちらまで眠くなりそうなほど気持ちの良い寝顔で母は眠ったいた。
少しばかり腹は減るが、多少の空腹ぐらい我慢しよう。
男
「……いってきまーす…」
音を立てないように気をつけて、俺は玄関を出た。
811 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 21:57:43.35 ID:oWzoEQDO
誰も居ない告白するならイマノウチ
アマネは俺の嫁
母は愛人
812 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 22:03:25.06 ID:E4VIQISO
母は譲らない
813 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/15(月) 22:32:48.91 ID:xVFspSIo
やっと二日目……折り返しはすぎてるんですが先が長い…
814 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 22:42:41.60 ID:R7rThoDO
もうやめちまえ
815 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 22:46:11.05 ID:G.AOOYDO
>>814
はスルーしましょう
816 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 22:47:09.54 ID:uWapXWoo
携帯多すぎワロタ
817 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/15(月) 22:50:01.38 ID:V9E8kLU0
でも遅いのは事実だからなぁ
それに関しては誰も何も言えんだろ
最初はすぐ完結すると思ったが全く進展がないな
818 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 22:53:14.54 ID:zYLSSkDO
しゃべり場()タイムをそんなに発動させたいか
そうかそうか
819 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 23:15:30.94 ID:xVFspSIo
眩しい陽射しと白い息。
今日もいい天気だが、まだ春は遠いようだ。
サナミと出くわさないか少し心配したが、出会った所で後ろめたい事はないはずだ。
きょろきょろと警戒する自分がよくわからない。
集合場所の駅まではここから十分ほどで着く。
俺は上着のファスナーを首元まで締めて、緩やかに走り出した。
―――駅
男
「……ちょっと早く走りすぎたかな…」
柱にもたれながら、ほんのりと温まった体を休める。
待ち合わせ時間の十分も前に着いてしまった。
辺りを見回しても、まだトミーの姿は無い。
彼女の家からは少し遠いはずだから、まだ居なくても当然といえば当然だ。
男
「……一応、連絡いれとくか」
俺はポケットから携帯を取り出して、トミーにメールする事にした。
件名:
『おーい』
本文:
『もう駅に着いてるよ。改札付近にいます』
一つだけ絵文字を付けて、送信ボタンを押す。
そういえば、トミーと二人で遊ぶのはいつぶりだっただろうか。
三年間毎日学校で顔を合わせていたから、別段休みの日まで会おうとは思わなかった。
入学した頃から騒がしい子で、誰とでもすぐに打ち解けてしまう。
彼女はそんな不思議な子だった。
男
「……でかくなってねーな……あいつ」
年々広がる俺と彼女の身長差を思って、少し笑ってしまった。
―――ブゥゥン…
手の中で携帯が震える。
送信者はもちろんトミー。
送ってからものの一分もしないうちにメールが返ってくるとは、
打つのがあまり得意では無い俺にとっては驚異的なスピードだ。
820 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 23:22:28.66 ID:cJZigmEo
こんだけ書くの遅いんだものVIPから移って正解だったね
いや・・・逆に落ちる心配なくなったから遅くなったのか・・・!?
821 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/15(月) 23:34:16.46 ID:xVFspSIo
件名:
『今』
本文:
『すっごい走ってる!もうすぐつけ』
男
「……着け?」
俺は着いているというのによくわからないタイミングで命令されてしまった。
いくら速く打っても打ち間違えていたら意味ないだろう。
独りで思わず笑ってしまう。
メールを打ちながら走るなんて芸当、彼女に出来たのかと関心しつつも、
ころんだりしていないか少し心配になった。
そのまま待つ事数分、横断歩道の向こうで人の間に埋もれそうな生き物を発見した。
俺に気がついたのか、両手を挙げてぴょんぴょんと跳ねてる。
信号が青に変わると同時に、いつもの帽子をふわふわと揺らしながらトミーがこちらへ走ってきた。
男
「うーす。おは……」
トミー
「たっ、タイムはっ!?」
男
「え、ええ?えーと……一時三分」
トミー
「うーわぁー!ま、まけたぁー!」
男
「ま、負けたって……何に?」
出会い頭からフルスロットルのテンションなのは相変わらずだ。
本当に悔しそうな彼女は、一体何と戦っていたのか。
トミー
「はぁー……ちかれたー……。ぼくもうだめかも……」
大袈裟によろけるトミー。
こんなテンションで生活していて疲れないのか不思議に思う。
まぁ、子供というのは無尽蔵のスタミナを持っているものだが。
トミー
「でも!次は負けない!」
不敵な笑みを浮かべて勢いよく指差された。
全く、母といい彼女といい、俺の周りには年齢不詳の女性が多い。
822 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 23:34:31.64 ID:GaKjAQso
このくらいでは遅筆とはいえないな
だいいちプロでもないのに内容とキャラクターと進行を考えながら
しかも安価進行だから書き溜めできないし
823 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 23:39:40.85 ID:oWzoEQDO
即興っちゃ即興だしね。何も書けない俺からしたら早いぐらいだと思う
やばいトミーが可愛すぎて生きるのが辛い
824 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/15(月) 23:56:58.14 ID:zYLSSkDO
光の速度で飛んでるせいで、相対性理論的に周りよりも歳をとるのが遅いと言うキャラがいたな
もちろんエロゲで
825 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/16(火) 01:02:34.88 ID:YR.ZCIk0
ミラがどうしたって?
826 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/16(火) 01:44:04.57 ID:vbmNUgSO
なんだやっぱトミー可愛いじゃん
827 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/16(火) 02:41:12.62 ID:JlfqRUSO
最初からトミー一筋のおれに死角はなかった
828 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/16(火) 03:48:47.81 ID:6LSfLs6o
男
「そうか、じゃあ俺も負けるわけにはいかん」
トミー
「むぅ…こしゃくな奴め……」
謎のファイティングポーズで威嚇される。
やっている事は学校となんら変わりないが、今日の彼女は少し違って見える。
二人で遊ぶのが久しぶりな事もあるが、当然今日は私服だ。
帽子こそいつものお気に入りだが、ふんわりとした可愛らしい服に身を包んだ彼女は、
随分と”女の子”に見える。
服装一つでこうも印象が変わるとは、女という生き物はすごいものだ。
トミー
「ん?どったのー?」
無言で眺めていたせいか、顔を覗き込まれた。
ふっと漂ってくる甘い香りにどきりとした。
男
「え?あぁ……。可愛い服だなーと思ってさ」
トミー
「そ、そっかなぁ……?えへへへ……とう!」
男
「ごふぅっ!!え!なんで!?」
小さな拳が鳩尾に突き刺さった。
トミー
「い、いいからいいから!ほら電車来たぞ電車が!わーい!」
トミーは苦しむ俺を置き去りに改札へと走っていった。
照れ隠しならもう少し穏やかにやってほしい。
それにしても、あんなに綺麗にウエイトの乗った突きを何処で覚えてきたのか。
トミー
「こっちこっちー!すわれるよー!」
男
「座れるよって……ガラガラじゃないか」
トミー
「まぁまぁ、おかまいなくー!」
先に長いすの端っこに座っていたトミーの隣に腰掛ける。
不思議とここの路線は平日の方が空いていて、俺たちの乗った車両はほぼ人が居なかった。
829 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/16(火) 06:16:43.87 ID:6LSfLs6o
動き出した景色が、スピードを上げて走り去っていく。
光で満ちた車内は暖かくて、心地がいい。
トミー
「がたんごとーん……ぼくこの音好きだなー」
電車の”モノマネ”をしながら、足をふらりふらりと遊ばせている。
男
「うん……すげー落ち着くというか……眠くなる」
トミー
「ねるなー!ねたらしぬぞー!」
男
「いたいいたい……」
お決まりの文句と共に、身体をぶつけて揺らされる。
陽射しに透ける帽子と髪が、キラキラと光ってとても綺麗だ。
男
「そういえば、トミーが野球好きって事忘れてたよ」
トミー
「ん?ぼくが野球好きだっていったの?」
窓の外を眺めていた彼女が、くるりとこちらに向き直る。
その眼は真剣そのものだ。
何も間違った事は言っていないのと思うのだが、俺は身構える。
男
「な、なんだよ」
トミー
「ノン…ノン」
呆れたような顔で首を振る。
トミー
「トミーちゃんは、野球がだぁーい好きなのだよっ!よーく、覚えておきたまえ。わとそんくん」
男
「………はい。ホームズさん」
自慢げな顔でヒゲを触る仕草をするトミーの口元に、俺の眼には確かにヒゲが見えた気がした。
彼女は空想と現実の狭間で生きているに違いない。
本当に一緒に居れば居るほど、不思議な少女だ。
830 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/16(火) 07:14:49.74 ID:6LSfLs6o
そこから俺は随分と熱の篭った野球談議を聞かされる羽目になった。
野球にはあまり詳しくない俺は、火をつけてしまった事を後悔した。
がらんとした車内、立ち上がって身振り手振りを交え話すトミー。
熱く解説してくれるのはいいのだが、揺れる度にふらふらと危なっかしい。
トミー
「今年のヤママヤーズはつっよいんだよ!?気合いがちがう!きあいが!」
男
「そ、そうか……今年はメジャーの誰かが帰って来るんだよな?」
トミー
「そう!それがだいじ!ギガンテスなんてもう眼じゃないね!」
彼女が応援するヤママヤーズは常勝チームならぬ、”常負”チームだ。
宿敵は毎年優勝候補の強豪ギガンテス。
まぁ、宿敵と言ってもほぼ勝った事はないのだが。
ファンサービスを大事にするヤママヤーズには熱狂的なファンが多いのも有名だ。
毎年この二チームの試合は、伝統の一戦として日本中から注目される。
トミー
「ちょーつよいんだよ?ちょーだよ?」
男
「そうだな、超強いな?」
トミー
「うんっ!えへへへ…!」
ひとしきりの熱い解説を終えたトミーは、満足げだ。
トミー
「…………」
しかし唐突に一点を見つめたまま黙り込んでしまった。
男
「……?どした?」
トミー
「んー……!」
両手を上げて身体を伸ばしている。
表情はまた真剣そのものだ。
限界まで手を伸ばした後、力なくうな垂れた。
トミー
「………はぁ……届かない……」
831 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/16(火) 08:54:57.44 ID:ca800mco
ヤママヤーと言えばヤマピカリャー
832 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/16(火) 10:16:16.14 ID:1jQgqADO
ちらほらあずまネタはいるな
そういうの好きだわ
833 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 17:20:37.69 ID:MCRvucDO
復活きたきたきたきた
834 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 17:33:26.61 ID:cNKX0ws0
期待期待期待期待!!!!!!!!!
835 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 17:35:10.59 ID:IqDlV.wo
復活ktkr!
836 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 17:37:51.58 ID:FtlCFQDO
おお、復活きたか
837 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 17:40:17.34 ID:4BgCXIDO
復活きたわぁ
838 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 18:04:45.35 ID:iMxIhCMo
いきなり復活とはww
839 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 18:09:58.61 ID:74XcDLso
キタ―――――(゚∀゚)―――――!!
840 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 18:36:54.27 ID:KhU/IEDO
復活したー
841 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 18:54:29.11 ID:jhYr0ADO
・
>>1
が復活に気づいていない
・
>>1
が長いブランクで飽きた
・書きためがないから今書いてる
・ゲーム化してる
・結末が思いつかず蒸発
・ゴールイン出来ない他のヒロインを哀れに思い自決
どれだろう
842 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 19:08:29.63 ID:F3oNhrY0
>>841
冗談に聞こえないから嫌だな
843 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 19:22:08.90 ID:MCRvucDO
一応、安価SSだしブランクあっても書きためはしてないんじゃないかなと思われる
844 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 19:28:52.73 ID:cNKX0ws0
製作スレも落ちてたから、ゲーム化は無いな
そもそも話を終わらせてからって言ってたし
845 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 19:29:45.66 ID:8MnHJISO
あら、一ヶ月は復活しないと思ってたら
846 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 20:05:09.09 ID:u0v.J5Y0
おぉ、やっと復活しおったか
847 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 20:06:52.07 ID:5Ub7A.Mo
じゃあ俺はハーレムエンド目指す
848 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 20:45:48.95 ID:KHDmcmwo
復活しとる
続きはまだかー
849 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 20:49:29.29 ID:KAYNv6DO
復活してる!!!!
v(≧∇≦)v イェェ〜ィ♪
850 :
幼馴染
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/19(金) 20:51:39.12 ID:sA7OCR.0
あら、復旧してましたか。しかしびっくりした……
晩御飯作ってから更新しますー。またお付き合いして下さい。よろしく
>>841
一番最後の心境はかなりわかるかもしれない
851 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 20:59:22.65 ID:KHDmcmwo
ハーレムエンドで万事解決
852 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 21:01:33.03 ID:74XcDLso
エンディングは全員分書くの?
それともゲームまで持ち越し?
853 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 21:56:50.77 ID:PJs1AIAO
あれ?
854 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/19(金) 21:56:54.03 ID:wTDORWM0
>>852
安価次第なんじゃない?
855 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 22:06:27.82 ID:jhYr0ADO
>>1
ちゃんのつくる晩ご飯たべたい
856 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 23:12:32.97 ID:E3rf7sDO
まだ作ってるのか…
857 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 23:12:53.20 ID:E3rf7sDO
まだ作ってるのか…
なんて奴だ…
858 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/19(金) 23:23:23.48 ID:sA7OCR.o
どうやら彼女からすれば遥か彼方にあるつり革に掴まりたかったらしい。
トミー
「あとほんのちょっとだけなんだけどなー…」
男
「……ちょっと…?」
ちょっとというには随分遠くにも見えるのだが。
トミー
「むぅ……。あ!きみきみ、ちょっとあの吊り革を掴んでみたまえ」
男
「へいへい…」
促されるままに立ち上がって彼女が届かなかった吊り革に掴まった。
俺からしてみれば、何の苦労もなく普通に掴まれる高さだ。
トミー
「おー……じゃあぼくはここに掴まろう!」
そう言うと彼女は俺のL字型になった俺の二の腕に掴まった。
必然的に接近する距離に、俺は少し緊張してしまう。
細い指がなんだかくすぐったい。
トミー
「おーこれは快適快適。しばらくそのままにしておるがよい吊り革くん」
俺に掴まったままご機嫌な様子。
これほど誰も座っていないのに、わざわざ立っているのも不思議な光景だ。
男
「……座ればいいんじゃないか?」
トミー
「こらっ!吊り革はしゃべっちゃだめ!」
男
「えっ………はい」
トミー
「へへへー、よろしい」
鼻歌なんて歌いながら、流れる景色を眺める彼女。
こうして振り回されている事に楽しさを見つけてしまうのは、
俺が彼女を本当に気に入っているからなのだろう。
859 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 23:24:31.20 ID:iMxIhCMo
キター
860 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/19(金) 23:35:13.62 ID:sA7OCR.o
トミー
「そういえばさーあ」
外を見たまま、彼女は言う。
男
「……」
トミー
「三年なんて一瞬だったねー…。ひゅーん!ってかんじ」
言葉に合わせて、右手が空を切る。
男
「………」
トミー
「……あっれえー?聞いてる?」
男
「…………」
トミー
「ねえねえ、聞いてるー?」
黙ったままの俺を振り返り見上げる彼女の顔は不安そうだ。
男
「……………」
トミー
「…………おーい…」
更に沈黙を押し通す。
表情に表れる不安はどんどんその色を濃くしていく。
これ以上黙っていると、よもすれば泣き出してしまいそうだ。
男
「…………あ、悪い。吊り革に徹してた」
トミー
「………もー……もー!!!びっくりしたじゃないかー!もー!」
男
「ぐふぅっ!」
またも鋭い拳が鳩尾に突き刺さった。
痺れるような痛みが背中に走る。
861 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/19(金) 23:56:31.83 ID:5Ub7A.Mo
トミーかわいいよおおおおおああああんあああああんんんん
862 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/20(土) 00:45:31.38 ID:I7.xezko
男
「つ…吊り革は喋っちゃ駄目って言ったのは……トミーだろ?」
トミー
「へりくついわないの!まったくこどもなんだから」
ふくれっ面で座ってしまう彼女を見ると、どっちが子供なんだと言いたかったが、
それを言ってしまっては、確実に三発目の拳を食らってしまう。
俺は言葉を疼く腹に飲み込んで、彼女の隣に腰掛けた。
彼女の隣に座ると、何故か緊張よりも安心が勝つ。
男
「まぁ……確かにあっという間だったなぁ……」
トミー
「結局、ずーっと一緒のクラスだったねー」
男
「腐れ縁、ってやつだな」
トミー
「失礼だなー!腐ってないよー?とれたて新鮮!」
男
「新鮮て……はは…」
彼女とは入学してからずっと一緒だった。
神様の悪戯か、クラスが同じなだけでは飽き足らず、
座席も名簿も、くじで決めたはずの修学旅行のグループまで同じだった。
男
「そういや、修学旅行でアイスもったまますっ転んでたな」
旅行先の北海道、牧場見学の時にせっかくソフトクリームを買ってやったのに、
次の瞬間派手にころんでいたのを思い出して笑いがこみ上げて来た。
落ちたアイスを牛が舐め始めて、皆の爆笑をかっさらったのはまだ記憶に新しい。
トミー
「あっ!あれはっ…!うしさんがわるいの!いきなり鳴くからびっくりしたの!」
男
「転んだといえば、体育祭でも毎年毎年絶対どっかで転がってたな」
トミー
「うー…あれはしばふ!芝生がわるい!あんなの足に絡まってくるだけだもん」
体育祭では元気に走り回るのはいいのだが、必ずどこかで転んでいた。
転んで半べそをかくトミーを慰めるのは毎年何故か俺の仕事で、
今年も体育祭だなぁと感じる恒例行事にさえなっていた。
863 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 00:49:59.26 ID:KP6fRUDO
トミーが可愛すぎて死んだけど生き返った
ちゅっちゅちゅっちゅ
864 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/20(土) 01:18:17.27 ID:I7.xezko
男
「あ……今思えば入学式でもちっさいのが転んでたけど……あれって…」
トミー
「うー…・……」
男
「……随分問題児だなぁトミー」
トミー
「問題児じゃないもん!ぼくは健康優良児だよ!ばかもの!」
確かに、健康優良児なのは誰の目から見ても間違いない。
トミー
「問題児なのはきみだよきみー。入学した時のこと覚えてるかな?」
男
「入学した時?普通だったと思うけどなぁ…」
トミー
「ぶっぶー!ちがいまーす!こーんな顔してー頬杖なんかついちゃってさー!」
自分の事だ、覚えいないはずがない。
ホコリを被っていた心の暗い部分にいきなり光を当てられて、嘘をついた。
俺は高校に入るまで、彼女の言う通り、人付き合いが得意なタイプではなかった。
思い切り笑えたり、馬鹿な事をするのは幼馴染のサナミの前だけ。
幸せそうにしやがって、なんて事も考えていたりした。
理由もわからない、行き場のない閉塞感の中に、俺は閉じこもっていたのだ。
トミー
「ぼくが挨拶してもさー、うんとか言うだけだったんだよー?わすれたとはいわせんぞー!」
男
「ははは……そんな事もあったようななかったような……忘れたよ」
それが、彼女の明るさに照らされて、いつのまにか俺の壁は消え去っていた。
全力で動いて、笑って、俺を心を暖めてくれた彼女を親友だと思う事に時間はかからなかった。
865 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 01:29:06.01 ID:OtC.m/go
トミーええ子やな…
866 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 01:34:05.33 ID:1XeLjQAO
安価直後から次の安価まで書きため
→毎日?おなじくらいの時間に投下
みたいなやり方でもいいとおもうな
867 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 01:38:26.93 ID:KswiFf60
トミーが弩ストライクすぐる
868 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/20(土) 01:39:09.78 ID:I7.xezko
>>866
不規則なタイミングで書いてるのでちょっと難しいかもしれないです……申し訳ない。
この時間帯(0時から3時あたり)って人いるのかどうかだけ知りたい
869 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 01:46:16.68 ID:KP6fRUDO
俺は居る
でも平日は厳しいだろうなぁ
安価出すならせめて0時までの方が白熱していいと思う
870 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 01:48:41.07 ID:K5YsD5Mo
俺は深夜が主体だよ。ここ覗くのは
871 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 01:49:05.13 ID:OtC.m/go
たしかに、安価は20時から24時くらいがいいかもね
872 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/20(土) 02:09:57.51 ID:I7.xezko
そして彼女も、そんな俺を知ってか知らずか、学校での大半の時間を俺と共に過ごしてくれた。
俺はたぶん、彼女が居なければあのまま一人で、何も変わらないまま過ごしていただろう。
本当に、感謝してもしきれない。
トミー
「じゃーねー……ぼくのことは?」
光を反射するきらきらとした瞳で、まっすぐにこちらを見つめてくる。
男
「ん?トミーのこと?」
トミー
「うんうん!ぼくのことー。最初に見た時……どう思ったのかな?って……へへへ」
自分で聞いておいて、彼女はどこか恥ずかしそうだ。
俺は入学した頃まで記憶を遡らせる。
もっとも、そんなに深く考え込まなくても、トミーの事は忘れるわけがなかった。
男
「そうだなぁ……」
>>882
873 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:12:46.20 ID:KP6fRUDO
遠いな
小学生かと思った
874 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:12:50.20 ID:xs2NGLMo
「正直、最初は煩わしい奴かと思ったよ。」
875 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:18:10.73 ID:OtC.m/go
ksk
876 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:18:43.62 ID:wV5ezbQo
ksk
877 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:19:58.81 ID:wV5ezbQo
ksk
878 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:22:54.43 ID:S0K1d52o
kskst
879 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/20(土) 02:22:58.53 ID:I7.xezko
安価打っといてなんですが今日は忙しかったのでちょっと早めに寝ます……
落ちてた間も待っててくれた人ありがとう。明日も頑張ります
安価下
880 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:24:09.73 ID:KP6fRUDO
>>874
881 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 02:25:33.10 ID:ymV6uv60
素直にかわいいなあって思った
882 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:25:35.40 ID:wV5ezbQo
ぶん殴りたいと思った
正直今でもたまにトミーのことをぶん殴りたくなる
883 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:25:38.52 ID:K5YsD5Mo
そんなことより、パンツの色だけパンツの色だけ教えてプリーズ!
884 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 02:25:53.93 ID:OtC.m/go
ちっちゃくて、かわいい娘だと思った
885 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:25:55.03 ID:s52i/gwo
ひどすぎわろたwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
886 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 02:26:33.14 ID:OtC.m/go
これはひどいwwwwww
887 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:27:20.54 ID:KP6fRUDO
サナミ派の放った刺客がきたか……
>>1
起きたらまたおなかいたくするなwwwwwwwwwwww
頑張れ!!!!!
888 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:37:01.22 ID:KP6fRUDO
しかしトミーは可愛すぎるよなぁ……
ほんとに
>>1
すげえ
889 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:38:45.22 ID:xs2NGLMo
ちょっと離れてる間になんという鬼畜安価wwwwwwwwwwwwwwww
>>1
がこれをどう捌くか期待
890 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:39:50.59 ID:1XeLjQAO
なにげに結構潜伏しててワロタ
891 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:45:40.39 ID:FiFzFcDO
まあこのレベルなら
>>1
なら間違いなく何とかする
全く予想はできんが
892 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:47:41.57 ID:ck/L9EDO
>>882
トミーには可愛いそうだが、よくやったGJ
893 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 02:48:53.55 ID:ck/L9EDO
可愛いそう→可哀想
894 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 03:07:33.04 ID:bW.tWm20
久しぶりに繋がったと思ったらサナミ派が総力を上げてトミーフラグぶち壊しにかかってて笑ったwwwwww
895 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 03:16:02.52 ID:TVb4K6DO
フラグ壊したのサナミ派ってお前らヒロインがもう一人いること忘れてるだろwwwwwwwwww
896 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 06:42:08.90 ID:RyNtrGco
トミーの身長ってどのくらいだろう…
897 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 07:16:28.77 ID:KP6fRUDO
150未満だろ
898 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 08:01:49.35 ID:9KmSEIDO
>>896
147くらいじゃないの?
899 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 08:08:30.03 ID:CfbF6JI0
この鬼畜安価はあれだよ、言ってトミーを涙目にして
はは、冗談だよ。みたいな
「ばかものばかものーーーー!!!!ほんとに、そうかと…ぐす」
ってなって、頭なでなでルートですよ、多分
900 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 08:19:17.95 ID:9LvkAPc0
>>899
なんだお前が神か
俺はサナミ派だが
901 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 09:17:19.92 ID:DETUPASO
>>899
言っちゃったらもうそのルート使えないじゃん
902 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 09:22:23.90 ID:x3wW0.DO
安価ひどすぎwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
903 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 11:48:41.72 ID:RyNtrGco
トミーがうちに来てくれたらいいのに
904 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 12:14:16.61 ID:CxORvAAO
>>903
ごめんな、トミーが俺ん家に居たいというもんだから
905 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 12:16:25.46 ID:9KmSEIDO
>>904
何いってんだトミーなら俺の見舞いに。
906 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 12:37:21.32 ID:9LvkAPc0
ではサナミはもらっておきますね
907 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 15:01:02.29 ID:KswiFf60
電波女と青春男読んでたら
トミーがリュウシさんにしか
みえなくなった
908 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 16:27:32.94 ID:KP6fRUDO
今ならいえる
アマネちゃんちゅっちゅ
909 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 16:38:58.82 ID:.qGTV2DO
今なら
ヤリダさんちゅっちゅ
910 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/20(土) 18:30:44.55 ID:I7.xezko
トミー
「なにっ?なに?」
男
「……ぶん殴りたいと思った」
トミー
「へ……?」
きょとんとした顔で間の抜けた声が返ってきた。。
男
「まぁ、正直今でもたまにトミーのことをぶん殴りたくなるな」
更に畳み掛ける俺の言葉を、事も無げに黙って聞いている。
トミー
「………ふーん……」
男
「…あれ?」
予想に反して、彼女の反応は静かなものだった。
ただ一つ気になる点を除いて。
男
「……その固めた拳は何かな」
トミー
「へ?これ?」
少し微笑んでるようにも見える彼女の右手は、大きく後ろに引かれ、
その拳は震えるほどに硬く握り締められている。
トミー
「なんでもないよ?」
男
「そ、そうか……ならよか…」
トミー
「……今まさにきみのことをぶん殴ろうとしてるだけだよ?」
男
「………」
911 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 18:39:46.44 ID:KswiFf60
え?
え?
912 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 18:41:39.17 ID:XI54QoUo
なんてことだ・・・絶望した・・・
913 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 18:42:12.56 ID:7vZ3UUAO
かわいい
914 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 19:26:44.30 ID:KP6fRUDO
これはかわいい……かわいい
915 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/20(土) 19:27:14.53 ID:I7.xezko
男
「……待とう、な。世の中大体の事は話せばわかると思うんだ」
トミー
「……あごを引いてね?歯は食いしばったほうがおれにくいよ?」
容姿と全く不釣合いな恐ろしいアドバイスと共ににっこりと微笑むトミー。
細い腕は引き絞られた弓のように、張り詰めた殺気が漂っている。
男
「冗談だって!冗談!」
トミー
「ほーう……今更命乞いとはみぐるしいぞこぞう」
口元に笑みは浮かんでいるが、その目は鋭く光っていた。
駄目だ、これ以上誤魔化していては本当に顔面が崩壊してしまう。
男
「ほんとは!ほんとは……よくわかんかったんだ」
照れ隠しのつもりの冗談が洒落にならなくなった所で、俺は白状した。
自分の事を話すはやっぱり少し苦手だ。
声が詰る。
トミー
「……」
拍子抜けしたように、引き絞られた弓はゆっくりと下ろされた。
男
「……忘れたって言ったけど……覚えてるよ。俺、あんなだったからさ……トミーがよくわかんなかった」
トミー
「……わかんないって?」
男
「…なんでこんな奴に笑いかけてくるんだろうなーって…。不思議な子だなって思ってた」
皆と馴染めず、馴染み方も判らないでいる俺に、
毎日毎日”おはよう”と言ってくれる彼女が、不思議でならなかった。
男
「でも……いい子なんだなって、思ってたよ」
俺の言葉をじっと聞いている彼女の視線に、気恥ずかしくなって目を逸らした。
916 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 19:42:44.13 ID:s52i/gwo
きゃわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
917 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/20(土) 19:47:24.01 ID:I7.xezko
すいません少し離れます
918 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 20:11:19.39 ID:18v38l2o
トミーかわいすぎだろ・・・
やっぱりサナミルートとトミールートそれぞれ別に書いたほうがいいと思うんだよね
919 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:19:37.36 ID:dSZPGCs0
サナミ派の皆すまないもう俺は限界だ
トミー可愛いよトミー
920 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:23:58.28 ID:RyNtrGco
サナミってどんなやつだったっけ?
あれ?おかしいな…そんなはずは…
とみいいいいいいいいい
921 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 20:37:35.00 ID:CxORvAAO
トミーかわいすぎww
でもサナミも捨てられん
どうすりゃいい…orz
922 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:01:14.75 ID:DETUPASO
サナミかわいいよサナミ…
923 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 21:06:05.03 ID:3c43vQSO
今なら言える
アマネはもらいます
924 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:31:58.54 ID:69EwKwDO
くそっ…すまんサナミ、トミー、アマネ…
俺は一人には絞れない…!
925 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 21:33:31.29 ID:keoxvQY0
今日夕飯外食だったんだが食後のアイスを見た時なぜかトミー思い出した
まぁつまりトミー可愛いよと
926 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/20(土) 21:36:11.79 ID:OtC.m/go
>>924
母を忘れてるぞ
927 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:40:10.30 ID:I5Bow7w0
トミーロッドも一人称ボクだったな
928 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:47:57.43 ID:s52i/gwo
>>927
黙らんとその口糸で結ぶぞ!
929 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 21:49:58.27 ID:KP6fRUDO
母かわいいよ母
930 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 22:29:53.33 ID:FiFzFcDO
まな板レーズン……トミーのまな板レーズン……
ハアハア
931 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 23:15:52.89 ID:ck/L9EDO
サナミのターンがくればお前らはサナミ派になるんだろ
932 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 23:25:33.55 ID:OtC.m/go
おれはいつでもトミー派だ
たとえサナミエンドで終わろうとも
933 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 23:33:09.85 ID:s52i/gwo
もうサナミなんて眼中にないぜよ
934 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/20(土) 23:55:55.24 ID:z..5gMDO
サナミのターンじゃなくてもサナミ一筋じゃオラアアア
935 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 00:08:49.02 ID:tNH72.DO
土曜だし
>>1
は飲みにでもいったかな……
936 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 00:49:17.49 ID:qO0E8QAO
というかもうすぐ
>>1000
だな
937 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 01:26:04.01 ID:NnKaVuQo
トミー
「い……いい子にきまってるじゃないかー!トミーちゃんだよ?」
男
「あはははは…!そうだな。だからさ……、すげー感謝してる。ありがとう」
感謝の言葉は、ごく自然に出た。
本当にこの不思議な少女には、感謝してもしきれない。
今の俺があるのは、間違いなく彼女のおかげだから。
トミー
「う……うん。えへ……えへへへ……照れちゃうぜーまったくー…」
俯いて足をばたつかせる姿に、俺まで恥ずかしくなった。
お互い何と言えばいいか判らないまま、黙り込んでしまう。
男
「……お、もう着くぞ」
トミー
「お、おー!降りよう降りよう!ほらほら!」
男
「わかったわかった、引っ張らなくても降りるって」
到着を告げる独特の調子をもったアナウンスの後、電車は目的の駅に到着した。
扉が開くと同時に、大勢の人が乗り込んでくる。
少し火照った顔を、冷たい風が心地よく撫でていった。
男
「うわー……こっちの方は随分人居ないな」
トミー
「そっかなあー?たしかになーんにも無いけどねー」
いつ来てもこの辺りは、よくいえば落ち着いた、悪く言えば閑散とした雰囲気だ。
少し錆びた看板なんかが、いい雰囲気を出している。
男
「んじゃ、行きますか?」
トミー
「おー!行こうぜー行ってやろーぜー!」
男
「走ったらこけるぞー……元気だなぁ…」
足早に改札を抜けて、こっちに手を振っている。
彼女といると、なんだか保護者のような気持ちにもなってくるから不思議だ。
938 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 01:37:38.87 ID:uQYOX86o
来た!
トミーかわいいよトミー
939 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 02:03:06.39 ID:NnKaVuQo
駅からバッティングセンターまでの道のりは十分程だ。
俺達は他愛もない話で盛り上がりながら歩く。
男
「あ、マクドーナルの新しいバーガーまだ食べてねーなぁ」
道路沿いに立てられた有名ファーストフード店ののぼり広告が目に付いた。
テレビCMも盛大に放送しているぐらいだ、よほど美味いのだろう。
トミー
「……あ!」
大きな声と共にトミーが突然立ち止まった。
男
「ど、どした?」
トミー
「……………わすれてたぁー……」
がっくりとうな垂れる。
よほど大切な物を忘れてきたようだ。
男
「なんだ?財布か?携帯か?」
トミー
「…………ごはん……」
男
「え?」
トミー
「……朝ねぼうしたから……ごはんたべるのわすれてたぁ……ぼくもうだめ……」
男
「えええええええー……」
よろよろと電柱に寄りかかるトミーに慌てて駆け寄る。
今にも泣き出しそうな顔をしている女の子に、心配そうな男。
擦れ違う人は何事かといった様子で俺達に視線を送っていた。
トミー
「あうぅー……おなかすいたよぉー……」
男
「大袈裟な…。俺も朝食ってないからさ、どっか食いにいこうか」
はっと俺を見上げる彼女の眼には、きらきらと輝く光が戻っていた。
940 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 02:05:49.08 ID:oLrcFgAO
トミーがガキっぽいうざい
941 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 02:35:42.19 ID:tNH72.DO
とりあえずパンツはけよ
942 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 02:47:16.37 ID:NnKaVuQo
男
「そーだなぁ……じゃあ何処行くかな。この辺あんま知らないし……」
この辺りは家から少し遠い事もあって、用事でもない限りあまり来ない。
何か食べるといっても、思い当たる場所があまりなかった。
トミー
「じゃあ、”とみの屋”行こうよ!そーだそーしよー!」
男
「おぉ……、引っ張るな引っ張るな」
急に元気になったトミーが俺の袖をぐいぐいと引っ張る。
男
「”とみの屋”?」
名前の感じからすると、食堂か何かだろうとは思うが、聞いた事がない。
トミー
「うんっ!近くなんだー!それはもうおいしいんだよー?ちょーだよ?」
男
「超か、よっぽどだな。じゃあ連れてってくれ」
食べるのが大好きな彼女をそこまで言わしめるとは、恐るべしとみの屋。
俺は跳ねるように歩く彼女の後ろをついて行った。
トミー
「さー着きました!」
男
「おー……なんか、いいな。これぞ食堂って感じで」
歩くこと数分、噂のとみの食堂はあまり目立たない路地の一角にあった。
古めかしい暖簾と、同じく年季の入った引き戸がなんとも味がある。
辺りには暖かいダシや焼き魚の香りが漂っている。
トミー
「ささ、入って入って!」
男
「お、おぉ……」
嬉しそうに戸を引く彼女と一緒に、店に入る。
トミー
「いらっしゃいませー!お二人ですか?」
943 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 03:20:35.03 ID:EwGjRygo
俺「一人です」
944 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 03:23:21.44 ID:NnKaVuQo
男
「あ……え?」
店に入るなりくるりとこちらを向いて、突然店員のような事を言い出した。
おばちゃん
「あらー!トモちゃん!お客さん連れてきたのかい?」
トミー
「うん!でも今日はぼくもお客さんだよー!」
男
「あ……え?ぼくも?あの……え?」
俺は今ひとつ状況が理解出来ない。知り合いなのだろうか。
トミー
「はれ?言ってなかったっけ?」
男
「な、何をでしょう…」
トミー
「ぼく、ここでアルバイトしてるんだよー?ささ、どーぞどーぞ!」
全く知らなかった。
バイトをしている事自体も知らなかった。
驚いて固まっている俺を、妙にきびきびした動きで空いている奥の席に案内してくれた。
おばちゃん
「トモちゃんのお友達かい?」
トミー
「うん!」
カウンターの奥のおばちゃんと目が合う。
俺は戸惑いながらも軽く会釈を返した。
おばちゃん
「ならサービスしないとねぇ。何でも作ってあげるよ!」
人懐っこい笑顔のおばちゃんは、一目見ただけでいい人だとわかる。
男
「しっかし……トミーが食堂で働いてたとはなぁ……」
トミー
「むー……どーゆー意味?ちゃんと頑張ってるよ?」
945 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 03:30:33.32 ID:LbyL6820
やっと追いついたー
アマネの出番が・・・
946 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 05:30:45.81 ID:YmoahrE0
さ あ ト ミ ー の で ば ん が
や っ て ま い り ま し た !
947 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 07:00:41.31 ID:6iFgbcSO
おれもトミーみたいな子と出会えてたら高校生活も変わっていたのだろうか…
948 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 07:19:00.14 ID:Dey2lESO
>>947
残念ながら…
949 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 09:02:28.16 ID:9CnSQYAO
>>947
トミーにもお手上げで
手の施しようが…
950 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 12:10:07.76 ID:1RfaggDO
まだかよ!!!!!!!!!!!!!!!!
951 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 13:43:15.06 ID:eJKzRbc0
>>949
まだ慌てるような時間じゃない
ウチにはトミーがいる、トミーがなんとかしてくれる
952 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 15:00:27.21 ID:fvqNKsoo
トミーがいないよ
トミーはどこにいるの?
953 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 15:10:07.86 ID:nXFoZoAO
トミーは今俺の横で裸で寝てますが何か
954 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 15:39:04.21 ID:qjFINAc0
トミーは今アイスヘルにスープを探しに行っていますが何か?
955 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 15:49:10.76 ID:mgYnbfwo
本気出したトミーマッチョすぎワロタ
956 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 16:14:14.36 ID:NnKaVuQo
対面して座る彼女は、少しふてくされたような表情で言った。
しかしなにせ食堂でお盆をひっくり返した回数トップに君臨する彼女だ、
ちゃんと料理が運べる所が全く想像出来ない。
トミー
「でー、なににするの?ぼくきまったよー」
男
「なに、早いなぁ……」
メニューの数はそう多くないのだが、空腹な上この香りだ、
俺はお品書きを片手に決めかねていた。
男
「トミーは何にしたんだ?」
トミー
「ぼくはねー鯖の味噌煮定食!ちょーおいしいんだよ!ねーおばちゃん!」
おばちゃん
「あっはっは!トモちゃんが言うんだから間違いないね!」
豪快な笑い方が気持ちいい人だ。
手元は隠れて見えないが、聞こえてくる音で手際がいい事もわかる。
男
「じゃあ……俺も同じので」
トミー
「なんだー一緒のとは芸がないやつだなー」
男
「だって、超美味いんだろ?なら食べとかないと」
トミーをここまで言わしめるのだから、それは食べておかないと後悔するだろう。
トミー
「じゃー”味噌定”ふたつー!」
おばちゃん
「はいよー、ちょっと待っててねー」
トミー
「うん!」
さすがにお昼時とあって、店内には常連と思しきお客達が一人二人と増えてきた。
皆一様におばちゃんと一言二言話してから席についていく。
聞けばここはトミーしかアルバイトがおらず、普段はおばちゃんが一人で切り盛りしているらしい。
出来上がった料理は自分で取りに行ってお盆も自分で返す学食スタイルだ。
957 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 17:15:49.37 ID:NnKaVuQo
そう広くない店内はあれよあれよという間に、ほぼ満席になっていた。
男
「うわぁ、いつの間にか満席だな」
トミー
「お昼はいつもこんなだよー。それはもうすーっごく忙しい!」
確かにこの量の客を一人で捌くなんて、考えただけで目が回る。
せめてもの救いは常連が多いおかげで多少料理が遅くなっても寛容な所だろう。
トミー
「おばちゃーん、手伝おうかー?」
心配そうな顔で声をかけるトミー。
おばちゃん
「いいよいいよ!せっかく友達と来てるんだからゆっくりしていきな」
トミー
「そーだけどー……」
男
「大変そうだな」
トミー
「そう、じゃなくて大変なんだよばかもの」
調理場をばたばたと慌しげに動き回るおばちゃんは相当に忙しそうだった。
調理に盛り付けまでを自分でやるのだ、忙しいに決まっている。
トミー
「……よし!」
男
「ん?どした?」
トミー
「ぼく、ちょっとだけ店員さんになってくる!おとなしくまつように!」
男
「え……?」
そう言うと彼女は席を立って、調理場へと入っていった。
一人取り残された俺は、どうしていいやらわからない。
トミー
「おばちゃーん、やっぱり運ぶぐらい手伝うよー!これもう運んでいい?」
958 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 17:36:14.63 ID:YmoahrE0
ktkr
959 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 17:38:43.73 ID:Fnp/mjo0
ちょこまかちょこまか動きやがって
可愛いじゃねえか、ばかもの
960 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 17:40:59.21 ID:NnKaVuQo
おばちゃん
「トモちゃん!いいっていってんのにあんたは…」
トミー
「いーってことさー!はたらかざるものくうべからず!」
おばちゃん
「ははは!それじゃあんたらのが出来あがるまででいいからね!これを二番でこれは四番にお願いするよ」
トミー
「はいはーい!」
元気の良い返事と共に、大きなお盆に定食を載せたトミーが調理場から出てきた。
いつの間にやらしっかり可愛らしいエプロンまで装着済みだ。
男
「だ……だいじょぶか?」
どうしても彼女がひっくり返す所しか想像出来ない俺はかなり不安だった。
しかし学食で目にするよりもその足取りは手馴れたものに見える。
トミー
「へーきへーき!はーいおっちゃん野菜炒め定食だよー!」
強面の男性の所に料理を運ぶトミー。
あんな接客で大丈夫なのだろうかと俺は更に不安になる。
客
「おぉ、なんだトモちゃん居たのか!ちいせぇから気付かんかったわ!はっはっは!」
しかし予想に反して強面の顔をくしゃくしゃにして笑っている。
気がつけば店のほとんどの顔がトミーを見て笑顔になっている。
既に暖かかった空気が、より一層温まっていく気がした。
トミー
「はーいポン唐定食ー!おみそしるあっついから気をつけてね!こっちは焼き鯖ねー!」
手際よく次々にあがってくる料理を運んでいく彼女の姿に、俺は少し見入ってしまう。
客
「おぉ、看板娘!今年のヤマーズはいけそうだな!」
トミー
「いけるいける!今年こそはゆーしょーだよっ!」
客は皆ヤママヤーズのファンらしく、一気に大盛り上がりだ。
あちらこちらで彼女の名を呼ぶ声がする。
こうして見ていると、”看板娘”という言葉が、今のトミーにはぴったりと当てはまっている。
961 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 18:00:47.14 ID:NnKaVuQo
トミー
「八百円になりまーす!」
客
「はい八百万円。ごちそうさまー」
トミー
「ありがとうございましたー!またきてねー!」
笑顔で店を出る客一人一人に手を振る。
ここが繁盛している理由が、料理の美味さだけではないように思えた。
ぱたぱたと走り回る姿を見ている間に、いつの間にか店は落ち着きを取り戻していた。
恐らく少々長い間待っていたのだろうが、そんな時間は全く感じなかった。
おばちゃん
「ご苦労さん!ちょっとのつもりがしっかり働かせちゃって、ごめんよトモちゃん」
トミー
「いーのいーの!でももうおなかぺこぺこだぁー…」
おばちゃん
「はいはい!今出来るからねー!座って待ってて」
エプロンもしたまま、トミーはへたり込むように席に戻ってきた。
男
「えっと……、お疲れ様」
トミー
「うんー…つかれたぁー……」
空腹の時にあんなに動き回れば、俺だってへたり込んでしまうだろう。
にも関わらず、進んで手伝いを買って出る彼女を俺は素直にすごいと思った。
おばちゃん
「はーい味噌定二つおまちー!」
調理場のすぐ隣の俺達の席に、おばちゃんがわざわざ定食を運んできてくれた。
お盆の上には所狭しと暖かな料理が並べられている。
トミー
「やったぁー!わーい!ごはんー!」
男
「おぉ……美味そう!」
頑張っていたトミーはもちろん、美味そうな料理に俺までテンションが上がってしまう。
962 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 18:23:11.91 ID:2Wp5PESO
次スレどうするよ
963 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 18:28:09.40 ID:nnsOGxwo
>>1
が立てるか
もしくは
>>1
がレス番指定してそれ踏んだ奴でいいんじゃね?
964 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 18:46:42.34 ID:NnKaVuQo
トミー
「…はれ?おばちゃーん、小鉢多いよ?」
言われてみれば明らかに小鉢の数が多い。
どれもこれも、ご飯によく合いそうな食欲をそそるものばかり。
おばちゃん
「頑張ってくれたからね、オマケだよオマケ。ゆっくり食べていきなよ」
トミー
「うぅー……おばちゃんありがとう!」
おばちゃん
「何言ってんのー。トモちゃんのお陰で繁盛してんだからこっちがありがとうだよ」
男
「あの…、すいません俺の分まで…」
見ていただけの俺の分まで小鉢を増やしてくれているのが少し申し訳ない。
おばちゃん
「いいよいいよ、だってあんた、トモちゃんの”良い人”なんだろ?あっはっは!」
トミー
「なっ…!おばちゃん!もー!」
豪快に笑いながら、おばちゃんはまた調理場へと戻っていった。
やっぱり、そんな風に見られていたのかと思うと気恥ずかしい。
だがあんなにも皆に気に入られてる彼女のそんな人に思われた事に、全く悪い気はしなかった。
トミー
「ほ、ほらっ!たべよーたべよー!」
男
「そ、そーだな…!じゃあー、いただきます」
トミー
「……あ!!!!」
手を合わせた途端の大声に驚いて箸が転がってしまった。
男
「な、なに……?」
トミー
「……きみははたらいてないからごはんは没収になります」
男
「………・」
965 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/21(日) 18:48:58.93 ID:NnKaVuQo
次のレスは次スレで書き込みます。
スレは自分が立てるから、暫しお待ち下さいませ
あと次スレが立ったらあらすじ等々書き終わるまでレスは控えていただけるとありがたいです。
966 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 18:50:37.78 ID:uQYOX86o
りょーかい
待ってるよー
トミー可愛いよトミー
967 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 19:19:19.75 ID:1RfaggDO
トミーぃ
968 :
◆vzyXO.Rw6Q
:2010/03/21(日) 19:27:58.88 ID:NnKaVuQo
【安価進行】幼馴染「ねえ、用事無いなら切るよ?」inGEP 〜その2〜
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi?bbs=news4gep&key=1269165624&ls=50
立ちましたよー。
ここの残りは雑談等々で埋め立ててください。
埋まり次第HTML化して落としてもらいます。
なお製速は1000を迎えたスレもリストから消えるだけで半永久的に閲覧が可能です。
969 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 20:43:30.20 ID:tNH72.DO
乙です
トミーの可愛さは五大陸に轟き渡ってもおかしくないレベル
970 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 21:33:51.87 ID:R7D/CkDO
トミーの本名が思い出せないくらいトミーが強烈
971 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 21:39:45.86 ID:fvqNKsoo
とみいいいいいい
俺のご飯あげるからこっちおいで
972 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 21:46:42.39 ID:pDzVWUDO
>>970
一度しか言わないからな。
トミー・ロッドだ。
忘れるな。
973 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 21:50:21.38 ID:uQYOX86o
>>972
,;r'"´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`ヽ、
,r'";;;;:::::;彡-=―-=:、;;;;;;ヽ、
/;;ィ''"´ _,,,,....ニ、 ,.,_ `ヾ;;;;〉
`i!:: ,rニ彡三=、' ゙''ニ≧=、!´ 屋上へ行こうぜ・・・・・・
r'ニヽ, ( ・ソ,; (、・') i'
ll' '゙ ,;:'''"´~~,f_,,j ヾ~`''ヾ. 久しぶりに・・・・・・
ヽ) , : ''" `ー''^ヘ i!
ll`7´ _,r''二ニヽ. l キレちまったよ・・・・・・
!::: ^''"''ー-=゙ゝ リ
l;::: ヾ゙゙`^''フ /
人、 `゙’゙::. イ
974 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 21:54:13.15 ID:Xqk1sX2o
ともちゃんって愛称がカワユス
975 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 22:40:07.95 ID:EwGjRygo
ゲスな野郎だ
976 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 22:41:26.23 ID:tNH72.DO
ともちゃんは可愛いなwwwwww
設定がよくあるエロゲみたいにぶっとんでなくていいよな
977 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/21(日) 23:02:29.12 ID:kB0ygFA0
記念
978 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/21(日) 23:34:22.93 ID:l2Mxf6DO
トミーのターンが終わらなきゃいいのに
979 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 00:54:04.91 ID:KKBpxcDO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1269165624
これでいける?
980 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 01:12:19.78 ID:sHAcbr.o
=| 害 お ど . |\| ゲ 稀 ト
―l 虫 前 の ト、| ス に ミ
二| だ が 虫 |ノ | 野 見 |
/|!! 1 よ | | 郎 る ロ
/∧ 番 り |/| だ ッ
丁7ト、 _ノl| ∧ な ド
ヽ {|/>-<//ノ/ ト-、____
ヘニニ_\:::::::\/ 厶彡ィTト、 |
气 ̄弋ッミ、:::/ /::/__ レ|l l|
`' ー==彡ミ 〈_ヾツ_≫イ 川
ヽ\ 三/彡'
〉 `ハ
‐ / l/
ー l |
t‐==ニ≧ ∧|
-―=ィ ∧ ト、
\ ハ}ノ
. \ 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l 丶 | : し 確
l ` ー┤ : て 実
l \::::|!!や に
', }:::| ろ 駆
\ ヽ /.:::| う 除
981 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 01:24:00.73 ID:1QUy2h6o
>>979
あっちはまだかかりそうなので先に乙
982 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 02:28:35.27 ID:RFH/Vbs0
>>980
屋上
ササミとかa moneyとかいらんわ
トミーこそが至高
まあみんな可愛いけど
983 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 03:07:02.01 ID:tZAnQkAO
トミーはあずま成分が多いから、なんか幼く再生される…
ともとよつばを足して薄めた感じ
984 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 03:18:11.09 ID:dzsM4QDO
トミーってトモミだっけ?
あ、ロッドですかサーセン。
985 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 04:43:44.63 ID:/NVlYoDO
>>983
それはまさに
>>1
の狙い通りなんじゃないかね
男との会話がとーちゃんとよつばみたいだからなwwwwww
986 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 04:56:33.84 ID:dHG1TXQ0
987 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 11:44:47.92 ID:X9JDQ9wo
トミーと野球について語り合いたい
988 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 16:04:53.17 ID:/NVlYoDO
トミーをおんぶしたい
989 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/22(月) 19:40:57.88 ID:D8HlfsDO
トミーを彼女にしたい
990 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/22(月) 20:55:51.51 ID:/NVlYoDO
そういや誰もイラスト書かなくなったな
こんだけ長いんだからもっとでてもよさそうなのに
991 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/22(月) 20:57:01.79 ID:dvovYiko
やっぱりトミーしかいないな
992 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/22(月) 23:50:54.63 ID:2HKNAIQo
夜食がおいしそうに出来たから…誰かに見て欲しいと思った…ごめんなさい
あさりと水餃子のとろみスープ
http://up3.viploader.net/ippan/src/vlippan083359.jpg
食べたら頑張ります
993 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/23(火) 00:24:46.13 ID:fliQeQDO
上手すぎワロタwwwwwwこんなん作ってたらそら時間くうわwwwwwwwwwwww
晒しあげ
994 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/23(火) 02:07:15.99 ID:v9uN6YSO
あと少しで埋まるな
995 :
◆vzyXO.Rw6Q
[sage]:2010/03/23(火) 02:09:56.67 ID:Bl4qSNMo
これは…………
996 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/23(火) 02:14:35.27 ID:ZGkfbTQo
>>992
レシピ教えてくれ
997 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/23(火) 02:23:35.61 ID:nqupsoDO
糞安価に
>>1
はどう対応するのか
998 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/23(火) 02:26:01.04 ID:l4z6tIDO
なんだろう、小学生がいるな
脳味噌取り出してアク抜きしてやりたいくらい想像力のない構ってちゃんが
999 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/03/23(火) 02:30:01.40 ID:/BrcaEgo
ホント痛いわぁ
1000 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/03/23(火) 02:30:25.45 ID:iAxq9Xoo
1001 :
1001
:Over 1000 Thread
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