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一方通行「フラグだと? って事ァ」  レッサー「私はあなたが好きって事です♪」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/19(土) 00:00:29.22 ID:DwLBiC7ao


このSSは、とある魔術の禁書目録に出てくるキャラクター、一方通行(アクセラレータ)を中心とした
もうあまりほのぼのとは言えない感じの二次創作物です。



一方通行「フラグ・・・ねェ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1285654962/



一方通行「フラグ・・・・・・なのかァ?」  風斬「そうですよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1289310136/



一方通行「フラグ・・・・・・じゃねェだろ」  エイワス「まだそんな事を言っているのか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294928027/



一方通行「フラグ・・・・・・だろォな」  垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295564748/




上記のスレからの続きとなっています。もしお暇でしたら、ご一読を。


以下、留意点など。


・投下は基本的に三日おきです、多分。そしてかなり気まぐれに投下するので質悪いです。
・第三次世界大戦は終結。その後のお話です。
・キャラ崩壊しまくりな上に、設定も弄りまくっています ←これ一番重要、ご注意ください。
・地の文が多めになってきました。
・書き溜めはありますが恐らく速攻で尽きます・・・・・・
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(安価&コンマ)コードギアス 薄明の者 @ 2025/07/23(水) 22:31:03.79 ID:7O97aVFy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753277463/

ご褒美にはチョコレート @ 2025/07/23(水) 21:57:52.36 ID:DdkKPHpQ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753275471/

ビーノどっさりパック @ 2025/07/23(水) 20:04:42.82 ID:dVhNYsSZ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753268681/

コナン「博士からメールが来たぞ」 @ 2025/07/23(水) 00:53:42.50 ID:QmEFnDwEO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1753199622/

4日も埋まらないということは @ 2025/07/22(火) 00:48:35.91 ID:b9MtQNrio
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753112915/

クリスタ「かわいいだけじゃだめですか?」 @ 2025/07/19(土) 08:45:13.17 ID:AK1WfFLxO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752882313/

八幡「新はまち劇場」【俺ガイル】Part1 @ 2025/07/19(土) 06:35:32.67 ID:BGCulupRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752874532/

【安価・コンマ】力と魔法が支配した世界で【二次創作】 @ 2025/07/18(金) 23:44:57.84 ID:Xc8IdKRvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752849897/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 00:01:55.05 ID:7uMJu16AO
遂にここまでキタか>1乙ん
3 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 00:02:39.94 ID:DwLBiC7ao


次回の更新は多分三日以内です。

もしよろしければ、このスレも応援してくださるとありがたいです。

それでは!
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 00:07:45.30 ID:FO5O4SfAO
大丈夫、私はそんな>>1を応援してる
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 00:11:47.77 ID:VkkIIl3Ao
風斬たんのマシュマロもにゅもにゅ
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 00:27:06.51 ID:6uucMH+B0
新スレ乙。
ついに5スレ目か……感慨深いな
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 01:11:54.42 ID:IxfZX52lo
新スレ乙
お、お前、やっているな、キャサリンを!

>「第三の解答だが、こンな喋り方面倒なだけだろォ。 何? キャラ作ってンですかァ?」
お前が言うなっていうか禁書キャラなんてみんなキャラ作ってるようなもn(ry
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 01:35:00.34 ID:voOxDas/o
レッサーはノリが軽いからいざって時に軽く受け流されそうで悲しい
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 01:36:02.96 ID:1fqUyya5o

順々にスレタイ見ていくと、一方さんがフラグというものを理解していってるwww
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 01:45:57.72 ID:H2j6mjPd0

ていとくンのキース化にニヤニヤしてしまった
俺のデッキにリボルバードラゴンが入っているのも偶然ではないな
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 04:59:00.46 ID:3gxu7c2DO
ワシリーサとヴェントが美人すぎて一方通行[らめぇぇっ!]
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 08:34:11.91 ID:R/FZqdeSO
>>1「タイトル回収失敗・・・・・・だろォな」
垣根「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 10:22:18.26 ID:MmA4N1vT0
>>1「このスレでも終わらないだと? って事ァ」
 俺「私はあなたが好きって事ですよ」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 10:27:36.05 ID:Nmxb5qwD0
というかサーシャはていとくんとフラグ立てると思ってたのになぁ。
いきなり横から掻っ攫っていく一方さんマジイケメン
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 11:55:07.83 ID:YdBYApzk0
だからていとくんは死亡フラグしか建てないって言ったんだよ
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 13:02:32.14 ID:u9LIg1cDO
>>15
さすが俺達のていとくんやでぇ……
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 13:14:22.83 ID:EO2Mh7iFo
そもそもていとくんは一方さンにフラグ立ててるしな
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 13:22:45.48 ID:VkkIIl3Ao
一方通行「フラグだと? って事ァ」  垣根「俺はお前が好きって事だ♪」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:19:14.84 ID:Jk5afw1vo
最近の遊戯王ネタにニヤニヤしてる俺が居る
乙です
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:29:57.24 ID:Jw/FjbfAO
ワシリーサ「サーシャちゃんを私の生贄に捧げて一本足の家の人喰い婆さん召喚!」
サーシャ「ふざけんな」


こうですねわかりました
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:36:37.66 ID:StcMcGGZo
一方「てめェ何いってんだオボロロロロロ」

エイワス「いきなり吐くんじゃない一方オボロロロロロ」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 15:58:14.08 ID:voOxDas/o
次回!城之内死す!
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/19(土) 17:54:20.07 ID:RT/vkUDw0
>>20
あの変態がサーシャを生け贄になんて捧げるわけがない







………魔法カード『洗脳〜ブレイン・コントロール〜』で
『サーシャ・クロイツェフ』のコントロールを得(グシャッッ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 20:11:19.37 ID:YdBYApzk0
ご…強欲の壺
25 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/19(土) 20:47:59.63 ID:DwLBiC7ao
こんばんわ、>>1です。

というわけでこの二次創作物もついに5スレ目に突入しました。
これも全て、皆様のおかげです。ありがとうございます。

・・・・・・当初は30レスくらいで終わる予定だったんだけどなぁ、どうしてこうなった


それでは新スレ最初の投下、いきまーす
26 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:50:32.74 ID:DwLBiC7ao


――――――――――――――――――――――


垣根帝督もまた、エリザリーナ独立国同盟の居住区を闊歩していた。
一方通行たちとは別の方向へ、ワシリーサを捜しているのだ。


道中、すれ違う民間人に度々挨拶をされ、若干戸惑う彼の姿は物珍しいものがあった。


「やけにフレンドリーだなここの連中は。 むしろ俺たちなんかは畏怖の対象で見られるべきだと思うが」


『アライアンス』号で今行われている事を知らない垣根は頭に疑問符を浮かばせていた。
挨拶ならともかく、たまにお礼を言われたりもしているのだ。

だがさして気にすることもなく、垣根はワシリーサを捜し歩く。
27 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:51:12.33 ID:DwLBiC7ao


「どーこにいやがんだあのババア。 部屋は分かんねえし・・・・・・
 エイワスにでもパシらせて探させるかぁ?」


到底不可能な事を考えつきながら、しかし本当にワシリーサの居場所が分からない垣根は
適当にその辺の民間人に尋ねてみようと、目についた商店に近づこうとしたとき、




「サーシャちゃああああああああああああん!!? どこに行ったのよおおおおおおおお!!?
 カモオオオン!! カムバックラヴァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」




全世界に轟くんじゃないかという、これでもかと言う程に分かりやすい大声で赤い修道服を着た
シスターが居住区の中心で愛を叫んでいた。
28 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:52:05.24 ID:DwLBiC7ao


垣根はうんざりとした顔で白いため息をつき、ざくざくと雪で覆われた道を踏みながら彼女に近づく。


「捜した捜した、捜したよん。 オイ、ちょっと付き合えよ変態女」

「ッ!? 垣根の坊や・・・・・・? ・・・・・・!!!」


ギュルン、とワシリーサの首が垣根の方へと向いた。やたら不気味な動きだ。
彼女は垣根の顔を憎悪に満ちた表情で睨みつける。


「ああ?」

「まさか・・・・・・貴様かぁぁぁああああああああああああああああ!!!?」


と、ワシリーサが絶叫した次の瞬間、垣根の顔面に彼女の見事なライダーキックが決まっていた。
29 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:53:05.85 ID:DwLBiC7ao


「ぶごっっ!!?」

「サーシャちゃんは返してもらうわよ!! このド悪党がああああああああああ!!!」


何が起きたのか状況も理解出来ないまま起き上がろうとする垣根に、ワシリーサは追撃のキックを
喰らわせようとする。その見事なまでの上段回し蹴りは某ライダーカブトを彷彿とさせた。


だがその回し蹴りが垣根を捕えることはなかった。

ゴキィィン!!、と金属と金属がぶつかり合ったような音が響いたかと思ったら、
垣根の体は白い無機質な翼に覆われており、ワシリーサの蹴りを弾き返していたのだ。


「いやんっ!? 何すんのよ垣根の坊や!!」

「こっちのセリフだクソボケ。 朝からハシャいでんじゃねえよ年増が」


バランスを崩してしまったワシリーサはなんとも間抜けな体勢で転んでしまう。
蹴りの勢いが勢いなだけに派手にコケてしまった彼女の修道服が大きくめくれ上がり、
その下の生唾を飲み込んでしまいそうなほど色っぽいガーター付きの下着が丸見えだ。


「誰が得するんだよ、テメェのパンチラなんざ」

「サーシャちゃん以外には見せまいと思ってたのに・・・・・・悔しいっ! でも――」

「バカやってねえで、ちょっと付き合えよ」


ビクンビクンする前に割って入る垣根。ワシリーサに見せつけるようにヒラヒラと
指先で動かすそれは、徹夜で作りこんだ例のルーンだった。
30 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:54:10.79 ID:DwLBiC7ao


起き上がり、パンパンと付着した雪を払いながらワシリーサは垣根の持つソレを見る。


「なぁに? ルーンの手直しくらい自分でしなさいってお姉さん言ったでしょ?」

「だからもうそれは出来たんだっつの。 だから次のステップに進むんだよ。
 お前相手ならいい感じに特訓できそうじゃねえか」

「特訓? 垣根の坊や、週刊少年ジャンプの読み過ぎじゃないのかにゃーん?」


ヒョイっと垣根が持つルーンを奪いとり、鑑定するように見るワシリーサ。
ふむふむと頷きながら数秒ほど見定めた彼女は、


「・・・・・・・・・・・・そのジャケットに忍ばせてるルーンも全部こんな感じ?」

「ああ。 狂ったように何度も何度もチェックしたからな、間違いねえよ」
31 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:55:04.36 ID:DwLBiC7ao


ジャケットの裏に仕込んであるホルダーを見破られた事に、大して驚きもせず垣根は言う。


「そうねぇ。 まぁこれなら合格ライン突破ってとこかしら?
 あなたって意外と努力家さんなのねん♪」

「茶化してねえで、付き合ってくれんのかどうなのか答えろ」

「私の将来の相手はサーシャちゃんって決めてるの!」

「そっちじゃねえよ耄碌ババア。 特訓だ特訓」


ようやくワシリーサのテンションが垣根のテンションに追いついたのか、
一息ついて彼女は彼に向かってニヤリと笑ってみせた。
32 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:56:05.07 ID:DwLBiC7ao


「使い方も兼ねての『実戦訓練』ってところかしらん?」

「最初から分かってんだったらさっさと話進めろコラ」

「でもぉ〜・・・・・・、それよりサーシャちゃんを捜す事のほうがお姉さんにとっては大事なんだけど」

「特訓に付き合ってくれたらサーシャの生着替え写真くれてやるよ。
 俺がどうにかして上手い事撮ってきてやっから」

「マジすか!!? 垣根さんマジパネェっす!! 私でも入手困難撮影難事な
 サーシャちゃんの生着替え写真集とか・・・・・・はぁはぁ、あらやだ、濡れてきちゃった」

「『写真集』とは言ってねえだろ。 何さりげにグレード上げてんだよアホ」


股をむずむずと動かしながらジュルリと涎を拭うその姿はとても修道女だとは思えなかった。

しかしそんなワシリーサの姿を見ても垣根は呆れもしなかった。
こういう彼女の言動や仕草は全てブラフ、猫かぶりだとわかっているからだ。
33 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:57:17.71 ID:DwLBiC7ao


ただ、サーシャに対する異常なまでの愛は本物だろうが。


「返答は?」

「オッケ! 交渉成立! 特訓でも何でもお姉さん付き合っちゃう♪
 その代わり、サーシャちゃんの生着替え写真、マジで割と切実に頼むわよ」

「どんだけ必死なんだよお前・・・・・・、気持ち悪いな」


ともあれ、何とかワシリーサは特訓に付き合ってくれるようだ。
彼女の場合、元よりそのつもりだったのかそうでなかったのかは定かではないが。
全く以て、掴めない女性である。


「こっちへいらっしゃい、丁度イイカンジの場所があるのよ。 誰にも邪魔されないような地下空間がね。 
 昔は防空壕的なものとして使われていた場所なんだけど、無駄なくらい広い空間だからバンバン魔術使い放題よん♪」

「地下空間か・・・・・・、まさにお誂え向きな場所ってことだ」


おいでおいで〜、と手招きをしてくるワシリーサの姿に、なぜか少し恐怖に似た感情を覚える垣根。
もしかすると自分は今から世にも恐ろしい体験をすることになるのかもしれないと危惧したが、
杞憂だろうと自分で自分を納得させる。


だがその悪寒は、物の見事に的中することになる。

34 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:59:10.22 ID:DwLBiC7ao


――――――――――――――――――――――


一方通行とサーシャ=クロイツェフは居住区にどっしりと据えた巨大豪華クルーザー、
『アライアンス』号の麓へと辿りついていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「第一の私見ですが、随分と賑わっているようですね」


分かっている。
そんなことは指摘されるまでもなく分かりきっている。

まず船の周りの様子がもうおかしい。
35 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 20:59:53.57 ID:DwLBiC7ao


人。人。人。


人間という人間で溢れかえっていた。

船へ向かう民間人や子供たちがやたら楽しそうにしていた点からして
こういう光景は予想できていたが、しかし、それにしても賑わいすぎだろう。


ロシアには古くから伝わる『復活大祭』、パスハとも呼ばれる大規模な祭日が存在する。
これは『イイスス・ハリストス』と言う、つまりはイエス・キリストの復活を祝う祭りなのだが、
この祭日には実に一〇万人もの人々が集まる大規模な祭りなのだ。

現在、『アライアンス』号を中心に集まっている独立国同盟の民間人たちの数も
それに匹敵するのではないかと一方通行は思った。

復活大祭とは趣きが違い、ここに集まっている皆はただ単純に用意されていたサプライズを
楽しむかのような雰囲気で、あちらこちらでどこから用意したのかも分からない
豪勢な料理を手に立ち食いをする人々や、船を見上げてキャッキャと喜ぶ子供たちがいた。
36 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:01:07.46 ID:DwLBiC7ao


「・・・・・・朝から元気なこった」


一方通行は呆れたように項垂れ、ロシアに来て何回目かも分からないため息をつく。


「第二の私見ですが、立食パーティのそれと似たような雰囲気ですね。
 補足説明しますと、こんな早朝から酒を嗜む者まで出てきています」


よっぽど気分が高揚しているのか、船の麓に集まっている軍人たちは
酒を飲み会の勢いでぐびぐびと飲みまくり、騒いでいる。


「いつからこンな事になったンだ?」

「第一の解答ですが、深夜の三時頃には既に大人たちがここで盛り上がっていたようです。
 補足説明しますと、その後、民間人の子供たちも早朝にそれを知り、
 いざここへ来てみたらこうなっていた、とあなたに会う前に聞いています」


そんな夜遅くから騒いでいたのか、と一方通行は呆れを通り越して笑いそうになった。
37 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:02:03.41 ID:DwLBiC7ao




「おはよう! あなた、あの船の持ち主でしょ? 感謝するわ!」

「おお、噂の少年じゃねぇか! こんなでっけぇプレゼント、聞いたことねぇぞ!」

「ほらほら、いつまでもこんなとこにいないで、上に行って騒いできなさい! わははは!」




民間人から次々と感謝の言葉を投げかけられる。中には未成年の彼に
酒を勧めてくる者もいた―――ロシアでは十六歳から飲酒が可能らしい―――。


「・・・・・・・・・・・・ここにいたら埒が明かねェ。 とりあえず船に行くぞ」

「第二の解答ですが、了解しました」


一方通行とサーシャは船の中にある駐車場の入り口を使って船内へと入っていった。
38 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:03:16.15 ID:DwLBiC7ao


巨大豪華クルーザー『アライアンス』号の船内も、外と変わらないご機嫌な雰囲気に包まれていた。


相変わらず立ち食いで豪華な料理を楽しむ者。立食パーティよろしく、金属製のトレイに
ワインやシャンパン、各種ドリンクを乗せて配っている者。船の構造について調べている
工業関係の人間であろう者。プライベーティアとの抗争の勝利を祝い乾杯をしている軍人。


一方通行たちが乗ってきた、親船最中から借りたケータリングカーに偽装した軍用トラックで
料理を作っている民間人までいる。


「第三の私見ですが、プライベーティアとの抗争を終え、無事に国を守ることが出来た
 その祝いとしてこのような催し物が行われているようですね」


サーシャ=クロイツェフはキョロキョロと船内を見回しながら述べる。
そんな私見を聞くこともなく、一方通行は周りの民間人たちから持て囃されていた。
主役登場、といった感じである。
39 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:04:07.51 ID:DwLBiC7ao


「あーあーはいはい、分かったから触ってくンじゃねェよ・・・・・・」


心底面倒くさそうに民間人をあしらう一方通行は、この騒ぎの主犯であろう
『天使同盟』のジェネラルマネージャー様がどこにいるのかと目を光らせていた。




二人がラウンジに到着すると、ようやくそこに見知った顔が居た。




「むぐっ。 あ、おはようございます一方通行さん、サーシャさん」


頬に食べ物を詰め込みぷっくりと膨らませているのは『新たなる光』の構成員、レッサーだ。
彼女はどこから持ってきたのか、パーティに用いられる大きな円状のテーブルに腰掛け、
さながら女王様気分でシャンパンをグイッと飲み干す。
40 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:04:59.05 ID:DwLBiC7ao


「っぷは。 いやー朝からこんなどんちゃん騒ぎってのも悪く無いですね!
 ささ、一方通行さんもいっちゃってください! よっ! 独立国同盟の救世主・・・・・・あ痛ッ!!?」


何様のつもりだ、と一方通行はレッサーの頭に思い切りゲンコツを喰らわす。
そしてそのまま片手で彼女の顔を鷲掴みにした。図らずもひょっとこみたいな顔になってしまう。


「ひゅ、にゃにしゅるんでしゅかぁ・・・・・・!?」

「肉塊にされなかっただけでもありがたく思えこのマセガキ。
 一体全体どォいう事なンだァこりゃ?」

「ぐみゅ・・・・・・ふひゅ」

「第四の私見ですが、それじゃ喋りたくても喋られないかと思われます」
41 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:05:55.16 ID:DwLBiC7ao


サーシャに指摘され、パッと手を離す。レッサーは涙目でヒリヒリと痛む頬を擦りながら、


「乱暴はいけませんよ乱暴は・・・・・・。 どういう事って、何言ってんですか?」

「やっぱあのクソったれのエイワスが主犯なのか」

「え? このパーティの事なら主催者はあなたでしょ? エイワスさんもそう言ってましたし」

「はァァ・・・・・・・・・・・・!?」

「第一の質問ですが、そうなのですか? もぐもぐ」

「ふざけンじゃねェよボケ、俺がこンなモン主催するわけ・・・・・・って何メシ食ってンだオイ!!?」

「第三の解答ですが、朝食がまだでしたし、せっかくなので・・・・・・。
 補足説明しますと、このグリルチキンすごく美味しいですよ」

「ンな補足説明いらねェンだよ!!」


ちゃっかりとテーブルに置かれていた料理をむぐむぐと頬張るサーシャに激昂する一方通行。
しかし、それにしてもその一方通行が主催者とはどういうわけなのか。
42 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:07:33.51 ID:DwLBiC7ao


「・・・・・・考えるまでもねェ、エイワスのクズ野郎、俺をダシに使いやがったな」

「ありゃりゃ、それじゃこのパーティはエイワスさんが持ってきたサプライズなんですね。
 なんでも、この船をエリザリーナ独立国同盟にプレゼントするみたいですけど」

「あァ? プレゼント? ・・・・・・エイワスはどこにいやがる」

「第四の解答ですが、甲板にいますよ。 ほら」


サーシャがグリルチキンで指した方を見ると、甲板で民間人と会話をしているエイワスの姿があった。
どこか誇らしげな雰囲気で佇んでいる様子が一方通行の癪に障った。


「ちょっとアイツと話してくる」

「はーい。 んー♪ この海鮮サラダもすんごく美味しい♪」
43 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:08:18.69 ID:DwLBiC7ao


「第二の質問ですが、料理の食材はどこから仕入れているんですか?」

「最初からこの船に保管されていたらしいですよ? 何でも、
 現代科学でも解明できないような冷凍保存で食材の細胞組織を全く壊すことなく
 新鮮な状態で維持されていたとかって」

「第五の私見ですが、さすがは学園都市からやってきただけのことはありますね」

「私はイギリスから着いて来たんですけどね。 あー美味し♪」


食材の保存はどう考えてもエイワスの仕業だが、その保存方法は
学園都市ですら掻い暮れ解明出来ない方法だ。

それはもはや冷凍保存というより"時間停止"の概念に近かった。
しかし一方通行ら『天使同盟』がそんな話を聞いたところで、もう驚くことはないだろう。


そんな『天使同盟』のリーダー、一方通行は甲板で独立国同盟の民間人達と談笑している
エイワスを睨み殺すかのような勢いで抗議していた。
44 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:09:07.30 ID:DwLBiC7ao


「エェイワァァスくゥゥゥゥゥゥゥン・・・・・・!!? 状況の説明を要求するぜェ?
 なーに勝手に独立国同盟の居住区をメチャクチャにしたお船でパーリィ洒落こンでンですかァ!?」

『おや、主賓のご到着だ。 それでは皆様、ご注目。
 今回独立国同盟にこのクルーザーをプレゼントするという大盤振る舞いなアイデアを実行してくださったのが
 この方、学園都市が誇る最強の超能力者、序列第一位の一方通行にございます』


大仰な仕草でマイク片手に一方通行の紹介をするエイワス。そのアナウンスを聞いて
船内だけでなく地上に居る民間人がワーッ!!と盛大な拍手を送ってきた。
大勢の人間から贈られる祝福と感謝の拍手に、学園都市最強が少したじろぐ。


「お、オイ、オマエ何考えて――――」


エイワスは一方通行の言葉などガン無視でアナウンスを続ける。
45 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:10:06.03 ID:DwLBiC7ao


『改めて説明すると、今回のこのクルーザー衝突事故は全て我々『天使同盟』に責任がある。
 その詫びといっては失礼だが、まず今回の事故の謝礼としてこのクルーザー本体、各施設、
 所有権を全てエリザリーナ独立国同盟に譲渡するものとしようではありませんか』

「質問! この船にはボウリング場やカラオケ、ビリヤードなんかが揃いに揃った
 レジャー施設も設けてあったが、そいつも全部くれんのかい?」


既にほろ酔い状態の民間人の男が挙手で質問した。


『もちろんだ、それだけじゃないぞ。 この船に積まれていた食料、燃料、武装、各パーツ、
 全てを無償でプレゼントする旨である。 遠慮しないでいただきたい』


そのアナウンスで再び大きな拍手と歓声が鳴り響いた。




「ひゅー!! さっすが学園都市の親善大使! 俺たちには出来ないことを平然とやってのけるッ、
 そこにシビれる! あこがれるゥ!!」

「あーくんカッケェっす!! マジハンパないっす!!」

「ああいう男性に抱かれてみたい・・・・・・・・・・・・」

「白いおにーちゃん! 本当にありがとう!」

46 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:13:15.71 ID:DwLBiC7ao


数の暴力とはまさにこの事。いやこの場合は暴力と言ってしまっては彼らに対して失礼だろうか。
しかしこうも一方的に賞賛されてしまうとエイワスに向けて発射しようとしていた怒りも冷めてしまう。


「く、そ・・・・・・」


とは言ったものの、一方通行は別にそこまで怒り心頭だったわけではない。
別に独立国同盟の民間人達がこの船でどんちゃん騒ぎをしてようが勝手だと思っているのだが、
こんな方法でこの国に迷惑をかけたことを、ちゃっかり帳消しにしようとしてるエイワスがちょっと腹ただしいだけだ。


『それでは皆の衆、引き続きパーティを楽しむが良い』


その一言で辺りは元の楽しげな雰囲気に戻っていった。
まさかここら辺にいる民間人、全員エイワスに操作されているんじゃないだろるなと勘ぐる一方通行。
47 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:15:07.10 ID:DwLBiC7ao


「さて、おはよう一方通行。 昨日は風斬氷華のふくよかな胸に包まれていい夢は見られたかな?」

「あンな状況でぐっすり寝てられるほど俺は人間出来てねェよ」

「なんだそのチェリーボーイのような発言は。 なんなら私が君の初めてを奪ってしまうぞ?」

「オマエが本気でそォして来たら恐らく抵抗できねェからやめろ」


念のため説明しておくが、『恐らく抵抗出来ない』とは単に力の差で抵抗出来ないという意味であって、
エイワスが夜這いしてきても抵抗しないという意味ではない。


「ンなくっだらねェトークしに来たンじゃねェンだよ。
 オマエこの船コイツらにくれてやンのか?」

「別に構わんだろう? この船は既に役目を果たしている、あとは粗大ゴミにしかならんよ」


約三〇〇億円で購入したクルーザーを『ゴミ』扱いするエイワスの器量といったら、
一方通行は額に手を添えて短く息を吐くしかない。
48 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:16:07.62 ID:DwLBiC7ao


ただその三〇〇億という巨額は全て学園都市、即ちアレイスター・クロウリーが収める予算から
"勝手に"引き落とした金なのだが。


「帰りはどォすンだよ?」

「んん? ・・・・・・ふふ、何とでもなるさ、その辺に関しては私に一任してくれないか?」

「チッ、まァ別に構わねェけどよ」


どうせまた何らかの方法で帰りの『足』を持ってくるのだろう。
一方通行はそう考え、適当に返事をした。
49 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:16:38.94 ID:DwLBiC7ao






「・・・・・・・・・・・・足など必要もなくなるさ。 ここから帰る時には、恐らくな」





50 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:17:41.44 ID:DwLBiC7ao


エイワスが何か言ったような気がして、一方通行はエイワスの方を向くが、
金髪の化物はニコリと柔和の中に不気味さを併せ持つ笑顔を見せつけてくるだけだった。


「・・・・・・他に誰か来てねェのか?」


風斬氷華は部屋で寝ているのを確認しているが、その他の構成員は見ていない。
垣根辺りなんかはここで酒でも飲んでるんじゃないかと踏んでいたが、


「私と君以外には『天使同盟』は来ていないよ。 皆それぞれ別行動をとっているようだな。
 今日は特にやることもあるまい? 出発の目処が立つまで君ものんびり過ごせばいい」

「やることねェって・・・・・・・・・・・・、・・・・・・ねェな」


昨晩に聞きたいことは大体聞いているため、あとは帰るだけなのだが
今自分がいる船を独立国同盟に贈呈するとなると帰るに帰れない。


「居住区に突っ込んだ時の瓦礫やらなンやらがだいぶ片付いているみてェだが」

「私が真夜中に掃除した、民間人にも手伝ってもらってね。
 ただ船にある部屋が並ぶ場所はまだ片付けが終わっていないんだ」

「・・・・・・そこ、片付けるわ。 暇だしな」

「おや、助かるよ。 優しいな君は」

「オマエもやるンだよボケ。 マセガキにも手伝わせるぞ」


一方通行は部屋でゴロゴロとするためにちゃっちゃと船に残った瓦礫の山を片付けることにした。
51 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:22:11.11 ID:DwLBiC7ao

今日はここまでです。

遊戯王ネタなんていつ使ったっけって思いましたが、垣根帝督のアレでしたか・・・・・・
自分で書いたのに忘れてました。


改めて、新スレでもよろしくお願いします。
次回更新はいつも通り。


それでは、ありがとうございました〜。
52 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/19(土) 21:22:37.57 ID:DwLBiC7ao



                          【次回予告】



『だから私は・・・・・・、その、なんて言われても前を向いて生きていくしかないんです』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華




『・・・・・・・・・・・・アホらし』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント



53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 21:46:07.61 ID:u9LIg1cDO
おつつつ
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:00:43.82 ID:+wPwYRft0
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:11:50.50 ID:z1syhUDG0

エリザリーナ独立国同盟の一般人の皆さんにもフラグ立てるとか……一方さんパネェっす
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 22:23:39.38 ID:1fqUyya5o
イギリスだからなのか、DIOのツレもいたぞwwwwww
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/19(土) 23:19:55.63 ID:8/QoQzTz0
いやトラックは親船さんに返せよwwwww
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/20(日) 00:53:35.98 ID:XTMz6gpC0

ケータリングカーに変えられた軍用トラックなんて返されても困るだろうから、代価をアレイスターの口座からまた引き落とすんだろ。
あるいは一通さんの借金に加算するとか。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 02:01:28.61 ID:VVMgSAHfo

ちょうどこれ読んでたらアニメにサーシャとワシリーサでて来て吹いた
てか一通さんフラグ数がやべえっすww
w
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 03:19:07.25 ID:goAKELfgo
あいかわずのエイワスww
予想の斜め上を行きやがる
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 03:56:21.45 ID:JRfo0OdAO
一方ていとくんは塵と化していた。


……実戦訓練とか軽く言ってるけど
魔術師の最強クラスでもなきゃまともにやり合えないよなぁ。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 04:30:13.12 ID:LKL6S40AO
ワリシーサはわけわからんチートだから仕方がない
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 08:20:36.35 ID:9HxLRG/DO
ワシリーサは見た目ババァかと思ってたら金髪にした麦野だった
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 12:38:11.21 ID:KR1JprMT0
ワシリーサは禁書キャラで唯一納得のいかないチート
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:13:55.53 ID:JnxCasKBo
削板は根性だから強い
ワシリーサは変態だから強い
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/20(日) 21:25:19.05 ID:rLkg4c8AO
木原くンの足は凄く臭い
67 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/21(月) 22:11:47.60 ID:SpShx5P4o
こんばんわ。今日も元気に投下していきたいと思います。

アニメ二期、けっこう話が進んでるみたいですね。早く見たいなぁ・・・・・・

それではいきます!
68 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:13:07.48 ID:SpShx5P4o


――――――――――――――――――――――


一方通行が『アライアンス』号で暇を持て余している頃、『天使同盟(アライアンス)』の良心、
風斬氷華は起床していた。


「・・・・・・・・・・・・ん、んん・・・・・・」


半目開きの寝ぼけた顔でゆっくりとベッドから起き上がる人工天使。
風斬は自身の力でいつも愛用しているメガネを『現出』させ、装着する。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、あ」


頭の中にある三角柱の核もようやく目を覚ましたのか、カチャ、という小さな音とともに
通常運転を始めた。それに応じるかのように風斬は昨夜の出来事を思い出す。
69 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:14:07.33 ID:SpShx5P4o


(ひぅぅぅぅ・・・・・・!!! わ、私、なんてことを・・・・・・!!!!)


焼けた鉄板のように顔をボンッ!と真っ赤にした風斬はあまりの恥ずかしさに悶えまくり、
布団を体に包ませて横長の枕に顔を埋めてしまった。

しかしその枕にまだ『彼』の残り香があると風斬の鼻腔が知らせ、
更に『ひぇぇぇ・・・・・・』と転がり、そのままベッドから落下してしまった。
一人で何をやってんだろうかこの娘は。


(私、昨日・・・・・・結局抱きついたまま寝ちゃったんだ・・・・・・)


両手をわなわなと震わせながら風斬はまるで黒歴史を思い出した人間のようにあうあう言っている。

本人の言うとおり風斬は昨夜、一方通行を抱き枕にしてそのまま寝入ってしまったのだ。
スラリとした細い体格の彼は風斬にとってはベストな抱き心地だったのだろう。
一方通行の写真を両面プリントした抱き枕を突きつければ高く買い取ってしまうかもしれない。

と、そんな誰得にも程がある抱き枕の想像をしていると風斬も居住区の異変に気付いた。
70 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:15:00.60 ID:SpShx5P4o


「・・・・・・な、なんだろ? なんだか賑やかだけど・・・・・・」


ベッドに上がり、ロシアの寒気で生じた壁の窓の結露を裾でコシコシと拭ってから外の様子を見てみる。
しかしその窓から直ぐ目の前に別の建造物が隣接して建っており、外の様子を窺えなかった。


「なんかお祭りでもやってるのかな・・・・・・。 あ、一方通行さんも居ないし・・・・・・」


彼の名を独り言で発しただけで顔を紅潮させる風斬は、まさに恋する乙女そのものだった。
ひとまず彼の行方を知るために風斬は一瞬で衣服を『現出』させ、パジャマから可愛らしいコートに着替える。


「他のみんなもどっか行っちゃったのかな・・・・・・、少し寝過ぎたかも」


一般的な睡眠時間と変わらない時間寝ていたので、寝過ぎという事はないだろう。
風斬は化粧室の鏡の前に立ち次々とマフラーを現出させ、どれが似合っているか品定めを始めた。


「〜♪ どんなのなら褒めてくれるかな、一方通行さん」


さっきまでの恥らいによる悶えのテンションも何処吹く風。風斬は鼻歌混じりで
一方通行が気に入ってくれそうなマフラーを選んだ。
71 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:16:37.81 ID:SpShx5P4o


「・・・・・・・・・・・・うん。 こ、こんな感じかな・・・・・・?」


風斬が選択したマフラーは黒を基調にしたカラーのマフラーだ。
そこにマーブル模様で加わっている白色が丁度いいアクセントになっている。


「さて、と・・・・・・。 今日も頑張ろう」


『天使同盟』は既にロシアでやることを終えているのに一体何を頑張るというのか。
風斬の場合は言わずもがな、一方通行への積極的なアプローチである。

昨日のレッサーとの会話で初めて自分が一方通行に向けている感情を『ソレ』だと自覚し、
レッサーからはもっと積極的にとアドバイスを貰った風斬は、とにかく張り切っていた。


一瞬、あの例の『桃色ノート』の中身が脳裏をよぎるが、


「・・・・・・あ、あんなデタラメ、信じるもんか・・・・・・。 本当だとしても覆してみせる・・・・・・」
72 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:17:20.27 ID:SpShx5P4o


ふるふると頭を振り、桃色ノートとニヤケ面の聖守護天使を頭から追い払う。


さて、と風斬は気持ちを切り替え意気揚々と部屋の扉を開けた。




「きゃっ」

「?」




今日も元気に一方通行と過ごそうと考えていた風斬には悪いが、運命のルーレットは気紛れだ。
この日、風斬氷華という名のボールが一方通行という名のポケットに入ることはないようだ。
73 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:18:13.06 ID:SpShx5P4o


「あ、あの、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

「! ・・・・・・チッ」


少し勢い良く扉を開けてしまったため、扉の前にいた誰かにぶつかってしまったようだ。
風斬は慌ててその人物に近付き安否を確認した。


「って、あれ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


風斬の目に映った人物はよく見たら、否、よく見なくても一目で判別出来た。
頭の先から足首まで、全身がほぼ真黄色という奇抜なファッション。
その整った顔にはピアスが数点付けられており、舌先から伸びるチェーンがジャラリと音を立てている。


「ヴェントさん?」

「・・・・・・何よ」


元『神の右席』の一員、『前方』のヴェントは心根から欝陶しそうな顔で科学の人工天使を睨みつけていた。
74 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:19:09.31 ID:SpShx5P4o


意外な人物に出会った事に面食らった風斬だが、とにかくまずは彼女の身の心配だ。


「あの・・・・・・、ごめんなさい。 大丈夫ですか・・・・・・?」

「ちょっとぶつかっただけでしょ、なんともないわよ別に・・・・・・」


京劇のような濃い化粧を施している目でギロリと睨まれ、風斬は少し怯んでしまう。


(うぅ・・・・・・、怒らせちゃったかなぁ・・・・・・)


実際本当にヴェントは怪我などしておらず、扉がぶつかっただけでいちいち激昂するつもりもないのだが、
風斬のオロオロとした様子を見て若干のイライラとほんの少しの違和感を感じた。
75 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:20:33.23 ID:SpShx5P4o


「・・・・・・人の心配してんだ? 『堕天使』」

「はい・・・・・・。 だ、堕天使・・・・・・ですか・・・・・・?」


そんな奇妙な呼ばれ方をしたことがない風斬は首を傾げながら困ったように笑ってみせる。
その笑顔がヴェントの抱く違和感を更に増幅させた。


「堕天使でしょうが。 人間に作られた紛い物の天使、冒涜の象徴だろ」

「は、はぁ・・・・・・。 ぼー、とく・・・・・・?」


ともあれ、二人は居住区の大通りへと歩いて行く。


これが漫画やアニメなら風斬の頭の上にはインテロゲーションマークが二つ三つ浮かんでいるだろう。
人間に作られた紛い物の天使というのは風斬自身も自覚しているが、冒涜の象徴とはどういう意味なのか。
76 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:22:34.65 ID:SpShx5P4o


「アンタは神に創られたワケでもない、人間の手によって創られた不恰好な堕天使野郎って言ってんのよ。
 今は『あの時』みたいに醜いバケモノにはなってないようだけど」

「そ、そうですね・・・・・・私は人の手で創られた天使・・・・・・。 天使とは呼べないんでしょうけど」


ヴェントと並んで歩いている風斬は何となく察する。

元とはいえ十字教の魔術師であるヴェントは、聖なる存在である天使を真似て創られた
人形のような自分があまり好きではないのだろう、と。


そして風斬は言った。


「あの・・・・・・ごめんなさい。 私は確かにあなた達魔術師にとっては許せない存在なのかもしれません。
 でも、もう私は私を受け入れました。 こんなバケモノでも接してくれる人間はいるんだって分かったから。
 だから私は・・・・・・、その、なんて言われても前を向いて生きていくしかないんです」


さっきまでのオドオドとした雰囲気は、その時だけは影も形もなくなっていた。
風斬の目は、真っ直ぐ、ヴェントの目を見つめていた。
77 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:23:59.84 ID:SpShx5P4o


ヴェントも同じように風斬を睨み続けたが、やがて目を逸らしため息をついた。


「・・・・・・・・・・・・アホらし」

「え、え?」


何かまずい事を口走ってしまっただろうかと、風斬は再び臆病な彼女へと戻ってしまう。


「あーあ、アホらしい。 っていうか、これじゃ私がクソったれのクズ野郎みたいじゃない。
 ま、あながち間違っちゃいないんだけどさぁ」

「ええ? よ、よくわかりませんがそんな事ありませんよ、あるわけないじゃないですか!」

「はいはい、おべんちゃらは結構結構」

「ほ、ホントですよぉ・・・・・・、自分をそんな風に蔑まないでください・・・・・・」
78 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:24:50.81 ID:SpShx5P4o


マジで言ってんのかコイツ、とヴェントは訝し気に風斬を見るが、
どうやらこの人工天使は世辞を言えるようなバケモノではないらしい。

実際、自分で自分を蔑むヴェントを心配そうに見ている、うるうると瞳を揺らしながら。


「えーと・・・・・・、えと・・・・・・、ほ、ほら。 ノートにもヴェントさんの事書いてありましたし」

「はぁ? ノート?」

「あああああああああああ何でもない何でもないです・・・・・・・・・・・・!!!」


何をそんなにパニクっているのか、風斬は目を回しながら必死でヴェントを励まそうとしている。
指を顎に当てながらうーん、うーんといい感じの言葉を模索するその姿にヴェントは思わず失笑した。


「・・・・・・なーんだそりゃ、なんなんだよそりゃあ?」
79 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:25:38.85 ID:SpShx5P4o


「ほぇ?」

「そんな風に振る舞ってれば人間っぽく見えるってか?」

「そ、そんなつもりじゃないですよ・・・・・・、ヴェントさんが元気ないからこうやって・・・・・・」

「余計なお世話よ、堕天使」


言って、ゲシッと風斬の足を小突く。


「あうっ!?」


それが丁度いい具合に膝裏にヒットし、風斬はそのままガクンと崩れ落ちてしまった―――いわゆる膝カックンだ―――。
80 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:26:17.74 ID:SpShx5P4o


「な、なにするんですかもう・・・・・・!」

「なーんか、アンタ見てるとムカつくのよ」

「ご、ごめんなさい・・・・・・」

「謝んなっつーの、余計にイライラする」

「うう・・・・・・」


ヴェントはしょぼくれながら立ち上がる風斬をつまらなそうな表情で見た。


「ホント、ムカツクわね」

「すみま・・・・・・、あ、う・・・・・・」


そう言われて更に落ち込む風斬の事など構わず、ヴェントは続けて言う。


「アンタ見てると、私がどれだけ小さい生き物かまじまじと見せつけられてるみたいだわ」

81 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:27:42.27 ID:SpShx5P4o


次はどんな罵詈雑言が飛んで来るかとビクビクしていた風斬は、
ヴェントの口から出たセリフにキョトンとする。


「え・・・・・・?」

「アンタ、しっかり自分を制御出来てるのね。 どうやってんの?」


科学についての知識が乏しいヴェントから見ても、今の風斬氷華が『安定』の域にいる事くらいは分かる。
しかし彼女は例の『0930』事件で暴走状態のヒューズ=カザキリをその目でしっかり確認しているのだ。
あんなバケモノが今ではすっかり臆病な女の子、イメチェンにしては劇的すぎる。


「どうって言われても・・・・・・、うーん、自分でも何で今、この世界に現出できてるのか
 よくわかんないんですよね・・・・・・。 一方通行さんと一緒に天使さんと喧嘩しちゃった時に
 力を使い果たしたはずなんですけど、改めて言われるとわかんないですね・・・・・・」

82 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:28:40.56 ID:SpShx5P4o


どっかの金髪召使さんによれば、風斬氷華がこの世に現出していられるのは
『一方通行やその他の人間たちと共に過ごしたいという気持ちが、風斬氷華を
 この世に留まらせている』との事。


しかし夢のない話をしてしまうが、現実的に―――風斬や天使などが現実的かどうかはさておき―――
AIM拡散力場の集合体である彼女が現出できるエネルギーを全て使い果たしてしまえば
想いが強かろうがどれだけ願おうが消えてしまうのだ。


それでも尚、風斬がこうして日常を送れている理由は・・・・・・、言うまでもないだろう。


「わかんないって・・・・・・アンタ自身の話でしょうが」

「そうなんですけど・・・・・・、こうして現出してられるだけで嬉しいから、
 そこまで深く考えたことないんです。 私、あんまり頭良くないし・・・・・・」

83 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:29:45.15 ID:SpShx5P4o


えへへ、と抜群にキューティクルな笑顔を付け足して言う風斬。
疑うまでもないが、彼女は無理をしていたりごまかしてたりしている様子は無いようだ。


「・・・・・・・・・・・・、ふーん。 何か、やっぱムカツクわね」

「な、なんでですかぁ・・・・・・!?」


目尻に涙を溜めながら指をつんつんしていじける風斬。
ここで苦笑でもすれば少しは場が和むのだろうが、そういう馴れ合いは好まないヴェントは
あくまでも風斬に対して突っ慳貪な態度をとった。


馴れ合いは好まないと思っておりながら、では昨日の一方通行とのやり取りはなんなのか?
と、聞いたら有刺鉄線付きハンマーでタコ殴りにされそうだ。

そしてヴェント本人も一方通行とのやり取りを思い出し、複雑な表情を浮かべる。
84 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:31:23.63 ID:SpShx5P4o


「一つ聞きたいんだけど、アンタがこの世界に居続ける理由って、"白いの"にある?」

「しろいの?」

「一方通行のコトに決まってんでしょ」


三角柱の核が口から飛び出るかと思った。

垣根やエイワス、レッサーに続き、ヴェントにも自分が抱く一方通行への想いを見破られてしまった。
いとも簡単に、言うなら二ピースしかないパズルを組み立てるかのように、容易く。


「どど、どうしてわかったんですか・・・・・・? 私が、その・・・・・・一方通行さんのこと・・・・・・」

「え・・・・・・そうなの? いやそこまでは考えが及ばなかったんだけど」

「ええええ!? 言い損じゃないですかぁ・・・・・・!」


勝手に派手な自爆をかましてしまう風斬。十五年ぶりに現れた使徒に匹敵する自爆っぷりだ。

もうバレバレな既成事実なのだが、それでも初心な風斬の乙女心は知られたら恥ずかしいという
小、中学生のような未熟さなのだ。


その証拠に、数えるのも面倒なほどの回数が積み重なっている風斬の顔真っ赤タイムが既に始まっていた。
85 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:32:47.38 ID:SpShx5P4o


ヴェントは改めて確認するため、風斬に再度質問する。


「アンタ、あの白いののコトが好きなの?」

「あううう・・・・・・、その、ハッキリそう聞かれると答えにくいと言いますか・・・・・・その、」

「イライラすんなぁホント、好きなのかそうじゃないのか、ハッキリ意思表示しろよ」

「ご、ごめ・・・・・・あ、う・・・・・・、・・・・・・す、す・・・・・・」


テロップでも表示してくれなければ聞き取れないような超がつくほど小さな声で風斬は答えた。
86 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:33:40.84 ID:SpShx5P4o


「好きなの?」


再三聞かれた風斬はさすがにもう声に出して言う気力は無くなったようで、
小さくコクコクと頷いた。その顔はもう茹で立てのタコみたいに赤く染まりきっている。


「あっは、好きなんだ、あんなのがぁ!? ハッ。 ふうん・・・・・・、笑えるわ」

「な、何で笑うんですか・・・・・・・・・・・・」


特別な訓練を受けたとしか思えない、醜悪で極悪で毒々しい笑みを浮かべるヴェントに
風斬は少しムスッと膨れてしまう。


ヴェントはこうして相手をおちょくったり敵意や悪意を抱かせる事にかけてはスペシャリストだ。
かつて彼女が行使していた魔術に、『天罰術式』というものがある。
ヴェントに対し敵意や悪意を抱いた者を、場所や距離問わず昏倒させてしまうという反則的な魔術だ。

彼女が施している化粧にも、相手に嫌悪感を抱かせる要素として一役買っている。

87 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:35:09.21 ID:SpShx5P4o


現在は天罰術式を行使するのに必要な霊装が無いので発動は不可能なのだが、
こうして相手につい嫌悪感を抱かせてしまうような言動や仕草は癖として彼女の身に染み付いているようだ。


「何であんなのがいいワケ?」

「お、教えません・・・・・・」


つーん、とそっぽを向いて風斬は黙秘権を行使する。彼女にしては珍しい意思表示だった。


「ふうん、アンタそういう顔も出来るの」

「そ、そうです・・・・・・。 ヴェントさんはイジワルだから教えません・・・・・・」

「堕落の人形が。 そんな人間臭い仕草が出来るのも白いののおかげってか?」

「?」

「努めてんでしょ? 人間と過ごすなら自分も人間らしくしなきゃいけないってさぁ。
 『あの時』のお人形さん状態じゃ白いのもさすがに引いちゃうもんねぇ」

「あ、一方通行さんはそんな事しなくても、どんなバケモノだろうと受け入れてくれる人です・・・・・・!」

「なるほど、そういうところに惚れちまったってか」

「あ、・・・・・・・・・・・・」


ヴェントの安い挑発にまんまと引っかかった風斬はシュン、と項垂れた。
こういった口頭でのやり取りでは風斬はヴェントに遠く及ばない。
ヴェントはしてやったりといった顔でニヤニヤと笑っていた。
88 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:36:28.27 ID:SpShx5P4o


しかしそこで風斬はかすかな違和感を覚え、首を軽く傾げた。
とりあえずそれを解消するために今度は彼女からヴェントに問う。


「・・・・・・ヴェントさんって、そういう事に興味あるんですか?」

「は?」

「あ、いえ・・・・・・その、今みたいに私と一方通行さんの事よく聞いてきたから・・・・・・
 そういう、恋愛とか興味あるのかなって」

「ケンカ売ってんの?」

「そ、そんな事ないです・・・・・・! ごめんなさい・・・・・・」

89 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:37:28.50 ID:SpShx5P4o


ちょっと威嚇しただけですぐ涙目になるな、とヴェントはうんざりとため息をつき、
しばし閉口してから風斬に答える。


「アンタみたいなのが乙女やってんのが面白かったから、聞いてみただけよ」

「そ、そうですか・・・・・・。 ・・・・・・本当にそれだけ?」

「どういう意味よ?」


風斬が抱いた違和感の正体は、自分と一方通行の事について問い詰めてくる
ヴェントの態度だった。

昨日今日と総合してもあまりヴェントと会話をしていない風斬だが、
それでも本来、ヴェントというこの女性がそういった色恋沙汰―――それも他人の―――について
興味を抱くとは思えないのだ。

90 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:38:22.19 ID:SpShx5P4o


風斬はあの『桃色のノート』の内容を思い出す。
彼女はノートの内容を隅から隅まで記憶しているわけではない。『パラメータ』が記載されたページは
大体把握しているが、『対象者』との関係、経緯が詳しく記載されたページは
オルソラ=アクィナスを除いて閲覧していないのだ。


しかし、だからこそ気になる。『パラメータ』のページには風斬の隣を
不機嫌な様子で歩くヴェントの名もしっかりと記載されていたのだ。


「え、っと・・・・・・。 ヴェントさんも一方通行さんの事が気になってるのかな、って・・・・・・」


ヴェントはずっこけた。
今時、そんなリアクションをする者などいないだろう、と言えるコケ方で。


「ヴェ、ヴェントさん!? 大丈夫ですか・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何? なに? 今なんてった?」

91 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:41:14.39 ID:SpShx5P4o


盛大にコケてしまったため、ヴェントは額を思い切り地面にぶつけてしまっていた。
しかし彼女はゆらりと起き上がると、そんな事はお構いなしに風斬を驚愕の表情で睨む。


「え? あ、いやだから・・・・・・ヴェントさんももしかしたら彼の事・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・んなワケねぇだろ」


ヴェントは赤くなった額をスリスリと撫でながら、スゥっと息を溜めて、


「んなワケねぇだろうが!! アンタバッカじゃねぇ!? 何でそうなる!?
 なーんでそうなるんだっつーの!! 思考回路がショート寸前なんじゃないの!?
 ホント、堕天使って愉快で素敵な頭の構造してんのね!!! アホバカ死ね!!!」

「うう・・・・・・ヒドイです・・・・・・」


ガトリング砲のように次々と飛んでくるヴェントの暴言に風斬はひどく落ち込んでしまった。
違うなら違うと一言で締めてくれればいいものを、これでは逆効果だろう。


「ち、違うならなんでそんなムキに・・・・・・」

「ムキになんかなってねぇし!!! ていうか何!? さっきの会話から
 どうやったら私が白いのを気に掛けてるなんて結論に至るのよ!?」


あまりの怒号に周りの民間人たちが何事かと視線を送っているのがムキになっている証拠である。
風斬は空腹から来るイライラで怒り狂った狼のように吠えるヴェントをなんとか宥める事に努めた。
92 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:48:11.79 ID:SpShx5P4o

ただのガールズトークだけで今回の投下はオシマイです・・・・・・すみません。
ま、まぁたまにはこういうのも良いですよね?


今回もここまで読んでくださった皆様に感謝します。ありがとうございます!

次回更新はもちろん三日以内に。

次は色々と大変な事になりそうです・・・・・・

それではまた!
93 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/21(月) 22:49:00.23 ID:SpShx5P4o



                          【次回予告】



『迎え。 来る。 近い。 離別。 拒否。 嫌。 嫌。 嫌。 ・・・・・・嫌』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・ミーシャ=クロイツェフ




『・・・・・・ミーシャ、あなた一体・・・・・・・・・・・・』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ




『一本足の家の人食い婆さん―――――』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ




『ごっ、がああああああああああああああああああああああああッッ!!!?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督



94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:51:22.56 ID:rDOQUnXso

平松晶子ボイスで脳内再生余裕でした
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:55:26.89 ID:3Fw4/Wkoo
乙乙
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 22:59:19.08 ID:VfSEwwSXo
おつおつ
垣根やべぇ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:01:07.09 ID:17GdMYI1o
思考回路がショート寸前>今すぐ会いたいって事ですね
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:22:52.40 ID:LWjNENDao

風斬かわえーなーと思ってたらゔぇんとたんにやられた
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:23:11.23 ID:IJ+O9BYOo
>>84
三角柱の核が口から飛び出るかと思った。

ここクッソワロタwwwwwwwwwwwwwwww
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:33:32.37 ID:n6ZyZ72e0
一方さんマジイケメン
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/21(月) 23:42:00.91 ID:3AGCk5Ko0
やばい
ギャグとか抜きにていとくんがやばい
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 00:47:35.09 ID:M8fywBOG0
ああ、前スレのフラグってそういう…

一方さん両面プリント抱き枕が誰得…だと…?!
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 03:14:50.35 ID:vt8fe42ao
おいおい一方さん抱き枕とか完全に俺得じゃねーか
表面はロシア服、裏面はもちろん半裸なんだよな?百合子ちゃンでもいいぞ
100000000万枚注文した
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 08:08:35.13 ID:YapzG3GAO


さすが一方さんと双璧を成すフラグ建築士垣根さん
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 10:55:58.59 ID:q6gp1CSAO
ちょっとわっしー何本気出しちゃってんのおおおおお!!?
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 12:17:31.76 ID:kTPDngJ5o
ワシリーサからのダメージで『ごっ、が(ryってなってるならまだしも
魔術の副作用だとしたら…ワンチャン再起不能あるでぇ…
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 17:38:21.00 ID:qAerXid40
風斬が正統派ヒロインすぎて俺の理性がやばい
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 18:22:18.42 ID:q6gp1CSAO
>>106
魔術の反動→ ごっ、
魔女の攻撃→ があああ(ry

こうだな
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 20:53:32.00 ID:+8YftVqIO
>>103
なに、その、貧坊っちゃま仕様
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 23:05:30.17 ID:mwYMzdsDO
ていとくんはクソ寒い中で冷蔵庫に逆戻りか・・・・・
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/22(火) 23:51:43.62 ID:o6Zq/m6Mo

あ、あれ?
ていとくん、死亡しかけてねえ?
てか、素人に毛が生えた魔術師に人喰い婆さん使うなw
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 07:34:55.59 ID:6OzUakNAO
さりげないセーラームーンネタに感動
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 17:38:16.13 ID:V2AQZO+h0
てーとくんだけは恋愛・友情フラグではなく死亡フラグだったということか
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [ sage]:2011/02/23(水) 17:40:48.53 ID:SaTIowOz0
実際に死亡フラグを消化しているから侮れない
115 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/23(水) 22:10:38.84 ID:ncnMJJRyo
こんばんわ〜、投下しに来ましたよ〜
いつもたくさんの支援をありがとうございます!


相変わらず垣根帝督は皆に愛されてますねwwww私も垣根帝督は男性キャラで三番目に好きなので嬉しいです。
当初は登場させるかどうか本当に迷ったものですが、出してよかったと今なら思えます。

では、いきまーす。


116 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:11:51.80 ID:ncnMJJRyo


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・ん。 とりあえず朝の仕事はこんなものかしらね」


ここは独立国同盟にある軍事施設のオフィスルーム。
エリザリーナはふぅ、と一息つくと目の前にあるノートパソコンの電源を落とした。


彼女はゆっくりとした動作で腰掛けていたチェアから立ち上がると、
石で出来た無骨な壁にある窓の方へ向かい、外の様子を眺める。


「とりあえず、みんなが明るくなってくれて良かったわ」


外では至る所で独立国同盟の民間人が飲めや食えやと盛り上がっている。
民間人の子供たちも、笑顔で船に向かって走っていた。
117 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:12:40.79 ID:ncnMJJRyo


エリザリーナは今朝五時頃、エイワスに『話があるから来て欲しい』と言われて
側近であるベラッギとロンギエを連れて居住区に鎮座する巨大豪華クルーザー『アライアンス号』へと
向かっていた。

そこで待っていたエイワスからの、予想だにしなかったサプライズ。
それはこの豪華クルーザーをエリザリーナ独立国同盟に贈呈するというものだった。

いきなりのとんでもプレゼント発言に面食らうエリザリーナと側近の二人だったが、
『天使同盟』来訪で独立国同盟に多大な迷惑をかけた事への詫びとして、
船に備え付けてあるあらゆる機器、食料、燃料、施設の全てを明け渡し、民間人たちに
喜んで欲しいと言われたら断るわけにはいかなかった。


実際、クルーザーにあった機器や食料、燃料は独立国同盟にとっても大変ありがたい物であり、
あらゆるレジャー施設は大人も子供も楽しめるようなものばかりで
結果的には独立国同盟にとって大きなプラス要素となったのだ。
118 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:13:28.46 ID:ncnMJJRyo


(・・・・・・でも、まだ客室へ続く通路を塞いだ建造物の瓦礫の掃除が終わっていないわね。 
 今やるべき仕事も一応キリがいいところで終わったし、そっちも手伝いに行こうかしら)


クルーザーには数多くの客室が設けてある。
居住区に突っ込んだ時に建造物の瓦礫やらなんやらが客室へ通じる道を塞いでしまっているため、
独立国同盟の工業関係に通じた民間人たちで今も撤去作業を行っているだろう。


エリザリーナはオフィスから廊下へ出てクルーザーがある居住区へ向かう。


「?」


と、廊下の突き当たりに異形の存在が見えた。

それは力なく壁に寄りかかりながら座っており、頭を垂れて意気消沈しているようにも
具合が悪くて座り込んでいるようにも窺えた。


「・・・・・・・・・・・・、ミーシャ=クロイツェフ?」


見紛うはずもない。
体表をすべすべした布で覆い、器官を全て布の凹凸で表現している不気味な顔。
髪にみえるそれは、頭から後ろにラッパのように流れる布。
全身に金色の葉脈のような模様が走ったその姿は、


ミーシャ=クロイツェフ。『神の力(ガブリエル)』と呼ばれる大天使だった。

119 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:14:32.97 ID:ncnMJJRyo


エリザリーナは明らかに様子のおかしいミーシャの元へ駆け寄った。


「どうしたの・・・・・・? 具合でも悪いのかしら?」


と、聞いたはいいものの、果たして本物の天使であるミーシャに人間と同じような
対応をしてもいいのだろうかとエリザリーナは悩む。

しかしそれを考慮しなくてもミーシャの様子がおかしいことは明らかだった。
第三次世界大戦で見せたまさに天使の如き覇気も、『天使同盟』の一員として
独立国同盟に訪れ、無邪気な仕草を見せた人間らしさも、

今のミーシャからは全く感じられない。


(医者に・・・・・・、見せても無駄よね。 天使の身体まで対応できる医者がいたら
 是非紹介してほしいところだわ)

120 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:15:31.28 ID:ncnMJJRyo


学園都市には『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』と呼ばれる凄腕の医者がいるが、
例え彼でも天使を治療することは出来ないだろう。


ミーシャの体調を調べられる、或いは治せる存在がいるとすれば、それは――――。


「・・・・・・エイワス!」


エイワス。聖守護天使の称号を持つ、天使よりも更に上の領域に立つ存在。
あの金髪の怪物ならば、ミーシャに何らかの処置を施せるかもしれない。
と言うよりも、エイワスに出来ないことなどこの世に存在するのかという疑いすらある。

エリザリーナはエイワスについてそれほど詳しいわけでもないが、
それでもエイワスなら今のミーシャの状況をどうにか出来るという確信があった。


(エイワスは今クルーザーにいる。 でもここからでも呼べば恐らく・・・・・・)


努めて冷静になり、エイワスを呼ぶために声を出そうとした時。
121 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:16:31.15 ID:ncnMJJRyo


スッと、エリザリーナの口を優しく柔らかな動作で塞ぐ手が伸びた。


「・・・・・・?」


それは言わずもがな、ミーシャ=クロイツェフの青白い滑らかな手だった。
彼女は人差し指を立て、エリザリーナの唇に触れる。


「な、何・・・・・・? エイワスは呼ぶなと言う事?」


ミーシャがとった意外な行動に驚きを隠せないエリザリーナ。
こうして近くで見ると、ミーシャの呼吸は明らかに乱れており―――呼吸をしているかどうかは別として、
どう見ても正常な体調ではない事は火を見るより明らかだ―――とても放っておける状態ではない。


にも関わらず、


「kvwfjdcv平気pabxdwug」


そう言って、ミーシャはわずかに首を横に振った。
その表情はエリザリーナを安心させるために、ニコリと微笑んでいるようにも見えた。
122 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:17:53.26 ID:ncnMJJRyo


「何を言っているの? どう見ても辛そうな状態じゃない。
 無理はしないで、エイワスを呼べばきっと何とかしてくれると思うから」

「gpgcdv駄目pidfcvcs」

「ミーシャ・・・・・・・・・・・・」


不思議なものだ。


第三次世界大戦の時は、ロシアを滅茶苦茶に荒らしまわったあの大天使を、
今はこうして親身になって心配している自分が、とても不思議だった。


「迎え」

「え?」

123 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:18:42.07 ID:ncnMJJRyo


エリザリーナは耳を疑う。ミーシャの『言葉』に驚いたのではない。

その声が信じられないほど透き通っており、全くノイズが混じっていなかった事に対して驚いたのだ。


「迎え。 来る。 近い。 離別。 拒否。 嫌。 嫌。 嫌。 ・・・・・・嫌」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」


そして今度こそ、エリザリーナはミーシャの『言葉』に驚愕する。


「『迎え』・・・・・・? 『離別』? 『嫌』・・・・・・? ・・・・・・どういう事?
 ・・・・・・ミーシャ、あなた一体・・・・・・・・・・・・」

「秘匿。 要求。 彼。 皆。 心配。 ・・・・・・、・・・・・・・・・・・・」

124 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:19:36.08 ID:ncnMJJRyo


ミーシャは口をモゴモゴと動かしながら言葉を紡いでいく。
エリザリーナは彼女から出てきた言葉の意味をよく考え、答えを導きだしていった。


「・・・・・・・・・・・・、・・・・・・。 『この事は誰にも言うな。 なぜなら「天使同盟」の皆が心配するから』。
 ・・・・・・そういう事かしら?」


ミーシャはエリザリーナの言葉を聞き、やがてコクリと頷いた。


「馬鹿な・・・・・・・・・・・・」


今、目の前にいる本物の大天使は、こんな状況でも他人を、『人間』を心配しているというのか。

天使とは神が創りだした人形、機械、ロボットであると、魔術サイドでは認識している。
だがミーシャのこの姿は、魔術サイドの常識を地殻から捲り上げるように覆すものだった。
125 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:20:32.55 ID:ncnMJJRyo


「けど、このままだと・・・・・・!!」

「pfgvjgc平気qpxvsfhi」


ミーシャは壁に手を添え、その衰弱しきった体を支えながらヨロヨロと立ち上がる。
その際、彼女の腰から伸びる布の裏からノートとスケッチブックが落ちた。


「?」

「―――――――――」


天使の所有物にしてはやけに身近なそのノートとスケッチブックにエリザリーナは怪訝な顔を浮かべる。
ミーシャは床に落ちたそれを今にも倒れそうな弱々しい動作で拾い上げようとする。
必死に拾おうとしているのが如実に窺える。よほど大切な物なのだろう。


「・・・・・・はい、どうぞ」


エリザリーナはノートとスケッチブックを拾おうと屈むミーシャを制止し、
代わりに拾いあげて彼女に手渡してあげた。

正直、いち魔術師として天使が人間界で書き記す情報が気になったが、エリザリーナはあえて詮索せず
ミーシャの手にそれらをしっかりと持たせた。
126 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:21:34.52 ID:ncnMJJRyo


「大事な物なのでしょう? だったら無くさないようにしないと」

「pdkbjgr感謝mcfhrugh」

「でもやはり放っておけないわ。 エイワスに伝えるのが駄目だと言うのなら、
 せめて私が使っているそこのオフィスルームで休んでいなさい」


そう言ってエリザリーナはミーシャの背中に手を添え、体を支えてあげながら
さっき出たオフィスへと歩を進めていった。


エリザリーナは何の気無しにミーシャの顔を見ると、彼女は廊下の天井を見上げていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


エリザリーナも釣られて天井を見上げるが、そこには簡素な電球が均等に並んでいるだけだ。
天使が興味を抱きそうなものは何一つ見当たらない。
127 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:22:24.72 ID:ncnMJJRyo


それでもジーッと天井を見つめるミーシャに、彼女は思わず問いかける。


「・・・・・・、どうしたの? 天井に何か面白いものでもあったかしら?」

「―――――――――――、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ミーシャは何かを言いかけたが、エリザリーナの問いには答えずただ『上』を見つめ続けるだけだった。

エリザリーナは意味がわからず訝しんだが、やがてミーシャが言っていた言葉を思い出す。


(・・・・・・・・・・・・『迎え』。 『離別』。 ・・・・・・・・・・・・、!!)


ハッとする。

恐らくだが、たかが人間が至った浅ましい推理であったが、エリザリーナは思う。
128 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:23:27.49 ID:ncnMJJRyo


(もしかすると、ミーシャ=クロイツェフは近いうちに人間界から消え去る・・・・・・?
 元の位階へと『還る』ために・・・・・・、いや。 『嫌』だと連呼していた様子からすると、
 彼女は元の『座』へ戻る事を拒んでいる。 彼女の意志ではない・・・・・・・・・・・・)


そして昨晩の食事で『天使同盟』と意見を交換し合った際に出た、『ベツレヘムの星の欠片』。
ミーシャ=クロイツェフが位階へ還るための『門』が残っている空中要塞の残骸。


(・・・・・・ベツレヘムの星の欠片に何か異変が? ミーシャが見ている天井には何も無い。
 だとすれば見ているのは天井では無く・・・・・・、『空(そら)』?)


そして、プライベーティアとの抗争の件で事後報告をしにロシア政府の元へと
足を運んだ際、軍事関係の人間から聞いた確証のない情報。


(学園都市から放たれている気象衛星が何らかの不具合を起こしている・・・・・・)

129 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:24:11.88 ID:ncnMJJRyo


垣根帝督によればそれは『ひこぼしU号』という名称の気象衛星だったはずだ。
それが『何らか』の不具合を起こしているらしい。




「まさか」




思わず声が出てしまう。ミーシャがこちらを向いてきたが、エリザリーナは
何でもないと言って適当にごまかす。


(・・・・・・・・・・・・だとしたら、彼女は、ベツレヘムの星の欠片は)


もしエリザリーナの推理が的中しているとしたら、



ミーシャ=クロイツェフが見上げているものは、『空』ですらない。


130 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:25:05.69 ID:ncnMJJRyo


――――――――――――――――――――――


エリザリーナ独立国同盟の地下に存在する、かつて防空壕として使用されていた地下空間。
誰かが手を加えたのか、空間の広さは東京ドームの四分の三という大きさだ。

天井もドームのように緩やかなカーブを描いており、電気もちゃんと通っている。
この地下空間を利用すれば様々なイベントが開けるくらい申し分ない場所だった。


そんな地下空間では今、床に鮮血が飛び散り、人の呻き声が響いていた。


「・・・・・・・・・・・・っ!! ぐ、おあ・・・・・・・・・・・・!!!」


学園都市の超能力者(レベル5)であり、『天使同盟(アライアンス)』の構成員、垣根帝督は
口からボタボタと鮮やかな『紅』を吐き出していた。
131 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:26:04.76 ID:ncnMJJRyo


その手にはギリリと握り締められたルーンの札。
彼の周辺には何らかの魔術を行使した痕跡が見られる。超能力者が魔術を行使したことによって
脳が拒絶反応を起こし、垣根は体のあらゆる部分から出血していた。


「いや〜ん、垣根の坊や。 特訓する前からこんなんじゃダメダメよん♪」


女の声がした。

全身を真っ赤な修道服で包んでいる彼女の名はワシリーサ。
その名はロシア民話のヒロインから拝借しており、偽名ではないかと言われている。

ワシリーサはロシア成教の特殊部隊『殲滅白書』に所属していたシスターだ。
今でこそフリーの魔術師ではあるが『殲滅白書』最強の魔術師としての実力は健在である。


垣根帝督に魔術の特訓に付き合って欲しいと頼まれたワシリーサは、己が溺愛する元『殲滅白書』の魔術師、
サーシャ=クロイツェフの『生着替え写真』を貰い受ける事を条件に特訓の付き添いを受諾した。
132 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:27:06.54 ID:ncnMJJRyo


で、いざ特訓開始。垣根帝督は魔術をさっそく使ってみるが、結果は前述通りの有様だった。


「ぐふっ・・・・・・げっほ!! ・・・・・・はぁ、クッソ・・・・・・」

「大丈夫ぅ? 最初の懸念だった『能力者が魔術を使うと死に至る』ってステップは
 クリアしてるみたいだけど、そのまま無理したら結局おっ死んじゃうかもよん?」

「・・・・・・う・・・・・・、っせえんだよ」


垣根は呼吸を整え、十五メートル程先で醜悪な笑みを浮かべている修道女を睨みつける。
まるで垣根の『敵』であるように挑発的な態度を取るワシリーサ。これも特訓の一環なのだろうか。


「いくぞ」


垣根は口に付着している血を拭い、頭からダラダラと流れてくる血を拭い、ルーンを手に構えた。
133 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:28:16.97 ID:ncnMJJRyo


そして今度は、しっかりと魔術が発動した。


「わぁお♪」

「反撃してもいいんだぞ」


魔術発動と同時に出現した『それ』を手に持って走ってくる垣根の言葉に『おっけー♪』と軽く返事をするワシリーサ。


「一本足の家の人食い婆さん―――――」


童女のような歌声が地下空間に響いた。
134 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:28:43.33 ID:ncnMJJRyo


瞬間、ワシリーサの歌に合わせて千切れた影を纏う怪物のような老婆が姿を現す。
老婆は少しだけ腕を動かすと、垣根の目の前に巨大な炎の塊が出現し、馬鹿げた威力で爆発、炸裂した。


「ごっ、がああああああああああああああああああああああああッッ!!!?」


ゴミクズのように二回、三回と地面をバウンドし吹き飛んでいく垣根。
そんな彼の姿を見てワシリーサは言った。


「やっと魔術で戦える領域に突入したわね。 ここからは私も容赦ナ・シ・よん♪」


そう言うワシリーサの笑みは、隣にいる老婆よりも『魔女』らしい笑みだった。
135 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:30:01.23 ID:ncnMJJRyo


「ク、ソ・・・・・・がぁぁ!!!」


垣根は体のダメージも気にせず、起き上がりワシリーサに向かって駆ける。


「ダーメダメ♪ 突貫一筋じゃ私に触れる事すらできないにゃん」


一方のワシリーサはあくまで余裕の態度をとり、顎先を軽く動かす。

それを合図にワシリーサが呼び出した老婆が地面を蹴って垣根の元へ動いた。
老婆の動く速度は、骨がむき出しになっているだけのその脚から出る速度とは思えないほど速い。
136 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:30:38.87 ID:ncnMJJRyo


(二番煎じが通じねえ事くらい・・・・・・!!!)


垣根は自分の魔術で現出させた『それ』を持つ手を思い切り振りかぶり、


「わかってんだよクソボケ!!!」


振りかぶった体勢のまま、駆ける足に急ブレーキをかけて停止した。


(いやぁん、フェイント?)


ガリガリに痩せこけた老婆の魔の手を垣根は掻い潜るように避ける。
そしてそのまま老婆の脇を通りぬけ、本命であるワシリーサへ飛ぶように駆けた。
老婆は垣根の方へ振り向き追うが、とても間に合いそうにない。
137 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:31:14.75 ID:ncnMJJRyo


(当たる・・・・・・ッ!!)


垣根は一気にワシリーサとの距離を詰め、手に持つ『それ』を彼女の頭に叩き込むため更に振りかぶる。


と、


「ッ!!?」


違和感。垣根は腕を上げたまま振り落とそうとしない。
目と鼻の先にいるワシリーサはニヤ〜っと意地の悪そうな笑みを浮かべていた。


「残念無念また来週〜って感じ? エイワスから貰った本に書いてあったっしょ?」


垣根は振り上げている自分の腕の方へ目をやる。

そこには自分の魔術で現出させた『それ』が綺麗サッパリ消えてなくなっていた。
138 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:32:41.16 ID:ncnMJJRyo


「あなたが今使った魔術は、ルーンだけじゃダメよ。 ちゃーんと『呪文』を唱えなきゃ、」


ワシリーサは吐息がかかるほどの距離まで垣根の顔に近付き、


「ね♪」


グシャァッ!!!と、垣根の脇腹へ尋常ではない速度の蹴りをブチかました。


「ご、ぼ・・・・・・ッ!!」


魔術を使ったわけでもないのに内臓から血が昇ってきてそのまま口まで達し、吐き出される。
蹴られた際、非常に嫌な音がしたのを垣根は聞き逃さなかった。
恐らく肋骨が何本か折れたのだろう。その折れた骨の破片が内蔵に突き刺さったのだ。


さっきまで自分がいた場所から真横へと『飛んでいく』垣根。
ふいに、背中辺りに寒気を感じた。


(く、そ・・・・・・!!)


一本足の家の人食い婆さんだ。
『バーバ・ヤーガ』とも呼ばれるその老婆は、信じがたい速度でぶっ飛ばされている垣根と
並行するように移動している。
139 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:33:58.64 ID:ncnMJJRyo


背中に妙な熱を感じた。さっき喰らった不可思議の爆破だ。


「ぐおああああァッ!!!」


炎の塊の爆破は背中に直撃し、今度は前方へと吹き飛ばされる。
信じられないことに、ワシリーサから脇腹へ蹴りをもらってからまだ足が地に着いていない。

そして垣根は顔から地面へと激突した。地面の汚らしい土が目や口に容赦なく入り込んでくる。


普通ならここでもう決着なのだろうが、ワシリーサは容赦しない。


「垣根の坊や、ボーッとしてると、ホラ♪」

140 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:34:54.74 ID:ncnMJJRyo


ゲボッ、と咳き込んでいた垣根が後ろへ目をやると、老婆は尚も垣根に追撃を喰らわせようと突進してきていた。

どこから持ってきたのか、いつの間に持っていたのか、老婆の右手には古臭い木材で出来た『杵』があった。
それを見て垣根は即座に理解する。


あれは餅をつくためにある杵じゃない。『人間を食べやすくするために肉をグズグズにすり潰すための杵』だと。


「―――――――――ッ!!」


声を出すのも億劫な状態で歯を食いしばり、垣根は素早い動作でジャケットの裏に忍ばせている
ホルダーからルーンを一枚取り出し、魔術を発動する。


「む、」


ワシリーサは少しだけ驚いた。垣根帝督は既に、簡単な魔術の詠唱なら『詠唱破棄』を行使出来るほどになっていた。
ついさっきまで魔術を使っただけで血反吐をブチ撒いていた能力者が、恐るべき速度で成長していた。
141 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:36:00.47 ID:ncnMJJRyo


詠唱破棄で呪文を省略した垣根は速攻で魔術による攻撃を行う。
予想外の攻撃速度に老婆は防御が間に合わず、まともに喰らってしまった。

魔術を使ったため、例に漏れず出血してしまう垣根だが、そんな事はお構いなしに、


「う、おおおおおああ!!!」


脇腹の激痛も跳ね除け、ワシリーサに続けてルーンによる魔術攻撃を発動した。

しかし、魔術を使ったことによる反動で眼球から血が吹き出し、照準が狂ってしまう。


「惜っしい〜☆ その辺にも対応できるようにしないとね♪」


飛んでくる魔術攻撃をあっさりと避けたワシリーサは、地面を蹴って垣根の元へ特攻を仕掛ける。
眼球からの出血で視界が真っ赤に染まった垣根の目に、真っ赤な修道服を着たワシリーサは
カメレオンのように赤い視界に溶けこみ、図らずも姿を消してしまっている。
142 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:37:04.28 ID:ncnMJJRyo


しかしそんな状態の垣根にもワシリーサは躊躇わず、彼の顔面にブンッ!!と足の爪先を食い込ませた。
グチュッ、というあまり耳にしたくない音が地下空間に響く。

垣根はそのまま仰向けで倒れるが、まだ意識は残っているようだ。
ジャケット裏のホルダーからゴソゴソとルーンを取り出そうとしている。


「その根性だけはもう認めちゃうけどさぁ〜♪」


ワシリーサは歌うように言う。


「今日は早いとこ降参しとかないとぉ・・・・・・。 死ぬぞクソガキ?」


垣根はワシリーサを視界から外し、左へ目を向けた。
そこには一本足の家の人食い婆さんが杵を両手で持ち、思いっきり振りかぶっているところだった。


地下空間に再三、生々しい音が鳴り響いた。
老婆の杵は垣根の頭に直撃し、彼の意識を完璧なまでに根絶させた。

その威力は、攻撃した老婆の杵が粉々に砕け散るほどの威力だった。
垣根の頭が杵のように砕けなかったのは不幸中の幸いか、それともワシリーサの慈悲か。


これにて、本日の訓練は終了。

143 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:42:38.62 ID:ncnMJJRyo

Q. 『未元物質(ダークマター)』なんで使わないの?

A. まずは魔術の特訓ですので、能力の使用は禁止です。



ミーシャも本格的にやばくなってきたし垣根帝督もフルボッコにさせるわで
なんだか穏やかではない、今回の投下でした。


次回更新は三日以内に。

今日もここまで読んでくださった読者様に最高の感謝を。

ではまた、よろしくお願いします!
144 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/23(水) 22:44:07.17 ID:ncnMJJRyo



                          【次回予告】



『か、垣根くぅん・・・・・・、生きてたら返事してほしいな〜・・・・・・』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ




『私がイギリス流のファッションをコーディネートしてあげてもいいんですよ?
 スタイリスト代はもちろんいただきますけどね〜♪』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『オイ、オマエが朝起きたらガブリエルのヤツはもういなかったンだよな?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『その通りです。 どこへ行ったのかはわかりませんが、
 恐らく独立国からは出ていないですよ』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ=クロイツェフ



145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:48:54.47 ID:sGtjv0+mo


ていとくんは死ぬ度にパワーアップしていくんですね、分かります。
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:53:08.68 ID:NjInCXzI0
乙!
ていとくん……
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:53:15.75 ID:LBSV5XVt0
死ぬ程のダメージを受けるたびにパワーアップして
最後は怒りでスーバーカキネンに覚醒?
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:53:20.23 ID:ZPIYvpCAO

前回は冷蔵庫だから…
洗濯機か自販機か炊飯器か
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:54:53.76 ID:KkLDuCLpo

未元物質でカード作ればよくね?とか思ったり思わなかったり
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:56:15.58 ID:xvBg2S9P0
垣根死んだww
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 22:57:17.94 ID:pQmucJHao
未元物質で作ったら
全然違う魔術が発動しそう

ルーンとかはこの世の法則にそって
魔術を発動させるから
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:00:43.94 ID:0qkar7fSO
垣根はサイヤ人なのかヤムチャなのか…
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:01:32.16 ID:bVPLMSN2o

垣根ェ…
まぁ最悪虫の息でも
もっかい再生装置にぶち込むか一方通行名義で冥土帰しに送付すれば大丈夫か
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:19:32.98 ID:R9d+Hj3Oo

ガヴリエルもやばそうだが、一体何が起きるのか……
急げ垣根、死んでる場合じゃない
間にあわなくなっても知らんぞ
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/23(水) 23:36:08.34 ID:KuPhRlvD0

大至急ていとくんに仙豆を食べさせないとヤバイ
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:40:56.48 ID:jYX6Otg1o

死亡フラグ・・・・だろォな・・・・・
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/23(水) 23:46:43.64 ID:R5maKz2w0
それこそ未元物質で血管に薄い膜を張るとか
肉体再生的な使い方は出来ないものかね
精密演算する余裕がないかも知らんが
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 00:00:19.34 ID:vtuWNV+20
そういえば一方通行が全く出てこない回も珍しいな。
それだけ終盤に差し掛かってきたってことか…さみしす。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 01:35:10.37 ID:31iCpevAO

垣根さん頑張れ。色々な意味でフルボッコだけど頑張れ
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 07:12:51.32 ID:o+E07CIDO
乙〜
ここまでやったら、ていとくんは何らかの形で報われないと心底絶望のどん底まで堕ちて「もう冷蔵庫なって工場生産生活でいいや」ってなってしまうかもしれない……
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 18:30:08.34 ID:nvYxwEIo0
まだ前スレのスレタイが消化できないままていとくんが沈んだ…
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 19:40:02.84 ID:y5rHohwAO
俺もワシリーサに蹴られて罵られたい。

未元物質使ってもあの人基本的に攻撃効かないところが最大のチートだから始末悪いよな。
163 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:17:31.84 ID:MYzrQ1Rto
よっしゃ、連日投下いきますぜ。


こんばんわ、いつもたくさんの支援をありがとうございます。
どうですか、皆が皆、垣根帝督の身を心配してくれて・・・・・・ホントこの男を参入させてよかった(号泣)


それでは行きます!
164 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:18:29.19 ID:MYzrQ1Rto


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ほ、本当に死んじゃってたりしないわよねぇ?」


ワシリーサの顔が若干青ざめる。


一切の手加減はするなと、特訓の前に垣根に言われていたため、ワシリーサはその通りにした。
彼女の攻撃には容赦など微塵も欠片もありはしなかった。


ドシャッ、と物が倒れるような音がした。もちろん、それは物ではなく垣根帝督が倒れた音なのだが。


「か、垣根ちゃ〜ん。 大丈夫かにゃーん・・・・・・?」


マジで殺してしまってたらどうしよう、とワシリーサに焦りが生じる。
いくら容赦をするなと言われたからって、これはやりすぎだろうか?

彼女は昔、サーシャ=クロイツェフに魔術のノウハウを少しだけレクチャーした経験があるのだが、
ここまで体当たりな特訓を受け持つのは初めてだったため、加減がよく分からなかったのだ。
165 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/24(木) 23:19:07.38 ID:MYzrQ1Rto


恐る恐る垣根に近づく。彼はピクリとも動かない。


「か、垣根くぅん・・・・・・、生きてたら返事してほしいな〜・・・・・・」


縁起でもない事を言い出す修道女。そして垣根が倒れこんでいる元までゆっくりと近付き、
その場で膝をついて安否を確認してみる。


「げっ」


死んだ、とワシリーサは思った。
死んだ、これは死んだ。間違いなく死んだ。デッドオアアライブなら有無を言わさず前者だ。

垣根の頭からは、あのワシリーサですらちょっと引いてしまうような量の出血が見られた。
魔術の行使による出血もあるのだろうが、こうなってしまってはどれがどの原因での出血なのかわかりゃしない。
166 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:20:14.15 ID:MYzrQ1Rto


彼の顔は肌色だったはずだが、今は顔中が鮮やかな朱色で染められており、
一般人が見たらまず迷いなく一一〇番で通報し、殺人事件として受理されるだろう。

一本足の家の人食い婆さんが管理している『命の水』でもぶっかければ生き返るかなと呑気な事を思いつくが、
あれは魔女のエピソードの内容から生み出された霊装であり、一本足の家の人食い婆さんと
ワシリーサにしか効果が無いことに気づき、ガクッと頭を垂れる。


為す術がないワシリーサは、『天使同盟(アライアンス)』の方々にぶっ殺される事も覚悟で正直に事を伝えようとした時、


かすかに、声が聞こえた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いてえ」

167 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:21:11.64 ID:MYzrQ1Rto


男の声だった。
ワシリーサはバッと垣根帝督の方に顔を向けると、すかさず話しかけてみた。


「生きてますか?」

「・・・・・・・・・・・・らしい、な。 俺も・・・・・・しぶといなぁ・・・・・・オイ」


「復ッ活ッ」


「?」

「垣根帝督復活ッ! 垣根帝督復活ッ! 垣根帝督復活ッ! 垣根帝督復活ッ! 垣根帝督復活ッ! 垣根帝督復活ッ!」


突然、ワシリーサが垣根の復活を確認するように彼の名を連呼し始めた。決して頭がおかしくなったのではない。
168 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:21:57.88 ID:MYzrQ1Rto


ともあれ、生きていた。垣根帝督は生きていた。

はふぅ〜、と安堵の息をつくワシリーサ。なんとか『客人』を殺してしまわずに済んだようだ。
彼の驚愕に値する生命力に感謝だ。さぁ、急いで垣根帝督に十四キロの砂糖水を飲ませなければ。


にしても、よくもまぁあの猛攻を受けて生きていられたものである。
さすが脳だけになっても復活した、常識の通用しない男―――常識が通用しないのは彼の能力だが―――。
伊達に学園都市の暗部『スクール』のリーダーを務めていたわけではないのだ。


「めんごめんご、やりすぎちった♪」


テヘ☆、と舌を出してごまかすワシリーサ。
彼が無事であると知った途端のこのテンション、彼女もまた図太い神経をしている。


「構わ、ねえ・・・・・・。 俺が、・・・・・・言った事だし、な」


ひゅう・・・・・・ひゅう・・・・・・と虫の息で言葉を何とか紡いでいく垣根。
どうやら会話が出来るくらいは意識が戻ったらしいので、ワシリーサはさっそく話をしていく。
169 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:22:43.02 ID:MYzrQ1Rto


「でわでわ、今回の特訓はお終いって事で。 それでね、今回の評価と今後の課題なんだけどぉ」


ワシリーサは立ち上がり、膝についた土をパンパンと払いながら続けていく。


「まず、誰の教えも無しに詠唱破棄を行った点は素直に賞賛するわ。 素晴らしいわよん。
 よっぽど勉強したのね、この短時間で凄まじい成長速度を見せてるわ」

「世辞なら・・・・・・、いらねえよ。 今後の課題、を・・・・・・さっさと言えババア」


言われて、ワシリーサはムスッとしながら地面に仰向けで倒れている垣根を爪先で小突く。
170 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:23:26.29 ID:MYzrQ1Rto


「ぐ、お・・・・・・ッ!!!」

「続けるわよ? それでも詠唱破棄については九〇点ってところね。 残り十点は後述するわ。
 で、ダメな点なんだけど、まず魔術がどうこう以前にあなたは猪突猛進過ぎ。
 今まで能力頼りで戦ってきたのが原因かしらん? それとやっぱり、まだあなたは
 魔術の特性について理解してないわね。 ルーンを用いた魔術って言っても、
 呪文をキチンと唱えなきゃ中途半端にしか現出できない魔術もあるの、分かるでしょ?
 あの時は詠唱破棄で済ませようとしたんでしょうけど、魔術にも『格』があるわけよ」


くどくどと、まるで説教のように戦績を述べていくワシリーサ。
ボロクソにされた垣根の耳にちゃんと届いているのだろうか。


「一本足の家の人食い婆さんをフェイントで掻い潜った後にあなたが使った魔術、
 あれって結構上等な魔術なのね? 未熟者のあなたはまだそれを詠唱破棄出来ない。
 だからあの時、あなたの手から"あれ"は消えたのよ。 おk?」


返事がない、ただの屍のようだ。

それでも構わずワシリーサは続ける。
171 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:24:30.27 ID:MYzrQ1Rto


「そこが詠唱破棄についてのマイナス十点ってわけね。 呪文の省略は効率いいけど、
 その分しっかりと呪文の知識をそのかち割れた頭に叩き込まないとダメダメってこと♪
 んで、一本足の家の人食い婆さんにブチ込んだ魔術に威力が無さ過ぎ。
 あの場面でもっと強力な魔力を精製していれば、魔女に一太刀浴びせられたかもしれないのに。
 魔力の精製はしっかりと正確に、そして強力に。 能力者だから踏ん張って精製すると
 肉体が風船みたいに破裂しちゃうかも知れないけど、それを覚悟でこうして特訓してんでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・、ああ」


今度はちゃんと返事が聞こえた。ワシリーサの言葉が右から左ということはなさそうだ。


「よろしい♪ というわけで今後の課題は、
 『詠唱破棄を極めたいならもっと自分の使う魔術についての知識を得ること』、
 『能力者特有の拒絶反応を恐れずに、しっかり魔力を精製すること』、
 『猪突猛進な攻撃方法は避け、きちんと上手く立ち回りを意識すること』、
 こんなもんかにゃーん。 おわかりいただけたかしら、垣根の坊や?」

「う、・・・・・・」

172 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:25:25.68 ID:MYzrQ1Rto


「ようは自分の生み出す魔力の質と、自分の使う魔術の特性を知っとけっつー事よん。
 能力者特有の拒絶反応はもう仕方が無いわ、私でもどうしようもないもん。
 今後、魔術を使うときについて回る障害だけど、乗り越えなさい」

「う、るせえないちいち・・・・・・、わかってるっつってんだろ・・・・・・」

「口答え禁止ー!」


今にもぱっくり割れそうな垣根の頭にチョップを入れるワシリーサ。殺す気か。


「んじゃ、今日はここまでね。 あなたが望むなら二十四時間いつでも特訓してあげるわよ。
 その分、サーシャちゅわんの生着替え写真は多めにもらうけどね〜」


くだらない約束を確認するように言う修道女に、しかし垣根は口答えをする気力すら残っていない。
173 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:26:18.06 ID:MYzrQ1Rto


「じゃ、私はサーシャちゃんをチュッチュしに地上に戻るけど、どうする?
 運んでいってあげ・・・・・・、・・・・・・いやん、カッコイー♪」


ワシリーサが言葉を言い終える前に、垣根は自力で立ち上がっていた。
数々の死亡フラグを乗り越えてきたこの男、案外マジで不死身なのかもしれない。


「いい・・・・・・、自分で、帰る・・・・・・。 またすぐ付き合わせるからな」

「君みたいな熱血くんも嫌いじゃないわよん。 あのウサぴょん君もこんな感じなのかにゃー」


そう言ってワシリーサは一本足の家の人食い婆さんを消し、機嫌よくその場を後にした。


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ハッ、熱血、か・・・・・・。 似合わねえ・・・・・・)


自分に苦笑する垣根も、しばらく休んだ後、地上へ戻るのだった。

絶望的な程の差を見せつけられた少年は、その悔しさをバネに苦難を乗り越えられるのだろうか。
こんな方向での努力などしたことがない垣根は、まだ分からないでいた。
174 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:27:10.16 ID:MYzrQ1Rto


――――――――――――――――――――――


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「つまり! トレンドとは先の先のそのまた先まで見据えて把握するものなのです!
 今でこそ私は『新たなる光』でお馴染みのコスチュームを着込んでいますが、
 こう見えてもけっこうオシャレさんなんですよ? 今度イギリスに来ません?
 私がイギリス流のファッションをコーディネートしてあげてもいいんですよ?
 スタイリスト代はもちろんいただきますけどね〜♪」

「第一の質問ですが、あなたの目から見たら私のこの衣装はどうなんでしょう?」

「そーですねぇ、確かに奇抜だとは思いますが、イマイチ『華』が無いといいますか、
 もうちょっとこう・・・・・・・・・・・・、ねぇ一方通行さん、どう思います?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「おーい、一方通行さん? 聞いてますか?」

「・・・・・・・・・・・・あ、あァ?」

175 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:27:59.52 ID:MYzrQ1Rto




一方通行はいわゆる『虫の知らせ』のようなものを感じていた。




ここはエリザリーナ独立国同盟の居住区、その中心部に鎮座する巨大豪華クルーザー
『アライアンス』号のラウンジだ。


居住区に突っ込んだのが原因でクルーザー内に備え付けてある客室への通路を
塞ぐように建造物の瓦礫が崩れ落ちていたのだが、一方通行とレッサー、サーシャ=クロイツェフ、
その他大勢の独立国同盟の民間人の手によって、ほぼ完璧に撤去作業が終わった。

エイワスはというと案の定というか何というか、『用事を思い出した』と一言言い残し、
一瞬でクルーザーから姿を消してしまっていた。
176 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:28:49.85 ID:MYzrQ1Rto


エイワスはこのエリザリーナ独立国同盟、ロシアに来てからというもの、
どこか忙しなくあちこちを移動している気がする。

それがどうしたと言われれば別に何でもないしどうでもいいはずなのだが、
一方通行は要領の得ない何か違和感のようなものを感じていた。




その違和感を感じた直後に思い浮かんだのは、なぜか『神の力(ガブリエル)』、
ミーシャ=クロイツェフの顔だった。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ちょっと、一方通行さん?」

「・・・・・・ンだよ」

177 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:29:43.77 ID:MYzrQ1Rto


――――――――――――――――――――――



瓦礫の撤去作業を終えた一同は、民間人たちで盛り上がりまくっている立食パーティに
参加していた。参加していたというよりは、やることがないためここに居残ったというだけなのだが。


「さっきの話、聞いてなかったんですか? サーシャさんの服の事なんですけど」


レッサーとサーシャ=クロイツェフは何やら衣服、ファッションについて熱い議論を交わしていた。
お前がファッションの何を知ってんだ、と言いたくなるようなレッサーの知ったかぶりと、
そんな話に純粋な気持ちでうんうんと頷いているサーシャがいたような気がする。

正直さっきから頭をぐるぐると這い回る違和感が鬱陶しすぎて話などまるで聞いていなかった
一方通行なのだが、そこを気付かれレッサーに怒られてしまった。
178 :ミス。 上の線みたいなのいりません、失礼しました。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:30:55.48 ID:MYzrQ1Rto


「コイツの服装がどォかしたのか、今更ツッコミ入れてもしょうがねェだろ」

「そうじゃなくて、サーシャさんには他にどんな服が似合うかなーって話してたんじゃないですか!」

「・・・・・・第二の質問ですが、どうかしたのですか? さっきからあなたはどこか上の空といった様子ですが」


サーシャに指摘された一方通行はしばし逡巡した後、彼女に質問してみる。


「オイ、オマエが朝起きたらガブリエルのヤツはもういなかったンだよな?」

「第一の解答ですが、その通りです。 どこへ行ったのかはわかりませんが、
 恐らく独立国からは出ていないですよ」


なぜ言い切れる、と聞くとサーシャには何となく、ボンヤリとだがミーシャがどこにいるのかが分かるらしい。
『御使堕し(エンゼルフォール)』の件以来、『天使の力(テレズマ)』による指先の震えてしまうなど、
"そういう体質"になってしまっているらしい。本人は御使堕しの件に関しては記憶が無いのだとか。
179 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:32:04.49 ID:MYzrQ1Rto


(御使堕しとか言われてもよくわかンねェが、コイツが言うならとりあえず間違いはねェ、か)


しかしそれを聞いても一抹の不安は拭えない。


「第三の質問ですが、ミーシャがどうかしたのですか?」

「・・・・・・・・・・・・、いや。 なンでもねェよ」


ミーシャの話題を終えると、今度はレッサーが話しかけてくる。


「私から提案なんですが、ここで一つ。 サーシャさんの服を買いにショッピングに行きませんか?」


人差し指を立てながら意気揚々にショッピングへ誘ってきた。
サーシャが慌てて間に割って入ってくる。
180 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:32:51.19 ID:MYzrQ1Rto


「第一の私見ですが、何もそこまでしていただかなくても結構です」

「まぁまぁ遠慮しないで! ロシア東部にある街をご存知ですか?
 世界中から一目置かれてる超巨大なウィンドウショッピング施設がありまして」

「いや、あの、」

「私も夏頃にそこで店開いてたんで、案内出来ますよ!
 どうです? あの街はぶらぶら歩くだけでも楽しいですし、
 ここはいっちょレッツ買い物! と洒落込もうではありませんか!」

「あの、」


にゃっはっは!と腰に手を当てて機嫌よさげに笑うレッサー。どうしてこんなに得意げなのだろうか。

サーシャが遠慮して断ろうとするもレッサーは全く耳を貸さず次々と本日の予定を組み立てていく。
話半分に聞いてみたが、なぜかその予定に一方通行自身も組み込まれていた。
181 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:33:37.02 ID:MYzrQ1Rto


「一方通行さん、確かこの船に一台車がありましたよね? それに乗せてください!
 あ、大丈夫ですよ、ここから街への道のりも私がナビしますんでー♪」

「第二の私見ですが、私はまだ行くとは言って―――――」

「ついでにそこで昼食も済ませちゃいましょう。 ここじゃのんびり食べられませんし、
 料理の味はここに出てるのより劣るでしょうが、街にもレストランがありますから」

「いやだから――――」


早くもハイテンションなレッサーとおろおろするだけのサーシャとは対照的に、
一方通行は先ほどと同じく彼女たちの話など馬耳東風でボーッとしていた。


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

182 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:34:44.64 ID:MYzrQ1Rto


どうしてもミーシャの事が気になる。冷静に考えてみると、今までの彼女なら
こんな豪勢な料理が出ている場所に向かわないはずがないのだ。
料理が無くてもミーシャならこれだけの数の人間が楽しげに騒いでいたら、
釣られた魚の如くふらふらと立ち寄って来るに決まっている。

だが現在のところ、この船内でミーシャは見かけていない。
あの天使が人混みに紛れられるわけがないし、見逃しているということはないだろう。


「・・・・・・・・・・・・クソッ、なンなンだこりゃ。 胸騒ぎっつーのかァ?」

「ん? 何か言いました一方通行さん? ていうか今の話聞いてました?」

「あ? ・・・・・・、いや別に」

「そうですか。 それじゃ、行きましょう!」

183 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:35:36.12 ID:MYzrQ1Rto


「どこにだよ」

「やっぱり話聞いてないじゃないですか!!」


やだー!!と耳元で騒ぐレッサーに一方通行はげんなりといった表情を浮かべた。
どうやらロシア東部に位置する巨大商業施設に向かうため、車を出せとの事らしい。


と、一方通行が唐突にレッサーに話しかけた。


「・・・・・・オマエよォ」

「はい?」

「いい加減、そォいう風に無理して明るく振る舞うのやめたらどォなンだ?」

「・・・・・・は?」

「・・・・・・チッ。 なンでもねェよ、バカが・・・・・・」

「?」


今の一方通行の発言はどういう意味があったのか。
レッサーは後に知ることになる。
184 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:42:24.99 ID:MYzrQ1Rto


垣根「してぇ・・・・・・・・・・・・。 試合してェ〜〜〜〜〜・・・・・・」


てなわけで今日はここまでです。
垣根帝督が復活したのはいいのですが、今度は一方通行が何やら不穏な雰囲気を感じ始めています。
じわじわと、ゆっくりですが最終章が近づきつつありますね。


次回更新はいつも通りです。

今日もここまで読んでくれた読者様に四キロの果糖が入った十リットルの水を。飲むん、だッ

では、ありがとうございました!
185 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:43:04.35 ID:MYzrQ1Rto



                          【次回予告】



『実際、ワシリーサのクソ野郎はかなり強い魔術師だった。
 そんなヤツ相手に能力無しでやりあうなんざ、死亡フラグとしか思えねえってんだろ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『何言ってンだオマエ。 ・・・・・・・・・・・・まァ、でも』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『あなたをオフィスに入れるかどうか迷ったのは・・・・・・、ミーシャに口止めされていたからよ』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ



186 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:43:41.51 ID:MYzrQ1Rto



                          【次回予告】



『実際、ワシリーサのクソ野郎はかなり強い魔術師だった。
 そんなヤツ相手に能力無しでやりあうなんざ、死亡フラグとしか思えねえってんだろ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『何言ってンだオマエ。 ・・・・・・・・・・・・まァ、でも』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『あなたをオフィスに入れるかどうか迷ったのは・・・・・・、ミーシャに口止めされていたからよ』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ



187 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/24(木) 23:44:30.62 ID:MYzrQ1Rto

やっぱりね・・・・・・二重投稿になってた。

大変失礼しました
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/24(木) 23:49:34.28 ID:ioo+x/T80
乙ー!
帝督さんの体力マジパネェww
どんな魔術とか、今後の成長とかも楽しみだなぁ。
魔術も常識が通用しないものなんだろうか。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/24(木) 23:55:40.14 ID:v8RawbRro
10リットルの水に、果糖4キロぶち込んで、素手で混ぜ混ぜするワシリーサだと…
これならきっとていとくんに奇蹟が起こるッッ!!!
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 00:07:48.22 ID:mNdQOkp60
未元物質に常識は通じない…そう思っていた時期が、俺にもありました
こうですねわかりま…アレ?

次回あたり前スレタイ回収かな?乙でした
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 00:33:11.45 ID:B80K7iTI0
更新乙です
終わりが近づくとどんな終わり方をするのか楽しめるけど、同時に悲しくもなるな
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 01:18:26.90 ID:qeKqYKYTo
乙ー

生きててよかったていとくん。砂糖水を飲めばまた戦えるよね!
ガヴリエルの異変に気付く一方通行は流石に付き合いが長くなってきたからか
終盤に近付いてるし、サーシャ、レッサーと買物にしゃれこんでる時間はないか
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 01:39:49.52 ID:MI4Z3CYIO
サーシャとレッサーも同じように感じてると思って見てみるとなんとも言えない気分になる。
やっぱもう最後の戦いは始まってんのかなぁ……
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/25(金) 02:35:42.54 ID:vN003s+N0

ガブリエルをガヴリエルって書かれると、「桃色ガヴリエル」を思い出す
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 08:11:17.59 ID:P7fYEOUoo
垣根「アンタさ
    ほんっ…と 優しいのな」
ワシリーサ「 ――― 。」カァ…///

……アリだな!
乙!
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 08:14:42.12 ID:LbjYc5zeo
垣根「フラグ・・・だと・・・?」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 11:57:52.85 ID:59Xq0rmAO
人喰い婆「そうですよ///」
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 12:33:57.27 ID:WYhTq/BJo
垣根「ごっ、がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/25(金) 18:38:35.14 ID:PFqmHSPx0
そういや、『バーバ・ヤーガ』って物語によっては子供いるよな
夫は一度も出てこないのに
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 19:47:31.54 ID:lP0R0z8A0
>>197
ひっでぇ
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/25(金) 21:44:56.30 ID:PFqmHSPx0
>>197
一方通行「フラグ……だろォな」 垣根「ち……くしょ……う」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/25(金) 22:04:35.44 ID:oCp68Bcp0
>>197
ワロタ
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/25(金) 23:37:54.31 ID:PFqmHSPx0
なんかサーシャはアクセラやていとくんよりも
レッサーとフラグ立ててる気がする
204 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/26(土) 03:54:04.79 ID:HJj5t0T+o
>>203
そういう事言うとまたここの>>1が調子に乗ってレッサー×サーシャとか
訳の解らんモンを書いちゃいますよ・・・・・・


そんな>>1です。百合なんて高尚なもの書けるか!

こんな真夜中ですが投下したいと思います。
ほとんどの方は寝ているでしょうから、起床がてら覗いて読んでやってください。


それでは、いきます!
205 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 03:55:23.85 ID:HJj5t0T+o


「というわけで、お願いしますね!」

「第一の質問ですが、これは強制イベントなのですか・・・・・・?」

「いいじゃないですか! たまには女の子らしく、サーシャさんも
 いっぱい服買ってオシャレしてみましょうよ!」

「第一の私見ですが、あなたが私の何を知っているのですか・・・・・・」


しかし最後にはサーシャも折れ、渋々ながらショッピングに参加する事にした。
レッサーは生意気に一方通行に向かって他のメンバーも招集するよう命じる。


「風斬さんや垣根さん、ミーシャも呼んでくださいよ。 特にミーシャは
 あんなポンチョだけじゃ不憫です。 天使なんですからそこはもっと
 神々しさを兼ね備えた衣服を着させてあげるべきでしょう!」

206 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 03:56:15.76 ID:HJj5t0T+o


全裸がデフォの大天使に何を言ってンだか、と一方通行は舌打ちをしながら腰を上げる。
ここまでテンションの上がりきった鬱陶しくてしょうがないレッサーを黙らせるには
結局ショッピングに付き合ってやるしかなさそうだ。


「エリザリーナさんにも一応声掛けてくださいね、忙しそうならいいですけど。
 あとヴェントさんとワシリーサさんと・・・・・・」

「つまりは全員じゃねェかクソボケ。 ・・・・・・ったく、オマエらは車乗って待っとけ」

「あぁ、第二の私見ですが、ワシリーサは呼ばなくても結構ですよ。
 彼女が来てはこの買い物の意味が無くなってしまいます」


はいはい、と適当に返事をして一方通行は船を降りていった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



207 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 03:57:02.65 ID:HJj5t0T+o




「つーかなンで俺まで買い物なンざに付き合わなくちゃいけねェンだ?」




生返事で了解してしまったが、今更になって非常に面倒な事を引き受けたと後悔する。
女性の買い物は非常に時間がかかる、と聞いたことがある。

一方通行は打ち止め(ラストオーダー)くらいしか女性と買い物になど行ったことがないが、
打ち止めはまだ適当に菓子やデザートをねだってくるだけだから時間はかからない。


だが今回は年頃の若い女が二人、しかも衣服の買い物ときた。
膨大な時間を浪費してしまうことは想像に難くない。
208 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 03:57:47.79 ID:HJj5t0T+o


(まァ暇だしな・・・・・・、最悪俺は車ン中で寝てりゃいいか)


若い女の子二人とショッピングに行くのが面倒くさい、とブチ殺したくなるような
贅沢をほざきながら一方通行は残りのメンツを集めに居住区を歩いた。

まずはさっきからなぜか気になってしょうがないミーシャを探そうと垂れていた頭を上げると、


「・・・・・・・・・・・・あン?」


よたよたと、放っておけばそのまま倒れてくたばってしまいそうな歩き方をした男が視界に入った。
壁に手を当てながら脇腹をもう片方の手で抑え、足を引きずりながらゆっくりと歩を進めるその男は、


「オイ、垣根か?」

「? ・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・、チッ。 テメェかよ」


一方通行はギョッとした。

振り向いたその顔は、垣根帝督かどうか一目見ただけでは分からないほどボコボコに腫れ上がっていた。

209 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 03:58:57.74 ID:HJj5t0T+o


垣根帝督はしばらく一方通行の顔を虚ろな目でジッと見つめ、舌打ちをして背を向ける。


「オイ待てよメルヘン野郎。 オマエそれどォしたンだ」

「何でもねえよ、テメェにゃ関係ねえ事だ」

「なンでもねェのにそンな頭がバックリ割れるわきゃねェだろボケ」


垣根の横に並んで杖をつく一方通行。よく見ると垣根は全身からジワリと出血している様子だ。


「・・・・・・? 何があった、話せ」

「うるせえっつってんだ」

210 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 03:59:42.00 ID:HJj5t0T+o


バン!!、と一方通行は垣根が歩く道を遮るように壁に手をつける。
垣根は心底面倒くさそうに再度舌打ちをした。


「話せよ」

「・・・・・・・・・・・・うっぜえな。 マジで何でもねえって。
 ちょっと階段から転んだだけだ」

「どンなアクロバティックな転び方したらそンなンになるンですかァ?
 言い訳ならもっと上手い言い訳をしろよ第二位」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


垣根はうんざりとした表情でため息をつく。と、同時に激しく咳き込み始めた。
喉を痛めているのか呼吸器官、もしくは肺がやられているのか、どちらにせよひどく辛そうだ。
211 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:00:28.24 ID:HJj5t0T+o


「ゆっくりでいいから話せ」

「げほっ、・・・・・・はぁ、はぁ。 ・・・・・・・・・・・・ハッ、俺の心配してくれてんのかよ?」

「何があったのか話したらおとなしく死ンでいいぞ」

「チッ。 ・・・・・・マジで大した事じゃねえよ。 ・・・・・・ちょっとワシリーサのヤツとな」

「ワシリーサ? あの変態とやりあったのか?」

「・・・・・・ムカつく事言われたからよ、喧嘩しただけだ」


ワケのわかんねえ魔術でボコボコにされちまったがな、と肩をすくめて言い足す。
ただの喧嘩にしてはあまりにも度が過ぎてると言っていい怪我をしているが・・・・・・。
212 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:01:26.52 ID:HJj5t0T+o


「あの女、どォいうヤツだかわかってンのかオマエ。
 大体、『未元物質(ダークマター)』使ってンならそンなひでェ状態にゃならねェだろ」

「能力無しでやったんだよ。 ちょっとワケありで」

「・・・・・・ただの喧嘩で能力使わないなンてワケがどこにあるンだボケ」

「いちいちうるせえな。 ・・・・・・ハッ、これもお前から言わせりゃフラグか?」

「あァ・・・・・・?」

「実際、ワシリーサのクソ野郎はかなり強い魔術師だった。
 そんなヤツ相手に能力無しでやりあうなんざ、死亡フラグとしか思えねえってんだろ」

「何言ってンだオマエ。 ・・・・・・・・・・・・まァ、でも」


一方通行は一拍間を空けて、鼻で笑った。
213 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:02:08.47 ID:HJj5t0T+o


「フラグ・・・・・・だろォな」

「ハッ・・・・・・・・・・・・」


垣根帝督はバツの悪そうに地面へ目を向けて呟いた。


「ち・・・・・・くしょ・・・・・・う」

「・・・・・・?」


拳を握り、震える垣根に一方通行は訝しげな視線を送るが、彼は続けて言った。


「・・・・・・詮索してくんな、今だけは」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「お前にもやらなきゃなんねえ事があるように、俺にもやらなきゃなんねえ事があんだよ。
 放っておいてくれ、わーかったかぁ? あークソ、口ん中ズッタズタで
 喋るのも億劫だわ。 俺は部屋で休んでっからな。 来んなよ」

214 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:02:56.14 ID:HJj5t0T+o


言いたいことだけ言って、垣根はふらふらとした足取りで帰路についた。
一方通行は追求しようかどうか考えたが、垣根の背中から『マジで着いてくんな』という雰囲気が
ひしひしと伝わってくるのを感じ、彼を追うのはやめておいた。


その代わり、


「オイ、垣根」

「あん?」

「"オマエがこそこそと何をしよォとしてンのかは知らねェが"、勝手に死ンだりするンじゃねェぞ。
 それと勝手にどっか消えたりしても許さねェ。 これだけは肝に銘じとけアホ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


垣根は少し間を空けて答えた。


「ああ」


軽く手を振り、今度こそ垣根は部屋へ戻っていった。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 04:03:55.98 ID:YT4eu1nso
スレタイ回収w
216 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:04:10.30 ID:HJj5t0T+o


(チッ、ガラじゃねェっつーの・・・・・・)


先ほど垣根に言ったセリフを思い出し、バツの悪そうに舌打ちをしながらポリポリと頬をかく。


一方通行はとある軍事施設の廊下を杖をつきながら歩いていた。
エリザリーナが使っているオフィスルームがある施設だ。

彼女を買い物へ誘おうとしてここに来たのだが、恐らくは無理だろう。
独立国同盟を率いる者としては、今のこの状況でショッピングになど付き合ってられるはずがない。


民間人たちは未だに居住区の船の事で盛り上がっているようだが、エリザリーナはそんな事に
うつつを抜かしている場合じゃないのだ。
プライベーティアとの件での後始末がまだまだ山のように残っている。
217 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:05:31.73 ID:HJj5t0T+o


「・・・・・・・・・・・・、俺だ。 入るぞ」


ミーシャを探しがてらここを通りかかった一方通行は、無駄だと分かっていても
一応誘ってみるかとオフィスのドアをノックし、彼女に呼びかける。


そして返事はすぐに来たのだが、


『あ、一方通行・・・・・・!? ちょ、ちょっと待ってちょうだい』

「?」


声の主は間違いなくエリザリーナなのだが、その返事は何やらとても慌てた様子だった。
着替えでもしているのかと勘ぐったが、返事から二、三秒ほどでまた声がかかる。
218 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:06:09.30 ID:HJj5t0T+o


『ごめんなさい、もういいわよ』


何のために待ってくれと言ったのかわからないほど、早い段階で入室許可が出た。
意味がわからず首を傾げる一方通行だったが、大して気にもせずオフィスへと入っていった。


「よォ、なンだったンだよ? 待ってくれとか言っといて――――――」


入ってすぐに、一方通行はその紅い眼を皿のように見開いた。


そこには、ソファの上でぐったりと寝そべっているミーシャ=クロイツェフの姿があった。


「・・・・・・ガブリエル?」


一方通行は何かを言いかけたエリザリーナなど無視してミーシャの元へ駆け寄る。
219 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:07:05.86 ID:HJj5t0T+o


自由奔放で無邪気ないつもの彼女の姿は影も形も無い。
一方通行にあれだけの好意を抱いている天使は、彼が近寄っても反応すらしなかった。
眠っているのだと思ったが、そもそもミーシャは『睡眠』という概念など持ちあわせていただろうか?


「一方通行」

「何があった・・・・・・?」


まさかついさっきと垣根にした問いかけを二度も行うことになるとは思わなかった。
ミーシャに一体何があったのか。外部からの遠隔攻撃?説明不可能な魔術による干渉?
科学サイドの頂点に立つ一方通行に天使の異常事態の理由など皆目見当もつかない。


「どォしてコイツがこンなにぐったり倒れてやがる? 誰かに何かされたのか。
 さっき俺がここに入る前に待たせたのはなぜだ?」

220 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:07:53.92 ID:HJj5t0T+o


「一方通行、落ち着いて聞いて。 私にも分からないのよ、私が廊下に出たら
 彼女が壁に寄り添って倒れそうになっていたから介抱したの」


一方通行はエリザリーナの顔を睨みつけるように見るが、彼女が嘘をついているようには思えない。
エリザリーナは話すべきかどうか逡巡するような仕草を見せたが、やがてこう言った。


「あなたをオフィスに入れるかどうか迷ったのは・・・・・・、ミーシャに口止めされていたからよ」

「口止め? コイツが俺に何を隠してやがるってンだ」

「今のこの状況よ。 どうやら彼女、あなた達に自分の疲弊しきった体を見せて心配させたくなくて、
 今までもずっと隠してきたんだと思うわ。 すぐにエイワスを呼ぼうと思ったのだけどそれも止められたわ」


自分達を心配させまいと黙っていた?口止めしていた?

意味が分からない。原因は不明だがこうなるまで相談もせずに黙っていたミーシャと、
こうなるまで気付くことが出来なかった自分に腹が立つ。
221 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:09:04.18 ID:HJj5t0T+o


「クソが・・・・・・、ふざけやがって。 どォしてこンな事になってンだ」

「彼女を開放したときと比べたら今はだいぶ落ち着いているから、
 目が覚めたら多分また安定した状態になるとは思うけど・・・・・・」

「原因は?」

「こっちが聞きたいくらいよ。 口止めされてるけど、やっぱり放ってはおけない。
 悪いけどエイワスを呼んできてもらえるかしら?」

「いねェよ。 アイツ、こォいう肝心な時にいなくなりやがって・・・・・・」


こういう時だけエイワスに頼る自分に歯噛みする一方通行だが、
悔しかろうがなんだろうが現時点でミーシャの事について一番詳しいのはあの聖守護天使だけだ。
222 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:09:50.42 ID:HJj5t0T+o


しかしそのエイワスは今、ここにはいない。ロシアどころか、あれが今この世界にいるのかどうかも
分かりはしない。エイワスなら平気で散歩感覚で平行世界を行き来出来ても不思議ではない。


しかし、こうなったらもう買い物どころではない。一刻も早くミーシャを回復させなければ。
一方通行は他に天使について詳しい者がいないか考え、とりあえず『天使同盟』のメンバーを
全員集合させロシアから発つ準備を整えさせようとしたが、



ふと、目の前でしんどそうに寝ていたミーシャに動きがあった。



「! ガブリエル――――――」


一方通行はミーシャの顔を覗き込むようにするが、

その瞬間、突然ガバッ!と跳ね起きたミーシャの額が思い切り一方通行の顔面にクリティカルヒットした。
223 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:10:48.23 ID:HJj5t0T+o


「ごっ・・・・・・、ご・・・・・・!!?」

「ミーシャ! 大丈夫?」


いやこっちの心配もしろ、と一方通行はツッコミを入れようとしたが、
大天使様のヘッドバットは信じられないほどの威力だったようで、激痛に悶える一方通行は声が出せない。

そのまましばらくオフィスの床をゴロゴロと転がりながら痛みが引くのを待ち、
目尻に涙を溜めながら起き上がった一方通行はずんずんとミーシャの元へ歩み寄った。


「よォ・・・・・・眠り姫。 いい夢は見れたかよ?」

「pfjegnd貴方mzlaqsh」


もはや一方通行とのやり取りで定番となった『天使のハグ』をすかさず行おうとするミーシャ。
さっきまでの衰弱しきったミーシャの姿が頭に浮かび、一瞬素直に抱きつかせてやろうかと考えたが、
224 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:11:35.39 ID:HJj5t0T+o


「相変わらずで、お約束だな・・・・・・。 抱きつくな」


電極チョーカーのスイッチを入れ、ベクトル操作全開のデコピンで押し返した。
ソファを吹き飛ばし、そのままノーバウンドで壁に激突するミーシャ。


「容赦無いわね」

「クソ・・・・・・、さっきまでのか弱い天使ちゃンはどこ行ったんだよ。
 元気満々じゃねェかこの狸が」


狸、とは言ってもさすがにさっきまでのミーシャの容態は演技などではないだろう。
いつも通りの元気な姿の彼女を見てこっそりと安堵の息をつく一方通行。

デコピンされた額をすりすりとさすりながらムクリと起き上がったミーシャは
無言で、無表情でエリザリーナをちらりと見る。


「あ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


『まさか一方通行に自分が倒れてた事言ったんじゃねえだろうな? あ?』と暗に示しているのか、
ミーシャからじわりと漂う得体のしれない重圧に思わず一歩後退るエリザリーナ。
225 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:12:45.97 ID:HJj5t0T+o


しかしこの天使に隠し事は無理だろうな、と正直に一方通行が来てからの顛末を話そうと
口を開こうとしたエリザリーナだが、突然横から割り込んできた声に遮られた。


「で、どォすンだよエリザリーナ」


一方通行が問いかけてくる。一体どうするのか、と。

しかし当のエリザリーナは何がなんやらさっぱり分からない。急にどうするのだと
言われても、何のことを指して言っているのか理解出来ない。

ミーシャの事ならさっきも言ったように体調悪化の原因はエイワスにしかわからないと
結論が出ており、そのエイワスが今ここにいないのだからどうしようもない。


「え、えっと・・・・・・?」


一方通行とミーシャの顔を交互に見ながら冷や汗を流す。
自分は今、何を求められているのか。ここで一発ボケでもかませばいいのかと考え始めていると、
226 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:13:36.04 ID:HJj5t0T+o


「買い物だよ買い物。 ロシア東部ンとこにあるショッピングセンター街。
 そこで買い物するかどォか誘いに来たンだろォが俺は」

「あ、あぁ・・・・・・・・・・・・」


もちろんエリザリーナはそんな事は一切聞かされていない。

だが彼女はすぐに把握した、これは一方通行からの『フォロー』なのだと。
ミーシャから口止めをされていたことを知っている一方通行が気を利かせてくれているのだ。


「いや、・・・・・・悪いけど私はまだ仕事が残っているから行けないわ。
 例の船についてもっと皆と話し合わなきゃいけないし・・・・・・」

「そォか」


精一杯アドリブを聞かせてエリザリーナはなんとか答える。
アドリブと言っても、買い物へ誘う事は一方通行の本来の目的でもあるためきちんと意味は通っている。
未だにミーシャがこちらをジーッと見ているのが正直怖くてしょうがない。
227 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:14:37.80 ID:HJj5t0T+o


だがやがて、納得してくれたのかミーシャはエリザリーナから視線を外し、
一方通行に――多分――問いかけた。


「zbddngh買物ieufgwsc」


今度は一方通行の方をジトーっと見つめるミーシャ。なぜか正座で。


「マセガキのヤツが急に買い物行こうなンて言い出しやがってな。
 仕方ねェから俺の同伴することにしたンだよ」


それを聞いた途端、ミーシャは右腕をビシィ!と元気よく天へ上げた。
一瞬、星でも降らせるのかと背筋が凍ったが、どうやらただの挙手のようだ。

自分も一緒に行きたい!と言葉ではなく仕草で表している。
そうと知った一方通行は『あァー・・・・・・』と面倒くさそうに頭を掻いて言った。
228 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:16:20.38 ID:HJj5t0T+o


「いや・・・・・・オマエは無理だろォ、あの街は。 あそこは『半公開型AR』っつって・・・・・・
 なンて言やァいいンだ。 下手したら街全体にオマエの個人情報が映っちまうっつーか・・・・・・、
 いや、あそこのARは個人情報の隔離レベルを設定出来るンだったか・・・・・・?
 つっても天使に個人情報もクソも・・・・・・。 エイワスがいりゃなンとかなるンだが・・・・・・」


ロシア東部にあるショッピングセンターについて、ミーシャにも分かるように情報を整理していく。
ブツブツと独り言のように、簡潔に分かりやすく言葉を選んでいく一方通行はやがて、


「結論、無理」

「ojbmvnadyaqwdfqwfpkgjsecndf」


それを聞いて、やだやだやだやだやだやだやだやだとノイズをまき散らしながら床に転がって駄々をこねまくるミーシャ。
彼女が駄々をこねただけで軍事施設が不気味に揺れ、オフィスの床に亀裂が走った。

ついでに駄々をこねて暴れる彼女の腕がオフィスのパソコンを繋いでいるケーブルに触れ、
電源がシャットアウトしてしまった。エリザリーナのただでさえ悪い顔色が、より顔面蒼白になっている。
恐らく整理していた書類やらなんやらのデータが全てリセットされてしまったのだろう。

予想通りの反応に一方通行は短く息を吐き、再び電極チョーカーのスイッチを入れ、
片足でミーシャの背中を軽く踏んづけた。それだけで彼女はピクリとも動けなくなる。
229 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:17:36.60 ID:HJj5t0T+o


「ったく、ここでおとなしくしてろってンだ」

「vdefhdscb渋々cbchvyef了解qafzxmcnidv」


意外にもミーシャは素直に退いた。一方通行の言葉にコクコクと頷き、
彼が足を離しても悄然とソファに座るだけで、それ以上駄々をこねてきたりはしなかった。


(・・・・・・やっぱりまだ身体に負担が掛かってンのか? クソ・・・・・・)


一方通行は誰にも気付かれないような仕草で舌打ちをする。
ミーシャはそのままソファに寝転がると、床に落ちた毛布を被り、恐らくだが『就寝』した。


「ミーシャはここで休ませておくから、買い物ならあなた達で楽しんできなさい」

「あァ・・・・・・、って、俺は別に行きたくて行くンじゃねェっつーの」

「そう」

230 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:18:26.78 ID:HJj5t0T+o


どことなく無理をしている感じで毒づく一方通行を見てクスッと微笑むエリザリーナ。
行きたくなければ行かなければいいのに。そういうところがあるから、


「本当、優しいのね」

「もう一隻くらい船突っ込ませてやろォか? ていうかオマエ、マジで来ねェのかよ」

「え?」


エリザリーナは意外な誘いにキョトンとする。さっき断ったはずだが、尚も一方通行は
自分を買い物へと誘ってくれた。


「正直、オマエも着いてきてくれりゃ助かるンだがな」

「まさかこんな細身の女に荷物持ちさせようって腹じゃないわよね?」

231 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:19:24.45 ID:HJj5t0T+o


自分も買い物へ来てくれたら助かるという言葉に、エリザリーナはほんの少しドキッとしてしまうが、
大方、一方通行だけじゃ荷物を持つのが面倒だから自分にも荷物持ちをさせようとしているのだろう
と、彼女は判断する。

だが、


「そンなンじゃねェよ。 オマエなンかに荷物持たせたら綿飴持たせただけでも腕が折れちまいそォだ。
 そォいうンじゃなくて、単純に着いて来てほしかっただけだ」

「・・・・・・何で私なのかしら?」

「察しろクソボケ。 言わせンじゃねェよ」


おやおや、これは一体どういう風の吹き回しだろうか?"あの"一方通行がこうもストレートに
女性をショッピングへ誘うなど、今までに見られなかったパターンだ。明日は星でも降るのだろうか。
232 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:20:20.82 ID:HJj5t0T+o


エリザリーナもそう思ったのか、ほんのりと頬を赤らめ目線が泳いでいる。
どうしたらいいか答えに迷っているらしい。


「え、ええと・・・・・・。 本当にごめんなさいね、私はまだやらなきゃいけない仕事があるから・・・・・・。
 ほら、今のミーシャの騒ぎでロシア政府への報告書のデータが全てリセットされてしまったし・・・・・・」

「そォかよ。 ガブリエルに代わって詫びとくぜ、このクソ天使め・・・・・・」


顔に落書きでもしたろか、と一方通行は寝顔になっているのかも分からないミーシャを睨みつける。


「じゃ、来れねェンだな?」

「ええ、ごめんなさい」

「構わねェよ、無理言って悪かったな」


そう言って一方通行は本当に残念そうな顔をする。マジでどうしちまったのだろうかこの白いのは。
女性にデートを断られてションボリするようなキャラじゃないだろうに。
233 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:21:32.93 ID:HJj5t0T+o


そんな彼の顔を見てエリザリーナもさすがに戸惑いを隠せないでいた。


(意外と積極的な子なのかしら・・・・・・? 異性からあんな事言われたの初めてだからわからないわ)


昨晩の『風斬事件』で一方通行も女性に対する態度と、女性が抱く気持ちを少しは考えるようになったのか。

だとしたら大きな進歩である。フラグを立てるだけ立てといて放っときぱなしでは意味が無い。
今の彼ならもしかすると順調にフラグを消化していけるのではないだろうか?
ここまで彼の心境が変化すれば期待もしてしまうというものである。


(チッ・・・・・・)


そんな、ショッピングへの誘いを断られた一方通行の今の心境はというと、
234 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:22:42.37 ID:HJj5t0T+o



(エリザリーナが着いて来てくれりゃ俺も少しは楽出来たンだがな・・・・・・。
 ハッキリ言ってマセガキやサーシャみてェな『ガキ』は性に合わねェ。
 事あるごとにいちいち騒ぎやがるからなァ。 それに比べたらエリザリーナみてェな
 『大人』は、『大人』なだけに『大人しい』から気持ち楽なンだよな。
 女なら尚更そォだ。 扱いやすいっつったらアレだが・・・・・・助かるって言い方が正しいか)



やっぱりそういうオチかよ。

風斬の件があって一方通行も女性に対する考えが多少は変わってきているようだが、
この程度ではまだ完璧とは言えないだろう。完璧になる必要はないのだが。


それにしてもこの白髪の少年、どうやら年下よりは年上の方が一緒に居ると楽、とのことらしい。
もしかしたら意外と年上の女性が好みなのかもしれない。そうなるとフラグを立てた人物の半分以上が
消えてしまうことになるだろう。

これではフラグの消化などまた夢の夢というものだ。やはり心は成長の兆しすら見せていないのか。
235 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:23:41.87 ID:HJj5t0T+o


だが、


(・・・・・・ま、たまにはレッサーみてェなとにかくうるさいガキ相手ってのも悪くねェか。
 うるせェガキには慣れてるしな)


一方通行は短く息を吐き、


(・・・・・・ンで、あとはレッサーの方をなンとかしてやンねェとな。 あのバカ、
 性に合わねェ事しやがって・・・・・・)


どうやら一方通行はレッサーに対して何か違和感を感じているようだ。
一体どうしたというのだろうか。


しかし、昔の一方通行ならこんなことすら思わなかっただろう。嫌々ながらも彼はもう
レッサーやサーシャの買い物の付き合ってあげると決めているのだ。
236 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:24:27.07 ID:HJj5t0T+o


昨晩の『風斬事件』で深く反省した一方通行は、女性に対する態度や考え方が
ほんの数ミリ程度だが、やはり変わっていっている。


「邪魔したな、コイツの事頼むわ」

「ええ。 ついでにミーシャにも何か色々買ってきてあげたらどう?
 あなたからのプレゼントならきっとどんな物でも喜ぶわよ」

「しょうがねェな・・・・・・。 それと、ついでのついでだ。 オマエも何か欲しいモンあるか?」

「え?」

「今から行くショッピングセンターは知ってンだろ? ロシア東部の実験都市。
 あそこなら大抵のモンは揃ってるはずだ。 今のうちに言やァパシってきてやる」


外見が同じなだけで中身は別人なんじゃないかとエリザリーナは思った。
少なくとも第三次世界大戦時の彼は、自分たちを助けてはくれたものの、
ここまで人思いな人物だっただろうか?
237 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:25:29.31 ID:HJj5t0T+o


「・・・・・・ありがとう。 そうね、私は何でもいいわ」

「あ?」

「私も、あなたがくれるものなら何でも喜ぶわよ、きっと」


あの例の『桃色ノート』があればエリザリーナの項目に何らかの変化があっただろうか。
まだ不安定で危なっかしい程度だが、これは恐らくもう『立っている』・・・・・・と考えていいだろう。


「後悔すンなよ? ふンどしでも俺がやりゃあ着てくれンのか」

「馬鹿なこと言ってないで早く行きなさい」


セクハラレータのセクハラ発言にボン!と顔を赤くしたエリザリーナは
それを悟られまいと早々に一方通行をオフィスから追い出した。


「・・・・・・、変な子ね」


クスっと笑うエリザリーナはパソコンを立ち上げ、報告書の復旧作業に専念することにした。
238 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:29:15.16 ID:HJj5t0T+o

っしゃああああああ前スレのスレタイ回収完了だぜ!
ホント、待たせてすまなかった垣根クン! また出番あるからよろしく頼む!


てなわけで、なんだかちょっと多めの投下になりましたが今日はここまでです。


一方通行たちが今から向かおうとしている場所は、超電磁砲SSUで登場した舞台ですね。
ロシア東部の原野にある、実験都市を冠したショッピングセンターです。
せっかくロシアに来たんだし、ちょっと出してみようかなと思いました。

セタリーとエニーリャの登場予定はありません、ご了承を・・・・・・。


それではまた三日以内に。今日もここまでお付き合いいただきありがとうございました!

239 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/26(土) 04:32:35.50 ID:HJj5t0T+o



                          【次回予告】



『モチのロンでしょ! あの人絶対カネ持ってますよ、第一位ですもん。
 なはははははー! ほら、サーシャさんもどうぞ。 これ聞こえてるのかなぁ』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『・・・・・・わ、わははははー・・・・・・、やったー』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ=クロイツェフ




『俺のベクトル操作ナメンな。 その気になりゃオマエの顔だけぶっ潰して
 他への衝撃を無効にするなンて芸当も出来たンだ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 04:40:23.96 ID:xH1bR2BFo

当然☆のついでに借金も踏み倒しますよね
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 04:50:19.24 ID:NNRwTvvio
イケメルヘンがイケメンだと…
第一位と第二位も完全にフラグ立ってますぜこいつぁ
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 05:09:58.17 ID:71CpGVwk0
おつおつ

エリザリーナ可愛いじゃねェか
俺もセクハラレータしてくるわ(ダッ
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 07:48:12.57 ID:KocOtgJDO
>>242
プラーズマー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/26(土) 11:59:11.64 ID:OJTTWmjo0
>>242

プラーズマー
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/26(土) 13:02:01.31 ID:88dylzFa0
 >>242

 プラーズマー 
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/26(土) 13:09:00.56 ID:88dylzFa0
サーシャの「やったー」であの世に行きかけた
というかもう次回予告が

                    一方通行
                     ↑│
                     ││?
                     │↓
             サーシャ──→レッサー

西か見えない
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 13:58:34.53 ID:PXx28j5q0
超亀だけどスレタイのレッサーかわいいなあ

でも無理してんのかしら・・・
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 14:52:35.97 ID:OZuliZ//o
出たばっかりの、しかも完結してないエピソードの設定持って来るとアレですよ
実は超電磁砲SS2の8で街崩壊してたりするかもしれないですよ自爆フラグですよ
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 16:01:00.83 ID:vd2cLU9jo
そんな事を言い出したら「とある」自体完結してないんだが…
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 17:06:04.06 ID:asfRgI8s0
エリザリーナたんがプレゼント貰って赤面を期待してるぜ!!
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 17:06:25.09 ID:Ad/ByGjs0
>>249
同意
確かに、そんな事言い出したら原作が完結していない作品のSSなんて無理
>>248 ていうか、二次創作に何言ってるの?
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 17:08:20.46 ID:OZuliZ//o
なんでそんなに噛み付かれたのか分からないんですがそこまで深い意味で言った訳じゃないですよ
超電磁砲SS1だと学芸都市崩壊したしロシアの方も崩壊してもおかしくないよねーって思ったからネタとしてレスっただけで・・・
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 17:25:17.83 ID:ReBYaKsAO
今回の地の文、なんとなくエイワスっぽくないか
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 21:25:50.94 ID:d7w/p/UL0
すべからく乙。
>>253 そうかなぁ・・・?俺は、あの・・・・・・・・・・・・・・・・・が気になる。単なる時間経過なんだろうけど。
     前はーーーーーーーーーーーーーーーが、エイワスの妄想だったしよ
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 23:04:10.60 ID:ZUcVTOVLo
風斬はショッピングに行かないのか?
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/26(土) 23:17:21.13 ID:88dylzFa0
>>255
ヴェントを宥めてます
257 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:12:07.52 ID:eL8Xj+MQo

こんばんわー、連日投下です。連日で投下できるのも皆さんの支援のおかげです、ありがとうございます。


>>254
基本的にその――――とか・・・・・とかは気にしていただかなくて大丈夫ですよ。
大変申し訳ないことに、ここの>>1はそういうところ適当なので・・・・・・
エイワスの妄想だったらちゃんとそう分かるように文章を打っていきますので、ご安心ください!


残りの疑問に答える前にまずは投下していきます。買い物編!
258 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:13:06.97 ID:eL8Xj+MQo


――――――――――――――――――――――


と、いうわけで一方通行は再びエリザリーナ独立国同盟の居住区を雪を踏みしめながら歩いていた。


早朝は『天使同盟』からのサプライズプレゼントに民間人が大いに盛り上がっていたが、
今はもうそれほどでもなくなっていた。
かと言ってお開きになったわけでもないらしく、子供は船の室内プール目当てに大はしゃぎで走っていたり、
大人たちも船のこれからの使い道などについて色々と話し合っている。


「結局、俺とマセガキとサーシャの三人かよ・・・・・・」


一方通行はオフィスを出た後、買い物へ行くメンバーを集めるために
レッサーに頼まれた人物を捜していた。
259 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/27(日) 02:13:59.58 ID:eL8Xj+MQo


まず垣根帝督だが、彼は行かないだろうと思って声はかけなかった。ていうかあんな状態じゃ行けないだろう。
次にワシリーサ。サーシャが割と真剣に同行を拒否していたので彼女も同じく声はかけず。

エリザリーナは先ほど誘ってみたが案の定仕事に追われておりこれもダメ。
オフィスに同室していたミーシャも買い物など行かないで体を休めておかせたほうがいいだろう。


エイワスは、と思ったがアイツ誘われてない。


残るは風斬氷華と『前方』のヴェントの二人なのだが、これが捜しても一向に見つからないでいた。
船にいるのならレッサーが―――どうにかして―――自分に連絡するはずだし、
居住区にいる民間人に―――心底面倒だが―――散々聞き回ったが居所は掴めず。

ヴェントは風斬の事を『堕天使』と呼び、心なしか忌み嫌っていたような雰囲気だったが、
ちょうどその二人がいなくなっているという事に一方通行は少し嫌な予感を感じる。
260 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/27(日) 02:15:06.85 ID:eL8Xj+MQo


(まさかあの二人、どっかでやりあってンじゃねェだろォな)


もちろん、やりあってるというのは『戦っている、戦闘をしている』という意味合いである。
しかし片や人工天使、片や一流どころの騒ぎではない魔術師だ。
戦闘でもしていたら居住区などものの数分で焼け野原になっているだろう。


どこかで話し込んでいるに違いない、と決め込んだ一方通行は二人の捜索を諦め、
結局三人でロシア東部の巨大商業施設へ向かうことにした。

雪の上を長時間杖でつきながら歩くというのは第三次世界大戦時にも体験しているが、非常にしんどい。
これから女の子二人の買い物に振り回されるのだろうと考えると頭痛すらしてきそうだ。贅沢なことに。


と、船へ向かって歩いていると一方通行のイライラを
メーターが振り切るまでアップさせるような出来事が起きた。
261 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:16:05.95 ID:eL8Xj+MQo





『一方通行さーん!!! おっそいんですけどー!!? どこにいるんですかぁ!!?
 どっかで女でも誑し込んでるんじゃないでしょうねぇ!? 聞こえてますかー!!?』





エリザリーナ独立国同盟中に響き渡るようなレッサーの爆音が居住区を駆け巡った。
ピー、ガガ、ガーとノイズが混じった音も含まれている。


「・・・・・・・・・・・・ッッ!!?」


思わず電極チョーカーのスイッチを入れ、音を『反射』しようとしたが
こんなゴジラの咆哮のような音を『反射』してしまったら周りの民間人たちが大変なことになる。
262 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:17:33.05 ID:eL8Xj+MQo


『早く来ないとお昼になっちゃいますよ〜!! あ、そうだ! 買い物ついでに
 お昼ごはんもショッピングセンターで食べちゃいましょう! もち、一方通行さんの
 奢りでね! みゅふふふふふふふ〜〜〜、早く来ないと出費が重なるだけですよ〜!』

『第一の質問ですが、お金は全て一方通行が?』

『モチのロンでしょ! あの人絶対カネ持ってますよ、第一位ですもん』

『第二の質問ですが、第一位だからと言って―――――』

『ダイジョブダイジョブ! なはははははー! ほら、サーシャさんもどうぞ。
 これ聞こえてるのかなぁ』

『・・・・・・わ、わははははー・・・・・・、やったー』


周りから槍のように突き刺す視線とセットでクスクスと笑い声が聞こえてきた。

どうやらあのクソったれのクソガキ共は、船に備え付けてある拡声器――恐らくエイワスによる改良版――を使い、
どこかをほっつき歩いているであろう一方通行にも声が届くように最大音量に設定して喋っている。


一方通行はその顔にありったけの明るい笑顔を、そしてその胸にありったけの殺意を込めて、
電極チョーカーのスイッチを入れてベクトル操作の力による跳躍でクルーザーまで飛んでいった。
263 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:19:06.30 ID:eL8Xj+MQo


――――――――――――――――――――――


レッサーは整備室にある拡声器のスイッチを切り、ご機嫌な様子で一方通行を待っていた。
サーシャ=クロイツェフを連れてひとまず甲板まで移動する。


「こんなもんですかね。 まったく一方通行さんってばどこで道草食ってんだか・・・・・・」

「第三の質問ですが、あんな呼び方じゃ迷惑だったのでは?」

「あれくらいしないと来ないですよ。 あの人は面倒臭がりですからね」


やれやれ、手間がかかる子ですと保護者のようなセリフを言ってレッサーは肩をすくめる。


ラウンジに来てみると独立国同盟の民間人が何人か耳を塞いで屈んでいた。
どうやら先のレッサーによる爆音で、耳及び脳を少しやられたらしい。
皆が皆、レッサーとサーシャの方をジロリと睨む。
264 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:20:33.20 ID:eL8Xj+MQo


「あ、あはははー・・・・・・いやいや、ご迷惑をおかけしました」

「第一の私見ですが、犯人はこのレッサーです」


二人はペコペコと頭を下げながら駆け足で甲板へと向かった。


「ちょいとやりすぎちゃいましたかね〜」

「第二の私見ですが、ちょいとどころではありません」


今度はサーシャがやれやれ、と言って肩をすくめる。


と、

265 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:21:22.76 ID:eL8Xj+MQo


「うん?」


サーシャが空を見て首を小さく傾げた。


「どうしましたサーシャさ・・・・・・、なんですあれ」


レッサーも習って空を見ると、何かが甲板へ墜落しようとしていた。
かなり上空の方にそれはある。ミサイルか何かかと二人は警戒したが、





「レッサァァァァちゃァァァァァァァン!!!!? ちょォォォっとおイタが過ぎるンじゃ
 ないのかにゃァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!??」




266 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:22:16.21 ID:eL8Xj+MQo


今まさに甲板へ墜落しようとしているのは、学園都市特製の真っ白ベクトルミサイルだった。


「あ、あくせら・・・・・・・・・・・・!!?」

「第三の私見ですが、私は先に避難しておきますね」

「ちょっ!!? 私を見捨てるつもり―――」


我先にと逃げ出したサーシャを引き止めようとしたが、もう遅かった。


上空七〇〇〇メートルという高さから突貫してきた真っ白ミサイルこと一方通行は、
そのままレッサーの顔面に必殺の『直立型ベクトルドロップキック』をぶちかまし甲板の床をビスケットのように
砕いて、バキバキと嫌な音を立てながら船底まで落下していった。

その威力はまさに爆撃。一方通行という名のミサイルはレッサーを踏みつけたまま地面にまで達し、
落下地点にクレーターを作り出した。居住区に震度三くらいの揺れが二、三秒続いた。


幸い、居住区の建造物に被害はなく、甲板を貫いた穴は不可思議なくらいに綺麗な穴を開けているだけだった。
その穴の周りは、これまた不思議なことにヒビ一つ入っていない。

恐らくベクトルを上手く操作して船への被害を最小限に抑えたのだろうが、まったく、器用なものである。
レッサーの顔に穴が開いていなければいいのだが。
267 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:23:42.42 ID:eL8Xj+MQo


「悪い子にはオシオキが必要だよなァァ? んン?」

「いだだだだだだだだだ!! ちょ、ちょっと待って・・・・・・!!!」

「ああァ? どォされてェンだァ? リクエストくらいなら聞いてやるぜェ?」

「そ、そうですね。 じゃあ後ろから優しく抱きしめてもらえると私のあなたに対する
 好感度がぐーんと上がると思いますよ・・・・・・ってあ痛たたたたたたたたたたっ!!?」


リクエスト通り、一方通行はレッサーの両腋から腕を通し、後ろから力一杯羽交い絞めにした。
そのまま彼女の両腕をぐいいっと後方へ引っ張り、そのまま関節技(サブミッション)を美しく決める。

レッサーは胸を思いっきり前に張る体勢になってしまい、苦痛からかそれ以外の理由からか、
顔が真っ赤になっていた。


「うぎぎぎぎぎぎ!!! ご、ごめんなさいごめんなさい!! ギブギブギブ〜〜〜〜!!!!」

268 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:24:32.07 ID:eL8Xj+MQo


「聞こえませェ〜ン。 もっと大きな声で」

「ぎ、ギブ〜〜〜〜〜〜!!!!!」


レッサーの悲痛な叫びと懇願を聞き、一方通行は仕方がないといった表情で
彼女にかけていた関節技を解除した。そしてそのままレッサーの尻にケンカキックをぶち込む。

顔から地面に突っ込んだ彼女のミニスカが背中まで捲れ、可愛らしいデザインのパンツが丸見えになるが、
一方通行はそれを見ても平常通り全く反応なしだ。


「み、みみみみ、見ましたね!!?」

「見ざるを得ねェだろォが」

「見物料として日本円で一〇〇〇万ほどいただきます! 痛ッ! じょ、冗談ですよ・・・・・・」


くだらない事を言うレッサーの頭に渾身のチョップを入れる。
269 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:25:36.63 ID:eL8Xj+MQo


「ていうか私、生きてるんですか? あんな上空から蹴り喰らったのに」

「俺のベクトル操作ナメンな。 その気になりゃオマエの顔だけぶっ潰して
 他への衝撃を無効にするなンて芸当も出来たンだ」


一体どうベクトルを操作すれば上空七〇〇〇メートルからの蹴りで
レッサーの顔を潰さないように出来るのか。

実際、レッサーは関節技の痛み以外は全くの無傷だった。


「くだらねェ真似しやがって・・・・・・、大恥かいちまっただろォが」

「だって一方通行さんが何時まで経っても戻って来ないんだもーん」

「ほンの数十分くらい待てねェのかクソガキが・・・・・・。 まァいい、行くぞ」

270 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:26:23.65 ID:eL8Xj+MQo


そう言ってレッサーの手をつかみ即席クレーターから船へ向かう。
彼女は突然手を掴まれた事に少し驚きながら、


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。 他のメンバーは?」

「どいつもこいつも、オマエらの買い物なンざ付き合ってらンねェとよ。
 ついでに俺もパスしていいか?」

「ダメです! あなたは着いてきてください。 ていうか皆さん薄情すぎやしません!?
 人望ないのかなぁ〜私」

「オマエなンかに人望があると今まで思ってたのか? めでてェ構造してンなァ、オマエの頭」

271 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:26:57.60 ID:eL8Xj+MQo


「・・・・・・・・・・・・人望、無いですかね?」

「・・・・・・あン?」

「いえ。 さぁーて! んじゃ薄情な皆さんは置いといて、とっとと買い物に行きましょう!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、バカが」

「ん? 何か言いました?」

「別にィ」


居住区の民間人から心配する声をかけられたが適当にごまかし、
クレーターの出来た所はあとで直しとくと言い残して二人は船の駐車場へ足を運んだ。
272 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:29:24.24 ID:eL8Xj+MQo


駐車場には一台の車が停まっている。見た目はポップでキュートなケータリングカーだが、
これは学園都市の統括理事会の一人、親船最中から借りた軍用トラックを偽装したものだ。


「第一の質問ですが、無事ですか?」

「なんとか・・・・・・。 一方通行さんってば容赦ないんですから」

「オマエに素晴らしい四字熟語をプレゼントしてやる。 自業自得だ」


サーシャ=クロイツェフは一足先にトラックへ乗り込み、暇を持て余していた。
後ろの荷台から『天使同盟』が持ち込んでいた学園都市製のドリンクをちゅーちゅー飲んでいる。


「いい身分だな。 何様のつもりだ」

「第一の解答ですが、元天使様です。 ・・・・・・補足説明しますとジョークですが」

273 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:30:21.94 ID:eL8Xj+MQo


あながち冗談にもなっていないが、一方通行は無視して運転席に乗り込んだ。


「ちょいと。 私はどこに乗ればいいんでしょうか?」

「あァ? 後ろの荷台にでも行ってろ」

「一方通行さんが運転席でサーシャさんが助手席で、私は一人荷台でお留守番しろと?」

「第一の私見ですが、荷台以外に場所を確保できませんよ」


うむむ、と悩むレッサーを横目に一方通行はエンジンをかけ、ショッピングセンターまでの
道のりを得るため備え付けのナビを慣れた手つきで操作する。


「・・・・・・かなり遠いな。 帰りは多分夕方過ぎてンぞ」

「第二の私見ですが、帰りは夕方ではなく真夜中になるかと予想されます。
 補足説明しますと、女性のショッピングとは時間のかかるものなのだそうで」

274 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:31:28.25 ID:eL8Xj+MQo


「他人事みてェな口ぶりだな。 オマエも結構ノリ気じゃねェかよ」

「第三の私見ですが、こうなったらなるようになれ、です。
 補足説明しますと、今日は沢山買い物をしようと活き込んでいます」


あれだけショッピングを嫌がっていたサーシャだが、今はもう気持ちを切り替えているらしい。
恐らくレッサーから貰ったものなのだろう、ショッピングセンターの薄い商品カタログを片手に
どれを買おうかと悩んでいる。こういう所はやはり女の子だ。


「えいっ♪」

「ンあっ!?」


と、車での居場所に悩んでいたレッサーが突然一方通行の席に強引に座り込んだ。
彼女のお尻が一方通行の股を圧迫し、変な声が出てしまった。
275 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:32:38.38 ID:eL8Xj+MQo


「・・・・・・マセガキ、ドロップキックじゃ物足りなかったか?」

「ここでいいです、私はあなたの膝上に座りましょう」

「オーケー、イイ答えだァ」


一方通行は自分の股に座るレッサーの首に腕を回し、そのまま締め上げた。


「うぎゅ!? がっ、にゃ、何をする・・・・・・んですか・・・・・・!!!」

「このまま気持ち良ォくしてやンよ、天国で木原クンによろしくなァ。
 あ。 アイツは地獄行きだな多分」

「木原って誰・・・・・・うぐぐ、離してぇ・・・・・・」

276 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:33:40.80 ID:eL8Xj+MQo


これ以上締めるとマジでGo to hellしてしまいそうだったので、一方通行は
根負けしてレッサーの首から腕を解いた。


「ぜぇ・・・・・・はぁ・・・・・・!! ふふふ、私の勝利です」

「ふざけンなよクソったれが・・・・・・マジでここに居座るつもりか」

「いいじゃないですか! こんな可愛い少女がこんな至近距離で座って
 くれてるんですよ? 夢のようなドライブでしょ?」

「死ね」


すりすりと頭を顔になすりつけてくるレッサーに殺意を覚えながらも―――彼女の髪のシャンプーの匂いだろうか、
やたら甘い匂いが鼻をつく―――、一方通行はナビをセットし終え、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
277 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:35:12.01 ID:eL8Xj+MQo


かくして一方通行、レッサー、サーシャの三人は独立国同盟から離れ、
ロシア東部に位置する巨大商業施設、世界各地から注目されている次世代ショッピングセンターへ向かう。

民間人の何人かが笑顔で『いってらっしゃ〜い』と言ってきた。
どんだけ仲睦まじいんだよ俺たちは、と一方通行は心の中でツッコンだ。


「第二の質問ですが、一方通行は運転免許を持っているのですか?」

「運転に必要なのはカードじゃねェ。 勘だ」


サーシャの当然の疑問にどこぞのスキルアウトとは違う意見を述べ、一方通行は無免許とは思えない運転技術で
滑らかにトラックを走らせる。雪の上での走行だろうと物ともしない。


「私も『新たなる光』の皆とこうやって車で移動することがあったんですけど、
 やっぱドライブっていいもんですよね〜♪」


レッサーは現在、一方通行が座る運転席に彼に重なるようにチョコンと座っている。
自分の腰の形とジャストフィットしているのか、彼女はすこぶるご機嫌が良いようだ。
278 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:36:37.76 ID:eL8Xj+MQo


「いや〜何だかこの『座席』、クセになりそうですね。 今度から
 ここを私の拠点にしちゃってもいいですか?」

「後ろから刺される覚悟があンならなァ」


後ろから刺される覚悟があるなら誰でも一方通行の股に座れるという事か。

そんな彼はナビをチラチラ見ながら自分の股に居座っているレッサーを、面倒くさそうに
腰を動かして位置をずらそうとする。


「あっ・・・・・・」

「ヘンな声出してンじゃねェ!! ロシアの雪原のど真ン中に放り出すぞ!!」

「あ、ちょ、ちょっとあんまり暴れないでくださ・・・・・・んっ」

「もう殺していいよなァコイツ・・・・・・」

279 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:37:30.37 ID:eL8Xj+MQo


どうせこれも色仕掛けの演技なのだろうと一方通行は無視した。

だが彼は知る由もないが、レッサーは割と本気で尻周辺に"イケナイ"違和感を感じており、
しかし今更荷台へ移動することも出来ず、若干しどろもどろになっていた。


「あぅ・・・・・・、何だか暑いですね」

「冗談だろ? ここがどこだか分かって言ってンのか」

「うひゅぅ・・・・・・・・・・・・」

「だっ、ちょ、オイ!! あンま腰動かすな! 事故りてェのか!?」


乱れかけたハンドル操作を慌てて元に戻す。
レッサーの尻はなぜか異常なほどにぴったりフィットしており、それが逆に気持ち悪かった。
280 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:38:40.77 ID:eL8Xj+MQo


「・・・・・・第三の質問ですが、私、お邪魔でしょうか?」

「何言ってやがンだ急に」


助手席に座るサーシャの目が、所構わずイチャつくカップルを見るような蔑んだ視線だった。


「あァークソ面倒くせェ・・・・・・。 マセガキ、ナビ見て案内しろ」

「ほいほい。 とりあえずはひたすら直進でしょうね〜、まずはモスクワまで行きましょう。
 ていうか音声ガイド機能オフになってますよこれ?」

「なンで機械音声の指図なンざこの俺が受けなきゃいけねェンだ」


変なプライドを持つ学園都市最強の超能力者(レベル5)がここにいた。
281 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:39:54.53 ID:eL8Xj+MQo


「第四の質問ですが、今日の買い物代は本当に全て一方通行が支払ってくれるのですか?」

「・・・・・・チッ。 少しくれェなら奢ってやる」

「聞きましたかサーシャさん! いやぁ〜やっぱデキる男は違いますね!
 こういう男性に抱かれてみたい! 今日は狂ったように買い物しまくりましょう」

「抱かれてェなら今すぐここで抱いてやろォか?」

「うぎゅっ!?」


雪原を走るトラックから窒息しそうな少女の声が響いてきた。


「・・・・・・ン」

「どうしました?」

「そォだよ、風斬のヤツに携帯電話買ってやってるンだった。
 ちょっと電話して誘ってみるか」

「そんなの早く思い出してくださいよ! もう出発しちゃってるのに!」


はてさて、一方通行の今日の出費はいくらになることやら。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 02:48:35.32 ID:MiXJgAERo
リアルタイムと思ったらなにがあった
283 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:49:13.48 ID:eL8Xj+MQo

Q. 挿入ってるよねこれ?

A. この作品はよい子のための作品です。


というわけで風斬も参加して買い物にいくそうです。さて、ヴェントはどうでしょうね?


>>248
その辺は一応考慮しているつもりです。『ニホンダルマ』には立ち寄りませんし、『とても価値のあるオレンジ』にもほぼ触れません。
ホントにただ買い物するだけですので、安心して読んでいただけると思います。
まぁ最悪、原作で実験都市が崩壊しちゃったらエイワスが何とかしてくれたって事で・・・・・・駄目ですよねw


さて、そんなわけで次回はみんなでお買い物・・・・・・じゃないです、ごめんなさい。
次回からなんと! しばらく『天使同盟』自体が出てこなくなります。
どういうことなのかは次回更新をお楽しみに!あのキャラ達が再登場しますよ〜


では、今回もここまで読んでくださった方に一方通行の膝上搭乗券をプレゼントします。

ありがとうございました!
284 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/27(日) 02:50:17.43 ID:eL8Xj+MQo



                          【次回予告】



『馬鹿女、とは誰のことなりけるのかしら? ステイル=マグヌス』
―――――――――――イギリス清教の最大主教(アークビショップ)・ローラ=スチュワート




『あ、最大主教・・・・・・!!』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師・ステイル=マグヌス



285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 02:55:00.28 ID:Vvf92kiP0

次からは必要悪の教会が出てくるのかな?
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 02:59:45.38 ID:/3Q8pu0G0
>後ろから刺される覚悟があるなら誰でも一方通行の股に座れるという事か。

>では、今回もここまで読んでくださった方に一方通行の膝上搭乗券をプレゼントします。

ひっざ!ひっざ!>>1乙FUUUUUUUUUUUUU!!!!!!
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 03:02:54.15 ID:w4cxBdOBo
一方通行の膝上搭乗券はいらないので、レッサーが膝上に乗ってくれる券を下さい
もしくは風斬でも良いです。むしろ風斬が良いです
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/27(日) 03:08:44.84 ID:7t5qSBZa0
むしろ風斬の膝の上に乗りたいです。膝枕的な意味で。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 03:19:26.40 ID:XGCFKfHCo
>後ろから刺される覚悟があるなら誰でも一方通行の股に座れるという事か。

間違ってますよ正しくは

>後ろから「挿される」覚悟があるなら誰でも一方通行の股に座れるという事か。

でしょ!!
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/27(日) 03:24:26.69 ID:XRyQbdMDO
とりあえずここまでのレスを見て、
このSSの読者によい子などいない事はわかったww

ていうか次回からカメラが切り替わって登場人物変わるのか!キャーリサ出してくれー!
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 06:17:19.16 ID:YmsbW98SO
ふぅ…

>>1乙!
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 07:26:22.18 ID:gVSg4sOIO
超電磁砲組かと思ったら違ったか。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 08:44:09.44 ID:8pDjl/8p0
>>287
じゃあサーシャは俺が
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 11:31:18.58 ID:v4DrT4Cn0
原作がどうだろうが、アニメや映画がどうなろうが、
それでもここのエイワスなら、エイワスなら何とかしてくれるはず。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 12:38:16.35 ID:aKo0cK+n0
よい子のための性教育作品ということか
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 14:11:55.08 ID:H8+ARu+W0
ヴェントにも服を買ってあげて―!
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 19:28:44.93 ID:7Jt+zeLAO
あいつはバナナで充分だァ
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/27(日) 22:13:28.89 ID:kOpMBQKDO
>>297
一方さんのバナナ……ゴクリ
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/02/27(日) 22:53:57.58 ID:n5jzD2sxo
落ち着けそれはもやしだ
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 01:11:33.78 ID:UNBE0aw4o
まて、それはセロリだ食べさせてもらえないよ
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 01:48:02.12 ID:A4lt42fro
天草式が再登場かな?
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 07:05:33.91 ID:BoonWVQ7o
>>300
このセロリは出来損ないだ、食べられないよ
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 07:40:33.35 ID:l4rIToo80
>>302
山岡乙
304 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/28(月) 10:23:23.23 ID:MTNGq7o2o
おはようございます、久々のモーニング投下です。

いやいや、私は読者の皆様方が健全な人間であると信じておりますよ。
当の私は濁りまくっていますがね・・・・・・


それでは投下していきます。


今回からしばらく『天使同盟』の面々は登場しません。
今暫くお待ちください。
305 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/28(月) 10:25:00.50 ID:MTNGq7o2o


――――――――――――――――――――――


某日。

イギリスのロンドンでも小さな変化が起ころうとしていた。


二メートルはあろう長身と、それに比例しているかのような赤く長い髪を
なびかせる『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師。


ステイル=マグヌスはロンドンの街を歩いていた。


(イギリス清教が『天使同盟(アライアンス)』と秘密裏に協定を結んでから何日か経過したが・・・・・・
 今のところ、うんざりするような騒ぎは起きていないようだね)

ステイルは口にくわえた煙草を吸い、フーっと呼出煙を吐き出す。
306 : ◆3dKAx7itpI :2011/02/28(月) 10:25:52.08 ID:MTNGq7o2o


彼が所属する『必要悪の教会』の大元である十字教旧教三大宗派の一つ、イギリス清教は
某日に『天使同盟(アライアンス)』と呼ばれる魔術結社でも科学サイドでもない、
一言で言えば『謎』の組織と非公式に協定を結んでいた。


イギリス清教の実質的なトップ、『最大主教(アークビショップ)』のローラ=スチュワートは
突如ランベスの宮に出現した『天使同盟』のジェネラルマネージャー、エイワスと
"適当な会話"を交わし、あっさりと手を結んだのである。


(まったくあの女・・・・・・、得体の知れない組織と何の疑いもなく
 協定を結ぶなど・・・・・・。 またいつもの間抜けスキルが発動したとしか思えない)


ブツブツと過ぎたことを愚痴るステイルだが、実は彼もそんなに強くローラを責められなかった。


彼は前に一度、ローラからの指令で学園都市に滞在しているという『天使』の保護を
一任されたのだ。
半信半疑で学園都市へ赴いたステイルは、そこで本当に本物の大天使、ミーシャ=クロイツェフと遭遇。
当然ながら話し合いで和解することも叶わず、絶望的戦力差で戦闘を行うことになった。
307 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:27:11.62 ID:MTNGq7o2o


結果としてステイルは無傷で済んだのだが――なぜか戦闘終了後、ミーシャに首をへし折られたが――、
そこで『天使同盟』の面々と出会い、話を聞いてミーシャの事は彼らに任せる事にしたのだ。


そして事後報告ついでにエイワスからイギリス清教と協定を結んだという事実の確認のため
ステイルはロンドンへ速攻で向かい、ローラを問いただした。


『どういう事も何も、事実偽りなきなのよステイル。 天使という強力な戦力を所持する
 組織と手を結ぶ事は、イギリス清教にとっても大きなアドバンテージになりけるからね』


事の重大さを理解していないのか、いや理解しているからこそ彼女はのんびりと構えているのだろう。
その態度にステイルはイライラが収まらなかった。未だにこうして愚痴るほどに。
308 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:28:17.74 ID:MTNGq7o2o


(確かに天使という強力無比な存在がいる組織と手を結ぶのはドでかい優位性となるが・・・・・・、
 一方通行や風斬氷華、垣根帝督はともかくとしてあのエイワスは信用に足る存在か?)


ステイルは『天使同盟』の所属するエイワスが"あの"エイワスである事を知る数少ない魔術師だ。

彼は必要悪の教会の女子寮、オルソラ=アクィナスやアニェーゼ=サンクティスらがいる女子寮に
『天使同盟』が来たという報告をローラから受けている。

そこでは大した事は起きなかったようだが、『天使同盟』はやたらとイギリス清教に関わってきているため、
若干ながらステイルは訝しんでいた。


(もし仮に『天使同盟』が、いや、エイワスが我々イギリス清教を掌握してしまうような事態になったら
 どうするつもりなんだ・・・・・・? いや、一方通行達が恐らくそうはさせないだろうが、
 やはり今回の協定は軽率だったんじゃないのか・・・・・・あの馬鹿女)

309 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:29:12.27 ID:MTNGq7o2o




「わっ!!」

「ひゃいいっ!!?」




「馬鹿女、とは誰のことなりけるのかしら? ステイル=マグヌス」


突然後ろから声をかけられ、驚きのあまり口にくわえていた煙草を落としてしまった。

後ろを振り向くと、そこにはイギリス清教の『最大主教』、ローラ=スチュワートが
どす黒いオーラを放ちながらニコニコと笑っていた。
310 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:30:32.39 ID:MTNGq7o2o



「あ、最大主教・・・・・・!!」

「ご機嫌ようステイル。 私のことで随分と思い悩みけるようね・・・・・・?」


気配を消していきなり出てくるな!!と、ステイルは叫びそうになるのを堪える。


ローラはいつものように簡素なベージュの修道服で身を包み、その異常に長い黄金の髪を
くるぶしの辺りで一度折り返し、後頭部にある銀の髪留めを使って固定し、
更にもう一度折り返している。にも関わらずその髪は腰の辺りまで達していた。


「・・・・・・またあなたは護衛の一人も連れ歩かずにのんびりと・・・・・・」

「あら、たかが散歩に堅苦しき護衛など連れて歩むはずがなきなのよ」

311 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:31:31.66 ID:MTNGq7o2o


しかしそれもいつも通りのことであり、ステイルはハァ、とため息をつくだけで
それ以上くどくどと説教はしなかった。


「『天使同盟』の事で考えたるのかしら?」

「ええ、まぁ・・・・・・。 彼らはあれからどうしているのか、ちょっと気になって」


その彼らは現在ロシアで観光旅行を満喫しています、と言ったら
ステイルはどういうリアクションを見せてくれるだろうか。


「あなたも何か『虫の知らせ』なりけるものを感じたの?」

「虫の知らせ?」

「予感、よ」

312 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:32:36.59 ID:MTNGq7o2o


予感。

確かにそう言われればそんな気がしないでもない。
今日は特に仕事もなく普通に散歩をしていただけだったのだが、ふと頭に『天使同盟』の事が
思い浮かび、愚痴をこぼしていたのだから。


「・・・・・・予感、と言えるほど大袈裟なものではありませんがね。
 何となく、漠然と彼らのことを思い出していただけですよ」


ステイルは黄泉川愛穂の家でとても暖かく歓迎されている。
『天使同盟』の事と同時にそれを思い出し、少しだけ心が和らいだのだが。


「私も、今しがた予感なるものを感じたわ」

「?」

313 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:33:19.98 ID:MTNGq7o2o


いつになく真剣な表情を見せるローラにキョトンとするステイル。
だから、彼女から続いて出た言葉もすぐには意味が理解できなかった。




「来たるわよ、"決戦の時"が」

「決戦の・・・・・・、時?」




また妙なドラマかゲームに影響されたのか、とステイルは呆れかけたが、
ローラの表情はとても冗談を言っているようには見えなかった。


「ステイル。 イギリス清教と『天使同盟』が協定を結んだ以上、
 あなたを『天使同盟』の為に駒として動かしたる事も私は厭わない。
 この意味、理解出来ようものかしら?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


理解程度なら言われるまでもなく出来ている。
しかしステイルは即答しなかった。
314 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:34:43.38 ID:MTNGq7o2o


試されているというわけでもなく、これはローラからの単純な質問だ。
ステイルはすぐには答えず彼らの事を思い出していた。


異国の魔術師である自分を、最終的には受け入れた彼らのことを。


「・・・・・・分かっています。 例え嫌でも、あなたに命じられたら僕は動くしかない」


特に理由は無いが、ため息をついてわざと嫌味っぽく答えるステイル。
しかしそんな事は気にもせず、ローラ=スチュワートは静かに、しかし力強く、
ステイルの目を見て言った。


「ならばその覚悟、見せてもらいけるわよ」

315 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:35:27.06 ID:MTNGq7o2o


『?』と頭に疑問符を浮かべることしか出来ない。今から何かをしてくるのかと、
ステイルはローラが何を言いたいのかイマイチ把握できぬままわずかに身構えた。


その時、




「あのー、すみませーん」




道路の向かい、反対側の歩道からそんな声が聞こえてきた。
どうやらその人物は二人に声をかけているらしい。

316 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:36:11.80 ID:MTNGq7o2o


「?」

「はぁーい」


頭の疑問符が更に増えるステイルを無視し、ローラは陽気に返事をする。

声をかけてきた人物は道路に車が通っていないことを確認すると、早足でステイルたちの元に走ってきた。
その容姿からして、どうやらこの男性は郵便配達員のようだ。

郵便配達員の男は長身のステイルを見上げ、確認する。


「あの、ステイル・・・・・・マグヌスさんでいらっしゃいますか?」

「あ、あぁ・・・・・・。 そうだが?」

「あ、よかったー。 いやね、さっき急に"変な人"に頼まれたんですよ。
 長い赤髪でやたら長身のステイル=マグヌスという名前の神父にこの手紙を渡すようにと」

「手紙・・・・・・?」

317 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:37:07.92 ID:MTNGq7o2o


男は言われたとおり、ステイルに一枚の封筒を手渡す。
一見何の変哲もないただの白い封筒だ、手触りからして中に手紙が入っている事も分かる。


「それと、・・・・・・あなたはローラ=スチュワートさんで?」

「はいはい、私がローラ=スチュワートなりける者よ♪」

「あなたにも手紙を渡すようにと。 その"変な人"から」


ありがたきなのよー、とローラはにこやかにステイルと同じ白い封筒を受け取った。
郵便配達員の男は安心したように柔和な笑みを浮かべ、立ち去ろうとする。


「では、私はこれで」

「いや、ちょっと待ってくれないか」


と、ステイルは男を呼び止めた。彼は『はい?』と首だけ動かして足を止める。


「なんでしょうか?」

「その・・・・・・、"変な人"というのは? 特徴を教えて欲しい」


ステイルならともかく、『最大主教』のローラにまで手紙の受け渡しを注文する人物など、
彼の思い当たる中では『王室派』や『騎士派』のトップ、

あるいは『学園都市に潜む世界最悪の魔術師』くらいしかいない。

318 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:38:26.80 ID:MTNGq7o2o


ステイルに尋ねられ、うーん・・・・・・と考え込む配達員の男。
どう答えたらいいのかわからないといった表情だ。

やがて彼はその"変な人"についてこう話してきた。


「特徴って言われましても・・・・・・、その人、"真っ白なローブ"で全身を隠していまして、
 顔はおろか身体のどの部分も全く見えない容姿だったんで・・・・・・なんとも言えませんね」

「ローブ・・・・・・、顔を隠していただと? 誰なんだ・・・・・・?
 その他に何か特徴はありませんでしたか? その、声とか」

「声、声・・・・・・。 あれ? 何ででしょう、よく覚えていないな・・・・・・。
 男か女かもちょっとわからないです、本当にすみません」

「いえいえ、お勤めご苦労様なりけるのよ〜」


では、と配達員の男は仕事に戻っていった。

319 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:39:11.96 ID:MTNGq7o2o


ステイルはとりあえず封筒を裏返してみてみるが、そこには送り主の名も何も書いていなかった。
もっとも、白いローブで全身を隠しているような人物が名前など書くはずもないが。


「・・・・・・誰からの手紙なんでしょう、これ」

「さぁーて、それは開けてからのお楽しみなりけるわよ」


その様子からしてローラは手紙の送り主が既に分かっているようだ。
なんなんだ・・・・・・、とステイルは若干イライラしながら新しい煙草に火をつける。


「ここで開けても?」


ステイルは呼出煙を吐き出しながら尋ねる。

320 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:40:08.00 ID:MTNGq7o2o


「別によいけれども、他人には見られぬよう注意したるのよ」


その言葉に若干緊張しながらも、ステイルは封筒を開けようとする。
開封口には虹色に光る、小さな正方形のシールが貼ってあった。

そこを指で触れると、まるで蜃気楼のようにその封をしていたシールは消えてなくなった。


(情報隠匿用の魔術か何かか? 見たことないものだったが・・・・・・)


そしてステイルは中身の手紙を取り出す。その手紙もその辺で売っていそうな普通の紙だった。
ローラも同じように指でシールに触れ、中身を取り出して読んでいく。

321 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:40:57.49 ID:MTNGq7o2o





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





ステイルは煙草を吸うことを忘れてしまっていた。
ある程度の長さに達した煙草の先の灰がポトリと手紙に落ち、やっと気がつく。


「予想通り、と言いたるところかしらね」

「な・・・・・・!!! こ、こんな・・・・・・、これは・・・・・・!?」

322 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:41:42.14 ID:MTNGq7o2o


手紙の内容を読んだステイルとローラの反応はまるで逆だった。
ローラはある程度予想がついていたらしく、意味深な笑みを浮かべていたが、
ステイルの方はというと、手紙を持つ手をふるふると震わせ、全身から嫌な汗を滲ませるだけだ。

ステイルは青ざめた顔でローラを見る。


「あ、『最大主教』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

「さて、見せてもらいけるわよステイル。 あなたの覚悟を」


ステイルは地面を見つめ、くわえた煙草を噛みちぎる。




彼は間もなく、世界最大規模の『死地』へ赴かなければならない。
『天使同盟』のために。魔術師である自分を迎え入れてくれた、あの学園都市の人間たちのために。



323 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:48:57.90 ID:MTNGq7o2o
あ、あれ・・・・・・何だか思ったより投下量が少ない・・・・・・
ボリューム不足で申し訳ありません。

そんなわけで、今回はここまでです。

どうでしょう、珍しくメインキャラが一人もいない内容でしたが・・・・・・少しでもワクワクしてもらえればと思っております。
・・・・・・ローラの口調、どうでした? 前よりはマシになりましたかね・・・・・・?


さて、次回はまたさらにカメラが別の方向へ移動します。
次は誰が出てくるのか、・・・・・・もう大体お分かりでしょうか。


ではまた三日以内に!

今日もここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。それでは!
324 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 10:49:33.24 ID:MTNGq7o2o



                          【次回予告】



『だってマジで暇過ぎて暇過ぎてお腹と背中がくっつきそーだし』
―――――――――――英国三派閥の一つ『王室派』第二王女・キャーリサ




『それ腹減ってるだけじゃねえか!!! ていうかついさっき食事したばかりじゃないですか!!』
―――――――――――英国三派閥の一つ『騎士派』のトップ・騎士団長(ナイトリーダー)




『え、えっと・・・・・・じゃあまたこの携帯ゲーム機で遊びませんか?』
―――――――――――英国三派閥『王室派』第三王女・ヴィリアン




『・・・・・・この手の娯楽は、私には難しすぎます』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『後方』のアックア



325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/02/28(月) 11:58:55.50 ID:7PtRyvkh0
>>1
ボリュームも充分だと思うぜ
でもローラってスチュアートじゃなかったか…?
326 :ご指摘ありがとうございます。ごめんなさい・・・・・・ ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/02/28(月) 12:03:21.93 ID:MTNGq7o2o
>>325
違うな、この二次創作ではスチュワートなんだぜ?


・・・・・・うん、まぁアレです。死んできまーす^^
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 12:30:26.29 ID:2XxyzzBi0
4スレぶりにキャーリサが返ってきたぞー
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 12:57:59.17 ID:ABNQa6ejo
乙なりけるのよ
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 13:05:23.49 ID:n3qhMAX8o
つまりあれか、一方さんが方々で建築したフラグが動き出す的な流れか今は
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 13:37:06.87 ID:GT93AoAAO
キャーリサきたぁぁぁぁぁぁ
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 15:49:29.46 ID:pAE82dzAO
来た!キャー様来た!!これでかつる!!
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 16:23:28.88 ID:p68tqBYvo
ローラたんちゅっちゅ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 17:20:57.86 ID:BoIpGhl90
そろそろ一通さんとローラのフラグが建っても言いころだと思う
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/02/28(月) 17:49:54.83 ID:SGlf2oxL0
>>333
ローラはむしろ大天使とフラグを建てたがってる
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 21:38:50.78 ID:BoIpGhl90
ならまず『天使同盟』のリーダーに話を通しておかないとな
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 21:44:55.21 ID:947rM8WB0
まぁまぁ
ここは間を取ってローラたんは俺とフラグを建てるということで
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/02/28(月) 22:16:07.90 ID:SGlf2oxL0
>>336
一方通行「フラグだと?ッて事ァ」 人食い婆「私はあなたが好きって事です♪」
           ↑
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 01:22:34.43 ID:80PxINzO0
禁書のPSP。
一方通行編をクリアしたら、ヒューズ・カザキリが出たんだけど・・・
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 16:57:09.55 ID:nhUu/YSu0
>>337

ま た お ま え か
340 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/01(火) 22:02:34.05 ID:+eefCC9Go
やっほう、読者様。投下しにきたよ


以前の投下での名前ミスにつきましては、大変申し訳ありませんでした。

ただしくは、ローラ=スチュアートです。脳内変換よろしくお願いします・・・・・・
先の書きため見たら全部スチュワートになってた・・・・・・直すのに苦労しましたww


そんなわけでそろそろ行きます。今回は王室派の皆様が久しぶりに登場します。
キャーリサは根強く再登場を希望している読者様がいらっしゃいましたねー、お待たせしました!

では。
341 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/01(火) 22:04:13.92 ID:+eefCC9Go


――――――――――――――――――――――


イギリス、ロンドンの一角にはとある大きな公園が存在する。
その公園と隣接するように、イギリスの首都の一区画を丸々開けて鎮座する巨大な建造物があった。


バッキンガム宮殿。


英国女王のエリザードが住む、説明不要の有名な宮殿だ。


しかし現在、宮殿の主であるエリザードはフランスへ出張しているため不在である。

そこで宮殿の留守を任せれているのが、三大王女の中で『人徳』を評されている第三王女、
ヴィリアンと、その護衛についている傭兵、ウィリアム=オルウェル。

そして三大王女の中で『軍事』に秀でている、第二王女のキャーリサ。
三大宗派の一つ、『騎士派』のトップである騎士団長(ナイトリーダー)の四人だった。


キャーリサは宮殿の中でも特別広い会議室の中央にある机に突っ伏していた。

342 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/01(火) 22:04:52.22 ID:+eefCC9Go


「・・・・・・・・・・・・。 おい、騎士団長」

「はっ。 いかがなさいましたか」


第二王女に名を呼ばれ、速やかに彼女の側に歩み寄る騎士団長。


「暇なの」

「・・・・・・・・・・・・」


キャーリサは軍事活動の時や戦闘時に着ているいつものボンテージのような赤いドレスではなく、
とても二十代後半の女性が着ていいものではなさそうな簡素なTシャツとミニスカという王女らしからぬ出で立ちだった。


「暇って・・・・・・、キャーリサ様。 そのセリフ、一体これで何度目ですか?」


騎士団長はもはや呆れ飽きたとでも言いたげに額に手を添えため息をつく。

343 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/01(火) 22:05:58.88 ID:+eefCC9Go


「二十九回目。 だってマジで暇過ぎて暇過ぎてお腹と背中がくっつきそーだし」

「それ腹減ってるだけじゃねえか!!! ていうかついさっき食事したばかりじゃないですか!!」

「ヴィ〜リア〜ン・・・・・・・・・・・・」

「え、えっと・・・・・・じゃあまたこの携帯ゲーム機で遊びませんか?」


『何か面白いことやって』的な視線を送ってくる次女に、妹である三女のヴィリアンは
若干パニクりながらも必死で姉の要望に答えるべく、手に持っていた『4DS』と名のつくゲーム機を差し出す。


「それ超つまんないの。 次世代中の次世代ゲーム機とか謳っておきながら目新しさはやり始めの時だけ。
 なんか目はチカチカしだすし騎士団長やウィリアムは下手糞すぎるでちっとも盛り上がらないし」

「下手で悪かったですね」

「・・・・・・この手の娯楽は、私には難しすぎます」

344 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:07:03.87 ID:+eefCC9Go


騎士団長はジトーっとキャーリサを睨み、ウィリアムはウィリアムで
木の年輪のように、丸く何重にも配置されているテーブルに腰を降ろし、
腕を組んで目を閉じている。彼も相当暇なのだろう。


とはいえ、こうして暇を持て余すという状況は、それだけ今の英国が平和であるという証拠に他ならない。
かの第三次世界大戦時、キャーリサはイギリス全軍を率いる総指揮者として第一線で戦い、
騎士団長もそれに続き、死闘を繰り広げた。


戦争終結直後こそ総指揮者としての後始末が山積みで多忙ではあったが、
今はご覧の有様。騎士団長は呆れているが、今のこの平和な一時を噛み締めるのも悪くはないだろう。

345 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:07:59.32 ID:+eefCC9Go


「あー。 姉上は?」

「リメエア様は今月と十二月に開催される英国での催し物の計画についての会議に出ていかれました。
 ・・・・・・って、これも今日説明したはずですが」

「そーだっけ。 そーいうのって普段はお前がやってるんじゃないの、ヴィリアン」


ピコピコと一人ゲーム機で遊んでいたヴィリアンはピクッと反応してゲーム機の蓋を閉じる。


「あ、ええ。 催し物についての会議は毎年私が参加していたんですが、
 なぜか今年は姉君が出ると言ってきて・・・・・・、問題は無さそうでしたので許可しました」


ちなみにイギリスで行われる有名なイベントは、十一月は『ロード・メイヤーズ・ショウ』
十二月はロンドンで行われる『トラファルガー・スクエア・クリスマス・ツリー』などがある。

346 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:09:10.05 ID:+eefCC9Go


「あの姉上が催し物の会議にね・・・・・・。 珍しい事もあるの」

「そうですね・・・・・・、今まではそういう知らない顔の方々ばかりがが集まる会議なんて
 絶対に行かなかったのに・・・・・・」


キャーリサは前髪を指でくるくると弄りながら退屈そうに息を吐いた。


しばらく沈黙が続くバッキンガム宮殿の会議室。
そこに、その沈黙を破るように口を開いたのはやはりキャーリサだった。


「・・・・・・・・・・・・。 "あいつら"、また来ないかな」

「? あいつら、と言いますと」

347 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:09:49.54 ID:+eefCC9Go


騎士団長が尋ねる。そこへ補足説明をするようにウィリアムが口を開いた。


「・・・・・・・・・・・・『天使同盟(アライアンス)』、でありますか」

「そ。 変なヤツらだったけど、あいつらがいる間は暇を感じることは無かったの」

「・・・・・・奇遇ですね」


今度はヴィリアンが言葉を放つ。


「私も・・・・・・、なぜか急にあの方達の事を思い出しました」

「お前も? ねー・・・・・・、何か私もさっきふと思い出したの。 面白かったなー」


と、キャーリサの隣にいる騎士団長が訝しげな表情に変わった。

348 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:11:22.34 ID:+eefCC9Go


「どーしたの」

「・・・・・・いえ、その。 ・・・・・・私も、」

「思い出していたのであるか」


ウィリアムが尋ねるとコクリ、と難しい表情で騎士団長は頷いた。
どうやらこの場にいる四人全員が『天使同盟』の事を思い出していたようだ。


キャーリサは悪だくみを考えてそうな顔をしながら言う。


「こーいうの、なんて言ったっけ。 シ、シンクロ・・・・・・、」

「・・・・・・シンクロニシティ、ですか?」

349 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:12:17.91 ID:+eefCC9Go


「それそれ、共時性だったか。 なーんか妙だし」

「・・・・・・個人的な意見を述べさせていただきますが、『虫の知らせ』、と言いますか・・・・・・。
 なぜか予感めいたものが脳裏をよぎりました」


予感。


どこかもやもやとした予感が四人の頭をかすめていた。
この妙な現象、実は同じロンドンの地にいる二人の魔術師にも起きているのだが、
今の四人は知る由もない。


「・・・・・・もしかして、また遊びにくるんじゃないですか?
 何だかそんな気がしないでもないんですけど・・・・・・」

「あいつらが?」

「は、はい・・・・・・」

「・・・・・・そんな事になったら、また私の気が滅入ります」


騎士団長の言葉に三人はクスクスと笑う。


しかし、そんなヴィリアンの予想は歪んだ形で現実のものとなる。

350 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:13:20.59 ID:+eefCC9Go


「失礼します。 キャーリサ様、騎士団長、ウィリアム殿はおられますでしょうか?」


会議室の出入口である巨大で荘厳な両開きの扉の向こうから、声が聞こえた。
バッキンガム宮殿に勤務するイギリス軍の兵士だ。


「いるぞ。 入ってこい」

「はっ。 失礼します」


騎士団長からの入室許可を得た兵士は、ゆっくりとドアノブを回し、会議室に入ってきた。


「?」


その兵士を見て、一瞬キャーリサの表情が変わった。
が、彼女はそのまま兵士に話しかける。

351 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:14:25.72 ID:+eefCC9Go


「どーした? まさかとは思うが、『客人』でも来たんじゃないだろーな?」

「は? いえ、客人ではないのですが、これを――――」




と、室内を囲む木製のテーブルの一部が突然、バキャッ!!!と大きな音を立てて砕け散った。
そのすぐ近くにいたヴィリアンが小さな悲鳴を上げるが、幸い彼女には怪我ひとつ無い。




「っ!!?」


キャーリサに何かを言おうとした兵士の目の前にズンッ!!と巨大な影が舞い降りた。
そしてその影は常備している巨大な"大剣"を並行に思い切り振り、その兵士の首を
斬り落としてしまう寸前のところでピタリと停止させる。

352 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:15:57.05 ID:+eefCC9Go


「ウィリアム!!?」


騎士団長が叫んだ。キャーリサは相変わらず椅子に座っていたが、その表情は
さっきまでとは比べ物にならないほど険しくなっている。


「ひ・・・・・・、ひっ・・・・・・!?」


机から跳躍し、その巨大な大剣、『アスカロン』をガタガタと震えて恐怖する兵士の首に向けたのはウィリアムだった。
彼もまた、キャーリサと同じく警戒心を最大まで高めた表情をしている。

さっきまでののんびりとした空気から一転、少し動いただけで全てが壊れてしまいそうなほど
ピリピリとした雰囲気に、ヴィリアンはどう行動すればいいのか分からずその場で固まっていた。


「・・・・・・どーしたのウィリアム。 その兵士の態度でも気に食わんかったのか?」


あくまで冷静に、いつも通りの態度でキャーリサは尋ねた。その顔はなぜかサディスティックな笑みになっている。
しかしウィリアムはわずかに首を横に振り、こんな事をした理由を告げた。

353 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:17:07.88 ID:+eefCC9Go




「・・・・・・この者、何者かの手によって『操作』されているのである」




それを聞いたヴィリアンは思わず口に手をやり、顔を青くした。
騎士団長もウィリアムの言葉を聞いた直後に気がついたらしい。その手には『フルンティング』が握られている。

そして最初から気付いていたのか、キャーリサはギシッと椅子に背もたれながら言った。


「とりあえず解放してやれ、ウィリアム。 確かにそいつは操られてるみたいだが、
 私たちに危害を加えるよーな真似をするつもりはないらしーし」

「・・・・・・承知しました」


キャーリサの命令を聞き、ウィリアムはゆっくりとアスカロンを兵士の首から離していく。
兵士は何がなんやらといった表情で、そのままへなへなと床に尻餅をついてしまった。


「あ、あの・・・・・・何か失礼を働いてしまったのでしたら、どんな処罰でも受ける次第ですが・・・・・・」

「・・・・・・いや、すまない。 私の早とちりであった」


震える声で謝罪を申し出る兵士の言葉を聞き、訝し気な表情を浮かべたウィリアムだが、
やがて兵士に背を向けてヴィリアンの元に歩いていった。

354 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:19:50.83 ID:+eefCC9Go


ヴィリアンはこの兵士が操られていると聞いて最初こそ驚愕したものの、今は首を傾げていた。
一見すると何の変哲もない、いつもこの時間帯に宮殿の周りを警備してくれている一兵士だ。


しかし今、改めてよく見てみると確かにこの兵士はいつもと様子が少し違っていた。


まず、目に光がない。
どう表現したらいいのか、いわゆる『ハイライト』と呼ばれる光がこの兵士の目には無かった。
どういう現象が起きればこんなことになるのか、この部屋はあらゆる角度に電気の光が届いているため、
普通ならこんなことは起こらないはずだ。

そして喋り方、口調は普通なのだが、目はどこを見ているのかわからないような虚ろな目をしており、
先ほどウィリアムに攻撃されかけた時も、ひどく怯えてはいたが表情は全く変わらない、フラットな表情だった。



「・・・・・・なんだこりゃ、魔術による精神操作ならこいつからその類の魔力を感じるはずなんだが、
 これは魔術じゃないし。 もっと・・・・・・、漠然とした膨大な何らかの力・・・・・・か?」

355 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:21:02.49 ID:+eefCC9Go


「私も同意見です。 こんな力は感じたことがない・・・・・・しかも巧妙に隠蔽されていますね。
 並の魔術師ならまず気付かないでしょう。 よく気付けたな、ウィリアム」

「ここで兵士の教育を任されている身である私が、このような異変に気付けぬわけがないのである。
 例え我が身に宿った聖人としての力と、魔術師としての力を失っていたとしてもな」


ヴィリアンにはよく理解出来ないが、どうやらこの兵士は魔術ではない、不可思議な力で操られているらしい
という事だけは何とか把握できた。

三人に観察されている兵士は、さっきまでの出来事がまるでなかったかのように
ただボーッと虚空を見つめ続けているだけだ。


「と、とりあえず何か話しかけてあげてはどうでしょう・・・・・・?
 この方、あなた達三人に用があっていらしたみたいですし・・・・・・」

「そーだな。 おい、聞いてるか? 私たちに何か用件があるんだろ?」


腕を組み、王女らしくふんぞり返った格好でキャーリサは兵士に尋ねた。
すると、兵士はビクン!とまるで電源を入れられた機械人形のように顔を上げ、
凍ったままの表情で三人に用件を伝える。

356 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:21:58.95 ID:+eefCC9Go


「・・・・・・・・・・・・。 はっ、つい先ほど、キャーリサ第二王女様、騎士団長、及びに
 ウィリアム=オルウェル殿にこれを渡して欲しいと頼まれましたので、参上させていただいた次第であります」


と言って、兵士は腰に巻きつけてある布のポケットからゴソゴソと何かを取り出し、
手を前に差し出した。





それは一見、どこにでも売っているような普通の白い封筒だった。




357 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:22:53.21 ID:+eefCC9Go


「・・・・・・手紙、でしょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


騎士団長の疑問にキャーリサは答えず、その封筒をとりあえず受け取った。
他の二人もそれに習い、兵士の手からそれを受け取る。

キャーリサは一通り白い封筒を調べると、封は開けずに兵士に質問する。


「・・・・・・この封筒、『つい先ほど私たちに渡して欲しい』、と言われて渡されたんだったな。
 答えろ、これを持ってきたのはどんなヤツなの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「これは命令だ、答えろ。 一体どんなヤツから受け取った封筒なの」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


英国の第二王女からの命令にも関わらず、兵士は一向に口を開こうとしない。
その後も騎士団長、ウィリアム、ヴィリアンを交えて問い詰めてみたが結果は同じだった。

358 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:24:20.60 ID:+eefCC9Go


完全に操り人形だった。いくら話しかけても、これでは壁に向かって独り言を言っているのと同義である。
キャーリサは深いため息をつき、頭をポリポリと掻きながら兵士に告げる。


「・・・・・・わかった。 確かに封筒は受け取ったの。 お前はもう下がれ」

「了解しました」




途端、糸の切れた操り人形のように兵士は力なくその場に倒れこんでしまった。




「っ! だ、大丈夫ですか・・・・・・!?」


ヴィリアンが慌てて兵士のもとに駆け寄る。まさか、用が済んだからと言って
この兵士を操っている何者かが彼を殺してしまったのでは・・・・・・?と嫌な想像をしてしまう。

359 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:25:18.01 ID:+eefCC9Go


しかし、


「・・・・・・・・・・・・あ、あれ。 寝て、る・・・・・・?」


兵士から聞こえてきたのは、すーすーと言う安らかな寝息だった。
とりあえず脈を調べて生きている事を確認すると、ヴィリアンは静かに安堵する。


「・・・・・・不気味ですね。 こんな手の込んだ事をして、何のつもりなんでしょう」


騎士団長は目を細めてその手にある白い封筒を見つめる。
見た目はどう見ても普通の封筒なのだが、どこか異様な雰囲気を醸し出している気がしないでもない。


ともあれ、まずはこの封筒の中身を調べないことには話が進まない。
三人は普通の方法では開封出来ないと理解し簡単に調べ、封をしている虹色に輝く正方形のシールに
指を触れることで開封することが出来た。

そして各々は閉口したまま、黙々と中の手紙を読んでいく。

360 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:26:13.35 ID:+eefCC9Go


「・・・・・・・・・・・・あ、あの、差し支えなければ手紙の内容を教えていただけませんか?」


四人のうち、唯一封筒を受け取っていないヴィリアンがオドオドしながら尋ねてきた。
手紙の内容が気になるのも無理はない。彼女もまた、英国三大王女の一人なのだ。
こんな無茶苦茶な方法で郵送されてきた手紙で、もし母国が危機に陥るような事態に発展でもしたら堪らない。


「・・・・・・。 操作されていたこの兵士は無事のようです。
 こんな方法で手紙を送ることになった事と、イギリス軍の兵士を玩具のように扱ってしまった事に
 ついての謝罪文が最初に書かれています」


ヴィリアンにそう答えたのはウィリアムだ。相変わらず硬い表情で手紙を読み続けている。
彼の言葉を聞いてヴィリアンはとりあえずほっと息を吐く。

一方の騎士団長は、ウィリアムとは違いひどく困惑しているような表情を浮かべていた。


「・・・・・・なんということだ。 とてもじゃないが信じられん、これはもはや
 『十字教の終わり』などというレベルの問題ではない・・・・・・!!
 この手紙の送り主の名がここに書いていなければ鼻で笑って捨てているところだぞ・・・・・・」

361 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:27:23.99 ID:+eefCC9Go


ということは、封筒には記載されていなかった送り主の名は手紙に書いてあるということだろう。
しかしその名を見ても、騎士団長は手紙の内容について半信半疑のようだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに、普通に考えれば悪戯程度にしか思えんが、
 例え冗談でもこの手紙の内容は悪戯で済むレベルじゃなくなってるの」


そしてキャーリサですら、手紙の内容を見て頬に一筋の冷や汗を流していた。
手紙を摘む指先に無意識に力が入り、紙には皺が出来ている。

そんな三人の様子を見て、ヴィリアンは手紙の内容を知るのが少し怖くなってしまった。


騎士団長がキャーリサに尋ねる。


「・・・・・・キャーリサ様。 この手紙、信じるに値するものでしょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


その問いにしばらく無言だったが、やがてキャーリサは口を重々しく開いて言った。


「・・・・・・『ブリテン・ザ・ハロウィン』や第三次世界大戦が"おままごと"のよーに思えてくるな。
 本当にこの手紙の通りになれば、魔術サイドはある意味『崩壊』の道を辿ることになりかねないし」

「同意見です」


彼女の言葉に、ウィリアムも首を縦に振る。

362 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:29:30.08 ID:+eefCC9Go


続けて騎士団長が手紙に視線を向けたまま質疑する。


「"これ"が事実になるのなら魔術サイドに膨大な影響が及ぶことは確かに想像に難くないですが、
 それでもこの手紙を鵜呑みにしていいとは私には思えません」

「そんな事はわかってるの。 でもこれが本当に起きるのなら、
 私もさすがに黙ってはいられないな」


そう言って、キャーリサは手紙をぐしゃぐしゃに丸めてしまった。
手紙を完全に破棄する意志を送ることで、この手紙は塵となって消える、と手紙に書いてあったからだ。

実際、キャーリサが丸めた手紙は役目を終えたかのようにふわりと宙に浮き、幻のように消え去ってしまった。


「まったく・・・・・・。 さっきまで暇だ暇だと喚いてた自分が笑えてくるの」

「・・・・・・どうされるおつもりですか」

363 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:31:10.27 ID:+eefCC9Go


騎士団長も彼女に習い、手紙をバラバラに破る。その紙片は雪のように溶けて消えていった。
ウィリアムもヴィリアンに手紙を読ませた後、同じように手紙を消した。
手紙の内容を把握したヴィリアンの顔色はとても優れているとは言いがたいものとなっている。


「ヴィリアン、この手紙のことは他言無用を貫け。 いいな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、は、はい」


一瞬悩むような仕草を見せたヴィリアンだが、キャーリサの言葉に頷いた。
他言無用、恐らくキャーリサはこの事を第一王女のリメエアや英国女王のエリザードには話さないつもりなのだろう。


「しかし、エリザード様にすら報告しないというのは如何なものかと・・・・・・。
 そもそもこの手紙の内容が事実だとして、我々が取れる行動があるのでしょうか?」

「あるの。 まぁこれはもうある種の賭けになるけどな」

「では・・・・・・、」

「ああ。 乗ってやる、この祭りに」

364 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:32:26.96 ID:+eefCC9Go


はぁ、と騎士団長は首を横に振りながらため息をついた。
キャーリサが最初からこう答える事を分かっていたのだろう。彼は引き止めることはしなかった。


「姉君・・・・・・」

「ヴィリアン、母上にはテキトーに言ってごまかしといて♪」


ど、どうやって・・・・・・とあたふたするヴィリアンを無視して、キャーリサはウィリアムの方を向く。


「お前はどーするの。 私個人から言わせてもらうと、お前は来ないほうがいーと思うがな」

「・・・・・・それは、私が聖人としての力も、魔術師としての力も失い、
 戦力にならないから、でございましょうか?」

「いやいや、そーいう意味じゃないし。 聖人としての力が無かろーが魔術師としての力が無かろーが
 今のお前の戦力は十分イギリス軍の中でもじゅーぶん抜きん出てるの」

365 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:33:37.83 ID:+eefCC9Go


キャーリサは不安気に自分とウィリアムの顔を交互に見るヴィリアンに一瞬だけ目を向け、


「ただ、下手をすれば二度と英国の地を踏めなくなるかもしれん。 それだけの事だし」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


これから彼女たちが向かわんとする場所は、そういう危険が生まれる可能性があるところなのだ。
そこへ向かい、もしウィリアムの身に万が一のことがあれば、彼は二度とヴィリアンには会えなくなってしまう。


「ウィリアム・・・・・・」


今にも泣きそうな顔で見つめてくるヴィリアン。

無理もない。ついさっきまで一国の王女が暇を持て余すくらい平和な時間が流れていたのに、
例の封筒が届いたとたんこの展開だ。ヴィリアンは一瞬、封筒の送り主を恨んでしまいそうになったが
短い間とはいえ一緒に過ごした『彼ら』の事を想うと、とてもそんな気持ちにはなれなかった。

366 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:34:53.11 ID:+eefCC9Go


「ヴィリアン様」


心のなかのもやもやした気分をどう消化すればいいのか分からないでいるヴィリアンに、
ウィリアムは優しく声をかけた。


「ヴィリアン様、心配には及びません。 私は未来永劫、貴女の側に仕えると心に決めております。
 事が済んだら、必ず貴女の元へ帰る事をここに誓わせていただきたい」

「・・・・・・・・・・・・、」


ヴィリアンは何かを言いかけたが、こうなったら意地でも自分の決意を曲げないウィリアムの事を
誰よりも理解している彼女は半ば諦めたように、しかし彼の言葉に安心したかのように笑みを浮かべ、


「・・・・・・約束、ですよ?」


なるほど、国民から『人徳』を評価されているのも納得のあどけない笑顔を見せてそう言った。

367 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:36:29.66 ID:+eefCC9Go


「さて、それじゃ善は急げだ。 騎士団長、辞退するなら今のうちなの」

「嫌だと言っても引っ張って連れてく気でしょう、あなたは」


そう言う騎士団長は、しかしどこか覚悟を決めたような勇ましい顔つきになっていた。


「軍隊を動かしますか? 動かすならそれなりの理由を考えなければなりませんが」

「必要ないの。 わざわざ死体の山を作りにいくようなものだし。
 ただちょっとお前にはやってほしいことがある」

「?」

「移動要塞型霊装『グラストンベリ』と『グリフォン=スカイ』、
 用意できるだけ用意してこい。 ほら、駆け足駆け足!」


マジかよ・・・・・・と呟く騎士団長などお構いなしで手をパンパンと叩き催促するキャーリサ。
言われた通り騎士団長は駆け足で会議室から出て行った。

368 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:37:56.28 ID:+eefCC9Go


「しかし理由もなく霊装や要塞を使用すれば、さすがに各国から抗議が殺到するのでは?」


至極真っ当な意見を述べたのはウィリアムだ。
彼はアスカロンの調子を確かめるようにその刃を指先でなぞる。


「私はイギリス軍の総指揮者だぞ? 武装の使用許可なんて私があとからいくらでも捏ち上げるの。
 軍力の全使用権限はこーいう時に使わないとな」


それ完全に職権濫用罪じゃ・・・・・・、とヴィリアンは誰にも聞こえないようツッコミを入れる。
しかしこうなってしまったキャーリサを止められる者など今この場には存在しない。
ストッパーである英国女王エリザードは運良く――運悪く?――不在なのだ。


しかし、そうまでしても彼女が『死地』へ赴く理由は二つある。

369 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:39:18.07 ID:+eefCC9Go


「手紙の内容通りの事が起きるというなら、私も一国の王女として止めないわけにはいかないし。
 下手すりゃ世界全域に影響が及ぶ事態を指を咥えて待ってられる性分じゃないの」


この事態が『死地』のみで収められる事態ならキャーリサはわざわざ自分から動くことは無かっただろう。
だがこれはもう、その『死地』だけに収まる規模ではないと彼女は確信していた。

ウィリアムはフッと笑い、キャーリサに確認するように尋ねる。


「・・・・・・それだけが理由じゃないでしょう?」


それを聞いてキャーリサは悪戯っ子のような笑みを浮かべて言った。

370 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:40:18.72 ID:+eefCC9Go


「あぁ。 "ウサギ"のヤツにも久々に会ってみたいし。 ある意味ベストタイミングなの」

「この件に関わっている人物は、どれもこれも問題がありすぎる。
 貴女とは理由が多少違いますが、それなら私も放ってはおけませんからね」


そして最後にヴィリアンも決心をつけたのか、三人の帰還を祈りながら言った。


「・・・・・・母上への言い訳、しっかり考えておきます」

「よろしく。 頼りにしてるの、可愛い可愛い私の妹」


ちょっと着替えてくる、とキャーリサも会議室から出て行った。
ヴィリアンとウィリアムは倒れている兵士を介抱し、部屋へ連れて行く。





ごく近い将来、『死地』になるであろうその場所に、役者はどんどん集まっていく。


茶菓子の用意を忘れるな。


間もなく始まる『お茶会』は、豪華で愉快なものになりそうだ。




371 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/01(火) 22:46:08.92 ID:+eefCC9Go

今回はここまでです。なんだか前回とはうってかわって投下量が多めになりました。


久々に王女達を書けて楽しかったなと思いました。
今回の話を書きためたのは確か一月下旬ぐらいでしたか・・・・・・時が過ぎるのは早いなぁ


さて、次回もまた、カメラは別のキャラクター別の舞台へ方向を変えます。
次はどんな『あの人は今?』が展開されていくのでしょうか。

読者様に楽しんでもらえるよう、私も精一杯頑張ります。

次回更新は三日以内。

では、今回もここまでお付き合いいただきありがとうございました!失礼します。
372 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 22:46:59.72 ID:+eefCC9Go



                          【次回予告】



『そんな大声で喚いたら周りに迷惑なんだよ、とうま』
―――――――――――禁書目録を司るイギリス清教のシスター・インデックス




『誰のせいで喚いてると思ってんだ!!? お前だよお前!! そこのシスターさん!!
 あなたのせいで四〇〇人もいた福沢諭吉センセイは数日で絶滅しちまったんですよ!!』
―――――――――――学園都市の無能力(レベル0)の学生・上条当麻



373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 22:49:50.17 ID:T5Te23kBo
>>1
インデックス何をしたんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 22:54:01.23 ID:uqlxTWw80

もうインデックスは大食い選手権にでて、テレビ界に出演
美人大食いシスターとしてやっていくのが皆にとって幸福なんじゃないかな
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:00:06.87 ID:YasUCBTfo
400諭吉が数日…だと…
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:04:45.33 ID:nhUu/YSu0
20XX年 暴食シスターによって輸吉の加護終了
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:21:03.92 ID:AT7ng80L0
超乙。
もうインデックスは、ロシアの永遠に続く雪景色を、かき氷って言って好きなだけ食べさしとけ。
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:23:36.05 ID:nhUu/YSu0
>>377
下手すりゃ本当に食いつくしかねない
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:27:28.47 ID:h1bpiHH/0
ところで、ウィリアムが失ったのは「神の右席」としての力と聖人としての力であって、
普通にルーンとかを使う能力は残っていた気がするんだけど?
380 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 23:34:01.32 ID:+eefCC9Go
>>379
ここのSSでのウィリアムは『魔術師としての力も失った』と言っていますが、
これはもうマジでショボい魔術しか(しかもそれすら満足に)使えない状態を指しています。


描写不足でした、大変申し訳ありませんでした。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:38:16.67 ID:5Z1cUqnSO
こう、ラスボス戦前に自然にかつての仲間が集まる的な王道展開はwwktkが止まらないな!!
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/01(火) 23:39:19.45 ID:5VvL2FXn0
……いや待て、なそれ以前になんで上条さんが400諭吉も持ってるんだ。
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:48:47.55 ID:VdRZLzFAO
並みの魔術師程度の力は有る
アスカロン振り回す力はもう無い

だった気がする
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:56:42.03 ID:yPfYNfd/o
魔術で身体能力にブースト掛けてると考えれば何も問題は無いな
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/01(火) 23:57:14.55 ID:yPfYNfd/o
忘れてた
386 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/01(火) 23:58:59.92 ID:+eefCC9Go
>>383
アスカロンに関しては確かにミーシャのテレズマを取り込んだ際は持ち上げることすら叶わなかったです。

しかしその後、彼は宮殿で軍の兵士達を指導する立場になり、
自身の肉体も鍛えまくり、数日でアスカロン程度(200キロ)なら振り回せるようになった!

これで決まりだ。(CV.立木 文彦)


・・・・・・アスカロンだけは見逃していただけたらありがたいのですが・・・・・・!ごめんなさい。
これで大暴れする描写があるので・・・・・・
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:04:37.96 ID:fWGPZLUm0
>>382
一方通行が束で渡してた
読み返せば分かる
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:26:10.86 ID:anAmWY0Qo
400諭吉でもやし生活だったら何年生きれるんだろうか…
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:32:03.63 ID:690M52eeo
400諭吉絶滅…だと……
BOSEのホームシアターシステムを一式そろえてもそこまでいかないぞ…

このSSの騎士団長はツッコミっぷりがかっこいいので
登場するとうれしい

乙です!
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:42:29.29 ID:I247hAq00
>>386
なんだ鍛えたのか。
筋肉ならしょうがない
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:47:59.08 ID:RmyTiB5AO
そうだな。鍛えたんじゃしょうがないよな。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:53:22.87 ID:w3knsWzU0
別にそこまで鍛えなくても、一般兵レベルに「身体能力を20倍にする」鎧が支給される英国
なら何とかしてくれると思うけどな。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 00:53:59.66 ID:j92zqlWDO
キャーリサ様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/02(水) 01:04:12.07 ID:V+Y2+yfg0
>>387
そんなわけで読み返してきたんだが

>禁書目録「こ、これだけあれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二日は食べていける計算・・・・・・」

こいつまさか有言実行しやがった……!?
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 02:52:24.07 ID:ayNhZcVh0
もうインスマスさんは土食ってればいいよ

祭りって何が起きるんだろーなーwwktk
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 05:57:18.43 ID:2Ez2xeuIO
同じようなサイズの大剣を生身で振り回してる、大砲仕込んだ義手の狂戦士がいるからありえない話ではないのである
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 10:28:34.85 ID:RmyTiB5AO
ガッちゃんと一緒にするなである
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 12:56:44.61 ID:iLOEV3NDO
聖なる胃袋…相手の財源に合わせて確実に食らい尽くすインモラルさんの切り札

コマンド→たべる

しばらくおまちください乙
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 16:37:36.92 ID:eG7TcaM7o
アックアさんとヴィリアンはもうくっつけちゃっていいと思うの
レイプ目兵士ちゃんは貰っていきますね
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 18:59:53.49 ID:nlV0iyrR0
>>397
アラレちゃんか懐かしいな
このスレでその名がでてくるとは思わなかった
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 19:16:04.48 ID:tnQrSaqE0
そろそろ一通さんはガブリエルにデレても良い頃だとおもうんだ
具体的にはガブリエルが危害を加えられそうになった時に庇うとか
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 19:22:57.22 ID:nlV0iyrR0
>>401
あれに危害を加えられるのってエイワスぐらいだろ
後は同じ大天使の三柱とか
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:26:55.99 ID:vPxrj17IO
>>396
ガッツさんはヤバイ
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:49:44.18 ID:nlV0iyrR0
>>399
>レイプ目兵士ちゃん

誰だっけ?
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 21:52:53.41 ID:TrVKh3ROo
手紙持ってきた人
406 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 22:44:25.68 ID:KFa0IyOzo
こんばんわ〜、今日も投下していきます。

ウィリアムの件ではお騒がせしました、まだまだ私は未熟だと痛感しました・・・・・・
しかし、それでもめげずに頑張っていきたいと思います。指摘してくださった読者様、改めてありがとうございます。

そしていつも支援してくださる読者様にも同じように感謝いたします。


さて、今回はあのキャラにカメラが向かうわけですが・・・・・・果たして何が起きるのやら。


それでは、行きます!
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:45:16.14 ID:nlV0iyrR0
キターーーーーーーーーーーーー!!!
408 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 22:45:49.83 ID:KFa0IyOzo


――――――――――――――――――――――


科学の頂点と言っても過言ではない街、学園都市。


その第七学区では一人の不幸な少年と、この街に似合わない白い修道服を来た少女が
買い物袋をぶらぶらと下げて帰路についていた。


「ふっふふん、ふっふふん、ふっふっふ〜ん♪」


白い修道服を来た銀髪のシスター。その頭に十万三〇〇〇冊もの魔道書を収めた
通称『魔道書図書館』と呼ばれる少女、インデックスはすこぶるご機嫌な様子で歩道を歩いていた。


「今日は久しぶりのお鍋なんだよ! 楽しみだな〜」

「い、インデックスさん・・・・・・。 楽しみにするのはいいけどウチの家計は今現在、
 この十一月の空より寒いことになってるからね? しばらくは食パンの耳だけの
 生活になると思うけど我慢してね?」

409 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 22:46:54.95 ID:KFa0IyOzo


財布の中身を見ながら、そもそも中身がないことを再確認し、がっくりと項垂れるツンツン頭の少年は上条当麻。

彼は学園都市公認の無能力者(レベル0)であるが、その右手には『幻想殺し(イマジンブレイカー)』と呼ばれる
異能の力なら何でも打ち消せる不思議な力を宿している。


インデックスの――何時もの――我儘に付き合わされ、今日の上条家の食卓はなんとフグ鍋。
一般家庭でもなかなかお目にかかれない豪華な料理だ。


上条当麻は別に裕福な家庭に生まれてきたわけではない。そもそも彼は学生寮で生活している高校生であり、
その生活資金は両親から毎月送られるお金で得ているのだ。

なぜそんな一般高校生がフグ鍋――しかも超最高級品、と広告があった代物――などという贅沢なものを
用意出来るのかというと――――。


「・・・・・・ちくしょう。 ここ数日間の俺の食生活はセレブそのものだったんだ。
 あいつが、いや『あの御方』が恵んでくださった大量の諭吉様のおかげで
 テレビとかでしか見たことない料理をたらふく食える生活を送っていたんだ・・・・・・」

410 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 22:48:10.89 ID:KFa0IyOzo


十一月某日。上条当麻が学校から寮に帰宅すると、そこにはいつもの同居人、インデックスと
もう一人、意外すぎるほど意外な人物が来訪、いや"降臨しておられた"。



学園都市最強の超能力者(レベル5)、第一位の一方通行(アクセラレータ)だ。



彼が帰宅した後に上条当麻はインデックスから話を聞いたのだが、『本当に遊びに来てくれただけなんだよ』の
一点張りであんまり詳細を話してはこなかった。

ただ彼女の表情を見ると、本当に楽しくお喋りをしてたんだろうなということは分かった。
二人にどういう接点があるのかは知らないが。

411 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 22:49:20.34 ID:KFa0IyOzo


そしてここからが重要。一方通行は上条宅にある食材を全て使ってインデックスに料理を振舞っていたのだが、
その食材代だとか言って上条に約四〇〇万円ほどの『端金』を渡し、帰ってしまったのだ。

四〇〇万。一般人にとっても十分大金なのだが、上条当麻にとっては本気で天からの贈り物としか思えない金額だった。
事実、上条はその時の一方通行が『天使』にしか見えなかったし、それはそれであながち間違いというわけでもない、のか?


四〇〇万の札束を神棚のように装飾し、インデックスと二人で手を繋いで小躍りした記憶が今となっては微笑ましい。


「・・・・・・そう、微笑ましかったんだけどさ」


しかし、


「なぁぁぁぁんでその四〇〇万円もの大金があって上条さんの家計が氷河期に突入しちゃうんですかぁ!!?
 しかも数日! たった数日で預金残高ゼロ!! あり得ねえだろ手品かよ!!? いや、理由は分かってる!!
 こんなことになったのも全部全部何もかもお前のせいなんだよインデックスぅぅぅぅ!!!」

「?」

「不幸だぁーっ!!!」


第七学区の中心で、少年は不幸を嘆いた。

412 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:51:46.98 ID:KFa0IyOzo


「そんな大声で喚いたら周りに迷惑なんだよ、とうま」

「誰のせいで喚いてると思ってんだ!!? お前だよお前!! そこのシスターさん!!
 あなたのせいで四〇〇人もいた福沢諭吉センセイは数日で絶滅しちまったんですよ!!
 そりゃ俺もこの数日間のセレブ生活を満喫して浮かれてたのは認めるけどさ・・・・・・、
 総合的に考えたらやっぱ一番の原因はお前の食費なんだよ!!」


一方通行大統領から寄付していただいた四〇〇万円は、彼の言う通り数日で預金残高から
姿を消してしまっていた。

原因も概ね彼の言う通り。金=食の錬金術に必要な素材というプロセスをその十万なんたら冊の本が
ぶち込まれている脳に組み込んでいるインデックスは、まさに七つの大罪、『暴食』を擬人化したような女になっていた。


しかし反面、上条当麻にも非はある。


彼も彼で学園都市の第四学区で世界各国のあらゆる高級料理を堪能し、第十五学区にある高校生じゃまず入れないであろう
十つ星級のフルコースに舌つづみを打ち、一ヶ月ほど前にテロ組織による占拠事件が発生した第三学区の
高級サロンを一室借りちゃったりと、もうやりたい放題もいいとこだった。

413 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:53:04.19 ID:KFa0IyOzo


貧乏人が急に大金を手に入れると金遣いが荒くなるという話は耳にしたことがあるかもしれないが、
上条とインデックスはそれを地で実行してしまったのだ。

結果、ものの数日で上条当麻の預金残高はどの角度から見ても、どの可能性を考慮してもゼロと表示されていた。


「あれは夢だったのか・・・・・・、あの数日間は所詮桃源郷でしかなかったのか・・・・・・。
 いやまぁ俺も調子に乗って個室サロンとか借りたりしてたからあんまり強くは言えないけど・・・・・・、
 それでもお前の食費の削りっぷりに関してだけは物申したいっ!!」

「夢なんかじゃないんだよ! 今日だってフグ鍋だし、とうまはちょっと贅沢言い過ぎかも」


もはや反論する気にもなれなかった。贅沢だと?どの口がそんな事を言うのだろうか。

・・・・・・と言っても上条も自分で言っている通り、あまり強くは言えないのだ。
止めようと思えば止められたはずのインデックスの暴走を、浮かれまくっていた自分は
あえて止めなかったのだから。

上条は自分の心に深く、深く反省の言葉を刻む。たかが高校生があんな大金を急に手にしたら
こうなってしまうのだ。一方通行はただの高校生ではないので除外。

414 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:53:55.82 ID:KFa0IyOzo



お金って、怖い。



「とうま、とうま」

「・・・・・・ん」


インデックスは横断歩道の前でくるんと振り返り、満面の笑みで言った。


「でも私は、とうまと一緒にご飯が食べられるなら食パンの耳だけの生活になっても
 全然平気なんだよ! とうまが一緒に居てくれたら、どんなご飯でも美味しいかも!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


反則だろう、と上条は思った。

415 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:54:46.76 ID:KFa0IyOzo


そんな天使のような笑顔を振りまかれては、言いたいことも言えなくなってしまう。
この笑顔はさすがに『幻想殺し(イマジンブレイカー)』でも打ち消せない。『幻想殺し殺し(イマジンブレイクブレイカー)』である。


上条はそんな掟破りのインデックスを見て今までの嘆きを払拭し、
はぁーっ、と大きなため息をついて、自分もニコリと笑ってみせた。


「・・・・・・そうだな。 俺もお前と食えるメシならなんでも美味いよ」

「うん!」


二人は横断歩道が青に変わると、手を握り合って渡っていった。


上条当麻はロシアでの第三次世界大戦の時に奇跡的に生還し、インデックスの元へ帰ってきた。
いや、あれは言うなれば二度目の『死』と言っていいかもしれない。北極海に落ちてからの出来事を今ここで語る気はないが、
あんな事があった上で、上条当麻はインデックスの元へちゃんと帰ってきたのだ。


もう、手放さない。


上条はインデックスの元に帰って、そう硬く決意した。
二度と彼女を危険な目に遭わせないためにも、その右手をギュッと握りしめて。

416 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:56:15.33 ID:KFa0IyOzo


上条当麻とインデックスは結局、学生寮に着くまで握った手を離さなかった。
帰る途中、偶然出会った青髪ピアスにひゅーひゅーと茶化されたりしたが、もう慣れっこだ。


「さて。 最後のセレブ生活を締めくくるために、フグ鍋を堪能しますか!」

「わーいわーい! たらふく食い散らかしてやるんだよ!」


食い散らかすのは勘弁して〜、と上条当麻は苦笑いしながら部屋の鍵を取り出す。


と、

417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 22:56:43.68 ID:nlV0iyrR0
何だろう、何か泣けてきた
418 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:56:58.47 ID:KFa0IyOzo





「失礼」





ふと、寮のエレベーターがある方向から声が聞こえた。

最初、上条は空耳かと思った。エレベーターの方を向いてその声の主を確認するまでは。
なぜなら、その声は人の声にしてはあまりにも美しく、透き通っていたから。


「?」


二人は同時にキョトンとした表情を顔に貼り付ける。
突然声をかけられ、上条の手には取り出されたままの鍵がプラプラと揺れていた。

419 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 22:58:30.25 ID:KFa0IyOzo


「いや、申し訳ないね。 今から食事だったかな? タイミングが悪かったか」

「え? あぁ、いや・・・・・・」


上条はその声に最初は耳を疑ったが、次は目を奪われた。
別にその人物が特別美しかったわけではない。美しかったもなにも、突然話しかけてきたその人物は、






全身を真っ白なローブで包んでおり、顔はおろか肉体の一部も見えない容姿だったのだから。




420 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:00:28.14 ID:KFa0IyOzo


「え、と・・・・・・。 俺たちに何か用か?」


とりあえず上条は差し当たりのないように話しかける。
白のローブは――男か女か、見た目でも声でもなぜか分からないのでこう表現する他ない――見た目は
完全に怪しさ全開だったが、上条は数ある事情でこういった出で立ちの人物には慣れている。

インデックスの方を見ても、相変わらずキョトンとしているだけで別に警戒まではしていないようだ。
そしてその身に『完全記憶能力』を宿している彼女がこんなリアクションなのだから、知り合いとかではないのだろう。
もっとも顔も何も見えない容姿では完全記憶能力があっても知り合いかどうか分からないかもしれないが。


無論、上条当麻の知り合いにもこんな人物は存在しない。


「確かに用件があって来たわけだが・・・・・・、上条当麻。 君にではなく、
 その隣の・・・・・・禁書目録。 彼女に少し用があってね」

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:00:37.54 ID:nlV0iyrR0
?





!?
422 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:01:30.90 ID:KFa0IyOzo


「私?」


名前を呼ばれ、ますます彼女の頭の『?』が増えていく。

そもそもなぜこの白のローブは自分たちの名前を知っているのか。
いや、この者が魔術サイドに位置する者なら無理はないかもしれない。
上条当麻とインデックスは、魔術サイドであるならある程度名が知れ渡っているからだ。

特にインデックスは、その名を知らない魔術師などいないと言っていいだろう。


「ああ。 一応断っておくが、禁書目録の頭脳に眠る魔導書が目当てで訪れたわけではない。
 まずはそこを理解し、納得してもらいたい」


上条は今更その可能性に気付き警戒するが、どうやら本当に十万三〇〇〇冊の魔導書が狙いではないらしい。


「今の言葉は嘘ではない。 なんなら今すぐここで確認してみるといい。
 私は『イギリス清教』に所属する魔術師だ」

「い、イギリス清教・・・・・・?」


イギリス清教と言えば、隣にいるインデックスはもちろん、その他大勢の魔術師が所属する大規模組織だ。
上条当麻もこの魔術組織とは色々と関わってきている。

423 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:03:32.83 ID:KFa0IyOzo


「私もイギリス清教所属の魔術師なんだよ。 でもあなたのことは知らないかも・・・・・・」

「無理もない、私はごく最近に所属が決定した未熟な魔術師だからね。
 禁書目録、あなたとは比べるのもおこがましい下っ端だよ、私は」


人は、相手の言葉からある程度の真偽を考察することができるが、この白いローブを纏った者からは
『真実味』も『嘘臭さ』も伝わってこなかった。
真実でもあり、嘘でもある。そんな矛盾が、この者の言葉には含まれている気がした。


「お名前を聞いてもいい? 同じ仲間なら仲良くしたいから知っておきたいんだよ」


ニコッと無垢な笑みで名前を尋ねるインデックス。イギリス清教に新たな仲間が加わった事を
素直に喜んでいるのだろう。

ローブの人物は名を尋ねられ、少しの間無言だったが、

424 :インデックスは魔術師じゃなくてシスターだ・・・・・・、失礼しました。  ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:04:41.37 ID:KFa0IyOzo


「・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・クイト」


二人に聞こえないような声で何か呟いていた。

そしてローブの人物は改めて二人に名乗る。




「私はイギリス清教に所属する魔術師、名はクイトだ。
 魔法名は『fibber800』。 よろしく、禁書目録、上条当麻」




そう言って、クイトは手を差し伸ばしてきた。握手の意だ。
その手にはこれまた見事なほどに真っ白な手袋が着けてあった。

425 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:06:01.43 ID:KFa0IyOzo


「よろしくなんだよ、クイト!」


インデックスは警戒心ゼロの笑顔で小さな手を出し、クイトと握手を交わす。


「よ、よろしくな。 俺は上条・・・・・・って、あんたにゃ自己紹介は必要ないみたいだな」

「よろしく頼むよ、『幻想殺し』」


上条も手を出し、クイトと握手を交わす。

念のため、最後の警戒として上条は"右手"で握手をしたのだが、何も起こらなかった。


「ふ、警戒しているな。 いや、すまない。 無理もないが・・・・・・」

「あっ、いや・・・・・・ご、ごめんな!! そういう性分っつーか・・・・・・あはは」

426 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:07:05.57 ID:KFa0IyOzo


「構わないよ。 彼女を守るためだものな」


心の奥の奥、そのまた奥すら覗いているようなクイトの発言に少し背筋がゾッとする。
声質は穏やかなのだが、クイトは今まで出会った中でも飛び抜けて異質な魔術師だと上条は思った。


「とりあえずこんなところで立ち話もあれだし、クイトも一緒にフグ鍋食べるんだよ!」

「うん? いや、私は何もそこまで世話になるつもりは・・・・・・」

「遠慮しないでほしいんだよ! いいでしょ、とうま?」

427 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/02(水) 23:07:52.92 ID:KFa0IyOzo


「ん? ああ、構わないぞ。 今日は、ていうか今日も奮発して買い物したからな。
 量だけはあるんだ。 つっても、そんな豪華なメシも今日で最後だけど・・・・・・」


何か逃れようのない現実を思い出したのか、上条は若干ションボリしながら
手に持っていた鍵で扉を開ける。


「ほら、いこっ!」

「何だか申し訳ないな。 そんなつもりじゃなかったんだが」

「いいっていいって。 ほら、入れよ」

「すまない。 ではお言葉に甘えさせてもらおう。 ・・・・・・・・・・・・ふふ」


こうして、奇妙な魔術師クイトを混じえた上条宅の最後の――豪勢な――食卓が始まった。

428 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 23:16:42.36 ID:KFa0IyOzo

Q. オリキャラ出すなら注意書きしとけよカス

A. オリキャラじゃないですのでご安心を・・・・・・、既存のキャラです。偽名を使っています。


さてさて、いかがだったでしょうか?
上条当麻とインデックスは幸せに過ごしていましたが、なにやら雲行きが怪しくなってきましたね。
謎の魔術師、クイトの目的とは・・・・・・?

みたいな感じで投下を終わります。

さて、忙しい事に次回はまたカメラが別の舞台を映します。今度は誰が・・・・・・って、もうお分かりですかね。

次回更新は三日以内。

今日もここまで読んでくださった読者様、フグ鍋奢ってください・・・・・・。

では、ありがとうございました!
429 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/02(水) 23:17:23.62 ID:KFa0IyOzo



                          【次回予告】



『む? ありゃ、貴方はステイル=マグヌスじゃあねぇですか。 お久しぶりですね』
―――――――――――元『ローマ正教』のシスター・アニェーゼ=サンクティス




『よろしければステイルさんも食事を摂られてはいかがでございましょう?』
―――――――――――元『ローマ正教』のシスター・オルソラ=アクィナス




『・・・・・・何の冗談ですか、それは』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師・神裂火織




『冗談でもシャレでも何でもない、これからごく近い未来に起きるであろう事・・・・・・らしいよ』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会』の魔術師・ステイル=マグヌス



430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:20:47.70 ID:yLZw5uSk0

fibber(うそつき)の魔法名(偽名)を関する既存の登場人物?
だれだかさっぱりわからないなー(棒)
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:26:12.85 ID:xBKMn+5AO
乙!
「最後の」が豪勢な、にかかるのか、食卓にかかるのかが心配でしょうがない……、しかし上インもゆる
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:43:20.76 ID:VWAFY4d4o
クソッ、上条さんもインデックスも可愛いなぁ…話もじっくり動いていて先が気になる
次回も楽しみにしてます
乙!
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:46:58.08 ID:I247hAq00
いったい、既存のキャラの誰が偽名を使うなんていうことをしでかすんだ?
全く予想がつかないな。
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/02(水) 23:56:05.97 ID:e1LU6G1r0
嘘八百とはまた中途半端にジャパニーズだが

つーかインデックスさん英語圏の人なんだから気が付けよww
ざっと調べたけどフィヴァーって読むラテン単語無いっぽいぞww
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 00:00:59.26 ID:n7wtz/+JP

フィーバー(祭)とかけてるんだろうかwwww
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 00:52:17.66 ID:W0qq5sb80
誰かまったく分からねえ
難問すぎワロタwwwwwwww
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/03(木) 01:13:27.21 ID:j+6hPdJu0
ちょっとエイワスにクイトの正体聞いてくるわ。
あいつ何でも知ってるし。教えてくれるかは別だけど。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 08:39:58.09 ID:eNAJ7mDAO
錬金術師かな?
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 10:45:46.04 ID:foNyK3sIO
>>438
ニーサンは関係ないだろ
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 11:30:18.54 ID:f3rSfm4to
>>438
あんなへタレに何が出来るのだ。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 13:27:11.86 ID:vcrxkei00
クイトっていうと元ネタはquite(副詞;完全に(completely))かな。発音はkwaitだけど。

"完全"な既存キャラ……小萌先生あたりか?
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 13:56:30.99 ID:eJfpuvA+o
えっ
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 15:22:02.31 ID:An01++vAO
QUITだろ。
つまりこいつは「I quit(もうやめた)!」と言っているんだよ!!
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 18:04:52.26 ID:I/9NFS0Ko
さすがAU
445 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:32:32.28 ID:1n05JhUQo
こんばんわ〜、今日も投下していきます。

連日投下が続きますが、どこまでいけるかな・・・・・・今、何日連続で投下してるんだっけ・・・・・・
こんな事が出来るのはもちろん、みなさんの支援があるからこそです、ありがとうございます!


>>434
細けぇ事ぁいいんだよ!の精神でお願いします!すみません・・・・・・


と、まぁこんな感じで謎の魔術師、クイトについて憶測が飛び交ってるのですが・・・・・・
どうせ正体わかってんだろちくしょうwwww
『クイト』の元ネタまで分かった貴方は素晴らしいです。


グダグダと失礼しました、それでは行きましょう
446 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:34:18.83 ID:1n05JhUQo


――――――――――――――――――――――


『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師、ステイル=マグヌスはロンドンのランベスに足を運んでいた。
相変わらず長い赤髪をなびかせ、相変わらずその口には煙草が咥えられていた。


彼の目の前には今、旅館のような建造物がそびえ立っている。


イギリス清教徒の為に設けられた『必要悪の教会』の女子寮である。


「まったく・・・・・・『あの手紙』の内容には驚かされっぱなしだったけど、
 まさかここにも彼らが関わっていたなんてね・・・・・・」


手紙とは、ロンドンの街を散歩していたときに郵便配達員から受け取った白い封筒に入っていたものだ。
途中で同行してきたローラと一緒にその手紙を読み、今までの人生の驚愕な出来事ベスト3に余裕で
ランクイン出来るほどの内容がその手紙には記されていた。

447 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:35:23.72 ID:1n05JhUQo


その手紙にはこんな事も書いてあった。




『「必要悪の教会」の女子寮、と言えば分かるかね? 神裂火織やオルソラ=アクィナスなどが住まう寮だ。
 もちろん、彼女たちも我々に関与している。 しかしこちらの都合が悪く、彼女たちにはこの手紙を
 渡す事が出来なくなってしまってね。 良ければ、君が彼女たちに手紙の内容を伝えてほしい。
 後の行動については彼女たちが決めるだろう。 それでは、"お待ちしているよ"。』




このメッセージのあとに、手紙を書いた者の名前が書いてあったのだが・・・・・・。


「世界を引っ掻き回しているのと同義だな・・・・・・。 次はフランスにでも行くつもりかヤツらめ」


彼が『死地』へ向かう前にここを訪れたのは、こういった理由があったからだ。

448 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:36:15.65 ID:1n05JhUQo


ステイルは忌々しげな表情を浮かべ、女子寮のドアをノックする。


「はぁ〜い」


絶賛平和ボケ中で〜す、的な呑気な返事が聞こえてきた。
もちろん、ステイルは声の主など考えずとも分かっている。


「・・・・・・『必要悪の教会』所属の魔術師、ステイル=マグヌス、と言えば分かるかな。
 用件があってここを訪れた。 話を聞いてもらいたいんだけどね」


ガチャリ、と扉が開く。


出てきたのは元ローマ正教のシスターにして、現在最も某超能力者とのフラグが進行しているシスター、
オルソラ=アクィナスだった。

449 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:37:13.64 ID:1n05JhUQo


「まぁ、あなたは・・・・・・。 先日はお世話になったのでございますよ」

「覚えていてくれてたか。 ・・・・・・まぁいい、あがっても?」

「ええ、どうぞどうぞ」


オルソラは全人類を幸せに出来そうな満面の笑みでステイルを迎え入れた。


「失礼する」

「む? ありゃ、貴方はステイル=マグヌスじゃあねぇですか。 お久しぶりですね」


女子寮に入ってすぐ、いの一番に声をかけてきたのは同じく元ローマ正教のシスター、
アニェーゼ=サンクティスだ。


「久しぶりだね。 相変わらず妙な修道服だ」

「貴方にだけは言われたくねぇですね」


ステイルは一旦外に出て魔術を使って煙草を完全に消し炭にし、
改めて女子寮にあがっていった。

450 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:38:06.93 ID:1n05JhUQo


想像通り、中には大勢のシスター達が忙しなくぱたぱたと走り回っていた。
どうやら食事の時間が近いらしく、食堂では料理が盛られた皿がシスター達の手によって並べられていく。


「よろしければステイルさんも食事を摂られてはいかがでございましょう?」


オルソラが親切に尋ねてきた。


「いや、ありがたいけど僕は結構だよ。 話はすぐに終わる、終わらせる。
 あと、出来れば神裂火織も呼んできて欲しいんだけど、今ここに―――」

「おや? ステイルじゃないですか。 どうしたんですこんなところへ」


噂をすれば何とやら。
ステイルの背後から声をかけてきたのは『天草式十字凄教』の女教皇、神裂火織だった。

451 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:39:08.73 ID:1n05JhUQo


「やぁ、神裂。 いいタイミングだ」

「?」

「ちょっと話があるんだけど、いいかな。 オルソラやアニェーゼ、
 他のシスターも耳に入れておくといいかもしれない。 いや、
 是非聞いていって欲しい案件なんだけど」


それを聞いて、元アニェーゼ部隊のアンジェレネ、ルチア、その他大勢のシスターが
ステイルの方を見て注目する。さっきまで騒がしかった食堂が、水を打ったように静かになった。


「そこまで緊張の糸を張ってもらわなくても・・・・・・。 ・・・・・・だが、
 これでもちょうどいいくらいか。 皆、これを見て欲しい」


ステイルは遠くにいるシスターにも見えやすくするために、
例の"白い封筒"を手に持って上へ掲げる。

452 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 22:39:58.97 ID:1n05JhUQo


「ふ、封筒・・・・・・?」

「なんですかそれは? イギリス清教からの?」


アンジェレネとルチアが不思議そうにその封筒を見上げる。
周りにいたシスター達もゆっくりとステイルの方に近付き、封筒を目視した。


「この封筒には手紙が入っている。 送り主は・・・・・・、言えば分かると書いていたが、
 まさか君たちも"彼ら"に関わっているとはね。 『最大主教』め、
 そういう大事な事は事前に伝えてほしいと何度も言っているだろうが・・・・・・」

「何の手紙なのですか? ステイル」


ぶつぶつと愚痴るステイルは勿体振るような事はせず、封筒の中身を取り出してその手紙を読み上げた。

453 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:41:05.89 ID:1n05JhUQo




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




絶句、とは今のこの女子寮内にいるシスター達の事を指すのだろう。


ステイルは手紙の内容を全て読み上げると、記述されていた方法で手紙を消し去った。
キャーリサ達がやっていたのと同じ手法だ。


「・・・・・・何の冗談ですか、それは」


神裂は若干顔を青ざめさせながら、冗談ではないと分かっていても尋ねた。


「冗談、だととてもユニークだったんだけどね。 残念ながらこれは『最大主教』のお墨付きだ。
 冗談でもシャレでも何でもない、これからごく近い未来に起きるであろう事・・・・・・らしいよ」

454 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:42:01.17 ID:1n05JhUQo


シスター達は徐々にザワつきはじめ、各々の不安を独り言で、
あるいは近くにいるシスター達と相談していく。


「十字教の・・・・・・終わり?」

「そんな・・・・・・急すぎます」

「ほ、本当に悪戯じゃないんですかそれ・・・・・・?」


アンジェレネは顔面蒼白で体を震わせながらステイルに質問した。


「あ、あ、あの・・・・・・・・・・・・」

「ん?」

「か、彼は・・・・・・」

「彼?」

「あ、あくせら・・・・・・・・・・・・」


震える声で、それでも一生懸命に言葉を紡いでいく。

455 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:46:23.33 ID:1n05JhUQo


「あ、一方通行さんは・・・・・・?」

「一方通行・・・・・・? あぁ、あの白い髪の能力者かい?
 うん・・・・・・、まぁこれが現実になるのだというなら、彼も動くだろうね」

「あの垣根帝督という男も、ですか?」


今度はルチアが質問してきた。


「垣根帝督だけじゃない、風斬氷華も、もしかしたらその他に彼らに関わっている
 人間たちも全て行動を起こすかもしれない。 これは、それほどの事態だ」

「・・・・・・ふざけやがって、何だったんですか。 ここに来たときはあの人達、
 そんな素振りなんか見せずに楽しんでたじゃねぇですか・・・・・・」

456 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:47:22.86 ID:1n05JhUQo


アニェーゼは拳を握り震わせながら毒づく。
一方通行とファッションについて熱く語った時、彼らと共に食事をし、大いに盛り上がった時。
彼らはこれから先に起こる事態に不安を抱えているような気配は微塵も見せなかった。

それは手紙に書いてあった現実とは思えない事態を知らなかったからだろうか。
それとも、知っててあんなに明るく振舞っていたのか。


神裂がステイルに尋ねる。




「・・・・・・この手紙の通りだと、この『はっきんぐ』とやらが発生したときは
 もう残された時間は無い、という合図という事ですね?」

「らしいね。 僕も『はっきんぐ』とやらについては全く詳しくないんだけど、
 『はっきんぐ』が起きれば後はもう時間の問題という事なんだろう」




『はっきんぐ』とは恐らくあのハッキングの事だろう。
手紙にはなにやら、そんな物騒な事も書かれているらしい。

457 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:48:45.40 ID:1n05JhUQo


ステイルはシスター全員に手紙の内容が伝わったことを確認すると、


「そういうわけだ。 君たちがどう行動をとるかは、君たちで決めるといい」


そう言って寮の出入口に向かっていった。


「ま、待ってくださいステイル!! あなたはどうするのですか!?」


神裂が堪らず大声を上げてステイルを呼び止める。
ステイルはハァ、とため息をつき、振り向きもせず言った。


「・・・・・・僕は『最大主教』の指令で嫌でも向かわなければならないんだよ。
 ま、僕に選択権があったとして・・・・・・・・・・・・。 それでも僕は向かっただろうけどね」


僕も相当頭が悪いらしい、とステイルは自分で自分に苦笑する。

458 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:49:43.99 ID:1n05JhUQo


すると、手紙の内容の事でざわざわと喧騒が起こる中、諭すような包みこむような、
とても優しい声がステイルの耳に入ってきた。


「・・・・・・ステイルさん」

「なんだい、オルソラ=アクィナス」


オルソラはゆっくりとステイルに近付き、背を向けたままの彼に言う。


「・・・・・・私たちはこれまで、自分たちが出来ることはどんな状況でも行って、貫いてきたのでございます。
 ブリテン・ザ・ハロウィンの時も、第三次世界大戦の時も、変わらず」

「・・・・・・そうだね。 話は聞いてるよ」


それが、元ローマ正教の、『必要悪の教会』の女子寮に住むシスターたちの生き方。
彼女たちは自分がどれだけ危機的状況に陥ろうとも、人々を救うため、
時には強大な敵に立ち向かうため、行動してきた。

459 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:51:06.11 ID:1n05JhUQo


しかし、




「でも、今回の件に関しては私たちは恐らく力添えが出来ないのでございますよ。
 例え現地に行ったとしても、足手まといにしかならないでしょう」



「し、シスター・オルソラッ!!」


アニェーゼがオルソラに激昂した。
まだ何もしていないのに、まだ何も起きてはいないのに、自分たちが無力であると
決めつけるような彼女の発言に怒りを覚えた。


「そんなもん、やってみねぇ事にはわからねぇじゃねぇですか!!
 いつだって私たちはそうしてきたでしょう!? 何だってんですか一体!!?」


だがオルソラはアニェーゼに何も言わず、ただ首を横に振るだけだった。


「オルソラ・・・・・・!!」

「この件に関してだけは、私たちが参加しても一方通行さんの・・・・・・彼らの邪魔になるだけです。
 私たちは戦えないのでございますよ。 彼らの邪魔をしないことが、私たちにできることでございます」


その言葉を聞いて、アニェーゼは唇を噛み締めることしか出来なかった。

460 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:53:26.26 ID:1n05JhUQo


「ちくしょう・・・・・・、何だって今更"あのクソ魔術師"が出しゃばりやがるんですか・・・・・・!!
 魔術サイドの面汚しが・・・・・・!!」


しかしアニェーゼもまた、理解はしていた。

自分たちでは、自分が率いるアニェーゼ部隊ではその"クソ魔術師"には束になっても敵わないだろうと。
理解しているからこそ、無力な自分を恨んだ。


「・・・・・・神裂、君はどうするんだい?」


ステイルは振り向いて神裂に尋ねる。
神裂は世界で二十人といない『聖人』だ。それでも微力なのだが、戦力にはなる。

461 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:56:25.24 ID:1n05JhUQo


「・・・・・・・・・・・・私は。 ・・・・・・・・・・・・」


神裂火織の魔法名は『Salvele000』。その意味は『救われぬ者に救いの手を』。


戦地へ向かう事が出来るのなら今すぐにでも行きたい、と彼女は考えていた。
だが後ろにいる大勢のシスター達の事を思うと、あと一歩のところで決断することが出来ない。

シスターだけではない、神裂が率いる『天草式十字凄教』。
もし自分が戦地へ向かい、万が一のことがあれば、もう彼らには出会えないだろう。


神裂はしばらく閉口し、そして答えた。


「・・・・・・すみません。 もう少しだけ、あと少しだけ考える時間をください」

「時間が残されているとは思えないけどね。 けど、それなら僕はもう行くよ。
 これから向かう死地には、『あの子』もいるんだ」

462 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:57:23.83 ID:1n05JhUQo


ステイルの言葉に神裂はビクッと肩を震わせる。
彼の言う『あの子』は、神裂もよく知っているとある少女の事だ。


「・・・・・・・・・・・・少し、時間をください」

「わかった。 それじゃ、邪魔したね」


ステイルはフッと笑い、出入口のドアノブを掴む。
彼の背中からは"これでお別れだ"、という儚い雰囲気が伝わって来るようだった。


と、その時、


「待ってください、ステイルさん」

463 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:58:05.92 ID:1n05JhUQo


オルソラ=アクィナスがステイルを引き止めた。
その顔には、なぜか温和な笑顔が浮かんでいる。


「なんだい?」

「一つ、頼みたいことがあるのでございますよ」

「・・・・・・一応聞いておこうか」


オルソラは一度だけ、周りにいるシスターたちを一瞥し、ゆっくりと話した。


「確かに私たちは戦う事も手助けをすることも出来ないのでございます。
 ・・・・・・けど、それでも私たちに出来ることが一つだけあるのでございます」

464 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 22:59:06.93 ID:1n05JhUQo


「?」


ステイルと同じように、周りのシスターたちも疑問の表情を浮かべる。


「ドラコ=アイワズ」


オルソラはかつて、この女子寮に突如来訪したトンデモ組織の一員の名を挙げて言った。


「あの方に、言伝を頼まれて欲しいのでございます」


シスターたちにも出来る事。それを行うためにはどうしてもあの物知りな聖守護天使の協力が必要だった。


その出来る事こそが、後の一方通行の心の支えになろうとは、まだこの世界で知る者は誰一人いない。

465 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/03(木) 23:06:27.29 ID:1n05JhUQo
はい、今回はここまでになります。

まさかのシスター戦線離脱、というわけなのですが、オルソラにはまだ何か考えがあるようです。
別にエイワスに頼まなくてもいい事なのですが、まぁアイツ便利だし・・・・・・


さて、次回は再び、カメラが学園都市の二人と謎の魔術師(笑)に向きます。
一体、二人はどうなってしまうのか!? そしてクイトの正体とは!!(棒)


次回更新は三日以内・・・・・・いやもう明日でいいや。


それでは、今回もここまで読んでいただきありがとうございました!!

失礼します!
466 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI :2011/03/03(木) 23:07:17.74 ID:1n05JhUQo



                          【次回予告】



『・・・・・・それで、その『毒』ってのを止める方法は無いのか?』
―――――――――――学園都市の無能力(レベル0)の学生・上条当麻




『な、なんか脳みそクチュクチュされてるみたいかも・・・・・・・・・・・・』
―――――――――――禁書目録を司るイギリス清教のシスター・インデックス



467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:17:21.13 ID:pVGPQi3Z0
乙ー

>な、なんか脳みそクチュクチュされてるみたいかも・・・・・・・・・・・・

脳姦ですねわかります
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:18:31.45 ID:n7wtz/+JP

そんなヤバい話なのかよエイワスえもん早く来てくれ
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:45:59.54 ID:ws+0fuoEo
とうとう>>1が脳姦を受け入れてくれたと聞いて>>1
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/03(木) 23:50:55.76 ID:XAeNIkcpo
クイトって
ラー=ホール=クイトから?
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 00:01:09.59 ID:yI76SWFdo
                _. -‐"^`'ー 、
            |ヽ-<        ヽ_
         ー-ァ{」_. \         'ー、_
        ,-ゝ"    `ー`            Z
        (    、__            rlii;;;{ヾ=,}
        {_    }`ッ-、-、  、_   ,r=、 `ー、) |!
         (_ ('t__`!.f.、 ; ``!ソ }テ"`! ';ト-- 、}
     ク   └`- `-} ヾ'  ``    !‘.... ν
   ク チ       ヽ ..ノ   .ィ ,.;;;iiii|||||||)
   チ  ュ         `-、/,,!ii||||||||||||||i、_
    ュ              ィii||||||||||||||!!'''" }
     (( ●          `|||||||!'''" _... `;
     _..., /           /|||!'"// _.. ` 、
   _..f ./!、 ● ))      /l||!'/ --==  ̄ /
   _i l_/_. ×         i i|!〃..-- 、、_  /
  (└ィニ、_/- !r;;、       l i!' ,;ii||||||||||||||||iii;ソ
   ×/``ニ`ヾ!||||i;、,,..   ,ィ!ニヾ!!|||||||||||||||||||!'
  / し="   `ーィi|||||i;,、<〃!、ヽ 〉||||||||||||||||/
  / / (/、  /||||||||||||||||ii;;;i、ソ||||||||||||||||/
   /  ヽ-'ー"T||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||/
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 00:36:24.20 ID:pPE4fa3H0
これは「受け入れた」の内には数えないだろ、ノーカンだけに

…うん、なんかゴメン
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 03:10:35.94 ID:Vzz/WINAO


クソ...やっぱりていとくんもあの時ルチアのフラグを
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 06:19:00.58 ID:/Y4+2CJDO
>>473
そこ気付
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 08:57:54.83 ID:LLDdlwvDO
さすが正妻は格が違った
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 11:12:23.62 ID:dRUPCuZSO
はっきんぐおはなばたけ
477 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/04(金) 15:00:34.36 ID:mRnGCitZo
ちょいとすみません。

明日(正確には今日)投下予定でしたが、もしかしたら0時回ってしまうかもしれません。
その時はどうかご容赦ください。申し訳ないです。


>>470
その通りです。エイワスとは方角が真逆ですけど・・・・・・。


では、失礼しました。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 16:35:32.33 ID:xoql1Ahs0
>>477
自分のペースでやってくれたらいいかも!

上条さんインさんも天使同盟に関わるのかと思うと胸熱
関わらなくても胸熱
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 17:11:54.78 ID:5vLQnrZT0
>>470って誰?
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 17:29:05.53 ID:xzzHBaGCo
>>479
エイワスのご主人様のご兄弟
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [1116]:2011/03/04(金) 17:53:10.71 ID:OlOdlND60
まだ天使同盟が逮捕されたとこまで読んだ
俺がすべて読み終えているころにはすべて終わっていると思うから今言う
このスレに出会えてよかった。>>1がんばって完結させてね☆
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/04(金) 19:41:26.17 ID:FCZ9Iq8DO
以上、学園都市にお住まいのアレイ☆君からのお手紙ですた
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 00:03:45.76 ID:GbXsDyI80
>>470
ラーの翼神竜とは関係ない?
484 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:18:24.57 ID:Rxev5jluo
こんばんわ、今日も投下していきます!

結局0時回ってしまいましたね、一週間はぶっ続けで投下できるはずだったのになぁ・・・・・・
まぁ急ぐ必要もないので、気にせずやっていきたいと思います。


さて、今回は再び上条当麻とインデックス、そして謎の魔術師(失笑)クイトの三人にカメラが向きます。


一体どうなってしまうのか、と某番組風の煽りと共に、いざ投下。
485 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:19:26.51 ID:Rxev5jluo


――――――――――――――――――――――


「う〜ん!! 美味しい!! すっごく美味しいかもこのフグ鍋!!」

「お、おいインデックス・・・・・・、お客さんの前でそんなドカ食いすんなよ・・・・・・」

「いや、私に気を遣う必要はないよ。 微笑ましい光景じゃないか」


学園都市の第七学区。とある男子学生寮の一室では豪華な料理が振舞われていた。


学園都市の無能力者(レベル0)、上条当麻と、イギリス清教所属のシスター、インデックス。
そして突然来訪してきたイギリス清教の新入り魔術師、クイトの三人は
上条の部屋で豪華なフグ鍋を囲み、わいわいと団欒の時を過ごしていた。

486 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:20:05.24 ID:Rxev5jluo


「あああ・・・・・・、普段はお目にかかることすら無いフグが・・・・・・
 まるでビデオの早送りのように消えていく・・・・・・」


上条当麻は学園都市最強のレベル5、一方通行大明神から授かった大金を使い、
普段の彼らには縁遠いフグを大量購入してその鍋を食べているわけだが、


「んまいっ! んまいっ! ん〜〜〜〜〜〜まいんだよっ!!
 ほらほら、とうまもクイトも遠慮しないで!」

「何で俺が買ってきた食いもんを俺が遠慮しなきゃならないんですかっ!
 お前の食うスピードが早すぎて手もつけられねぇんだよ!」

「・・・・・・ふむ。 フグ鍋か・・・・・・。 たまには鍋物も悪くないかもな」

「ん? クイト、なんか言ったか?」

「いやいや、こっちの話だ」

487 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:21:14.88 ID:Rxev5jluo


インデックスがその頭に所有する十万三〇〇〇冊の魔道書。
それについて話をするために真っ白なローブで全身を包んだこの怪しげな魔術師は
学園都市にやってきたという事らしいが・・・・・・。


「それでクイト。 お前、インデックスの魔道書について話をしに来たんだよな?」

「ん? いいのかね話題を持ち出しても。 食事中は遠慮しておこうと思ったのだが」

「気にすることはないんだよモグッ! 気兼ねなく話すといいかもパクッ!」

「口に物を入れながら喋るんじゃありませんっ!」


グツグツと煮えたぎる鍋に臆することなくヒョイヒョイとフグを口に放りこんでいくインデックス。
彼女の側ではスフィンクスと呼ばれる三毛猫も、それに負けじとフグの身をガツガツと食い散らかしている。


「そうか? ではさっそく本題に入らせてもらおうか」

「どんとこい! なんだよ」

488 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:22:32.34 ID:Rxev5jluo


今の彼女はすこぶる機嫌が良いらしい。上条が行儀の悪さをガミガミと指摘しても
彼女の耳は右から左だった。


「禁書目録、君が神の右席に所属する魔術師、『右方』のフィアンマによって
 魔導書の制御を奪われ、一時的に意識不明の状態に陥っていた事は分かっているね?」


ピタっと。


規則的に動いていたインデックスの手が止まる。
クイトの言葉を聞いた上条もシリアスな雰囲気を感じ取ったのか、手に持っていた割り箸を静かに置いた。

489 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:23:17.90 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・もちろん覚えてるんだよ。 例え完全記憶能力が無くったって、
 一生忘れることはないかも」


第三次世界大戦に上条当麻が参加せざるを得なくなった最大の原因。

神の右席、『右方』のフィアンマによって『自動書記(ヨハネのペン)』の遠隔制御霊装を奪取され、
『首輪』が無い状態で魔道書の知識を引き出されてしまった事により、彼女の身体に重大な負荷がかかり、
戦時中は意識不明の状態だったのだ。


「しかし、上条当麻の活躍によって遠隔制御霊装はフィアンマの手を離れ、
 君は元の平和な日常へ戻ることが出来た・・・・・・。 ここまでは正しいかね?」

「うん。 とうまには今でも感謝してるんだよ。 大好きだもん」


インデックスの言葉に上条は頬を赤らめながらポリポリと頬をかく。

490 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:24:31.42 ID:Rxev5jluo


「よろしい。 ・・・・・・それで、だ」


ここからが本題の本題、といった感じでクイトはコホンと咳をする。


「その後、君の頭の中にある魔道書に何か異変は無いか?」

「?」


インデックスは首を傾げた。十万三〇〇〇冊の魔導書を寄越せと言われた事は散々あるが、
異変がないかと問われたのは初めてだった。


「魔導書に異変って、どういうことだ?」


インデックスの代わりに上条が質問する。

491 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:25:55.40 ID:Rxev5jluo


「魔道書じゃなくとも、そうだな・・・・・・。 禁書目録、君自身の肉体には
 何か異変を感じたりはしなかったか? 頭痛や目眩、吐き気など、何でもいい」

「う〜ん・・・・・・特にそんな症状は無かったかも。 どうして?」


当然の疑問を投げかけるインデックスに、クイトはしばらく無言だった。
上条もクイトが何を言いたいのかよくわからないでいる。


「私が今日、君たちの元へ訪れたのはそれを調べるためなんだが・・・・・・。
 どうやら今のところ、禁書目録の肉体にも魔道書にも問題は無いようだな」

「今のところって・・・・・・どういうことだよ? まるでこれから先は分からないみたいな
 言い方じゃねぇか。 インデックス、何かヤバい病気にでもかかってるのか?」


上条の表情には明らかな焦燥が見て取れた。
当然だ、同居人でもあり、今や上条当麻にとって最も大切な女性であるインデックスに
何か大変な事が起きようとしているというのなら、心配するなと言う方が酷である。

492 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:26:31.64 ID:Rxev5jluo


しかしそんな彼などお構いなしに、クイトは淡々と彼らの疑問に答えた。





「病気とはまた類が違うのだがね。 実を言うと、遠隔制御霊装によって降りかかった負担の
 残留がまだ禁書目録の肉体に潜んでいる可能性があるんだ。 もしそれが再発した場合、
 禁書目録の頭に眠る魔道書の『毒』が滲み出て、それが彼女の頭、最後には全身に巡り、
 言いにくい事だが・・・・・・死に至る可能性もある、というわけだ」





クイトの説明を聞いた上条は思わずガタン!と立ち上がる。
当のインデックスもフグ鍋を堪能する事などすっかり失念してしまい、目を皿のように開いていた。


「な、・・・・・・なんだよそれ!! 本当の事なのか!!?」

493 :残留している可能性がある、が正しいですね。 ごめんなさい。 ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:28:10.98 ID:Rxev5jluo


「君の目の前でこんな嘘をつくと思うかね?」

「ちょ、ちょっと待ってほしいかも! 私は長いこと十万三〇〇〇冊の魔道書を保管してきたけど、
 そんな話は聞いたことがないんだよ!!」

「当然だろう。 これは君が所属するイギリス清教の中でも遠隔制御霊装の存在と君の『首輪』の存在に並ぶ
 トップシークレットの案件だ。 『最大主教(アークビショップ)』であるローラ=スチュアート、
 そして私しか組織の中で知る者はいない」


言葉もなかった。


ついさっきまでの楽しい和やかな空気はどこへやら。室内は極寒の地と相違ない
冷めた雰囲気に包まれてしまう。


「私としてもこの事実を君たちに伝える事に抵抗があったのだがな、
 禁書目録と、そして上条当麻。 君たちの事を考えるといつまでも隠しているわけにはいかない。
 『最大主教』もそう判断して、私に言伝を一任してきたのだよ」


と、言う事は今この部屋にいる魔術師、クイトはローラ=スチュアートと同等の
地位をイギリス清教内に持っているということになる。

上条はそんな事知る由もないが、インデックスは別だ。
クイトを見る彼女の目が一気に変わった。

494 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:29:47.13 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・クイト、あなたは一体何者なのかな?」

「さっき名乗ったはずだが? 完全記憶能力を有する君なら覚えているだろう」

「で、でもそれだとイギリス清教におけるクイトの立場は、『最大主教』のそれと
 ほぼ同じって事になっちゃうんだよ!」

「申し訳ないが、その辺に関する情報をむやみやたらと喋るわけにはいかないのだよ。
 私はごく最近にイギリス清教への所属が決まった三流魔術師だとしか、今は言えない。
 だが、これから私が言う魔術についての説明を聞いてもらえれば、私の立場についても理解出来るはずだ」


それはインデックスだけでなく、上条にも分かっていた。
このクイトという魔術師が、三流なわけがない。新入りだというのは本当かもしれないが、
それでもそこらにいる魔術師とは格が違う。

そう、思わせるような雰囲気がクイトには確かにあった。

495 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:30:54.45 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・とりあえず、まずは落ち着いて欲しい。 私の事などどうでもいい。
 どうしても納得出来ないのであれば、今すぐここでイギリス清教に確認をとってもらって構わない」


しかしインデックスは行動しなかった。
なぜならイギリス清教の魔術師が、いや、イギリス清教の魔術師でなくとも
あのローラ=スチュアートをダシにして虚言を吐くとは思えなかったからだ。

そんな事をすればクイトはイギリス清教そのものを敵に回す事になってしまう。


「・・・・・・確認なんて、そんな事しないんだよ。 クイトもイギリス清教の魔術師なんでしょ?
 私は仲間を疑うようなことはしない。 ・・・・・・もうしたくないんだよ」

「インデックス・・・・・・」


インデックスも上条も、とりあえず冷静になるよう努めた。
上条はゆっくりと腰を降ろし、胡座をかく。

496 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:31:40.20 ID:Rxev5jluo



「信じてもらえて助かる。 実を言うとそこが一番の懸念だったのだ。
 信じてもらう事が出来なかったら、私はイギリス清教を追放されていたからね」

「え・・・・・・!?」

「それほどまでに、この件は重要だということだ。 理解してほしい」

「うん。 了解したんだよ」


インデックスはニコっと笑って承諾した。
クイトが上条の方を見ると、彼も頷き、話を続けるよう促す。


「・・・・・・それで、その『毒』ってのを止める方法は無いのか?」

「うむ。 今のところ彼女に何の症状も起きていないようだから安心していい。
 しかしこれから先、『毒』が彼女の身体も心も蝕んでいく事態は避けられない」

「それはどれくらい先の話なの?」

497 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:32:56.40 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・今年の年末には、『毒』の侵食の前兆が起きているだろうな」

「年末だって・・・・・・!? クソ、すぐそこじゃねぇか!!」


ギリリ、と上条は歯噛みする。確かに年末など目と鼻の先だ。
クイトがこの事実を教えてくれなかったら上条は最悪の大晦日を迎えていただろう。


「そう、だから私がここに来たのだ。 『毒』の侵食を止める方法を持ってね」

「!! 本当か!!」


上条の顔が一気に綻ぶ。じわじわと絶望が迫ってきたこの状況で救いの道があるというのだから無理はない。
インデックスも内心ドキドキしながらクイトの言葉を待った。


「侵食を止めるためにはある魔術を使うのだが・・・・・・、それはまだ魔術サイドには全く広まっていない、
 新たに発見、生み出された魔術なんだ」

「じゃ、じゃあ私の魔道書にも載ってない・・・・・・!!?」

「そうだ。 十万三〇〇〇冊の中にも存在しない、未知なる魔術」


『魔道書図書館』とも呼ばれるインデックスですら知らない、新たに誕生した魔術。
それを使って『毒』の侵食を止めるのだとクイトは断言する。

498 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:34:09.76 ID:Rxev5jluo


「え、でもそんな魔術・・・・・・お前、使えるのか?」


上条は疑問に思った。
インデックスですら知りえない魔術を、果たしてこの新入りの魔術師が行使出来るのかと。

しかしそんな上条の心配もすぐに払拭される。


「もちろん使える。 でなければここに来る意味が無いだろう?
 そして口頭で伝えるだけで使える魔術なら、電話一本で済む話だ」

「そ、それはそうかも・・・・・・」

「更に付け加えると、この魔術は世界でも私しか使用できない魔術だ」

「え、・・・・・・ええっ!!?」


インデックスの『毒』を消し去ることが出来る魔術を行使出来るのがこのクイトだけ。
その事実にさすがの上条も驚きを隠せなかった。
・・・・・・なんだか少し、胡散臭い気がしないでもないのだが。

499 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:37:55.46 ID:Rxev5jluo


「お、お前やっぱりすごい魔術師なんじゃねぇか・・・・・・!?」

「そう言われると照れるのだがね。 ちなみにこの魔術は私が考案し、実現した代物だ。
 魔術名はまだ無いのだが・・・・・・そうだな、さしずめ『貸出無料(アカシック・フリー)』と言ったところか」

「そ、その魔術に応用性はあるの・・・・・・?」

「皆無と言っていい。 この魔術は『禁書目録に眠る十万三〇〇〇冊の魔導書から漏れる毒を払拭する』、
 という効果のみだ。 その他の毒の治療などには一切効果がない、いわば君専用の魔術なのだよ」


インデックスのためにだけ作られた魔術、『貸出無料(アカシック・フリー)』。

その魔術は一切の応用性を持たず、本当にただ十万三〇〇〇冊の魔道書にある『毒』を消すためだけに
存在する、超インデックス特化の魔術だった。

それを考え出し、実用化出来るまでに至らせたのがこのクイトという魔術師だという。


「これで私が『最大主教』と同等の立場を得る事が出来た理由が分かったかね?
 イギリス清教にとっての君の価値は、この魔術しか使えない私ですら、
 『最大主教』だけが知りうる情報を得ることが出来る立場になれるほどなのだよ」

500 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:39:24.06 ID:Rxev5jluo


「お前、その『貸出無料(アカシック・フリー)』って魔術しか使えないのか?」

「未熟、だからね」


そう言って苦笑いをするクイト。表情が見えないので苦笑いかどうかは判断しにくいが。


「では、早いとこ治療を始めようか。 せっかくの食事の時間が台無しになる前に」

「あ、あぁ。 頼むよ」


クイトは立ち上がり、向かい側にいたインデックスの前で膝をつくと、ゆっくりと彼女の頭を撫でた。

上条はゴクッと生唾を飲んで見守る。自分の右手に宿る『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が
邪魔になるのでは?とクイトに尋ねたが、『その程度の力は障害にならないから安心したまえ』、と
言って彼を追い出すような事はしなかった。

501 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:40:22.39 ID:Rxev5jluo


・・・・・・『幻想殺し』でも打ち消せないような魔術とは、一体どういった物なのだろうか。


「少し違和感が走るかもしれないが、我慢してほしい」

「う、うん。 わかったんだよ」

「・・・・・・がんばれよ、インデックス」


クイトがインデックスの眼前に手を近づけると、彼女はビクビクと目を閉じながら
体を小刻みに震わせた。やはりちょっと怖いのだろうか。


「では、『貸出無料(アカシック・フリー)』を発動するぞ」


ゆっくり、ゆっくりと、クイトはインデックスの頭、額の方に白い手袋を着けた手を近づける。
その手は魔術が発動したせいか、不健康そうな青白い"輝きすぎるほど輝いた"光を放っている。


そして、上条当麻は我が目を疑った。

502 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:41:45.89 ID:Rxev5jluo


「え・・・・・・? ・・・・・・げぇっ!!!?」

「ど、どうしたのとうま!!? んみゅ、な、何か変な感じかも・・・・・・」


上条は思わずクイトを止めようとしたが、それではインデックスを治療出来ないため
寸前のところで自身を制止させた。


彼がパニックに陥りそうになるのも無理はない。
インデックスは目を閉じているため状況が分かっていないのだろう。






クイトの手が、インデックスの頭にズブリと刺し込まれ、何かを揉み込むように指を動かしているのだ。





503 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:42:46.14 ID:Rxev5jluo


「ちょ、ちょっとオイ!!! それ大丈夫なの!!? それ大丈夫なのか!!?」

「と、とうま!! どうしてそんなに慌ててるの!! ひぅっ!!?
 な、なんか脳みそクチュクチュされてるみたいかも・・・・・・・・・・・・」

「おいいいいいいいいいいィィ!!!? マジで平気なのかそれ!!?
 手ェ抜いた時に脳みそが出てきたりしたら上条さん何するかわかりませんよー!!?」


しかし手が刺し込まれた部分からは出血は無いし、脳漿がどろりと出てくるような事も無かった。
クイトは無言のまま、インデックスの頭にぶち込んだ手をモゾモゾと動かしている。


「あっ! 魔導書を開いてるの!!? ダメだよ、そんな事したらあなたが――――!!!」

「『原典』ごときが、この私を殺せるわけがないだろう」


クイトが何かを言ったようだが、インデックスには聞き取れなかった。

504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 00:42:57.56 ID:cwItGlz10
脳みそクチュクチュって比喩じゃなかったのかww
505 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:43:46.01 ID:Rxev5jluo


上条は両手で目を塞ぎ、指と指の隙間から覗くようにしてそのおぞましい光景を見ていた。
インデックスの側にいる三毛猫、スフィンクスはこんな状況でも呑気にフグ鍋を堪能している。


やがて、事を終えたクイトはその手をゆっくりと慎重に引き抜いていった。


「い、インデックス!!! 大丈夫か!!?」

「う、うーん・・・・・・・・・・・・」


散々頭の中を掻き回されたせいか、インデックスはくるくると目を回してふらついている。
クイトはと言うと、手の調子を確かめるようにプラプラと軽く振るっていた。


「インデックス、しっかりしろ!! お、おいクイト! これって成功してるのか!!?」

「安心していい。 魔術は無事に発動し、『毒』を取り除いた」

「・・・・・・・・・・・・あ。 とうま、なんだか頭がスッキリした気分なんだよ」

506 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:46:10.90 ID:Rxev5jluo


目をパチっと開いたインデックスは、心なしか最高級のマッサージを施されたように活き活きとした表情になっている。
なんだか肌もつやつやてかてかしているように見えなくもない。
どうやらクイトの言う通り、『貸出無料(アカシック・フリー)』は無事に成功したようだ。


「よ、良かった・・・・・・。 一時はどうなることかと」

「禁書目録。 十万三〇〇〇冊の魔導書に異変は無いかね? 一冊でも消失したりしていたら事だ」

「・・・・・・、・・・・・・。 うん、大丈夫。 ちゃんと十万三〇〇〇冊揃ってるんだよ!」


それは良かった、とクイトは安心する。相変わらず表情は伺えないが。


「なんだか血行が良くなった気がするかも!」

「サロンじゃねぇんだから・・・・・・、でもホント良かった。 これで『毒』の侵食は始まらないんだな?」

「なにせ初の行使だからね、その辺りは下手な事は言えない。 ただ向こう一年は平穏に過ごせるはずだ。
 万が一何かが起きた場合は、すぐに私に連絡して欲しい。 イギリス清教にでも構わないよ」


その言い様は魔術師というよりは医者だった。
ともあれ、これでしばらくは『毒』に悩まされる心配はないらしい。


「とうまー!」

「あはは・・・・・・、やったな! インデックス」


わーいわーいと、上条とインデックスは両手を繋いで喜びを分かち合っていた。

507 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:48:35.96 ID:Rxev5jluo


「なぁ、クイト。 これって俺が右手でインデックスの頭を触ったりしたら効果が消えちゃったりしないのか?」

「先程も言ったが、『幻想殺し』程度では何の障害にもならんから安心したまえ。 例え君が彼女の脳を
 直接右手で触ったとしても問題はない。 その場合は魔導書が消えるかもしれんがね」

「そ、そんなグロい事しねぇよ・・・・・・・・・・・・。 でもそれなら安心だな」

「ふ。 なんだ、君は禁書目録の頭に頻繁に触れる事があるのかね?」

「いや、ほら。 撫でたりする時とか・・・・・・、って!! 何言わせんだよ!!!」

「これはこれは、お熱いことだ。 私はお邪魔虫のようだな」

「もう・・・・・・、とうまのバカ」

「ああああああああいいやいやいや、まぁこれはだなそのそういう事ではないと言いますかえぇっと・・・・・・」


上条は顔を真っ赤にしながらあたふたと騒ぐ。
インデックスも頬を赤らめながらプクーっと膨らませ、上条を上目遣いで睨んでいた。

508 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:49:58.73 ID:Rxev5jluo


本当に、仲睦まじい事この上ない。


「さて。 これで私の用件は済んだ。 御暇させてもらおう」

「え? もう帰るのかよ?」

「禁書目録の治療が終わったことを『最大主教』に報告しないといけないからね。
 それが終わってもまだ私には『茶会』の予約が入っている。 未熟者でも多忙なのだよ」

「残念なんだよ・・・・・・。 いっぱいお礼したかったのに」


二人は本当に残念そうな顔でクイトを見つめていた。
人が良いというか何というか、本当によく出来た人間だなとクイトは思った。


「フグ鍋、ご馳走様。 とても美味しかったよ」

「こんなものでいいんならまた食べに来るんだよ!」

「こんなもの!!? こんなものって事ないだろ!!? どんだけ贅沢なんだよお前は!!」

509 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:51:13.28 ID:Rxev5jluo


「あぁ。 また是非、寄らせてもらうよ。 "今度は遊びに"、ね」

「うん!」

「あぁ、いつでも来いよ。 上条さんは基本的に暇ですからね」

「その暇がいつまで続くのか、見物だな」

「?」


最後の言葉は聞こえなかったが、二人は笑顔で立ち上がり、
クイトを玄関まで見送ることにした。

510 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:51:51.54 ID:Rxev5jluo


「じゃあ。 本当にありがとな、クイト」

「礼には及ばんよ、むしろこちらが礼を言いたいくらいだ」

「イギリス清教のみんなにもよろしく言ってほしいんだよ! ありがとね!」

「もちろんだ。 では、失礼する」


クイトはそう言って、玄関から外に出て行った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


上条は何となく、閉まったドアをすぐに開けてクイトの姿を確認しようとした。


だが、そこにはもう誰もいなかった。

511 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 00:58:52.31 ID:Rxev5jluo

今日はここまでです。

どうやら上条当麻はまだほんのわずかにクイトを疑っていたようですが、それでいいと思う。
脳ミソくちゅくちゅはちょっとグロい表現でしたが、直に触れているわけではないのでご安心をw


さて、次回は久々に『天使同盟』の一人が登場します。
・・・・・・出てくるのはアイツですけどねー


そしてそろそろ『あの人は今』編も終わるかと思います。もう少々お付き合い下さい。


>>483
太陽神とも無関係ではないですが、そこまで深い関係はないと思います。


それではまた三日以内に。ありがとうございました!
512 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 00:59:44.14 ID:Rxev5jluo



                          【次回予告】



『ぷはっ!! ・・・・・・はぁ、はぁ。 来たるなら来たるって連絡くらいせいなのよ!!
 あと写真撮るなー!!!』
―――――――――――イギリス清教の最大主教(アークビショップ)・ローラ=スチュアート




『別に構わんだろう? 女同士、裸の付き合いといこうじゃないか』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス



513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:08:26.31 ID:cwItGlz10
乙。その写真焼き増しプリーズ
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:08:59.12 ID:hBvxkFA8o
こいつ……パクったな…………。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:18:37.35 ID:h2va12wio
相も変わらず上条さんとインデックスさんの仲の良い事。ステイルさん血の涙流しちゃうね
次回ローラか…どうなるか気になる
乙!
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:24:33.42 ID:Fo+hQDHAO
乙。で、その写真いくらだ??
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:56:18.15 ID:GbXsDyI80
2グロス貰……>>1
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 01:59:22.45 ID:KrK9ayn60
ていうかクイトさん、正体バレバレなんじゃ?
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/05(土) 02:04:18.15 ID:Tb81qwv00
>>1
やっとおいついたと思ったらもうすぐ終わりそうなんだよ
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 02:14:57.14 ID:MYHHUpkQo
oi
ローラたんの写真よこせ
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 04:55:11.95 ID:mjpef6pAO
おいエイワス
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 08:09:15.80 ID:H9cq+T/go
君がッ!死ぬまでッ!泣くのをやめないッ!!
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 12:25:09.30 ID:c4dbuIok0
ふぐ鍋じゃなくて、白子鍋だったら最高だったな。脳みそクチュクチュされた後に白子食べるインデックスさんを見たかった
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 12:38:48.16 ID:IAadhUyAO
前スレみたいなことにならないためにも雑談は自重しようぜ
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:15:05.90 ID:mjpef6pAO
投下の内容に触れるレスでも雑談?
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:29:14.04 ID:Jg+xJM4Wo
そりゃ雑談だろ
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 16:59:36.47 ID:H9cq+T/go
雑談とは、特にテーマを定めないで気楽に会話すること
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 17:07:57.68 ID:Fo+hQDHAO
やっと追いついた!!!
面白いです。>>1乙!!
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 19:48:04.91 ID:I7nDOSiIO
脳みそくちゅくちゅですっきりしたってことはやっぱ毒の侵食が始まってたってことなんだな。
エイワ……クイトgj
530 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:53:40.03 ID:Rxev5jluo
こんばんわ、今日も頑張って投下していきます。


ここの>>1はレスが多ければ多いほどやる気が出る構ってちゃんなので、
雑談はほどほどにと言いたいところですがレスがあれば嬉しいのです・・・・・・。

スレタイ回収は完全に私のミスですので、どうか皆さんはお気になさらず!


さて、今回はまたローラがひどい目に遭っちゃいますね。可哀想に・・・・・・。


それでは、行きます!
531 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:54:13.75 ID:Rxev5jluo


――――――――――――――――――――――


学園都市にはいわゆる、都市伝説というものが存在する。


虚数学区・五行機関。


数ある学区の中の『始まりの研究所』であり、それをプロトタイプとして
関連施設を増設していった結果が学園都市であるという都市伝説だ。


『天使同盟(アライアンス)』に所属する少女、風斬氷華はこの学区の住人であり、
その実態は学園都市に住む能力者から発生するAIM拡散力場の集合体である。

彼女曰く、そこは『陽炎の街』との事。


そんな虚数学区を、『天使同盟』の一員であるエイワスは闊歩していた。

532 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:55:04.13 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・ふむ。 久々に来てみたが、こうして見るとなかなかよく出来ているじゃないか。
 アレイスターが創り出した『科学の星幽界』・・・・・・。 ふふ、おこがましいと思っていたが、
 ここの"擬似アストラル体"も精密とはいかないまでもよく出来ている」


エイワスは独り言を呟きながらゆらゆらと蜃気楼のようにゆらめく歩道を音もなく歩いて行く。
その途中、エイワスは自身の右手を見て、調子を確かめるように握ったり閉じたりした。


「・・・・・・早いところローラ=スチュアートに接触しなければな。
 『衛星』の掌握はほぼ終わらせているし、あとは彼女の協力を得られるかどうか次第だ」


誰が聞いても理解出来ない様な事を言い、エイワスはイギリスへ"飛ぼう"とした。


と、その時、


「ん?」

533 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:55:50.00 ID:Rxev5jluo


虚数学区では決してあり得ない、機械音が流れてきた。
エイワスが懐に閉まっている、どこにでも売ってそうな携帯電話の着信音だ。
どうやら誰かがエイワスに電話をかけてきているらしい。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


エイワスは『非通知』と表示された携帯電話のディスプレイを見て、軽く冷笑する。
そして応答ボタンを一度押して、電話先の相手に挨拶をした。


「久しぶりだね、ステイル=マグヌス。 まさか君から連絡をしてくるとは思わなかったよ」

「・・・・・・・・・・・・よく僕からだと分かったね」

534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 20:57:00.11 ID:cg0BRpIu0
イギリス清教の三流魔術師クイト…
いったいなにものなんだー
535 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:57:32.20 ID:Rxev5jluo


電話をかけてきたのは『必要悪の教会』所属の魔術師、ステイル=マグヌスだった。

電話なので彼の表情は窺えないが、恐らくは怪訝な顔をしているのだろう。


「『適当に番号をダイヤルすれば私に繋がる』、と手紙に書いてあったが・・・・・・
 一体どういう仕組みなんだか。 ワケがわからない」

「ふふ・・・・・・。 それで、何の用かな? 私はこれでも多忙でね、用件があるなら手短に願いたい」

「言われなくてもそのつもりだ。 まず一つ、あの手紙は何の冗談だ?」


手紙とは言わずもがな、あの白い封筒に入っていた手紙の事だ。
やはりというか何というか、手紙の送り主の正体はエイワスだった。


「冗談に思えたかね? それなら君には悪いニュースを知らせなければならんが」

「・・・・・・・・・・・・クソッ。 人類を弄ぶのも大概にしておけよ、化物」

「酷い事を言う。 ・・・・・・で? 聞きたいことはそれだけじゃないのだろう?」


こっちの伝えたい用件など予想するまでもないからさっさと話せ、とも聞こえる発言に
ステイルは軽く舌打ちをしながらエイワスに話した。

536 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:58:56.83 ID:Rxev5jluo


「ロンドンの・・・・・・、『必要悪の教会』の女子寮に住むシスター達の事なんだけどね」

「協力は出来ない、と言ってきたのだろう? 構わんよ、彼女たちを戦力に加える気など
 我々は毛頭考慮していないからね」


一体この金髪の怪物はどこまで世界の現状を把握しているのか。
ステイルとシスター達との間で行われたやり取りを、エイワスは既に把握していた。


「その通りだ。 けどね、オルソラ=アクィナスが意外な申し出をしてきたんだよ」

「うん?」


さすがのエイワスもそれは予想外だったらしい。
とある超能力者との距離が抜群に縮まっているシスター、オルソラ=アクィナスの申し出とは何なのか、
エイワスはほんのわずかに興味を持ち、ステイルの言葉の続きを待った。

537 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 20:59:39.04 ID:Rxev5jluo


ステイルは、オルソラから預かった言伝をエイワスに余す所無く伝える。





「――――――――――――――――――――――、」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・」

「―――――――、―――――――――。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ。 把握した」





エイワスはオルソラからの伝言を全て聞き終えると、ゆっくりと目を閉じ、思考を巡らせる。
途中、通りすがっていく虚数学区の住人達が不思議そうにエイワスを見ていったが、
金髪の怪物は気にも留めずオルソラ達に返す返事を考えた。

538 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:00:20.32 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・返答は?」


ステイルが尋ねる。


「・・・・・・・・・・・・そう、だな。 ならばシスター達にはこう伝えるといい」


エイワスはこれから先に起こるあらゆる事例の可能性を考え、
恐らくベストと思われる解答を伝えるようステイルに言った。




「『イギリスにある学園都市協力機関に今すぐ向かえ。 そして事が済むまでそこで待機していろ』。
 ・・・・・・・・・・・・これだけ伝えてくれればあとは問題ない」

「イギリスの学園都市協力機関・・・・・・? なぜシスター達をそんな場所へ?」




そんな瑣末事などどうでもいいだろう、とでも言いたげにエイワスは短く息を吐く。

539 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:01:21.50 ID:Rxev5jluo


「戦力にもならない彼女たちが、それでも我々に助力したければ素直にそこへ向かうよう
 伝えればいい。 何、ちょっとした保険だよ。 そしてその保険は、恐らく一方通行の心の支えになる」

「・・・・・・? ・・・・・・わかった、意味はわからないがそれだけ伝えておくよ」

「そうしてくれたまえ。 では、"当日"はよろしく頼むよ、ステイル=マグヌス」

「ふん。 僕も生命保険に入っておけばよかったかな、あの子のために」


言って、ステイルは電話を切った。


「・・・・・・これで役者も舞台も完璧に整った、か。 あとはミーシャ=クロイツェフと垣根帝督次第だな。
 多少の狂いは生じるだろうが、大体部に影響はないだろう。 ・・・・・・・・・・・・くく」


これで『茶会』の下準備は全て整った、とエイワスは満足気に空を見上げる。


「・・・・・・当日は曇り、か。 快晴が望ましかったが・・・・・・、まぁ、その時は『空を割ればいい』、か」


このホルスの先住人には一体どのような未来が見えているのだろうか。
それが分かる者が果たしてこの世界に存在するのかどうか、それは定かではない。


エイワスはその場でスゥっと姿を消し、虚数学区いつもの景観へと戻った。

540 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:02:14.93 ID:Rxev5jluo


――――――――――――――――――――――


イギリス、ロンドンにあるランベスの宮。


その『処女の寝室(ネイルベッドルーム)』と皮肉で呼ばれる住居のバスルームで、
イギリス清教の『最大主教(アークビショップ)』、ローラ=スチュアートは湯浴みを満喫していた。


「ふっふふん、ふっふふん、ふっふっふ〜ん♪」


ここに誰かが入ってくる事などまずあり得ないと知っている彼女は、
清々しいほどのまっ裸で、ローラはジェット水流マッサージ風呂に足を入れて楽しむという
個人的にお気に入りの方法で足湯をしていた。


・・・・・・・・・・・・しかし彼女、これがどこかデジャヴな雰囲気を醸し出しているとは気付かないのだろうか。


かつて『処女の寝室』にあっさりと侵入してきたあの化物の事を。

541 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:03:41.84 ID:Rxev5jluo






「ちーす」

「ん? ・・・・・・ふ、ふぇぇぇぇっ!!!?」






突然、謎の声がバスルームに響き、ローラが慌てて後ろを振り返ると、
そこには以前に自分の全裸写真をカメラに納めるというとんでもないセクハラを働いたホルスの先住人、
エイワスが笑顔で佇んでいた。


ローラは慌てるあまり、例の如くジェット水流風呂に足を滑らせて落っこちてしまう。

542 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:04:28.81 ID:Rxev5jluo


「がっ!!? がぼがぼぼぼぼ・・・・・・・・・・・・!!!」

「ふふふ。 相変わらずユニークだな、君の挙動は」


記念に一枚、とエイワスは全裸でM時開脚の体勢のローラを一枚、パシャリとデジイチで撮る。
以前に撮ったローラの写真はマジでオークションに出品してしまったのだろうか?


「ぷはっ!! ・・・・・・はぁ、はぁ。 来たるなら来たるって連絡くらいせいなのよ!!
 あと写真撮るなー!!!」

「別に構わんだろう? 女同士、裸の付き合いといこうじゃないか」


とか言ってるエイワスはしっかりその身を『白い布の装束』で包んでいるのだからフェアではない。

543 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:05:21.14 ID:Rxev5jluo


ローラは顔を真っ赤にし、全裸の肢体を隠すように身をよじりながらエイワスに尋ねた。


「・・・・・・それで、今回は何の用なりけるのかしら? 手紙ならもう読みきなのよ」

「分かっているよ。 そうではなくて、アレ貸してアレ」

「?」


アレと言われても何のことだかローラには分からない。

大体、『錬金術的要素を持つルシフェル』と呼ばれるこの怪物が何を貸せというのだろうか。
欲しい物があるならすぐにでも用意出来るのがこのエイワスという存在なのでは、と
ローラはジトーっとエイワスの顔を見つめていると、




「まだ君が保管しているのだろう? 『自動書記の遠隔制御霊装』。
 それをちょっと貸して欲しいんだけどね」




さらりと、恐ろしいことをあっさりと口に出してきた。

544 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:06:40.08 ID:Rxev5jluo


「・・・・・・意外なりけるわね。 あなたほどの存在があんな"ちっぽけ"な物を要求したりけるとは」

「そう、私にとっては何の価値もないガラクタだが・・・・・・。 あれが必要な時が来るかもしれない。
 だから今のうちにレンタルしておこうと思って、今日はここを訪れたんだが」


あの十万三〇〇〇冊の魔道書を自由自在に行使出来る遠隔制御霊装をガラクタだと言いのけるエイワス。

自動書記の遠隔制御霊装は現在までに二つ確認されており、一つは上条当麻の『幻想殺し』によって
完全に破壊されたが、もう一つは未だにローラ=スチュアートが保管しているのだ。

それを貸せというエイワスの真意は一体。


「・・・・・・仮に聞きたるけど、嫌だと言ったら?」

「ん? 普通に奪う」

545 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:07:42.50 ID:Rxev5jluo


そんなの当たり前じゃん、といった軽い口調で堂々と強奪宣言をする。
もはややりたい放題とかそういうレベルではない。


「だがそんな事をしたら君の立場が危うくなってしまうだろう? だからこうして
 許可を得るために来たのだと言っているのだよ」

「・・・・・・呆れたるわね。 『ホール=パール=クラアト』は放任主義なりけるのかしら?
 いくら"沈黙の神"と言われたる存在でも、黙って見ているにも程がありけるわよ」

「ほう? 意外に勉強熱心なのだな。
 オシリスの人間がそこまで知識を持っているとはね」


はぁ、とため息をついて肩をすくめるローラ。
どうやらその様子からして、素直に遠隔制御霊装を貸してくれるようだ。

彼女も彼女で、自分が楽しければそれでいいという考えなのかもしれない。
遠隔制御霊装を貸し出す事で手紙の内容が実現されるなら安い物だ、とローラは思った。

546 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:08:51.05 ID:Rxev5jluo


「にしても、我が主をあまり悪く言わないでほしいな、ローラ=スチュアート。
 それに、今の私は言わば『フリー』の状態だ。 クラアトもアレイスターも
 私には干渉できない状態になっている。 放任主義というわけではなかろう」


そう言ってくつくつと笑うエイワス。今のどこに笑うポイントがあったのだろうか。


「貸したるには貸したるけど、あれうを使ったらまた禁書目録が昏睡状態に陥たるわよ?
 その辺に関してはちゃんと下準備したるのでしょうね?」

「心配ない。 先ほど禁書目録と接触し、彼女の脳と魔道書を隔離した」

「!? 魔道書を全て奪ったの!?」

「違う違う、そんな事をしても禁書目録に気付かれるだけだろう。
 言い方が悪かった。 整頓した、と言ったらいいのかな?」

547 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:10:20.87 ID:Rxev5jluo


科学サイド風に説明してみよう。


インデックスの頭には『彼女本来の脳』と『十万三〇〇〇冊の魔道書』がある。
つまり『インデックス』というフォルダに『脳』と『十万三〇〇〇冊の魔道書』というデータがあるのだが、
『インデックス』というフォルダの中に更に二つ、フォルダAとフォルダBを作成し、その中にそれぞれ
『脳』のデータをフォルダAに、『十万三〇〇〇冊の魔道書』というデータをフォルダBへと振り分けて入れたのだ。


こうすることでインデックスは誰かに遠隔制御霊装を使用されても隔離されている『脳』に影響は出ず、
意識不明の状態に陥る事はなくなる・・・・・・らしい。


「遠隔制御霊装を行使しても禁書目録に気付かれぬよう、小細工を労したるわけね・・・・・・」


無茶苦茶な事しやがる、とローラは心の中で呆れ果てる。


「その点で言うと、確かに『右方』のフィアンマはアレイスターの言う通り、確かに惜しいところまで
 進んでいたわけだ。 まぁ私が禁書目録に施したアレは現世で言う『裏技』だからな。
 人間であるフィアンマにそこまでしろというのも酷というものだ」

「いや、知らぬけど」


・・・・・・それにしても、『先ほど禁書目録と接触し、彼女の脳と魔道書を隔離した』というエイワスの言葉。

先ほどというと、ついさっきまでインデックスと上条当麻の元に一人の魔術師が現れていたはずだが・・・・・・?

548 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:12:26.11 ID:Rxev5jluo


ローラは両腕でそのなかなかに豊満な胸を覆い隠し、
ペタンとしゃがんだ体勢で言った。


「好きにせい。 持ってけ盗っ人」

「許可を得たのに盗っ人呼ばわりとは手厳しいな。 では、借りていくとしよう」

「さっさと出ていきたるのよこの変態」


エイワスは踵を返し、バスルームから出ていこうとする。


が、途中でその歩みを止め、くるりとローラの方へ振り返った。


「む・・・・・・。 まだ何か用がありけるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

549 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:13:05.72 ID:Rxev5jluo


沈黙が続く。

バスルームの中で音を立てているのはローラお気に入りのジェット水流マッサージ風呂の
水流音だけだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


睨み合う二人。ただエイワスだけは物凄く意地の悪そうな笑みを浮かべていた。


ローラに悪寒が走る。


「・・・・・・・・・・・・ま、待ていなのよエイワス。 あなたまさか・・・・・・、」

550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:13:34.55 ID:cwItGlz10
むしろC:とD:のイメージかな……
551 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:13:52.57 ID:Rxev5jluo


その言葉を待っていたかのように、エイワスは懐からデジイチのカメラを素早く取り出した。


そして、某名人も裸足で逃げ出すほどの連射速度でシャッターをパシャシャシャシャ!!!!!
と切りまくる。


「ふふははははははははははは」

「きゃー!! きゃー!!!」


ローラは咄嗟に湯船に飛び込んで避難しようとしたが、
ゴツン!!と、何か見えない壁のようなものに頭をぶつけてしまった。


「なぬっ!!? 迷彩防壁術式!!?」

「逃がさんぞローラ。 『最大主教』のヌード写真だ、ここで撮らないでいつ撮る?」


言いながらもエイワスはシャッターを連打しまくり、彼女の艶めかしい肢体をデータに納めていく。

552 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:15:22.28 ID:Rxev5jluo


「ははははははは、はーっはっはっはっはっは」

「いやーいやー!! きゃー!!!」

「ふふふふふ・・・・・・、ふはははははははは・・・・・・」

「ひゃあああああ!!! も、もういい加減止めいなのよー!!!」

「大量大量。 ゴチになったな『最大主教』。 では、結果報告を楽しみにしていたまえ」


数百枚くらいローラのヌード写真を撮ったエイワスはご満悦な笑みを浮かべ、
そのまま音もなくバスルームから消え去ってしまった。
恐らく今頃は遠隔制御霊装を持ち、イギリスからまたどこかへ移動しているのだろう。


ローラ=スチュアートはしくしくと涙を流しながら呟く。


「およよよよ・・・・・・・・・・・・。 エイワスめ、もし次に会ったらブチ殺したりけるのよ・・・・・・」


バスルームではその後しばらく、女のすすり泣く声だけが響いていた。

553 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2011/03/05(土) 21:22:12.35 ID:Rxev5jluo
>>550
あー、それですかね。フォルダじゃちょっと安っぽいですよね・・・・・・アドバイスありがとうございます!


そんなわけで、今日の投下はここまでです。ていうかこれ一日二度投下になってませんか・・・・・・?


そんでもって、『あの人は今』編でしたがいかがだったでしょうか?
ローラとエイワスはもう何かアホですね。ただの。


さて、次回から再びロシア編を再開します。
みんなでお買い物にいくわけですが、どーも一人乗り気ではないお方が・・・・・・。


ではまた、三日以内に。

今日もここまで読んでくれた読者様に感謝の祈りを・・・・・・。

失礼しました!では。
554 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI :2011/03/05(土) 21:22:56.60 ID:Rxev5jluo



                          【次回予告】



『えっ、わっ、け、携帯電話・・・・・・?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華




『アンタ、堕天使のクセにそんなモン持ち歩いてんの?』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『どうもどうも、レッサーちゃんです。 ヴェントさーん、風斬さんと一緒に来てくださいよ!
 全部一方通行さんの奢りなんですから、遠慮することないですって!』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『オイ、マセガキ! ふざけた事言ってンじゃ―――』
―――――――――――『天使同盟』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:24:28.94 ID:Fo+hQDHAO
乙!!!!
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:29:41.44 ID:cwItGlz10
乙! とりあえず写真を貰おうか、言い値で。
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:38:22.18 ID:FQ/pSI4fP

やめろ一方っちゃん!
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:40:31.33 ID:R5rGRSAAO
おつ
それにしてもエイワスさん今晩も絶好調ですね
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:57:53.54 ID:KrK9ayn60
>>550>>553
イメージは「パーティション(Partition)」ですかね?
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 21:59:06.53 ID:iqVnWdB+0
乙!!
これからの展開が楽しみになってきたなぁ
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:01:30.52 ID:fCT+VvqGP
おつつ
まさかクイトがエイワスだったとは・・・
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:17:23.91 ID:XN+2q8mfo
ほんとよそうがいにもほどがあるよなー
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:18:26.13 ID:MRLo1q75o
えっ、クイトがエイワスなの?
ぜんぜんきづかなかったおまえらすごいな
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/05(土) 22:21:13.83 ID:3eE8Q+MSO
でも自分でクイトって名乗ってたじゃねーか!!
まさかアレは嘘だったのか!?
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/05(土) 22:41:04.63 ID:lo1YIwxd0
しっかしエイワスさん楽しみすぎと違いますか。
ババアの裸なんt
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/06(日) 00:15:14.48 ID:w7eVuDLu0
『ホール=パール=クラアト』って誰?
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 00:19:49.91 ID:MF1ad+4Wo
全裸でM字開脚の最大主教……だと……
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 05:23:47.59 ID:ohdi0TRHo
>>567
参考画像が必要だとは思わんかね
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [46875ghk]:2011/03/06(日) 07:04:12.17 ID:Fvg6AoJi0
そろそろ最終回だけど禁書目録二期が終わるころには終れるかな?
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 12:29:53.26 ID:CmpvYIMQo
>>566
「野獣」と「水棲龍」を象徴とする「沈黙の神」。「未来へ進む神」。

「隠された宇宙」。「指をくわえた子供」として描かれる神。

エジプト版クハルト(小人の姿をとったクリシュナ)。ラー=ホール=クイト
の双児の兄弟。

東の水平線の神ラー=ホール=クイトに対する西の水平線の神。

ギリシア神ハーポクラテスのエジプト名。セト
やシャイタン
と同一視される、

ホルス
の一面。「クラアト」はヒンドゥーの「火」と「戦争」の神「カルティケヤ」の原形。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 12:59:57.10 ID:+d5z6XpP0
いつの間にか一方通行の携帯にフォルダが追加されていて
開いてみるとあられもないロー裸の姿が無修正で……
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 13:06:30.86 ID:pG8titVQ0
それを偶々見た風斬・ヴェント・レッサーは……
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 13:08:59.37 ID:MNypURmao
口々に私も撮ってと叫んだのでした……
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 13:25:40.30 ID:2KGMSBye0
やったッ!さすがエイワス!!
俺達に(物理的に)出来ないことを平然とやってのけるっ!
そこにシビレるあこがれねェ!!

現出出来なくなったら退屈で死んじゃうんじゃないかこいつ
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 16:52:35.30 ID:w8Db4Tt7o
>>574
しかし死にたいと思っても[ピーーー]ないのでそのうちエイワスは考えるのをやめた
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/06(日) 21:20:46.95 ID:83Vs9Jr3o
>>554
やめろ一方っちゃん!!
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 07:08:45.95 ID:dwii8d3q0
説明乙
北や南にも居るんだろうかとふと思ったり
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 07:10:32.28 ID:dwii8d3q0
>>572>>573

うん、サーシャは完全に垣根ルートだこれ
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 14:32:07.02 ID:QcQBJ3bAO
オーケーオーケー
ババアのヌードには興味ないが、オルソラのおっぱいには関心がある。
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 21:03:30.22 ID:JDE2fduY0
ほう、ならババアのヌード写真は俺一人のものか
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 21:11:15.73 ID:eouJx2dYo
ババアババア言ってるけどあの口調は土御門の所為であって本当にババアかどうかはわかってないんだぞ?多分
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 21:37:57.62 ID:tUDVCwXW0
上の連中はローラの魅力を解ってないのですよ
583 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:06:21.84 ID:/EAbImxCo
>>569
え、もう禁書二期最終回近いんですか?
残念ながらこのSSはまだまだ続きます・・・・・・長すぎるって話ですよね

>>577
興味があるようでしたら関連書籍を閲覧してみることをおすすめしますよ
魔術日記とかトートの書なんかは有名です


そんなわけでこんばんわ。 今日も投下していきたいと思います。
禁書二期終わり近いのかー・・・・・・見たいなあ。15巻の話とかやってるんですか?


それでは、行きます!
584 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:08:02.41 ID:/EAbImxCo


――――――――――――――――――――――


「あぁ、あの白い髪の子でしょ? ちょっと前に女の子を連れて出掛けちゃったわよ?
 車に乗ってね。 なんだか随分楽しそうだったけど」

「そうですか・・・・・・、ありがとうございます・・・・・・」


風斬氷華はエリザリーナ独立国同盟の居住区で一方通行の居場所を聞き回っていた。


突如、拡声器から放たれたレッサーの馬鹿でかい声が聞こえ、独立国同盟の国境近くで
ヴェントと話し込んでいた風斬は様子が気になり居住区に来たのだ。


「ふん、愛しの彼に置いてかれちゃったわね。 あの白いの、女たらしこんでどこに行ったのやら」

「た、たらしこむだなんて・・・・・・、一方通行さんはそんな事しませんよ」

585 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:09:19.53 ID:/EAbImxCo


しかし居住区を捜し回っても一方通行は見つからず、独立国同盟の民間人に聞き込みをしたところ、
どうやら彼は女性を連れて――どうやらレッサーとサーシャらしい――偽装トラックに乗って出掛けてしまったようだ。


「大方、デートとかそんなんでしょ。 男なんてそんなモンじゃない」

「で、デート・・・・・・」


風斬の表情が若干暗くなっていく。
昨晩、あんな事があったこともあり、今日は明るく彼に振舞おうと張り切っていただけに、
こうして置いてけぼりにされると完全に出遅れてしまった感がどうにも否めない。


(エイワスさんがいれば一方通行さんがどこに行ったか一発でわかるのに・・・・・・)


エイワスを完全にGPS扱いする風斬。どうやら今日もエイワスはどこかへお出かけ中のようだ。

そういえばミーシャ=クロイツェフもまだ見かけていないな、と風斬はこの二つの符号に
なんとも言えない嫌な予感のようなものを感じる。

586 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:10:03.12 ID:/EAbImxCo


「ヴェントさん、あの・・・・・・今日天使さんを見ました?」

「天使? ミーシャ=クロイツェフなら見てないわよ」


ヴェントも見かけていないと言う。ミーシャは昨日、サーシャ=クロイツェフと共に
一夜を過ごしたはずだ。彼女ならミーシャの居所が分かるかもしれないと考えていると、


「!」


突然、風斬の着ているコートのポケットから機械音が鳴り響いた。

587 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:10:30.32 ID:/EAbImxCo


「えっ、わっ、け、携帯電話・・・・・・?」

「アンタ、堕天使のクセにそんなモン持ち歩いてんの?」


風斬は慌ててポケットから携帯を取り出し、本体を開いて液晶画面を確認する。


「あ、一方通行さん・・・・・・?」


画面に表示されている着信先の登録名を見た途端、パァァっと彼女の表情が明るくなった。
風斬はすぐに応答ボタンを押して携帯を耳に添えた。


(コイツ・・・・・・人形のクセにわかりやすい性格してるわね)


そんな風斬を横目で見ていたヴェントはくだらなそうに鼻を鳴らした。

588 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:11:53.36 ID:/EAbImxCo


『風斬か?』

「は、はい! おはようございます・・・・・・」


おはようございます、と起床の挨拶をしたら昨晩のベッドで自分がやっちゃった事を思い出し、
ボンッと顔が赤くなってしまった。


『オマエ今までどこにいたンだ。 捜しても見つかりゃしねェし』

「あ、はい、ごめんなさい・・・・・・。 さっきまでヴェントさんと国境付近でお話してました」


自分の名前を出され、ヴェントはチラリと風斬の方を見る。


「あの、一方通行さんは今どちらに?」

『ン。 航空機のコクピット』

「ああ、コクピット・・・・・・。 ・・・・・・って、えぇっ!!?」

589 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:13:14.11 ID:/EAbImxCo


思わず納得しかけてしまった風斬は慌ててリアクションをとった。


航空機のコクピット?彼は車でどこかに移動したという話だが、これはどういう事なのか。


「あ、一方通行さん、空にいるんですか!?」

『あァ。 モスクワで一旦トラック停めてよ、そこから空港に個人でセスナ持ってるロシア人がいたから
 そいつに金払って買い取ったンだよ』


一方通行とレッサー、サーシャを乗せたトラックは現在、モスクワ空港に停めてあるらしい。
そこまでは別に問題ないのだが、なんと一方通行はその空港でロシア人が個人で所有していた
航空機を買ってしまったのだという。

エイワスも今まで散々、無茶苦茶をやってきたが、この第一位もなかなか負けず劣らずな事をする。

590 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:14:27.85 ID:/EAbImxCo


「で、でも飛行機って・・・・・・一方通行さん、どこに行こうとしてるんですか?」

『レッサーやサーシャと一緒にロシア東部の原野にある「実験都市」に向かってンだよ。
 知ってるか? 巨大商業施設があるンだが』

「ちょ、ちょっと待ってくださいね」


ロシア東部にある商業施設など、風斬は知らない。
彼女は一旦耳から携帯を離し、ヴェントに問いかける。


「あ、あの・・・・・・ロシア東部の原野にある商業施設って知ってますか・・・・・・?」

「は? あの白いの、そんなところに行ってんの? ・・・・・・知ってるわよ、
 馬鹿げた規模のショッピングセンターの事でしょ」


行ったことはないけどね、とヴェントは興味無さそうに説明してくれた。

591 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:15:41.37 ID:/EAbImxCo


「あの、ショッピングセンターがあるらしいんですけど・・・・・・」

『なンだ? 近くに誰かいるのか?』

「あ、ヴェントさんです。 彼女が教えてくれました」


そんなヴェントはプイっとそっぽを向くだけだった。


「あの・・・・・・じゃあレッサー達とお買い物をしに行ってるんですか?」

『そォいうこった、クソ面倒な事にな。 で、オマエも来ねェか? って事で
 連絡してみたンだが・・・・・・、どォだ?』


一方通行からの誘いに風斬は大して考えもせず即答した。


「い、行きます。 これからすぐに向かいますね」

『じゃあオマエは自力で飛ンでこい。 あンま人目に付くよォな場所は飛ぶなよ。
 俺も全速で今向かってるから多分こっちの方が到着は早いはずだ。 オマエも着いたら俺に連絡しろ』

「わ、わかりました・・・・・・。 あ、ちょっと待ってくださいね!」


風斬は再び耳から携帯を話すと、少し離れたところで退屈そうにしているヴェントに話しかけた。

592 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:17:21.23 ID:/EAbImxCo


「ヴェントさん、あなたも一緒に行きませんか? お買い物」

「ハァ? 冗談でしょ、何で私までんなモンに付き合わなきゃなんないのよ」

「いや、その・・・・・・せっかくですし」

「行かないっつーの。 面倒くさい」

「そ、そんな事言わずに・・・・・・」


意外に粘ってくる風斬に頭の何かがぶち切れそうになるヴェント。
面倒なのはもちろんなのだが、それ以前に彼女は魔術師になって以来、まともにショッピングを
楽しんだことがない。買い物の楽しみ方を忘れてしまっているのだ。

しかし魔術師だろうが元『神の右席』だろうが、ヴェントだって一人の女の子なのだ。
たまには女の子らしく買い物の一つでも楽しみたいという気持ちが無いわけではないのだが、
やはりまだどこか、大人数で買い物を楽しむという行為に抵抗があるようだ。

593 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:18:01.08 ID:/EAbImxCo


「・・・・・・行かないって言ってんでしょ。 何でそんなにしつこいのよ」

「すみません・・・・・・」

「もう私のコトはいいからさっさと行って来ればいいでしょ」


と、そこで風斬の携帯から何か声が漏れてきている事に気付いた。
風斬は耳に携帯を添えて応答する。


「あの、何か言いました?」

『ちょっとヴェントに変われ』


言われるがまま、風斬はヴェントに携帯電話を差し出した。
ヴェントは怪訝な表情を浮かべながらもそれを受け取る。

594 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:18:40.56 ID:/EAbImxCo


「・・・・・・・・・・・・何?」

『オマエも来い。 さっきからレッサーが連れてこい連れてこいってやかましいンだよ。
 だから、・・・・・・オイ!! 勝手に中に入ってくるンじゃねェよ!!』

「は?」

『どうもどうも、レッサーちゃんです。 ヴェントさーん、風斬さんと一緒に来てくださいよ!
 全部一方通行さんの奢りなんですから、遠慮することないですって!』

『オイ、マセガキ! ふざけた事言ってンじゃ―――』

『それじゃ待ってますんで! あでぃおーす♪』


言いたいことだけ言ってきたレッサーはそのまま一方的に電話を切ってしまった。
あちらは随分と賑やかな様子だ。


「なんだってのよ・・・・・・」


会話が切れた携帯を睨みつけるヴェントを見て、風斬はクスっと笑う。

595 : ◆3dKAx7itpI :2011/03/07(月) 23:20:01.81 ID:/EAbImxCo


「・・・・・・ね? せっかくですし、ヴェントさんも一緒にお買い物しましょうよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ヴェントはしばらく無言で考え、やがて風斬に言った。


「私が行ったってつまんないでしょうが」

「そんなことないですよ・・・・・・? みんなで楽しく遊びましょうよ」


ヴェントは思い出す。昨日、自分の部屋で白髪の少年が自分に向けて言った言葉を。


『オマエが抱えてる憎しみ、この一方通行が全て引き受けた』


あの言葉の真意を確かめるためにも、ここはとりあえず彼に会ってみたほうがいいかもしれない。
ヴェントはなるべく自分の都合の良いように解釈し、


「・・・・・・クソが。 行きゃあいいんでしょ行きゃあ。 あーメンドくさ」


渋々ながらも了解し、一方通行達のショッピングに同行することにした。

596 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:23:03.11 ID:/EAbImxCo


――――――――――――――――――――――


一方通行達は空港で買った個人用の航空機を街の民間空港に着陸させ、
そこから徒歩でショッピングセンターに向かっていった。


ちなみに航空機を運転していたのは一方通行だ。
彼は航空機のコクピット内に入るやいなやそこら中にあったスイッチや機器等を一通りチェックし、
あっさりと未経験である航空機の操縦をやってのけたのだ。

その辺の対応力はさすがは第一位といったところか。


そして一同は風斬達の到着を待つため、一足先にロシア東部の超巨大商業施設の
入り口の前で屯していた。

597 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:24:48.46 ID:/EAbImxCo


「第一の私見ですが・・・・・・、何というか、言葉もありませんね」

「ふふん、どうです? すごいでしょうこのショッピングセンター!
 なんたってここは元学園都市の協力機関だった都市ですからね、
 世界でも注目されている最新技術を余す所無く使用した最先端の街なんですよ」

「なンでオマエがそンなに得意げなンだよアホ」


今にして気付いたのだが、街の入り口付近にはこのショッピングセンター専用の
鉄道が走っているらしい。すぐ近くに駅があるのを彼らは確認している。


だったら航空機など使用せずともモスクワから電車で移動すれば楽だったのだが、
そもそも大金を支払って航空機というアシを手に入れたのもレッサーが原因だ。

598 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:26:10.10 ID:/EAbImxCo


彼女は、

『モスクワからこのショッピングセンターまではかなりの距離があります、
 だから車での移動より飛行機の方が断然早いですよ! ほら、ちゃっちゃと手に入れて
 きちゃってください!』

などと言い出したものだから、一方通行もその時は素直に納得し、空港のATMから
自身の預金口座にアクセスして目が飛び出るほどの現金を手に航空機を買ったわけだ。


なので鉄道が通っている事に気付いたときはレッサーに憤慨しかけたが、
ろくに調べようともせず彼女の言葉にまんまと乗せられた自分も悪い、と一方通行は彼女を責め立てなかった。


にしても、


「クソ・・・・・・、無駄な出費だったな。 やってることがエイワスと変わらねェ」

599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:26:22.71 ID:d+IZhjwY0
>>583
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00871/v00013/
ここで見れない?

あと
http://www.woopie.jp/
ここで検索かけると一部は見れるかもよ?
600 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:27:21.75 ID:/EAbImxCo


「航空機の事ですか? 別にいいじゃないですか、私たちにとっては大金でしたけど、
 あなたにとっては端金にもならないんでしょう?」

「そォだけど、そォいう問題じゃねェだろォが・・・・・・。 過ぎたことをグチグチ言う気も無ェけどよ」

「カッコイー! 女のためなら航空機の一機や二機くらいホイホイ買えちゃう!
 やっぱ男はお金ですよお金。 私、玉の輿狙っちゃおっかな〜♪」


猫なで声で杖をついている一方通行の右腕に自分の腕を絡ませ、わざとらしく胸を押し付けてくるレッサー。
今ここでチョーカーの電源を入れれば血流操作で彼女を瞬殺出来る一方通行だが、
ぎりぎりのところで堪えた。


そんなアホ二人は放っておいて、サーシャは街の入り口から見える
景観に圧倒されていた。


「第一の質問ですが、なぜこの街はどこもかしこも画面だらけなのですか?」

「半公開型ARっつーシステムを使ってンだよ。 街の道路、横断歩道、ビルの壁面、
 店ン中の壁や床、何もかもが半公開型AR用のタッチパネルで出来てやがるンだ」

「ほー・・・・・・・・・・・・」


まるで田舎から上京してきた人のように、サーシャは感心しながらキョロキョロと
街の様子を眺めている。
ただし、ここでもサーシャの格好は目立ってしまっているため、
彼女は入り口の壁から覗き込むような体勢をとっていた。

601 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:29:35.80 ID:/EAbImxCo


先ほど一方通行がサーシャに説明していた通り、このショッピングセンターは一風変わった特徴がある。
半公開型ARというシステムを使っており、街全体が巨大なウィンドウショッピング施設のようになっているのだ。


街の道路、ビルの壁面、サーシャが今触れている入り口の壁も、全てが半公開型AR用のタッチパネルに
なっており、そこに触れるだけで捜したい商品のカタログや、街の案内図など、何でも調べることが出来る。
ちなみにこの街の半公開型ARのモニタにはCMYKではなくRGBが取り入れられている。
RGBはパソコンの画面やデジタルカメラの画像などに利用されている表現方法だ。


つまりこの街は一日中、言ってしまえば年がら年中ピカピカと光っているため、
夜の闇などかき消されてしまうのだ。


「第二の私見ですが、目が悪くなりそうです」

「だろォな」

602 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:31:24.49 ID:/EAbImxCo


サーシャは自分のすぐ側にあるモニタもタッチパネル式だと知り、二人に尋ねる。


「第二の質問ですが、この街の地図を表示するにはどうしたらいいのでしょう?」

「うん? 地図が見たいんですか? どれどれお姉さんに任せてみなさい」


レッサーは一方通行に絡ませていた腕を解き、サーシャの元に歩み寄った。
彼女は慣れた手つきでキーボード状のタッチパネルを表示させると、指をわきわきと動かしながら
タタン、とタッチパネルを軽快に叩く。


「ほれ、どんなもんだい」

「おおー・・・・・・、ありがとうございます」


表示された地図はまるで小学生が自由ノートに書いた難解複雑な迷路のようだった。
この街は必要な施設を取り入れられるだけ取り入れた結果、その規模がドーム球場六五〇個分という
ふざけた大きさになってしまっている。

603 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:32:29.98 ID:/EAbImxCo


今現在、一方通行達がいるエリアはまだ普通の大きさなのだ。ホテルや免税店など
外から来る客に用意されたこの場所は都市部と同じくただ高層ビルが立ち並んでいるだけなのだが、
商業施設が集中して並んでいるエリアは『とてつもなく巨大な構造物』と化してしまっている。


「第三の私見ですが、ここは地図がないとほぼ一〇〇パーセント迷ってしまえる自信があります」

「そォ思うンなら俺から離れンなよ」


そんな彼の言葉に少し照れてしまうサーシャ。ただ子供扱いされているだけなのだが。


「私はこの街の地図を頭に叩き込んでありますから、迷う心配はないですよ」

「第三の質問ですが、レッサーはここに来たことがあるのですか?」

「ここで私、お店やってた事あるんですよ。 ・・・・・・って、言いましたよねそれ」

「オマエみてェなガキが経営出来る店がここにあるワケねェだろ。 なンて店だ?」

「『ニホンダルマ』」

604 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:34:41.96 ID:/EAbImxCo


それを聞いて一方通行はくだらねェ、と鼻で笑った。


「第四の質問ですが、ニホンダルマとはなんですか? あの片目に筆で目を書くあれですか?」

「知らねェでいいンだよ、オマエがそンなくだらねェ事」


すぐそこにあるタッチパネルで検索すれば情報を得る事が出来るだろうが、
やめたほうがいいと一方通行はサーシャを引き止める。


「つーかその店はまだ存在すンのか?」

「多分あると思いますけどねー。 しばらくここに来てないからわかんないです。
 『新たなる光』の皆でやってるんですけど」

「そンな悪趣味な店名じゃ来る客も来ねェだろ。 もう潰れてンじゃねェの?」

「何を言いますか! 超大繁盛してましたよ! ・・・・・・そういえば夏頃に珍しい客が来たのをふと思い出しました」

605 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:37:09.72 ID:/EAbImxCo


「珍しい客?」

「プライバシー保護のため詳細は伏せますが、なんと日本人の女の子です。
 中学生くらいの、茶髪の少女でした」


あの店名で寄ってくる日本人のガキなんて、ろくなヤツじゃねェだろォなと、
一方通行はその誰とも知らぬ少女に失笑した。


「第五の質問ですが、他のビルに比べてやたら飛び出ているあのクレーンのようなものはなんですか?
 ずいぶんと遠くにあるのでよく分からないのですが・・・・・・」


サーシャが指差す方向には、確かに工事現場などでよく見かけるクレーンのような
ひたすらに長い山なりの何かがあった。


「・・・・・・あれは、多分ジェットコースターのレールじゃないですか? 託児所の」

「託児所にあるジェットコースターがあンなバカみてェに高いコースになるわけねェだろ。
 本格的にテーマパークでも開こォとしてて、それの建設現場か何かじゃねェのか?」


少なくとも彼らから見て、そのジェットコースターのレールであろう物の高さは八、九〇メートルはある。
子供向けとは到底思えない構造だ。


「ま、ここは『実験都市』でもあるし、案外マジでその託児所のジェットコースターだったりしてな。
 ガキでも楽しめるよォなスリルマシンを設けてる、とかよ」

「あはは、そうかもしれませんねー」


そんなわけねーだろ、と一同は笑いあった。
606 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:42:45.89 ID:/EAbImxCo
>>599
ありがとうございます! しかし私は見たいアニメは大抵BDとか買って見るタイプの人間ですので
おとなしく月末を待っています。地元でやってくれりゃもちろんテレビで見るのですが


そんなわけで今日はここまでです。
久々に登場した一方通行達。彼らには是非ともほのぼのパートで頑張ってもらわねば。


そういえば禁書二期の二巻を見ました。あわきん可愛かったですねー。
あのかわいい顔が次回にゃグシャられると思うと興奮しますな、うへへ。


ではまた、三日以内に。


今日もここまで読んでいただき、ありがとうございました!
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:44:25.81 ID:exz5sbZUo
>>1おつ
楽しみにまってるよ
608 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/07(月) 23:45:09.74 ID:/EAbImxCo



                          【次回予告】



『・・・・・・気付いてた、んですか・・・・・・』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『俺を見くびるンじゃねェぞマセガキが』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:46:37.01 ID:3jHTJRwT0
おつ〜
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:52:51.27 ID:IVKMQuFR0
乙。
あれか、きっとレッサーがパンツ履いてないことに、一方さんは気づいてたんだな。さすが第1位。
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/07(月) 23:53:34.71 ID:zzqX7hN50
>>1乙なりけるのよ

次回はシリアス回の予感ww
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 00:26:40.02 ID:uU2jVJDZ0
>>610
取り敢えずコーヒー吹いて零した分払ってもらおうか
ついでに
スレ一覧でこのスレとその下のスレが混ざって
一方通行「フラグだと? って事ァ」( ^ω^)「私はあなたが好きって事です♪」
こう見えてまたコーヒー吹いて無駄になった分も

あ、>>1乙です
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/08(火) 01:12:08.37 ID:fOBI2TLt0
乙〜続きが楽しみなりけるのよ
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 02:51:48.89 ID:C+rX4JJ40
乙!
キョロキョロしてるサーシャちゃんに萌えた奴は挙手
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 02:55:51.74 ID:Nti8V98oo
ショッピングセンターっていうと、ガブリエルと一方さんが
セブンスミストを破壊してた頃を思い出す……

二人とも成長したんだな
いや、今回も壊すかもしれんが
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 06:40:39.53 ID:SUlZcNtAO

ここもいずれ木っ端微塵になるのですねわかります
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 07:27:07.82 ID:ILLZsLOs0
やっぱりすでにサーシャも一方さんの魔の手に……
マジパネェ一方さん
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 19:59:58.33 ID:T1b864fAO
「垣根の坊や、今特訓とかしたくない?いや、したくなくてもしろ。今憂さを晴らしたい気分なのよ」
ってワシリーサが言ってた
619 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:22:45.84 ID:hqGYnzPPo
こんばんわ、投下しに参りました>>1でございます。


そろそろ新訳の発売日が近づいてきましたね。とても楽しみです。
一方通行の出番増えるといいなあ・・・・・・。


では、行きましょう。今回はレッサーが時分の中の葛藤にケリをつけるお話です。
620 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:24:12.74 ID:hqGYnzPPo


とりあえず三人はショッピングセンターの前で風斬氷華とヴェントの到着を待つことにした。

サーシャは半公開型ARのタッチパネルにご執心なようで、さっきから両手の人差し指だけ
ピンと立てたまま、無我夢中でカタログやら新入荷商品の情報やらをチェックしている。


そんな彼女を視界に入れたまま、一方通行とレッサーはサーシャからほんの少し離れた場所にある
ショッピングセンター入り口付近のベンチに座ってボーッとしていた。


否、ボーッとしていたのは一方通行だけであり、レッサーは今、心の中で静かに覚悟を決めているのだ。


(・・・・・・言うとしたら、もう今しか無いですよね)

621 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:25:05.71 ID:hqGYnzPPo


レッサーはチラリと横目で一方通行の様子を窺う。
彼はショッピングセンターに行き来する大勢の客を目で追っていた。絶賛暇を持て余し中ですと言わんばかりの
退屈そうな雰囲気がダダ漏れである。


レッサーというこの十歳前半の――自称、中学生――少女は、イギリスにある魔術結社予備軍、
『新たなる光』に所属している魔術師だ。


彼女は英国を愛する気持ちから、今までイギリスのために利用できそうな人物に
様々なアプローチを仕掛けていた。学園都市に住む上条当麻もその一人だ。


第三次世界大戦が終結し、結局上条当麻を手中に収める事が叶わなかったレッサー達『新たなる光』は、
次のチャンスをただひたすら、静かに待っていた。



そして、イギリスに『天使』が舞い降りた。


622 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:25:58.50 ID:hqGYnzPPo


当初、イギリスにあのミーシャ=クロイツェフが来訪しているという情報を聞いたときは
耳を疑ったが、実際にその目で確認すると彼女たちはすぐさま行動に移った。

ミーシャ=クロイツェフは何らかの理由で何人かの人間と共に行動をしていた。
あの天使がなぜそんな事を、とも思ったが、瑣末なことは気にしなかった。


とにかく、本物の大天使の力を利用することが出来れば、イギリスは安泰だ。
外の魔術結社から攻撃や圧力をかけられる事も無くなるだろう。


しかし彼女たちの天使を手に入れるための作戦は、白髪紅眼の化物によって頓挫してしまう。


それが今、レッサーの隣にいる少年。学園都市最強の超能力者(レベル5)、一方通行(アクセラレータ)だ。


彼の圧倒的な力によって『新たなる光』は壊滅的な被害を受けてしまった。
それにより、ベイロープ、フロリス、ランシスの三人は天使を諦める事を決めた。


だがレッサーだけは諦めなかった。
何せ天使だけでなく、この一方通行という少年も天使に負けず劣らずの力を持っていたのだ。
天使が無理でもこの少年なら、何とか利用出来るかもしれない。


そう思い、レッサーは一方通行が率いる『天使同盟(アライアンス)』と行動を共にすることを決めたのだ。


623 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:27:14.03 ID:hqGYnzPPo


『天使同盟』というもうこれ以上はないと言っても過言ではない超巨大組織。
もしこれでこの組織を利用出来るチャンスを逃したら終わりだ。
利用しようとしている事がバレたら、本当に本気で『新たなる光』は壊滅してしまう。

壊滅ならまだいいが、下手をしたら『天使同盟』のジェネラルマネージャーでもある、あの聖☆おねえさんに
殺されてしまう可能性も十分に考えられた。





『私にとってはイギリスがこの先どうなろうと、
 言ってしまえばこの星がどうなろうと全く興味はないが―――』





だが聞いてみると、エイワスは『新たなる光』にもイギリスの行く末にもまるで興味がないらしい。
利用しようとしている事がとっくにバレていた上でこの発言だ。
いつも明るく振舞うレッサーでも、さすがに少しヘコんだ。

624 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:28:08.44 ID:hqGYnzPPo


しかし、エイワスは続けてこう言った。




『―――彼はおそらく、そうは思わないだろう』




彼、とは。今自分の隣で大きなあくびをかましている少年、一方通行の事だ。

しかしレッサーは信じることが出来なかった。この白髪の悪魔が、果たして本当に
たかが一魔術結社予備軍の瑣末な願い事を聞いてくれるのか、と。


そして『天使同盟』の良心、風斬氷華にも自身の目論見を看破され――これはレッサー自身から吐露したのだが――、
レッサーは一方通行が本当にイギリスがピンチになった際に助けてくれるのかどうか、相談した。


風斬氷華は笑顔で、大丈夫だと答えてくれた。自分も貢献する、とまで言ってくれた。

625 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:29:25.87 ID:hqGYnzPPo


思わず涙ぐんでしまった。利用というイメージの悪い方法でイギリスに貢献させようとしていた自分を
受け入れてくれ、その上背中を押してくれたのだ。


だからレッサーは今、運良く二人きりになれた状況で――一応サーシャもいるのだが――、
自分の気持ちをはっきりと一方通行に伝えようと覚悟を決めているのだ。






「・・・・・・わァーかったよ、ったく。 オマエから言えねェンなら俺から言ってやる。
 イギリスに何かあったら、俺が、俺たちが、すぐに駆けつけてやンよ。
 ・・・・・・・・・・・・これでいいンだろ?」





626 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:30:08.03 ID:hqGYnzPPo


そしてレッサーは気持ちを固め、表情を引き締め一方通行の方を振り向いて・・・・・・、開口一番にイギリ・・・・・・。


・・・・・・・・・?・・・・・・・・・え?


「・・・・・・あ、あれ? はい?」

「聞こえなかったのか? 面倒くせェな」





今、彼は何と言ったのだろうか?恐らくは自分に話しかけてきたのだろうが、
何しろ唐突だったので上手く聞き取る事が出来なかった。

627 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:31:07.86 ID:hqGYnzPPo


「アレだろ? 俺がオマエら・・・・・・なンて言ったか、『新たなる光』?
 に会った時にも言ってただろそンな事。 イギリスに何かがあった際に力添えして欲しいとか何とかってよォ。
 ったく、ロシアに着いてからいちいち俺の機嫌を窺うよォにチラチラ視線送ってきやがって。
 あからさま過ぎるンだっつーの。 まさか気付いてねェとでも思ったか? 認識が甘ェンだよクソボケ」

「あ、・・・・・・は、ぁ・・・・・・?」


エイワスだけじゃない、垣根帝督だけじゃない、風斬氷華だけじゃない。ミーシャ=クロイツェフだけじゃない。


一方通行も、とっくにレッサーの抱いている思いに気付いていた。
いつからだろうか、彼の口ぶりからしてロシアに着いた時から?


「もしもの時は、イギリスの為に力を貸して欲しい。 それがオマエの願いだろ。
 分かってンだよそンな事は。 オマエから言ってきた事なンだからなァ。
 大方、俺にお願いしても聞いちゃくれねェだろォから言おうかどォか悩ンでたってとこだろ」


とにかく彼は気付いていた。

628 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:31:59.26 ID:hqGYnzPPo


レッサーはポカン、と一方通行の顔を見つめることしか出来なかった。


確かに、初めて彼と出会った時にもそんな事は言っていた、と思う。
ミーシャ=クロイツェフの力をイギリスのために利用させろ、と。
それを遊びだと言われて、ちょっとムカついた事もあった。


確かに、改めて一方通行にお願いをすること躊躇していた事はあった。
いや、ついさっきまで、現在進行形でその気持ちでいっぱいだった。


確かに、一方通行にお願いをしたところで断られてしまうだろう、と諦めかけていた。
イギリスで会った時も、圧倒的な力でねじ伏せられ、拒否された前例があるのだから。

629 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:32:49.11 ID:hqGYnzPPo




それにしても。それにしたって。




「・・・・・・気付いてた、んですか・・・・・・」

「俺を見くびるンじゃねェぞマセガキが」


一方通行はロシアに入ってからも色んな人物と関わり、物事を考えていたが。
まさかちゃんと自分の事も気にかけていてくれているとは、レッサーは思わなかった。


そしてエイワスの言ったとおり。風斬氷華の言ったとおり。イギリスの為に力を貸してくれると、彼は言ってくれた。

630 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:33:43.35 ID:hqGYnzPPo


「要はあれだろ? ヘルプっつーか、助っ人みてェなモンだろ?
 イギリスで魔術的要素が絡ンだ何らかの事件が起きたら、助けに来いって。
 そォいう意味なンだろ?」

「は、はい。 でも、なんで・・・・・・? イギリスであなたと戦った時は、
 あなたは拒否してきたじゃないですか」

「あン時はオマエら、ガブリエルを利用しよォとしてただろ。
 それにあン時の俺はちょっと頭がおかしくなってたからなァ」

「?」


首を傾げるレッサーを無視して、一方通行は続ける。


「だから、そンくれェの事ならいくらでもやってやるっつってンだ。
 俺たちもイギリスにゃ世話になってるからなァ(二度も)。
 まァ、オマエが言いづらくなっちまった原因は俺にもあるンだが」

「一方通行さん・・・・・・」

「これでいいだろ? ンな気持ち抱えたまま楽しくショッピングなンて出来るわけねェからな。
 ハイこれにて一件落着。 この話はオシマイだ。 分かったらいつも通りに振る舞えマセガキ」

631 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:36:59.98 ID:hqGYnzPPo


そして一番驚いた事は、一方通行が急に。唐突に。突然この話を持ちかけてきた事だった。


車の中でも航空機の中でも、ショッピングセンターに着いてからも、
イギリスの話題なんて全く出てこなかったのに。そんな話は全然していなかったのに。


一方通行は舌打ちをし、地面の半公開型ARに流れている『本日の星占いランキング』を眺める。
照れ隠しか何かなのか、彼の表情は誰が見てもムスーっとしたものになっていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


レッサーはしばらく無言のまま一方通行の方を見つめていたが、
やがて歳相応の可愛らしい笑顔を浮かべて言った。


「ありがとうございます、一方通行さん。 よろしくお願いしますね」

「はいはい」


明るく振る舞いながらもどこか心に霧がかった何かがあったが
もうそれは払拭され、レッサーはすっきりとした表情を見せていた。

632 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:37:55.50 ID:hqGYnzPPo


「では、そういうことで! 今夜は私の部屋でさっそく今後のイギリス事情について熱く語りましょう!」

「なンでそォなる。 俺は英国市民じゃねェンだぞ」

「いいじゃないですか! 二人でイギリスの未来を熱く語り、その後は他愛もない話で盛り上がって、
 いつの間にやら二人はいい雰囲気に。 そして何かの拍子でベッドに押し倒される私! あぁ・・・・・・いけない、」

「随分豊かな妄想力ですねェ」


レッサーの熱い妄想を適当にあしらいながらも、いつもの調子に戻ったレッサーを見て
一方通行は薄く笑みを浮かべた。


「もう私は一方通行さんの虜です。 すこぶる惚れちゃいました!
 気付かぬ内に私とあなたと間には立派なフラグが立っていたのです!」

「フラグだと? って事ァ」

「私はあなたが好きって事です♪」

633 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:38:57.28 ID:hqGYnzPPo


雰囲気もクソもない告白を受けた一方通行。レッサーはズイっと体を寄せて
一方通行の顔を上目遣いで覗き込む。


「お返事は?」

「返事っつゥか、非常に嬉しゅうございます、はい」

「本気で受け取ってないでしょそれ!!」


これもまぁ、レッサーのいつもの冗談だ。と、一方通行は適当に応対した。


「私は本気ですよ!? 一方通行さん、どうせフリーなんでしょ?
 ほれほれ、このナイスバディでせくしぃな私を伴侶に出来ちゃうんですよ?」

「ナイスバディ? セクシー? 笑わすな、オマエちょっと風斬辺りの体つきをよく観察してこい」

「え。 なんでそこで風斬さんの名が? 体つきって、・・・・・・一方通行さん、まさか」

634 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:39:59.13 ID:hqGYnzPPo


「オイ、クソみてェな誤解してンじゃねェぞ」

「く・・・・・・!! これは強力なライバルが現れましたね。 一方通行さんは風斬さんのような
 ホルスタインバディがお好みですか!」

「やっぱいつものオマエは鬱陶しくてしょうがねェな・・・・・・」


ギャーギャーと何か言い争っている二人を見て、タッチパネルに夢中になっていたサーシャが首を傾げている。


「ま、今はそれでいいでしょう。 でもいつか、あなたの方から私に振り向いてくれるように
 尽力しますからね! 覚悟はいいですかぁ〜? むふふふふふ・・・・・・・・・・・・」

「三世紀くらいはかけねェと無理だなそりゃ」


じゃあ三〇〇年経ったら一方通行はレッサーに惚れるのだろうか。

635 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:40:55.64 ID:hqGYnzPPo


と、レッサーは不意に自分の顔を一方通行の顔に近付け、


「ま、とりあえず先制攻撃って事で♪」



彼の唇に、軽く自分の唇を押し付けた。



「ンが・・・・・・ッ!!? またこのパターンかよ・・・・・・!!! マジでブチ殺すぞクソガキィ!!」

「"また"ってどういう事ですか? え? まさか既に、誰かと愛の口づけをー!!?」

「"愛の"はいらねェよ!! あァークッソ、なンなンですかァこのゴミみてェな展開は・・・・・・」

「にひひひひ」

636 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:43:44.61 ID:hqGYnzPPo


レッサーの告白が果たして本気だったのかどうかは、本人にしか分からない。

しかしここ最近、『女性』を多少は意識してきた一方通行の顔はほんのわずかに紅潮していた。


(本当に、ありがとうございます。 一方通行さん)


さて、あとは風斬氷華とヴェントの到着を待ち、ショッピングを楽しむだけだ。


ちなみに先ほど一方通行が見ていた星占い。これは日本でやっている朝の情報番組を
こちらで流しているものらしい。日本時間で『明日』の占い結果も発表されていた。


結果は、


『明日のあなたの運勢は最悪! もしかしたらあなたの大事な物や人が全部離れていっちゃうかも!?』


との事だった。

637 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:44:45.62 ID:hqGYnzPPo


そんなこんなで到着してから三十分くらいだろうか。
駅の方から見知った顔が二人、歩いて来るのを発見した。


「すみません、お待たせしました」

「風斬さん! ずいぶん早かったですね、ていうか早すぎません?」

「ええ、『飛んで』きたので」


そう言って笑顔を振りまいているのは風斬氷華だ。
まさか本当に飛んで来るとは、と一方通行も若干驚いている。


「一方通行さん、お待たせしました」

「別に待ってねェよ」


と、風斬の後ろからフラフラと不安定な足取りで歩いて来る女性がいた。ヴェントだ。

638 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:45:32.44 ID:hqGYnzPPo


「テメェ・・・・・・堕天使、あとで覚えてろよ・・・・・・」

「?」


ヴェントの顔色がどこか青い。まるで『超音速旅客機に無理やり乗せられて大空を連れ回された』ような、
そんな乗り物酔いをしてしまった人のようだった。ほんの少し涙目になっている彼女の表情は珍しい。


「オマエ、そンな格好で来たのかよ。 目立ってしょうがねェじゃねェか」

「うるせぇよ白いの。 アンタだって人の事言えねぇだろうが」


というか、一人は真っ白頭髪に紅い眼の少年。一人はスカートから『尻尾』が伸びているアングロサクソン人。
一人はどういうファッションセンスを持っていたらそんな格好になるんだという、拘束着を来た金髪の少女。
一人は全身真黄色に包まれた一世紀以上前の衣服で、舌から鎖をぶら下げ顔中にピアスを留めている魔術師。


こんなのが集団で街を歩いたら、目撃者は仮装パーティでもやっているのかと勘違いしてしまうだろう。
この中でまともなのは風斬氷華だけだ。AIMを利用して衣服を自在にチェンジ出来る設定は少し卑怯である。

639 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:46:42.64 ID:hqGYnzPPo


だから、


「よく考えたら風斬。 オマエは服とか買う必要は無ェよな?」

「え・・・・・・。 そ、そんな事ありませんよ。 AIMの暖かみの無い服より、
 人が作った服のほうが着てて心地いいですし・・・・・・」

「そォいうモンなのか? だったらいいけどよ」


一方通行が適当に納得すると、レッサーは高らかにショッピングの開始を宣言する。


「それじゃ、早速ショッピングと洒落込みますか! もちろん一方通行さんの奢りですからね!」


そこにサーシャも便乗して、


「よろしくお願いします、一方通行」

「ふざけやがって・・・・・・、俺はオマエらの財布じゃねェンだぞ・・・・・・」

640 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:47:44.88 ID:hqGYnzPPo


しかし、両手に花どころの騒ぎではなくなっている今の一方通行の状況を
世の男性諸君が覗き見たら、誰もが第一位をぶん殴る術を習得したいと思うだろう。誰か木原数多にザオリクを唱えろ。


メインである、身体の構造以外は天然おっとり系少女の風斬氷華。
天真爛漫で、屈託の無い笑顔がぴったりのお調子者、レッサー。
寡黙で、喋ったとしてもその口調はどこか機械的。しかし小さな体躯と前髪で隠れている目があどけなさを彷彿とされるサーシャ。
どんな人間にも基本ツンツンしており、気に入らなければすぐに毒づく。しかし極稀に見せる『デレ』に定評のあるヴェント。


完璧なバランスである。そんな十人十色な女の子達を引き連れてショッピングを楽しめるのだ。
財布にくらいなったって問題ないだろう。ていうかなりたい。


「・・・・・・で、まずはどこに行きてェンだよ。 人多すぎンだろここ・・・・・・」

「うーん。 皆さんは何かリクエストありますか?」


レッサーが女性陣に尋ねる。

641 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:48:33.28 ID:hqGYnzPPo


「わ、私は皆さんに着いて行きますので・・・・・・」

「第一の解答ですが、風斬氷華に同じです」

「帰りたい」

「気が合うなァ、ヴェント。 俺も帰りたくてしょうがねェ」

「じゃ、とりあえず適当に見ていきましょう! ええーと、カタログカタログ・・・・・・」


レッサーがタッチパネルを使ってありとあらゆる商品が記載されたカタログを表示させる。
女性陣は覗き込むように表示された画面を見る。約一名も本当は興味ないんだけど、的な感じで見てる。

それを遠目に見る一方通行は一体どれだけモノを買わされるのかと思うとため息しか出なかった。

しかし、現在独立国同盟にいる垣根やエリザリーナやワシリーサ。

そしてミーシャ=クロイツェフにどんなお土産を買ってきてやろうかと考えると、
一方通行の気持ちも多少は弾んでいった。


一行は街の『商業施設』エリアに向かう。

642 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:53:44.90 ID:hqGYnzPPo
おうおう、こんな個性的な女の子四人に囲まれて買い物たぁええ身分じゃのう第一位。


そんな感じで今日の投下を終わろうと思います。レッサー良かったね。
それと地味にスレタイ回収完了しました。


ここから先の展開は、


一方通行サイド=買い物とかしながら基本ギャグな流れ
垣根帝督サイド=魔術の特訓とかそんな感じのシリアスな流れ


で、進行していくと思います。そして次回は垣根帝督のターンです。

次回更新は三日以内。

では、今日もここまで読んでくださった方に感謝しながらお別れです。ありがとうございました!
643 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/08(火) 20:54:23.52 ID:hqGYnzPPo



                          【次回予告】



『テレレテッテテー♪ 「痛みとか何かそんなんを和らげる札」〜♪』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『都合良すぎやしねえか? またお前お手製のとんでもアイテムかよ?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督



644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:56:20.96 ID:0oVCwujVP

いろいろ言いたい事があったけど一周して風斬メイン扱いおめでとう
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:57:24.51 ID:w8r3mknC0
>>1乙です
ていとくんにも少しは恋愛フラグを・・・ww

そしてエイワスはホントに青い狸になってしまったのかwwwwww
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:57:51.90 ID:SUlZcNtAO
乙!今回はスレタイ回収速かったな
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 20:59:47.90 ID:WjhhHp5Ho
乙!
エイワスwwwwwwwwww
「痛みを和らげる札」 じゃあないのかよwwwwwwwwww不気味すぎるわwwwwwwwwww
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:05:33.70 ID:AGgyCoMh0
ネーミングそのままだなエイワス
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:08:53.88 ID:wBvuh+K90
レッサーの、レッサーによる、レッサーのための一方通行陥落計画

――『250年法』の始動である

こうですかもげてしまえ
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:09:17.42 ID:6am87SBjo
エイワス・・・・それ麻薬的な何かやないかい・・・・・・
乙!
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:12:57.15 ID:vY7nvyuAO
新約「フラゲだと?って事ァ」
読者「私はあなたが好きって事です♪」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:29:33.81 ID:PhoVGk/X0
星占い……
ベレツレムの星といい、天体関係が不気味すぎる

そしていよいよ空気なガブリエルェ・・・
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 21:38:31.83 ID:isVKsi0DO

ミーシャはラストのために控えてるってなんか言ってたような
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:25:09.62 ID:C+rX4JJ40

何というか、サーシャはまだ色恋沙汰に興味が無いような印象を受けた
フラグが立つとしたら、やっぱりていとくんとだろうか
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/08(火) 23:54:51.40 ID:6P3cQmvOo

明日の運勢は最悪か……
一方通行最後の休暇かな……
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 00:03:15.64 ID:zW8+zggg0
一方さんもげろ
ちょっと木原神拳習得してくる
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 02:04:09.54 ID:eKV5m5ZPo
風斬さんも含めほかの女性陣もみんな素敵ですが
ガブリエルがメインだと信じてる

乙!
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 02:57:04.97 ID:ca2QynDNo
木原くンの為にちょっくらザオリク覚えてくる
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/09(水) 04:28:46.45 ID:5zB2owyq0
おつ〜
>>1よ体に気をつけてくれ〜
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 06:06:50.43 ID:4MTuu1SAO
次の垣根は何回死ぬのかなぁ
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 10:07:37.31 ID:Pum/CTADO
ザオリクはかけなくても大丈夫だけどね
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 11:41:12.76 ID:eUU2/Ao2o
ダークマターは2度死ぬ
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 14:03:11.29 ID:UMMOwwUb0
大丈夫、次のていとくんはもっとうまくやるでしょう
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 16:08:27.69 ID:Pum/CTADO
エイワス「ああ。今回も駄目だったよ。垣根は話を聞かないからなぁ」
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 17:57:16.09 ID:Prm9jF0v0
垣根「またお前お手製のとんでもアイテムかよ?」
エイワス「いや、バーバ・ヤガーからだ」
垣根「ごッ、があぁぁぁぁッッッッ!!!」





個人的にはサーシャの手作りとかだといいな
効果があいまい→慣れないながら一生懸命作りました
みたいな
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 18:40:51.35 ID:CrSwYbXuo
エイワスが青い猫狸になってしもうた
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/09(水) 21:38:52.46 ID:dSDs935Do
>>663
これはこれはUV様
私は幸福です
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 01:26:08.42 ID:LOBeYdhAO
こんなとこでパラノイアネタを見るとは思わなんだ
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 19:41:20.98 ID:IpM1xmzDO
死んだ帝督だけが良い冷蔵庫だッ!!
670 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:24:15.33 ID:gLVN9GxVo
>>657
もちろんメインはミーシャですよー、お楽しみに


そんなわけでこんばんわ。今日も投下していきます


垣根帝督のフラグについてですが、何というか彼はギャルゲでいう親友ポジション?
一方通行が主人公なら垣根は気の良い友達みたいな・・・・・・そんな感じですかね。
だから垣根にはそう頻繁にフラグは立たないんじゃないかな・・・・・・他でそういうのやってそうだから
ここでやっても需要なさそうですし・・・・・・


そういえばそういう親友ポジションキャラでCVが保志氏のギャルゲをやった事があるんですが
あれなんだったっけ・・・・・・


長くなりました、それではまいりましょう。よろしくお願いします。
671 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:25:33.63 ID:gLVN9GxVo


――――――――――――――――――――――


エリザリーナ独立国同盟の居住区にある簡素な作りのアパートの一室で、
垣根帝督は自作のルーンを眺めながら体を休めていた。


「・・・・・・ルーンの出来は問題ねえ、が・・・・・・。 いかんせん俺自身が使いこなせてねえんだよな。
 ・・・・・・・・・・・・痛っ。 クッソ・・・・・・あのババア、無茶苦茶やりやがって・・・・・・」


彼は少し前まで、元『殲滅白書』のシスター、ワシリーサと激しい戦闘を行っていた。
もちろん、戦闘といっても憎悪や見解のすれ違いによるガチバトルではなく、垣根帝督の
魔術の特訓という前提で行っていたものだ。


その際に、垣根帝督は自身の超能力『未元物質(ダークマター)』の使用を自分で禁止しており、
まずは魔術だけでワシリーサに挑んだわけだが、
そのワシリーサがまたとんでもないチート性能を誇っており、垣根は手も足も出なかった。

672 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:26:59.21 ID:gLVN9GxVo


おかげで頭蓋骨にヒビが入るわ肋骨はバッキボキにへし折れるわ鼻の骨は折れるわ
なぜか片足の骨も折れてるわ整った顔が世界タイトルをフルラウンド戦い抜いたようなボクサーみたいになってるわ
魔術を使用した反動で全身の神経や血管がブッチブチに切れまくってるわで満身創痍もいいとこだった。


(もうコツは分かった。 今すぐにでもあのババアに再戦を申込みてえとこだが・・・・・・クソ。
 こんな体じゃもう一度殺されに行くようなもんだしな。 『未元物質』を使ってやりてえとこだが、
 『未元物質』に『魔術の法則』を組み込むのはまだ早い・・・・・・。 待つしかねえ、か)


本当ならすぐにでもワシリーサを捜し出して訓練場を兼ねている防空壕へ引っ張っていきたいとこだが、
今の垣根はベッドに横たわらせているその体を動かすのも億劫な状態だ。


と、昨晩から一睡もしていないので一眠りしようかと考えていたところに、




「ふぅ、疲れた疲れた。 自分自身に『よく働いたで賞』を授与させたい気持ちだよ、まったく」



673 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:28:08.93 ID:gLVN9GxVo


突然、垣根の部屋に謎の声が響き渡った。
否、それは謎の声ではなく、もはや聞き慣れた鬱陶しい声だった。


「エイワス・・・・・・!? テメェ、急に人の部屋に入ってくんじゃねえよ!!」

「ん? 転移先の座標を間違えてしまったか、いやはやすまない。
 もしかして自慰中だったかね? だったら手伝おうか」

「胸クソ悪くなるようなキモい下ネタほざいてんじゃねえ」


『天使同盟』のジェネラルマネージャーにしてケテルとティファレトを繋ぐ道標、エイワスは
フラットな表情の中になぜか満足気な雰囲気を含み、垣根の部屋に顕現した。


「おやおや・・・・・・これは痛々しい。 大丈夫かね?」

「テメェに心配される筋合いはねえよ」

674 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:28:57.53 ID:gLVN9GxVo


「いやいや、痛々しいとは君の身体的ダメージの事を指しているのではない。
 その・・・・・・、言いにくいが、そんな怪しげな札を真剣な眼差しで見つめる君の姿が痛々しいと思ってね」

「俺は中二病じゃねえ!! ・・・・・・ッ、痛っ・・・・・・」


咄嗟にツッコミを入れる垣根だが、口の中がさっきの戦闘でズタボロに切れているため
叫ぶとズキズキと痛みが走った。


「ふふ、冗談だよ。 お疲れだったな垣根帝督」

「相変わらずお見通しかよ。 つかお前、どこに行ってたんだ?
 ロシアに着いてからこっち、やたら消えていなくなってるみてえだけど」

「気にする必要はない、ちょっとした下準備、だよ。
 それにしても、フグ鍋とは大変に美味なのだな。 今度皆で食べよう」

「フグ鍋ぇ? テメェ観光旅行でもしてきたのか?」


どうやらこの金髪、どこかでフグ鍋を堪能してきたらしい。
下準備という言葉の真意があまり理解出来ない垣根だったが、なんとなく嫌な予感は感じた。

675 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:29:53.88 ID:gLVN9GxVo


「それで、今日の魔術訓練は終了なのかね?」


全てを見透かしているエイワスは、さも当たり前のように垣根に問いかけた。


「・・・・・・やる気はあるが、体がこれじゃやるにやれねえんだよ」

「相手があのワシリーサではな、そうなるのも無理はあるまい。
 『殲滅白書』最強の女相手に生身で挑むなど、アドイボスリーパ無しで人修羅に挑むようなものだ」

「例えが分かんねえよ」


エイワスは垣根をジッと見つめ、フッと笑いこう言った。


「怪我さえ治れば、また彼女に挑むのだな?」

「全治五ヶ月並のこの怪我が今すぐ全回復するならな。
 本当なら病院行ったほうがいいんだろうが、面倒くせえ」

676 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:32:51.33 ID:gLVN9GxVo


全身の骨を痛めておきながら病院へ行くのが面倒とは、垣根も垣根でどこかアホである。

すると、エイワスはあっさりと言いのけた。




「じゃあ治してあげよう」

「は?」




何を言い出したんだこの金髪オバケ、と垣根が呆けた表情を浮かべていると、
エイワスは袖口に手を入れ、ゴソゴソと何かを取り出した。


「テレレテッテテー♪ 『痛みとか何かそんなんを和らげる札』〜♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

677 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:33:46.32 ID:gLVN9GxVo


某ネコ型ロボットがひみつ道具を取り出した時に鳴る効果音を口ずさみながら
エイワスは袖からクリーム色の札束を高々と掲げた。
札の名前が適当にもほどがある。


「説明しよう。 この『痛みとか何かそんなんを和らげる札』とは―――」

「ヤッターマンの見過ぎだお前」


ドロンジョ様エロいよね、とエイワスはコホンと咳をして改めて説明する。


「この札は、痛みを和らげるというよりはごまかす、と言った方が正しいな。
 これを何枚か身体に直接貼り付ける事で、今感じている痛みを消すことが出来るのだよ」

「都合良すぎやしねえか? またお前お手製のとんでもアイテムかよ?」

「いや、これは本当に存在する治癒魔術の応用だよ。
 このロシアでも似たような魔具が使用されている。 私のコレはそれよりも強力だがね」


見た目はクリーム色で長方形、垣根が持っているルーン程の大きさの札だ。
不思議と暖かさが伝わってくるその札には、何語でもない、何か妙な文字が刻まれている。

678 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:35:06.59 ID:gLVN9GxVo


「とりあえず、騙されたと思って使ってみたまえ」

「お前にそう言われると騙されたとしか思えねえんだけど」


そう言いつつも、垣根は『痛みとか何かそんな(以下略)』を受け取り、
着ている服を捲って適当に身体に貼り付けてみる。


すると、


「・・・・・・・・・・・・、? お? おお? マジかよこれ、すげえ」

「だろう? 私を詐欺師か何かと間違えてないかね君は」

679 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:35:57.42 ID:gLVN9GxVo


いや、お前は間違いなく詐欺師だ。それも極悪の。


しかしそんな詐欺師から貰った『痛みとか(以下略)』は絶大な効果を秘めていた。
身体に貼りつけて数秒、ものの見事に垣根の身体から激痛が引いていくのがわかる。

垣根は痛みを確かめるように身体のあちこちをバシバシと叩いてみる。


「・・・・・・新たに加わる痛みまでは消せねえのか。 でもこれすげえな。
 さっきまで数ミリ動いただけで激痛が走ってたってのに」

「剥がしたら今まで蓄積していたダメージが一気に襲い掛かるがね」

「なんだよそれ、じゃあこれ剥がしたら俺死ぬんじゃね?」

「事が済んだら私が君を完全に回復してあげるから心配するな」


ともあれ、善は急げだ。
垣根はさっさと支度をし、デッキホルダーを忍ばせたジャケットを着込んで
再びワシリーサに挑むため気合いを入れる。

680 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:36:55.71 ID:gLVN9GxVo


「一応、礼を言っておこうか?」

「今はいらんよ。 あとでたっぷり請求するからね」


さりげに怖いことを言ってくるエイワス。
だがそんな事が気にならないほど、この治癒魔術を用いた札はありがたい物だった。


「・・・・・・ところで、他の連中は今何してんだよ?」

「各々の詳細を聞きたいかね? 少し待ちたまえ」


エイワスはそう言って、二、三秒ほど目を閉じた後に告げた。


「一方通行、風斬氷華、レッサー、サーシャ=クロイツェフ、『前方』のヴェントは
 ロシア東部にある実験都市のショッピングセンターで買い物を楽しんでいるようだな」

「・・・・・・ああ、半公開型ARがふんだんに使われてるっつーあの商業施設か?
 ハッ、一方通行の野郎、女に囲まれても嬉しくねえだろアイツの性格じゃ」

681 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:37:45.65 ID:gLVN9GxVo


「らしいな。 早くもうんざりといった表情を浮かべていて笑える」


そう言えるということは、エイワスはリアルタイムで一方通行達の行動を
監視しているのだろうか。本当にプライバシーもクソもないヤツである。


「ミーシャ=クロイツェフとエリザリーナは軍事施設にある彼女のオフィスにいる。
 ・・・・・・、ミーシャは寝ている、のか?」

「天使でも寝たりするんだな」

「・・・・・・いや、これは。 ・・・・・・・・・・・・、ふむ。 エリザリーナめ、"気付いた"な?」

「あ?」

「いや・・・・・・。 まぁ、現状はこんな感じだな」

「ワシリーサはどこにいる?」

「サーシャ=クロイツェフの居所を民間人に聞き回っている。
 一方通行は帰ってきたら彼女に殺されてしまうかもしれないな」

682 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:38:43.93 ID:gLVN9GxVo


って事は、居住区辺りだな。と、垣根帝督は部屋を出ようとした。


「ちょっと待ってくれ。 私も次の"おつかい"まで暇なのだよ。
 だから同行させてほしい」

「ああ? 着いてきたってテメェの暇を潰せるほど面白いもんは出ねえぞ」

「何を言う」


エイワスは口を歪ませて笑みを作りながら言った。


「脆弱な人間が、それでも惨めに足掻いて力を欲するその姿。
 それ自体が私にとっては非常に愉快であり、この上なく価値のあるものなのだよ。
 君たちが役者なら、私はそれを上から眺める『観客』だ」


結局のところ、エイワスにとってはそれが全て。


"ホルスにすら至れぬ"人間が、滑稽に、惨めに、荒唐無稽に、愚昧に振る舞うその姿を見て
嘲笑い、そこから価値と興味を見出すことが趣味のような存在だ。

683 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:40:17.25 ID:gLVN9GxVo


「・・・・・・言ってろ。 お前、いつかその脆弱な人間にブチ殺されるような目に遭うぞ」

「だから面白いのだと言っている。 私を殺せてしまうような人間が現れるその時まで、
 私は何にでも依存するし、何でも『棄てる』」


そう、『捨てる』。
例えば今、エイワスが『天使同盟(アライアンス)』のためにとある魔術師の『プラン』を崩すように。

価値と興味があればどんな瑣末な事でも『取り憑く』し、価値も興味も無くなればあっさりと『棄てる』。


「行こうか、垣根帝督。 君の魔術を見てみたい」

「邪魔すんじゃねえぞ」


エイワスは魔術師ではないが、"魔術師として振る舞う場合"に備えて『魔法名』を所持している。


エイワスが持つ擬似の魔法名は、『fibber800』。


その意味は『森羅万象を欺き、天地万物を嘲笑う観測者』。


結果的に自分が楽しければそれでいい。結果的に自分が愉しければそれでいい。


エイワスは垣根帝督と共に部屋を出た。
間もなくやってくる、愉しい愉しい『茶会』を待ちわびながら。

684 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:41:42.82 ID:gLVN9GxVo


――――――――――――――――――――――


「よお、悪いけどまた付き合ってもらうぞ」


垣根帝督は居住区で走り回っているワシリーサをエイワスに捜し出させ、
あっさりと見つけて話しかけた。


「はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・。 か、垣根の坊や・・・・・・?」


ワシリーサは肩で息をしながら垣根の方を見る。
その美しい髪は乱れに乱れ、表情もまるで獲物を捜し求める肉食獣のそれだった。


「サーシャちゃんがいない・・・・・・、サーシャちゃんがいないのよぉぉぉ・・・・・・」


おーいおいおいおいと泣き崩れるシスター。
垣根は呆れながらも、無視してワシリーサの首根っこを掴む。

685 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:42:44.37 ID:gLVN9GxVo


「帰ってきたらいくらでも相手すりゃいいじゃねえか。 ほら行くぞ」

「いや〜〜〜んいやいやいやいやぁぁぁ!!! サーシャちゃんはどこぉ!!?
 どこにいるのよぉぉぉぉ・・・・・・・・・・・・、うええええええええええん!!」

「あーうるせえ! サーシャなら買い物に行ってるんだろ!!
 お前あの馬鹿でかい音量の船内放送聞いてなかったのかよ!?」

「か、買い物・・・・・・だと・・・・・・!?」


船内放送とは、レッサーが一方通行を招集するために行ったものだ。
部屋で休んでいただろう垣根にも当然それは聞こえていた。


「し、知らないわよそんなの!? 買い物って誰が!? 誰と!? どこに!?」

「サーシャが、一方通行の野郎と、ロシア東部の原野にあるショッピングセンターに」

「あ、一方通行・・・・・・!? あのクソウサギィィィ・・・・・・!!!!」

686 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:43:40.42 ID:gLVN9GxVo


垣根に雪の上をずるずると引きずられながら、ワシリーサは怨念を込めた表情を浮かべる。
愛しのサーシャちゃんを誘拐しやがった罪は重い、とその手に力を込めた。


「誘拐じゃねえだろ・・・・・・、サーシャも合意の上で参加してんだよ。
 お前、よっぽど煙たがられてんじゃねえの?」

「・・・・・・煙たがられて、る?」


ワシリーサの中でブチり、と音がした。


そして、


「んなわけ・・・・・・、」


ワシリーサは体を強引に捻り、両手を組んでピストルの形を作って、


「ねえええだろこのバカタレがぁぁぁーッッ!!!」

687 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:44:35.41 ID:gLVN9GxVo


垣根帝督の菊門に全力で浣腸をぶちかました。


「グアアアアアアアアッー!!?」


あまりの威力に垣根は二十メートル以上跳躍し、そのまま雪の上に頭から墜落した。


「勝手な事言わないでよ!! サーシャちゃんがそんな・・・・・・、まさか!!
 一方通行のクソ野郎に誑かされたか!? ちくしょう、あの凶悪ながらもイケメンなフェイスに
 ころりとイかされちまったかー!!!」


地面の上で泡を吹きながらビクンビクンと痙攣する垣根の事など放って、
ワシリーサはハンカチをキーッ!!と噛みながら涙を流していた。

688 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:45:51.70 ID:gLVN9GxVo


と、その光景を見て腹を抱えながら震えて笑っているエイワスがワシリーサに言った。


「安心したまえワシリーサ。 今のところ、一方通行とサーシャ=クロイツェフとの間に
 築かれているフラグは微々たるものだ。 この先はどうなるかは分からんが、
 たかがショッピングで劇的にフラグが成立する可能性は低いだろう。 愚鈍だし」

「そ、そうかしら・・・・・・? ていうかフラグ立ってんの・・・・・・? うう・・・・・・。
 フラグなら私とサーシャちゃんとの間に立ってるフラグの方が強力なはずよ・・・・・・」

「"あのノート"さえあれば君とサーシャのフラグの関係が調べられるんだがな。
 やはりノートを失った損害は大きい。 ヒューズ=カザキリは怒らせたらまずいなぁ・・・・・・」


よよよ、と泣き崩れているワシリーサ。

うーん、と何かを考え込んでいるエイワス。

地面に落下してそのまま動かなくなってしまった垣根帝督。


周りの民間人は何がなんやら、といった様子だった。

689 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:47:57.12 ID:gLVN9GxVo


「あのー・・・・・・、垣根、さん? ですか?」

「・・・・・・あ、あぁ・・・・・・?」


尻に手を添え目尻に涙を浮かべていた垣根の頭上から声が聞こえてきた。
見上げると、民間人であろう女性が携帯電話を片手に憐れみを含んだ表情で垣根を見下ろしていた。


「えっと、あなたに変わってほしいという連絡が入ってきて・・・・・・」

「俺・・・・・・に・・・・・・、うっ、ぐぐ・・・・・・貸せ・・・・・・」


垣根は携帯を受け取ると、冷え切った地面に転がったまま耳にそれを当てる。


「・・・・・・誰だよ」

『垣根か? 俺だ』

690 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:48:49.51 ID:gLVN9GxVo


電話先の声は現在ショッピング中の一方通行だった。


「テメェ・・・・・・かよ。 痛ゥ!! ぐっ、クッソ・・・・・・」

『なンだオマエ、まだ怪我が痛むのか?』


怪我の方はエイワスの不思議アイテムでどうにかなっており、
ケツ穴に喰らった新たなダメージが原因なのだが垣根は説明する気も失せた。


「放っとけ・・・・・・。 で、何の用だよ。 つかお前買い物してるらしいじゃねえか」

『あン? エリザリーナから聞いたのか』

「いや、エイワスから」

『エイワスの野郎、戻ってきてンのか? じゃあ死ねっつっとけ』

「あぁ。 それで用件はなんだよ? 俺は今忙しいんだよ」

691 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:49:33.83 ID:gLVN9GxVo


未だにズキズキと痛むホールを押さえながら垣根は一方通行の言葉を待つ。


『大した用じゃねェンだが、オマエなンか欲しいモンあるか?』

「テメェの命かな」

『それは自力で奪いに来い。 ついでにオマエが欲しいモン買ってこよォと思ってな』

「じゃあ・・・・・・あれ、なんか痔に効きそうな薬買ってこい・・・・・・」

『はァ? オマエ痔なの? ケツをちゃンと拭かねェからそォなるンだよアホ』


まぁ実際は痔でもなんでもないのだが、あながち間違っていない、穴だけに。
垣根は適当に考え、一方通行に告げる。

692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:51:12.94 ID:LAxyEnyJ0
穴が血と申したか
693 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:53:18.93 ID:gLVN9GxVo


「別に欲しいもんなんてねえよ・・・・・・。 あぁーそうだ、じゃあ適当に服買ってきてくれよ。
 俺ストックほとんど無えんだよな」

『服、か。 丁度いい、今から洋服店行くとこだ。 ていうかオマエ暇なら今すぐ飛ンで来いよ。
 コイツらの相手すンのマジ疲れるンだ、少し負担しやがれ』

「知るか、俺だってあんなヤツらの相手すんのなんかゴメンだ。 ていうか忙しいっつってんだろ。
 行けねえよ、そんな遠いところまで。 あと俺金持ってねえからテメェで払っとけ」

『チッ、言われるまでもなく金は俺持ちだクソったれ。 他には?』

「んー、何か適当に漫画雑誌とか?」

『漫画ァ?』

「だってここ娯楽少なすぎんだろ。 なんか日本のコミックとか買ってこいよ適当に。
 ドラゴンボールとかありきたりなのはもう読んでるからいらねえぞ」

『オマエでも漫画とか読むンだな・・・・・・。 ていうか本とか面倒なンですけど。
 ただでさえ荷物多いンだぞこっちは』

「知らねえっての。 オマエの性格からして女に囲まれての買い物ってのは地獄でしかねえだろうな。
 いい気味にもほどがある」


垣根はよろよろと立ち上がりながら意地悪く笑って言った。
ただしケツをさすりながらなので何とも格好がつかない。

694 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:55:46.85 ID:gLVN9GxVo


「そういやお前どうやって電話かけてきたんだよ?
 この電話、民間人の女が持ってきてたぞ」

『クルーザーに備え付けの電話あっただろ? そこにかけて民間人に電話出させたンだよ。
 で、適当にそこらの人間の携帯番号教えてもらってそいつの携帯にかけて、
 「垣根って名前のいかにもチャラ男ですって感じの男にこの電話渡せ」って言ったンだ』


垣根は携帯電話を渡してきた民間人の女性をギロリと睨む。
なぜ睨まれているのか分からない女性はオドオドとするだけだった。
というかよくそのヒントだけで分かったな。


『他にはもォ無ェな?』

「ねえよ。 地獄を楽しんでこいクソ野郎」

『帰ってきたら覚えとけよオマエ・・・・・・』


むしろ帰ってきたら速攻で逃げた方がいいのは一方通行の方である。ワシリーサ的な意味で。

695 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:56:50.14 ID:gLVN9GxVo


「じゃ、切るからな」

『オイ待て』

「ああ?」



『怪我、さっさと治せよメルヘン野郎』



最後にそう言い捨てて、一方通行は電話を切った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


垣根は携帯のディスプレイを忌々しげに見つめ、民間人の女性に乱暴に投げ渡した。

696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 21:57:54.56 ID:9J6ljzOM0
仲良いなぁ、こいつら
697 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:58:14.96 ID:gLVN9GxVo


「垣根の坊や!」


と、背後からワシリーサがさっきまでの陰鬱な雰囲気など無かったかのように
腰に手を当てて明るく声をかけてきた。


「ワシリーサ、テメェ・・・・・・! ちょっとケツ貸せコラ、同じ痛みを味わわせてやる」

「**ルプレイもキライじゃないけど、今は特訓でしょ? ほらほら、行くわよん♪」

「んだお前? さっきまでサーシャちゃーんとか言ってたクセによ」

「エイワスが特訓に付き合ってくれたらサーシャちゃんの生下着(脱ぎたて)をくれるって言ったの。
 それを聞いちゃあこのサーシャ=クロイツェフファンクラブ会員ナンバー000000000001の私もやる気が出るってモンよ!!
 生着替え写真に加え生下着・・・・・・、私のサーシャちゃんコレクションはもうホクホクよん☆」


垣根は軽蔑を含んだ視線をエイワスに送る。金髪の怪物はただ笑みを浮かべるだけだ。
というかワシリーサはしっかりと生着替え写真の件を覚えていたのだが、垣根はどうするつもりなのだろうか。

698 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 21:59:33.89 ID:gLVN9GxVo


「サーシャが可哀想でしょうがねえな。 まぁ俺には関係ない、さっさと行くぞ」

「怪我は大丈夫なのかにゃーん?」

「それは心配ない。 今回は私も同行させてもらう」

「ほほう・・・・・・」


指を顎に当てニヤリと笑うワシリーサ。何を企んでいるのやら。


「しっかしペース早いわねぇ。 ホントに大丈夫かにゃん?
 ちょっとくらいは手加減しようか?(本当言うと前回のも手加減してたんだけど)」

699 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 22:00:21.63 ID:gLVN9GxVo


「いらねえよ。 鉄は熱い内に打てって言うだろ。 やっとコツを掴んだんだ。
 とりあえず今からする特訓で魔術の基礎訓練は終わらせるぞ」

「言うねぇ言うねぇ。 そういう熱血も嫌いじゃないわ♪」


一向は今はもう誰にも使われていない防空壕跡地へと向かう。


「そういやエイワス。 一方通行から伝言だ」

「?」

「『死ね』」

「んー? ふふ、心当たりが"ありすぎる"な」


垣根帝督は宣言通り、魔術の基礎訓練を終える事が出来るのだろうか。

700 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 22:07:59.69 ID:gLVN9GxVo
今日はここまでです。
なんだかんだで割と楽しそうにやってる垣根帝督なのでした、というお話でした。


さて次回は場面切り替えで一方通行サイド、彼らのショッピング風景をお送りします。
一見楽しそうに思えますが、やはり一方通行にとっては大変しんどい買い物になりそうで・・・・・・。


次回更新は三日以内。


今日もここまで読んでくださった方、ありがとうございました!


では、失礼します。
701 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/10(木) 22:08:27.37 ID:gLVN9GxVo



                          【次回予告】



『チッ。 オマエだってノリ気じゃなかったクセによォ、ちゃっかり買い物してンじゃねェか。
 なァ〜にが『キューティクルな小悪魔ピアス(はぁと』だ。 案外こォいうの好きなンだなァ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『ちょ、勝手に人が買ったモン見てんじゃねぇよテメェ!!!/////』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『ああああの、第二の私見ですが別に試着はぁぁぁ・・・・・・』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ=クロイツェフ




『うーん、私もベイロープたちにお土産買ってこっかな・・・・・・』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『・・・・・・、・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・マジなの?』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華



702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:18:37.82 ID:XnUvbt3Vo
ていとくん相変わらず良いキャラしてるな。一方さんと良いフラグ立ててるぜ
しかし風斬さん…次回予告のたった一言でこの印象。凄い娘になったな
おつです!
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:21:18.17 ID:D3HNEXXAO
ヴェントマジ小悪魔
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:31:26.56 ID:aCHX1KqSo
予告の風斬こわいなw
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:51:09.49 ID:uNDmyHJ00
>たかがショッピングで劇的にフラグが成立する可能性は低いだろう。
なんか劇的にフラグが建ちそうな感じなんですが一方さんww
一方さんマジイケメン
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 22:59:08.43 ID:5PgO9C5P0

人修羅か…一方通行にとってはまさしく『天敵』だな
まぁ倒した事無いんですけどねorz
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/10(木) 23:03:56.28 ID:KGfTJ+RA0
>>705
エイワスが立てたフラグで一通さんがサーシャにフラグ立ててそれ知ったエイワスが「面白い」ってなってエイワスにフラグが立つというフラグ連鎖が起きそうだな。

そしてカザキリさんなんか本当生き生きしてるッスよね!
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 23:04:31.15 ID:xqFgmNf6o
乙っしたー
>>670のギャルゲはToHeartかな?
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 23:15:57.47 ID:2BQvVaMT0
>>705
おい、やめろ
せめてサーシャぐらいはていとくんと結ばせてやろうぜ





じゃないともうバーバ・ヤガーぐらいしか残ってねえ
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/10(木) 23:25:31.94 ID:dse0yXAoo
>>709
心理定規さんお忘れですか
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 00:22:26.20 ID:GN3rsApSO
垣根って本当にいいキャラだよな
1冊だけで退場はマジもったいない
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 00:23:43.94 ID:32j3MWy+o
垣根は一通さんとだけフラグ立ててりゃいいけど
サーシャはもっと一通とフラグ立てて欲しいな
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 00:54:05.46 ID:CMH9njxs0
このスレには未だ出てきてないからな、心理定規
それと、サーシャは垣根の嫁、反論は認めない
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 02:49:16.53 ID:fHFUWXNTo
ガブリエルの事を考えるとつらい

乙!
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 07:04:29.86 ID:hOymMOnAO
ワシリーサの安定感が凄まじい。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 21:18:15.11 ID:M2jQHdyGo
みんな(特に>>1)生きてるか?
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 23:00:00.72 ID:RT9SySWjo
俺ロシアでいまサーシャのパンツとってくる仕事やってっから大丈夫だったわ、
因みに1枚50000ルーブルだ、ん?なんだこの棒みたいなものh……
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/11(金) 23:34:01.33 ID:botlzlFS0
おーい!!
>>1元気かー!?
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 02:14:17.45 ID:xXnBwEJD0
>>1ェ・・・
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/12(土) 02:21:19.37 ID:+JlWuY8q0
まあネットに繋げないって人はゴマンといるだろうからなぁ。
騒がず無事を祈ろうぜ。
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
721 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 03:44:46.83 ID:qR4FN9mAo

生存報告に来ました。私は大丈夫です、ご心配ありがとうございます。


ですが、私の事より皆様はご無事でしょうか?
私は今日夕方五時に一旦就寝したのですが、今起床してニュースを見たら死者が三百人を超えてて・・・・・・
言葉もありません。


今日は投下予定日なのですが、こんな状況でのんびり投下なんてしていいものかどうか逡巡しております。
SS速報、ネット全体の様子を見て投下の判断を決めようと思っています。

皆様の生存報告がとにかく欲しいです。
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 03:49:36.94 ID:c37nCPXAO
生きてるよ〜
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 03:51:30.92 ID:Zgt1XC3AO
少し離れた所にあるコンビナート爆発笑えねえ
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 04:11:50.51 ID:wvn6grSo0
俺も夕方に寝てさっき起きたら死者の桁が増えててぞっとした
なんだかんだでここはSS投下する板なんだし、
とりあえずどこに住んでいようともすぐに避難できる準備をしてからなら投下してもいいと思う
いろんな地域で地震誘発されてるから九州民だしwwwwwwwwwwとか言ってられないよ
地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 07:12:05.54 ID:6Z5JL5B+o
家で誰か起きてた方がいいと思って、ずっと起きてた
家族が起きてきたから、入れ替わりで今から寝る

ここはSSを投下するための場所だし、>>1に危険がなくて投下可能なら
してもらえたらうれしい。ムリはしないでほしいけど
なんていうか、「SS読む」っていう「いつもの行動」を取れる、ってことで
すごくほっとできる面があるから
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:20:43.03 ID:V2NHgmTYo
とりあえず、>>1が絶対に安全だという状況なら投下はしていいと思う
それを読める状況にある人が何人いるかは置いておいて
東北だとまだ停電でネット繋げない人も多いだろうし
727 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 09:39:53.90 ID:qR4FN9mAo
わかりました、それでは本日の夜に投下していこうかと思います。
0時を過ぎるかもしれませんが、それまでもうしばらくお待ちください。

今回の地震によって被害に遭われた方々、大切なご家族を失ってしまった方に心からお見舞い申し上げます。
皆様のご無事を心からお祈りしております。

では、失礼いたしました。
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 09:42:45.81 ID:68/L1P89o
場所にも依るが無理すんな
729 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/12(土) 09:45:04.34 ID:qR4FN9mAo
>>728
私の住んでいる地域は後ろめたい事に比較的安全な地域ですので投下は問題ありません。
ただ依然として津波注意報が解除されていないのでそこだけが心配なのですが・・・・・・。

もちろん、無理なようでしたら投下は中止させていただきます。
ご心配ありがとうございます。
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 11:03:24.08 ID:4p5kZ9tLo
後ろめたいことは何も無いよ
心配する気持ちがあればそれで十分
日常生活をおくれるならおくるべきだと思うよ
それが安心感に繋がり心の負担が減る人もいると思うからね
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 12:56:45.31 ID:Yc+oHROm0
>>1さんも無理せずに頑張ってください
あとこの板にいる皆さんも無事だったらいいんですけど・・・

なんか言ってること支離滅裂ですみません
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/12(土) 13:28:53.08 ID:RDzidCpm0
>>731
大丈夫、お前の気持ちはちゃんと皆に伝わってるから
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 14:09:19.75 ID:rDh0jf060
安全地域にいて周りとの温度差が半端じゃなくてごめんなさい
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 15:46:59.18 ID:GlhJig3AO
被災してない人間が無理して被災者ぶる必要はない。
平穏に過ごせてるならそれに越したことは無いのだから。
735 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:16:46.35 ID:qR4FN9mAo

それでは、今から投下していきます。

今回は一方通行サイドのショッピング風景をお送りします!
736 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:17:20.65 ID:qR4FN9mAo


――――――――――――――――――――――


「適当な服に・・・・・・、漫画か。 ○ルゴ13全巻買っといてやるか」


垣根帝督との会話を終え、一方通行は携帯電話の電源ボタンを押した。


現在、一方通行はロシア東部の原野のど真ん中にある実験都市、超大規模のショッピングセンターにいる。

ここは街全体が半公開型AR式のタッチパネルで覆われている構造であり、
至る所に商業関係の情報が二十四時間流れ続けている。信号、標識、横断歩道なども全てこれで賄われているのだ。

そのタッチパネルを使用して商品カタログを閲覧したり、調べたい情報を検索したりも出来る。
表示される情報が個人によって変わるのも特徴的だ。


ドーム球場六五〇個分の広大さを誇るこのショッピングセンターは、中心にメインとなる巨大商業施設が
並んでおり、それを囲むようにホテルや免税店が立ち並んでいる。巨大商業施設内は生活必需品が集中するブロックと、
娯楽、嗜好品等が集まったブロックの二つに別れている。


今、一方通行がいるのは巨大商業施設の娯楽・嗜好品ブロックの一角だ。

737 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:18:26.72 ID:qR4FN9mAo


「しっかし・・・・・・、呆れるくらい広いなこの街は・・・・・・。
 なるほど、『保安員』みてェな人間が必要になるわけだ」


『保安員』はこのショッピングセンターに設けられた制度であり、
店員がこの街の治安維持要員を兼ねて活動をしている。万引きや迷子のトラブルを中心に対処しているのだ。

ちなみに、一方通行がここへ来る遥か前にこのショッピングセンターに訪れた某レベル5の見解だと、
ここの『保安員』は学園都市の『警備員(アンチスキル)』をモチーフにしているのだろう、との事。


一方通行、風斬氷華、レッサー、サーシャ=クロイツェフ、ヴェントの五人は
現在進行形でここでのショッピングを楽しんでいるのだが――その内二名ほどはノリ気ではないようだが――、
このショッピングセンター、入場の際に専用のIDが必要だった。


一方通行は心底面倒くさそうにため息をつきながらも、自分と他の四人たちのIDを新規登録し、
全員分のアカウントを作成してあげた。


「一方通行さーん! 早く早くー! 置いていきますよ〜」

「あァー、もォ是非置いてってくださァーい」


一方通行は杖をついていない方の腕で彼女たちの購入した品物入りの買い物袋をガサリ、と持ち直して
ため息をつきながら彼女たちのあとに着いて行くのだった。

738 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:19:19.63 ID:qR4FN9mAo


――ロシア東部の原野 実験都市・ショッピングセンター とある洋服店


風斬「わぁ〜、すごい・・・・・・。 見たことない服がいっぱい」ワァーオ

レッサー「ふんふん、ここもなかなかいい品揃えですね。 夏の頃と比べると
     更に種類豊富になってますなぁ」

サーシャ「第一の私見ですが、やはり周りの視線が気になりますね・・・・・・」モジモジ

ヴェント「・・・・・・・・・・・・」ハァ

一方通行「・・・・・・・・・・・・」ハァ

レッサー「さーてーと、・・・・・・お! サーシャさん、ちょっとこれ見てみそ」

サーシャ「?」トテトテ

レッサー「どうでしょうこれ? あどけなさが残るあなたにはこういう可愛らしい感じの
     服が似合うと思うんですけど」

サーシャ「・・・・・・おお。 ろ、露出が少ない・・・・・・」

739 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:20:13.51 ID:qR4FN9mAo


風斬「あ、それ可愛いですね・・・・・・! 試着してみたらどうです?」

サーシャ「え、あ、試着は別に――」

レッサー「そうですね。 すみませーん!」

店員「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょう?」

レッサー「ちょいとこの子に試着させたいんですけど、いいですか?」

サーシャ「い、いやあの・・・・・・///」アワアワ

店員「もちろんです。 どうぞ、試着室にご案内いたします」

サーシャ「ああああの、第二の私見ですが別に試着はぁぁぁ・・・・・・」ズルズル

風斬「私たちも行きましょう」スタスタ

レッサー「にっひひひ、私のファッションセンスに狂いは無いのです!」スタスタ

740 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:20:56.45 ID:qR4FN9mAo


一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

一方通行「・・・・・・なァ。 俺もォマジで帰っていいかなァ?」

ヴェント「一人だけ抜け駆けなんてさせると思うの?
     アンタから私を誘っておいてそれはねぇだろアホ」

一方通行「チッ。 オマエだってノリ気じゃなかったクセによォ、ちゃっかり買い物してンじゃねェか。
     なァ〜にが『キューティクルな小悪魔ピアス(はぁと』だ。 案外こォいうの好きなンだなァ」ガサゴソ

ヴェント「ちょ、勝手に人が買ったモン見てんじゃねぇよテメェ!!!/////」アタフタ

一方通行「いや別にオマエが買ったモンだと思って言ったンじゃねェけど?」ニヤリ

ヴェント「あ・・・・・・・・・・・・///」

一方通行「オイオイ、これがいわゆる『ギャップ萌え』ってヤツですかァ?
     『神の右席』だろォが魔術師だろォが、中身はちゃンと女の子なンだなァ」ニタニタ

ヴェント「くぅ・・・・・・!! 死ねクソうさぎ!! ざけんなクソ・・・・・・///」グヌヌ

741 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:22:00.04 ID:qR4FN9mAo


店員「こちらでございます。 ごゆっくりどうぞ」スタスタ

風斬「絶対似合ってますから・・・・・・心配ないですよ。 終わったら声かけてください」

サーシャ「うぅー・・・・・・///」プルプル

レッサー「おお、やはり試着室の中も半公開型ARがあるんですねー・・・・・・。
     んじゃ、行ってらっしゃいサーシャさん!」シャッ

サーシャ「か、勝手に閉めやがった・・・・・・。 はぁぁ・・・・・・」ガクッ

レッサー「うーん、私もベイロープたちにお土産買ってこっかな・・・・・・」キョロキョロ

風斬(・・・・・・あれ? 一方通行さんとヴェントさんは? ・・・・・・あ、)キョロキョロ




一方通行「別にバカにはしてねェだろ、いいンじゃねェ? 小悪魔キュートなヴェントちゃンってのも悪くねェ。
     多分どっかに需要あるだろ、ギャハハハハハ!!!」ヒーッヒッヒ

ヴェント「テメェ面貸せコラァ!!! そんなつもりで買ったんじゃないわよ!!
     クッソこいつ・・・・・・、このハンマーで頭叩き割ってやろうかぁ!!!」ゴトン

店員「お、お客様、他のお客様に迷惑となりますので・・・・・・」オロオロ

742 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:23:01.61 ID:qR4FN9mAo


ヴェント「うるせぇんダヨ!!」メメタァ

店員「きゅう」パタン

一方通行「面倒な事してンじゃねェよクソボケ!! 保安員がいるって
     ここに入る前に説明しただろォが!! あーあー、完全にノビてンぞこれ・・・・・・」

店員「」ピクピク

ヴェント「テメェのせいだろうが!! 散々バカにして・・・・・・!!!」ワナワナ

一方通行「だからバカになンかしてねェってのに・・・・・・聞き分けのねェ女だな。
     ちったァ女の子っぽく振る舞えば可愛げがあンのによォ」

ヴェント「か、かわ・・・・・・!?///」

一方通行「あン?」

ヴェント「何でもねぇよクソ・・・・・・」プイ

743 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:23:42.00 ID:qR4FN9mAo


風斬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ジー

レッサー「・・・・・・とか、それとあの辺にあるコートなんか
     軽そうでこれから来る冬には良くないですか? ・・・・・・ねぇ、風斬さん?」

風斬「あ、え? はい? そ、そうですね、ギャザリングはしっかりと確認したほうが・・・・・・」アセアセ

レッサー「いや誰もゲームの話はしてませんから。 ・・・・・・何見てんです?」チラッ

風斬「あ。 いや別に・・・・・・」

レッサー「・・・・・・・・・・・・むぅ。 あんにゃろ、何やらヴェントさんとじゃれあってますねぇ」マジマジ

風斬「う、うん・・・・・・。 ・・・・・・一方通行さん、誰とでも仲良くなっちゃうなぁ」ショボンヌ

レッサー「むー。 これはまた強力なライバルが現れた感じですか」

風斬「へ? ライバル・・・・・・?」

レッサー「強敵と書いて『とも』とも読みます。 まぁ一方通行さんを堕とすのは私なのですが♪」ニヤリ

風斬「・・・・・・は?」

744 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:25:00.15 ID:qR4FN9mAo


レッサー「いやぁ、風斬さんには申し訳ないのですが、私も一方通行さんに惚れちゃったクチでして」ケケケ

風斬「え・・・・・・」ゴゴゴ

レッサー「あの、後ろの『ゴゴゴ』がジョジョみたいなフォントになってるんですけど。
     まぁ、というわけなので、ライバル同士仲良くしていきましょう、風斬さん」ニタリ

風斬(・・・・・・あ、あぁ。 レッサーのいつもの冗談だよね・・・・・・、うん)

風斬「も、もう。 からかわないでくださいよ・・・・・・」

レッサー「んー? ふふふ。 ・・・・・・・・・・・・あ、ところで風斬さん」

風斬「ん?」



レッサー「・・・・・・例の話、一方通行さんに全部ぶっちゃけてみました」


745 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:25:44.17 ID:qR4FN9mAo


風斬「例の話? ・・・・・・、・・・・・・・・・・・・あ、イギリスの?」

レッサー「はい・・・・・・」コクン

風斬「・・・・・・それで、どうでした?」

レッサー「・・・・・・あ、一方通行さん。 イギリスの力になってくれるって・・・・・・」

風斬「! でしょ? そうでしょう? ・・・・・・ふふ、良かったですね!」ニコッ

レッサー「はい、ありがとうございます」グスッ

風斬「一方通行さん、ああ見えても困ってる人は放っておけない人だと思うんです。
   おせっかいって言ったら悪いんですけど・・・・・・、とてもいい人なんですよ」

レッサー「・・・・・・そうですね」

風斬「うん」

レッサー「だから、そういうところに惚れたわけなのですが」

746 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:26:27.18 ID:qR4FN9mAo


風斬「うん。 ・・・・・・・・・・・・、・・・・・・」

レッサー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

風斬「・・・・・・、・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・マジなの?」

レッサー「えらくマジです」ニヤッ

サーシャ「あの、第三の私見ですが、着替え終わりました」ボソボソ

風斬「ほ、本当に・・・・・・?」

レッサー「本気と書いてほんきです!」

風斬「そりゃそうでしょ・・・・・・ってツッコんでる場合じゃないやいっ!」

レッサー「ノリツッコミ・・・・・・」

風斬「そ、そんなぁ・・・・・・、どうすれば・・・・・・」オロオロ

747 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:27:16.03 ID:qR4FN9mAo


サーシャ「あのー」

レッサー「どっちが先に一方通行さんをモノにするか、競争ですよ!」

風斬「ううう・・・・・・そんな・・・・・・、勝てっこないですよ・・・・・・」ガクッ

レッサー「おやおや、早くも戦意喪失ですか?」

風斬「だって・・・・・・レッサーは可愛いし・・・・・・」

レッサー「お世辞は結構ですよ♪ でも風斬さんほどではないです。
     一方通行さん、あなたのグラマラスなボディにぞっこんみたいですし」

風斬「え・・・・・・///」

レッサー「うーむ。 これは私もせくしぃっぷりに磨きをかけないと
     風斬さんに盗られちゃいますかね」クネッ

風斬(本気なのかなぁ、レッサー・・・・・・。 ・・・・・・でも、)

風斬「でも・・・・・・一方通行さんのフラグの数、半端じゃないですよ?」

レッサー「フラグ?」

748 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:28:43.65 ID:qR4FN9mAo


風斬(あのノートを見る限りでは・・・・・・)

風斬「一方通行さんとフラグ立ってる女性の方、少なくとも十八人くらいいますよ・・・・・・」

レッサー「じゅ、十八人!? なんですかそれ!! 一方通行さんって"たらし"!?」

風斬「そ、そんなんじゃないですよ! ただちょっと、あの人無意識に女性と関係を持っちゃう人で・・・・・・」

レッサー「天然たらしか・・・・・・、なんて面倒な・・・・・・」

風斬「い、良い人だからそれは仕方ないんです・・・・・・!」

サーシャ「おーい」

レッサー「でもそんなんじゃ、ライバルは増えてく一方ですよぉ?
     早いとこモノにしないと、誰かにひょっこり持ってかれちゃいますよ」

風斬「そう・・・・・・、ですかね。 はぁぁ〜・・・・・・・・・・・・」シュン

749 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:29:47.87 ID:qR4FN9mAo


一方通行「・・・・・・はいはい、以後気をつけますゥ」ケッ

オーナー「本当にお願いしますよ! こういう事されると店の信用に影響するんですから・・・・・・!」

店員「」シーン

ヴェント「ちょっと小突いただけじゃないのよ・・・・・・ったく」ブツブツ

オーナー「ハンマーで頭ぶっ叩く行為のどこが小突いただけだと言うんですか!!
     はぁ・・・・・・。 では、失礼します。 ごゆっくりどうぞ」スタスタ

一方通行「・・・・・・・・・・・・。 チッ、オマエのせいで早くも目ェつけられたじゃねェかよ」

ヴェント「アンタが悪いんでしょ。 人のプライベートにいちいち土足で踏み込みやがって」

一方通行「ンだよ。 買ったモン見られンのってうぜェか?」

ヴェント「うざいに決まってんでしょ。 アンタそんな事もわかんないの?」

一方通行「こォいう形で買い物なンかした事ねェからな」

ヴェント「・・・・・・アンタ、デートとかした事ないの?」

750 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:31:44.03 ID:qR4FN9mAo


一方通行「デートォ? 俺が?」

ヴェント「その・・・・・・彼女とかと」

一方通行「彼女(笑)。 いると思うか? 俺にそンなのがよォ」

ヴェント「・・・・・・ま、いるわけないわよね。 アンタみたいなクソ野郎に」

一方通行「よォく分かってンじゃねェか。 俺と伴侶になりてェなンて女がいるンなら連れてこい。
     真っ先にいい病院を紹介してやるぜ」ケラケラ

ヴェント「・・・・・・。 アンタ、いつか殺されるわね」

一方通行「またそれか。 なンなンだよ」




風斬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ハァ

レッサー「まぁまぁ、元気出して。 頑張っていきまっしょい!」

風斬「もう・・・・・・・・・・・・」

751 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:32:45.70 ID:qR4FN9mAo


サーシャ「おーいってば」

レッサー「・・・・・・・・・・・・」

風斬「・・・・・・・・・・・・」ハァ


サーシャ「がおーっ!!!」ムキーッ


レッサー「ッ!!?」ビクゥ

風斬「ひゃっ!?」ビクッ

サーシャ「着替え終わったって言ってるじゃないですか・・・・・・」シクシク

風斬「あ、あ、ごめんなさい!」アタフタ

レッサー「す、すみません。 つい話し込んじゃって・・・・・・」タハハ

サーシャ「第四の私見ですが、あなた達の話は全て聞こえてましたよ。
     補足説明しますと、どうやらあなた達は相当彼に入れ込んでいるようですね・・・・・・」

風斬「ひぅぅ・・・・・・。 あ、あの、是非とも内密に・・・・・・」

サーシャ「・・・・・・だったらもう無視しないでください」グスン

レッサー「いや〜、なははは。 すみません。 それじゃあ出てきてください」

752 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:40:56.46 ID:qR4FN9mAo
控えめな投下量ですが、今日はここまでです。
風斬とレッサーはもうずいぶんと仲が良くなっていますね、だからこういう話も出来るのです。

さて、次回は(恐らく)垣根帝督サイドの話を。
ワシリーサとの二度目の死闘が始まります。


次回更新は三日以内。


それでは、被災地の皆さんの無事を願いながら今日のところはお別れしようと思います。
ありがとうございました!
753 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/12(土) 20:41:25.20 ID:qR4FN9mAo



                          【次回予告】



『髑髏のランプをくださいな。 純粋で真っ直ぐな少年を黒い炭に変えてしまう、炎を噴き出す髑髏のランプを』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ




『(ま、ず―――っ!!? あの化物ババアを呼び出すんじゃねえのか!?)』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『はい、こちら天使同盟デリバリーヘルスです。 当店は自慢の可愛い女の子を・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・エイワス



754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 20:47:08.67 ID:+HQYq8P0o
ヴェント可愛い…

乙!
自分も被災地の方々の無事を願います
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:24:18.11 ID:VXdUfS190
>サーシャ「がおーっ!!!」ムキーッ
えっ、何この可愛い生き物
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:32:09.85 ID:YqeSTMlRo
サーシャたんペロペロ
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:39:04.33 ID:+G54IM5F0
おいこらエイワスなんて事してやがる





さて、電話番号###-####-####っと……
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:40:39.35 ID:r4jYhP2Z0
エイワスさん、レッサーさんを指名させて下さい、お願いします。
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:56:21.11 ID:3/x6n6tAO


ヴェント可愛すぎて鼻血出そう…最近公開された素顔も可愛かったしな

という訳でぜひ彼女を指名でお願いしますエイワスさん。
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 21:59:51.27 ID:aqQGpiaXo
イマホテルに居るんでレッサーちゃん90分コースでお願いします
オプションはセーラー服で
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 22:09:24.98 ID:+nlnWghPo
エイワスさんを指名させてもらいますね
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/12(土) 22:09:42.81 ID:+JlWuY8q0
あーもしもし? はい、あのー風斬さんを……はい。
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 22:53:25.75 ID:jpryJEwbo
正体不明「もしもし、あの…色白の人っていますか?出来れば髪も真っ白で、目とか赤い人が居れば一番なんですけど…」
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:46:43.30 ID:rDh0jf060
>>763
ぼくと契約して魔法少女になってよ
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/12(土) 23:47:45.14 ID:RDzidCpm0
サーシャの可愛らしさを再確認させてくれた>>1超乙
>>755とは気が合いそうだ、俺もあの「がおーっ!!!」にやられた





そして垣根ェ……そのうち本当にフラグ立っちまうぞ、『バーバ・ヤーガ』と…………
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 08:30:35.42 ID:+sfegvfAO
ていとくんの死闘は本当に死ぬからなぁ
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 08:54:30.54 ID:qdXPe0Ero
エイワスフリーダム過ぎんだろww
電話って事は掛けてくる奴も知れてるか
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 10:04:21.40 ID:HI9O20cCo
ああ、またていとくんに死地が……
今の状態って痛みをマヒさせてるだけで怪我が治ってるわけじゃないからなあ
最悪はエイワスによる復活の奇跡か……
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 12:48:34.97 ID:8JHWCxhF0
電話ってことでアレイスターに指名されて固まっているレッサーの図を想像した
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 12:59:58.16 ID:KLyoMKkJ0
あーもしもし?……はい、カナミンコスのオプションで……はいそうです、サーシャちゃん3時間コースでお願いします
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 13:19:58.07 ID:iIfDVbT/o
もしもし?風斬ちゃんとサーシャちゃんの凸凹コンビ4時間コースで。
え?風斬ちゃんはうさぎ小屋に?あー・・・じゃオルソラさんで。大丈夫ですか?はい、はい。お願いします。
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 15:29:45.61 ID:SbuEWLhSO
だが俺はあえてエイワスを指名する
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 15:42:16.65 ID:KLyoMKkJ0
>>771
すいません、サーシャちゃんはこちらが先約なので……
凹のほうにはこの子をどうぞ

つフレメア
774 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:11:34.78 ID:JRafuJwlo
次回予告に食いつきすぎだろオイ・・・・・・
レスがいっぱいつくのは素直に嬉しいですけどね!


そんなわけでこんばんわ。今日も投下していきますね。
えー、今日はショッピングの続きをちょっとと、垣根帝督サイドのお話をば。

では、レッツゴー

775 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:12:31.45 ID:JRafuJwlo


サーシャ「だ、第一の質問ですが・・・・・・、どうでしょうか?」テレテレ

風斬「わぁ・・・・・・! すっごく似合ってますよサーシャさん!」

レッサー「うーん、バッチリですね! やはり私の目に間違いはない!」フンスッ

サーシャ「そ、そうですか・・・・・・?」テレテレ

風斬「それ・・・・・・、とりあえず購入決定ですね」

レッサー「ほい、このカゴに入れといてください。 おーい一方通行さん、
     このカゴ持ってくださいよー」


一方通行「あァ? 誰に指図してンだこのクソガキ・・・・・・」イライラ


レッサー「ほら、持った持った!」グイッ

一方通行「ぐ・・・・・・、クソ、俺は杖ついてンだぞ・・・・・・」ヒョイ

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」スタスタ

776 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:13:12.29 ID:JRafuJwlo


サーシャ「あ、一方通行・・・・・・。 第二の質問ですが、どうですかこれ?」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ジトー

サーシャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ドキドキ


一方通行「・・・・・・もォちょっとコイツ本来のあどけなさを出してェところだな」


サーシャ「?」

レッサー「なぬー!? 私のファッションセンスに文句つける気ですか!?」ガルルル



一方通行「サーシャのイメージに合わせて服選ンでンだろ? だったらこれじゃハデすぎる。
     サーシャはおとなしいイメージだが、だからっつってこンなど派手な服じゃ
     オーバーすぎるンだよ。 そォいう意味じゃワシリーサのセンスはぶっ飛ンでンな。
     そォだな・・・・・・、とりあえず袖口は手の指がちょっと出てる感じの、大きめサイズの服がイイな。
     袖から少しだけ出てる指と、大きめのぶかぶかなサイズがあどけなさを演出する。 
     そンでもって他の部分は少し露出を増やす。 その露出ポイントがアクセントになるンだ。
     春、夏、秋モノは露出多めで、冬は順当にサーシャの雰囲気ごと包みこむよォな暖かみのある服がイイ。
     今から本格的に冬に入るだろ? マフラー買っとけ。 顎と口を隠すように巻いておけば
     コイツの可愛らしさを演出出来ンだ。 それと下の方だがあえて短いスカートをチョイスして・・・・・・」ペラペラ

777 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:13:53.80 ID:JRafuJwlo


サーシャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

風斬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ポカーン

レッサー「あ、あのー・・・・・・。 もしもし?」

ヴェント「コイツの変なスイッチ押してんじゃないわよ・・・・・・」

一方通行「ンで、靴下は・・・・・・。 あァもォ面倒くせェ、ちょっと待ってろ。
     あ、今言った衣服は全部カゴにぶち込ンどけ、いいな」タッタッタ

サーシャ「は、はい・・・・・・」

風斬「あ、あの・・・・・・どこにいくんですか?」


>ちょいと携帯かけてくるゥ


風斬「・・・・・・行っちゃった」

ヴェント「逃げたんじゃねぇだろうなあの白いの・・・・・・」

レッサー「まさか一方通行さんがファッションにうるさい人だとは・・・・・・」

サーシャ「えーと・・・・・・これと、これと・・・・・・・・・・・・」ポイ ポイッ

778 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:14:37.34 ID:JRafuJwlo


一方通行「まずはランダムに番号プッシュして・・・・・・」ピポパポポピ


prrrrrrrrrrr・・・・・・ prrrrrrrrrrrr・・・・・・ prr


『はい、こちら天使同盟デリバリーヘルスです。 当店は自慢の可愛い女の子を・・・・・・』


一方通行「ふざけてンじゃねェよ、エイワス」

エイワス『おや、君かね一方通行』

一方通行「どォせ分かってたンだろ」

エイワス『ふふ。 それで、どうしたと言うのかな? すまないが今こちらは少し忙しくてね、
     出来れば手短に頼みたいのだが』

一方通行「『必要悪の教会(ネセサリウス)』の女子寮あンだろ。 そこの番号教えろ」

エイワス『・・・・・・、・・・・・・・・・・・・ふむ、なぜ?』

779 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:15:30.31 ID:JRafuJwlo


一方通行「ちょっとアニェーゼのヤツと話がしてェ。 アイツ、ファッションにうるさかっただろ」

エイワス『なんだ、そういう事か・・・・・・』

一方通行「?」

エイワス『いや、なんでもないよ。 後ほど、メールにて電話番号を送る』

一方通行「メール? オマエ俺のアドレス知らねェだろ」

エイワス『「歩くエシュロン」とは私のことだぞ? 理解しているだろう?』

一方通行「チッ。 ・・・・・・じゃ、送っとけよ」

エイワス『ああ、待ってくれ一方通行。 私も買ってきて欲しい物があるのだが』

一方通行「オマエは転移能力でいくらでも欲しいモンが手に入るだろ。 じゃあな」ピッ

780 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:16:11.75 ID:JRafuJwlo


ピロリロリン♪ ピロリロリン♪ メールが届いたよってミサカはミサカはお知らせしてみたり!


一方通行「早ェよ!! 電話切って一秒しか経ってねェっつーの・・・・・・」ピッ




『"************"
 
 電話をかけても無駄だと思うがね』




一方通行「・・・・・・? どォいう意味だこりゃ。 まァいい、かけてみるか」ピピッ


prrrrrrrrr・・・・・・ prrrrrrrrrrrrr・・・・・・ prrrrrrrrrrr・・・・・・ prrrrrrrrrrrrr・・・・・・


一方通行「・・・・・・・・・・・・」

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・出ねェ」ピッ

一方通行「なンだ? あいつら全員揃ってどっかに出掛けてンのか? こことイギリスの時差を考えても
     あっちも朝だよなとっくに・・・・・・。 ・・・・・・?」

一方通行「チッ、まァ仕方ねェか。  つかさっきは少し語りすぎちまったな・・・・・・
     ほどほどにしとかねェとアイツら図に乗りそうだ」タッタッタ

781 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:17:01.77 ID:JRafuJwlo


風斬「あ、おかえりなさい・・・・・・」

一方通行「あァ。 ・・・・・・・・・・・・オイ、なンですかァこの多数のカゴに積まれた衣服のエベレストは」

サーシャ「第一の解答ですが、あなたに指定されたものと一致するような衣服をカゴに入れただけです。
     補足説明しますと、この店舗の商品の約三十パーセントがこのカゴに積まれています」

一方通行「この店潰す気かオマエら。 周りの視線がさらにひでェ事になってやがる・・・・・・」ゲンナリ

レッサー「あ、これ私が買う分ですので、よろしくお願いしまーす」ドカッ

一方通行「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

風斬「あ、あの・・・・・・ごめんなさい。 これ、私が欲しい服なんですけど・・・・・・」ドカッ

一方通行「・・・・・・千手観音でも全部持ちきれねェ数だぞこれ・・・・・・、袋にまとめても」

サーシャ「第五の私見ですが、確かにあなたが指定した衣服は私に似合っているかもしれません。
     補足説明しますと、試着はしてませんしする気もありませんから何とも言えないですけど」

一方通行「試着? ンなモンここにあるAR使ってやりゃいいじゃねェか」ピピピッ

782 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:17:52.41 ID:JRafuJwlo


サーシャ「え・・・・・・?」

一方通行「・・・・・・、・・・・・・・・・・・・ほらよ。 例えばこの服をオマエが着たらこンな風になる。
     ってな具合で、AR使えばバーチャルで試着後の自分の姿が表示されるよォに
     設定できるンだよ。 洋服店とかこれデフォで用意されてるシステムだぞ?」

サーシャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

レッサー「あー、そういやそうでしたね。 すっかり忘れてました」ナハハハ

サーシャ「こ、こんなシステムあるなら最初から言え・・・・・・・・・・・・!!!」ワナワナ

レッサー「ま、まぁまぁ抑えて抑えて! いやぁホント、すみません」

風斬「へぇ〜・・・・・・、ちょっと私もやってみようかな」ピピッ

レッサー「風斬さん、下手したら下着姿のあなたが表示されるから注意するんですよ?
     情報隔離レベルはきちんと設定しておいたほうがいいです」ピッピッ

風斬「わ、わかりました・・・・・・!」ピピピ

783 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:18:33.02 ID:JRafuJwlo


ヴェント「いつまで買い物してんのよ・・・・・・ったく」ハァ

一方通行「・・・・・・ン? オマエは何も買わねェのかよ」

ヴェント「いらないわよ別に。 服なんて着れりゃ何だって構わない」

一方通行「・・・・・・、せっかくだから色々試着してみろよ」ピッピッ

ヴェント「ちょっと、何勝手なことしてんのよアンタ」

一方通行「ほらよ、これとかどォだ。 今の時代、ロングスカートってのはあンま需要無ェけど、
     オマエくれェの身長なら結構似合ってンぞ。 柄はチェックとかどォだ?」

ヴェント「・・・・・・、に、似合って、る・・・・・・か? これ・・・・・・///」ジー

一方通行「オマエ、ボトムスはパンツ系よりスカートのが似合ってンな。
     ミニスカにスパッツとか入れて組み合わせてもイイ感じになりそォだが・・・・・・。
     ワンピースとかも似合いそォだが今の時期だとさすがにな。 まァでも買っとけ」ピッ

784 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:19:27.88 ID:JRafuJwlo


ヴェント「あ、オイ・・・・・・」

一方通行「丈は・・・・・・普段は膝下くらいがいいか。 オマエよく見りゃ綺麗な足してやがンだから、
     ちったァ足見せる服着た方がいいぞ? トップスは・・・・・・。 オマエ、結構スタイル良いから、
     ラインが見えるよォなモンならなンでもいいンじゃね? これとか・・・・・・、これもか」ピッ ピッ

ヴェント「し、知らねぇよ・・・・・・そんな事言われても」

一方通行「じゃあ黙って見とけ。 さすがにその真黄色の服だけじゃ味気ねェだろ。
     ・・・・・・あァ、もしかしてそれも魔術的な意味合いがあンのか?
     だったら強要はしねェが・・・・・・」

ヴェント「・・・・・・別に。 私はもう『神の右席』じゃないし、黄色ってのも『神の火(ウリエル)』の属性だから
     黄色なだけで・・・・・・。 だからこれにこだわってるワケじゃないわ」

一方通行「『神の火(ウリエル)』、ねェ・・・・・・。 やっぱ『神の力(ガブリエル)』みてェなヤツなンかな。
     ・・・・・・まァいい。 そンじゃオマエも適当に選べ」

ヴェント「わ、わかったわよ・・・・・・」ピッ

785 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:20:44.03 ID:JRafuJwlo


――――――――――――――――――――――


と、一方通行の出費が大変な事になっている頃。


垣根帝督も大変な事になっていた。彼の場合は出費ではなく出血が、だが。


「・・・・・・っく」


ガクン、と膝から崩れ落ちる。やはり魔術を使用した際の反動によるダメージは
どうにもならないようだ。


「クッソ・・・・・・!! おいエイワス、お前の不思議パワーで魔術使った時の
 俺への反動をどうにか出来たりしねえのかよ」

「何か勘違いしているようだが、私は万能ではない。
 漫画やアニメみたいに何でもかんでも都合よくデメリットを消せるわけがないだろう」

786 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:21:32.40 ID:JRafuJwlo


チートの塊が何を常識的な事を言っているのか。


エイワスは垣根帝督から少し離れたところで佇んでいた。
垣根の魔術訓練に同行したエイワスだが、特にアドバイスや助力をしてくれることもなく、
ただ後ろで彼の訓練風景を眺めているだけだった。


「もう身体への負担の事は諦めたら? そればっかりは垣根の坊やが魔術を使う以上、
 一生付き合っていかなきゃいけない障害みたいだし」


真っ赤な修道服を着たシスター、ワシリーサは『一本足の家の人喰い婆さん』の魔術で現出させた
『臼』の上に腰掛けて、足をプラプラさせながら暇そうに言った。


「一日に何度も出来るような訓練じゃないわよ、これ?
 それでもいいなら私はさっさと始めちゃいたいんだけどにゃん♪」

「・・・・・・分かってる。 今回でルーンの魔術の訓練は終わらせるぞ」


そう言って、垣根は懐に忍ばせているデッキホルダーからルーンを取り出し、
丁寧に呪文を唱えた。

787 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:22:23.53 ID:JRafuJwlo


「ほうほう、呪文の詠唱はもう問題ないわねん。 んじゃ、目標は『この私に魔術の攻撃で一撃を喰らわせること』。
 遠慮しないで、攻撃できると思ったらズドン! と、かましちゃってオッケーよ☆」

「ふふ、君に一撃を喰らわせる、か。 ずいぶん厳しい目標じゃないか、ワシリーサ」


魔術による攻撃で一発当てるだけなのだから簡単だと思うかもしれないが、これは非常に辛いクリア条件だ。

なにせ相手が『殲滅白書』最強のシスター、ワシリーサ。
彼女は一体どこにそんな力を秘めているのか疑問に思うほどの怪力や、
十八番でもある魔術、『一本足の家の人喰い婆さん』で容赦なく大勢の敵を殲滅できる圧倒的な武器を持っている。


『殲滅白書』最強、は彼女がそう自負しているだけだが、実力は本物だ。
そんな彼女に一撃を喰らわせる事など、『未元物質(ダークマター)』使用禁止状態の垣根帝督に可能だろうか。

788 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:23:13.07 ID:JRafuJwlo


「行くぞ」

「カモォン♪」


その言葉を合図に、垣根帝督は地を蹴ってワシリーサの元へと駆けていった。
彼女との接触まで、残り四十メートルといった距離。

ワシリーサは素早くこちらに向かってくる垣根を見ても慌てずに、童女のような声で歌う。


「一本足の家の人喰い婆さん――――」

789 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:23:47.00 ID:JRafuJwlo


垣根の表情が険しくなる。あの馬鹿げた性能を持つ老婆を出される前に決着をつけたかったが、
戦闘を開始した時のワシリーサとの距離を考慮し忘れていた。


「幸薄く誠実な娘のために力を貸してくださいな♪」

「テメェの・・・・・・・・・・・・、」


走りながら、垣根は大きく息を吸って、


「どこが誠実なんだよコラァッ!!!」


垣根帝督はワシリーサとの距離が残り十メートルを切ったところで、魔術によって現出させた『武器』を
しっかりと握り締め振りかぶった。

790 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:24:45.32 ID:JRafuJwlo


「一本足の家の人喰い婆さん」


ワシリーサは掌を上に向け、ワイングラスを持つようにその手の指をゆるりと曲げた。


(ま、ず―――っ!!? あの化物ババアを呼び出すんじゃねえのか!?)


垣根の目論見では、まずワシリーサの前に彼女が召喚する『一本足の家の人喰い婆さん』、
あの不気味な出で立ちの老婆を自身の魔術の『武器』で叩き斬るつもりだったのだが、


「髑髏のランプをくださいな。 純粋で真っ直ぐな少年を黒い炭に変えてしまう、炎を噴き出す髑髏のランプを」


ワシリーサの手に、いかにもオカルトチックな頭蓋骨が音もなく現れる。
その髑髏の目の穴はまるで中に蠢く炎がいるようで―――。


「クソッ!!」

791 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:25:55.36 ID:JRafuJwlo


ドガァァッ!!!と、彼女が手に持つ髑髏のランプから紅蓮の焔が噴き出した。
炎が噴き出るというより、それはもはや爆破に等しかった。

どう考えてもその爆発範囲はワシリーサ本人をも巻き込んでしまっているのだが、
どうせ彼女は無傷なのだろう。


これをまともに喰らってしまったら、垣根の顔など一瞬で黒炭になってしまうだろう。
髑髏のランプから噴き出た炎が引いていく。


「およよ?」


意味不明の言葉を発するワシリーサ。
見ると、目の前にいた垣根帝督の姿が綺麗サッパリ消失している。


しかし、それはワシリーサの攻撃で垣根が木っ端微塵になってしまったのではなく、

792 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:26:53.17 ID:JRafuJwlo


「――――――、下か」


言って、ワシリーサが地面に目を向けると垣根帝督は既に『武器』を薙ぎ払う体勢に入っていた。
すんでのところで垣根は身を大きく屈め、髑髏のランプの攻撃を避けていたのだ。
そしてこのまま垣根の攻撃を喰らえば、ワシリーサの綺麗で美しい二本の足が見るも無残に『焼き斬れる』だろう。


だがワシリーサは垣根の薙ぎ払い攻撃を、余裕綽々といった跳躍であっさりとかわした。


「チッ」


攻撃をかわされ、垣根帝督は舌打ちをする。
前回の訓練でボロボロにされた時のダメージなど微塵も感じさせない軽やかな体捌きだ。
さっそくワシリーサにあと一歩で攻撃が届く、という段階まで来ている。

793 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:27:34.29 ID:JRafuJwlo


(・・・・・・ホント、おっそろしい成長速度だにゃん。 一瞬とはいえ私が対象を見失うなんて)


二十メートルほど上空から降下しながら、ワシリーサは垣根を観察する。
彼は降りてくるワシリーサを待ち構えんと、その手に握りしめた『武器』を構えていた。


(しかも最初に現出させた魔術の『武器』を難なく維持し、魔術の使用回数を節約してる。
 それによって身体への反動も減って・・・・・・、一石二鳥って事かぁ)


垣根は前回の訓練でただフルボッコにされただけではない。
完膚無きまでに叩きのめされた中で、しっかりと学習していたのだ。


「一本足の家の人喰い婆さん―――」


落下しながら、ワシリーサは口ずさむ。


「少年を焼き殺すには、髑髏のランプが足りませんわ。 二つ、三つ、いいえ、たぁくさん♪」

「あ?」


瞬間、垣根帝督の周りに。否、この地下空間の所々に髑髏のランプが出現した。
彼女が手に持っている髑髏とは違い、それらはふわふわと宙に浮いている。

794 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:29:08.70 ID:JRafuJwlo


「ふむ、眼福眼福。 ロシア民話を引用した魔術をこうも沢山見られるとはね」


エイワスはどこから持ってきたのか、やたら豪勢な背もたれ付きの椅子に座り、
二人の訓練の様子を優雅に眺めていた。


「しかしワシリーサめ、結構本気でやっているじゃないか。
 これではさすがに垣根帝督が可哀想に思えてくる」


と、言いつつも絶対に助太刀やアドバイスは送らないのがエイワスだ。
そんな事をしたら自身がしらけてしまうし、助太刀など垣根が断るだろう。


そんな垣根は天井を見て、目を皿のように開いて驚愕していた。


「・・・・・・・・・・・・!!? いねえ・・・・・・!?」


そこら中にうじゃうじゃと現れた髑髏のランプに驚いているのではない。

795 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:29:55.90 ID:JRafuJwlo


ついさっきまで地面に落下しようとしていたワシリーサの姿が、ふっと消えてしまっていたのだ。


垣根はキョロキョロと辺りを見回し彼女を探すが、やはりどこにも見当たらない。
そうしている間にも多数の髑髏が垣根に向けて照準を定めている。


『けろけろ、けろけろ。 こっちだよーん♪』


どこからか、声が聞こえた。ワシリーサの声だ。


「クッソ、隠れてねえで出てこいババア!!」

『けーろけろけろ。 ここまでおーいでー』


人を小馬鹿にするように笑いながら、ワシリーサは垣根を困惑させる。
髑髏の照準が定め終わったようだ。このままあの爆破攻撃を受ければ、垣根はあの世行きのチケットを手に入れてしまうだろう。


(出し惜しみしてる場合じゃねえ!!)

796 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:30:46.86 ID:JRafuJwlo


垣根は懐からルーンを数枚取り出し、『詠唱破棄』を用いて即座に魔術を発動させた。
その攻撃により周りの髑髏のランプが次々と爆破、霧散していく。

その隙に垣根は髑髏のランプの包囲網から走って抜け出し、ワシリーサの行方を追う。
魔術を使った際の反動で口や耳から出血したが、構わずに彼は走った。


と、そこで垣根はこの防空壕跡の地下空間に似つかわしくない、妙な物を発見した。




「・・・・・・・・・・・・なんだありゃ。 ・・・・・・カエ、ル?」



797 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:31:30.69 ID:JRafuJwlo


垣根の視線の先には、体長三、四センチ程度の蛙が喉をひくひく動かしながらこちらをジーッと見ていた。
見た目は普通のアマガエルのように見える。ただし、その体色は『赤』だった。


「・・・・・・テメェ、ワシリーサか・・・・・・!?」

『けろっ、見つかっちったけろ〜』


ベタすぎる口調で蛙はぴょいんぴょいんと微笑ましい動きで飛びながら垣根から離れていく。
しかし、その小さな体躯からは想像の出来ない跳躍力であり、一飛びでゆうに三十メートルも前へ飛んでいる。


(あれも魔術なのか・・・・・・? デタラメすぎんだろあのクソババア・・・・・・)


人が蛙に化けるなど、絵本やゲームの世界だ。
しかしワシリーサの魔術は大体が『ロシア民話集』をモデルにしているため、なんら不思議はない。デタラメではあるが。


垣根は予想以上にすばしっこい蛙の動きに翻弄されていた。
素早い上にあんな小さな体では、攻撃など当てられるわけがない。

しかもクリア条件は『ワシリーサに魔術での攻撃を当てること』、だ。
適当に小石などを蹴って当てても訓練終了とはならない。

798 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:32:46.90 ID:JRafuJwlo


垣根帝督は仕方なく蛙の追跡を諦め、周りで自分を焼き殺そうとしている髑髏のランプを
全滅させることにした。


「うざってえ・・・・・・!」


ルーンを使い、手に持っている『武器』を振るい、次々と髑髏を破壊していく。
反動で頭から流血し始めているが、かまっている暇など無い。


だが、この髑髏は破壊すると爆発する仕組みになっているらしく、
至近距離で爆発させると垣根自身にもダメージが伝わってしまった。


(距離を調節しねえと・・・・・・)


目の前にある髑髏から二、三歩後ずさり距離を取る。


と、


「ん?」

799 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:33:57.47 ID:JRafuJwlo


トン、と背中になにか軽くぶつかった。
まさかと思って振り向くと、そのまさかとしか言い様がなかった。


ワシリーサの呼び出した髑髏のランプが目から強烈な光を放ち、今にも炎を噴き出す瞬間だった。


「―――――――ッッ!!?」


垣根はほぼ無意識で髑髏のランプの頭上を越えるように後方転回――いわゆるバク転――する。
華麗な軌跡を描いて飛んだ垣根は、鮮やかに髑髏のランプの炎を避けることに成功した。

そしてすかさず『武器』を前に突き出し、髑髏に貫通させて破壊した。
その際の爆発も垣根は素早いバックステップで回避している。絶好調だ。


(まだあと数個残ってやがるな・・・・・・、とりあえず速攻でこの骸骨どもを片付けて――)

800 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:34:53.36 ID:JRafuJwlo


が、


「とーうっ☆」

「げはぁッ!!?」


垣根が行動に移る前に、突然横からワシリーサが垣根の横っ腹にトゥーキックをぶち込んできた。
さっきまでは蛙の姿だったはずだが、彼女はいつの間にか元の姿に戻っている。


「油断大敵ぃ! って、おおう・・・・・・」

801 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:35:35.20 ID:JRafuJwlo


「ぐっ・・・・・・」


ズザザザッ!!、と足を踏ん張ってなんとか蹴りの威力を殺す垣根。
彼は横腹にきた彼女のキックをしっかりと腕でガードしていた。


「むゆ〜ん。 かなりやるようになったわねぇ、髑髏のランプも通用しなくなってきてるし・・・・・・」

(信じ・・・・・・られねえこの女。 ガードしたのに肝臓までダメージが届いてやがる・・・・・・!!)


コイツの両親、ゴリラなんじゃね?、と垣根がジロリとワシリーサを睨むが、
既に彼女の姿は消えていた。

802 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:36:45.44 ID:JRafuJwlo


「またカエルかよ? 芸のねえ野郎だな」

『ごめんけろ。 けろ今度はもっといい物見せてア・ゲ・ル☆ けろ』


ザリ、と地面を踏む音が聞こえた。
垣根が後ろを振り向くと、二十メートルくらい先のところで元の姿のワシリーサが両腕を広げて目を閉じていた。

すると、まだ地下空間に残っていた髑髏のランプが一斉に爆破し、無へと帰した。


「何のつもりだテメェ、手加減とか抜かすんじゃねえだろうな。
 俺は常に全力で来いっつったはずだぞ」

「わぁーかってるってーの☆ 髑髏のランプはあなたには通用しないみたいだし、
 私も次の手で攻めさせてもらうわよーん」


ワシリーサは両腕を開いたまま、静かに口を開いた。


「ねぇ、一本足の家の人喰い婆さん――――」

803 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:38:22.99 ID:JRafuJwlo


何かを尋ねるかのような口調で、ワシリーサは声を出す。


(今度こそあの化物を呼び出すのか・・・・・・?)


しかし、そうであろうがなかろうが、垣根帝督のやる行動は決まっている。
彼はルーンを取り出し、魔術を発動する。出血や痛みの代償を支払って使用したそれは、遠距離攻撃。
魔力の塊が何かを言いかけているワシリーサの元へ一直線に飛んでいく。

それを追うように垣根は地を蹴った。
自身で出した魔術が通った後をたどるように、自分も『武器』を握って走っていく。

遠距離攻撃を避けられても自身で攻撃する、という典型的だが効果的な攻撃方法だ。


しかし、それらが届く前にワシリーサは言葉を終えていた。


(ここまでかな)


それを遠目で見ていたエイワスも、訓練の終了を静かに悟った。

804 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:39:17.68 ID:JRafuJwlo


「ねぇ、一本足の家の人喰い婆さん」




「小屋に向かう時に出会う、あの『黒い騎士』はなぁに?」




本当に、本当にその声は幼い純粋無垢な幼児が単純に疑問を話している時のような声だった。


垣根はワシリーサが何を言っているのかわからず、走りながらも怪訝な顔を浮かべた。
間もなく、垣根の遠距離攻撃がワシリーサに直撃する頃だ。


そして、垣根は確かに聞いた。パカラッという、まるで馬の蹄が地面を蹴るような音を。

805 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:40:29.29 ID:JRafuJwlo


「?」


そして、垣根は確かに見た。いつの間にやらワシリーサの隣に現出していた、黒い馬に跨った黒い騎士を。


(なんだ? あの真っ黒な騎士は・・・・・・? またコイツが呼び出して―――)


垣根は最初、黒王号に乗ったラオウがゲスト出演してきたのかと思った。
しかしよく見ると、黒い馬も黒い騎士もどこか西洋風の装備を着けており、黒い騎士はその手に禍々しい黒のオーラが
揺らめく剣を握っていた。

そして、突如出現した『何もかもが黒い騎士』が一体どのように攻撃を仕掛けてくるのか考察する間もなく
彼らがいる防空壕跡の地下空間に、




『夜』が訪れた。




これにて、本日二度目の訓練は終了。

806 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:46:26.79 ID:JRafuJwlo

Q. カエルとか黒い騎士とか意味不明なんですけど?

A. バーバ・ヤーガと髑髏のランプだけじゃバリエーションが少ないと思ったので、
  今回は少しロシア民謡を参考にオリジナル要素を入れてみました。
  オリジナル要素が苦手な方には申し訳ありませんとしか言い様がないです・・・・・・


さて、これで垣根帝督の二度目の訓練は終了しました。
非常に惜しいところまできています、ワシリーサ相手に能力なしで・・・・・・すごいです。


次回はほぼ100%前方通行でお送りします。少しシリアスかもしれません。

それでは、今回も読んでくださった方に心から感謝してお別れさせていただきます。
ありがとうございました!
807 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/13(日) 19:47:04.36 ID:JRafuJwlo



                          【次回予告】



『この私に否定形はない』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『どこの女王サマだオマエは』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:48:46.31 ID:nYOAy++uo
>>1
ヴェントちゃんちゅっちゅ
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:50:17.57 ID:baHXWmP+o
蒼ざめた馬かと思ったけどまったく関係なかった恥ずかしい
>>1乙乙
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 19:56:00.30 ID:1X4cfe5io
乙乙
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 20:49:09.77 ID:+sfegvfAO
イノケンさん三人が出来る以上
バーバ・ヤーガさん三人も出来るよな
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:36:22.62 ID:9ry92Wg+o
一本足の魔術はロシア民話を基にしたものだから十字教理論である三位一体(至聖三者)を基にしてるイノケン3バは出来ないんじゃないか?
まあ禁書だし応用し曲解したと言っとけばこまけぇこたぁ(ryだけどもさ
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/13(日) 21:54:29.20 ID:0usdH6bM0
一方さん着メロが・・・
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 21:55:23.70 ID:aMT7Sxz3o
>>812
天草式が一晩で(ry
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:07:06.73 ID:7SIpovY00
>>812
甘い。「鷹フィニストの羽根」ではまさに3人のバーバ・ヤーガが登場している
つまり、3体召還は不可能じゃない
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:15:24.10 ID:6cc/5hzh0
>>811
垣根ハーレム完成だな
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:16:32.49 ID:W27ZbmZIO
三体融合!アルティメット・イノケンティウス!
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:20:27.75 ID:DLggWHiB0
>>817
ただし負けフラグ
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:29:12.88 ID:X372z2q9o
生贄にしてシャイニング・イノケンティウスにすればいいさ
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 22:30:31.21 ID:22Sf5ANN0
そんなことより
すっぴんヴェントちゃんかわいすぎ
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:17:20.76 ID:aPkuj8eAO

ところで
『この私に否定形は【ない】』
って矛盾してね?
822 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/13(日) 23:23:15.40 ID:JRafuJwlo
>>821
え、もしかしてセリフ間違えてました?
原作にそんなセリフがあった気がしたので使ったのですが・・・・・・間違えてたら恥ずかしいってレベルじゃねえぞ・・・・・・
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:28:31.65 ID:aLHSmJPEo
ヴェントの言動を否定する事を認めないって事だろ
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:29:52.65 ID:KLyoMKkJ0
あ、俺この黒い騎士知ってる
バーバ・ヤガーに仕える時刻の3騎士だったはず
白い騎士と赤い騎士(乗ってる馬は同じ色のはず)も居るのかな?
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:33:06.70 ID:3HAeRpbeo
そのセリフ自体が否定形じゃないかというツッコミと思われます大佐。
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:38:56.09 ID:3RdWDsgHo
自己言及にはパラドックスが内在するってばっちゃが言ってた。
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/13(日) 23:43:27.86 ID:4D7NAEdWo
お前のばっちゃと話してると頭よくなりそうだな
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 00:02:44.31 ID:HI/LrvSr0
前方通行きた!これで勝つる
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 00:57:04.37 ID:XW36I9LB0
>>805
まさかの時刻の三騎士キターーーーーーーーーーーーーーー!!
こいつ、『麗しのワシリーサ』に出てきた、夜を司る騎士ですよね!?
なぜかこいつら気に入ってるので凄く嬉しいです!!

>>815
>>816

お前ら…そんなにていとくんとバーバ・ヤガーを結ばせたいのか……orz
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 01:54:50.82 ID:xlCEaHk/o
スレタイでスルーしてたけど、暇潰しに読んでみるとこんなにもはまってしまった。

しかしなんというか、こういうものを見てると、どうしても垣根クン的立ち位置のキャラを好きになってしまう・・・・・・
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 08:36:22.07 ID:SU5sTHsSo
GS美神の横島的存在だよな、バカで変態だけど憎めないっていう
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 17:30:28.67 ID:GTWDbE6E0
一通さんの着信音がwwww

>>815女の子三人に囲まれるとかハーレム以外の何ものでもないな
ホントに昇天してしまうかもしれないが

そして>>1乙です
833 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:24:09.19 ID:Jcbnw7aWo
とりあえず否定形はそのままでいきますー。
ともかく原作は手元に置いておいたほうがいいですね・・・・・・早いとこ弟から返してもらわんと。


どうも、>>1です。投下しに来ました。
バーバ・ヤーガの三騎士は割と有名みたいですね。許容していただけたようでありがたいです。


さて、今回は一方通行サイド。ていうかほぼ全部前方通行で進行します。


それでは、いってみましょう
834 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:25:34.68 ID:Jcbnw7aWo


――ロシア東部・実験都市 ショッピングセンター とある洋服店


店員「あ、ありがとうございました〜 (す、すげえ・・・・・・ブラックカードなんて初めて見た・・・・・・)」


          ガチャ


レッサー「いやー、かなり買い込んじゃいましたね!」マンゾクー

一方通行「・・・・・・買ったのは俺だけどな」フラフラ

風斬「あの・・・・・・お金、本当によかったんですか? 合計金額見てびっくりしたんですけど・・・・・・」

一方通行「なンでもねェよ、あンくらい。 ・・・・・・だがそォ思うなら少しは自重しろ」フラフラ

サーシャ「第一の私見ですが、あなた今、すごい面白い事になってますよ」

一方通行「・・・・・・買い物袋の持ち過ぎで、拡がった翼のようになっているこの状態の事か」フラフラ

ヴェント「おい、なんでこっち寄ってくんのよ。 さっきからフラフラと・・・・・・、
     アンタ酔ってんの?」

835 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:27:07.22 ID:Jcbnw7aWo


一方通行「見てわかンねェンですかねェ!? こンだけ荷物持ってりゃ能力使っても多少はフラつくわ!!
     演算が面倒くさすぎてなァ!」

風斬「能力を使ってるんですか? やっぱり私も荷物持ち手伝った方が・・・・・・」

一方通行「・・・・・・チッ、構わねェよ。 こンだけ多かったらこの先何個増えよォが変わらねェ」

レッサー「さっすが第一位! 人としての器が大きくいらっしゃる!」ヘヘー

一方通行「オマエが買ったモンは今すぐここで投げ飛ばしちまっても構わねェな?」ギロリ

サーシャ「第二の私見ですが、預かり所でその荷物を置いてきてはどうでしょう」

一方通行「分かってる。 ついでに郵送サービスでこれら全部まとめて独立国同盟に送ってもらう」

レッサー「じゃあここらで休憩しましょう。 皆さんそろそろお腹が空いてきてるんじゃないですか?」

サーシャ「第一の解答ですが、少し空いています」

一方通行「船であンだけメシ食らったクセに・・・・・・」

836 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:27:52.76 ID:Jcbnw7aWo


風斬「私はまだ平気ですけど・・・・・・」

ヴェント「空いてない」

一方通行「俺も平気だ」

レッサー「じゃ、そこのお店でフレンチでもいただきましょう」

一方通行「オイ、俺たちに選択権は無ェのかよ」

サーシャ「では一方通行、荷物をよろしくお願いしますね」

一方通行「オイ」

風斬「あ、じゃあ私も一方通行さんに・・・・・・」

レッサー「いいからいいから! 風斬さんも先に行ってましょうよ!」グイッ

風斬「あああ・・・・・・・・・・・・」ズルズル

837 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:28:49.88 ID:Jcbnw7aWo


一方通行「あンのマセガキ・・・・・・!! ・・・・・・チッ、まァいい」フラフラ

ヴェント「おい」チョイチョイ

一方通行「あァ? 服引っ張ンじゃねェよ。 つかこの紙袋の山からよく俺の服の部分を見つけられたな」

ヴェント「こっち。 荷物預けるとこ」スタスタ

一方通行「あ? あァ・・・・・・いや知ってるけどな」フラフラ


風斬「あ、あれ? ヴェントさんは・・・・・・?」

サーシャ「第二の解答ですが、一方通行に着いていってましたよ?」

レッサー「ぬぅ!? まさかヴェントさんまで!? ええい、先を越されてたまる―――」

店員「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」

レッサー「ちぃ・・・・・・! 五人です、二人は後から来ます」

838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:29:06.36 ID:EfvKp+dV0
ランプがたくさん出たんだから
きっとバーバ・ヤガーもたくさん出てくるよ
垣根くんのハーレムを作るために20000人くらい
839 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:30:46.32 ID:Jcbnw7aWo


一方通行「ていうかよォ」

ヴェント「あ?」

一方通行「こンな科学技術まみれのショッピングセンターにいて、オマエ大丈夫なのかァ?」

ヴェント「・・・・・・アンタさ、私を『科学アレルギー』か何かと勘違いしてない?」

一方通行「別にそこまでは言ってねェだろ」

ヴェント「確かに今でも科学は憎いし、嫌い。 でもね、そこにこだわってばかりじゃ
     今の世の中は生き辛いだけなのよ。 私だってテレビくらい少しは見るし、
     最近になって携帯電話も使い始めてるのよ、ほら」サッ

一方通行「ふーン」

ヴェント「・・・・・・まぁ、それでも確かにこの商業施設は気に入らないけどね。
     何よここ、あっちもこっちも画面だらけで目が疲れちゃう」

840 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:32:11.53 ID:Jcbnw7aWo


一方通行「その辺はまだ対策が出来てねェからなァこの街は。
     そォいう意味での実験都市なンだが」

ヴェント「ふん・・・・・・」

一方通行「ところでオマエ、なンで俺に着いてきてンだよ。
     荷物預ける場所くらい知ってるっつっただろォが」

ヴェント「私がどこを歩こうが何をしようが、私の勝手でしょ」

一方通行「そりゃそォだが。 ・・・・・・・・・・・・えーと、確か託児所の近くにあったよなァ・・・・・・」キョロキョロ

ヴェント「・・・・・・アンタ、随分な財布扱い受けてるけど、それでいいの?」

一方通行「あ?」

ヴェント「ここまでのアンタの出費考えれば分かるでしょ。 このままじゃアンタ、
     ここから帰る頃にはすってんてんになってるわよ」

841 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:33:15.21 ID:Jcbnw7aWo


一方通行「レベル5の財力ナメンなよオマエ。 その気になりゃその辺の店舗二、三は買い取れる」

ヴェント「アンタ金持ちなんだ?」

一方通行「このブラックカードが目に入らぬか。 ・・・・・・あァクソ、取れねェ」ゴソゴソ

ヴェント「でもアンタって金でブイブイ言わせるような人間じゃないわよね」

一方通行「あったり前・・・・・・、・・・・・・いや、俺も結構金遣い荒い方かもしンねェ。
     ここ来るときに個人所有の航空機買ってるしな・・・・・・」ブツブツ

ヴェント「?」

一方通行「しっかし、オマエでもこォいうショッピングとか来るンだな」

ヴェント「アンタが無理やり誘ったんだろうが!」

一方通行「いやァ、ホントに来やがるとは思わなかったンだよ」

842 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:34:03.44 ID:Jcbnw7aWo


ヴェント「・・・・・・ま、まぁ、アンタがあんだけ頼み込んで来たわけだし? 私も仕方なくって感じで・・・・・・」

一方通行「そこまで懇願はしてねェよ」

ヴェント「な、なによ・・・・・・。 私は来ないほうが良かったってか?」

一方通行「いや、来て欲しかったけど」

ヴェント「な・・・・・・・・・・・・///」

一方通行(人数は少しでも多い方がいいからな。 ガブリエルとエリザリーナは仕方ねェとして、
     垣根の野郎は何やってやがンだ・・・・・・? アイツいねェとすげェやりづらいンだよここ・・・・・・。
     エイワスとワシリーサは別に来なくていいが)

ヴェント「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

一方通行「どォした? 顔赤いぞ、風邪でも引きやがったか」

ヴェント「う、うるせぇ・・・・・・・・・・・・///」プイッ

一方通行「・・・・・・? お、やっと着いたか」

843 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:35:41.43 ID:Jcbnw7aWo


そうして適当に話しながら歩き回っている内に、一方通行とヴェントは託児所に到着した。


このショッピングセンターに設けられている託児所は、やはりこの街に比例して非常に規模が大きい施設だ。
毎日数多くの買い物客が来訪してくるこの街だが、その中にはやはり子供連れの客もいる。
この街で多種多様な商品を見て回ろうと思うと、やはりどうしても大人より先に子供が疲れてしまうのだ。

そんな親子連れの客のために用意されているのがこの託児所。
通常のデパートなどにも託児所が設けられていたりするが、ここのは前述したとおり規模が違う。
もはや一つのテーマパークと化しているのだ。


動物を模した乗り物やジャングルジム、滑り台など定番な遊具は当たり前。
ゲームセンターや、小さな映画館――子供向け劇場版アニメしか上映していない――、
終いには各店舗をぶち抜くように用意されているジェットコースターまである始末だ。
小規模の遊園地より出来がいいテーマパークかもしれない。


「こンな作りじゃ却ってガキが帰りたがらなくなンじゃねェのか・・・・・・?」

844 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:37:12.73 ID:Jcbnw7aWo


思わずそう口走った一方通行だが、確かに、言った側から子供の泣きじゃくる声が
彼の耳に届いた。まだここで遊んでいたいと駄々をこねる子供と、困り果てた親が視界に入る。

こういった、親からしたら面倒な事態になる事を避け、あえてここに子供を預けない親もいるそうだ。


(あのクソガキにこの託児所の事言ったら真っ先に連れてけ連れてけのオーケストラが始まるだろォな・・・・・・)


いや、打ち止め(ラストオーダー)はそこまで子供でもないと思うんだが・・・・・・・・・・・・。


と、さっきから一言も話しかけてこないヴェントを不思議に思い、一方通行が彼女を見てみると、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


なにやらヴェントの顔色が悪くなっていた。濃い化粧で顔色がなかなか窺えないが、
それでも多少青ざめてる事が分かる。

845 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:38:26.68 ID:Jcbnw7aWo


「オイ、どォした。 腹でも下したか?」

「・・・・・・べ、別に」


女性に対して非常に汚らわしい言葉を平気で投げかける一方通行にも大したリアクションを見せず、
ヴェントはただ俯いて生返事をするだけだった。これは明らかに様子がおかしい。


(・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・! アレ、か?)


一方通行は託児所の天井を見上げる。

846 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:39:07.84 ID:Jcbnw7aWo


そこには、この託児所に用意された巨大なジェットコースターがあった。
マシンがカタカタカタカタ・・・・・・、とコースを上り、マシンに乗っている子供たちは既にキャーキャーと騒いでいる。


一方通行はヴェントの部屋で聞いた、彼女の過去を思い出していた。


ヴェントには幼い頃、弟がいた。最新の科学技術で設計されたテーマパークのアトラクションに乗り、
そこでまさかの事故が発生。その時に彼女は弟を失っている。
ヴェントが科学を憎むようになったのは、確かそれが原因だったはずだ。


彼女は、この目の前にあるジェットコースターマシンを見て、その時の事を思い出しているのだろうか。


「・・・・・・・・・・・・さっさと行くぞ」


彼らは託児所に用があるわけではない。荷物を預かってくれるサービスを行っている施設に用があるのだ。
ただそこへ行くために託児所を通らなければならなかっただけだ。

847 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:40:13.59 ID:Jcbnw7aWo


そんなわけで一方通行は大量の紙袋をガサリと揺らし踵を返すが、ヴェントは一向に動こうとしない。


「・・・・・・、オイ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「見たくもねェモンを見る必要はねェよ」

「・・・・・・ちょ、ちょっと。 ちょっと待って」


ヴェントはそう言って、轟音を響かせながら走るジェットコースターマシンを凝視し続けていた。
やはりどう考えても過去の出来事を思い出している。


「・・・・・・私が弟と乗ったアトラクションも、こんな感じだったわ」

「そォかよ」

「どうしてあんな危険な物に乗れるのかしら」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・行くぞ」

848 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:41:13.39 ID:Jcbnw7aWo


さっさとレッサー達が待っている飲食店へ行かないとうるさそうだ。
一方通行は上を見つめたまま固まっているヴェントを無理やり連れていこうと腕を掴もうとしたが、


「・・・・・・ねぇ」

「あァ?」




「・・・・・・・・・・・・あれ、乗ってみたい」




一方通行はとりあえず自分の耳を疑ってみた。
バッテリーの調子がおかしいのか、ジェットコースターが走る音が邪魔になり、彼女の言葉を聞き間違えただけなのか。
しばらく閉口した後、一方通行は聞き返してみる事にした。

849 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:42:10.34 ID:Jcbnw7aWo


「・・・・・・なンだって?」

「ジェットコースター。 乗ってみたいっつったのよ」

「・・・・・・オマエ、なァ」

「わかってるわよ。 あんだけ科学が嫌いだの憎いだのほざいてたクセに、
 何をトチ狂った事言ってんだこの女、とでも思ってんでしょ?」


別にそこまで思いはしなかったが、しかし一方通行は驚いていた。
『このジェットコースターを粉々に破壊してやりたい』、とかならまだ分かる。いやそんな事言われても困っていたが。

しかし『ジェットコースターに乗ってみたい』、と言い出すとは思わなかった。
一体どういう心境の変化なのだろうか?


「でもよォ、さっさと風斬達と合流しねェとうるせェぞ。 特にあのマセガキが」

「一回くらいなら大丈夫でしょ」


若干だが口調が強くなっている。どうやら彼女の中で決心がついてしまったようだ。
こうなったら梃子でも動かないだろう。

850 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:43:58.22 ID:Jcbnw7aWo


しかしそうまでしてなぜ乗りたがるのか。
彼女は未だに気分の悪そうな顔色をしている。そこまで思いつめるのならさっさとここから
離れるのが得策だと思うのだが・・・・・・。


「マジで言ってンのか」

「・・・・・・アンタ、昨日私に言ったわよね」


ヴェントはジェットコースターのコースを見上げたまま、一方通行に話しかける。


「私が抱えてるどす黒い憎悪の塊を、自分も一緒に抱えてやるって。
 ・・・・・・アレ、嘘でしたとか言わないわよね?」

「さすがにあンな事で嘘つくほど俺は腐ってるつもりはねェよ」

「それなら・・・・・・。 それならアンタと二人なら、多分乗れる」


昨日、一方通行はヴェントの過去を聞き、確かに約束した。


ヴェントが抱えている科学への憎悪も、嫌悪も、一緒に抱えてやる、と。


その言葉に嘘偽りは無い。その場の雰囲気やノリで適当なことを言ったのではない。
ヴェントが科学の事で何かに苦しんでいるなら、それを解決する術を探し出すつもりだし、
彼女が『科学の頂点』と言っても過言ではない一方通行に死ねと命じてきたら・・・・・・、その時はその時だ。

851 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:47:44.57 ID:Jcbnw7aWo


そして一生をかけてでも、ヴェントが抱える歪んだ塊を払拭してやる。
一方通行はそう考えていた。そう考えられるほど、精神的に大きく成長していた。


だから、


「乗るわよ」

「ちょっと待てよ、なンで俺まで―――」

「この私に否定形はない」


ヴェントは振り向き、一方通行の真っ赤な目を見て断言した。


「私がやると言った事はやるの、絶対に。 否定だけは認めていない。
 ・・・・・・だから、アンタも一緒に乗るの、アレに。 私が乗れって言ってるんだから」

「どこの女王サマだオマエは」


一方通行は深くため息をつき、頭を掻こうと思ったが、両手が荷物で塞がっているためそれは叶わなかった。

852 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:48:57.04 ID:Jcbnw7aWo


しかし、否定形はないと来たか。
一方通行は今までも女性のワガママに散々付き合わされてきたが、ここまできっぱりと
従わさせるような物言いをする女には出会った事が無かった。

・・・・・・いや、一人だけ。ある意味ヴェントと似たように面倒なワガママを言ってくるクソガキがいたか。

しかし一方通行も甘いところがあるのか、結局女性のワガママは断れないのだった。
昨日、ヴェントとあんな約束をしたばかりなだけに、余計に拒否出来ない。


「アンタの言う通り、上条当麻の言う通り、いつまでもこのままの生き方じゃダメかもしれない」

「・・・・・・・・・・・・」

「私は弟が喜ぶ事なら何だってする。 ・・・・・・あの日、弟は私がワクワクしながら
 アトラクションが動くのを待っている姿を見て、とても嬉しそうだったわ。
 姉バカと言われても仕方ないかもしれないけど、私にはそう見えたのよ」

853 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:50:00.95 ID:Jcbnw7aWo


クスっと、自分で自分に失笑しヴェントは言う。


「私がこれに乗ったら、弟も喜んでくれるかしら?」

「・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・、ハッ」


一方通行は鼻で笑ってヴェントに背を向けた。


「死人に感情表現求めてンじゃねェよクソボケ」


荷物置いてくるからそこで待ってろ、と一方通行は託児所の広場から出て行く。

854 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:51:15.60 ID:Jcbnw7aWo


これはある意味、ヴェントに舞い降りた千載一遇のチャンスなのかもしれない。
たかがアトラクションの一つや二つ、そんな入れ込んでまで乗る事ないだろうと思う人もいるかもしれない。

だが、ヴェントにとってこれは最大の挑戦と言っても誇張ではないだろう。


だが今、彼女には心強い味方がいる。
自身の科学に対する憎悪も嫌悪も、苦しみも全て一緒に背負ってやると言いのけたあの男。
突如として巨大なクルーザーと共に現れた、科学の集大成。


(・・・・・・まだ信じたわけなじゃない。 あの白いのの言葉を。
 鵜呑みになんてしない。 ・・・・・・けど今、あの男のがどこまで本気なのか試してみるならここしかない)


やはりまだ、一方通行を心の底まで信用しているわけではないが、
彼の言葉が真実なのかどうか少しでも知れるというのなら。

そして上条当麻の言葉通り、少しでも自分の生き方を弟のために変えられるのなら。


まずは目の前にある子供向けのちゃちなアトラクションくらい、乗ってみるのもいいだろう。

855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:54:22.08 ID:OibGzLYK0
SHIENだ!!
856 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:57:24.33 ID:Jcbnw7aWo
ここまででし。

すっぴんのヴェントは可愛いですが、この場面のヴェントはまだ神の右席仕様です。
素顔のヴェントの登場はまだだいぶ先になりますねー。


で、次回も前方通行なのですが・・・・・・これ本当に需要あるのかなぁ。そこが心配でしょうがないです。
いやまぁ需要無くても書くんですけど。


次回更新は三日以内。


果たして無事にジェットコースターに乗れるのかどうか、
次回も是非、よろしくお願いします。

ではまた!
857 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/14(月) 22:58:09.54 ID:Jcbnw7aWo



                          【次回予告】



『手ぇ繋いでたら恋人同士なのかよ? だったらフォークダンス踊ってるペアも恋人になるのかよテメェの中じゃ?
 あぁ、それじゃ男同士でも女同士でもカップルが成立しちゃうわねぇ? テメェその年で同性愛に興味あんのか
 あーこりゃ将来が楽しみだわ、そうだろこのクソガキ!!』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『ガキを泣かしてンじゃねェよ、更に居辛い状況になっちまったじゃねェか!! 大人気ねェにも程があンぞオマエ!!』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)



858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 22:59:39.54 ID:rIaRtlV10

一方さんに大人気ないとか言われちゃう前方さんにニヤニヤが止まらない
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:01:36.05 ID:52u06H9E0
>>1

初めてリアルタイム更新に遭遇した
何か妙にテンション上がるなこれ・・・

ヴェントのデレが可愛すぎて生きるのが辛い
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:02:32.45 ID:GTWDbE6E0
>>1乙です

自分はヴェント好きだから前方通行嬉しいですww
そしてテッラさんの出番はまだですかねー?
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/14(月) 23:05:10.22 ID:oxnAyMKSO
>>1乙です。
リアルタイム遭遇はかなり興奮するな
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:06:53.06 ID:hlV1A+Ibo

おいヴェント何してんのww
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:07:12.64 ID:5PeqKFsIO
>>860
愉快なオブジェである
クール便で日本へ直送である
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/14(月) 23:10:48.52 ID:IXvybY/M0

とりあえずヴェント落ち着けwwww
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/03/14(月) 23:12:15.25 ID:s0Ad2VUQ0


あわきんはまだー?
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:14:25.56 ID:94j2ML+No

ヴェントちゃんがとても可愛いから何も問題はないな
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:22:21.71 ID:QXdvi/vDO
>>865
【いしのなかにいる】
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:30:57.35 ID:HI/LrvSr0

いやむしろ需要しかないと言っていい
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/14(月) 23:45:21.48 ID:/Iq3X0GAO
乙!!

大丈夫だ。俺は前方通行好きだよ
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 00:04:01.27 ID:uzKIICGD0
何この前方さん可愛すぎる
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 00:56:26.22 ID:AHhyBDJyo

今確認しましたけども「この私に否定形はない」であっていますの
>>821は「私は否定形を使わない」という意味で捉えてしまっただけであって
実際の意味は「私に(対して)否定形(を使う事)は(認めてい)ない」って事ですの
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 03:09:38.99 ID:GSHcrtUG0
>>838
どこのヤガー・シスターズだwwww
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 06:41:11.67 ID:lEChd4rAO
なにこれかわいい
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 11:02:09.20 ID:UMgi69WI0


需要とかないわけないでしょう?
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 12:20:04.83 ID:lEChd4rAO
>>872
両親はバーバパパとバーバママですねわかります
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 17:06:55.41 ID:09kHbCfyo
バーバーパパってあれ綿菓子らしいなそういえば
877 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:38:53.86 ID:8eevnv13o
ども、投下しに来ましたよ。

前方通行、ちゃんと需要があってよかったです。
ここまで需要あったって事はもう他で前方通行のSSがあったのかな・・・・・・?

今日はその前方通行の続きです。
ヴェントが科学を憎むようになった原因であるアトラクションに挑戦します。


それでは、いきまっしょい
878 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:39:41.02 ID:8eevnv13o


そういうわけで、一方通行は荷物預かりサービスにて彼女たちの狂った量の買い物袋を全て預け、
再びアミューズメントライドがある託児所に戻ってきた。

彼はヴェントの要望通り、ジェットコースターに一緒に乗ってやろうと思ったのだが。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


二人は託児所の広場の端でボーッと立ち尽くすだけだった。
乗るならさっさと乗れ、と言いたくなるかもしれないが、少し考えてみてほしい。

もしここが、この場所がそこらにある割と有名な遊園地やテーマパークだったら、
二人は迷うことなくジェットコースターが目的で出来ている人の列に並んでいただろう。




しかし、ここは託児所である。託児所とは、平均年齢五、六歳くらいの男女の子供が
親が買い物を終えるまで暇をせず遊べるようにと設けられた施設だ。



879 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:40:41.29 ID:8eevnv13o


「・・・・・・・・・・・・なァ」

「な、なによ」

「マジで乗るンすかコレ? やっぱやめといた方がよくねェ?」

「わ、私に否定形はな―――」

「いやそれはもォ聞いたけどよォ」


ジェットコースターがキャッキャとはしゃぐ子供たちを乗せ、コミカルなメロディと共にカタカタと前進し始めた。
残りの子供たちも次に乗車するために列を作り出している。
一方通行とヴェントが乗るのなら、もうそろそろ並んだほうがいいわけだが・・・・・・。


「いやァ、ちょっときつくないですかァコレ」

「何よ。 アンタ、こういうガキ達と乗るのが恥ずかしいとか言うんじゃないでしょうね」

「オマエはどォなンだよ」

「・・・・・・へ、平気よ。 こんなの全然、じゃがいもだと思っておけばいいのよ」

880 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:42:01.43 ID:8eevnv13o


二人はただ楽しむためにジェットコースターに乗るのではない。

これはヴェント自身が抱くアトラクションへのトラウマを払拭するための大事な事でもあるし、
上条当麻や一方通行の言葉に耳を傾け、かつて起きた悲劇をいつまでも引っ張る自分を
少しでも変えてみよう、という彼女の確固たる決意を示すための行動だ。


だから、これが託児所の『遊具』であるという羞恥心などにかまけてる場合ではない、のだが。


「やべェ、周りの視線がより一層凄まじい事になってやがる」

「ちくしょう・・・・・・、こんなところで躓いてる場合じゃないのよ!!」


ヴェントはおもむろに一方通行の手を掴むと、ずかずかと歩いて子供たちの列に加わった。
周囲の子供たちの視線は白髪の悪魔と顔面ピアス女に否応なく集中する。

881 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:42:37.11 ID:8eevnv13o




「みてみてーあの人、頭まっしろけ!」

「あのおねーさん、なんでベロにキーホルダーつけてるの?」

「俺の友達のおかあさんがあのおねえちゃんみたいに耳とかベロにいっぱいなんか付けてるよ!」

「うそー!? すげー、こえ〜」




色んな人種の子供たちが、色んな国の言葉でヒソヒソと二人のことについて囁いている。
いや、もはや囁いているというレベルの騒ぎではなくなっていた。
風船を手渡している可愛らしいキャラクターの着ぐるみなど放ったらかしで、子供たちは二人の元に集まってくる。

882 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:44:26.24 ID:8eevnv13o


もっとも、託児所という大抵は子供しかいないような場所に明らかな大人が、
それも一人は頭真っ白けのウサギオバケ、一人は近寄ることさえ躊躇ってしまう顔中ピアスだらけの女。
子供が興味本位で彼らに注目するのも仕方がない事だった。


「・・・・・・恨むぞオマエ」

「知らねぇよクッソ・・・・・・!」


子供たちは若干警戒しているのか、二人を凝視するものの、話しかけては来なかった。
託児所に設置されているベンチに座っている老婆――恐らく子供の保護者だろう――も、
どう考えても普通ではないこの二人に群がる自分の子供にどう声をかけたらいいか困惑しているのが分かる。


と、子供の一人が恐る恐る声をかけてきた。ロシア語だったため、現地の子供であることが分かる。


「ねぇ、おにいさんとおねえさんもジェットコースター乗るの?」


一方通行は目一杯の睨みをきかせ、重圧だけで子供を追い払おうとするが、
そのロシア人の子は純粋無垢な心ゆえか、彼の睨み殺すような表情にも臆しなかった。

883 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:45:18.78 ID:8eevnv13o


「これ、こども用につくられた乗り物だよ? いいの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ねぇ、おにい――――」

「このお姉さンがどォしても乗りてェって言うから仕方なく俺も付き合ってンだよクソガキ」

「!?」


忌々しげに、しかし丁寧なロシア語で子供に返事をする一方通行。
隣で自分の手を握っているヴェントの握力が心なしか増加している気がする。メキメキいってる。


「ふたりはこいびとどうしなのー?」


今度はアジア系の小さな女の子が話しかけてきた。
彼女の言葉を聞いてヴェントの顔が真っ赤になる。

884 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:46:08.59 ID:8eevnv13o


「そう見えんのか・・・・・・? あぁ・・・・・・!?」

「で、でもおててつないで――――」

「手ぇ繋いでたら恋人同士なのかよ? だったらフォークダンス踊ってるペアも恋人になるのかよアンタの中じゃ?
 あぁ、それじゃ男同士でも女同士でもカップルが成立しちゃうわねぇ? アンタその年で同性愛に興味あんのか
 あーこりゃ将来が楽しみだわ、そうだろこのクソガキ!!」


うわーん!と、女の子は泣き出して走り去ってしまった。
あまりのヴェントの迫力に周りの子供達も若干怯え始めている。


「ガキを泣かしてンじゃねェよ、更に居辛い状況になっちまったじゃねェか!! 大人気ねェにも程があンぞオマエ!!」

「子供で悪かったわねぇ!! ったく、ガキは何の躊躇いも無しにこの私に話しかけてくるから鬱陶しくてしょうがないわ」

「つかいい加減手ェ離せよ」

「離したらアンタ逃げるだろうが」

885 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:47:18.76 ID:8eevnv13o


ますます手を握りしめる力が強まっていく。痛みで表情を歪ませる一方通行だったが、
これも彼女の心から来る不安の表れだと思うと無理やり振り解くことも出来なかった。

そんな二人に怯えながらも、二人と同じようにジェットコースターが帰ってくるのを待つ子供たち。
子供たちの列に混じっている二人は、言うまでもなく浮きまくりだった。


そして、


「来やがったぞ」

「・・・・・・・・・・・・、」


某放送局の子供向け番組のエンディングで流れそうなリズミカルな曲と共に、ジェットコースターマシンは
発進位置まで舞い戻ってきた。笑顔でマシンからわらわらと子供たちが降りてくるが、
一方通行とヴェントの険しすぎる表情を見た途端、何だコイツら・・・・・・といった顔に変わっていく。

886 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:48:32.33 ID:8eevnv13o


「よォ。 諦めるなら今だぞ」

「行くわよ」


意を決してヴェントはマシンに向かって歩を進めた。しっかりと手を握られているため、
一方通行も引っ張られるようにマシンに向かっていく。

ジェットコースターの係員のお姉さんが、明らかに困惑した表情を見せながら
英語で二人にベルトの着用を促し、このジェットコースターについての説明をペラペラと話してくる。


「あー・・・・・・、エイワスと浜面のバカと滝壺でデートした時の事思い出すわ。
 よく考えたらあの時ジェットコースターがトラウマになっててもおかしくなかったよなァ俺・・・・・・」

「は? アンタあんな化物とデートする趣味あったの?
 ていうかデートなんてしたことないって言ってたじゃない」

「ありゃ彼女と、って聞いてきたから否定したンだよ。
 それ抜きにしてもエイワスとのあれはデートというか拷問だったがな」


一方通行達の後列にいた子供たちもわいわい騒ぎながらそれぞれの席に着いていった。
ちなみに一方通行とヴェントは最前列だ。席が二つ、隣同士で接続されている至って普通のタイプの座席である。

887 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:49:34.17 ID:8eevnv13o


隣にいるヴェントの呼吸がだんだん乱れ始めてきているのが窺える。
一方通行の手を握る力は更に強くなり、ふるふると小さく震えていた。


「・・・・・・やっぱやめといた方が良かったンじゃねェか?
 今からでも言えばベルト外してくれるだろ」


心配する一方通行の言葉に、それでもヴェントは小さく首を横に振った。
意地でもこの苦難を乗り越えてみせるという意志を見せながらも、彼女の口からは
小さくこんな言葉が漏れていた。


「・・・・・・・・・・・・何かあったらどうしよう・・・・・・」


まず周りの人間には聞こえない声量で、隣にいる一方通行すら注意しないと聞き取れないような声量で
ヴェントは抑えきれない不安を吐露していた。

888 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:51:02.04 ID:8eevnv13o


「オイ、ヴェン―――」

『それでは、発進しまーす♪ いってらっしゃい!』


係員のお姉さんが見事なネイティブ発音でジェットコースターの発進を見送った。
再び広場にコミカルなBGMが流れ、二人を乗せたマシンは緩やかに前進していく。


「オイ」

「?」


そんな中、一方通行が前を見据えたままヴェントに声をかけてきた。


「そンな不安げな顔すンじゃねェよ。 こォなったらせっかくだから楽しンでいけ。
 オマエの弟も、オマエのそンな顔なンざ見たくねェだろ」

「アンタ・・・・・・」

「何かあっても俺がいるから心配はいらねェ、必ず守ってやる。
 ・・・・・・つっても、こンなガキ向けのアトラクションじゃスリルもクソもねェだろォけどなァ」

889 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:51:41.37 ID:8eevnv13o


と、意地の悪そうな笑い方をする一方通行を、ヴェントは見つめていた。
彼の言葉はヴェントの不安を払拭させる事が出来たのだろうか。


「・・・・・・ふん、何格好つけてんの? 白いののクセに」

「うるせェ、カッコなんかつけてねェよ」


ヴェントは彼に気付かれないように、歳相応の少女の笑顔を浮かべながら
彼の手に指を絡ませる形で握りしめた。


「・・・・・・・・・・・・、一応、礼は言っておくわ。 ・・・・・・ありがと」

「へいへい、どォいたしまして」


後列の子供たちがキャーキャー騒ぐ中、マシンは山なりのレールをゆっくりと進んでいく。
ヴェントのアトラクションに対する不安は、一方通行によって何とか緩和出来たようだ。

890 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:52:31.34 ID:8eevnv13o


マシンはただひたすら、下りの傾斜に向かって緩やかに進んでいく。
今は上りのレールのちょうど中間地点まで来ただろうか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


一方通行とヴェントは、互いの手を握りしめたまま
無言で天まで運ばれていく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


マシンは、ひたすら、ゆっくりと上りの傾斜を登っていく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

891 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:53:12.77 ID:8eevnv13o


ゆっくりと、カタカタカタカタ・・・・・・、と音を鳴らしながら、
山なりのレールの最高所までノンストップでマシンは前進していく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、何か、長くね?


「・・・・・・・・・・・・おいィ、えらい時間かかってンなこれ」

「わ、私さ」


ヴェントが震えた声で話しかけてきた。握ったその手の力はまたしても強くなり、
さっきまで収まっていた震えが再び怒っている。

892 :×=怒っている ○=ぶり返している すみません。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:55:03.05 ID:8eevnv13o


「なンだよこンな時に。 言っておくが途中下車は出来ねェぞ」

「ち、ちち、違う。 そうじゃねぇよ・・・・・・」

「あァ? ・・・・・・なンなンですかァ?」


ヴェントの表情は明らかに変わっていた。
さっきまでの過去の出来事に対する不安の表情ではない、それは一方通行の言葉で何とか払拭できた。
かと言って、科学の技術で構成されたこのマシンに対する憎悪といった表情でもない。


「わ、私、あの、さ」

「なァにキョドってンだァ? 便所でも行きたくなったか?
 ンじゃもォここでしちまえよ」


デリカシーゼロの最低発言にもまともにツッコミを入れる事なく、
ヴェントは意外な事実をカミングアウトしてきた。

893 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:56:30.29 ID:8eevnv13o




「わ、私・・・・・・過去の事故の事とか、そういうの関係なく・・・・・・。 そう、
 あの時、弟と乗った時、いや"搭乗した瞬間"って言うのが正しいのかしら・・・・・・・・・・・・」

「?」

「死ぬほど苦手になったのよ・・・・・・、こういう絶叫系マシンが・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」




そう、ヴェントの表情は明らかに『恐怖』で染まっていた。

彼女は過去に起きた事件でこういうアトラクションが完全にトラウマになってしまったのだが、
その事故とは関係なしに元々こういったスリルマシンが極度に苦手なのだという。

幼少時、アトラクションに乗る前はワクワクしていたとさっき言っていたはずだが、
どうやら搭乗した瞬間にマシンの恐ろしさを直感で悟り、苦手になってしまったらしい。

894 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:57:41.33 ID:8eevnv13o


「ちょ、オイ。 オマエ何を今更―――」

「こ、こここ、これ、子供向けのアトラクションじゃなかったのかよ・・・・・・!!
 さっきから高く登っていくだけで全然下り傾斜が見えてこないじゃない・・・・・・!」

「確かにバカみてェに長ェな・・・・・・、つか元々苦手ならなンで乗ろォだなンて、」

「ついでに絶叫系マシンが苦手なのも克服してみようと思って・・・・・・うう」

「だから過度に怯えてやがったのか!! しかしもォ降りられねェぞ・・・・・・。 ――――、ン?」


と、ヴェントと言い合っている内に周りの景色が一辺した。


「・・・・・・・・・・・・な、なン・・・・・・だと・・・・・・!!?」

「ちょ、ちょちょ・・・・・・、何、なんで・・・・・・!?」


隣にいるヴェントはもはや完全にキャラが崩壊してしまっていた。
いつもの強気な態度はどこへやら、完璧なまでに臆病なか弱い女の子へとジョブチェンジしまっている。
そしてそんな彼女の変化にも、一方通行は大して驚けなくなっていた。

895 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 21:59:00.89 ID:8eevnv13o


無理もない。




今、一方通行達の視界に映っている景色は、どう見ても透き通った青空だからだ。




この託児所のジェットコースターのレーンは、なんと託児所の高い高い天井を突き抜けて設置されており、
乗らなければ気付けないのだが、上りのレーンの最高所はビル三〇階分に相当する高度だった。

このショッピングセンター、建造物はすこぶる多いのだがあくまで『ショッピングセンター』としての
体裁のため、立ち並ぶ多くのビルはせいぜい五階分ほどしかない。

一方通行がレッサーやサーシャと最初にこの街へ到着した時、見えていたレールはこれの事だったのだ。


(あン時は適当に言ったつもりだったが・・・・・・、まさかマジで託児所のジェットコースターだったとはな・・・・・・)

896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/03/15(火) 21:59:52.80 ID:GSHcrtUG0
まさかの伏線wwwwww
897 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:00:04.51 ID:8eevnv13o


つまりこのジェットコースターに乗ればこのショッピングセンターを俯瞰出来る、という事になる。
上り傾斜の最高所は大体九〇メートル前後、といったところか。 どこが子供向けなんだこれ。


「・・・・・・ったくよォ、これのどこが子供向けアトラクションなンですかァ?
 小せェ遊園地にあるジェットコースターよりよっぽどスリルあンじゃねェか」

「ふざ、ふざけんなよクソ・・・・・・!! アンタこれ子供向けだって言ってたじゃないのよ・・・・・・!!」

「いや実際子供向けに作られたモンだろ。 ただいくらなンでもやりすぎだな、見ろよ」


後ろではこれが初の搭乗だったのか、何人かの子供がわんわんと泣き叫んでいた。
泣いている子供を見て不安に駆られたのか、他の子供達も親の名を叫び助けを求めている。
こんな乗り物を繰り返し乗って遊んでいる子供は相当度胸があるのだろう。

898 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:01:34.18 ID:8eevnv13o


「まァ、あくまでこの街は『実験都市』だからなァ。 大方、ガキがどれくらいのスリルを
 求めてンのか、こォやって試験的にコースの調整してンじゃねェの?」

「託児所に来るガキがこんなスリル求めてるわけねぇだろうがぁぁ!!!!!!!!」


もっともな意見を高度八〇メートル辺りで声を大にし、ヴェントは叫んだ。
自分たちよりも大人なヴェントのパニクった叫びを聞いて、後列の子供たちも更に泣き喚く。


一方通行は冷静に、後方を眺めながら子供たちの様子を見ていた。
万が一、億が一に混乱した子供が暴れてベルトがぶっ壊れるなんて事があれば終わりだ。
そんな普通に考えたらあり得ない悲劇も一応考慮し、一方通行は電極チョーカーのスイッチをオンに切り替える。


「すげェな。 この高さでも馬鹿みてェに喜ンでるガキもいるぞ。
 ほら、あの後ろから四列目の―――――」

「んなもん見てられるわけねぇだろ!!! どうすんのよ!? 落ちるわよこれ!? 落ちる・・・・・・!!」


乗客がギャーギャーと騒いでいる間に、ジェットコースターマシンはついに最高所の地点へ引き上げられた。
カタカタ・・・・・・カタン、とマシンの車輪音が止まる。聞こえてくる音は子供たちの叫び声と上空から吹いてくる風だけだ。

899 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:03:07.43 ID:8eevnv13o


「ねぇ、ちょっと・・・・・・何でこれ先のレーンが無くなってんのよ・・・・・・!?」

「無いわけねェだろ。 下りの角度が結構急みてェだからそンな風に見えるだけだ」

「ホント・・・・・・? ねぇ、ホントに・・・・・・?」

「コースが途中で途切れてるジェットコースターなンか作るわけねェだろォが。
 ンな怯えまくる事ァねェよ。 ったく、オマエ自分のキャラ設定地上に置き忘れてきちまったンじゃねェか?」


一方通行の言う通り、このジェットコースターの下りの落下角度はジャスト一〇〇度。
有名なジェットコースターは世界各地に存在するが、それでも落下角度一〇〇のコースはなかなか存在しないだろう。
いくら実験とはいえこれはさすがに子供向けだと胸を張って言えるアトラクションではなかった。


「た、助けてよ白いのぉ・・・・・・」

「助けるも何も別になンも起きてねェだろォが。 別に事故ったりしねェって」

「く、ぅ・・・・・・・・・・・・」


自分の手を握っているヴェントの手がじっとりと汗ばんでいるのが分かる。
一方通行はやれやれ、とため息をついてヴェントに言った。

900 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:04:16.45 ID:8eevnv13o


「そこまで極度に怖がらなくていいだろ」

「何でアンタは平気なのよぉ・・・・・・!!」

「弟の分まで楽しめよ。 そのために乗ったンだろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わ、分かってるわよ」


ヴェントはふーっと深く息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
後列の子供たちのテンションも色んな意味で最高潮に達していた。


そして、


「来るぞ」

「い、や―――――――――」

901 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:05:27.10 ID:8eevnv13o




落下角度一〇〇という恐ろしい下り傾斜へ、マシンは轟音を鳴り響かせながら爆走していった。




ギュオオオオオオオオオオオ!!!!、とマシンは約一五〇キロという猛スピードでコースを駆け巡っていく。
途中のカーブでは後列の子供が心配になるほどのGがかかった。


「きゃああああああああああああああああ!!!!」

「おおおお・・・・・・なかなか迫力あるじゃねェか! エイワスの時ほどじゃねェが、
 ショッピングセンターにある乗り物にしちゃ上出来だァ!」


無邪気な子供のようにスリル満点のジェットコースターを楽しむ一方通行の姿はなかなかお目にかかれない。
彼はエイワスと浜面仕上、滝壺理后と共にこういったスリルアトラクションマシンに乗っているが、
あの時はエイワスの誰も望んでいないサプライズのせいでベルトを破壊され、楽しむどころではなかった。

902 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:06:31.55 ID:8eevnv13o


そんな事もあってか、純粋に身体にかかるGを楽しむ一方通行だったが―――――。


「きゃあああああああああああああああああ!!!! いやああああああああああああああああああああ!!!」


さっきから一方通行の鼓膜を突き破らんと、女の子らしく叫びまくっているのは言うまでもなくヴェントだ。


目尻に浮かんだ涙を流しながら、彼女は片手で一方通行の手を、片手で首もとにあるベルトをギュッと握り締め、
振り落とされないように必死に踏ん張っていた。設計上振り落とされるような事はあり得ないのだが。

当然だが、彼女は口を開いて絶叫しているため、舌先の霊装付きチェーンが後ろになびいてしまっている。


「いやあああああああああああああああ!!! あ、一方通行、助け・・・・・・!!!」

「うるっせェンだよオマエはさっきからァ!!!」


そんなこんなで、ヴェントは気を失ったりすることなく、見事に最後までマシンに乗り続けていられたのだった。
さりげに彼女は一方通行の名を呼んだのだが、彼の耳には届かなかった。

903 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:12:23.90 ID:8eevnv13o
と、いうわけで今回はここまでです。

途中でレールが切れてるジェットコースターってなんかありましたよね実際。
私はあんまりこういうの乗った事ないので今回のジェットコースターに本当にスリルがあるのかどうか
よく分からないまま書いてみました。子供向けではない感じにしてみたのですがいかがだったでしょうか。


さて、この前方通行。実はもうちょっとだけ続くんじゃ。
え、長い?まぁそう言わずに・・・・・・よろしくお願いします。


次回更新は三日以内。

今日もここまで読んでくれた読者様には大変感謝しています。
支援レス、ありがとうございます。

では失礼しました!
904 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/15(火) 22:12:50.25 ID:8eevnv13o



                          【次回予告】



『楽しいと思ったンなら素直に笑えばいいし、
 それが出来ねェンなら俺がオマエを笑顔にしてやる。 そンだけだ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『少しだけ、期待しといてあげる』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント



905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/15(火) 22:15:51.51 ID:OckuePhAO

ここのベントちゃん可愛すぎる
だれか止めて
いや止めないで
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/03/15(火) 22:16:25.04 ID:QNcw6coL0
それはもう告白じゃないかな?
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 22:16:27.31 ID:2wd6L3cCo
>>904
おつ
ヴェントかわいいなァ
だけどピアス大丈夫か・・・
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 22:16:27.79 ID:Wf1WsEgw0

前方さんの攻勢が続くなぁww

上り切った後、バックで降りていくっていうのがあった気がする
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/03/15(火) 22:18:13.70 ID:c/w8D736o
直角は90度なので100度だと裏返りますよと言ってみても構いませんか。
そりゃヴェントも泣き叫びますよ。
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/03/15(火) 22:19:39.37 ID:0gaE9Jux0
なんだろうな、かつての目標がアレだったから一通さんもこんな天然たらしになっちゃったのかな。
それとも元からそういう資質があったあのかな。
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 22:20:21.44 ID:2rzsfbVS0
乙です
オルソラさんに続いてヴェントちゃんがリードかな?

>>908
そういうジェットコースターあったよ。
だがもう二度と乗らない。後は察してくれ

そろそろスレに終わりが近づいてきてるけど
まだこのスレで終わらないよね?
終わらないと言ってくれ
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/15(火) 22:20:30.66 ID:tCRfW7CA0
ふたりともかわいいなオイ
ところでなんで名前欄に地名がでるのか誰か教えれ
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/03/15(火) 22:23:13.82 ID:GSHcrtUG0

多分猛スピードで下ることによって100度落下を可能に・・・っていうか、
このアトラクション明らかにガキ向けじゃない件について
こんなの心から楽しめるの通行さんぐらいだろ
914 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/15(火) 22:23:28.03 ID:8eevnv13o
>>909
脳内で適当に角度調整しといてください。
こういう適当なところがあるからいつまで経っても成長しないんだろうな・・・・・・

ごめんなさい
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 22:29:20.20 ID:XC2iVQ0Vo
かわいいねぇ
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 22:31:52.70 ID:IHPBlWnpP

一方さん告白連発しすぎだろ・・・
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/03/15(火) 22:32:09.38 ID:GSHcrtUG0
>>910
上やん病は伝染していくんだよ
ステイルやねーちん、浜面を見るべし
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2011/03/15(火) 22:50:45.99 ID:S+VwJmDAO
乙!

ヴェントたんかわいいよォ
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/15(火) 23:16:46.12 ID:AIvU1blRo
予告のセリフがイケメンすぎてやばいな
そして乙!
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/03/15(火) 23:46:03.36 ID:9MTCuGm20
何この天然イケメン
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/15(火) 23:51:53.25 ID:Ay0PLguOo

ベントちゃんのチェーンがどっかに引っ掛かったらどうなるのっと
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/03/16(水) 00:25:51.94 ID:D7ho90Ddo
おいやめろ
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 01:00:01.36 ID:xhv0MNbDO
>>908









Ι
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/03/16(水) 01:15:31.21 ID:TFIQ5ahPo
気が早いと思うけど、
もう次のスレタイを楽しみにしている
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/03/16(水) 01:34:15.33 ID:PSAQMyJAO
えっ…もうこんなに埋ってんの?


スレ新しくなったの最近じゃね?あれ…?えっ…?
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sage]:2011/03/16(水) 01:38:50.63 ID:TzS/LXuD0
>>「た、助けてよ白いのぉ・・・・・・」

萌えた
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/16(水) 02:49:57.48 ID:8w/W3Ntr0
>>908
そんなトンデモコースターあんのかよって思ったら地元の遊園地にあったでござる
そのジェットコースター逆走のまんま宙返りとかしてたな
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/16(水) 13:56:05.26 ID:Vn3Ty1Y7o
ヴェントちゃんかわいすぎんだろぉ!?
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/03/16(水) 18:32:47.36 ID:umgS/CxR0
次のスレタイにはミーシャが出るとこの俺が予言してやる
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/16(水) 21:52:55.85 ID:B2GhrjWdo
ウルトラマン「ジュワ?ジュワジュワ?」一方通行「日本語でおkェ」
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 00:00:43.08 ID:pwoCXfTIO
一方さん自分のシャツに話しかけて、何してんすか。
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 01:18:34.40 ID:UNGztEXqo
絶叫マシンで悲鳴あげちゃうヴェントちゃんかわいい

自分はいつもコースターとかで爆笑してしまうから、かわいく「キャー」って言える人がうらやましい
富士急で「俺は声も出ないのに、爆笑してるお前が怖い」と彼氏にふられた
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 05:14:46.62 ID:7xwdPk6J0
自分のビビリを棚に上げといてマジ最低の男だなそいつ
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/03/17(木) 14:19:01.40 ID:0OOyScDAO
30メートルのコースターでも結構迫力あったのにそんな高さだったらヴェントじゃなくてもヤバい
935 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:01:58.11 ID:BZFhL1eSo
こんばんわ〜、今日はなんと投下をしに来ました。
前方通行の締めですね〜
ジェットコースターに乗ったその後、ヴェントは・・・・・・

それでは、投下していきます!
936 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:02:53.10 ID:BZFhL1eSo


スリル満点のジェットコースターを思う存分楽しんだ一方通行は現在、
ショッピングセンターのトイレの個室の前で佇んでいた。


「・・・・・・・・・・・・オイ、いい加減出てこいよ」


もちろん、一方通行は腹を下してしまい猛烈な便意に襲われたため急かしているのではない。
そもそも彼が今いるトイレは、女性専用のトイレだ。


「いつまで泣いてンですかァ? ガキじゃあるめェしよォ」

「・・・・・・ぐすっ、泣いてねぇよクソったれ・・・・・・」


一方通行の目の前にあるトイレの個室からは、さっきからしくしくと嗚咽する声が聞こえてきていた。
その声の正体は言わずもがな、元『神の右席』の魔術師、ヴェントである。

937 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:03:57.83 ID:BZFhL1eSo


彼女はジェットコースターマシンが終点に到着した後、顔を両手で覆い隠しながら全速力で下車し、
近くにあった化粧室を見かけるや否やそのまま個室に閉じこもってしまったのだ。

その後はただ、個室の中ですんすんと鼻をすするだけ。
後から追いかけてきた一方通行が呼びかけても個室から出てくる気配は微塵も感じられない。


彼らが乗ったジェットコースターは確かに子供向けに作られた物とは思えないほどのスリルと迫力だったが、
俗に言う『ループ』や『コークスクリュー』、『四次元』など、ジェットコースター特有のギミックは無かった。
傾斜と速度以外は至って普通のジェットコースターだったのだが、絶叫系アトラクションが大の苦手な
ヴェントには相当堪えたらしい。


「まァよく頑張ったじゃねェか。 立派立派」

「うるさい・・・・・・、やっぱり科学なんて大嫌い・・・・・・ぐす」


一方通行は短く息を吐いてポケットから携帯電話を取り出す。

938 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:04:52.97 ID:BZFhL1eSo


「・・・・・・・・・・・・」


『不在着信:93件』


全て風斬氷華の携帯電話からだった。
と言っても恐らくは風斬ではなく、レッサー辺りが彼女の携帯からかけまくったのだろう。

確かに、彼女たちに荷物を置いてくると言ってから既に二〇分以上が経過している。
半公開型ARによるショッピングセンターの見取り図がある以上、迷ってましたでは言い訳できない。


(面倒くせェ事になってンな・・・・・・クソ)


いい加減、ヴェントを元に戻さないといつまで経っても風斬達に合流できないと悟った一方通行は
さっさと出てくるよう彼女に呼びかける。

939 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:05:51.03 ID:BZFhL1eSo


「うるっさいわね・・・・・・分かってるわよ。 つーか女子トイレに平気で入ってくんじゃねぇよテメェ・・・・・・」


と、毒づきながらも彼女の入っている個室から鍵が解除される音が響いた。
一方通行がドアの前から退くと、ヴェントは顔を隠しながらよろよろとした足取りで個室から出てきた。


「なに顔隠してンだオマエ?」

「・・・・・・め、メイクが・・・・・・」


どうやら涙を流しすぎてメイクが崩れてしまったようだ。
そんな顔を見られたくないからか、ヴェントは大きな鏡の前に移動し、手でシッシッと出て行くよう促してきた。


「別に気にすることねェだろ。 スッピンでも俺は構わねェけどな」

「アンタが構わなくても私が構うの。 先行ってなさいよ」

「出た所で待ってるからな」


意地の悪いことは言わず、一方通行は素直にトイレから出て行った。
ヴェントは彼が出て行った事を確認すると鏡で自分の顔を凝視する。

確かに少しだけメイクが崩れていたが、目元の黒がちょっと滲んでいるだけで、すぐに修正できる範囲だった。

940 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:07:05.63 ID:BZFhL1eSo


程無くして、ヴェントが化粧室から出てきた。明らかにしょぼくれている。


「お疲れさン」

「ふん」


いつも通りに振る舞おうと強気な態度を見せてはいるが、やはりどこか迫力が無かった。
このショッピングセンターに来てからの短時間に、色々な事がありすぎたからだろう。


「楽しかったか? ジェットコースター」

「二度と乗らない」

「そォかよ。 まァいいンじゃねェの、それでも」

941 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:08:17.73 ID:BZFhL1eSo


「・・・・・・・・・・・・」

「少しは胸の中のモヤモヤも消えたか?」

「・・・・・・・・・・・・かも、ね」


もういいから行くわよ、とヴェントは一方通行の手を取ってずかずかと歩き出した。
杖をついている一方通行は急に手を引っ張られてコケそうになってしまう。

一方通行はひたすら前を見て歩いて行くヴェントを睨みつけながら、


「ちょっと待てコラ。 もう手ェ繋ぐ必要はねェだろォが」

「いちいちうるさいっつってんでしょアンタは。 このヴェントが仕方なく手を繋いであげてるんだから、
 感謝の一つくらいしたらどうなの? 光栄に思うべきだわ」

「仕方なくって・・・・・・」

「アンタ杖ついてるから、歩幅合わせて歩くのが面倒なんだよ」

942 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:09:04.03 ID:BZFhL1eSo


ヴェントは一切こっちを見ずに、一方通行の意志など無視して歩を進めていく。
さっきまで死にそうな顔をしていたくせに、と一方通行はうんざりとした表情を浮かべた。


さて、風斬達にここまで遅れた理由をどうつけようかと、その学園都市最高の頭脳をフル回転させて思考していると、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ」

「あン?」


急にヴェントは歩く速度を弱め、普段の歩調で歩き始めた。
と同時に、振り向くことなく一方通行に声をかける。


「アンタは、楽しかった?」

「さっきのジェットコースターの事か?」

「それもそうだけど・・・・・・、その、あれよ」

「?」

943 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:10:08.10 ID:BZFhL1eSo


何か言いたげに、しかし言おうかどうか逡巡しているように見える。
一方通行はヴェントと手を繋いだまま、とりあえず彼女の言葉を待っていた。


時間にしたらわずか数秒だが、ヴェントは迷った挙句彼に言った。


「アンタは・・・・・・私とこういう風に過ごしてて、楽しかった?」


決してこちらとは目を合わさず、何とも照れくさそうな仕草を見せながら
ヴェントは目を泳がせつつ一方通行に尋ねた。


「・・・・・・・・・・・・楽しかったか。 って言われてもなァ」

「・・・・・・正直に答えろよ」

「ンじゃその前に、オマエはどォだったンだよ?」

「え?」

「俺とこォして遊ンでて、オマエは楽しいか? 正直に答えたら俺も答える。
 等価交換ってなァ。 こンな時くらい平等にいこォぜ」

「質問に質問で返してんじゃねぇよクソ野郎・・・・・・」

944 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:11:10.07 ID:BZFhL1eSo


ヴェントはしばらく押し黙っていたが、やがて観念したように息をついて
一方通行の顔をキッと睨みながら答えた。


「正直、ジェットコースターとかああいう乗り物にはもう本当に乗りたくないんだけど、」

「あァ」




「楽しかったわよ、アンタがいたから。 引きずりまくってた過去も怨念も、
 少しは軽くなった・・・・・・・・・・・・、かも知れないわね」




ふん、とヴェントはイジケたように一方通行から顔を逸らす。

945 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:12:33.85 ID:BZFhL1eSo


ヴェントにとって、これは非常に勇気の要する言葉だっただろう。
彼女は決して軽くしてはいけないと思っていた。胸に秘める過去の悲劇を、科学に対する憎悪を。

しかし、一方通行とこうして過ごしてみると、言い訳のしようもなく、ごまかしようもなく、
ヴェントの心にずっしりとのしかかっていた蟠りがスゥっと、コーヒーに入れた砂糖のように消えていくのがわかった。


だがそれを言葉にして認めてしまうと、いずれは自分の命を代償にしてまで救ってくれた
弟との思い出まで消えてしまいそうで、ヴェントは暗々裏にそれを恐れていた。


「アンタがいなきゃ絶対にあんなもん乗らなかったしね。 二度と乗りたくはないけど・・・・・・、
 白いのと一緒ならたまにはいいかな、くらいには思ってるわよ」

「・・・・・・そォかい、そいつは光栄だな」

946 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:13:55.79 ID:BZFhL1eSo


それでも、ヴェントは言葉にした。口にして伝えた。今の自分の正直な気持ちを、
自分と一緒に闇を抱えてやると言ってくれた、目の前にいる白い白い少年に。


この男と一緒にいれば、思い出まで忘れることはない。
なぜならこの男も、自分の思い出を背負ってくれているから、と。

しかしあと一歩、何かが足りない気もした。


「それで、アンタはどうなのよ」


改めて一方通行に問いかける。自身の気持ちは伝えた、では彼はどうなのか。


「・・・・・・まァ、楽しいっちゃ楽しい、な」

「何それ。 ハッキリしろよ男のクセに」

「うるせェよ、いつもの調子に戻ったからって図に乗ってンじゃねェ。
 ていうかなァ、オマエ一つ間違ってるぜ」

「あぁ?」

947 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:15:01.30 ID:BZFhL1eSo


自分の素直な気持ちを吐露したというのに、一体どこをどう間違えているというのか。
ヴェントはイライラしながら彼の言葉を待った。




「『楽しかった』、じゃねェだろ。 『楽しい』、だ。 オマエが本当にそォいう気持ちになったンなら、
 それは『楽しかった』じゃなくて『楽しい』、だろ? 勝手にここで終わらせンじゃねェよ。
 無理やり俺を付き合わせといて、勝手に終わらせるンじゃねェ。 こっから先も『楽しい』は続くンだ。 ていうか、」




ジッと一方通行の顔を見つめて話を聞くヴェントに、彼は続けて言った。


「俺がオマエもこれからも『楽しませてやる』。 普段みてェな憎たらしい笑顔じゃなくて、
 いつか俺が、オマエを本当の笑顔にしてやる。 あのオマエの部屋にあった写真みてェになァ」

「・・・・・・!」


見ていた。見られていたのか。


一方通行は昨日、ヴェントの部屋に入った時に部屋の机の上に飾ってあった写真立てを発見している。
ヴェントは速やかにその写真立てを伏せたが、まさかあの時に写真までしっかりと見られていたとは。

948 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:16:40.72 ID:BZFhL1eSo


「あ、アンタ・・・・・・!」

「あァーはいはい、勝手に見たことは謝りますよォ。 つかアレはオマエのミスだろォが。
 ・・・・・・まァとにかく、そォいう事だ。 楽しいと思ったンなら素直に笑えばいいし、
 それが出来ねェンなら俺がオマエを笑顔にしてやる。 そンだけだ」


楽しいと思ったのなら素直に笑え。


この言葉を、一方通行は自身にも言い聞かせた。彼も人のことは言えない。

『天使同盟(アライアンス)』の面々と共に過ごす事を楽しいと思っている彼も、
まだどこか素直な笑顔にはなれないでいるのだから。


言いたいことだけ言うと、一方通行は繋いでいた手を解き、表情を固まらせているヴェントの横を通りすぎて
カツカツと杖をつきながら歩いて行った。

ハッとして、ヴェントも慌てて彼を追いかける。

949 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:18:04.51 ID:BZFhL1eSo


「・・・・・・アンタってお人好しなの? それとも偽善者?」

「お人好しでもなけりゃ偽善者でもねェし、聖人君子でもなきゃ天使でもねェ。
 ・・・・・・他人の気持ちにも気付けねェ、ただの愚鈍なバカ野郎だ」


一方通行は舌打ちをしながら、自分を戒めるように言う。

彼も彼で、あの昨晩の風斬の件を未だに引きずっているのだろう。
なかなか相手の真の気持ちに気付けないでいる自分に嫌悪し、二度目のイギリス来訪の時も
過去の出来事に心を引きずられた。


そういう意味では、一方通行とヴェントは似たような共通点があった。


「・・・・・・なら、その愚鈍でクズでゲス野郎なアンタに言ってあげるわ」

「いやそこまで戒めてはないンですけど」

950 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:19:00.88 ID:BZFhL1eSo


ヴェントはさっさと進んでいく一方通行の隣に並んで歩きながら言った。


「少しだけ、期待しといてあげる」

「・・・・・・ご期待に応えられるよう、せいぜい頑張らせていただきますゥ」


少しだけ、という含みのあるヴェントの物言いには理由があった。

彼女はまだ少し、あと一歩のところで、数値にすれば残りの一、二パーセントだけ、
まだ彼を信じてはいなかった。

951 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:19:50.18 ID:BZFhL1eSo


それは、やはり長年『神の右席』として科学への憎悪を糧に戦ってきた経歴があるからなのだろう。
科学サイドの頂点とも言える一方通行を、まだ完全には信じる事は出来ないでいた。
一方通行が自分に言ってくれた言葉が、どこまで本当なのかを。


そして、それを確かめる方法はある。一方通行が、ヴェントの事をどう想っているのか、
"半ば強引ながらそれを確かめる『魔術』"が一つだけ存在する。


しかし、今の彼女にはもうその魔術は使えない。


「急ぐぞ。 オマエと話してる間にも一〇回くらい着信が来てやがった」

「ねぇ、もう面倒だからこのままロシアに帰らない?」


信じたいのだが心の底でまだ疑う自分の気持ちにイライラしながらも、
ヴェントは一方通行と共にひとまず風斬達が待っている飲食店へと向かうのだった。

952 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:27:43.54 ID:BZFhL1eSo
今日はここまでです。

ぐおおお・・・・・・投下ボリュームが著しく低下している、申し訳ない。
キリ良く終わらせるにはここで投下を切るしかなかった・・・・・・
次からは普通の量になると思いますのでどうかご了承ください!

さて、ヴェントは今までと違ってなかなかオトせませんね。ってこれそういうSSじゃないんですけど。
前方通行はここで一旦停止ですが、またはるか先の話にありますのでお楽しみに


次回は垣根帝督サイドです。二度目の訓練でも駄目だった垣根にエイワスが一言。


次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!失礼します
953 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [sage]:2011/03/17(木) 22:28:25.06 ID:BZFhL1eSo



                          【次回予告】



『―――その時は、私が君を[ピーーー]よ。 垣根帝督』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『役にも立たねえオモチャは"棄てる"に限るってか』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『なんだか私、超プレッシャーなんですけど?』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ



954 :ミスった・・・・・・  ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/17(木) 22:29:22.88 ID:BZFhL1eSo



                          【次回予告】



『―――その時は、私が君を殺すよ。 垣根帝督』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『役にも立たねえオモチャは"棄てる"に限るってか』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『なんだか私、超プレッシャーなんですけど?』
―――――――――――元『殲滅白書』のシスター・ワシリーサ



955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/03/17(木) 22:32:44.46 ID:PfunaAZ00
>>1
そしてドンマイw

でもそれまでわからなかったってことは殺すとか出てきてなかったんだな・・・
なんていうか平和で嬉しいわw
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sage]:2011/03/17(木) 22:34:57.28 ID:ypEK+Fre0


なんかヴェントさんのかわいさがマッハな件について
そして一方さんの発言が相変わらずイケメンすぎだろ・・・
957 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/17(木) 22:36:29.28 ID:BZFhL1eSo
いや〜申し訳ないです、ずっとsageてたのか・・・・・・w

にしても、ちらほらスレタイがどうとか次スレがどうとかいう話が出てたので何でだと思ったら
もう次スレの季節が近づいてきたのか・・・・・・一体いつ終わるんだろうこれ


では改めて、ありがとうございました!
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 22:39:19.63 ID:7xwdPk6J0
乙!
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/17(木) 23:20:43.42 ID:I6MHJCxSP

今まででも飛び抜けた速度でフラグ建設プロポーズラッシュしてんのにヴェントやるなぁ
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/03/17(木) 23:24:30.48 ID:kfA+3i520
乙です
なんだかていとくんに(また)死亡フラグが立った気がするけど
味方っぽい人から「[ピーーー]」って言われた人は絶対死なないってばっちゃが言ってた
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/03/17(木) 23:42:16.13 ID:lesHYFIi0
でもていと君に常識は通用しねえ
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/03/17(木) 23:56:39.99 ID:g896I8lyo
そもそもエイワスに常識など存在しねえ
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/03/18(金) 00:27:39.39 ID:ATzzjBzy0
一方さんがイケメンすぎて男の俺でも惚れそう
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2011/03/18(金) 00:28:45.85 ID:ATzzjBzy0
って言うか上条さんと区別がつかん
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [sage]:2011/03/18(金) 00:45:11.60 ID:OOfGa3qCo
ヴェントの乙女パゥワーが凄まじい勢いで上昇していく
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 01:04:30.99 ID:6Lu6xqWl0
ヴェントがツンデレだったとは・・・
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 02:27:22.96 ID:ZzZuldL60
てか未だにエイワスが味方の気がしない
俺だけか?
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/03/18(金) 02:34:15.98 ID:IAw8q48uo
アレはマスコット的なナニかだと思ってる
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/18(金) 04:34:20.88 ID:T84JgUkH0
せんとくん+エイワス
ひこにゃん+エイワス
ド ア ラ+エイワス

( '・_・)
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/03/18(金) 06:25:18.73 ID:/9Mgt+6c0
てかあれだろ
今流行りの淫獣
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/03/18(金) 07:28:07.32 ID:b3640oBHo
エイワス「私と契約して魔法少女にならないか」

いや本家以上に不気味というか胡散臭いというか
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 07:56:17.79 ID:iDhelYfDO
一方通行「俺と契約して(以下略」

きぬはたンと黒夜たンは犠牲となったのだ……
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/03/18(金) 09:55:06.39 ID:NSqFXk0AO
垣根の未来が……

1 ハンサムはていとくんは当然ワシリーサに殺される
2 バーバ・ヤーガが来て殺してくれる
3 エイワスに殺される。現実は非情である。
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 11:01:22.55 ID:og+wt8VIO
ざんねん!! かきねの ぼうけんは ここでおわってしまった!!
975 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 11:39:25.64 ID:Rv3JD22to
すっぴんヴェントは美人
ソースははいむら画
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 15:18:20.43 ID:ZzZuldL60
4 見かねたサーシャが助けに入る
977 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:46:35.23 ID:t9Ghw2KNo
>「ねぇ、もう面倒だからこのままロシアに帰らない?」

ここがロシアだっつのwwヴェントちゃんマジお茶目www


はぁ・・・・・・。

さて、今日も投下していきますよ。今回は垣根帝督サイドのお話ですねー。
エイワスが味方だと思えないと仰っている方がいますが、それでいいと思います。
あんなヤツ信じちゃ駄目です。でもいなきゃ困る、厄介な存在ですねぇ・・・・・・


では、行きます!
978 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:47:33.69 ID:t9Ghw2KNo


――――――――――――――――――――――


パキッ・・・・・・。


ギキッ、パキン。


スッ、スッ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ペキッ。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」




979 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:48:20.62 ID:t9Ghw2KNo


ゆっくりと、少しずつ。視界を覆い隠していた闇に光が差してくるのが分かった。
自分は今、瞼を開こうとしている。


「・・・・・・、・・・・・・・・・・・・う、・・・・・・」


声は出る。だが必死になって搾り出さなければ声が出せないほど、自分は衰弱しているようだ。
それでも、自分が生きているという事実は確認できた。


パキャッ。


また変な音が聞こえた。

自分から少し離れたところからその妙な音は耳に届いてくる。
音の正体を確認するために首を動かそうとするが、少しでも動かすと鈍痛が走り行動を阻害してくる。


「・・・・・・・・・・・・ふむ、こんなものか?」

980 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:49:05.69 ID:t9Ghw2KNo


その声の主は、何かを確認しているようだった。
不気味で、しかし美しく、心に染み渡るような透き通った声だ。


「う・・・・・・、ぐ、ぁ・・・・・・・・・・・・」

「うみゅ?」


次は変な声が聞こえてきた。
遠くからその声は聞こえ、その主はどうやら今、こちらに向かって歩いてきているようだ。
砂利を踏むような歩行音がザッザッと地面を伝って自分に届く。


砂利。


そういえばここは、エリザリーナ独立国同盟の地で使用されていた、防空壕の跡地だったか?

981 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:50:03.39 ID:t9Ghw2KNo


「お、」

「く・・・・・・、なん、だ」

「おおおお! 起きた起きた! おっはよ〜!」


寝覚めの時にはあまり聞きたくないような、明るく欝陶しい女の声。

知ってる。だんだん意識もハッキリしてきた。自分はこの女の声を知っている。


「・・・・・・ワシリーサ、か」

「ピンポンピンポーン♪ 大正解だにゃーん」


目を開けると、そこには手を腰に当て仁王立ちで自分を見下ろすシスター、
ワシリーサがニコニコと明るい笑顔を見せつけていた。


「おはよう、垣根帝督。 気分は如何かな?」


垣根はなんとか右方向に首を動かすと、そこには女の子座りで
何か手作業に没頭している聖守護天使、エイワスの姿が確認出来た。

982 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:52:58.25 ID:t9Ghw2KNo


垣根帝督は事の顛末を全て思い出した。


そう、垣根はワシリーサとエイワスを連れ、二度目の魔術の実践訓練を実行していたのだ。
もちろん、魔術の訓練を行うのは垣根帝督自身である。


内容は前回よりはかなり善戦出来たはずだ。
何度かワシリーサの攻撃を喰らってはしまったものの、それで戦闘不能状態に陥ることはなく、
防戦一方という展開にもならず、こちらからも果敢に攻めていけた展開だったはずだ。


「大丈夫ぅ? 起き上がれる?」

「・・・・・・ああ」


ワシリーサは気を遣って手を差し伸べてくるが、垣根は首を横に振って拒否の意を示す。

983 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:54:02.60 ID:t9Ghw2KNo


(・・・・・・それで、どうなった?)


ワシリーサが髑髏のランプによる連続攻撃を仕掛けてきたが、垣根帝督はそれを初見で看破。
髑髏のランプを次々と破壊し、蛙の姿になって逃げ回っていたワシリーサを引きずり出すまでは出来た。

そして垣根は魔術による多重攻撃をワシリーサに放った。それが当たれば合格、といった内容だったが―――。


「あ。 おい、どうなったんだよ」

「にゃにが?」

「訓練。 俺の攻撃をテメェに当てりゃ終了だっていう条件だっただろうが」


スムーズに言葉を紡ぐことが出来、垣根は若干驚いて喉の調子を確かめるように手を添える。

984 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:55:33.94 ID:t9Ghw2KNo


見れば、身体の節々に痛みはあるものの、致命的と言えるような傷は見当たらなかった。
全身至る所に乾いた血の跡が残ってはいるが、こうして生きている以上出血多量で死んでしまったという事はない。

ただ、垣根が着ている衣服はズタボロの血だらけだったが。


「・・・・・・また、駄目だったって事か」

「かなり惜しいところまでいったのだがね。 十分に健闘したんじゃないか?
 まぁ、私が賞賛の拍手を送った頃には君は意識を失ってしまったからね」


エイワスが手元で何か精密作業をしながら適当に言う。


「そうそう、随分健闘したと思うわん♪ 私に『騎士』の『黒』を使わせたのだから」

985 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:56:28.45 ID:t9Ghw2KNo


騎士。黒。この二つのワードに垣根は眉をひそめる。


そうだ。確か自分が魔術の多重攻撃を仕掛けた時、ワシリーサはいつの間にか
不気味な黒い騎士と馬を呼び出していた、気がする。


そうしたら急に、この地下空間に『夜』が訪れて――――。


「・・・・・・ならこれは、あの騎士にぶった斬られた痕ってワケか」

「メンゴメンゴ! やっぱりどうも手加減出来なくてねぇ」

「いらねえっつってんだろ」


垣根の衣服は左肩から右腰辺りにかけて、一直線に刃物で斬られたように裂けていた。

裂けていた、というよりは引き千切られていたという言い方が正しいだろう。
鋭利な刃物ではなく、刃こぼれした鋸で無理やり引き裂かれた感じが見て取れる。

986 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:57:22.86 ID:t9Ghw2KNo


そして恐らく、いや間違いなく、その一撃で垣根は沈んだのだろう。


「・・・・・・チッ。 何が惜しいんだよ」

「いやマジでいいセンいってたわよ? そこらの魔術師よりはセンスあるんじゃないかしら」

「以前とは違って今度はべた褒めだな。 アメとムチってか?」

「そういうのあんまり得意じゃないし、飴と鞭ならお姉さん、鞭の方が好みだわ♪」


その鞭でサーシャちゃんに思いっきり引っ叩いてもらえれば、あぁ・・・・・・、とワシリーサは
頬を赤らめて悶えている。そろそろこの変態にはついていけなくなってきた。


「あぁ、ついでに言っておくが、君の攻撃はワシリーサには届かなかったよ。
 しっかりと確認しておいたから安心するといい」

「そいつはどーも」

987 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 21:59:32.03 ID:t9Ghw2KNo


分かりきっている事をいちいち説明してくるエイワスをジロリと睨む垣根。
攻撃が当たっていればワシリーサもちゃんと告達してくるだろう。
彼女はそんな事をひた隠しにするようなタイプの人間ではない。


「明日の朝」


と、エイワスが相変わらず手作業をしたまま口を開いた。


「明日の朝、ワシリーサとの魔術訓練を行いたまえ。
 そこで決着をつけるんだ。 今回の訓練を見て大体理解した」

「は? 何で明日の朝なんだよ。 俺は今からでも行けるぞ。
 俺が受けた傷も全部テメェが治したんだろ?」

「今日はもうやめておきたまえ。 ・・・・・・三度目の正直、という言葉くらい耳にした事があるだろう。
 そうだな・・・・・・。 明日の朝の実践訓練でワシリーサに一太刀すら浴びせる事が出来なかったら――――」


エイワスはピタリ、と手作業を中断し、薄く笑みを浮かべながら垣根の宣告した。

988 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:00:15.03 ID:t9Ghw2KNo




「―――その時は、私が君を殺すよ。 垣根帝督」




チッ、と垣根は殺害予告を受けても忌々しげに舌打ちをするだけだった。
すぐ側にいたワシリーサはエイワスの言葉に驚いてヒュウ♪と口笛を吹いていた。


「既に二度もワシリーサと対峙し、二度目には善戦することが出来た君が、
 それでも三度目にワシリーサを追い詰めることが出来ないのであれば、あとはもう
 何度やっても同じことだ。 君はそれでも魔術から足を洗いはしないだろうが、
 無様に足掻く君を見ても興が冷めるだけだ。 そんなことになるくらいなら私が自身の手で消す」

「どこまでも自分勝手な野郎だな。 役にも立たねえオモチャは"棄てる"に限るってか」

「今の君にはそんな感情を抱いてはいないよ。 だがこれ以上足掻くつもりなら、
 君はただのガラクタだ。 ゴミはゴミ箱へ、人間なら誰もが実行している事ではないかね?」

989 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:01:39.61 ID:t9Ghw2KNo


「言ってくれるじゃねえか。 テメェに感情なんてねえだろうがよ」

「まぁ、君を復帰させたのも私だしな。 三度目の実践訓練が失敗に終わったら、
 その時は責任を持ってアレイスターに君を『返却』するとしようか」

「・・・・・・!!」


アレイスターの名を耳にした途端、垣根の表情が憎悪に満ちた鬼のような顔に変貌する。
またあのクソったれの"魔術師"の玩具にされるために学園都市へ舞い戻るなど、冗談ではない。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいぜ」

990 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:02:17.51 ID:t9Ghw2KNo


「ん?」

「殺れよ。 明日の朝、俺がワシリーサに一撃も喰らわせられなきゃ、
 そん時はまた俺を脳みそにでも冷蔵庫にでも何でもしてアレイスターのクズに差し出せ」

「男に二言は無いぞ?」

「分かってんだよクソボケが」


垣根はゆっくりと立ち上がり、体中に付着した土や砂を手で払う。
勝手にポンポンと話を進められたワシリーサは、わざとらしく指を唇に当てうーん、と唸って、


「なんだか私、超プレッシャーなんですけど? でも悪いけど、やっぱり手加減はしないわよ?
 手加減なんてしたら多分、エイワスが私を殺しちゃうでしょ?」

「ふふ、いやいや・・・・・・そんな。 恐れ多い・・・・・・・・・・・・くく」


再び手作業を始めるエイワスの表情からは、何を考えているのか見当もつかなかった。

991 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:03:24.14 ID:t9Ghw2KNo


エイワスの気紛れかもしれない言葉を、垣根は受諾した。
明日の朝、ワシリーサに一太刀浴びせる事が出来なければ、垣根帝督は死ぬ。

厳密には『死』というより再び脳だけにされて生かされる、と言ったほうが正しいが
そんなものは垣根とっては『死』も同然だった。死んだほうがマシとすら思っているかもしれない。

真面目な話、垣根帝督を殺せる人間などこの世に数人といないかもしれない。
彼の所有する能力、『未元物質(ダークマター)』はそこらの兵器などでは傷一つ負わせられない代物だ。


しかし、彼を殺すと宣言したのはエイワスだ。
この金髪の怪物なら、恐ろしいことに垣根帝督など呼吸をするかの如くあっさりと、容易く始末してしまうだろう。


しかし、


(面白え・・・・・・)

992 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:04:22.05 ID:t9Ghw2KNo


垣根帝督は胸から込み上げてくる高揚感を抑えきれずにいた。思わず笑みがこぼれてしまう。


(そんくらいのリスクが無きゃやる気出ねえよなぁ。 アレイスターのクソったれの下に戻るくらいなら
 それこそ死んでもワシリーサに一発ぶちかましてみせる。 俄然やる気になれるってもんだ)


これで決まった。


明日。明日の朝が垣根帝督の運命の別れ道だ。
垣根はそこら辺に散らばっていたルーンを拾って地下空間から出ようとした。


「ああ、垣根帝督」

「あ?」

993 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:05:29.88 ID:t9Ghw2KNo


と、エイワスが不意に垣根に話しかける。


「明日の訓練を見事にクリアしたら、それなりの報酬を君に授けようと思っているよ。
 魔術にお熱な君にはうってつけの代物を、ね」

「報酬・・・・・・? テメェなんざにプレゼントもらっても嬉しくもねえんだがな。
 何をくれるんだよ?」

「それは明日のお楽しみだ」


垣根はエイワスの手元に目線を向けて、


「・・・・・・・・・・・・、それか?」

994 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:06:38.91 ID:t9Ghw2KNo


垣根が指したのはエイワスがさっきから手元で作業をしている妙な物体だ。
最初、垣根が意識朦朧の中で聞いたパキッ、だのペキッ、だのといった音の正体である。

よく見るとエイワスはその物体・・・・・・石だろうか?それを彫刻刀のような刃物で
巧妙な手さばきで削っている。


「ん? コレの事を指しているのか?」


エイワスは垣根に見せつけるようにそれを手に持って軽く掲げる。
パッと見ではそれは『十字架のような物』に思えた。

995 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:07:14.49 ID:t9Ghw2KNo


「この十字架は君のために用意してるわけではないよ。 これは私の自己満足を満たすために作っているだけだ。
 君にはこんな『霊装』よりもっと素晴らしい物を用意しているから、楽しみにしていたまえ」

「・・・・・・ふん、せいぜい期待しとくぜクソ野郎」


ワシリーサに『また明日な』、と手を振って垣根は地下空間を後にした。


「ちゃんとサーシャちゃんの生着替え写真用意しといてよー!!!」


明日、訓練をクリア出来なければ垣根は死ぬという話を聞いているはずなのだが、
ワシリーサはやはり相変わらずだった。

996 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:08:06.35 ID:t9Ghw2KNo
次回予告は次スレにて投下いたします。

では、このスレでもお世話になりました。
6スレ目へのご案内は少々お待ち下さい。
997 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2011/03/18(金) 22:11:02.08 ID:t9Ghw2KNo


垣根「・・・・・・次スレでも生き残ってやるさ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300453744/
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 22:16:16.53 ID:ZzZuldL60
俺を踏み台にしろ!!
そして・・・帝督×サーシャ・・・を・・・
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/03/18(金) 22:16:31.33 ID:aPU1+YSf0
投下&スレ立てのW乙!
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/03/18(金) 22:17:14.77 ID:P2lD+D8Z0
1000ならサーシャ生着替え!!!!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
    ´⌒(⌒(⌒`⌒,⌒ヽ
   (()@(ヽノ(@)ノ(ノヽ)
   (o)ゝノ`ー'ゝーヽ-' /8)
   ゝー '_ W   (9)ノ(@)
   「 ̄ ・| 「 ̄ ̄|─-r ヽ
   `、_ノol・__ノ    ノ   
   ノ          /     
   ヽ⌒ー⌒ー⌒ー ノ      
    `ー─┬─ l´-、    
        /:::::::::::::::::l   /77
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       l;;ノ:::::::::::::::l l;.,.,.!  |
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       /:::::::;へ:::::::l~   |ヌ|
      /:::::/´  ヽ:::l   .|ヌ|         SS速報VIP@VipService
      .〔:::::l     l:::l   凵         http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/       
      ヽ;;;>     \;;>

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
一方通行「そンなフラグはヘシ折ってやる」  ヴェント「・・・・・・あ?」 @ 2011/03/18(金) 22:09:04.49 ID:t9Ghw2KNo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300453744/

交通事故起こしたことあるやつ集合 @ 2011/03/18(金) 21:28:27.10 ID://vL44MH0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1300451306/

ロレックス 時計直営店★brand-home★ @ 2011/03/18(金) 21:17:14.13 ID:+Rr0uR1M0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1300450633/

一夏「シャルが妹になった・・」 @ 2011/03/18(金) 21:10:20.17 ID:G6688OPO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300450219/

ドラえもんの疑問に>>1が全部答えるスレ @ 2011/03/18(金) 20:01:06.93 ID:tXSJdQsk0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1300446066/

ミニ四駆VIPスレ Mk.27 @ 2011/03/18(金) 19:57:47.18 ID:tsKp+OjM0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1300445866/

JKのプロフの職業欄がヤバいんだが @ 2011/03/18(金) 19:40:51.93 ID:vIFTtS9AO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1300444851/

一方通行「飯も風呂もできてンぞ」番外個体「それじゃあ、あなたで」 @ 2011/03/18(金) 19:31:51.85 ID:SMLw9DYPo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1300444311/


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