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魔王娘「繋いだ手と手」 歴史学者「優しい真実」 - 製作速報VIP(クリエイター) 過去ログ倉庫

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1 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/18(土) 23:20:15.63 ID:.hkTX.oo
魔術士オーフェンからいろいろパクって持ってきた勇者魔王SS
3スレ目

○過去スレ

・魔王「我輩と一緒に世界を救ってくれ」
http://ex14.vip2ch.com/news4gep/kako/1273/12730/1273066601/

・魔王娘「さあ行こう、学者様!」 歴史学者「その呼び方はやめてよ姉さん」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1277560971/
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :吉野家夫 [sage]:2010/12/18(土) 23:28:40.02 ID:04PwiYSO

いち超おつ!

3 :アナウンス [sage]:2010/12/18(土) 23:32:49.04 ID:.hkTX.oo
すみません間違えました

◆◇◆◇◆

○過去スレ

・魔王「我輩と一緒に世界を救ってくれ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1273066601/

◆◇◆◇◆

上の方が正しいです


さて、このスレでストーリーは完結いたします
前スレが終わり次第こちらに移りますので、申し訳ありませんが前スレ終了までお待ちください


それから、もうひとつ一応連絡
このスレで本編が完結したら、後日談等の短編を書こうと思っています
もしこんな短編が読みたいなどありましたら、今回もお気軽にお申し付けください

以上
4 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/18(土) 23:47:52.22 ID:B0ebT.Uo
スレ立て乙
5 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 00:23:21.98 ID:eZqtVeo0
乙です。
6 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/19(日) 00:45:54.98 ID:3BZXJjso
いちおつ
7 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 00:06:01.23 ID:.hS56qYo
前スレでの投下が終わったか
>>1
8 :アナウンス [sage]:2010/12/22(水) 00:19:41.88 ID:mq.LRbIo
>>7
どうも、おかげさまでここまで来ることができました
それでは第六章のはじめだけ、投下します
9 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/22(水) 00:24:34.43 ID:mq.LRbIo




 〜第六章 「女神」〜



10 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/22(水) 00:25:36.94 ID:mq.LRbIo

 父親がいないことは苦痛ではなかった。物心ついたころから父のいない生活というのが当たり前で、彼はそれを疑問に思うことはなかったから。そして、それよりもつらいことを知っていたから。

 父はひとところにとどまることのできない人間だった、とは母の弁である。彼にはよくわからないこと。彼は母が大好きで、それは父も同じだったはずで、ならば絶対に母から離れることなど考えもつかなかった。
 父から母に宛てられた手紙を数通見せてもらったことがある。今どこにいて、いつ帰るとしか書かれていないそっけないものがほとんどだったが、日付を見るとかなりこまめに出されていることが分かった。だから、なんとなく父は悪い人間ではないのだな、ということだけは理解した。
 ……ついでに言えば、それが一年前のものであることも理解してはいた。
 ただ、父のことを話す母は、その時だけは心なしか顔に生気が戻っているように見えた。

 母は遠くを見ていることが多かった。その目には何も映っていないように見えた。自分の姿さえも映っていないのではないか、と常々彼は危惧していた。
 そしてそれは恐らく間違ってはいなかった。母は彼の世話を怠ることはなかったが、そこに愛情の類はないように思えた。
 作業。それだけだ。賢い彼は気付いていた。

 彼は真実を求めた。絶対に揺るぐことのない、世界の唯一の真実を。
 彼は希求した。切実に願った。

 なぜ、彼は求めたか。それはきっと――



 ――ある歴史学者のこと――
11 :アナウンス [sage]:2010/12/22(水) 00:29:42.28 ID:mq.LRbIo
今度こそここまで
いやあ、ついにここまで来たかと感慨深いものが。
これも読んでくれてる皆さんのおかげ。ありがとうございます
残りはこの章とエピローグのみ。はりきっていきましょう!
それではまた次回

ところで、スレ立てした後、もっといいスレタイを思いつくのはよくあることなんでしょうか?
もんもんとしております
12 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/22(水) 00:32:53.82 ID:LhG94F2o
13 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 20:30:08.38 ID:lFQyjY2o

◆◇◆◇◆


 目の前を高速の何かが通り過ぎていく。

「っ……」

 ナイフを一閃させると、切り離されたそれはぼとりと床に落ちた。長くのびた人差し指。
 視線を左に振ると男の影が目に入るが、一瞬後には消えている。

(また死角に……)

 前方に身体を投げ出すと、背後を突風が駆け抜けた。
 すぐさま起き上がり、部屋の出口に向かって駆けだす。
 それを邪魔するように突如行く手に男が現れた。くたびれたスーツ、緑に輝く瞳。先ほど切り落とした指はすでに再生しているようだ。少なくとも人間ではない。

「“光よ”!」

 抑えられた光熱波が男を打ちすえた。威力は弱いものの、その衝撃で動けない男の横を駆け抜ける。
 外には、同じように白が広がっていた。長い廊下。迷わず右に向かって床を蹴った。この風景には全く見覚えはないが、それでもこの先にいるのは分かる。

(ルゥ君!)
14 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 20:31:07.59 ID:lFQyjY2o

 唐突に殺気を感じた。横に跳んだその残像を、やはり細長い何かが貫く。
 悟る。こちらが走る速度より、あちらの攻撃の方が速い。
 着地した場所で、ゆっくりと背後に向き直る。男は意外にもそれ以上の追撃をせずにそこに立っていた。
 人ならざる化け物は、静かに口を開いた。

「殺す者の名は、全て覚えるようにしている。それが殺害者の義務だと思うからだ。君の名は?」

 つまらないことを訊くのだなと、彼女はそう思った。
 だが、少しでも距離を稼ぐため答える。

「……リオ」
「そうか、俺はレッド・ドラゴンのヘルパートという」

 ヘルパートは、そうしてリオが空けた分の距離を正確に詰めながら名乗った。胸中で舌打ちする。

「御託はいるまい。行くぞ」
「“光よ”!」

 今度は手加減を加えなかった。狭い通路をいっぱいにふさぐように光の束が彼女の手から放たれる。一瞬で視界が白光に埋まった。
15 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 20:31:47.64 ID:lFQyjY2o

(これなら……)

 次々に身体から力が流れ出ていくのを感じる。

(これなら逃げ道は、ない……!)

 通路は狭くはないが、決して広くもない。その全ての空間を攻撃で埋め尽くしてしまえば避けられる道理はなかった。
 そして光が消えた時、確かに立っている者はいない。

「……」

 無言で深く、呼吸を繰り返す。

(倒した……?)

 ゆっくりと緊張を解く。
 ――それに対応できたのは、ほとんど偶然のようなものだった。
 必死で身をよじる。背後から耳を掠めて何かが飛び去った。

「!?」

 信じられない思いでその男を視界におさめる。
 無傷の男が、そこに確かに立っていた。
16 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 20:32:48.11 ID:lFQyjY2o

「ウィールド・ドラゴンは気に食わないが、それでも彼女らが聖域の管理者でいられるのは、その優れた道具の製作能力にある」

 言って男は懐から、何やら黒い卵のようなものを取り出した。

「小型の転移装置だ。一回しか使えないが、それで充分だ」

 それを背後に投げ捨てる。乾いた軽い音を立てて、卵型の装置は廊下を転がっていった。

「さて」

 ヘルパートはこちらを見据えると、視線を鋭くした。しゅるり、と右手の五指が伸び、床につく。

「殺すぞ」

 言うと同時、それらの指が床から持ち上がり、リオに向かって飛来した。
 空気を貫いて飛ぶそれらを見据え、リオは駆けだした。男の方に向かって。
 向かう方向がそちらならば迷うことはない。ましてや退くことも。
17 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 20:33:59.25 ID:lFQyjY2o

 弧を描いて上方から迫る指を、前進を止めずくぐってかわす。左右の肩を狙う二本の指は、わずかに身体をひねることで無効化した。その二本を布石とした四本目の指。眉間を狙うそれをナイフで打ちはらう。
 その数瞬のうちに、男との距離は四歩ほどに近付いていた。駆けながらナイフを持った右手を掲げる。

「“光よ”!」

 手の先に、光が収束し――
 突如視界が反転した。

「!?」

 転倒。白い床にたたきつけられ、混乱にうめく。
 すぐさま起き上がろうとし、それができないことに気付く。

(なん……?)

 右の太腿に、細長いものが突き刺さっていた。確認するまでもなくヘルパートの指。死角からせまっていたそれが、リオの移動能力を奪ったらしい。
 ヘルパートの残りの四本の指が持ち上がり、リオの方を向いた。

「終わりだ」

 殺人者の声が低く響いた。
18 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/23(木) 20:35:51.59 ID:lFQyjY2o

 その時、リオは自分が死ぬことについては考えていなかった。
 ただ、思い出していたのだ。嫌っていた父のことを。もう一生顔を合わせたくないと思っていたが、死を眼前にした今、本当にそうだったか確かめたい気もした。
 そしてもう一つ、あの真実という呪縛にとらわれた青年のこと。彼とは約束したのだ。一緒にお墓参りに行くと。
 だから。

(だから、ここで死ぬわけには行かないのに……っ)

 強く目を閉じた。その時。

「“我は放つ光の白刃”!」

 瞼の裏に、光が輝いた。
 驚いて開いた視界に、炎上した男が目に入った。完全に炎に包まれ、力なく倒れるヘルパート。
 彼が倒れたことで、新たに人影が目に入る。黒髪で、中肉中背の人物。

(あ……)
「だったら、立つんだ」

 優しく、力強い声で彼は言う。

「あいつらも待ってる」
「お師様……」

 ここにいるはずのないキエサルヒマ大陸最強の師を、リオはぽかんと見上げた。
19 :アナウンス [sage]:2010/12/23(木) 20:36:56.92 ID:lFQyjY2o
ここまで
20 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 20:50:25.16 ID:S2ioEEE0
乙です。
21 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 20:53:15.50 ID:ekwsqADO
乙です
22 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/23(木) 23:10:35.99 ID:.5hMS/Ao
23 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:51:21.75 ID:POTybwgo

◆◇◆◇◆


 地下砦・聖域は広大な湖の下にあった。転移装置によって外に出ると、その湖が背後に広がっている形だ。夜の闇の中で月の光をわずかに反射させ、こんな時でなければきれいなのにな、とルイスは思った。
 イスターシバの先導に従って森に入ると、焦げくさいにおいが鼻をついた。森の奥で火の手が上がっているのが見え隠れする。

「ディープ・ドラゴンが応戦しているようだ」

 ローブ姿では歩きづらそうに見えるが、特に気にしない様子で彼女は歩き続ける。

「できればすぐにでも汝らの手を借りたいのだが」

 肩越しにこちらに、いやルイスの隣に立つ者に視線を注ぐ。
 長身の人影は肩をすくめると、口を開いた。

「まあ、かまわんが」

 イスターシバによる魔術文字の明かりの中、白に近い銀の長髪がきらめく。黒色のマントをはじめとする黒一色の装いとは反対に、それ自体が発光しているようにも見えた。
 彼の名は魔王ニギ。かつて――非公式にではあるが――世界を救った英雄のうちの一人である。

「今までに聞いた説明だと、多分あいつが来るまでどうしようもないぞ」
24 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:52:50.66 ID:POTybwgo

「問題ない。それまでは時間があるはずだ」

 と、イスターシバが立ち止まる。
 魔術の明かりの中、黒く巨大な影がいくつもそびえている。ディープ・ドラゴンの影。
 彼らはこちらに背を向け、何かを待ち構えているように見えた。いや、事実何かを待ちうけていたのだろうが。

「ただ……」
「ふむ?」

 振り返ったイスターシバの不安げな視線を受け、ニギが疑問符を浮かべる。

「本当に、汝らに任せられるのか? 今より迎え撃つものは神だぞ?」
「話通りならば我輩らでなんとかできるはずだ」

 ニギが頷く。その動作には緊張の類は見えなかった。

「お願いします、ニギおじさん」
「うむ。任せておけルゥ坊」

 笑うニギは、やはりいつもと変わらない。正直なところ絶対的な確証があって呼び寄せたわけではなかったが、しかしこの人ならばなんとかできる。ルイスは確信した。
25 :MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!) [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:53:23.67 ID:POTybwgo

 その時だった。

「ルゥ君!」

 懐かしい声がした。そう、もう長い間聞いていなかったような気がする。
 振り返ったルイスは、何かに跳びつかれて転ばないように踏ん張った。

「姉さん……!」
「うん!」

 以前と変わらない姿で、魔王の娘がそこにいた。
 栗色のポニーテール、元気な笑顔。間違いない、リオだ。

「ルゥ君が遅いから、こっちから迎えに来ちゃった!」
「そっか……うん、そっか」

 ぽんぽん、と背中をたたいて身体を離す。泣きそうになっている自分に気づいて、ルイスはあわてて目頭を押さえた。
26 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:54:36.69 ID:POTybwgo

「男が泣くもんじゃないな、ルイス」
「爺さん……」

 一人の老人がリオに続いて現れた。魔王ニギとともに世界を救った、勇者シェロ。
 だいぶ老けて白くなってしまったが、奇跡的に黒い部分も多く残っている髪の毛。中肉中背。最近では革鎧を身につけることは少なくなり、(急に呼び出したのもあるのだろう)今は平服を身につけている。

「来たかシェロ」
「ああ、無事、リオちゃんと合流できたよ」

 魔王はちらりとリオの方を見たが、特に何も言わず勇者に視線を戻す。
 シェロは、ルイスとリオの前を通り過ぎるとニギの横に立った。

「行けるか?」
「いつでもOKだ」
「うむ」

 彼らにした状況の説明は必要最小限だった。それでも彼らとっては十分だったのだろう。問題なく待ち構えていてくれる。

「来た」

 イスターシバの声。同時にディープ・ドラゴンの向こうの闇がもぞりと動いた。
27 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:55:17.14 ID:POTybwgo

「ルゥ君、これ」

 そちらを見たまま、リオが何かを差し出してくる。
 ナイフのグリップ。

「護身。一応持ってて」
「分かった」

 受け取って――同時に激震がルイスたちをゆすった。
 見ると、森の奥に向かって炎の道ができている。ディープ・ドラゴンの攻撃だろう。だが、そこには何もいなかった。

「――!」

 刹那、最も前にいたディープ・ドラゴンが倒れた。右方から何か細長いものが伸びている。
 他のディープ・ドラゴンが反応するが、それよりも早くいくつもの“針”が降り注ぐ。それは狼たちを次々に貫いた。見る間に立っているディープ・ドラゴンはいなくなった。
 一瞬だった。それだけであの強大なドラゴンが一掃されてしまった。

「来るぞ!」

 イスターシバの声と同時か、それより早く。倒れたドラゴンたちに何かがぼとりとのしかかった。見覚えがある。あの肉塊。
 だが。

「大きい……!」

 現れたそれは、見上げるほどに大きくなっていた。
28 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:56:07.15 ID:POTybwgo

「“光よ”!」

 リオの呪文。高威力の光熱波は、肉塊に刺さって爆発した。だが、大きな傷を与えることはできずに爆発が消える。
 ぴっ――

「……!」

 音らしい音はしなかった。だが、確かに肉塊の“針”が飛来する。
 それは全員が飛び退った後の地面をえぐった。

「“光よ”!」
「“我は放つ光の白刃”!」

 次いで魔王と勇者の声。二つの光輝は肉塊を大きく傷つける。だが、数秒も立たずに肉塊は再生する。
 そして、それはゆっくりとこちらに覆いかぶさるように倒れこんできた。
 焦るルイスをおいてけぼりに、さらに声が響く。

「“我は繋ぐ虹の秘宝”!」

 見たこともない構成だった。放たれた光は極低温の風を吹かせると、続けて発火し、最後に電光を放って標的に突き刺さった。肉塊を大きく後退させる。
 振り返ると、最後列にさがっていたニギとシェロが並んで手を掲げていた。
29 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:56:40.91 ID:POTybwgo

「合成魔術!?」

 リオの叫び声に、ニギは頷く。

「我輩らは魔術をより高度な段階に進めるため、研究に研究を重ねたのだ」
「今のは一度の魔術で複数の効果を発生させる、そういう魔術だよ」

 さて、とシェロは続ける。

「ちゃっちゃと終わらせるぞ。準備するから援護を頼む!」

 頷いて、ルイスはリオと手を繋いだ。

「“我は放つ光の白刃”!」

 飛来した何本もの“針”が爆発によって軌道をそらした。

「行くぞ!」

 イスターシバの鋭い声。彼女が描いた魔術文字が、目にも止まらぬ速さで肉塊を貫いた。
 それでも致命傷にはならないらしい。

「どうするのだ、これでは埒があかないぞ!」

 イスターシバの悲鳴に対し、シェロの答えは静かだった。

「任せてくれ」
30 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:57:18.09 ID:POTybwgo

 ぶわり、と音をたてそうな勢いで巨大な構成が魔王と勇者から広がっていた。

(な、なんだこれ……!?)

 ルイスは戦いの場であることも忘れ、しばしそれに見入った。
 一人ではなしえない圧倒的な量の構成。だからと言って二人ならば容易いかと言われればそんなことはない。ルイスとリオの合成魔術でさえ、構成事態の規模は個人のそれの域を出ないのだ。
 ついでに言えばルイスとリオの合成魔術は構成と魔力のソースをそれぞれ明確に分担している。だが、ニギとシェロの二人は、同時に構成を編み、それを調和させているのだ。並大抵の業ではない。

(……でも、これは)

 そう、しかしその膨大な構成は明確な意味をなしていなかった。一つ一つは無意味な構成。これでは何の魔術も発動しない。

「ぬ!」

 イスターシバの声。
 飛来した“針”を、魔術文字で受け止めたらしい。

「ルゥ君!」
「ああ!」

 ルイスは意識を戦いの場に戻した。
 そして構成を編む。高度で複雑な構成。
31 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:57:58.76 ID:POTybwgo

(相手は無限に増殖し、傷をふさいでいる。ならば、丸ごと消滅させることができればあるいは……)

 構成はほどなくして完成する。

「“我が契約により、聖戦よ終われ”!」

 光の瞬きが、発生した瞬間に肉塊に刺さる。肉塊の悲鳴が聞こえた気がした。
 突き刺さった光は徐々に広がり、肉塊を浸食、消滅させていき――いや。
 肉塊は自分から形を変えていた。まるでお伽話の中の爬虫類の化け物、ドラゴンのように。

(なにか、まずい……)

 肉塊でできた醜いドラゴンの顎が開かれる。そこに光が収束し――

「“我は紡ぐ光輪の鎧”!」

 防御壁がすばやく展開する。しかし、ドラゴンの口から放たれたそれは、容易くそれを貫く。

(しま――!)

 がきん!
 音とともに新たな防御壁が光を受け止める。

「ぐ!」

 イスターシバが展開した防御壁。小さな文字の集まりによってできたそれ。
32 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 20:58:37.13 ID:POTybwgo

 肉塊が放った光と拮抗し、だがイスターシバの身体が傾ぐ。
 そもそも彼女らは千年もの間戦い続けてきた。もうこれ以上それを続ける力が残っているはずもないのだ。

「がぁ!」

 さらに苦悶する彼女に、しかしルイスはどうすることもできない。
 ついに光が消える。それと同時に防御壁が消え、イスターシバが地面に倒れ込んだ。
 駆け寄ろうとして、だが肉塊がさらに顎を開くのを見て足を止める。

「ルゥ君……」
(まさか、もう一撃……)

 肉塊の口に光が収束する。
 これ以上はどうしようもなかった。何もできずに死んでいくしかない。――いや、そんなの、

(そんなの認めるものか!)

 新たに魔術構成を編む。防御ではない、攻撃の構成。相手の攻撃に対し、迎え撃つ態勢。

「“負けて――”」

 そこで構成をさらに先鋭化させる。無駄を極限まで省き、速度と威力に特化させる構成。

「“――たまるか”!」

 放たれた光は、だが肉塊の光に押し戻された。
33 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 21:00:22.33 ID:POTybwgo

「ち――」
(ちくしょう!)

 悪態をつく暇もなかった。光は瞬時にルイスたちに殺到し――だが跡形もなく消え去った。

「え?」
「“我が名、イクトラ、それは虚偽”」

 そこにいる誰の声でもない声が聞こえた。振り返る。

「“虚ろの名、広がり、偽典の系譜を連ねる”」

 声は、魔王と勇者のいる方から聞こえてきた。膨大で巨大な構成が固定されている。それはついに威力を発揮する段に至ったようだった。

「“虚偽の名を贄に不正なる取引し、我、騙しの神の殺害を請求する!”」

 唐突に圧迫感が身を包み――そして跡形もなく消え失せる。
 はっとして肉塊の方を見る。だが、しかしそこには何も残されていない。

「“だが結果は真に残る。記録から削除せよ”」

 数呼吸をはさみ、茫然とつぶやく。

「消滅、魔術……?」
「いいや」

 シェロの声。

「これは消滅魔術よりも高次な魔術……いや魔法だ」
「我輩らは、ついに魔術を魔法に昇華する術を編みだしたのだよ。名付けるならば、そうだな、≪魔王術≫といったところか」
「なんですって?」

 ニギは頷く。

「我輩はかつて、時間の操作術を身につけた。それを昇華させて、世界の法則とでも呼ぶものに干渉する術を開発したのだ。それを使ってあの化け物を『最初からいなかったことにした』。だが、やすやすと使うことはできん。世界を改変してしまう技術だからして」

 ルイスは絶句して立ち尽くした。

「とにかくこれで脅威は去った、というわけだ」

 シェロが緊張を解いた声で言う。
 ルイスとリオの髪を、風が優しく揺らした。
34 :アナウンス [sage]:2010/12/25(クリスマス) 21:02:38.49 ID:POTybwgo
ここまで
予定もないくせに、昨日さぼっちゃってすみません
そしてありがとう。ずっと前にみんなから聞いたニギのイメージをようやく生かすことができました。
ではまた次回
35 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/25(クリスマス) 21:50:57.10 ID:J/cbXGAo
超乙
36 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 23:05:45.88 ID:POTybwgo

 ――ずずん……
 その時、どこかそう遠くないところから地響きが伝わってきた。
 大きくはない。だが、確かに地面を伝わってルイスたちを揺らした。

「何だ?」

 もう一度、揺れる。

「女神……」

 倒れたままのイスターシバの方から小さな声がした。あわててルイスが駆け寄り抱き起こすが、彼女の身体には全く力がない。

「大丈夫か? 今魔術で治療を」

 だがイスターシバは薄く笑った。

「もともと死んでいたはずの身体を、オーリオウル様の使い魔となることでもたせていただけだ……今更治療など意味はない……」

 それよりも、と彼女は続けた。

「オーリオウル様が女神と戦っている……ついにこちらに侵攻を開始したようだ……」
「女神が?」

 彼女は弱弱しく頷くとさらに言葉を重ねた。

「始祖魔術士たちが張ったアイルマンカー結界のことは前に言ったな? それと女神の存在が反発を起こしている……」
「すると、どうなるんだ?」
37 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 23:06:39.40 ID:POTybwgo

「アイルマンカー結界は強力だ。世界を論理的に区切ることでほぼ全知全能の神の侵入をも防いでいる。だからそれと神が反発すれば、最悪世界が危ない……」
「また、世界の危機ということか」

 ニギがつぶやく。

「ならば、我輩らはどうすればよい?」
「女神を何とかするか、もしくはアイルマンカー結界を消すかだ……だが、女神をどうにかするにはこちら側に完全に侵入してからでないとならない。それでは世界の崩壊が始まってしまう……」
「じゃあ、そのアイルマンカー結界というのを消せばいいんだな」
「頼む……我にはもう力は残されておらぬ……」

 ルイスは深くうなずいた。

「あなたは、もう休んでいい」

 イスターシバは再びかすかに笑うと、瞼をそっと閉じた。
 しばらくしてニギが口を開く。

「……さて、アイルマンカー結界とやらを消すには、やはり発生源を叩く方がいいな」
「そこ、分かりますか?」

 ルイスの声に、ニギは頷いた。

「大体見当はつく。シェロ、準備はいいか?」
「ああ」
「では、――いくぞ」
38 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 23:07:31.76 ID:POTybwgo

◆◇◆◇◆


 そこはひどく静かだった。太古の昔――そう、アイルマンカー結界が発生してからであるから、千年以上前からずっとそうであったのではないかと思われた。そして広く、うす暗い。四人はそこに立っていた。

「ここは?」

 ルイスのつぶやきは広大な空間に吸い込まれて消えた。答える者はない。
 いや。

「≪アイルマンカー玄室≫」

 低く、尊大な声が響いた。
 ふっ、と見上げるほどに巨大な影が現れた。

「我らアイルマンカーのための場所だ。なぜここに我ら以外の者がいる」

 それは雄大な軍馬だった。その後ろにさらにいくつかの影が現れる。

「お前たちは何者か」

 それらは狼、亀、熊、小さな獅子の姿をしていた。獅子以外の者は軍馬同様に大きい。

「我輩らは」

 ニギが口を開く。

「我輩らはこの孤島の外より参った、人間種族だ」
「人間種族」

 獣たちは――アイルマンカーたちは、大きくどよめいた。
39 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/25(クリスマス) 23:15:50.29 ID:POTybwgo

「一体何をしに来た。ここにはお前たちがいていい場所ではないぞ!」
「あんたたちの身勝手で世界が危機にさらされているんだ、悪いがアイルマンカー結界は解除させてもらうよ」

 勇者が言うと同時、魔王術の構成が彼と魔王からぶわりと広がる。

「させん!」

 声が響き、圧倒的な気配がルイスたちを襲う。しかし。

「なに!?」

 四人とアイルマンカーの間に一つの巨大な文字が現れた。

「オーリオウルか!」

 よくわからないが、その文字によってアイルマンカーたちの力が無効化されているいらしい。

「もともとあんたがたの間違いから始まった世界の混乱だ、責任はあんたがたに取ってもらうぞ」

 シェロの声が響く。構成が完成し――そして何かが砕ける音が響いた。
40 :アナウンス [sage]:2010/12/25(クリスマス) 23:19:13.60 ID:POTybwgo
ここまで
次回が最終回となります。というか最終回にします
そのためにいつもより書き溜めを多めにしなければならないので、そのための時間をもらおうと思います
早ければ明日にでも投下できると思います
ではそれまでごきげんよう
41 :アナウンス [sage]:2010/12/25(クリスマス) 23:45:29.19 ID:POTybwgo
あ。クリスマス特別編みたいなの、書こうかなと考えたまますっかり忘れていました
でもまあ、ちょうどシリアスなところだし、いらないですよね
すみません、独り言でした
42 :クリスマス終了のお知らせ :2010/12/26(日) 00:27:00.88 ID:mwnim6SO

はやく明日にならんもんかね

43 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 01:03:19.31 ID:b5Aszg.o

◆◇◆◇◆


 そよそよと。風が吹いていた。あまりに心地よかったので、目を覚ますことに抵抗を覚えた。

「う、ん……」

 起き上がって見えたのは、どこまでも続く草原だった。

「ここは……?」

 地面に座ったまま思い出す。今までのこと。

「……」

 ふと手を見ると、ナイフがあった。リオに貸してもらったナイフ……

「姉さん?」

 リオは、すぐそばに倒れていた。少しゆすると、すぐに目を覚ます。身体を起こした彼女は、ぼんやりとした視線でルイスを見た。

「あれ……ここは?」
「僕にもわからない。こんな場所、孤島にあったのか……」

 どこまでもどこまでも、草原は続いている。
 立ちあがってリオに手を貸した。立ってみると、遠くに森があるのが分かった。あれが聖域のある場所だろう。

「爺さんたちは、どこにいるんだ?」
44 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 01:04:43.66 ID:b5Aszg.o

 そして振り向いた時、見えたものは金に輝く何かだった。

「え……?」

 さっきまではそこにいなかったと断言できる。女の形をしたものが、虚空に浮かんでいた。
 長い髪の毛だった。金色のそれは、女の身の丈と同じくらい長かった。
 そして美しい。この世の何よりも澄んでいて、端正で、流麗だった。
 それの名は知っていた。

「め、女神……」

 その恐ろしさも、本能で。
 ルイスは恐怖の叫び声を上げた。

「“我は放つ光の白刃”!」

 リオの手をひっつかんで放った熱衝撃波は、女神の手前で掻き消えた。
 続いて放った衝撃波も、空間爆砕も、重力圧縮も。全てその発動前に掻き消えた。

「うわあああああああああ!!」

 次いで必死に編み上げた空間転移の構成。

「“我は踊る天の楼閣”!」

 ……何も、起こらない。

(そ、そんな……)

 リオと一緒にふらふらと後退する。
45 :クリスマス終了のお知らせ [saga]:2010/12/26(日) 01:05:44.50 ID:b5Aszg.o

 もう、何も手は残っていない。何も――

(……いや)

 まだ一つだけ残っていた。

「ルゥ君……」

 リオの絶望的な声音を聞き流し、ルイスは目を閉じた。視界から敵を外す不安と戦いながら、できるだけ集中に集中を重ねる。
 無駄にも思えるほどの膨大な構成を瞬時に組み立てる。彼らが編んだそれを、ルイスはほとんど記憶していた。

(いける、か……?)

 じりじりとした数秒を耐えながら、ついに完成したそれをルイスは解き放った。

「喰らえ! ≪魔王術≫!」

 構成に魔力を注ぎ込む。その瞬間。

(がっ――!)

 唐突にルイスは苦痛を覚えて身体をくの字に折った。

「ルゥ君!?」

 せっかく完成した構成が霧散する。
 そして聞こえてくる破壊の音。なかなか言うことの聞かない首を持ち上げると、地平の彼方にそれが見えた。
 草原の全てを爆砕する小爆発の群れ。それが押し寄せ、瞬時に目の前に迫る。

(……駄目、か)

 二人の身体はどこまでも続くその爆発にのまれ、砕かれ、ちぎられ――
 リオとルイスは、そこで一度死んだ。
46 :アナウンス [sage]:2010/12/26(日) 01:06:30.74 ID:b5Aszg.o
せわしなくて申し訳ない
今度こそここまで
では最終回で会いましょう
47 :クリスマス終了のお知らせ [sage]:2010/12/26(日) 01:55:29.37 ID:xu7dKGko

待ってるぜ
48 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 14:32:24.50 ID:PqgYU6SO
AUつえぇ
49 :アナウンス [sage]:2010/12/26(日) 15:19:42.20 ID:b5Aszg.o
今書いてますが、このペースだと五時六時になりそうです
いらないと思いましたが一応アナウンスしときます
んでは
50 :アナウンス [sage]:2010/12/26(日) 16:53:28.97 ID:b5Aszg.o
終わりました
五時から投下を始めます
51 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:00:23.69 ID:b5Aszg.o

◆◇◆◇◆


 ――彼は真実を求めた。絶対に揺るぐことのない、世界の唯一の真実を。
 彼は希求した。切実に願った。

 なぜ、彼は求めたか。それはきっと、寂しかったからだろう。
 世界の真実を手に入れるということは、世界に愛されることと同義だったから。
 与えられない愛の代わりに、別の愛を勝ち取りに行ったのだ。
 愛されないことは苦痛だった。
 だが本当の苦痛は、世界の真実を手に入れると決めたその時に始まったのかも知れなかった。


◆◇◆◇◆
52 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:01:28.62 ID:b5Aszg.o

 ルイスは女神を見つめていた。
 どれほどの時間が立ったのかは分からない。だが、確かにそこにいて、女神を見つめていた。

「あ……れ……?」

 身体に怪我はなかった。というよりも全く何も変わっていなかった。
 確かに死んだはずだった。小爆発にのまれて身体がぼろぼろにされた記憶もある。周りの地面は爆発でえぐられてしまっている。だが現実として、確かに生きていた。
 リオも隣でぽかんと口をあけている。

「私が君たちの時間を少しだけ巻き戻した」

 唐突に声がした。聞き覚えのある声だった。
 振り向くと人影。朝日の中で黒く沈む影。

「ミ、ミサンガさん……」

 装いを黒一色に変えたサンダ―・ストロンガーは、ルイスの声に静かに首を振った。

「それは偽名だ。真の名はスウェーデンボリ―という」
「え……!?」

 リオが驚きの声を上げる。

「神殺しの、神」

 ルイスは思い出していた。聖域にいたカゲスズミノコギリコバト。あれは新大陸では千年前に絶滅してしまったらしい。だが、サンダ―は自分の故郷には腐るほどいたと言っていた。

それは彼が千年以上前から生きていることを意味している。
53 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:02:20.73 ID:b5Aszg.o

「まあ、そういうことだ」

 サンダ―、いや魔王スウェーデンボリ―はこちらに歩み寄ってきた。

「私が女神の相手をする。さがっていてほしい」

 ルイスたちを追い越し前に出ると、スウェーデンボリ―は小さくため息をついた。
 風がかすかに吹く。

「長かった。千年はとても長かったよ。そうだろうヴェルザンディ」

 女神は答えない。だが、スウェーデンボリ―はそのまま続けた。

「彼らによってアイルマンカー結界が消滅した。そのおかげで、この孤島に来ることができた。……あなたに会うことができた」

 スウェーデンボリ―の声はわずかに震えていた。

「私は待っていたのだ、あなたに再開するこの瞬間を……」

 スウェーデンボリ―は大きく息を吸い込んだ。

「そうこの時を待っていた。数十年数百年いや千年! ずっと私は待っていた!」

 刹那、ぶわりと膨大な構成が彼の身体から展開した。見覚えのあるその構成。

(これは、魔王術!)

 だがその展開速度は尋常なものではない。一瞬にして虚空に固定され、さらにその次の瞬間にはもう魔力が注ぎ込まれている。

「私は今度こそあなたを手に入れる。もう、あなたを失いはしないよ。一緒に行こう」

 女神は不思議と抵抗の気配を見せなかった。それともスウェーデンボリ―がそれを無効化しているのかもしれなかったが。
 女神が、わずかに表情を動かした。ほほ笑み。ルイスにはそう見えた。

「一緒に行こう、姉さん」

 そして唐突に。二人の姿は消えた。そこにはもう何も残っていなかった。
 なんの気配も、なんの痕跡も残ってはいなかった。
54 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:03:08.11 ID:b5Aszg.o

「……」
「……」

 再び風が吹いた。遠くから吹いてきて、遠くに吹き去った。暖かくもなく、だが寒くもなかった。
 短くはない時間が経過して。リオがぽつりと言った。

「……行こうか」

 ルイスは、ただ頷くしかなかった。
 森の方へ身体を向ける。リオの手を取って空間転移の構成を――
 だがそこで、後ろに何かの気配を感じた。

「……?」

 振り返ったそこには――

「……」

 空中に小さなしみのようなものが生じていた。目を凝らすと、それは球状の何かであることが分かった。
 ちょうど女神がいた場所。それはさして驚異的な気配を発しているわけではなかった。
 だが。
 ルイスの脈が速くなった。口の中が急速に乾いていく。

『神様はとても大事な宝物を持っていました。それは持っていると世界のすべてのことが分かるきれいな宝玉でした』
55 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:03:45.98 ID:b5Aszg.o

 唐突にハーブの言葉を思いだす。それは神様と六匹の獣の話だった。

『宝玉は『真実』の比喩です』
「あ……」

 虚空の宝玉がうっすらと発色を始める。そして次々に色を変え始めた。
 ルイスはリオの手を離し、ふらりとそちらに足を進めた。宝玉に向かって手を伸ばす。
 本能的に知っていた。それは世界の真実、その権化であることを。
 ルイスはその宝玉に後数歩というところまで近づき、だが、そこで視界に別のものが入る。

「姉さん……」

 リオだ。

「どいて、姉さん……」
「……」

 彼女はまっすぐにルイスを見つめていた。薄い、ブルーの瞳。

「お願いだから、通して」

 だが、彼女はそこを動く気配を見せなかった。

「どいて!」
「やだ」

 リオはゆっくりと、噛み締めるように言った。

「やだよ。どいたら、ルゥ君が遠くに行っちゃう」
56 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:04:16.66 ID:b5Aszg.o

 そんなことは。そう言おうとして、別の言葉が飛び出す。

「姉さん、分かって。これは僕の悲願なんだ。僕の長らく願ったものがそこにあるんだ」
「分かるわけないよ」

 じり、と胸の奥が焦げる。

「分かってくれよ! それは真実の権化だ! それを手に入れるのを、僕がどれだけ待ち焦がれたか! 僕は、このためだけに……」
「それでもやだ」
「……っ」

 奥歯をぎりりと噛み締める。

「いいよ、分かった。もうどいてなんて言わない。僕がそこを、僕の力で通る。邪魔するって言うなら――」

 叫ぶ。

「姉さんだって殺して見せる!」

 リオは悲しげに、少しだけ笑った。
57 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:04:58.20 ID:b5Aszg.o

 このときにもナイフは手の中にあった。構え、飛び出す。気合の声ととともに、突進する。
 リオは動かなかった。かまわず飛び込む。
 ナイフは至極呆気なく、リオに突き刺さった。
 それでもルイスは止まらない。叫び声をあげてさらに押しこむ。ナイフは音を立ててリオの腹部に埋まった。
 ――それでも。
 それでもリオは倒れなかった。

「おおおおおおおおおお!」

 叫び声とともにさらに押す。動かない。

(この!)

 ならば突き飛ばそうとして身体を離す。がそれができないことに気付いた。
 リオがルイスの背に腕をまわしている。

(なにを……?)

 かまわず振りほどこうとして、ルイスは声を聞いた。耳元。

「あたしは――待ってるんだ」

 絶句する。腹部にナイフが深くうずまっているにも関わらず、リオの声には動揺はなかった。かすかな震えとともに、囁きがさらに聞こえる。

「あたしはルゥ君をずぅー……っと待ってる」

 リオに抱きしめられたまま。ルイスは動きを止めた。

「だって、あたしはルゥ君のこと、大好きだから」
58 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:06:32.45 ID:b5Aszg.o

 意味は不明瞭だった。痛みで混乱しているのか? いやそうではない。そうではないはずだ。
 なぜならば――

「姉さん……」

 自分の目からは、とめどなく涙が流れているのだから。
 手がナイフのグリップから離れた。膝から力が抜ける。リオに抱きしめられながら膝をつく。

「姉さん……っ」
「いいから」

 リオの囁き声は優しかった。どこまでもどこまでも優しかった。

「ルゥ君はちょっと迷子になってるだけ。それは悪いことなんかじゃない。だから、謝らないで」

 口からでる悔悟と謝罪の言葉を、彼女は見越していたらしい。それらはルイスの喉の奥につっかえて出てこなかった。
 そしてリオの肩越しに見えた。宝玉がゆっくりと虚空に溶けて消えていくのを。それはもうどこにもなかった。常世界法則へのアクセス経路は、ゆっくりとその口を閉じたのだった。
 ルイスは泣き続けた。声を上げることなく、静かに泣き続けた。
 苦い味が舌に広がっていたが、リオの腕の中は暖かかった。

「ルゥ君」

 しばらくして彼女は口を開いた。

「行こうか」

 どこへ?
 目で問うルイスに、リオは――傷が痛むのだろう――弱弱しくほほ笑んだ。
59 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:07:15.92 ID:b5Aszg.o

     ※


 風が――吹いている。突風が、二人の髪を巻き上げ、耳元でごうごうと音を立てる。
 まばゆい光が、地平線によく見えた。ここは先ほどいた場所のはるか上空。魔術により、そこに転移した。

「朝日がきれいだね、ルゥ君」

 重力に従って、落ちながら。リオが言うのが聞こえる。腹部の傷は治っているようだ。それをみて、ルイスは安心する。
 下を見ると、海に浮かぶ島が広がっている。これがドラゴン種族の逃げ込んだ孤島の全体だった。

「……」

 ルイスはぽかんと口を開けて、海の向こうの太陽を見ていた。
 あまりに高い場所にいるために、落下しているのにそれを感じない。まるで空中に浮遊しているようだ。
 だが、実際地面は急速な勢いで近付いてくる。

「ねえ」

 リオの声。

「ルゥ君はさ、真実にこだわってるけど、それってそんなに大事なものかな?」
「……」

 答えずにいると、リオは唐突に話を変えた。

「風ってさ、ほんのりキャンディーの味がするんだけど、知ってた?」
「いや……」
「そう? でもあたしにとってはそれは真実なんだよ」
「真実?」
「そう。あたしは、でもそんなくだらない真実だけで生きていける。ルゥ君にも、そんな“真実”があるはずだよ」
60 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:07:49.76 ID:b5Aszg.o

 ルイスは困惑して口をつぐんだ。

「小さくてもいい。ルゥ君の真実を見つけて? きっとそれはルゥ君の力になってくれる」
「……」
「もし見つからなくても大丈夫。そのときはあたしが――」

 そこまで言ってリオはにこりとほほ笑んだ。
 ルイスはやはり黙っていた。
 が、地面がもうそこまで迫っている。

「着地は、どうするのさ、姉さん」
「大丈夫だよ、ほら」

 彼女の指さす方向。そちらに小さく、二人分の人影が見えた。
 ルイスたち二人を受け止めるように、ぶわりと構成が広がった。
61 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:08:21.33 ID:b5Aszg.o

第六章、了
62 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:09:32.98 ID:b5Aszg.o




 〜エピローグ〜



63 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:11:11.38 ID:b5Aszg.o

 レポートから目を離したケーガク教授は、深く息をついた。
 眼鏡をはずし、目をこすってからルイスを見る。

「これが……魔術の起源」

 ルイスは何も言わずに立っていた。狭い部屋。だが、最高学府の教授に与えられる最上級のもの。
 そして、と眼鏡をかけなおしながら教授は続けた。

「これが人工的平和維持機構の物的証拠、世界書か」

 レポートと古い書物。両方をルイスに手渡す。

「大仕事を無事完遂したな、まずは御苦労……いやおめでとうと言うべきか」

 受け取ってルイスはほほ笑んだ。

「ええ、ありがとうございます」
「これで君の助教授の地位は守られた。いやそれ以上の地位を望めるはずだ」

 それからしばしの沈黙をはさみ、しかしと教授は続けた。

「しかし、これは重大な真実だ。世に公表してもよいものか……人工的平和維持機構の方など上の者が最重要機密としていたものではないか」

 部屋に思い空気が流れる。

「君は、この真実をどうするのかね?」

 ルイスは肩をすくめると、部屋の明かりであるろうそくに近付いた。

「こうします」
64 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:12:25.71 ID:b5Aszg.o

 レポートに火が燃え移る。

「……」

 ケーガク教授は静かにそれをみていた。
 日は徐々に燃え広がり、数秒で全てを燃やしつくした。

「……いいのかね?」

 教授の言葉にルイスは頷く。

「ええ。僕はもう真実に縛られるのをやめたんです」
「そうか……」
「それに教授にこれ以上迷惑をかけるのも忍びない――あ、いや、結局僕は成果なしになっちゃうからどの道教授の顔に泥を塗ることになっちゃいますね。申し訳ありません」
「それは気にするな。それよりも君はこれからどうするのかね?」
「僕は――知ってしまった責任を取ります。それから」

 世界書を抱え直してルイスはドアに振り向いた。

「僕はもう一度新大陸に用事があるので、行ってきます。ある人のお墓参りをしなければならないので」
「ああ」
「そうだ、あと」
「なんだ?」
「僕、これから職なしになっちゃうんで、たまにアルバイトに雇ってください」

 ケーガクが頷くのを見る前に、ルイスは部屋を出た。
65 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:14:05.33 ID:b5Aszg.o

◆◇◆◇◆


 空は曇っていた。そのせいか、甲板にいると寒かった。

「……」

 船は曇天の下を行く。

「ルゥ君、中に入らないの?」

 振り向くと、魔王の娘が歩いてくるところだった。

「ああ、ちょっと風に当たってたいんだ。姉さんは中に入っててよ」
「ううん、一緒にいる」
「そっか」

 苦笑して、海の向こうを見る。新大陸はまだ見えない。

(……そうだ)

 ふと思い出す。数カ月後に母の誕生日が迫っている。長らく顔を合わせていないが、いまなら会いに行ける気がする。

(うん……)

 そっと、リオの手を取った。

「ん」

 リオは笑って手を握り返してきた。
 新大陸で母へのプレゼントを買おう。うん、そうだ、それがいい。
 そして会いにいくのだ。リオと手をつないで。優しい真実とともに。
 今なら思っているより、もっと遠くに歩いていける気がする。

「行こう、姉さん」
「……その呼び方じゃない方が、いいかな」
「え?」
「リオ……って呼んでくれない?」

 ぽかんとしてリオの顔を見る。

「あたしはその方がいいな」

 はにかむリオを見て、いつの間にかルイスの方もほほ笑んでいた。

「じゃあ……行こう、リオ」
「うんルイス」

 雲の合間から太陽が顔を出した。
66 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/26(日) 17:17:11.16 ID:b5Aszg.o

title:魔王娘「さあ行こう、学者様!」 歴史学者「その呼び方はやめてよ姉さん」
   →魔王娘「繋いだ手と手」 歴史学者「優しい真実」





                   〜END〜


 thank you for your reading,sien and criticism
67 :アナウンス [sage]:2010/12/26(日) 17:23:20.49 ID:b5Aszg.o
まず最初に……秋田先生すみませんでしたああああああああああああ!
こんなパクリ全開のモノ書いちゃって申し訳ありませんんんん!
……でも、楽しかったです。重ねて申し訳ありません

さて、ここまで付き合ってくれた皆さん、本当にありがとうございました
最後、思ったよりもコンパクトにまとまってしまい、もっとボリュームのあるの期待してた人には申し訳ないと思っております
もっと丁寧に書くべきだったかなと反省
でも終わり方には一応納得しております
それでも分からないところがあれば質問お願いします

さて、もっと早く終わらせられたものを、長々とつき合わせてしまい申し訳ありません
付き合ってくれてありがとうございました
またどこかでお会いしたら、その時はどうかよろしくお願いします
では
68 :アナウンス [sage]:2010/12/26(日) 17:27:00.67 ID:b5Aszg.o
おっと、まだ後日談等の短編があるんだった
書いてきますんで、また次回会いましょう
69 :吉野家夫 [sage]:2010/12/26(日) 18:16:24.51 ID:mwnim6SO

おまいは最高だ

70 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 19:23:16.73 ID:bFFGSYDO
超乙
71 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/12/26(日) 23:27:11.36 ID:pK5t43o0
マジ好きだぜ
ありがとう
72 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/26(日) 23:50:33.23 ID:xu7dKGko
73 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 01:33:01.19 ID:LBW6q.SO
乙乙超乙

確かに振り返るとそんなに長い旅はしてないんだな
でも濃密で良かったよ
もう一回見直すわ
74 :アナウンス [sage]:2010/12/27(月) 21:02:28.97 ID:nXnI2jwo
今、後日談のプロットを練っているところですが報告があります
事前に短編のネタはいくつか出していたのですが、精査した結果使えるのが一つしかないことが分かりました
いや、無理やり書けば書けないことはないのですが、さすがにそれではボロがでるかと
よって、後日談の短編を一つ投下したらそこでシリーズの全編を終了としたいと思います
勝手な判断で申し訳ありませんがどうかご了承願います
以上アナウンスでした
75 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 22:54:47.07 ID:nXnI2jwo




 短編:魔女のお仕事



76 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 22:55:40.31 ID:nXnI2jwo

 自分が世界に愛されていないと知ったのはいつからだったか。もう覚えていない。ただ、気付いた時には身体だけでなく心も蝕まれてしまっていた。全てがぎしぎしと音を立ててきしんでいた。
 非情に過ぎていく時のなかで、彼女はいつだって悲鳴を上げていたのだ。
 彼女は救いを求めた。いつかやってくる幸福の兆しを、彼女は病の床で待ちわびた。世界に向かって、ずっとずっと哀願していた。
 そして、救いは思わぬ形でやってきた。

「あなたは……誰?」

 火の中で出された彼女の問いに、その人ならざるものは答えなかったが、確かに彼女を救ってくれた。
 彼女は苦痛から解放された。彼女は自由になった。
 だが、彼女は気付かない。その代わりにとても大切なものを失ったことを。
77 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 22:56:39.12 ID:nXnI2jwo

◆◇◆◇◆


 いくら技術が進もうと、そう簡単に変わらないものもある。がたごとと音を立てて進むこの馬車がその一つだ。噂によると蒸気車が開発されたとか何とか聞くものの、それがすぐ庶民の生活に浸透するわけでもない。

「ふわ〜あ……」

 この眠気も簡単に変わらないものに加えてもいいかもしれない。人間の生体リズムも、そうやすやすと変わったりはしないのだ。昼の穏やかな光の中、馬車に揺られて打とうとしながら彼女はそう付け加えた。
 時折眠気に負けて、頭がかくんと揺れる。それにつられて編まれた金髪もまた上下に揺れた。
 声をかけられたのはそんな時だった。

「眠そうだね」

 顔を上げると、対面に座る青年の姿が目に入った。

「起しちゃってごめん。話し相手になってくれないかな?」

 日焼けした顔に人好きのする笑顔を浮かべながら、彼はそう話しかけてきたのだった。
78 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 22:57:39.30 ID:nXnI2jwo

「ナンパですの?」

 眠さが抜けきれず半眼で問いかける。その目に気圧されてか、青年は声のトーンを一つ落とした。

「え? いやそんなんじゃないけど……」

 彼女はそんな青年を静かに観察した。背は高い。そして筋肉質な体つき。ラフな格好で、顔同様腕もよく日に焼けている。

「いや、たださ、退屈したもんだからそちらの眠気覚ましを兼ねて雑談でもどうかなあって」
「そうですか。誤解してしまい申し訳ありませんわ」

 伸びをして座席に座り直す。青年は笑って続けてきた。

「はは、だいたい俺、年上好きだしね。一応交際相手もいるし、君みたいな若い子は守備範囲外さ」

 青年は見たところ二十代の前半といったところだろうか。対して彼女は十五、六歳ほどの外見をしていた。

「年上好き……わたしのお父様と同じですのね」
「へえ? ちなみにいくつぐらいの年の差なんだい?」
「お母様とは大体三十ほど離れてますわ」
「三十!?」

 青年が素っ頓狂な声を上げたので、彼女も驚いて目を見開いた。
79 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 22:58:24.72 ID:nXnI2jwo

「ええ。お父様が十九の時にお母様は五十歳でしたわ」
「うわ、なにそのリアルな数字」

 驚きを混ぜたげんなり顔で青年が言う。

「その……よくその歳で君を産めたね」
「お母様はまだまだ元気ですわ。今、三人目をつくるどうかでお父様と話し合ってます」
「げっ、君の父さんも元気だな」
「いえ、むしろお母様の方が乗り気ですわ」
「……嘘だろ?」

 青年が信じないようなので彼女はさらに言葉を重ねた。

「お母様は出産に適した年齢は九十歳までっていつも言ってますし」
「どんだけですか……」

 あきれ顔で言うので、彼女は肝心のことを言うのを忘れていたことに気付いた。

「ああ、言い忘れてましたわ。お母様は亜人ですの」
「亜人?」

 キエサルヒマ大陸では魔物と称されていた人型のモンスター種族である。とはいえ、実のところ人間と亜人は根っこを同じくしているのだが知る者は少ない。
80 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 22:59:19.25 ID:nXnI2jwo

「じゃあ、君は亜人と人間のハーフなのか」
「ええ」

 だいぶ亜人と人間の共同生活が長くなったからといって、その二つが結婚し子供を設ける例はきわめて少ない。

「珍しいな」
「よく言われますわ。ところであなたの恋人は何十歳上ですの?」
「いやそんなに離れてないよ」
「十何歳、ですの?」
「そんなに離れてないって……二歳上だよ。今馬車が向かってる開拓村にいるんだ」

 青年はほほ笑んで続けた。

「俺ももともとはそこで働いてたんだけど、上からの指示で別の村の開拓にまわされてたんだ。今日は休みをもらって久しぶりに彼女に会いに行く」
「そうですの」
「身体の弱い人でね、開拓民には向いていないんだけどお金がなくて……でも、近いうちに結婚を申し込んで楽な生活をさせてやるんだ」

 そう言うと青年は座席に深く座り込んで、行く手の方を見た。まだ村は見えないが、のどかな風景が広がっている。
81 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/27(月) 23:00:04.45 ID:nXnI2jwo

「ところで、君の名前は?」
「わたしですの? リリスですわ」
「俺はアレックスだ。よろしく」

 こちらに向き直り握手の手を差し出してくる。少し触れる程度の握手をした。

「ところで君のそのしゃべり方、ずいぶん丁寧というかなんかだけど、一体誰に躾けられたの?」
「おばあさまですわ。おばあさまは作法に厳しくて、守らないと膝が飛んできますの」
「膝?」
「とても痛いですのよ?」
「そ、そう」

 それこそ作法がなってないんじゃないかな、と青年がつぶやいたその時、御者席の方から声がした。

「なんだありゃ」

 青年が声をかける。

「どうかしました?」
「いや、あれ……」

 彼が指さす先。それは街道の続く正面だったが、地平線の向こうから、何かが立ち上っていた。

「……?」

 煙。それは何かが燃えている時の黒い煙だった。
82 :アナウンス [sage]:2010/12/27(月) 23:00:45.67 ID:nXnI2jwo
ここまで
ああ本当の終わりが近い……
83 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 23:10:23.28 ID:wN90Mbwo
子供生んだのかwwww
84 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/27(月) 23:14:40.43 ID:zBAT4EDO
終わっちまうのか…寂しいな
今日も乙だぜ
85 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 01:13:39.46 ID:o6.40YSO
ああ、終わるのか
製速での楽しみの一つが終わりを迎えてしまうのか…
86 :吉野家夫 [sage]:2010/12/28(火) 08:14:47.72 ID:p7qLjcSO

だが試演

87 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/28(火) 13:02:45.88 ID:xCi926DO
乙です。
シリーズの完結に感謝です。
更に短篇だと
超 絶 乙 で有ります。
88 :アナウンス [sage]:2010/12/29(水) 01:15:12.15 ID:mmYd8Xwo
今更ですが、皆さん乙をありがとうございます
読んで頂けるだけでもありがたいのに、感無量です
そしてずうずうしいようですが、どうかあともう数日だけお付き合い願います
89 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 01:17:31.49 ID:mmYd8Xwo

 煙の出所はやはり向かっていた先の開拓村のようだった。近付くにつれて煙の大きさが明らかになる。燃えている家は一つや二つではなかった。

「これは……」

 村の入り口でアレックスが立ち尽くす。倒壊したり傾いたりした木造の建築物があちこちに見える。
 泣き声が聞こえてそちらを見ると、完全に呆けた顔をして座り込む女性とそれに泣きながら抱きつく子供がいた。

「一体何があったっていうんだ……?」

 彼はしばらく茫然とした後、はっとした顔になり走り出した。リリスも後を追う。
 走っているうちにも村の惨状が嫌でも目に入る。あちこちに倒れたりうずくまったり、あるいは座り込んだ人々がいる。死人も出ているだろう。それも少なくはない。
 アレックスは村の外れで足を止めると、それを認めて膝をついた。

「マ、マリー……」

 一際激しく炎上する家がそこにあった。

「マリー!」

 青年が絶叫する。しかし、どうすることもできない。既に建物は完全に火にのまれ、立ち入る隙すらなかったのだから。
 リリスはその隣に立って構成を編みかけ、中断する。魔術で炎を消すことはできるが、これほどまでに完全に燃えてしまっては既に手遅れだった。
 アレックスの繰り返される叫び声は、やがて泣き声に変わっていった。
90 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 01:19:26.81 ID:mmYd8Xwo

     ※


「私たちにも何が何だか分かりませんでした」

 数時間後。唯一無事だった小さな家の中で、リリスとアレックスは初老の男性と向かい合っていた。

「いきなり轟音が響いたかと思うと火の手が上がり、次々に建物が崩壊していきました」

 彼は村長。ニューサイトからこの開拓村に派遣された統括者である。この正体不明の災害の中を無事怪我もなく生き残った人間でもあった。

「私は崩れた建物の中に埋まって気を失いましたから、詳しいことは分かりません。後で助け出されて開拓民たちから話を聞きました」

 彼はそれまで心もち俯けていた顔を上げ、二人を見た。

「化け物」

 その単語はいかにも間抜けに響く。科学という概念が生まれてだいぶ経った今、それは前時代的なものとなってきている。

「化け物、ですか?」
「ええ、彼らはそう言いました」

 だが村長はいたって真面目な顔で頷いた。

「巨人が襲ってきた、と」
91 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 01:20:47.60 ID:mmYd8Xwo

「巨人?」

 アレックスの目は、恋人のために泣き腫らしたのでまだ赤かった。それでもいくらか平静を取り戻している。

「灰色の巨人。それが襲ってきたのだと」
「……」

 リリスの目が鋭くなる。
 アレックスがはっと気付いたように声を上げた。

「まさか、亜人?」
「恐らくは……」

 村長がそう言うのを聞いて、そこで初めてリリスが口を開いた。

「本当に? そんな亜人、見たことありませんわ」

 村長が彼女の方を見て、目をぱちくりさせた。

「あなたは?」
「リリスと申します」

 静かに頭を下げて、彼女は続けた。

「あちこちを回っている旅人ですわ」
「こちらへは何をしに?」
「観光です」
92 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 01:22:30.70 ID:mmYd8Xwo

 村長は不可解げに首を傾げた。

「開拓村に、ですか?」
「新しく村ができる現場というのは、わたしにとってとても新鮮ですの」
「はあ」

 彼は納得しかねたようだが、かまわず彼女は続けた。

「で、どうですの。そんな亜人、あなたは見たことありまして?」
「それは……ないですが。しかし少なくとも人間ではない。そうくればあとは亜人と判断するしか……」
「……」

 それは正論だった。“知らない者にとっては”。

「じゃあ、早く上に連絡しないと」

 アレックスの言葉に村長が頷く。

「ええ、すぐにでも戦力を投入してもらい、その亜人を討伐してもらうつもりです」

 もともと頭のよい亜人にはめったにないことだが、彼らがその有り余る力に頼って暴走することがある。そのための抑止力としてニューサイトには亜人と人間種族の混成軍が置かれている。ちなみに武装盗賊の討伐もその管轄であり、要請によって開拓村の警備・守護も行う。彼らが言っているのはそのことについてだった。

「でも」

 リリスは言う。

「それでは亜人と人間との関係に大きな打撃を与えてしまいますわ」

 亜人と人間の友好関係は数十年前に始まり、今ではずいぶん深化した。相互理解も進みそう簡単に揺らぐものではない。とはいえ、亜人と人間の結婚例が少ないことに代表されるように少なからず溝はある。互いへの不信感はいまだに拭い去られてはいない。特に人間は亜人の強大な力に恐怖しているのだ。
93 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 01:24:03.32 ID:mmYd8Xwo

「それは……でも……」

 村長が顔をゆがめる。

「それでは私たちに我慢しろというのですか? 全てをなかったこととして扱えと?」
「まさか」

 リリスは首を振った。それでは彼らは納得しないだろう。そんなことは分かっていた。

「そんなことは言いませんわ。ただ、少し時間を下さいませんか?」
「時間?」
「ええ」
「なんのための?」
「それは――」
94 :アナウンス [sage]:2010/12/29(水) 01:25:13.03 ID:mmYd8Xwo
ここまで
今日明日で終了です
ではまた次回
95 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 02:05:38.94 ID:FYSb4ADO
乙です。
96 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 09:29:01.80 ID:eb6s.ESO
あの二人の血筋の子供なんだから最強だら
97 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 18:04:38.94 ID:mmYd8Xwo

     ※


「そんなの無茶だ!」

 アレックスの声が森に響いた。何度も繰り返されたそれを聞きながら、リリスは煩わしげにそちらを見た。
 ここは開拓村の西北にある森である。より内陸側に位置するそこは、夜の闇に沈んでいた。人間と亜人が原大陸に進出してはや数十年。しかし、ここのようにまだまだ未開拓の土地は多い。


「君一人で亜人を退治するなんて!」
「そんなこと言ってませんわ」

 うんざりと否定する。

「わたしは本当にあのようなことをしたのが亜人なのか確かめたいんですの」
「でも危険なことには変わりないじゃないか」

 先ほどよりはやや音量を落として彼は言う。

「あなたには関係ないことですわ」
「じゃあ、俺が行くよ」

 アレックスの言葉に、リリスはきょとんと彼を見た。

「俺は恋人を殺された。亜人に復讐する理由がある」

 彼は言って、引きずっていたスコップを示した。

「……」

 少し考えて。

「……わたしは調査に行くんですのよ? さっきも言ったように巨人とやらをどうこうしに行くわけじゃ」
「そこら辺はどうでもいい。俺には行く理由がある。それで充分だ」
98 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 18:07:19.20 ID:mmYd8Xwo

「でもわたしは自分の目で確かめたいんですの」
「じゃあ俺が同行する。君一人で行かせるわけにはいかない」
「……わかりましたわ」

 正直気は進まなかったが、これ以上言っても聞きそうにないので諦めた。
 それから彼女は手の平を上にして差しのべる。

「“我は生む小さき精霊”」

 ぽう、と小さな光源が生じた。それはするすると頭上数メートルの位置に上ると、歩くのに支障がない程度にあたりを照らしだす。
 アレックスが驚きの声を上げた。

「魔術士?」
「ええ」

 だからそれなりの危険には対応できるし、中途半端な同行者はかえって足手まといであるのだが。

「凄いな、魔術なんて初めて見た」

 それは無視してリリスは森の中へ歩きだした。あわてて彼も後ろをついてくる。

「君は……どれくらいの魔術士なんだい?」
「どれくらい、とは?」
「えーと、どれくらい強いかってこと」

 彼女はしばし考えて答えた。

「それなり、ですわね。まあ少なくともわたしよりも強力な魔術士は見たことありませんわ」
「そうか……」
99 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 18:08:19.08 ID:mmYd8Xwo

 彼の考えていることを予想して、忠告する。

「だからと言って巨人とやらに勝てるとは限りませんが」
「……」

 図星だったようでアレックスが黙る。

「大体、強さなど大まかな目安に過ぎませんの。本当に圧倒的な存在に対しては手も足も出ないのが普通ですわ」

 彼は沈黙を続けたが、一応ついては来ている。

「それにどんな強さにも、弱いところがあるというのがひいおじい様の言葉ですし。矛盾しているようですが。だから変な期待をされても困りますわ」
「……分かった」

 夜の暗闇はまだまだ深くなっていくようだった。魔術の鬼火の光量を上げながら歩き続ける。
 再びアレックスが口を開いたのは、森に入ってから三十分ほどがたったころだった。

「君は、襲ってきた巨人の正体を知っているのかい?」
「なぜそう思いますの?」
「いや、なんとなくだけど」

 頬を掻きながら後ろを歩く彼を肩越しに見て、彼女はしばし考えた。

「まあ、心当たりがないといえば……嘘になりますわね」

 アレックスは歩く速度を上げて彼女に並んだ。

「やっぱり。一体巨人とはなんなんだ?」
「……」
100 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 18:08:58.57 ID:mmYd8Xwo

 “それ”は。そう簡単に話していいことではなかった。だから、彼女は慎重に言葉を吟味しながら口を開いた。

「そうですわね……少なくとも亜人ではないと思いますわ」
「まさか人間とは言わないよね?」
「いいえ」

 首を振って続ける。

「それはきっと人間でも亜人でもない……」
「人間でも亜人でもない?」

 当然アレックスは怪訝そうな表情になった。

「どういうこと?」
「人間種族にある可能性ですが、それはもう人間でも亜人でもありませんから」
「……?」

 彼はますます分からない顔になる。だが、懇切丁寧に解説するわけにもいかない。

「まあ、分からなくてもかまいませんわ。わたしが個人的に用があるだけですから」
「俺だって用がある」

 そこだけは力強く彼が言う。

「俺はそいつを許さない。マリーの仇をとる」
101 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 18:10:33.27 ID:mmYd8Xwo

 リリスは口を開こうとして――
 突如刺すような寒気を感じた。

「“我は紡ぐ光輪の鎧”!」

 がごっ!
 不可視の何かが防御壁に突き刺さった。

「なっ!?」

 叫ぶ彼を引きずり倒す。同時、防御壁が破られ今まで二人が立っていた空間を何かが引き裂いた。
 そして、

「グオオオオオオオオオ!」

 地を揺らし響く咆哮。

(出た! こんなに早く!)

 胸中で叫び、起き上がる。

「な、何だ!?」

 アレックスが地に倒れたまま混乱して叫んでいる。それを起こしながらリリスはつぶやいた。

「おいでになりましたわ」

 ゆらりと。森の奥に影が立ち上った。
102 :アナウンス [sage]:2010/12/29(水) 18:11:04.26 ID:mmYd8Xwo
ここまで
どうにか年内に終われそうです
また次回
103 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 18:37:28.31 ID:eb6s.ESO
次は?次は?
wwktk
104 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/29(水) 20:02:33.91 ID:FYSb4ADO
乙です。
105 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 22:35:05.02 ID:mmYd8Xwo

 その影は見上げるほどに大きかった。人型。巨人。だが顔と思われる部位にはのっぺりとした平面が広がっている。そして魔術の光の中ではいまいち判然としないものの、体表は灰色。

「こいつが……」

 アレックスはスコップを拾い、かまえる。
 察してリリスは叫び声を上げた。

「待ちなさい!」
「うおおおおおおおお!」

 走り出した彼を絶望的な心地で見送る。
 彼は数歩で巨人を間合いに捉えると、振りかぶったスコップを振り下ろした。
 ばきん!
 甲高い金属音とともに、リリスのすぐ横を猛烈な勢いで何かが通り過ぎた。スコップの先。

「そん……」

 アレックスのうめき声が聞こえる。彼のスコップは途中で折れていた。そしてその目の前には拳を振りかぶった巨人の姿。

「“我が腕に入れよ子ら”!」

 すんでのところで魔術が発動する。アレックスの身体が、何かに引っ張られたかのように後ろに吹き飛んだ。その目の前を巨人の拳が通過する。盛大に土が舞い上がる。

「うわっぷ!」

 大量に降りかかる土に、アレックスが悲鳴を上げた。だが彼のもといた場所には大穴が口を開けており、それに気付いてもう一度悲鳴を上げた。
106 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 22:36:38.39 ID:mmYd8Xwo

「早く! 立ちなさい!」

 言って、構成を編み上げる。

「“我は放つ! 光の白刃!”」

 必死にもがいて立ちあがる彼の頭上を熱衝撃波が駆け抜けた。目にもとまらぬ速さで標的である巨人の頭部に突き刺さる。
 巨人の身体がゆっくりと沈み――突如上空に跳び上がった。

「――!?」

 そして、急速にこちらに降ってくる。

「“我は踊る天の楼閣”!」

 視界が暗転。回復。背後から轟音がとどろく。ついでそちらからの衝撃につんのめって倒れかけた。そこを何かに支えられる。

「大丈夫か?」

 アレックス。頷いて、振り返る。巨人もまたこちらに振り返ったところだった。

「グ、オオオオオオオオオオオ!」

 再び巨人の咆哮。しかしそれはただの叫び声ではなかった。
107 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 22:43:08.08 ID:mmYd8Xwo

 ごっ!
 唐突に周りの地面が発火する、爆発する。巻き上げられた砂がばらばらと降り注ぐ。

(まずい!)
「“我は駆ける天の銀嶺”!」

 重力中和の構成。アレックスの手を取り地を蹴ると、二人の身体は宙高く舞い上がった。爆発の圏外に逃亡することに成功する。
 が。
 だん!

(しま……)

 それは失策。同じく地を蹴った巨人が目の前に迫った。拳を振りかぶり――

「ふん!」

 急激に上昇の軌道が変化する。アレックスが手近な木を蹴ったのだ。すぐわきを突風が通過した。衝撃で平衡を失って墜落する。地面にたたきつけられて小さくうめいた。

「つぅ……」

 なんとか起き上がったところで巨人が目の前に立つ。

(く!)
「“我は”――っ」

 突如手を引かれて集中が途切れた。舌打ちしたが、そのすぐ後を拳が叩く。肝を冷やす。
 手を引っ張ったアレックスはそのまま走りだした。
108 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/29(水) 22:44:47.15 ID:mmYd8Xwo

「ちょっと!」

 文句を聞かず、アレックスは走り続ける。後ろを見ると巨人は地面に打ち込んだ拳を引き戻してこちらを振り向いたところだった。

「あんな奴相手にするのは無理だ! 逃げるぞ!」
「馬鹿言うのはやめなさい、このまま逃げたらまた村におびき寄せてしまいますわ!」

 アレックスは黙って走り続けたが、突如立ち止まると手を離した。

「……それもそうだ」
「そう、だからあなたはこのまま村に――」

 だが言いかけたリリスを遮って、彼女の背中を押した。

「俺があいつを引きつけるから、君は村まで逃げるんだ。そしてやっぱり軍を呼んでくれ」
「え……?」

 アレックスは迷わなかった。後を追って凄まじい勢いで駆けてきた巨人に向かって、徒手空拳のまま走り出した。
 アレックスの叫び声が響く。
 巨人が走ったまま拳を振り上げた。アレックスもまた拳を振り上げる。だが、サイズが違いすぎた。リリスの目に、青年がつぶされるのが見えた気がした。

「うおおおおおおおお――!」

 二つ大小の影が交錯した。
109 :アナウンス [sage]:2010/12/29(水) 22:47:27.62 ID:mmYd8Xwo
ここまで
>>103可及的速やかに投下をしますのでどうかお待ちを
そして次回(明日)、再びの最終回となります
どうかお楽しみに
110 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 00:02:49.45 ID:6RNx1Zko
111 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 02:49:50.81 ID:SE0SBoSO
続きが気になる
でも終わってほしくない

この気持ちをどうすればいい?
112 :アナウンス [sage]:2010/12/30(木) 08:04:25.68 ID:zn4S7RQo
その気持ちは抱えたまま、笑顔でバイバイすればいいと思うよ(キリ

そろそろ完成します。投下は十二時過ぎになりそうです
それでは
113 :アナウンス [sage]:2010/12/30(木) 08:53:14.78 ID:zn4S7RQo
ん? これじゃあ「読まずに帰れ!」になっちゃいますね……
すみませんどうか読んでくださいお願いします!
無理にかっこよさげなことを言おうとするもんじゃないや……
114 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:27:19.25 ID:zn4S7RQo

「“我が名、イクトラ、それは虚偽”」

 虚空から声が聞こえる。それはリリスの声ではなく、空間の隙間から染み出す常世界法則――真なる神の声だった。魔術の構成によって導かれるそれが、この魔王術の媒体である。
 膨大な量の構成が空中に固定されている。それらは一つ一つは意味をなさない。全体となってようやく絵のように存在の力を持ち始める。
 そしてそれらは世界を塗り替えるための巨大な力の総体だった。その力を制御し、抑えるために構成は核となる部分の数倍の量の補足部を必要とする。それゆえ構成は際限なく膨らむ。
 通常の魔術構成とは次元が異なっていた。段違いに複雑な構成手法。しかしかつて開発者が時間をかけ二人がかりで行っていたものを、彼女はそれをものの数秒で展開して見せた。

「“虚ろの名、広がり、偽典の系譜を連ねる”」

 アレックスは巨人の目の前で尻もちをついていた。後ろ姿からでも呆けた様子がよくわかる。対して巨人は、その眼前に立ち尽くしていた。

「――」

 そして直立の体勢からゆっくりと身を折る。表情はないが、それはいかにも苦しそうではあった。

「“虚偽の名を贄に不正なる取引し、我、騙しの神の殺害を請求する!”」

 突如、うずくまった巨人の姿が掻き消える。すっかりと消えうせ、どこにも痕跡は残さない。

「“だが結果は真に残る。記録から削除せよ”」

 それで終わりだった。後には夜の静かさだけが残された。
115 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:28:04.41 ID:zn4S7RQo

「あ……?」
「わたしの魔王術の力を感じ取って襲いかかってきましたのね。だから簡単に見つけることができた……」

 静かにつぶやく。

「下級の神で良かったですわ。もし上級の神でしたら、今のわたしでは歯が立ちませんでしたから」

 アレックスに歩み寄る。手を差し伸べると、彼はぼんやりとこちらを見た。

「あ……君は一体……?」
「本当はあなたに魔王術を見せるつもりはありませんでした」

 ため息をつく。

「でも、あなたが無茶するので仕方なく」
「あ、えっと……ありがとう……かな?」

 ようやく手を取って立ち上がる。

「あの化け物は亜人でも、ましてや人間でもありません。神と呼ばれる存在ですわ」
「神?」
「ええ。人間が魔術の存在によって変異し至る可能性のある、そういうものですの」

 アレックスは先ほどまで巨人がいた場所を見つめ、それからリリスを見、ゆっくりと口を開いた。

「……ごめん、よくわからない」
116 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:28:48.33 ID:zn4S7RQo

「無理もありませんわ」

 言って、アレックスの身体に付いた土ぼこりを払ってやる。

「わたしはそういうものを常世界法則の記録から削り取り、“なかったことにする”ために旅をしている≪魔女≫ですの」
「魔女……」
「ええ、万能の力、≪魔法≫を行使する者の名称」

 あらかた払い終わり、彼の目を見つめる。

「魔女、リリス・フィンランディ。それがわたしですわ」

 アレックスはぽかんと口を開けたまま、

「魔女……」

 とだけつぶやいた。夜の肌寒い風が吹いた。
 そして。

「……いらっしゃいましたね」
「え?」

 落ちた木の枝を踏み折る、乾いた音が聞こえた。
 アレックスが振り返る。そこにいたのは――

「マリー!?」
117 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:29:36.83 ID:zn4S7RQo

 女性の姿がそこにあった。流れるような黒の長髪、それと対照的な真っ白の寝巻。裸足で夜の森をこちらに歩いてくる。そして何より目を引くのは。

「あの火事の燃え跡に遺体はありませんでした。やはり生きていらっしゃいましたのね」

 その背中から生えた、大きな翼。

「それでも無事ではなかった――いえ、それよりも悪い状態ですが」

 駆け寄ろうとしたアレックスの腕をつかんで止める。
 こちらを振り向く彼を無視して、彼女は口を開いた。

「“我は紡ぐ光輪の鎧”」

 がぎ!
 飛来した光が防御壁にぶつかる。

「な!?」

 アレックスが目に見えて動揺する。それはいきなりの攻撃のためだけではない。

「マリー……?」

 彼女の周りにいくつもの光球が浮かんでいた。彼女が、攻撃してきたのだ。

「やはりヴァンパイア化していましたか」
118 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:30:39.21 ID:zn4S7RQo

 びき!
 突如何かが破断する音が響き渡った。それは女の方から聞こえてきたものだ。
 見ると、顔にひびが入っている。

「……人間は神の影響を受け入れた場合、その存在を昇華させ神への階段を昇り始める」

 静かに、構成を編む。それが見えたわけではあるまいが、アレックスが逆に彼女の腕をつかみ返してきた。

「ちょ、ちょっと待て! マリーに何をするつもりだ!?」
「……」

 それでも構成は中断しない。ゆっくりと言う。

「ああなってしまっては……もうどうしようもありませんの」
「何を言っている?」

 ばき!
 彼の背後でもう一度音が響く。音に驚いて振り向いた彼は見てしまった。
 耳まで裂けた口で笑う女の姿を。
 アレックスの悲鳴が上がる。

「もう変異が始まっていますのね……開始しますわ」

 構成は完成していた。
119 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:32:17.85 ID:zn4S7RQo

 彼女の異変は続く。異音を立てて、彼女は人間から遠ざかっていく。

「マリー……マリー……」

 アレックスの泣き声がか細く響く中、彼女は急速に人間をやめていく。

「……神の影響を受ける人間は、この世に絶望していることが多いんですの」

 彼は聞いていなかった。それでも続ける。

「彼女は身体が弱いんでしたね。それでもきつい労働に耐えて、苦痛に耐えて、生きねばならなかった。村長さんに聞きましたわ。彼女、最近は身体を崩して寝たきりだったと」

 女が――もう変異が進んで、人間の姿をしていなかったが――咆哮する。悲しい叫び。

「わたしにもわかりますわ。死にそうな時、世界に絶望した時、どんな最悪な救いでも掴まずにはいられませんもの。わたしもそうでした。でも――」

 アレックスがこちらを見た。憔悴した瞳で哀願する。

「やめてくれ……俺はマリーを二度も失いたくない……」
「……でも、マリーさん、あなたは忘れてはいけなかった。大事な人がいることを」

 構成に魔力を注ぎ込んだ。

「せめて、彼女ごとこの事件を“なかったことに”しますわ。人には忘却も必要なもの……ごめんなさい、二人とも」

 リリスが手を掲げる。その手に光が生じた。小さい光はゆっくりと広がり、やがて全てを優しく包み込んだ。
120 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:34:16.45 ID:zn4S7RQo

◆◇◆◇◆


 いくら技術が進もうと、そう簡単に変わらないものもある。がたごとと音を立てて進むこの馬車がその一つだ。噂によると蒸気車が開発されたとか何とか聞くものの、それがすぐ庶民の生活に浸透するわけでもない。

「……」

 優しい風もその一つ。彼女の髪をわずかに揺らして吹き去っていく。
 村を出る馬車の外の風景から目を離し内側に戻すと、青年の姿がそこにあった。俯いて、表情は読めない。

「眠そうですわね」

 彼女の声に青年が顔を上げる。その顔は暗く沈み、目はどこかうつろだった。

「ああ、いや……別に……」
「大丈夫ですの? ひどい顔をしていましてよ?」
「……」

 彼が黙る。乗り合い馬車には彼ら二人以外は乗っていない。そのため沈黙が落ちた。
 少しして、青年は口を開いた。

「いや、大したことじゃないんだ」
「もしよかったら話をうかがってもよろしいですこと?」
「……ああ」

 彼は頷いて、続けた。
121 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:35:28.39 ID:zn4S7RQo

「俺は開拓公社で働いてる。さっきの村も、もともと働いていたところなんだ。ただ、今は別のところで働いてるんだけど」
「ではなぜあの村に?」
「いや、俺もよくわからないんだ。懐かしくなったのかな? でももっと不思議なのは、なんだかとても寂しいんだ」
「寂しい?」
「ああ。心にぽっかり穴が空いてしまった、そんな感じだよ。何があったってわけでもないんだけどね。うん、よくわからない……」
「……」

 いくら技術が進もうと。そう簡単に曲げられないものがある。事実を改変しようとも、残ってしまう痕跡がある。
 しばらく風が髪をもてあそぶのに任せて、彼女は彼を見つめた。
 馬車ががたんと石を乗り越え、そこで彼女は口を開いた。

「あなた、恋人はいますの?」
「え? 何だいいきなり」
「い・ま・す・の?」
「い、いやいないよ。いるように見えるかい?」

 詰め寄られて彼がたじろぐ。

「ふーん?」
「な、何?」
「あなた、どこまで行きますの?」
「職場の開拓村に戻るけど」
「仕事は楽しいですの?」
「やりがいはあるけど、楽しいかと訊かれると……。何が言いたいの?」
122 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:36:25.32 ID:zn4S7RQo

 彼女はふふ、と笑って続けた。

「じゃあそこ辞めてわたしと旅、しません?」
「……なに、言ってるんだ?」
「わたし、こう見えてもお金ならありますわ。同行者が一人増えるぐらいなんともありませんし」
「えっと……」
「次はどこに行こうかしら。蒸気車というのを見てみたいから、一度ニューサイトにもどるのがいいですわね」
「いや待ってよ」

 困惑顔で口をはさむ彼にぴしゃりとたたきつける。

「いいから、一緒にいきますの!」
「え、あ、はい」

 思わず頷く彼ににこりと笑いかける。

「それにわたしあなたより年上ですのよ?」
「え?」
「二十六歳」
「うそだ」
「ほんと」

 ひとしきり驚いたあと、彼は首をかしげる。

「信じられないけど……それがどうかした?」
123 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:37:10.21 ID:zn4S7RQo

「あなた年上好きでしょう」
「……なんで分かった?」
「そんな顔してますもの」
「どんな顔だよ」

 彼が初めて笑った。

「いい顔ですわね。あなた名前は?」
「俺? アレックスだ」
「わたしはリリスですわ、よろしく」

 差しのべた手を、彼が取る。触れるだけではない、しっかりとした握手。
 馬車はがたごとと進む。
 彼女は魔女。魔王術を受け継いだ力ある者。世界を改変する権利と重責を背負った女。彼女の旅はこれからもまだまだ続く。
124 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [saga]:2010/12/30(木) 11:37:41.12 ID:zn4S7RQo

 短編:魔女のお仕事





     〜END〜

 thank you for your reading,sien and criticism
125 :アナウンス [sage]:2010/12/30(木) 11:41:46.41 ID:zn4S7RQo

ちょっと予定より早かったですが、完成したので投下させていただきました
はい、ではこれにて全編終了です。こんなパクリSSを読んでくれてありがとうございました
最初は全て書き溜めてから投下することになってたのに途中から完全にながら書きでした。約束と違って申し訳ありません
でも全力は出し切ったと思っておりますので勘弁してもらえるとありがたいです

長い道のりでしたが、いろいろ勉強になりました
特に自分にはギャグセンスがないことが分かったり、日常描写が苦手だと分かったり、
戦闘への入りのバリエーションが少なかったり、叫び声が「あああああああああ!」とかしかバリエーションがなかったり、
それ以前に文章力がげふんげふん。そのほかにもいろいろ……

ついでに、前スレでいきなりスウェーデンボリ―が太古の魔王と看破された時は驚きました
ニギとミスリードさせようと思ったのですが
まあ、これからも趣味として上達していけたらなと思います

最後の短編は、この先も旅は続くぜエンドという感じで。
もともと最強の力を持っていますから、もし続くとすれば蟲師のような人助け系の話になるんでしょうね
いや、書きませんし書けませんが。

さて、これでいったんお別れ。またどこかであったらその時はどうかよろしくお願いします
ではまたいつか! さようなら!


追伸:スレは一応二三日残しておいて、それから依頼に出します。忘れたわけではないのでご心配なく
126 :吉野家夫 [sage]:2010/12/30(木) 11:58:09.18 ID:V0/BMYSO

ほんとうに面白かった
おまいさん最高だ
あるがとう
超お疲れ様

127 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 13:58:18.80 ID:SE0SBoSO
最高だわ

やっぱり最高だよ
128 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 16:59:39.06 ID:bbQlH3Q0
乙です。
有難う。最高でした。感謝。
129 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage ]:2010/12/30(木) 21:11:39.10 ID:XlTs7Bc0
良いわ…
ルイスとリオの後日談とかも見たいけど…
もうお別れなのね
寂しいわ
130 :アナウンス [sage]:2010/12/30(木) 21:21:08.89 ID:zn4S7RQo
>>129
父母祖父母が集まって老人会、とか魔女さんの妹やフィンランディ家の一日とかとっかかりはあったんですが、どうにもネタがないんですよね
もう第三世代の話を書いちゃったんでさかのぼるのもどうかと思うし、キリがいいんで申し訳ありませんけど今回は勘弁してください
次回作に期待ということで
131 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/30(木) 21:44:28.41 ID:6RNx1Zko
乙でした
もっと読んでいたいけど
132 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/31(金) 00:12:29.38 ID:pPzgeQDO
次回作は決まってたりする?
楽しみなんだけれど
133 :アナウンス [sage]:2010/12/31(金) 06:09:40.58 ID:ZGi4A5Io
>>132
いくつか案はありまして、「ふと思いついたスレ」に書きこみしました
全てオリジナル系で短編、台詞系です
魔王・勇者物ではないですけれど

地の文は今しばらく封印で。VIPの文才スレなんかで修行してきます
あとは二次創作としてはオーフェンやりたいですねオーフェン
これはVIPで、って考えてますが

今回中二病だったので、マイルドなのを書きたいなとか思ってます
あと、主人公たちが最初から強いのばかりなので、そのうち成長物のファンタジーもやりたいです
上でも言ったようにギャグセンスがいまいちなのでそこの補強もしたいですね
134 :アナウンス [sage]:2011/01/01(正月) 21:18:33.93 ID:Cd0YYGEo
依頼出してきました
長い間お付き合いいただきありがとうございます
またいつか会いましょう
135 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 21:53:49.11 ID:dqiTb2DO
お疲れ様でした
136 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 22:09:02.54 ID:Ldlk08wo
本当にお疲れさまでした
137 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/02(日) 00:10:20.75 ID:aSp.rkSO
じゃあの

本当によかたよ
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