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照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」【咲-saki-】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga]:2012/08/01(水) 01:34:32.06 ID:5tUPLJ+90
SS初投稿です

咲-saki-のifです

東京に行ったのが咲で、長野に残ったのが照という設定です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1343752471
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/01(水) 01:35:53.43 ID:5tUPLJ+90
-2年前-

照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」

照(咲が東京に行ってしまってからもう麻雀はしてなかったけれど・・)

トントン

照(麻雀部の文字を見たとたん、こんなに胸がうずくのはどうしてだろう)

久「どうぞ」

照「失礼します」

久「入部希望かしら?」

照「いえ、そういうつもりではなかったんですが」

久「と言っても、私もまだ部員じゃないんだけどね」

照「え?」

久「私も一年生なの、それに麻雀部は去年で部員0。だから、麻雀部に入るなら、まず活動再開するところからはじめないといけないのよ」

照(よくよく見れば同じ色のスカーフ・・・。同い年だったのか)

照「そうですか・・・」

久「同じ一年でしょ、敬語なんていいわよ。私は竹井久、あなたは?」

照「宮永、宮永照です」

久「だから敬語はいいってば」


それが私と、久との出会いだった----
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 01:36:50.60 ID:TbgVSlVqo
はい、続けて
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/01(水) 01:36:59.19 ID:5tUPLJ+90
久「結構勧誘したつもりなんだけどねー、結局2人きりか」

照「麻雀をやりたければ、普通は風越に行くからな」

久「まあ、来年に期待ってところかしらねぇ」

照「でもとりあえず部活としては再開できたし、個人戦には出られる」

久「えー、私パス」

照「なっ、どうしてだ。個人戦でいい成績を残せば部活に入ってくれる人だって出てくるかも知れないじゃないか」

久「ちょ、照。顔近いってば」カァァァ

照「あ、ごめん」カァァァ

久「まあ、その、私にもいろいろあるのよ。団体の方が好きだし」

照「だったらっ」

久「だから顔近いってばっ」カァァァ

照「私が全国に行ったら、来年は久にも出てほしい」

久「照だったら、全国なんて余裕でしょ・・・」

照「だったら優勝する、それならいいのか?」

久「なんでそんなに必死なのよ」カァァァ

照「だって、このまま部員が集まらなかったら。そのまま個人戦にも出なかったら、一緒に全国に行けないじゃないか」

久「分かったわよ、優勝したら来年は出てあげるわよ。だからちょっと離れてっ」

照「あ、その、ごめん」カァァァ

久「ま、まあ、roof-topのまこは押さえてあるし、来年にはもう少し期待持てるんじゃない」

照「だと、いいけどな」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/01(水) 01:38:36.82 ID:5tUPLJ+90
-全国大会決勝-

実況「無名の長野清澄高校から突如現れた新星、宮永照!!」

解説「清一手、これをツモれば下家を飛ばして優勝ですね」

実況「その宮永、赤5ピンツモォ!! 怒涛の10連荘で優勝を決めたーー!!」

解説「すごい選手が現れましたねぇ、今後が楽しみです」




久「はぁ、ほんとに優勝しちゃうなんてね」

照「約束、覚えてるよね」

久「うーん、なんだったかしら?」

照「忘れたのか? 久の手料理を毎日食べさせてくれる、だぞ」

久「はぁ、花嫁修業の一環としてあきらめるしかないわね」

照「・・・・・・・」

久「・・・・・・・」

照「花嫁だなんて、照れるじゃないか」

久「はぁ、もういいわよ・・・。手料理に変更するわけじゃないんでしょ?」

照「いや、そう言われるとちょっと悩む」

久「そう、どんどん悩んでくれていいわよ、その方が私も助かるし」

照「そんなに個人戦は、嫌なのか?」

久「まあちょっとね、トラウマっていうか・・・」

照「トラウマなら、しょうがないな・・・。その、私にもあるし」

久「へー、それは聞き捨てならないな」

照「・・私には妹がいる。でも、今は東京にいて、ぜんぜん連絡もとれてない」

久「そうなんだ。さみしい?」

照「さみしい。でも、私にはそんなことを言う資格なんてない。私は妹に、咲に嫌われているから」

久「どうしてそう思うの?」

照「昔は家族麻雀をしてたんだ。でも咲が勝つと悔しくて怒っちゃったり、負けたら負けたで泣いちゃうし」

久「まあ、小さいときに妹に負けたら悔しいわよねぇ」

照「そのうち咲は、プラマイ0でいつも終わるようになった・・・」

久「え、プラマイ0?」

照「私の10連荘なんかより、咲のプラマイ0連続10回の方がすごいと思ってる。でもそれは、麻雀を楽しんで打ってるんじゃない。咲にとっては苦痛でしかなかったと思うんだ」

久(幼いころとはいえ、照相手に10回連続プラマイ0・・・。一体どんな子なのよ)

照「別れ際に言われたんだ「お姉ちゃんも、麻雀も大嫌い」って。楽しいと思ってたのは、私だけだった」

久「でも今は、こうして麻雀してるじゃない」(抱き)

照(あったかい・・・)

久「私は楽しいわよ、照と打つの」

照「私だってそうだ。でも、やっぱり消えないんだ。あの大嫌いって言葉は。私の中に、いつまでも残ってる・・・」

久「じゃあ、そんな言葉消えるくらい私が好きって言ってあげる」

照「・・・ありがとう」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/01(水) 01:39:44.64 ID:5tUPLJ+90
-1年前-

まこ「どうせわしの入部シーンとかキンクリじゃけぇのぉ」

久「結局入部したのもまこだけだったしね」

照「清澄はまた団体には出れず、久も個人戦には出場せず、私は2年連続でインターハイを制した」

久「説明ご苦労様」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:40:56.66 ID:5tUPLJ+90
-そして照・久は3年生になった-
-その春-

優希「清澄にはインターハイチャンピョンの宮永照がいるんだじぇ」

和「そうなんですか、名前は知っていますけど、清澄にいるとは思いませんでした」

優希「のどちゃんは麻雀強いのにそういう情報はからっきしだじぇ」

和「あ、着きましたよ。麻雀部」

優希「失礼するじぇ!」

久「あらいらっしゃい、入部希望かしら」

和「はい、よろしくお願いします」

まこ「って、全中チャンピョンの原村和」

和「いえそんな、たまたまです」

久「あらほんと、びっくり」

まこ「ぜんぜん驚いとらんの」

久「合格発表のときにチェック済だしねー」

優希「そんなことよりインターハイチャンピョンはどこだじぇ!」

照「ここですけど」

優希「うわっ、突然現れたじぇ。さすがチャンピョンだじぇ」

照「あなたたちが新入部員さんですか? 私は宮永照です、一緒にがんばりましょうね」(営業スマイル)

久「照、ここでは営業スマイルは禁止って言ったでしょ」

照「え、でもせっかく2人も来てくれたのに。やっぱり第一印象が良くないと・・・」

久「部活中もそんな営業スマイルされたらこっちが嫌いになるわよ」

照「えー、それは困る・・・。こほん、私が宮永照だ、よろしく頼む」

和「は、はあ・・」

優希「なんだかちょっと変わったチャンピョンだじぇ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:42:49.83 ID:5tUPLJ+90
-5月-

久「はい、今週のウィークリー麻雀」

まこ「お、春季大会の牌譜がでとるのぉ。優勝は白糸台、チーム虎姫は今年も健在、か」

和「虎姫? なんですか、それは?」

まこ「ほんとに対戦相手に興味のないやつじゃの。わしらと違って白糸台は部員百人余りを抱える大所帯の名門校。その中でも一軍メンバーがチーム虎姫」

優希「インハイ団体戦2連覇中! だけど、今年はチャンピョン2人いる我ら清澄がぶちぬくじぇ!」

まこ「で、そのチャンプはどこ行ったんじゃ」

照「ここだ」

優希「相変わらずいきなり出てくるじぇ」

照「日直で遅くなった。あ、ウィークリー麻雀、読みたい」

久「とりあえず全員集まったし、打ちますか。照は読み終わったら入りなさい」

照「分かった」



優希「リータン一発ツモドラドラ、裏が2つ乗って倍満だじぇ!」

和「1000バックで」

まこ「親っかぶりか、ほんとに東場に強いの」

優希「東場は私の独壇場だじぇ!」

照「ぐすっ、ぐすっ」

久「・・・・どうしたの照?」

まこ「なに突然泣いとるんじゃ?」

照「咲が、咲が麻雀してるっ・・・」

和「咲?」

久「えっと、ちょっと中断ね。照、咲って、あの時言ってた妹さん?」

照「そう・・・」

久「ちょっと見せて」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:44:03.20 ID:5tUPLJ+90
-チーム虎姫、新星登場!

-層の厚い白糸台が、選抜春季大会に1年生を2人投入してきた。春から1年生出場は異例。

-メンバー入れ替え自由な春季大会のため、すべての試合に出場したわけではないが、卒業していった歴代虎姫をしのぐ活躍が期待される

-一人は大星淡、もう一人は宮永咲。

-そんな彼女たちの素顔に、次週迫るっ!
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:45:00.71 ID:5tUPLJ+90
照「麻雀なんて大嫌いって言ってたのに、また麻雀するようになったんだね・・・」

まこ「あー、話が見えんのじゃが・・・」

久「照には東京に住む妹さんがいるのよ。それが咲って子なんだけど」

和「離れて暮らしてらっしゃるんですか?」

久「まあ、ちょっと複雑みたいでね」

照「よかった、私のせいで麻雀が嫌いになって、もう麻雀はしてくれないと思ってたけど・・・・」

久「照・・・」

照「よかった・・・・」

優希「つまりー、どういうことだじぇ?」

和「・・・あの、今日はお開きにしましょうか?」

久「うーん、どうする照? 話しちゃってもいいかしら?」

照「いい、自分で話す」



照「というわけで、咲が麻雀してくれて、少しだけ救われた気持ちになれた」

まこ「そうじゃったのか・・・」

和「それなら全国に行けば、会えるかもしれませんね」

照「え?」

優希「そうだじぇ、その咲って子もきっと白糸台から全国に来るじぇ」

久「そうね、幸いにしてこれ以上ない面子が揃ったし、全国に行って咲ちゃんと麻雀しましょう」

まこ「そうと決まれば、続きじゃの。特訓じゃ」

照「みんな・・・・ありがとう!」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:46:04.96 ID:5tUPLJ+90
-白糸台-

記者「ところで宮永さん、チャンピョンと同じ名字ですけども、もしかして姉妹だったりします?」

咲「いえ、チャンピョンはすごい打ち手で戦う機会があればいいなぁとは思いますけど、姉妹だなんてとんでもないです」

記者「そうですか、それでは大星さん、宮永さん、取材にご協力いただきありがとうございました」

咲&淡「こちらこそありがとうございました」


淡「咲ちゃん、どうせなら公表しちゃえばよかったのにー」

咲「何言ってるの? それじゃあ面白くないじゃない」

淡「ふふ、まあいいけど。ま、とにかく早いところ2人でレギュラー取っちゃおうよ」

咲「そうだね」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:47:14.79 ID:5tUPLJ+90
-長野県予選 当日-

先鋒 片岡優希
次鋒 染谷まこ
中堅 竹井久
副将 原村和
大将 宮永照

まこ「決勝戦副将戦までは原作通りとしてキンクリじゃあ」



照「よし、じゃあ行ってくる」

和「お願いします、先輩」

優希「頼んだじぇ!」

まこ「チャンプの意地を見せちゃれ!」

久「照」

照「ん?」

久「いつも通りにね」

照「分かってる」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 01:47:41.86 ID:k3u9iDuZo
チャンピオン、のほうがいいぜ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:49:03.80 ID:5tUPLJ+90
-決勝 大将戦-

実況「さあ長野県予選もいよいよ決勝大将戦を残すのみ」

実況「名門風越復活なるか、大将は2年生池田華菜」

実況「今大会のダークホース、鶴賀学園は3年生加治木ゆみ」

実況「インターハイ個人2連覇中、清澄高校は大将宮永照。しかし団体戦は初出場。前年中学チャンプからインターハイチャンプへの豪華なリレーです」

実況「そして前年度長野県代表龍門渕高校、インターハイでも数々の成績を残した天江衣が大将です。2年連続の県予選突破なるか」

藤田「去年の全国個人戦でも、宮永照と天江衣の対戦はない。これは楽しみだな」

東 衣  101200
南 照  114900
西 華菜 81300
北 ゆみ 102600
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:51:06.32 ID:5tUPLJ+90
ゆみ(さて、大変な卓に入ってしまったな。まあ、貴重な体験と思うべきか・・・。全国クラスの魔物2人と戦う機会が得られたこと、みんなに感謝だ・・・)

華菜(トップとは33600点差、去年の天江だけでも大変だったのに、チャンプまで出てくるとかマジしんどいし)

照 (ま、東一は様子見)

衣 (清澄の大将、楽しませてくれよ)
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:53:22.70 ID:5tUPLJ+90
>>13
ありがとうございます
眠くなるまでがんばります
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:55:03.62 ID:5tUPLJ+90
-東1局-

ゆみ「リーチタンヤオツモ、1000、2000」

実況「先制は鶴賀の加治木です」

ゆみ(東1で上がり逃せば、ズルズル行ってしまうからな。チャンプ相手に、どこまでいけるか・・)


-東2局-

照「ツモのみ、500オール」

照「ロン、タンヤオドラ1。2900は3200」

華菜「むー、はいっ」

照(天江衣、そろそろだな・・・)

衣「無聊を託つ」

衣「つまらない上がりだな、清澄。そろそろ御戸開きと行こうか」ゴッ

照(来たな、海底ルートか)
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 01:58:16.46 ID:5tUPLJ+90
-東2局-
ドラ:五萬

照 配牌:一四五六AF389東西北白中

照(ドラ五萬含みの1面子、か・・・でも)

打 五萬

ゆみ「チー」

実況「なんと宮永照、面子になっているドラをいきなり切ったっ。そのドラを加治木、速攻のチー」

ゆみ(早いのか、それともチャンタ手なのか? なんにせよこれ以上連荘はさせない)

衣(シャンテン数が落ちた? 何を考える、清澄・・・)

華菜(配牌イーシャンテン、ここで巻き返すしっ)


-6巡目-

藤田「打五萬で加治木に鳴かせ、天江のツモを食い取ったな・・・・だが、天江の支配はその程度では抜けられない」

実況「ここで宮永照、さきほど切ったドラを引き返したっ」

照手牌 四五六ADF89東東西西北 →打A

照(イーシャンテン、でもここからが問題だな・・・)

ゆみ「ポン」

実況「加治木、ここでポン、タンヤオ手で宮永の親を流せるのか」

藤田「海底ルートに入ったな、さあどうする宮永照」

ゆみ(2鳴きでようやくイーシャンテン・・)

華菜(ダメだし、これじゃあ天江が海底・・、こっちは配牌イーシャンテンなのに役がないから鳴けないし手も動かない)
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/01(水) 02:03:16.40 ID:nnRejkKR0
支援支援アンド支援
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:03:24.22 ID:5tUPLJ+90
-12巡目-
照手配 四五六DF5(赤)67東東西西北  ツモ:西

実況「おっと、ここで宮永選手テンパイです」

藤田「役がないな、リーチに出るか?」

照(リーチすれば、リーチドラ2、打点はクリア・・・西が暗刻だなんて、まるで咲みたい)

照(だからこそ、これはきっとツモれない・・・)

打 東

実況「どういうことでしょう、この巡目に来てリーチはおろかテンパイすらとりません」

藤田「東は天江と持ち持ち、さらに6ピンは風越が暗刻、鶴賀が1枚捨てているからツモはない。客観的には上がり目無しだが、それを感じたというのか?」

衣(東・・・鳴けば待ちが変わる。それにしてもここで東を見切るとは・・・)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:05:31.77 ID:5tUPLJ+90
-17順目-
ゆみ(なんだこれは、イーシャンテンからまったく動かない・・・)

華菜(鳴けないっ、ここままじゃ天江の海底)

衣(楽しませてくれるかと思ったが、なんのことはない、こいつらもただの有象無象)

衣「リーチ」

実況「ここで天江選手、リーチ。しかし残されたツモは海底のみです」

照「ポン」

衣「なにっ」

実況「おっと、ここで宮永選手が前順重ねた北をポン、しかし役無し、何を切る?」

藤田「いや、これでツモ順がずれて海底は宮永だな」

照手牌 四五六FH5(赤)67西西西 北-北北 →打:西

実況「西切りで間8ピンに受けました」

藤田「これが宮永照・・・」

衣(衣の海底が、清澄に・・・)
衣手牌 一一二二三三FH123東東 →打:白

照「ツモ、海底ドラドラ、2200オール」

照手牌 四五六FH5(赤)67-西西 北-北北  ツモ:G

衣(どうやら見くびっていたようだな・・・清澄の大将)
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:06:59.47 ID:5tUPLJ+90
-そして-

実況「ついに決着ー! 長野県代表は清澄高校。龍門渕天江の追撃をかわし、悲願の初出場です」

衣「楽しませてもらったぞ、清澄」

照「こちらこそ」

ゆみ「まだまだ足元にも及ばないが、また手合わせ願いたいものだ」

華菜「あたしだって絶対リベンジするしっ」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:08:29.58 ID:5tUPLJ+90
-その日の夜-
-部室-

久「全国か、いざ出場となってみると実感がわかないわね・・」

照「そうだな」

久「いやいや、あなたインハイ2回も出てるでしょう?」

照「久と行く全国は、初めてだぞ。結局去年も個人戦に出てくれなかったしな」

久「今年は出るってば」

照「出なくて手料理でも良かったんだが」

久「どっちなのよ・・・」

照「どっちもしてくれれば、より嬉しい」

久「毎日お弁当つくるのにはもうこりたわ」

照「それは残念だな」

久「それにしてもホント、夢オチなんじゃないかって、ふと思っちゃったりするのよね」

照「2年前のことを思えば、そう思っても仕方がないが・・・それでもこれは現実だよ」

久「そうね。本当にありがとう、照」

照「・・・・礼を言うのはこちらだよ。久があの時部室にいなかったら、私はまた麻雀をしようなんて思わなかった」

久「私だって・・・あの日誰も来なかったら、諦めてたかもしれないわ」

照「だったら、お互い感謝だな」

久「そうね・・・。ああ、そういえば」

照「どうした?」

久「西東京の結果も出てるんじゃないかしら? ちょっと確認してみましょうか?」

照「・・・急に言われても、心の準備が出来てない」

久「いつ見たって一緒よ。西東京は白糸台ね、もう牌譜まで速報で出てるのね・・・」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:10:39.20 ID:5tUPLJ+90
照「咲は?」

久「あらあら、心の準備はもう整ったの?」

照「整ってはいないが、気になるものは気になるのだから仕方ない」

久「あら、先鋒なのね。先鋒宮永咲、華麗なる嶺上開花、か」

照「・・・・咲が、こんな牌譜」

久「確かに、正直言ってえげつないわね。予選の初戦、先鋒の全員0点にして次鋒に回すとか・・・」

照「私のせいだ。こんな、麻雀を憎んだ打ち方」

久「麻雀は勝ちを目指すもの、だけど負けた人を弄ぶようなことはしてはいけないわ。照、あなたはそんなことは分かっているかもしれないけれど、この子は麻雀を見失っているわ」

照「私のせいで、こんなことに」

久「あなたのせいかどうかなんて分からない。でも、この子を止められるのは・・・照、あなただけよ」

照「私、だけ・・・でも、私のせいで咲は」

久「だからこそよ、あの子を狂わせたと思うのなら、あなたが救いなさい」

照「私が、救う?」

久「そうよ。それに、こんなところでうじうじ考えたって、あの咲って子があんな打ち方をする理由なんて分からないでしょう。だったら直接確かめなさい。そうしないと、あなただって麻雀を楽しめなくなってしまうわよ」

照「・・・牌譜」

久「え?」

照「その速報の牌譜、プリントアウトして」

久「照・・・」

照「オーダーの変更はできないから私は直接戦えない。でも、この牌譜から少しでも見えるものがあるなら、私はそれを優希に伝える・・・」

久「そうね、じゃあちょっと待っててね」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:11:58.74 ID:5tUPLJ+90
-同日、白糸台-
-部室-

TV実況「ついに決着ー! 長野県代表は清澄高校。龍門渕天江の追撃をかわし、悲願の初出場です」

淡「さすがの宮永照も、あの天江衣には苦しんだようね」

咲「大将にしてもらえばよかったよ、直接潰せないんじゃ面白くないな」

淡「まあいいじゃない、先鋒でトバして出番なしってのも面白いんじゃないの? 私がチャンピオン叩き潰してあげてもいいけど、出番なく敗れるってのも屈辱じゃない?」

咲「ほんと、それくらいしか楽しみがないね」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:13:09.31 ID:5tUPLJ+90
-全国大会 抽選会終了後-

優希「白糸台とは反対側になっちゃったじぇ」

和「まあ、どこで当たるかが変わるだけですけどね」

まこ「余裕じゃのぉ、全国じゃあそう簡単には勝ちあがれんぞ」

久「とりあえず今日のところは自由行動にしましょう、羽目を外し過ぎないようにね」

照「・・・私は対戦相手の牌譜を見たいからホテルに戻る」

久「ダーメ。部長命令よ、今日は牌譜見るの禁止」

照「全国はそんな甘いところじゃないって今まこも言ったばかりじゃないか」

久「だからこそよ、リフレッシュも大事。先に進めば進むほど、休みなんて取れなくなるんだからね」

優希「東京のタコス巡りしてタコス力をアップさせたいじぇ!」

照「でも私はっ」

久「じゃあ民主的に多数決にしましょうか」

照「はぁ、そんなの勝ち目がないじゃないか・・・」

久「ではこれより自由行動、各自夕食を済ませて夜7時半にホテルに集合、その後簡単にミーティング。いいわね」

久「じゃあ解散!」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:14:43.20 ID:5tUPLJ+90
照「久は強引・・・」

久「あら、そうでもしないとあなたホテルから出ないでしょう?」

照「大会前はいつもそうしてるからな」

久「そこまでするなとは言わないけど、あんまり思い詰めてほしくないのよ」

照「思い詰めてなんかっ・・・いや、思い詰めているのかもしれないな。久にはそう見えるんだろうし」

久「今日だけは麻雀のことは忘れなさい。ほら、バスが来るわよ」

照「ああ、努力する・・・」

久「さて、5つ目のバス停で降りるわよ。あそこの席が空いてるわね。東京はごちゃごちゃしてるから、はぐれないでよ」

照「・・・気をつける。手、握ってもいい?」

久「恥ずかしいじゃない。座ってる間だけよ・・・」

照「それでいい」

久「照、本当は少し怖かったんでしょ。自由行動なんてしてたら、咲ちゃんに偶然出会ってしまうかもって」

照「久にはなんでもお見通しなんだな」

久「なんでもって訳じゃないけどさ、想像の範囲内よ。それに家族の離散っていうのは、他人ごとじゃないしね」

照「・・・・聞かないようにしてきたし、私を慰めるために身を切らなくてもいい」

久「あなただけじゃないんだから、そんなに気負わないでって話よ。私はもともと上埜って名字だったの。だけど中学の時に両親が離婚してね、母方の竹井って苗字になったのよ」

照「・・風越のキャプテンから、少しだけ聞いた」

久「正直、中学の時に福路さんと当たってたなんてほとんど覚えてないんだけどさ。ま、とにかくうちの両親の場合は、仕事の時間がとにかく合わなくてね、父さんは夜勤で母さんは普通に事務。そうやってだんだんすれ違って、お互いの心が見えなくなってしまった。だからなおさら思うのよ、あなたたち姉妹も、どこかで歯車が合わなくなってしまっただけで、何かきっかけがあれば仲良くなれるんじゃないかってね」

照「久・・・」

久「まあそういうことだし、部のみんなだってあなたの味方よ。だから、あんまり一人で抱え込まないでね」

照「本当に久には助けられてばかりだな・・・」

久(とはいえ、あの咲って子の打ち筋、いくら合同合宿で優希もレベルが上がってきたとはいえ、もう少し何か考えないと潰されかねない・・・)


その後、清澄は順調に決勝戦まで勝ち進んだ。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:16:06.67 ID:5tUPLJ+90
-Aブロック準決勝-

実況「さあ始まりました、Aブロック準決勝。決勝に進めるのは2チーム。順調に勝ち上がってきたシード校の千里山に王者白糸台。対するは福岡の名門新道寺に10年ぶり出場の阿知賀女子。開局です」


煌「宮永さん、前回は私を飛ばそうと躍起になっておられましたが、今回は負けませんよ。お互い、すばらな戦いをしましょう」

煌(私が飛んだことがないと知ってか、宮永さんは私を狙い打ちにしてきましたが、それでも飛ばない私、すばらですっ)

咲「よろしくお願いします」

咲(今度こそ飛ばす。すばらすばらって、うっとうしいし)

玄「よろしくお願いしますっ」

玄(宮永咲さん・・・白糸台の白い悪魔なんて呼ばれてる人、一緒に打ちたくないよねーなんて言ってたけど、私これからこの人と打たないといけないの・・)

怜「よろしゅう」

怜(宮永咲、嶺上開花が注目されがちやけど・・・)
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:17:46.99 ID:5tUPLJ+90
船久保「ええですか、白糸台先鋒の宮永咲。まず特筆すべきこととして、嶺上開花での上がり率は異常ですわ、上がらなくとも確実に有効牌を引くんですわ」

竜華「確かに、役無しの状態からカンして嶺上だけで上がるとか多いなー」

セーラ「こりゃ、嶺上牌が見えとるとしか思えんなー」

船久保「そうです、園城寺先輩が1巡先が見えるように、この宮永咲には嶺上牌やカン材が見えとると考えていいでしょう」

怜「カンされないように打ち回さなアカンちゅうことやな」

泉「まずってゆうてましたけど、他にも何かあるんですか?」

船久保「正直言って、えげつない打ち手ですわ」

セーラ「えげつないって、どれくらいえげつないん?」

船久保「西東京地区予選の初戦で、先鋒全員を0点にしたというのは有名な話です」

竜華「なんやのそれ、途中で誰もとばへんかったんか?」

船久保「ええ、他3校は成す術なく削られとります。しかも宮永自身、誰かを飛ばそうと思えば飛ばせる場面が何度もありました。でもそれを全部見逃し、全員0点に調整してのけたんです」

怜「そりゃ、えげつないな・・・。うち、そんなのと戦うんか、死ぬな」

船久保「あと、徹底的な狙い撃ちが特徴ですわ。西東京の決勝で、個人戦8位の西東京第二高校の松河合っていう早上がりに定評のある選手がおるんですが、さすがにとびはしなかったものの一回もあがらせてもらえず、しかも宮永は松河合以外からの出上がりは一切しないという徹底ぶりだったそうですわ」

怜「・・・狙われたらほんとに死ぬかもしれん」



怜(前回は新道寺を狙い撃ち。3校の中で一番強いと思うところを狙い打ちにするんやったら・・・狙われるのはうちなんかなぁ)
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:20:30.19 ID:5tUPLJ+90
-東1局-
-8巡目-
親:宮永咲
ドラ:2ピン

煌 打:発

咲「カン」

煌(カンされてしまいましたか・・・嶺上で責任払いでしょうか・・)

咲 打:一萬(ツモ切り) カンドラ:八萬

咲「どうぞ」

煌「え、ああ、失礼しました」

怜(嶺上やない上にツモ切りってどういうことや)

煌 打:1ピン

咲「カン」

煌「すばらっ」

咲 打:3ピン(手出し) カンドラ:2ソウ

煌(今度は手出し、さすがにテンパイでしょうね。それにしても・・・・)

玄 カタカタカタカタ

怜(なんや、阿知賀が震えとる・・・)
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:22:42.98 ID:5tUPLJ+90
玄 手牌:八八AAAD(赤)D(赤)2225(赤)68 ツモ:八 →打:8

玄(タンヤオ三暗刻ドラ12、数え役満テンパイ。手牌がほとんど全部ドラだよぉ)

玄 手牌:八八八AAAD(赤)D(赤)2225(赤)6

怜(・・・カンドラも乗っとるんやろうか。ドラ10とか平気で言ってきそうやし、注意しとかんとな)
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:23:56.72 ID:5tUPLJ+90
-9巡目-

煌手牌 五六七BBCCD678北白 ツモ:北 →打:白

煌(張るには張りましたが、待ちが悪すぎますね。ドラは来ない以上2ピンは空同然、5ピンは赤2枚ゆえ、残り5ピンは実質1枚。リーチは自重しましょう、仮に出ても平和のみで上がれますしね)

玄手牌 八八八AAAD(赤)D(赤)2225(赤)6 ツモ:西 →打:西

玄(そう簡単には出ないよね・・・)

怜手牌 二三四七七33457779 ツモ:4

怜(テンパイはしたけど、イマイチ。2ソウはドラやし、赤5ソウは出えへん・・・。実質ペンチャンやな)

怜(なら、一巡先やっ)


・・・・・
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:25:01.04 ID:5tUPLJ+90
怜(・・・・宮永咲、あんたほんとに悪魔やわ、このためにカンしたんか。阿知賀が振るのは止められへん)

怜 打:9ピン



-10巡目-

玄手牌 八八八AAAD(赤)D(赤)2225(赤)6 ツモ:五(赤)

-阿知賀控え室-

憧「赤五萬が来ちゃったかぁ、最悪」

穏乃「新道寺はAD待ち、ピンズは切れない」

灼「千里山は25待ち」

宥「それに、白糸台は…」

咲手牌 五五五六七66 一-一一一 発-発発発

晴絵「役は発のみだけど、五八萬-6ソウ待ち。何を切っても誰かに振り込む・・・」

宥「玄ちゃん・・・」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:26:37.30 ID:5tUPLJ+90
-再び10巡目-

玄(どうしよう、6ソウ以外全部ドラになっちゃった・・・でも、6ソウ切ったらせっかくの役満なのにあがれなくなっちゃう)

玄(ドラを切るしかない。1つくらい、いいよね・・・)

打:赤五萬

咲「ロン、発ドラ1」

玄「あっ・・・」

咲「残念でしたね、せっかくドラをたくさん乗せてあげたのに・・」

玄「えっ?」

咲「それに、後で牌譜を見てみてくださいね、面白いですよ。何を切っても誰かに振ってたんですから」

玄「え、えっ?」

怜(な、アカン。こいつ阿知賀をつぶす気なんかっ)

煌「さあ次の局を始めましょう。宮永さん、すばらなあがりでしたが、次は負けませんよ」

怜(新道寺ナイスや)

咲(ちっ、またすばらか)
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:27:39.82 ID:5tUPLJ+90
-東1局1本場-
ドラ:西

咲「カン」

怜(いきなりカンか、しかも・・・)

煌(西、ドラカンですか・・・)

咲「ツモ、リンシャンツモドラ4、6100オール」

怜(あかん、どっかからめげるわーって声が聞こえる・・・こんなん一巡先とか関係あらへん)

煌(宮永さんにドラ、なるほど、阿知賀の方は一度ドラを切るとドラを集めることができないのですね。それはすばらではありませんね・・・)

玄(ドラが、来ない・・・・)

煌(・・いけませんねぇ、先ほどのドラ切りは相当ショックだったようですね)
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:29:13.62 ID:5tUPLJ+90
-先鋒戦オーラス-
怜「ツモ、1000、2000や」

煌(ふう、今回も何とか飛ばされずに済みました、しかし前回より多く点を失ってしまったのはすばらではありませんね・・・)

咲(飛ばせなかったか・・・、もうすばらめんどくさい)

玄「あ、ありがとうございました・・」

怜(一巡先を読んでもほとんど歯が立たんかった・・・10万点差とか、めげるわー。にしても、阿知賀のこの娘の方が消耗激しそうやな。無理やりドラ切らされたようなもんやしな・・・)


白糸台 220200
千里山 119900
阿知賀  47500
新道寺  12400
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:30:11.61 ID:5tUPLJ+90
-廊下-

宥「玄ちゃん・・・」

玄「あ、お姉ちゃん・・・。ごめんなさい、みんなの点棒、あんなに取られちゃって」

宥「大丈夫だよ、玄ちゃん。お姉ちゃんが取り返してあげるからね」

玄「うわぁぁぁぁぁん」

宥「うん、じゃあお姉ちゃん行ってくるね」

玄「うん、がんばってね」

菫「すまない、ちょっといいだろうか」

宥「あなたは、白糸台の・・・」

菫「ああ、白糸台部長の弘世菫だ。その、先ほどのうちの宮永のことについて謝罪に来た」

玄「謝罪?」

菫「宮永と大星の大会での打ち筋は目に余る・・・。振り込んだ相手を馬鹿にするような言動、本当に申し訳ない」

宥「あ、頭を上げてください」

玄「部長さんは悪くないですよ・・・でもあの宮永さんは、麻雀自体を憎んでるような・・・そんな感じで怖かったです」

菫「本当にすまない・・・。大会にエントリーするまでは、宮永も大星も普通だったんだが、エントリーが決まった途端にあんな風になってしまってな。まあ今思えばその兆候はあったのかもしれないのだが」

宥「もうすぐ時間ですね、行きましょう。次鋒戦」

菫「ああ、お互いにいい戦いをしよう」

玄「お姉ちゃん、がんばってね」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:31:04.82 ID:5tUPLJ+90
淡「おっつー。あのすばらさんは飛ばせなかったようね」

咲「・・・千里山の園城寺さんにも上手く立ち回られたのもあるけどね。流石に10万点持ちを飛ばすのは全国レベルでは難しいよ」

淡「んで、決勝にはどこのチームを連れて行く?」

咲「阿知賀、かな」

淡「ん、まあ千里山はめんどくさそうだから論外としても、新道寺はいいの? 3度目の正直ですばらさん飛ばしてみるって言うのかと思った」

咲「・・・・それも考えたけど、あの人全然めげないから面白くない。あと1万点で飛ぶっていうのに、どうしてあんな笑顔でいられるの・・・。イライラするよ。その点、あの阿知賀の松実さんの落ち込みっぷりの方が断然いいね」

淡「確かにあんな顔されたらSに目覚めちゃうわね」

咲「だから、決勝は阿知賀残しでよろしくね」

淡「りょーかい。まあまた部長がぶつくさ言ってくるのかもしれないけどねー」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:32:13.26 ID:5tUPLJ+90
-大将戦 直前-
白糸台 160200
千里山 123200
阿知賀  74200
新道寺  42400


-白糸台控え室-

淡「先鋒戦で10万点あった差が、大将に回ってきて3万7千点になっているってどういうことでしょうね、先輩方・・・」

菫「・・・反省会は試合が終わったらやればいい、今は目の前の試合に集中しろ、大星」

淡「はいはい、わかりましたよー」

菫「まったく・・・」

淡(千里山と阿知賀の差、49000点。ただトップ通過するだけじゃ面白くないし、このくらいの点差、調整してあげるわよ)
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:33:44.48 ID:5tUPLJ+90
-千里山控え室-

船久保「ええですか、白糸台悪魔の1年生コンビの1人、大星淡。帰国子女で国内の試合データが少ないので、正直まだ十分な解析はできとりません」

泉「でも、結構な確率で役満上がってきますよね?」

船久保「ローカル役満の中に、大七星という役満があります。まあこれは字一色七対子のことなんですけども、西東京予選、全国2回戦において、大星はこの大七星を合計6回あがっとります」

セーラ「ほぼ1半荘に1回くらいか、すげーな」

竜華「それで、条件みたいなんはあるの?」

船久保「解析としては不完全ですが、分かったことが2つあります。一つは、7本場になると必ず大七星をツモります、これは誰が親でもとにかく7本場になるとっちゅう意味ですわ。もう一つは開局から7回目に大星が北家である場合、これも大七星をツモります。ちなみに、これも7巡目にツモるという念の入れようですわ。配牌に字牌が1つずつあって、1巡ごとに字牌が入って7巡目にツモ」

怜「7に関係することがキーになるわけやな・・・」

船久保「強いて言うなら、永水の薄墨と同じようなタイプかと考えられますね。ある条件下で、役満を持ってこれる。ただ薄墨の場合は、その場で東と北を切らなかったらなんとかなる話ですが、大星の場合は条件が発動してしまえば防ぐ手立てがあらへんということですわ」

セーラ「7本場か7局目の北家にならんように打ち回さなかんってことやなー。まあそれだけ分かっとれば竜華なら大丈夫やろ」

船久保「いや、それは分かりません。というのも、6回中5回は今言うた条件が当てはまるんですが、残りの1回、これの条件がどうしてもわからんのですわ。7本場でもなければ、開局から7局目でもない。まだ隠された条件があると考えた方がいいでしょう」

竜華「ま、基本的には7本場か7局目の北家に注意して、あとは大星の様子見ながら、なんか7絡みで何か変なことしようとしてないか確認って感じでええんかな」

船久保「ええ、それでええと思います。なんにせよ、清水谷先輩には2位以上での通過を大前提として、できるだけ大星のデータを集めていただきたい。決勝に向けて、残された条件も全力で洗い出してみせますっ」
竜華「わかった、ほな行ってくるな」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 02:34:45.98 ID:5tUPLJ+90
一気に投下したかったですが
眠さ限界なのでまた明日来ます
支援ありがとうございます!
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 02:43:05.18 ID:k3u9iDuZo
すばら
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 03:03:05.33 ID:pjZ4QIf4o
すばらです
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 03:05:03.67 ID:5PsYkE3po
すばらっ!
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/01(水) 03:23:08.62 ID:VIVc5dHzo
京太郎は?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/08/01(水) 04:55:13.23 ID:SH53Wyuvo
こういう未来もあったかもしれないのか・・・
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 05:09:15.46 ID:eD7GCHuLo
TELさんいいよTELさん

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/01(水) 06:20:08.48 ID:EOlrCAxmo
照久おつ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/08/01(水) 07:29:04.71 ID:Yk95y3Who
すばら!
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/01(水) 11:11:48.24 ID:RGShDb640
すばらです

タイトルは【照 -tel-】ですね、わかります
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/01(水) 13:31:29.12 ID:ufQDlCXO0
すばら
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/01(水) 16:40:36.46 ID:cMTjrssy0
照久すばらです。
ifルートは普通なら絡まない面子との絡みがあるのがいいです。
宮永家と竹井家(上埜家)は同じような事情を抱えている可能性があるので、同い年の二人が揃うとこういう関係になっていたかもしれませんねー。
にしても白糸台の一年コンビのラスボス感がはんぱない。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/08/01(水) 17:54:31.13 ID:swAqGjtvo
すばらっ!
京太郎の霊圧が……消えた……?
何も問題はないな
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/01(水) 18:20:03.37 ID:t+3LVT8t0
すごく・・・すばらです
咲と淡が白糸台もしくは制服に一年生コンビで白い悪魔なら、
清澄の三年生の照と久は赤っぽい髪コンビで(ryてことですね、わかります
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/01(水) 21:01:06.02 ID:Pae2Ul0Eo
すばらっ!
咲淡コンビが凄まじいな
フナQの解析は流石ですね
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 21:53:08.64 ID:5tUPLJ+90
1です。
帰ってきたらたくさんのすばらをいただき、ありがとうございます!
ご飯食べたりだなんだとありますので、23時くらいから投下予定です。よろしくお願いします

ええと、京太郎は出す予定ありませんのでご了承を。
というか、京太郎って咲の幼馴染だけど、照からすれば「妹の友達」くらいなもんだと思いますので、このIFでは出番はないんじゃないかと思いますが


[訂正]
>>33
咲手牌 五五五六七66 一-一一一 発-発発発

咲手牌 五五五六七66 @-@@@ 発-発発発

カンしたの1ピンなので修正。まあ対局に影響はありませんが・・・
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/01(水) 22:04:58.85 ID:fzJAZKiUo
このIFは面白い
続き期待してるで
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) :2012/08/01(水) 22:09:08.20 ID:8G7s4SAu0
すばらっ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/01(水) 22:52:56.71 ID:Pae2Ul0Eo
期待してるでー!
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/01(水) 22:55:41.14 ID:5tUPLJ+90
1です
では、ぼちぼち投下します
全部あげられるといいんですが・・・
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/01(水) 22:57:24.60 ID:5tUPLJ+90
-大将戦-
-東4局2本場-
-開局6局目-
親:高鴨穏乃

穏乃「リーチ」

竜華(あかん、阿知賀のジャージの子が親になってから連荘を続けとる。このまま上がられると7局目に大星が北家のままや。追いついて上がらな・・・)

淡「ポン」

淡 打:四萬

穏乃「ロン、メンタンピン。裏はなし・・。5800の2本場は6400です」

淡「あら残念・・」

竜華(・・・わざと差し込んだな。次局、万が一の出上がりの可能性も考えて、字牌は極力切らんようにせんとな)

姫子(前の局も大星の振込・・・何のために?)


白糸台 146400
千里山 120700
阿知賀  90200
新道寺  42700
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 22:59:37.64 ID:5tUPLJ+90
-東4局3本場-
-開局7局目-
ドラ:9ピン

穏乃「リーチ!」

穏乃 捨牌:中発八九@6
淡  捨牌:中発C5二

竜華(走ってんなぁ。うかうかしてると逆転されるかもしれん)

竜華 手牌:二三四@BCD345東南北白

竜華(通る字牌はあらへん。あらへんが・・・なんで大星はいきなり中発と切っとるん。大七星が発動するんやったら字牌は切らんはずや。発動してへんのか・・・。船Qの分析が外れるとも思えへんけど。まあなんにせよ、とりあえずは親の現物切るか)

竜華 打:1ピン

淡「ロン」

竜華(は、ロン、なんでや!?)

淡 手牌:東東南南西西北北白白HH@

淡「チートイ、混一、チャンタ、ドラ2。16900です」

竜華「発動しとるやん、なんでや!」

淡「発動? おっしゃる意味がわかりませんが、とりあえず16900点いただけますか?」

竜華(くっ・・・いくらドラ対子あったからにしても、役満上がれるなら上がる方優先するやろ)

穏乃(上がれなかったけど、これで2位との差が14600点。絶対あきらめないっ)

姫子(完全に蚊帳の外たい・・・)


白糸台 164300
千里山 103800
阿知賀  89200
新道寺  42700
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:00:59.41 ID:5tUPLJ+90
-千里山控え室-

船久保「・・・大星は確実に千里山狙いですわ。役満ツモってしまったら、親の阿知賀を多く削ってしまうから回避したんでしょう」

泉「3位の阿知賀に振り込みして7局目を北家で迎え、あえて役満捨てて出上がり狙い・・・。船久保先輩の分析のとおり、大星には字牌が配牌でそれぞれ1つの合計7個。ツモも、順番に東南西北白と来てた。そのまま続いていれば、発と中もツモってたはず・・・」

セーラ「今年の白糸台はめっちゃえげつないわー」

怜「竜華・・・」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:03:21.90 ID:5tUPLJ+90
-2半荘目 オーラス-
北家 白糸台 132400
東家 千里山 111100
南家 阿知賀 103600
西家 新道寺  52900


実況「いよいよ、この局で決勝進出校が決定します」

竜華(2半荘目は大七星の条件は完全に阻止したし、阿知賀に振り込もうとするところを狙い撃ちもできた・・・。阿知賀との差はだいぶ詰められて7500点やけど、絶対逃げ切る)

穏乃(7500点差まで来た。ツモなら5200点以上、直撃なら3900点、7700点以上あれば出上がりでもいい。あきらめない)

淡(二人とも、なにそんな真剣な瞳をしてるのかしら・・・そんなの無意味なのに)
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/01(水) 23:03:34.62 ID:0vOKHrMKo
シズは末原先輩と違って単純だな
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:05:02.64 ID:5tUPLJ+90
-7巡目-
竜華(・・・阿知賀はそろそろテンパイか。直撃狙いやったらまずリーチにはこんから気を付けんと)

穏乃(高目タンヤオ三色テンパイ。でも4ピンなら直撃できるけど、1ピンならタンヤオも三色も消えちゃう。ダマで高目が来るのを待つしかない)

淡「ツモ」

淡 手牌:東東南南西西北北白白発発中 ツモ:中

淡「字一色、役満は16000、8000です」

竜華(えっ、なんで発動しとるん・・・7本場でも7局目でもあらへんやん)

穏乃(ってことは、千里山が親だから、親と子の払いで8000点縮まる)


白糸台 164400
千里山  95100
阿知賀  95600
新道寺  44900


実況「なんということでしょう、このオーラスで役満が飛び出しました。千里山が親っかぶりで3位転落、阿知賀女子が2位浮上し決勝への切符をつかみました」

穏乃「やったー!」

竜華「みんな、ごめん・・・・」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:07:23.86 ID:5tUPLJ+90
-プレスルーム-

西田「また字一色七対子・・・」

和「また?」

西田「ええ、大星淡は字一色七対子を予選本選合わせて6回は上がっているわ」

和「それはなかなかの偶然ですね」

優希「のどちゃんの友達たちも決勝進出だじぇ!」

和「そうですね、副将の方は知らない人ですが・・・。そういえば、部長が阿知賀が勝っても負けても阿知賀の顧問か部長と連絡が取れるようにしておいてほしいって言ってましたね」

西田「情報交換かしら? 分かっているとは思うけど、練習試合はしちゃダメよ」

和「ええ、それはもちろん部長も分かっているはずです」

優希「なんにせよまずは阿知賀におめでとーって言いに行くじぇ」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:09:36.08 ID:5tUPLJ+90
-会場 ロビー-

晴絵「それで、清澄の部長さんからお話っていうのは何かしら?」

久「団体戦の決勝は、中1日挟んだ明後日です。つまり、明日1日は練習に使える」

晴絵「分かっているとは思うけど、代表校同士の練習はできないわよ」

久「もちろんです。ですが、すでに団体戦を敗退した学校は、個人戦出場者を除いてその縛りがなくなります」

晴絵「敗退した学校と練習試合を組む、ということかしら?」

久「ご理解が早くて助かります。実はうちの部員の知り合いの雀荘に会場としての貸切を打診しています。あと、姫松にもこれからお話する件はすでに了承をいただいています。阿知賀の皆さんがこの話に乗るか乗らないかは自由です」

晴絵「・・・つまり白糸台シフトを決勝に出た他3校で組もうって訳だ」

久「そういうことです。どの学校にせよ、優勝するための最大の障害が白糸台であることは間違いありません」

晴絵「・・特に先鋒戦って言いたいんでしょう?」

久「ええ、正直申し上げて、松実玄さんが決勝でもショックを引きずったままだと、宮永咲に狙い撃ちにされるのは想像に難くありません。彼女の復活は、まあそれはそれでうちとしては困る部分もありますが・・・それでも、現状のままただ毟られるよりはましですので」

晴絵「なるほど、話は分かった。それで、対戦相手はどこなのかしら?」

久「まず長野の決勝選出場学校の3校、前年代表だった龍門渕高校、風越女子、鶴賀学園。Bブロックの宮守女子、永水女子。今決まっているのはこの5校。あと姫松には同じ大阪の千里山にも声を掛けてもらっています、こちらはまだ未定ですが。そして練習には加わりませんが、協会の監査代行として藤田プロに立ち会いをお願いしています」

晴絵「藤田プロが協会の代わりに、決勝校同士が対戦しないかどうかチェックするということね」

久「そういうことです」

晴絵「なるほど、じゃあ信頼できるわね。そのお話受けましょう」

久「ありがとうございます」

晴絵「ただ、対戦相手はもう少し増やせるかもしれないわよ」

久「え?」

晴絵「荒川憩って知ってるでしょ、全国2位の。彼女とうちの部員、話ができるらしいから」

久「それが可能なら是非お願いします」

晴絵「じゃあ確認取れたら連絡入れるから、携帯の番号教えて」

久「ええ、ではお待ちしています。ああ、あとすいません。失礼かもしれませんが、サインをお願いしたいのですが?」

晴絵「えっ、私の?」

久「赤土さんも含めた、阿知賀全員です。先ほど言っていた雀荘の貸切条件が、使用者全員のサイン色紙なんですよね」

晴絵「逆にそれくらいで貸切にしてもらえるなら安いものよ」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:10:29.93 ID:5tUPLJ+90
-清澄 ホテル-

まこ「というわけでキリキリ書きんしゃい」

照「なんでみんなは1人1枚なのに、私だけ50枚も・・・」

まこ「それだけ価値があるっちゅうことじゃ」

照「疲れた・・・」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:13:03.60 ID:5tUPLJ+90
-千里山控え室前 廊下-
洋榎「おっ、セーラや、いいところに」

セーラ「ん、姫松の洋榎やんか、こんなとこに何しにきたん?」

洋榎「いやー、ほんまやったら部長の竜華に話さないかんことなんやろうけどな。流石に今のさっきじゃキツそうやんなぁ」

セーラ「・・・なんか良くない話なん? こう見えても俺かてショック受け取るんやで? まあ一番ショック受け取るのは竜華やろうけどな・・・」

洋榎「そういうことやないんや、気ぃ悪くせんといて。あんな、明日練習試合に付きおうてくれんかってお願いなんや」

船久保「何を表でしゃべっとるんです?」

セーラ「浩子、ちょうど良かった。ちょっと表でてや」

船久保「姫松の愛宕洋榎? なぜこないなとこに?」

セーラ「それがな、姫松の練習に明日つきおうてほしい言われてな。これって大会的にOKなん?」

船久保「あー、またややこしい話でんな・・・。個人戦に出る園城寺先輩と清水谷先輩は、愛宕洋榎とは戦えません。他はOKですね」

洋榎「まあ無理にとは言わんし、千里山全員でとも言わんよ。でもな、練習来るのはうちらだけやないで」

船久保「興味がありますね、どういうことです?」

洋榎「もともと明日の練習試合しよう言いだしたのは、長野の清澄や」

セーラ「おお、あの中高ダブルチャンピオン率いる清澄やな」

洋榎「せやせや、その清澄がな、今そっちのブロックで決勝に行った阿知賀にも声かけとるんや」

船久保「ほほう、読めましたわ。つまり、打倒白糸台の緊急合同合宿みたいなもんですね」

セーラ「面白そうやん、俺は乗るで」

洋榎「それでこそ大阪のノリや、感謝やで」

船久保「何勝手にゆうてますの・・と言いたいところやけど、まあどっちみち負けたウチらは明日から自由行動やさかい、各人自由に参加するつうのが落としどころやないですかね。園城寺先輩と清水谷先輩は明日はゆっくりしたいやろうし」

泉「先輩方、さっきから表で何してますの? って、姫松の愛宕さん?」

セーラ「泉、明日姫松他と練習試合な」

泉「は?」

船久保「次期エースとして、泉には参加してもらわんと困る」

泉「あの、話が見えんのですが?」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:14:27.39 ID:5tUPLJ+90
洋榎「深く考えんでええで、ウチらと仲良く麻雀しませんかつうお誘いや」

泉「明日はどこか東京見物でもしようかとか思ってたところなんですが・・・ちなみに何時から始めるんです、その練習」

洋榎「9時半集合、6時解散や」

泉「またみっちりやるんですね。船久保先輩やセーラ先輩も行くんですか?」

セーラ「その練習、清澄と阿知賀も来るらしいで」

洋榎「あと、こっちのブロックにおった岩手の宮守と鹿児島の永水も来るで」

船久保「永水、マジですか。神代も来るんですか?」

洋榎「清澄からはそう聞いとるで」

泉「いや、逆に私なんかが参加して大丈夫なんですかって気になりますけども・・・」

船久保「牌譜取ってもええんですかね、これは応援に来とる部員総動員で参加せんとあきませんな」

セーラ「なんか浩子が一番燃えてきたな」

怜「なー、どんどんミイラ取りがミイラになっとるけど、何しとるん?」

セーラ「怜、俺ら明日ちょっと麻雀してくるけど、竜華と仲良くお留守番しとくか?」

怜「なにゆうてんの? っていうか、姫松の愛宕洋榎がなんでここにおるん?」

洋榎「同じ大阪のよしみで、明日練習試合させてくれへんかってお願いにあがったんや。ってもうこれ3回目やん」

怜「何回目かなんて知らんけど・・・このタイミングでそんなお願いされてもな」

船久保「園城寺先輩、とりあえずここはウチが話まとめておきますんで、清水谷先輩のとこ戻ってください」

怜「そうさせてもらうわ・・・」

洋榎「機嫌損ねてしまったみたいやわ、申し訳ない・・」

セーラ「しゃーないしゃーない」

泉「どっちみち二人でそっとしといた方が良さそうですし、立ち話もなんですから場所を変えませんか?」

船久保「仕切るねー」

洋榎「せやな、下の喫茶店にでも行こか」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:15:43.46 ID:5tUPLJ+90
-翌日-
-雀荘 2階-
参加者:清澄・阿知賀・姫松・龍門渕・風越・鶴賀・宮守・永水・千里山(怜竜華除く)・荒川憩・藤原利仙・霜崎絃・対木もこ・百鬼藍子


久「本日は団体戦決勝戦を前にした3校合同練習に、これだけのメンバーに集まっていただき、本当に感謝します」

藤田「今回、協会の代理として練習に規定違反がないかチェックさせていただく。とはいえ、これだけの面子がそろうこともそうそうないだろうし、私も楽しみにしている。気兼ねなく打ってほしい」

久「それでは、直前にお渡ししたタイムスケジュールにそって、練習を始めましょう」


-練習方法-

決勝進出校以外を、ABCの3組に分ける

A…千里山・鶴賀・藤原利仙・霜崎絃
B…宮守・風越・荒川憩・対木もこ・百鬼藍子
C…龍門渕・永水

決勝進出校は2階(清澄)3階(阿知賀)4階(姫松)に常駐し、ABCの3組が2時間ごとにローテーションする
タイムスケジュールは10時〜12時、13時〜15時、15時半〜17時半、18時解散
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:17:38.80 ID:5tUPLJ+90
-1クール-
-4階 姫松・Cチーム-

衣「早くはじめるぞ〜」

神代「よろしくお願いします」

透華「さあ、どなたからいらしても結構ですわよ」

洋榎(こりゃ清澄の部長には感謝やな、こんな面子とはそうそう打たれへんで)

洋榎「よっしゃ、漫、この面子相手に爆発すれば本物やで。玉砕してこいや」

漫「玉砕したらあきませんやん! まあ玉砕するんは目に見えますけども」

恭子「いや、漫ちゃんの爆発は決勝までとっておきましょう・・・というか、私に打たせてください」

洋榎「恭子がそこまで言うんやったらやったり。面子的には大将戦の方が確かに雰囲気近いかもわからんな」

恭子(魔物と呼ばれる天江と神代。さらに去年団体で臨海と戦った時の龍門渕透華の牌譜は衝撃やった。この面子に少なくとも善戦できるようでないと、明日の大将戦なんて恥かくだけや・・・)

洋榎「じゃあ漫はウチがもんだる。龍門渕の中堅って誰なん?」

一「ボクだよ、国広一。よろしくね」

洋榎「あとは永水の黒糖ちゃん、また打とうや」

春「・・・プチ中堅戦。悪くない」ポリポリ

絹恵「残りはどうしましょ、一応姫松の練習やし、私と真瀬先輩は確定なんかな?」

由子「私は恭子ちゃんの卓が見たいから入らなくてもいいのよー」

絹恵「あ、そうなん? なら、薄墨さんともう一回やりたいわ、前の副将戦は宮守に塞がれとったみたいやし」

初美「望むところですよー。今度こそ四喜和を連発しますよ」

純「せっかくだからオレも入らせてもらうか」

霞「あらあら、なら残りは私が入ろうかしら」

絹恵(永水の副将と大将に、龍門渕の先鋒か、これは腕が鳴るで!)

智紀「・・・じゃあお茶でも入れましょうか」

巴「そうね」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:20:49.00 ID:5tUPLJ+90
-2クール-
-3階 阿知賀・Aチーム-

セーラ「ツモ、4000オールで終了や」

憧「あー、また競り負けたー」

セーラ「ちまちま上がって、どかっといかんからや」

憧「もう1回よ」

セーラ「何回やっても同じやでー」

智美「ワハハ、新子さんも十分稼いでるんだがなー」

桃子「消えるのに時間がかかるっすよ・・・」


利仙「まだ、ドラが集まらないようですね」

絃「そうみたいね」

玄「ぐす、あんな切り方しちゃったからかなぁ・・・」

泉「落ち込んでもしょうがありません、とりあえず数をこなしましょ」


ゆみ「さて、Aチームでは実戦よりもデータを教えてあげてほしいと清澄の部長から言われている。今、新子さんと松実玄さんが打っているから、残りの3人へのレクチャーを始めようか」

船久保「正直言いまして、決勝4校の中で一番優勝が厳しいのは、阿知賀です」

灼「うん、それは感じてる・・・それに、私たちが白糸台に残されたのも」

ゆみ「残されようが決勝に残った以上、最善をつくしてほしいし、その手伝いができれば幸いだ。さて、阿知賀が優勝するための鍵は、松実姉妹が握っていると私は考えている」

宥「私と、玄ちゃん・・・」

船久保「同意見です。まず先鋒ですが、我が校の園城寺先輩ですら宮永咲に10万点差つけられました。先鋒でこれだけの差をつけられると、2位抜けのある準決勝までは良くても決勝では話になりません。ですので、松実玄の復活は最優先事項ですわ」

ゆみ「これまで宮永咲は徹底的な狙い撃ちをしてきている。玄さんが落ち目と分かれば容赦なく狙ってくる」

晴絵「玄の復活は、もう本人がきっかけを掴むしない」

穏乃「そうだね、玄さんを信じよう」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:23:11.75 ID:5tUPLJ+90
船久保「正直、ドラが集まりませんどうしたらいいですか?っていう悩み自体が、ナンセンスな気もしますが・・」

ゆみ「まあ、玄さんにはまた個別にアドバイスをしておこう。さて、次鋒戦だが、阿知賀が大きく点を稼げるとしたら、ここしかない」

宥「そ、そうなの?」

船久保「逆算していけば見えてきます。まず大将戦、清澄宮永照に白糸台の大星淡、この2人のデッドヒートになるのは目に見えてます。高鴨さんがよほど強運に恵まれない限り、まずこの2人に収支で上回るのは難しいと考えるべきです」

ゆみ「副将戦は清澄の原村や姫松の愛宕絹恵と堅実な打ち手が多く、おそらく小場になって大量得点は望めない」

船久保「で、中堅戦は清澄竹井と姫松愛宕洋榎のデッドヒートですわ」

ゆみ「となると、やはり稼ぐべきは次鋒戦となる。白糸台の弘世と姫松の真瀬は堅実な打ち手だし、清澄の染谷が曲者ではあるが、彼女への対策をとることができれば、十分稼ぐことが可能だ。そこで第3クールでは、龍門渕の国広、井上、永水の石戸と練習をしてくれ」

船久保「国広が仮想真瀬、井上が仮想染谷、石戸が仮想弘世ですわ」

ゆみ「見えているものは違うのだろうが、染谷と井上の場の流れを変えようとする鳴きはよく似ている。対策の一助になるだろう。さらに、防御の得意な弘世を極力削るために、同じく防御の得意な石戸から点数を削ることを意識してほしい」

宥「なるほど、的確なアドバイスありがとうございます」

穏乃「私は、私はどうすればいいですかっ」

ゆみ「天江衣と神代の2人と戦うのがいいだろう。宮永大星クラスはあの2人しかいないしな」

灼「じゃあ私は?」

船久保「ピッタリの仮想相手はおりませんし、松実玄さんと同じく、とにかく数をこなしていただくことですかね」

怜「ピッタリやなくてもよければ、相手になったるで」

船久保「お、園城寺先輩っ。来てくれたんですか」

竜華「怜だけやないで」

セーラ「おー、怜に竜華やん。もう出てきて大丈夫なん?」

桃子「ロン、リーチ一発タンヤオドラ1、満貫っす」

セーラ「うお、消えとったんか」

竜華「気持ち切り替えるんに時間かかったけどな・・・。みんながこうして特訓につきあっとるのに、うちらだけどっかブラブラする気にもなれへんしな」

ゆみ「ならレクチャーは終わりにして、私たちも混ぜてもらうとするか」

竜華「穏乃ちゃん」

穏乃「はいっ」

竜華「頑張ってや、最後はあんな幕切れでも、うちらを倒したことには変わりないんやからな」

穏乃「はい、絶対優勝してみせます」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:27:49.71 ID:5tUPLJ+90
-3クール-
-2階 清澄・Bチーム-

憩「去年の個人戦決勝以来やなぁ、照。元気しとったか〜」

照「今年もまたどこかで当たるのを楽しみにしているよ」

憩「まあ今日ここでは一緒に打たれへんけど、照の学校のためにも頑張るさかいな」

久「さ、優希、特訓よ。宮守の臼沢さんに塞がれながら、全国2位の荒川さんに点数で上回ること。あともう一人は、吉留さん、お願いできるかしら」

未春「はい、よろしくお願いします」

優希「ちょ、塞がれながら全国2位に勝つとかスパルタすぎるじぇ」

塞「具体的にどのくらい塞げばいいんですか? 正直、あんまり長く塞ぐのはキツイんで」

久「んー、東場の配牌から6巡目くらいならどうかしら。最悪配牌から3巡くらいでもいいけど、とにかく出だしを押さえてちょうだい」

塞「了解、それくらいなららくしょーですよ」


豊音「原村さんと打てるなんてちょーうれしいよー」

和「よろしくお願いします」

もこ「ブツブツブツブツブツブツブツ」

まこ「なんやこの子けったいじゃのう。まあなんにせよ、よろしく」

久(副将戦はオカルトな打ち手はいないから、和は問題無い。問題は先鋒と次鋒。特に先鋒はあの宮永咲を抑えないといけない。たった2時間ではどこまでつかめるか分からないけれど、塞がれながら強い相手と打つことでより格上の相手との戦い方が見えてくるはず。あとはまこに対して、デジタルにオカルトに初見の子を混ぜてみた。まこにはとにかくいろんな打ち筋を見てもらうしかない)

美穂子「上埜さん、お客様がみえてますよ」

久「あら、誰かしら?」

煌「失礼しますよ」

久「あなたは確か・・・」

煌「新道寺の花田と申します。優希や和は中学時代の後輩で、今日も声をかけていただいたのですが予定がなかなか合わず遅くなりました」

優希「すばら先輩だじぇ、来てくれたのかー」

和「お久しぶりです、花田先輩」

煌「優希に和、まさか自分の後輩が全国の決勝まで行くとは、本当にすばらですっ」

久「せっかく来たんだし、打っていく?」

煌「いえ、それには及びません。自由時間が限られていますので。優希に話があって来ました」

優希「・・私?」

煌「ええ、白糸台の先鋒、宮永咲。彼女と二度対戦した私から、せめてものアドバイスをと思いまして」

優希「さすがすばら先輩だじぇ。えと、ちょっと中断するじぇ」

憩「どうぞ〜」

煌「対局中申し訳ないです」

照「私も聞きたい」

煌「チャンピオンにとっては釈迦に説法という感じがしますけども。そういえば同じ宮永姓ですね。すばらです」

久「・・・それで、話っていうのは?」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:30:27.96 ID:5tUPLJ+90
煌「宮永咲、彼女の麻雀に、勝ちたいという気持ちがありません。相手の心を折りたい、そんな黒い情念が渦巻いているように感じました」

優希「それで麻雀してて楽しいとは思えないじぇ・・・」

煌「まあ強いて言うなら、心を折った瞬間に楽しいと思うのかもしれませんけども。いずれにせよ、すばらな心がけではありませんね」

照「咲・・・」

煌「私は一度もハコになったことはありません。それをどこから聞いたのか分かりませんが、2回戦の対局中に『もうすぐ飛ばしてあげるから』などと囁かれた時には流石に寒気がしましたね」

久「野球で言うところの、連続無三振記録、みたいなものかしら?」

煌「えっと、喩えはともかく、そんな心を折りにくるスタイルで来ている以上、優希は標的になりうると思いました」

優希「東場で私に一切上がらせないとか?」

煌「ええ、そういうことです」

優希「部活でもときどきあることだじぇ?」

煌「それはすばらと言うべきなのかどうか迷うところですが・・・。いずれにせよ阿知賀の松実さんが復活しなければ、東場の優希を標的にすることはありえますよということを言いたいのです」

久「私の読みは逆だったけど、そういう思考をしてくる可能性もあるわね」

煌「それは、松実さんが復活していない場合には追い打ちをかけてくるということですか?」

久「そういうこと。準決勝では東一こそ松実さんを標的にしたものの、あれはあくまでドラを場に出すためにやったことでメインはあなたを飛ばすことだったはず」

煌「ドラを一回切らせたくらいでは満足できないということですか。まったくすばらではありません」

照「・・・・優希」

優希「なんだじぇ?」

照「練習を再開した方がいい。吉留さんは、優希以外からは出上がりしないでほしい」

未春「え、ええ。わかりました」

優希「なんかまたハードルが上がってるんですけど!」

照「つべこべ言わないで、どんどん打つ」

煌「・・・どうやらこれ以上は練習のお邪魔になってしまうようなので、これで失礼しますね」

久「ええ、貴重な時間をありがとう」

煌「礼には及びません。優希、和、応援してますからね」

照(・・・咲、本当にごめんなさい。でも、優希の心は折らせない)

煌(チャンピオンの反応・・。宮永咲とは何かしら関係がありそうですが、それは言わぬが花なのでしょうね)
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:32:50.67 ID:5tUPLJ+90
-全国大会 決勝戦直前-

照「迷った。控え室は、2階だったよな・・・」

咲「おトイレどこだろ・・・」

照「えっ、咲っ!」

咲「おね・・・・。すいません、急ぎますので」

照「待って、咲。私、ずっと咲に―」

咲「気安く呼ばないでっ・・・。私に、お姉ちゃんなんていない! いないんだからっ!!」

照「ごめんね、ただ、ずっと謝りたかった・・・」

咲「今さら、こんなタイミングで謝らないでよ」

照「ほんと、今さらだ。でも、本当にごめんね、咲・・・」

咲「嫌っ、聞きたくない、知らない、どっか行ってよ!」

久「照、また迷子になって・・・」

久(うわぁ、ここで鉢合うか。白糸台の控え室4階だからって油断してたか・・・)

淡「咲ちゃん、どこー、もうすぐ先鋒戦だよー」

淡(って、宮永照・・・。なんでこんなところにいるのよ)

久(あれは大星さん。この場は撤退よ)チラ

淡(清澄の部長さんか、お互い撤退しましょうね、って視線かな・・・)

久「照、控え室に戻るわよ」

淡「咲ちゃん、もうすぐ始まるからもう行こう」

照「でも、咲が・・・」

咲「・・・失礼します。ごめんね淡ちゃん、行こう」

久「ほんとに時間ないわよ、急いでね」

久(ひとまずこの場は収まったけど、さて・・・)

照「やっぱり、全部私のせいで・・・」

久(とりあえず控え室には戻れそうもないか・・・いや、まこと和に席を外してもらうか。仮眠室は誰が来るか分からないし・・・)
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:34:04.50 ID:5tUPLJ+90

淡「落ち着いた?」

咲「ごめんね、ありがとう」

淡「何があったかは後回し、今は麻雀に集中すること、いい?」

咲「・・・うん、頑張るよ」

淡「よし、行ってらっしゃい」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:35:37.50 ID:5tUPLJ+90
-全国大会 決勝先鋒戦-
実況「団体戦もいよいよ決勝戦を残すのみとなりました。3連覇のかかる西東京代表白糸台高校、先鋒は宮永咲。10年ぶり2度目の出場で悲願の決勝進出、阿知賀女子からは松実玄。南大阪代表は姫松高校、名門の完全復活はなるか、先鋒は上重漫。そして長野代表は初出場の清澄高校、中高2人のチャンピオンは団体戦でも栄光を掴むのか、先鋒は片岡優希。開局です」



-東1局-
-2巡目-
親:片岡優希
ドラ:3ピン

優希 手牌:三三四四五BBBCE345(赤) ツモ:五萬(赤)

優希(配牌からドラ暗刻。阿知賀のドラゴンロードはまだ復活してないようだじぇ)

優希「リーチ」

優希 打:6ピン

咲「カン」

優希(まずいじぇ、いきなりリンシャン!?)

咲 手牌:二二二@A678西西 E-EEE ツモ:西

咲(?? 昨日今日でまたドラが来なくなるものなの?)

咲(しょうがないか、ドラがまた阿知賀に集まるならこのピンズの下は面子にはならない・・・)

咲 打:2ピン

優希「ロンだじぇ、メンタンピンイーペードラ5。ここまで倍満」

咲(ドラ5! たまたま私に来なかっただけ? そんなこと・・・。さっき会ったのは忘れて集中しないと・・・)

優希「裏ドラ五萬で三倍満、36000だじぇ」

咲「はい・・・」

漫(2巡で親の三倍満とか事故もいいとこやわ・・・)

玄(ドラ5・・・。やっぱり私には来ない、か)
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:37:30.25 ID:5tUPLJ+90
-東1局 1本場-
-1巡目-
親:片岡優希
ドラ:東

優希 配牌:九F13456789東東東東

優希(ドラのダブ東が槓子、ノリノリだじぇ。混一と一通も見えるじぇ)

優希 打:7ピン

咲(また良さそう、とにかくこの親だけは終わらせないと)

漫(ドラが来ない。阿知賀が復活していないのなら阿知賀にドラが無いのは分からんでもないけど、他の3人に均等にしてくれんと割にあわんで・・・)

玄(また清澄の人が持ってそうだな・・・)


-3巡目-

優希 配牌:123456789東東東東 ツモ:9

優希「カンだじぇ!」

咲(ドラ槓子・・・止められない・・)

優希「リンシャンならず、でもリーチだじぇ」

優希 打:4ピン

漫(さっきから早すぎるっ!)


優希「ツモだじぇ! リーヅモダブ東混一ドラ4。カンドラも裏ドラもなし。三倍満で12100オールだじぇ!」

優希(塞がれていたのが無くなって、体が軽くなったみたいだじぇ)


実況「清澄片岡、またも三倍満炸裂です。これで2位との差が8万点以上、完全に独走状態です」

東 片岡優希 172300
南 宮永咲   51900
西 上重漫   87900
北 松実玄   87900
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:39:56.26 ID:5tUPLJ+90
-東1局 2本場-
-1巡目-
親:片岡優希
ドラ:七萬

優希(配牌にドラがないじぇ・・・。この勢いならまたたくさんあってもおかしくないはずなのに。でもタンピン三色イーペーコーまで行ける2シャンテン、イケイケだじぇ)

咲(集中しなくちゃ・・・全然牌が見えない・・・・)

漫 手牌:二二三七七七CD(赤)159西西 ツモ:1 打:9

漫(来た、ドラ4。これ以上清澄に離されたらアカン。ここは清澄がどんなに早くても突っ張るっ)

玄 打:西

漫「ポン!」

漫(自風の西がいきなり鳴けた。イケるで)


-7巡目-

優希「リーチだじぇ」

漫「ポン!」

漫 手牌:七七七CDD(赤)11 二-二二 西-西西

漫(もうこれで当たっても知らん)

漫 打:4ピン

玄(強い捨て牌、とりあえず合わせ打ち・・・)

優希「っ、やばいじぇ・・」

優希 打:赤5ピン

漫「ロン、トイトイ西ドラ5、倍満です。16600」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:41:35.22 ID:5tUPLJ+90
-姫松 控え室-

洋榎「よっしゃ漫、その調子でどんどん行ったれ」

絹恵「清澄から直撃とれたんが、大きいですね」

恭子(ドラの偏りがなんか変な気が・・・。ここまで阿知賀と白糸台にドラは1つも来てへん。清澄にドラがあれば漫ちゃんにもドラが来ない。逆に今は漫ちゃんにドラが来て、清澄はリーチ後のドラ放銃。ドラが一箇所に集まろうとして、彷徨ってる? んなアホな・・・)
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:43:40.16 ID:5tUPLJ+90
-東2局-
-8巡目-
親:宮永咲
ドラ:4ソウ

玄「リーチ」

玄 捨牌:四六CE5南中3

優希(こっちの手牌にドラは無い・・・。ドラローさんがことごとくドラが入るカンチャンを嫌ってるのはどういうことだじぇ? とりあえず現物)

咲(ドラは相変わらず来ないし、まだ追いつけそうにない・・・。いい加減集中しないと)

漫(手牌にドラがないし、清澄がドラを持ってたらもっと勝負に来るはず・・・。ついに阿知賀にドラが来たんか?)

玄「ツモ」

玄 手牌:HHH12233789北北 ツモ:1

玄「リーチ一発ツモチャンタイーペーコー。6000、3000です」

玄(ドラが来なくても、私は待ってる。でもただ待ってるだけじゃダメっ。私に今できることをやりきるんだ)

咲(ドラが来てないっていうのに、どうしてそんなやる気に満ちた目ができるの・・・・)
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:44:38.07 ID:5tUPLJ+90
-阿知賀 控え室-

穏乃「うわー、玄さんのチャンタなんて始めて見たかも・・・」

憧「私も。赤があるとチャンタなんてできないもんね」

灼「加治木さんのアドバイスが上手くはまったね」

宥「ドラが戻ってくる方法は分からないけど、ドラが入らないと分かっているならそのように打ち回せばいい、って言ってたものね」

晴絵「普段の玄なら、四六のカンチャンは赤が入るから捨てない。普通の五萬が来る可能性もあるけど、それよりも柔軟にチャンタを目指した。これであとはドラが戻ってこれば、行けるよ玄」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/01(水) 23:47:01.20 ID:0vOKHrMKo
なんだかんだで咲を応援してるぜ
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:47:08.10 ID:5tUPLJ+90
-南3局 1本場-
親:上重漫
ドラ:白

西 片岡優希 136700
北 宮永咲   37900
東 上重漫  131500
南 松実玄   93900

実況「南場に入ってから姫松の上重が怒涛の3回連続和了、その内2回をトップを走る清澄からの直撃でその差を一気に5200点にまで縮めました。白糸台の宮永、ここまで和了無し、苦しい戦いを強いられています。さあ上重、一気に1位浮上なるか」

漫(南場に入ってから清澄の勢いが弱くなったせいか、いい手が続けて入ってきた。今回はドラは無いけど、早くて軽い手。まずは連荘や)


-9巡目-
漫(全然鳴けへんし、手も進まへん・・・。流れって急に来たり来なくなったりで困るわ・・・)

玄「リーチ!」

優希(場に白は出てない・・・さっきは姫松にダマでやられたし、ここは下り)

咲(もう南3か、ここまで何も出来ないのって、家族麻雀を始めた頃くらいかな・・・)


-12巡目-
玄「おかえりなさい、ツモ!」

ツモ:白

優希(ドラっ、ここでドラローさん復活ですかっ)

玄 手牌:三四五(赤)DD(赤)45(赤)6888白白 ツモ:白

玄「リーヅモ白ドラ6、裏は1つ。8100、4100です」

漫(親っかぶりの上に、もうここからドラが来ぃへんの?)

玄(おかえりなさい、またよろしくね・・・)


西 片岡優希 132600
北 宮永咲   33800
東 上重漫  123400
南 松実玄  110200
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:48:52.43 ID:5tUPLJ+90
-その少し前-
-清澄 控え室-

和「染谷先輩、電話が鳴ってますよ」

まこ「おお、すまんの置きっぱなしじゃった。久からか」

和「宮永先輩が見つかったんでしょうか? もうすぐ優希の試合が始まってしまいますよ」

まこ「もしもし見つかったんか。・・・・ほう、そういうことなら、和にも言っとくけえの」

和「部長は何て言ってました?」

まこ「いや、どうやら照と妹の咲と偶然廊下で会って、照がショックを受け取るみたいじゃけえ、ちょっと控え室で2人きりにさせてほしいそうじゃ」

和「そうですか・・・。ならロビーで待ってますか。あそこならモニターもありますし、会場にも近いですから」
まこ「そうじゃの」


久「照、控え室についたわよ」

照「・・・・ぐすっ」

久「まこと和には、席を外してもらったから」

照「・・・・ぐすっ」

久「だからとりあえず泣くだけ泣いて、それから話をしましょう」

照「ぐすっ、うわあああああああああ」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:50:50.82 ID:5tUPLJ+90
久「落ち着いた?」

照「すまない・・・」

久「それで、どのくらい話ができたの」

照「ほとんどしてない。でも、謝ることはできた・・・聞いてはもらえなかったけれど」

久「そう、なら一歩前進ね」

照「でも、お姉ちゃんなんていないって言ってたし」

久「だって、ばったり出くわしたんでしょ? だったらパニックになってもしかたないわよ。だから、もっと言いたいことをまとめて、お互いに話し合えるような場所を作ってあげるから」

照「久には、世話になってばかりだ・・・。こんなんじゃ、姉として失格だし、お姉ちゃんなんていないなんて言われても仕方ない」

久「うーん、これは受け売りなんだけど」

照「・・?」

久「こうやって私が動くのも、照、あなたの力なのよ」

照「私の力?」

久「たとえばあなたが、「咲ちゃんをいじめるの楽しいです、ハアハア」みたいな人だったら、私は全力で2人が会うのを阻止するけど。でも、あなたは幼い頃とはいえ咲ちゃんを傷つけてしまったことを反省してるし、今も謝ったし、これから仲直りしたいと思っているんでしょ? そのことを私はもちろん、まこや和や優希も知ってる。だからみんな協力してくれる。でもそれは、あなたが努力しているからよ」

照「・・・正直、実感はわかないけれど。でも、ありがとう」

久「まあ、どっちみちその場は明日以降よ。今日はとにかく、全国の決勝の日なんだからね」

照「そうだな・・・。モニター、つけようか」

久「ええ、優希は頑張ってるかしら」

実況「さあ、先鋒戦の前半戦もいよいよオーラス。ここまで高打点の応報が続く中、白糸台の宮永咲だけあがれておりません。果たして反撃の狼煙を上げることはできるのか!」

久「優希がトップ、頑張ってるわね」

照「咲が焼き鳥なんて、家族麻雀をした最初の時だけ・・・」

照(私はそのときから、咲が嫌がることをしてきた・・・)
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:52:39.76 ID:5tUPLJ+90
-南4局-
-8巡目-
親:松実玄
ドラ:五萬

咲 手牌:七七七AAAAD西西 8-88 ツモ:8

咲(初めて家族麻雀をしたとき、私は訳も分からずに焼き鳥になった。そしたらお姉ちゃんが「次に焼き鳥になったらバツゲームにしよう」って言い出した。だから私は、次からは最低でも1回は上がるようになった)

咲「カン」 カン:8ソウ リンシャン:七萬

咲(初めのうちはお姉ちゃんには全然勝てなかった。お姉ちゃんと一緒に遊べれば良かったから、バツゲームさえ回避できればよかった。でもそのうちお姉ちゃんが言い出した。「お年玉を賭けようよ」って。賭け始めた頃はどんどん取られちゃったけど、そのうち私も勝てるようになった)

咲「もいっこカン」 カン:七萬 リンシャン:西

咲(私が元を取れるくらいに勝てるようになったとき、お姉ちゃんは怒り出した。怒られるのは嫌だったけど、お年玉を取られるのも嫌だったから、私は±0で打ち回すようになった。負けないように、勝たないように、ただ調整するだけの麻雀なんて、面白くなかった)

咲「もいっこカン」 カン:2ピン リンシャン:西

咲(いつも±0で打つ私に、またお姉ちゃんは怒った。そして「賭けなくてもいいから本気で打ってみて」って言われた。でも、その時の私はもう、±0で打つことが染み付いてしまっていた。ある意味で、本気で打って±0だった。お姉ちゃんは当然納得してくれなかった)


咲 手牌:西西西西D [七七七七][AAAA]8-888
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2012/08/01(水) 23:54:30.07 ID:8G7s4SAu0
マジレスするとドラマCdによればお年玉かけるの提案したのは親父
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:55:12.72 ID:5tUPLJ+90
咲(もう麻雀なんて打ちたくなかった・・・。お母さんが仕事の都合で東京に単身赴任が決まった時、私は一緒にいくことにした。これでもう、麻雀なんてしなくていい。それでも、麻雀を楽しくやっている人達が憎くてたまらなかった。私はこんなに苦しんだのに。みんな苦しめばいいんだ)

咲「4つめ、カン」 カン:西

咲(なのに、私は今、全国の決勝なんてところで麻雀してる・・・。お姉ちゃんと楽しく打っていたけど、その楽しみはお姉ちゃんに奪われて。それを取り戻してくれたのは、淡ちゃん。部内でもほとんど負けるなんてことなかったし、私にはみんなを苦しめる力があるなんて、天狗になってた・・・。でも今は、焼き鳥目前・・・)

咲 リンシャン:5ピン

咲(何やってたんだろ・・・。今になって焼き鳥のバツゲームなんて思い出して、お姉ちゃんが見てるところで焼き鳥になんてなれないだなんて思ったりして・・・)


咲「ツモ、四槓子。16000、8000です」



咲(ただ、お姉ちゃんと楽しく打ちたかっただけだったのに・・・)
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/01(水) 23:56:24.12 ID:lgOVSdT9o
>>91
黙ってうどんでも啜ってろ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/01(水) 23:58:48.70 ID:5tUPLJ+90
実況「珍しい役満が飛び出しました。長い沈黙を破り、宮永咲役満ツモ。これが反撃の狼煙となるのか。インターバルを挟み、後半戦に挑みます」


-先鋒前半戦 終了-
清澄  片岡優希 124600
姫松  上重漫  115400
阿知賀 松実玄   94200
白糸台 宮永咲   65800


-休憩時間-
淡「咲ちゃん、最後の四槓子はかっこよかったよ!」

咲「ありがとう。でもあんなに点数取られちゃったの、ほんと久々だよ」

淡「大丈夫だよ、後半で巻き返せばいいし、誰が大将やってると思ってるの?」

咲「そうだね、淡ちゃんが大将だもん、負けるわけないよね」

淡「よし、じゃあ後半も頑張ってね」

咲「うん、本気出してくるね」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:01:11.67 ID:rIe3ghE40
-先鋒後半戦-
-南4局-
南 片岡優希 102000
西 松実玄  101900
北 宮永咲   92400
東 上重漫  103700

実況「後半戦も高い打点が飛び交う中、怒涛の巻き返しを見せる白糸台の宮永咲。前半東1では10万点以上リードされていたとは思えません」

咲「カン」

咲 手牌:一一一BBB88東東 西-西西西 ツモ:8

咲「ツモ、リンシャントイトイ三暗刻。4000、2000です」


-先鋒戦終了-
白糸台 宮永咲  100400
清澄  片岡優希 100000
阿知賀 松実玄   99900
姫松  上重漫   99700

実況「白糸台、微差ながら逆転。トップに立ちました。全員がほぼ原点に戻り、勝負は次鋒戦に引き継がれます!」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:04:00.41 ID:rIe3ghE40
ちょっと休憩・・・
15分くらいから再開します。なんとか最後まで行けそう

>>91
IFということで、「いや、知らんし」ということで1つご勘弁ください
次回から参考にさせていただきます
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2012/08/02(木) 00:07:14.78 ID:jdUoz+hh0
いや 自分もタイミング悪かったです すみません
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:16:28.23 ID:rIe3ghE40
-休憩時間-
-白糸台 控え室-

淡(うわー、本気出すって、全員±0にすることか・・・。団体戦にオカはないから、ポイント上は全員±0。それでいて最終的にはトップとか、面白すぎるでしょ)

菫「最後にまくったか。まったく、一時はどうなることかと思ったが・・・。行ってくる」



-廊下-

咲「あ、部長。次鋒戦、よろしくお願いします」

菫「・・・なあ、宮永」

咲「はい、なんでしょうか?」

菫「何かあったのか? こう、言い方が悪いが、憑き物が落ちたような感じがするんだが・・・」

咲「憑き物ですか。・・・そうですね、確かに落ちたかもしれません。変なこだわりが無くなったというか、次への目標ができたというか」

菫「そうか・・・。私が見てきた中で、今日の後半戦の打ち筋が、一番良かった。それだけだ」

咲「ありがとうございます」

菫(何があったのかは知らないが・・・麻雀への憎しみが無くなったんだろうな・・・)
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:17:50.38 ID:rIe3ghE40
-次鋒戦終了-
阿知賀 松実宥  112200(+12300)
白糸台 弘世菫  105300(+ 4900)
姫松  真瀬由子  97000(- 2700)
清澄  染谷まこ  85500(-14500)


-阿知賀 控え室-

憧「宥姉やったね、対策バッチリだったじゃん」

宥「でも、ほんとはもうちょっと稼がないといけなかったよね・・」

憧「十分よ、あとは私たちに任せて!」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:18:49.79 ID:rIe3ghE40
-中堅戦終了-
阿知賀 新子憧  110000(- 2200)
姫松  愛宕洋榎 104700(+ 7700)
清澄  竹井久   96900(+11400)
白糸台 渋谷尭深  88400(-16900)


-姫松 控え室-

洋榎「久に負けた上に、ウチとしたことがこの程度しか稼げんとか。ほんま、堪忍な・・・」

絹恵「お姉ちゃんが稼げんかった分は、私が稼いでくるで。それがチームやって、お姉ちゃんゆうてたやん」

洋榎「せやな、絹、頼んだで!」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:19:52.45 ID:rIe3ghE40
-副将戦終了-
阿知賀 鷺森灼  106600(- 3400)
姫松  愛宕絹恵 100100(- 4600)
清澄  原村和   99900(+ 3000)
白糸台 亦野誠子  93400(+ 5000)


-清澄 控え室-

久「正直、もっとすごい大差で大将戦じゃないかと思っていたんだけど、思いの外接戦ね・・・」

照「何点差があろうと、勝って戻ってくる!」

和「私がもう少し稼げれば良かったんですが」

照「離されないだけで十分、あとは任せて」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:21:32.59 ID:rIe3ghE40
-大将戦 開始-
実況「さあ、本大会も残すは大将戦の2半荘のみとなりました。泣いても笑っても、これで勝負が決まります。果たして栄冠を掴むのはどの学校なのか」


-東4局-
-開局6局目-
南 末原恭子 104900
西 高鴨穏乃 107700
北 大星淡   86100
東 宮永照  101300


恭子(ここまでチャンピオンが2回連続で上がり。でも分かっとるんやろうな、チャンピオン。次に上がれば7局目の北家で大星の大七星が発動するんやで・・・仮に張ってても上がり放棄せなかん場面)

照「ツモ、2000オール」

穏乃「えっ」

恭子(マジでか、それとも大七星なんか相手にならんとでも言うんか・・・)

淡(連荘は止められないんでしょう、予定通りね)
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:23:13.87 ID:rIe3ghE40
-東4局 1本場-
-開局7局目-
-1巡目-
ドラ:八萬

恭子 配牌:二四九AABB34567南

恭子(このカン三萬さえ鳴ければ、喰いタンで7巡以内に上がれるかもしれん。大星が上がるのは7巡目、それまでに上がったる)

照 打:三萬

恭子「チー」 打:南

恭子(なんや、チャンピオンは私に上がらせたいんか? だったら前の局でやったらええのに・・・)


-3巡目-

照 打:3ピン

恭子「ポン」 打:九萬

恭子 手牌:AA34567 三-二四B-BB

恭子(よし、3メンチャンの方を残せたで。あと4巡、頼むでっ)

淡(・・・これが狙いなの? 宮永照)

淡 手牌:八@F7東東南南西北白発中 ツモ:西

淡(確かに、大七星が発動しても7巡以内にあがってしまえば関係ない。自分一人では上がれなくても、誰かのアシストに徹すれば上がれる可能性は高まる。そして私は、6巡の間は数牌を切るしかない。ある意味で、喰いタン相手には格好の餌食・・・。おまけに1ピン以外はちょっと切りにくいときた。どうする・・・)

淡 打:1ピン

淡(とりあえず様子を見ましょう・・・)
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:25:49.83 ID:rIe3ghE40
-6巡目-

照 打:五萬

恭子(あかん、テンパイしてから動かん。チャンピオンもここまでアシストするなら差込まできちっとやってや・・・)

穏乃(まずいなぁ、もう時間がない・・・。姫松の人の待ち、この辺かな・・)

穏乃 打:6ソウ

恭子(おしい、その下やっ)

淡 手牌:八東東南南西西北北白白発中 ツモ:発

淡(ドラを残してしまったけど、まあ対面の様子からすると、マンズよりもソウズっぽいし、問題無いでしょ・・。これで決まりね)

淡 打:八萬

照「ロン」

淡「なっ!」

恭子(張っとったんか、アシストしとるようにしか見えんかったで・・・)

照 手牌:三三八CCHH2288東東

照「チートイドラ2。9600の1本場、9900」

恭子(いや、私に鳴かせた三萬、暗刻から切ったんとちゃうか・・それに、私の当たり牌も抑えとるから、仮に大星がドラを切らなかったとしても差込もできる・・・2段構えってことなんか)
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:27:20.15 ID:rIe3ghE40
-東4局 2本場-
-9巡目-

淡(私が4万点も離されるなんて・・・ふざけんなっ。でも今回はみんな手が遅そう、ここで止める)

穏乃「カン」

穏乃「よし、ツモ。リンシャンツモタンヤオ。2800、1500」

淡(へー。チャンピオンの連荘中に普通に上がってくるなんて、やるじゃん。ありがとう・・・)

照(・・・高鴨穏乃か。まっすぐな、いい目だ)
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:28:32.08 ID:rIe3ghE40
-南1局-
-7巡目-

恭子(親番やけど、手が進まへんな・・・。それにしても大星の捨て牌)

淡 捨牌:四七DA34

恭子(チャンタ系なんか・・・・。嫌な予感がする)

淡「ツモ」

淡 手牌:東東南南西西北北白白発発中 ツモ:中

淡「字一色です。16000、8000」

恭子(やっぱり発動しとったか・・・。この親っかぶりは痛い)

照(・・・これが隠された条件。流石に発動のタイミングが分からないと対処がしにくい。東1でも見抜ききれなかったしな・・・)


東 末原恭子  85400
南 高鴨穏乃 103500
西 大星淡  104700
北 宮永照  106400
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:30:04.02 ID:rIe3ghE40
-観戦室-

実況「今度の字一色は上がりきった白糸台の大星。一気に2位に浮上です。一位清澄との差もわずかに1700点。親っかぶりとなってしまった姫松、苦しい展開です」


泉「ここで隠された条件が発動ですか・・・」

セーラ「どうや、なんか分かりそうか・・」

船久保「ちょっと過去の牌譜と比べてみんとわかりませんが、なんとかやってみましょう」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:31:31.88 ID:rIe3ghE40
-南4局 4本場-

穏乃(チャンピオンがラス親になってから4連荘、やっぱり強い・・・)

恭子(準決勝の時はなんとか2着抜けできたけど、1位にならんといかんときにこの連荘はしんどいなぁ。次は満貫か・・)

淡(もう止める、止めてやる・・・。私は勝たなきゃ、ここにいる意味がない)

淡「ツモ。タンヤオツモドラ1、1000、2000の4本場」

照(流石に決勝、連荘が続きにくいな。彼女の点数は削っておきたいんだが・・・)

淡(不格好でも、私は勝つ・・・)



-大将戦 前半終了-
南 末原恭子  80500
西 高鴨穏乃  98100
北 大星淡   98700
東 宮永照  122700
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:33:05.01 ID:rIe3ghE40
-4月 白糸台-

淡「私さ、帰国子女でこっちに友達いないんだ。席が隣になったのも何かの縁だし、友達になって」

咲「そうなんだ、よろしくね」


何の変哲もない、これが私と咲ちゃんの出会い---


淡「そういえば咲ちゃんは何部に入るの」

咲「え、私は特に入ろうとは思ってないなぁ」

淡「えー、そうなのー。私麻雀部に入ろうと思ってるんだけど、一緒に入らない?」

咲「・・・ごめん、私麻雀はやらないから」

淡「じゃあさ、見学に付いてきてよ。一人で行くの恥ずかしいし・・・」

咲「うん、それくらいだったら・・・」


菫「ようこそ麻雀部へ。といってもただ見ているだけでもつまらないだろうし、ルールが分かるなら空いている卓に入って、実際に打ってみるといい」

淡「私打ちたいでーす」

菫「そうか。君は打たないのか?」

咲「私は淡ちゃんの付き添いで・・・」

菫「吉田、北川、ちょっと見学者の相手になってやってくれ。・・・あとは、手が空いている者がいないな。三麻になってしまうな」

淡「咲ちゃん、数合わせでいいから打とうよ。全然分からないわけじゃないんでしょ?」

咲「ま、まあ。多少は分かるけど・・・」

淡「じゃあ決まり。咲ちゃん入れて4人でお願いします」

菫「分かった」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:34:54.25 ID:rIe3ghE40

菫「終わったか? どうだった?」

吉田「部長・・・。自分もう自信失くしたっす・・・」

北川「大星さんが2連続トップ。宮永さんは2連続±0。私たち2人で仲良く3着4着です・・・」

菫(最後のあがりが、七対子字一色か・・・。この子は、去年の長野の天江のような魔物なのかもしれんな)

菫「大星さん、君は中学の時でも大会では活躍していたのか?」

淡「いえ、帰国子女で、向こうでも特に大会とかには出てませんでした」

菫「そうか。それで宮永さんは、入部希望ではないのだよな・・」

咲「ええ、今日は淡ちゃんの付き添いで」

菫「うちの二人があっさりへこまされる中、2回とも±0というのは評価できる。もう少し打ち筋を見てみたいんだが」

咲「え、でも・・・」

菫「なに、別に入部しろと言っているわけではないし、うちの学校では2週間の仮入部期間がある」

淡「咲ちゃんそこまで考えてないと思うので、そのへんはまた明日にでも」

菫「そうだな。では、また明日」



淡「咲ちゃん、麻雀うまいじゃん。どうしてやらないの?」

咲「え、別にうまくなんかないよ・・・たまたま」

淡「えー、だってあの部長さんだって咲ちゃんのこと気にしてたよー」

咲「この時期はみんな部員がほしいからそう言っただけだよ・・」

淡「そうなの。私は咲ちゃんと打ってて楽しかったけどなー」

咲「・・・私と打って、楽しい?」

淡「そうだよ、楽しかったよ?」

咲「そんなこと言われたの、初めて・・・ぐすっ」

淡「え、え、私なんか変なこと言った?」

咲「ごめんね。麻雀なんてくだらないって、ずっと思ってたから・・・」

淡「そうなんだ・・・。なんだか、わけあり?」


そして、宮永照が姉だと聞かされた。ひどい仕打ちを受けたことも---
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:36:47.92 ID:rIe3ghE40
淡「何それ、一方的すぎる」

咲「うん、だからお母さんがこっちに単身赴任することになって、ついてきたの」

淡「分かった、私がチャンピオンをコテンパンにのしてやるわ。っていうか咲ちゃんも麻雀でチャンピオンをコテンパンにするべきよ!」

咲「え、でもお姉ちゃんすごく強いし・・・」

淡「そんなただ年上だからって妹をいじめるような奴はお姉ちゃんじゃない! それに±0にし続けるほうがよっぽど難しいし、普通に咲ちゃんが勝ちに行けば絶対勝てるって」


今思えば、このときもうちょっと言葉を選んだらよかったと思う。冷静じゃ、なかった---


淡「それにうちの学校、麻雀強いから宮永照と戦う機会は絶対ある。全国の舞台で、チャンピオンに復讐してやろうよ。なんで咲ちゃんが麻雀やめなきゃいけないの。麻雀やめなきゃいけないの、むしろあっちでしょ!」

咲「復讐・・・」


ただ咲ちゃんと麻雀部に入りたかったっていう、私のエゴ。そのための動機付けなんて、そのときは何でもよかった---
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:40:13.54 ID:rIe3ghE40
-大将戦 後半戦-
-東2局 1本場-
-開局4局目-

北 高鴨穏乃 103100
東 末原恭子  85700
南 大星淡   91500
西 宮永照  119700


-8巡目-
ドラ:9ピン

穏乃 手牌:@ABCDDD(赤)FFFF西西 ツモ:C

穏乃(よし、染まった。西も4ピンもまだ場に出てない。勝負!)

穏乃「カン」 カン:7ピン

カンドラ:1ピン リンシャン:1ピン

穏乃(1ピンも切れてない。なら待ち変更)

穏乃「リーチ」

穏乃 打:4ピン


-観戦室-
船久保「阿知賀の高鴨さん・・・それあがったらあきませんっ」

セーラ「なんや、条件分かったんか?」

船久保「条件の分からんかった地区大会、準決勝オーラス、そしてこの決勝の3回のデータの共通点は、前の局に7ピンを全部抱えて誰がかあがっとるってことですわ」

泉「じゃあこの手、阿知賀があがったら・・・」

船久保「次局、親にして大星の大七星が発動するはずや」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:42:22.59 ID:rIe3ghE40
-12巡目-

穏乃「ツモ、リーヅモ混一三暗刻ドラ3。裏はなし、倍満です」

淡(結構高かったけど、次で発動するから問題ないわね)


-東3局-
-開局5局目-
-7巡目-

淡「ツモ、字一色。16000オールです」

恭子(このタイミングでまた発動・・・。やばい、詰んだんちゃうか。次の6局目、大星以外の誰かが上がれば大星の親が流れて7局目の北家、また発動・・・。かといって誰も最後まで上がらなければ、大星はノーテン宣言すれば親が流れる。どうあがいても、次の発動は免れんやん・・・)


西 高鴨穏乃 103100
北 末原恭子  61700
東 大星淡  135500
南 宮永照   99700
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:44:09.49 ID:rIe3ghE40
-東3局 1本場-
-開局6局目-

照「ロン、南のみ、1300」

淡「どうぞ」

恭子(まあ、チャンピオンは連荘にギア入れるしかないか・・・次のチャンピオンの手は親の2飜で2900程度。この点差やけど、大星にあがられるよりはまだチャンピオン支援した方がましか・・・自分で上がれればそれにこしたことはないんやけど)
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:50:09.83 ID:rIe3ghE40
-東4局-
-開局7局目-
ドラ:七萬

照 手牌:二二二四五六ABCD234

照(間に合わない・・・。テンパイはしたが、1巡遅い・・・)

穏乃 手牌:三三四四五五6788 F-DE

穏乃(テンパイしてるけど、出ないか・・・)

恭子 手牌:二三八九ACGH3467中

恭子(もう、凡人にバトン渡さんといて・・・。誰かに鳴かせるか差込みせんと、大星があがってまう。もう、目つぶって切ったろか・・・)

恭子 打:二萬

照「カン」

恭子(リンシャンであがるんか?)

照 リンシャン:8ソウ

照(リンシャンならず。・・・・これはまず阿知賀の当たり牌、こうなるのか)

照 打:8ソウ

穏乃「ロンです、タンヤオのみ。1000点」

照(ふう、ギリギリ。さっきよりも厳しかった・・・)

淡(ち、流されたか・・・。でも点差は十分、このまま勝つ)
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:51:53.02 ID:rIe3ghE40
-南4局 3本場-
ドラ:三萬

照「ツモ」

照 手牌:一二三FFFFGGHH23 ツモ:4

照「ピンヅモイーペーコードラ1、2900オール」

穏乃(オーラスで連荘が止まらない・・・)

恭子(みんなごめんな、もう逆転の道筋がみえん・・・)

淡(・・・最後の最後で発動条件を満たすなんて。これでこの勝負もらったわ)

照(これで、次に満貫あがれば大星をまくれる。だが、そのために越えなければならない難所は、ずいぶん険しそうだな・・・)

穏乃(ツモり四暗刻テンパイだったけど、ダメだったか・・・。でもあきらめないっ)
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:53:07.01 ID:rIe3ghE40
-南4局 4本場-
南 高鴨穏乃 100300
西 末原恭子  52400
北 大星淡  128900
東 宮永照  118400


-6巡目-
ドラ:2ソウ

淡 手牌:東東南南西西北北白白発中9 ツモ:発

淡(この9ソウさえ通れば・・・)

照 手牌:七八GG123456789

淡 打:9ソウ

淡(通った、これで私の勝ち)
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:54:08.29 ID:rIe3ghE40
-7巡目-



  「ツモ!」



119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:55:01.84 ID:rIe3ghE40
-地区予選開始前 白糸台-

淡(咲ちゃんが一緒に麻雀部に入ってくれた。そのときはそれだけで嬉しかった。でも、時々見せる瞳の奥の闇に、私はひどく後悔するときがある。私はとんでもない魔物を起こしてしまったんじゃないかって)

咲「どうしたの、淡ちゃん?」

淡「え、その、ちょっとぼーっとしてただけ。今日はレギュラーの発表があるんだよね」

咲「そうだね。もう、いい子ぶって麻雀打つのも疲れたよ。早く、もっと自由に打ちたいな」

淡「咲ちゃんったら、慌てたらダメだよ。今日はあくまでレギュラーを部内で発表するだけ。大会当日になるまではオーダー変更はできるんだから」

淡(そんな暗い笑顔が、私をも暗くさせる。でも、きっかけを作ったのは私。いまさら引きかえすなんて、できない・・・)

咲「早く大会にならないかなー」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:56:33.31 ID:rIe3ghE40
-白糸台 部室-

菫「では今大会のオーダーを発表する。先鋒、宮永咲」

咲「はい!」

淡(咲ちゃん先鋒か。どちらかというと、点数調整が必要な中盤のどこかかと思ったけど)

菫「先鋒は他校のエースが出てくることが多い。だが宮永、君なら大崩れすることはない。3着にもまずならない安定した打ち筋を評価した」

咲「ありがとうございます」

菫「次鋒は私が務める」

淡(ふーん、部長は大将じゃないんだ。亦野先輩あたりにするのかな?)

菫「中堅、渋谷」

尭深「・・・はい」

菫「去年に引き続き、中堅を頼む」

尭深「・・・がんばります」

菫「副将、亦野」

誠子「はいっ」

淡(あれー、じゃあ大将誰なの?)

菫「昨年は先鋒だったが、状況に合わせて柔剛を使い分けられる打ち筋は、中終盤の方が向いていると判断した」

誠子「期待に応えられるよう、頑張ります」

菫「そして大将、大星淡」

淡(あれ、なんか聞き覚えのある名前だな?)

菫「大星、聞こていたのか?」

淡「・・・・え、大将、私ですかっ?」

菫「なんだ、不服か?」

淡「いえいえいえいえ、やりますやります、やらせてくださいっ」

菫「まったく・・・。お前の火力はずば抜けて高い。負けている時には逆転を狙える、勝っている時にはダメ押しができる。最善の布陣を敷いたつもりだ」

淡(1年に大将任せるなんて思ってなかったんだもん・・・。でも、やる気出てきた)

淡「はい、絶対勝ちます」

菫「よし、その意気だ。以上のオーダーで、白糸台3連覇を勝ち取る」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/02(木) 00:57:03.84 ID:fPHPRX1lo
なんだ淡ちゃんいい子だったのか
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 00:58:21.23 ID:rIe3ghE40
咲「淡ちゃんの慌てっぷり、面白かったよ」

淡「うー、だって1年に大将任せるとは思ってなかったんだもん」

咲「そう? 私は淡ちゃんが大将なら安心だよ」

淡「そうかなぁ。私は咲ちゃん大将の方が安心だけどなー」

咲「勝とうね。お姉ちゃんを、倒す」

淡(もし、もしも宮永照と会って仲直りとかしちゃったら、咲ちゃん長野に帰っちゃうのかな・・・)

淡「そうだね、先鋒で出てきたらいいね」

淡(そんなのダメっ・・・。宮永照をもっと憎ませなくちゃ・・・)




あれ、どうして今、こんなことを思い出すの---
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:00:44.66 ID:rIe3ghE40
-大将戦-
-南4局 4本場-
-7巡目-

穏乃「ツモ。国士無双!」

恭子(な、役満・・・。つうことはっ)


阿知賀 高鴨穏乃 133500
姫松  末原恭子  44000
白糸台 大星淡  120500
清澄  宮永照  102000



実況「奈良県代表、阿知賀女子学院逆転優勝ですっ!」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:01:51.69 ID:rIe3ghE40
淡「・・・え、終わり?」

照「いい戦いだった。おめでとう」

恭子「お疲れさまでした・・・ここまで力の差見せられると逆にすっきりやわ」

淡「ぐす・・・ぐすん・・・」

穏乃「大星さん?」

淡「ううっ、うう、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。負けちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ごめんなさいーーー」

照「大星さん、泣かないで・・・・。ほら、泣くと、私まで泣きたく、なって、ぐす、くるから、ぐす」

穏乃「えとえと、二人とも落ち着いて」

恭子「ああもう、あんたがゆうても逆効果や。あんたはとっとと優勝インタビューでも受けてき。ここは私が引き受けたる。泣きたいのはこっちやっていうのに、今更泣かれへんやん」

穏乃「ええ、お願いします」

淡「ごめんなさいぃ。お姉ちゃんを嫌うように仕向けたの私なんですぅぅぅ。仲直りしちゃったら長野に帰っちゃうと思ったんですぅ」

恭子(うわあ、なんやよく分からんけど、すごい爆弾落としたんとちゃうか? 引き受けんかったら良かった・・・)

照「ぐす、そんなことないっ。ぐす、大星さんが、ぐすっ、咲にまた麻雀を、ぐす、させてくれた・・・」

淡「咲ちゃんと麻雀部に入りたかっただけなんですぅぅぅ。そんなの私のわがままなだけなんですうぅぅ」

照「咲を傷つけたのは、ぐすぐすっ、私なの・・・。私が悪い・・・ぐす」

恭子(なんも悪うない私を誰か助けて!)
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:03:08.62 ID:rIe3ghE40
-白糸台 控え室-

咲 ボーゼン

菫(・・・・ふむ、これはなんと声をかければいいのやら)

尭深(気まずい・・)

誠子(こういう空気は、性に合わない)

誠子「宮永!」

咲「え、はいっ」

誠子「早く淡を迎えに行け!」

咲「は、はいっ」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/02(木) 01:04:29.17 ID:alSgW9iFo
予想外だった
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:04:34.99 ID:rIe3ghE40
-対局室-
照「私の方がぁ、ぐす、咲にひどいことして、ううぅ」

淡「そんなことありませんんん、私のほうがひどいことしましたぁぁぁぁぁ」

咲「淡ちゃん、お姉ちゃん!」

照&淡「っ!!」サッ

恭子「ちょ、なんで二人とも私の後ろに隠れんねん。無駄なことせんと、ちゃんと咲ちゃんと話すんやで」

咲「えと、なんかすみません・・・」

恭子「まったくや、あと頼んだで」

咲「淡ちゃん、お姉ちゃん。とりあえず、この部屋は出よう? その、さっきからずっと、モニターされてて・・・」

照&淡「・・・あ」カアア

恭子「まったく・・・。清澄の部長、ようやくおでましか?」

久「とりあえず、うちの控え室に来なさい。空けてあげるから」

恭子「・・・わざと遅く来たんとちゃうか?」

久「そんなことはないわよ。正直、呆気にとられてて」

恭子「わからんでもない。じゃあほんまにあと頼んだで」

久「ええ、ありがとう」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:06:26.31 ID:rIe3ghE40
-清澄 控え室-
照「久はいてほしい・・・」

久「照が良くても、他の二人はどうなの?」

淡「・・・中立な人がいてくれた方が、いいです」

咲「私からも、お願いします」

久「いいわよ。じゃあ照から、ちゃんと言いたいこと言いなさい」

照「私から?」

久「あなた一番年上でしょうに」

照「うん・・・。じゃあ、咲」

咲「はい」

照「幼かったとはいえ、私は咲にひどいことをして、本当にごめんなさい」

咲「・・・もういいよ、お姉ちゃん」

照「お姉ちゃんって、呼んでくれるの?」

咲「さっきの会場でも呼んだんだけどな」

照「ぐす、ぐすっ。ありがとう・・・ごめんね・・・ぐす」

久「じゃあ、次。大星さん」

淡「咲ちゃん、私は咲ちゃんの気持ちも考えないで、咲ちゃんの気持ちを踏みにじって・・・。やりたくもない麻雀させたり、心無い麻雀させたり。本当に、ごめんなさいっ」

咲「淡ちゃんは、何も悪くないよ。私が弱かったから、あんな八つ当たりみたいなことしかできなかったの」

淡「そんなことないよぉ。私が仕向けたの。お姉ちゃんと仲直りしたら長野に帰っちゃうんじゃないかと思ったの・・・・。私が、悪いの・・」

咲「そんなことない。淡ちゃんが誘ってくれなかったら麻雀は今もやってないし、そしたらお姉ちゃんのことも嫌いなままだったし」

淡「でもぉ・・・」

久「はいはい、そんなんじゃエンドレスよ。というわけで全部照のせいにしておきなさい」

照「・・・私?」

久「発端でしょう。で、照は十分反省した。はい、この件終了、一件落着!」

照「強引・・・」

久「あら、私は強引なのよ」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 01:07:26.84 ID:0ipLlYfSo
SSだからいいけど本編で阿智賀勝ったら暴動だろーな
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:08:36.90 ID:rIe3ghE40
-長野新幹線 車内-
久「改めて、個人3連覇おめでとう」

照「・・・・記録上はな。でも、心残りがある」

久「阿知賀の子?」

照「高鴨穏乃・・・。彼女はオーラスで負けているとき、必ず逆転手を張る。あの決勝の東1で、そんな景色が見えた」

久「確かに、国士無双の前の局も、彼女はツモり四暗刻をテンパイしていたし、その前の局は緑一色の1シャンテンまで行っていたわね」

照「逆に勝っている時には振り込んだりする。高鴨さんに勝つためには、彼女を1位にしてオーラスを迎えないといけなかった・・・。でもそういうのは咲の得意分野で、私はちょっとずつ上がることしかできない。私が打点を上げる度に彼女の打点や勢いはそれ以上に上がっていく」

久「阿知賀はみんな個人戦にはエントリーしてなかったみたいだからね。もうインターハイで彼女たちと戦うことも無いわね」

照「今年が一番充実していた。1年のときから団体戦、やりたかった」

久「逆に今年1年だけだから、密度の濃い大会になったのかもしれないわよ」

照「そうだな・・・来年の清澄は、部員が集まるといいけど」

久「そうね。和は、家族の仕事の都合で来年はまた奈良に戻ることになったみだいだし、まこと優希が心配ね・・・」

照「和が阿知賀に入れば、また全国に出られるだろうね。彼女たちの中で3年なのは、松実宥さんだけらしいから」

久「そう・・・」

照「久・・・」

久「なに、照?」

照「今まで進路の話とかしてこなかったけど、久はこの先、どうするつもり?」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:10:45.28 ID:rIe3ghE40
久「・・・・専門学校か就職か、どっちみち大学へは行けないわ。奨学金って手もあるけど、家のことも考えるとね・・・」

照「私は、東京の大学に行こうと思ってる」

久「それがいいわよ。プロを目指すなら、その方がいい」

照「みんなこうして集まって全国まで行ったのに、またバラバラになるんだな・・・」

久「しょうがない、なんて言葉では片付けたくないけどね。動かない水は腐る、それと同じ。環境が変化することは、悪いことばかりじゃないわよ」

照「でも、さみしい・・・」

久「もう、そんな暗い顔しないの。残された時間がわずかだと分かる、その幸福を噛み締めなさい。突然別れを突きつけられることもある、あなたも私も、それはわかってるはずじゃない」

照「久は、強いね・・・」

久「何度も言ってるでしょ。強引なだけよ。それに、東京に行って咲ちゃんと一緒に暮らすんでしょ。お釣りが来るくらい幸せなことじゃない」

照「そうだね。それは、幸せなこと」

久「だから・・・・私なんかに・・・・・邪魔できるわけないじゃない・・・・・・ぐすっ」

照「・・久?」

久「やだ・・泣くつもりなんて、なかったのに・・・・」

照「久、泣いたっていいよ」

久「泣いてないってば・・・ぐす・・・」

照「長野を拠点にするプロだっている。でも今は、東京に出て、もっといろんな人と戦いたい・・・・」

久「うん、分かるよ・・・・」

照「それに母さんはあくまで単身赴任。父さんをいつまでも実家なのに一人にさせるわけにもいかない。だから私は、戻ってくる」

久「・・・うん」

照「残された時間がわずかだと分かることが幸せなら、離れている時間が分かることも、幸せのうちに入るんじゃないかな?」

久「・・・4年で戻ってきなさいよ」

照「うん、約束」

久「約束よ」



カン!
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/02(木) 01:17:25.57 ID:AVU98CGbo
咲の改心があっさりしすぎな気もするけど乙
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/02(木) 01:17:50.56 ID:rIe3ghE40
以上です
ご支援、ごすばらいただき、ありがとうございました
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 01:20:48.68 ID:Kpwz/WEoo
ここから濃厚な魔王ルートになります。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/02(木) 01:21:59.52 ID:QrR17ZdLo
乙乙!
阿知賀優勝には驚いたけど面白かったよ!
また書いてね!
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 01:24:24.29 ID:hHzK0ecEo
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/02(木) 01:28:20.83 ID:hHzK0ecEo
いつの間にかこっちが完結してるな

照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/02(木) 01:36:39.17 ID:fPHPRX1lo
乙!
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 01:38:01.85 ID:aheOXvxp0
>>137
せ、せやな
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 01:54:37.91 ID:dzfI9TUCo

阿知賀優勝に一番ビックリしたww
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/02(木) 04:39:11.98 ID:iwpynAOTo

いいifを見させてもらった
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 19:17:20.87 ID:8pto2tDv0
1です
蛇足ですが阿知賀優勝について

淡が負けて大泣き、というところまで考えまして
じゃあそのとき、照は勝っているべきなのか?というのがしっくりきませんでした

淡も照も負けた、という方がラストへの流れが自然かなと思いました
阿知賀か姫松かは、正直末原さんが優勝するビジョンの方が見えませんでしたので・・・
平たく言うと「主人公補正能力」のある(はずの)穏乃の方が書きやすい、ということでした

まあ、さすがに本編でこんなことにはならないと思いますが・・・



次回作は、需要0な構想が浮かんでいたりしますがまとまりそうもないので・・・

短編で何か書けたらいいなと思います
リクエストに応えられるかは微妙ですが、ふっとはまると今回みたいに勢いよく書けたりしますので
さすがにメモ帳で80Kとか自分でもびっくりです

改めまして、ここまで読んでいただきありがとうございました
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 20:24:31.62 ID:Kpwz/WEoo
いっそ全優勝パターン書くのはどうかな(提案)

末原先輩含む(凡人)
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/02(木) 20:56:56.51 ID:LrQMMYzv0
乙!本編で阿知賀優勝がないといつから錯覚していた……?
姫松優勝は末原先輩が荒川憩並みになったらなんとかなるから(震え声)
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2012/08/02(木) 21:21:39.23 ID:xJqj3mP9o
乙でした
最後照の方が淡より点数勝ってたほうがしっくりくるなあと思ったり
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/02(木) 21:38:24.82 ID:+iNRkvafo
乙。

久はいてほしい。のとこで、はいてないを想像したのは俺だけでいい。
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/03(金) 16:03:58.44 ID:VjcE5u3f0
乙ですよ・・・
本編は阿知賀は憧と穏が能力に目覚めてかつ全員フル発揮したらありえなくはないな
まあそれはそれで今までのは何だったんだってなるけどな

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/03(金) 20:53:37.82 ID:FVHj6kwb0
1です。
まったく仕事がはかどらないので、30分くらい即興SSを書いてみます
書ききれるかどうかは分かりません
闘牌はぶけばいけるかな?

あまり期待せずにどうぞ
149 :巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」 [sage saga]:2012/08/03(金) 21:02:18.36 ID:FVHj6kwb0
-全国大会終了後-
-8月下旬-
-晩成 部室-

やえ「夏休みが終われば私たち3年も引退だな」

由華「そのことで話があります、部長」

やえ「どうした、それに部長はもう引き継いだはずだよ」

由華「やっぱり私には部長なんて無理です、向いてません」

やえ「まあそういいなさんな。私だって去年先輩に言われたときには、部長なんて他の誰かにやってもらいたいと思ったものさ」

由華「でも、私が一番練習してみんなを引っ張らないといけないのに、部長なんてしてたら時間がとられちゃいます」

やえ「私が時間をとられているように見えたなら、それは私の力不足だな」

由華「違います。先輩のように練習もこなして部長職もこなすなんて、私には出来ないです・・・」

やえ(ふむ、これは少し荒療治が必要だな。阿知賀が全国優勝して、力の差を感じてしまっているというところか)

やえ「まあ心配しなさんな。お前は私が認めた、大将なんだからな」


150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/03(金) 21:12:09.40 ID:FVHj6kwb0
-阿知賀 部室-
玄「ロン、三色ドラ5」

穏乃「うわー、ラス転落だぁ」

灼「もうちょっと河を見るべきだよ・・・」

憧「あ、電話なってる。初瀬か、ちょっと中断してするね?」

憧「もしもし初瀬ー、どうしたの珍しいじゃん」

憧「え、いまからこっちに来ていいかって? いいよいいよ、宥姉引退しちゃって同じ面子ばっかりだから、歓迎するよ」

憧「他の晩成の部員も来ていいかって? あんまり大人数だと部屋に入りきらないよー。うん、先輩2人。まあそれくらいなら大丈夫っしょ。じゃあ待ってるねー」

穏乃「え、何、晩成来るの?」

憧「うん、初瀬と、2年と3年の先輩が来るんだって」

灼「へー、たまには違う人と打つのもいいね」

玄「楽しみだねー」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/03(金) 21:22:12.97 ID:FVHj6kwb0
-阿知賀 部室-
初瀬「お邪魔しまーす」

憧「思ったより早かったね」

やえ「失礼するよ」

玄「あ、先鋒の・・・」

やえ「そう言えば言ってなかったな。全国優勝おめでとう。私たちを倒したくらいだ、そのくらいしてくれないと困るけどね」

由華「えと、失礼します」

穏乃「あ、大将だった人だ」

由華「巽由華です。それよりも部長、これはどういうことですか?」

やえ「どうも何も、ただ挨拶がてら麻雀をしにきただけだよ? それに部長は引きついだって言ってるだろうに」

由華「私は部長のことについて話をしたいって言ったのに、なんで阿知賀に来ることになるんですか?」

やえ「まあ、とりあえず打ってごらん。全国優勝の豪華メンバーじゃないか、それとも怖いのか? 確かにそんなニワカには部長は任せられんな」

由華「む、そこまで言うなら打ちます」

灼(何しにきたんだろ・・・・)

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/03(金) 21:23:11.41 ID:sAB7Tk04o
きてるー!
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/03(金) 21:31:58.97 ID:FVHj6kwb0
対局者:穏乃・憧・灼・由華

やえ「阿知賀の部長は誰だい?」

灼「あたし」

やえ「部長で大変なこととかあれば教えてほしい。どうにも、このニワカは部長になりたくないみたいでね」

由華「ニワカじゃないです。リーチ!」

灼「通らない、ロン」

由華「くっ」

やえ「そんなニワカリーチじゃ話にならんな・・・」

由華「たまたまですっ。次お願いします」

灼「この人数だし、それに晴ちゃん・・・赤土先生がいろいろやってくれるから特に苦労とかはないかな」

由華「晩成何人いると思ってるんですか。私には絶対向いてません」

穏乃「それロンです。8000」

由華「・・・はい」

やえ(ちょっとあおりすぎたか? だがこのくらい乗り越えてくれないと、来年もこの阿知賀に負けるだけだぞ)
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/03(金) 21:34:03.95 ID:FVHj6kwb0
うーむ、タイムアップ。
やっぱり即興は難しい・・・。

早いところ仕事片付けて、家に帰ってから書きます。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/03(金) 21:44:00.12 ID:sAB7Tk04o
期待してるでー!
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/03(金) 21:47:19.92 ID:nTAgk9sX0
何気にssだとあんまりない阿知賀と晩成の絡みが見れて新鮮な気分だ
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/04(土) 00:16:38.27 ID:TOcLNGE70
1です
帰ってきてあんまり眠たいので仮眠していたらこんな時間でした

今日は無理っぽいので、また明日の夜にします
おやすみなさい
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/04(土) 01:41:12.89 ID:rRJ3oaiCo
確かに晩成と阿知賀の絡みは珍しいなww
期待してるでー
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/04(土) 12:24:40.53 ID:oCGwXrSG0
1です
昼休みなので、少し書き進めていきます
そんなにはいけないと思いますが
160 :巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」2 [sage saga]:2012/08/04(土) 12:30:33.68 ID:oCGwXrSG0
-阿知賀 部室-

灼「晩成の部長がどれくらい大変なのかは分からないけれど。別に自分ひとりで全部やるわけじゃないんでしょ?」

やえ「もちろんそうだとも」

灼「部長会議にどうしても出れないときは、玄とか憧とかに頼んだりするし・・・」

穏乃「えー、わたし頼まれたこと無いっ」

灼「・・・穏乃には、重いものを運んでもらったりとか、重要な任務がある」

穏乃「そうだよね。頼られてないのかと思ったー」

憧(荷物持ちで満足なのかしら・・・)

灼「だから別に、そんなにプレッシャーとか感じなくてもいいと思う」

由華「そんなこと言ったって。私はもっと練習して強くならないと・・・」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/04(土) 12:35:20.20 ID:3kXgjBtWo
きてたー!
162 :159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/04(土) 12:43:25.57 ID:oCGwXrSG0
玄「なるほどー。つまり、部長になると練習できないってことですか?」

由華「そう。小走先輩だから晩成をまとめられたけど、私にはとても無理。自分で、精一杯なのに・・・」

やえ「晩成の伝統でな、エースが部長ということになっているんだが」

やえ「まあ阿知賀に来たのも何かの縁だ。少し昔の話をしようか。私も何代も前の先輩に聞いた話だが」

やえ「昔の晩成は、別にエースが部長だなんて決まりは無かったそうだ」

やえ「しかし9年前、晩成に事件がおきる」

灼「阿知賀の、レジェンド・・・」

やえ「そう、それが晩成の歴史的敗退。そのとき、晩成のエースと部長は別々だった」

やえ「30年連続の県大会突破という記録が終わってしまったという重圧は、相当のものだったらしい」

やえ「エースと部長のののしりあいから、部の分裂の危機にまで陥ったらしい」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/04(土) 12:52:12.38 ID:oCGwXrSG0
やえ「なんとか危機を脱したようだが、それ以降、エースを部長にするようなったそうだ」

憧「それでまた次の年から連続出場とか、さすがに晩成は違うわね」

玄「その、私たちからこんなことを聞くのも失礼かもしれませんが、小走さんも、10年連続が果たせなかったってことになるんですよね・・・」

やえ「まあそうなるな。気にしていないわけではないが、私は自分にできることはすべてした。それでこの結果なのだから悔いは無い」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/04(土) 12:53:55.88 ID:oCGwXrSG0
とりあえずここまで
また夜に
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/04(土) 17:28:13.68 ID:ZgqTcy0n0
劇団こばしり
という電波がきた
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/04(土) 20:46:17.58 ID:oCGwXrSG0
やえ「だが・・・。阿知賀のレジェンドに負けて、エースを部長にしようとなった。今回負けたのは、その転換期なのかもしれないな」

由華「先輩?」

やえ「エースと部長を分離しても、いいのかもしれない」

由華「・・・・・」

やえ「良くも悪くも、伝統は伝統に過ぎない。悪しき伝統であるならば、正されるべきだ」

由華「なんか、そんなのって・・・」

やえ「ん?」

由華「そんなの、くやしいですっ。負けたから変えましたなんて、晩成がそんなことでいいんですか。小走先輩がいつも言ってた王者って、そんなものなんですか」

やえ「由華・・・」

由華「たかが1回負けたくらいで折れるなんて、そんな王者はありえませんっ」

穏乃「なんか、和みたい」ボソ

灼「今そういうこと言わない」ボソ

由華「部長やります。部長にふさわしいエースでいます。そして---」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/04(土) 20:50:22.79 ID:oCGwXrSG0
由華「来年は阿知賀を倒して、全国に行きます」

憧「わーお、私たち目の前にして、それ言っちゃうの」

玄「来年は和ちゃんも戻ってくる予定だし、私たちだって負けないよ!」

灼「そう、来年も全国へ行くのは、私たち」

穏乃「負けないからね」

やえ「よく言った、由華。それでこそ晩成の部長にふさわしい」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/04(土) 20:55:18.66 ID:oCGwXrSG0
1です
短編のつもりだったのでこの辺で終わるつもりだったのですが

晩成と阿知賀なSSって確かにあんまりないですね
これから帰宅なのですが、道中まとまりつきそうだったら、また夜につらつら書きたいと思います

とりあえず
巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」第1部完
ということで
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/04(土) 21:10:58.19 ID:mv0Gq6lXo
乙乙
めっちゃ面白いし!
続き期待してるでー!
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/05(日) 00:18:07.54 ID:y6Rpk/v20
1です
なんとなく方向性が見えてきたので、つらつら書きたいと思います。書き溜め無しなので、ゆっくりです、ご了承を
やえ由華中心になる誰得な展開ですが・・・

そういえば、昼休みに小走先輩を書いてから外回りに行ったら、手にマメができてしまいました。自分、ニワカですいません・・・・

では、
巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」
の続きです
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 00:25:47.27 ID:y6Rpk/v20
-阿知賀 部室-
ザアアアアアアアアア

憧「うわ、すごい雨」

穏乃「傘持ってきてないよー」

やえ「これは、すぐには止みそうにないな・・・」

由華「どうしましょうか。駅までは結構歩きますし」

晴絵「おーい、そろそろ帰る時間だぞ」

灼「あ、晴ちゃん・・・でもこのすごい雨じゃあ」

晴絵「おや、晩成の制服・・。こんにちわ、わざわざ練習に来てくれたのかな?」

由華「はい、突然でしたが楽しかったです」

晴絵「そうか、それは良かった。でもどうやって帰る。なんなら駅まで送ろうか?」

やえ「ふむ、これはお言葉に甘えるしかなさそうだな」

ピンポンパンポン

---「ただいま大雨暴風警報が発令されました。鉄道は運転を見合わせる模様です」

ピンポンパンポン

由華「・・・・・どうしましょう?」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 00:44:54.73 ID:y6Rpk/v20
やえ「さすがに家まで送ってもらうわけにもいかないしな・・・」

玄「うーん、ちょっとお姉ちゃんに聞いてみるよ。平日だしうちのお部屋空いてると思うから」

由華「部屋って?」

穏乃「玄さんの家、旅館なんですよ」

由華「ええ、泊まりですかっ」

憧「いつやむか分からないしね・・・。旅館の方で駅まで定期的にマイクロバスで送ってくれるから、とりあえずそこで待機するのがいいんじゃない」

由華「小走先輩と岡橋さんはどうするんですか?」

初瀬「ええっと、私は」チラ

憧「初瀬はうちに来たら良いよ」

初瀬「私は憧のところに行きますので、大丈夫です」

晴絵「親御さんに迎えに来てもえそうなら、そうした方がいいと思うけど」

由華「いえ、うちは今日みんな帰りが遅いので、すぐに迎えには来てもらえないと思います」

やえ「うちも似たようなものだな・・・」

玄「お部屋空いてるみたいだよ。でも急だからご飯が余り物になっちゃうけど」

由華「いえ、そんなご飯までいただくなんてできません。適当にコンビニか何かで買います」

玄「ダメダメ。お客様にコンビニ弁当なんて食べさせたら、松実荘の恥だよっ」

やえ「客、か。あいにくそこまでの手持ちはないのだが・・・」

玄「タダでも、泊まる人はお客様だよ」

由華「いえ、後でお支払いはします。ですが、この場はお願いするしかないですね。よろしくお願いします」

玄「おまかせあれ!」

晴絵「よし、話はまとまったね。じゃあ先に玄たちを送るから、灼たちは待機してな。途中で雨が止んだから帰ってもいいけど、無理して雨の中帰らないようにな」

灼「分かった、待ってる」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/05(日) 00:49:48.99 ID:Tvqk8eTqo
淫乱ガチレズピンクが帰って来るのは確定?それとも希望?
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 00:58:44.01 ID:y6Rpk/v20
-車内-
晴絵「とりあえず親御さんには連絡ついた?」

由華「大丈夫です」

やえ「問題ない」

玄「あんまり空いてなくて、同じ部屋なんですけど、大丈夫ですよね」

やえ「強化合宿ではもっと大人数で泊っている、心配しなさんな」

由華(うわわわ、まさかの先輩と二人っきり・・・)

やえ「どうした、由華?」

由華「い、いえ、なんでもないです」

晴絵「せっかく来てもらったのにこんな雨になっちゃって、残念だったね。練習試合申し込んでくれれば、こちらから行ったのに」

やえ「いえ、現王者を呼びつけるような無粋なまねはできませんよ。まあ、アポ無しというのも無粋だったかもしれませんが」

晴絵「今回は運が良かった、それだけで王者なんて名乗れはしないよ。それに、奈良の王者は晩成、これは今だって変わらない」

やえ「そうあり続けてほしいものです」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 01:01:47.88 ID:y6Rpk/v20
>>173
SS内設定では、「和は来春、親の仕事の都合で奈良に戻ってくる予定」です
まあ、仕事の都合なんていくらでもころころ変わりますけども・・・

っていうか、和のことでよろしいですよね?
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 01:11:35.50 ID:y6Rpk/v20
-松実荘-
晴絵「ついたよ。じゃあ玄、あとは頼んだ。なんかあったら連絡しろよ」

玄「おまかせあれ。送ってくれてありがとうございました」

宥「玄ちゃん、お帰りなさい。はい、これ部屋の鍵。そのまま案内してあげて」

やえ「すまないな、世話になる」

由華「よろしくお願いします」

宥「困ったときはお互い様ですよ。じゃあ私、夕食の準備があるから行くね」

玄「うん、ありがとう」

由華「忙しそうですね」

玄「えと、優勝してから『全国制覇した阿知賀の松実姉妹の旅館』ってことで結構問い合わせが多くて。週末は私も手伝ってるんだ」

やえ「まあ、その看板が使えるのも今年だけだがな」

玄「来年も頑張りますよ」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/05(日) 01:24:05.74 ID:Tvqk8eTqo
>>175
うん
そうかーそういや全国優勝したら長野にずっといてもいいって約束だから転校しちゃうんだな
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 01:26:01.78 ID:y6Rpk/v20
-212号室-
玄「浴衣はここで、お布団はこっちの押し入れに入ってます。泊まりになるかどうか分からないから、お布団は必要になったら引いてもらうってことで大丈夫ですか?」

やえ「これだけしてもらえば十分だよ」

由華「ほんとに、申し訳ないです」

玄「体を冷やすといけないから、先にお風呂に入ってきてください。露天はさすがに今日は閉めてますけど、大浴場でも十分ゆっくりできますよ」

やえ「ではお言葉に甘えるとしようか」

由華「は、はい」

由華(うわあああ、先輩とお風呂とか・・・どうしようどうしよう。強化合宿は学年別だったしぃ)

玄「1時間位したらご飯食べられるように準備しておくね」

やえ「よろしく頼む」

玄(由華さん顔真っ赤だけど、大丈夫かな・・・)
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 01:34:15.86 ID:y6Rpk/v20
眠さ限界につき、寝ます
また明日以降に

結局晩成と阿知賀があんまり絡んでないやん、という気しかしませんが気にしない
おやすみなさい
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/08/05(日) 01:49:05.32 ID:0T+ceRYKo
おやすみー
ワクテカしつつ待ってるよ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/05(日) 02:34:02.57 ID:+Sb65AGBo
おつつ
やっぱやえさんええな
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 21:16:13.40 ID:y6Rpk/v20
1です
不定期になりますが、ぼちぼち書いていきたいと思います

おかしくねーしSSまとめ様に、まとめがあがってました。ありがとうございます!
183 :巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」 [sage saga]:2012/08/05(日) 21:32:34.51 ID:y6Rpk/v20
-大浴場-
カポーン

やえ「ちょうど夕飯の時間だからか、空いているな」

由華(うわあ、うわあ、先輩の肌白くて綺麗・・・・とってもスレンダーで、うわあ、うわあ)

やえ「どうした? とりあえず体を洗って、ゆっくりつかろうじゃないか」

由華「は、はい」



やえ「ふう、いい湯だ。これなら今度から合宿にここを使ってもいいかもしれんな」

由華「先輩。今日は、こんなことに巻き込んでしまって、本当にすいません」

やえ「由華、おかしなことを言うな。巻き込んだのは私の方だし、こうしてゆっくりお風呂に入れるんだ、何も謝ることはない」

由華「でも、私が部長を嫌がったから、それでわざわざ阿知賀に来たんですよね?」

やえ「それだけじゃないさ」

由華「え?」

やえ「私の気持ちの整理、なんてわがままな部分もあったよ」

由華「それって・・・」

やえ「由華、正直言って晩成の部長、晩成のエースというのは相当な重圧だ。勝って当たり前、そんな風に思われて負けた時の周囲の反応は、私が想像する以上だった」

由華「先輩でも、そうなんですか・・・・」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 21:58:23.46 ID:y6Rpk/v20
やえ「切り替えは、できているつもりだった。でもお前が部長を嫌がったことで、私も確かめたくなったんだ」

由華「ごめんなさい・・・」

やえ「何度も言うが、謝ることじゃないさ。で、私たちを破った阿知賀は、一体どんなところなのか。ちょうど、岡橋が阿知賀の知り合いということを思い出してな、取り次いでもらったわけだ」

由華「それで岡橋さんが一緒だったんですね」

やえ「まあ阿知賀は、王者としてはニワカ。負けたらどうこうなんて重圧はまるでなかったな。ただ、来年も阿知賀はメインメンバーがほぼそのまま出てくる上に、清澄の原村まで転校予定となると、晩成はこのままでいいのか、なんてことも感じた」

由華「ですね、間違いなく強敵です」

やえ「あとな、部長とエースが別々なら、私もどんなに良かったか、なんて思った時もあったよ。もし私がエースなら、部長にお前がしっかりまとめないからだ、なんて責任を押し付けたくなっても仕方ない。それくらい、負けた時の重圧はひどかった」

由華「・・・・」

やえ「でも同時にこうも思った。私一人歯を食いしばれば、他の部員にそこまでの重圧を与えることもないと」

由華「先輩、そんなに大変だったんですか」

やえ「結局、お前一人に背負わせるようなことになるのなら、伝統なんて言わずに部長とエースを分離したってよかった。どうするのが正しいのか、私にはよく分からなかった」

由華「先輩・・・」

やえ「ま、心配しなさんな。由華、お前はもっと強くなれる。それは私が保証するよ」

由華「約束しましたからね。阿知賀を倒すって。もっと強くならないと、倒せません」

やえ「晩成を、頼んだぞ」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/05(日) 22:14:02.92 ID:y6Rpk/v20
-212号室-
やえ「浴衣なんて久しぶりだな」

由華(先輩の浴衣姿、似合いすぎです。あとでこっそり写メとらないと・・・)

玄「失礼します、お食事お持ちしました」

やえ「お、来たな」

由華「うわあ、美味しそうですね」

宥「ごめんなさい、ほとんど余り物の賄いなの」

やえ「急に寄らせてもらって、ここまでしていただけるだけで十分だよ」

由華「これで賄いなら、実際の夕食はもっといいんですよね。これは、ほんとに次の合宿、ここにしちゃいましょうか?」

やえ「まあ部長だけで決められることじゃないけど、提案はできると思うよ」

宥「晩成の合宿に使ってもらえるんですか、うれいし」

やえ「まあここで決められることではないが、今回の恩もあるし、前向きに部に提案させてもらうよ」

玄「じゃあ後で団体用の宿泊案内持ってくるね」

由華「ところで、電車の状況はどうですか? 雨は全然止んでないけど、止まったままですか?」

玄「うーん、ニュースはときどきチェックするようにしてるけど、まだ動いたって情報は入ってないみたいだよ」

由華「泊まりを覚悟した方がよさそうですね・・・」

やえ「ま、冷めないうちにいただこう。考えるのは食べ終わってからだ」

由華「そうですね」

玄「じゃあ食べ終わったら内線いれてくださいね、下げに来ますから」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 22:36:04.40 ID:y6Rpk/v20
-212号室-
由華「美味しかったですね」

やえ「ああ、コンビニ弁当にしなくて良かったな」

宥「失礼します、お膳下げに来ました」

やえ「ご苦労さま。本当に美味しかったよ」

玄「お粗末さまです。あ、これ団体用の宿泊案内です、今度は予約して来て下さいね」

由華「ええ、ぜひ」

やえ「それで電車の状況はどうかな?」

玄「それが、この雨で土砂崩れがあったみたいで、今日中の復旧は難しいみたいです。明日になれば多分バス代行になると思うので、駅までうちのマイクロバスで行って、そこからバスに乗ってもらうって形になると思います」

由華「そうですか、じゃあ泊まりで確定ですね」

宥「朝ごはんは1階の食堂に来てくださいね、これ朝食のチケットです」

やえ「朝食までいただけるのか、助かる」

玄「おねえちゃんも言ってたけど、困ったときはお互い様ですよ」

宥「そうですよ。あ、お部屋にきたついでだし、お布団敷いていきましょうか」

玄「そうだね。私が敷くから、お姉ちゃんはお膳下げて」

宥「そうね、じゃあお願いね」

由華「あ、大丈夫です、自分たちで敷きますから」

玄「これも仕事のうちです。それに、なんでもかんでも自分でやろうとしたらダメですよ。任せるところは任せないと」

由華「え、それって・・・」

玄「さっき部活では、灼ちゃん部長の仕事をみんなに任せてるって言ってたけど、はじめは全部ひとりでやろうとしてて。すごいテンパってたこともあったんだよ」

バサ、シャッシャ

やえ「流石に手際がいいな」

玄「まだまだですよ。さて、じゃあお布団も敷いたので、これで失礼しますね」

由華「ありがとうございます」
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/05(日) 22:42:42.65 ID:Tvqk8eTqo
ところで姉ちゃんはどんな格好で接客してんだろう?
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 22:58:45.16 ID:y6Rpk/v20
>>187
そこまで考えてませんでしたが・・・
旅館なんで、花咲くいろは的なイメージでどうでしょう?
わっかんねー
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/05(日) 23:09:44.58 ID:Tvqk8eTqo
>>188
いやぁ夏にコタツで冬服着ながら震えてるのに普通の格好で大丈夫なのかなって
まぁ和服の下にカイロとかいくらでもやりようはあるか
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 23:14:01.35 ID:y6Rpk/v20
>>189
寒がり設定忘れてた・・・
旅館じゃあ冷房効いてるからかなり大変でしょうね
ほら、最近は薄くてもあったかい新素材とかあるから。あとはカイロをぺたぺたしてるでしょうね
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/05(日) 23:51:23.88 ID:y6Rpk/v20
-消灯-
由華「先輩・・・」

やえ「どうした?」

由華「先輩は好きな人とか、いるんですか」

やえ「ガールズトークってやつか? 正直、私はそういうのは苦手でね。麻雀一筋だったから、そんなこと考える余裕なんてないよ」

由華「じゃあ、私が先輩のこと、好きだって言ったら?」

やえ「ライクならありがとうだし、ラブならごめんなさい、だ」

由華「はっきり言うんですね」

やえ「なぜか男女問わず、告白されたりする・・・。困ったものだ」

由華「まあ、ラブな意味で言ったわけじゃないですけど・・・。先輩は憧れっていうか、目標っていうか」

やえ「私より上は、いっぱいいるのにか?」

由華「間近で見てきて感じました。先輩はすっごく努力してるし、それでいて周りに気遣いもできるし、ただ強いだけじゃなくて、みんなの力も引き出せるような、そんな人です。だから、そんな先輩のあとを継いで部長になるなんて、私にはできないんじゃないかって、弱気になってました」

由華「でも、今日の話を聞いて、先輩がみんなと一緒に受け継いできたこと、作り上げてきたこと、守ってきたことを、私も受け継いで行きたいって、そう思えたんです」

由華「それに、阿知賀の人達はこんなに優しいし、なにより楽しそうに打ってました。なんだか久々に、勝たなくちゃいけないってプレッシャーから解放されたような気がします」

やえ「由華、そこまで思ってくれるのなら、もう私から言うことはない」

由華「そんなことないです。もっといっぱい教えてください。小走先輩は、ずっと私の先輩なんですから」

やえ「可愛い後輩にそこまで言われちゃしょうがないな。ま、心配しなさんな」

やえ「所詮阿知賀はニワカな王者。来年は王者の重圧には勝てんさ。ニワカは相手にならんよ」



カン!
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/06(月) 00:01:09.57 ID:G1boOaF00
とりあえずいったんここでおしまいです
エロとか百合百合したのは書けないのでご了承を


由華の能力も考えてはみたのでそっちを書こうか、それとも剱谷IFを書こうかどうしようかなー、という感じです
即興で書くのもなかなか大変でしたので、また書き溜めて投稿したいです

剱谷IFなら新スレ、この話の続きならこっちのスレに続きになると思います

ここまで読んでいただきありがとうございました
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/06(月) 01:11:17.82 ID:VUUCHLSco

どちらも楽しみ
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) [sage]:2012/08/06(月) 01:13:05.76 ID:34ilwFG0o
お疲れ様です
楽しみに待ってる
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/06(月) 01:55:31.19 ID:y5rJYBqmo
乙乙
楽しみにしてます
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/06(月) 01:56:29.36 ID:q20hel5io
小走先輩モテモテなのか
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/06(月) 02:20:38.12 ID:uOLPQKeqo
乙乙
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/06(月) 20:55:46.22 ID:rDqhxqhB0
ここで剣谷をかいてもええんやで?
199 : ◆0cP3QVK6xsEQ [saga sage]:2012/08/06(月) 22:17:53.42 ID:sX9k4fs20
1です
本日はまったりしております
酉のテストをしつつ

>>198
由華編は、一応阿知賀優勝の続きということで照久の続きに書きましたけども
今考えている剱谷IFはメンバー改変ではないので、改めた方がいいのかなと思ってました
まあ、まだ全然まとまってませんので、ゆっくり考えます


ネタが何も無いのもあれなので、>>142で言っていた、需要0の構想の嘘予告を書いて、今日のところは落ちます
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/06(月) 22:20:59.30 ID:sX9k4fs20
照「ブレードチルドレンの謎を追う」
咲「え?」

高校1年にして全国大会を制した宮永照は、そう言い残し、2年前失踪した----

久「照、あなたは今どこにいるの・・・」
咲(久さんには、お姉ちゃんのことしか見えてないんだよね・・・)


和「麻雀で人が死ぬなんて、そんなオカルトありえません。つまり、あなたが犯人ですね宮永さん。詳しく取材させてください」
咲「えっと・・・・」

咲と同卓した、優希の死。否応にも、仕組まれた螺旋に巻き込まれていく咲----

衣「ののかー。ペンギンを拾ってきたぞ。あれ、このペンギン、カチカチ音がする・・・」
咲「衣ちゃん、離れてっ」

動き出す、ブレードチルドレン----

衣「さあ選ぶがいい。片方は死、片方は生。それとも、敗走が好みか、宮永の妹」
和「宮永さんのリンシャンを、私は信じています。リンシャンで上がれないなんて、そんなオカルトありえません」

宮永照の思惑は、どこにあるのか----

和「宮永さん!」
咲「アレルヤ」

そして飛来する、最大の脅威----

ゆみ「モモ、なぜっ」
桃子「先輩、良き死を・・・」

ブレードチルドレンとは、何なのか----

桃子「ブレードチルドレンに、救いなんてないっす」
和「あなたみたいな臆病者、まったく怖くありません」

咲に迫られる、決断の時----

照「さあ、私に止めを・・・」
咲「お姉ちゃん、どうしてこんな結末を望むの・・・」


咲-推理の絆- 近日公開予定無し!
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/08/06(月) 22:21:59.34 ID:OF6NPuU0o
衣腹黒枠かよ!
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/06(月) 22:32:08.31 ID:sX9k4fs20
そもそもスパイラル-推理の絆-のアニメ放送時期がもう10年近く前・・・
同じスクエニ系列とはいえ、これは需要ないわー、というのが没理由です

正直書いている自分すらもううろ覚えなのであれなんですが


鳴海歩 … 咲
結崎ひよの … 和
鳴海まどか … 久
鳴海清隆 … 照
竹内理緒 … 衣
アイズ … ゆみ
カノン … モモ

香介が純で亮子が一かなぁとか、この辺はぼんやり・・・
まあまとまりそうもないので、ネタだけで
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/08/06(月) 22:36:27.75 ID:sX9k4fs20
>>201
すばやいツッコミ、ありがとうございます。びっくり

理緒→衣は結構はまってると思うのですが
普段はロリロリなのに、いざ戦い(麻雀)になると本性を現すというか
あとぬいぐるみをもってくるところとか
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/08/06(月) 22:42:17.42 ID:5YXo6fyDo
ネタわからんかったけどなんとなく
照「・・・・・・美しいな・・・・・・・。」
咲「・・・はい!!とても美しゅうございます!!!」
照「ならば・・・・・!!」
「流派!!東方不敗は!!!」
「王者の風よ!!!」
「全新!!!」
「系裂!!!」
「天破侠乱!!!」
「見よ!!東方は、赤く燃えているぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!」
「・・・・・・!!」
咲「・・・・お姉ちゃん・・・・・?お姉ちゃん・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・・・お姉ちゃんちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
ってのが頭に浮かんだ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/07(火) 15:33:48.88 ID:G0U5wchHo
つまり
照×久(入籍済み) かつ 咲→久

すごく百合百合しいうえに女タラシすぎです部長……
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/08/07(火) 19:01:02.87 ID:P+BTURlBo
ここまでネタバレしてるのに火澄ポジいないのはなんでじゃ
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/08/08(水) 22:22:04.05 ID:lgPeh1oH0
縺翫▽
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/09(木) 02:48:44.72 ID:7TAOL/Cq0
1です
由華編の続きになります
とりあえず途中までですが

その前に、ちょこっとレス
>>206
咲と対比なキャラっていないかなーと思ったのと、火澄までやってたら本格的にまとまらないと思ったのが理由です
そのくせに、キリエは久保コーチだよなぁとかぼんやり思いましたけど
まあ強いて言うなら、火澄は絹恵でしょうか?
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/09(木) 02:49:59.73 ID:7TAOL/Cq0
-秋-
-松実荘-

---歓迎 晩成高校麻雀部

由華「というわけで、秋季大会の直前強化合宿です。選抜メンバー12人の中から、大会出場メンバーを選出する大事な合宿です、各自気を抜かないように」

部員「はいっ」

宥「ほんとに合宿先に選んでくれてありがとう」

由華「いえ、こちらこそ。以前泊めていただいたときのお礼も兼ねてますので、お気になさらず」

由華(阿知賀は部員不足で、秋季大会の団体戦には出られない。ちょっと残念・・・)

由華「じゃあそれぞれの部屋に荷物を置いて、30分後に大広間に集合」

部員「はいっ」
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:51:50.48 ID:7TAOL/Cq0
-大広間-
リーチ
カン リンシャンカイホー

由華「ツモ、6000オール。これで終了」

初瀬「やっぱり先輩は強いです・・・」

由華「岡橋さんもあれから随分腕を上げてきてる。今回も選抜メンバーの中に入れたじゃない」

初瀬「まあ、憧には負けてられませんからね」

憧「お疲れ様でーす」

灼「失礼します」

穏乃「おじゃましまーす」

玄「こんにちわ。今日はうちで合宿してれてありがとうございます」

由華「待ってたよ、阿知賀の皆さん。じゃあ、恒例の東風勝ち抜け戦を始めようか」

穏乃「おー、面白そう、何それ」

由華「普通にトーナメントよ。ちょうど16人になるから、4つの卓で2人勝ち抜けて8人。その8人で2つの卓を囲んで今度は4人。その4人で決勝、勝った人がその日の王者。何でも1つ命令できる」

憧「ちょっとした個人戦みたいなものね」

灼「組み合わせはどう決めるの?」

由華「いつもは校内ランキングで席を決めるんだけど、今日は牌を引けばいいんじゃないかな。東南西北で4枚ずつ。次の組み合わせは東南の1位と西北の2位、あとはその逆。じゃあ阿知賀から引いて」

穏乃「OK、じゃああたしから。東」

憧「私は、南」

灼「・・・西」

玄「北。あ、みんなうまく分かれたね」

由華「じゃあ、うちの部員はランキング順に引くってことで。私は、西」

灼「部長対決、か。負けないよ」

由華「こちらこそ」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:52:59.08 ID:7TAOL/Cq0
-北卓-
対局者:灼、由華、部員1、部員2

-東1-
ドラ:3ピン
親:灼
灼(この前うちの部室で打ってたときは、部長のことで揺れてて本調子じゃなかった。夏の大会では、大将戦の時にはもう大差が付いていて無理した打ち方

をしていたはず。つまり、今日こそが晩成のエースの実力を見極めるチャンス。練習試合とは言え、遊びでは打たない)

由華(夏の大会では副将、派手な上がりはなかった。でも大崩れもしない。今日はアリの一穴でもいい、隙を見つける)

灼「チー」

由華(早い仕掛け。あまり鳴かないイメージだったけど、東風だからかな? でも・・・)

由華 手牌:三四五六六七BCD678西 ツモ:六

由華(私にとっては、ナイス鳴きだよ)

由華「リーチ」

打 七

灼(・・・とりあえず現物)

由華「ツモ」

手牌:三四五六六六BCD678西 ツモ:西

灼(え、なんで西単騎・・・。七萬を残して西切りならタンヤオ確定の4メンチャンなのに)

由華「リーチ一発ツモドラ1。裏が西、2つ乗って跳満、6000、3000」

灼(・・・東風戦でこの親かぶりは痛い。それにしても、西をツモるのを知っていた? それとも、裏ドラが西だと知っていた? それくらい、不自然)
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:54:34.14 ID:7TAOL/Cq0
-北卓 終了-
1位:由華 
2位:灼

灼(やっぱり東1のあの上がりが気になる・・・)

由華(流石に2位に上がってきたか・・・)


-準決勝-
-1卓-
穏乃(東1位)
憧(南1位)
灼(西2位)
初瀬(北2位)

初瀬「うわぁ、こっちの卓って私一人か」

憧「玄と初瀬が逆だったら、それこそ阿知賀で固まっちゃうところだったわよ」

灼「そうでなくても、私たちの中で少なくとも誰か一人は落ちる」

穏乃「負けないぞ、勝負!」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:55:18.29 ID:7TAOL/Cq0
-2卓-
部員3(東2位)
部員4(南2位)
由華(西1位)
玄(北1位)

由華(阿知賀全員残ってきたか・・・。ほんと、強いね)

玄「よろしくお願いします」

由華「うん、よろしく」

由華(小走先輩を負かした人・・・・。乗り出すと止められないけど、出鼻をくじけば勝てない相手じゃない)
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:56:31.24 ID:7TAOL/Cq0
-東2-
北 巽由華 19000
東 松実玄 37000
南 部員3 22000
西 部員4 22000

ドラ:9ピン
由華(いきなりツモドラ5とか、勘弁してって感じ・・・。でも、この勝負手は、突っ張る)

由華 手牌:二二335南南南北北 G-GG

部員3 打:二

由華「ポン」 打:5

由華 手牌:33南南南北北 G-GG二-二二

由華(よし、テンパイ。これで鳴きが鳴ければ松実さんから上がれる)

玄(由華さんは、トイトイかな・・タンヤオの可能性もあるけど・・・)

玄 手牌:三四五(赤)CD(赤)EHH5(赤)67東東 ツモ:南

玄(南は由華さんの風じゃないし、いいよね)

打:南

由華「カン」

玄(え、カン?)

由華「ツモ、リンシャントイトイ北。8000」

玄(リンシャン・・・まるで、あの全国決勝の宮永さんみたい。もしこれが偶然じゃないとしたら・・・)

北 巽由華 27000
東 松実玄 31000
南 部員3 22000
西 部員4 22000


-2卓終了-
1位:玄
2位:由華

由華(東風でドラ爆2回はきっつい・・・)

玄(なんとか1位抜けできたけど、やっぱりあの東2だけは気になる・・・。あの時だけ、完全に狙われてた感じがする)
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:57:23.85 ID:7TAOL/Cq0
-決勝-
対局者:穏乃 憧 玄 由華

由華(結局こうなるか・・・阿知賀の壁を乗り越えるのは大変そうね)

憧「東風で玄相手ってキツそー」

玄「今日は調子いいから負けないよ」

穏乃「王者になって、今日の晩御飯をおかわりしまくる!」

憧「ほんと、食い気に走るわねぇ・・・」

由華(インハイチャンプ宮永照に唯一土を付けた高鴨穏乃・・・このはしゃぎっぷりだけ見てるととてもそんな風には見えないけど・・・。そして、阿知賀では逆に珍しいデジタル、いや、クレバーと評した方がいいのかな、新子憧。ともに1年・・・)

由華「じゃあ、始めましょう」

由華(私が1年のときは、まだ自分のスタイルなんて定まってなかった・・・)
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:58:15.62 ID:7TAOL/Cq0
-1年前-
-全国大会終了後 秋-
-晩成 部室-

日菜「やえちゃん、新しいランキングできたよ。あ、ごめん、部長って呼ばなきゃ、だね」

やえ「ああ、ありがとう。別に無理して呼ばなくてもいいよ」

やえ「・・・・それにしても、巽はずいぶんランクが落ちたな」

日菜「夏の大会前は6位までランクを上げてベンチ入りしたけど、今回は圏外。どうも調子が安定しないみたいね・・・」

やえ「巽は今どこにいる?」

日菜「2軍になったから、離れの方で練習してると思うよ」

やえ「・・・気になる。ちょっと覗いてくる」

日菜「じゃあ私も行くよ。新しいランキング、離れの方にも持っていかないといけないし」

やえ(ベンチ入りを果たした試合での打ち筋。何か持っていると思ったんだが・・・)
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 02:58:42.19 ID:7TAOL/Cq0
-離れ-
やえ「失礼するよ、巽はいるか?」

部員「巽さんなら、あっちで打ってるところです」

やえ「ありがとう」

日菜「あ、これ新しいランキングだから、貼っておいてくださいね」

部員「分かりました」


由華「ロン、8000。逆転で終了ですね」

やえ「ちょうど終わったところか」

由華「あ、お疲れ様です、部長」

やえ「ちょっと話があるんだが、いいかな?」

由華「ええ、大丈夫ですけど」

やえ(最後のあがりはダブ南ドラ2・・・。だが、なぜ両面待ちを捨てて東単騎に受けた? やはり、何か見えているのか・・・)
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/09(木) 03:00:06.80 ID:7TAOL/Cq0
-裏庭-

由華「それで、話っていうのは?」

やえ「単刀直入に聞こう。巽、お前は人には見えないものが、見えているんじゃないのか?」

由華「・・・流石に部長には気付かれますか。隠してたつもりだったんですけどね」

やえ「そうか。何が見える。そして、なぜ隠そうとする」

由華「うーん、だって、インチキっぽいじゃないですか。おおっぴらにするようなことじゃないと思います」

やえ「さっきのあがりも、わざと東単騎に受けていたな」

由華「だって、直撃したい相手が東ツモ切りするの、ほぼ分かってましたから。必然でしょう?」

やえ「・・・相手が何を切るのか、分かるというのか?」

由華「近からず、遠からずです。私には、風牌がどこにあるのか、すべてわかります」

やえ「風牌が見えるのか?」

由華「そうです。誰が何を何枚持っているのか、山のどこに眠っているのか、風牌ならすべてわかります」

やえ「ランク戦での打ち筋、よく覚えているよ。確かに、異常だと感じた時はすべて風牌が絡んでいたな・・・」

由華「そこまで覚えていただけるなんて、光栄です」

やえ「牌が見えるのを隠すために、わざとランクを落としたのか?」

由華「うーん、ランクが落ちたのは私の実力不足ですよ。私は、風みたいに気ままなんです。だから6位になることもあれば、圏外に落ちることもある」

やえ「・・・・だが、その能力を埋もれさせるのは惜しい」

由華「そう言われましても。風が見えるだけじゃ、必勝でもなんでもないですしね」

やえ「それはまだお前自身の実力が無いからだ。どんな道具も、使う人間変わればその効果も変わる。私が特別メニューを組む、それでもダメなら、これ以上何も言わない」

由華「本気ですか? というかそもそも、私の話を信じるんですか?」

やえ「そのくらいの嘘本当を見抜けないようじゃ、晩成の部長は務まらんよ」

由華(風牌が見えるなんて言って、インチキだって言われたことはたくさんあったけど、私自身を伸ばしてくれようとするだなんて・・・)

由華「分かりました。それで、特別メニューというのは?」

やえ「字牌抜きの三麻だ」

由華「へ?」

やえ「普通の三麻は、萬子の2から8の7種28牌を抜く。この7種28牌というのは字牌の数と同じだ。数牌だけの麻雀で、お前自身の実力を底上げする。そして再び風を得たとき、お前はさらに飛躍するだろう」

由華(この人、すごい・・・。今私のこと聞いたばかりなのに、もうこんな練習を思いつくなんて・・・)

やえ「行くか。正直、字牌抜きの三麻なんてやったことないからな。どんなものになるか、私も試してみたい」

由華「よろしくお願いします、先輩!」

由華(小走先輩、あなたとなら、頑張れる気がします!)
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/09(木) 03:04:09.10 ID:7TAOL/Cq0
とりあえずここまで

もうちょっと由華編を書いて完結
次からは剱谷編を書き溜めて行こうかと思います

それではおやすみなさい
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/09(木) 12:35:07.83 ID:ExZelDI60
乙!阿知賀編の掘り下げSSって千里山以外は貴重だから次も楽しみにしてる
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/12(日) 02:19:29.18 ID:BvnB4nWso
乙。
ネタ要素がほぼ無い晩成SSって凄い貴重な気がする。

剱谷編も凄い楽しみ。
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 05:33:22.08 ID:92oUQapz0
1です

貴重って言われると凄いものを書いているような錯覚を起こしそうです
ニッチなSS、これですね。うむ

あと由華編はオーラスだけなので、もうしばらくお待ちください
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/12(日) 23:36:27.87 ID:92oUQapz0
1です
由華編書き上がりましたので、投下します


巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」(完結編)です
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:39:40.60 ID:92oUQapz0
-決勝-
-東1-
東 憧
南 玄
西 由華
北 穏乃
ドラ:1ピン

由華(高鴨さんがラス親は微妙だな・・・・)

憧「チー」 打:A 副露:F-EG 手牌:□□□□□□□□□南

由華(ダブ東ではないし・・・タンヤオかな。白はもう2枚切れ。発は新子さん自身で捨ててる。そして)

由華 手牌:一一三三BB4488中中西

由華(中は2枚は私の手の内。つまり、新子さんに役牌は無い。三色の南単騎なんて待ち以外は、まだ新子さんはノーテン。2枚切れの南を持ってるのは、準安牌として抱えている証拠)

由華 ツモ:南 打:西

由華(じゃあ振ってもらいますか、地獄待ちの南単騎)

由華「リーチ」

穏乃(うーん、2シャンテンだし役がないし、オリ)

打:2

憧「チー」 打:南

由華「ロン、リーチチートイ。まあ、裏は見るまでもないんでしょうけど一応・・・。裏無し、3200」

憧「はい・・・」

由華(うーん、やっぱりドラがないと打点が伸びないなぁ)
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:41:06.08 ID:92oUQapz0
-東2-
北 憧
東 玄
南 由華
西 穏乃
ドラ:西

玄 手牌:□□□□□□□□□□東西西西

打 @

由華(ほんと、ドラ爆体質ね・・・。残りの西は、王牌か。東は、山の深いところに2枚。もう1枚は高鴨さんが持ってる。東を鳴かれることはない。三元牌にだけ注意すれば、松実さんの手は遅い)

由華 手牌:一三五@GH23499南白 ツモ:中

由華(って、言ってるそばから、白と中。まあ、ここは鳴かれてから考えますか・・・)

打 白

穏乃「ポン」 打:中

由華(高鴨さんの方か。で、中の鳴きもない。少なくとも松実さんが東を切るまでは時間がある)


-5巡目-
玄 手牌:四四五(赤)D(赤)EF45(赤)8東西西西 ツモ:6

玄(だいぶまとまってきたけど、役が無い・・・)

打 8

由華(まだ東は出さないみたいね・・・)

由華 手牌:一三三FGH23499南南 ツモ:1

由華(よし、チャンタまであと一息。どうせ赤ドラは来ないし、次の南は三巡先。間に合うかな・・・)

打 4

穏乃「チー」 打:東 副露:4-23

由華(むう、高鴨さん東を出しちゃったか。これで松実さんも合わせ打ちかな・・・・)
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:42:12.33 ID:92oUQapz0
-6巡目-

玄 打:東

由華(東が出た。三色で出上がりの可能性もあるにはあるけど・・・)

由華 手牌:一三三FGH12399南南 ツモ:9

由華(張った。南は2巡先に松実さんに回る。でも、誰かが鳴いてツモ順が変われば・・)チラ

憧 手牌:□□□□□□□□□□□□北

由華(新子さんに回ったら、出ないかな・・・。さっきので字牌警戒するだろうし。私の捨牌はチャンタ傾向・・)

打 三

由華 手牌:一三FGH123999南南

由華(ならこっち。昔の私なら、南と三萬のシャボにうけてただろうけど・・・)

-7巡目-

玄 打:二

由華「ロン、チャンタのみ。50符は3200」

玄「あ、はい」

由華(シャボに受けてたら、南が来るまで出上がりできない。こういう状況判断ができるのも、小走先輩のおかげ)

憧  21800
玄  21800
由華 31400
穏乃 25000
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:43:43.58 ID:92oUQapz0
-東3-
由華(・・・まったく、自分の親番なのに差込するなんて切ないけど)

穏乃 手牌:□□南南 8-79B-@A東-東東

打:南

穏乃「ロン、東南チャンタ。3900」

由華「はい・・・」

憧(・・・南で放銃? 見えているなら切らないはずだけど)

憧  21800
玄  21800
由華 27500
穏乃 28900

由華(これで高鴨さんが1位。ラス親で高鴨さんに逆転手を張られるくらいなら、差込したほうがマシ)

憧(わざと差し込んだのなら・・・オーラス1位のしずは、逆転手張るときのような勢いはない。それを分かってて、ってこと?)

由華(あのチャンプが言ってたんだからね。高鴨さんに逆転の機会を与えちゃいけないって、役満でも逆転できないほどの大差か、あるいはオーラスを1位で回す。なら、これが最善のはず)
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:45:38.32 ID:92oUQapz0
-東4-
-1巡目-
ドラ:5ピン

由華(イヤなドラ・・・そして、ヒドイ配牌)

由華 手牌:二五八BCEF東南西北発中

由華(ピンズの両面はあるけど、5ピンこないからペンチャンと同じだし・・・。あとは、風がうまくつかめるかどうか、か・・・)

玄 打:A

由華「チー」 打:二 副露:A-BC

由華(これでずらせば、自風じゃないけど西がツモれる。途中で発とか中も来るかもしれない。南入しない決めだから、1000点のツモでも逆転できる。とにかく進むんだ)

-2巡目-
穏乃 手牌:一二四九@@ABG79東白 ツモ:6

穏乃(うーん、玄さんが真ん中の牌に寄せてくるから、どうしてもチャンタ傾向になっちゃう。由華さんは、ピンズに染めてるのか、単純に役牌があるのか・・・、早そうな感じがする)

打 九

憧(逆転には、出上がりなら7700以上、しずを直撃なら6400以上。ツモなら5200以上。でもこの手牌じゃあなぁ・・・)

憧 手牌:一四五八AEHH123白白 ツモ:八

憧(うーん、リーヅモ白? リーヅモチートイ? 対子作って鳴いて、白トイトイ? 苦しいけど、どっちみちツモ狙いで行くしかなさそうね・・・。ドラが来ないのには慣れてるけど、やっぱりこういうときにはドラがほしいな)

打 A

玄 手牌:三五五(赤)七DDD(赤2)EF2246 ツモ:九

玄(テンパイまでは早そうだけど・・・最後の待ちがシャボかカンチャンになりそう。そこが微妙かな)

打 九

由華 手牌:五八EF東南西北発中 A-BC ツモ:西

由華(東は高鴨さんが1枚、山に1枚、王牌に1枚、東の鳴きは厳しい。あとの風牌は早めにツモれる可能性がある。喰い流れように上手くやるしかない)

打 八
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:46:35.43 ID:92oUQapz0
-9巡目-
由華 手牌:EFG東北中中 A-BC西-西西 ツモ:九

由華(松実さんはほぼツモ切り。配牌から動かないって典型的なパターンのやつかな。そして高鴨さんは)チラ

穏乃 手牌:□□□□□□□□□□□□東

由華(まだ東を持ってる。重なったらいいなぁ、くらいで持ってるとすれば、まだ手は進んでない。そして次の高鴨さんのツモ牌が東・・・)

打 東

由華(これで、鳴けるかもしれない東に手を縛られてくれれば、高鴨さんの手は凍るはず。実質、新子さんとのマッチレース)
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:47:46.79 ID:92oUQapz0
-10巡目-
穏乃 手牌:二二四@@AB34789東 ツモ:東

穏乃(ここで東か・・・。鳴けるなら鳴きたいけど、今由華さんが切っちゃったから一巡遅い。あと1枚がすぐ出てくればいいけど。三色もほの見えるけど、ここは鳴きにかけるしかない)

打 @

憧 手牌:八八八HH11 一-一一白-白白 ツモ:白

憧(ここで白か。もうどっちみち白鳴いちゃった以上トイトイで行くしかないし、カンすれば50符になって出上がりでも6400。しず直撃でも逆転できる。今更玄にドラが増えたって同じこと)

憧「カン」 リンシャン:G

憧(おしいっ)

打 G

カンドラ:七萬

玄(えぇぇぇ・・・)

玄 手牌:三五(赤)七DDD(赤2)EF2245(赤)6 ツモ:四

玄(テンパイしたけど、カンドラの七萬切らないといけなくなっちゃった・・・。うーん、こっちっ)

打 2

由華(松実さん、ショックが顔に出てるよ。捨てたいところがドラになったって感じ、かな。だったら手を回したってこと)

由華 手牌:九EFG北中中 A-BC西-西西 ツモ:北

由華(なんとか張った。北は二巡後にツモれるし、誰が掴んでも、これは止まらない。中は1枚切れだから持ち持ちってことはない。まだ山にいるはず)

打 九
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:48:21.72 ID:92oUQapz0
-12巡目-

憧「ツモ。白トイトイ。50符で3200、1600。逆転!」

穏乃「うわぁ、まくられたー」

玄「おめでとー。あのカンがなかったらツモれてたんだけど。残念」

由華「いい勝負だったね」

由華(1巡及ばなかった。もっと強くならないと)

憧  28200
玄  20200
由華 25900
穏乃 25700
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/12(日) 23:49:49.51 ID:92oUQapz0
-大広間-
由華「というわけで、今回の王者は新子さんに決定しました。みなさん、拍手」

パチパチパチ

憧「改めて拍手なんてされると照れるわね」

由華「新子さん。王者は1つ命令できるんだけど、もう考えてあるかな?」

憧「そうね。じゃあ、その新子さんって呼ぶの、やめましょう?」

由華「ええと、それはどういう意味で?」

憧「私が後輩なんだから、憧って呼び捨てにしてねってことだけど? これ、うちのメンバー全員ね」

由華「うーん、呼び捨てって慣れてないから、名前にさん付けでもいいかな」

憧「まあ、それでもいいけど。じゃあ順番に練習! 憧さん、穏乃さん、玄さん、灼さん。はいどうぞ!」

由華「ええっと、じゃあ・・・。憧さん」

憧「さん付けもむずがゆいけど、まあいいわ。よろしくね」

由華「穏乃さん」

穏乃「私も、慣れたらしずって呼んでいいからね」

由華「玄さん」

玄「はいっ。あと、お姉ちゃんも下の名前で呼んであげてくださいね」

由華「灼さん」

灼「よろしく、由華さん」

由華「・・・うわぁ、照れる」

憧「さん付けで照れるなんて、結構シャイなのね」

由華「私、名前呼ぶのはちょっと意識しちゃって・・・。えっと、これってもしかしてずっと?」

穏乃「もちろん。っていうか、これからもこうやって練習試合したいですよ」

憧「本番じゃライバルだけど、練習禁止期間じゃないときは一緒に練習させてもらえると助かるのよね」

灼「そう、阿知賀は部員少ないから」

由華「そうね、そういうことなら、親しくしないわけにはいかないわね」

玄「そろそろ晩御飯の支度があるから、私は準備手伝ってくるね」

由華「じゃあ、片付けして、1時間後にまたここに集合。その間にお風呂に入ってもいいからね。じゃあ片付け」

部員「はいっ」

由華(・・・小走先輩。来年は絶対、晩成を全国に導いてみせますっ)


由華(ところで先輩・・・。先輩みたいな決めゼリフ、私も考えた方がいいんでしょうか。照れるんですけど・・・)



カン!
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/13(月) 00:00:03.79 ID:kbNkD/gao
乙乙
稀少ですばらな晩成で嬉しい
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 00:02:26.10 ID:MUK7PrmY0
乙!
阿知賀をリスペクトしつつ晩成を立たせるって内容が気に入った、面白かったよ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/13(月) 00:13:06.64 ID:7tC/o/Pr0
以上にて完結ということにさせていただきます

オーラス展開がなかなか浮かばず、すごい久々に咲ポータブルをやりました
凡人の気持ちが改めてわかりますね
部長とかツモりすぎ・・・


次回は剱谷編を予定していますが、まだ頭の中にぼんやりあるだけで文章化されてませんので、時間はかかると思います
照久IF→由華編の流れとは設定が違うので、改めてスレ建てしたいと思います

小ネタ思いついたら、またこちらに書くかもしれません
シャープシューターネタに乗るなら今しかない、とか思わないでもないですし・・・

これからもニッチなネタを提供できればと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます

さて、剱谷の動画見てくるか・・・
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/13(月) 00:27:08.45 ID:5/hLKZCvo
乙です。
阿知賀と晩成が今後も合同練習するってのはアリだね。

剱谷編は、試合翌日の朝に、
でー子(副将)ともー子(先鋒)が同室にいたネタを上手く料理してくれると嬉しいかなーと。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/13(月) 01:48:52.19 ID:kbNkD/gao
乙乙
劔谷編も期待してます
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/13(月) 07:28:21.42 ID:9AhIOlzSo
乙です
面白かったで!
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/13(月) 07:31:49.28 ID:a3t6xxd6o
乙です
240 :235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 18:42:34.26 ID:Tze5ZOAY0
1です
劔谷編の導入部をぼちぼち書き始めました

友香のセリフ回しが難しいですね・・・「でー」を入れるところがよく分かりません
下手なところで「でー」を入れると、バスガデルデー、みたいになってしまいます
いつも「でー」と言ってるわけじゃないので余計に

逆に「もー」の汎用性の高さは異常だよもー


そんな感じでぼちぼちやっておりますので、気長にお待ちください
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 18:55:02.06 ID:Tze5ZOAY0
名前の番号までコピペしちゃったよもー
ついでなのでレス

>>233
貴重の次は稀少なんですね
晩成のSSと言いつつ、由華とか公式ではセリフないから晩成SS?という感じではありますが・・・
まあ淡も今までそんな感じだったし、別にいいのかと一人で納得
すばらいただき、ありがとうございます

>>236
リクエスト、任されましたっ
とか言えるとカッコいいんでしょうけど
そんな約束はできませんが、最善を尽くしますみたいな感じでー


他の方も、乙いただきありがとうございます!
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 19:39:48.06 ID:LBOYBDkyo
確かに「でー」の使い方が難しそうやね
楽しみに待ってるでー
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/14(火) 22:42:02.07 ID:1sevpQ2fo
乙でー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 00:46:13.74 ID:y6FKfOaPo
>>240
動詞の、特に終止形のあとに「でー」をつけると、どうしてもバスガデルデーにナッテシマウデー

これをある程度改善する簡単な方法は、
「バスが出るでー」→「バスが出るんでー」
みたいな「〜ので」系にするとか、
「リーチでー」
みたいな「(名詞)でー」系にすると、それっぽくなる。(原作の場合これ)
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/15(水) 01:30:16.26 ID:toB0/aNFo
ハッピーバースデー
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 12:49:47.71 ID:Hp7h5UHX0
昼休みにて

>>244
アドバイス、あざっす

しかし名詞で終わるセリフというのもなかなかないのであった
基本的には、「〜です」→「〜でー」という変換なんだろうなとは思っているのですが


しかし京太郎スレ増えてますね・・・まあ僕は京太郎書く気0なんですが
あたしゃいつも通り書いて、まとめサイトさんに託しますよ
って感じです

ではまた
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/15(水) 14:29:59.73 ID:pky0GoHRo
Z
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/08/16(木) 01:27:08.86 ID:3r9qQklQ0
1です

劔谷編書いてたらこんな時間・・・
分量的には由華編以上、照久IF未満という感じでしょうか?


それにしても、気づいたら京太郎スレしか無いんじゃないかくらいの勢いになってますね
なんだこのビッグウェーブ・・・・

ただまあ僕が書いたところで、お前のSSは、波に乗っているんじゃない、乗らされているんだ
とかカツ丼さんが言われるような気がしますけども

では、おやすみなさい
249 :突発的に「劔谷日和」 :2012/08/17(金) 18:53:01.95 ID:0XjkD83R0
1です
劔谷編を書いていてもほのぼの分が足りないのと、ヤンガンの咲日和を読んだのとで
小ネタを少々・・・


【口ぐせ】
友香「ダブリーでー」

美幸「もー、はやいよもー」

莉子「わー、友香ちゃんはやーい」


梢「私は思うのです、依藤さん・・」

澄子「なんでしょう?」

梢「私も、特徴的な口ぐせを持つべきなのでしょうか、と?」

澄子(申し上げます、とかでキャラ立ってますって! とは言えない・・・)


【口ぐせ 2】

美幸「もー、梢ちゃんそんなことで悩んでたのー。だったら私の口ぐせをあげるよもー」

澄子「あげたら、椿野先輩がもーを使えなくなるんじゃないですか?」

美幸「ふふん、大丈夫でー」

友香「もー、パクられたよもー」

梢「・・・私はどうすればいいのでしょう?」

莉子「二人ともおもしろーい」


【口ぐせ 3】

美幸「と、とにかく。もーをあげるからやってみて申し上げる」

澄子「その申し上げるもどうかと・・・」

梢「もー・・・・」

美幸「梢ちゃんかわいいよもー」

澄子「せめて1分くらいは我慢してください!」


【口ぐせ 4】

美幸「もー、じゃあ今度は友香ちゃんのでーをあげるよ」

莉子「友香ちゃんの口ぐせ、先輩のものだったんだー」

友香「先輩のため、でーを差し上げ申し上げる」

澄子「だから申し上げるの用法がおかしいですっ」

梢「・・・改めてそう言われると・・・でーというのは、どこでー、使えばいいのでー、しょうか?」

美幸「うん、その使い方は違うよもー」

莉子「まず友香ちゃんがお手本を見せたらいいんじゃないでしょうかー」

友香「でーの使い方を、お教え申し上げる」

澄子「申し上げるに手本はいらない、っていうか手本になってないっ!」


カン!


澄子ちゃんがツッコミにならざるをえない
今書いている方の劔谷編は、こんなゆるくないです・・・
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 02:03:41.75 ID:uRk+8D+Mo
乙。
確かに梢部長までがボケに回ると、ツッコミできるのが依藤さんしかいないなww
251 :突発的に「劔谷日和」2 [saga]:2012/08/18(土) 17:11:45.22 ID:2nmFElQu0
1です
ネタに詰まったので、息抜きに・・・


【部長として】
梢「私は思うのです、依藤さん・・」

澄子「なんでしょう?」 マタカヨ

――――――

新免那岐 帯刀

弘世菫「ロン」(物理)

鷺森灼 ボーリング打法

――――――

梢「私も全国大会出場の部長として、何かしらの武装をすべきなのではいか、と」

澄子(ど、どこからツッコミを入れれば・・・)


【部長として 2】
美幸「もー、梢ちゃんそんなことで悩んでたのー。だったら私がとっておきのを教えてあげるよー」

澄子(・・・またこの流れ)

美幸「梢ちゃんが武装したってどうせ使いこなせないんだから、もっと梢ちゃんらしいのにすればいいんだよもー」

梢「私らしく、ですか」

澄子「いや部長、今さらっとひどいこと言われてましたけど・・・」

美幸「そうだよもー。だからこんなのどう?」

――――――

梢「ロン、粗茶ですが」

ロンした相手にお茶を差し出す

――――――

美幸「ロンした相手への気遣い、これこそ和の精神だよもー」

梢「なるほど」

澄子「そこで納得しないでください!」


【部長として 3】
美幸「とりあえず梢ちゃん、イメージしてみたらいいよもー」

梢「そうですね」

――――――

梢「ロン」

尭深「くっ・・」

梢「粗茶ですが」

尭深「お茶、いただきます」コクコク

尭深「結構なお点前で」

そして芽生える友情

――――――

梢「ありですねっ!」

澄子「何を想像したか知りませんが、実際にやらないでくださいね」
252 :突発的に「劔谷日和」2 [saga]:2012/08/18(土) 17:13:00.89 ID:2nmFElQu0
【部長として 4】
美幸「もー、すみちゃん文句ばっかり。じゃあ他の部長を参考にしてみたらいいよ」

澄子「他の部長といっても、そんな変なことしてる部長なんてそういないはずですけど」

美幸「じゃあ千里山の部長は?」

梢「清水谷さんですか・・・。これといって何もなかったような?」

美幸「園城寺が、あの太ももはもう最終兵器やって言ってたから武装に違いないよもー」

梢「対局中に太ももを、どうすればいいのでしょうか?」

美幸「カメラさんが下からのアングルでばっちりとってくれるような太ももで、世界を魅了したらいいんだよもー」

澄子「・・・少なくとも、麻雀の役には立ってないってことで」


【部長として 5】
美幸「じゃあ清澄の部長は?」

澄子「ああ、あの牌を投げる人ですか。あれは流石にどうかと・・・」

美幸「まあまあ、とりあえず投げてツモしてみようよ」

梢「そうですね・・・」バシッ

澄子 バチコーン

美幸「これは、ツモ(物理)!」

澄子「上手いこといってんじゃねー!!」

梢「依藤さんごめんなさい。だから美幸ちゃんに殴りかからないでっ」



カン!



澄子ちゃん頑張れ・・・
咲日和の劔谷の巻が来るのを楽しみにしております
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/08/18(土) 17:13:28.14 ID:ALoSh+75o
武装wwww
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 20:03:16.56 ID:uRk+8D+Mo
ロン粗茶は実際やったら尭深は確かに喜んで意気投合できそう。
しかしツモ(物理)ww
思わずキレて美幸に殴りかかる依藤さん可愛いな。

そういや剱谷長編は別スレ立ててやる予定なんだよね?
ならそのスレのタイトルには頭に 【咲-剱谷編-】 をつけとくといいかも。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/18(土) 20:06:33.38 ID:uRk+8D+Mo
あ、漢字間違えた。【咲-劔谷編-】 か。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 00:04:20.44 ID:LMsVCfif0
感想ありがとうございます
梢部長は、咲日和における風越の巻のキャップと同じ立ち位置だと思いますので天然ボケ的ポジションですね

莉子はのんびりすぎて傍観者にしかなりませんし・・・
美幸と友香でネタ振りして、梢がボケて、澄子ちゃんあとは頼んだ状態です

ツモ(物理)のところは、「もうこの部活嫌だ」とメゲさせようかも迷ったのですが、可愛かったならなによりです


一応長編のタイトルは決まってます
でも今ちょっと進まなくて、それでこんな「劔谷日和」でちょっとブレイクって感じです
ようやく、全国大会1回戦に入れたところです

一応予定のタイトル
【咲-saki-】劔谷編 梢「今より前に進もうとするなら――」
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/08/19(日) 00:38:07.44 ID:xGXddgewo
乙乙
期待してます劔谷編
258 :突発的に「劔谷日和」3 [sage]:2012/08/19(日) 06:24:05.75 ID:LMsVCfif0
1です
うむー、長編が進まない・・・
今回は短めです


【お茶がない】
梢「さて、それでは部活を始めましょうか」

澄子「部長、ちょうどお抹茶が切れてしまっているようで・・・」

梢「それは困りましたね」

美幸「もー、梢ちゃんそんなことで困ってたのー。だったら1年生をパシリに使えばいいんだよー。ちょっとどこかで借りてきてよもー」

莉子「じゃあ行ってきますねー」

友香「一緒にいくよ」

――――――

莉子「借りて来ましたー」

梢「ありがとうございます・・・ん、これは、白いですけど?」

莉子「ポカリの粉でーす」

美幸「もー、どこで借りてきたのよー」

友香「アメフト部でー」

澄子「このお嬢様学校にアメフト部なんてありましたっけ!?」


【お茶がない 2】
梢「まあ、せっかく借りてきてもらったのですから、入れてみましょう」

澄子「そ、そうですね。お茶をたてるように入れたら、また違った味わいになるかもしれませんし」

パラパラ ジャバ シャカシャカ

梢「どうぞ、粗ポカリですが」

澄子(粗ポカリて・・・)

美幸 ゴクゴク

美幸「ポカリはどう飲んでもポカリ!」

莉子「ですよねー」


【お茶がない 3】
美幸「もー、そもそもなんでポカリなんて借りてきたのよもー」

友香「先生がいたから聞いたんですよ」

――――――

友香「ヒント1、粉状でー」

莉子「ヒント2、水に溶かしまーす」

友香「ヒント3、体にいいでー」

先生「分かった、ポカリの粉だな。それだったら私が顧問をしているアメフト部にあるから借りて行きなさい」

莉子「ありがとうございまーす」

――――――

友香「というわけでー」

澄子「なんて回りくどい・・・」

美幸「しかも結局正解にたどりついてないよもー」


カン!

長編、完成できるんだろうか(遠い目)
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 09:39:21.41 ID:/bMSG8avo
「でー」は江戸っ子口調の「でい」の位置付けでいいのでは、と

すごく今更だしここまで違和感ないのでそのまま続けて下さいお願いします
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/19(日) 19:05:06.19 ID:YjKn5LUCo
てやんでい!
261 :突発的に「劔谷日和」4 [saga]:2012/08/20(月) 12:41:40.49 ID:xIuQmu1U0
1です
昼休みです、てやんでい

江戸っ子は盲点でしたね、参考にさせていただきます


【引継ぎ】
梢「私は思うのです、依藤さん・・」

澄子「なんでしょう?」

梢「部長という肩書きを失ったとき、私に何が残るのでしょうか?」

胡桃(そんなことより、とっとと引き継ぐっ)

澄子「はっ、ツッコミの師匠の幻聴が・・・」

梢「え?」

美幸「もー、梢ちゃん、寂しいのは分かるけど、もう大会も終わったんだから部長をよりちゃんに引き継ごうね。もー」


【引継ぎ 2】
梢「ちょうど代替わりの時に、生徒会からの部活動調査アンケートが行われますので、一緒にアンケートを埋めていきましょう」

澄子「はい。まず、部活動の名前を記入してください」

梢「そこは、正座部と書いてください」

澄子「・・・は?」

梢「正しいという字にですね」

澄子「漢字を聞いてるんじゃありません!」


【引継ぎ 3】
美幸「あれー、よりちゃん知らなかったのもー。うち、正式には正座部なんだよもー」

澄子「いやいやいや、私が入った時だって麻雀部で勧誘してましたよねっ」

梢「それは登録名ですね」

澄子「・・・は?」

美幸「例えて言うなら、本名が大村三郎で、登録名がサブローみたいな感じかな」

澄子「せめてイチローで例えてくださいっ」


【引継ぎ 4】
澄子「だいたい、なんで正式名が正座部ですか!?」

梢「何年か前にうちの学校に空前のアメフトブームが到来して、茶道部、書道部、華道部、麻雀部はほとんど部員がいない状況に追い込まれました」

澄子「なに、このうちの学校におけるアメフト部の存在感」

美幸「そこで、4つの部活を1つにして部員と部室を確保しようって話になったらしいよもー」

澄子「確かに、ある程度人数がいないと部活として認めらてませんけども・・・」

梢「全部正座して活動できるから、じゃあまとめて正座部にしようとなったらしいです」

澄子「もー、やだよこの部活。もー」


カン!

やばい、長編よりもこっちの方が明らかに楽しいっ
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 14:48:39.99 ID:PuGWNZFCo
くそう

顔が思い出せない
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 17:29:59.83 ID:NzPAL6sxo
やきうスレに対抗してアメフトスレを立てよう(提案)
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 22:13:08.51 ID:seXAQROmo
アイシールド21でもいいじゃない
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/20(月) 23:19:41.99 ID:kToOsN7Do
あれはアメフトちゃう
ファンタジー漫画や

なお書こうとしたが22人揃えるビジョンが見えずに挫折したもよう
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/21(火) 02:07:43.58 ID:yCObMrbWo

優希「1・2Qの私を止められると思うな! 全部オープンで捲ってやるじぇ!」

まこ「この状況(シチュエーション)でこの隊形(フォーメーション)――――――――わしの記憶に狂いはない」

久「3rd down long……でも、だからこそ。スマッシュ(ド真ん中)でブチ破るわよ」

一(フェイクはもうしないって決めたんだ。透華との約束の為、なにより自分の為に―――真っ直ぐなボクでいく!)

和「消えるレシーバー……? そんなオカルトあり得ません……ッ!」

モモ(こんな私を見つけてくれた先輩への恩返し―――――見ていてください、ここからはステルスモモの独壇場っすよ!)

純「こ、の……っ、ダブルでも全然止まらねえ!なんだこの化け物は……っ!?」

純代「―――――――――――――――――――!!!!!」




怜がディフェンスやれば最強だと思った(小並感)
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/21(火) 14:33:00.29 ID:yCObMrbWo
面白いと思ってやった
後悔はしてる

スレ汚しすみませんでした
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/21(火) 18:24:22.48 ID:412qTbFj0
怜にディフェンスなんてさせたら死んでしまうっ
どうも1です

まさかアメフトでここまで話が伸びるとは思いませんでした
知識0の分野をうかつにネタにしてはいけない(戒め

スレ汚しだなんて
ワハハ、すでに1が汚しまくっているのに今更汚れなんて気にしないぜ
長編書けるまでのつなぎなので、雑談でもなんでもござれっす

アメフトって22人なんですか?(小並感)
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/21(火) 20:16:51.98 ID:412qTbFj0
長編が進まないと余計な事を考えてさらに収拾がつかなくなる1です

咲キャラ全員が通ってる学校とかいう設定をときどき見ては面白そうだなーとは思うのですが
だいたいその場合の最強チームというのが固まってしまいますよね

学年縛りして、クラス対抗戦とかしたらどの学年が強いんだろうかとか、そんなことを考えたりします
クラス対抗なので、例えば1年1組vs3年2組、とかですね

和・モモvs久・ゆみ
咲・穏乃vs照・宥

こんな感じですね。コンビ打ちの描写は、咲世界にほぼないと思いますので、そんなのも面白そうかなーと
和・モモとか、ステルスしても味方(和)からは見えているので相性が良さそうだよなーとか

まあ、このネタも収拾がつかないんですけどね
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/08/21(火) 20:21:17.72 ID:CWfem95ro
のどももの脅威のバスト
271 :和・モモvs久・ゆみ【自分で安価】 [sage]:2012/08/22(水) 01:24:50.29 ID:4/GF5wVs0
テスト兼ねてちょいと書いてみようかと

南3までをダイジェスト【D】
南4をオーラス【L】

【D】ステージ
供託点を、このレスのコンマで決定

00-19 10000
20-39 15000
40-59 20000
60-79 25000
80-99 30000

例えば、開局時に25000点が持ち点として、15000点が供託点とすると、4人合計60000点が供託点となる
この60000点を次の勢い判定で奪い合う

原村和 このレスの1つ下
東横桃子 その下
竹井久 その下
加治木ゆみ その下

勢い判定は、たとえば>>270なら、コンマ72なので、

7+2=9
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:26:08.50 ID:4/GF5wVs0
それぞれの能力

原村和
【D】のどっち
勢い判定に+1。2万点以上の失点判定の場合、失点2万点に変更し、超過の失点分は他の3人に均等に割り振る
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:26:52.79 ID:4/GF5wVs0
東横桃子
【D】ステルスモモ1
勢い判定が自分より低い能力の、自分に対する効果を無効化する
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:27:48.00 ID:4/GF5wVs0
竹井久
【D】悪待ち
勢い判定のコンマ1桁が3・5・7で発動。勢い判定が一番低い人から8000点直撃する、ただし勢い判定最下位の場合は発動しない
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:28:40.76 ID:4/GF5wVs0
加治木ゆみ
【D】堅実
自分の供託点判定から−5000点。
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:37:41.54 ID:4/GF5wVs0
供託点29→15000点

原村和   5+0+1=6
東横桃子  7+9=16
竹井久   0+0=0
加治木ゆみ 7+6=13

【D】堅実 により、ゆみの供託点は10000点

全体の供託点55000点

これを【和6:桃子16:久0:ゆみ13】の割合で割り振る

和   9400 + 10000 = 19400
桃子 25200 + 10000 = 35200
久    0 + 10000 = 10000
ゆみ 20400 + 15000 = 35400

これが南3が終わった段階での点数
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 01:37:45.82 ID:L5QRCBb8o
ゆみさんは意外と果敢なイメージ
堅実はドム
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:58:00.31 ID:4/GF5wVs0
かじゅは、差し込み以外振り込んでない記憶だったので堅実にしときました
まあ、超暫定の適当設定なのでどんどんツッコミよろっ


【L】ステージ
勢い判定は同じ要領
勢い1位の人が、和了する

>>272-275 
この場合なら、桃子の和了となる。ロンなら、久からロン和了

あと、和了牌判定と打点判定を行う

・和了牌判定

コンマ1桁が
123 マンズ
456 ソウズ
789 ピンズ
ただし、コンマ2桁のうちどちらかに0があれば、字牌

コンマ2桁目が、奇数ならツモ、偶数ならロン。ロンの場合は勢い最下位からロン和了
ただし、コンマ2桁目が0の場合、1桁目が奇数ならツモ、偶数ならロンとする

・打点判定
00-09  2000
10-25  3900
25-49  8000
50-69 12000
70-84 16000
85-94 24000
95-90 36000


和了牌判定(このレスから↓)

桃子

ゆみ
打点判定
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 01:59:29.61 ID:4/GF5wVs0
原村和
【L】そんなオカルトありえません
勢い判定に+1。判定コンマ70以上で、敵チームの能力を無効化
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 02:00:18.70 ID:4/GF5wVs0
東横桃子
【L】ステルスモモ2
自身の振込が確定した時点で発動。再コンマして80以上なら、「桃子の和了、和了判定1位からのロン上がり」に変更する。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 02:01:24.50 ID:4/GF5wVs0
竹井久
【L】牌を投げてツモ!
和了牌判定がツモの時に発動。和了判定に+2、翻数判定に+1
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 02:02:17.43 ID:4/GF5wVs0
加治木ゆみ
【L】対応力
勢い判定に、自分以外のL能力所持者の人数×1を追加する
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 02:04:40.76 ID:4/GF5wVs0
和了牌判定の牌の種類は、この面子では関係ありませんが・・

例えば宥姉の場合、萬子であれば上がりやすくなるとか、淡の大七星は字牌判定が必要とか、そんな感じで使えたらなと思ってます
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 02:12:37.50 ID:4/GF5wVs0
和了牌判定31→ツモ
打点判定76→16000

和  6+1+1=8
桃子 7+0=7
久  5+0+2=7
ゆみ 4+3+3=10

ゆみのツモ

勢い最下位が親っかぶり
同点の場合はコンマが低い方として、久が親

和  19400 → 15400
桃子 35200 → 31200
久  10000 → 2000
ゆみ 35400 → 51400
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/22(水) 02:20:59.05 ID:4/GF5wVs0
ふんふむ
なんかかじゅが安定しすぎな気がする、1回やっただけだから分かりませんが

とりあえず1回テストできたので満足


「文教堂同時購入特典はまさかの劔谷だよもー」という記事を咲アンテナで発見
やべぇ時代は劔谷だ、はよ長編書かねば、という気になったのであった
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 07:30:53.90 ID:AIjA5OaIo
ほう、何やら面白そうな判定テストが。
どっちかというと【L】判定を毎局やると面白そうかも?

コンマ合計による勢い算出と同時に、コンマ値自体でも判定して、
00-19ならスキル発動無し、
20-59なら【悪待ち】発動、
60-99なら【牌を投げてツモ!】みたいにするとか。
キャラによってスキル数を変えたりするのも個性出せそう。

劔谷特典はでーもーコンビらしいですね。
アーリーモーニングのアレといいプッシュされてますな。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/23(木) 00:55:18.96 ID:N0Gu+Ksg0
1です

文教堂のネット予約もう終わっとる・・・・昨日は予約準備中だったのに・・・
近くに店舗無いしなぁ・・・諦めるしかないか、無念

>>286
どちらかというと、1局ずつやるのが大変そうだったので端折るために考えたのが【D】です
Lを増やすにしても、東場D→東場L→南場D→南場Lくらいが限界かなぁという感じ

他の方がやる分には構いませんけどね
288 :突発的に「劔谷日和」4の2 [saga]:2012/08/23(木) 12:44:39.64 ID:CEIvq9u+0
1です

美幸から澄子への呼び方は公式では不明だと思いますが、澄子ちゃんが言いにくそうなので、すみちゃんとしています
が、前回は昼休みにこっそり書いたために、よりちゃんになっておりました
いまさらですが、各自脳内で変換おねがいします


【引継ぎ 5】
澄子「というわけで、部長を引き継ぎました」

莉子「がんばってくださーい」

友香「新部長これからも、よろっ」

澄子「さて」

莉子「はーい」

友香「なんでしょう?」

澄子「何か思ってみたりとか、無いですか?」

友香「いえ、特に」

莉子「ないでーす」

澄子「何だろう、何か物足りない・・・」


【引継ぎ 6】
澄子「ところで、先ほどうちの部の正式名称が正座部ということが判明したのですが・・」

莉子「あれ、知らなかったんですかー?」

澄子「え?」

友香「初心者でも歓迎って言ってたから、てっきり正座初心者の私でも歓迎してくれてるのかと思ってましたけど」

澄子「え?」

莉子「入部届けにも正座部って書きましたしー」

澄子「えぇぇぇぇ!」


【引継ぎ 7】
澄子「っていうかこれ、ちゃんと麻雀部に改名すべきですよね」

莉子「届けを出せばいいんでしょうかー。よく分かりませんけどー」

友香「そういうときは、わっかんねー、だよ」

莉子「わっかんねー」

友香「いや、知らんし」

澄子「」イラッ

澄子「とにかく、ちょっと顧問に聞いてきます!」


【引継ぎ 8】
顧問「ん、正座部の名前を麻雀部に変えたい?」

澄子「そうです。どういう経緯があったか知りませんが、実態にあってませんしややこしいです」

顧問「まあ変えることは可能だが、無理だと思う・・・」

澄子「どうしてですか? 届けを出すだけじゃないんですか?」

顧問「部活の名義変更をするには、アメフト部に勝つことって規約になってる」

澄子「この学校はアメフト部を中心に回ってるんですかっ!」


カン!

これでアメフトは終わりにするんだ(遠い目)
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga]:2012/08/25(土) 09:23:45.04 ID:JSl+fESu0
1です
>>269の照宥から思いついた試作
なお、思いつくままに書いたところまで・・・


『tell you that I love ...』

春、クラス替え
張り出されたリストに、喜んだり残念がったり、そんな声が周りから聞こえる
私は、残念がる方だった

「別々だね、菫」
「まあ、2年間一緒だった方が奇跡だ。1学年20クラスもあるのに、な」

白糸台高校
麻雀のプロを目指す女子高生たちが集う
現在活躍しているプロのほとんどが、この学校の出身というくらい

「3年1組・・・知らない人ばかり」
「照シフトを組むといううわさは、本当だったか」
「なにそれ?」

ため息をつく菫

「お前、この学校に入ってから大会と名のつくもの全て負けなしだろ?」
「そうだっけ?」
「春はクラス対抗戦、夏は部活対抗戦、冬は個人戦、お前は1年のときから負けなしだよ」
「そういえばそんな気がする」
「どんな形でもいい、お前に勝ったという実績をほしがる奴もいる、そういうことだ」
「そう・・・」

そんなことのために菫と離れるのは、悲しい

「私のクラスは特に、お前をつぶすためのクラスだろうな・・・」
「そう?」

菫のクラス、3年2組の名前を見るけど、よく分からない

「まったく、少しは他人に興味を持て」

またため息

「家庭科部の福路、書道部の石戸、ソフトボール部の清水谷、サッカー部の愛宕洋榎、そしてアーチェリー部の私。大所帯の部長を全部集めてるぞ・・・」
「きっと、部長会議をしやすくするためだね」
「お前は前向きでいいな・・・」
「そうかな?」

単純に、感想を述べただけなのだけれど

「お前の妹も今年入学だろう?」
「そう、楽しみ」
「そのクラス担任が、担任や顧問を受け持つと大会で番狂わせを起こしてくる赤土先生だ」
「去年の赤土先生のクラス、強かったもんね」
「それは覚えているのか」
「荒川さんと天江さんだっけ、春のクラス対抗も決勝まできて、個人戦でも荒川さんは強かったから。よく覚えてる」

荒川さんは、とにかく状況対応力がある。いろんな打ち方をする人がいるけど、荒川さんはそれにうまくあわせてくる
私は周りから言わせるとどんな相手でもねじ伏せるタイプらしいけど、荒川さんは柔剛の柔というところだろう

「その荒川と天江が同じクラスだ。しかも、神代というおまけ付きでな」
「じゃあ2年の本命は、そのクラスか」
「お前のクラスじゃあ、太刀打ちできないだろうな・・・」

ふと、菫の視線が止まった

「いや、伏兵がいる・・・」
「伏兵?」
「まあ、クラスへ行けば分かるさ。そのクラスで、一番目立つ奴だ」
「目立つ? 派手なの?」

ヤンキーとかだったらいやだなぁ

「派手というか、季節違いというか・・・」
「季節?」

季節違いと聞いて、ふと思い浮かんだのは

「冬でも半ズボンをはく小学生みたいな?」
「逆だ。まあ会えば分かる」
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/08/25(土) 10:54:25.00 ID:JSl+fESu0
そして自分の教室へ入って
菫の言うことは、本当だった
もう春なのに、コートにマフラー着用で、窓の外をぽーっと眺めている彼女。暑くないのだろうか・・・
菫が伏兵と言っていたのは、彼女で間違いないのだろう

「おはよう」
「ひゃいっ」

びっくりしたのか、奇妙な声を上げて振り返る

「ああ、えっとはじめまして」

私の顔を見て一瞬硬直したみたいだったが、すぐに落ち着いてくれたようだ

「はじめまして。私は宮永照、あなたは?」
「私は、松実宥です」

これが、彼女との出会いだった

「ところで、暑くないの? ダイエット中とか?」
「私寒がりで、これくらいでなんとか耐えられるくらい」

朝だからまだ肌寒いと感じることもあるかもしれないけれど、それでもこんな冬用の装備をするほど寒いとは思えなかった

「そう、大変なんだね」
「おかしいとか、言わないんですね」
「別に、人それぞれ事情はあるだろうし。それをどうこう言うつもりは無いよ」
「事情を説明しても、変な目で見てくる人も多いから」
「やっぱり、大変なんだね・・・」

事情を聞いても、感想は変わらなかった

「ところで、部活は何をしてるの?」

これ以上寒がりの話をしても彼女は喜ばないだろうから、話題を変えることにした

「私? ボーリング部ですよ」
「ボーリング部なんてあったんだ・・・」
「人数少ないから、知らないのはしょうがないよ」

でも、と彼女は笑顔になって付け足した

「今年は玄ちゃんの友達が2人入ってくれることになってるから、これでようやく夏の部活対抗戦に出られるんだ」
「くろちゃん?」

どこかで聞いたことがある名前だった

「あ、冬の個人戦で私が倍満を振った・・・」
「そう、私の妹なんですよ」
「そうだったのか」

そうだ、確か彼女の名前は松実玄
あのときは、その後ソフトボール部のマネージャーさんが倒れてしまったり、いろいろとインパクトの強い一局だった
そういえば、すばらすばらって言ってた人、名前なんだったかな・・・
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/08/25(土) 10:57:42.25 ID:JSl+fESu0
「その、妹さんは私のこと恨んでたりとか、そういうのある?」

私と戦って、暗い目をする人はかなりいる・・・

「負けたときは落ち込んでたけど、それからはもっと強くなるんだって、玄ちゃんがんばってる」
「そう、よかった」
「一緒に戦った園城寺さんと花田さんとは、それから仲良くなったみたいだし」

あのすばらの人は花田さんというのか・・・

「うわさされとるで、怜」
「そうなん?」

ふと、背後から降りかかる大阪弁

「あ、園城寺さんと、清水谷さん」

振り返ると2人がいて。あれ、清水谷さんってソフト部の部長で菫のクラスだったんじゃ?

「宥姉ちゃんと同じクラスなら、まだよかったわ。竜華とクラス分かれてしもうてな・・・」
「怜をよろしくお願いしますっ・・・何かあったら隣のクラスやからすぐ飛んでくるからな」
「過保護すぎや・・・」

ただの付き添いだったらしい。そして、園城寺さんがふと私に視線を向けた

「チャンピオンももしかして、同じクラスなん?」
「1組だけど?」
「そっか。クラスの人が誰かまで見とらんかって。竜華がクラスが違うって騒ぐんやもん」
「そやかてずっと一緒だったのにぃぃぃ」

どちらかというと清水谷さんの方が心配になるくらいショックを受けているようだった
対する園城寺さんは、あっさり割り切っているように見えた
若くして人生の真理に到達したのかもしれない

「わっかんねー、ホームルームの進め方とかわっかんねー」
「あ、先生来た」
「咏ちゃんやん、ええなあ」

三尋木咏先生は、先生の中でも1、2を争う腕を持っている。ただ、授業は結構てきとーらしいけど

「竜華んとこ、担任誰なん?」
「久保っち。あの人すぐ切れるからなぁ・・・」
「それはご愁傷さまや」
「よーし、席付けよー」
「もう行かな、じゃあな怜」

そうして名残惜しそうに清水谷さんは教室から出て行った

「ま、とにかくよろしゅうな、チャンピオン」
「その呼び方はちょっと・・・」
「うーん、呼び捨てでもええの?」
「構わないよ」
「じゃあ、よろしくな、照」
「こちらこそ、怜。あと、宥も呼び捨てでいい?」
「ひゃうっ」

しばらく話に加わらずに黙っていた宥は、また変な声を上げた

「え、いいの?」
「宥姉ちゃん、聞いてるのこっちやで?」
「あの、友達みたいだなって思って」
「友達やん、なあ照」
「そうだよ」
「すごく、うれしい・・・」

その時の笑顔は、忘れられないくらい輝いていた




とりあえずここまで
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 11:02:20.44 ID:u5Mu3X5IO
おつ!
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 11:21:14.63 ID:JM7KgBtZo
かれ!
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/25(土) 13:52:07.24 ID:fy7fYJ8l0
乙!
このスレはマイナーSS好きの俺にとって楽園だわ
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/08/25(土) 22:54:52.38 ID:UDu636Wm0
1です

試作でしたが、こっちの形式(地の文が一人称)の方が書きやすいかもしれません
剱谷もこっちの形式で書き直した方が進むかもしれないなぁと思いながら


>>294
ありがとうございます! 楽園だなんて、照れます

ニッチなSSという単語はまったく定着しておりませんが、これからも重箱の隅をつついていければと思います
というかこんなごちゃごちゃなスレで大丈夫なんですかねぇと思うわけですが



目次でも付けておいたほうがいいんでしょうかね?

>>1 照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」
咲が白糸台、照が清澄なIF。照久IF

>>149 巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」
照久IFの続編、晩成と阿知賀のその後

>>249 剱谷日和
剱谷短編、咲日和風味

>>289 『tell you that I love ...』
照宥メインになる予定。全キャラが通う麻雀学校白糸台という設定の話

掲載未定
剱谷長編

現在こんな状況です
296 :tell you that I love ... (2) [saga]:2012/08/26(日) 14:48:27.64 ID:/HMmGune0
-side 咏-

「三尋木先生」

いつもの堅い声
振り返ると、階段下の踊り場にえりちゃんがいた

「どったの、えりちゃん」
「校内では針生と呼んでくださいと言っているでしょう」

いちいち目くじら立てんでもとは思うが、それが彼女の性分なのだから仕方ない
つかつかと階段を上がってくる

「クラス対抗戦、本気で来るわけじゃないですよね?」
「・・・冷静になろうよえりちゃん。少なくとも、ここで話すことじゃない。ちょうど資料室もあるし、そこで話そうか」

返事はため息
いつものことだけど、ほんとに堅い人だよ
そこが可愛いなんてまた軽口を叩けば冷静に話もできないので、今はこらえておく

資料室に入ると、さっそくえりちゃんは詰め寄ってきた

「通達、聞いてますよね?」
「困っちゃうよねー、いくら理事長だからって、宮永照を負けさせろだなんてさー」
「ですが、理事長に逆らったらどうなるか分からないわけじゃないですよね?」
「まあ、そんときはそんときさねー。横浜に帰って麻雀教室でも開くさ、知らんけど」
「どうしてそこまでしますか!」

えりちゃん、そんなに思いつめたら血圧上がるよ

「宮永照を除いたらうちのクラスは、一番高くても真瀬由子の学年ランク20位。私がちょっとやそっとやる気出したところで何も変わらないって、そう思わない?」

これでもいろいろ考えたんだよー
校長のトシさんからは、逆に宮永照の力になってくれなんて言われるしさー。まあこれは特命で、えりちゃんにも言えないけど

宮永照以外の4人を校内学年ランク20位以下で選抜してくれってさー
どういういじめだよこれ、って思ったけど。まあそれはそれで面白そうだしねー

1クラス30人程度で20クラスあるから、1学年600人程度
かといって、この中で30位程度にはなっていないとプロへの道は厳しいから、3年生ともなるともうほとんどが就職とか進学とか、プロへの道を閉ざしてしまっている人が多い

だから人数が600人もいても、実はそんなに選択肢が多いわけじゃない
そんな中で、「宮永照のクラスは勝てないな」と一見するとそう思えるような人選をしろと言われたわけで
きついっすねーって軽口でトシさんに言ったら、じゃあ一人転校生を入れるって軽く言ってくれたけども、さてその実力はどんなもんかねー

「ですけど、万が一ってこともありますし・・・」
「っていうか、うちの組より、3年2組とかの方が凶悪じゃね? あと、晴絵ちゃんのクラスとかも面白そうだしねぃ」
「ですからそうではなくて」
「っていうか2年10組だって荒川、天江、神代がいるんだろ。まあ無理無理、うちのクラスじゃ勝てっこナイナイ。わっかんねー、どうやったら勝てるかなんて全然わっかんねー」

それが正直な感想
ただ、やるからには当然、勝ちに行くけどねぇ

「・・・・咏さん」
「およ、学校だよ、えりちゃん?」

うつむいてしまったえりちゃんの表情を確認することはできなかった

「あんまり、無茶しないでくださいね・・・・」

もう、そんなに震えた声出さないでよ
思わず抱きしめて、体まで震えているのを知る

「守りたいものがあるから、無茶できるんだぜー。知らんけど」
297 :tell you that I love ... (2) [saga]:2012/08/26(日) 15:14:25.72 ID:/HMmGune0
クラス替えして1週間経つ頃には、だいたいクラス内のグループ分けも終わる
と同時に、一通りクラスメイトと対局してその力量はわかったつもりだ

「さて、そろそろクラス対抗戦のオーダーを考えないといけないねぇ。どうだ、てるてるー。考えてくれねーかな」
「てるてるって、私ですか?」

ホームルームの最中、三尋木先生の視線はこちらを向いていた
照と呼び捨てにされたことはあったが、てるてるーはなかったので戸惑う・・・

「そそ、あれだろー、1回打つとその人の力量わかるんだろー。理屈はさっぱりわっかんねーけども」
「ええ、まあ」
「だったら宮ちゃんにさっくり決めてもらった方がよくねーかなーとか思うわけよ」

今度は宮ちゃんか、ほんとによくわからない人

「好きに決めていいんですね?」
「逆に反対意見があったら私が説得してあげる」
「分かりました、提出日は?」
「悪いけど、明日の放課後まで」
「十分です」

私が大きく頷くと、三尋木先生はパンパンと大きく手を打った

「よっし、じゃあホームルーム終了。おつかれー」

そしてさっさと教室を出ていってしまった

「照、オーダーどうするん? 相談に乗るで」
「私も、力になれれば」

怜と宥がすぐに駆け寄ってくれた

「ありがとう。二人には、大会に出てほしい」
「ええけど、途中で体調悪くなったら堪忍な」
「私で大丈夫かなぁ・・・」

理由はそれぞれ違うのだろうけれど、不安そうな2人

「大丈夫だよ、それに2人と一緒に出たいんだ」
「うーん・・・」

怜は体力的なことだけが心配のようだけど、宥は別の心配をしているようだった

「もし、私の連勝を止めたらとか、そういうことを考えてるんだったら気にしなくていいよ」
「そう言われても、すぐには・・・」

とそのとき、宥の携帯が鳴った

「あ、ごめんね。もしもし、玄ちゃん。うん、少し遅れるかもしれないから先に行ってて。うん、ごめんね」
「玄ちゃんからか、今日は部活外に行くん?」
「そう、2週間に1回はボーリング場で部活。あんまり部費がないから、部活として実際のレーンでなかなか投げられないんだ」

人数や実績に比例して部費が支給されるけれど、ボーリング場で練習となるとお金もかかるだろうし、大変なんだろう
ただ人数が少ないとは言え、鷺森さんという人がボーリングの全国大会常連らしく、実績面で多少優遇はされているみたいだった

「あの近くのボーリング場?」
「うん、そうだよ」
「私は真瀬さんと、転校生の姉帯さんに声をかけようと思ってる。そのあと、お邪魔でなければ見学に行ってもいいかな?」
「それは大丈夫だけど、照ちゃんは部活無いの?」
「ああ、私は幽霊部員だからね。菫と一緒に入っただけで、1年の頃はそれでも少しは射ってみたけど、全然的に当たらないしそのうち誰かに怪我させてしまうんじゃないかと思って、やめた。夏の部活対抗戦で貢献してるから、活動しなくても何も言われなくなったし」
「照っぽいなぁ、おもろいわ」

怜がくすくす笑う。私っぽいとはどういうことだろう・・・

「じゃあ、ソフト部の練習始まるし、行くな。宥姉ちゃんもそんなに深刻に考えんでも、気軽に出たらええと思うよ」
「ごめん怜、真瀬さんと姉帯さんって、何部?」

すでに二人の姿は教室にはなかった

「由子はサッカー部で、姉帯さんはたしか臼沢さんに誘われて美術部に入っとるはずやで」
「そう、じゃあグランドまで一緒に行こう。宥、じゃあまたあとで」
「うん、待ってるね」
298 :tell you that I love ... (2) [saga]:2012/08/26(日) 15:47:45.89 ID:/HMmGune0
怜がサッカー部の部室まで案内してくれると、ちょうど真瀬さんがユニフォームに着替えて出てくるところだった

「あ、ちょうどよかったな。じゃあ照、がんばってな」
「ありがとう、怜」
「宮永さん、どうしたのよー?」

私に気づいたのか、真瀬さんが声をかけてきてくれた
でも、なぜかその表情は暗かった

「もしかして、クラス対抗の話?」
「うん、そう。真瀬さんに出てもらいたくて」
「・・・・」

なぜか視線をそらす真瀬さん
何か気に障るようなことを言っただろうか?

「もうちょっと、目立たないところでもいい?」
「ああ、構わないけど・・・」

2人して部室の裏にまわると、いきなり真瀬さんが頭を下げた

「ごめんなのよー。誰にも言わないでほしいけど、圧力かけられてるのよー」
「圧力?」

ふと、菫の言葉を思い出す
照シフト・・・・
まさかそこまでしてくるとは思っていなかった

「クラス対抗戦はずっと出てたし、宮永さんと同じチームになれるのも楽しみだったのよー。でも・・・」
「いいよ。・・・巻き込んで、ごめんなさい」

私のせいで、真瀬さんの楽しみまで奪ってしまったなんて・・・

「ごめんなさいなのよー」
「私から声をかけられたのは忘れて。部活、始まっちゃうから」

小さくまた、ごめんなのよーとつぶやき、真瀬さんは走っていった

もしかして、宥がいいよどんだのも何か圧力がかかっていたからだろうか?

真瀬さんは20位くらい
宥は確か50位くらい
怜は100位くらいだったはず
怜が未来予知できるようになったのは冬の個人戦の直前、それ以前は300位くらいだったことを考えると大きく順位は上げているが、怜には圧力がかかっているような素振りはなかった

単純に、2番手を抑えておけば戦力ダウンするだろうくらいのことならいいけど・・・

しかし・・・

「これで、宥がOKしてくれても、1人足りなくなるな・・・」

とりあえず姉帯さんがいる美術部に向かおう

「・・・・美術部ってどこだろう」
299 :tell you that I love ... (2) [saga]:2012/08/26(日) 16:32:13.14 ID:/HMmGune0
いろんな人に聞いて、美術部にたどり着いたのはあれから40分以上かかってしまった
この学校、生徒が多いのは分かるけど広すぎる・・・

「失礼します」

ノックして中に入ると、一人が椅子にぽけーっと座っていて、それを取り囲むように4人がスケッチをしてした
その4人の中に、姉帯さんと臼沢さんがいた

「デッサン中だから静かにっ」
「あ、ごめんなさい」

姉帯さんの隣に座る、ひときわ小さな子に注意された
姉帯さんは2mくらいだけど、この子は130センチくらいしかないんじゃないだろうか。とても同じ高校生には見えなかった

「ダルい・・・・休憩しよう」

真ん中に座っていた子が、そう言って姿勢を崩した

「シロ、勝手に休憩しないでよっ」
「お客さん来たし、いいでしょ?」

崩した態勢を変えようとしないので、小さな子もため息をついて鉛筆を置いた

「いいよ、10分休憩。で、用件は何、チャンピオン」
「ああ、クラスのことで姉帯さんと臼沢さんに話したいことがあって」
「・・・なら、隣で話して、ダルいから」

ダルいという理由はよく分からなかったが、3人で話せるならその方がいい

「ありがとう。いいかな、姉帯さん、臼沢さん」
「いいよー」
「っていうか、私は必要なの?」

姉帯さんは気楽に返事をしてくれているが、臼沢さんは戸惑いを隠せていない
圧力でなければ、何を思っているのかは思い当たるけれど・・・

「うん、お願い」

そして3人で、隣の準備室に入った

「まあ、分かってるとは思うけど、クラス対抗戦の話。2人に出てほしいと思ってる」
「塞と一緒にー、やったー。もちろんいいよー」

姉帯さんはあっさりそう答えてくれる

「ちょっと豊音、勝手に決めないでよ」
「どうしてー、ちょー楽しみだよー」
「だって私は・・・」
「もう塞げない、から?」

彼女が、特定の相手の手を塞ぐ力を持っているのは、いや、持っていたのは分かっていた
そしてそれが、冬の個人戦を境に使えなくなってしまっていることも

「知っているのね・・・いや、見抜いちゃうんだっけ」
「え、塞げないってなに?」

転校してきたばかりの姉帯さんにはよく分からない話なのだろう

「ちょっと調子に乗りすぎてたのよね。冬の個人戦、いいところまで行けて。とんでもない卓に入ってしまったのに、いけるんじゃないかと思ってしまった・・・」

天江衣・石戸霞・辻垣内智葉と同卓して、1人を塞いだところで誰かが上がる
2人同時、3人同時に塞ぐしかないと無理をした結果、塞ぐ力をそのものを失ってしまった

臼沢さんの説明を、姉帯さんは真剣に聞いていた

「塞ー。じゃあ、もう麻雀も打てないのー?」
「いや、昨日も打ったでしょうに・・・でも、塞ぐことに慣れてしまった私は、塞げなくなって目に見えて成績が落ちてる。だからクラスを代表する力なんて、私にはない」

私は、大きく首を振った

「力は、完全になくなったわけじゃない。眠ってるだけだよ」
300 :tell you that I love ... (2) [saga]:2012/08/26(日) 17:06:50.86 ID:/HMmGune0
「眠ってるだけ・・・それも、見えているの?」
「ああ。そもそも、完全に失われていたら、私には塞ぐ力があることは見えてなかったと思う」

私が対局で見抜けるのは、今現在の状況だけ
過去や未来まで見通すほど万能ではない

「そう、眠ってるだけか」
「クラス対抗戦、嫌なら出なくてもいい。でも、ホームルームで言っていたけど、明日の放課後までには先生に提出しないといけない。だから、時間がないけど一晩考えて結論を出してほしい。急かして申し訳ないけど」
「そんな時間はいらないよ」

心配そうに見つめる姉帯さんをよそに、臼沢さんはもう笑顔だった

「そこまで分かってて、それでも私に頼むって言うなら仕方ない。出るよ」

その言葉を聞いて、私よりも姉帯さんが大はしゃぎしていた


美術室に戻ると、先ほどはずっと無口だった金髪の女の子が私に駆け寄ってきた

「ミンナ、ガンバレ」

そう言って差し出してくれたのは一枚のスケッチブック
そこには、「3−1 ガンバレ」と書かれて、姉帯さんと臼沢さんと、私のイラストが書かれていた

なにこれ、かわいいっ

「これは?」

あくまで冷静に努めながら尋ねる
先ほどの気だるげな子が見当たらないので周囲を見回してみると、彼女は準備室との扉にもたれかかったままだった。聞き耳立ててたな・・・

「餞別、ついでに塞の復活も期待してるよ」

小さい子がしれっと言うが、それを臼沢さんが許さない

「胡桃、聞き耳立ててたな?」
「知らない、豊音の声が大きかっただけ」
「えー、私のせいなのー」
「ダルい・・・」

一気に賑やかになった室内を見渡し、そして手元のイラストに視線を落とした。かわいいけど、まだ足りない
私は、金髪の子にイラストを返した

「あと2人、メンバーが決まったら書いてくれないかな?」
「ウン」
「あ、ごめん、あと3人だった」
「ダイジョウブ、イッパイカク」

ここに、怜と、そして宥
それに、真瀬さんも書いてもらおう・・・・

私は美術室をあとにし、ボーリング場に向かうことにした




とりあえず今日はここまで
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 17:57:06.89 ID:HVI7Zp/2o
エイスリンちゃんマジ天使
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/26(日) 18:22:21.61 ID:S4NyMb140

三年生組の絡みいいよいいよー
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/08/28(火) 13:37:52.92 ID:drCUyV+AO
なんだかんだでちょー強いよー
304 :tell you that I love ... (3) [saga]:2012/08/29(水) 09:43:04.97 ID:cMwJG2Om0
ボーリング場に入ると、平日だから随分すいていた
だから、宥たちがどこにいるのかもすぐに分かった
特に宥は、マフラーをしているからすぐわかる

「こんにちわ」
「あ、照ちゃん、ちょっと遅かったね」
「姉帯さんが見つからなくてね」
「うわああ、リアルチャンピオンだ!」
「しず、指ささないの」

リアルってなんだろう・・・
とりあえずジャージを着た子が私を指差しているのは分かった、まあよくあることだから気にはならないけれど

「ごめんね照ちゃん。1年生の高鴨穏乃ちゃんと、新子憧ちゃん」
「高鴨穏乃です、よろしくお願いしますっ」
「新子憧です、よろしく」
「宮永照です。突然見学に来て、申し訳ない」
「そんなに遠慮しなくても大丈夫だよ、照ちゃん」

高鴨は元気が有り余ってるようで、すごい勢いで頭を下げてくれた
対する新子さんは逆に落ち着いた様子でぺこりと頭を下げた
今年入ってくれると言っていた1年生2人、か

レーンに目をやると、投げているのは2人
髪の長い方が宥の妹の玄さんだから、髪の短い方が全国常連と言っていた鷺森さんなのだろう

「宮永さんて呼ぶと、咲とかぶっちゃうし、照さんって呼んでいいですか?」
「咲とクラスいっしょなの?」

新子さんから突然咲の名前が出てきて驚いたが、考えてみれば同じ1年だから知り合っていても不思議ではなかった

「そうです、咲って麻雀強いっすね」

どうやら高鴨さんも咲のことを知っているらしい
早くも友達が出来ているようで、喜ばしい

「正直、私でも勝てるかどうか怪しい」
「そんなことないですよ。って言っても、咲もそんなことばっかり言ってましたけどね、お姉ちゃんには全然かなわないって」

多少謙遜、多少本音
ある程度改善はしてきているものの、まだ咲は勝ちたいという気持ちが薄いように感じる
±0に調整する力は、私ですら崩すのは難しいけれど

そこに、レーンで投げていた2人が投げ終えてこちらに戻ってきた

「しず、憧、交代」
「よっし、投げるぞー」
「あ、宮永さんだ、本当に来てくれたんだね」
「ああ、冬の個人戦以来だね」

玄さんが笑顔で出迎えてくれた

「はじめまして、チャンピオン」
「ああ、はじめまして。えっと、あなたが鷺森さんでいいのかな?」
「ええ、鷺森灼です。よろしくお願いします」
「チャンピオンって呼ばれるのは恥ずかしいから、照でいい」
「それはいきなりすぎるかな・・・宮永さん」
「それでいいよ」

フランクな1年生2人に対して、上級生はややおとなしい印象だった

「それで、今日はどういった用件なの?」

鷺森さんが尋ねてくるのも当然だろう
私は本来、こんなところにはいるはずもないのだから
305 :tell you that I love ... (3) [saga]:2012/08/29(水) 09:47:39.72 ID:cMwJG2Om0
「クラス対抗戦のことで、宥と話をしたかったんだけど。部活が終わってからでいいよ、それは」

2週間に1回のボーリング場の練習を邪魔する気はない

「あと、ちょっと興味があってね、ボーリング。やったことないから」
「今まで一度も?」

鷺森さんが意外そうに聞いてくる
誰しも家族で1回くらいやったことあるだろうと思うのが普通だろうけど、我が家はある意味麻雀バカな一家だったから、休みの日といえば麻雀というくらいだった
遊園地とかに行ったことも、数回しかない

「そう・・・じゃあ宥姉と一緒に投げてみたらいいと思う」
「え、それは悪いからできない。2週間に1回しか使えないんだろう?」
「部費では、ね。自費で来ることもあるし、部としての体面を保つために宥姉や玄に入ってもらってるようなものだし」

部活としては最低3人は必要
部活対抗戦では5人必要だけど、それはあくまで大会規定に合わせているだけで、部活の成立要件とは別問題
ちなみに部活対抗戦では、臨時の部費が支給されるのでクラス対抗よりも盛り上がる
クラス対抗はどちらかというと親睦を深める方がメイン

「それにそもそも、ボーリング場に来てボーリングをやったことない人を、そのまま帰すわけにはいかない」
「それは確かに、そうだな」
「照ちゃん、それじゃあ靴を借りにいこう」

今まで座って話を聞いているだけだった宥が立ち上がった

「靴? レンタルしてるの?」
「そう、レーンの上は土足厳禁」

そうだったのか・・・
知らないことはまだまだ多い

「あとボールもいろんな重さがあるし、穴の大きさも微妙に違うから、いろいろ持ってみてね」

重さが違う?
カラフルなボールがたくさんあるなとは思っていたが、好きな色を選んでくださいねということではなかったらしい

「ボーリング、深い・・・」
「そんなに重く考えなくてもいいよ?」
306 :tell you that I love ... (3) [saga]:2012/08/29(水) 09:50:24.78 ID:cMwJG2Om0
結局、初めてのボーリングは、42点

「すまない、これは麻雀に例えるとどのくらいの点数なんだ?」
「うーん、5000点くらいで4着かな?」
「そうか、トビ目前なんだな・・・」
「そんなに深く考えなくても、楽しめればいいんだよ?」
「確かに、8本倒せたときは嬉しかった」

ただ転がすだけかと思ったが、まったくそうはいかなかった
まっすぐ投げているつもりでも、少しの回転で曲がってしまう
一度もストライクやスペアをとることはできなかった

「さて、じゃあそろそろ片付けようか」
「あ、宥姉と玄は先に帰っていいよ。照さんも待っただろうし」

鷺森さんの号令に、新子さんが応えた

「そうだね、今日はお言葉に甘えるね」
「じゃあ帰ろう、おねーちゃん」
「照さん、また来てくださいね」
「ああ、また教えてくれ」
307 :tell you that I love ... (3) [saga]:2012/08/29(水) 09:52:47.79 ID:cMwJG2Om0
もう外はすっかり暗くなっていた
あ、まずい、咲に連絡しとかないと

「すまない、先に家に連絡してから」
「どうぞ」

慌てて携帯電話を取り出して、登録ボタンを押す

「もしもし、咲?」
「あ、お姉ちゃん。ご飯そろそろできるよ?」
「ごめん、あと30分くらいかかるから先に食べてていいよ」
「今日部活出たんだ」
「いや、ボーリング部に一緒に行ったんだ」
「あれ、お姉ちゃん、穏乃ちゃんや憧ちゃんと面識あったっけ?」
「いや、同じクラスの友達がボーリング部でね」
「そうなんだ。30分くらいだったら待ってるよ?」
「分かった、できるだけ早く帰るね」

携帯をしまい、改めて宥の方を見る

「一緒に住んでるんだね」
「ああ、ちょうど母さんがこっちに来ててね。逆に今は実家なのに父さんが単身赴任みたいになってしまってる」
「私たちは寮だから、部屋が別々だから羨ましいです」

宥たちは奈良から上京している
上京してくる生徒も多いので学校の寮も充実しているが、全室個室なので姉妹で通ったりする分にはちょっとさみしい部分もあるのだろう

「それで、クラス対抗戦だけど」

ようやく本題に入ると、宥は少しうつむいた

「うん、今まで私、クラス代表に選ばれたことないから」
「別にそんなに重く考えなくてもいいよ」
「それに、照ちゃんの足を引っ張っちゃうんじゃないかって・・・」
「そんなことは気にしなくてもいい」

どうも気が乗らないようだ・・・
あまり無理強いさせても仕方ないけれど、できれば宥と出たい
不当な圧力をかけられているという雰囲気でもなさそうだし。ただ、気持ちの問題なんだろう
どうアプローチしようか迷っていると、玄さんが口を開いた

「私は、おねーちゃんが試合してるところみたいなー」
「玄ちゃん・・・」
「それに、私だってとんでもないクラスに入っちゃってるから、代表に選ばれたらどうしようってドキドキしてるんだよ」
「えっと、何組だっけ?」
「2年10組。荒川さんと天江さんと神代さんがいるクラス。明日赤阪先生が発表することになってるけど、残り2人の中に私が入るんじゃないかってクラスのみんなが言ってるから」

菫と話していた、2年最強の3人がいるクラス
その中に玄さんもいるようだ・・・
菫のクラスの部長連合よりも、2年10組の方がすごいような気がする

「宥、別に私は勝たなければ死ぬとかそういうことはないし、クラスの中で最善の布陣を敷いて戦いたい。その最善の中に、宥が入ってるんだよ。だから仮に負けたとしても、後悔しないし責めもしない」
「そう、だね・・・」
「それに、ボーリングの時に楽しめればいいって、私に言ってくれたじゃない。それと同じだよ」
「うん、さすがに自分で言ったことを返されちゃうと、もうお手あげかなぁ」

宥は、ようやくうつむいていた顔を上げてくれた

「私、頑張るね」

308 :tell you that I love ... (3) [saga]:2012/08/29(水) 09:56:56.36 ID:cMwJG2Om0
「ただいま。ごめんね、咲」
「大丈夫だよ、早く食べよ?」
「うん、すぐ着替えるから待ってて」

約束の30分を少しばかり遅れてしまって、私は少し息を切らして帰ってきた
もう少し運動しないとまずいかなぁ・・・
さっと制服を脱いで部屋着に着替えると、手を洗って食卓についた

「咲は料理が上手で羨ましいよ」
「そんなことないよ、お姉ちゃんの方が上手だってば」
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」

ポテトサラダと豚の生姜焼きと味噌汁、シンプルだけどそれだけで十分おいしい

「咲は、クラス対抗戦出るの?」
「明日赤土先生が明日の朝に発表って言っていた。メンバーは先生が決めるけど、オーダー順はその5人で決めていいよって」
「やっぱり先生によっていろいろ決め方が違うんだね」
「お姉ちゃんは?」
「私に一任。全部決めて放課後にオーダー提出だって」
「やっぱりお姉ちゃんくらいになると、先生からの信頼が厚いんだよ」

物は言いようというか・・・

「いや・・・あれは単にめんどくさいのと、私がどんなオーダー組むか知りたいっていうことだと思う」
「そっか、先生にもいろいろいるんだね。それで、お姉ちゃんは先鋒? 大将? もし代表に選ばれたら、お姉ちゃんと打ちたいな」
「秘密。まあ、ガチで行くよ、とだけは言っとくけどね」
「分かった。じゃあそれは本番までの楽しみにしておくね」

真瀬さんが入る予定だったから、オーダーは考え直しだけど
お風呂に浸かりながらゆっくり考えよう
309 :tell you that I love ... (3) [saga]:2012/08/29(水) 10:27:34.01 ID:cMwJG2Om0
次の日の放課後
私は教室に残り、三尋木先生と2人きりになるのを待っていた
ようやくみんないなくなり、私はオーダー用紙を先生に提出した

「これでお願いします」
「うは、マジすかっ」

まあ、そういうリアクションが返ってくるのだろうなとは思っていたので特に驚かない

「それにしても、そーかー。由子ちゃん断られたかー」
「あの、先生は真瀬さんのこと何かご存知なんでしょうか?」
「いや、知らんし。大人は汚いなー、ってことは知らんし」
「知ってるじゃないですか・・・」
「わっかんねー、何の圧力かかってるかなんてわっかんねー」
「いや、圧力とか言っちゃってますよね」

なぜかお互いのため息がかさなりあった

「ま、大人のごたごたは私に任せて、てるりんは目の前の試合を1つずつ進んでいってくれればいい」
「てるりんというのはよく分かりませんが、やるからには勝ちます」

よくもまあ、毎度毎度呼び方を変えられるものだ・・・

「そっか。参考までに教えてくんね、このオーダー組んだ理由」

3年1組
先鋒 松実宥
次鋒 臼沢塞
中堅 園城寺怜
副将 宮永照
大将 姉帯豊音

「まず、臼沢さんは調子を落としていますし無理をさせられないので次鋒でなんとかつないでもらえればと思います」
「この面子なら、次鋒はそのへんだろーねー」
「怜の性格から考えて、先鋒に据えた方が無茶をしてしまうと思うんです」
「だねぇ、冬の個人戦もてるるに対抗するためにそうとう無茶してたみたいだしねぇ」

今度はてるる、か・・・

「無茶をして、また倒れてまで打ってほしくはありません。例えば私が先鋒で怜を中堅にしても、それでも怜は無茶をすると思うんです」
「だねぇ、照の稼いだ点棒は渡さへん、とか考えそうだわ」
「だとすると、私は怜の後ろにいた方がいい」

怜は一生懸命なのはいいけど、それが無茶になってしまうときもあるから気を付けないといけない

「なるほどねぇ。そうすると誰を先鋒にするか、宥ちゃんか豊音ちゃんか、になるわけだが」
「姉帯さんは転校生でデータ不足。できるだけその実力は隠しておきたい」
「なるほどね、テルチャーが副将に座ることで、大将の豊音ちゃんをできるだけ楽させて打ち筋を隠しておきたいってことか」

もはや何も言うまい・・・

「そうです。それに、宥なら先鋒でもうまくやってくれると思います」
「よし分かった。まあどんなオーダーが来ても文句を言うつもりなんてなかったけど、これで行こう」
「よろしくお願いします」
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/29(水) 10:30:02.06 ID:cMwJG2Om0
とりあえず書き溜め分はここまで

またある程度書けたら投下します
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/29(水) 12:30:24.38 ID:37O2XyEd0

全体的に見ると三年生組と二年生組が個人、総合力共に高くて一年生組が一番尖ったチームになりそう
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 00:09:43.47 ID:pyhb85X8o
乙ー

ほんまこのスレは見た事が無い組み合わせの絡みが毎回見れて癒されるわー
313 :tell you that I love ... (intermission-1) [saga]:2012/08/30(木) 02:46:22.71 ID:rXT6qUUz0
intermission … 演劇などの休憩時間

2年6組

まこ「1年の時はバラバラじゃったが・・・」

未春「ついに私たちの力が1つになりますねっ」

智紀 コクン

浩子「よろしゅうに」

尭深「はい、お茶」

ズズズズズ

まこ「うまい。さて、わしら最強の地味メガネ軍団の、最強オーダーをそろそろ決めんといかんの」

浩子「他のクラスのオーダーを予想したリストがこちらです」

智紀「一緒に作った・・・」

未春「全59クラス分ですか・・・すごいですね」

浩子「伊達にIDソフトボールは名乗ってません」

尭深「強敵は、3−1、3−2、2−10、1−5・・・」

まこ「まあ宮永照は今回クラスメイトがあまり強くないという話を聞くが、そのへんはどうなんじゃ? いつも団体戦では先鋒で出てくるらしいが」

浩子「クラス戦ではこれまで宮永照・弘世菫の先鋒次鋒で逃げ切りというパターンで勝ってきたのですが、今回2人は違うクラス。新しい戦略でくるのかはやや読みきれない部分があります」

尭深「去年の部活対抗戦のとき、宮永先輩は先鋒が好きと言っていたから、多分変わらないんじゃないかと思う」

未春「なるほど、それでこの予想ですね」

3年1組予想オーダー
先鋒 宮永照(学年ランク1位)
次鋒 臼沢塞(68位)
中堅 松実宥(50位)
副将 園城寺怜(103位)
大将 真瀬由子(20位)

智紀「ただ、転校生の姉帯さんという人のデータが足りない」

浩子「なのでその転校生いかんによっては、中盤の誰かが入れ替わる可能性があります」

まこ「まあ何にせよ、先鋒に宮永照というのは変わらんじゃろうな」
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/08/30(木) 02:55:28.72 ID:JuICgQGLo
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
315 :tell you that I love ... (intermission-1) [saga]:2012/08/30(木) 03:22:00.10 ID:rXT6qUUz0
尭深「次は、3−2。強豪の部長ばかり集まるクラス・・・」

浩子「まあ、こちらはメンバーの入れ替えはないでしょう」

3年2組予想オーダー
先鋒 福路美穂子(4位)
次鋒 弘世菫(7位)
中堅 愛宕洋榎(2位)
副将 清水谷竜華(8位)
大将 石戸霞(10位)

智紀「ほぼ、これで間違いない・・・」

未春「これはこれでヒドイですね。全員学年ランク10位以内とか」

尭深「宮永先輩に対抗するために、わざわざ集めたといううわさがあるくらい」

浩子「ま、そのへんのうわさはいろいろあるようですが、もうクラス編成は終わってますからオーダーに影響を与えるようなことはないでしょう」

まこ「なるほどの」

浩子「次は、2年10組ですが・・・。ここもなかなかになかなかですわ」

2年10組予想オーダー
先鋒 神代小蒔
次鋒 上重漫
中堅 荒川憩
副将 愛宕絹恵
大将 天江衣

智紀「次鋒が、松実玄の可能性も高い・・・」

尭深「冬の個人戦で、宮永先輩に倍満を直撃した」

未春「通称、ドラゴンロード。龍を統べる者・・・」

浩子「担任が赤阪先生でサッカー部顧問代行ですんで、上重を持ってくる可能性がやや高いかと予想しとります。ただ、どちらにしても爆弾娘なのは変わりありませんが」

まこ「それにしても、派手メガネが副将なんじゃな?」

尭深「メガネの中では人気がある・・・・」
参照:http://saki-daisuki.info/archives/4916

未春「咲日和で愛宕の巻とか、許せませんっ」

浩子「ま、まあそのへんはさておき・・・。このオーダーですが、神代と荒川が入れ替わるパターンもありえるかと思います。正直、赤阪先生が曲者なのでトンデモオーダーになる可能性も否定はしきれません」

まこ「最後は、1年5組か」

浩子「それはですね」

智紀「【tell you that I love ...(4)-side 淡-】をお待ちください」

まこ「って、ここで終わりかいっ」

未春「まあ、所詮幕間のおまけ扱いですから・・・」



2年6組
先鋒 染谷まこ
次鋒 沢村智紀
中堅 吉留未春
副将 船久保浩子
大将 渋谷尭深

なお、予選で登場させるかどうかはまだ決めてない模様
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/30(木) 03:39:09.48 ID:rXT6qUUz0
9時くらいにうっかり寝てしまい、1時くらいに蚊にさされて目が覚めてしまったので即興で書きました

そういえばメガネ部3年生も一応人数は足りてるのか・・・

古塚梢(剱谷)
新井ソフィア(越谷)
辻垣内智葉(臨海)
狩宿巴(永水)
安河内美子(新道寺、まだロンとかツモとかしか言ってないないけど・・・)
木村日菜(晩成、セリフないけど・・・)


次にintermissionやるなら、これでいこうかな・・・
梢ちゃんがいるだけで、劍谷日和な空気になりかねない
ソフィアと智葉はツッコミいけるはずやっ

それでは寝直します、おやすみなさい
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/30(木) 10:58:33.06 ID:pyhb85X80

2年10組予想オーダーの絹恵の浮きっぷりwwwwww
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/08/30(木) 13:00:09.62 ID:rXT6qUUz0
1です
ちょっと1週間ばかり忙しくなりそうなので、ただでさえ遅い更新がしばらく止まると思います
まあ、小ネタくらいなら書けるかもしれませんが・・・

また上がっていたら読みに来ていただけると幸いです


>>317
2年生で5人選抜するとしたら、荒川・天江・神代・透華までは文句ないと思うんですが、5番手が意見が分かれるところじゃないかなぁと思います
結局、誰を入れても5番手は浮く気がするんですよねぇ

なので2年10組は、すごい3人を集めたけど、あとはそこそこ、です
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 03:26:39.32 ID:ERKmUeCTo
乙乙

二年生は制約が強さを縛ってる子が結構いるから難しいねえ
特に支配力トップクラスの玄ちゃんなんか制約無くしたら化けるなんてもんじゃない
320 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 22:49:30.52 ID:X0Rzf6dT0
-side 淡-

宮永照との対戦は、中学の時に1度だけあった
私が1年で、彼女が3年。もちろん、完敗
だけどそれ以上に、その打ち筋に魅了された

あれを恐怖と思う人は、所詮その程度の器量しかないということ。だったら麻雀なんて止めたほうがいい

私もああなりたい、それが目標であり、あこがれだった

「ねーあなた、宮永照の妹なの?」

だからその照の妹、咲と同じクラスになったのは、運命なのかもしれないと思った

「そうですけど・・・」

おそらく今までも耳が腐る程聞かされた質問なのだろうけれど、未だ慣れていないように戸惑う咲
その様子が、なんだか可愛かった

「よし決めた、友達になろう、サキ!」
「え、あ、はい」

こういうのは勢いが肝心。特に気の弱そうなこの子には
それにしても、あの宮永照の妹がこんなにかよわいなんて、血なんてものはあてにならないのかしらね、まあそれはそれで興味あるけど
麻雀の腕はどーなんだろ、まあこの学校に入ってるくらいだからそれなりには打てるんだろうけど

「ところで、名前は?」

咲が尋ねてくる

「大星淡よ。淡って呼んでくれていいからね」
「うん、よろしくね、淡ちゃん」
「今聞こえたんですけど、宮永さんあのチャンピオンの妹ってほんとですかっ?」

突然話に入ってくる、正直申し上げて猿っぽい子。っていうかなんでジャージなの、今日入学式終わったばかりでしょうに

「穏乃、そんな突然話しかけたら迷惑ですっ」
「まーまー、しずにそんなこと言ったって聞きゃしないわよ」

その後ろからやってきた、とっても大きなおもちと、髪をツインにした子

「えー、だってあのチャンピオンの妹だって聞いたらいてもたってもいられなくって」
「誰それの妹とか、そういう見方はするべきじゃないと思います」
「まあ和もそうかっかしない、妹だからどうこう言ってもしょうがないってのは私も同感だけどさ」

のどか?
ああ、確か去年の全中チャンプの原村和か。中2中3のときは私は海外にいたから、私のいない中学チャンプとか全く意味はないと思うけど

「ま、とりあえず急に話に入っちゃってごめんね。私は新子憧、こっちが原村和」
「私は高鴨穏乃です、よろしく」
「宮永咲です。確かに、宮永照は私のお姉ちゃんですけど・・・」
「おお、やっぱりそうなんだ、すごいすごいっ」
「だから、姉とか妹とかで人を見るべきじゃありません」

身を乗り出して咲に迫る穏乃に食ってかかる和
それをため息まじりに見ている憧
一番話が通じそうなのは、この憧って子かな・・・

「愉快なお友達ね、アコ?」
「そうね、しずはバカ正直というかなんというか、和は正直すぎるというかなんというか・・・」

同じ正直でもこうも違うものなのね

「あなたの名前、大星淡でよかったかしら?」
「ええ」
「ま、とりあえずよろしくね、淡」
「こちらこそ」

私たち5人の出会いはこんな感じだった
321 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 22:52:27.85 ID:X0Rzf6dT0
宮永照がいるというので、私はアーチェリー部を見学することにした
しかし実際に見学してみるとそこに宮永照の姿はない

「部長? 宮永照もアーチェリー部って聞いたんですけど?」
「ああ照は幽霊部員でな、たまに来るが、今日は来ないとメールが入ってるから来ないぞ」
「ええー」

海外にいるときからアーチェリー部に入ってるって情報を入れてたからこれでも結構練習してきたのに
でも全く来ないわけではないらしいし、それに夏の部活対抗戦には一緒に出られるはずっ

「照目当てなら、あまり入部はお勧めしないぞ。あまり特例は作りたくはないが、宮永照だから幽霊部員を黙認されているだけで、うちの部は全国クラスだ。練習はしっかりやる。去年もそうだったが、照目当てで入って半分位は辞めている」
「大丈夫ですよ、アーチェリーの経験はあります」
「そうか、なら少し射っていくか?」
「はい」

流石に道具は持ってきていないので練習用のものを借りる
結果は3射して、7点、2点、7点。自分の道具じゃないし、こんなもんかな

「ふむ、3射してミス無しか。経験者というのは確かなようだな」
「ええ、照目的のニワカじゃないですよっ」
「なるほど、それは悪かった。歓迎するよ」

こうして晴れてアーチェリー部に入部した


照に会えたのは、その2日後だった

「大星、今日は照が来るらしいぞ。というかまあ、新入部員もいるんだから1度くらい顔を出せといって渋々来させたんだが・・・」
「ありがと、スミレ」
「まあいいんだが、部活が始まったらせめて部長と呼べ」
「はーいっ」

どうもさん付けとかちゃん付けとか苦手だからほんとはみんな呼び捨ての方が楽なんだけどね

「お疲れさま、菫」

渋々連れて来られたからかなんなのか、無表情でようやく宮永照が現れた

「お待ちかねの照だぞ、大星」
「初めまして、新入部員の大星淡です、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。・・・あれ、どこかで会った?」

少しだけ私の顔をのぞきこむように顔を近づけてくる
え、覚えてくれてるの?

「3年前の全中で一度だけ対戦してます。覚えてるんですか?」
「ああ、中学の時か。髪が長くて、特徴的な打ち筋だったから記憶の片隅にあったのかも・・・。名前までは覚えてなくて、ごめんね」
「いえ、そんな。光栄ですっ」
「ほう、照が人の顔を覚えているなんて、珍しいこともあったものだな」
「人の顔とか名前覚えるの苦手だけど、そこまでじゃない・・・」

なんか菫と話しているのを見ると、対局中に想像してたルークビューティとは随分違う
事前に咲から話を聞いておいて、ある程度予想はしていたけれど

「まあとにかく、よろしくね大星さん」
「あの、淡って呼んでください。あと、できればテルって呼んでもいいですか?」
「ああ、別にいいよ」
「じゃあよろしくね、テル」
「よろしく、淡」

案外あっさり認めてもらえた。菫には海外生活が長くてとかいろいろ説明してようやく納得してもらえたから

「ところで菫。顔を出したのはいいけど、私は何をすればいいの? 手本とか見せられるわけじゃないし」
「どうにも、お前の神格化が激しくてな。私が何を言っても信じてもらえなくてな・・・。だから普段通りにしてくれればいい」
「なんだかよくわからないけど、分かった」

ため息をつく菫。私以外にも照に憧れてみたいな理由でアーチェリー部に入部しようとする人が多いみたい
たまたま来てないだけで、ほんとはアーチェリーも華麗にこなすんだわ、とかそういう想像をしている人もいるみたい。私は咲からその辺も聞いたから今更驚きはしないけど

「よし、じゃあ部活をはじめるぞ」

結局照は部活の最初から最後まで、ずっと本を読んでいるだけだった
322 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 22:53:45.51 ID:X0Rzf6dT0
部活が終わり、さっと帰ろうとする照を引き止めた

「テルー、一緒に帰ろっ」
「いいけど、家はどこ?」
「学校の寮だよ」
「そう、じゃあ寮に寄ろうか」
「テルは図書館の近くに住んでるんだよね?」
「そうだけど、どうして?」

不思議そうにこちらを見る照
うーん、やっぱり対局中に見せる表情とは別人だなぁ。麻雀してる時は、全部見抜いているかのようなのに

「私、咲と同じクラスだからね」
「そう、咲と仲良くしてくれると嬉しい」
「一番の友達だよ」
「淡みたいに明るい子が友達なら咲も楽しいだろうね」

寮が近くなので雑談している間にもう着いてしまった

「じゃあ、ここでお別れ」
「テルー、明日も部活来てくれる?」
「来ても私は本を読んでいるだけだよ」
「それでも、来てくれたら一緒に帰れるよね」

少し考えて、照は私の頭をなでた

「暇だったらね。晩御飯は咲と当番制だから、少なくとも来週は来れないし」
「うん、できるだけ来てね」

それだけ約束して、私は寮へ戻ることにした
323 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 22:55:41.48 ID:X0Rzf6dT0
しばらくして、クラス対抗戦のメンバーが赤土先生から発表された

「よーし、じゃあメンバーを発表するよ。私から発表するのはメンバーだけだ。その5人で集まってオーダーを考えてほしい。団体戦は総合力、1人だけ突出していても勝てるものじゃない。短い期間だが、チームワークを育てるためにもオーダーを全員で考えるところから初めてほしい。じゃあ名簿順に発表するよ」

そう言って、名簿に目を落とす先生

「新子憧」
「はいっ」

一緒に打つ機会が何回かあったけど、強いというよりは上手いという感じの打ち筋だった。誰が相手でも無難にこなすという点では、団体戦向きかもしれな



「大星淡」
「はーい」

ま、当然よねー

「高鴨穏乃」
「よっしゃー、頑張りますっ」

正直よく分からない子、逆境には結構強いけど、変なとこで無茶したりとにかく安定しない。他にもいたと思うんだけどなーというのが正直なところ

「原村和」
「はい」

まあ実績からしてもここは外せないのだろう

1年生はまだ正式なランクはないから、入試とか中学までの実績とかでランクを決めるみたいだけど、その暫定ランクで1位なのは事実だし。ただ、教科書通りって感じで打ち筋はあんまり好きじゃないけどね

ちなみに私は中学時代の実績がないという理由で、暫定ランクは150位らしい
まあすぐに上がるからいいけどさ

「そして最後、宮永咲」
「は、はいっ」

ま、ここも当然でしょ
とはいえ、まだまだ咲の底は知れない。正直、まだ実力を出してないっていうか、出すことを恐れているっていうかそんな感じがする
全然遠慮することなんてないのに・・・じれったい

「じゃあこの5人で昼休みにでもオーダーを話し合ってみてくれ」

朝のホームルームはそれで終了した
先生が出て行くと、すぐに声を上げたのは憧だった

「じゃあクラス代表のメンバー集合!」

みんなが集まると、憧がみんなにメモ用紙を渡した

「あんまり時間ないし、とりあえず昼休みまでに自分の希望のポジションと、全体のオーダーを各自考えておきましょう。全体は無理でも、とりあえず自分の希望するポジションだけは考えること、いいわね」

こういう仕切りは憧に任せておくのがいいっていうのは付き合いの短い私でも分かることだったので、誰も文句を言わずメモ用紙を受け取った
324 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 22:58:10.23 ID:X0Rzf6dT0
そして昼休み
憧がみんなのメモ用紙を受け取ると、真っ先にため息をついた

「しず、どこでもOKって何よ?」
「え、だって実際どこでもいいし」
「そんなんだと余り物になるわよ」
「それならそれでいいよ。どこだって自分の麻雀をするだけだしね」
「大した自信ね・・・」

そして次の用紙を見て、またため息

「のどかー、あなたもどこでも構いませんってさー」
「いえ、私は自分の適性が分かるほど団体戦の経験がありませんので、この位置が適正というのを分かりかねます」
「真面目かっ」

ある意味似たもの同士なのだろうか、穏乃と和って・・・

「じゃあ次は咲。先鋒、ダメなら大将。いいわねー、こういう回答待ってたわ・・・」
「うん、お姉ちゃんと打ちたいから。お姉ちゃんほぼ先鋒だし、チーム事情で先鋒を譲る場合に大将になることがあるくらいで、他のところで打ったって聞いたことないから」
「で、淡は大将or先鋒ね。大将を先に書いたってのは、大将の方がいいってことかしら?」
「サキが先鋒希望すると思ったから、先に大将を書いただけだよ」
「じゃあ、先鋒・咲、大将・淡は決定でいいわね」
「そういうアコの希望はなーに?」

散々どこでもいいを否定しておいて、自分の希望を言わずに決めるのはちょっとアンフェアかと思った

「私? 次鋒か副将よ。流石にこの面子で先鋒とか大将とかいうほど自惚れちゃいないわよ。それにこの学校、中堅マニアの愛宕洋榎っていう3年のランク2位の人がいるらしくてね、中堅にもそれなりの人員を配置しないとやばいらしいのよ」

中堅マニアってのもすごい響きね・・・、そんなに中堅って魅力的かしら?

「他のクラスもそうしてくるから、結局中堅も準エースくらいの人がくることが多くなるらしいのよね」
「3年の2位っていうと、お姉ちゃんの次に強いってことだよね。そんな人が中堅で出てくるんだ・・・」
「うん、だから私がオーダー組むなら、先鋒・中堅・大将に咲・和・淡。残りの次鋒と副将を、私と穏乃で回せばいいのかなと思ってた、組み合わせまでは個人の希望でいいかなと思ってたけど」
「じゃ、それでいいんじゃない?」

とにかく私にさえ回してくれれば、たとえそれが4着でもなんとかする自信はある

「じゃあ和は中堅ね」
「分かりました、頑張ります」
「しずと私はどうしよっか、正直どっちもどっちって感じだけど」
「じゃあジャンケンで決めよう、勝った方が副将ね」

あ、そのへんは結構適当なのね・・・
ジャンケンの結果、憧が勝ったので穏乃が次鋒、憧が副将になった

「じゃあ、これで決まりね。やるからには優勝目指すわよっ」
「おー!」

まさかこのジャンケンの勝者が宮永照とあたるだなんて、この時は思いもしなかった
325 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 23:00:44.88 ID:X0Rzf6dT0
-side 久-

春のクラス対抗戦や夏の部活対抗戦は学校行事ではあるけれど、主催は生徒会ということになっている。生徒会長としては、一番盛り上がる仕事
冬の個人戦は、最終的なランク選考なども兼ねているので学校主体で行われる

「久、先生方から全クラスのオーダーをもらってきたぞ」
「ありがとう、ゆみ」

副会長の加治木ゆみが職員室から戻ってきた
いち早く全クラスのオーダーが見れるというのは生徒会の特権よねー

「絃(いと)、じゃあこれのまとめよろしくね。明日の朝には速報出さないといけないから」
「了解です」

書記の霜崎絃。あまり千葉は麻雀が強くないのだけれど、彼女だけは別格だった
なぜか1年の時から生徒会に所属しているので、生徒会歴は私よりも長い
どうしてずっと生徒会にいるのか聞いたことがあるのだけど、「え、だって生徒会だったらチャイナ着ててもいいって聞きまして」という回答だった
それ以上深く聞くのはやめた

「ほかのクラスはどう出たのかな?」
「何か手伝いましょうか?」

絃の手元を覗き込むのは、会計の辻垣内智葉と、3年庶務の狩宿巴
庶務は各学年から1人ずつ出すことになっているが、まだこの時期では1年の庶務は決まっていない。2年の庶務は花田煌だけど、まだ来ていない

「いえ、大丈夫ですよ。入力が終わったものから横に置いていきますから、気になるようでしたらそちらから見てくださいね」

とはいえ絃も空気を読んで、まずは3年生の処理から始めたらしい

「はい、3年1組終わりました」

私も気になるので見に行くことにした
ゆみは気にならないのだろうかと思って彼女を見ると、ゆみは別の作業に入っていた。反応を示さないところを見ると、ここに来るまでに見たのだろう

「へー、そう来る・・・」
「ひと波乱ありそうだな」

3年1組のオーダーは、おそらく誰も予想できないものだった。確かに組まれてみれば、そう来るのも分からなくはないと言えるけれど
まこから聞いた、2年きってのデータ派である船久保さんでも、先鋒あっても大将くらいと予想していたと言っていたし

「参ったわねー、うちの副将、智美にしちゃったわよ」
「まあ、中堅までに極力削るしかないな。うちのクラスが1組に当たることがあれば、だがな」

ゆみが作業の手を止めないまま話だけふってくる

ちなみにうちのクラスのオーダーはこう

3年18組
先鋒 小走やえ
次鋒 椿野美幸
中堅 竹井久
副将 蒲原智美
大将 加治木ゆみ

どこのクラスも大体そうするのだろうけど、重視するのは先鋒・大将、次いで中堅。だから次鋒や副将は後回しになってしまう

「それにしても、うちのクラスも部長が3人もいるんだからもうちょっと注目されてもいいのにねぇ」
「やえはともかく、久もうちも去年は部活対抗戦にも出れてないような弱小だ。話題にはならないよ」
「まあそうんだけど、今年はお互い部活対抗戦に出れそうなんでしょ?」
「まあな」

そこで話を打ち切り、ゆみはまた作業を始めた
326 :tell you that I love ...(4) [saga]:2012/09/02(日) 23:04:55.03 ID:X0Rzf6dT0
「巴や智葉のクラスはどうなの?」

仕方ないので、絃の作業を眺めている二人に話を降ることにした

「まあうちもそんなには進めないだろうさ。予選を抜けられれば御の字というところだ」
「そうですね。智葉さんに極力稼いでもらって、その後はなんとか逃げ切りを図るという感じですから」

3年9組
先鋒 辻垣内智葉
次鋒 安河内美子
中堅 古塚梢
副将 狩宿巴
大将 新井ソフィア

智葉が学年3位というくらいであとは正直パッとしないオーダーなので、先鋒逃げ切りに賭けるしかないのだろう

「まさか副将で宮永さんと当たるかもしれないとは思いませんでしたよ」
「私も肩透かしをくらった感じだな。久々に対戦できるかもと思っていたんだがな・・・」

副将宮永照を読めという方が難しいだろう


ちなみにクラス対抗戦はトーナメントのような形式を取る

予選で60クラスを16クラスに絞る、ある意味ここが一番の難関だったりする
60あるので15卓で1位の15クラスが勝ち抜け、残り1クラスは惜敗率上位4組による敗者復活戦で選抜される

16クラスからは4卓で1位2位が勝ち抜けて8クラス
8クラスの2卓で1位2位が勝ち抜けて4クラス
4クラスで決勝、となる

ちなみに予選の組み合わせは優勝予想投票によって決まる。なので明日には速報を出して予想してもらわないといけないのだ

前評判1位から15位をシード扱いとして、予選段階では同じ卓に入らないようにする
自分のクラスを予想してはいけないというルールがあるので、ひたすら自分のクラスを予想してシードを獲得する戦法は取れない。また、優勝クラスと予想的中者には学食の食事券が配られることになっているので、予想はだいたい実力通りになる

この形式だと1年生はよほど中学の時に活躍しているか、担任の先生が注目されるか出ないとシードを取りにくいけれど、まあ得てして学校行事は先輩有利にできているものだし、それをはねのけて宮永照は1年の時から優勝しているのだから無茶苦茶不利というわけでもない


「会長、全部打ち終わりました。確認お願いします」

絃がもう全クラス分打ち込んだらしく、プリントアウトされた全クラスのオーダーと、クラスごとに書かれた用紙を持ってきた
それぞれを照らし合わせて間違いが無いか確認。OKなら明日の朝のHRで配って夕方回収という流れだ

「速報を出してからの投票集計が勝負よ。みんな、頑張りましょう」
「はい」

さて、生徒会の特権として、一晩ゆっくり優勝予想を立てましょうか・・・
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/02(日) 23:11:17.38 ID:X0Rzf6dT0
とりあえずここまでです
結局投下してしまう自分がいる・・・

週明けからは書く時間無いはずなので、intermissionに使えそうなネタがあれば書くかもしれませんので、なにかネタがあれば書いてもらえればピーンとひらめくかもしれません


ちょっとこの先の展開を考えるに、1人称で麻雀の描写するのって難しくないですかね?とかなんとか思ったのですがどうんでしょうか??
対局中だけ台本形式に戻すべきかどうか、そのへんが解決しないとクラス対抗戦が書けない。まあいっそ対局とかキンクリしてもいいのかもしれませけど

まあ書く時間はなくても考える時間はあるのでのんびり考えます

ではおやすみなさい
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/02(日) 23:47:28.91 ID:lCurXIXm0
乙ー
意外にも3年生組の戦力が分散してるのね。それでも強いところは強いけど

3ー1の交流がもっと見たいです!あ、でも咲のクラス(多分1−5?)も気になる……やっぱ2−10も(ry
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/03(月) 12:34:37.81 ID:m1JfjGD30
1です
1−5ってちゃんと明示してませんでしたっけ?
それとなーく分かるけど、明示はしてませんね・・・失礼

1年5組
先鋒 宮永咲
次鋒 高鴨穏乃
中堅 原村和
副将 新子憧
大将 大星淡

こんな感じで


というか照宥で始めたのに照宥要素が薄すぎることに気づいたので、3ー1の交流は書きますね
ほんとはすぐにクラス対抗戦に入ろうと思っていたのは秘密です
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/03(月) 13:40:55.83 ID:+s6h4TxDo
乙です
ワクワクしてきた


うむ、確かに照宥足りないってちょっと思ってた
331 :tell you that I love ... (5-1) [saga]:2012/09/04(火) 21:27:10.26 ID:hPMHQG//0
「おっし、ホームルームはじめるぞー」

三尋木先生が教室に入ってきて、みんなが席に戻っていく

「みんなお待ちかねのクラス対抗戦のオーダー表を持ってきたぞー。優勝予想を書いて放課後までにこの箱に入れておくよーに」

前の席から順番に配られていく
回ってきたオーダー表を後ろに回し、まず咲のクラスを探した
昨日の夜にもオーダーの話になったけど、明日の楽しみにしようとついはぐらかしていた。咲が副将とは思えなかったし、私が副将と知ったら残念がるだろうし。結局今日には分かってしまうことだけれど・・・

1年5組
先鋒 宮永咲
次鋒 高鴨穏乃
中堅 原村和
副将 新子憧
大将 大星淡

やっぱり先鋒だよね・・・
淡が大将、それにボーリング部の高鴨さんと新子さんも入っている。中堅の子は、確か去年の全中チャンプだったような気がする。うろおぼえだけど
これは侮れないかな

いつも優勝予想とか適当だったけど、今回は咲のクラスにしようかな。今まで当たった試しはないけれど・・・


昼休み
今までは宥と怜と一緒に食べていたけれど、昨日からは豊音と塞も(昨日の昼休みに名前で呼び合うことにした)一緒に食べることにしていた

「みんなとお弁当食べれてちょーうれしいよー」
「転校する前はどうしてたん?」
「私が大きいからか、あんまり近づいてもらえなかったんだー。しょぼーんだよー」

座っていても顔を見るためには見上げないといけない
その背の高さからか、バスケ部の小走さんという人が一度スカウトに来たらしいけれど、運動は苦手らしく断ったらしい

「みんなは優勝予想どうするの? ま、準優勝予想の気分だけどね」

塞がオーダー表をみんなで寄せ合っている机の真ん中に置いた

「私は、玄ちゃんのクラスにしようかなぁて思ってるよ」
「私は咲のクラス」
「うんうん、姉妹愛やねぇ。微笑ましいわ」

怜が大げさにうなづいた
そういえば玄さんは代表になれたんだろうか?

「玄さんのクラスって、何組だっけ?」
「2年10組だよ」

オーダー表の2年10組を見ると、確かに玄さんの名前があった

2年10組
先鋒 荒川憩
次鋒 松実玄
中堅 神代小蒔
副将 愛宕絹恵
大将 天江衣

「すごいクラスだよねー。特に荒川さん、天江さん、神代さんはちょー有名だよ。対戦したらサインもらわないと」
「ほんとに豊音はミーハーね」
「うん、照からはもう10枚ももらったよー」
「それは貰い過ぎや」

なぜか会うたび書かされた時期があった
まあ、書いてしまう私も私なのかもしれないけれど・・・

「玄ちゃんも負けないくらい頑張ってるから、応援の意味で投票しようと思ってるんだ」
「いいよねー兄弟ってー。私一人っ子だからお姉ちゃんとか欲しかったなー」
「豊音ちゃんのお姉ちゃんとか、どのくらい大きいのか想像できないなぁ」
「いや、別に豊音の姉ちゃんやからって豊音より大きくなくてもええんやで」

うんうん、怜がいると的確にツッコミが入るなぁ。感心する

「で、照の妹の咲ちゃんってどのくらい強いん?」
「難しい質問かな・・・」
「強い弱いかってそんな難しい質問なん?」
「咲の打ち方は、特別だから」

異能と呼ばれる力は、ほとんど勝つためのものを指す
でも咲の打ち方は、勝ちも負けも目指さない
332 :tell you that I love ... (5-1) [saga]:2012/09/04(火) 21:28:50.99 ID:hPMHQG//0
「咲はその気になれば、どんな局面でも±0にする。でも、団体の先鋒だったら合ってるかもしれないな。どんな相手でも、10万点を2半荘で11万点にして戻ってくるんだから」
「それって、照相手でもそうなの?」
「そうだよ」
「それは、なかなかになかなかだね」

塞が少し呆れ気味に言う、そして

「とりあえず、宥にその咲ちゃんの打ち方がどんなのか教えてあげなよ。多分、妹さんの方も、お姉ちゃんの打ち方はこう、みたいな感じで話をするだろうしさ」
「あ、じゃあ私も玄ちゃんの打ち方を塞ちゃんに教えればいい?」
「まあ玄ちゃんは学校内の牌符もあるし、ドラゴンロードは有名だから牌符見て疑問点があったら質問するよ」
「うん、わかった」

となると、私から宥に教えることになる

「どうする、明日から学校休みだけど・・・」
「放課後は、私は部活があるから遅くなっちゃうよ?」
「相談するんなら週末にしとかんとまずいんちゃう」
「じゃあ週末にみんなで集まればいいよー」
「いや、みんなで集まる必要はないからね、豊音」
「えー、みんなで集まりたいよー。寮にいても暇だしー」
「わがまま言わないの」
「えーん、塞のケチー」

なぜか豊音と塞の言い合いになってしまった・・・
さてどうしようか

「あの、例えばだけど・・・」

おずおずと宥が手を挙げた

「予定が合えばだけど、土曜日の午前に私と照ちゃんで話をして、午後にみんなで集まるとか。土曜日に2人で会って、日曜日にみんなで会うとか、予定をうまく合わせられれば両方できるんじゃないかな? 対抗戦に向けて親睦を深めておくっていうのも、必要だと思うし」
「それええアイディアやな」
「わーい、私はいつでもいいよー」
「私たちはいいけど、照と宥は大変じゃないの?」
「予定が合えば、私もそれでもいいよ。晩御飯までに帰れれば大丈夫」

結局、怜が土曜日は部活があるということだったので、土曜日に私と宥が会い、日曜日は午前中に学校に集まってみんなで打ち、午後はどこか遊びに行くということになった
授業に麻雀があるくらいの学校なので、届けさえ出しておけば生徒は自由に出入りして麻雀卓を使っていいことになっている

「どうする宥、どこで会おうか?」
「どこかで一緒にお昼ご飯食べて、それから落ち着いて話せる場所に行こう。図書館なら照ちゃんの家から近いし、どうかなぁ」
「とりあえずそうしようか。途中でなにか思いついたら変えたらいいし」

あまり外食しないけど、近くにいいお店あったかな・・・
そんなことを思いながら、咲が作ってくれた卵焼きを口に運んだ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/04(火) 21:38:05.08 ID:hPMHQG//0
とりあえず3−1交流編ということで、導入部分だけです
照宥分を補給しつつ、クラス交流もしてしまおうということで土日分けることにしました
週明けからはクラス対抗戦です

ここで安価スレだったら、「誰にお店の相談をする?」みたいな選択肢が出てくるところでしょうか?
誰かに聞くくらいの小ネタだったら、対応できるかもしれませんが
剱谷長編が暗礁に乗り上げてしまっているので、劍谷スレはひそかに応援しています


さて、3年は人材が豊富なのでたくさんチームが作れるんですが、他の学年はちょっと厳しいですね・・・
まあぼちぼち考えます
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/04(火) 22:10:00.50 ID:IE1NRDwp0
支援
がんばってなぁ
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 03:09:54.20 ID:2sHLV1420
乙ー
対3−1での副将戦の絶望感がすごい
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/05(水) 21:59:47.06 ID:x12zm2YE0
乙!いよいよ照と宥の二人っきりか……楽しみ
337 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 00:51:37.85 ID:sPpHQ6cU0
「ただいま」
「あ、お帰り、お姉ちゃん。ごめんね、ご飯これから作るから」
「そう、なら手伝うよ」

エプロンをつけて後ろ手に結ぼうとしているから、ほんとにこれから作るところだったのだろう

「今日は何を作るの?」
「遅くなっちゃったから、さんまを焼いて、あとは野菜炒めと味噌汁」
「ご飯は?」
「朝予約しておいたから、もう炊けてるよ」

炊飯器を見ると、確かにもう保温状態になっていた
野菜をまとめて切って、炒める分と味噌汁に使う分と分けてしまうのだろう。そうするとあまり手伝うこともなかった。台所も広くないし

「じゃあ私は洗い物するから、咲は料理お願いね」
「ありがとう、お姉ちゃん」

自分と咲の弁当箱を洗うことにした

「お姉ちゃん、副将なんて初めてじゃないの?」

聞かれるだろうなと思っていたことだったけど、咲は楽しそうに聞いてきた

「ああ。ガチって言っただろう?」
「そうだね。ガチって、普段とは違うよって意味だったんだね。みんな大騒ぎだったよ、特に憧ちゃんなんて、なんで副将でお姉ちゃんと当たるのよって叫んでたし」
「うーん、そこまで騒がなくてもいいと思うけど・・・」

別に意表をついてどうこうとか考えていたわけではないので、オーダーが発表されてからの反応は大げさすぎると思うのが正直なところ

「あとね、あの宮永照が大将を任せた姉帯さんってどんな人なんだってすごい話題になってたよ」
「それは秘密」
「だよねー」

会話をしながらも、咲は手際よくキャベツを切り刻んでいく

「あ、あとね。明日なんだけど、クラスのみんなで練習することになったんだ。お姉ちゃんのクラスの先鋒の、えっと松実さんだっけ、その人は穏乃ちゃん

と憧ちゃんの知り合いみたいだから、傾向と対策を教えてあげるって話になって」
「ああ、なら私も同じだな。咲の打ち筋を宥、ああ松実さんに教えることになってる」
「じゃあ帰り遅い? 一応晩御飯までには帰ってくる予定だけど」
「いや、昼ごはんは一緒に食べるけど、晩御飯までには帰ってくる予定だよ」

よくよく考えれば、咲の打ち筋について話してもそんなに多くの時間は必要がない気がする
それこそ、昼食を一緒に食べている間にも終わってしまうかもしれない
まあでも、宥と二人きりになる機会もそうはないだろうし、麻雀以外の話をしてもいいだろう

「でも盛り上がっちゃうかもしれないから、明日の朝はカレーを作って晩御飯は好きな時間に食べるってしておいた方がいいかもね。カレーだったら次の日に食べても問題ないし」
「ああそうだね。そうしようか。それに、私はクラスで練習するのが日曜日だしね」
「あ、そうなんだ。じゃあ土日はカレーで済むように少し多めに作るね」

咲は本当に気が利いて助かる

「あ、それとね、憧ちゃんにお姉ちゃんの弱点とかないの?とか聞かれて。そんなのあったら苦労しないよね」
「逆に私こそ、咲の弱点を知りたいところだけどな・・・」

こうして会話していると、あっという間に晩御飯が出来上がっていた
338 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 00:52:49.37 ID:sPpHQ6cU0
翌日
時間は少し早目に11時半が集合時間
たまに行く、近くの洋食屋さんで待ち合わせることにした
オープンテラスもあり、一人で本を読むときにも使ったりする。そんなに外食はしないけれど、ここは悪くないと思っている。宥も気に入ってくれるといいけど

先に入って待っていると、宥がやってきた

「ごめんね照ちゃん、待った?」
「今来たところだよ」

まるでデートみたいなセリフだなと思いながら、宥が座るのを待ってメニューを渡した
季節感はないけれど、初めて見る宥の私服。かわいい・・・
でもどうしてだろう。すぐにでも消え去ってしまいそうな、そんな儚さも感じるのは・・・
いや、変なことを考えるのはよそう

「はい。今日は土曜日だからランチもあるよ」
「そうなの? うーん、でもデザートがアイスか・・・」

宥の表情が曇る
多分真夏でもかき氷とかアイスは食べないんだろうな。寒がりというのも大変そうだ・・・

「ホットケーキとかに変えられるよ?」
「あ、じゃあ大丈夫だね」

AセットBセットとそれぞれ違うものを頼んだ

「いつもここで食べてるの?」
「いや、外食はそんなにしないから、たまにかな。近いし、落ち着くからね」
「そうだね、ゆったりしてていいよねぇ。人ごみは苦手なんだ・・・」

第一印象はいいようだ、すこしだけ肩の力を抜く
うーん、デートとかしたことないけれど、初めてのデートとかはこんな感じなのだろうか・・・

ただ友達とお昼ご飯を食べる、それだけのはずなのに。なんでこんなに意識してるんだろう

その時、先出しで注文しておいたドリンクが運ばれてきた
私はアイスコーヒー。宥はホットコーヒー
お互いの砂糖の入れる量が同じくらい多くて、くすりと笑った
その笑顔がまた儚くて・・・
私はまた意識してしまう、このもやもやした気持ちは、何?

「照ちゃん、甘党なんだね」
「宥も相当だと思うよ」

気づけば自然と受け答えしていた
でも意識は宥の空気に溶け込んでしまうかのように、どこまでが自分なのか分からなくなりかける
見惚れるって、こういう状態のこと?

私は落ち着こうと、アイスコーヒーを口にした

好みの甘さの中にかすかに残るほろ苦さ、とりあえず意識を覚醒させるには十分だった
とりあえずちゃんと決めていなかった午後の予定を決めよう

「ところで、午後はどうする? 昨日は図書館って言ってたけど、図書館じゃそんなに話込めないし」
「そうだね。学校は・・・今日は届け出してないし」
「それか、家に来る? その方が牌符も見やすいし、自動卓はさすがにないけど、牌とマットはあるから」

なぜそんなことを言い出したのか自分でも分からなかった
ただご飯食べに来ただけでこんなに意識しちゃってるのに、家で二人きりとかナイナイナイ

「え、でも咲ちゃんがいるんじゃないの?」
「咲は今日は学校でクラスメイトと練習するって言ってたから、夕方までは戻ってこないよ」

ああ、なんでここで咲がいるとかてきとーなことを言わないの私っ

「そっかぁ。あ、お母さんもいないってこと?」
「仕事だからね」
「じゃあ、お邪魔しようかな」
「ああ、歓迎するよ」

自分の営業モードをこんなに憎く思ったことはない・・・
もう一回コーヒーを口に入れるけれど、もう後の祭りだ

「うれしいな、友達の家ってほとんど行ったことないんだ」

ああ、でも・・・

「そんな大したところじゃないよ、普通のアパートだし」

こんなに喜んでくれる宥が見られるのなら、それでもいいかと思う自分がいた
339 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 00:54:25.09 ID:sPpHQ6cU0
ランチの味は、正直よく覚えていない
あっという間に時が過ぎ、いつの間にか家路についていた・・・



「そこの角を曲がったところだよ」

ときどき吹く風にマフラーがたなびく
儚く見えたのは、この寒がりのせいなのだろうか

たとえばマフラーが風に飛ばされたりしたら、宥は寒がってそのまま動けなくなってしまうのではないかみたいなことを頭のどこかで想像してしまうから、その命の灯火がか細く見えるから

・・・落ち着こう

私は大きく深呼吸する
多分、宥が気になるのはそんな理由じゃない・・・と思う
なんだか自分でもよく分からないけれど

アパートに着くと階段を上がり、部屋の鍵を開けた

「どうぞ、大したところじゃないけど」
「おじゃまします」

靴を脱ぎ、とりあえずリビングへ

「きれいにしてるんだね。寮で一人だとなかなか片付けられなくって」
「私も一人だったらここまではしてないよ」

咲と当番なのもあるし、咲が来る前は母さんの仕事が忙しいからほとんど家事はこなしていたし。でも一人だったら家事なんてだいたいにして、本を読むの

に費やしてしまっているのだろうなと思う

「とりあえず牌を持ってこようか。・・・あ、でもここじゃ無理か」

リビングにあるのはガラスの丸テーブル。流石にマットを敷いたとしても牌をガラガラ混ぜるわけにはいかない

「家では麻雀するの?」
「母さんは最近はほとんどしないから、牌もマットも私たちの部屋に置いてある。今までは1人で大会の牌符を並べたりしてたけど、そういえばまだ咲とここで打ったことはないな」
「あ、咲ちゃんと2人部屋なんだね。いいなぁ、私も玄ちゃんと2人部屋の方がよかったなぁ・・・」
「まあ、一人になりたい時には困るし、それぞれじゃないかな」

2人部屋では寝る時間をなるべく合わせないといけないので、つい本を読んでキリのいいところまでなんて読んでしまうともう咲が部屋が明るいまま寝てしまっているということがあった
悪いなと思いながら、逆のパターンもあったのでそこは持ちつ持たれつ

「じゃあ、部屋に行く?」
「そうしようか」

っていうかいきなり部屋に入れるとかどうなんだろうと、今さらになって後悔する
見られて恥ずかしい本とかは置いてないし大丈夫なはず・・・
あっ、私だけの部屋じゃないじゃないか

「いや、咲に了解もらってないし、机と牌をリビングに持ってくるよ」

部屋に入ろうとした宥を制する
ギリギリで間に合ったようだ。うん、やっぱり部屋はいろいろまずい

部屋に入り、まず牌とマット、そのあと机を運び出し、リビングに置いた。さすがに牌に触っていると、いつもの研ぎ澄まされた感覚が戻ってくる
340 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 00:55:43.19 ID:sPpHQ6cU0
部屋に入り、まず牌とマット、そのあと机を運び出し、リビングに置いた。さすがに牌に触っていると、いつもの研ぎ澄まされた感覚が戻ってくる

「まず、赤い牌とそうでない牌を並べてみようか」

宥の特性――赤い部分のある牌が集まりやすい
逆に言えば、他の人にはこの赤い牌が集まりにくくなるということだ

「赤い牌は、萬子9種、ピンズは@BDEFH、ソウズは1579、そして中。全部で20種80牌」
「うん、逆に冷たい牌は14種類だね」
「そう、だけど実際に配牌とツモを合わせても、自分が使う牌はだいたい30牌程度。それに冷たい牌だって混じったりするね?」
「そうだね。特に鳴かれたりすると冷たい牌が来ることが多いかな・・・」

だいたい照魔鏡で覗いて分かっていた通り。ここまでは改めて確認

「それで、咲の打ち方だけど。咲は嶺上開花が得意で、嶺上牌が上がり牌だったり有効牌だったり、とにかく無駄ヅモにはならない」
「ふあ、すごいんだねぇ」
「だから普通はやらないような大明槓とか、加カンのために役もないのにポンとか、そういう打ち方が見られる。カン材や嶺上牌は見えるんだって」

まあ見えているのはそれだけはないのだろうけど、咲の底は私をもってもまだまだしれない

「宥は字牌は他の牌に比べるとツモりにくいから、咲とは戦いやすいかもしれない。よく西でカンすること多いから、あの子」
「あ、じゃあ西が生牌だったらオリた方がいいのかな?」
「順目によるかな。序盤だったら切ってもいいと思う」
「うん、そうするね」

小さくうなづく宥
もっとも、毎回西でカンするわけではないし、西だからといって簡単に降りてしまうもの考えものではあるけれど・・・
2半荘しかない短期決戦ならそのくらいの慎重さがあっても間違いではないと思う

「あと、赤い牌は宥に集まりやすいから、逆に咲はこの辺の牌ではカン材を作るのが難しい。だから逆に、浮いてる冷たい牌が生牌でも、警戒した方がいいかもしれない」
「カンされて嶺上ツモだと、ロンと同じことだもんね。待ちが1つ多いって考えた方がいいのかも・・・」

理解が早くて助かる

その後いくつか打ち筋について話をして、講習は終了した
341 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 00:58:30.20 ID:sPpHQ6cU0
「まあ、だいたいこんなところかな。あとは明日、みんなと打ちながら確認していけばいいと思う」
「うん、ありがとう」

頭を下げ、再び宥は私のことをじっと見つめた
視線をそらすことができず、またもやもやとしたものが吹き出してくる

「あのね、ありがとう」
「そんなに何回も言わなくてもいいよ」
「・・・違うよ」

小さく首を振り、宥はいきなり私の手をとった

え、ええ、えええっ
なにこれっ

あ、でも寒がりっていってたけど手はあったかいんだ
そんなことを考えているうちにも、そのぬくもりが私に溶け込んでくる

「これは、私を大会に誘ってくれて、ありがとうってことだよ」
「そ、それも前に聞いたけどっ」

うまく言葉が紡げない
こんなときこそ営業モードで軽やかにかわさないといけないんじゃないの?

「しかも、先鋒なんて大事なところ」
「それは、宥なら大丈夫だと思って」
「うん、だからありがとうって言いたいの」

宥の顔をまともに見てはいけないような気がして、視線が泳ぐ
でもどんなに逸らそうとしても、また戻ってきてしまう

ああ、やっぱりそんな今にも消えちゃいそうな儚い笑顔は見せないでよ・・・・

「私ね、玄ちゃんに頼ってばかりだったから。お姉ちゃんらしいこと、ぜんぜん出来てないし」

他の人の名前が出て、少しだけ落ち着く
でも心臓がドキドキと、耳の隣でなっているかのように高鳴っている

「だから、照ちゃんみたいに強くてかっこいい人に、先鋒を任せてもらえるなんて思わなかったんだ」

あっ・・・

瞬間、心音の合間を縫って、私を押しとどめるものが崩れる音がした

「わ、私は、強くもかっこよくもない!」
「えっ」

宥の手がビクッと震えるのがわかる。でも、もう私は止まらない

「こんなの虚勢なんだ、咲の方がしっかりしているし、お姉ちゃんらしいことなんてできてないし。それに私のせいで真瀬さんだって苦しめてっ」
「え、由子ちゃん?」

あ、しまった
誰にも言わないつもりだったのに・・・
342 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 00:59:26.74 ID:sPpHQ6cU0
泣きたくなる・・・
今更ごまかしたって、もう遅い
それでも逃げるように、うつむく

でも・・・

すっとぬくもりが消えた

「え?」

無意識にそのぬくもりを求めて、また顔を上げる
宥は笑って、膝をぽんぽんと大げさに叩いた

「照ちゃん、膝枕」
「え?」
「怜ちゃんが言ってたよ。辛い時は膝枕が一番だって。だから、どうぞ」

その辛いとこの辛いは違うような気もするけれど・・・
私は三日三晩彷徨ってようやくオアシスを見つけた放浪者のように、ふらふらと宥の隣に座り、膝に頭を落とした

ふわっと、宥のにおいがする
落ち着く・・・

「話したくないなら、話さなくていいからね」

宥が私のあたまをなでてくれる
ああ、私、誰かに甘えたかったのかな・・・

「宥、私、どうしたらいい?」
「何があったの?」
「よく分からないけれど、私に負けてほしい人がいるんだって。それで、真瀬さんに、クラス対抗戦に出るなって言ってきてるらしくて」
「そっか、そんなことがあったんだ」

私の髪を、宥の細い指先が泳いでいく
それが気持ちよくて、私はどんどんと自分を囲んでいた去勢という名の砦が崩れていくのを感じる

「意識しないようにしてたけど、どこかで負けた方がいいのかなって考えたりして」
「1人で抱え込んだら、ダメだよ」

見上げると、宥がとても頼もしくみえた

「苦しいことは割り算、2人なら半分になる。楽しいことは掛け算、2人なら倍になる。だから、ね、1人で抱えてもいいことないよ」
「でも私は、どうしたら・・・」
「勝てばいいと思うよ。だって、直接照ちゃんに、負けろって言いに来た訳じゃないんでしょう?」
「それはそうだけど、真瀬さんみたいに他の人に迷惑が掛かるかもしれない。もしかしたら宥にだって」
「大丈夫だよ、大丈夫」

いつも1人でいようとする私・・・
姉として、チャンピオンとして、ふさわしい振る舞いをしなければならないと一生懸命に、ただ自分の逃げ場を塞いでいただけだったのかもしれない

「ほんとに、大丈夫かな・・・」
「大丈夫だよ、安心して」

宥の手も、ふとももも暖かくて

「私、誰かを頼ってもいいのかな・・・」
「むしろ私は、誰にも頼られないで、守ってもらってばかりの方が辛いかな・・・」

ああ、なんだ、そういうことか

「私が宥を頼りにすれば、それで解決する話なんだね」

だから惹かれて

「うん、まかせて」

だから意識したんだろう

「しばらく、このままでいさせて」
「どうぞ」

スカート、濡らしちゃうけどごめんね・・・・
343 :tell you that I love ...(5-2) [saga]:2012/09/08(土) 01:00:11.05 ID:sPpHQ6cU0
気がつくと、もうすぐ4時になろうとしていた

「もう大丈夫、照ちゃん」
「ああ、ありがとう」

夕方と言っていたので、そろそろ咲が帰ってきてもおかしくない頃だろう

「じゃあ、今日のところは帰るね」
「送っていかなくてもいい?」
「大丈夫、だいたい覚えてるから」
「じゃあ、また明日、学校で」
「うん、そうだね」

とりあえず玄関まで送り、宥が出て行く後ろ姿を眺めていた
引き止めたいような、引き止めたくないような複雑な気持ちになりながら、ドアが閉まる音が響くのを聞いていた   (続)
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/08(土) 01:04:36.24 ID:sPpHQ6cU0
今日はここまでです

まだ日曜日の交流について何にも考えてなかったりしますが、まあなんとかなるでしょう
なんともならんかったらキンクリしてぺっこりんでOKらしいですし


眠たいので寝ます・・・・
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 01:24:33.89 ID:jK9Ti3IZ0
乙!
こんな甘々な交流をキンクリするだって……!?そんなの普通じゃ考えられない……!
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/08(土) 05:38:30.09 ID:sPpHQ6cU0
おはようございます

・・・うわあ、やっぱり眠たい時に投稿するものじゃないな
虚勢が去勢になっとる件・・・これは霞さんの呪いですね。すいません、出番は当分先です

今度からはもうちょっと落ち着いて投稿しよう、うむ


>>345
ふふふ、すでにぺっこりんする用意はある
いや、知らんけど

実際、日曜日の交流はそんな甘甘にはならんと思われますが・・・
まあぼちぼち考えます
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 19:53:43.20 ID:QNN6wzcFo
てるてるがかわいい
かわいい
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 12:27:41.42 ID:CQPBI2ra0
てるてるかわいい
ゆうねえけっこんしたい
349 :tell you that I love ...(5-3) [saga]:2012/09/09(日) 16:36:24.15 ID:DikaT/yZ0
-side 怜-

『私は真瀬さんと、転校生の姉帯さんに声をかけようと思ってる――』

オーダーを組む前、確かに照はそう言っていた
実際、サッカー部の部室まで案内したのだ。誘ってないということは考えにくい
けれど、実際に組まれたオーダーに、由子はいない。その代わりに、塞が入っていた

別に塞を入れたことは悪いことではない。
ただ、照は確かに由子を誘いに行っているのだ。それなのに由子がいない理由・・・

「なんか、あったんやろうか」

つぶやき、私は自分の部屋の壁を見つめた
寮の個室、隣は由子の部屋
1年の時は同じクラスで、しかも寮の部屋が隣で同じ大阪出身ということで、すぐに友達になった

明日は照たちと練習をする
20時。そろそろ薬を飲む時間だ
私はベッドから起き上がると、よろよろとミニキッチンに向かう

オーダーが組まれてから、照にも由子にも、由子がオーダーから外された理由は聞いていない
宥も照が由子を誘おうとしていたことは知っているはずだが、豊音と塞は知らないかもしれない
あまり下手に騒ぎ立てない方がいいかもしれないと思い、みんなの前では聞けなかった

でも、今は由子の部屋を訪ねれば2人きりになれる
何があったかはわからないが、明日の練習に由子も来てくれたらいいなと思う

「さすがに、照と由子が喧嘩した、みたいなことはないと思うんやけどな・・・」

さっと薬を飲むと、私は由子の部屋に向かうことにした
350 :tell you that I love ...(5-3) [saga]:2012/09/09(日) 16:38:20.70 ID:DikaT/yZ0
真瀬由子と書かれた扉をノックする

「はーい」

間延びした声がして、扉が開いた
由子が顔を出すが、特に表情に変わりはなかった

「怜、どうしたのよー」
「ちょっと話があるんやけど、ええ?」
「いいのよー」

由子について部屋に入る
ちゃんと片付いている、私もちょっと整理しないとと思う
由子がベッドに腰掛け、私はクッションの上に座る

「それで、突然どうしたのよー?」
「照に、クラス対抗戦に誘われたんやろ?」
「・・・どこまで聞いてる?」
「聞いてるのはこっちや」

探るような視線
誤魔化そうかどうか考えたのだろう・・・

「はぁ、もういいか。オーダーは決まったし・・・」

さみしそうな表情で、由子がつぶやく

「赤阪先生に言われたのよー。クラス対抗戦に出たら、サッカー部のレギュラーから外すって。だから、宮永さんに誘われたけど断ったのよー」
「は、なんやのそれ」

あまりにも予想外の理由に、私はそれ以上の言葉を失う
いくら顧問やからって、そんな横暴許されるんか・・・

「麻雀も好きだけど、サッカーも好きなのよー。洋榎や恭子と一緒に、ようやく同じピッチに立てるようになったのに・・・」
「そう、か・・・」

そういえば浩子が言ってたな・・・
3年2組は照を倒すために強豪の部長ばかり集めたらしい、って

学校全体が照を倒すために動いている兆候はある
2年のトップ3である、荒川・天江・神代が同じクラスなのもその内の1つ

対して3年1組は、照の次は由子の20位。次が宥の50位、塞の68位、私の103位・・・それ以下は、確か200位近かったはず
ランクだけで実力が測れるわけではないけれど、客観的に見ればクラス全体の実力は他とかなり劣るといえる

その上で、さらに20位の由子を狙い撃ち

徹底して、えげつないな・・・

「ほんとは、クラス対抗戦出たかったのよー。ごめんなさい」
「いや、うちも悪かったわ・・・そんな大事とは思わんかったん」

いくらなんでも、これは手に負えん
強すぎるっていうのも考えものやな、照

「実はな、そんな大した理由やなかったら、明日うちら学校で練習するから来てくれんかなって思っとったんやけど。赤阪先生に目つけられるとヤバイんかな?」
「うーん、オーダーからは外れたし、練習にも付き合うなとは言われないし、大丈夫だと思うのよー」

それに、と付け足す由子

赤阪先生も本意ではないらしい
誰とは言わなかったけれど、上から言われて仕方なく、と
それでも由子は食い下がった
10分くらい話をして、レギュラーを外すと言ったのは、ほんとに最後の最後だったらしい
由子も悟る、これは先生にもどうしようもないことなんだろうと・・・

「じゃあ明日9時半に第三対局室でな」
「わかったのよー」
351 :tell you that I love ...(5-3) [saga]:2012/09/09(日) 16:41:02.40 ID:DikaT/yZ0
由子の部屋を出たのが20時半すぎ

「まだ電話しても大丈夫かな・・・」

照は口には出さないだろうけれど、由子のことを気にしているはずだ
照には「圧力がかかっている」としか言えなかったそうだから、余計に悩んでいるかもしれない

携帯を取り出し、電話をかける
5、6回発信音がなったところで、つながった

「もしもし怜、どうしたの?」
「ああ照、遅くに悪いな」
「まだ大丈夫だけど、何かあった?」
「実はな、明日の事なんやけど。練習に由子も誘ったんや」
「え、真瀬さん・・・」

照のトーンが暗くなる
やっぱり気にしとるんやろうな

「OKしてくれたの?」

言葉を選ぶように、ゆっくりと尋ねてくる照

「照、うちもさっき由子に聞いたんやけどな、由子のことやったらそんなに気にせんでもええからな」
「・・・なんて言ってたの?」

さっき由子から聞いた話を説明する
それを聞いて、照は安心したようだった

「そっか・・・。命に関わるような脅しまでかけられてたらどうしようかってことまで考えてた」
「それは大げさやわ」

そこまで由子のことを心配してくれたんだなと思うと、嬉しかった

「ありがとう、怜。心から感謝するよ」
「なんやの改まって、気持ち悪いわ」
「私は一人でいろいろ背負いすぎたってこと、今日気づかされたから」

今日気づいた、か
宥となんか話したんやろうな
宥はぽけーっとしとるようで、しっかりしとるからな

「そっか。じゃあ、もう遅いから、また明日な」
「ああ、おやすみ」

さて、練習に備えて今日は早く寝とこ
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/09(日) 17:00:51.08 ID:DikaT/yZ0
土曜日分はここまでです

正直、(5-2)の照はやりすぎたかなぁとも思いましたが、かわいかったようでよかったです、はい


日曜の午前の学校での練習はだいたい話が固まってるんですが・・・
午後から遊びに行く方があんまりですね・・・

書きやすいように路線変えようかとかなんとか
日曜午後はいまのままだとキンクリしかねないので、なんかネタいただければ埋め合わせでそちらを書こうかなと

キャラほぼ全員寮に住んでるような状況ですので、原作では接点が無くても寮の部屋が隣とか、上級生なら1年の時にクラスが一緒だったとか適当な理由をつけて友達関係にできます
まあ書けるかどうかわかりませんので、お気軽にどうぞ
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 17:16:13.85 ID:CQPBI2ra0
乙!3−10チーム全体の交流をもっと見たいけど難産なら仕方ないね

ネタだけど穏乃と南浦さんが二人並んで同学年なのに姉妹に間違われるってのを希望
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/09(日) 18:08:03.30 ID:DikaT/yZ0
>>353
奇しくもクラス対抗戦の設定では南浦さんを次鋒に置いていたという奇跡

1年11組
先鋒 片岡優希
次鋒 南浦数絵
(以下伏せ)

1年5組(次鋒は穏乃)と戦わせる予定はなかったのですが、対戦しても面白いかもしれませんね


3−1チーム全体の交流はやるなら、ラウン○ワンみたいなところで遊んでる剱谷日和風味の小ネタをいくつか、ならできるかなぁという感じです
ああ、それなら日曜午後をintermissionでおまけ扱いしてしまえば、割となんでもいけるような気がしてきました

ネタありがとうございます!
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/09(日) 20:55:04.64 ID:GuBlKrCDO
乙ー
んんんんんー、上の奴らめ許るさーん!!こんなか弱い女の子達を悲しませおって!!

あ、まだネタ募集中なら見た目そっくりさんネタに便乗して怜と灼の絡みが見たいです
356 :tell you that I love ...(5-4) [saga]:2012/09/11(火) 06:05:02.19 ID:kw53WJ610
日曜日
第三対局室の鍵を宿直の先生から受け取り、部屋へ向かう

「ちょっと早すぎたかな・・・」

まだ9時になったばかりだ
日曜日ということで部活をしているところもなく、平日には想像もできないくらい静かだった

第三対局室は学校の中でもずいぶん外れた場所にある
部屋も小さく、2卓しか置いていない
あまり広い部屋では落ち着かないし、豊音は極力隠しておきたい

豊音には悪いけど、多分本当の出番は決勝くらい・・・
そのくらいの覚悟で行く

第三対局室に着く
鍵を開けると、こもった空気が鼻につく
あまり使われていない部屋だから仕方ない・・・
私はすぐに窓を開けた。心地よい風が吹き込んでくる、30分もしないうちに問題なく使えるようになるだろう

「照ちゃん、早いね」

10分ほどして、最初にやってきたのは宥だった

「もしかしたらまだ誰もいないかもと思って鍵を借りに行ったんだけど、先生が照ちゃんが借りていったって言っててびっくりしちゃった」
「ああ、手間をとらせてすまない」

見慣れた制服姿だからか、それとも昨日怜から真瀬さんのことを聞いたからか、宥を見ても妙に意識したりはしなかった
きっと無意識の不安が、宥にSOSを出せとサインを出していたんだろう

「今日、真瀬さんが練習に付き合ってくれるって、怜から電話があった」
「そうなの? 由子ちゃん、大丈夫なの?」

昨日怜から聞いた話を宥にも説明する

「そっか・・・。でも、そこまでして照ちゃんを負けさせたいなんて」
「真瀬さんについては、一回三尋木先生に聞いたことがある」

かなりはぐらかしてはいたけれど・・・

「大人のことは、大人に任せておけって言っていた。その時は正直話半分に聞いていたけれど、今となっては先生が影でいろいろしてくれているのかもしれないと思う」
「ちゃらんぽらんに見えて、肝心なところでは嘘はつかない人だもん、きっと大丈夫だね」

それからまた10分して、今度は怜と真瀬さんが入ってきた

「照、宥姉ちゃん、早いなぁ。おはよ」
「おはよーなのよー」
「おはようございます」
「おはよう」

挨拶を交わし、真瀬さんが私の前で頭を下げた

「宮永さん、私が言葉足らずで心配かけたみたいでごめんなのよー」
「真瀬さんは悪くない。逆に、私こそ巻き込んでしまって、ごめん」

私も頭を下げる
どんな大人か知らないけれど、こんなことをして一体何になるというのだろう・・・

「こればっかりは、しゃーないよ」

それよりも、と怜があきれたように言う

「宮永さんとか真瀬さんとかそんなふうに呼ばずに、名前で呼ぼうか。由子は6人目のチームメイトやで?」
「6人目とか照れるのよー」

まんざらでもなさそうだった

「豊音に任せた私が悪かったわ・・・」
「えー、だってこういうの渡すのしたいんだけどー」
「だったら部室に忘れないでよね」

随分と騒がしく、豊音と塞が入ってきた
357 :tell you that I love ...(5-4) [saga]:2012/09/11(火) 06:06:28.28 ID:kw53WJ610
「あ、真瀬さんもいるんだ。ならちょうどいいか。ほら豊音、見せてあげて」
「じゃーん、エイスリンさん作の3年1組の似顔絵だよー」

豊音が色紙を高々と掲げた
そう、高々と

「豊音ちゃん、その、もうちょっと下げてくれる? 天井を見上げるのと同じくらいだから・・・」
「あ、ごめんねー」

そう言って胸元まで色紙を下げた。それでもまだ高いけれど・・・
豊音が持ってきた色紙は、このまえ豊音と塞を誘いに行った時に書いてくれたイラストと同じタッチだった
その時は返したけれど、今度は6人分書き直してくれたようだ

「私もいるのよー」
「うん、初めは美術部に行った時に即興で書いてくれたもので私と豊音と塞の3人しかいなかったけど、どうせなら全員書いてほしくて、お願いしてたんだ。今度、お礼をしないといけないね」

とてもかわいいイラストで、ちゃんと6人の特徴を捉えて書いてくれている

「ほんとに、ありがとうなのよー」

由子はうっすらと涙を浮かべていた

「ところで、ちょっと聞きにくかったんだけど、真瀬さん何か対抗戦に出れない用事でもあるの?」

塞が疑問に思うのも仕方ないだろう

「ちょっと複雑でね・・・」

あらかたの事情を話す

「そんなのちょー許せないよー」
「まあ、でもそのへんは三尋木先生に任せるしかないよ。それよりも、私たちは真瀬さんの分まで頑張って、絶対に勝つ」

豊音と塞に気合が入る

「そう、由子の分まで頑張る。1人で背負ったら大変だけど、団体戦は5人いる。だから、1人が1.2人分頑張ればいい」
「よし、そうと決まったら練習すんで。絶対優勝や」
「おー」


十分な最終調整が出来たと思う

「もうすぐお昼だね」
「ちょーお腹すいたよー」
「じゃあそろそろ切り上げようか」

午後はボウリング場に行くことになった
宥の顔が聞くので少しサービスしてもらえるらしい

「じゃあ昼はモスかどっかで済ませて、ボウリング場へ行くで」
358 :tell you that I love ...(intermission-2) [saga]:2012/09/11(火) 06:08:47.25 ID:kw53WJ610
intermission … 演劇などの休憩時間


【ボウリング】
怜「ちゅうわけでやってきたで、ボウリング場! 宥姉ちゃんが水着姿でボウリングする姿見られるのはこのボウリング場だけっ」

宥「ちょっと、何言ってるの!?」

豊音「私ボウリング初めてだけどー、水着持ってきてないよー」

塞「ちょっと怜、豊音が真に受けてるでしょうが」

怜「大阪の小粋なジョークやんなぁ、なあ由子」

由子「冗談は相手を見て言わないとダメなのよー」

怜「裏切られたっ」

照「ちなみに前回ボーリングと表記したが、ボーリングだと掘削という意味になるらしいので、各自補完するように」

怜「何ゆうてんの?」


【ボウリング 2】
怜「投げるでー」

由子「頑張るのよー」

怜「よし、ここで一巡先を読んだる」キュイーン

宥「ボウリングの一巡先って・・・」

怜「見えたで。照は次のフレーム、2回ともガーターやっ」

照「」ショボン

塞「見えててもそれは言っちゃダメ!」


【ボウリング 3】
豊音「投げるよー」

塞「あの身長でまさかの両手ころがし・・・」

宥「でも意外とまっすぐ進んでる」

照「な、あれで9本も倒れただと・・・・」

由子(さっき、怜の言った通りに2回ともガーターだったから照のショックが大きそうなのよー)

怜「お、1ピンだけ残ったな」

豊音「1ピンだけ・・・」

塞「何か思いついた顔ね?」

豊音「ぼっちじゃないよー」

塞「ボウリングで友引!?」

怜「すごいくねくねしながらも、ピンに向かっとる」

豊音「ぼっちじゃないよ、スペアだよー」

塞「汎用性高っ!」


【ボウリング 4】
塞「私も、何か塞ぐものがあれば・・・」

怜「ガーター塞ぐお子様用のレーンはあっちやで」

塞「なんで先にオチ言うかな!」
359 :tell you that I love ...(intermission-2) [saga]:2012/09/11(火) 06:10:30.34 ID:kw53WJ610
【ボウリング 5】
照「1ゲーム目、38点。前よりも低い・・・・」

宥「まだ始めたばかりだからしょうがないよ」

怜「っていうか、照も麻雀みたいにどんどん点数上げていったら点数上がるんとちゃうか?」

照「なるほどっ!」

2ゲーム目第1フレーム
一投目 G
二投目 −

照「・・・・・・・・・」

怜「・・・・・・・・・」

照「うん、東1は様子見だから」

由子「何の様子を見るのよー?」


【ボウリング 6】
照「点数を上げていったら自己ベスト更新した」

F|1|2|3|4|5|6|7|8|9|10|計
点|0|1|2|3|4|5|6|7|8|9|45

照「どうよ!」ドヤ

宥「照ちゃんがんばったね」ヨシヨシ

怜「・・・・最後にはスペアくらいたどり着くと思ったんやけどな」

由子「細かすぎるのよー」

豊音「やったー、150点出たよー」

塞「なんであの両手投げでそんなスコアでるのかな・・・」

照「」ショボン

宥「ああ、照ちゃん落ち込まないでー」
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/11(火) 06:20:13.67 ID:kw53WJ610
ここまでです
うーん、ちょっとスコア表がずれたか・・・・

期待されてた方には申し訳ございませんが、あんまり悩んでエタっちゃうのもあれなのでさくっといかせていただきました


小ネタの方は>>353は形になりそうなので、機会を見てintermissionを入れさせていただこうと思います
>>355の方はまだ思いつかないので、ストックということで

書けるかどうかはわかりませんが、ネタは随時募集してますよー
ではまた
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 10:38:25.74 ID:XfnHrVc00
乙!
てるてるだけ能力が運動オンチについていけなかったかー
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/11(火) 13:18:05.73 ID:BL2JtWrA0
てるてるてるてる
363 :tell you that I love ...(intermissionExtra-1) [sage saga]:2012/09/11(火) 22:57:19.47 ID:kw53WJ610
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)
>>353の小ネタです


それは、クラス対抗戦のオーダー提出日の昼休み


咲「お姉ちゃん、大変!」

照「どうしたの、そんなに慌てて」

咲「この学校に穏乃ちゃんのお姉ちゃんがいたの!」

照「そうなんだ・・・。でも、それの何が大変なの?」

咲「だって、廊下ですれ違っても目も合わさなかったんだよ」

照「む・・」

咲「だから気になって穏乃ちゃんに聞いてみたの。そしたら『私にお姉ちゃんなんていないよ』って」

照「それは良くないな。あんな悲しい事件は、二度とおこしてはいけない(戒め)」

咲「そう、私とお姉ちゃんが喧嘩して、お互いに「お姉ちゃんなんていない」「妹なんていない」って言ってたのと、きっと同じだよ」

照「よし分かった。それで、そのお姉ちゃんはどこにいるんだ?」

咲「あ、どこだろう・・・」

照「どこで会ったの? 特徴は?」

咲「購買に行く途中、穏乃ちゃんと同じポニーテールにしてる人だよ」

照「じゃあ一緒に探そう」


咲「お姉ちゃん、いたよ、あの人」

照「確かに似ているな、キリッとした感じが確かにお姉ちゃんっぽい」

咲「あの、すみません!」

数絵「はい、なんでしょう?」

照「喧嘩の原因はなんだ? 誰かに相談してみれば、案外なんでもないことだったりするんだよ」

数絵「・・・は?」

数絵(宮永照、よね・・・。一体何を言っている? 私を試しているのか?)

咲「お姉ちゃん、いきなりそんなこと言っても伝わらないよ・・・」

照「そうだったな、すまない。私は宮永照。あなたは?」

数絵「南浦数絵です」

咲(お姉ちゃん、名字が違うよ、もしかして他人の空似なんじゃ・・・)ヒソヒソ

照(いや、これは両親が離婚して名字が別々になってしまった可能性がある。だから余計に姉妹を名乗れないんだ・・・)ヒソヒソ

咲(そんなっ、だったらなおさら、なんとかしてあげないと)ヒソヒソ

照(ああ、何人たりとも姉妹の仲を切り裂くことはできない)キリッ

咲(おねえちゃぁん)ウルウル

数絵「あの、用件がないなら教室に戻りますが・・・」

照「ある。妹と喧嘩することだってある、でもいないなんて言ってはいけないんだ。それで喧嘩の原因を聞いている」

数絵「・・・全く話についていけません」

照(これは相当根が深そうだな・・・)

穏乃「あれー、咲に照さんじゃないですか。どうしたんです、こんなところで?」
364 :tell you that I love ...(intermissionExtra-1) [saga]:2012/09/11(火) 22:59:02.77 ID:kw53WJ610
咲「穏乃ちゃんこそ、どうしてここに?」

穏乃「え、お昼のランニング中だよ」

照「いいところに来た。お姉ちゃんと喧嘩している理由を教えてくれないか?」

穏乃「は、喧嘩? っていうかお姉ちゃんって照さんのことですか?」

照「違う、南浦さんのことだ」

穏乃「いや、南浦さん? お姉ちゃんじゃないし、お姉ちゃんいないって言ったでしょ」

咲「穏乃ちゃん、つい意地を張っちゃうのは分かるけど、素直になろうよ」

穏乃「意地とか素直とかじゃなくて、お姉ちゃんなんていないってば」

咲(どうしようお姉ちゃん、二人ともすごく意地っ張りだよ)ヒソヒソ

照(ああ、これは手ごわいな。だが諦めてはいけない。私たちみたいな思いをする人を、これ以上増やしてはいけない)ヒソヒソ

咲(そうだよね、頑張ろうね、お姉ちゃん)ウルウル

照(もちろんだ)キリッ

数絵「ちょっといい?」

穏乃「あ、はい」

数絵(どうも話の流れからして、私たちを姉妹だと思っているのではないかしら?)ヒソヒソ

穏乃(まあ、確かに似てるっていえば似てるけど・・・)ヒソヒソ

数絵(でも、他人だって言っても、理解しれくれそうにないわね)ヒソヒソ

穏乃(だよね・・・)ヒソヒソ

数絵(あなたも私も1年なんだから、普通は姉妹なんてありえないんだけど)ヒソヒソ

穏乃(それはそれで、今度は双子説を出してきそうだけど)ヒソヒソ

数絵(とりあえずこの場をしのぎましょう)ゴニョゴニョ

穏乃(マジで、頑張ってみる・・・)ヒソヒソ

数絵「宮永さん」

照「どうした? 2人で話していたようだが、和解できたのか?」

穏乃「エエ、咲ト照サンノ熱意ニ負ケタヨ」(棒読み)

数絵「それでも、私には妹はいない」

穏乃「私ニモ、オ姉チャンハイナイ」(棒読み)

咲「・・・まだそんなこと言うのっ」

照「そうだ、どうしてそんな悲しいことを言うんだ」

数絵「だって、穏乃は私の姉ですから」

穏乃「ソウソウ、数絵ハ私ノ妹ダヨ」(棒読み)

照&咲「えっ・・・」

数絵「よく間違われるのよね。私が姉だって、困ったものだわ」

穏乃「ハハハ、ホントダネ」(棒読み)

数絵「じゃあ行きましょう、お姉ちゃん」

穏乃「ウン、イコウイコウ」(棒読み)


咲「ま、まあ結果オーライ、かな?」

照「そうだな・・・・」


その後、穏乃と数絵が仲良くなったとかなんとか
365 :tell you that I love ...(intermissionExtra-1) [saga]:2012/09/11(火) 23:09:18.74 ID:kw53WJ610
ギャグもシリアスもこなす照の汎用性の高さは異常だぜっ

というわけで、小ネタでした。ご期待に添えたかどうかはわかりませんが
ネタ提供ありがとうございました!


それにしても、また京太郎スレ増えてて吹いた
もー、なんなんでしょうかこの流れはもー
初めは追いかけるけどー、だったけど、もう無理でー


まあ、ニッチな非京太郎非安価スレとして、ぼちぼちやっていきます
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 23:18:09.99 ID:94+NAZLKo
もう新規は追わないと決めた
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 23:23:31.61 ID:XfnHrVc00
乙!
ちっちゃい元気なお姉ちゃんとしっかり者の妹……すばらです!

>ニッチな非京太郎非安価スレ
末原「気づいてんのか?この異常事態」
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/11(火) 23:34:19.34 ID:5d6EFo4fo
非京太郎非安価スレ応援し照
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/12(水) 17:50:26.82 ID:U7HsA3fZ0

一過性のものだろうけど京太郎安価スレは飽和状態だからな
こういうスレは本当に貴重だな
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/09/12(水) 19:23:11.49 ID:n1MsbnMv0
僕自身、安価スレに憧れを抱いていた時期はあった
どうも、1です

というかそもそも「tell you that I love ...」を書くきっかけも、安価スレやりたいなぁと設定を考えていたところから始まってるので
ここまで増えると、ウェーブに乗らなくて良かったぜと思う今日この頃です

>>367
身長同じくらいと勝手に思い込んでいたんですが、穏乃ってちっこいんでしたよね
書いてて、もう姉妹になっちゃいなよと思いました


あ、そういえば、【巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」】がおかしくねーしSSまとめさんにまとめられていました
スレタイになってないような作品でもまとめていただけるんですね、びっくりです
ありがとうございました!

「tell you that I love ...」も、クラス対抗戦決着までは書ききって、まとめてもらえたらいいなぁ



・目次

>>1 照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」
咲が白糸台、照が清澄。照久メイン?のIF

>>149 巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」
照久IFの続編、晩成と阿知賀のその後

>>249 剱谷日和
剱谷短編、咲日和風味

>>289 『tell you that I love ...』
照宥メインになる予定(遠い目)。全キャラが通う麻雀学校白糸台という設定の話。小ネタもあるで
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 06:35:54.60 ID:EWCyBl1Do
京太郎スレはVIPだと叩かれまくるからこっちで静かにやってるのが多いと思う
数増えすぎだけど
372 :tell you that I love ...(5-5) [saga]:2012/09/15(土) 00:06:21.95 ID:XYNbcDO10
ボウリング場を出て、私は一人で帰路についていた
他の5人は寮に住んでいる、私だけがアパートに住んでいるため、こればかりは仕方ない

「待ってぇ」

少しして、そんな声が聞こえた

――宥

遠くでもはっきりと分かる
振り返ると、汗をかきながら走ってくる宥の姿

「どうしたの?」
「一緒に帰ろうと思って」
「でも、方向が違う・・・」

喜びと戸惑いが交錯する

「うん、なんでだろう。ただ、一緒に帰りたいって思って・・・・。ダメ?」
「ダメじゃない」

思ってもない申し出に、心臓が跳ねる音がする

「それとも、寮に来る? 門限は8時だからまだ時間あるよ?」

今は5時すぎ。家に帰ってご飯をと思っていたところだった

「迷惑でなければいいけど、ご飯はどうするの?」
「大丈夫だよ、作りおきがあるから。一緒に食べる?」

逡巡する
宥の顔が心なしか紅がかっているのは走ってきたからだろう
でも、そんな表情でまた心がざわめく

「分かった、咲に連絡するよ。遅くなるって」

昨日今日でお互いの家に呼び合うなんて、なんだか随分と展開が急だ
そこまで深い仲の友達は初めてかもしれない
菫は部活が終わるとすたすた帰ってしまうし・・・

「うん、じゃあ一緒に帰ろう」


寮に着くが、日曜日のせいか人影はほとんどなかった
平日ならこの時間帯には学校から帰ってくる人で賑わっているのだけれど

「あ、下駄箱は来客用のを使ってね」

あまり寮に来ることもないので、少しきょろきょろしながら階段を上がる
見ると、寮の行事とかもあるようだ
菫は自宅から通っているので、寮が近くにあってもほとんど関わりはなかった

「寮でも役員会とかあるんだね・・・」
「うん、自治会みたいなものだよ。だから寮長とかもいるし」
「そうなんだ」
「ちなみに今の寮長は新免さん、剣道部の部長もやってる人。ルールを破るとすぐ竹刀を持って飛んでくるから、寮は平和だよ」
「そ、そう・・・」

それは平和と言えるのだろうか・・・
正直、寮暮らしでなくて良かった。門限は必ず守ろうと心に誓う

「はい、ついたよ。ちょっと散らかってるけど、ごめんね」

扉には「松実宥」と書かれている。4階の一番角の部屋だった
中に入ると、大小様々なぬいぐるみが飾られていた

「かわいいぬいぐるみがいっぱいだね」
「うん、もこもこしたのがあったかいの」

基準はあったかいなのだろうか
確かにクマとかのもこもこしたぬいぐるみが多かった
それを差し引いても、十分整理されていた

「とりあえずご飯にしようか、用意するから待っててね」
「手伝うよ」
「私から誘ったんだから、照ちゃんは待っててね」

作り置きと言っていたから、冷蔵庫からタッパーに入ってるサラダなどを皿に盛り付けていくだけのようだ
エプロン姿の宥もかわいい・・・
373 :tell you that I love ...(5-5) [saga]:2012/09/15(土) 00:07:51.45 ID:XYNbcDO10
程なくして、机にはいっぱいの料理が並んだ
いやに漬物が多いけれど・・・

「一人で料理していると、日持ちする漬物とかが多くなっちゃうんだ。家からも送ってくれるし」
「あまり家では漬物は食べないから、分けてもらいたいくらい・・・うん、おいしい」
「今度お裾分けしてあげるね」

食べ終わって、食器は私が洗うことにする
遠慮する宥だったけど、そのくらいはさせてもらわないと悪い

時間は6時半になっていた

「ねえ、照ちゃん」

急に視線が泳ぎ始める宥
顔も心なしか赤い

「ん、どうしたの?」
「また、膝枕する?」

今度は私が顔を真っ赤にする番だった
・・・いくらなんでも不意打ちすぎる
いや、部屋に来た時にちょっとは期待しないでもなかったけれども

「う、うん、そうだね」

宥も恥ずかしいのかな
ドキドキしてるのかな

この前はとても自然に膝枕してもらったと思っていたけれど、あの時の私は正直冷静じゃなかったし
だからあの時の宥も、本当はドキドキして、勇気を振り絞って言ってくれたのかもしれない

「じゃ、じゃあ。失礼します」
「そ、そんなにかしこまらなくてもいいよぉ」

なぜか一礼してから、私はゆっくりと宥のふとももに顔をうずめる
やわらかいな・・・

「これは怜が病みつきになるもの分かる」
「じゃあ、私は清水谷さんかな?」

見上げれば、宥がほほえんでくれている
とても落ち着く

それでも・・・
だからこそ見えてくる、自分の心の奥底

明日の朝になれば、こんな気持ちにはもうなれない

「ねえ、宥」
「なに、照ちゃん」
「明日から、勝てるかな?」
「照ちゃんでも、不安になったりするんだ」

私はみんなを引っ張って、みんなと勝ちたい
ただ純粋にそれだけなのに、なぜそこに邪魔が入るのだろう
374 :tell you that I love ...(5-5) [saga]:2012/09/15(土) 00:09:22.38 ID:XYNbcDO10
「卓の前では、こんな気持ちにはならない。でも、卓の外で起こることには、私は無力・・・」

由子の件はひとまず解決したとは言え、それでも彼女を巻き込んでしまったことには変わりない
対抗戦が始まってからだって、何かしらの妨害がないとも限らない

「大丈夫だよ。何があったって、みんなこのクラスで勝ちたいって思ってるから。卓の外だって、照ちゃんは素敵なんだよ」
「素敵だなんて・・・」

面と向かって言われたこともない言葉に、どんどん鼓動は高鳴っていく

「素敵だよ。こうやって膝枕してると、私だって、ドキドキするんだよ?」
「・・・宥?」
「昨日から照ちゃんの強いところも、弱いところも、いろんな顔が見れて、とっても嬉しいの」

ああ、やっぱり私は無力だ
そばに寄り添ってくれる宥の気持ち一つ、私には見えやしない

でも、そんな盲目な私が素敵だと言ってくれるのなら・・・

「宥・・・」

私はゆっくりと起き上がる
宥がそんな私を見つめる。膝枕をやめてしまって戸惑っているようだ

「照ちゃん、私変なこと言った?」
「いや、変なのは、私・・・」

言い終わらないうちに、私は宥を抱きしめていた

「えっ・・・」
「ごめんね。この方が、宥を感じられると思って。もう何言ってるかわからないけど、なんだか抱きしめたくなって」
「・・・・うん」

着ぶくれていても、宥の背中に簡単に手が回る
ゆっくりと、背中に宥の手が回る
もうこのまま、宥の中に溶け込めたらいいのに・・・・

「明日になったら、私はまたチャンピオンの宮永照になっちゃう」
「そうだね・・・」
「だから、こんな気持ちは今だけだから。明日から大丈夫かなとか不安になっちゃうのも、こんな風に宥を抱きしめたいって思っちゃうのも・・・今日だけだから」
「・・・抱きしめるのは、今日だけじゃなくてもいいよ」

ポツリと宥がつぶやく
同時に、きゅっと抱きしめる力が強くなった

今のうちに、今の勢いで言わなきゃ・・・
この、ぬくもりと呼ぶには熱いくらいの抱擁で私の殻が溶けているうちに・・・


「宥、好き・・・」


「私も・・・」


それ以上の言葉は必要なく
このぬくもりと静寂が、時の流れを緩めてくれるのを感じていた
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/15(土) 00:14:45.60 ID:XYNbcDO10
百合妄想士の熱いバトルに影響されてこんな話になったわけではない(遠い目)
どうも1です

とはいえ、エロに持ち込む気はさらさらない
っていうか僕にはこれが限界点です、百合妄想士への道は険しく遠い・・・


クラス対抗戦は適度にキンクリしつつ、それぞれに見せ場が作れればなぁと思っております
困ったときの小ネタも随時募集しておりますのでよろしくお願いします

ではおやすみなさい
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/15(土) 00:17:40.10 ID:tatIRd860
乙!
ようやくイチャイチャの段階に踏みこんだのか……股かn胸が熱くなるな……
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 10:08:42.07 ID:PdygkM4ro
乙ー
この流れなら大好きなお姉ちゃんが他の人に好意を向けているのを見て咲&玄ちゃんがぐぬぬしているのが見たいです!
378 :tell you that I love ...(6) [saga]:2012/09/16(日) 09:35:46.46 ID:LK6c9zYA0
-side 煌-

金曜日
生徒会はアンケートの集計をようやく終えた

「終わったわねー」
「ええ、これで組み合わせも決定しました、すばらですっ」

会長が大きく背中を反って伸びをする
私も首をコキコキと鳴らした

「それにしても悪いわね、煌。2年生なのに実行委員長を任せることになっちゃって」
「いえいえ、お任せあれですよ」

3年生の生徒会員は全員、クラス対抗戦の代表メンバーに選ばれている
従って、代表になっていないのは生徒会の中では私だけ
代表メンバーが対抗戦の実行委員長を同時にこなすのは難しい、だから私に委員長の大任が回ってきたのだ

「最後のクラス対抗戦なのですから、思いっきり楽しんでください。それがすばらというものです」

私が在籍するのは2年10組
2年トップ3の3人に加えて、冬の個人戦以来すっかり戦友となった松実玄さんなどもいて、クラス編成がなされた段階で対抗戦に出られるとは夢にも思ってはいない
それに対抗戦だけがすべてではないのだし、これほど強い人とクラスメイトになれたというだけでも、すばらです

「それに、学校中が盛り上がるこの対抗戦の実行委員長という大役を任されるなんて、こんなすばらなことはありません」
「そう言ってもらえると、助かるわ」
「ええ、実行委員長、任されました!」

クラス対抗戦は4日間に渡って行われる
初日の予選こそ1人1半荘のみなので早く終わるが(ただし敗者復活戦に回るとダブルヘッダー)、その後の本選3日間は1人2半荘で行われる

1日目:予選(60→16)
2日目:本選(16→8)
3日目:準決勝(8→4)
4日目:決勝

麻雀が授業に組み込まれているが、その麻雀の授業の枠を使って大会が行われるため、この大会が終わるとしばらく麻雀の授業がなくなる
それほどの大会で校外からも観戦者が来るし、それを目当ての出店の許可なども生徒会で行っている

「今回の投票は、なかなか面白いことになったな」

出来上がった対戦表を見ながら、会計の辻垣内さんがつぶやく

「ああ、2年が1位になったことはほとんどないんじゃないか?」

副会長の加治木さんがうなづく

投票の結果、私のいる2年10組が1位となった
僅差で、3年2組の部長連合、宮永照さんのいる3年1組と続いている

3年生は今までクラス対抗戦2連覇を果たしている宮永弘世ペアが崩れたのを筆頭に、戦力が分散されている傾向
逆に2年生はトップ3集結で戦力には随分偏りがある

「みなさんはどこに投票したんですか?」

庶務の狩宿さんの質問に、私はまわりを見渡した
にやりと笑う、会長

「私は3年13組よ」
「13組ですか。あまり騒がれてはいないですけど、確かに実力者が揃っていますね」
「ね、そこまで悪い待ちではないと思ってるわよ」

書記の霜崎さんが頷く
はて、どんなメンバーだったか。私はオーダーを見返した

1組や2組に話題こそ持っていかれているが、確かにランク上位の人が揃っている
これはいかにチャンピオンといえど一筋縄ではいかなそうです

それでも私は、3年1組に投票しましたけども

どんな困難にでも打ち勝って見せるのが、チャンピオンというもの
すばらなところ、見せてくださいよ宮永さん
379 :tell you that I love ...(6) [saga]:2012/09/16(日) 09:38:26.59 ID:LK6c9zYA0
-side 照-

「ツモ、12600オール」

卓に着けば、自然と心は落ち着く
ただ目の前の勝負に集中するだけ

実際の大会と同じように、対局者と生徒会から選ばれた審判役の生徒が2人いるだけの対局室
クラスのみんなは教室でモニター越しに応援をしてくれていることだろう

さて、次は7本場
打点を上げて、次は役満。これでツモなら上家の1年生が飛ぶ

「ツモ、四暗刻。16700オール」

すごく久々の役満
大会ルールで10万点持ちじゃないと、2万5千点持ちでは打点を上げる途中で誰かが飛んで終わってしまう

「ありがとうございました」

すっと立ち上がり、席をあとにする
背中越しに打ちひしがれた3人の暗い声が聞こえる

「ノーぉぉぉぉぉぉである」
「これって・・・・」

悪いね・・・
でも私は負けるわけにはいかないんだ



教室に戻ると、大歓声が上がった

「照ちゃん、すごかったよ」
「まあ、予選だしね・・・」

宥が差し出してくれたペットボトルを受け取る

「ごめんね、豊音。今日は出番なしで」
「全然大丈夫だよー。なんてったって私は、最終兵器だもんねー」

最終兵器という言葉がいたく気に入ったらしい
出番が少なくなるだろうことを説明したときは、みんなとたくさん打ちたいよーと言っていたけれど、塞がうまく豊音をのせてくれた

でもその塞は、ひどく落ち込んでいた

「照、ごめんね。私が役満を振っちゃって・・・」
「いや、あれは仕方ない」
「やなぁ、まさかこの白糸台にあんな素人みたいな打ち方する人がいるとは思わんかったわ。しかも2年やで・・・」

怜も同調してくれる

2年19組次鋒、妹尾香織
みっつずつ、みっつずつと言いながら理牌し、打ち筋はめちゃくちゃ
しかしそのめちゃくちゃな打ち筋が迷彩となり、塞は親の四暗刻単騎待ちに振り込んでしまった

先鋒で宥が稼いでいてくれていたから良かったものの、次鋒では3位転落
中堅戦で怜が原点まで復帰した

「うん、ありがと。でも落ち込む・・・」
「大丈夫だよ塞ー、最終兵器の私がいるんだしねっ」
「豊音に極力回さないようにしないといけないんだけどね、はぁ」

うーん、これはちょっとまずいかもしれない
ただでさえ、自分の能力が失われて自信を無くしているところに、自分自身の力さえ信じられなくなってしまうとなると、支えにするものが無くなってしまう

「ただいまー。あ、照が戻ってきてるのよー」

そこに由子が戻ってきた
380 :tell you that I love ...(6) [saga]:2012/09/16(日) 09:40:49.92 ID:LK6c9zYA0
由子には他のクラスの状況を偵察してもらっている

牌譜自体は、大会終了後に速報が出るので知らないクラスでも参考にすることはできる
しかし牌譜だけでは分からない、リアルタイムで感じることもある
実力のある由子に偵察を任せられるというのは、不幸中の幸いといったところかもしれない

「照がいて豊音もいるってことは、飛ばしで終わったってこと?」
「ああ、無事に1位通過だ」
「それは良かったのよー」

由子は手にしたメモ帳を広げる

「他のところで番狂わせはなかったのよー。特に2年10組と3年2組は流石なのよー。中堅で他のクラスを飛ばして終了してる」
「玄ちゃんのクラス、勝ったんだね」
「竜華にまで回らんかったんやな。まあ予選やしそんなもんか」

優勝予想で1位2位というだけのことはある
ほかも概ね、予想上位のクラスが勝ち抜けたようだ

「咲のクラスは?」
「咲ちゃんは照の言う通りだったのよー。先鋒戦は1半荘だったからきっちり105000点で次鋒に回してる。1年5組は大将まで回ったけど、見た限りあの大星さんって人は本気出してる感じじゃなかったのよー。まあ大将に回った段階で5万点差ついてたから、豊音と同じで実力隠しだと思うのよー」

まあ淡が5万点差持っていれば流す程度で問題ないのだろう

「さて、じゃあ早く終わったし、お昼ご飯は屋台に何か買いに行こうか」
「せやな、たこ焼きの屋台あったで」

由子と怜が連れだって教室を出ていく
それを追いかける豊音

「私はわたあめがいいよー」
「豊音、昼ごはんって言ってるでしょうに・・・」
「じゃありんごあめー」
「祭りかっ」

やれやれと、塞が立ち上がる

「落ち込んでる暇なんてなさそうね」

笑顔を浮かべて、教室を出ていく豊音を追いかけていく

それでもその場しのぎだろうと、私はそう感じる
また卓に着けば、自分の不調、振り込んだ時の記憶が蘇ってしまうだろう・・・

それでも、これは塞自身が乗り越えないといけないこと

「塞ちゃん、元気になってくれるといいけど・・・」
「そうだな」

何かしてあげられることは、あるのだろうか

「じゃあ行こう、照ちゃん。屋台ってあったかいご飯が多いから楽しみ」
「ああ、行こう」
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/16(日) 09:48:40.10 ID:LK6c9zYA0
とりあえずここまで
2日目はキンクリして、3日目からスタート予定です

伏兵3年13組の逆襲が始まる、はず・・・
っていうか麻雀描写はどれくらい求められてるものなんだろうとか悩み中


>>377
ふんふむ、それはクラス対抗戦のあとにじっくりこってりやりたくなるようなネタですね
考えてみますねー
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/16(日) 10:02:55.21 ID:kJTVZG5w0

3年13組……一体何者なんだ……
麻雀描写は今みたいなダイジェストでいいんじゃないかな
牌譜は既にあるものを写すだけでもすごく時間がかかっちゃうしねえ
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 14:59:44.36 ID:U5/4xwSBo
乙乙

塞頑張れといいたくなる展開すなー

麻雀描写はこの程度でいいと思うっす
あんまりやると物語り進まなくなるし…
頑張ってくださーい
384 :tell you that I love ...(7-1) [saga]:2012/09/16(日) 22:13:23.85 ID:LK6c9zYA0
-side 照-

大会2日目も順当に勝ち上がった
展開も、1日目と似たようなものだった

宥が約2万点プラス、塞が約2万点マイナス、怜が約1万点プラスで2位でバトンが回ってきた
そこから私が連荘するけど飛ばすには至らず、8万点リードの1位で豊音にバトンを渡すことになった

予選からは2位以上で通過できる
豊音は平打ちに徹しても十分通過できる状況
いろいろ技を使いたそうでうずうずしているようだったけれど、なんとか実力は隠しきれただろう
まだ、塞は復調の兆しが見えない。そこだけが気がかりだった


そして大会3日目
いよいよベスト8が出揃った

組み合わせはこんな感じ

準決勝A卓
3−1
3−13
2−10
1−11

準決勝B卓
3−2
3−9
3−18
1−5


試合前、由子を交えてのミーティングを行う

「一番の強敵は2年10組なのよー。でも3年13組も強いのよー、恭子は私よりも強いのよー」
「シロとエイちゃんだってかなり強いしね・・・」
「セーラもおるしなぁ・・・竜華は調子に波があるんやけど、セーラは安定して強いからなぁ」

私はオーダー表を見る

3年13組
先鋒 小瀬川白望
次鋒 エイスリン・ウィッシュアート
中堅 江口セーラ
副将 薄墨初美
大将 末原恭子

今名前が挙がったのが4人
先鋒次鋒の2人は美術部で会ったことがある
江口さんは、ソフト部では4番サードをしているらしい
末原さんは、サッカー部で司令塔として活躍しているみたい

残るは、1人

「この、薄墨さんっていう人はどうなの?」
「・・・・・」

なぜか沈黙が広がる
沈黙に耐えかねたのか、怜が口を開いた

「・・・痴女やな。本来やったら友引は、薄墨初美にこそふさわしい」
「裸単騎なのよー」
「ちじょってなにー?」
「豊音は知らなくていいのよ」

なんだか話が脱線してしまっている
助けを求めるように宥に視線を移す
宥は、怯えるように震えていた

「薄墨初美は、ヒトじゃない・・・」

カタカタと声まで震えている
宥が、そこまで恐れる相手なの・・・

「あんなに露出して、私だったら寒くて死んじゃう・・・」
「いや、その感想は宥姉ちゃんだけやで」

結局、とにかく露出がすごいということしか分からなかった
グラビアアイドルとかやってる人なのかな・・・現役高校生麻雀アイドルとしてテレビにも出てるちゃちゃのんみたいに
まあ、対戦すればわかるからいいか
385 :tell you that I love ...(7-1) [saga]:2012/09/16(日) 22:14:56.95 ID:LK6c9zYA0
「あと、1年11組は正直そこまでチェックしてなかったから、牌譜の確認と他の人からの聞き込み情報だけなのよー」

再びオーダー表に目を落とす

1年11組
先鋒 片岡優希
次鋒 南浦数絵
中堅 滝見春
副将 東横桃子
大将 二条泉

「先鋒の片岡は、とにかく東場に強いのよー。逆に次鋒の南浦は南場にやたら強くなるのよー」
「お、泉のクラスなんか。泉は去年の全中2位やし結構強いで」
「中堅の滝見は技巧派なのよー。さっと安手で流したり差し込んだり、火力はないけど高い手を潰しに来るから要注意なのよー」

そこで解説が止まる
また副将に問題ありなの?

「それでこの東横ってのが、話を聞いてもよく分からないのよー」
「どういうこと?」

尋ねると、由子も釈然としていないようだった

「対戦した後輩によると『消える』らしいのよー」
「消える?」
「まあ、実際に照が対局するんだし、その時に見てくれればいいと思うのよー」

副将戦までに時間はあるし、少し牌譜を見ておくことにしよう

『準決勝先鋒戦まで残り15分です。選手はそれぞれ対局室まで移動してください』

「お、きたで。宥姉ちゃん、いったれ!」
「宥、がんばれー」
「うん、行ってくるね」

立ち上がる宥と視線が合う

「あんまり、無茶しないようにね」
「大丈夫だよ、照ちゃん」

柔らかく微笑み、宥は教室を出て行った

その笑顔が曇らないよう、今はただ祈るだけ
386 :tell you that I love ...(7-1) [saga]:2012/09/16(日) 22:17:45.31 ID:LK6c9zYA0
-side 宥-

精一杯と、無茶の境界はどこなのだろう
はっきりとした線なんて、引かれてはいないことだけは確かだけど

だから、塞ぐことのできた頃の塞も、何巡も先を見ようとした怜も、あいまいな線をいつの間にか超えてしまっていたのだろう
私も、そうなってしまうことがあるのだろうか・・・

場決めも終わり、対局者4人が席に着いた

「よろしくだじぇ!」
「よろしくお願いします」
「よろしく・・・」
「ほなよろしゅうな」

東 片岡優希(1−11)
南 松実宥(3−1)
西 小瀬川白望(3−13)
北 荒川憩(2−10)


立ち上がりは由子に聞いていた通り、優希が先制する

「ツモ、4000オール!」
「ツモ、裏が乗って6100オール」

いずれも早い順目でのリーチ一発ツモ
流石にこれでは対処のしようがない

「・・・・ダルいなぁ、もう」

白望がつぶやく。視線は、優希と憩へと行ったり来たりしていた
1年生は知らないのかもしれない、荒川憩の恐ろしさを。これ以上、優希に上がられるわけにはいかなかった


-東1局2本場

「ポン」

特急券の中を鳴く
とにかく1000点でもいいからここは流したい

でも、こんな鳴きくらいでは優希の勢いは止まらない

「ナイ鳴きだじぇ。リーチ」

またしてもリーチ
対抗戦の牌譜だけを見ても、東場では最低でも満貫はあるという火力の持ち主
ツモでも困るけれど、差し込むには高すぎるし親が続くだけだから事態の解決にならない

「んー、ほな追っかけてみようかな」
「通らず、ロンだじぇ! 12000の2本場」
「優希ちゃんやったっけ、強いんやなぁ」
「ふふん、2年最強でもこの私には手も足も出ないようだじぇ!」

憩が振り込んだ・・・

始まるっ・・・

「東1からとは・・・ダル」

白望が髪をくしゃくしゃとなでる

「ふふ、優希ちゃん?」

不敵に微笑む、憩

「お、なんだじぇ?」
「仏の顔も三度までって言葉、知っとる?」
「それくらい知ってるじぇ!」
「ほうか、それなら手間が省けるなぁ」
387 :tell you that I love ...(7-1) [saga]:2012/09/16(日) 22:28:58.22 ID:LK6c9zYA0
-東1局3本場

「ダブルリーチや」
「む、この私の速度を上回るとはやるじぇ。こんなの事故事故!」
「ロン、ダブリー・一発・ホンイツ・三暗刻・トイトイ・白・発・北。数え役満やなぁ、36900」
「なっ・・・なんですとー」

荒川憩
ツモ・ロンに限らず、同じ相手から累計3回点数を取られると、その後火力が一気に上昇する
その高火力状態は1半荘が終わるまで続くため、東1でこの状態になってしまうとかなり厄介になってしまう

それでも、なんとか頑張らないと・・・


-2半荘目
-南4局

「ロン、タンピン三色ドラ2。12000」
「張っとったかぁ、残念・・・」

トップから直撃できた
ようやく肩の力を抜ける・・・

「おつかれぇ、だじぇ・・・」
「ありがとうございました」
「おつかれ・・・」
「ありがとうございました、おつかれー」

片岡優希(1−11)   78500
松実宥(3−1)     94200
小瀬川白望(3−13)  90200
荒川憩(2−10)   137100



原点を下回ってしまった
かろうじて2位にはなれたけど・・・

「明日はもっと頑張らないといけないな・・・」

教室に戻る途中で、対局室に向かう塞と会えた

「さすがだね、宥は。早い段階から覚醒してる荒川相手にほぼ原点なら大したもんだよ」
「そんなことないよ、だいぶ離されちゃったし」
「私の方がみんなの足を引っ張ってばかりだからさ」
「そんなことないよ」
「いいよ、わかってる」

元気のない笑顔を浮かべ、塞は強がってみせる

「今回こそ、点数稼いでくるよ」
「うん、頑張ってね」

対局室に向かう塞を見送る

それでも、次の相手は玄ちゃん・・・
ドラが来ない以上、そんなに点数は稼げないだろう

「無茶、しないでね・・・」

もう見えなくなった背中に声をかける

無茶の境界がせめてぼんやりとでも、塞の瞳に映ることをただ願うしかなかった
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/16(日) 22:36:22.00 ID:LK6c9zYA0
>>382
>>383
アドバイスありがとうございました

スレタイの照久IFも、やえ由華もそれなりに描写していたつもりだったので、それくらいは書かないといけないのかなぁと思ってました
あっさりすぎるのも微妙かもしれないので、そのへんの塩梅は書きながら考えるしかなさそうです


3−13は単に「まだオーダー組んでないキャラで組んだけど、これ普通に強くね?」という程度のことですので、過度に期待させてしまったら申し訳ないです


引き続き次鋒戦を書いていきます
眠気が勝ちそうなので、今日中に投稿できるかどうかは微妙ですが・・・
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/16(日) 22:49:22.30 ID:kJTVZG5w0
おお、今日二度目の更新乙
荒川さんリスク高い能力だけど毟られた倍以上取り返すとか充分魔物だなあ
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/17(月) 01:59:11.79 ID:M0hLIPz00

宥姉ははっちゃんに加えて私服の和と一と一緒に卓を囲んだら一体どうなってしまうのか

あと憩ちゃんの数え役満の部分、何か色々おかしくないか……?
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/17(月) 05:58:06.01 ID:Tp/nKkeU0
おはようございます
案の定5行くらい書いてすぐ寝ました

>>390
憩の役満、おかしかったですかね?

憩配牌:@CFFF白白白発発発北北
ツモ:@

ここからC切りのダブリー

憩手牌:@@FFF白白白発発発北北

優希が 打:北 にて一発で放銃

ダブリー(2)・一発・ホンイツ(3)・三暗刻(2)・トイトイ(2)・白・発・北
13飜で数え役満です、間違ってはないと思います

配牌でこんなのおかしいよ、的な意味でしたら
憩ちゃん魔物らしいので、このくらい平然とやってのける、はず・・・
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 09:40:03.73 ID:KqvMylvp0
数え役満はあってるけど点数を間違えてる。
子の役満で3本場だから32900のはず…
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/17(月) 10:10:22.00 ID:Tp/nKkeU0
>>392
点数だったかっ
失礼しました・・・32900点に脳内変換お願いします

ついでなので、次鋒戦投下します
394 :tell you that I love ...(7-2) [saga]:2012/09/17(月) 10:12:31.28 ID:Tp/nKkeU0
-side 塞-

分かってる・・・
所詮私は数合わせ
初めは由子を誘おうとしたけど断られたから、私が代わりに出ているだけ

・・・ってそんな考えだからマイナスばっかりくらってるのよ

気合入れろ、私!

対局室に入ると、すでにエイちゃんが座っていた

「サエ」
「まさかエイちゃんが敵に回るなんてね。ま、お互い頑張ろう」
「ウン、ガンバル」

美術部で麻雀する時も、塞げたころは勝てたけどそうでないとなかなかエイちゃんには勝てない
しんどいことになりそう・・・

「お待たせしましたー」
「よろしくお願いします」

すると、玄ちゃんと、1年の南浦さんが入ってきた
さって、始めますか


東 臼沢塞(3−1)     94200
南 エイスリン(3−13)  90200
西 松実玄(2−10)   137100
北 南浦数絵(1−11)   78500


南場に強い南浦さんがラス親か、ついてない

「ツモ、2000、4000デス」

その上、初っ端から親っかぶりで3位転落・・・
かといって、エイちゃんの支配から逃れようと無茶鳴きしてみても

「ツモドラ5、3000、6000です」

だぁ、今度はこっちか、ドラゴンロード
これ以上2年に上がられると後ろには神代と天江が控えてるし・・・

東場はエイちゃんに任せておくか


-南場

「さて、優希が取られた点棒、返していただきましょうか」

南入、来るか・・・
まったく、エイちゃんだけでもしんどいっていうのに

「ロン、12000」
「ひゃうっ」
「ツモ、2000、4000」

2連続で上がってくる南浦さん
エイちゃんのあっさり支配を上回ってくる

でもエイちゃんも負けてない

「ロン、3900」
「あうっ」

それにしても玄ちゃん、守りは弱いのね・・・
っていうか私も焼き鳥じゃない

結局私は1度も上がれず、南浦さんが2連荘したあと、エイちゃんが上がって前半戦が終了した
395 :tell you that I love ...(7-2) [saga]:2012/09/17(月) 10:13:56.96 ID:Tp/nKkeU0
-廊下

近くの自販機まで行ってコーヒーを買う
まったく、こんなんじゃ私のせいで負けかねない・・・

いくら後ろに怜や照、豊音が控えてるって言っても限度がある

「サエ」

と、そこにエイちゃんがやってきた

「エイちゃんも、何か飲む?」

フルフルと首を振ると、スケッチブックに絵を書き始めた
うーん、解読班のシロがいなくて解読できるものか

書かれた絵には、文字で「south」と書かれて、髪留めがほどける髪の長い女の子が書かれていた
すごい勢いで牌をツモっている

「えと、南浦さんのこと?」
「yes」

さらにそこに、お団子頭の女の子が付け足される。私のことか
その私が、南浦さんよりも大きく書かれている

「ええっと、私より南浦さんの方が大きい?」
「サエ、コノヒト、フサグ」
「いやいやいや、言ったでしょ。私はもう塞げないって」

また首を振るエイちゃん

「イメージ」
「え?」
「ワタシガ、タクジョウデ、イメージスル」

確かにエイちゃんは自分のイメージを卓上に描く
無茶鳴きされたり、それを上回る支配にはそのイメージを壊されてしまうけれど、簡単には破られない

私が塞ぐイメージを、卓上で描くっていうの・・・

「そんなこと、できるの?」
「ワカラナイ」

そしてスケッチブックの南浦さんを、こつんと叩く

「コノヒト、ツヨイ。サエ、タスケテ」

ああもう、この子は状況分かってるのかなぁ
一応敵同士なんだよ、私たち・・・

っていうか、こんなことをエイちゃんが思いつくはずがない
まったく・・・私はどんだけ周りに心配かければ気が済むんだ

「おいこら、シロ、出てこい」
「バレてたか・・・ダル」

廊下の陰から、ゆっくりとシロが出てくる

「シロの差金でしょう? 一応敵同士なんだけど」
「うーん、正直クラス対抗戦とか興味ないし」
「ぶっちゃけすぎっ」
「それに、塞が落ち込んでる方が、ダルイ」
「はは、まったく。シロにまで介護されちゃあおしまいだわ」

さて、そろそろ後半戦か

「心配しなくても、実力で塞いで見せるわよ。いくよ、エイちゃん」
「ウン」

空元気なのは分かってる
でも、元気ですらないより、少しはましでしょ
396 :tell you that I love ...(7-2) [saga]:2012/09/17(月) 10:16:36.55 ID:Tp/nKkeU0
-2半荘目
-南4局1本場

「ツモ、6000、3000の1本場」

今日一番の上がりで、なんとか終了
塞ぐ力が戻ってきたとは思えないけれど、少しだけ、南浦さんの手が遅れていたような気がする
まあ、それはエイちゃんの支配が優ったのだろう、多分

それにしても最下位転落か・・・
みんなに申し訳ないな


臼沢塞(3−1)     83100(-11100)
エイスリン(3−13) 102500(+12300)
松実玄(2−10)   120100(-17000)
南浦数絵(1−11)   94300(+15800)
397 :tell you that I love ...(7-2) [saga]:2012/09/17(月) 10:22:29.45 ID:Tp/nKkeU0
とりあえずここまで
次はなぜか千里山vs永水という不思議

麻雀描写は2レスくらいでちょうどよさそうかな
また夜に書ければ、中堅戦をあげたいと思います
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/09/17(月) 17:13:58.66 ID:i40g9/jAO

乙です!

咲ss書くにあたって、麻雀描写書けるって強みっすよね。
羨ましいです!

399 :tell you that I love ...(7-3) [saga]:2012/09/17(月) 18:23:38.12 ID:Tp/nKkeU0
-side 怜-

最後は塞の上がりで次鋒戦終了

「心なしか、後半の南場の方があの1年のテンパイ速度が遅い感じやったなぁ」
「塞げてきてるのかなー」
「うーん、塞自身は自覚なさそうだけど・・・」

教室でモニター越しの応援というのはなんとももどかしいものがある

「次、怜ちゃんだね」
「おー、逆転してくんでー」


対局室に到着すると、私が最後だったようだ

「重役出勤やな、怜」
「真打は後からやってくるらしいで、セーラ」
「なら丁重に扱ったるで」
「セーラの丁重とか、怖いわ」

場決めまで終わっているようで、私は空いている席に着いた
神代と1年の滝見は同じ和装。確か二人とも書道部やったか

「ほな、よろしゅう」
「よろしくお願いしますっ」
「よろしく・・・」
「お手柔らかになー」

東 園城寺怜(3−1)   83100
南 神代小蒔(2−10) 120100
西 江口セーラ(3−13)102500
北 滝見春(1−11)   94300


-東3局

今のところ神代はおとなしい
打ち筋にムラがあり、弱い時はミエミエのホンイツとかにも振り込んだりするらしい

ここまではセーラが高い手を仕上げてくるのを、鳴いてずらしてなんとかしのいできた

「リーチ」

セーラの親リーが入る
はあ、また高そうやな・・・

「チー」

滝見がその牌を鳴く。これで3鳴き。役はドラがなければ中だけか?
そして私のツモは、西。とりあえずはセーラの安牌

ここで一巡先を覗く

どうやら 打:西 で滝見に振り込む、中ドラ1の2000点
セーラにツモられるよりはましか。セーラ親やし・・・

ツモってきた西をそのまま切った

「ロン、2000点」
「はい」
「流されてもうたかぁ、怜相手やと高い手はなかなか上がれんなー」


-東4局

滝見の狙いはこの中堅戦自体を即流しすることかもしれん・・・
自分が親なのに、私が即効で白を鳴くやいなや、鳴きごろの牌をどんどん切ってくる

「ロン、白ドラ1。2000」

さっきの点棒を返してもらった格好になる
神代小蒔のことは滝見の方がよく知っとるんやろうからこそ、覚醒する前に局を消化しとこうという狙いなんやろう

まだ原点には復帰しとらんけど、神代とセーラが同時に暴れたらさすがの私でも手が負えん・・・
ならその戦略、乗ったるで
400 :tell you that I love ...(7-3) [saga]:2012/09/17(月) 18:25:23.59 ID:Tp/nKkeU0
-後半戦
-東3局2本場

「ツモ、4000オール」

セーラの連荘が続く・・・
まだ神代はおとなしいけど、滝見がさっきからチラチラ見とるし、ぼちぼちやばいんとちゃうかな

「2人でちまちま場を流そうとしとるみたいやけど、親で上がれるときに上がらんと痛い目見るで」
「何が正解かなんて、終わってからやないと分からんもんやで」

とにかくセーラの親を流さなな・・・


-東3局3本場

「リーチ」

またセーラの親リー。調子に乗りすぎやでほんまに
その瞬間だった

「・・・・寝た」

危うく聞き逃しかねないくらいの小さな声で、滝見がつぶやく

ゾクゾクゾク

全身を冷たい風が駆け抜けるかのように体が震える

「おー、ついに姫様がきよったかー。ここからが本番やな」

楽しそうに笑うセーラ
その余裕、羨ましいわ・・・

「うおい、まったくツモが来んくなってんで」

6巡目にリーチしてから、その後6巡ツモ切り

そして次巡
一巡先を読んだ私には、もう結末が見えた

セーラ、やっぱり正解は即流しやで・・・

「はぁ、この辺やろ、神代?」
「ロン、24900」
「やられたわぁ」

それでも面白そうに点棒を出すセーラ
まあ、楽しそうなら何よりやけど
401 :tell you that I love ...(7-3) [saga]:2012/09/17(月) 18:27:20.96 ID:Tp/nKkeU0
-後半戦
-オーラス

その後神代がかなり暴れ、区間では一人浮き状態になった
しかしここに来て勝負手が舞い降りる
わずか4巡でピンズでホンイツ手がきれいに染まった。どれを切るかで待ちが変わるが、どうしたもんか・・・

でも、これは上がっときたい
無理はするなって照からも、みんなからも言われとるけど、少し無茶させてもらうで

2巡先、ダブルや


―――――

1巡先はピンズは全く出てこんかった。
2巡先のツモも、字牌やけど上がりには関係ない

2巡先の神代の捨て牌は・・・
そこで神代の手が止まる

ん、上がるんか?

「ここから先は、ご遠慮願えますか?」

・・・はっ?

「あまり未来視を続けると、お体に障ります」

神代の視線は明らかに私を捉えている
未来視の中に入り込んで来とるっていうんか?

「それに、いくら麻雀限定とは言え、あまり神様の領域に踏み込んではいけません」
「私は、勝たなあかんのや・・・」
「・・・・あまり無理しないでください」

みんな、無理するなって言うんやな・・・
神代が切ろうとしていた牌から手を離し、別の牌を切る

「今回はこれで手打ちにします」

切ったのは当たり牌・・・・

―――――


「怜さん、大丈夫ですかっ!」

あれ、煌の声?
ああそうか、意識がちょっと飛んどったみたいや。煌は今日の審判やったわ・・・

「ああ、悪いな」
「怜、大丈夫なんか?」

セーラも心配そうに私を見る
ただ、神代だけが意味ありげな視線を私に向けていた

ああ、手打ちにしといたる
今日のところはな

2巡先、不意に目が覚めた神代が慌てて切った牌で、私はホンイツ手を上がった



園城寺怜(3−1)   85600(+ 2500)
神代小蒔(2−10) 137200(+17100)
江口セーラ(3−13)100800(- 4400)
滝見春(1−11)   79100(-15200)
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 18:39:18.17 ID:VPFnxxkko
ひめさんおつよい
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/17(月) 18:39:53.44 ID:Tp/nKkeU0
ここまでです
短いと思ってたら意外と長くなってしまいましたね

>>398
乙です
好きすぎるの人ですよね、ID?

麻雀描写?という感じですが、まあてきとーですよ、てきとー
うむ、今まで手牌を細かく書いてきましたけど、考えるのに時間かかるので、細かく牌を書かない方が話は進めやすいですね


副将戦の前に、昼休み的イベントを入れようか検討中・・・
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/09/17(月) 18:47:24.06 ID:i40g9/jAO
>>403

あ、そうです。好き過ぎるの人っす。

てきとーでも、それすら書けない者としたら羨ましいですよー。
自分のssに麻雀描写欲しいっすもん!

とにかく続き期待してます!

乙!

405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 18:55:40.81 ID:njvB+t/D0
乙乙
他人の予想や夢、回想に干渉するのは麻雀漫画ではよくあること
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/09/17(月) 19:35:20.50 ID:czw+O0+B0
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 20:34:30.46 ID:TgazqXL7o
おつでしたー
408 :tell you that I love ...(7-4) [saga]:2012/09/19(水) 00:27:41.31 ID:9BAIo3Z70
-side セーラ-

「いやあ、まいったまいった。姫さん強いわ」

3年13組の教室に戻ると、チームの4人が出迎えてくれた

「お疲れや。できればプラスで帰ってきて欲しかったけどな」
「恭子は手厳しいなぁ。でも自分を曲げずに打ったんや、悪いけど後悔はしてへんで」
「大丈夫ですよー、午後からは私がバッチリ稼いできますからー」
「ハツミ、ガンバレ」
「もう帰っていいかな、ダル・・・」

相変わらずシロはやる気のない奴やな
それでなんだかんだ慕われてるんわ、役得ってやつなんかな
っていうかもうエイちゃんに飯食わせてもろうとるし・・・雛鳥かお前はっ

「まあ、化物ぞろいの2年10組が先行するのは想定内やし、怜にもたいして稼がせなかったから、今のところは及第点ってとこやな」
「今んところは、末原監督の采配通りってとこか?」
「今のところは、な・・・」

思案にふける恭子
こういうやつやけど、あんまり考えすぎても血圧上がるだけやで

「まあ、あとは初美の場決めの運に託すわ。宮永照の上家になれれば、まだ勝機はある」
「2半荘の内、1回くらいは上家になれればええけどな・・・」
「2半荘に1回以上上家になれる確率は5/9や。悪くない賭けやろ?」

宮永照の恐ろしいところは、打点を上げながら連荘するところ。そしてそれを止められへんところ・・・
やけど、初美が宮永照の上家なら、親で連荘する限り初美は北家になり続ける
上がり続ける宮永は、東や北をいつまでも抑えるわけにもいかへんやろう

仮に500オール、1100オール、2200オール、4300オールと4回上がっても、合計は24300点。収支差考えても32400点
その間に役満1回上がればチャラにできる

「読んどったんか、末原監督。宮永照が副将に来るってことを」
「ある程度3年1組のチーム事情は知っとったからな・・・少なくとも先鋒と次鋒は無いと思っとった。まあでも、3年1組だけ警戒すればええわけやないしな」
「難しい話はそれくらいにして、ご飯食べに行きましょー」

少し重たくなりかけた空気を払拭するように、初美が大げさに手を振る

「せやな。あとは2人に任せて、俺はゆっくり観戦させてもらうで」
「お任せですよー」
「凡人の私が天江にどこまで通じるか、楽しみにしといてや」

あんまり卑屈になりすぎるもんやないで、恭子
それだけが心配なんや・・・
409 :tell you that I love ...(7-4) [saga]:2012/09/19(水) 00:30:09.95 ID:9BAIo3Z70
-side 憩-

「小蒔ちゃん、おつかれー」
「最後不用意に振り込んでしまって、ごめんなさい」

教室に戻ってくるなり、小蒔ちゃんが頭を下げた

「プラスで帰ってきたんやから、十分やよ」
「そうだぞ小蒔。それに衣もそろそろ打たないと、徒然に耐えかねる」
「つれづれに?」
「要は暇やっちゅうことや」

衣ちゃんの言葉使いは慣れんとよく分からんからなぁ・・・
玄ちゃんが戸惑うところに、絹ちゃんがフォローに入った
でもその絹ちゃんが、ため息をつく

「初めて副将戦に回ってくるんやな・・・」

1日目2日目と、いずれも中堅戦で他のクラスを飛ばして勝ち進んでいる
衣ちゃんはおろか、絹ちゃんもまだ試合に出ていない状態だった

「しかもその初めての相手が、よりによって宮永照とか。足引っ張るくらいで済めばええんやけど・・・」

宮永照はヒトやない・・・
去年対戦して、それは肌で感じとる
やからこそ志願して先鋒をかってでたのに、まさか副将で出てくるとは思わんかった・・・

「ええか、絹ちゃん。宮永照を止めなあかんと思っとるのは、絹ちゃんだけやないってことを忘れんことやよ。他のクラス、薄墨さんも、1年の東横さんっていう子も、対策を練っとるはずや」

席順によっては、薄墨さんを支援に回ってもええくらいやしな

「どんどん差し込んでええ、最下位になってもええ。とにかく衣ちゃんにつなげるんや。な、衣ちゃん?」
「衣に任せろ、絹恵。1000点もあれば、衣が百倍にも千倍にも著増させてやる」
「1000点の千倍、100万点ですねっ、衣ちゃんすごいです」
「100万点も行く前に誰か飛んじゃうけどね・・・」

天然ボケを炸裂させる小蒔ちゃんにツッコミ入れる玄ちゃん
でもまだまだツッコミのキレが甘いなぁ

「とにかくそういうことや。13万点もあるんや、派手に使ってきぃ」
「みんな・・・」

ぐっと拳を握り締める絹ちゃん
そうや、まだ涙はいらんで

「がんばるさかいなっ」
「その意気やで。よし、じゃあお昼ご飯に行くで」

おそらく、無事では済まんやろう
傷だらけでもええ、とにかく帰ってくるんやで、絹ちゃん・・・
410 :tell you that I love ...(7-4) [saga]:2012/09/19(水) 00:32:20.24 ID:9BAIo3Z70
-side 照-

「怜、大丈夫?」

一瞬気を失った怜を心配して、試合が終わると同時にみんなで怜を迎えに行った

「大丈夫やって、みんな心配性やな」

そう言うが、とても大丈夫には見えない・・・

「怜、大丈夫なんか!?」

そこに駆け込んで来たのは、清水谷さんだった

「竜華・・・自分のクラスの方はええんか?」
「ずっと怜の試合見とったで、気を失ったんやろ?」
「それはありがとう言うべきなんか迷うなぁ・・・」

清水谷さんが自分の教室にいたら怜の試合は見れない。私たちはA卓、2組はB卓だから
ということは、清水谷さんは一般開放されている観戦室で試合を見ていたことになる

菫も言ってたっけ・・・
2組は個々は強いかもしれないが、横のつながりが薄い。ただの寄せ集めだって

それでいいのかなぁ・・・

「とにかく、どっかで休もう、な?」
「まあ確かに、膝枕分が著しく不足しとるわ・・・」
「やろ、やろ? いつものところ行って膝枕しよや」
「・・・自分がしたいだけちゃうんか?」
「そ、そんなことあらへんよ」

露骨に清水谷さんが動揺している
というか怜が清水谷さんを手玉にとっている感じ・・・

それにしても、膝枕分か・・・

ちらっと宥を見てしまう
宥は私の視線に気づいて、微笑む

はあ、対抗戦が終わるまでは甘えないでいようって思ってたんだけどな

「じゃあ怜は清水谷さんに任せて、私たちはご飯にしようか」

弱くなったと思うべきか、それとも力の抜き方を知ったと思うべきなのか・・・
膝枕してもらわないと、試合に集中できないかもしれない


「宥、ちょっといい?」

ご飯を食べ終えて、教室に戻る途中

「どうしたの、照ちゃん?」
「その、なんというか・・・」

なんでこうも恥ずかしくなるんだろう
でもさすがに、怜や清水谷さんみたいに人前で堂々と膝枕なんて恥ずかしいし・・・

「ボーリング部の部室、多分誰もいないと思うよ?」

察してくれているのだろう、宥の提案に私は小さくうなづいた
411 :tell you that I love ...(7-4) [saga]:2012/09/19(水) 00:34:15.44 ID:9BAIo3Z70
部室につくと、宥が先に中を確認する。中には誰もいないようで

「いないね、入ろう」

宥に手招きされるまま中に入る
人数が少ない部だからだろう、部室は教室の半分位の大きさだった

小さな本棚にはボーリングの本
あとはスチールの机と椅子、そして部屋の奥にはなぜかソファーがあった

「赤土先生が仮眠用にって入れたの。ほとんど自分で使ってるみたいだけど」

教員宿舎もあるが、学生優先のためか学生寮の方が学校に近い
昼ごはんを寮に戻って食べる人もいるくらいだが、初めからそのつもりでないと昼休み中には戻ってこれない
学校で昼ごはんを食べてしまうと、行って戻ってくるだけで昼休みが終わってしまうくらいの距離はある

先生がちょっと休憩したいと教員宿舎に戻るには、少々遠いということだろう
授業のない時間帯にサボっている疑惑も浮上するが・・・今は感謝して使わせてもらおう

「はい、どうぞ」

宥がソファーに座り、膝を叩く
吸い寄せられるようにふとととに頭を乗せる

お昼ご飯を食べた後の満腹感と相まって、思わず目を閉じて眠りそうになってしまう
もう無理、この誘惑には逆らえない・・・

「ごめん、寝そう・・・」
「私も寝ちゃうかも・・・アラームセットするね」

薄目越しにかろうじて宥が携帯を操作するのが見えた
でもそれもすぐに真っ暗になって、私の意識は暖かく溶けていく



ピピピピ ピピピピ

覚醒する
電子音が響く

「宥?」

ばっと体を起こすと、まだ宥は瞳を閉じていた
とりあえず机に置かれた宥の携帯を取り、アラームを止める

まだ、寝てるのかな?
宥の寝顔か・・・かわいいな・・・

なぜか唇に目がいってしまう

柔らかそう・・・

ゆっくりと腕を上げ、指先でその紅い唇に触れようとする
何してんだろう私・・・
押し止めようとする気持ちと、触りたいという誘惑が私を硬直させる

ピピピピ ピピピピ

また電子音
ああもうスヌーズとか、宥の気遣いが今は痛い・・・

「宥、起きて」

上げた手をごまかすように、慌てて肩を掴んで揺らす

「あ、照ちゃん・・・・時間大丈夫?」
「うん、あと9分。今から行けば間に合うよ」
「そっか、目覚ましつけておいてよかったね」
「ああ、そうだな」

良かったのか良くなかったのか、私にはよく分からなかった
まあでも、膝枕分は補えたしあとは麻雀に集中しないとな

「行こう、私は直接対局室に行くよ」
「うん、じゃあ教室で応援してるね」

宥が応援してくれる限り、私は勝ち続ける
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/19(水) 00:44:04.50 ID:9BAIo3Z70
今日はここまでです
残りの1−11にも触れつつ、次回副将戦です

それにしても、他のクラスが悲壮感を漂わせて照に立ち向かおうとしているというのに、当の照は膝枕分が足りないとかひどい話だとか思いながら書かずにはいられなかった・・・


>>404
まっつーさんのSSに麻雀描写はいらないと思いますっ
イチャイチャ分をどんどん増量してくれた方がおいしいです
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 01:00:23.11 ID:tdn8htAwo
乙。

末原先輩の「凡人の私が〜」はフラグにしか見えない件について。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 01:02:52.38 ID:HKO/oRxX0
乙ー
宥姉のエロさが回を増すごとに上昇している……!
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 02:41:22.77 ID:FIAqvKVGo
おつおつー
展開楽しみだー
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/19(水) 09:46:10.21 ID:szzxcdVFo

どこが勝ち上がるのやら
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/09/19(水) 12:55:46.94 ID:zwhAuRtAO

乙です!

膝枕いいっすわ〜。
ニヤニヤしてしまいましたww
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/19(水) 23:06:34.46 ID:9BAIo3Z70
副将戦を執筆中ですが、ミスに気づいたので訂正です

>>401

園城寺怜(3−1)   85600(+ 2500)
神代小蒔(2−10) 137200(+17100)
江口セーラ(3−13) 98100(- 4400)
滝見春(1−11)   79100(-15200)

セーラの点数が間違っていました
点数間違い多いなぁ・・・・気を付けないと
419 :tell you that I love ...(7-5) [saga]:2012/09/20(木) 00:23:36.29 ID:HZBD5G460
-side 桃子-

時はさかのぼって、春。入学当初・・・

ようやく、先輩の通う学校に入学することができた
退屈な中学2年からの2年間
それでも先輩に追いつこうと必死に勉強し、麻雀も強くなった

どうして2年後から生まれたというだけで、同じ学校に1年しかいられなくなってしまうのだろう
加治木先輩と出会ったのは中学1年の時
先輩が卒業するまでの1年間はとても楽しかった

私は存在しない
存在できるのは、先輩の前でだけ

先輩と同じ学校に入学できて、ようやく私は存在できる

クラス対抗戦になんて興味はない
そんなものに出ている暇があったら、先輩の応援でもしていた方がはるかに有意義だ

私は教室の、自分の席に座ってじっとしていた
こうしていれば、誰に声をかけられることもない

ふと見ると、隣には私と同じく何も物言わず座る子がいた
なぜか黒糖をポリポリと食べている

「食べる?」
「え?」

まさか話しかけられると思っていなかった私は思わず立ち上がる

「見えるんっすか?」
「初めは、幽霊かと思った」

会話しながらも、それでもポリポリと黒糖をつまみ続ける
・・・自分のことは言えないけど、変な人っす

「それで、食べる?」
「え、ああ・・・。いただくっす」

すっかり毒気を抜かれた私は、黒糖をもらうと口に放り込んだ

「あ、うまいっすね」
「それが自慢」

今まで仏頂面だったのが、ニコリと笑う
なんだかよくわからない人っす

「あー、いたじぇ! 鶴賀のステテコモモ」
「ステルスでしょう・・・」

やけにハイテンションな声と、やけに冷淡な声
振り返ると、そこには長野の県大会で見たことのある2人

片岡優希と南浦数絵
中学の個人戦で対戦経験もあり、随分苦戦したので覚えていた

優希がこちらにスタスタと歩いてくる
この黒糖の子と会話していたので見つかってしまったのだろう
正直、優希はテンションが高すぎて苦手っすけど・・・

「とうとう見つけたじぇ、ステレオモモ。今日が年貢の納め時だじぇ」
「いや、だからステルスって言ってるでしょう」

冷静にツッコミを入れる南浦さん
南浦さんは南浦さんで、クールすぎてとっつきにくいんっすけどね
やっぱり先輩みたいにクールだけど情熱も秘めてる感じじゃないとダメっす
420 :tell you that I love ...(7-5) [saga]:2012/09/20(木) 00:26:09.87 ID:HZBD5G460
また無表情に戻った黒糖さんが、首をかしげた

「あなたの名前、捨て犬モモなの?」
「なんすか、その可哀想な感じっ」
「捨て駒モモ?」
「すばらっ」
「捨て鉢モモ?」
「ああ確かにもうやけくそっすよ!」

ぜいぜいと息をつく

やっぱりコミュニケーションなんて疲れるだけ・・・
でも、なんでこんなに心地いいんだろう

「私は東横桃子っす。あなたは?」
「滝見春、よろしく」
「なんや、面白そうな漫才してるやん」

そこに声をかけてきたのは、やけにボーイッシュな人
もう、これ以上の面倒は勘弁っすよ・・・

「お前は確か、のどっちに跳直くらった全中2位」
「あれはリーチのまくり合いやし」

優希がビシっと指をさす
ああ思い出した、確か全中の決勝戦、おっぱいさんと一緒の卓にいた大阪の人

「二条泉や。高校では1番とったるから、よぉ覚えとき」
「かませの匂いがプンプンするセリフだじぇ!」
「うっさいわっ」

コミュニケーションなんて、ほんとに疲れる
でも・・・・

少なくともこの1年は、退屈しなくて済みそうっすね・・・

「よろしくね、スペースモモ」
「宇宙キターとか言ってる場合じゃないっすよ」

ああ、でもやっぱり疲れる・・・
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 00:27:42.32 ID:BcO/Jpt9o
スパイスモモ……一味違うのね!
422 :tell you that I love ...(7-5) [saga]:2012/09/20(木) 00:28:32.78 ID:HZBD5G460
-クラス対抗戦、準決勝副将戦

1年11組は今のところ最下位
しかも副将戦に、高校生麻雀界の頂点、宮永照が出てくる

先輩にいいところ見せるには、うってつけの舞台っす
ただ先輩のクラスも準決勝に出てるから、私の対局は見れないだろうけど・・・

はじめの場決めが終わる

東 宮永照(チャンプ
南 薄墨初美(鬼門さん
西 愛宕絹恵(メガネさん
北 東横桃子

チャンプが立ち親なのは助かるっすね
東1は様子見をするみたいっすから

「ツモ、2000、4000や」

その東1、まずはメガネさんがツモあがった
瞬間、チャンプからただならぬ気配が発せられた

これが、見透かすってやつっすか・・・

「ツモ、300、500」
「ロン、2000」
「ロン、3900」

チャンプの3連続和了
それぞれメガネさんと鬼門さんが1回ずつ振り込んだ

悪いっすけど、私は振り込まないっすよ

中1のときに先輩にステルスを麻雀に活かすことを教わってから、私はいかに早く消えられるかを考えてきたっす

序盤は、ポンチーカンロンツモと言った発声は全くしないこと
そして振り込みは避ける。振り込めば、それだけ注目を集めてしまう。私は存在しないのだから、消える前から振り込みなどしてはいけない。防御は徹底的に磨いたっす、全中でもあのおっぱいさんに振り込んだ以外は放銃0っすからね

今回に限って言えば、チャンプの圧倒的な存在感が、すぐに他の2人から私の存在を消してくれる

いずみんには悪いけど、大将戦には回さないっす
いくら意気込んでも、やっぱり天江衣にはかなわないと思うっす

チャンプに他の二人の点棒を徹底的に毟り取ってもらう
誰かがトびそうになったときに、漁夫の利的に2位をかっさらう
それが私の作戦・・・・

「ロン、4800」

チャンプの親番に、またメガネさんが振り込む
チャンプには、私がいつか消えるかもしれないということはわかっているだろう
最悪消えられないかもしれないっすけど、それでもこの席順は都合がいい。仮に私が消えていても、チャンプ同順でチョンボすることはありえないから

だからチャンプは、遠慮なく出上がりできる

「ツモ、2700オール」

ただツモられると厳しいっすけど
それでも、他の二人はいつもよりも厳しい条件で戦わないといけない。そんな中で振り込まないでいるのは、難しいはずっすよ

「ロン、10200」
「あかん・・・」

メガネさんのつぶやきは暗い
いいっすよ、トップからどんどん点を取ってほしいっす

「ツモ、4300オール」

あー、またツモられたっすか・・・
できれば出上がりして欲しいっすけどね
ただ打点が上がれば上がるほど、安目見逃しの高目ツモって傾向は見られるっすから、ある程度のところで見切りはつけないといけないかもしれないっすけど

「ロン、19200」
「ロン、25500」
「くっ・・・」

もうメガネさんがこの世の終わりみたいな暗い顔してるっすね
無茶して上がりに向かおうとしてくれるから助かるっす
そろそろ鬼門さんも削ってほしいとこっすけど、最悪は自分で上がりに行くしかないかもしれないっすね・・・
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 00:28:35.41 ID:NbmktrJ8o
ミンキーモモでいいや(適当)
424 :tell you that I love ...(7-5) [saga]:2012/09/20(木) 00:30:49.04 ID:HZBD5G460
-side 憩-

・・・アカン、アドバイスが完全に裏目に出とる
必死に上がろうとしとるのは、現状絹ちゃんだけ。だから振り込むのも絹ちゃんばかりになってしまう・・・

「絹恵ちゃん、もう完全に自分を見失ってるよ」
「絹恵ちゃん・・・」

去年の冬、同じ立場になった玄ちゃんがつぶやく。小蒔ちゃんも心配そうや

それでも、去年の玄ちゃんの方が状況はマシだった

玄ちゃんが手も足も出なくても、煌ちゃんは玄ちゃんの牌も鳴くことはできた
さらに同卓には未来予知のできる園城寺さんもいて、ようやく照に一矢報いることができた

しかし今は三麻状態や。あの桃子ちゃんの捨牌で絹ちゃんは1回上がれとったし、役牌を鳴く機会も何回か見過ごしとる
せめて薄墨さんが北家にいれば、東と北を鳴かせて照と戦わせるということもできたかもしれんけど、南家にいては何もできない・・・凌ぐのが精一杯なんやろう

宮永照は3人協力して倒すものやと、思い込んどった・・・

「まさか宮永照を使って、他家をへこませようなんて考える人がいるとは思わんかったわ・・・。肝っ玉の座った1年やわ・・・」
「諦めるのはまだ早い」

力強い、衣ちゃんの声

「絹恵も、愛宕の血を引く者。必ず衣に繋げてくれる」

その瞳は絹ちゃんを遠くからでも支えてあげようと、必死に画面を見つめていた

「せやな。うちらは精一杯応援したらんとな!」

絹ちゃん、頼んだで



【得点経過】
1半荘目 南1局5本場終了時点

宮永照(3−1)  169300(+83700)
薄墨初美(3−13) 84700(-13400)
愛宕絹恵(2−10) 76200(-61000)
東横桃子(1−11) 69800(- 9300)
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/20(木) 00:31:00.90 ID:jv5iikNeo
ワンダーモモだな(確信)
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/09/20(木) 00:31:53.43 ID:G3dcp3PQo
モンキーパンチ?(難聴)
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/20(木) 00:37:21.16 ID:HZBD5G460
ステテコモモを思いついたら、まだ副将戦が終わりきってないけど投下したくて仕方なかった1です

っていうかみなさん反応早すぎっすよー
いいぞ、もっとお願いします


おかしいなぁ、膝枕分補給して無双する照をかっこよく書くつもりだったのになぜかサイドモモのまま突っ走ってしまった・・・・
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/20(木) 01:34:17.92 ID:HZBD5G460
寝るかな
なんか照宥に続いては、モモ春という新しい可能性について追求したくなったのは、きっと眠たいからだろう・・・うむ

気配は消えても、霊的なものは消えてないので、春はモモを見ることができるということにしてます

それにしても、照は打点上昇して役満上がった場合、その後どうするんだろ・・・・カンストなんかな・・・
寝よう・・・
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 01:37:20.36 ID:NbmktrJ8o
起きたら>>1が寝てた

おつー
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/09/20(木) 07:11:20.15 ID:+fHToHRAO
>>1
おっつー
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/20(木) 17:44:36.30 ID:dBniwHbWo
まだかなー
432 :tell you that I love ...(7-5) [saga]:2012/09/20(木) 22:42:56.70 ID:HZBD5G460
-side 絹恵-

牌をツモる腕が重い

なんやのこれ・・・
なんやのこれ・・・・・

怖い・・・
もう牌を切りたくない・・・

今の倍満放銃で3位に転落した
次は三倍満。36000に6本場で37800・・・
そんなの振ったら最下位になってまうし、次に役満を振ったらトんでしまう

対面に並ぶ牌を見る

東白四H

もう、安牌はない・・・
なんでこんな時に限って字牌がほとんどないねん

三倍満やから清一は絡んどるやろ。だったら初めに切った萬子は無いはずや
ドラは竹やし、萬子は赤ドラも1つしかない

薄い理にしがみついて、二萬を切る

「ロン、37800」
「え・・・」
「タンピン清一二盃口」

照手牌:二三三四四五五六六七七八八

こんなん、どないしろっていうの・・・

点棒を出す
どんどん減っていく数字

207100 宮永照
84700 薄墨初美
38400 愛宕絹恵

これで4位転落やな
役満振って終わってまうのかな

って、あれ、3位誰や?
でも宮永と薄墨しかおらん・・・
いやいやいや、三麻しとるんやないんやで。最下位って4位やよな? 宮永が約21万点、薄墨が約8万点、私が約4万点・・・・7万点足りんやん

どないなっとるんや・・・
何かが起きとる、でもそれが分からん

サイは振られ、配牌・・・・
やっぱり普通の麻雀や、三麻やない。でも牌はちゃんと減っとる

4巡後、役もドラも無いし待ちもカンチャンやけど、とりあえずテンパイする
おもろいやん、覚悟決めたろか

「審判さん、ちょっとええ?」

忘れてしまった者は、何を忘れたのかを覚えてはいない
だが思い出せば、そこに何があるのか見えなくても、在ることは、分かる
433 :tell you that I love ...(7-5) [saga]:2012/09/20(木) 22:45:40.12 ID:HZBD5G460
-side 桃子-

まずいっすね
このままこのメガネさんが振り込んだりしたら、3着で負けてしまうっす

でも降りに徹してばかりの私に事態を打開するような手なんか入ってこない
ただ見てるしかないんすか・・・・

「審判さん、ちょっとええ?」

メガネさんが牌をツモってきたところで手を止める
・・・何をするつもりっすか?

「オープンリーチって、ありやったっけ?」

オープンリーチ?
何を言ってるっすか、この人は・・・・あんまり振込みすぎて気でも狂ったんすか!

「オープンリーチという役はありません。ただ、普通にリーチをかけて、手を開くことを禁止する規約もありません」
「なるほど、手は開けてええんやな」
「無意味に手を開くのはすばらではありませんが」
「意味ならあるで」

そう言って、リーチ棒を取り出すメガネさん
まさかほんとにオープンする気っすか!!

「よくわからへんけど、聞いとけよ。消える1年」

リーチ棒を小指と薬指で抱え、手牌を横にした

「通らへんかったら話にならんからな。まずは通らばリーチ」

切ったのは六萬
チャンプも鬼門さんも反応はしない

「差込みせんと、私はトぶで。消える1年、あんた3着やろ、私と心中するか?」

待ちはカン三萬
役もない、ただのリーチ
あー、もう、最悪っすよ
ここで差込みしないと、ほんとに終わってしまう

「チー」

せめて一発は消す
これでステルスは一時解除、でも念は押しておく

「ご希望の三萬っすよ!」
「ロンや。悪いな、裏が3つ乗って満貫や、8000の7本場は10100」

あー、マジ最悪っす!!!
もう、これしばらくステルス完成は諦めて上がりに行くしかないっすね・・・
チャンプにどれくらいで消えられるか試したかったっすけど、それどころじゃなくなったっす

2位の鬼門さん狙いで、上がりにいくっすよ


1半荘目終了

宮永照(3−1)  208100
薄墨初美(3−13) 75700
愛宕絹恵(2−10) 42100
東横桃子(1−11) 74100
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/20(木) 22:49:01.52 ID:BcO/Jpt9o
これはかっこいい
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga]:2012/09/20(木) 22:53:39.26 ID:HZBD5G460
副将戦が思いのほか長くなってしまった・・・・
ようやく1半荘目終了とか、全部ステロイドモモが悪いっ

おかしいなぁ、ウラキモン炸裂ぅのはっちゃん大活躍のハズだったのにどうしてこうなったんだろう・・・

ちょこっとレス
>>413
フ、フラグなんて、折るためにあるからっ

>>414
どちらかというと、打点が上がっているのは照の煩悩度と思われ
ここのスレにエロとか、ないから(遠い目
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 01:36:39.65 ID:PWKU/FDP0
乙ー
耳元で空いてる部屋に行かない?って囁くところは宥姉だから出せるエロさだと思うんだ……

って言おうとしたらそんなシーンなかった。これが幻術か……
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/21(金) 06:48:16.88 ID:sXzGkKgd0
>>436
なにそれ怖い・・・
そうか、それもエロなのか・・・エロ道は奥が深いっす


今日は更新ありません
というか最近の更新頻度が早いだけで、ほんとは遅筆なんだからねっ
ステモのせいで、考えてた展開がひっくり返っちゃったわけじゃないからっ


咲本編のバレ出てますけど、今日発売なんで本編読んだからまた展開考え直しかもしれませんし・・・
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 10:59:01.22 ID:rSAHl6gDo
ストロングモモ?
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/09/21(金) 12:48:47.66 ID:HpOSLNc00
1です。昼休みー
本編読みました。感想は控えますが、まあ無理してSSの展開変えなくてもいいかと思った

更新は無いと言いつつ、速攻SS発動!


【嘘予告】
泉「私もオープンリーチすればトばへんのか!」

オープンリーチ!

豊音「追いかけるけどー」

泉「・・・はっ?」

豊音「ロン、終了だねー」オツカレッシター


【嘘予告2】
初美「2半荘目、やっと宮永照が親のときに北家になれたのですよー」

照 打:西

絹恵 打:西

桃子 打:西

初美「あれー・・・・」orz


まあ、てきとーです
440 :tell you that I love ...(7-6) [sage]:2012/09/22(土) 09:40:16.52 ID:jkTB8KBn0
-side 由子-

念のための付き添いで、私は保健室に来ていた

「戒能先生、常連さんを連れてきたのよー」
「保健室で常連とか、あまり歓迎しないですけどね」
「大げさやてー、教室戻るー。照の応援するー、怜ちゃんすこぶる元気ー」

駄々をこねる怜の手を無理やり引っ張る

「ダメなのよー。怜、昼休み中、竜華の膝枕から一歩も動かなかったのよー。体力がない証拠なのよー」
「それは由子が竜華の膝枕の恐ろしさを知らんからや。由子も一度体験してみたら分かるで。でも竜華の膝枕は私のもんや、使わせへんで」
「思いっきり矛盾してるのよー」

膝枕をさせてくれるのかダメなのかよく分からないのよー
まあ、確かに元気そうに見えるけど、でも対局中に少し気を失っていたのは事実なのよー

「明日の方がもっと大変なのよー。だから今日はしっかり休むのよー」
「まあ、そう言われるとそうかもしれんけどー。やったらここのベッドを教室に持っていけばええんや」
「ノーウェイノーウェイ。黙って聞いていれば・・・・」

戒能先生が呆れ顔でつぶやくと、小さいテレビを運んできた

「ここにも頼んでモニターは持ってきてもらっているから、ここで観戦しなさい」
「おー、センキューセンキューやで」
「真似とかしなくていいから」

肩をすくめて、先生は書類の整理を始めた

「お、照の連荘が始まっとるなー」

当然に3−1がいるA卓を流す
画面隅には点棒状況も表示されている。まあ照の心配とか、釈迦に説法とかそういうレベルだけれど

「ところで竜華のクラスはどないやの?」
「3−2の安定っぷりは異常なのよー」

昼休み前、中堅戦を終えたところでの成績をメモした紙を怜に見せる

3−2  160500
3−9   44300
3−18  84600
1−5  110600

「9組のメガネーズは厳しそうやな」
「先鋒がほとんど平らだったから、後が続かない感じなのよー」

辻垣内智葉で稼げなかったのが痛い。福路が他の二人をうまくコントロールしてた
その段階で9組はジ・エンド

「中堅でいつもどおり洋榎無双で、ほぼ3−2は勝ち抜けなのよー」
「次の相手は洋榎か・・・」

B卓では、中堅の怜の相手はほぼ洋榎が確定
18組が上がってこれば、中堅は生徒会長の竹井久
1年5組が上がってこれば、全中チャンプの原村和
どっちになっても厳しいのよー

そしてA卓からは、セーラか神代か滝見。滝見なら協力体制が取れるかもしれないけど、他は無理だろう

「洋榎とセーラと会長とかやったら、私は[ピーーー]るな。ベッドから出たくなくなるわ。生きるんて、辛いな」

というか、滝見って1年以外はほぼ[ピーーー]ると思うのよー
視線をモニターに移す

我がサッカー部の正キーパーと言えど、照の連荘は止められそうにないのよー

「あー、これが消えるっていうことなんかな?」
「うーん、絹ちゃん、あの1年の7ピンで上がれたのよー」

高目安目の無い手だし、そもそも照の連荘中に見逃しとか普通にありえないのよー
でもそれがありえるとしたら、噂通り、あの1年は「消えて」いるのだろう

「ああ、今度は特急券の白を鳴かなかったのよー」
「後で絹ちゃんにどんな感じやったか聞いといてや。興味あるわ」
「照に聞いたらいいのよー?」
「いや、照にはまだ消えてないんちゃう? ちゃんと鳴けとるし」

相手によって消えやすさというのがあるのかもしれない
絹ちゃんには完璧に消えているのだろう
441 :tell you that I love ...(7-6) [saga]:2012/09/22(土) 09:42:56.00 ID:jkTB8KBn0
「とうとう照が役満まで来たのよー」
「これ振ったら、絹ちゃん飛ぶな・・・・」

4巡目にしてもう国士をH待ちで張った
ほんと、味方で良かったのよー・・・・

「絹ちゃんも張ったのよー」
「役ないけど、どないするんやろ?」

そしてまさかのオープンリーチ

「ちょ、絹ちゃんどういうことなのよー」
「あ、でもあの1年差込みにきたで」
「差し込ませて裏3とか、絹ちゃんすごいのよー」
「人間、捨て身になると違うな・・・」

しみじみとつぶやく怜

「怜は捨て身になっちゃダメなのよー」

一応釘を刺しておく
明日の中堅戦が今日以上に厳しくなるのはわかっているけれど

「分かっとるよ・・・自分が一番な・・・・」

前半戦が終わり、照は一人で20万点以上
これで勝ち抜けは決まりだろう

「相手が神代やったら、そもそも無茶もさせてもらえんかもしれんしな・・・」
「どういうこと?」
「独り言や、気にせんといて」

神代の名前が聞こえたけれど、何かあったのだろうか・・・

明日、何もなければいいけど・・・・
悪い予感がする・・・





-side 桃子-

そして再び始まる、宮永照による蹂躙
それでも、2位を確保した私は、ただそれを安全圏から見守るだけ

もう私は、宮永照からも、見えない――
442 :tell you that I love ...(7-6) [saga]:2012/09/22(土) 09:45:54.52 ID:jkTB8KBn0
-準決勝副将戦、後半戦開局

東 東横桃子
南 宮永照
西 愛宕絹恵
北 薄墨初美


立ち親で、鬼門さんに北家に座られるのはちょっと気味が悪いっすね・・・
まあでも関係ないっす
もう鬼門さんには私は見えないっすから

何の気もなしに北を切る

「ポンですよー」
「なっ・・・」

鬼門さんと、私の間に横たわる3枚の北
な、なんで見えるっすか・・・

その2巡後、鬼門さんが東を暗槓
上がられたら2着が遠のくっすよ・・・・

5巡後

「ツモですよー」

開かれた手は、小四喜
待ちはDGの両面・・・

って、Gピンは私が捨ててるんすけど
3着の私から上がれば、ほぼ2着を確定できるのに見逃す理由はないっす

・・・・あー、あれっすか、自分の能力に関係ある牌だけは見えるっていうやつっすか
まだまだ自分のステルスも甘いってことっすかね

でもそうと分かれば、次の親の時には切らなければいいだけっす
まだまだ上がりにいくっすよ
443 :tell you that I love ...(7-6) [saga]:2012/09/22(土) 09:48:29.16 ID:jkTB8KBn0
-南2局7本場

宮永照  311400
愛宕絹恵  22400
薄墨初美  16200
東横桃子  50000


違和感は、もう確信に変わっていた
私はもう、チャンプからも見えていない

始めに感じた違和感は、東場のチャンプの連荘中

私が切った6萬に一瞬手が止まった
その直後9萬でツモ上がり
安目見逃しはよくある
けれど6萬はタンヤオが付く高目。それを見逃す理由なんてない

東場のチャンプの親番が流れ、再び南場のチャンプの親
その最中でも、私の捨て牌を見逃す

1本場の時には、7ソウで手が一瞬止まり、その後9ソウツモ
3本場の時には、4ソウを切ったのにもう手は止まらず、その後同じ4ソウツモ
5本場の時には、ADGの3面待ちに対して、AGと2度も当たり牌を切って反応なし


私は、もうこの卓に存在しない――


そしてもう7本場
他の二人はなす術なく、どんどん振り込んでいく
私もツモで削られていくけど、振り込まない私は点数を減らさない

次のチャンプの手は役満っす・・・・
ツモなら16700オール。鬼門さんがトんで終了っす

チャンプ相手に、時間はかかるけど消えられることは証明できたっす
決勝戦では消えた段階で攻めに入ってチャンプに勝ってやるっす

でも今は、ただ静かに、鉄槌が落とされるのを見守るだけ

他の二人を見る
振れば終わり、かと言ってツモ上がりされても終わり
メガネさんと鬼門さんがお互いを見て、そして小さく首を振る

さっきはオープンリーチなんて奇襲をされたっすけど、そもそも手が入らなければそんな真似はできない
これで終戦っす・・・

一応チャンプの捨て牌を見る

東北G4二

うーん、とりあえず国士とかではなさそうっすけど、四暗刻単騎とかだったら読みようがないっすしね・・・
まあ、もう消えているから関係ないっすけど

何気なく、中を切る




「ロン」




「大三元」





目の前が、白く染まる

今、なんて言った?
444 :tell you that I love ...(7-6) [saga]:2012/09/22(土) 09:51:55.35 ID:jkTB8KBn0
世界が色彩を取り戻す


照手牌:白白白発発発中中@@六七八


絶望で、今度は真っ暗になる

「なんで、消えているはずじゃ・・・・」

「48000の7本場、50100」

「あっ・・・・」

私の持ち点は、50000点ちょうど


トんだ??


「なんでっすか。消えてるはずだったのに。全部演技だったんすか、私をだますためにっ」

何度も、見逃す必要の無い当たり牌を見逃していた。これは事実
それでもロンできたっていうなら、わざと見逃していたとしか考えられない

薄墨初美のように東や北がキー牌になる人ならともかく、宮永照と中には何の関係も無い
打点が上がって役満に到達しただけで、宮永照は役満を能力であがるわけではないのだから


対局が終わったからか、チャンプから張り詰めていたものが消えさる

「いや、消えていたよ。特に南場に入ってからはほとんど見えなかった」
「じゃあなんで!」

消えていた?
そう、消えていたはずだった

チャンプはほほを掻きながら、少し恥ずかしそうに答えた

「なぜか、牌の赤い部分だけは見えたんだ」

・・・赤い部分?

「なんすか、それ・・・」

意味が分からない
牌の赤い部分って、萬って字は赤いし、7ソウにも赤い部分はあるけど・・・・

じゃあ、途中で手が止まったのは、赤い部分が見えたから?

「萬という字だけは見えたけど、数字が分からないから特定できないし、ピンズもソウズも赤い部分がぼんやり見えるけどこれも特定できなかった。切った瞬間は見えるけど、すぐに分からなくなってしまうから。だから、はっきり分かったのは、赤ドラと中だけだった」

赤ドラはもちろん赤い
そして中も、赤い
だからっすか・・・・でもなんで赤い牌?
445 :tell you that I love ...(7-6) [saga]:2012/09/22(土) 09:53:33.53 ID:jkTB8KBn0
「松実宥か・・・」

メガネさんが呟く

3−1の先鋒。やたら寒がりで夏でもマフラーをしているらしいと話題になった3年生
その人は赤い牌が集まりやすいらしい

でも今、目の前に立っているのは宮永照であって松実宥ではない
もしそれでも、今ここにいない松実宥が、宮永照のそばにいるのなら・・・

「完敗っすね」

それほどの絆が二人にあるのなら・・・

私には、まだそれほどの深い絆はないから・・・

「完敗っす・・・・」

わずか100点でも足りなければそれで終わり
私は残りの点棒全部を差し出した

「でもいつか、この点棒は取り返すっすよ!」
「ああ、待っているよ」

加治木先輩みたいに、どんな些細なことにも注意を払って考えていれば、こんな不用意な振込みは防げたはずっす

こんなんじゃ、とても先輩の隣には、並べない

「待ってるっすよ、絶対に追いついてみせるっすから」

打ちひしがれている暇なんてない
先輩も、宮永照も、この学校にはあと1年しかいないのだから
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/09/22(土) 10:11:46.33 ID:jkTB8KBn0
モモのまま突っ走ってやったぜぃ
そして大将戦をまるごとキンクリする暴挙に出てやったぜぃ

この副将戦以上に大将戦が盛り上がるとはとても思えなかった・・・ぜんぶモモが悪い(遠い目
ほんとにモモ春行っていいですかってくらいモモが悪い・・・うむ


あと、「咲-saki-」SS人気投票で、スレタイの「清澄にも〜」が3票いただきました
ありがとうございます!

あれこれ手を出すと終わらなくなっちゃうので、今のシリーズが目処ついたら短編とかも書きたいですね
がんばりますっ
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 12:54:38.16 ID:TpXvBK9U0
乙ー
安定の泉と凡人がどこまでやれるか試す前に終わってしまった末原先輩ェ……
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/09/22(土) 14:07:59.49 ID:jkTB8KBn0
>>447
ダヴァン「スエハラは豹変しマシタ。恐ろしくなった私は、すぐさま1−11をトばしマシタ」
智葉「逃げたんだな」

照もきっと感じたんや、大将戦まで回したら勝てないということをっ
咲さんを超える末原先輩を恐れたんや


えー、その、ごめんなさい・・・
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 15:57:37.90 ID:Z8Tw8LuY0
乙!
最後まで蹂躙だったけどあったか〜い絆〆で魔物分が±0だね(ニッコリ

投票なんてやったのか……個人的にこのスレをすごく贔屓にしてるから票を入れたかったな
450 :tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/23(日) 09:52:19.82 ID:p80yp9Cn0
-side 恭子-

モニターをぼんやりと眺める

「負けてもうたか・・・」

ため息をつく
天江と戦ってみたかったけど、まだお前には早いということなんやろうか
柄でもないな、そんなこと考えるなんて・・・

「運に見放されたな。確率4/9の方やったな」
「まあ、1回は役満あがっとるし、あれ以上どうしようもできんやろうな・・・」

セーラが力なく笑う

「長かったね・・・みんなおつかれ」

いつものダルイは流石に言わない
でも白望の表情が変わらないので、相変わらず何を考えているのかはよく分からなかった

「マケチャッタネ」

エイちゃんの声は震えていて聞き取りづらかった
まあ、フォローは白望に任せる・・・

「ただいまですよー」

そこに、うつむきながら初美が戻ってきた

「お帰り初美。気持ちえーくらいボロ負けやったな」
「うう、ごめんなさいっ」
「ジョークやん、ジョーク。そんなに落ち込まんでや」

セーラが慌ててフォローする
流石に今の初美にそれは通じんで・・・

「あの消える1年に完全にやられたな。1人が傍観決め込んだら宮永照を止めるのは困難や」
「完全に存在を忘れてしまうほどだったのですよー。あんなのオカルトですよー」
「お前がオカルト言うなや」

今でも引き合いに出される冬の個人戦。園城寺怜、花田煌、そして松実玄・・・
3人で成し遂げた、宮永照の振り込み
さすがにあそこまではしなくても、3人が宮永照を止めるという意思の下に行動すれば、役満までの連荘はなかなかいかない

だがあの1年が完全に傍観を決め込み、さらにその捨て牌まで見えないとなると、絹ちゃんと初美が必死になっても止めるのは難しい

勝負を決めたのは結局、絹ちゃんの決死のオープンリーチ
あれがなければ絹ちゃんがトんで、そのとき2位だったうちのクラスが決勝へ駒を進めていただろう
それで勝ち進んだところで、決勝でまともな戦いができるとは思えへんけどな・・・・

なんにせよ、あの1年が2着狙いの殲滅作戦に出た段階で、大将戦に回ってくる見込みは薄かった

「まあ、副将宮永照の段階で、あいつらの作戦勝ちやったのかもしれんけどな・・・」
「それはそれで悔しいのですよ」

3年1組が、正確には宮永照が誰かに狙われているのは知っている
かえって変なことに巻き込まれるくらいなら、決勝に進まない方がよかったのかもしれん・・・

でも、それでええんか・・・

「恭子まで回せなくて申し訳ないのですよ」
「凡人の私に回したって、結果は見えとるよ」
「恭子、そうやって自分をすぐ卑下するもんやないで。1000点でも残っとったら逆転したったのにくらい言いや」
「1000点スタートでいきなり満貫でもツモられたらそれで終わり、そんな大言はけん」
「じゃあ、1000点スタートやったら始っから諦めるんか?」
「そんなわけあらへんやろ。上がりに向かうに決まっとる」
「だったらそれでええやろ」

セーラが笑う
ほんま、女にしとくのがもったいないくらい頼もしいやつや
451 :tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/23(日) 09:53:59.40 ID:p80yp9Cn0
せやな。何ができるか分からんにしても、何もしないのは間違っとる

「負けたもんやしゃーない。でも、まだうちらにはできることがある」
「ん、なんや、応援か?」
「まあ、応援っちゃ応援やけどな・・・」

うつむいているエイちゃんと、ダルそうに慰める白望を見る
あの2人には、あとで説明すればええか・・・

「ちょっと聞いて欲しい、協力しろとは言わんけど、結構ヘビーな応援やで」

私は知っていることを話した
由子がクラス対抗戦に出ていない理由、そしてその原因・・・

「赤阪先生に止められた?」
「そう、まあ先生も本意やないとは思うけど、由子に出るなって言ったのは事実や。宮永照のクラスを、負けさせるために」
「クラス対抗戦でなんでそんなことするのですかー。理解できないのですよ」
「その辺は分からん・・・」

分からないけど、動きがあるのは事実

「じゃああれか、竜華のクラスが宮永照を倒すために部長連合組まされたって噂もマジモンなんか?」
「おそらくな・・・」
「クラス編成にまで口出せるとか、ちょっとやそっとの話じゃないのですよー」

初美の声が震える
ただの一介の生徒が、どうこう出来る話じゃないかもしれんのは分かっとる

でも、現に由子が巻き込まれ、そして決勝には洋榎が出るのは確実、絹ちゃんも決勝に出る
それに、初美も、神代と石戸が決勝に出る
セーラは怜と竜華
白望とエイスリンは、臼沢と姉帯

これだけ決勝に出るメンバーに関わりがあるんや、何かできるはず

「考えすぎならええ。でも、本気で宮永照を外から負けさせようとするなら、いろいろ考えられるんや・・・」
「・・・ダルそうな話してるね」

いつの間にか、白望とエイスリンがこちらに来ていた

「ああ、もうエイちゃんは大丈夫か」

コクリと小さく頷くエイちゃん

「なら話すで。考えられる可能性。杞憂ならええけど・・・」
452 :tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/23(日) 09:55:51.79 ID:p80yp9Cn0
「そこまで、してくるのですか・・・」

初美の声は暗い

「分からん。仮に私が誰かに『宮永照を負けさせろ』と言われた時に、考える手や」
「分かった、なんならソフト部動員してもええ。何があってもええように備えとこか」

今にも飛び出しそうなセーラを止める

「いや、あまり事を大きくするんも、まずい」
「じゃあ、船Qを恭子の参謀に付ける。あいつもこういうのは得意そうや、荒事は俺に任せろ」

船久保か。確か洋榎のいとこ。愛宕先生ともコネが取れる、か。

「分かった。じゃあ呼んできて」
「おう、任せとけ。しっかり頼むで、総大将」

セーラが教室をあっという間に飛び出していく

「ダルイけど・・・私たちはどうするの?」
「臼沢を見といたって。多分姉帯は狙われん」
「ドウシテ?」
「姉帯が転校してきたのは校長の手配って話や。首謀者があのトシさんとは考えにくい。姉帯はそれなりに打てるんやろ、負けさせたい宮永のクラスにそんなやつ入れるわけあらへん。さらに言えば、姉帯に手を出せば校長の顔に泥を塗ることになる。美術部で何かしてくるなら、臼沢の方や」
「分かった・・・ダルくなければいいけど・・・」
「そう願う」

まあ、臼沢はまだ安全やろうとは思うけども・・・

「連れてきたで!」
「な、なんです、の・・・はぁはぁ、江口、先輩足早すぎですわ、はぁはぁ」
「早すぎやろ!」

勢いよく教室の扉が開き、汗一つかいていないセーラと、汗だくの船久保が入ってきた
まだ白望と少し話ししただけやで・・・

「時は金なりやで」
「で、なんですの・・・。いきなり、参謀の出番やって・・・はぁはぁ」
「まあ、ちょっと休んどき」
「そうさせてもらいます」

船久保が適当な席についてつっぷす
その間に初美と話をする、まあそんなにしてもらうことはないけども

「で、私はどうするのですか?」
「とりあえず石戸と神代に、変わったことがないか聞いといて。他のクラスには危害は及ばんと思うけども、逆に勝ったら何かもらえるとかそういう取引みたいなんはあるかも分からん」
「分かったのですよー」

これで一通り、現状で打てる手は打った
あとはもう少し手配が必要

「で、危害とか不穏な言葉出てましたけど、なんですの?」

息を整えた船久保が立ち上がる

「私に知恵貸したって。クラス対抗戦の決勝、誰にも汚させへんためにな」
「とりあえず事情をうかがいましょ、話はそれからですわ」

メガネの端を持ち上げ、少しだけ笑う船久保
頼りにさせてもらうで

首謀者が誰かなんて知らんけど・・・
見とれよ、由子を巻き込んだこと、後悔させたるからな
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/23(日) 10:04:38.84 ID:p80yp9Cn0
凡人にもできることはあるっ
というわけで「末原先輩、奮起する」の巻でした
決して、大将戦飛ばしちゃったから急遽この話を挟んだ訳ではない(遠い目


>>440が、sagaのつもりがsageになっていたので、一部[ピーーー]が入ってしまいました。

>そしてA卓からは、セーラか神代か滝見。滝見なら協力体制が取れるかもしれないけど、他は無理だろう
>「洋榎とセーラと会長とかやったら、私は死ねるな。ベッドから出たくなくなるわ。生きるんて、辛いな」
>というか、滝見って1年以外はほぼ死ねると思うのよー

こんな感じに読みかえてください


>>449
蹂躙して、さらに赤い牌が見えるとか魔物度が上がっている気がするんですがそれは・・・
人気投票は、僕も知らなくて結果がまとめられているのを見て初めて知りました

いつもご贔屓にしていたけているだけでありがたいことです、ほんとに
がんばりますっ
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/23(日) 16:12:48.64 ID:p80yp9Cn0
ところで、クラス対抗戦編が終わったあと(まだ先でしょうけど・・・

>>377の咲玄ぐぬぬぬルート 咲「妹同盟を組みませんか?」玄「えっ?」
・桃春ルート 桃子「桃が咲くまで」春「春を待てない・・・」(どっちもタイトル超暫定)

を考えてるんですがまだどっちも着地点が見えてないので時間かかりそうです



それでよく考えたら、まだちゃんと部活を考えてない学校があるなと思いまして、この学校はこの部活みたいなイメージがあったらご意見を聞きたいなと思いました

【作中で明言】
白糸台→アーチェリー部(菫のシャープシュートから)
阿知賀→ボウリング部(灼のボウリング)
千里山→ソフトボール部(なんとなく、竜華がピッチャーの絵が浮かんだので)
姫松→サッカー部(絹ちゃんがキーパーだったので)
宮守→美術部(エイちゃんのイラスト)
永水→書道部(服装がテレビでたまにやってる書道ガールズみたいなイメージだったので)
晩成→バスケ部(なんとなく、バスケのユニフォーム姿の小走先輩かっこいいと思ったので)
風越→家庭科部(キャプテン家事ならなんでもこなすし)
讃甘(新免さん)→剣道部(帯刀してましたし)

(明言してないけど、なんとなくイメージしてる)
劔谷→茶道部(これは確定)
清澄→文芸部
鶴賀→演劇部
臨海→ESS

(全然決まってない)
龍門渕
新道寺
越谷(決めても出さないと思いますが)
有珠山(本編進んである程度キャラが分かれば、ですけど)

完全に1人な荒川憩とか、ちゃちゃのんとかは部活入ってないってことにしておこうかなーとは思ってます


こうして並べてみると、結構決まってた・・・

龍門渕は最悪キャッチボール部でいいか、とか思ってたりしますけども
新道寺が全然浮かばない・・・
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 16:38:36.20 ID:p2PKgA/a0
乙!よかった……名前だけ登場した末原先輩はいなかったんだね……

荒川さんはコスプレネタで手芸部、ちゃちゃのんは演劇部にスカウトされてそう
新道寺はブラックな地方ネタだとミリタリー部かなぁ
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 16:57:25.00 ID:KqfEWoEPo
おつー、卓外もシリアスな流れになってきたな
新道寺の太ももの魅力を生かすなら陸上部もなかなか
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 21:40:57.85 ID:u2Vi+gxGo
末原先輩かっこいい
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/24(月) 21:19:22.71 ID:At0c66xP0
今日明日は更新ございません。ご了承を

末原ルートを入れたせいで予定が狂っているわけではない、決して(遠い目
でもアクションとか入れたらおいしいとこ持ってくのはセーラだよなーとかなんとか・・・
すぱっとまとめる技術がほしい


>>455
ミリタリー部はアカン・・・

羊先輩「なんもかんも政治が悪い。首相官邸に突撃やけん」
すばら「鉄砲玉、任されましたっ」

な未来しかみえない・・・

>>456
おお、陸上部いいっすねぇ。ひたむきに走り込む哩部長の光景が目に浮かぶ・・・


部活に関してはまだまだご意見募集中です
あと小ネタもできれば書きたいのでよろしくお願いします
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 23:44:14.33 ID:ePEZ3I1+0
穏乃はボーリング部との掛け持ちで山岳部に入ってても違和感ないな

小ネタは衣と胡桃と初美の背比べが見たい……デュフフ
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/09/26(水) 12:41:30.20 ID:CKrQhqT/0
昼休みー
今日は夜に更新予定です。それにしても2日ほっとくだけでずいぶん下の方に下がってしまいますね
昨日もある程度は書いていましたが、決勝戦先鋒直前までは行きたいところです

>>459
胡桃が130cmなのは咲日和で出てましたけど、他って設定ありましたっけ?
なんとなくでも身長のイメージをつかみたいところ・・・
頭が固くてすまんな・・・
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 19:50:39.24 ID:NyGg5uCC0
>>460
アニメ資料だと衣は130未満、初美はわからないなー
462 : tell you that I love ...(7-7) [sage saga]:2012/09/26(水) 23:26:21.07 ID:UgNQJfeS0
-side 浩子-

末原先輩から聞かされた話は、正直言って一介の生徒が関わってどうこうなる話とは思えなかった

「推察するに首謀者は、理事長ないし理事長の関係者、あるいは理事長を脅迫などした部外者、というところでしょう。理事長が何らかの形で関わっていると考えるのが自然でしょうな」
「ふむ、流石にソフトボール部の名参謀と呼ばれるだけはあるな」
「その上で、末原先輩はどうされたいのですか? 首謀者の特定なんてのは一介の学生の分を超えます」
「私もそこまでは思っとらん」

ゆっくりと首を振る末原先輩

「ただ私が許せんのは、宮永照を負けさせたいとかいう訳のわからん理由で大の大人が首突っ込んできとることや。明日の決勝だって、負けさせようとなりふり構わず何かしてくるかもしれん」

怒りに拳が震えている

「由子かて代表選に出たかったって言っとったのに出れんかった。それに他のクラスかて真剣に戦ってきた、それをぶち壊されるのだけは勘弁ならん」
「なるほど、目標としては試合妨害の阻止というところですね」
「せや。みんなが真剣にやった結果宮永照が勝とうが負けようが、それはどうでもええんや。やけど、ちょっかい入れて勝敗歪ませようだなんて、そんなのは許せん」
「まあ、それが落としどころでしょうな」

私が冷静にならんとあかんな、これは

末原先輩の怒りは、友人である真瀬由子が試合に出れなかったところから始まっている
私情を挟めば、それだけ視野は狭くなる。首謀者特定して警察につき出すとか言いだしたら止めようかと思っていたが、とりあえずそこまでは考えてはいないようだ。それでも私は、必要であればブレーキ役にならんとあかんな

今、モニターはB卓の大将戦を写している
もうオーラス、何も起こらなければ3年2組と1年5組の決勝進出だろう

「さしあたり、直接的な妨害が考えられる3年1組の護衛から考えましょか」
「とりあえず次鋒の臼沢は、同じ美術部の小瀬川白望に任せてある。美術部は校長のトシさんが直接顧問しとるし、狙われる可能性は低いと思っとるけどな。ついでに大将の姉帯も狙われにくいと思っとる」
「首謀者は、何を狙ってくると考えてますか?」
「今日の副将戦を見て、首謀者はこう思うやろ。『宮永照に回す前に、どこかをトバしてしまえばいい』」
「まさに、私もそう思います」

副将戦開始時には85600点だったものが、終わってみれば36万点
それこそ100点で回ってきても、逆転してどこかを飛ばして優勝しかねない
なら大将をどうこうしても仕方がない

「じゃあどこをトばすか。理想はもちろん、3年1組やろうな」
「まあ、中堅までで2年10組がトぶとか不自然すぎますし」

モニターを見る
残りの組がどこになるかで、対応が変わってくる

「決まったな。決勝は3年2組と1年5組やな」
463 : tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/26(水) 23:28:23.34 ID:UgNQJfeS0
「あー、ならなおさら、中堅で3年1組がトぶのが理想ですわ・・・」

3−2は学年ランク2位の愛宕洋榎
2−10は学年ランク3位の神代小蒔
1−5は学年暫定ランク1位の原村和
そんな中、園城寺先輩だけは、学年ランク103位

客観的に、ここで園城寺先輩がトんでもなんら違和感はない

もともと3年2組と2年10組は、3年1組を倒すために組まれた刺客
そこに勝ってもらわな困るわけで、そもそもトばす候補に入るはずもない

「とりあえず、一番の護衛対象は怜や」
「ありうるとしたら、真瀬先輩のように部活絡みの脅しでしょうか?」
「でも怜はマネージャーやろ。あるなら、竜華のレギュラー剥奪みたいな脅しになるかもしれんな」
「おばちゃん、いや、愛宕先生がそんな脅し使うやろか・・・」

曲がったことは嫌う人やし、いくら理事長絡みでもそこは断ってくれると思いたい
あー、でもおばちゃん確か派閥が理事長派やん、あんまり期待は出来んかも

「そうは言っても、同じ脅しは使えんとは思う。由子はレギュラー当落線上くらいやから外されても不自然やないけど、竜華とセーラはエースと4番やからな。そうそうレギュラーから外すのは難しいやろ」
「となると、怪我させるとかそんなことしてくるんでしょうか?」
「そこまで強攻に出てくるとは思わへんが・・・。とりあえずセーラと新免、体育会系のノリでよく話すらしいから、セーラには寮に向かってもらってる」
「寮?」

試合が終わってまだそんなに経っていない
園城寺先輩はまだ寮には戻っていないのではないだろうか

「怪我させたら、見た目でわかるやろ。だから分からん方法を取ってくる・・・・杞憂で済めばええけどな」

大きくため息をつき、末原先輩は窓の外を眺めた
その時、校内放送が鳴り響く

『2年10組愛宕絹恵さん、至急職員室まで来てください』

声こそ事務員さんの声やが、これは・・・

「ん、絹ちゃん使って何する気や?」

なんとかするなら中堅まで、その前提が崩れかねない動き

「どないします、様子探りに行きます?」
「いや、私たちが動いていることは極力悟られたくないし、別に何でもない用事なのかもしれへん。3年1組でないなら、下手に動かん方がええやろ」
「そうですな・・・」

他のクラスへの働きかけならば、危害ということはないだろう・・・

「あと、別件で調べてほしいことがあるんやけど」
「なんでしょ?」
「過去のクラス対抗戦、部活対抗戦、冬の個人戦。それぞれの優勝者調べてくれんか、ここ10年くらい」
「まあ、よろしいですけど・・・・何の関係がありますの?」
「いや、杞憂ならええんやけどな・・・」

返答になっていない返事が返ってくる
表情からするに、これ以上は望めそうもなかった
464 : tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/26(水) 23:32:22.97 ID:UgNQJfeS0
-side セーラ-

新免那岐と連絡を取り、怜の部屋の鍵を受け取る
杞憂ならいいと何度も恭子は繰り返した
たかが学校の1イベントで、そこまでしてくるとは思いたくない
急いで怜の部屋へ向かう

何もなければええ
でも、もし何か起こるのなら、間に合ってくれ・・・


「考えられる中で一番姑息なんが、怜の薬の入れ替えや」
「は、なんやそれ」
「ちいとばかし、いつもより効き目の弱い薬と入れ替える。対局中、怜が不調を訴えても3年1組にまともな代走はおらん。由子は出れんしな。急遽誰かに出てもらっても、まあトぶやろ。洋榎に神代に原村が相手じゃ、由子が出てもギリギリやろ・・・」
「そこまでしてくるんかっ。ふざけるな!」
「あくまで想像や・・・。そこまでしてこないと信じたい」


そんな会話があって
もういてもたってもいられなかった

クラス編成まで弄ってくる相手が本気になれば、そのくらいしてきても不思議ではない

園城寺怜と書かれた部屋の前につく
とりあえずノック。反応はない
借りた鍵を取り出し、ゆっくりと回す。カチャっと音がした。鍵はかかっていたようだ

周囲を一度見回り、ゆっくりと扉を開けた

「おんやー、本日2人目のお客様かい」
「誰や!」

不意に声がして、思いっきり扉を開けた
中にいたのは

「三尋木先生っ」
「おう、まさかセーラちゃんが来るとは予想外。どういった風の吹き回しかなー」

のんきに袖を振り回し、三尋木先生が笑う

「鍵かかっとったやん、なんでこんなところにおるんや?」

まさか先生が薬の入れ替えを?

「そりゃ担任だし、怜ちゃん病弱だから合鍵をもらってるのさー。いい加減退屈でしょうがないし、話し相手になってくんねーかな? えりちゃん試合の経過、メールでしか送ってくんねーからさー、ひどくね。もっと会話しようよって言っても、仕事中ですの一点張りだぜ?」
「鍵はええとして、ここにおった理由を聞こうか?」
「ん、ただの店番だけどもー。知らんけど」
「店番?」
「そそ、薬局のねー」

薬局・・・
やっぱり薬なんか

「怜の薬、返してもらうで」
「いやいやいや、それは誤解誤解。誰か薬を入れ替えにくるかもしんねーと思って、今日一日この部屋で待ってたんだからさー」

力ではかなわないと思ったのかどうか分からないが、先生が慌てて両手をぶんぶんと振る

「今朝の段階から、この部屋でずっと待っとったっていうのか?」
「そそ、もうまじ教師の鑑だよねー。っていうか職員室にいると動向をマークされそうだからとっとと避難してきたんだけどさー、知らんけどー」

ふとゴミ箱を見る
コンビニ弁当とペットボトルが捨てられていた

怜はコンビニ弁当なんてまず食べない。少なくとも、ここで先生が食事をしたのは間違いないだろう。そして食事をしたということは、薬を入れ替えに来た訳はないのだろう

犯行現場でご飯を食べるなんて意味が分からへん

「2人目って言っとったな、俺の前に誰か来たんか?」
「藤田ちゃん。あの人寮管担当だからねー、合鍵なんて好きに使えるから要注意と思ってたら案の定さー」
「藤田先生のことか?」
「そだよ。あの人も理事長派だかんねー。校長派の私は肩身狭いのよー」

なんか派閥があるんやろうか
そんなのには興味はない

「まあとりあえず警戒といてくんねー。流石にセーラちゃんに睨まれるとビビるわ」

流石に敵ではないだろう
警戒を解いて、部屋に入ると開けっ放しだった扉を閉めた
465 : tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/26(水) 23:35:14.29 ID:UgNQJfeS0
流石に敵ではないだろう
警戒を解いて、部屋に入ると開けっ放しだった扉を閉めた

「んで、セーラちゃんは自主的にここにきたわけ? わっかんねー、うちのクラスに怜ちゃんの薬にまで気が回る人なんていたかな?」

面白そうに笑う先生

「末原恭子や、知っとるか?」
「おおう、あのサッカー部の司令塔かー。面白いねぇ、まさかいくのんも恭子ちゃんに見破られるとは思わないだろ」
「いくのん? 赤阪先生か?」
「まあ理事長のわがままに付き合わされていくのんも大変なんだろうけどねー、知らんけど。いろいろ画策してんのはいくのんだよ。まあ今のところ私も潰せることは潰してるけど、流石にいくのんが顧問してる由子ちゃんまでは守れなかった」

一瞬顔を伏せる先生
だがすぐに顔を上げ、能天気なまでの笑みを浮かべる

「いやー、それにしても副将宮永照と知った時のいくのんの顔はウケたわー。偽オーダー組んでわざと見せたってのにねー、まんまとはまってくれた」
「偽オーダー?」
「そそ、先鋒宮永照って書いた偽オーダー。加治木ちゃんに頼んで、ギリギリで差し替えたんだ。普通にオーダー出したら、理事長派はオーダー差し替えてきそうだったからねぇ」

昼行灯にみせかけて、裏ではずいぶん動き回ってくれてるんやな・・・

「先生、このあと俺らはどうすればええ?」
「逆に恭子ちゃんはどう動くつもり?」

臼沢は小瀬川に任せてある、姉帯は襲われないだろう
怜は最悪寝ずの番をしてでも俺が守ってやれたとして・・・

あれ、松実と宮永はどないするんやったっけ?
やばい、聞いてへんかったわ!

「あらら、まあセーラちゃんらしいっちゃらしいけどねぇ」

うんうんと頷き、扇子をパタパタと仰ぐ

「じゃあこれは伝えといて。宮永照には何の危害も加えられない、そういう理事長通達だからね」
「なんや、理事長が犯人なんか?」

またパタパタと扇子を仰ぐ

「大人もめんどくさいんだ、その辺は深く考えなくていいよ」
「じゃあ残りの松実はどないや?」
「宥ちゃんも大丈夫。ボウリング部の顧問、晴絵ちゃんだからね」
「赤土先生は校長派ってやつなんか?」
「そういうこと。まあそれだけじゃないけど、そこも深く考えなくていいよ」

そしてパタパタしていた扇子を、パンと景気よく音を立てて閉じた

「まあ、大人のごたごたは、大人に任せておきなって。それに薬の交換を潰しておけば、それほどできることはないよ。せいぜい、久保ちゃんの3年2組といくのんの2年10組が、3年1組狙い撃ちを指示されるくらいさね。いくのんだって、別に警察沙汰にまでするつもりはないさ」

3年1組狙い撃ち、か
特に2組の先鋒福路と次鋒弘世なら、うってつけやな・・・それで中堅の洋榎でトドメ
十分ありうる作戦やし、普通に打ってそれで怜が負けるようなら、それはそれで仕方ない

「差し当たりの問題はクリアってことでええんか?」
「わっかんねー、この先どんな妨害が来るのかわっかんねー。やばくね、やばくねー」
「素直にクリアしたってことにしとけや、切りがあらへんで」
「ま、でも私一人じゃ全部はカバーしきれないし、恭子ちゃんが動いてくれるなら助かるわ」

ほんま、真面目なんだか不真面目なんだか、よくわからん先生やな・・・
466 : tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/26(水) 23:46:05.94 ID:UgNQJfeS0
一旦ここまで
この勢いで3日目の終わりまでは行きたい・・・
そこまで行けばキリがいいからおまけも入れられるし

>>461
ありがとうございます
初美は想像するしかないですかね・・・とりあえず衣が一番小さいってことにしておくかな
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 23:49:04.47 ID:hCQ+rvoDo
衣は135やね
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 00:21:08.00 ID:HLAKNPDco
乙です
すばらっ!

セーラさんかっけー
469 :tell you that I love ...(7-7) [saga]:2012/09/27(木) 00:47:12.89 ID:BJEROJJz0
-side 良子-

園城寺怜の通う病院を教えろ

赤阪先生から言われた時に、気づくべきだった
さらに薬を飲む時間や、保健室に薬の備えはあるかと詳しく聞かれ、後悔した

自分が理事長派とやらにいつのまにか組み込まれてしまっているのは分かっていた
それでも、積極的に協力する気はなかった
だから園城寺さんの担任の三尋木先生に、薬の入れ替えが画策されていると伝えたのが昨日

『そこまで考えてなかったわ、助かる。でもあんまり無茶すんなよ、一応あんた理事長派なんだからさー』

結局誰かに無理をさせて自分自身はセイフティに逃げ込むだけ・・・
それでいいのだろうか・・・

「怜、迎えに来たよ」
「怜ちゃん、大丈夫?」
「おー。宥姉ちゃんに照、お疲れやー。すごかったなぁ」
「おつかれなのよー」

保健室の扉が開き、入ってきたのは宮永照と松実宥
少し前に見舞いに来た清水谷竜華がニヤリと笑う

「でも明日は私が勝つでー」
「どうぞ。でも最終的に勝つのは、私たちのクラス」
「軽くいなされたなぁ、竜華」
「くっ、これくらいでは泣かへんもん」

そこに、携帯電話が鳴る
携帯を取り出したのは清水谷さんだった

「なんやのこんな時に・・・って久保っちか。もうめんどくさそうやなぁ」

仕方なく電話に出る

「はい清水谷ですけど・・・・ミーティングですか、意味あるんですか?・・・・まあ行きますけど・・・・」

心底嫌そうに電話を切る

「今から明日に備えて3年2組でミーティングやと・・・・今更そんなのしたってしょうがないと思うんやけどなぁ・・・。それより怜といたいってのになぁ」
「ぶつくさ言わんと行ってき。久保ちゃん怒らせる方がめんどくさいで」
「それもそうやな・・・怜、ミーティング内容はあとで教えるからなー」
「え、いいのかなぁ・・・」
「竜華はああいうやつやで、宥姉ちゃん」

カバンを持ち、清水谷さんはさっと保健室を出て行った
これで少しは静かになる・・・

「で、怜。具合はいいの?」
「おー、大丈夫やで。薬も飲んだしな」
「でも明日は今日以上に厳しいから、ちゃんと休むのよー」
「由子そればっかりやなぁ。飽きるで」
「怜ちゃんが大丈夫なら、もう放課後だしそろそろ帰ろうか」

薬と聞いて、少しだけ体が震える・・・
ここにある薬は、園城寺さんがいつも飲んでいるものと同じものが予備で保管してある
変えろと言われて渡された薬は捨てた。少し弱めただけとは言っていたけれど、それで命の危険にさらされることだってある、さすがにイージーに考えすぎだ

あとで三尋木先生に連絡を取って、もし薬を取られたのならこの予備の薬を持っていこう
保健室に忘れ物があったので届けに行ったと言えば、言い訳としては十分だろう

4人を見送ると、私は自分の携帯電話を取り出した

メールが来ている
三尋木先生から。藤田先生が来て追い返した、薬は大丈夫

「よかった・・・」

たとえ反逆者の烙印を押されたとしても、私はそれを誇りに進んでいける
簡単に返信し、メールを履歴から消した

あとは、明日園城寺さんがここに担ぎ込まれてこないことを祈るだけ
彼女、なんだかんだで無理をしてしまうから・・・
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 00:51:51.85 ID:fsU98PqPo
藤田sageは許せん
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 00:54:03.61 ID:KD7vueZw0
藤田は悪くない、理事長が全部悪い
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/27(木) 00:59:55.53 ID:BJEROJJz0
どうやっても誰かは下がるんで勘弁してあげてください・・・
いくのんとかいくのんとかいくのんとか・・・
理事長とか理事長とか理事長とか・・・・

うーむ、あと照宥帰宅だけ書けば3日目が終わるが睡魔との戦いになりそう
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 01:07:25.29 ID:riVEQcLK0
カツ丼には薬の内容は本当の事を伝えてない可能性があるから(震え声)

あ、今の内に謝っておくけど衣の身長見直したらギリギリ130以上あったよ
143前後の優希の頭2/3個分ぐらいの差だった
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/09/27(木) 01:10:29.32 ID:OUYS5gWyo
できれば先生達の誰某が何組の担任とか派閥とか役職だとか
まとめて欲しいな正直頭こんがらがってきた
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/27(木) 01:33:48.03 ID:BJEROJJz0
無理だった、寝ます
とりあえず、ここまでのまとめを上げておきます
うーむ、ちょっと悪乗りだったかなぁ・・・先生の裏舞台書いたの


【先生リスト (これまで名前が上がっている人のみ)】
3年1組  三尋木咏(校長)
3年2組  久保貴子(理事長)
2年10組 赤阪郁乃(理事長)
1年5組  赤土晴絵(校長)

担任クラス決めてない
藤田靖子(理事長)
針生えり(理事長)

保険医
戒能良子(理事長)

校長 熊倉トシ
理事長 ??

基本、理事長派閥が強いです
4日目は生徒中心になるので、もうそんなに派閥云々は出てこないと思います


【4日目・決勝進出メンバー】
3年1組
先鋒 松実宥
次鋒 臼沢塞
中堅 園城寺怜
副将 宮永照
大将 姉帯豊音

3年2組
先鋒 福路美穂子
次鋒 弘世菫
中堅 愛宕洋榎
副将 清水谷竜華
大将 石戸霞

2年10組
先鋒 荒川憩
次鋒 松実玄
中堅 神代小蒔
副将 愛宕絹恵
大将 天江衣

1年5組
先鋒 宮永咲
次鋒 高鴨穏乃
中堅 原村和
副将 新子憧
大将 大星淡
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/27(木) 01:45:16.62 ID:BJEROJJz0
>>473
>>467
ありがとうございます!

胡桃(130)<衣(135くらい?) ということですね
初美がどの辺に入るか、か

3日目が終わったら、おまけでなごんでもらえるように頑張るからっ
ちょっと大人がダーティになってしまったのは勘弁してあげてください
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 05:51:10.17 ID:fsU98PqPo
おっつ
478 :tell you that I love ...(7-8) [saga]:2012/09/28(金) 00:46:09.84 ID:MDliH0GT0
-side 照-

すぐに帰るのももったいない気がして、中庭のベンチに宥と2人で座った
微妙に距離を開けて座る。流石に人目もある中では、密着するのははばかられた

「赤い牌が見えたなんて、面白いね」
「ああ、自分でも正直何が起きているのか分からなかった」

ステルスすること自体は東1の段階で把握できても、実際に消えると存在していたことも忘れてしまう
でも時々赤い部分がちらつき、最後の「中」ははっきりと見えた

あの直撃がなければ、彼女が2位抜けしていただろう
そして決勝戦では見えない脅威にさらされていたに違いない・・・

「宥がそばにいてくれているみたいで、とても嬉しかったよ」
「そうだね。じゃあ、私が照ちゃんに膝枕してもらったら、連続和了とかできるかな?」
「いや、それは・・・」

無邪気に微笑む宥
でも、私は少しへこむ

「宥は宥のままの麻雀でいい。私みたいになっちゃダメ」

私の麻雀は、多くの人に恐怖を植え付けるらしい。そんなつもりはないのに
宥には、そんな風になってほしくない

「そうなの? 照ちゃん強いしかっこいいのに」
「だから、私は強くもかっこよくもないって言った」
「じゃあ、かっこいいし強い」
「逆にしただけ」
「うーん、じゃあどうしようかな」

なにやら考え込む宥
強く見えても、強いと言われるだけの成績を残していても、私は自分のことを強いと思えたことはない

「ねえ、照ちゃん」
「なに?」
「照ちゃんは自分自身のこと、嫌い?」

突然の質問にすぐに答えが出ない
宥は微笑みを浮かべていた。私の気持ちを和らげるかのように

私は小さく首を振った

「よく、分からない。少なくとも、現状が好ましいとは思ってない」
「なら大丈夫だよ、照ちゃんはもっと強くかっこよくなれるから」

何が言いたいのか、よく理解できなかった

無言のまま、宥が体を寄せてきた
肩と肩、腕と腕が重なり合う。それだけで心がほぐれていくのは、どうしてなんだろう・・・・

「現状に満足せず、さらに上を目指す照ちゃんかっこいい。っていうのじゃ、ダメ?」
「それは、かっこいいのかな・・・」
「うん、かっこいいよ」

今までだったら、そんなのはただの虚勢だと思っていただろう
上を目指しているかのように繕っても、自分を守る鎧をどんなに強固にしても、中身がそのままだったら意味がないから
でもその中身を、私自身を、宥なら解きほぐして、変えてくれる気がする・・・

「じゃあ、照ちゃんが私の好きなところを挙げてみて?」
「え?」

また突然の質問
改めて言われると、それを本人を目の前にして言えとなると、正直かなりはずかしい・・・

それでも心が言葉になって口をつく。感情が溢れ出てくる

「包み込んでくれるっていうのかな。一緒にいて安心できて。笑顔が可愛いし、それはもうとろけちゃうくらい可愛いし。宥の方が私より強いんだよ、私はボロボロで、宥は私を包んで癒してくれて」

嬉しそうに聞いてくれる宥
知りうる言葉をすべて使っても足りないくらいにしゃべる私

誰かの魅力についてこんなに喋ったことなんてあっただろうか・・・
うん、ない。宥が相手だから、できること

「ええっと、あと何を言ってなかったかな」
「たくさんたくさん言ってくれたよ。すごく嬉しい」

不意に宥は私の体を引き寄せ、抱きついてきた
479 :tell you that I love ...(7-8) [saga]:2012/09/28(金) 00:49:20.28 ID:MDliH0GT0
不意に宥は私の体を引き寄せ、抱きついてきた

宥の髪の匂いで、宥の熱で、私はぽーっとする
宥と接している部分が自分のものでなくなって、宥の中に吸い込まれていく感覚
それがとても心地よくて、私も宥の背中に腕を回す

放したくない
ずっと抱きしめていられたら、どれほど幸せだろう

今、この幸せと共に在ることを素直に感じられれば、それでいい

・・・今は先のことなんて考える必要はない


『じゃあお姉ちゃんの名前はどういう意味なの?』
『照はね、日の光っていう意味』
『日の光、お陽さまのこと?』
『そう、みんなを照らす、太陽』
『だからお姉ちゃんは、麻雀をするときちょっとずつ点数が上がっていくんだね』
『ふふ、そうかもね。お陽さまは少しずつ昇っていく、それと同じだね』


・・・今は咲のことなんて


『私が咲をいっぱい照らしてあげる。だから咲は、いっぱいお花を咲かせるんだよ』
『うん!』


どうして、今このタイミングでこんなことを思い出すの・・・


「照ちゃん、泣いてるの?」

宥の声で現実に引き戻される
自分が嗚咽しているのを、ようやく自覚する


「私は、咲の太陽になれなかった」
「どうして?」
「咲の麻雀が造花になっていくのを、私は止められなかった」

±0に調整することを悪いこととは思わない。調整が必要な場面もあるだろう
でも、麻雀に限らず勝負事は、勝ちを目指すもの

±0のために咲き誇る嶺上開花は、私には造花にしか見えなかった
造花に、太陽なんていらない

咲のことは好き、とても大切な妹
なのに・・・・
480 :tell you that I love ...(7-8) [saga]:2012/09/28(金) 00:50:21.39 ID:MDliH0GT0
「照ちゃん!」

宥がいつもより強い口調で私の名を呼ぶと、突然宥は私の膝に頭をうずめた
私が宥を膝枕している格好になる

「え、なに?」

宥といると突然のことばかり起きる・・・
俯いていると宥に泣き顔を見られてしまうし、涙で濡らしてしまうので、慌てて上を向いた

「照ちゃん、こっちむいて」
「・・・イヤ」

それだけは聞けない
私は意地を張って空を見上げる
太陽は、雲に隠れて見えない

でも、宥という太陽には、雲は一つもなかった

「今日私が照ちゃんのそばにいられたなら、照ちゃんも私のそばにいられるよ。だから明日、照ちゃんは私と一緒に、咲ちゃんと麻雀しよう」

もう、宥はどうして・・・・

どうしてそんなに・・・


私がこんなふうに咲を照らせていたら、咲はまっすぐ勝利を目指して打つようになってくれた?


もう理由なんてない

私は宥の頭を軽く持ち上げて

その唇と唇を重ねた







明日咲と打つ麻雀は、一体どんなものになるのだろう・・・
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/28(金) 01:06:25.16 ID:MDliH0GT0
3日目、終了です


4日目、大筋では決めてあるのですが、細かい部分がまだ決まってないので、少しお時間をいただくかもしれません
なので、先におまけを入れてから4日目にしようと思っています

>>355
こちらは(7-7)の延長で、
咏「こうなったら怜に影武者作戦だ」灼「は?」
とはいえおまけなので軽いノリで
というか7-8を書いた後だと、7-7は必要だったのかと小一時間・・・

>>459
身長差出していただきましたが、結局あんまり関係ない感じのネタになりそうです


それではおやすみなさい
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 01:10:14.55 ID:NOS5OQgvo
おつ
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 01:12:22.34 ID:iJYFEl8k0
乙!
宥姉のエロさにとうとう照も歯止めが利かなくなってきてすばらです!
484 :tell you that I love ...(intermissionExtra-2) [saga]:2012/09/28(金) 23:46:00.66 ID:MDliH0GT0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)

衣「どうして」

胡桃「ここに」

初美「集められたのですかー」

豊音「じゃーん、これ!」

『白糸台夏フェス恒例
 デコボコペア大募集!』

胡桃「これがどうしたの?」

豊音「うん、これに出たいなーって思って、候補者に集まってもらいましたー」

衣「確か去年は、一が優勝していたな・・・」

『去年優勝の、松実宥&国広一ペアに続け!
 優勝賞品は学食スペシャルデザート1ヶ月分!』

豊音「そうそう、これに出たいんだ」

胡桃「それでなんで私たちなのっ」

初美「まあ、なんとなく想像はつきますけど」

豊音「私、学校で一番大きいらしいんだ。だからね、一番背の低い人とペアを組めば勝てるかなーって」

衣「衣は小さくない、大人だっ」

胡桃「私だってそこまで小さくないし」

初美「私だってこれからとんでもない可能性を秘めているのですよ」

豊音「とにかく、総勢3名にアンケートをとった結果、同率で1位になったので最終選考をするよー」

胡桃「アンケート少なっ」


エイスリン「オナジクラス、ハツミ、チイサイ」

白望「ちょいタンマ・・・・・うん、天江衣でしょ」

塞「っていうかわざわざ聞かなくても、うちの部にいるじゃない」チラ


豊音「というわけだよー」

胡桃「塞のやつー!」

初美「エイちゃんにチイサイって言われたのですかー」

衣「白望? 知らない名前だが、今度戦う機会があれば贄にしてやる」

豊音「みんな気合が入ってるねー」

衣 胡桃 初美「気合じゃない!」

豊音「そうなんだー。それで、この中で誰が一番小さいの?」

胡桃「年下だし、衣に決まってるでしょっ。リボンで身長ごまかしてるのとか小さい証拠!」

衣「これは衣のお気に入り、馬鹿にするなー」

初美「まあこんな喧嘩してしまう2人のどちらかが一番小さいのですよー」

衣 胡桃 初美 オマエダ! アンタデショ! オチツクノデスヨ!
485 :tell you that I love ...(intermissionExtra-2) [saga]:2012/09/28(金) 23:47:57.33 ID:MDliH0GT0
豊音「み、みんな落ち着いてよー」

胡桃「元はといえば豊音が悪いっ」

豊音「え?」

衣「そうだ、ペアに選ばれたら負けたような気分になるだけだ」

初美「そもそもアンケートをもっと取るべきなのですよー。そしたら私は選ばれてないのに」

豊音「」ジワ

衣 胡桃 初美「え?」

豊音「みんなごめんねぇぇ。そうだよね、小さいって言われるの嫌だよね。私だって大きいって馬鹿にされるの嫌だもん。みんなの気持ちも考えないでごめんなさいぃぃぃ。楽しみだったけどぉ、出るの諦めるよー」

衣「いや、なにもそこまでは・・・・」オロオロ

初美「そ、そうなのですよ」アワアワ

胡桃「はぁ、まったく・・・・豊音!」

豊音「えぐえぐ、なに?」

胡桃「私が出てあげるっ」

豊音「え、ほんとに?」

胡桃「べ、別に私が一番小さいわけじゃないけど、同じ部活のよしみで一緒に出てあげるだけだから」

初美「そうですよ、誰が一番かなんて争うのはよくないですよ」

衣「応援しているぞ、豊音、胡桃」

豊音「うん、ちょーうれしいよー」
486 :tell you that I love ...(intermissionExtra-2.1) [saga]:2012/09/28(金) 23:49:21.43 ID:MDliH0GT0
照「」ワナワナワナ

宥「照ちゃん、どうしたの?」

照「宥、これなに!」

『白糸台夏フェス恒例
 デコボコペア大募集!
 去年優勝の、松実宥&国広一ペアに続け!
 優勝賞品は学食スペシャルデザート1ヶ月分!』

宥「去年ね、一ちゃんにどうしてもってお願いされて出たんだ。そしたらよく分からないけど優勝してたんだ。スペシャルホットケーキ、美味しかったなぁ」

怜「ああ、それなぁ。私も見とったけど、圧勝やったなぁ」

宥「そ、そんなことないよ・・・」

照「もしかして今年もこの人と出るの?」

怜(やきもち焼いてる照とかおもろいなぁ。もっとやれー)ニヤニヤ

宥「え、まだ頼まれてないけど」

照「分かった。頼みに来る前に、その国広さんとやらに麻雀を楽しませてくる」ゴゴゴゴ

怜「照の楽しませるとか、地獄絵図しか見えんのやけど・・・」

一「すいません、こちらに松実宥さんいますか?」

怜「お、噂をすれば、やな」

宥「あ、はじめちゃんだ」

一「お久しぶりです、宥さん」

照(名前呼びだとっ)グヌヌヌ

一(なんだろう、チャンピオンが満月の衣以上の迫力でボクを睨んでいる・・・)

一「えと・・・。よかったら今年も夏フェスデコボコペアに一緒に出てもらえたらと思って」

照「断る」

一「え?」

宥「照ちゃん、誘われたのは私だよ? ごめんね、はじめちゃん。照ちゃん、自分が誘われたと勘違いしたんだと思うんだ」

照「違う、宥はもう私と出ると決まっている」キリ

怜(アカン、腹がよじれる・・・・強がる照おもろい)プルプル

一「え、あ、そうなんだ・・・・。ところで、コンセプトは?」

照「コンセプト?」

一「え、ええ・・・。デコボコしてる部分がないとコンテストになりませんし」

照「よし、怜。発表してあげて」

怜「傍観しとったら無茶振り来たし。・・・まあ、あれやなぁ、去年の2人と同じやで」ニヤリ

一「あ、そうなんですかぁ。チャンピオンの私服見てみたいなぁ」

照「ああ、期待しているといい。だから今回は諦めてくれ」

一「そういうことならしょうがないね・・・。じゃあ宥さん、頑張ってください」

宥「あ、うん、ごめんなさいね」

宥(そうなんだ、照ちゃんははじめちゃんみたいな服も着るんだ・・・・ドキドキしちゃう)

怜(去年のコンセプト、照は絶対知らんやろ。おもろい、これはおもろいで)

照(私服? 男っぽい女っぽいとかそういうことか?)


その後照が、コンセプト『夏の私服の露出度』を知って卒倒したのは言うまでもない
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/09/29(土) 00:08:19.14 ID:9O72cM1AO
乙乙!
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 00:24:11.43 ID:jcGa6LuV0
乙ー
子ども三人と姉帯さん、そして〆に照宥……感慨無量でフィニッシュです
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/29(土) 05:50:56.83 ID:a2KgMCyG0
今日はここまでって書こうとしていたらもう寝ていました

デコボコペアのネタ、結構いけるかも・・・
本編シリアス続きになりますから
というわけで、こんなペアがあるぞというのがあれば書いていただけるとこれの続きで書ける、かも・・

とりあえず透華が「隣に桃子がいる」と言い張って、一人で目立とうとする絵が浮かんだ


>>459のリクを聞いて、真っ先に思い浮かんだのが「勤しめ仁岡先生」の浅井と前田ネタだったので、一番小さいのは誰だと争うネタを考えたら、一番大きい姉帯さん登場となりました
しかし衣は相変わらず動かすのが難しい・・・・決勝の大将戦大丈夫か・・・
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 17:30:54.21 ID:ER8bZ3Vmo
乙。

>コンセプト『夏の私服の露出度』

に笑った。そりゃあ宥と一ペアで優勝できるよなww
491 :tell you that I love ...(intermissionExtra-2.2) [saga]:2012/09/29(土) 23:39:22.97 ID:a2KgMCyG0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)

-1年前-

恒子「さあ、去年彗星のごとく現れた書道部のペア、ディフェンディングチャンピオンの石戸霞・薄墨初美。コンセプトは『あれ、同い年なのに親子?』。今年も圧巻のパフォーマンスを見せつけてくれている!」

はやり「残り1組になったけど、この95点を越えるのは難しいかも☆ 夢の2連覇、さらには3連覇も見えてきそう☆彡」

恒子「子供たちに瑞原先生キツイと言われるはやりんの解説も終わったところで、ラスト1組の紹介いっちゃうよ!」

はやり「・・・・恒子ちゃん、夜道に気をつけてね☆」

恒子「じゃあラスト、エントリーナンバー10。松実宥・国広一ペア、コンセプトは『だって夏だから、この服でキマリ』。どうぞー!」

宥 一「よろしくお願いします」

審査員A「こ、これはっ・・・」

審査員B「松実宥、噂には聞いていたけどほんとに夏でもマフラーにコートだというの・・・」

審査員C「これはキャラ作りじゃない・・・ガチ。だってあんなに着膨れてるのに汗一つかいてないじゃない」

審査員D「それに対してこの国広一って1年、何者なの!」

審査員E「去年、薄墨初美が現れたときはこの白糸台に衝撃が走ったが、それ以上の布面積の少なさじゃないか」

審査員F「え、あれが本当に私服なの・・・・」

一「あ、証拠ありますよ」

審査員G「こ、これは・・・」

審査員H「白糸台交番の駐在さんとにこやかに写真撮影だと・・・」

審査員I「アカン、国家権力が公認している以上、我々も認めざるを得ない・・・」

審査員J「また白糸台に、新たな伝説が生まれるのか」

恒子「さあ、審査員の皆様。判定をお願いします!」

はやり「これは、かなりの高得点が期待できますね☆」

恒子「出たー。10点×10で100点満点。優勝は松実宥・国広一ペアだぁぁぁぁぁ!!」

宥「やったねはじめちゃん!」

一「宥さんのおかげだよ、ありがとう」




どうせなので、去年の優勝した時の様子を書いてみた
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 03:55:52.55 ID:koQtW0wu0
去年優勝組や既存の凸凹ペアの完成度の高さに入り込む隙が無い……

あえて挙げるなら咲×もこの和洋風ボブカットペアーぐらいかなあ
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/09/30(日) 07:02:53.35 ID:sgZup7AD0
おはようございます

咲×もこかぁ。どちらかというとソックリさんかなぁ・・・
今年からソックリさんコンテストも開催されて、咲×もこ、怜×灼、穏乃×数絵とかで争わせますか
7-7のルート改変よりもそっちの方が良さそう、ふんふむ
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 12:02:30.18 ID:tJABlFVqo
あらたそ〜に勝てる気がしない
495 :tell you that I love ...(intermissionExtra-2.3) [saga]:2012/09/30(日) 22:30:03.38 ID:sgZup7AD0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)


『白糸台夏フェス新企画
 そっくりさんペア大募集!
 デコボコに出れなかった人もこっちなら出られるかも!?
 優勝賞品は学食スペシャルデザート1ヶ月分!』


宥「っていうのがあるんだって。今、照ちゃんと申し込みに行ったらもらってきたよ」

照(・・・・どうしようどうしよう。写真見せてもらったけど、ほんとにあんな服着るの?? っていうかあれ服? 国広一はヒトじゃない・・・。でももう出るって言っちゃったし・・・・あんな姿をみんなに見られたらもうお嫁さんに行けない・・・)アオザメ-

怜(本番が楽しみやなぁ)ニヤニヤ

怜「そうなん? 私はそういうの興味ないんやけど」

宥「でも、怜ちゃんに似てる人知ってるから、もしよかったら出てみたらいいんじゃないかなぁ」

怜「まあ相手次第やなぁ・・・私、病弱やし」

宥「大丈夫だよ、いい人だから。今から会ってみる?」

照(はっ、そうだ。こんなときは咲の笑顔を思い浮かべて 咲「お姉ちゃんの変態っ!」)

照「・・・・もうダメ」ジワ

怜(うまいことその気にさせたらんと、気が狂ってまうかもしれんなぁ・・・)ヤレヤレ

怜「部活あらへんし、とりあえず会うだけやったらええよ」

宥「じゃあ行こう。照ちゃん、また明日ね」

照「」ポケー

宥「・・・照ちゃん?」

怜「ちょっと考え事しとるんやろ、そっとしといたり」
496 :tell you that I love ...(intermissionExtra-2.3) [saga]:2012/09/30(日) 22:33:19.37 ID:sgZup7AD0
宥「というわけで、鷺森灼ちゃんだよ」

灼「初めまして」

怜「こちらこそ」

宥「夏フェスの新企画に灼ちゃんと怜ちゃんで出たらどうかなぁって連れてきたんだよ」

灼「そう・・・」

灼(似てないよね・・・)

怜(似とらへんな・・・)

灼(私、こんな病弱じゃないし・・・)

怜(私、こんな性格キツそうな感じやあらへんやろ・・・)

灼(髪型が微妙に似てるのかもしれないけど、こだわってるポイントが違うし・・・)

怜(私の方がきれいに髪も整えとる・・・)

灼(とにかく似てない。宥姉には上手いこと言って断ろう)

怜(結論、似とらへんな。宥姉ちゃんには悪いけど、なんとか断ろう。そもそも興味ないし)

宥「それで、どうかな? そっくりだと思うし、出てくれたら嬉しいなぁ」ポワー

怜(くっ、ものっそい期待の眼差しで見とる。これは照が骨抜きにされるのも仕方ないくらいの眼力やっ・・・)

灼(うーん、すごく期待してるな・・・。玄がいつまでもお姉ちゃん離れできないのも納得の眼力。どう乗り切る・・・)チラ

怜(なんとかそっちで断ってくれへんかなぁ・・・私には荷が重い)チラ

灼(はぁ、しょうがない・・・)

灼「宥姉、悪いけど私はこういうの興味ないから」

宥「あ、そうなんだ。審査委員長が赤土先生だから、灼ちゃんが出れたらいいかなぁって思ってたんだけど」

灼「ちょ、なんでそれを先に言わないの。出るに決まってる」

怜「・・・え?」

灼「一緒に頑張りましょう、園城寺さん。なんなら出来るだけ一緒に行動して、双子だって言われるくらいの完成度を目指しましょう!」

怜「えぇぇぇぇ」






レジェンドを餌にすれば、灼はなんでもしてくれるという風潮
個人的に、怜灼ってそんなに似てないと思ってるのでこんな感じになりました
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 22:46:13.42 ID:u/4Ylqm/0
乙!漫画版だと造形が、アニメ版だと色は近くなってるから両方揃ったら姉妹になれるよ!

そっくりさんネタと言えば松実姉妹の母親ってアニメ版だと霜崎絃さんとそっくりだったな……
原作ではそんな事は無かったけど一つ上の女子高生に
「おかあさーん!!」と泣きつく玄ちゃんと困惑する絃さんの光景が脳裏をよぎった
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/10/01(月) 19:12:50.05 ID:nEyPK3Fm0
こんばんわ
3日ほど更新お休みします
ぼちぼち本編を書き溜めて、中堅戦終了までは行きたいです

intermissionExtraは副将戦直前くらいでまた、ネタがあれば書こうかと思います


咲「もしも三年生と一年生が逆だったら…」が面白かったですね
それ読んで似たような設定が浮かんだんですが、いろいろ思いついても筆が追いつかないんだよなぁ・・・
いろいろ同時に書いてもエタるだけなので我慢我慢

>>497
なかなかアニメ見直すタイミングが無いのですぐ確認できないかもしれませんが
荒川クリニックの中では絃さん好きなのでチェックしたいですね(なのでチョイ役だけど生徒会に入れた)
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 19:41:04.83 ID:H2o90mL1o
こんばんはー
待ってるから頑張ってね
最近はここが一番楽しみww
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/01(月) 19:57:32.22 ID:kWxf5bIHo
気体
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/03(水) 02:42:52.37 ID:gPLnNp1a0
ようやく先鋒戦が書き終わったよこれ
できれば中堅戦まで書いてから、1日1戦で投下したいところですが

でもある程度書けると投下したくなる病ががががが

でも待っていただけるようなので頑張りますっ
おやすみなさい
502 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/04(木) 03:03:35.63 ID:eNqBZcmV0
-side 宥-

-クラス対抗戦 決勝先鋒戦 前半戦
-南2局 1本場

東 福路美穂子 120800
南 宮永咲    81300
西 松実宥    96100
北 荒川憩   101800


まだ荒川さんは爆発していない
というより、爆発させてもらえない、という方が正しいのかもしれない。それでも原点を維持しているのは流石学年ランク1位なだけはあるのだろう

客観的には、福路さんが場をコントロールしているように見えるのだろう
福路さんはほとんどツモあがりせず、私や咲ちゃんからの出上がりに徹していた

ツモを3回すれば、荒川さんが爆発する
点数を重ねるためには、荒川さん以外からの出上がりを重ねるよりない

今のところ、3人がそれぞれ1回ずつツモ。荒川さんからの出上がりは無いので、まだ全員に2回の猶予がある。荒川さんの親はもう回ってこないので、前半戦では荒川さんの爆発は厳しいだろう

「ロン、3200・・・」
「はい」

また咲ちゃんの振り込み・・・

この場の異常に気づいているのは、この場では私だけ・・・
いや、そんなことはない。少なくとも福路さんは、当たり牌が出たというのに少し顔をしかめた
本当は、私から出上がりしたいというのが本音なんだろう

どうして咲ちゃんは、私の捨てようとする牌を先に切るの?
東場からずっとそうだった。私が切ろうとする牌と同じ牌、もしくは筋牌を切る。福路さんが見逃せば、私が切っても出上がりできない

朝のミーティングで、他のクラスが3年1組を狙い撃ちにしてくるだろうということは話し合われた
照ちゃんに回す前に飛ばす、それができなくても極力削っておくというのは、ごくごくありふれた作戦だし、私が他のクラスにいればその作戦に納得する

3対1になるのは覚悟していた
いつも3対1の中戦っている照ちゃんの気持ちに、少しでも近づけるのかもしれない。そう前向きに捉えることにした

けど実際は、席順にも恵まれたのか、咲ちゃんが私の盾になって守ってくれている・・・

一体そのことに何の意味があるのか分からない
これはコンビ打ちじゃなく、自分のクラスの勝利を目指すクラス対抗戦。他のクラスを守る意味は、誰かが飛んだら1位になれないというときくらいしかない

荒川さんを警戒してのことだろうか
ひとまず福路さんに差し込んでおけば、荒川さんは爆発しない。それでも、私をかばう必要はない

多分、私を守る時に咲ちゃんは手を崩してる
荒川さんを警戒するだけなら、そこまでする必要はない

やっぱり分からない

・・・照ちゃんの、お姉ちゃんのいるクラスだから?

穏乃ちゃんや憧ちゃんからも、咲ちゃんが自分のクラスの勝利を捨てようとしてるなんてことは聞いたことがない
2年10組には玄ちゃんがいる。けれど、玄ちゃんのために自分のクラスの勝利を捨てるなんてことは、私はしない

咲ちゃんの気持ちが見えない
503 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/04(木) 03:05:17.08 ID:eNqBZcmV0
テンパイする
福路さんの親を続けさせるわけにもいかない

手牌:一二三四五六七八九HH中中

リーチはかけない
染め手に伸びる可能性はある、もっとも染めて出上がりできるような相手ではないだろうけれど・・・
安目のHであっても、出れば上がる

「カン」

咲ちゃんがAを暗槓する
ドラ表示は、発

中が乗った・・・・でも咲ちゃんならリンシャンでツモるはず

「リーチ」

けれど、咲ちゃんはツモ切りリーチ
宣言牌は――

「ロ、ロン・・・」

――中

「一通・中・ドラ3。12600です」
「はい」

まるで予見していたかのように差し出される点棒・・・
わざとドラを乗せて差し込んだ?
そんなこと、できるの・・・

照ちゃんも分からないと言っていた、咲ちゃんの打ち筋
私に理解することはできるんだろうか・・・


南2局2本場終了時点

東 福路美穂子 124000
南 宮永咲    65500
西 松実宥   108700
北 荒川憩   101800
504 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/04(木) 03:06:39.85 ID:eNqBZcmV0
-大会3日目 放課後

照ちゃんの顔が不意に近づいてきた

後頭部に添えられた温かい手に力が入った
頭が、ふっと浮き上がる

ただ流されるまま、その唇を受け止める

息ができない
いや、したくない・・・
今はただ照ちゃんを感じていたいから

多分、あっという間
生まれて初めてのキスは、ゆっくりと顔を上げた照ちゃんの涙に流れた

「ごめん・・・」
「どうして謝るの?」

照ちゃんらしいとは思う
けれど、謝る必要なんてどこにもないのに

「女の子同士でキスなんて・・・」
「照ちゃんとなら、いいんだよ」

本心を告げる
また、照ちゃんは大粒の涙を流す

「宥、私は・・・」

うまく言葉が継げない照ちゃん

「体勢、逆になろうか?」

今はまだ私が膝枕されている状態だった
涙がぽたぽたと流れ落ちるのを受け止めるのは、ちょっと話しづらかった
照ちゃんの悲しみは受け止めてあげたいけれど、それは実際の涙でなくてもいい

照ちゃんは首を振った
ぎゅっと目をつぶって、しばらくするとなんとか涙をこらえたようだった

ゆっくりと、照ちゃんの手が私の髪を梳いていく
髪の毛さわれられるの、気持ちいいな・・・

「私は、咲のことがときどき分からなくなる。それでも、宥を通してなら、分かってあげられるのかな?」
「うーん、私を通すことはないと思うよ。直接分かり合うのが、一番だから」
「でも・・・・」
「うん、でも、私がきっかけにはなれるかもしれない。私だって、お姉ちゃんだから」

ようやく照ちゃんが微笑んでくれた
うん、笑ってる方が素敵だよ

「じゃあ、ちょっとお手本見せて。お姉ちゃん」
「改めてそう言われると、ちょっと恥ずかしいかも」

照ちゃんが妹、か・・・・
それはそれで楽しそうだけど、それでも今の関係の方がいいかな
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/04(木) 03:17:05.57 ID:eNqBZcmV0
どうも、ある程度書けると投下したくなる病患者の1です
まだ次鋒戦の途中までしか書けてないのですが・・・・

宥と咲がメインになって、憩ちゃんとキャップが空気になってしまうけど、もう諦めた
4人同時に立てるなんて無理なんや・・・

明日の夜に先鋒戦の終了まで
次鋒戦以降はまた書き次第ということになりそうです
それではおやすみなさい
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 10:29:12.86 ID:7ba3xS700
乙ー
やっぱり咲さんは黙っている時が一番怖いな
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/10/04(木) 21:01:48.13 ID:LPXYDD2G0
仕事が終わらぬーーー
でも日付が変わるくらいには更新できると思います

こ、このスレにはかわいい咲ちゃんしかいないから(遠い目
508 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/04(木) 23:53:37.36 ID:eNqBZcmV0
-クラス対抗戦 決勝先鋒戦 前半戦
-南3局 親:宮永咲

「ツモ嶺上開花ドラ1。3200オールです」

4巡目にして嶺上開花
今までが調整で、この親で連荘するということなのだろうか

嶺上開花の性質上、大明槓の責任払いでない限りツモが多くなる
でも早い段階で嶺上開花を多用すれば、荒川さんの爆発がそれだけ早くなる
だからとにかく場を流すことに徹して、自分の親になった時に連荘して勝負をかけるということだったのだろうか・・・

・・・いや、多分違う
咲ちゃんの表情を伺えば、なんとなく分かった
もう、咲ちゃんは上がる気がない。そんな気迫はまるでなかった

「ロンや、3900の1本場」
「はい」

次局、咲ちゃんはあっさりと荒川さんに振り込んだ

やっぱり・・・

次はオーラス、私の親
咲ちゃんの狙いは多分・・・

阻止するべき?
無法に手を染めて、とにかく阻止しようと思えばできるけれど、それはクラスの、3年1組のためにならない・・・

まっすぐ上がりを目指して、それで阻止できるならその方がいい

「ロン、2600」
「はい」

また咲ちゃんが振り込んで、前半戦が終了した
一礼してすぐに対局室を出ていく咲ちゃんを、私は慌てて追いかけた



先鋒戦 前半戦終了時点

福路美穂子(3−2) 125000
宮永咲(1−5)    68300
松実宥(3−1)   105500
荒川憩(2−10)  101200
509 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/04(木) 23:56:42.63 ID:eNqBZcmV0
「咲ちゃん、待って」

早歩きする咲ちゃんに声をかけると、咲ちゃんは止まって振り返ってくれた

「松実さん?」
「宥でいいよ」
「じゃあ、宥さんで」

キョトンとした咲ちゃん
夢中になって追いかけてきたけど、面と向かって話すのは初めてだったかもしれない

「呼び止めてごめんね」
「いえ、それで何でしょうか?」
「どうして、±0にこだわるの?」

咲ちゃんはまたキョトンとする

「私は3万点以上マイナスですよ?」

そういう返事が返ってくるとは思っていた
でも、実際に対局していた私が、一番よくわかる

「じゃあ言い方を変えるね。どうして私の点数を調整したの?」

私の点数は105500点
普通の25000点持ち30000点返しだったら30500点だから、±0になっている

咲ちゃんはわざと私の振り込みを防ぎ、カンドラで支援し、支援しすぎた分をけずってあとは局を消化した

「・・・私、よく分からないんです」

咲ちゃんが困惑の表情を浮かべた

「±0のことは、お姉ちゃんから聞いたんですか?」
「そうだよ。この対抗戦、ずっとそうしてたよね?」
「自分を守るために、±0で打つようにしてきました。意識すればなんとか普通に打つこともできますけど、それだと負けることの方が多いから・・・。それにその方が無理して打ってる感じがして、疲れるんです」

普通に打って負けるくらいだったら、±0で打ったほうがいいのかもしれない
少なくとも、負けはしないのだから
咲ちゃんがそういう考えに至っても、仕方ないことのように思えた

「今朝のミーティングで、赤土先生から聞きました。3年1組が他のクラスから狙い撃ちされるだろうって」
「うん、照ちゃんが出る前に中堅までで飛ばすなり削るなりするのは、作戦としては当然だと思うよ」
「でも、私はお姉ちゃんが打っているところが見たくて・・・」

だから私をかばい、調整した
クラスの勝利が遠くなることが分かっていながら・・・

調整する麻雀しか、できないから?

「でも、自分以外の誰かを±0にするなんて、今までやったことがなくて。すごく難しくて、他の2人もすごく強いから、自分を犠牲にするしかありませんでした」
「そっか・・・」

多分照ちゃんだったら、もう声を荒らげているかもしれない

私たちのクラスを甘く見るなって
どうして自分の勝利を目指さないのって・・・

うん、分かるけど落ち着こう、照ちゃん
咲ちゃんに悪気はない。ただ、誰かが勝って喜び、誰かが負けて悲しむ――そんな感情の行き交いに耐性がない故の行動、そんな行動を責めてもきっと逆効果なだけ

「咲ちゃん。これが個人戦なら、私は何も言わないよ。でもこれは団体戦。勝負は、咲ちゃん一人のものじゃない」
「ほんと、そうですよね・・・」

俯き、視線を落とす咲ちゃん
咲ちゃんの後ろには、穏乃ちゃんや憧ちゃん達が控えている
咲ちゃんが失った点棒は、咲ちゃんだけのものではない

だから、取り返さなきゃいけないんだよ
510 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/04(木) 23:59:52.02 ID:eNqBZcmV0
「咲ちゃん。いまからトータルで±0にできる?」
「・・え?」

普通の25000点持ち30000点返しだったら、咲ちゃんのポイントは−37
次の半荘で1位を取り、90000点前後に調整すれば、ポイントでは+37。トータル±0になる

「その上で、私を±0にしてみて」
「・・・怒らないんですか?」

自分が打つと誰かが怒るかもしれない、そんな圧迫された心境で打っても楽しめない

気配りしすぎても、疲れるだけなんだよ・・・

「私は怒らないよ。むしろ、見せてほしいな。私も咲ちゃんも同時に±0に出来るのかどうか」
「すごく、難しそうですね」

そう呟く咲ちゃん
それでも、その瞳は闘志に燃えているように見えた

「うん、すごく難しいよ。私だって、11万点で留まるつもりはないから」

次の半荘も±0なら、私の持ち点は11万点前後になる

「負けたら悔しいから勝つように頑張りました。でも今度は、勝ったら怒られるようになりました。だから±0で打つようになりました・・・」
「うん、そうみたいだね」
「でも±0で打つようになったら、今度は怖がられるようになりました。お姉ちゃんにはそれでも怒られたりしました」
「うん、聞いてる」
「私、どうしたら良かったと思いますか?」

真剣な眼差し
私は安心させてあげられるように、微笑む

「今までは今まで。これからはこれから。今日はこれから、どんな風に打ちたい?」

過去のことを言っても、もう戻れたりしない
それよりも、今目の前に控える次の半荘のことを考えないといけない
叶うことなら、前向きに

「・・・勝ちたいです」

ポツリと、聞き取れないくらい小さな声
でも、眼差しに力がこもり、咲ちゃんは言った

「勝ちたいです。みんなの点棒、取り返さないと」
「そうだね。じゃあ、さっきの±0は無しにする?」
「あ、でも。全力出したら結局、±0になっちゃうかも・・・」
「だったらそれでもいいよ。急に無理して変わらなくても、少しずつ変わっていけばいいんだよ」

少しだけ逡巡して、咲ちゃんは頭を下げた

「ありがとうございます」
「うん、じゃあそろそろ行こう」
「はいっ」



後半戦、咲ちゃんは全力で打った。そう感じた
結論から言えば、ポイントでは両者±0になった

でもそれは前向きな±0だと思う

照ちゃんがどう思うかは分からない・・・
でも、私はこれでよかったと思う

自分が打ちたいように、打つことができたんだから


先鋒戦終了

松実宥(3−1)   110400
福路美穂子(3−2) 105200
荒川憩(2−10)   94300
宮永咲(1−5)    90100
511 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/05(金) 00:02:47.08 ID:ItgbP5MU0
-side 穏乃-

「ねー、サキに何かあったの?」

淡が複雑な表情を浮かべている

先鋒戦前半
モニターで観戦しているだけでは分からないけれど、明らかに咲はいつもと違っていた

露骨に手を崩して振り込んでいる
それも、宥さんが切るだろう牌を先んじて・・・

かばっているとしか、思えなかった

「うーん、余計なこと言っちゃったかな」

苦笑を浮かべる先生

「ハルエ、咲に何吹き込んだのよ?」

憧が聞く。先生は肩をすくめた

「いやぁ、宥が福路と憩に狙われるだろうから、逆にそこを狙い打ってやったらいいよって言ったんだけどね・・・」
「それがどう巡り巡ってこうなるのよ・・・」
「サキらしいけどね。ほんと、自分の勝利が眼中にないんだからさ。ま、このくらいいいハンデだよ」
「それじゃ困ります、咲さんの個人戦じゃないんですよ」

淡は興味を失ったのか、携帯をいじり始めた
対する和は、怒り心頭だった

「テルにメールしたら返事くるかなぁ」
「とにかく、前半戦が終わったらちゃんと打つように言ってきます」
「まあまあ、落ち着けよ、和」

先生がなだめる
そうこうしているうちに、前半戦が終了した
咲は−3万点近く。今までずっと±0に調整してきたのに、どうしてしまったんだろう

咲がすぐに対局室を出て、それを宥さんが追いかけていった

「まあ、宥に任せておけばいいさ」
「松実さんは敵チームなんですよ。私が行ってきます」

先生の言葉をさえぎるように和が教室を飛び出そうとする
私は慌てて止めた

「宥さんは、そういうの関係ない人だから」
「でも、咲さんが今まともな状況とは思えませんし、松実さんが励ましに行くとも限らないじゃないですか」
「その場にいた宥姉の方が分かることがあるかもしれないし、今の和の剣幕で咲のところに行っても涙目になるだけだよ」

憧も止めに入ってくれる
そこにキラキラキラっと、電子音が響く。淡のメールの着信音だった

「あ、テルからメール来た・・・・。って、うわぁ、やっぱりサキはサキだね」
「ん、何て言ってきたの、淡?」
「『宥が±0にされた。何か聞いてる?』だって」
「え?」

モニターに出ている点数を見る

松実宥 105500

咲がここ3日間でずっとしてきた±0そのものだった

「なるほどね、サキが変だったのはこのユウって人を±0にしようとしてたからか。ふんふむー、なんて返信しようかな」
「なっ・・・」

和が絶句してしまう
そりゃあそうだろう。私だって意味が分からない

「こ、こんなの偶然です」

しかしその声に力はない
打ち方を見ていれば、明らかに意図的なのは分かる。理解できるかどうかは別として

「やっぱり余計なこと言っちゃったか。咲は、3年1組が狙われてお姉ちゃんまで回らないのが嫌だったんだろ。だったら宥を±0になるように打てば、次鋒中堅がどんなに狙われてもトブことは考えにくい」

先生が肩をすくめる
自分の点数を調整すること自体は、たとえば逆転まで何点必要みたいに考えることはあるけれど
誰かの点数を調整するなんてこと、普通は考えない・・・
512 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/05(金) 00:09:28.68 ID:ItgbP5MU0
「ま、流石に3万点も減らしたら、咲も何か考えるでしょ・・・。後半戦に期待しましょ」

憧が和の肩をポンポンと叩く
すっかり毒気を抜かれてしまったのか、和はおとなしく席に着いた

「『なんにも聞いてないよー。こっちプチ修羅場ー』。よし、送信」

淡が送信するのと同時に、後半戦が始まった


後半戦が始まると一転、咲はどんどん上がりだした
結局9万点まで盛り返して、終了する

「ねーアコ、これちょっとポイントで計算してみてよ」
「計算も何も、また宥姉は±0でしょ・・・」
「いいから」
「はいはい」

憧が黒板に点数を書いていく

「おいおい・・・」

さすがの先生も、驚きの声を漏らした

宮永咲
−37、+37
松実宥
±0、±0
荒川憩
−4、−12
福路美穂子
+41、−25

点棒で言えば、咲と宥さんの間には2万点の差がある
けど、トップにポイントが入るオカを入れたとき、2人のポイントは並ぶ

「まさか、自分も宥姉も±0になるようにしたっていうの」
「ほんと、これだからサキはおもしろいよね。自分だけでも難しいのに、もう一人も調整するとかさ」
「認めたくはありませんが、事実は事実ですね・・・」

みんなが驚きの声を上げる
513 :tell you that I love ...(8-1) [saga]:2012/10/05(金) 00:12:50.16 ID:ItgbP5MU0
そこに、咲が戻ってきた
俯いたまま教室に入る

「あ、あの・・・」

咲が何か言いかけようとするけど、

「咲、おつかれ。頑張ったね」
「え、うん・・・」

自然とねぎらいの言葉が出てきた
点棒自体は最下位だけど、まだトップとは2万点差
それにこんなすごいもの見せられて、燃えないわけがない

でも咲は、すごい勢いで頭を下げた

「あの、ごめんなさい」
「謝ることなんてないって」
「でも、いつもどおり打ってたら点数減らなかったし・・・」

顔を上げた咲は、もう泣きそうになっていた
そんな咲に、淡が微笑んだ

「サキ、いつもと違うことの1つや2つないと、息が詰まっちゃうよ」
「淡ちゃん・・・」
「そーそー、この面子相手に失点1万点くらいなら全然問題無いしね」
「そもそも運の要素が大きい麻雀で毎回同じ点数とか、そんなオカルトありえませんから」
「ま、そういうことだ、咲。むしろ余計なこと言って悪かったね」
「先生、みんな・・・」

とたん、咲がボロボロと涙を流した

「咲ってば、なんで泣くんだよ」
「だって・・・・」

それ以上何も言えなくなってしまった咲を、私はきゅっと抱きしめた

「勝ったら嬉しい、負けたら悔しい、プラマイ0だったらまた次頑張る、それでいいじゃん」
「・・・そう、だね」

震える背中をポンポンと叩く
咲ってちゃんと食べてるのかな、すっごく細い

『まもなく次鋒戦が始まります。選手の方は対局室に集まってください』

放送が響く。行かないと

私は咲を抱きしめていた腕を解いた

「じゃあ次行ってくる。逆転するから、見ててよ」
「しず、わかってるね?」

先生が声をかけてくれる

「大丈夫です、行ってきます」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/05(金) 00:18:09.05 ID:ItgbP5MU0
以上、先鋒戦でした
ほとんど麻雀してねぇよ・・・いや、知らんし

次鋒戦は結局まだ途中なので明日の更新はありません
なんでしょうね、この次鋒戦ならそんなに書かなくても大丈夫かっていう安心感は・・・

まったくの余談ですが、ベイスたんハマスタ到着おめでとうやよ!
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 00:48:50.78 ID:wtmpgti4o
にゃー
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 23:16:19.26 ID:KRPwoqJQ0
乙!
主人公から主人公へのバトンタッチ……胸が熱くなるな
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/10/06(土) 20:14:40.29 ID:ahD3WXvz0
1です
全然今の流れと関係ない、10レスにも満たない咏えりSSを勢いで書いてしまったのですが・・・
こういう短いのってどこに投稿すればいいんだろう

それより早く続き書けよって話ですよね、はい
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 20:23:45.90 ID:f+ZXzFeGo
ああ、そうだな!
519 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/07(日) 00:39:23.51 ID:tgEyM1f+0
-side 菫-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 前半戦
-東4局

東 高鴨穏乃
南 松実玄
西 弘世菫
北 臼沢塞


まったく、めんどくさいことになった・・・

「リーチ一発ツモ、2000オール」

1年の高鴨がツモ上がる
準決勝の時もそうだったが、何度射抜いても全く動じない

あの松実宥のように、こちらの癖を完全に見抜いて避けるでもなく
あの安河内のように、あぶれ牌が出るまえに安手で上がるでもなく

何度射抜かれようが真っ直ぐに距離を詰めてくる
いつもならそれこそ、何度でも射抜いてやるのだが・・・

――とにかく臼沢を狙え

昨日のミーティングで、そんな話になった
久保先生の指示は、とにかく照に回る前に3年1組を飛ばせ、という至ってシンプルなものだった

簡単に言ってくれる・・・

松実宥、臼沢塞、園城寺怜
この3人に防御に徹せられたら、そう簡単に崩せるものではない
照が出てくる前にと狙い撃ちにあうのは、向こうだって当然読んでいる

案の定、臼沢は安河内戦法に出ていてあぶれ牌が出てこない
そして標準を臼沢にしているせいで、他の二人、特に射抜かれても構わないとどんどん前に出てくる高鴨に先を越されてしまう
さらに、松実玄がドラを支配しているせいでそもそも打点が上がらない
うまく射抜けても、せいぜい満貫がいいところだ

唯一の救いは、東1で松実玄を射抜いておいたおかげで、少し松実玄が躊躇していることか
流石にドラゴンロードにまで前に出られては火力のない私には厳しい

まったく、姉といい妹といい、松実姉妹には手を焼く・・・

「ロン、2000」

狙いを高鴨に変え、親の連荘は阻止する
それでも、その瞳から闘志は消えない・・・

臼沢は諦めてこの高鴨を狙うべきなのだろうか

まったく、めんどくさいことになった・・・


なあ、照・・・
お前のクラスは、楽しそうだな・・・
520 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/07(日) 00:41:36.00 ID:tgEyM1f+0
-side 照-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 開始前
-3年1組教室

宥が戻ってきた

「宥、咲は何か言ってた?」

いてもたってもいられず、ねぎらいの言葉よりも先にそんなことを口にする私

「宥、おつかれなのよー」
「トップで帰ってくるなんて、ちょーすごいよー」

みんながねぎらうのを見て、私は少しへこんだ
落ち着かないと・・・

「ごめん。お疲れさま、宥」
「いいんだよ照ちゃん。でも、話はあとでね」
「え、ああ・・・」
「大丈夫だよ、悪いようにはなってないから」

すぐにでも話を聞きたいけれど、この場では確かに無理かも
宥が自分の席に座ると、入れ替わりに塞が立ち上がる

「よし、じゃあ行ってくるか」
「塞ー、がんばれー」
「ま、できる限りやってくるよ」

そう言って、塞が教室を出て行った

「ところで、怜ちゃんのこれ、どういう状況?」

怜は、清水谷さんに膝枕されている
わざわざ専用のマットまで持ってきて

ああ、宥が先鋒戦に出て行ってから清水谷さんが来たから、訳がわからないのも仕方なかった

「膝枕分を補給しとるだけやで、宥姉ちゃん」
「そうそう、気にせんといて」
「えっと・・・」

宥の言いたいことは分かる
本来、清水谷さんのクラスはここではないのだし、当の清水谷さんのクラスも決勝に出ている。普通ならここにはいない

「竜華は自分のクラスに居づらいだけなのよー」
「だってひどいんやもん、昨日のミーティング。宮永照に回る前に飛ばせって・・・。それ私をわざわざミーティングに呼び出して言うことやあらへんやろ。朝はしゃーないから顔出したけど、もうムカついてムカついて!」

ということらしい
副将が清水谷さんだが、清水谷さんに「私を止めろ」というような一言くらいほしかったということのようだ
誰が来ても負けるつもりはないけれど・・・

「ま、そういうことやから自分の出番が回ってくるまで怜と一緒にいさせてな」
「え、じゃあ中堅戦の時はどうするの?」
「ここで怜を応援するで!」
「えっと・・・」

宥が来る前にも、塞が同じような議論をしたので、もう止めに入る人はいない
てこでも動かない、そういうことだった

「宥がいない間だけど、いてもいいよってことになったから、そうさせてあげて」
「みんなが大丈夫なら、別にいいけど・・・」



ねぇ、菫・・・・
菫のクラス、これでいいの?
521 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/07(日) 00:45:15.45 ID:tgEyM1f+0
-side 塞-

-南4局1本場

南入してから、弘世菫の標的が1年生に向かう。それがなんとなく分かった

昨日の次鋒戦、私には正直実感がなかったけれど、あとで記録を見ると確かに南浦さんの手が1巡程度ではあるけれど遅れていた
少しずつ、塞ぐ力が戻ってきているのかもしれない

だから、南入してから、弘世の手を塞ぐことに意識を注ぐ

普通1巡程度遅れたところで大勢に影響はない
だけど、弘世は違う。1巡違ったがために射損ねるということは十分ありえる

現に、弘世はこの1年の高鴨さんを射抜ききれていない
成功率は半々というところか

宥が冬の個人戦でこの弘世と対戦したときから、くせが修正されているらしい
昨日宥に弘世のくせを聞きに行ったらそんな回答だった

でも、なんとなく視線の動き方が誰を標的にしているかの指標にはなった
オーラスで、おそらく狙いは玄ちゃん
高鴨さんの親で連荘は避けたいところだろう。だとすれば、成功率の上がらない高鴨さんを狙うよりはという判断だろう

――塞ぐのやめるか

私はとにかく、平和手っぽいときには七対子、逆に対子手の時には平和手を目指すように打ち回した
当然無理やりの遠回り、手になる可能性は低い
でも今必要なのは、とにかく振り込みを避けること

思いがけず、宥がトップでバトンを渡してくれた。だから私は、それほど無茶をしなくてすむ
高鴨さんの親での連荘を避けたいのは、私も同じ

「ロン、3900の一本場」

弘世が予想通り玄ちゃんから出上がりする
これで前半戦が終了する

うん、力が戻ってきている実感が湧いてきた
これもエイちゃんとシロのおかげだろう・・・

でも塞がれていると思われるのは良くない
ちょっと調子が悪いな、くらいに思ってくれればいい
目立って狙われたら元も子もないからね

それにしたって・・・

「はあ、また焼き鳥か・・・」

小さくつぶやき、私は席を立った


次鋒戦 前半終了

臼沢塞(3−1) 100100(-10300)
弘世菫(3−2) 110600( +5400)
松実玄(2−10) 88900( -5400)
高鴨穏乃(1−5)100400(+10300)
522 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/07(日) 00:47:45.27 ID:tgEyM1f+0
-side 憧-

「今度のしずへのアドバイスは良かったみたいね、ハルエ」

だいぶ落ち着いてきたけど、まだ元気のない咲の頭を撫でながらの観戦

「まあ、ちょっと弘世も調子悪いかなって感じはあるけどね」

今回、ハルエはしずに対してこんなアドバイスをしたらしい

『しずに弘世のくせとか見抜くのムリ! 体で覚えるまで何度でも立ち向かえ』

私がこんなアドバイス受けたらぶん殴ってやるところだけど、体力バカのしずにはちょうど良かったのだろう

準決勝でも狙い撃ちされ、この決勝でも狙い撃ちはされている
でも、今日はその狙い撃ちをかいくぐってどんどん上がっている

おお、かっこいいぞ、しず!

逆に同卓の玄は、東1で狙われてからちょっと手をこまねいている感じだった。途中で満貫ツモが1回あっただけ。
玄にとっては弘世さんみたいなあぶれ牌を狙い撃ちする人は苦手意識が強いだろうし、無理もないことだった

前半戦が終わって、僅差だけど2位までもってきた
これはほんとに逆転できるかもっ

「ね、咲。誰かがへこんでも、こうやって誰か取り返してくれるんだよ」
「うん、そうだね・・・。みんなでひとつのチームだもんね」

咲が±0を狙ってできることは、すごいことだと思う
それは個人戦では、勝利できない力だけど・・・

でも、団体戦だったら、調整する力はきっとこれからも役に立つ

好き好んで±0にできるようになったわけじゃないみたいだから、咲はそんな力は好きじゃないかもしれないけれど
団体戦を通して自分の力をもっとうまく楽しく使えたら・・・

「だからそろそろ笑顔になってさ、しずのこと応援してあげて」
「うん」

まだちょっとぎこちなかったけど、ようやく咲が笑顔を浮かべてくれた
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/07(日) 00:52:24.47 ID:tgEyM1f+0
おかしい、次鋒戦のくせにまだ終わらない・・・
もうちょっとだけ続いて、中堅戦に入りたいです

今日のところは寝ます

>>516
主人公リレーなのさっぱり意識してませんでした
言われてみれば確かにそうだった、もうちょっと書けばよかった・・・
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/10/07(日) 00:55:34.86 ID:DucmLHEAO

乙!
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県) [sage]:2012/10/07(日) 01:00:16.96 ID:obT0l1xLo

面白いから俺はこのままジックリ描写でもええで〜
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/07(日) 01:25:16.62 ID:0A5fwnjJ0
乙!
憧咲!そういうのもあるのか
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/07(日) 20:16:24.33 ID:zj6ZqRgEo
憧ちゃんマジアコチャー
528 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/08(月) 01:58:04.56 ID:OYz/mOb+0
-side 塞-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 後半戦
-東4局

東 臼沢塞
南 弘世菫
西 松実玄
北 高鴨穏乃

「ツモ、2000、4000」

うーん、親っかぶり。旗色悪いな・・・

出上がりの効率が悪いとみるや、弘世はツモ狙いに切り替えてきた
その辺の修正力は、流石に学年上位ランクなだけはある

後半戦は高鴨さんと弘世のマッチレースという様相
しかしお互いドラがないので高くて満貫というツモりあいになっていた
でもこの傾向は、よろしくない・・・


-南1局

「リーチ」

6巡目で、高鴨さんからリーチ宣言

「ポン」
「む、玄さんが鳴くなんて珍しい」

そのDを鳴いたのは、玄ちゃん・・・
玄ちゃんはほとんど鳴かずに手を進めるのに

鳴いた牌と、手元から出てきた赤5ピンが2枚さらされる。ドラ2つか・・・

ドラは五萬。2枚くらい、もしかしたら3枚持っているかもしれない
そしてソウズの赤は1枚だから、三色同刻がこれで完成したか、あるいは普通にタンヤオか・・・

いずれにせよ、弘世がツモ狙いに切り替えたことで、出上がりの危険が減ったから前に出てきたんだろう

――塞ぐか?

後半戦はツモ狙いに切り替わったこともあって、塞ぐのは温存していた
まだ完全に力が戻ってきているとはいえないし、連続で使えばバテてしまう。大量失点さえ防げれば、そこまで無理をする必要はないんだから

少しだけ、ドラゴンロードが塞げるのかどうか試してみるか

そう考え、私は玄ちゃんに向ける視線に力を込める

「・・・・っ!」

きっつぃ・・・
だぁぁぁ、ヤメヤメヤメ!

どこかの修行場で地球の重力を10倍にした、みたいな圧力が一気に押し寄せてきた

あの照でさえ、まったくドラが来ないほどの支配力
そんなものを塞ぐのは並大抵じゃないってことか・・・

とりあえず玄ちゃん警戒しつつオリだな・・・
そして3巡後

「ツモ。タンヤオ・トイトイ・三色同刻・ドラ7。12000、6000」

もう少しで数え役満か・・・
まったく、これだけドラが集まれば1回上がるだけで一気に形勢逆転できるから羨ましい

親っかぶりが弘世だったのが救いだけど、これで一人沈みか・・・
まあまだ1回も上がってないから当たり前だけど

でも、牙を剥くのはラス親でいい。それまでは、凌ぐっ


次鋒戦後半戦南1局 終了時点

東 弘世菫  106600
南 松実玄  105900
西 高鴨穏乃 101400
北 臼沢塞   86100
529 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/08(月) 01:59:23.45 ID:OYz/mOb+0
-side 恭子-

観戦室から、出店で買ってきたポップコーンを片手に観戦する
対局さえ始まってしまえば、もうできることはない。ただ敗者として、勝負の行く末を見守るだけ

出来れば、あの場にいたかったけどな・・・

「隣、ええか?」
「・・・・なんでこんなとこにおんねん?」

声でわかる
振り返りもせず、私は長机の自分の左隣をコツコツと叩いた

「恭子こそ、なんでこんな人の少ないところで見とるねん。探したやん」
「いや、そもそも洋榎に探されるなんて思っとらへんしな」

隣に座ったのは愛宕洋榎、同じサッカー部の、主将にしてエースストライカーというやつだ
そして同時に、3年2組の中堅。もうすぐ出番のはずだった

「いや、ウチのクラス居づらいんやもん。竜華がおればまだええけど、残りの面子は大阪のノリが全然通じへん。息が詰まってまうで」
「竜華がおらんってどういうこっちゃ」
「昨日ミーティングがあったんやけどな。久保ちゃんが、宮永照に回す前に3年1組を飛ばせとか言いよるから竜華カンカンでな」
「ああ、そりゃダブルで怒るな」

自分には宮永照を止められないと言われたも同然
あと、中堅までに飛ばせって、仮にそれができたとして中堅で飛ぶ可能性が高い。怜を飛ばせと言われているようなもの

「由子は3−1におるし、絹も漫も2−10におるし、恭子くらいしかフリーなのがおらんと思ってあっちこっち探したんやで」
「メールなり電話なりすればええやん」
「それじゃあつまらんやろ、時間も潰れんし」
「なら私がどうこう言われる筋合いもあらへんな・・・」

私を探していてたというよりは、とにかく誰か話し相手が欲しかったというくらいのことだろう・・・

洋榎には、由子が対抗戦に出ていない理由を伝えてはいない
決勝の日に用事があるから断った、でもその用事はオーダー決定後に無くなった、ということで洋榎には説明してある

流石に代行に止められたとか聞いたら洋榎も黙ってはいないだろう
事が大きくなるのを恐れた由子から相談を受けた私は、とりあえず適当な理由をでっちあげておくことにした

真相を話すつもりではいる、でもそれは対抗戦が終わったあと
余計なことを話して、洋榎が麻雀に集中できないという事態になるのは避けたかった

ましてや今は、決勝戦のもうすぐ中堅戦が始まる時間
そんなタイムングで洋榎に会うとは思っていなかった
これは、話をしておけというサインなんやろうか

・・・いや、無いな。こんなタイミングで話してどうなる

「ポップコーン、もらうで」
「言いながら食うのやめや・・・」

まあ、話さんでもええやろ
今洋榎に余計なこと吹き込んでどうするねん
530 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/08(月) 02:00:22.02 ID:OYz/mOb+0
「おや、先客ですか?」

そこにやってきたのは船久保だった
もともとここで舟久保と待ち合わせをしていた

「お、浩子やん。浩子もこんなとこで観戦なんか」
「っていうかなんでこんなところに洋榎さんがおるんですか?」

そりゃあそう思うわな

「ま、試合前の気晴らしや」
「さよですか。でももうオーラスみたいですし、ぼちぼち戻った方がよろしいですよ?」
「なんや、ここに着いてからはあっという間やったわ」

そう言って洋榎が立ち上がる

「まあ、飛ばせと言われた以上、全力で飛ばすのがウチの流儀や。相手が何万点持ってようとな」
「その自信、ちょっと分けてほしいわ」

冗談めかして言ったつもりだったが、もう洋榎のスイッチが切り替わっていた

「恭子、お前にはお前の強さがある。それだけは覚えとけ」
「あ、ああ・・・」

思わず圧倒された・・・
ほんとに飛ばしかねんな、これは
洋榎が観戦室を出ると、同じ場所に船久保が座った

「手短に。頼まれてた歴代の代表選などのデータです。10年くらいと言わましたが、学校でデータ化されているものは全部焼いておきましたので、あとで見てください」
「仕事早いな・・・」
「それほどでも。それに興味がありまして」
「こんなこと調べろって言った理由か?」
「まさに」

まあ、ただの推測に過ぎんから過度の期待はご遠慮願いたいところやが・・・

「思ったんや。宮永照に勝ってほしくない理由。現在進行形な理由なのか、それとも宮永照には関係のないまったく別のことなのか」
「それで過去の記録にヒントを求めた、というわけですか」
「まあ、どうせ空振りやと思っとるし、真相の究明になんて興味はあらへん。ただの暇つぶしや。データは帰ったら見させてもらうで」

そうこうしているうちに次鋒戦が終了した

次は中堅戦・・・・
この妙な胸騒ぎは、いったいなんなんやろうか
531 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/08(月) 02:02:41.81 ID:OYz/mOb+0
-side 塞-

-クラス対抗戦 決勝次鋒戦 後半戦
-南4局

南 弘世菫  108600
西 松実玄  102000
北 高鴨穏乃 103300
東 臼沢塞   86100


弘世の視線がやたらこちらに向かってくるのを感じる・・・
うーむ、最後の最後に私を狙い打つつもりだろうか

確かにラス親ということで多少の無茶をすることを見越せば、まっすぐ進んであぶれ牌が出る可能性も高い
ほんとに冷静だね、感心する

ってことは、この手、まっすぐ切ったら狙い撃ちか?

ドラ:五萬
手牌:二三四六CDE456788 ツモ:四

3色確定させるなら7ソウ切りでカン五萬待ち
でも、ドラが五萬である以上、このカンチャンはツモれない

とすれば、六萬はどうせつっくかないから六萬切りするのがベストか?
けど、そういうベストな牌ってのが確実に弘世に狙われている牌・・・・

とすれば、ドラ支配下では来るはずのない牌で待つしかない

打:7ソウ

そして私は、玄ちゃんを塞ぎにかかる

「・・・・・きついって」

小さく呟く
これは支配力だけでいえば天江衣に匹敵するわ・・・
あのときは無我夢中だったから、能力の限界点をその場では気づかなかった

全力疾走でマラソンをしているような疲労感が襲ってくる
限界点はまだもう少しだけ先
ギリギリまでは塞ぐ

せめて自分のツモ巡が回ってくるまでもたせる
532 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/08(月) 02:03:45.48 ID:OYz/mOb+0
弘世がノータイムでツモ切り

次いで玄ちゃんの、手が止まる
ちょっとだけ首をかしげた
ドラが来る予定だったんだろうか?

時間にしたら5秒にも満たなかったんだろうけど、塞ぎ続けている私にはその5秒も惜しい
ようやく玄ちゃんが切る
次の高鴨さんは、同じくノータイムでツモ切りした

自分のツモ巡
今までで最大級の疲労感が襲ってくる

まるでドラゴンがのたうちまわりながら最後の抵抗を示しているかのよう
これを塞ぎきれば上がれる

そんな予感を支えにして、私はいつも以上に重たく感じる牌をツモった

真っ赤に彫られた、五萬という文字

「ツモ!」

私がツモった牌を卓に置くと、全員の表情が凍りついた

「赤ドラだとっ」
「玄さんがいるのに・・・」
「・・え、えっ」

そしてゆっくりと手牌を倒した
もう倒すだけでもきついて・・・

「タンヤオツモ三色ドラ2。6000オール」

今日で最初の、そして最後のあがり
一応親だから連荘できるけど、もうそんな体力残ってないや・・・

「もう、ちょーダルいよーだからあがりやめします」

シロなのか豊音なのかよく分からないセリフ
みんなのおかげでなんとかギリギリ1位はキープできたし、これでよかったよね


次鋒戦終了

臼沢塞(3−1) 104100(-6300)
弘世菫(3−2) 102600(-2600)
松実玄(2−10) 96000(+1700)
高鴨穏乃(1−5) 97300(+7200)
533 :tell you that I love ...(8-2) [saga]:2012/10/08(月) 02:05:21.82 ID:OYz/mOb+0
-side 怜-

-クラス対抗戦 決勝中堅戦 前半戦
-南3局


もう、アカンかもしれん・・・


―――照

  ―――由子

    ―――宥姉ちゃん

      ―――塞、豊音





 ―――竜華

   ―――竜華っ

     ―――竜華ぁぁ





私、何を信じたらええの・・・

もうわからへん・・・

誰か、助けて・・・


「ロン、16000」


またや・・・

また・・・


神代っ・・・・・・
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/08(月) 02:11:13.76 ID:OYz/mOb+0
ということで次鋒戦終了です

というかつなぎで書いただけの -side 憧- が一番反応があるとかびっくり
憧咲とか、原作では接点無いですからね(廊下ですれ違ったくらい?)

この先、憧咲で出てくることないと思いますが・・・
筆が乗ればintermissionでやってみますかね?

ではおやすみなさい
眠たいまま投稿したから、朝見直したらすごい誤字をしてそうな予感・・・
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/10/08(月) 02:33:58.62 ID:Swz7jKzAO
乙です
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 14:36:48.69 ID:NqNYiUZBo


怜…!!
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 17:30:36.42 ID:AF1O7I+i0
乙ー
準決で脳内にて先制した姫様が有利(キリッ

未開のカプ、憧咲にも期待ー
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 03:41:30.75 ID:eBLJM0ujo
おつー
ときいいいいいいい
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 12:23:40.56 ID:/ibWUI9Eo
おつ
やっぱ玄を塞ぐのはしんどいか

次回は姫様無双
怜死んでしまうん?
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 12:30:21.62 ID:Dk+EB7EX0
昼休みー、な1です

今日明日は更新ございません
基本平日は亀ペースと思ってください
とはいえ、竜華の打ち筋が分かる前に副将戦を書いちゃわないと、うわーうわーってなりそうではある

あと、憧咲を考えてはみたものの

百合のメジャーランドに(咲×和、モモ×かじゅ、とか)、マイナーランドの刺客があらわれてマイナーカプを成立させようとする
とかいう意味不明な展開が思いつく今日この頃
多分疲れてるんだな・・・
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 12:42:44.33 ID:Dk+EB7EX0
>>539
さ、さすがに死人は出ないから(震え声
でも、竜華がモニターの前で「ときぃぃぃぃぃぃ」は鉄板ですよね(意味深
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/09(火) 15:00:01.20 ID:OM7Oti7/o
竜華がモニターの前で「ジョインジョイントキィ」は鉄板ですよね(意味深
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 17:23:32.32 ID:cmB+3leuo
トキ 病んでさえいなければ
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 18:12:03.75 ID:wr9NZU7IO
命は投げ捨てるものッ
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/10(水) 20:35:42.10 ID:ZkGvPnEA0
「ジョインジョイントキィ」ってなんだろうと思ったら、次のレスで察した
っていうかみんなで怜の死亡フラグ立てないであげてください・・・

明日には中堅戦の前半はあげられると思います

安価じゃない咲SSが最近あんまり上がらなくなってきてさみしい・・・
546 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:29:31.05 ID:Mah/Mafi0
-side 怜-

-クラス対抗戦 中堅戦 開始前

塞の跳満が決まる
玄ちゃん相手に赤ドラをツモってきた

「玄ちゃん・・・」
「塞が、塞いだんだろうね」

宥姉ちゃんは流石に複雑な心境やろうな
玄ちゃんのドラ支配は絶対のはずだった、それでも塞に一時的とはいえ塞がれた・・・

ふむ、かっこいいことしてくれる
プレッシャーを感じてまうやん

「さて、動きたないけど、行こか・・・」
「頑張ってな、怜」

どのくらい頑張れば、ええんやろうな

中堅戦の面子が今までとは格が違う

学年2位の愛宕洋榎
全中チャンプの原村和
そして、神代小蒔・・・・

ちょっとやそっとの頑張りじゃ、太刀打ちできるとは思えない

ゆっくりと立ち上がる
照が、私をじっと見つめていた

「怜、100点残っていればいいから」
「・・・流石に100点じゃまずいやろ」
「100点でいいから」

そう強く言われても簡単には、はいそうですか、とは言えない
東1は様子見なんやろ・・・

「1年の副将と戦ったことあるんか?」
「ないよ」
「じゃあアカンやん、せめて万点棒は残しとかんと」
「様子見は、必ずしないといけないわけじゃない。牌譜も見てるし」
「・・・さすがに勝ってくるとは言わん。でも、安心して様子見できるくらいの点棒は残す、意地でもな」
「・・・怜」

照が複雑な表情を浮かべるけど、知らん
多少の無理はさせてもらうで
547 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:30:40.30 ID:Mah/Mafi0
そこに塞が戻ってきた、小瀬川白望に支えられて
そのあとから、鹿倉胡桃とエイスリンも入ってきた

「ただいまー」
「塞ー、お疲れさまー。っていうかなんでシロ達がいるの?」
「シロ以上にダルそうにしてるから心配になって」

塞も、そして支えている小瀬川もダルそうにしているのはなかなかシュールな構図だった
そしてエイスリンがスケッチボードに描かれたイラストを見せる

救急車と担架?

「病院に行かないといけないくらい動けないのかって心配した」

小瀬川解説員が一瞬で読み取る
エイスリンがコクコクと頷いた

「エイちゃん大げさ大げさ」
「でも動けなかったのは事実っ」
「まあ、そうだけどさ」

美術部の面子が談笑しとるけど、塞が体力をかなり消耗しているのは間違いなかった

塞がここまでして1位を守ったのに、私がのうのうと打って100点でええなんて、そんなの許されるわけないやろ・・・

「ちょうどええから、このマットに横になり」

竜華が、今まで私が横になっていたマットに塞を手招きした

「はは、まさか自分がそこで横になるとは思わなかったよ」
「ほら、誰か膝枕したり」
「はいはーい、私やるよー」

豊音がちょこんとマットの端に座った
塞が横になると、すぐに起き上がった

「豊音の膝じゃ高すぎる・・・」
「えぇー」

じゃあ次はシロだなどと会話が飛び交った
私も、この試合終わったら膝枕してもらお・・・

「じゃあ、行ってくるな」
「頑張ってねー」
「そこそこでいいのよー」

声援を背に、私は教室を出て対局室に向かった
548 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:32:01.61 ID:Mah/Mafi0
-クラス対抗戦 中堅戦 前半戦

-東2局

北 愛宕洋榎
東 神代小蒔
南 原村和
西 園城寺怜

東1はリータン一発ツモで先制できた
まだ姫様は起きとるが、未来視に割り込んでくる様子はない

問題は、寝てから・・・

「・・・・ったく」

と思ったら、もう寝よる
昨日と同じように、冷たい風が駆け抜けるかのように体が震える

まあええ
とりあえず1巡先見てお手並み拝見やな


―――――

手牌からEを切る、これでとりあえず平和テンパイ
洋榎が白をツモ切り

そして神代のツモ順でまたしても手が止まった

「昨日、警告したはずですが?」
「悪いけど、はいそうですかなんて簡単にはいかへんよ」

おっそろしいほどの睨みをきかせてくる
まったく、普段のぽやぽやした感じからは全く想像がつかん・・・

「昨日の神とは違いますから、これ以上は容赦はできません」
「そこをなんとか」
「無理です」

そう言いながら神代は、手出しの@切り

なるほど、それならその牌で上がれるわ

「ロンや、平和ドラ1」

―――――


昨日と違い1巡目から干渉しよったか・・・
まあでも、実際に切る牌自体は未来視と同じはずやろう

私は未来視の通り、Eを切った。これで神代から平和ドラ1で出上がりできる

「ロン」
「・・・はっ?」

手を倒したのは、原村和

「タンヤオドラ2。3900」

なんでや?
1巡先を見た時と同じ牌を切ったのに、なんで結果が違ってくるん・・・

Eで振るのなら、そもそも洋榎がツモったのがおかしいやん

――未来が書き換えられた?
――それとも、偽物の未来を見せられた?

考えられへん
何かの間違いや・・・
きっと疲れがたまっててちょっと未来視を覚えそこねただけや

いかんいかん、大げさ大げさ

でも実際には大げさでもなんでもなく、それが事実だということを東場ではっきりと突きつけられた
549 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:33:45.05 ID:Mah/Mafi0
-東3局

この局は1巡先を見るだけなら、神代はちょっかいを出してこなかった
容赦しないゆうとったけど、はったりやったんやろうか・・・・

再び1巡先
ふむ、これで一発ツモできるな
リーチ棒を取り出し、立てる

「リーチ」
「ポン」

ありえない声がかかる、1巡先を見たときには誰も鳴かなかったのに・・・

また原村っ・・・
神代やなくて、特殊なんは原村の方なんか??

一発も消え、ツモってきた牌はただツモ切るしかない・・・

「ロン、タンヤオ一盃口。2600やな」

その牌で洋榎があがる

違う
やっぱり未来が書き換えられとる

だって今切った牌は、原村が鳴かなければ本来洋榎がリーチ後1発でツモる牌やったんや
だったら一巡先を見たとき、洋榎がツモ上がりしとらなおかしい・・・

神代の瞳が私を見据える
絶対零度にまで冷え込んだような、冷たい眼光で

怖い・・・

心の奥底の震えが、少しずつ這い上がってくるのを感じた
550 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:35:42.00 ID:Mah/Mafi0
-東4局

再び1巡先を見る
前の局は振り込む前だけ書き換えられていた、そこまでは普通やった
まだ5巡目の段階なら、まだ未来は書き換えられてないだろう・・・多分・・・・・


―――――

ツモ切りの白は誰も鳴かない
そもそも1巡目に原村が切っとるしな

洋榎が手出しで北
神代が発

「ポンや」

それを洋榎がポン、南を切る
その後再び神代。切ったのは中

「おっと、そいつもポンや」

洋榎が発と中を揃える
でも、大三元やったら私の切った白も鳴いとらんと出来へん。もう白は場にあって2枚
あっても小三元までやな

また神代のツモ
神代が切ったのは・・・・

――白

「なんで白が出てくる・・・」
「ロンや、大三元やで!」

しかもそれを洋榎があがる
おかしいやろ、その白は5枚目やん

原村が1枚
私が1枚
洋榎が手牌に2枚
そして神代が切った1枚

ありえない未来

こんな露骨に書き換えてきよって、何が目的なんや・・・

神代の瞳は、相変わらず冷たいまま

「なんとか言ったらどうや、神代。こんな露骨に嘘とわかる未来見せよって」

返事はない
ただ氷の視線が、私を射抜くだけだった

―――――


・・・大三元があるから白は切らない方がいいですよ、っていうことか?
それで私の手を止めようとでもいうんか?

もうまともな未来は見せないぞっていう警告か?
嘘と分かる未来ならええけど、嘘かどうか分からんかったら、もう1巡先を見ても惑わされるだけ・・・

・・・1巡先が見れない?

私から未来視を取られたら、何が残るっていうの
未来視があるから、私は学年ランクを上げられた。なかったら、今も300位あたりでくすぶっていた

竜華やセーラとようやく対等に打てるようになれて、どんなに嬉しかったことか
照にだって、未来視が無かったらクラス対抗戦には誘われてはいなかっただろう・・・
551 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:37:41.97 ID:Mah/Mafi0
「おい、はよ切れ。怜」

現実に呼び戻される

「ごめん・・・」

慌てて白を切る

「ポン」

鳴いたのは、洋榎
あ、白が2枚あることはほんとやったんか・・・

神代が中を切り、それもポン

「あるでー、大三元あるでー」

洋榎が白と中を揃えた
まだ発は場には出ていない

そして次巡、ツモってきたのは

――発

流石に切れん。なんでこんなの持ってくる

1巡先を見る?
でもまた書き換えられとるかもしれん・・・

それでも・・・・

私はすがるように、1巡先を覗く


―――――

発を切る

「カン」

まさかの大明槓

「ツモや、大三元。責任払いやな、怜」

洋榎手牌:AB77 白-白白 中-中中 発-発発発  嶺上牌:@

薄気味悪く笑う洋榎
そして、神代も、原村も、似たような笑みを顔に貼り付けていた・・・

ケタケタと、3人の不気味な笑い声が重なる

私は未来の中で叫んだ

怖い・・・
こんなのホラーやん・・・

助けて、助けて・・・・

竜華、竜華っ・・・

―――――


「おい怜、おまえ大丈夫か?」

また現実に呼び戻される

「いや、すまんな・・・」

はっきりと、自分の声に生気がないのが分かる

「介錯したる、はよ切りや」
「せやな。介錯してほしいわ・・・」

もはや、自分が何の牌を切ろうとしているのか私には分かっていなかった
552 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:39:52.60 ID:Mah/Mafi0
-side 洋榎-

洋榎手牌:AB六七八77 白-白白 中-中中

ま、ただの白中だけやけどな・・・
それにしても怜はビビリすぎちゃうか

もともと色白やけど、どんどん顔面蒼白になってきよる
体調悪いんやったら、それこそはよ終わらせてやらなかんな・・・

手を震わせながら怜が切ったのは、

「強い牌切るやん。それでこそ園城寺怜や」

――発

普通は切れんのやけどな、上がりも鳴かれもしないのを未来見て確認したんやろ
便利なこっちゃで

「でも悪いな、ツモや。500、1000」

ドラの無い、白中だけの手
ここはこれでええ

どうにもさっきから、隣の魔物が大人しいからな
自分の親番で稼がせてもらうで
553 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:42:02.26 ID:Mah/Mafi0
-side 怜-
-南1局

洋榎のさっきのあがり
大三元やなかった、でも待ちは同じ・・・

何が嘘で何が本当なのか、さっぱり分からん
どないしたらええの

未来を見なければええのか?
でも、そんなことをしたら私の実力なんかで太刀打ちできへん・・・

かといって未来を見たら、またあんな恐ろしいものを見せられるかもしれん・・・

どうしたらええの?
どうしたら・・・

「リーチや!」

洋榎が8巡目にリーチをかけた
神代も原村もとりあえず現物を切る

私のツモが回ってくる
降りることで頭がいっぱいになる

もう戦いたくない・・・ひたすら現物を切れば振ることはない
でも、現物は今2枚しかない・・・

・・・現物があるうちは未来は見ない

ひとまず現物を切る
洋榎の一発は無し

「リーチ」

神代が追いかけた・・・
原村は完全に降りたのか、神代のリーチ牌を合わせ打つ

でも私は神代のリーチ牌は持っていない・・・
共通する安牌は、無かった

私は・・・私はなんて弱くて、脆くて、愚かなんや・・・・

絶望しか待っていないというのに、それでも一巡先に縋ってしまう


―――――

神代のリーチ牌はA
神代も洋榎も、Cを捨てている
Aは原村が合わせ打ちし、さらに洋榎も1枚捨てている。ワンチャンスというやつやけど

普通なら、筋の@は通るはず・・・

「ロン」

発声とともに牌を倒したのは原村

「ピンフのみ。1000点」

・・・・確かに原村に対しては無筋やったけど、どう考えたらええんや、これは

―――――
554 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:44:09.74 ID:Mah/Mafi0
それでも現実的に、切るのは@くらいしかなかった
それに、あの原村の手はABでの@-C待ちだった
神代も洋榎も@は単騎かシャボでしか待てない

仮に原村に上がられても1000点
これが嘘でも、リーチしている人に振るよりはマシだろう

「ロン」

発声とともに牌を倒したのは原村

「ピンフのみ。1000点」

1巡先を見たのと同じ牌姿
でも、そこから先が違っていた・・・・

「ロン、四暗刻。頭ハネです」
「えっ・・・」

さらに牌が倒れる

1巡先を見たときは牌を倒さなかっただけっつうことか・・・

「神代っ・・・」

なんで四暗刻の@単騎でリーチかけるんや

いや、2人からリーチかかって、さらにCの筋、Aが全部見えれば・・・弱気になった私からは確実に出る
そのためにあえて原村の手を見せた

1000点で流せるなら助かる
そう、私を誘導した

アカン、こんなのもう、無理や・・・

私の緊張の糸は、そこでぷっつりと切れた・・・
555 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/11(木) 20:46:27.97 ID:Mah/Mafi0
-南4局

はは、もう100点も残せんかもしれんな・・・

南2も南3も神代が聴牌した直後、私の思考を操るように都合のいい未来をみせ、私は神代に簡単に振り込んだ
差込マシーンがいるので、洋榎も原村も成す術なく、ただ見ているだけしかなかった

オーラス
自分が親なのが、唯一の救い
だって、連荘地獄にはならへんやろ

投げ出したい・・・
目の前の牌をわーって叫びながらぐちゃぐちゃにしたい・・・

―――・・・・ときぃ

ああ、もうアカン
竜華の声が聞こえた気がした
幻聴やな

あの原村のペンギンみたいに、私も竜華に膝枕してもらいながら打てばまだ戦えてるんかな

―――怜!

幻聴がどんどんはっきり聞こえるようになる
竜華・・・
膝枕分、もう全然足りへんよ

っていうかもう抱きしめてほしいわ
さっきから震えが止まらんもん

竜華・・・・
大好きやで
愛してるんよ

でも、ごめん
この気持ち伝える前に、もうどうかなってまうわ


配牌が終わると、もう見たくもない未来を強制的に見せられた



私の未来には、絶望しかない




中堅戦前半 南4局開始時点

園城寺怜(3−1)   38600(-65500)
愛宕洋榎(3−2)  103500(+ 1000)
神代小蒔(2−10) 160500(+64500)
原村和(1−5)    97400(+ 100)
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/11(木) 21:00:50.84 ID:Mah/Mafi0
うーむ、未来の改変楽しいな!
調子に乗ってだらだら書いた自覚はある

これ絶対に中堅戦が一番長いな・・・
神様が悪いんであって、姫様は悪くない、と先に予防線を張っておこう・・・そうしよう


次回更新は週末になると思います
中堅戦が終わったら小ネタを入れてから副将戦にしようと思ってますので、リクもあればぜひ
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/11(木) 21:47:44.08 ID:yf3dC4/60
乙ー
小蒔「一体いつから―――自分が未来視できると錯覚していた?」

リクは実は菫も宥を狙っていたが照が急速に宥に近付いてる事に気付いて葛藤する三角関係モノが見たいです(ゲス顔)
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/11(木) 23:18:53.66 ID:Mah/Mafi0
>>555
中堅戦前半 南4局開始時点

園城寺怜(3−1)   38600(-65500)
愛宕洋榎(3−2)  103500(+ 900)
神代小蒔(2−10) 160500(+64500)
原村和(1−5)    97400(+ 100)

洋榎の収支が100点違ってましたので修正です。持ち点自体には変わりありませんが・・・


>>557
照宥を書いているせいか、最近の宥菫SSを見ると「宥が菫さんに取られた」という気分になってしまう今日この頃です
しかしこの三角関係、小ネタで収まるレベルなのか・・・・
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 01:23:41.39 ID:CcDXGdrLo
神が悪いというのは、ようするにこのスレの神であるイッチが悪いってことだな
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/12(金) 12:31:20.94 ID:2rWslCkc0
せやったんか、僕が悪かったんか・・・
すいません、許してください!何でもしますから!(テンプレ

ガンガン最新号読みました
能力的に、姉帯さんの友引>亦野さんのフィィィィッシュだよねぇとかなんとか
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 12:47:23.50 ID:7hkr4+vwo
照の見せ場を作るためだししょうがないけど
怜をちゃんとフォローしたってな
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/12(金) 17:09:26.62 ID:PqpQLPuW0
友引と違ってフィッシャーは必要対子、塔子が一つ少なくて済むし
両面、ノベタン、シャボで待てるから単純に下位互換とは思わないなあ
563 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/13(土) 00:21:51.77 ID:4uu3wBVz0
-side 由子-

なんとなく、予感はしていた・・・

「怜が、振り込んだ・・・」

竜華が表情は一瞬で青ざめていく

東1こそ、いつもの怜だった

けれど、東2では原村に振り込み
東3ではリーチを掛けたのに、洋榎に振り込み
東4では洋榎にツモられた

そして極めつけは南1局

神代への四暗刻振り込み・・・・

「もう、見えてないのよー」

怜は1巡先を見るとき、捨てようとする牌を持つ
そして見た未来が都合が悪ければ、改めて別の牌を持つ
見た未来が良ければ、そのまま牌を切る

怜は牌を持ちかえていなかった
だから、あの振り込んだ@は、未来を見た上で切ったことになる
でなければ、もう見えてないかのどちらか・・・

見えて四暗刻振り込みなんてありえない。だからもう、見えてない

もう竜華はモニターを見ていなかった
祈るように手を組んで額にあてていた。ただひたすら小さな声で、怜、怜と呟く
まるで何かを念じるように

・・・今は下手に声をかけない方がよさそうなのよ

教室を見回す
結局、白望が塞の膝枕役に落ち着いていた
美術部の面々も全員残って観戦していた

「宮永さん・・・・」

その白望が照に声をかけた

「神代との、対戦経験は?」
「・・・無い。2年10組で過去に対戦したことがあるのは、荒川さんと松実さんだけ。3年2組は全員対戦したことはあるけど」

絹ちゃんとは昨日対戦したから、天江と神代は鏡で見たことがないということになる
学年が違うとなかなか戦う機会はない
同学年だと、ランク考査のための合同授業があるので対戦は多くなるけど

「そう、じゃあ分からないのか・・・ダルイね」

神代を見透かしたことがあれば、今の状況もわかるかもしれないと思ったのだろうけれど、空振りに終わってしまったようだ

南2局も怜が神代に振り込む
神代の連荘。しかしそこは洋榎、原村から1300点であがってなんとか連荘は阻止する
それでも南3局はまた怜が神代へ倍満の振り込み・・・

10万点以上あった点棒は、もう4万点を切っていた
このペースでは、2半荘は持たない・・・

「怜ちゃん」
「怜・・・」

照と宥が、同じタイミングでつぶやいた

南4局、配牌が終わった怜は、まったく動かなくなってしまった
そして、竜華も・・・
564 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/13(土) 00:24:21.95 ID:4uu3wBVz0
-side 怜-

はは、そうや、このまま牌を切らんかったらええんや
強制的に見せられた未来なんてどうせ紛い物に決まっとる

「はよ切れや、怜」
「そうです、早く切ってください」
「切らへん。もう未来なんて見る必要ない」

洋榎と原村が急かすが、私は切らない

「切らなければ、ずっとこの世界の中ですよ」

神代に睨まれるたび、氷柱で突き刺されるかのような錯覚を覚える
それでも、どんなに恐怖で体が震えようと、もう切りたくないもんは切りたくない

―――怜!

また聞こえた
竜華、竜華・・・・

どこにおるの?
近くにおるのなら、顔見せてや

「竜華、竜華、助けて!」
「怜!」

背後から、待ち焦がれた声がした
神代の視線が、私の背後に反れる
振り向こうとした瞬間、抱きつかれた

「怜、振り向いたらダメやで」
「竜華・・・なんで?」

顔が見たいのに・・・
それでもこの温もりは、確かに竜華のもの

今まで私を覆っていた絶望が、嘘のように晴れていく

「怜、もう大丈夫やからな」
「ほんまに?」
「ああ、ほんまやで」

今すぐにでも振り向いて抱きつきたい
でも、力強く抱きとめられてそれは叶わない

ええか、これはこれで安心できるし・・・

「神代、私の怜にずいぶん手荒な真似してくれたみたいやな!」
「警告はしました。無視したのはそちらです」
「警告さえすれば何してもええんか!」

あの神代に物怖じせず啖呵を切る竜華
あかん、竜華ってこんなにかっこよかったん・・・

神代が私の背後をじっと見つめた

「あなたが本来の?」
「もう元には戻らんけどな」

何の話をしとるん?

神代がため息をつく
霧があたりを覆いはじめた、まず原村と洋榎の姿が、霧になって消えていく

「興がさめました。いったん目を覚ますことにします」

神代の姿も霧の中に飲まれていく

「園城寺さん」

今までとは違い、緊張感に欠けるぽやぽやとした声
かすかに見える神代の頬に、伝う涙

「・・・ごめんなさい」
「神代っ」

叫ぶ声は、霧に飲まれた

―――――
565 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/13(土) 00:25:19.38 ID:4uu3wBVz0
「怜さん、怜さん! 大丈夫ですか!!」

煌の声で、私は現実に呼び戻された

「ああ、すまんな・・・」
「体調悪いなら無理すんなや」
「もう、大丈夫や・・・」

洋榎がそう言うけど、はいそうですかとゆうわけにはいかない

荒れる息を整える
でもこれ、もう1半荘ももたんかもしれんな・・・
精神的にかなり消耗してもうた

正面を見ると、神代は確かに目を覚ましていた

「あ、すみません、寝てたみたいです」
「・・・対局中に寝ているとか、そんなオカルトありえません」

原村がツッコミを入れる
でも、世の中はオカルトで溢れとるんやで・・・

「なあ、神代?」
「はい、なんでしょうか」
「寝てる時って、どんな気分なん?」
「・・・さあ、寝てますので分かりません」

さっき謝っていたのは素の神代かと思ったんやけど、覚えてないんやろうか・・・・

まあええか
神代が起きているなら、もう未来を見ても問題無い
それに何かあっても、きっと竜華が助けてくれる

「悪かったな、じゃあ、始めよか」

初っ端から2巡先を覗く

気がつけばいつの間にか点数は4万点を切っていた・・・
なにをやっとるんや、私はっ
ラス親やし、ここで取り返したる!

「ロン、12000!」
「は、はいっ」

8巡後、神代から出上がり
っていうか神代からどれだけ取られとるって話や・・・

「はあ、はあ・・・」

息が荒れる、体も震えだしてきた
このくらいの無茶がなんや、まだ取り返さなあかん点棒が半分も残っとるんやで

神代の差し出す点棒を受け取ろうと、手を伸ばす

瞬間・・・・

「あ、れ?」

視界が歪む
牌が崩れる音がする

自動卓が牌をかき混ぜる音を間近で聞きながら

私の意識は闇に溶けた
566 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/13(土) 00:26:52.84 ID:4uu3wBVz0
-side 照-

南4局がようやく始まった
怜は明らかに息を切らしている、傍から見ていてももう限界

それでも、いままでの生気のない振り込みが嘘かのように積極的に牌を切っていく
まるで、燃え尽きる前の最後の灯火のように・・・・

怜、お願いだからそんなに無理しないで・・・
ここで負けても、誰も責めたりしないから

そんな願いも虚しく
神代さんからロン上がりした直後、怜は卓に突っ伏した

「怜ぃぃ!!」

清水谷さんが一目散に教室を飛び出していった

「宥、私たちも行こう」
「そ、そうだね」
「シロとエイちゃんは残ってて。豊音、行くよっ」
「うんっ」
「私も行くのよー」

塞は小瀬川さんとエイスリンさんに任せて、私達も慌てて後を追う

対局室に着くと、すでに清水谷さんがまだ卓に突っ伏したままの怜の肩に手を添えていた

「怜、怜、しっかりして」
「とにかく保健室へ運びましょう」
「せやな・・・」

花田さんがそう指示すると、清水谷さんが怜を抱き上げようとした

「手伝います」

宥が反対側に体を回す

「あ・・・」

怜が小さく声を出した

「大丈夫、怜ちゃん」
「怜、気がついたんか?」
「私、倒れたん?」
「せやで、もう休まなかん。保健室行こ」

怜は小さく首を振った

「まだ1半荘残っとるやん」
「もう無理だよ、怜ちゃん」
「でもっ」

耐え切れず、私は声を荒らげた

「後のことはいいから、早く怜を保健室に連れて行って!」
「照・・・」

私の剣幕に押されたのか、怜はうつむいた
抵抗せず、2人に連れられて教室を出ていく


「で、審判。どないするん。基本メンバー交代できへんのやろ、3−1は棄権か?」

怜が出ていくのを見届けてから、愛宕さんが花田さんに聞く

――棄権
567 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/13(土) 00:29:52.74 ID:4uu3wBVz0
こんな事態になるとは思ってなかった
棄権するしかないのなら、それでも仕方ないけれど・・・

花田さんは首を振った

「基本的にメンバー交代は認められていませんが、病欠などの理由があれば交代は可能です」

あ、でも交代してもらう人なんて考えてなかった

「なら私が出ればいい話なのよー」

由子が前に出る

「由子はダメ。出たら部活が」

由子の肩をつかみ、思わず口走ってしまった

「部活がどうしたねん? 由子が出てんかったのは用事があったからだけなんやろ?」

え?
まさか同じ部活の部長なのに、知らない??

「部活に集中したいから、対抗戦に出れませんって言っただけなのよー」
「宮永の口ぶりじゃあ、とてもそんな風には聞こえんかったけどな」

また私は余計なことを言ってしまった・・・
愛宕さんは由子を睨みつけていた

「何かあったんか、由子?」
「何もないのよー」
「嘘ゆうなや、そんな仲やあらへんやろ」
「・・・・・ごめん、ここでは言えないのよ」
「なんやそれ!」

愛宕さんが、やり場のない怒りをぶつけるように、床を蹴る
大きな音が対局室に鳴り響き、その音が消えると対局室は静寂に包まれた

私は沈黙を破って、尋ねた

「・・・・由子、いいの?」
「6人目だって言ってもらえて、嬉しかったのよ。イラストまで描いてくれて、ほんとに嬉しかったのよ」
「でも・・・」
「ここで私が出なかったら、それこそ棄権か、誰か別の人探したって飛ばされて終わりなのよ」

対抗戦に出たらレギュラーから下ろすと言われて一度は辞退したのに
本当に、いいの・・・

「今はね、このクラスで勝ちたいって気持ちの方が強いのよー。後のことは、いいから」

そんな笑顔で言われたら、もう私は何も言えなかった

「というわけで審判さん、交代をお願いするのよー」
「交代を認める前に、ひとつ説明しておくことがりますが・・・」
「わかってるのよ、8300点を3人に支払ってゲーム続行、でしょ?」

8300点を3人に支払う?
意味が分からず、私は由子と花田さんを見た

「ご存知でしたら、すばらです。交代する選手のランクが下なら問題ありませんが、上の場合、そのランク差×100点を対局する他の3クラスに支払うというルールになっています」

後から聞いたことだけど、要は偵察要員を禁止するルールとして決められたらしい
オーダーに弱い人を入れて他のクラスを見てからメンバーを変える、というようなことを行わせないための処置

「怜は103位、私は20位。その差は83だから、8300点を3人に支払わないと交代できないのよ」
「支払いが24900点になりますから、それがすばらではないと思われるのでしたら、怜さんよりもランクが低い人を出していただく必要があります」

現在50600点
由子が交代することにより、25700点になってしまう

「ほぼ配給原点で1半荘くらいなら普通に打てば大丈夫なのよー」
「由子、それ本気で言っとるんか?」

愛宕さんが立ち上がった
その拳がワナワナと震えている

「本気も本気なのよ。それに、うちのクラスで洋榎のことを一番よくわかっているのは私なのよー」
「ならその余裕、叩き潰したる。卓につけや、由子!」
「上等なのよー」
568 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/13(土) 00:32:22.48 ID:4uu3wBVz0
「交代でよろしいですか、宮永さん?」
「え、なんで私に聞くの?」

もう交代するのが既定路線になっていると思っていただけに、花田さんにそう聞かれて戸惑った

「オーダー提出時に、リーダーに丸を打ってくださいとなっていたと思うのですが。メンバーの交代決定権は、担任またはリーダーとなっていますので」
「え、じゃあ先生に聞かないといけないの?」
「いえ、どちらかが認めればOKです」

まあ先生に聞いても、私に任せたとしか言わないだろう・・・
もう由子が腹をくくっているのだし、私がどうこう言うことじゃないだろう

それに、みんなが必死になってこの決勝の場まで来たのに・・・
最後が棄権だなんてことになったら、怜が一番ショックを受けるだろう

「交代を。園城寺怜に代わって、真瀬由子」
「了解しました。すばらです」


まだ怜はサイコロを振っていなかったので親の連荘もできたけど、由子は上がり止めを選択した



中堅戦 前半戦終了

園城寺怜(3−1)   50600
愛宕洋榎(3−2)  103500
神代小蒔(2−10) 148500
原村和(1−5)    97400

後半戦よりメンバー交代
ルールにより、3年1組は8300点ずつ他3クラスへ支払い

真瀬由子(3−1)   25700(-24900)
愛宕洋榎(3−2)  111800(+ 8300)
神代小蒔(2−10) 156800(+ 8300)
原村和(1−5)   105700(+ 8300)
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/13(土) 00:41:59.00 ID:4uu3wBVz0
ようやく中堅戦の前半が終わりました
うーむ、この中堅戦の長さ・・・
やりたいことをいろいろ入れすぎた

>>562
読んだときは、豊音は友引をしかけたら失敗してないよなーと思ったんですが(亦野さんがあっさり船Qに止められていたので)
帰ってきて読み返したら、霞さんが覚醒した時にも鳴いてるから失敗してるじゃんと思いました

純粋に比較したら、どっちもどっちかなぁという感じですね
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 00:52:54.91 ID:cZ3/55dk0
乙、
神代と竜華?の会話が気になるな…
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 02:06:34.77 ID:pQYw8qU9o
乙です

由子ちゃんが楽しみすぎるし
このあとにテルテル怒りの一撃があるかと思うと楽しみで仕方ない
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/14(日) 21:00:31.13 ID:JhY5n4el0
土日忙しくて何も進まなかった・・・

仕方ないので、>>517で言ってた咏えりをあげておきます
勢いで書いたので完成度とか知らんし
tellyouとは全く関係ないです

【咏「ドラフトやりたい」えり「は?」】

咏「ドラフトやりたい」

えり「は?」

咏「だからドラフトだって」

えり「野球のドラフト会議のことですか?」

咏「そそ、麻雀の団体戦5人をドラフトで選ぶのが今熱いらしいよ」

えり「はあ、それで私にどうしろと?」

咏「だからドラフトしようぜー」

えり「2人でしても盛り上がらないと思いますけど」

咏「やってみなきゃわかんないって。とりあえずやってみようぜ。えりちゃんとドラフトしたいー」

えり「はぁ。言っても聞かないから、とりあえず1回だけですよ」

咏「えりちゃんならそう言ってくれると思ったぜー」ダキシメ

えり「もう、いちいちそんなことで抱きつかないでください///」



えり「で、どうするんですか。普通に全高校生だと、ほとんど競合せずに指名しあって終わりになりますよ?」

咏「じゃあ私たちが実況解説した、千里山・阿知賀・劔谷・越谷でどうよ? っていっても、越谷はほとんどキャラわっかんねーし、抜いちゃうか」

えり「じゃあ15人の中から2チームですね。そのくらいのほうが戦略が立てられていいかもしれませんね」

咏「うしうし、じゃあ2人だけだし、せーので言い合おうぜ」

えり(2人きりだし、競合を避けてもしょうがないかな・・・。むしろ競合した方が盛り上がるかも)

咏「決まった?」

えり「ええ」

咏「じゃあいっくぜー。せーの」

咏「園城寺怜」
えり「園城寺怜」

咏「やっぱりここは外せないかー」

えり「2人で競合避けても仕方ありませんしね。で、この場合はくじですか?」

咏「そんなの用意してないし、じゃんけんでよくね?」

えり「それもそうですね。じゃあ、早速」

咏 えり「じゃんけん!」
咏 グー
えり チョキ

咏「うっし、勝った!」

えり「じゃあ外れ1位は江口セーラさんで」

咏「うわー、セーラちゃんは取って置いてほしかったなぁ」

えり「火力高いから1位でとりにくるかもって思ってましたけどね」

咏「しょうがないねぃ、じゃあ2位に行こうか」

咏チーム
園城寺怜

えりチーム
江口セーラ
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/14(日) 21:02:02.28 ID:JhY5n4el0
咏「じゃあ次、決まった?」

えり「ええ、大丈夫です」

えり(火力で言えば、次は松実玄さんかな。よくよく考えたら、この人やたらジャンケン強いんだった。競合は避けたいかも・・・)

咏「いっくぜー、2位指名。せーの!」

咏「清水谷竜華」
えり「清水谷竜華」

えり「うっ、また競合」

咏「怜ちゃんと竜華ちゃんはやっぱりセットでそろえとかないとねぃ」

えり「てっきり火力高い人で来るかと思いましたよ」

咏「セーラちゃんとられちゃったし、方針変換さね。ドラフトではよくあることだよ?」

えり「とりあえずジャンケンしましょう」

咏 えり「ジャンケン!」
咏 パー
えり グー

えり「くっ、また負けた・・・」

咏「よっしゃ、竜華ちゃんいただきー」

えり「私の方が火力チームになりそうですね・・・。2位は松実玄さんで」

咏チーム
園城寺怜・清水谷竜華

えりチーム
江口セーラ・松実玄


咏「じゃあ第3位にいってみよう」

えり(今度こそ競合は避けたい・・・でも人数が減れば減るほど、競合の可能性も高くなる)

えり(咏さんは安定性でまとめる方針かな。安定性なら、次は松実宥さんあたり。私も姉妹を揃えるというのも面白そうだけど、避けておくべきか・・・)

えり(あの試合、一番の火力を見せたのは劔谷高校の森垣友香さん。どうせなら火力重視チームにしよう)

咏「決まったかい?」

えり「ええ。じゃあ、せーの!」

咏「森垣友香」
えり「森垣友香。って、え?」

咏「おんやー、また競合だねぃ」

えり「方針転換したんじゃなかったんですか!?」

咏「うーん、松実宥ちゃんあたり行こうかなぁとは思ったけど、全員3年でも面白くないなぁって。意外性もほしいもんさ」

えり「そうですか・・・。とりあえず、ジャンケンしましょう」

咏 パー
えり グー

えり「また負けた・・・・。負けたことあるんですか?」

咏「いやぁ、ほとんどないねぇ。くじにしておいた方が良かったかな、悪いね、えりちゃん」

えり「一度決めたことですから仕方ありません。じゃあ、3位は松実宥さんでお願いします」

咏「姉妹がそろったねー、それも面白そうだ」

えり(もしかして、わざと競合を狙ってるんじゃ・・・)

咏チーム
園城寺怜・清水谷竜華・森垣友香

えりチーム
江口セーラ・松実玄・松実宥
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/14(日) 21:04:26.15 ID:JhY5n4el0
咏「さあ、4位指名。残りは9人、そろそろ指名も難しくなってくるかな?」

えり(意地でも競合を避ける。でもいかにも競合を避けましたみたいな指名じゃ逃げたみたいで嫌だ・・・・。こっちのチームの方針は極力貫く)

えり(もう火力自慢みたいな人は残ってない。勝負強さで言えば最後に逆転した阿知賀の高鴨さん、江口さんと競り合った新子さん、そしてあの千里山に1年でレギュラー抜擢された二条泉さん。指名するならこのあたり・・・)

えり(その上で、咏さんが指名してきそうなところを読んで、避ける)

咏「長考してるねぇ。そんなに真剣になってくれるなんてうれしいよ」

えり「・・・決めました」

咏「じゃあいってみよー。4位指名、せーの」

咏「高鴨穏乃」
えり「高鴨穏乃・・・またっ」

咏「いやぁ、やっぱりあの大逆転は魅せてくれたよねぇ。ロマンを感じずにはいられないよ」

えり「そ、そうですね・・・」

えり(阿知賀では新子さんが一番うまいって解説で言ってたから、新子さんを指名すると思ったのに・・・)

咏「じゃあ、ジャンケンしようぜ」

咏 グー
えり チョキ

えり「もうジャンケンする必要なくないですか・・・・」

咏「ルールはルールだし、確率は同じはずなんだけどねぇ」

えり(もうこうなったら、最後は絶対にかぶらないようにする。となれば、新子さんをドラフトの場に残す。さすがに残っていれば指名してくるはず・・・)

えり「じゃあ、外れ4位は二条泉さんにします」

咏チーム
園城寺怜・清水谷竜華・森垣友香・高鴨穏乃

えりチーム
江口セーラ・松実玄・松実宥・二条泉


咏「さあ、これで最後。5位指名で残りは7人。最後に選ばれるのは誰かなぁ?」

えり(さすがに新子さんを選ぶはず・・・。私のチームは千里山2人阿知賀2人。最後は劔谷から選ぶ・・・)

えり「決まりました」

咏「おや、今回は早いねぇ」

えり「ええ、大丈夫です」

咏「言っとくけど、私が憧ちゃんを選ぶと思ってるなら、考え直した方がいいよん?」

えり「・・・ドラフトでそういう揺さぶりは必要ですか?」

咏「ドラフトこそ情報戦だよ? 誰それを1位指名するぜーみたいなニュースはむしろえりちゃんの方がよく知ってるんじゃないかい?」

えり(どうする・・・はったり? でもそれで私が新子さんを指名して、新子さんでかぶる方がなんか悔しい・・・)

えり「大丈夫です。最後の指名に行きましょう」

咏「そう・・・。じゃあ最後の指名。せーの」

咏「椿野美幸」
えり「椿野美幸・・・・そんなっ」

咏「だから言ってあげたのに。そんなに信用ないのかねぇ。さみしいねぇ」
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/14(日) 21:08:25.08 ID:JhY5n4el0
えり「結局全部競合ですか・・・。じゃあ外れ5位は――」

咏「おーい、ジャンケンが先だろー」

えり「必要ありません。どうせ負けるんですから」

咏「どうしてそういうこと言うかねぇ。まだ終わってもないのに」

えり(あ、これは・・・・。高鴨さんが逆転したときと同じこと・・・)

えり「そうですね・・・。やる前から諦めちゃいけませんね」

咏「そそ、そういうこと。じゃあ最後の勝負!」

咏 えり「ジャンケン!」
咏 チョキ
えり グー

えり「か、勝った・・・」

咏「いやぁ、最後に持ってかれたねぇ」

えり「わざとじゃないですよね?」

咏「私の辞書に手加減の文字は無い!」

えり「そういうことにしておきますよ・・・」

咏「じゃあ私の5位は憧ちゃんね。これにて終了!」


咏チーム
園城寺怜・清水谷竜華・森垣友香・高鴨穏乃・新子憧

えりチーム
江口セーラ・松実玄・松実宥・二条泉・椿野美幸



えり「はぁ、でも結局、私は咏さんの読みを外せませんでした・・・」

咏「そりゃあ、私はえりちゃんのこと大好きだからねぇ。えりちゃんの考えてることは何でも分かるよ」

えり「・・・じゃあ、咏さんのことが分からない私は、咏さんのこと好きじゃないんでしょうか?」

咏「わっかんねーから分かろうとする、それも好きってことじゃね? 知らんけど」

えり「そうやってすぐはぐらかす。咏さんの言葉なんて信用できません」

咏「そっか。じゃあもう肉体言語しか残されてないわー」

えり「もうやめてって言っても、信用しませんからねっ!」

咏「それは楽しみだねぇ///」

えり「ほんと、楽しみですよ///」

カン!


tellyouとは関係ないのでsage進行でお届けしました
来週の平日は更新微妙です
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/14(日) 21:24:36.54 ID:JhY5n4el0
ついでなので久々の目次


>>1 照「清澄にも麻雀部はあるのか・・・」
咲が白糸台、照が清澄なIF。照久IF
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/-142

>>149 巽由華「私には部長なんて向いてません」やえ「まあそういいなさんな」
照久IFの続編、晩成と阿知賀のその後
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/149-235

>>249 剱谷日和
剱谷短編、咲日和風味
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/249-288
途中にコンマテストがありますが、気にしないでください

>>289 『tell you that I love ...』
照宥メイン。全キャラが通う麻雀学校白糸台という設定の話。連載中
現在はクラス対抗戦の決勝戦。中堅戦の前半が終了
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/289-

リンクをたどってもらえば、その話だけ読めるようにしてみました
さて、眠くなるまで続きを書くか・・・
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 21:45:51.24 ID:UKKxz887o
乙。

カップルが遊びで2人ドラフトとはその発想すばらです。
578 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/16(火) 21:41:00.22 ID:WIk/QDet0
-side 塞-

怜が倒れて、みんなが教室を飛び出していく
本当は私も行きたかったけれど、まだ体力が完全に回復しているわけではなかったので動けなかった

しばらくすると、モニター上に清水谷さん、そして照たちもあらわれた
そこで画面が突然切り替わった

今日の先鋒戦がリプレイで流れ始めたのだ

――競技中断の為、しばらくリプレイをお楽しみください

そんなテロップが流れる
どうやら対局室の様子は見せてはもらえないらしい

「はぁ、ここからじゃ状況が分からなくなっちゃったわね」
「胡桃たちが戻ってくるのを待つしかないね・・・ダル」

リプレイでは、瑞原先生と福与先生による実況解説、そしてゲストとして生徒会長の竹井さんが対局中にいろいろと発言をしていた

「おおっとー、チャンピオンの妹、宮永咲がまた振り込んだー!」
「うーん、差込みに来た感じがするかな☆」
「差込み? なぜです?」
「わかんないですっ☆」
「あのー、私は必要ですか?」
「なんとなく会長を呼んどけば箔がつくかなと思って呼んだだけだけど、いてくれた方が盛り上がるよ!」
「はぁ、ほんとに帰ろうかしら・・・」

全く解説になっていない解説・・・
これでも好評らしいから、世論からずれているのは私なのかもしれない

しばらくすると、豊音と胡桃が帰ってきた
帰ってきたのは2人だけ

「オカエリ」
「2人だけ?」

豊音の表情は芳しくなく、胡桃は落ち着いていた
クラスが違うし、普段もそうだけど、何かあっても冷静でいられるのは胡桃の方だろう

「えっと、どこから話そうか」

胡桃と豊音が席に着く

「・・・・園城寺さんは?」

シロが口を開いた
ダルイといいながらも、さすがに気になるんだろう

「園城寺さんは、清水谷さんと松実さんに運ばれて保健室に行ったよ。チャンピオンはこれから保健室に行くからって別れたところ」

結局、怜は保健室に運ばれたのか・・・
となると、これで試合は中断ということなのだろうか

その時、リプレイを流していたモニターが切り替わった
579 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/16(火) 21:42:06.55 ID:WIk/QDet0
「え、由子?」

怜の代わりに座っていたのは、由子だった
対抗戦に出たら、サッカー部のレギュラーを下ろされるから出ないんじゃなかったの?

「そう、真瀬さんが園城寺さんの代わりに出ることになった。ランク差のせいで25000点近く支払いして」

ちょうどモニターでも、その事情を説明しているところだった

「お待たせしました、試合再開ですっ。その前に、中断中の経緯について会長から説明があります!」
「改めまして、生徒会長の竹井です。運営主催者として説明いたします」

外部からの観戦者もいるため、流石の会長も畏まっていた

「3年1組の園城寺怜さんが体調不良のため、試合を中断しておりました。本来メンバー交代は認めていませんが、正当な理由であれば交代できるルールになっています。園城寺さんが試合続行不可能であると大会委員長である花田煌が認定し、3年1組のメンバー交代を認めました」

そこでモニターが由子の顔写真と名前、学年ランク20位であることが表示される

「園城寺さんのランクが103位、真瀬さんのランクが20位です。ランクが上位の生徒に交代する場合、他のクラスに不利となるためランク差×100点を他の3クラスに支払うルールになっています」

25000点近い支払い。これで元は、取れるんだろうか・・・
棄権するよりはましかもしれないけれど、由子の部活の件も含めてかなりの痛手に思える

「中断前の親の園城寺さんの上がりは成立、続行か上がり止めかは未選択でした。交代した真瀬さんが上がりやめを選択しましたので、試合再開は後半戦東1局からとなります。以上です」

長い説明をすらすらと言い切った。流石に会長を務めるだけはある

場決めはすでに終わっていたようだけど、この説明のためか対局はまだ開始されていなかった

東 真瀬由子(3−1)
南 愛宕洋榎(3−2)
西 神代小蒔(2−10)
北 原村和(1−5)

各学年を代表するような面子相手に、由子がどんな風に立ち回るのか
圧倒的な点差とはいえ、後ろに控えるのはあの宮永照

開始前に照が怜に言っていたように、とにかく100点でもいいからつなげるのが最低限の仕事

「由子、がんばって・・・」

それでも、私があの場所にいたら、あんな風に笑顔でいられるだろうか

由子に、悲壮感は全くなかった
580 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/16(火) 21:43:24.23 ID:WIk/QDet0
-side 洋榎-

-クラス対抗戦中堅戦 後半戦
-東1局

さっぱり分からん・・・・

なんで由子はうちにはこの対抗戦に出んかった理由が言えんのや
そんで、なんでうちに言えんことを、宮永照は知っとる・・・

そりゃ勉強とか恋愛とか答えられへんことやってあるけど
でも、部活の事なんやろう・・・
恭子かて、そんなこと言ってへんかった

恭子は、知っとるんやろうか・・・

「ロン、5800なのよー」
「うっ」

あかん、なんやこの振り込みは・・・素人かっ

由子の顔を見る
いつも通りの由子
けどそれがかえってうちの心をかき乱す

どうしてそんな風に、いつも通りに打てるんや
由子と恭子は、うちの大の親友やと思っとったんやで。それやのに、なんで隠し事すんねん

対抗戦と部活には、本来つながりなんてない
恭子なら即座につなげてみせるんやろうけど、うちはそんなごちゃごちゃ考えるタイプやない

「ロンよー、4800の1本場」
「は、はいっ」

今度は由子が神代から上がり
いつも通り、伸び伸びと打ってくる

分からん、さっぱり分からん・・・・
いま分かるのは、うちに隠し事しとったというのに、由子にはまったく臆した様子が感じられんこと

親友やて思っとったのは、うちの思い込みやったんか・・・

「ロン、1600点」
「・・・はい」

今度は原村に振ってしまった
でも、これで由子の親は流れた

はあ、もうウジウジ考えてもしゃーない!

さあ、うちの親番や
ここで稼いだる


その気負いが空回りするのは、由子への苛立ちが原因なのだと思っていた


密かに、うちの心の底に潜んでいたものがうごめきだしていた
581 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/16(火) 21:45:11.62 ID:WIk/QDet0
-side 和-

-東4局

対戦相手がどうあろうと、普段なら気にはしないのですが・・・
けれど流石に、対戦相手が突然倒れては多少は意識せざるを得ません

「リーチや!」
「ロン。2900」
「くっそ・・・」

私は手牌を倒した

やけに対面の人が苛立っている
憧の言っていた中堅マニアという人。強いという話だったけれど、本来の実力を出せていないように感じる

私はそれほど団体戦の経験はないけれど、それでも中堅という役割でそれほど気負っても仕方ないというのは分かる・・・

現状を冷静に見つめれば3年1組の一人沈みですが、3万点以上持っているので飛ぶことを視野に入れる必要もなくて
それよりも、まだ独走を続ける2年10組と少しでも差を詰めるのが先決

どうにもこの神代という方も、優希のように集中力に欠ける人のようです
前半戦は何も手が出せないほどに3年の園城寺さんという方からどんどん点数を削っていたのですが、後半はとても同一人物とは思えないほど振り込んでいる
前半と後半で人が違うなんて、そんなオカルトはありえませんけど

とにかくこの親番で、少しでも1位との差を詰めること
あとは、憧と、淡さんがなんとかしてくれるでしょう・・・

どうにも、あの淡さんとはイマイチ気が合いませんが
それでも、同じクラスメートですし。それに麻雀の腕も、かなりオカルトな思考に捕われていとはいえ確かですから

駅伝なら、とにかくタスキをつなぐことが重要なのであって・・・

対面の方は、そんなことを忘れて自分がアンカーかのように焦っているように感じる
昨日はもっと自信に満ちた打ち筋をしていたと思ったのですが

「リーチ」

いつも通り打てば、それがクラスのためになると、私は信じています

「ツモ。4100オールです」
582 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/16(火) 21:48:36.60 ID:WIk/QDet0
-side 由子-

-南1局2本場

原村が親で2回上がった後は、流局で親流れして自分の親番
今のところは振込もなく、神代も起きたままだからなんとかなってるのよ

怜が神代のことを気にかけていたからひょっとしたら無茶して倒れるかもしれないと思ってルールを読み返したりはしていた
けれど、実際に交代することになるとはそこまでは思っていなかった

それでも、もし出ることになったらといろいろ考えた
考えて考えて、もし出番が来たのなら出ようと心に決めた


恭子とは、洋榎には対抗戦が終わってから話そうと決めていた
ただ洋榎に余計な心配を掛けさせたくなかっただけで、仲間はずれにしようとかそういう意図はなかったのに

――絶対にハブられたとか思ってるのよー

そうでなければ、こんなにイライラした洋榎は見たことがない
どんなときでも自信に溢れていた打ち筋が、今はすっかりと息を潜めていた

でも、そうじゃないとは、それは勘違いだとは、今この場では言えない
このクラス対抗戦は学校中に中継されてる
いまここで打っている様子は牌譜に起こされたり、映像も記録として残されることになる

そんなところでうかつに、代行にレギュラー外すと脅されましたなんて言えないのよ

あとで話せば、洋榎も分かってくれる
いまはそう信じるしかない
そして信じているからこそ、私は自分のクラスのことに集中できる



去年の部活対抗戦、私が次鋒で洋榎が中堅だった
その時は、アーチェリー部の先鋒が照で、次鋒に回ってきた時にはもうどうしようもないくらいの大差がついていた
それでも、洋榎は笑いながら言った

「うちがなんとかしたるから、由子は好きに打ってこい」

それがどんなに心強かったか・・・
結果的にはアーチェリー部が優勝したけれど、次鋒戦と中堅戦はサッカー部が区間賞を取った
それは、今でも誇りに思うこと
583 :tell you that I love ...(8-3) [saga]:2012/10/16(火) 21:50:21.68 ID:WIk/QDet0

洋榎、あなたの背中を守ってくれる人はクラスにいるの?
結局竜華も石戸さんも、心の一番奥底では信頼してないから一人で気が焦ってるのよ。自覚はないと思うけれど・・・

3年2組がバラバラなのは傍から見ても明らかだった
ただ部長という括りで集められただけ
船頭多くして船山に上るが如しなのよ・・・

個々に強いから、決勝に来るまでにまとまりがなくても良かったのだろうけれど・・・


それに引き換え、照の考えたオーダーはほんとによく考えられていると思う

前の3人は防御に徹すればそこまで失点はしない。そして、照にさえ繋げばなんとかなるという安心感がある
唯一の不幸は、怜が神代に当たってしまったことくらい
そうでなければ、怜も無難に中堅戦をこなしていただろう

3人でつなぐ体勢を整えられたからこそ、宮永照が比較的戦力の手薄になる副将に座り、一気に稼ぐことが可能になった
普通に先鋒にオーダーされていたら照のマークは厳しくなるし、残ったメンバーは逆にプレッシャーを感じてしまったかもしれない

そしてその照も、大将の豊音を信頼している
でなければ、自分が大将に座って豊音をもっと前に出しただろう

3年1組は照が指揮者になって、クラスの調和をとっている
でも、3年2組は指揮者しかいない・・・・そこに旋律は生まれない

――ごめんね、洋榎

敵として対局している以上、今は心の中でそう思うことしかできなかった

――でも、大丈夫なのよ

周りが思うほど、私は事態を深刻には捉えないことにした

――あくまでレギュラーを外すと言われただけ。部活を辞めろとは、言われてないのよ

私は、自分がサッカー部ではギリギリでレギュラーになっているのは自覚している
エースの洋榎や、司令塔として外せない恭子とは違って

だからこそ、自分も外せない存在になってしまえばいい

そんなに簡単なことではないけれど、部活を辞めてしまえば可能性は無いけれど幸いにも部活は続けていいのだから

――夏の大会には、間に合わせてみせるのよー

だから今は、3年1組のメンバーとして全力で打つだけ

「ツモ、6200オールなのよ」

本当はこんな出方じゃない方が良かったけれど・・・


クラス対抗戦に出られて、本当によかった



中堅戦終了(収支は後半戦のみ)

真瀬由子(3−1)   48500(+22800)
愛宕洋榎(3−2)   93800(-18000)
神代小蒔(2−10) 129300(-27500)
原村和(1−5)   128400(+22700)
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/16(火) 22:00:39.57 ID:WIk/QDet0
中堅戦終了です
言えない、由子ちゃんに関しては交代した場面がクライマックスのつもりだったなんて・・・
後半は駆け足になってしまいました

511.97 KB Speed:7.5
というような表記がされているのに今日気づきました
感想コメントとかも含めてですけど、ここまでに500KB程度は書いたってことですよね
初投稿から2ヶ月半、よくここまで書いたもんだ・・・

次回は、本編の昼休みか、intermissionで>>557-side 菫-か、憧咲の予定です
リクも随時受け付けておりますのでよろしくお願いします
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/16(火) 22:21:12.86 ID:H6s7I9yt0
乙ー
部長チームは余計な横槍さえなければ強かっただろうに

そう言えば瑞原プロの打ち筋が判明したけど実力はわっかんねーまんまなのよね……
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 08:46:40.63 ID:363aCMMBo
乙乙

さーてるてるの出番だ
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 18:09:24.33 ID:xEa/oXUho
てるてーる
588 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:39:51.73 ID:KqltEAmB0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)


※注 本編と時系列は同じですが、あくまでパラレルとご認識ください
>>557の菫ルートです。結局小ネタって感じじゃねーよ


-side 菫-

2年の冬の個人戦
松実宥と対戦したのは、それが初めてだった

クラスが同じだったことはなく、夏でもマフラーという服装だけは知っていたが、その人となりに触れるということはなかった

そして個人戦、完敗だった
こちらの狙い撃ちをことごとく外し、さらに返り討ちにしてくる
そんな相手は初めてだった

あの照にさえ、菫に狙われるとかわすのが大変と言わしめたのに


「待ってくれ」

対局が終わり一礼をして去ろうとする彼女を、私は思わず呼び止めた

「はい、なんでしょう?」
「教えてくれ、なぜ私が狙い撃ちしたのを分かった?」
「赤土先生が教えてくれたんですよ、弘世さんにはクセがあるって」
「クセ・・・」

そんなもの、照にも指摘されたことがないぞ・・・

「弘世さんが狙い打つ時にですね――」
「いや、待て待て待て」

思わず静止してしまう
聞いておいた方がいいに決まっているのだが、あっさり教えてくれるとは思ってなかった

「え、どうかしました?」
「いや、そんな簡単に教えてくれるものなのか?」

首をかしげる松実
その仕草が、やけに可愛かった・・・

「教えるなとは言われてませんし・・・」
「いや、そうかもしれないが」

だからといって簡単に教えてくれるのもどうなんだ
聞いたのはこちらにしても、普通そこまで教えないものだと思うのだが。私がずれているんだろうか・・・不安になる

「それに、弘世さんがクセを直してもっと強くなれるなら、その方が素敵じゃないですか?」

その微笑みは、今まで見てきた誰のものよりも輝いていて・・・

「だから、教えてあげますよ」
「あ、ああ・・・」

私は、生返事を返すのが精一杯だった
589 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:43:42.49 ID:KqltEAmB0
松実宥か・・・

指摘されたクセは、ほとんど無意識に行っている動作だった
照に見てもらっても、「言われてみれば、確かに・・・」という程度のわずかな動き

それを見抜いた赤土先生がすごいのだろうけれど
その成果をあっさりと教えてくれた松実宥

それからというもの、彼女のことが気になり出してしまう

廊下を歩いていても、もしかしたらすれ違わないかなとか、そんなことを考えてしまう
でも、実際すれ違ったところで、何を話したらいいのか分からなかった

ただ個人戦で戦っただけ
彼女にしてしてみれば、ただの対戦相手の1人でしかないだろう

結局もやもやした思いを抱えたまま、春を迎えることになった



「別々だね、菫」
「まあ、2年間一緒だった方が奇跡だ。1学年20クラスもあるのに、な」

張り出されたクラス名簿
私と照は、初めて別々のクラスになった

ざっと自分のクラスのクラスメイトを確認する
部長が全部で5人、しかもランク上位の部長ばかりだった

照シフトを組むという噂は本当だったらしい
シフトの話をするために、他のクラスの解説をする

「じゃあ2年の本命は、そのクラスか」
「お前のクラスじゃあ、太刀打ちできないだろうな・・・」

その照のクラスを見る
おそらく、照のクラスは恐ろしく弱いのだろう

(3年1組)
姉帯豊音
臼沢塞
園城寺怜
 ・
 ・
 ・
真瀬由子
松実宥
宮永照
 ・
 ・
 ・
 ・

松実宥の名前を見つけ、思わずつぶやいた

「いや、伏兵がいる・・・」
「伏兵?」

確かにランクはそこまで高くないが、正直過小評価だと感じる
ランクの付け方一つで順位が分かってくるのはよくあることだけれど

「まあ、クラスへ行けば分かるさ。そのクラスで、一番目立つ奴だ」
「目立つ? 派手なの?」
「派手というか、季節違いというか・・・」
「季節?」

少なくとも、派手ではないだろう
冬にマフラーをしていても何の問題もない
ただ季節が違うから目立ってしまうだけだ

「冬でも半ズボンをはく小学生みたいな?」
「逆だ。まあ会えば分かる」

本人には目立つ気はないのだろうけれど・・・

照と宥がクラスメートなら、会う口実もできるか
そんな考えを情けないと思いながら、それでも期待せずにはいられなかった
590 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:44:47.63 ID:KqltEAmB0
それでも、結局のところ自分で一歩踏み出さなければ何も進むわけもなく
逆に照と昼休みに会うこともなくなり、ただ寂しさがつのるだけだった・・・

――そろそろ新入部員も入ってきたし、部活に顔を出せ

そんなメールを照に送る

――分かった、今日は行く

簡潔なメールが帰ってくる
なんだか、クラスが違うとこんなに簡単に距離ができてしまうのかと思うと切なくなる

・・・ああ、そういえば大星が照に会いたがっていたな
あいつもなんだかんだで部活はそれなりにやってくれているし、一番に会わせてやろう


その部活の休憩時間、照に呼び止められた。珍しいこともある

「菫、ちょっと相談」

照専用の丸テーブルには本が置かれ、その横にメモ用紙
そのメモ用紙にはごちゃごちゃと何か書かれていたがぱっと見では判断できなかった

「なんだ、献立か?」
「違う、クラス対抗戦のオーダー」

その言葉を聞いて、ドキッとする
照のクラスということはすなわち、宥のクラスのオーダーということ

「いや、クラスの違う私に相談はどうなんだ」

それでもいつものように、そんな指摘をしてしまう
私のクラスはおそらく久保先生が勝手に決めるだろう。1年2年と、生徒に決めさせてくれる先生に当たってきたので照と2人でオーダーを考えたりしたも

のだが・・・

「でも、いままでもそうしてきたし。菫のクラス、先生が決めるでしょ?」
「まあ、そうだな」

私に決定権はないから、相談しても構わないということか。まったく、照らしいよ・・・

「三尋木先生は何も言ってこないけど、多分直前になって私に振ってくるから今のうちに考えておこうと思って」
「ああ、確かにあの先生はそういう人だな」

そう言って照の隣に座る
なんだか、こうしてじっくりと話すのも随分久々だな・・・・

「それで、メンバーは誰を考えているんだ」
「今のところ、宥と怜。あと真瀬さんと転校生の姉帯さん」

・・・・ん?
聞き捨てならない言葉を聞き、思わず繰り返す

「宥と怜?」
「え? ああ、松実宥さんと、園城寺怜さん」
「なんだ、名前で呼ぶほどの仲なのか?」

平静を装うものの、心中は荒れ狂っていた

宥のことをいつの間にか呼び捨てで呼び合う仲になっているなんて
照も、そして宥も一気に遠くなっていくのを感じた

「うん、半分は怜があいだに入ってくれたおかげだけど」

園城寺か・・・
冬の個人戦で照が倍満を振り込んだのが松実玄、宥の妹。そしてそこに園城寺が同卓していた
その妹を介して園城寺と宥が知り合っていた、というあたりだろう

「そうか。で、オーダーだったな」

話を元に戻す
これ以上は聞きたくなかった
591 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:46:47.35 ID:KqltEAmB0
「転校生の姉帯をよく知らないんだが、どのくらい打てるんだ?」
「うーん、例えが難しいけど。強いて言うなら、トリッキーな感じが会長に似てるかな」
「・・・・竹井か。私、あいつは苦手だ」
「菫の天敵だもんね」

竹井は余剰牌を待ちにしてしまう、悪待ちを好む
私は普通に打った時の余剰牌を狙うため、ナチュラルに曲げた打ち方をしてくる竹井は苦手だった

「じゃあ、オーダーはこんなところじゃないのか?」

とりあえず竹井がクラスにいると考えて書き出す

先鋒 宮永照
次鋒 松実宥
中堅 真瀬由子
副将 園城寺怜
大将 姉帯豊音

「姉帯が竹井くらい打てるなら、大将か、あるいは真瀬と入れ替えて中堅かくらいじゃないか?」

おそらく私は、3年2組では次鋒だろう
大将が清水谷か石戸のどちらになるかというくらいで、先生が決めるにしても中堅までは分かりきっている

自然と宥を次鋒に据えてしまうあたり、私は姑息だな・・・

「そうだよね、やっぱりそうなるよね・・・」

しかし照はあまり納得いかないようだった

「なんだ、不服か?」
「うん、できれば怜を次鋒にしようと思って」
「なぜ?」

思わず語気を強めてしまった
照が驚いてこちらを見るので、慌てて取り繕う

「すまない・・・。だが、次鋒は松実の方がいいと思うぞ」
「菫、もしかしてもう次鋒になるって決まってるの?」

はあ、こんなに簡単に照に見抜かれるとは・・・
まあ、バレバレだよな

「決定じゃないが、うちのクラスは私が次鋒だろうな」
「冬の個人戦のリベンジをしたいの?」
「完全に私情だな、すまない」

リベンジもしたいが、単純に接点が欲しいだけなんて言えなかった

「ごめん、菫の気持ちも分かるけど、約束はできない」
「対抗戦だけが全てじゃないさ・・・」

宥がボウリング部で、今年ようやく5人そろって部活対抗戦にも出られるのは知っていた。もっとも、ボウリング部が出てくるか分からないが
それでも部活対抗戦はオーダーの組み換えが自由にできる。対戦できる可能性はそちらの方が高いだろう
部活対抗戦のオーダー決定権は、部長である私にあるしな

「部長、もうすぐ休憩時間終わりますよ」
「ああ、ありがとう」

尭深が声をかけてきた
もうそんな時間か・・・

「照、じゃあまた後でな」

だが帰りは淡が照を連れて行ってしまい、結局それから話す機会はなかった


宥に手が届かないこと自体は、仕方ないと思える
でも照が宥のそばにいて親しくなっていくのに、私は耐えられるのだろうか・・・・

このままでは、照を憎んでしまいそうだ・・・
592 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:48:34.15 ID:KqltEAmB0
クラス対抗戦の3日目も終わり、3年2組は無事に決勝進出を果たした
その放課後のミーティング

久保先生の指示は、3年1組を中堅までで飛ばせ

この指示が、結局は3年2組の辛うじてあった連帯感を完全にぶち壊した

まず真っ先に反発したのが清水谷
照と対戦する自分が信用されていないと分かって、それ以上クラスのために戦おうという気持ちにはなれないだろう

そして清水谷がいなくなり、居づらくなった愛宕がため息混じりに教室を出る

石戸も3日目にようやく出番が来たものの大差で回ってきたためにほぼ流して打っただけ。クラスのためにという実感はほとんどないだろう
大将まで回ってきたら、そのとき頑張りますねと言い残し、教室を出て行った

「先鋒次鋒の私たちが一番損だな・・・」
「私は、やれるだけやってみるだけですから」

福路の表情も暗かったが、久保先生がクラス担任に加え部活の顧問という手前、流石に従うしかないようだ

「1組だってこっちの狙い撃ちは読んでくるだろう・・・あまり狙い撃ちに固執するべきじゃないと思うがな」
「そうかもしれないですね・・・」

それ以上会話も続かず、同時に教室を出て、別々の方向へ向かっていった

まっすぐ自宅に帰る気も起きず、かと言って学校外で喧騒に飲まれるのも苛立ちそうで・・・
私は静かな場所を求めて学内をうろつくことにした

そして、一番奥の、ほとんど使われていない校舎までやってくる
ここまでくると流石に静かだ
確かこの校舎の中庭にベンチがあったはず。そこで少しぼーっとしよう

そして校舎裏にまわり・・・・

最悪の場面を見てしまった



照と宥が、抱きしめ合っていた



立ち尽くしたのは一瞬か永遠か
そんな判断もつかなくなるほど、目の前の出来事がうまく頭で処理できない
ただ体は反応し、物陰に隠れて様子を伺ってしまう

その後のことは、写真を直接脳裏に焼き付けられてしまったかのように、頭から離れなかった


照が泣いていた


宥が照と膝枕の体勢になった


照と宥が、キスをした



私は叫びたいのをなんとかこらえ、走って逃げ出した
それ以上は見ていられなかった

なんだこれは
なんなんだ、これは・・・

いつの間にそんな仲になってしまったんだ
593 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:50:00.36 ID:KqltEAmB0
無我夢中で走り、私はなぜかアーチェリー場に来てしまった
クラス対抗戦の間は部活は休止中、だが

ヒュン

誰かが残って射っているのか?
矢が飛ぶ音がして、私は場内に入った

「・・・淡?」
「あ、スミレだ。どうしたの?」

そこには淡が一人
的を見ると、もう何本も矢が刺さっていた

「部活は休止中だが?」
「自主練習もダメだったっけ?」
「せめて私に連絡しろ」
「ごめんね。なんだかんだいって、こうやって射つの好きだから」

好きという単語を聞いて、私はもう我慢の限界を迎えた

そう、好きなんだ
好きなんだ、宥

でも、もう手遅れ・・・
こんなことになるなら、もっと勇気を出して動いていればよかったのに

「ぐっ、ううっ・・・」
「え、ええっ。なんで泣くのー!」

立っていることもできず、膝から崩れ落ちる
淡が慌てて私に駆け寄った

「どどどど、どうしたのスミレ。どこか痛いの、病気?? 保健室行く、救急車呼んだ方がいいの、あわあわ」

慌てる淡になんの言葉もかけることもできず、私はただ泣いた
この苦しみも、宥が好きなんて気持ちも、全部心の底から流れ出してしまえばいいのに
そうすれば楽になれるのに

「そうだ、テルに電話すればいい?」
「やめろ!」

そんなことをされたら私は自分がどうなってしまうか分からない
恐ろしい剣幕だっただろう、淡が大きく体を震わせた

でも今の私に、淡を気遣う余裕はなかった

「病気じゃないんだよね?」

淡がそれでも私を気遣ってくれる
私は俯いたまま、小さく頭を下げた

「何かあったの? 無理に言わなくていいけど・・・」

言えるわけが無く
私はやり場のない感情を追い出そうと、ただ泣き続けた
594 :tell you that I love ...(intermissionExtra-3) [saga]:2012/10/17(水) 23:51:51.73 ID:KqltEAmB0
「私さ、こういうときの慰め方とかよく分かんないから」

そう言って、また風切り音が響き始めた
顔を上げると、淡は練習を再開していた

「柄でもないけど、明日対抗戦が決勝だからちょっと気を紛らわすために射ちにきたんだけどさ」

ヒュッ

その矢は美しい軌道を描き、的のど真ん中を射抜く

「スミレも射ったらいいよ。気が紛れるよ、きっと」

そんな言葉に突き動かされるように、ノロノロと立ち上がる
何も考えなくても慣れ親しんだ動きで準備を整えていた

構えて、射つ
的までの距離の半分で矢が失速して地面に突き刺さった

「的に当たるまで、無心で射つ」

まるで淡が先生になったかのよう
私は何も考えず、2射目を構える

またしても、あさっての方向へ飛んでいく

ああ、行き先が定まらない私の心のようだな・・・

「手が止まってるよ。考えるな、感じるんだ。射てば分かるさ、迷わず射てよ。って偉い人が言ってるらしいよ」

いろいろツッコミを入れるべきなんだろうが・・・
今はもう、何も考えたくない・・・


ようやく的に当たった頃には、もう周りはすっかり暗くなっていた

「スミレ、お疲れ」
「ああ・・・」

差し出してくれたタオルを受け取り、顔を埋める
まだ気持ちの整理はどう付けていいのかよく分からないが、とりあえず落ち着くことはできた

「無様な姿を見せたな・・・」
「ほんとだよ、貸しだからね」
「ああ、そのうち返す」

少しずつ、整理していけばいい
時間が解決してくれるのか、それとも力づくでどうにかしなければならないのか、それは今は分からないから




本当は、あなたに伝えたかった

愛していると

(了)
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/17(水) 23:57:55.61 ID:cTVSoqE/0
乙ー
こんな切ない展開をリクエストしたの誰だよ!!……とか思ってレス番見たら俺だった……
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/18(木) 00:02:14.03 ID:O2OYubAI0
※注 本編と時系列は同じですが、あくまでパラレルとご認識ください

すごい勢いで書きあがったけど・・・なんぞこれ・・・
なんか本編でも菫さんがこんな風に思ってるみたいじゃないですかー
すべて>>557氏が悪いっ、ネタ提供ありがとうございます(ペっこりん

それにしても昨今の宥菫な風潮は個人的には歯がゆい・・・
そんな思いがこの異常なスピードで書けた原動力に違いない


憧咲はまだそんなに固まってないので、先に昼休みかな
てるてるの出番は、もうちょい先です
でわでわ
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/18(木) 00:05:03.04 ID:O2OYubAI0
>>595
リクありがとうございました(ぺっこりん
こんなので、よろしかったでしょうか(震え声
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 00:28:55.79 ID:629dI5Lu0
>>597
本編の照宥初対面直前を菫視点で見る事で、キスシーンを
菫が目撃していたのがより胸くs……心に来てすばらだった(煌並感)
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/18(木) 00:38:30.89 ID:Ce4ljol6o
胸が痛いです先生…
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/18(木) 12:52:21.34 ID:AYy7qw+T0
どうも1です

>>598
胡桃並の感想でなくてよかったです

きっとこの切なさは、憧咲がプラマイ0に調整してくれる・・・といいなぁ
ほのぼの展開よりもシリアス展開の方が書きやすい今日この頃
次回更新は土日どちらかと思います。昼休み編、というか保健室編
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/19(金) 12:36:48.78 ID:GvqVdDVU0
1です
そういえば、憧咲を書こうと思って気づいたんですが・・・
シリアスとかが絡まない、普通のイチャイチャとか書いたこと無い気がする

まだ出だしだけですけど、こんな感じでいいんですかね?


【淡→咲=憧←穏乃 和「この四角関係、アリですね」】

-6月

憧「咲、お弁当一緒にたべよー」

咲「う、うん」テレ

淡「ぶーぶー。アコばっかりサキを独占してずるいよー」グヌヌ

穏乃「憧ー、たまにはみんなで食べようよ」グヌヌ

和「憧×咲、そして反目しながらもやがて惹かれあう淡×穏乃。アリですね」

淡 穏乃「ないない!」

憧「咲には敵わないけど、私だって最近料理の腕あげてきてるんだからね。はい、あーん」

咲「うれしいけど、やっぱり恥ずかしいな」

憧「咲ってばー。そんなとこもかわいいよぉ。ほら、あーん」

咲「う、うん。あーん」///

淡 穏乃「」グヌヌ

和「これは、今日もイラストが捗りますね」グッ



更新予定は土日どちらかに本編保健室編。来週にこの憧咲書いて、ようやく副将戦に入れるかな
さて、帰りにヤンガン買わないと
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 21:22:57.49 ID:Ys181uCE0
アリですね(直球)

今週のヤンガンを見る限りBブロックの準決開始は早くて次々回、まったりやれば年末かもしれんね
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/20(土) 06:52:17.56 ID:3evD7gbmo
すばらな四角関係ですね
今夜か明日の夜の更新楽しみにしてます
604 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/20(土) 23:16:16.77 ID:uycWguwY0
-side 照-

豊音と鹿倉さんには教室に戻ってもらうことにして、私は保健室へと向かった

その途中、見覚えのある人物とすれ違った

「あれ、愛宕さん?」

昨日副将戦で戦った、愛宕絹恵さんだった

「あ、チャンピオン・・・」

ひどく落ち込んでいるようだった
ああ、また私はこうやって麻雀で人を傷つけていくんだろうか

それにしても、どうしてこんな所にいるんだろう
今は2年10組が戦っているわけだし、3年2組の中堅は彼女の姉のはずだ。こんな所にいないで、応援しているのが普通だと思うけれど

「もうすぐ、中堅戦の後半が始まるよ?」

中堅戦が中断していたから、どこか買い出しにでも行く途中だったのかもしれない

「あ、ありがとうございます」

そう言うと、小走りに去っていく
そういえば、保健室の方から来たような・・・

まあ、いいか

保健室に着くと、なぜか戒能先生と宥が扉の前の長椅子に腰掛けていた

「どうしたの?」
「あ、照ちゃん。ちょっと2人きりにしてくれって、竜華ちゃんに言われて」
「こうして、お邪魔虫は退散しているわけです」

今、怜が誰と一番一緒にいたいかと問われれば、清水谷さんなのは間違いないだろう

「怜の体調の方は、大丈夫なの?」
「今のところ、問題無いですよ。何かあれば呼ぶように言いましたし」

病人を置いて保健室を出るというのは先生なりに抵抗はあったんだろう

「じゃあ、待ってようか」

私は宥の隣に座った

「照ちゃん、試合の方はどうなったの?」
「由子が出てる」
「え、由子ちゃん?」
「由子も悩んだと思うけど、それでも出るって決めたんだから、私には反対なんてできなかった」
「そっか・・・」
「なにやら、重そうな話ですね?」

戒能先生が長椅子から立ち上がる

「私はどんどん保健室から遠ざかるような運命なのでしょうか?」
「いや、そういうつもりじゃ」
「冗談ですよ」

微笑みを浮かべると、再び腰掛けた
先生が扉の向こうに視線を向ける

「まだ、効果が足りなくて倒れていた方が、幸せだったんでしょうか?」
「・・・え?」
「独り言ですよ」

そのとき、保健室の扉が開いた
605 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/20(土) 23:18:25.65 ID:uycWguwY0
「すいません、ありがとうございました」

扉を開けたのは清水谷さん
どうやら用件はすんだようだ

「もういいの?」
「ええ、大丈夫です」
「怜は?」
「待たせてもうて悪かったな。お見舞いしたって」

清水谷さんが体をどける
私が中に入ると、怜はベッドで寝ていた体を起こそうとしていた

「いいよ怜、寝てて」
「ん、大丈夫。それより、試合は?」

対局室にいたときよりは落ち着いているようだった

「由子が出てるよ」
「えっ、由子?」

驚く怜。事情を知っていれば誰でもそうなるだろう

「モニター、つけましょうか」

そう言って、戒能先生がモニターをつけてくれた
場面は、東2局
由子が立ち親だったようだけど、点数は増えていた

「由子、振り込んだん?」
「いや、怜と交代したときに25000点払ってるから、むしろ上がってるよ」

ルールを知らなければ怜が倒れた時よりは点数が減っているのだから、振り込んだと思っても仕方なかった
私は改めて、由子が出るに至った経緯を説明した

「そうか・・・。ごめんな、迷惑かけて」
「怜が無事なら、それでいい」
「でも、由子もレギュラーになれなくなるんやろ」
「それも含めて由子が決めたことだから、私は尊重したい」
「そっか・・・」

怜が俯いてしまう
私だって、こんなことにはなって欲しくなかったけれど・・・
それでもまだ、起こりうる最悪ではないと思うし。由子だってあんなに真剣に、なにより楽しそうにしている

「とにかく今は、由子を応援すること。私たちに出来るのは、それくらい」
「せやな。今の由子なら、大丈夫そうやもんな」
606 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/20(土) 23:21:43.95 ID:uycWguwY0
-side 竜華-

怜が倒れた・・・

私のせいや・・・

「ごめんな、竜華。宥姉ちゃん」

宥ちゃんと一緒に怜を保健室まで運ぶ
とりあえずは大丈夫そうやけど・・・

「結局今日もお世話になってもうたね、先生」
「そろそろ専用のベッドを発注しようか迷うところです」
「ええなぁ、ふかふかのにしてや」
「ノーウェイノーウェイ」

冗談を言いながら、怜は自分でベッドに潜り込んだ
そして毛布を頭からかぶった

「棄権になるんかな・・・」

毛布でこもった声は、震えていた

「100点でもええって言われとったのに、それすらできんとか・・・・最低や」
「怜・・・」
「私なんかが出たら、あかんかったんや」

泣いとるんか
怜、ほんま・・・ごめんな・・・

「先生、宥ちゃん、悪いけど二人きりにせてくれへん?」

先生と宥ちゃんが顔を見合わせて、頷いた

「何かあったら呼んでくださいね」
「怜ちゃん、あんまり落ち込まないでね」

そう言って、二人はすぐに出て行ってくれた
ありがとうな

「なあ、怜」
「なに?」

あやうく聞き逃しそうなくらい小さな声

「怖かったか、神代に変なもん見せられて」

毛布の上から怜の背中をなでる

「・・・竜華。オーラスに助けてくれたの、ほんまに竜華?」
「ほんまやで。ごめんな、すぐに助けてあげれんくて」
「なんで?」

怜が毛布から顔を出した
涙ですでにぐちょぐちょになっていた

ほんまに怖かったんやな、怜
そんで、悔しいんやろうな

ごめんな、ごめんな・・・・
こんな思いさせて、ごめんな

「なんでそもそも、助けにこれたん?」
「・・・怜、今まで言わへんかったけど」

ひと呼吸置く
臆病な私の、告白が始まる

「もともと、怜の1巡先を見る力、私のものやったんや」
「・・・・え?」
607 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/20(土) 23:26:42.83 ID:uycWguwY0
-side 怜-

「もともと、怜の1巡先を見る力、私のものやったんや」
「・・・・え?」

私の頭は真っ白になった
こんなときに、なんの冗談?

でも、竜華は真剣な目しとる
それに、こんなときにそんな面白くもない冗談、言うはずあらへん・・・

「何言うてんの?」

それでも私の口から出るのは、否定の言葉

「中学校から怜と知り合ったけど、1年の時私すごく弱かったやろ?」

竜華は構わず話を続けた

「そうやな、1年の時は私の方が強いくらいやったわ」
「でも小学生の時は強かったんやで。小3のときに、1巡先が見れるようになったんやから」
「・・・・ほんまに、ほんまなん?」

冗談を言うとは思えへんけど、それでもすぐに信じろと言われて信じられる話でもなかった

「ほんまや」
「だって、今までずっとつきおうてきて、そんなこと一回も言ったことあらへんやん」

竜華は首を振る

「だって、誰にも言ったことあらへんもん。今でこそ、この学校とかいろいろ特殊な打ち方する人たくさんおるけど、小学校の時はそんな人おらへんかったから、よう言わんかった」
「でも、中学の時は? 中学の麻雀部にもすごい人おったやん」
「そのすごい人に、私は未来視を封じられた」
「え・・・あ・・・」

私たちが1年の時の部長が飛び抜けて強かったのは覚えてる

「塞ちゃんみたいな感じやな。でも、未来が見えなくなった私はすごく弱くなった。そりゃそうやな、未来が見えて当たり前やと思っとったんやから」

そうやな・・・・
未来が見えなくなって、私は完全に戦意を喪失した
それと同じことを竜華も味わっとったんか
608 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/20(土) 23:28:29.84 ID:uycWguwY0
「部長が卒業した時に、私に言ったんや。勝手に封じてごめんね、封印は解くから、もう好きに使っていいよってな」
「なんでそんな流れになったん?」
「力に振り回されてろくなことにならないって、私が入部した段階で思ったらしい。ほんと、すごい人やで」
「え、じゃあ今まで未来が見えとったん?」
「見ようと思えばな」

竜華は小さく首を振った

「でも、中学の時の1年間で思ったんや。未来が見えなくても、強くなりたいって。ほら、ちょうどセーラがすごく強かったやん」
「せやな・・・。ダントツやったもんなぁ」
「補助輪がないと自転車乗られへんみたいで、カッコ悪いって思ったんや」
「そうか・・・」

じゃあ私は、なんやったんやろう
未来が見えて、補助輪付きで自転車乗れて自慢しとっただけやったん?

「去年の秋に、怜が倒れたやろ?」
「それからやな、私が未来が見えるようになったの」
「逆にそのときから私は、どんなに頑張っても未来が見えんくなっとった」

あの頃の私は、もう麻雀に見切りつけようかと思ってた
打つのは楽しいけど、竜華やセーラにはぜんぜんかなわへんし・・・

ただ楽しめればいい

強くは、なれない・・・・

そう思ってた矢先に生死の境を彷徨って
未来が見えるようになっていた

「怜が未来が見えるようになったって言ったから、私の力は怜のところへ行ったんやって思った」
「私が未来を見て、カッコ悪いとか思わへんかったの?」

こんなの八つ当たりだと分かっても、聞かずにはいられなかった

「よく分からへんかった、そんな力に頼るなって言うべきなんかどうか・・・・。怜、すごく嬉しそうやったから」
「嬉しかったよ。これで竜華やセーラと肩を並べられるなって・・・」
「ごめんな。こんなことになるんやったら、ちゃんと言わなあかんかったんや」

竜華が悪いことなんて、何一つないのに
補助輪に例えるから悪いイメージになるだけで・・・

どんなに便利な道具も、使い方を誤れば大怪我をする
ただ、それだけのことや

「急に色々言われて混乱しとるんやけど・・・」
「ごめん・・・」

しょぼんとする竜華
神代と相対したときはあんなにかっこよかったのに

まあ、そんなところも全部ひっくるめて

竜華がいらなかったこの未来視も含めて・・・

「ありがとな、竜華」
「・・・・え?」
609 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/20(土) 23:29:57.17 ID:uycWguwY0
-side 竜華-

「ありがとな、竜華」
「・・・・え?」

怜の微笑みは今まで見てきた中で一番、綺麗やった

怜が上半身を起こすと、私の目をじっと見つめた

「竜華にはいらなかったかもしれんけど、私にはこの未来視は必要やったよ」
「怜・・・」
「未来視が無かったら、私はもう麻雀諦めてた。あの冬の個人戦も、このクラス対抗戦も、私はただ眺めとるだけやったと思う」
「でも、神代に・・・」
「だから未来視で竜華と繋がっとるって、わかったんやろ。最高やん」

つながり・・・

ずっと言いたくて言いたくて、言えなかったこと
自分のせいで、怜に辛い思いをさせてるんじゃないかって
辛い思いをさせるんじゃないかって

ごめんな、ごめんな・・・・
そう思うだけで、私は何もしてこなかったのに・・・

それでもええって、言ってくれるの?

「竜華が気に病む必要なんて、あらへんからな」
「怜っ!」

もうこのぐしゃぐしゃの感情が抑えられなくて
私は怜を抱きしめていた

「竜華・・・」
「怜・・・」

怜の腕が私の背中に回る
その力が強くなるのを感じて、私は躊躇する

「強くても、大丈夫なん?」
「そんな気遣い、いらんよ・・・」

怜の囁きが、私のリミッターを外す

強く、強く・・・

「竜華、やっぱり痛いわ」
「ごめんっ」

ああもう。だから聞いたのに!
私は慌てて怜から離れた

「なんや、締まらんなぁ・・・」
「ほんまやね・・・」

お互いに笑い合う
しばらく見つめ合って、今度は怜が私を抱き寄せた

怜の息遣いが、耳をくすぐる

「なあ竜華」
「・・・何?」
「ありがとな・・・・愛してるで」

思わず強く抱きしめそうになるのを耐えた
そんなん耳元で言うなんて、反則やわ

今度は痛くならないように、そっと怜を抱きしめた

「私もやで」

この静寂が、私たちの時間を緩めていく

なあ、怜・・・
どんな未来が見えようと、私たちは望む未来へ進んで行こうな
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/20(土) 23:39:44.73 ID:uycWguwY0
とりあえずキリのいいところまで書けたので投下です
もう少し副将戦の前に書く事があるので、眠くなるまで書き溜めたいですね

>>602
阿知賀編(Aブロック)の準決勝が終わる→本編(Bブロック)の準決勝へ進む
という流れな気がしますので、年末までは進まないんじゃないかなという気はしますね
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/21(日) 01:19:10.01 ID:oelpUCiuo

続き期待してんよー
612 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/21(日) 12:49:42.03 ID:ia4+5Xbs0
-side 由子-

「洋榎」

対局が終わり、私はすぐに洋榎に声をかけた

「うちは用なんてあらへん」
「私はあるのよー」
「うちには無い!」

ああもう、完璧にこじれちゃったのよー

「洋榎ー」
「ついてくんなや」

対局室を出ていく洋榎を追いかける
ついてくるなと言われても無理な相談なのよ

何度も呼び止めても完全に無視されてしまう
はあ、これはちょっと予想外なのよー

「洋榎、由子!」

私たち二人を呼び止める声に、洋榎も立ち止まった
そこには恭子が腕組みして立っていた
なんか眉間にしわを寄せてるけど、きっと洋榎に対して怒ってるに違いないのよ

「恭子、洋榎が私のこと無視するのよー」
「恭子、お前までうちのことハブってんやないやろうな!」
「恭子、洋榎にガツンと言ってあげてほしいのよー」
「恭子、由子にガツンと言ってやれや。宮永なんぞに相談できてなんでうちに相談せんのやってな」
「恭子!」
「恭子!」
「うっさいわ、黙らんかい!」

ええぇ、あの恭子がキレたのよ・・・
その対象は、私だった

「由子、お前なんで対抗戦に出とるねん! なんのためにこっちがいろいろ気まわしたと思っとるねん」
「あの場面で出ないと後悔すると思ったのよー」
「こっちの後始末も考えや! まったく、代行とバトルせなかんやんか!」
「その、ごめんなのよ」

代行とバトル??
恭子、もしかしてレギュラー剥奪を撤回させようと思ってるの?

今度は洋榎に向かって恭子がキレた

「洋榎、お前もや。なんやあの腑抜けた打ち筋は、それでもうちらのエースか!」
「そやかて由子が」
「問答無用や! 卓についたなら麻雀のことだけ考えや」
「あ、すいません・・・」

そこで恭子が大きく息をついた

「とりあえず、久々に3人で飯食おうや。洋榎には話しておかなかんことあるしな」
「あ、ああ。せやせや、結局由子はなんやってんな」
「その件についてはエクストリーム土下座の用意はあるのよー」
「それは大事やな」

そうして3人で腹を抱えて笑った

「なんやもう、あほらしいわ。はよ飯食いに行こか」
613 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/21(日) 12:52:03.85 ID:ia4+5Xbs0
「はぁ、代行に脅された?」
「そうなのよー」
「だったらなんでうちに言わへんのや! すぐにでも代行のところに殴り込んだったのに」
「そう言うと思ったから相談できなかったのよー」
「あ、すいません・・・」

と言いつつ、洋榎は手元のたこやきを口に運んだ

「東京の屋台にしては、このたこやき旨いな」
「それはなによりや・・・」

恭子が呆れ顔で言う。そしてため息をついた

「さて由子、アレやるか・・・・」
「なのよー」
「お、待ってたで」

学食でやるのはなかなか勇気がいるけれど、洋榎に心配かけたのは間違いないこと
恭子と二人して、学食の端っこまで移動する

「洋榎ーーー」

思いっきり叫び、洋榎まで全力疾走

「すいませんっしたーーーーー」

そのままの勢いで洋榎の足元で土下座

サッカー部名物、エクストリーム土下座
できるだけ派手な演出で土下座をし、許しを請う
これをもって全部水に流す、それがサッカー部のしきたりなのよ

「よっしゃ、この観衆の中、見事なエクストリーム土下座や。感動したっ」
「はあまったく、3年にもなってこれやる羽目になるとは思わんかったわ」
「なのよー」

周りがざわついているが、私たちがサッカー部だとわかると納得の視線になる
まだ慣例になっているからいいけど、やっぱり恥ずかしいのよー

「ま、これでいままでのことはチャラやな。で、実際のとこ、これからどうすんねん」

再び席につくと、恭子が少し難しい顔をする

「由子が対抗戦に出てもうたからな。正直、事態がどう転ぶかよく分からへん」
「ごめんなのよー」
「まあそれはもうチャラやからええけども。とりあえず様子うかがってみるしかあらへんな。3年1組の勝敗によっても、こっちの動きは変わる」

もともと代行が動いたのは3年1組を負けさせるため
なら私が出ても、結果3年1組が負けたのならお咎めなしの可能性はある
逆に勝ってしまったら?

「まあ、そのへんのややこしいことは恭子に任せるわ。荒事になったら任せとき」
「そうならんことを祈る・・・」
614 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/21(日) 12:53:53.75 ID:ia4+5Xbs0
-side 憧-

「よっし、行ってくる!」

昼休みも終わり、とうとう副将戦
相手はあの、宮永照
無事で済むわけがない

でも私たちの大将は、淡だ

「淡、玉砕してくるからあとは頼んだ!」
「大丈夫、任せて安心だよ」

1位を走る玄たち2年10組との点差は僅かに900点
逆に3年1組とは約8万点差

ここまでは理想的な展開
私でぶち壊すわけにはいかないっての

「憧ー、頼んだぞ!」
「憧、平常心です」

しずと和も声援を送ってくれる
そんな中、咲が少しうかない顔をしていた

「咲、どうしたの?」
「憧ちゃん、思い出したことがあるんだ・・・」

咲は、少し震えていた

「お姉ちゃん、この点差だからいつも以上に全力で来ると思う」
「そりゃそうよね。そのくらい織り込み済みだって」
「だから、もし卓が軋む音がしたら気をつけて」

卓が軋む?

「どういうこと?」
「私も1回しか見たことないんだけど。お姉ちゃんの連荘を止めてもうお姉ちゃんの親がない状態で、いつもみたいに1000点から上がっていたらお姉ちゃんは勝てないって状況の時があったの」

たとえば南3局が照さんの親で、親が流されてオーラス1000点だけ上がっても逆転不可能という、そんな状況だったのだろう

「そのとき、卓が軋む音がしたの。ギギギーって」
「なにそれ、故障?」
「私も初めはそう思ったけど。その局、お姉ちゃんはいつもとは全然違う打ち方で倍満をあがったの」
「・・・いきなり倍満?」
「うん、それでお姉ちゃんの逆転」

連続和了だけでも厄介だってのに、まだそんな奥の手があるって言うの?

「テルにそんなのあるなんて聞いたことないよ?」
「先生はどうなんですか?」

淡が驚き、しずがハルエに話を振る
ハルエも首を振った

「去年のクラス対抗戦で、私が憩と衣の担任だったとき。1回だけ、憩に対して不自然な上がりはあった。でもそれが何なのか、私にも分からない。多分滅多に出さないような、奥の手なんだろう」
「そう・・・」
「ただ、その1回もオーラスだった。そのとき卓が軋んだかどうかは、私には分からないけどね」

でもま、そんな奥の手があるって分かってるだけでも収穫
対局中にいきなりそんなの出されたら、対応できるかどうか分からない

「ありがとね、咲。気をつけるよ」
「うん、がんばって」

みんながここまで繋いでくれた
ここまで来て負けるわけにはいかないっ

そして、咲に勝つ喜びを教えてあげるんだ
一人一人はそんなに強くなくても、みんなで力を合わせれば勝てるって
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/21(日) 13:09:05.26 ID:ia4+5Xbs0
とりあえず切りのいいところまで投下。パート2
なかなか副将戦にたどり着かないよこれ・・・
とりあえずここまで書いておけば後の憧咲も不自然になるまい

某キャップが阿知賀に行ったSSのギギギーはなかなか衝撃的でしたが
僕にはあれは越えられない・・・・

また夜に書けるだけ書きます、upできるかは分かりませんが
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/21(日) 13:46:09.18 ID:T7W8h3kE0
乙!   ジュウリン
主人公が出陣する前に周りをフォローするのは良い事だと思うのよー
そして憧ちゃんのすごい死亡フラグ……
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/21(日) 18:59:45.28 ID:ia4+5Xbs0
夜書けるかびみょうになってきた
なのでここまでの『tell you that I love ...』を3行では無理だったので5行でまとめた


・咲全キャラが麻雀学校である白糸台高校(女子高)に通っています
・3年1組に、宮永照・松実宥・園城寺怜・臼沢塞・姉帯豊音・真瀬由子がいて、タイトルが「tell you〜」の通り、照×宥中心で進行します
・クラスごとで戦うクラス対抗戦が行われ、現在決勝戦の中堅戦が終了しました(点数は>>583参照)
・決勝戦のクラスとメンバーは>>475を参照
・現在中堅戦と副将戦のあいだの昼休みイベント進行中


>>616
フラグとか全然気にしないので、普通にアコチャー活躍するかもしないかも
もうちょい周りで書くことあるのでがんばります
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 19:54:45.52 ID:oG7Xl++fo
ギギギーはアニメ最終話の灯篭に関係があるんだろうか
どっかのssではコピー能力にしていて面白かったが
619 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/22(月) 01:35:13.81 ID:ZlXuH6JB0
-side 憩-

中堅戦が始まってから、絹ちゃんの姿が見えない

「どこ行ってもうたんやろうねぇ・・・」
「昨日の宮永さんとの戦いがこたえるのかもしれないね。私もしばらくは落ち込んだし」

私の隣には玄ちゃん
昼休みになっても絹ちゃんは教室には戻ってこなかった

それぞれ手分けして探しているところ
私たちは保健室に向かっていた。戒能先生とは医療関係についてよく話をする

「なんもなければええけど、もう昼休みも半分切ってるしなぁ・・・」

中堅戦の園城寺さんのように公式に認められる理由であれば交代要員も出せるけれど、ただいなくなったでは通らない
開局時間から5分遅れればそれで棄権となる

初めから休みやったんなら分けるけど、次鋒戦までは一緒に応援しとったんやからな・・・

保健室に着くと、そこにいたのは戒能先生と、

「いくのん先生、こんなところで何してはるんですか?」
「憩ちゃんや。ちょうどよかった」

にへらとしまりのない笑みを浮かべて、赤阪先生は1枚の紙を差し出してきた

「絹ちゃん、体調不良で午後は休みになったんよ〜。これを煌ちゃんに渡してくれへん?」

渡されたのは、戒能先生の署名が書かれた病欠の証明書
これを大会委員長の煌ちゃんに渡せば、誰かに交代するのは可能になる

でも、どうも納得いかん・・・・

「・・・でも、中堅戦が始まるまでピンピンしてましたよ?」
「本人もそう言っていましたが、中堅戦が始まったくらいに保健室に来て体調が悪いということでしたので、寮へ帰るように指示しました」

質問に答えたのは戒能先生
・・・そんな体調が急に悪くなるようには見えんかったけど。絹ちゃん、サッカー部やから体は鍛えとるはずやし

「え、じゃあ絹恵ちゃんの代わりはどうするんですか?」
「漫ちゃんでどーやろか。絹ちゃんよりもランク低いから、由子ちゃんみたいに点棒出さんでもええしな」

玄ちゃんはあっさり信じとるのか、もう赤阪先生と交代の話をしている

「じゃあ、今度は漫ちゃんを見つけて話をしないといけないね」
「せ、せやね・・・」

どんなに納得できなくとも、ここに病欠の証明書がある以上、交代要員を確保しないといけないのは確定事項
2年10組のリーダーは私だから、私が交代を告げに行かなければならないわけやし

「玄ちゃん、ちょっと外で漫ちゃんに電話してもろうてええ?」
「うん、わかったよ」

玄ちゃんにひとまず外に出てもらう
620 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/22(月) 01:36:50.81 ID:ZlXuH6JB0
「赤阪先生」
「どうしたのー、急に改まって?」

ひと呼吸置く
いまさら覆すことはできないのだろうけれど、せめて一矢報いておきたかった

「絹ちゃんは、納得しとるんですね?」
「納得もなにも、体調不良やって。なー、良子ちゃん」
「ええ。そうですよ」

戒能先生も平然と返事をする。その視線は、まっすぐと私に向かってきていた。一応、納得はしとるのか?
もし無理やり休まされたとかやったら、多分先生は視線を逸らしたり泳がしたりしとると思う

「ええです・・・。漫ちゃんに代打断られた場合の交代要員については、私に一任してもろうてええですね?」
「時間あらへんしな、憩ちゃんの人選にお任せやー」
「わかりました」

まあ、漫ちゃんは断らんと思うけども・・・

「憩ちゃん、漫ちゃんOKだって!」

外で電話してもらっていた玄ちゃんが保健室に戻ってきた
OKか・・・

それでも、私個人としては、絹ちゃんに頑張ってほしかったけどな・・・
いまさらどうこう言ってもしゃーないけども

「じゃあ、絹ちゃんに代わって漫ちゃんってことを私が言いにいけばええんですね?」
「よろしくなー」
「じゃあ行こか、玄ちゃん」

確かに相手は宮永照
そして昨日の絹ちゃんはまったく通用してへんかった。オープンリーチは確かにすごかったけれど、そう何回も使える手ではない

だったら、漫ちゃんの爆発に賭けてみたくなる気持ちも分からんではない
それでも・・・

――これでええの、絹ちゃん?
621 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/22(月) 01:37:47.97 ID:ZlXuH6JB0
-side 照-

昼休みになり、怜はひとまず保健室から教室に戻っていいことになった

「毛布と枕は持っていっていいから、応援中は横になってなさい」

といって戒能先生が寝具を一式貸してくれたようだ
由子が戻ってきていないけど、サッカー部の人達と話すのでと塞のところにメールが来たらしい
なので残りのみんなでご飯を食べることにした

「こちらの教室は賑やかでいいな」

そう言って教室に入ってきたのは、菫だった

「あれどうしたの、菫?」
「愛宕は戻ってこないし、石戸も大将戦に向けて準備があるから部室の方へ行くらしくてな。福路も部室の方へ行くそうだ。だからもう2組にいてもしばらく誰もいないんだよ」
「そう・・・」

これで教室には、美術部の5人が全員、怜と清水谷さんと途中でお見舞いに来た江口さん、宥、菫、そして私を含めて11人になった

「じゃあ、副将戦の時もここにいる?」
「できればその方が退屈しなくて済む。愛宕も、真瀬のいるこちらの教室の方が居やすいだろうしな・・・」
「あー、なんか、ごめんな」

清水谷さんが手を合わせて小さく頭を下げた

「清水谷は悪くないさ・・・。それに、今日が終わってしまえばこんなぎこちない空気もなくなるだろうからな」

本来ならクラス対抗戦は親睦を深めるために行われていることなのに、なんだか悲しい・・・
でもそれも、あと副将戦と大将戦を残すだけ
勝っても負けても、それで終わり

本当は咲のことを宥から聞こうと思ったけれど、とてもそんな雰囲気ではなさそうだった
それに、宥が悪いようにはなってないと言うのだから、今はそれを信じよう

怜のこととか
由子のこととか
中堅戦でいろいろありすぎて、咲の話を今聞いてもあんまり落ち着かないかもしれないし

とにかく今は、副将戦のことを考えよう
由子が持ち直してくれたとは言え、トップまでは8万点差はある

・・・アレ、使うしかないかもな

正直、使いどころが難しいからあまり使いたくないのだけれど


――苦戦の、予感がする
622 :tell you that I love ...(8-4) [saga]:2012/10/22(月) 01:42:33.89 ID:ZlXuH6JB0
眠たい
きっとミスっているに違いないと思いつつ投下
とりあえずこれで副将戦に入れる。今週中に憧咲書いて、来週から副将戦になると思います

>>618
アニメの最後とか全然覚えてないなぁ・・・チェックしとかないと
コピー能力ですか、それってマホとかぶってる気がしますが1人1局じゃなくてずっとコピーとかそんな感じだったんですかね?
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/22(月) 01:47:53.55 ID:hnIDFV1Lo
>>622
ギギギーは関係なかったわゴメン
怜「見えへん…一巡先も…」
↑のss読んでもらったらわかると思う
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/22(月) 06:37:57.68 ID:ZlXuH6JB0
おはようございます
今週は憧咲の書き溜めしたいと思いますので、更新しても週の後半くらいと思います

>>623
教えていただいてありがとうございます
読んだことありますけど、あれはコピーというよりは能力を奪ったり返したりみたいな能力でしたね、たしか
625 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/22(月) 23:57:31.02 ID:ZlXuH6JB0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)

※注 
なぜか和さんのキャラだけおかしくなってしまいましたが・・・そういうのもアリですね
憧咲といいつつ、なぜか劍谷日和風な何かになってしまった・・・・
まあ、本編もintermission-3もシリアス続きだったのでこういうのもアリですね

ダメだったら、エクストリーム土下座の用意はあるっ



『白糸台の日常(憧咲風味)』


【淡→咲=憧←穏乃 和「この四角関係、アリですね」】

憧「咲、お弁当一緒にたべよー」

咲「う、うん」テレ

淡「ぶーぶー。アコばっかりサキを独占してずるいよー」グヌヌ

穏乃「憧ー、たまにはみんなで食べようよ」グヌヌ

和「憧×咲、そして反目しながらもやがて惹かれあう淡×穏乃。アリですね」

淡 穏乃「ないない!」

憧「咲には敵わないけど、私だって最近料理の腕あげてきてるんだからね。はい、あーん」

咲「うれしいけど、やっぱり恥ずかしいな」

憧「咲ってばー。そんなとこもかわいいよぉ。ほら、あーん」

咲「う、うん。あーん」///

淡 穏乃「」グヌヌ

和「これは、今日も妄想が捗りますね」グッ


【理系? 文系?】

憧「今日も図書室に行くの?」

咲「うん、読みきれないくらいたくさん本があるから毎日楽しみだよ」

憧「そっか、じゃあ私は横で宿題でもしてようかな」

咲「そうだ宿題あるんだった・・・。数学苦手なんだよね」

憧「数学なら任せてよ!」

咲「ほんと? ありがとう」ウルウル

憧「逆に国語とか苦手だから教えてほしいなー」

憧(まあ、比較的苦手ってくらいだけど・・・。咲は文系だから)

咲「うん、国語なら得意だから任せて」

憧(お互いに得意な教科を教えあう、アリですねっ)ホワワン

憧「にしても、100点棒一本まで細かく点数調整してのけるのに、数学が苦手なんて意外かな」

咲「えー、それとこれとは違うよー」

憧「じゃあxが下家、yが上家としてー」

咲「余計ややこしくなるだけだってばっ」
626 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/23(火) 00:00:01.69 ID:q+1eOTKE0
【昼休み、ふたたび】

憧「咲、今日も一緒にお弁当食べよー」

咲「うん」

淡「今日は!」ガシッ

穏乃「させないよ!」ガシッ

咲「ちょっと、淡ちゃん」

憧「何するのよ、しず」

淡「サキは今日はこっちで食べようねー」ズルズル

穏乃「憧は今日はこっちで食べよ!」ズルズル

咲「憧ちゃーん!」

憧「咲ぃ!」

和「切り裂かれる2人の絆。それでもなお、お互いを思いあう気持ちはますます強くなるのであった・・・・。アリですね!」

咲「わけのわからない事言ってないで助けてよー」

和「私は咲×淡、穏乃×憧でもいっこうに構いません! 私が愛でているのは優希だけですからっ!」グッ

憧「長野で何があったのよー、和!」



【その昼休み 1】

淡「ひさびさにサキとランチだね」ウキウキ

咲「ううぅ、ひどいよ淡ちゃん」ウルウル

淡(うっ、罪悪感が・・・)

淡「ひどいのはサキの方なんだからね。みんな友達なのにアコと2人だけでランチしようとするなんてさ」

咲「うん・・・・。ごめんね」

淡「そうそう、分かればよろしい」

咲「じゃあ今からみんなで一緒に食べよう」

淡(oh・・・)

淡「いやいやいや、たまには2人で食べようよ」

咲「え、でも2人でご飯食べたらダメなんでしょ?」

淡「えー、うん。そうですね、そうですね」

淡(メゲるわー)
627 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/23(火) 00:02:36.67 ID:q+1eOTKE0
【その昼休み 2】

穏乃「ひさびさに憧とご飯が食べれるねー」ウキウキ

憧「どういうつもりよ、しず?」

穏乃「だって憧、咲とばっかりご飯食べててずるいよ! 私だって一緒に食べたいのに!」

憧「しずったら嫉妬してくれちゃってるの? かわいい」

穏乃「か、かわいいってなんだよ」////

憧「でも、私には咲の方がもっとかわいいのよ。ごめんね、しず」

穏乃「なんで振られたみたいになってるのさー」

憧「んー、でもそこははっきりさせておいた方がいいかと思って」

穏乃「でも、諦めないからね!」

憧「それでこそ、しずね。でも、咲に振られでもしない限り、無理だよ」

穏乃「じゃあ咲に振らせてみせる!」

憧「いや、そういう方向性で努力はしてほしくないかな・・・」

咲「憧ちゃん、穏乃ちゃん、一緒に食べよ?」

穏乃「咲、いいところにっ。早速だけど、憧を振って!」

咲「えっと、どういう流れ??」

憧「だーかーらー!」

淡「おお、その手があったかっ! アコ、サキを振って!」

憧「誰が振るか!!」

和「いいですね、アリですね」

憧「そしていつからいたの、和!」

和「妄想が捗る場所がどこか導き出すことくらい、デジタルにかかれば造作もありません。そしてそこに、私は存在します」

咲「和ちゃんも十分オカルトだと思う・・・」


(続)


もうちょいネタはあるので、また今週のどこかで
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 00:32:32.90 ID:Wr5cQCuW0
乙ー
1−5のチームはこんなに仲が良いのに3−2は何故……

……そうか!嫁が別のクラスだったりNTRたりしてるからか!(確信)
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/23(火) 12:42:58.66 ID:iBbLfUaIO
この設定この状況
初めて来たけど実にすばらっすね

大将戦での魔物オールスターがいまからすごい楽しみ
>>1がんばー
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/24(水) 00:32:38.23 ID:5/egmScBo
乙乙
久々に来たんで一気読みしてしまったよ
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/24(水) 00:56:03.35 ID:vSsKCTPP0
tell you とてもおもしろいです
毎日毎日楽しみにしてます
決勝はどこのクラスが勝つのか・・・

決勝後の後日譚なども書いて下さると嬉しいです
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/24(水) 12:51:39.11 ID:icelm2Gc0
昼休みの1なのよー
昨日はひさびさにリアルに麻雀したので疲れました、今日は家に帰ったらすぐ寝ます・・・
残りの憧咲は金曜日かな?

>>628
NTR? それはどんな効果だ、いつ発動する?
なお、菫「お見せしよう、3−2のほのぼのを!」とか思いついたものの、その後のネタが思いつかなかった模様

それより2−10で、小蒔×憩でみこみこナースじゃないか!とか思いついて収拾がつきません


他の方も書き込みありがとうございます
なかなか話が進みませんが、ぼちぼちやっていきますので今後ともよろしくお願いします


目次
>>576
633 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/25(木) 06:58:59.82 ID:LYXDBs6O0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)
【宮永さんちの家庭事情】

咲「憧ちゃん」

憧「何?」

咲「今度の土曜日、うちに来ない?」

憧(デートのお誘いキマシターーー!)

憧「え、いいの? 照さんとかお母さんとかいるんじゃないの?」

咲「お姉ちゃんは宥さんとデート。お母さんは町内会で土日に旅行なんだ」

憧(そういや、照さんと宥姉付き合ってるんだった・・・。玄に相談されたときは大変だったなぁ・・・)

咲「あと、日曜日はどこかおでかけしよう?」

憧「いいねいいね、二日連続でデートとかいいね」ワクワク

咲「うん、お姉ちゃんがね。日曜日は宥さんと家でゆっくりしたいから、私はおでかけしてきてとか言ってきて・・・」ピキ

憧(ん、なんか様子が・・・)

咲「ひどくない! 最近お姉ちゃん、宥がかわいいとか、宥と今度デートするんだとか、宥の膝枕最高とかそんなことばっかり話すんだよ。私だって憧ちゃんのこと話したいの我慢してるのに!」

憧「そ、それは大変ねぇ・・・」

咲「もう私もそろそろ、お姉ちゃんに憧ちゃんのかわいいところを108個くらい並べたててあげようと思うんだけど、どう!?」

憧「あー、せめてその煩悩と同じ数並べるのはやめようか・・・」


【玄のお悩み】

玄「憧ちゃん・・・・」

憧「どうしたの、玄。そんな深刻そうな顔して?」

玄「あのね・・・おねーちゃんが・・・・」

憧「宥姉がどうしたの?」

玄「チャンピオンに傷物にされちゃったのぉぉぉぉ」ショボン

憧「・・・・・うん、さっぱり事情が分からないから一から説明して」

玄「おねーちゃんから、照ちゃんと付き合うことになりましたって紹介された」

憧「うん、それで」

玄「え、それで終わりだけど?」

憧「・・・・・は?」

玄「え、え? あ、えっと、時間は昨日の夕方くらいだよ」

憧「いや、紹介された時間じゃなくて・・・。傷物にされた経緯を詳しく」

玄「え、何言ってるの憧ちゃん。付き合う=傷物にされた、ってことでしょ!」

憧「全然違うっ」

玄「そ、そんな・・・・。じゃあ、付き合う前段階からすでに傷物にされたってこと」ワナワナ

憧「うん、一回傷物から思考を切り離そうか・・・」

玄「だってぇ、おねーちゃんがぁ」

憧「宥姉だって、恋愛の一つや二つするでしょうに・・・」

玄「違うよぉ、きっと脅されたんだよぉ。『私のコークスクリューで、お前の服をむちゃくちゃに剥いてやろう』って。おねーちゃんは逆らえずに仕方なく付き合うことにしたんだよ!」

憧「・・・・私、帰るね」

玄「『くくっ、いいおもちを持っているな。私にかかれば連続でツモって、飛ばしてあげられるよ(意味深)』『いや、玄ちゃん、助けて・・・』『やめるのです、チャンピオン!』『お、お前はっ』『ドラゴンチョーップ!』『ぐあああああ』『玄ちゃん、ありがとうっ』。ってなって、それからそれから」ブツブツ

憧(シスコン怖い・・・・逃げよう・・・)
634 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/25(木) 07:01:41.60 ID:LYXDBs6O0
【玄のお悩み 翌日】

玄「憧ちゃん、今日は急にいなくなっちゃったから心配したんだよ」

憧「あはは、ごめんね」

憧(また上手く逃げないと・・・・)

玄「とにかく、おねーちゃんには宮永さんはふさわしくないのです!」

憧「あー、うん。具体的にはどのへんが?」

玄「まず、おもちが足りない!」

憧「・・・・・・・・」ハァ

玄「私が認めるおもちの持ち主じゃないと、おねーちゃんにふわしくないんだよ!」

憧「じゃあ、具体的に誰ならいいのよ?」

玄「そーだなー、小蒔ちゃんとかかなー。あれはなかなかになかなかのおもちだよ!」

憧「うーん、二人ともほわほわしてて、恋人ってよりは姉妹って感じだけど・・・」

玄「おねーちゃんの妹は私だけなのにっ」

憧「いや、そんなマジレスされても・・・。書道部なら石戸さんの方がおもちもすごいし、しっかりしてそうだしいいんじゃないの?」

玄「石戸さんは確かにすごいおもちをお持ちだけど。それだとおねーちゃんをしっかり守ってくれそうで、嫌だな・・・」

憧「守ってくれた方がいいんじゃないの?」

玄「それだと私がおねーちゃんを守るっていう崇高な役目まで取られちゃう!」

憧(帰りたい・・・)


【宮永さんちの家庭事情2】

憧「っていうことがあってねー。もう、玄もいい加減お姉ちゃん離れしろってーの」

咲「確かに、それは無いね・・・」

憧「でしょ。良かった、咲もお姉ちゃんを守るとか言いだしたらどうしようかと思ったわよ」

咲「あはは、そんなこと言わないよー。だって、お姉ちゃんに甘えていいのは私だけだもん」

憧「そうよ・・・ねぇ・・・・」ハテ?

咲「お姉ちゃんも誰かに甘えたいときはあるだろうから、今は宥さんに甘えさせてあげてるだけだもん。宥さんがお姉ちゃんに甘えだしたら・・・・ゴッ倒すよ」

憧「・・・・えっと、咲さん?」

咲「なぁに、憧ちゃん?」

憧「参考までに聞きたいんだけど、ゴッ倒すって、具体的に聞かせてもらっていい?」

咲「え? ただ嶺上開花・清一・三暗刻・三槓子・対々和・赤1を箱下無しで責任払いさせ続けるだけだよ。お姉ちゃんに甘えようだなんて豆腐メンタルを叩き直さないと。ふふ、100本場くらいまで行けば、治るかな」

憧「咲ぃ、目を覚まして」グイングイン

咲「・・はっ。あれ、私、また魔王化してたの?」

憧「大丈夫だよ、一緒にリハビリ頑張ろうね!」

咲「うん、そうだね・・・・。お姉ちゃんだって、恋愛の一つや二つするんだし。私も乗り越えていかないと・・・・」

憧(私にもお姉ちゃんいるけど、年が近いとこうなるのかなぁ・・・・分かんないなぁ)

憧「そうそう。とにかく、週末のデート、楽しみにしてるからね」ニコ

咲(はう、その笑顔は反則だよぉ)///

咲「うん、いっぱい楽しもうね!」

咲(今は憧ちゃんがいるんだし、頑張ってお姉ちゃん離れするんだ!)

(続)

週末を目処に、週末編を書いて憧咲は終了。来週から本編再開になると思います
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 08:14:44.39 ID:zkbiuAEIO
100本場連続役満って-400万超えると思うんだが……
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/25(木) 11:36:18.14 ID:RARzrIs/o
あったかいコークスクリューを会得したら
かなりの確率で天和が出来そうな気がする
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/26(金) 01:53:47.01 ID:wC3w9jSO0
一年後・・・
咲「宥姉さ〜ん」ダキッ
宥「あらあら」アッタカ〜イ
照「」ギギギ
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/26(金) 12:34:20.43 ID:gyi/8KkZ0
昼休みの1だしっ

>>637
ちょっ・・・
続きはこうですか?


咲「宥姉さ〜ん」ダキッ

宥「あらあら」アッタカ〜イ

照「」ギギギ

宥「ほら、照ちゃん膝枕」

照「う、うん・・・」テレ

憧「咲、何してるのっ」

咲「憧ちゃん、これは・・・」

宥「憧ちゃん、咲ちゃんの隣においでよ。いっしょにあったまろう?」

憧「まあ、宥姉がそう言うなら」ダキ

玄「お、おねーちゃんが大変なことになってる!」

宥「あ、玄ちゃん、おいで〜」

玄「う、うん」ムギュ

菫「なんだこれ?」

宥「あ、菫ちゃん。でももういっぱいだよ〜」

菫「まだ空いてるじゃないか」

宥「え?」

菫「唇が、な」


宥姉がたらしである可能性が微レ存?
照ハーレムの次は宥ハーレムでどうですか、某シリーズの方!
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/26(金) 12:35:51.77 ID:Ra9mWtkxo
マフラーで絡め取れ
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/26(金) 18:14:04.33 ID:wC3w9jSO0
修羅場にならないとは!
さすが宥姉さん
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/26(金) 20:39:39.00 ID:T5c1mfRu0
NTR返し!そういうのもあるのか
642 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/26(金) 22:08:57.19 ID:gyi/8KkZ0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)


【土曜日 1】

憧(とうとうデートの日。私は今、咲の住んでいるアパートの前。うわー、ドキドキしてきたよっ)

憧(いいよね、メイクは薄めだけどバッチリ気合入れてきたし。髪も整えてきたし。うっし、大丈夫!)

ピンポーン

咲「はーい」

憧「おじゃましまーす」

咲「どうぞー」

憧「おはよう、咲」

咲「おはよう憧ちゃん。大したところじゃないけど、ゆっくりしてってね」


憧「ところで、何するか決めた?」

憧(土曜日は咲が、日曜日は私がどんなデートするのか考えるということにしたんだけど・・・・下手すると1日中読書とか言いかねないんだよなぁ)

咲「うん、とりあえず、腹筋しよう」

憧「・・・・・・は?」

咲「だから、腹筋」

憧「マジデスカ?」

咲「マジデスヨ?」


【クラスメート、高鴨穏乃はこう言った】

-金曜日の放課後

咲(デートかぁ。でも家で読書なんてしても憧ちゃんがつまらないだろうしなぁ。何か、意外なところを見せたいな・・・)

咲「うん、意外な一面を見せて、彼女をドキっとさせる。これ王道!」

穏乃「なにが王道なの?」

咲「あ、穏乃ちゃん。ちょっといい?」

穏乃「ん、なになに?」

咲「私が家でしてたら意外なことって、何?」

穏乃「うーん、そうだなー。筋トレとか?」

咲「なるほどなるほどー。ありがとう」

穏乃「よく分かんないけど、役に立ててよかったよ」


【土曜日 2】

咲「1、2、3〜」プルプル

憧(・・・・なにこれ? まあ震えながら頑張る姿に小動物的な愛らしさを感じないわけでもないけれど)

咲「4、5、6〜」プルプル

憧(・・・・咲、ダイエットでもしたいのかな? むしろもっと食べないといけないくらいだと思うんだけど)

咲(あれぇ、反応がよくないなぁ・・・)

咲「あんまり意外じゃなかった?」

憧「いや、意外っちゃ意外だけど・・・」

咲「そっか、じゃあ次ね。ちょっと準備してくるね」

憧(・・・・何がしたいのかよく分からないよぉ)
643 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/26(金) 22:14:06.41 ID:gyi/8KkZ0
【クラスメート、大星淡はこう言った】

咲「淡ちゃん」

淡「サキ、どうしたの? 今日部活あるから手短にね」

咲「私が家でしてて意外なことって何かな?」

淡「えー、急にそんなこと言われてもなぁ・・・・。そうだ、家では実はネコ耳をつけてるとか」

咲「ネコ耳かぁ。それなら確かお姉ちゃんが持ってたかな。ありがとう淡ちゃん」

淡「ちょ、今なんて言った!」

咲「え、ありがとうって言ったんだよ。じゃあ部活頑張ってね」

淡「そうじゃなくて、テルがネコ耳持ってるってどういうことっ!!」

和(チャンピオンのネコ耳? アリですねっ)

和(それに先ほどから咲さんがみなさんに聞いていること。ふふふ、これは面白くなりそうです。直接見ることは出来ないでしょうけれど・・・・)

和(とにかく、早く私にも聞きに来てくれないでしょうか)ワクワク


【土曜日 3】

咲「おまたせ・・・にゃん」/// ←ネコ耳装着

咲(意外性のためとはいえ、ちょっと恥ずかしいかも)

憧「・・・・・こ、これはっ」

憧(か、かわいいぃぃ。けど、なんで突然こんな流れなの!?)

咲「憧にゃーん」スリスリスリ

憧「くすぐったいってばぁ。だめぇ」

憧(なに、咲は家ではネコ耳してるのっ。意外だわ。咲ちゃんは意外カワイイっ)

憧「このぉ、ならっ! 首筋ゴロゴロゴロ」

咲「ううぅん、ゴロゴロゴロ」モジモジ

憧「かわいすぎる、家で飼いたいっ!」

咲(やったぁ、成功だ!)


(続)


まだ続きます
この流れで、僕は真面目な本編を書けるんだろうか・・・心配です
いまのノリでは副将戦の途中に「ネコ耳ツモォ」とかやりかねない・・・
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 11:47:08.41 ID:iHL2gmWy0
乙ー
ん?副将戦ではシスコン照による菫直伝のシャープシュートで憧ちゃんの愛を試す流れだよね?
645 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/27(土) 16:26:17.02 ID:nEvx64kU0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)


【土曜日 4】

咲 読書中

憧(結局こうなるのよね。まあそれも咲らしいけど・・・・雑誌持ってきてよかった)

憧(うーん、こうやって隣に寄り添ってると、咲のぬくもりが伝わってきて)

咲 ピラ

憧(咲は集中してるなぁ・・・・。私なんか雑誌どころじゃないのに)

憧(タイトルを見たけど、よく分かんないし。ここは触れない方が無難かな)

憧(ま、いっか。もっと密着してみよう)グッ

咲(・・・・ん、もう。ただでさえドキドキしてるのに)

咲(何回も読んだ本だからいいけど、やっぱり頭に入ってこないな・・・)

咲(ま、でもお昼ご飯の準備までちょっと休みたいし、しばらくこのままで)

カガヤイテー ココイチバーン

憧「もう、メールか・・・。って迷惑メールじゃない。マナーモードにしとこ」

咲「憧ちゃんの携帯、かわいいね」

憧「咲はいつ携帯持つの? 照さんは持ってるんだから、咲も買ってもらえばいいじゃない。一緒に選んであげるしさ」

咲「そうだね。今度お願いしてみようかな。明日一緒に選んでもらえば、すぐ買ってもらえるかもしれないし」

憧「うん、そうしてみなよ。そしたら夜にメールのやり取りとかできるしさ」

咲「いいね、そういうの」

憧「そうだよー。夜になって、咲は何してるのかなとかそわそわする身にもなってよねー」

咲「でも、そういうそわそわも、私は悪くないと思うけどな」

憧「えー、私は無理だよー」

咲「そうかな。すぐ買ってもらえるか分からないから、しばらくは我慢だね」

憧「明日は携帯ショップ行くよ。咲に携帯欲しいって気にさせるんだからね」

咲「うん、楽しみにしてるね。じゃあ、そろそろ私、お昼ご飯の準備するね」

憧「何か手伝おうか?」

咲「大丈夫だよ。どちらかというと、準備してるところを見ててほしいかな」
646 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/27(土) 16:27:22.14 ID:nEvx64kU0
【クラスメート、原村和はこう言った】

咲「和ちゃん」

和「はいっ、なんでしょうっ!」ワクワク

咲「な、なんかすごく気合入ってるけど?」

和「そんなことありませんよっ、それで用件は何ですかっ!」ウキウキ

咲「えっとね、私が家でしてたら意外なことを聞きたいんだけど」

和「なるほど。それは妄想が捗るお題ですねっ」

咲「いや、別に大喜利とかじゃないから面白くなくていいからね」

和「私は真剣に考えますとも。ふざけたりなんてしません」グッ

咲「いや、そんなに力を入れて考えなくてもいいんだけど」

和「ダメですよ、だって――」

和「憧に、意外なところを見せたいから聞いてるんですよね?」

咲「え、いや、そういうわけじゃないけど」アセアセ

和「隠そうとしなくてもいいですよ。私の目はごまかせませんから」

咲「はぁ、和ちゃんにはかなわないね」

和「それで、どのような休日デートを考えているんですか?」

咲「それが浮かばないから聞いてるんだよぉ。一緒にいられればそれでいいんだけど、憧ちゃんに退屈してほしくないし」

和「なるほど、お昼ご飯は当然手作りですよね?」

咲「そのつもりだよ。献立はスーパーに寄りながら考えようと思ってるけど」

和「分かりました、ならばいいものを貸してあげましょう。これで憧のハートは鷲掴みです! 寮に取りに戻りますからちょっと待っててくださいね!」

咲「あ、和ちゃん・・・・。いいものってなんだろう?」
647 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/27(土) 16:28:53.40 ID:nEvx64kU0
【お昼ごはんの準備】

憧(咲、準備するってキッチンじゃなくて自分の部屋に行っちゃったけど、何してるんだろ?)

ガラ

憧(あ、出てきた)

咲「お、お待たせ」////

憧「ええええっ」

咲「じゃあ、準備するね」////

憧「フリフリのエプロン・・・・・」

憧「それを裸で着ているだとぉぉぉぉぉぉ」

憧「おしりが・・・大きなリボンで見えそうで見えないっ」

咲(うう、和ちゃんが貸してくれたエプロン、すごくふりふりで恥ずかしい・・・・)////

咲(でも、これもすべては意外性のため。憧ちゃんに楽しんでもらわなくっちゃ!)

咲「じゃあ、ご飯作るから・・・・その、見ててね」////

憧「はいっ、じっくりと!」

憧(こ、これは写メ撮らねば・・・・・あれ?)

憧「咲、ヤバイヤバイ!!」

咲「え?」

ガチャ

照「ただいま、財布取りに来た」

宥「おじゃましまーす」

咲「え、お姉ちゃん!?」

憧(メール見逃してたぁぁぁぁぁぁ)

『憧ちゃんへ 照ちゃんが財布を忘れたから今から一緒に取りにいくね』(宥)

宥「わぁ、フリフリだね。でも、寒くない?」

照「・・・・・・・咲? なに、その格好?」ゴゴゴゴゴゴゴ

憧「あわわわわ」

咲「あわわわわ」

照「新子さん」ゴゴゴゴゴゴゴ

憧「はひっ・・・・」ビクッ

照「私は新子さんを信用して、咲を任せたんだよ。ふふふ、ふふふ、あははははははは」ギュルギュルギュル

宥「て、照ちゃん。どうどう・・・」

憧「落ち着いてください。話せば分かるっ」

咲「お、お姉ちゃん。これは私がやったことでっ」

照「問答無用! 歯をくいしばれぇぇぇぇぇぇ、あたらしーーーーーー!!!!」ギュギュギュギューン

宥「て、照ちゃん、ダメ!」ガシッ

照「宥、止めてくれるな。咲が傷物にされた今、私が天誅を下すしかっ」

憧「傷物になんてしてませんっ!」

咲「そうだよ、それはこの後のお楽しみだったのに」

憧「咲ぃぃぃぃぃぃ。この状況で何言ってんの!?」
648 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/27(土) 16:29:48.16 ID:nEvx64kU0
照「ほらみろ宥、もう時間の問題だ。ここで止めなくてはっ」ギュルギュルギュル

宥「確かに、それはまだちょっと早い気がするな・・・・」

憧「宥姉まで真に受けちゃダメぇぇぇ」

照「さあ、覚悟を決めろ。安心していい、一撃で終わるから」ギギギー

憧「なんか違う音しはじめたし」

咲「やめてお姉ちゃん!」ガシッ

照「咲、放してくれっ!」

咲「え、離れていいの? ほんとはお姉ちゃんに見せたくて、憧ちゃんに見てもらってただけなのに?」ゴゴゴ

照「え?」

宥「憧ちゃん、ここは逃げて」ヒソヒソ

憧「でも咲がっ」

咲(いいから逃げてっ)アイコンタクト

憧(咲っ・・・・ごめんっ)

咲「いいの、お姉ちゃん。私いま、とっても恥ずかしい格好してるんだよ。離れちゃって、いいのかな?」

照「・・・・くっ。・・・・でも、私には、宥が。ああ、でも咲ぃ・・・」ガタガタ

宥「照ちゃん・・・・」

咲「お姉ちゃん、背中が寒いなぁ。あっためてほしいなぁ」

照「ぐぐぐぐぐぐっ。ダメ、離れて!」

咲「あっ・・・・」

照「早く着替えてきなさい!」

咲「うん、わかったよ・・・・」ショボン

宥「照ちゃん、頑張ったね」ヨシヨシ

照「宥ぅ、私頑張ったよね。リハビリできてるよね? 咲ぃ、咲ぃ・・・」

宥「うんうん、大丈夫だよ。財布持って、お昼ご飯食べに行こう?」

照「うん・・・・」
649 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/27(土) 16:35:09.41 ID:nEvx64kU0
【お昼ごはんの準備2】

憧「はぁ、大変な目にあった」ドヨン

咲「ごめんね、こんなことになっちゃって」

憧「いや、私が悪いよ。メールに気づいてたらこんなことにはならなかったし」

咲「バタバタしちゃってご飯作る時間がなくなっちゃったよ」

憧「お昼だし、パスタとか簡単なのでいいよ」

咲「うん、そうしよっか」

憧「それで、晩御飯を一緒に作ろう」

咲「そうだね」

憧「ありがとね、咲」

咲「え、どうしたの突然」

憧「腹筋はともかく・・・。ネコ耳とかエプロンとかさ、無理してやってくれたんでしょ」

咲「う、うん。私、家にいたらほとんど本読んでるだけだから、家にいて憧ちゃんが退屈したら嫌だなって思って・・・・」

憧「だから、ありがとう。でもね、そこまで無理しなくても大丈夫だよ」

咲「うん、でもやっぱり、退屈でしょ?」

憧「咲が隣にいて、退屈なんてするわけないじゃん。それとも咲は、私が隣にいるだけじゃ退屈?」

咲「そ、そんなことないよっ」

憧「ね、そういうこと。はぁ、なんかどっと疲れたから、午後はお昼寝かな」

咲「お昼寝いいね、きっと気持ちいいよ」

憧「じゃあ、ささっと食べちゃおうか」

咲「うん」

咲 憧「いただきます!」

(続)


今日は咲ちゃんの誕生日らしいっすね。おめでとうー
しかし誕生日的な内容なんて考慮しとらんよ

土曜の午後はすっとばして、日曜日編を明日までに書きたいですね
それで本編復帰したいと思います


>>644
その流れを見抜くとは、やはり天才か

・・・・まだ本編の流れでは憧咲成立してないから
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/27(土) 17:39:13.74 ID:jTGJw1D/o
>・・・・まだ本編の流れでは憧咲成立してないから

まだ
651 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/28(日) 22:40:49.80 ID:76Vl29NP0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)


【日曜日 1】

宥「昨日は大丈夫だった、憧ちゃん・・・」

憧「いや、宥姉はちゃんとメールくれてたんだし、悪いのは私だから」

憧(咲と照さんのアパートまで一緒に行こうという話になって、向かってるわけだけど)

宥「照ちゃんも、咲ちゃんのことになると見境がなくなっちゃって」

憧(・・・年が近いとああなるのかなぁ。よく分かんないな、ホント)

宥「私も、玄ちゃんが誰かと付き合ったりしたら、ああなっちゃうのかなぁ」

憧「あはは、宥姉だけは勘弁してほしいよ」

宥「でも玄ちゃんも大切な妹だし、いい人とお付き合いしてほしいな」

憧「当面その心配はないとおもうけどね」

宥「そう?」

憧(おねーちゃんを守るんだって言ってるから、自分のことなんて二の次でしょ、多分・・・)

憧「ところで、その紙袋なんですか?」

宥「え、これは、秘密だよ」


【日曜日 2】

憧「咲、おまたせ」

咲「憧ちゃん、宥さん、おはようございます」

宥「おはよう。昨日はごめんね」

咲「いえ、こちらこそいつもお姉ちゃんがお世話になってます」

照「新子さん、昨日は悪かったね」

憧「いえ、なんというか、すいません」

宥「じゃあ、楽しんできてね〜」


憧「昨日、夜は照さん大丈夫だったの?」

咲「うん、帰ってきたらすぐ謝ってくれて、その後は普通だったよ。まあ、あのエプロンの入手先について聞かれたくらいだけど」

憧「今思えばさ、絶対あれ和のでしょ?」

咲「あ、分かっちゃった?」

憧「和のマイノリティな趣味じゃなきゃ、なかなかあんなエプロン売ってないでしょう」

咲「金曜日に和ちゃんに私が家でやってたら意外なことって聞いたら、裸エプロンだって力説して何着も持ってきてくれたんだけどさ。その中で一番布面積が大きいのを選んだんだけど」

憧「なんかいろいろツッコミ入れたいけど・・・・。あー、じゃあ腹筋はもしかしてしずの意見?」

咲「うん。筋トレだって言ってたけど、腕立ては一人でするだけだし、背筋は憧ちゃんの顔見れないし。だから腹筋にしたんだよ」

憧「筋トレの中でもちゃんと吟味したのね」

咲「で、ネコ耳は淡ちゃん」

憧「多分事情は知らないんだろうけど、淡さんGJ! じゃああのネコ耳は淡の?」

咲「違うよ、お姉ちゃんの」

憧「なんで照さんネコ耳持ってるのよ!」

咲「去年の学祭のクラスの出し物が101匹猫ちゃんっていうので使ったんだって。それから密かにハマってるみたいで捨てずにとってあるらしいよ」
652 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/28(日) 22:42:44.63 ID:76Vl29NP0
【日曜日 3】

憧「携帯ショップ到着ね」

咲「ふあ、いろいろあるんだね・・・。こんなの一人だったら選べないよ」

憧「ま、私に任せときなさい」

咲「憧ちゃん、頼もしい!」


憧「とりあえずスマホを体験してみよう!」

咲「こ、これが噂のスマホ・・・」

憧「そ、そんなに緊張しなくていいってば。画面に触って動かすだけだから簡単だよ」

咲「さわって・・・右に・・・・」

憧「うん、とりあえず体まで右に傾ける必要ないからね」

咲「画面を拡大・・・」

憧「と同時に顔を画面に近づけるのは何故?」

咲「スマホって疲れるよぉ」

憧「うん、おとなしくガラケーにしとこうか・・・」


咲「これからお姉ちゃんが使ってるのと一緒だから分かるよ」

憧(おーい、照さんもシンプルフォンかよっ)


【日曜日 4】

咲「さて、携帯の目星もついたし、これからどうしようか?」

憧「ふふふ・・・」ニヤリ

咲「どうしたの憧ちゃん、なかなか悪い笑顔浮かべてるよ」

憧「一回、家に戻らない?」

咲「え、でもお姉ちゃんと宥さんがいるんだよ?」

憧「だからこそ、抜き打ちで様子を見るんだよ。二人がどんなふうに過ごしてるか気になるでしょ?」

咲「まあ、気になるといえば気になるけど・・・・」

憧「よし決定、行こう行こう!」

憧(宥姉が持ってた紙袋も気になるしね・・・)
653 :tell you that I love ...(intermissionExtra-4) [saga]:2012/10/28(日) 22:45:11.40 ID:76Vl29NP0
憧「というわけで到着!」

咲「ねぇ、憧ちゃん、やっぱりやめとこうよ」

憧「ここでやめたら女がすたる。っていうかそのための口実に、昨日予備のコンパクトを置いておいた」

咲「わー、憧ちゃんあざとい」

憧「いざっ!」

バタン

憧「おじゃまします! ちょっと忘れ物しちゃいま・・し・・・・て」

宥「え、憧ちゃん!」

照「咲っ、なんで・・・」←はじめちゃんの私服を試着中

咲「・・・・・・えっと」

憧「あー、あった、こんなところに私のコンパクト」(棒読み)

咲「あれあれ? 裸エプロンはダメで、その服と呼ぶのもためらわれるその布切れはOKなんだね、お姉ちゃん」ゴゴゴゴゴゴ

憧「咲さん、忘れ物も見つかったし行こうか」(棒読み)

照「いや、その、これには事情が」アワワワ

咲「うん、事情とかどうでもいいの。裸エプロンがダメで、その布切れがOKな論理的理由が聞きたいだけだから」ゴゴゴゴゴゴ

宥「咲ちゃん、これは夏フェスで着るために試してただけで」

憧(宥姉、それ墓穴だよ・・・・)

咲「夏フェス? ふーん、じゃあお姉ちゃんは公衆の面前にその布で出るんだ?」ゴゴゴゴゴゴ

照「あー、いや、それはその・・・・」

咲「うん、別にいいんだよ。論理的理由さえ説明してくれれば。さ、どうぞ」ゴゴゴゴゴゴ

照「その・・・・ごめんなさい」

咲「・・・・歯を食いしばってね、お姉ちゃん」

――カンッ(物理)

照「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」

宥「照ちゃん!」

憧(ちょ、咲が何したのか見えないのに、照さんが吹っ飛んだっ。ちょーこわいんですけどー)ガタガタ

咲「さ、行こう。憧ちゃん」ニッコリ

憧「そ、そうだね。おじゃましましたー」

憧(咲さんを怒らせてはいけない(戒め))


(了)
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/10/28(日) 22:53:51.56 ID:76Vl29NP0
憧咲編終了
うむ、どうしてこうなったか、もうさっぱりわっかんねー

今後の予定ですが、副将戦大将戦はノンストップで
リクエストなどあれば決着がついてからintermission
そして後日談という流れで考えます

リクエストは随時受付てますので、お気軽にどうぞ

>>650
そう、まだ、成立していない
だが、いつ成立するのか。1がその気になれば、10年後20年後ということも可能っ

こんな感じでしたっけ?(うろおぼえ


咲フェスでいろいろ情報が出たみたいですね
まだ2期は早いような気がしますけど・・・
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 02:26:10.83 ID:+v01hUmK0
おつおつ
こんなにイチャつけるなら憧咲は流行る(*´ω`*)

リクは透華がもっと麻雀で目立つ為に玄のド派手なドラ麻雀の秘密に迫っていく……
そしてその内玄自身の人柄に……っていうのは無理矢理過ぎですかねっ!
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/10/29(月) 06:46:17.66 ID:rind226I0
咲 穏乃 淡 恭子「また4人で、ここで打てたらいいのに」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1351436591/

なぜか唐突に書けてしまった短編です
たまには短いのも書いてみたくて。コンパクトにまとめるのって難しい

>>655
透華×玄とか考えたこともなかったー。そういえば同い年か・・・
デジタル的に、あのドラ麻雀はどうなんでしょうね?
考えてみましょう
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/29(月) 15:38:40.16 ID:ZiBEEnS7o
透華×玄とかマイナーカプ厨歓喜
二期来てたね
658 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/10/30(火) 00:42:23.78 ID:46QsH+Kc0
-side 照-

-クラス対抗戦 決勝副将戦直前
-廊下

私は清水谷さんと一緒に、対局室へ向かって廊下を歩いていた

「宮永さんと打つの、久しぶりやな」
「そうだね。去年の部活対抗戦のとき以来」

確か準決勝でソフトボール部と当たり、その先鋒が清水谷さんだった

「清水谷さん」
「ん、なに?」
「怜、大丈夫だった? ほんとのところは、清水谷さんにしか打ち明けないだろうから」

すこし思案顔をし、清水谷さんは微笑んだ

「その前に、その清水谷さんっての、やめにせん?」
「え?」
「呼びにくいやろ、正直自分でも長ったらしい名字やなぁ思っとるし。怜みたいに、呼び捨てでええんやで?」
「そうだね・・・竜華」
「ん、それで」

竜華がひとつ頷き、

「怜のことなら、心配いらんで。あんなことにはなってしまったけど、クラス対抗戦に誘ってくれた照に感謝しとったくらいや」
「感謝・・・」
「怜も、クラス対抗戦出るの初めてやしな」

未来視があってようやくランクが上がってきたばかりの怜
だから、今まで対抗戦に呼ばれることもなかったんだろう

「そう・・・。でも、怜がまた倒れてしまわないように、できるだけ配慮したつもりだったんだけど」
「あれはしゃーないよ。神代以外やったら多分怜は倒れとらん」

神代小蒔、か
神社の関係で神様と関わりがあるとかないとか聞いたことはあるけれど、実際に直接対局したことがないので本当のところはよく知らない

「ま、とにかく怜は大丈夫や。だから、お互い気兼ねなく打とうな」
「そうだね。悪いけど、手加減はできないから」
「いきなり本気にならんといてや」

そうこうしているうちに、対局室に到着した

卓についているのは一人

「照さん、よろしくね」

既に場が決まっているのか座っていた新子さんだったが、立ち上がってぺこりと頭を下げた

「うん、よろしく」
「よろしくなー」

竜華も軽く頭を下げ、牌を引いた。引いたのは北、新子さんの対面
私も牌を引く。引いたのは東。竜華が上家、新子さんが下家

残る席に座るのは――
659 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/10/30(火) 00:44:27.12 ID:46QsH+Kc0
「すいません、失礼します」

なぜか対局室に入ってきたのは、荒川さんとショートカットの子だった
あれ、愛宕さんじゃないの?

「煌ちゃん、悪いけど選手交代をお願いするわ」
「絹恵さんはどうされたのですか?」

花田さんが審判席から立ち、荒川さんのもとへ向かう
荒川さんが差し出した、1枚の紙。ここからでは細かい内容までは分からないけれど、花田さんがその紙を見ると、ため息をつく

「戒能先生のサインが入った、病欠証明書ですか・・・」

え、病欠??
中堅戦の途中で会った時には、病気には見えなかったけれど・・・
あれから体調を崩したんだろうか

「うん、そういうわけなんよ。だから絹恵ちゃんに代わって、漫ちゃん。ランクは漫ちゃんの方が下やから点棒は出さんでええんよね?」
「ええ、分かりました。絹恵さんは、大丈夫ですか?」
「多分な、うちも直接見とらんから・・・」
「そうですか・・・」

証明書を受け取ると、花田さんはどこかへと電話をかけ始めた
それを見て、荒川さんと上重さんがこちらにやってくる

「というわけで申し訳ないんやけど、選手交代で漫ちゃんが入るんで、よろしくお願いします」
「漫ちゃんと打つとは思わんかったわー。サッカー部ではずいぶん可愛がられとるみたいやん」
「あれはかわいがりレベルですよ、ほんまに・・・」

竜華は知っているのか、随分親しげだった
そういえば、サッカー部とソフト部は結構仲が良いって怜から聞いたっけ・・・

「上重漫です。よろしくお願いします」

一礼して、卓に付く上重さん

荒川さんが、私の方を見てにっこりと笑顔を浮かべた

「先鋒で戦いたかったで、チャンピオン」
「それは、悪かったね」
「ま、その分は漫ちゃんにきばってもらうさかい。うちの漫ちゃんを甘く見ると、痛い目にあうで」
「ちょ、ハードル上げんといて!」

そこに花田さんがやってきた

「お待たせしました。場外にも選手交代の説明が終わりましたので、対局を開始しましょう」

「よろしくお願いします」

全員の声が重なる

いよいよ、始まる・・・
親決めのサイコロが回りだした


副将戦、開始

東 宮永照(3−1)    48500
南 新子憧(1−5)   128400
西 上重漫(2−10)  129300
北 清水谷竜華(3−2)  93800
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/10/30(火) 00:55:40.97 ID:46QsH+Kc0
すごい久々に本編を書いているような気分ですね

そういえば日曜日に将棋の橋本八段のテレビ対局見てて腹筋が崩壊しそうでした
日曜日の昼前は将棋に限りますな・・・


以下、わかる人にしか分からない小ネタ

アナ「大星淡八段へのインタビューをご覧ください」

――天江選手についての印象は?

淡「天江、強いよね。序盤中盤終盤、隙がないと思うよ。だけど、私は負けないよ」ユラユラ

――本局の意気込みをお聞かせください

淡「牌だっ・・牌たちが躍動する私の麻雀を、みなさんに見せたいね」ユラユラ


うむ、文字にするとあの面白さは伝わらないな・・・


>>657
考えてみると、咲本編キャラ×阿知賀編キャラにしておけば、マイナーカプって作りやすいかも
マイナーカプ、ドンと来い!
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 01:18:26.79 ID:dxECeDbP0
乙ー。漫ちゃんは爆発するか否か……

例のアレネタワラタwwwwww
後にパk……リスペクトされるとこんな感じになるのか


アナ「まずは若手の新子憧六段へのインタビューをご覧ください」

――小鍛冶TBS杯についてどのような印象をお持ちですか?

憧「小鍛冶さん?強↑いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど、あたし負けないよ」ユラユラ

――本局への意気込みをおねがいします

憧「えー・・牌だっ・・牌たちが躍動するあたしの麻雀を、みなさんに見せたいね」ユラユラ
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/10/30(火) 07:04:39.24 ID:46QsH+Kc0
>>661の完成度に嫉妬
すぐにこんなスレが立つわけですね


【女流麻雀】アコチャーがやらかしたwwww【TBS杯】

84 :名無し7冠:2012/10/28(日) 11:36:24.51 ID:Wr91sLCY
ワロタ、噛むところまで完全再現

88 :名無し7冠:2012/10/28(日) 11:37:57.02 ID:xY-D+//P
結果まで再現しなくても
牌が躍動する麻雀とはなんだったのか?

94 :名無し7冠:2012/10/28(日) 11:46:08.18 ID:hEEtj93K
比較動画はよ

96 :名無し7冠:2012/10/28(日) 11:58:23.47 ID:kIn+x/1+
>88
点棒は躍動してたから(震え声




羽生さんクラスは、アラサーですよね、やっぱり
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 13:44:26.80 ID:+jYA2W/Co
すこやんは清水女流

羽生はコイズミ
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 19:12:47.09 ID:tpcyjQSF0
羽生「王手飛車取り(ライジングザン)!!」
とかなんですかね?


照「王手! 王手! 王手!」
宮永照の連続王手が止まらないぃぃぃぃ

怜「見えたで、一手先がっ。でもまだや、ダブルっ、二手先っ」
竜華「あかん、怜ぃぃぃ」

宥「玄ちゃんは、相手の竜王竜馬も支配下に置いちゃうの………」
憧「じゃあ相手は飛車と角を成れないっていうの……」

白望「んー、ちょいタンマ」
胡桃「シロが長考に入った、次はすごい手を指すっ」


もう将棋スレでいいんじゃないですかね(提案)
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/30(火) 19:50:29.19 ID:EBzjP+vBo
淫夢厨わきすぎィ!
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/31(水) 00:24:38.59 ID:GGqV2yz5o
怜「見えたで、一手先がっ。でもまだや、ダブルっ、二手先っ」

将棋でそれでは相手にならないんじゃ・・・・・・
667 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/10/31(水) 02:18:26.31 ID:vnvvxB380
-side 漫-

-クラス対抗戦 決勝副将戦
-東1局
-親 宮永照
-ドラ 白

配牌:三三四EFH1234白白北

配牌3シャンテン、ドラ対子。まずまず・・・

それにしても、いきなりこんな大舞台で打つことになるとは思わへんかった
先生から、サッカーと同じく漫ちゃんスーパーサブやからちゃんと備えといてやとは言われとったけども

「チー」

上家の1年生、新子さんが鳴きを入れる
ここに来るまでに憩ちゃんから聞いていた情報通りの、速攻鳴き麻雀

清水谷さんと直接打ったことはないけれど、概ね部長並みと思っていれば間違いないだろう

そして、宮永照・・・

東1局だけ様子見して、その場でその人の打ち筋を全て見抜いてしまうらしい
そんなの反則やろと思うけども、それが現実

――1位キープとか、そんなん考えんでええからな。とにかく生き残ること、それだけや

最後にくれた憩ちゃんからのアドバイス
2年10組の大将に控えているのは、天江衣。味方なら、こんなに頼もしいことはないんや

いったるっ

「チー」
「ロン!」

うそん・・・

いきなり新子さんに3900の振り込みで、2位転落

そして、

ゾクゾクゾク

全身を悪寒が走る
冷たくて透明な針が、何千と体を突き抜けていくような感覚
これが、見透かすっていうやつなん?

こんなんと、ほんとに戦えるん・・・・
対面に座る宮永照の眼光は、獲物を狙うハンターそのものだった
668 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/10/31(水) 02:19:38.16 ID:vnvvxB380
-side 照-

-東2局
-親 新子憧

鏡に映るのは、その思考、打ち筋
どういう場面でどのようにうち回してきたのか
どういうときに特殊な打ち方をするのか

その膨大な情報が一気に映し出され、瞬間に理解する


――清水谷竜華
――攻守とも堅実、ただし精神状況によって牌勢が大きく左右される。現在、7段階でレベル7(最高状態)

――上重漫
――攻守ともにまだ発展途上。ただし対戦相手の強さや調子の良さが上がるほど、自身の調子・火力が上昇する

――新子憧
――速攻重視。鳴き三色、鳴き一通も積極的に使用、火力は低いが失点も少ないアベレージプレイヤー


竜華がレベル7か。確か前に対戦したときは、レベル5だったかな。あの時よりもさらに調子がいいということ
そして竜華が最高状態ということは、それに引きづられて上重さんの調子も上がっていくと見ていい

それを防ぐには・・・
悪いけど、新子さんを叩くしかないか

上重さん自体を叩いても、新子さんの調子が上がれば上重さんの調子も上がってしまう。戦意を喪失してくれればそれでもいいけれど、それでも子が上がれば戦意復活ということもありうる
だからやはり、狙うなら新子さんだろう
菫みたいな狙い撃ちは、得意ではないけれど

「ツモ、500、300」

まずは自分の親まで引き寄せる
東1の立ち親を捨てているから、南1局でできるだけ稼ぎたい

その後、東3、東4と連続で上がり、南場の親を迎えた
669 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/10/31(水) 02:21:24.36 ID:vnvvxB380
-side 憧-

-南1局
-親 宮永照
-ドラ 北

ここまではやられっぱなし
でも、この親だけは全力の全力で流すっ

「ポン」

副将宮永照と知ってから、学校内の牌譜は徹底的に調べた
少しでもいい、隙があれば見つけたい
隙がなくても、これまで照さんと戦ってきた人達がどういう戦いをしてきたのか分かれば対策も見えてくるかもしれない

藁にもすがるような気持ちで、ハルエにも協力してもらって牌譜をあさった

結論、私が目指すべきは――

審判席に座るあの人、花田煌

「チー」

2副露。最初に中が鳴けたから、1000点でいいからとにかく流す

手牌:六六七@@BD 中-中中 8-79

そう、玄とあの花田さん、園城寺さんが戦った冬の個人戦の牌譜

かなり無茶な形から、それでも花田さんは鳴き続けた
照さんにできるだけツモを回さないようにポン材をとにかく抱えながら

完全に同じことをしようとは思わない。鳴き仕かけはチーの方が得意だしさ
でも、ツモ順を飛ばせるポンは照さんが親の時は重視すべき

竜華 打:六

「ポン!」

3副露。これだけ鳴いて、待ちがカンチャンとか・・・ひどい話だわ

手牌:@@BD 中-中中 8-79 六-六六

でもこれでとにかく張ったっ
ここからは、全ツッパで行くしない


-side 竜華-

新子さん、やるなぁ・・・
1年生で、しかも相手が宮永照であそこまで鳴き続けるのはなかなかできへんことや

手牌:一一五七BCH135東西北

でもな、私も今日はすこぶる調子がええねん
いままで怜に対して抱え込んでたもんが、一気に解放されたおかげかもしらんな

だから、だいたい分かるで。新子さんのほしいところ

打 C
670 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/10/31(水) 02:22:46.09 ID:vnvvxB380
-side 憧-

「ロン、中のみ1000点」

六萬に続き、Cピンもあっさり出てきた

これって、差し込み?

わーいラッキーと簡単に思うほど、私は楽観視はしない
多分、清水谷さんの手牌はボロボロのはず。そんな中、的確に照さんの親を流す手を打ってきた・・・

照さんにばかり気を取られていたら、いつの間にかいいとこどりされてる可能性だってある

ま、でもとにかくこれでこの半荘の照さんの親は流れた。次の半荘に入れば、また点数はリセットされるんだから、あと3局連続和了されてもそこまでのダメージはない

と、思っていた



ギギギー



「え・・・・」

これが、咲の言っていた、卓の軋む音?
オーラスだけじゃなかったの??

私は慌てて照さんを見る

先程まであった威圧感が嘘のように、照さんは項垂れていた
髪が垂れ下がっていて、表情は見えない

まるで、空っぽの人形になったみたいに、じっと動かない
そこにいるのは分かっているのに、気配がまるでなかった

「あの、照さん?」
「ああ、すまない」

ゆっくりと顔を上げる照さん
そこに張り詰めた気配はなくて・・・・

「いきなりか・・・・」

照さんのつぶやく声は、ほとんど聞き取れない
ゆっくりと底冷えしてくるような、そんな見えない恐怖があたりを包み込んでいるようだった

「ごめんね、宥」

宥姉の名前を呼ぶ声は、ひどく震えていた
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/10/31(水) 02:24:31.57 ID:vnvvxB380
自分でまいた種とはいえ、ときどきよく分からない方向へ進むなぁ
次の小ネタは将棋スレですか? SSで将棋とか無理ですけどね・・・・

眠たいので寝ますー
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/31(水) 22:35:52.62 ID:9L1DIzYPo
乙!いよいよかわいい女の子達の生気ない顔を拝めるんやな(ゲス顔)
それと申し訳ないが将棋対麻雀なんて異種対局戦はNG
673 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/01(木) 23:58:06.62 ID:s/CNYacO0
-side 憧-

-南2局
-親 新子憧
-ドラ Hピン

照 捨て牌:CA白東西

憧 手牌:一一二二四五六六八九77北

うーん、すんごい萬子に偏ってるけど、照さんが全然萬子出してくれないし・・・
これ、照さんも萬子の染め手なのかな・・・
いきなりピンズから切ってるし、そのあと字牌だしな・・・

それに、あのギギギーって音

咲もハルエもオーラスだけだって言ってたけど、現にあの音はしたし、照さんの様子が変わったのも間違いない

漫 打:8ソウ

「ポン」

照 打:3ソウ

照さんが鳴く
んー、萬子じゃなくてソウズの染め手?

うーん、自分の親番だけど降りるべきかな・・・・
北は照さんの風だし、7ソウは切れなさそう
4対子あるし、とりあえずチートイ目指して切り回すかな・・・

憧 ツモ:北

あれ、北が重なった・・・
これで照さんと北を持ち合う形になってれば、少しは照さんの手も遅れるかもしれないけど
でも、あのギギギーで、北・混一ってのもどうなんだろうか・・・トイトイやドラを絡めてようやく、跳満になるかどうか

憧 打:九

なんにせよチートイの1シャンテン
場合によってはポンしまくってもいい。トイトイなら3つ鳴いてようやくテンパイだからちょっと厳しいけど・・・

上重さんがツモ切り
清水谷さんがツモ、そして少し手が止まった

「・・・・このへん?」

そう言って切ったのは、一萬
じっと、私の目を見る清水谷さん

鳴けっていうの?
鳴いたらもうトイトイで突っ走るしかなくなるけど・・・

照さんの腕が山に伸びる

――ヤバイ

直感的にそう感じるっ
674 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/01(木) 23:59:34.99 ID:s/CNYacO0
「ポン」

憧 打:八

照さんの腕が止まる
清水谷さんが小さくうなづくのが見えた
わかんないけど、多分今の牌は照さんに渡しちゃいけない、そんな感覚

でもこれは照さんは次のツモ順で上がる・・・
ちょっとやそっとずらしても上がられるのは、過去の牌譜を見ても分かってる
もうとにかくポンしまくるしかない

漫 打:二萬

「ポン」

竜華 打:北

「ポン」

憧 手牌:六六77 一-一一 二-二二 北-北北

それでも、一つ鳴くごとに死に近づいているような感覚が強くなっていく
自分の前にはもう牌は4つしか立ってない
自分を守る砦が少なくなったようで、ひどく心細く感じる・・・

上重さんがツモって、切る

漫 打:三萬

違う・・・・
お願い、清水谷さん・・・

清水谷さんのツモに力が入る。けどその力が抜けて、そのままツモ切りした

竜華 打:七萬

おしい・・・

そして照さんが、卓の端を掴んだ

それでも、相変わらず対戦相手を押しつぶすようなプレッシャーはない。そういう見える恐怖ではなく・・・
暗闇で物音がして、何かがいるけどそれが何か分からないような、そんな不可視の恐怖

溜めを作り、一気に右腕が山に伸びていく

「ツモ」

ツモってきた牌は、発
そして・・・・

照 手牌:22334466発発 8-88 ツモ:発

「緑一色。8000、16000」

これが・・・
あの、ギギギーってやつの効果?

・・・・こんなの、どうしろって言うのよっ
675 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 00:00:12.61 ID:BsqWPXe+0
-side 恭子-
-副将戦開始直前

「なんなら3−1で観戦しよかな。恭子も来たらええやん」

洋榎がそんなことを言い出す

「流石に対戦中のクラスに行くのはまずいんとちゃうの?」
「ええやん、もううち試合終わったんやし」
「午前中も美術部の人たちがいたから今更洋榎が増えても気にしないのよー」

まあ、由子がそういうならええかもしれんな・・・
それに、洋榎の試合が終わっとるのは事実やしな

っていうか美術部って、白望とエイちゃんか。これでセーラと初美がおったら13組が揃ってまうな

1組の教室に着く。松実がいて、怜は毛布をかけて寝転んでいた
美術部の5人が揃っている
そして、セーラはいたが、初美はいなかった。代わりにいたのは、弘世

「なんで弘世がおんねん」
「隣の気まずさはお前も良く知っているだろう?」

洋榎に苦笑を向ける弘世

「石戸は大将戦の準備は部室でするそうだ、着替えてくるんだろう。福路も部活の後輩と観戦するそうだ」
「さよか。まったく、なんでこんなバラバラになってもうたんやろな・・・」
「それも今日までと願うよ」

お互いに苦笑を向け合い、洋榎は空いている席に腰掛けた

「恭子まで来たんかー。これで初美がおったら13組もそろったのにな」
「石戸の手伝いなんかもな」

セーラが笑う
怜が心配で来たんやろうな。竜華は副将戦に出てしまうしな


そして副将戦が始まろうとしていた
けれど、すぐに起きたアクシデント・・・

「は? 絹が病欠? そんなアホなことあるかい!」

そう、絹ちゃんが病欠で、代わりに漫ちゃんが入ると説明された

「なんかの間違いやろ! 朝は一緒に登校してきたんやで」

洋榎が携帯を取り出し、絹ちゃんに電話するが、出ない・・・
代行、まさか絹ちゃんを無理やり病欠扱いにして下げさせたんか・・・

「くっそ。なんやねんな、今日は!」

そう言って、洋榎が席を立ち、教室を出て行こうとする

「どこ行くんや!」
「保健室や!」

慌てて私が追いかけようとしたが、由子が先に教室の外に出る

「恭子はここで見ていいのよー」
「なんでや? 由子こそ応援せなあかんやろ」
「漫ちゃんの試合、見てあげてほしいのよ」

そう言って、こちらの反論も許さず由子が洋榎を追いかけていく

いや、そりゃ漫ちゃんの試合は気になるけども
いくらなんでもこの場面でそれを言い出すのは不謹慎というかなんというか・・・

「ま、由子に任せとき。試合始まるで」

いつの間にか横に並んでいたセーラが、私の肩をポンと叩く
それで、一気に肩の力が抜けてしまう

「・・・そうさせてもらうわ」

仮に絹ちゃんが臆したにしたって、それだけで病欠にはならない
絹ちゃんが倒れたところなんて見たことないし、体は丈夫な方なのは一緒に部活しとってわかっとるつもりや

代行・・・
ここまでして、あんた何を得たいんや
676 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 00:01:20.16 ID:BsqWPXe+0
-side 照-

南場の親で連荘できなかった
この事実は、重い

新子さんの気迫は良い方向に作用している
空回りしてくれれば良かったが、そうもいかないようだ

そして竜華も、迷わず新子さんのアシストに回った
さすがにレベル7。状況が良く見えている・・・・

そしてこの2人が高まっていけば、今はまだ緊張しているのか手が伸びていない上重さんが爆発するのも、時間の問題
牌を自動卓に流し入れるときに、チラッと見えた

ドラ、北の暗刻

彼女の火力は確実に上がっている
あとは、火薬を着実に貯め込む火薬庫に、いつ火がついてしまうのか・・・

アレ、使うしかないか・・・

決断


私は脱力し、自分の心の奥底へ潜り始めた
深く、深く・・・







「あの、照さん?」
「ああ、すまない」

新子さんの声で、意識が覚醒する
ちょうど、サルベージも完了した・・・


――ロード中........選択完了......
――松実宥


「いきなりか・・・・」

こんな私を見たら、宥は寒がるんだろうな・・・・

「ごめんね、宥」

届きはしないけれど、


――.........reverse


勝つために、今は許して・・・
677 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 00:02:26.62 ID:BsqWPXe+0
-side 宥-

「照ちゃん・・・」

南場の親が流れた瞬間、照ちゃんの様子が変わった
一瞬落ち込んじゃったのかなと思ったけど・・・

顔を上げた照ちゃんの表情はまるで、部屋で泣いていたときの照ちゃんのようだった
どうしてそんなに悲しそうなの・・・

「・・・・出すのか、アレを」

弘世さんが呟く

「アレって、なんやの?」
「・・・・まず滅多に使わない、照の奥の手だ」

怜ちゃんの問いに、弘世さんが答える

「照にそんなのあるの?」
「えー、知らなかったよー」
「とりあえず、解説は1局終えてからだ」

塞ちゃんと豊音ちゃんも驚きの声を上げるけれど、弘世さんはそれ以上答えなかった
そして、照ちゃんの配牌が終わる

照配牌:23334468AC東白発

「ソウズで染め手か?」
「緑一色がほのみえる感じかな?」

口々に感想を述べるけれど、私は身震いを感じずにはいられなかった

「赤い牌が、一枚もない・・・」

赤い牌は20種類
赤くない牌は14種類
だから、赤くない牌だけで配牌されるのは無いわけじゃないけど、珍しいことだとは思う

「そうか、最初は松実か・・・」

弘世さんがまた呟く

「もったいぶらんと、解説してやー」

セーラちゃんが弘世さんの横に座って肩を軽く揺さぶる
弘世さんはため息をつく

「この先の照のツモを見ていれば分かる。赤いか、赤くないかに注目してみるといい」

結局、緑一色を上がりきるまで、照ちゃんはただの一度も赤い牌をツモることは無かった
そんなことって、ありえるの?
今までの照ちゃんに、そんな偏りはなかったのに・・・

「アカイノ、ナイネ」
「ほんと・・・それで緑一色とか。凄すぎてダルい・・・」

みんなの視線が弘世さんに集まった
678 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 00:03:48.14 ID:BsqWPXe+0
「さて・・・。赤い、赤くないの段階で分かったと思うが、照は松実の能力をコピーして使ったんだ」
「いやいやいや、なんでやねん」

怜ちゃん、セーラちゃん、末原さんの3人の声がハモった
うーん、さすが大阪出身

「あー、ここは末原解説員に任せるで」
「誰が解説員やねん」

3人がお互い顔を見合わせ、セーラちゃんが末原さんにどうぞと手を出した

「まあええけど。コピーになってへんやろ、赤くないのばっかりやったやん」
「照が、鏡のようなイメージで対局者の打ち筋を見透かすのは知っているな」
「ああ、それは聞いとるけど・・・・そうか、鏡か」
「そう、鏡なんだ」
「おーい、勝手に納得せんで解説しとくれや、解説員」

セーラちゃんが不満げな顔をする
それでも、もうみんな大体のところは分かっているのだと思う

「鏡は左右を逆にする。だから宮永のコピーも、そのままじゃなくて反転コピーになっとるんや」
「そう。だから松実の場合、『赤い牌が集まりやすい』が反転して『赤い牌は集まらない』になった」
「おー、ちょーすごいよー。じゃあここから緑一色連発だよー」

豊音ちゃんがはしゃぐけれど、弘世さんは首を振った

「残念だが、それは無い」
「えー、そうなのー?」

がっかりする豊音ちゃんに、弘世さんが肩をすくめる

「そんなことができるのなら、照は毎回こっちを使うさ。連続和了なんてしなくてもいい」
「滅多に出さないっていうなら、使い勝手が悪いつうことなん?」

怜ちゃんの質問に、弘世さんはモニターに視線を移した

「まあ、次の局で分かるさ。照が滅多に使いたがらない理由がな」



副将戦前半戦 南2局終了時点

宮永照(3−1)    87600
新子憧(1−5)   115800
上重漫(2−10)  114100
清水谷竜華(3−2)  82500
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga sage]:2012/11/02(金) 00:12:09.31 ID:BsqWPXe+0
昨日はキーボードが壊れて書けませんでした
今日新しいの買ってきたんですが、キーボードって1000円もしないんですね、びっくりしました

大将戦はだいたい考えてあるんですが、淡の能力が出てから考えた方がいいのかなぁとか思ったりします
透華×玄はなんとなく書けそうな気がしているので、もしかしたら副将戦終わったらまたintermissionかもしれません


なお、将棋対麻雀の異種対局戦なんてアクロバティックなSS、僕の頭では閃きませんのでご安心ください
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 01:17:04.80 ID:YTLDSU6q0
乙乙
なるほど、確かにこれだと玄や怜みたいな特化能力をコピーしても反転したら使いものにならんから扱いが難しいね

しかし今月灼ちゃんが活躍するとしたら今までの流れだと淡の能力は来月判明が濃厚なんだよなあ
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 01:26:31.64 ID:zLVanEnZo
怜…過去が見えるよ!
クロチャー…ドラ表示牌と赤くない5が集まるよ!


うむ。
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/02(金) 23:18:06.92 ID:4f8DlF2M0
照のギギギが能力反転は面白い発想やな
683 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 23:26:38.94 ID:BsqWPXe+0
-side 照-

-副将戦前半戦 南3局
-親 上重漫
-ドラ 六萬

――ロード中........選択完了......
――小瀬川白望

――.........reverse


照配牌:一二@ADDEH79白東北

小瀬川さんか・・・
しかも外れの方を引いたみたい
上重さんに振り込むのだけは避けないとな・・・

「・・・・ちょいタンマ」

はぁ、悩んでも先が見えてるって辛いな・・・
少し考え、染めるのがいいように思えてしまう

打:二萬
684 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 23:29:52.20 ID:BsqWPXe+0
-side 塞-

照の配牌は4シャンテン
ピンズが多いけど、染めていくにはちょっと厳しいかな・・・

「照のコピー能力は、正直まったくの未完成だ。それでも役満を上がってしまうあたり、十分強力なんだろうけどな」

弘世の解説が続く

『・・・・ちょいタンマ』

モニターから、そんな照の声がする
え? これって?

「どうやら次は小瀬川のようだな。だが、私の知っているパターンと違うな」
「・・・私?」
「パターンが違うってどういうことっ?」

シロがけだるげに弘世に視線だけ向けた
そして胡桃の質問に、弘世が答えた

「小瀬川は、悩むと手が高くなるんだろう。私が知っている小瀬川のコピーは『ノータイムで切り続ける限り手が高くなる』だったが、照はいきなり手を止めた。だから多分、別タイプのコピーだ」

同じシロをコピーしても、結果が違うことがあるということか・・・

そうこうしているうちに、照が次巡ツモってきたのは、三萬
今ペンチャンの二萬を切ったばかりだというのに

「ちょ、思いっきり裏目ってるんだけど・・・」
「悩んだら裏目に出るコピーなん? 使えんな・・・・」
「これが照が使いたがらない理由だよ」

私と怜が声を上げ、それを弘世がつなぐ

「照は誰をどのようにコピーするのか、ほとんど制御できてない。そして不利なコピーでもその局が終わるまでは取り消すことはできない」

それを聞いて、美術部のみんなから率直な感想がもれた

「シロのこのコピー、使えないね・・・」
「シロー、どうしてコピーされちゃったのー」
「どうしていい方向にコピーされてあげないかなっ」
「シロ、ドンマイ!」
「・・・・なんで私が責められる流れなの? ・・・生きるのもダルイ」

シロがさらに脱力する
みんなで同時に言うと、さすがにちょっとへこんじゃうかも・・・・

そうこうしているうちに、竜華からリーチが入った
当の照は、白を切った瞬間に白を立て続けにツモってまた裏目っていう状態で、手は全然進んでいなかった

『・・・・ちょいタンマ』

竜華のリーチを前に、またそう言う照

「いま、すんごいフラグが立ったな・・・」
「100%振るな・・・」

セーラがつぶやき、怜も同意する
当たり牌の高め9ソウを、照はバッチリ持ってるのよね・・・・

そして案の定、照は9ソウをつかんだ
685 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/02(金) 23:33:52.42 ID:BsqWPXe+0
-side 漫-

竜華さんからのリーチが入る
せっかくの親番やっていうのに・・・・

漫 手牌:四五六六六BCD33345

4メンチャン、三萬なら3色がついて跳満にまで届く。それ以外でもタンヤオドラ3で親満
これは上がりたい・・・・

そしてチャンピオンの打牌は・・・

「ロンや。まさか照から一発で出てくるとは思わへんかったわ」

9ソウ・・・

竜華 手牌:八八HHH12345(赤)678

「リーチ一発、一通ドラ1。裏も乗って跳満。12000や!」
「はい・・・」

手は入っとるのに
もう少し、もう少しなんや・・・

チャンピオンだって振り込むんやから、だったら私にもチャンスはあるはずっ



-side 照-

-副将戦前半戦 南4局(オーラス)
-親 清水谷竜華
-ドラ Gピン

――ロード中........選択完了......
――薄墨初美

――.........reverse     (続)
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/02(金) 23:42:32.47 ID:BsqWPXe+0
今日の更新分は短いですが、これで

ヤンガン買いましたが、やっぱり咲本編、落ちてましたね・・・・
アニメ2期はどこまでやるんだろう、ストックなさすぎる気がするんですが


>>680
今月号で淡の能力が分からなかったら自分の設定で書いちゃおうと思ってます
今のペースだと、ちょうどtell youの大将戦開始がガンガン発売日前後になると思うんですよね。だったら今月号の様子をうかがってからにしようかなと
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 00:43:17.47 ID:zoLNJipwo
乙乙
淡の能力早く見たいですなぁ
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 01:55:05.65 ID:fMo45VbP0
乙、
反転するにも色々あるからな?次のキャラは……北家の逆は南家なのか?
そうなら上手く行けば役満、悪くても南西が集まるのか?
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/03(土) 17:21:23.65 ID:ykiSX4Gn0
初美をコピーしたことを知られてないし一度目の役満は楽に成功しそうだね
690 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 07:36:33.70 ID:GlTl9HRE0
-side 照-

-副将戦前半戦 南4局
-4巡目

鬼門は北東の方角
裏鬼門はその反対側、南西の方角

北家に座った時、牌をさらす場所が北東になる
そして南家に座った時、牌をさらす場所は南西になる

必要な牌を並べることで、残りの風牌が集まってくる

方角のみが反転し、小四喜を招き入れるという能力には変化がなかった

「ポン」

対面、上重さんから出た西を鳴く

照 手牌:二三BD6789南南北 西-西西

・・・できれば南から鳴きたかった
私に対しては南はダブ南、西を先に鳴いたら警戒されてしまうかもしれない

でも贅沢は言っていられない
さっきみたいにハズレ能力を引くよりはよっぽどマシ・・・

照 打:D

「ポン」

新子さんが動き出す・・・・
彼女のスピードに対抗できるか?


-side 憧-

ギギギーの後の緑一色には驚いたけど、次の局は照さんが振り込んだ

オーラスしか使ってこなかったのは、1局限定能力なんじゃないだろうか
あるいは、高い手を上がれるけど次の局では振り込んでしまう制限があるとか。オーラスだけで使えばその制限は関係ないから使ってたとか

とにかく、過度にあのギギギーを恐れても仕方ない

照さんは親じゃない。だから前に進め!

憧 手牌:六七八八BBDD(赤)3578南

そして照さんから出されるDピン
もう攻めるっ

「ポン」

憧 打:南

「ポン」

照さんが南を鳴く。あちゃー、持ってたか
こんな早い段階で2副露させちゃうとスピードでも負けるかも・・・

照 打:B

「ポン」

憧 打:8ソウ

憧 手牌:六七八八357 B-BB D-DD(赤)

よっし、とにかくこれで1シャンテン
速攻で流すっ・・・
691 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 07:40:21.66 ID:GlTl9HRE0
-side 漫-

まだ4巡やのにもう2人とも2副露って・・・

漫 手牌:三五(赤)ACGGGH666中発 ツモ:D(赤)

ドラ爆なのはええけど、鳴けるところ出なくて動かれへん
しかも中とか発とか切りにくくなってもうたし・・・

新子さんはタンヤオ風味やけど、役牌片上がりみたいな可能性だってあるし
チャンピオンも、南西と鳴いとる。字一色はあらへんとは思うけども・・・

・・・いや、あるかも分からん
憩ちゃんが言うとったやん

――卓が軋んだら、連続和了やない何かが起きたんよ。気ぃつけてぇな

卓が軋む音がしたあと、緑一色
前の局は振り込みやったけど・・・

一色と役に名前がつくのは、4つ

混一色・清一色・緑一色・・・そんで、字一色

振り込んだ局も、チャンピオンは染め手くさかった
まだ3巡やけど、場の捨て牌に字牌がほとんど出てへん

一色能力とか、ありえるんやろうか
でも、憩ちゃんが見たのは清一やったらしいし・・・・

・・・逃げ回ってばかりもおられへんけど、ギリギリまで絞る

打:Hピン


-side 竜華-

竜華 手牌:一四四九@AH1東白白発中 ツモ:南

照と新子さんが鳴きあってお互い2副露、漫ちゃんH切りで回ってきたけど・・・
とりあえずBピンがポンされてもうたから、この@Aのペンチャンが厳しい

うーん、どないしよかな
初めから国士気配やったけど、でも西が残り1枚で厳しいんやよな

・・・・南と西が鳴かれて、場には東と北が見えてない
まさかとは思うけど、照やったら小四喜もありえるしな・・・

とりあえず様子見とこか

打:Aピン
692 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 07:44:39.68 ID:GlTl9HRE0
-side 照-
-8巡目

照 手牌:6789東東北 西-西西 南-南南 ツモ:東

・・・・間に合わなかったか

でも、最低5人は続けないとコピーモードは止まらない。長いと8人くらいまで止まらなかったこともある
オーラスでしか使わなかったのは、自分で制御できないコピーを何局も続けるリスクが高いから
立ち上がりは、自分に有利になるようにくらいのことはできるようになったけど、それでも誰をコピーするか分からない

次の半荘の東場の親に食い込まなければいいけど・・・

照 打:北



-side 恭子-

「すごいな・・・・」

ただ、そんな感想だけが口をつく


照 手牌:6789東東東 西-西西 南-南南

憧 手牌:六七八3345 B-BB D-DD(赤)

漫 手牌:三四五(赤)BCD(赤)GGG6667

竜華 手牌:一九@H1東南西北白白発中


「客観的に見れば、北切りの一手やけど、果たしてあの場にいて冷静にそれができるかどうか・・・。次巡、北をツモって役満の公算が高いのにな」
「南西鳴いて立て続けに東が来たところで、コピーを知っとる俺らには初美の能力やって分かるけど、竜華たちはそれを知らんわけやしな」

次の宮永のコピーが初美の鬼門の反転なのは分かった
ここでまた役満を上がるのかと思いきや、他の3人も手を仕上げていった

結果完成した、宮永照包囲網

6ソウを切れば新子
7・8ソウを切れば漫ちゃん
9ソウを切れば、竜華の国士に振る

北を諦めるしか、宮永に手はない

「なんか、あんときみたいやわ・・・」

怜が懐かしそうな顔をする

「あんとき?」
「冬の個人戦」
「ああ、確かにな・・・」

宮永と戦ったのは、怜と、いま審判席に座る花田煌。そして松実宥の妹、松実玄

「今の竜華は、私以上に状況が見えとる。あの1年がどんどん鳴いていくのは、まるで煌を見とるようや・・・」
「漫ちゃんが、松実玄、か・・・・。前半焼き鳥なところまで真似せんでもええのに」

いま、ほとんどのドラを抱えているのは漫ちゃん
その火力をまだ持て余しているけど、そろそろ爆発を見せてほしい

『ツモ』

モニターから、和了を告げる声がした
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/04(日) 07:55:11.62 ID:GlTl9HRE0
日本シリーズが終わった瞬間に寝て、3時くらいに起きたのでつらつら書いてました
続きはまた夜にでも書こうと思います


あと、おかしくねーしSSまとめ様に、『咲 穏乃 淡 恭子「また4人で、ここで打てたらいいのに」』が載ってました

もうおかしくねーしSSまとめ様に足向けて眠れません
どっちの方角にあるのか、まったくもって分かりませんけども!

また隙間見て短編も書こうかな


どうしてもやりたい無理やりコピーがあるのでそこまでは今日書きたいなぁ・・・
694 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 17:31:21.00 ID:GlTl9HRE0
-side 由子-

保健室に着くと、そこにいたのは戒能先生と、赤阪先生だった
代行とは今の洋榎には合わせたくなかったのよー

殴りかかろうととする勢いの洋榎を、私は必死に止めた

「代行、絹をどこやったんや!」
「もう洋榎、落ち着くのよー」
「由子ももっと怒れや、代行のせいで試合出れんかったんやろ」
「それはいいのよー」
「よくなんてあらへんわ!」
「洋榎ちゃん、落ち着いてや〜」
「どの口で言うんや!」

相変わらずぽけーっとしている代行。そして戒能先生が二人のあいだに入る

「落ち着いてくださいね、洋榎さん。順番に話をしましょう」
「良子ちゃん、絹はどないなっとるんや!」

戒能先生を揺さぶる洋榎
先生は、あっさりこう言った

「ズバリ、仮病です」
「な、な・・・・」

あまりの即答に、流石の洋榎も言葉を失う
なんとなくそう思っていたけど、あっさり認めるとは思わなかったのよー

「仮病ってどういうことやねん、だったらなんで病気の証明なんて出したんや!」
「あとは赤阪先生が説明してくれますよ」

そういって、先生は自分の机に戻っていった

「代行、説明してもらおうか。事と次第によっちゃ、分かっとるやろうな」

もう今にも殴りかかりそうな、鬼の形相をしているのよ
いつでも止められるように身構える

代行は、見たこともないくらい真剣な表情だった

「説明はするんよ。でも、対抗戦が終わってから、末原ちゃんや漫ちゃん、絹ちゃんを交えてでええ? みんな巻き込んでもうてるしな」
「・・・・絶対やな?」
「絶対やよ?」

しばらくにらみ合い、洋榎がため息をつく

「絹はどこにおるんや」
「寮に戻ってもらっとるよ」
「分かった。由子はもう教室に戻り。私は寮に行ってくる」

そう言うと、洋榎が保健室を出ていく
閉められた扉を見て、赤阪先生はひとつため息をした

「ごめんな、由子ちゃん」
「んー、何に対してなのよ?」

だいたい予想はついたけれど、あえてとぼける
先生は苦笑した

「レギュラーのこと」
「もう覚悟は済ませたのよー」

レギュラーを外されてもしかたないと、もう腹をくくった
先生は小さく首を振った

「由子ちゃん。善野先生、夏前には戻ってくるんよ」
「え?」

善野先生。元々のサッカー部の顧問
今は入院してしまっているけれど、そうか、戻ってこれるんだ・・・

「だからな、もともと夏の大会のレギュラーを決める権限なんて、私にはないんよ」
「じゃあ、代行はサッカー部の顧問やめるのよー?」
「まあ、その話はまた後でな。もう教室戻り?」

手をひらひらと振る
もうこれ以上話を進める気はないようだった
私は保健室を出ると、教室に戻ることにした
それにしても、恭子にはこのことをどう伝えようか・・・
695 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 17:39:15.51 ID:GlTl9HRE0
-side 照-

-南4局

「ツモ」

かろうじて、ツモったのは私
北を否定したことで、鬼門の流れは絶たれた
そこからは普通のツモになり、9ソウを引き入れた

「ダブ南混一、2000、4000」

竜華が点棒を差し出しながら、私の河の北を見る

「んー、親っかぶりかぁ。にしても、北を持ってたら小四喜狙えたんとちゃうん?」
「だって、これは切れないでしょ?」

コツコツと、ツモってきた9ソウを指差す

「ま、ご想像にお任せするで」

パタンと手牌を伏せる竜華

「うーん、前半終了。また後半よろしくお願いします」

そう言うと、新子さんはスタスタと対局室を出ていく

「じゃあ、私もいったん失礼します」

上重さんも少し肩を落としながら対局室を出ていった
なんとか今は彼女を抑えられているけれど、危険な爆薬庫状態であることには変わりない
ああいうタイプは一度火がつくと加速がついて止められなくなる

それに・・・

「じゃあ、うちらも一回戻ろか?」
「そうだね」

レベル7、最高状態の竜華がこんなにやっかいとは思わなかった
次の親も連荘は厳しいかもしれない・・・・



副将戦前半戦 終了

宮永照(3−1)    83600(+35100)
新子憧(1−5)   113800(-14600)
上重漫(2−10)  112100(-17200)
清水谷竜華(3−2)  90500( -3300)
696 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 23:43:34.68 ID:GlTl9HRE0
-side 咲-

憧ちゃん、すごい・・・

結果的にはお姉ちゃんの一人浮きだけど、微差の1位で折り返した

お姉ちゃん相手に、積極的に鳴いてた
私が今お姉ちゃんと戦ったら、あそこまで堂々と戦えるだろうか・・・・

「たっだいまー」

憧ちゃんが帰ってくる

「憧、照さんと充分渡り合ってるよ!」
「あの親っかぶりは不運ですが、この調子で行けば問題ないですね」
「いやー、でも結構しんどい」

穏乃ちゃんと和ちゃんが駆け寄った

確かに、あの緑一色のとき、憧ちゃんが親だったのは痛かった
あの、ギギギーってのは、私には正体は分からないけれど

「アコ、やるじゃん。テル相手に十分出来てると思うよ。あのリュウカって人が協力してくてるしさ」
「清水谷さんね・・・・。あの人にも注意してないと、知らないうちに牙を剥かれてる可能性もあるからね」
「ん、その辺気付けてるなら問題ないね」

清水谷さんは手を崩してまで、憧ちゃんに鳴かせたり差し込んだりという場面が多くあった

「咲、先生。客観的に見て、あのギギギーについてどう思った?」

私には分からなかったので、小さく首を振った
赤土先生は、手元のメモを今までじっと見ていたが、顔を上げた

「多分だけどな、あれは能力コピーだ」
「コピー?」

一体何をコピーしたんだろう・・・

「こちらからでは、ギギギーって音までは聞こえなかったんだが、咲がお姉ちゃんがうつむいたのがギギギーのときだって言ってたから、そこからの動きを観察していた」

そう、そこから先生はお姉ちゃんの動きを一挙手一投足見逃さず、細かにメモしていた

「わかりやすいから遡ろうか。南家で南と西を鳴くと東と北が集まっていた。これは3年の薄墨初美の逆バージョン」
「あー、副将戦で当たるかもしれないって牌譜見た、あの巫女さんね」
「その前の振り込み。『ちょいタンマ』と悩むのは、3年の小瀬川白望の特徴だ。本来なら悩むと手が高くなるんだが、逆に悩んで裏目を引いていた」
「うーん、その人は知らないな」

3年生の人の打ち筋を逆にしているコピー・・・・
そんなの私には気づけない。逆に先生だから気づけたことなんだろう

そうか、お姉ちゃんの鏡
鏡だから、反対のコピーになっちゃうのか

「そして緑一色の局。配牌とツモを含めて、宮永照の手に、赤い牌は1枚もなかった」
「赤い牌が1枚もないって。それって宥姉の反対ってこと?」
「そう、宥の逆バージョン。だから結果的に緑一色を上がれた」
「そういうことか・・・・」
「まあこれが正しいかは分からないけど、あの『ちょいタンマ』は結構決め手かな」

メモ帳を机に置いて、先生は私の方を見た

「な、咲。そもそもお姉ちゃんが、あんな風に悩んで手を止めるとか、その段階でありえないよな?」
「そうですね。お姉ちゃんが手を止めるなんてよほどのことだと思います」

お姉ちゃんが手を止めるところなんてほとんど見たことがないくらい
ましてや、ちょいタンマだなんて聞いたことがない

「その上で憧、正直これは対策しようがないわ」
「うん、聞いてて分かったわよ。3年の打ち筋を普通にコピーされても分かんない人が多いっていうのに、それを逆転されたら対局中にどうこうできるなんて思えないわね」
「そういうこと。ま、正体不明よりは心理的にましってところかな」
697 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 23:44:28.27 ID:GlTl9HRE0
小さく頷き、憧ちゃんは私の方を向いた

「咲、見ててくれた?」
「え、うん。憧ちゃん、すごかったよ」
「私はいま個人収支はマイナスだし、それをいいとは思わないけど。それでも、クラスはトップ」

お姉ちゃん相手にプラスになんてそう出来ることじゃない
でも、これは団体戦だから・・・

「私の役目はさ、淡にできるだけ負担にならないような点数でつなぐこと。咲が守って、しずと和が稼いでくれた点棒をできるだけ減らさずにね」

ずっと一人で打ってきたから、私は誰かの為になんて打ってこなかったから
収支がマイナスでも、とにかく次につなげばいいなんて、分からなかったから

「だからさ、咲。私一人見れば勝ってなくても、クラスでは勝てるような、そういう麻雀もアリだと思うんだ。ね、だから今日のことはあんまり落ち込まないでね」
「うん、ありがとう、憧ちゃん」

憧ちゃんの微笑みに、心があたためられていくのを感じる

お姉ちゃんが打つところを見たいなんて動機で、3−1の松実さんをかばったけれど・・・
今は、憧ちゃんがお姉ちゃんに向かっていく姿が見たかった

お姉ちゃんが、私の打つ麻雀を認めてくれないのは仕方ないことだと思う
じゃあ、憧ちゃんは?
勝たなくてもいいって言ってくれる憧ちゃんの打ち方は、お姉ちゃんにはどう写るんだろう

「頑張ってね・・・」
「うん、任せといて」

ぐっと親指を立てて、元気な笑顔を見せてくれた

「じゃ、行ってくるね」
698 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/04(日) 23:45:45.63 ID:GlTl9HRE0
-side 漫-

「私だけ焼き鳥ですんません!」

教室に戻るなり私は頭を下げた

「漫ちゃん、頭上げてや。急に交代してもろうて、1位と微差なんやから問題あらへんて」
「そうだぞ、漫。後ろには衣が控えてるんだ。大船に乗ったつもりで堂々と打ってくればいい」

憩ちゃんと衣ちゃんがそう言ってくれる
が、なぜか二人は手に水性ペンを持っていた・・・

「なぁ、そのペンなんなん?」
「んー、これ? なんやサッカー部で漫ちゃんのかわいいおでこにいろいろ落書きするのがブームって聞いてな。後半戦も焼き鳥やったら、乗るしかないこのビッグウェーブに、と思うてな」
「ばいおれんす感というが漫には不足しているらしいからな。衣も一肌脱ぐぞ」
「その情報のソース出してぇな!」

はぁ、もう。クラスでもいじられキャラになったら体力もたへんて・・・

「あれ、そういえば小蒔ちゃんは?」

クラスにいたのは、憩、衣、玄の3人だけだった。絹ちゃんがおらんのは仕方ないとして、小蒔ちゃんがおらん理由が思い当たらない

「小蒔ちゃんだったら部室の方にいってるよ。部活の先輩に呼ばれたんだって」

そう答えたのは玄ちゃん。さすがに玄ちゃんはペンは持ってなかった

「それより漫ちゃん。私もチャンピオンと当たった時は全然上がれてないし、全然気にすることないよ」
「それでも焼き鳥やで?」
「それ私も言われたよ。宮永さん相手にそんなに削られてないから大丈夫って」
「そう・・・。じゃあ私も、チャンピオンに倍満ぶちかますくらいのことはせなあかんね」

玄ちゃんみたいな絶対支配でないにしても、今日はドラがどんどん入ってきてるのは間違いない
ただ、テンパイまではたどり着いても、そこで止められてしまう

「お、言うたね漫ちゃん。じゃあひとつアドバイスな。もうちょい鳴き仕掛けしてってええと思うで。ちょっと緊張しとるんかあんまり動きがなかったと思うんよ」
「そういえば、あの卓が軋むってやつ、傍から見ててどないやったん?」
「あー、あれか・・・。多分やけど、深く考えてもしょうがない気がするで」

ちょいタンマというのが、3年の小瀬川っていう人のくせらしい
それが出てきたということは、なんらかの模倣を行っているのではないか
だとすれば、知らない人を真似している可能性も高いから、そこまでこだわってもかえって墓穴を掘るかもしれない

そんな説明を受けた

うん、よくわからん

分かるのは、私は残りの半荘、やれるだけやるしかないってこっちゃ
手は入ってきてるんや、分厚い紙一重やけど、乗り越えんとな・・・

じゃないと・・・・・

「ところで、額に何書くのがスタンダードなんやろうなぁ。やっぱり鰻か?」
「おお、難読漢字なら任せろ」

何書かれるか分かったもんやないわ
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 04:32:54.40 ID:pkTljJxt0
怒涛の三回更新乙乙
憧ちゃん……ムチャしやがって……
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/05(月) 19:20:47.63 ID:prBXU2vB0
1です
風邪引きました・・・

充電かねて今週は更新お休みしようと思います
また週末から書きたいですが、とりあえず今日は寝ます・・・
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 19:30:28.50 ID:qf20oAXmo
乙乙
ゆっくり養生してね〜
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/06(火) 21:58:26.75 ID:KrEFv3Tt0
ありゃま、結構な更新頻度だったしお大事にー
703 :tell you that I love ...(8-5) [sage]:2012/11/09(金) 07:01:23.03 ID:rYGXWybO0
-side 菫-

照にしては、あまり稼げなかった印象だな
まあもっとも、東1の親は捨てているし、南1の親もあっさり流され、それでも3万点以上稼いでいるのだから悪くないんだろう

まったく、自分のクラスを心配すべきなのにな・・・
だが、照を倒すために集められたとささやかれ、それで団結できるほど私は大人じゃない

久保先生は大将に石戸を据えた
私がオーダーを組むなら大将に清水谷を据えただろうな

その意味、石戸には伝わっているはずなんだ
2年10組が勝ち上がることは見こうして・・・
だから余計に、クラスのためになんて言葉が出てこない

無理な狙い撃ちを指示される先鋒次鋒が損な役回りかと思っていたが・・・
こうして自分の出番が終わってしまえば、大将というのもかなりキツイと思える

石戸、今お前は何を考える・・・

「ただいま」
「戻ったでー」

照と清水谷が一緒に教室に戻ってきた

「おかえりなさい」
「竜華、惜しかったなぁ」

歓迎の言葉を口々にするなか、私は照に歩み寄る

「照、悪いな。アレについては解説済みだ」
「覚悟はしてたから、問題ないよ。オーラス以外で使えばバレちゃうのは分かってたし」
「途中でアレを出すなんてな・・・ギリギリだったのか?」
「点差もあるし、竜華は最高状態。普通にやったんじゃ稼げない」
「そうか・・・・」

そのまま、照は松実のところに向かった

「照ちゃん、お疲れさま」
「菫から説明は聞いたと思うけど、ごめんね」

きょとんとする松実
何を謝ることがんだ? 私にも分からなかった

「宥の反転なんてして、寒がるっていうか、怖がられちゃうんじゃないかって思って」
「最初はびっくりしたけど、全然気にしてないよ」
「そう、なら良かった」

ほっとした表情を見せる照
知らないうちに随分親しくしているみたいだな・・・
まあ友好関係が広がるなら、その方が照のためにもいいのだろう。いつまでも私がお守りもしていられないしな

一方の清水谷は、一目散に園城寺のところに向かっていた

「怜、大丈夫やったかー」
「私のことはええから、自分のこと気にしいや」

それでも嬉しそうにはにかんで、膝枕されていた

「もうちょっとで国士やったのに、惜しかったなぁ」
「しーっ」

清水谷が慌てて口に指を当てるが、それを照が微笑んで見ていた

「ほら、やっぱり張ってた」
「あ、当たり牌が何かまでは教えへんからな」
「9ソウやでー」
「ちょ、セーラ!!」
「どうせあとで牌譜見たらバレるやん」
「そういう問題やあらへんのに!」

そこに真瀬が戻ってきた
しかし愛宕はいない

「由子、洋榎はどないしたん?」

末原が尋ねると、真瀬は首を振った
704 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/09(金) 07:02:34.05 ID:rYGXWybO0
「洋榎は絹ちゃんに会いに寮に戻ったのよー」
「それで、絹ちゃんはどないやったんや?」
「えっと、それは・・・」

言いよどむ真瀬
おそらく、ここでは言いにくいことなのだろう

「なんなら、3−2は空いてるぞ?」
「そうするのよー。ありがとう、弘世さん」

そう言うと、真瀬は末原の手を引いて教室を出ていった

さて・・・

私は清水谷の近くの席に移った

「清水谷、お楽しみのところ悪いが、照の打ち筋について解説は必要か?」
「ああ、途中で打ち方変わってビビったけど、あの失敗したコピーみたいなの何なん?」

それを聞いて、周囲から笑い声が漏れる

「失敗したコピーとか、ちょー面白いんですけどー」
「シロは失敗作なんかじゃないからねっ」
「シロ、ドンマイ!」
「だからなんで私が・・・もはやダルすぎて快感に・・・・ならないな・・・」

さらにぐだーとなる小瀬川
まあ、確かにあの3回で不利に働いたのは小瀬川のときだけだったが・・・

とりあえず同じような解説を清水谷にもする

「なるほどな、鏡か。面白いの隠しとったんやね」
「あんまり使いたくなかったけどね・・・」

照がため息混じりにそう言う

「そう? おもろいやん、毎回やってほしいくらいやわ」
「・・・また今度ね」

・・・ほう
変わったもんだな。以前だったら絶対にやりたがらなかったのに

部内で密かに調整していたから、今まで照のこの反転コピーを知っていたのは、私と渋谷と亦野だけだった

『副将戦再開まであと5分です。選手は対局室にお集まりください』

放送が流れる

「じゃあ、行こか、照」

清水谷が園城寺の体をゆっくりと起こす

「竜華、あと3400点やで?」
「分かっとるよ」

ん、なんの点数だ?

「照ちゃん、頑張ってね」
「うん、大丈夫」

照も松実と微笑みあい、清水谷と一緒に教室を出ていった

「なあ怜、今の点数なに?」

江口の質問に、園城寺は人差し指で口を抑えた

「秘密や」
「なんやのそれー。末原解説員はおらんのかー!」
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/11/09(金) 07:07:01.34 ID:rYGXWybO0
1です
とりあえず風邪は治りましたので、書き溜めてあった残りを投下です
ご心配お掛けしました(ぺっこりん)

ガンガンバレ出てましたけど、どうやら副将戦すら終わらないようなので本編での淡は自分で考えたので行きます
では、また週末に
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 18:10:02.09 ID:xNQ3gGlm0
乙!本復オメ!
まだ対局が終わってないのに対戦相手に手の内の詳細を明かす照は人間の鑑
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/10(土) 18:10:23.98 ID:2xwDmhDu0
久 洋榎 春 胡桃「また4人で、ここで打てたらいいのに」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352516837/

また短編書いたので告知


こっちの本編は、今日か明日の夜に1回更新予定です
708 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 00:50:02.42 ID:pbFB8hP/0
-side 照-

-クラス対抗戦 決勝副将戦 後半戦
-場決め

東 清水谷竜華(3−2)  90500
南 上重漫(2−10)  112100
西 宮永照(3−1)    83600
北 新子憧(1−5)   113800


-東2局
-親 上重漫
-ドラ 東

東1は竹井さんの反転で、なんなくツモ上がりできた
悪待ちを好む彼女の反転は、3面張以上なら和了率上昇というもの


そしてこの東2局・・・


――ロード中........選択完了......
――白水哩

――.........reverse


はぁ、よりによって白水さんか
私この能力苦手なんだけどな・・・

配牌:三四七九@ABF44568南

――3飜

選択権も反転されている
私が選ぶまでもなく、勝手に指定されてしまう

ドラが東であることを考えると、赤が来ないとドラを数に含めるのは難しい
リーチ平和に、タンヤオか一盃口あたりかな・・・
ツモ次第ではクリアできそうではる

しょうがない・・・

私は一度牌を伏せる
そして勢いよく牌を起こした

――リザベーション!!

右足首、左腕、そして首に圧迫感が加わる
実際に拘束されているわけではないのに、イメージの中で鎖に繋がれていくのが分かる

――スリー!!

リンク先は、対局者の中から選ばれる
709 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 00:52:13.57 ID:pbFB8hP/0
-side 憧-

ビビクン!

右足首、左腕、そして首に突然変な感じが走る

「ふきゅっ」

変な声もれたっ・・・
あわてて袖口で口元を抑える

なに、なんなのこれ・・・

3箇所のじわじわとした変な感じはまだ続いている
これもギギギーの効果なの?

照さんを見るけど、照さんに変化があるようには見えなかった
まあ、基本対局中に表情変えたりしない人だからわかるわけないんだけど

うーん、イマイチ集中できないけど
とにかくあがるのみっ

ああ、でもなんかもどかしいっ・・・



-side 照-

リンク先は新子さんか・・・

白水さんの場合は、自分が和了すればリンク先の姫子さんが倍の飜数で上がれるというもの
でも私が使うと、自分が和了できなければリンク先の対局者、今回は新子さん、が倍の飜数で南2局で上がれるというものになってしまった

つまり、この東2局で私が3飜で上がらなければ、新子さんの南2局でのハネマンが確定してしまうということだ
逆に私が上がれば、南2局での新子さんの和了はほぼ消える

それにしても、新子さんが落ち着かないな・・・
私の方はただ圧迫感があるだけだけど、リンク先はビビクンってなるって菫が言ってたし・・・

いつもこれ使ってる白水さんはどんな心境なんだろう
っていうか菫から詳しく聞かなかったけれど、ビビクンって、何?

新子さんが顔を赤らめてそわそわしているのを見ると、電気みたいなものなのだろうか・・・

「ロン、8000」

結局、集中力を欠いた新子さんがあっさりと竜華に振り込んだ

これで南2局の新子さんのハネマンは確定
南3局の自分の親までに手を高めておくということはできなくなった・・・

あとは、このコピーがいつ終わるか、か
とりあえず最低ラインの5人は消化した。次は自分の親番だし、もう終わってくれればいいけど

だけどコピーモードは続いた


――ロード中........選択完了......
――東横桃子

――.........reverse


最悪の形で・・・
710 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 00:53:18.84 ID:pbFB8hP/0
-side ゆみ-

試合の様子は気になるが、久を実況解説に取られてしまい、結果私が出店など試合外の部分の見回りを行うことになった

「別についてこなくていいんだぞ、モモ」
「好きでついて行ってるだけっす」
「ならいいんだが・・・」

傍目には私が独り言をしているように見えるんだろうか

中学の時の後輩で、それからもずっと私を慕い続けてくれている後輩
東京と長野と離れてしまっても、電話なりメールなりは続けていた

「副将戦はそろそろ後半かな。どうだった、宮永照は?」
「そうっすね。強かったっす」
「牌譜は見たよ。作戦は悪くなかったが、ツメが甘かったな」
「ううっ・・・」

2位狙い自体は悪い作戦ではない
むしろ、私も同じチームならそのように指示しただろう
ステルスが通じるのかどうか試さないことには、後の作戦も立てづらい

ただ、ステスルには常に見破られる可能性は付きまとう
その点は常に考慮していなければならなかった

「まだまだ、先輩には届かないっす」
「そんなことはない。お前の方が強いよ」

おそらく、モモが目標とする私は、現実の私とはもう乖離していることだろう
私はそんなに立派でも、強くもないよ

「そんなことないっすよ。先輩の方が強いっすよ」
「お互い否定しあっても不毛だな・・・・」

じっと私を見つめてくるモモを直視できず、私は前を向く
キョロキョロと落ち着かない様子であたりを見回す女性がいた

まだ春先、花粉症のためにマスクをしているから口元は分からない
それでも、そのセミロングの女性には見覚えがあった

「小鍛冶先生?」
「え?」
「ああやっぱり、小鍛冶先生だ」

マスク越しで声がこもっていたものの、それでも近づくにつれ確信を得る
間違いなく、1年前に退職された小鍛冶先生だった
私が1年の時の担任だったので、よく覚えている
711 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 00:53:44.43 ID:pbFB8hP/0
「先輩、この人は?」
「ああ、私が1年の時の担任の小鍛冶健夜先生だ。私が2年になる時に退職されたんだが」
「・・・もしかして、加治木さん?」
「そうです、加治木ゆみです。お久しぶりです」

一礼する
顔を上げると、それでも小鍛冶先生は落ち着かない様子でキョロキョロしていた

「・・・・誰かお探しでしょうか?」
「そういうわけじゃないんだけど・・・」

・・・・逆か?
誰かに見つかりたくないとか

退職の理由は聞かされていない
噂では寿退職だなんて話も出ていたが、それなら隠す必要もないし、なにより左手の薬指に指輪もない

まったく、今日は色々と動きが多いことだな・・・

「よろしければ、あまり人のこない穴場の観戦室をご案内しましょうか?」
「あ、そうだね。そうしてくれると助かるよ」
「じゃあ少し歩きますけど」

退職理由を聞くのは野暮なのだろうか・・・
それでも、タイミングさえ合えば聞いてみたい

「・・・あまりキョロキョロしていると、かえって目立ちますよ?」
「そうだよね・・・」

小さくため息をつく先生
仲の悪い先生でもいて会いたくないとか、そういう類のことなのだろうか・・・

「腕章をしてるけど、生徒会なの?」
「副会長をしています。残念ながら私のクラスは昨日負けてしまいましたので、今日は生徒会で見回りです」
「そういえば1年のときには、クラス委員もしてくれてたよね」
「そうですね。そういう役割が好きなんでしょうね」

話をして、先生も少しは落ち着いてきたようだ
っと、先生にばかり気を取られていてはいけないな

「モモ、昔話ばかりになってしまってすまないな」
「いいっすよ、黙ってるっすからお気になさらず」
「そういえば、この子は?」
「1年の東横桃子っす。先輩とは中学からの後輩っす」
「そう、よろしくね」

先生は微笑みを浮かべて小さく頭を下げた
712 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 00:54:54.66 ID:pbFB8hP/0
-side 照-
-東3局
-親 宮永照

対局者の捨て牌が全く見えなくなる
ただ、手の動きは分かるので、誰のツモ順なのかというのは分かった

テンパイ競争
ただし、私だけ目隠しをした状態

・・・・自分の親だというのに
東横さんには、ずいぶん嫌われてしまったのかな

ただひたすら、自分の手だけを見てツモを目指すしかない
けれど、そんな悠長なことを許す面子ではないわけで

「ロ、ロンです」

自分の振込を自覚すると、一気に視界が開けた
一番振ってはいけない相手に振ってしまったようだ

「リーチ一発ドラ6、裏無し。倍満です」

上重さんへの放銃
まずいな、これで導火線に火を着けてしまった


-東4局
-親 新子憧

――ロード中........選択完了......
――亦野誠子

――.........reverse

またハズレコピー・・・
誠子の反転、3副露以上したらツモ和了不可

っていうかまだコピーが終わらない。自分で決断したことだけれど、流石に困る・・・

「ツモ、3000、6000」
「くっ・・・」

また上がったのは上重さん。完全に調子づかせてしまった


南入だけど、まだコピーが止まらない


――ロード中........選択完了......
――荒川憩

――.........reverse


よし、これなら行ける
上重さんを止めるっ


副将戦後半戦 東場終了時点

清水谷竜華(3−2)  91500
上重漫(2−10)  138100
宮永照(3−1)    72600
新子憧(1−5)    97800
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/11/11(日) 00:56:54.32 ID:pbFB8hP/0
今日はここまでです
うーん、文章化が難しいな、哩先輩は・・・・

あと南場だけだし、頑張ろう
おやすみなさい
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 00:57:51.26 ID:DlrGVG29o
乙乙
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 01:09:33.17 ID:2eGCYA9g0
乙ー
今回は照のハズレコピーもさることながら憧ちゃんのエロさが青天井すぎる
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/11(日) 12:21:15.43 ID:dPh+01s2o
セルフSMをコピーは嫌だよね
717 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 22:57:36.52 ID:pbFB8hP/0
-side 漫-
-南1局
-親 清水谷竜華
-ドラ 5ソウ

配牌:三四四五(赤)BBCD(赤)34555(赤) ツモ:C

配牌、ツモ、ともに今かなり調子が出てきとる

四切りで、タンピン三色ドラ6、ダブリーかけてツモか一盃口が付けば数え役満
これで完全に引き離せる

前半戦はアカンかったけど、後半は行けるで!

「リーチ」

打:四



-side 照-

荒川さんの能力は、3回以上失点すると爆発するというもの
それが逆転して、3回以上失点するまで爆発。私はまだ2回しか失点してないので条件を満たす

配牌:二二三三四四五五六六八八西 ツモ:八

凄まじいな・・・
西切りで、二三五六の4面張

清一・タンヤオ・一盃口で倍満確定
これ以上の手替わりもないだろう・・・

上重さんがダブリーで来たけど、これ以上引き離されないためにも勝負に出るしかないか

「リーチ」

打:西



-side 竜華-

2軒ダブリーなんて考慮しとらへんよ・・・

新子さんが少し手を止めて、東切り

照からダブリーか、まだコピーモード続いとるんかな
上重さんも完全に調子が良くなってきてしもうたし
私が親やっていうのに、困るわそういうの・・・

でもな、調子がええっていうのは、常にいい配牌が来ることを指すんやない

手牌:一六八AG468西西西白発 ツモ:7

安牌を切っているうちに手が入ってくるっていうこともあるんやで
調子のええときは、そもそも当たり牌を切る状況にならへんもんや

ま、とりあえずは振りあってくださいってとこやな・・・

打:西
718 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 23:00:19.59 ID:pbFB8hP/0
-side 憧-
-7巡目

まっずいなぁこれ
手牌はイマイチだし、かろうじて現物を切って来れたけどそろそろ限界・・・

捨て牌
竜華:北西西西一G発
漫 :四9九東89C
照 :西一中G北七H
憧 :東一中九北七

憧 手牌:二二@@BD1123477 ツモ:9

やった、9ソウなら通ってる
ソウズが全然出てくれないから溜まってく一方なんだけど、この後はスジを頼りに@を切ってくしかないかな・・・
ダブリー相手にスジとかあんまり頼りたくないけど、読みようもないしね

打:9

「ロン、2900」
「え?」

まさかのロン・・・
牌を倒したのは、清水谷さん

手牌:六七八AA45678白白白

西暗刻切りしておいて、ちゃっかり張ってるなんて・・・
いや、生牌の発切り。あれで少しは警戒すべきだったかっ

「ま、私が一番安いからお買い得やったで」

そう言いながら、私の出した点棒と2人のリー棒を回収していく
ヤバイ、今のでリー棒含めると逆転された・・・

2軒ダブリーに振り込むよりはマシだったんだろうけど、それでも親の連荘を許してしまった
ジリ貧になる前になんとかしないと・・・

けど、今ので流れを引き寄せたのか、清水谷さんがそこから2連続で親満。ツモ1回とトップの上重さんから直撃で逆転して一位に浮上した
ようやく照さんがノミ手で流して、南2局に入った


-南2局
-親 上重漫
-ドラ 7ソウ

上重さんがサイコロを振る
その時、なぜか目の前に鍵が浮かんでいるように見えた

・・・・え、何?

その鍵には数字の6と書かれていた。数字を認識した瞬間、もう鍵は消えていた

疲れてるのかな、私・・・・
手早く理牌を終える

配牌:@ABCDEFG5666北

おお、いいじゃんいいじゃん
ダブリーも見えるし、ツモが悪くても鳴き一通もアリ

上重さんの一撃は重たいし、はやいとこ勝負に出よう
照さんも牌を切り、私の第一ツモはHピン
いきなり急所きたっ。これで一通完成、待ちも3面張

これは行くしかないっしょ!

「リーチ」

でもってー!

「一発ツモ!」

手牌:@ABCDEFGH5666 ツモ:5

「裏はなし。3000、6000」

平和もドラもつかないけど、これで最低ラインの配給原点復帰
照さんの親を全力で流して、ラス親に賭ける
719 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/11(日) 23:01:33.46 ID:pbFB8hP/0
-南3局
-親 宮永照
-ドラ 南

コピーモードは竜華が上重さんに直撃したところで終了した
連荘モードに入り、とりあえず竜華の親を流す

けど、南2局はすでに新子さんに跳満キーが渡ってしまっている

だから、この親で連荘を続けるしかない


竜華が最高状態だろうと
上重さんが爆発していようと
新子さんがどんなにスピードを上げようと


関係ない
すべて蹴散らし、私は勝つ


副将戦後半戦 南2局終了時点(収支は副将戦開始から)

清水谷竜華(3−2) 117500(+23700)
上重漫(2−10)  113800(-15500)
宮永照(3−1)    66500(+18000)
新子憧(1−5)   102200(-26200)
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/11(日) 23:10:31.54 ID:pbFB8hP/0
とりあえず照の親まで

ガンガン普通に本屋に置いてあってびっくりした
明日発売だと思ってたんですが・・・・


>>618でコピーの話になった時に、「やばい、ネタかぶっとる」と思ったのは懐かしい思い出・・・

>>644で「おしい、正解は『哩部長直伝(?)のリザベーションで憧ちゃんがふきゅってなる』です」とか思ったのも懐かしい思い出・・・
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 23:12:30.69 ID:DlrGVG29o
乙乙
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 23:19:05.98 ID:f7Z6U/I1o
ガンガンって大半の地域では11日発売で

今月は11日が日曜、10日が休配日(取次にもよるけど)だったから
9日には店頭に並んでた
723 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/13(火) 22:54:46.58 ID:WZUKWhFD0
-side 竜華-
-南3局

さってと、とりあえずトップにはなったけど
照の親。ここが最終関門やな。ここをどう凌ぐかや

まったく、今まで見た中で一番すごい迫力やないか・・・
思わず身震いしてしまいそうやわ

「ツモ、500オール」

早いな、3巡か・・・・
まあ、安い時の照はホントに早いからな

勝負は、満貫に到達するくらいや

流石にこんなに早いと小細工もできへん

しかも照の下家は新子さんやから鳴いてくれるかもしれんけど
漫ちゃんさっきからあんまり鳴いてへん

まあ上家だから鳴かなくてもええんやけど、アシストも苦手そうやんな
前半で照の親を流した時のようにはいかんで、これ・・・

「ロン、2900の1本場」
「はい・・・」

振ったのは漫ちゃん
うーん、どうも自分だけでなんとかしようとして周りがみえとらん気がするな・・・
手が入ってる分、周りをアシストしようなんて考えが浮かばないんやろう

流石に堂々と、みんなで協力して流そうとかは言えへんし
しかも間の悪いことに、順子場ときた・・・

対子場やったら新子さんが鳴いてくれるんやろうけど、それも叶わん・・・
それも含めて、照の支配なんかもしれん

「ツモ、1500オール」

平和手・・・・
やっぱりそうやんな

伊達に大会無敗を誇ってるわけやないわ
簡単には終わらせてくれへん・・・

このままじゃまずいし、ちょいと無茶するか・・・
724 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/13(火) 22:56:13.27 ID:WZUKWhFD0
-side 憧-

-南3局3本場
-ドラ 9ソウ

完全に順子場、かといってタンヤオも三色も一通も全部微妙だから動こうにも動けない
どうしろっていうのよ・・・

このまま削られてればいいの!?

「チー」

清水谷さんが動く

竜華 副露:2-13

染手?
チャンタ?
下の三色?

まだ分からないけど、欲しそうなところをどんどんアシストするしかない
照さんは6巡くらいまでには仕上げてくる

チャンタや下の3色なら、この辺?

打:二

「チー」

竜華 副露:二-三四

ええっ、何その鳴き!!
染め手もチャンタも消えたんですけど・・・・

あとはソウズの鳴き一通か、どちらかの三色。それとも後付けの役牌バック?

・・・・いや、そうじゃない

そうか、清水谷さんの手も順子手ってことよね
でも、一人だけ順子手じゃない人がいる

この状況を、伝えたいのね

「チー」

憧 副露:B-@A

この局を捨ててでも、3人の意思統一を図りたいってことなら、乗るしかないっしょ

気づいて、上重さん!
725 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/13(火) 22:57:34.06 ID:WZUKWhFD0
-side 漫-

竜華さんが、訳のわからん3副露
それに呼応して、新子さんも2副露

竜華 副露:2-13 二-三四 G-FH
憧 副露:B-@A 七-六八

・・・なんや、役があらへんのになんで鳴くん?
しかも全然ポンせんで、チーばっかり

対子場やないんか?

漫:五五(赤)七@@AD(赤)E999東東

私の位置で鳴けばそれだけチャンピオンに早く回るからポンでは鳴けないと思っとったけど・・・・
私にドラが固まっとるだけで、他の3人は順子場なんか?

「ツモ、2900オール」

また平和手・・・・
私だけドラが固まっとるだけで、やっぱり場は順子場

前半戦みたいに、新子さんがポンしてチャンピオンにツモ順を回さないっていうことは今の状況じゃできへんってことや

竜華さんはそれを知らせようとして、あんな鳴きを
そして新子さんもそれに対応した・・・

察しの悪い奴で、すんません・・・
私が動いたらアカンと思っとったけど、とにかくポン材のある私が動くしかあらへんのや

でないと、この鬼気迫るチャンピオンには、対抗できへん
726 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/13(火) 23:01:03.54 ID:WZUKWhFD0
-side 竜華-
-南3局4本場
-ドラ 北

気づいてくれたか、漫ちゃん
そうや、次の局も捨ててええ、とにかくポンして流れを変えてほしいんや

私や新子さんじゃ、普通に手なりで打って、普通に照に速さで負けるのがオチや
今、場の流れに逆らえるのは、漫ちゃんしかおらん・・・

だから、受け取りや

打:5ソウ

「ポン」

漫 副露:5-55(赤)

漫ちゃんの自風の北がドラになったんは幸いや
おそらく漫ちゃんには、最低でも対子で入っとる
役牌が対子であれば、ある程度は思い切って動ける

2−10はこのあと天江衣が控えとるから、漫ちゃんにはあんまり上がってほしくないってのもあるけど・・・
でも、このままじゃ現状を打開できんまま照の独走を許してまう
難しい判断やけど、照の手が跳満、倍満と仕上がってしまっては手遅れや

その前に漫ちゃんに動いてもらわんとな

それに、極力私から鳴いてくれれば、照にツモが早く回るということもない
私から鳴けばツモ巡通りやからな

竜華 ツモ:北

うーん、私のところにも来るんか、これ・・・
まあええ、受け取り

「カン」

まさかの大明カン
漫ちゃん、それはちょっと張り切りすぎちゃうかな
責任払いは勘弁してや・・・

嶺上では上がれず、ツモ切り

ドラ表示牌は、西

・・・見えとるだけで、北ドラ9か。ほんと恐ろしいやっちゃ、漫ちゃんは
でも、これも漫ちゃんが動いてくれる気になったからこそ
じっとしとったら、ここまで場は動かへんかったはずや

さあ、照
まだまだ漫ちゃんの勢いは衰えとらんで
この爆弾、どう処理する?

照が臆してくれればええけど、まあそう簡単はいかんやろな



-side 照-

竜華、やってくれる・・・

ただ場を動かしたくて意味のないチーをしたのかと思ったけれど
本当の狙いは、眠れる獅子を起こすこと、か

冬の個人戦を、少しだけ思い出す

けれど決定的な違い
松実玄はドラを切れなかったけど、上重漫にそんな制約はない

わざわざ北をカンしてきたことから、完全にふっきれて前進してきたことは分かる

――けどね

「ツモ、4400オール」

そう簡単に、私は引き下がったりしない
727 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/13(火) 23:02:38.76 ID:WZUKWhFD0
-side 漫-
-南3局5本場
-ドラ Dピン

とうとう5本場・・・
でも今の北のカンで、自分の火力が高まっているのは確認できた

「カン」

オタ風の東を暗カン
ドラ表示牌は、北
これでドラ4追加

そして、嶺上牌でテンパイできたっ

「リーチ」

打:2ソウ

チャンピオン相手に先制!
これはツモれる気がするで

手牌:二三四五六DD(赤)D(赤)33 [東東東東]
728 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/13(火) 23:05:08.87 ID:WZUKWhFD0
-side 照-

・・・・まったく、どこまでドラを乗せれば気が済むんだろう

手牌:三三四四五GGG55(赤)667 ツモ:7

G切りでテンパイ、二盃口なら出上がりできるけど二萬が出たらダマでは上がれない
次は跳満が必要、タンピン一盃口ドラ1では満貫止まり

どうせツモり合いだ
リーチしても、二萬が出たら困る・・・

打:G

「チー」

新子さんが動き出す
上重さんの一発消しだろうか・・・

憧 副露:G-FH

打:北

竜華のツモ巡、少し考えて打ってきたのは

打:二萬

・・・・・くっ、上がれない
竜華は何食わぬ顔をしているけど、ほんとに憎らしいくらいによく見えてる

上重さんのツモ
しかし上がり牌でなかったようで、そのままツモ切り

打:五萬

同巡だからこれも上がれない
まったく、これはもうツキに見放されたかな・・・

私のツモは北だったのでそのままツモ切り
新子さんが手出しで6ソウ

そして竜華のツモ
少し悩み、出したのは

打:A

「ロン」

手を倒したのは新子さん

「一通のみ、5本場で2500」

手牌:@BCDE88899 G-FH

また竜華にやられた・・・
あの二萬切りが無かったら、連荘できたのに

「これ以上の連荘はご遠慮願うで、照」
「まったく・・・」

ほんとに、最高状態の竜華は厄介だよ・・・

「オーラス、か」

泣いても笑っても、これが最後




だったら、ちょっと無茶してみようか





副将戦後半戦 オーラス前

清水谷竜華(3−2) 105700
上重漫(2−10)  100300
宮永照(3−1)    96600
新子憧(1−5)    97400
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/14(水) 00:51:26.07 ID:0xU0N+BCo
これは秘密兵器こと姉帯さんのスーパープレイに期待ってことだな!
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 18:16:40.08 ID:5lLVF4gw0
乙ー
何気に憧ちゃんからラス転落させるとは……長野県民は妹離れ出来ないのか(偏見)
731 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/15(木) 02:08:11.72 ID:bSatWB8W0
-side 憧-

-副将戦後半戦 オーラス
-親 新子憧

なんとか照さんの親を流せた

まあ、ほとんど清水谷さんのアシストのおかげだけど
流石に3年部長連合に隙はないわ・・・

でも、もうアシストは無い
私のラス親を続けさせる意味なんてないから
自力でなんとかしなきゃ・・・



ギギギー



またっ・・・

私は慌てて照さんを見た
また無気力に俯いている

「もう連荘はないし、それ出してくるんやな」

清水谷さんが、笑顔を浮かべる
もう、何が出てくるのかわからないのに、どうしてそんな楽しそうにできるの?

ハルエが言っていた通りコピーなのだとして、自分にデメリットになるようなコピーも多かったように思う
振り込んでいる局もあったし・・・
それでも使ってくるのは、宥姉のコピーみたいに有用なものもあるから?

麻雀自体ギャンブルみたいなもんだけど、その上にさらにギャンブルをするこの能力・・・
この局、一体どんな能力で来るんだろう

そろそろ声をかけてもいいのかな?
そう思ったときだった



ギギギー



「・・・2回目!?」
「マジか、どないなるやろな?」
「っていうか、何が起こっとるんですか?」

先ほどは余裕を見せていた清水谷さんも事態を理解できてはいないらしい

身震いが止まらない
底冷えするように、足元からひっそりと何かが這い寄ってくるよう

「・・・・すまない、待たせたね」

照さんが顔を上げる
その表情は完全に凍りついていた

「新子さん、サイを」
「あ、ごめんなさい」

私は慌ててサイコロを振る

一体、何が起きるんだろう
732 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/15(木) 02:09:59.43 ID:bSatWB8W0
-side 由子-

「はぁ、ホントに誰もいないのよー」

3−2の教室には誰もいなかった
決勝戦に出ているというのに、どうしてこうなってしまうんだろう

「ま、静かでええやろ」

恭子は窓際の柱に背をあずけた

「それで、代行は何て言っとったんや?」

私はまずは絹ちゃんが仮病であったことを伝える

「まあ、それは想像の範疇やわ」

流石に恭子、その程度のことは分かっていたようだった

「でも、それでよく洋榎が納得したな?」
「2点目、サッカー部を集めて後で赤阪先生がみんなにこれまでのことを説明したいって」
「む、それは予想外やな」

考え込み、恭子はため息をついた

「まあ、もともとどこかでバトルせなならんかったんや。向こうがその場を作ってくれるなら手間省けたと考えるべきか・・・」
「でも、そのバトル、必要無さそうなのよー」
「ん?」

おそらく、これは恭子にも予想はできないだろう

「善野先生、夏には戻ってくるみたい」
「え、ほんまか?」

心底嬉しそうな表情を浮かべる恭子

1年の時に一番善野先生に目をかけてもらったのが恭子だった
そこまでの恭子は私と同じDFだった。入ったときは私の方が上手かったくらい

でも善野先生がMFにポジションを変更して、徹底的に手ほどきをした
その結果、みるみるうちに才能を開花させ、2年の春にはすでにレギュラーを獲得するようになった

でもその矢先に善野先生が病気で倒れたのだった
そして急遽顧問に就任したのが、赤阪先生だった。サッカーの経験すらないので、代行顧問として

「うん、だから赤阪先生言ってたのよー。そもそも夏のレギュラーの決定権は自分にはないって」
「・・・・そうか」

笑みはすぐに消えて、またいつもの思案顔に戻った

「じゃあ、レギュラー剥奪なんてのは、もとから空手形やったってことか」
「そうなるのよー」
「となると、この後説明したいってのは、なんでそんなことしたかって話か?」
「そこまでは聞いてないのよー」

話の流れからすれば、それくらいしかないと思う

なぜ私をレギュラーから外すと嘘をついてまで3−1のオーダーから外そうとしたのか
そして絹ちゃんを仮病で下げさせた理由

「・・・宮永照を負けさせるために仕方なく、なんて今更言われたところで特に驚きはせんけどな」
「それで私のことは説明つくけど、絹ちゃんは?」
「昨日の絹ちゃん見とれば、漫ちゃんの方が宮永に対抗できる可能性あるからってだけやろ。もし交代が自由なら、私でもそうしとる。洋榎や絹ちゃんには悪いけどな」
「なら、なんで照を負けさせたいのかって話になる?」
「・・・・それ聞いたところで、どないなるって話やけどな」

まあ確かに・・・
なんとなく疑問が解消する程度のことでしかないのかもしれない

「まあ、代行にもサッカー部の洗礼を受けてもらうくらいのことはせんと気は治まらんけどな」

赤阪先生のエクストリーム土下座・・・
それは確かに見てみたい気はするのよー

「まあ大体の事情は分かったわ」

恭子は柱に預けていた体を、勢いをつけて起こした

「戻ろか」
「なのよー」
733 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/15(木) 02:12:27.21 ID:bSatWB8W0
-side 竜華-

-副将戦オーラス
-ドラ @ピン

ギギギーってのが、今まで照が見てきた能力を反転コピーするという話は聞いた
でも、今回それが2回鳴った

2人分を同時に使用するってことなんやろうか
まあ何にせよこのオーラス、照もかなり無理してくるんやろうな

まあ私は真っ向から戦うなんてことはせーへんからな
上がれそうなら上がるけど、無理なら一番被害が少なくて済むように立ち回るだけや

今日はそれが気持ちええくらいに上手く回っとる

「カン」

ここで照の暗槓。8ソウ、か
ふーん、あんまり積極的にはカンするイメージないけどな・・・

ってことは、1人目は妹の咲ちゃんか?
思い出すのも癪やけど、昨日のミーティングで1−5の話も出とった

1−5の先鋒、宮永咲
彼女は嶺上開花が得意で、嶺上牌は必ず和了牌もしくは有効牌になるらしい
そして宮永照の妹だから、姉のような魔物の可能性があるから気をつけるように

そんな話だった

でも、反転するんやったら、カンしても無駄ツモになるだけな気がするけどな
カンしやすいけど、上がれない、そんな能力とちゃうか?

ドラ表示牌は、中

はぁ、また漫ちゃんにドラ乗りよるやん
漫ちゃんはすでに白を鳴いている。これで白ドラ3は確定

ほんま、上手いこと抑えられたけど、これ以上はちょっと厳しいかも分からんな
親やから新子さんに差し込むわけにも行かへんしな
照が安ければええけど、正直読めない・・・

それにしても、上がれないカンと分かっててそれでもカンしたっていうなら・・・・
リーチしての裏ドラ期待か?
でもさっきから、表のドラはカンドラ含めてほとんど漫ちゃんに乗っとるから、あんまり期待できへん気もするけどな

照が嶺上牌をツモる
でも、そのままツモ切り

やっぱり咲ちゃんのコピーなんやろな

新子さんもツモ切りして、私の番

竜華 手牌:二二三五六七DEF5679 ツモ:四

うん、ええとこ来た
高目ならメンタンピン三色
差し込む先もあらへんし、ここは押しとくか?

「リーチ」

9ソウを横にした瞬間、走る悪寒

――あっ、これまずい

「カン」

パタンと3枚の9ソウを倒したのは・・・

「照・・・」
734 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/15(木) 02:45:01.36 ID:bSatWB8W0
-side 照-

――ロード中........選択完了......
――宮永咲

――.........reverse


そう、ここで来るんだね、咲・・・

今日の宥との対局
結局、±0で終わったけど・・・

±0で打つのが楽しいのか、やっぱり私には分からない
宥に話を聞いてみれば、分かることもあるのかもしれないけれど


でも、咲・・・


今日からは、ちゃんと向き合おう


だから、鏡越しなんかじゃなくて、ちゃんと真正面から向き合おう・・・・


お願い、宥
私に、力を貸して

やったことは無いけどもう一回、鏡を出す
2回鏡に写せば、本来の姿に戻るはずだから

意識を集中して
深く、深く・・・・



――ロード中........選択完了......
――宮永咲

――.........reverse


なんとか、上手くいった?

・・・・そう、これが咲が見ている世界
もしほんとにそうなら

ごめんね、咲・・・






竜華が9ソウを切る

「カン」

私にはもう見えている
その嶺上牌が、何なのか

「ツモ、嶺上開花ドラ1。3900」

照 手牌:@AB四五六7 [8888]9-999 嶺上牌:7


副将戦終了

清水谷竜華(3−2) 101800(+ 8000)
上重漫(2−10)  100300(-29000)
宮永照(3−1)   100500(+52000)
新子憧(1−5)    97400(-31000)
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/15(木) 02:53:48.01 ID:bSatWB8W0
ようやく副将戦終了です
長かった・・・

>>729
姉帯さんファンの皆さんお待たせしました、ようやく最終兵器姉帯出撃です
8月の終わりに対抗戦のオーダー決めて、そこからもう3ヶ月とか・・・

>>730
なんで長野県民で括るんですか・・・
その点、自分のクラスを犠牲にしてお姉ちゃんのクラスを1位した咲ちゃんは妹の鑑!
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 03:46:42.74 ID:eDehVwEIO
乙です!

まさか副将戦を±0で締めるとは思いませんでした。
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 09:24:59.34 ID:MW3EgCIIO
乙ー
照の浮きっぷりやべえww

遂に決勝戦か…魔物級と準魔物級しかいないから大荒れ必至だな…
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 10:06:31.66 ID:V+7Mxwozo
乙やで!
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/15(木) 21:13:13.70 ID:PhIMEUMAO

乙です!

照かっこいいー!
ヤバいね照の能力
740 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/15(木) 22:44:24.09 ID:bSatWB8W0
-side 憧-

嶺上開花・・・

まるで咲みたい。でも、どうして?

「なんでや、照。咲ちゃんの反対のコピーならあがれんはずやん」

そういえば今日初めてだろう、意図しない振り込みをしてしまった清水谷さんが少し声を荒らげた

照さんは、息を整えてから答えた
顔も少し青白い・・・

「2回コピーした。だから、普通の咲だよ」
「2人やなくて2回やったんか・・・・」

どうやら清水谷さんは2人分コピーしたと思っていたようだった
私はというと、深く考えても仕方ないからあんまり考えないようにしていたけれど

私は照さんの手牌を改めて見た


照 手牌:@AB四五六7 [8888]9-999 嶺上牌:7


・・・・どうしてこんなことを?
その手牌から疑問が生まれる

だって、8ソウをカンした段階でもうツモ上がりしている・・・
照さんがカンしたとき、手の中はこうなっていたはず

照 手牌:@AB四五六78888999

どの牌をツモってきたにせよ、ツモドラ1の和了
なのにわざわざ上がりを崩して、8ソウの暗槓

照 手牌:@AB四五六7999 [8888]

この形で待っていたことになる

「照さん・・・・」
「なに?」
「どうして、8ソウをカンしたんですか。その段階で、ツモできてますよね?」

清水谷さんと上重さんの視線が照さんの手牌に集まる

「新子さん、咲はその手ではあがれないんだ・・・」
「あがれない?」

ツモはツモなんだから、別にあがれないなんてこと・・・

ふと、照さんの点数が目に入る

100500点

まさか・・・・

「プラマイ0?」
「かつ、2着になれる点数。咲、家族で打ってる時はいつも2着だったから」

上重さんが100300点だったから、その条件を満たすのは3900点しかない

30符3飜か、あるいは60符2飜
でもこれもツモだと1000、2000になって合計が100600点になってしまう
だから出上がりするしかない

ドラが1つあるだけで役のない手
でも出上がりしないといけない

だから、大明カンからの責任払いを狙うしかない

理屈は分かるけど・・・・

「こんな打ち方しか、咲はできないって言うんですか?」

でも今日は、自分を捨ててまで違う打ち方をしようとしてた
点数を取られて悔しがってた

こんなか細い道を進むような、そんな麻雀だけしか打てないなんて、そんなことないのに・・・
741 :tell you that I love ...(8-5) [saga]:2012/11/15(木) 22:45:56.94 ID:bSatWB8W0
「少なくとも、私と打った段階では、ね」
「でも今日の咲は・・・」
「うん、きっと咲なりに考えて打ったんだと思うよ。私には、まだ分かってあげられないかもしれないけれど」

まっすぐ勝利に向かって進む麻雀じゃないかもしれない
でも、寄り道しながらでも、決して後ろに戻ることさえなければ・・・

ゆっくりと、照さんが立ち上がった
瞬間、体が私の方へ傾いてくる

「照さん!」
「ごめん、立ちくらみ・・・」

私は慌てて照さんの体を抱きかかえた
なんとか床に倒れてしまうのは防げたようだ

「教室戻ろか、照?」

清水谷さんも立ち上がる

「お疲れさまでした」

上重さんも立ち上がって一礼すると、対局室を出ていく

「ありがと、大丈夫」

照さんは卓に手をついて、私から離れた

「ほんとに大丈夫ですか?」
「ちょっと無理しすぎたかな・・・。1日に2連続で鏡を使ったことも、同じ人に2回使ったこともなかったから」
「もう、照のクラス、みんな体張りすぎやで」
「・・・返す言葉がないな」

ああ確かに・・・

穏乃と対局した臼沢さんも、玄のドラを塞いで体力使い果たしてたし
和と対局した園城寺さんも途中で倒れてしまったし・・・

ふと、清水谷さんと目があった

「新子さん、照のことは任せといてくれてええから、教室に戻ってええで」
「分かりました。今日はありがとうございました」

私自身はかなり失点してしまったけど、それでも清水谷さんがアシストしてくれてなかったらもっとひどいことになっていたのは間違いない

「こちらこそ助かったで。新子さんが縮こまってたら、照の親も流すの大変やったろうからな」

必死に鳴いていったのは無駄じゃなかった
うん、やれるだけのことはやれたと思う

最終的にはラスになってしまったけど、トップとの点差は4400点
あとは、淡がきっと勝ってくれる

「照さん、清水谷さん、ありがとうございました」

さあ帰ろう
みんなが待つ教室へ

そして淡の背中を引っぱたいて送り出してあげるんだ、この対局室へ
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage saga]:2012/11/15(木) 23:00:57.24 ID:bSatWB8W0
そして大将戦へ突入します。次回から(8-6)
しかしこの章をつけている意味あるのだろうかとか思いながら・・・

次回は大将戦直前までか、まだネタを練れてませんが「また4人で」シリーズの続きかのどちらかになると思います


>>736
コピーモードは宥で始まって咲で終わろうと、割と早い段階で考えてました
途中が途中だけに・・・
反転しても使える能力ってあんまりなくて困りました、ほんとに・・・
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/11/16(金) 03:01:40.78 ID:fhTCO9qQo
追い付いた!
憧咲良いな… 淡咲好きとしては少し複雑だけど
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 15:11:49.78 ID:/13aOw4xo
渋谷さんを反転させると熟すまえに収穫始めることになるん?
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 19:29:41.89 ID:x+IJbWYgo
一巡目に捨てた牌がオーラスで絶対に来ない能力
“雑草刈りの時”が発動する
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/16(金) 21:21:48.28 ID:9dNkIm55o
>>745
タンヤオとか絶一門状態なら狙えそう
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/19(月) 19:59:14.85 ID:nOgKDthJ0
1です

“雑草刈りの時”、これは淡の必殺技にするしかない!
いま大将戦のプロット書いてるので(見せ場は考えてあっても細かい点数計算してなかったので・・・・)、今週はあんまり更新できないと思います

>>743
そういう時はリクエストすると叶うかもしれませんよ?

穏乃→咲=淡←和 憧「この四角関係、アリよねっ」
に書き換わっているかもしれません・・・なんだこのカオス・・・
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 00:52:13.12 ID:z7VvFZ/IO
ここから濃厚な淡咲は無いよな…自分で書けって話か
精神面で支えるのは憧だけど麻雀は淡が鍛えるみたいな
我ながらどんだけ淡咲見たいんだよとは思う

749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 18:55:20.04 ID:UeEZf1nQ0
憧咲がすばらなので淡は最新号で再度登場した辻垣内さんにみっちり教育してもらおう
750 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/20(火) 23:44:02.46 ID:PeRsxs880
-side 晴絵-

嶺上開花、か
咲の得意な役・・・反対のコピーだけじゃなく、普通のコピーも使えるということなのかな

「思ったより全然点数残ってるよ、余裕だねー」

試合結果が出て、淡が背伸びする
最下位ではあるけれど、トップまでは4400点差。あってないような差だ

「最後、やっぱり私ですよね、コピー」
「多分ね。ま、戻ってきたら憧に聞いてみな」

複雑な表情をしている咲
お姉ちゃんに打ち方を好まれてないと思ってるんだから、コピーされてどういう風に捉えていいのか戸惑っているんだろう

それにしても、思った以上に接戦だな・・・・

咏が校長先生からの特命で宮永照のクラスを支援していることは知っている
けれど、私は自分のクラスを優先しろと、咏自身からそう言われた



「できることがあれば、なんでも言ってくれていいのに。校長先生には恩があるし」
「いいっていいって、晴絵ちゃんは自分のクラスがあるっしょ」
「でも・・・」
「宮永照を勝たせろって言ったって、結局できるのは露払いだけさね。それに、実力で他のクラスに負けるんなら、それはそれでしょうがない」

一度生徒が卓についてしまえば、教師には何もできない
ただベストの状態で、卓につかせてやるのが使命

「・・・・なら、いつも通りにさせてもらうよ」
「それに宮永照にとっては、晴絵ちゃんのクラスが勝ち上がってくれる方がやる気も出そうだしねぃ」
「宮永咲のこと?」
「そういうこと、姉妹対決なんてのも熱そうだろ?」
「あえて組ませたりはしないけどね。私はいつもオーダーは生徒の好きにさせてるから」
「私も、今回は宮永照に任せるさ」

手伝いを拒むのは、何かあっても自分だけの責任にするつもりなんだろう
まったく、あの人みたいなこと、してくれなくていいのに・・・



そうして好きにさせたオーダー
私が組むとしたらと考えたオーダーとほぼ同じだった

違うのは、次鋒・新子憧、副将・高鴨穏乃というくらい

そして私がオーダーを組んでいたら、おそらくもっと失点は増えていただろう
弘世と憧では、憧が弘世をかわそうといろいろ考えすぎてあまり稼げなかっただろうし
宮永照と穏乃では、まっすぐ行き過ぎて清水谷との連携が上手くいかなかったんじゃないだろうかと思う

なんにせよ、この程度の点差で大将に回せたんだ
十分に勝機はある

しかし、去年の教え子の天江衣が今回は敵に回るとか、なかなか複雑なもんだな・・・

「ただいまー」

憧が戻ってきた
真っ先にしずが駆け寄った

「ラス転落しちゃったよ、ごめんね」
「そんなことない、全然放されてないし、大丈夫だよ!」
「ありがとね、しず」

ほほえんで、憧は淡の元へ歩いていく

「やるだけはやった。後は頼んだ!」

そう言って、手を高く上げる
座っていた淡はぴょんと立ち上がり、ハイタッチした
乾いた、景気のいい音が教室に響く

「もっと点差開いてても良かったのに、私の見せ場がなくなっちゃうじゃん」
「戻ってきて泣き言言わないでよ」
「テルのいない大将戦で、私が負けるわけないでしょ?」

過剰なほどの自信の笑みを浮かべる淡
足元を掬われないといいけど、言っても火に油を注ぐだけか・・・
751 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/20(火) 23:46:04.59 ID:PeRsxs880
淡が扉の前まで進むと、声をかけたのは和だった

「淡さん」
「なにー、ノドカ?」
「あとは、よろしくお願いします」

淡は、少しだけポカーンとした表情を浮かべた

「・・・てっきり、油断するなとかそういうお小言が来るのかと思ってたよ?」
「言っても、無駄でしょう?」
「あはっ、わかってきたじゃん」
「まあ、負けでもしたらあなたのオカルトを徹底的にデジタルに矯正してあげますから、そのつもりで」
「じゃあ私が勝ったら、ノドカもオカルト入門だ」

視線が交差し、一気に笑い声が響く
一番大げさに笑っているのは、しずだった

「淡のデジタルとか和のオカルトとか想像できないよ」
「しず、くくくっ、受けすぎ」
「憧ちゃんも十分受けてると思う・・・」

小さく笑う咲
そんな咲が、淡と向き合った

「淡ちゃん」
「なに、サキ」
「ごめんね、すっごく今更だと思うけど・・・・」

ひと呼吸置いて、咲が恥ずかしそうに言った

「私、このクラスで勝ちたいな」

静寂が訪れ、淡はため息を漏らした

「・・・ほんとに今更だよね、サキ」
「逆に咲さんは、今までどう思っていたんですか?」

和も呆れたように尋ねる

「えと、±0にしてればみんな褒めてくれてたから、それでいいのかなって」
「無欲というかなんというか・・・」

憧も流石に呆れ顔だった

それでも、咲はこの対抗戦で得るものがあったってことだ
それだけで十分だと思ってしまうのは、すっかり私も教師が板についてきたのかな・・・

「さあ、そろそろ出番だよ、淡!」

緩んだ空気を引き締めるのも、教師の役目というものだろう

「行って、勝ってこい。祝勝会の場所はもう押さえてあるんだからね」
「ふふ、二次会まで押さえておかないとダメだよ」
「圧勝してきたら考えてやるよ」
「お財布、カラになっても知らないからね」
752 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/20(火) 23:47:44.36 ID:PeRsxs880
-side 照-

「ただいま」
「戻ったでー」

竜華とともに、3−1の教室に戻ってきた

「照ちゃん、お疲れさま」

宥をはじめとして、みんなが労いの言葉をかけてくれる
私は、豊音のところへ向かった

「ごめんね、あんまり稼げなくて」
「全然大丈夫だよっ。あとは最終兵器の私に任せて!」

立ち上がり、ぐっと握りこぶしを作る豊音
その表情はやる気に満ちていた

「やっと全力で戦えるんだもん、ちょー楽しみだよー」
「トヨネ、ファイト」
「・・・・がんばって」
「シロの応援なんてかなり貴重だよ、無駄にしたらダメだからね」
「あははっ、とにかく頑張ってきて、豊音」

美術部のみんなが声援を送る
まだ出会って間もないだろうに、それでも結束はかたいみたい

ふと視線を移すと、竜華は怜のところに向かっていた

「どやった、怜。約束は守ったで!」
「正直、あそこまでやるとは思っとらんかったわ・・・。どないしよ」
「なんでそこで悩むねんなー!」

調子が戻ってきたのか、椅子に座っている怜の表情は、わざととわかるような困り顔だった
いったい、なんの約束をしたんだろう?

「なー、怜。さっきの点数なんやったん、そろそろ教えてやー」

そこに江口さんが乱入する
怜はぷいっと顔を背ける

「秘密やってゆうとるやん」
「なあ怜ー、照相手にプラスで帰ってきたら怜のこと好きにしてええって言っとったやん。反故になんてせんといてぇ」

秘密だと言っている先から、竜華が涙目で怜に迫っていた
顔を真っ赤にする怜は、なかなかに可愛かった

「竜華、なんでこんなとこでバラすねん! 最低や」
「だって無しにしようとしとったやん!」
「ボケも通じへんの!」
「今はそんなボケ必要ない!」
「ボケがなかったら大阪人生きられへんのやで!」
「そんなことない、怜さえいれば私は生きていける!」
「・・・・照れるやん」

怜の負けのようだった・・・
江口さんも流石に口を挟むタイミングを測りかねていたようだったけど、ようやく口を開いた

「そっか、さっきの点数はプラスまでの点数か。ところで、挙式の予定はいつごろなん?」
「飛躍しすぎや!」
「すまんな、ボケがないと生きられへんねん。それとも、俺も怜を糧に生きたらええんか?」
「ボケで生きてください、お願いします」

きっちりと90度に腰を曲げて頭を下げる竜華
それをみて、また江口さんはケラケラ笑った

「まあ、あの極悪非道冷酷無比の冷血チャンピオン宮永照にプラスで帰ってきたんやから、上出来やろ。それでこそ俺らの部長やで」

いまさりげに酷いこと言われたような気がするけど、多分ボケだろう
うん、ボケだから、気にしちゃいけない・・・・

「照、そこはツッコミ入れなあかんとこやでー」
「まったくや、なっとらんな」

なぜか怜と竜華にダメ出しされる・・・
え、なんでそんな流れなの??
753 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/20(火) 23:49:22.58 ID:PeRsxs880
「いや私、長野県民だし・・・」
「じゃあ長野県民は何が無いと生きられへんのや」

江口さんに質問されるけど、急にそんなこと言われても・・・
長野の名産品ってなんだっけ??

「えっと、蕎麦とか?」
「うわー、ベタ・・・」

そ、そんなこと言われても・・・・
あと、確か長野で生産量1位なのって

「じゃあ、胡桃とか?」
「胡桃、まさかのご指名だよー」

え、そういう意味じゃなくて・・・。木の実としての胡桃であって
でも、鹿倉さんが豊音たちに押し出されて私の前にやってくる

「まさか私がいないと生きられないだなんて、そんな展開考慮してなかった・・・」

え、ここにボケは入らないの??
なんでちょっと恥ずかしそうに俯いてるの?
っていうか何、この展開??

「急すぎて気持ちの整理ができてないけど、生きられないんじゃ仕方ないよね」
「いや、だから鹿倉さんのことじゃなくて・・・」
「さっきみたいに胡桃って呼んでよ!」

ええ、だから何この展開?
ボケなの、違うの??
鹿倉さんの表情ってほとんど変わらないから読み取れないんだよね・・・

私が戸惑っていると、不意に背後から抱きしめられた

「わ、私だって、照ちゃんがいないと生きられない」
「え、宥?」

耳に宥の吐息がかかって、少しだけぽっーとしてしまう

「照ちゃんは、本当は鹿倉さんが好きだったの?」
「ち、違う。私だって、宥がいないと生きられない!」

慌てて否定して、私は振り返えって宥を抱きしめていた

教室は静寂に包まれて
そして一気に歓声で爆発した

「まさかとは思っとったけど、照と宥姉ちゃんはそうやったんか!」
「全然ツッコミ来ないからどこまで演技したらいいのか分からなかったんだけど、まさかの展開っ」
「うわー、うわー、大人だよー!」

周囲の歓声で、一気に冷静さを取り戻す

・・・・今、みんなの前で抱き合ってるよね?
754 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/20(火) 23:50:27.57 ID:PeRsxs880
「宥、ちょっと・・・」

やんわり離そうとするけれど、宥はますます強く抱きついてきた

「やだ・・・・」
「でも、みんな見てるし・・・」
「やだ!」

語気を荒らげて、全然離れようとはしない宥

ああ、もうそんなに体を震わせないでよ・・・
すぐに強く否定しなかった私が悪かったから

もう、頼ってほしいんじゃなかったの?

私は宥の頭を優しく撫でた

「ごめんね」
「・・・・うん」

ああ、でも周りの視線が気になって仕方ない・・・

「胡桃の演技、良かったよ!」
「でしょー」
「コイビト、ステキ」
「・・・・・あつい」
「ラブラブだよー、いいなー」

なんでこんなことになってるんだろ

離れたいけど、離れたくない
そんなもやもやした気持ちで・・・

「宥じゃないと、私ダメだから・・・」
「うん・・・・」
「さっきの鏡で疲れたから・・・また、膝枕して」
「うん・・・・」

ようやく、宥が腕を下ろした
ああ、でもなんだかんだで離れてしまうと熱が消えていって寂しくなってしまう・・・

もう、ほんとに、宥じゃないとダメになっちゃったよ



「なあ、末原・・・・」
「なんや、弘世?」
「これから、大将戦だよな、確か?」
「・・・・まあ、ギスギスしとるよりはええんちゃう?」
「ラブラブで羨ましいのよー」

遠くで、そんな会話が聞こえた
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/20(火) 23:55:46.25 ID:PeRsxs880
シルシルミシルで、長野県でクルミが生産高1位と聞いて

大将戦プロローグの半分終了
あとは2−10と霞さんを書いて、大将戦突入です

>>748
流石に本編の流れはもう憧咲でいいや、ってなってますけど
番外なら基本なんでもアリだと思ってますよ、ええ
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 00:59:28.77 ID:aUeIA6ZU0
乙ー
オチで菫恭が始まるのかと思った俺はもうダメかもしれんね
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2012/11/21(水) 12:38:18.37 ID:71A6MJJAO
菫恭、そういうのもあるのか
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 12:41:36.21 ID:xRAmv3+IO
凡人かつ苦労人枠

共感できることは多いだろうな
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/21(水) 15:30:17.21 ID:2xwz6xaAO
乙です

宥姉ちゃんいいっすね…
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/21(水) 20:02:49.61 ID:6MD7rOor0
1だけどー
菫恭とか、そんなん考慮しとらんよ・・・

本人の意図してないところに反応がある不思議
思えば憧咲もそんな感じで始まったしなぁ・・・・これは書けということか?
まあ、ストックはしておきましょう。ふとひらめくかもしれないし
761 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/24(土) 07:22:06.79 ID:f93sGyvD0
-side 巴-

霞ちゃんの着替えも終わり、お茶を入れて霞ちゃんの前に置いた

「いいんですか、クラスにいなくて?」
「・・・・・いいのよ。それよりごめんなさいね、生徒会の方もあるのに」

一瞬の沈黙
なんとなくは聞いていたけれど、やっぱり3年2組の空気は良くはないのだろう

「いえ、生徒会の方は午前中の当番で済ましてきたから大丈夫ですよ」

あらかじめ着替えの手伝いはお願いされていたし、仮に決勝まで来た場合は私は副将だったのでもともと午後はあけていた

今頃はその副将戦が行われてる頃だろう
仮に私たちのクラスが勝ち上がったとしても、あの宮永照と当たってまともにやりあえるとは思えなかった

昨日の副将戦。初美ちゃんと、姫様のクラスの愛宕さん、そして消えるという1年生
仮にその1年の代わりに私が入っていても、結果はさして変わっていなかっただろう

そう考えると、姫様のクラスが残れたのもギリギリのところだった

マナーモードにしておいた携帯が震える
春からのメール
部室には流石にモニターがないので、試合の経過は誰かに伝えてもらうしかなかった

『南2局、宮永照が緑一色和了』

点数経過は書かれていないものの、少なくともそれが異常なことだけは分かった
先ほど、南1局の親が流れたというメールが来たばかりだったから

霞ちゃんにもメールの内容を伝えると、小さく首をかしげた

「連続和了以外にも何か奥の手があるのかしらね?」
「かも、しれませんね・・・・」

この文面だけでは、それが何なのかまでは分からないけれど

「奥の手、か・・・」

その呟きは暗かった
あまり乗り気ではないのだろうか

「姫様をお連れしたのですよー」
「お待たせしました」

扉が開き、初美ちゃんと姫様が部室に入ってきた

「ごめんなさいね、小蒔ちゃん。わざわざ呼んじゃって」
「いえ、大丈夫ですよ」

霞ちゃんが浮かべた微笑みは、今さっき暗い呟きを発していたとは思えない
まったく、姫様の前ではしゃんとするんだから・・・

「それでお話というのは、恐ろしいもののことですか?」
「ええ、そうよ」

霞ちゃんが座る円卓の正面に姫様が座る
その間に初美ちゃんも座り、私はお茶を用意するために窓際の給湯スペースに向かう
スペースと言っても、机の上に小さな棚があって湯呑やお茶葉、ポットなどが置いてあるだけだけど

手早く用意すると、姫様と初美ちゃんの分を汲んで円卓に戻った

「どうぞ」
「ありごとうございます」
「ありがとうなのですよー」

ふーふーと冷ましながら、一口お茶を飲む姫様

「美味しいです、ありがとうございます」
「いえいえ」

そうして私も初美ちゃんの正面、霞ちゃんが左、姫様が右になる位置に座った
762 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/24(土) 07:24:40.53 ID:f93sGyvD0
霞ちゃんは姫様がお茶を飲み終わるのを待つと、真剣な表情を浮かべた

「正直、小蒔ちゃんのクラスも出ているのに許可を求めるのもどうかとは思うのだけどね」
「いえ、霞ちゃんが本気を出した方が衣ちゃんも喜ぶと思いますよ」

姫様のクラス、2−10の大将は天江衣
学年ランクは、荒川憩に次ぐ2位。姫様は起きたり寝たりの差が激しいので3位になっているけれど

霞ちゃんはひとつ咳払いをした

「改めて。姫様、本日の対局でおそろしいものを降ろす許可をいただけますでしょうか?」
「はい、許可します」
「・・・ありがとうね」

半ば形式的なものだ
姫様が許可しなかったことなどないし、そもそも許可がなくても霞ちゃんがその気になれば自分の意志で恐ろしいものを降ろすことはできる。もっとも、霞ちゃんも無断で使うことはないけれど

また携帯が震える
春からのメール

『オーラス、宮永照がヘン……裏初美』

・・・・ふむ、意味が分からない

メールの内容をみんなに伝えると、初美ちゃんが春に電話をかけるようだ

「もしもし、はるる? 裏初美ってなんなのですかー」

それから2、3会話を交わし、電話を切る

南家に座った宮永照が、南と西を鳴いたら東と北が集まってきた。ということらしい。
確かに裏初美と表現できる・・・

「偶然、なんでしょうか?」
「直接見てないから分からないけれど、南2局で緑一色を上がったみたいだし、何かそういう打ち方なのかもしれないわね」
「ほんとに化物なのですよー、昨日のも正直トラウマになりそうなのですよー」

昨日直接対戦した初美ちゃんが一番その恐ろしさを分かっているのだろう
それに加えてさらに奥の手があるとなれば・・・

「まあ、ここで考えていてもしょうがないわ」
「じゃあ私と姫様は、はるるに会ってくるのですよー」
「そのあと、私は教室に戻りますね」

姫様もただ許可を求められただけで、教室で応援したいと思っているんだろう
同じく決勝に残っている霞ちゃんが部室を選んだのとは対照的に・・・

・・・・本当に、どうしてこうなってしまったんだろうか

「霞ちゃん」

出ていく姫様と初美ちゃんを見送る霞ちゃんに声をかける

「何かしら?」
「良かったんですか?」

私の意図を分かった上でだろう、鋭い視線が突き刺さる

・・・・やっぱり、そうなんだろうか
霞ちゃんの気持ちはすでに、固まってしまっているんだろうか

「・・・・その、許可を得るのが、恐ろしいものだけで」
「そこから先に踏み込むつもりはないし、踏み込んではいけないわ」

私の言葉を断ち切るように、静かに、それでいて強く言い切る

「ええ、そうですね・・・・」

霞ちゃん・・・

もう自分のクラスのために戦うつもりなんてなくて
姫様のいる、2−10のアシストに回るつもりなんだろう

「・・・お茶、入れますね」

それを責めるつもりはない
ただ願わくば、その気持ちが誰にも気づかれないように・・・
そして打っている途中でもいいから、その気持ちが少しでも変わるように・・・

私には、ただ見守ることしかできないけれど
763 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/24(土) 07:31:32.70 ID:f93sGyvD0
-side 玄-

副将戦も後半の南入してくらいになって、小蒔ちゃんも教室に戻ってきた

「ごめんなさい、ちゃんと応援できなくて」
「ええよ、部活の先輩に呼ばれとったんよね?」

憩ちゃんが微笑む
くるくると水性ペンを回していたが、もうその出番はなさそうだった

宣言通りの倍満直撃もあったし、それに最終的には3着になっちゃったけど、トップとの差は1500点しかない
衣ちゃんなら全然問題ない

それでも小蒔ちゃんは、副将戦の結果を見ると中堅戦が終わって帰ってきたときと同じように頭を下げた

「ごめんなさい、私が後半あんなに振り込んだりしなかったらもうちょっと点差もあったのに」
「心配するな小蒔。むしろ最高の場面で衣に回ってくることに感謝しているくらいだ」

腕組みをする衣ちゃんはニヤリと笑う

「それとも、点差がないと衣が勝てないとでも思っているのか?」
「そ、そんなことないです!」

ぶんぶんと大きく首を振る小蒔ちゃん

「衣ちゃんなら、どんなに離れてても逆転してくれます」
「そうだろう。それにようやく宴に参加できるのに、勝っている状態でバトンをもらっても興が醒める」

今日まで、衣ちゃんが打つ場面は無かった

初日、2日目は楽勝ペースだった
憩ちゃんが荒稼ぎして、私もつないで、小蒔ちゃんに回る頃にはどこか飛びそうになってて、それを小蒔ちゃんが確実に飛ばしてきた

でも3日目は違った
流石に準決勝までくるとレベルが違う・・・
中堅までは1位のままで来たけれど、副将戦で全部ひっくり返された

やっぱり宮永さんを止めるのは容易ではない

けど今日は、それなりに止められた方なんじゃないだろうか

――うらやましいな

今日の漫ちゃんを見てて、そう思った

冬の個人戦を思い出す
私は最後の最後になるまで何もできなかった
煌ちゃんが必死に鳴いて、それを怜さんがフォローしているのを、ただ私は見ているだけだった

ようやくドラを切る決心ができたけど、今でもドラを切ることはほとんどない

でも、今日の漫ちゃんにはドラがどんどん集まってきてたし、それはドラを切っても変わらなかった
あのくらい積極的に動けるようになれれば、私はもう少し強くなれるんだろうか

それに今日の次鋒戦で、ドラを切ってないのに他の人にドラをツモられた・・・
あんなことは初めてだった

ドラを大切にってお母さんに言われて、ずっとそうしてきたけれど・・・
ドラを大切にするだけじゃなくて、その先にもっと重要なことがあるんじゃないかって

具体的にどうしたらいいかなんて分からないけれど、何か試してみなくちゃ
今よりもっと、強くなるために
764 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/24(土) 07:33:32.62 ID:f93sGyvD0
「ただいま」

そこに、漫ちゃんが戻ってきた

「おかえり漫ちゃん、頑張ったなぁ」

キュポン

憩ちゃんがねぎらいの言葉をかけると同時に、なぜか水性ペンのキャップを取った
あれ、焼き鳥じゃないはずだけど・・・・

「憩ちゃん、なんでペン持っとるん?」
「え? 頑張ったご褒美にと思うてね」
「そんなご褒美いらんわ!」

ジリジリと間合いを詰めていく憩ちゃん
机を間に挟むようにして横へ動く漫ちゃん
さらに衣ちゃんが動いた

「おお、鬼ごっこか? 漫を捕まえたらいいんだな?」
「鬼ごっこちゃうし。むしろ憩ちゃん止めてや!」
「ふっふっふー、逃げられへんよぉ」

漫ちゃんはいつの間にか、憩ちゃんと衣ちゃんに囲まれていた
天使のような微笑みで、憩ちゃんがどんどん漫ちゃんに近づいていく

「小蒔ちゃんが1位でつないだクラスの点棒を、最終的には3位にしてもうて・・・。これは懲罰動議もんやで」
「いやいやいや、憩ちゃん1位キープとか考えんでええとか言うてたやん!」
「・・・・はて?」
「はて?、やないわ!」
「隙アリだ!」

憩ちゃんが小首を傾げているあいだに、衣ちゃんが漫ちゃんを捕まえた

「よし、ナイスや衣ちゃん!」
「しもうたっ」
「無事捕縛。降伏しろ、漫」
「いややー、いややー」

ジタバタと暴れるけど、すぐに憩ちゃんも空いている左手で漫ちゃんをつかんだ

「なんて書いてほしい?」
「ちょ、小蒔ちゃん、玄ちゃん、見とらんと助けてや」
「あわわ」
「皆さん、楽しそうですね」
「楽しくなんてあらへん、誰か助けて!!」




-side 豊音-

色紙もあるし、ペンもある
楽しみだなー

ちょっとは緊張もするけれど、でもでもこれから戦うのは全力出しても勝てないかもしれない相手
今日まで全力は出すなって照から言われてたけど、やっと全力出して戦えるよー

「準備万端、行ってくるよー」
「トヨネ、ファイト」
「・・・・・頑張れ」

みんなが応援してくれる
みんながここまで繋いでくれた

いろいろあったけど
それも今日の、この対局で終わり・・・

だから、せめて悔いのないように

「勝つからね」

ただ勝利を目指して、突き進もう
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/24(土) 07:45:52.02 ID:f93sGyvD0
本日は阿知賀編4巻とビッグガンガンの発売日ですね
咲日和はついにあの高校が初登場らしいので楽しみです

週末は書けても対局室に4人が集まっての、対局直前までかな

菫恭は、部長会議になぜかいつも出席してくる恭子って感じなら接点持たせられるかなとか思った
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 14:35:08.63 ID:vrhwDpWm0
乙!
2−10のムードも良い感じで嬉しい!そして巴ェ……
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/24(土) 16:41:14.93 ID:8bKAVqS0o

4巻のカバー裏ェ…
768 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/25(日) 10:54:15.03 ID:OcTBPknG0
-side 智葉-

「ふう、ようやく副将戦も終わりか」

放送室の前で肩をくるくると回している久を見かけて、私は声をかけた

「お疲れのようだな、久」
「ああ、智葉。流石の私も、あの2人の先生の無茶振りを受けるのは疲れるわ」
「ふふ、たまには無茶振りされる身にもなれってことだ」
「あら、そんなに私って無茶振りしてたかしら?」

まったく、自覚がないのかただとぼけているだけなのか・・・・
まあ、とりあえず用件を済ますか

「大将戦のゲストは私が引き受けるよ」
「え、いいの?」
「というより、いい加減お前をゲストに取られていると、このあとの表彰式とか片付けとかに支障が出る」
「それもそうね。助かるわ」

久が軽く手を上げる
私もその手を軽く叩くと、放送室の扉を開けた

「失礼します」
「お、智葉っち、どうしたの?」

中にいたのは福与先生と、

「もしかしてゲストとして来てくれたのかな☆」
「ええ、会長はこのあと表彰式などの準備もありますから」

瑞原先生。あとは放送に関わっている生徒が数名

「おお、そういうことか。ノリで呼んじゃったけど、悪かったね」
「そうですね、事前にご連絡いただければシフトを組みましたけど」
「昨日まで試合してたし、事前は無理っしょ?」

それはそうだが、昨日の夕方にでも言ってくれれば予定の調整はできたが・・・
言ってはなんだが、福与先生に計画性を求めても無駄か

そろそろ大将戦直前の総括を始めるということなので、席に着いた

「さあいよいよクラス対抗戦も大将戦を残すのみ! 会長に代わって、ゲストには生徒会会計の辻垣内智葉さんが来てくれた!」
「よろしくお願いします」
「ここまでの戦い、智葉っちはどうだった?」
「正直、意外の一言ですね」
「ほうほう、具体的には?」

分かっていたけれど、ずいぶんと雑な実況だな
まあ本職でなく好きでやってもらっているのだから、そんなものかもしれないが

「なんだかんだで、副将戦が終わった段階では3−1がリードしていると思っていました」
「それでもチャンピオンは52000点稼いでるけどね☆」
「不用意な振込が何度かありました、それがなければもっと上積みできていたはずです」
「確かに途中で打ち筋変わってたよね。会長とも何だろうって話してたけど、智葉っちは知ってる?」
「いえ、私も分かりません」

あれこれ予想はできなくもないが、ここでそれを披露しても仕方ない

「そっかー。さてさて、じゃあこの大接戦から、どのクラスが抜け出すと思うか、はやりんも含めて改めて予想してもらえるかな!」

優勝予想か・・・
点数差はほとんど無いに等しい
なので単純に4人の実力の比較になるが

瑞原先生が小さくウインクして、先に話を始めた
先生が話しているうちに考えておけということだろう

「はやり的には、やっぱり2−10かな☆ 3−1の姉帯さんと1−5の大星さんはまだ本気出してないから実力がどこまでか分からないけれど、やっぱり衣ちゃんの破壊力は頭一つ抜けてると思うな☆」
「なるほど、無難な予想だね。3−2はどう?」
「石戸さんはリードを守るのは長けてるけど、この位の接戦になるとちょっと厳しいかな☆」
「じゃあ次、智葉っちの予想行ってみよー」

順番が回ってくる
まあ、概ね瑞原先生の言った通りなのだが・・・
769 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/25(日) 10:55:49.14 ID:OcTBPknG0
「まず3年の優勝はないと見ています」
「そうなの?」
「石戸の攻撃力には不安が残るのは瑞原先生の指摘通り。そして姉帯は私もよくは知りませんが、3−1のオーダーの組み方を見れば、おそらく姉帯は特殊な打ち手でしょう」
「え、そこまでわかるの?」

あくまで予想だが、そこまで外れてはいないだろうと思う

「特殊な打ち手には2種類。分かっていれば対応できるか、分かっていても対応できないか。姉帯が前者だからこそ、宮永は自分で極力稼いで姉帯の打ち筋を隠してきたと見ます」

そう、天江衣のような分かっていても簡単に対応できない相手なら宮永先鋒で良かったはずだ
だが宮永はあえて比較的層の薄い副将に座った。そこで稼ぐしかなかった、そういうことだと思っている

「分かれば対応できる程度であれば、残りの面子ならその場でもある程度対応可能でしょう。天江を差し置いて勝つには、弱いのではないかと見ます」
「なるほどー。はやりんにはこの重厚な解説は無理だわー」
「はやりだってそのくらいやろうと思えばできるけどね☆」
「はいはい。それで、2−10と1ー5なら、どっちが勝つと思うのかな?」

昨日の準決勝で戦ったという贔屓目はあるかもしれないが、それでも

「・・・・・おそらく、1−5」
「おお、その心は!」
「ここからは単純に、期待込みです。昨日直接戦って、これからさらに伸びる1年だというのは感じました」

昨日の先鋒戦
福路にある程度抑え込まれるだろうことは覚悟していたが、さらに場のコントロールに宮永咲が加わり、私も小走もまったく思うような麻雀をさせてもらえなかった

その後も1ー5は自分たち以外は全員3年生という卓でも誰も臆することなく、3−18、久たちのクラスを振り切った
赤土先生のクラスは、何かを起こしてくる・・・

「それに、姉の連覇を阻止するのが妹というのも、なかなか見られるものではないですからね」
「おお、それは確かに。なら1−5を応援するしかない!」
「実況はあくまで公平にね☆」

目の前のモニターには、次々と対局室に入ってくる様子が映し出されていた
いよいよ始まる・・・・
770 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/25(日) 10:57:57.04 ID:OcTBPknG0
-side 煌-

とうとう大将戦
長かったクラス対抗戦も、今日で終わり

「一番乗りかなー」

まず最初に入ってきたのは、3−1の姉帯さん
なぜか手には色紙を持っていた・・・・一応チェックしておいた方がいいのだろうか

「なになに、色紙ー? もしかしてこの私のサインがほしいの?」
「あ、大星さんだ」

あとから入ってきてのは1年の大星さんだった
姉帯さんは満面の笑みを浮かべて、色紙を上からにゅっと大星さんに差し出した

「うん、記念に是非と思ってね」
「そういうことならお安い御用。この私のサインはとっても貴重だから大事にしてよね」
「もちろんだよー」

手馴れた手つきでぐにゃっとしたサインを書く
あれは絶対に授業中とかに自分のサインを考えて悦に入ってるタイプですね
ですがその堂々たる書きっぷりは、すばらです

「名前は入れたほうがいいの?」
「うん、豊かな音って書いて、豊音ちゃんへって」
「りょーかい。とよ、ね、ちゃんへ、と。はい、できた!」
「わーい、ありがとう!」

大喜びしている姉帯さん
まあただの色紙のようですし、あえて目くじら立てるのもすばらくないですね・・・

「あら、色紙?」

次に入ってきたのは石戸さんだった

「あ、石戸さんだ、サインください!」
「えー、私だけじゃないの?」
「あらあら」

自分だけがサインを求められていると思ったのか、すねてしまう大星さん
サイン色紙を受け取るものの、そうそう自分のサインを求められる機会がないであろう石戸さんはやや戸惑っているようだった

「サインなんてしたことないんだけど・・・・」
「普通に名前書いて、あとは豊音ちゃんへって書いてください!」

慣れていないと言いつつ、綺麗な文字でスラスラと書いていく

「こんな感じでいいのかしら?」
「うん、ちょーうれしいよー」
「そんな普通なサインよりも、私の方が絶対価値があるからね!」

なぜか意地を張る大星さん
771 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/25(日) 10:59:24.67 ID:OcTBPknG0
そこに最後の対局者である、衣ちゃんが入ってきた

「む、なにやら物情騒然としているな」
「あ、天江さんだー。サインください!」
「サイン?」
「ちょっと、あなた誰でもいいの!」

また食ってかかる大星さん
なかなかプライドの高い方なのでしょうか

「ふふ、衣のサインを懇望するとは、ものの価値が分かっているようだな」
「むー、最初に求められたのは私なんだからね」

それにしても、衣ちゃんと姉帯さんの身長差がすごいですね・・・・

衣ちゃんは真ん中にでっかく「衣」と書く

「あ、この辺に、豊音ちゃんへって入れてください」
「豊音という名なのか、いい名だ。胸に留めておこう」
「わーい、ありがとう!」

こうして3枚の色紙をもらった姉帯さんは、私のところに向かってきた
うーむ、改めて近寄られるとかなり大きいですね

「これ、預かっててもらっていいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」

色紙を受け取り、机の中にしまっておく

「それでは、牌を引いて、場決めをお願いします」




大将戦開始

東 天江衣(2−10) 100300
南 石戸霞(3−2)  101800
西 大星淡(1−5)   97400
北 姉帯豊音(3−1) 100500
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/25(日) 11:10:44.04 ID:OcTBPknG0
というわけで、ようやく大将戦開始です
が、まだ前半戦しかプロットが出来ていないという・・・
次の更新がちょっと間があくかもしれません

4巻のカバー裏もなかなかになかなかでしたが、咲日和の亦野さんの紹介が雑すぎて笑った
773 : ◆.7FhrQ4rjk [sage]:2012/11/25(日) 12:33:52.60 ID:2ioGAuJDO

774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 22:47:35.52 ID:8i1pkRiZ0
乙乙
確かにこの面子で姉帯さんでは力不足な感じが否めないからどう展開していくのか楽しみ
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/25(日) 23:08:17.24 ID:VcRdbfKko
と、豊音にはまだ未登場の力がたくさんあるから(震え声)
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 14:55:48.12 ID:5r4I3yWHo
衣に追っかけリーチは出きないのか

777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/11/26(月) 22:13:44.05 ID:YEYwvgeAO
>>776
追っかけても掴む牌は当たり牌だから……(震え声)
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/26(月) 22:22:21.25 ID:f9lxjWjz0
1ですよー
このスレにおける姉帯さんの評価ェ

>>777
777レス目おめでとうございます!
タイムサービス、本日中にリクエストいただければ、よほどの無茶振りでない限り叶います
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/26(月) 22:36:47.21 ID:3BpBluK/o
無茶ぶりするなよ!
絶対無茶ぶりするなよ!
780 :tell you that I love ...(intermissionExtra-5) [saga]:2012/11/26(月) 23:28:15.19 ID:f9lxjWjz0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)

上げないと、タイムサービスに気づいてもらえないと思って即興で菫恭


-1年前、10月
-部長会議

久「じゃあ、部長会議始めるわよー」

菫「・・・なあ、末原?」

恭子「ん?」

菫「サッカー部の部長は愛宕じゃないのか?」

恭子「洋榎はこういうところでじっとできんからな」

菫「・・・分からなくもないが、そういう問題か?」

恭子「そういう問題なんや。部長にもいろんなタイプがおる。お前や、たとえば茶道部の古塚とか真面目に部長やるやつもおるし・・・」

恭子「そこの竹井とか、ムードでまとめてく部長もおる。洋榎はそういうタイプや。だったら実務は私がやったらええ」

菫「・・・・まったく、愛宕が羨ましいよ」

恭子「洋榎は洋榎なりに部をまとめとる、苦労してないなんてことはないで!」

菫「そう熱くなるな。愛宕を貶している訳じゃない。文字通り、羨ましいんだよ」

恭子「どういうこっちゃ?」

菫「お前のような、優秀な右腕がいるからだよ」

恭子「な、なんで突然私を褒める流れになっとるねん」///

菫「本心なんだがな。うちの部には愛宕みたいなムードメーカーも、お前のような優秀な参謀もいない」

恭子「宮永は・・・・って聞くのは無粋か・・・・」

菫「あいつは麻雀以外、部活には関わらないからな。結局私が全部やる羽目になる」

恭子「それはご苦労さまやな・・・・まあでも、顧問がそんな口出してこんからまだええやん」

菫「瑞原先生はアーチェリーできないからな。結局それはそれで全部私に一任されてしまうんだが・・・・」

恭子「いらんことばっかしてくる代行よりよほど楽やで、それは」

菫「・・・・噂には聞くが、それほどなのか?」

恭子「そうやで、差し入れにドリンク持ってきたと思ったら1つはとっても辛いで〜とか抜かしよって。しかも決まって私にそういうのを狙って渡してきよる」

菫「・・・・それはご苦労さまだな」

恭子「お互い、なんやかんやで苦労しとるみたいやな」

菫「まったく・・・・」

恭子「まあ、こうして話したのも何かの縁や、なんかあったら相談くらいには乗ったる」

菫「そうか・・・・。じゃあアーチェリー部に入ってくれ」

恭子「いきなり無茶な相談来たな・・・・」

菫「・・・ツッコミが入るんじゃないのか?」

恭子「無理してボケんでも」

菫「半分は、本心なんだがな」

恭子「そういうのは本心とは言わん。出直してき」

久「そこ、会議始めるわよ!」

菫「・・・・右腕は埋まっているだろうから。私の左腕になってくれ」

恭子「・・・・考えといたる」(了)

即興なのでこんなもんですかね・・・
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:31:50.57 ID:+YRwKkODO
>>777の方来なかったか。残念…
イッチ乙
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/11/27(火) 07:20:13.90 ID:GjtmSy7AO
>>778
そんなん考慮しとらんよ……
間に合うなら衣豊オナシャス!!
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 07:28:18.29 ID:46HWN7aHo
末原さんかわいい
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 07:52:10.38 ID:BxDornjIO
「衣が豊か」なひと…宥姉じゃね(適当)
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 16:52:23.54 ID:uV2IhRjw0
つまり、衣と豊音の衣が豊かな話を書くんですね。分かります
786 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/28(水) 23:23:50.54 ID:KUF+1ycV0
-side 豊音-

-大将戦前半戦 東1局
-親 天江衣


――豊音、最初っから全力でね

朝のミーティングでの、照からのアドバイス

曰く、天江さんと大星さんは最初の数局は様子を見てくるタイプ
石戸さんはどう出てくるか読みにくいけど、基本的には防御タイプなので序盤はそこまで気にしなくていい
とにかくスタートダッシュでできるだけ稼ぐこと

うん、頑張るよー

「リーチ」

先制をしたのは石戸さんだった

「んー、おっかけるけどー」

じゃあ、まずは先負からだねー

「通らばリーチ」
「あらあら」

宣言牌され通ればこっちのもの
石戸さんがツモ切り、それはもちろん私のロン牌

「ロン、リーチ一発裏1、5200」

点棒を受け取る
とりあえず1位になったけど、まだまだこれから

チラリと両隣に視線をうつす
大星さんも天江さんも、まだまだ余裕の表情

どの段階で牙を向いてくるのかなー
それまでに極力稼ぐよー
787 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/28(水) 23:24:55.93 ID:KUF+1ycV0
-side 照-

-東2局
-親 石戸霞


まずは先負、か

私が怜が寝ていたマットを借りて、宥に膝枕してもらいながら観戦していた
うーん、まさかこうやって堂々と膝枕してもらうとは思ってなかったけど

見上げると、宥も嬉しそうにしているから、いいか・・・
でもまだちょっと恥ずかしい。怜と竜華は、そのへんどうなんだろうか・・・

「辻垣内が言うとった通り、姉帯は特殊な打ち手なんか?」
「うん、あっさり見抜いてくるなんて、流石だね」

末原さんの問いに答えた
対局前の解説で、辻垣内さんが言っていたのは、概ねあってる

豊音の力は、一つ一つは打点の高いものでもないし、対応しようと思えばできる
だから極力隠したかったのは事実

「豊音は全力を出すだろうから全部使うと思うけど、彼女は六曜にちなんだ打ち筋を持っている」
「・・・・六種類もあるってことか、初見での対応は難しそうやな」
「でも、知っていれば対応できないことはないってのがほとんど。その点で、辻垣内さんの推測は正しいよ」

もちろん、先負を知られていれば相手からすればリーチがかけにくくなるから、知られることはデメリットだけではない
でも、知られないでいれば、リーチを追いかけて和了できるんだから、知られないに越したことはない

「その点いくとあの大星は、バカなのか、それとも真に魔物なんか・・・・」
『リーチ』

画面から淡の声がする

「・・・・まだ二向聴、ノーテンリーチだな」

菫も、少々戸惑いながら呟いた
淡の手牌が映し出されるが、まだテンパイじゃない

『おおっと、これはどういうことだー。大星淡、ノーテンリーチ!』
『これは、ちょっと分かんないですっ』

実況解説の方も戸惑っているようだった

「そういえば、菫は淡と打ったことある?」
「いや、まだだな。部活対抗戦に向けての調整は、クラス対抗戦が終わってからと思っていたから、まだ部内で打ったことはない」
「そっか・・・」
「そういうお前はどうなんだ?」
「中学のときに1回だけだし、その時はノーテンリーチするような感じじゃなかったけど・・・・」

3年前の打ち筋は、一応豊音には伝えてある
でも、3年も経てば打ち筋はまったくの別物になっていてもおかしくない

『おっかけるけどー』
『おっかけられるけどー』

「・・・・真にバカなんか?」
「残念ながらフォローの言葉は見つからない」

末原さんも菫も呆れ顔でモニターを見つめていた

『ロン、リーチ一発』
『アハ、ふーりこんだー』

・・・・淡、もしかしてもう先負に気づいたのかな?
確認するためにあえてノーテンリーチを・・・
そうでないとしても、これで追っかけ後の一発は警戒されるだろう

さすがに決勝の大将卓、一筋縄ではいかないか・・・
788 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/28(水) 23:25:56.50 ID:KUF+1ycV0
-side 淡-

-東3局
-親 大星淡
-ドラ 九

照が大将に据えたこのトヨネって人、なかなか面白そう
先にリーチした人を一撃で仕留めるとか、なかなかかっこいいじゃん

まあでも、最後に勝つのは私
今はせいぜいチマチマ稼いだらいいよ

さって私の親番だけど、ここはスルーかな
ハルエに圧勝してこいって言われたしね

淡手牌:二四六DEGG44東東北北 ツモ:中

まあ、東が出ればダブ東だけど、ドラも絡まないし・・・
様子見のままでいいよね

淡 打:中

「ポン」

鳴いたのはトヨネ
あれ、追っかけリーチするんだったら鳴いたらダメじゃん
それとも役牌だったからとりあえずこの局は追っかけ諦めた?

んー、でもさっきは白の対子を頭に使ってたしなぁ
順番が回ってきて、ツモは@ピン。とりあえずツモ切り

「チー」

またトヨネに鳴かれた
ふんふむ、これは私を警戒して、私の親を流そうってことかな

ふっふー、警戒されながらどーんと上がるのが快感なのよね
まあ、最初の親は様子見だから和了できなくてもいいけどさ

「ポン」
「チー」

あっという間に四副露で、裸単騎に・・・
っていうか4鳴きしないとテンパイできないとか、よほど手牌がズタボロだったのかな

それとも・・・

「ぼっちじゃないよー」

ふふ、そういうセリフ言っちゃうと、分かっちゃうよ

「お友達が来たよー。ツモ、中ドラ2。1300、2600」

なるほどねー
今度は裸単騎になったらツモできるとか、そんなとこかな

そういうのも面白いとは思うよ
でもさ、対面の魔物さんには、どう映ってるのかな?

もっと楽しませてあげないと、そろそろ動き出すと思うよー
あのちびっ子、さっきからチラチラこっちのこと見てるけどさ

手の内を晒すのは私の方が後
だって、真打は後から登場するもの。小物からどんどん手の内を明かしていけばいいんだよ

ねぇ、小さい魔物さん?
789 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/28(水) 23:26:42.69 ID:KUF+1ycV0
-side 豊音-

-東4局
-親 姉帯豊音

よーし、とりあえず3連続和了で自分の親番までつなげたよー
っていうか順調すぎて逆に怖いくらいだよー

そろそろ天江さんとか大星さんとか動き出してもおかしくないと思うんだけどなー
でもでも、動かないなら動かないうちにどんどん稼がないとね、私そんなに火力ないし

それにしても、みんなリーチしてくれなくなっちゃったなぁ・・・
だったら、どんどん新しいことをやるしかないよね

「リーチ」

いくよー、次は先勝だよっ



-side 衣-

・・・普通にリーチか、見世物はもう終わりか?

ここまで様子を見てきたが・・・

姉帯豊音。確かに面白いが、所詮子供のお遊戯に過ぎない
それよりも、対面に座るあの小娘

――大星淡

テンパイ気配が全くないところからリーチをかけてきた
あれは一体なんだったんだ?

自分の感覚を信じるのなら、ただのノーテンリーチ
だがもしも衣の感覚を超える相手なら?
テンパイの気配のないところからでも、リーチをかけられるとしたら?

「よーし、今度は私が追いかけるしー!」
「通るけどー」

・・・またテンパイ気配のないところからリーチだと!
何を考えている?

「ロン、メンタンピン裏2。親満だよー」
「ふりこんだー」

そしてまたしても大星の振り込み・・・
考えすぎなのか?

そしてこの姉帯、追いかけリーチだけでなく、先制リーチでも振り込ませる力があるのか?

「ふ、面白い!」

ならば見せてやる
リーチすらできぬ、深淵の恐怖を

「そろそろ御戸開きと行こうか。この卓に座ったこと、悵恨するといい!」

絶望をくれてやろう
790 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/11/28(水) 23:27:46.09 ID:KUF+1ycV0
-side 憩-

-東4局1本場
-親 姉帯豊音
-ドラ @ピン

「やっと本気モードか。・・・・最初からそうしてほしいところやけどなぁ」

衣ちゃんは潮の満ち引きのように、海底まで続く一向聴地獄と、高打点の速攻と2つのタイプを持っている。けど、最初は・・・

「海底コースのようやね、最初は」
「全然テンパイできないから、辛いよね、あれ・・・」

玄ちゃんが呟く

現に衣ちゃん以外の3人はもう13巡目になっているけど誰も鳴けず、テンパイもできていない
けど、一人おかしなことやっとるな・・・・

「大星淡、何者なんやろな?」
「・・・わざと二向聴に抑えているように見えますね」

そう、あの1年の大星淡
起きている小蒔ちゃんでも分かるくらい、露骨に一向聴になるのを避けているようだった

それにあの子は、さっきから2回もノーテンリーチをかけてきている。そのときも二向聴だった

多分リーチをかけたのはあの3年の姉帯さんの打ち筋を確認するためなんやろうけど、それにしたってノーテンでリーチをかけるなんて普通に考えればリスクが高くてできない

「衣ちゃん、油断したらアカンで」

何をしてくるか、まったく読めへん

「ところで、漫ちゃんがさっきからうつ伏せなんですが、体調が悪いんでしょうか?」

ここで突然別の話をもってくるとか、さすが小蒔ちゃんやな・・・

「うう、ほっといてや・・・」
「そうやよ、ただ『ころたんイエイ』っておでこに書いただけですーぅ」
「だけですーぅ、やあらへんわ!」

怒りに任せて顔を上げる
そこには額に『ころたんイエイ』と書かれているわけで

「くくくっ、これはっ・・・。漫ちゃん、顔上げるの反則やわ」
「だからうつむいとるねん!」
「あわわ、漫ちゃん、顔洗いに行く?」
「ダメやよ玄ちゃん、衣ちゃんが帰ってくるまでそのままやからな」
「なんでクラスでもこないな目にあうねんな・・・・はぁ」

再び漫ちゃんが頭を伏せてしまうので、私はモニターに視線を戻した

『リーチ』

衣ちゃんが海底目前でリーチをかけた
誰も鳴けないし、追いつけない

そして海底直前のリーチだから、もうツモが1回しかない姉帯さんは追いかけてリーチすることができない
いくらリーチで先制したり追いかけて潰すことができたとしても、この海底リーチだけは防ぐことができない

「・・・霞ちゃん」

微かに聞こえた小蒔ちゃんの声は、ひどく震えていた

『海底撈月。3100、6100』

衣ちゃんのツモ
これで東場が流れて南入、衣ちゃんの親になる

できるだけ親で稼ぐんやで、衣ちゃん

大星淡も、そして静かすぎる石戸霞も、まだ何かしてくるはずや


クラス対抗戦決勝戦・大将戦
前半戦東場終了時点

天江衣(2−10) 111300(+11000)
石戸霞(3−2)   91200(-10600)
大星淡(1−5)   75100(-22300)
姉帯豊音(3−1) 122400(+21900)
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/28(水) 23:33:48.59 ID:KUF+1ycV0
というわけで、まずは様子見ということで

>>782
僕もとっさに777を見て思いついたので、考慮してたら逆に怖いです・・・
まあでも、タイムサービスはタイムサービスなので、衣と豊音で短めに書こうと思います
タイムサービス内だったらガッツリ書いたかも


衣豊(ころもほう)って四股名っぽいなと思った
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 21:09:16.62 ID:p65OxD69o
衣砲がどうしたって?
793 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/02(日) 21:14:44.00 ID:rQFYGGkq0
県名が表示されなくなったようなので、酉テスト
794 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/12/02(日) 21:17:10.93 ID:rQFYGGkq0
-side 豊音-

-南1局
-親 天江衣
-ドラ 九萬

話には聞いてたけど、これが一向聴地獄か・・・・
本当に鳴く機会もないし、テンパイもできない・・・・

ちょーこわいよー
でも、それでもなんとか頑張らないとねっ

豊音 配牌:一四八AAEH127東北白

うわーん、配牌がズタボロだよー
大星さんか石戸さんのアシストに回ったほうがいいのかなー

淡 打:3

んー、友引行けるかなぁ
うじうじ考えたってしょうがない、せっかく鳴けるんだから、ここは鳴くよー

「チー」

これで海底は石戸さんから大星さんへ
話に聞くと、ちょっとやそっと鳴いたところでそんなの関係ないみたいだけど・・・・

10巡目で、大星さんがAを出してくれてポン
まだまだ手牌はバラバラだよー
でも、これで海底は私になった

豊音 手牌:二四EG7北北白 3-12 A-AA

自風の北がまだ出てないから、これさえ鳴ければなんとかなるかもしれない

豊音 打:7

「チー」

衣副露 7-89

あっ・・・

天江さんに鳴かれてしまった。口の端を小さくつり上げている
これで海底は私から天江さんに移ってしまった。またどこかで鳴かないとずらせないよー

ほんと、ちょーこわいんですけどー

・・・海の底が近づいてくる
なんだか息が詰まりそうになってくるよー
795 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/12/02(日) 21:18:18.74 ID:rQFYGGkq0
「まったく、たかだか海の底くらいでビビってちゃダメだよ、トヨネ」

それでも、こんな息が詰まりそうな中でも、大星さんは余裕の表情を浮かべていた

淡 打:三

「チー」
「ポンだ」
「ちぇ、取られたか」

私がチーしようとしたけど、でもポンの方が優先・・・
天江さんに三萬が持って行かれてしまう
でもこれで海底は大星さんになった

カンチャンの牌が喰い取られて、私の手はもう厳しい

残り3巡になる・・・・
まったく進まない、せめて天江さんに鳴かれないでいるのがせめてもの救いかなー

大星さんのツモ番で、大星さんはニヤリとした

「トヨネ、やっと持って来れたよ」

そう言って大星さんが切ったのは、北

「ポン!」

字牌なら横から持っていかれることはない
私は北を貰ってきて、白を切った

「ちょろちょろと小賢しい真似を。ポンだ」
「あっ・・・・」
「あらあら。また海底コースね」
「あはは、意味ないじゃん」

石戸さんに言われるまでもなく・・・

私が大星さんから鳴いて、海底は私に
でも、さらに私から天江さんが鳴いて、海底は天江さんに移る

そして・・・・

「ツモ、海底撈月白ドラ3。4000オール」

衣 手牌:八九九九 白-白白 7-89 三-三三 ツモ:八

せっかく大星さんがいろいろ鳴かせてくれようとしたのに、それでも海底からは逃れられないのかな・・・

・・・しょうがない、こうなったら大安を使うしかないよね
796 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/12/02(日) 21:24:07.50 ID:rQFYGGkq0
-side 憧-

まったく、淡は調子に乗りすぎだっての
巻き返してくれるとは思ってるけどさ

「ほんとに、淡さんの打ち方は理解できません」

ほらー、和をなだめなきゃいけいないこっちの身にもなってよね
ノーテンリーチなんてフォローしきれないわよ

今の局で天江衣の支配から逃れるために、あの大きな姉帯さんって人にいろいろ鳴かせようとしたのはいいと思うけどさ
誰かに鳴かせられるだけ、淡の実力も天江衣には負けてないってことなんだろうけど

「まったく、敵に回ると衣は厄介だな」

去年は天江衣の担任だったハルエ
打ち筋は教えてくれたけど、当の淡がそれを活かす気が全くないのが問題なのよね・・・・

たとえば天江は最初の数局は様子を見るとかさ
あとは今の海底コースと、速攻高打点に切り替えるあいだに1局を消費するとか

それを聞けば、最初っから飛ばしていかないと稼げなくなっちゃう
本当は姉帯さんみたいに、天江衣が本気になる前にできるだけ稼ぐべきなのが本来なんだけど
まあ、淡の能力上、しょうがないっちゃそうなんだけど

能力上なんて理由で和は納得してくれないしさ

「淡ちゃんなら大丈夫だよ」
「うん、淡が諦めるわけがない」

そんな中、咲は静かに、でも食い入るようにモニターの淡を見つめていた
しずも大きくうなづいた

今上がられた親満で2−10が3−1を逆転して一位に浮上した
そして最下位の私たちのクラスとは、もう5万点以上の差がついてしまっている

「和、一緒に応援しようよ」
「別に応援しないと言ってるわけではないですからね。もっと効率的に打ってほしいだけで」

はは、なだめる必要もなかったかな?
私が肩をすくめると、咲が話しかけてきた

「憧ちゃん。聞きそびれちゃってたけど、さっきのお姉ちゃんのオーラス、やっぱり私のコピーだったの?」
「ああ、さっきのね。2回鏡に写して、咲の打ち筋を反転せずに普通にコピーしたって言ってたよ」
「・・・そうなんだね。お姉ちゃん、何か言ってた?」

うーむ、私の口から言うべきなのかな?
どうせ帰ったら家でいろいろ話をするんだろうし・・・・

「言ってたけど、直接聞いたほうがいいよ? 私から言えるのは、悪いようにはなってないんじゃないかな、ってこと」
「大丈夫かな・・・」
「大丈夫だよっ」

私は、まだ不安そうな咲の肩を軽くたたいた
大丈夫だよ、今の咲なら照さんも認めてくれると思うからさ

「ま、とりあえず今は応援応援!」

モニターに視線を戻す

南1局1本場
またしても天江衣に海底が回てくる・・・
これで海底ツモなら、4100オール。さすがにこれ以上離されるのはまずいよね

「また海底なのかな?」
「そんなオカルトありえません」

しずと和も固唾を飲んで見守っている
そして天江衣が海底牌をツモってくる・・・・

「・・・海底じゃ、ない?」
「だから言ったじゃないですか、狙って海底なんて出来るわけがありません」

しずが驚くのに、和が冷静にツッコミを入れる
私は天江衣を一番知っているだろうハルエを見た

「流石に決勝卓、衣と言えども思い通りにはいかないか」

ハルエも意外そうな表情を浮かべていた
797 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/12/02(日) 21:26:33.24 ID:rQFYGGkq0
-side 衣-

-南1局1本場
-親 天江衣
-ドラ 2ソウ

衣 手牌:一二三GGGH222 A-AA

ふん、結局あの大星とやらもただの有象無象

「無為無聊だな。もう少し楽しませてせくれ・・・」

海に写る月を、撈い取る
最後のツモ、それが私の和了牌・・・・Hピンだ

衣 ツモ:九萬

「な、に・・・・」

Hピンじゃないだと・・・
どういうことだっ

視界に入ってくる、口の端をつり上げる、姉帯豊音
リーチの追撃だけではないということか

「この局、誰にも和了させないよ」
「・・・少しは骨があるようだな」
「それにさ、天江さん」

さらに私を挑発するかのように、笑顔を浮かべる姉帯

「私は海底コースより、速攻で高打点で和了してくる方が好きだなー」

ふん、海底の支配よりも、速攻の場での方が勝算があるとでも思っているのか?

「生猪口才、その挑発受けてやる。お望みどり、業火の責め苦を擬してやる」

夕刻、まだ夜の帳が降りるには早いが・・・
それでも、勝つのは私だ

九萬はツモ切り

「テンパイ」
「ノーテン」
「ノーテン」
「ノーテン」

他の3人は全員ノーテン
一人テンパイで親は続行

目にもの見せてくれる
798 :tell you that I love ...(8-6) [saga]:2012/12/02(日) 21:29:02.72 ID:rQFYGGkq0
-side 照-

-南1局2本場
-親 天江衣
-ドラ 中

衣 配牌:五六六六CCEG25(赤)白白中中

霞 配牌:一一五(赤)@AEF335東南南

淡 配牌:二六@D(赤)G5678西北北白

豊音 配牌:四九D(赤)H1279東西北発中


「どういうことや、あの天江が海底であがれんとか」

怜の疑問は、おそらく天江さんを知っている誰もが疑問に思ったことだろう

「豊音が大安を使ったんだろうね」
「大安?」
「次の局の自分の配牌が五向聴くらいの酷い手になる代わりに、その局は誰にも和了させない。平穏に場が流れるという意味で、大安」

前局の大安に続き、この局は赤口を使ってきた
なるほど、いい判断

「そしてこの局は赤口だね。これで仏滅以外は全部使ったかな」
「赤口ってそもそもどういう日なん? 大安とか仏滅とかはなんとなく響きでわかるけども」
「閻魔さまの口とか、悩みを撒き散らす鬼とかいろいろ説はあるみたいだけど。あまりいい日ではないね」

そして豊音の場合、全員の配牌に赤い鬼を紛れ込ませる

「全員に赤ドラ1枚ずつあるんやな」
「確かに、ドラを切るタイミングが悩ましいかもな」

末原さんも菫も気づく

「そう、赤口は赤ドラを全員に1枚ずつ紛れ込ませる。そして、その牌を切らない限り手の進みが遅くなる。さらに、赤ドラの近くの牌も入らない」
「例えば大星なら、Dの周りのBCDEFは入ってこないということか?」
「そう、だから赤ドラは、いつまでもくっつかずに浮き続ける」

いつ赤ドラを見切るか
手が進まない中で、ど真ん中の赤ドラを切るのは序盤ではしにくいし、中盤以降は危険牌になるので別の意味で切りにくくなる

でも、天江さんは配牌がいいから、手の進み次第では早めにドラが切られてしまうだろう
そこまでに豊音が追いつけるかどうか・・・
配牌はズタボロとは言え国士気配、さらにドラの中を切れば天江さんに鳴かれてしまう。抱えたまま国士を狙うしかないだろう

「・・・・頑張って、豊音」
799 :tell you that I love ...(8-6)  ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/02(日) 21:32:23.37 ID:rQFYGGkq0
今日はここまでです
再び酉テスト、タイトルの後ろにつけるのはこんな感じでいいのかな?

このペースだと年内完結は厳しそうかな・・・
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 21:54:21.65 ID:OvzlHZYD0
乙ー
ど真ん中のドラを早々に切らなければ和了れないなんてえげつない能力だなー
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 21:57:29.92 ID:skXiM48N0
乙ですわー
早々に切るのは覚悟がいるし、中々切らねば切らぬで手が遅くなるし……
なんとまあキツいねぇ
802 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/05(水) 00:48:08.18 ID:UKvbLhLz0
-side 智葉-

-南1局2本場
-親 天江衣
-ドラ 中

-7巡目

「ここまで重たい空気が漂ってるね。ほとんどの生徒がツモ切りを繰り返している!」
「手が進んでいるのは、一発目に赤ドラを切った姉帯さんの国士だね。でも残りの牌が少ないから厳しいかも☆」

先ほど、姉帯が挑発して天江が速攻高打点にスタイルを切り替えると思いきや、まだ海底支配のままということだろうか?
私なりに海底支配を研究するに、手なりでは無理だが国士を狙えばテンパイはできたという局面は何度かあった

姉帯の一打目の赤ドラ切りも、その決意の現れということだろう
逆に赤を抱えたままの3人ともが手が進んでいないというのはなかなか皮肉なものだ

だが、海底支配が続行しているというなら、天江の手まで進まないというのはいささか理解に苦しむが・・・

「さあ、ここで石戸霞が南をツモってきてダブ南を暗刻にした!」
「姉帯さんはまだ南を引いてないから、これでちょっと苦しくなったかな。あと南と一萬がほしいんだけど・・・」

ここでようやく石戸が有効牌を引いたか
そして次の、大星のツモ

「ああっと、そして最後の南が大星淡に渡ってしまったー!」
「うーん、これで姉帯さんの上がりは消えたかな・・・」

生牌だが、大星はノータイムでツモ切りした

『ポン』

・・・は?

モニターの向こうから、意味のわからない発声がする

「ええっと、なぜか石戸霞が南をポンした!」
「これはちょっと解説不能かなー☆彡」

霞 手牌:一一五(赤)EF3356東南 南-南南

打:東

・・・なんだこれは

思考をフル回転させる
オカルトに対応するために、デジタルに対抗できるのはとにかく考えることしかない

「さって、はやりんがさじを投げちゃったので、ここは智葉っちに重厚な解説をお願いしよう!」
「私にも理解は出来ていませんが・・・」

それでも、なんとかバラバラの思考をつなげて言葉に置き換えていく

「天江の海底支配への警戒、というのは考えられます」
「というと?」
「ポンやチーは、誰がか鳴ける牌を切ってくれた時にしか鳴けません。けれど、加カンに限っては自分の好きなタイミングでカンすることができ、なおかつ海底をずらすことができる」

そこまでする必要があるのかどうか、正直よく分からないが・・・

「そしてカンが必要なければ、ほぼ安牌として切ってしまえばいい。そういう対応が考えられるかと」
「おお、さすが智葉っち。もう解説は智葉っちで十分だから、はやりん帰ってもいいよ」
「さすがに泣いちゃうぞ☆」

まったく、久もよくこのいい加減な空気に長々耐えられたものだな

「ただ・・・」

そう、その対応には問題がある

「あの姉帯の国士気配は石戸も感じているはず。加カンをすれば槍槓がありえる、そのリスクを背負ってまでカンする権利を保有しておくべきなのかどうかは疑問ですね」

そう、もし石戸が普通に上がりを目指すなら、あんなポンは手の中にリスクを抱えるだけで意味がない

・・・・石戸、お前はもしかして
勝つ気が、ないのか?
803 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/05(水) 00:49:28.11 ID:UKvbLhLz0
-side 洋榎-

「絹ー、おるんかー、返事せー」

絹恵の部屋までやってきたうちは、ドンドンとノックをする
しばらくして、絹が部屋から出てきた

すでにパジャマに着替えて、コートを羽織って出てきた
ふむ、なかなかに芸が細かいな・・・

でもな、顔色まではごまかせてへんで

「お姉ちゃん、どないしたん・・・」
「副将戦を病欠やって、電話にもでんから心配したんやで」
「あ、ごめんなさい。寝たくて電源切ってたわ」
「まあとりあえず無事ならええんや、あがるで」

絹に文句を言われる前に、うちはさっと部屋にあがってしまう

「ちょ、お姉ちゃん。部屋散らかってるから堪忍してや」
「知らん、普段から片付けしとけ」

適当に転がっていたクッションの上に陣取る
座ってしまったうちを見て、絹はため息をついた

「まあええけど・・・。なんか飲む?」
「病人がいらん気遣いすな。とりあえず寝とり」

そう言われて、絹はしぶしぶコートを脱いでベッドに横たわった

「なー、絹。ひとつだけ確認させてくれ」
「・・・なに?」
「逃げたんか、宮永から?」
「・・え?」

ポカンとした表情を浮かべて、視線をあちこちにさまよわせる絹
はぁ、もう。言い訳考えようとしてるのバレバレやで

「いや、だから体調が悪くて仕方なしに・・・」
「良子ちゃんから聞いた。仮病なんやろ?」
「な、誰にも言わへん言うてたのに」

そこまで言って、絹がしまったと目を見開く。まあ、そこに至る以前にバレバレやったけども・・・

「良子ちゃんに殴りかかる勢いで迫ったら自白してくれたんや、良子ちゃんは悪ないで」

一応フォローはしておこう
あっさり教えてくれたこと自体、訳があるのかもしれんし。実際、体調を崩しましたって言われてもその場では納得できなかっただろうし

「そうなん・・・そうなんやね・・・・」

深くため息をつく絹

「昨日な、赤阪先生に放課後呼び出されてん。そしたら、戒能先生に頼んで病気扱いにしてもらえるけどどうするって聞かれて・・・」
「それで、OKしたんか?」

絹はベッドから起き上がり、小さくうなづいた

「だって、私が出てもチャンピオンには敵わへん・・・・。先生も、漫ちゃんを打たせてあげたいって言うたし。クラスに迷惑かけられへんやん、2年の強い人ばっかり集まってるクラスで、私のせいで負けたって言われるのが・・・・怖かった」

はあ、まったく
豆腐メンタル極まれり、やな・・・
同じ血を引いとるとは思えんわ。性格といい、その、胸といい・・・

「ええか絹、うちは卓につく前に負けるかもなんて考えることなんてない。そりゃうちかて宮永にはそうそう勝てへん。それでも、絶対に次は勝っちゃるって向かっていくんや」
「それはお姉ちゃんが強いからや。私なんて全然やもん・・・」
「そんなこと言っとるうちは強くなられへんで」
「・・・・せやけど」

うつむいてしまった絹
しょうがない、我が身を切るか・・・
804 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/05(水) 00:50:03.04 ID:UKvbLhLz0
「なら言うとくけどな。今日のうちは、ボロクソに負けたんやで」
「・・・え、お姉ちゃんが? 小蒔ちゃん?」

試合内容知らんかったら、そう思うのも仕方あらへんか
あの寝とるときの神代はすさまじかったけども、基本的に怜が勝手に振り込みしとるだけで、負けたっていうよりは蚊帳の外って感じやった

「ちゃう。由子や」
「え、真瀬先輩・・・・。なんで、真瀬先輩出てないはずやん」
「怜が倒れて、途中交代で由子が出てきたんや」

普段なら由子に負けるなんてことあらへん
でも、あのときだけは違った

「由子の方が、クラス対抗戦に賭ける思いが強かった・・・。感情論なんかで麻雀の強さなんて語られへんのかもしれんけど、今日ばかりは痛感した。うちのクラスは心がバラバラやったし、由子のクラスはまとまってた。その差が出たんや」

絹は黙って聞いている
試合を見とらんかったら伝わらへんかもしれんけど、それでもこれだけは伝えたい

うちはお姉ちゃんやからな
落ち込んどる妹を、ほっとくなんてできへんのや。こんなん、柄やないとは我ながら思うけどな

「だからな、絹。クラスに迷惑かかるって考えるよりも、クラスのためにやったるって考えんとあかんのやで。それがひいては、自分の強さになるんや」
「でも、怖かってん・・・」

絹は俯いて、肩を震わせる
うちは絹の隣に腰掛けると、肩に手を回した

「誰も見てへん。泣くだけ泣いて、全部はきだしや」
「う、ううっ。お姉ちゃん・・・・」

そうや。それでええ
全部涙で流し出して、もっと強くなるんやで、絹
805 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/05(水) 00:51:13.10 ID:UKvbLhLz0
-side 霞-

-南1局2本場
-親 天江衣
-ドラ 中

-17巡目

さて、そろそろ頃合かしら

衣 副露:白-白白 A-AA

霞 手牌:一一五(赤)EFG456南 南-南南 ツモ:H

結局この赤ドラはまったくくっつかなかったわね・・・
そして天江さんが2鳴きして今は海底コース

これが私のラスヅモ
残る牌はあと3つ。でも、この南をカンすれば海底牌がずれて姉帯さんが海底になり天江さんにまでは回らない

だからここで私がカンするのは、多少リスクがあれど仕方ないこと
もちろん姉帯さんに国士の可能性があるのは見えている
場に見えている牌からも、国士の可能性は消えていない、それでもやはり天江衣の方が怖かった

そういうことにしておけばいい

普通に南の暗刻落としの方がよかったかしら?
でももう仕方ない、開き直ろう

「カン」

そういえばこういう時の格言があったかしら

「南槓に上がり目なしだよー」

姉帯さんの手牌が倒れる
ふふ、そうでなくては困るわ

「ロン、国士無双。32600」
「あらあら」
「わーお、トヨネやるぅ」
「くっ、衣の親が・・・」

姉帯さんに点棒を出す
これでまた姉帯さんのトップ

巴ちゃんはおそらく私が姫様のいる2−10を勝たせようとしているのではないかと誤解していたようだけど・・・

私は確かにクラスの勝利なんて目指していない
ただ、こんな風にクラスをバラバラにされてしまって、私も黙ってはいられない

だから・・・3−1を勝たせてあげるのよ
多少、強引にでもね
それが、私にできるせめてもの抵抗


南2局は自分の親だけど、当然上がる気はない
そのつもりだったけど、上がる気がないときに限って手が入るもので、一応1000オールのツモ
まあ、完全に上がらないのも不自然かもしれないから、安手であがって良かったのかもしれない


南2局1本場
今度は天江さんに3100、6100でツモ上がりされる
806 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/05(水) 00:51:43.49 ID:UKvbLhLz0
そして南3局
そろそろ、様子見は終わりかしら?

「ふふふ・・・」

大星さんが不敵な笑みを浮かべる

「10局も様子見しちゃったよ」

ぐーっと両腕を伸ばし背伸びをする大星さん
あら、経過した局数を数えてるなんて意外と几帳面なのかしら

「テルが1局様子見してあの強さならさ・・・10局様子見した私は、テルの10倍強い!」

・・・・その理論はどうなのかしら

「教えてあげる。海の底なんかより、星の海の方が遥かに広くて美しいってことをね!」

さて、それじゃあお手並み拝見と行きましょうか


大将戦前半戦
南3局開始時点

天江衣(2−10) 137600
石戸霞(3−2)   50500
大星淡(1−5)   66000
姉帯豊音(3−1) 145900
807 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/05(水) 01:00:00.40 ID:UKvbLhLz0
今日はここまで
とりあえずガンガン発売前までになんとか淡の能力発動まで持っていかねば・・・
流石に今月号ではお披露目になると思うので

まあ、もっとも「次号、大星淡がその実力を魅せる」って感じで終わるかもしれませんが

今回のあわあわ理論は、1円に笑うものは100円で100倍笑える理論を採用しています
一応スレタイのSSの大七星とは違う感じにしてみました
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 07:39:08.09 ID:Vada629/o
乙ー
淡の能力本当楽しみだ
今週末くらいからボチボチネタバレ流れると思うので注意
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 09:27:00.99 ID:/oxnvF/Ao
魔物VS魔物VS準魔物×2みたいなイメージ
乙ー
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 11:49:28.43 ID:pBLvTvR00
乙乙
咲キャラがコンビ打ちすれば大抵強力になるからこれだったら姉帯さんでも勝てそう
811 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/07(金) 00:48:56.87 ID:lKLUF5XA0
-side 憧-

-南3局
-親 大星淡
-ドラ 五萬

「まったく、ようやく本気出したか・・・」

淡が強いのはわかってるけど、流石にこの点差じゃいささか不安になる

淡 配牌:ABCD89白白白発発中中中

「いつもいつも、ほんとに偶然が続きますね・・・」

そうは言っているものの、和も内心ではもうそういうものだと思っているんじゃないだろうか

10局様子を見たから、ストックは20飜か
で、この局は小三元で4飜。まあ4飜で役満狙えるからお得よね


――淡の能力、ビッグバン

様子見の局数×2飜をストックできる。ただし、様子見する局はテンパイの機会を得てはダメ。だから基本的には二向聴以下に抑えておかないといけない

そして様子見から、一気に爆発する。何もなかった空間から、突如宇宙が誕生したかのように
淡は配牌にストックした飜数以内の役を仕込むことができる

例えば小三元なら4飜(厳密には、小三元・白・中、の4飜だけど)
だから配牌は確定小三元がすでにセットされて聴牌している

でも制約もあって、同じストック内で同じ役は使えない
だから一度混一を指定したら、もう混一は指定できない
あと役満は指定できない。ストックが13飜以上あっても、あくまで数え役満になるように役を指定するしかない


いつもならダブルリーチでド派手に決めたいところなんだろうけど、姉帯さんがいるから流石に自重したかな?
リーチの必要のない小三元をセットしてきた。発がすぐ鳴けるかどうか、か

淡の第一打は、8ソウ
手広く受けれるピンズを残して、発の鳴きを待つつもりだろう

まだ発は他の誰の手牌にも無い。早いところツモれればそれが一番いいんだろうけど

「残り2枚の発のありかが問題だね・・・」
「あ、でも張り返した」

咲が心配そうに呟く
しずはそれほど心配はしてなさそうだった
なんだかんだいって、こういう逆境のときのしずは頼りになるんだな

淡の次のツモはAだった。これで発とAのシャボ待ち。A出上がりでも混一小三元で親っパネにはなる。ツモなら三暗刻が付いて倍満

ま、当然ダマだわよね・・・
そう思っていた

でも淡は点棒を取り出す

「ちょ、淡、まさかリーチするの!?」
「追っかけられるんじゃ・・・」

そんな咲の心配なんてお構いなしに、淡は9ソウを横にした

『さって、お試しリーチ!』

お試しじゃないわよっ。点差どれだけあると思ってんの!?
その手潰されたらどうすんのよ!!
812 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/07(金) 00:50:13.09 ID:lKLUF5XA0
-side 豊音-

うう、2巡目リーチかー

豊音 手牌:五七BCEF13889南西 ツモ:D(赤)

まだこっちの体勢が整ってないんだけどー

リーチしてくれたから先負が発動する
だから有効牌が来やすくなるけど、それでもまだ少なくとも2巡はかかる

すぐには追いかけられない・・・
とりあえず字牌も危なさそうだから現物

打:9

「あれー、追いかけてこないのー」

何も答えられない
さすがに2巡目リーチに対応できるほどのスピードはないよー

「ふふ、流石にこれだけ早いとすぐには追っかけリーチできないってことだね」

続く天江さんも、石戸さんも静かな打牌

「あはは、もたもたしてるとツモっちゃうよ」

そして大星さんがツモってきたのは、Aピン

「ツモ。リーチ一発ツモ、混一小三元三暗刻。ちぇ、裏は乗らないか、三倍満で12000オール」

ドラが1つでも乗れば数え役満だった・・・・
たった3巡でこの高打点、ちょーこわいんですけどー

うーん、これどうやって対応しようか・・・

大安を使っても、大星さんの親が続くだけで根本的な対策にならない
赤口かなぁ・・・
813 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/07(金) 00:51:08.60 ID:lKLUF5XA0
-side 淡-

-南3局1本場
-親 大星淡
-ドラ 九萬

あはっ、どんどん行くよー
久々に20飜もストックしちゃったから、役の組み合わせをうまく考えないとね

淡 配牌:@ABCDEFGH5(赤)9東東東

今度は一通役牌の3飜。残り13飜

もちろんこの手でいきなりダブリーはかけない
ピンズなり字牌なり持ってこればすぐに染まるからね、それで満貫確定。だったら焦る必要なんてない

それに今の私なら、星の重量に引かれるようにどんどん牌が集まってくるんだから

打:5(赤)



-side 豊音-

えー、第一打であっさり赤切られたんですけどー
まさかもう見切られたのかな?

いや、さっきはちゃんと国士狙いってことで偽装できてたハズだし
だからきっと大星さんも国士狙いか、あるいは染手とかで浮いてる赤は完全に不要だったってことかな・・・・

なんにせよ赤口も不発か・・・
あれだけ手が早いと赤が1枚浮いていればさっくり捨てちゃうよね
うーん、この局は赤かかえて心中するしかないなぁ・・・

意味もなく赤を一打目に切るとそれこそ赤口もバレちゃうかもだし

「リーチ」

また大星さんが2巡目リーチ
赤口は完全に失敗だったかなー。大星さん以外誰も赤切ってないからみんな手が遅いだろう。かえって大星さんをアシストする形になっちゃったよー

一発はなかったけど、4巡目

「ツモ。リーヅモ混一東。親っパネで6100オール」

うーん、これは私じゃちょっと止めるの無理かなー
早すぎて追いかけられないよー

ポン材集めて、できるだけ大星さんにツモを回さないようにするくらいしかできないかなー
うまいこと友引であがれればいいけど・・・
814 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/07(金) 00:53:05.06 ID:lKLUF5XA0
-side 小蒔-

-南3局2本場
-親 大星淡
-ドラ 4ソウ

「霞ちゃん、どうして・・・」

あの南ポンからの加カンでの放銃
いつもの霞ちゃんならあんな打ち方は絶対にしない
本気を出したくて、恐ろしいものの許可をもらったんじゃなかったの・・・

「心配なん、小蒔ちゃん」

憩ちゃんが私の顔を覗き込む

「ご、ごめんなさい。衣ちゃんの応援しないといけないですよね」
「部活の先輩が気になるんは別にええんよ。うちかて、部活の先輩とか出てたら気になると思うし」

モニターを見る。今は1年生の大星さんが、今まではテンパイすらできなかったのが嘘のように凄まじい追い上げを見せている

淡 配牌:一一九九@@HH11北北白中  打:白

「この子、さっきから配牌でずっとテンパイしてるよ・・・・」

玄ちゃんが驚くのも無理はなかった
この大星さんの親になってから、これで3回目の配牌でのテンパイ

これは、混老頭七対子。でもさっきから配牌での役をさらに伸ばして和了している
ならこの手、混老頭のその先へ手を伸ばすはず。清老頭、役満まで・・・・

でも衣ちゃんも負けてはいない
ドラの暗刻を抱え、次巡大星さんが切った中をポンして一向聴
3年生の2人はまったく追いつけていないから、実質2人だけの戦い

そして6巡目

淡 手牌:一一一@@@HH11 九-九九 ツモ:A

衣 手牌:AAA五五五(赤)4445(赤) 中-中中

大星さんのツモ番
衣ちゃんが暗刻で持っているAピン

『あーあ、これ掴んじゃったかなー』

と言いつつ、あっさりと大星さんはツモ切りした。流石に役満テンパイで降りるという選択肢はなかったのだろう

『カン』

モニターの向こうの衣ちゃんがAの暗刻を倒す

「大明カンか・・・」
「これでツモなら責任払いだよね」

憩ちゃんと玄ちゃんも少し驚いたようだった
カンしなければ、5ソウで和了の時に三暗刻が付く。わざわざカンするのは、ドラが乗らない限り手を下げてしまう

それに、衣ちゃんの支配は王牌には及ばないはず
リンシャンをツモできる保証はない・・・

「衣ちゃんも必死や。あの大星、それほどにヤバイ」

そう、保証がなくても責任払いを狙った。少しでも点数を減らしておかないとまずいという判断だろう
もっとも、それを衣ちゃんに直接聞いても認めないだろうけれど
でも、その必死さが功を奏した

『ツモ、リンシャン・中・ドラ5。12600、責任払いだ』
『あーあ、親が流れちゃった』

なんとか大星さんの連荘はストップできた
これでまた衣ちゃんが逆転して1位
そして霞ちゃんとの点差はもう10万点近くになってしまった

「霞ちゃん、どうして・・・」

また同じ言葉を呟く
だって、こんなに点差が開いてもおそろしいものを降ろさないなんて

全力を出してください、霞ちゃん・・・
815 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/07(金) 00:54:08.10 ID:lKLUF5XA0
-side 菫-

-南4局
-親 姉帯豊音
-ドラ 白

前半戦もオーラスか
トップの天江と、石戸の点差は10万点近い

なぜだろう
妙に胸の奥がざわざわと、居心地が悪い

ふと清水谷を見ると、そわそわと落ち着かない様子だった
・・・もしかして、私と同じ気持ちになっているのだろうか?

「なあ、清水谷」
「ん、どうしたん?」
「どうした、そんなにそわそわして?」
「・・・・弘世さんもそんな感じやで」

指摘されて、私も清水谷と同じようにそわそわしていたのかと驚く

「どうかしたん?」

清水谷の隣にいる園城寺が尋ねる
清水谷は肩をすくめた

「いや、分からへんねんけど、なんか落ち着かないっていうか、胸の奥がざわざわするっていうか・・・」
「あー、そりゃあ自分たちのクラスがこんなに断ラスやったら、そうなるんちゃう?」

そうなのだろうか・・・
いや、そうなのかもしれないな・・・・

「あー、そんなもんかな」
「なんやかんや言っても、自分のクラスやん」

いまいち腑に落ちない様子の清水谷

まったく、ここまで追い詰められてようやく自分のクラスという自覚が湧いたとでもいうのだろうか・・・
我ながら現金だな・・・

決勝に至るまでは、当たり前のように勝ってきた
決勝になっても、副将戦までは最下位になることはなかったはずだ
だからこれまで、危機感を抱く場面なんてなかった
むしろ望みもしない勝利をこのまま得てしまうんじゃないかくらいのことを、心のどこかで思っていたのだろう

けれど、現実としてこの圧倒的な点差
常識的に考えて、残りおおよそ1半荘だけで逆転など無理な話

目の前に敗北を突きつけられて、ようやく・・・

「・・・そうだな。なんだかんだ言っても、自分のクラスだ」

モニターを見る

相変わらず、淡は配牌でテンパイしている
清一タンヤオ三暗刻。ツモれば三倍満にまで届く

さっきは清老頭にまで手を伸ばそうとして天江に阻止されてしまったが、欲張らなければ早々に淡がツモ上がりするだろう
816 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/07(金) 00:55:02.43 ID:lKLUF5XA0
「失礼します」

ご丁寧にドアをノックする、突然の来訪者

「福路・・・」

同じクラスの福路美穂子だった
彼女もやはり落ち着かない様子だった

「福路さん、部活の後輩と試合見るって言ってへんかったけ?」
「いえ、見ていたんですが・・・。どうも落ち着かなくて」
「福路も同じか・・・」
「え、同じって?」
「なんだかんだ言っても、自分のクラスがここまで負けていたら落ち着いてはいられないさ」

ようやく合点がいったという表情を見せる福路
そうだろうな、自分では気づけない。それほどに麻痺してしまっていた、自分たちのクラスという感覚

『大星淡、三倍満ツモー! これで一気に1位浮上だーー!』
『抜きつ抜かれつの攻防が激しくなってきたね☆』
『これで前半戦終了。残るは後半戦の1半荘のみ、最後に栄光をつかむのはどのクラスか!!』

ちょうど前半戦が終わったようだ

「福路、清水谷・・・・。行こうか、石戸のところへ」
「せやな。最後くらい、ちゃんとしよか」
「そうですね」

福路も頷く

いまさら行って頑張れというのも、虫のいい話かもしれない
それでも、言わずにはいられない・・・

「そうだ清水谷。愛宕の電話番号は知っているか?」
「知っとるけど」
「まあこちらには来れないだろうが、一応連絡だけはしてみてくれ」
「ああ、わかった。じゃあ怜、ちょっと行ってくるな」

園城寺に手を振って、清水谷も教室を出た


大将戦前半戦終了

天江衣(2−10) 126100
石戸霞(3−2)   26400
大星淡(1−5)  131700
姉帯豊音(3−1) 115800
817 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/07(金) 00:58:35.50 ID:lKLUF5XA0
あれ、sageになってた・・・
とりあえず最後にあげつつ、今日はここまでです

流石にこのあわあわはチートすぎるとは思いますが、淡ならこのくらい平然とやってのけるはず
なにせテルの10倍強いんですから(自称)
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 01:33:29.26 ID:ZDEgfS7yo
乙乙
自由に飜数を引き出せる辺り、たかみスロットより便利そうだなぁ
819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 16:12:04.40 ID:PbGlsVz9o
淡の能力決まってしまいましたなあ
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 17:04:16.74 ID:tV+lpKvho
淡穏がほむまどな件
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 21:05:53.21 ID:5NiGJJMAO
>>820
そう言えばそうだww
822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 01:42:31.13 ID:KkjZvoXzo
>>820
淡って斉藤さんなのか
もっとアホなこのイメージだったわ
823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 11:40:02.23 ID:xZSHnoA00
霞さん覚醒フラグきたか、乙乙
824 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:08:45.77 ID:QTE/C41y0
-side 霞-

残りは26400点
ずいぶん削られたものね

でも自分の点棒にはそれほどの意味はない
ただ0になってしまえば対局が終わってしまう

いや、それさえも、3−1が勝つためなら失ってしまっても構わない
誰も、3−2の勝利など望んでいないのだから

「じゃ、後半もよろしくねっ」

大星さんがそう言って対局室を出ていく
それに続いて、姉帯さんと天江さんも出ていった

私には帰る場所はない
本当に、どうしてこんなにバラバラになってしまったんだろう

宮永照を倒すために集められたなんて話を耳にしなければ、普通に接することができていたんだろうか?
今となっては、そんな仮定に意味はないけれど

しばらく座っていると対局室の扉が開いた
もう誰か戻ってきたのだろうか?

「霞ちゃん」

入ってきたのは小蒔ちゃんだった・・・・

「あらどうしたの? 天江さんならもう出て行ったわよ」

その瞳を見れば分かる
小蒔ちゃんの目的が天江さんではないことなど

「違います。私は霞ちゃんに会いに来ました」
「あらそうなの?」

言いたいことなんか分かっている
悟られないように支援するなど、この大将戦の面子では至難。結局バレてしまったのだろう、私が勝つ気がないことは

私はこれ以上小蒔ちゃんの瞳を直視できなかった

「どうして本気で、全力で戦ってくれないんですか!」

小蒔ちゃんにしては珍しく語気を荒らげる

「みんな強くてね。これでも頑張ってるんだけど」

それでも、私はとぼけ続ける
分かっている、こんなのはただの現実逃避

でもその退路を、小蒔ちゃんはどんどん塞いでいく

「嘘です。あの南のカン、普段の霞ちゃんなら絶対にしません」
「あれは天江さんの海底を警戒して・・・」
「本当に、国士よりも警戒すべきでしたか?」

国士を狙っているのは分かっていた
ほぼ張っているのも分かっていた

国士振り込みと天江さんの海底の両天秤、しかし天江さんはあの時親番だった。連荘警戒はありえない範囲ではないはず
そう理論武装するつもりだった

でも、小蒔ちゃんの視線はまるで私の心の奥底まで見透かしているような力に溢れていた

私が押し黙ると、小蒔ちゃんは続ける

「答えてください。どうして全力を出さないんですか?」

ここで答えていいのだろうか?

宮永照を倒そうとする大人たちへの、せめてもの当てつけです・・・などと
825 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:10:42.97 ID:QTE/C41y0
私が逡巡していると、再び対局室の扉が開いた

「先客がいたか」

入ってきたのは、弘世さん、清水谷さん、福路さんの3人。みんな、3−2のクラスメイト

「どうしてここへ?」

そんな言葉が出てくること自体、普通の感覚は麻痺してしまっているのだろうと思う
クラスメイトが対局室に来るなんて、本来なら応援くらいしかないのに

「今さら虫のいい話かとは思うが、激励にな」

弘世さんの答えに、私は戸惑う
本当に今さら・・・

でも、どうして今になって・・・

「これだけの点差をつけられて、ようやくクラスの危機を自覚したというか。吊り橋効果みたいなものなんだろうがな」

弘世さんの後ろにいる2人も小さく頷く

でも、いいの?
一番辛いのは、ずっと宮永さんと戦ってきた弘世さん、あなたじゃないの?

「上の思惑など分からない。だがな、石戸・・・お前が手を抜けば仮に3−1が勝っても譲られた勝利と思われても仕方ないだろう」
「せっかくここまで来たんやし、やるからにはやっぱり勝ちたいわ」
「そうですね。少なくとも、できることはすべきです。本当は、もっと早くに気づかないといけなかったんでしょうけど」

3人の言葉が胸に染み渡る
4日間戦ってきて、ここまでみんながまとまっていたことがあっただろうか・・・

私だって、真剣に戦えるものなら戦いたかった
でもクラス編成にまで口を出して宮永さんを倒そうとする何者かの思惑が、そんな思いに水を差す

「あ、せや。洋榎に電話せんと」

清水谷さんが電話をかけ、一言二言話すと携帯電話を私に差し出してきた

「洋榎からやで」

電話を受け取る

「もしもし、石戸ですけど」
『おお、石戸か。なんか派手にやられとるようやん』
「申し訳ないわ」
『謝らんでもええ。むしろ謝りたいのはこっちやわ』
「なんで愛宕さんが・・・」
『余計な茶々入れられたもんも、結局全部お前に押し付けてまうんやからな』

私が二の句を継げないでいるのにお構いなく、愛宕さんは続ける

『今さら勝ってくれとは言わん。ただ、訳のわからん大人達の思惑に潰されんでくれ。うちが今日不甲斐なかったんも、結局ひん曲げられた思いのままで打っとったからや』
「愛宕さん・・・・」
『そっちに直接行けんくて悪かったな』

そう言うと、一方的に電話が切られてしまった
はあ、まったくせっかちね・・・
826 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:11:21.57 ID:QTE/C41y0
「あの・・・」

ここまで沈黙していた小蒔ちゃんが、ようやく口を開いた

「クラスで何があったのかはよくわかりませんが・・・みなさんも、霞ちゃんに全力で戦ってほしいってことですよね?」

振り返り、弘世さんたちの方を見る小蒔ちゃん
3人も頷いた

「ですから霞ちゃん、全力を出してください。必要なら、全力以上でも構いません」
「・・・・それは」

恐ろしいものを発現させること自体は想定していた

ただ、絶一門をすると姉帯さんへのアシストがしにくくなるから自重していた
しかし、自分が勝つ方向で戦うなら、アシストという足かせが無くなる

でも、全力以上となると話は別だ・・・

「小蒔ちゃん。気持ちは嬉しいけど、全力以上には踏み込んではいけないわ」
「構いません、許可します」

真剣な表情で私の瞳を見つめる小蒔ちゃん
はぁ、普段はぽやぽやしてるけど、こういうときの小蒔ちゃんは言っても聞かないものね・・・

「分かったわ、必要なら使わせてもらうわ・・・」
「はいっ」

小蒔ちゃんが嬉しそうに大きくうなづく
でも、極力使いたくないのだけれどね・・・

「話はまとまったん?」
「そろそろ時間なので行きましょうか」
「石戸、悪いが後は頼む」

弘世さんたちが出ていくのを、手を振って見送った

「じゃあ私も行きますね」
「ありがとうね、小蒔ちゃん。でも、私なんかより、天江さんを応援するのよ」

今は、私と小蒔ちゃんは敵同士なんだから

「いいえ、私はどっちも応援します」
「・・・・そうね」

まったく迷いなくそう答える小蒔ちゃんに、私もつられて微笑んだ

小蒔ちゃんはそういう子だものね・・・

分かったわ小蒔ちゃん。必要な場面は必ず来るから、そのときは、全力以上であたらせてもらうわ
827 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:12:36.86 ID:QTE/C41y0
-side 咲-

オーラスで淡ちゃんが逆転した
連荘を止められたときはちょっとヒヤリとしたけど、やっぱり淡ちゃんは強いな

「一時はどうなることかと思いましたが、とりあえずはトップに立ちましたね」

今でこそ落ち着いているけれど、配牌でのテンパイをくずしていく淡ちゃんに和ちゃんはブツブツと文句ばかり言っていた
まあ流石に混老頭七対子を清老頭にまで持っていくのは私も無理があるとは思ったけど・・・

「よしっ、これで行けるね。後半戦はノーテンリーチも必要ないだろしね」
「そう上手くいくかなぁ」

穏乃ちゃんは楽観的に喜んでいるけれど、憧ちゃんは穏乃ちゃんほどには喜べないようだった

「姉帯さんの手の内はだいたい分かってきたけど、まだあの石戸さんって人はハルエが言ってた強制絶一門を使ってないしね。後半戦はもっと動きが激しくなると思うよ」

天江さんの打ち方は、去年担任だった赤土先生のおかげでだいたい分かっている
石戸さんに関しても、これまでの学校で打ってきた配譜なども残っているし、その中で強制絶一門を大きな大会の勝負どころで使っていることも確認できた。問題はいつ使うか、ということだろう

そして姉帯さん。リーチに対して支配力を発揮する人なんだろう
でも、本当にそれだけでお姉ちゃんが大将に据えるんだろうか・・・・

そこに淡ちゃんが帰ってきた

「ただいまー」
「おかえり、淡っ」

穏乃ちゃんが出迎える

「このまま優勝いけるよ」
「当たり前じゃん、後半もどんどん稼ぐよ」

自信満々の淡ちゃん。私も、淡ちゃんの半分でも自信が持てればいいんだけどな

「まったく、ノーテンリーチとか何を考えているんですかっ。あれがなければもっと稼げてましたよ」
「えー、あれは情報料としての必要経費だよー。あれでだいたいトヨネの特性掴めたんだしさ」
「追っかけたら振り込ませるとか、そんなオカルトありえません」
「ま、後半戦が終わったらノドカは、そんなデジタルありえませんって言うようになるから」

和ちゃんは相変わらずだなぁ・・・・
私も、むやみに明カンなんてしてはいけませんって言われるし

でも、見えるんだからしょうがないよね・・・

「淡、まだ油断はできないよ。石戸さんはまだ強制絶一門を使ってないし、他の二人だってこのまま終わるわけがない」
「んー、大丈夫だよ、最後に勝つのは私だから」
「でも淡ちゃん、私も3年生の2人はまだ何かあると思うよ」
「サキが言うなら、そうなのかなー」
「ちょっと、私が言っても聞かなくて咲なら聞くとかどういう了見よ」
「あはっ、日ごろの行いの差?」

常に自分が勝つと思って戦う強さと・・・・
常に自分が負けるかもしれないと思って戦う強さと・・・・

一体、どちらの方が強いのだろう
そこに優劣がなかったとしても、違う強さを持つ人たちが卓を囲めば、勝者は1人だけ

そんな強さの激突から、私はずっと逃げてきた
でも、今日からはそんな誰かの強さと向き合っていかないといけない、そう決めたから

「淡ちゃん、勝ってね」
「私が負けるわけないじゃん、そんなに心配しなくたって大丈夫だよ」
828 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:13:43.03 ID:QTE/C41y0
-side 憩-

「すまないな、後れをとった」
「まだ十分巻き返せる点差やから大丈夫やよ」

教室に戻ってきた衣ちゃんは、思っていたよりは落ち着いていた

「あの大星の東場のリーチは、やはりノーテンリーチだったのか?」
「うん、そうだよ。っていうか南場の親になるまで、ずっと意図的に二向聴に抑えてる感じだった」
「そうか、なら大丈夫だ。衣の感覚がおかしくなったのかと、雑念に囚われすぎたようだな」

玄ちゃんが答えると、衣ちゃんは納得したように頷いた

衣ちゃんは感覚で相手が張っているかどうか、手の高さが分かる
ノーテンリーチをかけられたら、張っていないのにリーチがかかってきているわけで感覚を疑っても仕方ないことだった
初見の相手ということで、少し慎重になっていたのかもしれんな

でも、あの大星ももうノーテンリーチはしてこないだろう
あれはあくまで姉帯さんの手筋を探るためのリーチやったろうしな

ここからは様子見無しやろ

「そういえば小蒔はいないのか?」
「小蒔ちゃんなら対局室に行ったよ」
「そうか、衣が厠へ向かっている間にすれ違ったか」

衣ちゃんに会いに行ったわけではないけど、ここは黙っておこう

「衣ちゃん」

今までうつむいていた漫ちゃんが顔を上げた
また笑ってしまうかと思ったけど、予想以上に真剣な表情でさすがに笑うのはためらわれた

「勝ってな。もし負けたら、私と同じことしてもらうで」
「ふ、そんな憂いは必要ない。全力で行く」

そうや、衣ちゃんが全力やったら負けるはずあらへんよ
まだ日が落ちるには早いけど、今日は満月に近い。力が充実しとるはずや
829 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:14:40.36 ID:QTE/C41y0
-side 宥-

「やっぱり大星さんと天江さんはちょー強いよー。ちょっと自信なくしそう」

帰ってくるなり、豊音ちゃんはめずらしく弱音を口にした
点差自体は15000点くらい

「豊音、大丈夫だよ」

膝枕をされていた照ちゃんが立ち上がる
ああ、あったかいのが行っちゃう。でも、今は我慢しないと・・・

「石戸さんが本気を出してからが勝負。3人が3人とも場を支配しようとしてくるからこそ、豊音に勝機がある」
「でも石戸さん、照が言ってた絶一門を使ってこないよー」
「後半は使うよ・・・・やっと、3−2自体が本気になってくれるようだから」

弘世さんたちは今は対局室に向かっている
そしてそのまま3−2の教室に戻ることになっている

照ちゃんも心配していた、3−2がバラバラなこと
それもギリギリのタイミングで、なんとかまとまりそう

「え、今まで2組は本気じゃなかったのー?」
「少なくとも、クラスのために頑張るって雰囲気じゃないことは事実。でも、ここまで点差が開いて、ようやくクラスのためにって意識が出てきたみたい」
「そっかー」

豊音ちゃんはぐっとにぎりこぶしを作った

「じゃああとはタイミングの問題だねっ。がんばるよー」

ふと怜ちゃんが私の方に近づいてきた

「宥姉ちゃん、ちょっとええ?」
「ん、どうしたの?」
「膝枕・・・膝枕分が足りへん」
「ええっ」

顔色は・・・うーん、あったかくなさそうってくらいしか分からないなぁ・・・
様子を伺っているうちに、怜ちゃんは今まで照ちゃんが寝転んでいたマットの上に座っていた

「後生やから膝枕してくれへん」

うーん、若干棒読みな感じも受けるけど・・・

「あ、もうアカン・・・」

そう言って、怜ちゃんが有無を言わせず倒れかかってきた
そのまますっと私の膝に収まってしまう

「ふふふ、これが照を骨抜きにした宥姉ちゃんの膝枕やな」

顔は見えないけど、多分すっごくにやけてるんだろうなと想像ができる

「怜ちゃん、なんか十分元気に見えるけど」
「ううっ、立ちくらみが」
「・・・立ってないよね?」

うーん、ほんとに膝枕が好きなんだなぁ・・・
まだ本調子じゃないかもしれないし、ちょっとくらいならいいかな

と、思いっきり床をドンと踏みつける音がした

「怜、こっちが真面目に豊音にアドバイス送ってるのに、何してるの?」
830 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/09(日) 22:16:03.07 ID:QTE/C41y0
見上げると、照ちゃんがまったくの無表情で私たちを見下ろしていた
本気で麻雀打っている時みたいで、とっても冷たいよ・・・

「そこに膝枕があったら試すんが常識や!」

堂々と言い張る怜ちゃん
言い訳から入らないその潔さは立派だと思うよ・・・

「そう、じゃあもうお試し期間は終わりでいいね」
「まだ膝枕分が補給できてへんもん。膝枕分がないと生きられへんのや」
「竜華にしてもらえばいいでしょ!」
「だって竜華いまおらへんやん!」
「浮気者!」
「愛と膝枕は別物や。膝枕は平和の象徴やで」
「だったら江口さんとかにしてもらえばいいでしょ、同じ部活なんだし」
「セーラの膝は筋肉質で気持ちよくないねん」
「とにかく宥から離れて」
「いーやーやー」

とうとう照ちゃんが怜ちゃんを無理やり引き剥がしにかかるけど、怜ちゃんも抵抗する
うーん、怜ちゃん十分元気だよね

なんとなく手を出せずに見守っていると・・・

「はいはい、ご指名いただいた江口セーラやで」
「まったく、倒れたんやからおとなしくしとれや」

江口さんと末原さんがやってきて、照ちゃんと一緒に怜ちゃんを引き離した
引きずられながらじたばたと抵抗する怜ちゃん

「鬼ー、離せー」
「はいはい、俺の筋肉質な膝枕で我慢せーや」
「いややー、宥姉ちゃんの膝枕をまだ堪能したいー」
「分かった、じゃあ恭子の膝枕で我慢せーや」
「む、それは初体験、興味あるな」

怜ちゃんの左脇を抱えていた末原さんが怜ちゃんから離れた

「なんでやねん、お前膝枕やったら誰でもええんか?」
「まずはテイスティング、それが膝枕ソムリエや」
「もう十分元気やろ、大人しく座っとれや」

後ずさっていく末原さんに、距離を詰めていく怜ちゃん

「もう、まったく・・・」

と、照ちゃんがまた横になって私の膝に頭をうずめていた

うん、やっぱり照ちゃんじゃいとしっくりこないよ
私は照ちゃんの髪の毛をときながら、ぽかぽかとあたたかくなるのを感じていた


「バカみたい。膝枕より充電だよっ」
「ダル・・・・」
「ミンナ、ナカヨシ」
「仲良し、なのかなぁ。と、とにかく豊音、頑張ってよ」
「なんか途中から蚊帳の外っぽいんですけどー」
831 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/09(日) 22:23:33.35 ID:QTE/C41y0
今日はここまでです
正直、衣が書きにくい・・・
あとは大将戦後半戦のみ、そこまででも年内に終わらせたいです


声優さんネタはまったく分からないし、放送は見れないのでそのうち見れたらいいなぁくらいの感覚です
ではまた
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 23:01:55.28 ID:KeqKRBS9o
乙やで〜
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 00:26:10.80 ID:V26oYzVj0
乙ー
展開的には熱いけどこれでどこが勝つかわからなくなったなー
834 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/13(木) 14:01:41.25 ID:NCMT6bzm0
淡の能力が分かってからオリジナルで書いていると、なんかしっくりこない今日この頃・・・
もうちょっと早く書きたかったなぁ

とりあえず大将戦後半の東場終了まで書きました
一気に決着まで書ききってしまいたいので、もうしばらくお待ちください
835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 20:43:19.71 ID:NaUfcMZro
てるてるのギギギーってヤツみたいなマルチアビリティにすればいいんだよ(震え声)
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 21:00:40.74 ID:NUAUgg0AO
あわあわのあれは恐らく衣の一向聴地獄みたいなもんだろうから、あれをサブ能力にすればいいんじゃね。知らんけど
837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 05:05:43.39 ID:TcN+ADUro
多分あわあわは他にも隠し持ってると思うからそのつもりで書いたら良いんちゃう?
838 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:48:46.95 ID:5NYEjkYY0
-side えり-

メールで連絡を受けた場所に、待ち人はいた

「よくこんな穴場ご存知でしたね」
「加治木さんが教えてくれて」

ほんとに校舎の中でも外れた場所にある、3階建ての最上階の観戦室
人はまばらで、私たち以外では外部からの観客が2、3人しかいなかった

その隅に小さく座っていたのが、小鍛治健夜
2年前まではここで私と同じく教師をしていた人物だった

「加治木さんですか。気を利かせてくれたようですね」
「うん、助かったよ」

生徒会副会長、加治木ゆみ
3−18、私のクラスの生徒でもある
彼女なら、小鍛治さんの様子からあくまでお忍びで来たのだと察することもできただろう

「もう、残すは大将戦の後半戦だけのようですね」
「そうだね」
「3−1は、勝てるでしょうか?」
「今のままじゃ、厳しいかな」

小鍛治さんの表情は読み取れない。少しだけ固いとは思うけれど、それが何を意味するのかは分からない

「私もそうだった。3年の時、唯一クラス対抗戦で負けた。当時1年の、赤土さんのクラスに」
「そうでしたね」
「宮永照さん、彼女も私と同じ道を歩もうとしている・・・・。彼女を止めるのが、妹なのか、親友なのか、それとも縁もゆかりもない魔物なのか、それは私には分からないけれど」

小鍛治さんがこの学校の生徒だったとき、唯一敗北したのは3年のときのクラス対抗戦
その年以外のクラス対抗戦、そして部活対抗戦も個人戦もまったく他を寄せ付けなかったらしい

「当時、小鍛治さんを負けさせろみたいな空気はあったんですか?」
「・・・・分からない。ただ、今ほどクラス編成に偏りはなかったと思う。1つのクラスにトップ3集結なんてことはなかったし」

当時、小鍛治健夜を負けさせろというような指示が出ていたのかどうか、私には分からない
常に勝つなんてのは、小鍛治さんをもってしても難しい、というだけのことかもしれないし
何を考えても、想像の域から出るものではない

「ただ、もし宮永照さんがこのクラス対抗戦という鬼門を超えることができるのなら、前人未到の9冠はもう誰にも止められないと思う」
「小鍛治さんは8冠だったってことですよね、他に8冠とかそれに近い人っていたんですか?」
「私が知る限りでは、戒能さんが6冠、愛宕先生と校長先生が7冠だったかな? 全員3年のクラス対抗戦は負けてたはずだよ」
「なにか、ジンクスみたいなものなんでしょうか?」

歴代の強者でも越えられなかった、3年のクラス対抗戦
じゃあ今回、宮永照は勝てないということなんだろうか・・・・

でも、その方がいいのかもしれない
3−1が負けてくれれば、3−1を負けさせろという理事長通達に逆らっている咏さんもお咎めはないかもしれない・・・

「ジンクスか、そうかもね。でもだからこそ、宮永さんにはそれを乗り越えてほしいよ」

小鍛治さんが学校をやめた理由を、私は知らない

それでも学校を辞めてからも個人的に連絡はとっていた。私なら口が固いだろうということで、ときどき学校の様子などを尋ねられていたから
そこまで信用してくれているのだから、このことは福与さんにも咏さんにも言っていない

そして私が今回の理事長通達について相談したとき、小鍛治さんは静かにこう言った

『あなたは逆らっちゃダメだよ。私みたいになるから』

意味を問うても、それ以上は答えてくれなかった

『もし宮永さんが決勝まで進んだら教えて。直接、見たいから・・・』

そうして今、ここにいる

モニターは、大将戦の生徒たちが戻ってくるのを映し出していた
あと、半荘を残すだけ。それで決着がつく

最後に笑っているのは、誰なのだろう・・・・
839 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:50:00.03 ID:5NYEjkYY0
-side 豊音-

-クラス対抗戦決勝戦
-大将戦後半戦


東 大星淡(1−5)  131700
南 姉帯豊音(3−1) 115800
西 天江衣(2−10) 126100
北 石戸霞(3−2)   26400


-東1局
-親 大星淡
-ドラ 7ソウ

よーし、あと半荘だけだけど、頑張るよー

豊音 手牌:一一E112334578白

淡 打:9

「チー」

豊音 打:E

染めて友引で十分の手だねっ
さっきの前半の感じだと大星さんは、東場は様子見っぽいからガンガン鳴かせてもらえそうだよー

「あらあら・・・・」

そして石戸さんのツモ番になった時だった
石戸さんの、口癖自体は同じだったけど、その響きは全く違った

思わず身震いして石戸さんを見る
まるで光の竜巻が石戸さんを中心に暴れだしているように見えた

錯覚?
でも、確かに・・・

「へー、やっと本気出すんだ」
「それでなくてはな」

大星さんと天江さんは余裕でそれを見ていたけれど、私はあまりに急変してしまった石戸さんに驚いてしまう
今までは優しい眼差しだったのに、今となってはその眼光は獲物を射殺すくらいに鋭い・・・

これが、強制絶一門・・・

「ツモ、北混一ドラ1。3000、6000、お願いしますね」
「ちぇー、親っかぶりー」

霞 手牌:二三四五(赤)六八八九九九北北北 ツモ:七

きれいに染まってる・・・すごいよー

話は聞いてるけど、石戸さんは自分では解除できないらしいから、もうずっとこの状態が続くってことか
でも頑張るよっ。絶対に負けられないから
840 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:50:38.39 ID:5NYEjkYY0
-side 淡-

-東2局
-親 姉帯豊音
-ドラ Bピン

へー、これがハルエが言ってた、絶一門ってやつか

淡 手牌:一一二七八BCDEF北北白 ツモ:G

うーん、これめんどくさいなぁ。1種類来なくなるから、二向聴に構えるのが難しいなぁ。これ白とか切っちゃうと一向聴になっちゃう
私の能力は、テンパイ機会を得ると様子見とカウントされなくなちゃう

たとえばこの手で白を切ったとして、

手牌:一一二七八BCDEFG北北

この状態になったとする。そこにたとえば一萬を持ってきたとする

手牌:一一一二七八BCDEFG北北

ここで二萬を切れば、六-九待ちでテンパイする
他の牌を切ればテンパイしないけど、それはダメ

何かを切ったらテンパイできた、という状態がダメということ(この場合なら、二萬切りテンパイ)

あと、テンパイ機会はツモだけに限らない
自風が北だから、誰かが北を捨てたら「北を鳴いて二萬を捨てたらテンパイだった」ということになるからこれもダメ

だから二向聴以下に保っておかないといけない
結構めんどくさいのよね・・・・

とりあえず両面崩してくか

打:八

「チー」

げ、トヨネに鳴かれた
特に支援する気はなかったんだけど、しょうがないか・・・・

でもこれでツモ番がずれて、カスミのツモがこっちに来るのか
ハルエが言っていたっけ、カスミの絶一門は鳴けばずれるって。とりあえず今はむしろ向聴数落としたいくらいだからいいけど、南場になったときに面倒だなぁ・・・

でも次の私のツモは、Aピンだった・・・

「あっれー、ソウズが来るんじゃないの?」

現にカスミの河にはソウズと字牌しか捨てられていない
これって、カスミは今ソウズを集めてるってことでしょ? なのになんでカスミのツモが来たのにソウズが来ないの?

「ふふふ、いつまでも弱点をそのままにしておくわけないでしょう?」

カスミはそう言って微笑む
なーる、じゃあ鳴いても鳴かなくてもソウズはカスミに集まるってことか
あのドラローさんに鳴いても鳴かなくてもドラが集まるのと同じってことかな

でも、その弱点の克服はこっちにとっても都合はいい
鳴いてもツモがずれないなら、気にせずにどんどん鳴けるってことだからね

「ツモ。4000、8000です」

そうこうしている内にカスミに上がられた
まったく、様子見の途中であんまり高い手をどんどん上がられてもいい気分じゃないなぁ・・・

トヨネの親は終わったし、トヨネが鳴きやすいように支援しよっと
841 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:51:25.14 ID:5NYEjkYY0
-side 菫-

-東4局
-親 石戸霞
-ドラ 9ソウ

随分と久しぶりに自分のクラスに戻ってきた気分になる
石戸を励ましてきたあと、3人で教室に戻ってきた

「石戸が弱点を克服したと言うが、流石にすぐ対応してくるな」

東3局は天江衣が跳満をツモ。そして次の1本場は、

『ぼっちじゃないよー』

すでに4副露となった姉帯が1400、2700のツモ和了
まあこれは天江の親が続くのを嫌った淡が強引に姉帯を鳴かせにかかったというのもあるだろうが

鳴けばずれるというのは、確かに石戸にとっては弱点だっただろう
けれど、鳴くとずれて自分に不利益になる可能性があれば、他家も鳴きにくいという抑制効果もあるにはあった

石戸が邪魔されずに和了に向かえる代わりに、他の面子も鳴きによるデメリットが無くなったと言える
一長一短といったところか・・・・

「この親で、できるだけ稼ぎたいですね・・・」
「せやな、振り込んでも字牌だけやし、ガンガン攻めてかんとな」

霞 配牌:一一二二三三四五五五六七九南

南切りで待ちこそ八萬だけだが、配牌ですでにテンパイか・・・

「振り込むことも少ないが、逆に直撃も狙いにくいというのもなかなか厳しいかもしれないな」

ツモで全体を等しく削るのと、トップ目を狙って直撃をするのとどちらがいいのか・・・

「弘世さんがこの状況だったら、字牌を残して直撃を狙いたくなりますか?」
「流石にこれは清一優先だろうけどな・・・」

つい直撃を優先して考えてしまうのは、私のクセみたいなものか

『リーチ』

モニターから、リーチ宣言。ダブルリーチだ。ツモしかありえないから、確定三倍満だな
どうせ鳴かれてもずらされることもないなら、じっくりツモを狙えばいいだけか

『むー、こういうときに鳴いてずらせないのが困るのかー』

淡がもどかしそうにしている。まだ様子見をしているのだろう

具体的にどういう理屈で配牌でのテンパイを持ってくるのか分からないが、頑なに一向聴にすらとらないところを見ると、爆発するまではテンパイをしてはいけないとか、そういう感じなのかもしれない
そのへんのことはまた部活の中で聞いたらいい

ここであれこれ考えても、今は石戸には届かない

『ツモ、12000オールです』
「おっしゃ、きたで!」

王牌までは支配が行き届かないからドラには期待できないが、それでも十分な手だ

続く1本場
仮テンの混一のみだったが、淡からの直撃に成功する

『字牌で直とか忘れてたよー。ま、混一のみならいっか』

それでも相変わらずの余裕っぷりだ
2本場は淡がどんどん鳴かせて姉帯が友引で2200、4200のツモ和了だった

「親が流されたか」
「ラス親あるし、そこで期待やな」
「そうですね、まだまだ行けますよ」

当初10万点以上あった点差が、今は33400点にまで縮まった
この面子相手にここまでできるのか・・・

だが、次は淡の親番。おそらく親で稼ぎたいだろうから、配牌からテンパイしてくるはず

この淡の親が正念場だぞ、石戸・・・
842 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:53:06.65 ID:5NYEjkYY0
-side 淡-

-南1局
-親 大星淡
-ドラ 東


後半戦東場終了時点

大星淡(1−5)   92100
姉帯豊音(3−1) 100900
天江衣(2−10) 120200
石戸霞(3−2)   86800


さって、じゃあ爆発しちゃうよ

淡 配牌:13CDE西白白白発発発中中

ストックは12飜。小三元で4飜だから、残り8飜
さっきと比べると少ないけど、この小三元を大三元、最低でも混一を絡めて上がれば十分

ラス親ならもっとストックできたんだけど、こればっかりはしょうがない
それに、テルだって立ち親を捨てても十分強いんだから、私だってそのくらいできるっ

――あんまり字牌圧縮すると、石戸霞の清一が早まるぞ

そうハルエには言われたけどね

カスミは字牌もツモってる
でも私がこうやって三元牌を集めるとそれだけ字牌ツモが減り、清一の手の進みが早くなる

でもさ、それより早く上がっちゃえばいいんだよ!
それにさ、カスミが中を掴んだとして、清一目指すんだったら切っちゃうでしょ? 切らないで抱えてくれたって問題ないしさ

霞 打:中

ほら、切った

「ポン」

淡 手牌:CDE西白白白発発発 中-中中

さっきの字牌直撃、やり返してあげるよ
843 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:54:37.80 ID:5NYEjkYY0
-side 憩-

うーん、ちょっと衣ちゃんは旗色悪いかもしれへん・・・

「大星さん、すごいですね・・・」

小蒔ちゃんが驚くけど、なんやちょっと眠そうやな
眠ったら強くなるってこと自体はええけど、ところ構わず眠くなったりすると日常生活とか大丈夫なんやろかと思ってまうな

「衣ちゃん、思うように手が伸びてないね・・・」
「一向聴地獄が使えへんからな、片肺飛行でちょっと辛いな」
「え、どうして使えないの?」

まあ私も、初めはどうして使わないんやろうかと思ったんやけど・・・

「石戸霞は、たとえば今やったら萬子しかツモらへん。字牌もツモるとはいえ、萬子と字牌だけの相手にいつまでも一向聴なんてありえへん」

萬子36牌、字牌は平均で7牌くらいツモったとして、ツモる可能性がある牌は43牌程度
1局の間で使えるのは配牌で13牌とツモでおよそ17牌で合計30牌

これだけ種類が限定されていればよほどへません限りテンパイに至るし、ツモもできるだろう

「衣ちゃんが海底にたどり着く前に、石戸霞が先に和了してしまう。それを衣ちゃんは分かっとるから、一向聴地獄のときはそうならんように力を抑えとるんや」

まだリードはある
辛抱するところはぐっとこらえて、高打点のときに一気に稼ぐしかあらへん

「なあ、タオルとかあらへん?」

漫ちゃんが、おでこを腕で隠しながら顔を上げた

もう、隠さんでもええのになぁ・・・

「タオル? どうして?」
「小蒔ちゃんにかけてあげて。もう寝よる」

ふと見ると、すでに小蒔ちゃんは机に突っ伏していた

「おまかせあれ」

玄ちゃんは、タオルやなくて大きなひざ掛けを持ってきて小蒔ちゃんにかけてあげた

『大星淡、大三元をツモだー!』
『これでまた逆転だね☆』

モニターでは、大星淡が西をツモってきたところだった

「これ、ずっと配牌テンパイが続くんか?」
「流石に限度はある、と思いたいけどなぁ・・・・」

漫ちゃんの疑問は、1−5以外の他のクラスも、いや、この試合を見ている人全員が思っていることだろう
南場の親からずっとテンパイとかやったら、さすがにもう勝機が見えへんし
844 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:55:55.72 ID:5NYEjkYY0
-side 咲-

-南1局1本場
-親 大星淡
-ドラ Cピン

「・・・・まったく、ほんとに偶然ばかり起こりますね」

和ちゃんは意地でも淡ちゃんの力を認めないつもりんだろうか

「それにさっきから偶然の偏りが酷いですね。あの3年の方はずっと同じ色しかツモりませんし」

東場の間ずっと、和ちゃんの言うところの偏りが続いている
石戸霞さんの強制絶一門によって

鳴けばずれるはずだったのにそれも無くなったことで、石戸霞さんはずっと同じ色の牌をツモり続けている

「そろそろ別の理由を考えた方がいいかもしれません・・・」

そう言っている間に、配牌が終わろうとしていた

「え?」
「どうして・・・」

穏乃ちゃんと憧ちゃんが驚きの声を上げた

淡 配牌:二三七九BBDF257南北中

え、なにこれ?
テンパイしてないし、それに絶一門でもない

モニターの向こうの淡ちゃんも呆然としていた

「これが正常です。何を驚いているんですか?」

和ちゃんはそう言うけど・・・
だって、淡ちゃんのストックはまだ8飜あるはずだし、それに石戸さんだって自分の意志では解除できないって先生は言ってたのに

赤土先生を見ると、先生も驚きを隠せてはいなかった

「なんだこれ。全員が、それこそ和の言う正常な配牌だな・・・・」
「何が正常で何が異常なのか、なんだかごちゃごちゃしてきちゃいます」

普通の配牌が異常と感じるほど、確かにこの局の東場は偏っていた
だから急に普通の配牌になっていることに対応できていないのかもしれない

いったい、何が起きているんだろう

モニターの向こうで、ただ一人冷静さを保っていたのは
お姉ちゃんのクラスの、姉帯さんだけだった
845 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:57:29.94 ID:5NYEjkYY0
-side 衣-

なんだ、これは・・・・

衣 配牌:五七CEG24789南発中

いくら衣が海底支配を意図的に緩めているとはいえ、こんな酷い配牌にはならないぞ
それに、あの石戸霞の絶一門が終わっている?

「ちょっと、なんなのよこれ!」

対面の大星が憤る
・・・同じことが起こっているのか?

石戸は確か、自分の意志では絶一門は解除できないはず
これは小蒔から今朝聞いたこと。鳴いてもずらせないということも含めて聞いていたから、今この状態を作ったのは石戸ではない

だとしたら、残るは・・・・

「仏滅、だよ」

ニヤリと笑うのは、姉帯だった

仏滅? 六曜の1つだが、それが今なんだというのだ?

「私も含めて全員、牌に支配力は行使できないよー」

・・・冬の個人戦が不意に脳裏をよぎった

石戸霞、辻垣内智葉、そして臼沢塞
臼沢が睨んできたとき、確かに力が抑えられるような感覚はあった

でもこれは、今の状況は違う

上から抑えるというよりは、卓に支配力が届かない。どこかに反らされてしまっている・・・
目の前にあるのに、卓が遥か悠遠な場所に感じてしまう

そして普段なら感じるはずの相手の手の大きさ、テンパイか否か、それも見えない
海底が何であるかも、まったく分からない・・・

まるで月明かりもなく樹海を彷徨い歩いているかのようだ

「残り半分、ここからは普通の麻雀しよー」

姉帯は無邪気に微笑んでいるつもりなのだろうが、私には身を竦ませる効果しかなかった

これが、普通だと・・・
力を持たぬ有象無象どもは、こんな暗闇の中で麻雀を打っているとでも言うのか?

「まったく、とんだ隠し玉ね。でも、いいのかしら?」

石戸が首をかしげる
その視線の先には、大星

「やっぱ面白いよ、トヨネ。でも、ちょっと遅かったんじゃないかなー。私が大三元上がる前に、これをしておけばよかったのに」

あの大三元で、大星がトップに立った
かなりの差が出来てしまったが、それをこの暗闇の中で逆転できるつもりでいるのか?

まだ、リーチや裸単騎での上がりに賭けたほうが勝算があるだろう
姉帯は、それでも微笑んだままだった

「ふふ、確かにそうかもね。でも、そうじゃないかもしれない。今はこれが正しいって信じるよ」

そう言って、力強く打牌する

衣の心は、孤独に、そして深淵に飲み込まれようとしていた
支配していたはずの海を、漂流するかのように・・・・
846 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:59:18.20 ID:5NYEjkYY0
-side 照-

仏滅がようやく発動できたか・・・

「照ちゃん、これどうなってるの?」

髪をといてくれる宥の声

「六曜の1つ、仏滅。全員が牌になんらかの影響力を与えたときに、それをすべて打ち消すことができる。ただし、豊音自身も、友引とか全部使えなくなるけどね」
「マジでか、じゃあ私の未来視とかも封じられるんか?」

私の横で、結局末原さんの膝枕を堪能している怜
末原さんはすごく不機嫌そうだったけど、いつまでも怜がごねるので5分だけと折れた

「いや、怜は無理。未来を見るのと、影響力を与えるのは違うから。宥みたいに赤い牌を集めるとか、牌を自分の有利に動かそうとする力に対して打ち消すことができる」
「なるほどな、魔物対策の切り札って感じなんやな」
「そうだね。でもあれ、誰か1人でも普通の人がいたら発動できない」
「全員が支配力を持っているときだけ、ってことか」

塞のように、上から抑えるようか感じではなく、横へそらすイメージ

豊音の力が天江さんへ、天江さんの力が石戸さんへ、石戸さんの力が淡へ、淡の力が豊音へ

そんな感じでループして、渦巻きのようにぐるぐると卓の回りをただ回るだけ
卓には、力が届かない

塞のように特定の誰かだけ手を抑えるということはできないけれど、塞ぐことによる塞の負担が大きい
でも、豊音の場合は全員の力を反らしてしまえば、あとはぐるぐる回るだけなので負担は軽い

試したことはまだないけれど、おそらく私も仏滅の前には普通の麻雀を強いられるだろう

支配力勝負では、豊音は火力がない分押し負けてしまう可能性が高い
だったら、普通に運に任せた方が、まだ勝機はある

運に任せるには淡との点差はまだあるけれど、それでも・・・
847 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 06:59:59.66 ID:5NYEjkYY0
-side 淡-

「リーチ」

ほんと面白いね、トヨネ
でも残念、そこの小さな魔物さんは普段から支配力を振りかざしているから大変なんだろうけど、私は普通に打とうと思えば打てる

私の能力はビックバンだけじゃないからね
ストックを使い果たしてしまってまだ何局か残っているときは、絶対安全圏って手もあるんだから

相手を強制的に5向聴以下にして、自分は軽い手で逃げ切る
でもそのときは、私に特別いいツモが来るわけじゃない。それこそ、普通の麻雀して逃げ切っている

だから今はストックが切れたと思えばいい
8飜も使えなかったのはもったいないけどさ・・・

トヨネがツモって、リーチ棒を取り出した

「追っかけるけどー」
「通るけどー。って、なんで追いかけてくるのよ」

牌を横にしたけど、さっき自分も能力使えないって言ってたじゃない
ウソツキー!

一発目のツモは、自分の当たり牌じゃなかった
もう、これで振るんでしょ・・・

「振り込むけどー」
「通るけどー」
「って、通るのっ」
「通るよー。だから私も先負は使えないって言ったのにー」

もう、ややっこしいのよ
だったら1巡待ってから追いかけなさいよー

結局リーチの捲りあいは、トヨネが制した

「結局振り込んだー」
「まだまだ、ガンガン行くよー」
848 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/15(土) 07:01:14.75 ID:5NYEjkYY0
-side 霞-

-南3局
-親 天江衣
-ドラ 8ソウ

あらあら、これは困ったわね
絶一門状態ならなんとか逆転できると思っていたのだけれど・・・

どこかで仏滅という能力を使おうとしていた姉帯さんが、この場で一番冷静でいられたのは当然のことかもしれない
南2局で安いながらも連荘し、大星さんとの差を詰めていく

なんとか、のみ手で姉帯さんの親は流せたけれど・・・
ラス親が残っているとは言え、まともにやっていては逆転できる状況ではない

「ツモだよー。1300、2600」

また姉帯さんの和了

南4局、これが最後・・・
トップとの差は5万点近く

小蒔ちゃん・・・・

「出させてもらうわよ、全力以上・・・」

不本意ではあるけれど
できるだけ使いたくなかったけれど

これは約束だから

勝つために全力を、全力以上を出すと

まず仏滅を越えられるかどうか、それが第一関門
私は全神経を研ぎ澄ます

私の力も含めて、この卓を囲むように渦を巻いているのが分かる
ふふ、それでみんな支配を行使できないのね・・・

でも、渦を巻いているということは、その中心には台風と同じで目がある
だからその目を通れば、仏滅だろうが関係なく卓に舞い降りることができる

――裏九面

小蒔ちゃんに何かがあった時のために、血筋の近い私は九面を一時的に降ろすことができる

でも時間は限られている。もって3局
それに小蒔ちゃんにも負担がかかる
だから極力使う事態は避けたかった・・・・

でも、小蒔ちゃん自身がそう願うから
そして、クラスのためにも・・・

ここは、使わせてもらうわよ

私自身には降ろさず、卓に直接降りてもらう

一筋の光が、卓に突き刺さる
なんとか成功したようね。あとは、私が頑張るだけ・・・


-南4局
-親 石戸霞
-ドラ 1ソウ

霞 配牌:@BBBCCCDEFGHHH



クラス対抗戦
大将戦後半戦オーラス

大星淡(1−5)  119400
姉帯豊音(3−1) 111700
天江衣(2−10)  98600
石戸霞(3−2)   70300
849 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/15(土) 07:08:01.44 ID:5NYEjkYY0
結局最後まで書けてないのに、ある程度書けると投下したくなる・・・
とりあえず残るはオーラスのみ、ということで

淡については、アドバイスありがとうございます
原作とは順番が逆になりますが、ビックバンのストックが尽きたら絶対安全圏で逃げ切りというコンボを持っている、ということにしました。うむ、強引

明日は選挙です、選挙権のある方は投票に行きましょうね
選挙で羊先輩の小ネタ書いたけど、やっぱり方言難しいっすわ


目次
>>576
850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 07:29:37.96 ID:mAyXiGlRo
乙ー
魔物の見本市の中で普通の麻雀が来るとは思わなかった
咲さんとかもネト麻じゃ散々だったみたいだし、魔物の力がなけりゃ別ゲーになっちゃうよね
851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 10:55:14.95 ID:oLhsTXJAO
おつおつ
コイツは熱い展開ですなぁ
852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 11:39:46.21 ID:08dUvKN30
乙!
まさかの衣がただのこどもに……そして霞さんの配牌狂ってるwwwwww
853 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/17(月) 02:30:50.48 ID:tsd/vnvz0
-side 衣-

-4月

「はぁ、また別のクラスですのね」

クラス替えの名簿が貼り出されるのを、透華、一、純、智紀の5人で見上げていた
中学の時からずっといっしょにいて、5人で一緒にいるためにキャッチボール部まで作った友達

1年のときは智紀が同じクラスだったけれど、その智紀とも分かれてしまった
智紀は2−6だった

(2年10組)
天江衣
荒川憩



去年同じクラスだった憩と同じことだけが、救いか・・・

「ま、20クラスもあるんだから同じになる方がラッキーだろ。クラスは隣だから、何かあったら言えよ、衣」

純はまた一人、2−11
そして去年は別々だった透華と一は2−1で、今年は同じクラスだった

「じゃあボク達はラッキーってことだね、透華」
「そうですわね。でも、衣とも一緒になりたかったですわ」

少し悔しそうにする透華

「あ、衣ちゃんや。今年も同じクラスなんやね」

ひょっこりと現れたのは、憩だった。衣のすぐ下に憩の名前があるから、すぐに分かったのだろう

「智ちゃんとは別か、残念やなぁ」
「衣をよろしく・・・・」

小さくこくりと頭を下げる智紀

「む、そんなよろしくされるほど衣は子供じゃないぞ」
「そんなに気にせんでも、どんどんよろしくしたげるって」

そう言って、憩は衣の頭をなでた

「むう、だから子供扱いするなー」
「あはは、何回見てもこの反応はおもろいわぁ」

みんなと離れしまうのは寂しいけれど、憩がいてくれれば今年一年も退屈することはないだろうな
衣と対等に打てる、数少ない友達だから
854 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/17(月) 02:31:46.52 ID:tsd/vnvz0
-2年10組 教室

憩は顔が広い
誰とでもすぐに仲良くなれるし、羨ましい限りだ
すでに友達という何人かを紹介してもらった

まず、大阪つながりで知り合いという、絹恵と漫

「衣ちゃん、こっちが愛宕絹恵ちゃん。愛宕先生の娘さんで、あと3年の愛宕洋榎さんの妹なんよ」
「よろしゅうしたってや、衣ちゃん」
「で、こっちが上重漫ちゃん。可愛いおでこは伝言板やから、何か伝言があったらここに書いたってな」
「ちょ、なんでいきなり嘘教えるねん!」
「だって、洋榎さんがそう言うとったよ?」
「部長ぉぉぉ!!」

ふふ、なかなか楽しそうなやつらだな

そして、煌と玄
あの宮永照との戦いが注目されて自分より目立っていると透華が悔しがっていたので、名前だけは聞いたことがあった

「こっちが松実玄ちゃんやよ」
「よろしくね、衣ちゃん」
「それでこちらが、すばらちゃん」
「すばらです。って、私の名前は花田煌ですよ、憩ちゃん!」

そして、神代小蒔
憩と同じく、衣と対等に打てるらしい

「神代小蒔ちゃん。寝とるとすごい強いんよ」
「寝ると強い? だったら衣と同じだな。衣は満月の夜が一番強いぞ」
「そうなんですね、よろしくお願いします」


それから、クラスで練習もした

小蒔は、起きているときは弱かったけれど、寝ると衣の支配をあっさりと超えてくる
それに、玄と一緒に打つとドラが入ってこない
煌を飛ばすことは、何度打ってもできなかった

衣の支配など、誰もがひれ伏せるほど完璧ではないなんて、分かっていたことなのに・・・



-南4局
-親 石戸霞
-ドラ 九萬

霞 打:@
淡 打:北
豊音 打:北

衣 配牌:@@@AAAD(赤)D(赤)EEFFH ツモ:B

これは・・・

トップの大星までは、20800点差
この手なら、ダマでも倍満。だがこれでは直撃でなければ逆転できない

だが、リーチをかければ三倍満になり、出上がりでも逆転できる

H切りで、@ABCの4面張。だが@は既に切られているから、実質は3面張か
迷うことはない

かすかに手が震える

今は力が卓に届いていないのは分かっている
それでも、なぜだ・・・

なぜ、こんなにも牌が重いんだ
まるで、切ってはいけないみたいじゃないか・・・

でも逆転するには、これを切るしかない

「リーチ!」
855 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/17(月) 02:32:29.37 ID:tsd/vnvz0
-side 憩-

・・・・なんやの、これ
こんなの、ありえへん・・・


霞 配牌:@BBBCCCDEFGHHH

淡 配牌:124689東南西北白発中

豊音 配牌:一三四五七九東南西北白発中

衣 配牌:@@@AAAD(赤)D(赤)EEFFH


「どういうことなの?」

玄ちゃんの声も震えていた

石戸さんと、衣ちゃんでピンズを持ち合っている
そして大星さんと姉帯さんは、それぞれソウズとマンズを持つ形になっている

「今は誰の支配も受けんのとちゃうの?」
「その、はずなんやけど・・・」

漫ちゃんの疑問に、私は答える術がない
もし答えられるとしたら、今寝とる小蒔ちゃんくらいや・・・

衣ちゃんのツモは、Bピン
そもそも、配牌段階での上がり目であるHピンは石戸さんが全部持ってるから上がる見込みはなかったけど

「アカン、石戸霞の待ちはBからHまでの7面張や」

霞 手牌:BBBCCCDEFGHHH

配牌から@切りして、今はこの形
衣ちゃんがテンパイを維持するなら、Bをツモ切りか、Hを切るしかない

でも、それはどっちも当たり牌なんや
それをかわすなら、@かAを切るしかあらへんけど、見えてない衣ちゃんにそんな選択無理や・・・

っていうか私だってあの手あの状況なら、Hしか切るのはあらへん・・・

「衣ちゃん・・・」

玄ちゃんも、

「衣ちゃん、それ切ったらあかんて」

そして漫ちゃんも・・・
みんなの願いは通じへんけど

それでも、衣ちゃんの選択は、逆転しようって気持ちは間違ってないからな
それだけは、胸張ってええからな・・・

『ロン』

モニターの向こうで、無慈悲に石戸霞の牌が倒れた
856 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/17(月) 02:34:17.40 ID:tsd/vnvz0
-side 竜華-

なんやこれ・・・

石戸さんの手牌もなかなかありえへんけど、問題は他の3人のツモや
大星さんも、姉帯さんも、そして天江さんも、自分の持っている色の牌をツモってきてた

絶一門どころの騒ぎやない

全員が一色を独占しとる
けど姉帯さんと大星さんは字牌をバラバラと持っているのに対して、石戸さんと天江さんは字牌は一枚も入ってない

「これは、タイマンの殴り合いだな」

弘世さんが呟く

タイマン、確かにそうかもしれん

「もし、天江さんと石戸さんしかピンズをツモらないとしたら、山に残るのは8牌。4巡までに決着がつくってことですか」
「石戸の絶一門を強化した、ということなのかもしれない。推論に過ぎないが・・・」

姉帯さんと大星さんは字牌がバラバラなせいもあって5向聴
仮に5巡同じ色しかこなかったとしても、その間は何もできない

そしてピンズを持ち合う石戸さんと天江さんの殴り合いは、4巡までに決着がつく
5向聴の2人は追いつけない

まったく、一番の隠し球持っとるのは石戸さんやったってわけか

「今のが偶然か否か、次の局で分かるのかもしれないな」



南4局1本場

霞 配牌:一一三三四五五五七七八八九九

淡 配牌:二二二二三四四五(赤)六六六八九

豊音 配牌:@ADDFH東南西北白発中

衣 配牌:234688東南西北白発中



クラス対抗戦
大将戦後半戦南4局1本場

大星淡(1−5)  119400
姉帯豊音(3−1) 111700
天江衣(2−10)  80600
石戸霞(3−2)   88300
857 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/17(月) 02:41:52.00 ID:tsd/vnvz0
選挙速報を見てたらこんな時間になってました
牌は持ってないので、トランプを並べながら一色麻雀を考えてます

あともう少し、お付き合いください

>>850
姉帯さんがこの面子にまともにやりあうには、支配を打ち消すくらいしか思いつかなかった・・・

普通の麻雀させてーな
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 02:53:20.80 ID:r99F8dkK0
乙ー
普通の麻雀から一気に鰻になった……だと……
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 06:46:13.95 ID:IDmijBlXo
マンズ麻雀やバンブー麻雀を彷彿させる
860 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/21(金) 06:50:14.84 ID:XXbGO+XS0
年末進行で立て込んでます
週末、時間が取れたらいいなぁ・・・

生存報告だけ
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/21(金) 18:59:34.06 ID:g0MYol7S0
おっつ
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 02:36:47.19 ID:DaBSdvkm0
あげんなよ…
863 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/25(火) 12:26:36.44 ID:F1jScMS20
なんとか年末進行は潜り抜けました・・・・
年内に対抗戦の戦牌部分の決着までは行きたいです

が、一色麻雀、考えるの難しいっ

こうやってあがろう→あれ、これフリテンじゃね?、みたいなのの繰り返し・・・
頑張ります・・・・
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 15:46:10.66 ID:7mtFQ+gAO
ゆっくりで良いのよ?
頑張って>>1
865 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/28(金) 00:30:59.42 ID:jdFiJ7Vh0
-side 淡-

-南4局1本場
-親 石戸霞
-ドラ 1ソウ

淡 配牌:二二二二三四四五(赤)六六六八九

・・・・すごい配牌きたけどさ
七萬待ちの清一テンパイ

霞 打:三

私の支配はまだ卓には届いていない
それに前の局、小さな魔物さんがあっさり振り込んだ

その時も、カスミを同じ色を切ってリーチしてた
そして今回も、私と同じ色をカスミが切る

まさか、ね・・

「ねえトヨネ、あなたが持ってる字牌、当ててあげようか?」

揺さぶりが簡単そうなトヨネに聞いてみるか

「え?」
「ふふ、東南西北白発中、1枚ずつ」
「ええええ!?」

ほーら、簡単に動揺した
これでトヨネは白。この異常を起こした本人じゃないって分かる

「な、なんで!? 仏滅が破られた」
「んー、仏滅は継続中だよ」

そしてコロモがさっき振り込んだ以上、こんなおかしなことをしているのは

「ね、カスミ。面白いことしてくれるね?」
「あら、なんのことかしら?」

ふふん、すっとぼけたって無駄だからねっ

「カスミ、今この場を支配しているのは、あなたでしょ?」
「よく分からないけれど、早くツモってくれないかしら?」

まだすっとぼけるなら、こっちにも考えがあるからね

「ツモらないよ。チー!」

打:九

淡 手牌:二二二三四五(赤)六六六八 三-二四

これで振り込んだらカッコ悪いけど、どうやら通ったみたい
まあ、私が振り込むなんてありえないけどさ!

「でもどうせズレないんでしょ?」

これがカスミの支配ってなら、前と同じで鳴いてもマンズしか来ないはず

豊音 打:北

衣 打:北

「ううっ、さっきと同じだよー」

トヨネの声が少し震えている
でも大丈夫、私が勝って終わりだからさ

霞 打:六

「それポン!」

打:八

淡 手牌:二二二三四五(赤)六 三-二四 六-六六

これで、一-四-七 三-六の5面張。まあ、六萬は使い切っちゃてるけど
マンズしかツモらないってなら、これが正解でしょ
866 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/28(金) 00:34:46.61 ID:jdFiJ7Vh0
でも、次巡・・・

霞 打:五

淡 ツモ:八

うっ、鳴かなかったら上がれてた?
いや、鳴いたからマンズが来る順番は、ずれているはず・・・・

だからこれは鳴かなかったらカスミに行っていたはずだよ

うんうん、私が裏目るとか、ナイナイ

相変わらず微笑んだままのカスミ。ほんと、2つ上とは思えないくらい落ち着いてるよね

「ねえカスミ。そろそろ白状しなよ?」
「あら、別に。私は何もしてないわよ?」
「ふーん、まあいいけどさ・・・」

トヨネとコロモはまだ字牌整理中
さっきの私もそうだったけど、今の2人は染まっているけど字牌がバラバラで手が遠いっていう、なんだかなって状態のはず

霞 打:五

ふーん、カスミは五萬を2枚落としか
こっちの待ちが分かってるみたいに上手くすり抜けてくる

ああ、ハルエも言ってたっけ。カスミは滅多に放銃しないって
まあ、放銃しないなら、こっちがツモっちゃえばいいんだしね!

淡 ツモ:九

うえっ・・・
これどうしようかな

最初に私は九萬切っちゃってるから、これを持ってるってことはフリテンになっちゃうし

カスミが捨ててる順番は、

霞:三六五五

だから、九は通ってない
私が今まで切ってきたのは、九八八だけど、カスミの五五の2枚は手出しだったから、今度も九が通るとは限らない

回す?

いやいや、いまさらこんなの回すとかないでしょ?
こんなの回したら、もうオリ同然だよ

でも、なんか掴んじゃった気がするんだよね・・・

ねぇ、ノドカ・・・・

デジタルだったら、答えはちゃんと出るの?
振り込んでも期待値や効率的にしょうがないって割り切れるの?

多分ここで降りたら、もう次はないと思うんだよね・・・

さっきはコロモ、今は私がカスミと殴り合いになってる
だったら、次はトヨネの順番

さっきみたいなバラバラ配牌が来たら、もう上がることはできない

「行くしか、ないよ・・・」

クラスのみんなが、私が勝って帰ってくるのを待ってる・・・

こんなところで、退けるわけがない!
867 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/28(金) 00:38:23.35 ID:jdFiJ7Vh0
-side 和-

「さっきから何ですか、この異常な偏りは!」

オーラスに入ってからの配牌はすべて異常だった
いくら偶然が重なっても、ここまで完全に全員の手が染まるなんて、どれだけの天文学的確率だというのだろう

「どうして、誰の支配も届かないんじゃないの?」
「完全に石戸霞のペース・・・・どうすんのよ、これ」

咲さんも、憧も・・・

「淡、頑張れっ」
「まったく、最後の最後でこれか・・・」

穏乃も、そして赤土先生も・・・

みんな、固唾を飲んで見守っている
淡さんの勝利を信じて

淡さんが2鳴きして、絶好の多面張にする
これなら早々にツモれる

しかし、持ってきたのは、九萬

「最悪・・・・」
「淡ちゃん・・・」

憧と咲さんの呟きが重なる

霞 手牌:一一一三四五七七七八八九九

石戸さんも淡さんの上がり牌である七萬を持ってきて、五萬落としで回し、今は八九萬待ちになっていた
八萬はもうカラだから、現状ではこれが石戸さんの唯一の上がり牌

でも淡さんも、九萬を切らなければ完全に上がり目がなくなってしまう

「淡さん・・・」

分かってます。普通ならそんな九萬、ノータイムでツモ切りです


でもオカルトなら、止められるんじゃないんですか?


相手の待ちが分かったって意味の分からないことを言って・・・・
次のツモが分かったって意味の分からないことを言って・・・・

私には理解できない方法で、こんなピンチでも平然と和了してしまうんではないのですか?

振込さえしなければ、次の局にまだチャンスがあるかもしれない・・
だから、思いとどまってください

『行くしか、ないよ・・・』

淡さんが九萬を掴むのを呆然と見守ることしか、私にはできなかった
868 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/28(金) 00:40:59.85 ID:jdFiJ7Vh0
-side 智葉-

「大星淡、九萬で振り込んでしまったー!」
「これは降りれないし、しょうがないね☆」

オーラスに入ってから、異常な状況が2局続いている

いろんなオカルトに接してきた
その度対策を練ってきた

しかし、これはなんだ・・・
どうしてこんなことが起こる・・・

「どう智葉ちゃん、なんか心当たりある?」

福与先生が話を振ってくるが、心当たりなどはない
それでも何かしらで話はつながなければならない

まったく、解説というのもなかなか大変なものだな

「この2局、まるで石戸霞が対戦相手を選んでいるようですね」
「と言うと?」
「石戸は2局とも字牌もなく手が染まっています。そして前局は天江、今回は大星が振り込みました。それ以外の相手は、手が染まっているものの石戸とは別の色で字牌もあり、バラバラです」

字牌が7種7牌ではどうしようもない
かつ、他の数牌は他に独占されているから国士にも向かえない

「ですから数巡の間は、その場にいながら観客としてみているしかない状況です」
「うーん、確かに石戸さんの絶一門に通じるものがあるかもね☆」

だが、これはネタさえ割れば諸刃の剣だ・・・

「天江に対しては奇襲が成功しましたが、それを見た大星に対しては紙一重でした。対戦相手に必ず振り込ませるまでの強制力はないと思われますね」

残るは姉帯豊音、ただ一人
石戸霞が上がれば、鳴き清一でも満貫あるから逆転。3−2の勝利で決着がつく

ただ、山に残る一色牌は5巡で尽きる
なら、その5巡で勝負がつかなかったら?

そのときは、傍観者だった周りの2人が息を吹き返す
ただ少なくともその5巡で、決着がつく公算が高いのだろうが

当初の予想とは全く逆になってしまったな・・・

だが、それが麻雀か・・・


「さあ、この局で決着はつくのか、南4局2本場、開局だ!」
869 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/28(金) 00:42:48.89 ID:jdFiJ7Vh0
-side 霞-

残り1局・・・

「姉帯さん」

もう、ネタはバレているだろう
1人ずつ一色麻雀を仕掛けているのが、私だということくらい

「何かなー?」

複雑な表情を浮かべる姉帯さん

このまま、2局続いたままのバラバラの手牌だったらどうしようという不安と・・・
次は自分の番だろうという、覚悟と・・・

「あえて、あなたを最後にしました」
「・・・タイマン勝負の対戦相手に、かな?」

私はゆっくりとうなづく

「本当のところ、最後の最後になるまでまとまりのなかった私たちのクラスが勝つなんて、今でもどうかと思う部分はあるの」

姉帯さんは口を挟まず、黙って聞いている

「私はひねくれているから、逆に3−1が勝ったらいいのになんて思っていた」

それは変えられない事実
そして、悲しい過去

けれど、今は・・・・

「でも、こんな私でも、背中を押してくれる人はいた」

最後の最後で、ようやくクラスがまとまった
それは私が捨て鉢になってしまったからなのかもしれないけれど
普通に戦って、そこそこの点差に収まっていたら、まとまっていたのか疑わしい


それでも、それでも・・・・


やっぱり、バラバラになりたくてなったわけじゃないから
どうあれ、5人でここまで来たのだから

だから、姉帯さん。もう勝利は譲れない!

「姉帯さん。あなたが勝ちたいのなら、このくらいの障害、越えてみせなさい。あなたと、あなたを信じるクラスのために」

私は姉帯さんを射抜くつもりで視線に力を込める

それを受け止め、姉帯さんは微笑んだ
ぐっと握りこぶしに力を込める

「もちろん、初めからそのつもりだよ!」
「始めましょう。誰が勝つにしても、これがきっと本当にオーラス」

サイコロが回る
裏九面での支配も、この局までが限界、だから・・・


泣いても笑っても・・・・これが最後・・


ただ願わくば、決着の時に笑っているのが3−2であるように
全力で、全力以上で、戦おう



クラス対抗戦
大将戦後半戦南4局2本場

大星淡(1−5)  101100
姉帯豊音(3−1) 111700
天江衣(2−10)  80600
石戸霞(3−2)  106600
870 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/28(金) 00:51:47.11 ID:jdFiJ7Vh0
今日はここまでです

1000まで行くまでには終わると思っているのですが・・・
終わらなかったら、「tell you」をスレタイにして、はじめの部分の誤字とかしてるところを直しつつ上げ直したほうがいいのかなぁとか、今からいらない心配をしてます

ゆっくりとのお言葉もいただきましたが、あくまで目標は年内決着ということでぼちぼち書いていきたいと思います
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 19:17:46.14 ID:Z7uJD8Zt0
乙ー
まさか淡版「行けるよね……」が見れるとは……
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 22:52:44.19 ID:MDSNPXKlP
おっつー
>>859で知ってバンブー麻雀初めてやったけど、想像以上にすさまじいインファイトだなこれ
あわあわや石戸さんには一体何が見えてるんだ…
873 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:47:44.53 ID:YX7GGuO90
-side 豊音-

-南4局2本場
-親 石戸霞
-ドラ @ピン

霞 打:1

豊音 配牌:1122333579999

うわー、とても配牌とは思えないくらいにきれいに染まってるなぁ
ほんとにすごいよー

私はこの学校に来るまで、同い年の友達もいなかったから・・・
こうやって卓を囲むこと自体、全然できなくて・・・

だから、今はとても楽しい

多分、こんな時間は長くは続かないけれど・・・・
続かないから、だからこそ

私は戦うよ、悔いの無いように

「ポン」
「む、飛ばされたー」

大星さんが悔しそうに口を尖らせる

うん、ごめんねー
でも、私だって負けられないから!

豊音 打:5
手牌:2233379999 1-11 (8待ち)

すごい緊張感だよー

もしかしたら、すぐにでも振り込んでしまうかもしれない・・・
近距離で、逃げ場のない麻雀
ドキドキするよー

でも、こんな気持ちは一人だったら絶対に味わえなかったから・・・

みんな、ありがとう
ほんとに、ほんとに、ありがとう

だから、絶対に勝つよー
874 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:49:48.70 ID:YX7GGuO90
-side 照-

この局で、決着がつく・・・

霞 手牌:2444556677788

ツモ:6
打:2

霞 手牌:4445566677788 (35689待ち)

5面張・・・・
高目でツモり四暗刻だけど、あがれば勝ちだから今は手の高さは関係ない

とにかく手広く構えること
その点では、石戸さんの方が圧倒的に有利だろう

『ポン』

また、豊音が鳴く

「ダメ、振り込んじゃう・・・」

宥の声は震えていた

豊音 手牌:33379999 1-11 2-22

テンパイを維持するためには、3ソウか9ソウを切るしか無い
7ソウを切れば振り込まないが、それではテンパイが維持できない

「ダメだよ、豊音!」

塞も、

「負けちゃうのよー」

由子も、

「・・・豊音に、一巡先を見せてあげたいな」

怜も、

みんな悲壮感を漂わせ、モニターを見つめていた


ねぇ豊音、その道はとても細くて険しくて、誰もが歩める道ではないけれど・・・
でも、その道を行くと決めたんだったら、私はあなたを信じるよ

勝って、帰ってきてくれるって・・・



――豊音の選択は

875 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:51:31.98 ID:YX7GGuO90
-side 小蒔-

覚醒する
いつもより少し体が重たい感覚

そう、霞ちゃんが裏九面を使ったのだろう

「あ、小蒔ちゃん、起きたんだね・・・」

玄ちゃんが少し暗い表情で、私を見つめた
ひざ掛けが私にかかっているのに気づく、これは確か玄ちゃんが使っていたはず・・

「すいません、少し眠っていたみたいで。あと、これ」

ひざ掛けを取って、畳む
渡そうとしたけど、玄ちゃんは首を振った

「いいよ、使ってて」

玄ちゃんは小さく首を振って、モニターを見つめた

漫ちゃんも、憩ちゃんも、表情は暗い・・・

南4局2本場
衣ちゃんだけが10万点を切っている状況
そして霞ちゃんと、姉帯さんの手牌・・・

ああ、そうか
これで霞ちゃんが勝って終わり

どうやら、最強の裏九面が降りてしまったらしい

あの場では、ツモができない
どんなにいい待ちだったとしても、ツモ牌はギリギリまで回ってこない。山に和了牌しか残っていないという状況にならない限り
ロンしかできない、殴り合いの場

そして霞ちゃんには、相手の待ちが分かるから・・・


対局者はただ、霞ちゃんに振り込むしかない


霞ちゃんに全力を出せといったのは、私
でも、このクラスの雰囲気・・・

それは正しかったのだろうかと、心に霧がかかったようにもやもやとする

「霞ちゃん・・・」

それでも、全力を出さずにただ敗れる霞ちゃんを見ていたら、そのときはきっと今以上にもやもやとした気分を抱えていたのだと思う

最善なんてその場では何か分からない
ただ、その瞬間の決断に身を委ねられるかどうか・・・

衣ちゃんが戦っているのに不謹慎かもしれないけれど
今は、霞ちゃんが悔いなく戦ってくれるのを願うだけ


モニターの向こうでは、姉帯さんが牌を切るところだった

876 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:52:50.86 ID:YX7GGuO90
-side えり-

『姉帯豊音、7ソウ打ちで振り込みは回避ー。しかし石戸霞の逆転優勝は時間の問題かー!』
『石戸がツモれなくとも、姉帯の振り込みの方が早いでしょうね・・・』

こんな麻雀は、見たことがない
4人いるのに、戦う資格があるのは、ただ2人だけ・・・

ふと、隣に座っていた小鍛治さんが席を立った

「・・・どうされたんですか?」
「帰るね。決着はついたから」
「は?」

石戸さんがかなり優勢な状況ではあるが、まだすべてが決まったわけではないのに

「石戸さんが勝つってことですか?」

微笑みを浮かべたまま、小鍛治さんは小さく首を振った

「それは言わないでおくよ。でも、終わる前に学校を出ておかないと見つかっちゃうから」

決着がつけば、人の動きは激しくなる
観戦者が学校を出るし、生徒は講堂に集まって表彰式がある
その前に出ておきたいということだろう・・・

「・・・・分かりました。一応、結果はメールしておきます」
「ありがとう」
「おいおい、最後まで見ていきなよー」

出入り口の付近に立ちふさがっていたのは、咏さんだった
なんで、誰にも教えてないのに・・・

同じことを思ったのか、小鍛治さんが私をチラリと見る
私は慌てて首を振る

その視線の意味に気づいたのか、咏さんが扇子をばっと開いた

「えりちゃんの名誉のために言っとくけど、えりちゃんから聞いたわけじゃないぜー」
「・・・加治木さん?」
「違う違う、野依さんに見られてたんだよ」

野依さんか・・・
仮に見つかっても、上手く伝えられない気もするけれど・・・

「いやぁ、野依さん結構鋭いんだよ。でもそれを人に伝えるのが下手だからさぁ・・・探すのが大変だったんだよ?」
877 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:54:33.18 ID:YX7GGuO90
-side 理沙-

-副将戦対局中

お祭り、楽しいな!
私のクラスはすぐに負けちゃったけど、みんながみんな勝てるわけじゃないし、楽しんだもの勝ちだよね

私はいろいろな出店を回って、ちょっと休憩しようと少し離れた場所で休んでいた

そこで見たのは、

「・・・加治木さんと・・・・小鍛治さん?」

辞めちゃってから連絡も取れなくなっていたけど、間違いない・・・

どうしよう、どうしよう!
誰かに伝えなくっちゃ!

とにかく、まずはみさきちゃんに話そう

私は小鍛治さんたちがどこに向かおうとしているのかもよく確認しないまま、慌てて職員室に向かった



職員室に入ると、みさきちゃんは自分の席に座ってパソコンに向かっているところだった

「みさきちゃん!」
「なんですか? 野依さん」

迷惑そうな素振りも見せずに、パソコンから私に視線を向けてくれる
やっぱりみさきちゃんは優しいな

邪魔したら悪いし、すぐに伝えなくっちゃ!

「いた!」
「・・・・何がいたんですか?」

いつもそうだけど、これじゃあ全然伝わらないよね・・・
みさきちゃんに嫌われちゃうよ
頑張って伝えないと!

「こ、こ、こか・・・」
「コカ・コーラですか? 出店で売ってても不思議じゃないでしょう?」
「違う!」

なんでそうなっちゃうの・・・
つくづく、自分の口下手さかげんが憎いよぉ

みさきちゃんもだんだんイライラしてきてるように見えるし・・・

「なら、はっきり言っていただけませんか?」
「ううぅ。こ、小鍛治さん」

やった、言えたよ!

「ここ、加持さん? ここってどこですか?」
「ここじゃない!」

うう、でも伝わってないよぉ
やっぱり私ってダメ・・・

それに、加持さんじゃなくて小鍛治さんなのに、それすらも伝わってないし

「じゃあどこですか?」
「裏の方!」
「裏の方に、加持さんがいたんですね? で、加持さんって誰ですか?」
「違う!」
「じゃあどこですか? っていうかそもそも裏の方って・・・」
「加持さん、違う!」

だから加持さんじゃないのに!
878 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:56:40.19 ID:YX7GGuO90
「今日も野依さんと吉村さんのコントが楽しそうだねぇ」

そこに、三尋木さんがやってきた

「いえ、別にコントをしてるつもりはないんですけど」
「コント違う!」
「まあいいけどねぃ。ところで野依さん、そんなに言いたいことがあるなら、とりあえず紙に書いたらどうよ?」

確かにこのままだと全然伝わらないし・・・

私は、『加治木さんと小鍛治さんが一緒に歩いているのを見た』と書いて、2人に見せた

2人とも驚いた表情を見せる
特に三尋木さんの食いつきは予想以上だった

「マジで、どこに行こうとしてた?」
「そこまで見てない!」
「ああそうか。まあいいや、加治木ちゃんと一緒だったなら、私は加治木ちゃんに聞いてみるわ」

そう言うと、三尋木さんは職員室を出ていった
その様子を見送ると、みさきちゃんは大きくため息をついた

「まったく、加持さんって誰ですか・・・」
「そんなこと言ってない!」

私がはっきり言えないのが悪いんだけど・・・

「じゃあこれから野依さんと会話するのは、全部筆談にしましょう」
「イヤ!」

みさきちゃんと話せなくなるなんて、嫌だよぉ・・・

「まったく、そんな怒ってるんだか泣くんだかよくわからない表情しないでください・・・」
「でも!」
「別にいいんですよ、これでも伝わらないのを楽しんでいるところありますから。でも、急ぎの時は紙に書いてくださいね」
「分かった!」

ほんとに、みさきちゃんは優しくて、大好きだよ!
879 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 22:58:45.11 ID:YX7GGuO90
-side 咏-

野依さんからの目撃談を元に、加治木ちゃんに電話してみる

『はい、加治木ですが。どうしました、先生』
「単刀直入に聞くぜい。すこやんがどこにいるか教えてほしい」
『・・・おっしゃる意味がよくわかりませんが』

うーん、これはすこやんに口止めされているか、それとも自主的に黙ってるか、か
加治木ちゃん義理堅いから、口を割るのは難しいかもしれんね・・・

まあでも、もうちょっとだけ粘ってみるか・・・

「野依さんが見たって言ってるんだよ、加治木ちゃんとすこやんが一緒にいるのを」
『人違いではないですか?』
「野依さん、そういうところはしっかりしているんだけどねぇ」

少しばかりの沈黙
そして・・・

『これは想像ですが』
「ん?」
『もし、小鍛治先生が学校に来るとしたら観戦が目的になるんでしょう。けれど、お忍びであるならあまり人目には付きたくないでしょうね』
「そうかもしれないねぇ」
『私から言えるのはこれくらいです。よろしいですか?』
「ああ、悪かったね」
『では、表彰式の準備もありますので、これで』

通話が切れる

なるほどね・・・
観戦目的で、かつ人目につかないところ

いくつか候補はあがるけど、これは特定には骨が折れそうだねぃ



そして手当たり次第に、奥の方の観戦室を回って、ようやく見つけた頃にはもう大将戦も佳境を迎えていた
まったく、おかげでろくに観戦できなかったじゃないか
あとでリプレイがあがったら確認しておかないとねぇ

こっそり部屋に入る

む、なんでえりちゃんがすこやんと一緒にいるんだろ・・・
しかもなんかすっげー親しげに話しているし

なんかイライラしてくる
でも今はとりあず落ち着こう。後で問い詰めてやればいいこと・・・
覚悟しとけよ、えりちゃん!

ひとまず見つかったメールをして、話しかけるタイミングを探る

と、すこやんが立ち上がった
最後まで見ていかないのか?

とにかく、今はこの部屋に足止めしとかないとな
時間は稼いでやる、だから早く来いよ・・・
880 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 23:01:05.94 ID:YX7GGuO90
「まあ、とにかく最後まで見ていきなって。人は予想を超えてくるって、誰のセリフだっけか?」

扇子をパタパタを仰く
すこやんは、キッと私を睨む
卓上なら震え上がるんだろうけど、普通に睨まれてもそんなには怖くないね

「他に誰か、ここに私がいるって知っている人は?」
「今、すこやんに一番会いたい人に伝えたよん」
「・・・・なら、なおさら私はもう帰らないといけないね」
「だから、せめて最後まで見ていきなって。試合の途中で席を立つのは、いくらすこやんでも見過ごせないな」
「終わったら、そこをどいてくれる?」
「ああ、約束する」

そこらが潮時だろうねぇ
それに、私だって自分のクラスの勇姿を見届けたいんだ、今この場を離れらてても困るんだよ

「・・・・分かったよ。結果は見えてるけど、見届けてあげる」
「終わってもいないのに、ウチのクラスのこと馬鹿にするのやめてくれないか?」

だけど、そう簡単に結果が見えてるなんて言われて黙ってもいられないんだぜ
どうせこのまま石戸が勝つとでも思ってるんだろう

私は3−1が、みんながどれだけ頑張ってきたか見てきたんだ
だから、そんな簡単に結果が見えたなんて、いくらすこやんでも許せるか!

「馬鹿にしてなんて、ないよ」
「じゃあ結果が見えてるなんて言うなよ」
「見えるんだから、仕方ないよ・・・。それに、私は石戸さんが勝つ結果が見えたなんて言ってないよ」

なんだと・・・

『石戸霞は1ソウのツモで、これはノータイムでツモ切り』
『だけど姉帯さんは、何をツモっても3か9を切らないとテンパイにならないから、まだ石戸さんが優勢だね☆』

石戸霞のツモ和了はなかった
でも、まだこれで豊音がすぐに和了できるわけじゃない・・・

いや・・・

「まさか・・・」
「うん、これで決着だよ」

豊音のツモ牌・・・
手の中には、石戸の当たり牌だけになってしまった

そうか、それを引くのか
そこまで見えてたってのかい、すこやん・・・
881 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 23:03:39.10 ID:YX7GGuO90
-side 霞-

ツモ上がりは基本的にはできない
けれど、多面張に受けておけば、いずれツモることはできる

そして7ソウを切った姉帯さんの手牌は今テンパイすら維持できていない
いずれ、私のロン牌がこぼれてくるだろう

それで決着する

姉帯さんのツモ
そこで手が止まった

「大星さん、天江さん・・・」

なぜか、姉帯さんは両脇の2人に声をかけた

「なんだ?」
「どうしたの? ツモなら、もったいぶらないでいいんだよ?」

大星さんの問いに、姉帯さんは小さく首を振った

「私がこの石戸さんの一色だけの麻雀の最後の相手じゃなかったら、私は何もできなかったと思うから・・・」

そこで姉帯さんは、ひと呼吸置いて、

「ありがとうっていうのも、ごめんねっていうのも、変な感じだけど。とにかく、そんな気持ちだよって伝えたくて」
「・・・・お前は勘違いをしているぞ」

天江さんが、不敵な笑みを浮かべる
虚勢のようにも見えるけれど・・・・それでも、その声は力強くて

「衣は、勝負が決するまで諦めたりしない」
「私だってそうだよ。だからとっととソウズを全部使い切っちゃえ!」

そう、まだ2人とも諦めてないのね・・・
けれど、ソウズを使い切るなんてことは無いわ

「姉帯さん、ツモでないのなら、切っていただけるかしら?」
「うん、ツモじゃないよ・・・・でも、切るのはちょっと待ってね」

そう言うと、姉帯さんは瞳を閉じた
そして呟く

「仏滅・・・解除!」

え、今になってどうして?

「カン!」

パタンと倒れる、4枚の9ソウ・・・

そんな、まさか・・・
882 :tell you that I love ...(8-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2012/12/30(日) 23:05:00.64 ID:YX7GGuO90
-side 豊音-

嶺上牌は、@ピン

そう、もし石戸さんの絶一門と同じことが起こっているなら、嶺上牌は支配下に無いはず
これで違ってたらどうしようかと思ったけど、思ったとおりで良かったよー

これなら、大丈夫!

豊音 手牌:3333@ [9999] 1-11 2-22

「もいっこ、カン!」

今4枚揃えた3ソウもカンする

「うわ、サキっぽい!」

照の妹の咲ちゃんが得意な嶺上開花。でも、私は普通の状態でそれを真似できるわけじゃない
本当の目的は・・・

カンした3ソウも倒して、卓の端に寄せる

目の前に残るのは、@ピン1枚だけ

「ぼっちじゃないよー」

そう、友引を成立させるためのカン
誰かから鳴くだけじゃなくて、暗カンでも裸単騎にさえなれば成立するから

ずっとぼっちだった私だけど・・・
もう、一人じゃないから

だから、これで決める!

嶺上牌を引き寄せる

「お友達が来たよー」

手にした@ピンと、手元の@ピンを一緒に倒す

「ツモ、嶺上開花トイトイドラ2。2200、4200」


みんな、勝ったよー!
みんながここまで、一生懸命つないでくれたから

だから、だから・・・

「ありがとうございましたぁぁぁぁぁぁぁ」

勝ったのに、すごっく涙が出てきちゃうよー

すっごく、嬉しいよぉぉぉぉぉ



クラス対抗戦 終了

姉帯豊音(3−1) 120300
石戸霞(3−2)  102400
大星淡(1−5)   98900
天江衣(2−10)  78400
883 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2012/12/30(日) 23:07:46.48 ID:YX7GGuO90
ようやくクラス対抗戦が終わりました
長かったなぁ・・・・
とりあえず年内決着の目標達成ということで

新年になってからの帰省になるので、次回更新はしばらく空くと思います

それでは、よいお年を!
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 23:14:00.48 ID:zEjiGKmSO
乙だあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 23:20:30.70 ID:zsTsEu11o
乙です
その手があったか
本編でも姉帯さんのリンシャンカイホー見たかったな
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 23:21:35.47 ID:hWIyemhAO
おつおつ。イッチもよいお年を

来年二スレ目行くー?
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 23:42:14.92 ID:GdGmtr1b0
乙ですわー、ついに対抗戦が終了したかー

>>1も良いお年をー
888 :tell you that I love ...(intermissionExtra-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/01(火) 17:45:14.01 ID:rpONg+cq0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)

リクエスト
>>655
透華がもっと麻雀で目立つ為に玄のド派手なドラ麻雀の秘密に迫っていく……
そしてその内玄自身の人柄に……


-去年度個人戦終了後

透華「納得いきませんわ!」

一「・・・何がさ?」

透華「あの松実玄とかいう女ですわ!」

一「ああ、あのチャンピオンに倍満直撃したっていうあの?」

透華「個人戦の成績も学年ランクも私のほうが上。なのにどうして、みんな口を開けば松実松実と・・・・腹立たしいことこの上ないですわ!」

一「まあ、あの直撃は目立つからねぇ・・」アハハ

透華「だいたい、ドラが集まるとかなんなんですの? 何か秘密があるに違いありませんわ!」

一「秘密ねぇ・・・・」

透華「調べてらっしゃい、一!」

一「はぁ、しょうがないなぁ・・・。まあ、心当たりはあるから、そこから当たってみるよ」

透華「流石ですわ、もう調べがついてるのね!」

一「いや、話聞きに行くだけだよ。玄さんの、お姉さんにね」


-放課後

一(とはいえ、どう切り出したものかな・・・。宥さんとは夏フェス以来少しは話すようになったけど・・・)

一「まあ、うじうじ考えたって仕方ない。ストレートに聞くか」

宥「あれ、はじめちゃん・・・。こんなところで、どうしたの?」

一「ああ、ちょうど良かった。ちょっと宥さんに聞きたいことがあって」

宥「私に?」

一「厳密に言うと、妹さんのことなんですけど」

宥「玄ちゃん? 玄ちゃんに何かあったの?」

一「大したことじゃないんですよ。ただ、あの個人戦で注目を集めてるから、どんな人なのかなって聞きたくって」

宥「あ、そうなんだ。じゃあ、食堂に言って話しようか」
889 :tell you that I love ...(intermissionExtra-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/01(火) 17:47:19.39 ID:rpONg+cq0
-食堂

一「それで、あのドラが集まるってのは、昔からそうだったんですか?」

宥「小さい時はそうでもなかったんだよ。でも、お母さんが『玄ちゃんはドラをもっと大切にしなさい』って言って、それから気づいたら玄ちゃんにドラが集まるようになってたんだ」

一「そうなんですか」

宥「お母さんが亡くなってからは特に、ね。だからあの時、玄ちゃんがドラを切るなんて、私でも驚いたくらいなんだよ」

一「え、亡くなった・・・」

宥「あ、気にしなくていいよ。小さい時のことだし」

一「ごめんなさい。軽々しく聞いていい話じゃなかったみたいで・・・」

宥「いいんだよ。それに、はじめちゃんなら大丈夫だと思うから」

一「・・・あの、本当は、ボクが気になったんじゃなくて。友達の、龍門渕透華って子が調べてこいって言って。だから・・・」

宥「友達思いなんだね。言いふらしたりしなければ、別に構わないよ」

一「ありがとうございます」

宥「強いて言うなら、気になるついでに玄ちゃんと友達になってくれたら嬉しいかな」

一「友達、ですか・・・」

宥「うん。今日はこれからボーリング部で自主練習だから、近くのボウリング場に来てくれれば会えるよ?」

一「そうですね。ちょっと誘ってみます」


-教室

一「という感じで、ドラが集まるらしいよ」

透華「・・・・なんだか、張り合おうとしてたのが馬鹿らしくなってきましたわ」

一「馬鹿らしくって・・・」

透華「貶してるわけではなくってよ。ただ、親の形見みたいなドラを切ってまでチャンピオンに立ち向かったのなら、目立って当然ですわ」

一「うん、そうだね。それで、どうする? 今ならボウリング場に行けば会えるみたいだよ」

透華「そうですわね。これを機に、私が真のアイドルであることをあの松実玄に教えて差し上げますわ」

一「結局そうなるんだね・・・」


-ボウリング場

宥「あ、来てくれたんだね」

一「急に押しかけちゃってごめんなさい」

玄「えっと、龍門渕さんと国広さんですよね、始めまして」

透華「初めまして。今日は突然押しかけてしまって申し訳ございませんわ」

宥「いいんだよ、誘ったのは私だし」

透華「とはいえ、勢いで来てしまったのであまりボウリングのことは存じ上げませわ」

玄「じゃあ、2人ずつに分かれようか」

一「じゃあボクは宥さんとがいいな」

宥「じゃあ、玄ちゃんは龍門渕さんに教えてあげてね」

透華「透華で構いませんわ」

玄「じゃあ透華さん、よろしくね」
890 :tell you that I love ...(intermissionExtra-6) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/01(火) 17:48:32.09 ID:rpONg+cq0
透華「多分何度も聞かれているとは思いますけど、個人戦のドラ切りはどういった心境でしたの?」

玄「・・・・面と向かって聞かれたの、初めてかも」

透華「そうなんですの、あれだけ目立ったのに!」

玄「いや、別に目立つために切ったわけじゃないんだけど・・・」

玄「チャンピオン相手だから切らないといけない時もあるよねって勝手に納得されちゃうから、深く理由って聞かれないんだよね」

透華「ああ、それは確かにそうかもしれませんね・・・」

玄「でも、チャンピオン相手だから切ったって理由も、しっくりこないんだけどね」

透華「他に何か理由がありまして?」

玄「うん、一緒に打った煌ちゃんと園城寺さんの方が、私以上に頑張ってたから。特に園城寺さんは、得意のリーチ一発を封じてでも立ち向かおうとしてたから。だからかな・・・」

透華「失礼かとは思いましたが、ドラが集まる理由についてはすでにお姉さまから伺いましたわ」

玄「うん、来る前におねえちゃんから聞いたよ」

透華「普通の対局なら切らなかったけれど、その時ばかりは園城寺さんたちに感化されて、ドラを切る決断をしたということなのですね」

玄「そんな感じ、かな」

透華「玄さん。ごめんなさい!」

玄「え、え、なんで急に頭を下げるの!! 上げてください」

透華「私は、自分が恥ずかしいですわ! ただ目立っているというだけで玄さんのことを調べて・・・。そんな深い理由もあると知らずにっ」

玄「そ、そんな大したことじゃないですから、とにかく頭上げてください」

透華「それでは私の気が済みませんわ」

玄「私の気は済んでますからっ。それに、ここまで聞かれることもなかったから、嬉しかったっていうか・・・」

透華「嬉しい?」

玄「あ、やっと頭上げてくれましたね」

透華「それはその・・・」

玄「とにかく、ただドラを切ったってことだけじゃなくて、その理由も聞いてくれて、その上こんなに素直に謝ってくれて・・・透華さんって、優しい人なんですね」

透華「や、優しいだなんて、そ、そんなことございませんわ・・・」

玄「そんなことないよ。とっても優しくて、素敵です」

透華「す、素敵だなんて、そんなに褒めても何も出ませんわよ!」

玄「思ったことを言っただけですよ?」

透華「・・・わ、私の投げる番ですわね!」

玄「あ、ガター・・・」

透華「っ、玄さん!」

玄「なに?」

透華「今日は私のコーチ役なのでしょう、しっかり教えてくださいます!」

玄「ふふ、おまかせあれ!」


一「透華ったら、面と向かって褒められると照れちゃうからなぁ」

宥「うん、でもこれから仲良くしてくれそうで、嬉しいな」(了)
891 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/01(火) 17:57:02.79 ID:rpONg+cq0
あけましておめでとうございます
今年もぼちぼち更新していければと思いますのでよろしくお願いします

間隔空くと言いつつ、読み返していたらリクがあること思い出したので書いてみました
明日から帰省なので今度こそ間隔開きます

>>886
次に行くかは、950くらい行った時に考えようかなぁと
次のスレに行くのなら、今までの分を直して上げ直したいなぁと思ってますので
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 18:17:04.72 ID:/AWFO3GZ0
おつかれさまです!リクエストを書き上げていただいて至極恐悦
二人ともかわいいのはさることながら徐々に距離が縮まっていく感じも良かった
893 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:06:17.05 ID:G3y4CGvI0
-side 煌-

「ありがとうございましたぁぁぁぁぁぁぁ」

号泣する姉帯さん

「あらあら。まさか嶺上からツモられるなんてね・・・」

平静を装うものの、小さく肩を落とす石戸さん

「負けたか・・・」

言葉少なにうつむく衣ちゃん

審判としては公平に試合を見ていたけれど、私は同じクラスとして一番近くで応援してましたからね
すばらな戦いでしたよ、衣ちゃん

そして、

「負けちゃったかー。面白かったよ、じゃあね」

笑顔を浮かべて、早口にそう言うとあっという間に対局室を去っていく大星さん

「お疲れさまでした。15分後に表彰式がありますので、移動をお願いします」

これで大会実行委員長としての任務もほぼ終わり
あとは表彰式と片付けですが、これは会長も含めた役員全員でやりますから、実質肩の荷が下りたようなもの

ああそうでした、大事な任務がまだありました

「姉帯さん」
「え、なにぃぃ」

涙声の姉帯さんに、預かっていた色紙を渡した

「優勝おめでとうございます。預かっていた色紙です」
「あ、ありがとうぅぅぅ」

あはは、さすがにそろそろ泣き止んでほしいです・・・
894 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:07:46.09 ID:G3y4CGvI0
-side 淡-

負けた・・・
負けちゃった・・・・

うう、教室に戻りづらいな
居づらいから対局室はすぐに出たものの、一人になった途端泣きたくて仕方ないよ
でも、私が泣くなんて柄じゃないし
そんな弱いとこ見せたくないし・・・

自分の教室の近くまで来たけど、やっぱり戻るのは辛い
はぁ、このまま表彰式とかサボっちゃおうかな・・・

「淡さん!」

今、一番聞きたくない声がした
ノドカが、教室から少しい離れたところから私を見つけて駆け寄ってきた

「まったく、こんなところでフラフラして、道にでも迷ったんですか?」
「サキじゃないし、こんな所で迷わないよ!」

思わず言い返して、ああ道に迷ったってのに乗っかっておけば良かったと思ったけど
それはもう後の祭りで・・・

「そうですか。道に迷っていないとなると、教室に戻るかどうか迷っていたというところですか・・・」
「ううっ、どうしてそうストレートに言うかな・・・」
「淡さん相手に婉曲表現しても通じませんから」

そう言って、ノドカが手を差し出してきて

「さあ、教室に戻りましょう」

だけど、私はその手を取ることはできなかった

「まだ、そんな覚悟できてないよ・・・」

あれだけ大口叩いて、みんなに合わせる顔ないよね

「私はドライなんだと思います」

そんな私を見て、ノドカはため息をつく

「咲さんはもう泣きそうな顔をしていましたけれど、私にはそこまでの感情は生まれなくて。麻雀は勝つ時もあれば負ける時も当然ありますから、今回の結果だってその事象のひとつに過ぎません」
「そうかもしれないけどさ・・・」

言いたいことは分かるけど、まだそんな慰めを素直に受け入れられるほどの気持ちにはなってなくて
それを察したのか、ノドカは微笑んだ

「慰めが不要でしたら、敗因は淡さんですって言えばいいんですか?」
「ほんと、ストレートに言うね。そういうとこ、嫌いじゃないよ」
「じゃあ好かれついでに苦言を呈しておきましょうか」

曰く、混一清一を目指している石戸霞に字牌で振り込むのは不用意すぎる
曰く、大三元でトップに立ったのにダマで役のある手でリーチは必要ない

・・・うん、言い返せない。だけど、

「2向聴にわざと保ってるとか、オーラスの振り込みは不用意とか言わないの?」

どちらかというと、責められるのはそちらかと思っていた
オカルト否定のノドカだから・・・

けど、ノドカは首を振る

「言っても仕方ないことに口出しする気はありません。ただ、今言った2つはオカルトとか関係なく直せた部分じゃないですか?」
「あはは、そうだね・・・」

結局、自分の慢心が招いた敗北ってことでしょ?

もう、無理かなぁ・・・

「ねぇ、ノドカ・・・」
「なんでしょう」
「泣き顔見られたくないんだ。いいかな?」
「ええどうぞ」

ノドカの大きな胸に飛び込んだ時には、もう涙が溢れて止まらなかった

ごめんね、みんな・・・
私のせいで、負けちゃたよ・・・
895 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:09:04.74 ID:G3y4CGvI0
-side 衣-

煌に背中を押されて、対局室を後にする

――誰も衣ちゃんを責めたりしませんし、そんな人がいたら私が反論します。だから、胸を張って教室に戻ってください

煌自身は、まだ生徒会の仕事が残っているから教室には戻れない

だが、胸を張って帰れと言ってくれた以上、うつむいては帰れない
気分は重いけれど、それでも堂々と教室に帰ろうと気持ちをなんとか引き締める

それでも、教室に入ったらまずは謝罪からなんだろうと考える

そして教室につく
ひと呼吸して、中に入った

「みんな、すまな――」
「衣ちゃん、ごめんなさい!」

衣が言い切る前に、なぜか小蒔が頭を下げていた

「・・・どうして小蒔が謝るんだ?」

事態が理解できず、立ち尽くしてしまう

「霞ちゃんに全力を出してって言ったのは私です。全力以上を出してと言ったのも私です。クラスのことを考えるならそんなこと言わない方がいいのは分かってます」

頭を下げたまま、小蒔が叫ぶように懺悔を続ける

「衣ちゃんが戦いにくくなってしまったのは私のせいなんです。だから、本当にごめんなさい」

そして静寂が訪れて
衣はどうしていいのか分からなくなってしまった

助け舟を出してくれたのは、憩

「衣ちゃんが困ってるから、頭上げてえな、小蒔ちゃん」
「でもっ」
「ええから、とりあえず目と目を見て話そか」

そう言われて、小蒔は顔を上げた
その顔はすでに涙でぐちゃぐちゃだった

「負けたのは衣だ。小蒔のせいじゃない」
「でも私のせいなんです!」
「あの場の全員が強かった、それだけのことで小蒔のせいじゃない」
「でも、それでも私のせいなんです!」

ここで小蒔のせいだと言えば小蒔は満足するのだろう
でも、それでは衣の気が済まない
896 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:10:43.44 ID:G3y4CGvI0
どう言えばいいのか逡巡していると、

「あーもう!」

漫が声を荒らげた

「もうみんな自分のデコに、『私が戦犯です』とでも書いたら満足なんか!」

おでこに『ころたんイエイ』と書かれたまま
だけどその表情は真剣そのもので、とても笑う気が起きなくて

「それに今日の最多失点は私や、全部私のせいにしたらええやろ! そんな不毛な言い争い見たない!」

けれど、玄がかばうように漫の前に立ち、手を挙げた

「でも、漫ちゃんの相手はチャンピオンだよ。そんなこと言ったら、私だってほとんど稼げてないし」
「いや、先鋒でマイナスくらったうちに責任があるわ」

憩が手を挙げて、落ち込んだ表情を見せた
小蒔もみんなに習ってか手を挙げたので、衣もなんとなく挙手をして、漫も手を挙げた

「そんなことありません。悪いのは私です」
「みんなの点棒を引き継いだのは衣だ。だから責任は衣にある」
「せやから、一番悪いのは私やって」
「どうぞどうぞ」
「ってなんでやねん!」

憩と玄が漫に譲るように手を差し出し、漫は近くにいた玄にツッコミを入れた
ノリが分からない衣と小蒔はポカンとした

「えっと、どういう流れでしょう?」
「よく分からないが、衣たちも漫にどうぞどうぞと言えば良いのか?」
「漫ちゃんが手を挙げた瞬間に言わなあかんから、もうタイミング逃しとるよ」
「あれ、分かってて手を挙げてたのかと思ってたよ」
「っていうかスベったボケの解説されとるみたいやからもうこの件は流そか・・・」

この流れですっかり気が抜けてしまった・・・

「ま、団体戦で誰が悪いなんて言ってもキリがあらへんからな。あんまり責任感じたらあかんよ」
「そうだな。だが、どんな相手が来ても勝てるように、衣はもっと強くならないといけないな」

でも、このクラスで勝ちたかったな・・・
897 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:14:18.17 ID:G3y4CGvI0
-side 菫-

追撃、及ばずか・・・

「よく、ここまで追いつけましたね」
「せやな。よくやってくれたわ」

福路と清水谷も結果には満足しているようだった
もともとバラバラのクラス状態に加え、一時はトビで終了という可能性すらあったわけだから、結果2位で終わったこと自体が奇跡にも思える

「負けた勝ったよりも、これでクラス対抗戦が終わってくれたという安堵感の方が今は強いな」

照を負けさせようとしている連中が、どういうつもりで動いているのかは知りようがない
それでも、とりあえず1つの山場は越えた

次に何かアクションがあるとすれば、夏フェスの部活対抗戦
そのとき、私はアーチェリー部の部長として照を守ってやらなければならない

だが、それはまだ先のこと。今すぐに考えることでもないだろう

「ただいま」

そこに、石戸が戻ってきた。頭を下げる石戸

「ごめんなさいね。あと一歩だったんだけど」
「謝らんでもええって、ええ戦いやったよ」
「そうです。本当に、お疲れさまでした」

清水谷と福路も気持ちは同じだった

「お疲れさま、いろいろあったが今日でリセットしよう」
「そうね。今日までは、ちょっとギスギスしてたから。明日からはもっと仲良く行きたいわね」

そう言って、みんながみんなの顔を見て、微笑みあった

少しスタートは遅れてしまったが、ようやく3年2組として動き出す
そんな気がした・・・


-side 洋榎-

竜華からメールが来る

『負けたわ、私らは2位。絹ちゃんとこは4位』

あっさりとしたメール。スピードを重視したんやろう

「絹、対抗戦の決着がついた」
「どこが勝ったん?」
「・・・・書いてへんな」
「なんやのそれ」

絹に、竜華から来たメールの画面をそのまま見せる

「あー、私らのこと伝えてるだけやんな。もう一回メールしてもらったら?」

言われたとおりに、どこが勝ったん?とだけ書いて送信

「それにしても、衣ちゃんがラスになるなんてな・・・」
「あのちびっ子、夜の方が強いんやろ。そんなもんちゃうか?」

受け答えしながら、出かける準備をする。と言っても、ポッケから出してた財布をまた入れて上着を羽織るだけやけど表彰式には、今から出ればギリギリ間に合うやろ

と、そこにメールが来る
早いな、竜華

「優勝は3−1やと」
「そっか・・・」
「じゃあ、表彰式行ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃい」

病欠という建前上、絹は外出できへんからな

「対抗戦はこれで終わりや。また明日から腕上げてかなかんな、お互いに」
「うん、頑張る・・・」

うちがもっとしっかりしとればとか振り返る段階はもう過ぎた
明日からまた、今日の反省を生かして練習をしたらええんや

2位なら2位で、胸張ったる
898 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:19:44.66 ID:G3y4CGvI0
-side 咲-

負けちゃった・・・

私のせいだ
私がいつも通りやってたら、もっと点数があったから・・・

どうしよう、どうしよう・・・

「咲、そんなに落ち込まないでよ」

穏乃ちゃんが声をかけてくれた。憧ちゃんも心配そうに私を見ている
ちなみに、和ちゃんは淡ちゃんがなかなか戻ってこないので様子を見てくるって教室を出ている

「でも、私のせいで」
「うん、咲のせいだね」
「え・・・」

正面切って憧ちゃんからそう言われるとは思ってなかった

憧ちゃんが私に顔を近づける
その瞳は、真剣そのもので・・・

「咲が2割悪い。私も2割悪い。しずも和も淡も、みんな2割悪い。だから咲のせいだけど、咲だけのせいじゃないよ」
「でも、穏乃ちゃんも和ちゃんも淡ちゃんも収支はプラスだし、憧ちゃんだってお姉ちゃんが相手だったし」
「相手が誰だって、私の失点は3万点、咲は1万点。私は咲の3倍悪いってことじゃない? 先鋒はエース区間なんだしさ」
「そんなことない!」
「じゃあ咲が悪いなんてことはないって、私も言うよ」

そう言われると、私は上手く反論の言葉が紡げない
でも・・・

「私が初めからクラスのために打ってたら・・・」
「咲はクラスのために打ってたよ」
「・・・そんなこと、ないよ」

お姉ちゃんのクラスをかばったのは事実
そんなことをしなければ、勝っていたかもしれないのに・・・

「途中からだっていいじゃない。それで十分、咲は取り返してくれたよ」
「そうだよ、咲。だから全然気にすることないって!」

穏乃ちゃんも加わって、私のことを元気づけようとしてくれる
でも、まだ胸のもやもやは晴れなくて・・

憧ちゃんが少し考え込んで、また口を開く

「もしもになっちゃうけど。もし咲が宥姉を見捨てて、他のクラスに狙い撃ちさせたとする。そしたら、中堅戦で本当に3−1は飛んで終わってたかもしれない」

実際3−1は中堅戦の選手交代のペナルティで25000点くらいにまで落ち込んでた
もし点数がもっと少なかったら、あの選手交代がそもそもできなかったかもしれない
できたとしても、交代後に残り1万点を切るような状況だったら・・・・

「中堅戦で誰が勝っていたかなんて分からないでしょ。あの流れだと2−10な感じもするけど。だからきっと、咲のしたことは悪いことじゃなかったよ」
「そうなのかな・・・・」
「そうだよ、だからあんまり悔やまないで」

憧ちゃんが、そっと私を抱きしめてくれた
そして、ボソっと私にだけ聞こえるように、耳元で呟いた

「私だって、大失点の責任感じてるんだからさ」
「憧ちゃん・・・」
「でも、淡はもっと責任感じてるかもだからさ、ちゃんと笑顔で迎えてあげないとね」
「・・・そうだね」

大将の重圧がどれくらいのものなのか、私には分からないけれど
クラス5人分の思いを受けて戦う重圧は、きっと相当なのだと思う
899 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/06(日) 22:22:04.55 ID:G3y4CGvI0
「たっだいまー。負けちゃったー!」

戻ってきた淡ちゃんは、想像以上に元気だった
でも、よく見ると、目が赤くなっている・・・・

「もう、オカルトだらけでまいっちゃうよねー。私、今日から原村門下生として一からデジタルを学ぶことにしました!」
「コホン。一番弟子として厳しく鍛えさせていただきます」

大げさに振舞う淡ちゃんに合わせるように、和ちゃんもわざとらしく咳払いをした

「淡ちゃん・・・」
「もう、なんで泣いてるの、サキ。サキのせいじゃないよ、なんもかんもオカルトが悪い! デジタル最高ー!」
「そうですね、すべてのオカルトはただの偶然の偏りにすぎません」

無理に気丈に振舞っているのは分かるけど、それは淡ちゃん自身ショックなのと、私にも気を使ってくれているんだと思う
そうでもなければ、きっと和ちゃんがここまで合わせてくれないだろうし

「っていうか、アコとサキはいつまで抱き合ってるのー」
「えっ・・」
「ふきゅっ」

お互い素っ頓狂な声を出して、慌てて離れた
いい匂いだったのになぁ・・・って、そんなこと考えてる場合じゃなくて

思考を断ち切るように、パンパンと手を叩く音が教室に響いた

「よし、そろそろ表彰式だから、移動するよ」

赤土先生に言われて時計を見ると、あと5分しか残っていなかった

「淡が遅すぎるんだよー」
「シズノがダッシュすれば間に合う。席取っといて」
「席を取っておくとかそういう問題ではないと思いますが」

みんなで慌てて教室を出ていく

「咲、行こう」
「うん」

憧ちゃんに手を引かれて、私も教室を出る

負けちゃったけど・・・
今まで、負けたくないと思ってきたけど。それは傷つきたくないってだけのことで

負けたくないって思えた
勝ちたいって思えた

きっと私は、これから±0のその先へ歩き出す
願うなら、みんなと一緒に・・・
900 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/06(日) 22:29:32.83 ID:G3y4CGvI0
とりあえず今日はここまでです
当初書き始めたときはまさかこんな長々書くとは思ってませんでしたが、ようやくゴールが見えてきた感じですね
もうしばらくお付き合いください

>>892
こんなに早く感想いただけるとは思いませんでした
お気に召していただけたなら幸いです
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 01:07:02.02 ID:us6LKLru0
乙ー
みんな良い娘で本当に癒される

そして和、優希と言う嫁が居ながらまさかの二股……このまま修羅場もアリですね
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 19:31:01.76 ID:7Vyfo9wb0
お疲れ様です
最後はやっぱり3-1が勝ちましたね
照の9冠はもう間違いないのかなぁ…

続きも期待しています!
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/10(木) 22:44:05.15 ID:Q5cdxYZ1o
決着乙〜。おもしろかった。

表彰式にて理事長派がてるてるをサす(物理)→庇う宥さん→てるてる壊れる。な展開クルー
904 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/11(金) 21:35:27.13 ID:LNfdwBRn0
今度は年始進行でー。一応生存報告
日曜日にボチボチ書けたらいいなぁ、もー

>>901
Extraの和さんと、本編の和さんは別人のつもりでいますが・・・
和を取り合う優希と淡。これは新しい!

私の彼女(淡)と幼馴染(優希)が修羅場すぎる
こう書くと、あんまり新しくないかも・・・

>>902
期待に応えられる様に、ボチボチ頑張ります

>>903
そ、そういう展開はヤンデレスレでお願いします(懇願
905 :tell you that I love ...(intermissionExtra-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/12(土) 22:30:16.18 ID:W8FzDzYf0
intermission … 演劇などの休憩時間
Extra … 特別な(ぶっちゃけ、本編とは関係ございませんという意味)

>>782
タイムサービスリクの「衣・豊音」です



衣「透華たち以外とファミレスに来るのは豊音が初めてだ」

豊音「そうなんだー。思い切ってお誘いしてよかったよー」

衣「もちろんエビフライはあるな?」

豊音「もちろんだよー。でも、ここのオススメはサラダバーだよ」

衣「サラダバーとはなんだ?」

豊音「ほらあそこ。いろんなサラダを好きなだけ取っていいんだよー」

衣「衣は野菜は嫌いだ・・・」

豊音「そっかー。ごめんね・・・。でも好き嫌いしてると大きくなれないよー」

衣「・・・野菜を食べたら、豊音みたいに大きくなれるのか!?」

豊音「うん、なれるよー。だって私、村じゃほとんど野菜ばっかり食べてたし」

衣「そうか。なら、衣も頑張って食べてみる」

豊音「ちょっとずつ食べれるようになって行こうね」



豊音「うん、おいしいー」

衣「うう、やっぱり苦手だ・・・」

豊音「んー、じゃあ私の食べてるの試してみる? ドレッシングが違えば食べれるかもしれないし」

衣「そうだな・・・。少し分けてくれ」

豊音「じゃあ、あーんして?」

衣「子供扱いするな!」

豊音「えー? あーんは大人だよー」

衣「あーんは子供だ、幼児に食べさせるみたいだ」

豊音「恋人同士であーんってするドラマとか憧れちゃうよー。ちょー大人だよー」

衣「こ、恋人!?」///

豊音「うん、だからあーんして?」

衣「だが、衆人の前でそんな・・・」

豊音「じゃあ衣ちゃんのサラダ食べさせて?」アーン

衣「・・・まったく、しょうがない。衣はお姉さんだからな、食べさせてあげるぞ」

豊音「うん、おいしいよ。じゃあ、衣ちゃんもあーんして?」

衣「・・・い、一回だけだぞ!」アーン

豊音「少なめにしとくからね。はい、あーん」

衣「・・・こっちなら食べられるかも」

豊音「うん、よかったー」
906 :tell you that I love ...(intermissionExtra-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/12(土) 22:31:11.99 ID:W8FzDzYf0
衣「ふう、たくさん食べた。これで衣も豊音みたいに大きくなれるぞ」

豊音「毎日食べないとダメだよー?」

衣「・・・・努力する」

豊音「よし、じゃあ帰ろう?」

衣「そうだな」

コテン

豊音「転んじゃった、大丈夫!?」

衣「・・・問題ない」

豊音「うわわ、擦りむいちゃってるよ。早く帰って手当しないと。歩ける?」

衣「このくらい、歩ける」ズキン

豊音「ダメだよ、無理したら」

衣「衣は子供扱いされたくないんだ。このくらい歩ける」

豊音「んー、じゃあ・・・」ダキッ

衣「な、何をする!」

豊音「お姫様だっこだよ? お姫様扱いなら、いいでしょ?」

衣「・・・・お姫様扱いなら、仕方ないな」

豊音「うん、じゃあ急いで帰ろう!」 (了)
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/12(土) 22:47:30.78 ID:W8FzDzYf0
これでリクは全部消化したかな?
本編の方もボチボチ書いていきます

ガンガン本誌買いました
うーむ、竜華は真面目に打ってくれると思っていたのに・・・

まあ膝枕だからしょうがないね
このスレで照が赤い牌が見えたのも同じ理屈だったんだね、納得
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/12(土) 22:49:52.85 ID:nCeOV5JAO
おつおつ
何の展開もないリクでスマンかった
……しかし、自分で言っといてなんだが、凄まじい身長差よな。
端から見るとこのやりとりは親子ぐらいにしか見えなそうだww
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 23:21:43.31 ID:kS95OqAHo
衣を130cmだとすると60cm以上離れてるもんな
910 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/14(月) 00:04:04.18 ID:NLIrbRd90
-side 照-

2ソウを鳴いた時点で、豊音の狙いが友引であることは分かった
鳴いたところで待ちが変わらないのだから、本来なら鳴く意味なんて無い

なら、鳴く意味は別にある・・・・
けれど、限られた牌だけの一色麻雀で鳴きを進めるのはかなりのリスクを伴う

そんな、か細い道を進むと決めた豊音

私はゆっくりと体を起こした

「照ちゃん?」
「最後だし、ね」

流石に勝負がつく瞬間を寝転んで見てるのも豊音に悪い
宥は座ったままだったから、私も隣に腰を下ろす
膝枕じゃなくても、隣にくっついているだけで、宥からぬくもりを感じることはできる

『もいっこ、カン!』

まるで咲みたいにカンする豊音
そして・・・・

『ぼっちじゃないよー』

嶺上開花が決まる
その瞬間、私たちのクラスの勝利も決まった

「勝ったね・・・」

なぜか、すぐには実感が湧いてこなかった

いろいろあって
いろいろありすぎて
まだ何かあるんじゃないかって、そんな気分になって

「うん、勝ったんだよ」

宥がゆっくりうなづいてくれて
それで、ようやく実感が湧いてくる

はぁ、やっぱり私はダメだな・・・
私一人だったら、きっとどんどん悪い方向に考えちゃう

そう、勝ったんだからもっと胸を張らなくっちゃ

心に余裕が出てきて、私は周りを見渡した

「勝ったな!」
「おめでと。でもそろそろ膝枕終わってくれへんか?」
「勝利の余韻に浸らせてや」
「膝枕やなくても浸れるやろ!」

膝枕分を補充できたのか割と元気な様子の怜と、辟易しながらもなんだかんだ膝枕を続けてあげてくれた末原さん

「おめでとさん。じゃあ俺らは退散するか。恭子、ぼちぼち行くで」

江口さんが立ち上がると、小瀬川さんとエイスリンさんも立ち上がった

「あの、エイスリンさん!」

教室を出ていこうとするので慌てて呼び止める

「ナニ?」
「その、イラスト描いてくれて、本当にありがとう」
「ドウイタシマシテ!」

そう言うと、ボートにさっと絵を描く
6人が優勝カップを囲んでいる絵だった

「優勝おめでとう、だって」

小瀬川さんが解説して、エイスリンさんもコクコクとうなづいた

「うん、ありがとう。エイスリンさんのイラストには励まされたから」
「私まで描いてくれて嬉しかったのよー」
「マタ、カクネ」
「そろそろ行くよ、ダルイけど・・・・」
911 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/14(月) 00:06:48.00 ID:NLIrbRd90
小瀬川さんの視線の先には、まだ膝枕されようとしている怜がいて
そして江口さんに無理やり引き離されていた

「怜、もう恭子のレンタルは終わりやで」
「仕方ないな・・・。まあまあの膝枕やったで」
「それは喜んでええのかよくわからん・・・」

末原さんがようやく開放されて立ち上がる。そして私をじっと見つめた

「宮永。由子のことなら気にせんでええからな」
「うん・・・」

対抗戦に出るなと言われていたのに、怜の代わりに出てくれた由子
サッカー部のレギュラーを剥奪されるリスクを背負って・・・

でも、もう出てしまったのは取り消せない
だからせめて、少しでもいい方向に向かうように願うしかない

「末原さん。由子のこと、よろしくお願いします」
「・・・そんな畏まらんでもええ。それに、これは私らサッカー部の問題やからな」

深く頭を上げる私に、末原さんは苦笑する

「行くで、恭子。じゃああとは、クラス水入らずでなー」

江口さんが手招きして、末原さんも教室を出ていった

「もう大丈夫、塞?」
「流石にもう大丈夫だよ、ありがと」

塞の隣に座っていた鹿倉さんも立ち上がった
そして私の方を見て

「宮永さん、おめでとう。それと、ありがとね」
「え、うん・・・。ありがとうって?」

特にお礼を言われる心当たりがなくて、首をかしげる

「塞を復活させてくれて。こういうきっかけでもないと、きっと塞は麻雀自体打たなくなっちゃったかもしれないから」
「それは塞自身の力で、私は何もしてないよ」

鹿倉さんは首を振った

「謙遜とかいらない。宮永さんがきっかけになったのは事実だから」
「うん、じゃあそういうことで」

反論しても受け付けてもらえなさそうだったので、大人しく相槌を打っておくことにした
その鹿倉さんを、塞が小突いた

「ちょっと胡桃、なんで先にお礼なんて言っちゃってくれてるわけ?」
「別にいいでしょ、それくらい!」
「まったく、胡桃がお礼なんて、シロに介護されるよりビックリだよ」
「私だってお礼くらい言えるよ!」
「・・・うん、ありがとね。心配かけた」
「分かればよろしい」

はにかむ塞に満足げに頷くと、鹿倉さんも教室を出て行こうとした

「ただいまー。勝ったよー」

と、ちょうど豊音が戻ってきた

「あっ、豊音。おめでとう」
「胡桃ー!」
「わー、高いって!」

興奮気味の豊音はひょいっと鹿倉さんを持ち上げた。小さな鹿倉さんの体は簡単に持ち上がる

「ちょー頑張ったよー。ちょー嬉しいよー」
「分かったから降ろして!」
「豊音、あんまり振り回すと胡桃がどっか飛んでっちゃうよ」
「あっ、ごめんねー」

豊音は鹿倉さんを下ろした
鹿倉さんは、じゃあねと言って逃げるように教室を出ていく
912 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/14(月) 00:10:48.40 ID:NLIrbRd90
「まったく。優勝の感動がどっかいっちゃうじゃない」
「だって嬉しかったからー。ごめんね」
「まあいいけどね。ほら、みんなに報告!」

塞が豊音の背中を押す
豊音が、私たちの前で満面の笑みを浮かべた

「みんな、勝ったよ!」
「ホントあの面子相手によく勝ったわ」
「すごいのよー!」

もちろん、絶対に勝てるなんて思っていなかった。与えられた戦力でどうオーダーするのが正解なのかなんて、組み合わせ次第で変わってしまうから

でもこうやって、みんなで力を合わせて勝利を掴むことができた
今まで戦ってきた団体戦の中でも、一番嬉しい

「お疲れさま、豊音。ありがとう」
「こっちこそありがとうだよー。すっごくドキドキして、すっごく楽しかったよー」

純粋に麻雀にドキドキできて、楽しむことができて
少し羨ましいな

私だけじゃなくて、咲も・・・
ドキドキしたり、楽しんだりってことをどこかに置いてきてしまったんじゃないかって、そう思えるから

「私も、楽しかったよ」

隣にいる宥が、微笑みを浮かべた

うん、そうだった
私の隣には、宥がいてくれる

私だけだったら、きっと優勝なんてできなかった
私を負けさせたいなんて、意味のわからない重圧に負けてしまっていたかもしれない

「宥、怜、塞、由子・・・・。みんなも、ありがとう」

宥だけじゃない
怜にも無理をさせてしまったし、塞も復活したとはいえ初めは万全の状態じゃなかった

だけど今は、素直にこの勝利を喜ぼう
ボロボロになりながらも、みんなで掴んだ勝利には変わりないのだから

「お礼言わないといかんのは、私の方やで。あんなに失点したのに、取り返してくれて、ありがとな・・・」

怜が頭を下げた。それに合わせて、塞が苦笑する

「いや、そんなこと言ったら、私なんか4日間通して全部マイナスだよ・・・」
「勝ったんだからあんまり気にしちゃダメなのよ。それに、私も対抗戦に出れてよかったのよー」

由子がそう言ってくれるけど、当の由子の問題もまだ片付いているわけじゃない
末原さんは大丈夫だって言ってくれたけど・・・

『表彰式まで、残り5分です。移動をお願いします』

もうそんな時間か・・・

「じゃあ、そろそろ表彰式に行こうか」

ああ、そういえば去年も表彰式の時、コメント求められたっけ
何か考えておかないと・・・
913 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/14(月) 00:13:25.66 ID:NLIrbRd90
-side 咏-

決着がついた
よくやったな、みんな

「さあ、決着はついたよ。帰っていいかな?」
「ああ、どうぞ・・・」

そういう約束だから仕方ない
すこやんももう少し肩の力抜いてくれればいいのに、真面目すぎるんだよ・・・

「咏さん・・・」
「なに、針生さん?」

いつもはえりちゃんって呼んでるけど、なんだか苛立って名字で呼んでしまう
えりちゃんが表情を暗くしたけれど、それを気遣っている余裕は私にはなかった

・・・まだ来ないのかよ、すこやん行っちゃうぞ

「・・・誰ですか、小鍛治さんに一番会いたい人って?」
「それはすこやんが一番わかってるよな?」

すこやんは立ち上がって私の背中にある出口に向かって歩いてきた

「もう、済んだことだよ・・・・」

すれ違いざまにそう呟くすこやん
そして私のケータイからメールの着信音が響いた。着信音に気を取られている間に、もうすこやんは扉の向こうへ消えようとしていた

「まったく、誰だよ・・・」

もう追っても止められないだろう
メールを確認することにした

「・・・・ったく、意気地なし」

メールの内容を見て、舌打ちする

「咏さん・・・」
「・・・・なに、針生さん?」
「ごめんなさい」
「何を謝ってるのかしらねーけど、後でじっくり聞かせてもらうから」

頭を下げるえりちゃんに、きつく当たってしまう
ここにきてこんな展開予想してないっての・・・・


――ゴメン、やっぱり今の私に会う資格無いわ


こんなメール寄越すなよ、いくのん!
次はいつ会えるのかわかんねーんだぞ・・・
914 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/14(月) 00:19:16.07 ID:NLIrbRd90
今日はここまでです
ようやくアニメ13話が見れますので楽しみにしてます

衣・豊音が作中最大身長差でしょうね
リクありがとうございました
細かい指定もらってもその通りに書けるかどうかわかりませんし、カップリングだけでも書けますんで

また気が向いたらタイムサービスもあるかもしれません
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 17:31:21.81 ID:ax4LZn490
おつ
まさかのすこやんの彼女(元?)がいくのん……一体どうなるんだ……

アニメ版は漫画と比べて方向性が違うからか今一つ盛り上がりに欠けるのが残念でならない
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/15(火) 08:35:05.10 ID:UG2pCw3/o
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/15(火) 21:40:02.13 ID:rewQNil80
おつおつ

いくのんとか予想の斜め下だったわ
これは今後に期待

この流れで咏×郁とかリクエストしてみる
918 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 23:48:50.69 ID:EScLK8Dio
乙乙
919 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:04:30.56 ID:C9CHdplS0
-side 良子-

「終わりましたね・・・」

3−1の勝利が決まる
隣に座る赤阪先生が、深くため息をついた

「・・・・そうやね」

そのまま、どこかへとメールを打ち始めた


それにしても、いろいろと妨害を受けてよく3−1は優勝できたと思う
私の時は、そうは行かなかったから・・・

私が1年2年の時、宮永照のように学校内では敵がいないような状態だった
クラスメートにも、部活の仲間にも恵まれていた

けれど、3年になって様相がガラリと変わる
まずクラスメートのレベルが今までとは落ちた

そして当時1年の宮永照のクラス・・・
インターミドルで活躍したメンバーが勢ぞろいしたクラスになっていた
宮永照、弘世菫、辻垣内智葉、藤原利仙、白水哩

私のクラスは準決勝で敗れた

1年2年の時に負けなしだと3年のクラス対抗戦には勝てないというジンクスを聞いたことはある
気になって、過去の記録を調べたこともある

当時の成績から照らし合わせて、私の前に連覇ができなかった小鍛治さんの3年のクラスが極端に弱いということも、他のクラスが極端に強いという感じもなかった
それ以前の、愛宕先生や校長先生の時も同じ傾向を感じた

連覇が気に入らないから学校側が操作したわけではなく、たまたま連覇できないことが積み重なってジンクスとして言われるようになった
それがこれまでの傾向のはず

だから、極端な連覇妨害が始まったのは私の時からではないか・・・
私だけなら偶然クラス編成に恵まれなかったと言えるかもしれないけれど、宮永さんへの妨害も含めると、単に宮永照憎しで学校が動いているわけではないと思う

じゃあどんな理由で動いているのかと考えを巡らせても、それ以上は分からないけれど

920 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:05:18.81 ID:C9CHdplS0
メールを打ち終わったようで、赤阪先生は再び深くため息をついた

「赤阪先生、そろそろ移動しましょうか」
「良子ちゃん・・・」

携帯の画面を見つめたまま、赤阪先生は動こうとしない

「ここにおっても、ええかな?」
「・・・・ノーウェイ。決勝に出たクラスの担任が表彰式に出ないのはナンセンスでは?」
「・・分かっとる。分かっとるんやけどな〜」
「残念ですが、病欠の証明はできませんので」

愛宕絹恵さんに病欠の証明は出したけれど、本人の意向も踏まえてのこと
ボロボロに打ちのめされて、その翌日にまたあの宮永照に立ち向かえる精神状況にはとても見えなかったから

それを逃げだと捉えられるかもしれないけれど
リベンジの機会は、今日だけではない。再び立ち向かおうと思えるのであれば、時間がかかってもいいと思う

「さあ、私も行きますから」
「しゃーないな・・・」
「ひとつだけ、いいですか?」

暗い表情のまま立ち上がる赤阪先生に尋ねる

「なに〜?」
「宮永照が勝ちましたけど、これからどうなるんですか?」

宮永照を負けさせろという理事長通達は達成できなかったことになる
その通達に、失敗したらどうなるというような内容は無かった

赤阪先生は、肩を落として首を振る

「なんも変わらへんよ。変わらへん・・・」

他人事のように呟く
まるで抜け殻にでもなってしまったかのように。そこにはもう赤坂先生はいないかのように

「さあ、表彰式に行こか?」
「ええ、そうですね・・・」

本当に、何も変わらないのですか?
まばたきした一瞬の間に、赤坂先生がいなくなってしまうのではないかと、妙な不安に駆られる

気のせいなら、いいけれど・・・
921 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:06:07.37 ID:C9CHdplS0
-side 智葉-

解説が終わり、急いで講堂へ向かう
解説というのもなかなか大変なものだな・・・

講堂に着くと、概ね準備は終わっているようだった

「すまないな、もうほとんど終わってるみたいだな」
「いいのよ。むしろ解説に回ってもらって助かったわ」

久を始めとして、ちょうど一息ついているところだったようだ

「智葉さんが解説されていたのですね。あとで動画を見るのが楽しみですっ」
「そんな大層なものじゃないぞ・・・」

ああ、花田は誰が解説しているのかなんて知らないんだよな
あの戦いを一番近くで観戦できたのだから、私の解説なんて必要はないと思うがな・・・

次々と講堂に生徒たちが集まってくる

短いような長いようななんて陳腐な言葉が浮かぶが、そうとしか言い様がない
これでクラス対抗戦も終わりだ。こんなドタバタからも、しばらくは解放される

思えば1年の時は、宮永と同じクラスで戦ったんだったな
敵に回せば難攻不落の要塞のようだが、味方になってその要塞の中にいればこれほど頼もしいものも無かった

ただ、それでも要塞攻めの方がやりがいはあるのだがな・・・

宮永照をめぐる今回の攻防を、詳しく知っているわけではない
ただ、余計な噂が流れなければ、勝っていたのは3−2だったんじゃないだろうかとかそんなことを考えないでもない

「まったく・・・」

たらればなんかに思いを馳せるのは、片付けまで全部終わってからでいい
生徒会とすれば、平穏無事にさえ終わってくれればそれでいい

『あーあー、静粛に。これより、表彰式を始めます』

ゆみがマイクを持ち、進行をはじめる

『まずは、会長の総括からお願いします』

久が壇上に上がっていく
一礼して、壇上のマイクを調整する

「みなさん、4日間お疲れさまでした。特に決勝まで戦い抜いた4クラスのみなさんの戦いぶりは、その1打1打を手に汗握って見させていただきました」

普段はいい加減なように見えて、こういうときの久はしっかりしているんだよな・・・
まったく、抜け目無いというかなんというか・・・
922 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:07:30.45 ID:C9CHdplS0
-side 宥-

会長の総括が終わると、いよいよ表彰になる

『第4位、2年10組。メンバーの方は壇上へお願いします』

呼ばれて、玄ちゃん達が壇上へあがった
リーダーの荒川さんが会長の竹井さんから賞状を受け取り、そのままマイクの前に立つ

「2年10組の荒川です。優勝予想うちらが1位やったけど、食券もらえんくなってごめんなぁ〜」

思わずくすりと笑ってしまう

「上級生の壁はやっぱりデカかったです。特に大将戦のおもちとか身長とか。うちらが束になってもかなわへんよ、あれは」

こういう気さくなところが、人気なんだろう
荒川さんを悪く言う人なんて見たことがないから

「まあ、壁はデカい方が乗り越え甲斐があるってもんです。今日はええ勉強させてもらいました、ありがとうございました」

最後はしっかり締めた
玄ちゃん、このクラスなら1年楽しく過ごせそうだね

『つづいて第3位、1年5組。メンバーの方は壇上へお願いします』

今度は、穏乃ちゃんや憧ちゃん。そして咲ちゃんも壇上に上がる

「咲ちゃん、カチコチだね」
「人前は苦手だからな。私も得意じゃないけど・・・」

前に立つ照ちゃんに小さく声をかける
照ちゃんは少しだけ振り向いて答えてくれた

照ちゃんも人前が苦手なんだ。インタビューとか平然と答えてるように見えるんだけど、そうでもないのかな
壇上では、憧ちゃんが賞状を受け取っていた。リーダーは憧ちゃんだったんだね

「1年5組の新子です。荒川さんみたいに気の利いたことは言えませんが、正直言って悔しいです」

憧ちゃんは真剣な眼差しだった

「勝って、みんなで喜びを分かち合いたかったです。でもそれは叶いませんでした。もっと強くなって、また対抗戦をやりたいくらいです。ありがとうございました」

ぺこりと一礼して、憧ちゃんの挨拶は終わった
もう同じクラスで戦うってことはないけれど、またそんな機会があったら楽しいかもしれないね

『つづいて第2位、3年2組。メンバーの方は壇上へお願いします』

5人が壇上にあがる
賞状を受け取ったのは弘世さんだった

「3年2組の弘世です。2位とは言え、敗者が多くを語る必要はないでしょう。ただ一つだけ我侭が許されるのであるなら、私も新子さんと同じ気持ちです。雪辱の機会がほしい。ただそれだけです」

バラバラだった3年2組が、最後の最後にようやくまとまって
だから、初めから一致団結できていれば勝っていたのは2組だったかもしれない

本当に、勝てたのはちょっとしたことの積み重なりで
ほんの少しのことで崩れてしまうような階段を積み上げて
それでも、頂上にたどり着けるのはほんのひと握り・・・・

『つづいて第1位、3年1組。メンバーの方は壇上へお願いします』

照ちゃんを先頭に、由子ちゃんを含めた6人で壇上に上がる

「おめでとう。お疲れさま」

竹井さんがそう言って賞状を照ちゃんに手渡した

「じゃあ、最後、しっかり締めてちょうだいね?」

そうウインクして、竹井さんはさっさと壇上から降りていった
照ちゃんは静かに呼吸を整えて、マイクの前に立った

「3年1組、宮永です。4日間、お疲れさまでした」

背中ごしに照ちゃんを見守る
いったい、どんな表情をしているんだろう
インタビューのときのような笑顔を浮かべているんだろうか・・・
923 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:09:54.04 ID:C9CHdplS0
-side 咲-

お姉ちゃんが壇上に立つ

「3年1組、宮永です。4日間、お疲れさまでした」

取材を受けるときのような、作った笑顔じゃなかった
いつも家で過ごしているときのような、自然体なお姉ちゃん

思えば、こういう対外的な場面でそんな表情を見るのは初めてかもしれない

「どんなに準備したって、練習したって、負けるときは負けます。けれど、勝ちたいと願わないまま勝つなんて、できません。私はそう思っています」

視線が私の方に向いているような気がした

・・・そうだね、お姉ちゃん
私は、勝ちたいって願うのを諦めてた

枯れたくなかったから・・・
だったら、造花になってしまえばいいって

水も光もいらない
誰かの水を奪うことも、誰かから光を奪われるのもイヤだったから

だったら、私は何も望まない・・・・
そうやって、±0を目指した

「このクラスで勝ちたいって気持ちはみなさんも持っていたと思いますし、ここで気持ちの多寡を争うつもりはありません。気持ちが乗らないときだってある。自分が勝ちたいと思っても、周りが邪魔をしたりするときもあると思います。気持ちを思い通りにぶつけられることの方が、稀です」

心を空っぽになんて、できるわけないのに・・・
ただ機械のように打つなんて、いつまでもそんなことを続けられるなんてできるわけないのに

「でも、それが麻雀です。4人が卓を囲めば、勝てるのは1人しかいないんですから・・・」

その1人になるために打つのが麻雀なのに
私にはそれができなかった

でも・・・・

「けれど、実際には1人で打っていても、その背中を押してくれる人、背中を守ってくれる人・・・・戻ってくるのを待ってくれている人、いろんな人の思いを背負っています」

私が失点しても、誰も私を咎めたりしなかった

±0なんて、ただの逃げ
だけど、その逃げを期待されて・・・

そしてお姉ちゃんのクラスを±0にして、それはもっと酷い逃げで・・・
でも、それでも誰も咎めたりしなかった

逃げるのに必死でその場では気づかなかったけれど・・・
みんなの思いが、重たかった。こんなに重たいだなんて思わなかった
だけどその重みは、いつか自分と同化していて・・・
この重みと同じくらいに、みんなにも勝ってほしいって思うようになって

「みんなの思いがある限り私は勝ちたいと、そう強く思っています」

この気持ちに答えなきゃって・・・

私をまた、陽の光を求めて咲く、嶺の上で揺れる花にしてくれたから

みんなから水をもらって、光を浴びて
精一杯咲きたいと、今は思うから

「またみんなと打てる機会を、私も楽しみにしています。この大会を支えてくれた生徒会の皆さんにも、大変感謝しています。今日は本当にありがとうございました」

お姉ちゃんが一歩下がって一礼すると、講堂はいっぱいの拍手に包まれた
924 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:10:38.74 ID:C9CHdplS0
-side 健夜-

対局室を出る
誰にも会わないように早く行かないと・・・

階段を降りきったけど、ロビーで仁王立ちする人影に私は足を止めた

「・・・・野依さん」
「どこに行くのっ!」

野依さんは本当に怒っているのではないのだろうけれど、口調の落ち着かなさからどうしても怒っているように見えてしまう

「・・・お忍びで来たから、これで帰るんですよ」
「みんな、久しぶりだよ!」

解読に少々時間を要した
他の先生たちとも久しぶりに会っていけってことだろうか?

もう私はここの先生ではないんだから・・・
あの人がいる限り、私はここに戻れないんだから・・・後戻りなんてできないんだから・・・

私は首を振った

「みんなには会えないよ。よろしくも、伝えなくていいですから・・・」

野依さんの横をすり抜けて、外に出る

「待って!」
「・・・表彰式が始まりますよ?」

なぜか後ろを付いてくる野依さん
・・・目立つからできればやめてもらいたいけれど

振り切るように歩みを早める。それでも野依さんは無言でついてくる
とうとう校門を出てしまったのに、まだ後ろを付けてくる

「いいんですか、表彰式?」
「小鍛治さんの方が大事」

はぁ、こうなったら聞かないからな・・・
駅についてしまえば流石に電車にまでは乗り込んでこないだろう

「・・・なら好きにしてください」

無視して駅に向かって歩くことにする
無言でついてくる野依さんのことを思考から消すように努めながら
925 : ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/16(水) 00:16:43.96 ID:C9CHdplS0
今日はここまでです

アニメは、淡の声がしっくりこなかったなぁ。まあ何回も聞けば慣れるのかもしれないですが・・・
あと尺の問題はあるんでしょうが、詰め込みすぎで山場が分かりにくい感じでしたね
まあそれでも十分楽しめましたけども

>>917
リクありがとうございます
尺(レス数)の問題でどこまで書けるかわかりませんが・・・
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 04:12:03.62 ID:DyIvImYpo
あわあわはちわちわだとアホの子に聞こえる
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/16(水) 10:30:10.28 ID:NrnTZdWF0
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 15:02:02.09 ID:NsAgNwJwo
おつかれさまさまですの方が衝撃を受けた
929 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 15:28:44.26 ID:TwDO2+yN0
≫926
俺はssの読み過ぎでそのイメージしかないけどなwww
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/17(木) 00:45:06.27 ID:l5HhujV30
乙です

>>925
>>913の会話?から2人の関係を少し知りたいなぁ〜と思いまして
短めでいいのでよろです
931 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/18(金) 19:13:20.85 ID:wq5iqvPN0
繋がりましたね・・・
次回更新は日曜日、だと思います
なんとなく1000以内で収まるような気がしますが、書いてみないと分かりませんね・・・
全部まとめて再投下できるように少しずつ直し始めましたけど

ヤンガン買ってきましたがガイトさんがかっこよすぎるっ

>>930
そんなに期待せんといてや〜


ついでなので目次>>576


○番外編(intermissionExtra)のまとめ

Extra-1:穏乃と南浦さんが二人並んで同学年なのに姉妹に間違われる
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/363-364

Extra-2:衣と胡桃と初美の背比べ+見た目そっくりさんネタに便乗して怜と灼の絡み
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/484-496

Extra-3:実は菫も宥を狙っていたが照が急速に宥に近付いてる事に気付いて葛藤する三角関係モノ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/588-594

Extra-4:なぜか憧咲で反応が良かったので書いてみた
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/625-653

Extra-5:突発的に菫恭
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/780

Extra-6:透華がもっと麻雀で目立つ為に玄のド派手なドラ麻雀の秘密に迫っていく
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/888-890

Extra-7:衣と豊音
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/905-906

まったく関係ないけど投下したSS  咏「ドラフトやりたい」えり「は?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1343752471/572-575
932 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/20(日) 18:37:01.12 ID:BMbMoVEX0
-side 郁乃-

-2年前

「・・・戒能シフト〜?」
「あまり気は進まないけどね・・・」

私は隣を歩くすこやんに問いかける

「具体的に何するん?」
「・・・クラス編成で恣意的に戒能さんのクラスを弱くしてる」

入学以来、クラス対抗戦・部活対抗戦・個人戦と敵無しの戒能良子
その彼女の3年のクラス編成は、かなり露骨に彼女を負けさせようとしているのが分かる

「確かに、戒能ちゃん以外のメンツはちょっと厳しいなぁ」
「あと今の2・3年生では彼女に太刀打ちできないからって、1年生の編成がかなり偏っている」

1年8組
担任がはやりんで、宮永照・弘世菫・辻垣内智葉・藤原利仙・白水哩

「インターミドルで上位やった子が固まっとるんやな〜・・・」

ここまでして連覇を阻止したい理由が見えない
それに、1年を固めたところでそうそう連覇が止まるとは思えへんしな・・・

「理事長も何考えとるんやろうなぁ・・・」

すこやんも小さく首を振るだけ
私は編成会議には出てへんけど、すこやんは会議に出とるから理由を聞かされていてもいいと思うけど

「校長先生もみんな異論を唱えたけど、理事長が頑として譲らなくて・・・・理由を聞いても何も言わないし」
「なんなんやろうな〜」

まあ、よく分からんことを考えたってしょうがあらへんしな

「ま、とりあえずランチにしよか。今日のおかずは初めて作ったやつから感想聞かせてほしいわ〜」
「ごめんね、いつもお弁当作ってもらって」
「気にせんといて、好きでやっとるんやから〜」
933 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/20(日) 18:38:36.94 ID:BMbMoVEX0
麻雀は鬼神のごとき強さのすこやんだけど、家事に関しては正直まるでダメなんよね



教員宿舎で隣の部屋になって、その隣から焦げ臭い匂いが漂ってきた時にはビックリしたわぁ・・・

「なんか臭うけど、火事?」
「あ、赤坂さん・・・」

隣の部屋を伺うと、オロオロするすこやんがいて
でも火事やったらもっと慌てとるやろうし、そんな大したこと無さそうかな

「なんか、レンジが壊れたみたいで・・・」
「はぁ、おじゃましてもええん?」
「うん、ちょっと見てもらえると助かるよ」

中に入ると、お世辞にも片付いているとは言えない部屋で・・・
キッチンには、普通のオーブンレンジがあって、今もウーンと静かに音を立てていた

「・・・これ、オーブンになってますよ?」
「え、オーブン?」

小さな文字でオーブンと表示されていた

「え、え・・・。電子レンジなのになんでオーブンなの?」
「いや、レンジとオーブンと両方できるやつやから」

訳も分からずに買って、今まではなんとなく使ってきたけどたまたまオーブンのボタンを押してしまったということだろう
とりあえずこれ以上焦がしても仕方ないので、スイッチを切る

「しばらく熱いからほっといて、冷めてから使ってな」
「あ、ありがとうございます」
「あんまり家事できへんのやね?」
「・・・・うん」

恥ずかしがってうつむいていしまうすこやん
うーん、とても1つ上とは思えへん

でも、なんかほっとけへんなぁ

「こんな焦げ臭い部屋じゃご飯も食べられへんやろ。私の部屋に来る? お昼はカレーやから、食べてってええよ?」
「えっ、悪いよ」
「でもほっといたら今度はレンジが爆発しかねんし〜」
「流石にそこまでじゃないよ!」



そんなこんなで、いろいろと世話を焼くようになって・・・
いつの間にかお弁当を作ってあげたりするようになっていた

すこやんは私がおらへんとダメダメやからなぁ、なんて自惚れたりしてまう

恋愛感情みたいなのはなくて、年上のくせに手のかかる妹ができたみたいな感覚やったけど・・・・
それでも、なんとなくこんな関係がずっと続いたらええなって、そう思っていた


1年後、すこやんが学校を辞めるなんて思ってもいなかった

私のせいで・・・
934 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/20(日) 18:39:55.46 ID:BMbMoVEX0
-side 咏-

表彰式が終わると同時に、またメールが来た
メールの差出人は、野依さんだった

「野依さん・・・・。そういえば、いないな」

いくのんが表彰式に出てくるかどうかしか気にしてなかったけど・・
当のいくのんは表彰式のギリギリに来たんもんだから話しかけることができなかった

とりあえずメールの文面に目を通す

――小鍛治さん、白糸台駅にもうすぐ着いちゃう

・・・野依さん、まさかすこやんの後を付けてるのか
白糸台駅の電車は12分おきに出る。車で飛ばせばもしかしたら間に合うか?

「いくのん!」
「なに〜」

表面上はいつも通りののんびりとした口調のいくのん
でも、そんなはずないよな・・・

教員宿舎に住んでないえりちゃんは気づいてなくても不思議じゃないけど、2人は隣同士であんなに仲良しだったんだから

「野依さんがすこやんの後を付けてる。もうすぐ駅に着くんだと」
「・・・だから言うたやん。会う資格なんてないって」
「そんなの知らんし。だったら野依さんに今すぐ電話して付けるのやめさせろよ」

野依さんがどこまで考えてすこやんを付けているのかなんて分からない
せっかく来たんだからみんなと会っていけばいいのに、くらいにしか思ってないかもしれないけれど

そうだとしても、この機会を逃したらもうすこやんには会えないかもしれない・・・

「別に、私のためにやっとるわけないんやろ〜」
「ああ、そうかもしんねーよ。私が付けろって言ったわけじゃないしな。でもな、いくのん!」

私だって、なんであのとき殴ってでもすこやんが帰るのを止めなかったんだって思いはじめてる・・・
そう。ここで会ってくれなきゃ、みんな後悔すると思う

「会う資格がないなんて女々しいこと言ってる段階で、本当は会いたいんだよ。会いたくないだったらそんな七面倒くさいこと言わずに、会いたくないって言えばいいんだよ!」
「・・・・・なんも知らんくせに」
「知らねーよ、分かんねーよ。ただな、ちょっとのすれ違いでギクシャクしてるくらいだったら、とっとと会って解消したらいいだろ」

すこやんが学校を辞めた理由は私も知らない

ただ、すこやんが学校を辞めて一番落ち込んでいたのはいくのんだった
表面上はそうは見せなかったけれど、ときどき暗い表情を見せてため息なんてついてたら気づくっての

だからすこやんが今日学校に来たって知った時に、一番に教えてやったのに・・・

「・・・どんな顔して会ったらええんか、分からへんもん」
「5分で考えな」

ほら、ほんとは会いたいくせに・・・

「えりちゃん!」

遠巻きにこちらを見ていたえりちゃんに声をかける
教員宿舎に住んでいないえりちゃんは、自動車通勤をしている。だから、

「車出してくれ、今すぐ!」
「・・・え?」

無理やりいくんの腕をひっぱり、戸惑うえりちゃんを追い抜く

「いいからダッシュ、時間がないんだ」
「は、はいっ」
935 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/20(日) 18:42:20.95 ID:BMbMoVEX0
-side 浩子-

園城寺先輩が倒れたときはどうなることかと思ったけど、とりあえずは無事に対抗戦は終わった
けれど、まだいろいろ片付いてはおらんみたいやな・・・

三尋木先生、赤阪先生、針生先生の3人が慌ただしく講堂を出ていく

校長派として宮永照を勝たせるために動いてきた三尋木先生
その逆に、理事長派として宮永照を負けさせるために動いてきた赤阪先生
その2人が一緒にどこかへ行こうとしている・・・

「おばちゃんにでも、探り入れてみるか?」

誰に言うでもなく、独りごちる
末原先輩が目標としていた、クラス対抗戦の妨害阻止はとりあえずクリアしたとみていい

あとは、個人的な興味の問題だけ・・・

末原先輩に言われて集めたこれまでの歴代対抗戦や個人戦の勝者のデータは興味深いものだった
宮永照を除いた歴代の6冠以上は4人

熊倉トシ・愛宕雅枝・小鍛治健夜・戒能良子

全員が3年のクラス対抗戦で敗北している
けれど、戒能先生のクラスは明らかに弱体化していた。そして今回の宮永照への妨害・・・

ターニングポイントがあるとすれば、小鍛治健夜の敗北

小鍛治健夜の3年のクラス自体は可もなく不可もなくだったが、他のクラスも戦力が分散されている印象だった。全体的に平坦すぎるほどに平坦・・・平坦であれば、小鍛治健夜のクラスの勝利は約束されたようなもの

まるで小鍛治健夜の勝利を望んでいるかのような編成・・・
少なくとも私にはそう読み取れる

けれど、それを破ったのは当時1年の赤土晴絵と藤田靖子

先鋒でぶつかりあった小鍛治健夜を、赤土晴絵はリードを許したものの見事に抑えた
先鋒で10万点以上のリードは当たり前、下手をすれば先鋒戦だけでトビまでありうる小鍛治健夜との差を3万点で抑えたのだから、大健闘だろう
中盤で少しずつその差を詰めた当時の1年15組は、大将の藤田靖子でまくって逆転勝利を収めた

「・・・代行はどこに行くんや」

隣には末原先輩がいた
考えにふけっていた私は不意を打たれる

「突然現れんでください、ビックリしますわ」
「悪いな。一応、礼だけは言っとかないとアカンと思ってな」
「礼ですか?」
「クラス対抗戦も無事に終わった。協力してくれて助かったわ」

そう言って、小さく頭を下げる末原先輩

「礼には及びません。それになかなか興味深いデータが取れましたわ」

末原先輩を見て、不意に真瀬先輩のことを思い出す
園城寺先輩の代わりに中堅戦に出たけれど、出たらレギュラー剥奪・・・

「中堅戦の交代はビックリしましたけど?」
「・・・あれは単に怜が無茶しすぎただけや」

表立っては言わない方がいいと判断して、曖昧に尋ねる

「まさか洋榎さんがマイナスを食らうとは思いませんでしたわ」
「あれは由子以外みんなビックリしとる」

・・・ふむ、レギュラー剥奪は覚悟の上で真瀬先輩は交代を名乗り出たというところか

「あと、絹の体調はどないかご存知ですか?」

同い年の従姉妹、愛宕絹恵
小さい時から知っているけれど風邪一つ引かない健康体が、この大一番で体調不良とは考えにくかった

「なんなら、今から見舞いに行くか? ここでどうこう言うより、その方が分かりがええやろ」

ここでは話されへんってことか?

「そうですね、どうせこの後は寮へ帰るだけですから」
「じゃあ決まりや、行こか」

ほんと、まだいろいろ片付いてはおらんみたいやな・・・
936 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/20(日) 18:45:00.58 ID:BMbMoVEX0
-side えり-

言われるままに、咏さんと赤阪先生を乗せて車を出す

「どこまで行くんですか!」
「白糸台駅。頼むぜ、えりちゃん!」
「まったく、仕方ないですね」

いつだって突拍子の無い人なんだから・・・
さっきは針生さんだなんて言って怒っているかと思ったら、もう「頼むぜ、えりちゃん」なんだから

まったく、勝手が過ぎます
まあ、それを心地よいと思ってしまっている段階で、私の負けなんだろうけど・・・

時間帯的には渋滞が始まる頃
でも、任された以上、最短時間でたどり着いてあげますよ

「ちょっと無茶しますよ!」

頭の中であらゆる抜け道が浮かぶ
その中からこの時間帯一番空いていて、極力安全な道を考える。事故なんて起こしたら意味がない

「・・・なんでここまでするん?」

か細い声で、聞き逃しかける
後ろに座る赤阪先生と、咏さんの表情は見えない

「いろいろ聞きたいのはこっちだっての。なんですこやん辞めたんだ。なんでいくのんを避けるんだ?」
「・・・・知らへんよ」
「ほう、会う資格うんぬん言ってたのにか?」

赤阪先生は返事を返さない

小鍛治さんとは連絡を取り合っていた私だけど、赤阪先生の様子だけを聞かれたことはなかったと思う・・・
仲がいいのは、てっきり福与さんかと思っていたけれど・・・

「まあいいさ。一応そっちの質問に答えておくと・・・ただのおせっかい」
「・・・・ろくな理由やないな〜」
「理由なんてそんなもんだろ」

電車を使わないので何分に電車が出るのか分からない
だからもう電車に乗りんでしまっているかもしれない・・・・

「咏さん、野依先生に連絡を取った方がいいんじゃないですか?」
「おう、そうだねぃ。でも野依さん、電話だとますます何言ってるのかわっかんなくなるよなー」

あと信号2つ、まっすぐ抜けるだけ・・・
でも赤になってしまったので仕方なく停車する

「もしもし、野依さん?」

電話の向こうの野依先生の声が微かに聞こえるが、いつも以上にテンパっているのだけは分かった

「おおう。よし、殴ってでも引き止めてくれ!」
「間に合わんならそれでええって・・・」
「田舎じゃないんだから、電車の一本くらい遅れたって大丈夫だって。もうすぐ着くから、頼むぜぃ」

通話が終わると同時に信号も青になった
ここが青なら次の信号も青のままいける。アクセルを踏みこむ

「もうすぐ着きます」
「うっし、終わったらまた迎えに来てくれよ」
「ええ、近くで待機してます」

駅に到着した
小さなロータリーに車を付ける

「ほら行くぜ、いくのん」
「すこやんはもう電車乗って帰ってるって」
「つべこべ言ってないでとりあえず行くぜ」

気乗りしない赤阪先生の手を引っ張って、咏さんが車を降りる
小さな背中がますます小さくなっていくのを見届けて、私は近くの駐車場を探すことにした
937 : ◆oeEeLVGR7U [sage saga]:2013/01/20(日) 18:55:31.53 ID:BMbMoVEX0
今日はここまでです

部活対抗戦をやるなら、安価スレにしてみようかなぁとかぼんやり考えたりしてます
生徒会がくじでランダムに選んだ2人が1日限定カップルになって夏フェスを回る、みたいな感じで
まあやれるかどうかわかりませんけど・・・

一区切りまで、もう少々お付き合いください
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 20:18:17.73 ID:SN2x94D20
乙!いくのんが乙女してるなー
そして安価スレ建設予定だと……どこか適当なスレで錆びついた腕を磨かざるを得ない
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 20:21:08.54 ID:M1DuqXBAO
そいつも面白そうだなww
負担がないようにやってくれれば良いよ
面白いからね
940 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:37:59.90 ID:y6WeG5Yq0
-side 理沙-

「電車、来る!」
『おおう。よし、殴ってでも引き止めてくれ!』

三尋木さんからの電話を受ける
ホームには電車の到着を知らせるアナウンスが流れる
どうしよう、殴ってでも止めるなんて・・・

「じゃあ、お疲れさまでした」

小鍛治さんはもう電車に乗り込む気まんまんだし、私がなんとかしないと

「・・・行かないで!」
「そういうわけには、いかないので」
「じゃあ殴る!」
「ええええっ」

ああ、思わずとんでもないことを言ってしまった気がする。でもとにかく止めないと
私は思いっきり右腕を上げた

「ちょっと、ほんとに殴る気ですか!?」

小鍛治さんが怯えて体を半歩後ろにそらす。私はそのまま右腕を振り落とした
目をつぶって両手で頭をガードする小鍛治さん

よし、視線がそれたっ

私はそのまま小鍛治さんに抱きついた

「え、ええっ」
「捕まえた!」
「離してください、電車が来ちゃう」
「離さない!」

私から離れようとするけど、私は目一杯抱きついて小鍛治さんを逃がさない
電車が到着すると、降りてくるお客さんの視線を集めるけれど、今はそんなことを気にしている余裕はない

必死に抱きついて、なんとか小鍛治さんを電車に乗せないことに成功した
電車が行ってしまったので、私は小鍛治さんから離れた

「野依さん、どうしてここまでするんですか・・・」
「さみしいから!」
「さみしい?」
「そう、さみしい・・・」

訳も分からず学校を辞めてしまって
久しぶりに会えたのにゆっくりもできずに帰っちゃうなんて、さみしい

「野依さん! ほら、いくのん、すこやんいるぞ!」

振り返ると、改札口から三尋木さんが赤阪さんを引っ張ってくるところだった
小鍛治さんが、小さくため息をつく

「気まずいなぁ・・・」

きっと言えない理由があって辞めっちゃったんだろうけど・・・
そんなの、周りはそこまで気にしたりしないのに

「ほらいくのん、とっとと顔見せなって」
「やから、どんな顔したらええかわからんってゆうとるのに」

赤阪さんが三尋木さんの後ろに隠れようとするけれど、小さな三尋木さんじゃ隠れようもなくて・・・

赤阪さんは、ほんとに複雑な表情を浮かべていた

泣きたくもあり、笑いたくもあり
悲しくもあり、怒りたくもあり・・・

「野依さん、ありがとな。それでさ、ちょっと2人きりにしてやってくんね?」

三尋木さんが無理やり赤阪さんを小鍛治さんの前に押し出した

「分かった!」

きっと、2人の間に特別な事情があるのだろう

「2人とも、頑張って!」

こんなことしか言えないけれど。2人の表情を見てたら、次の電車が来るまでのわずかな時間だけかもしれないけれど、それが貴重な時間になるのは分かるから
941 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:40:14.77 ID:y6WeG5Yq0
-side 照-

「はぁ、なんで明日普通に授業なんやろうなぁ・・・」

表彰式も終わり、教室に戻る途中
怜がため息をついた

月曜日から始まって4日間のクラス対抗戦が終わったけれど、まだ金曜日が残っている。土曜日は休みだけれど

「今日は疲れたし、打ち上げは明日かな?」
「打ち上げとかちょー楽しみだよー」

塞と豊音は、打ち上げはどこに行こうかと盛り上がってた

「宥は、どこか行きたいところある?」

対抗戦の前はボウリングに行ったけど、流石に同じところというのも芸がないかな
宥は、うーんと首を傾げた

「特にどことかは、無いかな・・・。ぱっと思いつくのはカラオケとかだけと、私そんなに歌とか上手じゃないし」
「私も、あんまり歌えるのない」

人前で歌うのはいくら友達でもちょっと恥ずかしいし、みんなを盛り上げるような曲も知らないし・・・

「カラオケー! 行ってみたいよー。行ったことないんだ!」
「ええなぁ、今からでも行きたいくらいやわ」
「怜は今日は寝ないとダメなのよー」
「由子はケチやなぁ・・・」
「体が資本なのよー」

カラオケという言葉が聞こえてしまったのか、豊音がはしゃぐ
怜も同調したが、流石に由子が諌めた

「どっちにしても、今日は私はパスだよ。早く帰らないといけないから」

もしかしたら咲のクラスは打ち上げでどこかに行くかもしれないけれど、晩御飯の用意とか洗濯物片付けたりとか色々あるし

「予定はこっちで立てとくから、明日は空けといてよ」

塞がそう言うのに頷いて

「照ちゃん、咲ちゃんによろしくね」

悪いようにはなっていないと、宥は言っていた
きっと、そうなんだろう

「あ、電話・・・」

宥の携帯が鳴る

「憧ちゃんだ」

宥は新子さんと2、3会話をかわして、電話を切った

「照ちゃん、憧ちゃんたちのクラスは今日打ち上げするんだって」
「そっか。じゃあ咲も?」
「うん、照ちゃんにも伝えてって言ってたよ」

じゃあ晩御飯はそんなに用意しなくてもいいのか・・・・

「照ちゃんは今日は忙しいの?」
「え、まあ。洗濯物とかあるから。晩御飯は簡単に済ませようと思うけど」
「そっか・・・」

意味ありげな視線を受けて、質問の意味を理解する

「まあ、慌てて帰るほど忙しいわけじゃないけれど」
「うん、だったらちょっとお部屋に寄ってほしいな」

はにかむ宥に逆らえる訳もなく、私はゆっくり頷いた
942 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:41:21.66 ID:y6WeG5Yq0
-side 小蒔-

表彰式が終わったあと、憩ちゃんは言った

「みんなで絹ちゃんのところ行かへん?」
「え、でも体調が悪いのにみんなで押し寄せて大丈夫かな?」

玄ちゃんの指摘ももっともだった

「私は今日のところはメールで済ませといたらええと思うけど」
「む、衣はお見舞いに行きたいぞ」

漫ちゃんは反対して、衣ちゃんは賛成
みんなの意見が真っ二つになって、自然と私に視線が集まる

「わ、私は・・・」

逡巡して、

「お見舞いに行きたいです」

やっぱり突然体調を崩したというのも心配だし、なによりこの4日間一緒に頑張ってきた結果も直接話したかった
負けてしまったけれど、みんなで一生懸命戦ってきたんだから

「3対2やな、じゃあお見舞いに行こか」
「ん、まあ顔くらいは出しとかなな・・・」
「たくさんでお邪魔そうだったら、私は部屋の外で待ってるからね」

漫ちゃんも玄ちゃんも一緒に来てくれるようだった
うん、きっとみんなで行ったほうが絹恵ちゃんも喜んでくれるはず

みんなで寮に向かって歩いていくと、

「あ、末原先輩」

漫ちゃんが、船久保さんと歩く末原さんを見かけて声をかけた

「漫ちゃん、10組総出でどないしたん?」
「これから絹ちゃんのお見舞いに行こうと思ってたんですよーぅ」

聞くと、末原さんと船久保さんも絹恵ちゃんのお見舞いに行く途中だったようだ

「流石に7人は多すぎですわ。私は遠慮しときましょう」
「え、大丈夫だよ。私はお部屋に入らないから。浩子ちゃんと絹恵ちゃん従姉妹なんだから遠慮しなくてもいいよ」

船久保さんが辞退しようとするのを玄ちゃんが止めた

「順番に見舞えばいい。全員で行ったほうがきっと絹恵も喜ぶぞ」

衣ちゃんが喜色満面にして言うので、誰も反対できなくなってしまったようで

「ま、とりあえず絹ちゃんの様子を伺ってから考えたらええ」

末原さんがそうまとめて、7人でお見舞いに向かうことになった

「・・・明日にするか」

誰に言うでもなく、末原さんが呟くのが聞こえた
943 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:43:44.97 ID:y6WeG5Yq0
-side 健夜-

はぁ、どうしてこうなっちゃったんだろ・・・

「とりあえず座ろうか」

いずれにせよ、電車がまた来るまで10分くらいはある
郁乃ちゃんに席を勧めると、大人しく座った

「あんな・・・」
「だいたいは、針生さんから聞いてる」
「・・・そうなんや」

俯いたままの郁乃ちゃん
こうなるから、会いたくなかったんだけど。でもそれもただ引き伸ばしただけで、いつかはこうなったんだろうと思う

「宮永照、勝ったな」
「うん、そうだね」
「私は、何をしてたんやろうな〜」

郁乃ちゃんが宮永さんを負けさせるために動いているのは知ってた
だから余計に、会いたくなかった・・・

何のためにそんなことをしたのか、分かってしまったから

「理事長から、何て言われたの?」
「・・・・持ちかけたのは、私の方からや」
「何を?」
「宮永照が負けたら、すこやんを復職させてくださいって・・・」

そんなことだろうと思った
どうして私なんかのために、そんなことするかな・・・
だから、気が重くなっちゃうんだよ

1年前、郁乃ちゃんはちょっとした仕事のミスをした
けれど、あの理事長はミスの大小に関わらず郁乃ちゃんに目をつけていたんだろう

ミスに付け込んで、去年郁乃ちゃんを宮永照シフトの責任者にしようとした

当然郁乃ちゃんは反対する
2年に進級する宮永照はまだ3連勝しただけ、ジンクスになぞらえてクラス編成をいじるには早すぎる

理事長は強硬姿勢を崩さない
きっと恐れたんだろう、宮永照が9冠を達成してしまうことを

もうあなたには懲り懲りだよ、理事長・・・
だから辞表を叩きつけてやった
平静を装いながら、それでも内心で狼狽えているのだろうと思うと、少しは溜飲も下がった

この1年間は宮永照シフトを敷かないこと。来年以降のシフト責任者を郁乃ちゃんにしないこと
宮永さんが3年になってそれでも連覇を続けていたら、またシフトを強行するのは目に見えていたけれど

その条件だけは飲ませた

だから、やりたくなかったはずのシフト責任者になっていると聞いて、苦しかった・・・
944 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:47:04.58 ID:y6WeG5Yq0
「なあ、すこやん・・・」
「なぁに?」

まだ俯いたまま
うん、それでいいよ・・・

私も、面と向かって話されたら、きっと視線を泳がせてしまうから

「夏になったら善野先生帰ってくるんよ」
「そうなんだ・・・。確か倒れたの、私が辞めてちょっとしてからだったんだよね」
「サッカー部の顧問代行もそれで終わるから、潮時かななんて思うんよね」
「うん、そうしなよ・・・」

私だって辞めている
なのに続けろなんて言えなかった

「久しぶりに、郁乃ちゃんのご飯も食べたいななんて、思ってたところだよ」
「せやな、せやなぁ・・・・」

郁乃ちゃんがしゃくりを上げはじめる

もう、泣かないでよ
私は慰めたりするの苦手なんだから・・・・

「何食べたい? なんでも言ってや・・・」
「カレーかな。私たちが最初に食べた」
「・・・・あの頃より、もっと上手くなっとるけどな」
「楽しみだね・・・」

もううまく言葉を紡げていない郁乃ちゃんを、そっと抱き寄せた

ほんと、なんで私なんかのためにここまでしてくれたんだろう
ここまで、泣いてくれるんだろう・・・

「離れてみて分かるよ・・・・。私、郁乃ちゃんがいないとなんにもできないって」
「・・・もう、離れたらあかんよ」
「そうだね・・・」

それでも、どこかで思う
ここまで想ってもらえるほどに、私は価値のある人間なんだろうかって
こんなことになるんだったら学校に、残るべきだったんじゃないかって・・・

そうは思えど、あの人の影がちらつく
結局、私には逃げるしかできなかっただろう



――次の電車がもうすぐ到着すると、アナウンスが入った
945 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:49:27.90 ID:y6WeG5Yq0
-side 恭子-

絹ちゃんを見舞いに行く途中で、2年10組の面子と遭遇してしまった

この中で、絹ちゃんが仮病だと知っているのは私だけやし、上手いことフォローしたらなかんな
船久保だけやったら本当のこと話して今後のことについて話でもしようと思っとたけど、まあ明日にするしかないな

どうせ代行はどこかに行ってしまったしな
対立しているはずの三尋木先生と一緒に行動しとったのは気になるけれど、それも含めて今日は動きようがない

「あの、ご迷惑でしたか?」

声をかけてきたのは、神代だった

「ん、なんで私が迷惑なん?」
「いえ、明日にって言っていたようなので」

思わずつぶやいていた言葉が聞こえてしまったようだった
ぽやぽやしているようで、意外と鋭いのかもしれんな・・・

「気にせんでええよ。部活の話とかあったんやけど、別に今日でなくてもええことやしな」

遠からず近からずの回答をしておく
下手にごまかしても勘付かれそうやしな

「そうですか。それならいいんですが・・・」

浮かない顔の神代

「ん、まだ何かあるんか?」
「いえ、絹恵ちゃんが体調不良なのも心配なんですが、園城寺さんが倒れてしまったのも、大丈夫なのかと思って・・・」
「表彰式に出とったやろ、心配せんでもええよ」

怜のことか・・・
神代や洋榎、それに原村といった実力者相手に、怜は無理をしすぎた。結果、由子が出場することになった
まあ、誰を責めるなんて話やないけれど

「でも、私のせいで倒れてしまったので。ちゃんと謝りたくて」
「単に怜が無茶しただけや。それは自己責任ちゅうもんやで」
「その・・・・。いえ、すいません・・・」

言いよどむ神代
神代には何か見えて、それで責任を感じているのかもしれんけど・・・
見えた何かを言ってくれへんと、凡人の私には解決しようがないで

「謝りたいのなら、謝りたいって気持ちがあるうちに謝った方がええで。時間が経てば経つほど、気持ちに重りがのしかかって動かれへんくなる」

メゲるときだってあるし、辛くて逃げたくなる時だってあるけれど・・・
それでも前を向かなければ、前には進めない
足が震えて、目をそらしたくなっても、それでも・・・

「・・・そうですね」
「なんなら怜と連絡とってもええで」
「園城寺さんも、寮生ですよね?」
「ああ、そうやで」
「なら、絹恵さんのお見舞いが終わってからでも、お会いできますよね?」
「まあ、メールはしとく。もしかしたら打ち上げで帰りが遅いかもしれんからな」

優勝したクラスやから、そのままの流れでどこか遊びに行くということは考えられた
ただまあ、私がクラスにおったら明日にしろと言うけれど

怜からのメールが帰ってきた
由子に怒られたからまっすぐ帰る、か・・・・

「ありがとうございます、末原さん」
「ただのおせっかいや、礼なんていらへんよ」

そうこうしているうちに、絹ちゃんの部屋までついた
率先して、荒川が扉をノックする

「絹ちゃーん、起きとるー?」
「・・・・今開ける」

辛そうな声が返ってきて、ロックが外れる音がする
946 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/01/25(金) 22:51:32.26 ID:y6WeG5Yq0
「わ、みんなおるんや・・・。それに末原先輩に浩子も」
「お見舞いにきたぞ、絹恵」
「あ、ありがと。でもこんなにたくさんは部屋に入られへんよ」

かえってこの大人数の方が断る理由にはなるかもしれんな

「うん、顔を見に来ただけだから。大丈夫そうで安心したよ」
「まったく、長い付き合いやけど絹恵が病気とかいまだに信じられへんわ」
「もう、私だって病気くらいするって・・・」

絹ちゃんはうつむきながら受け答えする
まあ、顔色までは誤魔化せへんからな。極力正面は向かない方がええやろ

「絹ちゃんの代わりのとかしんどかったんやで。今度おごってな」
「あはは、ありがとな」

いきなり宮永や竜華の相手をした漫ちゃん
まあ爆発の片鱗は見せたし、これからもっと鍛えたらなあかんな

「絹恵ちゃん。私たち、4位でした。優勝したかったけど・・・。ごめんなさい」
「小蒔ちゃん、なんで謝るの。足引っ張ったのは私やで・・・」
「あとはまた明日にしよか。絹ちゃんも、立ち話じゃ辛いやろうしなー」

荒川がさっと神代と絹ちゃんの間に入る

ええタイミングやな。ほっとくと私が私がって無駄なループをしかねん・・・
ただ、なんとなく荒川は気付いとるような感じがするな・・・
絹ちゃんが、ほんとは体調不良やないってことに

「みんなごめんな、急にこんなことになって・・・」
「そんなしょげとったら、洋榎にどやされるで。だからあんまり気にしたらアカンで、絹ちゃん」
「お姉ちゃんにはもうどやされてますわ」

最後に絹ちゃんが小さく笑みを浮かべる。洋榎の言葉が一番の薬なんやろう

そうして絹ちゃんのお見舞いは終了して、解散になった
そこへ、荒川が声をかけてくる

「末原さん、ちょっとええですか?」
「どうしたん?」
「絹ちゃんことやけど、何か聞いてますか?」

探るような感じ、そこまで確信持ってる訳やあらへんのか・・・

「仮に何かあったとしても、それは絹ちゃんが言うのを待つべきやと思うで」
「そうかも、しれませんね・・・」

もう、終わったことやしな
後始末はせなならん、あまりことを大きくしてもな・・・

「もう一つ、ええですか?」

このあとに続く荒川の質問は、想定していなかった

「赤阪先生、辞めへんよね?」
「は? 辞めるって、学校をか?」
「保健室で絹ちゃんの病欠を聞いたときはなんとも思わへんかったけど、今から思うと、なんかいつもとちょっと違う感じがして」

荒川が言うには、いつもなら感情が読み取りにく代行だけど、少し無理をしているのが伝わってきたらしい
だから、絹ちゃんが休んだのは漫ちゃんと交代するためじゃないかと、直感でそう思ったようだった

ふむ、さすがの洞察力というべきなんやろうな

「でも、それがなんで学校辞めるなんて話につながるんや?」
「んー、なんとなく、としか言えへんのです。そのくらいの覚悟してへんかったら、そんな無茶せーへんやろうなって」

代行が、学校を辞める?
夏に戻ってくる、善野先生・・・・
ちょうど顧問も交代できて、辞めるにはいいタイミングかもしれへんけど・・・

散々迷惑かけられて、辞めてくれるならせいせいするはずやん・・・
でも、なんでこんなもやもやするんや・・・

いや、まだ仮定の話や。暴論もええとこや
宮永照が勝ったくらいで、なんで学校まで辞めなあかんねん。そんなこと、あるわけないやろ

「変な話してごめんなさい。でも、末原さんくらいしか話せる人おらへんと思って」
「ああ、せやな・・・」

私は、適当な相槌を打つので精一杯だった
947 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/25(金) 22:58:18.31 ID:y6WeG5Yq0
今日はここまでです
ビッグガンガンを買ってきました。何回もやっているからかもしれませんが、姫松や白糸台に比べるとインパクトは落ちてるかなぁという気がしました
劍谷はきっとやらないだろうなぁ・・・・

安価スレはぼんやり考えてますけど、ここんとこ忙しいので、小話スレくらいに落ち着くかもしれません
キャラ100人ならべて、コンマで2人選ぶとか。100人選ぶのからして大変そうですが

それでは、また一週間後くらいに
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 23:45:36.35 ID:lhz7wy5Qo
乙です

いくのんとすこやんは大人なんだけど大人だからキュンキュンしてしまう…
それからてるてると宥姉に期待!
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/26(土) 01:29:32.21 ID:HCxpsCgyo
コンマ表ならVIPにこんなのが

00 片岡 優希   01 染谷 まこ   02 竹井 久    03 原村 和    04 宮永 咲
05 井上 純    06 沢村 智紀  07 国広 一    08 龍門渕 透華 09 天江 衣
10 福路 美穂子 11 吉留 未春  12 文堂 星夏  13 深堀 純代   14 池田 華菜
15 津山 睦月   16 妹尾 佳織  17 蒲原 智美  18 東横 桃子   19 加治木 ゆみ
20 宮永 照    21 弘世 菫    22 渋谷 尭深  23 亦野 誠子   24 大星 淡

25 上重 漫    26 真瀬 由子  27 愛宕 洋榎  28 愛宕 絹恵   29 末原 恭子
30 神代 小蒔   31 狩宿 巴    32 滝見 春    33 薄墨 初美   34 石戸 霞
35 小瀬川 白望 36 エイスリン   37 鹿倉 胡桃  38 臼沢 塞    39 姉帯 豊音
40 松実 玄    41 松実 宥    42 新子 憧    43 鷺森 灼    44 高鴨 穏乃
45 園城寺 怜   46 二条 泉    47 江口 セーラ 48 船久保 浩子 49 清水谷 竜華

50 花田 煌    51 安河内 美子 52 江崎 仁美  53 白水 哩    54 鶴田 姫子
55 辻垣内 智葉 56 ダヴァン     57 郝 慧宇    58 雀 明華    59 ネリー
60 椿野 美幸   61 衣藤 澄子  62 古塚 梢    63 森垣 友香   64 安福 莉子
65 本内 成香   66 チョコレ    67 寺崎 遊月  68 新免 那岐   69 佐々野 いちご
70 荒川 憩    71 対木 もこ   72 百鬼 藍子   73 宇津木 玉子 74 南浦 数絵

75 小走 やえ   76 岡橋 初瀬  77 志崎 綾    78 山谷 ひな   79 ギバード 桜子
80 赤土 晴絵   81 新子 望    82 すこやん(37) 83 福与 恒子   84 藤田 靖子
85 三尋木 咏   86 針生 えり   87 野依 理沙   88 村吉 みさき  89 久保 貴子
90 瑞原 はやり  91 戒能 良子  92 赤阪 郁乃   93 愛宕 雅枝   94 熊倉 トシ
95 夢乃 マホ   96 室橋 裕子  97 大沼 秋一郎 98 ハギヨシ    99 須賀 京太郎

マイナーカプっていいよね!
速報では数少ない百合スレですし次スレも頑張ってください
950 : ◆oeEeLVGR7U [sage]:2013/01/26(土) 08:24:22.56 ID:YY3M6gGm0
おお、コンマ表ありがとうございます
でもこのままだと厳しいキャラもいるので、改良してみました


00 [自由指名]  01 宮永 照  02 井上 純  03 福路 美穂子  04 津山 睦月
05 片岡 優希  06 辻垣内 智葉  07 [自由指名]  08 荒川 憩 09 神代 小蒔
10 松実 玄  11 [自由指名] 12 小瀬川 白望  13 園城寺 怜  14 花田 煌
15 小走 やえ  16 上重 漫  17 [自由指名]  18 椿野 美幸  19 本内 成香
20 吉留 未春  21 弘世 菫  22 [自由指名]  23 沢村 智紀  24 エイスリン

25 染谷 まこ  26 真瀬 由子  27 [自由指名]  28 松実 宥  29 二条 泉
30 妹尾 佳織  31 狩宿 巴  32 依藤 澄子  33 [自由指名]  34 安河内 美子
35 江崎 仁美  36 古塚 梢  37 [自由指名]  38 渋谷 尭深  39 国広 一
40 蒲原 智美  41 愛宕 洋榎   42 新子 憧  43 鹿倉 胡桃  44 [自由指名]
45 竹井 久   46 文堂 星夏  47 [自由指名]  48 滝見 春  49 佐々野 いちご

50 江口 セーラ  51 針生 えり  52 福与 恒子  53 村吉 みさき  54 夢乃 マホ
55 [自由指名]  56 対木 もこ  57 [自由指名]  58 南浦 数絵  59 小鍛治 健夜
60 瑞原 はやり   61 戒能 良子  62 三尋木 咏  63 藤田 靖子  64 野依 理沙
65 鷺森 灼   66 [自由指名]  67 [自由指名]  68 臼沢 塞   69 ダヴァン
70 【カプ指名】  71 薄墨 初美  72 原村 和  73 龍門渕 透華  74 船久保 浩子

75 東横 桃子  76 亦野 誠子  77 【カプ指名】  78 愛宕 絹恵  79 森垣 友香
80 白水 哩  81 赤阪 郁乃  82 久保 貴子  83 赤土 晴絵  84 安福 莉子
85 鶴田 姫子  86 大星 淡  87 [自由指名]  88 [自由指名]   89 清水谷 竜華
90 石戸 霞  91 姉帯 豊音  92 末原 恭子  93 加治木 ゆみ  94 池田 華菜
95 天江 衣  96 高鴨 穏乃  97 [自由指名]  98 宮永 咲  99 [自由指名]

ぞろ目か下一桁7の場合は、自由に指名できます
70、77の場合は、カップリングを指名できます(もう一方のコンマは無効化されます)


試しに乱数生成してみた
7326…透華×由子
8620…淡×未春

未知すぎる領域だなぁ・・・
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/26(土) 09:44:02.97 ID:bpmPSboDO
乙〜
色々明かされてきたけど未だに照シフトの意図がみえてこないな…
952 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/04(月) 00:09:01.06 ID:yO9yCiR60
-side えり-

咏さんからメールが来たので、ロータリーへ車をつけた
改札から出てきたのは、咏さんと野依さんだけだった

「えりちゃん、ありがとねぃ」
「ご苦労さま!」

咏さんが助手席に、野依さんが後部座席にそれぞれ乗り込んだ

「あの、赤阪さんは?」
「すこやんと話してるよ」
「引き止めた!」

どうやら、野依さんが小鍛治さんの引き止めに成功したようだ。一体どうやったのか気になる・・・

「ま、あとはあの2人に任せるしかないさ・・・」

ロータリーに長く停めておくことはできないので、車を一度走らせる

「さって、えりちゃん。すこやんとの関係についてうかがおうか?」
「・・・このタイミングでですか」
「このタイミングしかなくね? 知らんけど」

野依さんもいるというのに・・・・

「いや、ほんとに。一番口が硬そうって理由で連絡をもらって、学校の様子を教えていただけですよ」
「信頼されてんのな・・・・」
「・・・・すねてます?」
「すねてねーし!」

運転中だから表情はうかがえないけれど・・・
これは確実にすねてるなぁ

もう、そんなんじゃないのに

「逆に私が聞きたいくらいですよ。小鍛治さんが突然辞めた理由とか、赤阪先生との関係とか、今回の宮永照シフトと関係があるんですか?」
「私も全部知ってるわけじゃないよ。ただな、きっとすこやんは辞めたくて辞めたんじゃないんだと思うんだ。じゃなきゃ、学校の様子を気にしてえりちゃんに連絡とったりしないだろ・・・」
「そう思う!」

野依さんも同意した。確かに、未練があるのだろうと言われれば、そうとしか言えない・・・

「シフトのことも、校長先生からテルルを守ってやれって言われたくらいだしなぁ。でもなんとなく想像はできるよ」

咏さんがため息をついた

「理事長だか、理事長の関係者だか知らねーけど・・・・。きっとすこやんに変な愛情の注ぎ方してるんだと思うんだ」
「・・・ちょっとよく意味が分からないのですが」
「すこやんに成し遂げられなかった9冠、完全制覇を、他の人にされたくないって考えてそれを実行できちゃう人がいても、おかしくないと思ってるんだよね」

そういう感情を、理解できないわけではない・・・
自分の出した記録が抜かれた時にどう感じるのかは人それぞれだけど、この記録は抜かれたくないという感情は多少なりとも生まれるはずだ

「でなきゃ、説明がつかないんだよね。私も連覇記録は気になってちょっと調べたんだけど、すこやんにはむしろ甘いくらいのクラス編成だったのに、戒能ちゃんには厳しいシフト組んでるわけだからさ」
「じゃあ、小鍛治さんに執着している誰かが指示して連覇をさせないようにしてるってことですか?」
「私はそう思ってる。まあ、それが正解かどうかなんてわっかんねーけどな」

もしそうなら・・・
宮永さんはなんの関係もないのに、ただとばっちりをくらっただけということになる

こういう咏さんの推理って、だいたい当たるからなぁ・・・


踏切に差し掛かると、小鍛治さんの帰り方面の電車が通過していった
あれが駅に着けば、小鍛治さんは帰ってしまうんだろうか・・・





短いですが、生存報告兼ねて・・・
今月はあんまり更新できないんじゃないかと思います
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 00:23:12.60 ID:Q92voh7G0
乙ー
とりあえず生きてるようで安心した
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/04(月) 00:42:11.74 ID:+i1keaTGo
おお、安心した
気長に続きを待ってます
955 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/12(火) 00:01:58.66 ID:qv6IIvio0
-side 照-

宥の部屋に入る

今更驚きはしないけど、やっぱりこの時期にまだコタツとストーブがあるのはなかなかシュールだなぁ・・・
っていうか、夏でもあるらしいから、「まだ」とかじゃないようだけど

宥の匂いがする
とっても安心できる…
なんだかんだで、今日まで張り詰めていたものが、ゆっくりとほぐれていくようだった

「お茶入れるね」
「うん」

熱いお茶を入れるのは分かっているけれど、流石にそこまでは合わせられなくて
宥が入れてくれたお茶に、氷を1つ入れる

ちょっと狭いこたつだけと、思いっきりくっつけば隣同士で座ることはできた

「もうちょっと大きいこたつ買った方がいいのかなぁ・・・」
「それはダメ」

だって、くっつける方がいいよ
お茶を一口すすり、宥の顔を見る
宥も、私の方を見ていた

「ありがとね・・・」
「どうしたの、急に?」

私が不意にお礼を言ったのに、宥はキョトンとした

「うん、なんというか・・・、いろいろ。今日なんか特に、怜が倒れたりしたし・・・それでもなんとか優勝できて。でも、ここまでこれたのは、宥のおかげだから」
「私は何もしてないよ」
「そんなこと、ない。だって、宥がいなかったら、私はもしかしたら途中で手を抜いて勝たないようにしていたかもしれない」

由子が脅されたと知って、誰も動いてくれなかったら・・・
私は、ざわと負けることを選んでいたかもしれない

「それを、勝つ勇気をくれたのは、間違いなく宥だから」
「そっか・・・。私はただ、照ちゃんの一番カッコいいところを見たかっただけだよ」
「・・・・勝つところが?」
「勝ちに向かって駆け抜けるところ、かな?」

小首をかしげて微笑む宥
はぁ、ほんとに、宥には叶わないな

「じゃあ、今日の私は、カッコよかった?」
「うん、カッコよかったよ」
「ギギギって反転コピー、結構振り込んだりするからあんまりカッコよくないと思うだけどね・・・」

まだまだ未完成だったから、できれば大事な決勝戦で使いたくはなかった
けれど、宥は首を振る

「うーん、駆け抜けるところっていうのは、最終的に勝てなくても、勝とうとして一生懸命に戦ってるところってことだよ」
「ま、まあ・・・。一生懸命ではあったかな」

どちらかというと、必死というか、もがきながらなんとか追いついたという感じだった

それが、カッコいいのかな・・・
あまり実感は沸かなかったけれど
麻雀をしてて怖がられることはあるけれど、カッコいいって評価はあまり受けたことがなかったから・・・・

ちょっと手を動かした時、宥の手に当たった
反射的に手を引いて、またゆっくりと、宥の手のあった場所を探り当てる

ちょんちょんと、手の甲をさする

「なあに?」
「なんとなく」
「なにそれ…」

苦笑しているけど、構わずまたさする

ん、感じが変わった?
と思った瞬間、指を掴まれた。ああ、手の甲じゃなくて、ひっくり返って手のひらをさすってたんだ…

「つかまえた」
「うん、つかまっちゃた」
956 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/12(火) 00:03:48.32 ID:qv6IIvio0
宥が私の指を捕まえた手で、今度は指を絡めてくる
ああ、恋人繋ぎってやつだ・・・

「ねえ、照ちゃん」

こたつだからあったかいのか、宥の手に包まれているのかよく分からないまま
それでも、私はギュッとにぎりかえす
まるで手がしびれてしまったかのように、ジンジンとする
それが心臓にも伝わって、今度はドクドクいい始めて・・・

「なに、宥?」
「キス、していい?」

宥は顔を真っ赤にしていた
私もつられて真っ赤になっていることだろう。もう顔が熱くなりすぎてよく分からない・・・

「あ、改めて言われると緊張しちゃう・・・」
「突然初めて奪っておいて、そんなこと言うの?」

あ、初めてだったんだ・・・

「そんな言い方、ずるい…」
「ごめんね。だから、仕返し」

ゆっくりと、宥の唇が近づいてくる
宥が瞳を閉じるのにつられて、私もゆっくり目を閉じた

繋がった手を、さらに強く握り締める

そして――

「おねーちゃん、いるー? 優勝おめでとう!」

いきなり扉が開く音がした

・・・え?

「って、あれれ・・・」
「玄ちゃん、お部屋に入るときはノックしてっていつも言ってるでしょ!!」

目を開けると、扉の向こうで立ち尽くす玄ちゃんがいて・・・
宥は顔を真っ赤にしたまま、その玄ちゃんを怒鳴っていた

「あ、えっと、おねーちゃんと、チャンピオンが、キス?」
「玄ちゃん、これは、その」

慌てる宥は言葉がうまく紡げていない
私もなんと言っていいのか、頭が真っ白になってよく分からない

もうすでに3年の何人かには、私と宥がそういう関係だって知られているわけだし、今更慌ててもしょうがない
というのは、しばらく経ってから思ったことで

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

バターン!

大声をあげて、玄ちゃんは勢いよく扉を閉めた
声が遠くなっていく。どこかへと走り去ってしまったようだ…

「あ、玄ちゃん!」
「どうしようか、これ・・・」

寮は広いようで狭い、なんて話を聞いたことがある
特に噂話なんかはあっという間に広まるらしい・・・

「とりあえず、追いかけてみる?」
「そ、そうだね・・・」

その時にはもう、いろいろと手遅れだったけれど・・・
957 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/12(火) 00:05:35.68 ID:qv6IIvio0
-side 怜-

恭子からメールが来た
どうやら、神代が用事があるらしい

隣を歩く竜華にメール画面を見せる

「ってメール来とるんやけど、どないしよか?」
「不安なら一緒におったるけど?」
「今日のことなんかな?」
「まあ、それしかあらへんやろな・・・」

中堅戦で、私の未来視に割り込んできたこと
それくらいしか、神代と私との繋がりはない

「まあ、とりあえず部屋で待っとればええか」
「じゃあ私も怜の部屋にお邪魔するな」

部屋について、早速横になる

「はぁ、やっぱり布団がええな」
「さらに膝枕のオプションはいかがですか?」
「勘違いしたらあかんで」

ベッドに腰掛けて膝をポンポンと叩く竜華をきっと睨んだ

「布団がオプションで、竜華の膝枕がメインやで!」
「怜! 私は感動した!」

というわけで早速竜華の膝枕を堪能する。恭子のも悪くはなかったけど、やっぱり一番は竜華やなぁ
こんな膝枕で寝られるなんて、私は幸せもんや

「このまま死んでもええな」
「縁起でもないこと言わんといてや・・・」

頭を撫でてもらうと、眠たくなってくるな・・・

「ちょっと寝てええ?」
「ああ、神代来たら起こしたるからな」

そう言われると、あっという間に私は眠りについていた


次に目を覚ますと、目の前には神代が座っていた

「あ、怜。起きたん?」
「神代来とったんか、やったらすぐ起こしてくれてよかったのに」
「いえ、今座らせていただいたばかりですから」

お気遣い無くと会釈をする神代
流石にこのままじゃ悪かろうと、体を起こしてベッドに腰掛ける

「それで、何の用やったっけ?」
「今日の中堅戦のことです」

真剣な表情の神代は、いきなり頭を下げた

「本当に、申し訳ございませんでした」
「え、いきなり何謝っとるの?」
「その、対局中にはちゃんと言えませんでしたが、少しくらいは覚えてるんです。未来の中に割り込んだこと」

ああ、だからか・・・
未来の中でも、かすかにやけど謝る声が聞こえてきたんわ

あの未来いじっくって人の心折るのが生きがいみたいな神様やったら、絶対に謝らへんやろうからな・・・

「園城寺さんの未来に割り込んで、園城寺さんが倒れてしまったのは私のせいなんです・・・。だから、どうしても謝りたくて」
「いや、まあ確かに割り込まれたときは怖かったけどな・・・」

とりあえず神代に頭を上げるように促す
神代は、今にも泣きそうな表情に変わっていた

「でも、そのおかげで、いろいろ分かったこともある」

なあ神代、自分やない誰かに勝手に麻雀打たれるって、どんな感覚なんやろうな・・・
今となっては、未来いじられるより、そんな麻雀をいつも打ってる神代の方がかわいそうに思えてきたり、するんやで

「未来視に頼りすぎて、私は自分で考えるのを止めてたんやって気付けたし。なによりな」

隣で黙って話を聞いていた竜華を抱き寄せた
958 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/12(火) 00:08:02.29 ID:qv6IIvio0
「わ、突然なんやの、怜」
「私がピンチになったら、この竜華が駆けつけてくれたんやで。かっこよすぎるやろ?」
「そうでしたね・・・。覚えてます」
「だからまあ、結果的にはプラスになっとるんや。そんなに気にせんといて」

まだ釈然としてないようやったけど、そんな表情を打ち消すように、廊下で叫び声が上がった

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「な、なんや?」

竜華が立ち上がって、廊下まで様子を見にいった

「玄ちゃん?」
「え、玄ちゃんですか?」

その名前を聞いた神代も廊下を覗き込む

「あ、小蒔ちゃん! どうしようどうしよう!!」

その神代を見かけたのか、廊下から聞こえてきた声は確かに玄ちゃんのものだった

「何があったんですか、玄ちゃん」
「おねーちゃんがチャンピオンに襲われてた!」

…はて? 空耳か?

「とりあえず落ち着きや、玄ちゃん。どういう状況でそうなったん?」

ちょい気になるし、私も見に行くか・・・
私も廊下の様子を見に行くと、ひどく慌てふためいた玄ちゃんがいて

「私がおねーちゃんの部屋に行ったら、おねーちゃんがチャンピオンに襲われていたのです!」
「あー・・・」

照と宥姉ちゃんが好き合っとるのは今日聞いたばかりやけど・・・
まあなんや、とりあえず鍵は掛けよか・・・

「ちょっと竜華、玄ちゃんに付き合ってあげて」
「しょうがあらへんなぁ…」

竜華も苦笑しながら、玄ちゃんの手を取った

「とりあえず宥ちゃんのところへ行こか」
「え、でも・・・」
「ええからええから。任せとき」

そう言って、竜華が不安そうに玄ちゃんを連れて廊下を歩いていく

「えっと、大丈夫なんでしょうか?」

取り残された小蒔も不安そうにしているけれど
まあ、竜華は事情は知っとるし、悪いようにはならへんやろ

「まあ大丈夫やで。っていうか多分、玄ちゃんのおねーちゃん大好き補正がかかっとるだけやから、そんな大ごとやあらへんで」
「なら、いいんですけど・・・」

まったく、素のこの子は心配性なんやろうな・・・
そこまで気を遣わんでもええのにな

「ああ、あと。わざわざ謝りに来てくれてありがとな…。そんなに気にせんでええからな」
「はい、ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げる神代を見送って、私は部屋に戻った

一応照にメールしとくか・・・

玄ちゃんが、竜華と一緒に宥姉ちゃんの部屋に行くからな、って
959 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/12(火) 00:13:55.45 ID:qv6IIvio0
-side 郁乃-

すこやんの帰りの電車が来てしまう

「じゃあ、行くね」
「結構ドライなんやね?」

もうちょっとくらい時間をずらしてくれてもいいと思うけど・・・

「うーん、次の電車に乗らないと、なんかずるずるしちゃいそうで」
「別にええやろ、ずるずるしたって」
「そういうわけにもいかないよ・・・」

それでもすこやんだって、そんなさみしそうな顔しとるやん
だったら、残ってもうちょっと話でもしてくれたらええのに

「ごめんね、私だってこうなったら帰りたくないって気持ちもあるけど・・・」
「だったらっ」
「でも、ごめん。それでもまだ、私は学校に近寄れない」
「なんでなん!」

帰ってきたのは沈黙で・・・
顔を伏せてしまったすこやんが、何を考えているのか読み取れない

「理事長、いるでしょ」
「え?」
「理事長さ、ちょっと複雑なんだけど、私のお爺ちゃんにあたる人なんだ」

まさか・・・
でも、だから戒能ちゃんや宮永照の連覇阻止に動いたんか。すこやんに成し遂げられなかった連覇を、他の誰かにさせたくなくて

「だから、あの人がいる限り、私は学校にはもう戻らない」
「じゃあ、私がした賭けは無駄やったん?」
「それはわからないけど・・・」

私が宮永照の連覇を阻止できたら、すこやんの復職を認めてほしいという賭け
でも、理事長がいる限りすこやんが戻ってくる気がないのなら、まったく意味がなかったことになる

首を振りながら、すこやんは顔を見せてくれた
弱気に微笑んでいた

「あの人のこと、好きじゃないけど。でもそういう賭けは守る人だから、きっとそのときは、理事長を辞めたんじゃないかな」
「すこやん・・・。私のしたこと、間違っとったん?」
「それは、私が決めることじゃないよ」

電車がホームに入ってきた
周りが騒がしくなり、言葉が聞き取りにくくなる

「じゃあね。学校辞めるときに、連絡して」
「すこやん・・・。休みの時に、会いに行ってもええ?」
「もちろんだよ」

そう言って、電車に乗り込んでしまう

「じゃあ、またね」
「うん」

ただ頷くことしかできず、私は見送る
すこやんは、最後まで無理やり作ったような笑顔でいてくれた

久々に会えたのに、これだけの短い時間で別れないといけなくて、もう涙でぐちゃぐちゃな私を見て、笑っていてくれたんだろうと思う
ああほんとに、何してたんやろうな、私は・・・
すこやんに気を使わせてどうするんやろな

電車が出ていき、見えなくなるまで、私はホームで立ち尽くしていた
おせっかいな咏ちゃんから電話がかかってくるまで・・・


ああ、そうや
辞表の書き方、確認しとかんとな・・・






今日はここまでです
また来週末くらいには。量はどのくらいか分かりませんが
あと目一杯詰め込んで20レスくらいで終わると思います
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/12(火) 00:35:16.37 ID:+0GBJ5Bv0
おつおつ
久しぶりの照宥かと思いきや安心の玄ちゃん……

そしてとうとうこの話も完結かあ、スレタイの話は一日で投下し終えたから
執筆期間はわからないけどこの話が始まってもう半年近く経つんだね……感慨深い
961 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/18(月) 00:10:50.03 ID:bP+/SzDL0
-side 照-

あれから怜からメールがあって部屋に戻ると、竜華と玄ちゃんがいて
竜華は事情を知っているから、うまく玄ちゃんのことをなだめてくれた

私と宥は、お互いに好きで付き合ってるんだよって言って
玄ちゃんはショックだったようだけど、とりあえず誤解はとけたようだった


家に帰ってきて、簡単なご飯を作って食べて
洗濯物を片付けてお風呂を沸かして

お風呂に入って髪を乾かし終わったくらいに、咲が帰ってきた

玄ちゃんみたいに変な誤解される前に、言っておかないといけないよね。私と、宥とのこと

咲が部屋に戻って部屋着に着替え終わった

「咲、ちょっといい?」
「いいよ。そういえば言ってなかったね、優勝おめでとう」
「ああ、ありがとう」

そう言って、リビングの椅子に座る。咲も正面に座った

「今日、宥と麻雀を打ってみてどうだった?」
「お姉ちゃんのクラスの人だよね。敵なのに私のこと励ましてくれて・・・びっくりしちゃった」

咲は意味ありげに微笑んだ

「だから、お姉ちゃんにお似合いの人だと思うよ?」
「え?」
「もう情報流れてるよ?」

詳しく聞くと、玄ちゃんから新子さんにメールで連絡が入り、一緒に打ち上げに参加していた咲の耳にも入った、ということらしい

「話があるって、このことでしょ?」
「まあね。玄ちゃんがパニックになっちゃうくらいだから、咲にはちゃんと話をしようと思ったんだけどね」
「うん、でも私は大丈夫だよ」

にっこりと微笑む咲
でも、その意味合いがなんとなく変わった

「むしろ、相談に乗ってほしいくらいで」
「相談?」
「お姉ちゃんが今日一緒に打った、憧ちゃん。一緒に打ってみてどうだった?」

逆に同じような質問を返されてしまった
新子さんか・・・

「芯のしっかりした子だよね。私に対しても一歩も引かないで自分の麻雀を貫いてきた。なかなかできないことだと思う」
「そうだよね。私なんかと違って、ちゃんと周りに気が使えて。私が自分勝手に±0にしても、それでもいいって言ってくれて」

±0か・・・

鏡越しに見えた、咲の力

嶺上牌だけじゃなくて、±0にするために必要な牌は全部見えた
だからあのとき、竜華が9ソウを持っていて、8ソウをカンすれば切ることも予想がついていた
そしてきっと、直撃相手が9ソウを持っていたのも、偶然じゃない気がしている・・・

「だからな・・・・。私、今日の打ち上げで、憧ちゃんのことほとんど直視できなくて・・・」

うつむく咲は少し震えていた

「この気持ちって何なんだろう、なんでこんなに憧ちゃんのこと見たいのに不安になるんだろうって思ったんだけど・・・」
「うん・・・」
「お姉ちゃんと宥さんが付き合うって聞いて、分かったんだ・・・。私、憧ちゃんのこと好きになっちゃったんだって」
「そうなんだね・・」

咲も、今回の対抗戦で成長できたんだろう
見えるが故に、周りに気を使って勝たないようにしていた

私はそれを責めてしまったけれど、咲を理解してくれる人がいてくれるなら、こんなに喜ばしいことはない

「それで、相談って?」
「・・・うん。その、こんな気持ち、普通は変なんだよ?」
「変?」
「だって、女の子同士なんだよ。お姉ちゃんは白糸台が女子高だから、女の子同士には抵抗なくなったのかもしれないけど」
962 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/18(月) 00:13:03.83 ID:bP+/SzDL0
「確かに、女の子同士って多いかもしれないね、うちの学校」
「でも、憧ちゃんがそうとは、限らないでしょ?」
「それはそうだけど・・・・。でも、それは男の子を好きになっても同じじゃないかな。相手が告白を受けてくれるかどうか、それはその時になってみないと分からないから」
「でも、超えないといけないハードルが1つ多くなるわけで・・・」

青春してるなぁなんて口にするのは、流石にやめた
でも、こればっかりはお互いの気持ちの問題だからなぁ・・・

「じゃあ、宥に探りを入れてもらおうか。新子さんが咲のことどう思ってるのか、それとなく聞いてもらう?」
「大丈夫かなぁ、バレたりしないかな・・・」
「宥なら心配いらないよ」

それに、なんとなく予感がするんだ
もうすぐ、宥から電話がかかってくるんじゃないかって

プルルルルル

「噂をすれば・・・。ちょっと電話してくるね」
「うん、宥さん?」
「そう」

私たちの部屋に戻ってから、電話に出る

『もしもし、照ちゃん。遅くにごめんね』
「大丈夫だよ。それで、どうかしたの?」
『私の部屋に、憧ちゃんが来てるんだけどね・・・』

思った通りの電話の内容に、私は思わず頬が緩んだ

咲、きっとあなたたちもお似合いだよ
考えてること、同じなんだから



-side 宥-

はぁ、玄ちゃん、すごくショックを受けてたなぁ・・・
好きなものは好きなんだし、きっとそれは分かってくれると思うんだ

でも、ちゃんと鍵をかけておかないといけなかったよね
・・・そういえば今も、鍵が開けっ放しだ

「はぁ、こたつから出たくないけど」

クセをつけないと
そう思って立ち上がろうとしたとき、ノックの音がした

「宥姉、入ってもいい?」
「・・憧ちゃん? いいよ」

入ってきたのは、憧ちゃんだった

「玄から聞いたよ、宥姉。照さんに襲われたんだって?」
「ふぇ、襲われてなんてないから!」
「冗談よ。でも、付き合ってるってのは本当なんでしょ?」
「もう、憧ちゃんったら・・・」

はぁ、でも今日の騒ぎを聞いていた人がいたらきっとそんなふうに誤解しちゃったりするんだろうな・・・
しばらく大変そう・・・

「あ、これ一応差し入れね。そろそろ自販機もあったか〜いがなくなってくる頃ね」

そう言ってくれたのは、お茶のペットボトルだった
憧ちゃんも自分で持ってきたお茶のペットボトルを開ける。キャップの色が違うから、きっと冷たいのだろう

「わざわざありがとう。あまり自販機で買わないから平気だけどね・・・。それで、今日はどうしたの?」
「ホントは優勝おめでとうトークをしようと思ってたんだけど、もうこれは恋バナするしかないっしょ?」
「こ、恋バナ・・・」

改めてそう言われると、なんだかむずがゆいなぁ・・・
憧ちゃんが腰を下ろすと、さっそくコタツに乗り出してきた

「それでそれで、どっちから告白したの?」
「ええっと、どっちだろ・・・」
「ええ、そこ肝心なとこなのに!」
「照ちゃんから、かな。でもほとんど同時っていうか、私も言おうと思ったら言われてたっていうか」
「うわぁ、アツアツだぁ」

ううっ、こういうの人に話すのってなんだかとっても恥ずかしい・・・
しかも、その告白した場所って、この部屋だよ・・・
963 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/18(月) 00:14:36.27 ID:bP+/SzDL0
「それで、どこで? どんな流れで?」
「ええ、もういいでしょ・・・」

もう顔が真っ赤になってるに違いないよ
あったかいを通り越してなんだか熱いくらい・・・

でも、憧ちゃんは不服なようで

「それじゃあ参考にならないじゃない!」
「参考って、何の?」
「ふきゅ・・・べ、別に私のことじゃないわよ」

慌てる憧ちゃん・・・
んー、憧ちゃんが私たちの告白を参考にしたいの?

「じゃあ、憧ちゃんの友達ってことで、話を進めようか?」

自分でもちょっと意地の悪そうな笑顔を浮かべている自覚はあった

「あー、もういいわよ・・・。私です、私が参考にしたいんです」

観念して、憧ちゃんはため息をついた

「そうなんだ、憧ちゃんも誰かに告白したいの?」
「まあ、そうできたらいいなぁとは思ってるけど」
「しずちゃん?」
「違う違う・・・。しずに恋愛なんてそれこそ100年早いわよ」

まあ確かに、しずちゃんが恋愛してるところなんて想像できないかな・・・

「・・・・その、今日の先鋒戦、どうだった?」
「今日の先鋒戦・・・」

対局したのは福路さん、荒川さん、そして咲ちゃん

「もしかして、咲ちゃん?」

憧ちゃんは顔を真っ赤にして、こくりと頷いた
そっか、咲ちゃんかぁ

「咲ちゃんと打ってみて、びっくりしちゃった。だって、私は普通に打ってるのに、きっちり調整されちゃったんだから」
「それもあるけど、そういういうことじゃなくて」
「うん、休み時間にお話したよ。咲ちゃんは優しいから、勝つことも負けることもできなかった」

だからといっていつも±0に調整できるなんて、それはそれですごいことだけど

「でも咲ちゃん、みんなのために勝ちたいんだって言ってたから。これから勝ちたくても勝てなかったりすることもあると思うけど、憧ちゃんが支えてくれるなら、咲ちゃんはきっともっと強くなるよ」

照ちゃんでも、もしかしたら負けてしまうくらいに・・・

憧ちゃんも頷いた

「普段は小動物みたいで全然強そうに見えないのに、いざ麻雀になったら全然別人でさ。もっと咲が強くなるってなら、それを支えてあげたいななんて思っちゃったのよね」
「うん、憧ちゃんと咲ちゃん、お似合いだと思うよ」
「でもさ・・・」
「ん、なにか問題ある?」

大きくため息をつく憧ちゃん

「問題ありよ、大アリよ。だって私のこの感情、宥姉と照さんと同じ感情だよ・・・」
「うん、別にいいんじゃない?」
「だって、咲が女の子同士OKとは限らないじゃない。なんか今日の打ち上げの時も目を合わせてくれなかったしさ」

ああ、そういうことか・・・
この学校、女の子同士って容認されてるっていうか、そういうカップルが多いからあんまり気にならなくなっちゃうけど

憧ちゃんも咲ちゃんもまだ学校に入って間もないから、そういう心配をするのも当然だった

「じゃあ、この学校の空気に咲ちゃんが染まるまで待とう」
「え、そういう対策になっちゃうの?」

何ヶ月かすれば結構染まっちゃうんだけどな、これまでの傾向からすると

「ダメかな? じゃあ、照ちゃんに咲ちゃんの様子聞いてみる?」
「あんまり露骨にならないようにしてくれるなら、そうしてくれると嬉しいけど」
「照ちゃんなら大丈夫だと思うよ」
964 :tell you that I love ...(8-7) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/18(月) 00:29:44.73 ID:bP+/SzDL0
早速電話をしてみよう

ちょっと時間がかかったけど、電話がつながる

「もしもし、照ちゃん。遅くにごめんね」
『大丈夫だよ。それで、どうかしたの?』
「私の部屋に、憧ちゃんが来てるんだけどね・・・」
『ああ、それなら私も同じ用件で電話しようと思ってたところだよ』

同じ用件・・・・
それって・・

目の前に憧ちゃんがいるし、どこまで話していいんだろう。帰ってから電話すればよかったかな・・・

「咲ちゃんの様子を、今度教えてほしいなって思って」

今聞くのはまずいような気がして、とりあえずほんとに探りだけいれておくようにする

『今度? ああ、別に構わないよ。こっちも、新子さんの様子も教えてほしい』
「うん、それも大丈夫」

照ちゃんも察してくれたんだろう

『まあ、あとはタイミングの問題だけだと思うけどね』
「うん、そうだね」
『じゃあ、私も咲と話をしてたところだから、今日はこのへんで』
「うん、ありがとね」

咲ちゃんも、きっと照ちゃんに同じことを相談したんだろう
ふふ、なぁんだ、もう2人とも息がピッタリなんだね

「宥姉、照さん、何か言ってた?」

憧ちゃんが緊張しながら私を見てた
私は、安心させてあげられるようににっこりと微笑んだ

「大丈夫、きっと悪いようにはならないよ」

だってもう、2人の気持ちは1つになってるんだから


tell you that I love ...(9)へ続く




4日目終了です
なかなか時間が取れず、進みが遅いですがなんとか最後まで書き切ります!
さて、これからアニメ14話を見てきます!
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/18(月) 00:35:04.41 ID:cXeOJP/x0
乙ー
両思いばかりじゃないか(歓喜)
966 :tell you that I love ...(9) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/20(水) 01:29:36.79 ID:1xlIlZ7v0
-side 洋榎-

昨日はなんやいろいろあって疲れたなぁ・・・
それに寮じゃ昨日は、宮永が松実を襲ったとかなんとかって話でもちきりやったしなぁ

まあ、どこぞのカップルがーなんていつものことやけど

「お、恭子。おはようさんー」
「末原先輩、おはようございます」
「洋榎に絹ちゃん、おはよう・・・」

学校へ向かう途中で恭子を見かける
恭子はなんか知らんけど暗い面持ちで携帯を見つめていた

「どないしたん、そんな暗い顔して?」
「まだ連絡きとらへん?」

そう言ってメール画面を見せてくる

「代行からか・・・。放課後、部室に集合のこと、か」
「なんで私にメールよこして、部長の洋榎に連絡せんのや・・・」
「そりゃお前、代行に愛されとるからやろ」
「冗談は顔だけにしてください」
「おう、どういう意味やそれ?」

と軽い掛け合いをしてみるものの、恭子の表情は晴れない

「何をそんなに思いつめとるんや?」
「・・・何を言ってくるか、予想ができるんです。なのに、気持ちの整理がつかなくて」
「んー、そんなん何か言ってきてから考えたらええんとちゃう?」

予想しとっても、そんなん一言一句同じなわけないんやしな
恭子は私の顔をまじまじと見て、ため息をついた

「洋榎と違って、まず手が出るタイプやないんからな・・・」
「おう、どういう意味やそれ?」

まあ気が済むまで考えたらええけどな。それが恭子の性分なんやしな

「ほんま、お姉ちゃんと先輩は仲がええね」
「絹ちゃん、これは腐れ縁って言うんや」
「腐ってへん、ピチピチや!」
967 :tell you that I love ...(9) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/20(水) 01:30:48.08 ID:1xlIlZ7v0
-side 咏-

昨日、すこやんが帰ってしまって・・・
えりちゃんが運転する車でいくのんを駅まで迎えに行って、学校に戻る途中

「すこやん、なんて言ってた?」
「休みの日には遊びにおいでって言うてたで〜」

・・・まあ、それだけじゃないんだろうけどな
そこから核心に触れることもなく学校に到着してしまって、解散するしかなかった

ま、うじうじ考えてもしかたねーか
とりあえず今日から普通に授業だし、気合入れて行きますか

「おっしー、ホームルームすんぞー」

思いっきり教室の扉を開けて、中に入る
教室の中では、照ちゃん宥ちゃんを中心に人だかりになっていた

「おう、祝勝会か何か?」
「先生来たよ、みんな散った散った」

塞ちゃんがみんなを追い払った
んー、でも何があったか、気になるじゃん。私は人だかりを縫うように照ちゃんと宥ちゃんのところへ向かう

「なんかあったの?」
「2人がラブラブだよーって話をしてたんですよ」

そう答えてくれたのは、豊音ちゃんだった。まったく、天井につくんじゃないかってくらい身長があるから見上げるのが大変だっての・・・

「そうかそうか。それはつまり、宮永宥になるってこと?」
「そうそう、結婚式には呼んでなのよー」
「否定してくれないかな、由子・・・」
「け、結婚だなんてそんな・・・」

案外ノリノリの由子ちゃんに、照ちゃんがげんなりしていた。宥ちゃんは真に受けたのかオロオロしている
あー、多分こんなふうに、みんなにからかわれていたんだろうなぁ

そうかそうか、照ちゃんと宥ちゃんがねぇ。なるほどなるほど、これは面白い組み合わせだわ

「まったく、イチャイチャとかよそでやってくれって感じやわ」
「ほんまやなぁ、イチャイチャしてええのはウチらだけやもんな、怜」
「もう、竜華ったら、照れるやん」
「・・・そろそろ久保っち来るぜぃ?」

一方、以前からカップルとして有名だった怜ちゃんと竜華ちゃんもイチャイチャ具合が増しているように見えた
ひざまくらしているとき以外はそこまでくっついているイメージはなかったんだがなぁ・・・

まあ、これが対抗戦マジックってやつだろうか
一つのイベントを乗り越えて生まれる愛、深まる愛ってのもあるもんだ

「もうそんな時間か・・・。じゃあ怜、なんかあったら大声で呼ぶんやで」
「うん、すぐ来てな」

ふむ、怜ちゃんも素直なこって

「はいはい、みんな席につけー」
968 :tell you that I love ...(9) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/20(水) 01:31:57.96 ID:1xlIlZ7v0
-side 霞-

「大丈夫、小蒔ちゃん・・・」
「はい・・・・」

いつも以上にポケーっとした返事。まあ分かっていたことではあるけれど・・・・
とにもかくにも、小蒔ちゃんの手を取ってなんとか2−10の教室までたどり着いた

「小蒔ちゃん、おはよう」
「石戸さん、どないしたんですか?」

教室には松実玄さんと、荒川さんがいた
松実さんの挨拶にも、小蒔ちゃんは小さくうなづくだけだった

「ごめんなさいね。小蒔ちゃん、今日こんな感じで半日はぼーっとしていると思うから」
「はぁ、なんでまたそないなことに?」
「うーん、ちょっと無理した反動ね」
「小蒔ちゃーん、小蒔ちゃーん?」

松実さんが小蒔ちゃんの目の前で手を振って呼びかけるけど、反応は乏しい
昨日、私が裏九面を使った反動・・・。今日の小蒔ちゃんは、神様どころか小蒔ちゃん自身もいないような感じになってしまっている

「まあ、今日は移動教室ないんでええと思いますけど」
「ごめんなさいね。書道部でできだけフォローするつもりだけど」
「これ、休んだほうがいいんじゃないですか?」

松実さんがため息混じりにそう言う
私も、本来ならそうして欲しいところなのだけれど

「小蒔ちゃん、授業には出るって言って聞かないから。一応先生方には連絡しておくけれどね」
「ん、連絡なんて聞いてへんよ〜」

突然にゅっと顔を出してきたのは、赤阪先生だった

「うわっ、先生突然出てこないでよ。びっくり」
「そんな人をお化けみたいに言わんといてや〜。それで、小蒔ちゃん、どないしたの?」
「すいません、半日はこんな感じで、心ここにあらずって感じの状態なんです。それでも授業には出るんだって言うので、とりあえず教室には連れてきたんですが・・・」
「そうなんや。まあ1時間目は私の授業やからええけどな」

特に理由も聞かず、赤阪先生も小蒔ちゃんの目の前で手を振った

「あー、ほんとに反応あらへんな」
「どうしても無理でしたら私も一緒に寮に戻りますから、それまではお願いしたいんですが」
「そこまでせんでも無理やったら保健室に連れて行くから、心配せんでええよ〜」

間延びした声でにっこりと笑う
まあ、お任せしても大丈夫そうかしらね

「それよりも、私は玄ちゃんに用があって早く来たんやけどな〜」
「へ、私?」
「じゃあ、よろしくお願いしますね」

松実さんと何やら話があるようなので、私はお任せすることにして教室を後にした

「まあ、正確に言うと玄ちゃんのお姉ちゃんに用があるんやけどな」
「え、おねーちゃんにですか?」
969 :tell you that I love ...(9) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/20(水) 07:13:20.76 ID:56nf4pTu0
-side 恭子-

そしてもやもやが晴れることもなく、放課後を迎えてしまった
ホームルームが終わると同時に私は教室を飛び出して部室に向かった

きっと、代行は・・・・

部室に着くと、そこにはもう代行がいた

「早いね、さすが末原ちゃんや」
「・・・一番乗りかと思ったんですけどね」
「2年の教室の方が部室に近いからな〜」
「それにしては絹ちゃんや漫ちゃんの姿が見えませんが?」

代行がホームルームを早めに切り上げたとしても、担任するクラスには絹ちゃんと漫ちゃんがおる
その2人と同時はあっても、早く来るというのはないはずやけど・・・

「んー、さすがに末原ちゃんや。実はホームルームは憩ちゃんに半分丸投げした」
「仕事せぇや!」
「え〜、でも早く部室に来たかったんやもん」

まったく、子供かっ・・・

「おー、もうおったんか、早いな」
「こんにちわなのよー」

そこに洋榎と由子が入ってきた。まだ絹ちゃんと漫ちゃんは来ない
ちなみに今日来るのはこの5人だけだ。他のレギュラーはクラス対抗戦で早々に負けとるし、そこまで話を大きくしても仕方ないしな

「んー、なんで代行がおって絹たちがおらんねん?」
「荒川にホームルーム丸投げしてきたんやと」
「あー・・・。先生に代わってホームルームを回せちゃう憩ちゃんを褒めるべきなのか迷うところなのよー」

まあ確かに荒川はなんでも出来てまうやつやけど・・・
麻雀の学年ランクだけじゃなくて、普通のテストとかでも学年1位を取ったことがあるらしいしな

「すいません、遅くなりました。漫ちゃんもすぐ来ます」
「お、絹が来たな。・・・漫も来たか」
「お疲れさまです。っていうかなんで赤阪先生が先におるんですか・・・。私らがホームルーム終わらないとどっちみち話が進まないのに」
「もっと言ったれや、漫ちゃん・・・」
「え〜、なんや・・・。気分?」

気分でホームルーム投げ出されてもなぁ・・・
まあ、とりあえず気を取り直して行こう。ここからは、きっと頭フル回転でいかなあかんやろうからな

「それで代行、今回のクラス対抗戦について。何を話してくれるんですか?」
「まあ、察しのええ末原ちゃんやったら私が言わんでも全部分かっとるんやろうけどな」

そして代行から聞いた説明は、概ね予想の範囲内だった

曰く、理事長からの通達で、代行が宮永照の連覇を妨害する責任者であったこと

そして、そのために由子を3−1のオーダーから外そうとした。
さらに怜の薬の入れ替えを画策したこと。それが失敗して、絹ちゃんを無理やり病欠扱いにして漫ちゃんを出したこと

流石に責任者なんてあるとまでは思わへんかったけど・・・。でも、概ね予想のできたことだった

「で、なんで理事長は宮永照の連覇を妨害したがったんですか?」
「さあな〜、それは分からへん。ただ通達が来ただけやからな・・・」

・・・この点で追求するのは無駄か?
まあわかったところでどうなるんやって事柄やしな・・・。それよりも、もっと肝心なことがある

「結局、クラス対抗戦は宮永照が勝った。責任者たる代行の処遇はどないなるんですか?」

昨日荒川が言っていたこと・・・

『赤阪先生、辞めへんよね?』

あの荒川の予感や、無下には出来へん。だからきっと代行は・・・

「まあ、簡単に言うとクビやね」
「・・・あっさり言いますね」

まあ・・・・・。これも、予想通りや
でも、他の4人からすればそんな予想なんてしているはずもなく
970 :tell you that I love ...(9) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/20(水) 07:16:37.27 ID:56nf4pTu0
「は? 宮永が勝ったらクビってどんな学校やねん!」
「そんなのおかしいよのー・・・」
「だから、私を引っ込めたんですね。少しでも勝率を上げるために」
「なんか、私がチャンピオンに勝てんかったんが原因みたいやないですか・・・」

全員が動揺してしまう。まあ、それもそうやろうな。心の準備をしていた私でも、未だにどうしたらええんか分からへんのに

「まあ、善野先生が戻ってきたら引き継いで学校を辞めるつもり。みんなにはお世話になったな」
「それはどうにもならんのか!」
「ならへんな。仕方あらへんことや」

洋榎が激高するも、代行はいたって冷静だった。もう観念してしまったかのよう
クラス編成までいじって宮永照の連覇阻止に動いとるんや。それが失敗した時の代償がそう簡単に覆るとは思えない・・・

・・・・代行にはいびられてばかりやし
善野先生が戻ってくるんやったら、それでええやん・・・
なんて、そんな感情が浮かんできてしまう。でもそんな感情になることに罪悪感があったり・・・

なんや、自分でもよく分からん。分からへんけど、分かったところでなんかできるとも思えへんのや!

「分かった。どうにもならんこと嘆いてもしょうがあらへん。とりあえず代行」

洋榎が真剣な表情で代行を見つめた

「エクストリーム土下座や。理事長通達やかなんやか知らんけど、とりあえず対抗戦に出れんかった由子には謝れ」
「・・・・まあ、そう来ると思っとった。一応サッカー部の代行顧問やしな、郷に従うよ」

相対する代行も、真剣な表情でそう答えた。その言葉に、由子が慌てて首を振った

「そ、そんな。私はいいのよー」
「よくあらへん。出れたのに出れなくしたのは代行や。由子を出すなって通達が出てたわけやないやろう?」
「確かに、手段は私が選んどるからなぁ。反論はできへんね」

代行はさっと立ち上がると、外へ向かって歩いていく

「じゃ、行こか。土下座会場」
「・・・もう場所決まっとるんですか?」

漫ちゃんの質問に、代行は頷く

「手配済みやよ〜。ま、楽しみにしといて」

・・・・代行、もう覚悟は固まっとるんやな
なら、今更どうこう言っても仕方あらへんのやろうな・・・



-side 宥-

「これでいいの、玄ちゃん?」
「オッケーだよ、おねーちゃん。ありがとね」
「じゃあ、あとはお片づけお願いね」
「うん、おまかせあれ」

放課後、よく分からないけれど赤坂先生に頼まれたという玄ちゃんと一緒にプールまでやってきた
でも、赤坂先生、どうしてこれを使いたいんだろう・・・

そう思っていると、赤坂先生とサッカー部のメンバーがやってきた
由子ちゃんもいる、ちょっと事情を聞けるかな?

「玄ちゃん、あとお姉ちゃんもありがとな」
「いえ、大丈夫です!」
「はぁ・・」

玄ちゃんは元気に返事をするけれど、意図が分からない私は生返事なってしまう

「由子ちゃん、こんなところで何をするの?」
「それが私も知らないのよー。とりあえず、ここでエクストリーム土下座をするらしいんだけど・・・」

エクストリーム土下座、か
サッカー部名物の、ド派手な土下座。それで失敗も全部水に流すっていうなかなか豪快なサッカー部の伝統だよね

「代行・・・。もしかして」
「んー、まあ察しはつくと思うけど、とりあえず見届けてや」

上重さんが、軽く屈伸を始めた赤阪先生に声をかけた
でも、まだ4月なのに・・・・

「玄ちゃん、ちょっと私離れてるね」
「おねーちゃん?」
971 :tell you that I love ...(9) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/20(水) 07:25:46.31 ID:56nf4pTu0
「じゃあ行くで!」

気合の叫声を上げ、赤阪先生はプールに向かって走り出した

「すいませんでしたーーーーー!!」

大声を上げながら、先生は体をプールに向かって投げ出した

弧の頂点に達したところで体を大きく曲げて頭を下げる
膝も曲げて、土下座のような体勢になったのは一瞬だった

ザパーーン!

水しぶきが四方八方に飛び散る

とりあえずすぐ離れたから濡れなくて済んだけど
まだ4月なのにプールの水なんて私じゃなくてもとても冷たいはずなのに・・・

「マジか、まだ4月やぞ!」
「え、本当に飛び込んだ・・・」

愛宕さんたちもあっけにとられていた

「あわわ、先生大丈夫ですか!!」
「っていうか無茶しすぎやないですか」
「久々にすごいエクストリーム土下座を見たのよー」

玄ちゃんは慌てふためいて、上重さんも由子ちゃんも驚きを隠せないでいた

「ぷはっ・・。寒い!!」

水面から顔を出した先生がプールサイドに戻ってくる

「・・・・それでストーブか」
「そういうことみたいだね」

末原さんだけは呆れ顔で事態を見守っていた

そう、玄ちゃんが用意していほしいと言われたものは私が部室で使っているストーブだった
きっと飛び込んだあとに暖をとりたかったのだろう

末原さんが足元に置かれたカバンの中から大きなタオルを取り出した

「しかもタオルに着替えまで用意してあるとか、始っから飛び込む気満々やないか・・・」
「タオルちょうだい、ストーブストーブ!!」

赤阪先生がようやくプールから外に出ると、ガタガタ震えながらタオルを羽織ってカバンを受け取り、ストーブを効かせた更衣室へ走っていった

「まったく、アホやろ・・・」

そう呟く末原さんの表情は、なぜか少しだけ嬉しそうに見えた

「代行がこんなに吹っ切れてるんやったら、こっちも吹っ切れなしゃーないな」

そして今度は意地の悪い表情を浮かべた
まるで、子供が面白いイタズラでも思いついたかのようだった


tell you that I love ... (Epilogue)へ続く



投下途中で回線が不調になって途切れてしまいました
あとはエピを書いて、できればまとめて最後まで投下したいです
なんとかこのスレで収まりそうですね・・・

次は何書こうかなぁとかもボチボチ考えてます
結局途中までで投げてしまった劍谷編を復活させるか、あるいはまたなぜか浮かんでしまったマホ×洋榎ネタとか

では、もう少しだけお付き合いください
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 09:52:01.56 ID:RP1u/0uIO
乙です!

いくのんが少し気持ちを持ち直してるみたいでよかった
973 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/22(金) 00:15:15.84 ID:9S+0C2nA0
-side トシ-

『赤阪先生の辞職撤回に関する嘆願書』

目の前に積まれた書類と、それを持ってきた生徒をまじまじと見比べた

生徒会長の竹井久、サッカー部部長の愛宕洋榎、そして同じくサッカー部の末原恭子
今回の嘆願書の発起人だった

「・・・よくこれだけ集めたね」
「週明けの月曜日から3日間で、全校生徒すべての署名を集めました。ご精査ください」

全員とは・・・
まったく、赤阪先生は愛されているんだねえ

とりあえず最初の数枚だけ見て、一息つく。
全校生徒は約2000人。よくもまあ、これだけ集めたものだねぇ・・・・

「分かったわ。これは私が責任をもって理事長に届けます」
「ありがとうございます」
「よろしゅう」
「よろしくお願いします」

3人がそれぞれに頭を下げた

退室を促して3人が部屋から出ていくのを見届けると、すぐに扉をノックする音がした

「どうぞ」
「失礼します。お呼びでしょうか?」

入ってきたのは、赤阪先生。表情はこわばっているように見えた
私は署名の束を軽く叩いた

「この3日間、どんな気分でこの活動を見守ってたんだい?」
「生きた心地はしなかったですね。私はもう辞める気やのに・・・。クビにされるなんて言わんと、辞めたいから辞めるって言えばよかったです」
「まあ、そのへんは手は回してあるけどね」

流石に理事長が先生をクビにしようとしているからと理由で動かれるわけにはいかないからね
今来ていた3人には、赤阪先生の自発的な辞職を思いとどまるようにという名目の署名を募るように頼んである

「ご迷惑おかけしました。それも含めて、私は辞めるべきやと思ってます」
「・・・・昨日、理事長と話をしたよ」
「私のこと、役立たずとでも言ってましたか?」
「辞職するそうだよ」
「・・・は?」

はは、予想外に射抜かれたみたいな表情をしてくれるねぇ
まあ私もそれを聞いたときは、もしかしたら同じような表情をしたのかもしれないねぇ

「誰が辞職するんですか?」
「だから、理事長だよ。理事長が辞職する」
「そんな突然、なんでですか?」
「さぁ。一身上の都合じゃないかい。あの人も年だしね」

私も辞めるとしか聞いていないからね。いろいろと予想はできるけれど・・・

「それで、私が臨時で理事長になるということで手筈を進めているんだよ」
「すいません、急すぎてちょっと事態についていけてないです・・・」
「畳み掛けるようで悪いんだけど、まだ話はあるんだ」
「・・・・なんでしょう?」

この一瞬でフルマラソンでも走ってきたかのように疲れはててしまった赤阪先生だけど
これを聞いたら、どんな反応をするのかね

「小鍛治健夜を呼び戻そうと思うんだけど、どう思う?」
「え、すこやんを・・・・」

思わずすこやんと呼んでしまってしまい、赤阪先生は慌てて口を塞いだ

「あ、すいません・・・。小鍛治先生を?」
「ふふ、別にすこやんでいいんだよ?」
「・・・・小鍛治先生は、了解しているんですか?」

流石にすこやんとは言わないか・・・
私は苦笑を浮かべながら、首を振った

「まだだよ。けれど、理事長が正式に辞任したら、声をかけようと思っているわ」
「そうですか・・・・」
974 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/22(金) 00:17:53.91 ID:9S+0C2nA0
肩を震わせうつむく赤阪先生。まったく、若いってのはいいわねえ・・・

「じゃあ、私は・・・・辞めなくても、ええんですね・・・」
「まあ、この署名を前にして辞められるなら、私には止められないけどね?」
「・・・・ほんま、アホばっかやわ。こんな私に、なんでここまでするんやろうな・・・」

軽口を叩く余裕があるのかと思ったけど、単に強がっているだけもしれないねぇ
もうしゃくりを上げて何を言ってるのか分からなくなってしまっているんだから・・・

「とりあえず、この辞表は返すわよ」
「・・・・はい」

辞表を受け取ったまま、いつまでも泣き続ける赤阪先生の背中をさする

さて、これから忙しくなるね・・・・





-side 恭子-

理事長の辞任と、赤阪先生の辞職撤回が発表されたのは、署名を渡した次の日だった



代行がエクストリーム土下座を披露してから、私の脳裏に浮かんだのは

「・・・・署名を集めましょう」

ありきたりといえば、ありきたりのアイディアだった
でもな、ここまでした代行をそう簡単に辞めさせてたまるか

エクストリーム土下座を披露した人のミスはすべて許し、そしてそのミスを取り戻すために全員で動く。それがサッカー部の伝統なんやしな

「おお、それええな。じゃあ早速動くで。ウチは久んとこ行って生徒会として協力してもらるか聞いてくる」
「絹ちゃんと漫ちゃんは荒川憩に声をかけてや。あと神代経由で石戸霞を押さえとけ」
「分かりました!」
「じゃあ漫ちゃん、行こう!」

洋榎、漫ちゃんに絹ちゃんがプールを出ていく

「由子、ちょうど松実がおるから一緒に宮永に声かけや」
「分かったのよー」
「ええっと、どういう状況なのかな・・・」
「私もよくわからないのです・・・」

ああ、松実姉妹は事態を知らんのやったか・・・
まあどうせこれから宮永にも説明せなならんしな

「説明は道々由子から聞きや。私は代行が着替えるの待っとるから」
「よく分からないけど、おねーちゃんは行っていいよ。私がストーブ片付けとくから」
「う、うん。ごめんね、玄ちゃん」
「じゃあ行くのよー」

こういうのは、もたもたしとったらあかん
相手がこれ以上手を打ってくる前に、速攻の超早上がりを見せたる

私一人じゃどうにもならんけど、全員の力集めたらどうにかなるかもしれんからな

「はあ、寒かった・・・・。あれ、みんなは?」

着替え終わった代行が出てくると、キョロキョロとした
そりゃそうやろうな、もう私と松実玄しかおらへんのやから

「洋榎たちにはもう動いてもらってます」
「動くって、なにを?」
「見事なエクストリーム土下座でした。ですんで、私たちはこれから署名を集めます」
「・・・・署名?」

目を点にする代行。ふむ、なんか察しが悪いな・・・

「赤阪先生の辞職を撤回するための署名ですよ、監督」
「・・・監督って」
「ゆうときますけど、あなたを監督なんて呼ぶのは今日だけですからね」
「末原ちゃん・・・。でも署名なんて、集めなくてもええって・・・」

何一人で諦めとるんや、まったく
そんなふうに狼狽えるなんて、らしくないで・・・
975 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/22(金) 00:20:05.75 ID:9S+0C2nA0
「じゃあこう言い換えます。監督に辞めてもらったら困るんです、それを私たちは行動で示します。それを見て、それでも辞めるって言うなら好きにしてください」

それでもなんとも微妙な表情を浮かべたままで黙りこくってしまう
はぁ、大方辞める決意固めたのにそう簡単には翻せないってところやろう

まあ、だったら困ったらええやん。普段は私が困らされてるんやからな
いずれにしたって、宮永照が勝ったからとかそんな理由で辞めるなんて目覚めが悪すぎる



その日が金曜日の放課後で次の土曜日が休みだったため、実際に署名を集めに動いたのは月曜日からだった
でも、その土曜日に生徒会が生徒会議と部長会議を招集してくれた
だから、月曜日からの署名集めはスムーズに進んだ

辞職撤回が発表され、私はほっとした。やったことは無駄にはならんかった・・・

さて、次は部活対抗戦や
今年の部活対抗戦、勝つんはサッカー部やからな!




-side 菫-

「さて、今日からは部活対抗戦に向けての調整も行っていく。各自抜かりのないように」

もちろんアーチェリーの練習も行うが、半数を麻雀の練習に分ける

特に今年は照の完全制覇がかかっている。ここで負けるわけにはいかない
個人戦で照とぶつかれば、もちろん全力で戦うが・・・

「特に淡、お前には期待してるからな」
「ごめんなさい。私は対抗戦には出れません」
「・・は?」

予想外の返答に素っ頓狂な声を上げてしまう

「何かあったの、淡?」

照も戸惑っているようだ・・・
あれほど照と一緒のチームで打てるんだと、クラス対抗戦の前には言っていたのに

「テルと一緒に戦うのも楽しみだけど、それ以上に私はもっと強くならないといけないから!」

むふーと鼻息荒く、そう主張する淡

「私は今、オカルトを捨ててデジタルを身につけるべく特訓中の身。だから部活対抗戦にはまだ出れません」
「あのクラス対抗戦のときに配牌でテンパイしていたのを捨てるっていうのか?」
「はい、その通りです」

いやいやいや・・・・
いろいろ予想外過ぎてどう対処していいのか分からないぞ

「淡、それは淡が強くなるのに必要なこと?」

照が尋ねる
そうだ照、淡を説得してくれ!

淡は大きく頷いた

「もちろん。私はテルに勝ちたいから、だからオカルトを捨てるんだよ」
「分かった。淡が納得できない状態で対抗戦に出てもしょうがないからね。その代わり、個人戦には間に合わせるんだよ」
「はい、ありがとうございます!」

おおおおおおいいい!!
なんでそんな簡単に納得するんだ

「おい照! お前、完全制覇がかかってるんだぞ、それでいいのか!?」
「菫、ありがとうね。でも・・・」

そう微笑む照に、迷いの欠片もなくて

「私は、淡に無理強いしてまで完全制覇なんてできなくてもいいよ。それよりも、みんなで悔いなく戦えれば、その方がいい」
「・・・・はぁ。まあお前がそう言うなら仕方ないな」
「大丈夫だよ。菫と一緒に戦って、負けたことなんてないんだから」

まあ仕方ない・・。淡のあの闘牌に期待はしていたが、戦力が足りないわけではない

部活対抗戦、勝つのはアーチェリー部だ
976 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/22(金) 00:26:56.97 ID:9S+0C2nA0
-side 淡-

ノドカのデジタル講座、初日

「いいですか、淡さん。まず淡さんが信じてらっしゃる絶対安全圏とビックバンとやらは捨ててください」
「えー、どっちも強いよ。絶対安全圏を使いながらデジタルで打った方が強いでしょ?」
「淡さんは、チェスか将棋はご存知ですか?」

全然関係ない質問で返された
むー、納得いかないけど、負けたらデジタルを学ぶってのは約束だったからなぁ・・・

「チェスなら知ってるよ?」
「ではチェスで例えましょう」

まあ知っているといっても、全然強くないけど・・・
ちょっと暇つぶしに付き合わされることがあったくらいで

「いいですか。淡さんの絶対安全圏は、相手からクイーンを取り上げた上で勝っているようなものです」
「うん。まあ、相手の手が遅くなるってことはそういうことだよね」
「しかし真の強者は、逆ではないですか? 自分のクイーンが無くても相手に勝ってしまう、それでこそ強いと言えます」

た、確かに・・・・

「加えて配牌でテンパイという、麻雀のゲームにありそうな手牌で戦っても、それは同じことです」
「・・・私はハンデをもらって勝ってきただけだって言うの?」
「有り体に言えば、そういうことになりますね。ですから、いざハンデを奪われたときに右往左往してしまうのです」

テルと同じクラスのトヨネに、絶対安全圏とビックバンを同時に封じられた
それにカスミがオーラスで使ってきた一色独占の強化版に対しても、果たして私の能力は通用しただろうか・・・

私の力の及ばない相手は、テルだけじゃなかった
だったら、私はもっと強くならないと・・・

「もちろん、デジタルも万能じゃないです。しかし、長いスパンで見たときには勝率を上げられる、そういう打ち方です」
「それでテルに勝てるの!?」
「それは分かりません。ですが、チャンピオン相手ならミスは許されないでしょう。そういう意味では牌効率や期待値による押し引きを習得することは攻略の手助けにはなると思いますよ」
「分かった、やるよ!」

テルに勝つためだったら、なんだってやるよ
それに私がもっと強かったら、クラス対抗戦だって優勝できたはずなんだ

「そうですか。デジタルなんてって言われると思ってました、良かったです」

嬉しそうに笑うノドカを見ていると、私があのとき勝ててたらもっと喜んでくれたのかなとか考えちゃうんだよね

「その代わり、しっかり教えてよね!」
「もちろんです。淡さんこそ、しっかりついてきてくださいよ」

ノドカのことなんか、あっという間に抜いちゃうんだからね
そしたら今度は、私がオカルトを教えてあげるんだから



-side 咲-

クラス対抗戦が終わって、1週間が経った
その間、署名を集めてとかいろいろ騒ぎはあったけど、それもようやく落ち着いた

憧ちゃんのことはどうしても意識しちゃうけど、なんとか普通にしゃべっている
憧ちゃんが私のことをどう思っているのか結局分からないままだけど、少なくとも友達としては好きだってお姉ちゃんは言っていた
それ以上は、自分で確かめないとダメだからって言われて

確かに、そうだよね。この思いは、自分で伝えなきゃ・・・

そして、そのお姉ちゃんから、今度の土曜日に憧ちゃんと宥さんと一緒に買い物に行かないかと誘われた

「咲、照さんから聞いた?」
「うん、憧ちゃんも宥さんから聞いたんだよね?」

もちろん憧ちゃんもそのことは知っていて

「楽しみにしてるからね、咲」
「うん、私もだよ」

きっと、これはお姉ちゃんと宥さんがくれるチャンス・・・
だから、頑張らなくっちゃ!


(もう少しだけ続く)
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 18:37:59.03 ID:W6NP6xqZ0
もう少しだけは二倍以上続くフラグ……!俺達のイチャイチャはこれからだ!
978 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:21:02.89 ID:wh5IVdvA0
-side 照-

土曜日
待ち合わせの駅前で、咲はいつになくそわそわしていた

ふふ、緊張しちゃって。かわいい

「お姉ちゃん、寝癖とか大丈夫かな?」
「角が5本くらい生えてる」
「え、ウソ!!」

ちょっとからかってみると、面白いように動揺する咲

「冗談だよ。いつも以上に可愛いから」
「お姉ちゃん!」

頬をふくらませて私を小突こうとするので、私はさっと避けた

「私、緊張してるんだからね。そういう冗談やめてよ」
「ごめんね、咲」

それでも本気で怒っているわけじゃないって分かるから。それに、このくらいした方が、緊張もほぐれるでしょ?
現にそわそわしなくなったわけだし

「咲、照さん、お待たせ!」
「遅くなっちゃった、ごめんね」

そこに宥と新子さんがやってきた
新子さんはやっぱりオシャレで、ずいぶん気合が入っているようだった

「今来たところだよ、憧ちゃん」
「咲、嘘はいけない。10分くらい待った」
「お姉ちゃん、そういうのは待ってても今来たところっていうものなんだよ!」
「私と宥の間に嘘はいらない」

微笑みながら、私はそう言う
宥も微笑んでくれる

「ごめんね、待たせちゃって」
「アツアツだねぇ、宥姉。本当に一緒にお買い物で大丈夫だった?」
「誘ったのは私たちからだから、気にしなくていいよ。新子さん」

んー、っと新子さんはちょっとだけ首をかしげた

「憧って呼んでくれていいですよ、照さん。私たちの間に、遠慮は要りませんってね」
「そうだね。じゃあ、憧って呼ばせてもらうね」
「そろそろ行こうか、電車が来ちゃうから」



もともとは、私が本を買いたいだけだった
近くの本屋さんではなかなか欲しい本がないのと、大きい本屋さんで知らない本を手にとってみるのも楽しいから

土曜日に宥に用事があるかどうか聞かれたから、本屋に行くと答えた
宥はじゃあ一緒に行こうかなって言ってくれたけど、私が本屋さんに入ると開店から閉店までいるときがあるから退屈しちゃうかもしれない
でも宥は日曜日が部活らしくて・・・

「本屋さんの予定、日曜日にならないかな?」
「いいよ」

土曜日に買った本を日曜日に読もうかと思っていたけれど、1日ずれても問題ないか・・・

「土曜日にね、憧ちゃんを誘おうと思ってるの。だから照ちゃんも咲ちゃんを誘ってほしいなって思って」
「ああ、そういうこと」

お互いに友達として好きだけど、それ以上は直接確かめること
咲にも憧にもそう伝えてある
けれど今のところ、進展はないみたいで・・・

あまりおせっかいを焼くのもどうかなと思うけど

「2人を見てると、きっかけがほしいのかなって思うから」

そう宥が思うのなら、反対する理由もなかった
979 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:22:22.54 ID:wh5IVdvA0
-side 憧-

電車に揺られて、今は商業ビルのエントランスでフロア案内を見ていた

「それで、最初はどこに行くんですか?」
「本屋の下見」
「・・・・照ちゃん?」
「ごめんなさい、服です」

真顔で本屋と言った照さんを宥姉がたしなめた。
ホントに本が好きなんだなぁ・・・。姉といい、妹といい

「咲も本屋に行きたいんじゃないの?」
「え、私は大丈夫だよ・・・」

と言いつつも、視線はしっかり本屋がどこにあるか確認してたりするんだよね

「いいよ、別に本屋見てからでも」
「ホントに!」
「憧は話がわかるね」

喜色満面の咲に、照さんもやけに興奮しているように見えた

「憧ちゃん、大丈夫?」

宥姉が不安そうにしてるけれど、別に本屋を見るくらいどってことないでしょ?

そう思っていたけれど、私はこの宮永姉妹の本好きを甘く見ていた

「あー、よく飽きないわね・・・」
「姉妹だからよく似ちゃうのかな。特に大きい本屋さんだから、いろいろ見たいんだろうね」

30分もしたら私と宥姉はギブアップして本屋の近くにある長椅子に腰掛けていた

「まあ、今度は気をつけるよ。本屋が最後になるようなルートとか考えてさ」
「うん、ごめんね。もともと照ちゃん、1人で本屋さん巡りするつもりだったらしいから、本屋さんが入ってるところの方がいいかなって思って」

しょうがないか。でもそろそろ本屋から引き剥がさないとね・・・
じゃないと、もったいないもんね!

「宥姉、ありがとね」
「え、突然どうしたの?」
「宥姉のことだから、私と咲のこと気遣ってくれたんでしょ?」
「・・・・うん、そうだね」

一瞬どう答えようか迷ったみたいだけど
わざわざこうやって私と咲を誘ってくれたことからすれば、咲の気持ちも何となく察することはできる

でも、それは希望的観測かもしれないなんて、ちょっと不安になったりもするんだよね
こんなに誰かを好きになったり、そしてそれを打ち明けたりなんて、今までしたことなかったんだから

ここまでお膳立てしてもらったんだし、午後から巻き返さないとね

「ちょっと本の魔物に囚われたお姫様の救出に行ってくるわ」
「・・・どうする、憧ちゃん?」
「どうって?」

宥姉の質問の意図が分からず、私はキョトンとしてしまう
宥姉は柔らかな表情を浮かべて、

「このまま、咲ちゃんと2人きりになってもいいんだよ?」
「あー、そういうことか・・・」

それもアリかもしれない。多分、今日のこの機会を逃しちゃったら、次はいつになるか分からなくなっちゃうし・・・
それに、宥姉だって照さんと一緒にいたいだろうし

「うん、じゃあここで解散にしよう。照さんによろしくって言っておいて」
「分かった。じゃあ、頑張ってね・・・」

頑張って、か・・・
よし、気合入れろ私!
980 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:25:12.71 ID:wh5IVdvA0
咲を探す。結構広い本屋だからちょっとウロウロしたけど、ようやく見つかった
こっちには気がついてないみたい

私は咲の背後にそっと近寄った

「だーれだ?」
「ひゃん!」

可愛い声を上げて咲がビクンと体をこわばせた

「憧ちゃん、ビックリさせないでよ。本を落とすところだったよ!」
「あはは、ごめんね。あんまり集中してるもんだからさ」
「もう次のところに行くの?」
「ああ、そのことなんだけどね」

私は、ここで宥姉と照さんとは別行動をすることを告げた

「え、そうなんだ・・・。憧ちゃんは、どこか行きたいところある?」
「とりあえず服見たいかな。あと、咲のコーディネートもしてみたい」
「私はいいよ、憧ちゃんみたいなオシャレなのは似合わないし・・・」
「いやいや、別に私と同じ服着させるわけじゃないからね」

グー・・・

その音が鳴ったのは同時だった・・・

「そ、その前にご飯にしようか、咲」
「そうだね・・・」

ああもう、恥ずかしい・・・・



-side 咲-

同じビルの一番上の階が食べ物屋さんのフロアになっていて
その中からパスタ屋さんを選んだ

ちょうど窓際の席が空いていて、近くの景色が一望できた
目の前にもビルはあるけれど、半分くらいは遠くまで見渡せた

「お姉ちゃんたち、まだ本屋さんにいるのかな・・・」
「聞いた話によると照さん、一日中本屋さんにいられるらしいけど、ご飯も食べずに本読んじゃうの?」
「滅多にないけど、すごく面白い本があったりするとずっと立っても平気なんだって」
「はぁ、すごいなぁ・・・。咲は?」
「私は流石にお腹が減ったら切り上げるよ」

まあそれでも、あとちょっとだけって思って1時間くらい経ってたってことはあるけど・・・

「あ、咲の分、来たよ。食べていいよ」
「憧ちゃんの分もすぐ来るよ」
「いいからいいから、あったかいうちに食べなって」

悪いなと思いながら、手を合わせる。なぜか憧ちゃんがじっと私の口元を見ているように感じた

「いただきます。って、そんなのじっと見られると照れちゃうんだけど・・・」
「えー、いいじゃん。咲の食べるところ見たいなぁて思っただけで」
「もう・・・。ほら、憧ちゃんの分も来たよ」

憧ちゃんのパスタも来たので、とりあえずこれでじっと見られることはないだろう
ドキドキしちゃうから、そういうのはまだ困るよ・・・

「じゃあ私も、いただきます」

世間話をしながらあっという間にパスタを食べ終えた

「ふう、結構お腹いっぱいになったね」
「もうちょっと休んでから行こうか」
981 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:26:05.06 ID:wh5IVdvA0
ふと外を眺める。ビルが立ち並ぶ。こういうのも、悪くないけど・・・

「長野の方が景色は良かったかな」
「それはしずが喜びそうだね。こっち来てから山が足りないって嘆いてるしね」
「あはは、山不足とか聞いたことないよ」
「今日も自転車でどこか出かけてるんじゃないかな」

穏乃ちゃんは元気だからなぁ・・・

「あと、淡と和が最近仲がいいみたいだよね」
「和ちゃんのこと師匠って呼んでるの聞いてビックリしちゃった」

うん、淡ちゃんはすごいと思う・・・

お姉ちゃんに中学の時に負けてから、様子見して強くなるってイメージを形にできるだけの力があって
でも、それをあっさり捨てて新しい自分のスタイルを身に付けようとしている

私も、そんな風になれるのかな・・・
いままで自分を守るために続けてきた±0を止めて、勝つために打ちたいって思うけれど
また何かのきっかけで、±0にしてしまうかもしれない

「咲、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ?」
「・・・・何かあったなら、相談に乗るよ?」

憧ちゃんがじっと私を見つめてきて・・・

「うん、そうだね・・・」

憧ちゃんなら、こんな私の不安も、受け止めてくれるかな・・・

「私ね、淡ちゃんみたいに、今までの自分を変えていけるのか不安になるの」
「咲・・・」
「クラス対抗戦のときはみんなのために勝たないとって思えたけど、じゃあ自分が一人っきりで打つときはどうなのかなって」

普段の練習だって、チームを組むわけじゃない
次の部活対抗戦はまだまだ先だし、冬には個人戦もあるけどそれも自分一人っきり

だから・・・

「咲・・・。咲は一人なんかじゃない」
「憧ちゃん・・・」

憧ちゃんの表情は真剣そのもので
だから、目をそらすなんてできなくて・・・

「一人じゃ打てないってなら、私のために打ってよ!」

えっ、それって・・・
憧ちゃんも言ってから、顔を真っ赤にしていた

「その・・・。私が咲のこと支えるから、傍にいるから・・・。だから、一人だなんて悲しいこと言わないでよ」
「憧ちゃん・・・」
「それじゃあ、ダメ?」

その微笑みは、今まで私の心の中にくすぶっていた不安を全部吹き飛ばしてくれて
きっと、憧ちゃんがいてくれたら私は思うように打てるんじゃないかって、そう思えて

「私も、憧ちゃんが隣にいてくれたら嬉しいよ」

私も、上手く笑顔で返せているのかな?

泣き顔なんて、見せたくないから・・・
ちゃんと笑顔でいられるかな?

「咲、ハンカチ・・・」
「・・・憧ちゃんこそ」

鏡に写したみたいに、きっと私と憧ちゃんは同じ表情をして、同じ感情でいて・・・・


だから・・・

これからよろしくね、憧ちゃん!
982 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:27:28.63 ID:wh5IVdvA0
-side 照-

「照ちゃん」

宥の声に振り返ると、頬に宥の指がささる

「・・痛い」
「彼女をほっておいて、本に夢中になる照ちゃんへのお仕置き」
「・・・・ごめん」

本気で怒っているわけじゃないんだろうけど、ほほを膨らませる宥はそれだけで可愛かった

はぁ、でもこれだけ大きな本屋さんがあるとどうしても夢中になっちゃう・・・
明日もう一回来るから、このくらい我慢しないといけないのに

「ところで、咲と憧は?」
「別々に行動することにしたよ」

折を見て咲と憧を2人きりにしてあげようって話だったけど、思ったより早かったな

「そう、じゃあどうしようか。宥はどこか行きたいところ、ある?」

とりあえず買い物に誘ってあとは成り行きで、という話だったのでこのあとの予定は特に決まっていなかった

「んー、実は私も大体のものは買ってあるから、特に買いたいものはないかな・・・」
「困るな、どこか行きたいところがないと私は本屋から出られない」
「ホントに本が好きなんだね・・・」

呆れ顔をされてしまう・・・
まあ、でもとりあえずそろそろお昼ご飯だから

「ご飯を食べながら考えよう、そうしよう」
「うん、そうだね」

誤魔化すように宥の手を取って、本屋さんを出る
名残惜しい気持ちもあるけど、明日も来るんだから我慢する・・・
983 :tell you that I love ... (Epilogue) ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:28:24.15 ID:wh5IVdvA0

ご飯を食べたあと、好きな小説が原作になった映画がやっているのを思い出した
それで、一緒にその映画を見ることにした

話題にはなっても映画館に行くことはほとんどない
でも、誰かと一緒の時でもない限り映画館で見ることもないだろうから

結論から言うと、ストーリーを知っている私は泣くことはなかったけれど、宥が号泣してしまった

「ごめんね、照ちゃん。みっともないよね・・・」
「大丈夫だよ」

映画館のロビーのできるだけ角の椅子に宥を座らせた
できるだけ他の人から宥の顔が見えないように体を寄せる

「私のお母さん、早死してるから・・・・。誰かが死んじゃう話を見ると、そのこと思い出しちゃって」
「そうだったんだ。ごめん」

・・・完全に失敗した
でも、宥は首を振る

「照ちゃんが悪いわけじゃないよ。映画が面白かったから、余計に感情移入しちゃっただけだから」
「でも、ごめん」

私は胸に宥を抱き寄せた

まだまだ宥のこと、知らないことが多いんだって、そんな当たり前のことに気づいて
抱きしめたくらいじゃ、宥のことを知ることはできないんだろうけど
それでも、安心させてあげるくらいはできると思うから

大丈夫、大丈夫だからね、宥
そう伝わればいいと思いながら、背中をさする

「照ちゃん・・・・。照ちゃんは、居なくならない?」
「・・・私は消えたりしないよ」

一時的に別れることは、あるかもしれない・・・
もう私も宥も高校三年で、来年には卒業してしまう
そこからの道は、別々かもしれない

私はプロを目指すつもりでいたけれど、宥はどうなんだろう・・・・
そんなことも、まだ知らないから

「宥、私はまだ宥のことを全然知らないから。もっと教えてほしい」
「・・・私も、もっと照ちゃんのこと知りたい」
「うん。お互い、教えあって、分かり合って、そうやって一緒の時間を過ごそう」

泣きじゃくる宥は、まるで小さい頃の咲のようで・・・
でもあの時と違うのは、私がお姉ちゃんだからなんて気負う必要はないってこと

私だって、宥に弱音を吐いたりしたんだから・・・

だからお互いに支えあって、一緒に歩んでいければいい


「ねえ、宥・・・・」


どんな言葉を使っても、100%は伝わらないんだろうけど

それでも、伝えたいんだ・・・


「愛してるよ、宥」

「私もだよ、照ちゃん・・・」




tell you that I love ... (完)
984 : ◆oeEeLVGR7U [saga]:2013/02/24(日) 16:29:29.91 ID:wh5IVdvA0
以上にて完結です
去年の8月の終わりから書いて、ちょうど半年ですか・・・・長かった

>>289を投下した段階では先のことなんて何にも考えてなかったので、よくエタらずに書ききれたと思います

皆様のレスもあって、憧咲とか思わぬ方向に進んでしまいましたが、これはこれでよかったのかなと
なかなか長編を書くのは大変なので、次からはちょこちょこ短編を書いていきたいなと思っています

ここまで読んでいただきましてありがとうございました!!



このスレのまとめ >>931
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 16:42:27.55 ID:NoDnciPDo
乙です
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 16:59:17.84 ID:6axZVbmAO
本当に乙です!
長い間楽しませて貰いました

話の内容や闘牌も凄いけど、最終的にここまでまとめて完結させる気力もすばら!
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:22:52.85 ID:8hYP3IVAO
乙です。
長編を完結させる精神力には心より脱帽。







レスに助けられた事もありますしね(笑)

次回作期待して待ってます。
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:32:36.94 ID:+26YhFTP0
お疲れさまです
様々な掛け合いが見れたり本編の合い間にリクに答えてもらったりで本当に最後まで楽しませて頂きました
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:43:52.37 ID:rnlZYAMHo
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:44:35.81 ID:rnlZYAMHo
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:45:02.31 ID:rnlZYAMHo
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:45:43.78 ID:rnlZYAMHo
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:46:37.67 ID:rnlZYAMHo
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:47:39.69 ID:rnlZYAMHo
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:48:43.68 ID:rnlZYAMHo
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/24(日) 17:49:27.58 ID:vbKuZI1AO

わざわざ埋めてるやつなんなの
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:50:22.20 ID:rnlZYAMHo
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:50:49.27 ID:rnlZYAMHo
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:51:53.33 ID:rnlZYAMHo
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 17:51:54.52 ID:+26YhFTPo
>>1000なら憩×穏乃の短編をお願いします
1001 :1001 :Over 1000 Thread
☆.。 .:* ゜☆.  。.:*::::::::::::::::゜☆.。. :*☆:::::::::::::::::: 。.:*゜☆.。.:*
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【安価】京太郎「俺が淡と付き合ってる?」淡「はぁ!?」 @ 2013/02/24(日) 16:01:30.33 ID:sIHFHhSJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361689290/

ナレーション「彼の名は徳山浩二、東京の福祉専門学校に通う20歳の男である。」 @ 2013/02/24(日) 15:58:07.90 ID:uCC+mE6H0
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