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魔王「覚悟するがよい、魔王よ」 その3 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/15(日) 04:13:28.73 ID:6yhW2miI0
その1 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1321461616#footer

その2 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1326827615#footer

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真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
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愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
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ハルヒ「最近わたしのss見かけなくなったわね」 @ 2024/05/07(火) 15:04:17.64 ID:FJQjQ6ct0
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孤独のエレナ Season3 @ 2024/05/06(月) 23:06:58.73 ID:mOA71iC60
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雑談はヒーローごっこじゃない @ 2024/05/06(月) 20:39:20.98 ID:e5NXmnk+0
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朝顔 @ 2024/05/06(月) 00:25:05.84 ID:AB/bv7Jv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714922705/

オゾン層依存症って3回 @ 2024/05/05(日) 18:17:43.14 ID:JwHCDSU70
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2 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/15(日) 04:13:57.01 ID:6yhW2miI0
キャラ紹介


魔王(勇者) 歳:不明(数百年は生きたらしい)

本物の勇者を殺害し、勇者となり替わって4人パーティを組み、打倒・魔王の旅をしている元・魔王様。

大変な我儘者で、自分勝手が過ぎるというとんでもなく子どもじみた性格。
さらに冷血、非情、クズ、阿呆、残酷とおまけがついている。人や魔物を殺す事に躊躇わない所を見ると、決断が早い。
好きな物は自分。暗所と孤独が大の苦手。

見た目年齢だけなら、20代前半。どことなく、顔に幼さが残っている。
長年、勇者たち人間と戦ってきただけあり、体は逞しい(戦士には及んではいない様)。
ちなみに作中で触れなかったが、結構身長が低い。

魔王ってバレちゃったみたいです



戦士  歳:26

勇者と共に、魔王を討つ為にパーティへ入ったムキムキ男戦士(通称:肉ダルマ)

人柄も良く、とても大らか。誰に対してもすぐに心を開いてしまうお人好しでもある。
元々リーダー気質だったのだが、魔王を傍で助けたいがため、パーティ内では参謀的なポジションについている。
顔に似合わず、特技は料理や洗濯、掃除といったとても家庭的な面を持っている。
好きな物は勇者殿、強さ。嫌いな物は難しい事。

2m程あるその巨体に、逞しい程の筋肉がガッツリとついている。顔は強面で、
全盛期は一睨みで魔物が逃げていくほどだったという。
赤い鎧に兜は戦士の目印。

3 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/15(日) 04:14:36.07 ID:6yhW2miI0
盗賊 歳:22

勇者と共に、魔王を討つ為にパーティへ入った捻くれ陰男盗賊

いじられキャラ代表選手。常に考える事はネガティブな方向で、人と接する事をとても苦手としている。
本人は親しくなろうと近づくも、思いもしない毒舌トークと不気味な笑いで相手を
自動的に牽制状態へさせてしまうのが彼の悩み。割と熱くなりやすく、クールを装いきれていない。
好きな物は僧侶ちゃん、酒、お宝、妹。嫌いな物は勇者(魔王)、戦士、馴れ馴れしい人間。

女性と間違うほどの身体の華奢さが、テクニカルで素早い動きを生み出している。
肌が雪の様に白く、手も繊細な為、後ろ姿だけならほぼ女性である。
目付きがとても悪く、完全に悪人顔。笑うと顔が引きつります。



僧侶 歳:23

勇者と共に、魔王を討つ為にパーティへ入った守銭奴貧乳女僧侶

パーティの紅一点。神に仕える者らしく、人に対して優しくて献身的な頑張り屋。頑張り過ぎて空回りする事も多々。
日ごろからお金に関してはパーティ一うるさく、我流・節約秘術を駆使してお財布の中身を減らさないように四苦八苦。
神や自分、仲間をバカにされる事を異常なまでに嫌い、途端に無謀な行動に出る事がある。
好きな物は神様、色んな景色、お金。嫌いな物は無駄に高い品物、親、故郷

盗賊が「べっぴん」と評価したように、顔は大変整っていて、男たちから評判が良い。
身長はパーティ中一番低く、小柄。下がスカート式の法衣を装備している。
作中でも言われた通り、胸はまるで壁の様。推定カップはA



魔剣 歳:不明

勇者(魔王)に恋する禍々しい力を持つ剣

女の様な口調で語りかけてくるが、性別は不明。一人称は「僕」の僕っこちゃん。
時折、余計な事を喋って魔王から破壊されかける事が多々ある。
刃の部分には閉じた口の様なものが部分的に存在し、敵を切り裂く時に口が解放される。
現時点では魔剣について詳しく魔王も、仲間たちもわかっていない。

4 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/15(日) 04:19:21.95 ID:6yhW2miI0
側近(死亡) 歳:118

ある日勇者になると城を飛び出していった魔王様も取り戻そうとしている健気な死霊使いちゃん

代々魔王の傍で世話をしてきた家系の女魔物。彼女は丁度8代目にあたる。
魔王を誰よりも尊敬し、慕っているにも関わらず、魔王からの扱いは大変ぞんざい。
彼女は人や魔物の死骸を蘇らせ、従わせる特技を持っており、それを駆使して帰ってこない魔王に対し、
過去に魔王へ挑んできた者を刺客として送りつけてきている。
好きな物は魔王様、お酒、ぬいぐるみ。嫌いな物は特にありません。

魔術師系の魔物という事もあり、容姿は人間には近い。
少女の様な顔立ちに頭から2本角が生えている姿が、彼女が魔物だという事を周りに認識させている。
胸はほどほど存在している様。推定カップはB〜C



武闘家 歳:10

勇者(魔王)を狙う謎の拳法家ロリ幼女。アチョ〜!

己の力を試す為にと現れるたびに魔王の命を狙ってくるが、大体返り討ちにあっている。
強がった態度を見せるが、やはり年相応の子どもなのか、状況によって借りてきた猫の如く大人しくなる。
僧侶に抱きつく事を好むらしく。魔王パーティの中では彼女に一番懐いているよう。
盗賊に対してはまるで虫でも見る様な態度。
好きな物は甘い物、僧侶姉。嫌いな物は魔王、盗賊、弱い奴。

ぶかぶかの拳法着を装備したツインテールの少女。
ちびっこい。見た目からして、THE・ロリである。
胸について特に記述する事はない。



女勇者 歳:17

魔王打倒を夢見て魔王と共に旅する元気な本物勇者ちゃん

由緒正しく勇者の血を引く勇者の末裔の1人。父親は既に死亡したらしい。
勇者としての使命を達成するため1人旅をしてきたが、途中で魔王たちに拾われた。
仲間を酒場で作れる事を知らなかったりするところを見ると少し天然属性寄り。
伝説の剣と鎧を身に付けているにも関わらず、戦闘に関しては初心者丸出しである。
好きな物は食べる事、ゆるゆるガールズトーク。嫌いな物は食べ物を粗末にする人。

黒髪短髪のさっぱりヘアー。見た目からして元気な女の子。
健康的なおみ足は黒のタイツで脚線美をそつなくキープ。
胸は僧侶が嫉妬してしまうほどに成長期の娘にしては大きめみたい。推定カップはC?
5 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/15(日) 04:22:08.12 ID:6yhW2miI0
現在装備とパーティ構成


魔王
武器:魔剣
防具:魔王のマント

女勇者
武器:なし(勇者の剣、盗まれ中)
防具:勇者の鎧

盗賊
武器:毒針 or アサシンダガー
防具:鎖帷子、黒頭巾

僧侶
武器:なし(壊れちゃった)
防具:きぬのローブ、皮の帽子
6 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/15(日) 04:22:56.64 ID:6yhW2miI0
こんなもんです
続きは未定
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 06:10:00.45 ID:HoVPY3TDO
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/04/15(日) 13:13:13.31 ID:XDoMW3DXo
おっつ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/15(日) 19:19:09.70 ID:VV3oYIbDO
もうみんな装備がボロボロだなww
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/16(月) 01:02:46.96 ID:NgBeLtDQo
乙乙!
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 12:57:35.46 ID:BFOoUR/IO
きっとそろそろ素敵装備を獲得する頃なんだよ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 17:19:33.11 ID:ZQClgkJm0
ぜひ僧侶ちゃんに水の羽衣を
武器?魔王ちゃんいれば持ってなくても安心でしょう
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/18(水) 22:23:04.49 ID:jwclbdm80
側近の名前の横の(死亡)の文字が嫌すぎるwwwwww
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 13:20:15.53 ID:qIl4LWZAo
武闘家の説明読んで思ったが仮にも拳法家がツインテって違和感MAXだな
ともあれ乙
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/19(木) 19:51:51.02 ID:kKRicqzIO
双條鞭という程なのかもしれんし
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/04/20(金) 02:01:42.26 ID:Ty/NaI+Uo
前にツインテなのかもしれんぞ
17 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:25:41.82 ID:SWgxiuQl0
夜王『すごろくはご存知で? ほら、こうやってサイコロ転がして…』

盗賊「バカにするのも大概にしてもらいたいところだな!」

盗賊「……随分ギャンブルから離れたじゃねーか」

夜王『私はゲームをしようと言ったのです。これではモチベーションが上がりませんか』

魔王「余は構わん。どの様な形であれ、貴様の鼻を叩き折れるのならなァ」

魔剣『そうそう! 始めるならさっさとー!』

夜王『まぁまぁ、そう慌てずに…ほほほ』

夜王『今回のル〜ルを簡単に説明させていただきますッ』

夜王『足元にご注目くださいませ』

盗賊「あ……? 何だこれは」

魔王たちの足元には、START!と書かれた大きなマスが。

盗賊「駒は俺たち自身って事かよ……?」

夜王『ええ。その通りでございますとも』

夜王『マスに書かれている事は絶対。何が起こるやら〜』

夜王『……これから貴方たちはすごろくの主役、駒です』

夜王『そして、サイコロを振るのも貴方たち』

夜王『勿論。私もですがー』
18 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:26:33.04 ID:SWgxiuQl0
魔王「今回はコインを使用せんのか?」

夜王『ええ。使用するのは、命でございます』

盗賊「何?」

夜王『このサイコロは少々特殊でしてね…出た目によって命の削れ具合が』

盗賊「おい待て! どういうつもりだ。そのサイコロ……振るたびにダメージがこちらに入るという事なのか」

夜王『お察しがよろしくて。1〜6の目、どれが出たとしてもかならずダメージが入ります。はい』

魔剣『じゃあ下手したら死んじゃうかも?』

夜王『はい』ニコニコ

盗賊「マスに書かれたイベントというのでも危険が丸見えしてるってのに」

盗賊「振るたびに命が削れる! 冗談じゃないぜッ」

夜王『私も冗談は言ってません。これは本気。真剣勝負でございますとも!』

盗賊「何が真剣勝負だ。胡散臭いぜ…」

魔剣『ホントだよ〜!』

夜王『ほほほ…。先にゴールへ辿り着いた者が勝ち。というか、私か貴方たちのどちらかが』

夜王『ル〜ルはこれぐらいで十分でしょう? 早速始めたいと思います』

夜王『くれぐれもゴールへ辿り着く前に命を散らさぬ様にね…』
19 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:27:21.84 ID:SWgxiuQl0
夜王『ではサイコロを振る順番を』

魔王「面倒だ。余が一番最初、構わんだろう」

盗賊「おい…まだ色々と得体が知れなさすぎるんだぞ? いいのか?」

魔王「何でも始めてみなければ分からぬものよ。それとも貴様が先行く?」

盗賊「……」

魔剣『盗賊ちゃんは臆病だねー!』

盗賊「少し臆病なぐらいが長生きできるんだぜ……」

夜王『ふむ。魔王様が一番手…よろしい。構いませんよ』

夜の帝王はサイコロを魔王へ手渡した。

魔王「この四角を投げればよいのだな!」

盗賊「遠くへぶん投げるとかはするんじゃねーぞ…」

魔王「分かっておるわッ! ふん」ポイ

魔王はサイコロを転がした!

ころころころころ・・・

盗賊(出た目によってダメージが異なる…まだよく分からんが)

魔剣『何が出るかな、何が出るかな♪』


出た目は、4ッ!!


魔王「4か」

魔王「!?」ズキンッ
20 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:28:30.43 ID:SWgxiuQl0
魔王は苦虫を潰したような表情で左胸を抑えた。

夜王『ほほほ…今体感しましたね? 命が削れる瞬間をッ!!』

盗賊「おい、大丈夫かよ!?」

魔剣『ゆ、勇者ちゃーん…』

魔王「き、さ、ま、あぁぁぁぁ〜〜〜…………ッ!!」

夜王『4の目はそれなりのダメージを。でございます』

夜王『ね? それなりに来たでしょう』

魔王「それなりになァー!!!」

盗賊(アイツにとってのそれなりってのはわからんが…)

盗賊(できればこのゲーム、参加したくない)

夜王『顔に書かれてありますねぇ? このゲームが嫌だと』

盗賊「うっ」

夜王『ご安心を。きっとお楽しみになれますとも』

盗賊「命を賭けたゲームなんぞもはやゲームでもなんでもねぇ!! ゲームの意味を辞書で引け!」

魔王「……で、余はどうすればよい!」

魔剣『きっと4マス進むんだよー』

魔王「真か?」

夜王『ええ、その通り。どうぞお進みください、魔王様』ニコニコ

魔王「チッ…気に食わん奴である」
21 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:29:02.23 ID:SWgxiuQl0
魔王は4マス移動した!

魔剣『何か書いてるね? 僕が読んだげる』

魔王「さっさと」

魔剣『えー……っとぉ』

魔剣『灼熱地獄? かなー』

盗賊「!?」

突如、魔王が炎に包まれた!

魔剣『やぁーん! 灼熱〜……』

盗賊「何だあれは!? 完全に殺しにかかってきてるじゃねぇか!?」

盗賊「てめぇ何考えて…!」

夜王『ええ。死ね死ねぇー…炭になってしまえー…』

盗賊「くっ!」

夜王『おっとー! 助けになんていかない方が身のためですよ』

夜王『さぁ、お次は貴方の番です。ほらサイコロ』

盗賊「……カス野郎っ」
22 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:29:31.79 ID:SWgxiuQl0
魔王「この程度の火加減では余を殺す事などできぬ……」

魔王「しかし、盗賊のカスならば即死レベルか」

魔王「おう、貴様一応気をつけておくのだー! 死ぬぞ!」

盗賊「……」ぷるぷる

夜王『おやおや』

夜王『顔色が優れませんね。怖がる事はありませんよ、上手くいいマスに止まれれば』

夜王『楽に逝けちゃうかも……!?』

盗賊(バカにしやがって……!!)

盗賊「振ればいいんだろ。振れば」ポイ

盗賊(ええいっ、ままよ!)


ころころころころ・・・出た目は、2ッ!!


盗賊「はぁ、はぁ……」ドキドキ

夜王『良かったですね』

盗賊「え?」チクリ

盗賊「……今のが、削れたってのか?」
23 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:30:26.87 ID:SWgxiuQl0
夜王『2の目は最小ダメージ。マチ針でツンとされた程度でしょう?』

夜王『この調子で2が出続ければいいですねぇ』

盗賊「ふん…」

盗賊は2マス移動した!

盗賊(本番はこれからか…。マスに書かれている事は)


『全裸ッ!! ※ 葉っぱ一枚備えておきますね…』


盗賊「ぶっっっ……」

夜王『本当に運の良い方ですね〜…ほほほ』

盗賊「ふざけてんのかコレ!? いい加減にしろよッ」

盗賊の服は問答無用で剥ぎ取られてしまった!

盗賊「わあああああぁぁぁぁ〜〜〜!!」

魔王「何と惨い……小さい」

魔剣『きゃっ…もう、盗賊ちゃんのエッチ〜…///』

盗賊「俺を見るなぁーーー!!!」

葉っぱを拾って大事な所を隠した。

盗賊「はぁ、はぁ……!」

魔王「真っぱで息切らしてるとまさに変態よのぅ」

盗賊「好きでこうなったわけじゃないっ」

夜王『そろそろ宜しいですかな。…そーれ』ポイ
24 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:31:03.33 ID:SWgxiuQl0
ころころころころ・・・出た目は、1ッ!!


夜王『……』ニコニコ

魔王・盗賊「ぷぷぷっ!」

夜王『う、ぐ、ぐ……ぐええええええぇぇぇぇっっっ』げぼぉっ

夜の帝王は勢いよく血を吐きだした!

盗賊「……おいおい」

夜王『こ、これがぁ…1の目を出した……代償、でしてね…!』

盗賊「…てっきり奴にサイコロの効力は通じないってオチを予測していたんだが」

夜王『ゲームとはッ!! 同じ土俵に立たなければ面白くないッ!!』

魔王「散々ズルしておいて今さらである」

魔王「貴様はそのまま余の後ろを永遠進むがよい! 余がゴールへ辿り着くまでなァ!」

夜王『ど、どうかな……それは』

夜の帝王は1マス移動した!

夜王『……ひ、ひひひ!』

マスに着いた瞬間に夜の帝王の姿が消えてしまった!

魔王「あァん?」

魔王「奴め、逃げおったか! この勝負を放棄したというのならば、余の勝ちで…」

盗賊「……いや、向こうを見てみな」

なんと、ゴールから1マス前の地点に夜王がいた!

夜王『私の勝ちは明らか……そうでしょう……?』
25 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:31:55.79 ID:SWgxiuQl0
盗賊「奴がさっき止まった場所、ゴール前に飛ばすマスだったって事か…?」

夜王『その通〜〜〜りッ!!』

魔剣『ずるっ子じゃーん!!』

魔王「貴様ァー! 何が同じ土俵か!」

夜王『同じじゃないですかね。ただ、私の方がこのゲームを広く理解していただけという点を除いてだが!』

魔王「喧しいわッ、やはりこのゲーム無し!」

夜王『無・理ッ!!』

夜王『さぁ……そして、今私が止まったマスの効果は!?』

『アナタを除いて全員一回休みッ!!』

夜王『ぶはははははははッーーー!!!』

盗賊「卑怯臭ェ!! てめぇ……最初から」

魔剣『バカ! アホ! 超ずるっ子!』

夜王『えぇ? 何も聞こえなーい。ほほほ…』
26 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:32:32.87 ID:SWgxiuQl0
夜の帝王が止まったマスの効果で魔王たちは一回休み! サイコロを振れない!

盗賊「終わった……。完全に終わったぜ……おい」

盗賊(僧侶ちゃん……俺は)

魔王「納得がいかんッ! このままでは済まさんぞ」

夜王『何を言おうが次で勝敗は決まってしまいますのでね』ポイ


ころころころころ・・・


盗賊「あ、あ、あ……頼むっ……! どうにか、どうにかなってくれ……!」

魔剣『あわわわわっ……』

魔王「!」


出た目は、2ッ!!


夜王『あらら、1が出てくれれば終わっていたのになぁ』チクリ

夜の帝王はゴールへ進み、再び先程と同じマスに止まった。

『アナタを除いて全員一回休みッ!!』

魔剣『またぁー!? これじゃあずっと進めないよぅ』

夜王『良かったですね。そのまま私がゴールへ到達するまでそこで眺めていなさいな』

魔王「いい気になるなよ貴様ァー!! 盗賊よ、かならず奴をゴールさせぬ方法を申せ!」

盗賊「あったら苦労しねぇよバカ! ……い、今考えてるんだ。話しかけるな!」

魔王「ぐぬぬぅ…!」

魔王「……あっ」

魔剣『勇者ちゃん?』
27 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:33:34.33 ID:SWgxiuQl0
夜王『何か良い策は思いつきましたか? まぁ、そんなのありませんよね』

夜王『これで終わり!』ポイ


ころころころころ・・・


夜王(確実! これは確実に1ッ! 手応えがあったぞ、勝ちだッーーー!!)

盗賊「うぁ……ダメだあっ……!」

出た目は・・・い

夜王『ほほほほほ、お別れですッーーーーーー!!』

魔王「まだ早いッッッ!!!」ブンッ

魔王はサイコロ目掛けて魔剣を投げた!

魔剣『あああぁ〜〜〜〜〜〜!? 勇者ちゃ〜〜〜んっ!?』ぴゅ〜

魔剣はサイコロにヒット!

夜王『ぬうっ!?』


出た目は、6ッ!!


盗賊「お、おい……!」

魔王「いやぁ! サイコロがデカくて助かったなァー!」
28 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:34:14.42 ID:SWgxiuQl0
6の目の代償! 微妙なダメージを受けた!

魔剣『あーうー……』

夜王『……魔王、貴様ぁ』

夜王『どういうつもりだ貴様!? 何だこれは!?』

魔王「貴様のルールに妨害は禁止されておったか? そして、余は貴様に傷をつけてもおらんぞ」

魔王「ただ魔剣をサイコロに当てただけである。文句あるかこらー!」

夜王『ないわけがあるかッーーー!!!』

盗賊「く、くくくっ……お前やるじゃねぇか……!」

盗賊「少々俺もやり方に納得はいかんが、この場は凌げた!」

盗賊「てめぇはさっさと6マス進みなっ! ルールにないんだ、これ以上文句は言わせないぜ!」

夜王『こ、このクソ虫共めが……』

夜の帝王はゴールへ進み、5マス戻った。

夜王『……ふん、残念でしたねぇ! このマスの効果は!』

『アナタは結構回復したッ!!』

夜王『ほほほ…。丁度回復したい頃だったのですよ、助かりました』

魔王「それがどうした事か」

盗賊「いや、奴はさっきの1の目の代償でかなりダメージを食らっていたんだぜ」

盗賊「俺としては自滅を願っていたんだが……あれではな」

夜王『ん、ん〜♪ いいぞぉ…実に体が軽い! 十分な回復量じゃないか』

魔王「貴様の体の調子なんぞ尋ねておらん。さっさと余にサイコロ寄越せ!」

夜王『ええ、ええ。どうぞ、魔王様。ほらよ!』

魔王「確実に殺してみせる……」ポイ
29 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:35:09.64 ID:SWgxiuQl0
ころころころころ・・・出た目は、6ッ!!


魔王「今回は微妙だなァー!!」チクリン

魔剣『早く僕の事拾いに来てねー!? 絶対だよー!』

魔王「……」しれ

魔剣『勇者ちゃあーん!』

魔王「では、進むとするか」

盗賊「気をつけろよ、先のマスに何て書かれているかわからん」

魔王「盗賊に心配される程、余は弱くないである」

盗賊「あーそー……」

魔王は6マス移動した!

魔王「……あ」

盗賊「おい、何て書いてあった? 効果は?」

魔王「とうぞ――――――」


ぼわわ〜ん!


女魔王「……盗賊よ、余は奴を絶対に許さないわ」

盗賊「えぇ……誰だお前……?」

魔王が止まったマスには『夢の性別逆転現象発動ッ!!』と書かれていた。

魔王は女になってしまった!

夜王『ほほほッ!! いいザマですねェーーーーーー!!!』

女魔王「喧しいんだわっ、覚えてなさいよ…!」

魔剣『勇者ちゃんが…僕の、勇者ちゃんが…っ!!』カタカタカタ…
30 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/20(金) 03:38:41.82 ID:SWgxiuQl0
ここまで。投下頻度落ちてきてすまない、5月入るまではこんな感じになりそうです

>>14
マジk
ショートツインテならどうでしょうか
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/04/20(金) 04:35:32.00 ID:Ty/NaI+Uo
お団子からシッポが生えてる程度にしようぜ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 06:58:02.37 ID:7/IszweIO
お団子から毛が一本で
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/04/20(金) 09:08:48.32 ID:CLjOlXzAO
DQ3の女武道家は普通にツインテールだよね?
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 13:04:36.50 ID:e9TQyb5q0


確かにDQ3の武闘家もツインテ。関係ないけどDBの最初のころのビーデルもツインテ
別にいいんじゃね?
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 13:33:27.98 ID:ipyW8UyIO
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/20(金) 16:34:46.83 ID:xyhzC6Udo
そんなことより女魔王だ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/04/20(金) 21:28:55.79 ID:mBTNSNXDo
スタイルはグンバツでお願いします
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/04/20(金) 23:47:43.05 ID:GP1Gtyr6o
せくしーな魔王ちゃんが見たいよ!
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/21(土) 23:11:25.40 ID:oS7IaFmIO
そろそろ魔法復活くるか?
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 01:14:03.38 ID:nEO+BJSF0
もはや魔剣は投げる物だなwwwww
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 17:07:43.12 ID:9xzaVZWH0
魔王ちゃんが女の子になった!これで勝つる!
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/04/22(日) 23:18:05.36 ID:GeS3ebk3o
なんだろう、魔王もキャラは可愛い気があったけどなんか超絶美少女になってる気がする
この魔王は美女じゃなくて美少女
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/22(日) 23:45:57.12 ID:qZYHdn1DO
これで正式に戦士×魔王ができるな
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/25(水) 21:45:30.60 ID:B8NXdCZdo
乙乙!
45 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:46:18.17 ID:EB3iSSrn0
盗賊「本当に誰だ!」

女魔王「余だわッ!」

魔剣『違うもん…これ違うもん…いやぁ…』

夜王『何やら想像以上に動揺をさせられた様だが』

夜王『これは実に滑稽ッ! 女となった貴方は普段の数倍力が衰えた!』

夜王『無茶できるなんて、考えない事ですね』

女魔王「ぐぬぬっ……」

夜王『いいじゃないですか。それもお似合いになっていますよ』

夜王『そこのお仲間さんも、変わられた貴方のお姿を見て元気になっているみたいですし』

女魔王「えっ?」チラ

盗賊「いや……奴に騙されるな! こっち見るんじゃねぇ!」

魔剣『……盗賊ちゃんサイテー』

盗賊(だって割と可愛いんだもの…)

盗賊「とにかくっ! ゲームを再開するぞ! 次は俺だぜ」ポイ


ころころころころ・・・出た目は、3ッ!!


女魔王「3ね。まだ出ていなかった目だけれど、どうなるか楽しみだわ」

盗賊「死んだら洒落にならねぇからな…おい」

盗賊「……!」
46 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:46:47.97 ID:EB3iSSrn0
盗賊はその場に崩れると狂ったように叫び始めた!

盗賊「  」

魔剣『盗賊ちゃん!』

盗賊「痛ぇ!! 痛い、痛い、痛いっっっ!!!」

盗賊「うわああああああああっーーー!!?」

女魔王「落ち着け、盗賊。貴様はまだ生きてるわよ」

盗賊(死ぬほど痛いんだよ!!)

夜王『おやおや、おめでとうございます。1の痛みには及びませんが』

夜王『苦しいでしょうねぇ…腹の内から何かが突き破ってきそうな痛みはねェ』

魔剣『なんかエグいんですけど』

魔剣『盗賊ちゃんしっかりしてー! 頑張って立ってー!』

盗賊「い、いぃぃっ……! ぐうぅっ……!」

盗賊は痛みを堪えて立ちあがった!

盗賊「こここ、この程度に屈するわけには、いかん…ぜ…!」

ゆっくり3マス移動し始めた。

女魔王「盗賊も女になったりして〜」

魔剣『もうそういうのいいよ! お断りです!』

夜王『マスへ辿り着いてからのお楽しみ。さぁさ、何が起きるやら』ニコニコ

盗賊「っ〜……」フラフラ
47 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:47:17.04 ID:EB3iSSrn0
盗賊「はぁ、はぁ……ひー……ふぅ」

夜王『無事到達しましたね。お疲れ様です』

盗賊「これで終わりならその言葉も甘んじて受け入れるがな!」

女魔王「……」ウキウキ

盗賊「何てめぇはワクワクしてんだよ!?」

女魔王「人の不幸は見ていて楽しいから! さー、盗賊はどうなっちゃうかしらねェ」

盗賊「マジでその喋り方やめてくれ。鳥肌が立つんだ」

盗賊「……あ?」

止まったマスには『目の前が真っ暗でお先が真っ暗ッ!!』と書かれている。

魔剣『大丈夫〜? もしかして何も起きてない?』

盗賊「いや、見えない……」

盗賊「何も見えねぇッ!! 暗い!?」

女魔王「視界を奪われたわけ、かしらね。良かったじゃない。その程度で済んで」

夜王『その程度の事だと本当に思っておられる?』

女魔王「は?」

夜王『何も見えないというものは恐怖ですよ、魔王様。何処を見渡そうが光はない』

夜王『果たしてあの人間は耐えられますかね』

女魔王「……盗賊?」

盗賊「ぅあ……」

盗賊の体は全身強張っており、冷や汗を流し始めた。

盗賊(奴の言う通りだ…何だこの嫌な感じ…音しか聞こえない…!)

女魔王「ちょっと返事の1つぐらいバカでもできるでしょ? おーい、もしもーし?」

盗賊「あ、ああ……心配するな。てめぇの言う通り大した事じゃねぇぜ」
48 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:47:45.74 ID:EB3iSSrn0
魔剣『絶対様子おかしいよ。勇者ちゃん、盗賊ちゃんにも気をつけてあげておいてね』

女魔王「ふん、本人が大丈夫って申したわけだし。別にどうもしてないわ」

盗賊「そうだ、気にする必要はない。俺なら何とかなるぜ」

夜王『強がりは時に身を滅ぼす事になりますよ。ほほほ…』

夜王(さて、次は私の番だが)チラ

盗賊「……」

女魔王「これは肩がこるー……。切り落とそうか」ボインボイン

魔剣『勇者ちゃぁん……ぐずっ』

夜王(これはチャンスッーーー!! 奴らは今私の邪魔をできるほどの余裕がないッ)

夜王(今回で5の目を出せばゴールへ。なに、確実に狙った目は出すなど私には容易い事)

夜王(私の勝利は、決まったも同然……!)

夜王「いやぁ、随分驚かされましたがこれで終わりですかね」

女魔王「!」

盗賊「おいっ! 奴が…!」

女魔王「心配する必要なしッ! もう一度邪魔をしてしまえば……」

女魔王「な、何も投げる物がないわ」

魔剣『〜……!』

女魔王「魔剣! こっちに帰ってくるの! 早くッー!!」

魔剣『無理だよぉー! 僕自分で動けないもん! それに今刺さっちゃってるもん!』

女魔王「あーっ、使えないガラクタめ!」

夜王「さぁ、今度こそ! 真のお別れですッッッーーー!!!」ポイ
49 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:48:14.66 ID:EB3iSSrn0
ころころころころ・・・出た目は

夜王『勝ったァ……』ニタニタ

魔剣『盗賊ちゃん、左30度だよ!』

夜王『何?』

盗賊「11時方向の事か!? ええいっ、当たってくれよ……!」シュッ

盗賊は毒針を魔剣が指示した位置へ投げた!

夜王『え、あ、ちょっ…!?』

毒針に当たってサイコロが再び転がる! 出た目は1ッ!!

盗賊「やったか……?」

魔剣『やったよー!』

女魔王「グッジョブと申しておこうかしらね!」

盗賊「へ、へへっ!」

夜王『あ、あ、あ…………?』ワナワナ

夜王『おえええええええええぇぇぇぇっ〜〜〜…!!!』ビチャビチャチャ

夜の帝王は血をドバドバ吐き出した!
50 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:48:46.54 ID:EB3iSSrn0
夜王『げえぇ…おえぇ…』ピチャ、ピチャ

女魔王「ふははははッ〜〜〜! いいザマだわね!」

女魔王「にしても盗賊にしては良い仕事をしてくれたわね」

盗賊「にしてもは余計だぜ。さすがの俺、だろ。くっくっく」

魔剣『僕の事も誉めてよぉ〜!』

夜の帝王は1マス移動した。

夜王『はぁ、はぁ……うぐぐ、イイ気になっているなよ!!』

止まったマスには『1回休みッ!!』と書かれている。

夜王『嘘ぉー……』

夜王『くそ! お前たちはゲームを馬鹿にしているのか!? 1度ならず2度も妨害を!』

魔剣『ふふーん。イカサマしてた奴に言われたくないですよー』

盗賊「その通りだぜ。てめぇに対しては容赦しねぇ」

盗賊「こっちは仲間の命がかかってるんだ、負ける勝負は許されない」

女魔王「そして負ける勝負はしないって事。いい? 覚悟はいいかしら」

女魔王「飛ばしていくわよッ!」ポイ

魔剣『いったれー!』


ころころころころ・・・出た目は1ッ!!


女魔王「……お、お、おえええええぇぇぇぇぇ…っ」ビチャビチャチャ

魔剣『勇者ちゃーん!?』
51 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:49:37.36 ID:EB3iSSrn0
夜王『ぶはははははー!!』

夜王『ザマぁみろ馬鹿めッー!』

女魔王「喧しいわよ…! きぃーっ!!」

盗賊「おい、何出したんだ? 見えないんだ…何が?」

魔剣『勇者ちゃん大丈夫!? 死なない? 死んじゃったりしない…?』

女魔王「この程度の事でくたばる余じゃないっ」

女魔王は1マス移動した。

止まったマスには『水洗トイレの刑(ふりだしへ戻る)』と書かれている。

女魔王「水洗トイレ?」


ドド ド ドド ド・・・


足元から大きな音がする。

女魔王「んんー?」

盗賊「妙な音が聞こえてるんだが、お前どんなマスに止まったんだ…」

女魔王「知らない。トイレって……!」

夜王『大当たりですねぇ…。はい、ボットン』

女魔王「ひゃっ!?」

突然、女魔王の足元に穴が出現して下に落ちてしまった!

待ち構えていたのは大きな便器! 水で女魔王は洗い流されてしまう!

女魔王「ぎゃーぎゃーぎゃー!?」

夜王『汚物には相応しい刑です!』

魔剣『勇者ちゃーん!!』
52 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:50:42.03 ID:EB3iSSrn0
女魔王「目が、目が回る…吸いこまれてる……」

女魔王(…………そういえば、以前にもこんな体験をした事があるような)


―これは失敗作ですよ。お偉いさん方は残せと言うが

―ん命在りし者ォ、全てに今を生きる権利があるゥ。そう思わぬか

―ですがね、こいつは危険過ぎた。何れ暴走を起こして全てを壊しかねない

―世の中には生まれてはいけなかった命もあると吾輩は思うのですよ。生み出した本人が言うのもおかしい話だとは思い
ますがね

―生ゥまれてはならぬ命ィ、理解し難し。頼む、博士よ。余はこの子を失う事が惜しいィ

―これはァ、この子はァ……きっと良い子へ育つのだ。ん違いないィ

―どうか頭を上げてくださいな。魔王様



女魔王「――――――…………魔王」

魔剣『ちゃん! 勇者ちゃん! 勇者ちゃんってばー!』

盗賊「おい、起きろっ! 気失ってる場合じゃねーんだぞ!」

女魔王「は……?」

気がつけば女魔王はスタート地点へ戻されていた。

女魔王「な、なぜ余はまたここへ戻って来てるの!」

夜王『スタート地点へ戻すマスを踏んだのですよ。いやはや、おマヌケな事』

盗賊「なんつータイミングで…!」
53 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:51:26.89 ID:EB3iSSrn0
魔剣『卑怯だぞ〜!』

夜王『卑怯? 人聞きの悪い事を言わないでいただきたい。そのマスに勝手に止まったのは魔王様でしょうが』

夜王『ですよねぇ、魔王様!』

女魔王「……」ボケー

夜王『あら、反応なし? 私を無視しないでいただきたいッ』

盗賊「てめぇの相手してる暇じゃないって事だぜ。ほら、次は俺だ…」

盗賊(俺には勇者の姿が今見えちゃいない。見えちゃいないが)

盗賊(やけに大人しくて気味が悪いっ!)ポイ


ころころころころ・・・出た目は5ッ!!


盗賊「……投げたのはいいが、見えな」

盗賊「痛ぇっ!!?」ドガッ

夜王『言うならば中ダメージの目ですね。5ですよ、5』

盗賊「…ご親切にどうもだぜ」

盗賊はふらふらしながら移動し始めた。

盗賊「!」

そして、コケた。

夜王『ぷぷー!』

魔剣『盗賊ちゃん、上手く歩けないの?』

盗賊「平衡感覚が妙におかしい…お、俺はどこまで進めばいい…」
54 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:51:54.63 ID:EB3iSSrn0
盗賊(こんなの目を瞑ったのと同じ事だろ? 違うのか? 何だこれ)

盗賊(全裸でいるせいか全身がやけに敏感だ)

盗賊(お、音……音だけが頼りだ。くそ…気分まで悪くなってきた…)

魔剣『盗賊ちゃん。立てる? 僕の声は聞こえてる?』

盗賊「聞こえてる…聞こえてるから、あと何歩移動したらいいか教えろ」

魔剣『う、うん』

夜王『ほほほ…。不安でしょう、恐ろしいでしょう、気持ちが悪いでしょう』

夜王『それが真の闇というものですよ。貴方の精神はどんどん削られてゆく』

盗賊「黙ってな。俺が聞きたいのはてめぇの声じゃないんだ……」

魔剣『もうちょっと左。そう、あと5、6歩ぐらいだよー』

盗賊「……」ヨタヨタ

夜王『本当に、面白い光景ですねぇ。まるで生まれ立て小鹿!』

夜王『ぷぷぷー!』

夜王『それより……』チラ

女魔王「……」

夜王(魔王、先程からやけに静かだが。何か考えているとでも?)

夜王(まさか。あの馬鹿がそんな事できる筈がない。あり得ないのだ)
55 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:52:21.64 ID:EB3iSSrn0
盗賊「……おい、マスには何と書かれてある? 教えろ」

魔剣『僕の方から読めないー』

盗賊「じゃあそこの魔物にでも聞こうか?」

夜王『気安く魔物と呼ばないで欲しい。私はそこ等の雑魚とは違うのだよ!』

夜王『ふん……!』ニタァ

盗賊が止まったマスには『次のサイコロの目2倍ッ!!』と書かれている

夜王『だそうで。いやぁ、良かったですね!』

盗賊「何だと? マジだとしたらかなり嬉しい話だが」

盗賊「てめぇ、そこは慌てるところじゃあないのか? 普通は」

夜王『いえいえ、慌てるどころか。貴方、次の目次第で即死ですからね』

盗賊「……え」

魔剣『もしかしてサイコロのダメージも2倍ってのじゃないよね…』

夜王『その通りでございまーす!!』

盗賊「あぁ!?」

魔剣『と、盗賊ちゃん…!』

盗賊「か、構わねぇぜ。上等じゃねーか、あと少しで奴の元へ辿り着けるんだ」

魔剣『確かにアイツのとこまで盗賊ちゃんのとこから残り12マスだけどー…』

盗賊「6だ、6さえ出せれば追いつけるんだ。間違っても1だけは…」

夜王『そういう時に限って、って感じだと思いますがね?』

盗賊「ふん、言ってな。カス野郎……」

女魔王「……」ボケー
56 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/04/26(木) 02:53:09.09 ID:EB3iSSrn0
ここまで
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) :2012/04/26(木) 07:32:25.46 ID:37SkAua+o
乙ィ
これが映画なら盗賊は確実に死ぬが、さて…
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 09:50:55.77 ID:y6FoLIPAo
棺桶の用意をするかww
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 10:33:43.98 ID:p5NboVDk0
盗賊は生きた死亡フラグ
そんなことより魔王ちゃんおっぱいだよ
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 11:49:07.86 ID:Eb9K/2GVo
魔王が4→6と進んで10マス目の性別逆転踏んでたから
盗賊は2→3→5で同じ10マス目じゃないの?

ただ、葉っぱ一枚+女体化……危険すぎるだろwww
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/26(木) 12:04:49.84 ID:32FBOxGIO
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/27(金) 00:15:39.09 ID:LwPbc1g40
魔王の回想的なのに出てるのは先代魔王と魔物博士・・・?

乙乙
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/04/28(土) 09:23:12.79 ID:QTPP9cXbo
乙乙!
64 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:01:17.83 ID:oqGkR/Rc0
盗賊(今回奴は一回休み。サイコロを振れない)

夜王『ほほほ…』

盗賊(しかし、どうも焦っている様子がない)

盗賊「強がりは止したらどうだぜ。お前、かなりヤバい状況じゃねーのか」

夜王『私が、でしょうかね? それはどうでしょう』

夜王『貴方が今でも心配しているサイコロ2倍の件もありますし、それに魔王様が』

女魔王「……」

魔剣『勇者ちゃんどうしちゃったの? サイコロだよ、サイコロー』

夜王『勝負にとって大切なのは適度な緊張感! それが頭を働かせてくれる原動力となる!』

夜王『今の魔王様はただ佇んでいるだけのアホ! あの様子では全く勝負になりません』

盗賊「……そいつはどうかな。アイツはいざとなれば動くぜ」

盗賊(いざという時だけな)

魔剣『そうだぞー! 勇者ちゃんはカッコいい上にスゴイんだから!』

魔剣『あ…今はカッコいいというより……女の子してる、けど……』

夜王『大きいですもんねぇ。ナイスバディですもんねぇ……』

盗賊「……とにかくっ! てめぇのその余裕っぷり、気にくわんぜ!」

盗賊「鼻折らさせてもらう。おい、勇者! さっさとサイコロを!」

女魔王「……あー」
65 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:02:20.03 ID:oqGkR/Rc0
女魔王はサイコロを持ったまま、ボケーってしている。

盗賊「聞いてんのか!?」

盗賊「アイツ、さっきから急にどうしちまったんだよ…変だぞ、いつもだけど」

魔剣『いつもじゃないもん! 時々だし』

夜王『貴方がた、仲悪いのですか』

魔剣『仲良しだよ〜!』

夜王『まぁ、そんな事今は関係が無いのですがね。早くサイコロを振っていただきたい』

夜王『ゲームが進まないのでね』

女魔王「ゲーム……あぁ」ポイ


ころころころころ・・・出た目は1ッ!!


夜王『あぁ!?』

盗賊「おいおい、余裕ぶっこきはどこへ行った……?」

盗賊「ふりだしから1マス進めば何があったか! お前は知っている筈だぜ!」

夜王『…………ゴール前までワープ』

女魔王「……おえええええええぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!?」ゲボボォォォ

女魔王は血をドバドバ吐き出し、倒れた!

魔剣『勇者ちゃん!』

盗賊「あ? ……何だ?」

女魔王「お、おえぇ! げほ、がぼぉ……ぐぅ!?」
66 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:03:30.67 ID:oqGkR/Rc0
魔剣『勇者ちゃん、勇者ちゃん! しっかりして!』

盗賊「おい、どうしたんだよ? アイツがどうした!」

夜王『いやぁ…焦って損しましたよ』

夜王『私は最初に言いましたねー? 命が削れ切れる前にゴールへ到達しなさいと』

盗賊「……あ?」

夜王『魔王様はどうやら度重なるダメージにより、立てぬ体へなり果ててしまった模様で!』

女魔王「体が、た、立たないッ……! そんな、何これ……」

女魔王「貴様ァー! 余に何かしたわね!? よくもっ……!」

夜王『私? 私は何もしていません〜。命を削っているのはそのサイコロ』

盗賊「このゲームはてめぇのだ。間接的には何かしてるだろ」

盗賊「それより立てないほどなのか!? お前、1マス進めばゴール手前だぞ!」

女魔王「ふぐぐぐぐっ〜……!!」グググ

魔剣『勇者ちゃん……なんか弱くなってる……?』

魔剣『前なんてそんなじゃボロボロにもならなかったし、魔法も使えたし……』

盗賊「使えた……だと?」

女魔王「あァ!? このっ、クソ魔剣!」
67 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:04:08.81 ID:oqGkR/Rc0
女魔王「誰にも申すなってあれ程!」

魔剣『だ、だって! 勇者ちゃん、このままじゃマズイよ! 変だよ!』

女魔王「喧しいわよッ!!」

盗賊「どういう事だ、てめぇ! 魔法が使えなくなっていたのか!」

女魔王「盗賊には関係ないわッ!!」

盗賊「ないわけあるかよっ!」

夜王『ほほほ…。よく分かりませんが、仲間割れですか』

夜王『ほらほら、魔王様。早くマスへ進んではどうです? そしてゴールへ辿り着く為に1の目を出すのです』

夜王『ゴール到達と同時、貴方の命は燃え尽きてしまうが! 私のコレクションに加えられぬのは残念だが!』

盗賊「あっ……!?」

盗賊(ゴールへ進むに際してもサイコロのダメージは来る!? 奴に勝てても死んでは元も子もないぞ!)

盗賊「いや、でもすぐに復活させれば……」

夜王『復活? そんなつまらない真似は許しませんよ。死体はこちらで引き取りますとも』

盗賊「バカ言うんじゃねぇ! そんな勝手な」

夜王『ここは私のホ〜ムグラウンドッ! 勝手が通じて当然でしょう』ニコニコ

夜王『私を倒すなんて事はくれぐれも考えない様に。ル〜ルはここにいる限り適用されるのですから』

盗賊(思った以上に厄介だ……)
68 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:04:50.44 ID:oqGkR/Rc0
女魔王「ひぃ、ひぃ……」

女魔王は這いつくばりながら1マス移動し、ゴール前へワープした。

女魔王「これで、次の回は貴様ら全員1回休み…そうだったわよね?」

夜王『ええ。違いありません。安心して、ごゆっくり1の目を出して下さいませ』

盗賊「いや、6だ! 6の目を出せば回復のマスに止まる事ができる! それを出せ!」

魔剣『そういえば邪魔した時にその目が出てアイツ回復してたー!』

魔剣『勇者ちゃん! まだ希望ありまくりだよー』

夜王『それはどうですかな』

魔剣『むっ、どういう意味さ!』

夜王『私が妨害を働くかもしれませんよ』

夜王『散々邪魔されたんだ…1度ぐらい問題ないでしょう?』

盗賊「大ありだぜ!!」

盗賊「てめぇだって散々イカサマ働いてただろうが!」

夜王『それはそれ。これはこれ』

女魔王「安心するが良いわ、盗賊。私がそやつ程度に邪魔されるなんてありえないから」

女魔王「強がっていられるのも今のうちよ。貴様は」ニヤニヤ

夜王『……』

夜王(何だあの自信は。奴は既に追い込んだも同然の状態だというのに)

夜王(気味が悪い笑みだ……)
69 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:06:07.43 ID:oqGkR/Rc0
盗賊「次は俺だ!」

盗賊(この回だけ俺が振るサイコロの数は2倍。しかし)

夜王『是非1の目を出して頂けるよう願っていますね〜』

盗賊「……ダメージも、2倍」

魔剣『アイツ、盗賊ちゃんの邪魔する気じゃないよねー…?』

盗賊「その確立も十分ありえる。もしあんな血をドバドバ吐き出すようなダメージの2倍なんてくらったら」

盗賊「生きていられる気が全くしないぜっ……!」

女魔王「恐れるな盗賊ー! 大して痛くないからッ!」

盗賊「ぜってぇ嘘だろっ!!」

盗賊(いかん……不安の方が大きくなってきた。これ大丈夫なのか)

盗賊「」チラ

夜王『……〜〜〜〜〜〜』

夜の帝王はこそこそ詠唱し始めた!

盗賊(邪魔する気満々じゃねーかよ…!)


≪安心するがいい。そのまま何も考えずにサイコロを振れ≫


盗賊「あ!?」

≪今、お前だけに語りかけている。他の者には聞こえてはいない、安心しろ≫

盗賊(……な、何者だ。信じていいんだろうな)

≪信じる者は救われる。任せてみろ≫

盗賊「どうも胡散臭い」

魔剣『どったの〜?』

盗賊「いや、なんでも」

盗賊「ふぅ、ふぅ……ふーっ」

盗賊「振らせていただくぜ!!」ポイ


ころころころころ・・・出た目は
70 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:06:42.39 ID:oqGkR/Rc0
夜王『させませんッ! 貴方は1だけしか出す事を許さないッーーー!!!』

夜の帝王は魔法を唱えた!

魔剣『あーっ! アイツやっぱり!』

女魔王「盗賊ッ」

盗賊「…………く」

盗賊「くっくっくっ……!」

夜王『あん? 何がおかしいのです? 追い詰められたあまり、狂ったか』

盗賊「そうじゃねぇ! そうじゃねぇよ」

盗賊「おい、俺にはどの目が出たかわからねぇ。確認頼むよ」

夜王『確認だと。するまでもありませんよ、1に決まっています』

夜王(なぜなら私がそうなる様に仕向けたのだからッ!!)

盗賊「1か? おかしいな、ならばすぐにでも俺は血を吐いて死ぬ筈じゃあないか?」

魔剣『あ、もしかしてのもしかして……』

夜王『えっ?』

盗賊「2倍って言っても、大して痛くもないものだな。おい!」

夜王『あ、あぁ……? ば、馬鹿な…あり得ん…!?』

夜王『なぜその目が、その目が出ているゥゥゥーーーーーー!!』


出た目は、6ッ!!


女魔王「まぁ、出て当然よね♪」

盗賊「心配したかよ。くくくっ」

女魔王「まったくー?」

魔剣『僕はしてたよぉ〜!』

盗賊「くっ、くっ、くっー!」
71 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:10:26.40 ID:oqGkR/Rc0
夜王『あ……』

夜王『いいい、インチキッ! インチキだこれは! イカサマァー!』

盗賊「なぜだ? どうしてそう思う」ニヤニヤ

夜王『だーって私が魔法……げふんっ』

盗賊「やれやれ何処までも汚ねェ野郎だ」

盗賊「俺が6の目を出せたのは偶然でも奇跡なんてものでもない」

盗賊「……最初から決まっていた事だぜ」

夜王『がぁーーーーーーっ…』

盗賊(決まった……最高にカッコいいな……)

盗賊は6の2倍、12マス移動した!

魔剣『盗賊ちゃん。そこでストップー』

盗賊「はいよ」

夜王『プルプルプル…………』

夜の帝王と並ぶ!

盗賊「今視界が見えていないのが残念に思えるよ。貴様の青ざめた顔が見られなくてな」

夜王『……青ざめた顔? は、ははは、馬鹿を言うなぁ…』

夜王『この程度で良い気になって! さすがド三流ギャンブラー!』

夜王『次は私が振る…この回で、私は貴様らを窮地へ叩き落とすぞッ』

女魔王「さて、どうなる事かしらね。貴様は次の回は休み。この回だけで何ができるって?」

女魔王「潔く負けを認めた方が良いと余は思うけどー?」

夜王『……へ、へへへ。馬鹿めが』


夜王『ル〜ル変更ォーーー!!! 私を除いて全ての駒は移動を許可しないィィィ』


女魔王・盗賊「!」ビリビリ

魔剣『え、えぇ?』


\ 新たなルールを認証しました。古いルールは破棄されます /
72 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/01(火) 03:13:00.65 ID:oqGkR/Rc0
ここまで。次で長くなったカジノ対決終われそう

>>60
う、うっかりしてたわ
大雑把に進めちゃってごめんよ・・・
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 11:02:21.57 ID:8/obk0BH0
乙!
面白い!最後の最後でどうなる…
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/01(火) 17:54:41.97 ID:C7mAf1WIO
wktks
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/01(火) 19:58:53.74 ID:FGOmMJWAo
あっちゃんが文字通り暗躍してるな
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/02(水) 21:29:15.32 ID:x9UtPGFd0
あっちゃんカッコイー!
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/03(木) 12:51:47.60 ID:NxTEUXPx0
敵は本当にずるいなwww
78 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 04:57:52.85 ID:CU9Y5rmb0
\ ルール発動ッ!! 魔王と盗賊は移動を禁ずッ!! /


盗賊「足が、動かない!?」

女魔王「貴様ッ! 何がルールよ! ただの貴様の勝手じゃない!」

夜王『ぶははははァ〜〜〜!! 聞こえないなぁ!?』

夜王『貴様らはそのマスから動くなよォ? 私がゴールへ辿り着くまで』

魔剣『自分が危なくなったからってこんなの酷い! 信じらんないよ!』

魔剣『ヒキョー者めぇ〜!』

夜王『卑怯? ああ、大好物さ。嫌いなのはなによりも敗北ッ』

夜王『貴様らに負けてしまうというのならば、私は手段を選ばないね!』

女魔王「……ふん、認めたわね?」

夜王『はぁ?』

女魔王「自分が負けてしまうかもと、認めたわね!」

女魔王「貴様はもう余には敵わない。このままでは敗北してしまうと!」

夜王『…何が言いたいィ?』

女魔王「敗北とは意識した瞬間から決まるものよ。一瞬でも負けを意識した者に勝利は訪れない」

夜王『あー戯言を! 揚げ足取りが何だと!? 今私は勝利を意識しているぞッ』

夜王『魔王は負け、私は勝ちッ!! ただそれだけを!』

女魔王「違うわね。貴様の位置は既に決まっているわ」

女魔王「あそこへ辿り着くのは余だけ。貴様は永遠に到達できないの、ゴールへは……!」
79 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 04:58:42.30 ID:CU9Y5rmb0
盗賊(アイツ何か策でも思いついたってのか。それともいつもの?)

盗賊(しかし、移動を禁じられたとなると……俺たちの方こそ永遠にゴールへは着けない)

盗賊(奴とゴールまでの間、残り4マス。確実に出してくるだろうよ、4の目を!)

盗賊(……得体の知れん奴を頼るのも何だが、あの声の奴がこの場を)

魔剣『勇者ちゃんカッコいいよ〜! 何言っても決まってるぅー!』

女魔王「当然! だって勇者だもん」

夜王『私がゴールへ到達できない? 馬鹿も休み休みにしていただきたい…』ニヤリ

夜王『妨害対策も今回はバッチリ。4の目も確実に出す事ができる』

夜王『ほら、ゴール決定だァー!』

女魔王「ほうほう。では振ってみなさいよ、そのサイコロを!」

夜王『お望み通りィィィーーーーーー!!!』ポイ

盗賊「ああっ……頼む、何とか……お願いだっ……!」

女魔王「あーこのままじゃ余ヤバいわねー。打つ手なしねー? どうしよー?」

盗賊・魔剣『「えっ!?」』

女魔王「あやつが5の目を出してくれたらなー? 余は助かるんだけどなー? ね?」

女魔王「前からストーカーしてたんだし、ここで死なれちゃっても困るわよねェ…」

≪…………えっ≫

≪こ、この……! こいつっ……!≫

盗賊「何言ってんだお前?」

女魔王「余の勝ちは決まっていたって事」
80 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 04:59:48.43 ID:CU9Y5rmb0
ころころころころ・・・出た目は


夜王『ハハアァ〜……』ニヤァ

出た目は、5ッ!!

夜王『…………は』

夜王『はああぁぁぁ〜〜〜ッッッ!!?』ドゴッ

夜の帝王は中ダメージを受けた!

女魔王「ほら、余の申した通りよ。貴様はゴールへ到達できない」

女魔王「それはきっと、何度やったって。永遠に」

夜王『か、か、うが、が、が、が……?』プルプル

盗賊「どうなったんだ、魔剣?」

魔剣『アイツがしくじった! 出したのは5!』

盗賊「5って……事は……。奴が辿り着くマスには」

夜の帝王は放心しながら、ゴールへ行くと1マス戻る。

辿り着いたそのマスには!

女魔王「ご機嫌いかがあそばせ〜?」

夜王『ああああぁぁぁ〜〜〜ッ!?』

女魔王が待っていた!
81 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:00:16.24 ID:CU9Y5rmb0
女魔王は片手を夜の帝王の肩へ回した。まるで、馴れ馴れしく!

夜王『……や、やめてください』

女魔王「そう嫌がるなよ。いいじゃない、仲良くしましょうよ?」

女魔王「それとも、元魔王で現勇者の余は気に食わないっていうのなら」ぐい

伸ばされた手は夜の帝王の首根っこをむんずと掴み上げる!

夜王『ギャ!?』

女魔王「仕留めるしかないわねェーーー!」

夜王『い、い、いやだ! ル〜ルへんこ…』

女魔王「これ以上好き勝手させんわよ!」

女魔王の攻撃! 攻撃! 攻撃!

夜の帝王の顔がとっても腫れあがってしまった!

夜王『ぃいい……〜〜〜〜〜〜』ぼろ

女魔王「ふん、貴様がルールとやらを変更してくれて余はとても助かったわ」

女魔王「まさかルールは1つしか設定できなかったなんてねェ。ヘナチョコだわ」

女魔王「この場を移動する事はできないが、貴様を好きなだけ殴れるのなら安いもの!」

女魔王の攻撃!

夜王『ぶっっっ!!? やめ、ほんとに、やめっ!! だめ、これ以上っ……! だめっ……!』

夜王『死んでしまいますっ……!』

女魔王「それは余の本望だわね!」
82 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:00:47.93 ID:CU9Y5rmb0
夜王『そんな……この私が、何で! こんなつまらないことでっ……あああ、あり得んッ!』

夜王『それに約束が違うじゃないですかァ……! 私を殺すのは、貴方がゲームに勝ってか…』

女魔王の攻撃! 潰れた鼻がさらに潰れる!

女魔王「余がルールなのよッ! 三下の屑以下めが!」

夜王・盗賊『「あ、あんまりすぎる……」』

女魔王「余は疲れたの。貴様の茶番に付き合うのに」

女魔王「別に? 余としては最終的に貴様を殺せればいいだけだし。勝ち方になんて拘りもないわよ」

魔剣『それでこそ魔王ちゃん! ううん!』

魔剣『勇者ちゃんだよぉ〜!』

夜王『こんな勇者がいて堪るか!? うわあああぁぁぁああああ!!』

女魔王「とどめ――――――」

盗賊「待て!」
83 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:02:13.80 ID:CU9Y5rmb0
女魔王「……盗賊ゥ〜。余はそういう事されて冷まされるのが凄い嫌いなの」

女魔王「邪魔するなら貴様も後でぶち殺すッ」

盗賊「いや、邪魔なんてする気はねぇ。ただ聞きたい事があるんだ、そいつに」

魔剣『そいつってまさかその魔物に?』

夜王『へぇ……?』

女魔王「この様な屑以下に何を聞き出せると思ってるの? イカサマの方法?」

盗賊「妹だ……。貴様は最初に言ったよな、妹が何者かに奪われていると…呪いだとか…!」

盗賊「呪いって何だてめぇ! 嘘吐いたわけじゃねぇだろうな!?」

魔剣『い、いきなりキレないでよー』

夜王『なんだ、肉親が大切なのか? ぶふふ、それなら残念だったな…!』

夜王『呪いは確かだ! それも随分と強力な、他からの干渉を指一本触れる事すら許されん程のものがな』

盗賊「!!」

盗賊「そ、それは……魔物が……?」

夜王『さぁねぇ〜。呪いなんて私の専門外だね。ただ言える事が1つ』

夜王『その女は死んだも同然だァー! 永久に人間らしさを取り戻す事はできんだろうよ!』

盗賊「えっ……」

女魔王「人間らしさ?」

夜王(チャンス)

夜王「油断は死を生むぞ、魔王……!」パチンッ

女魔王「あ?」

女魔王の攻撃!
84 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:03:23.51 ID:CU9Y5rmb0
夜王『がぶっ……!?』

女魔王「質問以外の時に口を開く事を許可していないのだけど。やめなさいよね」

女魔王「もう貴様はお終いよ! ここから何かできたのなら大したもんだと誉めてやっても」


ぽんっ!


女魔王「……?」

突然サイコロが女魔王へ飛んできて、当たった。

魔剣『何それ? さっきのサイコロ?』

女魔王「この様な物、もう必要ないわ。ゲームは既に終了したのだから」

夜王『いいやァ……ゲームはまだ終わってないさ……』

夜王『ほら、次は貴様がサイコロを振る番だ……!』

ぶつかったサイコロは地面に落ち、ころころと転がる。

女魔王「!」


ころころころころ・・・出た目は、1ッ!!


夜王『特大ダメージだ。よく味わえよ、魔王……それが貴様を死へと誘う』

夜王『命の削れる音をよく聞くがいいッ!』

女魔王「あ、あ、あ……」

女魔王「おええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ〜〜〜〜〜〜!!?」ゲボボボォ

女魔王に特大ダメージ! 大量の血を吐き出し、倒れてしまった!
85 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:05:52.46 ID:CU9Y5rmb0
盗賊「…………は」


< ―――ちゃん、勇者ちゃん! 勇者ちゃん!!


盗賊「な、何が」

盗賊「おいどうした! 勇者がどうした!」

魔剣『勇者ちゃん起きてよぉ! 勇者ちゃんってばぁー!!』

魔剣『勇者ちゃんっ!! 起きてぇ!!』

夜王『ぶははははははッーーーーーー!!!』ゲラゲラ

夜王『勝った! 勝った勝ったぁー! 魔王は死んだー!』

盗賊「し、死んだ? お、おい……!」

女魔王「   」

夜王『ああ、死んだぞォ! 完全に動いていないッ! 棺桶の準備をしてやろうじゃないか!』

魔剣『違うもん! 勇者ちゃんは生きてるもん!!』

夜王『死んだから! ほら、こんなに蹴っても反応の1つない!』

夜王『ぶははははははッーーーーーー!!!』ゲラゲラ

女魔王「   」

女魔王は倒れたまま、体をピクリとも動かさない。

女魔王「   」

女魔王は息絶えてしまった!

盗賊「え、まじで……」

盗賊(うそだろー……!?)

魔剣『う、う……うえええぇぇぇ〜〜〜んっっっ!!!』

夜王『そーら棺桶の中へポイだ!』ポイ



女魔王「†」
86 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:06:36.02 ID:CU9Y5rmb0
ここまで。続きはGW中に投下できたらいいなぁ
87 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/04(金) 05:07:58.98 ID:CU9Y5rmb0
てかカジノ対決終わってなかったなwww
ほんとのほんと、次で終わります
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/04(金) 08:03:20.47 ID:wK3y/mnAo
乙ぁー!
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 08:10:28.62 ID:VldkRB/DO
乙!!

魔王初死亡か……

盗賊達は生き返れるけど魔物って生き返れるのか?

生き返れるにしても金がめちゃくちゃかかりそう
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 10:47:44.07 ID:x8uEPllDO
魔王覚醒フラグキター?
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/04(金) 13:18:11.36 ID:fZMS0Wnx0
面白いwwwww
盗賊妹に何が
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/05/04(金) 16:10:00.37 ID:4JqdEvtio
生き返るとしても女のままか?
93 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:19:52.48 ID:WeLvGvH60
盗賊「アイツが死ぬとかありえないぜ! 冗談も」

女魔王「†」

盗賊「……や、休み休みに」

魔剣『やだよぉ! こんなの絶対おかしいよ! 間違ってるよぉ!』

夜王『何を言おうが事実は変わる事はないのだ。魔王は死んだ!』

夜王『この、私が、魔王を、倒したッ! この事実だけは変わらないッ!』

夜王『魔物の王がなんだ。所詮闇をも僕とするこの夜の帝王には勝てぬのだ』

夜王『今日から私が世界を闇に変えてくれようじゃないか!』

盗賊「う、うるせぇ……! てめぇなんぞ雑魚が粋がりやがって」

盗賊「そいつを倒したから何だ!? 一番強いのはおおお、俺だぜ!」

魔剣『…え?』

盗賊「でかい事言う前に俺と勝負しな。サシで真剣勝負で!」

夜王『ぶはははははッーーー!! 無力で愚かな人間風情めが、帝王であるこの私に対決を挑もうだとゥ?』

夜王『笑止千万ッ! 貴様には無様な死をくれてくれるぞ。そのまま動かず、なぶり殺されてしまえ。帝王の私によって
な…』

夜の帝王が盗賊へゆっくり近づいてきた!

魔剣『盗賊ちゃん逃げて!』

盗賊(こっちに近づいてきてるのか!? 逃げられるなら逃げてぇよ…)

盗賊はルールによって移動を禁止されている! 動けない!

夜王『ぶはははは』ニヤニヤ
94 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:20:23.94 ID:WeLvGvH60
夜王『』

盗賊(奴が、目の間にいるのがわかる……。見なくても、いいぐらい近くに!)

盗賊はダガーナイフへ手を伸ばした!

夜王『無駄無駄ぁ』

ダガーナイフを夜の帝王が払い落し、何処かへ放り投げてしまった!

盗賊「うぁ……!」

間髪入れず飛び込んでくる蹴り! 盗賊は地に倒され、踏みつけられる。

盗賊「ぐあああぁぁっっっ」

夜王『どうだ! どうだどうだ! 苦しめ、人間ッ! 恐怖しろ、闇の中で!』

夜の帝王は鋭利な爪で盗賊の腹を切り裂く! 途端に辺りに零れ出す血!

盗賊「ぃぎっ!?」

魔剣『もうやめてよー!! 盗賊ちゃんまでここで死んじゃったら、僕どうしたらいいの!?』

夜王『私が責任を持って貴様を我がコレクションに加えてやろう。ありがたく思えェ…』

魔剣『そんなの嫌ぁ! 勇者ちゃん起きてよ! 勇者ちゃんってば!』

しかし、女魔王は息絶えている。

魔剣『ゆ…魔王ちゃんっ!!』

夜王『ダメダメっ……! いない者に縋っては……ダメっ……!』

盗賊(俺の…大切な妹よ……。俺は、何もできずにここで終わるのか……)

盗賊(何もしてやれなくて、助けてやれなくて……ごめんなぁ……!)

盗賊「ぐふ……」ぶしゅぅぅぅー・・・

夜王『んー? 何だ、もう息絶えたのかね。脆い物だな人間は!』
95 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:21:01.95 ID:WeLvGvH60
夜王『さぁ、ゴミ屑の処理は全て済んだ。ンン〜なんと清々しい気分か』

夜王『ゲームに勝利するのもいいが、こう、肉体的にも気分的にも満足を得られるのは実にいいィ〜……』

魔剣『魔王ちゃん……』

夜王『約束通り貴様をコレクションに加えてやろうではないか。喜べ』

魔剣『魔王ちゃん起きてよぅ……もういいよっ、僕やだよ。魔王ちゃんじゃなきゃ嫌だよ』

魔剣『僕のご主人さまは魔王ちゃんだけなんだよ。魔王ちゃんじゃなきゃダメなの』

夜王『ふん、私は魔王を越えし者。帝王よ。貴様に真に相応しいのはこの夜の帝王ただ1人』

夜王『コレクションに加えた暁には、大切に飾って置いてくれる!』ガシッ

夜の帝王は魔剣を手に入れた!

魔剣『魔王ちゃぁぁぁ〜……ん』

女魔王「†」


女魔王「†」ガタッ


夜王『! ……なんだ気のせいか。驚かせやがって』

夜王(このまま棺桶を放置しているのもアレだからな。何処かに埋めてしまおうか)

夜の帝王は女魔王が中で眠る棺桶に近づき、手を伸ばした。

そのとき

女魔王「†」ガタッ

夜王『ま、また……!』

女魔王「†」ガタガタガタガタッ

夜王『えぇ!? な、何だコレは!?』

夜王(おかしい! 奴は完全に死んだ筈なんだ……! 何だ!?)

魔剣『魔王ちゃん?』
96 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:21:56.37 ID:WeLvGvH60
女魔王「†」ガタガタガタガタガタガタガタ…

夜王『嫌な予感がするっ……! 今すぐこの場で棺桶を焼き払うッ!』

夜の帝王は魔法の呪文を唱え始めた!

魔剣『魔王ちゃん頑張って! お願い起きてっ! 魔王ちゃんなら大丈夫だよー!』

夜王『〜〜〜〜〜〜……っ……!』

夜王(じゅ、呪文が上手く唱えられ――――――)


がしっ


夜王『――――――ひぅ!?』

棺桶の蓋に穴が開いた、同時に腕が伸びて夜の帝王の顔を力強く掴む!

魔剣『きたあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!』

腕は夜の帝王を掴んだまま放さず、棺桶へ引き寄せた!

夜王『や、やめてぇ!!?』

女魔王「…………」

夜の帝王のすぐ目の前には、女魔王の顔がそこにあった。

女魔王「……」ジロリ

夜王『!!』

白目を向いていた目がぐるんと一回転すると現れる鋭い眼。

夜王『……あわわ』


目と目が合った、睨みつけられた時間こそほんの数秒の出来事だが

夜の帝王にとってはそれが数時間、数日、数年を感じた。

死を意識したと言えばそれは違いない。しかしもっと違う何かを


女魔王「  」ぶんっ


後ろに頭を仰け反らせたと思った瞬間、振り下ろされる女魔王の頭!

ガツンッという音が脳内で響き渡り、瞼の辺りがチカチカと点滅!

星だ。星が見えた! 闇の中でピカっと光ったんだ!


夜王『……あ、ば?』

気がついたとき、夜の帝王は棺桶から数m離れた場所に横たわっていたのだ。
97 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:22:49.34 ID:WeLvGvH60
頭突きを受けたとき、既に魔剣は夜の帝王の手の中から落ちていた。

魔剣『魔王ちゃんが復活だぁー! やったよー!』

女魔王「……」

魔剣『魔王ちゃ……あ、勇者ちゃん勇者ちゃん! ごめんね!』

女魔王「……」

魔剣『怒ってる? もう怒らないで〜……ねぇ? 勇者ちゃん?』

女魔王「……」

女魔王はただ一点を見つめて、何も言わずに棺桶の外へ出た。

横たわる夜の帝王の元へゆっくりと、ゆっくりと歩みを進めている。

女魔王「……」

一歩一歩と歩を進めていくたびに、人間のソレだった腕や足、体が変化してゆく。

魔剣『あれって』

夜王『へ……?』

先程の攻撃が相当だったせいもあって夜の帝王は思考を働かせられないでいた。

自分の前に立ったそれもわからないでいた。

女魔王?『……ふしゅるー』

魔剣『わああぁ……カッチョイー……素敵だよー……!』


人間の姿を捨てたそれは、魔物の頂点として君臨するに相応しい

実に化物な姿であった。


女魔王『          』
98 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:24:03.99 ID:WeLvGvH60
女魔王『ぎゃぼおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』


咆哮を一声あげ、夜の帝王に跳びかかる!

そこからはただの汚らしい虐殺劇の開幕である。


夜王『』

千切っては砕き、裂いては放って。

無抵抗な夜の帝王をまるで玩具のように、それで遊ぶように

化物魔王は彼を殺し切った。

転がる死体は既にボロ雑巾か何か、生物としての形を保っていない肉塊そのものだった。


女魔王『          』


声にもならない声を滅茶苦茶に吐き出して、涎を飛ばしまくって女魔王は暴れた!

攻撃を向ける対象もいなくても、暴れ続けたのだ!


魔剣『魔王ちゃんヤバすぎ……! カッコよすぎて僕死んじゃうかもー……』

女魔王は先程自身が作り上げた肉塊を獣の如く貪る様に食らい始めた。

ごちそうでもなく、ただの魔物だった肉を、一片残さず胃袋へ!

女魔王『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……』


女魔王『ぐぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ』


ご馳走様の一言は雄叫びで代用されてしまった。

女魔王は全回復した!

女魔王は夜の帝王の力を手に入れた!


女魔王『ふしゅー…ふしゅー…ふしゅー…』

魔剣『お粗末さまでした!』
99 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:25:08.39 ID:WeLvGvH60
女魔王『ふぅ、ふぅ、ふぅ……』

食事を終えた女魔王の姿はじょじょに、再び紛い物の姿へ変体してゆく。

女魔王「ふぅ?」

魔剣『あれ、もう終わっちゃったの!?』

女魔王「余は何を。ていうか一体」

女魔王「あやつ、夜の帝王の姿はどこへ消え行ったの? まだ殺した覚えないわ」

魔剣『ううん! 勇者ちゃんがさっきやっつけちゃったよ』

女魔王「余が? 嘘ついてたらぶっ叩き折るわよ」

魔剣『ウソじゃないよ〜、ホントだよ〜』

女魔王「……なんだか貴様。やけに嬉しそう」

魔剣『えへへぇ』

女魔王「しかし、どういう事かしら。先程までの傷が無くなってる」

女魔王「それに妙な力を余の中に感じるわ。今までになかったような」

魔剣『勇者ちゃんはレベルアップしたんだよ〜! おめでとー』

女魔王「レベルアップ? これが? 噂の? 真なの?」

女魔王「…むっふっふー! だとしたら最高に気分が良いわねッ! 盗賊たちばっかりがレベルアップして面白くなかった
のよ〜」

女魔王「で、盗賊は?」

魔剣『あぁ! 忘れてたよー!』

盗賊はボロボロの死に損なった状態で倒れている。

盗賊「……」
100 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:26:17.06 ID:WeLvGvH60
女魔王「盗賊、おー盗賊ぅー。しっかりしなさいよ。生きてるでしょう」ペチペチ

盗賊「…ぅ、あ……ぐ」

女魔王「反応薄い。ちょっとこれどうなってんの」

魔剣『盗賊ちゃん、さっきいっぱい苛められちゃったから。早く回復してあげなきゃ』

魔剣『僧侶ちゃんたちのとこへ帰ろうよー。僧侶ちゃんなら何とかしてくれるかもだよ?』

女魔王「……そうか、僧侶たちの事すっかり忘れてたわ」

女魔王「まぁ、このまま死なれても困るし。さっさと帰るに越した事はなさそうねェ」

女魔王は盗賊の頭を掴むと引きづるようにしてその場を移動した。

魔剣『あ、でもどうやって帰ろう? アイツ倒したのに僕たちまだこの変な世界の中だよ』

女魔王「ふむ……。見るところ、やはりコレは空間魔法の一種のようね」

女魔王「元気百倍状態の余にとってこんな魔法を破るのは大した事じゃないわ」

女魔王は盗賊を一旦放り投げると、魔剣を鞘から引き抜いて

女魔王「破ァッッッーーーーーーー!!!」

何もない空間を切り裂いた! すると・・・

魔剣『おぉ〜空間裂けて出口ができたよー! これで元いた場所に戻れるね』

女魔王「やはり大した事なかったわねェ。疲れたしさっさと宿行きましょ」

盗賊「うっ……」ズリズリ…



≪…………何ということだ≫

≪アイツ、人間じゃないどころか! あれは!≫

≪えっと、何だろう……≫
101 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:26:59.33 ID:WeLvGvH60
宿屋


女勇者「ぐごぉー! ……すぴー……うぇ、えへへ……」

女勇者「おなかぁ……いっはい、へふほー……じゅるり」

僧侶「うぅ、うぅ! えーんっ……ぐすっ……!」

僧侶は乱れた衣類を纏い、シーツを頭からすっぽり被って部屋の隅ですすり泣いていた。

僧侶「怖かった、すごい怖かったぁ……!」

僧侶「もうダメかと思った。もう色々終わりかと思った」

僧侶「うぅ……」どんより

僧侶は少し人間不信気味になった!


どんどんどんっ!


僧侶「ひっ!? だ、誰ですか…!」

< 僧侶ちゃん開けてー 僕たちのおかえりだよー

僧侶「この声は」

< 盗賊ちゃんが死にかけだから助けてあげてー

僧侶「えぇ〜!?」

扉を開けるとそこにはボロボロになった盗賊を持った

女魔王「今帰ったわよ、僧侶」

僧侶(誰――――――!?)

゛女゛魔王がいた!
102 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/05(土) 04:31:10.58 ID:WeLvGvH60
ここまで。俺の地の文はラノベ以下というのがよくわかるぜ
とにかく、スレまたいで続いてた話がようやく終われたよー
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/05(土) 08:04:09.56 ID:jMcVLuT/o
女のままなのか
夜王喰って魔翌力回復かな?
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 11:09:31.21 ID:S44C6cFDO
メルエムみたいな能力なのかね
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 11:50:14.73 ID:yuZiC3No0
魔王が女のままってことは盗賊はやばくないかw
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 12:11:56.97 ID:9syWi3pDO
流石に魔王って事か……
だが女魔王だと非常にマズい
戦士がただの女好きになってしまう……
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/05(土) 12:52:49.60 ID:Z3v3IwsNo
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 15:17:54.83 ID:qdivpPbIO
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/05/05(土) 15:29:13.99 ID:oTIXFqKMo
さすがの魔王ちゃん
おつ
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 18:11:01.69 ID:AvO9UH3IO
つまり盗賊は裸+盲目のままか
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/05(土) 18:38:59.73 ID:te5lagrio
盗賊ってボス戦遭遇率高いよな
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/06(日) 03:05:58.11 ID:cL8v5JHl0
僧侶ちゃん・・・ただでさえ過去のことあるのに・・・
113 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:32:48.40 ID:lBrIKXty0
僧侶「どなた様でしょうかっーーー!?」

女魔王・魔剣「『はぁ?』」

魔剣『僧侶ちゃん、もしかして寝ぼけてたり? 僕たちだよ〜』

僧侶「ま、魔剣ちゃんはわかるの! わかるけれど…」

僧侶「こちらの方に見覚えがなくて」

女魔王「……あ?」

女魔王「あれから随分長く共に旅をしてきたわよねッー? どうして覚えてないとか申せるのかしら!?」

僧侶「知りません、知りませんっー!」ブンブン

魔剣『勇者ちゃんだよ』

僧侶「……は?」

僧侶「じー……」じろじろ

女魔王「……何よ」

僧侶「言われてみれば、面影が…あるような? ないような?」

女魔王「どうでも良いわ。それより盗賊はこのまま放って構わないの?」

女魔王「直に死ぬわよ。このままでは」

僧侶「そ、そうだ! 盗賊さん……」

盗賊「」ゼンラー

僧侶「……」

僧侶「きゅう」

僧侶は顔を真っ赤にして倒れた!

魔剣『何でー?』
114 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:33:19.99 ID:lBrIKXty0
盗賊「」←シーツ被せ

僧侶「……何があったか後でかならず聞かせていただきますからね!」

僧侶は回復の呪文を盗賊に唱えた!

盗賊「うっ」

魔剣『大丈夫ー? 完治ー?』

僧侶「したとは思うけれど。疲弊し切って体を起こせないのかしら」

女魔王「盗賊起きなさいよ、傷は全部治ったのよ」

盗賊「……」

僧侶「無理に起こす必要はありません。むしろゆっくり寝てもらった方が」

僧侶「それより、本当の本当にあなたが勇者様? まだ納得がいかないというか」

女魔王「余は何度も同じ事を申すのは嫌いだわよ! この阿呆めが」

僧侶「……この口の汚さっぷり。まさか本当に……?」

女魔王「汚いとは何ッ!?」

僧侶「あっーいえいえ!! らしい感じというか!」

僧侶「コホン…わかりました。今は信じます。では、なぜそうなったか」

僧侶「そして、私たちに黙って何をしていたのか! 詳しく教えてください」クワッ

女魔王「むっ…」

魔剣『僧侶ちゃんの顔がおっかないよぉ』

盗賊「……」

盗賊(声はする。するが……何も見えない)

盗賊(まさかな)
115 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:34:07.70 ID:lBrIKXty0
次の朝


女勇者「ん、ん〜! いい目覚めだー!」ぐぐっ

女勇者「…………それで」

女勇者「どうしてお説教なんてしてるんです?」


僧侶「ガミガミガミガミガミガミガミガミガミ」

女魔王「もう許せよ、余は眠いのよ……!」

僧侶「全く信じられません!!」


女勇者「あのー」

魔剣『約束破っちゃった上にお金勝手に使ったから、僧侶ちゃんご立腹なの』

女勇者「えぇ!?」

魔剣『帰って来てからずっとアレだよー』

女勇者「はぁ……ていうか、お説教を受けてる人は誰?」

女勇者「僧侶さん。知らない人にお説教ですか?」

僧侶「知らない人なんかではありません! この方は勇者様!」

女勇者「またまた冗談を〜」

僧侶「冗談でこんな顔ができますか!?」

女勇者「……えぇー」

女魔王「……」かく、かく

女魔王「ぐごー」

僧侶「あ、寝させませんよ!」ペチーン

女魔王「いやあぁっ」
116 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:34:50.03 ID:lBrIKXty0
盗賊「……おい、朝っぱらからうるさいぜ」

女勇者「師匠もいたー! って、師匠は見た目変化なしです?」

盗賊「幸いなことにな。それよりすまん。金を…」

僧侶「全くです! とっても深く反省してください!」

女魔王「そもそも盗賊がカジノに興味持つのが悪い」

盗賊「てめぇも行く気満々だっただろうが!」

僧侶「五十歩百歩、どちらも悪いですよ」

盗賊「はい……」

僧侶「それより盗賊さん。盗賊にも勇者様のお話を聞く限り、呪いがかかっているそうなんですが」

僧侶「正直に隠さずに言ってください。どんな呪いに?」

魔剣『全裸に葉っぱ一枚だよねー?』

女勇者「あ、なんか懐かしい」

盗賊「そういう反応を求めちゃいねぇよ…」

盗賊(盲目の呪いにかかったなんて知られては、変に心配される)

盗賊(まぁ、なんとかなるだろう)

盗賊「それだけだぜ。俺は比較的軽く済んだ」

女魔王「ん? 他にも何か」

がしっ

女魔王「んんー!!」もがもが

盗賊「余計な事は言わなくていいんだ。言うぜ、お前が魔法を今使えないことを」

女魔王「……チッ!」ぱしっ
117 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:35:21.18 ID:lBrIKXty0
盗賊「魔剣もだ。いいな」

魔剣『……あー!!』

僧侶「へ、どうしたの?」

盗賊「何にも……それより着る物が欲しい。武器もだ」

女勇者「ははーん。文字通り無防備な状態なわけですね〜」

女勇者「良かったら私が買ってきます! 師匠!」

盗賊「悪いな、任せるぜ」

女勇者「あいあいさー!」たたた

僧侶「全く、これでは本来の目的も果たせそうにないですね」

女魔王「……おぉ、痴女かぁ」

女魔王「魔剣。どう? 既に奴はこの町を立ち去った後かしら」

魔剣『ちょっと待ってね〜。くんくん』

魔剣『……いないっぽいです!』

盗賊「ほんと、来た意味なしだぜ」

僧侶「大丈夫。またあとを追えばいいだけですよ」

僧侶「それより優先しなければいけないのは貴方たちの呪いの解呪です」

女魔王「まぁ、余もこの姿には飽きたわけだし。今後にも支障がありそうだし」

女魔王「何より女勇者というのが被る。女の勇者はこれ以上は余計であるわ」

僧侶「そこなんですか」
118 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:35:59.65 ID:lBrIKXty0
盗賊(解呪、そうだ)

盗賊「俺は自分の呪いよりも優先しなければいけない事があるっ……!」

盗賊は立ちあがった。

僧侶「ちょ、ちょっとー!!?」

その姿は一部を隠し、ほぼ全裸であった!

僧侶「ダメです! ダメ! まずは服を着ないと…///」

盗賊「着てる暇なんてない! 俺は! あいつを」

女魔王「盗賊、何処へ行くつもりかしら」

盗賊「……教える必要はないね。俺の問題だ、お前らには関係ない」

僧侶「そんなに勝手決めつけたりしないで、話を。ね?」

盗賊「いい、放って置いてくれ! 俺は1人でも!」よろよろ

魔剣『あっ』

盗賊「うわわぁ!?」ドテーン

盗賊は出口と別の方向へ向かい、転んだ。

女魔王「ぷぷー! ダサいであるわねッ」

僧侶「盗賊さん!」

僧侶は盗賊を起こした。

盗賊「ぁ……」

僧侶「どうしたんですか。盗賊さん、様子がおかしいですよ」

盗賊「く、くそ……!」プルプル
119 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:36:26.51 ID:lBrIKXty0
僧侶「立てますね。まだ傷が完全に癒えてなかったのかも」

魔剣『僧侶ちゃん! 盗賊ちゃんはねー』

盗賊「うるせぇ!!」

盗賊「黙っててくれ…今はいい…。余計な事話すな」

僧侶「余計な事って、何ですか」

女魔王「盗賊よー?」

女魔王「貴様は余計な心配をかけさせない為とか、くだらんこと考えておるのだろうが」

女魔王「それでは帰って余たちに迷惑かけまくりよ。正直そういうのうっとおしいわ」

盗賊「だ、だって」

僧侶「盗賊さん。本当のことを言う勇気は時には必要ですよ」

僧侶「私たち、もう長い事一緒に旅を共にした仲間じゃないですか。信頼してください」

魔剣『そんなにみんなのこと信用ないー?』

盗賊「そうじゃないけど…迷惑は…」

僧侶「迷惑なんてありません。盗賊さん、隠し事はなしにしましょう?」

僧侶「大丈夫ですから。私たち、みんな全部受け止めますから」

盗賊「……や、やれやれだぜ!」

盗賊「負けたぜ。口じゃ勝てる気もしない…話せばいいんだろう」

女魔王「素直じゃないわね盗賊! そういう捻じれた糞の様な性格が盗賊らしいけど」

魔剣『捻じれ糞なんて言ったら可哀想じゃない?』

盗賊「……」
120 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:36:54.20 ID:lBrIKXty0
僧侶「盲目……ですか」

魔剣『なーんにも見えない真っ暗状態なんだって!』

僧侶「よく黙っていられる気になりましたね…」

盗賊「だから、俺の事で迷惑かけるわけには」

僧侶「黙っていられた方が迷惑です!! 先程勇者様が仰った通りですよ!?」

僧侶「もしそのままでいたら大変だと自分でもわかっていたでしょう」

盗賊「……」しゅん

僧侶「よかった。先に聞いておけて。やっぱり解呪を優先させるべきです」

女魔王「貴様は呪いを解くとかできぬの?」

僧侶「私では、ちょっと。大僧正様クラスの神官なら可能かもしれませんが」

僧侶「大きな教会がある町なんですけどね、そこへ行って……あ」

僧侶「ダメだわ。盗賊さんを連れて歩くには距離がありすぎる」

女魔王「盗賊はお荷物だわねェーーー!!」

盗賊「チッ…」
121 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:37:24.84 ID:lBrIKXty0
魔剣『そいじゃ、どうする?』

僧侶「うーん……魔法の町を目指してみましょうか」

僧侶「比較的にはそちらの方がここからだと近いですし、何よりあそこには魔法関係の資料が沢山です」

女魔王「では、もしかすれば解呪の方法が書かれた書物があるかもと?」

僧侶「可能性としては大きいですよ。魔法は幅広いジャンルに分かれていますし、呪い魔法についての本も恐らくは」

女魔王「ふーん…他に思い当たる節もないし僧侶のいう町を目指しましょうか」

盗賊「……だから、そんな暇は俺にはなくて!」

僧侶「は?」

僧侶「……まだ何か隠しているというのでしょうかね」

盗賊「これだけはお前たちには関係ないんだ! 俺の問題!」

女魔王「妹か?」

盗賊「黙れっ!!」

僧侶「盗賊さん、いい加減にしましょうよ。私に同じ事を二度も言わせないで下さい…」


ばちーんっ!


盗賊「!?」

僧侶の平手打ちが盗賊に炸裂した!

魔剣『僧侶ちゃんがー!』

女魔王「よし、もう一度殴っても構わぬわよー!」

盗賊「お、おいっ……!?」

僧侶「まだ口答えする気ですか。もう一発欲しいですか!」

盗賊「いやいやいや!」
122 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:37:55.18 ID:lBrIKXty0
僧侶の平手打ち!

盗賊「がふっ!?」

僧侶「いい加減にしてもらいたいですよ、盗賊さん!」

僧侶「正直に白状なさい。きっと力になって見せますから」

魔剣『いつも以上に僧侶ちゃんが大きく見えるよ! 勇者ちゃんっ』

女魔王「胸はいつも通りまな板だけど……?」

僧侶「そこ! 少しお静かにお願いできませんか」

女魔王・魔剣「『しーん……』」

僧侶「さぁ、言ってください。言ってくれなければ怒りますからね、私」

盗賊(既に怒ってるような気がするんだが)

盗賊「……確かな情報ではないが」

盗賊「どうやら俺の妹が、何者かの呪いにかかっているらしい」

盗賊「……俺は妹を早く助けたい。この手で。きっと俺の助けを待っているんだ、アイツ」

僧侶「妹さんが……?」

僧侶「あっ」

走馬灯のように、あの日の盗賊と盗賊妹のやりとりが僧侶の頭の中を駆け巡る!

僧侶「///」
123 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:38:27.07 ID:lBrIKXty0
盗賊「僧侶?」

僧侶「た、大変ですね! 一大事ですね!」

盗賊「あ、ああ…?」

魔剣『にしても呪い呪いって嫌になるよね』

女魔王「呪われし魔の剣がそれを申すのは滑稽よ」

魔剣『〜……』

僧侶「盗賊さん。今すぐ助けに行かなければという気持ちはわかります」

僧侶「でも、それにはまず貴方の呪いを先に解いてしまわなければ」

盗賊「だからそんな暇は!」

僧侶「助けに行くからには、そんな盲目なんて状態では話になりませんよ」

盗賊「うっ…」

女魔王「納得した? 盗賊よ。別に余としては貴様の妹なんぞどうでもよいが」

女魔王「余はさっさと元の姿に戻りたいのよ。さっさとー!」

盗賊「……わかったぜ。先に解呪してしまおう」

盗賊「もしかしたら魔法の町で呪いについての知識も色々蓄えられるかもしれん」

僧侶「そうです。焦らずとはいきませんが、少しはご自分の事も考えて」

魔剣『みんな盗賊ちゃんの味方だからねー?』

盗賊「……く、くっくっ///」


がちゃり


女勇者「うわぁーんっ!! たぶん変な装備掴まされましたぁっ」

「!?」
124 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:38:58.47 ID:lBrIKXty0
女勇者「ぐすんっ」

僧侶「一体どうしたんですか、いきなり」

女勇者「あのね…師匠の服とか、みんなの武器とか探しててねっ…ぐす!」

盗賊「まずは鼻をかんだらどうだ。お前」

女勇者「ううっ……ちーーーんっ!」チーン

女勇者「ふが、ふが」

魔剣『落ち着いたー?』

女勇者「はい……。それで、行商人って人からいいのあるよって言われて」

僧侶「……行商人?」

女勇者「有り金8割渡してくれれば凄いの売るって。それで私ってば」

僧侶「あ、有り金8割ぃ!? てことは…今残金」

女勇者「はい……」

僧侶「えぇー……」

女魔王「まぁ、元々余と盗賊がカジノで使った分もあったし、殆ど残ってない様な状態だったであるわよ」

女勇者「ですよねー!」

僧侶「開き直らないっ」

女勇者「ひーん……」
125 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:39:30.58 ID:lBrIKXty0
僧侶「というか、装備は売る前に見せてくれる筈でしょう。確認はしなかったのですか?」

女勇者「秘密の箱の中に詰めとくからって言われて、途中で開けちゃダメだよって言われて」

女勇者「宿屋に着いてから開けてみましたら…なんと!」

盗賊「ゴミ掴まされたってかよ…」

女勇者「ご、ゴミってほどでは〜……」

僧侶「いえ、ゴミですね。これは」

女勇者「あーんっ!!」ビィー

女魔王「貴様は真に使えぬ馬鹿者であるわね。この馬鹿ッ」

女勇者「ごめんなさいぃ……」

僧侶「まぁ、使えない物ばかりというわけではなさそうですし…ほら、これなんか」

僧侶は箱の中からひのきのぼうを手に取って見せた。

女魔王「ゴミであろう?」

僧侶「初期段階で装備するかもの武器ですね…」

僧侶「女勇者さんの代わりの武器にはなるのでは? 何も持たないよりはマシです」

女勇者「えぇ…勇者の剣からひのきのぼう…」しゅん

女勇者はひのきのぼうを装備した!
126 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:40:31.47 ID:lBrIKXty0
僧侶「こっちの……安そうな杖も私の武器になるかも」

僧侶は安そうな杖を装備した!

女魔王「一気に貴様らみすぼらしいわね!」

僧侶「な、ないよりはいいのですから! ね!?」

女勇者「これ、先にある道が二つ分かれてるときとか……いいかも」

女勇者はひのきのぼうで遊んでいる!

僧侶「……はぁ」

盗賊「おい、俺が使えそうな得物はないのか」

僧侶「盗賊さんには、私のナイフを貸しておきます」ス

盗賊「いいのかよ?」

僧侶「ええ。どうせ戦闘には参加させませんから。護身用にです」

盗賊「へ……」

僧侶「当たり前です! 目も見えない人を戦わせるなんて自殺行為に等しい!」

魔剣『盗賊ちゃんにはしばらく戦力外通告を言い渡そう!』

女魔王「まぁ、使い物になりそうにないものねェ。ふふふっ!」

盗賊「レベル差が埋められちまう……」

女勇者「それより師匠。代わりになりそうな服あったから装備してみて」

女勇者「いい加減それ隠してくれないと、目のやり場に困りますしー……あはは」

盗賊「ちっ!!」

盗賊は衣類をぶん取った。
127 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:41:04.53 ID:lBrIKXty0
女魔王「ていうか、その全裸に等しい状態が呪いによるものだとすれば」

女魔王「衣服など着れるのかしら?」

僧侶「あっ」

盗賊「……おい、誰か服着るの手伝ってくれ。上手く着れない」もぞもぞ

女勇者「私が着せてあげますねー!」

女勇者は盗賊に布の服を装備させた。

女勇者「じゃんじゃじゃーん! よっ、師匠男前ー!」

僧侶「ただの布の服でそれは、ちょっと…」

盗賊「……ん」

盗賊「お、おい…服がなんだか…」

布の服がはち切れて盗賊から脱げてしまった!

盗賊「……おい」

女勇者「し、師匠! 太ったんですかー!」

僧侶「…ああ、やっぱり」

女魔王「な?」

魔剣『盗賊ちゃんのエッチ〜』

盗賊「うるせぇ! 畜生っ」
128 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:41:39.01 ID:lBrIKXty0
魔法の町


ペロ「なぁ、本当にこんな恰好でバレたりしない…?」←ローブ装備中

戦士「しないしない。大丈夫さ、この町の奴らも全身黒ローブみたいなのばっかりだ」

戦士「それにバレる事があっても俺はお前を見捨ててさっさと」

ペロ「冗談キツイっすよぉー!!」

戦士「ははは…冗談、ね。あー」

ペロ「本当にやめてよねぇ……」

戦士「さー、武器屋はどこにあるかね?」

ペロ「無視しないでよねぇ!」

戦士「わかったってばー」

ペロ「人間がうようよいる町なんて長い事滞在してたくないぜ…。早いとこ用事済ませてくれよぅ」

戦士「そんな事言って、魔物がうようよの魔王城に帰ったところで、お前どのみちヤバいぞ」

戦士「どうだ? 諦めて人間たちの中で生きたらさ。お前悪い魔物じゃないし、俺が何とかしてやるよ」

ペロ「じょ、冗談! お前もさっきから冗談好きだねぇー」

戦士「割とマジで言ってみたんだけどな。魔物と上手く共存できたら良いと思って」

戦士「そしたらさ、あの子のように哀れな結末を辿る人もいなくなるかなと……」

ペロ「はぁ? あの子ぉ?」

戦士「俺の小さな友達だよ。もうこっちにゃいないけどよ」

ペロ「何の事やら……」
129 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:42:25.20 ID:lBrIKXty0
戦士「……さすが魔法の町というだけある」

戦士「俺向きの武器が全くと言っていいほどねぇ!」

ペロ「じゃあ別の町で買うとかしたらいいじゃん〜」

戦士「ごもっとも。しかし、ここにはまだ1つ用がある」

戦士「この先に大きな図書館があってな。色々な資料が読めるんだ」

ペロ「調べ物? そういうの似合わないよ、お前」

戦士「悪かったですねぇー…似合わないとしても調べておく必要がある」

ペロ「何をだね?」

戦士「世界樹について」

戦士「俺たちはアレを知らな過ぎる。まぁ、こっちの世界に世界樹について資料がある可能性があるかどうかだが」

戦士「それにエルフについても俺はよく知っておきたい。あの子へ何かしてあげられる事はないかってな」

ペロ「お前……。よくやるよねぇ」

戦士「何言ってんのよ、ペロも調べるんだからな。俺だけの話じゃないの」ばしっ

ペロ「おぅふ!?」

戦士(勇者殿、パーティへ復帰するのはまだ先の話になりそうっス。馬鹿野郎で勝手なこの俺をどうか許して下さい)

2人は図書館を目指した。
130 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:43:23.83 ID:lBrIKXty0
一方、そのころ・・・


女戦士「……」

武闘家「ねぇ、なんかアンタ顔色悪い感じなんですけど」

女戦士「どうしたお嬢様。私を気にしてくれているのか」

武闘家「べ、別にー! どうぞ勝手にぶっ倒れてもいいのよ!」

女戦士「はぁ…はぁ…はぁ…」

武闘家「ちょっと? 本当にぶっ倒れるつもり?」

武闘家「ねぇー! この人ヤバそうよー!」

3「何だと!?」

3は女戦士へ駆け寄って肩を担いだ。

女戦士「いい…自分で歩ける…余計な真似は」

3(こいつ、今日が体の限界だというのか)

3「バカを言うな! 貴様に今消えられては連れてきた意味がないではないか!」

女戦士「はぁ、はぁ……」

3「あと少しで目的地だ。見ろ、目と鼻の先だぞ」

武闘家「……あの町って」

3「あの地で眠るとある魔物を目覚めさせれば、貴様の体の腐敗は収まる」

3「もう長らく俺に使えられるんだぞ」

女戦士「好き勝手…言ってくれては…困るな……はぁ、はぁ」

女戦士(しかし、ここで再び朽ちるわけには。私にはまだすべき事が)


女戦士「あ――――――」ガクン


武闘家「オバサン!? ねぇ、大丈夫なの!?」

3「安心しろー……ここだ。この町なのだ」

3(待っていろ、死霊使い)


その町は、かつて魔王が滅ぼし、再生された盗賊の故郷。

側近の死体が未だ地に眠る町であった。
131 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/07(月) 02:45:59.13 ID:lBrIKXty0
ここまで。装備ちょい変わったし、書いておきますねー




現在装備


魔王
武器:魔剣
防具:魔王のマント

女勇者
武器:ひのきのぼう
防具:勇者の鎧

盗賊
武器:僧侶のナイフ
防具:1枚の葉っぱ

僧侶
武器:安そうな杖
防具:きぬのローブ、皮の帽子
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 04:50:30.15 ID:gjGbKji40
乙!
いろいろ進展してきたな。側近復活も近そう!!
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 07:11:41.68 ID:/DkcLhzDO
女魔王と巡り会ったとき兄貴なのかただの気のいい兄ちゃんなのかがわかるな
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/07(月) 08:08:26.43 ID:dO/J66Wto
確かに装備は新しくなった、新しくなったが…
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 09:21:36.98 ID:DqUUxboIO
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/07(月) 17:40:05.43 ID:L4J7nLdIO
盗賊前途多難に程があるな乙
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/05/08(火) 22:07:55.10 ID:c6LZYIe0o
乙乙!
装備しょっぺぇww
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/08(火) 22:54:49.75 ID:evB25y2Z0
女勇者ちゃんてばアホ可愛いんだから
僧侶ちゃんはいい女っぽい。まぁ、メインヒロインは魔剣ちゃんだが
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 03:04:46.91 ID:69/5ZsuW0
装備酷くなったなw
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/09(水) 15:31:35.00 ID:Rj1ocVKjo
吸収して魔翌力が戻ったのかが気になるところ
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 09:29:34.72 ID:WfiRxFU3o
メインヒロインは側近かと思ってた。
・・・死んでるけど。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 13:38:14.18 ID:bTaF0AGDO
え、メインヒロインって戦士だよ?

今は遠距離恋愛で愛を育ててるんでしょ?
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 15:05:16.69 ID:CDBkw3mD0
今は女の魔王ちゃんがヒロインでしょう
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 15:50:50.82 ID:zp+FcSuDO
魔剣ちゃんが一番可愛いのだけは確か
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 16:40:56.32 ID:1ahHsD+x0
投げられてばかりだけどな、魔剣ちゃんは
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 21:50:10.45 ID:6MfQsmoIO
魔剣ちゃんの健気さにはいつも涙が
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 20:59:29.61 ID:+so0zE7DO
なぜあんなに魔剣ちゃんは可愛いんだ
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/11(金) 21:17:54.94 ID:21BS0P1Ko
まけん気が強いからさ
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/11(金) 22:10:31.19 ID:KJ9u9ucK0
魔剣ちゃんの船での話の伏線はいつ回収されるかな?
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/12(土) 03:49:11.71 ID:/qHcQRqJo
>>148に一票
151 : ◆OQ6B.FS0lg [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:45:10.06 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「……」

僧侶「もう少しで魔法の町に着きますよ。頑張ってください」

盗賊(僧侶ちゃんに手を繋いでもらってる。僧侶ちゃんに手を繋いでもらってる!)

盗賊(が、なぜ俺は今嬉しくないんだ。理解できん。最高のシチュエーションなのに)

魔剣『ねぇ、盗賊ちゃんが変』

女勇者「そりゃ変にもなりますよ。色々大変な状況に置かれてるんだし」

女勇者「裸にシーツ一枚纏ってる状態だし!」

女魔王「シーツだけでも纏えただけ良かったわねェ、盗賊」

盗賊「すーすーしやがるけどな!」

僧侶(解呪を急がなければ、世間様の盗賊さんを見る目が冷たくなっていく一方だわ)

僧侶「盗賊さん。頑張りましょうね。妹さんの為にも、ご自身の為にも!」

女魔王「余はどうでもいいっていうの? 盗賊の事ばかり気にして」

女魔王「もう女の姿には飽き飽きしてるのよ。町の男たちの見る目が実にキモい!」

女勇者「イイ身体してますもんねぇ〜……ジュルリ」

僧侶「お、女勇者さん。最近おかしいですよ」

女勇者「え?」

僧侶「なんだか……女の人を見る目が……その」

女勇者「素敵な人に憧れるのは女子としてフツーですよ! フツー」

僧侶「そ、そうでしょうか?」


魔王一行は呪いを解くために魔法の町を目指す。

女体化、全裸(一部除き)、盲目の呪いをはたして解く事ができるのだろうか。
152 : ◆OQ6B.FS0lg [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:45:55.22 ID:+Zl88RNJ0
盗賊(しかし、この状況を他の奴らから見られるとどう解釈されているのだろうか)

盗賊(勇者は呪いのおかげもあって、体は女。そして、僧侶ちゃんに女勇者)

盗賊(つまり男は俺だけというわけであって)

女勇者「師匠、何を難しそうな顔して」

盗賊「へ?」

女勇者「やっぱり妹さんの事? 心配だよね……わかります」

僧侶「あ…」

僧侶(一体全体、盗賊さんと盗賊さんの妹さんの関係って、どうなのかしら)

僧侶(一度は気にしないとした話だったけれど、どうしてもやっぱり……)

僧侶「大切な妹さんですものね。かならず助けに行きましょう」

女魔王「待って」

僧侶「はい? 勇者様?」

女魔王「余は別にこやつの妹なんてどうでもよいのよ?」

僧侶「……?」

女魔王「誰が助けに行くと申したの。余は嫌よ、そんな意味のない寄り道なんて」

盗賊「あっ…!?」

女勇者「ちょー!? それ酷すぎませんかぁ! 家族のピンチなんですよ!」

僧侶「そうです! 助けに行くのが流れとしては自然です」

魔剣『流れって』
153 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:47:40.20 ID:+Zl88RNJ0
僧侶「そして貴方は勇者様! 困っている人がいれば助けてあげるべきなのですよ?」

女魔王「馬鹿を抜かせッー! 本来の目的から離れ過ぎておるのよ!」

女魔王「余にとって、勇者にとって優先すべきは魔王討伐。それをおいて他に何がある!」

僧侶「ですから人助け!」

女魔王「余は偽善を働く気は毛頭ないであるわッ! 親切とは余計なお世話の事よ」

女魔王「行くなら貴様らだけで行けばよい」

魔剣『そーだそーだ! 勇者ちゃんの言う通り!』

女勇者「ま、魔剣さんはこっちの味方だと思ってたのに……」

魔剣『勇者ちゃんが言う事は絶対なのです』

盗賊「……いい。それで構わん」

盗賊「元よりお前たちには関係のない話だと言ったぜ、俺は」

僧侶「盗賊さん!?」

盗賊「確かにこれは勇者の目的とは全く関係がないんだ。無理に付き合う必要ない」

盗賊「解呪が成功したら、俺だけで妹を助けに向かう。今の目的が済んだら俺は」

盗賊「パーティを抜け」

女勇者「そんなのいかんですよっ!!」バチーン

女勇者の拳が盗賊へ炸裂!

盗賊「ぐふっ……!?」

女勇者「師匠わりと死にやすい方でしょ。1人でいたらすぐ棺桶行きです!」

盗賊「て、てめぇ!!」
154 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:48:34.30 ID:+Zl88RNJ0
女勇者「いいじゃないですか! 関係ない事だとしても、私は無理矢理介入しますよ」

女勇者「私、これでも勇者だから。勇者は勇者さん1人じゃないから」

女魔王「あぁん?」

女勇者「魔王退治の事ばっかり考えてる勇者がいるなら、人助けの事ばっかり考えてる勇者がいてもいいでしょ…」

女勇者「例え偽善だとしても、それで人が救えるなら私は構わないの」

盗賊「おいおい……」

女勇者「勇者さんは魔王倒して世界を救えばいいです! 私は目の前で救いを求めるたった1人を救えるような勇者になり
たい!」

女勇者「……ゆ、勇者さんと僧侶さんは魔王退治へ行ってください」

僧侶「私も!? わ、私だって盗賊さんの妹さんを」

女勇者「僧侶さんまでいなくなっちゃったら、勇者さんが1人ぼっちになっちゃう」

女勇者「私、1人ぼっちで旅してたから寂しいのって分かるし、怖かったし」

魔剣『僕もいるから1人ぼっちじゃないもーん!』

女勇者「ごめんなさい。それでも、隣に誰かいてくれるだけでも違うから」

女魔王「ふーん……」

女勇者「……勝手な事言っちゃってごめんなさい。勇者さん、どうですか」

女魔王「いいんじゃね」

僧侶「本気ですか!?」

女魔王「戯言ではあるが、余はそれで構わないわ」
155 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:49:28.47 ID:+Zl88RNJ0
魔剣『でもでも、みんなバラバラになっちゃうよ。戦士ちゃんみたいにいなくなっちゃうよ?』

女魔王「余は去る者の後を追う様なみっともない真似はせんわ。良いじゃない、そうしたいのなら」

女魔王「なんだったら、僧侶も盗賊の方へ行けばよい。余は全然寂しくないもん」

僧侶「えっ……。ですけど……」

女魔王「構わんのだわ」

女魔王「それに余1人の方が強いし、サクサク進めるし」

女魔王「なにより気楽なのだわ」

僧侶「そ、そんな」

盗賊「変な強がりなんて見せなくていいぜ。いいんだ、俺だけが去ればいい」

盗賊「お前も変な事言ってこいつを困らせてやるなよ」

女勇者「そういうつもりで言ったんじゃ! 私は師匠が心配で」

盗賊「そういった親切が余計なお世話なんだよ。てめぇの我儘で無理矢理すんじゃねぇ」

盗賊「うっとおしいんだ。そういうの」

女勇者「!!」
156 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:50:41.77 ID:+Zl88RNJ0
女勇者「えっ……え……?」

女勇者はその場にぺたりと座りこんでしまった。

女勇者「私、ただ師匠の助けになりたくて…恩返ししたくて…」

盗賊「恩返しなら返す対象を間違えてるな。俺ではなく、そっちだ」

僧侶「……そろそろ行きましょう? 立てますか」

女勇者「私間違ってたかなぁ…ウザかったのかな…」ブツブツ

女魔王「動く気がないのならここへ捨て行くわよ。荷物が少なくなって助かるし」

僧侶「勇者様。言い過ぎです」

僧侶は女勇者の手を引いて立ち上がらせた。

女勇者「……」しゅん

盗賊(俺とした事が、こんなに気遣ってくれていたのに。キツイ言い方しかできねぇ)

盗賊(ごめん、俺の一番弟子)

盗賊は他のメンバーを放ってさきに町へ歩き始めた。

魔剣『盗賊ちゃん! 前危ないよー』

盗賊「ぶっっっ…」ゴツン

女魔王「ださー!」
157 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:51:27.40 ID:+Zl88RNJ0
魔法の町


僧侶「到着です。一休みは?」

女魔王「必要ないであろうよ。大した距離を来たわけではあるまいし」

盗賊「ああ、早く図書館へ向かうべきだぜ」

僧侶「……女勇者さんはどうでしょうか?」

女勇者「問題ないですよ! 早く2人の呪いを解呪する為にも図書館へ!」

魔剣『あれ、なんか元気になってる〜!』

女勇者「私は元気なのがとり得ですから! はっはっはー」

僧侶(無理していないか少し心配だわ。空回りしてしまわなければいいけれど)

女勇者「魔法関連の装備が充実しちゃってますねぇ〜」

女魔王「金が無いのだから品物なんて見て回るでないわ! 貴様ならまた騙される!」

女勇者「し、信用ない!?」

女勇者「…あ! ほら、アレとか師匠の武器にピッタリじゃ」

盗賊「すまんが、見えん」

女勇者「……あー」

盗賊「ほら、よそ見してないでさっさと行くぜ。本当に置いて行くぞ」

女勇者「待って待って! も、もう少しー!」


どかーんっ!!!


女勇者「うあ!?」
158 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:52:08.59 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「な、なんだ今のデカい音は」

魔剣『どっか爆発したみたいー』

女魔王「また爆発か。あまり良い思い出がないわね」

女勇者「ビックリしたー……」

僧侶「お怪我はありませんか? 一体何が」

おっさん「お嬢ちゃんたち、外から来た人らかい」

女勇者「そうだけど。おじさん、さっきの爆発が何かわかるの?」

おっさん「この町じゃしょっちゅう起きる事さ。ほら、あそこの屋敷」

女勇者「屋敷? うわ、ボロっちい……」

女魔王「あのボロ屋敷の解体工事でもしておるの?」

おっさん「姉ちゃん、すげぇおっぱいだな!」

女魔王「おっぱい?」

僧侶「セクハラはやめてください! この方は勇者様なのですよ!」

おっさん「え、勇者って……指名手配中の」

僧侶「あー!! 違います違いますー!!」

僧侶「よ、よく見てみたら…勇者様、じゃないかも?」

おっさん「え?」

女魔王「僧侶貴様ッ! 余は正真正銘の勇者であるわよ!」

僧侶「勇者様ぁ〜……うぅ……」
159 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:52:53.33 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「それでその屋敷がどうしたっていうんだ」

おっさん「あー、そうだね。まぁ、大した話ってわけではないんだが」

おっさん「あの屋敷にはたちが悪い魔女が1人住んでいてな。よく魔法薬の研究をしては爆発を起こしているんだ」

女魔王・僧侶「魔法薬?」

女勇者「あ、知ってるかも。昔、お父さんが買ってきてましてね」

女勇者「薬を飲むとその人に何らかの効果が付与されたり、解毒してくれたり」

僧侶「それはつまり、回復魔法の代わりとなれる薬なのでしょうか?」

おっさん「そうだね。そういう代物だと考えるべきだろう」

盗賊「だがそんな便利な物、今まで店に並んでいるところを見た事なかったが」

おっさん「そりゃそうだ。魔法薬を作れるのは代々あの屋敷に住まう魔女の一族だけだから」

おっさん「国から魔法薬精製の特許を頂いているらしいんだが、彼女たち一族は頑なに店へ置こうとはしないのさ」
160 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:53:34.23 ID:+Zl88RNJ0
女勇者「え? じゃあお父さんはどうやって買ってきてたんだろ」

女魔王「盗んだのではないのー」

女勇者「お父さんは悪い人じゃないですよ!」

おっさん「さぁ。魔女から直接買ったのか、魔女が裏に売りに出した物を買ったのか」

盗賊「どっちみち、話を聞いていると良さ気なブツだとは思えなくなってきたぜ」

おっさん「俺も大した事は知らんがね。なるべく関わりになりたくないし…」

僧侶「…あまりこの町の方々からはよく思われてなさそうな様子ですね」

女魔王「余には関係のない事。興味すら沸かないし、さっさと図書館とやらへ行くであるわよ」

おっさん「それより姉ちゃん。おっさんと良い事しようよ」

僧侶「なんと唐突……!」

魔剣『僕の勇者ちゃんに色目使うなぁー!』

おっさん「剣が!」

僧侶「し、失礼しましたぁー!!」がしっ

女魔王「は、え?」


ぴゅー


おっさん「乳が弾んでいる……」
161 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:54:16.64 ID:+Zl88RNJ0
図書館


女魔王「僧侶よ、なぜあの男は余の乳にあれ程の関心を示すの?」

僧侶「知りませんっ」

女勇者「男の人は胸が大きいの好きじゃないですか。ねぇ、師匠?」

盗賊「俺に振るな!」

魔剣『ともかく早く解呪しなきゃ僕の勇者ちゃんに変な虫がつく……』

女魔王「何が貴様のであるか! 駄剣めがッ」

魔剣『もっと罵倒してもいいんだよ!』

盗賊「永遠馬鹿やってろ……」

「図書館ではお静かに」

僧侶「あ、すみませんでした…」

女勇者「そうだ! あの、私たち呪いについての本を探してるんですけど」

「呪い? 一纏めに呪いと言われましても色々ありますし、そこを詳しく言っていただけると探し易いのですが」

盗賊「盲目と防具装備不可の呪いだ」

女魔王「あと女体化のッー! 忘れないでよ貴様ッ!」

「随分な呪いですねぇ…。わかりました、探してみましょう。ここでしばらくお待ちくださいね」

女勇者「ありがとうございまーす」

僧侶「見つかるといいですね。本」

盗賊「無くては困る……。あっ」

魔剣『どったのー?』

盗賊(心体拘束の呪いについての本も頼むべきだったか)
162 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:55:20.23 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「」ス

魔剣『盗賊ちゃん?』

盗賊「本を探してくる。お前たちはここにいろ」

女勇者「あのお姉さんが帰ってきたらもう一度頼めばいいんじゃ」

盗賊「いやいい。黙って待ってられないんだ」

僧侶「……盗賊さん。度々忘れてますけど、あなたは今盲目状態ですよ」

僧侶「本を探すどころか、読めないじゃないですか」

盗賊「うっ」

女魔王「マヌケー」

魔剣『やーいやーい!』

盗賊「喧しいぞっ」

女勇者「師匠、もしかして妹さんの呪いの……?」

盗賊「……色々と知っておく必要がある」

女勇者「やっぱり、私師匠についてく」

盗賊「何度俺に同じ事を言わせるつもりだ? いい加減にしろよ」

女勇者「だって…」

女魔王「好きにやらせておけば良いのよ。気が済むまで足掻いていれば」

盗賊「そうさせてもらう」

僧侶「ダメです。無茶はやめてと言ったじゃないですか」

僧侶「もう一度話合いましょう? この後どうするか」

女魔王「面倒臭いから結構であるわ!」

僧侶「もうっ」
163 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:56:00.49 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「話合う必要はない。俺は1人で行く」

魔剣『強情ですねー』

盗賊「僧侶は仲間を頼れと言ってくれたが、さすがに俺だけの事情に付き合わせて本当の目的を放置させるわけにはいか
ん」

女魔王「そうだわね。勇者の剣も取り返してない」

女勇者「忘れてた…」

盗賊「だから、俺の事は放っておけ。俺が抜けてもこのパーティに支障は何らない」

僧侶「あります。盗賊さんは貴重な戦力でもあるのですから」

魔剣『今は全然だけどね〜』

僧侶「そこは言わなくていいの!」

僧侶「とにかく、勇者様が折れてくれれば済む事なのですよ? 貴方がこの件に少し付き合ってくれたら」

女魔王「やーだー」

僧侶「〜……」
164 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:57:05.60 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「というわけだ。決まりだな」

僧侶「勝手に結論出さないで下さいよ!」

女勇者「……師匠は私たちに一緒にいられると邪魔?」

盗賊「ああ、邪魔だね。足は引っ張るし」

盗賊「必要ないんだよ。てめぇらは」

女勇者「うぅ…」

魔剣『またまたぁ、本心じゃないくせに〜』

魔剣『盗賊ちゃんはいじっぱりだなー』

盗賊「言ってろよ。俺は勝手させてもらうからな」

盗賊「不満だってのなら、このパーティから追い出しちまえばいい」

女魔王「それは絶対にしないわ」

僧侶「それでこそ勇者様です!」

女魔王「盗賊が居らんと弄り倒せる奴がいなくなってしまう」

僧侶「ゆ、勇者様ぁ……」

女勇者「お願いだよ、師匠。これ以上自分で自分を追い込まないでよ…」

盗賊「悪いが」

盗賊「俺にとってアイツは特別なんだ。大切な家族だ」

盗賊「アイツを救うためなら、俺はどんな事でもするし、非情にもなってみせる」


?「変にカッコつけちゃって。お前は変わらないなぁ、盗賊?」ポン


盗賊「誰だ……」

僧侶「あっ……!」


戦士「おいっす」
165 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:57:59.91 ID:+Zl88RNJ0
僧侶「戦士さん!?」

盗賊「は? 戦士?」

戦士「あー、えっと、こんな形での再会になったけれど」

戦士「……お久しぶりです。戦士です」

魔剣『戦士ちゃんだぁ〜〜〜!!』

僧侶「戦士さんっ!!」ぎゅっ

戦士「お、おいおい! そんなに嬉しいかー!?」

戦士「まぁ、俺も嬉しいけれどなぁー!」

盗賊「ふん、どのツラ下げて帰ってきやがった」

戦士「お前どっち向いて喋ってんの?」

盗賊「え、あ……」

女勇者「この人が前にパーティにいた戦士さん?」

僧侶「そうですよ! 戦士さんです!」

戦士「どうも戦士です」

女勇者「想像以上のデカマッチョ……」

戦士「それより、勇者殿だよ。俺のあの人は何処にいるんだ? 謝りたい事が」キョロキョロ

女魔王「ん?」
166 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 03:59:12.54 ID:+Zl88RNJ0
戦士「実際あの人と再会すると気まずいかもだが、とりあえず会えるなら会いたい」

僧侶「いや、その、勇者様は」

魔剣『僕がいるのに気づいてないって戦士ちゃんバカだなー!』

戦士「はい?」

女魔王「おう」

戦士「うおっ、スゲェおっぱいだ……失礼。この綺麗な女性は新しい仲間?」

女勇者「あのー、この人がその探してる勇者さんだと思うんですけど」

戦士「え? 馬鹿言っちゃいかんよ。俺の知ってる勇者殿は逞しい男だぞ?」

戦士「まさか性転換手術でもしたってかー? うははははは」

僧侶「……戦士さん。言いにくいのですが、本当にこの方が」

戦士「おいおい、僧侶ちゃんまで冗談言っちゃって! なぁ、盗賊。勇者殿は?」

盗賊「認めな、戦士。てめぇの目の前の女がそうだって事を」

戦士「……え」

女魔王「……」ボイーン

戦士「……」

戦士は涙を流した!

僧侶「だ、大丈夫ですか!?」

魔剣『久しぶりの再会に感動の涙かな?』

戦士「ウソだろ、おい……」
167 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:00:00.90 ID:+Zl88RNJ0
戦士「マジのマジで、貴方は……本当に、あの勇者殿……?」

女魔王「姿が変わっているから分かりづらいのはわかる。この姿が不満かしらねェ?」

戦士「俺がいない間に何があったんスか!?」

僧侶「呪いです。女体化の呪いを受けてしまったせいで勇者様は今は女性に」

僧侶「盗賊さんは盲目と防具装備不可の呪いを」

戦士「呪いだと?」

戦士「冗談では?」

僧侶「いい加減にしてくださいね」

戦士「……じゃあ本当に。盗賊、お前は俺が見えていないのか」

盗賊「そうだ。まぁ、見えなくて良かったな。肉ダルマなんて見えても嬉しくねぇ」

戦士「勇者殿!」

女魔王「あぁん?」

戦士「すまない、勇者殿……。俺がいなかったばかりに、そんな酷い目に」

女魔王「別に。貴様がいよういまいと何ら変わりないわよ」

戦士「いいえ! 俺は勝手にパーティを離れた身だ。しかし、勇者殿を守れなかった俺は…」

戦士「ただの脳筋馬鹿野郎です。どうぞ、好きなだけ殴って欲しいっス!」

女魔王「……相変わらずのキモさであるわね、貴様」
168 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:01:15.49 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「それより肉ダルマ。てめぇ、勇者の事はしっかり認められたのか」

盗賊「魔王ではない本物の勇者として」

戦士「…ああ、認められた。やっぱりこの方は俺にとって尊敬できる最高の勇者殿」

戦士「あの時は失礼な事も言いましたし、しました。勇者殿」

女魔王「うむ」

戦士「謝って許して貰えるかわかりません。ですが、謝らせてほしいっス」

女魔王「では好きなだけ頭を下げるのよ」

戦士「ありがとうございますっ!!」ペコペコ

戦士は土下座し始めた。

戦士「ごめんなさい! ごめんなさい!」

女魔王「気分が良いわねェ! もっと地に頭を摺りつけて、必死に許しを請うのよ!」

戦士「うおおおおぉぉぉ! ごめんなさいっ!」ガツンガツン

戦士「」ピタ

女魔王「む、どうしたのよ? もう終わり? まだ余の気は済んでいないわ」

戦士「……もう1つ、謝らせてほしい事があるっス」

僧侶「そんなに…。もういいですよ、戦士さん。これ以上はいっぱいいっぱいです」

戦士「ううん、僧侶ちゃん。言っておかなければいけないんだよ」

魔剣『戦士ちゃん?』

戦士「勇者殿。俺、勇者殿のことは認められたっス。ですけど」

戦士「他にやらなくちゃいけない事が見つかっちまいました」
169 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:02:08.34 ID:+Zl88RNJ0
女勇者「世界樹?」

戦士「そう。この世界とは別にもう一つの世界があったんだ」

戦士「二つの世界を繋ぎとめるもの。それが世界樹」

盗賊「んなもん聞いたことすらねぇが?」

戦士「俺もあっちで始めて知った。そして、世界樹を切らせてはいけないという事を」

僧侶「あの、話がよくわからないのですが」

戦士「僧侶ちゃんたちには関係のない話だ。これは俺たちだけの問題でもあって」

僧侶「たち?」

魔剣『……ここ! 魔物の臭いがプンプンするよ!』

盗賊「敵か?」

魔剣『向こうですね!』

ペロ「あわわわわっ…!?」コソコソ

僧侶「アレが魔物? どうしてこんな場所に」

戦士「アイツは俺の今の相棒。魔物だが悪い奴じゃねぇんだ、攻撃しないでやってくれ」

女魔王「魔物の仲間だと?」

戦士「ええ、まぁ……。色々ありまして」

ペロ「どうも〜……へ、へへへ……」ベローン

女勇者「舌長っー!!」
170 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:02:53.17 ID:+Zl88RNJ0
盗賊「で、あの魔物と一緒に何してやがった」

盗賊「まさか魔族へ寝返ったわけじゃないだろうな?」

戦士「そんなわけないっしょ。ここで一緒に世界樹について調べてたんだよ」

女勇者「その世界樹がさっき切られちゃダメって言ってましたけど、どうして?」

戦士「世界樹が切られてしまうとな、世界が一つになってしまうんだ」

戦士「向こうにはマンイーターといって恐ろしい魔物がウヨウヨいやがる」

僧侶「マンイーター? 勇者様、それって」

魔剣『あの気持ち悪い奴らの事だよね!』

女魔王「ふん、元々は向こうの世界とやらの魔物だったわけか」

女魔王「しかし、そやつらがどうしたのよ?」

戦士「奴らは何でも食っちまうんス。だから、人間も魔物も、全部食われ」

戦士「後には何も残らないなんて最悪な結末が待っているかもしれない」

僧侶「……その話が本当だとすれば、とても恐ろしいですね」

僧侶「戦士さん。全然関係ない話ではありませんよ。むしろ正義の勇者一行として、その世界樹を」

戦士「いや、みんなは魔王を早く討伐しなきゃ。それとこれとは別だろ」

戦士「それに魔族たちこそが、世界樹を切ろうと企む張本人らなんだしな」

女魔王「……何?」
171 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:03:56.60 ID:+Zl88RNJ0
戦士「どっちみち、世界の危機を救うには魔王を倒す必要があるわけっス!」

戦士「俺とペロは世界樹を攻めてくる魔物たちからそれを守らなければならない」

女勇者「攻めて、守ってって感じ?」

ペロ「まぁ、結局守るにしても俺らあっちへの行き方よくわかってないんだけどね〜。転送装置も魔王城にあるし」ヒョコ

僧侶「わっ!? ……向こうの世界へという事?」

ペロ「そそ。だから、何とかして三魔官様たちへ何とかするように説得しに行くの」

僧侶「三魔官?」

魔剣『勇者ちゃん?』

女魔王「余は知らんわよ」

女勇者「じゃあ……結局は目的地は一緒な感じになるんじゃない?」

戦士「あっ」

盗賊「相変わらずの筋肉脳っぷりだな、お前」

戦士「う〜……」

僧侶「では戦士さん! また私たちと一緒に魔王城を目指しましょう!?」

女勇者「え、てことは…私追い出されますか!?」

女魔王「パーティは四人までという決まりがあるからねェ…」ニヤニヤ

僧侶「勇者様、いじわるしないで。大丈夫ですよ。女勇者さんはもう私たちにとっていなくてはならない存在なんですか
ら」

女勇者「僧侶さぁ〜ん……」
172 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:04:34.59 ID:+Zl88RNJ0
女魔王「三魔官なんてワケの分からん奴らに頼みこまなくとも」

女魔王「ぶち殺してしまえば世界樹とやらは守れるでしょ? だったらなおさらね、戦士」

女魔王「余の元へ帰ってくるのだわ。これは命令よ」

戦士「ゆ、勇者殿ー……!」

僧侶「私からもお願いです。戦士さん、また一緒に戦いましょう」

魔剣『また一緒にいたいよ〜。戦士ちゃん』

女勇者「じゃあ、とりあえず私も!」

戦士「え、えっと……いいのかな……こ、こんな唐突に」

戦士(俺はまた戻れるのか。またこの人と、みんなといれるのか)

女魔王「はい。戦士は仲間に戻りましたー」

戦士は再びパーティへ加わった!

戦士「あれ、強制っスか!?」

女魔王「どのみち貴様に断るという選択は無いのだわ。別に構わないでしょ」

女魔王「お帰りだわ、戦士よ」ニコニコ

戦士「あ、あっ……!!」


戦士「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーっ!!!」
173 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:05:34.20 ID:+Zl88RNJ0
ペロ「あのぅー」

女魔王「あ?」

ペロ「大変言いだし辛いのですがねー…僕はどうしたら良いでしょう…」

女魔王「魔物なんぞ知らんわよ。ここに切り捨ててゆこうかしら」

ペロ「ひぃっ」

戦士「勇者殿、そいつはマジで良い魔物なんス! 殺すだなんてとんでもない」

戦士「こいつの事も一緒に連れて行ってやれないですかね…。こいつ、帰る場所がなくて」

女勇者「帰る場所?」

ペロ「俺、元々魔王城の城下町に住んでたのね。でも、裏切り行為働いちゃったし、帰るに帰れなくて」

僧侶「つまり、魔物たちからも敵視されてしまうような存在になってしまったと?」

ペロ「そうなのよ〜…」

女勇者「可哀想! 勇者さん! 仲間に加えてあげましょうよ」

女魔王「喧しいわよッ! 決めるのは余なの!」

戦士「勇者殿〜……この戦士、一生のお願いっス。ペロを連れて行ってやってください!」

戦士「たぶん役に立ちますから! ね?」

ペロ「たぶんとか余計じゃね?」

女魔王「では、役に立ってもらうよう精々働いてもらうか」

魔剣『勇者ちゃんマジすかー?』

女魔王「盾ぐらいにはなるわよ、きっと」

ペロ(土わらし)が新たにパーティへ加わった!
174 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:07:33.03 ID:+Zl88RNJ0
戦士「良かったな、ペロ。俺に感謝しとけよー」

ペロ「仲間加わったのいいけどさ、嫌な予感しかしないよ。俺は…」

僧侶「なんだか一気に大人数になってしまいましたね、ふふ」

女勇者「5人と1本と1匹なら魔王にも余裕で勝てちゃうかもー!」

女魔王「ないない。ありえんわよ」

盗賊「肉ダルマが帰ってきた事は想定外だったが、助かった」ボソ

戦士「ん? どうしたよ、嬉して仕方がない感じ?」

盗賊「これで俺は安心してアイツを助けに向かえるって事だよ」

盗賊「アイツらのこと、今度はてめぇが守ってやれよ。俺は疲れた」

戦士「お前何言って」

「あのー! お話そろそろ済みましたかねー!? 本見つかったんですけど大丈夫ですかねー!?」

女勇者「あ、さっきのお姉さん…」

ペロ「さっきからずっとそこで待ってたぞー」

僧侶「すみませんでした!」

「図書館ではお静かにと言ったばかりでしょう!?」ガミガミガミガミ
175 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:08:24.25 ID:+Zl88RNJ0
「それらしい内容の本が全部で3冊。他にも在りましたら後で持って来ますから」

女勇者「ありがとう! お姉さん!」

「いえいえ、本は知恵の塊。大切に読んでくださいな」

お姉さんは去っていった。

盗賊「僧侶、読んでくれ」

僧侶「少し待ってくださいね……。この厚さだと調べるにも時間が」

女勇者「大丈夫! 私も手伝いますよー!」

魔剣『はいはい! 僕もー』

女魔王「余は何もしない」

ペロ「俺もしないかなぁ」

僧侶「そ、そうですか……」

戦士「勇者殿はとにかくペロは手伝えや。ほら、さっそく役に立っておかんと」

ペロ「人間の文字が魔物の俺に理解できるわけないだろー。無理無理!」

戦士「気合いでどうにかなるって」ドン

ペロ「いやいやいや!」

女勇者「じゃあ私と一緒に調べよ。魔物さん」

ペロ「あら、良い子……しかし舐めたくはならないな」

ペロ「アンタは少し、歳をとり過ぎた。既にババアだよ!」

女勇者「は……?」

ペロ「俺の最高ラインは12歳まで。覚えとけよ」

女勇者「よくわからないけど叩いておいた方がいいのかな。これ」

僧侶「……あった。ありました!」
176 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:08:59.91 ID:+Zl88RNJ0
女魔王「ではさっそく読んで聞かせるのよ」

僧侶「はい。えっと…………!」

僧侶「もう1冊! もう1冊の方を調べましょう!?」

女魔王「余は読んで聞かせるように申したのだけど? ほれ、さっさとー!」

僧侶「……解呪なのですが、やはり大僧正様クラスの人間でなければ難しいと」

盗賊「なにっ」

僧侶「素人が下手に手を出せば悪化する可能性があり、解呪の施しが最悪効かなくなるそうです」

僧侶「そう、こちらの本には記載されてあります……」

戦士「じゃあその大僧正に頼めば」

僧侶「盗賊さんは今目が見えない状態ですし、大聖堂が存在する町まで移動するには相当苦労すると思われますよ」

盗賊「……」

戦士「場所的には何処からが一番近い?」

僧侶「私たちが初めて会った町。はじまりの町からなら、遠くは」

戦士「今まで来た道をはるばる戻れってわけねぇ。厄介な話っスね」

女魔王「今さらあの距離を戻るわけにもいくまいて」

ペロ「ほい、お姉さん。次の本でさ」

僧侶「ありがとうございます。……」
177 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:09:53.71 ID:+Zl88RNJ0
それから数時間、魔王たちは解呪の方法を求めて本を読み漁った。

しかし・・・!


僧侶「……ダメでした。こちらの方にも先程と同様の内容が」

魔剣『知恵の塊ダメダメだね〜』

女魔王「これだから人間はダメダメなのだわッ」

女勇者「そんな、まるで勇者さんは人間じゃないみたいな」

盗賊「……チッ」

戦士「おい、こっちもダメ。係員に聞いてみたらその3冊以外まともな内容の物はないって」

女勇者「それって打つ手なしって事ですかー!?」

ペロ「お手上げって感じね。もうその町まで行けばいい話じゃん?」

戦士「バカ。尋常じゃねぇ距離があるんだぞ」

盗賊「…俺は諦めねぇ。絶対にあるはずなんだ。でないと、俺がアイツを助けてやれん!」

盗賊は見えもしないのに本を読み始めた。

僧侶「盗賊さん。他の方法で情報を集めましょう? ここでは限界が」

盗賊「」

盗賊は聞く耳持たない様子だ!

戦士「……盗賊、なんか様子がおかしいぜ? 少し休んだ方が」

盗賊「うるせぇよ!! 何もわかりもしないで気安くすんじゃねぇ!」

盗賊「どいつもこいつも! 俺の事は放っておけよ!!」

女勇者「し、師匠。落ち着いて」

魔剣『盗賊ちゃーん』
178 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:11:03.16 ID:+Zl88RNJ0
盗賊は立ちあがり、仲間の元を去ろうとした。

盗賊「うわっ!?」

が、転んでしまった。

戦士「おい、大丈夫かよ」

盗賊(こんな時だっていうのに俺は何してるんだ!? 妹が)

女魔王「ふむゥー……」

僧侶「今は無理はしないでください。やはり貴方1人では」

盗賊「触るな!!」

僧侶「!」

盗賊は僧侶の手を振り払った。

盗賊「……1人でも立てるから。そういうの、いい」

僧侶「ご、ごめんなさい…」

「あなたたちー! まだ騒ぐようならそろそろ追い出しますよ!?」

ペロ「また本の塊姉ちゃん来やがったぞ」

女勇者「本が見つかったんですか?」

「ないってそこの人に言ったばかりです。……それより、貴方たち、そこまで呪いの事を調べてどうしたの?」

戦士「実は仲間に2人、呪いをかけられた奴がいて。その解呪方法を探しているんだ」

女魔王「しかし、貴様が持ってきた本には大したものは記載されてなかったのよ」

女魔王「女、貴様何か知らんの? あ?」

「解呪? あー、それだったらこの町に来て正解だったわね」

僧侶「え?」

「呪いを簡単に解くことができる物がこの町にはあるってこと」

盗賊「何だとっ」
179 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:12:16.00 ID:+Zl88RNJ0
「魔法薬は貴方たち知っているかしら。魔女が作る」

ペロ「魔女?」

僧侶「魔女……。あ、先程の方が話していた」

女勇者「きっとそうですよー!」

戦士「魔女が作る魔法薬かぁ。まさにって感じ」

戦士「その魔法薬を使えば解呪することができるってのか?」

「ええ、その通り。あまり魔女へ関わり合いになりたくはないし、最悪な人間だけども」

「彼女が精製する魔法薬の効果は保証できるわ。それはもうバツグンに凄いんだから」

女魔王「貴様ァ、なぜそのような大事なことを先に伝えなかったのよッ!!」

「え、聞かれなかったし……」

僧侶「まぁ、そうですよね」

僧侶「ありがとうございます。その魔女という方をこれから当たってみようと思います」

「気をつけてね。無事に解呪が成功することを祈っているわ」

女勇者「師匠良かったですね! なんとかなりそう!」

盗賊「……」

戦士「盗賊、気にかけてくれる子がいるのに無視するなんて感心しねーぞ」ゴツンッ

盗賊「痛ぇ!? てめぇー!」

戦士「俺さ、今のお前は嫌いだよ」

女魔王「戦士に同意」

魔剣『じゃあ僕もー!』

盗賊「ふん、言ってろよ……」
180 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/13(日) 04:14:35.32 ID:+Zl88RNJ0
以上でございます。一気に2人も仲間になってゴチャゴチャしてきたなぁ



次の投下でもう1人仲間になってしまいます
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 06:06:26.35 ID:JvIX1DkDO
戦士キター
戦士がいると会話に安定感あるなー
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 07:25:41.23 ID:YIBeJAkM0
戦士合流待ってたぞwww
もう1人仲間って、まさか側近たんでしょうかね?!
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 08:37:04.00 ID:fvHD+TiIO
戦士キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/13(日) 13:45:54.05 ID:Q/bam9aFo
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 14:08:38.34 ID:ngk7TrFdo
乙んぽ!
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 15:08:32.58 ID:c0YTDa6IO
ブ道家かな?
おつ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 18:24:49.45 ID:AOzWNdKIO
話の流れと場所的に魔女じゃね?魔法使いいないし
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/13(日) 20:36:01.36 ID:TgdWTAG/o
いやきっと図書館のお姉さんが、歩く図書館・焚書目録として
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/13(日) 22:52:23.45 ID:JvIX1DkDO
そういえば魔王は今お風呂入る時はやっぱり女風呂なのだろうか

魔王の性格的には男風呂入るだろうけど……
戦士が大変な事になるな
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 00:33:47.68 ID:qzv9txOOo
>>189
なにそれwktk
191 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:12:45.70 ID:Rx3oFmro0
戦士「にしてもよ?」

女勇者「はい、マッスル戦士さん!」

戦士「普通に戦士さんでよくない? 勇者殿、その姿だと馬鹿な男共も放っておかなかったでしょう」

女魔王「確かに余を見る目がキモくなったわね」

戦士「そりゃ胸に大きなたわわ二つ抱えて、絶世の美女と讃えんばかりのお顔っスもんねぇ。な、僧侶ちゃん」

僧侶「……それ、暗に私の潰れたぺちゃんこ胸と比べて〜って仰られていますか」

ペロ「いいんじゃないのかい。きっと需要はあるぜ」

僧侶「殺しますよ!!」

ペロ「なんと物騒なお姉さんだ!」

僧侶「うう、勇者様ばかりズルイです。あー、胸が大きくなれる呪いがあるのなら喜んでかかるというのに」

女魔王「こんな邪魔になる物、渡せられるというのならとっくに渡してくれておるわ」

女魔王「今は僧侶のない胸が羨ましい〜」

僧侶「もう勘弁してくださいっ」

女勇者「あ! 師匠だったら大きいのと小さいの、どっちがお好みで!?」

盗賊「……」

女勇者「師匠ー…」

戦士「放っておいてあげな。今のアイツにゃ何言っても反応もなさそうだ」

女勇者「で、でも」

戦士「触れない気遣いってのも時には必要って事があるわけよ」

女勇者「今がその時……? 私、そういうのよくわからない。人と接するって難しい事だったのかな……」

戦士「そうやって人を知っていくのが大人になるって事さ、お嬢さん」
192 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:13:34.21 ID:Rx3oFmro0
魔女の屋敷付近


魔剣『町の中にあると思ってたけど微妙に離れに建ってるんだねー』

女魔王「元々ここの住民どもからよく思われていなかったようだし、これぐらい離れていた方がどちらとしても都合が良
いのではないの」

女勇者「どうして嫌われてたりするのかな? ゴミ出しの日を無視していつでも出しに来てるとか?」

ペロ「それぐらいで嫌われてりゃ人間も小さいもんだぁ〜」

僧侶「たぶん違うかと……」

僧侶「それにしても、本当に大きなお屋敷ですね。門から家まで距離が」

戦士「随分な金持ちっぽい魔女さんだことよ」

魔剣『ん〜 僕、魔女ってのがよくわからないんだけど?』

ペロ「読んで文字の如く! 魔の女だべ?」

女勇者「魔剣さんも読んで文字の如く魔の剣ですね!」

魔剣『はっ…!? もしかして仲間』

戦士「やったじゃん」

盗賊「……ねーよ」

女魔王「ようやく口を開きおったわね。貴様、今さら寡黙なキャラを演じても無駄なのよ」

盗賊「ああ、そうかよ。言ってろ」

僧侶「盗賊さん、もう少しで解呪できるかもです。頑張りましょうね」

盗賊「できなくては困る。さぁ、進もう」

女勇者「んー」

ペロ「どったのよぅ?」

女勇者「いや、魔法薬ちゃんと貰えるか少し心配で…」

女魔王「金もほとんどないし」

戦士「ちなみに現在の持ちGは?」

僧侶「……130G」

戦士「お前らちょっと自重した金の使い方しなさいよね」
193 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:14:21.67 ID:Rx3oFmro0
ペロ「あれ、この門開かなくね? 溶接されてある」

僧侶「え? あ……これは」

女魔王「ふん、ようは客人を招く気は毛頭ないということだわね」

女勇者「どこかに他の入り口があるかも! 裏の方から回ってみます?」

盗賊「そうするべきだな。まさか事前にアポイントを取らなければ入れないなんてことはないだろうな…」

僧侶「どうでしょう。魔女自体が人間嫌いという可能性もありますしね」

戦士「ここからデカい声で呼んでみますかね? 俺呼んじゃいますぜ?」

女魔王「ウザいから結構であるわよ。このような門、叩き切ってしまえば良いの!」

魔剣『どーんっ!!』

女魔王の攻撃! 門は壊れてしまった!

女勇者「あちゃあ……」

ペロ「おい、後で弁償するハメになったらどうするの!」

女魔王「弁償はしない。余の訪問を拒んだ魔女が悪かっただけなの〜」スタスタ

ペロ「思いきった姉ちゃんだなぁ…勇者ってみんなアレなの?」

女勇者「いやいやいや!」
194 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:14:51.30 ID:Rx3oFmro0
僧侶「お庭の手入れがあまりされていないようですね。ボサボサ…」

魔剣『森みたい〜』

戦士「いかにも魔女の住む屋敷って感じっスね。日も暮れてきてさらにオドロオドロしい雰囲気も…!」

女魔王「さっさと用を済ませて帰るわよ」

盗賊「……痛っ!?」

女勇者「師匠? うわ、足に矢が刺さってるじゃない!」

僧侶「矢が!? 待っててください、すぐに手当てを…」

ペロ「うわあああ!! どっかから狙撃されたのか!? 攻撃!?」

戦士「落ち着けっ。みんな一旦静かに!!」

「……………」

盗賊「くぅ……っ……」

僧侶「良かった。幸い深くは刺さっていないようです。これなら応急処置で」

ペロ「もう安心? 矢は飛んできませんかー……? ねー……?」

戦士「わからん。もしかしたら罠が張ってあったのかもしれん」

魔剣『どしてー?』

戦士「それもわからんです」

女魔王「侵入者対策といったところであろう。恐るるに足らず! 全員進むわよ」

僧侶「ちょ、ちょっと! 勇者様!」


ビービービー


「!」
195 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:15:29.93 ID:Rx3oFmro0
女魔王が屋敷へ向かおうとすると、警告を催す無機質な音が庭に響いた。

魔剣『今度は?』

女魔王「知らんわ」

ペロ「これ以上進むな、屋敷へ近づくなって……感じじゃ?」

女勇者「魔女さんから見れば私たち、勝手に敷地内に侵入した人たちですもんねぇ」

盗賊「強行突破は失敗だったわけかよ…」

盗賊「おい!! 魔女!! 聞こえるかっ!!!」

魔剣『盗賊ちゃん?』

盗賊「俺たちはお前に用があって来た!! 魔法薬だ!!」

盗賊「話を聞いて欲しい!! 屋敷の中へ入れてくれ!!」

「…………」

僧侶「音が、止まった? もしかしてわかってくれたのでしょうか」

戦士「そうだといいがね。問答無用で矢が飛んでくるような罠を仕掛ける奴がそう簡単に」

女勇者「きっと話せばわかってくれる良い人に違いないですよ! 大丈夫!」

戦士「まぁ、いっか」

ペロ「軽すぎワロタ」

魔剣『さっきまで変な雰囲気あったんだけど』

女魔王「あ?」

魔剣『急に消えちゃったよー。ほんとにだいじょぶかもかも』

女魔王「貴様の言う事だからあんまり信用は置けないけど、進むべきね」

盗賊「ああ、行こう」
196 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:15:57.43 ID:Rx3oFmro0
魔女の屋敷 エントランス


がちゃ・・・きぃー・・・

女勇者「お邪魔しまーす……?」

女勇者「屋敷の中が静かー。誰もいないみたい……なんか雰囲気怖いよ」

盗賊「誰もいないわけがねぇだろ。おい、魔女ー!!」

僧侶「床にゴミが散乱している……。掃除されてませんね、ここ」

戦士「僧侶ちゃんってわりと潔癖症かしらね」

戦士「音を鳴らしたのが魔女なら、屋敷へ入って来た俺たちを向かえるのが普通かと思っていたけど」

ペロ「はっ!? 魔女なんて最初からいなかった……?」

女勇者「まっさかー!! やめてよ! そういうのは!」

女魔王「出迎えも無しとは失礼な家主だわ。奥へ勝手に進むわよ」

僧侶「あ、勇者様! 人様の家にそんな勝手に!」

盗賊「出てこないのならこっちから会いに行くだけだ。時間を無駄にはできねぇ」

ペロ「アイツ何そんな焦ってるワケ?」

女勇者「えっとー……」

戦士(盗賊。妹がなんとかって言ってたよな)

戦士(そりゃ必死になるわけか。流石はカッコいいお兄ちゃん)

盗賊「……」
197 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:16:27.48 ID:Rx3oFmro0
魔剣『こっちにもいないよ〜』

僧侶「ここも掃除されてない!? 酷すぎます!」

女魔王「やはり元々人など居らなかったという事か?」

戦士「怪しくなってきたっスね。幽霊屋敷かも」

女勇者「幽霊……」ピク

僧侶「ですが、人が住まないお屋敷で爆発など起きるでしょうか? 罠だって…」

盗賊「いないのならそれでも構わない。魔法薬とやらがここにあればそれで用は済むんだ」

女勇者「えっ、もしかしてここ漁る気!? 師匠やめよう〜……」

盗賊「馬鹿言うんじゃねぇ。収穫なしで帰る気はないからな、俺は」

女勇者「う〜……」

魔剣『女勇者ちゃん、怖い?』

女勇者「こわ、怖くはないです! 別にそんな!」

女魔王「そういえば貴様は以前船でダメダメだったであるわねェー」

女勇者「うっ!」

女魔王「情けのない小娘」

僧侶「苦手な物は誰にでもありますよ。気にしなくても」


どかーんっ!!!


「!?」
198 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:17:02.40 ID:Rx3oFmro0
女勇者「きゃー!? なになになにぃー!?」

ペロ「敵襲じゃねー!?」

盗賊「落ち着け。ただの爆発だ」

戦士「ただの爆発ね……。この屋敷の中から聞こえたよな」

僧侶「ええ、それも下の方から。もしかしたら地下に?」

戦士「行ってみましょうか、勇者殿?」

女魔王「うむ、行くであるわ」

僧侶「しかし……地下へ向かう階段はどこでしょうか」

僧侶「エントランスには見えませんでしたし、他の部屋から?」

戦士「んじゃま、探して見るとしましょうかねぇ〜」

魔剣『ちょっと待った〜〜〜!』

戦士「……どしたのよ?」

女魔王「くだらぬ話を始めたらこの屋敷に置いて帰るからね」

魔剣『たぶんくだらなくないよ! あのね、あのね!』

魔剣『下から魔力を感じるんだけど、もしかしたらこの部屋から下行けるかもです』

女魔王「真かしら? 余には何も感じぬわ」

魔剣『そうー?』

盗賊「……おい、誰か。この部屋にテーブルがあるだろ」

女勇者「ありますけど、それが?」

盗賊「ならテーブルの下を覗いて見てくれ。もしかすれば」

女勇者「えっとー……あ、一カ所だけ色が違う。って、触ったら外れたけど」

盗賊「何かあるだろ。押しとけ」

女勇者「何かって。うーん?」ポチ


ゴゴ ゴ ゴゴ ゴ ゴ
199 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:17:36.84 ID:Rx3oFmro0
女勇者が何かを押すと、床下が開け始めた!

ペロ「何これカッコいい!」

僧侶「隠し通路ということでしたか。さすがです! 盗賊さん」

盗賊「魔剣が言ってくれたからだ。勘だったし」

魔剣『うん。やっぱりこの奥から魔力をいっぱい感じるよ〜』

女魔王「ふむ。では貴様、貴様から降りなさい」

ペロ「俺っすか!?」

女魔王「役に立たせてやろうというの。ほら、早くー」

ペロ「罠仕掛けてあるかもじゃないかー!」

女魔王「早くしろッッッ」

ペロ「ひぃ〜……」

ペロは下へ降りて行った。

僧侶「大丈夫でしょうか。本当に罠でも仕掛けてあったら」

女魔王「その為に下見をさせているんじゃない。余が安全に通るために」

僧侶「鬼だわ…」

女勇者「特に何も聞こえてこないですねぇ? 無事に降りられたのかな」

戦士「心配になってきた。俺、様子を見てくるっス!」

盗賊「面倒な事してんじゃねぇ。さっさと進むぞ」

僧侶「ですけど、慎重に進むべきでは」

盗賊「どうでもいい」

僧侶「そんな…」

女魔王「まぁ、待つのも暇になってきたし進もうかしらね」

女勇者「暗くて何も見えないー……」
200 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:18:07.36 ID:Rx3oFmro0
魔女の屋敷 地下


僧侶「ゆ、勇者様……? もう離れても大丈夫かと……。あの、痛いです……」

女魔王「」ぎゅっ

戦士「勇者殿ー。もう明るい場所に出ましたぜ」

女魔王「真なの……?」

戦士(脅えた勇者殿プリティー……)

女勇者「自分だって暗いのダメじゃないですかー。人の事言えないですよ!」

女魔王「喧しいんだわッ」

盗賊「……で、魔女はいたか? 俺にはわからん」

僧侶「いいえ、ここには……それよりあの魔物さんは何処へ?」

戦士「見た所ここ以外に他の部屋があるようには見えんが」

戦士「おーい! ペロ隠れてんのかよー?」

魔剣『お返事聞こえないね〜?』

戦士「参ったなぁ…。まさか本当に罠が仕掛けてあったとか」

僧侶「少し心配ですね」

女勇者「……ん? あの! あそこに置いてある物って!」

戦士・僧侶「ん?」

そこには、『魔法薬』とラベルが貼られた物が置いてあった!

女魔王「あれが例の魔法薬か! あれは余が先に飲ませてもらうわ、盗賊ッ」だっ

盗賊「何っ!? お前、待て!!」だっ

女魔王と盗賊は魔法薬目掛けて走りだした!

僧侶「ああ、盗賊さん! 走ってはまた転んでしまいますよ!」

戦士「にしても簡単に見つかって良かった良かった」

女勇者「これで解呪できますね〜!」
201 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:18:42.67 ID:Rx3oFmro0
盗賊「くそ! どこだ! どこに薬が置いてある!?」

女魔王「ふふーん。盲目とは苦労するわねェ、盗賊〜」

女魔王「さて、これでこの身体とはおさらばだわ……!」

女魔王は魔法薬を手に入れた!

魔剣『勇者ちゃんやったねー!』

女魔王「残念だったわね、盗賊」

盗賊「てめぇ! ふざけるのも大概に――――――」


魔法薬が持ち上げられると、女魔王と盗賊へ檻が落ちてきた!

2人は捉えられた!

女魔王・盗賊「はぁ!?」

女勇者「何あれ!?」

僧侶「やっぱり罠……!」

戦士「うわあぁ、勇者殿ぉー! 今すぐに助けるっス!」

戦士が檻へ触れると途端に電流が檻の中へ走る!

盗賊「ぐあああああぁぁぁーーー!?」

魔剣『びりびりびりびり……』

戦士「だ、大丈夫か!? 何だこの檻……」


『ほーほほほっ こんな所へやって来るなんて、なんておバカさんたち』


「!」
202 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:19:16.86 ID:Rx3oFmro0
女勇者「誰!」

『あらら、檻に入ってないのが3匹も。そーれ』

残る3人の上からも檻が落ちてきた!3人は捉えられた!

戦士「おいっー!?」

僧侶「これはどういう事ですか! 私たちは魔女さんに用があって」

『ふふっ! 魔女とはいかにも他にも私のこと、ですわ』

盗賊「てめぇが魔女か! 何処にいやがる!」

『ナ・イ・ショ・ですわ♪』

女魔王「貴様ァー!! ここから出せだわッ」

『え〜 誰がせっかく捕まえた得物を逃すと思いましてー?』

魔剣『勇者ちゃん! 僕ならこれ壊せるよ!』

女魔王「それを早く申すのよ! ふんっ―――」

『そーれ』

ガキィーン・・・

女魔王「むぐッ」

盗賊「やったか!?」

魔剣『ダメだよ〜! どうして、魔法の檻なら簡単に壊せるのにー!』

『その剣は特定の魔力性質の物は切れないと見た! だから、直前で性質変化してみましたの』

『ね、切れないでしょ?』

魔剣『ずるーい!』
203 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:19:51.56 ID:Rx3oFmro0
戦士「おい、魔女さんよー! 俺らをどうするつもりなわけ!」

『凡人には関係ないですわ。あなたたちはこの天才ビューティー魔女っ娘ちゃんの新たな魔法薬精製の材料となってもら
う!』

女勇者「ざ、材料って」

僧侶「まさか魔法薬には人間が使われている!?」

『それもナ・イ・ショ・ですわ。企業秘密ってところかしら』

戦士「冗談じゃねー! そうだ……ペロは何処へやった!?」

女勇者「あ、忘れてた」

『ペロペロ? ああ、先に来た魔物? まだ、無事に生きてるかも。ですわ』

戦士「かもって何だよ、かもって!」

『だって私魔物には用はありませんしー。興味ありませんしー』

盗賊「てめぇの事情なんて知ったこっちゃねぇぜ! 俺はただ魔法薬を」

『どうしてそこまで薬を欲しがるの? 理由次第で渡してあげなくも。うふふ』

盗賊「妹を助けたいんだ! アイツは今呪いに苦しめられている!」

盗賊「あんたの魔法薬には解呪の効果があると聞いた! だから!」

『ああっ、なんて悲劇的な。妹さんが可哀想、ですわ』

盗賊「そう思うなら早く渡してくれ! 姿を現してくれ!」


どかーんっ!


「!?」

突然小さな爆発が起きたと思えば、そこには1人の少女の姿が!

?「呼ばれて飛び出てばばばば〜〜〜んっ!」

僧侶「あなたが……魔女さんですか?」

魔女「いえーい!」
204 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:20:22.59 ID:Rx3oFmro0
戦士「お、俺の想像していた魔女と違う感じがする」

僧侶「わ、私もです」

魔女「あら! 対面してすぐにそんな、失礼しちゃう。ですわ」

女魔王「それより貴様ッ! 早く余をこの檻から出すのよー!」

魔女「嫌ですわー。あなた、出したらすぐに私に襲いかかりそうだし」

女魔王「ぶっ殺してやるからねッー!!!」

魔女「こわーい(棒」

魔女「それより妹さんがピンチのお兄様はいずこ?」

盗賊「俺だ……! 早く、渡してくれ! くれるんだろ!?」

魔女「ええ、あげますわ。はい、上げた!!」グイ

魔女は魔法薬らしきものを上に掲げた!

盗賊「……?」

魔女「あれれ? 思った感じのリアクションじゃない。ですわ」

女勇者「あ、あんた師匠をバカにしてるの!? 師匠は本当に妹さんのことを!」

魔女「バカにしてるけども。それに私、最初に言いましたわよね? あなたたちは材料になってもらうって」

魔女「これから材料になるような人に薬をあげても。ね?」

盗賊「あ……あっ……!?」

戦士「この、クソアマッー!!! ぶん殴ってやる!」ガシャーン!

僧侶「戦士さん! 落ち着いて」

戦士「落ち着けるかっ、俺は必死な奴を馬鹿にする奴が大嫌いなんだよ!」

魔女「うわわ、なんと暑苦しい。イイものね、好きですわ♪ あなたみたいな人」

戦士「このっ……!!」
205 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:21:10.66 ID:Rx3oFmro0
女勇者「師匠にあやまってよ!」

魔女「ごめんなさい。……ぷぷぷ」

女勇者「心の底からあやまれ!!」

僧侶「女勇者さんも一度落ち着いて。これでは埒があきません」

女勇者「でも!」

僧侶「魔女さん。どうしても私たちを開放する気はないというのですか」

魔女「なーい、ですわ」

僧侶「……最初から私たちを罠にかける為に招き入れたのですね」

魔女「別に招き入れたつもりはない。それに私、警告音を庭へ流したつもりだったのですけど?」

盗賊「……俺の言う事を聞いてくれて音を消したんじゃねぇのかよ」

魔女「いいえー。だってあなたたち、警告しても入ってきそうだったし」

魔女「それじゃあもう、馬鹿で愚かな凡人どもを材料にしてあげるべきでしょう?」

女魔王「何が馬鹿で愚かであるかッー!! 訂正するのよー!」

魔女「クズ、ゴミ、ウジ虫! もういっちょー! この、ぞうきん!」

女魔王「がううッッッ〜〜〜!!!!」

魔女「」きゃっきゃっ

僧侶「敷地内に無断で立ち入った事については謝ります。ですが、これはやり過ぎですよ」

僧侶「これ以上聞く耳持たないというのなら、力づくでここを脱出しますよ」

魔女「ん? 勝手にどうぞですわ。私はその檻に自信があるの」

魔女「ぜーったい! 逃げられないというね!」

僧侶「……くっ」
206 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:21:48.97 ID:Rx3oFmro0
戦士「……どうする? あの女はまともじゃない」

僧侶「勇者様の力を期待したいところだったのですが、魔剣ちゃんでも破れない物だと…」

女勇者「さっきアイツ、魔力性質を変えたとか言ってましたよね」

女勇者「魔剣さんが切れない魔力性質ってどんな」

魔剣『僕自身よくわかりませんー』

魔女「ヒントあげちゃおっかな〜?」

女勇者「アンタには聞いてない! 黙っててよ!」

魔女「そ、そんなに冷たくしなくてもいいのにっ!! 酷い。ですわ……うぅ」ぐすんっ

女勇者「えっ、あ!? 泣かないでよ…ごめんってば…。言い過ぎたよ…」

魔女「うん。わかればよろしいー」

女勇者「…………私、アイツ嫌いです」

戦士「好きになる奴もいねぇよ。とにかく何とかして脱出だ」

女魔王「ふんッ、ふんッ、ふんッ!」

女魔王は諦めずに檻を壊そうとしている。

盗賊「このっ!」

盗賊も頑張っている。

盗賊「こんなところで捕まってる暇はねぇんだ! 俺は、アイツを!」

僧侶「盗賊さん……」

女勇者「そうだ」

僧侶「どうしました?」

女勇者「私に考えがあります。少し話しかけないで」
207 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:22:24.25 ID:Rx3oFmro0
女勇者「〜〜〜〜〜〜……」

女勇者は呪文を唱え始めた。

戦士「魔法? 魔法でこれをぶち破るつもりか?」

魔女「苦肉の策がそれ? あー、これだから凡人は困る。ですわ」

魔女「大した魔力器官を持ったわけでもないくせに。魔法の威力も知れたもの」

魔女「結論、ただの愚策でしょ。無駄無駄無駄ぁ! ですわ」

僧侶「さぁ、どうでしょうね……。この方だって勇者の1人」

僧侶「底は知れませんよ。あなたにも」

魔女「ふーーーん」

女勇者「えいっ!」

女勇者は炎の呪文を唱えた!

火球が女魔王たちを捉える檻へヒット!

「…………」

戦士「だ、ダメか」

女勇者「今ですよ! 魔法が当たったところを魔剣さんで壊して!」

魔剣『僕の出番キター?』

女魔王「破ッッッッッ」

なんと! 檻を破壊することができた!

盗賊「壊れたのか…!?」

魔剣『大成功〜』

女魔王「ようやく出られた。役立たずの貴様にしてはよくやったではないの」

女魔王「さァて、これで貴様を切る事ができるわねェー……!」

魔女「げげっ。ですわ」
208 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:23:19.70 ID:Rx3oFmro0
女魔王「死ねィッッッ!」

女魔王の攻撃!

魔女「」

女魔王「グハハハハッーーー! 雑魚め! 大した奴でなかったわ!」

魔女「お見事ですわね」

女魔王「何っ」

魔女「あなたが今切ったのは、私が魔法で作り出したダミー」

魔女「私の魔法の方が早かったですわ。スッとろい!」

再び爆発! 煙が消えるとともに、そこから魔女の姿はいなくなっていた。

魔剣『アイツ逃げたぁー!』

女魔王「どこまでもムカつく奴だわ…」

戦士「勇者殿! こっちの檻もお願いするっス」

女魔王「世話がかかる奴ら、ふんッ!」

もう1つの檻も破壊した!

戦士「みんな無事?」

僧侶「ええ。……それより女勇者さん。さっきの魔法は?」

女勇者「ただの下級魔法です。でも攻撃するのが目的じゃなくて」

盗賊「檻の一部にぶつけて、その部分だけの魔力性質を変化させたのか……?」

僧侶「い、いつのまにそんな技術を」

女勇者「初めてでよくやり方はわからなかったけど…私ならできるって思えて」

戦士「すげーよ。とにかく君のお陰でみんな助かった、もっと誇ってもいいぜ」

女勇者「はいっ!」
209 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:24:37.24 ID:Rx3oFmro0
女勇者「って、それより。師匠、魔法薬はどうするつもり……?」

盗賊「当然諦めちゃいねぇよ。魔女をひっ捕らえて力づくでもいただく」

戦士「それが一番だな。どうもただでくれるような奴には見えないしよ」

僧侶「では魔女を探しましょう。そう遠くへは逃げてはいないかと」

女魔王「魔剣よ、奴の魔力を追えるかしら」

魔剣「まっかせてよぅー! 僕にかかれば一発です」

女勇者「急ぎましょ。私、あの女に一発入れなきゃ気が済みそうにないですし!」

僧侶「そうですね」

戦士(こわー……)

僧侶「あの魔物さんは無事でしょうか。あの方も同じように何処かで檻に入れられていたら」

戦士「そん時は助けてやりゃいい。なに、大丈夫よ。アイツは運だけは良さそうだし」

魔剣『ホントかな〜』

女魔王「雑談はそれぐらいにしてもらうわよ。奴を追うわ」

盗賊「了解だぜ…」

盗賊(俺をコケにしてくれた借りはかならず返してくれる)


たったったっ・・・


魔女「やっほー」ヒョコ

魔女「ああ、これだから凡人は困る。ほんとおバカさーん」

魔女「ほーっほほほほっ!」
210 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/14(月) 04:25:14.64 ID:Rx3oFmro0
以上です。次で、仲間が1人増えるかも
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 08:12:43.14 ID:9a8xXmwIO
まさか…
おつ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/14(月) 08:17:20.48 ID:qySa6rjDo
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/14(月) 08:20:29.06 ID:2O2GZVCso
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 10:48:30.33 ID:K8y4fAuz0
魔女かわいい
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/14(月) 11:55:27.97 ID:nXioYNEDO
>>1よ魔王と戦士のお風呂シーンはまだですか?
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/15(火) 02:11:42.72 ID:Bse3H6PY0
魔女仲間になるなら、パーティーがどんどん濃くなるなw
217 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:31:13.28 ID:CMvlcJfV0
女勇者「あの女は今どこに」

魔剣『えっとねー。こっちかな、あっちかな』

魔剣『どっちだろ〜……』

盗賊「この野郎、魔力の追跡ができるんじゃなかったのか!」

魔剣『僕だって頑張ってるもん! でもあっちこっちから似たような魔力が漂ってきてね』

僧侶「まさか魔剣ちゃんの力に気づいて」

女魔王「これだからこの剣は使えぬのよ!」

魔剣『頑張ってるのにー……』

戦士「しかし、魔女は檻のときにも魔剣ちゃんの弱点に気づいたし」

戦士「もしかしたら魔剣ちゃんのような特殊な武具に対して知識があるのかも?」

女勇者「そんな事関係ない! 今はアイツを捕まえるだけです!」

僧侶「あまり熱くならないでください。その調子ではまた罠に引っ掛か」

女勇者「熱くならないでってのは無理なんです! 私はアイツを許さない」

魔剣『いつにもなく燃えてますなぁー』

女魔王「ガキであるわ。しかたがない、魔剣が頼りにならぬのなら地道に探し出すのみ!」

盗賊「チッ……」

魔女「あらら、そんなに頑張らなくてもいいと思うけど」

女勇者「あ!」
218 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:31:46.47 ID:CMvlcJfV0
戦士「お前いつのまに」

魔女「気づくの遅すぎー」

魔女はソファに腰かけて悠長にお茶をすすっていた!

魔女「あなたたちもどう? ですわ。まぁ、コップは全然足りてないけど」

女勇者「バカにして! えいっ」

魔女「あぶねっ」

女勇者の攻撃! しかし、攻撃は外れてしまった!

魔女「物騒ですわ! せっかく入れたお茶が台無しじゃないー!」

女勇者「うるさい! 大人しく捕まってもらうよ!」

魔剣『お縄につけ〜』

盗賊「こっちはマジだぜ。悪いが怪我の補償はできねぇ」

魔女「」にこにこ

戦士「お前、何がおかしいんだよ? いきなり笑って気味悪いなぁ…」

女魔王「よほど傷つけられるのが楽しみなのね。わかるわよ」

魔女「そーれ!」
219 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:32:31.06 ID:CMvlcJfV0
魔女が指をピンと立てて天を突くと、女魔王たちの上から熱湯が降り注いだ!

僧侶「これは!? 詠唱もなしに!?」

戦士「あっちぃ!」

女魔王「……よほど舐められておるようねェ」

魔女「ペロペロペロ〜。なんて」

魔女「ぷぷぷっ」

女魔王「ふんッッッ」

女魔王の攻撃!しかし、攻撃は外れてしまった!

女魔王「!」

魔女「お目目はどこについてるの〜。ですわ」

魔剣『空間魔法で逃げたんだ!』

女魔王「黙って切られろだわッ」

魔女「私、痛いのは昔からダメで……。でも」

魔女「痛くさせるのはだぁい好き、ですわ!」

魔女へ攻撃をしかけた女魔王は謎の力によって吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられた!

女魔王「ちぃ!」

戦士「勇者殿! お前、自分の家でよくこうも暴れられるな!」

戦士は魔女を捕まえにかかった!

魔女「はっ」

戦士「……捕まえた。悪い魔女っ娘ちゃんを!」がしっ
220 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:33:00.83 ID:CMvlcJfV0
魔女「きゃー! えっち! スケベ! 変態〜!」

戦士「えっ、えぇ!?」

魔女「いーやー! 犯される〜妊娠する〜!」

戦士「ちょ、ちょっと何スかー!?」

魔剣『戦士ちゃん……』

女勇者「ふ、不潔ー!」

僧侶「……」

戦士「いやいや! 俺はまだ何もしてないぞ!? ほ、ほら! 離すから騒ぐな…」ぱっ

魔女「おバカさーん。ですわね」

戦士「へ?」

魔女の攻撃! 痛恨の一撃だ!

戦士「はうっ」キーン

女魔王「痛そうであるわ……」

戦士は悶絶している!
221 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:33:43.27 ID:CMvlcJfV0
僧侶「戦士さん! 今回復をー!」

ちょんちょん

僧侶「え?」

僧侶は誰かに肩を突かれた。

僧侶「何ですか、今から回復を―――」


魔女「ふーーー……」

僧侶「はああぁぁぁ///」


魔女の攻撃!僧侶は耳が弱点だった!

盗賊「おい、奴の位置は今どこだ!」

女勇者「師匠から右手前の位置に!」

盗賊「ふんっ」

盗賊はナイフを投げつけた!

魔女「そーれ」

ナイフは軌道を変えて、女勇者へ飛んだ!

女勇者「え」

戦士「あ、危ないっ!」

戦士は腕を伸ばし、ナイフから女勇者を守った。

戦士「痛ぇなー!!! くっそー!」

女勇者「だ、大丈夫? 戦士さん」

戦士「あの魔女、予想以上に厄介だ……早く何とかしないと」

魔女「あちゃー……お茶が冷めちゃった。ですわ……」
222 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:34:30.14 ID:CMvlcJfV0
僧侶「気をつけて。魔女は詠唱なしで魔法を」

戦士「迂闊に近づけないってわけねぇ……」

女魔王「貴様ァ、いい気になりおって」

魔女「お茶菓子もあるの。良かったら一緒に」

盗賊「そこだな!」

盗賊の攻撃!しかし、攻撃は外れてしまった!

盗賊「あ……!?」

魔女「あら、あなたは目が見えてませんの? 可哀想に」

盗賊「そんなわけねぇだろ。よく見えてる」

魔女「それにしては全然見当違いの場所へ攻撃してたけど?」

盗賊「うるせぇ!」

魔女「ふふふ。さ、もう攻撃は済んだ? これで終わりなんて面白くない。ですわ」

女勇者「まだ終わってなんかいないよ!」

女勇者の攻撃! 魔女へ向かってひのきのぼうをブンブン振り回す!

女勇者「えいっ、えいっ」

魔女「まるで子供のチャンバラごっこですわね〜。本当の剣の振り方は、こう!」

魔女は手から光を生みだした。光は徐々に剣を模り、光の剣へ。

魔女「ちぇいさー!」ブゥゥン

女勇者「ああっ!」

ひのきのぼうは真っ二つに切り裂かれた!

僧侶「魔法剣も使えるの……? そんな」

魔女「私に傷を負わせたいのなら本気でこなきゃダメ。ですわ」
223 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:35:11.66 ID:CMvlcJfV0
戦士「このっー!!」

戦士の突撃! 魔女へ突進攻撃だ!

魔女「武器も持たずに突進を? その勇気に行動、敬意を表しますわ」

戦士「それはどうも!」

魔女「ちぇーんじ」

突然、魔女と盗賊の位置が変わった!

戦士「何だと!?」どーんっ

盗賊「うぐぅ! 肉ダルマ、てめぇ……」

戦士「だ、だってお前が急に……!」

女魔王「あの魔法、以前戦った道化師のものに近いわね」

僧侶「攻守ともに隙がないですね。遊んでいるように見えますが、厄介な」

魔女「なんだか興が薄れてきた、ですわ。だってみんな歯応えが無いんだもの」

魔女「私、少しわくわくだったのに〜! 残念極まり! ですわ」

魔剣『勇者ちゃん、アイツまたバカにしてきた!』

女魔王「余に対してその様な舐めた態度、許さんわッッッ」

女魔王の攻撃! しかし!

魔女「そーれ」

女魔王「むっ!?」

魔法によって、女魔王の体は拘束されてしまった!

女勇者「勇者さん! よくもー!」

魔女「ほれ、ついでに」

女勇者「うわぁ!?」

女勇者も拘束されてしまった!
224 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:35:42.59 ID:CMvlcJfV0
魔女「ダメダメのダメ、ですわね。所詮凡人といったところかしら?」

女勇者「何が凡人だ! これぐらいで調子に乗って」

魔女「凡人は凡人ですわ。さっきはもしかしたら結構デキる子? と思ってたのに」

魔女「期待ハズレかしらー。ま、天才の私を相手にするには早すぎたのね」

女勇者「うるさい!」

僧侶「2人とも、すぐに拘束を解きに」

魔女「動くなー! ですわ」

僧侶「くっ…」

魔女「動けばこちらの2人を羽根虫に変えて潰す。ふふん、チェックメイトですわね」

僧侶「ゆ、勇者様」

戦士「あの女! ふざけやがって…。盗賊、俺が指示したら一気に飛び込むぞ」

盗賊「了解だぜ」

魔女「あら! 私の魔法より速く動けると思っていて? あまあまの甘ちゃんね」

盗賊「どうかな。やってみなければわからんぜ」

魔女「いいえ、わかってる。あなたたちには足りないの。情熱思想理想思考気品優雅さ勤勉さ!」

魔女「そして何より――――――」

戦士「今だー! 盗賊っ」
225 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:36:22.30 ID:CMvlcJfV0
戦士の合図で盗賊と共に魔女へ突撃!

盗賊(奴の声が聞こえるこの方向! 間違いない! 今度こそ)

戦士「うおおおおおおぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!!」

魔女「速さが足りないー! ですわ」

魔女が2人へ手をかざす。一瞬で戦士と盗賊は地に伏せられた!

戦士・盗賊「ぐぅ!?」

僧侶「また詠唱なしに……!」

戦士「こ、この! この程度の魔法で俺を止められると」

魔女「無理に抵抗しない事をオススメしますわ。骨が砕け、体がズタズタになる」

盗賊「えげつねぇ魔法だぜ」

魔女「私の趣味ですわ♪」

魔女「さて、残るはあと1匹かしら。あなたはどうするの? 逃げ出すのだけは許可しませんわよ」

僧侶「逃げ出すなんて。仲間を置いて1人で逃げるのなら死を選びますよ、私は」

魔女「なんてご立派な! 私、感動しましたわ!」

魔女「その心意気を讃えて、あなたが好きな仲間、1人だけ解放してあげよー!」

僧侶「えっ……」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/05/16(水) 02:37:54.36 ID:CMvlcJfV0
魔女「ほらほら、解放してあげると言ったの。私の気が変わらない内に。逃げても追わないから」

僧侶「そのような事をいきなり言われても! それに私は選べません!」

戦士「僧侶ちゃん! 勇者殿を選んで一旦屋敷から脱出するんだ!」

魔剣『賢明な判断ですねー』

盗賊「……」

女勇者「僧侶さん、早くー!」

僧侶「で、でも」

魔女「残り5秒内で決断しちゃってー。さもなきゃあなたを灰に変えちゃいますわ」

僧侶「!」

女魔王「僧侶早く余を選ぶのだわ。さすれば余がその女を倒す!」

魔女「だそうで。ほら残り3秒〜」

僧侶「では……勇者様を……!」

魔女「気が変わった。ですわ」

僧侶「……え?」

魔女「あなたが好きな仲間を1人消す、に変更〜♪」きゃっきゃ

戦士「おい、バカ言ってんな! 約束が違うじゃねーかよ!」

魔女「私ってば気分屋なの〜。ごめんあそばせ」テヘペロ

戦士「こ、こいつ……!」

僧侶「勇者様! えいっ」

僧侶の攻撃!

魔女「愚かな凡人。結局暴力か」

僧侶は魔法によって拘束された!

僧侶「ああっ」
227 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:38:39.94 ID:CMvlcJfV0
パーティは全員行動不能状態だ!

魔女「これで全滅っと。終わっちゃったぁ」

女勇者「勝手に終わらせないでよ! 私たちまだ負けてないっ」

魔女「そんな無様な姿で何を言われようが、ただの負け犬の遠吠えに過ぎない。ですわ」

盗賊「じゃあ、負け犬の意地って奴を見せてやるぜ……」

魔女「ん?」

盗賊は無理矢理起きあがろうとした!

盗賊「うぐぐぐぅ……! うぉおおおおお……!」メキメキ

僧侶「む、無茶はやめてください!」

盗賊「無茶はしてこそだ……!」

魔女「バカな男ですわ。でも、なんだかす・て・き」

戦士「それなら俺もいっちょ意地張ってみますかねぇ……」メキメキ

魔剣『戦士ちゃんも? 頑張ってー』

僧侶「2人とも!」

魔女「きゃー! 2人の男が汗水垂らして私に迫って来てるー!」

魔女「ゴクリ……。ですわ」

戦士・盗賊「うおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」メキメキ


ボキ


戦士・盗賊「†」

戦士と盗賊は息絶えた。

女勇者「そんなぁ……」

魔女「まぁ、こうなりますわよねぇ」
228 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:39:55.19 ID:CMvlcJfV0
魔女「頑張っただけ凄いと言っておいてやる。ですわ」

魔女「そろそろ飽きたし、残ったあなたたちを材料に」

女魔王「……魔法の使用。これを禁ず」

魔女「そーれ!」


\ ルール違反! 魔女はペナルティを受けるッ! /


魔女「え」

魔女に大ダメージ!

魔女「ぎょええええぇぇぇ〜〜〜っ!!? ですわ!」ドーン

全ての持続魔法の効果は切れる! 全員の拘束魔法が解けた!

僧侶「な、何が起きたの。拘束が解けたし……勇者様?」

魔剣『勇者ちゃん。今の何ー?』

女魔王「思いついたから言ってみただけであるわ。夜の帝王とやらの力であるわねェ」

女魔王(微かだが、余の中に魔力を感じる……だが、少しだけ。本のちょっぴり)

魔女「いててだよー……。まさかそんな切り札を持っていたなんて。ずーるーい!」

女魔王「よくわからぬが、これで貴様は魔法を使用できぬわけよ」

女魔王「覚悟は良い? 余はこれから貴様を切り刻み、果てに殺すわ」

魔女「うっ……」

魔剣『成敗〜!』

魔女「ストップ! ストップ! もう降参。ですわ」

女魔王「あァん?」

女勇者「勇者さん、騙されちゃダメ。どうせただのウソだから」

魔女「ウソじゃないよ〜……」
229 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:40:37.31 ID:CMvlcJfV0
魔女は懐から魔法薬を出して女魔王へ手渡した。

僧侶「それは魔法薬? …本物でしょうね」

魔女「それは本物ですわ。私に勝つ事ができたご褒美にどうぞ」

女魔王「貴様、これでまた罠だったなんて事がわかれば招致しないわよ」

魔女「信じてよ〜……」

女勇者「信じられないよ! あなた、さっきから私たちを騙してくるし」

女勇者「信用が無いの!」

魔女「〜……」

僧侶「まぁまぁ。今度は本当のことを言っているような気がしますよ」

僧侶「でも、あなたほどの力の持ち主が魔法を封じられただけでそんな」

魔女「私にとって魔法は全て、ですわ。使えなければ私はただの天才人間だもの」

魔女「つまりガチンコ勝負で勝てない。だから、ここでギブアップですわ」

女魔王「降参したところで殺されぬと思っておるの? 甘いわよ、殺す」

魔剣『しーねしねー♪』

魔女「ひぃー!」

僧侶「勇者様! そもそも私たちが勝手にお屋敷へ入ったのが悪かったのですから」

僧侶「それに目的の薬は手に入ったし、ここは見逃しましょう。ね?」

女魔王「ならんわッ! 殺すであるわよ」

女勇者「さすがに殺しちゃうのはダメかも……。でも、あんたどうして本当にあんな事してきたの?」

女勇者「本気で薬の材料にするつもりだったの?」

魔女「その通り!ですわ」

女勇者「……」

魔女「でも、途中からそんなことどうでもいいかなって思えてきて」

女勇者「は?」
230 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:41:17.76 ID:CMvlcJfV0
魔女「あなたたちと話したり、遊んでいたらとっても楽しくなって!」

魔女「久しぶりにいい運動もできたし、本当の本当に楽しかった。ですわ」

女勇者「楽しかったって、私たちは遊んでるつもりじゃなかったし! 下手したら死んじゃってたかもだよ!?」

魔女「私、加減というものがよくわかりませんの」

僧侶「あなたの力は強すぎるのですから。それに本当に死人が出てしまったのですよ?」

魔女「ちょっぴり反省、ですわ」

魔剣『今さら言い訳したって無駄だよー! 調子乗ったそっちが悪いんだもん』

女魔王「その通りであるわ。罪は罰するのよ」

魔女「で、でもぉ……私、楽しくて…久しぶりの面白いお客で…はしゃいじゃって…」

魔女「ババ様死んでから、毎日1人で退屈で…寂しくて…ですわ」

魔女「ごめんなさいっ」ペコペコ

女魔王「ごめんなさいで済むならなんとかかんとかッッッ」

女魔王の攻撃!

魔女「†」

僧侶「は、反省していたのに、殺してしまうなんて」

女勇者「容赦なさすぎー……」

女魔王「さて、この薬を飲めば余にかかった呪いを解く事ができるのね」

女勇者「あー! 待って待って! 師匠と分けて飲んでくださいよー!」

僧侶「では、まず先に教会へ行って蘇生させちゃいましょうか…」

女魔王「ふん!」
231 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:42:04.62 ID:CMvlcJfV0
教会


女魔王「戦士と盗賊を蘇らせるのは構わんが」

魔女「†」

女魔王「こやつまで蘇らせる必要はないのだわッ!」

女勇者「でも、殺す事はなかったなぁと思って」

僧侶「その通りです。勇者様は少し過激すぎます」

女魔王「だって」

僧侶「だってじゃなくて。……まぁ、それに魔女さんには聞く事もありますしね」

女勇者「え?」

神父「では、こちらの3名様を蘇らせればよろしいのですな?」

僧侶「ええ、神父様。どうかお願いします」

神父「それでは……えいえーいっっっ!!!」

戦士・盗賊・魔女は蘇った。

神父「お仲間様たちは無事、復活を遂げました。おめでとうございます」

僧侶「ああ、神父様。そして我が主よ、感謝いたします」

戦士「あれ、俺死んでたの?」

盗賊「どうやらあの時に力尽きたみてぇだな…」

女勇者「もう、心配したんですからね!」
232 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:43:08.80 ID:CMvlcJfV0
魔女「で、聞きたいのだけれど。どうして私まで蘇らせた。ですわ」

僧侶「あんなところで死んでしまう必要はなかったから。それだけです」

魔女「死んでくたばっちまうのもありかな、と思ったのに。ですわ」

女勇者「バカなこと言わないでよ。生き返られんだからもっと喜ばなきゃ」

魔女「いえーい! ……はぁ」

魔剣『こいつもう一回殺っとく?』

女魔王「それもよいわね」

僧侶「お金が無駄になるので止めてくださいね」

女勇者「それより師匠! 魔法薬手に入ったんですよー! これで解呪できます!」

盗賊「マジか……? だが、それは俺にじゃなくて妹に」

戦士「まずはお前の呪いをどうにかするべきだっての。もっと自分のこと考えな」

盗賊「しかし……」

女魔王「盗賊使わぬのなら余がもう飲むであるわよ。待ってられない」

魔女「ちょいと。魔法薬がもう1つ必要なのかしら?」

女勇者「あるの?」

魔女「ないですわ!」

女勇者「ええいっ、紛らわしい!」

魔女「今、ちょーど在庫切らしてて。新しく作らなきゃ。ですわね」

盗賊「それなら早く次の薬を作ってくれ」

魔女「今は無理ね〜。材料も切れてるの」

盗賊「おい……」
233 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:43:39.08 ID:CMvlcJfV0
神父「あのぅ……そちらにいらっしゃるのは、魔女ですか」

戦士「そうだが。それが何か?」

神父「できれば魔女が教会内にいるのは……その……」

僧侶「そんな! 教会はどのような人でも歓迎するのが」

神父「その魔女はいかんのです。お代はいいから早く出て行っていただけないでしょうか」

僧侶「神父様!」

魔女「構わないですわ。私の一族はこの町では嫌われ者。気持ちはわかる。ですわ」

魔女「積もる話は屋敷へ戻ってからでもいいでしょ〜。ね?」

戦士「それでいいのかよ、お前は」

魔女「嫌われるのって魔女の宿命みたいなものですわ。寂しいけど」

女勇者「納得いかないよ。あんたがここで何したっての!」

魔女「私が何かしたわけでも? ほーら、行きますわよ」

魔剣『よくわかんないね〜』

女勇者「うーん……」
234 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:44:14.95 ID:CMvlcJfV0
魔女の屋敷


魔女「適当に座って、ですわ。お茶飲む?」

女魔王「貴様のことだ。変な茶を出されるに決まってるのだわ!」

魔女「むー、本当に信用されてない。ですわ……!」

盗賊「てめぇの胸に手を当てて、自分にした事思い出してみやがれ」

戦士「んで魔法薬の材料がないってのだけどー」

魔女「そうなんですわよねぇ〜……。どうも材料の注文を頼んだところでトラブルがあったらしくて」

僧侶「その材料って、まさか人間とかじゃないですよね……」

魔女「むっふっふー……」

僧侶「そ、そんな!」

魔女「んーなわけないでしょー。人間を使うなんて気持ち悪っ!ですわ」

僧侶「ほっ」

盗賊「何か特殊な物なのか? 普通じゃ手に入りにくいような」

魔女「確かに普通では手に入らない物ですわね。だけど、あなたたちのような冒険者のような人たちなら」

魔女「何処かで拾う事もなくはないような〜。ですわ」

戦士「マジで?」

盗賊「……ていう事はだ。俺たちが材料を拾ってきたらお前が調合して魔法薬を作ってくれるってのは?」

魔女「あら、それなら無償で薬を渡しても構わない。ですわ」

盗賊「本当か!?」

魔女「天才ビューティー魔女っ娘ちゃんはウソをつかなーい!」

女勇者・戦士「ウソつけぇ……」
235 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:45:37.84 ID:CMvlcJfV0
僧侶「良かったですね、盗賊さん」

盗賊「ああ…」

魔剣『よかったー!』

魔女「ただし、1つ条件があるー!」

戦士「……やっぱ何かあんのね」

女魔王「無理難題がくるに違いあるまいだわ」

盗賊「何だっていい。薬のためなら俺は何でもやってやる」

女勇者「や、安請け合いしない方がいいんじゃ」

盗賊「やるったらやるんだぜ!」

魔剣『盗賊ちゃんハリキリだね〜』

僧侶「恐ろしい条件を出されなければ良いのですが……」

魔女「あなたたち、私を何だと思ってるの。ですわ……!」

魔女「条件そのいーち!」

女魔王「そのいち、じゃないわ。いちで終われ」

魔女「はぁ、釣れないですわねぇ」

魔女「じゃあ条件。私をあなたたちの旅の仲間に加えろ。ですわ」

盗賊「……は?」

女勇者「マジで言ってるの?」

魔女「大マジ! かなり大マジっすー!」

(なんて恐ろしい条件だろう……)

戦士(ていうか、何か忘れてる気がする)
236 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/16(水) 02:47:01.21 ID:CMvlcJfV0
以上だー
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 04:23:28.25 ID:jgbIowtIO
>>216
予想が当たったな
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 04:45:35.29 ID:rgCyIXkDO
呪いが解けるなら盗賊が股に装備してる皮の帽子の呪いも解けるかもな
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/16(水) 08:24:55.01 ID:FkIDYhabo
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 08:49:36.92 ID:ZZtbWh+Fo
ま、魔物は材料に入りますか?
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 09:18:51.45 ID:9HbE2A1qo
魔法を禁じる魔法…あれ?
ルール変えられなくなった?
ルールの魔法は例外扱い?
便利だけど使い方間違えると無限ループで自滅するな
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 10:29:11.50 ID:z2400N9DO
夜の帝王も変えてたからOKなんじゃね
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/16(水) 11:51:01.64 ID:2j+naeF20
乙乙!
女魔女もそろそろ終わりか…
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/16(水) 12:40:57.14 ID:2JtD8FRjo
きにしたらまけ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/16(水) 16:22:42.82 ID:gSK7LHhuo
ペロ……
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/05/16(水) 17:01:59.56 ID:ZhnsacI0o
>>245
言われるまで気付かなかった

魔女もチートだけどやっぱり魔王様の方がチートで安心した
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/16(水) 17:04:33.98 ID:bSVwa01io
気に喰わんヤツ喰いまくってたら魔翌力も回復しそうだな
女魔女を喰えばいやなんでもない
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/05/16(水) 18:43:16.43 ID:1lsx8ifTo
>>241
モンスターの技だし特技って扱いならいいんじゃね?
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 16:26:43.86 ID:kcRt+0jH0
これって魔女は仲間内だと魔王の次に強い方じゃないかww
250 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:29:30.27 ID:mgM3LATL0
戦士「他の条件に変更できませんかね」

魔女「変更?」

魔女「嫌だー! ですわよ。私、もうこれだって決めましたの」

女勇者「だとしても唐突すぎ…。あんた、このお屋敷で薬を作ってるんじゃなかったの?」

盗賊「そうだぜ。お前には仕事があるだろ」

魔女「仕事? 薬を作るのがお仕事かと思っていたの?」

女勇者「違うの?」

魔女「まぁ、確かに私の一族は代々魔法薬を精製して売り渡すことを生業としてきたけど」

魔女「ぶっちゃけ魔法薬を買いに来るお客も年々数が激減。需要は下がる一方ですわ」

僧侶「驚いた。呪いすらも解く事ができる素晴らしい薬なのに」

魔女「素晴らしいと評してくれているのには感謝するけど。この魔法薬には唯一欠点が存在する。ですわ」

戦士「欠点って。お前ら、そんな不完全な物今まで売ってたのかよ」

魔女「だからこそ、本当に求めに来たお客にしか売らなかったの」

魔女「後で文句を言われたりなんて嫌だし。ね?」

女魔王「それで欠点とやらは何? 後で飲んでから手が増えたとかなったら嫌だわよ」

魔女「さすがに部位が増える様なゲテモノ変身薬じゃなくってよ。ですわ」

魔女「単純に言わせてもらえば、魔力器官を異常活発状態へ変化させるの」
251 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:31:05.96 ID:mgM3LATL0
僧侶「それって……」

魔女「まぁ、魔力を急激に増幅させるということね」

僧侶「魔力回復薬! ということでしょうか」

盗賊「確か、以前話を聞いたが」

僧侶「ええ。魔力を回復させる類の薬は回収処分されたんです」

僧侶「人体への膨大な魔力の注入は死をもたらす。本当は危険な力の元なのですよ」

女勇者「へぇー……ただ便利なものだと思ってたらそんな」

僧侶「結構常識な筈なんですけどね。魔法をあまり使わない人にとっては関係のない話ですから」

戦士「ゆ、勇者殿は魔法使えたっスよね? 大丈夫ですよね?」

魔剣『勇者ちゃんは〜』

女魔王「大丈夫だから余は気にするなだわ。それより」

魔女「本当のところ、魔法薬なんて欲しがる連中はみーんなセコい魔法使いばかり」

魔女「本来の効果を求めるわけでなく、リスクであるはずの魔力器官の暴走を求めてね。ですわ」

魔剣『それって自殺行為じゃないの?』

魔女「一気に飲み干すような事があれば自殺行為に等しいですわね。適度の量であれば、魔力の微量回復や魔力器官の一
定時間強化も可能でしょー」

魔女「そんなことしてまで求める力に意味はあるのかって感じだけど」

盗賊「おい、2つ聞きたい事がある」
252 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:32:01.77 ID:mgM3LATL0
盗賊「その薬を飲んで解呪できることは間違いないんだな?」

魔女「うん。間違いない〜。ですわ!」

盗賊「そのリスクの代償に……個人差があるか?」

魔女「個人差? 私自身が実際見たわけでも実験したわけでもないけど」

魔女「魔力器官は人によってそれぞれ違うし、また魔力が生み出される量も違ってくるし」

魔女「個人差はあるとは思う、ですわ。正直飲んでみなきゃなーんにも」

戦士「自分で飲んだ事はないわけ?」

魔女「誰がこんなわけのわからない薬を飲まなきゃいけないのよぅ」

戦士「ま、まぁ…」

僧侶「魔法薬。便利な反面、恐ろしい部分もあったとは」

魔女「ぶっちゃけこんな薬は邪道よ? 呪いだって解くだけならちゃんとした常套手段があるのだし」

魔女「そもそも、薬に頼るのが大間違い! ですわ」

盗賊「……」

女魔王「余はさっさとこの姿からおさらばしたいのよ。ならこんな薬でも飲んでやるわ!」

女勇者「あ、ちょっと!」

女魔王は魔法薬の栓を開けて、1人でグビグビ飲みほした!

僧侶「あーーーっ!?」

女魔王「……ふぅ」

魔剣『全部飲んじゃったぁ〜』
253 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:32:38.72 ID:mgM3LATL0
盗賊「て、てめぇ! 俺の分まで飲みやがった! なんてことを!」

女魔王「ふふーん。余が毒見してやっただけ感謝するがよい!」

戦士「それより勇者殿大丈夫っスか!? 体が熱いとかは?」

僧侶「前に魔力器官を暴走させたばかりだというのに…あなたって人は…」

魔女「下手したら死にますわよ。バカねー、魔力が満ち満ちてしまったら復活させるのにも一苦労なのに」

魔女「とりあえず、さよなら〜☆ ですわ」

魔剣『勝手に殺さないでよー!』

女魔王「むー……いつになっても元の姿に戻らぬ」

女魔王「貴様、これも本当は魔法薬ではなかったのね!?」

魔女「モノホンですわよ。失礼ねぇ」

僧侶「まさか、解呪には時間がかかるとか?」

魔女「さぁ? わからん。ですわ」

戦士「お前、本当に自分の薬に責任ないよな…」

魔女「それ程でもー。おほほほほ〜」

盗賊「ていうか俺はどうすりゃいいんだぜ。こいつのせいで!」

女勇者「まぁまぁ。それなら早速材料集めに行けばいいんですよ!」

女勇者「師匠と、師匠の妹さんの分の薬を作るために。ね?」

戦士「そうねぇ。お前はもう旅立てる支度は?」

魔女「特に荷物も必要なし、ですわね。必要な物があれば魔法で取り寄せられるし」

魔剣『ちょー便利じゃん! すごー』

魔女「ぶいっ」ピース
254 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:33:19.19 ID:mgM3LATL0
女魔王「ていうかまだ貴様を歓迎した覚えはないッ」

魔女「もー なんか文句ありますの!? いいじゃない、減るもんじゃあるまいし」

女魔王「貴様と一緒にいると精神が削られそう」

魔女「あら、面白いじゃない。是非その様をお傍で観察させて欲しい。ですわ」

僧侶「あー……理由はどうあれ、宜しいではないですか。彼女なら即戦力にもなれますし」

僧侶「魔法の知識について詳しい人物が1人いても良いかと」

魔女「さっすが〜! 話がわかるお姉さまね♪」ぎゅっ

僧侶「ただし、妙な事をしたら私怒りますから。覚悟しておきなさいね」

魔女「痛いのだけはやめてね……? ですわ」

戦士「何だ。この流れは結局仲間にしちゃうわけ?」

戦士「勇者殿は不服そうだけどよ」

女魔王「いらいら」

魔女「ほーほほほっ きっと私がいれば百人力。凡人が天才に及ばないという事をお教えいたしましょうか!」

女勇者「凡人言うなっ」

魔女が新たに仲間へ加わった!

魔女「是非新歓パーティを開いてくれていいのよ? ですわ」

僧侶「いまお金がありませんから。パスで」

魔女「やだー!」

戦士「いきなり図々しすぎっしょー」

魔女「やー!」ビー!
255 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:34:08.36 ID:mgM3LATL0
盗賊「大体そんな悠長にしてる場合じゃないんだよ、こっちは」

魔女「ぐすんっ……わかってますわ。呪いでしょ? ならパパっと解呪しよ」

女魔王「で、余にかかった呪いは?」

魔女「わからん。ですわね」

女魔王「貴様ァー!」

魔剣『勇者ちゃんがこのままだったら許さないよー』

魔女「そう言われても」

僧侶「時間が経てば元のお姿に戻ってくれるかもですよ。気を落とさないで」

女魔王「余は怒ってるの!」

女勇者「でも、勇者さん見てるともしかしたらリスクも本当はないかもって思えてきたよ」

魔女「それはありえなーい。絶対ですわ」

女勇者「気安めでもないって言うところなの!」

戦士「まぁ、最強の勇者殿だ。そんなの関係ないっスよね」

女魔王「当たり前であるわよ」

魔剣『勇者ちゃんさいきょー』

盗賊「話はもういいかよ。集めに行くならすぐにでも」

魔女「あら、もう? 今日は遅いし明日からでいいじゃない」

盗賊「同じ事を何度も言わせるなよ。俺は!」

戦士「そう焦るなって、盗賊。冷静さを見失ったらどうにもならないって」

盗賊「だけど…」

戦士「大丈夫だ」

盗賊「〜……」

魔女「まぁ、言い忘れてたけど。早朝でしか手に入らない材料もあるから」

僧侶「先に言ってください」
256 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:34:50.07 ID:mgM3LATL0
魔女「必要な材料は3つ。それさえあれば後は私の手持ちで補えますわ」

女勇者「3つだけ? 思ってたより少ないね」

魔剣『すぐ集まりそうだよ〜』

魔女「甘ーい! ですわ」

戦士「……手に入れるまで骨が入るとか?」

魔女「それは後のお楽しみ〜。ね、ワクワクするでしょ」

盗賊「しねぇよ、バカ」

女魔王「もう休んでよい? 余はもう動きたくないわ」

僧侶「お疲れ様です、勇者様。魔女さん、どこか横になれる場所とか」

僧侶「……そうだ、忘れてた」

魔女「へ?」

戦士「俺も何か忘れてたけど、今思い出したよ…」

僧侶「このお屋敷は汚すぎます!」

戦士「……あれ?」

僧侶「なんですかこの散らかり様は!? いくら1人で暮らしているとしてもあんまりです!」

魔女「で、でもでも…私、散らかってる方が落ちつけて…」

僧侶「ダメです! 得意になりましょう!」

魔女「ひぃー……ですわ」

僧侶による魔女の屋敷徹底お掃除計画が始まった。
257 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:35:39.15 ID:mgM3LATL0
僧侶「ふふ、だいぶ片付きましたね」キラピカー

魔女「マイホーム……私の生活感カムバック!」

戦士「どうせしばらく家を開けるんだし、いいじゃん」

魔女「いくない。ですわ!」

女魔王「よっこらせ」ドスン

魔剣『勇者ちゃんもうお休み?』

女魔王「うむ。どうせやる事ないであるわ、起きてても仕方があるまい」

戦士「勇者殿、俺が寝れるまで添い寝で温めるっス。そして子守り歌歌うっス」

僧侶「やめてください。今の勇者様は女性の体なのですから」

戦士「あっ……」

女勇者「なんで微妙にガッカリしてるの?」

戦士「いや、勇者殿の引きしまった逞しい身体カムバックってな」

女勇者「今のムチムチエロボディもいいと思うけど〜」

盗賊「……」

盗賊(アイツは今どうしているだろうか。本当に大丈夫なのか)

盗賊(いや、大丈夫なわけがない……。きっと俺の助けを待っているんだ)

女勇者「師匠、また難しそうな顔してる」

戦士「アイツにとって妹さんはよっぽど大切な存在らしいしな。仕方がないよ」

女勇者「妹さん、どんな人だったの?」

戦士「え? おっぱいが大きくて、盗賊に似ないで、結構可愛い……」

女勇者「おっぱい……」

戦士「デカいんだよ、これが」

女勇者「デカぱい……」

女勇者「私、会って仲良くなりたいです!」

戦士「ああ、頑張ってな」
258 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:36:14.22 ID:mgM3LATL0
僧侶「早朝と先程仰ってましたが」

魔女「うん。できれば日が上がってすぐに出かけるべき。ですわ」

僧侶「その時間帯にしか生えない薬草を、とか?」

魔女「薬草おしい! 正解はきのこでした〜」

魔女「別名、朝焼けにそそり立つきのこ。長いから朝立ちきのこですわね」

僧侶「朝立ちきのこ? 聞いた事がありませんね」

魔女「本来は滋養強壮剤に使われるのだけど、私の場合はアレンジで薬に加えてるの」

魔女「先代の薬では使用されなかった。ですわ」

僧侶「はぁ」

戦士「おーい、ここに飾ってある額縁のおっさんって」

女勇者「おっさんって言うほど老けてるようには見えないけど?」

魔女「ああ、その人は先代の魔女。つまり私のお母さんの息子。ですわ」

魔女「魔法使いとしての才能は申し分なく、魔物の扱いにも長けてたらしくて」

僧侶「魔法使いでもあり、魔物使いでもあった? 凄い方ですね。今はどこに?」

魔女「死んだ。その才能を買われて勇者と共に魔王討伐へ向かい、逆に」

戦士「殺されたってわけか。難儀するな」

僧侶「ごめんなさい…気安くそのような事を聞いてしまって」

魔女「別にー。会った事すらありませんし」

戦士「でもお前のお母さんの息子ってことは兄弟なんだろ? なのに」

魔女「歳はだいぶ離れてた、ですわ。だから私が生まれてからは既に旅に出ていた」

戦士(どれぐらい歳の離れた兄妹なんだろ)

魔女「ていうか、その人 一族の中では異端でしたのよ。世間様の為に自らを犠牲にだなんて」

魔女「魔王なんて別に放っておけばいいのにー。ですわ」

女勇者「あれ、でもあなた私たちに着いてくるなら魔王討伐の旅に参加ってことになるけど」

魔女「……あっ。ですわ」
259 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:37:15.93 ID:mgM3LATL0
魔女「勇者ってあの勇者のことでしたの!?」

戦士「他にどんな勇者がいんのよ?」

魔女「ぎゃあ、騙されたぁ〜!」

僧侶「別に騙した覚えはありませんけど……」

僧侶「そもそも、仲間になると言い出したのは魔女さんですよ」

魔女「だってー……」

盗賊「おい、今からでも遅くはねぇ。材料集めが終わったらやはり屋敷に居ることを勧めるぜ」

魔女「はぁ? それだけは勘弁願う。ですわ!」

魔女「私、隠居生活するには早すぎると思うの! まだ若々しいピチピチギャルですわ」

女勇者「いくつなの?」

魔女「15歳!」

戦士「若いっ!」

僧侶「23はおばさんでしょうかね……」

僧侶「そ、それはさておき。15という若さで魔王討伐の旅になんて連れては行けません」

僧侶「やはりこの話はなかった事に」

魔女「あー! あー! そんな事言ったら私協力しないですわよ! 薬あげない!」

盗賊「お前な…」

戦士「最悪命を何度も落とすことになるかもしれないんだぜ? 全滅しちまえば復活もできない」

戦士「もっとよく考えな? お前なら他にできることがいっぱいあるんだよ」

魔女「もう決めた。ですわ! 面白いじゃない、魔王退治だなんて」

魔女「兄が達成できなかった事を妹である私が達成させる。燃える展開じゃないの」

魔女「燃えてきたぁー! ですわ」

戦士「いや、どうだろうなぁ」
260 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:37:50.88 ID:mgM3LATL0
戦士「下手打てば兄貴の後追いになりかねないんだ。よく考えろよ」

戦士「魔法使いとして才能があったお前の兄貴でさえ魔王に敗れたんだぞ」

魔女「あら、だったら私が魔王を倒せば兄を越えた事になりますわね?」

戦士「それは、まぁ」

魔女「素敵ですわ。天才である私が兄に劣る筈がないの」

魔女「てなわけで、何が何でも着いて行きますわ。拒否したらぶち殺す! ですわ」

女勇者「本気なの?」

魔女「はぁい、そりゃもう」

女勇者「つらい旅になるかもなんだよ? それでも」

魔女「つらくなったら逃げる。ですわ!」

女勇者「そんなに甘くないの!」

魔女「肩筋張って意味がある? あなた、そんなじゃ使命に押し潰されてしまいますわ」

魔女「つらいなら逃げてもいいって。逃げ道を用意しても罰は当たらない。ですわ」

女勇者「そんなの納得いかない! だって私は最後の勇者で…」

僧侶「わかりました」

女勇者「へ?」

僧侶「魔女さん、仲間になっていただいて構いません」

魔女「ほんと? まぁ、ダメって言っても無理矢理着いてくけど〜♪」

戦士「いいの? 勇者殿が起きてからもっかい話合っても」

僧侶「いいえ、必要ありませんよ。彼女なら大丈夫でしょう」

戦士「そうかぁ?」
261 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:38:49.22 ID:mgM3LATL0
次の日


魔女「全員おっきろーーー!! ですわ」

女勇者「う〜ん」

戦士「何よ……まだ暗いんだから寝てても」

僧侶「眠いです……」

魔女「材料集めを忘れたの? 早く行かないと回収できなくなる。ですわ」

盗賊「そうだった! おい、寝てる場合じゃねーぞ!」

女魔王「余は寝てるから貴様らだけで行けばいいであるわ」

魔剣『勇者ちゃんは手伝う理由ないもんね〜』

僧侶「そんな。盗賊さんの分まで薬を飲んだのですから手伝ってください!」

女魔王「やーだ」

僧侶「勇者様〜!」

盗賊「いい、手伝ってもらう必要はないぜ。こいつはここへ置いておけばいい」

魔女「あら、でももうこの屋敷へは戻ってきませんわよ?」

戦士「でもそしたら薬の精製はどうすんのよ?」

魔女「別に屋敷でなければ作れないというわけでないし、旅しながらで大丈夫」

僧侶「ですって、勇者様! ほら、朝ですよー! 起きましょうー!」ゆさゆさ

女魔王「余の5m以内に近づく。これを禁ず」


\ ルール発動! 周りの人間と剣を吹き飛ばす! /


僧侶「きゃあ!」

魔剣『どうして僕までー!』ぴゅー
262 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:39:32.31 ID:mgM3LATL0
僧侶「もう! 勇者様なんて知らない!」

女勇者「まぁまぁ、まだ寝てたい気持ちはわかるし」

戦士「でもこれでは勇者殿を置いて行くことになってしまうぞ」

盗賊「別にいいんじゃねぇの」

戦士「よくねぇよ! バカかお前!」

魔女「妙ですわね」

戦士「何がだ!」

魔女「あの勇者、昨日例の奇妙な魔法を使って魔力が枯渇したように感じていたの」

魔女「それがまさか寝てすぐに。あれ程の魔法なら使用魔力量も膨大なはず」

女勇者「え、でも魔力って黙ってればしばらくして自動的に回復するものじゃ」

魔女「普通なら、ですわ。だけど勇者の魔力器官。恐らく機能してない」

僧侶「え!?」

魔剣『あちゃー…』

魔女「本来なら魔法を放つなんて無理な状態だと思う。ですわ」

僧侶「勇者様は…まさかあの時から魔法を使用できなかった?」

戦士「前に熱出したときか!? だったらきっとその器官とやらが治ったんじゃ」

魔女「今も、機能してないの。本人の前だから言うのを控えていたのだけど」

魔女「私の魔法薬は対象の魔力器官を利用して異常を治したり、解呪したりする薬ですわ」

盗賊「だからアイツには効果が見られなかった?」

魔女「うん。まぁ、本当かどうかはよくわからないけど」

魔女「問題はそこじゃなくて。どうして魔力がない今魔法を使えたか。ですわよ」
263 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:40:10.49 ID:mgM3LATL0
戦士「きっと勇者殿だからだろうな!」

魔女「んなバカなー」

盗賊(確かにアイツは魔法が使えない状態だった。まさかあの魔物と戦った後に何かあったのか?)

盗賊「それよりどうするんだ。もうじき夜が明けちまう」

僧侶「ですね。これについては後で勇者様が起きてから話すとして今は」

魔女「え〜? またここへ戻って来なきゃってこと? ですわ」

魔女「面倒だから無理矢理勇者を連れ出しますわよ。今は魔法禁止のルールが解けたみたいだし!」

魔女「そーれ」

魔女が女魔王目掛けてピンと指で指し示すと、寝たままの女魔王が立ち上がり、歩き出した!

女魔王「Zzz……」

魔剣『勇者ちゃん起きたー?』

戦士「ね、寝てる? その魔法は」

魔女「まぁまぁ、どうでもいいじゃない。ですわ」

魔女「そいじゃ出発進行〜! ですわ」

僧侶「寝ながら歩かせて転んだりしないかしら…」

女勇者「師匠もコケないように気をつけないと!」

盗賊「やかましい……」

僧侶「一応勇者様の魔法は持続しているみたいなので離れて歩きましょうか」

戦士「近くにいるのに近づけない。このもどかしさ! ああ、勇者殿ぅ」

女魔王「眠い……Zzz」
264 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:40:57.52 ID:mgM3LATL0
魔法の森


戦士「ここも何度も通った道だなぁ」

女勇者「へ? なんで?」

戦士「前に言ったろ。あっちの世界へ行ったり、帰ったりしたときにこの森を通ったんだよ」

戦士「そういえば武闘家元気かなぁ。少しはスリムになっただろうか」

僧侶「あの子と一緒にいたのですか? 今はどこに」

戦士「お、親元へ帰ったんじゃないかねぇ…さぁ、どうだろー?」

僧侶「うん? 盗賊さん、その辺りは足元に気をつけて」

盗賊「ああ」

魔女「盲目の呪いというのも困りますわねぇ。その上、防具を装備できないとか」

魔女「つまり今はただの無能ってわけか」

盗賊「ああぁー!?」

僧侶「そんな言い方ありませんよ。謝ってください」

魔女「ごめんあそばせ〜☆ きゃはっ」

盗賊「ムカつくガキだぜ…くそ」

魔女「ガキとは失礼な。ですわ」

魔女「私、スタイルには自信があるの。ほーら、ナイスバディ…って、見えないのか」

盗賊「呪い解いてからの楽しみにしとく」

戦士「お、盗賊にしては軽い発言っスね〜!」

女勇者「私の方がスタイルいいよ!」

魔剣『僕も負けてないよー!』

戦士「魔剣ちゃん。さすがにねーよ」

僧侶「私だって……! ……な、何も言えない」
265 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:42:01.04 ID:mgM3LATL0
魔女「それより気になってるのだけど〜」

魔女「どうしてその剣を持つのに、そんな厚手のグローブを何枚も? ですわ」

女勇者「素手で触ったらヤバいから」

魔女「ほう、ヤバいとな?」

戦士「触る?」

魔剣『いやーん』

魔女「実に興味深い、ですわね。ちょいと失礼」ス

魔剣『あっ』

戦士「触ったらすぐに離せよー。本当に危ねぇから」

魔女「ぎょええええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜っ!!? ですわ!」

戦士「は、早く離せってば!」

僧侶「大丈夫ですか!?」

魔女「ひ、ひぃ、ひぃ……こわかったよー……」

盗賊「魔剣は俺らじゃ扱えないって事だぜ。唯一持つ事が叶うのはそこの勇者だけだ」

魔女「それを先に言えー! ですわ!」

魔剣『勝手に触ったのはそっちじゃーん』

女勇者「Zzz……」

魔女「ん」

女勇者「ん?」
266 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:42:33.73 ID:mgM3LATL0
魔女「勇者の魔法の効果が切れた気配がする。ですわ」

戦士「おお、マジで?」

魔女「あの魔法は自動継続魔法なのね。魔力が尽きたら効果も自動消滅する」

魔女「まぁ、その魔力はどこから? って話だけど」

僧侶「とにかくこれで近づいても安心というわけですね。では、魔剣ちゃんを鞘へ戻しましょう?」

戦士「そうしよう、そうしよう」

魔剣『わーい! 勇者ちゃーん!』

魔剣は鞘へ収まった。

盗賊「お前はホント好きだな」

魔剣『だって勇者ちゃんなんだよ〜。ねー?』

戦士「ねー」

盗賊「妙な所で意気投合してんじゃねぇぜ。気色悪ぃな!」

魔女「喋って、怖くて、変な剣。一度解体してみるべき。ですわね」

魔剣『やぁーん!』

僧侶「それよりキノコが生える場所にはまだ?」

魔女「焦らなくてももうじき到着する、ですわ。あまりの立ちっぷりに感動に違いない!」

僧侶「少し興味あります」

女勇者「どんなキノコ?」

僧侶「ええ、確か朝立ちキノコでしたか?」

戦士・盗賊「ぶっっっ……!」

魔女「そうそう。見事な立ちっぷりなんだから! ですわ」
267 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:43:20.64 ID:mgM3LATL0
戦士「……ねぇ、そのキノコやめね?」

僧侶「え? なぜです?」

戦士「だって……なぁ?」

盗賊「あぁ」

女勇者「2人してそんな。師匠の呪いを解くためなんですから妥協できないよ」

僧侶「そうですね。必要な物だというのなら、かならず手に入れないと!」

盗賊「俺はそのキノコを調合した薬を飲まなければいけないわけか…」

魔女「滋養強壮薬にも使用されるキノコですの。とっても体にいい。ですわ」

戦士「良さそうだな、本当に」

盗賊「……」

女勇者「日出てきたよ。急がなきゃ」

魔女「うん。この辺ね」

女勇者「着いたの?」

魔女「着きましたわ。さぁ、見ていて。あそこに日の光が当たった瞬間」

魔女「ニョキニョキ生え出す。ですわ」

僧侶・女勇者「わくわく」

戦士「勘弁してくれよ……」

太陽が顔を出し、日の光が辺りに差し始めた!

魔女「そーれニョキニョキ!」

にょきっ!
268 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:44:00.79 ID:mgM3LATL0
一本の、大変立派な太くて硬そうな黒光りしたキノコが土から元気に立ちあがった!

戦士「あっー!」

女勇者「すごーい! なんて立派なキノコ!」

僧侶「うあっ」

僧侶「これって……///」

盗賊(今だけは見えないことに感謝できる)

魔剣『あれが材料の1つなのー?』

魔女「うん。さぁ、さ! みんなで狩り取っちゃおー!」

キノコはさらに2,3と続々と急激に数が増えだした。元気そうだ。

僧侶「わ、私は遠慮しておこうかなー……なんて」

女勇者「何言ってるんですか。必要な物はかならず手に入れるってさっき言ったじゃないですか!」

僧侶「でも!」

戦士「清らかっていいわねー」

戦士「まぁ、魔法薬のためだ。仕方がない……」

戦士はキノコへ手を伸ばした。しかし、掴めない!

戦士「……」

魔女「早く刈り取ってしまわないと萎れてダメになる。ですわよ」

戦士「ええいっ!」

掴んだ!
269 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:45:19.24 ID:mgM3LATL0
戦士「あああぁぁ……! なんか、ヌルってするんですけど」

僧侶「ひぃ!?」

女勇者「本当だ。ヌメヌメしますねー……面白い〜!」

盗賊「あんまり弄ってないで、さっさと回収しちまえよ」

女勇者「えー? だってー。僧侶さんも! ほら」

僧侶「やぁー!? ダメです! 絶対ダメー!」

女勇者「何でそんなに嫌がるの? よっと」ぬぽっ

キノコ『うっ!! ……ふぅ』

女勇者「喋ったー!」

魔剣『僕のお仲間?』

魔女「そのキノコは土から抜かれる時、絶命の一瞬に声をあげるの」

魔女「加工していない朝立ちキノコは早めに使用してしまわないと効力が薄れるから、残りの材料も早めに集めなきゃ。
ですわね」

戦士「畜生! こうなったらヤケだ、うおー!」ぬぽっ、ぬぽっ、ぬぽっ

戦士によって次々とキノコが狩られていった!

女勇者「早い! こっちも負けませんよー!」ぬぽっ、ぬぽっ、ぬぽっ

キノコs『うっ!! ……ふぅ』

僧侶「あ、悪夢だわ……!」

盗賊「一体何本狩り取れば済むんだ!?」

魔女「もう少しねー。ほらほら、頑張って〜。ですわ」

魔剣『みんな楽しそうだよ。勇者ちゃん起きてー』

女魔王「Zzz〜……」
270 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/18(金) 00:49:06.68 ID:mgM3LATL0
ここまで。今日はついでに魔女のプロフィールでも書いておこう



魔女 歳:15

(自称)天才クールビューティー マジカルキューティクル魔女っ娘ちゃん。ですわ

魔法の町に住む代々続いてきた魔法薬精製を生業とする魔女一族の少女。自分以外の人間を凡人として見たり、
基本的に自分以外の人間を小馬鹿にするような態度ばかりとって度々周りを呆れさせている。
魔法の扱い・知識に関してはパーティ中最高クラスを誇り、詠唱無しで魔法を放つ中々の天才っぷり。
(知る人ぞ知るとあるゲームのキャラがモデルとなっている)
好きな物はお茶、お茶菓子。嫌いな物は掃除、面倒事

長めの髪を背中辺りで三つ編み。頭に被った魔法使いの帽子が魔女らしさを醸し出します。
服は帽子の色と合わせた青を基調とした服。胸の赤リボンがイイ感じ。
胸は僧侶よりあります。推定カップB
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/05/18(金) 01:37:41.93 ID:1N7J1cPNo
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 01:38:57.27 ID:puJKYrKA0

ああ、俺のきのこが…
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 02:28:56.77 ID:q2ybG7rDO
戦士……女魔王より男魔王の方が良くて添い寝とかマジ魔王専用兄貴
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/05/18(金) 07:55:00.23 ID:g1v8PVBAo
ふう…
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/18(金) 17:11:29.25 ID:Ue/FKTfIO
戦士はやめてくれ…
戦士は…
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/05/18(金) 17:52:57.85 ID:lov6LZt4o
魔法薬で魔法器官が復活・・・ではないのか・・・
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/05/18(金) 18:23:10.51 ID:kAn3YSqco
あるいは、魔力を超えた魔翌力に目覚めたか…
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 18:19:12.76 ID:7b3DVHWq0
魔女馴染むの早いな
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/19(土) 22:25:08.94 ID:vmg99LiIO
>>277
わざわざsaga入れてまで言うネタかよ








大好きだけどwwwwwww
280 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:26:28.11 ID:9dXc+XAz0
魔女「そこまで。ですわ」

魔女「これだけ集まれば十分でしょ。恐らくこれにはしばらく困る事ない。ですわね」

女勇者「いっぱい取ったもんね! 戦士さんお疲れ」

戦士「俺はもうキノコ狩りしなくていいや」

僧侶「本当にご苦労様です」

盗賊「で、次の材料は? この森で手に入るものか?」

魔女「ん〜 そう、ですわね。お次は魔物から剥ぎ取れる素材なの」

盗賊「魔物の一部が材料かよ…趣味悪ィぜ」

魔女「時々いるんですわよねぇ、人間に益となる魔物が」

戦士「へぇ、不思議なもんだ」

女勇者「あのペロペロも私たちにとって益?」

「あっ」

戦士「……まさか、みんなアイツのこと忘れてたなんてことは」

僧侶「……ごめんなさい」

女勇者「えー! さすがに可哀想だよ! 私も自分で言って気づいたけど」

戦士「それでペロは何処にやったのよ?」

盗賊「どうせそこの魔女が何かして放りっぱなしなんだろ」

魔女「お見事! 大正解!」

戦士「いいからどうしたっての!」
281 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:27:23.62 ID:9dXc+XAz0
魔女「ぶっちゃけ忘れましたわ」

戦士「えー!」

魔女「だって私、別に魔物には興味なくってよ? そんな変な物記憶の片隅にも残らねぇ。ですわ」

僧侶「あ、貴女という人は……」

魔女「天才は無駄な記憶力を使わないの!」

戦士「そこに天才は関係ねぇかと」

戦士「……まぁ、後で探してもいいし、もしかしたらヒョッコリ帰って来るかもだし」

戦士「放っておきますかね」

僧侶「だ、大丈夫でしょうか。さすがにペロさんにも同情です」

盗賊「今は材料集めが優先だぜ。余計な事は後にするべきだ」

魔剣『ねぇねぇ、勇者ちゃんまだ起きないよー。お寝坊さんだね』

女勇者「こんなに早い時間だし仕方がないですって。私だって眠いもん…」

魔剣『これが終わったらみんなでもっかい一緒に寝ようね〜』

女勇者「大賛成〜」

魔女「睡眠なんて時間の無駄無駄。ほら、次行きますわよ」

女魔王「……」

戦士「勇者殿、良い寝顔っス…美しいっス…!」

僧侶「頬っぺたつねっても起きてくれませんね。よほど疲れが溜まっていたのでしょうか」

女魔王「……」ビローン
282 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:28:02.96 ID:9dXc+XAz0
魔物『ふんもっふ』

女勇者「アレが素材になる魔物?」

魔女「そのとーり。ですわ」

戦士「随分可愛気がある魔物じゃないの。言われるまで魔物ってわからねぇや」

魔女「見た目に騙されていると痛い目みる。ですわよ? あんなナリで凶暴だから」

僧侶「あの可愛いのがですか? 考えられませんね」

盗賊「まさかその魔物丸ごとが素材ってわけじゃねーだろうな?」

魔女「ううん。必要なのは爪だけ、ですわ。他は必要なーし」

戦士「なら早いとこ爪いただいちゃおうぜ。ほーれ、こっちだ。こっち」チョイチョイ

魔物『わーい』とことこ

戦士・僧侶「可愛い!」

魔剣『僕の方が可愛いもん!』

盗賊「貼り合うな、バカらしい。凶暴ってのは冗談だったのかよ? 攻撃もしてこない」

魔女「みんなすぐに鼻を詰まめ!ですわ」

戦士「へ?」

魔物『はぁ〜……』

魔物は息を吐いた!

僧侶「くっさ!? あ……」

戦士「うっ!?」

戦士・僧侶「†」

女勇者「きゃー!? 2人が死んじゃった!」

盗賊「ええぇ!?」

魔女「やれやれ……ですわ」
283 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:28:47.96 ID:9dXc+XAz0
魔剣『鼻が曲がるよぅ〜……』

盗賊「お前に鼻はねぇ」

女勇者「どうしよ……ていうかこの臭さは酷いです……」

魔女「あの魔物はプリチーな見た目と裏腹に口臭が文字通り殺人級。ですわ」

盗賊「先にそれを言え!」

魔女「言う前にそこの戦士が勝手に引きつけたんじゃない。私は注意を催させたはずですわよ〜」

女勇者「凶暴って言われても臭いがだなんて誰も思わないよ!」

魔物『ふひ?』プ~ン

女勇者「こ、こっちに近づいてくる。来るなぁー! 臭い臭い!」

魔女「一旦引きますわよー! それ撤退撤退! 逃げるが勝ち!」

盗賊「くそったれ!」

しかし、魔物に先回りされてしまった!

魔物『きゅうきゅう』

魔女「あらら……案外すばしっこいのね」

女勇者「言ってる場合じゃないよ! 勇者さん起きてー! ピンチだよ!」

女魔王「……」

女魔王はまだ眠りから覚めない!

盗賊「仕方がねぇ。おい、俺たちでこいつを倒して素材を手に入れるぜ」

女勇者「私、アイツに近づける自信ない…」

盗賊「我儘言ってる場合じゃねーだろ!」

魔女「なら近づかなけりゃいいのだ。ですわ」
284 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:29:42.11 ID:9dXc+XAz0
魔物の攻撃! 臭い息だ!

魔物『はぁ〜……はぁ〜……』

女勇者「うっ!」

女勇者は息絶えてしまった。

盗賊「お、おい! 何だ!? こいつまで死んだっていうのか!?」

魔剣『女勇者ちゃんアウトー』

盗賊「くそ! どこだ……奴はどこにいる」

魔女「まさかこの程度で全滅に追いやられそうになるなんて」

魔女「そーれ! ですわ」

魔女は天を突くように腕を真っ直ぐ上げた。

魔女「すぐにこの場から離れますわよ。危険、ですわ」

盗賊「魔法を使ったのか!」

魔女「いいから。ほら、早くしないと」

魔物『はぁ〜……』

盗賊「臭っ! う、このままでは…」

突如、上空から隕石が振ってきた! 隕石は魔物の近くに落ちた!


どーんっ


魔物『ぶぐ!』
285 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:30:20.65 ID:9dXc+XAz0
盗賊「今の音は?」

魔女「だから早く逃げようって言ってるでしょーに! このままだと巻き込まれる。ですわ」

魔女「その気がないなら私一人でも逃げますわよ」

盗賊「あ、ああ…」

隕石は次々と魔物の付近に降り注ぐ!

魔物『ぶひぃいいいーーーーーー!?』どーんどーん

魔女「これぞ我が自慢の魔法の1つ。星の魔法ですわ!」

魔剣『なんかすごーい!』

魔女「宙より出し、無数の流星群よ。我に仇名す愚かな敵をぶち殺せ〜☆」

隕石は魔物を倒すまで降り止まない! 森はボロボロだ!

魔女「もっと落ちろー! それ落ちろー!」

盗賊「おい、そんな派手にやって魔物の素材が手に入らなかったらどうするつもりだ!」

魔女「いやっほぅ〜〜〜! ですわ!」

魔女はハイテンション状態で盗賊の話に全く耳を傾けていない!

盗賊「聞こえなかったのか! おい!」

魔女「滅びろどーん!」


盗賊「へ…………」


盗賊に隕石が落ちてしまった!

盗賊「†」

魔剣『あれれ、盗賊ちゃんアウト……』
286 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:30:55.66 ID:9dXc+XAz0
しゅう〜・・・・・・


魔女「ほーっほほほっ 私にかかればあんな魔物敵でもない! ですわ」

魔女「ふふーん、しかとその目に焼き付けたかしら? 私の実力を」

魔女「……って、あれれ? 誰もいないよう」

魔剣『盗賊ちゃんは魔法に巻き込まれて死んじゃったよー?』

魔剣『今生き残ってるのは、勇者ちゃんと魔女っちと僕』

魔女「魔女っち」

魔剣『へへへ、可愛いでしょ〜』

魔女「なんかムカつく、ですわ。それより」

魔女は魔物の死体へ近づいた。

魔物『』

魔女「体なんて残っちゃいないかもと思ってたのに。案外頑丈ねぇ」

爪を前足から数本引っぺがした!

魔女「にしてもこの人たち大丈夫かよ。ですわ! 簡単に死んだりして」

魔女「これじゃあ先が思いやられる。ですわ」

魔剣『一回みんなのこと蘇らせようよ〜。寂しいの』

魔女「蘇らせるにしても、私は町の教会へは入れそうになかったですわよ? 嫌われてるみたいだし」

魔女「そこの勇者が起きたら連れてってもらいましょ。今は材料集めてから……」

女魔王「」

魔剣『急に黙ってどったのー?』

魔女「まさか、ですわ」
287 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:31:49.42 ID:9dXc+XAz0
魔女は女魔王の体を手探りで調べ始めた。

魔剣『あー! 僕の勇者ちゃんにベタベタ触んないでー!』

魔女「魔力が勇者の中に僅かに蓄積してる」

魔女「……でも魔力器官はやっぱり回復していない」

魔女「ちょいとヘンテコ剣! 本当の事を言え。ですわ」

魔剣『ヘンテコ剣じゃないもん!』

魔女「んなことどうでもいいですわ。この勇者、何者なの?」

魔女「明らかに普通の体だとは思えない。異常ですわ」

魔女「それとも、勇者とは元来から普通の人間とは身体の作りが違うのかしらね」

魔剣『え? えっと〜……』

魔女「私、今と〜ってもそこの勇者に興味が沸きましたの。ガチですわ」

女魔王「」

魔女「うふふ! やっぱりあなたたちの仲間になって正解でしたわね」

魔女「これから楽しくなりそう。ですわ」

魔剣『勇者ちゃんの体を好きにはさせないんだからね! 勇者ちゃんは僕のなんだから!』

魔女「剣如きが偉そうに! 俄然勇者を手に入れてみたくなってきましたわ」

魔女「この身体……本当に調べた甲斐がありそうだしね☆」

魔女は手から雷を放出させ、女魔王へ攻撃した!

女魔王「……ん」

魔剣『あー! 何すんのー!』

魔女「少し荒っぽくなるけど、起きてもらう。ですわ」

魔女「さすがに魔法で寝たままの勇者を動かすには疲れてきたの」
288 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:32:25.77 ID:9dXc+XAz0
女魔王「ここ何処である?」

魔剣『勇者ちゃーん! おはよー』

女魔王「余は、ここは何処かと尋ねておるのよ?」

魔女「どうもお寝坊勇者。早速だけど次の素材集めに行きますわよ〜!」

女魔王「素材?」

魔剣『その前にみんな蘇らせようってばー』

魔女「私と勇者ならさっさと素材集め終われるし、そっち優先でOKっす!」

魔剣『全然OKじゃないよ〜。みんな死んでるんだよ』

女魔王「そういえば戦士どもの姿が見当たらぬではないの」

女魔王「まさか、この棺桶sの中に?」

魔女「いえーす! ですわ。みーんな魔物にやられて棺桶行きですの」

魔剣『盗賊ちゃんは魔女っちがやったくせにー』

女魔王「余が眠ってる間に色々あったみたいだけど、どうせ大した事はしておらんのでしょ」

女魔王「それより体がまだ女のままではないのッ! やはり貴様の魔法薬はインチキね!」

魔女「インチキとは失礼なぁー!ですわ! 私の魔法薬は完璧よ。効果が現れないのはあなたに問題があるからであって」

女魔王「余にだと? 余は異常でないわよ! これ以上無礼な事を申すつもりなら貴様も棺桶行きにするであるわよ」

魔女「ふーん! やれるもんならやってみやがれ!ですわよ」

女魔王「言ったなァー! よし、殺すわ!」
289 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:32:55.87 ID:9dXc+XAz0
女魔王「魔法の使用を…」

魔女「同じ魔法を何度もくらってたまるか。ですわ」

魔女「あなたのその微々たる魔力、吸わせてもらいましょー!」

魔女は女魔王の肩を持ち、自分の方へ引き寄せると

魔女「ちゅー」チュッ

女魔王「むぐっ!?」

女魔王の唇を奪ってしまった!

魔剣『あーっ!! あーっ!!』

魔女「……ふぅ。ごちそうさま」

女魔王「……貴様ッ!」

魔女「もしかしてファーストキスだったかしら。ごめんあそばせ〜 ほーっほほほっ!」

魔女「別にキスが目的じゃなかったのよ? 私は今、あなたの体内に潜んだ魔力を頂いた。ですわ」

魔剣『魔女っち死ね! 魔女っち死ね! 勇者ちゃんをよくも汚したな!』

魔剣『勇者ちゃんボーっとしてないでこいつ殺してよ!』

女魔王「貴様、余の体内に潜んだ魔力と申したわね……?」

魔女「ええ。確かに言いましたわ」

女魔王「つまり、余は魔法が使えるのか……?」

女魔王(治ったというのか! 余は再び魔法を!)

魔女「使えるも何も、使っていたじゃない? 昨日と今朝で2回。それに今だって使おうと」

女魔王「あっ」
290 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:33:44.47 ID:9dXc+XAz0
女魔王「これは魔法であったか」

魔女「気づかずに使用したと?ですわ」

女魔王「うむ」

魔剣『仕方がないよね〜。でも魔法使えるなら勇者ちゃんまためちゃ強じゃん?』

女魔王「余は魔法なんぞに頼らんでも最強であるわよ。阿呆め」

魔女「勘違いしないように言っておくけど」

魔女「別に今は完全に魔法を使える状態じゃないと思う。ですわ」

女魔王「あァん!?」

魔女「その話は後。今は素材を集めよー! ですわ」

魔女「昨日飲んだ薬がダメなら、今回作る薬できっと何とかなるかも〜」

女魔王「それは真? 次もダメなら容赦しないであるわ」

魔女「だいじょーぶ。任せておけ〜、ですわよ」

魔剣『魔女っち信用なんないよー……でも、次で終わりなんだよねぇ?』

魔女「そう。次で最後ですわ。必要なのは」

魔女「聖水ですわね」

魔剣『何それー?』

魔女「聖水って言ったら聖水よ。聖なる水」

女魔王「その水が手に入れば魔法薬を作れるのね? ならさっさと手に入れるわよ」

魔女「この森の中の何処かに聖水が沸く泉がある。ですわ。その剣に探すのを手伝ってもらえばすぐでしょー」

女魔王「よし、魔剣!」

魔剣『む〜……魔女っちのために頑張るんじゃないからね? 勇者ちゃんのために僕は頑張るんだからね?』

魔女「主人思いの健気な剣だこと。ですわ」
291 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:34:10.69 ID:9dXc+XAz0
魔剣『くんくん、くんくん』

魔剣『あっちの方から嫌な感じがする〜……』

女魔王「嫌な感じ?」

魔剣『うん。これ絶対嫌な感じだよー』

魔剣『僕はこれ嫌い!』

魔女「そんじゃ、そっちへ行ってみよー」

魔剣『やだよぉー!』

魔女「私の勘ではその嫌な感じが聖水が沸く泉かと睨みましたわ」

魔女「私の勘はよく当たる! かも?」

魔剣『信憑性全くないよ〜!』

女魔王「手掛かりがないのよ。仕方が無しね、魔女の勘とやらは当てにせんが行ってみるであるわ」

魔剣『ゆ、勇者ちゃん〜……』

魔女「だいじょぶだいじょぶ! きっと見つかるってー! ですわ」

女魔王「見つからなきゃ困るわよ」
292 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:35:48.73 ID:9dXc+XAz0
森の中の泉


女魔王「アレが泉?」

魔女「みたいですわね。ほーら、言った通り! 私は間違ってなかった。ですわ」

魔剣『ムカつく〜!』

魔女「まぁまぁ、ヘンテコ剣のおかげでちゃちゃっと見つかったし、感謝感謝ですわ」

魔剣『つーん……』

魔女「あれれ、嫌われちゃってる? ですわ」

魔剣『だって僕の勇者ちゃんにチューしたし……ふん!』

女魔王「何度貴様の余ではないと否定すればよいのよ! 泉に沈めるであるわよッ」

魔剣『ごめんなさいっ〜!』

魔女「仲がよろしそうで結構なこと。さてさて、聖水汲んで教会向かうですわ」

女魔王「全く、あやつらは何度死ねば気が済むのだ」


?「まぁぁぁ…おぉぉぉ…くぅぅぅ…んっっっ〜〜〜!!!」


女魔王「!」

勇者「ヒャッハー!!」

勇者の攻撃!

魔剣『勇者ちゃん後ろだよー!』

女魔王「ふんッ」

女魔王は攻撃を魔剣で受け止めた!

勇者「お久しぶりですねェ〜〜〜? 何ヶ月ぶりかなぁ!?」

女魔王「誰であるか、貴様?」

勇者「あああぁぁぁーーーーーー!! そんな事言っていいと思ってんのかよ!」
293 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:36:24.16 ID:9dXc+XAz0
魔女「誰ですの?」

魔剣『わかんなーい』

勇者「賢者のバカに追跡させて来てみたら、まさか今回は当たりだったなんて」

勇者「俺様ラッキーじゃん。なぁ、今は女の魔王くゥん…!」

女魔王「なぜ余が女だと」

勇者「知ってるよぉwwwwww 愛しの魔王くんの事なら何でも知ってるよォ!」

魔女「魔王って? そこのは勇者ですわよ。勘違いしてるのかしら?」

勇者「合ってんだよバカじゃねーのバーカ! こいつ、魔王だから! みんな騙されてんの!」

勇者「俺が勇者だぜ!? お前ら目かっぽじって俺を見てみやがれよ!」

魔女「……うーん、ガラの悪いチンピラですわね」

勇者「あぁ!?」

魔女「ぶっちゃけ、私的にはどんなのが勇者なのかよくわからん。ですわ」

勇者「俺だって言ってんだろ! くそガキ!」

魔女「むっ……」

魔女は女魔王に近づいて、手を持ち上げた。

魔女「はい。こっちが勇者!ですわ。お前は気に食わん。ですわよ!」

勇者「へ、へへへ……どいつもこいつも……バカじゃねーの……」

女魔王「馬鹿で阿呆は貴様の方よ。ベラベラと減らぬ口である」

女魔王「大人しく帰るのならば見逃してやらんでもない。死にたいなら殺してくれようか」

勇者「死ぬのはお前だ魔王ゥーーー!!!」

勇者は抜刀した!


勇者(本物)が戦いを挑んできた!
294 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:37:20.40 ID:9dXc+XAz0
勇者「今回は簡単にやられねー。なんせ俺には勇者の剣があるんだからな」

勇者の攻撃!

女魔王「勇者の剣?」

魔剣『女勇者ちゃんが盗まれちゃった剣だよー。痴女が持ってたんじゃなかったんだ!』

女魔王「ほう、貴様がねェ……。これは手放しにしておけんであるわッ」

勇者「くたばれこの野郎ッ!」

女魔王の攻撃! 勇者の攻撃!

魔剣と勇者の剣が激しく何度もぶつかり合う!

魔剣『ふぬぬぬぬぬ…』

女魔王「魔剣よ、もっと押すのよッ! 勇者の剣をこやつの手から落とすわ!」

魔剣『頑張るよ〜!』

魔女「よくわからん。ですわねぇ」

勇者「前の俺とは違うところ、教えてやるぜ!」

勇者は距離を離し、呪文を唱えだした。

魔女「およ? 何だかヤバ気な魔法がくる予感〜?」

女魔王「ではその魔法は貴様が何とかするのよ」

魔女「私関係なさそうなのにぃ。ですわ」

勇者「へへへ……ゴチャゴチャ言ってる場合かよ」

勇者「最初からクライマックスだぁ。痺れて死ねッ」

勇者は雷の呪文(大)を唱えた!


ゴロゴロ、ドォーン
295 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:38:23.02 ID:9dXc+XAz0
女魔王たちの頭上に大きな暗雲が現れ、強大な雷が落ちる!

魔女「うわぁー! マジでヤバ気ですわ!」

魔女「そーれっ」

魔女が声を上げると、落雷する位置から離れた場所へ女魔王と魔女は瞬間移動した!

女魔王「やればできるじゃん。である」

魔女「失礼ね。私は常にできる女、ですわ! なんてったって天才なんだから」

勇者「空間魔法の応用か? セコい真似して逃げやがる!」

女魔王「当てられぬ貴様が悪いのよ。ばーか」

勇者「俺を侮辱してんじゃねーよ! お前如きが! 勇者の俺を!」

勇者(くそっ、くそっ! 何が勇者の剣だよ。魔王と対等に切り合うことができるんじゃなかったのか!?)

女魔王の攻撃!

勇者「ま、まず――――――」


ぶしゅうぅぅぅ〜


勇者「痛ぇええええええええええええぇぇぇぇ!」

魔剣による一撃を防ぎきれず、勇者の両腕は切り飛ばされた!

魔剣『勇者ちゃん、アイツ剣落としたよ!』

女魔王「おう貴様ッ! そこの剣を腕ごと拾って来いであるわ」

魔女「腕もー!? げげっ、趣味悪! ですわ」

魔剣『早くー! 確かアイツ怪我してもすぐに…』

勇者「その剣に……指一本でも触れるんじゃねェえええ!」

魔女「指が触れなければいいのかしら。ですわ? そーれ」

魔女は魔法で剣を持つ腕を拾おうとした、が

賢者「はい注目〜!」

魔女「え? ああっ!?」

勇者「ナイスフォローじゃん……」

賢者「イイ女はピンチの時に颯爽と現れる。なんてね」

魔女よりも早く、賢者が剣を回収していた。
296 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:38:59.83 ID:9dXc+XAz0
魔女「あの女! 天才のこの私より先に動いていた? 私の魔法が遅れた?」

魔女「きぃーっ!」

賢者「何このガキんちょ? 前はいなかったのにいつ魔王の仲間に」

勇者「そんなのどーでもいいんだよ! 早く剣返せや」

賢者「返してもいいけど勇者くんの腕まだ生えきってない感じなんですけど…www」

賢者「トカゲの尻尾かよってwwwwww」

勇者「ちっ……くそビッチが!」

魔女(切られた腕が、新しく生え変わってきている?)

魔女「あいつらは魔物? ですわ」

女魔王「恐らくアンデッドの類であるわ。再生能力が異常に高いのが厄介よ」

魔剣『殺しきる前に生き返っちゃうんだもんねぇ』

魔剣『魔法とかの事なら魔女っちのが詳しいでしょ。何か知らないのー?』

魔女「私も初めて不死者というものを見ましたわ。正直、死霊を扱う類の魔法は専門分野外なの」

魔女「さっぱり! ですわね」

女魔王「自信満々に申す事か阿呆ッ! 使えん奴!」

勇者「おーし……腕生え終えたぜェ。反撃開始といこうか、ビッチよぅ」

賢者「今度ビッチなんて言ったら殺す」

勇者は完全回復した!

魔女「厄介な敵ですわねー。冒険の初めからこんなのと戦うことになるなんて」

女魔王「足手まといとなるのなら置いて行くか、殺すであるわよ」

魔女「私が足手まとい? バカも休み休み言え。ですわ」
297 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:39:47.22 ID:9dXc+XAz0
一方そのころ・・・


武闘家「おばさん。しっかりしてよー……死にそうじゃないのよ」

女戦士「……」

武闘家「ねぇ、どっかで少し休みましょうよ! 横にさせてあげた方が」

3「いや、その必要はない! 俺が死霊使いを蘇らせればその女もきっと元気になる」

武闘家「あんたバカじゃないの! 気遣い1つもできないとか、ウンコね!」

3「ウンコで結構。そんなにその女が心配ならばお前が何処かで休ませてやればいい」

3「俺は忙しいのだ。邪魔をするな。復活が遅れればどのみちその女は腐って無くなってしまうのだぞ」

武闘家「はぁ……?」

3「この魔物博士に以前作らせた魔物探知機によると、この周辺に埋まっている筈」

3「当てにできるかわからんが、今はこれに賭けるしか……ん?」

ぴーぴーぴー!

探知機の反応が強くなってきた。

3「ここじゃね!?」

3「ええいっ、もうシャベルで掘り出すのは面倒! 魔法で一気に地面に穴を開けるッ!」

3「きええぇぇーーーーーーっっっ!」


ちゅどーんっ! ・・・しゅ〜


武闘家「アンタ何やってんのよー!? 町の中であ、穴なんて開けて…今に人が来るわ!」

3「やかましいー! さて、死霊使いの遺体は……!」

穴の中から足が2本外へ飛び出していた。側近の足である。

3「アレか! 遺体の腐敗が進んでいるな、よく白骨化せずに残ってたものだ」

3「体内の魔力が進行を止めていてくれたのかな……」

足を持ち、体を土の中から引っこ抜いた!

側近「†」デローン

3「うあ、若干腐りかけじゃないか……」
298 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:40:59.17 ID:9dXc+XAz0
3「この遺体が死霊使いで間違いなさそうではあるな」

武闘家「ちょっと何で死体なんて掘り出してんのよ!? いやー!」

3「やかましいぞ娘! この女は俺の目的に必要不可欠な女だ!」

3「……ふふふ、待っていろ。今蘇らせてくれる」

3は懐から薬を取り出した。

3「こいつは魔物博士が作り出したアンデッド薬。死霊使い、貴様の技術を真似て作った薬だ」

3「悪いが通常の蘇生ではもはや上手く行きそうにないのでなァ。貴様自身もアンデッドへ変わってもらう」

側近(死体)の口から薬をドバドバと投入した。

武闘家「本当に何してるのよ……。キモいわよ」

3「ふん、この死霊使いが蘇ればその女は助かるのだ。まぁ、見ていろ」

3「……そろそろだ! 復活せよッ! 魔王の側近、死霊使いよ!」

側近「」

3「……復活せよッ!」

武闘家「そいつ死んでるんだし教会にでも連れてった方が」

3「あれぇ、おかしいなぁ……? どうして蘇らないんだ」ペチペチ

側近「」
299 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:42:13.65 ID:9dXc+XAz0
3「まさか、薬は失敗だった? バカな」

3「いやあり得るか……あのジジイ、ロクな発明を作らん!」

武闘家「さっきから1人でぎゃーぎゃーって、おばさんは心配じゃないの!?」

武闘家「アンタが仲間にしたんだから責任取りなさいよねっ」

3「う、うう……」

3「仕方があるまい。何処か、宿屋でも探して……」


がしっ


3「ん?」

3の足首が掴まれている。側近の手に。

3「お、お、おぉ? おー!?」

側近「…………魔王さま?」

武闘家「しゃ、喋った。死体が喋ってるー!」

3「薬は成功だったのか! 上手くいったぞー!」

3「おい、死霊使いよ。俺は元三魔官の1人、3だ。知っているな」

側近「魔王、さま……魔王さ、まは……」

3「聞いているのか? 貴様を蘇らせたのはこの俺だ。これからは命令にしたがって」

側近「あ、そーだ……」

3「おーい! 俺の話を聞いて」

側近「私、魔王さまに……否定されちゃって……帰ってもらえなくて……」

側近「魔王さまが、私を……? あ、あれ? おかしいな……おかしいよ……変ですよ……」

側近「ふ、ふふっ……ぷぷぷっ……くすくす……」

3「こいつおかしい。薬やっぱりダメだった?」

側近「はぁ……」

側近はため息をつきながら、その体をゆっくりと立ち上がらせた。
300 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:43:36.08 ID:9dXc+XAz0
武闘家「ど、どうなってんのよ」

3「蘇生は成功した! 成功したがどうも様子がおかしいの…」

3「もう1度言わせてもらうぞ、死霊使い。貴様は―――」

側近を懐柔しようと再び語り始めた3の顔面を、側近のハイキックがとらえる!

3「ぎゃ!?」

武闘家「え、え?」

側近「どうぞ笑ってくださいよ……私、魔王様の側近としてもダメダメでしたよ……」

側近「はぁー……」

突然蹴られた顔両手で覆って転げまわる3を踏みつけ、苦虫を噛み潰したような顔で側近は

側近「早く笑ってください」

3「無理ー! あー痛い! 痛いっ!」

側近の攻撃!

3は体を丸めて蹴りのラッシュから耐えている。

武闘家「もう止めなさいよ。勝手にアンタの事掘り出して蘇らせたのはそいつが悪かったけど、そこまで…」

側近「蘇らせた? はぁ、私はアンデッドになっちゃったんですねー……皮肉ですね、私がアンデッドに。だって」

側近「うふふ……」ゆらぁ

武闘家「ひっ」

3から武闘家へ対象を変えると、気だるげにダラダラと無気力そうに近づいてきた。

側近の目は、既に死んでいる!

武闘家「ま、待って」

側近「待ちませーん」

側近の攻撃!

武闘家「うっ…!」
301 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:45:24.00 ID:9dXc+XAz0
武闘家「痛い……痛すぎだわ……」

武闘家(私の蹴り以上に早くて、強かった)

武闘家「何者よ……!?」

側近「はぁ〜……今じゃ蛆虫同然の女ですよ」

側近「負け犬と笑うなり、使えない奴だと罵声を浴びせてくれてもいいです」

側近「ぜーんぶ、私は受け止めますからね……どうぞ、笑ってくださいな」

武闘家「アンタ何か変よ……怖い……」

側近「あー、魔王様。あんなにお慕いしてたのに。私、一度だって魔王様から」

側近「本当にダメですね、私ってば……」

武闘家「も、もっと前向きになりましょーよ。アンタならやってけるはず…」

側近「適当言わないでくださーい」

側近の攻撃!

武闘家「ひっ!」

しかし、攻撃は受け止められた!

武闘家「あ、あれ……」

女戦士「戦意を喪失した相手に一方的な攻撃。誉められた行為ではないな」

武闘家「おばさん!」

女戦士「せめてお姉さんと呼んでもらいたいものだね」

側近「あーん……?」
302 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:48:07.95 ID:9dXc+XAz0
女戦士「貴様も不死者になったとは。まぁ、貴様が蘇ったことで私にも力が戻った」

女戦士「感謝はしておこうか。だが、それとこれとは別」

側近「はぁ」

女戦士「この場は引いてもらおう。町中で暴れるのは趣味じゃない」

女戦士「どうしてもやりたいというのなら、外でなら私が付き合おう」

側近「ふふ、一方的にベラベラベラベラ……お喋りが好きなんですかぁ……?」

側近「奇遇な事に私もで……どーでしょ。今度お酒でも飲みながら2人だけの女子会開いてみたりー……」

女戦士「生憎、魔物と酒を飲み交わすような事は好まない」

側近「えー……でもぉ、貴女だって魔物じゃないですかー……」

女戦士「そうだな」

女戦士「さぁ、会話はこれまでにしてもらう。何処かへ消え失せてくれないか」

側近「私のこと嫌いですか……そうですか……」

側近「悲しいなぁ……涙が出てきます……」

女戦士「……」

側近「ああ、魔王様。かならずお城に連れて帰りますからね。一緒に帰りましょうね……」

側近「私、魔王様のためにいっぱいお菓子の作り方覚えたから……えへへ……」

側近はふらふらと何処かへ行ってしまった。

女戦士「……ふぅ。あの女魔物、一体何が。酷い変わりようだ」

武闘家「うっ、ううっ! うぐっ…ぐすっ…」

女戦士「よく頑張ったな。痛かっただろう」

女戦士「私は強い子どもは好きだよ、お嬢様」ナデナデ

武闘家「うううぅぅぅ……っ」

3「まだ痛い……俺も撫でて……」
303 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/20(日) 02:48:45.50 ID:9dXc+XAz0
ここまでやで
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/05/20(日) 04:11:54.11 ID:rIbkNLhNo
乙やで
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 04:49:42.71 ID:go+pu0Fw0
側近たん!側近たんじゃないか
どうしたんだ俺の嫁は・・・
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/05/20(日) 09:36:43.45 ID:MlJ/CQPRo
>>305
あなたの嫁はすっかり腐ってるみたいですよwww
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/05/20(日) 10:58:21.18 ID:dso45XcVo
俺の側近たんがデロデロに…
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/20(日) 14:16:47.41 ID:wANaV1bC0
こうなっては仕方あるまい
骨まで愛するのみだ。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/20(日) 23:40:58.08 ID:lXzJyj6DO
デロデロだろうがなんだろうが
側近が戻って来た!!

これでかつる
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 11:18:22.38 ID:4HMjYaMt0
どれぐらい腐った状態なんだろうか
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 16:07:51.61 ID:nQS4JABDO
リゾットくらいだろ
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/21(月) 16:12:28.98 ID:RyFPmsNeo
流派・側近腐敗
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 19:26:09.97 ID:ik1eu+4q0
これはゾンビですか?
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/21(月) 22:16:20.90 ID:44NPL4UIO
>>310
なんでも掛け算にする腐りかたじゃないといいよな
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/22(火) 11:57:28.34 ID:Ql7cszqW0
側近「魔王様と戦士…ハァハァ」
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 12:10:41.29 ID:zDkG1d9DO
側近も魔王に食べられちゃうのかな
そして側近が「やっと魔王様と一つになれる」とか喜んじゃうのかな

なんて俺得
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 18:17:51.99 ID:cjxYH2730
側近…不幸な子
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/22(火) 21:07:38.85 ID:AqKNgptc0
側近「ワタシノカラダハデロデロダ」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/23(水) 23:47:51.77 ID:Y+UlvoMDO
>>315
どんな腐り方したんだ


戦士産朝立ちキノコはその筋の方に高く売れそうだ
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/26(土) 01:25:24.40 ID:xfw5rGKSO
追い付いた!ダレる事なく一気に読めた

>>1乙だぜ

それとエルフは俺の嫁!
あああぁぁぁぁぁぁぁペロペロしたいよぉぉ!!
321 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:49:50.81 ID:LXPvDq7E0
魔法の森奥地、聖水が沸くとされる泉にて激しい攻防が繰り広げられる!

勇者は死を恐れずに女魔王へ正面から切りかかる、

賢者は――――――。


賢者「あい゛だだだっ!?」ぎゅうぎゅう

勇者「お前早速足引っ張ってんじゃねーよ! くそビッチ!」

賢者「だってだって! あー、背骨がボキボキ言ってる!」

魔女(ドラゴン)『ほーらほーら、もっと体重かけますわよ』

魔女は変身ドラゴンの魔法を使って大きな竜の姿になり、賢者をじわじわ踏みつぶしている。

魔剣『エグーい!』

勇者「チッ…あっちはもう知らない! 俺は魔王を倒すだけなんだよ!」

女魔王「貴様如きガキがかしら? 寝言は寝てから言えとはよく言ったものよねェ」

勇者の止まない猛攻を一撃、一撃と確実に受け捌き、隙あらばカウンターを放つ!

女魔王「ほら、また隙ありありであるわッ」

勇者「ひぎぃいいいぃ」ブジュウゥゥゥ〜

女魔王「勇者の剣はどうした? 貴様は勇者なのでしょ、全く使いこなせている様に見えんのだわ」

勇者「うるせェーッ! この剣が悪いんだアホ!」

勇者(対等に切り合うどころか……全く歯が立たねェ!)

勇者「はぁ、はぁ、はぁ……お前ぇ! 強くなったな!」

女魔王「貴様! 何上から目線してるであるか!」ざくっ

勇者「あううぅぅぅ!?」
322 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:50:32.36 ID:LXPvDq7E0
勇者「は、ははは……まだ死んでないんだよ。何度だって蘇るんだよ!」

女魔王「雑魚のくせにしつこく復活とか最悪だわよ…」

魔剣『早く死んでよ〜』

勇者(どうする……。接近戦じゃ勝ち目は無さそうだが、かと言って魔法は呪文を唱えている暇をあのクソが与えてくれ
る筈がねェ!)

勇者(この不死身の体を生かすのだとすればやはり接近戦だけどよォ〜〜〜 アイツはスタミナも化けモン。さっきから汗
一つ垂らさない)

勇者(腐っても魔物の王かよ! いや、腐ってんの俺か――――――)


ぶしゅうううぅぅぅぅ〜〜〜・・・


勇者「げぇ!」ポロ

勇者の首が魔剣で刎ねられた!

魔剣『これでどうだー!』

女魔王「全然のようねェ。肉体的にはダメージを蓄積させられている様に見られるが」

魔剣『アイツ、体が元通りになると今までの傷が全部回復しちゃうもんね。卑怯だよー』

女魔王「単純に殺しても殺す事が叶わぬ相手、アンデッド。厄介過ぎるわ」

女魔王(しかし特別な殺した方とやらが存在するとしたら? この世に余が倒せぬ敵は一匹たりとも居らないのよ)

女魔王(……あやつ自身、脅威的な再生能力を除けばただの武器持った人間。先程からの猛攻撃で疲れが顔に出てきてお
る)

女魔王(完全なアンデッドではない? 不完全な? 側近の馬鹿はどの様にしてあやつらを生み出しておるのかしら。そし
てどの様にして処分を)

女魔王(日の光……)チラッ

女魔王(アンデッドとはどちらかと言えば闇のイメージが強いである。だとすれば相反している属性、光)

女魔王「試す価値は大ありだわね」

魔剣『何でもこーい! 勇者ちゃん!』
323 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:51:44.59 ID:LXPvDq7E0
勇者「ボサっとしてんじゃねーよ!」

勇者の攻撃!

女魔王のカウンター攻撃発動!

女魔王「ヨイショーッッッ」がしっ

勇者「は、へ」

勇者の横一閃へ薙ぐ攻撃を魔剣で防ぎ、空いた片手で勇者の後頭部を鷲掴みにした!

そのまま尖った木の枝へ目玉を突き刺す! 勇者の絶叫を気にせずぐいぐいとさらに頭を押しこんでいき、木に固定する!


勇者「    」


女魔王「おう、そこの!」

魔女(ドラゴン)『そこのとは失礼ですわね! 何よ』

女魔王「貴様は光魔法を使えぬの? 使えればさっさとー」

魔女(ドラゴン)『見てわからないかしら、ですわ。私は今こっちをお仕置きするのに忙しいの』

賢者「ゆう゛じゃぐっ…へ゛るぶみ゛ぃ〜…」めきめき

魔女(ドラゴン)『悪いけれどそっちはそっちで何とかしろ! ですわね』

女魔王「ええい、使えん奴だわ!」

魔剣『魔女っちのケチー!』

勇者「抜いて…抜いてくれ…」
324 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:53:37.44 ID:LXPvDq7E0
勇者(さ、刺さった枝が邪魔して再生が!)

勇者「ウオオオオオォォォォォ〜……」じたばた

魔剣『勇者ちゃん、アイツ再生遅くない?』

女魔王「……成程。再生に邪魔があれば」

女魔王「つまりであるわ。あやつらアンデッドは殺しきる事は不可だとしても、永遠と死なぬ程度には痛みを与え続けるのは可能という事か」

女魔王「まぁ、その様なまどろっこしい事はしないけど」

女魔王「おう、何か縛る物は何処かにないかッ!」

魔剣「え?」

女魔王「早く!」

魔女「そーれ」

魔女は一本の縄を召喚すると、女魔王へ投げ渡した。

魔女「特別出血大サービスですわ。その縄なら簡単に切られる事はないでしょ」

魔女「さぁて! こっちは後どう調理してやるか! ですわ」

賢者「このガキぃ……!」

女魔王「ふん、出せるのならさっさと渡すのよ」

女魔王の攻撃!

勇者の四肢を切断してしまった!

勇者「あああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッッッ!!!」
325 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:55:03.80 ID:LXPvDq7E0
魔剣『わーい! ダルマだ、ダルマ!』

女魔王「これからもっと面白い物を見せてくれようぞ」

魔女から受け取った縄で達磨勇者をグルグル巻きにすると

勇者「な、何だ! てめぇ、フザケんなよ!? この縄を解け! 止せッ……!」

女魔王「その様な上から目線な阿呆の申す事など余が聞き入れると思っておるのかしら」

女魔王「せめて、ごめんなさい。すいませんでした。ぐらい申してくれなきゃねェ」

勇者「誰がてめぇなんかに――――――」

女魔王「じゃあポイするであるわ」ぽい

勇者「え」

女魔王は達磨勇者を掲げると、泉の中へポイした!


ぼちゃーん!


賢者「げっ! 勇者くんー!」

魔女「あら、私との戯れの途中に余所見は禁物。ですわよ」

賢者「だ、だって勇者くんが! ヤバい! ヤバいよ、ヤバいよ!」

魔女「燃えろファイア〜!!」

魔女は炎の魔法を使った! 体内から一気に燃え上がる!

賢者「きゃあああああああぁぁぁあぁああああああああ」

女魔王「あ、ミスったであるわ!」

魔剣『え〜?』

女魔王「重りつけなきゃしっかり水底に沈まぬわ……」

泉に落ちた勇者は水面にプカプカと浮いている。

が、

勇者「お、おおお……? オオオォ……ッ!!」

勇者「ウゥアアアアァァァ……? お、俺の体! 俺の体が溶けてる……!?」ジュ〜

水底へ落ちる事はない。だが、体が水に触れた途端に勇者の肉が徐々に溶けだした!

女魔王・魔剣「『んん〜?』」
326 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:56:04.77 ID:LXPvDq7E0
勇者「お、おい! 助けてくれ! やべぇ! マジやべぇ! 溶けてんだよ! うわあああああああ」

魔剣『何かよくわかんないけどー。もしかして弱点は水だった、とか!』

女魔王「ふふーんッ! 今頃気づいたか愚かな魔剣め! 余は既にその様な事気づいておったのよー!」

魔剣『えー! 勇者ちゃんってば天才すぎだよ〜!! カッコイー!』

女魔王「ふははははーッ!」

勇者「わ、笑ってる場合じゃ…! ひっ!? 早く助けやがれよッ!! 俺はまだ消えるわけには!」

勇者「ああああああぁぁ……! 何でどうして再生しないんだよ! 早く治れよ! 何でだよォッーーー!!!」しゅーしゅ


女魔王「滑稽なザマよ、偽勇者。これは勇者の名を余の許可無しに語り、虚言を語って回った罰。まぁ、許可なんぞくれ
てやる気も起きないけど」

女魔王「今度こそ潔く死んで見せよ! 腐れアンデッドッ!」

勇者「お…おれは……ゆうしゃだぞ……。こんなおわりかたなんてひでーよ……」


勇者「おれ、かませみたいじゃん……――――――――」しゅー・・・


勇者は骨となり、泉の底へ沈んでしまった。

魔剣『偽勇者を倒したぁー! きゃっほー!』

女魔王「気分がいい。なんと清々しい気分。ザマァみろー!」

女魔王・魔剣「『wwwwwwww』」

魔女「勝利の余韻に浸るのは構わないけど、まだ私の方は決着ついてねぇ。ですわ」

女魔王「なーに。貴様もその雌狐を縄で縛って泉に投げ捨てればいいのよ」

賢者「ゆ、勇者くん。マジかませ犬」

賢者「っていうか私もマジでヤバい予感なんですけどー……」

魔女「その予感、てきちゅー! ですわ」

賢者「やだぁー!!」
327 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:56:38.40 ID:LXPvDq7E0
魔女「氷漬けでゆっくりと泉の聖水に溶かされていくか、沈めてさっさと溶かされるか」

魔女「好きな方を選ぶ権利がお前にはある、ですわ。ささ、私の気が変わらないうちにどっちかを」

賢者「じょ、冗談じゃない!」

賢者は落ちていた勇者の剣をさっさと拾うと、空間魔法を唱えて逃げてしまった。

魔女「ふー……いくら化物じみた再生能力があるとはいえ、人間の姿の相手を痛ぶるのは少し気が引けますわね…」

魔剣『そのわりにノリノリだったし』

女魔王「それより勇者の剣! 何処いったの」

魔女「剣? それならあの女が持って逃げたけれど」

女魔王「何故すぐに回収しなかったのよッ」

魔女「別に拾えなんて言われてないしー。ですわ」

女魔王「アァーッ!!!」

魔女「それより、アンデッドとやらはこの聖水が弱点だったみたいですわね」

魔剣『え? 水じゃないの? 違ったの?』

女魔王「馬鹿め、気づかぬかったの? 余は知っておった」

魔女「ウソおっしゃいー。さぁ、敵も退けた事だし、面倒だけど一旦町へ戻ろー」

魔剣『みんなを蘇らせなきゃだもんね〜』

女魔王「こやつらもアンデッドにした方がいいんじゃないかと最近思う」

仲間s「†」
328 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:58:01.55 ID:LXPvDq7E0
魔法の町・教会


女魔王「これ蘇らせるのよ」どさっ

神父「あ、あなたは……魔女の仲間の」

女魔王「今は魔女と行動を共にしておらんわ。ほれ、さっさと」

神父「申し訳ありませんが、あの悪魔の一族と関わった方を復活させるのは」

魔剣『確かに魔女っちは性格くそ悪いし、見下してくるけど悪魔じゃないよー』

神父「け、剣が!」

女魔王「ええいっ、貴様は喋るな!」

魔剣『だって〜』

神父「お前たちは悪魔の使いか! 言葉を喋る剣を持っている! それが何よりの証拠!」

魔剣『何でだよー!』

神父「黙れ黙れ! お前たちのような者を復活させるわけにはいかん! 失せろ!」

女魔王「神官如きが余に刃向うとは。余は勇者なのよ! 早く復活させろ!」

神父「……勇者? しかし、見た目がなんか」

神父「まさか例の偽勇者!? お、おお、何という事だ……誰か! 誰かー!」

女魔王「チッ」

女魔王の攻撃!

神父「†」
329 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 05:59:52.68 ID:LXPvDq7E0
魔女「おかえり〜。みんなしっかり蘇られたのかしら?」

女魔王「この町から早く逃げるであるわ」

魔剣『スタコラサッサー』

魔女「は?」

女魔王「いいから早くする!」ぐいっ

魔女「ちょ、ちょっとー!?」


<ウ、ウワー シンプサマガー

<キャー シンプサマガー


魔女「……何してきた。ですわ」

魔剣『だってアイツが悪いんだよ! みんなの事蘇らせてくれないし、勇者ちゃんを偽勇者だって』

女魔王「こやつの申す通りだわ。あの神官が屑だったから余が神に代わって裁いてあげた」

魔女「呆れた〜……ですわ」

魔女「私、もうこの町へ戻ってこれなくなるかもしれないじゃないの! ただでさえ私の一族は町で嫌われてるというの
に!」

魔女「あー、勇者が罪のない神父を殺すだなんて信じられねぇ。ですわ」

魔剣『でもアイツは魔女っちの事悪く言ったんだよ。だから』

魔女「まさかその理由も含めて神父を…?」

魔剣『そうだよー。ね、勇者ちゃん!』

女魔王「別にー」

魔女「……そんな事されたって」

女魔王「あァん?」

魔女「…………お礼なんて絶対言わないんだから」

魔剣『顔赤くなってるー』

魔女「こ、こっち見んな! ですわ!」
330 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 06:01:51.35 ID:LXPvDq7E0
フィールド


魔剣『町の方が騒がしい感じがするよ。きっと僕たちを探してる』

魔女「でしょーね」

魔女「とりあえず、近場の町に向かいましょ。そこの教会へ行けば今度こそ」

女魔王「それは構わないけど貴様は早く魔法薬を作るのよ。歩きながらでいいから」

魔女「中々の無茶を言いますわねぇ。魔法薬を精製するには結構な集中力が欲しいのよ?」

魔女「そんな適当に作ったら、失敗作ができあがるかも。それでも?」

女魔王「……仕方がないから町で作れであるわ」

魔女「はいはい」

魔剣『勇者ちゃん勇者ちゃん。あのビッチが持ってった剣はどーすんの?』

魔剣『今ならそう離れたとこにはいないだろうし、すぐに追っかけられるよー』

女魔王「今は面倒だがこやつらの復活を優先させるのよ」

魔剣『じゃあそれからだね〜!』

女魔王「否、勇者の剣は後回しよ」

魔女「あらら? だいぶあの剣を欲しがっていたのに。ですわ」

魔剣『ねー?』

女魔王「盗賊が妹うんたら申しておったでしょ。いい加減ウザいからそっちから事を済ませてくるのよ」

魔剣・魔女『「……」』じー

女魔王「何よ?」

魔剣『ううん、勇者ちゃんは何だかんだで優しくカッコいいなー! って!』

女魔王「ふふーん! そうであろう、そうであろう! もっと余を讃えるがいい」

魔女「きゃーかっこいー(棒」

女魔王「貴様舐めておるわねッ!」びしっ

魔女「痛いよ! 何で私ばっかりですわー!」

ぎゃーぎゃーぎゃー



暗黒騎士「まさか本物の勇者が化物だったとは。一体どちらが偽った勇者だったのだろう」

暗黒騎士「ん、伯父上。……はい、はい」

暗黒騎士「了解した。隙あらば女の方の勇者を手に入れ、そちらへ送らせてもらう」

暗黒騎士「俺はしくじらない、伯父上。信用していてほしい。それでは」

暗黒騎士「……伯父上にいっぱい頭撫でてもらうためにも頑張らなければな!」
331 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 06:02:31.25 ID:LXPvDq7E0
一方その頃・・・


ペロ「いててだよ〜……ここ何処だよ〜……」

ペロ「おぉーーーーーーいぃ」

しーん

ペロ「……ぐすんっ」

ペロ「アイツらは大丈夫かな。つか俺だけかな、こんな変なとこにいんの」

ペロ「何があって、どうなって、こんな場所に俺はいるんだよー……」

ペロは魔女の魔法の罠によって適当なところへ空間転移されてしまったのだ!

ここは周りに何もない、ただの大平原である。

ペロ「どうしよう。こんな所で俺を追ってきた城の奴らに見つかったりしたら」

ペロ「こ、殺されるかな……嫌だぁ……」

ペロ「誰かー! 戦士ー! 僧侶の姉ちゃんー!」ふらふら

ペロ「おぉーーー……うわっ!」

当てもなく歩いていると、何かに躓き転んでしまった。

ペロ「な、何だよ。ゴミか何かぁ……?」

側近「ゴミ……。ああ、そうですねぇ……私ってゴミかも」

ペロ(うわ、魔物じゃん!!)

側近「ゴミはなーんにもできません。使い物にならないから、ゴミ」

側近「今の私にピッタリの言葉じゃないですかぁ……あなた、ネーミングセンスいいですね」ジロ

ペロ「うっ!!」
332 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 06:03:51.02 ID:LXPvDq7E0
ペロ(この女……! 魔王の側近だった死霊使いじゃねーかよ)

ペロ(でも確か死んだって聞いたぞ? どうしてこんなところに)

ペロ「ど、どうも」

側近「ゴミだから私、少し腐った臭いがしますよね……ふふふ」

ペロ(うあ、若干腐りかけなのか……。てことは、こいつゾンビに?)

ペロ「あのー……間違えてたら申し訳ないんですけどね。貴女って8代目側近のー」

側近の攻撃!

ペロ「ぐえぇー!?」

側近「そんな時もありましたねぇ……でも今は何でもないんですよ」

側近「まぁ、魔王様の事は今でもお慕いしてますけどねぇ……」

ペロ「い、いきなり何するんですか。俺はただ尋ねただけなのに」

側近「」にたにた

ペロ(こ…この女……絶対ヤバい……! おかしい……!)

ペロ「……こんな所で貴女は何を?」

側近「何を? 何って魔王様を探していたんですよぉ」

側近「それしか私の目的はないんです。でも、魔王様はまた私がお城へ連れ戻そうとしても」

側近「きっと……断るんでしょうねぇ!!」

側近の攻撃!

ペロ「ぶっ!?」
333 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 06:05:23.34 ID:LXPvDq7E0
側近「うう……」

ペロへもう一発蹴りを放ち終えると、その場に崩れて両手を顔に当てた。

ペロ「え、え?」

側近「悲しいのに……泣きたいのに……涙が出てこない……うっ、うぅ!」

側近「魔王様、ごめんなさい……私はこんなにも醜い女になっちゃった……」

側近「ごめんなさい……うぅ……」

ペロ「お、おい。泣くなよ、元気出せよ…。きっと良い事あるって」

側近「慰めなんて要りません」

ペロが励まそうと声をかけてきた瞬間に立ちあがり、側近の攻撃!

ペロ「ま、またぁー!? うげぇ…ぐっ…」

ペロ「さっきから何なんだよアンタ! 一方的に攻撃してきて! 失礼じゃないのか!?」

側近「あー……何だか私、今は善悪とかワケが分からない状態で……自分を止められないって感じでぇ……」


側近の攻撃! 側近の攻撃! 側近の攻撃!


ペロ「う、げっ、やめっ、おい…!」

側近「あはははは…ふふっ、あー、楽しい……やめられないよー……」びし、びし

ペロ「畜生ー! こんな奴に話しかけるんじゃなかったよ!」
334 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 06:07:40.03 ID:LXPvDq7E0
ペロ「」ボロボロ

側近「ああ、私ったら……心配してくれた魔物をこんなにしちゃって」

側近「最低ですね…私って…」ふらぁ

事を終えた側近はその場を後にしようとした時、ペロの舌が側近の足を捉えた!

側近「えぇ……?」

ペロ「ま、待てよ……あんた、本当にどうしちゃったんだよ?」

ペロ「8代目の側近っていえば、こんな凶暴でもなかったし、他の魔物たちにも優しかっただろ…」

ペロ「憧れてた奴もいたんだぞ…死霊使いとしての腕だって凄くて…」

側近「昔の私は、たぶん死んじゃったんじゃないでしょうかねぇ」

側近「今ここにいる私は、落ちぶれたただの屑。負け犬です」

側近「指を差して笑ってくれてもいいですよ……どうせ私なんて」

ペロ「そんなに自分を卑下するなよ……」

ペロ「あんたに何があったかは知らないけれど、まだ立ち直れるだろ? 屑でも負け犬でもないってば」

ペロ「頑張れなんて事は言わないけどよぅ、何もかも諦めたらダメじゃねーか…」

側近「お説教ですか? 勘弁してくださいよ……」

側近「これ以上私に話しかけない方がいいですよ……じゃないと……」

ぼとっ

側近・ペロ「あっ」

側近の右足が付け根から腐れ落ちてしまった!

ペロ「ひっ……」

側近「あぁ……」どてっ

側近「どうしよう……片足だけじゃ魔王様を探しに行けないよぅ……うぅっ」

ペロ「本当に腐ってたんだぁ……」ガクブル
335 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/05/27(日) 06:08:30.08 ID:LXPvDq7E0
ここまで。どうも一週間ぶりです
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/05/27(日) 06:59:11.42 ID:1LAf2NEOo
さすがに勇者sがかわいそう
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/27(日) 07:45:17.21 ID:S71KrKev0
乙!
勇者の倒した方えげつねぇな

それより俺の側近たんが大変だ…
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/27(日) 12:24:39.63 ID:7JAETW+DO
側近、女魔王みたらどうなるんだろ
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/05/27(日) 15:55:22.25 ID:jnxy6jBI0
側近ならたとえどんなに姿形が変わっていても、一目で魔王と見抜くだろう愛ゆえに
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/27(日) 22:24:27.63 ID:X4K6V7YIO
新ジャンル 「腐デレ」
と思ったら既にあるジャンルだった。
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/28(月) 09:37:59.05 ID:J/sIo7WIO
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/29(火) 02:02:48.23 ID:miqYhtpJ0
魔女っち可愛いのう。15歳だし
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/31(木) 20:41:13.34 ID:y6oXJ2+Z0
側近たんの変わりようが凄い
344 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:01:58.11 ID:px0avWDz0
王都騎士団円卓の間


団長「そうそう、じゃあ頑張ってね。上手く任務達成できた暁には伯父上があっちゃんの頭ナデナデしたげる」

団長「ばいびー。……ふぅ、疲れるねぇ」

魔導騎士「どうして暗黒騎士くん1人に任せるの? ボクたちもそろそろお仕事したいよ」

団長「あの子は優秀ですから。それに小娘1人に騎士団全員動かす必要ないのよ」

団長「君らは来るべき闘いに向けて、英気を養ってなさいな」

竜騎士「ダラダラしてるだけでオキューリョーGET。Ah! ナンテステキな職場でしョ!」

騎士「くだらないっ。そのダラダラする時間を剣の鍛錬に費やしたらどうか」

魔導騎士「騎士くんの言う通りだよ。怠けてばかりじゃ腕がなまっちゃうの」

竜騎士「オレはストロンガー。何もせずともサイキョー」

重騎士「わしの間違いでもなければ、お前はつい最近偽勇者の一味に」

竜騎士「皆まで言うなYOー!」

竜騎士「……それよりダンチョさぁん。何故にあのガールに執着する?」

竜騎士「まさかのLOVE? いわゆるロリコンカ?」

団長「14過ぎた娘は老婆同然だよ」

竜騎士「あぁ? Holy shit!」
345 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:02:39.16 ID:px0avWDz0
魔導騎士「……」

団長「やめてくれよ。冗談なんだから」

魔導騎士「騎士くん、ボク怖い」ギュ

騎士「騎士団長殿! 見損なったぞ!」

団長「純粋な子たちだわねぇ」

団長「おじさんがあの子を追っている理由は、必要だから。それだけさ」

重騎士「……」

竜騎士「ソノ必要なリユーがオレたちゃシリテーわけヨ?」

団長「それを話す義務があるかい? 君らはおじさんの部下なのよ、文句言わず言われたままに動けばいいの」

竜騎士「ショッケンランヨーかッ!」

重騎士「団長の仰る通り、我々はただその命に従えばよい。それが彼の元へ集った我々の宿命よ」

騎士「……? 騎士とは高貴なる存在だ。私たちは王都を守るために」

重騎士「ああ見えても団長は王都の平和を案じているのだ。彼に従うとは、王都を、いや、世界へ平和を齎す道よ」

竜騎士「相変わらズじじいはダンチョ崇拝野郎ネ」

重騎士「わしは友を信じておる。なぁ、戦友?」

団長「おう、戦友」ニヤリ

魔導騎士「胡散くさいです…」

団長「よー言われます」
346 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:04:28.00 ID:px0avWDz0
騎士「まだ納得はいかない。だがしかし」

騎士「団長殿、私は貴方を信じよう。そして改めて誓おうではないか! この剣にかけて王都を守り通すと!」

団長・竜騎士「あつっくるしー…」

魔導騎士「かっこいいな…」

竜騎士「Youの感性疑っちゃうワ」

団長「ふぅ、とりあえず解散にしよっか。おじさん歳だからお話してても疲れるのね」

騎士「お肩をお揉みしようか!?」

団長「男からはノーセンキューだよ。ほれ、さっさと行ったー」

騎士「ぐぬぬ……。では、私はこれにて失礼する!」

魔導騎士「騎士くん待って…ボクも…」

竜騎士「バイナラー」

3人は部屋を出て行った。

団長「……睨んだ通りだ。勇者一族はあの女を殺せる」

団長「あーあ、あの時逃がしたのは痛かったねぇ。こんな事なら」

重騎士「焦る事はあるまいて、友よ。まだ慌てる様な時間ではないのだ」

団長「気に食わないのさぁ。あの女がまだこの世に生きているのがよ」

団長「俺を汚した罪は重いんだってば……」

重騎士「心中お察ししよう」

団長「あんたにゃわからんよ。これは俺だけの問題さね」

団長「つまらん復讐劇に付き合わせて、すまんな」

重騎士「構わん、お前には借りがあるのだ。好きにわしを使え」

重騎士「わしはどこまでも友に着いて行こう」

団長「心強い部下兼友人がいて俺は幸せもんだ!」

団長「……っんふふ」

重騎士「いよいよなのだな」

団長「ああ、待ってて頂戴。世界樹ちゃんよ」
347 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:05:22.74 ID:px0avWDz0
どっかの町


戦士「勇者殿おおおぉぉ……」

女魔王「止せ貴様ッ! スリスリするなだわ! 気色悪っ」ジタバタ

戦士「お役に立てず申し訳ねぇ〜〜〜……」すりすり

魔剣『僕の勇者ちゃんに触んないで! だめ!』

女勇者「あれってセクハラに入る?」

魔女「勇者は元は男なのでしょ? たぶんスキンシップ、ですわ」

盗賊「今は女の体だろ。あの肉ダルマ、ドサクサに紛れて好き放題触るぜ」

戦士「俺は勇者殿にそんな失礼な事しねぇよ! あっ、手がすべっ」

僧侶「ふんっ!」ゴチンッ

戦士「痛いんですけど!? …もー、僧侶ちゃん酷くね」

僧侶「スケベな戦士さんは嫌いですよ。回復してあげませんから」

戦士「男はみんなスケベでしょうが…。なぁ、盗賊」

盗賊「俺に振ってくんじゃねぇ!」

盗賊「……それより勇者、本当なのか。妹を」

女魔王「余はウソつかないである」

女勇者「うそつき……」

戦士「流石は勇者殿だ! 仲間の為に……うぅ、涙出てくる」

僧侶「大袈裟です。でも本当に良かった、やっぱり勇者様はお優しい方です」

女魔王「優しいとかどうでもよいから、もっと敬えよ。頭を地にすりつけて」

戦士「はい!」すりすり
348 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:06:02.33 ID:px0avWDz0
盗賊「おい、薬の方は?」

魔女「素材はなんとか集まった。けども、調合はまだーですわ」

盗賊「急げるか」

魔女「はぁ……私、今とっても疲れてますのよ? 素材集めも戦闘も任されっきりだったので」

戦士・僧侶「うっ」

女勇者「あ、あ、じゃあ! 今日は一旦この町で休憩ってのはどうかな」

女魔王「大賛成であるわ。余は今日はもう動きたくない」

女勇者「ほら、勇者さんも魔女もこう言ってる事だし。師匠は」

盗賊「…構わねぇぜ。こいつらは仕事もしてくれたしな。俺の我儘で無理に引きずり回せねぇ」

戦士「お? 盗賊?」

盗賊「何だよ、肉ダルマ」

戦士「ああ! いつもの盗賊に戻って来たなって思って。気にするなよ」

盗賊「ほんと気色悪ぃな……チッ」

僧侶「では盗賊さんもそう言っていますし、今日は宿をここで取りましょう」

僧侶「その後は各自自由行動、ということで大丈夫でしょうか? 勇者様」

女魔王「寧ろそうするのよ。ただし、魔女。貴様だけは魔法薬精製してて」

魔女「私だけ自由じゃないー!? はぁ!? ですわ!」

女魔王「当たり前よ! 余は早く呪いを解きたいのよ!」

魔女「ふっざけんな! ですわ!」
349 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:06:34.80 ID:px0avWDz0
戦士「勇者殿、こいつにも休憩させてやりましょうや」

戦士「偉そうな事言っておいて、俺たちこいつに迷惑かけちゃったし…」

魔女「全くですわよ! 人の言う事もしっかり聞かないし」

僧侶「魔法薬は今すぐでなくても、明日から頑張ってもらえばいいじゃないですか。ね?」

女魔王「ぶー! ぶー!」

魔剣『勇者ちゃんが魔法薬を今すぐご所望だよー!』

僧侶「そう仰らずに…」

盗賊「おい、こいつの言う事は気にすんな。お前もゆっくり休んどけ」

魔女「何様のつもりですの……」

魔女「ていうか、疲れてたら適当な魔法薬できても知らない。ですわよー」

女魔王「何、それは困るぞッ!! では貴様! 今日はさっさと休め!!」

「……」

女魔王「はい、全員一旦解散であるわよ。戦士よ、宿の手配を済ませておくのだ」

戦士「あいあいさー!」

魔剣『勇者ちゃんどこいく〜? デートだよ、デート』

女魔王「阿呆が。余は少し外に出る。試す事があるのよ」

僧侶「外へ? 町の中へいては…」

女魔王「」イソイソ、イソイソ

僧侶「も、もう行っちゃった」

魔女「勝手な奴ですわねぇ。ま、私も好きにさせてもらう。ですわ」

戦士「んじゃ俺も命令通り宿取ってくるかな。女勇者ちゃん一緒に来て」

女勇者「へ?」
350 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:07:07.19 ID:px0avWDz0
女勇者「どうして私?」

戦士「いいじゃないの。ほら、仲間になったばかりだし。お互いの事もっと知るために喋ってみようかなと」

女勇者「なるほど。……でも、師匠が心配だよ。目見えてないし」

戦士「アイツなら僧侶ちゃんに任せておけばいいのよ。な?」

僧侶「え? あ、はい。ていうか盗賊さんも一緒に行って、先に宿屋で休んだら」

戦士「盗賊が散歩したいそうだ! 付き合ってやりなよ」

盗賊「は?」

女勇者「ああ! だったら私が付き添いまっ」

戦士「さー、行こうか。女勇者ちゃんは食い物何好きかな〜?」ぐいぐい

女勇者「わー!?」ずりずりずり…

僧侶「なんだか楽しそう……」

盗賊「……」

盗賊(何考えてんだアイツ!?)

盗賊(うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)

僧侶「あ、お散歩でしたね。適当に歩きますか?」

盗賊「お願いします」




暗黒騎士「……」コソコソ
351 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:07:45.37 ID:px0avWDz0
宿屋


店主「6名様ですか。運が良いですね、お客さん! 丁度2部屋空いてますわ」

女勇者「2部屋? いいえ、私たち別に1部屋で」

戦士「2部屋で頼む!」

店主「へいへい。じゃあこれカギ」

女勇者「え?」

戦士「ありがとさん。それじゃあ」

店主「どうぞごゆっくり〜」

戦士「……」スタスタ

女勇者「ねぇねぇ、どうしてさっき1部屋に」

戦士「このおバカ。一応男と女で分けなきゃいかんだろ」

女勇者「でもいつもは1部屋に全員で…」

戦士「じゃあ今日からは2部屋ね。人数多くなったし」

戦士「……君ね、もうちょい考えるようになんなさいよ?」

女勇者「はぁー…?」

女勇者「あ、考えたら何か」

戦士「ん?」

女勇者「勇者さんってどっちの部屋に寝るの? 男女で分けるなら私たちの方に?」

戦士「あっ……!」

女勇者「お風呂もどうしましょ?」

戦士「うわっ、やべぇなコレ!」
352 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:10:30.39 ID:px0avWDz0
フィールド


女魔王「……キエエェーーーーーーッッッ!」

女魔王は炎の呪文を唱えた! しかし、魔力が足りない!

女魔王「むぅ、やはりまだ変わらず魔法が使えぬではないの」

女魔王(魔力が回復したわけでもなければ、余は何故ルールの魔法が使えた?)

女魔王(……そもそも、この魔法は以前戦った夜の帝王のモノではないか)

女魔王「ん?」

女魔王「何故あやつの様な雑魚をまだ余が覚えておるのかしら」

女魔王「……それよりも以前の事も、斑ではあるけど、少しずつ」

女魔王「……ぼけー」


―この様な者を後継ぎにですと!? ご冗談もそこまでに

―んー冗談ではなァいィ。余はァこの子を我が息子として迎えようゥ

―問題あるまい。んこやつもォ我らと同じ魔物であろう?

―魔物! その様な穢れた身体を持つ者が我らと同じと! お止め下さい!



―どうか考え直して下さい、魔王様。私にはわかるのです。その者は危険だと

―一刻も早く処分すべき……! きっと今に大変な事に!

―んゥ〜〜〜……頼むゥ……。余の、余の我儘だとは先刻承知よ。しかし、余はこの子に可能性を見出したのだ

―この子はァ、魔王として

―なりません!! では、お妃様との間で授かったご子息はどうするのです! ご子息こそが

―……ならんッ。アレはならんのだ。余にはわかる。

―アレはァ、事の善悪の判断ができぬゥ。アレは、狂気そのものよ。いずれ魔族が消されてしまうゥ



―ふぇえええ・・・・・・。



―ああ、ご子息様が泣かれておられますぞ!

―余はこれより、アレを封印する。誰が止めようがァ……成し遂げてみせようぞ

―ま、魔王様!

―離せィィィ! あの女が悪かったのだッ! あの女と余が関係を持たなければァ!





「ふぇえええ・・・パパ上に封印されちゃうよぉ・・・ふぇえええ・・・」
353 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:11:16.32 ID:px0avWDz0
女魔王「……」

魔女「おいっす!」

女魔王「……」

魔女「驚いた! とか何故ここに! とかそういった反応を待っていたのに」

魔女「まさかの無反応。なんて面白みのない」

魔女「ちょっと、こんな所で1人で何してる。ですわ?」

魔女「あの剣はどこ? 退屈だから解体してやるんですわ」

女魔王「……」

まったく反応がない。

魔女「ちちんぷいぷい」

女魔王の頭上から大きなタライが落ちてきた!


女魔王「むぐっ」ゴツーン


女魔王「……余は、何を」

魔女「それはこっちの台詞、ですわよ」

女魔王「貴様! 何故こんな所におるの!」

魔女「〜♪」
354 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:11:50.46 ID:px0avWDz0
女魔王「魔剣? 喧しいからその辺にポイしてきたであるわ」

魔女「あらら、大切な剣じゃなかったの?」

女魔王「いや別に」

魔女「ちょっぴり魔剣に同情、ですわね」

魔女「で、勇者は何してたんですの?」

女魔王「貴様にそれを申す義理はあるまい」

魔女「ケチな奴〜! 当ててみようか。魔法が使えるか試していた。違う?」

女魔王「違う」

魔女「ウソおっしゃーい! 私にはわかる。ですわ」

魔女「ぶっちゃけ、あなたの今の魔力器官はズタボロ。使えるわけがねぇ。ですわよ」

女魔王「だがルールの魔法が使用できたのよ」

魔女「そこですわよね。おまけに微量ながら魔力が回復する」

魔女「……考えられるのは、なんか変な物を体に仕込んだ? ですわね」

女魔王「何だと」

魔女「私にもよくわかりませんけれど、その変な物が勇者の体内にあると仮定すると」

魔女「ソレがあなたのルール魔法の使用負担を補っている。とか」

女魔王「……よくわからんなッ!」

魔女「それなら私の魔法薬の効果がなかった事にも説明がつきますのよ」

魔女「つまり、あなたの例の魔法は魔力器官が生み出した魔力を使用したものではないかもという事。ですわ」

女魔王「ふーん?」
355 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:12:24.42 ID:px0avWDz0
盗賊「……」

僧侶「あの、手震えてますけど。大丈夫ですか?」

盗賊「はい」

僧侶「本当ですか? 無理だけはしないでくださいね」

僧侶「…それにしても、視覚が無くなる呪い。難儀しますよね」

僧侶「私なら何も見えなくなっちゃったら壊れてしまいそうです」

盗賊「目が見えないと、別の感覚がよく冴えるんだ」

僧侶「え?」

盗賊「特に触覚とか嗅覚とか聴覚」

盗賊(だから、僧侶ちゃんの手の温かさとか! いい臭いとか! 可愛い声とかが凄い感じられるんだぜ!?)

盗賊(……ダメだ。今は妹の事を心配するんだ。俺はなんて薄情なんだ)

盗賊(アイツが苦しんでるのに俺は、馬鹿野郎だよ)

盗賊「……すまん。何でもない。気にしないでくれ」

僧侶「他の感覚が冴える、ですか。確かに敏感にはなりそう」

僧侶「味覚はどうなんです?」

盗賊「目に映らない物を食ってると変な感じになる」

盗賊「何を食っているかよくわからないのがな」

僧侶「でしたら、解呪できるまでは私が盗賊さんの口へ運ぶ物を一々教えましょう」
356 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:12:52.52 ID:px0avWDz0
僧侶「そうすれば、ああ今はこれを口に入れているんだって少しはわかりますよね?」

盗賊「あ、ああ」

僧侶「他にも悩んでる事があれば遠慮なく言ってください。できる限り協力します」

僧侶「あ、別に目が見えないから哀れんでいるとかではないんですよ? 私は困っている人の助けになりたくて」

盗賊「困ってる人とか思う時点で哀れんでいるんじゃねぇのか…」

僧侶「え」

盗賊「いいんだよ、無理しなくてな。お荷物ならそうだって言ってくれた方がいい」

盗賊「大体困ってる人の助けになりたいなら、お前の故郷の乞食とか……!」

盗賊「……すまないっ!」

僧侶「い、いいんですよ。私が悪いんですから!」

僧侶「勝手ですね、私って。こんなだから立派な神官になれないのかな…」

僧侶「ハッキリ言っていただいてありがとうございました。反省します」

盗賊「えっ、いや! お礼言われるような事は……俺が変な事を勝手に言って!」

「……」

盗賊(どうして俺はこう無意識に悪態つきたがんだよ!?)

盗賊(完全に雰囲気ぶち壊して気まづくなったじゃないか!! うわああああ)
357 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:13:26.87 ID:px0avWDz0
僧侶「あの、盗賊さん」

盗賊「ひゃい!?」

僧侶「このような事聞くのは厚かましいとは思うのですけど」

僧侶「……い、妹さんとはどのような関係なのでしょうかっ」

盗賊「……へ?」

盗賊「ど、どのようなって」

僧侶「ああああ!! やっぱり何でもないです! 聞かなかった事にして!」

盗賊「そ、僧侶?」

僧侶「あーーーーーーっ、あーーーーーーっ、聞こえないですーーーーーーっ」

盗賊(妹との関係って、そりゃ家族だろ? え? 違うの? え?)

盗賊「え……僧侶、お前は俺とアイツが男女の関係かと、聞いているのですか?」

僧侶「っ!!」

僧侶「……は、はい」

盗賊(ウソだろおい……)

盗賊(まさか、あの夜の出来事。僧侶ちゃんに聞かれてたとかじゃ!?)

盗賊「べべべべべ、別にそんなじゃないぜ。全然違うんだぜ」

僧侶「滅茶苦茶動揺してるじゃないですか!」

盗賊「違うんだ! 俺は!」


<シクシク、シクシク……


盗賊「……ん? 何やらそこから聞き覚えのある泣き声が」

僧侶「は?」

魔剣『勇者ちゃあぁ〜ん…勇者ちゃあぁ〜ん…僕を置いてかないでよぉー…ぐすんっ』

僧侶「魔剣ちゃん?」
358 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:14:16.35 ID:px0avWDz0
魔剣『僧侶ちゃーん……』

僧侶「どうしたのこんな所で。勇者様は?」

魔剣『ぐすっ、勇者ちゃんてば酷いんだよ。僕はうるさいからここに捨ててくって』

盗賊「だから啜り泣いてたのかよ」

盗賊(ナイス助け舟だったけど)

僧侶「全く勇者様ったら勝手なんだから。大丈夫よ、私が怒っておいてあげる」

魔剣『勇者ちゃん怒ったらやだよー。叱らないでー!』

僧侶「えっ、でも」

魔剣『よくよく考えたら僕がいけなかったんだよね…。静かにしてれば』

盗賊「何でそんな考えに行きつくんだよ。どう考えてもアイツが勝手なだけだろうが」

僧侶「ですよね?」

魔剣『違うよ〜。僕が悪いんだよ〜』

魔剣『はぁ……もしかして勇者ちゃんって僕の事嫌いなのかなぁ』

盗賊・僧侶(気づくの遅ぇ!)

僧侶「そ、そんな事ないよ。勇者様はきっと自分に素直になれないから…」

僧侶「ほら! 好きな子には意地悪したくなるお歳頃なのよ」

盗賊「それはたぶん、もう過ぎたお歳頃じゃねーか……?」

魔剣『いいんだぁ、無理してフォローしなくても。僕、勇者ちゃんと一緒にいられるだけで幸せだから』

僧侶「ま、魔剣ちゃん…!!」

魔剣『嫌われてるなら好きになってもらえるように何かしたいよー』

魔剣『……でも、またうるさいって言われちゃうかなぁ』

僧侶「ううん! そんな事ない! イイと思う!」

盗賊「お、おい…。下手な事しない方が」

僧侶「何を言っているんですか! 魔剣ちゃんのためなんですよ!?」

盗賊「…う、うん」
359 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:15:30.92 ID:px0avWDz0
宿屋


僧侶「た、ただいま戻りました…」

盗賊「僧侶、大丈夫か?」

僧侶「はい、一応は……ふぅ」

僧侶は魔剣を壁へ立て掛けた。

魔剣『僧侶ちゃんありがとー』

女勇者「あれ? 何で僧侶さんが魔剣さんを」

盗賊「勇者の野郎がその辺に捨ててたんだよ。だからわざわざ持ち帰って来た」

戦士「町の人に触られたら大問題だしなぁ」

盗賊「全くだぜ!」

女勇者「捨てるなんて酷いなぁ。ケンカでもしたの?」

魔剣『そういうわけじゃないのー』

僧侶「いつもの勇者様の我儘ですよ。本当に何を考えてるのかしら」

魔剣『僧侶ちゃん、勇者ちゃん帰ってきたらアレしたらいいの?』

戦士・女勇者「アレ?」

僧侶「……ふっふっふっ、勇者様に魔剣ちゃんの事を振り向いてもらうための作戦ですよ!」

戦士「へぇ? なんだか面白そうな」

女勇者「ねー」

盗賊「…いや、別にそうでもねぇよ」

魔剣『僕は今から心を鬼にして勇者ちゃんに接するよ!』

女勇者「ほほう、鬼?」

がちゃり

魔女「ういーっす!」
360 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:16:08.30 ID:px0avWDz0
戦士「魔女っちじゃん。おかえり」

魔女「……その呼び方はやめてくれないかしら。マジできめぇ、ですわ」

戦士「可愛いじゃん? 魔女っち」

魔剣『僕がつけてあげたんだよ! 可愛いでしょ』

魔女「それで呼ばれると背中むずむずするからやめろー!」

女勇者「今まで何してたの? ずっと1人?」

魔女「ちょっと勇者に絡みに行ってた。ですわ」

魔剣『むっ!』

魔剣『また僕の勇者ちゃんにちょっかいを……!』

魔女「あら、別に恋愛感情は持ってないわよ? あんなガキんちょに惚れるなんてアホしかいないでしょ」

魔剣『ガ』

戦士「ガキじゃねーだろ!! 訂正しろくそガキっ!!」

僧侶「……び、ビックリした」

盗賊「おい、それぐらいでマジギレしてんなよ」

戦士「だって魔女っちが悪いんだぞ!?」

魔女「アーホ、アーホ」

戦士「てめーっ、この!!」がしっ

魔女「ぎゃー!?」

女勇者「戦士さん、大人気ないよ?」

がちゃり

女魔王「腹減った。飯食いに行くであるわよ」

魔剣『!』
361 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:16:38.41 ID:px0avWDz0
戦士「おお、愛しの勇者殿! おかえりなさいっス!」

女魔王「うむ。……おい! 何故ここに魔剣が居るのよッ」

盗賊「早速かよ」

僧侶「勇者様、魔剣ちゃんを無闇に適当な場所へ置き捨てないでください」

僧侶「勇者様も知っているでしょう? 普通の人間が素手で触れたら危険だと」

女魔王「知らんもーん。そやつがウザいのが悪いんだもーん」

魔女「ほら、ガキんちょ……」

戦士「あ゛!?」

魔女「なんも言ってないですわ!」

盗賊「僧侶の言う通りだぜ。魔剣はお前以外にはかなりヤバい武器なんだ」

盗賊「お前が手に入れたんだから責任もって装備してろよ」

女魔王「ふん! そんなの余の勝手であろうが! 盗賊如きが余に説教するつもりかッ」

女勇者「でも、魔剣さん無くなっちゃうと私たちの戦力だいぶ下がっちゃうかもですよ? だから、ね」

女魔王「あの様な糞みたいな剣がなくとも十分戦えるであるッ」

僧侶「な、なんて事を……。勇者様、魔剣ちゃんにあやまって」

女魔王「ふんッ」



魔剣『僕、勇者ちゃん嫌いー』
362 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:17:17.98 ID:px0avWDz0
「……?」

女魔王「余の聞き違いだったかしらねェ。今こやつが舐めたことを」

魔剣『勇者ちゃんなんて大嫌いだよ!』

女魔王「何……?」

女勇者「え、えっ?」

戦士「ど、どうしたのよ。魔剣ちゃん……急に」

戦士「いつもは好き好きラブラブ言ってるじゃん?」

魔剣『前はねー。でも僕、他に好きな人ができちゃったんだよ〜』

魔剣『だから、勇者ちゃんはもうどうでもいいから。大嫌いー!』

女魔王「何ィ!?」

僧侶「……」ニヤリ

僧侶「だそうです、勇者様。残念でしたね」

僧侶「良かったじゃないですか。離れる理由ができて」

女魔王「し、しかし余は盗賊の申した通り、こやつを手に入れた責任があって、装備しておかなければ」

盗賊「別にお前の勝手なんだろ。いいじゃねぇか、魔剣も嫌がってんぜ?」

女魔王「え……」ちら

魔剣『つーん』

女魔王「ま、魔剣よッ」

魔剣『きらーい!』

女魔王「!」

僧侶「上手くいきそうな流れですね……!」

盗賊「あ、ああ」
363 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:18:21.41 ID:px0avWDz0
女魔王「……ま、魔剣よ」

魔剣『しーらない!』

戦士「これが僧侶ちゃんの言ってた作戦なのか。えげつねぇな…」

魔女「あら、割とグッドアイデアかと私は思う。ですわ」

魔女「こういうの大好きなの〜!!」

女勇者「性格悪っ……」

僧侶(これぞ『押してダメなら引いてみな』作戦!)

僧侶(勇者様なら上手くかかってくれると思っていたけれど、まさか本当に上手くいくとは)

僧侶(魔剣ちゃん。辛いだろうけど、今は耐えるのよ! きっと勇者様は振り向いてくれるはず!)

女魔王「魔剣ッッッーーー!!」

魔剣『やだー』

女魔王「貴様ッ、余をからかうのも大概にするのよッ!! ぶっ壊すぞ!」

魔剣『何が何でもきらーい』

女魔王「」ぷっつん

盗賊「おい、もう諦めたらどう―――」


女魔王「死ねクソ虫がッッッッッッ」


女魔王の攻撃!

盗賊「†」

盗賊は息絶えた。

僧侶「きゃあああああーーー!! 盗賊さんっ!!?」

戦士「え、ええぇ…」
364 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:19:19.05 ID:px0avWDz0
女勇者「し、師匠がまた死んじゃった」

僧侶「勇者様! 盗賊さんに当たるなんて酷いですよ!」

女魔王「ええいっ、喧しいッー!! 騒ぐ様ならば盗賊のように殺すであるわよッ」

僧侶「うっ…」

魔女「ここは逆らわないのがベスト。みたいですわね」

戦士「勇者殿マジギレじゃないか…」

戦士「僧侶ちゃん、魔剣ちゃん。ここはもう素直にこっちが謝った方が」

僧侶「こ、ここで引いては負けですよ…。本当に魔剣ちゃんを捨てられてしまうかもしれないし…」

戦士「しかし、このままでは宿屋ごと俺ら打っ飛ばされかねないんだぞ!」

僧侶「ううっ……。仕方がありません……」

女魔王「さぁ、謝るなら今のうちだわよ! 全員床に頭をすりすりして余に許しを請えッ」

「……」

魔剣『そんな事言ってもあやまんないよー。嫌い嫌いきらーい!』

「ちょっ……!」

女魔王「   」

女勇者(こ、殺される! お終いだ)

僧侶(かみさまかみさまかみさま)

魔女(私だけは助かりますように、私だけは)

戦士「……勇者殿?」

女魔王「……よくわかった。魔剣よ」

女魔王「余は貴様の申したい事がよく分かったわよ」

魔剣『きらーい!!』

女魔王「もうよい。よいのよ……」

魔剣『勇者ちゃんなんて嫌いの嫌いー!』

女魔王「……わかったわ」
365 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:20:08.86 ID:px0avWDz0
女魔王は何も言わず部屋を出て行った。

魔剣『きら……あれ、勇者ちゃん?』

魔女「助かった!? ああ、皆さんっ。私だけ助かってとーっても申し訳」

魔女「あ、なんだ生きてるじゃん……」

女勇者「何で残念そうなのよ!」

僧侶「それよりどうして何もしないで出て行かれたのでしょうか」

魔剣『僕、もしかして言いすぎちゃった……!?』

魔女「大した事は言っているとは思えなかったけれど、もしかしたら」

魔女「効果てきめん過ぎた、かもですわね!」

僧侶「わ、私が悪いんだわ……。そのせいで盗賊さんまで」

戦士「バカ野郎っー! そんな事より勇者殿だろうが!? すぐに追いかけるぞ!!」

女勇者「私も追いかけるよ! 戦士さん!」

戦士と女勇者は女魔王の後を追いかけた。

魔剣『僕、勇者ちゃんを傷つけちゃった……?』

僧侶「そんなことないわ。きっといきなり過ぎてビックリしちゃったのよ」

魔女「傷つけたんじゃないの?」

僧侶「魔女っちさん!」

魔女「っちが余計だろーが。ですわ!」

魔女「まぁ、加減を知らなかったお前が悪いですわねぇ」

魔剣『うっ……。僕が勇者ちゃんを……』

僧侶「ま、魔剣ちゃん……」
366 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:21:09.08 ID:px0avWDz0
戦士「勇者殿ー! 待ってください、勇者殿ー!!」

女魔王「」

戦士「は、速い……。あの速さじゃ走って追いつけないか!?」

女勇者「一生懸命呼べばきっと止まってくれるはずです。勇者さーん!」

戦士「それにしても勇者殿。まさか本当に傷ついて」

女勇者「いつもは我儘だけど、本当は一番ナイーブな人だったのかも」

女勇者「ほら、わりと純粋ですし」

戦士「君がそれ言うかねぇ…。勇者殿ー!!」

戦士「貴方の戦士が、貴方の傷ついた心を癒しますよーっ!! ほら、この胸に思いっきり飛び込んできて!」

女勇者「勇者さーん!! みんな謝るから戻って来てー!!」

女勇者「だ、ダメだ。どんどん遠くに……」

戦士「うわあああああああぁぁぁぁぁー! 勇者殿っ! 俺を置いて何処へ行こうというんスかぁー!?」

女勇者「はぁはぁ、も、もうダメ……体力の限界ですっ」

戦士「ちっ……。仕方がない一度宿屋へ戻ろ――――――」


後ろを振り向くと、そこには1人の鎧を纏った者が佇んでいた。


戦士「何か用か」

暗黒騎士「用があるのはお前ではない。隣の小娘だ」

女勇者「え、私ですか? どちら様?」

暗黒騎士「王都騎士団に所属する暗黒騎士という者だが」

暗黒騎士「知ってるか?」

女勇者「いやー聞き覚えないかも……」

暗黒騎士「まぁ、だろうな」
367 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:22:29.19 ID:px0avWDz0
戦士「王都騎士団だと」

戦士「そんな大層な方がただの旅人に何の用だよ」

暗黒騎士「お前に話す義理はない。俺に与えられた命令を妨害する者ならば」

暗黒騎士「排除しても構わないそうだが?」

戦士「……確実に物騒な用だって事はわかったよ」

女勇者「でも、もしかしたら話がしたいだけかも。ていうか勇者のサインが欲しいとか!」

戦士「だったらあんなガチガチの鎧に身を包む必要はないぜ。それに」

戦士「ヤバい空気が漂っている!」

暗黒騎士「初対面の相手に失礼なゴリラだな!」

戦士「ゴリラも大概失礼じゃねーかよ!」

戦士「おい、女勇者ちゃん。構う事はないぞ。こんな奴無視して帰ろう」

女勇者「えー、うーん……ごめんなさい、暗黒さん。私たち、のんびり話してる場合じゃないので」

暗黒騎士「俺ものんびり話をしに来たわけでは……あっ」

戦士と女勇者は一気に駆けだし、逃げた!

戦士「変な奴とは関わらないのが正解だー!」

女勇者「勉強になります!」

暗黒騎士「こらー!!」
368 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:24:14.61 ID:px0avWDz0
女勇者「うわ!?」

逃げている最中、突然女勇者の動きが止まった!

戦士「おい、何してんの。急がないとあの黒いのが」

女勇者「何もしてないよ! 足が動かないの! まるでここにくっついたみたいに」

戦士「は?」

見てみると、月明かりで照らされた女勇者の影から黒い手が数本足に纏わりついていた!

戦士「何だこれ……!」

女勇者「ぎゃー! なんか気持ち悪いです!」

暗黒騎士「俺の前から逃げるとはいい度胸をしているな、小娘」

戦士(こいつ、あれだけ距離を離したのにもうここまで……。あんな重量がありそうな鎧を着込んでいるのに)

戦士「どうやらその趣味悪ィ手はお前のモンらしいな」

暗黒騎士「趣味が悪い? やれやれ、ゴリラには理解できないのか」

暗黒騎士「闇は…美しい、だろう…」

戦士「言ってろ!」

戦士は落ちていた桶を拾うと、暗黒騎士へ投げつけた!

暗黒騎士「むっ」

飛んできた桶を冷静に篭手で防ぎ、戦士に反撃しようとすると、いない!

戦士「そんなにガチガチに着込んでりゃな、反応も鈍るよな」

戦士は暗黒騎士の背後に回っていた! 暗黒騎士が反応するよりも早く片腕を取り、拘束。

手にしたナイフが、鎧の隙間を抜けて喉元へ突きつけられる!

女勇者「戦士さんすごーい!」

戦士「血噴き出したくなければ、あの子から手を退けてくれ」

暗黒騎士「……」
369 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:27:18.20 ID:px0avWDz0
戦士「5秒だ、5秒くれてやる。その間に拘束を解くんだ。さもなければ刺す」

暗黒騎士「やってみろ。まぁ、できないだろうが」

戦士「俺を舐めてんのか? 悪いが敵なら躊躇なく殺せるぜ」

暗黒騎士「そういう意味じゃない。お前は何か勘違いをしているらしいな?」

戦士「は?」

暗黒騎士「できないのは、こうなるから!」

何の前兆もなく、暗黒騎士の重量感溢れる黒い鎧が辺りに弾け飛ぶ!

密着していた戦士はもろに飛ばされた鎧の数破片を体に受け、近くの家の壁に叩きつけられてしまった!


戦士「あぐっ……!?」


女勇者「戦士さん! よ、鎧が弾けた?」

暗黒騎士「その鎧は俺の魔法で作り出した闇の鎧。好きな時に好きなように着脱できるのだ」

暗黒騎士「便利だとは思わないか、ゴリラ?」

戦士「ズルいとは思うなー……! しかし、まさかお前が」

戦士「女だとは思ってもなかったわ」

暗黒騎士「あまりやらしい目つきでジロジロ見ないで欲しいのだが。妊娠しちゃう」

戦士「しねぇよバカ」

女勇者「び、美人さんだぁ……!!」
370 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 06:28:04.39 ID:px0avWDz0
ふぇえええ・・・ここまでだよぉ・・・
371 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/03(日) 07:51:56.48 ID:px0avWDz0
ちょっぴり>>369の台詞訂正。ぼーと書いててあっちゃんのキャラが狂った



女勇者「戦士さん! 鎧が弾けた……?」

暗黒騎士「その鎧は俺の魔法で作り出した闇の鎧。好きな時に好きなように着脱可能」

暗黒騎士「便利だとは思わないか、ゴリラ?」

戦士「ズルいとは思うなー……! しかし、まさかお前が」

戦士「女だとは思ってもみなかったわ」

暗黒騎士「おい、俺は女じゃない。訂正しろ……」

戦士「どう見ても女だろ? 胸あるし」

女勇者「び、美人さんだぁ……!!」

暗黒騎士「やめろ!」
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 07:53:22.28 ID:8dD4kksIO
おつ
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/03(日) 12:13:19.09 ID:R1+D8REio
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/06/03(日) 12:42:29.16 ID:WoRXfmB2o
その訂正のどこがちょっぴりなんスか
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 13:29:53.47 ID:fw7blVvDO
真逆すぎてワロタww


考えてみれば勇者一筋の戦士や魔剣はツンだけど寂しがりやな魔王にぴったりの相手なんだな
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/03(日) 14:59:28.02 ID:H58FmDKd0
一途な魔剣ちゃんかわいいよ!!!!
わりと騎士団好きかもしれん

377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/06/04(月) 01:31:51.04 ID:SsFTZbXEo
真のヒロインは魔剣ちゃん
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 14:26:28.45 ID:1kq0VOLx0
ふええええ言ってたのは幼年時代の魔王?
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 19:32:03.68 ID:Pu165VS90
魔王ちゃんの鳥頭が治ってきたのか。夜王なんて変なの食べた影響でしょうか
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/04(月) 19:47:21.49 ID:FhnbbKnIO
>>379
夜王食べる前に瀕死になった時からじゃない?
381 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:44:35.63 ID:pb6V0ZLs0
女勇者「美人のお姉さん! 私の友達になりましょう!」

戦士「何言ってんのお前……」

女勇者「いやだって! うっ」

影が女勇者の首元まで生き物のように這い上がっていくと、ぎゅうと絞めにかかった。

暗黒騎士「俺を女として見るな。最後の忠告だ」

女勇者「ぐるじ…!」

戦士「おい、お前の目的はこの子の誘拐じゃなかったのか」

戦士「殺していいわけないよな。相手なら俺がしてやるから無粋なマネは止せよ」

暗黒騎士「別に生かして連れて来いとまでは言われていない。それにどうせ後で蘇らせられるだろう?」

暗黒騎士「俺はうるさくて馴れ馴れしい奴が大嫌いなんだよ。死体なら静かで運びやすい」

戦士「バカ言ってんじゃねーよ!」

戦士の攻撃!

戦士(武器はない。だけど、問題ない!)

暗黒騎士「丸腰で真っ向勝負とはいい度胸じゃないか。さすがゴリラ男……!」

闇が暗黒騎士の身を包むと、黒い鎧が既に装着されていた!

そこへ遅れて戦士の鉄拳が打ち込まれる!

戦士「〜〜〜〜〜〜!! ぉ、おわわっ……!?」

暗黒騎士「拳の骨でも砕けたか? 随分間の抜けた顔になったな」

戦士「うるへー!」
382 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:45:16.85 ID:pb6V0ZLs0
戦士の攻撃は全て頑丈な鎧によって防がれてしまう!

隙を見せると瞬時に暗黒騎士が鎧を弾き飛ばし、戦士へカウンターを放つ。

まさに脳筋である戦士にとって、敵は成す術がない相手であった。

戦士(ようやく実感できてきた。奴の鎧はかなり厄介すぎる)

戦士(単純なこっちの攻撃は全部あの硬い鎧で弾かれる。そして、ソイツが弾け飛んで来る)

戦士(モロに塊を食らって、俺の骨は今何本折れたんだ? い、意識が朦朧としてきた…)

暗黒騎士「気が緩んだらすぐにでも悲鳴を上げてしまう。そんな顔をしているな?」

暗黒騎士「いいよ、一向に構わない。俺はそろそろお前の悲鳴を聞きたいところだ」

暗黒騎士「ここまで痛ぶっておいて、それなしに殺してしまうのは戦った実感とやらが沸かないんだよ。え?」

戦士「……」

暗黒騎士「声もでないのか? ふん、そこのバカ女もその様だな。まぁ、そいつの場合は既に息絶えているからであるが」

女勇者「†」

戦士「い、いつのまに……」

暗黒騎士「ああ、恰好悪いねぇ」

暗黒騎士「お前のその我慢強さに免じてこの場は見逃してやってもいい。もちろん、そこの女は連れて行くが」

戦士「あら、優しいじゃん。お断りだぜ、美人の姉ちゃん」

暗黒騎士「」

暗黒騎士「ぶっ殺してやらぁ!!! くそゴリラァァァーーー!!!」くわっ

戦士「いやぁ、綺麗な顔が台無しじゃねーか……おっかないな」
383 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:45:52.64 ID:pb6V0ZLs0
暗黒騎士が散々汚らしい言葉を使って戦士を罵倒しまくる。

しばらくして罵倒が止むと、息を切らしながら肩で呼吸をする。

戦士「……俺、ここまで悪く言われたの初めてかも」

暗黒騎士「はぁはぁはぁはぁ……っ!」ギロリ

戦士(うわ! まだ怒ってる)

暗黒騎士「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやるぅぅぅ……っ!」

唸るようにそうブツブツと言い続ける彼女の腕だけに闇が纏い始める。

戦士(また鎧の装着? だが、どうして腕だけ)

暗黒騎士「お前の考えている事が俺には手に取るようにわかるぞ!! すぐにその疑問は解消されるだろうがな!!」

戦士「は? うぐ――――――!」

何だと?と口にする暇も与えられなかった。視界の中に入っていた暗黒騎士の姿が、いない。

姿を探そうと目だけを左へ動かす、そこには黒い塊が!

それは反応する間もなく戦士の体目掛けて真っ直ぐに突っ込んできた!

暗黒騎士「お前の攻撃を防ぐのはやめたッ! 俺の武器はこの手に装着したブツだけで十分だ!!」

暗黒騎士「お前は俺を怒らせた……。死んで償えよ、ゴリラ!!」

戦士「ぐぇぇ、おえっ……! ぶ、ぐぅえええぇ……!」

戦士の体はすでにボロボロだ!
384 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:46:34.79 ID:pb6V0ZLs0
戦士「頭が! や、やばい……! 息が!」ヒューヒュー

暗黒騎士「いいぞその調子だ!! もう長らく苦しんでおけ!!」

戦闘不能とまでといった戦士の体に蹴りを何度も放っている暗黒騎士。

蹴られた痛さより、さっきの攻撃の影響がまだ続いて思考が上手く働かせないでいる。

体を上手く立たせられない!

戦士「」

暗黒騎士「あっはははははッーーーーーー!! わた…俺を舐めたのが悪いんだよ!!」

暗黒騎士「俺は、男だ!! 覚えておけよ……!」

戦士「はっ」

戦士(……手が、少しだけ動く。奴が隙を見せたらナイフを投げて)

戦士(お、落ち着け俺! それでは確実に倒せねぇし、逆に奴の逆鱗に触れかねない! 今ここで死んだら勇者殿を探しに
行って励ます美味しい役を逃す事になるんだぞ)

戦士「……勇者殿」

暗黒騎士「少し物足りなく感じられたが、まぁいい。そろそろ潰す」

戦士の頭部へ黒い塊を身に付けた暗黒騎士の両腕が振り下ろされる!


戦士「勇者殿ぉっーーーーーーーー!!!!!!」


暗黒騎士「え?」

頭部へぶつけられるその寸前、戦士の両腕が塊をガッシリ掴み捉えた!

戦士「う、う、う……! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!」

暗黒騎士「え? えぇ!?」

呆気に取られて動く事のできない暗黒騎士を塊ごと宙へ力強く持ち上げ、そのまま勢いよく地面へ叩きつけた!

暗黒騎士「ぐえっ!!?」

戦士「勇者殿ぉおおおおおおおおおお!!!!!!」
385 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:47:23.08 ID:pb6V0ZLs0
暗黒騎士「何を言っているんだお前は! なぜ動ける!」

戦士「うるせぇー!!! そもそも俺はお前の相手なんかしてる場合じゃなかったんだっ」

戦士「余計な時間食わせやがって……。お前、勇者殿が向こうで泣いてるかもしれねぇんだぞ」

暗黒騎士「え? え?」

戦士「俺はそんな傷心したあの人を優しく抱きしめてやらなきゃなんだよ!」

戦士「俺も魔剣ちゃんに負けてらんねーだろ」

暗黒騎士「お、おい……?」

戦士の攻撃! 拳が暗黒騎士の美しい顔へめり込む!

暗黒騎士「ぶばぁ!」

後ろへ思いっきり吹っ飛ぶと、まだ何がなんだか状況が理解できない様子でオロオロとしている。

戦士「女を殴ったのはこれが2度目。最悪の気分だ」

戦士「あの時はもう絶対、2度と殴るもんかと思っていたんだがな」

戦士「まぁ、さっきまでのお返しって事にしてくれよ。謝らないぜ、俺は」

戦士「以上だ。王都騎士の男姉ちゃん」

暗黒騎士「ゴリラアァァァーーーーーーッッッ!!!」

戦士「あいよ」

戦士はふらつく体を奮い立たせ、暗黒騎士へ不敵な笑みを浮かべた!
386 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:48:30.55 ID:pb6V0ZLs0
暗黒騎士「」

戦士(また消えた。次はどこから)

暗黒騎士「うわあああああぁぁぁーーー!!」

背後から暗黒騎士の雄叫び! 振り向く間もなく戦士は地へ叩き伏せられてしまった!

戦士「あぐっ……」

暗黒騎士「死ね! 死ね! 死ねぇ!」

ぐしゃ、ぐしゃと戦士を潰す鈍い音が辺りへ響く!

黒塊を振りあげるたびにねっとりとした血が振り撒かれるが、暗黒騎士は一心不乱に戦士を叩く!

暗黒騎士「はぁ、はぁ……ふん、愚かなゴリラめ」

戦士はうつぶせの状態で地に伏せ、ピクリとも動かなくなってしまった。

ただただ、夥しい血を体から垂れ流すだけである。

戦士「死んだなんて思っちゃいないだろーな?」

暗黒騎士「!?」

戦士、立ちあがる!

暗黒騎士「何で……」

戦士「自分、打たれ強いっスからね」

暗黒騎士「ウソだ。そんなバカな! お前は化物じゃないのか!」

戦士「それはお互い様じゃないの!」

戦士は暗黒騎士を捉えようと飛びかかった。しかし、そこに暗黒騎士の姿は無く、地面へドスンと落ちる。

戦士「いてて…。お断りされちゃったか」

暗黒騎士「このっ!」

暗黒騎士の攻撃!

戦士「ぐぅ!?」

暗黒騎士(こ、こいつ……まだ立ちあがるの……?)
387 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:49:59.49 ID:pb6V0ZLs0
戦士「おらー!」

再び暗黒騎士へ跳びつこうとする。しかし結果はまた同じ、寸前で暗黒騎士が消えるのだ。

戦士「速いな……」

暗黒騎士「しつこいなお前も。何度やろうと同じだろうに」

暗黒騎士「俺の速さにはさすがのお前も着いてこれないだろう。そろそろ諦めて潔く」

戦士「死ねって頼みはなしだぜ。姉ちゃんよぉ」

暗黒騎士「っ!」

戦士「ほら、またキレた。カルシウム足りてないんじゃないか?」

戦士「俺を見習ってはどうだ。これだから最近の若い子はいかんって」

暗黒騎士「年寄り糞ゴリラが!!」

戦士(消えた。奴は走って俺に近づいてきているわけじゃなそうだ)

戦士(だとすれば考えられるのは)

自分の影へ視界を移す。なんと、そこには戦士の影の中から上半身が飛び出てきた暗黒騎士が。

戦士(影だ! 俺の影を媒介に瞬間移動してきたんだ!)

戦士(奴は影の中を自在に移動することができる魔法の使い手ッ!)

暗黒騎士「これで――――――――」


がしっ


暗黒騎士「あ?」

戦士「……ようやく捕まえたぜ。苦労したんだ、本当に骨が折れる思いでよ」

暗黒騎士「は、離せ……! はなっ」

戦士「ただでは離せねぇよッーーー!!!」

戦士の攻撃! 再び戦士の鉄拳が暗黒騎士の顔面を捉えた!

会心の一撃!!


暗黒騎士「ぶぐぐっっっ……」


戦士「……やったか?」

暗黒騎士「 」ピク、ピク

暗黒騎士は完全に沈黙した。戦闘不能状態である。

戦士は暗黒騎士を倒した!

戦士「悪いな、綺麗な顔を殴ったりして」
388 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:50:54.98 ID:pb6V0ZLs0
宿屋


戦士「た、ただいまっス」

魔女「おや、帰ってきましたわよ。どうなの? 勇者は」

魔女「……って何ですの? そのヤバそうなぐらいボロボロ状態」

僧侶「え!? 戦士さん一体何をしていたんですか! まさか勇者様が…」

戦士「そういうわけじゃ。それより俺はいいから女勇者ちゃんを」どんっ

女勇者「†」

魔女「アンタたちは棺桶に入るのがよっぽど好きらしい。ですわね」

僧侶「し、死んじゃったんですか? 本当に何が起きたのか…。とにかく回復を」

戦士「†」

戦士は倒れ、息絶えた。

僧侶「うそ…………」

魔女「ははーん。こりゃ勇者を探して謝っている場合じゃない」

魔剣『え!? じゃあ勇者ちゃんは放置なの!? やだよー!』

魔女「本当に勇者ラブですわね、この剣も。いい? こっちは死人が3人もでたのよ」

魔女「心配するならどっちが優先かしら?」

魔剣『う〜……』

僧侶「とにかく教会へ3人を運び出しましょう。夜遅くになってしまったけれど、何とかなるはずです」

魔女「はいはい〜」

魔剣『勇者ちゃんごめんなさいー……』
389 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:51:25.09 ID:pb6V0ZLs0
一方、魔王は・・・。


女魔王「……はぁ」

女魔王「…………はぁ」

女魔王「何であろうか、この胸の奥が痛い感じのは? 気持ち悪い」

― 勇者ちゃんなんて嫌い!

女魔王「魔剣よ、どうしたのよ……。悪い物でも食わせてしまったか?」

女魔王「余がわる……くはない。余は何もしておらんのよ。あやつが悪いの」

女魔王「そうであるわ! きっと僧侶どもが魔剣に変な物食わせたのよ!」

女魔王「……はぁ」

「あらあら、元気がなさそうですね。勇者様」

女魔王「!」

湯女「私のことはまだ覚えていらっしゃるかしら。忘れてしまったかな?」

女魔王「……覚えとるわ。久しぶりだわね」

湯女「ええ。お久しぶりですわ、勇者様」

湯女「ふふっ、しばらく見ない内にお美しいお顔になられましたねぇ」

女魔王「…そうよ。貴様なぜ余がわかったの? 余は今呪いで」

湯女「はぁい。存じてまわー」

女魔王「んん?」
390 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:52:32.94 ID:pb6V0ZLs0
湯女「可哀想に、呪いはまだ解けていないのね。このままでは元に戻ることが難しくなってきますわ」

女魔王「それは真かッ!? では、やはり魔女の奴に早く魔法薬を作らせなければ」

湯女「魔法薬なんて如何わしい物に頼ろうとしていたのですか? ふふふっ」

女魔王「何がおかしいッ」

湯女「今の勇者様では効果は現れませんよ。だって、実際に飲んでみても何も変わらなかったでしょう?」

湯女「知っての通り、あなたの魔力器官は既に機能していませんのよ。いい加減認めてはどうでしょう」

女魔王「喧しいのよ!! 貴様如き女に余の何がわかるというの」

湯女「ぜーんぶ、知っているわ」

女魔王「……あァ?」

湯女「それより、私のことを覚えていたのならあの時の約束も覚えてはいません?」

女魔王「約束? 知らんわ」

湯女「あなたのお仲間に入った女の勇者を殺せ。もう、こんなに簡単なことを頼んだのにまだ実行してくれないのだも
の」

湯女「私、待ちくたびれて直接尋ねに来てしまいましたよ」

女魔王「女勇者は使い物にもならん粗大ゴミであるが、殺しはせん」

女魔王「貴様との約束とやらは破棄したッ。そういうわけだからとっとと失せろ!」

湯女「じゃあ新しく条件を付け足しちゃおうかな?」

女魔王「……」

湯女「あの勇者を殺してくれたら、あなたとあなたのお仲間。そしてその妹さんの呪いを綺麗さっぱり消し去ってあげま
しょう」

女魔王「!!」

湯女「そうね、これが一番いい条件。ふふっ、そう思いません?」
391 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:53:00.79 ID:pb6V0ZLs0
女魔王「それは……真なの……? ウソついて……」

湯女「私、うそはつかない主義なの。信じてくれると嬉しいですよ」

湯女「なんならもう1つ。おまけにサービスをつけてあげても構いません」

女魔王「お、おぉ!?」

湯女は女魔王へ近づくとぼそぼそと耳打ちをした。

湯女「あなたの魔力器官を、治してあげようかしら……っ」

女魔王「!!!」

湯女「ほら、もう断る理由がなくなりましたね。うふふ」

女魔王「貴様、真に余の魔力器官を治せるのだろうな!?」

湯女「ええ。以前町全体を治してみせたでしょう? アレが何よりの証拠」

湯女「これでも腕には自信があるのです。だから」

湯女「魔王……いいえ、勇者様。あの女を殺して、あなたこそが世界に最後の唯一の勇者となりなさい」

女魔王「唯一の勇者……」

湯女「勇者は2人もいらない。そうでしょう?」

女魔王「……ふむ」

湯女「では、勇者を殺してきてくださいね。いいですか? 完全に、復活しようがない程に殺しきって」

湯女「この世から消し去って」

女魔王「消し去る……」
392 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:54:02.11 ID:pb6V0ZLs0
湯女「魔剣のことでショックを受けている場合じゃなくなってしまいましたね。ふふふっ」

女魔王「あ……」

湯女「大丈夫。あの剣はあなたを裏切りません。かならずあなたの力となる」

湯女「アレは最強にして最悪の、魔の者の為に生み出された兵器なのよ」

女魔王「魔剣は余を嫌っておらんの? 本当に?」

湯女「あらあら、うそはつかないって言ったばかりですよ?」

女魔王「あ、あ……!」

湯女「さぁ、安心したところで早速勇者を殺してきて。あなたならきっと殺せるわ」

湯女「あなたの力と魔剣の力が合わされば、きっと伝説の鎧だって破壊できる」

湯女「自分を信じなさい、勇者様」

女魔王「……貴様は一体何者か。なぜそこまで知り過ぎておるの」

湯女「私は物知りなんですよ。エルフだから」

女魔王「エルフ?」

湯女「そう、エルフ。ほら、髪で隠れてるけれど耳も尖っているのですよ」

湯女「素敵でしょう?」

女魔王「ふん、気味の悪いッ! では余はそろそろ去るぞ。約束はかならず果たしてもらうからね」

女魔王はむくりと立ちあがると、町の方へ歩いて行った。

湯女「んー、今度はしっかり殺ってくれるといいのだけれど」

湯女「ふふふっ……」

湯女は魔法を唱えるとその姿を霧の中へ消した。
393 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/07(木) 01:54:40.24 ID:pb6V0ZLs0
以上でしたー
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 02:06:02.30 ID:qeC2/qzXo
うーむ、先が読めねーなぁ(褒め言葉)
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 02:12:16.57 ID:Ok6BhfoU0
戦士マジ兄貴。一生ついてきます
あとは魔王ちゃんどうなるか…乙
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 06:37:11.67 ID:GdY5O565o
戦士……やっぱりそっちの人だったか……
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/07(木) 07:55:41.72 ID:R/xqAtCto
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 13:42:20.33 ID:2b+++GvDO
戦士は素晴らしいな

イメージ的にはFFのワッカを一途にした感じ
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/07(木) 20:44:24.30 ID:LwNQKTfDO
女勇者に拘る理由がワカラン
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/06/08(金) 06:21:32.84 ID:eK4xQSF8o
由緒正しい(?)勇者なんじゃね
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 10:27:04.18 ID:pxkMoILTo
アホな勇者ちゃんが可愛いからさ
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 20:13:39.11 ID:b1LtJ6TC0
勇者の剣が使いこなせるからとか?
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/06/08(金) 20:43:35.05 ID:/cByI0pgo
勇者の血を濃く引いてるとかだろ
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/08(金) 22:09:32.87 ID:VCeqmyOIO
よそうやめれ
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/09(土) 01:30:45.01 ID:l9LJ3RM70
戦士かっこよすぎワロタ

暗黒騎士も頭に血が昇りやすくなければ勝てただろうに
406 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:28:23.70 ID:srqflxyK0
魔王城・集会


「ざわざわ・・・ざわざわ・・・」

1「まずは諸君! 日々魔族繁栄のために多忙を極める中、今日はお集まりいただき感謝しよう」

1「皆の知っての通り、我々の同士であり三魔官の一角、4が死んだ」

1「残念ながら遺体には首が繋がっていなかった。そして彼の首は未だ発見できていない」

「うっ、うう・・・」

1「奴の死に顔がどのようなものだったか。諸君には想像できるだろうか?」

1「俺は想う。魔族のために、全身全霊で行動を成してきた4は、きっとここで朽ちてしまった事をとても無念に感じ、
死んだのだろうと」

1「……その死に顔は! 最後に悔しさで、どれほどの悔しさでその表情を歪めさせたのだろう!?」

「わっっっ・・・」

1「私たちの同士、誇り高き勇者であった4は死んだ。何故だ!?」


< ボウヤダカラサ!!!


1「違う! ……人間だ。全ては我々魔族に仇名す人間どもが悪い」

「ざわざわ・・・ざわざわ・・・」

1「諸君、静まれ。我らはこの4の死を胸に刻み、更なる魔族の繁栄を目指さねばならん」

1「その為に! 排除すべきものは何だ!」

「ニンゲン・・・ニンゲン・・・!」

1「そうだ……! 人間……! 奴ら害虫がこの世界に居座る限り、我らは肩身の狭い思いをせねばならんのだ!」

1「殺せ!! 人間を!! 黄色い豚めをやっつけろ!!」

「わーーーーー!!!」
407 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:30:15.80 ID:srqflxyK0
1「……我々魔族の象徴である現魔王様は今、その席を空けておられる」

1「だが安心しろ。諸君らには俺たち三魔官がいるのだ」

1「約束しよう! 俺たち三魔官がかならず諸君らに、魔族へ! 勝利をもたらすと!」

「おーーーーー!!!」

1「勝利こそが死に行った全ての同士たちへの最大の慰めとなる!」

1「時が来たのだ……今こそ立ちあがる時なのだ! 悲しみを怒りに変え、そいつを憎き豚どもへぶつけてやろうではない
か!」

1「諸君、我々魔族こそがこの世界に相応しい優良種である。忘れないで欲しい」

1「魔族こそが正義である事を……ッ!!」

「ジャスティス! ジャスティス!」

1「魔族へ栄光の光あれ。以上、ありがとう」

「わーーーーーー!!! わーーーーーー!!!」


パチパチパチパチ…


2「らしくない演説だったわね。やな鳥肌が立ったわ」

1「ふん! わからん雌だ。俺はただ皆の士気を高めてくれただけよ」

1「……言っておくが、馬鹿の4は死に逝った。これからは俺が全てを、魔族を引っ張てゆく」

2「あら、自分1人抜けがけで偉くなろうって? セコい真似するわね」

2「私たち三魔官でしょ。仲良くいこうじゃない。こ・れ・か・ら・も」

1「これ以上貴様と慣れ合うつもりはないというわけだ。2よ」

2「つれない雄だこと……」
408 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:31:43.42 ID:srqflxyK0
2「それより本当なの? 世界樹を切れるのは例の小娘だけだって」

1「そうだ」

2「蟹男は世界樹を切る前に敵に懐柔されてしまった。もしかしたらアイツだって切れたかもしれない」

1「切れない。断言する。あとになり、魔物博士から詫びを入れられたのだ」

1「……呪われた楔である世界樹を断ち切れるのは真の勇者ただ一人」

1「それは勇者の真似事をしている魔王でもなく、俺たちが蘇らせたクソ勇者ではない」

1「あの、小娘。奴だというわけだ」

2「なら話が早いわね。あの娘は今、私たちにとって脅威ですらない。雑魚」

2「さっさと攫ってきて無理矢理にでも世界樹を切らせる。そうでしょう?」

1「そうだ。実に簡単なことよ」

1「マンイーターどもの対策は既に練ってあると博士から聞いた。つまり死ぬのは人間のみよ」

2「あの胡散臭いジジイの対策っていうと、それだけで不安だけど」

2「まぁ、人食い如きに私たちが殺せるわけがないわ」

1「……ところで話は変わるのだがな」

1「焼肉のクーポンがここにある。ポッキリ1000Gで食い飲み放題。全品選び放題」

2「はい乗ったー!」

1「金欠には助かるなぁ」

2「ホルモンいっぱい食べちゃうぞ☆」
409 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:32:20.53 ID:srqflxyK0
教会


神父「あなた方もよくお亡くなりになられますな…?」

僧侶「ど、どうも……」

盗賊「あのバカ野郎! 人の命を何だと思ってやがる!」

戦士「勇者殿だってきっと何か考えがあってお前を殺ったんだよ。怒るなって」

盗賊「ぜってー何も考えてねぇよ…!」

魔女「それより、勇者はいいの? ですわ」

戦士「よくねーよ。すぐに探しに行く」

女勇者「それよりお腹減ったなぁ……」

戦士「それよりって、このおバカ。飯なら勇者殿を探してからだよ」

女勇者「わ、わかってるけど。でも」

僧侶「魔剣ちゃんなら臭いで勇者様の居所がわかるかもしれませんね」

僧侶「一旦戻って魔剣ちゃんを持ってきてあげましょう?」

盗賊「ああ。ったく、面倒ばかりかかる勇者様だぜ……」

魔女「アレで勇者ってのがまず凄いですわよねぇ。信じらんないこの国どうかしてる」

女勇者「ほら、勇者は血だから!」

戦士「お前ら失礼だろうがよー!? こら」
410 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:32:54.61 ID:srqflxyK0
教会前


女魔王「……」チョコン

「……」

戦士「勇者殿勇者殿勇者殿ォーーー!!!」だきっ

女魔王「ぎゃー!? ぎゃー!?」

僧侶「勇者様! もしかして、ずっとここに?」

女魔王「……そういうわけではないわ」

魔女「てっきり何処か遠くでめそめそしてると思ってたのに。意外ですわ」

盗賊「とりあえず俺に謝りやがれ。まずはそこからだぜ」

女魔王「え、何で?」

盗賊「……」

戦士「そんな事はどうでもいいんだよー! 勇者殿、俺が恋しく帰ってきてくれたんスね!」

女魔王「違うわ阿呆ッ」

女魔王「ん……」チラ

女勇者「ん?」

女魔王「おう、貴様。余は貴様に少し用が」

魔女「私も腹減ったぁ〜〜〜!! ですわ」

魔女「勇者もこうして発見できたことだし、夕食を取るべき!」

女勇者「はい大賛成です!」

女魔王「そ、それより余は……」

僧侶「そうですね。このままご飯をみんなで食べに行きましょう。よろしいでしょうか、勇者様?」

女魔王「……うん」
411 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:33:29.20 ID:srqflxyK0
魔剣『あうー……』

女魔王「で」

女魔王「何故飯を食しに行くのに魔剣を連れて行かねばならんのよ!」

盗賊「暗い部屋に1人で留守番ってのはさすがに魔剣に悪ィだろうが」

盗賊「それに、どっちもどっちに言う事があるんじゃねーのか」

女魔王・魔剣「『うっ……』」

女勇者「まぁまぁ。とりあえずお店に入ってからにしましょうよ。立ち話するのもなんだし」

僧侶「そうですね。勇者様、この機会に魔剣ちゃんのことをしっかり考えてあげてください」

僧侶「当たり前がそうじゃなくなるというのが、どれ程嫌な事か今回でわかりましたよね」

女魔王「喧しいわよッ! ふん」

「らっしゃーせー」

魔女「6人と1本ですわ。席は空いてる?」

「1本ですか?」

戦士「いや、6人で……」

「はぁ?」
412 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:34:05.30 ID:srqflxyK0
女勇者「だぁー! お腹減ったよー!」チンチンッ

魔女「あーら、勇者ってのは食事前のマナーもなっていない下品な人間ですのね」

女勇者「いやだって! お腹減ってて……。いつもはきちんとしてる!」

魔女「ふーん? 怪しいところですわねぇ」

女勇者「師匠! こいつ、私より2つも下なのに失礼ですよ! 生意気っ」

盗賊「はいはい」

僧侶「店員さん。生中を4つ」

戦士「飲むのかよ!?」

僧侶「あ、たまにはいいかなーと……」

戦士「……んまぁ、最近ご無沙汰だったしいいか」

盗賊「俺は遠慮しとくぜ。気分が乗らねぇ、未成年2人もいるしよ」

僧侶「そ、そうでしたね! 私ったら……」

女勇者「私たちの事は気にしなくていいですよ、僧侶さん。ねぇ?」

魔女「これだから大人って奴は。ですわ」

僧侶「すみません。お二人とも…。それじゃあお言葉に甘えて」

僧侶「店員さん! 改めて生中を3つお願いします」

「あいよー」

女魔王「……」

魔剣『〜……』
413 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:35:11.81 ID:srqflxyK0
魔女「なんか勇者とあの剣、じれったい感じねぇ」

女勇者「私もそれ思ったよ。ここは私が2人に橋をかけて」

戦士「いいよ、そんな事しなくて」

女勇者「でも」

戦士「放っておきなさい。余計な事したら返って2人悪いって」

戦士「ほれ、お子様2人は何食べる? フライドポテトでいい? 枝豆もある」

魔女「どうして摘まみオンリーなんですの! 普通にステーキ食べたいー!」

女勇者「ステーキに2票! 私も! ビフテキ、ビフテキ」

戦士「なんか古臭いわねぇ…? まぁ、いいんでねーの。すんませーん」

魔女「私の分はニンジン、ブロッコリー抜きで、と頼め。ですわ」

女勇者「好き嫌いしてると大きくならないよ?」

魔女「……あなた、どこ見て喋ってる。ですわ!」

魔剣『……勇者ちゃあん』

女魔王「!」

魔剣『勇者ちゃん、ごめんなさい。僕が変なこと言って勇者ちゃんを悲しくさせちゃったんだよね』

魔剣『僕ね、勇者ちゃんの事は絶対に嫌いにならないよ? 絶対の絶対!』

女魔王「魔剣……」

魔剣『大嫌いなんてウソなんだよ。本当は大好きだよ! 僕、勇者ちゃんが大好き!』

魔剣『だからね〜……? 勇者ちゃんがいくら僕の事嫌いだとしても、どう思っていても』

魔剣『ずっと、勝手に好きでいていいかなぁ。お願いだよー』

女魔王「……ふん、勝手にするがよい。余は魔剣なんて嫌いだもんね!」

魔剣『勇者ちゃーん』

女魔王「嫌いであるわ! 嫌いの嫌い!」

魔剣『うん。僕は勇者ちゃん大好きだからねー』

女魔王「ふんっ」

魔剣『〜〜〜♪』きゃっきゃ

戦士「くそぅ…!!」ダンッ

魔女「何いきなりキレてるのよ」
414 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:36:48.27 ID:srqflxyK0
「おまたせしましたー。まずは生中3つになりますー」

僧侶「きたきた!」

盗賊「…前から思っていたんだが。神に仕える職って酒飲んでいいのか」

僧侶「ええ。とくに禁酒はされていません。例えばワインなんてものは神が齎した…」

盗賊「ああ、そう」

僧侶「最後まで聞いてくれてもいいじゃないですかぁ……」

僧侶「はい! 戦士さんと、勇者様の分!」

魔剣『ま、また僧侶ちゃんがおかしくなるヤツ? やだよー!』

女魔王「……」チラ

魔剣『勇者ちゃーん? 聞いてる? 僧侶ちゃんが』

魔剣『どうして女勇者ちゃんの方見てるの? もしかして浮気……!』

女魔王「阿呆、違うであるわッ」びしっ

魔剣『きゃんっ』

女魔王(あやつを殺せば、余と盗賊、そしてその妹にかかった呪いは解かれ)

女魔王(そして魔法が再び使えるようになれる……!)

女魔王(しかし、殺す。今のタイミングではちょっと嫌である)

女魔王(うーむ……)

女勇者「な、なんかさっきから勇者さんが熱い眼差しで私見てる気が!」

魔女「ビールって美味そうに見えますわね…」

女勇者「もしもし魔女っち聞いてます?」
415 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:37:29.42 ID:srqflxyK0
僧侶「乾杯ー!」

戦士「はい、乾杯。勇者殿! 乾杯! さぁ、俺とチンとグラスを鳴らしあいましょう!」

女魔王「戦士キモい…」

魔剣『僕もチンってしたいよー』

女魔王「これで良い?」チン

魔剣『わーい!』

戦士「ま、魔剣ちゃんばっかし……!」ぐぬぬ

盗賊「剣に嫉妬する奴も世界で探してお前ぐらいだぜ、きっと」

戦士「うるせー!」

僧侶「ん、ん、ん……ぷはぁー!!! 生き返るって感じがしますよね!」

魔女「生き返る? それは蘇生薬のような物ですの? 気になる。ですわ」

魔女「ちょいと戦士。それを一口、私に飲ませろですわ」

戦士「ダメダメ! これは子どもが飲んでよろしい飲み物じゃねーの」

魔女「いいじゃない! ちょっとぐらいどうって事ねぇですわ! ほれほれ!」

戦士「ダメったらダメ。お酒は二十歳から!」

戦士「お子様は頼んだステーキ食べてりゃいいの。ほら、来たぜ」

「ステーキのお客様ー」

魔女「はい! はい! はーい!」

女勇者「わーっ! 先輩が先にもらう権利があるんだよ!」

魔女「うるせーですわ!」
416 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:39:01.89 ID:srqflxyK0
僧侶「私思うんですけどね?」

盗賊「え?」

僧侶「女性の魅力って胸だけじゃないと思う」

盗賊「お、おう……」

戦士「まーたそんな綺麗事言って! 男ってみんな最初は顔か体見て突っかかってくもんなわけよ」

僧侶「あー! あー! 夢も希望もない事言った! 戦士さん嫌いです!」

戦士「嫌いになんなよぅ」

魔剣『僧侶ちゃんが怪しくなってきた気がするの』

女勇者「もしかして僧侶さんって酒癖悪い人だったり?」

魔剣『酒癖?』

女勇者「簡単に言ってしまうと、お酒飲むと面倒くさい人」

魔剣『変になっちゃうんだよー!』

女勇者「じゃあ悪いんだ、きっと」

魔女「酒は人を惑わす麻薬と聞きますわね……」

魔女「ぶっちゃけ、何が良くて好きこのんで飲むのかしら?」

盗賊「お前らも苦労が重なるようになればわかるようになるだろうよ」

女勇者「師匠はお酒どう思う?」

盗賊「飲み方さえ間違えなければ悪い物ではねぇよ。あとは飲む奴」チラ

僧侶「ゆうひゃしゃまぁ! ……あ〜〜〜、なんでもないへふ! よんでみははへ」

女魔王「僧侶バカであるわよwwww僧侶のバーカwwww」

戦士「ああ、これ美味いっスよ!? 勇者殿、口開けて? あーん」

女魔王「……何だこれは」

盗賊「いわゆる酒に呑まれた奴らだな」
417 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:39:45.89 ID:srqflxyK0
女勇者「師匠も私たちの事気にしないで飲んでも良いのに」

盗賊「いいんだよ、俺は」

魔女「飲めない口。ですの?」

盗賊「別にそういうわけじゃねーよ。お前ら残して飲める気が起きないだけだぜ」

女勇者「私、師匠のそういうところ大好きですよ!」

女勇者「微妙に優しいところ、ポイント高いんじゃないでしょうか!?」

盗賊「そうか……マジか?」

女勇者「女子はイチコロっスよ」

魔女「あなたの価値観で語らないで欲しい。ですわね」

女勇者「むっ……だったら、魔女っち後輩はどうなのよ。趣味悪かったりー」

魔女「どこまでも失礼な女ですわね? ていうか魔女っち言うな」

魔女「私なら、私にどこまでも尽くしてくれて、言う事を何でも聞いてくれるような男が好みね」

盗賊「実にお前らしい」

魔女「まぁ、実験役を買って出てくれるような積極的な男をどうせなら」

女勇者「やっぱ趣味悪いと思います…」

魔剣『盗賊ちゃーん……勇者ちゃんが僕の相手してくれないの』

盗賊「じゃあこっちに混ざればいいんじゃねぇのか。お前の好きにしてな」

魔剣『うん! あのねー、あのねー。僕ね、勇者ちゃんにちゃんと大好きって改めて言うことできて嬉しかったよ!』

盗賊「……い、いきなりだな」

魔剣『一時はどうなるのかなって思ってたけど、勇者ちゃんと仲直りできて良かったよ〜』

盗賊「……そうだな」
418 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:40:47.97 ID:srqflxyK0
戦士「でな? そいつが俺に言うんだよ。お前はガチ臭いって」

僧侶「wwwwwwwwww」

女魔王「ガチって何である?」

僧侶「でもぉ〜、戦士しゃん彼女いはじゃないへふはぁ〜?」

戦士「いたっていうか、まだ続いてるんだけどな……」

魔女「」コソコソ

魔剣『魔女っち何してんのー?』

魔女「じゃじゃーん! 私は戦士の飲みかけビールを手に入れた! ですわ」

盗賊「お前、それ飲むとかじゃねーだろうな? 止せよ」

魔女「やめろと言われてやめるバカがいて? どうしても止めたいなら土下座を要求しよう」

盗賊「ふざけんなよ…」

女勇者「別に一口ぐらい良いんじゃないですか? 一口だよ?」

盗賊「……いいか。その飲み物はマズイ。苦くて飲めたもんじゃない」

盗賊「飲んで得るものは何もないぜ。だから戦士へ返し」

魔女「いただきまーす。ですわ」

魔女は戦士の飲みかけビールを飲んだ!

魔剣『飲んじゃったよ?』

盗賊「バカじゃねぇの…」
419 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:41:30.00 ID:srqflxyK0
魔女「……かーっ! マズイ!」

女勇者「どんな感じ? どんな感じだったの?」

魔女「ん〜……味は苦い中にポップな感じが混ざってるというかなんというか」

魔女「恐らく、舌で味わう飲み物ではないですわね。喉越しがイイ感じ?」

女勇者・魔剣「『喉越し?』」

盗賊「もう十分だろ。大人の味覚でしか楽しめない物なんだ。返せ」

魔女「……もう一口〜」

盗賊「バカ……」

女勇者「師匠、私も飲んでよろしい?」

盗賊「よろしくねぇよ。怒るぞ」

女勇者「師匠に怒られるのなら悪くないかもしれません!」

盗賊(こいつは雰囲気によってるのだろうか。やけにテンションが高い)

盗賊「お前それ飲んだら二度と口聞かねぇからな」

女勇者「えっ……それはやだよ……!」

盗賊「だったら大人しくしてろ。好きな物食べていいから」

魔女「……お、おかしい。一度飲んだらまた飲みたくなってくる。ですわ」

魔女「何か油っ濃いものを摘まみながらコレを喉に流し込みたくてよ!?」

戦士「ぶっといソーセージとかいいと思う」

盗賊「やめろ……!」

盗賊「ていうか肉ダルマも気づいてて放って置いてんじゃねーよ!」

戦士「今、そっちに構ってる場合じゃないんだよ……俺の失恋話が」

僧侶「うっ、うう! わかりまふ、わかりまふよー……せつなひへふほへー……」

盗賊「僧侶にはこれ以上酒を飲ませるなよ。いいな?」

僧侶「てぇいんひゃん! うめしゅをロックでぇ!」

盗賊「やめろ!」
420 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:43:05.52 ID:srqflxyK0
盗賊「仕方がない。一旦お前ら2人を宿に帰しに行くぜ」

女勇者「えっ! 私たちもまだここにいたいよ!」

盗賊「ガキはお開きの時間だっ……!」

女勇者「むーっ、帰しに行くとか言っておいて師匠目見えてないからアレじゃん……」

盗賊「俺も帰るから宿へ連れて行け! それでいいだろっ」

女勇者「仕方がないなぁ」

盗賊(くそガキが……)

魔女「私はもう少しこの場に残りますわ」

盗賊「あ?」

魔女「だってさっきビール追加の注文したんですもの」

盗賊「お前……!」

魔女「ああ、なんだか体が火照ってきた気がするの……どれ上着を一枚」

盗賊「やめろバカ!」

魔女「私のワガママボディを今こそ解き放つ時ですわッ!」

女勇者「純粋に見てみたいです」

盗賊「うるせぇ! 帰るぞバカどもが!」

魔剣『僕は勇者ちゃんの傍にいるねー』

盗賊「大丈夫なのか?」

魔剣『勇者ちゃんと一緒ならどこだって大丈夫なんだよー』

盗賊「ふぅん……」
421 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:43:48.06 ID:srqflxyK0
女魔王「おう、貴様ら待て」

戦士「勇者殿〜?」

女魔王「余は女勇者と少し話がしたいであるわ。だからそいつは残せ、盗賊よ」

盗賊「だそうだが。お前はどうする?」

女勇者「勇者さんが個人的に私と話を……」

女勇者「全然おっけーですよ! 猥談でもしましょうか」

女魔王「猥談……?」

僧侶「ふひはらなっ!」

盗賊「どうでもいいが、遅くならないようにしろよ。帰りはそいつに送ってもらって」

女勇者「大丈夫! 私一人で全然宿まで帰れますから。方向音痴とかじゃないし」

盗賊「そういう意味でなくて」

戦士「女勇者ちゃん、帰りは絶対送ってもらいなさいよ」

女勇者「え?」

戦士「いいから。年頃の女が夜にほっつき歩いてると危ねーの」

戦士(……それに、王都騎士団の事も気になる。勇者殿がいれば心配もなさそうだが)

戦士「勇者殿ぉ〜遅くならないようにしてくださいよぅ〜!」

女魔王「問題ない。すぐに終わらせるわ」

魔剣『僕も一緒に行ってもいい? 勇者ちゃん』

女魔王「……貴様はここで戦士たちとお留守番よ、魔剣」

魔剣『早く帰って来てね? 僕、勇者ちゃんと一緒がいいの』

女魔王「ふん、知った事か!」
422 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:44:43.19 ID:srqflxyK0
店の外


盗賊「じゃあ、女勇者はお前に任せるぜ。しっかり帰してやってくれ」

女勇者「まるで私が子どもみたいな言い方……失礼ですよ、師匠!」

盗賊「みたいじゃなくて、事実そうなんだよアホ」

女魔王「わかった。しっかり帰す」

盗賊「ああ、じゃあ先に部屋で休んでいるぜ。おら、行くぞ」

魔女「ふへへぇ〜〜〜」

女魔王「いや、待つのよ。盗賊よ!」

盗賊「……何だ? でかい声出して」

女魔王「貴様は、すぐにでも呪いが解かれ、そして妹も呪いが解かれておったら」

女魔王「喜ぶか?」

盗賊「何言いだすかと思えばだ。当たり前だぜ、泣いて喜ぶな」

盗賊「アイツが助かる上に俺まで助かるなら勿論そうなるに決まってるだろ。だがそれは所詮幻想だぜ」

盗賊「アイツにどんな呪いがかかっているか知らねぇが。俺は……」

女魔王「ふむ」

盗賊「何でもない。じゃあな。おい、宿までの道案内しっかりしろよ」

魔女「任せろーーーーーー!! ですわぁ〜」

盗賊「……大丈夫かよ、こいつ」

女魔王「では貴様自身の為と、妹の為ならば、助かる手段は選ばぬのね?」

盗賊「お前が何言ってるのかよくわからんが」

盗賊「俺はいい。アイツが助かるなら俺は手段を選ばない」

盗賊と魔女は宿を目指した。

女魔王「成程であるわね」

女勇者「勇者さん?」

女魔王「少し場所を変えるわよ」
423 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:45:19.64 ID:srqflxyK0
町はずれ


女勇者「んー、散歩にしては少し遠すぎないですか?」

女魔王「……ここでよい。まぁ、其処にでも腰かけているのよ」

女勇者「はぁ? もしかして凄く大事な話をするつもりですか? ま、まさか」

女勇者「……愛の、告白とか」

女魔王「喧しい」

女勇者「あ、すみません」

女勇者「でも珍しいですよね。私、勇者さんと一対一で話すのってあんまりなかったかも」

女勇者「とっても新鮮に感じます!」

女魔王「そうか……」

女勇者「えっ、とー……良かったですね、魔剣さんとまた仲良くなれて」

女勇者「私たち本当に心配したんですよ! どうなっちゃうのかって」

女魔王「何とかなったわ。心配する必要は全くない」

女勇者「そ、そうですねぇ…あはは…」

女勇者(……どうしよう。話が続かないよ)

女勇者「あっ! 勇者さんて一応勇者なんですよね!? 今までにどんな事を習ってきたんですか!」

女魔王「一応だと?」

女勇者「すみません、失言でしたっー!」
424 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:45:53.50 ID:srqflxyK0
女魔王「逆に、貴様は今まで何を習ってきたのよ? 勇者とは」

女勇者「あ、はい! 勇者というものは、勇気ある者と書いて勇者でして」

女魔王「そんな事は知っておるわよ」

女勇者「……お父さんがよく言ってたんです。勇者になるには誰よりも強い勇気が欲しいって」

女勇者「勇気って積極的になれって事だと私思ってたんですけど、ちょっと違うんですよね」

女勇者「ちょっぴり気づいちゃったんです。勇気って裏返せば無謀に近いって」

女魔王「ほう?」

女勇者「でも勇気は自分の信念を最後まで貫く事。そう私は信じてる」

女勇者「私、前にも言った事あるけど人の役に立ちたい。世界よりも目の前の人間を助けたいの」

女勇者「大より小を取るってわけでもないですけど……。助けられるなら、私は大も小も両方を助けたい人間なんです」

女勇者「って全然習ってきた事じゃないですねっ。すみません」

女勇者「でも、お父さんは私が一人前の勇者に成長する為に色んな大事な事を教えてくれましたよ」

女勇者「自信を持って私の生涯一番の勇者の先生だったって言えます」

女魔王「色々大切な事を教わってきたということか、貴様のパパ上から」

女勇者「はい!」

女魔王「勇者とは誰かから教わるものなのか?」

女勇者「え……?」
425 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:47:15.33 ID:srqflxyK0
女魔王「余が知る勇者とは、魔王を討つ者のこと」

女魔王「人間を救う? それは勇者なのかしら」

女魔王「貴様の話を聞く限り、それはただのお人好しの考えであるわよ!」

女魔王「遥か昔からこの世界で言い伝えられてきた勇者とは、悪を討つ勇ましき者よ」

女魔王「貴様、何か勘違いをしておらないかしらねェ……?」

女勇者「勘違いなんかじゃないですよ」

女魔王「んん?」

女勇者「これが私自身の信念。人を助け通す事が私の信念であって勇気そのもの」

女勇者「悪を倒すから勇者、そうじゃないと思います」

女勇者「それに結果的には魔王を倒して人類へ平和を齎して救うじゃないですか、勇者だって」

女勇者「……勇者なんて、その気になれば誰にでもなれるものなんですよ」

女勇者「魔王へ挑む者の名称として勇者だなんてカッコ良さ気なのついてますけど」

女勇者「私はただ、その゛勇者゛と呼ばれる血を引く家に生まれただけ」

女勇者「何だっていいじゃないですか。まぁ、私も魔王を倒しますよ! ゛勇者゛の最後の子孫として!」

女魔王「……」

女勇者「それが私と貴方にしかできない事だというのなら、やってやります! かならず!」

女魔王「もうそのぐらいで十分か? 貴様」

女勇者「ん?」

女魔王「いや、十分貴様の話は聞けたわよ。悪くなかった」

女魔王「……では、救う為に貴様には死んで貰うであるわ。勇者として」

女魔王「人助けとしてなァ!!!!!!」

女勇者「ちょ、まっーーー!?」

女魔王の攻撃!
426 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/11(月) 03:48:58.46 ID:srqflxyK0
ここまで。次回、女勇者死す
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 07:55:44.24 ID:3pTLXWMSO
デュエルスタンバイ!
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/06/11(月) 09:34:50.54 ID:lYWMF6zuo
このあとは「私の魔王様がこんなにゴイスバディーなはずがない」!
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/11(月) 14:26:00.81 ID:DGOEtg9z0
魔王ちゃんと魔剣ちゃんかわいい
もうくっついちゃえよ
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 03:59:47.93 ID:uuiA9MFDO
むしろ戦士とくっついちゃえよ

ってか戦士がガチで臭いのかと思ったww
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 18:04:37.36 ID:QwgPXSTIO
魔王さまちょっと良心でてきてる?
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 20:15:02.27 ID:6AVpiPxs0
魔王はだいぶ良い子になってきた気がする
容赦ないのは変わりなさそうだけどww
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 22:54:43.37 ID:XYCjZndDO
らしくなってきたな
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/12(火) 23:07:52.90 ID:LzUvL8gk0
一応盗賊とその妹のこと気にかけてるし、だいぶ優しくなったよね
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/13(水) 23:01:17.07 ID:Em08EyjDO
人の話を大人しく最後まで聞くなんて初めての快挙ではなかろうか
436 :  [sage]:2012/06/14(木) 23:53:18.70 ID:2hf6AmPTP
魔王ちゃん成長してるのねー
437 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 02:55:32.06 ID:J2UtjzL20
ずどぉーーーん・・・


女勇者「ひぃ、ひぃー……」

女魔王「チッ! 外したわ」

女魔王「貴様、余の一撃が避けられる程成長していたか」

女勇者「いきなり何するんですか!」

女魔王「殺される理由は先程申したわよ。余の為に、死ねと」

女勇者「ワケわからんですよ! 私が死んだらどうなるっていうの」

女勇者「……とにかく落ち着こうよ。良くない、私たち仲間なのに」

女魔王「それは貴様が勝手に思い込んでおるだけではないか」

女魔王「以前余は申したわね。貴様は戦士が帰ってくるまでのただの繋ぎだと」

女魔王「空きは既に埋まったのだ! まぁ、魔女とかいうウンコも余計加入してしまったが」

女魔王「ようは貴様は用済みである。安心せよ、楽に殺してやろう」

女勇者「いやいや! おかしいですよ!」

女魔王「何もおかしくなんてないッッッ」

女魔王の攻撃!

女勇者「ひっ」
438 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 02:56:49.71 ID:J2UtjzL20
女勇者はひのきの棒で攻撃を受け止めた!

女魔王「何ィ……?」

女魔王「余の攻撃をそんな棒切れで防ぎきっただと?」

女勇者「お、お願い……ダメですよ……! これ以上は、もうっ」

女魔王「黙れ死ねェー!!」

女魔王の攻撃! 攻撃! 攻撃!

女勇者「うぅぅ! ぐ、痛い……! 勇者さん!」

女魔王「何故だッ!? 余の攻撃を何故そうも容易に受け止められるのッ!?」

女魔王(こやつが持った武器はただのひのき棒! 雑魚中の雑魚! それが…)

女勇者「お願いだから一度話合おうよ。こんなの絶対おかしい」

女勇者「勇者同士が争うだなんて違うよ!」

女魔王「っっっ〜……!」

女魔王「余が勇者であるッ! 貴様は違う! 貴様は勇者などではない」

女魔王「勇者は、余一人で十分なのよッ! だから貴様は朽ちて消え去れ!」

女勇者「ゆ、勇者さん……」

女魔王「星にしてくれるわ小娘がッッッ〜〜〜〜〜〜」

女魔王「余の攻撃を防ぐ事を禁ず!!!」


\ ルール承認ッ 何人たりとも攻撃を防ぐ事を禁ず! /


女勇者(そんな! 勇者さんがおかしいよ! か、完全に私を殺す気満々……)

女勇者「だ、誰か……助けて……!」
439 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 02:57:18.69 ID:J2UtjzL20
女魔王「もっと気が効いたルールを制定してくれた方が良かったかしら」

女魔王「その気になれば、それだけで殺せるのだわ。この魔法? は」

女勇者「勇者さぁん……!」

女魔王「ぐっふふふふ〜」ニヤリ

女魔王(こんな気分久しぶりである。見よ、こやるの余を見る瞳を)

女魔王(絶望一色に染まっておるわ! 愚か者め、余を呼ぶのは命乞いのつもりか)

女魔王「勇者よ、これが貴様の最後の死と成る事だろう。余は貴様を完全に殺してくれる」

女勇者「最後の死って……や、やだ……」

女勇者「やだよ! 勇者さんお願い! 私を殺さないで!」

女勇者「勇者が2人いる事の何がおかしいの……? 私、あなたとなら魔王を倒せるって」

女魔王(なんと皮肉な!)

女魔王(貴様がそれを語っておる相手こそが魔王よ。元がつくけど)

女魔王「ふん、貴様の手を借りずとも余は魔王を討ち獲れるのよ。だから貴様は必要ない」
440 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 02:58:08.98 ID:J2UtjzL20
女魔王「残念だが貴様の冒険ごっこはここで終いよ。あの世にてその身を癒せ、勇者」

女魔王の手刀がへたり込んだ女勇者の左胸へ突きつけられる!

女勇者「信じてたのに。勇者さんは凄い勇者なんだってずっと信じてたのに!」

女勇者「こんなところで死んじゃったら……私の今までって何だったの……?」

女魔王「……」

女勇者「……ああ、でも私がここで死んだら勇者さんが救われるだっけ? なら良かった」

女勇者「私の死は無駄にならないってことですよね」

女魔王(それどころか、貴様は盗賊たちをも救う)

女勇者「……殺してください。人一人救えたのなら、私は勇者として最高の死を迎えられる」

女魔王「後悔はないと?」

女勇者「ないって言ったらウソになるよ。聞かないで」

女勇者「せっかくの覚悟が台無しになっちゃいそうですから……グスッ」

女魔王「死が恐ろしいか。安心せよ、貴様は痛みを知覚する前にこの世から精神を消すの」

女勇者「それで優しいつもりなんですね……変な人……っ!」

女勇者「……いやだよぉ、勇者さんに、うぐぅ…殺されたくない。死にたくないよっ…」

女魔王「残念な事に泣いても貴様は救われぬ。それが世界の摂理よ。死ぬ時は死ぬのだ」

女魔王「辞世の句はもう十分であるわ……」

女魔王の攻撃!

女勇者「っ!」
441 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 02:59:09.32 ID:J2UtjzL20
ガギィン!


女勇者「…………あれ?」

女魔王「…………貴様ぁ、ここまで長引かせておいてどういうつもり」

やはり女勇者の伝説の鎧には傷一つつけられない! 攻撃が弾かれてしまった!

女魔王「余は、余は確かに避けられぬルールを制定した筈ッ! だのに…!」

女魔王「こうなったらもう自棄であるわー! その鎧を脱げェ!」

女勇者「ええっ!? そ、そんな、って……!?」

女魔王は無理矢理鎧を脱がせにかかった!

女勇者「きゃあああぁぁぁ〜〜〜!!? ちょっとちょっと! 勇者さんダメだよっ!?」ジタバタ

女魔王「脱げッ!! 早く脱ぐのだッ、くそ……中々脱がせにくいっ……!」

女魔王「ほっ」ニヤ

女勇者「殺すなら別に鎧があるとこ攻撃しなくてもいいじゃないですかぁ〜!!」

女魔王「むっ……確かに」

女勇者「どうしてそこに気づかない!」

女魔王「ふんッ、仕切り直しであるわよ!! 貴様はまた先程のように命乞いをしておれ」

女勇者「い、いやぁ……死にたくない…なぁ……あははははー……」

女魔王「わざと臭い」

女勇者「だって」ムスッ

女魔王「これでは先程のイイ感じが台無しじゃないの。貴様はこれから死ぬのよ?」

女勇者「もう止しましょうよ……」
442 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:00:36.54 ID:J2UtjzL20
女勇者「勇者さん、これってただの冗談だったんでしょ? もう十分だよ」

女魔王「え」

女勇者「私そろそろ宿で休みたいです。ヘトヘトですよぉ」

女魔王「ちょ、ちょっと待つのよ! 貴様これはお遊びなんかではなくてね…!」

女勇者「あんまり遅いと師匠に心配されちゃうし、帰りましょうよ。勇者さんはきっと酔っ払ってたんだね!」

女勇者「勇者さんのその演技力の高さに私驚いちゃってよ〜……本気で怖かったし」

女勇者「お遊戯とかなら、意外と勇者さんは魔王の役とかピッタリかも! なんて〜」

女魔王「ふんッッッッッッーーーーーー!!!」

女魔王の攻撃! 女勇者は顔面に女魔王の拳を受け、大きくぶっ飛んだ。


女勇者「†」しゅうううぅぅぅ〜・・・


女魔王「……さ、最初から問答無用でこうしてれば良かった。すまないわ、女勇者よ」

女魔王「後はこやつの体を二度と再生できぬように微塵に砕けばいいわけか」

棺をこじ開けると、そこには酷い顔で亡くなった女勇者の遺体が中に。

女魔王「なんと惨い死に顔か。鎧は着けたまま……」

女魔王「どうやってこやつを更に殺しきったらよいのだろうかしら?」

湯女「早速約束を果たしてくれているのね! ありがとう〜、勇者様ぁ♪」

女魔王「……貴様、今までのやり取りを盗み見ておったの?」

湯女「うふふ。ちょーっぴり心配でしたので」

湯女「でも、杞憂でしたね。あなたはきちんと約束を果たしてくれそう」

女魔王「貴様もきちんと約束果たしなさいよ。じゃないと貴様も」

湯女「ウソはつかないと言いましたわ。安心して」

女魔王「チッ……!」
443 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:01:11.27 ID:J2UtjzL20
女魔王「こやつを死にやったまでは良いが、ここから先をどうしていいか分からん」

女魔王「…女勇者を完全に殺すにはどうしたら?」

湯女「ええ。まずは鎧を外さなければ始まりません」

湯女「頑張って外してください。と、言っても魔族のあなたでは絶対に外す事はできないけど」

女魔王「……ではどうすればよい。貴様が鎧取るか!?」

湯女「私もちょっと〜」

女魔王「エルフとやらは魔の者と同等か? 余には貴様がよくわからん」

湯女「そういうわけでもないけれど。私自身がねぇ」

湯女「お仲間のどなたかに外していただいては? ほらぁ、あの大きくて逞しい男の方なんてあなたの命令に忠実だし」

女魔王「ならん。これは余だけの問題であるわ。戦士どもには手伝わせん」

湯女「あらあら、お仲間の手を汚させたくはない?」

女魔王「喧しいわくそ耳! もうこやつはこのまま地中深くに土葬してしまえばいいのよ」

女魔王「死体が見つからなければ完全に死んだも同然。文句あるまい」

湯女「うーん、それはちょっと困るかも」

湯女「彼女の存在自体をこの世から消し去って欲しい。それが交わした約束」

湯女「やっぱりあなたには難しかったかしら? 難しいわよねぇ」

女魔王「そんな事は全然ないわよッ!」

湯女「へぇ……? 最初、鎧が攻撃を防いでくれた時に安心していた仲間思いの魔王さまのくせに?」

女魔王「あァん?」

湯女「魔王、あなたは少し人間と共に過ごしたせいか。優しくなり過ぎてしまいましたよ」

女魔王「魔王魔王と喧しいクソ女ね。ケンカ売ってるのかしらァ?」
444 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:01:55.07 ID:J2UtjzL20
湯女「やっぱり使えませんね。あなたは」ニッコリ

女魔王「あ?」ピキピキ

湯女「まぁ、ここまでしてくれたし、呪いは私が後で解いておきましょうか」

湯女「魔力器官もオマケ。良かったわねぇ、こんな大サービス普通ならしませんよ?」

女魔王「で、ではこれで約束を果たした事になるのか!」

女魔王「おい! 今回だけは貴様に感謝してくれようぞ! ありがたく思うがいいわ」

湯女「はぁい。そうしておきます」

女魔王「ではかならず呪いと魔力器官を治しておくのだぞ! 余はそろそろ帰るから…」

湯女「待ちなさい」ニッコリ

女魔王「は?」

湯女「そこの死体も一緒に帰られちゃ困ります〜。渡しなさい」

湯女「面倒だからしたくなかったけれど、私自らの手で勇者を滅ぼすから。ね?」

女魔王「えっ……」

女魔王「い、いいから貴様は早く治すのよ! そしたら女勇者をくれてやるわ!」

湯女「ダメですわ。さきに死体を寄越しなさい。ほら」

女魔王「それは……ならん……。先に貴様が」

湯女「ダメです」

女魔王「……」

湯女「何を迷っているのかしら? あなたにとってその勇者は大切?」

湯女「元は敵同士なのよ。それに勇者は2人もいらないのでしょう?」

湯女「あなたにその娘を持って帰るメリットは何一つないの」

女魔王「うう……!」
445 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:03:20.89 ID:J2UtjzL20
湯女「直前になってその娘を亡くすのが惜しくなった?」

女魔王「違う……。余は」

湯女「いいえ、違わないでしょう。愚かな魔王」

湯女「もうあなたは魔王の器に相応しくはない。ただの出来損ないの魔物モドキ」

湯女「所詮は紛い物のゴミですね〜♪」

女魔王「貴様ぶっ殺ォッッッーーーーーー!!!」

女魔王の攻撃!

しかし、攻撃地点から湯女の姿が霧のように薄れてぼんやりと消えた。

女魔王「魔法か? 余は貴様を力づくで言うことを聞かせる事に決めたわ」

女魔王「この使えん粗大ゴミ女は渡さん。これは既に余の所有物よッ」

湯女「所有物? ナマ言わないでくださる?」

女魔王「!」

湯女は女魔王の背後に静かに現れ、耳元で囁いた。

瞬時に顔面目掛けて肘撃ちをおみまい! …し損なった。

女魔王(まるで実態がない女……!)

湯女「あなたはとても強いわ。でもそれは昔の話ね〜」

女魔王「何処におる貴様ァー!」

湯女「今のあなたは私以下かしらぁ。それどころか」

湯女「そこらの三下魔物以下かしら?」

宙に何の前触れもなく大量のスライムが出現した!

女魔王「むっ!」

スライムたちは女魔王へ流星群の如く降り注ぐ!一気にそこにはスライムでできた山が。

湯女「名付けて、もりもりスライム地獄かしら? 窮屈で息ができないでしょう。苦しいね」

湯女「諦めて私にその娘を渡してくれたら――――――」


どおぉーん!!!


女魔王「……これで勝ったつもりになるとは。貴様の程度が知れたぞ、エルフの女ァ」

スライムの山は女魔王の拳一つで崩れる! 大量のスライムはぐちゃあと音を立てて地へ潰れた。

女魔王「余が貴様に渡すものは何一つないのよ。貴様のような胡散臭い変耳には!」

湯女「悪い子ねぇ。こんな子にはお仕置きが必要だわ」
446 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:05:25.46 ID:J2UtjzL20
湯女「私の魔法に耐えられるかしら?」

炎、氷、雷、木、闇。全属性を凝縮させ、生まれた魔法の矢が湯女の手に握られる。

湯女「耐えてみて」

びゅんっと投げ放たれた矢は直線の軌道を描き、魔王へ向かう!

女魔王「耐えるまでもない! 避けてしまえばよいのよ」

真っ直ぐ飛ばされてきた矢を避けるのは女魔王にとって、いとも容易い事であった。

その気になれば叩き落とす事でさえも!

女魔王「この程度の魔法で余に敵うとでも思っておったか? ふふーん、愚かな女よ」

湯女「うしろ、うしろ♪」

女魔王「へ?」

ズドン!と勢いよく突き刺さる魔法の矢。それは体を抜けて胸を破り、再び湯女の手の中へ帰った。

女魔王「ぎゃああああああぁぁぁ〜〜〜!!?」ぶしゅううぅぅ〜・・・

湯女「ごめんなさいね? 私だってあなたにこんな酷い真似はしたくなかったわ」

湯女「でもぉ、あなたがどうしても聞きわけが悪かったから。つい」

女魔王「ぎ、ぎざまぁっ…!」

湯女「もう一度言わせて。その娘を大人しく渡しなさい。そうしてくれたら今できた穴も埋めてあげます」

女魔王「余に回復は不要であるッーーー!!!」

女魔王の攻撃!

湯女「時間よ止まって。私だけのために〜」


・・・


女魔王「    」

湯女「情けのない子へ育ってしまいましたね、魔王」なでなで

湯女「私とあなたに関係はもうありません。けれどあの人が選んだ子なのよね、あなたは」

湯女「覚えておいてね? あなたはあの子を踏み台にして魔王の跡継ぎへなれたという事」

湯女「本当はとても憎らしい。あなたが嫌いよ」

湯女「それでも私は愛するわ。あなたを、そして世界の全てを」

湯女「魔王、私はこの世界の母となるの。当然だと思わないかな、ママが子どもを愛そうというのは」
447 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:07:04.37 ID:J2UtjzL20
湯女「母は子を支配する権利がある。だから私は」

湯女「あらぁ、時間切れね」


・・・


女魔王の攻撃ははずれた!

女魔王「……ぐぅぅ」

女魔王(思ったより先程の魔法の威力が大きかったであるわね。凄く痛む)

湯女「あなたに言いたいこと、今全部言えましたわぁ」

女魔王「はぁ?」

湯女「うふふ。気にしないでくださいね♪」

湯女「十分お仕置きも済んだし、あなたも勇者を引き渡すつもりもないみたいだから」

湯女「強引に奪って帰りますね」

女魔王「無駄であるわ! 余がそれを許さん」

女魔王「貴様の魔法では余を倒す事など不可。次は全力全快よ」

湯女「そう。良かったわね」

湯女「時間よ」ボソ


・・・


女魔王「    」

女勇者「†」

湯女「熱くなってるところ申し訳ないけど。このままこの子を連れて行くわぁ」

湯女「怒らないでね。こうでもしなきゃ手に入りそうにもないし〜」

湯女は女勇者が入った棺を持ってそのまま去ろうとした。が、

女魔王「    」ピク

湯女「……」

女魔王「    」ピク、ピク

女魔王『がうがうがううううううううううううぅぅぅぅぅぅ』

女魔王、覚醒!

湯女「私だけの時間へ入り込んでくるだなんて! さすが魔王ちゃん〜♪」
448 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:10:07.20 ID:J2UtjzL20
女魔王『     』


意識はなく、体だけが無意識に湯女の体を切り裂こうと襲い掛かる!

鋭い爪は魔法を裂いて砕く。どんな強力な魔法でさえ、その魔獣を止められない!

湯女「元気があってとてもよろしいですこと」

湯女(一度の死をキッカケにここまで凶暴な姿へ変態できるようになるなんて)

湯女(言うならば、魔王第二形態といったところかしら? これは私の知ってる姿ではない)

女魔王『ぎゃうううううううぅぅぅぅ』

湯女の細く白い首へ、牙を剝き食らいつこうとする!

湯女「世界樹よ。この子の弱点を私へ教えなさい」

世界樹が知る、世界の全ての知識の中から魔王だけの情報が抜粋され、湯女へ蓄積される!

湯女「解析完了ー☆」キラッ

女魔王『ああああああああああああ』

湯女「あなたの動きは全て手に取るようにわか――――――」


\ルール発動ッ 魔王の攻撃を防ぐ事は何人たりとも許されない! /


湯女「えっ」

女魔王『ガブッ』


ぶしゅうううぅぅぅ〜〜〜・・・!


湯女「っ〜〜〜!!」

首を攻撃されることは防げた。しかし鋭い刃の様な歯は、華奢な肩へ食い込み、その肉を千切る!

湯女「バカな……信じられない……っ」

女魔王『ぐちゃ、ぐちゃ……もぐ』

湯女「お、美味しい? よく味わって食べなさい……私の肉なのですから……っ」
449 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:11:33.69 ID:J2UtjzL20
湯女「うっ……!」


・・・


湯女(魔力ごとあの子へ喰われたせいかしら。時間がもう動きだした…)

女魔王『ふーっ、ふーっ、ふーっ』

湯女「まるで久々のエサへありつけた獣ねぇ、魔王」

湯女「そういう無邪気なところも愛おしく感じますよ。うふふ」

女魔王『ぎゃーう!』

湯女「……あらあら、まだお腹が膨れないのかしら。困った子」

湯女「悪いけれどさすがにもう私の肉をあげるわけにはいかないの。ごめんなさいねぇ」

女魔王『がーうっ!』

湯女「と言っても聞くわけがないようね。ダメよ? お母さんの言う事はしっかり聞かないと」

湯女「」ふら・・・

湯女(いけない。消耗しすぎたか。このまま魔力を酷使しては世界樹を、私自身を枯らせてしまう)

湯女「ごめんなさいね? 私、急用を思い出してしまったみたいで」

湯女「だから今日はここでさようなら。残念だけど、あなたを回復させてあげられないで去らせてもらいますねぇ」

女魔王『ぐるるる……』

湯女「うふふ。さよなら」

湯女は微量の魔力を練って転送魔法を使い、その場から消えた。

女魔王『がおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』
450 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:12:18.26 ID:J2UtjzL20
女魔王は牙を向ける相手が消えたもどかしさから、自身の体を傷つけた!

女魔王『ぐううううう……』

しかし、自分がつけた傷のあまりの痛さに悶絶し、悲鳴を上げてぱたりとその場で横たわる。

女魔王「…………ん?」

女魔王「貴様ァー! 今度は余に睡眠の魔法をかけたか! 卑怯者の糞女めがッ」

女魔王「……いない? 逃げたか、あの耳。ふん! 余に敵わぬとようやくわかったわけね」

女魔王「それより棺は」

女勇者「†」

女魔王「ほっ」

女魔王「……しかしあの女、去り際にどうせなら余の魔力器官を治してゆけばいいものを!」

女魔王(あやつは何の為に女勇者を消し去ろうと考えたのか。目的がハッキリしない)

女魔王「分かったのはあやつがエルフという事のみ。マジ謎であるわ」

女魔王は女勇者の棺を担ぐと、そのまま教会を目指した。

女魔王「今日でどれだけ貴様らを教会行きにさせたことか。全く、金の無駄である!」

女魔王「今後は余の許可無しに死ぬのは絶対許さんことにしたわよ。決まりだわ」すたすたすた・・・
451 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:13:07.27 ID:J2UtjzL20
女勇者「――――――……あ、れ」


神父「全く! 命は投げ捨てる物ではありませんぞ! 簡単に死なないでいただきたい!」

女魔王「別に貴様ら神官どもが復活させられるのだから構わぬだろう。勝手ぬかすな阿呆」

神父「なんて人だ!」

女勇者「勇者さん?」

女魔王「あァん? 貴様、今起きたか。さっさと宿へ戻るであるわよ」

女勇者「わ、私死んじゃってたの?」

女魔王「そうだ。貴様が石に躓いて頭を打ち、勝手に死んだ」

女魔王「余に感謝するがよい! 面倒だがわざわざ蘇らせてやったのだから」

神父「蘇らせたのは私なんだけどね……?」

女勇者「すみません、なんか面倒かけちゃって」

女魔王「全くであるわよ」

女勇者「でも! そもそも勇者さんが変なドッキリ仕掛けてこなかったらこんなことにならなかったんだよっ」

女魔王「助けてもらっておいて余を愚弄するか! 穴の青い小娘が!」

女魔王たちはぎゃーぎゃー言い合いながら教会を出て行った。

神父「……あ、あのー。お金をまだいただいてないのですけども」

しーん

神父「酷い! なんて酷い輩なんだ! もう二度と蘇らせやらんぞ! ……あれ?」

神父「この手配書の偽勇者一行とどこか似てたような。でも、あんなおっぱい大きい女は載ってないぞ」

神父「むぅ、一応自警団へ連絡を」
452 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:13:58.03 ID:J2UtjzL20
次の日・宿にて


戦士・僧侶・魔女「頭痛い〜……」

盗賊「何やってんだお前ら……」

戦士「にしても勇者殿ぉ! 昨日ずっと戻って来るの待ってたんスよ!?」

女魔王「知らん。済んだ事だ許せよ、戦士」

戦士「はい!」

魔剣『勇者ちゃ〜ん…僕も寂しかったんだよー。2人とも変になって怖かったし』

僧侶「反省してますっ」

女魔王「魔剣も許しなさいよ。別に忘れてたわけじゃないから」

魔剣『さすが僕の嫁の勇者ちゃん!』

戦士「は?」

女勇者「戦士さん顔怖いよ」

盗賊「で、お前はもうこれで酒は懲りたろ。ダメな奴が飲んじゃいけねぇもんなんだぜ」

魔女「ダメって何よ、ダメって。ふん! これは挑戦と受け取った。ですわ」

魔女「次回は絶対負けませんことよー!」

盗賊「バカたれ」

盗賊「……魔法薬、今日から作れるんだな?」

魔女「ええ。十分休憩も取れたし、さっそく今日から取りかかるわ」

盗賊「頼んだぜ。お前が頼りなんだ」

女魔王(女勇者を大人しく渡せば盗賊も救われた)

女魔王「余の我儘で機会を逃してしまったが。まぁ、盗賊だしいいである」

盗賊「お前は急に何言ってんだ?」

女魔王「盗賊には内緒よ。今日から魔剣に匂いを追わせ、貴様の妹の元とやらへ行く。良いな?」

盗賊「お、おう……?」

盗賊「今日はヤケに丸くなってて気持ち悪ィな、アイツ」

僧侶「ですよね…?」
453 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:15:16.31 ID:J2UtjzL20
がやがやがや・・・


女勇者「んー? 何だか店の外騒がしくありません?」

魔女「騒がしいのはあなたたちで十分だというに。迷惑極まりないですわね」

女勇者「はぁ!?」

戦士「頭に響くなっ……今日は祭りか何かですかぁ?」

僧侶「そのような話は聞いていませんが、気になりますね。見てきま」

盗賊「待て」

僧侶「ん?」


< ココデスココ! ココニニセユウシャイッコウガ!

< トツニュー


盗賊「どうやら逃げた方が良さそうだぜ。バレたらしい」

魔剣『バレたって? 盗賊ちゃん変な事したの?』

僧侶「ま、まだ偽勇者疑惑取れてなかったのね……もう」

戦士「何スかそれ?」

女魔王「ではとっとと退散の流れで構わぬなァーーー!」

女魔王は壁に穴を開けて、外へ跳び下りた!

魔剣『きゃっほ〜!』

僧侶「えぇー!?」

戦士「まぁ、逃げるってのは俺も大賛成。面倒になりたくないし!」

盗賊「……こうやって俺たちの罪が次々と増えてくわけか」

女勇者「わ、私何も悪いことしてないのにっ」

魔女「罪とは無意識に重なるもの。ですわ」

戦士「へいへい。さっさと逃げますよ〜」ガシッ

魔女「あっ、ちょっと! どこ掴んで……ぎゃー!?」



魔王たちは町を早々後にし、次の目的地へ向かったのであった。
454 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:16:13.28 ID:J2UtjzL20
一方そのころ


ペロ「おい、完成したよー! これ着けて歩いてみてくれ」

側近「またそんなガラクタで……お断りです」

ペロ「今回は自信ある出来なんだよ。頼むから。な?」

側近「……」

ペロから渡された義足を取りつけ、側近は辺りを適当に歩いた。

ペロ「どう? どんな感じだ。全然壊れないだろー! 俺って物作る才能あるんだなぁ!」

側近「調子に乗らないでくださいよ」

ペロ「ごめんなさい」

側近「……悪くありません。まだ慣れないけどこれなら自由に動けるかも」

ペロ「だろう? 見たくれも悪くないぜ、カックイー」

側近「ま、魔王様もこのお姿を喜んでくれるかな……!」

側近「あっ」

ペロ「魔王様の事はもう忘れるっての、やっぱりアンタにゃ無理だな」

側近「……」
455 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:16:48.48 ID:J2UtjzL20
数日前のこと〜


ペロ「あのぅー……」

側近「どうして」

ペロ「へ?」

側近「どうして私に着いてくるんですか。あなた誰ですか? 知りません」

ペロ「酷い!」

ペロ「片足もげて地面這ってる魔物を放っておけるわけないだろ…。心配なんですよ」

側近「あなたに心配される筋合いはないですよ…私はこうやって、ゴミの様に地べたを這って生きていくのがお似合いな
んです」

ペロ(また言ってるよこの人)

ペロ「アンタ、今はアンデッドって状態なんでしょ? どうして体再生しないの」

側近「魔王様…どこにいるのかな……ここかな。魔王さまぁ……側近はあなたを見捨てていませんよぉ……ううっ」

ペロ「ま、まずは自分の体のことを心配しようぜ」

側近「自分の体なんて二の次です。私は魔王様の方が心配で」

側近「悪い人間たちに騙されてないかな…夜は一人で寝れてるのかな…」

側近「うぐ、心配しだすと止まらないよぉ……」

ペロ「魔王様のこと大好きなんだねー」

側近「好きじゃなきゃこんな事してません…大好きなんだもん…」

側近「でも、魔王様は私の事はだいっ嫌いみたくて……あははは」

側近「あはははははははっ!!!」

ペロ「ひぃ!」
456 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:17:22.30 ID:J2UtjzL20
ペロ「……嫌われてても、そうやってずっと魔王様を探してるつもりなのか?」

側近「だってお城に帰ってもらわないと…魔王様なんですから」

ペロ「うーん、まぁ」

ペロ「でも魔王様がいなくてもぶっちゃけ魔王城もしっかり機能してるし。魔物たちも仕事してるし」

ペロ「別にいなくてもいいような?」

側近「今、私が立つことができたらあなたを死ぬまで蹴り飛ばすところでしたよ」

ペロ「ごめんなさい!」

側近「……ダメなんです。魔王様がいなくちゃ私たちはダメな魔物なんです!」

ペロ「魔王様がいなくちゃダメなのはアンタの方じゃないかい」

側近「!」

ペロ「アンタは何だかんだ言って魔王様に依存してんだよ。だからそんなに欲してる」

ペロ「違いますか」

側近「違わない……その通りです……」

ペロ「……楽になんなよ。そんな体にまでなってさ」

ペロ「死ねとは言わないけど、可哀想だぜ。側近さん」

側近「やめて! やめてやめてやめて! 可哀想だなんて言わないで!」

側近「私は魔王様がいてくれたらそれだけで幸せなの! 私なんてどうなってもいい!」

側近「だから、可哀想だなんて言わないでくださいよぅ……」

ペロ「う、うーん。参ったな、この人」
457 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:17:56.54 ID:J2UtjzL20
ペロ「……俺もよぅ、昔は死んだママンに結構依存気味だったんだぜ」

側近「何を」

ペロ「まぁ、聞いてくださいよ。本当に沈んだぜ、ママンが殺されちまったときは」

ペロ「当たり前のように一緒にいてくれた人がある日を境にパタリといなくなっちまうんだ」

ペロ「恐怖だったよ。生きる気力さえ失せちまってよぅ……情けない姿だった」

ペロ「今のアンタは昔の俺そっくりだ! 情けない俺だ!」

側近「だったら何だというんですか…私はあなたじゃない…」

ペロ「ようはさ、忘れちまえって事だよ。魔王様を」

側近「ふざけてるんですか」

ペロ「いいや、そんなつもりは毛頭ねぇ。そいつを忘れてアンタは今後好きに生きるも死ぬもしたらいいんだ!」

ペロ「俺は誰かに尽くす喜びというのは知らないけどな? 生き方を変えるってのもいいと思うんだ、俺」

側近「生き方を変える?」

ペロ「とても勇気が入ることだとは思う。だけど、乗り越えちまえばアンタは自由だぜ」

ペロ「アンタ、魔王様っていう呪いの束縛から逃げちゃいなよ」

側近「逃げる…魔王様から、逃げる……」

ペロ「どうしてもあの人を忘れられないというのなら無理強いはしねぇさ。これはアンタが選ぶ道だぜ」

側近「私の道……」

ペロ「とりあえず生きていたいってのなら、まずはその足どうにかしなきゃな」

ペロ「そうだ! 足作ればいんだ。俺が作ってやろうかー!?」

側近「……不服だけど、お願いします」

ペロ「よーし!」
458 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:18:59.05 ID:J2UtjzL20
そして現在に至る


側近「わ、私どうしたら……」

ペロ「知らねー! あとはアンタ自身が考えるんだよ」

ペロ「俺も親切心でここまでしてやったけど、後は知らん」

ペロ「だけど、せっかく足をくれてやったんだ。無駄にするような事はしないでほしいな」

側近「土わらし……」

ペロ「俺はペロだ。土わらしのペロだよ。初めて俺を呼んでくれたな、側近さん」

側近「ペロ。しっかり記憶しましたよ……あなたは恩人です」

側近「ありがとう……」

ペロ「それ言われると照れちゃうじゃないかよぅ。いいよ別に〜」

ペロ「お礼なら小さな人間の女の子を紹介してくれる方が嬉し」

側近「決めた」

ペロ「へ?」

側近「自分のこれからの生き方を」

ペロ「……そっか。何かヤボだし聞かないでおいた方がいいのかぃ」

側近「ううん。私、やっぱり魔王様を諦めません……」

ペロ「えっ」

側近「魔王様を探しだしてお城へ連れて帰る……かならず」

側近「もしかしたら魔王様は私を必要だと思っていてくれているかもしれないでしょう…嫌いっていうのも何かの間違い
だったかもしれない」

ペロ「あのー……」

側近「あはは、道は変わりませんね。ペロ……」ニヤァ

ペロ(こいつ、だいぶ良くなってきたと思ってたのに何にも変わってないじゃんかよ!)
459 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:21:13.39 ID:J2UtjzL20
ペロ「もう勝手にしてよー……」

側近「はぁい」

側近「あなたも一緒に来ませんか、ペロ。あなたはいい魔物です」

ペロ「俺はいい。どうせ魔界から追放されちまった身だしよぅ」

ペロ「本来なら俺がアンタと喋ってんのは信じられない事だぜ」

側近「追放……? だったら、また共に魔界で暮らせるように私が何とか」

側近「あぁ、でも私今そんな権限ないか……ただのゾンビだし……あー」

ペロ「い、いいよ。気持ちだけ受け取っておく」

ペロ「側近さんよぉ、魔王様見つかるといいな。きちんと振り向いてもらえるといいな」

側近「……はい。きっと振り向かせてみせます」

側近「魔王様ぁ……お待ちしていてくださいね、側近が今そちらへ向かいますからねー……」

側近「あははは……」ふらぁ・・・

側近はガシャンガシャンと義足の喧しい音を立てて、何処かへ去っていった。

ペロ「やさぐれからヤンデレへ進化したって感じか……」

ペロ「いや、進化じゃないよな。もう知ーらないっと」
460 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/17(日) 03:23:53.79 ID:J2UtjzL20
ここまで。少しずつ終わりが見える感じになってきただろうか
このスレだけで消化するには難しそうだけど・・・
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 04:10:06.16 ID:Aen4be0IO
おつ
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 11:19:59.53 ID:TPR4SRZ/0
側近たん…側近たんは腐ってても病んでてもかわいいよ!
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/06/17(日) 12:53:53.78 ID:7V8vwrVOo
色々と動き出した感じか
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/17(日) 14:37:57.49 ID:KLYG/9+ao
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 08:20:12.49 ID:UWen8BgDO
そろそろ終盤ってことか
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/06/18(月) 08:47:48.91 ID:LA2CIU9qo
しかし文字だから気にならないが盗賊は全裸にシーツなんだよなww
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 17:46:09.32 ID:e394W9DB0
終盤かあ…
勝手なこと言わせてもらえばまだまだ続いてほしいよ
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 19:28:14.98 ID:KGWP877xo
10スレくらい使って濃厚な終盤を
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/18(月) 20:50:30.88 ID:2lBnu2FN0
>>466
そういやそうだった


盗賊が全裸にシーツだけまとった画像をください!!
470 :  [sage]:2012/06/19(火) 00:58:50.26 ID:CONWlqtKP
>>469
それ需要あんのかwwww
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 01:21:54.41 ID:6GAIRKaWo
色々探しましたが見つかりません、とりあえずこれで勘弁してください><
http://gayz-party.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_aab/gayz-party/1482210713f00f-99e7c.jpg
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/06/19(火) 01:34:18.68 ID:ga2MJOGxo
>>469
はい
http://i.imgur.com/jOAm8.jpg
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/19(火) 02:39:36.54 ID:4yJ7F0uw0
おい、その画像たちは本当に盗賊なのか・・・?
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/06/19(火) 22:47:40.74 ID:JZCgKKwwo
そういえばここの盗賊の容姿って
「後ろ姿だけならほぼ女性」なんだよな……
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/19(火) 22:48:59.28 ID:EJt3uhQQ0
>女性と間違うほどの身体の華奢さが、テクニカルで素早い動きを生み出している。
>肌が雪の様に白く、手も繊細な為、後ろ姿だけならほぼ女性である。
>目付きがとても悪く、完全に悪人顔。笑うと顔が引きつります。
うん、完璧だな。
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 08:02:39.83 ID:ZV+l7nsSO
つまり後ろから襲ってみたら実は男で新境地行きか……
盗賊のくせにヤリおる
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/20(水) 14:28:24.29 ID:eLM9VKLH0
盗賊が女体化してたらどんな反応貰えたんだろうな
478 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:18:28.07 ID:35jC4DAh0



勇者『世界が平和になったら僕と一緒に暮らしてくれるよな』

女戦士『……勝手な物言いだな。いきなり何だという』

勇者『いきなりじゃないだろう? 明日で僕たちの長い旅とも決着がつく』

勇者『結果はきっとハッピーエンドだよ。僕とお前もね』

女戦士『やはり勝手だ。私の言いたい事を無視して自分ばかり。ずるい男だな』

勇者『よく言われるよ。でもわりと嫌いじゃないだろ』

女戦士『馬鹿者』

勇者『……僕もお前も、この戦いを終えたらお互い剣を置こう。戦士の肩書も』

勇者『女として僕の傍にいるんだ。僕の為に毎朝毎晩美味い飯を作ってくれ』

女戦士『……私の料理は不味いぞ。いいのか』

勇者『やっぱり僕が作るよ。死にたくないや』

女戦士『本当に勝手な男だな』





勇者『くそっ……みんな殺されちまった』

勇者『魔法使いも賢者も! 残ったのは僕らだけ』

女戦士『それでも私たちは先へ進まなければな。2人の犠牲を無駄にするわけにはいかないよ』

女戦士『ご丁寧にこの扉の先で魔王は待ち構えているようだ。さぁ』

勇者『……』

女戦士『無様な姿を見せないでくれ。2人は魔王を討った後に蘇らせてやればいい』

勇者『頼むから、お前は僕を置いて先に逝かないでくれよ!』

勇者『僕が死んでもお前も守ってやるから』

女戦士『馬鹿。死んだら元も子もない』

女戦士『ここで死ねば私たちの旅は無駄となる。魔王を討つ、かならず』

勇者『お前は本当に強い女だな』

女戦士『強いさ、待っていてくれる奴が家にいる。それに』

女戦士『お前との約束も果たさなければいけない。そうだろう?』

勇者『ああ…!』


魔王『おうコラ!! 貴様らさっさと入って来いー!! イチャイチャしてんなッ!』


勇者・女戦士『……』
479 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:23:10.79 ID:35jC4DAh0
魔王と私たちの力量の差は一目瞭然だった。

これまで鍛えてきた自慢の剣技は全て素手で払われ、まるで赤子の手を捻るように簡単にあしらわれる。

魔王の幼稚な口ぶりとは裏腹にこの圧倒的強さ。

絶望が私たち2人を包みこんだ。


魔王『何度やっても同じ事だというのがいい加減わからぬか?』

女戦士『うっ……』

勇者『まだ立てるか!?』

女戦士『愚問だ、馬鹿者。それより振り返るな!』

勇者『くぅ……魔王ぅぅぅーーーーーーー!!!』

魔王『貴様らゴミが何人束になろうと、余には絶っっっ対勝てるわけがないのだ』


魔王『どっかぁーーーーーーん、である!』


女戦士『勇者!』

勇者『あ、がっはぁ……』

勇者『大丈夫……まだ立てる……。僕はまだ心折れちゃいない!』

魔王『ではさっさと余が折ってやるわ。死ねィ』

勇者『あっ!?』


女戦士『……うああああああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーッッッッッッ!!!!』


残された力を振り絞り、勇者へ止めを刺そうとする魔王へ特攻した。

後ろで勇者が私の名を呼ぶ。

女戦士(勇者、お前は私を守ると言ってくれたな。ならば私がお前を守ろう)

女戦士(お前は魔王を殺す剣だ……! 私はお前を守る盾となる……!)

勇者を遠くへ突き飛ばし、私は魔王の体を掴む。


勇者『やめろ! やめてく―――――』

女戦士『約束、守れなくてすまないな』

魔王『あァん?』


女戦士は自爆の魔法を唱えた!


勇者『う、そだぁっ……うぁぁ……!』




消えゆく意識の中、私が最後に見たものは


自らの命を犠牲にして放った最後の一撃を持ってしても、傷一つついていなかった魔王の姿
480 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:29:10.61 ID:35jC4DAh0
再び私が目を覚ましたとき、そこにいたのは魔物の女。

どうやら私はこいつから生ける屍として偽りの命を植え付けられたらしい。


側近『成功成功〜。意識はありますか? 魔王様へ敗れた愚かな人間の戦士』

女戦士『……どういうつもりだ』

側近『単刀直入に言わせていただきますと、お城から出て行かれた魔王様を探してほしいのです! それも大至急に!』

女戦士『お前がそれを頼んでいる相手がわかっているのだろうな』

側近『ええ。でも、私の術によってアンデッド化させた者は私の言う事を無視できないんです』

側近『心では嫌がっても体は言う事を聞かざるを得ない。つまり貴女は私の操り人形』

側近『つまりそういう事なのです。早速連れてきていただけますね?』

女戦士『もう少し詳しく教えてくれ』

側近『えぇ……。仕方がない、特別ですからね?」

側近『かくかくしかじか、かくかくしかじか、べらべらべらべらべら……――――――――』

側近『わかっていただけましたでしょーかっ!!!』

女戦士『了解した』

側近『……結構素直な人間ですね? 拒否されると思っていたのに』

女戦士『連れてきても構わないが、別にどの様にして連れてきても構わないな』

側近『……ん? まぁ、後で蘇らせてさしあげれば良いので別に』

側近『でも! 魔王様は貴女も知っての通り、超お強い方ですから貴女程度が力づくでどうにかできるとは思いませんけどねー!』

側近『って、もういない? まったく、話を最後まで聞かないなんて失礼な行為ですよ!』
481 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:31:08.99 ID:35jC4DAh0
女戦士『アンデッドか』

女戦士(魔王が顕在しているということは、私たちは失敗したのだな)

女戦士(……まさか勇者も私と同じ様に生ける死者へと変わって)

女戦士『何を期待しているんだ、私は。心まで腐ったか』


もし勇者が私と共にアンデッドへ成り変わっていたとしても、それは喜ぶべき事ではない。

私は今魔物どもの操り人形同然の存在なのだ。既に人間からかけ離れた存在へなった。

しかし、どの様な姿になろうと私はかならず魔王を討つ。勇者の代わりに私が剣となる。


―勇者『世界が平和になったら僕と一緒に暮らしてくれるよな』―


今度こそ魔王を討つ事ができたら、その時はあの男がひょっこり顔を出してくれるかもしれない。

アイツはそんな男だったんだ。きっと、帰って来てくれるだろう。


女戦士『……』


目的を持たなければ私の心はすぐに壊れてしまいそうになる。


愛した男がいないこの世界で、私は過去に縛られたただの亡者として蘇った。

死ねない体で心も体も、日に日に腐ってゆく。今では勇者の声すら思い出せない。
私はこのまま人としての感情を忘れて、魔物へ変わってゆくのだろうか。
私の守る力はただ壊すだけの虚しい力と化してゆくのだろうか。


勇者『』

女戦士『お前は私にとってどんな存在だったのだろう?』

女戦士『少しずつ、お前の事も、家族の事も私の中から薄れ始めてきた……』

女戦士『怖い……私が私ではなくなってしまいそうだ……』

女戦士『誰か。私に存在する意味を与えてくれ……誰か……!』
482 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:32:00.84 ID:35jC4DAh0
女戦士「……誰かぁっ!!」

3・武闘家「ぎゃー!?」

女戦士「はぁ、はぁ……はぁ……?」

武闘家「おばさん、大丈夫?」

女戦士「ここは」

武闘家「宿よ。少し休もうって言ったじゃない」

女戦士「あ、ああ……どうやら悪い夢でも見ていたらしい」

3「アンデッドとは寝れぬ体だと思っていたんだが」

3「まさか睡眠できて夢まで見る事ができるとは思わなかったぞ?」

女戦士「アンデッドでもないくせに知った気でいないでくれ」

武闘家「凄い汗かいてるんだけど。水飲む?」

女戦士「必要ない。少し落ち着かせてくれ」

武闘家「……ふん、せっかく心配してやったのに!」

女戦士「感謝されたかったのか。甘えないでくれ」

3「どんな悪夢を貴様が見ていたか気になるんだけど。貴様ほどの者が魘されるぐらいだ」

3「相当な悪夢か?」

女戦士「落ち着かせてくれと言った」

3「むぅ〜……!」
483 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:32:40.05 ID:35jC4DAh0
女戦士「……あのまま腐って死んだ方が、幸せだったのだろうか」

武闘家「いきなり何言ってんのよ?」

女戦士「いや……」

3「死ねない体は不便か? 俺には理想的な体だと思うんだけど」

女戦士「死ぬ喜びもある」

3「はい?」

女戦士「何もできずに生かされる事ほど苦痛はないと私は思うよ」

女戦士(魔王を討つ、そしてこいつらに着いて行く事だけが今の私が存在する意味でありたい)

女戦士「……何でもない。魔王を再びこの手で討てるんだ。この体になれて良かったよ」

3「だろう? まぁ、貴様では魔王を倒せんだろうがね」

武闘家「おばさんって本当何者なのよ? よくわかんない事ばっかり言ってさ」

女戦士「知る必要もないし、教える必要もない」

武闘家「何よー! いいじゃん教えてくれても!」

女戦士「黙ってくれ」

武闘家「……ばーか」

3「そう拗ねるなよぅ」

武闘家「知らない!」
484 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:33:12.82 ID:35jC4DAh0
女戦士「それより、お前はこの先どうするつもりだ」

女戦士「目的の死霊使いには逃げられ、やる事もなし。といったところか」

3「うるさい!」

3「死霊使いが俺のものにならなくとも、俺は三魔官を葬れるし、魔族の長ともなれる!」

女戦士「……魔王になるつもりなのか」

3「魔王。いや、魔王以上の存在となるつもりだ。俺は世界全てを支配してくれよう!」

武闘家「バカじゃないの?」

3「バカじゃない! 笑いたければ笑えばいい、これは俺の野望。誰にも邪魔はさせん」

女戦士「勝手な奴だな」

女戦士「人間を、魔物を支配下に置いてお前はどうしたい。優越感に浸りたいのか」

3「……実のところ何も考えてない」

女戦士「は?」

3「三魔官の馬鹿どもを笑ってやれたら俺はそれでいい。何もいらん」

女戦士「……呆れた物だな」

女戦士「しかし、魔王がこれ以上増えては人間側として困る。お前をこの場で切り捨てるべきか」

3「何を言う。貴様はもう人間じゃあないだろう?」

女戦士「!」

3「人間の味方をする必要もないという事だ。貴様は自由の立場なんだよ」

3「だからこそ、貴様は俺に着いてきて俺の野望を手伝えというのだ!」

武闘家「バカもここまで行くとヤバいわね……。いい歳してるんだし、目覚ましなさいよ」

3「ガキんちょ如きが生意気言うなぁー!」がしっ

武闘家「いだだっ!?」
485 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:34:00.53 ID:35jC4DAh0
女戦士「……いいだろう」

3・武闘家「へ?」

女戦士「お前の野望とやら、協力してやろうというんだ」

女戦士「それをお前は望んでいるんだろう?」

武闘家「おばさん正気? マジで言ってんの……」

女戦士「」こくり

3「や、やけにあっさり引き受けてくれてビックリだけど……」

3「貴様ならそう言ってくれると俺は信じてたぞぉ! はっはっはー!」

女戦士「ふっ」

武闘家「冗談で言ったのよねぇ?」

女戦士「さて、どうかな」

武闘家「ちょっと……」

女戦士「あの魔物はアイツによく似ている。そんな気がするよ」

武闘家「アイツ? 誰よそれ」

女戦士「こっちの話だ。気にしないでくれ」

女戦士(くだらない野望とは分かっている。だけど、私は)

女戦士「……では、予定が決まったな」

3「予定? 早速? 部下が勝手に俺の野望の予定を立てるなよ」

女戦士「魔王を倒しに行こう。そして、次は王都に住まう国王を」

3・武闘家「は……?」

女戦士「私たちは頭を使うより体を使った方が上にのし上がれるだろう?」

女戦士「人間でも魔物だろうと、椅子を無理矢理退かせてしまえという事さ」ニコ

武闘家「……おばさん、イカれちゃった」

3「いやぁ、頼もしい部下ができたなぁ……」
486 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:35:33.14 ID:35jC4DAh0
フィールド


魔剣『んー、向こうの方っぽい』

女魔王「海の方?」

魔女「あっちだと丁度ギルドが作り上げた交易所のある港町ですわね」

戦士「なら随分商業が盛んそうな場所っぽいな」

僧侶「戦士さんはご存じではなかったのですか?」

戦士「こっちまで遠くだと中々足を運ぶ事もないしねぇ。それに俺、商人にも商売にも興味ないし」

女勇者「ギルドっていうと商人の人たちの組合のことですよね?」

盗賊「ああ、商売するにしてもそいつらの許可を貰わなきゃなんだぜ」

盗賊「ようは商人だけで結成された大きなグループ……」

女勇者「師匠?」

盗賊(アイツは実家を助けるために嫁ぐと言っていたが、相手は実力のある商人とか?)

盗賊(詳しく聞いておくべきだった。しかし、呪いをかけられるという事は魔法が使える相手か)

戦士「おう、お兄ちゃん」ポン

盗賊「あ?」

戦士「行ってみなくちゃ何もわかんねーって。大丈夫、俺らがいる」

盗賊「気持ち悪ィこと言ってんじゃねぇよ……」

女魔王「では、盗賊も余たちに気を使わせる様な態度をいつまでも取っていてほしくないわねェ」

盗賊「なら気使うなよ。俺だってここまで来たら落ち着いちゃいられねぇ」

女勇者「し、師匠〜……そんなに肩に力入ってたら危ないよ」

盗賊「ふん……」

僧侶「……盗賊さん。本当に妹さんのことが心配なんですね」

女魔王「家族とやらはそんな大切なの? あやつにとって」

戦士「でしょうねぇ。まぁ、俺らにはわからんスよ。盗賊の問題なんだから」
487 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:36:07.78 ID:35jC4DAh0
魔女「るんるん〜」グツグツグツ…

女勇者「にしても、そんな大きな鍋どっから出したの?」

魔女「魔法でウチから引き出したんですわ」

女勇者「魔法って便利ー……」

魔女「ま、あなたみたいなガサツな人には縁のないモノだけど」

女勇者「いつも一言余計だよね!!」

戦士「おお、朝立ちキノコが……」

僧侶「わ、私あっち行ってますね」

魔剣『これ全部混ぜたらお薬完成ー?』

魔女「いやいや。そこからちょーっとしたコツが入りますの」

魔剣『ふむふむ?』

女魔王「随分面倒な精製方法なのねェ?」

魔女「だからこそ絶大な効果がある。ですわ」

魔女「愛情、真心全部込めて混ぜましょ〜」カマカマ

戦士「なんか美味そう」

僧侶「冗談、ですよね……?」

戦士「いい匂いじゃね、これ?」

魔剣『戦士ちゃんは汗臭いけどねぇ』

戦士「……マジで?」

女魔王「自覚しておらんかったの? さっさと風呂入るべきであるわ」

戦士「うそ、やだ……ねー! 俺臭いのー!?」くわっ

女勇者「どうして私に寄って来るのー!?」
488 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:37:30.04 ID:35jC4DAh0
女魔王「盗賊よ、貴様は先程から何一人難しい顔して考えておるの?」

盗賊「……」

女魔王「盗賊ってば」

盗賊「頼むから今話しかけんな! 俺は今真面目なんだよ!」

女魔王「冗談はその恰好だけにするのだわ」

盗賊「〜……!」

僧侶「確かに、その恰好は早くどうにかするべきですよね」

僧侶「捕まっちゃったら元も子もないですし」

戦士「だいぶ見慣れたもんだけどねぇ」

盗賊(どんな姿で俺はこいつらに映ってんだ……)

女魔王「まぁ、そのうち魔法薬も出来あがる。そしたらシーツともお別れだわ」

盗賊「早くそうしたいところだぜっ…」

魔女「まだ完成はしないですわよ?」

盗賊「は?」

魔女「この状態で少しの時間、置いておく必要があるの」

戦士「ああ、カレーも一晩置いておくとコクが増すもんな」

魔女「料理と一緒にすんな。ですわ」

女勇者「てことは今日中には仕上がらない?」

魔女「そんな事はないわ。今日の夜にはおそらく」

盗賊「何でもいい。とにかく早めに完成させてくれ」

魔女「とにかくって何よぅ。私だって誇りを持って魔法薬を作ってますのよ? 適当な仕上がりは絶対に許せなくって
よ!」

僧侶「ま、まぁ…頑張りましょ。私たちはまず盗賊さんの妹さんを見つけ出さないとですし」

盗賊「……チッ」

女魔王「ふむ、ではそろそろ町へ向かうとするわよ!」

魔剣『レッツゴーだよ! 勇者ちゃん!』
489 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:38:44.89 ID:35jC4DAh0
商業の港町


盗賊「魔剣、どの辺りだ。見つけ次第すぐに殴りこむぞ」

戦士「ちょちょちょ、気持ちは分かるけど少し落ち着けお前」

盗賊「落ち着いてられるかよ!」

魔剣『盗賊ちゃんごめんね。もう少し僕に時間ちょーだい』

魔剣『妹ちゃん一度あったきりだから、匂いが分かりづらいの』

盗賊「……っ」

僧侶「では、まずは宿を取ってきましょうか。長期戦になるかもしれませんし」

女勇者「じゃあ私たちで取りに行ってくるから、勇者さんと師匠はその辺ぶらぶらしててよ〜」

女魔王「ええっ、何故余が盗賊と2人きりにならなければいかんのだッ」

戦士「そうだとも! 盗賊の代わりに俺が勇者殿と2人きりで」

魔女「あんたも揺るがない。ですわね…」

女勇者「まぁまぁ、呪われた同士仲良くお散歩でもしててくださいねー」

女勇者たちは宿を探しに行った。

戦士「やだぁー! 勇者殿ぉー!」ずりずりずり・・・


女魔王・盗賊「……」

魔剣『みんな忘れてるけど、僕も一緒だよ?』

女魔王「貴様はどうでもよいの」

魔剣『酷いよ〜』
490 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:39:21.90 ID:35jC4DAh0
盗賊「俺たちはこのままアイツを探す。それでいいか?」

女魔王「暇だし構わんわ。魔剣も直に発見できるであろうし」

魔剣『まっかせてよぅー!』

魔剣『潮の匂いが邪魔だなぁ〜……』

女魔王「そもそも、貴様が妹の情報をもっと聞いておけばこうして探さずに済んだのである」

盗賊「こうなると誰が予想できた? それに俺は一度家を勝手に出た身だぜ」

盗賊「嫁ぎ先を聞いてどうしろってんだ……。おめおめと会いに行けるわけがねぇ」

女魔王「妹は貴様を嫌ってなかったであろうが? 喜ぶんでないの」

盗賊「……アイツとはもう会わない方がいいんだよ」

女魔王「なら何故妹の呪いを解きにわざわざこの町へ訪れた?」

盗賊「うっ……」

女魔王「余には兄弟とかおらんし、よくわからんわ」

魔剣『じゃあ僕が今日だけ勇者ちゃんのキョーダイになるよ!』

女魔王「やかましいッ」

盗賊「アイツは、俺に兄妹以上のもんを求めたんだ……俺も」

女魔王「あァん?」

盗賊「何でもねぇ。気にするな!」よろり
491 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:39:58.28 ID:35jC4DAh0
どん!


盗賊「うわ!?」

魔剣『ああっ! 盗賊ちゃん目見えてないんだから動き回らないー!』

男「……ほほう、なんとも面妖な。剣が言葉を語った」

魔剣『げっ』

女魔王「阿呆が。おう、貴様! これは見せ物ではない。失せろ」

男「ああ、失礼。珍しい剣でしたのでつい」

女魔王「珍しくもなんともないわ。これはただの玩具よ」

男「ほぉ? だとしても興味深いものです」

盗賊「いてて……」

男「申し訳ない事をしてしまった。君、大丈夫かね」

通りすがりの男が盗賊へ手を貸した。

盗賊「こちらこそすまなかったな……」

男「ん、ドコを見ているんだね。まさか目に不自由が?」

盗賊「いや、どうってことない。疲れていただけだぜ」

魔剣『……? くんくん、くんくん』

女魔王「どうした魔剣よ」

魔剣『なんかね、そのオジサンから』

魔剣『盗賊ちゃんの妹ちゃんの匂いがするのー』

盗賊「!」
492 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:42:19.05 ID:35jC4DAh0
盗賊「……どこだ」

男「は?」

盗賊「俺の妹をどこにやった……!?」

盗賊は男の胸倉を掴み、自分へ引き寄せた。

魔剣『わぁぁ、盗賊ちゃん〜!』

女魔王「この男が妹の?」

盗賊「てめぇ、どういうつもりだッー!? アイツに何しやがったッ!?」

男「はて、何のことやら分かりませんな。人違いでは」

盗賊「うるせぇ!! 知ってんだろ……お前に嫁いだ俺の大事な妹だ……!!」

盗賊「知らねぇとは言わせねぇ!!」

女魔王「これ、人違いだったらどうするのよ?」

魔剣『うーん。盗賊ちゃんの早とちりでしたで済むかなぁ』

男「……手を、そろそろ除けては貰えないかね」

男「人を呼ぶぞ?」

盗賊「答えろ! てめぇが、てめぇがッーーー」

盗賊は男へ殴りかかった!

魔剣『あらら〜……僕知らな――――――』


すかっ


盗賊「!?」

殴ろうとした顔がいなくなっているどころか、掴んでいた男の姿自体が気づくとそこにはいなかった。

女魔王「魔法?」

盗賊「てめぇっ、この! 何処へ逃げやがった!? 何処だ!」

男「やれやれ。暴力はやめたまえ」

盗賊「……そこかぁっ!!」

盗賊のナイフ投げ攻撃! 投げられたナイフは男へ

盗賊「あ?」

当たらず。ナイフはいつのまにか手元へ戻っていた。
まるで最初から投げられていなかったように!
493 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:44:19.55 ID:35jC4DAh0
盗賊(どういう事だ!? 俺は確かにナイフを奴の方向へ投げつけたはず……!)

盗賊(それが何故、手元にあるんだ……!?)

男「動揺をしているね、君」

盗賊「あぁ……!?」

男「汗を掻いている。それが何よりの証拠」

男「ナイフを投げるまで汗など掻いていなかったしな。熱くはなっていた様だが」

女魔王「盗賊、この男はどうやらただの一般市民というわけではなさそうであるわよ」

盗賊「ま、魔法使いか?」

魔剣『ビミョーに魔力の痕跡を感じます』

魔剣『でもでも、あのオジサンからじゃないかも』

女魔王「他の何者かの仕業というわけかしらねェ」

男「便利な玩具ですね、お嬢さん」

女魔王「余はお嬢さんじゃないわ! 阿呆ッ」

男「ではご婦人? まぁ、それはよしとして…」

男「君たちは何者かね。私の遺産か、それとも単純に私の命が狙いか」

男「どうせそこ等のド三流商人の頼みだろう。ほら、これをあげるから見逃しなさい」

男は懐から大量の金をバラまいた。ざっと5万Gはありそうだ!

魔剣『お金いっぱいだよ〜! 僧侶ちゃんが見たら叫んじゃいそうだね』

女魔王「最悪あの男へ金で買われるかもであるわね。よし、その金貰ってよいのだなッ」

男「ええ、見逃してくれるなら。取引ですよ」

女魔王「盗賊。こやつ見逃していいんじゃね?」

盗賊「金に釣られてんなよ……! あの男、俺には怪しく思える」

盗賊「お前、本当に知ってるんじゃないか……。最近嫁に若い女が嫁いできただろ」

男「それを君に教える必要はあるかね? ないね」

男「さぁ、金を拾いたまえ。時は金なり、私は1秒1秒を無駄にしたくない人間なんだ」

盗賊「舐めんな。いいから俺の質問に答えろよ……!」

男「……ううん、少し冷静になってもらえると助かるんだがね」
494 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:45:11.54 ID:35jC4DAh0
魔剣『また魔力がここら辺に流れた感じ!』

女魔王「……余にはそんなの感じなかったが」

女魔王「あれ、地面の金がないであるわ! 貴様ァ、あれくれるんじゃなかったのか!」

男「ただで差し上げるほど私も人が良くないですよ。そこの青年が」

男「どうしても見逃してくれなさそうですしね。あなた、青年を引いて帰っていただけませんか」

盗賊「帰らねーよ」

盗賊(俺の直感が、こいつを逃すなと言っている!)

盗賊(間違いねぇ……保証も何もないが、この男が!)

盗賊「俺も気が長い方じゃないんだ! さっさと口割らねぇと――――――」


盗賊「 」がくっ


女魔王「むっ」

盗賊は声を出す事もなく、突然その場で気を失った!

男「おやおや、偶然にも彼は気を失ってしまったようだ。話をできなくて残念だったよ」

男「では私はこれで。さようなら、美しいお嬢さん」

女魔王「待て」

男「」すたすたすた

女魔王「待てと申しておるのだッッッ」

女魔王は魔剣を男へ投げた!

魔剣『……あれれ?』

魔剣は、手元に女魔王の手元へ戻ってきていた!

女魔王「何か妙であるわ。あの男ではない、何か……」
495 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:47:28.58 ID:35jC4DAh0
女魔王は盗賊が装備していたナイフを手に取り、再び男へ投げた!

男「」すたすたすた

男は変わらず、魔王たちへ背を向けて歩いている。

女魔王(このままだと、ナイフはあの男の背中へ刺さることなく手元へ戻っておるだろう)

女魔王「しかし魔法だとわかればこっちのもんだわッッッッッッ」

女魔王は魔剣を地面へ突き立てた! 物陰に隠れていた何かの姿が露わになる!

魔剣の能力によって、姿消しの魔法の効果が掻き消された!


女魔王「そこォッーーー!!」

女魔王の攻撃!

魔物(マキマキ)『ウギッ!?』

女魔王「あの男、魔物を飼っていたか。それともあやつ自身魔物が化けた姿か」

女魔王「胡散臭い男だとは思っていたが。むっ!」

マキマキ『キャ、キャキャ……』

マキマキはときのすなを使った! 時間がちょっぴり巻き戻る!


〜〜〜


「!っむ。がたいてっ思はとだ男い臭散胡」王魔女

「か姿たけ化が物魔身自つやあもとれそ。かたいてっ飼を物魔、男のあ」王魔女

『?!ッギウ』(キマキマ)物魔

!撃攻の王魔女

「!!ーーーッォこそ」王魔女


〜〜〜


女魔王「……あ?」

マキマキ『キキキッ〜』

マキマキは姿を消してどこかへ逃げ出した!
496 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:54:05.82 ID:35jC4DAh0
女魔王「今、何か起きたかしら?」

魔剣『ごめん〜。僕よく今のわかんなかったよぉ』

魔剣『でも、さっきの魔物の仕業だって事だけはわかるよ。もう一回探してみようよ〜』

女魔王「……? 魔物の仕業だとは思ってはいたが、先程とはどういう意味か」

魔剣『勇者ちゃん? さっきったらさっきだよ?』

女魔王「あァん? 先程は余がおとりのナイフを投げて魔力の流れを確認してから」

魔剣『僕を使って魔法を暴いたよね! そこから先だよー』

女魔王「その、先……?」

魔剣『魔物を切ったじゃない! で、その後によくわかんなくなって』

魔剣『とにかくさっきの魔物もう一回探そうよ。それかあの男!」

魔剣『そしたらきっと何かわかるよ!」

男「よくないなぁ、そういうのは」ぽんっ

女魔王「うっ!!?」ビクゥ

いつの間にか、背後にさっきの怪しい男が立っていた!

男「玩具にしては性能が良すぎるねぇ……」

男「時を流れを掌握するのは、私だけで十分なんだよな」

女魔王「貴様ァーーー!!!」

女魔王の攻撃!

男「時よ……!」

魔剣『勇者ちゃ――――――』



さらに時間が巻き戻る! 〜〜〜
497 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:56:42.46 ID:35jC4DAh0
〜〜〜〜〜〜


魔剣『……ん?』


女魔王「余には兄弟とかおらんし、よくわからんわ」

魔剣『あ、えっと……? じゃあじゃあ僕が今日だけ勇者ちゃんのキョーダイになるよ!』

女魔王「やかましいッ」

盗賊「アイツは、俺に兄妹以上のもんを求めたんだ……俺も」

女魔王「あァん?」

盗賊「何でもねぇ。気にするな!」よろり


どたっ!


盗賊「ぁ痛っ!」

女魔王「ぷぷぷっー!」

魔剣『あー! 盗賊ちゃんコケた! 痛くない? 大丈夫ー?』

魔剣『……あれれぇ?』

盗賊「くそっ! だせぇ……///」

女魔王「貴様は目が見えておらんのだし、あんまり動き回るでないわよ」

盗賊「……うるせぇ!」

魔剣『勇者ちゃん、勇者ちゃん』

女魔王「あん?」

魔剣『何か変だよ。盗賊ちゃんはコケないはずだったんだよ!』

女魔王「魔剣、貴様どうかしたの? おかしくなった?」

魔剣『おかしくないよ! ホントだよ!』

女魔王「貴様が何を言いたいか余にはさっぱりであるわよ。盗賊わかる?」

盗賊「あ? 何が」

魔剣『とにかくおかしいのっ〜〜〜 違うんだよぉっ!』

女魔王・盗賊「?」

魔剣(2人ともどうしちゃったんだろう!)
498 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/21(木) 02:58:41.13 ID:35jC4DAh0
ここまでだよ!
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 09:29:42.35 ID:zbTNpjIIO
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 09:52:42.91 ID:Wh62p2CR0
バイツァ・ダストか
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/21(木) 10:23:56.23 ID:tX33OY9O0
マンダムか
乙ー!
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 12:41:17.20 ID:S6yxhDR0o
読んでて本気でポルナレフ状態になった
ちょっとだけな。
503 :  [sage]:2012/06/21(木) 13:42:23.60 ID:GoN6TDVUP
魔剣ちゃん頑張って!
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/21(木) 18:36:59.84 ID:IGB8zg9IO
湯女といい暴走魔王ちゃんといい今回の男といいボスクラスが連続してきたな乙
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/06/21(木) 18:47:20.46 ID:LADAxsUmo
キラークイーン戦みたいだ。
オラ、わくわくすっぞ。
506 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:42:00.01 ID:USsQ734r0
盗賊「まさか敵の攻撃か。やられたぜ……奴は先に魔剣を潰して」

魔剣『決めつけないで僕の話をちゃんと聞いてー!』

女魔王「それかもう年期きてガタ来たであるわね」

女魔王「粗大ゴミ置き場が丁度そこに!」

魔剣『聞いてってば!』

魔剣(絶対に変だよこれ。勇者ちゃんたちがおかしいってワケじゃないけれど)

魔剣(……だって、ここは本のちょっと前に僕たちがアイツに会った場所だよ!?)

魔剣『そうだよ! 2人とも、あの変な男を忘れたの?』

女魔王「男ォ?」

魔剣『そいつは僕の匂いセンサーに反応したし、もしかしたら盗賊ちゃんの妹ちゃんに呪いをかけてる相手かもなんでし
ょ?』

盗賊「何だとっ」

盗賊「男ってのはどいつの事言ってんだ! 今さっきすれ違った奴か!」

魔剣『違くて〜……』

盗賊「おい!」

女魔王「どうも魔剣の申してる事は噛み合っておらんわね」

女魔王「貴様はきっと寝ぼけておったのよ。戦士たちが戻ってきたらさっさと宿入るわよ」

盗賊「そんな場合じゃないと言っている! 魔剣っ、お前知ってる事全部話せ!」

魔剣『話せって言われても僕もよくわからなくてね? 何起きたかもよくわからないの』

盗賊「何か起きた?」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/06/22(金) 03:43:36.99 ID:USsQ734r0
盗賊「やはり攻撃を俺たちは既に受けていたってのか?」

魔剣『間違いないよ! 盗賊ちゃんがね、男にナイフ投げたら投げてなかったり』

魔剣『いつのまにか倒れてたり!』

盗賊「……?」

女魔王「やはり壊れたか故障かどちらかと見た。魔剣よ、もう喋るな。意味不明だわ」

魔剣『最後まで聞いてよ〜! ここで逃がしちゃったら追いかけられないよ!』

盗賊「もう少し、先を教えろ。その後は」

魔剣『何とか僕と勇者ちゃんで敵の魔法破って、魔物倒したと思ったら』

魔剣『倒せてなくて! ていうかね、傷がなくなっててね?』

盗賊「頭痛くなってきたぜ!」

魔剣『頑張ってよー!』

女魔王「余が魔物を攻撃? 魔物にはこの町で遭遇した覚えが」

魔剣『゛今゛でも゛昔゛の話じゃないの! ゛先゛の出来事の話なんだよ!』

女魔王「先ィ〜? それは今から起こり得る話ということ?」

魔剣『起きたんだよ〜!!』

盗賊「……お前の話がマジだとしたら」

盗賊「魔剣、お前は未来を見たのか? ……いや、ありえないか」

魔剣『見たんじゃなくてしっかり体験した!』

盗賊「あぁああああぁあぁぁ〜〜〜〜〜〜!!! もういいっ、わかったいい!!」

魔剣『わかってくれたの!?』

盗賊「違う! これ以上聞いてたら頭壊れそうなんだよっ」

魔剣『えぇ〜……』

魔剣『ゆ、勇者ちゃんは信じてくれるよね! ね? ね?』

女魔王「盗賊に同意であるわ。これ以上は聞く必要なし」

魔剣『なんでー……』
508 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:46:11.27 ID:USsQ734r0
魔剣『あぁ!』

女魔王「……だから同じ事を何度も申させるないで」

魔剣『最後に1つ聞いてよー!』

女魔王「また意味不明な話したら投げ捨てるからな!」

魔剣『あのね、あのね。さっきの続きでね?』

魔剣『勇者ちゃんは魔物に結局逃げられちゃったの』

女魔王「余がそんな失態犯すわけないであろうが。ウソである」

魔剣『ウソじゃないもん! 本当だもん!』

魔剣『問題はそこじゃないよ。その後』

盗賊「逃げられた魔物を追ったのか」

魔剣『ううん。僕が追おうって言っても、勇者ちゃんは追いかけなかったの』

魔剣『勇者ちゃんは魔物を攻撃したこと自体忘れてる感じで』

女魔王「っ〜〜〜……」

魔剣『お願い! もう少しだよ!』

盗賊「ここまできたら全部聞いてやるから安心しな。続けろよ」

魔剣『うん。……そうだよ。僕が勇者ちゃんに追いかけたら思い出せるよって言ってすぐに』

魔剣『あの男が勇者ちゃんの後ろに立っててこう言ったの!』

魔剣『ときのながれを しょーあくするのは わたしだけでいい って』

女魔王・盗賊「時の流れ?」

魔剣『そしたら゛今゛になってたんだよ! 僕が知ってる゛今゛では盗賊ちゃんはコケなかったし、男にぶつかった!』

盗賊「つまり、お前それって」

盗賊「過去へ飛ばされたとでも言うのか? ほんの少し前の時間に…」
509 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:47:53.30 ID:USsQ734r0
女魔王「男の言葉が本当なら、魔剣だけが時間の流れとやらの記憶を引き継げる」

女魔王「そういうことでないの? その言葉は余に当てたか、魔剣に当てたか」

魔剣『僕に言ったんだと思う! アイツ、玩具って言ったもん』

盗賊「……この剣がウソをついたとは思えない」

盗賊「くだらねー話で俺たちを引きつけるのならば、ここまで凝った話がこいつに考えられるわけがねぇんだ」

魔剣『何かバカにされてない? 僕』

盗賊「勇者! やはり俺たちは既に敵の攻撃を受けているようだぜ。証拠はまだ不揃いだが」

女魔王「魔剣よ、その男の顔と匂いを記憶しておるか?」

魔剣『たぶん!』

女魔王「たぶんではないわ阿呆ッ!」

魔剣『匂いはね、覚えてるけど。今探したらどんどん距離が離れて行ってるみたい』

魔剣『ここ! ここを真っ直ぐだよー! この先にアイツはかならずいる!』

盗賊「よしっ……」

女魔王たちは魔剣のナビに従い、男の追跡を始めた!
510 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:50:32.37 ID:USsQ734r0
男「……」

魔剣『いた! アイツ、アイツが僕が言ってた男!』

盗賊「あの男が……俺のッ!」

女魔王「間違ってたらその時はその時であるわね」

女魔王と盗賊は男へ跳びかかった!


女魔王・盗賊「……!」


男の姿は既にそこにはない!

女魔王「魔剣! 今、過去へ飛ばされたかッ」

魔剣『飛んでない! ゛今゛は゛今゛のまま、まだ変わってないー!』

盗賊(ならば、なぜ男の姿が消えた? 俺が視覚して男へ向かったわけではないが、勇者と2人で男へ跳びかかったんだぞ)

盗賊「野郎……! 俺たちより素早いのか」

男「……正直驚いたな」

男(何故私の居場所がわかった。この広い港町を走り回って探したのか?)

男(まさかな)ドド ド ドドド ド

魔剣『勇者ちゃん。後ろ5メートル先に男がいるよ!』

女魔王「背後にまわっておったか!?」

女魔王「このッ―――――――――」

男「1秒ほど私より遅かったな?」ドオォォーーーン





女魔王は攻撃をはずした!

女魔王「あれ?」

男「ンフゥ〜〜〜……」
511 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:52:50.05 ID:USsQ734r0
男「乱暴で雑すぎた動きだが、力は十分。腕も十分」

男「その玩具に見合った素晴らしい動作を拝見させていただいたよ」

女魔王「どういう意味かッ」

盗賊「てめぇには聞く事が山ほどあるが……その前に数発殴らせな」

男「青年。君も変わりないな。これでは、さっきと丸っきり一緒じゃあないか?」

盗賊「は……?」

女魔王「魔剣、あの男が余の攻撃を回避したときに時間に変化があった?」

魔剣『たぶんないと思うの。僕もアイツが一瞬であそこまで動いて見えたもん』

魔剣『きっとまた魔法だよ! 瞬間移動したんだ!』

男「さすがはおもちゃ、だなぁ」

魔剣『そんな余裕かましたって、お前は勇者ちゃんにすぐに八つ裂きにされるんだからね!』

男「このお嬢さんが勇者? 確かに、少女の勇者がいると話には聞いていたが」

男「……どうかね。勇者なんてやめて私の元にきては。幸せな毎日が訪れる事を約束しよう」

女魔王「」ゾゾー

女魔王「余は女ではないッッッ〜〜〜〜〜〜!!!」

盗賊「待て! まだ殺すな!」

女魔王「チッ…! その男がこの場から動く事を禁ずるッ」


\ ルール承認ッ 男はここから動くべからず! /


男「何だ今の声は?」

男「……!」
512 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:57:04.44 ID:USsQ734r0
男(私の足が、まるで地面にピッタリとくっ付いたように……動かん!)

男「何だこれは! 魔法か! 私はただの人間だぞ!」

盗賊「どの口がほざいてやがる……。武器持った相手にここまで上手く立ち回れる奴がただの人間であるわけがな
い……」

盗賊「そのまま歯食いしばれよ! ぶっ飛ばすっ!!」

女魔王「余もムカつくから殴りたいんだが構わぬな」

男「時よ……!」





すかっ

盗賊「えっ!」

盗賊「消えた……お前のあの魔法は絶対じゃなかったのかよ!?」

女魔王「ド阿呆がッー! 絶対に決まっておるわよ! よくわかってないけど…」

男「ふゥ〜〜〜……絶対。絶対ねぇ」

女魔王「……なぜ動ける、貴様」

男「私は魔法について詳しい方ではないがね?」

男「どんなに便利な道具だろうと、欠点の1つは存在してしまうのだよ。悲しい事に」

女魔王「それが何だというのだ。関係あるまい」

男「魔法だって実はそうじゃないのかな? 君が放ったアレは何か条件付けをして相手を拘束させるものなのかな?」

女魔王「余も知らんッ」

男「それとも、君の好きなように私をどうにかできるものなのか。まぁ、それはどうでもいい」

男「私は一歩も自分の足でここまで移動しちゃあいない」

盗賊「……仲間が隠れてんのかよ」

魔剣『近くに魔物の気配はないっぽいような〜……』

女魔王「も、もう一度ルールの魔法であやつを!」

男「いいや。流石に飽きたし、もう御免だよ。ゆけ!」

?『    』

盗賊「アイツ、また俺たちを」

男「これに懲りて私をもう追わないでくれよ。騒々しいのは勘弁願いたいんでね」

魔剣『勇者ちゃん。僕で魔法を壊し――――』


時間が巻き戻る!〜〜〜
513 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 03:58:03.66 ID:USsQ734r0
〜〜〜〜〜〜


魔剣『―――て! まだ間に合う……』

女魔王「余には兄弟とかおらんし、よくわからんわ」

魔剣『あ、あれれ』

女魔王「今何か申したか?」

魔剣『勇者ちゃん! 時間がまた!』

盗賊「アイツは、俺に兄妹以上のもんを求めたんだ……俺も」

女魔王「あァん?」

盗賊「何でもねぇ。気に」

魔剣『盗賊ちゃんコケるよ! ストップ!』

盗賊「え?」ピタ

盗賊「……石ころでも転がってたか。悪いな、魔剣」

魔剣『2人とも気づいてないの!? また゛昔゛に戻ってきちゃったんだよ』

女魔王「昔?」

盗賊「いきなり何言いだしやがる」

魔剣(どうしよ〜)
514 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:01:32.55 ID:USsQ734r0
たったったったっ・・・


盗賊「お前が言った事マジなんだろうな?」

魔剣『本当だってばー! 僕たちはアイツに何度も時間を巻き戻されちゃってる!』

女魔王「何度もォー?」

魔剣『1回、2回! ゛昔゛はこれで3度目なんだよ!』

盗賊「……本当何言ってるのかよくわからんが」

盗賊「あの男だな!? あそこでベンチにかけているあの男が……俺のっっっ」

女魔王「間違ってたらその時はその時であるわね」

女魔王と盗賊は男へ跳びかかった!





男「……何故だ。さっきから早すぎる」

男「何故私を見つけられる! お前たちこの町は初めてではないのか……?」

女魔王「消えただと。余のすぐ目の前におったのよ? だのに貴様と余のその距離は何!?」

盗賊「俺たちより素早い? 奴はただの一般人じゃあないというわけか」

盗賊「俄然怪しくなってきたぜ……てめぇがよ……! 俺はお前を逃がすわけにはいかなくなったようだ」

男「冗談じゃない……。しつこいのだよ、君たちは」

男「」チラ

魔剣『今度こそボッコボコにするよ〜!』

男(2人の様子からして記憶を受け継いでいる様には思えない。そもそも最初の時点であの剣だけだと知った筈だ)

男(剣だ。あの剣が懲りずに私を奴らに追跡させているのだ……! しかも、何らかの方法で私の居場所を)

男「どうやら同じ事をしても無駄なようだ」

女魔王「こっちは貴様に初対面であるわよ。同じ事? 寝ぼけておるのよ」

魔剣『だから初めて会ったわけじゃなくて〜』

男「初めに言わせていただこう!! 私は私が面倒事に巻き込まれるのが嫌いだ」

男「それは……この状況が死ぬほど勘弁願いたいものだいうわけだが」

盗賊「あぁ?」

男「どんな手を使ってでも君たちを撒いてみせようじゃあないか……。やってやろうじゃないか」
515 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:05:26.52 ID:USsQ734r0
男「時よ!」





男の姿がそこから消えていた。

盗賊「しまった。逃げられたのか!」

女魔王「あの男は怪しさプンプンである。魔剣よ、すぐに匂いを追えッ」

魔剣『あいあいさー! ……こっちだよ、こっち! この通りの中』

盗賊「どこにいる? この雑音の量からして…ここ等は人の通りが多くて奴の姿が見つけ辛い」

盗賊「人ゴミの中に隠れてんのかよ!?」

魔剣『ちょっと待って! 僕、今頑張って探してるんだからね』

女魔王「さっさとー!」

魔剣『そこの……物陰だ!』

女魔王「ふんがァーーーーーッ!!!」

女魔王の攻撃! 木箱の山を破壊すると、影から男の姿が飛び出してきた!

男「ぐぅ……」

男(やっぱりだ! やっぱり私を何らかの力か方法で探し出していた!)

魔剣『ビンゴだよ勇者ちゃーん! こいつはやっぱり物陰に隠れてた!』

女魔王「貴様、余から逃げ切れると思うなよ」

男(剣を……剣をどうにかしなければいけない。コイツさえいなければ、奴らは私を追跡できない)

男(破壊して過去へ……ダメだ。巻き戻せば剣が元通りに直っている! 過去へ戻っちゃあいけない……!)

男(とにかく私の予想が当たっていただけでも十分な収穫だ。もう一度逃げて考えねば……)

男「時よッ!!」


?『時間魔法の連続使用につき、魔力の回復が必要』


?『繰り返す。魔力の回復が必要とされています』

男「なにぃ……?」

女魔王『チェストォーッ!!』

女魔王の攻撃!

男「よ、よせやめぇ…――――――――」

女魔王の蹴りが男のこめかみへ抉る様に決まった!


男「ぶっぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ〜……」めきょ
516 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:07:37.32 ID:USsQ734r0
女魔王「ようやく攻撃できたわね。これでまだ初当たりだというのか?」

魔剣『今初めてアイツに攻撃が入ったよ!』

盗賊「なら今のうちに奴をひっ捕らえるぜ。過去へ飛ばすとやらをされんうちに!」

男「っ〜〜〜……!!」

男(ド畜生ッ!! しくじった!! 私が調子に乗り過ぎたのだ……!)

男(時間魔法を発動させる為に゛アレ゛へ供給する魔力の量を忘れていた! 魔力の消費は膨大なんだ……何度も無制限に
発動させられるわけじゃあない!)

男(だとしてもッ! 私の危機を救うぐらいしてくれていいんじゃないかっ……!? 契約に忠実すぎるんだ……アレは
ッ!)

男「くっ……」

盗賊「この状況で逃げられると思ってんなよ。俺たちは逃がさんぜ、けして、お前を」

男「な、何故私をそう執拗に追いかけ回す? 一体何が目当てだと言うんだ」

魔剣『1回目に盗賊ちゃんが言ったはずだよ! 盗賊ちゃんの妹ちゃんを』

男「妹だと?」

盗賊「この町の富豪の男に、最近俺の家の妹が嫁いだ。……呪いとやらをかけてくれたようだがなぁ!!」

盗賊は男を殴った!

男「ぐぇあう」

女魔王「本当に、もし外れてたらどうするつもりか? 盗賊よ」

盗賊「ハズレなわけがねぇ……大当たりだ。こいつだ、こいつからアイツの匂いが微かだが香ってきやがる……!」

盗賊「アイツの匂いを俺が間違えるものか、忘れるかよ。どうなんだよ!? てめぇ!」

もう一度殴った!
517 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:11:24.16 ID:USsQ734r0
「何してるんだろう?」「血が出ていないか?」

ざわざわざわざわ・・・


盗賊「見せもんじゃねぇ!! 失せろ!!」

女魔王「あまり目立つと後が厄介だわよ、盗賊」

盗賊「構うものか。俺はこいつを許さねぇ……」

「殴られてるのって商会ギルド幹部の」「ああ、違いないぞ」

「武器商人の」「どうなってだ」「自警団を呼ぶべきだろう」

魔剣『盗賊ちゃん。そろそろマズイよ〜』

盗賊「……随分重役背負ってるようだな、てめぇ」

男「私を殺せば君は後悔することになるぞ」

もっかい殴った!

男「があぁあ〜……痛い、痛むぞ」ぽた、ぽた

盗賊「てめぇが今どんなツラしてるか拝んでやりたいぜ。なぁ、おい」

男「…………ああぁぁ〜〜〜。そうか、そういう事だったか」

男「生憎私はね、どの娘がいつ私の元へ来てくれたのか一々覚えてないんだよぉ…?」

盗賊「あ?」

男「ああ、確かに。よく見たら……君の髪色とあの娘のものはよく似ているねぇ」

男「お気に入りの娘だよ……んふ」

盗賊「このっ――――――」

男「○×家の娘のことだろう? 知ってるよ。大事に、とても大事にしてあげているんだぁ……」

男「可愛いよなぁ?」ニタァ

盗賊「あ……あっ……!?」

盗賊は男を離し、その場で体を震えさせて膝をついた。

盗賊「っぐ……!」

女魔王「盗賊、退いておれよ。余がゴミ掃除しておこう」

盗賊「……」
518 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:14:42.91 ID:USsQ734r0
男「私をここで殺していいのか? その青年の妹さんは私の手の中同然」

魔剣『僕が探すもん』

男「やはり……いい剣だな、君は。是非欲しいよ」

女魔王「これは余の剣である。貴様如きに渡してなるものか」

男「そうか、残念だよ。……あと5秒」

女魔王「?」

男「ん〜! 3・2・1……少し無様な姿を見せてしまったが、予告通りだッ!!」

魔剣『勇者ちゃん! 魔法が』


女魔王「死ねッーーー!!」


男「遅い。私は君たちから逃げる事に成功したッ! 私の勝ちだーッ!」


?『魔力の供給を確認した。時間魔法を発動します』

男「やれ、タイムマスター!」

?『    』

女魔王「この男があらゆる手段で港町から出ることを禁ず!――――――」

男一人を残し、港町の時間が制止した。





男「このまま一度、家へ帰ろう。やっぱり我が家がいい……私だけの女の子たちが待っていてくれる私の家に」

男「ああ……この町で暮らせるのもそろそろ潮時というわけか。思い知らされたよ」

男「私の平穏で美しい日常はいつだって誰かに壊されてしまうんだ。そう思わないかい」

タイムマスター『理解不能です』

男(ふん、魔物が!)

男「時を止めていられるのも今のうちだ。さぁ、早く私を家へ帰せ」

タイムマスター『時間魔法が継続中だが空間魔法を重ねて使用しますか』

男「構わないよ。魔力は十分回復した頃合いだろう? やるんだ」

タイムマスター『了解〜〜〜〜〜〜』


519 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:16:25.17 ID:USsQ734r0
\ ルール変更ッ あの男があらゆる手段で町から出る事を許さない! /


女魔王「間に合ったかしらね?」

魔剣『たぶん。それより勇者ちゃん。盗賊ちゃんどうにかしなきゃ!』

盗賊「……」

女魔王「なんと情けのない骨なし具合か。ほれ、とっととこの場から撤退であるわ」ぐい

盗賊「……」

女魔王「貴様ァ! 自分の足で立てよ! ここへ捨て置くぞッ」

盗賊「少し、一人にさせてくれ」

盗賊「今すごく……気持ち悪ィんだ……」

魔剣『そーいう時は無理に動かさない方がいいって僧侶ちゃんが言ってたよ?』

女魔王「〜……!」

女魔王「盗賊、ここを一歩たりとも動くなよ! 戦士どもを連れてくるから」

女魔王「よいか。ここで待っておるのだからな? 絶対動くな」

盗賊「」コクリ

女魔王「全く世話をかけさせおって。盗賊のくせに」

魔剣『ボーっとしてたね? アイツに言われた事がよっぽどショックだったのかなぁ』

女魔王「知るか。そんなの盗賊にしかわからんわ」

ぎゃーぎゃーぎゃー・・・

盗賊「……」

盗賊(あんな、ゲスな男に……アイツが……?)

盗賊「ううっ……!」
520 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/22(金) 04:17:22.70 ID:USsQ734r0
ここまで。久々に連日投下できたんだぜ
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2012/06/22(金) 04:44:12.08 ID:hr8CsYTDo
乙!
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 07:36:41.32 ID:A70GFPtDO
なんていうか最近盗賊は問題ばかり起こすな


魔王が制約魔法に続いて空間、時間魔法手に入れたらチートだな

制約魔法は応用範囲広いし魔王が元々持ってた魔法より利便性高いよな
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 09:38:14.35 ID:zlSmn1CIO
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/22(金) 11:13:10.86 ID:r2TTHO9n0
もう盗賊ちゃんのライフは0よ!
妹どうなってんだろうか・・・乙
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/22(金) 20:20:47.23 ID:I9KAbkgXo
本当に純粋に可愛がってたらそれはそれで怖い
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 14:28:56.25 ID:LKO8vFpIO
おまえら魔剣ちゃんの大活躍を賞賛しろよ絶讃しろよ崇拝しろよ!!!
なんで魔剣ちゃん抜きで感想レスとか書いてんだよksども!!
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 18:16:20.23 ID:Ir/U4GGDO
魔剣ちゃん最高!!最高!!最高ォォォォォ!!
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 21:43:52.63 ID:FtBPpC2e0
魔剣ちゃんすげぇ!!!!
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/23(土) 21:53:11.15 ID:lwzGYl5jo
魔剣ちゃんなら俺の腹に突き刺さってるよ
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/06/24(日) 00:47:57.18 ID:33B3AazAO
>>529
無茶しやがって…
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 01:08:20.72 ID:BJ7YkIfi0
魔剣ちゃんはなんでこんなに可愛いの?
剣に口あるとか不気味な剣なんだよ?
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/06/24(日) 13:23:03.43 ID:LOaIpZIBo
そういえば魔剣ちゃん最近人食べてないね
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛媛県) [sage]:2012/06/24(日) 15:00:15.15 ID:8ACLxtato
男に飢えてるのかな
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/24(日) 19:23:06.70 ID:umGooTUIO
魔剣ちゃんってGEの神器の捕食形態みたいなもんかな
535 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:03:16.40 ID:3itCwMTX0
戦士「なるほど」

戦士「俺たちがいない時に限って厄介な」

僧侶「ええ、少し急ぐべきでした」

女魔王「貴様らが居たところで」

僧侶「状況が何も変わる事がなかった。いいえ、多少なら助けになれましたよ」

魔女「つーか私一人で百人力なのよ? ですわ」

戦士・魔剣「『それ 言いすぎ』」

盗賊「……」

女勇者「師匠〜……」

僧侶「精神的に傷がついてしまったようですね」

魔剣『回復できないの?』

僧侶「魔剣ちゃん。私が治せるのは体の傷だけなの。でも、彼の支えにはきっとなってみせるわ」

魔剣『じゃあ僕も盗賊ちゃんを支えてあげるね! 添え木みたいな感じで』

魔女「骨折れたのとは違うと思いますわよ?」

女勇者「師匠をこんなに追い込んだ奴、許せません! すぐに殴り込みへ」

戦士「待てよ。そいつの場所は?」

女魔王「直に魔剣が探し当てるわよ。余がこの町に縛り付けておいたから、出て行くのは不可能」

魔女「例の謎の魔法で? ホントに便利ねぇ。そのうちよく調べさせて欲しいですわね」

戦士「ダメだ。勇者殿の体を調べるのは俺だけだ」

魔剣『違うよ! 僕だよー!』

女魔王「……」

僧侶「と、とにかく一度宿へ戻って話合いましょうかっ」
536 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:04:43.31 ID:3itCwMTX0
宿屋


女勇者「師匠、ここに座って。あ、転ばないように気をつけて…」

盗賊「……悪い。気を使わせてるな」

女勇者「いえいえ。そんなことないですって」

女勇者「困った事があったらどんどん私に言ってくださいね!」

盗賊「……」

女魔王「全く盗賊は情けのない男よのぅ」

魔剣『だって盗賊ちゃんだもん〜』

戦士「おいおい…」

魔女「で、あなた達の話を聞く限りは敵は時間魔法の使い手なのね?」

魔剣『そうだよー。僕たち何度も昔に戻されたりしたの』

僧侶「過去へ時間を遡らせる魔法……今までに聞いた事もありません」

僧侶「魔女さんは、何か」

魔女「ある、とだけは知ってましたわ。時間魔法というモノは膨大な魔力量を消費して扱うの」

魔女「そんじょそこらの魔法使いが使用できる魔法ではないのは確かね」

女魔王「だとすれば、あの男は元々の魔力器官が優れておったわけね」

魔女「そうかもしれないし、そうではないかも」

女魔王「あん?」

魔女「前に言いましたわよね? 私の魔法薬を飲むと魔力器官を異常活性させられると」

戦士「無理矢理魔力を底上げさせていたってか……?」

魔女「可能性の1つとしては」

女勇者「もしかしたら魔女っちのお客さんだったかもなんだ?」

女勇者「でも、そういう魔力を無理矢理上げる方法って禁止されてたよね」

僧侶「魔法薬の本来の使用目的は使用者の異常を回復させるものです」

僧侶「しかし副作用として魔力器官を暴走させてしまう……表ではそうなりますよね」

魔女「そう。だから前に話した通りなわけですわ」

女勇者「そんな使われ方されて悔しくないの……?」

魔女「別に〜?」

女勇者「ふ、ふーん」
537 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:07:55.11 ID:3itCwMTX0
僧侶「勇者様や魔女さんは時間魔法を使うことは?」

女魔王「余はその気になれば何でもできるのよ〜! ふふーん!」

戦士「ですよね! 流石は勇者殿っスよぉー!」

魔女「私はわからん。ですわね」

魔剣『わからないの?』

魔女「呪文は既に調べ終えてはいるの。使用に伴う魔力の消費量にも十分耐えられるし」

女勇者「じゃあ使えばいいのに〜! 時間の魔法って過去にも未来にも行けちゃうんでしょ?」

魔女「素質が必要なのよ」

魔女「時間魔法を使えばそれこそ過去へ遡れるわよ? でも、時の流れを認識できなければダメ」

僧侶「時の流れを認識?」

魔女「例えば私が今過去へ戻るとしますわ。でも、私は過去へ戻ったという記憶をきっと覚えていない」

戦士「……は?」

魔女「つまり、時の流れの中で自己を如何に認識できるかという事ですわ。それは誰しもができるものではない」

女勇者「それで素質? 選ばれた人間だけが扱える魔法ってことかな?」

魔剣『かなー?』

魔女「もし過去へ戻れても、自分の意識が現在の記憶を保ったまま戻れていなければ無意味でしょ」

僧侶「そうでなければ、過去へ戻る意味がないと?」

魔女「ま、単純に子ども時代へ帰りたいなー、と過去へ戻るならそれでもいいかもだけど」

戦士「……??」
538 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:08:47.98 ID:3itCwMTX0
戦士「……あ、ああ! そういや時間魔法にも色々なものがあるんじゃないか?」

女魔王「色々? 時間を遡る、先送りする以外にと?」

戦士「うっす。前に別の世界での話は聞いてもらいましたよね」

戦士「そこでエルフって女の子が時間を止める魔法を使ったんス」

魔女「エルフだぁ?」

戦士「他にも、俺が腕を切断されてしまった時は腕だけの時間を戻して切断がなかった事にとか」

僧侶「凄いですね、その方は。一部分だけの時間を巻き戻す事も可能だったなんて」

魔剣『戦士ちゃん色々知ってるんだね〜!』

戦士「知ってるっていうか、実際体験してきたのな」

女魔王「戦士、貴様エルフと申したわね?」

戦士「へ? ああ、言ったスけどそれが?」

女魔王(あの女も自分はエルフだと申しておった)

女魔王「そのエルフは以前に余たちが砂漠で会った女か?」

戦士「ん……? えっと、あの恥ずかしい名前の姉ちゃんスよねぇ?」

戦士「全然違いますよ。あんなパイオツボインでもなければスタイルもよくない」

戦士「小さな女の子っス! まぁ、俺より年上だって言ってたけど」

魔女「エルフって。ぷっ」

戦士「何よ?」
539 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:10:23.34 ID:3itCwMTX0
魔女「エルフなんて大昔に全滅した種族ですわよぉ? いるわけがない」

戦士「俺は実際に見たんだぜ?」

戦士「耳だってこーんなに尖ってたし」

僧侶「確かにエルフはもう存在しない筈ですよね。戦士さんの話が本当なら」

僧侶「もう1つの世界へ移住した為にこちらには存在しない?」

戦士「いや。あの子以外のエルフは滅びたと聞いた」

女魔王(だとすれば、湯女は?)

戦士「でも勇者殿。どうしてあの姉ちゃんを?」

女魔王「気にすんなであるわ。聞いてみただけ」

戦士「他にも聞きたい事があればどんどん聞いて欲しいっス! もう、勇者殿になら俺の隅々まで……!」

僧侶「やめてください」

女勇者「で、話戻すとすると?」

女勇者「今回の相手は時間魔法が使える強敵って感じですか?」

僧侶「強敵でしょうね。まぁ、今まで出会ってきた敵も相当な強さでしたが」

魔剣『もしかしたら、いきなりパッて消えたり現れたりはアイツが時間止めたからかもね!』

女魔王「その線はあり得るわねェ。空間魔法にしては静かに移動したし」

女勇者「……そんなの相手に私たちはどう戦えばいいのかなぁ」

魔女「きっと厳しいでしょうね。時間止められたら、止まった時間の中を動けるのはそいつだけ」

魔女「気づく間もなくグサッ!! とか」

女勇者「やめてよ! 縁起でもない!」

戦士「勇者殿。魔剣ちゃんではその魔法を破れないんスか?」

女魔王「わからん。しかし、余なら絶対破れるわッ」

魔剣『僕も頑張るよ〜』

戦士「なら俺らは全力で勇者殿をサポートしますよ!」
540 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:11:21.26 ID:3itCwMTX0
僧侶「しかし、無策なまま攻めては危険ですね」

僧侶「少しみんなで考えましょう?」

女魔王「必要あるまい。余の辞書に失敗の二文字は存在せんのだ!」

戦士「ああ、違いない!」

魔女「どうだか。私は僧侶に賛成ですわよ。また時間逆行なんてされたらこちらに勝ち目はなし」

魔女「まぁ、そこの盗賊が敵討ちを諦めてくれれば、無理にそいつに喧嘩売りに行く必要もないんだけど」

魔女「だってその男は戦い自体を好むような奴ではなかったんでしょう?」

魔剣『うん。逃げてばっかりでちょーウザかった!』

僧侶「という事はつまり、その方は戦い自体に不慣れなのかしら」

戦士「そうとも限らんだろうよ。無駄に血を流すのを好まないのかもしれん」

女魔王「いや、戦闘自体には不慣れな様子であったわ。体力もスタミナもそうありそうにも見えんかったし」

女勇者「てことは、時間魔法さえどうにかしちゃえばこっちのもん? やったー! 希望が見えてきましたよ、師匠!」

盗賊「……ああ」

魔剣『盗賊ちゃん久々に喋ったね〜!』

盗賊「話は全て聞いた。お前ら、マジでごめんなさい」

盗賊「今回は俺の個人的な理由だけで奴に挑むんだ。お前らには関係がない話だった」

僧侶「いいえ。勇者一行ですし、困っている方を助けなきゃですよ」

僧侶「妹さんを助けましょう? 盗賊さん」

女魔王「余はあやつが気に食わなくなってきたから殴り込むだけだわよ」

女魔王「別に盗賊の為なんかじゃないである!」

僧侶「ゆ、勇者様が仰ると本当にそうなんじゃないかと思えてしまいますね……」
541 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:12:18.58 ID:3itCwMTX0
武器屋


女魔王「余は勇者だからタダで武器を寄越せ」

店員「えっ……?」

僧侶「ゆ、勇者様! 何でもありません。ただの冗談ですので!」

店員「はぁ。ていうか勇者って」

僧侶「勇者でもございません! お、おほほほ」

店員「面白いお客さんですねぇ」

女勇者「流石にひのき棒じゃ心許ないですよねー」

戦士「全然ね。おっ、コレなんていいんじゃない?」

女勇者「ムチ? 戦士さん、これで叩かれたいの?」

魔女「変態ここに極まりし。ですわね……!」

戦士「ここそういうお店じゃないからやめような。な」

戦士「鞭は広い範囲で攻撃できるし、威力も凄いんだ」

戦士「まぁ、でも女勇者ちゃんにゃ扱いが難しいかねー?」

女勇者「むっ」

女勇者「オジサン! これを」

戦士「……いや、ムキになる必要ないから」

魔剣『ていうかみんな、お金あるの? 買える? 大丈夫?』

僧侶「うん。必要ない道具や装備を売ってこれだけのGが手に入ったから」

女魔王「もっと早くそういう事しておけである」

僧侶「び、貧乏性で……中々物を売るって気が進まないんですよ……」

魔女「これカックイー! たぁー!」ぶんぶん

戦士「やめろ! バカ、店ん中で振るなっ」
542 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:14:14.65 ID:3itCwMTX0
店員「ありがとうございましたー。またウチをご贔屓にー」

女勇者「この鞭で敵をビシビシひっ叩きますよ〜!」

戦士「本当にそれにしたのねぇ……」

僧侶「新しい物だから手に馴染むまで時間がかかりそうですね」

盗賊「僧侶は? 杖を?」

僧侶「ええ。どうやら魔法の効果を持つ武器らしいんですけど」

僧侶「これで私の攻撃のバリエーションが増えたらなと」

盗賊「なるほど」

魔剣『勇者ちゃんはずっと僕のまんまだよね〜! ね〜!』

女魔王「喧しいッ」

魔女「まぁ、その剣は最初から卑怯なぐらい強いし。ですわ」

女勇者「師匠と魔女っちは?」

盗賊「俺は変わらず僧侶がくれたナイフだぜ」

女勇者「えっ、普通のナイフ」

僧侶「盗賊さんはまだ上手く戦える状態ではありませんし、護身用で十分ですもんね」

盗賊(いや、僧侶ちゃんのお古のナイフとか負ける気しないからなだけで)

魔剣『盗賊ちゃんいつも武器投げるから何本かナイフ持っとけばいいのに〜』

盗賊「……そ、僧侶! ナイフ! 無くさないから! 大切にするからな!」

僧侶「え、ええ」

魔女「私の武器はなーし。必要ないですわ」

女勇者「大丈夫?」

戦士「……誰か俺の新武器には触れてくれねぇの?」

盗賊「次は防具だな。溜まった金もすぐに尽きちまいそうだぜ」


仲間たちはステータスが上がった!
543 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/25(月) 03:16:31.68 ID:3itCwMTX0
今日はここまでっす。ついでに新装備書いておこ



現在装備

(女)魔王
武器:魔剣
防具:魔王のマント、黄金?のティアラ←NEW!

女勇者
武器:鋼の無知←NEW!
防具:勇者の鎧 、お鍋のフタ←NEW!、銀?の髪飾り←NEW!

盗賊
武器:僧侶のナイフ
防具:1枚の葉っぱ

僧侶
武器:イカヅチの杖←NEW!
防具:マジカルスカート←NEW!、不思議な帽子←NEW!

戦士
武器:大金槌←NEW!
防具:魔法の鎧←NEW!、魔法の盾←NEW!、鉄兜

魔女
武器:なし
防具:マジカルスカート、不思議な帽子、スライムピアス←NEW!
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 03:26:30.24 ID:7AJ2rz9ho
ちょww鋼の無知wwwwww
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 03:49:45.81 ID:cC9POx6IO
鋼の無知www
でも女勇者ちゃんには違和感がない!!不思議!!
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 03:54:40.04 ID:w0sZ+RzDO
鋼の無知は痛いな
色んな意味で
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 04:28:42.87 ID:jNrlJWx30
無知は武器にならないなwww
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 09:18:48.36 ID:t1Tf1LuIO
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/06/25(月) 16:30:04.28 ID:0MsGT4gn0
乙ー
ドラクエで言えばレベル30台ってところか
550 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:38:24.60 ID:NWZsAyjy0
女勇者「装備整えたら私たちかなり強く見えますよね!!」

魔剣『みんなカッコイ〜』

戦士「見えるんじゃなくて実際強いって。レベルだってかなり上がってるはずだ」

女魔王「では魔剣に調べさせてみる?」

戦士「いいっスねー。是非是非!」

魔剣『解析中〜〜〜……』

僧侶「なんだかドキドキしますね…」

女勇者「テストの回答用紙返ってくる感じに似てる」

魔女「赤点の常連さんはいつも結果わかってるでしょうに?」

女勇者「……どうして私が赤点ばかりだと知ってる?」

魔女「あら、違いますの?」

女勇者「ははははははっ」

魔剣『はい! みんなのレベルがわかったよー!』

盗賊(肉ダルマには負けてませんように。肉ダルマだけには)

魔剣『まずは誰から知りたい?』

女魔王「余からッ」

魔剣『あ〜ごめんね! 勇者ちゃんはレベルがわからなかったよ』

盗賊「そういやそうだったな」

魔女「どういう事ですの? 勇者にはレベルの概念は存在しない?」

僧侶「たぶん勇者様が特別なだけかと」

女勇者「それじゃあ私からお願いしますっ」
551 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:39:07.04 ID:NWZsAyjy0
魔剣『女勇者。キミはレベル19です!』

戦士・魔女「えっ」

女勇者「やった〜! 結構上がってるじゃん! 強い強い!」

魔女「……この子、大丈夫なのか。ですわ」

僧侶「だ、大丈夫でしょう。足りない分は私たちがカバーしてあげれば」

女勇者「こりゃあ私がみんなの中で最強ですね! でも欲言えばキリよく20あっても」

盗賊「精進しろよ、おい」

女勇者「うっすー!」

戦士「次、俺ね!」

魔剣『戦士ちゃんはレベル28です』

女勇者「え゛っ」

戦士「うひょ〜!! 俺すげ〜!!」

僧侶「戦士さんおめでとうございます」

女魔王「それでも全然弱っちィがな」

戦士「これからも努力するっス!」

盗賊(……抜かれてないかちょっぴり心配)
552 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:39:51.31 ID:NWZsAyjy0
女勇者「あー…あー、えっとー……」

魔女「うーん? どうかしましたの? レベル19さん」

女勇者「いえ……」

魔剣『僧侶ちゃんはレベル24。みんなあれから成長してるね〜』

僧侶「まぁまぁでしょうかね?」

女魔王「雑魚」

僧侶「酷い!」

盗賊「お、俺は……?」

魔剣『盗賊ちゃん。盗賊ちゃんはボス級によく当たるから勇者ちゃんのお零れ経験値で成長してるっぽいよ』

盗賊「うぐっ!?」

魔女「そういう人の事を何というのだったかしらっけ?」

女魔王「コバンザメ?」

盗賊「うるせぇ!!」

魔剣『レベルは26』

盗賊「そ、そんなぁ……!」

戦士「うひゃひゃひゃひゃ〜wwwwww」

魔剣『盗賊ちゃん最近よく初っ端で死ぬからね。仕方がないよぉ』

僧侶「魔剣ちゃん。それは慰めになってないと思う」

魔女「ついでに私は? ですわ」

魔剣『魔女っちは高いね〜。レベル35だって』

魔女「」ニヤニヤ

女勇者「あ、あ、ああ……?」

魔女「努力しましょうねぇ、先輩」

女勇者「かはっ……」バタリ

盗賊「あんま虐めてやんなよ」
553 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:40:32.98 ID:NWZsAyjy0
魔剣『みんなステータスも高い方だし、前の土地の魔物ぐらいには善戦できるぐらいじゃない?』

戦士「おお〜。それは嬉しいねぇ」

戦士「な、盗賊…www」

盗賊「話しかけんなチクショー」

戦士「え? え? wwwwww」

盗賊「うぜぇ!」

女勇者「」しなしな

女魔王「こやつは何萎びておるの?」

魔女「自信があったんでしょーねぇ」

女勇者「私、すごい強くなれたと思ってたのに……」

僧侶「十分ですよ。これは競争じゃないんです。私たちがどれ程成長できたかを」

女勇者「慰めなくていいっすよぉ〜……うへへへ……」

盗賊「まぁ、勇者が最弱というのもな」

僧侶「盗賊さん!」

盗賊「そのうちまた鍛えてやる。覚悟しときな」

女勇者「し、師匠〜……!」

戦士「さーて、強さも確認できたし、装備も新調したし」

戦士「行きますかぁ?」

女魔王「その前に魔女よ。魔法薬の方はどうなっておるの」

魔女「もう少し時間が欲しいところですわね。まぁ、あの状態でも使えなくはないけど」

魔女「身の補償はできん。ですわよ」

女魔王「何が起こるというのよ」

魔女「さぁ? そこは使った後のお楽しみかしら。安全な薬が欲しいのならもう少しお待ちなさいな」
554 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:41:23.55 ID:NWZsAyjy0
盗賊「……」

戦士「まさかお前、どうなっても構わないから寄越せとか言う気じゃねーだろうな?」

盗賊「あ?」

戦士「お前がどうかなっちまえば妹ちゃんは誰が助けてやんの。今は自分の体大切にな」

盗賊「わかってるぜ……妙な気使うんじゃねェよ」

魔女「それにしても相手は商会ギルド幹部。一悶着あれば商人たちも黙ってはいない」

魔女「あなたたち、今はお尋ね者なんでしょう? おバカさんたちねぇ」

僧侶「おバカで構いませんよ。私は悪を許す気はありません」

女魔王「まーた綺麗事である。背中痒くなってくるわ」

女勇者「綺麗事の何が悪いんですか? 汚い事よりマシですよ!」

女勇者「私も僧侶さんと同意見。精一杯がんばります」

魔女「足手まといにはならないように。レベル19」

女勇者「それ引き摺るのいい加減やめてほしいかなぁ!?」

魔剣『勇者ちゃん、勇者ちゃん。アイツの居場所がわかったよ〜!』

女魔王「随分早いわねェ。まぁ、よくやったと誉めておこうかしら」

魔剣『誉められた! 勇者ちゃんが僕を誉めたよー! わーい!』

戦士「勇者殿っ……俺も……!」

魔女「よくやった、変態肉ダルマ。ですわ」

戦士「お前じゃねぇんだよっ!!」

盗賊「バカやってないでさっさと行こうぜ! そういうのは後にしてくれ!」

戦士「あ、はい……」
555 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:42:00.98 ID:NWZsAyjy0
屋敷前


僧侶「ここに例の幹部の方が? 随分大きなお屋敷ね…」

魔剣『間違いないよ。僕の鼻に間違いはないんだよ』

盗賊「鼻なんか元からないだろ」

女魔王「何処か見つかりにくい場所へでも逃げ隠れたと思っておったが」

女魔王「まさか自宅へとはねェ〜。奴は真の間抜けであるわ、商人としての腕も大した事あるまいて」

戦士「勇者殿がそう言うのなら間違いないな。とりあえずどうする?」

盗賊「正面突破だ。あの男相手にコソコソする必要はねぇ」

盗賊「追い込んだ獲物にはどうどうとだぜ!」

魔女「追い込んだのではなく、逃げられた。が正しいでしょうが」

盗賊「……」

戦士「カッコつけさせてやれよなぁ」

魔女「ごめんあそばせ。私ってば凡人の考えってのがよくわかんないの〜」

女勇者「凡人でも何でもいいよ! 師匠が正面突破って言うなら私も」

僧侶「……見たところ他に入れそうなところもありませんしね」

僧侶は呼び鈴を鳴らした。

女勇者「ちょっ!? 私たちお客さんじゃないんだよ!?」

僧侶「通してくだされなければ門を勇者様が勝手に破壊してくれますし」

女魔王「よくわかっておるではないかァ〜」

女勇者「超強引……」

魔剣『いつものことじゃない?』

魔女「私の屋敷にもこんな風に来たのね……」

女魔王「余の訪問を拒む奴が悪いのよ?」
556 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:42:52.38 ID:NWZsAyjy0
< どちら様でしょうか


呼び鈴下に備え付けられたスピーカーから女性の声が流れた。

「!」

戦士「宅急便っす。ご注文のお品物を宅配に参りました〜」

魔女「とっとろ開けろや。ですわ」

盗賊「おい…!」

< 宅配。いえ、その様な物を注文した覚えはありませんが

女勇者「女の人の声だけど」

女魔王「きっと屋敷の僕か何かが代わりに対応しておるのだろうよ」

< というか、当屋敷へ訪問する際は事前にアポイントが必要とされております

< 突然のご来客様方へは申し訳ありませんが、またのご機会にという事に

僧侶「今、この場で訪問の約束を取り付けられないのでしょうか?」

< ・・・・・・。

魔剣『いきなりだんまりだよ〜』

盗賊「悪いが、穏便な手段で通れないというのなら強行手段を取らせてもらうぜ」

盗賊「構わねぇな?」

女魔王「準備は既にできておるわよ〜」

< 少々お待ち下さいませ

戦士「……もしかして取り合ってもらえんの?」

僧侶「上手くいくでしょうか。こちらは野蛮なお客人ですし」

女魔王「待つのは面倒だからさっさと門など壊してしまえばよいのよッ」

女勇者「まぁまぁまぁ〜! たまには荒っぽくないのは無しでいこうよ!」

魔女「あら、殴り込みだとか言ってたのはどこの誰だったかしらね?」

女勇者「いやぁー……誰だろー」
557 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:43:47.53 ID:NWZsAyjy0
魔剣『勇者ちゃん僕もう待ってらんないよ〜! アイツどうせ誤魔化す気だよ!』

女魔王「余もそう思っておったところだ。もうよいな?」

僧侶「もう少しだけ彼女を信じて待ちましょう」

戦士「そりゃメイドだとしたら当然の行動だわな。ご主人様が訪問客に暗殺されるかもしれんって状況だしよぅ」

僧侶「こうも堂々とした暗殺は中々見れた物ではありません。それに」

僧侶「今回は命を取る必要がまだわからない。もしかしたら話合いで済む事も」

盗賊「どうだかなっ……。あの男の本質はよくわからんが、クズ野郎だという事はわかる」

魔剣『ゲロ以下の臭いがプンプンしたと?』

盗賊「は?」

盗賊「…ともかくだ! 俺はアイツをぶん殴ってやらなきゃ気がすまんぜ!」

魔女「威勢だけはご立派ですこと。もしかしたらあなたの妹を拘束しているのは彼ではないかもしれないというに」

盗賊「いいや、間違いないぜ。俺にはわかるんだ」

魔女「それ、どっから沸いた自信ですのよ……」

魔剣『愛ですね! ね、戦士ちゃん!』

戦士「愛、だな」

女勇者「なんだか素敵!」

女魔王・盗賊「馬鹿か」


< 大変長らくお待たせいたしました。皆さま


戦士「おぉ?」

女勇者「どうだったんですか? 通してくれるの?」

< はい。ご主人様から御許しをいただけました。こちらへ通せ、と

< すぐに開門いたしますので、門から離れてお待ちくださいませ
558 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:44:33.17 ID:NWZsAyjy0
盗賊「……余裕かましてやがるな。あの野郎」

僧侶「ですが、素直に通してもらえて良かったです。まずは話合いから」

盗賊「あの男のツラを見て俺は俺を抑えていられる自信がないぜ…!」

僧侶「気持ちはわかります。ですが」

魔剣『門が開いてってるよ〜』

戦士「罠とかじゃないだろうなぁ?」

女魔王「これまでのケースから見るとあり得ない話ではないのぅ」

盗賊「……俺を止めるなよ、僧侶。頼むから」

僧侶「うっ……」

< どうぞお入りください。お客様の足で玄関まで歩かせてしまう事をお許しください

戦士「構わないよ。開けてもらえただけありがたいしな」

女魔王「罠を仕掛けてはないだろうなァ?」

魔女「それ、聞いたら失礼だと思う。ですわよ」

< ・・・・・・。

女魔王「おう貴様ッ! なぜ何も申さんのよ!? 罠があるというのかッ」

戦士「……一応気をつけて進みましょうか。勇者殿」

魔剣『最近は自分の家に罠を仕掛けるのが流行ってるの!?』

文句を垂れながら女魔王たちは屋敷の敷居の中へ足を踏み入れた。

女勇者「すごーい! 庭ひろーい! って、何じゃこりゃ……」

外壁で庭の中が見えなかった事もあり、中へ入って初めて見えたそれらの姿。

マネキンだ。綺麗なまま地面に埋まってあるのもあれば、五体不満足で転がっているのもある。

花壇には花ではなく、手が一定の間隔を開けて地面から生えているように固定されている。

魔女「悪趣味の一言に限りますわね。こういうの」

魔女「まだ私の家の庭の方がマシよ?」

盗賊「どうだろうな」
559 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:45:32.56 ID:NWZsAyjy0
僧侶「不気味ですね……。何を思ってこんな」

戦士「人形好きのマニアだとか?」

女勇者「だとしても歪んでる気がする……おえぇ」

魔剣『僕、そんなに嫌いじゃないよ?』

女勇者「うそぉ!?」

女魔王「余も別に。悪趣味とは思うが、こういうのも中々」

魔女「揃いに揃って。あんたたち意味不明ですわよ」

盗賊「この様子だと俺は見えてなくて良かった、と思うべきか」

僧侶「ええ。違いありません」

魔女「ちょっとこれ。よく見てみ」

女勇者「やだよ気味悪い! よそうよ…」

魔女「いいから。ここらの人形、どこかに同じ言葉が彫られてるのよ」

戦士「同じ言葉? 言葉ってよりは、名前じゃないか?」

女魔王「確かによく見れば名前らしきものが彫られておるわね。人形の名前?」

僧侶「でしょうか。でも同じ名前をこんなにいっぱいの人形に彫る必要なんてあるかしら…」

盗賊「そんなものどうでもいいだろ。先に進むぜ」

女勇者「悪趣味すぎる……。こういうの苦手だなぁ」

女魔王「気に食わんのなら貴様も壊せばよいのよ」

女勇者「壊すって……ていうか、貴様もって?」


魔剣『どっかーん!』ばこぉ


女魔王はマネキンを破壊してまわっていた!

女魔王「ぐははははっ〜〜〜!! ストレス解消ッ!」

女勇者「ぎゃああーーー!!?」
560 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:46:14.30 ID:NWZsAyjy0
戦士「ゆ、勇者殿まずいっスよ!」がしっ

女魔王「あー! 戦士邪魔するでないわよッ」

僧侶「いくら気味が悪くても人様の物なのですよ!? 信じられませんっ」

魔女「ふむ、ストレス解消とな? ではでは私も1つ」

僧侶「やめなさいっ!」

盗賊「……お前ら頼むから真面目にやってくれよ。遊びに来たわけじゃねーんだ!」

盗賊「こうなったら俺一人でも先へ進むぞ!」

盗賊はふらふらと足元を確認しながら先へ進んでいった。

戦士「あ、おい! 盗賊! 待てってば!」

女勇者「師匠危ないですよー!」

盗賊「うるせ――――――――」


ガコンッ


盗賊「うわぁああああああああああああああ〜〜〜…………」ひゅー

なんと! 盗賊は罠に引っ掛かって地下へ落ちてしまった!

女勇者「危ないって言ったのに〜!!」

女魔王「やはり罠を仕掛けておったのかー」

魔剣『してやられたね!』

僧侶「それどころではないでしょう!?」

戦士「あのバカは! ……ええい、みんなは先へ行ってくれ!」

戦士「俺がアイツの傍につくから! ふんっ」ひゅー

戦士は盗賊の後を追って、穴へ自ら落ちて行った!

僧侶「戦士さん!」

魔女「あらら、勇敢な男ですこと。ほんとおバカさ〜ん」

女勇者「言ってる場合か! うわあぁ、大変だよ〜……」
561 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:48:23.25 ID:NWZsAyjy0
魔剣『2人ともいなくなっちゃったよぉ。どうする?』

女魔王「阿呆は放っておいてこのまま進むわよ」

女勇者「で、でも」

女魔王「余たちまで盗賊の後を追う必要はあるまい。戦士に任せとく」

魔女「最悪、ミイラ取りがミイラになる可能性もあるしねぇ」

僧侶「……止むを得ませんね。勇者様の仰る通りにしましょうか」

女勇者「置いて行っちゃうの!?」

僧侶「あの2人なら後でかならず合流できます。心配しないで」

女勇者「う〜……」

魔女「別にあなたも落ちて構わないわよ? ただし、あの人たちと同じ場所へ落ちれるかは補償できないけれど」

魔女「さぁ、どうぞ! 落ちてみなさい」

女勇者「……ご、ごめんなさい」

魔女「ふん、気にしなくていいですわ」

女魔王「決まったか? ほれ、もう行くぞ」

僧侶「まだ罠があるかもしれません。慎重に進みましょう、勇者様」

女魔王「慎重に? 阿呆、その必要はないッッッ」


魔剣『もっかいどぉーん!』


女魔王が魔剣をぐんと力強く振るうと、庭へ突風が吹く!

庭は一瞬にして滅茶苦茶に! マネキンも、地面も、花壇も! 剣によって付けられた傷跡が辺りには沢山だ!

僧侶「い、今のは?」

女魔王「新技である」

僧侶「……新技?」
562 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:49:15.92 ID:NWZsAyjy0
女勇者「まさか秘密の特訓の成果とか!」

魔剣『そんなのした覚えないけど〜』

魔剣『ていうか、勇者ちゃん! 僕も今の知らなかったよ!』

女魔王「当たり前だわ。思いついたのも使ったのも今が初であるし」

魔女「新技とかほざいていたけれど、本当はアレ、適当に魔剣振っただけじゃない? ですわ」

女勇者「わ、私にもそんな風に見えました!」

女魔王「喧しいッ! 新技と申したら新技なのよッ! 文句あっかアーン!?」

女勇者・魔女「ないです……」

僧侶「ですが、こんな乱暴に散らしただけで罠を壊したと?」

女魔王「確実に手応えはあった。一々魔剣で確認しながら進んでおっては時間かかるし」

女魔王「問題あるまい?」

僧侶「え、ええ……もういいです……わかりました!」

僧侶「あちらも罠を仕掛けていたとわかったのならば、もう容赦はしません!」

僧侶「とことんやりましょうか……!」

魔剣『おー!』

女勇者「お、お〜?」

僧侶「よし!」

魔女「僧侶も勇者に着実に感化されてきてますわねぇ」

女魔王「別に悪い事ではないであるわ。貴様も余を崇めよ」

魔女「はいはい、そのうちね〜」
563 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/27(水) 02:51:03.97 ID:NWZsAyjy0
ここまで。最近ダイ大読み直してます
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/06/27(水) 05:41:29.47 ID:zsZYaKupo


ク、クロコダイーン!!
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/27(水) 08:04:25.25 ID:SSuWqpdd0
女勇者ちゃん弱くてワロタ
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/06/27(水) 16:30:08.00 ID:q7Xba+l/o
まだまだ続いてほしいな
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/06/27(水) 19:27:34.86 ID:LedFMKO/o
女勇者、装備が無かったら確実に弱いよな
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/27(水) 21:54:59.02 ID:xHITV6+IO
魔王はどのくらいのレベルなのかな?
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/06/28(木) 00:19:09.06 ID:uq105BQ/o
勇者がLv41になる頃には倒せる程度?
とは思えんよな
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/28(木) 23:24:46.41 ID:mQKYHn1m0
女勇者の弱さに悪意を感じる
もしかして嫌いなキャラですか
571 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:23:17.86 ID:MevTnOcO0
もう1つの世界


妖精「るんるん〜♪」

エルフ「機嫌良さそう」

妖精「そりゃそうだよ。最近、世界樹に変な事しようとする人たちも来ないし」

妖精「エルフはきちんと仕事してるもんね♪」

エルフ「そう」

世界樹の根元に腰かけるエルフ。彼女は今、世界樹へ生命維持させる為に栄養を分け与えている。

しかし、それは分け与えるというよりは彼女の全てを世界樹へ注いでいたのだ。

妖精「その調子で世界樹を元気にしてあげてね。誰かが魔法を使えば使うほどこの子には負担が掛かるんだから」

エルフ「わかっているよ」

エルフ「……ほ」

妖精「終わった?」

エルフ「うん」

妖精「はい、ご苦労様〜。でも世界樹はまだまだ満足してないんだけど」

エルフ「これ以上受け渡しては私の身が持たなくなってしまう」

エルフは世界樹へ体を預け、目を閉じた。

妖精「そうだよね。エルフ死んじゃったら世界樹もダメになっちゃう」

妖精「なにか栄養が出る食べ物探してきたげる! いっぱい食べてもっと頑張って〜」パタパタ

エルフ「ふー……」

エルフ「この方法以外に、君を長生きさせてあげられる方法はないのかな」

エルフ「ねぇ、世界樹。私にも声をかけてほしい」

世界樹『』

エルフ「……」ぐいぐい

自分の顔を両手で引っ張ったり、広げたりし始めた。

エルフ「おかしいと思ったから笑う。これは笑っているつもり」ぐいぐい
572 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:23:56.37 ID:MevTnOcO0
・・・

エルフ「おぎゃー」

?「あなたはもう言葉が話せるわね。いいのよ、私はあなたの仲間」

目の前の女性が耳にかかった綺麗な長い髪を除けると現れた長くとがった耳。

彼女のそれは私のそれとよく似ていた。

生まれて初めて、私は私と同じ耳をした生き物と出会ったのだろう。

それまでに誰に出会ったか、私は覚えていなかった。

覚えてもいないのに何故彼女に初めて親近感のようなものを抱けたのだろうか。

私は今まで何をして、されて、誰に育てられたのだろう。

何もかもがわからないことだらけだ。

?「あなたは人間ではないの。エルフという種族の女の子」

?「他に必要な知識はこの大きな木、世界樹が教えてくれるわ」

エルフ「せかいじゅ?」

?「そう。これからあなたが一生共にする子。あなたと世界樹は一心同体なの」

?「覚えておいて。世界樹を枯らしてはいけないわ。あなたがこの子を守るの」

エルフ「どーして?」

?「理由が欲しいの。そうね、私とこの世界の為にかしら」

?「私はあなたのお友達。お友達の頼みはかならず守らなければならないわ」

エルフ「?」

?「あなたはけして孤独じゃない。忘れないで」

?「……うん。はいっ、それじゃ頑張ってちょうだいね〜♪ ばいばーい」

さっきまでの意味深な話の内容とは裏腹に、別れは異様なほどあっさりしていた。

その日から私のこの世界樹と共に暮らす生活は始まった、のだろうか。

私の過去の記憶はとても曖昧なのだ。
573 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:24:34.46 ID:MevTnOcO0
『……フ! エル……! 起きて……!』

エルフ「……ん」

妖精「エルフ起きて! エルフってば!」

エルフ「今、起きた」

妖精「お昼寝してる場合じゃないよ〜! 大変だよ〜!」

エルフ「ねぇ、あなたはいつから私の傍にいたの?」

妖精「え?」

妖精「いきなりどうしたの」

エルフ「ふと思い返してみたら、私はあなたと初めて出会った記憶がない」

エルフ「思い出せないだけかな」

妖精「きっとそうだよ。あたしはエルフがこっちに来てからずっと一緒だよ」

妖精「だって、そうじゃなきゃチビッ子だったエルフが一人で生きていけるわけないもん!」

エルフ「世界樹から知識を得たとしても?」

妖精「体が知識について行けない。所詮子どもだったんだから」

エルフ「そう」

妖精「それより大変なんだってば! ほら、アレ!」

妖精が指差した池(世界樹の横にある)へ視線を移すと、そこには

骸骨「」ホネホネ

人間のものと思わしき骨がバラバラになって水面にぷかぷかと浮いていた。

妖精「ね!? 骨なのに水の上に浮いてるんだよ!」

エルフ「大変ってそこじゃないと思います」
574 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:25:13.84 ID:MevTnOcO0
とりあえず、人骨は池から救い上げられて地上に出されたのである。

エルフ「人間の骨だね マンイーターに食べられたら骨も残らないはずなのに」

妖精「昔ここで溺れた死体が今になって浮かんできたのかも!」

エルフ「だったら私たちは今まで死体が入った水を飲んでいたんだ」

妖精「それやだぁー!!」

エルフ「……」

エルフ「まさか、あの人たちのモノじゃないだろうか」

妖精「あの人たち?」

エルフ「うん。向こうの世界へ帰られずにここで溺死してしまったとか」

妖精「え〜? あたししっかり帰り道まで送ったんだよ〜? あり得ないよ」

エルフ「あり得ない。うん、あり得ないと思う。私は何を思ってそんな事を考えたのかな」

エルフ「心配なのかな」

妖精「エルフ、あの人たち気に入ってたもんねー」

エルフ「うん」

エルフ「……」

エルフ(もしかしたら、この人は私の過去を知っている人かもしれない)

エルフ(ずっと昔に私と一緒にいた人かもしれない)

エルフ「〜〜〜〜〜〜……」

妖精「魔法!? あの骨生き返らせちゃうの!?」

エルフ「知りたいから……〜〜〜〜〜〜!」

エルフは復活の呪文を唱えた!

バラバラだった骨たちは、元の人間の形を模り始め、徐々にそれに肉がつき始めた!

勇者「…………あれ」

妖精「やっぱり人間だぁ〜!」

エルフ(この人間は、何)

勇者「うはっwwwwwwwなんか知らねぇけど復活したwwwwwwww」

エルフ「残念な人間を生き返らせちゃったみたいです」

妖精「これ、どーすんの?」
575 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:25:54.04 ID:MevTnOcO0
一方、盗賊たちは・・・。


戦士「真っ暗で何も見えねーや。おい、盗賊いるのかー!」

盗賊「……ここだぜ」

戦士「うひっ!? な、なんだ……後ろにいたのかよ」

盗賊「ここは何処だ。俺は罠にかかったのか?」

戦士「罠にかかったのには間違いない。で、ここは〜」

壁へ手を着いてみるとひんやりとした岩肌の感触が当たった。

戦士「……地下、なんだろうな」

盗賊「まさかてめぇも罠にかかったのかよ。マヌケが!」

戦士「お前の為にワザと一緒にここに落ちてやったんだよ! バカ!」

盗賊「余計なマネしやがって」

戦士「そう言うな。お前は目が見えてないんだし、誰か傍にいてやんないと」

戦士「勇者殿たちは大丈夫かなぁ……俺いなくて怖くなってないかな……」

盗賊「さぁな」すたすたすた

戦士「何処いくんだよ? 勝手に進むと危ないぜ」

盗賊「どうせ何も見えちゃいねーんだ。真っ暗闇でも変わりはない」

盗賊は転んだ!

盗賊「〜〜〜……!」

戦士「強がるなよ、大将」

戦士「俺が直々にエスコートしてやるから。はい、手貸せよ」

盗賊「やめろキメェ!」

戦士「お年頃じゃないんだし。ほれ、早く。ここから出たいんだろ」

盗賊「う、ぐぅ……」
576 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:26:26.41 ID:MevTnOcO0
戦士は松明を使った!

戦士「道はここから真っ直ぐ一本しかないみたいだな」

戦士「まぁ、進んだ先に出口があるとは思えん。侵入者用の罠としては上々じゃないか?」

盗賊「出られなきゃ困るんだよっ!!」

戦士「はははははっ」

盗賊「笑い事じゃねぇ……!」

戦士「わかってんよ。今のは緊張を解してやろうと冗談だね」

盗賊「洒落にならねぇ冗談が緊張を解すか! アホ!」

盗賊「お前……俺は真剣なんだぜ。ふざけてる場合じゃ」

戦士「今からガチガチじゃ上手くいくもんもいかないぜ?」

盗賊「何だと!」

戦士「お前、ちょっとカッカし過ぎよ。立ち直ったのはいいとしてな」

戦士「そこに水……汚そうだけど……一回頭からぶっかけてやろうか?」

盗賊「必要ない!」

戦士「だよねぇ」

戦士「それじゃあ、ボチボチ進みますか。俺ものんびりするわけにはいかん」

盗賊「だったら早く出口見つけやがれよ……」

戦士「盗賊といると面白いなー。うはははははっ」

盗賊「あぁ? こっちは不愉快だぜ」
577 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:27:00.37 ID:MevTnOcO0
戦士「もしかして本当は僧侶ちゃんに助けに来てほしかった?」

盗賊「当たり前だろ! ……いや、別に」

戦士「まぁ、俺で我慢しなさいよ。結構イイ男だぜ」

盗賊「それは笑える冗談だな。くっくっく」

戦士「今のは冗談のつもりじゃねぇ!」

戦士「むっ……ちょいストップだ」

盗賊「どうした? 出口が見つかったか?」

戦士「焦るなよ。死体だ、死体がここら一帯に転がってやがる」

盗賊「……ここに落ちた侵入者の末路ってか。嫌な気分だぜ」

戦士「ああ……。ん、いや」

盗賊「何だ?」

戦士「死体が着てる物を見る限りは……ここにあるのは女ばっかりだ」

戦士「服だけじゃない。こういうアクセサリーだって男が身につけるには」

盗賊「女の死体しかない? 女殺す趣味でもあんのか……よっ……」

盗賊「……」

戦士「大丈夫だよ。お前の妹ちゃんは死んでない」

盗賊「気休めだろ……」

戦士「俺を信じろよ、盗賊ちゃん」

盗賊「キモイ」

戦士「まぁ、死体は置いておこう。あまり見ていて気分が良くなるものじゃあない」

盗賊「そいつらの死因は?」

戦士「見たところだと、外傷らしきものは見当たらん。おそらく餓死だろう」

盗賊「……ふん、出口は簡単に見つからなさそうだぜ」
578 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:27:45.81 ID:MevTnOcO0
盗賊「……」

戦士「どした。急に黙りこんで? 諦めたとかじゃないだろうな?」

盗賊「んなわけあるかっ……!」

盗賊「音だ。風の音が聞こえる。もしかしたら」

戦士「出口が隠されているかもって? 俺にはそんな音聞こえないけど」

盗賊「目が見えねぇとよ、音に異常なほど敏感になってくんだよ……」

盗賊「失って初めて冴えるもんってのもあるようだぜ。おい、そこを真っ直ぐ」

戦士「わかったの?」

盗賊「黙って言う事きけ! そう、そこで……左に……」

戦士「いや、無理だ。そっちは行き止まりになっている」

盗賊「……壁に耳当てて聞いてみろよ。少しはわかんじゃねぇか?」

戦士「どれどれー?」ぴたっ

戦士「……あ、ああ。微かだが、風の通る音みたいなのが聞こえるような」

戦士「聞こえないような?」

盗賊「どっちだよっ」

戦士「聞こえました! 聞こえました!」

盗賊「チッ!」

戦士「怒んなよぅ〜」

盗賊「……もしかしたら、ここに隠し通路があるかもしれないな」
579 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:28:32.71 ID:MevTnOcO0
戦士「よぅし、その言葉を信じるぜ」

戦士は背負っていた大金槌を手に取り、構えた!

盗賊「おい! 下手な事して罠が作動したりしたらっ」

戦士「しゃらくせぇーーー!!!」


どかーんっ!


破壊した壁に穴が空いた。その先には道が見える!

戦士「お前の言う通りだな、盗賊。確かに通路があった」

戦士「出口かどうかはわからんが他に進む道もねぇ。行くだろ?」

盗賊「当たり前だぜ、バカ野郎。そこまで言わせんな」

戦士「……雑な岩の壁からきちんとした作りの壁になってきてる」

戦士「それでも暗いのには変わりないが」

盗賊「屋敷の内部へ侵入できたのかよ?」

戦士「まだわからないな。ここからもまた一本道……いや、先に階段が見えるぞ」

戦士「上へ上がる階段だ! 間違いないぞ!」

盗賊「……何故あの地下からここへ通じているかは不思議に思わねぇか?」

戦士「……」

戦士はチラチラと辺りを見回した。すると、壊した壁の付近に一本のレバーが

戦士「壊した壁の近くにレバーがあるんだけど?」

盗賊「なら、本当は隠し通路なんかじゃなく、この通路からさっきの地下へ向かうのが正しい道順だったようだな」

戦士「どうしてだ? あんな何もない場所に行く理由がないだろ」

盗賊「死体があったんだろ。ソレを隠す為の場所だったのかもしれねぇぜ」

盗賊「まぁ、俺たちには関係はないが……あの野郎が悪党だということはハッキリしてきたぜ!」

戦士「かもしれないな。俺は実際見てないんですけどね」

盗賊「見かけだけなら、普通の中年の男だ。ヤバいのは中身…! 糞野郎だと俺にはわかる!」

戦士「何でわかんのよ?」

盗賊「俺の妹に惚れる男は大体内面腐ってんだよ!」

戦士「……えぇ? 何で?」

盗賊「ふんっ!」

戦士「無視かよっ」
580 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:29:15.54 ID:MevTnOcO0
2人は慎重に階段を上っていった。

すると、まだ薄暗いが広間のような場所へ出る。

盗賊「奴がいたか!」

戦士「まだいねーよ。焦るなって言ってるっしょ」

戦士「灯りはつくかな……。少し探してみるからお前は座って休んでな」

盗賊「休息は必要ねぇ」

戦士「いいから。お前ずっと神経張ってんだから俺より疲れたろ」

盗賊「疲れてねぇよ……!」

戦士「はいはい」

戦士はぽんと軽く盗賊を押して、床へ尻もちをつかせた。

盗賊「お前っ!」

戦士「えっと〜……灯りは〜……どこ〜?」

盗賊「チッ……毎回勝手な事ばかりしやがって、お節介にも程があるぜ!」

戦士「……何か足に当たったぞ。この辺はやけに物が散乱してるな」

戦士「お、これかな」

カチッ。戦士はスイッチを入れて部屋の電気を付けた

戦士「!!」

戦士「やっぱり悪趣味だな、この屋敷の主は……」

盗賊「どうした。何があった?」

庭にあった物と同じマネキンが散らばっていた。

やはり同様に体の一部を欠損したような物まで。まるで玩具箱をひっくり返したあり様がそこにあった。

戦士「いや、気にしなくていい。ネズミが出てきただけだよ…」

盗賊「地下の近くだしな。一匹、二匹はいるだろうよ」
581 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:30:40.83 ID:MevTnOcO0
戦士(それにしても、この人形)

戦士は人形の一体を手に取った。

戦士(同じだ。庭にあった物と同じ。それに名前も彫ってある)

戦士「……よく見たら全部女の人形ばかりじゃないか」

盗賊「おい、もういいだろ。先へ進もうぜ」

戦士「あ、ああ」

戦士「盗賊。その男は一人の女によっぽど執着してるとか聞いてない?」

盗賊「あ? 知らねぇよ。何で俺があの男のそこまで知ってなきゃいけねぇんだ」

戦士「まぁ、そうだよな。悪い」

盗賊「…お前さっきからどうした? 様子がおかしいぜ」

戦士「俺はいつでもおかしいよ」

盗賊「くっくっくっ! ようやく認めたか!」

戦士「そこはフォローしなさいよ、お前」

戦士(まぁ、一々こんな事は気にしていられない。先へ進むべきか)

戦士「どれどれ。そろそろ進むとしますかぁ? 盗賊ちゃん」

盗賊「あ!?」

戦士「十分とは言えないけど、少しばかり座れて落ち着けただろう」

盗賊「……まぁな」

戦士は盗賊の手を引っ張って立たせた。

盗賊「この部屋の先はどうなっている? また一本道が?」

戦士「それには変わりないけどよ。扉があるんだ」

盗賊「扉?」

戦士「ああ、とりあえず開けるけど異議は?」

盗賊「ねーよ。とっとと開けろ!」

戦士「あいよ」ガチャ
582 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:31:18.75 ID:MevTnOcO0
盗賊「待て、なんかこの先から聞こえないか」

戦士「え?」

盗賊「……女の声。それから魔物らしき声がするぜ」

戦士「お前の妹か?」

盗賊「いや、恐らく違う。一人だけじゃない…複数人…何人もの」

戦士「何て言ってる? そこまで聞こえるか?」

盗賊「悲鳴に近いような」

戦士「……とりあえず、入ってみればわかるな」

戦士「魔物は俺に任せとけ!」


ガチャリ


戦士「……えっ」

重い扉を開け放つと、そこには信じられない光景が広がっていた。

人間の女たちが赤子ほどの大きさの魔物たちに、犯されている。

「だ、だずげでぇ……」「あ゛、あああぁ」「ひいいぃぃぃぃ」

「らめぇ!」「しゅごおおおぉぉぉ……」「ンアーッ!」

マキマキ『キキッ、キキキッ、キッ』

戦士「盗賊下がってろ!!!」

盗賊「な、何!?」

戦士「俺の後ろに、いろっ!! 黙って従え!!」

マキマキ『キキッーーーーーー!!』

大量のマキマキが戦士たちに襲いかかってきた!

戦士「魔物がっ……!」
583 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:32:18.47 ID:MevTnOcO0
次から次へと跳びかかってくるマキマキたちを大金槌で叩きのめし、蹴散らしてゆく!

戦士「うぉおおおおおおぉおおおおおおおッーーー!!」

盗賊「おい、戦士! 何が起きてる! 魔物に襲われているのか!」

戦士(何だこの数は……。何だアレは!? ま、魔物が人間を)

戦士「ド畜生めがッー!!」ぶちっ

マキマキ『ギギッ…』

戦士「何なんだ貴様らは!? どうしてこんなっ…」

マキマキたちの攻撃!

戦士「うぐぅ!?」

盗賊「戦士、俺も加勢する……! 無茶してんじゃねぇ!」

戦士「来るなァーーー!!! 俺一人で十分だ、退けッ」

盗賊「しかし……」

戦士(な、何が魔物と分かり合えるかだ。俺は、こんな、こんな奴らの為に!)

マキマキ『ウギャゥ!』

戦士「てめぇら全部皆殺しにしてやるッ!」

戦士の魔人切り!

グチャアと飛び散るマキマキの肉や血が戦士の体にはねる。
しかし、戦士は気にする様子もなく一心にマキマキたちを潰しにかかった!

戦士「…………はぁ、はぁ」

戦士「何だってんだ……」

盗賊「それはこっちの台詞だぜ」

盗賊「全員片付けたのか?」

戦士「ああ、全部殺した。それより……」

女s「あ、あ、ああ……」ガタガタ
584 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:33:15.35 ID:MevTnOcO0
盗賊「やはり女がいたのか。何人ぐらいいる?」

戦士「ここには十数人程だな。お前たち、大丈夫か」

女「だ、大丈夫じゃないわよ……いまさら助けに来たって」

戦士「勘違いすんじゃねぇよ。お前ら助けに来たわけじゃないよ、こっちは」

女「え?」

戦士「魔物どもは今俺が全部殺した。後は好きにしてくれ」

戦士「そこまで面倒見る気はないんでな」

女「そんな! あたしたちここでずっとアイツらに!」

盗賊「な、何されてたんだ」

戦士「知る必要もねぇな」

盗賊「お、おい……まさか」

戦士は道具袋の中から体を隠す布を取り出し、女に渡そうとした。が

戦士「……孕まされたか」

女「ううっ!」

女「こうやってあの人に必要とされなかった女は魔物たちに渡されるのよ」

女「後は、奴らの数を増やす為に…私たちが……。何人も死んだわ!」

戦士「そうか」

戦士「お前たち、どうしたい?」

女「し、死にたいわよ。こんなに穢れちゃったんだもの」

女「以前の様に日の光を浴びて堂々と暮らしていけない。もうダメよ……」

盗賊「そんな……」

女「だからいまさら助けに来られたって遅いって言おうとしたの!!」

戦士「そいつは悪かったな。申し訳ない」
585 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:33:46.74 ID:MevTnOcO0
戦士「楽になりたい奴は前に出てくれ。俺が」

盗賊「何言ってんだてめぇ!? 正気かよっ」

戦士「正直に言うとな……今、正気でいられない気分だよ……」

戦士「俺はこの人たちに生きろとは言う事ができない。だからせめてもの」

盗賊「ふざけんなよ。くそぅ……」

盗賊(あ、アイツももしかしたら、ここの女たちのように、酷いことを?)

盗賊「いやだ……」

女が一人、戦士の前に出てきた。

女「私を殺してください。お願いします」

戦士「ああ」

盗賊「ダメだ! 殺すな! よせ!」

戦士「彼女がそれを望んでいるんだ。そうしてやるのが一番だろう」

戦士「俺も、そろそろ甘い事ばっかり言えなくなってきたなぁ……」

盗賊「カッコつけてんじゃねぇよ! マジでどうかしてるぜ!?」

戦士「……」

女「さぁ早く。お願いします」

戦士「盗賊、ナイフを貸してくれ」

盗賊「う、うううぅぅ……!」

盗賊は戦士へナイフを渡してしまった。

戦士「目を閉じていて。すぐに終わる」

女「はい」
586 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:34:14.20 ID:MevTnOcO0
盗賊「何か助かる方法があるはずだろぉ…? そ、そうだ。時間魔法を使って体だけを前の時間に戻せるんだろ!?」

盗賊「お前があっちの世界でしてもらったっていう、魔法が!」

戦士「……あるにはある。だけど、あの子は今ここにはいないよ」

盗賊「連れてきたらいいじゃねぇか!」

女「時間があまり残されていないの。魔物はすぐに私たちの腹を裂いて出てきてしまう」

女「苦しまずに逝けるなら、そうさせてほしい」

盗賊「う、あぁ……」

戦士「綺麗に殺す事ができなくてごめんな」

女「」

盗賊「マジかよ……!」

盗賊「す、すぐに教会へ」

戦士「ダメだ。いま蘇生したら腹の中の魔物まで蘇る」

戦士「諦めてくれ、盗賊」

盗賊「そんな…――――――――」
587 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:34:57.93 ID:MevTnOcO0
戦士「ここの一件が片付いたら、僧侶ちゃんに彼女たちを弔ってもらおう」

盗賊「ああ……そうだな……」

盗賊「俺はあの男を絶対に許さんぜ……」

戦士「そうだな。俺もだよ」

戦士「僧侶ちゃんのナイフをこんな風に使って悪かったな。ごめん」

盗賊「……」

戦士「とりあえず、また先を目指すとしますか。な、盗賊?」

盗賊「早く連れてけよ」

戦士「はいはい」

女たちがいた部屋を後にし、先へ進むとまた大きな部屋へ2人は出た。

牢屋だ。牢の中には女たちがギッシリ詰まっていた!

「助けてぇー!!」

盗賊「ここの女たちは」

戦士「恐らく、さっきの順番待ちだろうよ。待ってな、すぐに解放する」

盗賊「大丈夫なのか? こいつらを連れて上の階へ上がって行けば」

戦士「俺が守る。それでいいだろうよ」

盗賊(こ、こいつ……一人でどんだけ背負う気だ……)

戦士「勇者殿たちには悪いが、まずはこの子たちを逃がす事を優先する」

戦士「もちろんお前にも悪いけど、盗賊」

盗賊「……いい。気にすんな」
588 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:35:50.26 ID:MevTnOcO0
女「ありがとうございます! ありがとうございます!」

盗賊「これで全員なのか?」

女「い、いいえ。まだあの男のお気に入りが……」

戦士・盗賊「お気に入り?」

女「ええ。どうも気に入った女は別の部屋に隔離されてるみたいで」

戦士「お前の妹ちゃんももしかしたらそこにいるんじゃないか?」

盗賊「……確かにあの男は、アイツは気に入っている様子だったが」

盗賊(よかった。希望は少し見えた気がする)

女「も、もたもたしていると奴らが戻ってきてしまう! 急いで逃げなきゃ!」

戦士「大丈夫だ。俺が魔物を倒すから」

女「いくら貴方が強いからといって、奴らが持つ時の砂を使われては危険よ!」

戦士「何それ?」

女「時の砂っていうのは、時間を少し前に巻き戻す特別な道具のこと」

女「奴らはそれを使って好き勝手できるのよ」

戦士「魔法とは違うのか」

盗賊「……少しの時間を戻す。もしかしたら奴はそれを使って」

盗賊「とにかく、面倒なのは避けるべきだぜ。とっとと上を目指そう!」

戦士「そうだな。お前たち、俺たちから離れるなよ」

女「離れる? 離れるものか……キキキッ!」

戦士・盗賊「!」

マキマキ『このままお前たちを爆破スルゾッ』

戦士「まずっ」

盗賊「チッ……!」


マキマキ『ドカァーーーン!!! ――――――』


戦士たちは爆発してしまった!
589 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:37:18.69 ID:MevTnOcO0
〜〜〜


女『離れる? 離れるものか』


盗賊「……やってみるもんだぜ。流石は俺だ」


女『えっ? あれ?』

盗賊はときのすなを使っていた。

マキマキ『ギギッ! なぜそれをお前が持っている!』

盗賊「俺が盗んだ。それだけだぜ…! くっくっく」

戦士「久々に盗んだな、アイテム!」

マキマキ『グ、グゥ……!』

盗賊「てめぇが教えてくれたんじゃねぇか。コイツを持っているってな」

盗賊「ま、下手してたら俺たちが負けてたぜ」

盗賊「盗みの感覚ってのは、目が見えていようが見えていまいがどうにでもなるもんだな」

戦士「さーて、それじゃあ騙してくれたお礼をしてやらなきゃな!」

マキマキ『キ、キィー!!!』

マキマキたちが襲いかかってきた!


戦士・盗賊「うおおおおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!!」


戦士と盗賊の攻撃! 会心の一撃!

マキマキ『ギ、ギギ……ウギッ……』

マキマキたちを倒した!

戦士「わりとお前動けるじゃんよ。どうして?」

盗賊「さぁな。慣れたんだろ」

盗賊「それより、この時の砂とやらを使っても俺たちは現在の記憶を引き継いで過去へ戻る事ができたわけだが」

戦士「魔女っちが話してたやつ? 素質がーとか」

戦士「俺たちに素質があったって事か? それとも」

盗賊「さて、どうだろうな……くっくっく、とにかくスッキリしたぜ」

戦士「本当だよ、全く」
590 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/06/29(金) 04:38:02.06 ID:MevTnOcO0
ここまでっす
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/06/29(金) 06:11:15.19 ID:y9+qUsC2o
盗賊が活躍してくれてうれしい
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 09:11:19.42 ID:TxO1YSzIO
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 10:09:58.15 ID:DuS8H22IO
勇者は尸良くんかなにか?
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/29(金) 11:59:39.49 ID:fPRUtzeT0
戦士と盗賊のコンビは格好いいな
どっちもどこか人間味があって好感持てる
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/30(土) 20:49:06.05 ID:17sAjCZw0
エルフかわいい!
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 01:48:38.61 ID:7jC+59xDO
本当にかわいいのは戦士だがな
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/01(日) 12:40:29.41 ID:fXb5DWMCo
>>596
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 22:16:58.02 ID:dFKXLRRSO

戦士は背負いこみすぎじゃね?肉ダルマのくせに…

盗賊の久々の活躍だな
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/01(日) 22:38:17.13 ID:j2M2nZAPo
肉ダルマとて、ここで背負わねばただのホモだ。
600 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:27:36.04 ID:HdmpaeVV0
玄関


女魔王・魔剣「邪魔するぞッーーー!」『勇者ちゃんのご登場だよ! お茶出してお持て成しして!』どかーん

女勇者「お、お邪魔しまーす」

僧侶「本当に罠を一掃できたようですね。さすがは勇者様」

女魔王「もっと誉めても罰は当たらぬわよ。ふっはっはー!」

魔女「あんな雑なやり方でなければねぇ」

女勇者「エントランスは普通のお金持ちっぽい外見だね」

僧侶「ええ。まるで外に置いていた人形が嘘のように」

僧侶「……勝手に進んでも大丈夫かしら」

魔剣『お邪魔します言ったから大丈夫だよ〜』

僧侶「そういう問題かしら」

魔女「こっちは殴り込みに来た立場よ? 無礼講、無礼講」

女魔王「その通り。遠慮する必要は一切なし! 敵も罠を仕掛けておったのよ」

女魔王「出迎えは十分であるわ」

僧侶「なるほど。では、進みましょうか」

女勇者「アグレッシブ〜……これが勇者」

魔女「あら、勇者ってのは人様の家の中に入ってタンスの中を荒すような輩じゃないの」

魔女「この程度は許されるべきですわよ。ついでに何か貰ってけば?」

女勇者「勇者を泥棒扱いすんなっ!」

「お待ちしておりました」
601 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:28:26.22 ID:HdmpaeVV0
メイド「ようこそ。さぁ、ご主人様が応接間にてお待ちになられております」

僧侶「いつのまに…。使用人さんでしょうか」

魔女「メイド服に身を包んでるし、そうじゃないの。歳も若そう。妻とは思えませんわ」

魔剣『あれ奥さんならロリコンっていうの? それじゃないかなぁ』

女魔王「貴様はどこからそういった情報を知ってくるの」

魔剣『戦士ちゃんだよ〜♪』

女魔王「いらぬ教育を……」

僧侶「後で叱っておきますね」

メイド「そろそろ、よろしいでしょうか?」

女勇者「待ってよ! 外に罠が仕掛けてあったり…そっちはもう私たちを敵と見てるんだね!」

女勇者「だったら容赦しないからね」

メイド「はぁ。罠、でございますか。その様な物を貴女方の為に仕掛けた覚えは一切ございません」

メイド「きっと、ソレはご主人様の趣味でしょう」

女勇者「趣味って……」

魔女「やはり趣味悪っ! ですわ。庭ならもっと庭らしくなさいな」

女魔王「貴様が言えた立場?」

魔女「人は人、私は私。ですわ」

僧侶「……勇者様。この先にもまだ罠が存在すると思われますか」

女魔王「魔剣〜」

魔剣『ないよ! たぶん!』

僧侶「たぶんじゃちょっと困るかな……」

魔王一行はメイドの後ろを歩き、応接間を目指した。
602 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:28:57.98 ID:HdmpaeVV0
メイド「……」

魔女「随分と複雑な構造ですわね。無理に部屋数を増やそうとしたのかしら」

女勇者「私だったらすぐに迷っちゃいそうだよ…」

魔女「ガキは保護者から離れないように」

女勇者「ガキじゃないし!」

僧侶「少しは緊張感を持ちましょうね…」

女魔王「ウロウロ、ウロウロとどこまで余を歩かせる気か? いい加減にせよッ」

メイド「当館内は大変広く複雑な作りとなっています。申し訳ありませんが、あと少しだけの辛抱を」

女魔王「客を持て成すのは主の役目! 普通玄関まで出てくるのはそっちであるわよ!」

女勇者「でも魔王とかってお城の奥の方で勇者を待ち構えてるじゃないですか?」

女魔王「誰が魔王かッー!?」

女勇者「そうは言ってないよぉ!?」

魔女「……ちょいと。使用人はお前一人ですの?」

メイド「はい。ご主人様へ使える使用人めは私一人でございます」

魔女「この広い屋敷の中でねぇ。ここを見る限りは、ごちゃごちゃしてるのが嫌いだとも思えないけれども」

僧侶「こちらのお屋敷に住んでいらっしゃるのはあなたとその主人さんの2人で?」

メイド「いいえ」

僧侶「……? ご家族が?」

メイド「……」

魔女「このメイドも人形みたく生気が感じられないですわね。気持ちが悪い!」

僧侶「魔女さん、失礼です」
603 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:29:29.92 ID:HdmpaeVV0
女魔王「……」イライラ

女魔王「ガァーッ!! まだかッ、まだ到着せんのか!」

メイド「ご辛抱を」

女魔王「それは先程聞いたわ! 貴様、余をおちょくっておるのかよ」

メイド「滅相も御座いません」

魔剣『勇者ちゃん。こいつ殺して僕たちで進んだ方がきっと早いよ〜』

女魔王「余もそれを思ったところよ…」

僧侶「いけません! 彼女は無害な一般人かも」

女魔王「あの男と住んでる時点で無害な人間とは思えぬ! 殺すッ」

メイド「お止め下さい」

魔女「必死さを感じられませんわね?」

女勇者「ど、どうしよ……」

魔女は女魔王に胸倉を掴まれているメイドの顔を覗き込んだ。

魔女「!」

メイド「お止め下さい。お止め下さい。お止め下さい」

体では何も抵抗を見せていないメイド。しかし、死人のようなその瞳は僅かに涙でうるおわせていた。

魔女「この女……?」

僧侶「勇者様、乱暴はっ」

女魔王「喧しいッーーー!!!」

魔剣『やっちゃえ〜!』

女魔王の攻撃!

メイド「お止め下さい。お止め下さい」
604 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:30:11.89 ID:HdmpaeVV0
魔女「どっこいしょー!」

魔女が女魔王を突き飛ばした!

女魔王「あだっ!?」ズコッ

女魔王「魔女貴様ァー! 余の邪魔立てをするなら、まずは貴様を」

魔女「ちょっと待てですわ。この女は呪いを受けている」

僧侶「そうです! 待ってください! 呪いを……呪い?」

女魔王「呪いだとォ?」

女勇者「まさか、師匠たちがかけられたのと同じ様な」

魔女「さぁ。それはどうかわからないけれど」

魔女「この女は恐らく、この屋敷の中に縛られている。あるいは命令を忠実に聞かなければならないような呪いにかかっ
ている。ですわ」

僧侶「何故、わかったのですか?」

魔剣『そうだよ〜。僕でさえわかんなかったのに』

魔女「ただの勘よ。間違いないと思うけれど」

魔女は空間魔法を使い、魔法薬を取り寄せた。

女魔王「ああー!! 貴様、それをこの女に飲ます気じゃないでしょうねッ」

魔女「またいつでも作れるのだから構わないでしょ?」

女魔王「余が先〜!」

女勇者「だったら師匠も〜!」

僧侶「……と、とりあえず助けられるのなら、こちらの方を優先すべきでは」

魔女「ほれ、口を開けなさい。ゆっくり流し込むから」ぐい

メイド「……ん、ん……ん……ん…………!」
605 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:30:46.74 ID:HdmpaeVV0
女勇者「ていうか、まだ時間置かなきゃだったんじゃないの?」

魔女「そうですわよ?」

女勇者「え゛っ」

魔女「どうせこの女からはお金も貰っていないし、ただの親切でだし」

魔女「何も起こらずに治れば運が良かったという事で」

女勇者「いや、良くないよ!?」

メイド「……」

僧侶「大丈夫ですか? 体に何か異常は」

メイド「あ」

メイド「あっ……う……」

輝きが失せていたメイドの目に、徐々に光が灯ってきた。

魔剣『おや〜?』

メイド「助けて……たす、けて……!」

女勇者「……これ、治ったの?」

魔女「さぁ?」

女魔王「余の薬を飲ませてくれたのよ。治ってなければ許さん」

僧侶「よしよし。勇者様、よく我慢できましたね」ニッコリ

女魔王「あァん〜!?」くわっ

メイド「はぁ、はぁ……」

女勇者「だ、大丈夫?」

メイド「助けてっ!!!」がしっ

女勇者「えー!?」
606 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:31:18.14 ID:HdmpaeVV0
メイド「ああああ、あたしを! あたしをここから逃がしてぇ! お願い!」

女勇者「おおおお、落ち着いて! 落ち着いてくださいよ!」あたふた

魔剣『女勇者ちゃんも落ち着こうよー』

僧侶「もう大丈夫です。安心してください」

メイド「ひぃ、ひぃ……!」

魔女「ほーら! 私の言った通りですわよ! ……誰か誉めなさい!」

魔剣『ぐっじょぶ』

女魔王「おう、何が助けてか。意味不明であるわよ」

メイド「ここから出なきゃ……あの男から逃げなきゃ! ダメなの、あの男の傍にいては!」

女勇者「どうして?」

メイド「ああああぅぅぅぅ……っ」

僧侶「まだ混乱している様子ですね。少し休ませてあげましょう」

魔剣『休ませてって、ここ敵の本拠地だよ? のんびりしてていいの?』

僧侶「この方を放っておくわけにもいかないから」

女魔王「適当に外へ放り出しとけば勝手に帰るであろうが」

僧侶「まだ、無理かと」

魔女「ていうか。外へ出すにしてもこの辺りじゃ窓の1つもありもしないし」

魔女「玄関からはだいぶ離れたと思われる。ですわ」

「……」

女勇者「ま、まさか屋敷の中で迷子にさせるのが敵の作戦!」

女魔王「わざわざその様な面倒をする輩が何処におるか。阿呆め」
607 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:31:50.22 ID:HdmpaeVV0
僧侶「でしたら、本当に主人さんが待つ応接間に私たちを誘導していたのでしょうか」

魔女「敵のみぞ知る〜……って感じですわね」

女勇者「大丈夫? 話せる?」

メイド「す、少し落ち着けました」

メイド「あの男は狂っている……。おかしいの」

女魔王「それは重々承知済み」

メイド「あたし、3年前ぐらいにこの屋敷の男に貰われたんですけど」

メイド「そこからの記憶が……全然ないんです」

僧侶「やはり呪いで操られていたのでしょうね。怖かったでしょう」ナデナデ

メイド「うっ……」

女勇者「じゃあどうして狂ってるって」

メイド「わからない? 屋敷の中からして異常ですよ。それに、あの男は女の人たちを――」

〜〜〜

女勇者「……あれ」

女勇者「さっきの子、どこ行っちゃったの?」

僧侶「え? ……あ」

魔剣『い、今』

魔剣『魔力の痕跡があったよ! 何か、起きた!』

女魔王「罠か?」

魔女「……そうではないみたい。ですわね」

近くに置いてある彫刻にメイドは刺さっていた。
608 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:32:41.51 ID:HdmpaeVV0
僧侶「そんな!?」

女勇者「きゃあああああああああぁっ!!」

女魔王「時を止められたか。あやつの気配は全く感じなかったが」

魔女「本の一瞬の出来事でしたわね。私も気付けなかった」

僧侶「……なぜ。なぜ敵は私たちではなく、あの方だけを」

女魔王「聞かれてはならん事を語ろうとしておったのだろうな」

女魔王「あの小娘は何を伝えようとした?」

女勇者「わ、わかんないよ……。あっという間で」

魔剣『でもどーしようねぇ? 案内係死んじゃったよー』

僧侶「こうなれば仕方がありません。それらしい所を調べて」

ぞわぞわぞわ・・・

魔剣『むっ!』ピピーン

魔剣『何か来るよ―――――――――』


〜〜〜


気がつくと、一行は大きな扉の目の間にいた。

「!」

魔女「いつのまに!」

女勇者「お、おかしいよ!? さっきまで廊下にいたのに……どうして」

女魔王「魔剣が直前で何か反応しておったが〜〜〜」

女魔王「肝心の魔剣の姿が見当たらないわねェ」

僧侶「え? 鞘の中に納めていたじゃないですか」

女魔王「確かにそうしていた。が、現に今ここにないであるわ」

僧侶「な、何が起きたの……」

魔女「それより、何ですの。この疲労感は。まるでここまでうんと長い距離を歩いてきた様な……」

女勇者「だ、だよね。すごい疲れてる」

僧侶「……私たちもここまで時を止められて、動かされたのでしょうか」

魔女「ならこの疲労感の説明は? 足のダルさもありますわよ」

女魔王「ふむゥ」

女勇者「ここまで歩いてきた。でも、私たちにその記憶はない?」

女勇者「時間が飛んだ?」

魔女「!」
609 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:33:13.82 ID:HdmpaeVV0
魔女「珍しく冴えてるじゃない!」がしっ

女勇者「へ?」

魔女「時間魔法の中には時を一定時間ふっ飛ばして未来へ移行させてしまうものがあるの」

女魔王「今、余たちはその魔法を受けたと?」

魔女「確証はないけれど。恐らくは。ですわ」

僧侶「その、飛ばされた時間の記憶は引き継げないというのですか?」

魔女「言ったはずですわ。時間魔法には素質が必要だと」

魔女「過去と現在での間に起きた時間は私たちの記憶の中ではなかった事になってますの」

女勇者「でも、体の疲れとか」

魔女「そう。実感はないけれど、確かに私たちは゛間゛の時間を体験していた」

魔女「だから疲労感だけは体に残っている。といったところかしら?」

僧侶「時間魔法とは、想像以上に恐ろしいものですね…。止める、巻き戻し、そして早送り」

僧侶「早送りとは仮定を飛ばして、先の結果が対象者だけに残るものでしょうか? それとも使用者も」

魔女「それはわからん。ですわ」

魔女「魔法は使いよう。その気になれば好きにアレンジできるの」

僧侶「そうですか……」

女魔王「結果があやつにも残るのであれば、再度早送りされた場合はあやつの死体がきっと余の目の前に転がるわ」

女魔王「余はかならずあの男をぶち殺すからね!」

『いやはや、よくわかったね。賢いお嬢さんたちだよ』

「!」

『いつまでも部屋の前で立たれていては落ち着かない。入りたまえ』
610 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:34:12.31 ID:HdmpaeVV0
応接間


男「やぁ」

女魔王「わざわざ余が貴様を始末しに訪れてやったわ。感謝せよ」

男「ところで〜〜〜……。気づいたかね」

女魔王「あァ?」

男「この部屋は玄関から入ってすぐの場所にあるんだ。君たちにはぐるぐる私の家の中を歩き回ってもらっていたよ」

男「ご苦労様」

女魔王「貴、様ァ……!」

女勇者「ほらぁ! やっぱり私の予想通り、迷子にさせる作戦だったんだよ!」

魔女「どーかしらねぇ」

男「疲れとは、脳の活動を緩慢にさせて集中力を乱させるものでね」

男「私は君たちに対して優位な立場でいたい。だから軽く運動してもらったよ」

男「ああ、そこに人数分、丁度座れるソファがあるがね。座る事は許可しない」

男「そこに突っ立てていたまえ。私は座っているがね…」

僧侶(何を考えているかさっぱりわからない)

女魔王「ふん!」

女魔王はソファへ堂々と腰かけた。

女魔王「客人には精一杯持て成せェ。茶も出せ」

女魔王「貴様らも遠慮せずに座ったら――――――」

〜〜〜

女魔王はソファから離れた位置に立っていた。

女魔王「……?」

「!」

僧侶「い、いつのまに!? 勇者様っ」

魔女「詠唱がない……。あの男、一瞬で時間魔法を使ったといいますの?」

男「ふゥ〜〜〜……」
611 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:34:48.55 ID:HdmpaeVV0
男「恐怖とは、疲労と相性がいい」

男「動揺や混乱を誘うなら一番の組み合わせだな。そうは思わないかね?」

女魔王「……」

女勇者「そ、そうだ」

女勇者「どうしてあの子を殺したの! 酷いよ!」

男「それはすまない。私はお喋りな女を好かなくてね」

女勇者「この野郎っ」

僧侶「待って……。下手に踏み込んではまた何かされかねません」

女勇者「! なら、隙をついて」

魔女「あの様子だと隙をカバーできる何かが用意されているようにも思えますわ」

魔女「まだ。下手な手出しはすんな、ですわ」

女勇者「うっ〜……」

女魔王「さて、余の所有物である魔剣を無くしたのだが」

女魔王「もちろん。貴様が盗んだのだろう?」

男「さぁてね〜〜〜……」

男「どう思うかね?」

女魔王「今、申した通りだ阿呆が」

女魔王はソファへふたたび腰かけた。

男「おいおいおいおい! 私は君に座っていいと許可したかぁ? 君は座っちゃあいけない」

女魔王「この男がソファへ座るのを禁ずる」


\ ルール変更ッ 男はソファへ座る事を許されない! /


男「!?」

男は謎の力によってソファから落とされ、床へ尻もちをついた。

女魔王「゛貴様が゛座るな」

男「っぐ……!」
612 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:35:19.45 ID:HdmpaeVV0
魔女(そうですわ。勇者のあの魔法を使えば時間魔法に対抗できなくもない)

魔女(……でも、あの魔法の実態は分からない事だらけ。それに消費する魔力の量だって)

魔女「あの野郎がそれに気づかずにバカスカ使いさえしなければ、勝てなくもない。ですわ」

女勇者「え? 何が?」

魔女「勝てない相手ではないと言ったのよ」

女魔王「いいソファであるわね〜。座り心地は悪くはない」

女魔王「あれぇ? 貴様は座らんのか? 貴様のソファだろうに」ニヤニヤ

男「……」

女魔王「まぁ、余が許可しない限りは無理かwwwwwwww」

女魔王「余をあの程度で征服したつもりになるなよ。それは不可能な事なのだから」

男(まただ)

男(この女、また例の妙な魔法を使ったな。拘束する魔法とばかり思っていたが…)

男(正体は、奴の言う事を、奴が制定したルールに無理矢理従わせるといった魔法!)

男(無茶苦茶だ……。簡単に家の中へあがらせたが、少し無策過ぎたか?)

男(いや、問題ない。私にはタイムマスターがいる。時を自在に操れるのだ……!)

男(邪魔な剣はアイツに奪わせた! 私があの女に脅える必要は万に一つもない!)

女魔王「どうした。動揺しておるのか? ん?」

男「いや……そうじゃないさ」チラ

男は女勇者たちへ向いた。

僧侶「な、何か」

男「君らも座りたまえ。そうだな。客人を立たせっぱなしにするのは失礼すぎた…」

男「どうぞ」

僧侶「……結構です」

〜〜〜
613 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:35:57.95 ID:HdmpaeVV0
3人はいつのまにかソファへ座っていた。

女勇者「あ、あれ!?」

僧侶「一々驚く必要はありませんよ。また時間魔法です」

女魔王「貴様だけはずっとそうして立っておれよ〜! それか床に座れ」

男「そうだなぁ。女性に雑な扱いはできないよなぁ……?」

魔女「ちょいと。あの男、魔法使いではないですわよね」

女勇者「どうして?」

魔女「こんなつまらない事に時間魔法を使うのよ? 消費魔力はバカにならない」

魔女(まさか、本当に魔法薬を使って魔力器官を)

男「」

魔女(一切疲労した様子は見えない)

僧侶「1つお聞きしたい事があります」

男「どうぞ。答えられる範囲ならば」

僧侶「あなたは呪いの魔法も扱えるのですか」

女勇者「それ、聞く必要あります……?」

僧侶「答えてください」

男「……ああ、勿論だとも。それが?」

僧侶「いえ、別に」ジロリ

僧侶は男を睨んだ。

男「そんな怖い顔をしては、せっかくのお美しい顔が台無しですよ」

男は僧侶の顎を持って、舐める様にじろじろと見つめた。

僧侶「……」

男「少し、私が求めている顔ではないが……せっかくだ。君を私の妻に迎えてもいい」

男「どうかね?」

僧侶「馬鹿を言わないで」

僧侶は男の手を払い除けた。

男「そいつは残念だよ」
614 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:36:41.63 ID:HdmpaeVV0
女勇者「あ、外のマネキン……アレは趣味なの?」

男「ノーコメント」

女魔王「趣味で違いあるまい。悪趣味な、なァ」

魔女「嫌いじゃないとかほざいてなかったかしら?」

女魔王「喧しいわ」

女勇者「……じゃあ、マネキンに彫られてた文字は?」

男「ノーコメント!」

男「さぁ、他に私にどんな質問をしたい? 時間が許す限りは答えてあげたい」

男「あと……2時間ぐらいかな。その時間に出かけなければならない用があるんでね」

女魔王「用だと? 行けると思っておるのかよ。貴様はこれから死体と化すのだぞ」

男「冗談を。私にはそんなつもりはないよ」

男「ここへ君たちを招き入れた理由は何も始末しようとか物騒な考えからじゃあない」

僧侶「……? どういうことです」

男「その女の剣を手に入れる」

男「だが、この件は既に終えた。無事に私の手の元にある」

女勇者「あれ、魔剣さんって普通の人間じゃ触れないんじゃ」

女魔王「魔物を使ったか。用心深い奴である」

男「あとは〜〜〜……そうだな、男二人は既にいなくなってくれた事だし」

男「君たちを手に入れてみせようじゃないか。屋敷の置物か、奴らの慰み物程度にはなるだろう」

魔女「最悪、ですわね」
615 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:37:15.23 ID:HdmpaeVV0
男「私の静かな生活を脅かす者は全て許さない」

男「どの様な手を使おうが、始末させてもらう」

女魔王「否、余が貴様を始末する。勘違いするでないわ」

女勇者「師匠の妹さんを開放してもらう為にも、お前を叩きのめす!」

男「血気盛んなお嬢さん方だ」

魔女「そーれっ」

魔女は雷の魔法を使った!

指先から放たれた雷光が男へ走る!

男「」ぱっ

魔女「!」

女魔王「そこかァッーーー!!」

女魔王の攻撃!

男「」ぱっ

女魔王(外した!? 違う、また時を止めて)

僧侶は防御力上昇の魔法を唱えた!

僧侶「気をつけて。時が止まっている間に攻撃されては一溜まりもありませんよ!」

女勇者「ど、どこに……どこにいる!?」

女勇者は鋼の鞭を構えて男の姿を探す。

男「私が早すぎて追えないかね?」ぽん

女勇者「ひっ! このぉー!!」

女勇者は鋼の鞭を振るった! しかし、男に当たる事なく、鞭は床で大きな音を響かせてを跳ねる!

魔女「ちょいとー! 闇雲に攻撃していてはこちらが消耗するだけですわよ。考えなさい!」

女勇者「わかってる! わかってるけど無理ー!」

魔女「な、何それ」
616 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:38:31.33 ID:HdmpaeVV0
魔王たちの攻撃はどれも当たる寸前で回避されてしまう!

僧侶(でも、向こうからの攻撃はまだ1つもない。なぜ?)

僧侶「一体何を考えているのか読めない……!」

男「だろうな。ンンふゥ〜〜〜……ペロリ」ペロペロ

僧侶「っ〜〜〜!?」

女魔王・女勇者「おりゃーーーッ!!」ぶんっ

男「」すかっ

女勇者「僧侶さん!」

僧侶「だ、大丈夫……。少し驚いただけです」

僧侶(あの人生理的に無理ぃっ!!)ゾゾー

女魔王「ええいッ、一々これでは埒が空かん!」

魔女「今こそ例のルール魔法を使用する時でしょうがっ」

女魔王「分かっておるわよ。あの男が魔法を使用するのを禁ずる!」


\ ルール変更ッ 男の魔法使用を許可しない! /


魔女「……? 随分乱用しても魔力が尽きなくなってきた。ですわね?」

女魔王「今はそれは関係あるまい! これであやつの時間魔法を封じたッ」

男「ほーう?」

女勇者「なら、これでッーーー!」

女勇者は炎の呪文を唱えた! 火球が男目掛けて飛ばされる!

男「」ぱっ

女勇者「!?」

男「捕まえたぞぉ?」がしっ

男(この娘に混乱魔法をかけろ、タイムマスター)

?『了解しました。残り魔力量が僅かです、一度撤退をすること推奨』

男(空間魔法で拾ってくれたまえ。撤退をしようじゃないか)

男「ふっふっふっ……」

女勇者「……ん〜〜〜」

女勇者は混乱魔法をかけられてしまった!
617 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:39:34.91 ID:HdmpaeVV0
女魔王の攻撃!

男「精々身内で争いたまえよ。無様に!」

男は空間魔法で何処かへ逃げてしまった。

女魔王「チッ、逃がしたか……」

女魔王(あの男、なぜ魔法が使えた? 余が封じたはずなのにっ)

女勇者「うあへへへぇ〜〜〜〜〜〜」ぶん、ぶんっ

女勇者はわけも分からず鞭を乱暴に振り回している!

魔女「あぶねっ」

僧侶「混乱している!? いつのまに状態異常の魔法を使ってきたの!」

女勇者「あへぇ〜〜〜〜!」ぶんっ

女魔王「ふん!」がしっ

女魔王は鋼の鞭を素手で掴み取り、女勇者を床へ抑え込んだ!

女魔王「寝ぼけておるのか貴様。目を覚ますのよ!」

女魔王の攻撃! 攻撃!

女勇者「ぶっ、ぐえぇ、げぇ!? うぎゃ…!」

僧侶「ゆ、勇者様やりすぎです! やりすぎです!」

魔女「早く回復魔法を唱えてあげるべきじゃないの?」

僧侶は状態異常回復の呪文を唱えた!

女勇者「」ぴく、ぴくぴく

女魔王「全く! こやつは本当に足を引っ張る天才であるわねッ」

僧侶「……回復もしてあげた方がいいかしら」

魔女「おー、ピクピクしてますわ。面白い!」ツンツン

女勇者「」ぴくん
618 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/02(月) 02:44:05.90 ID:HdmpaeVV0
ここまで

>>570
嫌いなキャラ書くわけないだろ
弱いのは仕方がない
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/02(月) 02:47:00.70 ID:T9dC4w+3o
>>125

弱いおかげで混乱役に立たなかったな
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2012/07/02(月) 02:52:33.17 ID:BDDjRNGd0
俺も僧侶ちゃんぺろぺろ
ついでに役立つ女勇者ちゃんもぺろぺろ
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 09:29:28.76 ID:8uzVE3BIO
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage saga]:2012/07/02(月) 17:53:49.65 ID:3ddqPqO7o
この男うぜぇ・・・
魔王さんとっとと殺っちゃってくださいよ
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/02(月) 20:55:27.43 ID:gEcJOU2oo
おっつ
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 21:39:05.40 ID:aBFeY6YIO
まだですか
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2012/07/08(日) 12:09:34.36 ID:Lq4Ptd/p0
時間魔法相当強いけど、こいつに魔王ちゃんが負ける光景は全く想像つかないやwww
626 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:34:47.66 ID:2p/Sgukp0
ガチャリ


戦士「開いたのか?」

盗賊「ああ、手応えアリだぜ。よく盲目の奴に解錠なんかやらせるな、てめぇ」

戦士「ぶっ壊せなかったんだし仕方がないべ?」

2人は扉を開いた。

盗賊「今度こそどうだ? いい加減当たりであって欲しいところだぜ…」

戦士「この屋敷の部屋の多さは異常よなぁ。俺ももう懲り懲りしてきたところ」

戦士(みんなは無事だろうか。時間魔法、厄介そうだし……)

盗賊「おい、扉の先はどうなっている?」

戦士「あ、ああ! えっと…階段が」

戦士「……?」

盗賊「あ?」

戦士「いや、変な感じがして。きっと気のせいだろう。行こうぜ」

盗賊「その台詞だと絶対何か起きる確率が高そう」

盗賊「しかし! このまま進まねぇなんて選択肢は俺にはないぜ!」

盗賊「進むぞ! 戦士!」

戦士「ほいさー」
627 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:35:21.13 ID:2p/Sgukp0
盗賊「それにても時の砂か」

戦士「よく分からないけどよ、どれぐらい時間を巻き戻せるんだろうな?」

盗賊「…ちょっぴり?」

戦士「そのちょっぴりを具体的に知りたいんですけどねぇ?」

盗賊「んなの俺が知るかよ。勝手に一人で考えてやがれ」

戦士「ああ、冷てー男だな……」

盗賊「お前ぐらい馴れ馴れしいとうぜぇんだよ、アホ」

戦士「はぁ!? 俺がウザいと? え? えぇ〜?」

盗賊「うぜぇ!!」

戦士「盗賊ちゃんは思春期の少年みたいねぇ」

盗賊「次くだらん事話したらぶっ殺す」

戦士「へいへい」

戦士「……なぁ」

盗賊「……」

戦士「あ、別に変な話じゃねーよ?」

盗賊「一々確認取らなくていい」

戦士「そう。あのな、どうも妙じゃないか?」

盗賊「妙? 視覚的にそれを感じたのなら俺には分からないぜ」

戦士「俺たちは今階段を上っているよな」

盗賊「そうだな」

戦士「一向に階段を登り終えていないのだが…」

盗賊「え?」
628 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:35:54.86 ID:2p/Sgukp0
盗賊「長い階段なのか?」

戦士「いや、そうでもないよ。昇り終えるのに2分も必要ない」

戦士「だがよぅ、俺とお前がこうしてダベりながら上っていて、どれぐらいの時間が経った?」

戦士「感覚的には5分程かと俺は思うんだ」

盗賊「……」

盗賊「時間が、巻き戻されている? とか」

戦士「ああ、俺もそれを睨んでる。だけどよ?」

戦士「もし時間が戻されているなら、俺らの今さっきまでの会話は?」

戦士「不自然に途切れてすらいなかったんだぜ?」

盗賊「そんなの……こちらに時間が巻き戻っているという認識ができていなかったから」

戦士・盗賊「……?」

盗賊「何言ってんだか分けわからなくなってきたぜ」

戦士「うん」

戦士は盗賊に身を寄せ、ひそひそと耳打ちをした。

戦士(もし、仮に俺たちが敵の攻撃を受けているというのなら)

戦士(今までにこんな上階へ到達させないなんて間接的妨害は受けなかった。つまりだね)

盗賊(この階段の先が1階である確率が高いというわけだな…)

盗賊(いや、それどころか奴がこの上に……!)

戦士「よし」

戦士は盗賊の手を離し、一人で階段をゆっくり上った!

盗賊「お、おい」

戦士「……」
629 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:36:33.67 ID:2p/Sgukp0
戦士(一歩、二歩、三歩……確かに、俺は今一段ずつ段を上れている)

戦士(だけど何だ? なぜ俺たちはいつになっても上階へ辿りつけんのだ?)

戦士は階段を駆け上った!

盗賊「てめぇ、おい、大丈夫だろうな!」

戦士「今のところは―――――」

戦士「……あれ」

戦士「きょ、距離が縮まっていない!」

戦士(それどころか、俺は一段も上がれていないんじゃ)

戦士は道具袋から馬のフンを取り出して、今自分が立っている段に置いた。

戦士はまた駆け上った!

戦士「うおおおおおおぉぉぉ〜〜〜!!」だっだっだっ

盗賊「あ、アイツ何してんだ……」

戦士「―――――はぁ、はぁ、はぁ」

戦士「!」

戦士(やっぱりだ…やっぱり何らかの妨害を受けている…)

馬のフンが置いてある段は、今の段から2段上にあった。

戦士(上れているどころか降ろされてきてるじゃあないか)

戦士「盗賊、俺の予想は大当たりだよ。やだねぇ〜…」

盗賊「ほら、言った通りだぜ。畜生め!」
630 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:37:01.33 ID:2p/Sgukp0
戦士「時間が戻った感じした!?」

盗賊「分かるかよ。ただ、通して思考できていたとは思うぜ」

盗賊「違和感……なんて感じられねぇしな。時間魔法に俺たちは耐性はないんだ」

戦士「……だとすれば、この階段自体の仕掛けか何か?」

戦士「いや、そんな筈はない! 俺は確かに階段を駆け上った!」

盗賊「……と、とにかくだぜ」

盗賊「一旦落ち着くべきだ。これでは奴の思う壺」

盗賊「よく周囲を調べろ!」

戦士「既に調べている!」

戦士「何もない…おかしな所なんて、何も」

盗賊(もし時間が巻き戻されているのなら)

盗賊は懐から時の砂を取り出した!

盗賊「おい、肉」

戦士「ダルマが外れた!?」

盗賊「それはどうでもいい。一回俺を担いで全力で階段を上ってみろ」

戦士「え?」

盗賊「いいから」
631 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:37:36.30 ID:2p/Sgukp0
戦士は盗賊を持った。

戦士「お前軽いなぁ!」

盗賊「……この抱き方やめろ」

戦士「俺だってやだよ。何で野郎をお姫様だっこせねばならん」

盗賊「なら普通に背負えばいいだけだろうがっ!」

戦士「だよね…」

背負い直した。

戦士「で、これにはどんな意味が」

盗賊「いいから走ってさっさと上まで上れよ。試してみたい事があるんだぜ」

盗賊「いいか。もう少しで上り終えそうだというところで俺に声をかけろ」

戦士「? ん、ああ」

戦士は階段を駆け上った!

戦士(盗賊の奴、何考えてやがんだ。こんなの意味が)

戦士「はぁ、はぁ……! もうすぐ! あと少し!」

盗賊「よし! まだ上れているのか!?」

戦士「まだ行けてる! まだ、上れている!」

戦士「……って、あれぇ?」

戦士「ま、まただ! また俺たちは゛下りている゛ぜ!? 盗賊ぅー!」

盗賊「ふん!」

盗賊は時の砂を使った!

〜〜〜
632 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:38:07.18 ID:2p/Sgukp0
戦士「!」

戦士「え、あれ……上にいる……?」

戦士「盗賊! 俺は確かに下へ降りていたんだ…なのに、今度は上に」

戦士「あと少しで上り終えるという位置に」

盗賊「上手くいったな」

盗賊「俺の予想が正しければ、俺たちは時間を撒き戻されたんじゃねぇ」

盗賊「時間を止められたんだ」

戦士「……だから、記憶を引き継いでいたってこと?」

盗賊「野郎、馬鹿げた事に、一々時間止めて俺たちを下の段まで運んでやがったんだぜ」

戦士「なんつー手間のかかる事を」

盗賊「今の内だぜ! 早く踊り場まで上るんだ!」

戦士「おう!」だっだっだ


―――どすんっ!


戦士・盗賊「!?」

バルザック『WRYYYYYYYYYYYYYYY』
633 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:38:39.86 ID:2p/Sgukp0
盗賊「魔物か!」

戦士「そうらしい。こいつが俺たちをハメてやがったのか」

戦士「盗賊、今回の相手はヤバそうだ。お前は下がっていた方がいいぜ」

盗賊「下がるって、お前下がったら階段あるじゃねーか…」

戦士「…とにかく、盲目のお前じゃいると返って邪魔になる。退いてて」

盗賊「……」

バルザック『フン、貴様一人でこの私に勝とうとしているのか?』

バルザック『愚かなモンキーめ! よいだろう。負けて死ねッ』

バルザックが襲いかかってきた!

戦士「さっさと退いていろ!」どんっ

盗賊「うあっ…」

戦士は盗賊を突き飛ばして、自身も敵の棍棒攻撃を跳んで避けた!

戦士(図体がでかいだけある……。なんて力だ、一発で床が陥没しやがった)

戦士(ここじゃあ足場が悪すぎる。下手に攻撃をかわしていてはこれ以上に)

バルザック『〜〜〜〜〜〜……!』

バルザックは氷の呪文を唱えた! 大きな氷の刃が戦士へ向かう!

戦士「魔法!? こいつ、魔法まで使うのかっ」

大金槌を構えて氷の刃を防ぐ体勢へ。しかし、魔法の威力は予想以上!

攻撃に耐えきれず、戦士は後ろへ大きくぶっ飛び、階段の途中段へ落とされてしまった!

戦士「げぇっ……!」

バルザック『ぶッ潰れよッーーーーーー!』

バルザックも後を追うように、跳び上がり、戦士の体を自身の巨体で潰しにかかった!

〜〜〜
634 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:39:31.06 ID:2p/Sgukp0
戦士「!」

盗賊「感謝しな、肉ダルマ。俺のお陰だぜ…」

盗賊は時の砂を使い、時間を巻き戻していた!

状況は魔法が使用される手前!

バルザック『〜〜〜〜〜〜』

戦士「やらせてたまるか!」

大金槌を振るってバルザックの足の指を叩きつぶした!

バルザック『その程度かァッーーーーーー!!』

ぶゥんと横へ薙ぐ様に振るわれる棍棒。戦士は大金槌を放ってバルザックの背後へ跳んだ!

盗賊「ヤバいと思ったらすぐに言え! 俺が砂を使う!」

戦士「言う暇があったらね……」

戦士「このっ」

戦士の殴打攻撃! しかし、ダメージはあまり入らなかった。

戦士(随分と硬い筋肉だ。これじゃあ武器無しでは敵いっこない)

バルザック『ちょこまかとウザったい猿め』

バルザックは背中に生えた小さな羽根を羽ばたかせ、上昇する。

そのまま自身の体重を利用した落下攻撃をお見舞いした!

戦士「そんな見え見えな攻撃――――――」


ずしんっ


床が大きな衝撃に、揺れる!

戦士「うお、おおお……」

盗賊「し、痺れるぜぇ……!」

無防備になった戦士目掛けて、棍棒攻撃が襲いかかる!

戦士「盗賊!」

盗賊「間に合わねぇ――――――」
635 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:40:42.50 ID:2p/Sgukp0
棍棒での一撃は強力だった。戦士の鎧にはヒビが入り、戦士自身は壁へ叩きつけられる!

戦士「うぐぅぅぅ……!?」

バルザック『一撃でそのザマか、腑抜けめ。他愛もないわ』

戦士(う、動かなければ。すぐに立たなければ、次の攻撃が来るっ)

しかし、力が入らない!

バルザックはその目を赤くギラギラと光らせて戦士へ迫る!

盗賊(戦士がやられちまう! すぐにアレを使わねば)

盗賊「!」

手を動かそうとすると、動かない。なんと、盗賊の手は床に張り付いていた。

盗賊「冷たい。こ、凍っている……! 野郎!」

バルザック『無駄無駄無駄ァ』

戦士「盗賊!! まだか!?」

盗賊「今何とかしているところだぜっ…!」

戦士「早くッー!」

盗賊(くそ、どうせコイツを使えば時間は戻るんだ!)


盗賊「ぐうううぅぅ…ぎゃああああああああぁ〜〜〜!!?」べりべり


盗賊は無理矢理氷で張り付いた手を引っ張り上げた!

バルザック『許せよ、猿。これで終いだ』

盗賊「今度は間に合えよォーーーーーーッ!!」

時の砂を使った!

〜〜〜
636 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:41:14.92 ID:2p/Sgukp0
時間が巻き戻った!

盗賊「今だ、避けろーーー!」

戦士「!」

盗賊の声にハッと意識を取り戻し、バルザックの地震攻撃を上手く回避した!


ずううぅぅん・・・


バルザック『時を巻き戻したな?』

戦士「盗賊逃げろッ! 奴の標的がお前に移った!」

盗賊「えっ」

バルザック『はぁぁ〜……』シュー

口から凍える息を漏らしながら、盗賊へ向かっていくバルザック。

盗賊はすぐに不安定な足つきでその場から動いて、バルザックから逃げる!

戦士「お前の相手は俺だろ。かかってこいやァ!」

バルザック『 』

戦士の挑発に乗る事もなく、そのまま盗賊を始末しに後を追っている!

戦士「だ、ダメだ。あの魔物、図体ばかりの脳筋野郎と思っていれば……」

戦士「盗賊ゥーーー! 時間をもう一度巻き戻すんだ! もう一度ッ!」

盗賊(それしかないか)

盗賊は時の砂を使った!

〜〜〜
637 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:42:12.39 ID:2p/Sgukp0
盗賊(どの辺りまで巻き戻せたんだ)

戦士「盗賊退けッ!」どんっ

盗賊「うあっ…」

さっき自分がいた場所を棍棒が通過してゆく!

盗賊(敵の初発攻撃! なんだ、さっきから敵の攻撃直前にばかり巻き戻りやがる!?)

盗賊(……だが、敵は時が戻った事を認識していない。同じパターンを繰り返している?)

盗賊「戦士! 敵の動きを思い出すんだぜ!」

戦士「はぁ!?」

バルザック『〜〜〜〜〜〜』

戦士(…ああ、そういう事か!)

戦士はバルザックから距離をとると、大金槌をぶんと投げる! 狙いは頭部!

バルザック『!?』

見事大金槌はバルザックの頭に命中した! 大きなダメージが入る!

戦士「体はいくらガチガチでもよぉ〜……頭ばかりは、そうはいかんよなぁ」

バルザックはフラフラしている!

戦士はその隙に落ちている大金槌を拾い上げて、敵のひざへ攻撃を仕掛けた!

戦士「必殺ゥ〜〜〜……とうっ!!」

戦士の魔獣切り! バルザックに効果覿面だ! バランスを崩したバルザックは前のめりに倒れた!

盗賊「やったか!?」

戦士「次で、やるッーーーーーー!!」

倒れたバルザックの頭目掛けて、もう一度魔獣切りをお見舞いした!


戦士「うおおおおおおぉぉぉ〜〜〜〜〜〜ッ!」


ずんっ


バルザック『グ、グ、グエーーー…』


バルザックを倒した!
638 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:42:39.43 ID:2p/Sgukp0
戦士「うおっーーー! 流石は俺だ! 大勝利っスよ、勇者殿ォー!」

盗賊「ふん、俺のサポートがなけりゃ勝ててなかっただろうが」

盗賊「……しかし妙だぜ。あの魔物は時間魔法を一度も使用しなかった」

戦士「確かに」

盗賊「もしかしたら使わなかった、ではなくて使えなかったのかもしれねぇ」

戦士「つまり、アイツ自身が時間を止めて俺たちを妨害していたわけではなくて」

戦士「他の何者かがって事か? あの……下層にいた小さい魔物のような」

盗賊「だろうよ。まぁ、詳しい事は知らねぇが」

戦士「それにしてもよー。その時の砂は便利だよなぁ」

戦士「お陰で次にくる敵の動きがわかって勝てたんだ。相当イイもんだぜ、それ」

盗賊「ああ、だけど問題もあるかもしれない」

盗賊「さっきも話したが、どの程度まで時間を巻き戻せるのかわからない」

盗賊「最悪、回避不能なところまできた攻撃の直前に戻るかもだぜ」

戦士「……ゾッとしないわねぇ」

盗賊「使うタイミングはよく考えた方がいいかもな」

戦士「ふーん。とりあえず、邪魔な奴も倒せたし、次行きますか」

盗賊「ああ」

〜〜〜
639 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:43:16.51 ID:2p/Sgukp0
盗賊・戦士「?」

盗賊「今、妙な感覚に陥らなかったか」

戦士「お前もか?」

戦士「なんていうか…例えようのないような…その―――」

その時だった。戦士は何かに薙ぎ払われて横へ大きくぶっ飛んだ。

壁が崩れる音が辺りに反響し、戦士は体をぐったりとさせて意識を失う。

盗賊「……え」

盗賊「せ、戦士?」


バルザック『WRYYYYYYYYYYYYYYY――――ッ!!』


バルザックが現れた!

盗賊「何で!? 確かに倒した筈なのに…!」

盗賊(べ、別の魔物なのか!? それとも完全に倒しきれなかった!?)

盗賊「どうしてテメェ、生きてやがるんだよッーーーーーー!!」

バルザック『貴様が何を言っているのかは理解はできんが』

バルザック『私の使命は、この扉を守る事。羽根虫一匹通さない』

盗賊「っ〜……!」

バルザック『愚かなクソモンキーめ。私が貴様の骨まで擂り潰し、糧としてくれよう!』

盗賊「ま、まさか」

バルザック『負けて死ねッ』

盗賊「時間が戻っている……!?」
640 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:43:50.84 ID:2p/Sgukp0
一方、魔王たちは・・・。


女勇者「なんか頭がガンガンするよ〜……」

魔女「気のせいじゃありませんこと?」

女勇者「そうかなぁ」

僧侶「か、回復はしっかり行ったはずなのですけどね」

女勇者「え、回復?」

女魔王「別に異常見られんだわ。貴様の勘違いである」

僧侶「そういう事にしておきましょうか」

魔女「僧侶にまで雑に扱われてますわねぇ。可哀想に」

女勇者「……え、何? どうしてそんな目で見るの。え、ちょっと、やめようよ…!」

魔女「あんたには同情しますわ」ポン

女勇者「肩に手を置くなァー!? やめて、なんか嫌だよ!」

魔女「ぷぷぷっ…」

女魔王「あまりからかってやるなよ。マジ可哀想に見えてきたわ」

女勇者「こんな扱い止しましょうよ!!」

僧侶「……ふざけるのはそのへんで終わっていただいて」

僧侶「まずは魔剣ちゃんを取り返しましょう。あの子がいなくては敵を探すのにも時間が掛かってしまいます」

魔女「まぁ、同意ですわね」
641 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:44:22.86 ID:2p/Sgukp0
女魔王「と申されても、魔剣を探す術すらこちらにはないわよ」

女魔王「また適当な部屋を調べてゆくつもり? それも時間掛かるわボケェ」

僧侶「……う、うーん」

女魔王「魔剣なぞ今は必要あるまいて。ほれ、行くぞ」

女勇者「あれ、珍しい」

魔女「はぁ?」

女勇者「いつもならあの後に、ついでに魔剣はここへ捨て置くわッ! とか続くのに」

魔女「あー……なるほど。きっとアレよ!」

女勇者「愛、ね」

魔女「そうそう。それそれ」

僧侶「愛が芽生えて、魔剣ちゃんを大事に思うようになったのですね〜。ふふふっ」

女魔王の攻撃! 攻撃! 攻撃!

3人「ぐぅ〜〜〜……!」じーん

女魔王「ふんッ、死ね貴様ら!」

僧侶「勇者様! いきなり叩くなんて酷いです!」

女勇者「右に同じく! 右に同じく!」

魔女「さいてー」

女魔王「喧しいわウンコッ! 次くだらぬ事ほざいたら下顎もぎ取ってしまうわよ!」

女勇者・魔女「おっかねー……」

女魔王「糞っ垂れ雌豚どもめが!」
642 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:44:49.79 ID:2p/Sgukp0
がちゃり


僧侶「しつれいしまーす……。ああ、ここには誰もいないみたいですよ」

魔女「そう畏まる必要もないと思うのだけれど?」

女魔王「この部屋は何か。ベッドやテーブル、イス。それにクローゼット」

女勇者「人が暮らせそうな部屋だね?」

女魔王「暮らせそう? 暮らしておったのではないの? この家具はその為に」

僧侶「いえ、生活をしていた痕跡が全くありませんね」

僧侶「見てください。クローゼットの中には何も入っていません」

女勇者「タンスの中にも何も入ってませんよー?」

女魔王「なるほど。つまりこの部屋は客が泊まる場所か」

魔女「そうとも限らないんじゃないかしら。あの男が客を自分の家に泊める奴とも思えませんわ」

魔女「どちらかというと、誰かを住まわせる為に用意した部屋。かしら」

僧侶「その線が一番合っているように思えますね…」

女魔王「ふん! そんなの分かったからなんなのよ! 意味なしである!」

女勇者「誰を住まわせようとしたんだろう。もしかして、連れて来た女の人?」

僧侶「でしょうかね」

魔女「まぁ、勇者の言う通り、この部屋は意味なさそうですわ。他行きましょ」

女勇者「ちょい待ったー!」

魔女「…は?」
643 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:45:20.95 ID:2p/Sgukp0
魔女「……トイレ? 漏れそうなの?」

女勇者「だからってここで用足すかよっ」

女勇者「違うの聞いて。みんな、よく部屋を見てよ」

僧侶「あらかた見てみましたが……特に怪しい所では」

女魔王「普通の部屋と見せかけて何か隠された仕掛けでもあると、貴様は申したいの?」

女魔王「それらしい物、全然なかったであろうが。構っていられるか」

女勇者「待ってよー! みんな本当に気づいてないの?」

魔女「あんたもじれったいわねぇ〜。さっさと何なのか言ってみろ! ですわ」

女勇者「うん。あのね、この部屋だけ……他の部屋と違って変じゃないの」

「……」

魔女「あんたの頭ん中は変だけどね」

女勇者「冗談で言ったんじゃないっての!」

僧侶「……言われてみれば、確かにこの部屋には他の部屋で感じたような異質さというか」

僧侶「奇妙な物も、不気味な人形も見当たりませんね。本当にごく普通の部屋」

女勇者「でしょう?」

女魔王「この部屋だけ悪趣味に飾るのは止しただけじゃないの〜」

女勇者「じゃあどうしてこの部屋だけ止しちゃったんですかね?」

女魔王「余が知るかよッ」

女勇者「絶対変です! だってこの部屋だけお屋敷の中では浮いてるもん」

女勇者「きっと、何かあるはず!」

魔女「……あのねぇ」
644 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:45:49.64 ID:2p/Sgukp0
魔女「そういったところに着眼するのは別に悪くはないと思うけど」

魔女「私もこの部屋には特に何かあるとは思えませんわよ?」

女勇者「え〜っ! こんな普通の部屋なんだよ!」

魔女「ええ、普通の部屋。本当に僧侶の言った通りの普通の部屋よ」

魔女「魔法で何か隠している物があるかと、魔力の気配があるか探ってもみたけど、何もないし」

魔女「ましてや仕掛け一つもない。そういう部屋ですわ」

女勇者「あ…いや、でもね。こういう部屋を作った何らかの理由はたぶんあると思って」

女魔王「あったとして、それが今何の関係があると申すの?」

女魔王「そんな理由は後であのカス男にでも尋ねろカスッ!」

女勇者「ひ、酷い!」

僧侶「皆さん、彼女に少し厳しすぎますよ。もうっ」

僧侶「そういった細かな所を考えられるのは良いことです、女勇者さん」なでなで

女勇者「ううっ…」

僧侶「気づいた事があれば、どんどん教えてくださいね。私はあなたを頼りにしていますから」

女勇者「そ、僧侶さぁーん…!」

女勇者「僧侶さん大好きだよー! 2人は嫌いー!」ぎゅっ

女魔王・魔女「あァー!? 喧嘩売ってんのかレベル19(ですわ)」

僧侶「よしよし」

女勇者「えへへ〜……」スリスリ
645 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:46:19.58 ID:2p/Sgukp0
がちゃり


魔女「こちらの部屋は〜……うげぇ」

女勇者「何かあったの?」

魔女「最悪。あの男は人としておかしいわね」

女勇者「だから何があったのってばー?」

魔女「ん」

魔女は女勇者を部屋の中へ突っ込んだ!

女勇者「うわぁ!? いきなり押さないでよ! もうっ……」

女勇者「……えっ」

僧侶「お二人とも! 勝手に先へ進んでは危険ですよ!」

魔女「はいはい〜。申し訳ない、ですわ」

女魔王「んで、今度はどの様な悪趣味が炸裂部屋であるのか?」

魔女「炸裂中も炸裂の部屋ですわ。マジで信じらんない」

僧侶「そんなに酷かったのですか……」

魔女「ほら、まずは2人も入って確かめてみたらぁ?」

女魔王「うむ。……おう、貴様。何腰抜かしておるのよ」

女勇者「だだだだ、だって」

僧侶「こ、これは……!」
646 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:47:08.70 ID:2p/Sgukp0
その部屋には壁ギッシリに、液体が中に満たされてある大きなカプセルが数十個と並べられてあった。

中には、人間の女が裸で浸っている。

僧侶「酷過ぎる……。あまりにも非人道的だわ」

女魔王「ほぅ、人間のホルマリン漬けといったところかしら!」

女勇者「な、中の女の人たちは死んじゃってるのかな…」

魔女「さぁね。どうかしら? でも、こいつらはどうも何かの研究に使っているって感じにも見えないし」

魔女「恐らくは、ただの観賞用ですわ。まるで水槽に入れた魚のよう」

女勇者「や、やめてよ……」

女魔王「これは面白い。ふっふっふー」

女魔王はニタニタと笑みを浮かべながら、カプセルの中の女たちを眺めて行った。

僧侶「勇者様! 冗談でもその様な事は仰らないでください!」

女勇者「……私にはわからないですよ。こんな事して何が面白いの」

魔女「人それぞれの趣味ってのがある。ですわ」

魔女「いくら歪んでてもね。人肉を好んで食べてしまう人間もいるぐらいなのよ?」

女勇者「お、おかしいよっ」

女魔王「んで〜? この中におる人間どもも奴に嫁いだ者というわけか?」

僧侶「それだけだとは考えられませんね。人間を何だと考えているのかしら……」
647 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/10(火) 03:48:51.59 ID:2p/Sgukp0
ここまで。先週は事情あって書けなかったんだ、すまねぇ・・・
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) [sage]:2012/07/10(火) 06:43:47.14 ID:K3zmBzLSo
jojo好きなのか
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 08:10:33.42 ID:N71PAyax0
このバルザックは石仮面でも被ったのかよw
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 09:31:57.34 ID:NPkXxW3IO
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/10(火) 12:20:24.93 ID:Maepl5Y/o
ジョジョネタがごちゃ混ぜで出てきたなwwww
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/10(火) 13:41:54.53 ID:lniMS8xIO
おつ
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/10(火) 21:52:04.58 ID:cn7GyWQ70
バルザックさんが進化の秘法でなく石仮面の力を受けた場合ね。
乙ー
654 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:48:57.89 ID:kBWLBhkd0
女勇者「どうやって開けるのかな、これ」

女魔王「開けるとは貴様。中の人間どもを開放するつもりか!」

女勇者「当たり前ですよ! このままじゃ可哀想だもん!」

魔女「生きているとは思えませんわよ」

女勇者「うっ……でも、こんなところに入れられているよりは。ねぇ、僧侶さん」

僧侶「はい。私も女勇者さんに同意します。解放してあげるべきかと」

女魔王「無駄であるわ」

女勇者「無駄じゃない! この人たちの気持ちを考えてください!」

女魔王「余には家畜の気持ちなんて理解できぬ〜」

女勇者「ちょっと…!」

僧侶「勇者様。この方々は家畜ではありませんよ、皆あなたと同じ人間なのです」

女魔王「あ? …ああー」

僧侶「しっかり聞いていらしましたか?」

女魔王「む〜! もう貴様らの勝手にするがよい! 余は知らんよ!」

女勇者「ゆ、勇者さん! ありがとう…!」

魔女「特にお礼を言われることはこいつ言ってませんわよ?」

魔女「で、どうしますの。開ける仕掛けを探すか、力づくで外へ出すか」

僧侶「後者ですと何が起きるかわかりません。念のために仕掛けを探しておきましょう」

女勇者「よーし!」

女魔王「終わったら申せ。余はここで寝っ転がっておるからな」

女勇者「いやいや手伝ってよ!」

女魔王「なぜ余が(ry」

魔女「面倒臭くなりそうだし、勇者は放置が一番だと思う。ですわ」

女勇者「うん」

女魔王「ぎゃー ぎゃー ぎゃー!」わー
655 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:49:41.48 ID:kBWLBhkd0
女魔王(しかし、同じ人間ときたか)

女魔王(僧侶の阿呆。まだ余を信じておったのだなァ)

女魔王(まぁ、余の変身魔法レベルは最高。誰もがこの姿に疑問を思う事もあるまい)

女魔王(……そういえば何故余はまだ人間の姿でいられおる? 魔法は使えない状態であった筈では)

女魔王「うーむ」

女勇者「勇者さんってばすごい難しそうな顔してるよ。もしかしてこの人たちの事を真剣に考えてくれてる?」

魔女「アレはそういう人間ではないことをお前もそろそろ理解すべきですわよ」

魔女「僧侶、何か見つかった?」

僧侶「ええ、見つかった事は見つかったのですが……」

僧侶が見つけた装置には様々な色をしたスイッチが備え付けられていた。

女勇者「うわ、何これ……。押していいの?」

魔女「下手に押せばどかーん! ……とかあるかもですわよ〜」

女勇者「お、脅すなよぅ……」

僧侶「適当に押すべきではないですね。しかし、それらしい仕掛けはこれ1つ」

魔女「なら押すっきゃないっしょ〜!」

ぽちっ

女勇者「あ゛ー!! あ゛ー!! あ゛ー!?」

魔女「ぎゃーぎゃーやかましいですわよ! 何事も試してみなければ分からないものなの!」

女勇者「だからっていきなりすぎだ!」

僧侶「……何か、変化はありましたか」

魔女「……特に?」

女勇者「もしかして、ただのスイッチだった?」

僧侶「ただのスイッチとは何でしょう……?」

女魔王「うぎゃー は は は 、ひぃーwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

「!?」
656 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:51:02.89 ID:kBWLBhkd0
女魔王「いひっ、ひひひひwwwwwwww」

僧侶「勇者様ー! どうされましたか!?」

魔女「決まってますわ! ついに壊れてしまったのよ…」

僧侶「いやいやいやっ」

僧侶「お、お気を確かに。勇者様、すぐに回復を!」

女魔王「いや…www 待て待て待て、んぷぷっwwwwww」

魔女「いつまでも訳も分からず笑われているとムカつくんですけど」

女魔王「あれwww あれを見るがいいwwwwww」

魔女「あれ?」

女魔王が指差す先のカプセル。
中の女性の表情が喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、怨み、と連続でコロコロと変化させられていた。

僧侶・魔女「うっ……」

女魔王「非常におもろいwwwwwww大変愉快であるwwwwww」

女勇者「な、なんだか怖い」

魔女「どうもこの機械に無理矢理操られているみたい。ですわね」

魔女「これで明らかになりましたわ。ここの女たちは全て観賞用」

僧侶「どうしてこの様な…下種な!」

女勇者「もしかして、そこのスイッチの数はカプセルの数に比例してたから、こんな数も?」

魔女「でしょうね。初めからカプセルを開く仕掛けなんてないかも」

女勇者「そんなー!?」
657 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:51:47.23 ID:kBWLBhkd0
女勇者は鞭を構えた!

僧侶「破壊するつもりですか!?」

女勇者「当たり前だよ! その方が手っ取り早いっ!」

女勇者の攻撃!

パリーン!

女勇者「よっしゃ」

女魔王「ぶーっ……いきなりデカい音立てるなボケッ!! ビビったわ!!」

カプセルを破壊し、女を外へ出すことができた。

女「……」

僧侶「何も、罠も作動しない? すいません、少し女性から離れていて…」

僧侶は倒れている女に駆け寄ると体を調べ始めた。

魔女「その女自身に罠があるかもですわ」

僧侶「危険は承知です。脈は正常に動いている」

女勇者「本当? その人死んでたりしてなかったんだねー!」

僧侶「はい。この分なら他の方々も――――――」

女「ごほっ、げほ!! お、おえっ……!」

魔女「意識を取り戻したようですわよ」

女勇者「あああ、あ、えっと、大丈夫ですか!? もう安心し」がしっ

女「ひゅー…ひゅうーーー……ひ、ひーーー……ぜー、ぜー……!!?」

僧侶「待って! 呼吸が上手くできていないんだわ! きっとパニックで」

女勇者「え、え!? 早くなんとか…!」

女「あぐげ、がぅっ……!! ぐう、がぁっ!!」ギリギリ…

女勇者「痛っ! お、落ち着いてください。つ、爪を立てないで…!」

僧侶「無理に人工呼吸をしてはこの方の肺を……ううん、緊急事態だわ」
658 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:52:20.38 ID:kBWLBhkd0
女勇者「僧侶さんどうしよう!? この人、漏らしてる……!」

僧侶「そんな事はどうでもいいんです!! 邪魔になるから、後ろへ退いていて!」

女勇者「あ、はい……!」

女「」

女は必死の形相で自分の首を押さえ、床をのた打ち回っている。

僧侶「勇者様! この方の足を押さえていてください! 暴れないように! 早くっ」

女魔王「あァん? 何故に余がその様な事をせねばならんのよ。そこの小娘どもにやらせィ」

僧侶「っ……! 魔女さん!!」

魔女「え〜……まぁ、仕方がないですわ」がしっ

女「」びたんびたん!

魔女「ちょっ、なんつー力で暴れてるのよ…ふぬぬっ」

女勇者「わ、私は何をしたら」アセアセ

僧侶「!」

僧侶(呼吸ができないんじゃなくて、この人は……呼吸をしていない!)

僧侶「い、息をしてください! 鼻でも、口からでもいいから! 早く!」

女「」だんだんっ

魔女「ちょっとこの女どうなってるのよ! 僧侶まだー!」

僧侶「呼吸をして!」

女「」

魔女「……あ、収まった」

僧侶「……」

女勇者「えっ……その人どうなっちゃったの……」

僧侶「」フルフル

女勇者「そ、そんな」

女魔王「終わったー? 早く別の部屋調べ行くわよ」
659 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:54:15.57 ID:kBWLBhkd0
女勇者「どうして……」

僧侶「わかりません」

僧侶「ごめんなさい。助けられなくて」

女「」

魔女「呼吸をしろと言ってたけど、できなかったわけじゃないの?」

僧侶「ええ。彼女は呼吸することはできた筈なんです。なのに」

女魔王「自分で死のうとしたのではないのー?」

僧侶「そんな馬鹿なっ」

女勇者「……この人はダメでも、他の人はまだ救えるよね」

魔女「よせよせ! 分かりもしないのに下手に動くな! ですわ!」

女勇者「だって……!」

僧侶「あの、これは推測なのですが」

僧侶「一定条件が満たされると本人の意思とは関係なく、死んでしまうように無理にでも自傷行為を行ってしまうものが
ある呪いが存在する、と本で読みました」

魔女「自殺の呪い?」

僧侶「そうなりますね。ただ、これが呪いによるものだったのかはわかりませんが」

女勇者「だ、だったら」

女勇者「外へ出した後に魔女っちの薬を飲ませてあげればいいんだよ! そしたら」

女魔王「ならん。これ以上関係のない人間に余の薬を飲ませる事は許可せぬ」

女勇者「言ってる場合じゃないよ!! す、すぐに助けなきゃ…」

魔女「この数だと、薬も足りないですわよ。それにああも暴れられては飲ませるのも一苦労」

魔女「私もあまり乗り気になれない。ですわ」

女勇者「何でよっ!?」

僧侶「……とにかく、今に亡くなってしまうわけではないようです」

僧侶「申し訳ありませんが、残りの方々は後で助けに来ましょう。かならず、ね?」

女勇者「う、うぅ……っ」

魔女「それにしても、このカプセルの中にいる時は空気は吸えませんわよね? どうしてるのかしら」

女魔王「エラ呼吸でもしてるんでないの?」

魔女「おー」

僧侶「いえ、ありえませんから」
660 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:55:06.86 ID:kBWLBhkd0
盗賊(何でだよ――――――!)

盗賊「何でこんな、最悪なっ……!?」

バルザックの攻撃!

ひゅっ

盗賊(武器が風を切る音!)

盗賊は素早く体を伏せて、攻撃を回避した!

盗賊(戦士がやられた今、俺だけでコイツを倒す術は)

手持ちは僧侶から借りたナイフ一本、そして時の砂だけである。

盗賊「時間だぁーーーーーー!! 時間を巻き戻せば魔物が現れる手前、戦士もいる!」

バルザック『WRYYAAAAAAAAAA―――――――――ッ!!』

盗賊「うおおおおおぉぉぉ〜〜〜ッ!!」

時の砂を使っ


盗賊「ひぐぅっ…!?」


全身が一気に粉微塵にぶっ叩かれた感触。さらに、自分は今、宙を舞っているとハッキリとわかった。

一瞬の出来事だったのだろう。だが、盗賊にとって自分が何をされたのか、理解できないままに硬い石畳へ叩きつけてし
まった。

盗賊(攻撃を受けたのか!? あ、頭から生温かい液体が垂れてる……)

盗賊(か、体がバッキバキだ……! 右腕が動かせられる気がしねぇ!!)

ずん、ずん、とバルザックがゆっくりこちらに歩みを進めいているのが石畳の振動を通じてわかった。

音と振動が近づいてくるほどに盗賊の焦りと恐怖心は増してゆく!

盗賊(う、うう……にしても、よく装備も身につけていない状態で耐えたな、俺)

盗賊(何かしないと……。そうだ、まずは魔物との距離をおかなきゃ)

盗賊(動け、動け、動け! 次に攻撃されては洒落にならない! 殺されるッ!)


ずん、ずん、ずぅーん、ずん、ずん・・・。


盗賊「あれ……?」
661 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:55:57.35 ID:kBWLBhkd0
盗賊(何だ? 一度足音が間延びしなかったか……。確かに伸びた)

盗賊(一カ所だけ、この床の一カ所だけに空洞があるんじゃあないか?)

ずん、ずん、ずん、ずぅん!

バルザック『フーンッ! 雑魚の分際で私の一撃に耐えるとは。その生命力だけは誉めてやろう』

バルザック『……何だ。声も出せない状態か? 見たところ体も動かせられまい』

盗賊「……」

バルザック『安心するがいい! そう苦しまずとも今に楽にしてくれよう! この私がァーッ!!』

盗賊(武器を振りかざした)


ぶゥん!


盗賊(今だ、振り下ろした!)

盗賊は転がって攻撃を回避した! 石畳に叩きつけられた棍棒の振動が全身に伝わる!

盗賊「うおおおおぉぉぉ……」ぶるぶる

バルザック『何ィ〜〜〜……? まだ動けるではないか。卑怯者め!』

盗賊「卑怯じゃねェ。戦いに卑怯も糞もないぜ、ようは勝ちゃあいいんだよ…」

盗賊(まだ立っていられる。足はしっかり動くぜ…。奴の動きに合わせて動けられる)

バルザック『兵の風上にも置けぬ、青二才めがッ! 羽根虫以下だッ貴様…!』

盗賊「それで構わないぜ。魔物野郎」

盗賊(上等だ! 戦士がいなくとも俺一人でコイツを倒してみせるぜ)

バルザックの攻撃!

盗賊(上からだ)

盗賊は攻撃を横へ回避した!

バルザック『ええい、ちょこまかと鼠の様に逃げおるわ……』
662 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:57:20.79 ID:kBWLBhkd0
盗賊「どこ見て振ってんだよノロマ。テメェは口だけか!」

バルザック『私を愚弄するか猿の分際で!? それだけは許せんッ』

盗賊「もっと上手く当てに来てみなっ、俺はここだぜ」

盗賊(警戒すべきは奴の魔法だ。俺の機動力をそいつで削がれられたら、死ぬ……)

盗賊(しばらく相手してるところ、奴は妙にプライドが高い。ここは挑発して物理攻撃を誘うまでだぜ)

バルザック『WANNABEEEEEEEE――――――ッ!!』


ずぅん、ずぅん


盗賊(あまり距離を開けすぎるな、奴をなるべく熱くさせてやるんだ。冷静にさせてはいけない!)

盗賊(……石畳を破壊させるには)

バルザック『貴様! 私と正々堂々と戦うのだ! 逃げてはならん!』

盗賊「なら、追いついてみるんだな! 俺の速さにお前は着いてこられるか!?」

盗賊(と言っても……慎重に動いている分、あまり上手く走れないが……)

バルザック『畜生ッ〜〜〜〜〜〜!!!』

バルザックは再び背中の羽根を羽ばたかせて上昇した。

盗賊「羽根音……また飛び上がったのか」

盗賊「あ、そうか。これだぜ……」

盗賊は何か思いついたようだ!


盗賊「おら!! 掛かって来いッ―――!!」


バルザック『ぶッ潰れよッ!!』


どしーんっ! どかんっ。ドカーン、ドカーン、ドカーン・・・


盗賊「!?」グラグラ

盗賊(落下攻撃と同時に棍棒攻撃!?)

バルザック『はぁ、はぁ……はぁぁ!』ニヤリ

盗賊(危なかった……。一歩引いていなければ棍棒に叩きつ潰されていた……)

盗賊「だが、お陰で位置がわかった。感謝するぜ」

バルザック『フフンッ、負け犬の遠吠えのいうやつか。よくほざく奴だよ』
663 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 01:58:25.64 ID:kBWLBhkd0
バルザックの攻撃!

盗賊「うっ……!?」

盗賊(は、早い……いや、俺の回避が遅れただけなのか!?)

バルザック『貴様、疲労し始めているなッ! 軟弱者め』

バルザック『それ見ろ。足がふらついておるわ!』

盗賊「はっ」

盗賊の足はバルザックの落下攻撃による強烈な振動の影響を受けて、ガクついている!

盗賊(さっきの攻撃が……う、動かしづらい! まるで地面に足がついていないみたいだぜ)

バルザック『その調子で私の攻撃を避けきれるか? できまいッ! 死ねィッ』

バルザックの横払い攻撃!

盗賊「ま、まずッ―――――――」


グシャァ〜・・・


盗賊は攻撃を避けきれず、棍棒の先端部にぶつかってしまった!

半端ではない威力に大きく吹き飛び、石畳へ転がる!

盗賊「あうっ……がふ……」

バルザック『ハハハハハハハハハッ』

バルザック『アハハハハハハハハハハハハハハハッーーーーーー!』

バルザック『馬鹿めが、何が俺の速さに着いてこれるかだ。ノロマな猿め』

盗賊「ぎ、ぎぎぎっ……うううぅぅぅ……!」

盗賊「へ、へへっ」

バルザック『……驚いたな。貴様、まだ息があるのか? 随分がまん強い男よ』

盗賊「あんなもんじゃ食らった内に入らないんだよ……お前の一撃なんてアイツに比べりゃ屁でもないね」

盗賊(絶対この頑丈さはアイツの仕業だ)

盗賊「……だがしかし、俺はもう動けねぇ。悪い事は言わねーからさっさと止めでも刺しに来たらどうだ?」

盗賊「放っておくと回復して反撃されるかもだぜ!」

盗賊(来い…かかって来い…もっと激情しろよ。もう一度、ここに…落下攻撃を仕掛けてきやがれ…これは賭けだ…最後
の。俺にとっても、奴にとっても)
664 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 02:01:47.40 ID:kBWLBhkd0
バルザック『……フン、バレバレだな」

バルザック『貴様はまだ動けるだろう。まぁ、それが私にとって脅威になるとは思えん』

盗賊「…………」

バルザック『だが、念には念をだ! 貴様が動こうと動けまいと関係のない処刑を思いついた……』


バルザック『……〜〜〜〜〜〜』ブツブツ


盗賊「!!」

盗賊(野郎、最後の最後で冷静になりやがった…呪文を唱えてやがる…)

盗賊「賭けは俺の負けなのかっ……!」

バルザック『〜〜〜……勝った! 死ねィッーーー!』

バルザックは氷の呪文を唱えた!

氷の刃が空中で形成され、盗賊へ襲いかかる!


盗賊「うぐゥ〜〜〜…………!?」ドスッ


盗賊の体を氷の刃が貫いた!

バルザック『クックック。どれ、ダメ押しにもう一本!』

バルザックは氷の呪文を唱えた!

さらに盗賊の体に氷の刃が突き刺さる!

盗賊「 」

バルザック『KWAHHHHHH――――――ッ! んん〜む、最高に気分がイイ! 貴様のおかげだぞ!』

バルザック『ぐふふふ〜……ッ! 安心しろ、死体は今に粉々に砕いてやろう……』


ずん、ずん、ずん、ずん・・・。
665 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/14(土) 02:02:21.07 ID:kBWLBhkd0
今日はここまで
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/14(土) 10:47:43.50 ID:T8zPWcSDo

いいとこで終わりおる
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/14(土) 12:37:14.12 ID:ibJt2B8l0
盗賊のタフは魔王ちゃんのおかげかwww
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/15(日) 19:45:46.26 ID:Ca0Z+XPSO
毎回いいとこで終わるな乙
盗賊頑丈さだけ周りより群抜いてるだろwwwwww
669 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:31:03.05 ID:uqnzR30E0
魔王城


1「で」

1「勝ち目がないと思い、おめおめと帰ってきたというわけか」

賢者「う、うるさい……」

賢者「お土産持ってきたんだから文句なんてないでしょ!」

賢者は勇者の剣を1へ投げ渡した。

1「フン、まあいいだろう」

2「これが勇者の剣。話には聞いていたけれど、実物は初めて拝見するわ」

2「……? ていうか、魔物の貴方が持っても平気なの? 浄化されたりとか」

1「そもそもそこのアマがここまで持ってこれた事自体、魔物が触れても害はないと分かりきっているではないか。馬鹿
たれ」

賢者「魔物扱いとか冗談じゃないんですけど!」

賢者「私は人間よ! 勝手にあんたらのお仲間に加えないでちょーだい!」

2「あら、まだ人間気分だったのね。ぷぷぷっ」

賢者「……ちょ、調子乗んなよ! 何がおかしい!」

1「実に滑稽よ。貴様、魔物と同様の扱いをされる事をもっと誇りに思うがいいぞ」

1「魔物とは、人間を越えた生物。いわば超人類ッ!」ドンッ!

賢者「は……ぁ?」

2「魔物の生まれ方は二通りあるわ。一つは親が魔物同士、それらの交配によって生まれる」

2「そしてもう一つ。人間が魔物へ変態する」

賢者「変態って、やらしい事するって? 馬鹿げてるわね〜」

2「学が足らな過ぎてるわねぇ」

賢者「け、喧嘩売ってんのかよ…!?」
670 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:31:36.00 ID:uqnzR30E0
1「優れた細胞を持つ我々超人類こそが、この大地へ居座るに相応しい」

1「劣等種である人間はただの害だ。お前は部屋に小バエがいたらどうするね? 潰すに違いない」

賢者「……滅茶苦茶言ってるけどサ」

賢者「人間から魔物へ変身できんなら、滅ぼす必要もないと思うけど」

賢者「わざと生かして魔物にさせちゃえばいいじゃん? ほら、味方が増えるわよ」

1「それができるのならとっくにしている」

1「魔物へ変態できるのは限られし、選ばれた人間のみ! その数も多くはなし!」

1「つまり、探すのが面倒だから纏めて滅ぼすのだ!」

賢者(テキトーすぎじゃね)

2「そういうこと。よく覚えておきなさい、貴女は仮定はどうあれアンデッド(魔物)として目覚めた」

2「それは誇るべきなのよ…ほほほ」

賢者「全っ然嬉しくねー……」

賢者「そんな話は私にとってどーでもいいの。それよりもういいでしょ? 解放してよね」

賢者「これ以上危ない目にあうのは嫌なんだっつーの。私は人間として一生遊んで暮らして、普通に死ぬの」

1「……く、屑め」

2「こんな酷いの見た事がないわ……っ」

賢者「お前らには言われる筋合いはねーわよ!!」
671 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:32:18.31 ID:uqnzR30E0
賢者「とにかくもういいわね? 私はジューブン仕事しました、はい」

賢者「文句はないはずだよ」

1「いいや、あるね」

1「貴様に与えた使命とは? 魔王を仕留める事だったろうが? 何が仕事しましただボケェ」

1「俺は貴様のような甘いガキが大っ嫌いだぞ! どうしても自由になりたいのなら、この場でぶち殺す!」

賢者「はっ。私は不死身なんですけど? 絶対に殺せやしない」

2「だけど、完璧な不死身としては作られていない」

2「現に貴女のお友達は死んだわ。聖水の湖に溺れてね」

賢者「うっ……」

2「殺し方ならこっちで何通りか把握しているから、どうぞご自由にー」

1「フン、そういう事だ! 間抜けめ」

賢者「……わかったよ」

賢者「でも! 魔王を私だけで倒すなんて無理よ! 勇者くんでさえやられたんだもん!」

賢者「も、もしかしたら…アンタらみたいに殺し方を知っているかもだし…」

2「そうね。そろそろアンデッドの能力に頼る時期も過ぎた頃合いよ」

賢者「だったら無意味! 私はまだ死にたくないんだよ! って、死んでるけど!」

1「wwwwww」

賢者「笑うなバカ!」

1「馬鹿は貴様だ、あまり俺を失望させんでくれよ」

1「こちらとしても対策は練ってある。アレを見るがいい…」

賢者「はぁ…?」

リビングアーマーMk-U『 』ずん
672 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:34:04.68 ID:uqnzR30E0
1「最近開発に成功したリビングアーマーの正当後継機。その名もリビングアーマーMk-Uだ」

賢者「あれ魔物じゃないの? ロボット?」

2「正真正銘、魔物よ」

2「リビングアーマーは私たちとは違った生まれ方をするの。アレは生き物とは分類されない」

2「゛中身のない゛化物よ」

賢者「中の人がいない?」

1「前リビングアーマーは意思を持ち、勝手に行動を起こす厄介者だったのだが」

1「Mk-Uは逆に意思を持たない。主の命令に逆らう事もなく、忠実に、合理的に行動をさせられるのだ」

賢者「あーとりあえずすごいのねー。へー」

1「……さらに! Mk-Uは水陸両用の量産型! あの一体だけではない、他に数十体が地下の倉庫に待機させているの
だ!」

賢者「へぇ、まだ一杯あるんだ? 凄いじゃん?(何で熱くなってきてんのよ…)」

1「様々な機能を兼ね備えながら、自然にも大変優しい燃料で実にエコ的!」

1「爪切りから耳掻き、さらには缶切りも備える! 手の届かない痒い所は言ってくれれば掻いてくれます!」

賢者「……」

1「眠れない夜には数ある名作魔物童話を読んでくれて睡眠を捗らせてくれる。加えて料理もできるぞ! 和食から中華、
洋食まで全てカバー! いつでも美味しい料理を提供!」

2「まさにアイアンシェフ!」

1「それだ!」

賢者「……か、帰っていいかな」
673 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:34:43.85 ID:uqnzR30E0
2「全く! ここはもう少したぎる場面じゃないかしらね…!」

賢者「ロボットとか興味ないの。便利なのはもうわかったから」

1「じ、実際に稼働させてみせようか……?」

賢者「結構、結構」ブンブン

1「ぶ〜…」

賢者「それで、あの魔物が何なのよ。便利なのがあるなら益々私必要ねーじゃん」

1「アレを貴様に託してくれよう。ムカつくがな…」

賢者「は? い、いらないよ…無駄にデカいし…」

1「何だとぉ?」ギロリ

賢者「うっ…わかった……貰っとけばいいんでしょ」

2「貰っておいて困る代物ではない事は確かよ。後で泣いて感謝するほど」

賢者「でもあの魔物使う程度で魔王が倒せるとは思えないんだけど〜?」

1「フン、誰が魔王を倒せと言った。貴様には新たな使命を与える!」

賢者(あんだけキレといて違うことさせんのかよ)

1「貴様にはこの女を始末してもらいたい」

1は女戦士が写った写真を手渡した。

賢者「これって……オバサンじゃん?」

賢者「何かしでかしたの?」

2「いつまでも仕事しない邪魔者に制裁を下すのよ」

2「というか、Mk-Uの稼働テストを兼ねてるの。いきなり魔王相手じゃ流石のMk-Uも破壊されかねないし…」

賢者「微妙に自信ないんじゃねーかよっ!」
674 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:36:15.07 ID:uqnzR30E0
賢者「全く、付き合いきれないんだよ! アホらしっ」

1「貴様! Mk-Uを馬鹿にするのか!」

賢者「こんなのただのガラクタじゃない! この!」

2「あ、ちょっとっ」

賢者はMk-Uを蹴っ飛ばした。


Mk-U『ビ、ビビビ……ビーーーーーーガーーーーーー』


賢者「何さ。一回蹴っ飛ばしただけで壊れちゃったじゃん」

1・2「」こそこそ

賢者「ん……? アンタら、何こそこそして……どこ行くの? おーい……?」

賢者「はぁ、ワケわかんないんですけど」

Mk-U『足なんて飾りです。偉い人には分からんのです』

賢者「喋った?」

Mk-U『殴ったね!? 親父にもぶたれたこと無いのに』

賢者「いや、蹴ったんですけど…」

Mk-U『歯ぁ食いしばれ! そんな大人、修正してやるッーーー!』

賢者「え……」

Mk-Uの攻撃! 大きな腕を振りあげて賢者を叩きつぶした!

賢者「うぎゃ―――――――――」プチッ

賢者「――――なんて、不死身舐めんな!」

復活した賢者は炎の呪文を唱えてMk-Uへ反撃! だが、

Mk-U『』カンッ

賢者「!?」

火球はMk-Uへ直撃せずに、まるで壁に跳ね返ったボールのように向きを変え、賢者へ向かっていった!

賢者「ちょっ……うそぉ……!?」


ドオォーーーン!!
675 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:37:07.47 ID:uqnzR30E0
2「ふふ、対魔法反射装甲は上手く働いてくれたようね」

1「ああ、成功だな」

賢者「…………くそー」しゅ〜…

Mk-U『』

賢者「ふっ、ざけんな! 魔法が跳ね返ってくるなんて聞いてないわよ!」

1「言ってないしな。貴様が勝手にMk-Uを攻撃したのが悪い」

1「まだ主を設定していないのだからな。児童迎撃システムが発動したのだよ」

賢者「意思ねーんじゃないのかよ!」

2「ないわよ。でも、自動的に攻撃を仕掛けてきた相手を攻撃するシステムを備えてるの」

2「今のがそれ。ああ、主には本当に懐いて可愛いものなんだけどねぇ」

賢者「可愛いとかどうかしてるっ……!」

賢者「まぁ、でも……やるじゃん」

賢者「ちょっとだけ気に入ったわ。遠慮なく貰ってやるよ」

2「気に入ってくれてこっちとしても嬉しい限りよ。大事にしてあげて」

賢者「精々コキ使ってやるわよ」

賢者「じゃ、私今日は疲れたから部屋で寝るね。特にアンタらの相手して疲れたんだから…ふぁ〜」

1「ああ、ゆっくり休むといいぞ。ただし」

1「手術台の上でだがなッ」


賢者「は? うっ――――――――」


賢者「」パタリ

魔物博士「麻酔の効きがいい。ぐっすり眠っているわい」

1「博士、このくそ女の改造を任せるぞ」

魔物博士「あいわかった。しかし、アンデッドの体を弄れるとは……むっふ〜」

2「間違っても殺さないように頼むわね。まだ使い物にはなるんだから」

1「アンデッドだからちょっとやそっとでは死なんだろう?」

2「ああ〜! そうだったわね」

1・2「HAHAHAHAHAHA」

魔物博士「では、吾輩はこれで。期待して待っているがいい」

1「よろしく頼む。……さて、ランチ時間だ」

2「牛丼屋いきましょうよ。クーポン持ってるの」

1「牛鍋丼復活しないとなぁ」

2「アレ、そんな美味しかった?」
676 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:38:59.17 ID:uqnzR30E0
ずん、ずん、ずん、ずん


バルザック『ムフフゥー……少し調子に乗り過ぎたかな。貴様程度の相手になぁ』

盗賊「」

バルザック(さすがにこの状態では再び起き上がる事もあるまい。虫の息だ)

バルザック『それにしても見掛けによらず頑丈な猿め。あれだけ痛ぶっても棺桶に収まらんとは……』

盗賊「」

バルザック『早めに息の根を止めておくに越したことはない。さらだばッーーー!』

バルザックは盗賊を全体重をかけて、踏み潰した!


ずぅーん! ミシッ・・・


バルザック『……?』

ミシミシミシィ・・・

バルザック『な、何だこの妙な音は。何処から聞こえてくるのだ? し、下……』


ミシッ! ドォーン!!


マキマキ『キ、キキッー!?』ぷちっ

バルザック『うおおおおおおおおおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!?』

なんと! 踏み潰した石畳がバルザックの体重に耐えきれず、崩れて壊れてしまった!

バルザックは足を巻き込まれ、そのまま自らが空けた穴へ落ちる!

さらに! 下の穴の中で身を隠していたマキマキを潰してしまった!

バルザック『こ、これは! か、体が…抜けないッ…馬鹿な! くそ、もっと私がスリムなら!』ぐぐぐ…

?「やれやれ……マジで苦労したぜ……」

バルザック『!?』

盗賊「ふん」
677 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:39:53.34 ID:uqnzR30E0
盗賊「時間を巻き戻して俺たちを足止めしていたのは、今てめぇが潰した奴のようだな?」

盗賊「一石二鳥、だぜ……。くっくっく!」

バルザック『貴様ァーーー!! なぜそこにいるのだ! 貴様は今私が潰したァッー!!』

盗賊「てめぇの足には神経通ってないのかよ? そんでもって余裕こき過ぎて、俺をよく確認しなかったのか?」

盗賊「今潰したのはただのシーツだぜ。とんだ間抜けがいたもんだな」ゼンラー

バルザック『あぁッ……?』

盗賊「最初の氷の刃が来た時はもうダメかと思ったが、どうやら俺は運でてめぇに勝ったらしい……」

盗賊「氷の刃はシーツだけを貫いた! …お陰で脱げて俺だけ外へ放り出された」

盗賊「後はそこに隠れて、てめぇのアホ丸出し劇場を聞いていただけだよ」

バルザック『う、ウソだ……この、バルザックが……そ、そんな……あり得ない……』

バルザック『ありえなァーーーいッッッ!!!』

盗賊「その性格が仇になったな…笑えるぜ」

盗賊は穴へ嵌まって動けないバルザックの頭部目掛けてナイフを突き立てにかかった!

盗賊「悪いが、このままトドメを刺させてもらうーーーッ!!」


バルザック『まだだァッーーーーーーーーーーーーーー!!!』


バルザックは凍える息を吐き散らした!

盗賊「何っ……」

盗賊の足が凍って固まった! ピクリとも動かせられない!

盗賊(大事な時に限って…! もう少し慎重にいくんだった!!)

バルザック『次こそ貫いてくれるわッ!! 〜〜〜〜〜……』

盗賊「ま、まずいぜ……!」

バルザック『終わりだ! 死ねッ! 勝つのはこのバルザックよッ! ――――――』

盗賊「うっ……!」


ずどぉーーーん!!!


盗賊「…………?」

盗賊(こ、攻撃がこない……どうしてだ)

戦士「ふいぃ〜〜〜……悪い、俺ばっかり居眠りこいちゃってて」

盗賊「肉ダルマぁ!」
678 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:40:43.00 ID:uqnzR30E0
バルザックは戦士の不意打ちによってトドメをさされていた!

盗賊「お前、生きてたのかよ」

戦士「何で微妙に残念そうにしちゃってんのよ」

戦士「良いトコ取りして悪かったな。でも、お前やられそうになってたし…」

盗賊「別に気にしてねぇよ」

戦士「ていうか、お前。時間を巻き戻せばよかっただろうにー」

盗賊「ふん、俺のプライドがなんか使う事を許さなかったんだぜ……」

戦士「何でいきなりそうなるんだってば……」

戦士「まぁ、とりあえず、盗賊よぅ」

戦士「なんか身につけてよ。その恥ずかしい恰好見てると俺まで恥ずかしくなるんだよ」

盗賊「……」

葉っぱ一枚! 葉っぱ一枚だけが盗賊のアレを隠しているッ!

盗賊(カッコ悪ィー…………)

戦士「お、落ち込むなよ。ほら、俺がなんか隠すもん持ってるかも…ちょい待ちね」

盗賊「早くしろっ!!」

戦士「そーれっ」

戦士は盗賊へボロボロシーツを被せた。

戦士「ちょっと臭うが……ないよりはマシだろ?」

盗賊「おあー! 臭ェ!! 酷過ぎる!! どこに入れて仕舞ってたんだよおい!?」

戦士「……内緒」

盗賊「くそっ! くそっ!! 最悪だぜ!! 死んだ方がマシだ!!」

盗賊「あー臭ぇよ!! 何だよコレ!? うおおおぉぉぉ〜〜〜……!?」

戦士「うるせーよバカたれ! これ以上言うと俺が傷つくぞ…!」

盗賊「臭ぇーーー!!! 匂いに殺されるッーーー!!!」

戦士「ひいいぃんっ…」ビクンビクン
679 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:41:34.60 ID:uqnzR30E0
戦士「はぁ、はぁ……」

盗賊「もういいっ! これで我慢しといてやるぜ!」

戦士「慣れれば臭くないでしょ……?」

盗賊「うるせぇ! さっさと屋敷の中に入るぞっ」

ガチャリ

盗賊「……おい、どうなってる? 無事に辿りつけたのか?」

戦士「見たところは。ただ、何だよ、この部屋の数は」

盗賊「え?」

戦士「これは妹ちゃん探しも骨が折れそうだ。どうする一つ一つ部屋を確認して回るか?」

盗賊「それしかないってのなら、そうするまでだ……!」

盗賊「おい、肉ダルマ。てめぇの目が頼りなんだ。頼むぜ」

戦士「お、おう」

盗賊「……何だよ?」

戦士「いや、盗賊から頼りにされる事ってなかったから。嬉しくて」

戦士「頭を撫でてもいい?」

盗賊「気色悪ィんだよてめぇは!」

戦士「冗談だってば。それより、罠があったらすぐに時の砂を使ってくれよ」

戦士「ここまで来てまた下へ落ちた! なんて事はごめんだぜ」

盗賊「分かってんだよくそったれ……」

盗賊(あと少し、あと少しで助けに行けるからな。お兄ちゃんを信じて待っていてくれよ)

盗賊(かならず助けるからな!)
680 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:42:13.22 ID:uqnzR30E0
魔剣『はーなーせーよぉー! やーだぁー!』


タイムマスター『……』

魔剣『僕は勇者ちゃん以外に触られたくないの! やめてよ!』

魔剣『えーんっ、勇者ちゃん早く僕を助けに来てよー!』

タイムマスター『なんて喧しい剣なのだろう』

タイムマスター『お前、その気になればワシから逃げられるのではないか』

タイムマスター『魔物なのだろう?』

魔剣『僕が? 魔物? お前、さてはバカだな! バーカ!』

タイムマスター『……』

魔剣『僕をお前らみたいな魔物と一緒にしないでよ! 僕は魔剣だ!』

タイムマスター『いいや、お前はワシと同じ魔物匂いがプンプンするわぃ』

タイムマスター『その剣の中に封印されているのか? 哀れな奴よ』

魔剣『だから違うんだってば! もう、ジジイと話してると疲れる!』

タイムマスター『……少し、お前が気になるのだ。調べてみよう』

男「よせ」

タイムマスター『いらしていたのですか。マスター』

男「その剣に必要以上に触るんじゃあない。それは私の剣だぞ」

魔剣『違うよっ! 僕は勇者ちゃんだけの僕だよ! やぁーだぁー! 気持ち悪いよぉ〜!』

男「……うるさい剣だな」

タイムマスター『同意します。マスター』
681 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:42:51.48 ID:uqnzR30E0
男「その剣を適当に黙らせておけ。後でじっくり私が見てやる」

男「くれぐれも傷をつけるなよ? 素晴らしい品なのだから」

タイムマスター『了解しました』

タイムマスター『……』

魔剣『ねぇ、ねぇ。どうしてあんな奴の言いなりになってるの?』

魔剣『お前だったら簡単にアイツ倒せちゃうじゃん〜?』

タイムマスター『その通り。だが、あの男からは手に入れなければならない物があってな』

タイムマスター『隠し場所さえ分かれば用済みよ。根こそぎ奴の魔力をいただいて、退散させてもらうわ』

魔剣『ふーん』

魔剣『あぁ! ねぇねぇ、だったら僕たちに協力してよー』

魔剣『そしたらお前が探してる物を一緒に探してあげるよ!』

タイムマスター『結構だね。得体の知れん者の手を借りる気は起きんのだ』

タイムマスター『それに……魔王がいたな? ワシはあの男を信用できん』

魔剣『気づいてたの〜?』

タイムマスター『ふん、気づかないと思っていたのか。ワシは先代魔王様を殺したあの男を許さん』

タイムマスター『忘れるものか。あの混ざり者の嫌な臭い、そしてあのプレッシャーを』

魔剣『むっ! 魔王ちゃんは嫌なにおいじゃないよ、いい匂いだよ! バカ!』

魔剣『これ以上あの人の悪口言ったら僕が許さないんだからねっ』

タイムマスター『健気な剣よのぅ。アレの正体を知った時、お前は今のままでいられるかな』

魔剣『正体って、魔王でしょー? 何言ってんのさ』

タイムマスター『いつまでもそう思っていればいいのだ。真実を知ることなくな』

魔剣『こいつムカつくよ、魔王ちゃん! 早くぶった切ろうよー!』
682 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:43:30.48 ID:uqnzR30E0
ここは男の部屋。大きな空間の中に、真ん中に大きなダブルベッドが一つだけ。

その上には男の姿と

盗賊妹「……」

男「ン〜〜〜フゥ〜〜〜……いいね、いいッ! 最高にイイんだよ、キミはッ!」

男「キミは、実にいい…私が追い求めていた理想そのものなんだ…ああ、母さん」

男「なぁ、キミなら私の母親になってくれるよなぁ? なぁ?」

男「ン〜〜〜……」スリスリ

盗賊妹「……」

男「いい手だ。スベスベしているじゃあないか…すーりすり」

男「ああ、母性を感じて堪らない……なぁ、その手で私を撫でてくれてよ」

男「愛しそうに頭を撫でてくれ…ふふっ、ああ…興奮を隠せないよ…参ったなァ…」

盗賊妹「……」

男「……ふんッ」

男(これでは一人でよがっている変態じゃあないか。タイムマスターめ、厄介なことをしてくれて)

男「私はこの娘に部屋から出れなくしろと言ったんだ…! なのにっ、あの屑め!」

男「゛人形の呪い゛をかけやがった……! 実に強力で凶悪な呪いッ!」

盗賊妹「……」

男「神父でも、聖水でも、魔法薬でもダメだった!! そうだよなァッ、もうこの娘は人形なんだからなァ!!」

男「人間に通用するものが人形には通用しない。実に厄介だ……!」

男「厄介だ、厄介過ぎる……呪いをかけた術者であろうと、呪いを解く事はできない!」

男「ああ、何故なんだ。既にキミは私の物だというのに遠く感じてしまうよ」

盗賊妹「……」

男「早く私を愛してくれよォ〜〜〜……寂しいんだよォ〜〜〜……」ペロペロ


盗賊妹「……オ」


男「!」

盗賊妹「オニイ、チャン」
683 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:44:28.81 ID:uqnzR30E0
男「しゃ、喋りやがった。治ったのか? マジなのか!?」

男「おいッ! もう一度だ、もう一度その口を開けて喋ってみるんだ!」

盗賊妹「……」

男「なぁ? 本当は喋れるのだろうが…! 私は知っているぞ! さぁ、貴方を愛していると喋るんだッ」

盗賊妹「……」

男「何だっていうんだ!? 私のただの聞き間違いなのかァ? 私はついに気が狂ったか!?」

男「どうしてお兄ちゃんと呟いた!? 私にはそんな趣味は断じてないぞッ」

男「うおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーッ!!!」

男は獣のように荒ぶりながら、盗賊妹が身につけていた服をビリビリと破いた。

盗賊妹「……」

男「はぁ、はぁ」

男「ふ…ふふふっ……。お、落ち着こう。少しクールになろうじゃあないか」

男「ああ、なんて綺麗な体をしているんだろう。最高さァ、キミは」

盗賊妹「オ、オ、オ」

盗賊妹「オニイチャ、ン」

男「……」プルプル

男「キミは…キミは実に良かった…良かったが…もう、私は耐えきれそうにない」

男「ふー、飽きちまった。残念だがキミとの関係もここまでにしておこうじゃあないか」

男「仕方がない。水槽の中に入れて観賞用の私の嫁にするよ。実に残念だが…」


「何がそこまで残念なのかしらねェ」


男「!」

女魔王「ぐわはははははッーーー! 隙ありであるわ!」

女魔王の攻撃!

男(い、いかんッ……!)
684 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:45:09.07 ID:uqnzR30E0
男「時よ――――――」

女魔王「遅ォい」


男「がぶばっあぁぁぶぅぅ〜〜〜……!?」めきめきめき・・・


男は女魔王の拳を顔面に受けて、大きくぶっ飛んだ!

女魔王「ふんッ、生っチョロイわ」

僧侶「いた! 盗賊さんの妹さんですっ」

女勇者「は、裸に引ん剥かれてる! ひどい!」

魔女「絶妙にえっちぃ。ですわね」

男(な、なぜだ)

男「なぜこの部屋へ辿りつけたのだーーーッ!! タイムマスターは何をしていたのだァッ」

女魔王「何を申しておるのかさっぱりであるわね」

女魔王「一つ一つ部屋を調べるのは面倒だったので、壁を壊して回っておった」

女魔王「そうしたら何と、偶然」

魔女「初めからこうしていれば良かったんですわよ。アホくさい」

女勇者「ようやく追い詰めた! あなたはここで倒すからね!」

女勇者「絶対に許さないんだからね!?」

男「ひ、ひぃ……」

女魔王(おかしい。全力で殴ったつもりなのに、何故あやつ生きておるのか)

女魔王(あやつが頑丈だったのか。それともやはり、女体化した事で余の力が弱まってきている?)

女魔王「そんなの認めんわッ! どっちみち貴様はこれでも十分ボコれるッ!」

女魔王と女勇者の攻撃!

男「うおおおおおぉぉぉぉーーー!? 時よ止まれェーーーッ!!!」


〜〜〜


男「あ……ああ……止まった。ふぅ」

男「おい、どういう事か説明するんだ! なぜコイツらをこの部屋に!」

タイムマスター(申し訳ございません。うっかりしていたのです)

男「うっかり!? バカかッ! 実にバカらしい言い訳が来たものだなァッ!?」

男「私を舐めているのか? 調子に乗るのも大概にしろよ…ふざけやがって!」

タイムマスター(申し訳ございません。マスター)
685 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:46:15.89 ID:uqnzR30E0
男「畜生ッ。まぁ、いい……このままコイツらを始末するぞ。時間が止まっている今がチャンスだ」

タイムマスター(不可能です)

男「は?」

タイムマスター(制止した時の中で物体を動かせられるのは素質があるのみ。それはマスターもご存じの筈)

男「……ならお前がやるのだッ! お前がコイツらを仕留めろ! 殺せ! あのメイドをそうしたようにッ」

タイムマスター(無理です)

男「は? はぁ? はぁ!?」

男「い、いい加減にして欲しいところだ……。私はお前をこれでも信頼しているんだぞ」

男「やれと言ったらやるんだよォーーーッ!!」

タイムマスター(私が今からあなたにできる事は、あなたの指示に従って時を止めるぐらいの程度です)

男「ふざけんなぁぁぁぁ!? どうしたんだお前、おかしいぞ!?」

タイムマスター(マスター。こちらも非常事態なのです)

男「何ぃ……?」


・・・


タイムマスター『迂闊に、動く事ができないのです。敵に』

タイムマスター『敵に…背後を取られてしまった…とても、迂闊だったと思います』

戦士「おい、誰が喋っていいって言った? お前は今ヤバい状況下なんだぜ」

戦士「一歩も足を動かすな! 口も許可なく動かすんじゃねぇ!」

魔剣『そうだー! もっと言ってやって戦士ちゃん!』

タイムマスター『……』

盗賊「こいつがあの男の補助に時間魔法を使っていたとはな」

盗賊「追い詰めた、屑野郎っ! いい気になっていられるのはここまでだぜ!!」

タイムマスター『……』ニヤリ
686 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/16(月) 02:49:36.85 ID:uqnzR30E0
ここまで。ジョジョ大好きだよジョジョ展行ってきたよ
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/16(月) 03:20:57.73 ID:FnPI1TkAo
ジョジョ展?
ンなモンはどーでもいい(問題発言)。
このDOKIDOKIが止まらねぇー!

俺はアンタにッ! 最高にシビれてるんだぜーーッッ!!
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 03:21:33.14 ID:FnPI1TkAo
sage忘れ
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 03:47:53.65 ID:99D7ZqGf0
きてたのか、乙
相変わらず面白い。三魔官ズがアホかわいいです
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 04:02:59.34 ID:apb/arzIO
otu
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/16(月) 08:30:18.59 ID:El8w47NDO
戦士どこにボロシーツ隠してんだよww
そんなに臭いところってどこよ
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/07/16(月) 15:16:38.64 ID:/HHh4WAGo
乙乙!
693 :  [sage]:2012/07/16(月) 20:38:19.59 ID:beZYICbvP
>>691
フンドシだろ
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/07/16(月) 21:13:09.54 ID:E7Whic3/o
>>691
ソレは奴のフンドシなのよ!
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/17(火) 02:38:21.32 ID:FEz2GNB+o
東海道中膝栗毛思い出したわ

道中でメシ食うアテがなくなったもんで、喜多さんが大名参勤の本陣に潜り込ンで、人足方の飯を食う。
…そのついでに握り飯を作って、懐の手拭いに包んで弥二さんに持っていく。
その包みを開け、握り飯をたいらげた弥二さんが開口一番。

弥二「おい喜多さん、この手拭いでキンタマ拭いてんだろう。そんな汚ねェ手拭いで包んだ飯かと思うと、食う気も起きねぇぜ」

喜多「それにしちゃア、一粒も残さずに綺麗に食ったじゃねェか」

…うん。
戦士盗賊はお笑いコンビか。
696 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/17(火) 15:24:11.76 ID:D1KLqJYK0
見直したらジョジョ展行ったって何だよ。まだ始まってねーぞ
うそついてたようだ。ジョジョ展は7/28日からだす!行きたいなぁー!
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/17(火) 22:56:38.33 ID:fesNz18I0
乙だぜ!
>>696
……時間遡行?
698 :  [sage]:2012/07/18(水) 03:13:03.37 ID:R2nY9+96P
>>696
それが時の砂の力だぜ…!
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 07:13:35.08 ID:Z8bBuwXDO
>>693>>694
フンドシかよwwwwww


え、なに?じゃあ戦士さんったら今ノーパン?
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 16:45:34.41 ID:qXgtXSMIO
>>696
タイムマスターにやられたのか
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/18(水) 18:33:04.90 ID:z/F56cM+0
調べたらタイムマスターってドラクエのモンスターだったんだね。初めて知ったよ
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/07/18(水) 23:36:21.37 ID:atJpqNcso
よるのていおうもドラクエだしな
703 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:25:54.35 ID:q00bCm7I0
女勇者「!」

女勇者「目の前にいたはずなのに」

女魔王「阿呆、時を止められて回避されただけよ。動揺すんな」

男「はぁ、はぁ……」

僧侶(さっきまでの余裕がまるでウソのような焦りっぷりだ)

僧侶(この部屋に来られただけで、普通あんな動揺を見せる?)

僧侶(何か、予想外の事が起きてしまった……?)

魔女「アンタは気づいているみたいですわね」

僧侶「ええ、様子がおかしい」

僧侶「時間魔法に警戒するに越した事はありませんが…」

魔女「そうね。でも」

女魔王「ぐふふ〜 貴様ァ、ビビっておるな? 余を恐れておるな?」

男「……」

魔女「今、奴に手を出すべきなのか。それとも、手を出さないべきなのか」

僧侶「妹さんの安全確保が最優先だと私は思います」

僧侶「勇者様ー! 私は妹さんと共に一旦外へ出ます! 構いませんね!」

女魔王「どう苛めてやろうかのぅ…!」

僧侶(全く聞いていないわっ…)

女勇者「このっ!」

女勇者の攻撃!

男「時よッ!!」ぱっ
704 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:26:55.11 ID:q00bCm7I0
女勇者「……まただ。でも、今がチャンスだよね。アイツを確実に追い込んでるんだ!」

女勇者「勇者さん! 挟み撃ちの形で攻めていきましょ!」

女魔王「やだァッ!」

女勇者「勇者さぁん…!!」

女魔王「余は余の好きな様に動くの。貴様ァ、チョロチョロ動いて攻撃に巻き込まれてもしらぬからなーッ!」

男(どう逃げればいいのだ…ここから…時を止めて…)チラ

僧侶・盗賊妹「」

男(出口まであと少しなんだ。しかし、ここであの娘を奪われるのは気に食わんッ! 癪だッ!)

男(私の最も嫌う事とは、それは他人に私の物を奪われる事だ。それだけはあっちゃいけないんだ……)

女魔王の攻撃!

〜〜〜

男「おい、何とかしてくれたまえよォーーーーーーッッ!!」

タイムマスター(無茶を言わないでもらいたい。゛ソレ゛が今の精一杯なのです)

タイムマスター(゛時を止める゛それが今できる最大限の努力なのです。マスター)

男(つ、使えない…! 魔物風情め! 主の危機なのに…こんな時に…!)

タイムマスター(しかし、マスター。貴方はその者を退ける力を、剣を持っているのだ)

男「は…え…?」

男「……出鱈目を言うんじゃあないぞ。私はテキトーな事を言われたくない」

タイムマスター(出鱈目ではない。貴方が大切に保管している剣こそが、敵を退ける力となるのです)

タイムマスター(確実だ。きっと剣は貴方の力になるだろう……!)

男(大切に保管? こいつ、如何にも私がソレ以外をぞんざいな扱いしているかのように言いやがったぞ…実にムカつくな
ぁ!?)

男「その剣とは何なのだ? 心覚えが全くないぞ」

タイムマスター(勇者の剣です。マスター)

タイムマスター(勇者の剣を取り出すのです……それが最高に、いいんだ……!)

タイムマスター(今がチャンスだ。さぁ、時が止まっている今! 部屋を出て剣を!)

男「あ、ああ……タイムマスター…お前の言う事はいつも胡散臭いと思っている、が…今だけは…信じようじゃあない
か」

男「このピンチを切り抜けられるというのならッ!! お前の言いなりにでもなってやるぞォッーーー!!」

男は制止した時の中、部屋を飛び出してある部屋を目指した!


タイムマスター(……)
705 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:28:19.97 ID:q00bCm7I0
盗賊「おい、俺の妹の居場所を知っている筈だ! 答えてもらうぜ!」

タイムマスター『……』

盗賊「こっちは今てめぇに質問しているんだ。魔物相手だ、容赦はしねぇ…」

戦士「必要な事には答えてもらおうか。少しでもおかしな真似したらわかってるよな?」

タイムマスター『……』

魔剣『おらー! ジジイー! 何か答えたらどうなのー!』

タイムマスター『……』

魔剣『もしかして、寝てる?』

戦士「だとしたら緊張感なさすぎっス」

タイムマスター『馬鹿とハサミは…』

盗賊「あ?」

タイムマスター『使いようだな、本当に……。いや、お前たちのお陰でもあるわぃ』

戦士「俺らが言った事の意味を理解できてないようだな。覚悟しろよ、魔物めーーーッ!」

戦士の攻撃!

タイムマスター『感謝しよう! お前たちが来てくれたからこそ、ワシは目的を果たせられるのだ!』

タイムマスターは攻撃を仕掛けてきた戦士へ手を向けた!

戦士は謎の力で床に押しつけられてしまった!

戦士「ぐぅ……!」

魔剣『これ、前に魔女っちが使ってきた魔法なんだよ! 重力魔法!』

魔剣『盗賊ちゃん何とかしなきゃー!!』

盗賊「わかっているぜ…っ!」

ナイフを逆手に持ち、姿勢を低くして一気に敵へ接近!

盗賊「スッとろ過ぎるぜ。ノロマな老いぼれっ」

勢いに任せて体を捻じり、回し蹴り攻撃!

しかし!攻撃が命中した感触は得られなかった。

タイムマスター『……生憎だが。その遅さは別の部分でカバー済みなのだ』


盗賊(時を止めて回避したのかッ―――――――)


タイムマスター『己の未熟さと無力を抱き、失意に飲まれて永久に死ね!』


盗賊「      」
706 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:29:07.13 ID:q00bCm7I0
何をされたのか、盗賊には永遠に理解することはできない。

なぜならば、盗賊は盗賊自身の時を凍結されてしまったからだ。


盗賊「      」


戦士「盗賊……? おい、盗賊に今何しやがった!」

魔剣『時間魔法だよ、戦士ちゃん! アイツは盗賊ちゃんの時間を止めちゃったんだ!』

戦士「何だよそれ!」

タイムマスター『この男はこの世に居続ける。死んだも同然の状態で』

タイムマスター『ふん、愛する兄妹を救えずに。悲劇的だな。だが、ワシには喜劇よ』

戦士「お前ぇっーーーーーーッッ!!!」

タイムマスター『このワシこそ全ての時を制する者。その名は伊達ではなァいわッ!!』

戦士「名前なんぞ知らねぇんだよ!! 調子に乗るんじゃねぇーッ!!!」

魔剣『戦士ちゃん落ち着いて〜! 盗賊ちゃんなら後で僕をつか…』

タイムマスター『頭が高いぞ』

戦士「うううっっ〜〜〜……!!」ぐぐぐっ

魔剣『戦士ちゃあーんっ! やめてよー! 戦士ちゃん潰れる!』

タイムマスター『お前たちの役目はここで終了というわけなのだ。そろそろ舞台から降りろ』

戦士「あ、ぐ、ぎ、ぎぎ……」


戦士「      」


戦士の時間も凍結してしまった。

魔剣『ああっーーー! 戦士ちゃん! 酷い! バカジジイー!! 老衰してくたばれよぉ!』

魔剣『どうすんのさ、これ! 魔王ちゃん助けてよぅー! わーんっ』

タイムマスター『何を言っているのだ。この人間どもを救えるのはお前だろうに』

魔剣『うー、話しかけないでよ!』

タイムマスター『ワシはワシの邪魔をされなければ別にこれらを殺める真似はせん』

タイムマスター『後は屋敷を抜け、2人の時を動かすなり、お前の好きにするのだ』

魔剣『はい? 死んだも同然とか言ってたじゃん…?』

タイムマスター『ふむ…そろそろだろう。ではの、喋る剣! ワシはお前を嫌いではなかったぞ』

タイムマスターは空間魔法を唱え、何処かへ消えてしまった。

魔剣『もー! わけわかんないよー!』
707 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:29:38.92 ID:q00bCm7I0
隠し部屋


男「はぁ、はぁ……アイツの言葉が真実なら」

男は勇者の剣を手にした。

男「これで奴らを倒せるーーーッ! はははは、そりゃそうだ! この剣は伝説の勇者の剣なのだからァーッ!!」

男「ぐふ、ひひふ……私は制止した時の中を動けるのだ。この剣とそれさえあれば、かならず……」

男「誰も、誰にも私の邪魔はさせないぞッ! ひーっひひひ、ヒッハァ!」


どかーんっ!


男「!?」

「地の果てまで逃げようと見つけだしてぶッ潰す〜……」

女魔王「貴様が安心できる所など、何処にも存在しないのだ! 余がおる限りなァー」

男「フン、きやがった……」

魔女「逃げ足だけは達者だこと。まぁ、魔法のお陰もあるだろうけど」

女魔王「セコい人間めがッ」

女勇者「観念してお縄につけ!」

男「お笑い集団めが。だがいい気になるのもここまでだ」

男「時よ止まれェッーーー!! 一瞬でケリをつけてやるぞッ!」

女勇者「ま、まずっ―――」

〜〜〜
708 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:30:44.75 ID:q00bCm7I0
女魔王「  」

女勇者「  」

魔女「  」

男「フッフゥ〜〜〜ッ! ん、んー! この世界では誰も私を知覚できなぁい」

男「こう、肩を…グイッ!! と掴んでも…気づかないのだよ」ぐいぃっ

女勇者「  」

男「時を支配した私に敵はいない。貴様らの敗北は既に決定していた」

男「ざまぁみろ! この伝説の剣の錆びとなることを誇りに思って死ね…」

女魔王「  」

男「まずはお前から」

そして時は動き始める。〜〜〜

男「真の時の支配者は、この私なのだァッーーーッッ!!」

女魔王「!」

男は勇者の剣を腰溜めに構えて突き刺しにかかった!

女魔王「後ろか!――――――」

男(私の方が、早ァい! 勝利だ! やったぞ!)

それはほんの一瞬だった。勝利を断言したその瞬間、


『時よ加速するがよい』


男「――――――……〜〜〜」ぐしゃあぁ

裏切られた。

タイムマスター『仮定をすっ飛ばしてお前には結果だけを残した』

タイムマスター『ワシのみが、この加速した時間の仮定の中を認識できている…』

男「〜〜〜」

タイムマスター『……勘違いをしてくれるなよ、小僧ッ!』

タイムマスター『お前はただの道化! 時を支配する者はワシ一人で十分なのだ』

男「〜〜〜」

男の体は数秒前とは打って変わって酷い様になっていた。

タイムマスター『これまでよくワシを扱き使ってくれたわい』

タイムマスター『ふん、最後の慈悲よ。無駄な殺しは好まんのでな』

男「〜〜〜」

加速を終え、そこに気絶した男の姿が残る。

男「  」がくっ
709 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:31:32.53 ID:q00bCm7I0
3人「!」

女魔王「あのクズ男はなぜ向こうで倒れておるのよ…?」

女魔王「余の攻撃が当たった感覚はなかったぞ! それに奴の攻撃を防いだ覚えも!」

魔女「気をつけなさいな! 時をほんの少し加速されたんですわ!」

女勇者「い、いつ!?」

魔女「知らないわよっ。どこまで進んだのか、いつ仕掛けられたか!」

魔女「それよりも不思議なのは……あの男がぶっ倒れている事よ……」

男「  」ピクピク

女魔王「あやつ自身が時を加速させて、余の攻撃を受ける結果をくらった?」

魔女「今さらそんなヘマを起こすとは思えませんわよ。きっと、他に原因が」

女勇者「!」

女勇者は急に振り向くと、鋼の鞭を振るった!

しかし、そこには何がいるわけでもなく、攻撃は虚しく終える。

女勇者「……あ、あれ」

魔女「また混乱魔法でも受けた? 全く、このバカ女は」

女勇者「違うよ! 何か後ろの方で嫌な感じがしたから……でも」

女魔王「あァん? 何もおらんではないか。嘘吐きめ」

女勇者「うーん……勘っていうか、なんてーか……と、とりあえず」

女勇者「一旦、師匠と戦士さんを探そうよ。よく分からないけどこいつ倒してるし」

魔女「そうね。僧侶との合流はその後に―――!」

視線を女魔王へ移すと、そこには背後から剣で首を撥ねようとする魔物の姿が!

魔女「バカ! 後ろーっ!!」

女魔王「ふんッ!」

女魔王の攻撃! しかし、魔物の姿は消えていた。

女魔王「確かに何か余の後ろにおったわよ! 貴様も見たなッ」

魔女「え、ええ……でも、いつのまにか消えていて……」

魔女(僅かに魔力の痕跡が残っていますわ。じゃあこれって)

魔女(まさか!)
710 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:32:26.24 ID:q00bCm7I0
魔女「ちょっと! 私たちは大きな勘違いをしていましたのよ!」

2人「は?」

魔女「時間魔法を唱えていたのはあの男ではなく、魔物……」

魔女「それなら勇者の例の魔法で男の時間魔法を止められなかった事にも説明がつきますわ!」

魔女「そして、その魔物は今……この部y――――――」


魔女「  」がくんっ


女勇者「魔女っち!?」

魔女は突然意識を失い、倒れた。

女魔王「死んだか」

女勇者「ううん、死んではいない……けど」

女勇者「勇者さん。魔女っちがさっきまで言ってた事が本当なら、私たち今」

女魔王「真の時間魔法の使い手に襲われておる最中というわけねェ」

2人は背を合わせる状態で固まって、周囲の様子を警戒した。

女魔王「どうもあの男は弱すぎだと思ってたのだ。何をするも中途半端だし」チラ

女勇者「攻撃も全くって言っていいほど仕掛けてこなかったですもんね……」チラ

女勇者(どこに…どこに隠れてるの……? いつ攻撃してくる?)

女魔王「ふん、何も心配することはあるまい」

女魔王「ルールをチェンジするのだッ! 時間魔法を禁ずる!」


しーん・・・


女魔王「あれぇ?」

女勇者「魔力切れてるんじゃ……」

『その魔法は知っているぞ。あの方から奴が盗んだ術だ……』

女魔王・女勇者「!」

『夜の帝王のコソドロめがのぅ……そうか、貴様の手に渡ったのか』

女勇者「す、姿を現しなさい! 正々堂々戦えー!」

『憎い、憎いぞぉ……お前が憎い……』

女勇者「勇者さんっ」

女魔王「……」

女魔王(この声は)
711 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:33:54.83 ID:q00bCm7I0
女魔王「タイムマスターか」

女勇者「え?」

タイムマスター『お前が、憎いぞ……!』

女魔王「おう、これは時間魔法ではないッ! ただの姿消し魔法であるわッ」

女勇者「姿消し……何じゃそりゃ?」

女魔王「退けィー!」どんっ

女魔王は女勇者を突き飛ばした。

女勇者「うわぁ!?」

タイムマスター『キエエァーーーーーーーッッ!!!』


どすっ


女魔王「!?」

なんと、姿を現したタイムマスターに女魔王は腹を刺されてしまった。

タイムマスター『痛かろう、痛かろうゥ。じゃが、あの方が受けた傷はこの程度ではあるまい!』

女魔王「がばぶっ……!?」ぼこぼこ…

女魔王は刺された腹から、そして口からも大量の血を流した。

タイムマスター『今こそ恨み晴らす時ッ! くたばるのだァッー!』

女勇者「ふんっ」

女勇者は起き上がると、2匹の間に割り込みを入れるように鞭を放った!

タイムマスター『邪魔じゃあ!』

呪文を唱えることなく、女勇者を包むように爆発魔法を起こす!


どかーんっ!


タイムマスター『邪魔はさせん! させんのだ! うおおおおぉぉぉーーーッ!!』ぐぐぐ・・・

女魔王「ぎああああぁぁあああああああああああぁああああああああああ!?」どくどく・・・

女魔王(か、体が!! 体が溶けるように熱い!! 動けん!? 余が! そんな!? ば、バカな……!)

女魔王の体力はみるみる内に削れて無くなってゆく!
712 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:38:53.96 ID:q00bCm7I0
女勇者「勇者さんっ!」

女勇者は爆発間際で魔法防御力強化の呪文を唱え、強引に突破した!

そのままタイムマスターへ突っ込む!

女勇者「うわあああああぁっーーーッ!!」

タイムマスター『ふん、時よ止ま』


「時止まれ、ですわ!!!」


タイムマスター『あっ!? ――――――』


〜〜〜


魔女「……成功、ね」

タイムマスター『バカなっ、小娘! 無理矢理ワシの魔法へ干渉してきおったな!? 滅茶苦茶なっ』

魔女「最初から飛ばしていきますわよ!!」

魔女はタイムマスターへ両手を向け、早口で呪文を唱えてゆく!

魔女(まだ、まだ止まった時間の中で動いていられる! いける!!)


タイムマスター『時よ戻るのだアァァーーーッ!!』

魔女「呑まれて消えなさい!!」


魔女は天体魔法を唱えた! タイムマスターの頭上に暗黒空間が出現する!

暗黒空間は何もかもを吸い込む!

タイムマスター『ぐ、ぐぬゥウウウウ……!?』

タイムマスター『この剣だけは、剣だけは守らねばならん! ぐおおおおぉぉぉ!?』ガオン

既にタイムマスターは暗黒空間に半身を呑まれつつある。
それでも必死に剣を庇い、空間の中から這い出ようとしている!


魔女「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ! ……――――――――」


魔女は止まった世界での行動限界、魔力全消費によって敵の時間停止に巻き込まれてしまった。

同時に暗黒空間は音もなく消滅してゆく。

タイムマスター『あぐ、ぐぅ……! か、体が…半分持ってかれた……』

タイムマスター『まだ死んで堪るものか……』ふら、ふら

力尽きそうな自分を奮い立たせ、空間魔法で地下へテレポートした。


〜〜〜
713 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:41:06.00 ID:q00bCm7I0
女勇者「あああああ……って、あれ」

女勇者「いない? 時間止めて逃げたのか」

魔女「はぁ、はっ、は……ひゅー、ひゅー……」

女勇者「魔女っち! いつ起きたの! な、なんか辛そうだけど…」

魔女「いま……はなし…か、かけないでっ……!」

魔女(咄嗟にダメもとでやってみたものの、上手くいくとは)

魔女(魔力も体力も消費が激しいですわ……。下手すりゃ死ぬ!)

魔女「うご、うごけて…せいぜい5びょう……かしら」

女勇者「待ってて! すぐに薬草を」

魔女「わ、わたくしは…いいから! …あっち!」

魔女が指差す先にいた女魔王は、床に倒れて止めどなく血を流していた。

意識が薄れつつある!

女勇者「あ…!?」

女魔王「   」どくどく

女魔王「……ゥゥ」

女魔王(いかん……ここで意識を無くしては、いかんのである……)

女魔王(おかしくなりそう……ッ!!)

女勇者「ゆ、勇者さん……?」

女魔王「ウゥゥ……フガー……ギャウウウゥゥゥ〜』ぴく、ぴく

女魔王の姿が変化し始めている。

女勇者「えっ」


女魔王『ギャウウウウウウウウウウウウウウウウウォォォォォォォォーーーッ!!!』


魔王は第2形態へ変身した!

魔女「!」

女勇者「な、何あれ……」

魔女「まもの……?」
714 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/19(木) 02:45:30.48 ID:q00bCm7I0
ここまで

>>701
ここではほぼ名前だけを借りた別物だと思ってくれ
実際のタイムマスターは時間止めたりとかしてこないんだ。ちなみにZのボスだよ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 07:09:32.21 ID:rayPyMpIO
最初は性格壊れた奴らばかりでなんだこれって思ったけど…
凄まじく面白く悔しい!悔しい!(ビクンビクン)
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 07:13:29.67 ID:46bfHwYIO
おつ
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/19(木) 09:38:38.47 ID:qT2GqC28o
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/19(木) 09:46:56.87 ID:QcwQa8QY0
魔王ちゃん変身しちゃった…どうなる
乙!

719 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:17:49.06 ID:oGagvSC50
盗賊妹「……」

僧侶「ええと、出口は」

僧侶「あーもうっ! 無駄に複雑なんですから!」イライラ

僧侶「それにしても」

盗賊妹「……」

僧侶「まるで生気を感じられない。瞳の輝き一つないわ」

僧侶(こんな状態の妹さんを見て、盗賊さんはショックを受けてしまわないかしら)

僧侶「はっ」

僧侶「どのみち視力を失っているんだから見えるはずがないじゃない……」

僧侶「私が代わってあげられたらどんなにいいか」

僧侶「盗賊さんの為なら……」

ちくり

僧侶「痛っ」

盗賊妹「……」

どういうことか盗賊妹が僧侶の手をつねっている。

盗賊妹「……」

僧侶「い、痛い痛い! 痛いです!」

盗賊妹「……」ギリギリギリ

僧侶(なぜ急にこんなことを? 呪いを受けて意思がないはずなのに)

僧侶「気に障った事を話してしまったのならごめんなさい。ですから、許して頂けないでしょうか…っ」

盗賊妹「」ぱっ

僧侶「あ、ありがとうございます(またさっきと同じ状態に。一体どうしちゃったのかしら…)」
720 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:18:53.25 ID:oGagvSC50
キキキ・・・


僧侶「!」

近くの部屋から魔物の声が複数聞こえてきた。

僧侶は注意しつつ、その声に耳を立てる。


< ニンゲン、ニンゲン!

<ウゴイテナイカラクエル!

<ヤメテヨー! フタリヲタベチャッタラ ユルサナインダカラー!


僧侶(この声はまさか)


<エーン ユウシャチャーン


僧侶「魔剣ちゃんだわ―――!」

慎重に扉を少し開け、中の様子を覗く。

すると、中には戦士と盗賊がマキマキに囲まれている状況がそこにあった!

僧侶「大変……。妹さん、私の後ろから離れない様に」

盗賊妹「……」


どかんっ!


マキマキ『キキッ!?』

僧侶「イカヅチの杖の力よ〜〜〜!!」

僧侶が杖を掲げると、マキマキたちへ閃光が走る!

カッ――――!

マキマキ『ヒギャアァアッ』

僧侶「よ、予想以上の力! こんなに凄い威力の魔法を一瞬でだなんて!」

僧侶(久々にいい買い物をしたわ!)フンス

盗賊妹「……」ツンツン

僧侶「あっ、そうでした。浮かれている場合では」

魔剣『僧侶ちゃ〜〜〜ん!!』

僧侶「魔剣ちゃん! 無事だったのね」

魔剣『無事なんかじゃないよー。2人が』

戦士・盗賊「   」

魔剣『2人の時間が止められちゃったの! 助けて!』

僧侶「これは……」
721 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:19:33.39 ID:oGagvSC50
盗賊妹「……」

僧侶「せっかくお兄さんに会えたのにこんな状態では」

魔剣『僕で切ればきっと治せるはずです!』

魔剣『でも、僧侶ちゃんは僕を持てないから勇者ちゃんを…』

僧侶「ううん、私がやるわ」

僧侶は魔剣を手にした。

僧侶「あうっ……!?」

僧侶(触れただけで一気に嫌な感覚に、た、耐えられな……)

魔剣『無理しちゃやだよー。死んじゃうっ』

僧侶「無理は、通してなんぼ……」ぐっ

僧侶「あああああぁぁっ!! うううううぅぅぁ……ッ!」

僧侶「こ、こんな…こんなもの! 乗り越えてみせるわ!」

僧侶は魔剣で2人を切った!


戦士・盗賊「―――――はっ」


戦士「この野郎ッ! 盗賊をよくも……あり?」

盗賊「奴の姿がないぜ?」

僧侶「も、戻った……」グッタリ

魔剣『ああっ、僧侶ちゃーん!』

盗賊「僧侶!?」

戦士「一体何があったってんだ!」がしっ

戦士は僧侶の体を支えた。

戦士「で、後ろにいるその子……妹ちゃんじゃね?」

盗賊「何だと!」

盗賊妹「……」
722 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:20:49.68 ID:oGagvSC50
盗賊「おい、どこにアイツはいるんだ! おい!」

戦士「落ち着け。お前のすぐ目の前にいるよ……」

戦士(ただ、さっきから一言も喋らないところを見ると……やはり呪いが)

盗賊「こ、ここにいるのか…? なぁ、俺がわかるか…ちょっと臭いけど…なぁ?」

盗賊妹「……」

盗賊「ああ…」

魔剣『感動のご対面だね〜』

戦士「皮肉なことにどっちも呪いに掛っている事を除けばね」

戦士「僧侶ちゃん。平気? ごめんな、俺たちの為に無理したんだよね」

僧侶「いいえ……私だって、皆さんのお役に立ちたくて……えへへ」

戦士「十分いつも役に立っているよ。ありがとな」

僧侶「盗賊さんは…盗賊さんは大丈夫ですか……。妹さんに、会えましたか」

戦士「ああ」

魔剣『盗賊ちゃん。あと2、3歩で妹ちゃんだよ』

盗賊「……」

盗賊は体を震わせて妹へ近づき、手を伸ばした。

そこには柔らかな感触があった。

盗賊「これは、お前の顔だな。きちんとわかるよ……お前の頬っぺた柔らかかったから」

盗賊妹「……」

盗賊「ごめん、ごめんな。俺がお前の事をもっと気にしていればこんな事には」

盗賊「声を、声を聞かせてほしい……お前の声が聞きたいんだよ……」

盗賊「大丈夫だったって言ってくれ……それで俺を、安心させてくれ……」

盗賊妹「……」

盗賊「いつもみたいに、頭を撫でながら言ってくれていいんだ。なぁ……」

盗賊妹「……」

戦士「なぁ、盗賊」
723 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:21:42.50 ID:oGagvSC50
盗賊「……」

戦士「今回は盗賊が妹ちゃんに大丈夫だって言ってやる役じゃねーのか」

戦士「その子はよ、ずっとお前のことを信じて待ってたんだぜ」

戦士「安心させてやんなよ。お兄ちゃんだろう?」

盗賊「お兄ちゃん……」

僧侶「とても良いお兄さんです。妹さんが心配で壊れてしまいそうにもなるぐらい」

僧侶「最後まで、助けてあげてください。ね」

盗賊妹「……」

盗賊「助ける。ああ、助けるとも」

盗賊は妹を拙い手つきで引き寄せて、思いっきり抱きしめた!

魔剣『きゃー!』

戦士「魔剣ちゃん。しーっ」

魔剣『あい』

盗賊妹「……」

盗賊「いつもは俺がお前に慰められたり、励まされていたんだな。こうやって」

盗賊「だから安心できたんだ。甘えてたんだよ、俺はお前に」

盗賊妹「……」

盗賊「情けないけど。それでもお前は見捨てたりしなかった。命一杯好きでいてくれて」

盗賊「嬉しかったよ……」

妹の頭を自分の胸の中で優しく抱いて、片手でその頭を撫でた。

盗賊「大丈夫、大丈夫だよ」

盗賊妹「……」

盗賊「お前は今どんな顔をしているんだろうな。恥ずかしいよな、こんなこと…///」

盗賊「安心してくれ。お兄ちゃんがお前をかならず助けるから」ナデナデ
724 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:22:24.92 ID:oGagvSC50
盗賊は妹をゆっくり離して、手を繋いだ。

魔剣『ラブラブですねー!!』

僧侶「こら、茶化しちゃダメ」

戦士「ここを出るまではお前がその子を守らないとね」

盗賊「ああ」

僧侶「……それにしても」

僧侶「空気読まないようですみません…何だか、変な、異臭が…こう、鼻をつくような…」

盗賊「!?」

魔剣『だよねぇ?』

戦士「……これぞ漢のかほりよ」

戦士「盗賊は今、漢への門を叩き出したんだ! だからこの臭いはその証拠で」

盗賊「うるせぇよ!! しねっ」

魔剣『いい雰囲気が一気に崩れちゃったよ〜』

盗賊「肉ダルマが悪い」

戦士「酷い!?」

僧侶「いえ、どう考えても私が悪かったです! ごめんなさいっ」

盗賊「僧侶は全然悪くないんだぜ! 僧侶は良いんだ、僧侶は!」

盗賊妹「……」ギリギリギリ

盗賊「痛い! な、何で手を抓ってるんだ!?」

僧侶「あ、それ私にも先程……。もしかしたら呪いが解けかけて意思が?」

戦士「……ほほーう」

魔剣『どったの? 戦士ちゃん』

戦士「女の恋心故にって感じっスね」

魔剣『僕、難しいのわかんなーい』

戦士「俺もよくわかんなーい」

魔剣『じゃあ一緒だね〜!』キャッキャ



盗賊「だ、大丈夫だよな。お前……?」

盗賊妹「……」
725 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:23:01.82 ID:oGagvSC50
一方、魔王たち・・・。


女魔王『ギャギャギャギャアー!』

魔女「一体どういう事ですの! 敵に何か呪いをかけられた!?」

女勇者「わからないよ! 私が見たのはお腹に剣を刺されただけで―――」

魔王は咆哮を上げると、仲間である2人へ襲いかかってきた!

鋭い爪と牙、獣の様な俊敏な動き! いつもの魔王ではないことは明らかである。

女勇者は体力の限界を迎えている魔女を脇に抱えて、魔王から逃げる!

女勇者「勇者さん! 返事して! 私たちがわかんないの!?」

魔女「どう見てもわかってねー様子ですわよ。あれ、私たち殺す気でしょう」

女勇者「きっと混乱魔法にかかっているんだ! だから」

魔女「なら、あの異様な姿の説明は? 明らかに人間ではない。ですわ」

女勇者「っ……!」

彼女たちの声は魔王へは届いていない。攻撃は、止む事も知らずに一層激しさを増すばかり!


女魔王『ギャボボボボボボボボ〜〜〜…』


両目をカッと見開くと、直線状に熱線が発射された!

女勇者・魔女「いっ…!?」

横へ跳び、姿勢を低くしてなんとか回避! 熱線が当たった壁は、まるでスライムのようにドロドロに溶けていた。


魔女「……怖すぎ」

女勇者「う、うん……」
726 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:23:56.05 ID:oGagvSC50
女勇者「あの攻撃は魔法の一つ?」

魔女「目から出す魔法なんて、逆に聞いて目から鱗が出るほどのモンですわよ!」

魔女「また向かってきましたわ! 一旦、この部屋から逃げるべき!」

女勇者「それは私も今考えてたとこだぁー!!」

ふたたび魔女を担ぐと、部屋の扉を蹴破り――――――

女魔王『ウォオウッ』


\ 部屋から出る事を禁ず! /


女勇者「えっ!?」

扉は、まるで扉ではなく、周りの扉と同等に硬くなり、開け放てる状態ではなくなっていた。

魔女「ええい、どうしてこうも、厄介な!」

魔女「……最悪ね。一番敵に回したくはない奴といったところかしら」

女勇者「冷静に言ってる場合じゃないよ! 魔女っち降ろすよ! もう限界っ」

魔女「え、あ? ちょっ…ちょっと……! きゃあっ」ボトッ

魔女「もう少し優しく降ろしなさいな! この脳筋女!」

女勇者「今なんて言ったぁー!?」

2人が言い争っている中、魔王は突然動きを止めた。

しかし、その口元だけは微かに動いている。

女魔王『…………』ブツブツ
727 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:25:39.33 ID:oGagvSC50
魔女「脳筋つったのよ! ホント、いつもガサツで嫌になりますわ!」

女勇者「うるせー! そっちこそ口悪いし、性格も最悪だし、うんたらかんたら!」

魔女「きーっ!」

女勇者「がーっ!」

女魔王『…………』ブツブツ

女勇者・魔女「…………」

魔女「気づいてますわよね」

女勇者「うん。なんか静まったっぽい」

女勇者「もしかして混乱が解けたかな?」すっ

魔女「あ、バカ……! 下手に近寄っては――――――」


女魔王『■■■■■■■■――――――ッッ!!』


魔王は近づいてきた女勇者に反応して、地獄の雷を地から召喚!
雷を身に纏うと、そのまま我武者羅に突進を仕掛けてきた!

女勇者「ひっ……」

魔女「避けなさい!!」

女勇者(だ、ダメだよ……早すぎて体が……)


女魔王『■■■■■■■■――――――ッッ!!』


魔女「チッ……」

魔女は片手を女勇者へ向けて、空間魔法を唱えた!
女勇者は瞬間移動して反対の位置へ転送される!

女勇者「あ、あれ」

魔王の突進は止まらない! そのまま直線状に座っていた魔女を撥ね飛ばした!

魔女「     」

女勇者「あああああああぁぁぁっーーーーーー!!?」
728 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:27:47.88 ID:oGagvSC50
魔女「†」

女勇者「そ、そんな……魔女っち……」

女勇者(私の事を助ける為に!? どうして逃げなかったのよ!)

女勇者「ううっ……!」


女魔王『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオォ』


魔王は殺した魔女の棺桶をガリガリと爪で引っ掻き、中から死体を取り出そうとしている。

もちろん、食べるためにである。

女勇者「勇者さん……」

女勇者(あんなの勇者さんじゃないよ。まるで魔物みたいだ)

女勇者(このままだと、魔女っちが食べられちゃう……!)

女勇者は炎の呪文を唱えた!
火球が魔王へヒットすると、魔王は攻撃対象を女勇者へ替える。

睨みつけてくるその目は血走っていて、まともとは言えない様子だ。


女魔王『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーー!』


女勇者「私が相手になります! かかって来て!」

遠慮も何もなく、魔王は高く跳躍し、女勇者へ襲いかかった!

今度は心も体も準備ができていた為に、攻撃を寸でのところで回避!
鋼の鞭を振るい、魔王の足を打つ!

女魔王『グルルルルル』

痛くも痒くもないと言いたげに、不敵に唸ると、グンと腕を伸ばして爪での攻撃を仕掛ける!

女勇者「あっ!?」

素早い動作に体が追いつかず、脇腹を爪がかすめる!
しかし、勇者の鎧は予想以上に頑丈だった。傷一つ、爪の痕すらついていない。


女魔王『…………グゥ』

女勇者「……はぁ、はぁ」

女魔王『グルアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアァァァアァアアア』


猛る魔王。涎を口から零し、巻き散らす事を構わずに怒り叫ぶ!

その声は部屋に反響し、女勇者の体を強張らせた。


女勇者(どうしよう……こ、殺される……)
729 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/21(土) 05:29:09.93 ID:oGagvSC50
ここまでや。来週辺りから投下できない日が続くかもしれない、すまんのぅ
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/21(土) 05:32:27.08 ID:rygzkXJbo
なんてこった
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/21(土) 09:03:41.69 ID:1lWfuLFSo
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 10:21:07.18 ID:q0TgIWwu0
盗賊妹が嫉妬してるwww
お兄ちゃん、僕の頭も撫で撫でしてください
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 10:55:50.08 ID:jiF5UJ7Ao
しかし面白いようにホイホイと死んでいくなぁ
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/21(土) 16:08:16.53 ID:uQ1+zuIDO
漢のかほり……
戦士さんいつも汁垂れ流しなんですか
735 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:28:16.69 ID:7jzEQ4J80
女魔王『――――――』

再び、発射される熱線。女勇者は咄嗟にお鍋のフタを構える!

結果は一目瞭然であった。元々鍋のフタは戦闘での使用を考慮された防具ではない。

熱線はフタを貫通し、女勇者の腕を貫く!

女勇者「っ〜〜〜〜〜〜!?」

腕が焼け落ちなかった事を幸いと思うべきか、それとも鍋のフタ如きで攻撃を防ごうとした事を情けないと思うべきか。

女勇者(確実に勇者さんの攻撃は避けないと。鎧もどこまで耐久力があるのかもわからない)

女勇者(ふとした瞬間にバラバラに壊されちゃうかも……。その時は、私の体だって)

最悪のケースが脳内を過った。それをぶんぶんと頭を振る事で想像を断ち、暴走から帰らない勇者と対峙する。
熱線の後、間髪入れずに床を獣の様な無骨で大きな手で殴る魔王。直後に激しい地の揺れが女勇者を襲う!

女勇者「おわわっ……」

揺れに対応する為に壁へ跳びつき、振動を必死で耐える!

しかし、その隙を魔王は見逃す気はなかったようだ。


女魔王『アガガガガガガガガガガッ』


2つの腕と足を使い、対象へ一気に駆け寄る!

顎を大きく開げ、直接女勇者を食い殺す魂胆だ!


女魔王『ガッ―――――――』

女勇者「ふっ……う!」


女勇者は氷の呪文を唱えた! 魔王が駆けている床がカチコチに氷づいた!
ツルツルの床に足を取られた魔王は勢いよく転倒し、脇へ滑って壁にぶち当たる!

女魔王『キャン!』

女勇者「考えよう、よく考えよう私……。勇者さんを倒すべきか、元の状態へ戻すべきか」

女勇者(元へ戻すといっても、私にはそういう状態回復の魔法も使えないけど)

女勇者(……もしかしたら鋼の鞭で思いっきり叩けば治ったり? いやいや!)

女勇者(さっき意味なかった! 絶対無理だと思う! ならどうすれば!?)

女魔王『ふーっ、ふーっ、ふーっ……!!』

立ち上がる魔王。怒りは更に増している様子だ。

女勇者「ああっ、これ以上凶暴になんないでーっ!」
736 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:29:29.90 ID:7jzEQ4J80
女勇者「どうしたら……」

ふと、魔女の棺桶へ視線を移す。すると、傍に何かかが転がっていたではないか。

魔法薬が入った小瓶である。

女勇者「アレは」

彼女はない頭を最大限に働かせて考えた。

あの魔法薬は偶然魔女が落とした物ではない。故意に取り出していた物なんだ。
つまり、何らかの意図がかならずあった。例えダメもとであろうと、考えがあって取り出した魔法薬に違いない。

女勇者「魔法薬の効果は」

女勇者「呪いを解く。そして魔力器官の活性化……」

後者を魔女はデメリットと話していた。魔力器官を急激に活性的にさせるのは危険行為に等しい。
例え、魔力の最大量を増加させられるとしても、それ目的で使用するべきではないのだ。

女勇者「もしかしたら、魔法薬を使うことで今、勇者さんに掛っているナニカを解く事ができるのかもしれない」

女勇者(でも待てよー。勇者さん、前に魔法薬を飲んだ時は効果がなかったんだよね?)

女勇者(最悪、頑張って飲ませたとしても、また効果が現れなければ……)


女魔王『ギャボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』


女勇者「こ、これは…これは賭け! 私は魔女っちが残した魔法薬を信じて賭けるよッ!」

女勇者「勇者さん! 勇者さんは私が今からする最大限の頑張りに応えて! ほんと、マジ頑張りするんだから!」

女魔王『オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ〜〜〜!』

女勇者(あの勇者さんなら、きっと何とかなるよ!)ドンッ


女勇者と魔法薬の距離、約10m!

しかし、魔王との距離はそれ以上に近い。つまりは彼女の頑張りとやらは魔法薬を獲得するところから始まる!
737 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:30:06.52 ID:7jzEQ4J80
戦士「……」プルプル

魔剣『戦士ちゃん。気をつけて持ってねー?』

戦士「ま、任せとけよ」

僧侶「もしダメなら私が代わりに持っていても」

盗賊「ダメだぜ。僧侶にはこれ以上無理はさせられん」

戦士「お、俺はいいのかよって……」

盗賊「フン、俺はこの通り妹の手を握っているんだ。後はお前しかいねぇだろ」

盗賊「それとも魔剣をここに放ってさっさと進むかよ?」

魔剣『やぁーんっ! みんなと一緒じゃなきゃイヤぁーっ!』

僧侶「そんな酷いことはできませんもんね。仕方がないです」

僧侶「本当に、手伝いますよ? 戦士さん」

戦士「いや、もう戦士ちゃんに任せとけっての〜!」グググ…

戦士は魔剣を持ち上げた。勿論、厚手の布を何枚も手に巻いてである。

魔剣『わーい♪』

戦士「わ、わーい……」

盗賊「これからどうするんだぜ。3人との合流を急ぐか」

僧侶「いいえ、それより先に妹さんを安全な場所まで運ぶべきです。これ以上危険な目には合わせられませんし」

僧侶「合流はその後に。これで構わないでしょうか?」

戦士「じゃあ盗賊と僧侶ちゃんで屋敷から出てくれ。俺は勇者殿へ魔剣ちゃんを届けよう」

戦士「きっと魔剣ちゃんと俺ががいなくて勇者殿も困るし、寂しがっているに違いないからな!」

盗賊・僧侶「……」

僧侶「で、では戦士さんはそちらをお願いします。私たちは脱出を」

盗賊「……奴をこの手でぶちのめす前に出るのは心残りがあるが」

盗賊「復讐より、こいつを守ってやるのが俺にとって優先すべき事だぜ。そうだろう?」

僧侶「ええ。では、戦士さん! 後で!」

戦士「ういーっ」

魔剣『僕にもバイバイ言ってよー』
738 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:31:24.83 ID:7jzEQ4J80
盗賊「おい、肉ダルマ」

盗賊は戦士へ近づくと時の砂を手渡してきた。

戦士「コレはお前が持っているべきじゃ」

盗賊「いや、きっとこの砂は何かの役に立つ。アイツらについでに届けてやれ」

戦士「……俺は配達屋じゃないよ〜。まったくもうっ」

魔剣『戦士ちゃんは大忙しだね!』

戦士「なーに、これも勇者殿の為ならだぜ! 俺はあの人の為なら尽くせられます!」

魔剣『僕も〜!』

盗賊「……じゃあ、後は任せたぜ。あばよ」

戦士「そっちもしっかりやってくれよー!」


・・・


盗賊妹「……」

盗賊(コイツを解呪する為には魔女のヤローの魔法薬が必要だ。今度こそ完成しているといいのだが)

僧侶「盗賊さん」

盗賊「はいっ!」

僧侶「げ、元気な返事ですね……。あの、盗賊さん変わりましたね」

盗賊「か、変わった?」

僧侶「はい。勿論良い方向へですよ」

僧侶「妹さんの事、きっと守ってあげてください。あ、もちろん! 私も手助けしますから」

盗賊「あ、ありがとうございます……」

盗賊(全く、心強すぎておかしくなっちまいそうだぜ!)

僧侶「ストップ」

盗賊「え?」
739 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:32:56.48 ID:7jzEQ4J80
僧侶「……また魔物の声だわ。きっとさっきのものと同じ」

僧侶に倣って耳を済ませると、確かに魔物の鳴き声が聞こえてきた。
それはどこか、脅えが入ったものに聞こえてくる。


< ヒーエー

< オヤメニナッテー


盗賊「そのようだが。どうも様子が変だぜ」

盗賊「何かに襲われている感じがする。悲鳴だ、これは」

僧侶「襲われている? それなら、もしかしたら勇者様たちかも」

僧侶「勇者様たちが魔物たちをも追い込んでいるに違いありません!」

盗賊「かもしれないぜ。だがよ、今は悪いが妹を外へ……」

僧侶「ええ、忘れてはいませ――――――」


マキマキ『キエエァアーーー! ヒィイイアァーーー!?』


盗賊・僧侶「!」

突如目の前に出現したマキマキ。やはり様子がどこかおかしい。
マキマキは僧侶へ必死に這い寄ると足へしがみ付いた!

僧侶「な、何をっ」

マキマキ『タスケテクレヨォ〜……オレタチ、タスケテホシインダヨォ〜!』

マキマキ『アンタタチ、マスターヲタオシニキタンダロ〜〜〜? タスケテクレヨォ』

盗賊「薄汚い魔物が僧侶ちゃんに触れてんじゃねぇよ!」

盗賊はマキマキを問答無用で踏み潰す!

マキマキ『ウギッ』ぐにゅ

僧侶「ま、待って! …何があったか、話してもらえますか。事と次第によっては」

盗賊「正気か!? 相手は魔物だぜッ」

盗賊「助けるも同情掛ける余地すらねぇ! ぶっ倒すまでだ!」

僧侶「私は手も出してこないような、ひん死の魔物を痛ぶる気にはなれません!」

僧侶「お願いです、盗賊さん。慈悲をかけてあげて…」

盗賊「……チッ」

マキマキ『ア、アリガトヨォ〜……ジツハ、マスターガオレタチ、――――ヲォッ!?』


ぐちゃあ
740 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:33:54.22 ID:7jzEQ4J80
気がつけば、そこにマキマキの姿は既になかった。

残ったのは床にベットリと付着した血痕の後のみ。僧侶はソレを目で追う。

追った先にいた者は、下半身が欠如した魔物であった!

僧侶「!」

盗賊「そ、僧侶っ?」

僧侶「盗賊さん。すぐにこの場から逃げますよ!」

盗賊「何が起きたんだ。さっきの魔物は……」

僧侶「……ほ、捕食されています。違う魔物に」

タイムマスター『ぐちゃあ…がぶ、がぶ…ぐじゅ、ぐじゅう…がりっ……』

僧侶「聞こえていますよね。あのおぞましい音が…」

盗賊「……」

盗賊と僧侶は、魔物の気に触れぬようにと、静かに後ずさりをする。

一瞬で2人は察知した。今、戦ってはいけない敵であると!
さらに今は非戦闘要員である盗賊妹を連れている。勝ち目はまるで見えないのだ。

この場は逃走が最適とされる!

盗賊妹「……」

盗賊(下手を打てば、またコイツを危険に曝してしまう。それだけは何としてでも防がなければ)

盗賊の手を僧侶が引く。一気に走って逃げだそうという合図だ。

僧侶(盗賊さん。3秒後に、逃げます)ヒソ

盗賊(了解したぜ)ヒソ

僧侶「では、3……2……1ッ――――――」


〜〜〜


僧侶「3……2……」

タイムマスター『ワシは無駄な殺しはせんのだ。無駄な殺しはのぅ』

盗賊・僧侶「!」

タイムマスター『しかし、ワシのこの体を治す為に貴様らを食い殺す事。それはワシにとって無駄ではなかろう』

タイムマスター『せっかく時の呪縛から解放されたところ、悪いがワシの餌になるのだ……』

盗賊(あの老いぼれ魔物か! アイツが、味方の魔物を!)
741 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:34:31.66 ID:7jzEQ4J80
戦士「盗賊たちは上手く逃げられたかねぇ」

魔剣『もしかして、寂しいの? 大丈夫だよ〜僕も一緒なんだよ〜♪』

戦士「魔剣ちゃんじゃなくて勇者殿と一緒じゃなきゃやですー」

魔剣『むっ、だったら僕だって勇者ちゃんと一緒がいいもん!』

魔剣『戦士ちゃんなんかより、ず〜〜〜っと僕の方が勇者ちゃんLOVEなんだからね!』

戦士「言ったなお前ぇー!」

魔剣『ふーんだっ』

戦士「はぁ……大人気ない事はやめよう。魔剣ちゃんよ、今は3人との合流を急ぐんだ」

戦士「キミなら3人の匂いを追って、場所わかるっしょ?」

魔剣『わかりまーす。でもさっきの事謝らなきゃ教えませーん』

魔剣『せっかく戦士ちゃんのこと心配してあげたのにー、酷いよぅ』

戦士「うぅ…ごめんなぁ。勇者殿としばらく離れてたからイラついてたんだよ…」

魔剣『本当? もうイラついてなぁい?』

戦士「うん」

魔剣『そっか〜! じゃあ僕、戦士ちゃんを許したげるね!』

戦士「魔剣ちゃんは優しいなぁ。んで、場所は?」

魔剣『わりとここから近い所だと思うよ。すぐ、すぐ〜』

戦士「マジで?」

魔剣『はい。僕を信じましょー』

戦士「はーい」

戦士「早く勇者殿に会って、勇者殿分を補給しなきゃやってらんねーぜ。全く」

魔剣『なぁに、それ?』
742 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:35:02.82 ID:7jzEQ4J80
魔剣『ねぇねぇ、戦士ちゃん』

戦士「ん?」

魔剣『僕は魔剣だよね? 魔物なんかじゃないよね』

戦士「いきなりキミは何言いだすのよ?」

戦士「どこからどう見ても剣。魔剣ちゃんだよ」

戦士「魔物じゃない、俺たちの大切な仲間さ」

魔剣『わぁーい♪』

戦士「でもどうしてそんな事聞いたわけ? らしくないわ」

魔剣『あのね、あの変なジジイが僕のことを魔物だって言ったんだ』

魔剣『僕は絶対違うよ、って言っても認めてくれなくてね? だから』

戦士「ああ、不安になったんだな……大丈夫だよ」

魔剣『魔物なんかに見えない?』

戦士「うん。魔剣ちゃんにしか見えないんだぜ」

魔剣『盗賊ちゃんの真似っこー』キャッキャ

魔剣(でも、戦士ちゃんはこう言ってくれてるけど……)

魔剣(僕は本当は一体何なんだろー? 本当に魔剣なのかな)

魔剣(僕、ちょっとだけ心配だよ〜勇者ちゃあん……)

戦士「魔剣ちゃん。魔剣ちゃんてば。おーい?」

魔剣「はっ! な、なーにっ」

戦士「この辺りに3人はいるのかって聞いたの。どうよ?」

魔剣『う〜ん……たぶん、そこ?』

戦士「たぶんって…」
743 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:36:23.39 ID:7jzEQ4J80
魔剣『何かね、匂いがイマイチなのね』

戦士「はい?」

魔剣『イマイチ匂いを嗅ぐ事ができないの。ちょーっとだけは匂うんだけど』

戦士「……よくわからないけど。この部屋にいそうだってことは間違いないのね?」

魔剣『たぶん』

戦士「たぶんね、はいはい。十分っスよ」

戦士「可能性がある限り……そして、この勇者殿センサーが強く反応している!」

戦士「気がする!」

魔剣『気がするんだね〜』

戦士「だから、この部屋を調べる動機としては十分なのよ。OKィ?」

魔剣『おーけー』

魔剣『でもこの部屋音一つ聞こえてこないね〜?』

魔剣『もしかして誰もいないんじゃない?』

戦士「気にしなーい」がちゃり

戦士は扉を開けて、部屋の中に入った。

そこにはボロボロの女勇者と

女魔王『グルルルルルルグ…!』

戦士「魔物!」

魔物でもあり、

魔剣『違うよ〜! アレは勇者ちゃんなんだよ!』

勇者(自称)でもある魔王がいた!

女勇者「ああっ!?」
744 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:37:06.94 ID:7jzEQ4J80
女勇者「戦士さんと魔剣さん……来てくれて、とっても心強い…私としても助かるよ。でも…」

女勇者「このタイミングで部屋に入ったのはマズかったと思う! 2人はもう、この部屋から出る事はできないんだ!」

戦士「そんな事はどうでもいいんだよ! その魔物は何だ? 勇者殿と魔女は!」

魔剣『だから勇者ちゃんは〜』

女勇者「魔女っちは死んじゃった。私を庇って……勇者さんは」

女勇者は暴走している魔王を指差す。

戦士「何の冗談だ。まったく面白くない」

女勇者「冗談なんかじゃないよ! 戦士さん、こうなったら戦士さんにも手伝ってもらいます!」

女勇者「一緒に勇者さんを元に戻しましょうっ」

戦士「マジかよ……」

戦士(あそこで涎垂らして目ん玉ギラギラ光らせてんのが勇者殿? バカな。見た目だって全然違うじゃあないか)

戦士「まんま、魔物の姿だ……!」


女魔王『ギャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ』


魔剣『勇者ちゃん超カッコイイんですけどー……まがまがしー』

戦士「やめろー! あんなの俺の勇者殿じゃねぇ!」

女勇者「戦士さんっ、言ってる場合じゃないよ! すぐにそこにある魔法薬を―――」

魔王が女勇者へ牙を剥く! どうやら、先に女勇者を片付けて戦士は後で始末する気らしい。

女勇者(勇者の鎧で! 攻撃は最大の防御なら、最大の防御は!)

突撃してくる魔王! 女勇者はその攻撃にタイミングを合わせ、体当たりをぶちかます!

女魔王『ギャフッ!』

女勇者「最大の攻撃にぃっ〜〜〜〜〜〜ッ!!」

魔王の攻撃は鎧に弾かれ、その鎧を纏った女勇者の攻撃を受けて大きく仰け反った!

女勇者「い、今だよーーーーーー!! 戦士さんっ」

戦士「うっ……任せとけ!」
745 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:38:10.03 ID:7jzEQ4J80
戦士(アレが勇者殿のわけがない! だって、魔王とは似ても似つかなかったんだぞ!)

戦士(勇者殿は、人間だ。俺たちと同じなんだよ……)

戦士は魔法薬を手に入れた。

魔剣『ないすげっとー!』

戦士「次はどうしたらいい!?」


女勇者「あっ、ぐうぁ…………」

女魔王『ふしゅーっ、ふしゅーっ、ふしゅーっ!』ぐぐぐっ


女勇者は魔王へ押し倒され、牙をその細い首へ突き立てようとしている!
必死の抵抗を見せてはいるが、今にもぶすりとやられてしまいそうだ。

魔剣『勇者ちゃん! それ、女勇者ちゃんだよー! 勇者ちゃんってばー!』

戦士「まずい……!」

戦士は手にしている魔剣を放り投げて大金槌へ武器を持ちかえた。

横へ構えると、そのまま2人へ駆け寄り、勢いよく大金槌で魔王を横へ薙いだ!


ずこーんっ!


戦士「ホームランっ!」

女勇者「あ、ありがとう。戦士さん……も、だ、ダメかと」

戦士「キミ、腕が……」

女勇者「こんなのかすり傷だよ! さぁ、頑張りましょ!」

戦士「強い子に育ってくれて、俺は嬉しいよ」

女勇者「それ、なんかお父さんみたいだよ」

魔王は再び立ち上がる! その体力は底抜けだ。
しかし、すぐに2人へ襲いかかる事もなく、またブツブツと何かを呟き始めた。

女魔王『…………』ブツブツ
746 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:38:45.36 ID:7jzEQ4J80
戦士「向かってこないぞ? 何ブツブツ喋ってやがんだ」

女勇者(さっきもこんな風にしてた時があったような……)

魔剣『!』

魔剣『2人とも注意だよ〜! 勇者ちゃんの魔法攻撃がくるの!』

戦士「魔法って……確か――――――」

魔剣『くるの!!』

女勇者「はっ」

女勇者「電撃の突進攻撃だ……。戦士さん! 横に避けないと!」

戦士「は?」

女勇者「とにかくここから動かなきゃ!!」がしっ

女勇者は戦士の腕を掴んで、その場から逃げだした。

戦士「ちょ、ちょっとー!?」

女魔王『あうあうあう〜…………』バチバチバチ

魔王の足元から、電撃が徐々に召喚されつつある。

それはもう! 誰にも止める事はできない!


女魔王『■■■■■■■■■■――――――――ッッ!!』


ズドォーーーンッッッ!!!

女勇者・戦士「!?」

魔王のその攻撃は、難点としては一直線上にしか仕掛けられないものである。

しかし、破壊力は他のどの技や魔法をも蹴散らす程、凶悪で強力。

まさに滅茶苦茶な魔王にこそ相応しい、真の必殺技!


魔剣『あわわわわ……』
747 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:39:43.96 ID:7jzEQ4J80
しゅ〜・・・


女勇者「さっきの突進よりヤバかったかも」

戦士「なんつー攻撃だ……」

女勇者「アレを受けたらさすがの勇者の鎧も無事に済みそうにないの」

女勇者「魔女っちはあの技をくらって死んじゃったんだよ……!」

戦士(魔女じゃなくとも、俺でさえすぐに死ねる威力だろうよ……)


辺りは魔王の攻撃によって酷い有り様となっている。

見ると、先程自分たちが居た場所にあった後ろの壁に穴が空いている

どうやら勢いを殺しきれず、魔王は壁を突き抜けてしまったようだ。


魔剣『おーい おーい……ここだよ〜……助けて〜……』

瓦礫の中から魔剣の声が聞こえてきた。
2人はすぐに気がつくと、瓦礫を持ちあげて魔剣を助けた。

魔剣『死ぬかと思いました』

戦士「魔剣ちゃんは死なないだろー。たぶん」

女勇者「思えば、私たちの中で棺桶入ってないのって魔剣さんぐらいだよね」

魔剣『僕、さいきょー!』

戦士「……それよりさっきの魔物」

戦士「本当に勇者殿だっていうのか?」

女勇者「うん」コクリ

戦士「キッパリだな……。まぁ、俺もなんだか信じられてきたわ」

戦士「悔しいけどよぉ」

女勇者「早くなんとかして元に戻さなきゃ。きっと大変な事になるよね」

女勇者「勇者さんのためにも、私たちのためにも、早く何とかしよう! 戦士さんっ」

戦士「あ、ああ」

女勇者は魔王が空けた穴から部屋を出ようとした。が


ごつんっ


女勇者「痛ぁっ!?」

戦士「どうしたよ?」

女勇者「わ、忘れてた……勇者さんの魔法のこと……」

女勇者「どうしよう戦士さん。私たち、この部屋から出られないかも……?」

戦士「えっ」
748 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/23(月) 03:40:17.41 ID:7jzEQ4J80
今日はここまでや
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/23(月) 08:34:59.78 ID:cvjsqeozo
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 10:21:58.04 ID:4bpoWrHY0
乙!
女勇者ちゃんが活躍している…だと…





751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/23(月) 11:16:51.17 ID:ZVefTy1Fo
どっちもピンチだな
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 17:48:40.55 ID:+Ea7xwaIO
ここの>>1様の更新ペースに濡れた
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/23(月) 22:38:27.66 ID:5wGxQK/IO
ここで女勇者が[ピーーー]ば魔王の魔翌力が戻るんだよな…
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 01:03:44.37 ID:puzf58W20
そうか。湯女との約束があったな
ただ、今の
魔王ちゃんにそんな事できそうにもないが
755 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/24(火) 04:43:08.59 ID:jOKlOt2a0
僧侶(この状況はとてもマズいわ)

僧侶(目が見えない盗賊さんと妹さん。そして私だけ…戦力が明らかに足らなすぎる…)

僧侶(逃げる? 相手の様子からして、絶対に逃がしてくれないに違いない)

僧侶「……万事休すだわ」

盗賊「僧侶、俺の事はいいから。妹を頼むぜ」

僧侶「ダメです。妹さんを守るのはあなたの仕事だと言ったはずでしょう」

僧侶「私が囮になりますから! 早く!」

僧侶(魔物に食べられては、復活できる見込みはない。きっと……)

タイムマスター『ワシとて目的を果たす為には非常にならねばならん。逃がしはせんぞ!』

盗賊「……かかってきやがれ」

盗賊(妹も守る。そして惚れた女も守る。どちらもこなさなきゃいけねーのが辛いところだぜ)

盗賊(しかし、この展開……悪くないッ……!)


盗賊「うおおおおおおぉーーーッッ!!」


盗賊の攻撃! しかし、盗賊は見当違いの方向を攻撃する!

タイムマスター『……何処を見ておるのじゃ。貴様の目は節穴か』

盗賊「……」

僧侶(や、やっぱり私が何とかしなきゃ……)

盗賊妹「……」
756 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/24(火) 04:44:05.40 ID:jOKlOt2a0
タイムマスター『悪いが遊んでいる余裕はないのだ。観念するがいいぞよ』

盗賊「黙れ! てめぇら魔物どもの腹の中に収まるなら、そこらで野垂れ死にした方がマシだぜ」

盗賊(敵は僅かだがダメージが残っている様子がある。しかし、時間を操る魔物にどこまで通用するのか)

僧侶「イカヅチの杖よッ!」

僧侶はイカヅチの杖を高く掲げた。途端にタイムマスターへ閃光が走る!

タイムマスター『むうっ……!?』

僧侶「やった! 効いている!」

盗賊「僧侶気をつけるんだぜ。奴は時を止められる」

盗賊「あの男の時間魔法の謎は、そいつが魔法を使用していたからだったんだ!」

僧侶「えっ――――――」

タイムマスター『フンッ』がしぃっ

タイムマスターは魔法から逃れ、僧侶の首根っこを掴み上げていた!

僧侶「が、ぐぁ……ひっ……」

タイムマスター『調子に乗るなよ小娘如きめが……!』

盗賊「この野郎ッ」

盗賊の攻撃!


タイムマスター『重力に押し潰されるがいいッ―――!』


しかし、魔力が足りなくて魔法が発動できなかった。

タイムマスター『…………えっ』

思わぬ出来事に、盗賊の素早い動きに対応する事ができず、突き出されたナイフでタイムマスターは咽を切り裂かれる!


タイムマスター『がぼがぼがぼぉ〜〜〜…………!?』


盗賊「へへっ、手応えアリだぜ!!」

僧侶「盗賊さんっ…」
757 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/24(火) 04:45:27.71 ID:jOKlOt2a0
タイムマスター『お、おおおぉぉ〜〜〜……? こ、このワシが…人間に…!?』ゴボゴボ

タイムマスター『ヴァカナッ……!』ガボォ

盗賊「お得意の時間魔法で逃げたらどうだ。俺たちのしては一向に構わないぜ」

僧侶「盗賊さん、助かりました……ごほ、げほっ!」

盗賊「僧侶ちゃんは俺が守る!」

僧侶「え?」

タイムマスター(魔力が、魔力が溜まらないだとォ? まさかあの小娘の魔法で魔力器官まで破壊されたというのか!?)

タイムマスター『そんな……ワシは、どうしたらいいのだ……このままでは……』

僧侶「どうやら調子が悪いようですね。大人しくしていれば、見逃しますよ」

タイムマスター『見逃す? なぜ貴様ら人間に上から物を言われなければいかんのじゃ!』

タイムマスター『許してたまるものかッ、この恨み! 晴らしてみせるぞ!』

タイムマスターは必死の形相で僧侶を睨むと、片手を向けた。

残る魔力を使って何か仕掛けるつもりのようだ!

僧侶「はっ!?」

タイムマスター『貴様の体を頂くぞォ〜〜〜!!』カッ

盗賊「僧侶!――――――――――――」


その時、膨大なエネルギーの塊。化物が彼らの前に壁を突き破って現れた!

『――――――……うううぅぅぅ!』


女魔王『ぎゃあああああああおおおおおおおおおおおおお』


「!?」

盗賊「な、何だ今のでかい音は! 何が来たんだ!」

僧侶「魔物っ……!?」

僧侶「なんて禍々しい姿…まだこんな魔物が屋敷の中に住みついていたなんて…」

「――――――……貴様、その姿は一体」

盗賊「え?」

盗賊は聞き覚えのある声に、その主の姿へ振り向く。
喋れるはずがないのだ。人形の呪いにかかった、その女が。


盗賊妹「わかったぞ! 貴様ッ!魔王ォーーー!!!」

女魔王『ぐるるるるるぅ……ッ!』
758 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/24(火) 04:46:59.57 ID:jOKlOt2a0
盗賊(魔王だと。いや、それより…どうして…何で)

盗賊「どうしてお前、喋れているんだ!? まさか、呪いが……」

盗賊妹「ん? ああ…糞っ垂れめ。アレが割り込んでしまったせいで対象を間違えてしまったわ」

盗賊妹「まぁ、それなりに魔力は秘めておるようだし、問題はあるまい。ふふんっ」

盗賊「……何を言っているんだ」

僧侶「と、盗賊さん!」

僧侶はタイムマスターの死体。もとい脱け殻を発見した!

タイムマスターは体を乗っ取る魔法を僧侶に撃つつもりが、誤って盗賊妹へ当ててしまったようだ!

盗賊妹「フン、これが人間の入れ物か。思っておったよりは動き易いわい」

盗賊「お前……! まさかっ」

盗賊妹「んむ? コイツは貴様の妹かのう? これは既にわしとなった」

盗賊妹「悪いがこのまま娘の体を頂く! わしの復讐の為にもなァ!」

盗賊「うそだ……わ、悪い冗談にもほどがある……っ!?」がくっ

僧侶「盗賊さん! しっかりして! 盗賊さん!!」

女魔王『ぐぎゃああああああす〜〜〜〜〜〜!!』

盗賊妹「さぁ、貴様の相手はこのわしじゃ。かかってくるがいいわ!」

盗賊妹(勇者の剣。まだこの手の中よ。もう一度突き刺してやれば終わりじゃ……)

魔王はタイムマスターへ気づくと、すぐさまに襲いかかった!

しかし!


盗賊妹「時よ止まれ、わしは美しい――――――」


〜〜〜


盗賊妹「―――ぐふぅ、ふふふふふっ!」

盗賊妹「うわはっはっは〜〜〜! イイッ! 最高に馴染むぞ、この体!」

盗賊妹「前の体よりも、時間魔法を扱えているぅ! わしはさらに時の支配者として相応しい存在へ近づいたのじゃあ!」

女魔王『    』

盗賊妹「……して、魔王よ。貴様はこのままブスリとやらせてもらうわぃ。貴様に対しては卑怯という感情すら沸かん」

盗賊妹「ただ、ただ! 恨みしか、このわしの中には存在しないのじゃ! 貴様に対してはッ!」

タイムマスターは勇者の剣を構え、無防備な魔王を刺しにかかった。が!

女魔王『    』ピクッ

盗賊妹「!」
759 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/24(火) 04:48:08.15 ID:jOKlOt2a0
女魔王『ぎゃあぼおおおおおおおおおおおおお』


制止した世界でも、暴走した魔王には関係がない!
遮るものは何もない! ただ敵を切り裂き、食らいつくのみである!

盗賊妹「バカな……どうして……」

盗賊妹「ふぐっ!?」

魔王の爪攻撃を咄嗟に勇者の剣で防ぐ! 威力は強大であったが、何とか防ぎきれた。

盗賊妹(これが本当に魔王だというのか? 化物すぎるわぃ……)

盗賊妹「しかし! 以前より力が弱くなっているようじゃのう! 十分耐えきれるわ!」

タイムマスターは器用に勇者の剣を扱うと、そのまま魔王へ切りつけにかかる!

魔王はステップでそれを容易に避けると上へ跳び、天井を蹴って勢いよく飛び掛かってきた!


女魔王『うぉおおおおおおううううううううぅぅぅぅ!』

盗賊妹「そこじゃあ!」どすっ


女魔王『!?』

左腕に突き刺さる勇者の剣! そのまま剣を薙ぎ、魔王の腕を刎ね飛ばす!

女魔王『っっっ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』

体勢を崩して床に叩き落ちると、痛みに悶える魔王!
その様をタイムマスターは満面の笑みで眺める。

盗賊妹「ぐふふぅ〜〜〜……♪ 無様すぎて返って笑えてくるのぅ!」

盗賊妹「ザマァみさらせ! じゃっ」

女魔王『ふーっ、ふーっ、ふーっ……!』


〜〜〜


盗賊妹「チッ…もう時間切れか。随分早く感じるな」

盗賊「何で、何で……うそだ……!」

僧侶「一旦逃げましょう盗賊さん! さぁ、立って!」

盗賊「……うぅ」
760 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/24(火) 04:49:01.73 ID:jOKlOt2a0
短いけど今日はこのへんで許してちょーだい
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 06:53:08.26 ID:ieXPzyJIO
乙ん
短くても来てくれるだけで嬉しす
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/07/24(火) 07:56:05.22 ID:Y2qQUB36o
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 16:30:25.90 ID:cDHVvtbIO
おつ
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/24(火) 17:04:23.66 ID:gXAAATedo
まさか魔王ちゃんが腕落とされるなんて
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 17:10:33.30 ID:0ALfCBPIO
ずいぶん自己顕示欲の強いファウストがいたもんだ
お伝え
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 17:11:01.09 ID:0ALfCBPIO
まちがえちった
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 19:56:36.40 ID:puzf58W20
さすがに盗賊が哀れになってきた…
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/24(火) 22:20:11.10 ID:awBMk/d7o
未だに目は見えないわほぼ全裸だわでもう踏んだり蹴ったりだもんな……
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/25(水) 02:51:52.49 ID:ckFilS4Ho
そろそろ服着たら逆に違和感感じるレベル
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/26(木) 16:03:44.84 ID:VdGktwfSO
周りも慣れてきてるしな

魔王ちゃんも女魔王ちゃんでも違和感なくなってきた
771 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:14:07.58 ID:J23yBGxR0
ドンドンドン!


戦士「くぅ、どういう事だ一体! 見えない壁でもあるのか」

女勇者「恐らく勇者さんの魔法が影響してるんだ。だから私たちは出られない」

女勇者「出る為には勇者さんが魔法を解除するか、それとも一旦死んでもらって」

戦士「前者しか俺は認めないからな。主に死ねって酷過ぎだぜ」

魔剣『そーだよ! それに勇者ちゃんは不死身なんだから!』

女勇者「不死身って……強いからって事ですよね? 本当に、魔物だから不死身だって」

戦士「勇者殿は魔物じゃないよ」

戦士「それは俺がよく知っているし、証明もできる」

戦士「魔物でも、魔王でもないんだ」

女勇者「魔王?」

戦士「そこは別に気にしなくていい!」

戦士「……とりあえず今考えるべきはこの部屋をどう出るかなわけで」

魔剣『ふふーん』

女勇者「急に得意気になったね!?」

魔剣『ふ・た・り・と・も〜 僕の力をお忘れかな! それともご存知なーい?』

女勇者「力って……あ!」

戦士「そうだ。魔剣ちゃんなら魔法効果を破れるぜ!」

魔剣『てってれ〜!』

女勇者「流石は魔剣さん!」

戦士「チューしようか? ちゅ〜」

魔剣『やだぁー!』
772 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:14:58.46 ID:J23yBGxR0
女勇者「で」

女勇者「問題は誰が魔剣さんの力を引き出すか、ですよね」

戦士「俺でいいさ。こういうのは男の役目よ」

女勇者「あ、じゃあお願いします」

戦士「……もっと遠慮があっても悪くないと思う」

魔剣『戦士ちゃんにまた持たれた。これ、浮気になる?』

戦士・女勇者「ならない。ならない」

戦士は魔剣を持った!

戦士「ぐぬ、ぬ、ぬぅ〜……」

魔剣『ガンバだよっ!』

女勇者「戦士さん、やっぱり私が替わっても」

戦士「今さら遅いッ――――――!」


戦士は魔剣を使ってルール魔法をぶち破った!


魔剣『やった! やった! 上手く壊せたと思う!』

戦士「思うって何よ……」

女勇者「ああ、戦士さん! 部屋から出られるよ! グッジョブっ」b

戦士「おう」b

女勇者「魔女っち、かならず後で戻ってくるからね。絶対戻ってくるよ」

魔女「†」

2人は部屋を脱出し、魔王の元へ急いだ。
773 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:15:54.02 ID:J23yBGxR0
目の前で起きている光景は今の俺には見えていない。

だが、確かな事は一つだけわかる。アイツが、魔物に、


盗賊妹(タイムマスター)「あっはっはっは〜♪ いい気味じゃっ」


乗っ取られたんだ。

僧侶「盗賊さん、気をしっかり。盗賊さん!」

頬を数度軽く叩かれる感触が伝わった。きっと僧侶ちゃんだろう。
彼女は好きだ。だが今はそんな事すら頭の外へ零れ落ちた気がする。

俺は、俺は何の為にここまで来たのか。俺がアイツに掛けた言葉はウソだったのか。

大丈夫、心配ない。畜生……!

盗賊「ちくしょう……」

僧侶「盗賊さん! この場を一旦離脱しますよ! 手をしっかり握っていてっ」

無理矢理立たせられると、手を引かれて俺は何処かへ走りだした。

何処へ逃げるというんだ……。俺はアイツを一人残して逃げ出していいのか……。

盗賊「」ブツブツ

僧侶「はぁ、はぁ、はぁ……?」

僧侶「盗賊さん?」チラ

盗賊「…………」

盗賊はワケの分からない事を呟き続けている!

錯乱状態へ陥ってしまった様だ。

僧侶(いけない……自分を強く責め出し始めている……)

僧侶(このままだと、盗賊さんが壊れちゃう!)

僧侶「と、盗賊さ――――」


盗賊「ああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」


僧侶「!?」

盗賊「うわああああああああああぁぁぁぁぁー!! 嫌だ、嫌だああああぁぁぁぁー!!」

盗賊「どうしてこうなるんだどうして! 何でアイツばっかりあんな目に! どうして俺じゃないんだ!」

盗賊「ぐうううううぅぅぅぅっ……!」

僧侶「……落ち着いてください、盗賊さん」

僧侶「あなたは悪くありません。悪いのは、私です」
774 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:16:42.89 ID:J23yBGxR0
僧侶「元はといえば、敵は私を狙っていました。でも、突然の出来事に…」

僧侶「責めるなら自分ではなく、私を責めなさい」

盗賊「っ〜〜〜!!」

盗賊は僧侶の言葉を聞き終えると、まるで子供のように僧侶へ当たった。

ボカボカと何度も僧侶の体を叩いた。

僧侶「……」

盗賊「お前が悪いんだ! お前が! お前が!」

盗賊「アイツを返してくれよぉ!? どうしてアイツが!? 畜生っ!」

僧侶「……っ」

僧侶(ごめんなさい、盗賊さん。私が無力だったばかりに)

僧侶(私が今あなたへできる事はあなたの怒りを受け止めてあげるぐらい)

僧侶「ごめんなさい……」

盗賊「畜生ぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」


がしっ


戦士「その辺にしておけよ」

盗賊「!」

僧侶「せ、戦士さん……」

女勇者「師匠…? 何があったの」

僧侶「……」

盗賊「俺を止めるな! こいつは、こいつは!」

戦士「目ェ覚ますんだ」

戦士は盗賊を思いっきり殴った!

盗賊「ぶぐっ…………!?」ズザー

戦士「お前、今誰叩いてたと思うんだ。僧侶ちゃんだぞ」

戦士「気をしっかり持つんだ、盗賊」

僧侶「戦士さん! 悪いのは盗賊さんではなくて、私で」

戦士「そんな事は今どうでもいい。話は後で聞くよ」

戦士「それより、勇者殿が大変らしいんだ。俺たちはこのままあの人を探す」

魔剣『盗賊ちゃんはどうすんのー?』

僧侶「私が責任を持って盗賊さんを見ています…ですからお二人は」

女勇者「だったら私も!」

戦士「いや、キミは俺についてこい。俺だけじゃ厳しい」

女勇者「うっ……」
775 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:17:17.15 ID:J23yBGxR0
戦士「そうか、妹を」

僧侶「私の不注意が産んだ結果です。責めていただいて構いません」

戦士「冗談言っちゃいかんよ、キミは悪くないぜ」

戦士「俺が盗賊から時の砂を受け取っていなければ何とかなったんだ。なのに」

魔剣『戦士ちゃんまで自分責めだしたらキリないよぉ?』

女勇者「そうだよ! 悪いのは敵! 私たちがいつ悪いことした? してないですよ」

女勇者「だから師匠も悪くありません。早く、元気出してね…」

盗賊「……」

戦士「こんな可愛い子たちに励まされて幸せ者だよ、盗賊は」

戦士「それに加えてこんなナイスガイにも心配されるんだからよ」

魔剣『自分で自分を褒める人って、よくないんだよー!』

戦士「だって本当のことだしー」

女勇者「ここはツッコむとこですか!」

戦士「よし、そろそろ行くかぁ」

女勇者「無視しちゃうの!?」

僧侶「ふふっ……」

僧侶「盗賊さん。みんな、あなたの味方です。みんな心配してくれています」

僧侶「だから、どうか一人で背負いこもうとしないで」ナデナデ

盗賊「……」
776 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:18:09.07 ID:J23yBGxR0
盗賊妹「流石は勇者の剣よのぅ。魔王に対して威力はピカイチ!」

盗賊妹「片腕がなくなった貴様なんて恐るるに足らず。赤子の手を捻る様に殺してくれるわい」

女魔王『がるるるるるるぅ……』

盗賊妹「ん〜? この剣に恐れをなしておるのか? これ以上切られてはマズイのか」

盗賊妹「安心しろぃ。貴様は次に切られた時、この世から消え失せて亡き者へと変わるのじゃ」

盗賊妹「今日が貴様の最後! 覚悟するのじゃ!」

盗賊妹「そして、これが最後の時間停止ッ! 時よ―――――――――!」


〜〜〜


女魔王『がうっ……!』

盗賊妹「これで、誰も我々の邪魔をできない。この世界にはわしと貴様しかおらん」

盗賊妹「さぁ、思う存分苦しみ悶えて、挙句の果てに死ねッ!!」

女魔王『ぎゃおおおぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜!!!』

魔王は考えた。

このまま突っ込めば、間違いなく刺される。
思考したというよりは、勘のようなものが働いたのだ。
その勘が伝える。奴を捕食する事ができれば、自分はさらに強者へなれると。
更なる力を得られるだろう!と・・・。

女魔王『 』

魔王の目から熱線攻撃! 高熱のレーザーが魔王の瞳から発射される!

盗賊妹「フン、魔王の時を10秒遅らせる」

これにタイムマスターは時間魔法を発動して、軽々回避。
レーザーはゆっくり横を通過してゆくのみ!

盗賊妹「貴様が何をしようが、わしの時間魔法の前では無力なのだよ!」

盗賊妹「とおぅっ!」

タイムマスターの攻撃!

女魔王『!』

盗賊妹『これでぇ―――――――』


ぱきぃんっ!
777 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:19:23.64 ID:J23yBGxR0
盗賊妹「バカな…………!?」

なんと、勇者の剣が折れてしまった!

盗賊妹「なぜ伝説の勇者の剣が、こうも脆く! 容易く折れたぁーーー!?」

タイムマスターは剣がダメになったことに動揺を隠せないでいた。

そこを、魔王が一気に突く!


女魔王『ぐぉおおおおおおおおおおおお〜〜〜!!!』


盗賊妹(はっ、時を戻して剣を……ダメじゃ…。剣が折れるという運命はこれでは変わらん…!)

女魔王の攻撃!

盗賊妹「えっ!?」


ざくうぅぅっ〜・・・


女魔王『がうううぅぅぅ……!』

盗賊妹「あ、う……あっ……そ、そんな……」どくどく

魔王の爪が゛盗賊妹゛の腹を貫いた。絶え間なく血が溢れる。

盗賊妹「に」

盗賊妹「人間の体とは……どうも脆いよじゃのぅ……これは、ひどい!」

盗賊妹「げぼおぉっ!」ビチャア

女魔王「にたぁ……」ニヤニヤ

魔王はタイムマスターが苦しむ姿を見て、満面の笑みを浮かべている。
してやったり!と言わんばかりだ。

すぐに笑みは消え去り、魔王は大口を開けてタイムマスターを食らいにかかる!

盗賊妹「いかんッ……! ここで、喰われ死ぬわけにはならんのじゃっ!!」

タイムマスターは力を振り絞り、転送魔法で何処かへ逃走した!

女魔王『……うが?』


〜〜〜
778 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:20:48.05 ID:J23yBGxR0
女魔王『?』

目の前で突然タイムマスターが消えた。

どうして消えたのか、わかっていない様子だ。辺りをウロウロして探している。

目をギラつかせて。


女魔王『ぎゃうぎゃうぎゃう!』


敵がいなくて、魔王は退屈そうだ。イライラし始めた!

そこにタイミング゛悪く゛現れてしまったのは、

女勇者「見つけた! 戦士さんっ」

戦士「ご機嫌斜めな感じが伝わってくるなぁー!」

魔剣『発見! 勇者ちゃん!』

女魔王『…………』

女魔王『にたぁ……』ニヤリ

女勇者「獲物がのこのこ戻ってきやがった、バカな奴らめ! みたいな事があの邪悪な笑顔から読み取れますねっ」

戦士「たぶん、大当たりじゃねーかな」

戦士「……それより魔法薬飲ませて本当にどうかなると思う?」

女勇者「私を信じよう! 戦士さん」

戦士「ああ、はいはい」

戦士は女勇者に魔法薬を手渡した。

戦士「よし、俺がアイツを押さえるから。キミは魔法薬を飲ませる。オーケー?」

女勇者「おっけー!」

女勇者「戦士さん、気をつけてね。あの勇者さんはいつも以上に容赦ないんだから」

戦士「つーか勇者殿であってほしくない……」

魔剣『勇者ちゃんだよ?』

戦士「うぅ……!」

戦士は魔王へ突撃した!

戦士「俺は認めないからな! お前は勇者殿なんかじゃないんだからなっ!」

女魔王『うぉおおおおおおおうううううぅぅぅ〜!!』
779 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:21:50.44 ID:J23yBGxR0
魔王の攻撃! 戦士は攻撃を避けきれず、時の砂を使った!
時間がちょこっと巻き戻る!

戦士「……危なかった」

女魔王『!』

戦士(にしてもなんて素早さだ。デカい爪と牙持ってるくせに…アレ、邪魔にならないのかよ)

戦士「このッーーー!!」

戦士は大金槌で魔王の腹を殴りかかった。

だが、殴る寸前に魔王の体に変化が!


女魔王『ぐぅ…………?』


表面の皮膚がまるで鋼の様に硬化し始める。

まるでそれは、金属を纏う獣! あまりに不似合いな姿が逆に敵を恐怖させる!


メタル女魔王『WOOOOOOOOOOO―――――――――ッ!』


戦士「ば、化物め……。こいつ、体が」

戦士の攻撃はその鋼の体に難なく弾かれる!

戦士「見た目以上に硬いぞ! どういうことだ!」

魔剣『勇者ちゃんメタルってる〜〜〜!』

女勇者「もう、滅茶苦茶だよー……」

メタル女魔王『ッ〜!』ギロリ

戦士「うっ…」

戦士(睨まれただけでこの威圧感。すごいプレッシャーだ……!)

魔剣『戦士ちゃん一旦下がって〜!』

戦士「えっ――――――――――」

魔王の動きは、先程のものとは更に、桁違いに素早くなった。
恐らくは並大抵の人間や魔物では視覚すらできないであろう程までに!

メタル女魔王『〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』

魔王が吼えると、辺り一面のフロアが一瞬にして崩壊!
さらに火柱が何本も立ち上がる!

戦士「うぐあああああああぁぁぁっーーー!?」

戦士は咆哮の威力に吹き飛ばされた!

女勇者「や、やばいやばいやばいっ!!」

魔剣『2人とも早く僕のとこに来て〜〜〜〜〜〜!』
780 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:22:50.91 ID:J23yBGxR0
魔剣『僕の近くなら平気なのです』

女勇者「魔剣さんやる〜!」

戦士「吼えるだけであの威力って」

戦士「これは近づくのも難しく……ん?」

魔王は一通り暴れ終えると、逃げ出してしまった!

メタル女魔王『ガウっ』

魔剣『勇者ちゃ〜ん! どこ行っちゃうの〜!』

女勇者「はっ、逃げた! 戦士さんっ」

戦士「あっちへ逃がしてはまずい! 向こうには僧侶ちゃんたちが!」

戦士は大金槌をぶんと魔王へ投げつけた! 大金槌は魔王の頭へヒット!

メタル女魔王『! …………』

魔剣『不意打ちされて怒ってるみたい。あわわ…』

戦士「いや! これでいい! 俺たちに注意を向けておくんだ」

戦士「今度こそ奴の動きを止めてみせるぜ。準備はいいかーッ!」

女勇者・魔剣「『いえっさー!』」


メタル女魔王『フォオオオオオオオオオオオウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ』


戦士は武器を拾い、女勇者と魔剣を庇う様に前線へ立つと、魔王と対峙する!

戦士「かかってこい!!」

その言葉を合図に1人と1匹は互いへ駆けだす! 攻撃!
爪と槌がガンッと衝突し、派手な音を打ちならし、響き合う!


メタル女魔王『ガルウウウウウウウゥゥゥッ!』戦士「うおおおおおおおおおぉぉぉっ!」

ドオーンッ!!!
781 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:24:51.43 ID:J23yBGxR0
戦士「おおおおおおおおおぉぉぉーーーーッ!!」

明らかに戦士が押されているのは見てわかる。
しかし、戦士は引かない。これは漢としての意地なのだ。

魔王に負けじと大声で吼え、武器を強く握る!

戦士(強い……強すぎて参っちまう……)

戦士「だが、これが燃える!! 俺は今、強者へ挑んでいる!!」

メタル女魔王『ガオオオオゥゥゥーッ!!』

戦士「うはっ、うはははははははぁっー!! もっと強く打ちこんできやがれ!」

戦士「返り討ちにしてやるぜ……!」

冷や汗を垂らしながらも、強者へ出会えた喜びに戦士は舌舐めずりをする。

さらに! 互いの攻撃は激化してゆくのみ!


魔剣『おー……』

女勇者「しゅごいぃ……」

彼女もまた、彼らの闘いに心躍らされているのだ。
本来の目的を忘れて、手に汗を握ってソレを眺めるのみ。

女勇者「あれが漢の戦い! 興奮してきたぁー!」

魔剣『大丈夫?』

女勇者「ううんっ、全然大丈夫じゃない!」

女勇者「こんな光景見せられて……おかしくなれない人なんていないよ……!」

女勇者は興奮している! その時!


ピカー!


女勇者「……うおっ、何ぃ〜!?」

魔剣『ピカピカしてる!』

魔剣『女勇者ちゃんの手がピカピカしてるよ〜〜〜!』

女勇者「はぁ!?」ピカー
782 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:25:52.60 ID:J23yBGxR0
確かに、女勇者の両手が眩しいぐらいに輝いている!

そしてその手の中で握られていた魔法薬が

女勇者「魔法薬、1つ増えてるよ……?」

魔剣『え?』

女勇者「おかしいよ! 私、魔法薬なんて最初から1つしか持ってなかったのに! でも」

女勇者「増えてる……!」

魔剣『増えちゃったの?』

魔剣『もしかして〜、魔法薬って勝手に増殖しちゃうんじゃないかなぁ』

女勇者「小瓶ごと増えちゃうの? そんなバカな」

戦士「うぁああああああああ〜〜〜っ!?」

ガンッ

女勇者「戦士さん!」

戦士は魔王の猛攻にさすがに耐えきれず、武器を砕かれて大きくぶっ飛ばされた!

女勇者「戦士さんしっかりして! 生きてるよね!?」

戦士「生きてる、生きてるけど……ちょい厳しい……」ガクガク

魔剣『すぐに回復だよ〜!』

女勇者「ごめんッ! そんな暇は今ないみたいだ!」

魔王は倒れた戦士へ追い打ちをかけに、飛び込んできた!

戦士「こ、これを……」

女勇者は戦士から時の砂を受け取り、時を巻き戻した!


〜〜〜


女勇者「……え?」

時間が巻き戻った事により、先程の2人の戦闘が彼女の目の前で再び行われていた。

戦士「その攻撃は読めてるんだよぉっ!!」

同じ攻撃は通用しない。戦士は魔王の攻撃をギリギリ避け、大金槌でぶっ叩く!

メタル女魔王『フン……』

戦士「……全然堪えてねぇな。ここまでやって無傷だもんな、あんた」
783 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:26:46.58 ID:J23yBGxR0
大金槌が前触れもなく壊れた。

戦士「!」

魔剣『そろそろ戦士ちゃんヤバいよぉ〜 女勇者ちゃんなんとかしてー!』

女勇者「なんとか…なんとかって言われても…今飛び込んだら逆に足手まといに」

戦士「魔法薬ッ!!!」

女勇者「はっ!」

魔剣『戦士ちゃん、僕なら勇者ちゃんのあのメタル状態壊せるかもよ〜』

戦士「それを先に言ってくれるとありがたかったんですけど!!」

女勇者「戦士さん! 私が前に出ます!」

戦士「任せたぁーーーッ!!」


メタル女魔王『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』


魔王の攻撃を掻い潜り、戦士は魔剣の元へ。すぐに厚手の布を手に巻くと、魔剣を取る!

女勇者「とりゃー!」

女勇者の攻撃! やはり、全くダメージは通っていないようだ。

メタル女魔王『ブフッ……』

女勇者「今笑われた!?」

しかし、隙を突いて魔王の足へ鞭を絡める!
魔王は転倒した!

メタル女魔王『ギャンッ―――――――』

女勇者「今だよ!!」

戦士「よくやったぁああああ〜〜〜!! 魔剣ちゃんッ!」

魔剣『勇者ちゃんごめんね〜!』

戦士は魔剣で魔王を切った!

メタル女魔王『むぐっ……!?』

魔剣の力によって、徐々にメタル化が解けてゆき、元の生身の獣状態へ戻る魔王!
そこへ女勇者が魔法薬を持ち直して飛び込む!

女勇者「飲めぇえええええええええええええええええっっーーーーーーッッ!!!」

がっ

女魔王『!』
784 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:27:24.78 ID:J23yBGxR0
戦士「やったか!」

女勇者「わかりません!」

女魔王『…………』

魔剣『勇者ちゃ〜ん……』

女魔王『』ビクン

鋭く尖った爪が元の大きさへ戻り始めた。そして牙も。

体も元の魔王の姿に!

女魔王「Zzz〜〜〜……」

魔剣『勇者ちゃーん! わーい!』

女勇者「や、やった。上手くいった…魔女っち、仇は取ったよー……」ヘナヘナ、ペタン

戦士「……勇者殿!」

戦士は魔王へ駆け寄ると、その体を強く抱きしめた。

戦士「ほ、本当に勇者殿だったのかよ。マジかよ」

戦士「この人何者なんだ、一体……!」

魔剣『勇者ちゃんは勇者ちゃんだよ〜 戦士ちゃんばっか抱きついてずるっ子だよ!』

戦士「うう、勇者殿ぉ〜」すりすり


女魔王「――――――むっ」


女魔王「…………臭いであるわよ」

戦士「勇者殿おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ぎゅうっ

女魔王「ぎゃー!? ぎゃー!?」ジタバタ

女勇者「勇者さん。調子どう?」

女魔王「ハァ? 何を申しておるのだ貴様、ワケ分からんわ」

戦士「ワケ分からなくて別にいいんスよぉう! うほーっ、勇者殿だぁ!」

女魔王「貴様は先程から何なのだァーッ!!」

女魔王の攻撃!

戦士「†」

女勇者「えぇ……」

魔剣『暴走しても元のまんまでも、変わりないよね〜』
785 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:28:00.11 ID:J23yBGxR0
戦士「†」

魔女「†」

僧侶「これ、全部勇者様がやっちゃったんですか?」

女魔王「知らんッ」

女勇者「まぁ、とりあえず無事で良かったよー。それより」

盗賊「……」

女勇者「師匠。大丈夫だよね? ね?」

僧侶「今はなんとも……。私たちにできるのは励ますぐらいです」

僧侶「後は本人の気力次第かと」

女魔王「これ、どうしたのである?」

魔剣『色々あったんだってー』

女魔王「ふーん……」

女魔王「おう、魔法薬持っておるか?」

女勇者「魔法薬。確か、増えた奴が1個だけ」

女魔王「黙って余に寄越せィ」ばしっ

女魔王は魔法薬を引っ手繰る様に奪い、フタを開けた。

魔剣『これ飲めば今度こそ勇者ちゃんの呪いが解けるかもなんだね!』

女魔王「……」

女魔王「ふん!」

盗賊「もがぶっ」

僧侶「勇者様ー!?」

女魔王は盗賊の口へ無理矢理魔法薬を流し込んだ!

盗賊「て、てめぇ!!」

女魔王「今回だけであるわよ。感謝するのだ」

盗賊「は……? ――――――!」

盗賊「め、目が見える……」
786 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:28:45.37 ID:J23yBGxR0
女勇者「もしかして」

盗賊は防具を装備させられた。

盗賊「……!」ソウチャク

僧侶「すごい! 装備も身につけられていますよ!」

女勇者「し、師匠! 呪いが解けたんだよ! ついに!」

盗賊「おお……」


おめでとう。盗賊にかかっていた呪いが解呪された!


女勇者「もーっ!! 魔女っち様々だよー!! ありがとー!」ぎゅっ

魔女「†」

魔剣『勇者ちゃん、勇者ちゃん。どうして盗賊ちゃんに上げちゃったの?』

女魔王「あの薬は変な色しててマズそうだった。だから盗賊に毒見させたのよ」

女魔王「別に盗賊の為にとかじゃないわ阿呆。勘違いを起こすでないわよッ!」

僧侶「あはは…」

女勇者「良かったねー! 師匠ー!」

盗賊「……何にも良くねぇよ」

盗賊はその言葉を最後に俯いて黙りこんでしまった。

女勇者「そんなぁ……」
787 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:30:20.79 ID:J23yBGxR0
その後、一行は教会へ行き、死んだ2人を復活させた。
またその後、屋敷へもう一度忍びこむと囚われていた女たちを何とか解放し、残る魔物を殲滅する事に成功した。

例の屋敷にはあの男一人がポツンと残る。ただそれだけである。


男「――――――あ、ああ」

男「私の、私の日常が…平和で安全で優雅な日常が壊されてしまった…」

男「女もいない! 武器もなくなっている! 全部、全部なァい!」

男「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

男「どうして、どうしてこんな……ああ、私の母の代わりになってくれる娘まで……」

男「寂しい〜…寂しいよォォォ〜〜〜……私を一人にしないでくれよォ……」

男「何で私を殺さないんだよー…何で私を自警団へ渡さなかったんだよー…」

男「奴らは、私をどうしたかったんだ。惨めな様を笑うつもりだったのかぁ?」

男「ぐうううううううううぅぅぅぅぅっ……」

男「殺してくれ、誰か私を殺してくれよォ〜〜〜……」もぞもぞ

男「誰か―――――――――――――――――」


ガシャン、ガシャン、ガシャン。


一定の間隔を置いて、音が聞こえてくる。

金属だ。金属が喧しい音を立てて男へ近づいてきているのだ。
音は男の前まで辿り着くと、そこで止まった。

男「…………?」

男が顔を上にあげると、そこには一人の女がいた。

正しくは魔物の雌がいた。



側近「お邪魔していますよぉ…魔王様いらっしゃいます?」
788 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:31:35.71 ID:J23yBGxR0
男「だ、誰だ君は……。この家には私一人だ、魔王なんているわけが」

側近は足を後ろへ振りあげ、男の顔面にサッカーボールキックを一発お見舞いした。


男「ぐぇええあああッ!?」


側近「魔王様、いらっしゃいますよね。この豚小屋へ遊びに来られたのでしょぉ…?」

側近「そうですよねぇ。ふふっ…」

男「じ、じらないっ!! 何言っているんだぁっ!? お前何だァ〜!?」

側近は男にニッコリ微笑みかけると、男の背中へ腰を下ろした。

男「うっ……!」

側近「ここからぁ〜……魔王様の良い匂いがプンプンするんですよねー……」

側近「私、魔王様の匂いに敏感なんで。一発でわかっちゃった」

男(この女……変だ……ッ!)

男「異常者めが! これ以上私に何を求めているというのだ!」

男「出て行ってくれよッ!」

側近「早く魔王様を出してくださいよ。どうせ隠しちゃってるんでしょう?」

側近「みんなして、私に意地悪するんだから…酷いですよ、もうー……」

男の髪を鷲掴み、ぐいっと持ちあげた。

男「あっっっ!」

側近「ねぇ、どうして意地悪するんです……? あんまりですよ」

側近「そんなことされたら、私…私…」

男「ひぃー……」

側近「あっ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ〜!!!!」


側近の攻撃! ぐちゃっ!
789 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:32:18.83 ID:J23yBGxR0
男(だったもの)「   」

側近「私、魔王様の大好きなお菓子いーっぱい持ってきたんですよぉ」

側近「ああ、でも今日全部食べちゃったら…魔王様、お腹壊しちゃう…」

側近「やっぱり私はダメな奴なんですよね…えへへ…」

側近「魔王様ぁ〜……側近は一刻も早く魔王様に会いたいのー……」ふらふら

側近「魔王様の為なら何処へでも駆けつけますよー…何処までも追いかけますよー」

側近「……あっ」

側近は肉塊と化した男から手を離した。

側近「……これ、魔王様じゃない。私、またおかしい……変になってる……?」

側近「いひ、いひひひひひ、ひひひひひひひ……っ」ケラケラ

側近「あーあ……こんなおかしい私を見たら、また魔王様は私を突き離しちゃう……」

側近「それでも、それでも側近は魔王様を諦めませんよぉ…かならず魔王様を」

側近「魔王様ぁ〜……」


ガシャン、ガシャン、ガシャン。


側近「!!」

側近「お、お酒……! お酒がいっぱい置いてある……!!」

側近「わぁ〜〜〜い!!」

側近は男が保管していた酒を見つけると、喜んで跳びついた。



側近「うまうま、うまうま……」ゴクゴクゴクゴク
790 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/27(金) 05:33:32.79 ID:J23yBGxR0
ここまでっす。次回は来週の金曜あたりかもしれん
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/27(金) 05:36:31.30 ID:FFrF/z9Lo
乙ぽィ
寝ようと思ったら更新始まってがっつり読んでしまったでござる
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 05:37:16.05 ID:FFrF/z9Lo
眠くてsage忘れるほどでござる
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 07:16:35.58 ID:OjfDsVdIO
…側近ちゃん正常に戻らないかな
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 09:24:28.74 ID:FlyiVLNIO
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/27(金) 10:43:23.32 ID:be0iCqK0o
さすが勇者パーティーつよい
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/27(金) 13:34:48.60 ID:aA4uewFG0
盗賊の全裸もようやく治ったわけか
ていうか、側近たんこえぇよ・・・
797 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/07/28(土) 15:42:38.01 ID:8FVt1F8c0
ああああ、魔王の腕がにょきにょき生えてくる描写を書くのを忘れてた!
申し訳ないが、戦士たちと戦う前に生えたと脳内補完してくださいマジすんません
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/07/29(日) 02:29:22.54 ID:flvRLZlxo
魔王ちゃんならそりゃ腕も生えるよな
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/29(日) 13:15:48.35 ID:52QfHWpRo
おまけして2、3本くらい多めに生えても驚かない
800 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:04:49.96 ID:npPz2no30
女魔王「……どう。男へ戻れた?」

僧侶「いえ、まんまですね」

女魔王「うがぁー! どれ程余が魔法薬を飲んだと思っておるのよ! 何故戻れん!?」

魔女「知らん」

女魔王「貴様ァ!」

魔剣『魔女っちの無責任女ー』

魔女「別に女のままで宜しいんじゃなくて? そもそも私はアナタの元の姿知らないし」

魔女「違和感なしですわ」

戦士「勇者殿はカッコいい男の方が勇者殿って感じなんだよ! 俺もこのままは嫌ぁ!」

魔女「気色悪〜……」

女勇者「でも、勇者さんが暴走した時は一発で効いてくれたのにね。魔法薬」

戦士「しーっ!」

女魔王「暴走?」

戦士「いえ、何でもないっスよぅ。気にせんでくださいな」

戦士「それについては内緒だって話合ったでしょうが…!」

女勇者「この際言っておいても…」

女勇者「だって、自分の事なんだよ。知らないままにしておくってダメだと思う」

僧侶「そうですね……。いつか機会を見つけて」

戦士「いいんだっての! 勇者殿は勇者殿! 他でもない!」

戦士「魔物でも何でもねーんだよ……」
801 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:05:40.13 ID:npPz2no30
戦士「そんな事より、女勇者ちゃん。魔法薬を2つに増やした話を詳しく聴いてなかったワケだが」

僧侶「2つに?」

魔剣『ピカー! って光って2つになったんだよね!』

女勇者「そうそう。ピカーって、それでポン!って」

戦士・僧侶「……」

魔女「この女と剣では説明にもならねー。ですわ」

女勇者「何だとー!?」

魔女「事実ですわよ」

女勇者「こっ、のぉー……!」

僧侶「まぁまぁ。喧嘩は止しましょう? ね」

女勇者「だって魔女っちが先に悪く言ってきたんですよ! 酷いよ!」

女勇者「うわぁ〜んっ!!」ギュ

僧侶「あはは…よしよし…」

魔女「私は本当の事を言ったまでですわよ〜! ぶーぶー!」

戦士「お前は俺に抱きついてきてもいいんだぞ。俺がよしよししてやるぜ」

魔女「やだ」

戦士「振られちゃった……」

魔剣『戦士ちゃんも僧侶ちゃんによしよししてもらう?』

僧侶「え゛っ」

戦士「俺は勇者殿がいいなぁー!! 勇者殿ぉー!!」ばっ

女魔王「ふんぬゥッッッ!!」

女魔王の攻撃! 拳が戦士の腹を抉る!

戦士「が、ががが……」ピクピク

魔剣『勇者ちゃんに抱きつこうとしちゃダメだよ〜! 僕のなんだからね!』

女魔王「叩き折るぞ、駄剣めが」

女魔王「いい加減クソつまらん馬鹿話を続けておらんで、余の呪いを解く方法をどうにか探してくるのよ!」

魔女「だからそのままで」

女魔王「あァ〜〜〜!?」

魔女「はいですわっ!」ビクゥ
802 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:06:34.76 ID:npPz2no30
盗賊「……悪いが、俺はそいつに協力しない」

女勇者「師匠? どうして」

盗賊「どうして? 妹が魔物に取り憑かれたんだぞ!? 俺は奴を許さんッ」

盗賊「……そういうわけだよ。お前らと一緒にいるのも終わりだ、パーティを抜ける」

盗賊「構ないな」

僧侶「い、いいわけありません」

僧侶「ここまで来て途中で抜けるだなんて、そんなのダメです!」

盗賊「うるせぇ! 放っておけよ!」

僧侶「うっ……」

魔女「穏やかじゃありませんわねぇ」

戦士「盗賊、お前一人で例の魔物に挑むつもりなのか。しかも、今はソイツはお前の妹の体なんだぞ」

戦士「戦えるのかよ?」

盗賊「うるせぇ……」

女勇者「師匠、少し落ち着こうよ。みんな師匠の為を思って言ってるんだよ?」

女勇者「確かに放ってはおけない事だし、心配になるのはわかる。でも、焦ったって何も変わらないよ」

魔剣『そうなの?』

女勇者「ごめんなさい。それっぽい事言っただけ」

盗賊「〜〜〜…!」

盗賊「じゃあな!!」

盗賊はパーティを去ろうとした。しかし、盗賊へ女魔王の攻撃が炸裂!


盗賊「†」


女魔王「勝手に動くなウンコ垂れめ」

女勇者「だからって殺す必要ありませんよねぇ!?」
803 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:07:07.42 ID:npPz2no30
女魔王「盗賊はしばらく棺桶の中で眠らせておく。構わないわね」

魔女「一向に構わん。ですわ」

戦士「あい」

僧侶「そうですね……」

魔剣『眠れ、盗賊ちゃん』

女勇者「みんなおかしいよっ!?」

女勇者「師匠だって悪気があったワケでもないのに……あんまりです!」

女魔王「ふむ、どうも貴様も棺桶がよいらしいわね? 流石に2つ増えると持ち歩くのが面倒だが」

女勇者「結構だよ!」

戦士「まぁまぁ、勇者殿にも考えがあってのことなんだよ」

女勇者「え……?」

戦士「もし今タイムマスターへ遭遇したとして、盗賊は激情して返って邪魔になる」

戦士「だから、盗賊が眠ってる今、俺たちで妹ちゃんとアイツを切り離すって魂胆なワケなんだろう」

女勇者「ほ、本当? 私ってば勝手な事を……」

女魔王「よし、喧しいのは消えたッ! さっさと余の解呪を急ぐであるわよ!」

戦士・魔女「あいあいさー!」

女勇者「戦士さん信用した私がバカだった……」
804 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:07:56.17 ID:npPz2no30
女魔王「まぁ、タイムマスターにもいずれは会わねばなるまい」

女魔王「アレは何故か勇者の剣を手にしておったのだ。貴様は勿論気づいていたであろう?」

女勇者「えっ!? マジで!?」

女魔王「……」

魔剣『さすがだね〜』

女勇者「今バカにしたんですか。そうですよね、バカにしたよね……」

魔女「私も実物見たわけではないから何とも言えないけれど」

魔女「確かにあの魔物は剣を手にしていましたわ。でも、あんなのが伝説の勇者の剣?」

魔女「そこまで凄さを感じなかったけれど……」

戦士「剣を使わない奴にはわからない。剣士のみが知る事ができる凄さって奴なんじゃね?」

女魔王「実際に余が剣を受けておるのだ。間違いなく、アレは勇者の剣よ」

女魔王「一度刺されただけで全身が破壊されそうになったであるわ」

女勇者「そ、そんなに強い剣だったんだ…知らなかった…」

僧侶「まさか盗まれた剣が魔物の手に渡るとは思いもしませんでしたね」

魔剣『でもさぁ、勇者の剣なんて名前付いてんのに、魔物が使えるってのも変だよね〜』

女勇者「そうですよ! アレは勇者の血が流れている者にしか扱えない剣なんだよ」

女勇者「きっとその剣は偽物だ!」

女魔王「はぁ? 余が身を持って感じた威力が、偽りの物によるものだったと申したいのか?」

女魔王「阿呆な事をぬかすなッ! あの剣こそ勇者の剣よ!」

戦士「まぁ、実際見てみるしかねーっスよ。なぁ?」ぽん

女勇者「あっ、う、うん……」

僧侶「話を戻しましょうか」

僧侶「やはり、勇者様の呪いを解くには大聖堂へ行くしかありませんね」

魔剣『何そこー? 楽しい?』

魔女「神に信仰を持たない人間が行けば、つまらん所極まりない場所ですわー」

魔剣「ふーん?」
805 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:08:39.41 ID:npPz2no30
女魔王「最初に聴いておくが、僧侶」

女魔王「そこでなら余の呪いは本当に! 解けるのだな!」

僧侶「え、ええ…たぶん」

女魔王「たぶんではないッ! 絶対解くのよ!」

僧侶「絶対……絶対かは、ちょっと」

戦士「大丈夫かねぇ」

戦士「俺らって一応王都から追われている身だぜ? そんな所行けば流石にバレるんじゃ」

僧侶「そうなんですよね……それが心配なんです」

僧侶「何とか大僧正様を連れて来たとして、呪いを解いて貰えるとは思えませんし」

女勇者「追われてたの忘れてた」

戦士「キミ最近狙われたわよね?」

魔剣『じゃあ結局だいせいどーに行っても意味無しなんじゃないの〜?』

僧侶「うーん……」

女魔王「手段は何でもよいのだ。早くどうにかせよ」


?「あら、それなら早くその勇者を殺せばいいだけじゃないですかぁ」


女勇者「へ?」

湯女「こんばんはぁ、お元気そうで」

女魔王「……貴様」

僧侶「この方は確かいつかの。ご無沙汰ぶりですね、確かあの時以来…」

戦士「ヤラしい名前の姉ちゃんか」

女魔王「貴様ら離れておれ、この女は信用ならん」

魔女「あら、私以外全員お知り合いですの?」

女勇者「私も始めて会ったよ?」

湯女「うふふ〜♪」
806 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:09:37.35 ID:npPz2no30
湯女は魔王たちを無視して、盗賊が入った棺桶へ近づいた。

湯女「よほど生きたがっていますわぁ」

女勇者「ちょ、ちょっと! 師匠に勝手に近づかないでくださいよ」

湯女「あら、どうしてです? 私はこの人を蘇らせようとしているだけなのに」

女勇者「蘇らせようって……そんな事できるの?」

戦士「ああ、この姉ちゃんは確かに死人を復活させられる」

戦士「もしかして教会の人なんスかね?」

女魔王「奴はエルフよ」

魔女「はい?」

魔女「……前にも言ったけれど、エルフなんて種族は過去に全滅したと」

女魔王「証拠なら奴の耳を見よ。特徴的な尖った耳をしておる筈」

湯女「お望みなら、ちょっとだけ。はい、サービスですよ♪」チラ

魔女「……うそぉ」

魔剣『ツンツンしてますね〜!』

僧侶「え、エルフ……本当に?」

湯女「はぁい。正真正銘、エルフでございまーす」

女魔王「今はそんなのどうでもよいのよ。貴様、何が目的か」

女魔王「盗賊を蘇らせろと誰が頼んだ? とっとと消え失せるであるわ」

湯女「頼まれましたとも。この人に」

湯女は笑顔を絶やさず、盗賊の棺桶へ指差す。

戦士「盗賊が? バカ言え。死人が口を利けるかよ」

湯女「確かに言葉は話せません。だけど、意思は伝えられるの」

湯女「私には無念の死を迎えた者の、生きたいと思う意思を感じ取れちゃうのですよ」

魔剣『まさかその長いお耳で!?』

湯女「はぁい」

魔女「ウソおっしゃいなー」
807 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:10:32.39 ID:npPz2no30
魔女「勇者の言う通りですわ。そいつは胡散臭すぎて信用できない」

僧侶「悪い方には見えませんが」

湯女「そうですよぅ。別に悪い人じゃないでーす」

戦士「悪人はみんなそう言うんだぜ、姉ちゃんよぉ」

戦士「勇者殿が気に食わねー相手だっていうなら、俺もそうするぜ」

戦士「さっさと消えな。何もせずにな!」

湯女「いーや♪」ニコニコ

戦士「……しまった、俺の苦手なタイプだ」

女勇者「本当に蘇らせてもらえるのなら、そうしてもらおうよ」

女勇者「教会でお金払わなくても済むんだよ?」

僧侶「そういう問題ではないかとっ」

女魔王「どうしても去らんというのならば、力付くで追い払うまでよ」

湯女「相変わらず血気盛んな子ですこと。可愛いわ」

女魔王「殺すぞォッ!」

湯女「ええ、言うだけならタダですよ。勝手にしなさい。私も勝手にしますね」

湯女は大きなドラム缶をポンと取り出し、そこへお湯を足していった。
棺桶を魔法で動かし、その中へ浸からせようとしている。

女勇者「ドラム缶風呂ーっ!? 死体をお湯に浸けたらダメだよ!」


女魔王「ウガァーッ!!」

魔剣『ヒャッハアアアアアアアアアァァァァァーーーーーーーーッッ!!』


女魔王の攻撃!

湯女「既にあなたは解析済みですよ…魔王」

湯女へ飛び掛かる女魔王の上空から、隕石が落ちてきた!

女魔王「あ!?」



どぉーん!!!
808 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:11:38.39 ID:npPz2no30
女魔王「 」

魔剣『動けないよぉ〜…』

隕石に潰されて身動きが取れないようだ!

魔女「天体魔法……詠唱無しで、そんな」

湯女「まぁ、びっくり! あなたは本当に弱くなってしまいましたね」

湯女「その程度の魔法、大した事もない筈でしょう?」

女魔王「ぐ、ぐ、ぐうぅぅぅ……!」

戦士「勇者殿ーっ!」

僧侶「戦士さんはあの方をお願いします。私は勇者様を!」

戦士「おうッ! てめぇ、女だからって容赦しないんだからなー!」

女勇者「私も援護する!」

僧侶「勇者様、すぐに回復しますね。待っていてください 〜〜〜〜〜……」

女魔王「早くするのよぉ〜…ぐぬぬぅ!」

魔剣『僧侶ちゃん、急げ〜』

僧侶「急いでるわ!」


戦士と女勇者の同時攻撃!!

湯女「あまり無関係な人を傷めつけたくはないの」

湯女「でも、それは時と場合によりまーす♪ えーいっ」

戦士・女勇者「!?」

2人は炎の渦に囲まれてしまった! 身動きが取れない!

戦士・女勇者「超熱いぃいいいいい〜〜〜……!」

僧侶「そ、そんなっ。魔女さん!」

魔女「既に何とかしてますわよ」

魔女は湯女の炎魔法へ無理矢理干渉すると、炎の渦を打ち消した。
そのまま、湯女へ向かって魔法で形成した数百の武器を射出!

湯女「ちょちょいのチョイ」

フッ、と息を吹きかけると武器たちは跡形もなく消えてなくなった。

魔女「えっ!?」
809 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:13:12.87 ID:npPz2no30
魔女「わ、私の魔法が一瞬で……」

魔女「自信喪失した、ですわ……」

魔女は意気消沈して、戦闘不能状態となった。

魔剣『肝心なところで役に立たない魔女っち!』

僧侶「勇者様、行けますっ」

女魔王は回復した!

女魔王「よーし、ぶっ殺決定であるわよッ!」

湯女「無駄無駄〜♪」

戦士「勇者殿、俺たちも援護するっス。行くぜ」

女勇者「了解〜!」

魔剣『行くぜぇ〜〜〜!』

女魔王「今回こそ貴様を仕留めさせてもらうわよッ」


同時攻撃が炸裂!! 3人の息はピッタリだ!


湯女「…………あらあらまぁ―――」


湯女「お願い。天空に住まう白き竜よ、我に仇名す愚者を焼き払いたまえ」


遥か彼方の空より、眩く光が輝いた!
同時に女魔王たち三人は天空より降り注がれた光の熱線によって大ダメージを受ける!



女魔王「うううぅぅぅ……うぐっ」グッタリ

魔剣『機能停止、機能停止……』シュー…

戦士「†」

女勇者「†」

僧侶「……い、今のは一体何なの」

僧侶「魔法……ううん、もっと違うものだわ……」

僧侶「か、勝てない……!」

魔女「同感……」


僧侶たちは、魔王すら凌駕する湯女の圧倒的な力に絶望してしまった!
810 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:15:05.77 ID:npPz2no30
盗賊「はっ」

盗賊は復活した。

湯女「いっちょ上がりー、二度もご協力いただきありがとうございましたぁ」

盗賊「な、何だ?」

湯女「あなたの生きたいと願う強い意志は世界樹の栄養とさせていただきます」

湯女「まさにギヴ&テイク。理に適ってますねぇ」

盗賊「お前、いつかの……え」

周りを見渡すとそこには仲間が倒れている姿に棺桶が2つ。

ほぼ全滅状態だ。

盗賊「俺が死んでいる間に何が起きた……」

湯女「邪魔してくるからちょーっとお灸を据えてあげちゃいましたの。おほほほ」

湯女「大丈夫。しっかりアフターサービスしておきますからぁ」

湯女「ああ、ビンビンと伝わります…無念の死を遂げた2人から生きたいと思う意思が……」

湯女は復活、全体回復の呪文を唱えた。
戦士と女勇者は蘇り、仲間たちは全回復する。

女魔王「何のつもりであるかァァッッーーー!!!」

湯女「善意によるものから回復してあげました。嫌でした?」

女魔王「こ、殺す…絶対殺してやるわ…!」

女魔王「貴様らァ、もう一度攻撃を仕掛けるわよ! 次こそ…」

僧侶「……」

魔女「ちーん……」

女勇者「ううぅ」ガタガタ

女魔王「何をへたり込んでおるのか! さっさと立てぇ!」

戦士「勇者殿……」

女魔王「あァ!?」

戦士「……す、すまない。無理っス」

女魔王「お、怖気づいたとでも申すつもりか! 貴様は強者が好きだったろう! ならばっ」

戦士「……うぅ!」

湯女「無理強いは良くありませんわ。彼らは既に戦う気はないようですし」

湯女「ねぇ?」

「……」

女魔王「バカを申すなよ……ま、魔剣よ!」

魔剣『―――――』



女魔王「魔剣?」
811 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:15:58.43 ID:npPz2no30
魔剣『―――――』

女魔王「何故返事をせんのよ。どうした!」

湯女「ごめんなさいね、私はその剣までは回復してあげられません」

湯女「魔剣自身が魔法を拒んでしまっているから」

女魔王「あ?」

湯女「さて、都合の良い事に勇者がここにいます」

湯女「だからぁ、お持ち帰りしちゃいますねぇ。回復の代価ということで♪」

湯女は脅えている女勇者を抱き上げた。

女勇者「ぇ……」

僧侶「だ、ダメ……!」

女魔王「ふんッ」

女魔王の攻撃! しかし、攻撃は避けられた!

湯女「邪魔ですよ」

湯女は無防備となった女魔王へデコピンをした。大きく後ろへ仰け反り、頭を抱えて悶絶している!

女魔王「〜〜〜っ!」ジンジン

湯女「せっかく久しぶりの親子の対面だというのに。水を刺しては嫌ですよぉ」

湯女「ねぇ?」

女勇者「えっ」

僧侶「…………う、うそ」

戦士「今、なんて……」

盗賊「親子……っ!?」


湯女「大きくなりましたね、我が娘よ。そして勇者の子よ」



女勇者「おかあ……さん…………?」
812 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:17:18.72 ID:npPz2no30
女勇者は湯女の胸の中で固まった。
それをさらに優しく包み込む湯女。その姿はまさしく、親子だ。

女勇者「……」

湯女「うふふ、何年ぶりかしら。こうしてあなたを抱いたのは」

湯女「前にあんなに小さかったのに。時が過ぎるのは早いものですねぇ」

女勇者「……」

僧侶「女勇者さん! 気を確かに持ってください! 惑わされているだけです!」

湯女「失礼ですねぇ、事実なのですよ?」

女魔王「このオォォォーーーーーーッッ!!」

女魔王の攻撃!

湯女「もう、空気の読めない子ですね」

女魔王の攻撃を回避し、拘束魔法で魔王を縛り上げた!

女魔王「がぅ!?」ギュウギュウ

湯女「少し、人がいない場所で落ち着いて話をしましょうか。最後の親子の会話を」

女勇者「お、おかあさ…」

湯女が地面へ手を向けると、魔法で作られたワープホールが現れた。
ホールの中はとても暗く、中から霧が溢れ出ている。

盗賊「待て!! そいつをどうするつもりだぜ!?」

湯女「さ、他の事は気にしないで。行きましょうかぁ」

女勇者「師匠っ―――――――」


湯女は女勇者を抱えたままワープホールへ跳び下りた。
2人が中へ入って行った後、すぐにホールは閉じてしまおうとしている!

そこへ拘束魔法を無理矢理解いた女魔王が魔剣をもって駆け寄り、ホールを魔剣でこじ開けた!

女魔王「うがあああああああぁぁぁぁぁッッーーー!!」ガリガリガリ…

女魔王「ふんーッ!!」

ホールを開けると、閉じないように魔剣をつっかえ棒の様にしてホールを支えた。


女魔王「すぐにあの糞女を追うであるわよ……っ!」

戦士「ゆ、勇者殿……」
813 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:17:59.20 ID:npPz2no30
僧侶「色々あって頭が混乱してきました……」

戦士「みんなそうだよ。俺だって意味わかんねぇ……」

盗賊「お前、さっきからどうしたんだぜ」

魔女「ショックですわ〜……天才のこの私が……」

盗賊「よくわからんが、とんでもない事態らしいな」

女魔王「ふん、それより魔剣…」

魔剣『―――――』

女魔王「何故喋らなくなってしまったのよ」

盗賊「壊れちまったんじゃねーのか。本当は機械仕掛けの剣だったのかもしれん」

女魔王「魔剣は魔剣だわよ! 機械なんぞと一緒にするでないわ!」

僧侶「あの壮絶な光線攻撃で調子が悪くなってしまったのかもしれませんね…」

魔女「ていうか、勇者が毎回雑な扱いしてたのも原因じゃ」

女魔王「あァッ!?」

魔女「……ないですわよね、うん」

僧侶「それより女勇者さんです。あのエルフが先程言いましたよね、最後の親子の会話と」

僧侶「まさか、女勇者さんを殺してしまうのでは…」

女魔王「そのまさかであるわよ。アレは元から女勇者の命を狙っておったのだ」

女魔王「執着しておったからな、かならず殺しにかかるわ。殺すというか、完全抹消」

戦士「それってやばいんじゃないっスか!」

盗賊「……俺には関係ねーな。やはりパーティを抜けさせてもらうぜ」

僧侶「と、盗賊さん!? まだそんな事を!」

盗賊「今は仲間より家族だ! 俺の大切な妹なんだ、すぐに助ける!」

戦士「好きにしろよ」
814 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:19:12.51 ID:npPz2no30
盗賊「……何だよ、止めねぇのか。肉ダルマ」

戦士「俺が言ったんだもんな。妹ちゃんを守ってやれって」

戦士「責任感じてるんだろう、盗賊?」

盗賊「……」

戦士「安心しろ、女勇者ちゃんは俺たちがかならず助けだすから」

戦士「お前は行け」

僧侶「戦士さんまで……そんな」

僧侶「女勇者さんだって、盗賊さんをあんなに慕っていたじゃないですか……」

僧侶「彼女は盗賊さんが大好きだったんですよ…だから、さらわれた最後の時だって盗賊さんを呼んで」

盗賊「知るものか!!」

僧侶「っ!」

盗賊「お…俺には俺でやらなければならない事がある! 俺はそれで手一杯なんだ!」

盗賊「だから……無理だっ」

僧侶「ううっ…………」

魔女「好きにやらせてあげたらいいですわ。仲間だとかいって、所詮私たち他人だもの」

魔女「家族を優先する気持ちは分からなくもなくてよ」

戦士「そうだな」

戦士「僧侶ちゃん。俺たちが盗賊の抜けた分まで頑張ろうぜ」

戦士(たとえ、敵わない相手だとしてもな……!)

盗賊「……」

女魔王「どうした盗賊のバカウンコ。行かぬのか?」

女魔王「さっさと行けェィッッ!! 貴様の相手をしている場合ではないのよ!」

盗賊「う、うあ……」

盗賊「っ……!」


盗賊は仲間たちに背を向け、立ち去った。

盗賊がパーティから外れた!
815 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/04(土) 21:20:22.13 ID:npPz2no30
遅くなっちゃった、申し訳ない

もしかしたら後で書きに来れるかもしれんので、その時はよろしく
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/08/04(土) 21:33:27.09 ID:onWOVuvto
とりあえず乙です
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 21:54:46.35 ID:nyom3nAy0
あなたを待っていた!乙
終盤らしい展開なってきたが盗賊・・・
818 :  [sage]:2012/08/04(土) 22:34:24.17 ID:JIL5z1BgP
おつおつ!
魔剣ちゃんが心配だぜ…
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/05(日) 01:40:00.37 ID:w6KsvR6Xo
霧が溢れるホールの中身って…
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/05(日) 08:04:43.16 ID:2uuD4KB6o
821 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:04:37.90 ID:PhV8ITDW0
のどかな村


モーモー コケー ブヒブヒ

3「うーむ……」

3「ここは何処なんだ」

武闘家「アンタ何も考えないで此処まで来たの!?」

3「仕方がないだろ! 俺は魔王城付近以外遠い場所は行った事ないの!」

武闘家「それならそうと言ってくれたよかったじゃん! アンタバカぁ?」

3「うるさいやい!」

女戦士「ふふっ…」

3・武闘家「笑い事じゃない!」

女戦士「いや、すまないね。面白くて」

武闘家「全然っ、面白くないですー」

女戦士「はははははは」

武闘家「おば……お姉さん最近随分笑うようになったわよねぇ」ヒソ

3「むっ、確かに。明るくなったというか」ヒソ

3「……それはそれでどこか不気味だけど」

武闘家「同感、同感!」

女戦士「私に隠れて何の話をしている? コソコソしているのはあまり関心できないな」

3・武闘家「!」

女戦士「とにかく、今日はもう日が暮れそうだ。この村にお世話にならせてもらおう」

女戦士「それでいいかな?」

武闘家「べ、別にいいんじゃない〜?」

3「」こくこく

女戦士「ん。そうしよう、そうしよう」ニコニコ
822 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:05:21.84 ID:PhV8ITDW0
武闘家「にしても、ホント何にもない村だわねぇ。面白味もないわ!」

女戦士「だからお嬢様なんだよキミは」

武闘家「何よっ!?」

女戦士「この村は最近賊に襲われて一時、壊滅状態を迎えたらしい。だけど周りを見渡してみなさい」

武闘家「……別に普通の、゛ただ゛の村だけど?」

女戦士「この゛ただ゛の村に復興させた彼ら…いや、彼女たちは凄いよ。本当に」

3「言われてみれば確かに男より女の数の方が多いぞ、この村」

武闘家「若い女ばっかね。こんなで大丈夫なの?」

女戦士「ああ」

武闘家「断言してきたわね……」

女戦士「彼女たちもそうだが、本当に凄いのは―――」

子ども「あ、ご無沙汰してます! 女戦士さん!」

女戦士「……やぁ」

3「知り合い?」

女戦士「以前、この村に魔王の手掛かりを求めて訪れてな。その時に知り合った子だよ」

子ども「村を見てくださっていたんですね。どうですか、貴女のおかげで村はここまで元気になれたんです」

女戦士「私が? いや、大した事をした覚えはない。キミが村人たちの士気を上げ、引っ張ってきた結果じゃあないか」

武闘家「ちょっと待って」

女戦士「うん?」

武闘家「このガキんちょが何したっての?」

女戦士「ガキんちょなんて見た目で判断してくれるな。彼は村のリーダーだ」

子ども「えへへ…」

武闘家「は?」
823 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:06:08.39 ID:PhV8ITDW0
武闘家「リーダー!? つまり村長!? はぁ? 何の冗談を…」

子ども「あ、村長じゃないんだよ。僕はただ復興計画のリーダーを務めているだけで…」

女戦士「控え目になる必要もないさ。皆だってキミを認めてくれている」

3「この人間のガキが大人を引っ張っているだと? 俺でも信じられんぞ」

女戦士「彼はとても賢い子だ。判断力、指示力……何よりも物覚えが早い」

女戦士「必死なんだよ、大好きな村のためにね」

3「やはり信じられん……」

子ども「そうですよね。僕程度の奴がそんな事していると誰が信じられますか」

子ども「いいんです。誰に認めてもらおうだとか考えちゃいません。僕は僕がすべき事をするだけなんです」

武闘家「どうしてアンタがそこまで頑張るのよ? ワケ分からないわ」

子ども「勇者様に誓ったんだ。僕がこの村を立て直すんだって」

武闘家「勇者って……まさか、あの、アイツじゃ」

女戦士「その通りだとも」

武闘家「はぁ!? アンタ自分で何言ってるかわかってんの! アイツは勇者じゃ…」

がしっ

武闘家「もがっ!」

女戦士「しーっ……」

女戦士「いいじゃないか。勇者が誰か決めるのは国じゃない。個人だ」ヒソ

女戦士「本来の勇者の在り方を考えてみてくれ」

武闘家「……」
824 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:06:45.72 ID:PhV8ITDW0
夜・民家


女「こんなボロ家で申し訳ありませんが」

3「マジでボロ家だなぁ! 酷いぞ!」

武闘家「ホワチャー!!」

武闘家の攻撃!


3「あ゛あぁぁっ〜〜〜!?」ボカーン


武闘家「くそバカ」

3「いきなり蹴る奴がいるか!?」

武闘家「ふん、これだから常識がないガキは嫌いよ!」

女戦士「はっはっは、やるようになったな」

武闘家「まぁね」

3「な、何だよお前たち……」

女「あの、大丈夫ですか?」

女戦士「ソレは気にしなくていいよ。すまないな、連れが無礼な発言を」

女「いいえ…本当の事ですから…」

女「せめて、恩人の貴女へ精一杯の恩返しができたら」

女戦士「いいんだ。私たちは恩を受けるつもりで村を訪れたわけではない」

女戦士「どうか、気を楽にしてくれ」

女「そ、そんな……! とんでもありませんわっ」

武闘家「オバさんってば、本当に慕われてるのね。そんな凄い事したのかしら?」

3「知るかぁ……」ボロボロ
825 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:07:33.67 ID:PhV8ITDW0
子ども「やぁ、夜分遅く訪れてすみません」ガチャリ

女「リーダー。いいえ、大丈夫よ。どうぞこちらに掛けて」

子ども「申し訳ない……」

女に引かれて椅子へ腰かけた。

武闘家「ガキらしくないわね」

子ども「え?」

武闘家「アンタ、私と同じぐらいの歳でしょう〜? おかしいわよ」

女戦士「こらこら…」

子ども「構いません。おかしい事は重々承知してますから」

子ども「丁寧な言葉使いを心がけてるけれど…どこかやっぱりおかしいかな…」

武闘家「知らない!」プイ

子ども「あ……」

女戦士「どうか怒らないでやってくれ。この子は世間に疎い」

武闘家「失礼ね!!」

子ども「ううん、それが普通の子どもなんだよ。きっと」

子ども「世間の子どもから見れば、僕の方が異端に見えるのは間違いない」

武闘家「そこまで言っちゃいないわよ……?」

武闘家「おば…このお姉さんから聴いたけれど、アンタ村の為に頑張ってるんでしょ?」

武闘家「じゅ、十分立派よ……何も悪くないし……」

女戦士「素直に初めからそう言えば良かったのに」

武闘家「うるさいわねぇ!!」

子ども「あ、ありがとう……」
826 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:08:06.14 ID:PhV8ITDW0
女戦士「――――――そうか、傭兵を雇う金が」

子ども「はい。村のみんなは資金を補う為に外へ働きにも出てくれていますが」

子ども「……それでも現状は、厳しい」

武闘家「ふん、そりゃあ女子供しかいないような村には傭兵が付いていなきゃ危険よね」

武闘家「それなら、みんな戦う術を学べば少しはマシになるんじゃないの?」

女戦士「簡単な護身術程度ならば私が以前教えた。だが、魔物はもちろん。男共には」

女戦士「その程度の技術を噛んだぐらいじゃ勝ち目はない」

子ども「……ぼ、僕がしっかりするしか」

女戦士「いい。君は戦うな、戦うような人間じゃあない」

子ども「で、でも!」

女戦士「傭兵については私も考えておこう。安心してくれ」

3「まさかお前! 俺たちから抜けてこの村で……とかじゃありませんよね?」

女戦士「お前も安心しろ。私は交わした約束を破る真似はしないさ」

3「ほっ……」

3「それにしても、何故お前はこのガキに肩入れするんだ。そんな事してお前に得があるとでもー?」

女戦士「損得の問題じゃない。私は強い者の味方なんだよ」

子ども「そんな、僕は強くなんて」

3「強いだぁ? このガキがだと?」

女戦士「強いよ」

女戦士「……とにかく、協力しようとも」

女戦士は子どもへ手を差し伸べた。

子どもはそれにオドオドと手を伸ばし、掴む。
827 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:08:48.53 ID:PhV8ITDW0
女戦士「私の両親は資産家だ」

子ども「え?」

女戦士「私が一声かけてやれば、少しばかり援助できるかもしれない」

女戦士「勿論。これは最終手段として考えてほしい。私自身、喜んで両親にその様な勝手を頼める立場ではない」

子ども「……そんな、貴女に恥をかかせる真似はさせたくありません」

女戦士「キミが今考えなければならない事は村の事だけ。私に遠慮はするな」

女戦士「私は好きでキミに協力しようとしているんだ。好きに使え」

3「ちょっと自己犠牲がすぎると思うがな、お前の行動は」

武闘家「うん…」

女戦士「いつだって、救いの裏には犠牲が存在する。気にするな」

子ども「では…それは一つの、貴女の言う通りの、本当に最後の手段として取っておきます」

女戦士「ああ、それでいいんだ」

子ども「……僕は、この村は本当に幸せ者です」

子ども「貴女のような人に出会えて、勇者様にも出会えて…助けてもらって」

子ども「どう感謝していいかわからないや」

武闘家「アンタ…」

3「食糧は?」

3「食糧問題なんかはないのか」

子ども「何分、大人の男は傭兵ぐらいですので、僕らは」

3「そういう問題でもないだろう。労働者には食う権利が平等にある」

3「おい、その辺りも考慮すべきだぞ」

女戦士「ああ」

武闘家「……」

女戦士「お嬢様は無理に話に付き合わなくても」

武闘家「わかってるわよー!」ピュー
828 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:09:32.52 ID:PhV8ITDW0
野外


武闘家「何よ……」

子ども「ああ、ここにいたんだ」

武闘家「!」

子ども「難しい話は粗方済んだよ。もう戻っても」

武闘家「うるさい!」

子ども「ご、ごめん……」

武闘家「……私、そういうのわかんないから」

子ども「え?」

武闘家「王都出身でさ、こういった村の事情とは無関係に暮らしてきたわ」

武闘家「だから、オバさんが言ってたお嬢様ってのも実質間違いじゃない」

子ども「そうなんだ」

子ども「もしかして気にしているの?」

武闘家「全然……!」

武闘家「気にしてなんかないし! 知らないもん!」

武闘家「だって知識のないガキの私に、できる事なんて何にもないわよ」

武闘家「そうでしょ?」

子ども「そうだね」

武闘家「〜〜〜…」

子ども「いいじゃないか、ガキはガキらしく。外で遊んでいる方がらしいよ」

子ども「無理して自分以外のもののタメになるような事をする必要はない。それはガキの仕事じゃない」

武闘家「だったら、アンタにだってその言葉そっくり返せるわ」

武闘家「アンタがこんな村の為に誰よりも仕事する必要ないわよ」

子ども「それが、僕にとっては゛こんな゛村じゃあないんだ」

子ども「大事な大事な生まれ故郷。大好きな場所なんだよ」

武闘家「はぁ?」
829 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:10:05.96 ID:PhV8ITDW0
武闘家「それが理由になるとでも…」

子ども「大好きだから救うんだ。他に理由はある?」

武闘家「おかしい……」

子ども「これは趣味みたいな物だよ。だから、僕の趣味に文句をつけないであげて」

子ども「僕も、好きでやっているだけだから。それに約束したもん」

武闘家「勇者サマに?」

子ども「みんなにだ。村のみんなに……」

子どもはボロボロになった盾を取り出し、武闘家へ見せた。

武闘家「ボロっ!」

子ども「この盾は僕の宝物なんだ。これで村を守る」

子ども「なんて言ってるけど、こんなボロくそ盾じゃ村もみんなも守れない」

武闘家「ガキのくせに現実的……きもっ」

子ども「だから、この盾は僕の決意の表れというか…とにかく誓ったんだよ」

子ども「僕自身が盾になろうって……」

武闘家「キモいわ、あんた。バカじゃないの?」

子ども「……そっか」

武闘家「あー、やだやだ。何だかんだ大人ぶってても、所詮はガキね!」

武闘家「逆に安心した」

子ども「えぇ?」

武闘家「精々頑張るがいいわ。村リーダー」

武闘家「……それと忠告しておくけどね。あんた、若白髪いっぱい生えてるわよ」

武闘家は去って行った。

子ども「変わった子だなぁ」
830 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:10:56.13 ID:PhV8ITDW0
武闘家「……」ガチャリ

3「おかえりー」

武闘家「ん」

3「ただいまぐらい言えよ!!」

武闘家「うるさいわね。私疲れたからもう寝る。話しかけるな、以上」

3「以上って……もう」

女「どうぞこちらでお休みになってください」

武闘家「ありがとう。って」

女戦士「おかえりお嬢様。夜の散歩は楽しめたか」

武闘家「アンタももう休むの?」

女戦士「ああ。彼女のお言葉に甘えてね」

女「お酒ぐらい出しますのに」

女戦士「いいんだ。私は酒に弱いから」

3「酒豪に見えるけどなぁ」

武闘家「うん」

女戦士「そうなのか。まぁ、気にするなよ」

寝室の扉が閉められ、2人はベッドに腰掛けて向かいあった。

武闘家「……」

女戦士「何か言いたげな顔をしているね」

武闘家「ねぇ、私はこのまま温室育ちのお嬢様でいていいのかしら」

女戦士「というと?」

武闘家「世間知らずを貫いていてもいいのか」

武闘家「ほら、よく言うでしょ。何も知らない方が幸せに生きていけるって」

武闘家「私は自分以外の事は正直どうでもいいの。だけど」

女戦士「世間体を気にし始めたというわけか、それとも無知を恥と知り始めたか」

武闘家「ううん、どっちも」
831 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:11:38.67 ID:PhV8ITDW0
女戦士「キミは私にこれからの道を指し示してほしいのかな」

武闘家「笑って言う台詞じゃないわよ……」

武闘家「昔から父親の言う通りに生きてきた。武道だってやれと言われたからやった」

武闘家「私、自分を持ってないのかもね」

女戦士「それが嫌になった?」

武闘家「嫌……というわけでもないかも。楽だから」

女戦士「そうか」

武闘家「怒らないの?」

女戦士「うん? 何故かな?」

武闘家「だって、アンタってこういうの嫌いそうな感じだし……」

女戦士「嫌いだよ。だから今の私がいる」

武闘家「はい?」

女戦士「キミは過去の私とよく似ている。いや、今の私とも」

女戦士「何を決めるのも、結局は自分が最終的に決断を下さなければならない」

女戦士「楽か苦か。いいじゃないか、キミが好きな方を選んだら」

武闘家「ふん、典型的答えね」

女戦士「そりゃそうさ。私はキミじゃあない」

女戦士「他人がどう動こうが、生きようが、私の知った事ではないよ」

武闘家「……最初からアンタに訊いた意味なんてなかったのね」

女戦士「ああ、私以外の誰にでも同じ事を相談してみるといい。きっと結論は皆似たり寄ったりだ」

武闘家「でしょうね」

女戦士「ふふ、分かっていたのなら何故相談してくれた?」

武闘家「知らないわよ…」

女戦士「自分を持っていないとキミは言ったが、私はそう思わないよ」

女戦士「じゃあ、お休み」

武闘家「……意味不だわ」
832 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:12:11.88 ID:PhV8ITDW0
3「この泥水は一体?」

女「お茶ですわ。お気に召さなかったでしょうか…」

3「茶だとぅ。飲んでもいい?」

女「え、ええ」

3「」グビグビ

3「……やはり人間が口にする物は合わん」

3「この茶は村で採れたものから?」

女「はい。裏の方で私が栽培しているものでして」

女「喜んでいただければと思っていたのですが」

3「正直微妙だぞ」

女「あ、は、はい…そうですか…」

女戦士「デリカシーがない男だ。それで上に立とうとしているのか」

3「はっ、お前……寝たのでは……!」

女戦士「お前の声が大きいから起きた。それより」

女戦士「何か嫌な予感がする」ヒソ

3「あい?」

女戦士「少し外に出てくる。異常がなければすぐに戻るから、先に休んでいろ」

女「それなら私も」

女戦士「大丈夫だよ」ポン

女戦士「それじゃあ…」

女戦士は装備を一式担ぎ、民家を出て行った。

3「フン、一々気の休まらん女だな」

3「そこの女。俺は退屈している。何か話をしようか!」

女「あ、是非是非」
833 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:13:03.84 ID:PhV8ITDW0
女戦士(外を回っているのは傭兵が4人程……)

女戦士(信頼できる所を紹介してやって正解だった。仕事はしっかりしているようだ)

傭兵A「おお、何だい。こんな遅くに出歩いて。散歩でも?」

女戦士「ああ、あまりにもいい場所だから」

傭兵A「そうだな。人もいいし、緑も豊かだし…悪くねぇや」

女戦士「気に入ったのならこのまま暮らせばいい。皆、貴方たちを歓迎してくれるだろう」

傭兵A「そう? なら考えてみようかな。畑仕事に変わるのも一向に構わないしよ」

傭兵A「別に今の仕事が嫌いってなワケでもないけどなぁ。はっはっはっ!」

女戦士「ふふ、そうか。では私はこれで」

傭兵A「おうよ。一応気をつけろとは言っておくぜ。村から出れば魔物もすぐ出てくる」

女戦士「ご忠告感謝する」

その後、彼女は村を一通り歩いてまわった。魔物や賊の気配は感じられなかったようだ。

女戦士(……異常は特に見られない。私の勘も鈍ったものだな)

女戦士「きっと心配されている。そろそろ戻ると――――――」


ふと、視線をとある民家へ移す。窓から家の中が丸見えだ。
村人と思わしき女が後ろから誰かに抱きしめられていた。

女戦士「おっと、いけない」

すぐに目をその光景から視線を逸らそうとするが。

女戦士「……妙だな」

抱きしめられている女がグッタリしている。遠目から見ても肌の色が悪くなっているのがわかった。
その゛誰か゛の顔はこちらからでは見る事ができない。しかし、ソレは女の首筋に歯を立てているように見えなくもない。

女戦士「……」
834 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:14:03.36 ID:PhV8ITDW0
コンコン


?「はーい」

女戦士「夜分遅く失礼する。私は以前村の再建に協力した戦士だが」

女戦士「大切な話があるんだ。少しだけ出てきてはもらえないだろうか」

?「……こんな日が暮れてからはちょっと」

女戦士「では、扉越しでいい。大丈夫かな?」

?「それなら構いませんよ」

女戦士「話と言ったが、質問をしても?」

?「答えられる範囲でしたら、何でも」

女戦士「キミはこの家の持ち主かな」

?「はい」

?「まぁ、今は家族が亡くなって私一人っきりの家ですが」

女戦士「すまないな、辛い事を話させてしまって」

?「いいえ。もう悲しくありませんし」

女戦士「……そうか」

女戦士「ところで、私は以前こちらのお宅でお世話になった事があるんだ」

女戦士「覚えはないかな?」

?「え、ああー……どうでしょう? 何分物覚えが悪いものでして」

女戦士「そうか、残念だな。あの時約束した物を渡そうと思っていたのだが」

?「そうなんですか。ではまた後日にでも〜」

女戦士「今がいい。無理を言っているのはわかっているが、出てきてくれ」

女戦士「いや、出て来い」

?「……乱暴ねぇ」

女戦士「話は終わりだ。お前が誰かは知らんないが」

女戦士「出て来ないのならば、私が今からそこへ踏み込むとしよう。力付くでもな」

?「チッ」

女戦士は剣を片手に扉を蹴破り、民家へ突入した!

奥には首から血を垂らせた女が一人。

女戦士「……」
835 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:14:41.94 ID:PhV8ITDW0
女戦士は入り口からその女を眺め、近づこうとしない。
だが、家の中にあったクローゼットへ近づくと、それを開ける。中は服だけ。

女戦士「餌に釣られたのはお前の方だったな」

女戦士は一気に振り向き、ソレに剣を突きつけた!

賢者「……あちゃー」

女戦士「キミは……」

賢者「おばさんの勘の鋭さにはホント嫌になっちゃうよ、ったく!」

ソレはかつて共に行動していた女賢者だった。彼女の口元や服は血で汚れている。

女戦士「何をしていた。言え」

賢者「ふふん、それはこっちの台詞だっつーの。おばさんこそ今まで何してた?」

賢者「魔王を倒す仕事を放っておいてサ。仲良しごっこかな?」

女戦士「さぁな」

女戦士「どうやらキミは本当に魔物へ成り下がってしまったようだな」

賢者「好きでこうなったんじゃねーよ! 無理矢理だ!」

賢者「……まぁ、でも。悪くはないかもね」ニヤ

女戦士「愚かな女だ。これから私はキミを切る。容赦はしない」

賢者「アンデッドは普通には殺せない、って自分でもわかってるっしょ〜?」

賢者「いくら切ったって無理む―――――――」


ずばあぁぁっ!


賢者「〜〜〜……!」ぶしゅうぅぅ…

女戦士「容赦はしないと言ったぞ、魔物」

賢者「こ、こんにゃろっ〜〜〜……!!」
836 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:15:31.31 ID:PhV8ITDW0
女戦士の攻撃! 賢者の攻撃!

賢者「あっはははァーーー!! 舐めんなババアァーーーッ!!」

女戦士(この力は、以前とは比べものにならない。魔物の力をさらに受けた結果か)

賢者の殴打攻撃を避けながら、隙を見つけ、一気に彼女の腕を掴み、民家の外へ放り投げた!

賢者「きゃあん!?」ビターンッ

女戦士(さて、どうした事か……)

女戦士(アレが何の目的でこの村を訪れたかはわからん。恐らくは私を始末しに来たのだろうが)

女戦士(そうだとすれば、村の中で争うわけには。外へ連れ出すしかない)

賢者「フン、その程度で倒したとか思ってるんじゃないよね? まだまだよ」

賢者「今までムカついてたんだよ…あんたには!!」

賢者「私にはとっておきの秘密兵器もあるんだから! あんたはもう死んだも同然だ!」

女戦士「よく吼えるな、舌を噛むぞ」

賢者「は、あっ!? ――――――――――」


女戦士は武器を剣から盾へ持ち替えると、そのまま賢者へタックルをお見舞いした!
さらに武器を変更! 盾から槍へ!

賢者(つ、次から次へとッ――――――!)

どすんっ! と音が聞こえてくるような強烈な一撃が賢者の胸を貫いた!

賢者「がぼぉっ……!?」

女戦士「さぁ、続きは外でやろう。ここでは皆の睡眠の妨げになる」

槍に賢者を突き刺したまま、女戦士はそれを肩に担ぐと外へ出ようとする。が、

賢者「なっ、めんなぁ〜……!!」


賢者「リビングッアァーーーマァァァーーーッッッ!!!」


賢者がその名を叫ぶと辺りが揺れ出した!

女戦士「何だと」
837 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:16:18.97 ID:PhV8ITDW0
ゴゴ ゴ ゴゴ ゴ


賢者「……ふふん、今からあんたに真の恐怖を体感させてやるわよ」

女戦士「キミが先程話していた秘密兵器とやらの登場か」

女戦士(マズいな、何が来るかわからない。急いで村を出なければ)

賢者「あははははははッ!! 後悔したってもう遅いんだからね!」

賢者『コロセ、ナンバー1・2・3!』

女戦士は賢者の恐ろしい声を聞き、急いで村を出ようと駆けだした。
しかし、彼女の行く道の前に、巨大な鉄の塊が落下する!

女戦士「むっ……」

Mk-U(NO.1〜3)『ういーん、ガシャンガシャン―――』

賢者「この子たちはリビングアーマーMk-U! 聴いて驚けっ、全部で9体もいる!」

賢者「ふふ〜ん。私はこいつらを纏めてナンバーズと呼んでるの。どう? カッコいいでしょ」

女戦士「本当にベラベラと喋ってくれるな。お喋りがしたいのならその物騒なのを引っ込めるんだ」

女戦士(ちっ、こんな場所で面倒そうな物を。村人たちを避難させなくては)

賢者「あんたの考えは読めてるわよ。この場所にどれだけ被害を出さずに私たちを倒すか」

賢者「でも安心しなさいよねぇ〜? そんな事を考える暇なんて、すぐになくなっちゃうんだから!」

女戦士「……」


傭兵A「魔物ぉーーー!!」


賢者「あ〜ん……?」

女戦士「気づいたか」

女戦士「ここは私一人に任せろ。あなたたちは村人へこれを呼び掛けて避難の催促を」

傭兵A「アンタ一人でこの人数を相手に? 馬鹿を言っちゃいけない…俺もやろう」

傭兵A「既に今の俺の報告で仲間たちには情報は届いた。避難までの時間稼ぎを、俺とアンタでやろう……」

女戦士「恩に着るぞ、傭兵殿」

賢者「……一人増えたから何よ。ナンバーズ! ジェットストリームアタックッ!」

Mk-Us『じょいーん』ガシャン
838 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:17:16.39 ID:PhV8ITDW0
リビングアーマーMk-Uたちは女戦士たちへ地面を滑る様に移動しながら向かいつつ、縦一列に綺麗に並んでゆく!

傭兵「何だあの動きは、初めて見るぜ」

女戦士(戦うにしては奇妙なフォーメーションだ。前列の1体の陰に2体の動きが隠れていて行動が分かりづらい)

女戦士「来るぞ、私が敵の攻撃を受け止める。あなたは私に合わせて支援を」

傭兵「了解」

手前の1体の腕が巨大な斧へ変形する! 移動での加速を乗せつつ、一撃を放った。
その攻撃に対し、既に盾に持ち替えていた女戦士は敵の強烈な一撃を冷静に盾で受け流す!

女戦士(流石に重い、強力だ。アンデッドでなければすぐに腕が使い物にならなくなっていたか)

攻撃を受け流し終え、そのまま隙を見せた敵へカウンター攻撃を狙う!倣って傭兵もそれに続いた!

しかし!

No.1『 』ス…

一撃を放ったNo.1は流れるように素早く2人を追い越し、背後へ回り込んだ!
そちらへ注意が向かうと、すぐに前方からNo.2の両腕がブンッと振り下ろされる!

女戦士「なにっ」

傭兵「囮だァッー! 野郎、狙いはこれだったんだ!」

女戦士「いい、すぐに横へ転がるんだっ」

間一髪、2人はNo.2の攻撃を回避。やはりNo.2もNo.1同様に攻撃を終えると2人を通りこして背後へ回る。

その後に控えていたNo.3の攻撃! さらに、背後へ移ったNo.1の攻撃!


女戦士・傭兵「!?」


賢者「……ふふ〜ん」

賢者「これが私たちの『ジェットストリームアタック』よ。完璧な連携。そしてMk-Uの機動力がなければできないあの動き」

賢者「勝ち目はないわよ、あんたらにはね!」

傭兵「あの女は一体……」
839 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:18:23.60 ID:PhV8ITDW0
2人はナンバーズの猛攻を必死に掻い潜る! もはや避ける事で精一杯!
反撃の態勢を整えようと、すぐに崩されてしまう。

傭兵「はぁ、はぁ……冗談じゃあない!」

傭兵「どうして人間の女が魔物どもを指示してやがる。魔物使いかよ?」

女戦士「アレは既に人間ではない。見掛けに惑わされないように注意してくれ」

傭兵「だとしたら魔物と同類かよって。信じられんぞ」

女戦士「あなたが思っている以上に世界は広い」

No.3『ずもももも…………』

傭兵「村の皆の避難が済めば、俺の仲間が駆けつける! それまでは!」

女戦士「無茶だけはしてくれるなよっ」


傭兵「ぬ〜おおおおおおぉぉぉうううっっ!!」


傭兵AはNo.3の振りおろし攻撃を外した隙を狙い、その腕に飛び乗った!
そのまま腕を伝ってNo.3の頭まで一気に駆け上がる!

傭兵「図体ばかり頑丈そうに見えるが、その頭の無防備さは何だぁ!?」

No.3『〜〜〜〜〜〜』

傭兵「まさに、どうぞ殴って私を壊してください、と言わんばかりだな!」

賢者「違うよ。ソレはそうやってあんたみたいな馬鹿を誘き出す、ただの餌!」

No.3『ビ、ガガガ…ビィーーーーーーーッ』バリバリバリ

女戦士「すぐに降りろ!」

賢者「遅いっつーの!!」

傭兵「うぁああああああああぁぁあぁぁぁあああああ〜〜〜〜〜〜ッ!!?」ビリビリ

なんと、No.3の身体が放電を起こした!
上に乗っていた傭兵Aは感電し、下へボトリと無様に落ちる。

傭兵「うっ……ううぅ……」

女戦士「チッ」

賢者「並大抵の人間が耐えられる電撃じゃないわよ。そいつの支援は期待しない事だね」

女戦士はナンバーズに周りをいつのまにか囲まれてしまった!

賢者「観念しろー」

傭兵「……いいやぁ、まだ動けるね」
840 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:19:15.67 ID:PhV8ITDW0
賢者「……あぁ?」

傭兵「ここでくたばっては兵の名が廃るもんだぁ。俺はまだ戦おう」

女戦士「行けるのか」

傭兵「ちとしんどいが、頑張ろうか」

女戦士「無理は禁物だ。私たちの敵は未知過ぎる」

No.1,2の同時攻撃! さらにそれを回避すればその先にいるNo.3のレーザーが!

女戦士「!」

女戦士(これを避ければ村が……)

3「ぬゥん〜〜〜!」

突然登場した3がレーザーを受け、上空へ跳ね返した!

「!?」

3「俺は全ての生きとし生ける者の頂点へ立つ男だ。そして世界を統べる予定なのだ」

3「だから、俺様の所有物に断りなく傷をつける行為は許さんぞ。もちろん断りがあってもだ!」

傭兵「……ああ、ここには化物しか集まらないのか」

女戦士「お前、どうして」

3「理由はさっき答えた! そして、あのポンコツ魔物ども!」

3「アレは三魔官が作ったモノだろう。気に食わんのさ」

賢者「……誰よ?」

傭兵「俺に訊かれても困るが……」

3「通りすがりの世界の支配者3様だ。覚えておけ」

賢者「結構好みの顔なんですけど。でも、私の邪魔するってーのなら、容赦しないよ!」

女戦士「お前まで巻き込まれる必要はなかったものを。馬鹿な奴め」

3「俺は俺の好きなように行動する。忘れるな! 俺を支配できるのは俺自身だと…なっ!」

傭兵「ここぞとばかり良さ気な台詞を吐く兄ちゃんだなぁ」

女戦士「ああ、許してやってくれ」

3「……俺を立ててくれよ!」
841 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:19:56.86 ID:PhV8ITDW0
村の離れ


子ども「こんな夜更けに魔物が襲撃してくるだなんて……」

女「心配ですね。傭兵の皆さんも駆けつけたけれど」チラ

武闘家「……何よ?」ジロリ

女「あ、あなた一人で本当に私たちを守れるの?」

武闘家「ふーん、ガキだからって見た目で判断してもらいたくないわね」

武闘家「私がどれだけ強いか知らないで勝手言わないで頂戴」

女「う〜ん……」

子ども「僕はキミを信じているよ! そしてあの人たちの事も!」

子ども「でも、こんな時に自分が戦えないっていう事は歯痒い事だな……つらい」

武闘家「だからってアイツのお手伝いしようだなんて言い出さないでよね。足手まといになるだけなんだから!」

子ども「うん、わかってるよ」

武闘家「アンタたちは村人らしく自分の村の事だけ心配してりゃいーの。変な気起こすな」

武闘家「それにしても3の馬鹿アホまで出て行くとは思わなかったわ」

武闘家「アイツのことだから、てっきり見捨ててさっさと何処かに行くかと」

女「そんなに薄情な方には見えなかったけれど……。あの方も強いのかしら」

武闘家「言うのムカつくけど、超強いわ……!」

武闘家「私よりおばさんよりも遥かに強い。正真正銘化物クラスよ」

子ども「そ、そんなに?」

武闘家「これ以上私にアイツを誉めさせないでよ! うっとおしい!」

女「態度も大きければ、戦いでも強いだなんて……」

武闘家(そこがアイツに似てるのよね)

武闘家(あの勇者……ううん、魔王に!)
842 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:20:44.61 ID:PhV8ITDW0
3「そ、そんな馬鹿な話があってたまるか……」

3は恐怖した。

ナンバーズを殲滅すべく、魔法の連発攻撃を放ったのだ。
しかし、それは思わぬ展開を生んだ!

Mk-Us『抵抗すると無駄死にするだけだって、何故分からないんだ!?』

傭兵「ま、魔法が……反射しやがった……見た事ねぇぜ」

ナンバーズは3の強力な魔法攻撃をいとも簡単に反射してしまったのだ。

自棄になって3はさらに魔法をナンバーズへ撃ちまくる!

女戦士「よせっ、村への被害が出るぞ」

3「黙って見ていろぉぉぉーーーーーッッ!! この、俺様がぁ! アイツらの作った人形なんかにぃ!!」


どかぁーん! どかぁーん!


賢者「わっはっはぁー! 無駄だっつーの! いくらやっても同じよ!」

Mk-Us『これが若さか……』

3「畜生っっっーーーーーー!!?」

傭兵「おぉい! ソイツを止めてくれ! これでは村が先にぶっ壊れちまうぜ!?」

女戦士「止せ、3。奴らに魔法は効かない。物理で攻めるぞ」

3「ぐぬぬぅ……。まだだ、まだ俺はやれるぞぅ!」


どおぉーんっ!


その時、魔法を反射し続けていたナンバーズの様子が変化した。

Mk-U『ですとろいモード起動。ですとろいモード起動……』

賢者「えっ、何それ?」

ナンバーズの重々しかった装甲が次々と外れ落ちてゆく。
装甲に隠れていた骨格が露わとなり、3体は攻撃に特化した軽量機動型へ姿を変えた!

傭兵「鎧を落としやがった、マヌケめ。今なら俺たちの攻撃が奴らに」

女戦士「いや、様子がおかしい……」

3「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ?」



Mk-UD『愚の骨頂』
843 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:21:50.49 ID:PhV8ITDW0
一方、魔王たちは・・・。


戦士「盗賊、行っちゃった」

魔女「寂しいの? もしかしてアレな関係だった? やだぁー! ですわっ」

戦士「違うわいっ」

戦士「ただ……何か……」

僧侶「戦士さんが行けと言ったのではないですか。後悔しても遅いです」

僧侶「あの人にはあの人でやらなければならない事がある。私たちだってそう」

魔女「こっちは吹っ切れてますわね。潔くて素敵」

僧侶「別にそんなのじゃありません……私だって寂しいです」

僧侶「……」

魔女「まるでお通夜ムードですわね、こりゃ〜」

魔女「ここは魔剣が明るくするところよ。さぁ、馬鹿の様に騒ぎなさいな」

魔剣『―――――』

魔女「……あちゃあ」

戦士「そうだ、勇者殿。魔剣ちゃんはどうするんスか?」

女魔王「後で何とかすればよいのだ。それより先にする事があるではないかッ」

女魔王「さっさと穴へ跳びこむであるわよ!」

僧侶「これは、何処へ通じているのでしょうか…」

魔女「モクモクと霧が溢れてますわ。不気味なぐらいよ」

戦士「霧……」

僧侶「霧といえば、勇者様。あの時の幽霊船の件で」

魔女「何そのオカルト臭ぷんぷんする件は。興味があってよ! 話してっ」

女魔王「別の世界かァ……」

僧侶「ええ。確か魔物が言うには別の入り口があると」

戦士「その魔物が言った別の世界って、もしかして俺が行った事があるあっちの世界か?」

戦士「それなら向こうに知り合いがいるし、道案内に困る事はないですぜ。勇者殿」

女魔王「世界の何処に出るかも分からんのだ。知り合いとやらに会えるかもどうか」

戦士「あ、あー……」

魔女「もーっ! みんな酷いですわっ、私ばっかり除け者にして」グスン
844 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:22:56.56 ID:PhV8ITDW0
戦士「ツッコミ入れてくれる女勇者ちゃんの為にも、俺ら頑張らなきゃな」

魔女「ふん……でも、勝ち目はないですわよ?」

僧侶「ええ……」

女魔王「貴様らァー! 最初から弱気になってどうするのかッ」

女魔王「リベンジマッチである。次こそはかならず倒せるわ!」

魔女「いやにポジティブねぇ。でも現実は厳しい」

魔女「何せ、天才の私の魔法が…あんなに簡単に掻き消されて…ううっ」

僧侶「よほどショックだったんですね」

魔女「当然ですわ! 私は自分が扱う魔法には絶対の自信を持っているのよ! それが!」

戦士「まぁまぁ、アレでダメならもっと凄いの使えばいいじゃん?」

魔女「もち。そのつもりですわよ……ふふふ……」

女魔王「よーし、その意気込みを忘れるなだわ」

女魔王「もうよいであろう? 早く穴へ――――――」


?「少々待たれよ、偽勇者諸君!」


女魔王「あァーん?」

振り向けば、そこには見覚えがあるような、ないような騎士たちの姿が3人。

騎士「我ら王都騎士団。主の命によって、此処へ馳せ参じた」

騎士「また会えたな、わが こうてきしゅ よ !!」

女魔王「はぁ?」

戦士「王都騎士団……また出たな! 悪いけどここに女勇者ちゃんはいないぜ!」

僧侶「……それとも、私たちを捕らえに来たというのですか?」

重騎士「否、ワシらは貴様らに用があるのではない。その穴より繋がる別世界」

重騎士「そちらへ向かう事こそが第一の目的よ」

魔女「引っ掛かる言い方しますわね。他の目的は?」

騎士「秘密事項なのだ! 貴様らにそれを話す筋合いはなし!」

魔導騎士「そ、そうだぁー……話す気はないよ……」

戦士「なんてアンバランスな騎士様方だよ」

僧侶「要するに、あなた方は今回、私たちと争う気はないと?」

重騎士「その通りだ。ただ、その穴を通らせてもらえれば構わん」

重騎士「口約束が不安ならば、契約書を書いても構わん。一切そちらに手は出さぬと」

戦士「ゆ、勇者殿。こいつらどうしやす…?」

女魔王「フン、余の邪魔せんと約束できるのなら通しても構わぬわ」

女魔王「だが最初に申しておくわ。貴様らの事は気に食わん」

魔導騎士「騎士くん……」ぎゅう

騎士「ええいっ、敵前で引っ付くな! これだから女は好かんのだ!」ばっ

魔導騎士「あうう〜……」
845 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:24:08.36 ID:PhV8ITDW0
重騎士「貴公らにどう思われようが構わん。よもや、背中を狙われてもだ」

重騎士「さぁ、そこを退いていただこう。時間をあまり掛けたくない」

女魔王「頼み方があるであろうがァ〜?」

騎士「貴様ぁー…我が戦友を愚弄するつもりか!?」

僧侶「勇者様! 面倒ですので余計な挑発は止して下さい!」

魔女「まぁ、面倒ですわよね」

女魔王「余は別に通してやってもよいのだぞ? ただ、その物腰が気に食わない」

女魔王「さっさと頭下げィ。貴様らは勇者の前におるのよ」

魔導騎士「ボクもこいつ嫌いだよ……」

騎士「ぐ、ぬ、ぬ、ぁあ〜……にゃー!!」ピキピキ

重騎士「止せ、手は出さぬと約束したぞ。今、ワシらの敵は目の前の者ではあるまい」

騎士「しかし、こうてきしゅ がいるのだよ! 夢にまで出てきたわが こうてきしゅ !!」

騎士「私はこの男を……あれ、女だ……?」

女魔王「喧しいわ」

魔女「一々面倒臭い騎士もいたものね。ここはさっさと通すべきではなくて?」

女魔王「うむぅ……しかし、余は思うのよ。こやつらを先に通すのは嫌だと」

僧侶「変な所で負けず嫌いなんですから……もう」

騎士「もう我慢ならんぞぉ! 私はやる! 誰が止めようが、やる!」

魔導騎士「ボクもそのお手伝いをします……!」

重騎士「止せと言ったのが聞こえなかったかァーーーーーーッッッ!!!」


「……」しーん


重騎士「貴公らが先に通るとするのなら、それでもいい。好きにしてくれ」

重騎士「だが、その後にワシらが通る。構わんな?」

戦士「勇者殿、もういいっスよね。俺らも疲れてきたっス…」

女魔王「ぐふふふ……」ニヤニヤ

魔女「な、何で笑ってますの。こいつ」

僧侶「……勇者様のいじわるな性格が前に出てきちゃってるんです」
846 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:24:44.80 ID:PhV8ITDW0
僧侶「勇者様ー! 私たちも急がなければならないのですよ? 遊んでいる場合ではありませんっ」

女魔王「もう少し待っておれよ〜。今よい所なのよ〜」ニヤニヤ

魔女「こっちもこっちで面倒ですわ…!」

戦士「勇者殿ぉ〜……」

魔導騎士「じれったいね」

騎士「はぁ、はぁ、あはぁ……!!」ギリギリギリ

重騎士「……もう通ってもいいだろうか。頼む」

女魔王「やーだであるwwwwwww」

僧侶「皆さん。やむを得ません」

僧侶は戦士と魔女へ目で合図した。
仲間たちは女魔王の体を押さえた!

女魔王「ぬうゥッ!? 貴様らいきなり何をっ」ジタバタ

戦士「おら、さっさと行ってくれー! 今のうちに、はよーっ!」

僧侶「どうか私たちの事は気にせずにー!」

魔女「何で私までこんな自殺行為を……」

女魔王「貴様らァーーーッッ!!」

重騎士「すまんな、許してくれ」

騎士「ふん、最初から素直に通していればよかったものを」

魔導騎士「べーっ」アッカンベー

女魔王「畜生がァアア〜〜〜〜〜〜!!!」
847 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:25:37.11 ID:PhV8ITDW0
騎士たちは穴の下へ落ちて行った。

戦士「よし、もういいだろう。……勇者殿ぉ〜! すまねぇ、すまねぇ!」

女魔王「泣いて謝って済むと思っておるのかしらァッ!?」

僧侶「勇者様がいけないのですよ。さ、私たちも彼らの後を追いましょう」

魔女「早くしなきゃまた何か来そうですわね」

戦士「ていうか、こんな穴をいつまでも放置しているわけにもいかんだろう」

戦士「勇者殿! お待たせしたっス、いざ出陣っス! 今度は俺も踏ん張りますから見ててくださいな!」

女魔王「もう知らんッ」

戦士「勇者殿〜…いやぁぁ……」

魔女「魔剣は連れて行きますの? この状態だと使い物になるか」

女魔王「こやつを一人ぼっちにはさせんわよ。余はそう、こやつに約束したの」

僧侶「ふふ、そうですか。ではこの件が終わったらなんとしてでも魔剣ちゃんを直してあげましょうね」

女魔王「うむ」

女魔王「さて、貴様ら行くであるわよ」

戦士・僧侶・魔女「」コクリ

女魔王はホールを支えていた魔剣を取り、鞘へ収めた。

途端にホールが収縮し始める!

女魔王「とぅー!」ピョン

魔王たちはホールの中へ飛び込んだ! いざ、もう一つの世界へ!



?「……」

それを後ろの木陰から見ている怪しい影。
影も時間を置き、魔王たちを追うようにホールの中へ飛んだ!


しゅうううぅ〜・・・


ホールは完全に閉じ切ってしまった。
848 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/09(木) 01:27:10.62 ID:PhV8ITDW0
ここまでー。お盆の時期なったら更新できなくなるかもだ、最近休み連発ですまん
849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/09(木) 02:26:31.33 ID:VR3hkkVSo
かなり初期の村が出たきたな
そろそろ魔王ちゃんの特大魔法が懐かしい
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 02:37:30.85 ID:TiMldpet0
おお、最初の村www
リビングアーマーから香るガンダム臭がすごい
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 09:21:46.11 ID:6bKFrWPIO

Zとは歳がバレるな
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/09(木) 13:18:34.23 ID:AZuovmoDo
ガンダムネタが豊富だな
853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/10(金) 16:44:59.00 ID:AsldxRaT0
乙、お盆じゃ仕方がない
ゆっくりしてきてくれ待ってるよ
854 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/18(土) 23:02:55.97 ID:AvuZXz0W0
よーし後で書くぜーあとでー
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/19(日) 00:35:18.61 ID:KSb45nwco
それはまるでダイエット中に行くケーキバイキングのような
856 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:22:41.54 ID:OdLv7Zpp0
魔王城


1「そもそもの話だが、魔王無き今、この城の名称を変更すべきだとは思わんか?」

2「だいぶいきなりの思い立った話ね」

2「それじゃあ゛2城゛と名付けましょー?」

1「予想はしていたが…ここまで安直だとはな…!」

2「な、何よっ……可愛いしいいじゃないのよぅ」

1「自画自賛にも程がありすぎるぞ。それより、この場に何か向かってきている」

2「……あら、貴方も気づいたの。奇遇ね。私の勘違いではないみたい」


ぱっ、と三魔官の前に急に何者かが現れた!


1・2「人間かぁ」

暗黒騎士「俺の魔法に一寸の狂いなし。伯父上、誉めて!」

竜騎士「上手くカムできたのはGJよ? でもヨォ〜〜〜…奴さんのフロントはねぇべや」

暗黒騎士「おまけで連れてきてやったんだ。貴様が文句を垂れるな」

竜騎士「ゼンッゼンキュートじゃない。テメーウゼー!」

団長「あれあれ、おじさん達はここに何しに来たんだっけかな?」

団長「ガキの喧嘩なら外でやれよ。邪魔だ」

暗黒騎士・竜騎士「お、おぅっ……」

団長「……さてとー?」

1・2「……」

両者は静かに対峙する。雰囲気は最悪だ。

2「随分せっかちな人間がいたものね。もっと段階踏んでからラスボスダンジョンに踏み込んできなさいよ」

竜騎士「ハハーン? 別にオレたちはテメーらキルしにカム…」

2「何こいつ痛い……」

竜騎士「はぁ!?」

暗黒騎士「貴様が口を開くと面倒しか起きないんだ。引っ込んでろ、大柴」

竜騎士「大柴って何だヨ……!」

団長「はいはいはーい。少し黙ってよ、頼むからさぁ」

団長「僕らはね、別にお前たちを倒しに来たわけでも、魔王を倒しに来たわけでもないわけ」

団長「まぁ、魔王は今はご不在のようですけどねぇ……」

1「き、貴様…それを何故…っ」
857 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:23:43.97 ID:OdLv7Zpp0
1「何故魔王が城にいない事を知っているのだ。どこで知った!」

団長「ありゃ、本当に魔王ちゃんいないわけ? そうなんだ」

1「ああっ!? 鎌かけたなーッ!」

2「ちょっとしっかり……」

団長「めんごめんご。少しからかってみただけ」

1「ああァッ!?」

ゴゴ ゴ ゴゴ ゴ

暗黒騎士・竜騎士「」ゾクッ

暗黒騎士「さすが魔物の中でも実力がある者だ。凄い迫力を感じる」

竜騎士「べべべべ、別にビビってねーよ」

暗黒騎士「喋り方が普通に戻ってる」

竜騎士「Oh,Shit !!!」

2「遊びに来たというのなら、場所を間違えてしまったようね?」

2「私たちは暇ではないのよ。さっさと死ぬか、土に埋まってろ…」

団長「……おー、怖い怖い」

団長「それじゃあ本題に移ろうかね。おじさんも遊びで来たわけでもねーのよ」

1「……殺すぞ、人間」

1「我々は人間と慣れ合うつもりはない。劣等種めが!」

団長「黙れよ必要悪(笑)」

1「」プッツン

竜騎士「うぇ、うぇーい……うぇーい!」

暗黒騎士「空気変えようとしているのなら、もう遅いかと」


1『ンダラァーーーーーーーーーーーーッッッ!!!』ゴゴゴゴゴゴ


暗黒騎士「伯父上、危険だ。敵は俺たちの力を凌駕している」

団長「はぁ、騎士団の身でありながら、弱きさねぇ……」

団長「大丈夫。おじさん人間最強代表選手だから」

1は纏っていたローブを乱暴に脱ぎ捨てて、その強靭で凶悪な筋肉質の体で団長へ突撃した!

2「怒らせたのはお前たちよ。ご愁傷様ね」

団長「さぁ、そいつはどうかね〜〜〜……!」
858 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:26:23.15 ID:OdLv7Zpp0
1の身体が団長に当たる寸前、団長から光の波動が発せられる!
波動を浴びた1は成す術なく吹き飛ぶ!

1「!?」

竜騎士「Yeah! ダンチョーチョーイカすYO-HO!」

1「魔法か、小癪な―――!」

団長「いいや違うね。魔法なんて穢れた技と一緒にしてくれるな」

団長「お前らがどれだけ僕に仕掛けてこようが構わないが、何度やっても同じ結果だぜ」

2「あら、大した自信だわ事」

1『舐めるなアァ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ』

暗黒騎士「叔父上…」

団長「いい、下っていなさい。出る幕じゃあないよ」

団長は懐からタリスマンを取り出し、掲げた。

1「……はうっ!?」

突然、1は胸を押さえて片膝をついてしまった! 苦しんでいる!

暗黒騎士「……確かに。俺の出る幕ではなかったか」

竜騎士「これでエンドね」

2「私が後ろに控えている事を忘れては困るわ」

団長「言っているだろ、何してもいいが結果は同じだと。見えているんだよ〜…僕の勝ちがさ」

団長(抵抗が激しいな……。こりゃあ流石の僕でもギリギリきついかもねぇ……)

2「……あ、そ」

2「それじゃあ話を聞きましょうか? 悪いけどお茶は出さないから」

竜騎士「コークプリーズ」

2「げっとあうと!」

竜騎士「!?」

暗黒騎士「……どうやら大人しく話を聞いてくれるようだ。伯父上」

団長「それなら、そこの魔物を開放してやるけどぉ。またいきなり襲いかかって来ないでよ?」

1「や、約束してやろうじゃないかぁ……ッ!!?」グググ

竜騎士「ヘイヘーイwww 態度が全然なってないヨーwww」

1「そのウザいのをどっかにやれ!!!」

団長「あ、ああ…そうねぇ…」

竜騎士「嫌やぁっ! やめてー!」
859 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:28:01.99 ID:OdLv7Zpp0
2「それで、話って何よ?」

団長「面白い話だよ」

2「下らない話が喋られないのを祈ってるわ」

暗黒騎士「悪魔でも態度を改める気はないという事か。屑め」

暗黒騎士「伯父上、やはり魔物如きに協力させるのは」

団長「おじさんの言った事に反論するつもりかぁ? 可愛くないね」

暗黒騎士「はぅ!?」

1「……貴様、今協力と聞こえたぞ」

1「まさか我らに協力を頼む気でいたのか!? フーハッハッハァーッ!!」

1「ふざけるなぁっ!?」ドンッ

竜騎士「デスヨネー」

団長「言うのは話を聞いた後にしてくれよ。なぁに、そっちにとっても悪い話じゃあない」

1・2「……」

団長「小耳に挟んだんだがね、そっちさんも世界樹を切りたがっていると聞いたんだ」

1「だから、どこでそういう情報を!!」

団長「話を遮るな〜〜〜、続けるぞ」

団長「僕らもね、世界樹を切ってしまいたいと思ってるわけよ。目的は一致している」

2「だから協力して欲しいって? 馬鹿げてるわ」

団長「まぁまぁまぁ〜、悪くないとは思うんだがねぇ。協力し合えば早く切り落とせるよ?」

竜騎士「……ダンチョーてば、そんな事しようとしてたン?」

暗黒騎士「……俺も初耳だ」

2「ふん、魔物と人間の協力ね。初めてだわ、そんなの」

団長「いいキッカケになれると思うね、僕は」

団長「話はそれだけさ」

1「……その程度で我々に協力を頼むのか」

1「くだらん! やめやめ! この話は終わりだ!」

1「大体、世界樹が切れたら貴様ら劣等種が困るだけだぞ。そっちに何のメリットが残る?」

暗黒騎士「えっ」

団長「……」ニヤリ
860 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:28:58.35 ID:OdLv7Zpp0
その頃、のどかな村では激しい戦闘が行われていた。


しかし、それはなんとも一方的な、酷い有り様。

3「  」ぐったり

傭兵「……じょ、冗談じゃあねぇよ」

傭兵「俺たちがあんな化物に敵うわけがな――――――」

女戦士「傭兵殿っ」

Mk-UD『ぎょいーん・・・ぎょいーん・・・』

圧倒的スピード! ナンバーズは防御を捨てた事により、更なる機動力を得た!

元々の攻撃力の高さも重ね、それはもう手に付けられないモンスターマシンへと変貌してしまったのだ!

賢者「って、もうコイツ魔物じゃなくね!?」

賢者「……まぁ、結果オーライよね〜。どうするおばさん? タダでさえ押され気味だったのにサ」

賢者「もうボロボロじゃないの♪」

女戦士「……」

既に女戦士の身体は傷塗れだ。しかしダメージはすぐに無かった事になる、アンデッドの効果が働く為に。
彼女は剣を握り直し、余裕たっぷりで向かってくるナンバーズから目を離さない。

女戦士(仲間は2人やられ残るは私のみ。これで確固撃破は厳しくなったわけか)

女戦士(こうなると……魔物へ攻撃するのを諦め、指示を働いている賢者を討つべき。しかし)

賢者「私を狙ったって無駄だよおバカさぁん。だって私、あんたと同じアンデッドだも〜ん!」

女戦士「思考が読めるようになったのか」

賢者「うっさいわね! そこは今関係ないから。…とにかく今のあんたはアンデッド戦の対策は全くしていない」

賢者「……あれれぇ〜〜〜? これってさー? もうそっちの負けは確定的っつー事だよね〜。どうすんの?」

Mk-UD『見せて貰おうか。女戦士の性能とやらを!』

女戦士「性能か。私自身のものではないが、良い武器がある」

女戦士は新たに剣を持ち替えた。

その剣は全ての魔物に対する最悪の兵器であり、人間にとって最高の兵器。



賢者「うそぉ……!?」
861 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:30:06.87 ID:OdLv7Zpp0
賢者「ど、どうして」

賢者「どうしてあんたが勇者の剣持ってるわけぇ〜〜〜っ!!?」

女戦士「……」カチャリ

賢者「っ!」

女戦士(この剣は全ての゛魔物゛に仇名す物。アンデッドすら殺す剣だ)

女戦士(その毒の刃は内側からじわり、じわりと蝕み、最終的に死へ至らせる)

女戦士(切る事さえできれば、魔物は敗北する)

女戦士「さぁ、私の思考は読み終えたか?」

賢者「がぁ、こ、このっ〜〜〜……」

賢者「ナンバーズ! ぶっ殺しちゃえ!」

女戦士「……残念だが、私もキミと同じアンデッドでね」

女戦士「普通には殺せない」

Mk-UD『ですとろーい! ですとろーい!』

ナンバーズ3体が散開しつつ女戦士へ突撃する!

最初に見せた三位一体かつ、それぞれが仲間をカバーして攻撃を放つ!

賢者「いっけぇーーー! 必殺のジェットストリームアタックよ!」

女戦士は勇者の剣を下段の位置で構え、冷静にナンバーズの攻撃に対処した。

賢者(あ、アイツ! 手抜いてたとかじゃないよねぇ!? どうしてあんな業物隠し持ってたのよ〜〜〜!?)

賢者(とっておきの秘密兵器だから? ……ううん、私なら即効使うわ。だってアイツは村に被害を出さない様に気をつけ
ていたし)

賢者(……何か、別に理由があって使うのを控えていた?)

女戦士「どうした。機械人形の動きが鈍り始めたぞ」フッ

Mk-UD『です、です、ですとろ――――――』


Mk-U『ですとろいモード終了。ですとろいモード終了……』

ナンバーズは機動力を無理に底上げしたのが原因でオーバーヒートを起こしてしまった!

賢者「んにゃあああ〜〜〜ぁっ!?」
862 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:30:51.36 ID:OdLv7Zpp0
女戦士「動きが止まったようだが、このまま私がこれ等を切りつければ終わる」

賢者「……まだよ、まだ残り6体もいるんだから!」

女戦士「では束になってかかってきても構わない。私はかならず討ち倒す」

女戦士「死にたくなければ、この村から撤退しろ。今は見逃す」

賢者「か、完全に上から目線じゃん…頭きたぁ…」

女戦士「やる気かな。それならば手加減はしないよ」

女戦士は勇者の剣を賢者へ突きつけながらゆっくりと近づいた。

賢者「うっ……こ、来ないでよぉ……」

女戦士「哀れな娘だな、キミは。魔物にこき使われて終わってしまうのか」

女戦士「別の出会い方をしていればいい友達になれると信じてた」

賢者「ちょっと…もう終わりみたいな話始めないでよ…やめてよぉ…!」

賢者はその場にぺたん、と崩れた。涙をぼろぼろ流し、震えている。

賢者「まだ死にたくないのぉ! いっぱいする事あるんだから…やだぁっ!!」

賢者『お願いです許してくださいごめんなさいもうしませんすみませんすみませんッー!!!』

女戦士「……哀れだな」

女戦士は勇者の剣を振りかざし、賢者の首を刎ね――――――


賢者「こんなに謝っても許してくれないんだね」


女戦士「!?」

女戦士「……が、ぶぐ…げほっ…なにが!」

突然自身を襲う脱力感! 体の中が何か得体の知れない物によって、浄化されている!

女戦士「…………まさか」
863 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:32:42.76 ID:OdLv7Zpp0
女戦士「っ!」

体に力が入らない。耐えきれず、彼女は地面へバタリと倒れ込む。
女戦士は知らぬ間に回復されていた!

賢者「そ、回復魔法を唱えたわ。どう? アンデッドにとってこれって毒その物なんしょ?」

賢者「今の結構多めに癒してくれる回復魔法なんだけだサ、堪えたぁー?」

賢者「あーあ、謝って許してくれたら何もしなかったのになぁ。た・ぶ・ん」

女戦士(いつ呪文を唱えていた……私は確かにこの娘を追い込んで……)

女戦士(……何か、別の、関係のない言葉に重ねて呪文を唱えたとでもいうのか?)

賢者「察しがいいね〜…でも教えたげないヨ。これからくたばる奴にそんな事教えてもね」

賢者「やぁーっ、大変だった。おばさんの事だからうまーく回復させてくれないと思って。あんな凄い魔物まで連れてき
たんだから」

女戦士「してやられたよ……」

賢者「えへへっ、完璧油断してたっしょ♪」


賢者「この、バアアアァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜カァッッッ!!!」


賢者は倒れた女戦士を片足でぐりぐり踏み潰し、高笑いしている。

女戦士「……」

賢者「なにっwww諦めちゃった?wwwwwwちょーウケるんですけどwwwwwwwwww」

賢者「おら、何か喋ってみろよ!! 何でもいいわよぉ!? 私に許しを請うのもいいんじゃなぁ〜〜〜いのぉぉぉ!?」

賢者「あぎゃーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

女戦士「……」

賢者「チッ、だんまりかよ。つまんねーおばさん」

賢者「……1つだけ、最後に答えてほしい質問があんたにあるわ」

女戦士「1つでいいのか?」ニヤリ

賢者「……チッ!」

賢者は女戦士を蹴り飛ばした!

女戦士「うっ」

賢者「茶化してんなよッ! 余計な事喋るなァッ」

賢者「……その勇者の剣、どうしてあんたが持ってるのよ?」

女戦士「……」
864 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:33:45.71 ID:OdLv7Zpp0
賢者「あんたは前に勇者くんにその剣を渡してたわ。私は確かに見た」

賢者「それで、その剣は最終的に私が三魔官へくれてやった……」

賢者「つまり私の言いたい事はもうわかるよネ?」

女戦士「さぁね」

賢者は回復の呪文を唱えた!

女戦士「あぐっぁ、ぅ!?」ガクガク

賢者「てめー…いい加減にしろよ」

賢者「答えてよ。その勇者の剣は三魔官から貰ったのか、それとも奪い返したのか」

女戦士「いいや、どちらでもないな」

賢者「は?」

女戦士「その剣はある方から私が受け取った品だよ。キミたちに与えた物とは違う」

女戦士「いや、同じかな。ふふっ」

賢者「……あんたが言ってること、マジならさぁ?」

賢者「勇者の剣は二つ存在するってーことになるわ! そんなわけないでしょ! これは!」

女戦士「そう、伝説の武器。世界にたった一つの剣であるはず。だった」

賢者「だったぁ〜〜〜? 面倒ね! そういう引き延ばしいらねーんだよバカ!」

女戦士「そう急かすな、私も長話が好きな方らしい。歳を食ったな」

女戦士「――――――よし今だ」

賢者「!」


3「やれやれ死んだフリも中々大変だなあああああああぁぁぁぁーーーーーーッ!!」


3の攻撃! 跳びひざ蹴りが賢者へ炸裂した!

賢者「がぶばぐぁっ〜〜〜…………!?」

賢者は顔面に強烈な一撃を受け、地面に転がり悶絶している!

3「ふーっ……フン、貴様の敗因は余裕こいてそこのデクの棒を動かし忘れていた事だな」

女戦士「すまない。助かったよ」

3「俺は俺の物を守ってやったまでだぞ。礼などいらん! 気色悪い!」

女戦士「ふふっ、そうか」

賢者「ぐ、ぐふぅ…………どうして……!」ジタバタ
865 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:35:37.38 ID:OdLv7Zpp0
3「それで、それが伝説の勇者の剣のようなもの……」

女戦士「その言い方は当たりだな」

3「何だと?」

女戦士は再び勇者の剣を賢者へ突きつけた。

女戦士「次は遅れを取るつもりはない。どうする」

賢者「あっ……くぅ〜〜〜……!」

賢者「ドロンします! ドロロ〜ン!!」

3「ドロンだと!?」

賢者「カモン、ナンバーズ! 全員集合〜〜〜!」

賢者がそう叫ぶと、空から残り6体のナンバーズが降り立ち、光線を滅茶苦茶に発射し始める!

女戦士「なっ……よせ! 村をこれ以上―――」

3「バカ者め、そこは危険だ!」

3は女戦士を抱えて光線を回避した。


「あっはははははぁ〜〜〜!!! 今日の所はこれぐらいにしてやるわよ!」

「次はないと思いなさいよ! この、バーカッ」


光線攻撃が止み、辺りの黒煙が晴れるとそこに賢者とナンバーズの姿は無かった。
女戦士たちは賢者をなんとか退けた!

女戦士「あの娘、とんでもない事をしていく……」

3「村などまた立て直せばいいだろう。気にするな」

3「しかし、その勇者の剣はマジ物か? なぜ貴様が手にする事ができた」

女戦士「……本来、これは誰にでも扱える武器だよ。魔物だけに致命傷を負わせられるだけでね」

女戦士「だがこの剣は勇者の剣であり、勇者の剣ではない」

3「バチモンでっか?」

女戦士「そうだな、詳しい話は後にしよう。傭兵殿が怪我をしている。それに村の者たちを呼んで来なければね」

3「お、おう」

3(この女、一体本当に何者なんだろうか)
866 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/19(日) 02:37:03.31 ID:OdLv7Zpp0
力尽きた。今日はここまでにしておいてやるぜ・・・
長々と書けなくてごめんなさい。明日からは通常運行に戻れるかと
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 03:28:25.62 ID:lnSlfYLZ0
乙かれ
竜騎士さんはやっぱりルー大柴なんだな
魔王ちゃんたちの方も気になる…
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 08:03:48.02 ID:GyZ0ff9IO
おつ
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/19(日) 10:08:26.26 ID:trBkjw2Co
重騎士たちは世界樹切りに行ったのか
870 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:08:41.96 ID:NKCEPOY40
霧で満ちた森


戦士「やれやれ、どうやら予想通りみたいっスね」

僧侶「ここがもう1つの世界ですか……霧で前がよく見えない」

女魔王「以前船の上で見たような霧ね。ということは、あの時も余たちはこちら側に来ていたというわけか」

僧侶「言われてみるとそう思えられますね。あの時は海の上でしたが」

魔女「どーでもいいけど、何だかここにいると気分が陰鬱になりそうですわね」

魔女「特にこの妙な霧のせいで」

女魔王「ふん、軟弱者じゃのう! 余はなんとも無いであるわよ」

魔女「あなたと一緒で私は頑丈じゃないの。非力で可愛いんですわ」

僧侶「ん?」キョトン

魔女「……げほんっ、げほんっ!」

女魔王「それより戦士よ。この場所に見覚えはある?」

戦士「見覚え〜……いやぁ、どこも同じ景色みたいなもんスからねぇ」

戦士「あるような、ないような?」

女魔王「ハッキリせい阿呆!」

戦士「え、えっとー 大丈夫っス! とりあえず世界樹を目指せばOKっス!」

魔女「それ、どうOKなのよぅ」

僧侶「世界樹とは前に戦士さんがお話していた物の事ですよね?」

戦士「ああ、でっかーい木だよ。見たらきっと驚くぜ」

魔女「世界樹ねぇ……」

女魔王「どうした非力な阿呆よ」

魔女「呼ぶのなら天才美少女魔女っ娘ちゃんになさいな」

魔女「世界樹って何かの本を読んで、見た覚えがあるんですわ」

僧侶「本当ですか? ちなみに内容の方を覚えていたら…」

魔女「いや、覚えてねーですわ。私! こう見えても自分が興味を持ったものしか記憶しない人なの! 天才的に」

戦士「天才じゃなくても大抵そんなじゃね?」
871 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:09:46.30 ID:NKCEPOY40
女魔王「忘れるぐらいどうでもいいなら気にするなであるわ」

魔女「まぁ、そうよねぇ」

僧侶・戦士「えー……」

僧侶「もしかしたら、大事な事を読んだかもしれませんよ? 何か少しでも記憶にあれば」

魔女「ん〜? んー……えっと〜……ああー……」

戦士「頑張れ天才、思い出せ」ポンポン

魔女「頭を叩くなぁーーー!! 気が散るですわよぉっ」

魔女「あっ」

女魔王「おお、戦士に叩かれて頭がショートを起こしたか」

戦士「俺が原因っスか!?」

僧侶「魔女さん、もしかして思い出せましたか?」

魔女「……世界樹。ほとんどおとぎ話みたいな存在よ」

魔女「その大樹こそ、世界…ううん、星の記憶を全て保管記録しているというモノ」

僧侶「ほ、星の記憶。いきなり壮大なお話ですね…」

戦士「それってつまりどーいう事よ?」

魔女「そのままの意味ですわ。自然、生物、技術、活動……私たちが暮らすこの星の全てを世界樹は知り、記録している」

戦士「えっ!?」

女魔王「世界樹ー! 貴様! 見ているなッ!」

僧侶「詰まるところ神様のような存在と考えられますね。全知の神様です」

女魔王「ただの木如きが神だとォ〜? 実に馬鹿げておるわね!」

魔女「だから言いましたわ。ほとんどおとぎ話だって」

戦士「……だけどよ、世界樹は実際に存在するぜ? その全知の木なのかはわからんが」

僧侶「確か、エルフの少女からその木を世界樹だと教えられたのですよね」

戦士「少女〜…かは曖昧だけど、うん」

女魔王「では名前だけ真似たでかい木ではないのー。そんな、木があれば色々なところで放って置かれまいよ」

魔女「ですわよねぇ」

戦士「そう言われてもー……俺にもよくわからねぇっスよー……」

僧侶「まぁ、とにかく実物を目にしたらいいじゃないですか。どの道エルフさんに協力を頼むつもりでしたし」

戦士「あの子、元気かなぁ〜」

魔女「エルフはどんな子ですの?」

女魔王「耳が尖っている!」

戦士「正解!」

魔女「馬鹿でもわかりますわよ」
872 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:10:22.71 ID:NKCEPOY40
僧侶「それにしても酷い霧。魔女さんの言う通り、良い気分になれませんね」

戦士「なんか毒々しいっスよね、勇者殿」

女魔王「……」

戦士「勇者殿?」

僧侶「魔剣ちゃんをじっと見てますね。可哀想に、心配なんですよきっと…」

女魔王「魔剣が喋らないとモヤモヤするのだわ」

魔剣『―――――』

魔女「静かで助かるとか言い出すかと思ってたのに」

女魔王「もちろん、ウザくないのは良い。だが、落ち着かん」

戦士「そう考えると魔剣ちゃんって俺らにとって、もう無くてはならない子になってたのかもしれねーっス」

女魔王「それはない」

僧侶「ハッキリしませんね……」

僧侶「そういえば、王都騎士団の方々は今頃何をしているのでしょうか」

魔女「あいつらいまいち目的がわからねーですわ。それに」

戦士「ああ、どういう事かこっちの世界を知っている様子だったな」

戦士「一体ここで何を始めようってんだ?」

僧侶「秘密の特訓とかでしょうかね」

女魔王「バーベキュー」

戦士「お〜」

魔女「……妥当な所で考えれば」

魔女「世界樹が目的だったり?」

女魔王・戦士「まっさかー」
873 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:11:30.87 ID:NKCEPOY40
女魔王「貴様がアレはおとぎ話だと申したのよ。阿呆臭い」

戦士「でも、あいつらマヌケそうだったし、実はそういうの信じちゃってるとか」

魔女「お前らにそれを言われる騎士団が哀れに思えますわ…」

女魔王「ああァッ!?」

僧侶「まぁ、私たちには関係は無いでしょう。こちらは早く女勇者さんの救出を急ぐべ…き……」

魔女「どうしましたの?」

僧侶「あ、あれ……!」

僧侶が指を刺した先、そこには霧の中でもうっすらとわかる程の、巨大な木が一本聳え立っていた!

女魔王「でかっ」

魔女「アレが例の世界樹……?」

戦士「そう。ほーら、やっぱり驚いたなぁ!」

戦士「あそこまで行けば安全だ。もたもたしてると魔物が来る」

女魔王「マンイーターどもか」

戦士「ええ。……あれ、何で知ってるんスか」

女魔王「何となくである。そんな感じがしたのよ」

僧侶「またマンイーターですか、なんだか嫌な所で縁がある魔物です」

魔女「私はそんな魔物知らないけれど。もっとも、興味ないけれど」

戦士「人を騙して食べる凶悪凶暴な魔物だよ。数も馬鹿にならん」

僧侶「でも、私たちは以前にそのマンイーターの一匹と会話しました」

僧侶「その一匹は理性もあり、攻撃的でもありませんでしたよ?」

戦士「えっ」


〜〜〜

マンイーター『…企ミナドナイ。タダ、ソレヲ渡シテクレレバ』

魔剣『しつこいの嫌いだよ! 僕、お前やだ!』

マンイーター『ソレト少シ話ヲサセテクレナイカ』

マンイーター『自分ガ何者ナノカ、知リタクハナイカ』

魔剣『はぁ? 僕は僕だし。魔剣だし』

マンイーター『……ソウカ』

マンイーター『ソレノ気持チガ変ワル事ヲ祈リ、航海ヲ続ケヨウ』

〜〜〜


女魔王「……あやつはどうも魔剣を知っている感じであったな」

僧侶「勇者様? 突然何を」

女魔王「もしかすれば、この状態になりおった理由も分かるかも」

僧侶「あのー」

女魔王「喧しいわ僧侶ッ! 余の独り言の邪魔をするでないぞ!」

僧侶「えーっ!?」
874 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:12:38.93 ID:NKCEPOY40
世果樹の下


エルフ「来た」

妖精「どうしたのエルフ? 急に口開いたと思ったら、そんな」

世界樹へ寄り添ったいたエルフは立ち上がってその場を離れる。
そして世界樹を守る様に杖を構え、霧の向こうを静かに見つめた。

妖精「……世界樹に悪さをしに、誰か来たの?」

妖精は脅えながらエルフの肩元へひらひらと飛んでゆくと、彼女の後ろに隠れた。

妖精「最近は安心できていたのに。怖いよ、エルフ〜!」

エルフ「大丈夫。私、一人じゃないから」

エルフの横にいつかの合成魔獣、クラブマンがいた。

さらに、もう1人。

勇者「退けよ、カニー……! 俺様だけで十分なんだよ殻剥いて食っちまうぞオラ」

蟹男『ケツの青いガキめ、好い気になっているなよ。隙を見てその首叩切ってしまうぞ』

勇者「だーまれよぉ〜〜〜!! だいたい、俺は不死身……じゃないのか、もう」

エルフ「アンデッドはもう卒業しましたからね」

勇者「……これが普通の身体ってのも変な言い方だけどよぉ、俺は人間に戻れたんだよなw」

勇者「マジエルフちゃんには感謝wwwwwとにかく感謝wwwww」ヘイヘーイ

エルフ「君は感謝という言葉が好きだね」

エルフ「そろそろ、お話は打ち切りましょう」

蟹男『うむ』

霧の中から人影が一つ、二つ・・・王都騎士団の三人が現れた!

勇者「驚いた」

勇者「こーれはこれは、騎士様じゃないのwww こんな所に何の用だァ」

魔導騎士「……あの人ボクたちの事知ってるみたいだよ?」

騎士「私はあんな輩知らんぞ! 失せろ失せろっ」

勇者「な、にぃ!?」

蟹男『所詮貴様程度の男に勇者は似合わんということ』

勇者「うるせぇぞ!! 黙ってろボケェー!!」

エルフ「面白い」ぐいぐい

蟹男『主よ、何をなさっておられるのか……?』
875 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:13:29.54 ID:NKCEPOY40
重騎士「貴公らが何者かは問わん。ワシらはその先の物に用があるのだ」

妖精「エルフ〜! アイツらやっぱり!」

エルフ「うん」

騎士「重騎士殿よ、実のところ…我らは真の目的を聞かされていないのだが」

重騎士「……」

騎士「重騎士殿!」

魔導騎士「騎士くんを、無視、しないであげてください……!」

蟹男『主、彼奴等は見るところ連携が上手く取れていないように見える』

蟹男『ここはこのクラブマンに任せ、下がるといい』

勇者「でしゃばんな甲殻類! 俺がやんだよ!」

勇者「ぎゃああああああああ」蟹男『カニカニカニカニカニ』


重騎士「……コホン」

重騎士「単刀直入に言わせてもらおう。退け」

エルフ「お断りです」

妖精「そうだよ〜! あんた達は世界樹に近づいちゃダメなんだから!」

騎士「重騎士殿、私は理由を知りたい! 我らがこの任務をこなさなければならん理由は何だ!」

重騎士「若造は黙って従っていればよい、余計な口を挟むな」

魔導騎士「それって、なんか、おかしいと思います……!」

魔導騎士「ボクたちにも知る権利が」

重騎士「……」

重騎士「ワシは騎士団長から当任務の指揮権を頂いた。言う通りに動いてもらおうか」

騎士「ぐ、ぬ、ぬぁ〜!!!」

勇者「はぁ、仲間割れですかぁー? 面白いわぁwwwwwwwwwww」

エルフ「無駄に怒らせてはよくないよ」

勇者「だってよぉ〜wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

エルフ「どうしても、引き返してもらえないの?」

重騎士「意地がある。通せ」

エルフ「頑固」

エルフは雷の呪文を唱えた! 騎士たちの目の前に雷電が走る!

魔導騎士「すごい魔力の質です……!」
876 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:14:23.18 ID:NKCEPOY40
騎士「もう動いても構わぬか」

重騎士「ああ」

騎士は剣と手斧を両手に先陣を切った! すぐに蟹男が動き出し、強靭な鋏で攻撃を受け止める!

騎士「魔物如きがぁー……私を止める気か!?」

蟹男『退かぬのならば、その首チョッキンするまでよ』

2人が動き出したのを火種に戦闘が始まる!
エルフが魔法を唱えれば、魔導騎士がそれに対応した魔法を放ち、相殺!

その隙に重騎士は大槍を構えて世界樹組を蹴散らさんとばかりの特攻を仕掛けた!

勇者「〜〜〜〜〜〜!!」

勇者は火炎の呪文を唱えた! 重騎士目掛けて火球が発射される!

重騎士「それしきの魔法でワシを止められると思うなっ」

火球は重騎士が身につける鎧にいとも簡単に弾かれてしまった!

勇者「あぁー!?」

エルフ「カバーします」

エルフは氷の呪文を唱えた! 重騎士の手前に巨大な氷塊が落とされる!

重騎士「むぅ!」

勢い余って氷塊に大槍が突き刺さり、重騎士の特攻を見事阻止できた!

エルフ「魔法というのは使いよう。覚えましょう」

勇者「畜生ッ、はい!!」

魔導騎士「ボクを忘れてないよね。〜〜〜〜〜〜!」

魔導騎士は土の呪文を唱えた! 地面がぐらぐらと激しく揺れる!

騎士「おぅふ!? ば、馬鹿者めッ!! 味方まで巻き込んでどういうつもりなのだ!?」

魔導騎士「ああっ、ご、ごめんなさい……!」

蟹男『隙ありでござる』

騎士「!」

蟹男の右腕が一気に伸ばされ、騎士の鎧を大きく削ぐ!
さらに左腕鋏で騎士の兜を上から叩きつけた! 会心の一撃!

騎士「ぐぇ」

蟹男『容易い……!』
877 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:15:12.66 ID:NKCEPOY40
騎士は頭部に大きな衝撃を受けてフラついている!

蟹男『大口を叩くくせにその様とは。愚かな騎士殿よ』

止めの一撃を刺しに必殺技を放つ体制を取り始めた蟹男。しかし、

エルフ『殺してしまう事はないです。そのまま気を失わせて』

蟹男『ふむ、御意』

溜めていた力を抜き、フラついている騎士を小突いて地面に転倒させた。

騎士は気を失い、戦闘不能となった!

魔導騎士「きゃあ! 騎士くんーっ!?」

勇者「アイツもう沈んだぜ、おっさんw 騎士団ってのも大した事ないんじゃね」

重騎士「愚か者め、油断しおったな……」

エルフ「これ以上は続けても無駄。大人しく引いて」

重騎士「断るッッッ」

氷塊から無理矢理大槍を引き抜くと、槍を腰溜めに構えてエルフたち目掛けて槍の先端を向けた。

魔導騎士「重騎士さんっ!!」

蟹男『アレは』

重騎士「よもや、ここまでとは思わなんだ。一気に、世界樹ごと貴公らを吹き飛ばせてもらう」

重騎士「時間をあまり掛けるなと命じられているのでな……」

大槍が展開して、中から大砲のような砲口が現れた!

勇者「何じゃ…ありゃぁ…」

妖精「エルフ、エルフ! 魔法じゃないよ、人間が作った爆弾の兵器!」

妖精「あいつはあたしたちごと、世界樹を……!!」

エルフ「蟹さん」

蟹男『あい分かったッ!!』

蟹男は大砲を向けて無防備な重騎士へ一気に駆け寄る、が!

そこに魔導騎士の雷魔法! 蟹男へ落雷が落ちる!

蟹男『あばばばばばば……』ビリビリ

魔導騎士「邪魔はさせないから…!」

勇者「あの役立たずめっ」
878 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:15:52.08 ID:NKCEPOY40
勇者も続いて重騎士へ向かって行った!

勇者「エルフちゃんよォ〜〜〜!! 俺はあの老いぼれを殺るから、そっちはあの魔法使い殺れや!」

エルフ「任せます」

エルフはすぐに呪文を唱えようとしたが、

エルフ「もがっ」バッ

騎士「わ、私はまだ息絶えていないのだぁ……!」

騎士がいつのまにかにエルフの背後へ周り、彼女の口を塞いでしまった!

妖精「ず、ずるいよ〜〜〜!!」

騎士「これはズルではないッ、私は仲間の援護をしているだけなのだから」

エルフ「もがもがふー」ジタバタ

騎士「悪いが魔法は使わせんぞ! 今だ、魔導騎士ィッーーー!」

魔導騎士「騎士くん……すてき……///」

魔導騎士は氷の呪文(大)を唱えた! 勇者は重騎士を止めることもできず、カチコチに凍ってしまった。

勇者「  」カチコチ

妖精「え、え、エルフぅぅ〜〜〜〜〜〜っっっ!!?」

エルフ「もふー……」

騎士「これで我々の勝ちだぞ、重騎士殿!」

重騎士「いいや、これからだ……!!!」

重騎士の構える大砲から数十発の砲弾が連続射出された! 砲弾は世界樹へ!



どおおぉ〜〜〜んっ!!!



妖精「あ、ああっ……そんな……」

エルフ「……」
879 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:16:54.71 ID:NKCEPOY40
しゅ〜〜〜・・・


重騎士「むっ、やはりか」

なんと世界樹は折れるどころか、傷一つついていない!

妖精「エルフ、世界樹がぁ」

エルフ「ふぅ……とっても頑丈なんだ、世界樹って」

騎士「馬鹿な、重騎士殿の必殺の一撃を受けてすらアレだと」

騎士「手を抜いたわけでは!? というか何故あの木を狙ったのだ!」

蟹男『そこかよ』

重騎士(友の言う通りか。並大抵の攻撃では世界樹を破壊できん)

重騎士「あの大樹を壊す事ができるのは、やはり勇者の」ジロリ

勇者「……な、何だよじじいオラ!」←氷溶けた

重騎士「いいや、この男ではアレは手に余る。それに力がない」

勇者「あぁん!?」

魔導騎士「じゅ、重騎士さん。どうしたの」

重騎士「一度この場から引くぞ。例の少女が必要だ」

騎士「女の勇者の事だろうか? なぜ、そちらを優先しなかったのだ」

重騎士「ワシとしたことがな、少々自信を持ち過ぎていた様だ。調子に乗った」

エルフ「あなたたちが一体何を考えているのか私にはわからない」

エルフ「どうして世界樹を壊そうとしているの?」

重騎士「貴公らに答える必要はなかろうよ」

?「それじゃあ俺たちにはどうなんだ」

騎士「貴様らは……!」

女魔王「目の前にして見るとさらにでっけー…であるわね」

騎士「出たな! わが こうてきしゅ よ!」
880 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:17:49.29 ID:NKCEPOY40
僧侶「王国騎士団、やはり世界樹を狙って……」

戦士「ここで何をしていたんだ。何で世界樹を攻撃した!」

戦士「お前たちはこの木が無くなると大変な事になっちまうのを知らねーのか!」

魔導騎士「大変なこと……?」

騎士「……重騎士殿」

勇者「魔王、てめぇ〜〜〜……」

女魔王「は?」

勇者「魔王ゥッーーーーーーーーーーー!!!」

勇者は女魔王へ襲いかかった! しかし、やはり簡単に撃退された!


勇者「†」

女魔王「こやつは、確かアンデッドだった筈では。ていうか余が滅したはずよ」

エルフ「色々あって普通の人間へ戻れました」

エルフ「それより、この騎士の人たちはあなたの友達?」

戦士「いや……だけどすまない。俺がしっかりしていれば」

エルフ「ううん、大丈夫です。心配してくれていたんだね」

エルフ「」ぐいぐい

戦士「ん?」

魔女「その、エルフ……? は何してますの」

戦士「さぁ」

エルフ「えふぁほぉにみへはへんふぁ?(笑顔に見えませんか)」

戦士「お、おぉ……なるほど」

僧侶「この子…いえ、この方が戦士さんが話していたエルフさんでしょうか?」

戦士「ああ、俺の恩人みたいな。友達みたいな」

エルフ「よろしく」

妖精「お話してる場合じゃないよエルフぅー!」

エルフ「そうだった」
881 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:18:22.83 ID:NKCEPOY40
騎士「重騎士殿、いい加減にしろ。何故私たちに何も話さん?」

騎士「これは世界を平和へ導く為の任務ではなかったのか!」

重騎士「語弊があったな。正確には支配から逃れる為の任務」

魔導騎士「し、しはい?」

重騎士「そして、我が友の為の任務でもあるのだ」

騎士「団長殿のだと! あの男の私情で我々は動かされているというのか!」

重騎士「……」

騎士「な、何だと思っている…誇り高き我ら王国騎士団を、何だと思っているのだ!?」

魔導騎士「騎士くん落ち着いて…怒らないで…」ぎゅぅ

騎士「離せっ!! わ、私は…私は…!!」ガクッ

魔女「なーんか、あっちはあっちで大変そうですわよ?」

僧侶「みたいですね…」

エルフ「今回は落ち着けない状況でごめんなさい」

戦士「いや、キミが謝る事はないんだ。それに今回はこっちもヤバい」

戦士「仲間が一人、キミと同じエルフに攫われた!」

エルフ「私と同じエルフ?」

女魔王「貴様もエルフであろう。何か知っておるのではないかァ」

蟹男『お前たち気安く我が主に話かけるな』

エルフ「いいの。この人たちは大丈夫だから」

エルフ「それより、エルフというのは本当?」

僧侶「ええ。湯女と語っていた女の方なのですが」

妖精「!」

戦士「聞き覚えは?」

エルフ「ないです」
882 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:19:13.96 ID:NKCEPOY40
魔女「それにしてもこれが世界樹ねぇ…」

女魔王「なぁ、蹴ってもよいー?」

僧侶「罰が当たりますよ! とんでもないっ」

女魔王「え〜〜〜っ」

魔女「本当に星の記憶を記録しているのかしら、こんな木が」

エルフ「たぶん」

魔女「え゛っ」

エルフ「世界樹は何もかもを、全てを知ってます。だから゛世界゛樹」

エルフ「そして、世界の均衡を司ってもいます。はい」

戦士「そんなに凄い木だったのね……」

魔女「し、信じられませんわよ、そんなの。何の確証を持ってそう言えますの!」

エルフ「そう言われても」

僧侶「無理に聞いてはエルフさんが困るだけですよ、魔女さん」

魔女「だって!」

妖精「エルフの言っている事だけじゃない。世界樹はあなたたち人間にも、魔物にも必要なもの」

女魔王「何だこのちっこいの」

戦士「おぉ、勇者殿は妖精が見えるんだぁ!! ピュアだなー!!」

女魔王「あ?」

僧侶「あの、必要なものだというのは……」

妖精「魔法」

妖精「みんなが普通に使っている魔法。それは世界樹があるからこそ使えるの」

魔女「!?」

妖精「火炎の記憶、氷の記憶、雷の記憶…あなたたちは体内の魔力を世界樹へ渡す事で、その記憶のちょっぴりを貸して
もらえるの」

妖精「記憶は力。だから何もない所へ火を起こせる力を、それで初めて手にできる」

エルフ「……妖精?」

妖精「呪文は世界樹の記録の中へアクセスする為のパスワード」

「……」
883 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:19:50.80 ID:NKCEPOY40
魔女「で、出鱈目おっしゃい……」

魔女「それなら詠唱なしで魔法を扱えられるのは何!? どういう事よ!?」

妖精「パスワード(呪文)を自分の中で自動的に刻み込んでいて、意識するだけで世界樹へアクセスできるからだよ」

妖精「あとは通常通り魔力を世界樹へ渡して、記憶を借りる。それだけです」

魔女「えっ…え……」

僧侶「ま、魔女さん…大丈夫ですか」

エルフ「あなたも大丈夫?」

妖精「」

エルフ「いつもと、様子がおかしいよ」

戦士「何かよく分からない話だが……ゆ、勇者殿?」

女魔王「世界樹へ蓄積された魔力はどうなる」

戦士「へ?」

女魔王「そこのちっこいの。答えよ」

妖精「はい。世界樹の中に溜まった魔力は全て―――さまが魔法を扱う際に消費される」

妖精「その際に消費された魔力は、完全に消滅しちゃいます」

僧侶「……どなたと、今言いましたか?」

エルフ「今日は妖精がなんだか変です」

妖精「―――さまは世界樹とリンクしている。だから、―――さまは世界樹そのもの」

妖精「―――さまはこの星の真の支配者。みんなあの方の子ども」

妖精「みんな、―――さまを大事にしましょー」

妖精「  」ガクッ

妖精はよくわからない事を一方的に話して、気を失ってしまった。

戦士「お、おい」

エルフ「大丈夫。気絶してしまっただけだよ」

魔女「……」ブルブルブル
884 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:22:42.74 ID:NKCEPOY40
魔女「私は、今の信じませんわよ……」

魔女「だって、そんな……」

女魔王「貴様は何ショック受けておるのよ? 意味不明だわ」

僧侶「勇者様っ」

戦士「それよりこの子、何さまって言ってた? 聞き取りづらかったんだけど」

僧侶「私もです。エルフさんは?」

エルフ「」フルフル

僧侶「……謎ですね」

蟹男『主よ、先程攻めてきた騎士どもがこう話していたな。支配から逃れる、と』

蟹男『あの者どもはその何かの支配から逃れる為に、支配者の影である世界樹を狙ったのでは?』

エルフ「支配から、逃れる」ちら

エルフは呟くと重騎士たちを見つめた。

重騎士「……そうだ。世界樹を断つことができれば、あの女は死ぬ」

女魔王「女だと?」

重騎士「そう、勇者に魔王、そして我が友を騙し弄んだ悪女」

重騎士「神様だ」

「はぁ?」

重騎士「神様だ」

戦士「二回も言わんでいいって」

女魔王「神とは、僧侶よ。貴様が信仰しておる神のことか」

僧侶「わ、わかりません…そもそも私たちの世界の宗教は一神教な筈」

僧侶「神様と言われれば、我が主しか……」

魔女「じゃあ何よ、この木は! 世界樹は神様だっていうの!?」

魔女「私は神様の手の中で転がされていた愚かな魔法使いだっていうの!」

重騎士「転がされているのは皆だ。ワシらも同じなのだ」

重騎士「疑問に思わんか? 我々は通常生まれて死にゆく生物」

重騎士「どの様な死に方であろうと、それは運命だ。だが、現状は」

僧侶「魔法一つで傷も癒せて、蘇生もできます…」

戦士「でも、今はそれが普通だぜ。むしろ戦って死ぬ事も少なくなった」

重騎士「ああ、魔物と戦おうが被害が少なくなった」

僧侶「それの何が悪いというのでしょうか…?」

重騎士「……気づかんか、若いな」

重騎士「そもそも我々人間と魔物が争うようになったのは何故だと思う?」

戦士「……お、おいおい」

女魔王「その神とやらが引き起こしたとでも申すつもりはないわよねェ?」

重騎士「そうだ」

「えー……」
885 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:23:50.78 ID:NKCEPOY40
重騎士「奴は世界を自分の考えるがまま、思うがままにコントロールし」

重騎士「奴にとって理想の世界を築こうと企んでいるのだ」

女魔王「ああァッ!? ふざけておるのかッ!」

僧侶「か、神はその様な勝手な方ではありません……たぶん」

重騎士「……信じぬのは勝手だ。それより」

エルフ「?」

重騎士「貴公らへ世界樹を守れと命じた女。その顔を覚えてはいないか」

エルフ「たぶん」

エルフ「私と同じ、エルフです」

「!」

魔女「それってまさかウチの脳筋女攫っていったのと同じだとかじゃありませんわよねぇ?」

戦士「いやいや、流石に…」

重騎士「その攫われたというのは、勇者か?」

戦士「あんたらにそこまで言う義理もねーよ」

重騎士「ふん、大概予想はつくわ。聞かんでも分かる」

僧侶「……どうして貴方はそこまでの事をご存じなのですか」

僧侶「少し、詳しすぎますよ」

騎士「…………そうだ。団長殿も重騎士殿も、私に隠して何故そんな事を…」

重騎士「呆れたというのなら騎士団を抜けても構わん。これから先も、ワシは友の為に動くぞ」

騎士「ぐぅっ!」

魔導騎士「ど、どうしよう……」

女魔王「ウジウジとキモい奴らよ! 失せろ失せろ!」

騎士「こ、こうてきしゅ ……!」

女魔王「どうでもよい話はここまでだわ。これ以上聞いても無意味」

女魔王「そもそも、それを知りに来たのが目的ではあるまいよ?」

戦士「うっす! その通りっス!」
886 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:24:28.80 ID:NKCEPOY40
重騎士「……どうだ、ワシらに手を貸す気はないか?」

重騎士「ここまで話したのだ。貴公らも考えを改める事だろう」

女魔王「勘違いするなよ、老いぼれじじいィ〜…!」

女魔王「余は勇者なのよ! 目的は魔王を討つだけなのッ!」

女魔王「それ以外はアウトオブ眼中」

重騎士「そ、そう……」

魔女「あの勇者もブレないですわよねー」

僧侶「ええ、いつも変な所だけ真っ直ぐなんです」

女魔王「おう、そこのエルフよ。貴様はこの地に詳しいと聞いたわよ」

女魔王「だから早くあの糞女のところへ案内するのであるわ」

エルフ「糞女?」

戦士「もう1人のエルフの女の事。女勇者ちゃんが攫われたって言ったでしょ?」

戦士「俺らこれから救出に向かうわけよ」

エルフ「なるほど」

魔女「……本当にわかりましたの?」

重騎士「ワシもその勇者に用がある。手を貸―――」

女魔王「嫌だよ。気色悪い…」

重騎士「えー……」

女魔王「どうせ恩を売って余に貴様らの手伝いをさせる魂胆であろう? 厚かましいわボケッ」

重騎士「そ、その様なつもりは」

女魔王「知らん! もう貴様の長話は聞き飽きたのよ!」

エルフ「私も」

重騎士「ええぇー……」
887 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:26:02.80 ID:NKCEPOY40
戦士「何とか位置わかりそう?」

エルフ「わかりません」

戦士「あー、やっぱし…」

エルフ「でも力は貸す事はできるよ。あなたには何度も助けてもらったから」

エルフ「恩返しがしたいです」

蟹男『あ、主よ……』

僧侶「なんて良い子…いいえ、良い人!」

魔女「恩を返すのはいいけれど。私たちは女がいる場所を知りたいのよ?」

魔女「わからなければ、どうしようもありませんわ」

戦士「まぁな」

女魔王「……さっそく役に立ちそうにもないというわけね!」

女魔王「やっぱり戦士の言う事なぞ当てにするものではないわッ」

戦士「酷いっスよぉ!!」

エルフ「役に…」

エルフ「それじゃあこうしましょう。役に立つかわからないけれども」

女魔王「あァ?」

エルフ「貴方にかかっている呪いを解く」

女魔王「…………何と?」

エルフ「解呪を」

女魔王「おぉ?」

エルフ「だから私が貴方の解呪を」

女魔王「おぉーッッ!!?」

女魔王「貴様、真に余にかかった呪いを解く事ができるのッ!?」

エルフ「楽勝です」

女魔王「おおぉォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」

僧侶「ま、まさかこんな形で勇者様の呪いが…」

戦士「勇者殿男性化きたぁーーー!?」ウキウキ

女魔王「よ、余は貴様が気に入ったぞ…褒めてやる! さぁ、さっさと呪いを解け!」

エルフ「ちょっとだけ待っててくれると助かります」

女魔王「うへ、うへへへへ……!!!!」




重騎士「……ワシらは先に動いているか」

魔導騎士「そういえば、アレどうするのかな」

勇者「†」
888 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/20(月) 03:28:57.02 ID:NKCEPOY40
ここまでー
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/20(月) 03:30:37.26 ID:Lo0GnO/vo
乙!
ついでに魔王様の魔法器官も
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/20(月) 03:40:14.59 ID:Rc2UY7kG0
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 04:34:52.30 ID:IPg2dAYM0
魔王ちゃん遂に男なるんですかー!
戦士歓喜じゃないか!
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 08:38:44.81 ID:k62kd0PIO
魔法解禁かー
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 01:41:19.99 ID:ZNdEZ2530
ラスボスが見えてきたな・・・wktk
894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 03:26:12.36 ID:dBLLsagDO
別に魔王の魔法って呪われて使えなくなってる訳じゃないから魔法解禁はまだだろ

戦士の性欲は解放されるかもしれんg……
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 03:51:41.57 ID:ocNyaTx90
エルフ敬語かわいい!乙う
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 12:17:56.87 ID:xThdzBMDO
これからが楽しみや乙
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 15:05:42.79 ID:HBjB+sPbo
ついに男に戻るのか!
寂しくなるな
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/08/22(水) 17:05:21.17 ID:NnMbmooSo
見た目は分からないけど口調も変わってるから違和感がすごそうだ
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 20:19:40.97 ID:5/RdGFyZo
やっと女に戻れるのか…もう忘れられてるかと思ってたぜ
900 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:44:29.00 ID:h0yRhG2s0
どこか知らないところ


女勇者「……」

湯女「そう身構える必要はありませんよ?」

湯女「だって、私はあなたのお母さん」

女勇者「いきなりすぎて信じられないよ!」

女勇者「どうして私のお母さんが突然出てくるの! 唐突すぎ!」

女勇者「……そりゃあ、母親なんて顔も見た事もないし、記憶にも無いけど」

女勇者「うう……」

湯女「あら、私があなたのお母さんでは嫌ですか? もっと美人が良かったの?」

女勇者「十分美人だよ!」

女勇者「そうじゃなくて!」

湯女「本当に面白い子。うふふ〜♪」ナデナデ

女勇者「や、やめてよっ……触らないで…」

湯女「今まで甘えられなかった分、私に甘えてくれていいのですよ」

湯女「父親だけでは満足できないものね。あー、髪の毛ふわふわぁ」ポンポン

女勇者「……///」

女勇者「聞きたい事があるの」

湯女「え?」

女勇者「どうしてこんな所に私を連れてきたんですか? どうして急に私の前に現れたの?」

女勇者「もしかして、裏があるとか」

湯女「裏ねぇ……そうねぇ……」

湯女「ぶっちゃけ、私はあなたをこれから消し去るつもりです♪」

女勇者「何ですとっ」
901 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:45:50.94 ID:h0yRhG2s0
女勇者は湯女からばっ、と離れた! とても警戒している。

湯女「そう怖がらなくてもいいのに。あなたの母親なのですよ?」

女勇者「母親だろうと何だろうと、娘を消そうとしている人は怖いよ!」

女勇者「どうしてあなたにそんな事されなくちゃいけないの……? よく分からないよ」

湯女「ああんっ、そんな小動物の様な脅える眼差しで見ないでくださぁい! もーっと可愛がりたくなっちゃう!」

女勇者「ひいぃ〜……」

湯女「消すのやめようかしらぁ? だって可愛らしいんですもん〜!」ぎゅう

女勇者「怖い怖い怖いぃ!!」ジタバタ

湯女「そんなにお母さんを怖がらないで〜♪ むちゅちゅー」チュッチュ

女勇者「ひぎゃあああぁ〜〜〜!?」

湯女「おっぱいはどれぐらい大きくなったのかしらね。触っていい?」

女勇者「やめろーっ!!」

女勇者「あんまりベタベタ触らないでよ! 気持ち悪いよぉ!」

湯女「……あら、反抗期。こうなったら意地でも調べてあげましょう。世界樹を使って!」

湯女は目を瞑って何かブツブツ唱え始めた。

女勇者「私のお母さんセクハラ魔人すぎるよ……!」

湯女「…………新情報? あれ、そんな。こんなタイミングで…馬鹿な」

女勇者「え?」

湯女は目を開くと、女勇者へ悲しそうな表情を見せた。

湯女「」うるうる

女勇者「え゛っ?」

女勇者「ど、どうしたの…急にそんな顔して…」

湯女「…………とても残念なお知らせです」

女勇者「う、うん……?」

湯女「あなたは私がお腹を痛めて産んだ子どもではない事が先程判明しました……」

女勇者「えぇー!?」
902 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:47:34.20 ID:h0yRhG2s0
湯女「世界樹の与えてくれる記憶の情報に間違いはありません。絶対の真実です」

湯女「でも、調子でも悪かったのかしらねぇ……今になって分かったの……」

湯女「私があなたにとっての母親である事は本当。でも、それは間接的なと言いますかぁ」

女勇者「え?」

女勇者「……つ、つまり私はあなたからじゃなくて、別の人から産んでもらったという事?」

女勇者「じゃあお母さんじゃなくない!? 何それっ」

湯女「いいえぇ、あなたは確かに私の力を引いた子です。私がお母さんよ〜」

女勇者「じゃあ私を産んだのは誰なのー!? 意味不明だよぉ!」

湯女は女勇者へ近づき、その手を取って自分の頬に当てた。

女勇者「ひぃ!」

湯女「……確かにあなたの中には、あの時与えた力の片割れが宿っている」スリスリ

女勇者「ひぃぃ〜! そのスリスリやめてぇ! 何か怖い!」

湯女「でも、その力は元のモノとは比べものにならないぐらい弱い」

湯女「弱ったわけではない。これは元の力を複製し生まれた偽りの力」

湯女「…それでも、あなたは私の子ども。女神の子である事に変わりはありません」

湯女「勇者と女神のハーフ。素敵ねぇ〜♪」

女勇者「あ、あのぉ! あなたが何言ってるか私にはさっぱり分かりません!!」

湯女「……でも、本物のあなたは一体どこにいるのかしら?」

女勇者「えっ」

湯女「本物のあなた。私がお腹を痛めて産んだ子。そして、あなたを生み出した子」

女勇者「わ、私を生んだぁ……? ダメ、もう意味分からなすぎて爆発しそう……」

湯女「気づいていないのも当然ですよねぇ」

湯女「あなたは本物の女勇者のコピー。複製人間という事ですよー」

女勇者「もう意味わからないよぉっ!!」ドカーン
903 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:49:03.14 ID:h0yRhG2s0
湯女「大丈夫ですかぁ? そうだ、お母さんが膝枕してあげるから横になりなさい?」

女勇者「嫌だよー!」

湯女「もう、素直じゃないのだから」しゅん

湯女「それにしても、自分自身をコピーする技を身に付けるなんて」

湯女「やっぱり子は親に似るのね♪ 天才〜♪」

湯女「……コピーの方には色々問題がありそうだけれど」チラ

女勇者「馬鹿にされてるという事だけはわかる……」

女勇者「頭が変になりそうだよ…私って一体何なの…?」

湯女「だから複製人間」

女勇者「それがまずわからないのっ!」

湯女「物分かりが悪い子ですねぇ。でも、少し頭が弱い方が可愛気があっていいわ♪」

女勇者「〜〜〜……」

湯女「少しお話しましょうか。本物のあなた、そしてその兄弟たちの事を」

女勇者「なんか始まった……」

湯女「知っての通り、本物の女勇者は私と勇者の間に授かった子」

女勇者(お父さんはどうしてこんな変な人と……見た目? 巨乳?)

湯女「うふふ、勇者は女性経験少なかったから。落とすのは簡単でしたぁ」

女勇者「はぁ!?」

湯女「でも面白い人でしたよ。だから選んだの」

湯女「苦労したのですよ? あやうくアッチの道へ走りかけていた所を何とか止めたりして」

女勇者(おとう、さん……?)

湯女「ふふ、まぁそんな話はどうでもいいわよね」

女勇者「できればそれ以上は聞きたくない……」

湯女「私の過激で卓越したテクニックで勇者は―――」

女勇者「やめてぇっ///」
904 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:50:29.88 ID:h0yRhG2s0
湯女「本当に面白い子……さて、私は勇者以外とも関係を結んでいました。それも種族間を越えて」

女勇者「お、女の風上にも置けませんね!!」

湯女「あらぁ、優れた男を好くのは女としての性よ?」

湯女「あなたも同じ女の子なら、分かると思いますよぉ」

女勇者「……いいっ、分かりたくないよ!」

湯女「あらあら、うふふ〜♪」

湯女「そうねぇ…確か、一人は魔族の長である男。魔王」

女勇者「!?」

湯女「そして、もう1人は勇者と同じ人間。何処かの騎士様だったかしら」

湯女「合計3人! ね、そんなに多くないでしょう? 子ども作ったけれど」

女勇者「もう最低っ!! あなた大嫌いだよっ!!」

女勇者「どうしてそんな話聞かせるの!? 知りたくないよ!」

湯女「ああ、少し脱線しすぎちゃったかしらぁ……ごめんなさいね♪」

女勇者「ふん!」プイ

湯女「さて、生まれた子は3人。配偶者は違えど、血は繋がらない兄弟です」

湯女「私はその子たちにそれぞれ私が元々備えていた力を受け渡しました」

女勇者「……それがさっき言ってたコピーうんたら?」

湯女「はぁい」

湯女「一つは複製の力。この世に存在するありとあらゆるモノの相似物を作りだす力」

湯女「一つは消去の力。気に入らないモノをこの世から抹消し、なかった事にする力」

湯女「そして最後に復元の力。この世から消え去ってしまったモノを完全に戻す力」

女勇者「……ん?」

湯女「どれもこの世界を支配する者に相応しい力。いわば神の能力です」

女勇者「どうしてそんな力をあなたが持っているかは聞かないけど」

女勇者「何で子どもになんて渡しちゃったの?」

湯女「んー…あると便利すぎて面白味がなくなってしまうから?」

湯女「ほら、私の場合はアレなのよぉ。強くてニューゲーム?」

女勇者「はぁ(何言ってるんだろう。この人は)」
905 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:52:02.41 ID:h0yRhG2s0
湯女「ぶっちゃけ理由は適当です♪ そうする事で何か面白い事が起きるかもと思って」

湯女「はぁ、でもそれが大間違い。最近は私や世界樹を狙う人たちも増えてきましてぇ…」

女勇者「……つまりは力(子ども)を誰かに悪用される前にどうにかしようと?」

湯女「そゆこと♪」

女勇者「そんなの勝手すぎるよ! おかしい!」

湯女「どうして? 自分の身を守る事の何がおかしいの?」

湯女「お母さんには少し理解できないなぁー……」

女勇者「狂ってる! キチガイ!」

湯女「まっ、親に向かってそんな酷い言葉! お尻を出しなさい!」

女勇者「変態! 近寄らないでっ」

女勇者「あなたはおかしいよ……変だ……」

女勇者「もういいでしょ!? 私をみんなの所へ帰して!」

湯女「そんな悲しい事を言わないでぇ。もう少しだけお母さんとお話しましょうよ」

湯女「お母さん、これでも今凄く嬉しいし楽しいの。この時間がとても素敵に思える」

女勇者「冗談言わないでよ……殺そうとしてたくせに!」

女勇者「あなたの言う事全部信じられないです! 全部ウソなんだ!」

湯女「ウソじゃない」

女勇者「うるさぁい!! 最低だよ、もう嫌い!! 最悪だ!! こんなに人を嫌いになったのは初めてだよ……っ」

女勇者「……こんなのお母さんでもなんでもない。知らない!」

湯女「ああっ……」

湯女「ねぇ、どうして酷いことばかり言うの……? お母さんをいじめているの……?」
906 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:54:44.05 ID:h0yRhG2s0
湯女「私はあなたをこんなにも愛しているのに……。どうして受け入れてくれないの……?」

湯女の様子がどこかおかしい。女勇者はさらに警戒を強めた。

女勇者(こうなったら自力で逃げ出してやる。一秒でも早くみんなの所へ)

湯女「寂しい、寂しいよぉ……怖い、怖い、寂しいのは怖い〜……」

女勇者「うう……」

女勇者(い、今のうちに逃げるべきなのに。気になってしょうがないよ、こんな女なんかにどうして!)

女勇者「あ、あのぉー……そのうち良い事あるよ! だから元気だ―――」


湯女「私を拒絶するあなたは許さないです」


女勇者「へ?」

湯女「よーし、粉みじんになって死んでもらいまーす!」

女勇者「!?」

湯女「死体は海に流しておいてあげるわねぇ。それじゃあ〜〜〜〜〜〜……」

湯女は呪文を唱えだした。強力な一撃の予感!

女勇者「ちょちょちょーっ!?」

湯女「〜〜〜〜〜〜……」

女勇者「ごめんなさいウソです! 嫌いとか言ってごめんなさい! 好き! ラブ! 愛してるぅ〜!」

湯女「〜〜〜〜〜〜……」

詠唱は止まらない!

女勇者「いやぁああああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!?」

湯女「死んで償え」

湯女は天体魔法(大)を唱え―――――。


?「今、積もり積もった貴様への恨みッ! 晴らさせてもらうぞーーーッ!!!」


湯女「えっ!?」

魔法が発動されようとするその瞬間、一つの黒い影が湯女へ猛スピードで突っ込んだ!

女勇者「あ……ああぁ〜〜〜〜〜〜!?」

魔王「憤怒ゥァッーーー!!!」

勢いの乗った魔王の跳び蹴りが湯女の顔面へ! 魔王の攻撃!


湯女「…ぶがばぁっ―――――――ぁ!!」


湯女は攻撃を咄嗟に防ぐ事もできず、強烈な一撃をその頬へ受けてしまった!
大きく後方へぶっ飛ぶッ!!

湯女「………………ぐ、ぐぅ!?」シュ〜…

女勇者「ゆ、勇者さん。どうしてここに…ていうか、その姿」

魔王「ふーんッ、ようやく清々したわ!」
907 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/23(木) 23:57:35.97 ID:h0yRhG2s0
以上、後半へ続く 4〜6時あたり予定?
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/08/23(木) 23:58:14.66 ID:HfLzOF4Ao
魔王キター!
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/24(金) 00:06:09.63 ID:PMLpGJqdo

魔王戻ったー!
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 00:09:02.27 ID:P1ENuZSko
ようやく魔王が戻ったー
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 00:10:55.24 ID:oid/iThp0
なんて男女平等・・・さすが魔王さんや!
つーか、勇者と魔王穴兄弟なのかよwwwwww
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/24(金) 01:02:40.60 ID:931lw3h4o
魔王様ァーッ!
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 01:16:19.91 ID:P1ENuZSko
往年のダーク・シュナイダーの暴れっぷりを見ているかのようである
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 04:32:56.06 ID:LG4oLK2IO
魔王様がまるで勇者様みたいな登場のしかたするじゃないかwww
915 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:01:10.58 ID:twTCEuub0
少し前の時間 〜 in 世界樹の下


戦士「本当の本当に勇者殿の呪い解けるのか!?」

エルフ「ウソはつかないよ。信じて」

女魔王「信じるからはよォッーーー!!」

エルフ「もう、せっかちです」

僧侶「良かったですね! 勇者様ー!」

女魔王「うんうん!!」キャッキャ

蟹男『なんて異常な喜びようか……』

エルフ「お役に立てそうで何より」

魔女「解呪の魔法を知っていますの? アレは神官の上位の者にしか伝えられないのに」

魔女「……まさかとは思うけれど、世界樹の記憶からその魔法をこっそり引き出すとか」

エルフ「さっき妖精が言ってたけれど、元々魔法は世界樹の記憶から引き出して借りるもの」

エルフ「だから全ての魔法は」

魔女「あーあー! もう結構ですわ! そうですわねっ、世界樹様々ですわ!」

エルフ「それに私は世界樹の記憶をこっそり引き出せません」

戦士「何怒ってるんだよー?」

魔女「ふーんっ!」ツン

女魔王「おうコラァッ!! 余は焦らされるが嫌いであるわよ! 早くッ!」

女魔王「元の身体へ戻る事ができれば、元の最強の余へなるのだわよ! ふははははァ〜〜〜!!」

騎士「……さ、さいきょうだと」

騎士「私こそが最強なのだ!!」

重騎士「馬鹿な事を言っておらんで、ゆくぞ。次の目標は勇者だ」

魔導騎士「ば、ばかなことではないと思います……っ!」

騎士「そうだ! くっそぉ〜う……騎士を引退するのはまだ早いようだな!」

騎士「続けます! 騎士職! 私は王国騎士として こうてきしゅ と刃を交えたい!」

重騎士「……もう勝手にするがいい」

王国騎士団はどこかへ行ってしまった。
916 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:01:45.37 ID:twTCEuub0
エルフ「では、さっそく始めていこうか」

女魔王「うむッ!!」

エルフ「世界樹の近くに小さな池があるのはわかるね。まずはそこに浸かって」

ざぶーんっ!

女魔王「浸かったわよ! 解呪済んだかしら!?」

エルフ「まだ」

女魔王「ぐぬぬァァァ〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」イライラ

僧侶「ゆ、勇者様。少し落ち着きましょうね…」

戦士「そうっスよ〜。男チェンジまであと少しっス!」

魔女「あの池の水は……まさか」

エルフ「そう、聖水」

僧侶「聖水って自然に沸くものだったのですか!? 初めて知りましたよ」

魔女「ああ、そうか。あんたたちはあの時死んでいましたものねぇ」

魔女「そうですわ。聖水は魔法の町付近の森の中になる湖に沸いてますの。ていうかそれが聖水」

戦士「それを教会が汲み上げて使っていたってわけか」

魔女「教会のはきちんと純正化されてますわ。生の聖水じゃ効果は薄い」

僧侶「だから私たち神官が聖水をさらに清い物へ変えなければならないのですね…」

戦士「それはどうやって?」

僧侶「簡単ですよ。回復魔法を掛け続ける、それだけ」

戦士「あら簡単……まぁ、回復魔法使えない俺にとっちゃ難しいがよ」

魔女「それにしても、こんなところにも聖水が沸くだなんて」

エルフ「あなたたちが聖水と呼ぶあの水は、そもそも世界樹が流している樹液のようなものだよ」

僧侶「ええっ!」

魔女「……世界樹なんでもアリですわね」

戦士「てことは、世界樹がなくなったら聖水も取れなくなるわけねぇ。そうだろ?」

エルフ「そういうことかも」
917 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:02:19.83 ID:twTCEuub0
エルフ「とにかく、世界樹が無くなるという事は世界そのものを壊すという意味」

エルフ「だと思います」

魔女「思いますって。ハッキリとしないですわね!」

エルフ「本当のところは何も分からないの。世界樹は今まで枯れた前例がない」

戦士「それなら無くなったとしても、もしかして…って展開もあり得る?」

エルフ「わからないよ」

戦士「ん〜……まぁ、無くなるよりはあった方がいい木なんだろうな。エルフも今まで一生懸命守り抜いてきた木なんだ
し」

僧侶「そうだったんですか…。凄いです」

エルフ「誉められても困ってしまいます」

女魔王「ああああああああああァァァッッッーーーーーーーーー!!!」

魔女「……早いとこ解呪してあげた方が良さそうですわよ?」

僧侶「勇者様の怒りで聖水が煮えてしまいかねませんねっ」

エルフ「ふむ、温泉になるのもいいかもです」

戦士「いいんかい……」

女魔王「あと3秒で解呪せねばぶっ殺しに行くであるわよォーーーッ!!」

蟹男『あぁ!? 我が主にそんな事させるかボケェ!!』

エルフ「慌てなくても大丈夫。既に解呪は始まっているよ」

女魔王「……何ィ?」
918 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:03:18.87 ID:twTCEuub0
僧侶「まさか聖水に浸かっているだけで呪いは解けるのですか?」

エルフ「あれはちょっとした下準備。本番はこれから」

戦士「任せたぞ、エルフ! 勇者殿を漢にしてやってくれぇ!」

僧侶「少し意味が違って聞こえますね、それ」

エルフは池に近づくと、そのまま水の中へ入って行き魔王の元へゆっくり歩いて行く。

エルフ「……」じゃぶじゃぶ

蟹男『あ、主ぃ! せめて御召物を脱がれてから…かにかにぃ…』アタフタ

魔女「変態がまーた一人見つかりましたわね。これだから魔物は!」

戦士「ペロと仲良くできそうだよなぁ」

蟹男『やめろカスどもがッ!!』

僧侶「濡れても平気なのですか?」

戦士「まぁ、よく分からないし、後はあの子に任せようや。ぐふぅ、勇者殿ぉ〜……」

魔女「お前キモいですわよっ…おえぇ…」

戦士「吐くなよお前ぇー!! 勇者殿の元の姿を拝めるんだ! 喜びたくもなるだろうがっ」

僧侶「そういえば、魔女さんは初めて拝見する事になりますね。男の勇者様を」

魔女「ん〜……ボインの暴力女のイメージで固まってたのだけれど。違和感ありそうですわ」

戦士「勇者殿はなぁー! めっちゃカッコいいんだぜ! 最高だよ、惚れんなよ。俺の勇者殿なんだから」

僧侶「あ、あははははー……」スス

魔女「ひえ〜……」ススス

戦士「何で引いてんのよ?」

僧侶・魔女「何も言うまい。何も言うまい」

蟹男『貴様ら少しは静かにできんのか? 主の集中を削ぐつもりならば、まずは貴様らの喉を削ぐぞ…』

「「「ごめんなさい……」」」

女魔王は水をかき分けて自分の元へやって来るエルフを疑わしげそうに睨んでいる。

女魔王「……何する気だわよ?」

エルフ「あなたに掛った呪いを解くの。そうしてほしいんでしょう?」

女魔王「ではさっさと魔法でも何でもよいからどうにかせよッ! 余は待ちくたびれたぞ…!」

エルフ「お待たせしてごめんなさい。これで終わるから」

エルフ「我慢してね」

彼女の小さな両手が女魔王の頬へと伸びた。女魔王は黙ってそれを受け入れると、

女魔王「う、うう……何かこれ嫌……」

エルフは女魔王の顔を自分へ引き寄せ、唇を重ねたッ!

「!?」

女魔王「んぶぶォーーーああッ!!?」ジタバタ

エルフ「……」チュー
919 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:04:31.80 ID:twTCEuub0
蟹男『あ、あ、主ィ……主ィーーーーーー!』

戦士「嘘だ…嘘だぁ…!!」

魔女「ちょ、ちょっとー! 僧侶何で目隠しするのよぉ!?」

僧侶「子どもにはまだ早い光景ですっ!」がしっ

僧侶「……で、ですが。アレは一体///」

口づけはまだ続いている。例え女魔王が逃れようとしても、エルフはそれを離さない。
しかし、そんな女魔王の身体がじょじょに変化を見せ始める!

おんな魔王「んッ〜〜〜! ンンッ〜〜〜!」シュウウ…

なんと女魔王のたわわに実ったビッグバンボインが萎んでいる!

さらに、プリッと自己主張が激しい魔尻までもが!

凛々しくも美しい顔つきまでも、目つきが鋭く戻り極悪ヅラへ!

おん魔王(こ、これは……! これはァッ―――!!)

全てがあの頃の魔王へ戻ってゆく! あの頃の、男だった魔王へ!
同時に、女体化した事で減少してしまった力の高まりをも実感する! 力が漲ってきた!

お魔王(キタキタキタキタキタッ……! おおおおぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜……!?)

エルフ「……ふぅ」


魔王「キタァーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」ドドーン


おめでとう! 魔王の女体化の呪いが解けた!
ステータスは元通り化物レベルへ! やったね!

戦士「勇者殿だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっっ!!!」

僧侶「おめでとうございます! とてもおめでたですっ!」パチパチパチ

魔女「顔怖っ!?」

魔王「……ぐふふふっ、ふはははははっ…! ぎゃあっははははははアァッ〜〜〜!!」

戦士「よっしゃあ出たぞ! 勇者殿の三段笑いだぁっ!」

魔王「……貴様らァー!! 待たせたのぅ!!」キリッ

戦士「うおぉ、マジで待ってたっスよぉ〜〜〜!!」

僧侶「やっぱりこちらの勇者様の方がらしくていいですね。安心しましたよ〜!」

魔女「慣れん、ですわ……」

魔王「ぐわっははははははァッーーーーーーー!!!」 \ ヤンヤヤンヤー /

蟹男『め、めでたい奴ら……奇怪な光景であります、主よ』

エルフ「喜んでもらえてなによりです」
920 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:05:13.18 ID:twTCEuub0
魔王「おう貴様、貴様に感謝してくれるぞ! ありがたく思うが良い!」

戦士「キミのお陰だよー! うはははっ」

エルフ「どうも」

僧侶「……それにしても、あの方法以外の解呪はなかったのですか」

僧侶「いいんですか? あんな簡単にしてしまっても……///」

エルフ「別になんともです」

エルフ「呪いを解くには今の方法が一番てっとり早い。古来からの伝承」

僧侶「本当ですか!?」

戦士「だったら俺が勇者殿にチューしてあげたのに! チュ〜」

魔女「もうこの男やだぁーっ!!」

エルフ「冗談だよ」

戦士「冗談かよぅ」

僧侶「戦士さん、残念そうにするの止めていただけませんか」

エルフ「本当は聖水に浸かってもらって、ある程度呪いの効力を薄めたところで」

エルフ「私がその呪いを直接吸い出して体内から排除しただけ」

魔女「という事は、あなたの中に呪いが蓄積されるんじゃありませんこと?」

エルフ「私はあの程度の呪いには耐性があります。だから大丈夫なの」

魔女「さすがはエルフって感じかしらねぇ……」

僧侶「だとしても会ったばかりの男性にキスをするのは抵抗が」

エルフ「女の子だったし、問題ないと思う」

僧侶「いやいやいやっ!」

魔王「済んだ事ではないか。今さら一々気にしておるなよ、小心者め〜」

魔女「今のはそういう問題じゃないと思う。ですわ」

蟹男『……貴様ぁ、本当の本当に、主に感謝しろよ。主は身を呈して貴様の事を!』

魔王「はいはい」

エルフ「あとそれから」

魔王「あァん? まだ何か」
921 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:06:06.46 ID:twTCEuub0
エルフ「あなたの魔力器官までは治療できなかった。試してはみたけれども」

魔女「むしろ、それまでできたら仰天ですわよ。大したもんですわ」

エルフ「ごめんなさい」

魔王「次はもっと頑張れよ貴様ァ! 余を完全に治す努力をせよ!」

蟹男『ああぁっ!?』

エルフ「いいの。私の力がまだまだ不足気味だったから」

僧侶「凄い人ですね、エルフさん……。あれで自分を責めています……」

僧侶「謙遜する事はないですよ。あなたは素晴らしいです!」

エルフ「そう」

僧侶「……あらら?」

戦士「こういう子なんだ。感情に乏しいっていうか」

蟹男『』ジロリ

戦士「べ、別に貶したわけじゃねーぞ! なんていうか…もっと表情がころころ変われば可愛いなぁって」

エルフ「前にも同じ事を言っていたね」ぐいぐい

僧侶「何をなさっているのですか?」

エルフ「えふぁふぉのふぇんひゅー(笑顔の練習)」

エルフ「面白いと思ったら笑うといいと言われたから。笑顔のつもり」

魔王「余も気分が良いから一緒に盛大に笑ってやろうではないかァー!」

魔女「うざい」

魔王「ぶっ殺すわよ」

魔女「んぷぷっ…! 女のころの口癖出てますわよっ」

魔王「よし」

魔女「待て待て待てぇー! ですわ! 暴力は悲しみしか生まないの!」

僧侶「その通りですよ、勇者様。無駄に暴力を振るうのは良くありません! めっ」

魔王「ママ上でもない奴に正される筋合いねーであるわボケ! 死ね!」

戦士「ゆ、勇者殿…ここで死人出したらいかんスよ…」

蟹男『死体は一体出来あがっているわけだしな』

勇者「†」
922 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:06:43.43 ID:twTCEuub0
魔王「ふん、まぁ呪いが解けたのは本当に喜ぶべき事よ」

魔王「さてとー! 用は済んだし、そろそろ帰るである」

戦士「はっ!?」

僧侶「ゆ、勇者様……?」

魔王「あァ〜?」

僧侶「その、大事な事を忘れてはいませんか……」

戦士「」コクコク

魔王「余の女体呪いは解いた!! 以上だッ」

僧侶「本気で仰っているのでしょうかねー!?」

魔王「うん」

魔王「それに魔剣を直さねばならんのだ。無駄な時間を過ごすわけにもいくまいて」

魔女「魔剣もそうだけれど、私たちがこの世界へあのエルフを追って来た意味をよ〜く思い出してみなさいな」

魔女「誰か忘れてはいませんこと?」

魔王「……あー」

戦士「ゆっ、勇者殿マジっスか!? やだなぁ…冗談キツいっスよ〜…あはははは」

エルフ「素で忘れていたと思われるかも」

戦士「しーっ! しーっ!」

僧侶「さ…さぁ! 勇者様! 当初の目的通り、女勇者さん奪還ですよ!」

僧侶「急ぎましょうね!!」

魔王「……ちょっとどうでもよくなってきておらんか?」

僧侶「勇者様ぁ〜〜〜っ!!?」

戦士「ま、マジか……マジでか……」

エルフ「困った?」

魔女「うん」
923 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:07:25.39 ID:twTCEuub0
エルフ「どうしてもと言うのなら、私たちでその子を探してそっちに帰してあげても」

戦士「ダメダメダメっ! それはあかん!」

戦士「……勇者殿ぉー。よく思い出してくださいよぉ…俺ら、あの女にボコられたんスよ?」

魔王「むっ!」

僧侶「そうですよ。あの時勇者様、ううん! 私たちで決めたじゃないですか。リベンジマッチするって」

僧侶「呪いが解けて力も万全の状態な勇者様なら、次こそ勝てますよ!」

魔王「当たり前だろう。余は最強よ! あの女に後れを取るなど愚かな真似は二度とせん」

魔王「余裕で、赤子の手を捻るかの如く、ぶちのめすッ!!」

戦士「よっしゃー! 勇者殿がやる気になってくれたぞ!」

僧侶「……やれやれです」

魔女「あんたたち、勇者煽てるの上手いわねー」

僧侶「人事ではありませんよ! 全くもうっ」

蟹男『……何だあの連中』

エルフ「面白いね」

蟹男『あの様なくそどもが主のお気に召したと!? そんな馬鹿な』

エルフ「騒がしくて、とっても楽しい」

エルフ「わくわくするの」

蟹男『さ、左様で……』

戦士「それじゃあ勇者殿もやる気を見せてくれたところで、行きますか」

僧侶「ええ。王国騎士団の方々に遅れを取るわけにも行きませんしね」

僧侶「それにきっと、女勇者さんも待っています。盗賊さんだって彼女が心配なはず。だから」

魔女「何でそこにアイツの名前が出てきますの? 正直あれは裏切り者ですわよ」

僧侶「そ、そんな…! 盗賊さんだって並々ならぬ理由があっての事で」

魔女「だからって、仲間のピンチを忘れて当てもない方へ向かうのはどうかしてますわ!」

戦士「おい、止めようぜ。今は盗賊関係ないんだからさ」

魔女「だって……」

戦士「お前の気持ちは分かるよ。でもアイツを貶すやらは後にしとけよ」

戦士「僧侶ちゃんもな? 本当はみんな盗賊が心配なんだ。アイツ後先考えない奴だしよ」

僧侶「はい……」

魔王「おう、話終わったー?」

戦士「うっす」

魔王「じゃあそろそろ行くとするか。リベンジ戦であるぞ……!」ゴゴゴゴゴ
924 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:08:17.17 ID:twTCEuub0
魔王「それで、あのくそエルフ女の居場所は?」

エルフ「わかりません」

戦士「そうだ、分からないままだったんだ……」

魔王「という事は何か!? まずはあの女探しから始めねばならんのか!?」

魔王「余はそんな面倒却下ッ! 来るまで待つわ」

魔女「んな無茶言うな。ですわ」

僧侶「……あっ、あの方の魔力の気配を追うというのはどうでしょうか?」

魔女「魔力の追跡ですわね。確かにあの膨大な魔力なら探りやすい」

魔女「と思って、既に試してみましたの」

戦士「早いな! さすが天才!」

魔女「はい、煽てたところで残念。反応は世界樹から出ていた、ですわ」

エルフ「世界樹から?」

魔女「そう。あの女の魔力の気配同様のものがこの樹に」

僧侶「確か魔法を使うたびに世界樹へ魔力が流れるのでしたよね」

僧侶「そして、例の゛神様゛と関連付いているのもまた世界樹……」

エルフ「騎士の人たちは世界樹を切って、間接的にその人を倒そうとしていた」

戦士「つー事は、この樹は神様そのものだってのか?」

戦士「神様というか……その、俺たちが追ってるあの女なのかもしれないよな」

戦士「エルフはキミ以外の他に存在しない筈なんだろ? だが、アイツはエルフだった」

エルフ「可能性はあるかもです」

魔女「こりゃ驚いた〜。私たちは今から神を相手にしなきゃいけないみたい!」

僧侶「……ほ、本当にそうだったら、私はどうしたら」

魔王「ふん、決まった事でもなかろうが。余は余を傷つけた者を殺すまでよ」

魔王「余は勇者である! 害ある敵は確実に仕留めるぞ!」

戦士「おぉ、勇者殿心強いっスー!」

魔女「んで、もし本当に相手が世界樹の記憶へ自由にリンクできる神だとすれば」

魔女「最悪魔法を封じられるかもだし、私たちの情報も筒抜けかもですわよ?」

魔女「なんせ世界のありとあらゆる全ての記憶を記録しているのだもの」

僧侶「……い、いきなりとんでもなく壮大な相手ですねっ」

戦士「まぁ、普段のボスよか桁外れだったよな。しかーしっ!!」

戦士「今の俺らには元の力を取り戻した勇者殿が居られる! こいつは百人力だぜ」

魔王「ふははァ〜、よく分かっておるではないか!」
925 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:09:25.94 ID:twTCEuub0
魔女「まぁ、神に通用するかは分からないけれども、あの脳筋バカ女の為にちょっとだけ頑張ってもいいかもですわ」

僧侶「……」じー

魔女「何ですの?」

僧侶「い、いえっ、意外と女勇者さんの事を大切に思っているんだなーと思いまして…」

魔女「うっさいバカぁー!!」

戦士「照れるな照れるな」ナデナデ

魔女「チッ……」

戦士(露骨に嫌がられると凹むな……)

エルフ「みんなの意気込みはわかった。それで結局居場所は」

魔王「阿呆っ垂れめッ!! それを今どう把握するのか考えておるのだ!」

エルフ「おぉ」

僧侶「いえ、出鱈目言っただけですから感心しないでください…」

エルフ「ふーん、出鱈目言われちゃったのか」

蟹男『貴様ぁー!! 主を愚弄した罪は重いぞ!!』

魔王「この魔物一々うっさいわー」

魔王「ていうか、世界樹と同じ魔力ならばこの世界中で同じ魔力を探せば何れは見つかるであろうが」

魔女「ちょっと無茶仰いな! 私たちはついさっきこの世界へ来たのよ?」

魔女「どれぐらいの広さかも分からないし、きっと時間も凄くかかりますわ」

魔王「役立たず。こっちのエルフの方がよっぽど役に立つな」

魔女「何だとチクショー!!」

魔王「だって魔法薬使えなかったである!」

魔女「知るか! あんたの魔力器官に問題があったのがいけないんですわ!」

魔王・魔女「ぎゃーぎゃーぎゃー!」

僧侶「……このままだと先へ進めそうにないですね。どうしましょうか」

戦士「参ったな…」

エルフ「お手上げ」

戦士「一緒にお手上げ」
926 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:10:19.05 ID:twTCEuub0
魔王「大体こんな木偶の木が魔力詰まってるとか意味不である!」

魔王「本当は何かの冗談ではないの〜?」

魔女「冗談なんて言いませんわよ。本当ですわ」

魔女「確かにあの女の魔力の質とよく似ているのよ……」

蟹男『では、この世界樹の中に籠れば魔力探知によって発見される事はないのか』

魔女「……は?」

蟹男『だってそうだろう。木を隠すのならば森の中。自身の魔力を隠すには』

僧侶「……あ、似た魔力を持つ者の中へ紛れ込めば」

魔王「ふーむ、確かに完全に隠す事はできずとも、多少は誤魔化しは効くかもしれん」

戦士「だけど完全に隠れてるんだろう? その世界樹で」

魔女「そうですわよ…誤魔化しなんかじゃ……あー、こんな時に魔剣があれば匂いで辿れるんじゃなくって!?」

魔王「使えん者の話をしたところで無駄であるわ阿呆」

エルフ「結局、話は振り出しに戻って――――――」

魔王「ふん、何を申すか貴様。今そこのバカ蟹が良い事を申してくれたではないか」

蟹男『わ、私がか? えぇ?』

魔王「木を隠すなら森の中。……認めたくはないが、あの女は割とキレ者よ」

魔王「完全にあの中で魔力を隠す程度は造作もあるまい」

戦士「つ、つまり勇者殿が言いたい事って」

魔王「単純であるな。あのくそエルフ女は世界樹の中ではないかと余は睨んだ!」

エルフ「世界樹の中?」

僧侶「樹の中って……勇者様、あの中は空洞ではないかと思いますが」

魔王「愚か者めが! あんなバカげた木に常識なんぞ考えるなよ!」

鞘に納めていた魔剣を抜刀し、世界樹の巨大な根を切り裂きにかかった!


魔王「……むぅ!」

戦士「どうっスか?」

魔王「硬いとか、そういうものではないな。攻撃自体を受け付けぬぞ?」

根と魔剣の間すれすれに、薄く魔法で作られた結界の様な物が見える。
いくら魔剣を振るおうが根には傷一つ付く事はなかった。

魔女「あんたなら全力で叩っ切ればやれない事もないんじゃないですの?」

魔王「この様な木偶に今全力を叩きこむ必要はあるか? それならば余はあのくそエルフ女に叩き込みたいであるわ」

魔女「結局、世界樹と一心同体の存在なのだから同じでしょー……」
927 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:10:57.34 ID:twTCEuub0
魔王「何か他の方法でこの中へ入る事はできぬの?」

エルフ「私には分からないです。ただ」

魔王「あん?」

エルフ「この、今気絶しているこの子なら。もしかしたら」

エルフは掌の上に寝かせている妖精を指した。

戦士「確かに遺跡の中での件といい、世界樹とコンタクト取れてたな」

魔女「なら、早くその妖精起こして色々聴くべきですわ」

僧侶「無理矢理起こすのは可哀想ですよっ。気を失っているのに」

魔王「狸寝入りかも知れんがなァー!」ヒョイ

魔王は妖精を摘まみ上げ、上下にぶんぶんと振った!

エルフ「妖精、かわいそうです」

僧侶「本当ですよ! やめてください勇者様!」

魔王「おら、さっさと起きろー。起きぬのなら焼いて食うぞ蚊トンボが」ブンッブンッ

妖精「起きます! 起きましたから食べちゃ嫌だよ〜!!」

僧侶「えっ」

妖精「食べない? ねぇ、食べませんよねぇ……?」

魔王「うっさい。さっさと言え阿呆」

エルフ「本当に狸寝入りだったね」

戦士「おいおい……」

エルフ「いつから起きていたの?」

妖精「ほ、ほんのついさっき! みんなあの人を倒そうとか怖い話してたから…」

妖精「みんな聞いて! お願い! 神様を殺しちゃダメ! あの人が死んだら世界樹も死んじゃうの!」

魔王「それが何だ。はぁ〜〜〜やぁ〜〜〜くぅ〜〜〜……」ぐいぐい

妖精「ひぃん!」

蟹男『鬼かこの男……』

戦士「ね、カッコいいっしょ?」
928 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:11:56.30 ID:twTCEuub0
妖精「じゃ、じゃあ約束して! あの人を倒さないで、攫われた人だけ助けるなら入り方教える!」

魔王「舐めておるかこの虫ケラはよォ〜」

魔女「別に私たちがあの女を倒す意味はないし、その条件でいいんじゃない?」

戦士「俺もそう思うっス。こっちの目的は女勇者ちゃんの奪還だから」

魔王「余は殺しきらねば納得いかぬぞ?」

エルフ「こわい」

僧侶「ほら、エルフさんも怖がっていますよ! そういうのは止しましょうよ!?」

魔王「やだ!」

僧侶「あー……えっとー……それじゃあこうしましょうか! 条件を呑んでくれたら、勇者様の好きなお菓子を3つまで買
ってあげます!」

魔王「え〜、足りなーい」

僧侶「5つ!」

魔王「もっとー」

僧侶「くっ…6つ!」

魔王「もっと。僧侶はケチで困るなァ」

戦士「僧侶ちゃん、少し折れようか……」

僧侶「好きなだけ」

魔王「乗ったぞ! くっくっくっーッ! 約束したからな!」

僧侶「はい……」

魔女「ただでさえ装備整えたばかりで金欠だというのに」

僧侶「許してくださいっ!!」ペコペコ

エルフ「あの人たちがそれでいいって。神様倒さないから大丈夫だよ」

妖精「……ほ、本当?」

魔王「手が滑ってトドメ入ったはノーカンでよいな?」

妖精「エルフぅ〜!!!」

エルフ「困った困った」

僧侶「も、もういや……」
929 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:12:42.77 ID:twTCEuub0
妖精「ぐすんっ…本当に、ほんとーに約束守ってくれるんだね? 嘘じゃないよね?」

僧侶「ええ、本当ですよ! 大丈夫です! 安心してどうぞ!」

魔王「離せ貴様らッ、離せェー!!」ジタバタ

戦士「勇者殿ー! すまねぇー!」がしっ

魔女「だからどうして私までこの役割させられてますの!?」がしっ

妖精「……じゃあ、教えたげるね!」ニコニコ

僧侶「ふぅ」

エルフ「おつかれさまです」

蟹男『さり気なく気遣う主の心優しさに私の心がまた撃ち抜かれましたぞ!』

エルフ「ばきゅーん」

蟹男『はうっ……!』

戦士「何やってんだ、あの蟹」

妖精はぱたぱたと背中の羽根を羽ばたかせ、世界樹の裏へ回った。

妖精「こっちこっち〜!」

エルフ「どこへ行くの?」

妖精「こっち側に秘密の入り口があるの〜」

戦士「割と簡単に入れる感じだったりするんスかね?」

魔王「だったらムカつくわ。あの虫ケラを捻り潰すとスッキリしそうだが」

僧侶「そろそろ懲りてくださいね」

蟹男『主はこちら側から侵入できるという情報は持っていらっしゃらなかった?』

エルフ「うん。世界樹は妖精にだけ心を開いてくれているのかな」

エルフ「私じゃちょっとダメみたい」

戦士「木だけに気にするなよ。こんなのただのデカい木さ」

エルフ「……」

戦士「あれ、面白くなかった?」

エルフ「」コクリ
930 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:13:56.18 ID:twTCEuub0
妖精の後に続いて世界樹の裏へ回ると、小さな洞がある事に気づく一同。

魔王「……貴様のそのちんけな体では通れるかも知れんがな」

魔王「馬鹿にしておるのか!? あァ!?」

妖精「ひぃ〜!!」

エルフ「この子は悪くないよ。許してあげて」

魔王「なら、この期待の行き先をどうしてくれるか! クソがッ」

戦士「無理矢理この洞を彫り開ける、ってのはキツそうか?」

魔女「世界樹の一部だろうし、ここにも結界が張られてると思いますわ」

戦士「力押しで突破は無理か」

僧侶「困りましたね……」

妖精「だ、誰もこのまま通ってだなんて言ってないよ?」

「は?」

妖精「ここで秘密の合言葉を言えば、入口ができるの。だから」

魔王「貴様いい加減にしとけよ」がしっ

妖精「ぎゃ〜! エルフエルフエルフぅ〜!!」

エルフ「ごめんね。早速で悪いけれど、その合言葉を言ってほしい」

魔王「言わねばこのまま余の口へ抛り込んで噛み砕くッ」

妖精「どうして一回一回脅すの!? 怖いよっ」

妖精「……わかった。言うよ、合言葉。おーい!」

大樹の表面に薄らと文字が浮かび上がった『今何時?』

妖精「゛おやじ、でんぷん、画鋲゛〜!!」

『通ってよし』と新たに浮かぶ言葉! なんと、洞が人が通れるサイズまで大きく広がった!

戦士「今のは合言葉なんスかねぇ……?」

魔女「いいセンスですわ」

魔王「行くぞ、貴様らぁー!! お礼参りしてやるわッ」

エルフ「お礼?」

蟹男『主をこれ以上汚い言葉で汚すなァーッ!!』


魔王一行、+エルフ組は遂に世界樹の中へ侵入したのであった。
はたして女勇者を無事奪還する事は叶うのだろうか、神である湯女とどう戦うのか。



魔王「ここだけ微妙に狭いけど、僧侶なら易々と通れそうである」

魔女「あら、本当ですわね」

僧侶「さり気ないイジメやめていただけませんか!?」
931 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:15:31.26 ID:twTCEuub0
世界樹の中


戦士「やっぱり中は広いっスねー……うは、天井見えない」

魔女「灯りは所々に付けられているみたいですわね」

魔王「うむ、明るくて安心したぞ」

僧侶「魔女さん。魔力探知の方は……」

魔女「変わりありませんわ。ていうか、世界樹の中に入ったわけだし、ほぼ探知不可能」

魔女「もうこの樹の膨大な魔力しか分からないですわよ」

僧侶「それも、そうですねぇ」

僧侶「これで中に誰もいなかったら……」

魔王「余の予想が外れるとでも? その時はそこの蟹が悪かったという事で」

蟹男『カニっ!?』

エルフ「この子は何も悪い事してないよ」

魔王「余が決めたからそれでよかろう?」

エルフ「そっか」

蟹男『いやいや、おかしいっ』

戦士「…………しーっ、みんな静かに」

「……」


<うるさぁい!! 最低だよ、もう嫌い!! 最悪だ!! こんなに人を嫌いになったのは初めてだよ……っ

< 私はあなたをこんなにも愛しているのに……。どうして受け入れてくれないの……?


はるか上の方から2人の女性の声が微かに聞こえてくる。
女勇者と、湯女のようだ。


魔女「……何だか良くない予感がしますわ」

僧侶「ええ、すぐに助けに――――――」


魔王「ぐはははははははっはっはっはァッ〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!!」


魔女「うるさっ!? いきなり何よ!」

戦士「ゆ、勇者殿!」

魔王「見つけたぞォーッ!! あやつだ、あやつの声が聞こえた! やっぱり余の判断に間違いはなかったのだよッ!」

魔王は高く跳躍すると、さらに壁を蹴って跳び上がる!
戦士たちが唖然とする中で、魔王は次々と驚異的な運動能力を発揮しつつ、彼女たちが居る場所を目指して飛んでいった!


「殺してやる殺してやる殺して……ぐへへへぇーーあぁ〜〜〜!」


「……」

妖精「え、エルフぅ〜……」

エルフ「早く追いつかないと大変かも」

戦士「お、俺たちも勇者殿を追いかけるぞ!!」
932 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:17:09.97 ID:twTCEuub0
そして、現在に至る。


魔王「ふはははははァ……」

女勇者「邪悪な笑顔! 間違いないよ、あなたは本物の勇者さん!」

女勇者「どうして元の姿に。まさか私がいない間に呪いが解けた…?」

魔王「あ? 誰だ貴様は」

女勇者「え゛っ!?」

魔王「……ふん、よく見んでも間抜け面の女勇者であったか」

魔王「一応聴いておいてやるわ。無事であるか?」

女勇者「な、なんとか…勇者さんの乱入のお陰で…」

女勇者「……気をつけて。あの人、どこかおかしいんだよ」

湯女「  」ゆらり・・・

湯女はゆっくりと立ち上がり、笑顔を魔王たちへ向けた。

その笑顔は口だけはにんまりとしているだけで、目だけが笑ってはいない。


湯女「ふいうt―――」

魔王「不意打ちは卑怯と申すのなら間違いだなァ。勝てばよいのだ! 勝てば!」

湯女「……」

魔王「貴様には悪い意味で多くの借りがある。それを今ここで返させてもらうから」

魔王「覚悟するがよいぞ、゛世界樹の片割れ゛」

湯女「……片割れぇ? うふふふふふ」

湯女「違いますよぉ。私と世界樹は対になっているわけではない」

湯女「ほぼ一心同体なのですよぉ〜♪」

魔王「黙れ説明しろと申した覚えはない!」

女勇者「……勇者さん、私もこの人と戦うよ」

魔王「邪魔だ、どっかに消え失せろゴミッ!!」

女勇者「えぇ、そんなぁ!?」

湯女「……全く。あの時の子がこんなに邪悪に成長しただなんて」

湯女「やっぱり! 見る目があるわぁ〜♪ あなたのお父様ってば♪」

魔王「そうか死ね」


女神・世界樹(湯女) が あらわれた !
933 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/24(金) 06:19:33.53 ID:twTCEuub0
ここまでだよー もう少しで3スレ目終わるか・・・自分で書いておいて終わりが見えねぇ


とりあえず頃合い見て次スレたてます
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/24(金) 06:28:19.33 ID:HT8sMI3D0

935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/24(金) 08:18:30.08 ID:2r4lf6/8o
おつ
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 11:54:47.99 ID:oid/iThp0
乙!面白れー
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 12:51:37.00 ID:O7P/VTGIO
もうちょっとだけ続くんじゃ
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 15:13:33.75 ID:BKGWs1dIO
おつ
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 17:42:13.57 ID:WhpCWiIIO
俺の魔王様に!エルフゆるさん!
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 17:59:07.42 ID:xUgHE98IO
乙!
ドンドン続けてたぼれー
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/24(金) 23:01:42.64 ID:931lw3h4o
俺のエルフちゃんに!
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 01:54:16.40 ID:2BsLwF+J0
俺も呪われたらエルフちゃんにキスしてもらえるのかな。それなら喜んで呪われるぜ!!!!!!
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 13:33:15.14 ID:rrPxy01SO
面白い展開になってきた!!
乙!
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 14:41:41.08 ID:L56xGSGDO


いちょぉつ!!
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 18:21:50.23 ID:rd6ZL46IO
いちゅおちゅっっっっ!!
946 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 23:49:55.86 ID:iLkrmfoIO
>>942
え、おまえとっくに呪われてるよね
鏡見てごらん

947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 18:32:32.29 ID:oPhaga280
魔王の制約魔法があれば弱点調べられる前に封じて勝てる。先手さえ取れればマジでチート魔法じゃんwww
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/08/26(日) 20:45:32.99 ID:G3WHdOpho
でも相手世界樹なんだったら魔法の制限とか出来ないんだろうか
相手が魔法使ったら魔翌力流れていく分強くなるとか
949 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:39:38.39 ID:2ZpPjZ910
魔女「はぁ、はぁ……ひー!」

魔女「一体どれだけ上ればっ……」

戦士「おぶってやろうか、元引きこもり娘」

魔女「馬鹿にしないでちょうだい!」

僧侶「勇者様は異常ですよ。あんな動き魔物でも見た事がありませんっ」

蟹男『気づいてないのか? あの男は―――』

エルフは蟹男の口を塞いだ。

蟹男『カニィェー!?』

エルフ「しーっ」

エルフ「知らなくていい事も、あると思う」

妖精「何が〜?」

エルフ「私と蟹さんだけの秘密だよ。内緒」

妖精「えー、それってずるいよ! 2人して!」

戦士「お宅ら一体何の話を?」

エルフ・蟹男「『知らなくていい話』」

戦士「そう言われると気になるってのが俺の性分でさ」

僧侶「戦士さんも結構首突っ込みたがりじゃないですかぁ。いつも私ばっかり!」

戦士「俺は別にそれで僧侶ちゃんを責めたりしないでしょう?」


< アンタタチーオソイデスワヨー


「?」

いつのまにか魔女が上の階まで上がり終えていた。

妖精「はやーい! でも、いつの間に?」

僧侶「転送魔法でも使ったのでしょうか?」

戦士「何だとっ! 魔女っちお前ずりぃーぞ!!」


< オーホホホッ コレガテンサイ ト ボンジン ノ チガイデスワァー


蟹男『性悪娘め……』

戦士「あんにゃろー……俺たちの事も一緒に転送しても良かったじゃないか」

僧侶「魔女さーん! 急いでいるんです、私たちにも転送をお願いできませんかー!」

「……」

エルフ「返事が聞こえない。声が届いてなかったのかも」

妖精「はーい。もっと大きな声でお願いしまーす!」

戦士「それなら俺が声を掛けよう。お――――――」


< ンギャーーー…………


「!」
950 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:40:26.26 ID:2ZpPjZ910
蟹男『今のはあの娘の悲鳴ではないか』

僧侶「本当ですか!? まさか上で何か」

戦士「お、おい! 走るぞ! 早く上へ進むんだ!」

一同は魔女の危機に一刻も早く駆けつけるべく、急いで階を上がって行った。
その間も悲鳴らしきものが聞こえてくる!

妖精「もう助からないんじゃないかなぁ」

僧侶「やめてください!」

蟹男『主、辛くはありませんか』

エルフ「大丈夫です。ありがとう」←蟹男に抱えられ中

戦士「もしかしてマンイーターの奴らが俺たちに気づいたんじゃ…」

エルフ「それはない。世界樹の周りには私が結界を張っているもの」

エルフ「それに、ここは世界樹の中。入れるわけがないと思う」

戦士「確かに……。じゃあ」

僧侶「神様が罠を仕掛けていたか、何か刺客を待ち伏せさせていたか」

僧侶「どちらにしても彼女が心配です! 急ぎましょう!」

戦士「そうだな。もうすぐだ、無事でいてくれよ……」


遂に辿り着いた一同。一体そこで彼らが見たモノとは・・・!


「…………」

魔女「んぎゃー!? んぎゃー!?」

虫の大群に壁に追いやられている魔女の姿だった。

魔女「虫キモい! こわい! あーっ、あぁーっ!!」

魔女「あんたたち早く助けてくださいませ!? はよーっ!!」

僧侶「なんと惨い……」

戦士「おえぇ〜……」
951 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:40:57.59 ID:2ZpPjZ910
魔女「はぁ、はぁ、はぁ!」ゼーゼー

魔女「もう世界樹の中いやぁーっ!! 気持ち悪すぎですわ!!」

戦士「ふーん、一人で先に行った奴が悪いんだ。反省しなさい」

魔女「むぅ……」

僧侶「でも怪我がなくて良かったです。本当に心配しましたよ」

妖精「超急いで走ってきたんですからね!」

エルフ「あなたは私の肩に捕まってたでしょう?」

蟹男『そしてその主を担いだのはこの私、クラブマンよ』

妖精「〜〜〜……」

魔女「大体あんたたちが遅いのがいけないんですのよぅ。こんな事ならもっとゆっくり」

戦士「みんなに心配掛けたんだ。ほら、ごめんなさいは?」

魔女「……ごめんなさいですわ」

戦士「素直でいい子」ナデナデ

魔女「戦士、汗臭いー!」

戦士「お前の為に走ってきたからだろうがアホ!」

戦士「ったく、虫なんて怖がってて大丈夫なのか? これから神様相手にすんだぞ」

魔女「神様なんて虫よかマシですわよ! こんどこそ私の魔法で簡単に捻り潰してしまうんだからね」

エルフ「……」

エルフはなにやら周りを警戒している。

蟹男『主、そろそろバカ共の相手にも疲れてきた頃でしょうか?』

エルフ「違うの」

蟹男『主?』

エルフ「みんな少し静かに」

「え?」
952 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:41:58.87 ID:2ZpPjZ910
妖精「どうしたのエルフ〜? お腹痛い? 大変だね」

魔女「そういう様子には見えないけれど」

蟹男『貴様ら主が静まれと言ったのが聞こえんかったのかぁ!? 喧しいぞーッ!』

エルフ「蟹さんが今一番うるさいかも」

蟹男『えぇっ!?』

僧侶「一体どうしたのですか……。また誰かの声が聞こえた?」

戦士「まさか勇者殿か女勇者ちゃんだろうか」

僧侶「あ、あり得るかも!」

エルフ「違う。みんな、いいかな」

エルフ「すぐに上に進みましょう。ここにいると嫌な予感がするの」

妖精「みんなー! エルフの勘はよく当たるんだよー!」

戦士「……マジで?」

蟹男『何せ主だからなぁー!!』

エルフ「突然この世界樹の様子が変わったような気がする。おかしい」

エルフ「お願いです。こうして話をしている場合ではない」

エルフ「だから早く―――――――――」


≪ はぁーい。神・もとい自己防衛プログラムを起動しちゃいまーす。きゃぴっ☆ ≫


魔女「何ですの、今のふざけたやつ……?」

戦士「ああ、ふざけてたな」

妖精「世界樹…………!」

エルフ「え?」

妖精「今のは世界樹の声だよー! 世界樹が直接話しかけてくれたんだ!」

僧侶「い、今のが……?」
953 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:43:03.96 ID:2ZpPjZ910
エルフ「みんな急いで上にあがってください」

エルフ「とても嫌な予感がするの」

蟹男『急ぐぞ! 主よ、さぁ私の近くに寄ってください。危険だ』

妖精「おーい、世界樹ー!」

戦士「バカ! 呼ぶなっ、今は俺たちの敵なんだぞ!」

妖精「大丈夫! 世界樹はあたしのお友達なんです。だから」

≪ 神・もとい世界樹を攻撃しようとしている輩がお友達だなんて都合良すぎぃ! ≫

妖精「へ?」

≪ 世界樹は妖精を信用してたのにな。あーあ、残念無念☆ ≫

妖精「ちょ、ちょっと待ってください! あたしは何も世界樹を裏切ったわけじゃ…」

エルフ「妖精早く来て」

妖精「でも!」

エルフ「早くっ」

≪ 裏切り者は〜〜〜……成敗しちゃうゾっ☆ ≫

妖精「あっ―――――――」


ぱぁんっ! と小さな破裂音。妖精の身体が内部から爆発されてしまった!
床には粉みじんと化した妖精らしき物の肉片が散乱している。


エルフ「!」

魔女「ひっ!?」

僧侶「う、うそ……そんな……!」

≪ えーんっ! 本当に悲しいて泣きたいのは世界樹の方ですぅ! でも大丈夫 ≫

≪ 替えの妖精なんていくらでも作れちゃうんだぁ。だから世界樹は寂しくないよ☆ ≫

戦士「……こいつが神様だって?」

戦士「ただのイカれ頭じゃねぇか!! ふざけるなよ貴様ぁ!!」

僧侶「いいえ、神な筈ありません。私はこんなもの認めたくない」

僧侶「絶対に!」

≪ どうしてみんな怒っているの? 妖精は世界樹が作ったんだよ? ≫

≪ 自分で作った物を壊しちゃダメなの? だって自分の物なんだよ。好きにしていいと思う! ≫

蟹男『主の言う通りだ……。ここは引くか、すぐに上へ行くか』

蟹男『あの小さな犠牲を無駄にするな! 我々は――――――』

蟹男の様子がおかしい。

エルフ「かにさん?」
954 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:44:03.78 ID:2ZpPjZ910
≪ はぁーい。エルフがかけた魅了の魔法は世界樹が解いちゃいました! 蟹一丁〜! ≫

≪ この子があなたたち神の敵を成敗しちゃうよ。首をチョッキンしてあげてネ ≫

蟹男『御意…!』

エルフ「蟹さん。お願い、やめて」

魔女「その魔物から離れなさい!!」

魔女は蟹男へ両手を向け、火炎の魔法を放った。

しかし、魔法は発動されなかった!

魔女「!?」

それをカバーすべく、直ぐさま僧侶は風の呪文を唱える! が!

僧侶「じゅ、呪文を唱えているのに……魔法が!」

僧侶「世界樹です! 世界樹が魔法を封じています!」

魔女「早速ですって!?」

≪ ピンポーン! 大当たり〜! ≫

戦士「お前たちは俺の後ろに隠れていろっ!! 出てくるな!!」

エルフ「一人では無茶だよ。あなたは今武器を持っていない」

戦士「分かっている!!」

お構いなしにその腕にある鋏を鳴らしながら近づいてくる蟹男。

何を言おうが、蟹男の動きは止まりそうにない!

≪ きゃー! 魔物の本性丸出し状態! 超凶暴状態! ≫

≪ チョッキン、チョッキン、チョッキンなー☆ やっちゃえー ≫


蟹男『カニイイイィィィーーーーーーーーーッッ!!』


僧侶「戦士さんこれを!」

僧侶は咄嗟に道具袋へ手を突っ込み、武器を戦士へ投げ渡した!

それを掴み取ると、蟹男のギロチン鋏を膝を曲げて下へ倒れる事で上手く回避し、武器で蟹男の足を打つ!

蟹男『あうっ』

魔女「僧侶が今投げたのって、ひのきのぼうですわよ!」

僧侶「えぇーっ!?」

硬い体を持つ甲殻生命体である蟹男にとって、ひのきのぼうは非常に相性が悪い!
なによりも、攻撃力が無さすぎた!

戦士(俺の今持つ盾は魔法の盾……。コイツであの鋏に耐えきれるだろうか)
955 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:45:18.24 ID:2ZpPjZ910
僧侶「何とか私たちで援護できる事はないでしょうかっ」

僧侶「魔法は封じられているし……!」

僧侶「そ、そうだ。時の砂を使えば時間を少し戻せます!」

≪ そんな便利な道具を使わせるわけないでーす。許可しませーん ≫

魔法に続いて時の砂を封じられてしまった。

僧侶「ひどい!」

魔女「あぁあぁ〜〜〜〜〜っ!!! くっそーーーーーお!!」

魔女「なんとか世界樹を介さずに魔法を使う方法はありませんの!?」

エルフ「ごめんなさい。私にはそれはわからない」

エルフ「というより、存在しないのかもしれない」

魔女「……私は諦めませんわよ! 記憶が何だっていうの」

魔女「私は将来有望天才魔法使い! 神の力になんて屈しませんわ!」

戦士「だったら早いとこ何とかしてくれ!」

蟹男の猛攻は止まらない! 戦士は自分の首が落とされない様に立ち回る事で精一杯だ!
隙を見て攻撃を放つも、蟹男は一瞬の動作が素早く攻撃をすぐ止めてしまう!

戦士(こいつ、ここまで強かったのか! 全く攻撃を受け付けんぞ!)


戦士「ふんっっっ!!」


戦士は何とか蟹男を盾で押しだし、必殺技・魔神切りを放つ態勢をとった!

腰を低く、両足は地面へガッシリと踏みしめ、ひのきぼうを握る腕へ全力を込める!

戦士「かかって来やがれ、蟹野郎ッ!! 俺が目を覚まさせてやる…」

蟹男『面白いな! そんな棒如きで何ができる? お前の一撃、見せてもらおうかーッ!』

蟹男は両手の鋏を振り上げて戦士へ真っ直ぐ向かってゆく!

僧侶「あのままでは戦士さんの力に武器が耐えきれず折れてしまう……!」

戦士「いいや、問題ないねっ」


戦士・蟹男「『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜っ!!!』」


蟹男の鋏が戦士へ振り下ろされる! が、戦士は避けようとない!
そのまま、ひのきのぼうを鋏へ放つ! 戦士の一撃必殺、魔神切り!

戦士「ホームランだッ!!」

蟹男『んーっ!?』

戦士の首は撥ね飛ばされていなかった。両鋏を必殺技で無理矢理上へ押し上げたのだ。
しかし、やはり武器は硬い装甲と力に負けて折れた!

そんな事を気にせずにと、戦士は無防備となった蟹男へ追い打ちをかける!

戦士「慢心は油断を生むってことだ……」

折れたひのきのぼうの切っ先は、それによって尖っていた。
尖った先端部は深々と蟹男の露出した喉元へ突き刺さっている!

蟹男『…………』

ごぽごぽ、と醜い音とともに口から吐き出された緑色の血と泡。
蟹男はそのまま静かに戦士へ凭れかかり、絶命した。


戦士「胸糞悪い真似させやがって、畜生」
956 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:46:01.30 ID:2ZpPjZ910
戦士は折れたひのきのぼうをその辺へ放り投げ、蟹男を優しく床へ横たわせた。
すぐにエルフが死体へ駆け寄ると、蘇生を試そうとしたが、やはり魔法が発動できない。

そっと蟹男の顔へ手を触れて、自分へ言い聞かすように

エルフ「蟹さんも死んでしまった」

戦士「すまない」

エルフは無言で首を横へ振って答えた。

エルフ「ねぇ、世界樹。どうしてこんな酷い事をするの」

エルフ「私からこれ以上大切な人たちを奪わないでください」

魔女「あんた……」

≪ どうして? どうしてって、振りかかる火の粉は払わなきゃいけないんだよ? ≫

≪ ぜーんぶっ、貴方たちがいけないんだと世界樹は思います! ≫

僧侶「私たちはあなたを殺す気はなかったのに! ただ、仲間を助けに来ただけなのに!」

僧侶「どうして話を聴こうとしなかったの……。私たちがあなたへ何かをした?」

僧侶「してないわっ!! まだ何もしていない!! なのにっ」

≪ キレー事ばかりでは、神様は務まらないのです。これが現実なのです。うんうん ≫

僧侶「あなたの価値観で私たちを当てはめないで!」

魔女「何言ったって無駄ですわよ。向こうは向こう、こっちはこっち」

魔女「どちらにも、正しいと言える事はないですわ」

≪ 利口な人間さんはだぁい好きだよ〜。でもアホな人間さんも悪くはないよ ≫

≪ 色んなのがいるから面白いんだものね! ≫

魔女「ふん、言い方がムカつきますわね……」

魔女「ちょいと。あんたが今まで守ってきた樹はこんな奴でしたわよ? どう思う?」

エルフ「少しだけ悲しい」

戦士「もっと文句言っても罰は当たらねーぞ。キミにはこいつ叱る権利があるんだ」

戦士「怒れよ…!」

魔女「戦士が怒ってどうしますのよ」

≪ エルフには世界樹を怒れないよね。だって感情なんてないような物だもんねー ≫

エルフ「違うよ」

≪ ううん、違わない! だってエルフをそうなる様に育てたのは世界樹だもん☆ ≫

≪ エルフはぁー、世界樹に黙ってご飯を与えてくれればそれでいいの! そこに感情も何もいらないよ ≫

≪ むーっ、だからこそ今回はとっても悲しい! エルフも裏切ってしまうなんて! ≫

戦士「ならこの子も殺すか? させると思うか。俺らがよ…」
957 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:46:43.64 ID:2ZpPjZ910
≪ エルフを? まっさかー、エルフを消しちゃったら世界樹は生きていけないもん ≫

≪ ただ、教育し直す必要があるみたいだねぇ〜……むっふっふっ……! ≫

エルフ「それでこの人たちを許してくれるなら、お願いします」

僧侶「ダメです。そんな事許しませんよ」

僧侶「決めました! エルフさんには指一本触れさせません」

僧侶「例えそれが神様だとしてもですよ!」

≪ 世界樹は世界樹だよ? 神様じゃないよー? ≫

戦士「何でもいい! これからお前の半身をぶち殺しに行ってやる」

魔女「結局、やるんですわね……」

戦士「俺は今無性に腹が立っているんだ!!」

エルフ「どうしてそんなに。私の事は放って置いてくれてもいいんだよ」

戦士「勇者殿ならそこはNOと……こた、えないかな?」

僧侶「恐らくは」

戦士「……えー」

戦士「じゃあこうするぜ。エルフは勇者殿を助けてくれた! だから今度はこっちの番だ」

戦士「貸しはなしって奴ね!」

エルフ「別にいいのに」

僧侶「気にしないでくださいね。私たちが勝手にする事ですから」

≪ む〜っ……面白くない。これは面白くないよ! ≫

≪ つまんなぁーい! 面白くなぁーい! うふふっ、それなら面白くしてあげたらいいんだよね☆ ≫


魔女「は? ――――――」

戦士「――――――」

僧侶「――――――」


エルフ「みんな、どうしたの?」

≪ これからこの人たちには、神様を殺そうとしているおバカさんを殺しに行ってもらいまーす! ≫

なんと、戦士たちは世界樹に操られてしまった!
958 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:47:32.59 ID:2ZpPjZ910
三人は人間味を感じられない、無機質な動きで魔王たちがいる上階へのぼっていった。

エルフ「あうっ……」

≪ きゃはっ! エルフったら凄くやり切れない顔してる。そういうのが気に食わないってどうして分かってくれないのか
な? ≫

≪ 大人しく世界樹の中から出て行って、それでご飯を頂戴☆ お腹減っちゃったんだぁ ≫

エルフ「うう……」

≪ だからどうして言う通りにしてくれないの! その顔をやめて! ≫

天井から触手が生え、エルフへ向かって勢いよく伸ばされた。

だが、触手はエルフの顔を叩く寸前で何かに切断されてしまった!

エルフ「!」


?「話は全て聞かせてもらったぜ。そして、よくも僧侶ちゃんを悲しませたな」


≪ 一人入ってきた人が足りないと思ったらぁ、そんなところに隠れてたんだね〜 ≫

盗賊「……」

エルフ「だれ?」

盗賊「匿名希望だぜ」

エルフ「?」

盗賊「俺に今名乗る名など存在しねぇ……。アイツらを少しでも失望させちまったんだ」

盗賊「見せる顔もないぜ。だがな、僧侶ちゃんをいじめる奴は許さん」

盗賊「ついでにそこの肉ダルマと糞ガキも付け足しといてやんよ!」

≪ 出たなぁ〜シスコン男めぇ〜 ≫

盗賊「ぶっっっ…」

エルフ「気をつけて。世界樹はあなたの事を既に知っています」

盗賊「今のはそういう問題じゃねぇだろ!」
959 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:48:22.54 ID:2ZpPjZ910
≪ ほかにも色んな事知ってるんだけど、聴きたいよね? ≫

エルフ「」こくり

盗賊「ふざけるのは止せっ」

盗賊「……いいか? 俺はお前をこれから」

エルフ「ダメ」

盗賊「は?」

エルフは盗賊へ耳打ちした。

エルフ「恐らく、世界樹は自分と神様を敵視した人だけに害を与えてくる」

エルフ「あなたはまだ曖昧な事しか言ってないの。だから」

盗賊「なら、これからどうしろと言うんだぜ。このまま逃げ出せと?」

エルフ「うん」

盗賊「……却下だ」

≪ ねぇねぇ、楽しそうな話なら世界樹も混ぜてよ。記憶しておきたいなー ≫

盗賊「うるせぇ!! てめぇには教えてやんね!!」

盗賊「何か良い策はないか。こう見えて俺は何も考えずに飛び出した」

エルフ「……」

盗賊「呆れた顔しないでくれ。助けに来ただけ感謝するんだぜ…?」

エルフ「ううん、感謝できません」

エルフ「あなたが下手に動いても、みんなと同じ様に洗脳されるか、殺されてしまうだけ」

エルフ「申し訳ないけれど」

盗賊「はっ、やってみなくちゃ分からないだろうが。諦めてるんじゃねぇ」

盗賊「おい! 世界樹よ!」

≪ おおっ、やっと世界樹に話題振りきた☆ なになに? 暇なら山手線ゲームいっちゃう? ≫

盗賊「いや、俺の話を聞け」
960 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:51:13.05 ID:2ZpPjZ910
≪ はーい。それじゃあ張り切って、どうぞ! ≫

盗賊「俺は神様が好きすぎるて仕方がないらしい……」フゥ

エルフ「は?」

盗賊「静かにしてな」

盗賊「あまりの信仰心の高さにな、こんな所まで来てしまった」

≪ 本当に!? わーい! 世界樹は世界樹たちの事が好きな人が大好き! ≫

盗賊「ああ、俺も好きだぜ。そして申し訳ないとは思う…! 神様なら多忙に追われている事も知ってのことだ…!」

盗賊「どうか、神様に合わせてほしい!」

エルフ「……」

≪ えーっ、いきなりすぎない? ちょっと張り切りすぎだと世界樹は思っちゃうなぁ ≫

盗賊「頼む……この通りだっ……!」

盗賊は立派な土下座をして見せた!

エルフ「!?」

盗賊「頼むっ……!」

≪ すごいすごい! 生土下座を世界樹は初めて見た! いいよっ、最高かも! ≫

≪ それじゃあお返しに神様に会わせてあげてもいいかなぁ ≫

盗賊(よし! チョロい!)

≪ さぁ〜! どうぞどうぞぉ〜! 上にあがっちゃって! ≫

エルフ「今ので、そんな」

盗賊「このガキも通っていいな? どうせいたって何もないはずだぜ」

≪ いいよ〜 特別に会わせたげる ≫

盗賊「行くぜ。大丈夫だ、無策だが何とかところを見せてやる」

エルフ「……おかしい」

盗賊とエルフは戦士たちを追って上階へ向かった!



≪ …………アホな人間さん可愛い〜☆ 世界樹ってば超優しい〜 ≫

≪ はーい。神様、言われた通りに全部やりましたよー。全部神様が言った通りの事も起きてくれた ≫

≪ 楽しくなると素敵だねぇ〜、むっふっふ〜 ≫
961 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/27(月) 03:55:57.07 ID:2ZpPjZ910
今回は以上です。ぼくにとって虫に囲まれることほどの恐怖はありません。

次で魔王・女勇者と神様のバトル書いたぐらいでスレ立てようか
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 06:05:36.30 ID:SVTYkmCRo

盗賊よ妖精と蟹男の敵討ち頼んだ!
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 07:06:41.97 ID:FC9ClvFa0
盗賊ちゃん見捨ててなかったんだな!よかった、よかった!
団長さんがいれば世界樹にも対抗できそうだが…結局協力の話はどうなってんだろうか
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 07:38:30.86 ID:HAzHp3cIO
虫怖い
虫怖い
地方には住めないガクブル
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/27(月) 09:34:04.69 ID:GXo/4dsIO
おつ
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/27(月) 11:45:11.07 ID:goa9eoEpo
どえらい事に気付いたかもしれ乙
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 00:02:43.51 ID:KK+PCx9IO
>>966
そのどえらい事はお前が墓の中まで持って行け
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 03:39:16.64 ID:jENjZdS+0

妖精と蟹男が可哀想すぎるよ・・・
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 07:35:02.94 ID:fu3kM5zIO
容赦ない世界観が好きじゃ
970 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:16:43.48 ID:l41WJq5c0
魔王の攻撃! 湯女の攻撃!

魔剣を片手に湯女へ突っ切る魔王! しかし、今回ばかりはそう簡単に近寄れないようだ。

湯女が一度、片手を振るえば彼女の背後に大小様々な異空間へ繋がる穴が召喚される。
穴からは灼熱の火炎に凍てつく吹雪。魔法という魔法、最大威力のものが連続発射!

湯女「お互い全力で戦いましょうかぁ。殺されても文句はなしですよ」

魔王「勿論ーッ!! だが、死ぬのは貴様のみよ!」

牙を剥く数々の魔法は全て魔王へ狙いを定めてとんでくる!

魔剣で切り裂き、打ち消すだけでは全ての攻撃を捌き切れず、何発かをその身に受けてしまう。
だが、今の魔王にとって、その程度の魔法はまるで堪えない!

強引に襲いかかる魔法の嵐を掻い潜り、着実に湯女との距離を詰めてゆくのだ。

魔王「グッハッハッハアァーーーーーーーーッッッ!!!」

女勇者「何あれ……」

女勇者「全然私が入っていく余地なし! 下手に手出したら棺桶行きだよ……」

低レベルの女勇者が目の前で行われている死闘へ参加できるわけもなく、彼女は唖然として立ち往生。
鞭を握るその手の力が一気に抜けそう。

そこへ、唐突に自身の足へ走る痛み!

女勇者「痛っ」

見ると、足には床から伸びる蔦が絡まっているのだ。
蔦は見るみる内に足から胴へと忽ち伸びてゆき、女勇者の首を絞めにかかる!

女勇者「わぁ!?」

女勇者「魔物の触手! …ううんっ、これは植物の蔦だ!」

女勇者「どうして突然……こ、このままじゃ」

蔦を手で引っ張って強引に体から引き離そうとする。が、その蔦の巻き付く力は相当のよう。
無理に剥がそうとすればするほど、体を締め付ける力は増すばかり!

女勇者「痛い痛い痛ぁいー!!」

≪ 神様を悲しませる酷い奴は、世界樹が変わって成敗してあげまぁーす! ≫

女勇者「世界樹!?」

≪ あなたは神様の子どもなのに。どうして酷い事ばかり言ったの? この……クズ! ≫

女勇者「く、クズはどっちだ…! 私はあんな人の子だなんて信じないよ!」

女勇者「何が神様よ。何が世界樹よ。私利私欲の為に人を弄んで狂わせたあなたたちの事、私は許さない!」

女勇者「勇者として、悪は滅ぼしてやるんだからぁ!」

≪ 勇者は大人しく魔王を相手にしていればいいんですぅ〜! 相場は決まってるんだからね! ≫
971 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:18:10.92 ID:l41WJq5c0
女勇者「ふんぐ、ぐ、ぐぅっ……!」

女勇者は蔦へかける力をさらに加えてゆく。自分の体が痛みに悲鳴を上げようと気にせずに!

≪ あなたバカぁー? 世界樹に抗おうというつもり? 無理無理ぃ☆ ただの劣化複製人間如きに何が… ≫

女勇者「ファイト一発ぅ!!」

女勇者は蔦を己の力のみで引き裂き、束縛から逃れた!
すぐに落ちた鞭を拾い上げて魔王へ続く!

≪ うっそぉ〜〜〜〜〜〜! 信じられませぇーん〜〜〜〜〜〜! ≫

女勇者「よっしゃあ、低レベルなんて関係ないよ!!」

魔王(邪魔な奴が邪魔しに来おったか)

魔王「そこから一歩でもこちらに近づいてみるがよい! さきに貴様の首を刎ねるッ」

女勇者「勇者さん。私を足手まといと見ないでください!」

女勇者「私だって何度も強敵と戦ってきたの。何度だってみんなと力を合わせて」

魔王「貴様すぐ死ぬかどうにかなっておったではないかカスが!」

女勇者「…………あれ、そうだっけ?」

魔王「引っ込めド阿呆娘が! マジで貴様邪魔にしかならん!」

女勇者「ひ、ひどーい!! そんな言い方ないですよ! 私だって頑張れますよ!」

魔王「貴様耳ついておらんのかァーッ!?」

湯女「……あらあら、真剣勝負に余所見は禁物では?」

魔王「!」

すぐに向き直ると、そこには次の強力な魔法発動の準備を既に終えていた湯女の姿が。
湯女はにっこり笑顔を浮かべて魔王へ天体魔法!

三本の光の帯を一斉に放つ! 光の帯は魔王、女勇者もろとも消し去りにかかった!

女勇者「うひゃあああー!!」

魔王はすぐに女勇者を引き寄せ、マントを広げて包むと、魔法の攻撃を防御する!


しゅうううぅ〜〜〜・・・


女勇者「あ、あ、あれれ……? 生きてる?」

魔王「チッ……」

湯女「あの魔法を耐えるとは、流石ですよぉ。ちょーすてきー」

湯女「どうやら調子が良くなったようですね、魔王」

女勇者「魔王って? ここに魔王はいませんよ。いるのは選ばれし勇者が2人!」

女勇者「私たちがあなたを裁く!」ビシュ

魔王「貴様は引っ込んでいろ。よいか、これが最後の忠告であるぞ…」
972 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:19:32.98 ID:l41WJq5c0
魔王(何が全力なものか。あやつ、今まで放った魔法は本気ではなかったな)

魔王(一気に余とこの使えぬクソを消しに掛ってきおった……)

魔王のマントは魔法でボロボロになってしまった!

女勇者を後ろへ突き飛ばし、魔剣を構えなおすと再び一気に距離を詰めにゆく。

湯女「あら、二人がかりでいいのに。気を使わなくて結構」

魔王「馬鹿を申すな! 余は一人で最強なのだ、他が居ては余の邪魔なだけ!」

軽く跳び上がると、そのまま魔剣を湯女へ叩きつけ……られなかった!

湯女の手には光り輝く槍が握られており、魔剣での一撃をいとも簡単に受け止めていた。

魔王はそれに動揺することなく、何度も切りつけにかかる!
がんっ、がんっ、と音が響き、火花が散り、それでもなお魔剣が湯女の体へ触れる事はない。

湯女「私は神様、それも女神様なのです♪ それを知って、何故向かってくるの?」

湯女「一端の魔族の長程度が、敵う筈もないのに」

防御の合間、強引に槍を一閃! 魔王は力負けし、魔剣を弾かれ飛ばされた!
魔剣はそのまま床を滑って部屋の端へ転がる。

魔王「魔剣!」

湯女「隙あり〜! はい、一本です」

無防備となった魔王へ槍の一撃が入る。槍は肩を貫き、刃をその血で滴らせる!

そこへ湯女は片手を魔王の腹へ向け、爆発魔法を纏った拳を叩きこんだ!


魔王「げふううぅぅ〜〜〜……ぐえぇ」グジュ


湯女「これぞ拳を極めし者の最終奥義。ばくれつけん! の真似っこ〜♪」

魔王「…………」

魔王は連続攻撃の猛威にダウンしている! 回復が必要だ。

女勇者「勇者さぁんっ!!?」

女勇者「ゆ、勇者さんを……よくも殺したなぁああ〜〜〜!!」

湯女「まだ死んではいないかと…?」

女勇者は氷の呪文を唱えた! 空中に形成された氷柱が湯女へ突撃!
しかし、湯女は魔王を盾にして氷柱を防ぎきった。氷柱は魔王に当たると刺さる事なく、砕ける。

湯女「本当に邪魔なだけなのですね。これでは子ども騙しもいいところよ」

女勇者「勇者さんごめんなさい! もういっちょ〜〜〜……」

女勇者は火炎の呪文を―――


湯女「許可しません! ダメよぉ、女の子が物騒なことしては」


女勇者は世界樹によって魔法の使用を封じられてしまった。

女勇者「あ、あれぇ!? 何で! 魔法が出てこないよー!? 魔力も十分なはずなのに…」
973 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:20:25.23 ID:l41WJq5c0
湯女「言ったはずでしょう。私は神。全てを支配する者」

湯女「あなたの魔法も行動も、全ては私の思い通りなの♪」

≪ そうですよぉー。神様は超偉大なんだから! 誰にも負けないしっ ≫

≪ だぁーかぁーらぁ、神に逆らう愚か者は早いところくたばってよぅ☆ ≫

女勇者「ひっ……」

湯女「あらあら、乱暴で困りましたね。ダメよ、世界樹?」

≪ はぁーい! ≫

女勇者「……」

湯女「この声の主は世界樹。世界のありとあらゆる記憶を記録する大樹」

湯女「あなたと私は今、その世界樹の体内にいるのよぉ。素敵でしょう♪」

女勇者「……」

女勇者は何を言われようが湯女を睨みつけたままだ。

湯女「ねぇ、どうしてそんな顔をするの。皺ができてしまいますよ…」

湯女「ほぉーら、笑顔〜」にこぉ

女勇者「私はあなたの思い通りになる人形じゃないよ」

湯女「…………は?」

女勇者「お母さんだなんて言っているけど、あなたはさっきから自分の事ばかりしか考えてないよね」

女勇者「子どもが喜ぶ事の一つでもしてみなさいよ! このっ、母親失格!」

湯女「…………私を何度悲しませたら気が済むの?」

女勇者「ふん、手が掛かる子ほど可愛いって聞くけど?」

湯女「嫌い。嫌い。勝手な事ばかり喋る子は大嫌い」

湯女「お母さんはとっても、悲しいです……」

女勇者「一々悲しむなぁー! うっとおしい!」

女勇者「気に入らないのなら、早く私に手を掛ければいいじゃない。殺してみなさい」

湯女「あ、そう? じゃあ遠慮なく……」

湯女は魔王を放って、槍を女勇者へ向けて近づく。

女勇者「いやあああぁ〜〜〜!! そこは少し躊躇うところだよ! 煽ったけど、ちょっと違うんだよぉ!」

湯女「うふふっ、可愛い♪」

女勇者「あーんっ! カッコつけてごめんなさぁーい!」

湯女「私を悲しませる残念な子。来世では良い子になって生まれてきてくださいねぇ」

?「時間稼ぎに使えただけ、まだ使えた方か」


どすっ!


湯女「がはぁっ…!?」

湯女の腹を魔剣が深々と貫いている!

女勇者「ぎゃああ! お腹から魔剣さんがこんにちはしているっ…!」

魔王「ぐふふゥ〜〜〜、先程のお返しだ。マヌケがッ!」
974 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:21:24.85 ID:l41WJq5c0
≪ か、神様ぁ! どうして! そんなー! ≫

魔王「余裕噛ましておるのが悪いのである」

湯女「がっ、げほ、けほ……ひどいぃ……」

湯女「女の人には優しくしなきゃ、めっ! ですよ……」

魔王「あァん? 聞こえんなー?」

女勇者「お、鬼……!」

魔王「何が鬼か阿呆めが。こやつは敵よ、女でもなければ男でもない。ただの敵」

魔王「さて、このまま魔剣を振り下ろすも振り上げるも余の自由」

魔王「おう貴様ァ! 裂けたい方向を申してみるがいいぞ、余がカットしてくれる!」

湯女「」

湯女の姿がぱっと消えると、2人から離れた距離に出現した。
魔剣で裂かれた腹の穴はいつのまにか、塞がり回復されている。

女勇者「これで分かったでしょう! 私と勇者さんのW勇者コンビは無敵なの!」

女勇者「神様だろうとお母さんだろうと、何も怖くないよ!」

魔王「喧しいわッ」びしっ

女勇者「あ痛ぁーっ!?」ゴチンッ

湯女「……うふふ、私ってばドジさんね。ちょーっとだけ油断しちゃった」

湯女「でもこれでおあいこになりましたね、魔王」

魔王(アンデッドでもないくせにあの回復速度は何なのだ。神どころか、化物だなァ)

女勇者「勇者さん、あの人の怪我がもう治ってるよ……」

魔王「貴様は気づくのが遅すぎるわ。よいか、次ピンチになっても貴様は助けぬ」

魔王「勝手にそこらで転がり死んでおれ」

女勇者「それはちょっと……」

≪ はーい。神様、言われた通りに全部やりましたよー ≫

≪ 楽しくなると素敵だねぇ〜、むっふっふ〜 ≫

湯女「世界樹、お疲れ様です。良い仕事をしてくれましたよ」

魔王「次はどの様な手でくるつもりだ? 余は何度でも破ってくれるぞ」

湯女「大した自信ですこと♪ でーもっ、次は簡単にいかないかと」

湯女「……さぁ、来ましたよ。お楽しみの時間です」

魔王・女勇者「?」

2人が振り向くと、そこには戦士・僧侶・魔女の姿が!

女勇者「み、みんなも私を助けに来てくれたんだね! 嬉しいよ!」

女勇者は僧侶を抱きしめに跳びついた! が、非情にも僧侶の攻撃!


魔王「邪ッッッ!!!」


魔王の攻撃! 魔王を魔剣の柄で僧侶を殴り飛ばしてしまった!

僧侶「  」どかーん!

女勇者「いやあああああぁーーー!?」
975 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:22:18.53 ID:l41WJq5c0
魔王「僧侶には最近言われ放題だったからのぅ……清々したぞ!」

女勇者「いきなり何しちゃってるんですかぁー!?」

魔王「ふん、雰囲気で気づかぬのか。こやつらは今、どうせ操られておる」

女勇者「えっ!」

湯女「ご名答〜……でも、仲間を躊躇い無く攻撃するとは思いませんでしたぁ」

魔王「馬鹿めが! こやつらは余の所有物だ、だから余の好きにしてもOKなのだ!」

湯女「…………あらー」

女勇者「さ、最低だよぉ……」

湯女「と、とにかくまぁいいでしょう♪ 私の相手の前に、まずは仲間たちと戦ってくださいな」

魔王「だそうだ、貴様ら。手加減はする必要もないな! 後で復活させればよいのだから!」

戦士・魔女「  」ススス

戦士と魔女は後ろへ下がった。

≪ うそー! 洗脳はバッチリのはずだよ! こいつ、戦闘マシーンと化したはずなのにっ ≫

女勇者「人間を何だと思っているの! やっぱりあなたたちは神様なんかじゃない!」

湯女「あなたのお友達も大概だと私思うのだけれどぉ」

魔王「よし、魔女からゆくか!? 掛って来るのだ、なぁに! 全力で構わんぞ! 余も全力で仕返すからッ!」

女勇者「勇者さぁん……」

?「お前も救えん奴だぜ……糞っ垂れ!」

魔王・女勇者「!」

女勇者「し、し、師匠ぅ〜〜〜〜〜〜っ!!」

盗賊「よくもてめぇ僧侶ちゃんぶん殴ったな!? 殺すぞっ」

魔王「あァー!?」

エルフ「私もいます」

女勇者「どなた?」
976 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:23:06.84 ID:l41WJq5c0
魔王「フン、確かパーティを私用で勝手に抜けたシスコンうんこではないか。久方ぶりで」

盗賊「うぅ……」

女勇者「勇者さん! ていうか、勝手に抜けたって」

魔王「それで今さら余の前に現れて何のつもりなのだ? あ?」

エルフ「この人を責めないであげて。この人はみんなを心配して」

盗賊「いや、責められて当然だぜ」

盗賊「……無事そうなら良かったよ。俺の出る幕はなさそうだ」

女勇者「師匠! この土壇場で何処行く気なの!」

魔王「おう、余は去る者は追わん。そして余は余以上に勝手な糞が嫌いじゃ」

魔王「つまり! 貴様の事などもう知ったこと無し!」

女勇者「勇者さんやめたげてよー! 師匠はみんなのこと嫌いになったんじゃないんだよっ」

女勇者「みんなだって師匠が好きだよ! だから、そんなに落ち込まないで!」

魔王「貴様は余計な発言か邪魔な行動しか取らんなァ! 余がリーダーである。従えッ」

女勇者「お断りです!」

ギャーギャーワーワー


湯女「……あらら、私は蚊帳の外?」キョトン

エルフ「あなたには私からお話がある」

エルフ「あの時私をこの世界へ置いて行ったのはあなた。そして、世界樹を守るように言ったのも」

湯女「ええ、私ですよぉ」

湯女「あんなに小さかった子が、もうこんなに大きく…とても可愛らしくなったのね」

エルフ「そんな事は今は関係ない」

エルフ「どうしてあなたは私に世界樹を守らせるの。他のエルフたちは何故滅んでしまったの」

湯女「知りたがり子。こうも質問責めだと神様な私も困ってしまうわ」

エルフ「困っているのはこっち。あなた……世界樹に私の大切な人が殺されました」

エルフ「早く魔法を使わせてください」

湯女「あら、復活魔法を使って蘇らせる気なのね♪」

湯女「ダメぇ。2人はあなたの役目に悪影響を及ぼす存在だと私は思います」

湯女「そして、向こうで楽しそうに喋っているあの人たちも」

魔王・女勇者・盗賊「〜〜〜」ワーワー

エルフ「これ以上は、やめてっ」

湯女「どうして? 彼らは私が創造してゆく世界にとっても必要がなくなったの」

湯女「……私には未来が見えるわ。彼らはきっと、世界樹を、この神様をいずれ滅ぼすと」

エルフ「あなたがみんなに何もしなければ、私が説得する。だからっ」

湯女「ダーメ♪」
977 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:24:16.33 ID:l41WJq5c0
戦士・僧侶・魔女「!」

停止していた三人の様子がおかしい。

戦士は突然駆け出し、女勇者をむんずと掴むと

女勇者「え、えっ……!」

壁へ向かって勢いよく放り投げてしまった! 壁へと激突してしまった女勇者は胸を押さえて苦しげに咳を込み続けてい
る。

エルフ「!」

盗賊「肉ダルマ、お前何を!!」

魔王「ようやくヤル気を見せたようだな。他の二人もそうか」

僧侶は死の呪文を唱え始めている。すぐに盗賊が口を塞ぎに向かうが、

魔女の氷魔法が妨害を働く! 氷のつぶてを含んだ嵐が吹き荒れる!

盗賊「ぐうぅっ……!」

魔王「全ての魔法の使用を禁ずるーッ!!」


\ ルール承認ッ! この場にいる全員は魔法を使えない! /


湯女(それ。その魔法が私には分からない。これが見たかったのですよ、魔王)

湯女(世界樹の記憶を辿っても、その魔法については何も出てこない)

湯女(いわゆる、魔法であって魔法ではないもの)

湯女「まるで私と世界樹が全ての生物を仕切るように、あなたは行動を自在に制限させてしまう……とても気に食わない
ですよ」

魔王「余は貴様が気に食わぬがなァッ! おい、そこのうんこ゛盗賊゛よ! 戦士どもを任せるッ」

盗賊「お、俺でいいのか!? 俺がみんなを助けてもいいのか!?」

魔王「ふん!」

魔王は面白くなさそうに盗賊を一瞬チラ見、後に魔剣を構えて湯女へ向かって行った!

盗賊「……てめぇは、何だかんだ言っても優しいとこあるよな。時々」

盗賊「かかって来な!! 勇者の次に強いこの俺が、お前ら三人纏めて相手になってやる!」

≪ そんな余裕言ってるけどー。世界樹にとってはキミもこいつら一緒の状態に変えちゃうのはどうって事ないって感じ
ィ? ≫

盗賊「!」

盗賊(世界樹に俺の全ての情報は網羅されている…それどころか、意思すら操作されちまというのか。かなりずるいぜ)

盗賊「……」

≪ このままお仲間さんに少しでも触ってみ? 一発でキミも洗脳しちゃう☆ ≫

≪ そしたらそしたらぁ〜、魔王にまた迷惑かけちゃうねぇ……どうする? ≫

盗賊(世界樹を、この樹自身へ攻撃するには何処が一番効果的だ? 燃やせば…)

≪ やだよぉ! 燃やすなんてひどぉーい! でもでも、そんな事したって無意味なんだから ≫

盗賊「えっ!?」

盗賊「し、思考が読まれているのか……!」

≪ 丸見えで〜す。えへへっ☆ ≫

盗賊「くっ!」
978 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:27:49.97 ID:l41WJq5c0
盗賊「……これじゃあ、俺に何ができるっていうんだ」

エルフ「逃げてっ」

盗賊「俺はもうこいつらから逃げないぜ!!」

戦士の攻撃! 僧侶の攻撃! 魔女の攻撃!

三人にそれぞれ攻撃され、盗賊はボコボコに!
身を丸めて頭を抱えていても、三人は盗賊を蹴って殴っての繰り返し。

エルフ「どうして……」

盗賊「うっ、ううぅ……! やめてくれぇ……僧侶ちゃん。お前ら……っ」

≪ 手を出して早く洗脳され、楽になった方が身の為じゃない? ほーらぁ ≫

盗賊「嫌だ! 今ここでアイツの足枷になるわけにはいかねぇんだ!」

盗賊「お、俺はこいつらを裏切っちまった! だけど、だけどっ」

≪ 中々に甘ちゃんな人間ですねぇー。大した事も、世界樹を相手にする事もできないくせに ≫

盗賊の体は仲間たちの攻撃によって、既にボロボロだ。
それでもなお、三人は盗賊に乱暴を続けている。

盗賊「げほっ! ぐぇぁ…おえっ……はぁ、はぁ、うぅ!」ボロボロ

≪ 奇跡が起きてお仲間の目が覚めてくれると思ってたりはしませーん? ないよ、そんなの。現実は貴方のように甘くは
ないのだー! ≫

≪ そのままだと、大好きなあの子にも、殴り殺されちゃうよ。こわいよーそういうのー ≫

盗賊「やめてくれ…やめてくれぇ…」

盗賊にできる事は必死に仲間たちへ制止を訴えかけるだけ。しかし、その声も弱々しくなってきている。


「師匠っ!!!」


盗賊「え…………?」

女勇者「みんなを攻撃して! 早く!」

盗賊「ば、ばかかお前は…そんな事をすれば、おれはこいつと一緒にお前を…」

女勇者「私がなんとかする!! 信じて、盗賊師匠!!」

盗賊(アイツ信用して良い事あったっけ……まぁ、いいか!)

盗賊「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーッ!!!」

盗賊は力を振り絞り、目の前にいた魔女を引き倒した!
続けざまにナイフの柄でこめかみを殴りつける! 魔女は気を失ってしまった。

≪ はぁーい!! 約束通り、あなたも世果樹に忠実なお人形にしちゃいまぁーす!! ばーかっ ≫

女勇者「そんなの、私が許さないんだからね!」

なんと 女勇者の両手が眩しく輝き始めた!

エルフ「とても大きな魔力が集まっています。その手に……見た事も、ないような」

女勇者「よーし! うりゃっ」

そのまま盗賊へ駆け寄ると、盗賊を両手でタッチ!

盗賊「お前その手どうしたぁー!?」

女勇者「……あの人が言ってた。私の中には複製の力が、ちょっぴりあるんだって」

女勇者「今だけ、あの言葉を信じてみるよ!」

女勇者が何もない空間に向かって、両手を向けると・・・盗賊が現れた。

盗賊?『……』

女勇者・盗賊「!?」
979 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:32:48.66 ID:l41WJq5c0
盗賊「え、え、え」

エルフ「一人増えた?」

女勇者「できた……師匠、2号……!」

盗賊「そういう問題じゃねぇ!! お前、アレ何だ!! それより何したんだぁ!?」

女勇者「コピー……かなぁ?」

盗賊「はぁ……?」

≪ あれ、あれ、あれれ〜〜〜!? ≫

≪ どうしてこっちの方!? 世界樹は確かに、本物の方を狙ったよー!? ≫

盗賊?『……』

盗賊?は女勇者と盗賊へ襲いかかってきた!

盗賊は女勇者を後ろへ引き、向かってきた盗賊?を蹴り飛ばす!

盗賊「……何がなんだか。俺が出てきて、俺に攻撃してきやがる」

盗賊「お前が作った俺は敵なのかーッ!? てめぇ、敵増やしてどうしやがる!」

女勇者「こ、こうするしか師匠を世界樹から守る方法がわからなかったの」

盗賊「えっ」

女勇者「もう一人の師匠を作れば、世界樹が混乱して間違うかなって…思いまして。はい」

盗賊「なるほど、身代わりか!」

エルフ「上手く世界樹を混乱させられている。たぶん、成功」

女勇者「よし、結果オーライだね!」

≪ あ、あ、あああー! 神様ぁ! 洗脳解いてから本物狙っても操れない! どうして! ≫


湯女「……いつの間にか、力を開花させていたとは」

湯女「腐っても゛コピー゛。私の子ですね」

魔王「何をぐちゃぐちゃほざいておる。貴様の相手は余だ」

魔王「次は邪魔も何もされる心配もあるまい。なぁ?」

湯女「ええ、本当の真剣勝負といきましょうかぁ……」

湯女が指をパチン!とならすと、魔王と湯女の姿が部屋から消えてしまった。


エルフ「あっ、神様が、いない?」

盗賊「今はそれどころじゃねぇぜ。ええいっ、肉ダルマがうっとおしい!」

女勇者「このコピー師匠滅茶苦茶雑魚いですよ! 私でも何とかできるかも!」

盗賊?『……』ボコボコ

≪ か、神様ぁー! 世界樹を一人にしないでよぉー! ≫


その時、魔王の気配につられて、新たに世界樹の中へ侵入した者が一人。


「ふぅー……とーっても苦労させられましたよ。こんな所にいらっしゃるのですね」ガシャン、ガシャン

「!」

側近「魔王様ぁ〜……!!!」
980 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/08/30(木) 06:35:10.17 ID:l41WJq5c0
ここまで。3スレ目もここまで 続きは次のスレでー

時間に余裕でき次第、次スレ立ててここにURL張っておく
981 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 07:32:14.20 ID:Z33AI50SO
側近ちゃん来た!これでかつる!

乙です
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/08/30(木) 07:57:49.01 ID:s8STfGofo
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 08:24:57.22 ID:KHiBzFpIO
側近たんだ!
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 08:27:31.82 ID:BdXlLqK+o
減速減速
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 09:01:17.43 ID:O3bl+fU60
魔王ちゃんが初めて力負けしたな
乙!次スレも追うぜ
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/08/30(木) 14:20:32.55 ID:W65OxFT8o
死んだらアンデット化か?
頼もしい乙乙
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 15:50:56.91 ID:Rzg+pMEIO
側近きたか
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 10:53:26.55 ID:CLMhSXzDO

側近、やっと魔王様に会えるんだな
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 12:10:44.87 ID:dI+sCUsg0
いや、でも運悪く魔王ちゃんどっかにいなくなってないか
側近たん中々魔王ちゃんにエンカウントできないねー・・・
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/01(土) 19:09:06.03 ID:Nyn79MiIO
じらしプレイって感じか?
991 : ◆KzQg0Q/KK6 [sagesaga]:2012/09/03(月) 04:34:38.73 ID:rEsJsVLL0
いえーい次スレつくったよ

その4 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346613727/#footer
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 05:14:25.44 ID:EYTH9+5Z0
乙!残りは埋めてしまうか
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/09/03(月) 07:48:05.91 ID:c98h5PfCo
梅乙
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 07:54:06.25 ID:yIHZLvUIO
梅つ
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/09/03(月) 10:14:52.77 ID:GAskgmJAO
ゆすらうめ
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/03(月) 14:25:47.35 ID:8RzxM6Cvo
うめちゃえ
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/03(月) 15:39:49.27 ID:ZY+uhClDO
うめ
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/03(月) 16:02:58.61 ID:+yfY/tqHo
うめ
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/03(月) 18:13:34.72 ID:RdJG1egwo
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/03(月) 18:31:15.20 ID:8RzxM6Cvo
uje
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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    '.o  r┐   *   ヽ、 ヽ、_     ,..-=ニ_
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      `ー-、_    く´ =@    /     ヽ  
         ,!     `!  l              ヽ、__ノ    このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
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小学校で体験済みってありなの? @ 2012/09/03(月) 18:28:16.65 ID:Uv73+5+X0
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どうしようもなくksなナースのたまごなんだが @ 2012/09/03(月) 18:11:53.76 ID:1jbA850DO
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嫁宣言して60分以内に嫁AAにお断りされなければ結婚避難所 @ 2012/09/03(月) 18:08:32.39 ID:yx/P5RBIO
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ヤタ-----------!!!ジャモラできYO−−−!!!! @ 2012/09/03(月) 18:02:58.80 ID:E8oKoiUD0
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P4Uで最強の力が星井の @ 2012/09/03(月) 17:33:41.42 ID:1eGRb3beo
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男「裸族に捕まってしまった」 @ 2012/09/03(月) 14:54:01.47 ID:j/oOByTbo
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悠「宇宙?」弦太郎「ペルソナ?」 @ 2012/09/03(月) 14:28:06.58 ID:Cf6fYJMao
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静岡から自転車で佐多岬まで行く Part3 @ 2012/09/03(月) 12:47:32.84 ID:gMFSQxtFo
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