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蛇足 とあるフラグの天使同盟 ?匹目 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:04:11.48 ID:MBMzVLU9o

この二次創作はライトノベル『とある魔術の禁書目録』の登場人物、一方通行を主人公にした
天使と人間が織り成す感動のラブストーリーです。ラブ100%です。もう甘々です。吐き気がする。

【本編】

一方通行「フラグ・・・ねェ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1285654962/

上記のスレが本編最初のスレです。こっからグダグダと続いていきます。


【本編のエピローグ・続編】

蛇足 とあるフラグの天使同盟
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804166/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 弐匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310210981/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 参匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1313069422/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 肆匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316009458/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 伍匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1319277226/

蛇足 とあるフラグの天使同盟 陸匹目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322982536/


上記のスレからの続きとなっています。もしお暇でしたら、ご一読を。


以下、留意点など。


・更新は基本的に三日以内です。時間帯は不安定。
・キャラ崩壊が起きています。ご注意ください。
・地の文と台本形式、両方でお送りします。
・誤字脱字のバーゲンセール。発見した方は厳しく指摘してやってください。
・書き溜めは多分尽きる事は恐らくないでしょう。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1327741451(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
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(安価&コンマ)鉄血に狼の男が(機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ) part2 @ 2025/06/22(日) 22:47:53.63 ID:xiq+pvxz0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1750600073/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:08:31.92 ID:A9RjOWcxo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421311/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:07:56.06 ID:9l741hD4o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421275/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:07:18.78 ID:XCIH42NJo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421238/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:06:42.32 ID:sMr/Yf+to
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421202/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:06:05.72 ID:A9RjOWcxo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421165/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:05:29.13 ID:9l741hD4o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421128/

■ 萌竜会 ■ @ 2025/06/20(金) 21:04:47.30 ID:XCIH42NJo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1750421087/

2 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:05:16.99 ID:MBMzVLU9o


                   【登場人物紹介・『天使同盟(アライアンス)』の構成員】


【一方通行(アクセラレータ)】


このSSの主人公。学園都市最強、超能力者(レベル5)第一位の『一方通行』の能力を持つ白髪の少年。
第三次世界大戦を経て大天使ミーシャ=クロイツェフに好意を抱かれてしまった哀れで幸せな男。
『第一九学区事件』後、ひょんな事から垣根帝督と衝突してしまうが、その事もあって一方通行は
他人(特に異性)との交流について真剣に考えるようになる。現在はフラグを立てた女性陣と真剣に
向き合い、自分という存在と方向を確立しようと奮闘している。


【ミーシャ=クロイツェフ】


『神の力(ガブリエル)』。本作のヒロインにして『天使同盟』の顔。水を司る本物の大天使。
第三次世界大戦で意思疎通をした一方通行に好意をよせ、以後は彼と共に人間界で生活する。
『第一九学区事件』で周囲の仲間達に救ってもらった後も学園都市に居座り自由奔放に暮らす。
現在、フィアンマと打ち止めを巻き込んで一方通行に贈る『サプライズ』を進行している。


【風斬氷華(ヒューズ=カザキリ)】


『天使同盟』に咲き誇る一輪の花。『天使同盟』内でも比較的常識を持ち合わせている健気な女の子。
油断をするとつい風斬がヒロインなのではないかと勘違いしてしまうほどヒロインをしている、はず。
『第一九学区事件』も好意を寄せる一方通行相手になかなか積極的になれずにいるが、健気に彼を
遠くから見守っている。風斬氷華専用ルートが蛇足にて確定した。
3 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:05:43.62 ID:MBMzVLU9o

【エイワス】



このままではエイワスの命が危ない! みんなの応援が、彼(彼女)に勇気を与えるぞ!



【垣根帝督】


学園都市第二位の超能力者(レベル5)、『未元物質(ダークマター)』の能力を持つ少年。
『第一九学区事件』で脳をひどく損傷し、能力と魔術が使用出来なくなってしまった。
ひょんな事から一方通行と衝突してしまい、彼は一時的に『天使同盟』から離脱した。
現在はドレスの少女と共に過去に訪れた魔術サイドの地へ足を運び、能力と魔術を
取り戻す修行に専念している。一方通行同様、異性との向き合い方がわからないでいる。


【フィアンマ】


『天使同盟』最後の構成員。ローマ正教『神の右席』のリーダーを務めていた最上級魔術師。
様々な経緯を辿った末、『天使同盟』唯一の魔術師として加盟する事になった。
組織内でも比較的常識人ではあるが、それでもたまに意味不明のボケに走ってしまったりする。
現在はミーシャと打ち止めの協力を受けながら、とある『計画』を進行中なのだが…………。
4 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/28(土) 18:06:10.99 ID:MBMzVLU9o


                   【閲覧可能エンドルート一覧】



・【風斬氷華育成計画 -AIM Simulation-】

・【兎追いしかの街 -Wonder land-】

・【闇喰らわぬもの祈るべからず -Saint-】

・【???】 

・【???】 

・【第一位と第二位の垣根を越えて -Identity-】

・【???】 

・【???】
5 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2012/01/28(土) 18:07:00.12 ID:MBMzVLU9o

テンプレは以上です。っつーか文字化けしてるよスレタイ!!ちくしょう!!
前スレでこれから投下を始めますので、今しばらくお待ちください。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 18:11:56.17 ID:DWQDDaV90
>>1スレ建て乙!!
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/28(土) 18:24:10.42 ID:RbuCdjoK0
>>1乙!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/28(土) 18:45:43.91 ID:aFhGyjks0
>>1
9 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2012/01/28(土) 18:50:22.70 ID:MBMzVLU9o

前スレ、埋まりました。ほんとうにありがとうございます。

で、このスレなんですが……すみません、タイトルが文字化けを起こしております。
正しくは『蛇足 とあるフラグの天使同盟 七匹目』なのですが、『七』の大字が
文字化けを起こしたようで……。今まで大丈夫だったのに、何だよちくしょう……。

ですので、このスレは蛇足七つ目のスレとなります。皆様、よろしくお願いします。

以下、新スレでお話無しは寂しいのでさっき適当に書いた小ネタをsageで投下します……。
10 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2012/01/28(土) 18:51:01.66 ID:MBMzVLU9o

――【フィアンマ】


垣根「『天使同盟(アライアンス)』の新参者」

フィアンマ「立場的に言えば俺様は一番の下っ端ということになるな」

エイワス「一番の下っ端という言葉もおかしいと言えばおかしいが」

ガブリエル「xybi頼airf」

風斬「でもフィアンマさんが下っ端って……何だか少し違和感ありますよね」

フィアンマ「と、言うと」
11 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:51:37.96 ID:MBMzVLU9o

風斬「フィアンマさんって……『神の右席』のリーダーだったんですよね?」

一方通行「黒歴史だな」

フィアンマ「暗部なだけにな」

垣根「そのリーダーが今となっては落ちぶれたもんだよな」

フィアンマ「何故だかは俺様にもわからんが、お前にだけは言われたくない」

一方通行「つか俺達の間に下っ端もクソもねェだろォよ」

エイワス「左様だな。 我々は、何時如何なる場合も心身を共にする同士だろう」

垣根「ない」

一方通行「それはない」
12 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:52:17.19 ID:MBMzVLU9o

フィアンマ「もう俺様に立場を言及する資格などないよ」

垣根「俺様(笑)」

一方通行「今時そンな一人称使ってるヤツもいねェよなァ」

フィアンマ「……『フィアンマ』として振る舞うのなら俺様で通す他ないんだが」

垣根「自分で言ってて恥ずかしくねえの?」

エイワス「出ました、新人いびり」

フィアンマ「俺様の何が悪い。 別にお前らに迷惑かけてないだろ」

垣根「溢れ出る小物臭」

一方通行「それもオマエには言われたくねェだろォな」
13 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:53:03.47 ID:MBMzVLU9o

ガブリエル「ngjc意地悪guy禁止cip」ゴツン

垣根「わかったから殴るのをやめろ……首の骨がズレた……」

フィアンマ「ふん。 まぁ、お前らが俺様をどう思おうと勝手だが」

風斬「でも私……頼りにしてますから、フィアンマさんのこと」

ガブリエル「xhye同意pvdgt」

フィアンマ「…………何に対してどう期待しているのかは知らんが……」

エイワス「照れる事はないだろう」

フィアンマ「照れてなどおらん」
14 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:53:44.41 ID:MBMzVLU9o

――【垣根帝督】


一方通行「死ね」

フィアンマ「そもそもお前、一度死んだんだろう?」

垣根「何の因果か、こうして生き返ったけどな」

エイワス「その点に関しては訂正を加えなければならんだろう。
     彼は死んでなどいなかったのだよ、学園都市的には」

風斬「怖い話ですけど……脳さえあれば死者として扱わないっていう……」

エイワス「脳に開発を施す学園都市ならではの、死の定義だな」
15 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:54:19.45 ID:MBMzVLU9o

ガブリエル「qqtud開帳spdso」

垣根「やめろテメェ! 頭を割ろうとすんじゃねえ」

フィアンマ「そして死亡フラグに定評のある男、か」

風斬「私個人の意見なんですが……別に垣根さん、そんなに立ててないですよね?」

エイワス「立てても悉く回避している傾向にあるな」

垣根「回避しねえと死ぬだろうが」

ガブリエル「ycnr素敵xnvb」

風斬「たくましいですよね……」
16 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:54:48.85 ID:MBMzVLU9o

垣根「お、好感度上がった?」

風斬「そうですね……もう少し好感度が上がれば、グラフのバーが下から顔を出すかも……」

垣根「お前俺の事どんだけ嫌いなんだよ!?」

フィアンマ「ムードメーカー的なイメージがあるな、組織内の」

垣根「暗部の頃はこんな感じじゃなかったんだけどな」

エイワス「良き傾向と捉えて構わないだろう。 これが垣根帝督の正体なのだよ」

垣根「ちっ……。 ま、俺、お前ら大好きだからな。 白髪のクズ以外は」

一方通行「死ね」
17 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/01/28(土) 18:55:17.00 ID:MBMzVLU9o

おしまい。

大変失礼しました。ではまた、三日以内に。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/28(土) 18:57:25.12 ID:DWQDDaV90
再度>>1乙!!
一方さん垣根に対して[ピーーー]しか言ってねぇww
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/01/28(土) 20:23:07.82 ID:iYxuZQmc0
>>1乙!!
一方さんwwwwww
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/01/28(土) 20:26:17.25 ID:Su2hzM9x0
超乙です
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/01/28(土) 20:40:44.00 ID:uRo0zmf40

なんかケータリングカーとかで遊んでた頃を思い出したわ
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/28(土) 20:46:12.22 ID:aFhGyjks0
乙!

一方さんひでえwww
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/28(土) 21:05:20.89 ID:mnrfTYjz0
乙ー!
一方さん、[ピーーー]はひどいってwww
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/28(土) 23:05:19.44 ID:w59pYj640

前スレの1000で垣根が大変なことになってるぜwwwwww
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/29(日) 07:23:16.67 ID:2SVA144m0
1乙!後四つ開いたら第二章だね!
前スレ1000にはよくやったと言わざるを得ない。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 10:24:42.54 ID:N8zc0Ch6o
前スレの>>974から見れねえ
スレ落とすの早すぎだろ……
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/29(日) 10:35:32.26 ID:YYHizCQP0
Htmlで見れるだろ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/01/29(日) 14:38:59.69 ID:VSWiFosLo
専ブラならタブをダブルクリックとかしてみろ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/29(日) 15:23:50.08 ID:MJlbZXLs0

>>21懐かしいな、あのころはもうギャグ満載だったな・・・いや今も満載なんだが
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/29(日) 15:39:27.98 ID:8ksYMsP00
前スレの『恐ろしいG』で

黒光りする六本足が機内を蹂躙しているのを幻視したのは俺だけだろうか
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/01/29(日) 16:08:23.82 ID:3af0nl5AO
>>30
おいやめろ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/01/29(日) 18:50:33.80 ID:NbZWTdDV0
応援を忘れていたので
エイワスー!俺だー!頑張ってくれー!
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/29(日) 20:15:25.71 ID:trg2dxOB0
前スレの1000は凄く感謝してる……
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 01:54:19.67 ID:58IhvlCjo
>>30
おまおれ
35 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:50:50.16 ID:5bYIzcmbo
>>26
申し訳ないです……未だに上手く次スレ誘導できない>>1をお許しください。
前回の更新は垣根がイギリスに着いて、ランベスの女子寮に顔を出そうかなと
考えている辺りで終わりです。お手数ですが、参考までに……。

おはようございます。更新を開始します。

このスレで投下した小ネタ、初期の頃のギャグを思い出してくださった方も
いらしたようで大変嬉しく思いました。最近ああいうノリやってないので
たまに小ネタ書いてはしかし投下せずを繰り返したりしています。

さて今回は垣根帝督が例の女子寮へ。久々の再会に胸踊らせる彼ですが、
何やら事態はそう簡単にほのぼのとさせてはくれないようです。

それでは、よろしくお願いします!
36 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:52:14.62 ID:5bYIzcmbo


――――――――――――――――――――――


ルチアは絶体絶命の危機に陥っていた。


黒の修道服で身を包んだ彼女は現在、ランベスの人気のない路地で
息を潜めている。人一人がやっと通れるような汚い路地から時折顔を
覗かせては大通りの路地の様子を確認する。

そもそも彼女がいる大通りは、人気のない場所ではなかった。

朝から商店の開店準備のためにこの道を通る住人や、学校へ向かう
学生などが頻繁に利用する通路なのだが、不思議な事にさっきから
人っ子一人通りかかる事はない。
37 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:53:16.38 ID:5bYIzcmbo

だがそれは、ルチアにとっては不思議な事でも何でもなかった。

簡単な話。"連中"は人払いのルーンを使って人間を大通り周辺に
近づけないよう手を打っているだけであり、ルチアもそれに気付いている。
ならばルーンの札を剥がせばいいのだが、そう簡単に見つかるような場所に
"連中"が札を貼ってくれている訳がなかった。


結論を言うと、ルチアは追われていた。


昨今、魔術サイドで狂信的な志を振り撒く、『暴徒』と呼ばれる連中に。


(まったく……想像以上の連中ですね。 まだ心にいくらかの余裕が
 残っていると判断した私がバカでしたか。 まさかあれ程までに
 『天使同盟(アライアンス)』に心酔しているとは……。 念のため、
 車輪を持ち運んでおいて正解でしたね。 問題はどう切り抜けるか)
38 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:54:14.85 ID:5bYIzcmbo

額の汗を拭い、ルチアは手に構える『車輪』を強く握り直す。
彼女が使用する魔術は聖カテリナの『車輪伝説』をモチーフにしたもので、
車輪を爆散させ、その破片で敵を攻撃するという仕組みの魔術なのだが。


(二対一では……、いえ、多人数相手でも対応出来るのが『車輪』の術式。
 しかし相手の技量は私より遥かに上……。 拮抗するならまだしも、
 これでは次に相対したら一気に畳み掛けられてしまう…………)


ルチアが『暴徒』の存在を知ったのは、オルソラ=アクィナスとアンジェレネが
勝手に寮を抜けだしてどこかへ行った事実が発覚し、彼女が激怒した後だった。
アニェーゼやシェリーに手を借り、オルソラとアンジェレネの行方を調べていく内に
『天使同盟』の存在を歪んだ方向で狂信する『暴徒』の情報を入手したのだ。

そして今日の早朝、ルチアが朝の散歩に出掛けている時に、彼女は偶然目撃した。
平和な街で見かける事はまずない、やたらボロボロになったコートを着た二人の男。
男達の会話が耳に入り、ルチアは思わず声をかけてしまった。
39 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:55:36.17 ID:5bYIzcmbo

『「天使同盟」……。 つかぬ事をお聞きしますが、あなた達が例の―――』


それだけだった。迂闊だった。所々が破けたコートを着た不審な男二人組に、
『あなた達は「暴徒」の一味なのか』と出し抜けに尋ねるルチアもルチアだが、
無理もない。明らかに様子のおかしい二人組が『天使同盟』の名を口にすれば、
本物の『天使同盟』を知っているルチアに対し声をかけるなという方が酷だ。

そして『暴徒』かどうかの有無を尋ね、二人組が魔術サイドに関わっていない
一般人なら首を傾げるだろうし、『暴徒』の淘汰に勤しむ魔術結社の魔術師なら
『我々も暴徒の連中に手を焼いている。 この身なりも先ほど暴徒によって――』
等と言って事情を説明してくれるだろう。少なくとも、ルチアはそう判断して声をかけた。


二人組の男は、ルチアに対して言葉ではなく害意のこもった『魔術』で応じた。

40 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:56:33.18 ID:5bYIzcmbo

ルチアは咄嗟に相手の攻撃をかわす。背後で大きな爆発が発生した。
そしてルチアは悟った。こいつらが例の『暴徒』であると。


そこから先は追って追われての戦闘が始まり、自分と相手の力量の差を
正確に計ったルチアは現在、細い路地に身を隠しているという訳だ。


(シスター・アニェーゼ達が敵の存在に気付いていれば……。 気付いて
 いなくとも私がどうにかこの状況を切り抜け、寮に戻って事情を説明
 すれば……。 いえ、駄目ですね。 彼女達をこんなくだらない事に
 巻き込む訳にはいきません。 私が、一人でどうにかしないと……)


路地から顔を出し、大通りの様子を確認する。
暴徒の二人の姿はない。人の気配すらない。遠くから車が何台も走る
走行音が聞こえる。まるでここら一帯だけ、その日常から切り離された
かのような錯覚に陥る。
41 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:57:02.94 ID:5bYIzcmbo

(とりあえず場所を変えますか)


最大限の警戒網を張り巡らせながら、ルチアはゆっくりと路地から大通りへ踏み出そうとする。




「示すは『左方』。 司るは『緑』。 『アルマデル』の声に呼応するは、万物を天に誘う『風』」




にも関わらず、その詠唱が鼓膜を揺さぶるまでルチアは気付くことが出来なかった。
ルチアが潜んでいた細い路地を作り出す両端の建造物。その内一つの屋上に暴徒の
魔術師が潜んでいた事に。
42 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:57:56.53 ID:5bYIzcmbo

「――――――ッッ!!」


相手の姿を確認する事もせず、ルチアは地面に飛び込むように跳躍する。
直後、さっきまでルチアが居た位置に局地的な暴風が発生した。
暴風は地面をドリルのように抉り、両端にあった建物の壁をクッキーのように粉砕してしまう。
この風に巻き込まれていればルチアの肉体はズタズタに引き裂かれてしまっていただろう。

しかしそこで安堵の息を吐く事は叶わなかった。


「示すは『右方』。 司るは『赤』。 『アルマデル』の声に呼応するは、焦熱地獄を産みし『炎』」


ルチアが飛び出した大通り。先程まで誰もいなかったはずの大通りの前方には、
片手に分厚い書物、片手に赤い蝋を固めて作った奇妙な像を携えたもう一人の暴徒の姿があった。
蝋で出来た像が真っ赤に輝く。瞬間、ルチア目掛けて蝋から巨大な火球が射出された。
43 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:59:11.92 ID:5bYIzcmbo

ルチアは慌てて車輪を前面に構えガードの体勢に移る。火球は車輪に直撃し、
爆散して、ガードしていたはずのルチアごと吹き飛ばしてしまった。


「う、ぐ……ッ!!」


凶悪な熱風を浴びながらルチアは地面に転がる。たった一撃でボロボロに
なった彼女の姿を赤い蝋を持った男は冷めた目で眺めていた。
建物の屋上から、緑の蝋を持った男がふわりとした動作で飛び降りてくる。


(まるで歯が立たない……、このままでは……)


この二人に声をかけるという行為は、迂闊だったとは思う。しかし後悔はしていなかった。
わずかでも自分達の行動の障害になり得る人間を見つけたらこのように危害を加えてくる
魔術師を放置しておくわけにはいかないとルチアは思った。
44 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 09:59:39.15 ID:5bYIzcmbo

『暴徒』が何人いるのかも分からない。全貌など、イギリス清教の単なるシスターである
ルチアには掴めるはずもない。太刀打ちだって出来ないかも知れない。現に彼女はこうして
手も足も出ず一方的にされるがままなのだから。


「示すは『左方』。 司るは『緑』――――――」

(くっ…………!!)


しかしルチアは退かない。ここに味方がいない以上、味方を巻き込むまいと
誓った以上、ここで自分が引き下がる訳にはいかない。
そんな彼女の想いを踏みにじるように、男は呪文を紡いだ。
45 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:00:47.85 ID:5bYIzcmbo




「『アルマデル』の声に呼応するは、偽典を裁く『刃』―――」

「おーおー、朝から派手にやってんなぁ。 さすがは魔術の本場イギリスってか」




突如として介入してきた声に、ルチアは一瞬戦慄した。
ただでさえ防戦一方なこの状況に、さらに暴徒の連中が増援に来たのかと思ったからだ。
しかしその考えは見当違いだという事に気付かされる。

緑の蝋を構えた男が、術式発動直前で詠唱を停止した。怪訝そうに眉をひそめながら
背後へ振り返る。赤の蝋を持った男も同様に声のした方へ首を回した。


「あ……」
46 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:01:31.05 ID:5bYIzcmbo

「んん? これって、アレか? ピンチになったヒロインの下に
 颯爽と駆けつけるヒーローの図? そういうのガラじゃねえんだけどな」


場の雰囲気とは裏腹に男の声は陽気そのものだった。
男もこの状況と張り詰めた空気をひしひしと感じているはずなのだが、まるで動じない。
そしてルチアは目を剥いた。


「垣根……帝督、ですか……?」

「よぉ、遊びに来てやったぜ。 ルチア」


自分を襲っている二人の男が心酔する組織、『天使同盟』。


その構成員である垣根帝督がイギリスに再びやって来た現実を、
ルチアは素直に受け入れる事が出来なかった。
47 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:02:40.81 ID:5bYIzcmbo


――――――――――――――――――――――


「何者だ」

「相手の名前を尋ねるならまずはテメェから自己紹介しろよ」


垣根帝督はとくに身構える様子も見せず、ゆっくりとルチアと二人組の
方へ歩いていく。その表情に困惑や緊張は一切見られず、彼は余裕の笑みを
浮かべながら続けてこう言った。


「で、こんな朝っぱらから何やってんだ? ナンパにしちゃ手が込んでるが」

「……貴様には関係の無い事だ。 怪我をしたくなければ立ち去れ」

「そいつ、俺のオンナなんだけど」
48 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:03:24.41 ID:5bYIzcmbo

へ……? とルチアは思わず間抜けな声を出してしまったが、
二人の魔術師はどうやら気付いていないようで、


「理解出来たか? 俺のオンナがちょっかい出されてる以上、
 俺も無関係じゃねえんだよな。 おら、さっさと消えろよ」

「この修道女の関係者という事は、貴様も魔術師なのだな」

「現在は休業中だがな。 活動再開の目処はついてるんだが……」

「どうやってここへ来た」

「これ、人払いのルーンだろ? この大通りの入り口付近にある商店の
 壁にさりげなく貼ってあったぜ。 最初の一枚を見つける事が出来りゃあ
 あとはトントン拍子ってな。 悪いが、ルーンの札に関しちゃそれなりの
 知識があるんだよ」

「ま、待ってください!」
49 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:04:22.56 ID:5bYIzcmbo

地面に伏しているルチアが叫んだ。頭の中が混乱に陥りグチャグチャに
なっているためか、その先の言葉がなかなか紡げない。
なぜイギリスに垣根帝督がいるのか。なぜ急に自分を『俺の女』などという
ふざけた位置付けで呼ぶのか。言いたい事は色々とある。

だが今はそんな事を言及している暇はない。どうにかして取り繕わないと敵の二人と
垣根が衝突してしまう。それを危惧したルチアは、


「あの御方と私は無関係です。 いくらあなた達でも、一般人を巻き込む
 事で得られるメリットはないでしょう。 ですから彼は見逃して―――」

「手遅れだぜルチア。 まず最初の時点で俺はお前の名前を呼んじまってるし、」


傷つきながら、それでも自分を庇おうとするルチアの痛々しい姿を見ていた
垣根の顔から、ふと表情が消えた。明らかな雰囲気の変化に男はすかさず警戒する。
だが敵意を向ける二人を意に介さず、垣根は声を低くして言い放った。
50 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:06:24.60 ID:5bYIzcmbo




「今のルチアの言葉で理解した。 ……テメェらが例の『暴徒』だな?
 ルチアをこんなにしちまった以上見逃せねえんで―――ま、覚悟しとけよ」




直後、垣根の全身から溢れたのは明確な『殺意』。たかが少年一人が出せるような
敵意ではない事に気付いた男達は攻撃対象を垣根帝督に変更し、臨戦態勢に移った。


「垣根帝督……!!」

「すぐ終わらせる。 お前はそこで俺に振る舞う朝メシの献立でも考えとけ」
51 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:07:24.68 ID:5bYIzcmbo

垣根の軽口にルチアが反論しようとしたが、二人の内の赤い蝋を持った
男が一気に垣根の下へ駆け寄った事で断ち切られてしまった。
魔術師の男は赤い天使を象ったような像を構えながら距離を詰めていく。


「何だそれ、大人のオモチャ?」

「詠唱破棄。 灰になれ背信者」

「あ、そう」


灼熱の炎を吹き出さんと赤い蝋が不気味に輝く。


だが炎が出現する直前に、垣根は右足を思い切り振り上げて蝋を持っている方の
男の手を蹴り、赤い蝋を空中へ弾き飛ばしてしまった。
52 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:08:20.66 ID:5bYIzcmbo

「な、」

「遅えよ豚。 アレイスターの攻撃は今の数億倍は早かったぜ」


垣根はそのまま左足に重心を置き、不安定な格好で男に右ストレートをぶち込む。
ベキリ、という鼻っ柱がへし折れる音と共に男が地面に叩きつけられた。

と同時に、垣根の耳に呟くような詠唱の声が届く。


「示すは『左方』。 司るは『緑』―――」

「ハッ、来いよ」


今の垣根の位置ならギリギリの所で緑の蝋を構えた男の詠唱を食い止める事が
できるが、彼はそうしなかった。
そうしなかった行為に挑発の意味合いもあったが、それ以上にこれから
男がどのような魔術を繰り出してくるのか、垣根は単純に興味があったのだ。
53 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:09:07.66 ID:5bYIzcmbo

そして垣根の希望通り、男は術式を発動させる。


「『アルマデル』の声に呼応するは、万物を天へ誘う『風』」


詠唱終了と同時、垣根の足元から恐るべき威力の暴風が舞い上がった。
暴風は瞬間的に膨れ上がり、垣根を包んでそれこそ本当に天へ昇っていく。
その光景を目にしたルチアの顔が真っ青に染まるが、


「ナメてんのかテメェ」


荒れ狂う暴風の中から、ハッキリとそんな言葉が聞こえた。
それがこの風の中で平然としている垣根帝督の声だと認識した時には、
垣根を中心に起きた正体不明の大爆発によって風が霧散していた。
54 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:09:53.33 ID:5bYIzcmbo

「風鈴でも持ってりゃ風情が出てたかもなぁ、今は冬だけどよ。
 風と言えば俺の知り合いにとんでもねえ風のスペシャリストがいるぜ。
 ん? あの女は風じゃなくて氷だっけ? ……よく知らねえや」


垣根が適当に言葉を紡いでいるが、緑の蝋を持った男は聞いていなかった。
先ほど垣根が起こした爆発に巻き込まれ、数メートル先まで吹っ飛んでいたからだ。
爆発によって地面を転がった男の全身から力が抜ける。


「『未元物質』……、雑魚を撃退する程度の力は戻ってきてるな。
 ただそれでも翼は出せねえし、魔力精製に繋がる手掛かりも
 浮かんでこねえ。 ……もう少しリハビリが必要か、面倒くせえな」


あっという間の攻防だった。ルチアがあれだけ苦労した魔術師の二人を、
垣根帝督はあっさりと一蹴してしまった。
防御術式を施していたのか、垣根に鼻をへし折られた魔術師が呻くように言う。
55 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:10:40.93 ID:5bYIzcmbo

「貴、様…………、何者……」

「お前らが狂信してる大天使様に聞いてこいよ」


言って、垣根は男の顔を思い切り踏みつけた。今度こそ男の意識が断絶される。
二人の魔術師が使う魔術が期待外れだったのか、垣根はつまらなそうにため息をついて、


「…………どうせ居るんだろ? このクソ二人を回収しろ」

「承知」


音源不明の声が垣根の指示に応えたと思ったら、大通りの随所から
黒いローブを羽織った謎の人物が三、四人程集まってきた。
フードの部分に黄金の鷹の頭をあしらったローブを着る謎の人物達は
互いに言葉を交わすことなくダウンした暴徒の二人を回収していく。

その光景にルチアは疑問符を浮かべるが、彼女がその正体を推察する前に
黒ローブ達は音もなく大通りから消えてしまった。
56 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:11:20.41 ID:5bYIzcmbo

「立てるか?」

「え。 あ、はい…………」


手を差し伸べてきた垣根に、ルチアは動揺しながらも応える。
垣根の手を取ってゆっくりと立ち上がり、破壊された車輪を再生させた。


「あ、あの……垣根帝督……」

「あーはいはい。 どうせ『なぜあなたがこんな所にいるのですか!』とか
 さっきのヤツらの事でギャーギャー言ってくるんだろ。 だがその前に
 メシにしようぜ。 俺朝から何も食ってねえからよ、何か作ってくれ」

「は、はぁ…………」


垣根に先を越されてしまい、何も言えなくなったルチアは辿々しく返事をするしかなかった。
57 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:16:29.16 ID:5bYIzcmbo

今回はここまでです。

今回登場した『アルマデル』は、何でも四属性の天使を召喚する霊装なんだとか。よく覚えてませんけど。
天使召喚については私が勝手にアレンジして、ただ四属性の魔術が使えるってだけの代物にしました。

あと今回の垣根はちょっとやりすぎとういうか、強すぎた感がありますよね……。
ただ彼の久々の見せ場なので、見逃していただければありがたいです。

次回は久々に再会した垣根とルチアの漫才をお送りします。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
58 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/01/30(月) 10:17:04.47 ID:5bYIzcmbo



                          【次回予告】



「幾千の欲を切り捨て、節制を心がけ、規律と信仰を重んじる事が
 我々シスターの役割です。 勝手に寮を抜け出してどこかへ出掛けて
 しかも連絡を寄越さず帰る気配の無いあの二人とは違うんです」
元ローマ正教のシスター――――――ルチア




「知ってるか? そうやって自分を縛ってる人間ほど、案外エロい話に
 興味を持つ傾向があるんだぜ。 欲とは無縁とかのたまってるヤツとか」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督



59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 10:26:44.78 ID:BZ1zD0KIO
おつおつ
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 10:39:58.18 ID:jMx7i1Dfo
次回は天使同盟初のエロと聞いて飛んできまおつ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/01/30(月) 10:57:28.85 ID:tFDaZ4eAO
おつおつ
今までの相手が世界最強クラスしかいなかっただけで、ていとくんもやはり最強クラス
というか能力不調とはいえこんな名も無き雑魚に苦戦したらワシリーサに殺されるレベル
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/01/30(月) 11:34:41.50 ID:l99OYOV70
乙  エロ期待

小ネタとか眠らせずに投下しちゃってもいいんだよ? (チラッ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 11:59:00.60 ID:Mkz58BVSO
垣根が強かったっていうのを今思い出した
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 12:11:55.00 ID:o5BJ+Crbo
ヤムチャポジが板についてきたせいだから仕方ないな
それが本人にとっていいことか悪いことかは別として

つまり、ていとくんはこんな感じに俺たちに愛されることを強いられているんだ!!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/01/30(月) 12:12:08.66 ID:8rSIu6zco
垣根より強い奴なんて大抵人外だからな、天使同盟怖い
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 12:47:29.04 ID:pK7lTofBo
垣根って死から復活し天使同盟で弄られワシリーサを倒し
アレイスターと相対し禁書目録を酷使してババヤーガで童貞失ってまだ生きてるんだぜ?
弱い訳がない
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/30(月) 12:51:19.78 ID:lbbvQjwIO
そうか、ていとくん童貞じゃないのか
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/30(月) 14:00:40.93 ID:HulDM1L40
ていとくんなんてこと言うんだ
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/01/30(月) 19:11:32.63 ID:OnqUwpBI0
超乙です ていとくんかっこよすぎる
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/01/30(月) 22:33:47.98 ID:qfEWuRUfo
イケメルヘンぱねえ
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/01/31(火) 00:21:39.65 ID:Fb6TCZno0


某ラノベ読んでるからアルマデルって単語が出てきてびっくりした。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/01/31(火) 17:32:10.75 ID:UdDwa7mr0
乙!

ていとくん・・・俺の知らない内にカッコ良くなりやがって・・・
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/01/31(火) 22:39:06.21 ID:Jpf4e3Pm0
ていとくん好きの俺歓喜
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/01(水) 00:07:08.75 ID:9k0qaxjIO
乙!
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/01(水) 09:42:58.71 ID:n1Cik9IDO
おつ!

かっきーはヤムチャポジだが、パイクーハンクラスの力はあるのよな
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/01(水) 15:56:54.97 ID:oN7ZOhTn0
乙です

垣根が久々にカッコよかった
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/01(水) 19:11:38.41 ID:1W0PCCKU0


カキネ…オマエがNo.2だ
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/01(水) 21:58:02.77 ID:kymbCJLS0
おつです!

読み返し宣言してからやっと追いついた・・・。
量は多いけど飽きないで読めるってすごい事だと思います。
>>1の技量的な意味で。

ていとくんとルチアの情事?全裸待機してますね。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2012/02/02(木) 03:55:49.35 ID:b0kP0e0d0
乙です!
80 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:46:05.32 ID:71S8SZs9o
>>61
ですよね?普通に垣根帝督強いですもんね。
いっそ暴徒の二人なんて舌だけで倒したあげく建物の柱もぎ取って
それ投げてそれに乗って女子寮まで行くくらいの事してもよかったですよね。

>>78
ありがとうございます。ゆっくりでもいいので、これからも
読んでくれたら非常に嬉しいです。

そして皆様も、いつも沢山の支援をありがとうございます。
お昼前ですが更新を開始します。

今回は再び出会った垣根とルチアがぐだぐだ漫才して、
女子寮に着いてまだぐだぐだ喋るだけの信じられない程中身のない内容です。
いつもの事とか言わないでください。

それでは、よろしくお願いします!
81 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:46:40.64 ID:71S8SZs9o


――――――――――――――――――――――


――イギリス・ロンドン ランベスの大通り


垣根「何だ? 急に人が通るようになったな」

ルチア「あなたが人払いの術式を解除したからです」

垣根「ああ、そういやそうだった」

ルチア「……」

垣根「いやそれにしても、久しぶりだなお前」

ルチア「……お久しぶりです」
82 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:47:29.51 ID:71S8SZs9o

垣根「怪我とかしてねえだろうな? さっきのクソ共と戦ってたんだろ」

ルチア「大した事はありません」

垣根「そりゃ重畳」

ルチア「……それで、垣根帝督」

垣根「あ?」

ルチア「学園都市に居るはずのあなたが何故イギリスに?」

垣根「さっき言っただろ、遊びに来たって」

ルチア「まさか大天使様の身にまた何か……?」

垣根「そんなんじゃねえよ、あのアホ天使は今も元気にやってんじゃねえか?
   『天使同盟』の近況報告は寮に着いたらたっぷり話してやるからよ」
83 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:48:37.05 ID:71S8SZs9o

ルチア「そう、ですか」

垣根「しっかしさっきの連中が暴徒ねえ……。 思ってたより雑魚でガッカリだな」

ルチア「あ。 か、垣根帝督」

垣根「なんだ?」

ルチア「先ほどは……その。 助けていただいて……あ、ありがとう……ございました」

垣根「飛び回ってたハエを払っただけだ、礼を言われる程の事じゃねえ」

ルチア「あなたが来てくれなかったらどうなってたか……」

垣根「何だよ、もしかして惚れちゃった?」

ルチア「ば、馬鹿な事を出し抜けに言わないでください!///」
84 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:49:20.27 ID:71S8SZs9o

垣根「冗談に決まってんだろ、相変わらずだなお前」

ルチア「そういうあなたも、剽軽な人柄は相変わらずですね」ムスッ

垣根「怒ってんなよ、いちいち細けぇなぁ」

ルチア「……」

垣根「あの寮、まだシスター共が利用してんのか?」

ルチア「へ? ええ、まぁ一応……」

垣根「ふうん。 ……ああ、て事は男は俺一人か。 居づれぇな」

ルチア「何ですかそれは、何かふしだらな考えを起こしているんじゃないですよね」

垣根「お前はそのテの話に警戒しすぎだよなぁ」
85 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:50:16.98 ID:71S8SZs9o

ルチア「幾千の欲を切り捨て、節制を心がけ、規律と信仰を重んじる事が
    我々シスターの役割です。 勝手に寮を抜け出してどこかへ出掛けて
    しかも連絡を寄越さず帰る気配の無いあの二人とは違うんです」

垣根「知ってるか? そうやって自分を縛ってる人間ほど、案外エロい話に
   興味を持つ傾向があるんだぜ。 欲とは無縁とかのたまってるヤツとか」

ルチア「な!?」

垣根「学校のクラスに居なかったかそういうの? あ、お前は学校とか
   行ってないのか? 俺も通ってねえけど。 でもまぁ、いるんだよ」

ルチア「ど、どういう意味ですか。 詳細な説明を要求します」

垣根「クラスの男子がエロい話してる中、一人だけ『そういうの興味ねえから』とか
   言って紳士ぶるヤツとかいるじゃん。 そういうヤツほど裏じゃ成人雑誌片手に
   興奮してたりするんだぜ? その他よりよっぽど知識が豊富だったりな」
86 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:51:18.76 ID:71S8SZs9o

ルチア「な、な……///」

垣根「逆もまた然りでな。 男より女の方がエロ知識が豊富だったりするだろ。
   そういう話をしてる男共を女達は蔑むが、本当はその女達の方がエロい
   話で盛り上がってたりするもんだ。 お前んとこの寮でもそういう話――」

ルチア「し、してませんッ!! い、いいですか? あなたさっきから
    スラスラとエロいとか成人雑誌とか口にしてますけど、女性である
    私の前でそのような如何わしい話題を出すなんて、正気とは思えません!!」ウガー

垣根「仕方ねえだろ、俺男だし。 格ゲーで女キャラ使っただけで馬鹿にしてくる
   ヤツとかたまにいるよな。 あれ何でだ? 男だからこそ女キャラを使うんだろ」

ルチア「知りませんよそんな事!」

垣根「あれ、シスターってゲーセンで息抜きしたりしねえの?」
87 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:52:45.07 ID:71S8SZs9o

ルチア「あり得ません。 節制に重きを置く修道女が、その……ゲーセン、ですか?
    そのような場所で遊ぶなど以ての外です。 ゲーセンという娯楽自体を
    全否定する気はありませんが、修道女ならば無縁であるべきだと考えます」

垣根「いいじゃん、シスターがゲーセンで遊んだって。 オルソラとかアンジェレネとか、
   平気でゲーセン行ってるイメージあるけどなぁ、しかも超楽しんでる感じ」

ルチア「あの二人は確かに修道女としての何かが欠落している雰囲気がありますが、
    それでも弁別はきちんとしているはずです。 それは流石にないかと」

垣根「前に俺らが来た時、ミーシャに煽られて酒飲みまくって潰れたお前が
   節制だの規律の修道女の何たるかを語られても説得力に欠けるなぁ」ニヤニヤ

ルチア「……ッ/// だ、大天使様は我ら十字教徒を導いてくださる高貴のなる御方です。
    大天使様が酒を飲めと仰られたら酒を飲むのが十字教徒にとって正しい行いなのです」

垣根「さすがにそれは十字教を軽んじ過ぎちゃいねえか……? とりあえずお前はやっぱ姑タイプの女だな」
88 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:54:13.72 ID:71S8SZs9o

ルチア「姑言うな!」


心理定規「あ、いたいた。 垣根帝督〜」タッタッ


ルチア「?」クルッ

垣根「チッ……」

心理定規「あからさまに舌打ちしないでよ、傷つくでしょ」

垣根「このまま放置していこうと思ってたんだがな」

心理定規「そんな事したら私、『天使同盟』に関する情報全部リークするから♪」

ルチア「? あの、この御方は……」
89 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:55:02.11 ID:71S8SZs9o

心理定規「お、シスターだ。 あの変態女とは違って黒い修道服なのね」

垣根「あー、俺の連れだ」

心理定規「『荷物』から『連れ』に昇格か、光栄ね」

ルチア「連れ……?」

垣根「よくここがわかったな」

心理定規「あなたの背中に小型の発信機を付けておいたからね」

垣根「ああ!? ……クソッ、これか」ポイッ

心理定規「こんな物にも気付けないなんて、本当に丸くなったわね」

垣根「くだらねえ事してんじゃねえよクソ女」

ルチア「あの……」

垣根「そうだ、この女も一緒に連れていきてえんだけど、いいか?」

ルチア「え?」
90 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:55:53.99 ID:71S8SZs9o

心理定規「ちょっと、断られたらどうすんのよ」

垣根「そりゃお前……捨て置くしかねえだろ」

心理定規「あなたって垣根帝督の知り合い? この男、こんなヤツなのよ?
     こんなのより私を傍に置いた方が楽しいと思うけど、どう?」

垣根「目くそ鼻くそだな」

ルチア「…………」ジー

心理定規「(はい来ました、明らかな警戒の眼差し。 何とかフォローしてよ)」ヒソヒソ

垣根「余計な事はしないよう見張るから、許可してやってくんねえか」

ルチア「……まぁ、あなたがそう言うのでしたら……、……」ブツブツ

心理定規「あら、ずいぶんとこのシスターさんに信頼されてるのね」

ルチア「あ、いや別に私は……」

垣根「どうでもいい。 さっさと行こうぜ」
91 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:57:02.24 ID:71S8SZs9o


――――――――――――――――――――――


――イギリス・ロンドン 『必要悪の教会(ネセサリウス)』の女子寮


ルチア「ただいま戻りました」ガチャ

アニェーゼ「おや、お帰りなさい。 そろそろ朝ご飯にしちまおうと思ってたんですよ」

シェリー「くぁ……眠い」ポケー

ルチア「おや、珍しく朝から起きていらっしゃるのですね」

シェリー「昨日は特に何にもしなかったからな」
92 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:57:53.97 ID:71S8SZs9o

アニェーゼ「今日の朝食担当はシスター・ルチアですよ」

ルチア「わかっています。 が、その前に……」

シェリー「?」

ルチア「はい皆様、ご拝聴ください」


「?」

「はい、シスター・ルチア」

「なんでしょうか?」


アニェーゼ「何ですか突然。 一体何が始まるんです?」

ルチア「今日はお客様がお越しになっています」
93 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:58:31.63 ID:71S8SZs9o

シェリー「客?」

ルチア「『天使同盟』の方です」

アニェーゼ「あ、『天使同盟』!? 何でまた!?」ガタッ

シェリー「まさか例の『暴徒』についての情報を聞きにきたとかかしら?」ガタッ


    ザワ…… ザワザワ…… ドヨドヨ…………


ルチア「…………。 では、どうぞ。 お入り下さい」

アニェーゼ「またあの時みたいにどんちゃん騒ぎが出来ちまうんですかね!?」ワクワク

シェリー「色々聞きたい話もあるしなぁ、眠気飛んだわよ」
94 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 10:59:25.55 ID:71S8SZs9o



垣根「うーっす、久々だなぁお前ら!」



アニェーゼ「……………………………………………………」

シェリー「……………………………………………………」


              シーン…………


垣根「あれ」

ルチア「今日は垣根帝督が遊びに来てくれました。 皆様、どうか丁重なおもてなしを―――」
95 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:00:06.70 ID:71S8SZs9o

アニェーゼ「一方通行さんは?」

シェリー「おい風斬は来てねえのか風斬は」

「あ、あの、ドラコ様はお見えになってないのでしょうか?」

「大天使様は!? あの事件の後も現世に留まってくださっているのですか?」

ルチア「今回は垣根帝督のみです」

アニェーゼ「何だ垣根だけか……」

シェリー「あー、途端に眠くなってきたわ。 マジ萎えるわー」

アニェーゼ「ま、一応歓迎しときますか。 どーぞごゆっくりー(棒)」

垣根「殺していいな?」

ルチア「抑えてください」
96 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:00:50.84 ID:71S8SZs9o

心理定規「修道女とあなたって反り合わなそうだしねえ」

アニェーゼ「ん?」

シェリー「誰だその女」

心理定規「垣根帝督の連れでーす、よろしくね」

アニェーゼ「しかも女連れかよ……」

シェリー「マジで何しに来たのって感じね」

垣根「俺の女じゃねえよ、妙な誤解してんじゃねえ」

心理定規「そこまで必死に否定することないじゃない」
97 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:01:31.48 ID:71S8SZs9o

シェリー「白髪のガキとか天使とかは本当に来てないの?」

垣根「今日は俺だけだ」

アニェーゼ「仕方ねぇです、垣根さん一人で妥協するとしましょう」

垣根「クソ生意気なガキだなテメェ……」

ルチア「…………。 では私は朝食の準備に取り掛かりますので、
    お二人はゆっくりと寛いでいてください。 失礼します」スタスタ

アニェーゼ「……ふんふん? でもまぁ、シスター・ルチア的には僥倖ですかね?」ニヤリ

垣根「ああ?」

シェリー「そういやお前、そんな話してたわよねえ。 こいつらが帰った後も」
98 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:03:04.61 ID:71S8SZs9o

アニェーゼ「とりあえず、第三次世界大戦と『第一九学区事件』が相次いじまったせいで
      生まれた暇っつーもんが少しは潰せるってなトコですよ、この状況は」ニタニタ

垣根「さっきから何をぶつぶつ言ってんだ? あー、お前なんて名前だっけ」

アニェーゼ「なっ!? 前来た時名乗りませんでしたっけ!?」

垣根「記憶にねえんだわ」

アニェーゼ「失礼な野郎ですね。 アニェーゼです、アニェーゼ=サンクティス」

シェリー「垣根の連れの女は初めて会うんだから別に自己紹介してもいいだろ。 私は、」

垣根「シェリー=クロムウェルだろ、お前は覚えてるよ」

シェリー「あら、そう?」
99 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:03:51.44 ID:71S8SZs9o

アニェーゼ「何でシェリーさんだけ……」

心理定規「あなた達もやっぱり魔術師なの?」

アニェーゼ「うーん、まぁ一応そうなりますが……、あれ? そんな事を聞くってこたぁ、」

シェリー「お前、学園都市の人間か」

心理定規「そゆ事。 垣根帝督と同じ能力者よ」

アニェーゼ「もしかして『天使同盟』の一員だったりします?」

心理定規「そうよ」

垣根「呼吸をするように嘘をつくんだなお前は。 んなわけねえだろ」

心理定規「別にいいじゃない、加盟させてよ」
100 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:04:31.11 ID:71S8SZs9o

垣根「冗談じゃねえ。 六人もいれば充分だろうが」

アニェーゼ「……六人?」

シェリー「白髪のガキ、風斬、ミーシャ=クロイツェフ、……えーと、ドラコだっけ。
     それにお前で……五人じゃねえか。 まさかあれから一人増えたのかしら?」

垣根「そうだな、じゃあその辺も含めて『第一九学区事件』後の事を話すと
   するか。 一応お前らも関与してるしな。 ただし、メシが出来てからだ」

シェリー「それと、『暴徒』の連中についてもだろ?」

垣根「話が早くて助かる。 それと、あとは俺からの個人的な相談だ」

心理定規「にしてもここ、シスターだらけね……。 量産でもしてるの?」
101 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:11:46.31 ID:71S8SZs9o

今回はここまでです。

垣根帝督、まさかの……というか必然ですが、さりげにハーレム状態です。
彼がこのSSでこうなるのも珍しいですが、たまにはいいんじゃないでしょうか。
ただ周りの女性陣がどいつもこいつも一癖ありそうな……いえ、何でもないです。

次回も台本形式で、垣根がまったり近況報告して、おにゃのこ達が色々アクションしてくれます。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
102 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/02(木) 11:12:22.75 ID:71S8SZs9o



                          【次回予告】



「し、シスター・アンジェレネとシスター・オルソラが学園都市に!!?」
元ローマ正教のシスター――――――ルチア




「まぁもしかしたら一端覧祭の騒ぎに乗じたバカが誘拐事件なんてもんを
 起こして、オルソラとアンジェレネが誘拐されるか、そうじゃなくても
 巻き込まれてる可能性はあるかもしれねえけどな。 もしもだけどよ」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督




「魔術サイド側が秘密裏に報道規制をかけてんのよ」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――シェリー=クロムウェル




「『禁書目録』を……使った? 能力者が……?」
元ローマ正教のシスター――――――アニェーゼ=サンクティス




「(ヤバいわね。 このテの話になると私は空気になる……)」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女



103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/02(木) 11:20:33.19 ID:iO1xiFID0
ていとくんしか来てないとわかった時のルチア以外の連中のがっかり感が…
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/02(木) 11:20:41.72 ID:D6EfAjlb0
うおおおおおおおお乙!!
垣根の扱いが相変わらずで面白かった!!
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 11:54:30.33 ID:tsdHbGBco

垣根学園都市の状況把握しすぎだろwwwwww
エスパーかよwwwwwwww

と思ったら超能力者って訳すとエスパーだったな
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 12:11:10.16 ID:n2Uau2pO0
ルチアと心理定規のキャットファイトは期待してていいのか?
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 13:09:00.25 ID:csX2ZT3IO
乙!

がっくりされるていとくんwww
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 14:35:14.75 ID:cnV76BQDO
予告の定規たんワロタwww
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/02(木) 15:00:28.21 ID:jtWRkYrg0
乙!
ふぃあんまの事は話して良いのか?
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/02(木) 18:29:31.75 ID:zmwv+1G3P

垣根がさりげなく学生生活の知識持っててワロス
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 18:51:22.56 ID:VPUfpGps0
おつ!
早く続きが読みたいぜぇ・・・

それにしてもていとくんのガッカリされ具合がハンパないwwwwww
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/02/02(木) 22:04:44.20 ID:huFVZ7EG0
乙〜
ついにていとくんにハーレムが・・・wwwwww
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/02(木) 22:08:25.14 ID:hZdx3XHAO
>>112
下げような
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/02(木) 22:32:36.02 ID:VPUfpGps0
>>112
やり方は名前欄の横のメール欄に「sage」でございます
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/02(木) 23:43:43.65 ID:NnhBEsc50
そんなことよりていとくんの話しようぜ!
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/02(木) 23:48:27.74 ID:oA7AHpIr0
メルヘン
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/03(金) 00:03:55.71 ID:Sh1vNb7V0
ていとくんマジイケメルヘン
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2012/02/03(金) 00:09:28.22 ID:pyULVg2so

           ミ\                      /彡
           ミ  \                   /  彡
            ミ  \               /  彡
             ミ   \            /   彡
              ミ   \         /   彡
               ミ    \      /   彡
                \    \   /   /
    ミ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\  |  |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄彡
     ミ____        \  |.  .| /        ____彡
           / ̄ ̄\|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i|/ ̄ ̄\
          /   / ̄|               || ̄\.   \
        /   /   |〕   帝凍庫クン   .||   ´\   \
       /    │   ..|              ||    |     \
     /    /│    |___________j|    |\.     \
     彡   /  │  ./..|   -―- 、__,        |ト、  | ´\    ミ
      彡/   │ ../ |   '叨¨ヽ   `ー-、  || \ |    \ ミ
            │ / ..|〕   ` ー    /叨¨)  ..||   \|     
    r、       |/   !         ヽ,     || \  \      ,、
     ) `ー''"´ ̄ ̄   / |    `ヽ.___´,      j.| ミ \   ̄` ー‐'´ (_
  とニ二ゝソ____/ 彡..|       `ニ´      i|  ミ |\____(、,二つ
             |  彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
             \彡 |               .|| ミ/
                       |〕 常識は通用しねぇ  ||
                  |             ..||
                  |___________j|
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 01:18:08.74 ID:BrozNglwo
>>118
不意打ちやめろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/03(金) 01:32:09.40 ID:6wFtsG6d0
乙です!

>>118
帝蔵庫wwwwwwww
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/03(金) 07:50:39.67 ID:tbm66vNAO
もう飽きた、帝凍庫
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/03(金) 08:50:39.59 ID:y0UNEgR0o
いちおつ

帝凍庫懐かしすぎて反応に困る
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/03(金) 11:16:58.95 ID:hNQ00KGso
ウケると思ってるんだろ。現に二人喜んでる。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/02/04(土) 00:39:59.23 ID:m1K1TW5l0
うん、このSSにおけるていとくんのキャラはやっぱりこうでないと
でも決める時は決めるから尚更かっこいい
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/02/04(土) 17:01:27.57 ID:84ZrO6qAO
次回予告、ていとくんの"もしも"ってセリフ"もしかしたら"の方が合う気がした。
126 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:24:17.78 ID:KWx8Iu9Co

>>62、と仰ってくれる方もいらっしゃったので、
お言葉に甘えて小ネタをsage進行で投下します。
前回の小ネタの続きみたいな感じになっております。
127 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:24:46.46 ID:KWx8Iu9Co

――【エイワス】


一方通行「……」

風斬「……」

垣根「……」

フィアンマ「……」

エイワス「新手のいじめ?」

ガブリエル「ckftu同類ajru素敵awt」
128 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:25:24.22 ID:KWx8Iu9Co

エイワス「どうだろう、ミーシャ=クロイツェフ。 私と式を挙げる気はないか?」

ガブリエル「……」

エイワス「いっそ清々しい」

一方通行「『天使同盟』はこいつが加盟してから確実におかしくなった」

風斬「申し訳ないですけど……その意見には賛同を禁じ得ません……」

垣根「俺にとっちゃ……いや、恩人でも何でもねえなこいつは」

フィアンマ「まあ、忌々しい存在ではあるな」

エイワス「君達、私相手なら何を言っても許されると思っていないか?」
129 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:26:05.65 ID:KWx8Iu9Co

一方通行「こいつが余計なヤツを勧誘するからこンな訳のわからねェ集団が生まれたンだよ」

風斬「で、でも……」

一方通行「ン?」

風斬「連れてくるのはエイワスさんですけど……その、最終的な判断は一方通行さんに
   委ねてますよね……? そ、そこで首を縦に振っちゃうから結局一方通行さんが……」

一方通行「………………」

エイワス「くくく、痛いところを突かれたのではないか?」

フィアンマ「エイワスが推薦→一方通行が承諾のプロセスが組み上がっているんだな」
130 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:26:51.63 ID:KWx8Iu9Co

垣根「うさぎってのは寂寥感に殺される生き物なんだろ? 群れてえんだよこいつは」

一方通行「うるせェな……そンなンじゃねェよ。 俺が断ったって、エイワスが無理にでもねじ込むだろ」

エイワス「そんな強行手段、私は取らんよ。 根も葉もない事を言う」

風斬「でも結局……私も含めて、皆さんエイワスさんを頼ってますよね……」

一方通行「……」

垣根「……」

フィアンマ「……」

ガブリエル「vcxb成程pxtbj」
131 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:27:35.27 ID:KWx8Iu9Co

エイワス「風斬氷華、君は私の事が好きなのか?」

風斬「いえ」

一方通行「頼るっつーか……、なァ?」

垣根「俺達の場合、もうこいつに任せるしかねえって場面に出くわし過ぎなんだよ」

フィアンマ「そりゃこれだけの勢力が集まればな。 当然その周りを取り囲む環境も厳しくなる」

風斬「頼りになるじゃないですか……実際。 そうですよね?」

垣根「そうかぁ? 思い返してみれば微妙な結果ばかりじゃねえ?」

エイワス「ふふ、何を言う。 私ほど頼れる存在もそうはいまい?」
132 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:29:11.74 ID:KWx8Iu9Co

フィアンマ「そういう事を自分で言う辺り、自信家ではあるかもな」

エイワス「遠慮無く私に頼って構わんのだよ?」

一方通行「じゃ、なンか『やっぱ頼りになるなこいつ』的なアピールしてみろ」

風斬「♪一難去ってまた一難、」

エイワス「ぶっちゃけ想定内」

垣根「かっけえ!」
133 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:29:52.20 ID:KWx8Iu9Co

風斬「♪だって、」

エイワス「やってられます」

風斬「♪ストレスより、」

エイワス「エイワスでしょ」

フィアンマ「頼もしいな」

一方通行「つか風斬、オマエ……」

風斬「すみません、つい……」
134 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:30:42.42 ID:KWx8Iu9Co

――【風斬氷華】


一方通行「正直なァ、『天使同盟』は初期の三人で充分だと思うンだがよ」

エイワス「酷い事を言う。 ではその三人から更に一人リストラするとしたら?」

一方通行「なンで更に一人抜かなきゃならねェンだよ……」

垣根「テメェがリーダーなんだから、テメェ以外のどっちかだぜ」

風斬「……」

ガブリエル「……」
135 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:31:36.04 ID:KWx8Iu9Co

フィアンマ「どちらで答えても殺されそうな気がせんでもないが」

一方通行「………………ガブリエル」

ガブリエル「!?」

エイワス「何故だ?」

一方通行「『天使同盟』最後の良心だろォが風斬は……」

風斬「い、いえそんな……///」

ガブリエル「cktr不愉快xosr」

フィアンマ「普通に機嫌悪くなったりするんだなお前でも」
136 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:32:26.23 ID:KWx8Iu9Co

エイワス「しかし、『天使同盟』の中なら彼女が一番良識を弁えているしな」

一方通行「一緒に行動しててもハラハラする必要がねェからな」

風斬「わ、私……そこまで人間出来てませんよ。 人間じゃないし……」

フィアンマ「今気付いたが、『天使同盟』の女性陣には人間が一人もおらんのだな……」

垣根「でも風斬はなんか……見逃されてる感あるよなぁ」

風斬「え?」

エイワス「なるほど。 私やミーシャ=クロイツェフの奇行ばかり目立つ
     この組織だが、その影で実は風斬氷華も割と無茶を犯していると」

一方通行「自覚あったのかオマエ……」
137 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:33:26.94 ID:KWx8Iu9Co

風斬「わ、私……そんな……」

垣根「おどおどした仕草の可愛さを武器にしてるって感じだよな」

風斬「そんなつもりは……私は」

一方通行「オマエら謂れのねェ事ほざいてンじゃねェよ」

垣根「こんな風にな。 一方通行が庇ってくれるが、よくよく思い返してみると
   風斬も割とメチャクチャやってる感あるよなぁ? 裏番長みたいな感じか」

フィアンマ「まぁ……甘やかされてる感は否めんかもな」
138 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:34:02.40 ID:KWx8Iu9Co

風斬「……………………新参者のクセに」ボソッ

フィアンマ「ん?」

風斬「い、いえ……」

垣根「ま、常に風斬の味方でいてくれる白馬の王子様ならぬ白髪の王子様がいるからなぁ」

風斬「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか…………垣根さん、死ねばいいのに」

垣根「え?」

一方通行(……たまに黒い部分出るよな、風斬……)
139 : ◆3dKAx7itpI [sage saga]:2012/02/04(土) 17:35:03.55 ID:KWx8Iu9Co

おしまい。こんなん投下するならさっさと本編進めろと言われそうですが、
その本編は明日投下します。しばしお待ちください!

それでは、大変失礼しました。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/04(土) 17:37:53.50 ID:NkrCJWeY0
もう>>1なしじゃ生きられない。

明日の投下まで全裸ネクタイに靴下で正座して待ってます。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/04(土) 18:11:48.99 ID:ec1kAp3b0
これはひどい
乙です
こんな感じのネタならたくさん見たいですね
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/02/04(土) 18:22:08.87 ID:FHB2+Qub0
黒風斬様に言葉責めされたい
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/04(土) 18:33:21.99 ID:I2BdogpU0
乙!

明日も期待して待ってる
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/04(土) 18:53:39.39 ID:TShBdiU70
残りは一方通行とミーシャだな
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/04(土) 22:44:55.17 ID:8w/qfEGIO
風斬がひどいな、まるで女みたいだ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2012/02/04(土) 23:06:06.41 ID:jfj7O/Wv0
乙です!
エイワス結婚してくれ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/04(土) 23:18:12.45 ID:UBrZQ1Ko0
>>145
ふむ、男の娘である方が好みか
あるあ……いや、うーむ…
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/02/05(日) 03:08:04.40 ID:OyYLSANC0
全部読んできた
SSは面白いんだけどスレにいる一方厨の気持ち悪さにドン引きした
149 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:24:45.84 ID:I0jgkS5Oo
>>125
確かに、同意見です。ご指摘ありがとうございます。
でも投下時に修正するのはアレなのでまんま投下します。

皆様おはようございます。更新を開始します。
ニチアサキッズタイムの前にパパっと読んでいただけたらなと思います。
今日から新しいプ○キュアが始まるようですね。

さて、今回はイギリスの女子寮で垣根帝督がおにゃのこ達に囲まれながら
『天使同盟』の近況を報告したりします。

それでは、よろしくお願いします!
150 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:25:16.41 ID:I0jgkS5Oo


――――――――――――――――――――――



ルチア「し、シスター・アンジェレネとシスター・オルソラが学園都市に!!?」ガターン



心理定規「あ、このスープすっごく美味しい」

垣根「ああ、来てたぞ」

アニェーゼ「あ、あの二人……なるほど、そういう魂胆だったんですか」

シェリー「たった二人でなぁ、よくやるよ本当」
151 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:25:50.73 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「貴女はたった一人で学園都市に襲撃をかけたんじゃ?」

シェリー「…………それもそうだ」

垣根「あ? お前学園都市に来た事あんのか?」

シェリー「まぁね」

ルチア「ちょ、そんな事より垣根帝督!! その話は本当なのですか!?」

垣根「ウソついてどうすんだ。 つか大体考えてみりゃすぐに辿り着く答え
   じゃねえか? あの二人がこっそりとここを抜け出して向かう場所なんて」

アニェーゼ「言われてみりゃそうですよね。 "あの二人"なんですから」

垣根「"あの二人"だからなぁ」

心理定規「?」
152 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:26:31.32 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「た、確かに……。 クソッ、今すぐ学園都市へ連絡を―――」

シェリー「少なくともここに学園都市直通の電話回線はないっつーの」

ルチア「では垣根帝督、あなたの電話を貸してください!」

垣根「やなこった。 いや別に良くね? 好きにさせてやれよ」

ルチア「しかし……」

垣根「あっちにゃ一方通行やミーシャがいるんだぞ? 万が一が起きるとでも思ってんのか?」

アニェーゼ「一方通行さんはともかく、大天使様がついてくれりゃ文句はねえですよね」

ルチア「む、むぅ……」
153 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:27:32.74 ID:I0jgkS5Oo

シェリー「過保護過ぎるのよお前は。 そりゃ鬼姑だの何だのと言われるわ」

ルチア「ぐぬぬ……」

垣根「まぁもしかしたら一端覧祭の騒ぎに乗じたバカが誘拐事件なんてもんを
   起こして、オルソラとアンジェレネが誘拐されるか、そうじゃなくても
   巻き込まれてる可能性はあるかもしれねえけどな。 もしもだけどよ」ニヤニヤ

ルチア「そ、そんな事になったら私は一体どうすれば……」

アニェーゼ「どうもしなくていいんじゃねえですか? それこそ大天使様とかいますし」

ルチア「し、シスター・アニェーゼやシェリーさんは不安じゃないのですか!?」

シェリー「別に」

アニェーゼ「同じく。 ただそれは冷酷っつー訳じゃなくて、それだけあの二人を信頼
      してるって事ですよ。 そういう意味じゃシスター・ルチアもそうでしょう?」
154 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:28:10.50 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「……」

垣根「何かあったら誰かが連絡寄越すだろ、気にすんな」

ルチア「……そう、ですね」

アニェーゼ「ま、それはさておき……あの事件の後の学園都市はどんな感じなんです?」

垣根「普通に文化祭やってる辺り、まぁ平和なんじゃねえの? 何かもう世間や
   マスコミもあんまり『第一九学区事件』や『天使同盟』について報道しねえしよ」

シェリー「魔術サイド側が秘密裏に報道規制をかけてんのよ」

垣根「そうなのか?」
155 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:29:09.35 ID:I0jgkS5Oo

シェリー「例の『暴徒』の件を表沙汰にしたくないんだろうな」

アニェーゼ「大天使様は無事なんですか?」

垣根「無事も何も、あの破天荒な性格に拍車がかかってるくらいだ」

シェリー「ハッ。 よく学園都市が無事でいられるな」

心理定規「ちょっと」クイックイッ

垣根「あん?」

ルチア(そ、袖を……)

心理定規「さっきから話題に出てる大天使様って何よ?」

垣根「そこからかよ……」
156 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:30:05.70 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「貴女は『天使同盟』について何も知らねえんですか?」

心理定規「あなた達にとっては『天使同盟』は割と身近な存在なんでしょうけど、
     学園都市の人間にとっては未知でしかないのよ。 暗部に属する私でさえ
     入手出来た情報はその存在の真偽と構成員くらいだった、詳細情報無しでね」

垣根「じゃあお前、風斬の事とかも知らねえのか」

心理定規「構成員の詳しい素性はあなたと第一位くらいしか知らないわ」

シェリー「ミーシャ=クロイツェフっていう大天使がいるのよ、こいつらのとこには」

心理定規「ミーシャ=クロイツェフ? サーシャ=クロイツェフじゃなくて?」

ルチア「サーシャ=クロイツェフの事はご存知なんですね」
157 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:32:08.37 ID:I0jgkS5Oo

垣根「あ、そう言えば結構前に誰かから聞いたんだけどよ、サーシャとミーシャって
   肉体がどうのこうのであーだこーだだから名前が似てるのか? そもそもミーシャ
   の本来の呼び名って『神の力(ガブリエル)』なんだろ? 何でミーシャなんだ?」

心理定規「???」

ルチア「ええっと、ミーシャという名は本来『神の如き者』が名乗るべき名でして」

垣根「ミカエルだからミーシャなのか? じゃあサーシャは元々の名前か?」

シェリー「ああもう面倒くせえな……端折ってもいいんじゃない?
     その辺についてはいずれ分かる事でしょうし」

垣根「いや端折るなよ……」

心理定規「つまりどういう事だってばよ」
158 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:33:02.86 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「個人的には事件の詳細について詳しく聞きてえんですがね。
      黒い霧とか空から降る羽根とか、あの時何があったんです?」

垣根「俺は詳しく知らねえんだよなぁ、その辺の事は」

シェリー「当事者だろうがお前は」

垣根「俺、あの戦いの時に『禁書目録』を使っちまってな。 頭ん中ボロボロに
   なって、記憶が曖昧なんだよ。 曖昧っつか、ほとんど覚えてねえかも」

シェリー「は、はぁ……!?」

アニェーゼ「『禁書目録』を……使った? 能力者が……?」

ルチア「…………!!」
159 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:33:44.39 ID:I0jgkS5Oo

心理定規「"きんしょもくろく"って何?」

アニェーゼ「呆れて物が言えねえですね……貴方、バカでしょ?」

シェリー「よく生きてられたな」

垣根「まぁ、おかげ様で―――」

ルチア「………………それで、あの時」

垣根「?」

ルチア「それであの時、……あんな消え入るような声で私に……!!」
160 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:34:30.44 ID:I0jgkS5Oo

垣根「な、何だよ」

アニェーゼ「……あぁ、そういえば私達、ミサカさんの協力を経て貴方達に連絡を取ったんですよ」

シェリー「あの辺は私もよく覚えてないんだけどな(寝起きだったから)」

垣根「…………? あ、そういえば俺が"死にかけてた"時、確かルチアの声が―――」


ルチア「どうしてそんな無茶をしたんですか、あなたは!!!」ガタッ


垣根「…………、」

心理定規(ヤバいわね。 このテの話になると私は空気になる……)
161 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:35:26.40 ID:I0jgkS5Oo

垣根「待てよ、何でお前がそんなにキレるんだ」

ルチア「あの日、私がミサカさんを通してあなたに声をかけた事は……」

垣根「覚えてるっつーか、何かお前の声が聞こえたような記憶はあるな」

ルチア「あの時のあなたは……声色だけでも窺えるくらい衰弱していて……」

垣根「まぁ……『原典』の毒ってのは洒落にならねえもんだったからな」

ルチア「何が図書館で調べ物ですか……、あんな皮肉めいた冗談をよくも……」

垣根「そんな事言ってたか?」
162 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:36:18.92 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「無茶はしないでと言ったのに……」

垣根「あー、まぁそんな怒るなよ。 現にこうして俺は生きてるんだから」

ルチア「結果論に過ぎません、よりにもよって『原典』など……生きてる方が不思議なくらいです」

垣根「何でそこまで俺の心配するんだよ?」

ルチア「えっ」

垣根「俺なんかより、それこそミーシャに気を配った方が修道女"らしい"んじゃねえの?」

ルチア「え、っと……」

アニェーゼ「そりゃあだって、ねえ?」ニヤニヤ
163 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:37:15.92 ID:I0jgkS5Oo

垣根「あん?」

シェリー「まぁ、アレだ。 白髪のガキと同じく、お前も鈍感って事なんじゃない?」

垣根「え、何。 やっぱ俺に惚れてたりすんのお前?」

ルチア「惚れてません!」

垣根「そりゃ残念」

心理定規「……………………………………」

ルチア「だ、大体……能力者が魔術を使うとどうなるかについては
    以前にここで散々説いたはずですよね?」

垣根「神裂と一緒に話したアレだろ、耳が痛くなるほどになぁ」
164 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:38:14.86 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「にも関わらず、その危険性を無視して魔術を使うとはどういう了見ですか?」

垣根「いや、それは色々と事情があったっつーか手段を選んでる場合じゃなかったし」

ルチア「単に魔術に対する知的好奇心が勝っていただけなのでは?」

垣根「……、」

ルチア「人の心配を度外視して自らを死の危険に晒すあなたの考えが理解できません」

垣根「いやでも、」

ルチア「でもも何もありません。 超能力という通常の人間がどれだけ努力を
    積み重ねても得られない力を有しておきながら魔術にまで手をだすとは、」

垣根「る、ルチアさん?」
165 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:39:30.75 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「それは強欲でしかありません。 強欲が七つの罪源の一つとして
    挙げられているのは関連知識を持たぬ人間でも知っている事です」

垣根「強欲?」

ルチア「そうでしょう? 超能力では飽き足らず、魔術まで欲している時点で」

垣根「強欲……テオドシアと同じような事言いやがって」

ルチア「いいですか? 我々のような修道女は当然として、普段この世で
    生きている一般人もそのような罪に繋がる欲望を自制するべきなのです」

垣根「それが出来れば苦労はしねえよ」
166 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:40:37.69 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「確かに欲望や邪な感情を完全に自制する事は簡単ではありません。
    言うは易し行うは難しと言いますが、それでもある程度は抑えて
    人は生を謳歌しているのです。 今回のあなたの件は、明らかに
    セーブ出来る欲望を好奇心で解放している。 これは愚かしき行為です」クドクド

垣根「やべえ……始まった」

シェリー「アンジェレネが居ない分、お前に対してありがたいご説法(笑)が向かってるな」

ルチア「知識を得る程度なら問題はないでしょう。 むしろある程度知って
    おいた方がためになる。 しかし、それを実行するという危険性を
    あなたは充分に理解しているはず。 それをあろう事か『原典』に
    手を出してしまうとは……。 一方通行は構成員の管理がまるで
    なってない。 これは非情に由々しき事態です。 いえ、手遅れでしたか」
167 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:41:24.45 ID:I0jgkS5Oo

垣根「一方通行は別に関係ねえんじゃ……」

ルチア「何か?」ギロリ

垣根「いや……何でもねえ、です」

心理定規「……ねえ、ちょっと。 アニェーゼ……だっけ?」ヒソヒソ

アニェーゼ「ん? 何ですか?」

心理定規「このルチアって口うるさい女は……、つまり"そういう事"なの?」

アニェーゼ「と言いますと?」

心理定規「だからその、垣根帝督をさ……」
168 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:42:31.56 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「ああー、やはり貴女もそう思っちまいますよね?」ニヤニヤ

心理定規「実際の所、どうなのよ」

アニェーゼ「個人的見解を述べさせてもらいますと、うーん……恐らくはそうなんじゃねえかと」

心理定規「…………」

アニェーゼ「ただ例えそうだとしても、ここから発展するにはいかんせん
      段階が踏み足りねえような気がすんですよね、私としては」

心理定規「段階?」

アニェーゼ「有り体に言っちまえば『親密度』的なものがあの二人の間には
      まだ不足してるんじゃねえかと私は考えてるんですよ」
169 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:43:22.00 ID:I0jgkS5Oo

心理定規「……フラグ的なイベントとか?」

アニェーゼ「そんな感じですね。 今はまだ時速三キロくらいの一方通行なんですよ。
      あ、走ってんのはシスター・ルチアだと仮定しての話になっちまいますけど」

心理定規「少しわかりにくい例えね……」

アニェーゼ「垣根さん次第ですけど、このまま進展していけば二人はいずれ
      正面衝突しちまって、そのままめでたく結ばれんじゃねえかと」

心理定規「…………あの二人が?」

アニェーゼ「ま、フラグがまだ弱すぎますんで、断言は出来ませんけど」

心理定規「…………」
170 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:43:58.66 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「どうかしました?」

心理定規「そういう心情、私は私が弄った能力の結果としてでしか抱いた事がないのよね」

アニェーゼ「は?」

心理定規「偽物の愛情。 こんな能力を持った私に、本物は手に出来ないのかな」

アニェーゼ「?」

心理定規「なーんてね、冗談よ冗談。 馬鹿馬鹿しい」

アニェーゼ「独り言でしょうか?」

心理定規「そうね。 ちょっと羨ましいなと思っただけ」
171 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:45:26.14 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「いいですか? そもそも七つの大罪とはとある著作に現れた八つの枢要罪が……」

垣根「ああもう、うるせえうるせえ!! いいかルチア!?」

ルチア「ひゃっ、な、何ですか急に……」

垣根「とりあえずお前が俺を心配してくれた事はわかった、ありがとう。 以上、この話終わり!」

ルチア「だ、誰があなたのような野蛮な異教徒を心配しますか!///」

シェリー「今更そこを否定してもねえ……」

垣根「おいそこのメガネのガキ!! スープおかわり!」

アガター「は、はい」
172 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:47:04.10 ID:I0jgkS5Oo


――――――――――――――――――――――


垣根「―――つー訳で、俺以外の『天使同盟』は学園都市の一端覧祭を満喫中、以上」

ルチア「なぜあなたが『天使同盟』から一時離脱した経緯の説明を省くのですか?」

垣根「んなもんどうだっていいだろ。 ほらアレだよ、暴徒の調査」

ルチア「暴徒は『天使同盟』そのものに関わる問題です。 その案件をなぜあなたが一人で――」

垣根「ごちゃごちゃうるせえんだよテメェ! 色々事情があんの!」

ルチア「な、なんて乱暴な話のまとめ方……これだから垣根帝督は」
173 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:47:56.97 ID:I0jgkS5Oo

シェリー「その前に、まだ一つ聞いてない事があるだろ」

垣根「?」

シェリー「六人目の『天使同盟』。 ま、私らが聞いても面白くない話かもしれないけどさ」

垣根「あー、何、聞きてえの?」

アニェーゼ「個性豊かな集まりですからね貴方達は。 六人目ってのも気になっちまいますよそりゃ」

垣根「あー……、でもなぁ、言ってもいいもんなのかこれ」

シェリー「問題児?」

垣根「お前らにとってはな」
174 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:49:54.39 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「??? 誰です?」

垣根「…………言ってもいいけど、騒ぐなよ?」

シェリー「オルソラ=アクィナスに一票」

ルチア「!」

アニェーゼ「シスター・アンジェレネに一票。 あり得ねえ話じゃないでしょ?」

ルチア「!?」

垣根「あー……」

ルチア「も、勿体ぶらないで早く教えてください」
175 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:50:45.33 ID:I0jgkS5Oo

垣根「……………………フィアンマ、っていう……。 知ってるか?」

アニェーゼ「」

シェリー「…………こりゃまた、とんでもない名前が出てきたわね」

ルチア「ま、さか……そんな……じょ、冗談にしてもひどすぎます!!!」

心理定規「何? 誰?」ヒソヒソ

垣根「お前も見たんじゃねえの? あの赤い髪した男」

心理定規「…………あぁ。 あの明らかにヤバい雰囲気醸してた男か。 へえ、問題児なの」

垣根「あの第三次世界大戦、発端者がそいつなんだよ」

心理定規「うわ、それマジなの? あはは、そりゃ問題児よね」ケラケラ
176 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:52:29.16 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「笑い事ではありません!!」

心理定規「きゃっ! 帝督、この女の人怖い〜」ギュッ

ルチア「ちょ……」

垣根「騒ぐなって言っただろ?」

ルチア「こ、ここで騒がずどこで騒げと言うのですか!」

垣根「テメェも離れろ、何ださっきのキモい演技」

心理定規「ふん」

アニェーゼ「い、イギリス清教が急に右方のフィアンマの捜索を打ち切ったのって……」

シェリー「お前らが一枚噛んでたって事かよ、信じらんないわね」
177 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:53:47.65 ID:I0jgkS5Oo

垣根「ん? フィアンマのヤツ、魔術サイドから追われる身じゃなくなったのか?」

アニェーゼ「少なくともイギリス清教は最大主教の命によって捜索打ち切りが宣言されちまってます」

垣根「マジかよ? へえ、そりゃあいつにとっては朗報じゃねえか」

ルチア「何が朗報ですか、こんな……!!」

アニェーゼ「まぁまぁシスター・ルチア、落ち着いてくださいよ」

シェリー「イギリス清教と『天使同盟』は非公式に協定を結んでるんだろ?
     最大主教がフィアンマの加盟の事実を何らかの手段で傍受したんでしょう」

垣根(…………何らかの手段だぁ? 最大主教、何か引っかかるな)
178 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:54:50.17 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「しかしあの男は世界中を混乱の渦に……」

垣根「オルソラとかアンジェレネも受け入れてるんじゃねえ? もう顔合わせてるだろうし」

ルチア「おお……なんという事でしょう……。 我らを救済せし大天使様……どうか……」オヨヨ

垣根「その大天使様が一番歓迎してると思うけどな」

シェリー「世も末ね」

アニェーゼ「……一応聞きますけど、どうすんです?」

シェリー「ローマ正教やロシア成教にこれを伝えたところで私らが得られる
     メリットが無いからねえ。 害が無いなら放置でいいんじゃない?」

アニェーゼ「まぁ、そうするしかないですよね。 私達がどうこう出来る相手じゃないですし」
179 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:55:53.15 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「そんな短絡的な……」

垣根「そりゃねえだろ。 こいつらだって適当にこんな事言ってる訳じゃねえ」

ルチア「……」

垣根「お前だってそれはわかってんだろ? 言いたい事は山ほどあるだろうが、
   ここは一つ折れてくれねえか。 大罪人なのはフィアンマだけじゃなく、
   一方通行や俺や、この女だってそうなんだ。 …………頼むよ、ルチア」キリッ

心理定規「私が大罪人? …………否定出来ないわね」

ルチア「…………。 し、仕方がありませんね。 あなたがそう仰るのなら、
    私は渋々納得する次第です。 ここで口論しても無駄ですし……」

垣根「すまねえな」
180 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:56:47.45 ID:I0jgkS5Oo

ルチア「…………。 し、仕方がありませんね。 あなたがそう仰るのなら、
    私は渋々納得する次第です。 ここで口論しても無駄ですし……」

垣根「すまねえな」

ルチア「ゆ、許したわけではないですからね」

垣根(案外ちょろい一面もあるなこいつ)

アニェーゼ「はいはいそれじゃ一件落着って事で。 垣根さんのお話は終わりですね?」

垣根「こんなもんだろ。 ここから先は『これから』の話になるしな」

シェリー「暴徒の件だろ? 私も『必要悪の教会』の魔術師として情報を集めてる」

垣根「そりゃ助かる。 が、まだ個人的に抱えてる案件があってな」
181 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 06:57:22.63 ID:I0jgkS5Oo

アニェーゼ「?」

心理定規「『黄金』系がどうとかいう連中の事だっけ?」

ルチア「……『宵闇の出口』、ですか?」

垣根「それは暴徒の方だろ? 俺が知りたいのは――――『明け色の陽射し』」

アニェーゼ「おおっと、」

シェリー「またずいぶん面倒な魔術結社の名が出てきたわね」

垣根「そいつらと合流して暴徒を叩く手筈になってる。 ステイル達から
   連絡があるまで、お前らが知ってる限りの情報を提供してくれ」
182 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 07:01:57.23 ID:I0jgkS5Oo

今日はここまでです。

これで近況報告は大体終わりましたかね。
フィアンマがどうのこうのは正直口論させてもめんど……もとい、
埒があかないのでこんな感じで落ち着けました。

そして次の話題はいよいよ本命、『明け色の陽射し』と『暴徒』についてです。

……が、垣根パートはここでほんの少しだけ休憩して、
次はその問題児パートを少しお届けしようと思います。
で、また垣根パートといった感じで。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
183 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/05(日) 07:02:30.84 ID:I0jgkS5Oo



                          【次回予告】



「(……こんなアパートで一体何が起きた? 魔力の濃度からして事態が起きたのは約五ヶ月程前……か?)」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・元『神の右席』の魔術師――――――フィアンマ




「ど、泥棒ー!!!」
上条当麻の担任――――――月詠小萌



184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/05(日) 07:07:18.00 ID:G8S401tyo
おつおつ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/05(日) 07:09:57.18 ID:y1rYrYgO0
>>1

>>180ていと君、自分から○○フラグwwwwww
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/02/05(日) 07:12:25.99 ID:lPBl5LvAo
垣根爆発しろ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/05(日) 08:32:00.13 ID:Qk4X8GjAO
垣根…バーバヤーガというものがありながらフラグだとぉ!
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 09:31:03.38 ID:FVV0QaME0
>>1乙!!
はいはいツンデレツンデレ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 10:25:16.55 ID:BaTGeq/4o
おつ
また小萌家の天井が吹き飛ぶのだろうか
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 10:59:41.95 ID:izOEnc5eo
小萌先生不憫な子だな
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/05(日) 13:43:06.74 ID:6JaCiE+50
フィアンマが言ってるのはインデックスが竜王の息吹をぶっぱなしたところかな?
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/05(日) 17:14:04.82 ID:UfKm+nnE0
>>1おつです!!!!

満遍なくいろんなキャラ使ってくれるから読んでて楽しい

この3日以内ってのがもどかしい・・・
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/05(日) 23:22:55.36 ID:nlynDgKr0
乙。
ルチア可愛い。
ていとくんもげろ。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/02/06(月) 00:08:30.19 ID:mm06Hykc0
乙です
相変わらず最高のクオリティです
子萌先生は赤い魔術師とご縁があるようですね
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/06(月) 09:58:34.78 ID:8o1+HZFK0
乙!

フィアンマは小萌てんてーのナニを盗んで行くんだ!?
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/06(月) 15:22:07.98 ID:sdzBgifi0
心だろJK
197 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:33:17.27 ID:cbrju3gno
>>192
もっと更新頻度増やした方がいいですかね?
しかし多忙故、時間を見つけてちょこちょこ投下しているので
三日以内が今のところ限界なのです。申し訳ありません。

こんにちわ、今日の更新を開始します。

垣根帝督パートは今回お休みで、フィアンマパートをお送りします。
フィアンマもずいぶん出番なかったですが、最後に出たのはいつだったかな……。

それでは、よろしくお願いします!
198 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:33:53.33 ID:cbrju3gno


――――――――――――――――――――――


一方通行がオルソラ=アクィナス、アンジェレネと共に風紀委員第一七七支部へ赴いている頃、


「さて、どうせ外出禁止令など一切守らんミーシャが何かをやらかす前に
 さっさと『星の欠片』を調整せんとな。 まずは『御使堕し』だが……」


魔術サイドの問題児、右方のフィアンマは第七学区を歩いていた。
学園都市最大の文化祭、一端覧祭も今日で四日目。相変わらず科学の総本山は
たくさんの学生と『外』からの来客で賑わいを見せている。

その多くが友人同士であったりカップルであったり家族であったりしたが、
当のフィアンマに連れはおらず、彼は一人で街を散策していた。
もちろん、フィアンマの目的は学園都市観光ツアーでもなければ志望校の取捨選択でもない。
199 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:34:40.54 ID:cbrju3gno

「儀式場を用意しなければならん」


『御使堕し(エンゼルフォール)』。フィアンマはそう呼ばれる大魔術を発動に必要な
儀式場にお誂え向きの場所を捜していた。


この大魔術は過去に一度発生している。その際には四界に多大な影響が及び、
現世ではそれを上回るとんでもない現象が発生した。
原因は天文学的数値の偶然から起こり得たもので、とある中年男性が意図せず
大魔術発動の条件である魔方陣の作成を成してしまい事件は起こった。

それによって現世に大天使ミーシャ=クロイツェフが召喚される事となったのだが、


(……あの日に起きた『御使堕し』も正当な手順を踏まえて発動されたものでは
 ないが、今回のケースではさらに法則を無視した発動条件を満たさねばならんな)
200 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:35:24.69 ID:cbrju3gno

『御使堕し』の副作用。世界中の人間の魂がイス取りゲームの要領で入れ替わってしまう
現象を未然に防ぐ事が第一であるとフィアンマは考えていた。
その現象も含めて『御使堕し』であるため、魂の入れ替わりを防ぐのは魔術的理論上不可能なのだが、


(不可能を可能にするためには『奇跡』という材料が必要になってくる)


奇跡を起こす。口にすれば実に簡単だが、実際に起こすとなるとそれこそ奇跡が
起きなければ不可能だ。しかしフィアンマは不本意ながらも取り戻す事に成功した
『右腕』を見つめ、薄く笑みを浮かべた。

彼を象徴する最強の魔術、『聖なる右』。フィアンマの肩口から生えるその第三の腕は
あらゆる奇跡を起こす事が出来る。フィアンマは『御使堕し』という大魔術に己の右腕という
要素を組み込む事で副作用の無効化という都合の良い奇跡を実現しようと考えていた。
201 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:36:18.95 ID:cbrju3gno

(だが不安要素が多すぎる……。 まず『神の右席』の魔術師として肉体を調節された
 この俺様に大魔術など発動出来るのかという懸念事項。 『神の力』召喚術式が実行
 出来た以上、大魔術"程度"ならどうにかならん事もないだろうが……。 そこにこの
 『神の如き者(ミカエル)』の力を加えるとなると、『御使堕し』ではない別の魔術が
 発動する危険がある。 俺様にも予想がつけられん未知の大魔術…………)


少し考えただけでフィアンマの計画(正確にはフィアンマとミーシャ、そして打ち止めの計画)には
不安要素が多すぎる事が判明する。計画の話をミーシャから持ちかけられた時点で簡単に内容を
まとめていたフィアンマだったが、こうして改めて考えると天地がひっくり返っても実行は不可能だ。

大魔術の効能を自分の都合の良い形で書き換えるなど、魔術サイドの歴史上を踏まえても前代未聞である。


(面白い)
202 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:37:39.87 ID:cbrju3gno

それでも、フィアンマは臆しなかった。『神の右席』のリーダーですら頭を抱える難問が
立ちはだかり、しかし彼はそれを楽しむかのように笑ってみせた。


(奇跡は俺様の専売特許だ。 出来る出来ないの問題じゃない、やってやる)


となると、まずは大魔術発動のための儀式場の確保なのだが。
フィアンマは最初、学園都市の『外』で儀式場の作成に取り掛かろうと考えていた。

だが今日になってフィアンマは、やはり学園都市内で『御使堕し』を発動させる決断をする。

『外』で行う場合、まず誰の目も届かぬような広い平原、荒野で行うのが望ましいが、
そんな場所を捜している時間が彼には惜しいと感じられた。
更に、奇跡的にフィアンマ特製『御使堕し』が発動した場合、恐らくこれから先も
しばらく学園都市に留まるであろうミーシャの肉体に明確な変化が発生する。
203 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:38:50.26 ID:cbrju3gno

その際のフォローに回る時、『外』にいては手遅れになる可能性があるのだ。
通常の手順を踏んでいない『御使堕し』でミーシャの身に何が起きるか、
それは術者であるフィアンマにも未知数なのだ。

学園都市内で大魔術を発動させる決断に至った理由はまだある。
それは副作用だ。『御使堕し』が発動した際に起きる魂の入れ替わり。
これはフィアンマが何としてでも未然に防ぐ。

だが、フィアンマ特製の『御使堕し』にも何らかの副作用があった場合は?
その副作用が魂の入れ替わりとは比べ物にならぬ恐ろしい現象だとしたら?

フィアンマがこれから行おうとしているのは、もはや新たな魔術の開発と言って過言ではない。
その未知なる副作用が発生するなら、まず変化が起きるのはミーシャが存在する学園都市内。
ならばフィアンマも学園都市に居た方が素早くフォローに回れる。
ミーシャ自身を『外』へ連れ出すケースも考慮したが、あのバカは多分このお祭り会場から
梃子でも動かないだろうとフィアンマは判断した。
204 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:39:26.19 ID:cbrju3gno

(問題は『御使堕し』をどこで発動するかだが……)


学園都市は関東地方を大幅に開拓して発展した巨大都市ではあるが、
今回の場合に限ってはそれでも足りないほど狭いのだ。
大魔術発動の瞬間はどうしようもないが、せめて準備だけは静かに整えたい。

そう考えていたフィアンマは、


「ん?」


ある『違和感』を覚えた。場所は依然として第七学区。
違和感。しかも、"魔術的な残り香"を辛うじて嗅いでいるような、そんな違和感。
恐らくフィアンマレベルの魔術師でないとまず見逃すであろう、そんな儚い違和感。

フィアンマはその違和感が漂う方向へ視線を投げてみる。
205 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:39:55.71 ID:cbrju3gno

「……」




フィアンマの視界に、くしゃみをしたら吹っ飛びそうなボロッボロの木造二階建てアパートが映った。




なぜここから魔術的要素満載の『残り香』が? 疑問に思いながらもフィアンマは
暗闇の部屋で壁を探す時の仕草のように右手を少しだけ前に向けながらアパートを
品定めするようにゆっくりと調べる。

彼の頭に想起されたのは、『かつてここで聖戦級の戦闘が勃発した』という"イメージ"。
このアパートに残されたあまりにも僅か過ぎる魔力の残滓から、フィアンマはそこまで
イメージする事が出来た。
206 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:40:37.03 ID:cbrju3gno

(……こんなアパートで一体何が起きた? 魔力の濃度からして事態が起きたのは約五ヶ月程前……か?)


フィアンマはここでかつて何が起きたのかを調べるつもりはなかった。
しかしここで聖戦級の戦闘が勃発し、にも関わらず未だ健在しているという
事実だけが、彼が抱えていた案件の一つを解決するに至った。


「ここでいいか」


まるで一人暮らしを決めた青年が不動産屋でよくわからんカタログを見せられ、
品定めが面倒になりよく調べもせずに適当に物件を決めた時のようなセリフだった。

『御使堕し(改)』の儀式場にこのアパートを選んだ理由。
それはどうせ学園都市内で行うのだから場所の選り好みをしたって仕方がない、
というあまりにも適当過ぎるものだった。
207 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:41:24.12 ID:cbrju3gno

強いて言えば聖戦級の戦闘に耐えうる何かがこのアパートにはあるんじゃないか、
というフィアンマの願望も含まれた推測も理由の一つになるだろうか。


(……二階の一番奥、だな。 ここで何かがあったとすれば、その部屋だ)


という訳でフィアンマはアパート二階、一番奥の部屋に辿り着く。
全体的にボロっちいアパートだが、その部屋は更に上をいっていた。
吹っ飛んだ屋根を覆い隠すようにビニールシートが敷かれ、フィアンマの位置からは
窺えないが壊れた壁の応急処置としてベニヤ板も施されている。

少し躊躇したが、フィアンマは無断で室内に侵入した。どうやら彼はこの部屋を儀式場として
利用する事にしたらしい。鍵がかかっていたが、フィアンマは魔術の風を使って鍵を壊してしまう。
どうせこんなボロ部屋に人など住んでいないと判断した故の不法侵入だった。


フィアンマは部屋主の名前が書かれたドアプレートを見逃していた。
208 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:42:09.54 ID:cbrju3gno


――――――――――――――――――――――


で、夜。


フィアンマは無許可でお邪魔した第七学区のオンボロアパート、二階の一室に
とりあえずさっと呪文と魔方陣を書き終え、さてここからどうしようかと考えていると
空はすっかり闇に包まれていた。

彼がいる部屋には時計という物が一切存在しなかった。だがフィアンマはここに
人など住んでいないと思い込んでいるため、疑問を感じる事はなかった。


「……、」
209 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:43:45.09 ID:cbrju3gno

ただ、フィアンマはまずこの部屋に入って"察した"。掃除の行き届いていない部屋の
壁に、既に書かれていた魔方陣(煤やヤニで塗り潰されかけていた)を見て、かつてこの部屋で
どのような戦いが繰り広げられたのかを。


(なるほど、『聖なる右』を介していたとはいえ『禁書目録』に触れた俺様が
 違和感を覚えたのはそれが原因か。 あの男の記憶喪失も、ここで…………)


それと、もう一つ。


(……学園都市で何らかの大きな動きがあったようだが、それも済んだようだな)


学園都市を流れる目に見えない『人間の気の流れ』が意図的に操作されている感覚に
フィアンマは気付いた。今日、この街で何者かが『人払い』の術式を使った。
彼は気付いたが、しかし関わらなかった。それどころではないし、学園都市で起きた問題は
学園都市の人間が片付けるだろう、と首を突っ込む事はしなかった。
210 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:44:42.40 ID:cbrju3gno

「さて、」


瑣末な疑問も片付いた所で、フィアンマは一息つく。

改めて部屋を見回してみると、部屋の角にはビールの空き缶が何本か転がっており、
無造作に置かれた灰皿には大量の煙草の吸殻がオブジェのように積み重なっている。
ベッドはつい最近まで使用されていた痕跡があり、ベッドの上に投げられたパジャマは
見たところ子供用のようだった。

そこまで認識して、フィアンマはこの部屋に生活感がある事を察知する。


(しかしまさか、いくら何でも魔術サイドによる戦闘が行われたであろう部屋に
 人間が住み着くはずが……。 ……学園都市の破落戸が根城にしているのか?)
211 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:45:31.58 ID:cbrju3gno

彼が言う破落戸とはスキルアウトの事である。スキルアウトが誰も手をつけない
この部屋を勝手にアジトとして利用している可能性は充分に考えられた。
だとしたら、部屋の空き缶や煙草の吸殻も説明がつく。

仮に今ここを根城にしているスキルアウトが帰ってきたら、そいつはフィアンマに
牙を剥くだろう。当然だ、人様の領域に勝手に踏み込んだバカ野郎が何か訳のわからん
魔方陣や呪文を壁に、床に、天井に書き殴っているのだから。


(ま、その時は悪いがそいつにはしばらく眠っててもらおうか。
 不法侵入を働いている俺様にも非があるが、破落戸も他人の
 事は言えんだろうしな)


不測の事態への対応も決まった所で、フィアンマは『御使堕し(改)』の魔方陣に
視線を移す。我ながら法則を無視しすぎたメチャクチャな魔方陣だとフィアンマは
ため息をついた。普通ではない方法で術式を発動させなければならないとはいえ、
魔術サイドの人間がこの部屋の有様を見たら、悪魔でも召喚するつもりかと笑われそうだ。
212 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:46:28.68 ID:cbrju3gno

だが笑われようが呆れられようが、この法則無視の魔方陣から新たな『御使堕し』を
開発、発動しなければならない。それがミーシャと打ち止めの『計画』を成就させる
鍵となるのだから。


(とりあえず微量の魔力を注入し、『神の右席』である俺様のフォーマットでも
 術式を発動出来るのか、魔力を注いだ際の反応を見極める必要があるか……)


フィアンマの右肩から、音もなく"腕"が現出した。『赤』を象徴するその腕、
『聖なる右』。フィアンマは第三の腕の指でそっと魔方陣を撫でようとして――――、




「あ、あれー!!? 鍵が、鍵が壊されてるのですー!!!」



213 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:47:01.88 ID:cbrju3gno

ビクン、とフィアンマの肩が跳ねた。突然部屋の玄関の向こうから幼い女の子の
絶叫が飛んできたからだ。


「チッ」

「ど、泥棒ー!!!」


今時そんな叫び声をあげる人間などいないだろう、と思えるセリフと共に
玄関の扉が勢い良く開け放たれる。それに対しフィアンマは即座に第三の腕を
収め、掌に火球を出現させて相手の出方を窺った。とても不法侵入者とは思えぬ
堂々とした対応だが、彼は相手がスキルアウトだと想定しているので仕方がない。

だから、
214 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:47:42.91 ID:cbrju3gno

「…………って、あれ? ひ、火野ちゃんですかー?」

「…………お前、いつかの妖精教師か?」


見た目一二歳の幼女と視線が合ったフィアンマは目が点になった。
対するピンク髪の幼女も大きな瞳をぱちくりさせながら驚愕している。


幼女の正体は、フィアンマが数日前に出会った学校の教師、月詠小萌であった。


「ど、どうして火野ちゃんが先生のお家に……?」

「ここは空き部屋じゃなかったのか?」

「扉のプレートに先生の名前が思いっきり書いてあるのですー!」
215 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:50:10.93 ID:cbrju3gno

右手に提げたパンパンの買い物袋を揺らしながら小萌先生は叫んだ。
掌に火球を浮かべたままフィアンマはしばらく微動だにしなかったが、
やがて事情を察すると静かに火球を虚空に還す。


「合点がいった。 ベッドの上のパジャマはお前の私物だったのか」

「ま、まさか火野ちゃん……先生のパジャマに顔を埋めてクンカクンカスーハーなんて―――」

「俺様を侮るな。 匂いを嗅ぐどころか、お前のパジャマは食べてしまったぞ」

「食べた!?」

「下着も全てぺろりだ」

「そ、その流れで今度は先生を食べちゃ―――」

「いや、お前はいらん」

「真性の変態さんなのですよ……」

「…………いや、女。 冗談だ、真に受けるな」
216 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:51:06.74 ID:cbrju3gno

小萌先生はまさかの事態が起きていない事に安堵し、そっと胸を撫で下ろすが、


「げぇー!!? な、何だか先生のお部屋がとってもオカルトチックにー!?」

「…………これならまだ破落戸の方が対処が楽だったかもしれんな」


あわあわと慌てふためきながらもしっかりと玄関で靴を脱ぎ、買い物袋を
そっと床に置き、首を回しながら部屋中の様子を窺いつつ手をしっかりと
洗っている辺り、小萌先生もこういったハプニングは慣れっこらしい。

そしてフィアンマも、指の間も爪の間も丁寧に洗う小萌先生の後ろ姿を
眺めながら考える。
考えるというか、彼の頭にはある一つの『提案』がスタンバっていた。
217 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:51:47.79 ID:cbrju3gno

「……月詠小萌、だったか」

「はいはいー小萌先生ですよー。 ていうか火野ちゃん、勝手に人様のお家に
 無断で忍びこむとは何事ですか! それだけに飽き足らず、部屋中にこんな
 落書きまでして……さては反抗期? 先生、火野ちゃんをこんな風に育てた覚えは――」

「無いだろうし、俺様もお前に教育を受けた覚えなど無い。 それより、一つ頼みがある」


フィアンマの真剣な面持ちを見て何かを察したのか、小萌先生はタオルで
手を拭き終えると何も言わず丸テーブルの前で正座をした。


「先生にお願い……何ですか?」

「ここまで準備を整えた以上、今更ここを離れる訳にもいかん」


フィアンマも小萌先生に習って丸テーブルの前で座り込み、続けてこう言った。


「少しの間で構わん。 しばらく俺様をここへ住まわせてはくれんか」
218 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:53:03.52 ID:cbrju3gno


――――――――――――――――――――――




「新しい同居人に、カンパーイなのですー!!」

「……」




鉄板から立ち上がる煙を吹き消すように、フィアンマと小萌先生は
お互いが持つグラスと缶ビールをぶつけ、盛大に乾杯をした。


フィアンマが口頭でした事情説明はこうだ。
まず、どこでもいいからそれらしい空間を見つけてそこに魔方陣(小萌先生でいう落書き)
を書き殴る必要があった。なぜならこうする事で救われる人物がいるから。だからしばらく
ここに居候させてもらい、救済の準備を整える事を許可してほしい。
219 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:53:48.06 ID:cbrju3gno

たったこれだけ。魔術的要素を含む詳細説明など一切合切省略し、フィアンマは
嘘はついていないためそれをアピールするために真剣味を強く出して説明した。
小萌先生は数秒の間目を閉じ、うーんと悩むように唸った後、


『よし! 先生、火野ちゃんの居候を許可するのですよー』

『いいのかよ!?』


懇願する側のフィアンマが思わずツッコミを入れてしまう程の判断だった。
どう考えても話が見えてこないフィアンマの意味不明の説明のどこに納得
したのか、小萌先生は深く事情を言及する事なく彼との同居を容認してしまった。


そうと決まれば次は新たな同居人の歓迎パーティ、と小萌先生は買い物袋から
焼肉用の肉を詰めたパックと缶ビールを大量に取り出し、台所から家庭用の鉄板を
引っ張って来て、あっという間に今夜の食卓を完成させてしまったのだった。
220 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:54:41.19 ID:cbrju3gno

「いやー先生、どうもそろそろ新しい居候がやって来るんじゃないかと
 思って、こうして焼肉のための買い物をした次第なのですけれど、
 無駄にならなくてよかったのですー。 ささ、火野ちゃんも遠慮せずに」

「新しい居候がやって来る……? お前、普段から路頭に迷う人間を
 捕まえてこの部屋に住まわせる生活を送っているのか?」

「しょっちゅう歓迎している訳ではないですけどねー。 今年は……、
 パン屋へ修行に行った誘波ちゃんとー、夏に転校してきた姫神ちゃん、
 それとめっきり姿を見せなくなった結標ちゃんくらいですかねー。
 ん? そう考えると男の子の同居人は火野ちゃんが初めてなのですー」

「……、」


それは教師という立場が彼女を奮い立たせているのか、とフィアンマは適当に考察する。
家出少年、無法者、浮浪者。それらを厚意で拾い上げ育むという行為は小萌先生に限らず、
科学も魔術も飛び越えて、世界中で行われている事だが。
221 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:55:38.74 ID:cbrju3gno

「それにしても自分の住処に勝手に侵入し、部屋中に術式を仕込む
 人間が居たら然るべき機関に連絡するのが普通ではないのか?
 俺様は迷える仔羊でも無ければ親に捨てられた哀れな子供でもないぞ」

「うーん、確かにこの魔方陣……でしたか。 これは先生もさすがに引きましたが、
 これも含めて火野ちゃんが大切に想っている人を救うための準備なのでしょう?
 安心してほしいのです、先生こう見えてもなぜかオカルトめいたイベントに多く
 遭遇する星の下で生まれた人間ですから。 火野ちゃんを全力で応援しますよー」

「……お人好しが」

「んー?」

「何でもない。 とにかく助かった、お前と接触していた過去が役に立ったよ」

「いやぁ、そこまで言われると先生も照れるのですー。 あーほらほら!
 早く食べないとお肉が焦げちゃうのですよー? 火野ちゃんはその菜箸で
 肉焼きに徹して下さい、そして私が育った肉をこうしてヒョイパク」

「……せめて換気くらいはしたらどうだ。 煙たくてかなわん」
222 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:56:35.86 ID:cbrju3gno

部屋の窓を開けて室内に充満する煙を逃がそうと立ち上がったフィアンマだったが、
その窓にもフィアンマ独自の法則に従って描かれた呪文の一部があったため、
窓を開く事は出来なかった。ヘタに陣形をズラして妙な魔術が発動してはたまったものではない。

小萌先生が五〇〇ミリリットルの缶ビールを数瞬で空にしながらフィアンマに尋ねる。


「時に火野ちゃん。 さっき先生が入ってきた時に出現させてた火の玉なのですが……」

「アレについて説明しろと言われたら多分朝までかかるが」

「いえいえ、アレ、『発火能力(パイロキネシス)』によって生み出された炎じゃ
 ないですよねー? 先生、『発火能力』専攻の教師ですからそれは分かるのです。
 火野ちゃんは確か『空間移動(テレポート)』の能力者だったはずですからねー」

「…………それで?」

「あ、いえ、気に障ったのなら謝るのですが……どうやってあの火の玉を生み出したのかなーって」
223 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:58:05.60 ID:cbrju3gno

フィアンマは少し驚いていた。『発火能力』専攻の教師と発言している事から
小萌先生は学園都市の炎に関する能力についての知識を豊富に蓄えているのは彼でも理解出来る。
しかし小萌先生はフィアンマが魔術によって生み出した火の玉をあっさりと『別の手段による何か』
と看破した。

魔術についての知識は無くとも、この小さな教師は何度か魔術そのものを目撃、
或いは体験しているのかもしれないとフィアンマは推測した。先程もオカルトめいた
場面に多く遭遇すると言っていたことも手伝って。


「……とりあえず、科学による力ではないという事実は明かしてしまっても構わんだろう」

「科学ではない技術……という訳ですかー?」

「そう思ってもらって問題はない」

「ふむふむ、科学ではない別の法則……『非科学』ですかー」

「思い当たる節は?」

「あるのですよー」
224 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:59:00.80 ID:cbrju3gno

小萌先生は即答した。フィアンマが面倒を見ていた肉の焼き加減を見極め、
鉄板の上に素早く割り箸を滑り込ませてながら小萌先生は続ける。


「例えばインデックスちゃんの時の……天使がどうこう言うなんたらかんたら……とか、
 大覇星祭の時に大怪我を負った姫神ちゃんを治療する時に、火野ちゃんと同じような
 赤い髪の神父ちゃんが手伝ってくれたアレとか……科学じゃ説明の出来ないような現象は
 先生、さっきも言いましたけど何度か目にした事があるのですよー」

(禁書目録との関わりも持っていたか……。 当然と言えば当然だが)

「先生、暇が出来てはあの現象について考えていたりしたのですがー……。
 うん、やっぱり先生の頭じゃ結論は出せなかったのです。 あの不思議現象、
 『未知の法則』は学園都市の人間では解き明かせない現象なのでしょうか」

「その訳のわからん法則でこの部屋を満たし、訳のわからん現象で
 俺様が誰かを救おうと考えていると言ったら、お前はどうする?」
225 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 15:59:49.30 ID:cbrju3gno

フィアンマの唐突な質問に、小萌先生は『ふぇ?』と首を傾げる。
が、その手に構える割り箸にはしっかりと肉が掴んであった。


「俺様が実は学園都市の能力者ではなく、お前がこれまでに見てきた
 科学とは別の法則に満たされた世界の住人であり、俺様の都合で
 お前を勝手に巻き込んでその法則を利用しようとしていると言ったら、」

「……、」

「お前はどうする。 お前が住む世界とはまるで違う世界の人間である
 俺様が、お前の居場所に土足で踏み込もうとしているんだぞ」

「構わないですよー? 火野ちゃんはそんな事を気にしているのですか?」


やはり小萌先生は即答した。しかも散々悩んで搾り出したような物言いではなく、
何をそんな細かい事を今更になって言い出しているんだと言うような口ぶりで。
226 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 16:00:57.41 ID:cbrju3gno

「住む世界がどうとか、法則がどうとか、先生はそんな小さい事気にしないのです。
 インデックスちゃんや神父ちゃんの時は、そりゃ驚きはしましたが、"それだけなのです"。
 気味悪がっている訳でもないし、否定するつもりもない。 どういう手段であれ、
 火野ちゃんが誰かに手を差し伸べようとしているのなら先生は応援するのですよー」

「応援どころか、場合によっては俺様がお前に助力を申し出るかもしれん」

「むしろ大歓迎なのです! 先生なんかが火野ちゃんの行いの助けになるのなら、
 先生は嬉しいのですよ。 何か手伝える事があるなら遠慮せず言ってください。
 火野ちゃんが能力者ではないという事実には驚きましたが――――」

「……、」

「―――住む世界が違えどなぞるルールが違えど、火野ちゃんと先生は同じ人間なのですから」


ね。 と、小萌先生は純粋無垢な笑顔を浮かべて肉を頬張った。
まだ肉が高温を保っていたせいか、はふほふと口の中で肉を冷ましている。
227 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 16:01:46.66 ID:cbrju3gno

フィアンマはこの時、月詠小萌という名の人間の器量の大きさを理解した。
同時に、『天使同盟』という科学も魔術もクソもないイミフ軍団の一味のクセして
科学だの魔術だのとこだわり、引きずっている自分の器量の小ささも思い知らされた。


「……恐らくお前は、俺様が救おうとしている存在が人間ですらないと
 知っても、同じように答え、同じように笑顔を浮かべるのだろうな」

「?」

「少し、長い話になる」


フィアンマはほとんど使っていない割り箸をタレが注がれた小皿の上に乗せ、
こちらをジッと見つめる小さな、そして大きな女教師の瞳を見ながら言った。


「俺様がこれからお前の部屋で行おうとしている事、俺様が救おうと
 している存在の事、漏れなく全てを話す。 そして話した上で、
 お前に協力を要請したいのだが……、構わんか?」
228 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 16:02:18.46 ID:cbrju3gno

「先生に二言は無いのですー。 ドンとこい、ですよ」

「…………礼を言う」


話さなければならないと思った。不法侵入をされて、意味もわからない
魔術という名の法則で自分の領域を侵され、それでも受け入れてくれた
この月詠小萌という人間に、隠し事など失礼だと、フィアンマは判断した。

自分の勝手な都合を全て受け入れてくれた小萌先生に素直に感謝しながら、
フィアンマはまずこの『計画』の根幹たる存在を小萌先生に明かした。


「俺様が救おうとしている者は……天使。 現世とは違う別位相に住む
 未知なる存在、ミーシャ=クロイツェフという大天使だ」


この日、月詠小萌が認識している『世界』が新たに開拓された。
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 16:03:34.70 ID:Me2LjPvf0
やっぱフィアンマは俺様が似合うよね。
230 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 16:07:36.62 ID:cbrju3gno

ようこそ、月詠小萌てんてー。

という訳で今回はここまでです。
フィアンマはあろうことか、月詠小萌のお家で術式を開発する事に決めました。
ロマンチックの欠片もない同居生活の始まりです。
ボロボロのアパートとか書いちゃいましたけど、そこまでボロくなかったような気もします。

ですがフィアンマはここで一旦フェードアウト。次の出番はもう水平線の向こう側です。

次回は代わりに一方通行パートが加わります。そして垣根帝督パートも
挟みつつ進行する……はず、です。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

誘波って誰ですか?
231 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/07(火) 16:08:16.59 ID:cbrju3gno



                          【次回予告】



「死ぬ……眠い……死ぬ……眠い……死ぬ……眠い……死ね……殺す……」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)




「実戦とリアルファイトを混同しないでくれる? 私は実戦慣れしてるけど、
 リアルファイトなんてお店のマナーを破るような行為には走らないわよ」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント



232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 16:12:16.85 ID:LQ0nb9jSO
眠れないって結構な拷問だよな
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 16:16:29.90 ID:Me2LjPvf0

綾波って昔小萌先生の所にいた少女。どっかのパン屋にいるらしい。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/07(火) 16:30:55.09 ID:TY/zU+1Uo
綾波ではねーよ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 16:48:24.25 ID:Me2LjPvf0
やべぇ、誘波だった。
ごめん。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/02/07(火) 17:48:43.67 ID:4g6bnw0xo
フィアンマさん丸くなってやがる
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/07(火) 18:51:33.11 ID:dcswWy3k0
ま、待ってくれ
「実戦」と一線を劃す「リアルファイト」という単語…
もしやヴェントちゃんちゅっちゅが居るお店ってまさか科学の吹き溜まりのような例の……
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 19:30:49.97 ID:UX1OMeJno

小萌てんてーはどこのスレでも器が大きいよね
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/02/07(火) 19:36:16.21 ID:NLAXY6MP0
乙です
ヴェントちゃんきましたね

240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/07(火) 21:31:40.01 ID:e5cUiLaIO
アクセラさん途中から[ピーーー]気満々じゃないですか…
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 01:18:31.69 ID:2dzRfxtDO
なにこのかわいい生物…


小萌先生マジ妖精!
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/08(水) 04:45:24.84 ID:Og/vCm0io
弁当来た!弁当パートきたあああああ!!
243 :192 [sage]:2012/02/08(水) 09:41:39.97 ID:kp4x8Y1N0
ホァァァアアごめんなさいごめんなさいごめンなさい!!!

>>1のペースで超お願いします・・・申し訳ないです。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/08(水) 17:40:45.96 ID:Q1/l4W5B0
弁当のターンと聞いて
245 :名無しNIPPER [sage]:2012/02/08(水) 19:35:36.86 ID:6bnrllWAO
誘波って言うからガソリンスタンドで働いてる「らっしゃーせー☆」かと思ったらパン屋かよ。
しかし小萌てんてーはほのおタイプと縁があるようだ。パイロキネシスのレベル5じゃね?って説あったな。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/08(水) 20:45:38.71 ID:fwwxVCkx0
>>1乙です

小萌先生の順応ぉ!!
さすが小萌先生、パネェッす
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/09(木) 16:25:21.82 ID:OOyxTDIk0
フッ……

小萌先生が寛大なことは知っていたさ……
あの急展開に順応できるとは流石小萌てんてーナリでござるよ
248 :ぱるめざん [sage]:2012/02/09(木) 17:53:40.80 ID:sH25LZmDO

やっと…追い付いた…ハァハァ(息切れ
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 20:02:56.99 ID:831aELY30
>>248お疲れさん
とりあえずなぜ名前を入れたし
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 20:16:36.90 ID:sH25LZmDO

>>249

初めてで入れちゃいけないの
知らなかった(´;ω;`)
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 20:24:34.32 ID:384y3kmY0
>>250 初めてって何が正しいのかわからないですよね。
俺も以前テンションがうるさい、半年ROMれって怒られました。自重中・・・
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 20:43:23.37 ID:+Oc7QiPDO
>>250
別に入れちゃいけない訳じゃないんだけどね

名前を入れると目立つから、問題発言なんかも取り上げられやすいし、名前があると特定されるから1回の発言でずっと言われ続けたりするんだよね

だから悪くはないけど、オススメはしない
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/02/09(木) 20:44:14.27 ID:XO0fHq2oo
まぁ、次から気をつければいいだけの話ですな
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 20:51:18.38 ID:sH25LZmDO

けど、ここの人は
優しそうですね(^O^)!

名前の件ありがとうなんだよ!!
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 21:12:37.65 ID:384y3kmY0
そんなことよりヴェントちゃんちゅっちゅの話しようぜ!!
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 21:37:41.68 ID:BH2dtN1/o
>>254
でもとりあえず1ヶ月はROMろうぜ
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 21:47:56.40 ID:sH25LZmDO

断っておくと
初期から見てて
見失った上での
追い付き、初書きです


まぁROMりますわ
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/09(木) 21:51:58.80 ID:sd3w3Mhpo
どこに見失う要素があったのかよくわからんがな
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 22:03:21.83 ID:sH25LZmDO

ここも含めていろんなサイトで見てたから、次スレのリンクない場所にあたって見失った。
まぁ言い訳っすね
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/09(木) 22:10:35.49 ID:/8ccecITo

>同時に、『天使同盟』という科学も魔術もクソもないイミフ軍団の一味のクセして
>科学だの魔術だのとこだわり、引きずっている自分の器量の小ささも思い知らされた。
科学側皆純粋な科学法則に頼ってるわけじゃないし、確かにイミフ集団だな
でも小萌てんてーは屋根の上には住んでないよ!
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/09(木) 22:22:55.52 ID:QbsKCJzX0
>>1乙!!

小萌てんてーホント見かけによらない
大人の包容力あるな

チャットみたいなことはやめろよ?
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/09(木) 22:37:37.30 ID:Gojd22LD0
まあ正直個々人の話なんてどうでも良いから話がこんがらないうちに止めようか

そんなことよりAIM拡散おっぱいの話しようぜ
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/09(木) 22:47:24.47 ID:tNs9LQ9TP
懺悔します
未だにクルーズで移動してた頃の風斬の濡れ場(エイワスの妄想)を定期的に読み返します
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 05:55:09.86 ID:KCm7Bh4DO
>>263
俺はこのSSを読みはじめてから御坂妹から氷華に乗り換えてしまいそう

どうしよう…ちっぱい派の俺がおっぱい派になっちまった…
265 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:42:37.77 ID:q/1JS9LVo
>>264
の、乗り換えちゃってもいいのよ?いやこれを機に乗り換えてしまえ!

皆さん、こんにちわ。更新を開始します。

前回はフィアンマが月詠小萌の家に居候することが決まり、
しかも彼女もまた、『天使同盟』の事情を知るに至るのでした。

今回は一方通行パート。風紀委員の雑務と戦った彼の話の続きをお送りします。

それでは、よろしくお願いします!


なお、更新後に重大発表がございます。……重大発表ってほど大袈裟なもんじゃないですが
266 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:43:18.68 ID:q/1JS9LVo


――――――――――――――――――――――


結局、風紀委員(ジャッジメント)の雑務は翌日の朝一〇時頃までかかってしまった。




「死ぬ……眠い……死ぬ……眠い……死ぬ……眠い……死ね……殺す……」




最後の方はもはや恨み言と可していた。

一方通行。学園都市第一位の超能力者。
267 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:44:33.85 ID:q/1JS9LVo

彼は杖をつきながら学園都市の第七学区を歩いていた。歩くと言ってもその歩行速度は
フェアな条件で亀と競争してもまるで勝ち目が無い程に鈍かった。彼は容姿をウサギと
例えられる事があるが、これでは亀どころか陸に上がった魚にすら追い抜かれてしまう。

杖をついて歩いている理由は、彼が過去に頭を銃でぶち抜かれ、歩行機能とその他諸々が
著しく低下してしまったからではあるが、今の一方通行の状態なら例えかのようなハンデが
無くとも杖を使用しなければ歩行すらままならない程であった。


学園都市最大の文化祭。一端覧祭の五日目である。


昨日、色々あって風紀委員の事務処理を強制実行させられるハメになった一方通行は、
共に行動していたイギリス清教のシスター、オルソラ=アクィナスとアンジェレネの
協力を経て始末書の処理に勤しんだ……のだが、まず最初にアンジェレネが眠りこけて
リタイアし、その後もなんやかんやした後にオルソラが机に突っ伏して寝息を立てて
しまったため、事実上彼は一人で見上げる程の量がある始末書を睡魔と戦いながら
適格に処理していくことになってしまった。
268 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:45:25.52 ID:q/1JS9LVo

朝になって通常出勤してきた白井黒子と固法美偉は締め切り数分前の漫画家のような
状態になっている一方通行を目の当たりにして凍った。彼女達曰く、一方通行達は
雑務など放り投げてとっくに帰宅しているものだと思っていたらしい。

白井と固法は一方通行に心の底から感謝と尊敬の意を送り、息も絶え絶えの
彼に素晴らしい出来の朝食を振る舞ってくれた。アンジェレネが目を覚まし
『あれ……まだ終わってなかったんですか一方通行さん……』とか言い出した時は
危うく黒翼を現出させるところだった。

真面目に感謝してくる白井と固法にオルソラとアンジェレネの事を任せ、一方通行は
ようやく風紀委員という立場の地獄から解放され、第七学区のアジトへの帰路に着いたのだが、


「眠い……あァ……これ今寝たら俺一生目ェ覚まさねェンじゃね?」


彼はここ数日、あらゆるイベントに邪魔されて就寝を取る事が出来なかった。
最後に寝たのは風斬氷華とのデート後。翌日、一端覧祭の三日目であるキャーリサの
看病の時から彼は一睡もしていない。本当の意味で徹夜二日目だった。
269 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:46:42.09 ID:q/1JS9LVo

普通に過ごしていれば二日程度の徹夜など一方通行なら苦に感じなかっただろう。
だが徹夜せざるを得なくなったその二日間、彼の華奢な体に溜まった疲労は尋常
ではないものだった。彼にとってあまりにも『非日常』な事が立て続けに発生し、
尚且つ眠れなかったというのだから現在の彼の疲労度は筆舌に尽くし難い。


(時間を無駄に出来ねェなンてのたまってるが、これじゃイギリス行きの前に
 俺が昇天しちまう。 今日はもォ一日中寝る、何人たりとも邪魔はさせねェ)


二日後、彼は神裂火織と共にイギリス清教のローラ=スチュアートと謁見する約束を取り決めている。
仮にも最大主教であるローラに自分の亡骸を差し出す訳にはいかない。
一方通行は今日一日爆睡する事を固く、固く誓った。


「着いた……」
270 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:47:34.92 ID:q/1JS9LVo

『天使同盟』が利用している『グループ』のアジトであるアパートが見えた。
一方通行にはそれが天界への入り口にも思えた。
這うように階段を登り、意識朦朧の中部屋の扉を開ける。


「ソロモンよ……俺ァ帰ってきた……」


ここはソロモンではなくアパートの一室なのだが、意識が混濁している彼には
この部屋が軍事用に改装された宇宙要塞に見えたのかもしれない。

部屋には誰の物かも判別つかない衣服や私物が無造作に放り投げてあったが、
肝心の人間がいないため室内にはなんとも言えぬ寂寥感が漂っていた。


「誰かいねェのか……? 風斬、ガブリエル、フィアンマ。 その他大勢のモブ共。
 ……………………チッ、部屋散らかすだけ散らかして外出してやがンのかよ」
271 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:48:33.99 ID:q/1JS9LVo

だが無人という状況は今の一方通行には都合が良かった。
彼は他には目もくれず一直線にソファへ向かうと、溶けるように寝そべって
そっと目を閉じる。二日ぶりの睡眠だ、その寝心地はさぞ気持ちの良いものだろう。




「あ、白いの。 テメェやっと帰ってきやがったのか」




夢かと思った。怒涛の二日間を徹夜で過ごした一方通行ならわずか数秒で
夢を見れる。だから彼は夢の中で誰かが語りかけているものだと思い込み
声を無視して睡眠に徹しようとしたのだが、

272 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:49:41.22 ID:q/1JS9LVo

「ちょっと、ねえ、起きてよ。 ねえってば」

「…………」

「起きろよ白いの。 このヴェントが起きろっつってんのよ?」

「…………うるせェなァ」


ゆさゆさと体を揺すられ、仕方なく一方通行は意識を戻して愚痴るが
しかし瞼は閉じられたままだ。だがそれでも相手が名乗ってきてくれたおかげで
一方通行は元『神の右席』の魔術師、前方のヴェントの存在を認識した。


「アンタここ最近帰ってこなかったけど、どこ行ってたのよ」

「ンあー……、…………、知らン。 どこでもイイだろ……」
273 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:50:41.61 ID:q/1JS9LVo

「どうせその辺の女とイチャついてたんでしょうけど」

「人聞きの悪い事言うンじゃねェ……」


ぺちぺち、とヴェントが頬を軽く叩いてくる。一方通行はそれを鬱陶しがりながら払った。
シャンプーの甘い香りが一方通行の鼻孔をくすぐる。どうやらヴェントはさっきまで
シャワーを浴びていたようだ。

そんなヴェントが就寝と永眠の狭間で揺れる一方通行に質問を投げかける。


「ねえ、アンタ今日暇?」

「いいや……恐ろしく忙しいなァ」

「何か予定があるの?」

「寝る。 ただひたすら寝る。 これが今日のスケジュールだ……」
274 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:51:43.49 ID:q/1JS9LVo

じゃあオヤスミ、と一方通行が再び夢の世界へ旅立とうとした所を、
ヴェントが彼の薄いお腹にのしかかり阻止した。


「げふェ!!?」

「朝っぱらから惰眠を貪る程度には暇なんじゃない。 ちょっと付き合ってよ」

「殺されてェのかなァこの小娘ちゃンは……」


腹に座る魔術師の女をどけようと抵抗するが、今の一方通行では到底太刀打ち出来ない。


「ねえ、聞いてんの?」

「あァもォ勘弁してくれ……。 風斬とかその辺のヤツらと一緒に遊べばイイじゃねェか」
275 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:52:29.99 ID:q/1JS9LVo

「ここにはアンタと私しかいないんだけど」

「だったら街に出て探してくりゃイイだろ……。 悪いが俺はマジで疲れてンだ、
 頼むから今日だけは寝かせてくれ……。 後日埋め合わせしてやるからよ……」

「……」


発声出来ているのかいないのか微妙な声量で懇願する一方通行。
すると彼の願いを承諾したのか、ヴェントは素直に彼の腹から降りる。
一方通行の腹部に開放感が訪れた。


「何よ……人がせっかく誘ってあげてんのに」

「眠いンだからしょうがねェだろ……」

「……まぁいいわ。 どうやら本当にお疲れのようだし、見逃してやるわよ」

「……、」
276 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:53:27.96 ID:q/1JS9LVo

その言葉にわずかな寂しさが窺えたのは一方通行の気のせいだろうか。


「アンタこの前、暇が出来たらどこかへ遊びに行くかって言ったわよね。
 あの時の言葉を今日実行してもらおうと思ってたんだけど」

「……」

「……また今度、声かけるから。 都合が良かったら付き合って」


一方的に話を切り上げると、ヴェントは一方通行から離れて適当に外出の
準備を始めた。ここで一方通行は初めて瞼を開く。用意を進めるヴェントの
背中から伝わる孤影悄然とした雰囲気は、やはり気のせいではなかった。
277 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:54:08.31 ID:q/1JS9LVo

「ちょっと待てよ」

「! ……何?」


ぴくっ、と肩を震わせてヴェントは聞き返す。


「どォやら睡眠は充分に取れたみてェだ。 すっかり眠気が飛ンじまった」

「だ、だから何?」

「暇になっちまったって言ってンだよ。 どこにでも連れてけ。
 つまらねェ事に俺を付き合わせよォって魂胆だったら叩き潰すぞ」

「……別にアンタじゃなきゃ駄目って事はないんだけど」
278 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:54:53.92 ID:q/1JS9LVo

「だったら俺から申し出る。 今日暇か? 一緒に遊ぼォぜ」

「……………………。 し、仕方ないわね」


ヴェントは一方通行の方に体を向けると、腰に手を当てふんぞり返りながら言った。


「どうしてもって言うなら付き合ってあげなくもないわ」

「元はといえばオマエが言ってきたンだが」

「いちいちうるさいわよ白いの。 さっさと出掛ける準備してもらえる? 文化祭
 だからか何だか知らないけど、"あの店"、早く行かないと人が増えてウザいのよ」

「ちっ、調子のイイ女だ。 …………あの店?」


一端覧祭五日目。一方通行の今日一日のスケジュールが決定した。
279 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:55:58.41 ID:q/1JS9LVo


――――――――――――――――――――――


「さ、着いたわよ」

「……………………」


ずぶずぶと沈みそうな意識を必死で引っ張り上げながらヴェントのお出かけに
付き合った一方通行は、彼女の案内で目的地にたどり着いた。

たどり着いて、


「さて……帰って寝るか」

「ふざけんな、ここまでついてきておいてそれはないでしょ」
280 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:56:55.39 ID:q/1JS9LVo

「帰りたくもなるわそりゃ、オマエの方こそふざけンなよ?」

「何がよ」


一方通行は心の底からうんざりしたような顔を貼りつけて指をさした。
彼の指の先には、ヴェントが目的地としていたとある店。




「なンでこの俺が寝る間を惜しンでゲーセンなンかに行かなきゃならねェンだよ!?」




281 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:57:49.73 ID:q/1JS9LVo

第七学区の地下街。栄養学、料理専門学校が実験的に出している店がズラリと並ぶ
地下世界。その一画にあるゲームセンターの前で一方通行は捲くし立てる。


「少しシリアスな雰囲気でよォ、『一緒に来て欲しい場所がある』とか言われたらよォ、
 なンかオマエにとって思い入れや悲しい過去があった地域とかにでも赴くンだろォな
 と思って俺も寝てる場合じゃねェなって思ったから着いてきてみりゃよォ、」

「心外ね。 悲しい過去はともかくある程度の思い入れはあるわよ」

「ゲーセンに対するオマエの思い入れなンざ知るかァ!」


ぎゃあぎゃあと怒鳴り続けた一方通行は終いに呆れてしまい踵を返すが、
すかさずヴェントが彼の右腕に装着された現代的なデザインの杖を蹴っ飛ばした。
バランスを崩した一方通行はバナナの皮で滑ったように間抜けな転び方をしてしまう。
282 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:58:34.62 ID:q/1JS9LVo

「私を置いて帰ったらここで暴れてやるから」

「この俺に脅しをかけてくるとはイイ度胸してンなァ……」

「一端覧祭中は忙しかったんでしょ? ここは娯楽施設よ、アンタの体に
 蓄積された疲労をここでパーッと解消させればいいじゃない」

「ちっ……。 つーか、まさかオマエがゲーセンに通ってるとはなァ」


腰に手を当てて見下ろしてくるヴェントを睨みながら一方通行はよろよろと立ち上がる。


二人が行き着いたゲームセンターは、いわゆる『外部系』の店だった。
学園都市のゲームセンターは『外部系』と『内部系』が存在しており、
『内部系』は学園都市内で開発されたゲームが並び、『外部系』は
学園都市の『外』から入荷したゲームを取り揃えている。
283 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 12:59:33.43 ID:q/1JS9LVo

学園都市の文明レベルは『外』に比べて二、三〇年は進んでいるため、
『内部系』ゲームセンターのゲームは『外』では味わえない最新技術が
取り入れられた面白さが溢れているが、中には『外』の技術が遅れた
ゲームの方が楽しいという学生もおり、そういった学生のニーズに応えるため
用意されたのがここ、『外部系』のゲームセンターなのだ。

予想以上に『外部系』のゲーセンは需要があり、『内部系』に負けず劣らずの
賑わいをみせているようだ。実際、一方通行が軽く店舗内の様子を確認しても
頭の軽そうな数人の不良が店内のベンチで屯しているし、いかにもゲーマーですと
訴えているような容姿の学生が筐体を凝視しながら手元でレバーを操作しているし、
仲睦まじい女子高生集団が黄色い声で騒ぎながらUFOキャッチャーを楽しんでいた。


「あァ……一端覧祭って一部の学生にとっちゃ単なる休日でしかねェモンな。
 今年の一端覧祭はエイワスの野郎が延長してやがるからあァいうのも増えてンのか」

「つべこべ言ってないでさっさと中に入るわよ」
284 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:00:29.43 ID:q/1JS9LVo

ヴェントに襟を掴まれ、一方通行は半ば強引にゲーセンへと連行される。
店内へ入った瞬間、ゲーセン特有の騒音が彼の鼓膜を叩いた。


「相変わらずだなゲーセンってのは……かなり前に番外個体とかと行った時もうンざりしたモンだぜ」

「アンタ、こういう場所に来た事あんの?」

「自分から赴く事はまずねェけどな。 で、ここでオマエは何をしよォってンだ」

「これよ」


店内を歩くヴェントの足が、ある筐体の前で止まった。
そのゲームを見て一方通行は不可解さを表すように眉をひそめる。
285 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:01:16.92 ID:q/1JS9LVo

「…………格ゲー?」

「アンタ、一〇〇円持ってる? 無ければ両替してきてくれないかしら。
 ここ数日ゲーセンに通ってたせいで私の所持金も底を突いてしまったのよ」

「おいおい待て待て、オマエまさかこれをやるつもりか?」

「何よ」

「オマエが格ゲーって……、リアルファイトの方が得意分野だろォに」

「実戦とリアルファイトを混同しないでくれる? 私は実戦慣れしてるけど、
 リアルファイトなんてお店のマナーを破るような行為には走らないわよ」


そう言う割にはベンチからこちらを見る不良達の目が怯えの色を浮かべているが、
ヴェントはこの店の常連で、過去に何かをやらかしているのかもしれない。
もしくはその不良達はヴェントでなく、一方通行に対して警戒しているのだろうか。
286 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:02:41.96 ID:q/1JS9LVo

「一〇〇円」

「うるせェなクソ……。 とりあえずこンだけあればイイだろ」

「ありがと。 さ、アンタは向こう側の筐体に行きなさい。 私はここの筐体を使うから」

「?」

「どうしたのよ、早く」

「一体何が始まるンです?」

「何言ってるのよアンタ。 これは格闘ゲームよ?」


ヴェントはさも当然のように言ってのけた。
287 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:03:20.33 ID:q/1JS9LVo

「これからこのゲームで私と対戦するのよ。 格闘ゲームなんだから当たり前でしょ。
 CPUという名のサンドバッグを延々とボコボコにしてもつまらないもの」

「……俺、格ゲーなンてほぼ未経験なンだが。 初心者ってレベルじゃねェぞ」


一方通行の言葉を聞いて、ヴェントの瞳がわずかに見開かれた。
その際に彼女の口角がわずかに『ニヤリ……』なニュアンスで歪んだのは
気のせいだろうか。


「大丈夫よ、アンタ学園都市第一位の超能力者なんでしょ?
 学園都市で一番頭がいいんだったら、こんなゲームのノウハウくらい
 一瞬で覚えられるわよ。 操作方法は筐体に記載してあるし、ね」

「学園都市第一位は格ゲーも上手いなンて根拠があるかよ……。
 まァここまで来た以上やってもイイが、初心者相手じゃつまンねェだろ」

「いいから」
288 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:04:14.82 ID:q/1JS9LVo

ヴェントは筐体の椅子に座ると一方通行から受け取った一〇〇円を投入する。
初回プレイ時に作成したのか、彼女はスカートのポケットから格闘ゲーム用の
プレイヤーカードを筐体にスキャンした。プレイヤーのスコアやランクを記録する
ためのカードなのだろう。

筐体のディスプレイがボタン操作を要求し、ヴェントは慣れた手つきでボタンを押すと
キャラ選択画面でカチカチとレバーを横に倒した。


これより、学園都市最強の超能力者とローマ正教『神の右席』の魔術師による
ガチバトルが始まる。…………ただし格闘ゲームだが。
289 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:12:16.36 ID:q/1JS9LVo

私「引越しするんでネットの移転手続きお願いしまーす」

プロバイダ「かしこまりました。移転先のご自宅にネットが
        繋がるまで二週間前後かかりますがよろしいですか?」

私「な、なんだってー!?」


……というわけなんです。重大発表でもなんでもない、ただの私事でした。

ただこれで少しだけ更新に支障が発生する可能性がございます故、
一応報告させていただきました。しばらくはネットカフェで投下していきますが、
もしかしたら三日以内というルールは守れないかもしれませんのでご了承ください。

あと、今回から始まった一方通行パートのヴェント編は、かなりパロディ要素が含まれます。
パロディ6、ギャグ3、その他1の割合で進行していきます。
そういうの苦手な方には申し訳ないのですが、どうかよろしくお願いします。

次回更新は(多分)三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
290 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/10(金) 13:13:14.74 ID:q/1JS9LVo



                          【次回予告】



「……アックアの野郎に手伝わせてまで練習したのに」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「あいつまで巻き込ンでやがったのかオマエ!?」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)



291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/10(金) 13:17:35.95 ID:wSDk3SDN0
乙。
引越しとは・・・。

>パロディ6、ギャグ3、その他1の割合で進行していきます。
悪くない、むしろ良い。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 13:21:33.05 ID:x7t9eZ8eo
ネカフェ使ってまで投下しなくてもwwww
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/02/10(金) 13:22:41.89 ID:2pUG/7HN0
乙!

まさか……重大発表って…引っ越し…?
純粋無垢な心で天使同盟に関係していることに期待した俺の気持ちを>>1どうしてくれるんだ!?
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/10(金) 13:29:56.17 ID:FungUmXC0
つまり当初のノリってことだろ

大歓迎です
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 13:32:56.24 ID:mJqkPyoDO
乙でした
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 13:33:53.82 ID:lJ+z+A5Wo
バナナさんまじかわいい
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 14:56:21.39 ID:KCm7Bh4DO
一方さんマジイケメン!


ってか、そろそろ寝ないと死んでしまう…
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/02/10(金) 15:27:12.40 ID:7JtRoCNM0
乙乙
前方のバナナさん暇なんだなあ…
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 15:46:00.19 ID:VXaOgaOKP

弁当丸くなりすぎワロタ、誰だよこいつってレベル
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 16:34:39.35 ID:+KcRgveSO
そりゃこのスレの女性キャラ全般にいえるから今更だな、原作じゃバナナさんもう出番無いのかね
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/10(金) 16:50:17.30 ID:4no8/NZO0
>>299
つ初期美琴、初期一方通行、7,11巻頃の建宮さん
302 :名無しNIPPER [sage]:2012/02/10(金) 17:51:52.28 ID:U9c0u3SAO
>>301
一巻美琴なんて自分から「【妹達】は〜」みたいにべらべら喋ってたよな・・・
アニメ先に見てたからえ?!ってなったわ
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 19:00:01.00 ID:XNsy5lORo
乙ー
これまでの更新頻度で読めないのは寂しいが
さすがにネカフェから投稿しなくても良いんじゃないかと思う
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 21:47:43.77 ID:jol59RdIO
>腹に座る魔術師の女をどけようと抵抗するが、

臀部とは接触しているわけだ。つまり疲れた風を装いつつも感触を堪能したんだな
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/02/10(金) 23:01:07.02 ID:Qej7angV0
羨ましいな。俺もヴェントに乗られたい
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 23:16:02.33 ID:x7t9eZ8eo
むしろヴェントに乗りたい
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 23:17:43.37 ID:fj1g0UQso
のりゔぇん
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/10(金) 23:32:42.32 ID:zRv+3srP0
最終的に踊る大捜査線1作目のラストみたいなオチが待ち受けてそうだwwwwww
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 00:13:50.98 ID:Y1N0fLzZ0
なんとなくこのヴェント、雨流みねねぽいな。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/11(土) 00:17:30.94 ID:OHdhKVzy0
のり弁ワロタ
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 01:39:50.71 ID:qdlsyG6M0
のりヴェンwwww

いちおつ!引っ越しで忙しいのに無理すんなって
落ち着くまで二週間だろうと待つから
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/02/11(土) 04:32:09.50 ID:nlRLld0m0
乙です
引越しならバイトを雇うである
313 : ◆3dKAx7itpI [sage]:2012/02/11(土) 06:19:46.24 ID:nVCaE6VXo

無理に投下しんなくてもいいというお声がちらほらございますので、
ではお言葉に甘えて、私のペースで投下する事に決めました。
まあ暇ができたらちょこちょこ投下もしていきますが、暫くの間
今までのペースでの投下は困難になりますので、ご了承ください。

ありがとうございます。では、次の投下まで今しばらくお待ちください!
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/11(土) 12:33:48.67 ID:DDMvL3qKo
いつもありがとなー楽しみに待ってる
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 13:22:56.88 ID:UKF0LWLDO
まぁこんだけの量を3日以内…ってかほぼ毎日投下し続けてくれてたんだ

2週間くらいの休みはあってもいいよな
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/11(土) 18:47:54.95 ID:pSoJOmPS0
>>1
ゆっくりしていってね!
一方さんはそろそろ路上で倒れるんじゃないかと思うの
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/13(月) 00:55:04.78 ID:iS0KmrjAO
弁当がぁっ
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/02/15(水) 18:21:17.73 ID:GlpTV5GO0
>>1乙です
そちらが落ち着いたらまたお願いしますね。ノシ

しかし、一方さんマジお疲れ
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/15(水) 18:53:44.43 ID:T+nKViYi0
超乙ッス!
休暇だと思ってゆっくり休んでほしい訳よ
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/18(土) 21:51:18.19 ID:caAt7nNDO
ゲーセンでリアルファイトと言えば、リアルサイクバーストが思い浮かぶ
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/18(土) 22:39:44.20 ID:DUiwCRARo
>>320
あれは世紀末の名を冠するにふさわしい戦いだったなwwwwww
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/19(日) 00:08:46.13 ID:D7spv39Ho
あそこは最弱が最強にちょっとばっか響くぞをやれてしまうぐらいの世紀末だろ
323 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:31:04.29 ID:Myp3Dm6Go

皆様、お久しぶりです。>>1にございます。

三日以内の投下が難しくなると宣言したにも関わらず支援レスをたくさん書いてくださり、
大変嬉しく思っております。本当にありがとうございます。

さて、今日は久々に更新をしにきました。ようやく引越しのどたばたも落ち着き、
しかしネットは未だ使用不可のため更新が滞っていましたが、ようやく暇を作れたので
投下させていただきます。

今回の投下はもちろん前回の続き。一方通行とヴェントが格ゲーで対戦するというお話です。
格ゲーなんざ触ったこともない一方通行は果たして彼女に勝利することができるのか、的な。

それでは、久々によろしくお願いします!
324 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:32:07.70 ID:Myp3Dm6Go


――――――――――――――――――――――


ひとえに格闘ゲームと言っても様々な種類があるのだが、
今回一方通行とヴェントがプレイするのは『外』の世界で大流行している
『スーパーストライキファイターW』、通称『スパW』という格闘ゲームだった。




―――主人公、『リュウタ』は通っている道場で毎日のように師範にしごかれ、
いつまで経っても強くなれない自分に絶望していた。元々リュウタは気弱で臆病な
性格であり、大親友である『ケイン=マスタード』とは対照的な人間であった。
そんな気弱な性根を叩き直すために格闘道場へ入門したリュウタだがやはり才能はなく、
ケイン以外の門下生からは嘲笑され、師範から浴びせられる喝は彼の気弱さに拍車をかけていった。

325 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:32:37.24 ID:Myp3Dm6Go

ある日、いよいよ周囲からの侮辱に耐えられなくなったリュウタは『反逆』を決意する。

『こんな環境では俺の才能は開花しない。 俺は俺より弱いヤツと戦って自信をつけていく』。

師範と門下生達の前で堂々と宣言したリュウタは、ケインや師範の呼び止めにも応じず
道場から出て行ってしまう。見かねたケインもリュウタの後を追って道場を飛び出すが―――。




こんなバックストーリーが存在する格闘ゲームの第四作目(外伝的扱い、バージョンアップの作品は除く)である。

主人公のリュウタをイメージした『俺より弱いヤツに会いに行く』という情けないキャッチコピーが人気を博し、
このキャッチコピーは今回のスパWでも『俺より弱いヤツがいない件について』という変化を経て引き継がれている。


「……八方向レバー操作に六ボタン、番外個体がやってたゲームと
 同じか。 つかあいつが垣根から借りてた格ゲーってまさかこれか?」
326 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:33:24.33 ID:Myp3Dm6Go

筐体に書かれた操作説明を見つめながら一方通行は番外個体が家庭用ゲーム機で
プレイしていたゲームを思い出そうとするが、真面目に鑑賞していた訳ではないため
明確に思いだす事は出来なかった。

対面の筐体にいるヴェントは現在、CPUと対戦をしているのだろう。
彼女がプレイしている画面が対面の一方通行の筐体にも表示されている。
ここで一方通行が一〇〇円を投入すると、『乱入対戦』が成立するのだ。


「……とりあえず俺みてェな初心者は、主人公キャラを選択するのが無難だよな」


筐体のキャラクター説明には各キャラの簡単な説明と技コマンドが表記されている。
一方通行は一通り確認して一〇〇円を投入し、ヴェントに乱入対戦を挑んだ。
327 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:34:32.48 ID:Myp3Dm6Go

一方通行が選択したのは主人公のリュウタ。第一作目から何一つとして成長していない
彼の表情は、プレイヤーからやる気を削ぐような鬱々しいものだった。
キャラ選択画面のリュウタの顔には既に青アザがあり、彼の受難さが表現されている。


「で、ヴェントの使用キャラは…………って、そォか同じじゃねェか」


対するヴェントが操作するキャラクターもリュウタであった。乱入された方のプレイヤーは
最初に選んだキャラを変える事は出来ないため、一方通行がリュウタを選べば同キャラ対戦に
なる事態は必然的である。ステージ選択を終え、いよいよ二人の対戦が始まった。


(弱パンチ……あ、このボタンは弱キックか。 ちっ、ボタン配置にまず慣れねェと)
328 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:35:28.32 ID:Myp3Dm6Go

六ボタンという配置に多少手こずるものの、初心者にありがちな『画面見たり操作方法確認したり』という
視線が上下に泳いでしまう現象は一方通行には見当たらなかった。彼は筐体に書かれている基本操作、特殊操作、
全キャラの技コマンドを数秒で完全に記憶してしまっていた。

そんな彼がボタン配置に手こずる時間などほんのわずかであり、瞬く間に彼はリュウタを
手足のように操作してしまう。虚弱で格闘才能ゼロという設定のはずのリュウタが、
ヴェントの操る1Pカラーのリュウタを手玉に取ってしまっている。


(技が出るまでの時間は技によって違うのか。 技を出し終えた後の硬直時間も
 考えねェとスカった時に攻撃をもらっちまうな……。 連続技を食らわせる際の
 ダメージに補正がかかってやがるな。 ゲージの管理も慎重に行わねェと……)


予備知識ゼロであるはずの一方通行が独学でゲームのシステム、駆け引き、コンボを習得していく。
第一ラウンド目が終了した時には、彼はリュウタの全てを理解していた。どの技からどの技が繋がるか、
各動作のフレーム、硬直、対空、牽制、ゲージ管理、起き攻め、投げ間合い等、ゲーム開始から数分で
彼は初心者という枠組みから一気に脱却してしまった。
329 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:37:37.53 ID:Myp3Dm6Go

(たかがゲームだと思ってたが、なるほど結構奥深いじゃねェか。
 番外個体やヴェントがハマるのも納得出来るな、面白れェぞこれ)


続けて第二ラウンド、次に一方通行はヴェントが操作するリュウタの動きを観察してみる。
自分がまだ知らないリュウタのコンボ、セットプレイがあるかも知れない。そう考えた一方通行は
相手の出方を窺う戦法に切り替えたのだが、


「……、」


ヴェントが操作するリュウタがまず遠距離で不気味な挙動を何度か繰り返し波動拳(リュウタを代表する技)、
それを捌きながら一方通行操るリュウタがじりじりと距離を詰めたら前ジャンプ。すかさず一方通行は
昇龍拳というアッパーカット、つまり対空技で飛んできた敵を打ち落とす。受身も取らずゆっくり起き上がる
敵に足払いを仕掛ける。ヴェントはこれにほぼ一〇〇パーセント引っ掛かり、再びダウンしてしまう。
330 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:39:01.43 ID:Myp3Dm6Go

次にヴェントのリュウタが起き上がるが、その直後に反撃の昇龍拳を放ってきた(リバーサル)。
その際、対面の方からガチャガチャガチャガチャ!!! とレバーをムチャクチャに操作する音が聞こえてきた。
レバーをへし折るつもりなのだろうか。

ヴェントのリバーサルを先読みしていた一方通行はバックステップで攻撃を回避すると、アッパーカットからの
着地で硬直していた敵キャラに容赦のないコンボ攻撃をお見舞いする。

両キャラの距離が離れる。ヴェントは再び虚空拳を連射し、一方通行がそれを捌きつつ接近。
ヴェントが操作するリュウタが飛び込んでくるので一方通行は対空技で敵を打ち落とす。
受身を取らず起き上がる敵に足払い。相手のリバーサルを読んでフルコンボ。


以上の『作業』を繰り返し、一方通行は見事にヴェントを打ち負かした。
331 :×=虚空拳 ○ ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:40:23.99 ID:Myp3Dm6Go

(…………待てよ、こいつ)


対面のヴェントに何かを伝えようとしたのか、一方通行は一度席を立とうとするが
その直前に乱入者が現れた事を報せる演出が筐体の画面に表示された。
ヴェントが再び一〇〇円を投入して一方通行に勝負を仕掛けてきたのだ。


「……」


放置する訳にもいかないので一方通行は椅子に座り直し挑戦を受ける。
ヴェントが次に選んだキャラクターはリュウタの親友、ケイン=マスタードだった。
リュウタとは対照的に明るい性格で、格闘技の才能もあり、人柄も良い善良な設定のケイン。
まぶしく輝く金髪を振りかざし舞うその格闘スタイル、初心者にも優しいそのキャラ性能から、
全国でも使用率の高い人気キャラだ。
332 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:41:45.27 ID:Myp3Dm6Go

Fight!! というシステムボイスで幕を開けた第二戦。だが、


「……さっきの試合のリプレイじゃねェか」


結果は言うまでもなく、一方通行の圧勝。リュウタとケインのキャラ性能が
似通っているためか、試合展開もほぼ同じという散々な結末に終わった。


「おい、ヴェン――――」


一方通行はヴェントに声をかけようとしたが、再び流れた乱入者登場の演出によって
それは遮られた。次にヴェントが選んだキャラは『シュン=リー』。この作品の
ヒロイン的存在で、かつては彼女が繰り出す特定の技の動作中にスタートボタンを
連打して一時停止を繰り返すプレイヤーが続出したとかしないとか。
333 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:42:19.81 ID:Myp3Dm6Go

一方通行はため息をついて対戦に臨む。対戦相手に手加減が出来るレベルの腕前になった
彼はかなり消極的なプレイスタイルに切り替えるが、結果は火を見るより明らかだった。


(……これでも駄目か。 仕方がねェ)


一方通行は席を立った。その際にまたしても乱入者登場の演出が流れたが、
彼は無視して対面の筐体に座るヴェントの下へ足を運ぶ。


「…………」


一方通行の目に飛び込んできたのは、目尻にうっすらと涙を溜め、下唇をキュッと噛み、
レバーを握ったままふるふると震えるヴェントの姿だった。
334 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:43:04.87 ID:Myp3Dm6Go


――――――――――――――――――――――


ヴェントが完全に不貞腐れてしまった。


「…………まァこれでも飲ンで元気出せよ」

「……」


一方通行は自販機で購入した缶コーヒーをヴェントに差し出すが、
彼女は見向きもせずただ不機嫌そうな表情を固定したまま正面を見据える。
ヴェントが座っているベンチに一方通行も腰を下ろし、自分用に購入した
缶コーヒーを開封して一息ついた。
335 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:43:51.49 ID:Myp3Dm6Go


ヴェントが操作するシュン=リーを撃破した後も二人の対戦は続いた。
総勢三九キャラの中からヴェントは立て続けにキャラ変更を行い一方通行に
挑み続けたが、何らかの波動に目覚めたとしか思えない動きを繰り出す
一方通行のリュウタに手も足も出なかった。一度、一方通行はわざと
ラウンドを落とす事でヴェントに勝利を譲ったが、彼女のプライドが
許さなかったのか、散々な非難を被った。


「……」

「……」


隣に座るヴェントの横顔を一瞥する。やはりムスッとした表情のまま
一方通行と目も合わせようとしない。だが二人の周囲にだけ漂う沈黙
の空気に耐え切れなくなったのか、ボソリと彼女が呟いた。
336 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:44:50.71 ID:Myp3Dm6Go

「初心者って言った」

「……いや、本当に今日この日までやった事なかったンだから、初心者だと申告しても語弊はねェだろ」

「初心者って言った」

「いつまでも初心者の腕前でいられる訳がねェ。 こォいうゲームは
 何度もやってりゃ誰だってある程度は上手くなるモンだしよォ」

「最初っから上手かった」

「……」


反論は許さないと言わんばかりに、ヴェントは一方通行の弁論に耳を傾けず
一方的に言葉責めを送る。悔しさを隠し切れない表情は変わらぬまま。
まさかこのヴェントが対戦ゲームで負けてここまで悔しがる性分だったとは、
と一方通行は意外に思ったが、いつだったか、番外個体と対戦ゲームで遊び、
そこで負けたヴェントが憤慨してゲーム機を叩き潰していた事を彼は思いだす。
337 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:45:50.27 ID:Myp3Dm6Go

「そォか、番外個体のヤツに敗北した事を未だに引きずってンだなオマエ。
 そこでゲーセンに通って腕前を上げて、あの女にリベンジしよォって魂胆か」

「……、」


返事はこなかったが、恐らく図星だろう。ヴェントが首を横に向けて
一方通行から完全に視線を外している。


「確かに割と楽しめたが、それでもたかがゲームじゃねェか」

「そのたかがゲーム如きで私は敗北を喫したのよ」

「ゲームで負けたくらいでオマエ自身の評価が上下する訳じゃねェだろ」

「私自身の気持ちの問題なんだよ、これは」
338 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:46:52.83 ID:Myp3Dm6Go

ヴェントはキッと一方通行を睨むと、彼が手に持っていた未開封の
缶コーヒーを乱暴に奪い、一気に飲み干していく。


「……アックアの野郎に手伝わせてまで練習したのに」

「あいつまで巻き込ンでやがったのかオマエ!?」

「アイツ、交通警備のバイトしてるでしょ。 昼休憩の時とかバイトが
 終わったあとにアックアを拉致ってここで対戦相手を務めてもらってたのよ」

「結果は?」

「アックア相手だったら私も善戦出来たけど、それでも一回も勝てなかった」

「ウィリアムがどれだけの腕前かは知らねェが、オマエ下手糞すぎンだろ」

「うるさい!」
339 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:47:49.93 ID:Myp3Dm6Go

頬を膨らませて再び不貞腐れてしまった。今まで彼女がほとんど見せた事のない、
人間らしい、女の子らしい仕草だった。対戦ゲームでの敗北が彼女の隠れた表情を
引き出しているのだろうか。一方通行はそんなヴェントを物珍しそうに観察する。


「何よ」

「いや、オマエにも子供っぽい面があるンだなと思ってな」

「うるせえな……別にいいでしょ。 私だってくだらない娯楽に熱中する
 事だってあるし、ゲームでも勝負に負けたら悔しいと思う心くらいあるわよ」

「科学嫌いのオマエがか。 そォいやここは科学技術で生み出された
 ゲームが腐るほど並べられてるが、平気なのかよ?」

「……」
340 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:49:21.35 ID:Myp3Dm6Go

ゲームセンターも突き詰めれば科学技術を利用して作られた娯楽が詰め込まれた、
ヴェントにとってはアウェイの塊でしかない施設だ。以前の彼女ならこのような
施設など視界に入っただけで憤り、その手で破壊し尽くしてしまっていただろう。


「平気じゃないわよ」


しかし彼女は滔々と語り続ける。


「平気じゃないけど、学園都市で生活すると決めた以上、いつまでも
 毛嫌いはしてられないでしょ。 その辺は既にアンタに散々語った
 はずだけど。 言ってしまえばこれはリハビリみたいなものかしら」

「無理して受け入れよォとする意向は賛成しかねるけどな」

「科学の結晶であるアンタとこうして一緒に過ごしてる時点で察しろよ。
 アンタに比べたらこの街やゲーセンなんて屁でもないわ。 いつまでも
 目を背けてられない、アンタが私と結んだ約束は意地でも守ってもらう」
341 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:50:09.10 ID:Myp3Dm6Go

「……そンな話もあったな」

「だから格闘ゲーム程度で躓いている場合じゃないって事よ」

「どォしてそこで格ゲーに繋がるのかは理解に苦しむがな、何も格ゲーじゃ
 なくたってイイんじゃねェのか? 対戦ゲームだけでも色々な種類がある
 ンだぞ? レースゲームとかシューティングゲームとかカードゲームとか」

「それじゃ逃げになるでしょ。 私は格闘ゲームであの女に勝ちたいのよ」

「結局そこに落ち着くのか……オマエ意外と根に持つタイプなンだな」


さて、とヴェントは立ち上がり、空になった缶をゴミ箱へ放り捨てる。


「続き、始めるわよ」

「まだやンのか……。 格ゲーにしたってさっきやったゲーム
 以外にも色々あるンだからよ、手ェつけてみたらどォだ?」
342 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:51:13.71 ID:Myp3Dm6Go

「番外個体にはこの格闘ゲームで勝利を得たいの」

「ますますガキの物言いだな……。 まァでもオマエの意外な一面が
 垣間見えて、俺としては結構面白かったりするからイインだけどな」


という訳で二人は再び『スパW』の筐体へとやって来た。
このゲームの筐体は二人がプレイした二台だけではなく、横二列で六台までズラッと並んでいる。
二人以外に『スパW』をプレイをしている学生を見つけた一方通行がある提案を申し出た。


「あそこでプレイしてるガキに乱入してみたらどォだ?」

「嫌よ、アンタとやりたいもの」

「つってもなァ……俺の腕前云々以前に、オマエ下手だからなァ。
 対人戦はともかく、CPU戦ならオマエでも楽に勝てるンだろ?」

「CPU相手にまともに戦った事ないからわからない」

「ここまで対人オンリーかよ……無駄にチャレンジャーだな」
343 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 07:52:15.33 ID:Myp3Dm6Go

一方通行は一〇〇円玉を筐体に投入する。デモプレイが流れていた画面が
タイトル画面に戻り、ボタン操作を要求してきた。そこにヴェントを座らせるが、
一方通行は対面の筐体へは向かわず彼女の背後から画面を眺めて言う。


「どうしたのよ」

「とりあえずアーケードモードってのをやってみろよ。 CPU相手に
 連戦して、最後まで辿り着いたらゲームクリアだ。 このモードで
 ゲームの基本動作を頭に叩き込め。 あと操作キャラも固定しねェとな」

「基本動作って……前に出て敵に攻撃するだけのお手軽ゲームだろこんなもん」

「そのお手軽ゲームで一つも勝利を掴めねェオマエは一体何なンだ」


一方通行は一度ため息をついて、ヴェントに最初のアドバイスを送った。


「まずオマエが覚えるべき操作は…………ガードだな」
344 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 08:01:26.28 ID:Myp3Dm6Go

今回はここまでです。

実際の格闘ゲームは一方通行が簡単にノウハウを極めたようにはいきませんけどね。
難しいですよね格ゲーは……。

私事ですが、ネット開通は思ったより時間がかかりそうで、完全に安定した投下を
行うには三月中頃までかかりそうです。なので次回更新は未定ですが、すんごい
暇なときにまた更新しますので、よろしくお願いします。

次回は垣根パートと、おまけのお話をひとつ。

それでは、今回もありがとうございました!
345 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/02/20(月) 08:01:53.22 ID:Myp3Dm6Go



                          【次回予告】



「あ? 何だよ、『カドゥケウス』って」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督




「聞きそびれたんだけど、どうしてお前は『黄金』なんかと関わろうとしてるのよ?」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――シェリー=クロムウェル




「エリザリーナ独立国の住人が居住区の大型船から行方不明に
 なっていた『法の書』を含めた原典を発見したらしい」
イギリス清教『必要悪の教会』の魔術師――――――ステイル=マグヌス




「私やステイルは管轄外デスので詳細はわかりませんが、神裂火織が
 『必要悪の教会』の魔術師として担当している事件の一つデスマス」
イギリス清教『必要悪の教会』の魔術師――――――テオドシア=エレクトラ



346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/20(月) 08:10:50.47 ID:P2Y0Lvfio

更新が止まらないSSってのは安心出来るなぁ
無理しないで頑張ってください
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/20(月) 08:34:11.23 ID:jjP4hS4fo
原典をBARに置いたままかよwwwwww
お菓子まみれになってる原典もあるだろうし、発見者もビックリだろうな
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/02/20(月) 08:34:13.82 ID:qvP7aTAa0
ヴェントかわええええええ!!

エイワスさんは船で読んでた原典そのままだったのね
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/02/20(月) 10:54:51.46 ID:6Rz87D500
エイワスさん何やってんすか

下手したら毒されちゃうよね
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 11:09:38.78 ID:nbEd/Tw5o
原典一般人が見たらどうするつもりだwwwwww
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/02/20(月) 11:12:52.53 ID:tLqxCEHAO
投下ありがたやー
>>1さん素晴らしい
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 11:44:41.44 ID:VMAf5mrDO
バナナさん可愛いよ目覚めてしまったぞどうしてくれる。

スーパーストライキファイターに噴いたwwww
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/02/20(月) 12:46:44.20 ID:bkroP5cbo
>>1
弁当さんが可愛いだと?

エイワスさん原典忘れてたのかよw
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/02/20(月) 15:47:52.60 ID:jXMdHk6AO
バナナさんが格ゲー舐めすぎふいた。スパ4はキャラが多すぎなんや…
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/20(月) 15:57:19.40 ID:6mi4SblAO
ヴェントたんかわえええええ
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 16:09:57.08 ID:GntWCSYIO
ヴェント「(格ゲーで)私より弱いヤツに会いに行く」キリッ
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/20(月) 16:53:17.22 ID:hlN7QfpR0
おい引越しで忙しいって聞いてたのに何架空のゲームの設定練り込んでんだコーヒー吹いたじゃねえか

格ゲーごときで不貞腐れてほっぺた膨らましたりするガードのゆるいバナナさんマジ天使
もはや天使同盟入らない方がおかしいレベルだよNE!
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/02/20(月) 18:28:32.84 ID:MLnE0poO0
バナナを上位に
レバーを下位に
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 18:28:55.46 ID:pmc/KGADO
エイワスぇ…

警察官がトイレに拳銃忘れた事件があったが、それよりひでぇ……
自衛隊が公園に戦車忘れたようなもんだぞ…
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 19:10:03.29 ID:wFssamQg0
ヴェントさん・・・ホントみねね化してるな・・・・
誰かが「結婚してくれ」と言ったら、結婚式やその後のことを妄想しそうだ。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/20(月) 21:00:17.82 ID:U85A/2Zj0
いちおつ!
どうでも良いけど自衛隊が戦車を公園に忘れるってどんなシチュエーションだよ
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(和歌山県) [sage]:2012/02/20(月) 21:24:22.22 ID:8Tj74WDr0
>>1はスパ4やってんのか…どんなキャラ使うんだろう?
それはそうと更新ありがたや〜
しっかりSS更新する>>1さん素晴らしい
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/20(月) 21:26:01.33 ID:pmc/KGADO
>>361
戦車でドライブ中にもよおして、公園でトイレ借りたらそのまま忘れた

みたいな?
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/02/20(月) 22:14:09.41 ID:0OGa2HpX0
IDがPMCになってるww
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/02/20(月) 23:18:58.62 ID:P9kiwjlAO
>>1

やっと追い付いたと思ったら引越し…まあ無茶しない程度に頑張ってください


ってかエイワスさんマジ最てi…おや、誰か来たようだ
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/02/20(月) 23:53:03.12 ID:/NT01edso
>>1
クロウリー関連の魔道書って汚染ヤバイらしいじゃないですかーやだー
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/02/21(火) 11:28:16.04 ID:aT/vCKLu0
見たら即死だーAhahaha
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/22(水) 12:35:59.77 ID:il+cOHOIO
>>361
内陸に打ち上げられた大型客船のバーで原典読みふけって置き忘れてきました
ってのも>>363と似たようなもんだと思うけどな
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 20:40:18.92 ID:1WMdSv9DO
そろそろ2週間か…


と思ったら3月半ばまで延長か……orz
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/25(土) 22:22:42.86 ID:5/6QI/R30
そうか、三月まで無いことをすっかり忘れていた…
それまでは学校休むかな…
371 ::VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/28(火) 02:09:47.63 ID:QpO3Sy290
無性に素ヴェントさんが描きたくなったから支部に>>338の挿絵的なもの上げてきた(下手でゴメソ)
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 02:28:26.29 ID:DERNHz3DO
>>371
URLはよ
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 03:48:40.24 ID:VhHzHTDUo
>>372
天使同盟で検索すればいいんじゃね?
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 04:54:27.18 ID:DERNHz3DO
>>373
トンクス

見付かった


ってか、ヴェント・画像 でググったら仮面ライダー龍騎がいっぱい出たわ
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/01(木) 20:08:15.90 ID:XHrVrZzy0
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 21:01:00.65 ID:D2NG3hHho
>>371
本当に下手だな
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/01(木) 21:14:06.23 ID:Nyi3JTZAO
>>376
わざわざ言う事か?
絵の巧拙とは関係無しに支援絵が増えるのはいいことだ、お前みたいなのがいると支援絵減るんだよ黙ってろ
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/01(木) 23:07:38.64 ID:uboSfq6E0
>>376 すいません。言い訳になっちゃうけど衝動描きで時間かけずに描いたもんで
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/02(金) 01:13:28.27 ID:DUSkX17vo
つまり時間かけた丁寧な絵を見せれば解決か
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/02(金) 09:56:05.23 ID:ewsJkg6Lo
>>377
支援絵増えるのはそんなにいいことかい?
下手を下手と言うことに問題があるとも思えんし
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 11:15:39.95 ID:PRkWFl6IO
支援絵云々はどうでもいいがこうやってギスギスするのは良い事ではないな

おっぱいの話しry
382 : [sage]:2012/03/02(金) 11:37:16.49 ID:PrIHfmgDO
>>380
少なくともいいことではないな

美的感覚は人それぞれだから上手い下手の正確な判断基準はないし、結局称賛はともかく批判はしないほうがいいってわけよ
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/02(金) 13:22:42.47 ID:onKX5BOZ0
けんかいくない
そういうのは個々人で判断することであって全体に発信する必要はない
求めてないから

だからおっぱいのはなししようよ!
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 13:41:24.02 ID:48+er5X5o
僕はオルソラちゃん!
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 14:29:49.34 ID:PrIHfmgDO
ナージャもなかなかだと思うんだ
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/02(金) 18:47:28.65 ID:wODr83fAO
何故かおっぱいというとオルソラばかりで風斬が出てこないのか
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/02(金) 23:45:44.11 ID:Nvis+qcZ0
風斬最近影うす・・・あれ、こんな時間に誰だ?
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 01:03:03.20 ID:1Jb2H4IDO
おっぱい→オルソラ オリアナ 氷華 むぎのん などなど10人前後?

ちっぱい→美琴 アンジェレネ 絹旗 妹達 などなど1万人前後


とあるではおっぱいよりちっぱいの方が多い

つーわけで、お前らちっぱいの話しようぜ!
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 09:58:25.27 ID:zTJ2UWtv0
俺はフレメアちゃん!
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 12:53:09.23 ID:zmaZRnNQo
絹旗ちゃんの乳首をダブルクリック!
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/03(土) 13:37:17.20 ID:srWNckAz0
>>390
きぬはた荘www
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/03(土) 17:56:44.85 ID:znmay+SAO
意外と盲点になりがちだが男性にも脂肪、乳腺の発達はないものの「胸」は存在する
というわけで一方さんの貧弱ちっぱいぺろぺろ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/03(土) 18:02:36.47 ID:vZ4dM+ai0
>>392 お前変態だろ
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/03(土) 20:44:35.85 ID:1gEJ+nkBo
僕の御坂美琴ちゃんはいただいていきますね
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/03(土) 21:54:36.57 ID:tAEFv2fio
じゃあ俺はレイヴィニアたんとパトリシアたんにうさぎパンツ履かせてもらっていきますね
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/03/03(土) 22:40:14.05 ID:srWNckAz0
>>394->>395
そげぶ
397 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:31:30.34 ID:vb7leFHWo
>>371
ありがとうございます!励みになります。なんならもっともっと書いてくれていいのよ?


暇、です。暇で暇でお腹と背中がくっつきそうな>>1です。
まあ私事など投下が終わってからにしましょう。


というわけでお久しぶりに更新をば。
前回は……なんでしたっけ、一方通行とヴェントがゲーセンで遊んだのか。
今回は垣根の話とかおまけの話を投下します。

では、よろしくお願いします!
398 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:32:19.42 ID:vb7leFHWo


――――――――――――――――――――――


『必要悪の教会(ネセサリウス)』の女子寮にステイルとテオドシアがやって来た。
寮内で『暴徒』や『明け色の陽射し』についての情報を聞き出していた垣根が
軽く手を振って二人に応じる。


「よう、本当に来てくれるとは思わなかったぜ」

「わーお、こんな所に『必要悪の教会』の領地があったとは驚きデスね」

「『必要悪の教会』所属の魔術師、ステイル=マグヌスと
 テオドシア=エレクトラだ。すまないが少し失礼するよ」


垣根と適当に言葉を交わして寮に住むシスター達に挨拶を済ませると、
二人は垣根が座る席の隣にそれぞれ腰を落ち着けた。ステイルが煙草に
火をつけようとすると、周囲のシスターが若干迷惑そうな顔を浮かべる。
399 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:32:55.82 ID:vb7leFHWo

ステイルは仕方なく喫煙を諦め、何やら数枚の書類に目を通しているシェリーに言葉をかけた。


「……シェリー=クロムウェル、イギリス清教からの招集命令を
 幾度と無く断っているらしいけど、どうして応じないんだい?」

「何、お前ら本部に戻ってたの? ……招集命令ったってどうせこの私にも
 『必要悪の教会』の魔術師として暴徒の連中の淘汰に尽力しろとかそんなん
 だろ? 人手なら充分足りてるでしょうし、私まで参加する必要はねえよ」

「ていうかぶっちゃけ面倒なだけデスしょ?」

「有り体に言えばそういう事ね。 暴徒の件についてはさっきも
 こいつに話したけど、私自身は興味がないもの。 そろそろ
 王立芸術院の方にも顔出ししなきゃならねえし、興味の無い事で
 養った英気を無駄に浪費したくねえんだよ。 てなわけでご勘弁」
400 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:33:55.04 ID:vb7leFHWo

「養った英気? ふん、この寮で自堕落に生活を送っていただけの
 君が一体どう英気を養ったというんだ? バカも休み休み言え」

「うるせえな、一応本部からの通達は手紙を通して受け取ってやってんだから
 別に問題ねえだろうが。 お前らの方こそ、バチカン図書館の件の解決を
 一任されてるんだろ? 『法の書』を始め世界各地から蒸発した原典の捜索、
 本部からの手紙で『必要悪の教会』の魔術師が担当してる案件の一覧が記載されてたぞ」

「『法の書』?」


反応を示したのはステイル達ではなく垣根帝督だった。
彼は眼鏡のシスターが淹れてくれた紅茶を一口含みながら尋ねる。
401 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:34:46.96 ID:vb7leFHWo

「それってアレだろ、アレイスターのクソ野郎が書いた魔導書とかいうヤツ」

「あら、知ってるの?」

「一度だけ目を通した事があるからな。 あの本なら確か―――」

「原典捜索の件なら本部で解決の目処が立った事を知らされてるよ」


そこでステイルはなぜか垣根の顔をジロッと睨みつけ、呆れた調子で
ため息をつくと話を続けた。


「僕らと垣根帝督達がロシアを発った直後の事らしいけど、エリザリーナ独立国の
 住人が居住区の大型船から行方不明になっていた『法の書』を含めた原典を発見
 したらしい。 魔導師のエリザリーナが極めて慎重に調べて本物だと判断したから
 間違いないだろう。 後日、原典管理課の魔術師達に引き渡すそうだ」
402 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:37:15.26 ID:vb7leFHWo

「船?」

「あー……」


シェリーが訝しげに眉をひそめるのに対し、垣根は罰の悪そうな顔を浮かべていた。
船とロシア、そして原典というワードがどう結びつくのかシェリーには理解出来ず、
苦笑いをする垣根に問いただす。


「…………お前らの仕業か?」

「俺らっつーか、エイワスの仕業だよ。 あー、ここではまだドラコって
 名前じゃねえと通らねえんだっけ? あの野郎、確か各所から原典を
 かき集めちゃ読みふけってやがったな。 返本し忘れてたんだろう」

「僕の聞き間違いかな? 今、君、『法の書』に目を通したと」

「ああ、頭痛くなってまともに読めなかったけどな」

「そのまま死ねばよかったのに、まったく君たちは……」
403 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:38:04.54 ID:vb7leFHWo

「返本って……原典をそこらの図書館から借りた書物みたいに言わないで
 欲しいのデスが。 しかし『法の書』紛失事件もあなた達『天使同盟』が
 関わっていたとは……。 こうなると『カドゥケウス』の件もあなた達が
 一枚噛んでいるのではと根拠もなく疑ってしまうのでマスが…………」

「あ? 何だよ、『カドゥケウス』って」


テオドシアは金と銀が混じった髪を指で弄りながら適当に答える。


「私やステイルは管轄外デスので詳細はわかりませんが、神裂火織が
 『必要悪の教会』の魔術師として担当している事件の一つデスマス。
 イギリス某所にある霊装保管施設で厳重に保護されている呪いの杖
 なのマスが、例の暴徒がカドゥケウスの杖を強奪しようと暗躍している
 不確定情報がイギリス清教に飛び込んできまして」
404 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:39:19.02 ID:vb7leFHWo

「いわくつきの杖ってか。 残念ながら心当たりはねえな」

「君に心当たりがなくても、他の構成員はそうじゃないかもしれない」

「?」


ステイルが複雑な顔をしながら会話に割って入る。


「本部で聞いた話だが、神裂火織は現在学園都市に居るらしい」

「あぁ、そういや来てたな」

「学園都市に魔術師が赴く用件なんて、現時点では『天使同盟』絡みの
 何かとしか僕には思えない。 君達が及ぼした影響であの街には現在
 無意味に魔術師が集まっているからね。 学園都市にカドゥケウスの
 情報を持っている誰かが居るのか、或いは『天使同盟』に協力を仰ごう
 とでも考えているのか……。 後者ならば、君以外の構成員に何か
 心当たりがあるのかもね。 土御門元春は別件で動けないようだし」
405 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:40:16.22 ID:vb7leFHWo

「そういう事かよ。 ま、何にせよ俺達をアテにはしねえ方が得策だと思うけどな」

「同感だ」


ステイルは忌々しげにしながらも垣根の言葉に頷いた。

どうやらステイル達の現状報告が終わった事を察した垣根は、
シェリーが持ってきた書類の一枚を手に取って話を切り出した。


「それで? "こいつ"の件に関してはどうだったんだ? グラスゴーで
 『明け色』の連中が暴徒とぶつかったんだろ? お前らがここへ来た
 って時点で既に事は何らかの理由で収拾がついたと推測出来るが」

「逃げられた、そうデスよ」


テオドシアが淡々と結果報告を述べた。
406 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:41:27.55 ID:vb7leFHWo

「『明け色』の魔術師が暴徒の連中を何人か生け捕りにして情報を
 吐かせようとしたみたいなのデスが、捕らえた暴徒は全員自殺。
 残った連中も死に物狂いで『明け色』から逃げ延びたらしいデス」

「遅かったか。 チッ、確実に会える機会は逃したくなかったんだが……
 ここでのんびりと茶をしばいてる場合じゃなかったかな。 面倒くせえ」

「聞きそびれたんだけど、どうしてお前は『黄金』なんかと関わろうとしてるのよ?」


シェリーの疑問に垣根は軽い口調で答えた。


「単純な好奇心だよ。 ほら、俺が『禁書目録』に触れちまった事は
 話しただろ? あれの影響で魔術が使えなくなっちまってな。
 『明け色』の連中がどういう魔術を使うのかも気になるし、あわよくば
 そいつらに魔力を取り戻すコツのような教鞭をもらえりゃ儲けもんだろ」
407 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:42:33.85 ID:vb7leFHWo

「何も『黄金』じゃなくても、魔術結社は他にも腐るほどあるでしょう」

「別に『黄金』にこだわってる訳じゃねえんだ、色々歩いて回ってんだよ。
 だがまぁ、聞けばそいつらは魔術サイドの中でも有数の力を持ってる
 らしいし。 どうせコツを聞くならスペシャリストの方がいいだろ」

「ふうん、欲深な考えだけど……一理あるかもな」


だけど、とシェリーは前置きをして、


「会おうと思って会える連中じゃないわよ、『明け色の陽射し』は」

「普通に会おうと思えば、そうだろうな。 まさかアポ受付
 のために連中が公式サイトなんざ運営しちゃいねえだろうし」
408 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:43:32.95 ID:vb7leFHWo

「どうするつもりだ? 君は暴徒も叩こうと考えているんだろ?
 相手は小規模とはいえ、戦力は多いに越したことはない。
 君が望むなら僕達との行動を許可しても構わないが…………」

「ああ、でもその前にやっぱ『明け色』のヤツらとは会っておきてえ。
 確かそいつらはそいつらでアジトを構えてるって話だったよな?」


それがどうした、とでも言いたげにステイルは首を傾げる。
この女子寮に顔を出す事を優先したが故に『明け色の陽射し』との
接触の機会を逃してしまった垣根だが、なぜか彼の表情は余裕が窺えた。


「拠点さえあるなら、あとはこっちで『明け色』の居場所を掴めるはずだ」

「どういう意味デスか?」

「俺のバックには優秀な"駒"が控えてるんだよ」
409 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:44:59.75 ID:vb7leFHWo


――――――――――――――――――――――


常盤台中学敷地内。


風斬氷華は何故か必死で顔も知らない男の身を擁護していた。


「で、でもアンジェレネさんの説明を聞いた限りでは……この人が
 ストーカー行為を行なっていたという根拠にはならないじゃないですか。
 状況証拠が圧倒的に不足していますし……今回は許してあげてもいいんじゃ……」

「いいえ、疑わしきは罰する、です!」

「それを言うなら『疑わしきは爆する』でございますよ、アンジェレネさん」

「それ『爆弾魔(ボマー)』ですよオルソラさん…………」


シスター二人のボケに苦笑しながらツッコミを入れる風斬。
ちなみに、正しくは『疑わしきは罰せず』である。
410 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:46:24.67 ID:vb7leFHWo

朝の散歩をしていた風斬は常盤台中学付近でオルソラ=アクィナスと
アンジェレネのシスターコンビに出くわした。二人の修道女の右腕には
『風紀委員(ジャッジメント)』の腕章が装着されていた。

何でも昨日、風紀委員の体験講習を受けたとかで二人はすっかり風紀委員の
お仕事にハマってしまい、第一七七支部にワガママを申し付けて体験講習の
実行期間を延長してもらったらしい。ただオルソラの場合、風紀委員の腕章が
欲しかったというガッカリな理由で講習に参加しているようだが。


で、そんな二人がどのように風紀委員らしい働きをしていたのかというと、




「あの……そういう事ですので、そろそろ自分を解放していただくわけにはいきませんか?」




411 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:47:31.94 ID:vb7leFHWo

見るからに優男といった風貌だった。柔らかな声色でその少年は風紀委員の
取り調べの解放を要求する。茶色の頭髪、何をやらせても様になりそうな
典型的サワヤカフェイス。

モデルをやらせたらそこそこのファンが発生しそうなその美男子の名は、海原光貴といった。


「自分は本当にただここを通りかかっただけで……ストーカーだなんてとんでもない」

「通りかかった? その割にはずいぶんと常盤台中学の女子寮を気にかけている
 ような仕草をしていましよね? 何度も何度も常盤台の敷地内をぐるぐる
 歩き回って……、特に女子寮に視線が集中していた点がまた怪しいです!」

「今は一端覧祭期間中。 普段お目に掛かる事のない常盤台中学に足を運んで
 見学するくらい誰だってするでしょう? 自分もその一人ですよ。 女子寮に
 視線を向けていたというのは濡れ衣でしかありません、貴女の思い違いです」

「そ、そうですよアンジェレネさん……ちょっと警戒心を高め過ぎて人の動きに
 過剰に反応しすぎなんですよ。 こんな人柄の良さそうな海原さんがそんな……
 ストーカーだなんて不審な行為に走る訳がないじゃないですか……」
412 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:48:26.93 ID:vb7leFHWo

海原の弁解に風斬も乗っかる。どうやら彼女は海原寄りにこの状況を見ているらしい。
普段アンジェレネ達とも仲が良いだけに、当のアンジェレネは風斬の態度にちょっとだけ
不満を抱いていた。その証拠に、何だか不貞腐れてたように頬をぷくっと膨らませている。


「人を見かけで判断しちゃいけませんよ風斬さん……! 大体、確かに一端覧祭中は
 常盤台の敷地内もフリーになっていますが、それでも生徒が利用する女子寮は
 立ち入り禁止の規定が設けられています。 にも関わらず、足音を殺して寮の周辺を
 ウロウロとしている人を見つけたら風紀委員として見逃すわけにはいかないんです」

「人を見かけで判断してはいけない、か。 あははは……言い得て妙ですね」

「?」

「あ、いえ。 独り言です、気になさらないでください」


海原は何故か視線を泳がせてポリポリと頬を掻くが、三人は彼の微妙な感情の
変化に気付く事が出来なかった。
413 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:49:44.21 ID:vb7leFHWo

「それで……どうすれば自分は身の潔白を証明する事が出来るのでしょうか?」


困ったような笑みを浮かべながら海原は尚もアンジェレネに無実を主張する。
アンジェレネは柔和な笑みを浮かべる海原の顔を尚も疑うようにジト目で見上げていたが、
やがて思い直したようにこう言った。


「うーん……でも、風斬さんの言う通り……私の判断もちょっと早計過ぎたかもしれません。
 海原さんが嘘をついている可能性も否定出来ませんが、同時に海原さんが女子寮の常盤台
 生徒目当てに愚行に走ったというのも確定ではない。 ……やっぱり風紀委員は簡単じゃないですね」

「今回は厳重注意、という事でよろしいのではないでございましょうか?」


ふわぁぁ……、と退屈そうにあくびをしながらオルソラが意見を出してきた。
重たそうに瞼を瞬きさせている所からして、彼女は昨夜あまり眠れていないのだろうか。
414 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:50:43.36 ID:vb7leFHWo

「根を詰め過ぎているアンジェレネさんにも多少非はあるでございましょうが、
 立ち入り禁止の女子寮敷地内に入り込んでいた海原さんもそれは同じにございます。
 ここはお互い様という事で収束させても構わないと思うのでございますが……」

「…………そうですね、うん」


アンジェレネは得心いったように頷くと、


「海原さん、この度は早計な取り調べで不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。
 ですが先も申し上げました通り、女子寮周辺は立ち入り禁止ですので、その点だけは充分に
 注意を払っていただけると助かります。 私に対する苦情はお手数ですが第一七七支部の方に……」

「あぁ、いえいえ。 立ち入り禁止区内に入り込んだ自分の不注意が悪かったですし、
 風紀委員の貴女方に抗議をするつもりなんて毛頭ないですので、ご安心ください。
 それに助かりました、貴女達にこうして呼び止められなければ自分は本当に拘束されて
 しまう所でした。 改めてお礼と謝罪を申し上げます。 本当にありがとうございました」

「これにて一件落着、なのでございますね」
415 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:51:42.44 ID:vb7leFHWo

互いが互いの非を認め合う事で今回のストーカー疑惑の件が解決し、その場に居合わせた
風斬もホッと胸を撫で下ろした。
海原は最後にもう一度三人に頭を下げると、踵を返して常盤台中学敷地内から出て行く。


(…………………………………………ふう)


風斬達からは窺いようがないが、この時海原の顔は冷や汗にまみれていた。
実は今回彼にかけられたストーカー疑惑。あながち濡れ衣という訳ではなかったのだ。


まず、彼の名前は海原光貴ではなくエツァリである。顔も容姿も、果ては口調までが
嘘っぱち。彼は学園都市の人間ではなく魔術サイド、アステカの魔術師だ。
海原光貴という仮の姿は彼が学園都市で活動する際に利用している術式によって作られた
仮面である。
416 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:52:42.91 ID:vb7leFHWo

さらに彼はもう一つ、『グループ』という学園都市暗部構成員の顔を持っているが、
今回は暗部も魔術組織も関係なく、単に街をぶらついていただけだ。彼には想い人が
おり、その想い人が常盤台中学の生徒であるため、"『海原光貴』という姿で常盤台に
近づく危険性"を棚にあげて想い人の様子を見に行こうとしていたのだが、


(いやぁ……マジで危なかったですね。 風紀委員や警備員には警戒していたのですが、
 まさか修道服を着た風紀委員がいようとは……ていうかあのお二人完璧に魔術サイドの
 人間ですよね。 どうしてシスターがこの街に、しかも風紀委員として…………)


ともあれ、自分の立場を危うくしてしまいかねない火遊びは控えよう、と
海原光貴は『同僚』が待っている病院へ足を運ぶ事にした。
417 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:54:20.42 ID:vb7leFHWo

その一方、


「あー!? う、海原さん、ついさっきここへは近寄るなと忠告したはずですよ!?
 ていうかさっきあっちの方向へ歩いていったのに一体どうやって後ろから!!?」

「あ、え? いえ、確かに自分がここへ立ち寄る事は普段無いというか出来ない
 のですが、今回は女子寮の寮監に寮内の規則変更についての書類をお届けする
 ために……。 あれ? あの……その、何でしょう、その変質者を見るような目は……」

「積極的なのはとてもいい事でございますが、海原さんの場合は少々度が過ぎると言いますか……」

「へ?」

「取り調べ、いいえ、問答無用で拘束でっす!」

「ちょ、ちょっと!? 自分は"今ここに来たばかりで"……うわぁ!?」


困惑が極まった表情もまた様になってるなぁ……、と風斬はシスター風紀委員の
二人に強制連行される『常盤台中学理事長の孫』をのん気に見送りながら呟いた。
418 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:55:49.23 ID:vb7leFHWo


――――――――――――――――――――――


お姉様を慕う純血乙女、白井黒子の朝の目覚めは微妙に複雑なものだった。


「ぬう……」


寝起きでボケーッとしている頭を白井は"その光景"を網膜に焼き付ける事で覚醒させる。
彼女の視線の先には、すぐ隣にあるもう一つのベッド。
そこに眠っている少女を、白井は心から尊敬し、愛していた。


「ぐぬぬ……」
419 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:57:00.92 ID:vb7leFHWo

常盤台中学女子寮の一室。ここには二人の生徒が住んでいる。
一人はさっきから隣のベッドを素人目には落書きにしか見えない絵画を
見るような目で見つめ続ける少女、白井黒子。

もう一人は、そんな白井が絶対の信頼を寄せているお姉様、御坂美琴であった。

学園都市第三位の超能力者という肩書きを抜きにして、白井は美琴を尊敬していた。
尊敬という道から時には恋慕、終いにゃ欲情という歪んだ方向へ走ってしまう事も
あったが、ともかく白井は御坂美琴を慕っていた。


そんな白井は、すやすやと寝息を立てる美琴を見て若干"引いていた"。
可愛らしい寝顔を浮かべる美琴にではない。美琴が抱き枕のようにギュッと
抱きしめている『それ』を見て引き気味になっているのだ。
420 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:58:01.66 ID:vb7leFHWo

(ま、あの類人猿よりかはなんぼかマシかもしれませんけど)


抱き枕扱いを受けている『それ』が白井ならば本人も本望でだろうが、
残念ながらそれは白井でも無ければ、彼女が言う類人猿なる殿方でもなく、
ましてや美琴が熱中しているゲコ太の巨大ぬいぐるみでもない。
そもそも美琴が抱きしめているそれが人間だったら、白井はそれが誰であろうが
テレポート→ギロチンのコンボをお見舞いしていただろう。


ではなぜ白井が何の行動も起こさないかというと話は簡単、『それ』が人間ではないからだ。




「…………。 uryap、apvmr起床zbvort」

「あら、おはようございます。 "ミーシャ"さん」



421 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 02:58:52.75 ID:vb7leFHWo

異形にして異常。怪異にして怪奇。この世ではない別位相の住人。
正真正銘本物の大天使。水を司る『神の力(ガブリエル)』。

ミーシャ=クロイツェフが常盤台中学女子寮の一室で新鮮な朝を迎えた。

ミーシャはまだ慣れない部屋の光景を首を動かしながら見回し、そこでようやく
自分が美琴に思いっきり抱きつかれている状況に気付いた。


「?」

「あぁ、申し訳ございませんの。 どうやらお姉様ったら、貴女を枕と勘違いして
 就寝なさっているようでして……。 出来ればそっと、お姉様を起こさぬように
 ゆっくりそこから降りてきてほしいのですけど…………」

「……」


大天使様からの返事は無い。そもそもこっちの言葉が通じているのかも定かではない。
白井は朝っぱらから怪奇現象に直面したような寒気を背中に感じるハメになった。
422 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:00:05.42 ID:vb7leFHWo

彼女はミーシャ=クロイツェフと面識がある。常盤台中学の能力実演で美琴が
ミーシャと少年漫画のようなバトルを展開する少し前、校内で不思議な赤い髪の
男と共に常盤台へ訪れた天使と出会っている。

だがその時のミーシャは全身を黒のガウンで包み込んでおり、


(……一夜で慣れるものではありませんわね、この方の異形過ぎるお姿は)


現在のようにガウンを脱ぎ捨て、灰色のような白のような薄気味悪い肌や
葉脈のように全身に走る金色の装飾、製作途中の人形のような顔、頭部から
後ろへ流れるように広がるラッパ状の布は披露していなかった。
423 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:01:11.01 ID:vb7leFHWo

「ミーシャさん、念のため聞いておきますけれど……わたくしの事は覚えておいでで?」

「…………。 chfri白黒apijtv」

「何だかものすごく失礼な事を言われた気がしますが、やっぱり言葉が理解出来ないですの……」


するとミーシャはコクン、と首を縦に振って頷いてみせた。
コミュニケーションが成立した事に白井は一瞬喜んだが、同時に謎の疲労感が襲ってきた。


(まぁ……お姉様自身がご友人であると仰るのですからわたくしも受け入れますが……
 実際あり得ますのこれ……? ていうか何ですのこの方は? 人? いいえ天使です。
 いやいやそれでハイそうですかと得心いく人間などこの世にいてたまるものですか)
424 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:02:13.72 ID:vb7leFHWo

昨日の事である。一端覧祭誘拐事件解決に助力した御坂美琴が部屋に帰ってきて、


『黒子ー、今日はちょっともう一人部屋に入れたいんだけど、大丈夫?
 一応寮監にも奇跡的に許可は得られたし、いいわよね? 答えは聞いてない』


問答無用とばかりに部屋を招いたのがこのミーシャ=クロイツェフとかいう化物だった。
既に面識があった白井は訝しく思いながらも最終的には快く天使を迎え入れた。

しかし、さぁお風呂へ入ろうという話になった際、ガウンを脱ぎ捨て『真の姿』を
披露した時に白井が放った絶叫は恐らく天界まで届いていただろう。何事かと部屋へ
やって来た寮監の目からミーシャを隠すのにかなりの苦労を強いられた。
美琴もミーシャの全裸(?)姿にやはり驚きを隠せないでいたが、それでもある程度の
耐性が付いていたのか、白井のように悲鳴を上げるような事はなかった。
425 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:03:30.79 ID:vb7leFHWo

「cnyeu何処aqwyrlsy」

「何をさっきからキョロキョロと……。 貴女は昨日、お姉様に招かれて
 この部屋へいらしたんですのよ。 覚えていませんの? お風呂でわたくしを
 溺死寸前に追い込んだ事や、お姉様の美しい裸体に卑猥な行為を……って、
 まぁそれはわたくしが言えた事ではございませんが……」

「hditu把握bnriq」


どうやら見慣れない部屋に少しだけ困惑していたらしく、白井の事情説明を
聞いたミーシャは全てを思い出したようにうんうんと頷いた。


「……それで、その、そろそろお姉様から離れていただけると
 わたくしとしましても安心というか何というか……ね?」

「xbnitud了解lparrnc」

「…………ん。 んん、うぅん…………」
426 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:04:51.54 ID:vb7leFHWo

と、ミーシャが美琴のホールドから抜けようとした時、微かに声が漏れた。
音源は御坂美琴。彼女はするりとミーシャに絡みつけていた腕を解くと、
こしこしと寝ぼけ眼を手でこする。


「ふぁ……黒子〜……おは―――」

「mvncv美琴alwtrd」

「――――…………ようございますぅ」


目を開けるとそこは、出来損ないのマネキンみたいな顔が視界いっぱいに広がった世界だった。
美琴は一度目を閉じ、再び瞼を開き、やはり視界を覆い尽くすは人外の顔面である事を確認すると
うむ、とゆっくり頷いて―――――。




「うっぎゃあああああああああああああああああああああああ!!?!?!!?!!?」

「お、お姉様! お気を確かに! ていうかお姉様が連れてきたのですわよこの怪物!!」




ネズミを見つけてしまった青いタヌキのように、美琴はベッドから勢い良く跳躍した。


不思議そうに首を傾げるミーシャ。白井は天から舞い降りた天使が誘う騒がしい
朝の光景に頭を抱えるしかなかった。
427 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:13:31.08 ID:vb7leFHWo

今回はここまででーす。


しかし、暇です。引越しのゴタゴタも終わって、やっと腰が落ち着いて、
しかも私が働いている店が改装するということで長期間お休みになり、
思わぬ休暇を得たのはいいのですが……

ネット環境が未だに成立していないため、とにかく暇すぎる。
私からネットをとったら仕事と書き溜めしか残らないとか……悲しすぎるだろ。
書き溜めはたまっていく一方で、しかし投下は自由にできないという。


まあでも、こんな風にたまには投下していきますので、皆様もうしばらくお待ちください。
ったくこんなに時間かかるとは思わなかったですよ……


次回更新は未定。


それでは、たくさんの支援に感謝しつつ、また次回よろしくお願いします!

428 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/04(日) 03:14:10.02 ID:vb7leFHWo



                          【次回予告】



「あ、あと一ミリ!! あと一ミリだろこれ!? ど、どうする? どうすればいいのよ!!?」
ローマ正教禁断の組織、『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「イイか、とにかく落ち着け!! 強攻撃を意味もなく振ったりするクセを直せ!!」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)――――――一方通行(アクセラレータ)



429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/04(日) 03:14:34.64 ID:Za9jp+HPo
乙!!!!!
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 03:17:18.10 ID:MBwtrKEIO
海原ェ……
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/04(日) 03:24:30.67 ID:G/xAaEG3o
乙!!待ってました!
今回も面白かったww

しかし美琴がここまで魔術に関わっているのにあの上条さんに動きがないのがふしぎだwwww
あと魔術のスペシャリストであるインデックスがフィアンマとかガブリエルとかの膨大な魔翌力に気づいてないのも不思議
まあ面白ければなんでもいいけど

>>1さん次も楽しみにしてます!
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/04(日) 04:42:05.30 ID:rEMhN/Kg0
超乙!!!!!
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 06:48:53.28 ID:ZW/ixV1DO
乙!!

書き為のストックが溜まるのはいいことだ!
時間があるとついつい番外編とか書いちゃうからね
番外編とかね番外編
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/04(日) 07:05:50.14 ID:cL1fwEPM0
美しい裸体への卑猥な行為とやらを詳しく
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/04(日) 07:17:01.80 ID:zM3lRX6AO
私も是非とも詳しく聞かせてもらいたいものだな、その美しい裸体への卑猥な行為とやらの全容を
これ以上ないくらい、ねちっこく具体的に描写をお願いしたいんですがね
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/04(日) 07:22:07.56 ID:WVKIinXh0
イケメン(本物)はそろそろアステカ(笑)を分子レベルで固めて大西洋に不法投棄しても許されるレベル
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/04(日) 10:02:58.24 ID:a5wKrec20
相変わらずのクオリティ!いちおつー!

アステカ歪みねえな流石だわwwwww
まあ、ショチトル放っぽってる彼は爆すればいいと思うよ

438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/04(日) 10:50:17.17 ID:XH9q/wUI0
海原とばっちりじゃないっすかー
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 11:14:18.56 ID:LtPsqugIO
>>1いつも乙
書き溜めも進まなくなったら蛇足の蛇足を書き始めてもいいんじゃよ
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/04(日) 12:43:49.35 ID:mGrObkUDO

かみじょーさん出てきたら
うっかり不幸で
ミーシャ消しちゃうかもな
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/03/04(日) 14:20:50.53 ID:Vc99ObGxo


抱き枕にされるミーシャwww
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/04(日) 21:57:50.53 ID:7EbiwStAO
まだあったんだこのシリーズ
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/04(日) 23:31:13.83 ID:EmwxWcqA0
>>1は電王好きなの?
一方通行、心理定規、美琴で三人目だぜ答えは聞いてない
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/04(日) 23:34:06.64 ID:ZXBbb8rq0

続きが楽しみだ
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/03/04(日) 23:34:54.59 ID:ZXBbb8rq0

続きが楽しみだ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/06(火) 10:06:11.59 ID:oTAZzG2f0
>>1乙!!

予告のヴェントがヤバい体力が1oの時はマジで白熱する
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2012/03/09(金) 11:40:55.80 ID:6Ku799NAO
来ないと思ったらまだネットに繋げないのね
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/09(金) 15:14:14.91 ID:kXhcWY1xP
禁書の格ゲーは上位勢のお手軽永久とシューティングで構成されるゲームだったわけだが
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/03/12(月) 21:42:26.36 ID:bGq7vNLXo
おっぱい
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/13(火) 00:38:47.85 ID:GlnbNB8a0
gdtlmalおagphwiっぱいdjbqdtami
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/13(火) 19:06:51.52 ID:uLfnpu6bo
確かに忘れがちだがミーシャのおっぱいも目を見張るものがある
しかも全裸!全裸!!
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 22:36:50.02 ID:XV7jzwDXo
身長との対比で考えるとB100オーバーだな、ミーシャは
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/15(木) 23:05:40.74 ID:Hh2PLBDSO
まつわ
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/16(金) 00:58:13.46 ID:qReJkBsh0
いつまでも
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/16(金) 01:02:28.72 ID:Ie5/hn/lo
もむわ
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/16(金) 01:43:37.35 ID:mf4DL6rDO
バーバヤーガ「///」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送 りします [sage] :2012/03/16(金) 13:38:32.96 ID:CPbFQtdm0
追い付いた…(ふぅ
垣根×ルチア好きだなー
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/03/16(金) 13:50:53.27 ID:D1QLoW1J0
期待したら…

>>457
sageの場所違うぞ
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/03/16(金) 16:47:14.26 ID:GDr1ANUAO
にゃぁ
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/17(土) 01:04:45.04 ID:5uTdzrFY0
にゃにゃ
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/17(土) 01:05:42.08 ID:KLtew3Pko
にゃーん
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/17(土) 01:20:26.22 ID:W8GmRPHf0
にゃーにゃーにゃん
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送 りします [sage] [[sage]]:2012/03/17(土) 07:17:36.60 ID:zLG/jsZv0
>>457 すいません。ありがとうございます
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送 りします [[sage]]:2012/03/17(土) 07:18:08.22 ID:cBCYHEKc0
>>457 すいません。ありがとうございます
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/17(土) 20:42:48.93 ID:qDDRb0+SO
きえろ
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 08:06:41.36 ID:oUqs4xbDO
このSS結構有名なのかな?

とあるのSSの過去ログを読むと天使同盟の話題がちらほら出てくるね
467 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 09:59:06.61 ID:+geG/7bno
>>466
どうなんですかね。有名なら嬉しい半面、ちょっと怖かったりしますが……
まあこんだけ長くやってりゃ嫌でも人の目につくかもしれませんよね。

というわけでおはようございます。久々に投下を開始したい所存でございます。

二週間以上あけてしまって、本当に申し訳ありません。
どんだけ読者様が離れてしまったかわかりませんが、
また戻ってきてもらえるよう頑張りますのでどうかお願いします。本当に。

今回は一方通行パート。番外個体どころか一方通行にすら格ゲーで勝てない
ヴェントが修行に励みます。

それでは、よろしくお願いします!
468 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 09:59:50.17 ID:+geG/7bno


――――――――――――――――――――――


学園都市のゲームセンターに勤務する青年は業務をほったらかして
その光景を凝視していた。その光景が愉快であると同時に、物珍しかったからだ。

青年の視線の先には、時には叫び、時には項垂れ、時には歓喜する、
筐体に向かってあらゆる感情をぶつける二人のカップルが映っていた。
正確にはその二人はカップルでも何でもないのだが、青年の目には
二人が仲睦まじいバカップルにしか見えなかったのだ。


ゲーセンに熱狂する客が居ること事態はそう珍しくもない。
ただそれでも、一端覧祭という多くの学生にとっては楽しいイベントが
今まさに開催しているというのに、それを無視してゲーセンを満喫する
その二人が、青年にとっては微笑ましいものだったに過ぎない。
469 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:00:24.89 ID:+geG/7bno


で、




「あ、あと一ミリ!! あと一ミリだろこれ!? ど、どうする? どうすればいいのよ!!?」

「イイか、とにかく落ち着け!! 距離を置いて深呼吸をするンだ!! 体力ゲージが
 残り数ミリなのはオマエも同じだ、弱攻撃はおろか削りダメージ食らってもお終いの
 状況なンだよ。 とにかく距離を置け、強攻撃を意味もなく振ったりするクセを直せ!!」



470 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:01:16.14 ID:+geG/7bno

レバーを握るヴェントの手はじっとりと汗ばみ、ふるふると小刻みに震えていた。
彼女の背後から覗き込むように見守る一方通行も同様に嫌な汗を掻いている。
ヴェントの操作キャラと相手CPUの体力ゲージはお互いにミリ単位。あと一発、
何らかの攻撃が入ったらそれで即K.Oという緊迫した状況。


一方通行との対戦でボッコボコにされたヴェントは、ひとまず基本操作と戦術を学ぶため
CPUとの対戦に明け暮れていた。さすがのヴェントも初戦のCPU相手には勝てるものの、
三戦目までいけば上々、五戦目ともなるとCPU相手に全く手も足も出ない有様だった。

CPUの難易度を店側が定めているケースもあるが、この店のCPUはせいぜいノーマル
程度の強さだった。が、致命的に下手糞なヴェントではそれすらも精一杯であった。

だが彼女には心強いセコンドが居る。そう、わずか数分で上級者と遜色ないプレイを
披露出来る腕前になりやがった初心者(笑)の一方通行だ。彼の適格でわかりやすいアドバイスと
一〇〇円の出費のおかげで、ヴェントはついにアーケードモードのラスボスに辿り着くまでの
実力を有するまでに至ったのだ。
471 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:02:27.88 ID:+geG/7bno


ヴェントがラスボスに辿り着くまでにかかったクレジット数――――実に一〇〇〇〇円以上!!


「『外』から入荷したゲーム取り揃えてる店で家庭版買った方が経済的だったンじゃねェか!?」

「今そんな事どうでもいいだろうが!! どうすんの、もうタイムアップになっちゃうわよ!」


ラスボスCPU―――『ヤス』というキャラクターの不気味な肢体が画面狭しと暴れまわる。
ヤスは他キャラの技をコピーしそれを駆使してくる恐るべき強敵だ。
もはや触れられたら負けの勢いでヴェントは敵の攻撃をギリギリのところで捌いていく。
極限まで追い詰められたヴェントは実力以上のプレイが出来た。しかしそれも所詮まやかし――。


「あ、」
472 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:03:25.60 ID:+geG/7bno

ヤスの屈強K―――足払いが、ヴェントには死神が振るう鎌にも見えた。


「―――――ッ!」


しかしヴェントのまやかしの集中力はまだ消えてはいなかった。彼女はレバーを斜め上に正確に倒し、
全身をゲル状化させるという改造を施した設定の操作キャラ、『ジュレ』を前ジャンプさせる。


「蹴り入れろォ!!」


思わず叫ぶ一方通行。キャラ操作に集中力を割いていたためヴェントの
耳に彼の声は届かない。しかし本能が彼女の指を強Kボタンへ誘う。
473 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:04:39.89 ID:+geG/7bno

『K.O!』


相手を倒した事を報せるアナウンスが響き渡る。ヴェントが操作するジュレの斜め下蹴りが
(ストーリー的な意味で)ヤスの野望を打ち砕いた瞬間であった。


「っしゃああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「おらァァァァァああああああああああああああああ!!!!!!」


筐体のディスプレイにジュレのエンディングが流れているが、二人は見向きもしなかった。
ヴェントは勢い良く席から立ち上がると、反射的に一方通行の細い体に抱きついた。
一方通行も自分の事のようにヴェントの勝利を喜び、彼女を称えるようにギュッと抱き締める。
474 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:05:37.73 ID:+geG/7bno

「よくやった!! やりゃァ出来るじゃねェかこのクソ女!!!」

「当然よ!! この私を誰だと思ってるの、『堪輿エンジンのヴェント』とは私の事よ!!」


前方のヴェントというキャラ設定を放り投げる程に彼女は歓喜し、勝利を噛み締めていた。
だがそこに野暮なツッコミを一方通行は入れない。それぐらい彼も周りが見えていない。
小躍りしながらアケモ制覇を喜び称え合う二人を店員の青年は和やかな笑みで静かに祝福していた。


「アンタの適格なアドバイスのおかげよ!」

「バカ言え、結局はオマエの腕前が導いた結果じゃねェか! 驚嘆せざるを得ねェぜ、
 まさかこの短時間でここまで腕を上げるたァ、万札崩した価値があったってモンだ!」
475 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:06:35.08 ID:+geG/7bno

あははうふふと互いに互いを賞賛する姿のなんと微笑ましく鬱陶しい事か。
周囲の客は迷惑という感情を通り越し、見てはいけない物を見たような目をして
ドン引きしていた。


「よし、この勢いに乗るわよ! さ、白いの。 あっちの筐体に行きなさい。
 もはや何者をも寄せ付けないくらい強くなった私のサンドバッグになるのよ!」

「おいおいイイのかよ? あンま調子に乗ってっとまた痛い目見るぞォ?」

「今の私なら足で操作しても勝てるってなもんだ! 勝負しなさい!!」


やれやれ、と言いながらも一方通行の顔から笑顔が消える事はなかった。
彼女と喜びを分かち合った時のテンションを保ったまま意気揚々と向かい側の
筐体へ移動する。
476 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:07:08.68 ID:+geG/7bno

ヴェントも普段絶対に浮かべないような女の子らしい笑顔を振り撒きながら
エンディングが終わりタイトル画面に戻った筐体へ腰を下ろす。
手元のボタンをピアノのように指で軽快に叩く。今のヴェントは絶好調だった。


「負けたら私に一生服従よ! アンタの仲間や家族に別れを告げるなら今のうちだぜ?」

「おォおォおっかねェなァ、こりゃ本腰を入れてかからねェとマジで足元すくわれるかもな!」


お互いに一〇〇円を投入し、いざ尋常に勝負。




数分後。完膚なきまでに叩きのめされたヴェントがベンチに座って不貞腐れ、
彼女を再起不能に追い詰めた一方通行が面倒くさそうに慰める光景がそこにはあった。



477 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:08:36.92 ID:+geG/7bno


――――――――――――――――――――――


――学園都市・第七学区 『外部系』ゲームセンター


ヴェント「……」ムスッ

一方通行「イイ加減機嫌直せよ……」

ヴェント「ていうかさ、」

一方通行「あン?」

ヴェント「違うだろ」
478 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:09:14.05 ID:+geG/7bno

一方通行「何がだ」

ヴェント「アーケードモードクリアが最終目的じゃねえだろうが」

一方通行「……なンだったか」

ヴェント「私の最終目的はあのクソ生意気な腹黒女をぶちのめす事よ!」ガタッ

一方通行「番外個体をあの格ゲーで潰すンだったっけ」

ヴェント「そうよ」

一方通行「番外個体の腕前なンざ知らねェが……今のオマエじゃ無理だろォな」

ヴェント「だからこうして特訓してるんだろ」
479 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:10:50.16 ID:+geG/7bno

一方通行「アーケードモードで苦戦してるよォじゃなァ」

ヴェント「……」

一方通行「つかさっきの俺らのテンションは明らかにおかしかった」

ヴェント「それもそうだわ。 私なんかつい勢いに任せて……」

一方通行「互いに抱きついたりなンかしてなァ……何やってンだ俺ら」

ヴェント「お、お互い忘れてしまうのが賢明ね」

一方通行「で、どォする。 続けるか?」

ヴェント「まだ付き合ってくれるの?」
480 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:11:36.93 ID:+geG/7bno

一方通行「乗りかかった船だ、最後まで面倒みねェと締まりが悪い」

ヴェント「ガキをあやすような物言いはやめろ」

一方通行「ところでオマエ、金は持ってねェのかよ?」

ヴェント「どういう意味よ」

一方通行「オマエがアーケードモードクリアするまでに俺が被った出費、
     結構バカにならねェンだよ! 俺はオマエの財布じゃねェぞ」

ヴェント「アンタ、今更出費がどうこう言うつもり?」

一方通行「……まァ、金銭面は問題ねェけどよ」
481 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:12:31.01 ID:+geG/7bno

ヴェント「とりあえず、少し休憩するわよ」

一方通行「もォ昼か……こンなに長い時間ゲーセンに入り浸る事は二度とねェだろォな」

ヴェント「お腹空いたわね」

一方通行「どっか適当な店で腹拵えでもするか?」

ヴェント「………………、よし」スクッ

一方通行「どォした?」

ヴェント「私が食料を調達してきてやる」
482 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:13:01.75 ID:+geG/7bno

一方通行「ほォ? 気が利くじゃねェか、どォいう風の吹き回しだ」

ヴェント「外に行くついでに、ちょっとアイツを呼んでくるわ」

一方通行「アイツ?」

ヴェント「アックアの野郎よ」

一方通行「あァ? どォして」

ヴェント「私がどれだけ強くなったか、アイツを相手に確かめてみる」

一方通行「ウィリアムがどこに居るのか知ってンのかよ?」
483 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:14:04.08 ID:+geG/7bno

ヴェント「あの野郎が派遣されてる職場は全て把握してあるわ」

一方通行「なンで知ってンだよ……」

ヴェント「アンタ、何が食べたい?」

一方通行「実を言うと食欲より睡眠欲の方が俺の中では勝ってンだが」

ヴェント「ダメよ、寝たらアンタに目押しコンボぶちかますから」

一方通行「ゲームじゃ目押し出来ねェクセに……、んン、じゃあ……」

ヴェント「多分コンビニに寄ると思う」

一方通行「適当でイイ。 いくら金渡せばイインだ?」
484 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:15:46.55 ID:+geG/7bno

ヴェント「いらないわ。 アックアに奢ってもらうから」

一方通行「こいつらの現状をローマ正教の連中が知ったら泡吹いて倒れそォだな」

ヴェント「じゃあちょっと行ってくるから」

一方通行「あァ……」

ヴェント「ちゃんと待ってろよ」

一方通行「オマエこそガキに向けるよォな物言いしてンじゃねェよ。
     心配しなくてもどこにも行きゃしねェからさっさと行け」

ヴェント「……」タッタッタッ

一方通行「…………はァ」

一方通行「さて、寝るわけにもいかねェし……ヒマだな」
485 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:16:17.84 ID:+geG/7bno

一方通行「……」

一方通行「なンかゲームでもするか」

一方通行「他になンか格ゲーねェのかな……」キョロキョロ

一方通行「…………ン?」

一方通行「……よくわからねェが、グラフィックからしてずいぶん古そォなゲームだな」

一方通行「これも『外』から仕入れてきたゲームか。 需要あンのかよ」

一方通行「同じ六ボタン形式か……」チャリン

一方通行「キャラは……まァ主人公っぽいこいつで」カチカチッ ポチッ

一方通行「よし……」ポチッ ポチッ

一方通行「…………」ガチャッ ガチャガチャッ

一方通行「!? オイ、なンか序盤からCPUの動きが尋常じゃねェンだが」
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 10:20:44.59 ID:x57o6q8W0
キタ━(Д゚(○=(Д゚(○=(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)=○)Д゚)=○)Д゚)━!!!
おかえり。まってたよ。
487 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:21:44.86 ID:+geG/7bno

今回はここまでです。

そして、本日よりこのSSは通常更新体制に移行します。
ようやくネットも繋がり、やりたい放題やれるようになりました!
ちなみに電王だけでなく、ライダーは大体好きですよ。

次回も一方通行パート。アックアも交えてさらにカオスな状況になります。
ホント何やってんだって感じですよね神の右席……。

次回更新は三日以内(これが言えるようになった……)。

それでは、今日もありがとうございました!
皆様のご支援のもと、またグダグダやっていきますのでよろしくお願いします。
488 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/20(火) 10:22:20.45 ID:+geG/7bno



                          【次回予告】



「かたい事言うなよ、第三王女に言いつけるわよ」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「レバーを回しているだけである程度戦えるから楽なのである」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――後方のアックア




「全国のザンギ使いを敵に回すよォな発言すンな、そンなお手軽キャラじゃねェだろ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)



489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 10:26:38.95 ID:9f7muS5SO
お帰り〜

一方さんの前だとヴェントたんが女の子しててテラカワイス
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 10:31:57.41 ID:x57o6q8W0
>>489
まるでみねね。
あと、お帰りなさい
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 11:04:19.73 ID:MLY4FwkM0
>>1おかえり
そして>>489に完全同意

というかあんなカオスな状況を笑顔で祝福できるゲーセン店員の神経を疑うわww
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 11:40:25.65 ID:a9ABZQxDO


電車でニヤニヤしてるオレキメェwwww
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/20(火) 12:24:52.80 ID:afrrjA+J0
>>1お帰りなさい&乙〜
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 12:50:37.53 ID:ISmFl2u90

お帰りなさい
待ってたよ〜
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/20(火) 13:19:42.77 ID:cXG//M3no

おかえり
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 13:32:20.36 ID:3lvt9Knm0
乙!お帰りなさい
やっとこの日が来た!
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 13:41:18.74 ID:6k6RqyWQo
そうか、これが萌えか
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 13:48:52.26 ID:Svr9DuXco
乙 おかえりー
ところでこのバカップルはどこのゲーセンに行けば見れますか?
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 15:17:21.51 ID:oUqs4xbDO
おかえりゃあああああああああああああああ!!!!!!!


アニメしか見てない俺にはヴェントってあんまりいいイメージないんだが、このスレでイメージ変わった
かわいいじゃねぇかこのやろう
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/20(火) 19:30:10.36 ID:IpRBsDoAO
バナナかわいいよバナナ
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 22:20:37.71 ID:mSgS+dWDO
お帰りなさいぃぃぃ!!

ゲームクリアして抱き合っちゃう一方さんとヴェントさん可愛い
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/20(火) 22:21:54.96 ID:9SAB2TLf0
おかえり>>1
前方可愛すぎわろた。

このスレってすげぇ有名だよ。
ニコで名前が出るssなんてそうない。
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 01:32:20.39 ID:lvK0aYDzP
有名になるとニコ厨が沸くっていうわかりやすい例だな
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/03/21(水) 01:54:50.08 ID:gkFeGvDa0
お帰りなさいませ
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 07:16:09.58 ID:ND1LCA7m0
>>503サーセン
>>1おかえりいいいいいいいいいいいいいいいいい
舞ってたぞおおおおおおおおおおお

それはそれとしてヴェント可愛すぎ骨抜けた
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/21(水) 07:17:11.07 ID:Rvno5qUeo
知名度とかニコニコがどうとかクソほどどうでもいいぜい

それより今弁当は化粧してないんだよな
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) :2012/03/21(水) 07:59:42.82 ID:AL/Kj66t0
待ってました!
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長崎県) [sage]:2012/03/21(水) 19:20:53.35 ID:ZNxkqlhT0
お帰り

ところでヴェントちゃんにはお勧めの格ゲーがあるんだが。つ「カイザーナックル」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/21(水) 20:33:45.04 ID:tHKH7khW0
ヴェントかわいいなぁ・・・
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/03/22(木) 02:30:34.51 ID:EwoHfeej0
>>1乙です

お帰りなさい!
あまりの嬉しさに、机に両こぶしぶつけた・・・痛い!
でも嬉しい!
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/23(金) 12:28:19.73 ID:vhvikpwAO
確定「乙」
512 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:28:33.25 ID:d+ywJUqGo

こんにちわ、真っ昼間から更新を開始します。

長い間更新できなかったにも関わらずのご支援、本当にありがとうございます。
未だにグダグダ続くこの長ったらしいSSに付き合ってくださって、もうどう感謝
していいやら……。とりあえずただいまと言っておきましょう。ありがとうございます。

さて今回も一方通行とヴェントがゲーセンで遊ぶだけっていう
中身スッカスカのお話をお送りします。今回は後方のアックアも出ますよ。

では、よろしくお願いします!
513 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:29:05.73 ID:d+ywJUqGo


――――――――――――――――――――――


ヴェント「さっさと歩けよ」

アックア「貴様……少しは私に対して気を遣え」

ヴェント「私、かなり腕を上げたわよ」

アックア「また格闘ゲームなるものを私にやらせる気であるか……」

ヴェント「何よその言い方、まるで私がアンタを拘束してるみたいじゃない」

アックア「しているのである!!! 休憩時間を潰されているのだぞ!」
514 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:29:43.75 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「かたい事言うなよ、第三王女に言いつけるわよ」

アックア「一国の姫君を脅迫材料に使用するとはどういう了見であるか……」

ヴェント「さて、白いの……寝てたら承知しないんだから」


           ウィーン


アックア「……相変わらず騒がしい店であるな」

ヴェント「あれ……アイツどこ行ったのよ?」キョロキョロ
515 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:30:10.25 ID:d+ywJUqGo




一方通行「クソったれがァァァァァ!」



ヴェント「!?」ビクッ

アックア「一方通行の声である」


            \I'm a perfect soldier/


一方通行「キャラスペックがあまりにも違いすぎるだろォが!
     訳の分からねェ間合いから投げてきてンじゃねぇよ!」ドカッ!!
516 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:30:54.36 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「ちょっと、何やってるのよ」

一方通行「あァ!? ……なンだオマエか」

アックア「久しいのである、一方通行」

一方通行「よォ、オマエも難儀してンな」

アックア「返す言葉もない……」

ヴェント「何このゲーム?」

一方通行「知らねェよ。 序盤から超反応かますCPU相手にどォにか2クレジット使って
     ノーコンかつストレートでアーケード制覇したらよォ、スタッフがボケてた
     としか思えねェよォな性能のラスボスが出てきやがった。 なンだこいつ」
517 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:31:37.11 ID:d+ywJUqGo

アックア「貴様のような人間でもこんな娯楽に夢中になるのであるな」

一方通行「やってみたら意外と駆け引きが面白くてな」

ヴェント「そんな古臭いゲームなんてやるなよ。 ほら、ご飯」ガサッ

一方通行「どォも」

アックア「ではヴェント、さっさと終わらせて帰らせてもらうのである」

一方通行「割と面倒見イインだなオマエ」

アックア「ぬかせ」
518 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:32:11.95 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「じゃあ始めましょうか。 今日は特別に私が一〇〇円入れてあげる」

一方通行「俺の金だけどな」



ヴェント「〜♪」

アックア「……初めて見るのである」

一方通行「あン?」

アックア「あの子が、ヴェントがあれほど純粋に感情を表している姿を」

一方通行「確かに。 まさかあいつがあンなに女の子するなンてなァ」

アックア「これもまた、貴様の影響であるか」
519 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:32:57.34 ID:d+ywJUqGo

一方通行「……」ピクッ

アックア「聞いたぞ、騎士団長から。 キャーリサ様の事を」

一方通行「あの野郎……」

アックア「キャーリサ様の事については素直に感謝するのである」

一方通行「必要ねェよ、あれは俺にとっても必要な事だった」

アックア「今回のこれも、か」

一方通行「……そォだよ。 だからクソ眠いのを我慢して来てンだろォが」

アックア「ふ。 異常だな」
520 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:33:39.04 ID:d+ywJUqGo

一方通行「あァ?」

アックア「誰に想像出来る? ローマ正教の暗部として活動していた我々が、
     今やこのような科学の娯楽施設で平穏に浸っているなどと、誰に」

一方通行「気にしてンのか」

アックア「気にするなという方が無理であろう。 だが……悪くない」

一方通行「平和ボケ、結構じゃねェか」

アックア「私や貴様のような者にとっては特に、な」

ヴェント「二人でこそこそ話してないでさっさとキャラ選べよ!
     早くしないとタイムアップになるでしょうが」
521 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:34:29.62 ID:d+ywJUqGo

アックア「わかっているのである。 ……、一方通行」

一方通行「……」

アックア「貴様が、あの子の闇を払うか」

一方通行「俺に闇を払うなンて芸当は不可能だ。 せいぜい、一緒に抱えるくらいか」

アックア「そうか。 ……そういう手段もあるのだな」

一方通行「…………さっさとキャラ選べってよ」

アックア「うむ、ではいつものこれで……」ポチッ

一方通行「『ザンギ』か。 北海道出身のレスラーキャラだな」
522 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:35:12.29 ID:d+ywJUqGo

アックア「レバーを回しているだけである程度戦えるから楽なのである」

一方通行「全国のザンギ使いを敵に回すよォな発言すンな、そンなお手軽キャラじゃねェだろ」

ヴェント「今日こそ対人戦で勝利を掴んでみせる……!」


            ファイッ!!!


アックア「…………、……! む!?」ガチャガチャ

一方通行「お……」
523 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:35:57.54 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「……! くっ、この、」

アックア「ガードを覚えたか!」

一方通行「俺が仕込ンだ。 今まで通りってわけにはいかねェぞ」

アックア「ならば……」

ヴェント「!」

一方通行(飛び道具を裏掌撃で掻い潜りつつ前進……、このオッサン結構やり込ンでるじゃねェか)

アックア「ちっ、敵キャラの飛び道具、不規則な軌道で……! しかし、」

ヴェント(近づかれた……!)
524 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:36:33.49 ID:d+ywJUqGo

一方通行(バカ野郎……、コマンド投げは投げ抜け出来ねェよ!)

ヴェント「あ……」

アックア「すまんな」グルグル


          \道民のために!!/ \K.O.!!/


一方通行「ジャンプ経由無しで二回転コマンドかよ、オマエ本当は格ゲーマーか?」

アックア「ヴェントに散々付き合わされているからな……」

ヴェント「く……」

一方通行「わかっちゃいるだろォが、」

アックア「うむ、手加減は無しである。 以前手加減して負けてやった時は非難轟々だったからな」
525 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:37:23.34 ID:d+ywJUqGo


――――――――――――――――――――――


ヴェント「しまっ……」ガチャ

アックア「また私の勝利であるな」タタンッ


             \K.O!/


一方通行「これでヴェントは五戦五敗か……、やっぱ対人はまだ早かったかァ?」

ヴェント「もう一度よ!」チャリン
526 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:38:18.57 ID:d+ywJUqGo

アックア「このザンギというキャラ、真上へジャンプした瞬間に各種方向へ
     レバーを入れると移動距離を縮めてジャンプする事が出来るのである」

一方通行「あー、それで表裏択ってンのか」

アックア「それと、私はまだ安定していないが裏掌撃を弱攻撃に仕込んだり、」

一方通行「オッサンこのゲームやり込ンでるだろ絶対」

アックア「ヴェントとこのゲームをやっていた時に観衆が出来た事があってな。
     その内の一人にそういったテクニックを教えてもらったのである」

一方通行「……」

ヴェント「いくわよ!」
527 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:39:19.86 ID:d+ywJUqGo

一方通行「にしてもよォ、」

アックア「?」

一方通行「第三王女放ったらかしでゲームやってるンだなァ……」

アックア「ぐっ!?」ギクッ


            \ファイッ!!!/


一方通行「ヴィリアンがこれ知ったらどンな顔すンだろォなァ……」

アックア「貴様……!!」
528 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:41:35.60 ID:d+ywJUqGo

一方通行「『私の事を忘れて格闘ゲームに夢中になってただなんて……。
      そんなに格闘ゲームが好きなら一生股間のスティック握ってなさい!』」

アックア「ヴィリアン様はそんなこと言わない」

一方通行「嘆くだろォな……呆れるだろォなァ……」

アックア「ぐ、く……! き、貴様こそ打ち止め達を放置してこのような場所に―――」

一方通行「俺は俺にとって必要な事だからここに居るだけだ、さっきも言ったろ?」

アックア「私を惑わせてヴェントに勝利をもたらすつもりであるか」

一方通行「いやいや別にィ? ただヴィリアンがこの光景見たらどォ思うかなァって……」

アックア「…………ヴィリアン、様……」
529 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:42:27.71 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「あ! も、もらったわよ!」ガチャッ

アックア「あ、」


            \K.O!/


ヴェント「か……勝った。 ま、まずは第一ラウンド……」フルフル

アックア「ぬ……」アセアセ

ヴェント(ラリアットはしゃがめば当たらないのね……)

一方通行(……こンくらいのハンデはあってもイイだろ)
530 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:43:07.30 ID:d+ywJUqGo

アックア「……不思議とな、」

一方通行「あン?」

アックア「このような娯楽とはいえ、騎士道精神を捨ててでも負けたくない
     という気持ちが湧き出てくる。 私もまだ子供であるな」

一方通行「オマエみてェなガチムチのガキがいてたまるか」

ヴェント「…………ッ」ガチャガチャ タタンッ

アックア「勝ちを得て動きが変わった……? 勝利という美酒が
     あの子のポテンシャルを引き出しているのであるか!」

ヴェント(あのコマンド投げの間合い……)

アックア「……ちっ、不用意に懐へ入らなくなった。 学習しているのである」
531 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:44:05.13 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「ここか……?」

アックア「!?」スカッ

ヴェント「見極めた! この距離が恐らくベスト!」

アックア「スクリューをスカされたか!」

ヴェント「弱、中、強で間合いが変化する事も既にお見通しよ」

アックア「ふっ、レバーをぐるぐる回しているだけでは勝てぬという事であるな」

一方通行(『神の右席』ってもしかして内情は結構和気藹々としてたンかな……)

ヴェント(落ち着いて……むやみに飛び込まない……足払いに頼らない……)ドキドキ
532 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:44:34.04 ID:d+ywJUqGo

アックア(体力差でこちらが不利の場合、遠距離ではゲージ溜めくらいしか
     選択できる手段が無いのである……。 非常にまずい状況だな)

一方通行(綺麗に勝とォとするな……どンな結果であれ勝ちは勝ちなンだ)

ヴェント「……」

アックア「……」

一方通行「……」


             \K.O.!/


533 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:45:12.94 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「あ……勝った」

一方通行「っし」グッ

アックア「……完敗、であるな」

ヴェント「勝ったわ……、対人戦で、私が……!」パァァァ

一方通行「見ろよ、ヴェントの顔」

アックア「どこにでもいる普通の女の子である」

ヴェント「私の勝ちよ、アックア!!」ドン!

アックア「ぐうの音も出ないのである」
534 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:45:55.21 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「…………」チラッ

一方通行「文句なく、オマエの勝ちだ。 誇ってイイ」

ヴェント「ふふ……!」ニコニコ

一方通行「(こっちまで嬉しくなっちまいそォな笑顔だな)」

アックア「(もっと早く、この子に今のような表情を浮かべさせたかったのである)」

ヴェント「勝った勝った……やった……!」

一方通行「……」ジー

ヴェント「私が人間相手に……勝っ―――ハッ!?」ギクッ
535 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:46:32.56 ID:d+ywJUqGo

アックア「……」ジー

ヴェント「…………///」コホン

ヴェント「……ま、当然の結果よね。 今までのは私が手加減してあげたから
     負けていただけの事よ。 私がちょっと本気を出せばこの通りだわ」

一方通行「雛鳥の巣立ちを見守る母親の心境だな」

ヴェント「誰が雛鳥なんだよテメェ!!」

アックア「ふっ……」ガタッ

一方通行「仕事か?」

アックア「うむ、そろそろ休憩時間も終わりである」
536 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:47:24.23 ID:d+ywJUqGo

一方通行「ほぼこの女が原因とはいえ、付き合わせちまって悪かったな」

アックア「構わん、良いものが見れたからな」

ヴェント「雑魚に用は無いわ。 どこへでも消えなさい」シッシッ

アックア「言われずとも。 ……一方通行」ボソッ

一方通行「?」

アックア「ヴェントの事……よろしく頼むのである」

一方通行「……俺がフルンティングのオッサンにあのバカ姫を任された事、聞いてるよな?」

アックア「選ぶのは貴様である」

一方通行「クソ野郎……」ギロッ

アックア「ではな」
537 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:49:03.93 ID:d+ywJUqGo

ヴェント「……。 ふん、所詮アックアもあの程度のプレイヤーだったって事か。
     情けないわね。 あれでも元『神の右席』の一員だってんだから」

一方通行「『神の右席』に格ゲーの腕前がどォこォは関係ねェだろ……」

ヴェント「てんでつまんないわね」

一方通行「素直に勝利を喜べよ」

ヴェント「勝って当然の勝負だったのよ? どこに歓喜しろって?」

一方通行「……俺、ちょっとトイレ行ってくる」カツッ カツッ

ヴェント「そういうのは黙って行ってこいよ。 ……、」

ヴェント「…………」

ヴェント「…………」

ヴェント「…………、ふ、ふふ」ニコーッ

ヴェント「やったー……ふふふ」ニコニコ



一方通行「…………素直じゃねェよな、ホント」ジー



538 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:53:42.48 ID:d+ywJUqGo

今回はここまでです。

2クレでゴンザレス倒す一方通行は異常。ですがさすがに伝説の尖兵には敵いませんでした。

こうしてみると本当にただゲーセンで遊んでるだけの話ですね……。
多少それっぽい話も今回は含まれてましたが、しかしいいのかこんなんで……。

でも次のお話も一方通行とヴェントがゲーセン満喫するだけなんです。
ただし格ゲーはちょっとお休み。せっかくですから他のゲームもやってみます。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!

新約4巻、出てたんですね……早く読まないと。
539 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/23(金) 13:54:16.07 ID:d+ywJUqGo



                          【次回予告】



「UFOキャッチャー……? このガラスぶち割って中のぬいぐるみやら何やらを取るの?」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「その行為のどこにUFOの要素が含まれてンだよ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)



540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/03/23(金) 14:06:48.08 ID:YMchM6UAO
バナナかわいいよバナナ
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 14:08:39.63 ID:SwctAJ/Oo
不覚にもバナナ弁当可愛い
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/23(金) 14:13:08.68 ID:wSoKWf+V0
おっつー
新約4巻新キャラ多すぎwwwwww
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2012/03/23(金) 14:14:54.85 ID:fJ7oGVkbo
乙〜
バナナかわいい!
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/23(金) 14:18:55.06 ID:CMXAIn4Y0
ヴェントちゃん かわいい
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 14:29:12.53 ID:mfkZo74X0
やったーとかかわいすぎるww
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/23(金) 14:34:22.60 ID:iLr5O4NCo
バナナかわいい
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/03/23(金) 14:50:32.38 ID:0f6do80r0
乙 可愛いバナナ
尖兵さんはチート性能だけど原作なら本気じゃない(AI的な意味で)からまだいける
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/23(金) 15:06:30.00 ID:L4/Fvtd90
ヴェント可愛すぎてやべえええええ

>一方通行「オマエみてェなガチムチのガキがいてたまるか」
これにはわろた
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 15:18:59.37 ID:cPJzm7zDO
バナナさん可愛いよバナナさん
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 15:51:39.31 ID:B3PRGsdIO
すごいよバナナさん
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 16:24:26.68 ID:BBuiySjb0
ヴェントかわいすぎる
雛鳥の巣立ちを見守る母親wwww
ハハセラレータwwwwww
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/23(金) 16:47:23.81 ID:Gk85CMk+0
ゴンザ倒したのかよww一方さんマジTAS見習いwwwwww
バナナさん可愛すぎて生きるのがつらいわー
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 18:03:19.03 ID:bys9NsoSO
2人目の保護者容認とか

爆発しろっ
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/23(金) 18:50:15.65 ID:U6uVXvyM0
ああ一方さん…
あのゲームはどの店もeasyで回してください
って言われてるからあれでもAI最弱固定なんだよ…
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/23(金) 19:03:46.74 ID:pa8uaV1o0
ヴェントまじかわいい
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/23(金) 20:47:37.84 ID:vJ7Oyv/DO
ちょっとバナナ買って来て抱きしめて来るわ
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 00:00:44.28 ID:Wm0yLpIIO
ブニュル
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/24(土) 00:14:37.46 ID:A8LMK5oX0
いちおつ!

股間のスティック……
一通さん…
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/24(土) 16:16:23.87 ID:Wb0SiogDO
もうバナナさん可愛すぎるやろ 惚れてまう
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/03/25(日) 19:57:02.48 ID:wx0Yxdvio
信じられるか?この一方通行格ゲー初心者なんだぜ?
それが2クレでゴンザレス倒すとか…
561 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:21:24.52 ID:GTpI+JVxo

おはようございます。朝っぱらから更新を開始すべく馳せ参じました。

あー、今回も一方通行とヴェントがゲーセンで〜……以下略。
マジこの話書きためてた当時は(去年の11月くらい)このネタだけで
SS一本書けるって考えてましたね。多分本当に書けますし……面白いかは別として。

ただ今回は格ゲーをお休みして、ゲーセンそのものを満喫しようぜという
流れになります。これなら格ゲー知らなくてつまんねえと思っていらした
読者の方も少しは気が晴れるんじゃないでしょうか……。

それでは、今日もどうかお付き合いくださいませ。よろしくお願いします!
562 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:22:05.55 ID:GTpI+JVxo


――――――――――――――――――――――


一方通行がトイレから戻ると、ベンチに座っていたヴェントが何やら妙な事をしていた。
自分の頬をぐにぐにと引っ張っている。どうやら弛緩しきった頬の筋肉に喝を入れている
らしい。アックアとの対人戦で勝てた喜びが抜けず、ニマニマとした笑顔が解けないのだろう。


「よォ」

「ふぁ!?」


一方通行の存在に気付いたヴェントは慌てて頬から手を離す。
一体どれだけ引っ張っていたのか、彼女の頬はほのかに赤く染まっていた。
もっとも、紅潮の原因は頬をつねった事だけではないのかもしれないが。

ヴェントは頬をすりすりと摩りながらいつもの調子で話しかける。
563 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:22:34.64 ID:GTpI+JVxo

「ちょっと格ゲーは休憩するわよ」

「勝利の余韻を味わっていたいのか?」

「べ、別に。 あんなの、勝って当然だって言っただろうが。
 適度な休憩も挟まないとベストなプレイが出来ないのよ」


相変わらずの言い草だったが、しかしその目はどこか遠いところを見つめていた。
やはり相当対人戦で勝利できた事が嬉しいらしい。ヴェントの口角がひくひくと
動いている。一方通行がこの場にいなければいつまでも悦に浸っているだろう。

一方通行は携帯電話を開いて時刻を確認しながら尋ねた。
564 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:23:12.78 ID:GTpI+JVxo

「で、だったらどォする? メシも済ませちまったし、どこか適当にぶらつくか?」

「アンタ何言ってんの。 ここはゲームセンターよ? 娯楽施設なんだから、
 暇を潰せる手段は腐るほど揃ってんだろ。 外を出歩く必要はないわよ」


確かにゲーセンで一日中過ごしていられるという人間もいるが、
それだけ入り浸るには結構な金が必要になる。


「別に構わねェンだけどよ……、オマエやっぱり金持ってねェンだな」

「アンタ程は持ってないわよ。 無い事もないけどこのお金は……、あ」

「?」
565 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:23:41.41 ID:GTpI+JVxo

ふと、ヴェントが言葉を止めた。見ると、何かを思い出したようなハッとした表情を浮かべている。


「どォした」

「そうだった、私、買っておかなきゃいけないものがあったんだ……」

「何を買うンだ?」

「……」


返事が来ない。なぜかヴェントは困ったような、忌々しげな、そんな複雑な
顔をしながら言い淀んでいる。
566 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:24:29.24 ID:GTpI+JVxo

「なンだよ」

「……別に、何だっていいでしょ」

「俺には言えねェモンなのか?」

「そうじゃないわよ。 ……そうね、ついでにアンタにも後で付き合ってもらおうか」

「何なンだよ」

「諄いわね、後でいいって言ってんだろ。 それより、何か面白いゲーム無いのここ?」


結局ヴェントが購入したいものがなんなのかは教えてもらえず、話は一方的に終わってしまった。
一方通行は一瞬、自分に何かを贈るつもりなのだろうかと考えたが、ヴェントの様子からして
そうではないと否定した。当の彼女があまり面白くなさそうに話していたからだ。
567 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:25:33.70 ID:GTpI+JVxo

ヴェントは立ち上がり、店内の様子をキョロキョロと見渡す。
どうやら今ここでしつこく問い質しても機嫌を損ねるだけだと判断した一方通行は
面倒くさそうに頭を掻きながら定期的に襲ってくる睡魔を追い払った。


「ゲーセンには割と回数通ってンだろ? オマエまさか格ゲー以外のゲームやった事ねェのか?」

「他に目的が無かったから目もくれなかったわよ。 こういう店って対戦型格闘ゲームを
 主に取り揃えて営業してるもんじゃないの? ゲームセンターって言うくらいなんだから」

「ゲームの定義狭すぎだろ……。 まァ無理もねェか、今までこンな場所で
 ゲームなンてモンに触れる機会も無かっただろォしなァ。 ……そォだな、」


ついて来い、と言うだけ言って一方通行は勝手にどこかへ歩き始めた。
こことは違うエリアにあるメダルコーナーに目を向けていたヴェントが
慌てて彼の後を追う。
568 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:26:32.66 ID:GTpI+JVxo

二人がやって来たのはゲーセンの定番中の定番、UFOキャッチャーだった。
箱の全面がガラス張りになっている、通常より少し大型サイズの仕様だ。


「UFOキャッチャー……? このガラスぶち割って中のぬいぐるみやら何やらを取るの?」

「その行為のどこにUFOの要素が含まれてンだよ。 これは中に設置されてる
 クレーンを自分で操作して、アームで目当ての景品を掴ンでダクトの中に
 放り込むゲームだ。 これはニボタン機種だから割と運が絡ンでくるけどな」

「ふうん。 で、具体的にはどうやるの?」

「やってみるか? 一回だけ俺がやってみせるから、黙って見てろ」
569 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:27:20.90 ID:GTpI+JVxo

一方通行は財布から硬貨を数枚取り出し、投入口に入れる。
すると本体からリズミカルなBGMが流れだし、手元のボタンが点滅し始めた。
一方通行はまずクレーンが左右に動く方のボタンを数秒間押し続ける。
次にクレーンが奥へ進むボタンを押し、適当な景品の上へクレーンを移動させた。


「あとは見守るだけだ」


一方通行が二つ目のボタンから指を離すと、BGMが変化すると同時にクレーンが
緩やかに降下する。アームの先端がウサギのぬいぐるみの頭部を少し押さえ、
そのまま左右に開いていった。


「……」
570 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:27:59.12 ID:GTpI+JVxo

ヴェントはまるで水族館の巨大水槽を泳ぐ魚を物珍しげに見つめる子供のように
両手をガラスに押し当ててその一部始終を凝視し続けていた。

クレーンのアームがウサギの頭部をがっしりと掴む。が、


「あ」


どういう訳か、完全にぬいぐるみの頭部に固定されていたはずのアームが、
クレーンが上昇するとまるで力が抜けたようにぬいぐるみを解放してしまった。
何の成果も上げられなかったクレーンが虚しく景品ダクトへ移動していく。


「アームの強度がイマイチだな……。 ま、こンな感じで上手いこと目当ての
 景品を掴ンでダクトに放り込みゃイインだよ。 上手いヤツは中身空っぽに
 するまで搾取出来るが、下手な奴はもォどこかの店で景品と同じモンを
 購入した方が早いンじゃねェかってくらい金を吸い取られちまうけどな」
571 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:28:40.75 ID:GTpI+JVxo

ただ最近のクレーンゲームの景品にはプライズゲーム専用景品、プライズ品と
呼称される、クレーンゲームでしか入手出来ない景品も存在する。特に注目されて
いるのがプライズフィギュアであり、専門メーカーから販売される完成品フィギュア
にも負けず劣らずの出来のフィギュアがクレーンゲームで入手できるという事で
人気を博している。その景品が元値より高い値で取引されるケースもあるらしい。


「奴隷市場とかでこのシステムを採用したら面白そうね」

「滑稽過ぎて反吐が出そォだな。 どォする、一回やってみるか?」


一方通行が硬貨を差し出すと、ヴェントは黙ってそれを受け取り本体に投入した。
比較などしても意味はないが、さすがにクレーンゲームと格闘ゲームでは操作の
複雑性が天と地の差であるため、ヴェントにも容易にプレイする事が出来た。
572 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:29:16.72 ID:GTpI+JVxo

「あのウサギのぬいぐるみ、アンタにそっくりじゃない」

「ふざけンな……と言いてェところだが、さすがに否定は出来ねェな。
 つかおかしいだろあのデザイン。 明らかに"俺に似せてやがる気がする"」

「だからアンタもあのぬいぐるみを狙ったんでしょ? 私もそうする」


先ほど一方通行が取ろうとしていたウサギのぬいぐるみをターゲットに選んだヴェント。
一方通行も言っていたが、そのぬいぐるみはウサギをモチーフしたにしては明らかに
不自然なデザインだった。

頭部こそ長い耳にまん丸の赤い目、口を表現したバツ印ではあるが、それ以外がおかしい。
ウサギの右腕には何故か『杖』が装着されているし、キャラクターとして着せられている服は
彼がよく着る縞模様のシャツ。おまけに首にはオシャレな黒いチョーカーが付けられていた。
573 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:29:58.61 ID:GTpI+JVxo

(悪意すら感じるンだが……、偶然で片付けられるレベルじゃねェだろあのデザイン)


誰かが嫌味のつもりで作成したようなぬいぐるみ目掛けて、ヴェントが操作する
クレーンが移動していく。景品の頭上にクレーンを位置づける作業は意外と難しい
のだが、彼女は難なく絶妙な位置へクレーンを持っていく事が出来た。

運命の瞬間。クレーンが降下し、あまり信用出来ないアームがウサギの頭部を挟む。


「! 捕獲したわ!」


がっしりと頭を掴まれたウサギは、クレーンによって問答無用に
ダストまで運ばれていく。自分に似ているからか、一方通行はその光景を
見て何だか悲しくなってきてしまった。
574 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:30:41.68 ID:GTpI+JVxo

「え……」


軽く絶望したような、目の前に餌をぶら下げられ食いつく直前に取り上げられたような、
そんな調子の声がヴェントから漏れた。ぬいぐるみがダストにボッシュートされる直前、
アームが限界を迎えたのか、ぬいぐるみを落っことしてしまったのだ。


「残念だったな。 個人的には回収してほしかったンだが……」

「……」


ヴェントは黙ったまま取り逃したぬいぐるみに視線を固定させたままだ。
てっきりまた不貞腐れたのかと一方通行が適当に慰めようとしたが、
575 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:31:30.22 ID:GTpI+JVxo

「ま、いいわ」

「諦めたのか?」

「わざわざ金払ってまで手に入れる価値が無いってことよ。 こんなぬいぐるみ
 じゃなくてもアンタという本物がここにいるし、私はそれで充分満足出来るわ」

「それどォいう意味だオマエ……」


どうやらUFOキャッチャーはヴェント様のお気に召さなかったらしい。
わずか一回プレイしただけで飽きた彼女は次なるゲームを求めて場所を移動した。

ならば自分が回収してやろうかと一方通行はもう一度UFOキャッチャーに挑もうとしたが、
ダストの傍で虚しく転がっている自分そっくりのぬいぐるみを見てやる気を削がれたのか、
このまま処分されるまで永遠に他者の手に渡らぬ事を祈りながらヴェントの後を追っていった。
576 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:32:15.79 ID:GTpI+JVxo


――――――――――――――――――――――


ところで、『プリクラ』がプリント倶楽部の俗称及び略称である事を知らない人は結構多いらしい。


「……どういうゲームなのこれは? 何でカーテンで仕切られてるのよ」

「ゲームっつか、こりゃプリントシール機だな。 この部屋の中で撮った
 写真をシールにしたモンが手に入るンだよ。 今でも流行ってるらしいが」


一方通行とヴェントはプリクラ機の前でそんな会話をしていた。
普通、プリクラが設置されているエリアに男女二人組が居る事は極めて自然なはずだが、
なぜか二人は浮いていた。両者が放つ独特の雰囲気とプリクラのキャピキャピした雰囲気が
マッチしないせいなのかもしれない。
577 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:33:12.62 ID:GTpI+JVxo

カーテンを少し開けてヴェントが部屋の中を覗き見る。これまでここでプリクラを
作成した学生等が貼っていったのだろう、部屋の至る所に人の顔が写った可愛らしい
デザインの写真シールが見受けられた。

写真は人の想い、意識、念が強く込められるという。ヴェントは部屋の中に渦巻く
大勢の人間の思念じみた何かを感知し、気分を害したように青くなった顔を引っ込める。


「なんか気味悪いけど、便利かもねこれ。 写真に魔術的意味を持たせて
 魔術発動の道具や霊装に用いる例はいくつもある。 このサイズでしかも
 シールなら携帯性も文句ないし。 探せばこのプリクラとやらを利用した
 魔術を使う魔術師がいるかもしれない。 俗っぽくて気に入らないけど」

「プリクラに対してそンな解釈をする人間は魔術師だけだろォな」

「普通の人間はこんな物を集めてどうしようっていうのよ?」
578 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:34:12.31 ID:GTpI+JVxo

「普通の人間はこんな物を集めてどうしようっていうのよ?」

「若年層が一〇年以上前に食いついたンだよ。 特に女子高生なンかは思い出を
 残せる写真とかを好むからな。 女受けしそォなデコレーションも施せるし、
 残したい記憶をシールって形で誰でも気軽に作成できる点が好評で流行ったらしい」

「何でアンタそんな事知ってんの?」

「……なンでだろォな。 知らねェ内に余計な情報まで取り込ンでたのかも
 知れねェ。 ガキの頃は毎日が実験漬けだったから、そンな余裕は無かった
 はずなンだけどな。 情報ってのはいつの間にか刷り込まれてるモンだろ」

「あっそ。 ……思い出、ねえ」
579 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:35:22.64 ID:GTpI+JVxo

ヴェントはほんの一瞬だけ遠い目をした。
彼女が持つ、恐らくは唯一の『思い出』。死別した弟と一緒に写った
一枚の写真を思い出しているのだろうか。


「こういうのってどういう人間が利用するもんなの?」

「さっきも言ったが若年層、特に女子高生が中心だが……実際は色々だろ。
 男連れでも家族でも、親子でもカップルでも、プリクラなンて呼称されてるが
 要は写真シールだ。 写真なンだからどンな人間でも利用するンじゃねェのか」

「まさかアンタも誰かとこういうの撮ってたりすんの?」

「ねェよ。 写真自体は何度か撮ったり撮られたりしたよォな気もするが、
 プリクラなンざ俺にはまるで縁のねェモンだからな。 全く似合わねェし」

「……」
580 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:36:08.78 ID:GTpI+JVxo

ヴェントは改めて部屋の中を覗く。多くの人間が写った写真が
こちらを見ているような錯覚に襲われ、やはり良い気分はしなかったが
よくよく見てみると写真に写った各々の顔はどれも皆、純粋に人生を
楽しんでいるような笑顔である事に彼女は気付いた。


「ふん」


ヴェントは思案し、顔を引っ込めて一方通行に提案する。


「だったら記念に一枚撮ろうか」

「嘘だろオイ。 オマエこォいうの一番嫌悪しそォな人間だろ」
581 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:37:25.03 ID:GTpI+JVxo

「デコレーションだとかそういう浮ついた要素は気に食わないけど、
 写真くらい私だってたまには……、……たまには撮ろうかなとか思うわよ」

「あァそォかい。 ……俺があまり乗り気じゃねェンだが、まァたまにはイイか」


という訳で一方通行は財布を取り出し中身を確認したのだが、


「……チッ。 オイ、ちょっと待ってろ。 小銭がねェから崩してくる」


そう言って踵を返し、現代的なデザインの杖をつきながら両替機へ向かった。
582 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:38:22.78 ID:GTpI+JVxo

「……」


一方通行の姿が見えなくなったのを確認したヴェントは三度部屋の中を覗く。
こうして見るとまるで恐れながらも路地裏から表の様子を窺おうとする臆病な猫のようだ。

よく確認すると部屋中にぺたぺたと貼られているプリクラが皆笑顔なのだが、
更に注意深く観察してみるとそのプリクラに写っているのはほとんどが
仲睦まじげな男女二人組、つまりカップルである事が新たに判明した。


(な、何よこれ……。 カップル以外はお断りみたいな……プリクラって得てしてこんなもんなの?)


これから一方通行と二人でプリクラを撮るという時に、ヴェントは何だか急に気恥ずかしさを覚えだす。
と、そんな彼女の耳に声が届いた。音源はヴェントが居るプリクラ機の隣にあるもう一つのプリクラ機。
室内から顔を出して隣から聞こえる声に耳を傾ける。声色からしてどうやら中に居るのは男女二人組らしい。
583 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:39:53.65 ID:GTpI+JVxo

よく耳をすませてみるが、会話の内容が聞き取れない。声が外部に漏れないよう
ひそひそと会話をしているようだ。


「……?」


会話の内容はともかく、ヴェントはプリクラの撮影風景がどのようなものなのか
気になって仕方がなかった。中の二人に悟られないよう足音を殺してゆっくりと
カーテンを開き、ほんのわずかに開いた隙間から室内の様子を窺ってみる。


「!」


室内の光景が視界に入り、様子を理解した瞬間にヴェントは速攻で顔を引っ込めた。
彼女の顔は耳まで真っ赤に染まっている。視線があちこちに揺らぎ、今にも倒れそうな
危なっかしい足取りで一歩一歩後退していった。
584 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:41:10.80 ID:GTpI+JVxo

中に居た男女の学生二人は、その、いわゆるチューをしながら撮影に臨んでいたのだ。
何かを言うために声を出そうとするが、口がパクパク開閉するだけで
音を発する事が出来ない。


「…………、……!」


ここでヴェントの頭に蘇ったのは、あの時の記憶。
そう、彼女は何も男女のキスシーンを見て衝撃を受けた訳ではない。
いくら何でもそこまでヴェントはウブではない。

蘇った記憶は、『天使同盟』がロシアに来て何日か経った時の事。
露天風呂の休憩所で一方通行と会話をし、そして―――――――。


「待たせたな」

「ぬふぅ」
585 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:41:58.28 ID:GTpI+JVxo

掛け値なしに口から心臓が飛び出たとヴェントは思った。両替を終えて
帰ってきた一方通行は、声をかけただけで妙な声を出したヴェントに怪訝な目を向ける。


「? なンだよ」

「ちょ、ちょっと……待ちなさいよこのクソ野郎……。 あ、あ、
 アンタ、この……プリクラとかいうの。 ちょっとアレなんじゃ」

「は?」

「い、いや……何でもないけど……」
586 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:42:38.92 ID:GTpI+JVxo

茹で上がりのタコのように顔を赤く染めながらヴェントは激しく動揺していた。
この場を離れたわずか数分の間に一体何があったのかと一方通行は考えるが、


「ま、まぁ仕方ねえよな……アンタが撮りたいっていうんだから仕方が無い……」

「いや俺が撮りてェって訳じゃねェンだが……。 何だ、嫌なら別に―――」

「いいからさっさと入れよ!」


尻に強烈な蹴りを食らった一方通行は転がるように室内に激突し、
悪態をつく前にヴェントが部屋に押し入り、カーテンを閉めてしまった。
587 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:51:06.11 ID:GTpI+JVxo

今回はここまでです。

書いてて腹が立ってきたのでチューしながらプリクラ撮ってるカップルが
心臓麻痺で死ぬ展開にしようかと思いましたが、意味不明なのでやめました。

私事なのですが、最近はあまりゲーセンなどには立ち寄れず、今のゲーセンが
どのようになっているのかよくわかってません。ビデオゲームフロアなどは
何となくまだわかりますが……。今でもプリクラってありますよね?

そんな訳で次回はちゃっちゃとプリクラ撮って、そしてこのお話のラスボスを呼ぶまでをお送りします。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
588 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/26(月) 07:51:44.61 ID:GTpI+JVxo



                          【次回予告】



「こんな所で妙なプライド出してどうすんのよ」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「俺も血生臭せェ『闇』から背を向けるなら、普通の人間として生きて
 いくつもりなら、この程度の壁なンざ鼻歌交じりで越えなきゃならねェ」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




「お姉様に付き従ってもう割と長い月日が経ちましたが、初めてお姉様をバカだと思いましたの」
第一七七支部所属の『風紀委員(ジャッジメント)』――――――白井黒子




「や、やかましい! とにかく試してみるわよ、構わないわよねミーシャ?」
学園都市・常盤台中学の超能力者――――――御坂美琴




「studm了承zmfrs」
『天使同盟』の構成員・水を司る大天使『神の力(ガブリエル)』――――――ミーシャ=クロイツェフ



589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/26(月) 08:02:36.65 ID:5DsSYOYZ0

カップルはそのまま死んでも・・・いやなんでもない。
相変わらずヴェントが可愛い。
一方通行に似たぬいぐるみはエイワスさんの仕業なんだろうか
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 09:05:15.61 ID:chdJvX1B0
黒子が美琴をバカと…
何をしたんだww
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/03/26(月) 11:45:43.34 ID:NQzQEFMQ0

何をするつもりなんだ美琴ww
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 12:35:02.06 ID:Gkfl4ZBso
ガブちゃんきたあああああああ
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 12:42:47.66 ID:K6Fla2vHP

去年の11月ぐらいにこの話書いてたってすげーな…
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/26(月) 13:53:03.17 ID:koYVUXeh0


ああ……、なんか活気がなくなってきた気がしない?
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チリ) [sage]:2012/03/26(月) 16:30:06.22 ID:0YXZi+mt0
乙なの
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/26(月) 18:17:36.68 ID:3ICFRkADO
黒子…

気付くのが遅いよ……


乙!


3日以内と言わず、3時間以内でも一向にかまわないんだぜ!
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/26(月) 20:03:57.78 ID:CQWtJxYD0


この一方さんなら穴冥も数回でフルコンできる気がする
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/26(月) 20:34:01.49 ID:b7O+80iv0
乙なのよな

なんかウサギさんとバナナさんがこれからとてつもなく困難かつ滑稽なミッションに挑むような気がする…
主にバナナさんの勘違いのせいで…
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/27(火) 04:30:09.57 ID:lVXwoaxDO
>>598

なにそれ胸熱
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/27(火) 06:36:43.14 ID:rA+zNEC30
ぬふぅにワロタ
舟木兄弟かよ
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/27(火) 18:11:39.14 ID:HauvBHxpo
一週間かけて初めから読み返した
ある程度一定のペースでこの質・量、それを超長期間。改めて>>1の凄さを感じた
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/03/28(水) 07:00:15.30 ID:bmeOTT6v0
乙である
603 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:10:09.73 ID:ymqQwoTLo
>>597
冥界帰航でしたっけ、音ゲーネタもやりたかったですねえ

皆様こんにちわ。更新を開始しに参りました。

えー今回は一方通行とヴェントがプリクラに挑戦するお話と、
白井とミーシャが美琴のとある事に付き合う小話を一つ。
小話とかいいつつ、こっそり伏線のようなものを張ってたりしますが……。

それでは、よろしくお願いします!
604 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:10:39.21 ID:ymqQwoTLo


――――――――――――――――――――――


プリクラ機の室内は何故かピンクを基調としたカラーリングが施されており、
ハートや星のデコレーションで甘々な雰囲気が演出されていた。
当然、そんな擬音にしたら『きゃるきゃる〜ん』や『ぽわわわ〜ん』な空気に
まるで縁がない一方通行とヴェントはこの光景にうんざりとする他ない。


「出よォか」

「この程度の重圧に耐えられないようでは私と写真を撮る資格は無いわよ」

「オマエと写真を撮るにゃ資格が必要だったのかよ」
605 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:11:33.32 ID:ymqQwoTLo

だがそういうヴェントもよく見ると冷や汗を掻きまくっており、気のせいか
息遣いも荒い。恐らく内心で懸命にこの『毒』と言っても過言ではない
スイートな室内の空気と戦っているのだろう。戦況は芳しくないようだが。


「なンつゥか、ラブホテルの部屋みてェだな」

「な、あ?」


一方通行の唐突な発言に思わず変な声が出るヴェント。


「あ、アンタそういう場所に行った事があるの?」

「さっきも言っただろォが。 情報ってのは求めていよォがいなかろォが
 いつの間にか頭ン中に刷り込まれてるモンなンだよ。 つかプリクラ
 知らねェクセにラブホテルは知ってンのか、知識偏ってンなオマエ」

「う、うるせえな」
606 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:12:40.20 ID:ymqQwoTLo

プリクラとラブホテルに何の因果関係があるのかはわからないが……。

視線をあちこちに泳がせながら混乱するヴェントは必死で何か違う事を
想起しようとするが、いくら記憶回路を絞っても出てくるのは先程目撃
した男女二人組の学生が交わしていた口づけの場面だけだった。

このままでは『どうにかなってしまう』と危惧したヴェントは
半ばヤケクソ気味に話題をチェンジしようと試みる。


「そ、そういえばさっきアックアと勝負した時―――」

「気のせいかも知れねェが、なンかこの部屋やたらと狭くねェか?」
607 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:13:22.07 ID:ymqQwoTLo

が、ヴェントの努力は一方通行の何気ない指摘によって遮られる形となった。
彼の言葉を聞いてヴェントは室内を見回す。先ほどカーテンから少し覗いた
時には気がつかなかったが、言われてみれば確かに狭いようにも感じる。

いや、明らかに狭い。プリクラ機の面積基準を満たしていないとしか
考えられないほど狭い。その証拠に、隣にいる一方通行とある程度密着
していないと壁に押し付けられてしまう体勢になる。


(まさかこの部屋……"そういうコンセプト"なのか?)


ヴェントの推測はズバリ的中だった。二人が利用しているこのプリクラ機、
男女のカップルが利用する事を前提とした仕様の少し珍しいタイプだったのだ。
『恋キュン密着倶楽部』という名称がプリクラ機の外面にデカデカと記載されて
いるのだが、確認作業を怠った二人はまんまと場違いな部屋へ入ってしまった。
608 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:13:59.87 ID:ymqQwoTLo

「や、やっぱやめ――――」

「面倒くせェ、さっさと撮ってここから出るぞ」


もうさっきから紅潮状態が続いているヴェントの退室提案も虚しく、
一方通行は硬貨を投入口に入れてしまった。室内に"それっぽい"BGMが
流れだし、画面が切り替わると同時に手順を説明する音声案内が始まる。


「話聞けテメェ! 中止よ中止」

「オマエに否定形はねェンじゃなかったか?」

「た、たまにはあるわ!」

「そりゃ俺もオマエと同じ心境だがよォ、」
609 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:14:36.24 ID:ymqQwoTLo

一方通行は音声ガイダンスを軽く聞き流し、タッチパネルを適当に
操作しながら話を続ける。


「こォいう笑えるくらい似合わねェ事でも、やらなきゃならねェンだ俺は。
 さっきも言ったが今でも俺は乗り気じゃねェし、許されるならこの機材
 を銀河の果てまでぶン投げてェとさえ思う。 だが、残念ながらそれじゃ
 ダメなンだよ、今の俺は。 こォいうバカな事でもやらなきゃダメなンだ」

「こんな所で妙なプライド出してどうすんのよ」

「プライドっつーか……、例えばこンなプリクラとかゲーセンとか、
 普通の人間なら当たり前のよォに生活の一部として割り切れるだろ?
 俺も血生臭せェ『闇』から背を向けるなら、普通の人間として生きて
 いくつもりなら、この程度の壁なンざ鼻歌交じりで越えなきゃならねェ」

「……、」

「ゲーセンに通ってるオマエと同じだよ。 俺はオマエを見習ってンだ」
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 11:14:59.87 ID:HNvbh7jO0
ヴェントさんマジみねね。
611 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:15:32.18 ID:ymqQwoTLo

暗部としての活動、第三次世界大戦、『天使同盟』、『第一九学区事件』。
ごくありふれた生活を送る上で必要のない要素に、一方通行は触れすぎた。
それは時に己から首を突っ込み、時に理不尽に巻き込まれたりもした。

そのような人間に必要なものは『何でもない日常』。一方通行も垣根帝督も、
風斬氷華もフィアンマも、"人間として"当たり前に生きるために自分の立場を
理解し、見直し、目を背けず、日々懸命に生きている。

非日常に浸りすぎた人間には、こういった馬鹿みたいに当たり前な環境に対し
真剣に取り組み、順応していかなければならないのだ。一方通行にとっては
その辺でスーパーでカートを押しながら買い物をするのもプリクラを撮るのも
違いはない。


だから、今ここでプリクラを撮る。阿呆らしく思えるかもしれないが、大事なことなのだ。
それがまず理由の一つであり、
612 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:16:05.88 ID:ymqQwoTLo

「まァ、それと」


もう一つ、ただ単純明快な理由が彼にはあった。


「こォいう事言うのも抵抗があるが、イインじゃねェのかこォいうのも。
 無理やりじゃなく自分を納得させて俺はそォ思ってる。 ようはアレだ、
 せっかくだし、オマエと一緒に写った写真の一枚くらい持っておきてェンだよ」

「……」


真剣な話なのかシュールな笑いを狙っているのか判断し難い言葉に
ヴェントは閉口するしかなかった。
613 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:16:49.02 ID:ymqQwoTLo

「オマエが最初に撮りたいと言った時、俺は乗り気じゃねェなンて言ったが
 ……実際はまンざらでもなかったりするのかもな。 まァ笑いたきゃ笑え、
 悪いが俺は絶賛修行中の身でな。 あンまこォいう状況から逃げたくねェンだ」

「……何かこの前に垣根帝督と口論してた、アレ?」

「そォいうこった。 ……強制はしねェが、」


ヴェントは一方通行の横顔を見る。相変わらず見ていて腹の立つ顔だが、
どこか照れくさそうにしているその表情に彼女は観念したように笑った。


「……最初に持ちかけたのは私だしね」

「?」

「乗りかかった船だ、撮るわよ」
614 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:17:30.65 ID:ymqQwoTLo

さっさと操作しやがれ、と完全な命令口調で吐き捨てるヴェント。
腕を組み、そっぽを向いてむくれた表情を浮かべる彼女に一方通行は
『はいはい』と面倒くさそうな調子で、しかし素直に撮影手順を踏んでいく。


『では、撮影を開始します! フレームに収まる位置を確認してください』

「チッ、こンな狭かったら顔も半分くれェしか写らねェじゃねェか……」

「だ、……」


撮影開始のカウントが始まったが、なかなか二人の顔がいい具合の位置に
収まらない。部屋が狭い上にフレームのサイズも微妙に小さいのはもちろん
この機体の仕様なのだが―――、
615 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:17:59.49 ID:ymqQwoTLo

「だったらこうすればいいだろ、もたもたすんな!」

「なっ、オイ――――」


ヴェントは一方通行の細い腕に自分の腕をしっかり絡めると、そのまま
自分の方に彼の体を引っ張った。完全に密着状態になったところでタイミング
良くカメラのシャッターが降りる。


二人が撮った初めての写真。真っ赤な顔のまま引きつった笑顔のヴェントと、
強引に体を引き寄せられ苛立ったような表情の一方通行。お世辞にも良いとは
言えない写真が一二分割されて取り出し口に出てきた。
616 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:18:50.95 ID:ymqQwoTLo


――――――――――――――――――――――


お昼。


「えー、とにかく。 この常盤台中学女子寮で過ごす限り、例え客人である
 貴女でも寮の規則はしっかりと守ってもらいますの。 ご理解出来て?」

「mzighf了解lpvrgt」

「寮監には逆らわない事、暴飲暴食は以ての外、ここ以外の部屋に無断で
 入室しない事、お姉様とあまりイチャイチャしない事、最低限これだけの
 ルールは破らぬようお願いしますの。 基本的には歓迎ですのよ」

「czhj把握pufeg」

「会話が出来ねええええええ!」

617 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:19:54.94 ID:ymqQwoTLo

実のところ会話はしっかりと成立しているのだが、ミーシャの放つ独特(過ぎる)言語を
理解出来ない白井黒子は頭を抱えながらベッドの上でのたうち回っていた。


食事を終えたミーシャ=クロイツェフと御坂美琴、白井黒子は三人で顔を合わせて
改めてこのミーシャという異形について議論を交わしていた。

とは言っても白井が『で、結局この怪物は何者なんですの?』と尋ね、美琴が
『んー、何か天使なんだって』と適当にも程がある解答を提示するの繰り返しであった。

話題の種であるミーシャはお嬢様が過ごす女子寮の部屋に興味津々といった様子で、
棚を漁ったり(白井に止められた)、故意ではないにせよ机を散らかしたり(白井に怒られた)、
二人の下着を漁ったり(白井に殴られた)、美琴の下着を白井の頭に被せたり(白井に褒められた)と、
いつも通りのやりたい放題スタイルを実行していた。
618 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:20:49.61 ID:ymqQwoTLo

「あーんもう、これではコミュニケーションが成り立ちませんの。 以前に
 常盤台で出会った時もそうでしたが、会話が出来ない以上客人としてもてなす
 事はおろか普通に接する事もままなりませんの。 これは由々しき事態ですわ」

「ocjgw白黒lapqas」

「だからそれでは通じてるって言ってますの!! わたくしをそんな
 オセロやオレオみたいに呼称するのはやめてくださいとあれ程――」

「yuds熊猫sjhot」

「今のは理解出来ませんでしたが結局同じ意味合いの事を言われた気がする!」


ギャーギャーと騒ぎながらも何だかんだで楽しそうに触れ合うアホ二人を放置し、
美琴は机に向かって作業を行なっていた。その手には精密作業を補助するドライバーや
ピンセット、その他に何やら細かい精密機器の部品、極小サイズのチップなど、
そのテのカテゴリーが苦手な人が見たら目眩を起こしそうな要素が机に広がっている。
619 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:21:34.80 ID:ymqQwoTLo

「……で、ここをこうして……。 あ、ここはこの経路に繋げなきゃいけないのかな」

「……お姉様ぁ」


疲弊しきった調子の声色で白井が背を向けて黙々と作業を続ける美琴に尋ねる。


「先ほどから一体何をしておいでですの?」

「んー……ちょい待ち。 …………、……。 よっしゃ出来た!」

「?」


どうやら何かが完成したらしく、美琴は椅子から勢い良く立ち上がると
これ以上はないと断言出来るドヤ顔で二人の方へ振り返った。
620 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:22:16.34 ID:ymqQwoTLo

「じゃーん!」

「……………………それ、は?」

「tsrot不可解cks反応loe感知psytxfr」


印籠よろしく腕を前に突き出して美琴はその完成した何かを二人に見せつけた。
それは一見、『首輪』のようだった。その首輪に比較的小さなワイヤレスマイクが
装着されている。


「黒子、アンタこいつとのコミュニケーションが成立しない事に苦悩してるわよね?」

「それはお姉様も同じでは?」

「marx微弱ahe魔力alpoe」
621 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:22:58.79 ID:ymqQwoTLo

その首輪に、白井は怪訝な目を向けたがミーシャは違った。首を左右に傾げながら
不思議そうに美琴の下へ近づき、そろ〜っと指で首輪をつんつんとつつき始める。
匂いを嗅いだりもしているが、この人外に嗅覚なるものは備わっているのだろうか。


「お、やっぱりアンタにはわかるの? これに組み込まれている『アレ』が」

「?」

「お姉様、勿体ぶらないで答えを教えてほしいですの」


よろしい、と美琴は咳を一度立て、首輪を天に掲げながら堂々と宣言した。
622 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:23:31.98 ID:ymqQwoTLo




「対ミーシャ用コミュニケーションツール、その名も『ガブリンガル』よ!!!」




ぱちぱちぱち……と、とりあえず拍手しとくかみたいな雰囲気でミーシャが手を叩く。
対して白井は『お姉様、頭でも打ったのかな?』と口には出さないが内心では
正直美琴の言動に疑問を感じていた。
623 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:24:12.38 ID:ymqQwoTLo

「その、ガブリンガルとは一体……?」

「私が今日、即興で開発したミーシャ専用翻訳機、と言ったところかなー。
 ほら、『外』で開発された『バウリンガル』っていう犬の
 コミュニケーションツールって名目の"オモチャ"があるじゃない?」

「ああ……ありましたわねそんなのも」

「アレの名称を拝借して名付けたの。アンタ、別名をガブリエルって
 言うんでしょ? 語呂的にはグッドじゃない?」


こくん、とミーシャは首を縦に振る。ミーシャは美琴と白井に自分の本来の
呼び名を教えていた。もちろん、他言無用で。二人はなんだか仰々しくて
呼びにくいという理由で結局ミーシャと呼んでいるが、本人はもう気にしていない。
624 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:25:16.38 ID:ymqQwoTLo

「ほ、翻訳機……ですの? この、眉唾ものですが別の世界からやって来た
 ミーシャさんの意味不明の言語を翻訳するツール……? ど、どうやって
 この方の言語の法則性を把握したんですの? そもそもなぜ首輪…………」

「ぶっちゃけ法則は人間である私には理解出来ないのよね。 あの火野とかいう
 男に聞けばわかるかもしれないけど、どこに居るのかミーシャも知らないし。
 で、私はとある極秘ルートから学園都市が秘密裏に保有してた物を入手したの」

「極秘ルート? 秘密裏に保有? お姉様、"また"わたくしに
 内緒でヤバい案件に首を突っ込んでおられません?」

「…………、……。 足はつかないようにしたから平気よ。 黒子、『天使の涙』って聞いた事ある?」


若干の沈黙に、白井は眉をひそめて首を傾げた。
625 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:26:15.02 ID:ymqQwoTLo

『天使』というキーワードが出てきた以上何らかの反応を示すべきのミーシャは
そもそも話を聞いていなかったらしく、さっきから美琴が持つ『ガブリンガル』をジッと観察している。


「私も詳細は知らないんだけど、かつて学園都市が研究、解明に着手した
 曰く付きの宝石なんだって。 何でもそれを使えば天使と会話が出来る
 けど、使用方法を誤れば死に至る……なんて、佐天さん辺りが食いつきそうよね」

「その胡散臭い宝石をパーツにして作ったのがこのガブリンガルですの?」

「私が入手出来たのは『天使の涙』のわずかな欠片だけ。 今はもう
 その宝石の研究は凍結されてるらしくて、専門の研究機関も潰れた
 らしいわ。 その時の『遺産』を今回、私が拾ってきただけの話よ」


美琴が開発した『ガブリンガル』は、その本体も兼ねた小さなワイヤレスマイクに
更に極小の精密機器と、一度落としたら二度と見つからない程小さな『天使の涙』を
第三位の頭脳をフル回転させて作り上げたアホ臭くも凄すぎるツールである。
少しでもその才能をどこか別の方向へ……普段は使っているのだが。
626 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:27:10.03 ID:ymqQwoTLo

ミーシャの首に『ガブリンガル』を装着し、その状態でミーシャが声を発する。
その音波を『天使の涙』が組み込まれたワイヤレスマイクがキャッチし、
『天使の涙』を介して正しくミーシャの意思を伝える事が出来るという。


「ただし、正確に言語が再生出来るかどうかは『天使の涙』に一任しちゃってるけどね。
 学園都市で研究されていたとはいえ、半分以上はオカルトの領域の宝石だもの。
 いくら私でも個人でその宝石の性質を解明する事は出来ないから、そこはご愛嬌」

「お姉様に付き従ってもう割と長い月日が経ちましたが、初めてお姉様をバカだと思いましたの」

「や、やかましい! とにかく試してみるわよ、構わないわよねミーシャ?」

「studm了承zmfrs」

「いいのかよ」
627 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:28:00.52 ID:ymqQwoTLo

白井のツッコミも虚しく、美琴の手によってミーシャの首に『ガブリンガル』が
装着される。その光景がまるで出社前の夫にネクタイを付けてあげる妻のように見え、
白井は理不尽な嫉妬の念をミーシャに送るが普通に無視された。


「これでよし。 さぁミーシャよ、今こそそなたの思いをあらん限りに打ち明けるのだー!」

「なんだか今日のお姉様、変……」


白井の言う通り、今日の美琴はいつもと違う奇妙なテンションが続いていた。
天使という別位相の存在と触れ合い過ぎてちょっと頭をやられてしまっている
のかもしれない。それならこの『ガブリンガル』とかいう才能の無駄遣いの結晶を
開発した行動も頷ける。
628 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:28:47.90 ID:ymqQwoTLo

「wdefhndagpcbktrbemmr……、xwdnmd。 ……gbexezuratawyw」


ミーシャが声を放つ。翻訳には一度ミーシャの生声をキャッチして『天使の涙』が
解析し、マイクから翻訳されるという過程が生じるため多少のラグがあるようだ。

美琴も、疑わしい目を向ける白井も、何だかんだでドキドキしながら耳を立てて結果を待つ。


そしてついに、『ガブリンガル』によって翻訳されたミーシャの言葉が――――!




『わん! わんわん! わん! あおーん』

「結局バウリンガルじゃねえか! お姉様ちょっとバグりすぎですの、目を覚ませー!」



629 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:29:23.64 ID:ymqQwoTLo

普段絶対にしないようなフライングクロスチョップをツッコミとして美琴に浴びせる白井。
彼女もまた、天使という領域に足を踏み入れて色々とおかしくなっているのだろうか。


(……)


しかし美琴としては『ガブリンガル』の成否など、実はどうでもよかったりする。
彼女はとある『主目的』を調べる過程で『天使の涙』の情報を得ただけなのだ。

主目的。

それは、美琴の立場からすれば決して見過ごすことのできない、とある『駆動鎧(パワードスーツ)』の情報だった。
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/29(木) 11:33:56.06 ID:HNvbh7jO0
大丈夫だよ。ミコッちゃんあなたはヌイトの力を受け継ぐ能力者だから。
631 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:36:50.23 ID:ymqQwoTLo

今回はここまでです。

なんか久々にくっだらねえ話を投下した気がします。
実にどうでもいい的な意味で。でもこういうのもたまにはいいかなとも思います。
『天使の涙』のエピソード、もう覚えてないんで不安ですけど……。

で、また前回嘘をついてしまいました。申し訳ない。
一端覧祭五日目のラスボスが登場するのは次回です。
ようやく今回のゲーセン編も終わりが見えてまいりました。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
632 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/03/29(木) 11:37:37.27 ID:ymqQwoTLo



                          【次回予告】



「じゃあじゃあ、ミサカとキャーリサがあなたの目の前で同時にひどい
 風邪を引いたらあなたはどっちを看病するの? 言っておくけど、どっちも
 なんてふざけた解答はNGなんだからってミサカはミサカは釘を刺しておく」
『妹達(シスターズ)』の司令塔――――――打ち止め(ラストオーダー)




「チッ、面倒くせェ……」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




「このミサカに格闘ゲームで挑もうなんて無謀で愚かな挑戦状を
 叩きつけてきたのはどこの馬の骨かなぁ? あひゃひゃひゃ」
『妹達』第三次製造計画(サードシーズン)で作られた御坂美琴のクローン――――――番外個体(ミサカワースト)




「今日、私がアンタに格ゲーで勝負を挑んだ理由、説明しなきゃダメかしら?」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント



633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/29(木) 11:41:46.61 ID:cE9P6O0To

次回、ついに修羅場……!
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) :2012/03/29(木) 12:08:39.45 ID:BUUlkpWX0

635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 12:21:00.58 ID:eIAEGkKDO
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 13:11:52.14 ID:EIZ8m3YDO
乙!!

みこちんすげぇ発明を…って失敗かい!!!


ってか、一通さん?
それ(一緒に写真を〜)告白にも聞こえないかい?
フラグがより強固に立つよ?
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 13:37:36.24 ID:Kta58aI+o
黒打ち止めクルー?
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/29(木) 14:45:50.57 ID:ClbWOI7ho
いやまて・・・まだミーシャが犬の鳴き声のまねをしたという可能性が残っている!
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 14:52:54.96 ID:tOKt/s5SO
ガブリエル→ガウリンガル→バウリンガル→人語
完璧じゃね
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/03/29(木) 15:27:25.66 ID:CjA4WpK30
失敗かよww
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/29(木) 16:31:54.69 ID:paKj2kdx0
熊猫さんツッコミキレッキレっすね!
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 17:48:56.42 ID:EIZ8m3YDO
>>638
ガブおちゃめだなww
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/29(木) 19:35:23.07 ID:yOLP5VwY0
お前らよく考えろ 犬と天使が会話できるんだぞ!! 超便利だろ?
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/29(木) 21:31:47.37 ID:jVpXQLuS0


冥界帰航…?
弐寺の冥のつもりだったけどまあいいや

にしても御坂さん頭だけは無駄にいいっすね
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/03/29(木) 22:13:10.46 ID:wesvfn2xo


美琴が調べていた駆動鎧は「ガトリングレールガンか?
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 22:45:59.04 ID:jBrBAfuuo
>>643
つまり、人間の言葉が喋れる犬を用意すればミーシャとも会話できるわけか
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/29(木) 22:54:31.08 ID:0UnjL6gfo
脳幹くんの出番フラグだな
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/29(木) 23:23:30.58 ID:dJrlc9mH0
>>639
それは俺も思った
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/03/31(土) 18:46:35.93 ID:lNvP26Fdo
>>648
グーグル再翻訳みたいになりそうじゃね?
650 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:41:23.82 ID:KQlYIabRo

そもそも私はバウリンガルというものを使用したことがないのですが、
あれ本当に犬の言語を翻訳してくれる素敵ツールなんでしょうか?
私は犬を飼っていないので試しようがないのですが、どうも眉唾ものというか……。

こんにちわ、更新を開始したいと思います。

今回はいよいよヴェントが格ゲーに興じるきっかけとなったあの子を交え、
一端覧祭五日目(でしたっけ?)のアンロック編を終盤に持ち込もうと思います。

ちなみに今日はエイプリルフールなので何か嘘ネタしようと思いましたが、
既に午前は終了していたという……。

それでは、よろしくお願いします!
651 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:42:00.90 ID:KQlYIabRo


――――――――――――――――――――――


「で、撮ったプリクラはどォする訳?」

「ん……私が武器に使ってるハンマーにでも貼っておくわ」

「ボロボロになるわクソボケ」


本来は店内にあるゲームを隅から隅まで楽しもうという予定だったのだが、
プリクラの騒動で精神的に疲れ果ててしまった二人(特にヴェント)は結局
格闘ゲームの筐体に座って対戦をしていた。
652 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:42:45.63 ID:KQlYIabRo

「……また俺の勝ちか」

「何度でもやるわよ。 負けてもいいからとにかく経験を積まないと
 上手くなれないんでしょ? ……努力なんてしたの、いつ以来だろ」

「ゲームにかける努力なンざたかが知れてるけどなァ」

「たかがゲームでも大事なんでしょ」

「……返す言葉もねェよ」


相変わらず一方通行は容赦なかった。圧倒的な猛攻でヴェントの操るジュレを
地に這いつくばらせている。が、午前中のような完全なワンサイドゲームという
展開ではなかった。

ヴェントもまた、着実に腕をつけてきていた。初めの方は一方通行が操作する
リュウタに一発のクリーンヒットも当てられなかった彼女が、今では調子の良い
時など敵体力の半分以上を減らせるくらいまで上達していたのだ。
653 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:43:55.66 ID:KQlYIabRo

「チッ」

「……今のは結構危なかったな。 あの女、この短時間でここまで上手くなるとは」


それでも一方通行の実力には遠く及ばないが(一方通行も現在進行形で経験を積んでいるため)、
恐らくアックア相手なら一〇回やって八回は勝てるであろうプレイヤースキルを備えている。

だが格闘ゲームというのはやはり対戦が主なゲームであり、対人戦となると本物の人間相手と
己の腕を競う事になる。例外こそままあれど、勝てば自分の実力が相手を上回っており、
負ければ自分が相手より下手クソなだけ。シンプルが故に、その実力面が浮き彫りになるゲームだ。

当然、負けたら面白くはない。負けても経験を得たと思えば、という考え方も正しいが、
それでも負けたら楽しくない、悔しいという気持ちが沸き上がってこなければ意味が無い。
格闘ゲームをプレイした経験を持つ人間の実に五割は、負けが重なりつまらなくなって
足を洗ったというケースである。
654 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:44:37.63 ID:KQlYIabRo

(……、)


ヴェントはどちらかというと負けず嫌いの人間にカテゴライズされる。それも当然、
彼女はこうして何でもない平穏を過ごす前はローマ正教最大の暗部組織、『神の右席』に
所属していた魔術師だ。こんなゲームなどではなく、本物の、正真正銘の『実戦』に
何度も駆り出されている過去を持つ。

実戦での負けは『死』を意味する。負けた事で被る『死』の定義は様々であるが、
肉体的に死のうが立場的に死のうが、『神の右席』という最重要位置に君臨する
ヴェントにとってはどちらも等しく『死』である。


故に彼女は負けを嫌う、避ける。根付いているのだ、敗北を拒否する体質が。
そんな彼女が今こうして格闘ゲームで一方通行にボコボコにされている。
これだけやっても一勝どころか、一ラウンドも奪えていない。
格闘ゲームで負けても死にはしないし立場が脅かされる心配もないが、負けたら
悔しいし面白くない事には変わりない。
655 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:45:27.68 ID:KQlYIabRo

そんなヴェントがなぜこうも対戦を続けられるのか。


(まんざらじゃないのは、私も同じって事か)


それは、楽しいからだ。数えきれない敗北を積み重ね、一方的に叩き潰され、
苦い思いを強いられても、楽しいと思っていられるから彼女は継続出来るのだ。
しかし敗北ばかりのこの対戦がどうして楽しいと思えるのか。


(対戦とか勝敗結果とかそういう問題じゃなく、)


ヴェントは筐体の向こう側にいる、姿の見えない一方通行に向かって
薄く笑いながら"認めた"。目を背けず、素直になる事が出来た。
656 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:46:13.60 ID:KQlYIabRo




(白いのと一緒に遊んでるって状況が、私にとって幸福なんだ)




何でも良かったのだ。今回がたまたま勝敗という結果付きの格闘ゲームだっただけで、
ヴェントは一方通行と過ごせるならどのような状況でも構わなかった。
薄々は理解していただろう。しかしなかなか自分の本当の気持ちを受け入れる事が
出来なかった。以前の、厳密には垣根帝督とぶつかる前の一方通行のように、
ヴェントもまた無意識に己の心と距離を取っていた。


(『楽しい』、というこの感情は悪くない。 意地張って目を逸らしてた
 今までの自分をぶち殺したくなるくらいには、心地が良いと言える)
657 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:46:58.13 ID:KQlYIabRo

薄汚い定食屋だろうが、何の面白みもない映画館だろうが、ただ街路を歩いているだけであろうが、
どんな場所でも、どんな状況でも、ヴェントは無愛想で口を開けばすぐ暴言を吐く、杖をついた
髪の白い生意気な少年が傍に居れば幸せだった。


(……そろそろ頃合いかしらね。 『前方のヴェント』として自己を振る舞うのも)


そして人という生き物は、認識した幸福を手放したくないという気持ちが生まれてくる。
噛み締めた幸せを持続したいと、ずっと抱き続けたいと考える。


「白いの」

「あン?」


もはや何戦目かもわからなくなった対戦で敗北したヴェントは連コインを中断し、
席を立って一方通行の下へ歩み寄った。
658 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:47:33.98 ID:KQlYIabRo

「どォした、さすがにこンだけ負けが続いてやる気が無くなったか?」

「"決着"をつけるわ。 あの女をここへ呼べ」

「はァ?」


出し抜けな注文に一方通行は首を傾げた。が、ヴェントの実直な視線を受けた彼は
茶化す素振りも見せず詳細な説明を要求する。


「あの女ってのは、」

「番外個体。 アンタ、連絡先くらいは知ってるんでしょ」

「あいつとやる気か? まだ俺にすら勝てねェって段階なのに」
659 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:48:07.97 ID:KQlYIabRo

「アンタよりあの女の方が強いの?」

「……知らねェけどよ」


ヴェントが要求したものは、つまりは『ラスボスの呼集』。
彼女をゲーセンへ通わせる原因となった女、番外個体との決着であった。

かつてヴェントは成り行きで番外個体と格闘ゲームで対戦し、それはもう
見るも無残にギタギタにされてしまった。初心者狩りなどというレベルではない、
対戦相手の心をへし折るどころか粉々にしてしまう程の圧勝ぶりを番外個体は
見せた。明らかな悪意を以ってヴェントを潰したそのプレイスタイルは実に彼女らしい。


「呼べって……まァイイけどよ。 勝てるのかよこンな付け焼刃の特訓で」

「アンタと今日ここに来る以前にも、私は毎日のようにゲーセンへ
 通っていたわ。 ……本格的に特訓したのは今日が初めてだけど」
660 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:49:00.10 ID:KQlYIabRo

「急ぐ必要はねェだろ。 今年いっぱいは練習に費やして充分に上達してからでも―――」

「私の中で『私』との折り合いがついたのよ。 気付けたとも言えるか。
 思い立ったが吉日、でもいいわ。 とにかく、今日あの女と決着をつける」

「……? ……よく分からねェが、まァ勝手にしてくれ」


一方通行は番外個体に連絡するためにポケットから携帯電話を取り出した。
登録番号をプッシュして耳に添える前に、ヴェントからこんな質問が飛んできた。


「白いの」

「?」
661 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:49:28.88 ID:KQlYIabRo

「私、勝てると思う?」

「嘘ついてもしょうがねェからハッキリ言うが、十中八九無理だろ」

「だったら、私があの女に勝ったら……一つだけ私のお願いを聞いてもらうから」

「なンでそォなる……。 しかも、"お願い"たァオマエらしくねェな」

「そうね。 命令、私の命令に従ってもらう」

「…………、了解」


ヴェントの真意は掴めなかったが、とりあえず一方通行は彼女との賭けに乗った。
ボタンを押し、ラスボスである悪意一〇〇パーセントのクローンに電話をかける。
662 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:50:13.25 ID:KQlYIabRo


――――――――――――――――――――――




「待たせちゃったかにゃーん?」

「まだ一分も経ってねェぞ!? もしかして近くに居たのか?」




連絡をしてからわずか数十秒後。一方通行とヴェントが居る
ゲームセンターの自動ドアが左右に開かれた。そこに佇むはこれから
ヴェントが格闘ゲームで決闘を挑む、いうなれば"ラスボス"。


番外個体(ミサカワースト)。一体ミサカネットワークのどこにそこまでの
悪意が溢れていたのか、彼女の顔は『天罰術式』にお誂え向きの憎たらしい
笑顔で染まりきっていた。
663 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:51:01.64 ID:KQlYIabRo

「み、水……ってミサカはミサカは真冬であるにも関わらずカラカラに
 干上がった喉を潤すため冷たい水を要求してみたり……ぜぇぜぇ……」


番外個体の隣に、彼女から悪意を抜いてそのまま小さくしたような少女、
打ち止めがフラフラとした足取りで店内に入ってきた。
彼女の様子から察するに、どうやら二人は一方通行の電話を受けて走ってきたらしい。


「黄泉川の家からここまでどれだけ距離があると思ってンだ……。
 少なくとも一分以内に来れる距離じゃねェぞ……」

「ここんとこ暇が続いてたからね〜。 あ、そうそう、あなたが
 世話してたイギリスの王女様、すっかり元気になったから」

「キャーリサか」

「報告するよう頼まれててねえ。 そういう訳だから、伝えたよん」
664 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:51:46.64 ID:KQlYIabRo

風邪を引いてダウンしていた第二王女の回復報告を受けた一方通行は
つまらなそうな調子でそっぽを向いた。これが彼なりの『胸を撫で下ろす』
なのだから紛らわしい。というか、素直ではない。


「で?」


番外個体は死にかけの打ち止めを無視してつかつかと店内に入り、
額に手を当てながらわざとらしく視線を動かして何かを捜す仕草をする。


「このミサカに格闘ゲームで挑もうなんて無謀で愚かな挑戦状を
 叩きつけてきたのはどこの馬の骨かなぁ? あひゃひゃひゃ」

「私よ」

「うん、知ってる」
665 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:52:33.62 ID:KQlYIabRo

番外個体の顔を正面から睨みつけ、これまたわざとらしく足音を
立てながらヴェントは彼女に接近する。ヴェントも番外個体に
負けず劣らずの悪に満ちた笑顔だった。

ひゅー、ひゅーと掠れた息を漏らす打ち止めの手を引いて自動販売機に
連れて行く一方通行など二人の視界には入っていない。彼女達は吐息が
かかる距離まで顔を寄せ、バチバチと火花を散らせていた。ていうか
番外個体が本当に前髪から紫電を放っている。非常に危ない。


「お久しぶりですねえ〜魔術師さん」

「今日、私がアンタに格ゲーで勝負を挑んだ理由、説明しなきゃダメかしら?」

「くふっ、大方、ずっと前にこのミサカ相手に格ゲーでボッコボコにされて、
 その忸怩たる思いを惨めったらしく今日まで引きずってぇ、第一位の前で
 膝をついて懇願して修行を積んだからぁ、その成果をこのミサカ相手に
 見せつけてやろうってとこでしょぉ? あーやだやだ、根に持つ女って☆」
666 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:53:19.13 ID:KQlYIabRo

「話が早くて助かるわ」

「……へえ、安い挑発には乗らなくなったか。 つまんにゃーい」


もっとも、ここでヴェントが番外個体の挑発にあっさり乗って
リアルファイトに突入したらこのゲーセンは廃墟と化していただろう。

だがそれでも二人から溢れるどす黒いオーラはあっという間に店中を
覆い尽くしてしまった。遠目でその光景を見ている店員の青年の膝が
ガクガクと笑っている。並の人間がこの場に居たら卒倒していたかも知れない。

当然、ヴェントと番外個体、一方通行と打ち止めを除く店内の客は
全員我先にと逃げ出してしまった。完璧に営業妨害である。
667 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:53:56.76 ID:KQlYIabRo

そして一方通行に買ってもらったオレンジジュースを一瞬で飲み干した打ち止めは、


「ぷっはー! これのために生きてますなぁってミサカはミサカは
 改めて地球の恵みである水に感謝の意を送ってみたり!」

「つかなンでオマエまでついてきてる訳?」

「あなたがいる所にミサカがいる、って言いたいんだけど……
 ってミサカはミサカはあざといジト目を作ってあなたを見上げてみる」

「あン?」


ゴミ箱に空き缶を放り投げ(入ってない)、腰に手を当てながら打ち止めは
一方通行の顔をジーッと凝視する。
668 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:54:52.69 ID:KQlYIabRo

「各地に点在するミサカから聞いたんだけど、あなた、ヨミカワの家に
 いるキャーリサとホテルでイチャついておったらしいではないか、
 ってミサカはミサカは当時受信した動画を再生しながら確認してみる」

「!?」

「しかもベッドの上で? スプーンであーん? うふーん? あなたが
 年増フェチだとは思わなかったってミサカはミサカは失望してみる」

「話を飛躍させすぎだァ!! クソッ、一〇〇三二号が発信源だな。
 つかあれはただあの女を看病してただけでイチャついてなンかねェよ!」

「ミサカをほったらかしにして看病? ってミサカはミサカは追撃してみる」

「何様なンだよオマエは!! なンで俺の行動の優先順位のトップに
 オマエが君臨してる事になってンだ! キャーリサだって知らねェ
 仲じゃねェンだ、放っとく訳にはいかねェだろォが」
669 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:56:06.71 ID:KQlYIabRo

「じゃあじゃあ、ミサカとキャーリサがあなたの目の前で同時にひどい
 風邪を引いたらあなたはどっちを看病するの? 言っておくけど、どっちも
 なんてふざけた解答はNGなんだからってミサカはミサカは釘を刺しておく」

「……、」

「即答しろー!! ってミサカはミサカはグーでポカポカ殴ってみたりー!」


自動販売機の前で痴話喧嘩をするアホ二人を放置して、ヴェントと番外個体は
因縁深い『スーパーストライキファイターW』の筐体へ移動していた。
ちなみに打ち止めの問いに対する一方通行の答えは当然、『どっちも』である。
彼は口にはしなかったが。


「さっさとこのくだらない因縁を断ち切るわよ」

「因縁だと思い込んでるのはあなただけじゃないのかなぁ?
 あ、でもその前にちょっと肩慣らししてもいいかな?」
670 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:57:15.03 ID:KQlYIabRo

「CPU相手に?」

「いいや――――――、ねえ〜第一位」

「ンだよ、こっちは今取り込み中……痛てェ痛てェこのクソガキがァ!」


その完成度の低さに原作ファンが修羅と化した某格ゲーのキャラの如く、
打ち止めにマウントからのパンチを叩き込まれていた一方通行は返事をするのも
いっぱいいっぱいといった様子だ。


「一回だけでいいから対戦しようよ。 本命の魔術師さんと
 やる前にウォーミングアップしておきたいからさぁ」
671 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:58:16.71 ID:KQlYIabRo

「し、白いの相手にウォーミングアップだと……? あ、アンタ、あいつと格ゲーで対戦した事あるの?」

「うんにゃ、あの人こういうゲームとかやらないから対戦なんてした事ないよ。
 ……ふむ、そう考えると不思議だねえ。 あなたとだったら第一位もこんな
 ゲームに付き合ってくれる訳だ? これは上位個体へのいい土産話になるね」

「……いい性格してるわ、アンタ」

「いえいえ、あなた程ではないですよ。 あひゃひゃひゃ!」


ぐにゃあ〜、と二人を取り囲む周囲の空間が複雑に歪んだ。あらゆる『負』の感情が
店内を所狭しと暴れまわる。店員の青年が重圧に耐え切れず過呼吸を起こしているが
放置しても大丈夫なのだろうか。
672 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 16:59:14.61 ID:KQlYIabRo

「あァクソ、イイ加減離れろクソガキ。 ……で、俺相手に肩慣らしか」

「ミサカ、誰かさんにゲーム機壊されたせいでしばらくゲーム出来なかった
 からねえ、プレイするのも久々だし、カンを取り戻しておかないと。
 どうせあなたの事だ、今日のプレイでかなりの腕前になってるんだろ?」

「う……」

「チッ、面倒くせェ……」


そんな訳でまずは一方通行vs番外個体の対戦。ヴェントは一方通行側の筐体で
対戦を観察する事にし、プンスカと怒ったままの打ち止めは頬を膨らませながら
番外個体側の筐体へ移動した。
673 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 17:02:26.82 ID:KQlYIabRo

はい、今回はここまでです。

久々に登場した打ち止めと番外個体ですが、書いてて楽しかった記憶があります。
というか今の書き溜めで美琴を書いているのですが、ミサカ系キャラが可愛く
思えてきました。いや今までも可愛いとは思ってましたけど。

次回も引き続き、こんな感じでいきます。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
674 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/01(日) 17:03:08.00 ID:KQlYIabRo



                          【次回予告】



「国へ帰るんだな、あなたにも家族がいるだろう? って、
 第一位に家族なんざいねえかあ、いやあゴメンゴメン☆」
『妹達(シスターズ)』第三次製造計画(サードシーズン)で作られた御坂美琴のクローン――――――番外個体(ミサカワースト)




「仇ィ討つンだろ、番外個体を倒して……仇討ちを成し遂げるンだろ!」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




「か、仇……?」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「急に何言い出したのこの人、ってミサカはミサカはちょっと本気でこの人の容態を心配してみたり」
『妹達』の司令塔――――――打ち止め(ラストオーダー)



675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/01(日) 17:36:22.37 ID:2DiEy2FAO
乙です
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/04/01(日) 17:45:46.85 ID:SiqITSkA0
乙乙!
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2012/04/01(日) 18:01:45.10 ID:3OOkjSSW0
乙!
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/01(日) 18:10:41.79 ID:xrKQQ6K/o

徹夜続きだからな一方通行……
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/01(日) 18:18:58.17 ID:3OOkjSSW0
まだゲームやってんだ?
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/01(日) 18:33:33.45 ID:jEDypPQ/0
一方通行が変なテンションになってるな
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 21:16:19.43 ID:buEkdPnIO
寝てないからな。
しかし、ゲーセン店員は並の人間ではなかったか。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 21:45:00.57 ID:rf7YjM9Ho
過労3徹だからな
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/01(日) 22:32:21.69 ID:B9qQ1XmIO
乙!
格ゲーはトバルNo.1しかやったことがないな……
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/01(日) 23:07:11.28 ID:uZbFH4lAO
2クレでゴンザレスに勝てる一方通行を普通に倒す番外個体ってどんだけ強いんだ
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/02(月) 10:54:18.68 ID:l7AJgfXDO
乙!!

最近おっぱい要素が足りないぜ…
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/04/02(月) 20:06:31.26 ID:G7qvFm5d0
おっぱい要素はほしいね うん おっぱいおっぱい
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/02(月) 20:07:24.13 ID:A3L4m8tAo
おっぱい!
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/04/02(月) 21:21:16.58 ID:a1AXnV3AO
どこまでも平坦でなだらかな砂丘を愛でようとする優しさを持った人はいないのかね
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/02(月) 23:43:07.07 ID:ol4/ynY/0
とらドラ!なんかじゃ一方さんと風斬の中の人が
恋仲のキャラ役演じてたな、そういえば
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/03(火) 12:59:05.11 ID:hn/ebIsAo
おっぱい(迫真)
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/04(水) 00:20:34.91 ID:gKtGnT0g0
おっぱい(棒)
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 00:32:16.66 ID:+3abyKQuo
おっぱい(板)
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/04/04(水) 00:32:48.38 ID:PZacKJTro
そんなことよりオルソラの話しようぜ!
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/04(水) 00:35:03.09 ID:+qJdt3sZo
おっぱい(神)
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/04(水) 01:02:42.44 ID:6rLv2kJ1o
おっぱい(極)
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/04/04(水) 04:20:18.18 ID:v+6RtGif0
おっぱい(天)
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/04(水) 11:09:38.32 ID:of72qbCho
ちっぱい(ぷらす腋)
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/04(水) 11:15:04.20 ID:8CIlJEBF0
そろそろ落ち着け
699 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:06:37.69 ID:84qGUhQKo

こんにちわ、更新を開始します。

これは……皆様はおっぱいをご所望でしたか。
そういえば最近そういうの書いてないですね。でもまさか胸を露出させて
ゲームやらせる訳にもいきませんし……それじゃただの変態だ。
しかしおっぱいは大事ですね。これは真剣に考えてみないと。

さて今回はついにヴェントと番外個体が対戦を始めます。
そこで番外個体はウォーミングアップのために一方通行との対戦を希望したのですが……。

それでは、よろしくお願いします!
700 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:07:09.94 ID:84qGUhQKo


――――――――――――――――――――――


店内のBGMとゲームが奏でる騒音だけが虚しく響き、客などほぼ皆無の
状態と化しているここ、ゲームセンターで――――――。




「あひゃひゃ! ぎゃははははははははははははは!!!
 国へ帰るんだな、あなたにも家族がいるだろう? って、
 第一位に家族なんざいねえかあ、いやあゴメンゴメン☆」

「なン……だと……」

「…………」

「すげー……、ってミサカはミサカは番外個体の華麗な腕前に感動すら覚えてみる」




――――――学園都市最強の超能力者。一方通行は哀れなまでに叩きのめされていた。格闘ゲームで。
701 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:08:04.81 ID:84qGUhQKo

「お、おい白いの……アンタ今のちゃんと本気でやったんだろうな?」

「こ、この俺が……今日初めてプレイした初心者のこの俺が……」

「いや何でそんな言い訳くさく戦慄してんのさ。 素直に負けを認めない
 男なんて、それはもう男じゃなくてただのオスだよ。 いやゲスだね」


対面の筐体から番外個体によるボロクソな言葉を浴びるが、一方通行はもはや聞いていない。

一方通行は敗北した。番外個体との対戦で、それはもう完膚なきまでに。確かに彼は今日
初めて格闘ゲームを経験した初心者だが、その並外れた頭脳は彼を数分で初心者から脱却させた。
今すぐ全国大会に出場しても優勝を狙える腕前に上達した事は、彼に今日の朝からフルボッコに
されているヴェントが一番よく理解している。

その一方通行が、番外個体に手も足も出なかったのだ。
702 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:08:59.98 ID:84qGUhQKo

「これじゃウォーミングアップにもならないなぁ。 然しもの第一位様も
 さすがにゲームじゃこのミサカには勝てないかぁ、正直失望したよ」

「ぐうの音も出ねェ……、ていうかオマエ普通に上手すぎだろ……」

「おやおや、第一位から賞賛のお言葉がいただける日が来るとはねえ。
 まぁでも、結構イイ線いってたんじゃない? ミサカが操作する
 キャラの体力を残り三割にまで追い詰めた技量は初心者とは思えないよ」

「オマエに慰められてもちっとも浮かばれねェよ……」

「だったらカラダで慰めてあげようかぁ?」

「調子に乗らないの! ってミサカはミサカは油断も隙もない妹に注意してみたり」


番外個体の邪な誘惑を阻止した打ち止めは、膝をついて白い顔をさらに白くして
絶望に打ちひしがれる学園都市最強(笑)の怪物の方へ、トテトテと歩み寄る。
703 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:09:58.08 ID:84qGUhQKo

「あなた、大丈夫? ってミサカはミサカはそっと頭を撫でてみる」

「……考えてみりゃ俺ァ、格ゲーで敗北を味わうのはこれが初めてだった……。
 ヴェントは……こンな思いをもォ何度も……。 いや、俺があいつにそォいう
 思いをさせちまってたンだよな……。 そりゃ不貞腐れるってモンだ…………」


ぶつぶつと譫言のような何かを呟く一方通行を憂いた打ち止めが、小さな手で
彼の頭を撫でる。見た目一〇歳前後の少女に慰められる学園都市最強(故)の
怪物がそこには居た。彼は真っ白な灰となって燃え尽きていた。


「あはぎゃは、こんな第一位の姿なんて滅多に見れるもんじゃないよねえ。
 ちょっと写メ撮っとこ。 ……さてさて、それでは? 本日のメインイベント、
 始めちゃおうかにゃん? このミサカに挑もうなんていう滑稽な挑戦者は……」
704 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:11:05.31 ID:84qGUhQKo

ビクン、と肩が震えた。言わずもがな、それは番外個体に粘つくような視線を
浴びるヴェントの小さな肩である。彼女は魂が抜けて伽藍堂の肉体だけが残った
一方通行を見下ろしていた。それは呆れや失望による視線ではなく、ただ理解
出来ない、一方通行が敗北したという現実を受け入れられないという混乱の視線だった。


ヴェントにとって一方通行は、憎き敵であり互いを高め合う(強敵と書いて)ライバルであり、
そして自分を脱初心者へと導いてくれる優秀なパートナーでもあった。格ゲーにおける彼の
強さはヴェントが一番よく知っている、理解している、味わっている。

そんな一方通行を、シャドウに精神を食われた影人間のような有様にしてしまった
番外個体の恐ろしさも、彼女は痛感していた。正直に言って一方通行相手で精一杯の
ヴェントが番外個体に勝てる見込みなど、雀の涙ほどもありはしない。
705 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:11:54.72 ID:84qGUhQKo

「どうしたの〜? もうミサカのウォーミングアップは終わったよ。
 さっさと一〇〇円を入れて、ミサカを楽しませてよ魔術師さん」

「う、ぅ……」


ヴェントの勝利など絶望的である事くらい番外個体も承知のはずなのだが、
しかし尚対戦しろと言葉を投げかける彼女の、なんと残酷で無慈悲なことか。

だがそれが格闘ゲームなのだ。最低限のマナーを守るのは当然として、
その上で格下が格上のプレイヤーに処刑されるという光景は日常茶飯事。
相手が初心者だとわかった瞬間つきまとっては容赦なくワンサイドゲーム
を決められるという状況ならともかく、今回は格下のヴェントが格上の
番外個体に勝負を持ちかけた。

故に、逃げる訳にはいかない。勝てないとわかりきっていても、
己から挑戦状を叩きつけた以上、尻尾を巻いて逃走するなどあってはならない。
706 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:12:59.64 ID:84qGUhQKo

そのはずなのだが、


「ま、別にやりたくないならやらなくてもいいけど?」

「!?」


それは、希望の光が差したというより、甘い果実を眼前に差し出され誘惑されたのと同義であった。


気まぐれなのか情けなのか、番外個体は突然対戦の中止許可証を提示してきた。
自分から『やっぱりやめます』とは言えないこの状況、しかしそれが相手からの
提案だったら? 飲んでもいいのではないか……とヴェントは思案する。

頭の中の天秤がぐらぐらと揺れ動く。例え相手から持ちかけてきた試合中断とはいえ、
ここで首を縦に振ったらそれはもう敗北、背を向けて逃げ出したと同義ではないのか?
いやいや、恐らく相手も、番外個体もこんなゲームなんかで呼び出されて面倒になった
だけだろう。本当はもうさっさと帰りたいはず。ここは彼女の意志を汲んで今日はもう
切り上げてしまうべきではないのか?
707 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:13:44.52 ID:84qGUhQKo

「どうするんだいヴェントちゃんよぉ、今日はもう止めとく?」

「…………そ、」


そうね。今日はちょっと都合悪いし、やめておくわ。


そう、言いかけたところで――――。




「待てよ、ヴェント」



708 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:14:31.37 ID:84qGUhQKo

低く、唸るような。だけども芯が通った、力強い声が彼女の降伏宣言を遮った。


「し、白いの……生きてたの?」

「あと少しで地獄の閻魔大王サマとキスしちまうところだったけどなァ。
 オマエのその情けねェ姿見たら死ンでも死に切れなくなっちまったぜ」


打ち止めに一言礼を言い、現代的なデザインの杖に体重を預けながら一方通行は
ゆっくりと立ち上がった。彼特有の覇気こそまだ戻っていなかったものの、
その瞳には見た物全てを射抜く鋭い紅き眼光が輝いていた。


「やれよ、番外個体と。 つか出来れば殺ってくれ」

「で、でもこんな……アンタを一方的に打ち負かすような女に私が……」
709 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:15:11.76 ID:84qGUhQKo

「そォじゃねェだろォが。 オマエは、そンな情けねェセリフを吐く
 よォな女じゃねェだろ、ヴェント。 こォいう場面でこそ、こォいう
 絶望的状況下でこそ、オマエは輝くンだ。 今までもそォだったろ」

「いや別に……」


確かに現時点でヴェントがそんな主人公のような熱血的シチュエーションに
関わった事はない。恐らくまだ意識が定かではなく、一方通行も自分で何を
言っているのかよくわからないのだろう。

それでも彼は続ける。今日この瞬間まで支えて、支えられてきた最高のパートナーを奮い立たせるために。
710 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:16:01.57 ID:84qGUhQKo

「仇ィ討つンだろ、番外個体を倒して……仇討ちを成し遂げるンだろ!」

「か、仇……?」

「急に何言い出したのこの人、ってミサカはミサカはちょっと本気でこの人の容態を心配してみたり」

「も、もういいわよ……。 どうせ私なんかじゃこの女には……」

「だったら……俺の仇をとってくれ」


似合わない弱音を吐き続けるヴェントに、一方通行は優しく諭すようにそう言った。
奮い立たせる言葉は何も心からの叫びや喝でなくてもいいのだ。相手の心に響けば、
極端な話子守唄でも構わない。

一方通行はヴェントの心を包み込むように願った。抱擁の暖かさがどれだけ人間を
安らげ、突き動かすのかを、彼はとある天使から嫌というほど味わっている
711 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:16:45.38 ID:84qGUhQKo

「俺の仇を討つって建前があればオマエも戦えるはずだ」

「……ふん、何を自惚れてるんだか。 どうして私がアンタのために―――」

「俺達は二人で一つだ……。 そォだろ?」

「…………!」


惚気るなー! と打ち止めから渾身のボディブローを食らって、一方通行は今度こそ意識を失い崩れ落ちてしまった。

だが、充分であった。一方通行が必死に紡いだ言葉はヴェントの心を包み込み、『想いの抱擁』という
形で奮い立たせたのだ。いつも無愛想な彼が贈ってくれた想いは、これまで一度も感じた事のない
優しさと絆の強さに満ち溢れた暖かさが込められていた。
712 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:17:46.58 ID:84qGUhQKo

「白いの……」

「……さて、もう一度だけ尋ねようか。 ミサカと対戦、する?」

「………………」


気づけば、ヴェントの口元には笑みが浮かんでいた。失意の底に沈んでいた瞳も、
輝きを取り戻している。さっきまでの弱気なヴェントの面影はもう無い。番外個体は
彼女の決意を受けて、同じように笑みを浮かべるのだった。


「さっさと席につけよ番外個体。 始めようぜ」


ヴェントは意識を失った一方通行のポケットから財布を抜き取り、一〇〇円玉を投入して運命の戦いに望む―――!
713 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:18:49.68 ID:84qGUhQKo


――――――――――――――――――――――


「勝ちまんた」

「負けまんた」


数分後、そこには未だに意識を失ったまま倒れる一方通行に並ぶように
大の字になってノックダウンしているヴェントの姿があった。現在この店には
彼ら以外の客がいないため、こうして堂々と床に倒れ込める。注意を呼びかける
べき店員はヴェントと番外個体が放ったプレッシャーによって天に召されている。


一方通行から受け取った想いとやらが格闘ゲームの対戦結果に影響及ぼすはずもなく、
終わってみればヴェントは第一ラウンドパーフェクト負け、第二ラウンドも相手の体力を
ミリ単位削っただけでKOといういっそ清々しい程の大敗北を喫していた。
714 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:19:54.54 ID:84qGUhQKo

「番外個体は少し容赦なさすぎだよね、ってミサカはミサカは
 大人気ない妹に呆れを込めたため息をついてみたり」

「大人気ないって、ミサカまだ子供だも〜ん」


ヴェントが操作するキャラクター、『ジュレ』に対し番外個体が選択した
キャラクターは『イェン』という、八極拳がベースの中国拳法に憧れた事がある
という設定のキャラクターだ。登場演出時にはセグウェイに乗って颯爽と現れる。

この『イェン』、弟の『ウォン』と共にこのゲームの最強キャラではないかという
呼び声が高い高性能キャラクターである。
『外』ではとうの昔にアップデートが施され、その脅威も程々に抑えられているが、
『外』から入荷しただけの学園都市ではアップデートまでは対応しておらず、未だ
強キャラとして君臨している。
715 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:20:44.37 ID:84qGUhQKo

「あ、アンタ……」

「おお、まだ喋れるくらいの気力は残っていたかね」

「アンタ……この前、愛穂の家で対戦した時は……こんなキャラ使ってなかったじゃない」

「ん? あぁ、前にあなたと対戦した時に使ってたのってサバットだったっけ。
 ミサカがアレ使う時は大抵初心者相手か接待プレイの時だけだから。
 今回はまぁあなたも本気だったみたいだし、ミサカもそれに応えただけだぜ」


『サバット』とは本人が言った通り、番外個体が手加減プレイをする際に
使用するキャラクターである。黒い眼帯を装着した"魔女"であり、脅威の上背と
その身長に不釣り合いな軽すぎる体重設定はあまりにも有名。
716 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:21:38.46 ID:84qGUhQKo

「接待プレイって……アンタあの時もこの私をボコボコにしてくれたわよね。
 というか今回のこれもあの日の事が原因で始まったのよ。 何が接待よ」

「ミサカ的には手加減してるつもりなんだけどねえ、どうしても無意識に
 相手を嫐っちゃう悪いクセが出ちゃうみたい。 あひゃひゃ、失敬失敬」

「…………個人的な意見だけど、機会があればアンタに『天罰術式』を教えてやりたいわ」

「『天罰術式』? 何それ、美味しいの?」


適当に流され、ヴェントは店内の天井を見つめながら大きくため息をついた。


以前に番外個体と対戦した後に残った、引きずらなければならないほど
悔しい思いというものが、今回の対戦では生まれてこなかった。
ヴェントは控えめな胸にそっと手を当て、惨敗後の蟠りが無い事を確認する。
717 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:22:19.97 ID:84qGUhQKo

(今日一日でこれだけ敗北を経験すれば、そりゃ蟠りなんて飽和して溢れちゃうわよね)


それと、減らず口を叩きながらもわざわざゲーセンに足を運んできて、
一応それなりにヴェントの決意に応えて本気を出してきてくれた番外個体の
おかげというのもあるだろう。見ると番外個体も今回の対戦に結構満足した
らしく、打ち止めに己の腕前の程を楽しそうに自慢している。


「……一応礼は言っておかなきゃな」

「ん?」

「付き合ってくれてどーもありがとう」

「らしくないねえ、ミサカ的にはしつこく惨めったらしく再戦希望とか
 してくれた方が良かったんだけど。 ま、割と楽しかったからいいよ」
718 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:23:05.06 ID:84qGUhQKo

そう言って番外個体は席を立ち、床に倒れたヴェントに手を差し伸べてきた。


「テメェこそらしくないじゃねえか。 似合わねえマネしやがって」

「おいおい、めでたく芽生えた友情の証だぜこれは?」

「友情だぁ?」

「そうだよ。 芽生えた友情に『時間』という名の水をやって成長を見守り、
 その芽を無慈悲に摘んだ時のあなたの表情が見たくてねえ、くひひひひ」

「裏切られてショックを受けるまでの仲にまずならねえよボンクラ」


と言いつつもヴェントは差し出された手をしっかりと握って起き上がった。
顔を合わせれば罵り合うこの二人だが、その根幹たる悪意によって行動してきた
という共通点があるため、互いにどこかで理解し合える部分を見出したのかもしれない。
719 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:23:45.14 ID:84qGUhQKo

「おおー、まるでドラマのような感動的なシーンかも、ってミサカはミサカは
 互いの健闘を讃え合いがっちりと熱い握手を交わす二人を交互に見比べてみる」

「ま、ミサカ達の中でも一番根っこが黒いのはこの小さな上位個体だったりするんだけどね」

「何をー! ってミサカはミサカは根拠もないレッテル貼りに異議を申し立ててみる!」


仲が良いのか悪いのか、クローン姉妹はそのまま口論へと突入してしまった。
ヴェントはくだらなそうに二人から視線を逸らすと、すっかり忘れ去られてしまった
床に寝転がる一方通行を見下ろす。


(まぁ、でも)
720 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:24:28.81 ID:84qGUhQKo

彼女はしゃがみ込み、覗くように一方通行の寝顔(?)を見つめながら、


(これだけ楽しめたのも、やっぱこいつのおかげ……なんだろうな)


一方通行と何度も格闘ゲームで対戦している内に、勝ち負けに対する執着が薄れてきた事を
ヴェントは自覚している。番外個体へのリベンジだと勢い込んだものの、結局彼女は番外個体との
対戦を素直に楽しんでしまった。もちろん負けた時の悔しさは拭えないが、それ以上に『楽しむ』
というものを実感出来た経験は大きい、とヴェントは思う。


それを教えてくれたのがこの無様に寝転がる白い少年である事は、もはや疑いようが無かった。


「おーいヴェントちゃんよぉ、せっかくだからもう少しここで遊んでいこうぜ」

「まだ話は終わってない!! ってミサカはミサカは根拠なき発言の取り消しを要求してみる!」
721 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:25:20.77 ID:84qGUhQKo

「……別にいいけど、このバカはどうすんの?」

「あー、第一位なら放っといても死にゃしないだろ。 つか寝てるんじゃないのこれ」


と、ギャーギャーと捲し立てていた打ち止めが慌てて一方通行の下に駆け寄り
自分が着ていたエリザリーナ独立国同盟製のコートを優しくかけてあげた。


「さて、じゃあどのゲームで遊ぼうか」

「白いのはこのまま放置かよ!?」

「しーっ! あんまり騒ぐと起きちゃうからってミサカはミサカは指を立てて口元に当ててみる」

「騒ぐとって、ここゲーセンなんだけど……」


そして珍しい組み合わせの三人はまず店内の奥にあるメダルゲームのコーナーへと
向かっていった。もちろん、一方通行の財布はヴェントがしっかりと握りしめたままで。
722 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:27:46.40 ID:84qGUhQKo

今回はここまでです。

あんだけ引っ張った割にはあっさりと終わってしまいましたが、
まあこれくらいで良かったんじゃないかなと思っています。
一方通行も強引ながらようやく就寝することが出来ましたし。

あとはもう打ち止め達と遊んで、ヴェントの最後の用事を済ませて終わり。
残りニ、三回くらいで終わる……と思います。多分。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
723 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/04(水) 14:28:19.89 ID:84qGUhQKo



                          【次回予告】



「健気だねえ。 ミサカも今みたいな笑顔したら好感度上がったりする?」
『妹達(シスターズ)』第三次製造計画(サードシーズン)で作られた御坂美琴のクローン――――――番外個体(ミサカワースト)




「ただ、打ち止めと番外個体にはついてきてもらわないと意味ないから」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント




「ちょっと遊びすぎちゃったってミサカはミサカは少しだけ
 悪い子っぽい夜更かしに内心ワクワクしてたりするんだけど」
『妹達』の司令塔――――――打ち止め(ラストオーダー)



724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/04/04(水) 14:37:46.64 ID:XofXx6Dyo
おつんつん
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/04(水) 14:43:53.26 ID:UBIK3QqV0
>>1乙!!
一方さん放置プレイwww
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/04(水) 14:49:12.77 ID:AbbDe90p0
ヴェントちゃんマジ少女かわいい!
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/04(水) 16:46:58.20 ID:X/HxAu9DO
さらっと一方さんから小銭とってるのが笑えたww
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 16:49:03.25 ID:tuYLYkvSO
幼女のワンパンでKOとか
倒れてる間に財布抜かれるとか今回の一方さん不遇過ぎるだろ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/04(水) 18:24:13.71 ID:QJPqmncj0
サイフラレーターさんのテンションおかしいww
というか全てにおいてこのモヤシおかしいwwwwww
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 20:32:21.94 ID:IJUIokODO
乙!

一方さんの扱いwwww
ようやく熟睡できて良かったね!!
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 20:37:46.01 ID:JqbqXB2DO
さすがは学園都市最強の一方通行(財布的な意味で)


乙!


ってか、最後までこいつらがやってるゲームがなにかわからなかったんだが…
オリジナルかと思ったんだが何人かは反応してるから既存のゲームだよね?
わかる人タイトル教えて〜
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 21:51:54.38 ID:G4J7SNY5o
スパ4じゃね?
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/04(水) 23:36:37.31 ID:8CIlJEBF0
幼女の一撃で気絶するなんてさすが第一位。
相変わらずの白もやしっぷり。垣根に笑われるぞ。
ヴェント可愛いなぁ。
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/04/05(木) 04:43:47.72 ID:Z9Rakdmn0
乙である
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/05(木) 13:53:56.56 ID:SKNIZm/k0
乙だけど、、、。
一方通行がお笑いパートになったら、垣根の居場所がさらに無くなる
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/05(木) 15:52:09.64 ID:swzsEz+3o
乙!
垣根はまだ出てこないのか?
737 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:47:19.40 ID:zprqjvmho
>>731
一応ベースというか元ネタは『スーパーストリートファイターW』です。
リュウタ→リュウ、ケイン→ケン、シュン=リー→春麗、ジュレ→ジュリ、
ザンギ→ザンギエフ、ヤス→セス、サバット→サガット、イェン→ユン、ウォン→ヤンとなってます。

という訳でこんにちわ。更新を開始します。

前回、当たり前ですが番外個体に完膚なきまでに叩きのめされたヴェント。
しかし友情までとはいかないものの、まあ普通に仲良くなって結果オーライ。
たんまり金の入った一方通行のお財布片手にヴェント、番外個体、打ち止めの
三人はゲーセンを満喫する構えのようです。

それでは、よろしくお願いします!
738 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:48:02.24 ID:zprqjvmho


――――――――――――――――――――――


――学園都市・第七学区 ゲームセンター メダルゲームエリア


打ち止め「来い、来い、来い! ってミサカはミサカはミサカが
     賭けた@番の『シロイコイビト』を必死で応援してみる!」

番外個体「このミサカの読みにハズレはないよ。 このレース、
     間違いなくE番の『ロストナンバー』が制覇する!!」

ヴェント「ここまで三レース連続で外してる……。 でも今度こそ、
     私が賭けたA番の『イケメルヘン』が勝つはずよ!」



実況『さあ最終コーナーを通過、トップは依然としてC番の「ブチコロシカクテイ」、
   それを追うようにB番「ビリビリッテイウナ」、@番の「シロイコイビト」が
   猛追を――――あーっとここで@番「シロイコイビト」がまさかの転倒ー!!
   F番の「コンジョウイチバン」がここぞとばかりにラストスパートをかけたー!!』


739 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:48:56.73 ID:zprqjvmho

打ち止め「あ、あー!!! ってミサカはミサカはゴール直前で起きた
     ハプニングにがくぜんとしてみる! ていうか転倒とかそういう
     システムあったのこれってミサカはミサカは納得いかねえええ!」

番外個体「ぎゃははははご愁傷さまぁ!! ……でもE番が伸びてこねえ」

ヴェント「ってオイ!! @番の転倒に巻き込まれて私のA番まで落馬してんぞ!!」



実況『一着はF番「コンジョウイチバン」、二着にB番「ビリビリッテイウナ」、
   三着はC番「ブチコロシカクテイ」、続けてD番「ソウサシチャウゾ」、
   E番「ロストナンバー」。  えー今、遅れて@番「シロイコイビト」も
   ゴール、A番の「イケメルヘン」は再起不能です。 続いてG番の……』


740 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:49:50.05 ID:zprqjvmho

打ち止め「ああ……ミサカの最後のメダルが搾取されたって
     ミサカはミサカは膝をついて絶望してみたり……」ガクッ

番外個体「ちぇっ、やっぱ『6』なんて不吉な数字選ぶんじゃなかったかなぁ」

ヴェント「再起不能だと……。 これだからどこの世界でも二番手はクズなのよ……」

打ち止め「もうみんなメダル無くなっちゃった? ってミサカはミサカは確認してみる」

番外個体「ミサカはあと二枚残ってるけど、これだけじゃもう遊べないねえ」

ヴェント「メダル落としだっけ? あれで最後の賭けに出てみない?」

番外個体「二枚じゃ望み薄でしょ。 ここは潔く諦めようぜ」

打ち止め「一時は三〇〇〇枚くらい稼げたのにねってミサカはミサカは
     空っぽのバケツを眺めながらしょんぼり肩を落としてみる」シュン
741 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:50:56.50 ID:zprqjvmho

番外個体「ま、所詮メダルゲームだしねえ。 本場のギャンブルで現金とかなら
     ミサカの血も騒ぐってもんだけどさ、メダルじゃ名残惜しくもないね」

ヴェント「……っていうか、私達かなり熱中してたけど、今何時?」

番外個体「えっと……、げ。 もう夜一〇時を過ぎちゃってるよ」

ヴェント「昼からずっとゲーセンに入り浸ってたのか……」

打ち止め「うわっ、ヨミカワからたくさん着信がきてるってミサカはミサカは
     ゲームセンターの騒音で着信に気付かなかったという言い訳を準備してみる」

ヴェント「あの女、警備員なんでしょ? 何でアンタらを迎えに来ないのよ」
742 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:51:51.94 ID:zprqjvmho

番外個体「そういや今日は帰り遅くなるとか言ってたっけ。 多分芳川桔梗に
     ミサカ達の面倒見るのを一任してるんだろうけど、芳川の事だから
     すっかり忘れて寝こけちゃってるだろうね、冷たい冷たい」

打ち止め「で、でも今から帰れば誰にも怒られずに済むかも……って
     ミサカはミサカは速やかな帰宅を推奨してみたり」

ヴェント「ところで、ここのゲーセンってこんな遅い時間まで営業してんのね」

番外個体「学園都市の娯楽施設って大半は完全下校時刻と共に店閉めるんだけどさ、
     今は一端覧祭中だから『外』から来た客のために夜遅くまでやってるって
     黄泉川が言ってたような……。 ほら、ミサカ達以外にもまだ客残ってるし」

ヴェント「なるほど。 ……ん、待てよ?」

打ち止め「どうしたのってミサカはミサカは尋ねてみる」
743 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:52:26.76 ID:zprqjvmho

ヴェント「…………いや、でも、もう……今しかないか?」

番外個体「?」

ヴェント「アンタら、ちょっと私に付き合ってくれる?」



一方通行「…………」

店員「お客様……、お客様」ユサユサ

一方通行「…………ン……」クカー

店員「お客様、起きてください。 お客様……」

一方通行「……あ、あァ? ンだよクソったれが……」ムニャムニャ
744 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:53:04.91 ID:zprqjvmho

店員「申し訳ございませんお客様、もう今更にも程がありますが
   店内で寝るという行為は他のお客様の迷惑になりますので」

一方通行「……は?」パチ

店員「すみません」

一方通行「あ……やべ、え? 俺寝てたのか?」

店員「それはもう、豪快に」

一方通行「店内で? つかここ床じゃねェか」

店員「お昼頃から寝てたと他のお客様から……」

一方通行「起こせよ!」
745 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:53:44.50 ID:zprqjvmho

店員「申し訳ございません……(だってあの第一位だもんなぁ……。 声をかけるだけでも寿命が縮む思いだ)」

一方通行「クッソ……。 ……そォいや、他の連中は?」

店員「お連れ様の事でしょうか?」

一方通行「あァ、目付きが悪い女二人とガキ一人が居たはずなンだが」

店員「その方々でしたら夕方頃からメダルゲームコーナーに……、あ」

打ち止め「あなたお待たせー! ってミサカはミサカは飛びついてみる!」バッ

一方通行「うぐゥ、ていうか起こせよオマエら! なに俺を放置して遊ンでンだ!?」

番外個体「あなたが勝手に寝てただけじゃん」

ヴェント「アンタ、寝てなかったんでしょ? 起こしちゃ悪いと思って」
746 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:54:31.70 ID:zprqjvmho

一方通行「って、おいィ!? もォ一〇時じゃねェか!」

打ち止め「ちょっと遊びすぎちゃったってミサカはミサカは少しだけ
     悪い子っぽい夜更かしに内心ワクワクしてたりするんだけど」

一方通行「するンだけど、じゃねェよ。 もォ帰れよオマエら」

番外個体「そうしたいところなんだけどさ、」

一方通行「ンだよ、まさかオマエらがここでなンかしでかして、
     今この店の周囲を警備員が囲ンでるとかじゃねェよな?」

番外個体「いやそれはそれでミサカ的には愉快なんだけど、そうじゃなくて
     この魔術師さんが愛しの第一位様に何かお願いがあるそうだよ?」

ヴェント「な、何ワケわかんねえ事言ってんだテメェ!」
747 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:55:22.11 ID:zprqjvmho

番外個体「えー? だってあなた達、同じ屋根の下で暮らしてるんでしょお?
     しかも今日はヴェントからのお誘いでここへデートに来たそうじゃん、
     このミサカと格ゲーで対戦するための修行とかいう"らしい"口実で」

ヴェント「殺すぞテメェ……」

一方通行「……これ、デートだったのか?」

ヴェント「違うわよ!」

番外個体「いやいやいや、今更そこを否定されてもねえ?」ニヤニヤ

一方通行(デートか……。 そォだよな、デートになるンだろォな)

打ち止め「そこんとこハッキリしなさいってミサカはミサカは問い詰めてみる」ズイッ
748 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:56:07.57 ID:zprqjvmho

一方通行「いや、まァ……。 ……それより、お願いってなンだよ?」

ヴェント「そ、そう。 ええっと、アンタ、今の時間帯でも開いてるゲームショップとか知ってる?」

一方通行「ゲームショップ?」

番外個体「何それ、意外。 今日の一件ですっかりゲームにハマっちゃったとか?」

ヴェント「そうじゃないわよ。 むしろもう向こう一〇年はゲームしたくない」

打ち止め「でもゲーム買うんでしょ? ってミサカはミサカは再度尋ねてみる」

ヴェント「……まぁ、そうね」

一方通行「あァ、オマエが昼に買うっつってたヤツ、ゲームだったのか?」
749 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:57:04.62 ID:zprqjvmho

ヴェント「いいから、どこかまだ営業してる店はない?」

一方通行「俺に聞かれてもな……。 オマエ、どこか知らねェか?」

店員「え!? ぼ、僕ですか!?」ビクッ

一方通行「他に誰がいるンだよ」

店員「いやまさかこの流れで僕に話が振られるとは思わなくて……」

ヴェント「知ってるなら教えろ」

店員「んん……、この時間だと地下街のレトロゲー専門店くらいしか開いてないかと……」

ヴェント「レトロゲーって何よ」
750 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:57:54.99 ID:zprqjvmho

店員「十数年前に販売されたような古いゲームの事です。 地下街に
   そういったレトロゲーを取り扱ってる店があって、そこなら
   多分まだ営業してるかと……。 それと、『外』から入荷した
   ゲームも多く取り揃えている事で割と有名なお店なんですよ」

ヴェント「! そこでいいわ」

一方通行「懐古ゲーがやりてェのか?」

ヴェント「私は別に。 ただ、打ち止めと番外個体にはついてきてもらわないと意味ないから」

打ち止め「ミサカ達? ってミサカはミサカは首をひねって疑問を感じてみる」

一方通行「今度は何を企ンでやがる」

番外個体「なんでミサカが付き添わなきゃ意味ないの?」

ヴェント「つべこべ言ってないでさっさと行くわよ」

一方通行「面倒くせェ……」
751 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 10:59:18.41 ID:zprqjvmho


――――――――――――――――――――――


――学園都市・第七学区 地下街 レトロゲーム専門ショップ


打ち止め「おおー、なんだか見たことのないゲームがいっぱいあるって
     ミサカはミサカはあちこちに視線を泳がせながら眺めてみる」キョロキョロ

番外個体「このジェネシスって何?」

一方通行「北米のメガドライブ」

ヴェント「あ、このゲーム見たことあるわね」

一方通行「魔術サイド暗部のオマエでもさすがにスーファミは知ってンだな」

打ち止め「ううむ、このセガ・マスターシステムっていかにもレトロっぽいって
     ミサカはミサカは今初めてみたゲームに対し知ったかぶってみる」
752 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:00:18.66 ID:zprqjvmho

ヴェント「…………」キョロキョロ

一方通行「で、オマエは一体何を買うンだよ?」

ヴェント「今捜してる」

一方通行「高いモンなら俺が買ってやろォか?」

ヴェント「その太っ腹には感謝するけど、アンタの財布空っぽよ、ほら」ポイッ

一方通行「え……?」ゴソゴソ

番外個体「やべえ、逃げるか」

一方通行「待てコラ。 こりゃ一体どォいう了見だ!?」

打ち止め「ちょ、ちょっとだけ貸してもらうつもりだったのって
     ミサカはミサカは冷や汗を流しながら言い訳してみる」アセアセ
753 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:01:11.64 ID:zprqjvmho

一方通行「ちょっとだけって、確か俺の財布にゃまだ結構……」

番外個体「あの程度の金額、ゲーセンじゃ半日と持たないよね」

一方通行「人の金勝手に使っておいてその物言いはねェだろォが!」

ヴェント「謝るわよ、悪かったわね」

打ち止め「ごめんなさいってミサカはミサカは謝罪してみる」ペコッ

番外個体「ごめんなさい」

一方通行「う、……まさか素直に謝られるとは思わなかったな」

番外個体「じゃあ許してくれる?」
754 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:02:07.63 ID:zprqjvmho

一方通行「"じゃあ"の意味がよくわからねェが、まァイイ別に」

打ち止め「ありがとう、ってミサカはミサカはあなたの懐の広さに感謝してみる!」



一方通行「……ところでよオマエら」

打ち止め「?」

一方通行「この前、第三位と接触したらしいじゃねェか」

番外個体「おおっと、このタイミングでその話題を出してくるかね」

打ち止め「……」

一方通行「どォいうつもりだ?」
755 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:02:50.36 ID:zprqjvmho

打ち止め「み、ミサカがお姉様に会いたいってワガママを言ったの、
     ってミサカはミサカはミーシャやフィアンマや番外個体は
     何も悪くないよって正直に告白してみたり」

一方通行「実験後の経緯についても洗いざらい話したのか?」

番外個体「このミサカが製造された実験の件と、あなたの事くらいかな」

一方通行「……それだけか?」

打ち止め「お姉様は動揺してたけど、それもミサカのせいだから
     怒るならミサカだけにしてってミサカはミサカは……」

一方通行「……別に怒っちゃいねェよ。 確認しただけだ」

番外個体「心配性な親御さんだねえ」
756 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:04:10.82 ID:zprqjvmho

打ち止め「……」

一方通行「オマエらと第三位の問題に俺は関わらねェよ。 俺が関わンのは
     オマエらの問題だけだ。 第三位と俺が接触する事はもォ二度と
     ねェだろォが、オマエらが第三位に接触する事に俺は反対しねェ」

番外個体「ミサカ達とお姉様の問題は常に付随するもんじゃない?」

一方通行「厳密には違うだろ。 俺とオマエらか、第三位とオマエらか。
     その二つは絶対に相容れねェし、交差する事はねェンだ。
     第三位も恐らく言ってただろォが、俺と第三位が和解するなンて
     展開は未来永劫訪れねェだろ。 そンな簡単な問題じゃねェしな」

番外個体「そんなもんかね」

一方通行「そンなモンじゃなきゃダメなンだよ。 ……"今はな"」
757 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:04:46.79 ID:zprqjvmho

打ち止め「で、でもあなたは前にホテルで一〇〇三二号と―――」

一方通行「アレは軽い挨拶みてェなモンだろォが。 あれでもギリギリなンだよ」

打ち止め「うん……ってミサカはミサカは納得してみる」

一方通行「すまねェな。 余計な気苦労させちまって」

打ち止め「……ううん、大丈夫だよ! ってミサカはミサカは笑顔で答えてみる」ニコッ

番外個体「健気だねえ。 ミサカも今みたいな笑顔したら好感度上がったりする?」

一方通行「上げてほしいのか?」

番外個体「んー、いやぁやめといた方がいいかなやっぱ。 だって、」

一方通行「?」
758 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:05:34.69 ID:zprqjvmho

番外個体「恐ろし〜いお姉さんがこっちをずっと睨んでるし、ねえ?」ニヤニヤ

ヴェント「……………………………………」ジットー

一方通行「な、なンだよ……買うモン決まったのか?」

ヴェント「決まったわよ。 アンタらが色々と話してる間にね」プイッ

一方通行「そ、そォかよ」

番外個体「けけ、大変だね第一位も」

ヴェント「……。 ねえ、これちょうだい」ドサッ

店員「はい、ありがとうございます」

打ち止め「何買ったの? ってミサカはミサカは覗き込んでみたり」ヒョイ
759 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:06:18.82 ID:zprqjvmho

番外個体「……あれ? このゲーム機、黄泉川の家にあるやつじゃん」

一方通行「正しくは黄泉川の家でヴェントがぶっ壊したゲーム機だな」

ヴェント「あとアレ、ゲーセンにあるコントローラみたいなのって無い?」

店員「えっと……アケコンの事ですか?」

ヴェント「多分。 レバーとかついてる大きいやつ」

店員「この機種のアケコンなら……あと二つ在庫に残ってますけど」

ヴェント「二つともちょうだい。 あとこのソフトも」

一方通行「それ今日やった格ゲーの家庭版じゃねェか」

店員「ありがとうございます(すげえ……ここまでがっつり買うか普通……)」
760 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:06:56.60 ID:zprqjvmho

ヴェント「これ、クリスマス仕様に梱包するとか出来る?」

店員「ええ、承っております」

ヴェント「じゃ、お願い」

打ち止め「???」

番外個体「これは一体どういう事なのかな?」

店員「お待たせしました」ガサッ

ヴェント「お金、ここに置いとくから」

店員「ありがとうございました、またご利用くださいませ」
761 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:07:40.86 ID:zprqjvmho


――――――――――――――――――――――

ヴェント「重……」ズシッ

一方通行「ずいぶン思い切った買い物しやがるな」

ヴェント「はい、これ」スッ

打ち止め「?」

ヴェント「…………アンタらのゲーム、壊して悪かったわね、だから弁償するわ。
     ついでにちょっと早いけど、私からのクリスマスプレゼントって事で」

打ち止め「え、これミサカ達にくれるの!? ってミサカはミサカは
     突然のサプライズイベントに戸惑いながらも尋ねてみる!」

ヴェント「まぁ私が壊したもんをプレゼントって言うのも変だけど……持っていきなさい」
762 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:09:31.08 ID:zprqjvmho

番外個体「おいおい、一体どういう風の吹き回し?」

ヴェント「私に対して風を例えるとは面白いわね」

一方通行「なるほど、そォいう事だったのか」

番外個体「こりゃ明日は雪でも降るんじゃない?」

一方通行「この時期に雪が降るのは至って普通だろォが」

打ち止め「わーい! ヴェント大好きってミサカはミサカは大喜び!」キャッキャ

ヴェント「わかったから早く受け取れ。 これマジで重い……」

番外個体「これ二つともミサカが持つの!?」ズシッ

打ち止め「だってミサカじゃ持てないもん、ってミサカはミサカは非力さをアピールしてみる」
763 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:10:11.30 ID:zprqjvmho

番外個体「ちぇっ。 よっしゃ、じゃあ早速帰ってプレイしますかね」

打ち止め「でもアケコンってガチャガチャうるさいからヨミカワがすごい
     嫌がるってミサカはミサカは騒音対策を講じる事を提案してみる」

番外個体「第一位とヴェントはこれからどうすんの?」

一方通行「あァ? そォだな……」

ヴェント「私はこいつとアジトに戻るわ」

一方通行「何勝手に決めてンだよ」

番外個体「……ふむ。 じゃあミサカ達は黄泉川の家に帰るね」

一方通行「まァイイ。 気をつけて帰れよ」

打ち止め「たまには帰ってこいよー! ってミサカはミサカは手を振りながら帰路についてみる」

一方通行「余計なお世話だクソガキ」

番外個体「ヴェントも頑張ってくれたまえよ」ニヤニヤ

ヴェント「………………」
764 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:12:31.32 ID:zprqjvmho

今回はここまでです。

そして次回の投下で一端覧祭5日目、ヴェント編もおしまいです。
引越しのあれこれがあったためずいぶん長くなってしまいましたが、
ようやく場面を切り替えられそうです。

ちょっとだけ一方通行と美琴の話が出てきましたが、
さすがに深く考え過ぎですかね?原作じゃ割とさらっと会話してたし、
『天使同盟』自体はあまり絡まない話題ですし、やりすぎかな……。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
765 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/07(土) 11:13:01.14 ID:zprqjvmho



                          【次回予告】



「言えよ。 …………一つだけ、何でも言うこと聞いてやる」
『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・学園都市最強の超能力者(レベル5)―――――― 一方通行(アクセラレータ)




「……」
ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員――――――前方のヴェント



766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/07(土) 11:21:56.96 ID:UkJj2T6J0
乙でしたー
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/07(土) 11:26:28.85 ID:rwZemInW0
おつおっつ
次回どうなるんだ・・・!?
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 16:41:34.10 ID:ohPAoe6vo

なんでも、か……何が来るかな
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 19:53:35.46 ID:37PzU68DO
乙!

そっかスト4か…
ストシリーズは2と0 ターボくらいしか知らんからなぁ……


もし、一つだけ願いが叶うなら レッサーをぼくに下さい
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 20:43:33.67 ID:iSuWn8Nno
子供作りと聞いて飛んできました
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 20:44:21.69 ID:iSuWn8Nno
子作りだった
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/07(土) 23:56:58.27 ID:GXMJuzWAO
まあ、子作りだな
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/08(日) 11:41:39.82 ID:wkA/Zrgu0
孤作りと聞いて
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) :2012/04/08(日) 14:52:07.67 ID:wxc7ojhj0
やっと追い付いた…!
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 18:12:08.37 ID:V+uNQzfDO
>>774
ようこそおっぱい同盟へ
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/04/08(日) 19:39:27.57 ID:V+m431iV0
最初から読んでいたがこうゆう”スレ”に書き込みをしたことがないので初心者です。
このssすごいですね!
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 19:41:26.19 ID:5YXAdO8Ao
>>776
ではまずは半年ROMりましょう
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 19:59:56.15 ID:V+uNQzfDO
>>776
とりあえずメール欄に「sage」って入れようか

んで、この>>1は連投してくれるタイプだから
>>1が投稿中はレスを控える
後は、もうすぐ埋まりそうだから 1000付近になったら次スレが立ち、誘導が完了するまではレスを控える


とりあえずこれだけ守れば怒られないと思うよ
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/08(日) 21:58:38.63 ID:j9yIk0Oso
長いなこの話も

780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 11:17:24.12 ID:FNyGTKEAo
てかゲーセンでずいぶん引っ張ったな
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 13:03:21.20 ID:EhwEK9ODO
引っ越しがあったから余計に長く感じるな
782 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:10:35.16 ID:UHPYxZZio
>>780
返す言葉もございません。引越し云々を挟んだとはいえ、
それ抜きにしても長いお話だったと反省しております。
もっと話を短くまとめる技量が私にあれば……どうしても
書きたいこと全部詰め込みたいという衝動がですね……。

ま、こんな見苦しい言い訳はよしておきましょう。
おはようございます。今日の更新を始めたいと思います。

前回、打ち止めと番外個体にお詫びのプレゼントを渡したヴェント。
一端覧祭五日目のゲーセン祭りもこれにて終了……のはずですが。

それでは、よろしくお願いします!
783 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:11:42.31 ID:UHPYxZZio


――――――――――――――――――――――


今日は、そんな一日だった。


打ち止め、番外個体と別れた一方通行とヴェントは第七学区にあるアパート、
今や『天使同盟』と愉快な仲間たちが巣食うアジトへの帰路についていた。


「しっかし、まさかオマエみてェなのがゲーム機ぶっ壊した事を
 気にしてやがったとはなァ。 オマエの意外な一面を見れたぞ」

「うるさいわね、気まぐれよ気まぐれ。 ……まぁあいつらと遊んでて
 結構楽しかったし、私のくだらない用件にわざわざ付き合ってくれた
 のもあるし……。 クリスマスも近いし? たまにはいいかなって。
 まあ私の立場でクリスマスがどうこういうのもおかしいけれど」
784 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:12:39.61 ID:UHPYxZZio

「だからそォいう一面が意外だって言ってンだよ」

「あっそ。 でも、それも『私』だから」

「あァ」


夜一〇時過ぎ。いくら一端覧祭のため『外』からの客が多いといっても、
さすがにこの時間だと街の大通りで窺える人影はほとんど居なかった。
その証拠に二人はレトロゲー専門ショップを出て一度も通行人とすれ違っていない。

たまに通りかかる車の走行音が通り過ぎると、静寂が再び二人を支配する。
まるで二人だけ誰もいない空間へと切り離されてしまったように。


「しかし今日もまた疲れたな……、ただ遊ぶだけでもこンなに疲れるモンだとは」

「……お疲れ様、って労ってやればいいのかしら?」
785 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:13:54.66 ID:UHPYxZZio

「必要ねェよ。 俺にとっても大事なことだからな」

「遊ぶことが?」

「そォだよ、ゲーセンで話しただろそこら辺の話題については」


一方通行は今日までの過程を振り返る。


出発点を一端覧祭開始日として、
一日目に長点上機学園でエイワス主催の能力講座を(強制で)行い、
二日目に風斬氷華と何の変哲もないデートを楽しみ、
三日目に風邪を引いた英国第二王女キャーリサの看病をして、
四日目にオルソラ、アンジェレネと風紀委員の体験講習に参加した。


そして今日、五日目。一方通行はヴェントとゲームセンターで遊んだ。
786 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:14:44.68 ID:UHPYxZZio

(ハッ、俺みてェなクソ野郎が充実した日常を満喫してやがるじゃねェか……)


最初の頃に抱いていた自分が日常に溶け込むという違和感は、現在ではもう
ほとんど霧散しかけていた。四日目の誘拐事件で危うく溢れ出そうになった
胸の内に秘める『闇』も、オルソラのおかげでどうにか抑える事が出来た。

同時に、垣根帝督との衝突で決意した『異性を理解する』という目標も、
僅かずつではあるが順調に進行しているように一方通行は思う。


イギリス清教最大主教、ローラ=スチュアートとの謁見まで残り二日。
一方通行という一人の少年は、周囲の仲間に支えられながら確実に
『人間』としての自己を確立していた。

そんな確かな手応えを一方通行が感じていると、
787 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:15:10.55 ID:UHPYxZZio

「白いの」

「あン?」


視線を地面に向けながら歩いているヴェントが不意に話しかけてきた。


「………………き、今日」

「?」

「今日……楽しかったか? その、私と……遊んでて」


尋ねてきた内容は至って普通の事だったが、どうもヴェントの様子がおかしい。
その言葉に力というか、自信がないような、細々とした声色で、さらに必死で
言葉を搾り出しているような、いっぱいいっぱいといったような調子だった。
788 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:15:57.30 ID:UHPYxZZio

「……」


一方通行はすぐに察する。ヴェントの性格上、自分と過ごしてて楽しかったかと
尋ねるのは抵抗があるのだろう、と。要は少し照れているのだろう、と。
一方通行はほんの少し間を空けた後、こちらに顔を見せないヴェントへ迷いなく答える。


「楽しかったに決まってンだろ。 そォじゃなきゃ速攻で帰って寝てる。
 まァ結局ゲーセンで盛大に寝ちまうという醜態を晒しちまったけどな」

「そ、そう。 何で楽しかったの?」

「何でって……妙な事聞くなァオマエ。 ……正直、最初はオマエとゲーセンなンか
 行ったって楽しくねェだろとは思ってたが、実際遊ンでみて楽しかったンだから
 しょうがねェだろ。 オマエで良かったとさえ思える。 オマエだから楽しかった」
789 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:17:06.76 ID:UHPYxZZio

「……そういうセリフを、他の人間にも言ってるんだろアンタは」

「…………否定はしねェが、だが"オマエも"楽しかった、これも事実だ」


そうとしか答えようがなかった。一方通行がこの五日間過ごした日々は、
どれもこれも楽しくてしょうがなかったのだから。昔の、心の根っこまで
腐り果てていた自分に自慢したいくらいだと一方通行は思う。


「……」

「……なンだよ」


色々な事があったが、自分は今幸せであると。幸せになってもいいという
事実が、こんなにも素晴らしい事であると。過去に戻って言い聞かせてやりたかった。
790 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:18:34.71 ID:UHPYxZZio

「だったら」

「?」

「最後にもう一回だけ楽しんでもらおうかしら。 ちょっと付き合え」

「どこに」

「ゲーセン」

「……!? またかよ?」


そう言うヴェントは、しかし一方通行と一切視線を合わせようとしない。
照れている、という風でもなかった。照れているにしては―――そして
もう一度だけゲームセンターに行こうと誘っているだけにしては、その表情は
そこか真剣味を帯びていた。
791 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:19:38.12 ID:UHPYxZZio

――――――――――――――――――――――


一方通行は渋々ながらもヴェントの申し出を受け入れ、
二人は先のゲームセンターへと足を運んだ。

営業時間も残り僅か。ヴェントは格闘ゲームの再戦を申し込んできたが、
ワンクレジット分程度しかプレイ出来る時間は残されていないだろう。
一方通行とヴェントは互いに筐体へ向かい、硬貨を一枚投入する。


「本当に懲りねェよなァオマエ、まさかまた対戦しろとか言い出すとはよ」

「……」

「まァ、オマエの様子からして何か裏があるみてェだが」
792 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:20:30.08 ID:UHPYxZZio

様子といっても一方通行はそれを漠然としか窺えていなかった。
何となく、ヴェントの様子が少しおかしい……ような気がする、程度の。
ついさっきここへ誘われた時も思ったが、どこか『真剣』なのだ。


「白いの」

「ンだよ、さっさとキャラ選ンじまえ。 俺ァもォ帰りてェ」

「賭けをするわよ」


唐突にヴェントはそう言ってきた。賭け。見返りと共にリスクがチラつくその言葉に
一方通行は眉をひそめる。
793 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:21:13.71 ID:UHPYxZZio

「……どォいう方法で、何を賭けるンだ?」

「この対戦で私が勝ったら、アンタは一度だけ私の言う事を何でも聞く」

「そォいやさっきもそンな事言ってやがったな。 事前に俺が従わなきゃならねェ命令を聞いておきてェが」

「………………私が勝ったら、……」

「……?」


言葉の続きが紡がれない。明らかに続きを口にするのを拒んでいる。
言い淀んでいる。
794 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:22:00.62 ID:UHPYxZZio

「……とにかく、私が勝ったらアンタは私の犬よ」

「わかったよ、オマエが勝ったらな。 で、俺が勝ったら?」

「え、特に何も無いけど」

「賭けとして成立してねェ!」


これではただ単に対戦をして終わるだけだ。この勝負、十中八九一方通行が
勝利を収める事になるのだから。ただ彼としてはそれで充分満足出来るのだが。


「じゃ、始めようかしら」

「言うまでもねェだろォが、手加減なンざしねェからな」
795 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:22:44.50 ID:UHPYxZZio

「手加減なんてしたら殺すわよ、全力で勝負しろ。 ……絶対に、」

「?」

「この勝負、絶対に私が勝ってやる」

「……………………」


どうやらよほど一方通行に執行できる絶対命令権が彼女は欲しいらしい。
そこまで言いたい事が、伝えたい事があるならこんな形式を取らなくとも
聞いてやるくらいの気で彼はいるのだが―――


(……こいつ。 いや、俺の考えすぎか……?)
796 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:23:22.10 ID:UHPYxZZio

一方通行の中にある推測が生じる。ヴェントがこの対戦に勝利して一方通行に
何を言おうとしているのか。


(俺も大概鈍感だが、それでもこればかりは……)


仮に一方通行の推測が正しかった場合、


(俺は――――)


この勝負、果たして一方通行は勝つべきなのか、負けるべきなのか。


「いくわよ」


第一ラウンド開始を告げるアナウンスが、一方通行の迷いを中断させた。
797 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:24:24.92 ID:UHPYxZZio


――――――――――――――――――――――


果たして、一方通行vsヴェントの本日最後の格闘ゲーム対戦は―――


「……」

「……、俺の勝ちだな」


案の定というか、必然と言うべきか。一方通行の圧勝という形で幕を閉じた。


番外個体と対戦する直前のヴェントの腕前は確実に上がっており、
驚異的なテクニックを有する一方通行でも稀に苦戦を強いられる
程度までスキルを磨いてたいたが、結局本命であった番外個体には
敵わず、それでも今の自分なら―――と一方通行に挑んだヴェント
だったが、奇跡と形容できるそれは起こるはずもなかった。
798 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:25:24.01 ID:UHPYxZZio

一方通行は今日一日の疲労を吐き出すようにため息をつくと、
ゆっくりと筐体から立ち上がり向かい側の筐体へ向かう。


「……」


レバーとボタンに手を添えたまま、無表情でヴェントは固まっていた。
いや、その様子を見る限り一方通行に敗北したことによってショック
を受けている訳ではなさそうなので固まっていたという言葉はやや
相応しく無いだろう。どちらかと言えば、何か全く、別の事を考えるのに
夢中でその場から動かない様子、だろうか。


「……どォすンだよ」

「……え。 何が」
799 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:26:09.08 ID:UHPYxZZio

「終わったぞ、勝負。 結果は俺の勝ち、つまりオマエが望ンでた
 俺を飼い犬にするとかいうクソみてェな取り決めは実行前に
 無効ってこった。 文句はねェだろ、オマエが決めた事だからな」

「……別に、」

「あン?」


消え入るような声で呟いたヴェントはやがて、ひどく緩慢な動作で椅子から
立ち上がると、一方通行の存在を忘れているかのように一人店から出て行って
しまった。

別に不貞腐れている訳でもないだろうが、彼女のただならぬ様子に
一方通行はヴェントのあとを追っていく。
800 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:26:55.93 ID:UHPYxZZio

「待てコラ。 散々人を付き合わせておいて何勝手に帰路についてやがる」

「ん……あぁ、ご苦労さん。 アンタにはもう用は無いから、
 今すぐ死んでいいわよ。 私はもう帰って寝るから」

「あれだけ散財させといてそンな口がきけるオマエにゃ参るがよ。
 ンだよ、やっぱ不貞腐れてやがンのか? だが手加減したら――」

「もう終わってんのよその話は。 あーあ、もう格ゲーなんてやりたく
 ないし見たくもないわ。 やっぱり私にあんな科学ごってごての
 娯楽は合わないわよ。 あのゲーセン、帰りに潰しときゃよかった」

「……」


本気で言っているとは思えなかった。今日という日を経て、ヴェントは
確実に、彼女の中の"しがらみ"を無視して何かに興じるという、人間として
当たり前のことをしながら過ごす術を学んだはずなのだから。
でなければ例えば、アックアに勝利した時の、こっちまで嬉しくなってしまう
くらいのあの笑顔を浮かべられるはずがない。例えば、一方通行と二人だけの
写真など撮る気になるはずがない。
801 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:27:58.39 ID:UHPYxZZio

しかし、ではヴェントのこの形容し難い様子というか雰囲気は何なのか。
一方通行には分からなかった。不貞腐れているでもない、怒っているでも
ない、ゲームという娯楽に嫌気がさしたでもない。
だがどこか物足りなさを抱いている。納得のいかないような、曖昧な態度。

と、


「ん……」


微妙な距離をあけながら歩いている二人の頭上に、何の前触れもなく雪が降ってきた。
少し前に番外個体が言っていた言葉が現実となって二人の視線を空へ奪う。


「ヴェント」

「何?」
802 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:28:56.57 ID:UHPYxZZio

雪が降ったから、という理由ではないが一方通行はここでヴェントに声をかけた。
彼がただ単純に気になっていることを彼女に尋ねてみるためだ。
本当にただ疑問に思っていることを、しかしそれが或いは、今のヴェントの曖昧な
様子の原因に繋がるかもしれないと一方通行は考えた。


「今日……つーか、さっきの勝負。 "俺が負けてたらどォなってた"?」

「……と言うと?」

「俺が負けたらオマエの言いなりになる予定だったンだろ俺は。
 一度だけって制限が設けられてるが、とにかく俺は一つだけ
 オマエの命令に従わなきゃならなかった。 その命令の内容だ」


その『命令』を執行出来なかったが故に、今のヴェントは不完全燃焼的な
雰囲気を醸しているのではないかと一方通行は踏んでみた。
803 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:29:43.69 ID:UHPYxZZio

「別に勝負の賭け事っつー設定にこだわらなくても、俺は構わねェぞ。
 大体、今日の朝から今まで俺はオマエに絶対服従みてェなモンだった
 じゃねェか。 だから遠慮する事はねェ、最後くらい聞いてやるよ」

「……」

「言ってみろよ。 これが出来なかったからオマエ、さっきから
 つまンなそォな態度してやがるンだろ? クソわがままもイイとこ
 だが、最後にそンなツラさげられてちゃこっちも気が滅入るンだよ」

「……」

「言えよ。 …………一つだけ、何でも言うこと聞いてやる」


少ししつこいくらいに一方通行はヴェントから『命令』の内容を引き出そうとする。
納得のいかないような顔をされてたら自分も気が滅入る、と彼は言っているが、
実を言うとそれは本心ではない。
804 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:30:38.42 ID:UHPYxZZio

あの時自分が敗北していたらヴェントは何を命じてきたのか、という
単純な好奇心であり、そして一方通行には―――


―――彼にはその『命令』の内容がある程度、予想出来ていた。つまりは確認作業だ。


「この私に、否定形はない」


一方通行の言葉に対し、そう返して振り返ったヴェントの表情は、
つい先ほどまでの不明瞭なそれとは違い、いつもの不敵な薄い笑みであった。


「命令するのは私が勝ったらって取り決めだろうが。 で、私は負けた。
 だからもうアンタにあれこれ言うつもりはないわよ。 ていうか仮に
 私がとんでもない命令するつもりだったらどうするのよ? 
 それを実行しろだなんて、アンタ真性のマゾなんじゃねえの?」
805 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:31:34.70 ID:UHPYxZZio

「いや、俺は―――」

「諄いってのよ。 何で私が命令しろって命令されなきゃいけないの?
 確かに勝負はアンタが勝ったけど、アンタが勝った場合は特に何も
 無いって取り決めでもあっただろうが。 私に指図すんじゃねえよ」


このムチャクチャな物言いがまさにヴェントらしくあり、そしてそう言われると
一方通行もこれ以上言葉を紡ぐのを躊躇わざるを得ない。もし本当に、例えば
『全裸で逆立ちして学園都市を一〇〇周しろ』などと言われたらたまったものでは
ない(そんな事を言われても一方通行は実行に移らないだろうが)。


「…………私に"勇気"がないから命令出来ないってのもあるけど」
806 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:32:15.91 ID:UHPYxZZio

独り言のつもりだったのだろうが、一方通行の耳は確かにそんなヴェントの
言葉を受け取った。
勇気。そんな大それたものが必要であるヴェントの『命令』が何なのか、
ここで初めて一方通行は確信に近いものを得る。


得て、そしてますます、これ以上『命令してみろ』と口にする事が出来なくなった。


「ま、今度またアンタに命令できる機会が出来たらその時にしてやるわよ。
 覚悟しておいた方がいいわね、アンタの予想以上に過酷な内容だから」

「……」

「じゃあ私はあのアパートに帰るけど、アンタは今日は帰ってくるなよ。
 私にあれだけ屈辱を味わわせやがったクソ野郎の顔なんて見たくないし。
 いつまでもとは言わないけど、少なくとも今日だけは帰宅禁止って事で」


最後まで理不尽な物言いを押し付けたヴェントは、
807 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:33:14.61 ID:UHPYxZZio

「今日は付き合ってくれてありがと、"一方通行"」


儚げな笑顔を一瞬浮かべ、一方通行を置いて早足で去って行った。


「……クソったれが。 だが、そォだったとして……なら俺は……」


最後の対戦、自分は勝ってしまってもよかったのだろうかと彼は思う。


仮に負けたとして、手加減をして負けたとして、やはりヴェントは怒るだろう。
だがそれでも『オマエは勝ったんだから』と取り決めを重視させて『命令』させて、
その『命令』が自分の予想通りで、そうだった場合一方通行は―――


「俺は……」
808 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:34:30.58 ID:UHPYxZZio

明確な『答え』を出せない自分にいい加減腹が立つ第一位。

そもそも、まずその『答え』を出すという考えすら単なる勘違いに過ぎないかもしれない。
勝手に一人で推測して、結論付けて、ifに頭を抱えるマヌケなピエロ。
むしろそちらの方が可能性としては高い。しかし、


(…………こォいう時、例えば垣根だったらどォすンだろォな……。
 あのクソ無能力者なら……こンな事に頭抱えることはねェのか)


ミーシャ=クロイツェフ。風斬氷華。キャーリサ。オルソラ=アクィナス。アンジェレネ。
打ち止めも、番外個体も、その他にも、たくさんの顔が一方通行の頭に浮かんではグルグルと
渦のように回っていく。ヴェントと過ごし、だがなぜこんな葛藤が生まれてくるのかがわからない。


(ハッ、いつから俺は『選ぶ』なンて権利を持ち得た人間になったンだ? 何様のつもりなンだよ……)
809 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:35:25.60 ID:UHPYxZZio

鈍感だと散々指摘され、ではそこを改善していこうという心構えの一方通行。
そんな今の彼だからこそ、わかる。ヴェントがどういう目的で最後の勝負を挑んだのか。
分からなければならない。ここでわからなければ一方通行はもう一生成長を望めない。
だからこの苦悩はある意味、大きな進歩といえる。しかし最後の一歩が足りなかった。


(……今からでも追いかけて、)


今更アパートには帰りづらく、黄泉川の家に戻ろうかとも思案した一方通行だが、
やはりこのままでいいとは思えないとヴェントのあとを追おうと決心したところで、


「?」


とある音色が一方通行の思考を遮断した。音が存在しないはずのこの空間で、
しかし明瞭な音色が彼の鼓膜を叩いた。一気に現実に引き戻されたような感覚。

音色の発信源は一方通行の携帯電話であった。
810 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:36:32.20 ID:UHPYxZZio

(誰だ……?)


ポケットをまさぐりながら彼は電話をかけた相手が誰なのかを予想する。
この時間帯にかけてくる人物、黄泉川だろうか、打ち止めだろうか、番外個体か、
風斬氷華? ミーシャだった場合、十中八九何らかのトラブルに見舞われている。
垣根帝督か? だったらちょうどいい、恥を承知で相談してみるかと一方通行は考える。
フィアンマである可能性もある。或いはエイワスか。それともヴェント?

あらゆる可能性を挙げていきながら一方通行は携帯電話のディスプレイを見るが、
名前が表示されていない。携帯に登録されていない人物からの電話という事だ。


「……」


ついさっきまで様々な考えを巡らせていたため、とにかく何かをして頭を冷やした方がいい。
そう思った一方通行は特に警戒もせず応答ボタンを押して携帯を耳に添えて――――。
811 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:37:18.70 ID:UHPYxZZio

――――そして、心底後悔した。




『お久しぶりですね、一方通行』




危うく携帯電話をへし折りそうになった。
一気に現実へ引き戻されたような感覚―――どころの騒ぎではない。

現実どころか、引き戻された場所は地獄。
812 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:37:50.42 ID:UHPYxZZio

「………………オマエ、」

『ようやく"繋がりましたね"。 我々としましても喜ばしい限りです』


丁寧な男の声。一方通行が最後にこの声を聞いたのはいつだっただろうか。
第三次世界大戦。いや、それより前。


『突然で、しかもこのような時間に恐縮なのですが―――』


ふつふつと煮えたぎる一方通行の憤りなどお構いなしに電話の男は滔々と告げた。
813 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:38:23.17 ID:UHPYxZZio




『――――"仕事"です。 これから指定する場所に、午前〇時までに向かってください』




学園都市暗部。その組織の一つ。


『グループ』。


完全に捨て切ったはずの『闇』が、再び一方通行を沈めていく。
814 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:39:00.75 ID:UHPYxZZio


                  〜Information〜


【俺より強い奴に I need you -Advance-】がアンロックされました。
815 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:46:24.30 ID:UHPYxZZio

今回はここまでです。
なんかルート一覧みたいなのあった気がしますが、
それは次スレにでも載せておくということでお願いします。

というわけで、一端覧祭五日目のアンロック編でした。はー、長かった。
そして実を言うとこれで一方通行のフラグ強化合宿は終了となります。
一方通行が誰かと二人きりでデート……という展開はもう当分お預けです。

そして次回からはようやく舞台が移り変わり、あの男にスポットライトを当ててスタートします。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
816 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/10(火) 08:46:52.78 ID:UHPYxZZio



                          【次回予告】



「よし、連中の居場所は突き止めた。 さっそく行ってみようぜ」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督




「『黄金』系の魔術結社と直に対面する機会なんてそうそうあるもんじゃないデスからねえ」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――テオドシア=エレクトラ




「……なぜ君の中でリチャード=ブレイブの一件が貸しになってるんだ」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――ステイル=マグヌス




「そうやって度々私を置いてけぼりにしようとするの、やめてくれる?」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女




「あ、あなたはどこか魔術という法則を軽んじている傾向が見られます」
元ローマ正教のシスター――――――ルチア



817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 08:48:40.70 ID:VHLFVfFMo
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2848565.gif
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 10:02:12.25 ID:vPrxBwxIO
>>817
先に貼られている…だと…?

死亡フラグ建築士キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 12:17:20.38 ID:ObAdpKvH0
やっと面白くなりそうだ!
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 13:03:22.10 ID:k0o+MxcDO
天使同盟のヤムチャ様来たー!!
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/10(火) 13:14:43.72 ID:VzXMQcLh0
次回は垣根か
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/10(火) 14:00:03.39 ID:kbXOTX5a0
ていとくん来たーー乙!
そしてアンロック乙!
次回に期待
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/10(火) 18:20:54.94 ID:2f1ocFfq0


ようやっとていとくんか
原作でも復活フラグあったし期待
824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/10(火) 23:35:22.42 ID:zIujShDDo
おつ
待ち望んでたぜ垣根
今後はシリアスになりそうだし楽しみだな
825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/04/11(水) 02:35:04.99 ID:lww6XjpAO
>>823
ネタバレ自重するがあの一文はゾクッとしたよな!
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/11(水) 20:46:26.42 ID:Ro60XVBs0
乙ー
小説とSS両方見てるからどっちが本当の一通さん分かんなくなる・・・
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 01:38:32.17 ID:GCE24K0DO
今までさんざん悩んだが、このスレに出会って俺決めたよ…


原作全巻買ってくる

アニメだけじゃ足りん!!
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 20:09:21.49 ID:Qxxg41iU0


完成度の高さにSSである事を忘れそうだな
次回に期待
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/04/12(木) 21:19:02.63 ID:gyo+OXIk0
このSSが一番の生き甲斐だお
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/04/12(木) 23:09:04.57 ID:rn1l1DhAO
俺の生き甲斐はこのスレとKの部屋……
っと浮気心をだしてみたりっ!
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/12(木) 23:22:05.86 ID:5RPno89w0
>>825
ネタバレ自重は重々承知しているがなんだっけそれ
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/12(木) 23:47:23.34 ID:MGovizXzo
>>831 新約4巻のP450読め

ていとくんの復活フラグ部だけ強調されてる
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/12(木) 23:49:15.70 ID:179gq8Kho
フレンダの復活フラグはないの!?
834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/04/13(金) 01:55:40.27 ID:uZLc4U7AO
>>833
絵がブレンダっぽいのは出てきたけど……
これ以上はネタバレになるから新約4巻読んでくれww
835 :834 [sage]:2012/04/13(金) 01:57:50.46 ID:uZLc4U7AO
あ、思わせぶりに書いたけどブレンダはタヒ亡確定してるからないと思う。
ってか学園都市組はもう出てこないんじゃないか?
836 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 13:56:35.40 ID:uTxQLaY9o
>>832
なんやて……。嬉しい半面、何だか複雑ですねえ

朝っぱらから発射がどうとかやってましたが、私も今日の投下分を発射します。

さて、今回から舞台は一変。イギリスはロンドン、主役を垣根帝督に置き換えて
話を進行していきます。
久しぶりの登場で垣根が今なにやってんのかわからんって方のために。


―――シスターが住まう女子寮で『天使同盟』の経緯を話した垣根帝督。
そして時代の変革(笑)を望む『暴徒』の勢いが想像以上に深刻化している
事を彼は知る。ステイルとテオドシアもまた、イギリス清教本部にて同じ
情報を受けていた。垣根は『暴徒』の件も考える一方、やはり本題である
魔術と能力の再使用を目指すべく、あの『明け色の陽射し』の下に向かう。


……こんな感じだったような気がします。

では、よろしくお願いします!
837 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 13:57:28.73 ID:uTxQLaY9o


――――――――――――――――――――――




「―――――ってワケなんだわ。 場所がわかったら俺の携帯に連絡して」

「垣根様がそう指示なさるのでしたら我々は尽力するまででございますが、
 率直に申し上げますとその指令の結果を出せる確率は良くて五分五分かと」




フードに覆われているせいで表情は窺えなかったが、
黒のローブを着た魔術師は明らかに困っている様子だった。
838 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 13:58:29.25 ID:uTxQLaY9o

イギリスはロンドン。ランベスの一角にある『必要悪の教会(ネセサリウス)』の
女子寮の近く、人気のない路地裏での事であった。『天使同盟(アライアンス)』の
構成員、垣根帝督は目当ての女の子の好みのタイプをクラスメイトの友人に聞いて
くるよう頼むくらいの気軽さで、『天使同盟』の駒として活動するセレマ教の
魔術師にある頼みごとをしていた。


「お前らならそのくらい朝メシ前なんじゃねえの?」

「指令内容の達成難易度に関する問題ではないのです」

「じゃあ何で渋るんだよ」


現在、この路地裏にいる黒のローブを着た魔術師は垣根の頼みごとを
聞いている彼一人ではない。その後ろに、垣根の視界の範囲内に居る
にも関わらずまるで存在そのものを消しているように気配を希薄にした
セレマ教の魔術師が二人、周囲を警戒しながら佇んでいた。
839 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 13:59:26.37 ID:uTxQLaY9o

垣根と会話をしている魔術師が平坦な声色で返す。


「渋るなどとんでもない。 先ほども申し上げました通り、
 我々はエイワス様より遣わされし『天使同盟』の駒。
 与えられた指令は全力を以って実行するだけでございます」

「じゃあ頼むよ」

「ですが、垣根様が提示された指令―――『明け色の陽射し』が有する
 アジトの居場所の捜索、これ自体に少しばかり問題がございまして」


ステイルやテオドシア、シェリーと話し合った垣根は『明け色の陽射し』と
接触する意向を固めていた。だが、今どこにいるのかもわからない組織に
どう接触するかという問題が浮上した。

垣根帝督は策があることを三人に示唆し、一度寮を出て駒であるセレマ教の
魔術師達を招集、彼らに『明け色』が構えるアジトの居場所を見つけ出すよう
指示を出したのだ。要するに他力本願、というか丸投げである。
840 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:00:23.04 ID:uTxQLaY9o

「問題ってなんだよ」

「レイヴィニア=バードウェイ。 垣根様はその女の詳細を存じ上げて
 おられないでしょうが、バードウェイは『明け色』のボスの座に君臨
 する魔術師。 我々とて、バードウェイは一筋縄ではいきません。
 アジトを捜索するにおいて我々とバードウェイの接触という事態が発生
 する可能性が五分五分。 最悪、戦闘に持ち込む可能性もございます」

「で?」

「その結果がどうあれ、『明け色』はより一層警戒を強める恐れがございます。
 ロシアでエイワス様に迎撃された件から彼奴らはどの結社であれ所属であれ、
 何者かと接触する際の警戒心を既に高めているでしょう」

(やっぱロシアの一件はエイワスの仕業かよ。 つかそこに『明け色』もいたのか)

「左様でございます」

「俺の許可無しに心を読むんじゃねえよ」
841 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:01:14.10 ID:uTxQLaY9o

『明け色の陽射し』を率いるボス、レイヴィニア=バードウェイ。
『黄金』系の魔術結社の頂点に君臨する魔術師だけあって、その
実力は折り紙つき。アジトの捜索自体は容易に行えるものの、
その際にバードウェイと接触してしまう可能性を黒のローブは危惧していた。

アレイスター=クロウリー直属、現エイワス直属の魔術師が危険視する程の魔術師。
バードウェイというその女がどれだけの実力者なのか、しかし魔術サイドと魔術師の
強弱関係について詳しく知らない垣根にはイマイチ危険性が伝わらなかったようで、


「警戒網の範囲外から見つけりゃいいだろ」

「当然そのつもりではございますが、我々がしくじった時のリスクを
 垣根様が被る可能性を考慮すると今回の指令は何かと面倒でして」

「俺の身なんてお前らが案じる必要ねえよ、よろしく頼むぞ」

「承知」
842 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:01:53.56 ID:uTxQLaY9o

結局、折れたのは魔術師側だった。三人は垣根の指令を了承するや否や
何らかの術式を使ったのか、その場から音もなく霧のように姿を消した。

垣根は満足そうに笑みを浮かべると、踵を返して女子寮へ戻った。


「よう、待たせたな」

「どこへ行っていたんだ? 『明け色』と接触するための算段でも―――」


イギリス清教から渡されたのだろう書類を難しい顔をしながら閲覧していた
ステイル=マグヌスが垣根に声をかけたところで――――、


「?」

「早っ! まさかもう見つけたのかよ!?」
843 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:02:50.77 ID:uTxQLaY9o

垣根のポケットから携帯の着信音が流れた。ついさっきローブの魔術師と
別れたタイミングでの着信。さすがに早すぎると垣根も彼らではない誰か
からの連絡だと思いながら電話に出たのだが、


『垣根様、大変お手数ですがこれからメールで送るGPS情報に従い指定の
 ポイントまで移動をお願い申し上げます。 尚、「明け色」に我々の
 存在を察知される事態には至りませんでした。 アジトの周囲に対侵入者
 迎撃術式が仕掛けられていない事も確認済みですのでご安心ください』

「いくら何でも迅速すぎるだろ! もしかしてここからかなり近いのか?」

『ランベス区の一画にございますアパートメントの一室が、彼奴らが構える拠点の一つでございます』

「近すぎる! さっきの俺らの会話を盗み聞かれてたとかいうオチはねえよな?」

『その点も問題ございません。 盗聴術式による魔力反応もありませんでしたので』
844 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:04:09.37 ID:uTxQLaY9o

「だったらさっき路地裏で場所教えてくれりゃよかっただろうが……」

『そのようなご命令は承っておりませんでしたので』

「チッ、わかったよ。 ご苦労さん、……融通効かねえなぁ」


垣根は面倒くさそうに頭を掻きながら通話を切った。
その瞬間、見計らっていたように彼の携帯にが一通のメールを受信する。
確認すると、GPSで表示されたランベス区の地図に一箇所、赤いポイントが
点滅していた。ここが『明け色の陽射し』が構えるアジトなのだろうか。


「よし、連中の居場所は突き止めた。 さっそく行ってみようぜ」

「……君の情報網は一体どんな仕組みになっているんだ?」


魔術結社の中でもトップクラスの勢力と規模を誇る『黄金』系のアジトを
あっさりと突き止めてしまった垣根の手腕にステイルは驚くより呆れるしかなかった。
845 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:04:49.97 ID:uTxQLaY9o

「つーワケで俺はお暇させてもらうが……お前らどうする? 一緒に来るか?」

「行きマス行きマス。 『黄金』系の魔術結社と直に対面する機会なんて
 そうそうあるもんじゃないデスからねえ。 『明け色』のボスには個人的に
 貸しも作ってますし? それをネタに有益な情報を引き出せるかもしれないマス」

「……なぜ君の中でリチャード=ブレイブの一件が貸しになってるんだ。
 わかっているとは思うが、あそこのボスはあの件を貸しとも借りとも
 思ってはいないぞ絶対。 そもそも覚えているかどうかも疑問だけど」

「ステイルはどうする?」

「同行しよう。 正直、バードウェイとはもう二度と関わりたくないし
 顔も合わせたくないんだが、状況が状況だ。 『明け色』が他者と
 手を取り合っての活動を承諾してくれるとは思えないけど、君一人を
 彼女達のところへ向かわせるのも何だか忍びないしね」

「なんだ、知り合いなのか?」

「顔見知り、という表現さえ嫌になってくるけどね」
846 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:05:36.02 ID:uTxQLaY9o

すると机の上で気怠そうに突っ伏していたシェリー=クロムウェルが
これまた気怠そうにパタパタと手を振って、


「あー、私は行かねえから。 ちょっと話の規模が大きくなりすぎなのよ。
 面倒くさそうな事態に自ら首を突っ込む趣味はねえし、勝手にしてくれ」

「そんな気構えだと、いずれイギリス清教から干されるぞ」

「『必要悪の教会』を解雇されても私には働き口があるからねえ。
 芸術院の方に顔出しすることを優先したいし。 ま、頑張れよ」

「わかった。 風斬には俺の方からよろしく言っといてやるよ」


ともあれ、『必要悪の教会』の二人は垣根に同行するようだ。
ステイルとテオドシアが女子寮のシスター達に軽く礼を言いながら
身支度を整えていると、奥の廊下から声が飛んできた。
847 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:06:11.73 ID:uTxQLaY9o

「おーい垣根帝督。 あなたどこへ行こうとしてるのよ?」

「チッ、さっさと出て行きゃよかった」

「そうやって度々私を置いてけぼりにしようとするの、やめてくれる?」


廊下から姿を現したのはドレスの少女であった。その隣には黒い修道服に
身を包んだルチアとアニェーゼもいる。


「おや、もう出かけちまうんですか?」

「ああ、『明け色』の連中に茶菓子持って挨拶してくる」

「さてさて、今度はどんな連中と顔を合わせる事になるのやら」

「まだ着いてくるのかよお前……」

「……」
848 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:06:45.76 ID:uTxQLaY9o

ドレスの少女は垣根達と行動を共にするつもりのようで、アニェーゼ達に
軽く手を振ると軽い足取りで垣根の下へ歩いていった。
と、何やらルチアの様子がおかしい。まるで何かを迷っているように
視線を左右に揺らして物申したげにしている。


「どうかしましたかシスター・ルチア?」

「いや、あの……」

「じゃ、またイギリスに来る事があったら立ち寄ってやるよ」
849 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:07:21.54 ID:uTxQLaY9o

そう言い残して垣根は寮から立ち去ろうとしたが、


「ま、待ちなさい垣根帝督!」


不意に背後からルチアが彼を呼び止めた。


「何だよ?」

「わ、私も同行させていただきますっ!」
850 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:08:10.94 ID:uTxQLaY9o


――――――――――――――――――――――


――イギリス・ロンドン ランベスの大通り


ルチア「……」スタスタ

垣根「『わ、私も同行させていただきますっ!///』」ケラケラ

ルチア「く……。 『///』なんて頬を染めるような感情は抱いていません!」

垣根「いや、ていうか……何でお前まで着いてくるワケ?」

心理定規「……」

ステイル「僕も垣根帝督に同意する。 これから向かう場所が
     どこなのか、君も理解しているはずだろう?」
851 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:09:09.90 ID:uTxQLaY9o

ルチア「かの『黄金』系魔術結社が一つ、『明け色の陽射し』のアジトです」

テオドシア「知ってて着いてくるんデスから、肝が据わってるといいマスか……」

垣根「そりゃお前らも同じだろうがよ」

ステイル「君もな」

垣根「どうせならアニェーゼも連れていってやりゃ良かったのによ。
   あいつ、お前が行くっつったら着いていきたそうにしてたし」

ルチア「シスター・アニェーゼは一応あの女子寮を仕切る立場ですから、
    私と彼女に加え、シスター・オルソラとアンジェレネがいない
    状況をシェリーさんに一任するのは不安でしたので仕方なく……」

垣根「信用されてねえなあの魔術師も」

ルチア「いえ、信用とかそういう話ではなくて……」
852 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:10:30.21 ID:uTxQLaY9o

垣根「お前も『明け色』に興味があるとか?」

ルチア「別に……、あ、いや、」

垣根「やっぱお前、俺に惚れてるんじゃねえの?」ニヤニヤ

ルチア「な、何を馬鹿なことを! 身分をわきまえてください」

垣根「お前は何様なんだよ……。 冗談だって」

ルチア「あ、あなたはどこか魔術という法則を軽んじている傾向が見られます。
    魔術結社のアジトに立ち寄って、そこで魔術を冒涜するような物言い
    を働いてしまったらトラブルの原因になります。 なので監視を――」

垣根「…………軽視? 冒涜? そんなふうに見えるか俺?」

ルチア「み、見えますとも……。 あなたはある意味で危険な存在なのです」
853 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:11:44.00 ID:uTxQLaY9o

テオドシア「私と似たような意見を持っているのデスねえ」

垣根「……俺、もしかして魔術サイドから疎まれるような人間だったりする?」

ステイル「冒涜的かどうかはともかく、魔術を軽視しているという点には頷ける」

垣根「魔術の危険性くらい俺も理解してるつもりだぞ?」

テオドシア「科学サイドの人間が魔術サイドの事情に首を突っ込み過ぎ、
      とステイルやルチアは言いたいんじゃないデスしょうか?」

ルチア「そ、そうです。 あっちこっちを歩き回っては面白半分で
    魔術の法則に触れたり実行したり……危なっかしいのです」

垣根「面白半分……。 キツい事言いやがるな、一応俺は真剣なんだけど」
854 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:12:43.70 ID:uTxQLaY9o

テオドシア「危なっかしいから見守りたい、と同時に、その勇敢とも
      無謀ともとれる彼の振る舞いにどこか惹かれるんデスしょ?」ニヤニヤ

ルチア「はい……」

垣根「え、マジで?」

ルチア「ハッ! い、いやいや、とんでもありません! あなたのどこに
    人を魅了する要素があるというのですか! 何が惹かれるですか、
    あなたみたいな人間は車にでも轢かれてしまえばいいのです!」

垣根「……一応俺にも傷つく心ってのがあるんだけど」

ルチア「あ……、言葉が過ぎました。 申し訳ありません」

心理定規「ねえ、イチャついてるとこ申し訳ないんだけど」

垣根「何だよ、空気になりかけの女」
855 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:13:39.98 ID:uTxQLaY9o

ルチア「言葉を選んでください、イチャついてなどおりません!」

心理定規「面白半分とか真剣とか、その辺は置いといてもさ。
     垣根帝督が魔術サイドに首を突っ込む事はある種
     仕方がないというか、やむを得ないと言えるんじゃない?」

ルチア「な、何故ですか……」

ステイル「……彼が『天使同盟』の一員だから、か」

心理定規「そうそう。 『天使同盟』って"そういう集まり"なんでしょ?」

テオドシア「私は直に会った事がありませんデスから、らしいとしか
      言えないのが悔しいデスけど。 一度会ってみたいなぁ」

心理定規「私もそうだけど、かなりヤバい魔術師も一員として加盟してるらしいし」

垣根「まぁな」
856 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:14:56.76 ID:uTxQLaY9o

心理定規「それで『第一九学区事件』でどうやら最高峰の魔術師として
     君臨してたらしいアレイスターと殺り合って……。 そんな
     ことしてたらそりゃ嫌でも関わる事になるんじゃないの?」

垣根「お前、アレイスターが魔術師だって情報を誰から聞いたんだよ」

心理定規「あなたよあなた。 あなたが事件の詳細説明してる時、私も聞いてたっつーの」

垣根「なるほど」

ステイル「……君達、ごく普通の日常会話のようにマズい話題を
     軽々と口にしないでくれるか? こっちがヒヤヒヤする」

心理定規「まぁつまり、彼の猪突猛進的な行動も少しは大目に見てあげたら? ってこと」

ルチア「……」
857 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:15:51.15 ID:uTxQLaY9o

垣根「何でお前が俺のフォローをしてくれるんだ?」

心理定規「んー? "借り"を作っておきたいから?」

垣根「俺をどうしようってんだお前」

心理定規「さて、どうしてくれようかしら」ニヤリ

ルチア「……考えておきます」

テオドシア「でも垣根が私達の領域に足を踏み入れなかったらあなたは
      彼に会えなかった訳デスし、良かったじゃないデスか」

ルチア「あ、あなたはさっきから何を―――」

テオドシア「えへへー、シェリーから大体の事情を聞いちゃった☆」テヘペロ

ルチア「あの芸術品マニアが……!」ワナワナ
858 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:16:48.72 ID:uTxQLaY9o

垣根「っと、ここの角を曲がって右沿いの街路を直進だな」

心理定規「そこに連中のアジトがあるの? こんな何の変哲もない街中に?」

垣根「あえて、って事じゃねえの? よく知らねえけど」

ルチア「どうやってその情報を入手したのやら……」


ステイル「……テオドシア」

テオドシア「デスねえ」


ルチア「?」

垣根「どうかしたのか?」
859 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:17:35.54 ID:uTxQLaY9o

ステイル「妙なんだよ」

心理定規「何が?」

テオドシア「周囲から魔術師の気配を感じ取れないデスマス」

垣根「……魔術師がいなきゃいけねえ事情でもあんのか?」

ステイル「少なくとも僕は『明け色の陽射し』の詳細な内情を知らない。
     だが僕は以前連中と接触している。 その際に黒服の……
     バードウェイの部下も確認している。 彼らが有する魔力もね」

垣根「それが何だ?」

テオドシア「『明け色の陽射し』のアジトが(恐らく)この近辺にあるというのに、
      警備や監視を担う魔術師の姿はおろか、気配すらないデスのけれど」
860 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:19:27.86 ID:uTxQLaY9o

心理定規「必要が無いからじゃない? もしくは、魔術師を
     置いておけない状況下にでも陥っているか」

ステイル(魔術師を控えられない状況……、いやまさか、)

テオドシア「どういう事なんデスしょ?」

ステイル「アジトの周囲に監視役を必要としない理由なんてそうそうない。
     恐らくは後者か。 僕達が向かっているアジトにバードウェイが
     居ないのか。 ……それでもアジトの護衛を解くのは不自然か」

垣根「あーヤベ、アジトを複数構えてるって可能性を失念してたわ」

心理定規「ホント、牙が抜けちゃってるわよねあなた」

ルチア「ど、どうするのですか?」

テオドシア「私は垣根にお任せするマスけど」
861 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:20:06.37 ID:uTxQLaY9o

垣根「とりあえず行ってみようぜ。 そのバードウェイとかいうボスが
   居なかったら居なかったで、アジトにいる『明け色』の魔術師に
   ボスの居場所を吐かせればいいんだからよ」

ルチア「そんな強制的に情報を引き出すような行為は……」

ステイル「心配いらない。 そんな馬鹿な真似は僕がさせない」

垣根「言葉の綾だっての。 ……、……ここじゃねえか?」

心理定規「どう見てもただのアパートなんだけど」

垣根「だからここだろ。 アジトはアパートの一室だって聞いたし」
862 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:20:44.25 ID:uTxQLaY9o

ステイル「"聞いた"? 君、アジトの居場所を誰かに調べさせたのか?」

垣根「あぁ。 あ、もしかしたらそいつらが護衛の魔術師を殺っちまったのかも」

テオドシア「何者なんデス?」

垣根「聞かねえ方がいい。 胸くそ悪くなるだけだ」

ステイル「……」

心理定規「じゃ、とりあえず突撃してみる?」

ルチア「どうか大事に至りませんように……大天使様、我に御加護を……」スッ

垣根「大袈裟だな、ちょっと挨拶してくるだけだってのに」
863 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:27:47.50 ID:uTxQLaY9o

今回はここまでです。

ていうか『明け色』に会いに行こうって話を投下したのいつだよ……
そこからどんだけ日数経過してんだっつーの……。
いや本当に、大変お待たせしましたといった感じで。

それと、この垣根帝督パート。これまでの垣根パートに比べると
(最悪なことに)長編となります。しばらくは垣根漬けの更新となりますが、
どうかご容赦くださいませ。

では次回の『突撃! 隣の黄金結社』は三日以内に更新します。

いつも支援をありがとうございます!また次回。
864 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/13(金) 14:28:25.45 ID:uTxQLaY9o



                          【次回予告】



「え、え、あの……え? あの、ステイルさん、こ、これは……?」
『明け色の陽射し』のボス少女の妹――――――パトリシア=バードウェイ




「え、この子がバードウェイ!? ボスなの!? ちっちゃ!」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女




「お前ら揃って俺をガン無視してんじゃねえ!」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督



865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 14:38:30.47 ID:2PVFSbMXo

段々かっきーサイドも大所帯になっていってるな
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/04/13(金) 14:49:56.53 ID:yqtPaUBo0


>(最悪なことに)
最高の間違いだろ?
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/13(金) 16:30:52.39 ID:Z2jEzx9G0
ルチアかわかわ
お茶らけイケメンと生真面目少女の絡みは至高だな
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 17:37:38.82 ID:n/NDjUw/o
おつー
望むところよ>垣根漬け
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/13(金) 19:33:54.05 ID:glOg1xowo
なんだルチア漬けか
一通さんサイドのヒロインとは別の純粋な初々しさがたまらんwwwwwwwwwwww
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/04/14(土) 00:06:45.44 ID:8txnwRTK0
ルチアかわいい
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 01:30:30.20 ID:oR1/4WWDO
かっきーフラグビンビンだね!

バードウェイがどんな娘か知らないけどおっぱいに期待する
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/15(日) 01:57:18.49 ID:skt621Jd0
バードウェイには期待しない方が……
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 02:08:26.74 ID:i9OyyLsRo
>>871
12歳ブラいらずが凄い怖いして顔走って行ったぞ
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/15(日) 11:58:50.69 ID:i1Spon9xo
レイヴィニアにうさぎぱんつはかせてペロペロしたいお!
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/04/15(日) 21:51:57.83 ID:kTHKiQHAO
最近また最初から読み返して垣根のかっこよさに震えてた
垣根漬け?ご褒美だろ
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 22:15:51.74 ID:JriwESuIO
このシリーズでは二回号泣したがその両方とも一方さんとていとくん絡みだったな
877 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:39:25.71 ID:u3vDgpISo
>>871
貴様、さては知っているな……?

おはようございます、更新を開始します。

どうやら久々の垣根パートも受け入れてもらえたようで安心しました。
こいつだけイギリスだからどうしても出番遅くなるんですよね。
一方通行もさっさと向かわせたいのですけど……

さて今回はいよいよ『明け色の陽射し』とご対面。
魔術のエキスパートである黄金結社から垣根は有力な手がかりを
得ることが出来るのでしょうか。

それでは、よろしくお願いします!
878 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:40:34.31 ID:u3vDgpISo


――――――――――――――――――――――


――イギリス・ロンドン ランベス 石造りのアパートメントの一室


垣根「……この部屋だな」

テオドシア「部屋まで調べてあるんデスか」

ステイル「もういい、浮上した疑問点を並べていたら年が暮れる」

心理定規「もっとすんごい『アジト』感溢れる場所をイメージしてたんだけどなぁ」

ルチア「…………」ドキドキ
879 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:41:17.25 ID:u3vDgpISo

垣根「面白そうな話だなそれ、あとで聞かせろよ」

テオドシア「ていうか部屋の前でこんな話をしている時点で何らかの
      反応があってもいいマスのに、今のところは無いデスね」

心理定規「とりあえずお邪魔してみれば?」

ステイル「ここまで接近しても魔術師の気配が無いという事に対して
     不自然さが拭えないが……まぁいい、僕が挨拶してみよう」

テオドシア「一応、対侵入者迎撃術式に対する防護術式を構えておきマスね」サッ

心理定規「何か空気がピリピリしてるわね」

垣根「楽に構えてりゃいいのにな」

ルチア(この二人はまったく……)
880 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:41:59.74 ID:u3vDgpISo

ステイル「……………………」コンコン


「はーい」


ステイル「……ん? ちょっと待て、今の声――――」

心理定規(子供の声?)

垣根(なんだ、バードウェイって子持ちなのか?)


          ガチャ


少女「どちらさま―――――ふぇ?」キョトン
881 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:42:27.20 ID:u3vDgpISo

ステイル「…………………………ッ!」ギクゥ

テオドシア「……………………わーおわおわお、こういうオチデスか」

心理定規「あら、可愛い子」

垣根「ちょ、どけお前ら。 見えねえだろ!」

少女「す、ステイル……さん?」


ステイル「………………パトリシア=バードウェイ……」


テオドシア「あー、何かもう全部わかっちゃったのデスマスが」

心理定規「え、この子がバードウェイ!? ボスなの!? ちっちゃ!」

パトリシア「え、え、あの……え? あの、ステイルさん、こ、これは……?」アセアセ
882 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:43:17.59 ID:u3vDgpISo

垣根「だから見えねえって!」

ルチア「この少女が……『明け色』のトップ……?」

ステイル「…………とりあえず、久しぶりとだけ言っておこうか」

パトリシア「え。 あ、はい! お久しぶりです!」ニコッ

テオドシア「碑文の欠片の一件以来デスねえ」

パトリシア「テオドシアさんも、お久しぶりです」

ルチア「突然押しかけてしまって申し訳ありません。 私はイギリス清―――」

ステイル「あー、ところで悪いんだけど」

ルチア「な、なぜ自己紹介に遮るような形で……」
883 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:44:13.73 ID:u3vDgpISo

テオドシア「(あとで事情は説明しマスデスので)」ヒソヒソ

ルチア「???」

心理定規「こんにちわー」ニコ

パトリシア「ど、どうも……初めまして、ですよね?」ペコッ


>「おいパトリシア、誰が来たんだ?」


ステイル「げっ……」

テオドシア「うっわ……居マスねえ、"姉の方も"」
884 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:45:04.69 ID:u3vDgpISo

心理定規「姉?」

垣根「見えねえっつってんだろ!! お前ら揃って俺をガン無視してんじゃねえ!」

パトリシア「あ、お姉さん。 ステイルさん達が……」

ステイル「ちょ、僕の名前を出すな!」アセアセ


         スタスタ


少女「…………何だ、この連中は」

ステイル「………………」

テオドシア「どもども、お久しぶりデス」
885 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:46:01.00 ID:u3vDgpISo

心理定規「何か似たようなお子ちゃまが出てきた」

少女「お子……」ピクッ

パトリシア「あ、えっと。 私はパトリシア=バードウェイと言います。
      そしてこちらが私の姉、レイヴィニア=バードウェイです」

レイヴィニア「……おい」

ステイル「とりあえず、話だけでも聞いてもらえないだろうか」

レイヴィニア「聞いたあとに全員始末してもいいのならな」

垣根「クッソ、新キャラがどんどん増えてやがる……。 ルチア、ちょっとどけ!」グイッ

ルチア「きゃっ……、ど、どこを触っているのですかこの野蛮人!」

心理定規「何だ、姉妹だったのね」
886 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:47:05.72 ID:u3vDgpISo

垣根「どれ、ボスってのは……ってうわっ、小っさ! ガキじゃねえか!」

レイヴィニア「殺していいな?」ブンッ

ステイル「心中察するが、まずはそのウサギの前足みたいな意味不明の杖を収めてくれ」

心理定規「初めましてー♪ 学園都市の学生Aと、」

垣根「学生Bでーす♪ ……って何だこれ」

レイヴィニア「学園都市……?」

パトリシア「え、が、学園都市の学生さんですか!?」

ステイル「話をややこしくするな!!」
887 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:48:08.34 ID:u3vDgpISo

ルチア「私にも自己紹介を……」

テオドシア「あなたはあとで」

パトリシア「ところで皆さんはどのような御用で……?」

ステイル「えー、それはだね……」

垣根「『明け色の陽射し』のボスってどっちだ? 俺が会いに来たんだけど」

ステイル「お前ちょっとマジで黙ってろ」

パトリシア「えっと、『明け色の陽射し』って、お姉さんが所属してる"サークル"ですよね?」

レイヴィニア「…………」

垣根「あ、こっちか。 つかボスって……こんなガキでもトップ張れるのかよ『黄金』系」
888 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:48:49.32 ID:u3vDgpISo

レイヴィニア「殺していいな?」

ステイル「いいよもう」

垣根「何怒ってんだ? ああ、俺は垣根帝督って言うんだ。 そうだ、飴玉いるか?」

レイヴィニア「殺 し て い い な ?」ゴゴゴゴゴ

ステイル「いや、むしろ僕が始末しておこう」ボウッ

垣根「熱ゥゥゥァああ!!? いきなり何しやがんだテメェ!!」

パトリシア「うわ、今の……改造したライターですか? そんな
      危ない物を人に向けたらダメですよステイルさん……」

ルチア「?」

心理定規「?」
889 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:49:48.27 ID:u3vDgpISo

レイヴィニア「……………………」ギロッ

ステイル「…………軽率だった」

垣根「どこをどう見りゃ今のが改造ライターだって解釈出来るんだ!
   もしかして妹は天然ちゃん? 今のはどう見ても魔じゅ――げふぅぇっ!?」グシャ

レイヴィニア「それで、この私に謁見したいという事らしいが」

垣根(今……どこから攻撃された……?)

心理定規「ていうか部屋の中入っていい? 外すごい寒いんだけど」

パトリシア「あ、すみません! どうぞお入りください」

ルチア「自己紹介……」

ステイル「……こういう状況を、日本の四字熟語で何と言うか知ってるか?」

テオドシア「………………前途遼遠?」

ステイル「プラス、前途多難だクソったれ」
890 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:50:32.35 ID:u3vDgpISo


――――――――――――――――――――――


心理定規「うわ、コタツだコタツ。 外国でこれにありつけるとはね〜」ヌクヌク

ルチア「これが噂のジャパニーズコタツ……、日本らしいデザインですね」

テオドシア「想像してたより生活感溢れる室内デスねえ」

ステイル「……」

パトリシア「ど、どうぞステイルさんも……良かったら暖まってください」

ステイル「……あぁ、ありがとう」

パトリシア「いえいえ」ニコニコ
891 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:51:30.67 ID:u3vDgpISo

垣根「つうか狭いってここ。 大規模な魔術結社ならもっと城みてえな
   場所に拠点を構えろよ。 フリーターじゃねえんだから」

レイヴィニア「口の聞き方には気をつけろ。 妹さえ居なきゃお前
       なんざ今頃『象徴武器(シンボリックウェポン)』で……」ボソボソ

パトリシア「? 私が何ですかお姉さん?」

レイヴィニア「何でもない。 おいマーク、こいつらに茶を出してやれ」

マーク「………………了解です」

垣根「あ、お構いなく」

ステイル「まず突然押しかけてきた非礼について詫びよう」

垣根「何でお前が謝るんだよ、お前らは俺に着いてきただけだろ」
892 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:52:54.64 ID:u3vDgpISo

レイヴィニア「お前が私に用があると?」

垣根「そういうこった。 残りの連中は勝手に着いてきただけ」

レイヴィニア「まず誰なんだお前は。 学園都市からイギリスへ観光しに来た
       ついでに"我々"の顔も見ておこうと考えた観光客とか言うなよ?」

垣根「その点は問題ねえよ。 そうだな、急に押しかけた非礼がチャラに
   なる程度の土産話はくれてやれると思うぜ。 長い話になるけどな」

心理定規「お、煎餅はっけーん。 風情があっていいわね」ボリボリ

テオドシア「最近、こういった硬い物をかじるのが辛くなってきてるんデスよ」バリバリ

ルチア「ひ、人様の家の物を勝手に口にするなど……!」

レイヴィニア「家という訳ではないんだが」
893 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:53:47.86 ID:u3vDgpISo

パトリシア「え? でもイギリスの大学でロシアにあるサークルの
      メンバーと合流するためにイギリスでお姉さんが借りて
      いたこの部屋を使ってるんですよね? だったら家だと
      言っても差し支えないような気がするんですけど……」

レイヴィニア「ん、まぁ――――」

垣根「大学? サークル? え、ここってお前ら魔術結社のアジ―――ごはぁっ!?」グシャ

パトリシア「うわあっ!? だ、大丈夫ですか!?」アセアセ

レイヴィニア「パトリシア、私はこれからこいつらと込み入った話をする。
       悪いがあっちの部屋に行ってゲームでもしててくれないか」

垣根「ぐ、う……。 クソッ、どこから攻撃されてんだこれ……」

パトリシア「ど、どうして私だけ除け者にするんですか……? さっき
      自己紹介を受けたんですけど、このお二人は学園都市から
      やって来た学生さんだって……。 だったら私も色々とお話を
      聞いてみたいんですけど。 参考になる話もあるかもしれませんし」
894 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:54:18.94 ID:u3vDgpISo

心理定規(…………なるほどね。 大体事情は把握したわ)

レイヴィニア「いいから向こうへ行ってろ」

パトリシア「うう……そんなぁ……」

心理定規「それじゃ、ええと……パトリシア? 私と向こうで一緒にお話しない?」

パトリシア「え! い、いいんですか?」

心理定規「もちよもち。 何だかあなた、"こっち側"に興味があるようだし」

パトリシア「わあ……! ありがとうございます、ちょっと向こうの部屋片付けてきますね!」タタタッ

レイヴィニア「……おい」

心理定規「心配ないよん。 "余計な事"は漏らさないから」
895 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:54:52.06 ID:u3vDgpISo

垣根「?」

ステイル「察しがよくて助かる」

心理定規「これでも暗部やってた身だからね。 内情把握は割とお手の物よ」

パトリシア「お待たせしました、どうぞこちらへ」

心理定規「そんじゃ垣根帝督。 あとで私にも話聞かせてね」

垣根「何だってんだ……」

ステイル「……パトリシア=バードウェイ。 彼女は僕達の『領域』と無関係の人間なんだ」

垣根「え、あいつも魔術師……っつか『明け色の陽射し』じゃねえの?」

マーク「パトリシア嬢は我々側の人間ではないのです。 今ここにいる時でも
    魔術という領域から遠ざけつつ接している、そういう方針ですので」
896 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:55:48.11 ID:u3vDgpISo

レイヴィニア「いちいち説明しなくていい」

マーク「必要なことかと思いまして。 ……大したものは用意出来ませんでしたが」コトッ

テオドシア「どもども、ありがとうございマス」

ルチア「い、いただきます」

垣根「アレか? 妹をお前らが抱える面倒事に巻き込みたくないからとか?」

レイヴィニア「どうとでも解釈しろ。 ……というかどけ! コタツは私の
       所有物だぞ。 お前達はそこの暖炉にでも当たってればいい」

垣根「いてっ、いて。 足を蹴るな足を」

マーク「お連れ様に気を遣わせるような形になってしまい、申し訳ありません」
897 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:57:33.25 ID:u3vDgpISo

垣根「あん? 別にいいよ、アレはあの女の気まぐれだろうしな」

マーク「恐れ入ります」

垣根「このガキと違ってお前は俺たちに対して歓迎モードなのか」

マーク「えぇ、まぁ」

垣根「ま、そりゃ"表向き"だけなんだろうけどよ。 ちょいと殺気が漏れてるぜ」

マーク「……」

テオドシア「自分の組織のボスに突然会いに来たとかのたまう輩が現れれば
      そりゃ警戒しマスって普通。 とんだサプライズデスしょこれ」

レイヴィニア「一本取られたな、マーク」

マーク「いやあ、このお方がそういう方面にも長けているというだけですよ」
898 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:58:12.08 ID:u3vDgpISo

レイヴィニア「言い訳は好かん」

垣根「いや、まぁ悪かったって」

マーク「こちらこそ。 ……私はマーク=スペースと申します。
    『明け色の陽射し』所属の魔術師です、よろしく」

レイヴィニア「私も名刺くらい渡しておこうか?」

垣根「その瞬間何が飛んでくるかわかったもんじゃねえし、遠慮しとく」

レイヴィニア「そうか。 ま、社交辞令を好むような人間には見えんしな」

ルチア「あの……」

レイヴィニア「ん? あぁ、そういえばなぜ修道女までここに?」
899 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:58:58.83 ID:u3vDgpISo

垣根「知らねえ、こいつも勝手に着いてきた」

ルチア「い、一応許可はいただいてるはずです」

レイヴィニア「イギリス清教か? 『必要悪の教会』といい、敵情視察の
       ためにイギリス清教がお前達を遣わせたんじゃないだろうな」

テオドシア「そう思うマスか?」

レイヴィニア「ふん、冗談だ。 今の魔術サイドならそんな愚行に走る必要もないしな」

ルチア「元ローマ正教、現イギリス清教のシスター、ルチアです」

レイヴィニア「ローマ正教からイギリス清教に寝返ったのか?」

マーク「ボス、恐らくは『法の書』争奪戦の件かと」
900 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 08:59:27.34 ID:u3vDgpISo

レイヴィニア「……あったかそんなの? てか『法の書』なんて気分の悪くなる名前を軽々しく口にするな」

マーク「ただ補足説明しただけで……」

レイヴィニア「うるさい」

マーク「はい……」ショボン

レイヴィニア「さて……では。 お前の素性を聞かせてもらおうか?」

垣根「俺は垣根帝督、学園都市で能力者やってる身だ。 ……だけじゃ終わらないんだけど」

レイヴィニア「構わん。 学園都市の人間のクセに我々の領域はおろか、我々の
       存在も知っているようだし、『必要悪の教会』の連中ともコネが
       あるらしいし、お前がただの能力者じゃない事は理解できてるよ」

垣根「そうかい。 じゃ、まずは俺がここへ来た目的から話してみようか」
901 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 09:02:42.33 ID:u3vDgpISo

今日はとりあえずここまでということで。

ココら辺書き溜めてる当初は大変でした。レイヴィニアもパトリシアもマークも
『誰だっけ』……と悩みつつ書いてました。マークに至ってはフルネームすら
うろ覚えでしたが、恐らくマーク=スペースであっているはずです。

次回は互いに軽く挨拶をしつつ、『天使同盟』をレイヴィニア達に紹介する流れ……
だったら話が早いのですが、そうは問屋がおろさないのが私の悪いところ。
なかなか本題に入りませんが長い目で見てやってください。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
902 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/16(月) 09:03:13.19 ID:u3vDgpISo



                          【次回予告】



「今から話すが、"ウチ"には恐ろしい胸を誇る人工天使サマがいらっしゃるぜ!!」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督




「私も最近肩こりに悩まされて……」
元ローマ正教のシスター――――――ルチア




「みなぎってきたぜ!」
魔術結社『明け色の陽射し』のボス――――――レイヴィニア=バードウェイ




「馬鹿ばっか」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――ステイル=マグヌス



903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/16(月) 10:40:39.23 ID:ET+rkZpv0
次回、何があったレイヴィニア=バードウェイ!!
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 10:47:51.03 ID:niT4NBDNo
「馬鹿ばっか」←エロ耐性が微塵も無いステイル君14歳
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/16(月) 17:03:44.97 ID:zGGdJxmB0
次回、なんだかおかしな方向に話いってね?
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/16(月) 17:12:59.76 ID:kXkzGt9o0
レイヴィニア巨乳フラグだと?

ロリ巨乳フラグだと?
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 17:40:32.71 ID:yJ0W2CDDO
ルリルリならぬ、ステマグか。
誰得
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/16(月) 17:55:49.36 ID:xK4dBRK50
今回レイヴィニアが終始シリアスっぽいからどうなることかと思ったけど
どうやら杞憂のようだなww
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/16(月) 18:11:31.31 ID:E4FKlE/1o
身長2メートルのルリルリか
イノケンさんも凍えるな
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/04/16(月) 20:41:03.93 ID:e0UFhMUB0
ところどころでパトリシアに気を使われるステイルさんじゅうよんさいマジうらやまですの
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/16(月) 23:12:43.23 ID:X2q+9p5H0
誰も言ってないので
>>1乙!!
カオスすぎワロタwwwww
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/17(火) 09:11:04.01 ID:O+qIG2Ajo

このスレも残りわずかになってきたなー
913 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:02:05.68 ID:UqS8ba56o

なんか最近暑くなってきましたね、ただでさえ持ってる服少ないのに
これから何を着て出掛ければいいんだ……裸にネクタイでもいいのかな

こんにちわ、更新を開始します。

『明け色の陽射し』と接触した垣根。さっそくボス少女の逆鱗に触れて
大変な目に遭っています。早いとこシリアスパートに持って行きたい
ところですが、そもそも話自体がなかなか進展しません。

では、その続きをどうぞ。よろしくお願いします!
914 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:02:31.70 ID:UqS8ba56o


――――――――――――――――――――――


垣根「えー、この度わたくしめがここへ赴き馳せ参じた理由を述べさせていただきますと―――」

レイヴィニア「ん、ちょっと待て」

垣根「んだよオイ! 人がせっかく気合い入れて回想に入ろうとしてんのによぉ!」

レイヴィニア「マーク、喉が渇いた。 シャーリー・テンプルを持って来い」

垣根「何だそれ?」

レイヴィニア「んん、知らんのか? 子供でもノンアルコールカクテルの
       知識くらいは頭に入れておいた方がいいぞ?」フフン
915 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:03:19.76 ID:UqS8ba56o

マーク「ソーダにレモンとライムを加えたドリンクですよ」

テオドシア「それにシロップを加えて出来上がり、デスマス」

垣根「ジュースじゃん」

レイヴィニア「カクテルだと言っている!」

垣根「が、あぁあぁ!? わかった、わかったから意味不明の魔術を
   俺に使うな……痛てててててスンマセン! スンマセンっした!」

マーク「でもジュースですよね、お子様向けに発明された物ですし」

レイヴィニア「……今日はずいぶんと口が出るなぁマーク君?」

マーク「す、すぐお持ちします」ダッ
916 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:04:19.85 ID:UqS8ba56o

垣根「ワガママなとこといい背伸びする性格といい、お前やっぱ内外面共にガキじゃん」

レイヴィニア「それが辞世の句でいいんだな?」シュバッ

垣根「うぎぎぎぎ!! そうやって……がはっ、すぐムキになるところも……」

レイヴィニア「気が変わった、お前は今ここで死ね」バッ

垣根「熱ぅいや冷たぁい!? 妹ちゃんの方がしっかりしてそうだよなぁクソガキ!」

レイヴィニア「みなぎってきたぜ! マーク、『剣』を持って来い!」

マーク(うるせえなぁ……)

垣根「大人ぶるならせめて服の上からでも確認出来る乳を用意しろよレイヴィニアちゃん、
   今から話すが、"ウチ"には恐ろしい胸を誇る人工天使サマがいらっしゃるぜ!!
   それはもう見ただけで思わず両手がワキワキ……あっ、痛い! 死ぬ、マジで死ぬ!!」
917 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:04:57.68 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「初対面の人間にここまでの侮辱を味わったのは初めてだぞ垣根帝督とやら……。
       そして乳の話はやめろ、聖人を務めてらっしゃるどこぞのババァを思い出す!」

ステイル(まさか神裂火織のことじゃあるまいな……)

ルチア「あ、あの……止めないのですか?」

テオドシア「どうぞどうぞ」

ルチア「わ、私が!?」

テオドシア「ていうか垣根帝督、アレわざと挑発してるマスよねえ?」

ステイル「大方、バードウェイが挑発に乗って目新しい魔術を使う展開に期待してるんだろ、くだらない」

ルチア「そんな事で魔術師が手の内を明かすはずがないですしね」
918 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:05:24.33 ID:UqS8ba56o

テオドシア「いや思いっきり己のレパートリー開示しちゃってるマスよあの貧乳」

レイヴィニア「何か言ったか『必要悪の教会』……」ギロリ

テオドシア「いえいえ滅相もございません」ギクッ

レイヴィニア「ん? ……」ジー

ルチア「……え? な、何か?」

レイヴィニア「よく見たらお前も結構"ある"な」

ステイル「よく見るなよ」

ルチア「いや、私は別に……。 そもそも修道女、いえ、だけじゃなく、前線に
    赴くタイプの魔術師に豊かな胸など必要ないと私は考えていますし」
919 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:06:17.15 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「良い事を言うなお前。 あのババァに聞かせてやりたいもんだ」

ルチア「むしろ邪魔であると思っています。 私も最近肩こりに悩まされて……」

レイヴィニア「さりげなく乳のデカさを自慢するんじゃあない!」ゲシッ

ルチア「痛たぁい!」

テオドシア「いや、すごいデスねこの二人……あのバードウェイに全く臆しない」

ステイル「二人共、いや三人ともバカなだけだろ」

マーク「ボス、あまり騒がしくしては周囲に迷惑が……」

レイヴィニア「はぁ、はぁ……。 ちっ、私とした事が、ちょっとムキになっちゃったかな」

マーク「カクテル、お持ちしましたよ」
920 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:06:53.34 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「ん。 ……、…………おいマーク」

マーク「え?」

レイヴィニア「シャーリー・テンプルはここまで強く赤が発色してたか?」

マーク「え、と……ほら。 さっきまでボスも激昂してましたから、赤く見えてるだけじゃ―――」

レイヴィニア「お前が飲んでみろ!」グイッ

マーク「がぼぶっ!? が、あ、ひぃぃいいいいいいいいいいい!!!」ジタバタ

レイヴィニア「案の定だったな。 タバスコでも入れたんだろ」

マーク「ら、らって……これならボスも少しは大人しくなるひゃと思っへ……」ヒリヒリ

ステイル「馬鹿ばっか」
921 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:07:39.32 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「もういい。 さっさと話を始めろ、話せるならな」

垣根「ちくしょう……、だがこれでしばらくフラグは立たねえはずだ……」ボロボロ

ステイル「どういう基準で何を計ってるんだこの男は……」

レイヴィニア「というかまず、何故ここがわかった?」

垣根「ん……あぁ、部下に調べさせた」

レイヴィニア「部下? 学園都市のか?」

垣根「いや。 まぁそこはどうでもいいだろ、本題じゃねえし」

レイヴィニア「……マーク」

マーク「……一応、パトリシア嬢に悟られない範囲で周囲を警戒していたんですけどね」
922 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:08:16.98 ID:UqS8ba56o

垣根「こっちも本気なんだ、お前らに会うためにな」

レイヴィニア「それで? お前がここを訪れた理由はなんだ」

垣根「俺は能力者だが、とある事情で魔術も使うようになった」

マーク「!」

レイヴィニア「…………、……で?」

垣根「けど、これまたとある事情でどういう訳か魔力が精製できなくなってな。
   魔力を精製する手段の一つは今も実行中なんだが、他に何か手はねえかと
   模索してる最中なんだ。 それで、魔術結社の大物らしいお前らを訪ねた」

レイヴィニア「再び魔術を行使できるように調整しろと?」

垣根「しろとは言わねえけど、方法があれば教えて欲しいってだけだよ」
923 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:09:15.45 ID:UqS8ba56o

マーク「……ボス」

レイヴィニア「急くなよマーク。 確かに我々が科学サイドの人間に助力するなど
       ご法度もいいとこだが……。 今回のケースは少し熟考する必要が
       あるとは思わんか? 科学と魔術を有するサンプルは極めて稀だ」

ステイル「まさか、乗り気なのか?」

レイヴィニア「いいや、今のところは話を聞くだけ聞いて追い出したい気分だが」

垣根「タダとは言わねえよ」

レイヴィニア「さっき言っていた土産話というやつか?」

垣根「俺は多分、お前らも知らねえ情報を提供できる」
924 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:09:58.02 ID:UqS8ba56o

マーク「取引、ですか」

垣根「自分の立場くらい理解できてる、取引なんて等価的なもんを
   交わそうとは思ってねえよ。 これは俺からの頼みごとだ」

レイヴィニア「……」

垣根「それに取引だとしても、それは成立しねえ。 なぜなら俺はお前らに
   魔力を取り戻す方法を教えてもらうために、結局俺が持っている情報を
   洗いざらい提供しなきゃいけねえからな」

レイヴィニア「その情報の一部に、お前が魔術に関わった経緯も含まれていると」

垣根「話が早くて助かるぜ。 例えば、ロシア成教本部でお前らを襲った魔術師の正体とか」

マーク「な……」

レイヴィニア「……………………、ほう」
925 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:10:34.90 ID:UqS8ba56o

ステイル「おい!」

垣根「これは『俺達』の案件だ、お前は口を挟めねえだろ?」

ステイル(……この男、どこで『クイト』の事を……?)

垣根「さて、どうだ? 俺の頼みを聞いてくれる気になってくれればありがたいが」

レイヴィニア「……ふん、何が頼みごとだ。 立派な取引じゃないか、なぁマーク?」

マーク「しかしボス、この男は……」

レイヴィニア「お前以外の……この三人も既に事情は聞き及んでいるのか?」

ステイル「……」

テオドシア(正体までは知りませんけど)

ルチア(ロシア成教で襲われた……? 『黄金』系が?)キョトン
926 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:11:17.65 ID:UqS8ba56o

ステイル「……すまないが、やはり僕は席を外させてもらう」スッ

垣根「んだよ、何マジギレしてんだお前」

ステイル「そうじゃない。 大戦後の魔術サイドの傾向を考慮しても、
     やはり『明け色の陽射し』とこうして同席するのは気が乗らない」

レイヴィニア「賢明な判断だと思うよ」

ステイル「ふん。 ……テオドシアは」

テオドシア「んー、私はここでのんびり寛がさせてもらうマスかねえ」

ステイル「そう言うと思ったよ」

ルチア「わ、私もここで彼らのお話を拝聴させていただきます」

ステイル「……話が終わったら教えてくれ。 僕は隣の部屋へ移動する」
927 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:12:06.25 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「我が妹によろしくな。 あいつ、お前が突然ここへ
       やって来た事に少なからず喜びを感じているようだし」

垣根「え、何。 お前らそういう?」

ステイル「そんなんじゃない。 まったく……」スタスタ

レイヴィニア「では、改めて話を聞こうか。 垣根帝督とやら」

垣根「一から説明しねえと的確なアドバイスをもらえねえだろうから
   そうするけど、さっきも言ったが長くなる。 それでもいいか?」

レイヴィニア「我々もついさっき一仕事終えたばかりだ。 時間は有り余っている」

垣根「ああ、『暴徒』と一戦交えたんだっけ?」

マーク「どこでその情報を?」
928 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:12:49.24 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「ちっ、『清教派』のクソババァが情報を横流ししたな?」

テオドシア「でしょうね。 私達を含めても暴徒と『明け色』の
      接触を知っている魔術師は限りなく少ないようデスし」

垣根「まんまと逃がしちまったんだろ、暴徒の連中の一部を」

レイヴィニア「マークが事前に調べた情報と暴徒の規模に誤差があったんだよ」

マーク「え、私のせいですか!? どちらかというとあの時カンペキに油断してたボスが……」

レイヴィニア「私はお前を信頼して連中の素性を洗わせたんだぞ? なのにお前ときたら……」

マーク「信頼……ですかぁ? まぁ、私の諜報活動に落ち度があった事は認めますが……」

垣根「暴徒の連中の規模は小せえと聞いているんだがな」
929 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:13:33.31 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「まるでねずみ算式のように増殖し続けてるよ。 『宵闇』のヤツら、
       まだ魔術の領域に足を踏み入れて間もないひよっこを口八丁手八丁で
       誘い込んで勢力を増やしてる。 まぁ、ヤツららしいやり口だがな」

垣根「人員は使い捨てが当たり前の組織なんだっけか」

レイヴィニア「その通りだ。 事実、私が捕まえた数人の『宵闇』は
       自らの肉体を"起爆"させる事で情報漏洩を防いだ」

垣根「自殺じゃなくて自爆かよ、いい具合にトンでやがるな」

ルチア「…………」ゾクッ

垣根「早いとこ潰しとかねえと面倒になりそうだ」

レイヴィニア「なぜお前がそこまで暴徒殲滅に力を入れる?」

垣根「察しはついてるだろ?」
930 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:14:19.77 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「……お前が『天使同盟(アライアンス)』の一部、だからか」

垣根「ご名答」

マーク「やはり実在しましたか」

垣根「残念ながらな。 良い感じに話が繋がった、俺が『天使同盟』に
   加盟するまでの経緯とその後の話をスムーズに始められる」

レイヴィニア「詳細に話す必要はないぞ。 不明な点が見つかれば私が質問するし、
       お前の口から出てくるキーワードから事情を推測していくからな」

マーク「ボス。 このレベルの話をここで交わすのは何かとリスクが大きすぎるかと」

レイヴィニア「結界は?」

マーク「念のために展開しておりますが……」
931 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:15:05.64 ID:UqS8ba56o

テオドシア「うぇ? 全然感知出来なかったデスマス」キョロキョロ

ルチア「いつの間に……」

垣根「結界って? 盗聴防止的な?」

レイヴィニア「まぁそんなもんだ。 それに、お前がここで『天使同盟』の
       素性を我々に明かすという事は、ある程度公にしても構わない
       段階まで『天使同盟』の存在が他者に発覚しているからだろう?」

垣根「……まぁな」

レイヴィニア「そこの『必要悪の教会』の魔術師とシスターだけじゃない。
       恐らく学園都市にも存在を知る人間が何人かいるはずだ」

マーク「己が所属している組織の情報公開に対しての慎重さがあまり見受けられない
    点から考慮すると、存在が公になり魔術サイドから攻撃的なアプローチを
    仕掛けられても対処出来る程度の勢力が『天使同盟』には備わっている」
932 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:16:08.84 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「……と、『天使同盟』の情報提供が出来る理由についてはこんなところかな」

垣根「察しが良すぎて気持ち悪いよお前ら」

レイヴィニア「意外に雑だな、『天使同盟』」

垣根「俺の魔術に関する話とはあまり関係ないんだが、『天使同盟』の
   構成員の情報もついでにお前らへ提供しておこうか?」

ルチア「良いのですか? そこまで明かしてしまっても……」

垣根「お前にだって明かした情報だぞ? もはや『天使同盟』の
   機密防衛レベルは『聞かれたら答える』程度になってんだよ」

テオドシア「それ、あなたの独断デスしょ」

レイヴィニア「一応聞いておこうかな、少し興味もあるし」
933 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:17:12.36 ID:UqS8ba56o

垣根「ええっと。 まず俺と、学園都市の一方通行って能力者、こいつリーダー。
   で、風斬氷華とミーシャ=クロイツェフ、エイワスにフィアンマ」

マーク「………………………………」ポカン

レイヴィニア「はっはは、おいマーク。 こいつら面白いぞ、『天使同盟』とは良く言ったものだな」

マーク「どこに笑う要素があるんだろう……。 何名かヤバすぎる名前が出てきてますし」

レイヴィニア「一方通行と風斬氷華とかいうのは知らんが、他は愉快な面子だな。
       大天使や『神の右席』以上に、エイワスが眉唾ものなんだが」

垣根「だが事実だ」

マーク「エイワスというと……アレイスター=クロウリーに『法の書』の
    作成を指導した霊的存在……。 聖守護天使の座に君臨する者」
934 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:18:35.83 ID:UqS8ba56o

テオドシア「……これ、私達とんでもない話を聞いてる事になるマスよね?」

ルチア「で、でもここまで来たら引き下がれません」

レイヴィニア「しかし解せんな。 お前達の組織に属しているエイワスが
       "本物"のエイワスなら、十字教などとっくに終焉を迎えてるぞ」

垣根「そうなのか? 何か魔術サイドにとってヤバいヤツだってのは知ってんだけどよ」

レイヴィニア「恐らくそのエイワスは学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリーが
       手にした技術を駆使して"でっち上げた"仮の聖守護天使だと私は考える」

垣根「学園都市の技術で作り上げた贋作ってか? そういや風斬とエイワスって
   色々な共通点があるとか聞いた事がある気がするな。 それが関係してんのか」
935 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:19:22.03 ID:UqS8ba56o

レイヴィニア「アレイスターが抱えている『プラン』の事はお前も知っているだろう?
       そのエイワスが『プラン』成就の鍵にでもなっているのかもしれんな。
       ……んん、予想以上に話が面白くなってきた。 ようこそ、垣根帝督。
       ここは『明け色の陽射し』の拠点の一つで、私がボスだ、よろしくな」

垣根「今更!?」

マーク「(今のボスは珍しく機嫌が良いみたいですので、適当に乗っかってあげてください)」ヒソヒソ

レイヴィニア「その余計な言葉がなければ機嫌も良くなってたかもなぁマーク?」

マーク「失礼しました…………」

レイヴィニア「しかしその鍵をアレイスターが野放しにしておくとも思えんな。
       私は、アレイスターは現在も自由に動く事が出来ない状況に
       置かれていると推測しているんだが、その辺はどうなっている?」
936 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:20:17.82 ID:UqS8ba56o

垣根「待った、アレイスターの近況報告をするなら話は次の段階に移行するぜ。
   『天使同盟』の構成員についての話は以上でいいんだな?」

レイヴィニア「構わん、ミーシャ=クロイツェフとフィアンマについては
       大体予想がつく。 経緯は重要ではない、そいつらが現在
       『天使同盟』として存在しているという真実があればな」

垣根「他の連中については?」

レイヴィニア「気が向いたら尋ねてやるよ」

垣根「そうかよ。 じゃあ次は俺の話だな」

ルチア「や、やはり話についていけないのですが、シスター・オルソラやアンジェレネは
    よく彼らと平気で関わっていられますね。 目眩がしてきました……」

テオドシア(『天使同盟』という逸話に基づいた新魔術とか開発出来ないかなぁ……)
937 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:26:51.21 ID:UqS8ba56o

今回はここまでです。

前半はドタバタした感じで進みましたが、後半から徐々に真剣味を帯びたような
雰囲気にしてみました。レイヴィニアで延々ギャグパートをやるのはちょっと抵抗が
ありますね。もう少し彼女のことを知らなければならないようです。

次回はようやく話が本題に入ります。『未元物質』について魔術サイドの
レイヴィニア達が考察する感じです。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!
938 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/19(木) 12:27:24.32 ID:UqS8ba56o



                          【次回予告】



「"お前の『未元物質』に、常識は通用しない"」
魔術結社『明け色の陽射し』のボス――――――レイヴィニア=バードウェイ




「………………まさか他人からそれを言われる日が来るとはな」
『天使同盟(アライアンス)』の構成員・学園都市第二位の超能力者(レベル5)『未元物質(ダークマター)』――――――垣根帝督




「……恐らく『未元物質』というこの世に存在しない物質と魔力が
 何らかの作用を引き起こし、その『槍』を生み出したのでしょう」
魔術結社『明け色の陽射し』のボスの側近――――――マーク=スペース



939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 12:47:11.39 ID:7ijgs84IO
おつおつ
楽しくなってきた
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 14:20:09.22 ID:ZehMEeWlo
おつ
やっと蛇足の本筋に戻ってきたな
楽しみ
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/04/19(木) 14:57:08.83 ID:JK7Esi3n0
天使同盟の逸話に基づいた魔術……いただきますをするとガラスが割れるとかか
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/04/19(木) 16:16:15.58 ID:v1K8xg8wo

>>941
くしゃみするとコンクリが砕けるとかな
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/19(木) 16:26:27.82 ID:6rDMAZ1v0
女を次々と手篭めに・・・いやなんでもない
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/19(木) 17:06:33.81 ID:uF6S29HK0
>>1乙!!
そういや垣根ロンギヌスみたいの作ってたな
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/04/19(木) 18:31:45.61 ID:0ZRD1Rvu0
>>944
あのシーンはホントに泣いた
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/04/19(木) 18:42:26.94 ID:7ihKlduAO
美味しいクレープが作れる魔術かぁ……
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 18:54:28.10 ID:tz5Kx4cto
炊飯器であらゆる料理が作れる……のは別系統か
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 19:35:47.65 ID:VmjQN0ub0
フラグを立てる魔術ですね
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 19:39:12.25 ID:Ckdn9Rr70

そういえば、この垣根は別に一方さんみたいに何かを宿していないみたいだね。
一応このスレでもプランのスペアプラン扱いされている設定が残っていれば可能性があるけど・・・・
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/04/19(木) 19:41:49.95 ID:rdS03Fru0
>テオドシア(『天使同盟』という逸話に基づいた新魔術とか開発出来ないかなぁ……)

充分に開発可能だと思うよ
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 20:32:52.10 ID:XqOU7C4Ho
乙ー
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/19(木) 20:50:53.18 ID:XfK/lGxL0
>>1
テオドシアすげーマイペースww
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 23:26:05.54 ID:7BSIRnSio
失言をする度にその場の建造物がグラウンドゼロ化する魔術とかな
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 00:15:26.02 ID:n8lROQLDO
ランダムで恋愛フラグor死亡フラグが立つ魔術じゃないかな

>>1

さて、そろそろ減速して次スレと誘導を待とうか
955 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:28:08.00 ID:k5/+0LA+o

次スレを立てました。↓のURLよりお入りください。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1334985761/

いつもご覧になられている皆様、ありがとうございます。こんにちわ。
更新を開始したいと思います。

今回から本格的に垣根帝督とレイヴィニアが議論を交わしていきます。
レイヴィニアは彼の『未元物質』に着目し始めて……。

それでは、よろしくお願いします!
956 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:28:59.18 ID:k5/+0LA+o


――――――――――――――――――――――


垣根「一〇月頃だったかな。 俺は学園都市で一方通行に殺された」

ルチア「え!?」

レイヴィニア「ふむ」

ルチア「ふむ、じゃねえ!」

垣根「お前には話してなかったっけ?」

ルチア「初耳ですが……」

テオドシア「あなたが殺されたと聞いても、なぜかあまりリアリティが無いデスね」
957 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:29:44.87 ID:k5/+0LA+o

垣根「うるせえ。 ま、正確には脳だけ暗部に回収されて他は挽き肉状態。 その脳も
   アレイスターのオモチャとして利用されるためだけに保存されていた、らしい」

ルチア「な、何の冗談ですかそれは」

垣根「自分の事なのに他人から聞いた話だから笑えるよな」

ルチア「ちっとも笑えません!」

レイヴィニア「それで、"死んで"からどうなった?」

垣根「エイワスの野郎がアレイスターを出し抜いて俺の脳を回収、肉体を復元。
   そして俺は晴れて娑婆の空気を吸える体を取り戻したって訳だ」

マーク「死者蘇生……ですか。 この世の理を冒涜するような方法ですね」

レイヴィニア「学園都市的には脳さえあれば生者扱いなんじゃないか?
       生を生たらしめる魂は脳にあるという説もあるしなぁ」
958 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:30:37.42 ID:k5/+0LA+o

垣根「そこで俺は不本意ながらもエイワスに借りを作っちまった訳なんだが……、
   俺が『天使同盟』に加盟して、ミーシャの存在を助力する事でその借りを
   チャラにしてやるとエイワスは言ってきやがったんだ。 俺はそれに乗った」

レイヴィニア「何故だ」

垣根「『天使同盟』を発足したのが一方通行だと聞いたからだ。 当時の俺は
   天使だの何だのはどうでもよかったんだ、一方通行に復讐する事さえ
   出来ればあとは知ったこっちゃなかった。 ……クソ忌々しいが、
   今となってはその怒りも風化寸前にまで至っちまってるけどな」

テオドシア「天使と、魔術サイドに触れていく内に、デスか」

垣根「そうかも知れねえ。 俺が『天使同盟』に加盟してすぐに、学園都市に
   ステイルが来たんだ。 何でもイギリス清教のトップにミーシャを捕らえる
   よう命じられたらしくてな。 思えば、俺が本格的に魔術への興味を示す
   ようになったのもステイルが原因かもな。 それ以前にも話は聞いてたんだが」
959 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:31:47.12 ID:k5/+0LA+o

マーク「それで能力者の身でありながら魔術という禁忌に触れようと思い至ったのですか」

垣根「規格の違いでかかる負荷だろ? 実際に使ってみるまでは半信半疑だったがな。
   ロシアでワシリーサっていう魔術師相手に魔術の使用訓練を繰り返して……。
   魔術を会得してどうすんのかとか、その頃は具体的に決めてなかったっけ」

レイヴィニア「ならば、今は魔術を利用する理由が明確になっているのか?」

垣根「居場所を守るためかな。 元々どこにも居場所なんてなかった俺に
   一方通行の野郎が与えてきやがった『天使同盟』を守るために、
   俺は魔術を使ってるんだと思うぜ。 別に能力だけでもいいんだがな」

レイヴィニア「…………………………」

マーク「続きを」
960 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:32:53.74 ID:k5/+0LA+o

垣根「そうだな、色々あってアレイスターと衝突しちまった『天使同盟』は
   学園都市でアレイスターと戦闘になったんだ。 その戦いの中で俺は
   居場所を守るために魔術の中でもとびきり禁忌とされてるそれに触れた」

レイヴィニア「…………『原典』か」

垣根「それも『禁書目録』っていう超大物らしい『原典』だ」

マーク「『禁書目録』に触れた……? 能力者はおろか、魔術師ですら
    閲覧する事も叶わぬ魔道書図書館に一体どうやって…………?」

垣根「言ってもいいけど、これ下手したら俺、然るべき機関で裁かれるんじゃね?」

レイヴィニア「ミーシャ=クロイツェフやフィアンマを加えた組織の構成員が今更何を恐れてるんだ?」

垣根「それもそうか。 多分お前らも知ってると思うけど、……何だったっけか。
   『禁書目録』にアクセスできる霊装をエイワスからもらったんだけど」
961 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:34:15.29 ID:k5/+0LA+o

マーク「第三次世界大戦で右方のフィアンマが使用していたという、
    『自動書記(ヨハネのペン)』の遠隔制御霊装……ですか」

レイヴィニア「『王室派』と『清教派』がコソコソと隠し持っていたとかいう代物だろ。
       戦争が終わってその話を聞くまでは私も単なるくだらん噂話だと思ってたよ」

テオドシア「その霊装、エイワスはどうやって入手したんデスかねえ?」

垣根「さぁな、『エイワスだから入手できた』で通せちまう怪物だしなあの野郎は」

レイヴィニア「バッキンガム宮殿で保管されていた遠隔制御霊装は『幻想殺し』が
       破壊している。 となると、エイワスが『清教派』のババァをどうにか
       して出し抜いてちょろまかしてきたんだろう。 不自然な点はないさ」

ルチア「最大主教を出し抜くという時点で不自然さが極まっているような……」

レイヴィニア「人智を越えた領域の存在が行うやり取りなんて、常人からすれば
       どれもこれも不自然で怪奇的な現象としか捉えられないんだよ」
962 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:35:00.75 ID:k5/+0LA+o

マーク「しかしもう一点、明らかに不自然な点がありますね」

垣根「あ?」

レイヴィニア「……お前、『禁書目録』の海に飛び込んだんだろ?」

垣根「それのおかげでアレイスターのクソったれに一泡吹かせることが出来たしな」

レイヴィニア「能力者という立場で魔術を使い掛かる負荷+『原典』などという
       死ぬほど胸くそ悪い代物を閲覧した事による純粋な毒の汚染。
       ……その二つが重なって、何故お前は今もこうして生きている?」

ルチア「……言われてみれば……」

垣根「いやいや、俺だって無事じゃすまなかったんだぞ? ようやく話が
   本題に乗るが、俺は『禁書目録』の酷使によって脳に重大な負荷が
   掛かって、魔術はおろか能力まで使えなくなっちまったんだからな」
963 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:36:22.20 ID:k5/+0LA+o

マーク「『原典』の汚染による影響で魔術が使用不可になった?」

レイヴィニア「それは確かなのか?」

垣根「確かじゃねえよ。 確かな原因を知るために俺はこうしてお前らを訪ねてんだから」

レイヴィニア「それでも、『原典』による汚染で魔術が使えなく
       なったと推測出来る点はいくつかあるんだろう?」

垣根「いいや、現時点ではそうなんだろうなと思ってるだけだ」

テオドシア「なんたるアバウト」

垣根「放っとけ」

マーク「あなたの能力が使用出来なくなった理由も汚染が原因と考えているのですか?」
964 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:37:04.65 ID:k5/+0LA+o

垣根「あぁ。 能力は脳の演算によって左右されるから、『禁書目録』で
   脳に負担が掛かった事が原因だろうとほぼ断定してる」

レイヴィニア「お前の能力は一体どのようなものなんだ」

テオドシア「おお、そういえば私も詳しく聞いていませんでしたね」

ルチア「確か……この世の物理法則に影響を与えるような能力でしたね」

垣根「お? 覚えてくれてんの?」

ルチア「いえ、まぁ……その」プイッ

垣根「俺の『未元物質(ダークマター)』はこの世に存在しねえ素粒子の生成、操作が出来る能力だ。
   世界には存在しねえ物質だからこの世の物理法則には従わねえし、この世界の物質と俺の
   『未元物質』が相互作用した場合、独自の物理法則で動き出す。 法則の歪曲はある程度
   俺が定める事が出来るが、自由自在に法則を作り替えるなんて都合の良いマネは出来ねえんだ」
965 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:37:44.90 ID:k5/+0LA+o

テオドシア「わけわかんね」

レイヴィニア「……具体例は?」

垣根「なんだ? 俺の能力に興味があんのかよ?」

レイヴィニア「いいから黙って答えろ」

垣根「黙って答えろって矛盾してんだろこのクソガキが……。 ……あー、そうだな。
   普段から大気中に吹いてる風を『未元物質』に通して烈風に変換したり、
   そこら中に散らばってる素粒子に引火作用を付与して大規模な爆発を起こしたり、
   太陽光を『未元物質』に通して皮膚細胞を破壊する殺人光線に変化させたりとか」

ルチア「何という恐ろしい力……、やはりあなたは危険極まりない男です」

垣根「だから学園都市は『管理』したがってんだよ」
966 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:38:35.09 ID:k5/+0LA+o

テオドシア「ロシアではその『未元物質』が魔力の精製を阻害しているんじゃ
      ないかという結論で保留したんデスよね。 確定はしてませんけど」

マーク「魔力そのものが精製出来ないという訳ですか。 あまり聞かないケースですね」

垣根「いくつか例があるらしいが、俺の場合はそのどれにも当てはまらなかったな」

レイヴィニア「……、………………………………。 …………」

垣根「大体こんなところだな、俺が話す事は」

テオドシア「いやぁ、波乱万丈な人生を送ってきてるマスねえあなた」

ルチア「こんな男を野放しにしておけません、修道女として」

垣根「修道女がどうとかは関係なくね?」
967 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:39:30.01 ID:k5/+0LA+o

レイヴィニア「いや、このシスターの言うことにも一理あるぞ」

ルチア「え?」

レイヴィニア「お前、その『未元物質』とかいう"フィルター"に魔力を通した事はあるか?」

垣根「魔力……? どうだったかな」

レイヴィニア「思い出せ」

垣根「…………ロシアでワシリーサと訓練してる時にそんな感じの"実験"を
   したような気もするが、正直最後の訓練の事はほとんど覚えてねえんだよな。
   だが『未元物質』と魔力の応用で『黒騎士』を看破したような覚えがある」

レイヴィニア「曖昧な情報は求めておらん」

垣根「ったく、うるせえな……。 あぁ、そうだ。 アレイスターと殺り合った日、
   『第一九学区事件』っつったらわかるよな? あれは俺達が起こしたもんなんだが、
   あの時に『禁書目録』の知識と『未元物質』を複合させた。 『星の欠片』にある
   儀式場に干渉して切り離し、ミーシャの消滅を回避するための手段としてな」

マーク「『星の欠片』?」

垣根「『ベツレヘムの星』だったか? あれにミーシャを召喚するための儀式場が
   あるって話でよ、それがなんやかんやで消えちまいそうになってたから俺が
   『未元物質』と魔力を"練って"作り上げた『槍』でそれを阻止したんだよ」
968 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:40:38.72 ID:k5/+0LA+o

テオドシア「…………『槍』、デスか?」

ルチア「女子寮で言っていた、一方通行が投擲した槍のことですか」

垣根「そうそう、あれだけはハッキリ覚えてる。 見事な出来栄えだったな」

マーク「…………? それは『未元物質』の能力によるものですよね?」

垣根「それもあるが、ほとんどは『禁書目録』の知識に頼って作ったもんだぞ。
   何かよくわかんねえ神話に基づいた槍に関する魔術がたくさん載ってた
   からよ、その内の一つからパクったんだ。 あれは紛れも無く魔術だろ」

テオドシア「いやでも、『未元物質』の作用も働いているんデスよね?」

垣根「『未元物質』無しじゃ出来なかったからな。 だが魔術無しでも無理だった」

マーク「能力でもあるし、魔術でもある、と。 ……? ?」
969 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:41:33.95 ID:k5/+0LA+o

垣根「何か変なとこでもあるか?」

ルチア「言い換えれば、その『槍』は魔術でもないし能力でもないって事ですよね?」

垣根「?」

テオドシア「能力なのか魔術なのか、『槍』の製作者であるあなたにハッキリ断言してほしいとこデスけど」

垣根「"どっちもだろ"。 どちらかの法則が欠けてたら作れなかったんだぞ。
   能力でもあるし魔術でもある、能力でもないし魔術でもないのがあの『槍』だ」

レイヴィニア「…………」

マーク「…………」

垣根「?」

マーク「その結論は認められませんよ、残念ですが」
970 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:42:26.66 ID:k5/+0LA+o

垣根「は?」

テオドシア「この世界が魔術と科学に二分されている事はご存知デスよね?」

垣根「ナメてんのかお前は」

ルチア「その二つの技術を一つにまとめた力とは、一体何なのですか?」

垣根「……? 何かお前ら、難しく考えすぎてねえか? 俺は魔術と科学を混合しただけだぞ」

マーク「それはあり得ないんですよ、この世の法則に従う力では」

テオドシア「例えばステイルのルーンデスが、彼は魔術的アイテムであるルーンの札に
      科学技術で製造されたカラープリンタの技術を重ねてルーン魔術の強化に
      成功しているマス。 これも一つの科学と魔術の応用と言えるデスしょう」

垣根「俺の『槍』もそんな感じだろ」
971 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:43:52.18 ID:k5/+0LA+o

テオドシア「デスがその応用によって生まれた物はあくまでルーンの札。 ルーンは
      元々魔術サイドの技術の産物であり、そこに科学技術のカラープリンタを
      取り込んでも生まれてくるのは強化されたルーンであり、その効果が劇的に
      変化、いいえ進化している訳ではないのマス。 この違い、わかるマスか?」

垣根「結果的に進化してるならそれは新たな魔術なんじゃねえの?」

ルチア「それは少し違います。 ルーンはルーンで『確定』しているので、
    ルーンから全く別の何かが生まれた訳ではありません。 科学技術を
    用いてルーンが『杖』に変貌すればそれは世紀的発明となりますが、
    そんな事は現在の世界の法則では起こり得ないのです」

マーク「ルーンの例え話に乗らせていただきますが、ルーンを使って札から
    杖を召喚する事は可能です。 例えその杖を喚ぶ札をカラープリンタ
    の技術による応用で作ったとしてもそれはあくまで魔術ですが、
    あなたの『槍』はまるで別物。 能力と魔術の複合で作成した『槍』が
    別位相の出入り口を担う儀式場に干渉するなどという魔術は存在しない」
972 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:45:17.84 ID:k5/+0LA+o

垣根「現に俺はその存在しねえ『槍』でミーシャ救出の助力をしたんだが?
   『禁書目録』に載ってたんだぞ? 槍についての知識は全てな」

レイヴィニア「……『禁書目録』に別位相への門に干渉できる槍の製造方法が記載されていたか?
       お前が死に物狂いで閲覧した槍に関する知識はあくまで槍に基づく魔術の詳細であり、
       そこにお前の『未元物質』が介入する余地などない。 その"未知なる元素"がな」

垣根「俺の能力とカラープリンタに何の違いがあるんだよ?」

ルチア「……カラープリンタはあくまで"補助"ですが、あなたの『槍』は"融合"です」

レイヴィニア「『1+1』で例えようか。 『1(ルーン)』+『1(カラープリンタ)』は
       『2(強化ルーン)』。 魔術や霊装にどれだけ科学技術の補助を追加
       しようとも、ルーンという枠組みから抜けだせはしない。 お前の場合、
       『1(魔力、既存法則)』+『☆○*$(未元物質)』イコール『?(槍)』。 
       未だ前例の無い訳のわからん『何か』をお前はその日に生み出したんだ」

垣根「……俺の能力もカラープリンタも、突き詰めれば同じ科学じゃねえか」
973 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:46:04.28 ID:k5/+0LA+o

レイヴィニア「お前の『未元物質』は既存の法則を無視した働きを持つんだろう?
       何らかの誤作動が起きない限りカラープリンタが物理法則を無視する
       ことはない。 言ってしまえば、『未元物質』は科学のカテゴリには
       当てはまらないんだよ。 その未知から生み出された『槍』もまた未知」

垣根「……」

レイヴィニア「『科学』ではなく、『未元物質』という枠組みで考えろ」

垣根「……何が言いてえんだ」


レイヴィニア「"お前の『未元物質』に、常識は通用しない"」


垣根「………………まさか他人からそれを言われる日が来るとはな」

レイヴィニア「自覚はあるんだろう?」
974 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:47:10.73 ID:k5/+0LA+o

垣根「『未元物質』は法則そのものを完全にねじ曲げられる訳じゃねえぞ」

レイヴィニア「しかし魔術という法則を歪めてしまっている」

マーク「……恐らく『未元物質』というこの世に存在しない物質と魔力が
    何らかの作用を引き起こし、その『槍』を生み出したのでしょう」

レイヴィニア「『原典』の知識も混じってるという点もキモだな。 『原典』は
       それ単体がまるで意志を持っているかのような性能を有している。
       自律型の魔術装置とも言えるな。 『原典』はこの地球という惑星
       の地脈や龍脈から漏れる力をかき集め、書物の中にある知識を破壊
       されないように防衛と迎撃を促している。 ……以前、聖人サマの
       ババァと『原典が惑星から脱出したらどうなるか』という議論を
       少しだけ交わした事があるが、まさかここでその伏線が回収されるとはな」

垣根「地球から脱出した『原典』はどうなるんだ?」
975 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:48:46.81 ID:k5/+0LA+o

レイヴィニア「『分からない』。 『原典』の力は地脈と龍脈ありきである事は
       確かだが、それらを失った場合どうなるかは検証例が無いんだよ。
       私の予測では『原典』が地球から脱する事をそもそも"許さない"
       と思うのだが、さて、『原典』をミックスしたお前の『槍』は今、
       どういう状態になっているんだろうな」

垣根「それと俺の『槍』に何の繋がりがあんだよ」

レイヴィニア「『原典』もまた、魔術サイドの未知なんだよ。 判明した性質も多いが、
       やはりまだまだ未知なる疑問点が残っている。 そんな未知の『原典』の
       知識と、未知の物質と、既存法則の魔術を複合させて出来た『槍』は
       もはや科学でも魔術でもない。 科学と魔術が交差してしまってるんだ」

マーク「しかも膨大な数の防衛機構で固められた『禁書目録』の『原典』ですからね。
    個人的な好奇心で窺うのですが、その日あなたは『禁書目録』からどのような
    情報を閲覧したのですか? 槍にまつわる魔術といっても、メジャーどころの
    神話などでは未知を引き出せないはずです。 差し支えなければ聞かせてほしい」
976 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:49:49.21 ID:k5/+0LA+o

レイヴィニア「差し支えあるだろ。 『禁書目録』の情報を手にしたとなると
       『禁書目録』を管理しているイギリス清教辺りがうるさいぞ」

マーク「(そんなの気にする性格じゃねえだろうに……)」

垣根「悪いが、その時見た情報なんざもう覚えてねえよ。 あの時の俺は瀕死だったからな」

ルチア「……」ギュッ

レイヴィニア「魔術も科学も取り入れたいと奮闘しているお前にこういう結論を
       下すのも気が引けるが、お前のためにハッキリ断言してやる」

垣根「……」

レイヴィニア「お前は科学サイドにも魔術サイドにも立っていない。
       かといって一般人でもあるはずがない、未知だよお前は」
977 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:50:59.92 ID:k5/+0LA+o

垣根「……そんなご大層な代物かよ、『未元物質』が」

レイヴィニア「誇ってもいいくらいじゃないか? 実際、学園都市の中でもかなり
       レベルの高い能力者だろお前。 こうなると一方通行にも興味が湧く」

マーク「ダメですよ、ボス」

レイヴィニア「ここまで来てそれはないだろ?」

マーク「ここを凌いで魔術サイドに留まればあとは安泰かと」

レイヴィニア「もはやそういう安泰を求めている場合ではないかもしれんぞ。
       『第一九学区事件』で時代の変革が訪れたとほざく暴徒の連中の
       言い分も今なら理解できんでもない。 やり方は肯定できないがな」

マーク「やれやれ……」
978 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:51:28.51 ID:k5/+0LA+o

垣根「……」

ルチア「……垣根帝督?」

垣根「……、あ? 何だよ」

ルチア「大丈夫ですか?」

垣根「どういう意味だ」

ルチア「いえ、何だか意気消沈している様子なので……」

垣根「……そんな事ねえよ、心配すんな」

ルチア「し、心配しているわけでは……」
979 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:52:04.81 ID:k5/+0LA+o

テオドシア「それで?」

レイヴィニア「ん?」

テオドシア「結局、垣根帝督はどうしたら魔力を取り戻せるのマスか?」

レイヴィニア「………………」

垣根「……………………」

レイヴィニア「我々にはその『未元物質』というものが何なのか理解できんからな。
       しかし『未元物質』がこいつの魔力精製に何らかの影響を及ぼしている
       事はもはや明白だろう。 あとは能力者であるこいつ次第ということだ」

テオドシア「『未元物質』を取り戻さない事には何も始まらない、と」
980 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:52:58.60 ID:k5/+0LA+o

レイヴィニア「そういう事だ。 いくら私でもこう未知が重なるとなぁ」

垣根「結局そこに落ち着く訳かよ」

レイヴィニア「お前が生み出した未知の正体が判明しただけでも儲け物だろう」

垣根「『槍』のことか? 何がどう判明したってんだ」

レイヴィニア「『槍』は魔術でも能力でもない『何か』である事は間違いない。
       その何かは天使が住む別位相にも影響を及ぼす力を持っている」

垣根「『何か』って何だよ」

レイヴィニア「そこまで判明したらそれはもう立派な第三勢力だろう」

垣根「第三勢力……」
981 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:53:38.17 ID:k5/+0LA+o

レイヴィニア「ただし、その領域に存在出来るのはお前一人だけどな」

垣根「……」

レイヴィニア「これだけ喋ってると腹が空いてくるな。 おいマーク」

マーク「かしこまりました、軽食でも用意してきますね」スッ

レイヴィニア「他の者も少し休憩しておいたらどうだ?」

テオドシア「そうさせていただきマスかねえ、少し腰が痛くなってきたデスし……」ズキズキ

ルチア「……」

垣根「……魔術への冒涜って、そういう事なのか?」

ルチア「え……?」

垣根「何でもねえよ」
982 : ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 14:59:50.97 ID:k5/+0LA+o

今回はここまでです。

新約3巻にて、スマホで魔術を発動する描写がありましたが、『槍』はアレに近いです。
ただ科学そのものではなく、やはり『未元物質』が強く影響しているという話ですので、
鋭い方はなぜ垣根帝督が魔力を精製出来ないのか、わかっちゃうかもしれません。
少しややこしいお話になりましたが、ご了承ください。

さて次回は一旦休憩に入ります。心理定規が垣根帝督の事を少し違う視点で考えたり、
パトリシアとステイルがなんかアレな感じなってたりと。

次回更新は三日以内。

それでは、次スレもよろしくお願いします!
983 :次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI [saga]:2012/04/21(土) 15:00:16.63 ID:k5/+0LA+o



                          【次回予告】



「ステイルさんも私と同じ事を、同じ時期に願ってたんだなって思うと……」
魔術結社『明け色の陽射し』のボスの妹――――――パトリシア=バードウェイ




「思うと?」
イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の魔術師――――――ステイル=マグヌス




「運命を感じる〜!!」
『クラッカー』の構成員・『心理定規(メジャーハート)』の能力者――――――ドレスの少女



984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) :2012/04/21(土) 15:00:21.22 ID:8m5Z/gt90
乙!!
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/04/21(土) 15:14:24.46 ID:A2i0iP7Yo
うーん面白い
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/21(土) 15:48:47.91 ID:xWWFCYke0
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 15:52:45.03 ID:japQgKn4o
こんだけ槍の話をするってことはつまりそういうことなんだろうなあ
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 16:02:38.83 ID:IRyjpcvdo
おつ
そういえば結局、未元物質はAIM拡散力場から取り出してるのか、
それともガチの天界から取り出してるのかはよくわからなかったな
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 16:14:41.78 ID:MhybZIm70
そして、この垣根は一方さんみたいに何かを宿しているかどうかもね。
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/21(土) 17:02:14.29 ID:f2eNpOVco
要は宇宙空間にある槍の存在がていとくんの魔術を阻害してるのか?
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 20:13:25.68 ID:da3CqtvFo
ほう
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/04/21(土) 21:20:54.53 ID:E3K67k4h0
こwwwwこwwwwろwwwwんwwww
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2012/04/21(土) 21:23:44.45 ID:o4xgu8kpo

別の部屋は平和そうですねwwww
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 22:32:23.80 ID:BYBq7JVH0
ぶっちゃけ新約ほぼ読んでない俺にとってすでにこっちのほうが公式になってる
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/21(土) 23:10:52.17 ID:VcOSlfYe0
ちくしょうステイルもげろ
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/04/21(土) 23:25:22.34 ID:GcdeY7LQ0
魔術を精製するんじゃない 未現物質(改)を精製するんだ!!ってことか?
つまりは、垣根帝督に常識は通用しないってこった
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/04/21(土) 23:26:36.93 ID:1n3KBBVBo
>>994
おまおれ
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/04/21(土) 23:33:55.20 ID:Gl6EhZOK0
唯一、一方通行のスペアプランになれたからな
一方通行の能力ですら副産物ならスペアとなれた未元物質はどうなんだろう…

>>1の解釈にすっごい期待する!
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/04/22(日) 00:28:13.49 ID:c0aU5zQt0
>>994
あれ俺レスしたっけ?
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 00:50:18.70 ID:gHQNr3gDO
>>1000なら垣根はこころんルート直行
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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  | l| | || || l!           | l| | || || l!         たらい回しの最果ての地へようこそ!
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  ゝ___ノ がーん! .   ゝ___ノ がーん! 
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客に告白されたけどセクロスフラグが立ったかもしれない @ 2012/04/21(土) 23:08:56.70 ID:5HUp8OHAO
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VIPPERでフットサルしようずwwwww【避難所】3ゴール目 @ 2012/04/21(土) 23:03:27.49 ID:bkY0zxdQ0
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