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侍「言葉が通じなくとも」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/11(火) 01:05:08.19 ID:X+VkJGtAO
―「世界は一つではない」

こういった発言をすると、大抵の人間は「何を馬鹿な事を…」という顔をする

私達が生きる世界は、どう見たって一つきりで、代え難いものだ


しかし、時として私達は「魔物」「悪魔」「天使」といった「この世ならざる者」と出逢う

彼等は一体どこから来るのか


そして、「神」はどこで私達を見守って下さっているのか―
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【クリスマス・年末・年始】連休暇ならアニソン聴こうぜ・・・【避難所】 @ 2024/04/30(火) 10:03:32.45 ID:GvIXvHlao
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714439011/

VIPでガンダムVSシリーズ避難所【マキオン】 @ 2024/04/30(火) 07:03:33.32 ID:jpWgxnqGo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1714428212/

今日も人々に祝福 @ 2024/04/29(月) 23:42:06.06 ID:cZ/b8n+v0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1714401725/

ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part12 @ 2024/04/29(月) 20:01:59.10 ID:OQox+0Ag0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714388519/

私が書いた文だ 一度読んでみて @ 2024/04/29(月) 13:03:50.96 ID:zomKow9K0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714363430/

私が書いた文はどう? @ 2024/04/29(月) 12:48:33.59 ID:6mJNXBCE0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714362513/

感情から生まれたものたちとの物語【安価】 @ 2024/04/29(月) 10:45:54.36 ID:0XsgiyN10
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714355153/

【安価】タイトルからあらすじを想像して架空の1クールアニメを作る 2024春 @ 2024/04/28(日) 16:37:54.07 ID:PHuiugtM0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714289873/

2 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/11(火) 01:06:18.55 ID:X+VkJGtAO
前スレ

http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4gep/1276608351/l20
3 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:08:40.84 ID:wqo4utVSO
スレ立て乙
4 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:20:25.68 ID:LnPULQ8IO
お、今度のスレタイは侍だな
スレたておつおつ
5 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 01:38:44.62 ID:PJex0R3AO
スレ立て乙であります
6 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2011/01/11(火) 06:03:24.53 ID:1SEcxaTso
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1276608351/
PC用
7 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 09:16:57.13 ID:GHVtCiyoo
乙です
8 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/11(火) 22:32:57.79 ID:X+VkJGtAO


少女『はい、あーん』

侍『―』パクッ

少女『あ、口にタレがついてるよ』

侍『―…』フキフキ

一見、微笑ましい光景だが、これにはある事情があった

添え木を施され、肩からぶら下がっているだけの侍の両腕

致命傷を負った両腕は、もう手としての機能を果たす事はなかった

侍『……』

少女『…痛む?』

侍『―』アーン

食事を催促する侍

彼の心遣いが、少女は痛かった
9 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/11(火) 22:53:27.90 ID:X+VkJGtAO
給仕『お客さんも「救い」を求めてきたのかい?』コトッ

少女『はい』

昼の書き入れ時を過ぎ、空席が目立ち始めた店内

手持ち無沙汰になったのか、小麦色の肌をした給仕が少女達に話し掛けてくる

給仕『そんな腕じゃ無理もないか。まあ、せいぜい気を付けな』

少女『気を付ける?』

給仕『お嬢ちゃん、救われるという事はどういう事かな』コポコポ

三人分の紅茶を注ぎつつ、給仕が言う

少女『それは……心配事がなくなって、みんな幸せに…』

給仕『そう、心安らかに暮らす事が、一般的なこの世の救いだ』

給仕『じゃあ、心安らかに暮らすには……どうしたらいい?』

コク…ッ

給仕は自分の紅茶を一口飲み、少女を横目に見る

給仕『答えは、「神の教えに従え」だ』
10 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/11(火) 22:55:09.21 ID:SSQjE3ZDO
侍の腕が…
11 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/11(火) 23:15:53.46 ID:X+VkJGtAO


少女『なんか刺のある言い方だったなぁ』

給仕が吐き捨てるように残した言葉が頭から離れない

「神の教えに従え」と言うとかなり威圧的だが、件の神の教えとは至ってまともなものばかりだ


一つ、自らを貶めるべからず

一つ、隣人を信じるべし

一つ、全て謙虚に受け入れるべし


これが神の教えの柱、三訓である

自分を下落させる行為をせず、人を心から信頼し、物事を素直に受け止める

この世で生きる為に欠かせない事である


少女『……』

欠かせない事……なのだが、何故か肯定しきれない自分がいた
12 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/11(火) 23:53:10.92 ID:X+VkJGtAO
=宗教国家 添命=

西の大陸で最も信仰されている「大神」が居るとされる「天界」

そこに最も近いとされているのがここ、聖地添命である

大戦中も添命は侵されることなく、むしろ敵対関係にある国同士を取り持ったりと、神の教えに従い平和活動を積極的に行っていた


又、添命には聖者と呼ばれる「神の代行者」がおり、苦しむ人々を神の力を借りた奇跡で救っていた

その為、添命には救いを求めて訪れる人が後を断たないので、添命周辺では弱きを狙った略奪者が出没したりと、治安はあまり良くない
13 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/12(水) 00:09:04.98 ID:MTQXg/gAO
構想がまとまらないので今日はここまでにさせて下さい

お付き合いいただきありがとうございました

皆様のおかげで前スレも無事1000に到達できました

この場を借りて御礼申し上げます

お赤飯
14 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 09:52:28.93 ID:Lxo1AjbAo
15 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 11:48:14.81 ID:SRxfwowIO
おつおつ
16 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/12(水) 22:13:20.19 ID:MTQXg/gAO


少女『…これみんなそうなの?』

やっとの思いで集会所に到着した少女が目にしたのは人、人、人、救いを求める人の群れ


悲惨である


足が無い者もいる

虫の息で虚空を眺めている者もいる


『助けてくれ』  『助けてくれ』


皆、壊れたカラクリのように口を動かす

木霊する呻き声、泣き声、嘆き声

まるで終末を謳っているかのようだった
17 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/12(水) 22:26:05.44 ID:MTQXg/gAO
聖者『安心なさい。貴方は既に救われています』スッ

やがて、純白の衣を着た聖者達が近付いてきた

一人一人に手をかざし、皆を苦悩から解き放って

盲目の男『ォォォオ…! 見える……見えます! 神は存在した…ッ!』

二人の少し前に居た男も例に洩れず、盲目から救われた事に涙し、いつまでも祈りを捧げていた


正に神の力


失った足が戻ったり、不治の病が治ったり、光を与えられるのだ

こんなに素晴らしい力はない

そう、あれぞ救い

心の闇を払う光



少女『でもなんでだろう……心がとても苦しいよ……』
18 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/12(水) 23:04:53.62 ID:MTQXg/gAO
>>17
脱字訂正


× 一人一人に手をかざし、皆を苦悩から解き放って

○ 一人一人に手をかざし、皆を苦悩から解き放っていく


妄想力が尽きたのでペース落とします
ちょっとテーマ難しくしすぎたかも…
19 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 23:13:21.77 ID:72/+tDxb0
じっくりやってください
いい作品が出来るならいくらでも待ちますぜ

にしても、内容は深いし展開は熱いし、下手なラノベより全然面白いな
20 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/12(水) 23:18:14.12 ID:Lxo1AjbAo
乙でした
21 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 00:40:09.44 ID:3xurHMkIO
>>19禿同
22 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 09:34:58.90 ID:c9kD3eBSO
23 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/13(木) 20:25:08.15 ID:stARXlmDO
少女まじ赤飯
24 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:08:46.47 ID:y/XJAQkIO
作者様、移転しましょう
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/

25 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 02:13:52.09 ID:y/XJAQkIO
申請はここで↓
■ 【必読】 SS・ノベル・やる夫板は移転しました 【案内処】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1294924033/
申請はここで↓

SS・小説スレは移転しました
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26 : [sage saga]:2011/01/14(金) 10:55:03.28 ID:gkw87WvAO
移転依頼出しました
今暫くお待ち下さい
SS・小説スレは移転しました
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27 :真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/14(金) 13:16:57.83 ID:AtfV7Jsfo
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/16(日) 00:49:56.09 ID:xzOnGD0b0
移転乙

>>19
禿同
ありそうでなかった物語だよな
漫画化とかしたら絶対買うのに


以前出てたネタ帳ってどんぐらいストックしてんだろう
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 10:15:02.38 ID:EWCy+NCIO
>>29超禿同
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/16(日) 17:51:11.78 ID:z2uutECc0
>>29
禿同
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/17(月) 21:46:11.64 ID:HgQhJEdAO
やがて、侍の番が回ってきた

穏やかかな表情に純白の衣を纏った女性の聖者は、聖職者の見本と言えた

女聖者は堅琴を奏でるような声で侍に語りかける

女聖者『もう大丈夫です。あなたの腕も、すぐに動くようになります』

侍『…』

侍に女聖者の手が翳され

バチッ

女聖者『―ッ!?』

見えざる力に弾かれた
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/17(月) 21:55:17.22 ID:HgQhJEdAO
少女『今、何が光みたいなのが…』

女聖者『…もう一度』スッ

バチッ

またも女聖者の手は弾かれる

女聖者『くっ、こんな筈は…』

少女『あの、お兄さんの腕は…』

聖者『どうなされた』

女聖者『あ…、それが、こちらの方に手を翳すと何かに弾かれてしまうのです』

聖者『ふむ…』スッ

バチッ

聖者『痛ッ!? こんな事は初めてだ…』
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/17(月) 22:09:46.65 ID:HgQhJEdAO
女聖者『どうしましょう…』

聖者『我々では施しようが無い。皇王様にご覧いただこう』

女聖者『皇王様に、ですか』

女聖者の表情が僅かに険しくなる

少女『あの、皇王様って…』

聖者『この添命を治める王、我らの神に最も近い御方だよ』

皇王という言葉に不安を見せる少女に、聖者は優しく語りかける

聖者『私は引き続き救いを続ける。君はお二人を神殿へ案内して差し上げなさい』

女聖者『わかりました』

聖者の指示に頷く女聖者

その顔は元の穏やかなものになっていた
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/18(火) 01:32:46.26 ID:eVtj6K4jo
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/19(水) 01:13:27.39 ID:QXVExn4AO


女聖者『お二人は、どちらからいらしたんですか?』

道すがら、女聖者が少女達に話を振ってきた

少女『私達は遮光から来ました』

女聖者『遮光から…!?』

遮光という地名に、女聖者の声が思わず大きくなる


遮光といえば、西の大陸でも最西端近くの国

大陸を東西に分ける大河に近い添命と遮光では、商人隊ですら行き来をしない

航路を使ったとしても、決して安全とは言えぬ道程だ


女聖者『んっ、失礼』

咳払いをし、間を整える

女聖者『それほどの道程を踏破するとは、あなた方はとても強い心の持ち主なのですね』

女聖者が尊敬の眼差しと、賞賛の言葉を贈る

少女『いえ……確かに苦しくもありましたが、それ以上に大切な出来事が沢山ありましたから』

少しはにかみつつも、誇らしげな少女を、女聖者は優しく見つめ


女聖者『立派な方々。神はあなた方の仲間入りを喜ぶでしょう』


と言った
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/19(水) 01:34:41.11 ID:QXVExn4AO
少女『え……それって、どういう』

怖くなった

得体の知れない恐怖

寒気

女聖者の微笑みの後ろに、深い闇がある


一瞬、そんな予感がした


しかし、

女聖者『神は我々人間の成長を見守っています。清く、正しく、強い心を持って生きて欲しい。それが我らの神の唯一の願い…』

女聖者『神の願いを叶えるのは、ほかでもない私達なのです』

女聖者の言葉に曇りなどはなく、穏やかな口調なれど心の底から湧いてくる想い、熱を帯びていた

女聖者は敬虔な信徒だった

その心は清らかで迷いが無く……どこか危うさがあった
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/19(水) 01:45:20.18 ID:QXVExn4AO
ちょっと私情により遅くなる可能性ありますがご了承下さい

>>29-31
ありがとうございます
私自身、探しても探しても見つからなかったから書いてしまえ、という感じで書き始めたので
もしかしたら同じ物を求めていたのかもしれませんね



>ネタ帳
今のところ19の使いたい要素があります
もしかしたら19話分になるかもしれませんし、いくつか組み合わせるかもしれません

後、最終話の構想が固まりました
最終話のみ書きためとなりますが、終わりがいつになるのかは、私自身わかりません


では、おやすみなさい
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 03:04:10.43 ID:5u7sC3q0o
乙でした
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/19(水) 08:02:13.41 ID:ZnCWV4HIO
いつでも終われる安心感から持続力アップですね、わかります
>>1が書く限りどこまでもついていくぞ
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/19(水) 15:33:30.98 ID:QXVExn4AO


女聖者に案内され、街の中央へと進むと、やがて石造りの神殿が見えてきた

女聖者『あれが皇王様のいらっしゃる神殿です。添命の政府が議会を開く場所も、あの中にあります』

少女『へぇー…』

近付けば近付く程、その大きさに感銘を受けてしまう


時に、人は大きいというだけで感動する

海や山を見た時、人は自分の存在全てを飲み込むそれを畏れ、敬う


この神殿もそうだ

ただの石の集まりと思えばそれまでだが、その「ただの石」が建物の……それも巨大な神殿の形を成している

それは一つの奇跡と言えた
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/19(水) 15:50:38.17 ID:QXVExn4AO
コツコツ コツコツ

三つの足音が神殿の中に木霊する

今日は議会はないらしく、神殿内に人気はなかった

少女『装飾品とかは無いんですね』

添命の神殿は、少女の想像と真逆で、絨毯や調度品の類は飾られておらず、随分と簡素なものだった

見かけるのもせいぜい観葉植物、申し訳程度の燭台である

女聖者『私達の使命は民の救済。人々を救い導くのには、最低限の蓄えと志があれば十分ですから』

少女『!』

驚いた

この人は「足る事」を真に理解している

この人と私は同じなのだ

それなのに…

それなのに、不安が拭えないのは何故だろう
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 00:45:26.41 ID:49cK9feoo
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/20(木) 07:36:41.44 ID:b5t7bTdIO
乙乙
SS専用板だから>>1は投下時にsageなくてもいいんだぜ
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 09:42:45.38 ID:IN5ufAxAO
>>44
了解です
でもsagaって下げ進行にならないんですかね?

指摘要望は都度書き込みよろしくお願いします
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 10:32:35.38 ID:IN5ufAxAO
コンコン

女聖者『皇王様、お目通り願いたい者達がおります』

『私にか? 入りなさい』

ガチャッ

女聖者『失礼します』

女聖者に倣い樫でできた扉をくぐる

皇王『勤めご苦労、…そちらが件の?』

室内には初老の男性がいた

男性は執務を中断すると、椅子から腰を上げて三人に近寄った

女聖者と同じ白装束に加え、首から下げた金の首飾りが、聖者達の中でも位が高い事を物語っている

皇王『して、どうしたのかね』

女聖者『はい、本日も広場にて「救い」を行っていたのですが、こちらの殿方に手を翳すと、見えざる力に弾かれてしまうのです』

皇王『なに、そんな事があるのか』
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 10:55:22.58 ID:EAHPXNkSO
ななばつに前スレまとめられてた
なんか感慨深い
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 14:44:38.23 ID:IN5ufAxAO
皇王『失礼』スッ

皇王が侍に手を翳す

バチィッ

皇王『ッ!? なるほど…』

女聖者『やはり救いは無理なのでしょうか…』

皇王『前例が無いからな、このままでは彼の手を治すのは難しいだろう』

少女『そんな…!』

医者から完全に治る望みは薄いと言われた侍の腕

藁にも縋る想いだった少女には、あまりに酷な結果だった

少女『その見えない力は、どうにかならないんですか!』

他の人達は救われて、侍だけが苦しみ続ける

除け者、疎外感、そんな気がしてつい声が荒くなる

皇王『お嬢さん、落ち着きなさい』

少女『…あっ』

皇王の冷静な声に、少女はハッとした

皇王『安心なさい。神は等しく我々に救いの手を差し伸べて下さる』

静かで強い眼差しから一転、皇王の目は優しく温かな目になっていた
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 15:37:31.48 ID:IN5ufAxAO
>>47
本当だ!
なんだか嬉しいやら(誤字脱字に粗い部分あったりで)恥ずかしいやら…
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 17:46:16.20 ID:IN5ufAxAO
女聖者『皇王様、何か妙案でも?』

皇王『大神にお伺いを立てよう』

女聖者『なっ!?』

皇王の発言に、女聖者の顔が「皇王に見てもらう」事にした時よりも険しくなる

女聖者『畏れながら、人事はまだ万全に尽くしていないと思います。神託を賜るにはまだ早いのでは』

皇王『確かに……では我らが次に打つべきはどんな手か、自由に申してみよ』

女聖者『…ッ』

女聖者が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる

少女(これが……あの悪寒の正体?)


今の皇王の発言は女聖者の考えを訊く、というようにも取れる

しかし「他に良い案でもあるのか? 無いだろ」という無言の圧力が伝わってきた

「大神の啓示」とあれば闇雲に策を打つよりも信頼性が高い

―が


少女『…人任せ、なんですね』

女聖者『!』

皇王『…なに?』
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 18:15:04.88 ID:IN5ufAxAO
皇王『今、何と申した』

少女『人任せなんですね、と言いました』

皇王の鋭い視線を、少女は真っ直ぐ受け止める

皇王『確かに、我々は神の力をお借りして民の救済を行っている。人任せならぬ神任せだ。しかし、その力に頼ってきたお主らにそれを責められる言われはない』

皇王『さらに言えば、お主らは神の力を頼って来たのだろう。我らを責めるのはお門違いだ』

話にならん、と皇王は背を向ける

少女『皇王様、目を背けないで下さい』

皇王『この者達を外へ』

聞く耳持たぬ、と冷たく言い放つ


少女『間違ったっていいんです。どんなに遠回りでもいいんです。貴方のしたい事には、神様の力がなくてもできる事があるじゃないですか!』
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 19:32:17.03 ID:O6dnX5qYo
>>45 sagaだけではsageにはならないsaga sageなんて入れ方をすれば両方効果有り
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/21(金) 20:24:59.22 ID:2azTGb3DO
本当にまんま王ドロボウだな。王ドロボウ読んだことあると比べてしまう
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/21(金) 20:46:00.42 ID:IN5ufAxAO
ようやっと添命編の方向性が固まったので27日以降はスラスラ進めれそうです


>>53
どうですかね
熊倉さんに近づけてますか?
55 :44 [sage]:2011/01/21(金) 23:58:15.98 ID:H9n2o2kIO
>>1おめでとう
まとめられるだけの作品であると思う
これで友人に勧められる///

>>47禿同

>>52回答感謝!
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 01:25:51.09 ID:JdBqKr0AO
27日まで修羅場に入るので投下はできません
休憩中にスレ覗いたりはしますので、ダメ出し・感想等あればお願いします

>>47>>55
ありがとうございます
今後ともご贔屓いただけるよう頑張ります
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 03:30:23.69 ID:yPhbp/zAO
前スレから読ませてもらいました

>>1さんの独特な世界観・・・嫌いじゃないです

続きゆっくり待ってます。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 12:39:57.10 ID:nkwn19pDO
>>54
漫画には絵があるからどうしても……、とオリジナルだからっていう偏り
でも文章だけでも王ドロボウに似てるなって名前出す前に思ったから雰囲気はあるんだと思う
漫画のごちゃごちゃした小物が
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 12:42:02.13 ID:nkwn19pDO

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/22(土) 20:18:58.04 ID:u1mwvwjIO
修羅場に負けんなよ!
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/01/23(日) 16:08:01.40 ID:tUAAOnCw0
乙です。
頑張れです。
更新、楽しみに待ってます。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/25(火) 09:24:13.91 ID:vPdrlwiqo
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/27(木) 00:06:12.40 ID:6X4WNKTIO
もうすぐ修羅場もおしまいだな
ファイト乙
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 22:24:24.05 ID:yVipPxcAO
>>1です
現在修羅場が延長戦に突入してます
申し訳ありませんが明後日までお待ちください
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/28(金) 22:54:48.30 ID:vH3aChxIO
修羅場もあと少しさ
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/29(土) 09:03:59.05 ID:XmzYscdqo
スレッドの進行中割りこんで申し訳ありません、お許しください。
今現在、「■SSスレッドをWikiでまとめようプロジェクト!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295189440/
において、SS-WikiにSSの紹介文等を載せるための相談をしております。

さて、今日はその一過程として編集テストを行いました。
その際に、勝手ながらこのスレッドをテストに用いさせていただきましたので報告いたします。
詳細はWikiスレまたはSS-Wikiをご覧ください。
勝手に行った上に事後報告になってしまい、お気に障ったら申し訳ありません。
編集にご不満があれば削除・修正をいたしますので、上記のWikiスレまでどうかご連絡ください
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 21:44:19.22 ID:Y8ZY02lSO
飯と>>1はまだかのぅ…
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/30(日) 23:40:58.46 ID:fcpn2FkOo
>>1なら昨日食べたでしょ、おじいちゃん
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:06:35.40 ID:q6Q8R8gAO
皇王『連れて行きなさい』

少女『皇王様!』

女聖者『…お帰り願います』

少女『…っ』

女聖者に止められ、少女は唇を噛んだ


世界には理不尽が溢れている

抗い難い不幸に満ちている

それらは人の心に深い闇を落とす


少女『皇王様、一つお答え下さい』

先程と打って変わって、少女は静かに語りかける

少女『不幸の逆は、本当に幸せですか……?』
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 00:21:50.33 ID:2IXeDMzSO
1キテター
wktk
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:27:23.20 ID:q6Q8R8gAO
皇王『……どういう事だ』

少女『私は、先の大戦で両親、友達、生活……全てを失いました』

少女の言葉に、女聖者が眉を潜める

皇王も背を向けたままだが、少女の言葉に傾けている

少女『飢えと孤独、朝起きると隣の人が死んでいる世界』

少女『靴磨きで日銭を稼ぐと、兵隊さんが場所代だと取り上げに来る始末…』

それは、この世の地獄

この世に溢れている地獄

少女『この地獄から、皇王様はどうやって救ってくれますか?』
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:37:33.69 ID:q6Q8R8gAO
皇王『……』

少女『お金をくれますか? 飢えぬよう養ってくれますか?』


少女『家族を……返してくれますか?』


少女は泣いていた

目尻を濡らす雫はなかったが、彼女の心が、魂が涙を流していた


少女『…人は理不尽や不幸を嘆き悲しみます』

少女『それらはとても強大で、抗い難い力を持っています』



少女『…でも、それは自分の力で乗り越えなきゃいけないんです』
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/01/31(月) 00:47:27.51 ID:HV2RqKLb0
しえんぬ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 00:55:32.58 ID:q6Q8R8gAO
皇王『では、君は人々を救うなと言うのか?』

ついに皇王は少女に向き直った

その目には色濃い怒りと、僅かの迷いが宿っていた

少女『いえ、皇王様はこれからも多くの人を導いて下さい』

皇王『解せぬな、何が言いたい』

痺れを切らし、皇王の口調が荒くなる


『手を』


少女が皇王に歩み寄り、硬く大きい手をそっと包む

少女『手を…取りましょう』
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/01/31(月) 01:15:15.28 ID:q6Q8R8gAO
少ないですが今日はここまでです
長らくお待たせして申し訳ありませんでした
それではまた明日
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 01:47:00.26 ID:Tc3/Uak9o
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 09:23:30.82 ID:rLvXuosSO
幸せは犠牲無しに得られないのか、時代は不幸なしに超えられないのか

このセリフ思い出した
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/01/31(月) 10:10:39.96 ID:UW3/NODIO
超乙乙
もしかして明日も来るのか!
う!れ!し!い!
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:41:55.26 ID:egw5FLRAO
皇王『なッ!?』

予想外の少女の行動に、一瞬固まる皇王

少女『身体の不自由や難病、それらは耐え難い不幸です。その不幸を取り除けるなら、それ以上に素晴らしい事はありません』

少女『でも…』

皇王の手を包む少女の手に少し力が入る


少女『それでも、人は受け入れなきゃいけないんです』


80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 02:52:46.94 ID:egw5FLRAO
皇王『不幸を受け入れる……だと?』

少女『不幸を許し、受け入れ、乗り越える。私達は……そうやって強く生きなきゃいけないんです』

皇王『それは理想だ。私達人間はそんなに強くない』

ギュッ

皇王『!』

少女『だから、手を取り合うんです』

少女『一人じゃ押し潰されてしまう不幸も、みんなで手を取り支え合えば乗り越えれます』
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 03:29:23.77 ID:egw5FLRAO
皇王は重なった二人の手に目を落とした


少女が言っているのは理想、綺麗事だ

不幸や理不尽を受け入れられる程、人間は強くない

ましてや突然降りかかった不幸や、生まれながらの不遇など、どうして許せる


皇王『……許せる訳がないだろう。許せる訳が!』バッ

少女『あっ!?』

皇王『連れて行きなさい』

少女の手を払いのけ、皇王が冷たく言い放つ

女聖者『はい。お二人共、どうか外へ』

少女『皇王様…』

少女は少し後悔していた

あれだけ熱弁しておきながら、自分の中に答えを持っていなかったからだ


人を救うのに間違いも正確も無い

万人から賞賛される方法も、絶対では無い

それが分かっていながら、溢れる想いを止められなかった

何故なら、皇王もまた、後悔しているようだったから……


女聖者『失礼します』

女聖者に促され、退室する二人

去り際に見た皇王の背中は、どこか哀しそうに映った
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/01(火) 10:24:13.02 ID:kLt9YWm3o
乙かしら
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 14:40:28.17 ID:egw5FLRAO
バタン

女聖者『…良かったのですか? 彼の腕はまだ…』

少女『良くはないです。でも…』

侍『……』


侍は始終を見守っていた

先程の男―恐らくこの国の有力者だろう―何故、少女と口論になっていたのだろうか

…いや、大方の見当はついている

あの病や障害を取り除く力

少女はあれに反応したのだろう
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 14:57:22.85 ID:egw5FLRAO
当初は、あの力で私の腕を治すつもりだったのだろう

だが、力は少女の想像を超えていた

何せ、失った四肢が元通りになり、生きているかどうかも判らぬ死人が再び息を吹き返すのだ

あれは『過ぎた力』だ


確かに、あらゆる苦悩から解放されれば、それ以上に楽な事は無い

しかし、楽になる事が必ずしも幸せになる事だろうか



人には死中で希望を見出す力がある

手を取り合い、共に立ち上がって苦境を乗り越える強さがある

そう、困難を乗り越える度、人は強くなる
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 15:07:52.04 ID:egw5FLRAO
もし、願えば救われる世界なら

もし、困難がこの世からなくなれば

もし、世の中が幸福で満ち満ちていたら……


それは、なんと不幸な世界だろう


苦難があるから努力をする

哀しみがあるから慈しむ

生があるから死がある


「生きる」とは、これらと折り合いをつける事だ

故に、不幸を受け入れず拒絶すれば、人は必ず堕落する


少女はそれを敏感に感じ取ったのだろう
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 15:12:19.83 ID:egw5FLRAO


―不幸とは「幸せでない事」を言う


事故で腕を失うのも不幸

毎日が退屈なのも不幸

では、

死は不幸なのか……?―


87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/01(火) 15:26:08.72 ID:egw5FLRAO
クイッ

侍「……ん」

袖を引っ張られ、思考から引き戻される

横を見ると、少女が浮かない顔で侍を見上げていた

少女「――――」

どうやら難しい顔をしていたので心配をかけたらしい

侍「いや、すまぬ。少し考え事を……、」

まで言って気が付いた


救いを求める人々を見て以来、少女は笑っていない

ずっと、瞳に哀しみを浮かべてたままだった


侍「これ」ペシッ

少女「―!?」

無理矢理に少女の頭を小突く

加減が出来ない為、やや乱暴だったが何とか手は動いてくれた

少女「――…」

侍「お主も随分とひどい顔だぞ」ナデナデ

今度は精一杯優しく、少女の頭を撫でる

結局笑ってはくれなかったが、少女の頬は朱に染まっていた
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 03:53:06.58 ID:dV0yGRNa0
乙です。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 09:42:30.57 ID:btsWiWhVo
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/02(水) 12:50:20.30 ID:LaVc+ARAO
〜〜

ケホッ、ケホッ。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

うん。むしろ今日は調子がいいんだ。

それより、今日は一年に一度のお祭だろ

友達が待ってるんじゃないか?

「ううん、いいの」

「私は、お兄ちゃんと一緒がいいから」

……

…ありがとう

「来年」


「来年は一緒にお祭に行こうね」


〜〜
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/02(水) 13:11:10.63 ID:LaVc+ARAO


少女『あの……すみませんでした』

女聖者『何がですか?』

神殿の出口で見送りをする女聖者に、少女は頭を下げた

少女『皇王様も聖者様達も、苦しんでいる人達を助けようと頑張っているのに、それを否定するような事を言って…』

少女『私、すごく失礼な事を…』

聖者から目線を外し俯いたまま、少女は尻すぼみに言う

スッ

女聖者『いいのです』ナデ

少女『…あ』

頭を撫でる優しい感触に顔を上げると、女聖者が微笑んでいた

女聖者『実は私も大神様に頼りきりではいけないと思っていたの』
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/02(水) 21:07:36.22 ID:nsda6vvDO
やっと追い付いた
仕事中なのに一気読みしてしまったぜ

続きも期待してます!
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 00:15:37.45 ID:JKvAsL1so
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/03(木) 01:00:19.00 ID:PagBef7AO
少女は女聖者の険しい表情を思い出した

一度目は皇王に伺いを立てる事になった時

二度目は神託を賜ると言われた時

女聖者『私は、どんな苦労をしても、自分の力で人を救いたいんです。…尤も、そんな事を言っていながら大神様の力をお借りしているのですが』

力無く笑う女聖者

少女の頭から手を放して両手を組み、祈りの姿勢をとる

女聖者『…大神様の力はあらゆる障害から我々を解放して下さいます』

女聖者『しかし…』

目を瞑り、二呼吸置いて


女聖者『その力は、私達の心まで救ってくれているのでしょうか……』


無垢な疑問を投げかけた
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/03(木) 01:17:58.58 ID:PagBef7AO
心を救う

それは他ならぬ自分自身にしか出来ない

他人にできる事があるとすれば、それはキッカケを与える事だけだ

少女『…』

少女の心の中には一つの答えがあった

しかし、それを口に出す事は、どうしても憚られた


……もし、私が足を失ったら

もし、足が元通りになる望みがあったら

私は、救いを求めずにいられるだろうか……


女聖者『…ごめんなさい、意地悪な事を言ってしまいました』

また、女聖者が力無く笑う

少女は、女聖者が「少女の中の答え」を聞きたくて疑問を投げかけたのではない事を知っていた

同時に、誰かに答えを教えてもらいたい内心も知っていた

…だって、彼女は私自身だから

胸の内の葛藤に、少女は唇をきゅっと噛んだ
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 01:24:24.45 ID:JKvAsL1so
ktkr
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/03(木) 01:33:52.20 ID:PagBef7AO


少女『はぁぁぁーっ』ギシッ

背もたれに身体を目一杯預け、少女は深い溜め息をついた

答えを出しては否定、答えを出しては否定を繰り返し、脳味噌は疲労困憊

発作のように悶える少女を見て、流石に侍も心配そうだった

給仕『あら、また来てくれたんだ』

お品書きを持ってきた給仕の声が少し弾む

少女『…どもー』ズルズル

反対に少女は下がり調子

気のない声と共に、身体が飯台の下に飲まれていく

給仕『なんだい、やたらにダレてるね』ハァ

少女『うー』

給仕『ダレるのはいいけど、注文はさっさと………えっ』

給仕の目が丸くなる

給仕『…腕、治らなかったのかい?』
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/03(木) 01:51:47.97 ID:PagBef7AO
少女『ええ、いろいろありまして』

給仕『いろいろって、三訓を守らぬ極悪人でも問答無用で救う大神に、救われ損ねるなんて…』

給仕『あんた達、何者だい?』ズイッ

少女『えっ、えっと…』

詰め寄る給仕に、思わず言葉を詰まらせる


自分は兎も角、侍はただ者ではない

多くの精霊や魔物、機械巨兵、果ては神格まで倒してきた侍

人間離れで片付けきれぬ実力

そもそも、侍は自出が明らかでない

海の向こう、遥か東にある「蛇島」の「サムライ」という戦士らしい事は知っている

だが、それだけ

考えてみた事もなかったが、一体彼は何者なのだろう…
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/03(木) 02:00:07.52 ID:PagBef7AO
ペシッ

少女『―っえ』

給仕『はい時間切れー。2番さん日替わり2つ』


給仕『なーに固まってるのさ』

少女『え、あの、』

呆れ顔の給仕

妙な空気が漂い、迷走を続けた少女の頭は

少女『私達は旅人です』

給仕『……知ってるよ』

てんで的外れな答えを出した
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 02:10:58.21 ID:PagBef7AO
今日はここまでです
迷走気味だった添命編も明日明後日あたり終わりかと思います


最近話題に上がっているwikiに関してなのですが
細かい事までまとめると情報量が多くなるし、ざっくりやるとほとんど載せる物がないように思えます
想像力任せのこの物語のコンセプト上、あまり細かい事を書くのはうまくないかと思うのですが、いかがでしょうか
もしくは、>>1の頭にある設定資料集的な意味合いで使ったらいいですかね

ご意見よろしくお願いします


>>92
ありがとうございます!
読み返すと脱字が多くて恥ずかしいです
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 10:01:08.17 ID:8KYi/3wDO
乙だぜ
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 10:08:50.18 ID:JKvAsL1so
wikiなんてあるのか
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/03(木) 23:02:44.17 ID:o/G77T560
乙です。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 05:31:33.95 ID:AhEjyfKAO
〜〜

ゼェ……ゼェ……

「お兄ちゃん、しっかりして!」

ゼェ……大丈ぶ…ッ ゲホッ! ゲホッ!

「お医者様! お兄ちゃんが血を!」

「……今夜が山ですね」

「そんな…」

……ごめんな

「…お兄ちゃん?」

祭には一緒に行けそうもないや…

「……」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 05:38:04.75 ID:AhEjyfKAO
迷惑ばっかりかけ……本当にごめ

「お兄ちゃんの馬鹿!」



「私は一度も迷惑だなんて思ったことなかった!」

「お兄ちゃんと一緒にいられて、本当に幸せだった!」

「それなのに…」

……


「……もし、お兄ちゃんが迷惑かけたって思うんだったら」

「ちゃんと元気になって……ね?」




「……お――ちゃん?」

「――ちゃ―――
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 05:46:31.37 ID:AhEjyfKAO


……


……っ

眩しい……

僕は……死んだのか?

『否、汝生かされたり』

あなたは……誰?

『我、汝らにオンカミと祀られし者』

神……さま?

『我、無垢なる娘の願い、聴きとどけたり』

無垢なる娘―――?


〜〜
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/04(金) 06:12:02.17 ID:AhEjyfKAO


少女『……夢?』

いつの間にか目が覚めていた

眠りについている時に見る夢というより、現に漂う白昼夢

いや、誰かの記憶というのが一番しっくりくる

少女『……』

寝起きだというのに、やけに頭が冴える

少女は、見えざる力に導かれるように部屋を出ようとして

侍『―』ペシッ

少女『…った!?』

相棒に見つかった
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 10:07:03.11 ID:U+eRa92/o
乙かな
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/04(金) 12:29:16.60 ID:h9PkzpeDO
おつおつ。
終わるまで見続けるんだぜ。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/05(土) 15:21:45.07 ID:4aJf+o970
乙です。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 13:53:58.96 ID:d+yJAVhAO


私は、生まれつき身体が弱く、5つの時に不治の病にかかった

身体が確実に弱っていくのを感じながらも、私が絶望しなかったのは、私を励ましてくれた妹のおかげだろう

妹は毎日外での出来事を話してくれた

寂しい時にはずっと傍にいてくれた


私は、十分幸せだった

だから、妹には幸せになって欲しかった



皇王『だが、それも最早叶わない』

少女『貴方の病を治す代わりに、大神に全てを捧げたんですね』
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 14:10:23.82 ID:d+yJAVhAO
皇王『妹は優しかった。いや、優しすぎた』

神殿内の礼拝堂に、皇王の声が悲しく響く

皇王『大神は人の願いを聴き届ける代わりに代価を求める』

少女『…待って下さい。代価を払わなきゃいけないなら、聖者さん達は何を払ってるんですか?』

壇上の皇王が振り返って少女に言う

皇王『…代価は私の妹が払い続けている』

少女『妹さんが…?』
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 14:11:49.25 ID:9nTb5ZYMo
見てるよー
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 14:24:00.01 ID:h33QYlrDO
侍の出番はまだかしら
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 14:30:08.60 ID:d+yJAVhAO
皇王『大神の求める代価は、金や地位なんて生易しい物じゃない』

皇王『真に身を切る気持ちがないと払えない……願いを叶えても苦しみが残るようなものだ』

皇王『故に、自力で悲しみや苦しみを乗り越え願いを叶える、というのが我々に与えられた戒め』

少女『…!』

それは、昼間皇王が否定した少女の言葉

皇王『しかし、妹は願った。自らの命と引き換えに、死に往く私の救済を……』
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 14:42:26.02 ID:d+yJAVhAO
皇王『…妹の命と引き換えに、私は生き延びた』

少女『…だから、苦しんでるんですね』

皇王『…ああ』

皇王の願いは妹の幸せだった

だが、その願いは自分が生き延びる事で断たれてしまった

妹の願いが皇王の幸せだとしたら、その願いも叶わない


それは、戒律を破った者への呪いのよう
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 15:03:09.88 ID:d+yJAVhAO
皇王『私を苦しめる為、大神は様々な手を使ってきた』

皇王『私を皇王に仕立て上げ、救いをばらまくよう命じた。私だけが救われないのを見せつけるかのように…!』

声から滲み出る深い哀しみ

誰も悪い者などいないのに、羨み恨んでしまう自分

他人を許せず、自分を許せず、どれだけの苦痛を味わって生きてきたのか

少女『皇王様…』ツー

少女は泣いた

誰かの幸せを願える人が幸せにならない事程、不幸な事はないから
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 15:24:55.65 ID:d+yJAVhAO
少女『皇王様、妹さんの事、今でも愛していますか?』

皇王『…愚問だ』

少女の問いに、やや不機嫌な声で答える

少女『だったら諦めてないで、もう一度幸せな物語を始めましょう!』

少女『きっと、私達は―』



ユラッ

ボッ ボッ ボッ


青白い炎が空中に灯り、

大神『我、願いを叶えし者』

光を纏った女の子が現れた



少女『―その為にここへ来たんだから』
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 15:39:06.73 ID:d+yJAVhAO
皇王『大神様! 私はどうなってもいい! 妹を返してくれ!』

大神『できぬ。汝の命運は既に尽きしもの、代価にはなり得ぬ』

大神が妖艶な笑みを浮かべる

人を見下した冷たくも、どこか熱っぽい瞳

真っ白な柔肌は老いとは無縁な、生を超越した存在である事を感じさせた

少女『あの女の子が大神?』

皇王『…ああ、私の妹の身体を依り代にしている』
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:09:20.78 ID:d+yJAVhAO
大神『皇王、この娘の事は忘れよ。さすれば楽に生きられよう』

大神が甘い声で囁く

それは人が過ちを犯す時に聞こえる声、まるで悪魔の囁きのようだった

大神「苦しみを過去のものとせよ。苦しみ悲しみを乗り越えるよう、我は教えたぞ」

フワッ


侍「―ならばその教えは欠陥だらけだな」

大神「!」

キィンッ

侍「乗り越えるとは、苦しみや悲しみと共に生きるという事。それらを忘れ去れる程……人間は強くない」スタッ

大神「人間は弱い、と申すか」ニィッ

侍「左様」チャキッ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:23:24.86 ID:d+yJAVhAO
大神『そうだ! 人間は弱い! 己の無力さを知れば直ぐに他力にすがりつく!』

心底楽しそうに大神が言う

大神『まして代価も無しに救いを得られるのだ。言えばお前の妹は聖女として崇められるぞ?』

神とは思えぬ下品な笑み

いや、神とは総じてそういうものなのかも知れない

皇王『ふざけるな! 妹を貶めるような真似ができるか!』

聖女として崇められる

それは「代価になってくれてありがとう」という犠牲になった者への感謝

人は犠牲になる者にいくらでも感謝できるのだ
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:32:43.82 ID:d+yJAVhAO
侍「外道が…!」ダッ

ギィンッ

大神「我に剣を当てるとは、恐るべき腕前」ギギッ

侍「褒めるにはまだ早い。次の太刀でその首貰い受ける故」ギギッ

カシィンッ

大神『よいのか皇王よ! 妹君が殺されるやも知れぬぞ!』


皇王『ハァッ』ブンッ


ガシッ

大神『……なんの真似だ』ベキベキッ

皇王『ようやく目が覚めたのだ……!』

強い意志を宿した瞳で、皇王が大神を睨む

皇王『我が妹を貶める大神こそ、憎むべき敵であると!!』
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:42:45.15 ID:d+yJAVhAO
大神『敵……か。「オンカミ」である我を敵呼ばわりとは、無礼者共がッッ』バッ

空中に漂う6つの青白い炎が、大神の掲げた手の上で交わる

熱が渦巻き、炎が爆ぜ、大神の怒りが燃えた

礼拝堂の天井は怒りに焼かれ、石造りにもかかわらず焼け落ちた

大神『滅びるがいい! 愚かで弱き人間共よッッ』

ゴウッ


ドカァァァアアアンッッ
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 16:59:34.95 ID:d+yJAVhAO
爆発は神殿を半分以上吹き飛ばし、辺りには黒煙が漂った

大神「人の弱き事、なんと哀れな」


「確かに、人は弱い」


大神「!」


侍「だが、弱さを卑下する事も強さを傲る事もない」ピッ


少女と皇王を背に、侍は大神の炎を受けきった

大神「……化け物が!」ギリッ

大神は初めて驚愕に顔を歪めた
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 17:19:18.56 ID:d+yJAVhAO
大神「くッ!」バッ

大神が侍に手を翳す

バチッ

大神「なに!?」

侍「御首級頂戴仕る…!」ダッ

大神「止まれ! 小娘の心の臓、捻り潰すぞ!」バッ

今度は少女に手を翳す、が

バチッ

大神『何故だ! 何故力が効かぬ!?』グアッ

大神が青白い光を放ち、皇王の妹から離れる

やがて光の中から「神」が現れる

大神『我、は「オンカミ」。汝らの願いを聴き届けし者』
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 17:28:09.32 ID:d+yJAVhAO
少女『大神が妹さんから離れた!』ダッ

少女が皇王の妹に駆け寄る

大神「滅せよ」バッ

ギィンッ

侍「お主の相手は私だ」ギッ

大神「愚かな」

カ――ッ

侍「!」バッ


ドォォォォンッッ


侍「ぐぅッ!?」ドサッ
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 17:37:30.61 ID:d+yJAVhAO
少女『大丈夫、妹さんは生きてます! お兄さんが時間を稼いでくれてる内に逃げましょう!』

皇王『ああ!』バッ

ドォォォォォンッ

皇王『ぐっ!?』

少女『なっ 何が…』

大地を揺らす爆発に、逃げ足が止まる

尤も、

大神『持たざる者よ、彼の者の命と引き換えに、汝の願いを叶えよう』

大神に立ちはだかれ、逃げ道などなくなってしまったのだが
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 17:50:01.85 ID:d+yJAVhAO
休憩とります
風邪をひいてしまって予定より遅くなってしまいました
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 17:51:06.19 ID:UkZKAzAfo
構わん
寝ろ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 17:58:54.23 ID:XNvkDDo/o
構わん
休め
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 19:11:01.22 ID:d+yJAVhAO
大神『願いを叶えよう。汝、肉親が恋しいか』

少女『…』

大神『汝が願うのなら、彼の大戦(おおいくさ)を昔日より消し去ろう』

少女『!』

あの忌まわしき大戦が起きなければ…

世界中に飢えや傷病に苦しむ人が溢れる事もなかった

沢山の人が死なずに済んだ

何より、家族を失う事がなかった

少女『…』

少女『……でも、私はそれを選べない』

大神『……何故に』

少女『私は……その悲しみを引き連れて行く事にしたの』
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 19:28:41.09 ID:d+yJAVhAO
侍「…勝負あったな」ザッ

少女『お兄さん!』

大神『人間よ、何故苦難の道を選ぶ』

大神が静かに二人に問いかける


侍「それが、信じた道故」少女『それが、信じた道だから』

大神『!』

大神『……強き事よ』


侍「僭越ながら、介錯仕る」カタカタ

少女『お兄さん! もう腕限界なんでしょ!』

侍の震える腕を少女が支える

少女『大丈夫、私も手伝う』

侍「…忝ない」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 19:34:34.05 ID:d+yJAVhAO
侍と少女は平突きの構えを取る

それは少女の瞳に焼き付いた、侍の奥義

「道照らす事―」


大神「嗚呼、漸く合点がいった」

大神「『道を拓く者達』の妨げはできぬという事か…」


「―日輪の如し」


ドォォォォォオンッッ
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 19:39:28.34 ID:XNvkDDo/o
なんだろう、なんでかわかんないけど目頭が熱い
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 19:51:25.43 ID:d+yJAVhAO
―ある日を境に、添命では奇跡が起きなくなった

それでも苦しむ人々は後を断たず、添命が悲しみに包まれる日も近いと思われていた


だが、それは杞憂に終わった


添命には世界各地から医者や看護職、介護を志す人々が集まった

「皇王様と妹君の御尽力に心打たれて」

奇跡が起きなくとも、人々は救える

強い信念の下に、皇王は医者、学者、魔術師……あらゆる方面の専門家を集めた

特に医療に力を入れ、「不治の病」と諦める事を禁止した
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 20:00:52.02 ID:QMU8sT11o
いい話過ぎて死にそう
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 20:07:12.98 ID:d+yJAVhAO
皇王の妹は徳の高い人だった

医学を学ぶ傍ら、療養所を訪ねては患者達とよく話した

その柔らかな声と慈愛の心は、皆の心を少し優しくする

「五体満足だからそんな事言えるんだ」

そう言われる事もある

そんな時、彼女は決まって患者の手を握る

手から伝わる深い哀しみと労りの気持ち

彼女の心に触れて、患者は、いつしか自分心を蝕んでいた病に気付く

「心は、救われましたか」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 20:23:11.21 ID:d+yJAVhAO
添命の人間は死に際に「ありがとう」と言う

それは、自分を産んでくれた両親へ

今まで出会った全ての人へ

そして、看取ってくれた心優しい人達への感謝の言葉…


皇王達の努力虚しく、消えゆく命がある

だが、死に往く友を救う為、添命は今日も苦難の道を歩んでゆく


一つ、自らを貶めるべからず

一つ、隣人を信じるべし

一つ、全て謙虚に受け入れるべし―




給仕『ちょっと待ってって!』グイグイ

女聖者『貴女の力が必要なのよ! 苦しんでる人を見捨てるなんて貴女らしくない!』ギュウギュウ

給仕『アタシはもう引退した身なの!』ギューッ

女聖者『貴女が戻ってくれたら、皇王様も喜ぶだろうなぁ』

給仕『え…』

女聖者『それっ』グイッ

給仕『うわっ ちょっとっ』タタッ



少女『はい、あーん』

侍『―』パクッ
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 20:25:31.91 ID:d+yJAVhAO
添命編終わり
いかがだったでしょうか…
風呂敷広げすぎた感がありましたね


ご飯食べて次の冒頭まで書きます
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 20:33:10.65 ID:k3IMZPCfo
結局腕治らずか
一先ず乙
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 20:51:56.15 ID:h33QYlrDO
短い時間とはいえ刀が持てる位には回復したのか…?

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 21:13:51.37 ID:WrQ5pcDBo
モンハンやりすぎて親指の付け根が痛い状態
つらいが一戦ぐらいなら出来る
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 21:38:29.90 ID:d+yJAVhAO
ちょこっとレス

>>102
言葉が通じなくてもwiki
http://ss.vip2ch.com/ss/%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%80%8E%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%8C%E9%80%9A%E3%81%98%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%A6%E3%82%82%E3%80%8F

>>109
ありがとうございます
これからもご愛読いただけるよう努力します

>>129>>130
寝過ぎて頭痛いです


では本編に戻ります
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 22:07:06.75 ID:d+yJAVhAO
=亡国 花嵐=

―花嵐は、大陸を東西に分ける大河の畔に居を構える、伝統と歴史ある大国であった

「弱きを助け、強きを挫く」という正義感溢れる国民性から、周辺国からの信頼は厚かった

心身共に強国の花嵐であったが、その歴史は大戦の序盤に幕を閉じる

何故、花嵐は滅んだのか―




少女『花嵐の遺産?』

商人『そ、大国花嵐の隠し財産ってやつよ』

少女と侍は次の目的地を決めるべく、旅の商人に周辺国の話を聞いて回っていた

少女『そんなの、既に漁り尽くされてるんじゃない?』

商人『それがさ、大戦で死んだ連中の亡霊が出るとかで、まだ手付かずらしいぜ』

少女『ふーん…』

少女はこの宝探しに興味が湧かなかった

それというのも、この商人……怪しすぎる

大方、宝探しに来た連中から身包みを剥ぐか、奴隷商に売り飛ばす悪党だろう
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 22:23:53.65 ID:d+yJAVhAO
少女『あの、興味ないんで…』

商人から離れようとした、その時

『その話、詳しく聞かせて下さい!』

少女『うわっ』ドン

侍『―』ボフッ

女旅人『亡国花嵐に隠し財産があったなんて初耳です! 是非、お話を聞かせてください!』サッ

少女を突き飛ばし、商人の前に陣取った女の旅人

商人に四つ星銅貨を握らせ、続きを話すよう催促する

少女(あんなにのめり込んで大丈夫かな…)

冒険家というのは、総じて夢見がちな生き物だ

歴戦の勇者も、お宝を目の前にすると、冷静な判断が出来なくなる

熱に浮かされた女旅人は、正にその典型だった
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/06(日) 22:26:17.35 ID:d+yJAVhAO
今日はここまでです
皆様も風邪をひかぬようご自愛下さい
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 22:39:31.40 ID:Dqo2e/xO0
乙です。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/06(日) 23:28:56.49 ID:QTX0oehSO
乙。主も気をつけて。
149 : ◆xT1RX3lNDg [sage]:2011/02/10(木) 00:22:53.16 ID:wPkFF0UIO
乙乙乙ー
まだ読めてないが、やっと時間ができたので支援
作者様の素敵な流麗な文章を(更新あるのに)読めず苦しかった…
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 00:37:23.35 ID:wPkFF0UIO
と思いきや、時間が無いようだ
だがいつも心で支援している
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 01:46:49.44 ID:dDRlDfWMP
コテつけてんじゃねえよ帰れ
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 05:30:13.71 ID:pQrCpQzAO
>>151
コテ外し忘れぐらいスルーしようよ
空気悪くなる
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 10:58:37.71 ID:f4PJtBTMo
2chで空気もくそもねぇとは思うがね
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/10(木) 11:11:15.01 ID:flAmuA5DO
まぁコテ外し忘れたやつが悪いわな
155 :149 [sage]:2011/02/11(金) 14:20:39.46 ID:cg6Sh4+IO
悪いのは私だ
迷惑かけて本当すまそ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 02:58:49.51 ID:WllU6eEAO
……

旅は道連れである

小動物が大群を作るように、旅人は連れ立って旅路を行く

盗人『大人しく有り金全部置いていきな』

女旅人『お断りです!』ダッ

追い剥ぎ『おっと、逃がさないぜ』バッ

女旅人『…っ 囲まれた!』ザッ

大戦は人々の生活の場を奪っていった

治安は悪化する一方

今や街々を移動するにも、隊を組んでの移動が世の常識である

悪漢『一人でウロウロしてるって事は、腕に自信があるって事だよな!』

女旅人『くっ!』チャキッ

逆賊『ハッハッ! そんな短刀で何が出来るんだよ!』

襲う方が群れているなら、尚更襲われないよう大群を作る必要がある

少数、一人で旅人をするなど「どうぞ襲って下さい」と言っているようなものだ

…もっとも、


ザッ

侍「―寝ておれ」グッ

バキィィッッ


ドサッ  ズザーァッ

逆賊『ぐげッ!?』バタッ


烏が徒党を組んで獅子を襲ったところで、喰われるだけなのだが
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 03:09:15.30 ID:9QVvUuWKo
キタ――(゚∀゚)――!!
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 03:13:28.31 ID:WllU6eEAO
盗人『なっ!?』アングリ

盗人達の開いた口は塞がらなかった

突然現れた黒髪の男に、仲間の一人は伸されてしまった

逆賊は黒髪の回し蹴りを食らうと地面に一度着弾するも勢い衰えず、二度目の着弾で漸く止まった

絶好の獲物…、一人きりの女性旅人を見つけ、楽な仕事が出来ると思っていた矢先の出来事だ

女旅人『……』アングリ

女旅人も、目の前で何が起きたのかしばらく考えていた

いや、頭の中が真っ白だったので考えていたとは言えないか

女旅人『えーっと……』



女旅人『助かった、の?』
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 03:45:07.30 ID:WllU6eEAO
悪漢達にとって今日は最悪の日となった

悪漢『や、野郎……ッ』ギリッ

侍『……』ザッ

人間を鞠か何かのように蹴り飛ばす黒髪の男

加えて

『動くな!!』

悪漢『! 誰だ!』

少女『私は魔術師。既にお前達は私の術中に嵌っている! この杖を振ればお前達は……』

少女『ドカンッ!』

悪漢『!』ビクッ

魔術師が杖を掲げて殺人予告をしてきた

悪漢(武闘家に魔術師……恐らくは政府に雇われた野盗狩り!)

少女『粉微塵になりたくなければ、そこで伸びてるのを連れて、今すぐ消えなさい!』

悪漢『……くッ!』
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 04:02:36.18 ID:WllU6eEAO
ようやく風邪が治ったので続き書いていきたいと思います
とりあえずこれから寝て、続きは夜にでも投下する予定です


>>149
ありがとうございます
進行スピードは遅いので、お手空きな時にでも読んで下されば幸いです
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 09:13:53.38 ID:xhQ//ZhDO
待ってます
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 09:33:29.38 ID:aMMk4wH1o
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 12:06:09.12 ID:+GZjuK530
乙です。
御大事に
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 15:49:00.96 ID:zuwCEJND0

少女ェ…
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 19:04:20.14 ID:WllU6eEAO
悪漢『おい、そっち持て!』グイッ

盗人『うわっ!? 腕折れてるぞ!』

そそくさと退散する悪漢達を見送り、

少女『……ふぅ』

少女は漸く緊張を解いた

少女『大丈夫でしたか?』スタッ

女旅人『ええ、お陰様で。助かったわ、ありがとう』

女旅人も緊張を解き、短刀を収める

女旅人『貴女達強いのね! 武闘家に魔術師だったなんて』

少女『いえ、強いのはお兄さんだけで、私は魔術師でも何でもないんです』

女旅人『へ? じゃあ魔術でドカンってのは』

少女『真っ赤な嘘です』エヘヘ

悪漢を睨んだ少女の鋭い視線、それは正しく強者の目であった

もしあの瞳が演技だったのなら、

女旅人『…やっぱり貴女ただ者じゃないわ』
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 19:35:40.91 ID:WllU6eEAO
女旅人『でも貴女達が何故ここに?』

少女『いえ、私達も今になってお宝に興味が湧いてきて…』

〜〜

女旅人『なるほど……大河の水位が下がった時にしか現れない入り口がある、と』

商人『噂だけどな。最近雨が少ないし、運が良ければ見つかるかもね』

女旅人『よし、天が私に味方している内に出発しよう!』

女旅人『貴女達も花嵐の遺産に……って、あれ?』

商人『お嬢ちゃん達なら途中でどっか行っちまったよ』

女旅人『あら……仕方ない、私一人で行くか』




商人『ヘッ 誰がお宝の情報を銭一枚で話すかってんだ。馬鹿な女だ』


『すると、お宝自体は実在するのかな?』


商人『!』
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/13(日) 20:01:07.07 ID:WllU6eEAO
少女『本当の情報を教えてくれるかな、四つ星銅貨一枚で』ニコッ

商人『だ、誰がッ』

ベギャンッッ

商人『え!?』

耳元で鳴った激しい激突音に目を向ける

すると、飾っていた鋼鉄製の立派な兜が、侍の足の裏で紙風船のようにぺしゃんこになっていた

侍『…』

商人『……』ヘタッ

少女『話してくれるよね?』

商人『は、はい』カクカク

〜〜


少女(貴女が心配で、なんて言えないよね)

女旅人『そっかそっか、大国花嵐の遺産ともなれば誰だって興味をそそられるよね!』

うん、うん、と一人納得する女旅人

少女(…やっぱり駆け付けて正解だったかも)
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/13(日) 20:30:10.98 ID:aMMk4wH1o
新ヒロインかしら
期待
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 01:32:31.31 ID:OrvQabIAO
女旅人の列に加わり、大河の西岸まで足を延ばす

女旅人『さって、あのオジサンの話だと、このあたりに入り口が隠されてるっぽいけど』

少女『その入り口の事なんですけど…』

少女がおずおずと手を挙げる

女旅人『ん? 何かな』

少女『入り口は花嵐の城内に繋がってるんですよね?』

女旅人『オジサンの話ではね』

少女『それって、何に使う抜け道なんですか?』

女旅人『……』

女旅人『……さあ?』
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 01:46:09.17 ID:OrvQabIAO
鵜呑み、という言葉がある

与えられるがままに物事を受け入れる、という意味だ

当然与えられるがままなので、情報の裏付けなど無いし、意味を考える事も無い

人間は食事をする時、物を咀嚼する

物を噛むと食感が変わる、旨味が出る

食事にしろ、調べものにしろ、鵜呑みにしていては大事は成らない


少女『これは私の推測ですけど、城内への抜け道は、落城時の脱出用に作られたものです』

女旅人『あ、なるほど!』

少女『……』
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 02:03:28.63 ID:OrvQabIAO
少女『敵の包囲から逃れる為の抜け道だから、できるだけ人目に付かない場所、できるだけ遠くに繋がってる必要があります』

女旅人『ここだと城のすぐ傍だし、夜でない限りすぐ見つかるね』

少女『加えて、敵の進路が陸、大河どちらでも確実に逃げるには…』ガサガサ

少女は鞄から地図を取り出し、一点を指差した

少女『ここ、東岸の岬から船で脱出するのが一番安全です』

女旅人『遠っ!? いくらなんでもそれは無いんじゃないかな』

少女『…』ピクッ

ここにきて女旅人が否定の立場を取った

推理めかして、商人から引き出した情報通りに導く作戦の雲行きが怪しくなる

「虚報を掴まされたんですよ」と言えない少女としては、ここも鵜呑みにしてもらわないと非常に困る
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 02:25:46.85 ID:OrvQabIAO
水位が下がった時しか使えない抜け道なんて役に立たない

そう言ってしまえば女旅人を傷つける事になる

少女『………えと』


女旅人『あ、でもここって協奏曲「花嵐の波」のモデルになった場所だよね。折角だし行ってみよう!』


少女『……はい?』

少女が意を決して真実を告げようとした途端、その勇気は無用になってしまった

女旅人『ん? 知らない? 私が子供の時なんか凄く流行っててね…』

鼻歌を歌い出す女旅人

女旅人の気紛れで事なきを得たのだが、少女はいまいち納得いかなかった
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 02:27:02.82 ID:OrvQabIAO
女旅人扱いにくいですね…

おやすみなさい
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 02:32:10.74 ID:0f6cGlN0o
おい寝るのか
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 02:50:58.40 ID:OrvQabIAO
>>174
申し訳ないですが寝ちゃいます
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 03:30:39.12 ID:OrvQabIAO
―花嵐の岬から望む海原は世界一美しい

その水平線に人々は未だ見ぬ世界を想い、その細波に命の鼓動を聴く

花嵐の岬から多くの詩が生まれ、多くの旋律が花嵐の岬に還る―

女旅人『そう、ここもまた、一つの「想いの還る場所」……』


ザザーン  ザザーン


女旅人の言葉は、多くの芸術家が愛した「花嵐の岬」の紹介文の一節だ

少し絵画や音楽をかじった人間なら、半数以上が目にした事がある有名な文章だ


少女『……』

だが、少女はそれを知らない

いや、そんな事は実に些末だった

女旅人の口から生まれる言葉はどれも本物で、「受け売り、借り物の言葉」ではなかった

少女『想いの還る場所……か』


―感動は人から人へと伝わる

想いもまた、風に、波に乗って伝わる―
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 03:47:51.41 ID:OrvQabIAO
ザザーン

ザザーン

侍「……」

侍は水平線の彼方、青と青のその間を見ていた

何気なしに見ていた

いや、もしかしたら故郷を探していたのかも知れない

侍「……」


―郷愁を 未だ拭えぬ 我が弱さ

  情けなきしも なおも嬉しき―


目を閉じれば故郷

懐かしい景色が広がる

声が聞こえる


ザザーン

ザザーン
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/15(火) 03:48:24.88 ID:OrvQabIAO
今度こそ寝ます
おやすみなさい
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/15(火) 07:55:15.29 ID:/pK8fgLSO
おやすみ。待ってるぜ。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/16(水) 01:53:31.67 ID:Q/xvDiTAO
乙乙
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 02:18:25.56 ID:PU4fqDIf0
乙です。
おつかれさん
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/17(木) 15:31:51.49 ID:dr0uz8Zwo
週末来るかな?かな?
楽しみにしています。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/18(金) 11:11:40.83 ID:Oah3OyvAO


船頭『向こう岸に行きたい? じゃあ一人四つ星二枚ね』

少女『結構高いなぁ…』チャラッ

船頭『こちとらお客さんの命預かってるからね、…まいど!』


三人は西岸から東岸への渡し舟へと乗り込んだ

大河には橋が一つも無く、舟以外での行き来はできないので、古くから渡し舟が利用されていた

大河は運河としても利用されている為、渡し業を行うのには大陸東西の許可が必要なので、料金はやや高めである

女旅人『渡りきるのにはどれくらいかかります?』

船頭『一時間弱かね』ギィギィ

女旅人『一時間!?』

船頭『まあまあ、生涯に一度あるかないかの機会だ。よォく見ておきな』ギィギィ
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/18(金) 11:46:35.24 ID:Oah3OyvAO
ギィコギィコ

大河に流されながら、舟はゆるゆると東へ進む

止め処なく流れる水とは対照的に、船上の景色は写し絵のように変わる事なく、時の流れを感じさせない


―ここを越えりゃァ二度とは戻れん

振り向けどそこには大河しかねえ

故郷懐かしむ事は叶わず

それでもアンタは行くのかい―


少女『それは何て歌ですか』

女旅人『曲名は無いけど、大河の船頭さん達が歌うから花嵐の舟唄って呼ばれているわ』

船頭『詳しいねぇ、アンタ渡るのは二回目かい?』

女旅人『いえ、初めてですよ』

少女『なんだか悲しい歌ですね』

船頭『昔は大河を渡るなんて難民ぐれぇのモンだったからな、全てをこの大河に捨てていく想いだったんだと』

女旅人『大河に捨てて…』

少女『……』


船頭『カランの大河はこれっきりィ〜、カランを渡るはこれっきりィ〜』

船頭が再び舟唄をうたう

少女と女旅人は東岸に着くまで、船上から西岸をじっと眺めていた
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 00:44:00.96 ID:7jMTFSdxo
うわー
ちょうどSS速報に切り替えの時のスレのログがない
多分ここって三スレ目だよな?
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 01:55:11.03 ID:g+tcdMs3o
↓ 7xにあるヤツな
ttp://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/syoujo_kotobaga_tuujinakutemo.html
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 02:05:05.23 ID:7jMTFSdxo
あーいや、七罰からここに来たんだよ
>>981にあるスレがURL踏むとリンク切れてたけど、よく日付見たらそこがこのスレか
ありがとう
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 11:41:54.57 ID:aHLMMqAAO


大河を渡り、三人は東岸の岬へと到着した

女旅人『まさか大陸の東に来ることになるとは』

少女『とは言っても、すぐ西に戻るんですけどね』

大河の東西では文化圏が違う

歴史を紐解いても、東西が活発に文化交流や貿易をしていた時期は無く、大きな民族移動も起きていない

かと言って、互いに侵略行為をするでも無く、東西は文明誕生以来不思議と不干渉のまま今日に至っている

それは必然なのか、はたまた偶然なのか…
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 12:02:12.24 ID:aHLMMqAAO
少女『東、か』

少女は二人の先導をしながら、「自分の旅」の行き先を考えていた


職を探しに旅に出たつもりだったが、気付けばまた次の旅に出ている

路銀を稼いで各地を転々とし、流浪の末に東西の境界にまで来てしまった

今は抜け道を使って西へ戻る

だが、その先は―

花嵐で折り返し、再び西へ戻るか

それとも―


ポン

少女「―!」

侍「童がそう眉間に皺を寄せるでない」クッ
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 12:18:54.01 ID:aHLMMqAAO
頭に触れる感触に少女が歩みを止めると、侍がその前にしゃがむ

そして少女の眉間の皺を、くい、と伸ばした


侍「私はお主との旅が好きだ。お主と共に過ごす世界が…」

侍「私達なら大丈夫だ。だから……笑っておくれ」


とても、優しい言葉だった

その優しい言葉に、少女はあたたかな気持ちになる

少女『……うん』

少女がすみれの様に可憐に笑う

侍の心は言語の壁を越え、少女の心へと届いた
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 12:31:35.92 ID:aHLMMqAAO


ペタ ペタ

商人の情報通り、抜け道は東岸の岬に隠されていた

三人は灯りを持てない侍を殿、女旅人が先頭の縦隊で抜け道を進む

ペタ ペタ

湿り気で滑らぬようゆっくりと進み、外の明かりが届かなくなった頃

女旅人『さっき、何話してたの?』

少女『えっ』

女旅人が少女に話しかけた

女旅人『武闘家さんは異国の人っぽいけど、私達の言葉わかるの?』

少女『いえ、蛇島の言葉しかわからないみたいです』
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/20(日) 12:52:06.27 ID:aHLMMqAAO
女旅人『蛇島? そんな国あったっけ…』

聞き慣れぬ地名に女旅人が首を傾げる

少女『私も聞いた話なんですけど、海の向こう……遥か東の島国がお兄さんの故郷らしいです』

女旅人『へぇー! 遥か東の異国なんて、想像しただけでワクワクするね!』

興味津々といった具合に女旅人が食いつく

異国人である侍に好意を抱いてくれるのが嬉しく、少女は以前「仮面さん」から聞いた話を続ける

少女『蛇島の人達はみんな髪が黒くて、床が草で出来た家に住んでて、鯨を食べるらしいです』

少女『島には首が八つある蛇の神様がいるらしく、多分それで蛇島って呼ばれてるんだと思います』

少女『お兄さんは「サムライ」っていう蛇島の戦士で、なんでも最強と言われているとか』

へぇー、なるほど、と女旅人が感嘆を洩らす

女旅人『すごいね! 貴女、蛇島の言葉がわかるんだ!』


少女『……へ?』
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 12:59:47.72 ID:aHLMMqAAO
ここで一区切り
進行が遅くて申し訳ないです
夜に再開するかは未定です

あと、いつも乙レスありがとうございます
今後も少女と侍にご期待下さい
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 13:25:21.76 ID:g+tcdMs3o
お疲れさまです。

侍の腕は治ってないんだね。
美少女剣士ktkr!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 15:24:47.31 ID:FFSDRmzA0
乙です。
読んでいて凄く楽しいです。感謝
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 00:39:59.18 ID:UShiEmszo
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 15:52:34.05 ID:NmNDHv9SO
乙乙。
自分のペースでしっかり書いてって。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 09:31:06.56 ID:LW+Eu0/X0
各話にちゃんとコンセプトっつーかテーマがあって、それでいてスレ全体を通した主軸があって、しっかりとしたストーリー構成で面白いです
マジで漫画化したらいいのになあ・・・
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 19:33:45.49 ID:lFIbH8UAO
女旅人『さっきもサムライさんと話してたし……そうだ! 私にも蛇島の挨拶教えてよ』

少女『ちょ、ちょっと待って下さい! 私、蛇島の言葉なんて喋れないですよ』

女旅人『え、そうなの?』

少女『はい』

女旅人の勘違いを正す少女

女旅人は少し、うーん、と顎を撫でると


女旅人『でも、心は通じてるんだね』ニッ

少女『!』


からかうような笑みを浮かべた
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 19:47:00.85 ID:lFIbH8UAO
……

女旅人『…なっがいなぁ』

少女『岬と花嵐は結構離れてますし、仕方ないですよ』

侍『……』

ひたすら歩き続け、どれぐらい経っただろう

外の様子も分からない状況で、灯りを頼りに前へ前へ

段々時間感覚が無くなり、今が昼か夜か分からなくなった頃

侍『…―!』

女旅人『光!』

少女『出口かな!』
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 21:04:24.26 ID:lFIbH8UAO
ガコ……ッ

女旅人『重い……ッ』ググッ

少女『ぬぬ……ッ』ググッ

バタンッ

女旅人『開いたぁ!』

光の漏れる辺りを押し上げ、太陽の下に出ると


帽子売り『さあさあ帽子はいかが? 明日は日差しが強くなるらしいよ!』

魚屋『そろそろ店仕舞いだ! 安くしとくよ!』


少女『商店街……?』

女旅人『…みたいね』

花嵐の街中に出た
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 21:25:33.10 ID:qaF2DaGeo
きてるか
支援
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 21:47:21.05 ID:lFIbH8UAO
地面から顔を出したまま、二人が唖然としてると

町人『おいアンタら! 何故抜け道を使っている!』

女旅人『!』

あれよあれよと言う間に、街の人々に囲まれてしまった

自警団『…お前達、城から来たのか』ザッ

少女『…いいえ、岬から来ました』

青年『大方、隠し財宝のデマを真に受けた盗人ってとこだろ』

女性『宝なんて無いよ。みんな憶新の連中が持ってっちゃった』
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:03:26.20 ID:lFIbH8UAO
―花嵐国民は王も臣も兵も、そして民一人ひとりも誇り高く義理堅い人間である

大戦が始まると、兵達は戦火に焼かれる戦線の人々を守る為、勇敢に戦った

王や重臣達も混乱状態に乗じる事は無く、領土拡大ばかりを目論む他国を痛烈に批判した


義と情に生きる花嵐が有力国の中で孤立するのに、佐程時間はかからなかった


有力国は見せ付けるかのように花嵐周辺の小国を攻撃し、花嵐の軍隊を誘き出した

明らかな陽動、見え見えの罠

だが、花嵐は逃げない

我が身可愛さで見ぬふりをする程、屈辱的な事はなかったからだ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:15:52.54 ID:lFIbH8UAO
大国花嵐も兵力に限りはある

四つの国を相手に戦っている内に、花嵐の兵は出払ってしまった

こうなれば、隣国・憶新が攻めてくるのは目に見えている


直ぐに兵を撤退させねば滅亡は必至


小国の王達は花嵐の兵達に帰国するように言った

しかし


『花嵐を想って下さるならば、強く誇り高く生きて下さい。それが皆の願いです』


皆、頑として譲りません

とうとう花嵐の兵達が帰国する事はありませんでした
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/23(水) 22:19:47.46 ID:lFIbH8UAO
文の最後に『―』をつけるの忘れた
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:06:21.38 ID:lFIbH8UAO
今日はここまでです
妄想が止まらない、ヤバい
いつになったら書き終えれるんだろう


おやすみなさい
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 00:22:45.23 ID:2+joeMhSO
その妄想にいつも期待

209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 07:58:32.11 ID:hCV5c7Jx0
乙です。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 12:57:37.53 ID:+KvhetuAO
>>1です

ちょっと私生活でゴタゴタがありまして、身の回りの整理がつくまで時間がかかりそうです
今でも十分間が空いてますが、更に一週間ほど休みを取りたいと思います

季節の変わり目、風邪などひかぬよう御自愛下さい
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 17:42:49.08 ID:Kzrv4s5SO
うぃ、そちらこそ体壊さんようにね。
気長に待つさ。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 22:54:02.28 ID:HC6gnPXDO
この児童文学みたいな空気感がたまらん
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 01:11:40.86 ID:D9p84ZPSO
>>1は被災してないか?
報告欲しいな
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/12(土) 18:44:23.84 ID:Oq6ziYIAO
>>213
生きてます
私事になりますが、東北の実家も無事みたいで、やっと安心できたところです

長らくお待たせしましたが、明日続きを投下します

ご心配おかけしました
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 22:39:57.54 ID:D9p84ZPSO
無事で何より…
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:12:20.89 ID:JZ3k4RK80
乙です。
無事で何より
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/13(日) 22:03:11.18 ID:N4L3AJXAO
町娘『城にある物はみんな兵隊が持ってっちゃったよ』

農夫『金庫や食糧庫の中身は勿論、壷や絨毯も、全部』

学士『そういう訳だから、君達の想像しているようなお宝は、花嵐には残ってないよ』

花嵐の町人達は、そう言って踵を返す

大工『大人しく帰んな。今なら見逃してやっからよ』

少女『……』



女旅人『…あのっ』

去り行く町人達に向かって、女旅人が声を絞り出す

おばさん『…なんだい、アタシぁ忙しいんだよ』

女旅人『花嵐の義勇は聞き及んでいます。とても高潔で、それでいてとても人間らしい』

おじさん『はぁ…、どうも』

女旅人『そんな誇り高い人達の宝物が金銀財宝の類とは、私は思えないんです』

郵便屋『……』

再び、女旅人に注目が集まる

女旅人『教えて下さい。皆さんの「想いの帰る場所」を』
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/13(日) 22:37:30.97 ID:N4L3AJXAO
鍛冶屋『……そいつを聞いて、一体どうするって言うんでい』

女旅人『!』

奥さん『ちょっと! あんた…』

鍛冶屋『いいから』

奥さん『……』

女旅人の一言で、花嵐の町人達の見る目が変わった

想いの帰る場所

それは故郷かも知れないし、見惚れた景色かも知れない

其処は心の起源

鍛冶屋『アンタ……興味本位じゃないんだろ?』

自分達の深い所に入り込もうとする者を拒絶する気持ちと、歩み寄ろうという気持ち

相反する気持ちの間で、人々は揺れていた


女旅人『……』

女旅人は目を瞑ったまま言葉を紡ぐ


女旅人『目を閉じると見えるんです。闇に咲く光の花が』
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/13(日) 22:48:47.81 ID:N4L3AJXAO
本当に少なくて申し訳ないですが今日はここまでです
また明日お会いしましょう
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 00:33:29.57 ID:ju3F0+7go
プリキュアかとおもた乙
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 14:26:58.99 ID:Qw7/VyS30
乙です。
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/15(火) 23:40:57.34 ID:cwtYlujAO
少女『光の花……』

鍛冶屋『アンタ……どこまで知ってるんだ?』

女旅人の雰囲気に飲まれるように、鍛冶屋が「光の花」の話に乗る


女旅人は言う

女旅人『光の花が何なのか、私は何も知りません。ただ…』

長く、閉じていた目を開き


女旅人『私の旅が花嵐で終わる、そんな予感がしてならないんです』


223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/16(水) 09:13:10.03 ID:vy4yQ5bAO
女旅人の言を受け、花嵐の町人達は頷き合う

鍛冶屋『じっちゃん』

町長『うむ。お嬢さんが何者かは知らんが、悪巧みしてるようには見えん。話してもよい……と禿は思うぞ』

鍛冶屋は町長に会釈をすると、女旅人に向き直った

鍛冶屋『アンタの見ている「光の花」は、俺達の想いの帰る場所……花嵐の地下広場に咲いている』

少女『地下広場?』

女旅人『花嵐にそんな場所が…』
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/16(水) 09:25:46.33 ID:vy4yQ5bAO
奥さん『私等にとって大切な場所だからね、誰彼に教えたりしないのさ』

女旅人『私が聞くのも変ですが、そんな大切な場所を……余所者の私に教えてもいいんですか?』

自警団『いいのです。我々は貴女を信用した』

学士『貴女にも「光の花」が見えるのは、何か花嵐に縁があるからではないでしょうか』

魚屋『神サマ、ってやつのお導きかもな』

女旅人『……ありがとう』
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 00:22:56.83 ID:fPisjI41o
きてたか
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:13:25.37 ID:yeaG1tXAO
鍛冶屋『さて、俺はこいつらを地下広場まで案内してくるとすっかな』

女旅人『よろしくお願いします』

奥さん『気ぃつけてね、あんた』

鍛冶屋『ほら、みんな散れ散れ! 憶新の占領軍に見つかると面倒だ!』




ゴトンッ

花嵐の鍛冶屋を加え、再び真っ暗な抜け道に潜る少女達

土地勘のある人間の案内を得た安心感からか、女旅人と少女は小さく溜め息を洩らした

鍛冶屋『俺が先頭に立つからよ、松明をくれや』

女旅人『どうぞ』

女旅人から松明を受け取り、鍛冶屋が辺りを照らす

鍛冶屋『しっかし、女子供の二人旅たぁ関心しねぇな』

女旅人『……?』

少女『二人じゃないですよ?』

鍛冶屋『え?』


侍『―――』ヌッ


鍛冶屋『うぉぉぉ!?』ビクッ

背後の闇から現れた侍に、鍛冶屋は思わず悲鳴を上げた
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:25:51.69 ID:yeaG1tXAO


女旅人『び、びっくりしたぁ』

少女『お兄さんは髪も瞳も黒だから、暗い所にいると溶け込んじゃうんだよね』

侍『―…』

鍛冶屋『び、ビビらせんなよ……』


抜け道に木霊した絶叫が消える頃、鍛冶屋の息はようやく整った

松明を持つ鍛冶屋を先頭に、一行は奥へ奥へと歩き続ける


少女『宝探しじゃなかったんですね』ペタペタ

女旅人『……』ヒタヒタ

足音ばかりが消えてゆく抜け道に、ようやく声が響いたのは、空に月が登ったころだった
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:36:16.00 ID:yeaG1tXAO
ペタペタ

ヒタヒタ

女旅人『いつからかは分からない』

女旅人が少女に応える

女旅人『それこそ、ずーっと昔から旅してきたような気がする』

女旅人『私の願いは一つ、あの場所に帰りたい……あの場所で眠りたい』

その声は母に甘える子供のように純粋で

少女『お姉さん……』

風を失った鳥のように哀しげだった
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:50:08.41 ID:yeaG1tXAO
ドンッ

女旅人『わぷっ!?』

鍛冶屋『おいおい、折角とっておきの場所に案内すんのに、湿っぽい雰囲気にすんなよな』

二人の雰囲気が気に入らないのか、鍛冶屋が足を止める

少女『す、すいません』

鍛冶屋『…………ま、いいけどよ』ザッ

鼻を撫でる女旅人を一瞥すると、鍛冶屋は再び歩き出す

それに倣い歩き出す女旅人

少女も後に続いたが、女旅人との距離がさっきよりも遠く感じた
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:54:23.61 ID:yeaG1tXAO
風呂入ってきます
寝落ちしたらごめんなさい

もう少しで花嵐編終わりですが、今回ちょっとイミフかもしれません
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:54:53.34 ID:yeaG1tXAO
風呂入ってきます
寝落ちしたらごめんなさい

もう少しで花嵐編終わりですが、今回ちょっとイミフかもしれません
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:55:43.02 ID:yeaG1tXAO
風呂入ってきます
寝落ちしたらごめんなさい

もう少しで花嵐編終わりですが、今回ちょっとイミフかもしれません
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/17(木) 23:56:09.16 ID:yeaG1tXAO
風呂入ってきます
寝落ちしたらごめんなさい

もう少しで花嵐編終わりですが、今回ちょっとイミフかもしれません
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:58:50.72 ID:NJxIaUqfo
そこまで重要じゃないと思うぜwwww
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 00:11:13.59 ID:tfjdh8WSO
クソワロタwwwwww
236 : [sage]:2011/03/18(金) 00:18:24.72 ID:z9rssYhAO
(;^ω^)
237 : [sage]:2011/03/18(金) 00:36:45.48 ID:z9rssYhAO
今日は大人しくVIPに短編でも書きなぐって寝ます

ボタン連打ェ…
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/03/18(金) 00:43:14.42 ID:SAoHY9lxo
あれこの>>1こんなキャラだっけとかおもったけどよく考えたらあの北斗スレ書いてた奴と考えたら納得だった
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 12:50:53.72 ID:nY/oEG49o
鼻くそふきでたわwwwwwwww乙
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 12:51:31.88 ID:nY/oEG49o
ごめん鼻くそじゃなくて鼻水だった
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 13:57:07.21 ID:tfjdh8WSO
>>237
その短編のURLを
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/20(日) 12:01:03.97 ID:bfOcN8qAO
>>241
しばらく見ない間にninjaとかいう新システムが導入されていて立てれなかったです
SS速でやろうかしら
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/20(日) 21:02:21.99 ID:Ks0op2GSO
>>242
やってくれるなら
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/21(月) 01:04:29.87 ID:t0YNT5QAO


鍛冶屋『ついたぜ』

狭い道を歩き続けると、拓けた場所に出た

ただ広いだけで、目を引くような物は何もない

中央あたりに湧き水が湧いていて、その周りに幾ばくかの苔が生えているだけだった

少女『ここが「想いの帰る場所」…?』

鍛冶屋『そうさ。まぁ見てなって』
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/21(月) 01:15:16.03 ID:t0YNT5QAO
鍛冶屋が松明の火を消す

すると

侍『!』

少女『わぁー…』


蒼く煌めく水面

翠に輝く光苔

壁、天井、地面の亀裂から溢れる山吹の光

そして

少女『あれは……!』

女旅人『光の……花』

地下広場いっぱいに、光の花が一斉に咲き乱れる

一瞬にして、地下広場は淡い光に包まれた
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/21(月) 01:58:44.06 ID:t0YNT5QAO
鍛冶屋『凄いだろ。此処が俺達の心の拠り所、俺達の想いの帰る場所さ』

視界に広がる輝く枝

それに咲いた光の花

枝は蒼と翠が交わる幹から伸び、全ての光を繋いでいる

鍛冶屋『あの花は、花嵐の人間の魂。俺達は、いつかここへ帰る』

女旅人『……』

女旅人の頬を涙が伝う

体が疼く

胸がふるえる

体験したことの無い感情の高まりに、頭も体もついてこれず、女旅人はただただ涙を流した
247 : [sage]:2011/03/21(月) 02:12:49.05 ID:t0YNT5QAO
明晩で花嵐終わりです
おやすみなさい
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 00:03:32.76 ID:+yf4xlVOo
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 00:04:19.77 ID:+yf4xlVOo
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/22(火) 06:36:57.18 ID:mdA6GoMAO
『―ほう、ここが花嵐の精神的支柱か』


前から、後ろから、左右から聞こえる嘲りの声

少女『!』

鍛冶屋『誰だ!』


『誰だ、とは挨拶だな。私の声を忘れたか』


少女達が辺りを見回していると、気配が広場の中央に集まり、一つの影が浮かんだ

司令『自分達の主も覚えられぬとは、つくづく愚かな種族だな』
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/22(火) 06:56:17.92 ID:mdA6GoMAO
少女『あの人は…』

鍛冶屋『占領軍の司令だ。ヤツは俺達の尊厳を奪う事に躍起になってる』

強く拳を握り、怒りに体を震わせながら声を絞り出す鍛冶屋

司令『それが私の使命だからな。支配とは、敗者の心を折る事で成される』

司令『ましてや「義と誇りの国」とまで言われた花嵐とあっては、念入りに踏みにじる必要があるだろう』パァッ

司令は冷酷に言い切ると、おもむろに壁へ手を翳す

その手に青白い光が集まり、

鍛冶屋『! やめろォォ!!』


ピッ

ドォォォォォンッッ
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/22(火) 07:19:52.44 ID:mdA6GoMAO
司令の手から光の矢が放たれ、辺りに土埃が舞う

司令『……今宵、花嵐が歴史から消滅する!』カッ


ドォォォォオオンッ


鍛冶屋『やめろ!! クソッタレ!!』ダッ

鍛冶屋が司令に突進する

司令『…死にたがり屋が』パァッ


それは、死中への突入


少女『危ないッ』

鍛冶屋『あっ』


ドォオオォォォンッッ
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/22(火) 07:36:46.42 ID:mdA6GoMAO
司令『抵抗しなければ死なずに済んだものを…』




『―わからないかな』


司令『むッ』


女旅人『死を賭してでも守らなきゃいけないものがあるってことがさァッ!』


砂塵の中から現れたのは、破壊された地下広場ではなく、立ちはだかる女旅人の姿だった

その勇敢な立ち姿は、無数の光……先人達の魂に包まれていた
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/22(火) 07:37:55.25 ID:mdA6GoMAO
続きは夜です
昨晩は書けなくて申し訳ありませんでした
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/22(火) 14:53:41.25 ID:8yUk6uJSO
テッカテカして待ってます
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/22(火) 22:27:22.07 ID:mdA6GoMAO
女旅人『怪我はありませんか?』

鍛冶屋『お、おう!』

司令と対峙したまま気を使う女旅人に、鍛冶屋はどもりつつも張りのある返事をする
それを聞いた女旅人は、僅かだが顔を綻ばせた


司令『花嵐の亡霊か…』

反対に、苛立ちを微かに浮かべた司令

司令はしばらく女旅人と睨み合っていたが、ふと、声を上げた

司令『そうだ、良いことを思い付いた』
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/22(火) 23:02:15.04 ID:mdA6GoMAO
司令『亡国を支配下に置く時、何に一番気を付けなければならないか、知っているかね?』

不意に司令が女旅人達に問い掛ける

女旅人『……何を急に』

司令『私は様々な国へ侵略と占領政策を取り仕切ってきたが、戦死者の怨念はなかなか消えぬものでね』


フッ、と視界が暗転し

ドサッ、と耳元で鈍い音


司令『そういう粘着質な連中は、まとめて専門家に頼む事にしたよ』

魂狩り『ォオオオオォォオオオッッ』
258 : [sage]:2011/03/22(火) 23:55:27.49 ID:mdA6GoMAO
すいません落ちます
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 00:00:33.06 ID:3JW2hZ+SO
なん…だと…?

260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 08:36:32.13 ID:cJWiXVV3o
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/23(水) 19:18:42.27 ID:fPIM64BIO
きてた、、だと!
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 22:02:00.74 ID:7sBtpMkAO
地下広場は暗闇に包まれていた

司令の召喚した存在に、花嵐の魂が根こそぎ狩り取られたからである


一蹴毎に青い炎を掻き上げる漆黒の馬

それに跨る甲冑だけの騎士

「魂狩り」と呼ばれる魔の騎士は、現世に漂う魂の残滓を冥界に運ぶ、死の遣い

その手から逃れるには、鳥となるしかないと言われている


女旅人『…まさか、神話の住人に会えるなんてね』

司令『良かったじゃないか。こんな機会は二度と無いだろうね』
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 22:18:48.36 ID:7sBtpMkAO
少女『お兄さん! ねえ! 目を覚ましてよ!』ユサユサ

侍は湿り気を帯びた地面に倒れていた


魂狩りは召喚と同時に侍達に襲いかかった
対する侍は、迷う事無く刀を抜いた

一閃

必殺の太刀は空を斬り、魂狩りは眼前に迫った


少女『ねえ! お願いだから息をしてよ! お願いだからっ!』ユサユサ

侍『』ユサユサ

魂狩りの突撃槍は、大地や身体から魂を引き剥がす

思念の強弱は問わない

侍には、少女を突き飛ばす事しか出来なかった
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 22:32:19.36 ID:7sBtpMkAO
司令『……しかし、驚きだね』

女旅人『…何がよ』

司令『魂狩りの疾走が、二つも魂を取りこぼした事さ』

地面に突っ伏す鍛冶屋と侍

狩り取られた地下広場の魂達

残った女旅人と少女

司令『そっちの子供は男に突き飛ばされたおかげで攻撃をかわしたけど、君はまともに食らった筈だ』

女旅人『花嵐の魂が……守ってくれたんじゃないかしら』

司令『……』

司令は何か言いたげだったが、言葉を飲み込む

魂狩り『……』チャキッ

司令『まあいい、どっちにせよ次で終わりだ』
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 22:51:27.31 ID:7sBtpMkAO
女旅人(魂狩りはまだ冥界に魂を運んでいない)

短刀を持つ手に力を込める

女旅人(あいつを倒せば、花嵐の……みんなの魂を取り戻せる!)

漆黒の騎士を見据え、構える

司令『こんな状況で、まだ抵抗する気かい?』

女旅人(取り戻さなきゃ、大切なモノを)

力一杯地面を蹴る

女旅人(守らなきゃ、死を賭してでも……!)
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 22:58:04.94 ID:7sBtpMkAO
女旅人が魂狩りに向かって突進する

それを受け、魂狩りが馬を走らせる

魂狩りは一瞬で黒い風となり、女旅人に詰め寄る

女旅人『っ!?』

気付けば、心臓に突撃槍を突き付けられていた

魂狩り『オワリダ』



グサッッ
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 23:10:01.33 ID:7sBtpMkAO
少女『お姉さん!?』

女旅人『ァ……あ』

突撃槍に貫かれた女旅人の体

女旅人は視界の暗転……魂が剥がれるのを感じた


女旅人『まもる、ん、だ……! たましいが……消えるとしても!!』バッ

女旅人の最期の抵抗

魂狩りへ投げつけた短刀は、その首元を捉え突き刺さった
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 23:27:29.28 ID:7sBtpMkAO
司令『…無駄な事を』

動かなくなった女旅人を見下ろし、司令は冷たく言い放つ

司令『さて、お嬢ちゃん。間も無くここは爆破される。早急に避難したまえ』

少女を問題視していない司令は、少女を追い払おうとする

少女『…断ります』

しかし、少女は司令を睨んだまま動こうとしない

司令『………君も死にたいのか』

少女『死にたくはありません。でも…』

少女は、小さな手のひらをぎゅっと握り、


少女『今逃げる事は、私の「誇り」が死ぬ事と同じ。私は、私の誇りの為に、そして生きる為に戦います!』


司令と、魂狩りに対して構えた
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 23:38:09.17 ID:7sBtpMkAO
年端もいかぬ少女に反抗され、司令は苛立った

司令『…よろしい、ならば好きなだけ相手をしてやろう』スタスタ

少女『…っ』グッ

司令は早足で少女に歩み寄り

バシッ

少女『あぐっ!』クラッ

平手打ちを食らわせる

司令『ほら、誇りとやらの為に戦いたまえ』

バキッ ドカッ ガスッ

少女『ぐっ!? っぁはッ』

二発目の平手打ちで少女は倒れ込んだ

続けざまに司令は、うずくまる少女を容赦なく踏みつける

司令『さっきまでの威勢はどうした! 誇りとやらを見せてみろ!!』ガスッ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 23:45:05.38 ID:7sBtpMkAO
ガスッ ガスッ

少女『―ッ ――』ビクッ

司令『どうだ! 誇りを捨て、命乞いをする気になったか!』ギュウッ

司令は少女の頭を踏みつけ、降伏するよう言う

少女『……誇りは…しなない……!』

司令『――ッ!!』カッ


司令『ならばッ 誇りと共に死ねッッ!!』グアッ
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/23(水) 23:56:37.78 ID:7sBtpMkAO



―波は、私が投げ込む小石から生まれる


風は、君の一挙手一投足から生まれる


未来は、夢を見る心から生まれる―



272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/24(木) 00:04:01.69 ID:w+VkkojAO
少女『ッ』




ドサッ

司令『―え』

少女『……、え?』

少女の頭を踏み潰す筈の司令は、少女の脇に倒れ込んだ

司令『な、何が――――ッッ!! 痛ぇぇぇ!?』
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/24(木) 00:12:38.97 ID:w+VkkojAO
突然痛みを訴え叫び出す司令

無理もない


侍『娘を足蹴にするとは、余程その足、要らぬようだな』


斬り落とされてしまったのだから

少女『お兄さん!!』

司令『ぃぎぎぎッ! きさまッ 死んだ筈じゃ!?』

侍『死んではおらん。魂を身体から引き剥がされただけだ』
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/24(木) 00:20:10.07 ID:w+VkkojAO
侍『こんなに傷だらけになって……遅れてすまぬ』

魂だけ……霊体になった侍が、少女の前に降り立つ

少女『私はいいの。それより、お兄さん……』

少女は、元に戻れるのか聞こうとした

だが、今それを聞くのは正しくない、と感じて思いとどまった

少女『ちゃんと話すの、初めてだね』

侍『……そうだな』フッ
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/24(木) 00:22:48.54 ID:w+VkkojAO
今日はここまでです

思いの外長くなってしまってちょっと戸惑ってます
上手くまとまればいいなぁ
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 00:25:39.14 ID:0p/De9hIO
うむ、大義であった
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/24(木) 00:41:05.83 ID:PsK6btYZo
そういや腕まだ治って無かった気がするが霊体だから?気合?
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/26(土) 08:30:21.65 ID:U9OeaHaAO
少女の頭を優しく撫でると、侍は司令に向き直った

侍『さて、死出の旅支度は出来たか』

司令『死に損ないのクセに随分と強気な!!』

侍『……』

侍は女旅人を一瞥し

侍『彼女が……命懸けで教えてくれた』ザッ

居合いの構えを取る

侍『何故、我が剣が空を斬ったのかを』チャキッ

司令『! 魂狩り!!』

魂狩り『オオオオォォオオオォオオッッ』
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/03/27(日) 09:34:41.17 ID:r8RePjtg0
乙です。
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 00:21:00.64 ID:pCRMJa2AO
迫り来る魂狩りを前に、侍が言う

侍『彼女が教えてくれた。こやつを相手にするには、魂を乗せるだけでは足らぬと』
侍の刀が空を斬り、女旅人の短刀が刺さった理由

侍『身体を棄て、魂の器を棄てて差し違えなければならぬと!』

ズグッ

少女『お兄さん!!』

突撃槍が侍の魂を貫く

魂の器が破れるのを感じつつ、侍は渾身の力で吼えた


侍『武士道とはッ 死ぬ事と見つけたりッ!!』


キィンッッ
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 00:31:16.23 ID:pCRMJa2AO
侍『がはァ……ッ』パラッ

侍の魂が砕け、光の粒となる

その光の粒は魂狩りの甲冑へと吸い込まれてゆく

少女『お兄さん!! 消えちゃ駄目!』

侍『――……』パラパラ

少女『駄目! 駄目だったらぁ!!』バッバッ

少女は、散り行く侍の粒を必死にかき集める

だが、それは指の隙間からすり抜け、飛んでゆく

司令『ハッハッ! ざまぁ見ろ! 二度も殺されるとは馬鹿な奴!!』
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 00:37:30.42 ID:pCRMJa2AO
司令『さて、最後はお嬢ちゃんの番だ! お兄さんの所へ直ぐに送ってあげよう!』

少女『…くッ』グシッ

次から次へと溢れる涙を一度だけ拭い、少女は侍の刀を抜く

その幼い身体に不釣り合いな得物を構え、魂狩りを睨む

司令『また無駄な事を……、魂狩り!』

魂狩り『……』

司令『おい、そこのガキを殺せ!』

魂狩り『……ァ』

司令『……あ?』


バキャァァンッッ


283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 00:47:32.04 ID:pCRMJa2AO
砕け散った魂狩りの甲冑

その中から、光の粒が溢れる出し、暗闇が明るさを取り戻す

司令『ばッ 馬鹿な!?』

鍛冶屋『……んッ』ビクッ

少女『おじさん!』

光の粒……魂が身体に戻り、鍛冶屋が意識を取り戻す

苔も水源も地面も、花嵐の先人達も解き放たれ、俄に輝き出す


ザッ

司令『ひィ!?』ビクッ

侍『……』
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 00:57:19.50 ID:pCRMJa2AO
司令『こ、殺すのか……?』

侍『…――』

司令『……そうか、言葉が通じないのか』

少女『お兄さんは…』

司令『…』

少女『お兄さんは、きっとこう言ってます』


「最期の場所を決めているなら、そこへ帰るがいい」


司令『……ぐぅッ』ジワッ

司令は悔しかった

死を覚悟した途端に故郷の景色が、家族の笑顔が、脳裏を駆け巡った

それは紛れもなく、司令の生きた証、「誇り」だったのだ

そんなにも単純で、大切な事に気付かなかったのが、堪らなく悔しかった
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 01:18:02.29 ID:pCRMJa2AO
……

少女『大丈夫ですか?』

鍛冶屋『イチチ……ちょいと腰を打っただけさ、問題ねぇ』

鍛冶屋『しかし、あの嬢ちゃん……あのまま逝っちまうなんてな…』

侍『……』

侍の手の中に在る、木彫りの睡蓮

それは、花嵐の姫が憶新に囚われ、処刑されるまでに彫った故郷への想い

少女『お姫様の想いは、ここに帰ったんですね』

睡蓮は花嵐の国花

清く、強く、誇り高い人達の花

侍『……』スッ

侍の手を離れ、木彫りの睡蓮が水面に浮かぶ

その花弁は淡い光を帯びていた
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 01:52:05.32 ID:pCRMJa2AO
=花学=

―道徳と一口に言っても、その基準には土地の風土や宗教など、様々な要因が関わってくる

同じ国家でも、その時の時勢によって道徳基準が反転する事も珍しくはない

そんな中、「花学」と呼ばれる教えが全世界から注目を浴びている

「花学」とは、西の大陸のとある国で生まれた道徳観で、東西を隔てる大河流域を中心に、世界に広まったと言われている

その価値観は「誇り」に収束し、自分可愛さに見て見ぬ振りをする等、卑怯な行いを憎む、というものである

しかし、死しを賭しても誇りを守るという徹底ぶりに、ごく一部から「花学者」が「狂信者」と呼ばれる事もある

その一方、花学は平民を中心に急速に広まった。義を重んじ、人情に厚い花学者達の周りに人々が集まり、それを真似るからである



ところで、何故この道徳観を「花学」と呼ぶかと言うのかだが、実ははっきりしていない

最も有力な説は、花学の書物全てに施されている「睡蓮の花」から由来している、というもの

中には「歴史から消えた国の名前」を由来とする説もあるが、確かめる術は無い


ただ一つ確かな事がある

それは、誇り高き生き方が今も私達に受け継がれている、という事である―
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 01:54:31.11 ID:pCRMJa2AO
花嵐編終わり
すごくまとめ方に悩んだ末こうなりました
あと戦闘描写


様々疑問があるかも知れませんが、答えは皆様の解釈にお任せします
他力本願な作者でごめんなさい
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 02:49:34.49 ID:ICcyWdASO


いいねぇ
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 07:20:05.56 ID:yi2F+VfDo

久々にPC起動したら一杯キテタ嬉しい
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 10:31:39.43 ID:rej4V3xDO
乙乙
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/28(月) 20:42:55.67 ID:17Z5HGs80
他のファンタジーSSよんでる時に、ふとこの二人が現れる展開がよぎるんだよな

続き期待してます
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 22:43:24.79 ID:XnoMdARmo
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 23:14:22.65 ID:7ev4dftXo

女旅人死んじゃったか…
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 23:31:59.62 ID:pCRMJa2AO
=旅路6=

―道とは

永き時を経て動物が、人間が、生きとし生ける者達が踏み締めた足跡である

旅路とは

旅人達が脈々と辿り、拓き、朽ちていった生涯の軌跡である―




少女『こんなに簡単に見つかるなんて…』

東西を隔てる大河近くの小さな都

そこにある、これまた小さな魔術装飾屋で、少女はため息をついていた

魔術装飾は一般的に、輝石に魔術を埋め込む事で、対象に影響を及ぼす

安価な物は魔除けの御守りとして市民に親しまれているが、具体的な効力を求めると相応の値が付く

少女『はぁ…』

少女はまたため息をついた

ある品物の前に立ってから実に30回目である

【通訳魔装】

そう銘打った棚の、一番安価な首飾りの前で少女は案山子になっていた

それもその筈

この「異国語を通訳する」魔術装飾、下手をすれば家が建つ程、高価な品物なのである
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/28(月) 23:51:17.25 ID:XnoMdARmo
ktkr
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/28(月) 23:59:31.94 ID:pCRMJa2AO
言葉には力が宿る

魔術には陣を描いたり、自然の法則を用いて儀式を行う等、様々な方法があるが、詠唱程迅速で強力な物はない

詠唱という術式の難しいところは、「引き起こす事象に合った言葉を紡ぐ」事であり、いくら魔力があろうと語学に精通していなければ魔術は完成しない

魔術にとって、語学力は実力に直結する


故に値も張る


だがそんな事情を知らない少女は、「誰が欲しがるんだろ…」と恨めしそうに商品棚を睨む

貴族でも少し躊躇う値段、少女が死ぬまで働いても買えるか怪しい

それ程差があっても、少女には退けない理由があった
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/29(火) 00:11:20.09 ID:Av/7iNNAO
少女『店長さん、通訳の魔術装飾を譲ってもらえませんか!』ズイッ

婆さん『無理だね』

魔術装飾屋の店主である老婆は、少女の交渉に即答した

尤も、少女もあれだけ高価な品物がそう簡単に譲ってもらえるとは思っていない


少女『じゃあ、物々交換ならどうです?』


婆さん『……物々交換?』

老婆が訝しげな表情で少女を見る

この時、既に少女は「しめた」という顔をしていた
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/29(火) 00:30:42.47 ID:O0yX9F7a0
>>293
個人的解釈だけど
女旅人だけ魂戻らなかったのって、花嵐の姫が処刑されているのに関係すんじゃないのかな
女旅人=姫の望郷の念 みたいな
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/03/29(火) 07:58:51.54 ID:XHvcX7Fk0
乙です。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/29(火) 09:38:57.31 ID:/5FOYlSHo
>>298
ばっかそういうのはいつかまた読み直した時に気づくから言わなくていいんだよww
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/29(火) 12:42:05.79 ID:Av/7iNNAO
老婆は、少女が何か切り札を用意している想定しつつ、交渉に乗り出した

婆さん『……で、お嬢ちゃんは何を出すんだい?』

少女『何でもいいですよ』

婆さん『!』

「なんでもいい」とは、相手の要求した物を持ってくるという、冒険家が交渉手段使う常套句である

戦前は依頼を達成して報酬を得るという流れが専らだったが、戦後になって冒険家が交渉手段として腕を貸すという、新たな流れが生まれた


婆さん『……馬鹿を言うんじゃないよ。そういうのはね、幾多の死線を潜ってきた猛者か、自殺志願者だけが口にしていいんだよ』

但し、それが成立するのは力のある冒険家に限られる
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 21:41:07.31 ID:IH3FvBoAO
少女『お言葉ですが店長さん、こう見えても私は数多の修羅場を潜り抜けてきた戦士!』

少女『この羽は悪魔と共に戦った天使との友情の証!』スッ

少女は羽飾りを老婆の前に差し出す

思い出の羽で人を欺くのは些か気が引けたが、少女はどうしても魔術装飾を手に入れなければならなかった

婆さん『……確かに、これは本物の天使の羽!』

少女『どうです、店長さんに損はさせませんよ』

婆さん『むう…』
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 22:03:45.77 ID:IH3FvBoAO
老婆は悩んでいた

といっても、少女が嘘を吐いてるのではないか、とか、少女と取引するか否か、というような事ではない

「少女が悪人か、そうでないか」をどう判断したものかと悩んでいた


天使の羽という物は、そう簡単に手に入る物ではない

それは、天使より人間に与えられし加護、聖なる力

偶然見つける事はおろか、他人から盗む事など絶対に出来ない

少女『……あのー?』

婆さん『むうう……っ』

少女が悪人でないのであれば、それは正しく天使に目を掛けられ与えられたと言う事


しかし、少女が悪人だったら

それは「人間を天使に造り替えた」という事
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 22:17:53.98 ID:fyhiwHSMo
終わりが近いのか…?
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 22:23:41.44 ID:IH3FvBoAO
婆さん『くぅぅ……』

少女『あの……どこか具合でも悪いんですか?』

客が来ても「いらっしゃい」一つ言わない老婆が、唸り声を上げている

その急変ぶりに、少女は焦りを感じ始め、医者を呼びに行こうかと思った


その時だった


カランカラン

侍「すまぬ……この腕輪、また買い取ってもらえなかった」
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 22:33:23.96 ID:IH3FvBoAO
少女『お兄さん! 医者! お医者さんを読んで!』

侍『―――?』

身振り手振り、侍に状況を説明する少女

その様子から、老婆の身に異変が起きている事を侍は直ぐに察し、老婆に駆け寄る

侍「もし、どうなさった?」トントン

あくまで冷静に、侍は老婆に声を掛ける

当の老婆は、肩を叩かれてようやく現実に引き戻された

老婆『い、いやすまない。ちょっとばかし考え込んで……』

侍『―?』

顔を上げると見知らぬ男

驚いた老婆は、悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 22:39:59.28 ID:IH3FvBoAO
老婆『あッ!? イタタタタタタ……』

侍『――!?』バッ

少女『大丈夫ですか!?』

老婆『ま、魔術装飾の悪用はさせないよ!!』

少女『は、はぁ!?』

腰痛に苦しみながら、老婆が叫ぶ

少女は呆気に取られたが、言葉のわからない侍は「早く起こしてくれ」と言っていると勘違いし、老婆を抱き起こす

老婆『イタタタ… アンタ、何のつもりだい』

少女『何のつもりも、ただお婆さんが心配なだけですけど…』
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 22:43:04.64 ID:IH3FvBoAO
婆さんが途中から老婆になってましたね
脳内変換お願いします

>>304
本編はまだまだチマチマ続きます
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 22:53:12.17 ID:IH3FvBoAO


婆さん『すまない、迷惑をかけた』

少女『いえ、いきなり天使がどうこう言った私も悪かったですし』


結局、腰を強く打った老婆の為に、医者を呼びに行った少女達

なんだかんだ、ドタバタしている内にすっかり日は暮れていた

婆さん『で、通訳の魔術装飾が欲しいんだったね』

少女『いえ、今日はもう遅いですし、出直します』

婆さん『いい、取っときな』ジャラ

少女『あ、はい』ジャラ




少女『へ?』
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:02:36.78 ID:IH3FvBoAO
少女『え? え!?』

婆さん『やる。大事にしんさい』

少女『これ! 滅茶滅茶高価な物じゃ!?』

目が飛び出る程高い物を渡され、あたふたする少女

さっきまで、何が何でも手に入れようとしていた人間とは思えない変わりように、老婆も思わず笑う

婆さん『アタシはね、アンタ達が悪人じゃないかと疑ってたんだ。それも、人間を天使にしちまうような極悪人かも……ってね』

老婆の言葉に少女が唇をきゅっと噛む

思い出になった筈の悲劇が、少女の中で鮮明に蘇った
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:11:13.30 ID:IH3FvBoAO
婆さん『でも、それは杞憂だった。アンタ達は相当なお人好しだ』

少女『べ、別に普通だと…』

お人好しと言われ反論する少女を見て、老婆はまた笑った


婆さん『だってアンタ、世界を丸々手に入れる機会を棒に振ったでしょうが』

少女『!』


老婆は知っていた

侍の持っている「白宝石の指輪」が、願いを叶えるという魔神の物である事を

そして、その機会を棒に振ってくれたから、誰も代価を払わなくて済んだのだ、と
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:15:59.48 ID:IH3FvBoAO
婆さん『さ、早速魔術装飾を着けてみんさい』

少女『…はい!』

老婆に促され、少女が首飾りを着けようとする

婆さん『アンタじゃないよ』ペシ

少女『っえ!?』

婆さん『アンタが着けても、天使の羽で打ち消されるだろうが』

少女『…あ!』
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 23:21:27.60 ID:Kb24O5P0o
天使の羽にはそんな力があったのか…
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:24:27.78 ID:IH3FvBoAO
少女『……よっ』

侍『……』ジャラ

少女『…できた!』

屈んだ侍に、少女が首飾りを着け終える

婆さん「どうだい、アタシの言葉が分かるかえ?」

侍「! これは面妖な……魔術か?」

婆さん「そうだ。通訳魔装でアンタは世界中の誰とでも話せるようになった」

通訳の魔術が侍に作用し、老婆との会話を可能にする

婆さん「その娘以外と、ね」

少女「――…」
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 23:28:17.65 ID:fyhiwHSMo
oh...
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:33:38.74 ID:IH3FvBoAO
婆さん『まぁ、会話したくなったらその羽飾りを外せばいいんだけどね』

少女『…いえ、これは外しません』

婆さん『天使との友情かい?』

少女『それもあります。けど―』

婆さん『んん?』




少女『言葉が通じなくても、私とお兄さんの心は繋がってますから』


317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 23:41:46.00 ID:a7/BwuPDO
めっさイイ話…
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:48:01.95 ID:IH3FvBoAO
―不思議な客だったよ

女の子と……東国の男かね、二人組みでさ

天使の羽やら、魔神の指輪やらを隠すでもなく身に付けてるんだ

驚くの通り越して、最後は笑っちまったね


…ん? 魔術装飾?

ああ、あげたとも

何、勿体無いだって?

馬鹿言うんじゃないよ

アイツ等、また寄ってくれるって約束してくれたんだ

立派な交換条件だろうに―
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:54:28.56 ID:IH3FvBoAO


婆さん『アンタ等、次はどこへ行くんだい?』

少女『東へ』

婆さん『東……?』

少女『はい』

婆さん『まさか、大河を越えて…』

少女『ずっとずっと、東へ』

婆さん『そうか、それで魔術装飾を……』

少女『お世話になりました』

婆さん『気をつけて』

侍「お達者で」

婆さん「ババがボケる前に帰ってきな」



少女『お婆さんに幸あれ!』侍「では!」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/03/30(水) 23:58:42.52 ID:IH3FvBoAO
旅路6終わり
ようやっとスレタイ回収しました
思い付きでやってるので回収できるか未定でしたが、上手くいって良かったです

さて、次回から大陸の東が舞台になりますご期待下さい


ご意見、ご感想等あれば遠慮なくお願いします
では、ご愛読ありがとうございました
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/30(水) 23:59:44.59 ID:fyhiwHSMo
今腕どうなってるの?
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/31(木) 00:03:52.74 ID:stKgdsZ6o
323 : [sage]:2011/03/31(木) 00:11:59.26 ID:IqIUCF6AO
>>321
花嵐→完治していないので自重していた
魂狩りへの一太刀目は気合いで振るった
霊体は腕へのダメージ無し

旅路6→完治

というつもりで書いてます
が、皆様各々の解釈でいいと思います


女旅人の件も同じで、彼女が何者だったのかは皆様の想像通りでいいと思うのです
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/31(木) 00:15:31.81 ID:U7wMVC08o
霊体になった際に治ったってことでいいのかな?
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/31(木) 00:28:04.46 ID:IqIUCF6AO
>>324
体は器、魂が中身
車が壁に擦っても、運転手は傷付かない

というイメージで書いてました
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/03/31(木) 07:55:11.54 ID:8DLQFuHm0
乙です。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage saga]:2011/04/08(金) 01:05:31.06 ID:6ponQgBAO
……

ザッ

ザッザッ

少女『……この丘を下れば、いよいよ東の人達の国だね』

侍『……』ザッ

少女『私が住んでた所とは、何もかもが違う……新しい世界』

侍『……』


ポンッ


少女『んっ』

侍『――――』ナデリ



少女『…………そうだったね』


少女『よっし! 麓まで競走!』タタタッ

侍『―!』


侍『……――』タタッ
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage saga]:2011/04/08(金) 01:50:35.52 ID:6ponQgBAO
―未知という恐怖から逃れる為に、人間は情報という鎧を身に付いた

それが今では、新たなる一歩を妨げる足枷となっている

大多数の人間は、誰が作ったかも知れぬ地図で世界を知り、

誰が発したかも知れぬ報道に一喜一憂する

「それらに、果たしてどれだけの価値があるのだろうか……」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage saga]:2011/04/08(金) 02:01:24.19 ID:6ponQgBAO
ある旅人が答えた


「事物の価値は、己が手に取って初めて生まれる」

「地図は私の後ろに生まれ、報せは私の口から生まれる」


「では、歴史は……歴史も、貴方により作られるのですか?」


旅人は、また答えた


「それは違う。何故なら、私は孤独ではないから」

「私もまた、心を受け継いだ……歴史の一部なのだから」―
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 21:39:40.02 ID:Vf/v9rWko
きてた
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/10(日) 12:30:23.88 ID:VASjmh83o
ワクワク
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/11(月) 17:26:35.51 ID:CuGCM1em0
しえーん
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/04/13(水) 19:59:12.05 ID:95dePqJI0
乙です。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/24(日) 10:46:54.64 ID:7upaUS7AO
支援
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/25(月) 23:12:07.58 ID:zR/xBadAO
……


青年「これで4人目か……」

おばさん「こんな幼い子供に……」

母親「うううううう……っ!」ポロポロ

自警団「すまねぇ……俺達が無力なばかりに」

老人「うなだれてる時間はないぞ。またいつ犯行が行われるかわからない」

自警団「……そうだな、見回りに行ってくる」

ガチャ……バタン

老人「………」
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 23:23:35.21 ID:4VooyFPBo
久々だな期待
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/25(月) 23:49:57.35 ID:zR/xBadAO
=小天村=

豊かな自然に囲まれた小さな小さな村である小天村

周辺町村が少なく、流通網から外れている為、村人は自給自足の生活を続けていた

決して豊かとは言えない無いが、村人達は満足していた

そんなある日、小天村を震撼させる事件が起きた


連続殺人


ある時は白昼の犯行、ある時は深夜の殺人

ある時は無垢な子供を、またある時は働き盛りの男性をズタズタに切り裂いた

毎日出る犠牲者

村人達は恐怖に震えた

いつまでこの悪夢は続くのか……
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 00:14:27.90 ID:zfjXvOmAO
自警団「みんな、聞いてくれ」

集会所に集まった男達が振り向く

自警団「事件発生から3日目、未だに犯人は捕まっておらず、今日も犠牲が出た。……まだ子供だというのに」ギュウッ

自警団は少しの間顔を伏せたが、再び前を向き話始める

自警団「昨日、皆で集会所に集まった時に見張り役二人が殺された事は覚えているだろう」

自警団「あの時は皆集会所の中に居た。誰も犯行が不可能な状況だった訳だ」

団長「疑いたくはなかったが、この村は辺境、外部から人が来る事は滅多に無い。内部犯をまず疑わざるを得なかった」

親父「それはわかった。いいから次の手を考えようぜ、団長」
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 00:30:26.37 ID:zfjXvOmAO
中年男性「で、外部犯と考えると、どんな作戦に出るんだ?」

自警団「山狩りに出ます」

青年「山狩り……?」

男達がざわつく

親父「おいおい、そりゃあ少し危険じゃないか?」

小天村のような小村では、山狩りのように多くの男手が必要になる事は難しい

男性二人を殺す凶悪犯を探すとなれば尚更だ

青年「それに、村の子供達や女衆は誰が守るんだ?」

初老の男「そうだ、男達の留守に殺人犯が村を襲ったら……えらい事になるぞ!」
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 00:44:35.64 ID:zfjXvOmAO
男達が口々に反対を訴える

犠牲者を出さない事を考えれば、危険の伴う行動は避けるべきである

人手という資源は有限で、人間にできる事も有限である

皆を守る、それが最優先事項である



団長「…だが、これは嵐ではない……! 嵐の様に耐えるだけでは終わらんのだ……!」


341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 00:52:07.45 ID:G8UrJcXLo
キタァアアアア
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 01:01:44.30 ID:zfjXvOmAO
男達が山狩りに消極的なのには理由があった


まず、村人全員がこの3日間、ろくに休養を取っていない事

特に男達は、交代で仮眠を取るだけで、昼夜を問わず警戒に当たっている

加えて、いつ襲ってくるかわからない殺人犯への恐怖、常に集団行動を強いられる心労

更に、収穫や狩り、仕事ができない事による生活への不安

そして、それらによる村人同時の衝突


肉体的にも精神的にも、村人達は疲弊していた


団長「だからこそ、早急に事件を解決しなければならない」

自警団「これ以上消耗すれば、俺達に隙が生まれ、殺人犯につけ込まれる」

親父「……」

団長「……今が勝負所だ」

青年「…わかった」
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 01:24:41.97 ID:zfjXvOmAO


中年女性「あなた、無事に帰ってきてね」

中年男性「心配するな。おまえこそ、留守を頼むぞ」

山狩り部隊の男達が家族の見送りをうける

夕方には帰ると言えど、殺人犯の捜査である

皆、名残を惜しみながら、隊列へとついていった

団長「皆、準備は良いか?」

「オーッッ」

団長「留守中、頼んだぞ」

自警団「はい!」

団長「よーし、出……」


ガサガサッ


少女『いっちばーん!』スタッ

麓まで一気に駆け降り、茂みから飛び出した少女の目の前に並ぶ、物々しい装備の男達

男達は皆、険しい表情で少女を見ている

団長『……―』ギロッ

少女『……もしかして、怒ってます?』

侍『――…』ガサッ
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage saga]:2011/04/26(火) 01:28:49.12 ID:zfjXvOmAO
今日はここまでです
ありがとうございました
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 07:37:45.02 ID:3i7RdhvDO
乙です
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 08:58:37.45 ID:7po4/fJSO
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/04/26(火) 15:23:24.16 ID:S9cjI3R10
いーね!

地の文うまいなマジで。分かりやすい。参考にする。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 21:18:02.16 ID:zfjXvOmAO
……

侍「……だから先から何度も知らぬと言っている」

親父「嘘をつけ! この人殺し!」

侍「……」

侍は留守を任された男達に囲まれていた

その手足は縄できつく縛られており、刀は押収されている

新米自警団「そうは言っても、剣を所持していた貴方を疑うなというのは無理な話です」

侍「護身用だ。丸腰で旅ができる程、世は平穏でないからな」

青年「そんな事言って、アンタこそ野盗なんじゃないか!?」

自警団「……こら、憶測で物を言うな」

青年「……」

侍「……」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 21:35:45.81 ID:zfjXvOmAO
侍は取り押さえられた訳ではない


侍と少女が茂みから出て暫くは、村人達との睨み合いが続いた

その睨み合いの中、侍は男達が『背後を気に掛けている』事を感じ取った


この男達は、守る為に戦おうとしている


そう見抜いた侍は、刀を地面に置き、少女を捕縛しない事を条件に投降したのだった
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/04/26(火) 22:12:28.96 ID:zfjXvOmAO
不思議な事に、男達は侍に家族が襲われなかった事で不幸な気持ちになっていた

……もし、この男が犯人だったら……

家族と仲間を守らなければならないという重圧を、事件解決への期待が一瞬上回た

だが、蓋を開ければどうやら男は白らしい

皆、一様に落胆し、振り出しに戻った事に焦りを感じる

親父「おい……あんまり人を舐めるんじゃねぇぞ」グイッ

自警団「お、おい!」

そして焦りは理性を焦がし、人を暴力に駆り立てる

侍「………」

親父「ンだぁ!? その目は!」バキッ

侍「……っ」
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage saga]:2011/04/26(火) 22:29:53.99 ID:zfjXvOmAO
明日早いので寝ます

>>336>>341
お久しぶりです
飛び飛びですみません


>>347
ありがとうございます
より良い作品目指して精進します
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 22:43:44.01 ID:7po4/fJSO
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/27(水) 09:18:59.22 ID:KFppr50AO
キテタワァ!
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/05(木) 02:07:19.42 ID:ATLwZrJAO
少女「―――!」タタッ

少女が侍と親父の間に割って入り、両手を一杯に広げる

身を挺して守る姿勢を見せる事が、言葉の通じない少女にとってできる精一杯の抵抗だった

自警団「止せ! まだ彼が犯人と決まった訳じゃないだろ!」ガシッ

親父「うるせぇ! 村の連中が犯人じゃねぇなら、余所者を追い出しときゃいい話だろうが!」バシッ

自警団の静止を振り切る親父

仲間を殺された怒り、姿の見えぬ犯人への恐怖

様々な感情が彼の理性を焼き尽くす

親父「どけ、ガキ! 痛ぇ目にあいてぇのか!?」ドンッ

少女「―ッ」ザッ

大人の男に突き飛ばされた少女の小さな身体

だが、その身体はよろめく事無く親父の前に立ちはだかり、少女は一層大きく手を広げる

親父「―っ こんの……っ 余所者がぁ!!」グァッ

少女「!」




「その腕……余程不要と見える」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/05(木) 02:21:53.97 ID:ATLwZrJAO
親父「うっ!?」ビクッ

振り上げた警棒が親父の頭上でピタリと止まる

親父(な……なんだ!? 腕がっ 動かねえ……!)

腕だけではない

足、首、腰の関節から視線、呼吸器……心の臓に至るまで、あたかも「石になってしまったかのように」動かない

動かせない


否、本能が停止を命じたのだ


侍「言った筈だ。その娘に手を出すな……と」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 02:35:52.97 ID:ZmEDiVM0o
腕ぐらい持っていっとくべき
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/05(木) 02:38:17.85 ID:ATLwZrJAO
―「蛙は蛇に鉢合わせると、何故固まるんだろう?」

「ああ、あれは蛇が満腹である事を祈ってるのさ」―



自警団の脳裏を何時か本で読んだ台詞が過ぎった

もし自分が蛙で、拘束された男が蛇なら、その時は満腹を祈ればいいだろう


……では、子供を傷つけられた虎が相手ならば


父親「う……うあああああああっ!!」ダダッ

自警団「あっ!?」

その時は、何を祈ればいいのだろう……
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/05(木) 02:50:15.39 ID:ATLwZrJAO
父親「うああああああああああああああッッ!!」

侍から応酬した刀を抜き、真っ直ぐに突進する男がいた

彼は今日、愛する我が子を失った

無念に打ちひしがれる妻を慰める間もなく、村の仲間を守る為……我が子の仇を討つ為に家を出た


殺人犯を探しに出ようとした矢先、怪しい男が捕まった

皆、刃物を持っていた事を理由にその男を疑ったが、父親は腑に落ちなかった
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/05(木) 03:02:05.95 ID:ATLwZrJAO
彼は子供を殺すような人間だろうか……

初対面……それも、一言も交えていない人間の本質を見抜く事はまず不可能だ


でも、あんなに真っ直ぐな瞳の人が、子供を殺すとは……どうしても思えなかった


バキッ

場の雰囲気に流され、俯いていた父親が顔を上げると、血の気の多い親父が男を殴ったところだった

すぐに自警団が止めに入ったが、親父は静止を振りほどいて男に詰め寄る
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/05(木) 03:10:30.84 ID:ATLwZrJAO
切りが悪いですがここまでです
登場人物の区別が難しくてすみません

親父→殴ったやつ
父親→犠牲になった子供の父

です
以後気をつけます



VIPで書き殴った二次SSです
暇つぶしにでもどうぞ↓
http://blog.m.livedoor.jp/minnanohimatubushi/c.cgi?id=1675577
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 03:24:15.95 ID:ZmEDiVM0o
見れない
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/05/05(木) 04:59:42.02 ID:gwBReIxv0
おつ

>>361
http://unkar.org/r/news4vip/1304353252
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/05/05(木) 05:39:23.78 ID:S+wKVZvv0
侍<ドゥフフwwwwwwwwwwwwwwww月光でござるwwwwwwwwwwwwww

しか思いつかなかった俺
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/05(木) 05:39:47.01 ID:BycKmUNk0
>>362
ネタばれ:イカ娘かわいい
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 08:43:58.99 ID:8Lqbw+BDO
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 10:09:07.56 ID:fOneMx5SO
毎回思うんだが、このSSと他の落差の激しさがwwwwww
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 15:24:26.22 ID:BF66dtPBo
向こうのスレの話だが、メインフェイズに対立でタップされても大して痛くないだろう
対立はアップキープに拘束されるのが辛いわけで・・・メインフェイズならマナ出すだけ出してもいいわけだし
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/06(金) 08:06:55.24 ID:QTOHUu5z0
乙です。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 16:00:13.28 ID:71Ajo2/DO


オリジナルSS同士のクロススレが立ってたけど、>>1は参加しないの?
ちょっと期待してるんだけど
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/08(日) 21:53:58.31 ID:NDlGohuAO
捕らわれの男が犯人とは思わない

だが、見ず知らずの男を助ける為、激昂している人間を止める気力もなかった

結局、彼は成り行きを見守る事にした


と、二人の間に割って入る小さな影が視界に映った

目を凝らすと、男と共に現れた異国の少女が親父の前に立ちはだかっていた

男は言っていた

「この娘には手を出さないでくれ」、と

その少女も又、あの男を守ろうとしている


……父親の胸が少し痛んだ
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/08(日) 22:08:52.03 ID:NDlGohuAO
ズキズキと

ズキズキと胸が痛む


キュウキュウと心臓を締め上げる音がする


父親の脳裏には四半時間前の映像が蘇っていた

目に浮かぶは、山狩り班の見送り

愛する家族に囲まれた男達


守るべき幸せ



自分には、もう無いモノ
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/08(日) 22:48:45.00 ID:NDlGohuAO
視界の端では親父が警棒を振り上げていた

だが、余所者達の処遇も、殺人事件すらも、父親にとっては最早どうでもよい事となっていた

急速に肥大する喪失感の中に願うは、速やかなる終わり

もしくは、痛みを紛らわせる麻酔

そう、甘美なる他人の悲劇…
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:43:55.00 ID:+PhSMK+7o
ktkr
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:44:33.12 ID:+PhSMK+7o
ktkr
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:45:34.13 ID:+PhSMK+7o
ktkr
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 23:46:34.10 ID:+PhSMK+7o
ktkr
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 16:00:19.38 ID:CMZh/aTw0
連投しすぎだろjk
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/10(火) 19:37:30.15 ID:3ieE/Ezp0
乙です。
379 : [sage]:2011/05/11(水) 00:27:13.42 ID:9EZDa7CAO
先日は中途半端な所で止まってしまってすみませんでした
寝る前の妄想をSSにしてる状態なのでご勘弁を

>>367
仰る通りです
完全に私のミスでした


>>369
興味はあったのですが、結局少女と侍中心の話になるので断念しました



木曜日が(確か)休日なので、大幅更新したいと思います
おやすみなさい
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 12:13:48.85 ID:b7nQybFSO
大幅更新とな

期待
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/11(水) 14:02:48.45 ID:DaZlwmRAO
期待
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 22:23:20.81 ID:VDq62FoZo
期待
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/11(水) 22:41:59.37 ID:9EZDa7CAO
……下ろせ


父親は願った

人間を畜生へと堕落させる願いを


…振り下ろせ


口元が緩んだ

あの異国の少女の頭が真っ赤に染まる事を想像すると、愉しくて仕方なかった


振り下ろせ!


この苦しみを、あの男にも与えるのだ!


さぁ、思い切り振り下ろせッ!!
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/11(水) 22:49:19.09 ID:b7nQybFSO
きたか
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/11(水) 23:04:28.75 ID:9EZDa7CAO
親父「うっ!?」ビクッ

だが、悪しき願いは叶わなかった

侍の発する強大な威圧感に気圧され、男達は身動きが取れなくなった


ただ一人、父親を除いて


父親(割れろ割れろ割れろ割れろ割れろ割れろ割れろ割れろ割れろ……ッ)

全てを圧倒する侍の重圧に気付かぬ程、父親は麻痺していた

悲しみに支配され、狂った心の為すがまま父親は刀を抜き

父親「なんで割れねぇんだよーッッ!?」ダッ

疾走した
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/11(水) 23:27:37.99 ID:9EZDa7CAO
父親「ああああああああああッッ」ダダッ

侍「!」

侍達に接近する影があった

それは、赤々とした髪を靡かせ、発達した犬歯の間から熱い息を吐き出し、駆け抜ける

目には憎しみだけを宿し、どす黒い影を引き連れ、不浄な刃を翳す


人はそれを、悪鬼と呼ぶ


悪鬼「オオオオオオオォォォッ!!」
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/11(水) 23:52:43.26 ID:9EZDa7CAO
悪鬼「シャッ!!」ビッ

少女「―!」

ドンッ

侍「……ッ」プシッ

悪鬼「シャッ シャァッ!」ビッ ビッ

侍「くッ!?」バッ

少女を悪鬼が斬りつける刹那、侍は少女を突き飛ばした

掠めた刀が侍の肉を切り裂き、鮮血が迸る

上手く動けない侍に休む暇を与えず、悪鬼は二度三度、と立て続けに斬撃を繰り出す
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 00:43:34.24 ID:Xhuf49bAO
悪鬼「シャッ! シャッ!」ビッ

侍(速い……!)バッ

悪鬼の攻撃は憎しみを増す毎に、より鋭くなってゆく

一の太刀よりも二の太刀、二の太刀よりも三の太刀

より、速く

より、力強く

より、憎しみを込めて憎悪の太刀は加速し、やがて


―――ズバッ



侍「速い……が、愚直だな」パラッ

侍を拘束していた縄を捉えた
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/12(木) 00:59:25.19 ID:Xhuf49bAO
今晩はここまでです
明日起きたら続き書きます

おやすみなさい
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 01:25:51.52 ID:pghXbjdno
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 07:13:42.02 ID:X7YlRpvSO

そして期待
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 15:16:35.79 ID:Xhuf49bAO
親父「ひっ 化け物……!」ドサッ

青年「クソッ、村人に化けていたのか!」

新米自警団「あの化け物が私達の仲間を……!」ギリッ

男達が悪鬼に対し弓を構える

自警団「待て! 射ってはならん!」バッ

新米自警団「! 何故です!」

自警団「あの旅人を巻き込む気か! それに、私は悪鬼が村人になりすましていたとはどうしても思えない」

新米自警団「先輩どう思おうと自由ですが、思い込みで皆を危険に晒さないで下さい!」

自警団は言葉に詰まった

悪鬼を取り逃がすという事態が招く危険を、自警団も重々承知していた

故に、危険分子を速やかに取り除く事は、自警団にとって「やらなければならない事」であった

…だが

自警団「悪鬼の顔をよく見てみろ!」

自警団「我々の使命はなんだ!」

新米自警団「! …仲間を守る事です!」

自警団「であれば、彼が何かに憑かれているならば、我々救わねばならない!」

新米自警団「……!」

安易な平穏を、自警団は求めなかった

独り善がりであると分かっていても、皆を守る事で妥協したくなかったのだ

自警団「彼が悪鬼と化したのには理由がある筈だ! それを突き止めるまで、殺す事はならん!」
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 15:34:36.82 ID:Xhuf49bAO


侍「……さて」

縄の跡のついた手首をさすりつつ、侍が悪鬼に向き直る

侍「その刀、返してもらおう」ザッ

悪鬼「…………シャァァッ!」ダッ



少女『あの人、泣いてる……』

悪鬼の目からは涙が零れていた

恐ろしいその姿に不釣り合いな涙を目の当たりにし、新米自警団達も不承不承弓を下ろす


涙の意味は何なのか

それは悪鬼自身忘れてしまっていた
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 15:52:08.35 ID:Xhuf49bAO


―ヒュンッ

         パシンッ―


悪鬼「クカッ……!」ポタポタ

侍「……五つ」ザッ

悪鬼の鼻から血が滴る

斬撃の度に侍に殴られ、悪鬼の赤黒い肌は一層赤く腫れていた

悪鬼「ク……!」チャキッ

侍「お主は何と戦っている。何故それ程苦しんで―」


ビュンッッ  パシンッッ


悪鬼「……クッ」ポタポタ

侍「……刀を返すのだ、お主の意志で」ザッ
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/12(木) 15:58:01.67 ID:PBbYt9Nr0
>>1おはよう

起きんのおせえwwww
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/12(木) 21:10:16.89 ID:0P6Sp45n0
乙です。
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 22:52:12.47 ID:Xhuf49bAO
新米自警団「す……凄い」

悪鬼を翻弄する侍を前に、男達はただ見守る他なかった

侍は的確に攻撃を避け、その度に悪鬼の顔面に拳を叩き込む

悪鬼の斬撃は徐々に失速し、斬りかかるのを躊躇う素振りを見せるようになった

親父「あの男、あんなに強ぇのになんで倒しちまわねぇんだ……?」

自警団「わからないのか?」

親父「えっ」

自警団「あの旅人もまた、彼を助けたいと思っているのだ」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 23:02:08.60 ID:Xhuf49bAO


少女『…はっ …はっ』タタタッ

悪鬼となった父親の涙の理由を探す為、少女は村の中を走っていた

少女『まだ……まだ間に合う!』タタタッ

何故、自分達が捕らえられたのか

何故、侍が殴られたのか

今、村に何が起きているのか……少女は分からない


ただ、一つだけ分かる事がある

少女『あ! 人だ! すみませーん!』タタッ

見張り『――!?』

今、動かなければ取り返しのつかない事になるという事だ
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 23:33:21.83 ID:X7YlRpvSO
今日は終わりか?
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/12(木) 23:55:28.63 ID:Xhuf49bAO
少女「―――! ――!」ググッ

見張り「いやっ ちょっと君、困るよ!」グイグイッ

見張りの下に現れた金髪青眼の少女

少女は異国の言葉と身振り手振りで、見張りに何かを伝えようとするが上手くいかない

痺れを切らせた少女は集会所へと入ろうとするが、部外者を入れる訳にもいかず、見張りと揉み合いになっていた

少女『お願いだから通して下さいっ』グイグイ

見張り『――――!!』ググッ

少女『涙を……止めないとっ』グイッ

グググ……ッ



「何をしているんだ?」

見張り「班長!?」バッ

少女「―!?」ドタッ

自警団「あ! 大丈夫かい!?」
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/13(金) 02:18:11.13 ID:SUVh0VMAO
大幅更新とか大見得切ってあまり進んでなくて申し訳ありませんorz

また明日出直します
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/13(金) 16:38:07.30 ID:cg2ZyL8AO
これを待っていた
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 19:43:26.75 ID:aHPgOycUo
待ってる
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/13(金) 21:35:02.45 ID:5P/9XgXJ0
乙です。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/13(金) 22:53:58.44 ID:SUVh0VMAO
自警団は事件初日を思い出していた

最初の犠牲者は村の成人男性

少し内気な性格ではあるが誠実で、人間関係は至って良好であった…


自警団(彼が殺されるなど……未だに信じがたい)

「……長」

自警団「……ん?」

見張り「班長! 何ぼーっとしてるんですか?」

自警団「あ、ああ……少し考え事を」

自警団の返答に、見張りは訝し気な顔をしたが、不満の声を飲み込み訊ねる

見張り「で、この娘はどうします?」

少女「……」

自警団「……ふむ」

少女は強行を止め、自警団の言葉を待っていた

それは、自警団が「そういう意味の言葉を言う」確信めいた予感があったからの行動だった


自警団「彼女を通してやってくれ。責任は全て私が負う」
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/13(金) 22:59:41.24 ID:aHPgOycUo
ktkr
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/13(金) 23:30:46.33 ID:SUVh0VMAO
……

母親「ううっ……うううぅぅ…………!」

おばさん「……っ」グスッ

老婆「気の毒に……」

集会所の中に、我が子を失った母親の悲しみの声が響く

周りの人間は掛ける言葉が見つからず、ただ傷が癒えるのを待つ他なかった…




丸半日泣き続けた母親を心配したある女性が慰めに歩み寄った

彼女も、掛ける言葉は持ち合わせていない

だが……背中をさする事ぐらいはできる、と女性は思った

女性「……あの」


ヌト……ッ


女性「…………え」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/13(金) 23:44:58.69 ID:SUVh0VMAO
母親の肩に触れた女性の手は、何か……粘っこいものに触れた

それは冷たくもあり熱くもあり…………


まるで、火傷と凍傷を一度に体験したような


「ッッ!? いやぁぁぁぁぁアアアア!!!!」


自警団「悲鳴!?」

見張り「なっ 何だ!?」

留守班の班長である自警団の言で、少女を集会所に入れる事になった時、集会所の中から女性の悲鳴が響いた

少女「―ッ」バンッ
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/13(金) 23:57:43.08 ID:SUVh0VMAO
少女「!? これは一体……!」

集会所の中に飛び込むと、中央部に村人達が固まっていた

そしてそれを囲み追い詰めるように、鈍色の液体が徐々に迫っていた

見れば窓にも壁にもその液体が付着し、まるで村人達を覆い尽くそうとしているようだった

自警団「これは……魔物の類か!?」


「タスケ……ッ 助けてッ!!」


少女「!」

一際悲痛な叫びに目を向けると、液体に呑まれかけた女性がいた

女性「クルシイ……!! クルシイヨ……ッッ」

少女「――!」ダッ

自警団「あ!? 君!」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/14(土) 00:07:44.81 ID:Xe99wPsAO
『―――――ッ!!』

『――!!』

『――――――!?』

苦悶の声と鈍色の液体の中を少女は駆け抜けた

少女(そっか……そうだったんだ)

異国の言葉であっても、助けを求める声は分かるんだ……と少女は思った


苦しい……苦しいよ…………


少女『届いたよ……! 今助けるからね!!』
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/14(土) 00:38:06.40 ID:Xe99wPsAO
ドプン――ッ

少女は、一際大きな鈍色の塊に飛び込んだ

女性の体を引っ張り出そうと手を伸ばすものの、粘度の高い液体に捕まり、身動きがとれなくなる

少女『―くぅッッ!?』ゾクゾクッ

そして少女の全身を襲う苦痛の嵐


灼熱の炎と極寒の吹雪に晒されたような感覚


少女『うッ!! くァァァッ!?』ガクガクッ


体の表面から壊死していくような耐え難い感覚


『ダズゲデグデェェェ……!!』

『グギ……ッッ ガガガッ…………』


痛覚を抉られるような感覚


少女『アがぁッ ぁぁぁ……ぁ…………っ』ビクッビクッ


……死の感覚



少女『……』





いつか、私の心を襲った感覚
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/14(土) 00:46:55.27 ID:Xe99wPsAO
あまりアテにならない予告ですが、次回で小天村編終わりです

皆様ついてこれてますでしょうか?
私はサッパリです

また明日お会いしましょう
おやすみなさい
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 06:31:21.66 ID:PPqIkOmSO
書いてる本人がさっぱりってどういうことだよwwwwww
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/14(土) 13:30:19.53 ID:N9Hn8NzLo
サッパリってどういうことなの…
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/14(土) 18:57:25.13 ID:xhxrgioAO
さっぱりってwwww
おつ
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 18:49:47.13 ID:vRoEy58y0
さっぱり乙
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/15(日) 21:07:47.56 ID:OANmMwMd0
乙です。
418 : :2011/05/15(日) 21:10:55.35 ID:epHzL7xAO
いつもなんですけど
物語を書いていて、自分自身結末がどうなるか分からないんです
伝えたい事と書きたい場面が噛み合わなかったり
とりあえず風呂敷を広げてみて、どうまとまるかは後で考えてよう……って感じで始めるので

さっぱりっていうのは、その辺から出た言葉です


もう少ししたら続き投下します
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 21:19:54.88 ID:Pqp4gY4SO
そういえば宗教?の話の時そんなだったな
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 21:35:35.94 ID:epHzL7xAO
…………

……



炎を眺めていた

その熱が私の傷口を灼いたけど、身体の芯は氷のように冷えきっていた

少女『お父さん……』

私の家だった物が、赤々と燃え上がる

少女『お母さん……』

私の大切なものが、ゆっくりと消えてゆく

手のひらから零れる砂のように

ゆっくりと

ゆっくりと……
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 22:10:17.40 ID:epHzL7xAO
聞こえる

私の声が聞こえる

頻りに頭の真ん中で騒ぎ立てる

『私のお父さんは死んだ』

『私のお母さんはもういない』

『私はひとりぼっち』

『私は……私は…………』


私は知っている

この痛み、脳を焼く熱、血の凍る冷たさを……

これが「哀しみ」

独りになる恐怖





そして、私は知っている

少女『哀しみは、私の心が生むものだと!!』
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 22:20:23.46 ID:epHzL7xAO
少女『やあぁぁッ!』バッ

少女はまやかしの炎へ飛び込んだ

その中には胸を切り裂かれ、苦しむ女性がいた

女性『――ッ!? ――――!!』バタバタ

少女『もう大丈夫です! 今、助け……』

母親『……』


そしてもう一人、静かに佇む女の姿があった


少女『……』

直ぐにわかった

この「哀しみ」は、彼女のものなのだと
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 22:26:11.92 ID:epHzL7xAO
少女『堪えきれなくなった哀しみが、溢れてしまったんですね』

母親『……』

母親は答えない

ただ、一粒の涙が頬を伝った

少女『……でも、その哀しみは胸にしまって下さい』



少女『哀しみも、あなたの大切な心なんですから』



424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 22:38:21.69 ID:epHzL7xAO


―――――――ィン



眩い光に包まれた

そして、次に目を開けた時には、もうあの鈍色の液体はなくなっていた

自警団「…………消えた?」

夢から覚めたような感覚に、首を傾げる村人達

その夢は……そう、何かとても哀しい…………



母親『……』ギュッ

タタタ……
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 23:23:42.58 ID:epHzL7xAO
ベキッッ

悪鬼「――ッッ!?」ガクッ

鼻骨が折れる音が響き、とうとう悪鬼は膝をついた

鼻を押さえた手を伝い腕を伝い、鼻血が地面を赤く濡らす

侍「立てッ! お主はまだ戦えるであろう!」

悪鬼「……ック!!」グッ

侍に叱咤され、悪鬼が脚に力を込める

だが、繰り返し与えられる痛みに身体が怯え、いうことをきかない

侍「何を怖れる! 『そのような姿』になった今、最早何も失うものはあるまい!」

悪鬼「!!!!」

グァッッ

渾身の力で悪鬼が立ち上がる

眼前には両手を広げた侍

侍「さあ! 打って来い!!」

悪鬼「……!」

悪鬼は、ゆっくりと刀を頭上に構えた
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 23:24:23.00 ID:epHzL7xAO
ベキッッ

悪鬼「――ッッ!?」ガクッ

鼻骨が折れる音が響き、とうとう悪鬼は膝をついた

鼻を押さえた手を伝い腕を伝い、鼻血が地面を赤く濡らす

侍「立てッ! お主はまだ戦えるであろう!」

悪鬼「……ック!!」グッ

侍に叱咤され、悪鬼が脚に力を込める

だが、繰り返し与えられる痛みに身体が怯え、いうことをきかない

侍「何を怖れる! 『そのような姿』になった今、最早何も失うものはあるまい!」

悪鬼「!!!!」

グァッッ

渾身の力で悪鬼が立ち上がる

眼前には両手を広げた侍

侍「さあ! 打って来い!!」

悪鬼「……!」

悪鬼は、ゆっくりと刀を頭上に構えた
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 23:25:10.54 ID:epHzL7xAO
ベキッッ

悪鬼「――ッッ!?」ガクッ

鼻骨が折れる音が響き、とうとう悪鬼は膝をついた

鼻を押さえた手を伝い腕を伝い、鼻血が地面を赤く濡らす

侍「立てッ! お主はまだ戦えるであろう!」

悪鬼「……ック!!」グッ

侍に叱咤され、悪鬼が脚に力を込める

だが、繰り返し与えられる痛みに身体が怯え、いうことをきかない

侍「何を怖れる! 『そのような姿』になった今、最早何も失うものはあるまい!」

悪鬼「!!!!」

グァッッ

渾身の力で悪鬼が立ち上がる

眼前には両手を広げた侍

侍「さあ! 打って来い!!」

悪鬼「……!」

悪鬼は、ゆっくりと刀を頭上に構えた
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/15(日) 23:26:42.64 ID:epHzL7xAO
連投すいません
接続悪いな……
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:29:50.90 ID:vRoEy58y0
重いね
430 :1 [saga]:2011/05/15(日) 23:30:13.67 ID:YRgUylD80
連投すいません・・・
なんだかEZ鯖の調子が悪いみたいなので、風呂入ってきます
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:30:15.84 ID:vRoEy58y0
重いね
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:40:05.85 ID:weWaO78ho
多分パー速自体が重くなってるから書き込み失敗ってなっても何度か再読み込みして確かめた方がいい
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:46:29.73 ID:Pqp4gY4SO
とりあえずパンツは履いておきます
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/16(月) 01:56:57.10 ID:qh++6eCAO


侍「……」

悪鬼「……」

向かい合った侍と悪鬼はいつまで経っても動かなかった

風が前髪を撫でても、柄に羽虫が止まっても、二人は微動だにしなかった


親父「黒眼のやつ……どうしたんだ」

新米自警団「次が決着、なんでしょうか……」



悪鬼「……」

侍「……どうした」

侍「拙者を斬るつもりなのだろう」

悪鬼「……」カタカタ

刀を持つ手が震え、鍔が音を立てる

今、刀を振り下ろせば、目を瞑り両手を広げた侍を容易く両断できるだろう

悪鬼「……!!」


ブォンッッ    ザクッッ
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/16(月) 02:20:44.07 ID:qh++6eCAO
侍「……」




悪鬼「…………できない」

刀は大地に深々と突き刺さった

悪鬼「……俺にはアンタを斬る事ができない」

悪鬼の中に渦巻いていた憎悪は、闘いの中で消え失せていた

世の中の理不尽と自分自身への怒りが、いつしか他人への嫉みを生み、不幸へと陥れる

悪鬼は人の心に棲んでいる

悪鬼「ありがとうよ…………止めてくれて」ズッ

侍「止めたのは私ではない」

悪鬼から侍に刀が返される


侍「お主の涙が悪鬼を止めたのだ」
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/16(月) 02:28:00.59 ID:qh++6eCAO
新米自警団「あの……」

おずおずと、男達が悪鬼に近寄る

新米自警団「元に戻ったん……ですか?」

悪鬼「ええ、意識は」クルッ

新米自警団「ひっ!?」ビクッ

心を取り戻しても、父親の姿は悪鬼のままだった

悪鬼「はは……バチが当たったんですかね」

侍「弱気な事を申すな。お主には成さねばならぬ事があろう」

悪鬼「!」
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/05/16(月) 02:33:37.53 ID:qh++6eCAO
やはり守れなかった次回予告
次こそ小天村編最終回、だといいなぁ

gdってすいませんでした
おやすみなさい
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 02:34:52.15 ID:SloY/r0SO
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 02:47:29.23 ID:MHOa+lcDO


>>418
でも上手くまとめるんだもんなwwww

何より題材が難しいよね
果敢に挑戦して凄いと思うよ
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/16(月) 02:56:48.01 ID:tMy7gSXs0


確かに添命も花嵐もやりづらそうだったな
でも、誰かが言ってたように、脳内補完と自己解釈がこのスレの醍醐味だからな
もちろん、>>1の文章ありきですよ?
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 03:04:56.00 ID:naMDmXVm0
乙だよ

楽しみにしているんだよ
自分のペースでやってくれ
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/05/16(月) 18:45:18.48 ID:v8Fmnffh0
乙です。
443 : [sage]:2011/05/25(水) 02:16:18.29 ID:1PTTBeeAO
マイペースでやった結果がこれだよ!

http://speedo.ula.cc/test/r.so/hibari.2ch.net/news4vip/1306077283/l10?guid=ON
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 12:58:39.74 ID:hW4FrgGSO
ふぅ…

なにやってんだよwwwwww
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 14:29:30.62 ID:JuvMi/vtP
あっちの>>19にワロタ
これから抜いてくるわ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/25(水) 20:44:50.23 ID:99uOQFl1o
普通に抜いちゃったんだけどどういうことなん?
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 21:10:04.13 ID:Z7IwsZtDO
お前だったのかよwwwwww
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/25(水) 22:52:02.24 ID:Y0Xxceb3o
>>446
侍(>>1)「勃てッ! お主はまだ戦えるであろう!」
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/26(木) 17:20:50.50 ID:2nniyohE0
エロすぎワロタwwww
しっかしテーマが違うだけで別人みたいになるな
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 01:18:12.98 ID:fIE3w6MQ0
姉スレ大好評だなwwwwまとめにも載ってたし

で、つづきはまだかのう?
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/29(日) 22:33:49.20 ID:TukzhWTAO
―それは、小さくか弱い存在で、喩えば……いつも冷たい水底から水面の光を見上げている

森羅万象、あらゆるものに隣り合って、私達を草葉の陰から見守っている

それは知っている

自分達は陰である事を―
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/29(日) 22:55:08.35 ID:TukzhWTAO
……

サワ……

中年男性「……っ」ビクッ

風が木々をすり抜ける音が響く

村を出発して半刻、山狩り班は異様な空気に包まれていた

団長「は……ッ! はぁ……ッ!」ビクッ

壮年男性「ひっ……!?」ビクッ

男達は皆背を向け合い、円を描くように集まっていた

山狩り……捜索に出るのならば、隙間ができないよう等間隔に広がり、足並みを揃えて進むのが基本である

だが、今の山狩り班は逆

一箇所に固まり、身を寄せ合っている


何かに包囲されたかのように
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/29(日) 23:05:03.24 ID:TukzhWTAO
最初に違和感に気付いたのは、入山すべく獣道を歩いていた時だった

壮年男性「……なぁ、何か聞こえないか?」ヒソ

中年男性「何がだ?」

壮年男性は班の最後尾を歩いていた

その彼曰わく、班の後を付いて来る足音が聞こえたらしい

壮年男性「きっと犯人だ。俺達が散り散りになるのを待ってるに違いない」

団長「ふむ……」
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/30(月) 00:06:43.77 ID:i170PkHAO
……犯人が自分達をつけてきている

もしそれが本当だとしてら、どうやって犯人を確保するか……団長は考えていた


今、反転して犯人を追いかけたとした場合、犯人は当然逃げるだろう

その時確保の成否を決めるのは犯人と我々の身体能力の差であり、折角の数の優を生かせない

では、人数を割いて待ち伏せるというのはどうか

……これも難しい

恐らく、犯人は村を出た時から尾行をしてきている

という事は、こちらの人数を把握している可能性が高い

徒に班を割れば、犯人は警戒するだろう
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 22:08:21.51 ID:E9hh0tn/o
乙かな
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 01:49:09.60 ID:nknLLC2e0
へい!乙だよ。

頑張りどころだな。
457 : [sage]:2011/05/31(火) 11:55:53.29 ID:BXYnZQxAO
風邪こじらせてしまいました
今日から復帰します
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 21:29:26.36 ID:aJuC5EGDO
とか言ってVIPにスレ立てちゃう>>1
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/31(火) 23:27:03.65 ID:BXYnZQxAO
逆に考えてみよう

犯人が自分達をつけて来ているとすれば、犯人は殺人の機会を窺っているだろう

ならば、隙を見せれば食いつく可能性が高い

団長(囮を使うのが、犯人を誘き出すには最善だが……)

問題が二つある

囮は襲われやすい状況に置かれる為、相当な危険が伴う事

それに、犯人が目星をつけている人物を囮に選ぶ事

この二点を満たさなければ、作戦は失敗となってしまうが……

髭の男「団長……」ヒソ

団長「ん、何だ?」ヒソ

髭の男「何者かの気配がします」ヒソ

団長「ああ……我々を尾行している者だろ」ヒソ


髭の男「いえ……後ろではなく右手です」

団長「……なに!?」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/05/31(火) 23:43:23.39 ID:BXYnZQxAO
団長は横目で茂みを窺った

……姿は見えないが、確かに視線を感じる

短髪の男「団長、左手にも……」

団長「……っ」

……木々の間を併行する気配がある


複数犯


考えなかった訳ではない

だが、その手口……人目を忍んでの犯行から団長達は単独犯だと推測していた
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 23:54:24.85 ID:CEbmGqino
きたか
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/06/01(水) 00:14:30.43 ID:5qWwTCPAO
ザッザッザッ

山狩り班一行は、開けた場所で歩みを止めた

奥に進む程、数を増やす敵の気配に囲まれ、最早後戻りのできない状況

団長達は、この場で迎撃する事にしたのだ

団長(6……いや、8人か? くッ、村が無事だといいが……)

犯人達の撹乱なのか、それとも本当に囲まれたのか、確かめる術はない

それに、相手が何者であろうと逃げる訳にはいかなかった
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/06/01(水) 00:15:08.51 ID:5qWwTCPAO
今日はここまでです
一気に書ききるのは諦めてチマチマ書いていくことにしました
今暫くお付き合い下さい


>>458
そ、そんな事……ナイデスヨ


>姉スレ
あっちにも書いた通り、最初はテーマを設定して書いてたんですよ
でも、加えてエロゲや同人誌を作る人の気持ちというか、楽しさがわかった気がします
今度は悲劇を書いてみたいと……あ、また停滞フラグが
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/01(水) 01:00:55.94 ID:5QRhnGPAO
おつおつ
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/06/02(木) 23:23:00.38 ID:qkJ2OR+I0
乙です。
466 : [sage]:2011/06/03(金) 03:21:07.56 ID:xiwA7paAO
……すいません
FFTのSS完結させてから再開します
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/05(日) 11:33:11.95 ID:lLnoWxa40
>>466
kwsk
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 12:02:19.40 ID:+whkoAXDo
>>466
ファスト
フーリエ
トランスレーション?
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/05(日) 17:05:55.71 ID:B3LnaWM+0
>>468
釣りだと思うがあえてマジレスすると

ファイナル
ファンタジー
タクティクス

だろう
470 : [sage]:2011/06/05(日) 20:32:17.01 ID:GeEUg1NAO
ファイナルファンタジータクティクス×北斗の拳

ミルウーダ「七つの傷……?」
http://speedo.ula.cc/test/r.so/hibari.2ch.net/news4vip/1306937451/l10?guid=ON
↑携帯用

VIPで書いてます
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/08(水) 09:41:48.30 ID:Lz0G/9mAO
追いついてしまったかC
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage ]:2011/06/09(木) 09:37:32.18 ID:mJ4yr6Mq0
乙です。
三男かっけー
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 13:21:10.16 ID:kNxzUsZIO
さっぱり乙!
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/06/17(金) 10:52:38.66 ID:Ux+LbI2ao
FFTの続きはまだか
475 :おしらせ :2011/06/17(金) 13:33:29.53 ID:E3aOwZ5g0
>>474
スレ立てました
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308285104/
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 22:34:14.41 ID:4efL8LE7o
続きはまだかのう
477 : [sage]:2011/07/05(火) 00:29:46.36 ID:pBZdT7lAO
>>476
ジャギ様のFFTがそろそろ終わりそうなので、きちんと終わらせたら再開します

正直、政治の話とか書いた事ないジャンルが多くて、引き出しの少なさを感じてました
FFTスレ書いてみて、シナリオ形成の仕方が大変勉強になりました

(多分)パワーアップした>>1にご期待下さい
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/05(火) 07:20:56.52 ID:6/ciuigIO
期待C
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/05(火) 14:05:44.67 ID:74tjEofro
待ってます
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/05(火) 18:53:04.46 ID:BDhVYME80
>>443
アンタだったのかww
系統まるっきり違うじゃねーかww
481 : [sage]:2011/07/05(火) 21:20:02.53 ID:pBZdT7lAO
>>480
はい、僕です
今度はボクっこスレとか挑戦してみたいです
なんかすいません
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/06(水) 08:02:48.15 ID:1RMJGbYIO
>>1よ、おまえがどこに浮気しても帰るスレはここだぞ///
483 : [sage]:2011/07/26(火) 01:43:08.35 ID:UDUSWVRAO
>>482さん///


今月中には、ミルウーダ「七つの傷……?」が終わるので、こっち再開できそうです
長きに渡り放置してすみません(平伏
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 03:15:12.97 ID:qtmqV7Q/o
待ってる
485 :482 [sage]:2011/07/26(火) 06:00:56.40 ID:TniqPZRAo
あなた(>>1)お帰り///

ちょっwwwwwwwwww
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/26(火) 14:12:12.00 ID:agyiYUjyo
ワクワクして待ってます
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/26(火) 15:08:12.35 ID:lvS0pAgAO
テカテカして待ってます
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/26(火) 22:00:38.68 ID:wPiSAU1SO
シコシコしてます
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/07/31(日) 20:00:41.90 ID:ibLlK/c2o
それは報告しなくてもいいです
490 : [sage]:2011/08/02(火) 09:52:17.85 ID:psSCtnsAO
お陰様で、ミルウーダ「七つの傷……?」が完結しました
今日か明日あたりにこっちを再開したいと思います

どこまで書いたか読み返さなきゃ……


脱線集↓

ケンシロウ「世紀末まであと89年か」

幼精「うう……おなかいっぱいでうごけないよぅ」
幼精「うう……あっついよぅ……」
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 13:06:58.88 ID:25xRvWKIO
>>490
完結したなら読んでみよっと
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 19:38:15.42 ID:hsgzBqUSO
SS速報に密かな侍ブームを巻き起こしたのがようやく再開か
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 00:29:17.70 ID:zybZD67AO
ザザ……

ザザァ……

団長「……っ」ゴクッ


浮かんでは消えてゆく敵意

包囲を狭め、にじり寄る殺意

山狩り班の面々は皆、額から首筋から全身から……冷や汗を流していた

……と



――――



一瞬の静寂、


     そして



『グガァァアアアッッ!!!』



団長「う、うおおぉぉぉッッ!?」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2011/08/03(水) 00:30:54.51 ID:AXHk6Q3lo
やっと投下きたか
wktk
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 00:42:17.41 ID:zybZD67AO
山狩り班を襲った脅威


中年男性「うわっ!? うわああああッ」


それは『熊のように凶暴で、虎のように血に飢えた獣』


短髪男「ひッ!? く、来るなぁぁぁ!」


それは『大鎌を引きずる青白い狂人』


壮年男性「うッ!? オェッ……!」


それは『蛆の巣くう巨大な肉塊』




それは、人の心に棲む恐怖の象徴――――



496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 00:54:36.24 ID:zybZD67AO
恐怖とは生物が持つ本能である

生物は、恐怖故に天敵から身を隠し、群れを無し、脅威を避ける

吊り橋を渡る時に感じる『冷たさ』も、生物の生存本能の訴えである




「だが、膨れ上がった恐怖は時に生を食らう物の怪を生む」




団長「――――あ、あんたは!」


ブシャァァァ――ッ


恐怖「ギェアアアアアアッッ!!」


侍「刮目せよ、これがお主らの恐怖の姿だ!」チャキッ
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 01:04:14.41 ID:zybZD67AO
ある者には血飛沫に、ある者には黒煙を上げる炎に

剣撃を受けた恐怖は、傷痕から絶叫を垂れ流す


中年男性「ひぃぃ!? も、もう駄目だァ!!」ガタガタ

短髪男「化け物が怒ってる!! 助けてくれぇぇ!」


五感を通して全身に染み渡る寒気

震えを呼び起こす恐怖に、山狩り班の男達は精神を蝕まれる



オオオォォォオ――ンッッ!!



団長「は……はぁ……!」ガタガタ

侍「……」グッ
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 01:10:09.75 ID:zybZD67AO
恐怖「ゴォォォォオ……!」ズシィィンッ

団長「はッ……! はぁぁ……!」ガタガタ

侍「……恐ろしいか?」

団長は「恐ろしい」と答えようとした

だが、喉がはりついて声が出ない

必死に言葉を紡ごうとしたが、唇すら痺れだして利かなかった

侍「そうか、恐ろしいか……」




侍「ならば恐怖を認めよ! その上で覚悟を決めいッ」チャキッ

ターンッ――


      ――バシュッッ


499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 01:50:10.22 ID:zybZD67AO
侍の剣を受けて尚、恐怖は倒れない

恐怖は外傷に苦痛の声を上げ、足とも手ともつかぬ肢体で大地を打つ


団長「き、きいてない!?」

中年男性「にげなきゃ! はやくこ」



――――逃げるな――――



壮年男性「……えっ」

侍「あのものから逃げる、是即ち己が心に殺される事と思え」ザッザッ

団長「お、おいあんた……」


侍「恐怖を認め受け入れよ。心を強く持て。さすれば」

恐怖「ゴァァァアアァッッ!!!!」ブウンッ


――――グシャァァァッッ


500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 06:55:36.31 ID:zybZD67AO
中年男性「うわッ!? うわああああああ!!!!」

短髪男「潰された! 潰れちまったあ!?」

団長「……いや、あれを見ろ」

中年男性「え……?」


恐怖の肢体は大地を穿ち、深々と突き刺さった

だが、



侍「恐怖とは心、己の一部。自分を強く持てば、決して喰われぬ」



侍は健在だった

強い意志を持つ者の前に、恐怖に為す術は無く、肢体は身体をすり抜けていた
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 08:51:21.22 ID:fBosV74SO
久々の侍無双に濡れた
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/03(水) 12:22:20.80 ID:hlKWbMUD0
……俺、今から大ファンになります
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 22:07:58.66 ID:zybZD67AO



――――   起  て  ッ  !   ――――



団長「!」ビリビリビリッ


侍の放った短い叫びは、空を走り宙を駆ける

強く、力強く……響く度に力強く

風となり、波となり、押し寄せてくる鼓舞の言葉


短髪男「だ、団長……!」

壮年男性「やりましょう……!」


それは消えかかった心の灯火……勇気を燃え上がらせた


団長「ああ……! 共に最期まで戦おう!」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 22:25:02.19 ID:zybZD67AO
……タッタッタッ

悪鬼「はッ、はッ!」タタタッ

父親は村の中を走った

体中の痛みも忘れ、遮二無二に走り回った

鼻から流れ落ちる血も、胸の奥からこみ上げる熱さの前では些細な事だった


ザザ――ッ


悪鬼「ッはぁ……はぁ!」

父親は立ち止まった



母親「……あなた」

尋ね人を見つけたからだ
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 22:33:43.87 ID:zybZD67AO
悪鬼「……」ゴクッ

汗水漬くになりながら探していた筈なのに、いざ目前にすると言葉が出なかった

悪鬼と化した自分を真っ直ぐ見つめる妻に、夫はようやく

悪鬼「こんな姿になっても……あなたと呼んでくれるのか?」

と、言葉をかけた


母親「……何を言ってるんですか」

妻は答える


母親「あなたがどんな姿になっても、私にはたった一人の夫です」

悪鬼「……ありがとう」

二人は、ぎゅっと抱き合い

母親「私を独りにしないで……ずっと傍にいて下さい」

悪鬼「大丈夫……もう、見失わない」



光につつまれた
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 22:55:28.46 ID:zybZD67AO
―妖怪、物の怪、魔物

人に仇為す存在達の中には、人間が生み出した者がいる

人が憎悪怨恨から人間を辞めて魔物となったもの

人が呪術的に魔物にされたもの


そして、人間の心が生み出したもの


恐怖、憤怒、悲哀、絶望……

心に強大な闇が生まれた時、それは形を為し魔物となる―
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 23:11:39.54 ID:zybZD67AO
最初の犠牲者、成人男性

彼はある村娘に恋をしていた

幼い頃から想いを募らせ、今日こそ伝えようと意気込んでは寸前で躊躇う日々が続いた


そんなある日、彼は村娘から結婚する事となったと告げられる

不思議と、哀しさは感じなかった


何故なら、哀しさは既に彼の胸を引き裂いて出て行ってしまっていたから
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 23:31:11.52 ID:zybZD67AO
警備員二人が殺された夜

二人は集会所の入口を見張っていた

消耗の激しい深夜の警備である

交代は頻繁に行われ、当番の時間はさほど長くはなかった


が、当番が回ってくるたびに夜は深くなり、闇への恐怖が肥大化していった


二人はとにかく話をした

家族の事、仕事の事……

いい狩場が見つかったから今度行こう、などと最大限明るく振る舞った
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/03(水) 23:36:35.72 ID:zybZD67AO
ここまでくれば事件の真相は見えましたね
明日こそ小天村編終わらせます
おやすみなさい



>>502
私も貴方のスレ読んでます
楽しませてもらっていますよ
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/03(水) 23:44:19.60 ID:zybZD67AO
冷静に考えてみたら、このオチは意外でもなんでもなかった


無念
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/03(水) 23:53:21.17 ID:J+ljHK4q0
>>510
それが心に響くんだから
文学ってすげえよな
512 : [sage]:2011/08/05(金) 00:58:11.67 ID:Nsag97pAO
安定の終わらせる→終わらない
明日こそは


>>511
そう言っていただけると嬉しいです
やっぱりオリジナルは書いていて楽しいですね
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/05(金) 06:54:48.62 ID:HZeSD92AO
前スレから全力疾走で追い付いたら>>1は変態でした
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 07:44:35.26 ID:A1AxkbmIO
あっちで変態
向こうで北斗
こっちでシリアス
>>1は引き出しの使い分けが上手いC
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 11:23:44.86 ID:NK0fag2SO
>>512
まあ定番だわなwwwwww


幼精見たぞ
同じ人間かと思ったが、地の文の使い方がお前だった
良かったぞ

期待
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/05(金) 22:30:13.80 ID:Nsag97pAO
>>513
私が変態でも少女と侍がまともだから問題ないですww

>>514
織り交ぜができないんです
特にシリアスストーリーにギャグやほのぼのを入れられないという……
『ミルウーダ「七つの傷……?」』に至っては、ミルウーダという女性剣士とジャギのキャッキャウフフ、及びジャギ様無双を書きたかったのに
気が付いたらガチ戦記譚になってたという

>>515
幼精や雛ちゃんみたいなキャラは好きですね
無垢な子供って書いても書いても全然飽きないです



本編再開します
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/05(金) 22:40:58.55 ID:Nsag97pAO
見張りの二人は会話を弾ませる

だが、心は全く躍らない

気を紛らわせようとすればする程、感覚は研ぎ澄まされ鋭敏になっていく



――今にも犯人が襲いかかってくる画が浮かぶ――



その妄想に、表面上の明るさで蓋をした

もう、お互い何を話しているのか判らなかった
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/05(金) 23:13:44.78 ID:Nsag97pAO
気がつけば二人は「気配」に囲まれていた

宵闇から二人を眺める目、目、目……

隙あらば足を引きずり込まんと伸びてくる手

疑心暗鬼に取り憑かれ、自分の影にすら悪意を感じる

と、耳元で何かが囁く



「後ろにいるのは誰だ?」



二人は殺人犯の存在を信じた

同時に、二人は最期を迎えた
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/05(金) 23:39:50.41 ID:Nsag97pAO
では、幼い子供は何故死ななければならなかったのか

……


子供と母親は血が繋がっていない

父親の再婚相手、つまり継母である

子供の実母は産後の肥立ちが悪く、病気を患い亡くなった

妻の早逝に、父親は酷く落ち込んだ

その反動からか、妻の忘れ形見である子供を溺愛するようになった

自分の事が疎かになる程に
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 00:03:38.58 ID:0514IdQAO
やがて、父親は家に籠もりきりになった

訪ねていってもまともに応対もせず、話しかけても上の空

そんな父親を心配する反面、村人達は鬼気迫るものを感じ近寄らなくなっていった


そんなある日

日に日にやつれていく父親のもとに、ひとりの女がやってくる

後の再婚相手、母親である
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 02:41:34.40 ID:zl/QzFaIO
kkttkkrr
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/06(土) 15:18:15.04 ID:W5PQ/j8AO
おつ
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 21:53:28.32 ID:0514IdQAO
〜〜

オギャア オギャア

母親「おしめなら私が替えますから、貴方は身体をお風呂に入って下さい!」

父親「うるさい! 勝手にひとの家に上がりこんで、俺の子供に何をする気だ!」

母親「おしめを替えるだけです!」

オギャア オギャア

母親「ほら、お父さんが臭いってお子さんも泣いてますよ?」

父親「なッ、この」

母親「ほら、湯浴みの準備ならできてますから」グイグイ

父親「く……」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 22:00:43.63 ID:0514IdQAO
……

父親「ほーら、ベロベロバー!」

アー、ウー

父親「ベロベロベロー、バー!」

アー、キャッキャッ


母親「ご飯、できましたよ」

父親「……」

母親「冷めない内に食べて下さいね」

父親「……」

母親「また、夕方来ますから」

父親「……」
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 22:21:34.60 ID:0514IdQAO
……

「ちょっとアンタ」

母親「はい、何ですか?」

「あの男の所に出入りするのは、もう止めな」

母親「……何故ですか?」

「あの男、奥さんを亡くしてから様子がおかしいだろ? 村中で気がふれたって評判さ」

「そんな奴に良くしてやっても、みんな訝しむだけさ。アンタまで頭がおかしいとか言い出す奴もいるし……」

母親「……」
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 22:33:36.16 ID:0514IdQAO
…………

父親「おー、よしよし」

アー、ダー

母親「……」

父親「ふいっ、ふいっ」

アー、ウー

母親「……」

父親「……」





父親「毎日毎日、じっとして……何のつもりだ」

母親「あ、やっと話しかけてくれましたね」

父親「……」
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 22:38:28.55 ID:0514IdQAO
…………

「まだあいつの所に行ってるのかい」

母親「ええ」

「アンタが貧乏くじ引く事はないんだよ、悪い事は言わないから」


母親「大丈夫」


「……は?」

母親「昨日ね、あの人から話しかけてくれたの」

「ちょっと……何を」


母親「大丈夫、大丈夫だから……」
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 22:43:32.34 ID:0514IdQAO
…………

母親「おはようございます」ガチャ

父親「……」…ギュ

母親「あれ、靴なんて履いて……買い物ですか?」バタン

父親「……畑に行ってくる」スタスタ

母親「……畑に?」

ガチャ


父親「子供を頼む」


母親「え……」


バタン
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 22:47:40.81 ID:0514IdQAO
………………

母親「あんよは上手、あんよは上手」

ア……ウーウ

母親「ほら、がんばれーがんばれー」




父親「……」


母親「おいっちにーさんしー」
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/06(土) 23:49:03.75 ID:0514IdQAO
……………………

来る日も来る日も、母親は父親の所へ通い続けた

最初は無反応だったり、癇癪を起こしていた父親だったが、一年が過ぎた頃には無愛想極まりない返事をするようになっていた

父親は、自分の閉ざしていた心が少しずつ開かれるのを感じていた


母親も、その変化をつぶさに感じ取っていた

人と言葉を交わす事、家の外に出る事

人を信じる、ということをする事

それは、最愛のひとを亡くした哀しみから立ち上がろうと苦しみ、もがいて、一歩ずつ進んでいるように見えた
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 00:12:47.94 ID:aemYEj+AO
いつしか、二人は互いを意識するようになっていた

しかし、父親は彼女が「自分達の境遇に同情して世話を焼いている」と思い、素直に好意を受け入れられなかった

また、父親は今も亡くなった妻を愛していた



母親も彼が未だに妻を愛している事を知っていた

また、「滅入っている男に取り入る女」と思われるかと思うと、もう一歩が踏み出せなかった
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 00:18:13.10 ID:aemYEj+AO
…………………………

――ドカッッ

母親「な、何!?」

「お前か! ウチの娘を誑かす不届き者はッ!」グイッ

父親「ぐッ!?」

母親「お父さん! 違うの! 私は……」

「お前は黙っていろ! 話があるのはこの男だ!」
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 00:28:03.63 ID:aemYEj+AO
父親は言い訳できなかった


妻への想いがあるのに、一年以上も彼女の好意に甘えていた自分がいた

どうしようも無く腑抜けていた自分に、立ち直るきっかけをくれた彼女への想いがあった

そして、その好意を「彼女が勝手にやった」などとは絶対に言えなかった


「歯を食いしばれ……!」

父親「……ッ」




母親「聞いて! お父さん! 私は……彼を愛しているの!」



534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 00:44:49.39 ID:aemYEj+AO
父親「!」

「な……お前、本当にこの男を?」

母親「本当よ! 私達は愛しあっているの!」


母親の口から放たれる「嘘と真」

真実を述べても嘘になる


父親「聞いての通りです! 僕と娘さんは愛し合っています!」

「そ……うなの、か」


何故なら、二人はこの修羅場に紛れて想いを述べただけだから

それは、とても臆病な愛の告白

他の誰が信じようが、二人にとってその告白は、その場しのぎの嘘に変わってしまう


二人は夫婦となった

だが、互いに心を隠したまま、愛を伝えぬまま時だけが過ぎていった
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 01:05:38.70 ID:aemYEj+AO
子供は哀しかった

二人が結婚して正式な家族になったというのに、以前よりもギクシャクしていたからだ

取り繕った会話

温もりのない食卓

笑顔のない家庭



まだ、二人が結婚していなかった頃

そこには家庭の暖かさがあった

無愛想に振る舞いながらも愛情溢れる父親と、明るく振る舞いながらも静かに見守る母親

子供は、そんな二人が好きだった


そこには、確かに愛があった
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 01:15:48.23 ID:aemYEj+AO
〜〜

父親「……俺はいつだってそうだ。失って初めて大切なものに気づく」

母親「私も……あなたを知れば知る程わからなくなって、一番近くにいるのに一番遠かった」

光が溶けると、悪鬼と化していた父親の身体は、もとに戻っていた

母親「でも……」

父親「……」



母親「もし、私達の為にあの子が死んだというなら……」



ギュッ

父親「言うな……!」



父親「……言わないでくれッ」ポロポロ

母親「――――ッ」ポロポロ
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 02:10:20.90 ID:aemYEj+AO
恐怖「オオオオオォォォ――――……ン」

大気に光が溶けると共に、恐怖もまた、虚空へと消えていった

中年男性「や……やったのか?」

短髪男「そうとも! 俺達があの魔物を倒したんだ!」



「いや、それは違う」



壮年男性「……団長?」

団長「あの魔物は我々が生み出したもの。魔物は……常に我々の心にいる。それを忘れてはならん」
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 02:55:32.74 ID:aemYEj+AO
いい文が浮かばないので寝ます
明日こそ…明日こそまとめるぞ


おやすみなさい
539 :  [sage]:2011/08/07(日) 03:01:44.74 ID:O6ZlcV/AO
泣きそうでござる

おつです。
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 09:27:18.72 ID:iTx9OJfSO
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 15:52:53.53 ID:aemYEj+AO
……

司祭「では、最後の別れを……」

少年「うう……にいちゃん……」

自警団「お前達の事は……忘れない」

母親「……ごめんね」

父親「……うっ、グスッ」


魔物達が消え、三日間の惨劇は幕を閉じた

村人達は各々の家に戻る前に、今回の事件の犠牲者の葬儀を行う事にした

長老「送り火をつけるぞ、ほら、離れて……」

母親「嫌っ、駄目できない!」バッ

長老「こ、これ」

おばさん「長老、もう少しこのままで……」

長老「…………わかったよ」
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 16:19:46.77 ID:aemYEj+AO
パチ……パチ…………


橙色に輝く大火を後目に、少女と侍は村を後にする

死者を送る炎は煌々と燃え、立ち上る煙は天へと消えてゆく


少女『ねぇ、お兄さん』

侍『……』

少女『どんなに悲しくて、どんなに理不尽な事があっても……私達は、乗り越えていかなきゃいけないのかな』

侍『……』


侍に問いかけながらも、その言葉は少女自身に投げ掛けられていた

少女は心が強い

どんな理不尽や苦境で傷付いても、それを自身の財産にできる強さを持っている


だからこそ、時に他人にもその強さを求め過ぎているのではないか、と思うのだ
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 16:26:57.56 ID:aemYEj+AO
小天村を襲った奇妙で悲しい事件

それは村人達の心の闇を浮き彫りにし、消えない傷痕を残した



――ポン

少女「―っ!」

侍「大丈夫」

少女の頭を撫で、侍がもう一度


侍「大丈夫だ」


と、言った

橙色の灯りに煌めくその瞳は、小さな村の未来を見つめていた
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 16:47:51.82 ID:aemYEj+AO
―流通網から外れた辺境の地に、小さな小さな村がある

村の名は小天

村は決して豊かではなかったが、村人達は慎ましくも健やかに暮らしていた

そんな小さな村が、ある時悲劇に見舞われた

伝承によると、「人の心に棲む魔物」が現れ、次々と村人を襲ったという

四人の尊い命を失いながらも、村人達は三日目に魔物の退治に成功する


だが、村人達は暗雲たる気持ちで一杯だった―
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 16:51:09.79 ID:aemYEj+AO


「お、おい! あれを見ろ!」

「え!? 送り火が……」

「まだ燃えている……!」



母親「あなた……!」

父親「ああ……あの火はきっと……」



546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 17:02:44.43 ID:aemYEj+AO
=小天の贈り火=

小天という村には、決して消えない火がある

村人達はその火を、死者からの贈り火だという

そして、村人達は口々に言う

「あの火から声が聞こえるんだ」

「君は独りじゃない」

「生きろ、精いっぱい生きろ」

「恐れるな、心を強く持て」


「僕の……私の分まで幸せになって」



小天村には、今日も心の闇を照らす火が煌々と輝いている
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 17:05:44.45 ID:aemYEj+AO


――――大丈夫、大丈夫だから


少女『え――』バッ



侍『―?』

少女『ううん、何でもない!』タタタッ


548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) :2011/08/07(日) 17:10:13.65 ID:aemYEj+AO
小天村終わり
長々と停滞してすみませんでした

夜から次の話に入ります

ようやく500かあ
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/07(日) 17:28:40.92 ID:O6ZlcV/AO
惜しみない賞賛を

おつです。
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 18:12:25.44 ID:Ft4FsTQwo
送り火の流れで目頭が熱くなった。
仕事中になんてことしてくれたんだありがとうばかやろー!
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/07(日) 19:56:43.80 ID:oTVIWNlAO
おつおつ
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 22:30:28.51 ID:aemYEj+AO
=旅路7=

―道とは

永き時を経て動物が、人間が、生きとし生ける者達が踏み締めた足跡である

旅路とは

旅人達が脈々と辿り、拓き、朽ちていった生涯の軌跡である―



ザァァァ…

少女『雨、止まないね』

侍『―』コクリ

少女と侍は雨宿りをしていた

峠越えの最中、突然大雨に見舞われたので、途中で見つけた横穴に避難したのだ

少女『……』

侍『……』

ザァァァ…

一向に雨は弱まらない

それどころか強風に煽られ、入り口から雨が侵入してくる始末だった

少女『今日はここで野宿だね』

侍『―』
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 22:38:33.37 ID:aemYEj+AO
二人は、今晩の灯りに使える木材がないか探し始めた

横穴はそれほど深くなかったが薄暗いので、手探りで薪になるものを探した

少女『うーん……暗くてよくわかんないなぁ』ペタペタ

四つん這いで地べたを探る少女と侍


……と

少女『! あ、何かあっ』



――――カッ


554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 22:42:53.72 ID:aemYEj+AO
……聞こえる

話し声が聞こえる


「この峠を越えれば、いよいよ都だな!」

「ああ! この反物を元手に商売を成功させて、大金持ちになるんだ!」

「じゃあ、俺達の明るい未来に」

「乾杯!」

カチンッ



少女『――――はっ!?』
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 23:01:15.80 ID:aemYEj+AO
少女『今のは……』

ほんの僅かな時間だったが、少女ははっきりと二人の男が会話しているのが見えた

男達が杯を交わしていた場所には、空になった古い酒瓶が転がっていた





「……」ペタペタ…

侍「……」

「……うん、なかなかいい色になった。あと少しで夕焼けの朱が出そうだ」
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/07(日) 23:13:49.10 ID:aemYEj+AO
侍「これは……筆の記憶なのか?」

侍の手には、毛が疎らになった筆が握られていた

侍が筆をそっと置くと、絵描きの姿は暗がりに消えていった


侍「では、この匙は……」スッ

「この辺に熱病に効く薬草があるって聞いたんだがなー」

地面に転がっている古ぼけた匙を手に取ると、今度は薬師の姿が浮かんできた

侍「面妖な……物の記憶を見る事ができるとは」
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/08(月) 00:10:17.72 ID:av9OkLUSO
サイコメトラー思い出した
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/08(月) 12:54:29.03 ID:O+NPMSHAO
物と記憶は密接な関係を持っている

人は、長年愛用した物に触れると、当時の事を鮮明に思い出す

人は、物を忘れる時に、一緒に記憶をその場所に置いてくる



…………

少女『……ん、できた!』

侍『―、――!』ナデナデ

少女『えへ、ちょっといびつだけど……』
二人は焚き火をつけると、火の点きにくい木を使って木彫り人形を作り出した

少女は侍の指導を受けながら、手傷を作りつつもようやく完成させた

少女『……あ』

気付けば、雨は上がっていた

少女『…………行こうか』

侍『―』コク


旅人達の記憶が残る不思議な横穴を、少女と侍も後にする

そこには新たに、二つの木彫り人形が並んでいた
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/08(月) 13:38:09.22 ID:O+NPMSHAO
旅路7終わり
オチだけ投下する前に寝落ちとは…
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/10(水) 21:18:32.90 ID:nrF9kWmro
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/10(水) 23:54:30.24 ID:WSYGbqHAO
若い商人「あ、アンタら……これがどれだけ大切な物かわかってるだろ!」

険しい旅路を行く時、旅人達はしばしば隊を組む

特に、金目のものを運ぶ商人達は、「商人隊」を組んで、野盗から身を守る

野盗頭「わかってるから寄越せって言ってんだよ!」


だが、世の中には商人隊を狙った野盗団というのも存在する

何故なら、大規模な商人隊は、高価な物を輸送している可能性が高いからである

この悪漢共は、専ら商人隊を襲う野盗団であった


商人頭「お前達のような輩に、大事な塩を渡してたまるか!」

野盗頭「渡してくれなんて頼んでねえよ! 勝手に奪っていくからよォ!」
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 00:13:52.44 ID:Wk2+/9OAO
野盗頭「かかれッ!」バッ

「うおおおお――――ッ!!」

馬を駆り、野盗共が商人隊の荷馬車を包囲しにかかる

若い商人「きたッ!?」

商人頭「撃てぇッ!!」

ダァーンッ ダァーンッ

商人達は鉄砲を使って野盗団の騎馬隊を迎撃する

が、拡散する騎馬に狙いを定められず、弾丸はことごとく空を切った

髭の商人「だ、駄目だ!」

初老の商人「数が多すぎる!」ダァーンッ

野盗団は商人隊を優に越える人数が揃っていた

それも、数だけではなく組織として統率された動きを取る戦闘集団である

稀に弾丸が命中しても、その動きが乱れる事はなく、確実に包囲を縮めていった
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 00:31:08.18 ID:Wk2+/9OAO
野盗頭「そろそろだな」ニィ

野盗頭は攻撃の機会を窺っていた

遠距離射撃用の鉄砲は、装填に時間がかかる

従って、実践で使用するには何人かが一組になり、清掃・弾込め・射撃をひっきりなしに行う必要がある



ダァーン… ダァーン…


必然、作業効率は時間と共に落ちていき、銃声は徐々に疎らになってゆく

野盗頭「今だ! 二の陣!!」サッ

野盗「頭の合図だ! いくぞ野郎共!」バシッ


ヒヒーンッ

ドドドドドドドド――ッッ


564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 00:36:18.76 ID:Wk2+/9OAO
若い商人「こ、こっちに来る!?」

髭の商人「馬鹿! 早く鉄砲よこ」


――ドスッ


若い商人「!!」

鉄砲を受け取るべく、振り返ったその背中に、野盗の放った矢が刺さる


ドサッ


若い商人「う、うわあああああッ!?」
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 00:57:53.59 ID:Wk2+/9OAO
商人頭「出口に盾を! 奴ら雪崩れ込んでくるぞ……」

小柄な商人「くっ……!」ガタンッ

矢を防ぐ為に出口を塞ぐ

それは最早反撃の余裕が無いと言っているに等しかった

年配の商人「くぅ……ここまでか!」

「は……ッ、ぐう……!」

若い商人「そ、そうだ! ヒゲさんの手当てを!」

頑健な商人「ひとの心配してる場合か! お前も剣を持て!」

若い商人「……ッ」
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 01:08:18.48 ID:Wk2+/9OAO
盗賊「奴ら盾を出したぞ!」

盗賊頭「頃合だ! 乗り込めぇ!!」


「オオオオオォ――――ッ!!」


ギィンッ ザシュッ ガキィンッ

「ぎゃあぁ!?」「ぐげぇッ!!」


盗賊頭「グッフフ、デカい馬車だから手こずるかと思ったが……見かけ倒しだったな」



「そうだな、見かけ倒しだ」



盗賊頭「……ん?」



ピィッ――
       ―――ブシャッ



567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 01:13:03.79 ID:Wk2+/9OAO
あ、野盗が盗賊に……

野盗が正しいです
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 01:19:45.77 ID:Wk2+/9OAO
野盗「ァ……」プシャァァ

ドシャ……


ザッ

侍「一度だけ機会をやろう。ここから立ち去り、二度と悪事をするな」

野盗頭「奴ら用心棒を……お前ら! さっさと畳んじまえ!」






野盗頭「どうした! 早くいかねぇか!!」

野盗騎兵隊「でも、お頭……」

野盗弓兵「あいつ、無茶苦茶強ぇっすよ……!」
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 01:26:11.14 ID:Wk2+/9OAO
野盗頭「馬鹿野郎! 何の為に数揃えてんだ!」

剣を持った野盗「でも……」

侍「見かけだけの軍隊には信念が無い。一度崩れたが最後、統率を立て直すことはできぬ」

ザッ


侍「もう一度だけ言う…………立ち去れいッ!」カッ


野盗達「ひッ!?」ビクッ
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 01:52:49.94 ID:Wk2+/9OAO
肌黒商人「…………」

商人頭「妙だな……」

馬車への集中砲火が止んで尚、野盗団が突入してくる事はなかった

罠……という可能性があるが、圧倒的野盗優勢において、商人達を誘き出す必要はほとんど無い



「ッ!? 痛ぇぇ!!」



年配の商人「な、なんだ!?」

髭を生やした商人の絶叫に、商人達が振り返る

髭の商人「痛ぇ! 痛ぇよぉ……!」ガクガク

少女「――! ――――」グ…ブシャッ

商人頭「金髪!? 誰だおま」

小柄な商人「みんな! 外を見ろッ!」

商人頭「ッ……どうした」
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/11(木) 07:36:24.05 ID:yo3OzZ9SO
なんという隠密行動
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 07:52:50.42 ID:Wk2+/9OAO
野盗頭「あいつら……ッ!」ワナワナ

ずらした盾から見た馬車の外

そこに野盗の大群の姿は無く、野盗の死体が幾つか転がっているばかりだった


肌黒商人「どうなってんだ……?」

太った商人「わからん……が、あいつが追い払ってくれたみたいだ」




侍「忠告はした。拙者、仏ではない故、三度は待たぬ」チャキッ

野盗頭「何を訳のわからん事」


――――プシッ


野盗頭「あ――――え?」ブシャァ

侍「南無……」


ドサ……
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/11(木) 08:56:05.92 ID:Wk2+/9OAO
……

侍「……南無」

少女「―」ナムナム

商人頭「どこの誰かは知らないが助かったぜ、ありがとう」

死者に手を合わせている二人に、商人達が声を掛ける

商人頭「そっちの兄さんはもちろんだが、お嬢ちゃんもありがとうな。お嬢ちゃんの手当ての甲斐あってか、うちの負傷者は皆落ち着いてきたよ」

侍が野盗の相手をしている間、少女は負傷者の手当てをすべく、馬車から馬車へと走り回っていた

いきなり乗り込んできて介抱を始める少女に、初めは驚き警戒心を剥き出しにしていた商人達だったが、なぜか少女を止める事はできなかった

そして、最後には少女に倣って負傷者の手当てを始めていた
574 : [sage]:2011/08/11(木) 09:36:08.14 ID:Wk2+/9OAO
ここまで書いて寝落ち
仕事の為、一時中断
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/11(木) 12:10:20.31 ID:mL9E5haAO
いちおつ
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/11(木) 14:08:56.50 ID:yo3OzZ9SO
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 02:06:52.38 ID:TzZkvPZAO
侍「礼なら無用だ。私は、私自身の為に刀を抜いたのだ」

商人頭「……むう。よくわかんねえが、だったらさっきの言葉は前金として受け取っておいてくれないか?」

侍「前金……?」

商人頭の言い回しに、侍は首を傾げる


商人頭「そう、前金だ。アンタみたいな凄腕に、是非とも砂漠越えの用心棒を頼みたい」


578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 02:25:19.69 ID:TzZkvPZAO
侍「砂漠……とはなんだ?」

魔術の掛かった首飾り「通訳魔装」の効果で、侍は異国の言葉を理解する事ができる

だが、時折魔術をもってしても意味が伝わらない事がある


それもその筈

通訳魔装は、異国語を侍の国「蛇島」の言葉に変換させる

故に、蛇島に存在しない言葉にはどうしても変換する事ができない
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 03:17:25.23 ID:TzZkvPZAO
色黒商人「なんだ、アンタ砂漠を知らないのか? ……まぁ、余所からの旅人だったら、それも仕方ないか」

そう、仕方のない事である

風土や歴史、思想……文化が異なれば、当然それらを伝える「言葉」という物も形を変える

聞き覚えのない言葉が会話に使われる事があれば、言語自体全く異なる場合もある

となれば、旅人同士の会話など、補足の為に中断されて当然だろう

侍「すまぬが、砂漠とは何なのか教えてくれぬか?」

侍が頭を下げる

商人頭「ああ、いいとも。その代わり、俺達にもアンタの言ってたカタナ、とかいうやつについて教えてくれよ!」
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 09:46:17.90 ID:APD+//JSO
乙か?
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 14:41:04.41 ID:N3hXY6tLo
砂漠超えってことはその内「清」とかにつきそうだな
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 14:41:43.67 ID:TzZkvPZAO
……

小柄な商人「へぇぇ、片刃の剣かぁ……」チャキ

砂漠の入口にある、そこそこ栄えている街の食堂で侍達は夕食をとっていた

商人頭は、

「砂漠越え用の駱駝を調達してくるから、その間に護衛の話を検討しておいてくれ」
と言っていた。が、

年配の商人「蛇島、蛇島……聞いた事ねぇな。ちょいと兄さん、蛇島ってのはこの地図のどの辺だい?」

若い商人「これ魔術装飾じゃないですか! どうやって手に入れたんですか? やっぱり賞金稼ぎでお金を……」

肌黒商人「物持ちがいいのは悪い事じゃねぇが、流石にそれはツギハギがすぎるぜ。どうだい? この服なんか機能的で……」

侍「……」

話好きな男達のおかげで、そんな暇はなかった
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 15:21:23.86 ID:TzZkvPZAO
商人頭「駱駝が手に入ったぞ」ギィ

商人頭が扉から嬉しそうな顔を覗かせた

荷物を運ぶ事と人を乗せる事を考えると、結構な数の駱駝が必要になるが、彼の表情を見れば上手く頭数が揃った事が窺える

商人頭「で、護衛の話は考えてくれたかな?」ギッ

侍の向かいの席に腰掛ける商人頭

表情こそ先と変わらぬ笑顔だが、その瞳には「是が非でも首を縦に振らせる」という決意が宿っていた
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 19:54:07.13 ID:TzZkvPZAO
侍は隣に座る少女を見た

少女は既に食事を終え、食後のお茶を楽しんでいた

商人頭「勿論タダでとは言わねえ。無事に砂漠を越えられた暁には、銀を一袋」


「引き受けよう」


商人頭「わかった! 前金でもう一袋……って、え?」

侍「その砂漠越えの道程、私達も同行させてもらえるか」

商人頭「お、おう! そりゃ大歓迎だが、報酬は……」

侍「お主らの言い値でよい。道中、世話になる」ペコ

商人頭「い、いや……こちらこそ」ペコ
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 20:23:19.92 ID:TzZkvPZAO
年配の商人「言い値でいいなんてカッコイイねー!」

小柄な商人「でもいいんですか? 砂漠越えの護衛なんて、普通いくら銀を積まれても断る仕事ですよ」

侍「言ったろう、道中世話になると。拙者達はお主らを守る代わりに、食糧を提供してもらう。持ちつ持たれつであろう」

侍「加えて、拙者達には砂漠の知識がない。同行者ができるのは好都合なのだ」


そう、侍達には砂漠の知識がない

山を登るにしろ、海を渡るにしろ、旅には地形に合わせた知識が必要になる

それも、本で読んだ上辺だけの情報ではなく、その環境で生き抜く事により培われた、生きた知識が必要なのだ
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 21:05:30.32 ID:TzZkvPZAO
少女の住んでいた西の大陸にも、侍の故郷である蛇島にも、砂漠は存在しない

つまり、二人とも無知という事だ

山の知識がない者が雪崩を予見できないように、無知なる者は何が危険なのか、どんな事が起こり得るのか、想定する事ができない

故に、無知なる者にできる事は、知識のある者に従うか、立ち入らないかのどちらかになる


商人頭「明朝、街の北門で待ち合わせだ。それまでゆっくり休んでくれ」ガタ

侍「うむ、ではまた」


商人達が店を後にする

侍は向かいの席に移ると、少女がお茶を飲み終えるのを待った
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 21:51:07.26 ID:lAfnlHaqo
超乙
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 22:20:08.80 ID:TzZkvPZAO
……

少女『……でね、そのまま飲んでも美味しいんだけど、一緒についてくる飴玉を口の中で溶かしながら……』

侍『――』

少女と侍は宿屋への道を歩いていた

夕食の間に日はすっかり暮れ、見上げれば星空が広がっている

スタッ

少女『ね、お兄さん』

少女が歩みを止め、侍に向き直る


少女『聞かせて。私をどこに連れて行ってくれるのか』
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 22:47:42.79 ID:TzZkvPZAO
侍「!」

少女の言葉に侍は目を見開いた

勿論、少女が「何を言っているか」はわからない

だが、少女の「伝えたいもの」を感じる事ができるようになってきた

侍「どこに連れて行くか……か」


思えば、侍が旅の行き先を決めたのは今回が初めてだった

大河を渡る前は勿論、大河を渡り、言葉が通じなくなっても、今日まで行き先は少女が決めていた


侍は、少女が旅路の先に何を見せてくれるのかが見たかった
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 23:00:27.84 ID:TzZkvPZAO
だが、気付けば侍は「砂漠を越える」事を決めていた

他の誰でもない、侍が行く先を決めたのだ

その事実に、言われて初めて気が付いた

侍「……ああ、そうか」

隣に座る少女を見た時、私は何を期待しただろう

砂漠を越えるか否かの決を下して欲しかったか?

違う

私は、砂漠の果てを見た時、少女がどんな顔を見せるか期待していた



―私はこの娘と、世界の全てを見たかったんだ―



591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/18(木) 23:07:38.96 ID:TzZkvPZAO
今日はここまでです
投下間隔が広くて、終わりのタイミングが分かりづらくて申し訳ありません
イメージを文章化するのに、適切な言葉が浮かばないとどうしても時間がかかってしまって……


ご愛読いただきありがとうございます
それでは
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 23:24:07.68 ID:APD+//JSO
いいコンビだな
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/19(金) 00:22:50.00 ID:3C2vlBEAO
おっつー
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/22(月) 17:33:05.00 ID:crH/EMn7o
楽しみにいつも待ってるんだぜ
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/23(火) 01:15:46.67 ID:OBKTsQhAO
少女「―」タッ

少女が踵を返し、再び歩き始める

侍「……かなわぬな」タタッ

侍は僅かに笑みを零しそれに続いた


先をゆく小さな歩みはゆっくりと

後を追う大きな歩みは足早に

互いの距離が縮まるように


やがて二人が隣り合うと、同じ速度で歩き出す

ゆっくり、よりゆっくりと

この一時を味わうように
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/23(火) 01:49:33.03 ID:OBKTsQhAO
…………

少女『あつ……』

照りつける太陽に目を細める少女

吹き出る汗に釣られ、無意識の内に弱音を零していた

少女『緑一つない……本当これ、全部砂なんだ……』

侍『……』


見渡す限りの砂、砂、砂……

植物の類は一切見られず、眼前には焼き増しの景色が広がっている
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/23(火) 02:08:11.28 ID:OBKTsQhAO
少ないですがここまでです
私生活がちょっと忙しく超遅筆で申し訳ないです


>>592-594
ありがとうございます!
明日の活力になります!
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/23(火) 04:15:22.87 ID:HIwWUxoAO


遅筆でも必ず完結させてくれると信頼出来る
良い>>1
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/23(火) 10:47:18.22 ID:qmvwPDyAO
ぉっ
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/24(水) 02:56:15.59 ID:f6r0UNWd0
お疲れさまっ!
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/24(水) 04:51:41.39 ID:zUlP7eyAO
少女『お兄さん』

侍『―』

少女の呼びかけに、手綱を握る侍が顔を僅かに向ける

少女『私達、この砂の海を渡るんだよね』

侍『……』

少女の語調は少し弱かった


はじめ、侍達は砂漠を越える北東の経路を避け、南下するつもりだった

といっても、その時点では砂漠の存在を知らず、単に地図で見た経路上で、人里と人里の距離が長かった為に回避しようとしたのだ
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/24(水) 05:02:56.58 ID:zUlP7eyAO
少女『そうだよね……これじゃあ誰も住めないよ』

少女は今、地図上の空白の意味を知った

人がいないのではなく、いられない場所

人里がないのではなく、作れない土地

草も木も水も……僅かな希望すらない、砂の海

ただ、通り過ぎる事しかできない世界

少女『…………』


ペシッ

少女『! な、何を』

侍『――』

少女『ん、これ……地図?』ガサ
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/24(水) 05:32:28.98 ID:zUlP7eyAO
少女『でもこれ、昨日まで使ってたのと違……あ!』

侍の差し出した一枚の紙

それは砂漠の地図だった

緑色の島を中心に砂の海が広がり、ぽつぽつと目標物が点々と存在するのが窺えた


だが、地図には幾度も幾度も修正が加えられた跡があった

それは、この地図が未だ不完全なもので、今も手探りの調査の最中である事を示していた

地図上に走る、幾重にも重ねられった経路図が砂漠という土地を旅する事の難しさを物語っている


少女『でも……すごい……こんな何もない所に希望を見出すなんて……』

少女は、完成には程遠い地図を手に、震えていた

擦り切れ穴が空き、すっかり色褪せた一枚の紙に、諦めという終着点は無い

それはまさしく、希望の地図だった
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/24(水) 05:34:17.87 ID:zUlP7eyAO
連休とって続き書こうかと思う今日この頃
おやすみなさい
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/24(水) 07:43:18.69 ID:N2anxQaAO

おやすみなさい
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 08:37:47.86 ID:/SGA4djSO
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 11:16:57.06 ID:b45s2sPbo
romってるやつどんくらいいんの?
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 12:01:09.04 ID:0evdRZoDO

けっこういるんじゃない?
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/24(水) 12:08:08.64 ID:N2anxQaAO

手を上げるべきか?
610 : [sage]:2011/08/24(水) 22:28:36.64 ID:zUlP7eyAO
こんばんは、1です
「言葉が通じなくても」の進行について、皆様にご相談があります

以前から公言している通り、当スレは長編を予定しております
となると、途中から読む人がいる事も考えて、「あらすじ・コピペ」等があった方がいいのではと思い至りました

どこから読んでもいいように、オムニバス形式といいますか、短編集のようなスタイルで書いていたつもりなのですが、いかがでしょうか?
ご意見願います
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/24(水) 22:36:59.90 ID:hxesPfVAO
個人的には不要かと思います

あらすじがあると序盤の話を読む意義が薄れるのと、話毎で読むにはかえって読みづらくなるんじゃないかなぁと
工夫次第かもしれませんが。
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/24(水) 22:44:59.00 ID:YmTo3pkEo
自分も不要かと…
基本的に必要な情報は「侍と少女はしゃべれない」ぐらいなものですが
それもスレタイで補っているため大丈夫だと思います
613 : [sage]:2011/08/25(木) 08:03:00.62 ID:dA5ar6TAO
なるほど、参考になります
次スレまでまだ400弱あるのでじっくり検討したいと思います
引き続きご助言よろしくお願いします
>>611>>612のお二方、ありがとうございました


本編は明日が休みなので沢山書けそうです
御期待下さい
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/25(木) 08:54:56.72 ID:NSZ4rRESO
よし期待
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/26(金) 23:13:20.16 ID:4gq4JzmAO
パチパチ……

地平線に太陽が沈み、宵闇が砂漠を包んだ
一行は薪に火をつけ、夜営をする事にした

商人頭「ング……ぷはぁ! アンタも一杯やるかい? 芯から温まるぜ」

侍「いや、遠慮しておこう」

商人頭「そうか? んじゃあ代わりに俺が……」

若い商人「飲みすぎないで下さいよ。いっつも見張りの交代の時間に起きないんだから」

商人頭「わかってるって」トクトク

砂漠は夜行性の動物が多い為、旅人は交代で見張りを立てる

夕食を終えると、一行は見張りを残して束の間の休息につくのだった
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/26(金) 23:44:57.08 ID:4gq4JzmAO
パチ…パチ……

頑健な商人「……っと!? へへ……すまねぇ、ちょっと寝てたわ」

侍「疲れているなら無理をせず寝るといい。時間まで私が見張りをする」

頑健な商人「いやいや! アンタに任せて自分だけ寝るなんて、居心地悪くて体に悪いぜ」

最初の見張り番になった侍は、筋肉隆々の頑健な商人と焚き火を囲んでいた

見張りは基本的に二人で、砂時計が四回落ちきったら交代の約束になっている

頑健な商人「お、砂が空っぽだ。もしかして、結構熟睡してた?」

侍「うむ、砂時計一回分は寝ていた」

頑健な商人「へへ、悪いな。アンタは眠くないのかい?」

侍「ん……」

商人の問いに、侍は焚き火に目を落とし

侍「慣れている」

と、短く答えた
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 00:00:41.18 ID:rOA3sysAO
頑健な商人「慣れてるって、やっぱり普段から用心棒をやってるって事か?」

侍「……」

頑健な商人「いや、言いたくないなら無理に答えなくていいんだ……あ、そうだ!」

侍「いや、嫌という事は」

トクトク……

頑健な商人「ほら、居眠りした借りだ。飲んでくれ」
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 00:08:14.45 ID:rOA3sysAO
酒の注がれた木製の器が差し出される

侍「む……では一杯だけ」

頑健な商人「俺の奢りだ、ささグッと!」

勘が鈍るので控えている酒だったが、お詫びにと出されて断る程、侍は野暮でなかった

器に口を付け、グッとあおると


侍「……ッ!? ゲホッ! ゲホッ!?」

頑健な商人「お、おい!? 大丈夫か!」

思い切りむせた
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 00:29:26.05 ID:ac7VYNtSO
かわいいなwwwwwwwwwwww
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 02:29:04.64 ID:rOA3sysAO
――ビュォォォォゥ
        ォォォゴゥッ――


駱駝から降りて全身を外套に包み、一行は嵐が過ぎ去るのを待っていた

少女「―――……ッ」ギュッ

侍「く……ッ、大丈夫、大丈夫だ」グッ


突如現れる自然の脅威、砂嵐

砂漠で吹き荒れる強風に巻き上げられた砂は、皮膚を切り裂き、目を潰し、呼吸器へ侵入せんと旅人に襲い掛かる

砂嵐の前に旅人は抗う術を持たず、ただただ脅威が過ぎ去るのを待つしかない

バサッ バサバサッ

侍「そう長くは続かぬと商人達が言っていた。もうじき過ぎ去るだろう」グッ

少女を庇い、自らの外套で少女を覆う侍

少女「―」ギュ

外套を叩く風の音がやけに大きく聞こえた
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 02:36:22.90 ID:rOA3sysAO
……

若い商人「大丈夫でしたか?」

侍「ああ、少し擦り切れはしたが」

小柄な商人「お嬢ちゃんも、無事で何より」

少女「――」ペコ


商人頭「おーい! 無事が確認できたなら出発するぞー!」

若い商人「はーい! さ、先を急ぎま」


――――ヒュンッ


622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 03:03:34.71 ID:rOA3sysAO
若い商人「え……っ!?」

若い商人の鼻先を侍の刀が掠め


ブシャァッ――


鮮血が砂を赤く染める

小柄な商人「う、うわぁぁぁ!?」ドテッ

初老の商人「こ、この人殺」

若い商人「ぶへっ!? っぺッ! なんだこれ!」

初老の商人「っえ!? 生きてる……」


ボゴォォッッ

「ギィィィイイ!!!!」


初老の商人「!? うわぁっ!?」



――――ズル
       ブシャァァ……――


侍「拙者が援護する! 早く馬に乗れ!」
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 03:16:53.55 ID:rOA3sysAO
肌黒商人「大王土竜だ!! ここはモグラの縄張りだ!!」

商人頭「早くしろ! 砂に引きずり込まれたら終わりだぞ!」

若い商人「わかってるよッ!」


ボゴォッ

駱駝「ングェェー!?」ズルッ


小柄な商人「荷馬が!?」

初老の商人「見捨てろォ!! 死んだら元も子もねぇ!!」


侍「ふ――ッ」ヒュッ

大王土竜「ギィィィィイ!?」ブシャッ


小柄な商人「く……! はッ!」ピシッ


ドダドダドダドダドダドダドダ――
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 03:34:08.07 ID:rOA3sysAO
若い商人「隊長! あの人置いてきちゃいましたよ!?」

商人頭「一端離れるだけだ! 守る物が多すぎちゃ兄さんも戦いに集中できん!」

商人頭「それに、俺達の鉄砲じゃモグラ相手には不利」


――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――


商人頭「な、なんだ!?」

駱駝「ンゲェェェェッ!!!!」

頑健な商人「こ、こら!? 落ち着け!」

若い商人「駱駝が怯えている……隊長! 」

商人頭「わかってる! ここを離れるぞ!」ピシッ
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 03:42:11.45 ID:rOA3sysAO
大王土竜「ギィィィィィ……!!」ザザザザ

ザザザザザ……

侍「何だ? かなわぬと見て逃げ出したか……」


――――ゴゴゴゴゴゴゴ――――


侍「!? 地震!? 違う! 地中を何か巨大な物が移動している!!」


―――――ドバァァァアンッ


侍「!! あれは!?」
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 03:52:33.29 ID:rOA3sysAO


――――ドバァァァァアンッッ――――



姿の海から飛沫を上げ、巨大な生物が姿を表す

小柄な商人「あ……ああ……」ガタガタ

その頭には口と思しき物しかなく、体には首も、肩も、手足も無い


いかにも、獲物を喰う事しか考えていない風貌である


年配の商人「す……スナミミズだ……!!」


砂蚯蚓「キシャァァァアアアッッ!!!!」



627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/08/27(土) 03:54:15.70 ID:rOA3sysAO
休みだというのに全然書く時間がなかったです
申し訳ありません

おやすみなさい
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/08/27(土) 06:42:52.99 ID:+rVkng4uo
ドラクエとかの砂漠越えイベントだなぁ とりあえず大ボス倒したらある程度落ち着くか
629 : [sage]:2011/08/27(土) 10:20:47.99 ID:rOA3sysAO
>>626
訂正
姿→砂です

読み直すと誤字多いなぁ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 15:44:02.05 ID:zPwnv+9b0
砂漠四天王「砂蚯蚓がやられたか…」
砂漠四天王「だが奴は我らの中でも最弱…っ!」
631 :おしらせ [sage]:2011/08/29(月) 03:19:05.77 ID:dv3CFjIH0
こんばんわ、1です

いつも投下している携帯電話を紛失した為、進行が遅れます
いつも読んでくださっているかたがたには申し訳ありませんが、早めに買いなおそうと思いますのでご容赦ください
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/01(木) 03:46:33.99 ID:7ugFIpTAO
おぉう……そいつは大変だ
待ってますぜ
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/02(金) 13:24:52.72 ID:BeMo/uGAO
若い商人「うわ……うわあああぁぁぁ!?」

駱駝「グェーッッ」

商人頭「声を出すな! 奴らは音で俺らを狙って……っ!」


ドバァァァアアンッッ


砂蚯蚓「キシャァァァァァ……ッ!!」

ムシャ……ムシャ……

商人頭「……ッ」ザッ

捉えた駱駝を咀嚼し終えると、砂蚯蚓は歓喜の声を上げた

小柄な商人「……ッ、……ッ」ガタガタ

誰もが息を殺した

砂蚯蚓は口しか無い頭で辺りを見回し、恐怖の声が上がるのを、今か今かと待っている
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/02(金) 13:38:27.34 ID:BeMo/uGAO
砂蚯蚓「シャー……!」

肌黒商人「……」ゴクッ

年配の商人「……」ブルッ

砂蚯蚓との静かな戦いは続いた

どれだけ太陽が肌を焼こうと、どれだけ渇き水を欲しても、商人達は身じろぎ一つできない

若い商人「はぁ……はぁ……!」

ジリジリと、砂漠は旅人の体力を奪ってゆく

商人頭(諦めてくれ……頼む! 大人しく帰ってくれぇ!!)

皆、一心に祈った

涙も出ないほど渇いた身体で、ひたすらに願い続けた
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/02(金) 14:37:37.10 ID:+71+wNjSO
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/02(金) 15:09:09.45 ID:BeMo/uGAO
砂蚯蚓「…………」

商人頭「……」

ズズ……

若い商人「!」


ズズズズ……


砂蚯蚓の巨躯が砂中に消えてゆく

小柄な商人(……やった!)

後ろ髪を引かれる様子もなく

年配の商人(やった!)

地響きを立てて、砂蚯蚓は姿を消した
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/03(土) 00:05:13.52 ID:doYzpnRAO
1です。無事携帯買えました
今日は私情で中断しましたが、明日からネタ帳復旧しつつ、通常営業します
ご心配おかけしました
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/03(土) 14:38:54.59 ID:FPB1CqaAO

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 06:09:39.85 ID:fX+ETnyDO
1ってDD北斗の作者?
640 : [sage]:2011/09/13(火) 07:37:06.70 ID:RD+i9uvAO
>>639
違います

私生活が込み入ってましたが、落ち着いたので今夜あたりから再開します
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/13(火) 11:34:34.70 ID:kb3kCQ6IO
>>607
このスレは読んだSSで最高峰)ノ

多忙で更新確認だけだったが、やっと最新へ追いつけたC
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/13(火) 22:59:38.39 ID:RD+i9uvAO
ジリジリ

ジリジリと、太陽が肌を焼く音が聞こえる

頑健な商人「は……」

流れる汗の不快感

小柄な商人「……はは」

瞳に映る青空

商人頭「た……すかった」

そこに、砂漠の主はいない

若い商人「助かったんだ……!」ギュウッ

自身の身体を強く抱き締める

砂蚯蚓の立てる地響きが遠退き、一行はようやく脅威が去った事を実感した
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/14(水) 00:20:46.94 ID:XnbC1oUAO
商人頭「……そうだ! 嬢ちゃんは!?」

肌黒商人「! そういや、一人で駱駝に乗れないんだっけ!?」

ふと我に返り、辺りを見回すと、少女の姿が見当たらない


少女は、侍に抱えられるようにしながら駱駝に乗っていた

何度か一人で乗る練習はしてみたものの、一朝一夕で駱駝の乗馬を体得できる筈もなく、そのまま出発に至った


頑健な商人「もし落馬して砂漠に取り残されでもしたら……」

年配の商人「マズいぞ! 日が暮れる前に探さねぇと!」
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/14(水) 00:27:32.79 ID:XnbC1oUAO
少女『はぁ……っ、はぁ……っ!』

手綱を握り締めていた

縄のあとが掌につく程、強く握り締めた

振り落とされぬよう、必死に身体を使いながら

ひたすら遠くへ遠くへ、駱駝を走らせた


少女『ンク…………はっ!? うわぁ!』


ドサッ


気がつけば砂漠に一人

駱駝「グエー」

駱駝と二人ぼっちになっていた
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/14(水) 00:30:02.18 ID:XnbC1oUAO
今日はここまで
ようやく展開の構想が固まりました
書きたいように書いているせいか、一人でリレーSSやってる気分です

>>641
ありがとうございます
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2011/09/14(水) 00:35:15.51 ID:QEJHerxSo
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/14(水) 00:38:17.35 ID:mkcDSmiSO


これからも頼むよ
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/14(水) 15:36:51.65 ID:/i0VVvwAO
おっつー
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/14(水) 21:29:43.21 ID:XnbC1oUAO
…………

侍「……そうか、あの子とはぐれたか」

商人頭「面目ない……どう詫びていいか……」

商人隊に遅れること数分、侍が合流した

合流した時、一団には明るさが無く、侍はすぐに「生死の境界」特有のじっとりとして冷たい空気を感じた


聞けば、少女がはぐれたという

生命の循環から外れてしまった、この砂漠という地獄に独り

飢え、渇き、熱砂、外敵……孤独

―直に触れる死の感覚が、今も少女を蝕んでいるのだろうか?―


侍「…………」

目蓋を閉じて暗闇に問い掛けると、少女の花の様な笑顔が浮かんだ
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/14(水) 23:12:51.24 ID:XnbC1oUAO
商人頭「兄ちゃん、本当に申し訳ないと思っているが、この広い砂漠で迷子を捜すのは……無理だ」

若い商人「隊長!?」

年配の商人「これ!」グイッ

若い商人「……ッ」

侍「……」

砂漠での捜索が無謀という事は、侍も重々承知していた

一面に広がる砂の海は、目印もなく足跡も残らないという悪環境に加え、砂丘と砂塵により見晴らしも良くない

更に、砂漠の熱気が引き起こす陽炎が、様々な錯覚を引き起こす


―砂漠を往く者曰く、月を掬いあげるが如し―


頑健な商人「だけどよ、俺達ぁ兄さん達に二度も助けられてんだぜ!?」

小柄な商人「一日、一日だけでも捜してみましょうよ!」



「先に進もう……!」



絞り出したような声だった

商人頭「兄ちゃん……いいのか」

半分は自分を鼓舞する為に……

自分に言い聞かせるように、侍は


侍「死中に活在り。娘は、必ず月を掬いあげる……!」


と言った
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 08:14:53.83 ID:7Cr23ttIO
乙!あんたは最高だ
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/15(木) 23:59:19.66 ID:L12tLEdAO
……

少女『よっ』

一段と高い砂丘に登り、頂上から砂漠を見渡す

仲間を捜すと同時に、高い位置にいる事で発見される可能性を高めようという魂胆だ

少女『わぁ……』

風を受け、砂漠が少しずつ形を変える

その姿は、さながら凪いだ水面の様で美しい


が、肝心の仲間が見当たらない


砂丘の頂上からはかなり遠方まで見渡せたが、砂漠は思いのほか凹凸が多く、陰になっている場所も少なくない


改めて確信した。砂の海で孤立した、と

少女『……っ』

あまりの現実に込み上げてきた、絶望の言葉を飲み込む

そして、努めて冷静に、少女は所持品を確認し始めた
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/16(金) 07:00:46.95 ID:FrJjTEIAO
少女『うーん……』

砂の上にぺったり腰を下ろした少女は、右に左にと首を傾げた

少女の目の前には、鞄の中身である小物が転がっている

釣竿用の木の枝を切り出す短剣や、いざとなったら食料になるかも知れない植物の種等、役立ちそうな物も多少出てきた

だが、方位磁針が出てこない

よくよく思い出すと、砂漠に入る際に大陸の地図と一緒に侍へ渡した気がしなくもない

少女『大丈夫……太陽は必ず東から昇るんだから』

無い物は仕方がない

次の手を打つべく、少女は荷物を鞄にしまい始め

少女『!? 冷たい……?』

微かに冷たいその存在に気付いた
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/17(土) 01:00:20.78 ID:su9alYjAO
少女は一切れの布を手に取った

月の綺麗な刺繍が施された純白の手拭い

それは、夜の世界でしか生きられないという少女からもらった宝物

手拭いは、水に濡らしたわけでもないのに、ひんやり冷たかった

少女『不思議…………でも、これで少し楽になった!』

少女は首筋に手拭いをあてがうと、再び荷物をしまい始めた



少女『……ありがとう』キュ


655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/17(土) 01:03:14.17 ID:su9alYjAO
継続は力って本当ですね
頑張ります
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/17(土) 11:29:40.19 ID:sNaVnEuSO
頑張れ

見てるから
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/23(金) 20:47:03.34 ID:3l9hbQlAO
パチ…パチ……

頑健な商人「ううっ、さむ……」

小柄な商人「夜になると太陽が恋しくなりますね」

商人隊一行は夕暮れ前に火を焚くと、野宿の準備を始めた

日の入りに従って気温が著しく低下する砂漠では、体力の消耗を抑える為に早めに進行を切り上げる

商人頭「さ、一人一つだ。酒も一口ずつだぞ」

干し肉と乾飯を一つずつ受け取り、焚き火を囲む商人達



侍「……」


その輪に加わらず、侍は一人離れて遠く地平を見つめていた
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/23(金) 21:21:51.86 ID:3l9hbQlAO
侍「冷えるな……」

外套を羽織り直し、侍が呟く


―あの子は、夜風に身を震わせているのだろうか―

侍「……」


―すぐにでも迎えに行きたい

暖をとらせてやりたい

獣に怯えなくていいよう守ってやりたい


少女の傍にいたい―



侍「……」グッ

駆け出しそうになる衝動を胸の中に押し込め、強く、強く拳を握りしめた
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/23(金) 21:35:50.46 ID:3l9hbQlAO
侍「……」


「いつまでそうしてるんだい?」

侍「……隊長殿」

夜営を始めて半刻、見かねた商人頭が侍に声を掛けた

商人頭「ほれ、兄ちゃんの分だ。他の連中に食われる前に食べな」

侍「忝ない」ペコ

頭を下げ、侍は干し肉と乾飯、一杯の水を受け取る


商人頭「……で、いつ口にするんだい?」

侍「……あ」

商人頭「やれやれ……」
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/23(金) 22:23:57.97 ID:3l9hbQlAO
商人頭「見捨てた俺が言えた事じゃねえが……そんなに愛娘の事が心配なら、あんとき捜せばよかったじゃねぇか」

侍「……すまぬ。迷惑をかけた」

商人頭「いや……言い方が悪かったな。兄ちゃんも嬢ちゃんも仲間だからな、俺等も心苦しいんだ」

そう言って頭を掻くと、商人頭は侍の目を見ると

商人頭「どうして見捨てたりしたんだ」

ずっと疑問に思っていた事を口にした
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/23(金) 22:26:53.29 ID:3l9hbQlAO
久しぶりの投下ですがこれだけです
明日も頑張ろう
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/09/23(金) 23:04:03.06 ID:lA8wQarAO
いいよいいよ
来てくれた事に感謝
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/24(土) 01:01:32.49 ID:uu2pYfkSO
明日も来るのか
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/24(土) 23:31:18.31 ID:aU2O4k4AO
>>660訂正

そう言って頭を掻くと、商人頭は侍の目をまっすぐ見て


に脳内補完お願いします
我ながら酷い日本語
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/25(日) 19:34:34.92 ID:WP3VavRIO
相変わらず耽美な名文だ
投下嬉しい限り
この作品といい、一年以上続くファンタジーといい、SSには才能ある作者がおるな
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/26(月) 19:34:53.47 ID:mVvdEd0AO
商人頭「兄ちゃんは、見捨てたつもりはないんだろうが、子供一人が砂漠から生還するなんて、それこそ『月を掬う』ような話だ」


侍「………………」


理由付けはいくらでもできる

言い訳も弁解も、本心を語る事も

……だが、侍は語らない

開きかけた口を閉じ、浮かび上がった言葉を心底に沈める


商人頭「……あまり思い詰めるなよ」ザッ

侍「……ありがとう」

焚き火に戻る商人頭に背を向けたまま、侍は乾飯を食んだ
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/26(月) 19:58:08.69 ID:mVvdEd0AO
……

少女「堅いけど……だんだん……甘くなってきた」モグモグ

駱駝に寄りかかり、少女は乾飯を噛み続けていた

太陽の位置によって大まかな方角はわかるのだが、真昼と日没後は身動きがとれない

自分と駱駝、両者の体力を無駄にしない為にも、少女は早々に野宿を決めた

少女「お兄さん……今頃どうしてるかな」

私の事を捜しているのだろうか……

そう思うと、生き延びる事に必死で忘れかけていた寂しさが急に蘇ってきた

少女「……」

目を瞑ると侍の姿が浮かぶ

少女「……ん、大丈夫」

胸に息づく熱いものを感じる

それだけで、『寂しさ』ともうまくやっていける気がした
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/09/26(月) 22:00:28.47 ID:mVvdEd0AO
―何故、旅人は熱砂を避けて夜に旅をしないのか

そう疑問に思う人もいるだろう

確かに夜に旅をすれば、太陽に肌を焼かれる事も、渇いた身体で砂漠を歩く事もなく、快適に旅ができるかも知れない

それなのに、何故夜に旅をしないのか―



少女は砂丘の頂上から砂漠を見渡していた

宵闇に光が浮かんでいれば、侍達が熾した灯りの可能性が高い

小さな希望を胸に、少女は砂丘を登り、

少女「! あれは…………旅人」

砂漠を行く人の列を見つける



―その答えは、夜渡の旅人が知っている―
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/27(火) 02:54:01.08 ID:K5ct53nAO
少女のカッコが『』になってなかった……

ごめんなさい
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/27(火) 08:13:37.94 ID:/ftisJ6IO
いつも素敵
671 : [sage]:2011/10/01(土) 01:42:22.06 ID:TeCCRPJAO
今日も書けそうにありません、ごめんなさい!


こっちが進んでないのに北斗×FFTの後日談(というか番外編)が書きたくて仕方ない……
あと、サモンナイトとかストライダー飛竜とか……

おやすみなさい
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/01(土) 07:52:05.34 ID:aaP+7I/SO
把握

息抜きにやってこいよ
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2011/10/04(火) 22:11:34.63 ID:YzuwjliAO
少女『徒歩で移動してるって事は、集落でもあるのかな』

遠くの砂丘を渡って行く人影は、駱駝に跨がっている様子はない

砂漠を旅する為の荷物を背負いこんでいる様子もない事から、少女は彼等が短距離の移動を目的としていると判断した

少女『もしくは砂漠を知り尽くしてて、水場を渡り歩いてるって事も……』

何にせよ、死と隣り合わせの砂漠で生存者を見つけた事は大きい


少女は人影を追いかけるべく、寝ている駱駝を起こしに戻った
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2011/10/04(火) 22:41:09.69 ID:YzuwjliAO
ドタドタドタ……

駱駝に跨がり、夜の砂漠を走る


少女には一つ気掛かりな事があった

夜に旅する一団が、自分に友好的かどうかという点である

もしかすると、商人隊を襲っていたような盗賊かも知れないし、異国人に嫌悪感を持つ民族という可能性もある

或いは……


少女『……っ』ブンブン

後ろ向きな想像を振り払うように、少女は顔を横に振ると、少しだけ駱駝を急がせた
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2011/10/04(火) 23:05:11.73 ID:YzuwjliAO
ドタドタ

ドタドタドタ…


妖しく輝く砂の海を、少女と駱駝は走り続ける

外套の隙間から入り込む冷たい風が、少女の体温を奪ったが、日中の酷暑に比べればまだ快適である

駱駝も夜の方が過ごしやすいのか、足取りも心なしか軽く見えた

少女『これなら夜の方が旅しやすいんじゃ』



バサ……ァ――――



少女『え―』

夜を染めたような、漆黒の羽根が舞い降りる

大きな……砂嵐を予感させる大きな羽音が聞こえ、



――――ガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッッ



少女『ッッ!?』ビクウッ


奪冠鷲『ガチャガチャガチャガチャッッ!!』バサアッ


夜の住人が姿を表した
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/10/04(火) 23:21:24.62 ID:YzuwjliAO
奪冠鷲『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ!!』バサッバサッ

少女『――ッ』ギュウッ

金属のぶつかり合うような、けたたましい鳴き声を上げながら、鷲の群が夜空を覆い尽くす

少女よりも数倍大きい鷲達は腐臭を漂わせ、牛や馬と思しき物から人骨まで、各々様々な髑髏を被っている

無冠の鷲達は、例外なく脳を露出していた



駱駝『ングェ――――!!』ドタッドタッ

少女『!? ちょ、ちょっと!!』グラグラッ
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/10/04(火) 23:42:33.98 ID:YzuwjliAO
奪冠鷲の鳴き声に驚いた駱駝が、身を捩らせ暴れ始める

なんとか騎乗している程度の腕しかない少女が駱駝を鎮めれるわけもなく、少女は振り落とされないよう、必死にしがみつくしかなかった


奪冠鷲『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ!!』

――ガチャガチャガチャガチャッッ

         ガチャガチャガチャガチャッッ――

奪冠鷲の鳴き声が夜の砂漠に降り注ぐ


駱駝『グェーッ! グェーッ!』ドタッドタッ

少女『……くッ! 逃げ……逃げなきゃ……!!』グッ
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/10/13(木) 20:25:14.18 ID:uN2ERSQX0
乙です。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県) [sage]:2011/10/14(金) 12:02:13.43 ID:V36wK0kio
関係ないけど別の侍スレが落ちちゃったな
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/14(金) 12:43:50.08 ID:NKxLKIQIO
FFTわからんけど、こちらを待ってる
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 03:46:36.57 ID:GYIMjLfqo
久しぶりに来てやっと追いついた、続きに期待
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) :2011/10/24(月) 13:04:08.03 ID:41gHUV9AO
マダー
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/25(火) 08:00:23.19 ID:d3gBdXUIO
また、浮気してるんじゃなかろかww
684 : [sage]:2011/10/26(水) 07:59:55.41 ID:cVpxIb1AO
1です

しばらく私生活が忙しく、投下が難しい状況が続いていましたが、11月に入れば余裕ができるので今しばらくお待ち下さい
連絡が遅れて申し訳ありませんでした
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 10:00:43.12 ID:zOTBtNmSO
うむ
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/26(水) 17:26:41.64 ID:2aRoEcpHo
よかろう、下がってよいぞ
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/27(木) 08:07:07.15 ID:sMFBBgyIO
下がっちゃらめえええ!
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/10/31(月) 22:50:01.29 ID:gP39DFNAO
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

逃げなければ

駱駝『グェッ!? グェー!!』

逃げなければ

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

生き残る為にも

少女『くっ!? おねがいッだから! 走っ』

旅を続ける為にも



―――バサァ……―――



ここじゃ死ねない
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/10/31(月) 23:14:02.95 ID:gP39DFNAO
羽ばたきとも、翼の崩壊ともつかない不気味な音

背後、すぐ後ろ、そう……首筋あたりから、その音は聞こえた

振り返れば、死

明確に、背後から迫る影に


……フワッ


バサッ

奪冠鷲『ガギャ! ギャギャギャギャ!!』バタバタ


少女は外套を被せた
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2011/10/31(月) 23:43:11.56 ID:gP39DFNAO
死の予感

背中を貫かれる画が浮かんだ瞬間、少女は駱駝にしがみつく事をやめ、落馬していた

そして、自身が天を仰いで落下する最中、外套を中空に置き去りにしたのである


何故そんな事をしたのかはわからない

強いて言うなら、あれが「ひらめき」というものなんだろう



奪冠鷲『ギャギャギャギャ!! ギャギャギャギャギャギャ!!』バタバタ

外套が絡まり、もがき悲鳴を上げる奪冠鷲

もがけどもがけど、外套は外れず、いたずらに朽ちた身体が崩れるばかり

一羽の上げた苦痛の声は、瞬く間に伝染し、奪冠鷲の群は混乱に陥った
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/01(火) 00:13:05.90 ID:zw6zKZM8o
来てた!
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/01(火) 13:26:10.89 ID:xVWrTcNIO
最高ですC

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(山梨県) [sage]:2011/11/01(火) 15:42:23.27 ID:kvtgzYWm0
きてたーwktk

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/08(火) 00:45:09.04 ID:2A8kNvyAO
――ひんやりとした感触

背中に、指先に感じる、

砂ではない……しっかりとした地面


それと

この、心安らぐ匂いは――
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 00:54:12.36 ID:86oFUqXSO
キター!
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/08(火) 00:58:35.77 ID:2A8kNvyAO
……レル

少女『んん……っ?』

目元を滑る生温かい感触に、意識が浮上する

目を開けると、駱駝が顔を覗き込んでいた

少女『……あれ、私……いつ寝…………っ!』

文字通り、少女は飛び起きると、周囲を警戒した


一面には、多くの鳥の羽と肉片が広がっていた


予期せぬ反撃で混乱に陥った奪冠鷲の群は、少女に手を出さず、夜空に逃げたのだろう


けたたましい鳴き声は、もう聞こえない

少女『…………助かった、のね』

駱駝『ングェ』


間もなく、夜が明ける

少女は、ボロボロの外套を拾うと、一口水を飲んだ
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/08(火) 09:34:00.80 ID:a+I8MG/IO
再開かな。ワクドキC
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/11(金) 01:27:02.96 ID:BBZjF5wAO
若い商人「ん……」モゾ

年配の商人「起きたか」

若い商人「はい……おはようございます」

商人頭「さっさと支度しろよ。早く砂漠を抜けるに越したことはないんだ」

砂漠の夜が明けた

太陽が登ったにより、夜の間に失った熱が、再び空気に宿る

砂漠の唯一の生命「旅人」達は、日の出と共に活動を始める



――生きる事が動く事ならば、目覚めとは熱を持つ事である――



侍「……」

「兄ちゃーん! 出発するぞー!」

侍「…………」

ザッ
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) :2011/11/11(金) 10:19:44.38 ID:lq305Tnpo
しえんぬ
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/12(土) 01:37:46.98 ID:seaDWpEAO
侍「待たせてすまぬ」ザッザッ

商人頭「いいって。ほら、ちゃっちゃと乗りな」

若い商人「あ、これ朝食です。走りながら食べて下さい」

侍「忝ない」ペコ


商人頭「……なぁ、殆ど寝てないみたいだけども、大丈夫か?」

侍「寝ずの番には慣れている」

商人頭「……そうか」

侍「……」



侍「だが……」

商人頭「ん?」



侍「信じて待つというのは辛いものだな……これほどまでに苦しいとは。」
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/12(土) 01:55:46.16 ID:seaDWpEAO
……

侍達とはぐれて丸一日が経過した

大王土竜、砂蚯蚓、奪冠鷲と、外敵に見舞われた昨日と打って変わって、今日の砂漠は静かだった

少女『あつ……』

相変わらず商人隊の影は見えず、砂の海は遥か彼方まで続いている

その途方もない景色に、少女は軽く目眩した

少女『……もう、ちょっとだけ』

いけないとわかっていても、水筒に手が伸びてしまう

少女の給水は、昼前にして昨日の倍近い回数になっていた

それもその筈

奪冠鷲にボロボロにされた外套は、断熱性を失い、熱気に晒された少女の身体は激しく消耗していく
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/12(土) 02:10:26.89 ID:seaDWpEAO
少女(これ飲んだらちょっと休もう。危険かもしれないけど、やっぱり夜の方が)

ビュオゥッ

少女『!? ケホッ!?』

突風

砂を巻き上げ、一陣の風が吹き抜けた

その突然の出来事に、少女は大切な水筒を落としてしまう

少女『ああっ!? ちょっと待って!』ザッ

慌てて駱駝から飛び降りるが、無情にも水は重力に従って流れ出てゆく

少女『ああぁ…………』

殆ど空になった容器を手にうなだれる少女

まだ水筒はあるが、一日分はあるであろう水を失ったのは痛い

少女『横着しないで降りて飲めばよかった……』ガクッ



……ニュ

少女『……ん?』
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/12(土) 02:19:44.51 ID:seaDWpEAO
水筒の中身を吸った地面にある変化が起きた

少女『砂の海に……草が』

ごく狭い範囲ではあるが、草の芽が次々に顔を出し始めた

否、発芽に止まらず、見る見る背を伸ばし葉を広げ、とうとう花を咲かせてしまった

その様子は、まるで



少女『雨を待ちわびていたみたい……』



704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/12(土) 21:51:18.02 ID:SurKQo7oo
きたあああああ
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/14(月) 01:48:02.79 ID:UOweFjMJo
その様子は、まるで



俺『投下を待ちわびていたみたい……』
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/14(月) 22:34:34.67 ID:KvGghKUAO
少女『すごい……たったあれだけの水で、こんなに大きな花を咲かせるなんて』

青々とした葉を広げ、天を仰ぐ黄色の花に、少女は暑さを忘れてしばらく見惚れていた

少女『そっか、こんな場所にも花は咲く………………?』


ふと、少女の中に違和感が生まれる

まだ疑問とも言えない、心にできた小さなしこり

それが何を意味するのか、現時点では掴めない

だが、この違和感の正体……答えが、運命を左右すると、少女は予感した


少女『こんな時、お兄さんなら……』

無意識の内に侍の名前を零すと、少女は花を調べ始めた
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/14(月) 22:45:19.25 ID:KvGghKUAO
……

若い商人「なんで砂漠を渡るか……ですか?」

隣を走る侍に話し掛けられ、若い商人は目を丸くした

侍「話し辛いなら、無理に喋らなくてよい」

若い商人「い、いえ! 全然大丈夫です!」

もともと口数が少ない上、悪党や猛獣でも躊躇なく斬り伏せる侍は、どこか人を寄せ付けない雰囲気を持っていた

加えて、少女とはぐれてからの侍は表情も暗く、事務的なやり取り以外の会話は皆無になっていた

そんな状態の侍に話し掛けられたのだ

この青年が狼狽えるのも、仕方のない事である
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/14(月) 23:04:44.20 ID:KvGghKUAO
彼等が砂漠を渡る理由――

若い商人の話によると、彼の曾々祖父の時代は、砂漠の各地に湧き水があったらしい

年中酷暑の厳しい土地ながら、人々はその水源を頼りに街を作り暮らしていた


だが、曾々祖父が成人した頃を境に、井戸の水位が日に日に下がっていった

稀に降っていた雨もぴたりと降らなくなり、とうとう湧き水は枯れてしまっという


新たな水源も掘り当てられず、人々は移住を余儀なくされた

現在では侍達が出発した街と、砂漠を挟んで真反対の街だけが残っている
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/14(月) 23:19:36.99 ID:KvGghKUAO
若い商人の話は続く

水源がなくなり、雨が降らなくなって数十年

砂漠の民は枯れた水源の謎を解くべく、幾度となく調査を繰り返していた

が、成果らしい成果は上がらず、それを嘲笑うかのように次の問題が浮上した

彼の父親が結婚した頃を境に、見たこともない生物が出現するようになった

大王土竜や砂蚯蚓といった、肉食獣である

砂漠はその土地柄、肉食獣……それも大型であるほど自生が難しい

難しい、考えにくいのだが、砂漠で遭遇するのが現実だ
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/15(火) 00:41:59.11 ID:hF8tccu9o
ドキムネ
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/16(水) 01:41:02.86 ID:wxoBUBIAO
頑健な商人「相次ぐ犠牲者で調査は打ち切り。砂漠は棄てられちまったって訳さ」

若い商人「おおっ!? 危ないじゃないですか!」

頑健な商人「おお、悪い悪い」

小柄な商人「でも、僕らみたいに諦めの悪いやつらは、今もこうして砂漠を渡るのさ」

頑健な商人「ま、砂漠の向こうの街まで塩とか届けるついでだけどな」

小柄な商人「違う、逆だよ! 輸送は調査の口実!」

若い商人「……とまぁ、こんな感じです」


割って入って早々、話を脱線させる二人

若い商人は苦笑いを浮かべながら、事の経緯について締める


侍「なる程。お主らはそのような使命を帯びていたのか」

若い商人「使命だなんて、そんな……」


「お喋りもいいけどよー! 早くしねーと日が暮れんぞ!」


712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/16(水) 10:12:56.15 ID:Ynd/xRuzo
しえんぬ
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank) :2011/11/17(木) 19:38:45.80 ID:+jHj7NXW0
しえんしえん
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(九州) [sage]:2011/11/17(木) 20:12:03.35 ID:5NlzwFyAO
上げるなよクズ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/18(金) 01:19:22.90 ID:KrJUnFmAO
……

傾いた太陽が砂漠の凹凸を浮き彫りにする

間もなく、地平線に日が沈む

だというのに、少女は未だに花の前に腰を下ろしていた

限られた水と食料……ひいては限られた時間しか残されていない


停滞、是即ち死

だが、同時に誤った選択も許さない


少女は、一刻の猶予もないこの状況で、この花を調べる事を選択した

今、少女にとって前進するという事は、この巡り合わせを大切にする事であったのだ
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/18(金) 02:27:38.67 ID:KrJUnFmAO
駱駝『ブルル……』

少女『いい子だから、大人しくしてて』

花を食べようとする駱駝を制止させながら、じっと……時が過ぎるのを待つ


『もしかしたら、徒労に終わるかもしれない』

『花なんかに構ってないで、先に進んだ方がいい』


弱い心のあげる悲鳴が響く

諦めという名の難敵は、少女の首筋に刃をあてがい、後退するのを今か今かと待っていた
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) [sage]:2011/11/20(日) 15:27:06.71 ID:oXb69Y4AO
キテタワァ
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 17:53:27.13 ID:GoV7qWa6o
出遅れたがC
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/22(火) 02:23:20.19 ID:oNlH9hOAO
……夜

隙間風の吹き抜ける穴あきの外套にくるまった少女は、乾飯を食べながら、砂漠の花を見守っていた

太陽が沈み、気温が一気に下がると、花は首を垂れて金色の実を結んだ

少女『わぁ……』

月明かりに照らされ、艶やかに光る果実は、まるで日の光を凝縮したように美しく……




――――バサッ


少女『!』

奪冠鷲『ガチャガチャガチャガチャ!!』バサッ


夜の住人に雲をかけられて尚、輝いていた
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/22(火) 02:37:09.93 ID:oNlH9hOAO
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

駱駝『グェー!! グェー!!』

無数、本当に無限にいるのではないだろうかと思える程の腐乱した鷲に囲まれる

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

か弱く、小さな存在を嘲笑うかのように、鷲達はけたたましく鳴き喚く

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

少女『ッ……』


逃げるか――


選択が迫られる

砂漠の花、果実を…………自ら進むと決めた道から引き返すか?

それとも、行き着いた先――崖から踏み出すか?
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/22(火) 02:40:52.70 ID:oNlH9hOAO
ビュオ――――――――ッ






少女『あ』





後退する気なんて、ちっともなかった

迷いなんて、微塵も……

本当に、本当……本当だってば

信じてよ、


神さま





722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/22(火) 02:48:09.33 ID:oNlH9hOAO
風を、感じた


その次の瞬間には、少女の背後で奪冠鷲達が果実を嚥下していた

少女『――――イヤ』



少女『返して! 返してよ!!』

自分より幾回りも大きい化け物に、少女は飛びかかった

が、



バサァ――――



少女『ッぶ!?』ズザーッ


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

奪冠鷲達は天高く舞い上がり、また少女を嘲笑うかのように喚き、地平へと飛び去った……
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/22(火) 03:01:10.39 ID:oNlH9hOAO
―夜の砂漠を、駱駝が走る

背中には、遠い遠い国の少女

月の光を湛えた、金の髪

それを彩る、銀花の飾り

眼には涙

伝い落ちる雫が、砂漠を濡らす―
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/11/22(火) 03:08:48.51 ID:oNlH9hOAO
直ぐに立ち上がり、駱駝を走らせた

どんどん離れていく黒い翼を追いかけて、前へ、前へ


少女『……えぐッ、……グスッ』


胸に広がる絶望感に、目頭が熱くなる

止め処なく溢れる涙が、風で後ろへと飛んでいく



……それでも

それでも見開いた瞳は行き先を見つめていた
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/22(火) 09:23:23.54 ID:jlcUwl7zo
いつも楽しみにしてる
726 : [sage]:2011/12/01(木) 05:33:51.66 ID:TBrT8IKAO
週末までお待ち下さい
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 06:45:25.56 ID:JvsVzGwSO
把握
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 13:15:40.14 ID:t6XIiw5ro
わくてけ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越) :2011/12/03(土) 22:20:40.74 ID:aPvPb2SAO
頑張ってくれ
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/12/05(月) 09:04:53.86 ID:R/vA9wyAO
……

翼の群は朝日に消えた

辺りが明るくなり、涙がようやく止まった頃、少女は滅びた集落に辿り着いた


少女『……ッ』


鍬振るう骸骨『…………』ザク…ザク…

瓶持つ骸骨『…………』

駱駝の骸骨『……』


集落には骸骨が暮らしていた

滅んだ事実を否定するかのように
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/12/05(月) 09:17:47.87 ID:R/vA9wyAO
崩れ落ちた石造りの住居

骸骨が鍬入れする、かつて畑だった砂地

布が敷かれただけの露店


生気を失った村は、生気を失った住人と今も変わらぬ生活を続けていた

いや、生活と言うよりは時間の浪費というのが適切か……


少女『あの……』

少女は、恐る恐るひとりの骸骨に話しかけた

骸骨『…………』

しかし、骸骨は反応しない

少女の言葉が通じなかったからかもしれない

或いは、耳がなかったからかもしれない
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 09:26:02.74 ID:wEpHMSsSO
偶然ドラクエ7のサントラのこれ聞いてて文との相乗効果がヤバい

http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&client=mv-google&v=IqxYlHFJtwU
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/12/05(月) 09:31:29.41 ID:R/vA9wyAO
―見る目がない癖に、こちらの忠告を聞く耳も持たず

時間を浪費し、骨折り損ばかりしている奴がいる

全く、馬鹿は死んでも治らない―



集落の中心に大きな穴を見つけた

周りに落ちている採掘道具から、この穴は骸骨達が掘ったものだという事がわかる

少女『井戸、掘ってるんですか……?』

縄を垂らす骸骨『…………』

穴を見下ろす骸骨から返事はなかった

だが、少しだけ骸骨が頷いたように見えた
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 10:47:57.23 ID:XIrtObQWo
kt!!!
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/12/06(火) 00:24:53.68 ID:FGXAMY2AO
骸骨『……』クックッ

少女『縄が動いてる?』

骸骨は、垂らしている縄が二度引っ張られると、両手に持ち替え、一度だけ強く引いた

骸骨『……』グッ


縄をピンと張っり、両の足を砂地に突き立てる骸骨

何かを引き上げる仕草だが、骸骨は踏ん張った姿勢を取ると、微動だにしなくなった
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [saga]:2011/12/06(火) 01:01:20.87 ID:FGXAMY2AO
……

少女『あの、もしもし?』

骸骨『……』

太陽が空の頂点を過ぎる頃になっても、相変わらず骸骨は縄を張っていて

大きな縦穴に下ろされた縄も、相変わらずそのままだった

水も食料も限られている現状、少女にはこの「時間の浪費」に付き合う余裕はないのだが……

少女『…………きた!』

…ガシャ……

ガシャ…ガシャ……

物がぶつかり合う無機質な音が縦穴に響く

覗き込むと、土にまみれた骸骨が縄を登っているところだった
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/12/06(火) 01:06:08.17 ID:FGXAMY2AO
縄垂らすが抜けてました
脳内補完お願いします
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 02:09:08.08 ID:OKJ0UUH/o
湧くてか
湧くてか
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/06(火) 08:02:21.11 ID:Jjxqnl3SO
740 : [sage]:2011/12/07(水) 07:30:52.61 ID:6YqbLnPAO
やっぱり北斗スレは書いてて楽しいです

ジャギ「今日が何の日か言ってみろ!」ケンシロウ「あ、俺の誕生日!」


あと最近書いた旬物

小鷹「普通にしてればかわいいのに」小鳩「ふぇ!?」ドキッ
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 08:11:49.94 ID:QXtIOVg5o
北斗スレもしかしたら>>1かもしんないけどんなことねーわなwwwwwwwwって思ったらやっっぱりかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 09:26:47.80 ID:fNd2XpeIO
ここまで[田島「チ○コ破裂するっ!」]されるとは思ってなかったわ
743 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/12(月) 23:12:25.81 ID:xVfIVZpAO
土まみれの骸骨『……』ガシャッ

地中から這い上がった骸骨は、背負っていたつるはしを下ろすと、うなだれたまま動かなくなった

縄を張っていた骸骨も、俯き加減の姿勢をとると、再び動かなくなった

土まみれの骸骨『…………』


身体を休める木陰も、永久の眠りにつく墓もない廃墟


少女『……よし』

少女は、せめて、この勤勉な死者達に手向ける花を咲かせようと心に決めた
744 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/12(月) 23:21:59.48 ID:xVfIVZpAO
少女『あの、降りてもいいですか?』

縄を垂らす骸骨『……』

少女『大丈夫かな……さっきみたいにしっかり持ってて欲しいけど……』

縄を垂らす骸骨『……』

正面から話しかけても、相変わらず骸骨は無反応だった

骸骨同士にも会話はなく、ただ同じ行動を繰り返しているように思える

少女『ひょっとして……』クックッ

二回引っ張るのが縄を張る合図と見て、少女も真似をする

縄を垂らす骸骨『……』

が、骸骨はうなだれたまま
745 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/12(月) 23:29:40.43 ID:xVfIVZpAO
少女『駄目かぁ』

トントン

少女『え? わぁ!?』

土まみれの骸骨『……』スッ

少女『……ひょっとして、これを持ってけと?』

土まみれの骸骨『…………』

骸骨は少女につるはしを差し出した

穴に入るなら続きを掘れと言っているのか……

何にせよ、この廃村に来て初めて骸骨達が少女に対して起こした行動だった
746 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 23:37:36.66 ID:vC1qD9vSO
きたか
747 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/13(火) 00:23:37.95 ID:FZ0RRT0AO
……

商人頭「こいつぁ……どういう事だ?」

頑健な商人「どうしました?」

商人頭「こいつを見てみろ」

商人頭が差し出した方位磁針は、北を指す事なくグルグルと回っていた

頑健な商人「磁石で直せないんですかい?」

商人頭「さっきからやってんだが……って、あれ?」

ピタリと止まった指針は、先ほどまで北だった方角と、およそ関係ない方向を差していた

商人頭「あちゃー……本格的に狂っちまったか?」


侍「……」

侍の脳裏に災厄を司る神と出会った時の記憶が蘇る

そして、針の示す先に新たな試練と、はぐれてしまった少女が待っている予感がした
748 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 16:27:46.26 ID:YfzWbdOIo
素晴らしいと支援
749 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 20:54:01.07 ID:n7+MTEiF0
うんうん
750 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 18:32:22.60 ID:FVmbVZ4AO
商人頭「誰か、新しい方位磁針を出してくれ」

小柄な商人「あいよ」ゴソ

商人頭の指示を受け、小柄な商人が予備の方位磁針を取り出す

小柄な商人「あれ? こいつも狂ってる……」

商人頭「何だと?」

若い商人「俺のも駄目です!」

年配の商人「こっちも駄目だ! 一度に全ての磁針が故障するとは……」

商人頭「クソ……どうなってんだ!」



侍「天啓だ」

若い商人「……天啓?」

侍「世の理を超えて我々にもたらされる選択肢の一つだ」
751 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 18:42:15.60 ID:KJExgfmho
wkwk
752 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 18:43:55.40 ID:FVmbVZ4AO
頑健な商人「世の理を超え……?」

年配の商人「本来、北以外を指す筈の無い磁針が、この方角を指している事に意味を感じる……」

年配の商人「そう、言いたいんじゃな?」

侍「……」

侍は、磁針の指し示す先を向いたまま、そっと目を閉じた

肌黒商人「でも、その磁針の方角は、俺達の向かっていた方向とかなりズレてる」

肌黒商人「試しに目指してみる……って訳にはいかねぇぜ」

商人頭「だが、正常な方位磁針が無い以上、今まで通りに砂漠を渡る事は難しい」

肌黒商人「そりゃ……そうだけどよ」
753 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 19:04:11.55 ID:FVmbVZ4AO
本来の目的地を目指したいのは、商人頭も同じだった

だが、時と共に姿を変える砂漠で、太陽の位置を頼りに旅をするのは、余りに心許なかった

肌黒商人「じゃあ……兄さんの言う通り、狂った磁針に賭けてみるんですかい?」

商人頭「…………」

狂った方位磁針の指し示す方向へ進む、という選択もまた危険である

目印の無い砂漠において、現在位置を割り出す事は不可能である為、出発点から目的地を一直線に進む事が重要となる

従って、途中で直線上から外れる行為は、砂漠での遭難に繋がるので避けなければならない
754 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 19:34:37.04 ID:FVmbVZ4AO
若い商人「あの……」

商人隊を包んでいた重苦しい空気に、若い商人が一石を投じる

若い商人「俺は、剣士さんの言うとおり、この針の指す方へ進むのがいいと思う」

若い商人「方位磁針が北とは別の方向を指しているのは、何か……強い力に引かれての事に思えるんだ」

年配の商人「……しかし」

若い商人「確かな事が何一つ無い今、役に立たなくなった常識は捨てるべきだ」
755 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 19:50:39.80 ID:FVmbVZ4AO
頑健な商人「お頭はどう思います?」

商人頭「……」


商人頭「俺の見立てだと、兄ちゃんはこういった死線を幾つもの越えてきた人間のはずだ」

商人頭「今みたいに八方塞がった時、兄ちゃんならどうする? その天啓ってやつを信じるかい?」

侍「……」

侍はまた、静かに目を開くと言った

侍「天啓もまた、選択肢の一つに過ぎぬ。何を選ぶかは、私が決める」

侍「大切なのは、己の選択を誰かの所為にせぬ事。自らの失敗を、何かの所為にせぬ事。そして、最期まで闘い抜く事だ」


――――ビッ

侍「私は選択する。この針の示す先に進むと!」
756 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 20:00:14.98 ID:zR4XsWRSO
濡れた
757 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/19(月) 21:07:52.98 ID:9CWPcyCIO
同意
758 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 21:10:54.69 ID:FVmbVZ4AO
侍の宣言に、誰もが呑まれていた

居合わせた者は勿論、空も大気も、砂漠日差しさえも心奪われ止まっていた


―やがて、侍は刀を収めると

侍「お主、良い目をしているな」

振り返り、若い商人にそう言った
759 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 23:36:41.36 ID:FVmbVZ4AO
砂漠「の」日差しでした
760 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/19(月) 23:59:30.12 ID:FVmbVZ4AO
若い商人「そ、そうですか?」

侍「うむ。まだ荒削りだが、先を見通す良い目を持っているように見える」

若い商人「ありがとうござ―」

ズズ…


――ドバァァァァァアアアアッッ

砂蚯蚓「キシャアアアアアアアアアアア!!」



飛沫を上げ、巨大な砂中から姿を表す

世界ごと獲物を呑み込まんと言わんばかりに口を開いた、砂漠の主――砂蚯蚓

若い商人「いっ!? 砂蚯蚓!?」

駱駝「ングェー!!」ドタドタ

商人頭「ちッ! みんな駱駝に―ッ!?」グラッ


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ――

砂蚯蚓は大きな口で地表を喰らいながら、商人隊に襲いかかる

砂は崩れ、川が下流に下るかの如く、砂蚯蚓の口へと流れ込んでゆく

761 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 00:13:24.18 ID:9Xvj80nAO
小柄な商人「うぁ!?」ズデッ

頑健な商人「駄目だ! 立ってらんねぇ!!」


砂蚯蚓「キシャアアアアアアアアアッッ!!」


商人頭「くッ!?」



「案ずるな。お主らは拙者が守る」



若い商人「!」

流体と化した砂

砂蚯蚓の大口の、目と鼻の先に侍は立っていた

若い商人「駄目だ! 喰われちまう!」
762 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/20(火) 01:03:08.46 ID:9Xvj80nAO
砂蚯蚓「シャアアアァァァア!!」ゴゴゴォ
商人頭「無茶だ! 兄ちゃん!!」


――ィンッ

砂蚯蚓の大口が喰らいつく瞬間、侍の刀が光を放ったように見えた


バクンッッ


若い商人「そんな……」

砂蚯蚓は侍の事など意に介せず、砂ごと呑み込んだ



「拙者の払いだ。存分に喰らうが良い」




砂蚯蚓「ギッ!?」ブシッ

そして、その迂闊さ故に死ぬ事になった


ブシャァァァ――――



侍「言ったろう、案ずるなと」チャキッ
763 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 01:07:42.52 ID:9Xvj80nAO
今日はここまでです
あと10日ほどで今年も終わりですが、風邪などひかないようご自愛下さい
おやすみなさい
764 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sagesaga]:2011/12/20(火) 01:29:04.38 ID:ELLyZ9/So
おつおつ
765 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 01:34:58.69 ID:PLd4m7zQo
おつ
侍と少女には早く再会して欲しいと願う一方
会えない焦れったさも読む楽しみの一つ
766 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 04:53:10.20 ID:Ivn4VPV1o
>>1様こそご自愛ください
次をお待ちしております
767 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/20(火) 08:45:12.09 ID:7K7hyXBSO
768 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 21:35:10.53 ID:ga6D1c/Z0
おつおつ
769 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/21(水) 22:29:35.12 ID:n9vytb2AO
小柄な商人「……っ」

肌黒商人「…………」

血に染まった砂の中、侍は返り血すら浴びずに立っていた


皆、言葉を失った

『あの』砂蚯蚓がほんの一瞬、まばたきの間に肉片と化す、壮絶な光景

自分の中にある常識がねじ曲がるかのような、非現実的な出来事

理解を超えた事象が、今目の前に起きたのだ


侍「……怖いか?」

振り返らず、侍は訊ねた

商人頭「……馬鹿野郎。怖いじゃねぇ、頼もしいって言うんだ」

商人の頭が言うと、皆頷いた


侍は、やはり振り返らず「ありがとう」と言った
770 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/21(水) 22:46:08.02 ID:n9vytb2AO
…………

少女『く……ッ、いっ…………!』ズッ

一体どれくらい降りただろう

地上から降り注ぐ光がか弱くなっても、依然として縦穴は底を見せない

少女の握力は長時間縄を握りしめていた事で弱り、縄が手の中をすり抜けていく

そのたびに擦り切れた掌に鋭い痛みが走り、反射的に手を離しそうになる

少女『く…………はぁ……』ザリッ

足下の硬い感触を慎重に確かめ、少女は岩の隙間にできた足場に体重を預ける
771 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/21(水) 23:02:18.22 ID:n9vytb2AO
この縦穴を降り始めてわかった事がある

それは、大地が何種類かの層に分かれている事だ

砂ばかりだと思っていた砂漠にも、地下には土の層があり、やがて岩が多く紛れた層へと到達する

そのおかげで、少女は岩場を頼りに、つかの間の休息を取る事ができるのだが……


少女『どこまで……』

どこまで続くのだろう

口からこぼれそうになった不安を、少女は無理やり飲み込んだ
772 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/21(水) 23:12:11.38 ID:n9vytb2AO
少女『……んく』

渇ききった喉を自分の唾でごまかす


もう、上を見るのは止めよう

降りる事、先に進む事だけを考えよう


そう心に決め、少女は萎えかけた心を奮い立たせる

少女『……よしッ』グッ

決意を新たに、上半身を壁から離した

その時




ブ―――――ォ―――ンッ




少女『…………え』


風を切る音と共に、天地が逆転



闇に包まれた視界が加速




奈落へ






奈落へ








773 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 23:15:03.06 ID:n9vytb2AO
少ないですがここまでです
私の意識も奈落へー
774 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/21(水) 23:36:14.64 ID:vuc/d43AO
乙!良かったぜ
775 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 00:49:03.94 ID:aE/yZ29oo
奈落へwwwwww
おwwやwwすwwみwwww
776 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 00:55:38.43 ID:WX1kebRSO
777 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 03:45:54.28 ID:6W8u/zXo0
おつ
778 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/22(木) 07:58:23.29 ID:5SNk1lcqo
下で俺が待ち受けてたら腹の弾力で着地後も無事になりそうだな

779 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/24(土) 22:11:54.68 ID:Ct6gU2fTo
        / ̄ \
    __☆⌒>   ヽ
   /   ∩⊂ニニニ⊃∩
 /     | ノ      ヽ
|     /  ●   ● |  メリークリクマース!
|     |    ( _●_)  ミ
|    彡、    |∪|  、`\
|   / __  ヽノ /´>   )
 \  (___)   / (___/
   \   |      /
     ̄ ̄|  /\ \
       | /    )  )
       ∪    (  \
             \_)
780 : [sage]:2012/01/01(日) 01:50:34.23 ID:cHGa7eTAO
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

投下は近日中にしますので、いましばらくお待ちを
781 : ◆Nx3L9vlr.. [sage]:2012/01/01(日) 04:50:39.80 ID:Ga5aRS5oo
あけてか!
782 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 20:13:51.72 ID:logFTDuSO
今年も期待

>>781
あっちの酉つけっぱなしだぞwwwwww
783 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/01(日) 23:28:15.67 ID:Ga5aRS5oo
>>782
誠に申し訳ない
気づいた時には遅かった
784 : [sage]:2012/01/02(月) 01:50:56.33 ID:ymWZ20kAO
ここで質問するのもなんですが
>>781さんのスレってどこですか?
785 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 02:24:29.40 ID:tPfiISXSO
>>784
厳密には>>781のスレではないぞ

魔王「武器を下ろせ。お前と戦う気はない」


本編が一応終わって、この作者が読者参加で本編の続きを書いているとこ
最近投下が少ない

>>781は「侍」ってキャラで参加してる
確かここの侍に影響されて〜とか言ってた希ガス
786 :SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) [sage]:2012/01/02(月) 09:52:46.17 ID:xuqTX4nwo
このスレに憧れて読者参加型SSのキャラモデルにしました。勝手にすみません。
しかも、あまりにもデッドコピーであっちにもこっちにも申し訳なし。陳謝。
787 : [sage]:2012/01/02(月) 17:37:10.42 ID:ymWZ20kAO
そういう事でしたか
私のスレが何かしらの影響を与えられたなら、SS作者冥利に尽きるというものです
788 :以下、あけまして [saga]:2012/01/03(火) 19:45:30.19 ID:FubBur8AO
……染み入ってくる

指先から、鼻腔から

髪一本一本の間から

私の中に流れ込んでくる

冷たく、それでいてやさしい―


光と共にたゆたい

身体を包むこの感覚に身を委ね

無音の中に眠る


―ああ、そうか

ここは海なんだ
789 :以下、あけまして [saga]:2012/01/03(火) 20:00:16.52 ID:FubBur8AO
…………

少女「……」

天を仰いでいた

気がついた時には、大きく開いた縦穴の闇を見つめていた

少女「……」


少女は水面を漂っていた


少女「……水?」

ザバッ

少女「これ、全部が水……?」
790 :以下、あけまして [saga]:2012/01/03(火) 20:26:59.22 ID:FubBur8AO
意識が浮上してすぐ、少女は違和感に気付いた

立ち泳ぎをしている訳でも、水底に足がついている訳でもないのに、少女は沈んでいかない

加えて、

少女「服も、髪も濡れてない……?」チャプ

手で器をつくり、水に浸ける

……確かに、冷たい水の感触はある

だが、少女の掌に水は一滴も残らなかった

少女「……とにかく、灯りを探そう。今、何が起きているのか見極めないと!」
791 :以下、あけまして [sage]:2012/01/03(火) 22:18:06.96 ID:gQnaJKdPo
ktkr!
792 : :2012/01/04(水) 03:01:22.04 ID:bfxqpRmAO
また少女の括弧を間違えた…
本当に申し訳ありません
793 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 07:04:09.74 ID:KeGRPnXIO
え?どこ?
わからない
794 :以下、あけまして [sage]:2012/01/04(水) 08:07:18.69 ID:pgjnukeSO


二重括弧か
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/01/09(月) 18:31:26.85 ID:jx1P/c5AO
ドタドタドタ……

商人頭「兄ちゃん、そろそろ日が暮れるぜ」ドタドタ

侍「行き先は決まっているのだ。このまま進んでも差し支えないだろう」

日中に比べると夜の砂漠は気温が低い分、体力の消耗が少なく、駱駝の疲労も溜まりにくい

方角に関しては、太陽の位置から割り出さなくても、方位磁針さえ持っていれば済む

これだけ聞くと、無理に猛暑の砂漠を旅する必要はないように思えるのだが

商人頭「駄目だ。夜の砂漠の進行は認められん」

侍「何故だ。確かに夜は冷えるが、日中の進行に比べれば、幾分も楽であろう」

侍はかねてより疑問に思っていた

何故、夜に歩みを進めないのかと

商人頭「……夜の砂漠はあの世と繋がっているんだ。夜明けの先には、絶望しか待っていない」
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/01/09(月) 19:06:23.48 ID:jx1P/c5AO
砂漠に住む者達には、禁忌とされる行為がある

それは、夜に砂漠を渡る事である

日差しの非常に強い日中に比べ、夜の砂漠は防寒対策さえしていれば、比較的快適に旅をする事ができる

その為、禁忌を知らぬ旅人達は、夜に旅をする

そして、そういった旅人達は、例外なく行方不明となる


昔……砂漠に人々が居を構えるようになった頃から、夜の砂漠には見えざる脅威が在った

何故、『見えざる』なのか

それは、人々を襲っているのが一体何なのか確認できていなかったから

言い替えれば、その脅威と遭遇して、無事に生還した者がいなかったという事である
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/01/09(月) 19:32:39.83 ID:jx1P/c5AO
ある時、砂漠の住人達は意を決し、『見えざる脅威』の打倒に立ち上がった

各集落から腕利きを募り、男達は隊を組んで夜の砂漠を渡る


一日、二日、三日……

待てど暮らせど男達は帰って来ない

七日目の朝、留守を任されていた男達が捜索に出ると、血で赤黒くなった水筒を発見した


「ここは最早、この世ではない。朽ちた鷲が空を飛び、死んだ仲間が歩き回る地獄だ。夜に出歩こうなどとは考えるな」


中には、村人に宛てた最後の手紙が入っていた
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/09(月) 20:23:39.56 ID:i9RoP0lSO
見直したら少女夜走ってるな
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/01/10(火) 00:29:10.75 ID:MjvKEwMAO
侍「なるほど。故に夜の砂漠を渡ってはならぬ、と」

年配の商人「砂蚯蚓や大王土竜のいない頃ですら、夜の砂漠を移動するのは自殺行為だったんだ。どんな化け物が現れてもおかしくねぇ……!」


侍「では、止めるか?」

侍「失われし水源と故郷を取り戻さんと、苦難に立ち向かうと決めたのではないのか?」


年配の商人「……っ」

侍の言う通りだった

砂漠を渡るという行為自体、生きて帰れる保証の無い……身投げのようなものだ

商人隊として各地を旅するようになった後も、幾度も砂漠に挑んでいるのは、帰郷という夢が棄てられないからではないか

商人頭「…………」

手のひらの方位磁針に目を落とすと、針がまたグルグルと回っていた
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/01/10(火) 01:41:55.91 ID:MjvKEwMAO
商人頭「…………」


―ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ―


商人頭「!? なんだこの音は!?」

駱駝「グェー!! ングェー!!」ドタドタ

頑健な商人「静まれって!! クソ! なんなんだこの喧しい……」


バサ……ッ バサァッ


頑健な商人「音……」


奪冠鷲「ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!」バサァッ


夜の帳と共に、腐臭を漂わせながら、黒い翼が砂漠の空に現れた

小柄な商人「あ、あれが『夜の住人』……」ガタガタ

侍「怖ろしいか?」

商人頭「あ、あんなおぞましいの……初めてだ」

商人頭の額に汗が滲む

他の者達も、手綱を一際強く握り、気を保つので精一杯のように見えた

侍「では、逃げるか?」

商人頭「…………」



商人頭「……いや、進む。兄ちゃん、力を貸してくれ」

侍「御意」チャキッ

商人頭「やるぞみんな! 銃を構えろ! 奴らに鉛玉ぶち込んでやれッ!」チャキッ
801 : [sage]:2012/01/19(木) 00:39:00.25 ID:eflexRVAO
明日ないし明後日には投下します
ごめんなさい
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2012/01/19(木) 00:42:26.97 ID:f40axAmDo
のんびりやってくれりゃいいよ
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/19(木) 07:05:57.77 ID:I7HnR+jIO
同じく気楽に投下待ってる
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/22(日) 04:43:07.10 ID:e/0m3oqAO
ダーンッ ダーンッ ダーンッ

奪冠鷲「ガチャガチャガチャガチャ!」ビズッビズッ


色黒商人「き、効いてねえ!」

商人頭「効くまで撃ち込むんだよ! いいから弾詰めろ!」カチャッ


金属のぶつかり合うような、脳の芯に響く声を上げ、奪冠鷲が接近してくる

その身に弾丸を受け、身体が崩れ落ちようと、鷲が怯む事はない

若い商人「既に身体が死んでいるから、頭が吹き飛んでも死なないのか……?」

頑健な商人「知らねえよ! ただ、痛くも痒くもねぇって事は確かだぜッ」ダーンッ
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/22(日) 05:28:01.79 ID:e/0m3oqAO
ビュォウ……ビュォウ……

甲高い音に混じって、なんとも不気味な音が聞こえる

肉が脱落し、風を切れなくなった奪冠鷲の翼が奏でる、歪な羽音

その羽音は、けたたましい奪冠鷲の鳴き声にかき消される事無く、商人隊一行の耳に響く


ビュォウ……ビュォォウ……ッ


虚しくも物悲しい、嘆きの声に似た羽音

……ザッ

侍「未練、か」

商人隊の前方遠く、奪冠鷲の群の前に侍はいた

上空を取り巻く禍々しい鳥の群をして、侍はやはり眉一つ動かさない

侍「お前達は、未練を乗せて飛んでいるのか」

奪冠鷲「ガチャ……」


―ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ―


806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 10:59:17.01 ID:iC6P8Tgyo
さむらいたんktkr
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/24(火) 01:51:35.80 ID:ZrCI5H6AO
侍の言葉を受けてか……奪冠鷲が激しく鳴き立てる

侍「最早、己が何者なのか……何故現世を彷徨うているのかも判るまい」


―ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャッッ―


砂漠中が目を覚ますのではないかと思う程騒ぎ立てる


――スラッ

侍「来い。その救われぬ生涯に幕を下ろして進ぜよう」チャキッ


侍が刀を抜く

すると、それが合図だったかのように、奪冠鷲の群が侍に殺到した
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/24(火) 03:16:23.55 ID:ZrCI5H6AO
奪冠鷲「ギャギャギャーッッ!!」ギュオッ

奪冠鷲「ガチャガチャ!!ガチャガチャガチャガチャッッ!!」ビュオッ


ズバッ

宵闇をより深い黒に染める黒い翼

砂漠の骸鳥、後に「奪冠鷲」の名で記される怪物が、次々に侍を襲う

キィンッ

50、60……或いは100を超えていたかも知れない

最早、黒い竜巻にしか見えぬその猛攻を凌ぎ、

ザンッ

太刀を浴びせる


奪冠鷲「ギャッ!ギャッ!ギャーッ!!」ビュオッ

ギンッ

バシュッ


ズバッ



チャキン――ッ
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/24(火) 03:25:47.92 ID:ZrCI5H6AO
頑健な商人「お、お頭……!」

商人頭「信じろ。あの砂蚯蚓を倒した人間だ。鳥の化け物ぐれぇ、何てことねぇさ」
頑健な商人「でも、奴ら不死身なんですぜ? 剣で斬っても……」


奪冠鷲「ガチャガチャガチャガチャア!!!!」ギュオッ

頑健な商人「!?」


商人頭「ッてぇ!!」


ガウンッガウンッガウンッガウンッガウンッッ


奪冠鷲「ギェギャギャ!!」ビズッビズッ

ドシャァッ
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/24(火) 03:40:22.97 ID:ZrCI5H6AO
小柄な商人「やった! 墜ちたぞ!」

商人頭「こいつで終いだッ」ブンッ

奪冠鷲「ギャギャギャ―」

パリンッ


ボワァッッ


――メラメラメラメラメラメラ……


「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!」


火炎瓶を受けて、奪冠鷲の死肉が激しく燃え上がる

若い商人「これで死んでくれ……」

商人頭「銃を構えとけ。何があるかわからん」


「ギ……ギィ…………ィ」


炎に包まれ、黒い煙を上げながらも、奪冠鷲は商人隊へと向かってきた

が、途中で身体が焼け落ちると、とうとう動かなくなった……


色黒商人「倒したの……か」

年配の商人「こいつらを倒したのはわしらが最初だろうな」

商人頭「油断するなよ。次も同じようにいくとは限らん」
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/01/24(火) 14:24:13.85 ID:oU3+vOjIO
相変わらず面白いです
楽しい
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/24(火) 18:48:57.00 ID:NJw36LxIO
同意C
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/25(水) 20:57:11.51 ID:vGR7xgpAO
……

奪冠鷲の襲来から四半刻


ボウ――ッ


商人頭「! な、なんだ!?」


ボウッ
 ボウボウッ


それは突然始まった

いや、来るべき時が、ようやく訪れたと言うべきか


ボウッ ボウッ


年配の商人「鳥共が……」


薄紫の光が、闇に咲く

燃え上がるように激しく

美しい過ぎる程、儚く、煌びやかに


 ボッ  ボウッボウッ
ボウボウッ  ボッボッッ

――ボウッボウボウボウッボウッッ――


若い商人「弾けていく……! 魂が、命が散っているんだ!」
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/01/25(水) 21:08:05.67 ID:vGR7xgpAO


――――ビッ

「――――ギャ」


絶え際の、


ブシャッ――――――ボウッ



チャキ――ッ

「ギェーッ!!」 ――――ズバァッ

ボウッ――――


微かに薫る、故郷よ


ザッ――――バシュッ


奪冠鷲「ァ――――」ブシッ


侍「瞼閉づるば、泉津平阪」チャキンッ


――――ボウンッ――――
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/01/25(水) 21:22:01.22 ID:vGR7xgpAO
闇に咲いた薄紫の光は

風に散る夜桜の如く、また、闇に消えていった……



侍「南無……」

商人頭「兄ちゃん!」ドタドタ

頑健な商人「よく無事だったな!」ドタドタ

若い商人「……それは?」


膝をつき、両手を合わせる侍

その足元には、小さな花が一輪咲いていた
816 : [sage]:2012/01/25(水) 21:31:01.38 ID:vGR7xgpAO
少なくて申し訳ないですが、今日はこれで終わりです

支援レスいつもありがとうございます
とても励みになっております

おやすみなさい
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/25(水) 21:49:38.98 ID:hjnH9VRSO


いい短歌だ
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/26(木) 08:11:31.34 ID:YWOs0pNIO
乙C

支援しかできないが必至に支援させていただく
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 06:50:41.16 ID:VmoEptXDO
面白いのにスレ自体の盛り上がりに欠けるのはなんでだろう?
雑談もほぼ皆無だし住民少ないのかな
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 07:39:25.17 ID:8wJ7WJNSO
少ないはずはない


はず

きっと馴れ合いより静観組が多いんだよ
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 11:18:17.41 ID:H0BedmnIO
>>819
前スレが始まって一年半
投下間隔と乙&支援を見れば
作者ペースを尊重する静観組が多いのは明白

ちなみに、毎度投下翌日ぐらいに支援してるオレが一番ガキっぽいwwww
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 22:11:37.85 ID:WEFh0xTVo
>>819
投下内容がぶつ切りだから
話途中にあまり目立つレスを挟むと読む邪魔になるから
話の切れ目以外は控えめにしてる
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 15:33:06.08 ID:zEjdhY7DO
投下速度が遅過ぎるんだよ
いわせんな恥ずかしい
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/31(火) 23:34:25.70 ID:PoRGlytIO
遅さも作者の味
続いてくれりゃ
ゆっくりでいい
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/06(月) 23:03:49.42 ID:vV1CxalAO
…………


少女『ちょっとはマシになったかな』ペタ

少女の行く手を、横顔を、足元を、淡い光が照らす


地底湖がある地層には、熱に呼応して光を放つ鉱石が混じっているらしい


少女が壁面に触れれば、そこから微かな光が広がり、素足で歩けば光る足跡が残る

つるはしで掘り出した欠片をかざしながら、少女は壁面沿いを右回りに進む

少女『これだけ水があるのに、骸骨さん達はなんでつるはしを持って……』
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/06(月) 23:13:34.30 ID:vV1CxalAO
手で掬えずとも、ちゃんとした器なら或いは

そう思い、少女は空になった水筒で給水を試みた

が、やはり水は汲めなかった

水中で封をしても、栓を開けると中身が空になっている

汲めない水……

骸骨達も、地底湖の水が「汲み上げる事が出来ない」と知って、別な水源を探しているのか……


…カツーン


少女『……ん?』


カツーン カツーン


少女『つるはしの音? 骸骨さん達かな』
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/06(月) 23:32:30.42 ID:vV1CxalAO
カツーン

カツーン カツーンッ

大きくなる金属音が、対象への接近を知らせる

少女は、曲がり角の手前で一旦歩みを止めた


少女(もし、もしも骸骨さん達じゃなく……悪者だったら……)


何者かが、死者を操って労働力にしている、という可能性がない訳ではない

それに、骸骨達が襲って来ない保証もない

汲めない水が在るぐらいだ。何があってもおかしくない

少女は靴を履き直し、鉱石の欠片を鞄に仕舞うと、闇の中へと足を踏み出した
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/02/06(月) 23:51:22.15 ID:TT3LDTKSo
そろ〜っと来てた
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/06(月) 23:55:23.72 ID:vV1CxalAO
投下間隔あいて申し訳ありませんでした
おやすみなさい
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 06:33:56.28 ID:ITFoVxs/o
>>1のプライベートだって筆のノリだってあるんだからマイペースでいい
ちゃんと続けてくれてるから気長に待ってる
>>1は俺の嫁///
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/07(火) 23:38:15.28 ID:kYNi9G+AO


カツーン

カツーン


遙か彼方から音が湧いている


カツーン

カツーン


いや、音は目と鼻の先で生まれている


カツーン

反響

カツーン


反響


カツーン



反響



あれ、私はどこにいるんだろう?
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/08(水) 00:26:02.47 ID:gNVjCyZAO


少女(……ッ、駄目! しっかりするのよ、私!)バッ


耳を塞ぎしゃがみこんだ

木霊に聴覚をやられないよう、本能的に身体が取った行動だった

少女(自分の事は、自分で守るのよ。誰でもない、私が守るの)

強く自分自身に言い聞かせる

少女(私は強くなる。胸を張って、お兄さんの隣に居る為に)



――もっと、もっと強くなる!――



耳を塞いでいた手を離すと、少女は再び立ち上がり、歩き出した

もう、木霊は聞こえない

熱い鼓動が、雑音を全部かき消してくれるから
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/08(水) 00:30:39.02 ID:gNVjCyZAO
2レス書くのに2時間かかる超遅筆ですが、どうか多目に見てやって下さい
ラストは出来上がってるので、そこまで行けばスラスラ進む……筈です

では、おやすみなさい



>>830
ありがとうございます///
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 00:38:07.41 ID:dx4npVvSO
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 06:35:14.13 ID:axqR05Vyo

ラストとか(涙)
終わりを意識したら、もう…ぅぅ
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/15(水) 21:29:30.17 ID:lQQn8wwAO
カツーン

左足を差し出す

カツーン

右足と身体を送る

カツーン

また、左足を差し出す

少女(……)

闇に自身を見失わなぬよう

音の中に迷わぬよう

鼓動を頼りに、進んでいく

少女(……)


こめかみが甘く疼く


少女(……何か、忘れているような…………)
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/15(水) 21:34:38.43 ID:lQQn8wwAO
左足を出したところで、暗闇しか映らない目を瞑った

少女(何だろう……何か…………)

何か、忘れているような感覚

記憶が、既視感が疼く感覚


何だろう……



何か、大切な何かが芽生えそうな感覚



838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/15(水) 22:12:35.47 ID:lQQn8wwAO
―森羅万象


汝、全知を望むのならば

耳、余りに不確

目、うつるは全て朧なり




耳ではなく肌

鼻ではなく舌

舌を肌とせよ

耳を目とせよ

己を空に、空は己に


汝はこの世と共に在り

この世は汝の目に映るがままに―
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/15(水) 22:28:04.47 ID:lQQn8wwAO
少女の中に、いつかの記憶が蘇る



それは、ある太陽が失われた日の記憶

世界は闇に包まれ、天も地も見失い、音すらも失われた日

人々は自身をも見失い、縋るように大地に這いつくばった


少女(私は知っている。真の闇とは何なのかを)

闇の輪郭に目を見開き、自身を見失わず駆け抜けた



そう、私は知っている


「人が道を見失う時は、心を閉ざした時である」


840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/15(水) 22:56:30.70 ID:lQQn8wwAO
少女『……』

静かに瞼を開くと、暗闇に地底湖の景色が浮かんだ

少女(わぁ……!)

岩肌が、地面が、路傍の石ひとつひとつが、その存在を主張しているように見える

少女(すごいすごい! 私、夜目が利くように)


『嬢ちゃん、手伝ってくれるのかい』

少女『!?』ビクッ

背後からかけられたら声に振り返り、

提灯を持つ骸骨『やあ』

少女『――――っ!?』ビクーンッ


また、視界が真っ暗になった
841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/15(水) 22:59:40.47 ID:lQQn8wwAO
ちょっと休憩
今日はもう少し書きます
842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/15(水) 23:15:02.21 ID:0WU5aOmSO
ふむ
843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/16(木) 00:31:55.50 ID:bi0WjrrAO
…………


駱駝「ングー!」ドタタッ

侍「……」グィ


ドタドタドタドタッ

商人頭「へぇ……へぇ……と、飛ばしすぎだぜ兄ちゃん!」

駱駝を止めた侍の横に、商人頭の駱駝が駆け寄る

二人の遥か後方では、荷を積んだ駱駝を引き連れた商人隊が後を追っていた

侍「……すまぬ。気が急っていた」

商人頭「……まぁ、わからないでもねぇけどよ。走りっぱなしじゃあウマが潰れちまう。今日はもうここいらで休むぞ」

昨夜から昼夜を問わぬ進行に、駱駝の動きは鈍り、手綱を握る商人達の顔にも、疲労が色濃く浮かんでいた
844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/16(木) 00:51:28.96 ID:bi0WjrrAO
西の空が赤く染まり始めた頃、大分遅れて後続が追いついた

小柄な商人「へ……へぇぇ……」ドタドタ

年配の商人「……年寄りに無茶させよって」ドタドタ

商人頭「みんな、よっく頑張った。今日はここで夜営だ」

小柄な商人「や、やったぁ…………ッぶ!」ドサッ

頑健な商人「お頭、駱駝の消耗がひでぇ。多めに水をやっとかねぇと、明日まともに走れっか……」

商人頭「ぬう……」


若い商人「……あれ?」

夜営の準備がちらほら始まる頃になっても、侍は駱駝の上から遠見していた

若い商人「剣士さーん! 火ぃ起こすの手伝って下さいよ!」

侍「……」

若い商人「剣士さんってば!」


侍「……! 見えた!」バッ

若い商人「っい!?」


侍「集落だ! この先に集落があるぞ!」
845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga]:2012/02/16(木) 01:11:59.34 ID:bi0WjrrAO


地平線に太陽が沈む頃、一行はある集落に到着した

色黒商人「集落……というか」

小柄な商人「廃村…………」

風化の進んだ瓦礫が点在するだけの、滅びた集落

夜が訪れようと、その集落に灯りが点る事はない

若い商人「……!」

商人頭「ッ! あ、あれは!」


頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」テク…テク…

商人頭「化け物か!?」

年配の商人「待つんだ……!」バッ

商人頭「……じいさん?」
846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/16(木) 01:18:51.12 ID:bi0WjrrAO
……と、ここまでで今日は終わります
あと二回の投下、今週中にはこの話終わりたいと思ってます

前回、ラスト考えてるって言いましたが、それはこの話のラストで、全シナリオのラストの話ではありません
まだまだ書きたい話があるので、チマチマ続きます


余談ですが、余裕ができれば仕官時代の侍の話をどこかで書きたいと思っています
書きためてバッと投下する感じで



ご愛読ありがとうございました
おやすみなさい
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2012/02/16(木) 01:35:15.83 ID:0hOzNy0So
おつおつ
そーいや最初島流しにされてたんだったな既に一年半以上前とは
848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 07:05:37.15 ID:J+qsKsdIO
書きたいうちはマイペースでいいからどんどん続けてたぼれ
>>1のものならなんでも読みたいからのう
士官時代も非常に期待でござる
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/17(金) 20:49:46.89 ID:LBEdFgJ7o
一昨日から読み始めてやっと追い付いた
なんか、キノとか蟲師とか999とか、憂愁さを感じさせられるね

面白いよ!頑張ってね〜
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/18(土) 00:52:27.28 ID:rLHQq+/R0
四か月ぶりに来たけどもっと読みてー

前スレの401からの戦闘見ると改めて侍かっこいいと思うよ
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/18(土) 22:59:57.39 ID:KKTUWZaAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「……」テク…テク…

年配の商人「もし! そこの御仁!」

商人頭「お、おい!」

年配の商人が道行く骸骨に語りかける

年配の商人「この紋章に見覚えはないか? 儂の父の故郷の物なんだが」

頭蓋骨の欠けた骸骨「……」テク…テク…

年配の商人「……ならばこれはどうだ? 駱駝小屋の利用手形は砂漠の村では共通の……」

頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」テク…テク…

年配の商人が、次々に鞄から古ぼけた品々を取り出して、骸骨に差し出す

が、骸骨は見向きどころか立ち止まりすらしない


―見る目がない、聞く耳持たない


年配の商人「わ、忘れてしまったのか……? 我ら砂漠の民の約束を……」



年配の商人「待っていてくれたのでは、ないのか…………」ヘタ…


852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/18(土) 23:12:09.75 ID:KKTUWZaAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」



絶え際の



頭蓋骨の欠けた骸骨「……!」



微かに薫る故郷よ




若い商人「あ、あの! これ……じいちゃんが届けろって」


骸骨の「節穴」が若い商人の手の中を覗く

そこには、溢れんばかりの花の種があった

頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」


脳が忘れても

五感を失っても

記憶が磨耗しても



この、存在のどこかに残っている


懐かしい……あの、匂い。故郷の匂い




見る目はない。聞く耳持たない。


されど鼻は利くようだ―
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/18(土) 23:19:54.18 ID:KKTUWZaAO
ちょっと予定が狂ってしまったので、もしかしたら終わりは月曜あたりになりそうです

感想、応援レスありがとうございます
明日の活力になります。本当にありがとうございます


寝落ちしなければ休憩挟んで続き投下します
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 00:33:43.34 ID:pfx+F6NSO
明日の活力になるならば

私は乙を送らふ
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 00:50:33.10 ID:TdzPuUcDO
「言葉が通じなくても」住人は日課で覗くというより、週一〜数ヵ月っていう長いサイクルで閲覧してるのかもね
まとめ読みの方が楽しめる内容だし

一乙
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 06:13:12.04 ID:E6Ywc6R2o
確かに、専ブラで監視してて更新あったら飛んできてる人は少ないかもな
一乙んぽ
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/19(日) 10:36:06.28 ID:6ov34R2Io
まぁ読んでますけどね
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2012/02/19(日) 15:32:54.65 ID:/7fJqq2jo
更新ある度に見てるほうが珍しいのか…
おつおつ
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/21(火) 20:32:26.72 ID:G78nXzDAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」ヨタ…

よろよろと、骸骨が若い商人に歩み寄る

さっきまでの疲れきった足取りではない

一歩一歩、力強く

されど、どこかたどたどしくもあり

頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」ヨタ…



まるで、歩みを始めた赤子のように



860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [saga sage]:2012/02/21(火) 20:56:08.05 ID:G78nXzDAO
頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」ヨタ…

若い商人「……」

骸骨が若い商人の眼前で佇む

視線は若い商人の手中、溢れんばかりの種に落とされていた


若い商人「ど、どうぞ」

頭蓋骨の欠けた骸骨「……………………」
思案顔



頭蓋骨の欠けた骸骨「…………」スッ

骸骨が種を一粒摘み上げ、顔の高さへ持っていく



頭蓋骨の欠けた骸骨「……」アングリ

若い商人「喜んでる……の……かな?」

年配の商人「勿論。あんなに喜んでいるのがお前にはわからんのか?」

若い商人「…………そっか」


頭蓋骨の欠けた骸骨「……」アングリ

下顎を開いて御満悦
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/21(火) 21:35:51.45 ID:Msa4Rd6Oo
乙ん
862 :1 [saga sage]:2012/02/22(水) 00:16:21.75 ID:ccy5ESmAO
うわ、寝落ちしてもた
申し訳ないです
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 07:21:12.32 ID:np+T+OBIO
寝落ちとはお疲れ様
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 08:13:41.89 ID:mE+ev3S3o
そろそろ投下かな?
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/08(木) 08:34:13.48 ID:KFKZxfBAO
ご無沙汰しています>>1です
お待たせして申し訳ありません
もう少し時間を下さい
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/08(木) 12:08:26.20 ID:sDsaveXIO
うほっ
wktks
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/03/09(金) 21:37:57.95 ID:iw7aeSo9o
wktk
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 19:03:16.77 ID:ZJGtz6HIO
>>1はなんか別のスレしてるのかい?
紹介ぷりーず
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 20:53:46.12 ID:kao99nSDO
有名所だと
ケンシロウ「世紀末からもう11年か」
ミルウーダ「七つの傷……?」
の作者

現行だとSS深夜VIPで
ケンシロウ「世紀末からもう13年かぁ」
を書いてる(停止中)

他過去作品は前スレにリンク貼ってた
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 22:35:37.35 ID:V7z7Yu8IO
>>869親切にありがとう

ただそうで無くて、
>>1が忙しい時に現行で別のスレを進めてることがあるから
もしかしたらと思って
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/13(火) 01:10:57.52 ID:A61fzOiAO
>>870

>>1です
前回の書き込みから今日まで、他スレでの活動はしていません

私自身が至らない所為か、文字で表現・描写がうまくいかず、筆が進まなくなってしまいました

楽しみにして下さっている方々には申し訳ありませんが、少し長めの休息を取り、気持ちを新たに作品(と言えるかわかりませんが)づくりに取り組みたいと思っております


勝手な話ですが、妥協して後悔したくないので……
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 07:42:36.08 ID:Tg73uBQIO
この作品は俺の最高峰だから幾らでも待つ
しっかり休んでまた書いてくれ
もし気分転換で他スレ始めたら教えとくれ
873 : :2012/03/21(水) 21:05:18.92 ID:Uif5agbAO
ご無沙汰しております、>>1です

皆様方にご相談したい事がありますので、聞いて下さる方はレスの程、お願いいたします
874 :872 [sage]:2012/03/21(水) 21:24:05.07 ID:T/SI04v5o
はい、聞きます
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 21:26:15.85 ID:kWUnGNsSO
はい
876 : :2012/03/21(水) 21:40:01.09 ID:Uif5agbAO
ありがとうございます
馬鹿な事を言うかもしれませんが聞いて下さい


私事で申し訳ないのですが、私この度、3月一杯で職場を離れる事となりました

これを機に、一度挫折した作家の道に再度挑戦してみたいと思っています

877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 21:47:36.74 ID:T/SI04v5o
なるほど
878 : :2012/03/21(水) 21:57:04.22 ID:Uif5agbAO
そこで、まずこの「言葉が通じなくても」のここまでの話を加筆修正し、ちゃんとした読み物にしたいと思っているのですが…


簡潔に言えば、出版社に持ち込みというか応募してみようと思ってます

欲目が出たとか、勘違い野郎乙とか言われても仕方ないと思っています

でも、こういうと語弊があるかもしれませんが…

この「言葉が通じなくても」は私に取っても思い入れのある作品で、この作品で一度、全力を尽くしてみたいんです

自分の面白いと思うものが、どこまで通用するか確かめてみたいんです

879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 21:58:20.27 ID:kWUnGNsSO
ふむ
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesaga]:2012/03/21(水) 22:07:26.74 ID:WlMaxEmyo
ここに載せてる以上本人が書いたかの確認が難しいしここ見てれば大体同じようなものはかけるから大分いじらないと厳しいんじゃないか?
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:15:45.02 ID:T/SI04v5o
いいと思うよ
それだけの作品だと思う
悔いの無いよう出来る事を存分にしてみたらいい

続きを書けばパクリかどうかなんて分かるさ
持ち込んでダメなら、またここで書けばいい
882 : :2012/03/21(水) 22:17:01.73 ID:Uif5agbAO
>>880
酉付けておくべきでしたね……
乗っ取りとか盗作とか言われる程、知名度ないと思うんですが……

一応、大分いじる予定ではあります
読み返してみると、直したい点が結構浮かんでくるので
883 : :2012/03/21(水) 22:24:01.39 ID:Uif5agbAO
>>881
ありがとうございます

許可をもらうとか、そういうのではないのですが
持ち込みをするに当たっての公約として、「言葉が通じなくても」の作風を壊さないよう活動します
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2012/03/21(水) 22:36:55.91 ID:VuSCB70AO
>>882
もし本に……とでもなれば金になる以上、盗作など言いだす人が出てもおかしくない。

後、ここに書き込むのって知的財産権の放棄とか約束させられてるけど、そのあたりは大丈夫なのかな?

別に反対してるわけではないけど、そのあたりきっちりしておかないと後々面倒になりかねないからさ……
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:40:50.38 ID:T/SI04v5o
オレは読者参加の他スレでここの雰囲気に惚れ込んで、侍キャラで参加したくらいだから応援するよ
本になったらノータイムで買う

あと、確かに>>884さんの言う通り権利関係を調べて見ることもして置いた方が良いかもね


(先に言っとくが特定厨乙)
886 : ◆jG/A7LPXl9Ny :2012/03/21(水) 22:44:15.74 ID:Uif5agbAO
一応酉付けておきます
あまり意味ないかも知れませんが

>>884
荒巻さんに相談してみます
こればかりは駄目と言われたら諦めます
この端末からしか書き込んでないので、調べる事が可能なら盗作問題は大丈夫だと思うのですが
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:51:42.99 ID:T/SI04v5o
作家の道を応援させていただくよ
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:55:11.69 ID:s2PLpbMDO
出版社に持ち込むって事は、もうこっちの投下はしないことになるんかな
それならそれで本買うだけだし、作家の道を応援したいんだぜ
889 : ◆jG/A7LPXl9Ny :2012/03/21(水) 22:56:00.77 ID:Uif5agbAO
皆様、ありがとうございます
荒巻さんにはメールを送ったので、結果がわかり次第報告します

あとは、出版社の方の規定ですが、営利目的外であれば掲載されていても問題ないらしいので、なんとかなるかと
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 22:58:49.80 ID:T/SI04v5o
私はずっとファンだしそう言う奴は他にもいるし
辛くなったり挫折したら帰ってくればいいのさ
それまで背中押してやるぜ
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 23:07:40.89 ID:z9LB4hhDO
どうなろうとも応援させていただきます
892 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/03/21(水) 23:18:13.73 ID:Uif5agbAO
正直、書き込むのが、報告するのが怖かったんですが、勇気を出して良かったです
これで思い切り作業に打ち込めます


進展があったら都度、報告させていただきます


皆様、夜分遅くにありがとうございました!
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 23:43:46.20 ID:kWUnGNsSO
つまり

1:このSSは事実上凍結(打ち切り)。物語の進行は結果次第
2:その都度報告するということは、このスレは定期的に生存報告をする、または報告する場所を設ける
3:少女は俺の嫁

って事でおk?
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/21(水) 23:45:21.69 ID:GnxYOq1do
加筆修正頑張れ
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 23:50:52.91 ID:CtnAgEjIO
応援するよ
この先が気になってしかたないが…
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/22(木) 00:21:54.69 ID:dgSYI4X4o
応援するよ、がんばって!
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 00:45:37.20 ID:Jpdafudro
いつでも応援してますぜ!
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 09:38:27.11 ID:G/R4OUWRo
マジかよ最初のスレからずっと見てきたけど>>1がんばれ
899 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/03/22(木) 11:53:15.72 ID:cqHYdyuAO
>>893
まだ持ち込みが可能か確認できてませんが…

1.砂漠編まで投下しきるか、やめておくか……考え中です
あまり切りが悪いので投下しきりたいんですが

2.とりあえず、応募可能の報告まではこのスレを使いたいと思います
それ以降は、SSを投稿する為の掲示板というSS速報の存在理由に合わないので、やめておこうかと思っています。
簡単なHPかブログを用意するか、Twitterを利用するか……検討します

3.少女マジお赤飯
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/22(木) 12:10:49.70 ID:vbCr1toIO
>>899
簡単なHPかブログ作ったら見に行きますので、その時はご紹介願います
901 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/03/22(木) 12:15:46.97 ID:cqHYdyuAO
>>900
了解です
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/03/24(土) 20:48:52.08 ID:jPTlcFIK0
この独特の雰囲気の少女とおっさんの物語は琴線に触れたからな

是非とも成功してもらいたい。

応援してますよー

>>893 少女は侍の嫁!
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/26(月) 22:52:24.69 ID:bRqrolPD0
期待
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 23:27:01.47 ID:fvStItsVo
期待
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/27(火) 01:57:27.34 ID:Ad7Dwj+I0
久しぶりに見に来たら
頑張ってください
906 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/03/31(土) 22:03:01.38 ID:wbrKVK+Z0
ご無沙汰しています。
荒巻さんからの返答はまだないのですが、とりあえず原稿の方を書き始めました。
どんな形式がいいか模索中ですが、↓のような感じで書こうかと思っています。


故郷破れて大海在り、島泡となり影も無し――

ザザーン……ザザーン……
寄せては返す波を、少女はぼうっと眺めていた。ぼさぼさに荒れた金色の髪、朧気に揺れる碧の瞳、あちこち破れたボロ衣を纏い、身体は痩せこけていた。
全世界を巻き込んだ長きに渡る戦争は、人々の行き場を奪った。この少女も、その被害者の一人であり、先の大戦で家族や友人を失い、幼くして天涯孤独となってしまったのだった。故に、少女は生きる為に自分で金を稼がねばならなかった。
技術も体力もない少女に、まともな働き口などはなく、靴を磨くことで糧を得ていた。だが、町中に溢れかえった難民を問題視した領主は、許可無く街商行為を行うものを罰するよう命令を下した。
『……これからどうしよう』
唯一の収入源を失った少女は、ぼうっと海を眺めていた。
いっそ、このまま海に身を投げたら楽になるのだろうか……
考えないようにしていた言葉が、少女の脳裏に過る。まともな職に就けるあても無く、露天商などしようものなら、兵士に捕まり厳罰が科せられる。そう思うと、心を支えている最後の何かが折れてしまいそうで……
『……? あれは……人?』
波打ち際に、人間が打ち上げられていた。戦時中は日常茶飯事だったが、終戦から一年経った今ではあまり見なくなった光景だ。
『あの人も、身投げしたのかな……』
『――ゲホッ』
『! 生きてる!』
打ち上げられていた男が、身体を痙攣させながら水を吐き出す。よく見ればこの男、黒髪黒眼で見慣れない服を着ている。おそらく、航海中に船が難破し、ここへ流れ着いた異国人だろう。
――助ける? でも、どうやって?
もし仮に、一命を取り留めたとして、その後介抱するには、少女は余りに貧しい。下手に情けをかければ共倒れになる。少女には、他人の心配をする余裕など、微塵もなかった。
『…………でも、見捨てるなんて、出来ないよね』
理屈は分かる。自分は他人を守れる程強くない。だが、心を支える最後の何かが、少女に諦めるなと囁きかける。
ボロボロになった服の胸元をぎゅっと握ると、少女は男のもとへと駆け寄ったのだった。


1スレ目の1レス目はこんな感じになるかと。
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/01(日) 13:14:35.26 ID:dK4qENjAO
俺は結構好きだが、あちらさん次第としか言えないな

タイトルはスレタイのまま行ったり?
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 17:03:48.52 ID:d7MJ5IESO
なんだか説明文な印象を受けるな
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/04/01(日) 17:05:22.46 ID:ktEOeLtFo
結構うっとおしい文
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 17:50:29.46 ID:37bvDqb3o
SSに比べれば、当然地の文は多くなるよな
縦書きにしてみたが、とてもいい
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 20:57:41.57 ID:uzYptxrTo
横書きで見ると重いな
主な読者層として考えられるラノベ層にも堅い文は受けなそう
912 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/04/01(日) 21:28:32.45 ID:Pz9J0wvAO
>説明的、鬱陶しい、重い
私も書いてて思いました
とりあえず、バトルシーンも書けたら、また投下してみたいと思います
一本通して読んでみて、バランスを調整してみます
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 07:29:39.74 ID:9fdMWgoIO
バトル待ってる
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 23:36:40.01 ID:6j4elB3DO
昔っていうか>>1の書く物語って全てを語らないけれど伝わる、雰囲気を味わうことができる文章だったよね
イメージに訴えかけるというかさ!

SSと小説じゃあ書き口が違うのだからSSらしさがあってもいいと思います!
全力で応援してます!
915 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/04/03(火) 00:17:25.28 ID:DSR743sAO
キノの旅、禁書、ハルヒ、シャナ、ザ・サード、バイトでウィザードを読んでみました
ライトノベルと言っても、書式は様々なんですね。勉強になりました

ちょっと身構え過ぎてた気がします
私は私なりに、読んで面白いと思える物を追求しようと思います

というわけで、最初からやり直します
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 06:23:01.88 ID:aOM3nYA5o
それだ!
自分が読みたいと思えるものがいい
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 21:01:36.09 ID:RKDx6l2zo
電撃大賞を読んでみるといいよ
驚くほど稚拙な文章と内容に衝撃を受けるから
気楽なSSから小説に上げようとして変に文章を弄らなくても、そのまんまでいいと思う
魅力があればとんでもない文章でも大丈夫だし、受けるかどうかは編集の好みや絵師など運の要素の方がデカイから
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/04/03(火) 21:33:42.90 ID:875BQv19o
大賞はさすがに大賞だと思う それ以外がガクッとランク落ちるけど
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/11(水) 15:28:47.94 ID:UeUeqflIO
いつも応援しとる!
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/13(金) 04:41:40.75 ID:u9wRl8TAO
えっちいのから見てるが好きだぜ侍と少女
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 18:36:23.78 ID:7/IszweIO
待つのもwktk
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 03:08:53.57 ID:nVvWjPvF0
まだかなーwwktk
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 00:39:48.08 ID:4rsKPELSO
まだ落ちないけど、生存報告は欲しいかな
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 12:39:33.18 ID:WgfUWgPIO
同意
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/05/07(月) 16:10:35.61 ID:n8K/RQmLo
この人のtwitter垢っぽいの見つけたけど本人かな?
晒しはしないけど
926 :名無しNIPPER [sage]:2012/05/09(水) 10:24:36.40 ID:rxY5B0HAO
便りが無いのは良い便り、とも言う
原稿の作成に忙しいのだろう
927 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/05/13(日) 21:03:23.92 ID:2oscwR2AO
ご無沙汰しています。1です
音沙汰もなくすみません

退職に伴う引っ越しなどでバタバタしていたのも落ち着き、ようやく創作活動も軌道に乗ってきました
進行状況は、順調にいけば5月末のGA大賞に間に合うかな、というレベルですが、焦らず自分のベストを尽くしてみます

PCのネット環境が無いのでHPは当面難しいです。すみません


かなりざっくりですが、報告でした
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 01:45:33.83 ID:sDzXbWLYo
最大限応援の乙を送る!!
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/05/20(日) 11:08:37.47 ID:zQMa8/CAO
この物語に合うイラストってどんなんだろう
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2012/05/24(木) 00:33:08.25 ID:ZqvNDtvc0
確かに気になる
931 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/05/25(金) 01:35:41.84 ID:e6gYC9SAO
こんばんは、1です

今月末のGAはちょっと間に合わないっぽいです。すみません
間に合わなかった場合は、6月30日〆のMF新人賞に送ります

内容的には最初〜緑謳編ぐらいになると思われます

少なくとも、「言葉が通じなくても」応募関係は6月中には決着がつくので、今しばらくお待ち下さい

そうだ、HP用意しないと…

>Twitter
ここで言及していいものかわかりませんが、「かれー!」アイコンなら多分私です
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 01:45:37.81 ID:k/9eNbgSO
頑張れ

HP待ってる
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 07:02:28.67 ID:+mI1VzVIO
具体的な時期がでたー!!
全力投球で書いてくださいませ
本になったらノータイムで買う
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/06/12(火) 06:57:48.12 ID:ZSoGn7UK0
報告はまだか
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/12(火) 11:07:15.60 ID:iTCLfvyDO
頑張って欲しい!
応援するわ
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/06/12(火) 12:41:04.11 ID:Dtp4CHdAO
ちょっと見ないうちに面白い事になってきてるな
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 12:27:35.20 ID:G7tGus2IO
ワクテケ!!
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 20:58:05.71 ID:DQdcRkklo
ここにいる奴らは全員買うよな
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/15(金) 23:28:59.09 ID:cwAE1t4IO
他作者の名前出していいもんなのか分からんけどまおゆうみたいになったら考える
940 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/06/24(日) 03:30:29.76 ID:TNYimIEAO
報告なくてすみません
修羅場ってます。ちゃんとした報告は後日改めて
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 04:34:11.38 ID:jm8IBJeSO
おk
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 09:33:51.01 ID:8Vl8FApJo
頑張れ
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 20:02:18.81 ID:GKVW0Rb2o
ふあいつ!
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 22:40:54.73 ID:8Vl8FApJo
そういえば作家ってのは専業じゃ相当売れないと食っていけないって聞いたんだが、>>1は仕事を辞めてしまっていいのだろうか
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/24(日) 23:02:48.80 ID:KO7X2DBto
>>944
>>876見てみ?
946 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/06/27(水) 23:26:43.75 ID:0Fsti0oAO
お疲れ様です
今見直し作業中です
紆余曲折、いろいろありましたが29日に投函する予定です

30日、7月1日はちょっと予定があるので、報告は7月1日夕方以降になります

皆様、沢山のご声援ありがとうございます
では、もうひとがんばりしてきます
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 00:07:47.05 ID:85B51WQso
>>946
頑張れよ!
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/06/28(木) 01:29:00.72 ID:J9bHYLhAO
>>946

合否?通知はいつ頃になるんだ?
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/06/28(木) 01:29:29.28 ID:J9bHYLhAO
>>946

合否?通知はいつ頃になるんだ?
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/06/28(木) 01:30:19.14 ID:J9bHYLhAO
連投すまん
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/28(木) 02:14:17.89 ID:GPBgkVv0o
おちつけww
とりあえず>>1無理はするなとは言えないが無茶はしないでくれよ
報告が遅れても構わないから自分のペースで頑張ってくれ
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/28(木) 08:04:39.44 ID:d+aqqlgq0
みなぎってきた
953 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/06/28(木) 21:46:17.91 ID:HcZxun/AO
こんばんは1です
応募用の封筒買ってきました。ドキドキしてます


MF新人賞は3ヶ月ごとに予選をやっているので、今回(一期)から3ヶ月後の二期締め切りごろに結果が来ると思われます
(予選で佳作を選出、その中から大賞等を選出するらしいです)
9月25日という噂もありのですが、正直未経験なのでよくわかりません
とりあえず返信用封筒(評価用)を同封するので、そちらでも結果が分かるかと


あと、一番近い時期だったのでMF新人賞一期に応募しますが、MFはラブコメ以外には狭き門みたいな所があるみたいです
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 23:09:40.21 ID:zdaFnK9SO

ドキドキだな
955 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/06/30(土) 22:41:53.71 ID:jUp6aUBAO
こんばんは1です
MF文庫新人賞一期に「言葉は通じなくても」投稿しました

内容的には、出会い〜緑謳編プラス書き下ろし「最果ての財宝」です


正直、時間があればまだまだ詰められるところもあったと私自信思います
でも「言葉は通じなくても」を書くにしろ別作品書くにしろ、客観的な評価を受けないと今後作品書いていく上でいいものを作れないと思いました

事実、執筆ペースはかなり遅かったですし…
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2012/06/30(土) 22:46:10.94 ID:2ukFAWtZo
結果が楽しみであり怖くもあり
957 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/06/30(土) 23:02:18.66 ID:jUp6aUBAO
>書いてみての感想
如何にSSというジャンルが便利か思い知りました
場面の切り替えや音響描写がノベル形式だとかなり不便に感じました
プラス、一番悩ましいのがキャラクターの風貌についてで、ちょっと会話するモブでさえ油断すると雪だるま式に情報が増えるのがネックでした
送れるレベルまできた時は感慨深いものがありましたが、いざ印刷して読み返すと、やっぱり力不足な気がしてきます


>今後
とりあえず、結果が出るまでの3ヶ月は更新もできないので、このスレが埋まり次第、一旦〆ようと思います
ただ、完結までは書くので、(まだ手付かずの)連絡用ページみたいなのは近日中に必ず作ります


あと、やっぱり私はSS書くのが好きなのでVIPなりなんなりで別スレ書くのは間違いないです(笑)
958 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/06/30(土) 23:24:28.02 ID:jUp6aUBAO
一本書き上げるという段階は、皆様の暖かいレスのおかげでクリアする事ができました
この場を借りて、御礼申し上げます



ちかれた
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/30(土) 23:32:36.98 ID:p7YPKdjSO


連絡用待ち
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/01(日) 01:23:59.15 ID:8h/QGmnh0
待ってるわよ
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 05:22:43.53 ID:Sof15iEfo
おつかり!

結果出て、これを再開できそうだったら同じスレタイで現行の再投下もしてほしいなあ
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/01(日) 12:03:59.11 ID:nea0aIYbo
>>961
それ落ちたらって事だろうが……
結果出るまでそういう縁起でもないこと言うなよ……
963 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/07/01(日) 16:19:08.04 ID:EFYQY+7AO
>>962
落ちたら落ちたでいいと思うんですよ
まず始めにやらなきゃならないのは形をつくる事であって、受かるのは次の段階でいいと思います
勿論受かるれば楽ですが

それに、もう投稿した原稿についてどうこう言っても仕方ないですし
受かるにしても、落ちるにしても、そこに運の要素はないと思います
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2012/07/01(日) 17:41:11.13 ID:5t0aju6N0
乙乙
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 21:55:37.66 ID:lAqhlK6go
埋めたがる人が現れるから、連絡場所は早めに作らないと難民出ちゃうよ
もし間に合わなかったらSS-Wikiかまとめの掲示板に一報頼みます
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/11(水) 21:34:14.87 ID:0RDuUDDZo
生存報告あれば待てます!
リアルがんば
967 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/07/12(木) 13:49:46.77 ID:1H75163AO
ご無沙汰しております
思いのほかHPの作業が上手く行かないので、突貫でブログ用意しました
↓見れますかね……?

http://m.ameba.jp/m/blogTop.do?unm=yakamachinegun


とりあえず難民が出ないよう、しばらくこのまま置いておいてから、HTML化依頼したいと思います
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/07/12(木) 21:03:19.40 ID:0/md9TUro

http://ameblo.jp/yakamachinegun/
↑コレで見れた
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2012/07/14(土) 13:26:03.20 ID:exPCRtzr0
おっつ
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 13:41:17.43 ID:ig1V2nVko
>>968
見れたー
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/19(木) 14:18:00.91 ID:gzj7w+d+o
乙乙!
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/19(木) 14:18:28.49 ID:gzj7w+d+o
乙乙!
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 12:23:38.86 ID:6Pc/7dKSO
アメブロ登録した人しかコメできない設定を変えてほしい
974 : ◆jG/A7LPXl9Ny [sage]:2012/07/23(月) 21:12:25.62 ID:ds7BdeaAO
こんばんは1です
ブログの設定変更しました
ご指摘ありがとうございました


ブログがどれくらい周知されたかは未知数ですが、一応今月一杯でhtml依頼出します

再開するかどうかも含め、まだ全てが未定ですが、これにて一旦締めさせていただきます

愛読して下さった皆様、本当にありがとうございました

またどこかのSSで会いましょう
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 01:02:18.34 ID:nPtQm3fVo
応援してる
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県) [sage]:2012/07/25(水) 21:54:50.74 ID:1iuHKsRE0
応援して待ってます
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 08:22:37.00 ID:Znt47xYDO
応援してる
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 22:50:10.22 ID:75tU0SZPo
今更だけど>>1誕生日おめでとう
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