ほむら「幸せに満ち足りた、世界」2.5(まど☆マギ×禁書)

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42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 21:32:42.19 ID:kytLJanTo
追いついた、しんど
一スレ目の長文批評書きたいんだけど書いてもいい?
43 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/02/17(水) 14:36:36.53 ID:8gLkL7sQ0
それでは今回の投下、入ります。

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>>41

 ×     ×

「おはよう」
「お早うございます」

月曜日の朝、さやかとまどか、仁美、ほむら、と言った面子が通学路で合流する。

「昨日、どうだった?」
「はい、楽しませていただきました」

さやかの問いに仁美が臆面もなく返答し、
さやかの肘がぐりぐりと仁美に押し付けられる。
これは、まどかもほむらもお手上げである。

「お早うございます」
「おはよー」
「おはよう志筑さん、さやか」

教室で恭介が交わす挨拶を、
教室内の面々はさり気なくウオッチする。

「昨日は楽しかったですわ」
「うん」
「ふふーんっ、仁美の水着姿、どうだった?」
「うん、可愛かったよ」

これは、まどかもほむらもお手上げである。
44 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/02/17(水) 14:41:42.86 ID:8gLkL7sQ0

 ×     ×

「ああ、美樹さん」

放課後、美樹さやかは、
廊下で担任の早乙女和子教諭に呼び止められた。

「ちょっといいかしら?」
「なんですか?」

取り敢えず、少々長い話になりそうなので、
ほむらとまどかは先に帰路に就く。
まどかはまどかでウサギ小屋の用事を一つ忘れたかも知れないと言う事で、
ほむらは先に帰路に就く。

<ちょっと、いい?>

校門を出た辺りで、ほむらの頭の中に聞き覚えのある声が届く。
視線を走らせると、近くの曲がり角に人影が見えた。

「どうしたの?」

そちらに向かったほむらが、
塀に背中を預けていた詩音千里に声を掛ける。
その側には成見亜里紗の姿もあった。

「ちょっと、聞きたい事があって」

千里が口を開く。

「何?魔法少女関連?」
「んー」

ほむらの問いに、千里は少々困った顔を見せた。

「?」
「暁美さん、そちらの学校に上条、って男子生徒はいるかしら?」
「かみ、じょう?」

千里の問いに、ほむらは怪訝な表情をする。
45 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/02/17(水) 14:46:52.35 ID:8gLkL7sQ0

「ええ、結構いい家に住んでて、多分ヴァイオリンに関わってる」
「知らない事もないけど、一体どういう話?」
「どういう男子?いい人?」
「んー、悪い人、って事はないと思うけど」

ほむらと千里が、やや要領を得ない会話を交わす。

「で、その上条君、彼女とかいるの?」

少々苛ついた様に、亜里紗が口を挟んだ。

「ええ、いるわよ」

ほむらがあっさりと応じる。

「その、彼女と上手くいってんの?」
「リア充爆発しろ」

亜里紗の問いに、ほむらはぼそっと答える。

「その、恋人と言うのは見滝原中学校にいるの?」
「ええ」

千里の、やや低い声の問いにほむらはやはりあっさりと応じる。
46 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/02/17(水) 14:51:44.95 ID:8gLkL7sQ0

「………そう、分かった」

どこか、底に冷たいものを漂わせた千里の答えを聞きながら、
ほむらにもなんとなく話の筋が読めて来た。
女子校育ちで少々疎い、とほむらは自覚していたが、
つまり、千里の学校の誰それが、と言った辺りの事で、
顔見知りで学校が同じほむらに探りを入れて来た、と言った辺りだろう。
どちらにしても、ほむらとしては余り深入りしたくない類の事だ。

「お手間を取らせたわね。じゃあ」

千里がくるりと踵を返し、ざっざっと前進する。

「それじゃあ」

亜里紗もその後について行く。
ほむらから見て、本来危険人物と見ていた亜里紗は千里を追うばかりで、
むしろ優等生タイプの千里がどこか剣呑なのが気にかかった。
むしろあのタイプこそ、こじれたら面倒だ。

「えーっと、千里」

亜里紗が、ざしざしと前進する千里に後ろから声を掛ける。

「なんか、背中が物語ってるって言うか、
今、この辺に魔獣とか出てたっけ?………」
47 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/02/17(水) 14:54:59.11 ID:8gLkL7sQ0

 ×     ×

「美樹さやか」
「おおっ」

用事を終えて、歩いていた廊下で思わぬ声を聞いたさやかが仰け反っていた。

「何?転校生、さやかちゃんを待っててくれたの?」
「あなた、詩音千里、って知ってる?」
「詩音?」

「ホオズキ市の魔法少女、ワルプルギスの時に会ったんだけど?」
「いや、知らない」
「そう。じゃあ、
どうしてその詩音千里が上条恭介の事を聞きに来ているのかしら?」
「は?」

「さっき聞かれたのよ、詩音千里から上条君の事を」
「何を?」

さやかの表情が少々剣呑なものとなる。

「いい人かとか彼女はいるかとか」
「何それ?」
「取り敢えず、
魔法少女関連でその手の揉め事とか、勘弁して頂戴」

 ×     ×

「食うかい?」

友人に会うために訪れた見滝原市内の路上で
佐倉杏子は、チョコ菓子を差し出したまま
ばびゅうんっと通り過ぎた痕跡を追って首を右から左に動かしていた。
48 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/02/17(水) 14:58:05.16 ID:8gLkL7sQ0

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今回はここまでです>>43-1000

>>42

まずは読了感謝です。
あれを読了するのに相当な忍耐を求められる事は、
書いてる私もよく分かりますので………

許可求められても困る、と言うのが正直な所ですが、
荒らしじゃなければ現時点で止める理由はありません。

本来は歓迎したいのですが、まあ、色々ありまして。
敢えて事前にそう質問されますと、ここは無難な返答を。

続きは折を見て。
49 :ご自身でさえ忍耐力がいると思うのならばもう少し改善してほしい…… [sage]:2016/02/18(木) 02:48:46.59 ID:HAaEd5cro
お許しも出たので遠慮なく批評行きます

まずは文章について

恐らく三人称であると思うのですが『話し言葉』が文中に頻出するせいで、あれ? と幾度も首を傾げました

三人称で書くのならば地の分は『書き言葉』を中心にし、
心理描写をするときなど状況の変化に合わせて『口語体』を雑ぜる程度に収めておくべきと感じます
文体の不徹底感もあいまって物語への没入感が大きく削がれているという印象を受けます

>>1は軽妙洒脱な文章を書きたいのかなと勝手に憶測しているのですが、個人的には滑っているとしか思えません
もしくは単に手癖と勢いでつないでいるのか、どちらにせよ地の文でユーモアを語るのは一考した方がいいかもしれません

特に唐突に挟まれる伏字のギャグっぽいやつとか冷笑がこみ上げてくるレベルでした、どことは言いませんが

これは極々個人的な見解ですが、文章そのもので笑いを取るのは恐ろしいまでに難易度が高いです
強烈なキャラクタを用いるのでもなく、世界設定そのものを盛大に崩すでもなく、ただ文章だけで笑いを取る
これのなんと難しいことか。はっきり言ってプロの作家でさえ時折滑ったりしているのです

最低限プロレベルの文章力がないと成功しない手法と言って差し支えないと思っています
それだけの実力があるとお考えならば止めはしないですけれど、私見を言えば『キツイ』かなと思います

場面転換と描写について

まず場面転換について、三人称であれば転換用の記号は排除してしまっても構わないと思います
というより、氏の場合は転換用の記号は排除してしまった方がいいように思います

最も大きな理由としては『転換用の記号を入れているのだから場面が変わったってわかるだろ』
という意識が生まれてしまう、ということです。自覚的か無自覚かは問いませんし、これは非常に自覚し辛いです

きちんと情報を整理してあれば、必要な場面に必要な情報を必要なだけ仕込めるはずです
ですが書き手の意識に少しでも『これくらいは伝わるだろう』という思いが入ると途端に崩れます。

『これは伝わらないかもしれないな』というのならば伝わらなくても問題はない構成であることが多いですが
『これくらいは書かなくてもわかるはず』という意識になるとほぼ百パーセント伝わらなくなります
理由は単純です、書き手は読み手が持っていない情報も持っているから、にほかなりません

なのでまずは大枠として時間、例えば太陽や月、星が出ているや空の色など、ほかには正確な時間等々
その次に場所、屋内か屋外が、どんなところで、何のためにいるのか等も併せて併記し
最後にそのキャラの目線へと移行して、誰といるのかそこで何をしようとしているのか、等の情報を添付する
といったように順序を決めて描写し、慣れてきたらそこから徐々に崩していく、というような手法をお勧めします


描写にも触れます

読んでいて真っ先に思ったのことがあります
『果たしてその情報は必要なのか?』というもので、これを思った文章は大体あとで何かにかかわることもなかったです
修飾語や状態の説明が無意味に長く書き連ねられているために全体としてとっ散らかった印象の文になるのだと思います
少し引用させてもらいます

> 年上で、一見するとややふっくらかぽっちゃり目にも見えるとは言え、
> ブラウスタイにスカートと言う着の身着のままの姿で
> 焼け出されに近い形で土砂降り暴風雨の大嵐の中に放り出されている。

これなんか
『濡れ濡れスケスケの年上の少女(しかも巨乳でエロい)。』とかそんな風にすればたったの一行に圧縮できますし
その次の

> そんな、素人目にも当然体力ゲージがゴリゴリ音を立ててノンストップでマイナス進行している筈の
> 風斬氷華の肩を借りるのは男として間違いなく心苦しいが、
> 骨折こそしていなくともむしろ痛みを忘れそうなぐらい危ない怪我人の身として、
> 黄泉川の合理的な発言に逆らう気力も体力も持ち合わせてはいなかった。

これも
『上条恭介の男のプライドには反しているが背に腹は代えられず素直に黄泉川の言葉に従って風斬に肩を借りたのだった』
とかにしてしまえば圧縮率は約五割程度になります

これに対しての解決策は
『必要最小限の描写にどれだけ肉付けをすべきかを考える』になるかと思います

憶測ですが、氏は足し算で書いているんじゃなないでしょうか? 恐らくその辺りに原因があると見ています
なので、引いて引いて極力シンプルな文章へと変換したのちにそこからどうしても必要な描写だけを足してあげてください
そうすれば恐らくですが読みやすい文章になるかと思います

ついでに氏の文章は益体もないことをくどくどと並べ立てる傾向を感じました
そういう書き方をするならば一人称形式を採用した方が違和感は抑えられるかと思います、キャラクタにもよるのですが

まとめれば、
文体と人称は徹底してブレがないように、話し言葉は極力混ぜないようにしてください
地の文でのギャグは相当自信がなければ控え方が無難です
場面転換をするときは時間、場所、キャラ、思考のように順序立てて描写すると分かり易いです
足し算でどんどん修飾描写を積んでいくのではなく、引き算でシンプルな文章になるように考えるといいと思います
といった感じだと思います
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/18(木) 02:55:46.66 ID:HAaEd5cro
長くなりましたけど、続けてお話についても触れます
一言でいうとひたすらに退屈でした
おそらく考えるに理由は明白で、『目的の欠如』でしょう
冒頭から特に目的のない暁美ほむらの日常というなだらかな物語が延々と続きます

だらだらと続く日常モノとして見たとしてもあまりにも起伏がなさすぎます
お話自体がスロースタートなのだから仕方がないと思うかもしれませんが、そういうことではありません

例えば、投下一発目の時点で恐らく主人公と思われるほむらに目的を与えてあげるのです
この目的っていうのは何でもいい、例えば『まどかと仲良くなりたい』でも、『早くクラスに馴染みたい』でも、
『この町にいる魔法少女たち全てと知り合う』とかでもいいかもしれないです、とにかく何かしら目的をあげてあげてください

そうすればキャラクタに方向性が生まれるし、読者も話の方向性が分かれば読みやすくなります
これは非常に重要なことです。方向性の分からないお話を読みたいと思う人は少ないです、長丁場なら尚更です

で結局ほむらちゃんに仮初の目的が付与されるのに大体百レス程度掛かって、しかもなんだかふわっとしてる
これでは読んでる方には何にも響かない、少なくとも私はそうでした

でクライマックスっぽいワルプルギス戦になってわらわらと禁書キャラが登場します
ただ、理由付けがなおざりに過ぎる、百歩譲って吹寄制理がボランティアに来るのはいいです
でも、教師である黄泉川愛穂がボランティアで来ちゃダメでしょ。授業どうするの?
風斬氷華はまぁロシアに行ってたしで済ませるとしても、
アイテム勢が来てる理由は全く分からないです、しかもフレンダもいるっぽいですし……。時系列ちゃんと考えてますか(小声
なんというか、人的資材あたりの属性を便利なご都合主義と勘違いしてません?
新約のあの辺って負でも正でもご都合主義がから回る話じゃないでしたっけ? 記憶違いなゴメンナサイですけど

それでやっと話が動き出したと思えば全く何も絡まない上条君主役の番外編が始まる始末です
しかも無駄に長い。書きたいのは分かるけれどワルプルギスそっちのけすぎて思わず投げたくなりました。
面白いならいいんですけど、正直このパートはほかにもましてつまらなく感じられました……。
『君たちなにしてんの?』感が半端じゃないです。もちろんこの後の展開に必要なパートだったのですよね?

正直言って群像劇は向いてないと思います

キャラについても少しだけ
ほむらちゃん自意識過剰すぎだし、全部乗せしすぎです
この感じは所謂『U‐1』とか『スパシン』とかに近いものを感じました
ほかにもキャラ出しすぎの割に全然捌けてないぞ、とかいろいろあります

けど一番言いたいのはこれです
『大人書くの下手』

ぶっちゃけ上条君パートの黄泉川先生とかいる必要が微塵も感じられません
大人キャラを集団に突っ込むのならば相応の役割と行動をさせないと意味がないです
これは詢子さんや知久さんも同じです。背中を押す役やブレーキをかける役というだけならば別のキャラでも同じに思えます
同じ背中を押す役だとしても大人には大人なりの、子供には子供なりの時と場合によって必要となる属性は変わってきます

だけれど氏の書く大人にはそれを感じられませんでした
なんというか、『それ別のキャラが言っても同じだよね』というか、『言葉に重みがない』というかそんな感じです

理性と感情を切り離して背中を押すだとか、背中を押してあげたい気持ちはあるけれどそれでもブレーキをかけてあげる
みたいなキャラクタとしての芯の強さや責任みたいなものがいささか足りていない感覚です

禁書作中の黄泉川先生も割と無茶なことには突っ込みがちですが、その後ろには必ず子供たちがいますし、
組織に抑えられて動けなくなる場面も多いです。そんな中でもできる限り子供たちのためになることを選択していきます

そんな先生が果たしてボランティアの先で予想以上の悪天候により要救助者になるでしょうか?
少なくとも私には想像できないです。例えばこれが突然堤防が決壊して鉄砲水に飲み込まれるとかならば、
まぁあり得るかな、と思うのですけれど暴風雨の水害で身動き取れなくなるというのはキャラクタとして軽率が過ぎるのでは?
学生の吹寄ならばまぁそういう甘い目算でもそんなもんだよなと思えるのですけれど、大人キャラがそれはダメだろう、と思うのです

そのほか細かいこと
本文と>>1の一言や挨拶を分けてほしいといわれる理由

本文だと思って読み始めたら違っていて萎えるだとか、
そもそも本文以外には興味がないから本文と一緒くたにされると読みたくないものも読まなくちゃいけなくなって苦痛だとか、
各々理由は違うだろうけれど共通することが一つ
つまり、余計なノイズが混じると物語の没入感が損なわれるということ

もし書いたものを色眼鏡で見られたくないと思うならば絶対に分けた方がいい
一言だけなら平気、だとか本文と区別がつくようにマーカーつけてるとかそう言い訳ははっきり言えば無意味
なぜならば一レスは紙の本の一ページに相当する。紙の本で章の頭や区切りの部分で作者の挨拶が乗っていたら鬱陶しいでしょう?
そういうことなのです。どうしても挨拶に一レス使いたくなければ名前欄に入れるとか、メール欄に入れるとか、工夫しよう

返レスそのものが無駄に長いのも読者にとってはノイズになりえます
私がその内容で返すとすれば
荒しじゃなければどんと来い
くらいに収めます。キーワードは短く簡潔にです

ついでになぜ批評を書いていいか聞いたかといえば
称賛以外の感想なんか聞きたくない、という人種が一定数存在するから、です
流石にそう思っている書き手に批評をするのは労力の無駄なので出来れば避けたいし、お互い気分が悪くなるだけかと思います

言いたいことはこれで全部です
続き書くの頑張ってください。この長文で心が折れないことを祈っております
51 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/03/06(日) 13:29:41.39 ID:jFT/WcAU0
生存報告しときます。
52 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/03/11(金) 01:54:19.04 ID:M9gxy/OV0
今回は作品投下無しで。

>>49
>>50

あんただったか(汗

畏れ入って乾いた笑いが、と言うのが実感です。

そして、まず何よりも感謝と敬意を。
何と言うか、全部賛成、とは言いませんが、
あなたの熱意、作品愛と観察には脱帽です。

今回の返答ですが、基本はノーコメントです。
あれだけの熱意を傾注していただき本当に申し訳ないのですが、
言える事言えない事入り乱れでちょっと返答しかねる、と言うのが一つ。

技術面も含めて大いに読ませていただきました感謝します、
と言うのは正直な所なのですが、
ちょっとそこから先の返答が難しいと言うのも。

かなりの部分私の書き癖になっている様ですが、
読み返してみると場所によっては身の程知らずにも
原作かまちーに勝手に引っ張られて地の果てまでスリップした部分もある、かも。

そういう訳で、まことに失礼いたします。

ではありますが、二つばかりこちらで気が付いた事を。

何故か作者の私が他人事の様な口調になりますが、
実際、結構前と言う事もあり、
自分で読み返して感想を書くのに書き易いと言う事で。
書いてる時には、プロットと押さえておくべき事を叩き込んで
勘に近い所を突き進んでる部分もありますので。

以下、震え声タイム。
53 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage saga]:2016/03/11(金) 01:56:55.77 ID:M9gxy/OV0

>>49の時点で、上条君は純粋に
風斬さんの体調やそちらの悪条件の事しか考えていなかったと思いますよ。
少なくとも自覚意識の88.3%以上は。

まず余計な事を考える余裕なんて無い状態でしたから。
彼がメインで自覚している限りにおいては
主に風斬さんの体力面を測る要素を観察して
助けを得るべきか自分がどう行動するべきか。

あの時の彼の考えを論理的に言えば、
およそこれ以上の事を考える余裕もなさそうでしたので、
記述に於いてもそちらの要素を専らとしたものになったものと。
まあ、その辺で人称のブレが、と言う事にもなりましょうが。
語彙が異常にくどい、と言うのは書き癖でしょうが。

それから、黄泉川先生は引率ですね。
時々書かれてはいましたが、
確かに成り行きでそうなったとも受け取られる書き方でした。
(準)公的なボランティア募集で、安全なルートを移動して
安全地域の受け容れ先に引き渡して帰って来る予定だったのではと。
本来スーパーセルは短期間で素人ボランティアは災害後が出番ですから。

その途中で天候の急変とバス事故に巻き込まれた
と言う事ならあの状態もありでは、と。

そちらも呆れて触れなかったのかも知れませんが
しまいに交通システム障害も絡んで常盤台まで来てましたし。
あっちは実習っぽいですね。

ワルプルさんのスーパーセルって暴風雨としての威力も常軌を逸している上に
元がモンスターですから発生しても移動パターンの予測が難しい。
本編でも住民が避難している体育館をミンチにする勢いで突き進んでいましたから。
そんなのが進路を急変更してバスごと巻き込まれたら
或はああ言う事態も発生する、かも(汗

そこまで書かなくても、と言う見込みが余り上手くないのかも知れませんが。

言われておきながら色々妙な書き方になりましたが、
私からは以上です。
ホントーに中身の無い事を長々とマジすまん。

それでは、今回はこれにて失礼します。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/11(金) 17:05:14.52 ID:k+s9kuyfo
今全てが腑に落ちました
長々と批評家気取りで書き込んだ手前、頂いた返信に返信するのは憚られるのですが、

一個だけ絶対に伝えておかなければならないことが出来てしまった。というか氏の決定的な弱点がハッキリしました

内面描写と外面描写を一緒くたにまとめてしまっているんですね。それならば読みづらいのは道理です
取り上げさせてもらった文章にキャラクターの主観描写が混在しているとは全く読み取れていませんでした
多分、読んでくれてる方のほとんどが気が付いてないと思います

内面と行動を同時進行するならば、〜はそう考えながらも、や――の状況を客観的に頭の中で分析して、のように
キャラクタの内面描写であることを明確にし、そのあとで動きや行動の結果を描写するとグッと分かり易くなります

文章のどこまでが内面描写でどこからが外面描写になっているのかがとかくわかり辛い
氏の返信を拝見して本当に全てが腑に落ちました

三人称でキャラクタの内面を描く場合は()や〜はそう思った。等の分かり易い描写の分かれ目を意識してみてください
重ね重ね長文失礼しました
55 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/03/12(土) 03:35:37.35 ID:UcxQ0O8D0
それでは今回の投下、入ります。

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>>47

 ×     ×

上条恭介は、ごくごく当たり前に安全なルートを選択し、
通いなれた歩道をテクテク歩いて帰路に就いていた。

そして、気が付いた時には、見知らぬ工事現場のただ中に立っていた。
そこは、取り壊し中のビルの前、囲いの中の資材置き場だった。
少なくとも、彼自身は何をされたのか、全く理解出来ていなかったが、
種を明かせば意外と単純だった。

フルブースト状態の魔法少女に胸倉を掴まれ、
短時間の内に力ずくの最高速でそこまで移動していたため、
理解が追い付かない。これだけの事だった。

「上条恭介君?」

そして、恭介の目の前には、
体をすっぽりとマントで覆った成見亜里沙が不敵な笑みと共に立っていた。

「な、何?」

見た目、同年代らしい亜里沙に、恭介が怪訝な顔で聞き返す。

「ちょっと、聞きたい事あって顔貸してもらったんだけど………」

その時、資材の山の陰から、もう一人の少女がツカツカと接近して来る。
そして、亜里沙にドムッ、と、肘鉄を食らわせた。

「手荒な事をしてごめんなさい。
もう少し常識的な話し合いをする予定だったんだけど」
「つうぅーっ」
「一体、何?」

一応、まともな話の出来そうな新しい少女に恭介が声を掛ける。
56 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/03/12(土) 03:40:59.07 ID:UcxQ0O8D0

「失礼しました。私は詩音千里。茜ケ崎中学校の者です」
「茜ケ崎?」
「はい。風紀委員として奏ハルカ会長と関わりを持っています」
「ハルカさんと」
「へぇーっ、名前呼び」
「あの人は、多少親しい人にはそれを求めます」

ずいっと顔を出す亜里沙を千里が手で制した。

「つまり、ハルカ先輩とはそれなりに親しい、と言う事ですよね?
先輩とはどういうお知り合いなんですか?」

「どういう、って、ハルカさんが見滝原中学校に来た時に知り合って、
ジャズ同好会と一緒にピアノを弾きに来た時に。
僕もジャズヴァイオリンを少し弾くから、その時に」

「ああ、あの時ね」

亜里沙が、間違いなく自分のせいで聞き逃した演奏を思い出して声を上げた。

「それで上条君、あなた、付き合ってる人、いますか?」
「付き合ってる?」
「彼女とかいるのか、って聞いてるんだけど」

どうも少々鈍い反応を返す恭介に、亜里沙が続けて尋ねる。

「なんでそんな事、を?………」
「恋人はいるんですか?Yes or No?」

どうにも不躾な質問に答えあぐねたその時に、
恭介はそれこそキスしそうな距離感で千里の顔を見ていた。
何か、妙な成り行きだが千里自体は可愛い、
本来、真面目にきりっとした雰囲気も悪くない、美少女と言ってもいい。
混乱しながらも、恭介としてもその事を全く感じないでもない。

「う、うん、いるけど」
「その恋人は、見滝原中学校にいるんですか?」
「う、うん」

とにかく、気圧されているのが一番で、恭介は返答する。
57 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/03/12(土) 03:46:33.12 ID:UcxQ0O8D0

「そう。もう一度聞くけど、ハルカ会長とはどういう関係?」
「どういう、って、ハルカさんとの関係って………」

次の瞬間、やはりマント姿だった千里の右腕が、びゅうんっと右手に振られていた。
そして、その右手には、拳銃が握られている。

「それって………」
「ああ、玩具よ。
ごめんなさい、少々苛立ってたみたい。
だから、これが本物だ、と言うぐらいのつもりで返答して」
「あー、上条恭介君」

そそそっと近づいていた亜里沙が、恭介の肩をぽんと叩く。

「早めに全部ゲロッた方がいいよ。
アタシも結構大概だけど、この件に関してだけは、
チサトがキレたらアタシの百倍怖いから」
「ハルカさんの事?」

恭介の改めての問いに、拳銃をだらんと下げた千里が頷く。

「さっきも言ったけど、最初に会ったのは見滝原中学校のジャズ同好会で。
ハルカさんは尊敬するピアニストの妹さんで、
ハルカさん自身も尊敬に値する演奏者。
僕も、ヴァイオリンやっててジャズも少し齧ってるから、
その事で何回か会ったり演奏した事はある」

「音楽関係の付き合いって事?」

恭介の返答に、千里が聞き返す。

「うん」
「あの人の事を、魅力的な先輩だと思う?」
「うん。素晴らしいピアノを弾いて、
それであんなに綺麗でしっかりした人だから、尊敬してる」

その返答を聞き、千里は天を仰ぐ。
千里自身経験豊富、と言う訳では決してないが、これは、素直過ぎる。
何か、想像以上に単純過ぎる事が、千里にも段々と分かって来ていた。
58 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/03/12(土) 03:52:09.82 ID:UcxQ0O8D0

「そう、分かった」

次の瞬間、千里と亜里沙は目配せを交わした。

「これはっ?」
「チッ!」

千里と亜里沙は、目の前の景色がぐにゃりと歪むのを目の当たりにする。

「加減、大丈夫でしょうね」
「伊達に経験積んでないって」

尋ねた千里に、恭介を当て落とした亜里沙が答える。
千里の右手の拳銃が天に向けて発砲され、
花火のシャワーの様なものが降り注ぐ。
それと共に、景色は普通の工事現場のそれに戻される。
次の瞬間には、死神規格の大鎌と槍がガキインッと衝突していた。

「!?」

千里の発砲した魔法弾が、空中で飛来したサーベルを撃ち落とす。

「えーっとさ」

飛来源からのその声を聞きながら、千里の足がじりっ、と下がる。

「あんた達、他所の縄張りで一般人捕まえて何やってる訳?」
(オーケーそれでいい、打ち合わせ通り、取り敢えず魔法少女の筋論から様子を見る)
「ごめんなさい、もう用事は終わったわ。
彼にも危害は加えていない。退散させてもらう」
「ふーん、それで、納得してもらえる、とか思ってる訳っ?」


==============================

今回はここまでです>>55-1000

>>54
有難うございます。
今回はお礼だけで失礼します。

続きは折を見て。
59 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/04/04(月) 23:46:50.78 ID:Fmu7ZFeG0
生存報告しときます
60 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/04/28(木) 23:02:33.43 ID:ZljhueG40
すいませんが生存報告です
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2016/05/11(水) 22:42:25.47 ID:6/81+6x40
age
62 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/05/28(土) 23:13:51.08 ID:AjTiPIr50
生存報告です
63 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/06/25(土) 13:38:06.89 ID:zwFCVwBT0
生存報告です
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 00:32:13.72 ID:tULHUK7J0
乙です
本日初めてこちらのSSを発見したので、ちょっと読んでみます
65 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/07/24(日) 02:42:19.59 ID:5R2V/YuL0
生存報告

そろそろ行けます、かね………
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/25(月) 10:24:34.00 ID:kBbsFUTXo
 
67 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/07/29(金) 01:40:19.27 ID:b1q2A61p0
大変お久しぶりですいません。
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>58

「おっ」

佐倉杏子が呟いた時には亜里紗が踏み込み、
成見亜里紗の大鎌と杏子の槍が打ち合う。

(こいつ、強いっ)
(ちょっとは出来るじゃんっ)

杏子に、ニッと笑みを向けられて、亜里紗の頭にカッと血が上る。

「っのおっ!」

一度距離を取った亜里紗が再び杏子に突っ込んだ。

(こっちもデカイけど、あのでっかい槍なら動き、をっ!?)

何とか、杏子の槍働きに合わせて打ち合っている、
と、亜里紗が思っていた時には、
亜里紗は杏子の得意手にはまっていた。

「こ、のっ!(鎖仕込みかよっ!!)」
68 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/07/29(金) 01:46:22.78 ID:b1q2A61p0

ーーーーーーーー

ほとんど裸のフロアの空中で、
放たれるサーベルと銃弾が激しく衝突する。
親友の突撃が作った隙に、詩音千里は解体中のビルの中に逃げ込んでいた。

そして、途中で待ち伏せして、
美樹さやかとの戦闘状態に入っていた。

本来、無闇な戦闘をするタイプではない千里だったが、
今回は色々まずい歯車が回った、と、頭を痛めていた。
それも自業自得と言わざるを得ないのが本当に頭が痛い。

まともに逃げても追い付かれる、
千里の側が縄張り荒らしなだけに、普通の話し合いも難しい。
と、なると、申し訳ないが一度ぶつかって退路を作るか、
虫のいい話だが優位に立ってから話を付けるしかない。

およそその様な発想だったが、
追いかけて来た相手もなかなかの手練れ、
益々以て頭の痛い話だった。

(やるじゃん)

柱の陰で、さやかも心の中で呟く。
ホオズキ市から来てよりによって上条恭介に手を出す。
なんだか知らないけど何はともあれ取り敢えず万死に値するのは間違いない。

そんな相手を追い込んでここまで来た訳だが、
まあ、誘い込まれた、と言う事は理解出来る。
相手が銃だけに、遠距離戦は向こうに分がありそうだ。

「!?」

物陰から物陰へ、ちょこまか移動を始めたさやかを、
千里は銃口で追いかけて銃撃を続ける。
その内に、さやかの動きに合わせて空中に現れた消火器が、
千里の銃撃を受けて爆発していた。
69 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/07/29(金) 01:51:48.51 ID:b1q2A61p0

(もらった、あっ!?)

さやか会心の一撃、が、ガキイッと受けられた。
自分の距離に持ち込んだ、その確信が、逆にさやかの心に狼狽を生んでいた。
そして、気が付いた時には、振り下ろした刃は全て相手の銃身に受け流され、
ドカッ、と、腹を蹴られたさやかはそのまま背中を打ち付けるまで吹っ飛んでいた。

「ごめんなさい」

経験差があったとは言え、パワーそのものを願いに大業物を振るう成見亜里紗を
手もなく捻った事もある千里である。
さやかの隙を堅実に見抜くと一気に畳みかけ、
さやかが復活する前にドンドンドンと魔法弾を浴びせていた。

(ありゃ? 変身解けた?)

マジ死んだ、ぐらいに思っていたさやかが自分の異変に戸惑っている間に、
千里は走り出していた。
魔法少女の強みで、何階もの高さの窓から飛び降りる。
もう一人のポニーテールもかなり厄介そうだ。
亜里紗に撤退を促して、と、思っている所で千里は異変に気付く。

ーーーーーーーー

千里が把握した現実は、降下中に近くの窓に引きずり込まれたと言う事だった。
その結果を齎した、千里の脚に絡まった黄色い紐を千里が銃撃した頃には、
別の銃弾が雨あられと千里を襲っていた。

「くっ!」

物陰に隠れ、そこから敵を銃撃したが、
その効果は覿面だった、悪い意味で。
身を隠していた柱が目の前から消滅し、千里は這う這うの体で別の柱の陰に入る。
70 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/07/29(金) 01:57:12.43 ID:b1q2A61p0

(一発撃ったら百発返って来る、っ)

自分が銃撃タイプの魔法少女だけに、
今戦っている状態が本気でまずい、と言う事が骨身に染みて理解出来た。

最早、余計な事を考えている余裕はない。
鋭い空気が掠める連射にチビりそうな恐怖を覚えながら、
千里は柱から柱へと駆け抜け、威嚇にもならない拳銃を発砲しながらチャンスを伺う。
足を止めたら死ぬ、見切り損ねても死ぬ、と、痛感しながら。

「やああああっ!!!」

そして、千里は相手の斜め後ろから飛びかかった。
千里の右手に握られた横殴りの拳銃が相手の振るった長い銃身に受け流され、
千里の左手の拳銃が火を噴いたが、その銃弾は壁に埋まる迄空しく空を切る。

いつの間にか、相手が振るった銃床が千里の後頭部に叩き付けられそうになり、
千里は文字通りに這う這うの体でそこから逃れる。
千里が走り去った後を銃撃が追跡し、千里は柱の陰で荒く呼吸する。
そして、又、紙一重に銃撃を交わしながら柱から柱へと飛び回る。

(もらったっ!!!)

その中で発見した千載一遇の機会。
詩音千里はそこに、文字通り飛び付く。
魔法少女ならこのぐらいでは(辛うじて)死にはしない。一番大きな胴体を的に。
とっさに狙った相手の胸元に魔法弾の連射を浴びせた瞬間、
千里の目の前には、
ぶわっ、と、紐の塊が展開していた。

==============================

今回はここまでです>>-1000
続きは折を見て。
71 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage saga]:2016/07/29(金) 02:04:30.76 ID:b1q2A61p0
雑談
随分お久しぶりになりまして、
短い投下での再開ですいません。

少し勘が鈍ってる予感もありますが、
まあ、ぼちぼち続けます。

改めまして、
今回はここまでです>>67-1000

それでは失礼します。
72 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 01:38:23.12 ID:PL2otzEv0
No.16 充填完了。

それでは今回の投下、入ります。

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>>70

「付いて来てもらいましょうか?」

全身雁字搦めで身動きが取れない。
その間に、銃口を向けられて詩音千里は一度抵抗を諦める。

魔法銃を使う事が出来たら拘束を解除する目もあったが、
拘束がきつくてそれも使えない。

魔法少女同士の抗争になってしまった以上、
本来ならここで頭を吹っ飛ばされても文句は言えない。
千里は、その生真面目な声の指示に従う事にする。

ーーーーーーーー

かくして、連行された先は、最初の資材置き場だった。
そこには、多節棍で拘束された成見亜里紗の姿もあった。

「チサトっ!? 放せ畜生っ!!」
「てめぇで喧嘩売って来たんだろうがっ!!」
「この、っ………」

拘束されたまま、無言で向けられた銃口に亜里紗が息をのんだ。

「余り手荒な事はしたくないけど、
他人の縄張りで暴力沙汰を起こされて甘い顔は出来ないわね」
「申し訳ありません」

厳しい口調で告げる巴マミに、千里が拘束されたまま頭を下げた。
73 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 01:45:33.44 ID:PL2otzEv0

「私は巴マミ、この辺りで魔法少女のリーダーみたいな事をやってる。
あなた達の事は暁美さんから聞いてるけど、
一体どういう事か説明してもらえるかしら?」

「はい、その、何と言いますか………
私達のチームの副長、奏ハルカと最近見かけない男子生徒がやけに親しくと言いますか。
それで、その男子生徒に就いて少し確認した所、見滝原の上条恭介君だと分かって、
それで、あの、本当はもう少し穏やかにどういう事か確かめるつもりだったんですが、
手違いがありまして………」

「つまり、そちらの副長さんに粉掛けて来た野郎がいたから、
どんな奴だか確かめてやろうとこの見滝原まで出張って来たって事ね」
「まあ、そういう事ね」
「アリサッ、確かに、否定する程間違ってはいません」

杏子の要約に亜里紗と千里が応じた。

「で、その、奏ハルカ? あっちの副長って知ってるのか?」

杏子が、側にいた暁美ほむらに尋ねる。

「ええ」
「どんな奴だ?」
「綺麗なひと(女性)よ」

杏子の問いに、ほむらはファサァと黒髪を払って答える。

「綺麗なロングヘアの美人で背が高くてスタイル抜群。
物腰は折り目正しくて、育ちがいいみたいね。
魔法少女のリーダーとしても強い責任感と実力の持ち主で、
いかにも憧れの先輩、ってタイプかしら」

「ええ、その通りです。
ハルカ先輩は立派な先輩で素敵なひとです」
「ウェヒヒヒ………」

自分の指で自分の顎をついと上げて言うほむらの言葉に千里が応じる。
その側では、腕組みして眉をヒクヒク動かしている幼馴染を横目に入れて、
鹿目まどかが乾いた笑い声を漏らしていた。
74 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 01:51:44.80 ID:PL2otzEv0

「本当はもっと穏便に話を進める予定でしたし、
そちらと事を構えるつもりもなかったのですが、
全てこちらの不手際で騒ぎを大きくしてしまって、
本当に申し訳ありません」

プイッ
ギロッ

千里が頭を下げ、そっぽを向いた亜里紗もそれに倣う。

「それで、その、元々の調査の目的はどうなったのかしら?」

ほむらが尋ねた。

「音楽を通じた友人だと言う事が分かりました。
それだけの事です。彼には他に付き合っている人もいるみたいですし、
それが分かって引き上げる所だったのですが、本当にすいませんでした」
「この事は、そちらの副長さんやリーダーは知ってるの?」

頭を下げる千里にマミが尋ねる。

「いえ、知りません。全て私の一存です。
アリサにも無理を言ってついて来てもらいました」
「格好つけるなっつーの」

千里の言葉に亜里紗が毒づく。
しかし、マミと杏子がチラッと見たところ、その脚は震えを帯びている。
まず、本人の言葉がどこまで信用されるか、と言う事もあるし、
魔法少女が他所の縄張りで変身しての暴力沙汰となると、
それ相応の目に遭わされても文句は言えない。

「あー、めんどいから言っておくけど、
あの坊やの彼女ってこいつだから」

親指で指しての杏子の言葉に、千里と亜里紗の首がぐるーりと動く。
75 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 01:56:52.12 ID:PL2otzEv0

「んんっ、あたしは美樹さやか、よろしく」
「つーか、そんなら彼氏の事ぐらいちゃんと見とけってーの」
「アリサッ。今回は本当にごめんなさい。
あなたにも彼にも迷惑をかけて」

「まあ、分かったんならそれでいいけど、
それでその、ハルカ先輩って音楽とかやってるの?」
「ピアノを、年齢的には相当な腕前だそうです。
こちらの学校でジャズピアノを弾いた時に上条君と知り合ったと。
ただ、肝心な所の確認に少し手間取りまして………」

「ああー、恭介も時々ジャズ弾いてるからね。
あいつ筋金入りの音楽馬鹿で、ちょっと色々疎い所あるから、
なんかそっちで誤解招いたかも、って事にしておくわ」
「有難うございます」

「これでまた恭介に手ぇ出した、とか言ったら、
あたしも本気でキレるからね、多分文字通りの意味で」
「覚えておきます」

「美樹さんがそれでいいと言うなら。
ワルプルギスの件では手助けしてくれたとも聞いてるし、
今回だけはあなた達を信じて不問に付しましょう」
「有難うございます。本当にすいませんでした」

マミの言葉に、千里が深々と頭を下げ、
拘束を解かれた亜里紗が腰を抜かしていた。

ーーーーーーーー

「ん、んー」
「気が付きましたか?」

上条恭介が目を開けると、可愛らしい少女が視界に入る。
確か、ごく最近の記憶にありそうな。

「話している最中に立ちくらみしたみたいで、
短い時間でしたけど」
「そう」

そっぽを向いて笑いを堪える亜里紗の横で、
地面で身を起こす恭介と、それを覗き込む千里が言葉を交わした。
76 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:00:11.15 ID:PL2otzEv0

「確か、ハルカさんの後輩の」

「詩音チサトです。
さっきまであなたと先輩の事を少し話していただいたのですが、
事情は分かりました。
こんなところでお手間をとらせてすいません」

「ああ、うん。こちらこそ何か面倒かけたみたいで」
「はい。出来れば今日の事はハルカ先輩には内密に。
私達もあなたから勝手に色々聞きましたから、
余り気分のいい事ではないですので」

「詩音さんがそういうなら僕は構わないけど」
「それじゃあ」

双方、頭を下げた後で合意が成立し、ここで別れる事となる。

ーーーーーーーー

「あなた達」
「良かった、追い付いて」

馬鹿馬鹿しい騒ぎに付き合わされ、帰路に就いていたほむらの前に、
その騒動の元凶二人組が姿を現した。

「少しだけ、いいかしら?」
「何?」
「………あの場では、収拾するために敢えて言わなかった事」

その時には、千里の唇はほむらの左耳のすぐ側まで近づいていた。

「私は、あんな女の子の顔をしたハルカ先輩を見た事がない」

ほむらが視線を外すと、亜里紗も小さく肩をすくめていた。

「正直、この手の事で拗れたら他人にはどうにも出来ない。
それでも魔法少女同士のトラブルは避けたい。
だから、私も気を付けるけど少しだけ頭に入れておいて欲しい」
「そうさせてもらうわ」
「ごめんなさい」

千里が小さく頭を下げ、ホオズキの二人組はその場を離れる。
77 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:03:49.08 ID:PL2otzEv0

「………どうしろって言うのよ」

女子校出身暁美ほむら、人選を考えろと心の中で毒づく所であるが、
後の人選はと言えば、

当の本人。
暁美ほむらが固く信じている所によると、ピュアそのもの。
花より団子のがさつ者。
多分残念美人。
消去法の結果、暁美ほむらはもう一度嘆息する。

ーーーーーーーー

「何やってんだかなぁ」

見滝原でのちょっとした馬鹿馬鹿しい揉め事も片付いて、
佐倉杏子は陽の落ちた風見野で繁華街をうろついていた。

「ん?」

そこで、ちょっとした気配を察知する。

ーーーーーーーー

「うぐっ!」

薄汚い路地裏で、一人の少年がうめき声と共に蹲る。
その周辺には、少女を含む柄の悪いのが集団で、
ニタニタ笑って取り囲んでいる。

「なぁ、このままボコボコなる前に金出しちまおうぜ」
「分かんねーならもう一発いっとく?」
「ヒャハハ………あがっ!?」
「おいっ? おごっ!!」
「てめぇ、何して………」
「?」
78 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:07:21.78 ID:PL2otzEv0

蹲った少年が気が付いた時には、
彼を取り囲んでいたグループが仲間割れの様に殴り合いを始めていた。

「行くぞっ!!!」

そして、彼を掴んだ手は、意外に柔らかなものだった。

ーーーーーーーー

「大丈夫か?」
「ええ、すいません」

佐倉杏子は、夜の公園で、
路地裏からかっ攫って来た少年にハンカチを差し出した。

下らない気配を感じて路地裏を探った所、
分かり易く進行していたカツアゲの中から被害者の手を引いて今に至る。
見ると、相手は杏子と同年代、
ちょっと年上にも見えるが、如何にも育ちのいい、線の細そうなタイプ。

「アンタみたいな坊ちゃんがあんな所で何やってたんだよ? 夜遊び?」

まず、「食うかい?」とチョコ菓子を勧めてから杏子が質問する。

「妹を、探してた」
「妹?」
「うん。この娘、見かけなかったかな?」

杏子が差し出された写真を見る。
同年代らしいが、生憎心当たりはない。

「妹さん、どうかしたのか?」
「いなくなったんだ。何日も帰ってない」

「警察には?」
「一応。恥を言うけど、僕の母親がちょっと毒親入っててさ、
昔から僕の事を贔屓して妹にはきつく当たってたんだけど、
事故の後からちょっとひどくなって」
79 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:10:59.43 ID:PL2otzEv0

「事故?」
「うん。通学路に車が突っ込んで来てね。
僕が妹を庇う形で大怪我したから」
「それで、母親から嫌われたってか」

「正直、家出しても仕方がないと思う。
僕も、出来るだけフォローして可愛がってたつもりだし、
兄妹仲は悪くなかった、と、思ってるけど。
妹も、祈ってくれた」

「祈って?」
「入院中に、僕のために祈ってくれた。
夢か現実か、はっきりしないんだけどね。
だって、意識もなかった筈だし。
それでも、妹が僕のために必死で祈ってくれてたのはなんとなく覚えてる。
後で看護師さんに聞いても本当にそうだったって」

「健気だな」
「うん。必死に僕の回復を祈って、
しまいには何かおかしなものが見えてたのかも知れない」
「おかしな、もの?」
「うん、なんか、願いを叶えるとか、奇跡とか、契約とか、
そんな事をぶつぶつと言ってた様な気がして」

「奇跡、か」
「実際、僕がこうして普通に動いてる事自体、
医者に言わせれば奇跡なんだって。
即死しなかっただけで、まず生きて病院を出られないって所から
信じられない勢いで回復したって、医者も驚いてた」

話を聞きながら、杏子は、すっ、と目を細めていた。
80 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:14:51.49 ID:PL2otzEv0

「何か、手がかりとかないのか?」
「携帯とか財布とかもなくなってた。只………」
「只?」

尋ねる杏子に差し出されたのは、印刷された風見野の地図だった。

「申し訳ないけど、妹のPC開けさせてもらった。
見当のついたパスワードが当たりだったから。
それで、見られる範囲で見つかったのがこの地図」

「印がついてるな」
「何か所か印がついてるから、
そこを回ってみようと思ったんだけど、一つ目であんな風に………」
「ああ、これ、アンタみたいな坊やが出入りする場所じゃねーよ、
コピーとっていいか?」

「え?」
「ちょっと、あたしが見てみるって言ってるの。
アンタはもう帰った方がいい。
そうだ、名前は? あたしは佐倉杏子」

「マナ、人見マナ」
「妹さんは?」
「人見リナ」

「そうか。連絡先聞いていいか?
何か分かったら連絡する。はっきり言って気紛れでやってる事だし、
全然当てにならないって事で良かったらだけど」
「うん」

人見マナは素直に応じた。杏子の見た所、愛されて育ったのだろう。
確かに、甘やかされたのかも知れない、と言う部分はあるが、
ある種の素直な好ましさが見える。
甘やかされても、それを他人、恐らく妹にも、
優しさに変換する術を身につけている様に見えた。
81 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:18:09.86 ID:PL2otzEv0

ーーーーーーーー

大槍一閃、魔獣が一掃され、魔獣の結界は錆の浮かんだ廃工場でしかなくなる。

「佐倉、杏子か?」

ドン、と槍の石突で床を叩いた杏子が、背後から声を聞いた。

「この辺には現れない、と思っていたが」

そんな言葉を聞きながら、
杏子は背後に現れた集団に魔獣のキューブを放った。

「最近この辺で売り出し中の魔法少女パーティーってあんたらか?
あたしも面倒はごめんだからなるだけ近づかなかったけど」

「まあ、そういう事になるだろうな。
私は朱音麻衣。風見野で槍を使う凄腕、佐倉杏子と言うのは?」
「佐倉杏子はあたしだけど。
それで、ちょっと聞きたいんだけど、人見リナってそっちの関係か?」

次の瞬間、杏子は胸倉を掴み上げられていた。

「お前、何を知ってる!?」
「美緒っ!?」

麻衣が叫び、美緒と言う魔法少女は杏子に振り解かれていた。

「やるってーの?」
「風見野でも利己的な魔法少女って聞いてる。
リーダーをどうかしたのかっ!?」

槍を持ち直した杏子に美緒が叫ぶ。

「やめなよっ!」
「よせ美緒っ!
仮にも風見野の一匹狼で名の通った相手だ」

グループの一人佐木京がおろおろと叫び、
麻衣も強く制止する。
82 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:20:45.06 ID:PL2otzEv0

「じゃあ、人見リナって、あんたらのリーダーかよ」
「そういう事だ。だから、何か知ってると言うなら話して欲しい」

不精不精引き下がった美緒に代わって麻衣が頭を下げた。

「リナの兄貴に会った」
「お兄さんに?」

杏子の言葉に京が聞き返す。

「ああ、リナの事を探してた。何日か前から行方不明だって」
「こっちも同じだ。急に連絡が取れなくなった」

杏子の説明に、麻衣が続ける。

「独りで魔獣にやられたんじゃねーだろうな?」
「まさか、あの生真面目で、自分で集めたグループを大事にしてたリナが、
何の連絡もなくなんて考えられない。
そもそも、リナの技術で魔獣相手に致命的な事態になる事自体考えにくい」

「家庭がちょっとアレみたいってのは聞いたが」
「それも、少しは聞いている。
だが、お兄さんとは仲が良かった筈だ。
誰にも何も報せず、と言うのは、リナの性格からして………」

杏子とやり取りをしていた麻衣の言葉が途切れた。

「だとすると………本気でどっかの変態野郎にとっ捕まって、
何かの弾みで変身も出来ず、って線か」
「そんなっ」
「残念だが、理論的に一番あり得る推測と言わざるを得ない」

叫ぶ京の側で、麻衣も下を向いて言う。
83 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/08/19(金) 02:24:15.83 ID:PL2otzEv0

「人見リナって、どういう奴なんだ?」
「立派な奴だ」

杏子の問いに麻衣が答え、京が頷いた。

「立派な魔法少女で立派なリーダー、であろうとしている。
そしてそれを実践している。
正直、それで少し頭が固過ぎて抱え込み過ぎる所がある。
だが、それを含めて私達はリナを支え、付いて行こうと決めた。
私達にそう思わせる奴だ」

麻衣の言葉を聞き、杏子はくるりと背を向けた。

「………親の事以外は恵まれてる奴だな、色々と」
「ああ。だから、心から無事を祈ってる。
心当たりも色々当たったが、駄目だった」
「………気が向いたら探してみるよ。
気が向いたら、だからな」
「ああ、分かったよ」

麻衣の言葉を背に、杏子は歩き出していた。

==============================

今回はここまでです>>72-1000
続きは折を見て。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/19(金) 07:27:24.46 ID:wi4EqFEgo
まだこのスレあるのか
85 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/09/15(木) 23:06:58.53 ID:Ymq9F1qf0
生存報告です
86 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/10/06(木) 20:19:13.02 ID:yiR9IGEW0
生存報告しときます
87 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage]:2016/11/02(水) 02:39:10.35 ID:1VKAtVmY0
生存報告

そろそろ行けそう、ですが
88 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 00:45:33.11 ID:6BO///6e0
かなりお久しぶりですいません。
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>83

 ×     ×

その日、上条恭介は少なからず陰鬱な心を引きずりながら登校していた。

「おはよー」
「おはよー」
「お早う、上条君」
「お早う」

教室近くの廊下で、恭介は顔見知りの女子生徒と挨拶を交わす。

「それで、連絡とかは?」

恭介の問いに対し、割と古い馴染みの同級生は首を横に振る。
その側から向けられる、
最近こちらの学校に来た黒髪美少女の涼しい眼差しが重苦しさを増加させる。

「お早う、志筑さん」
「お早うございます上条君」

教室で挨拶を交わした恭介に対し、
彼と親しくしている志筑仁美が相変わらず優美な物腰で一礼する。
しかし、その表情には常にない疲労が漂っている。
そして、恭介の問いに対して、仁美は小さく首を横に振る。
89 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 00:51:05.14 ID:6BO///6e0

ーーーーーーーー

放課後、上条恭介は、ごくごく当たり前に安全なルートを選択し、
通いなれた歩道をテクテク歩いて帰路に就いていた。
しかし、その表情は常になく険しく、憂いていた。

そして、気が付いた時には、最近見かけた工事現場のただ中に立っていた。
そこは、取り壊し中のビルの前、囲いの中の資材置き場だった。
少なくとも、彼自身は何をされたのか、全く理解出来ていなかったが、
種を明かせば意外と単純だった。

フルブースト状態の魔法少女に胸倉を掴まれ、
短時間の内に力ずくの最高速でそこまで移動していたため、
理解が追い付かない。これだけの事だった。

「えー、と、成見亜里紗さん、だっけ?」
「そう」

そう返答した亜里紗の口調は、以前に増して剣呑なものだった。
亜里紗が恭介の胸倉から手を離し、一歩下がる。
それと入れ違う様に、近くにいた詩音千里がつかつかと恭介に近づいてきた。

「あなたに聞きたい事があります」

千里の口調は丁寧だが、前回とは違う、敵意に近いものすら感じられた。

「先輩がどこにいるのか、分かりますか?」
「ハルカ先輩? いなくなった?」

それは、自分への問いに近い恭介の呟きだったが、
次の瞬間恭介の体は軽く浮き上がっていた。
90 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 00:56:23.65 ID:6BO///6e0

「もしかして尻尾出した?」

恭介の胸倉を掴みながら、亜里紗の口角は僅かに吊り上がっていた。

「知ってる事、洗いざらい喋った方がいいよ、じゃないと………」

言いかけた亜里紗の肩が、ぽんと叩かれる。
亜里紗が移動すると、恭介は自分に向けられた銃口を見ていた。

「早めに全てを白状して下さい」

地面を一発の何かが貫き、恭介のこめかみにつーっと汗が伝う。

「さもなくば、足から始まって手の指が残っている間に、
と言う事になりますから。
それは大いに困る事でしょう、特にあなたは?」

「あー、上条君上条君、
基本、千里は常識的な冗談は通じる娘だけど、
ハルカ先輩絡みだとヒャクパー本気だから」
「ち、ちょっと待って」

「はい」

ごくりと息をのんだ恭介がまあまあまあの形で手を動かし、
千里も素直に従う。

「聞きたいのは僕の方なんだ」
「え?」
「さやかの事を、知らないか?」
「何?」

恭介の言葉に、亜里紗が聞き返した。
91 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 01:01:47.42 ID:6BO///6e0

「ちょっと、待って下さい………さやかと言うのは?
あなたの知り合いの方ですか?」
「うん、ハルカ先輩、いなくなったんだよね?
それで探しに来たんだよね?」

「ええ」
「さやかもそうなんだ、何日も家を空けて、
今までそんな事なかったのに」

恭介の言葉に、二人の少女は顔を見合わせた。

「分かりました」

千里が言った。

「正直言って、何も分からないからこちらに来た次第で、
さやかさんの事までは分かりません。失礼しました」

千里がぺこりと頭を下げて走り去り、亜里紗がその後を追う。

ーーーーーーーー

マミルームに集まっていたのは、
鹿目まどか、暁美ほむら、詩音千里、成見亜里紗、
そして巴マミと言った面々だった。

「あなたから連絡をもらった訳だけど、
奏ハルカさんが失踪したと言うのは本当?」
「ええ」

まず、ほむらと千里が状況を確認し合う。

「奏さんと美樹さんが、失踪………」

マミが不安げに呟いた。

「この組み合わせだと………」

言いながら、ほむらが顎を撫でて思案する。
その脇で、マミがインターホンに向かっている。
92 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 01:07:33.99 ID:6BO///6e0

「可能性として考えるなら、何処かで二人で剣を交えた決闘を行って、
そのまま二人とも動けなくなった、とか」
「ほむらちゃん………」
「アンタ、ふざけてるの?」
「可能性として、排除出来るかしら?」

剣呑な声を上げる亜里紗にほむらが言う。

「二人だけならな」

そんな会話に割って入ったのは、佐倉杏子だった。

「もう一人、いなくなってる」
「もう一人?」

杏子の言葉に、ほむらが聞き返した。

「人見リナ、風見野で魔法少女グループのリーダーをやってる奴だ」
「魔法少女のリーダー………」

杏子の言葉に、千里が呟いた。

「多少調べて回ったが、魔獣にやられたとも思えない、
責任感が強い真面目な奴で、
一人で勝手にいなくなる様な奴じゃないってな」
「それは、ハルカ先輩もそうです」
「さやかちゃんも、色々やんちゃな所はあったけど、
こんなに何日もいなくなる、なんて事はなかった」
「魔法少女が、失踪してる?」

口口の言葉を聞きながら、マミが言った。

「その可能性が出て来たわね」

ほむらが言う。
93 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 01:10:54.50 ID:6BO///6e0

「今の所三人。
その何れもが魔法少女で、失踪する様な理由が無い。
確かに魔法少女には危険があるけど、
三人が三人、一人で誰にも分からず連絡不能になる、
そんな間抜けが揃っている面子じゃない」
「その通りです」

ほむらの言葉に千里が同調した。
その時、マミが自分のスマホを手にして着信を受けていた。

「もしもし………ええ、ちょっと落ち着いて………ええ………」

マミがスマホをテーブルにおいてスピーカー状態にする。

「キリカを、探して頂戴」
「織莉子さん?」

スマホの声にほむらが言う。

「キリカと連絡がつかない、
その前に不審な状況があった。手がかりは………」

切迫した口調の織莉子の声を聞きながら、ほむらがメモを走らせた。

「こちらでも条件に合う所を探しながら、みんなで手分けしてって事でどうかしら?」
「それで行きましょう」

パソコンを起ち上げたほむらの言葉にマミが応じ、一同が動き出した。

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今回はここまでです>>88-1000
続きは折を見て。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/03(木) 01:19:18.01 ID:f0KkfsexO
このクソスレ読んでるやつまだいるのか?
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/03(木) 09:38:21.40 ID:Me4fTiLmP
ここにいるぞ!
ここまで来たからには頑張って完結して欲しいな
96 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 12:56:03.13 ID:6BO///6e0
それでは今回の投下、入ります。

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>>93

ーーーーーーーー

「詳しい話、聞かせてもらえるかしら?」

マミルームに再集結した一同の中で、
新たに合流した美国織莉子に暁美ほむらが尋ねる。

「有難う」

織莉子は、巴マミが差し出した紅茶を傾ける。

「見えたのよ」
「予知?」

ほむらの質問に、織莉子は頷いた。

「キリカが、見覚えの無い車に乗っていなくなるシーンが。
変な感じだったから、私はキリカに連絡を取った。
キリカも覚えが無いと言った。
だけど、その後で連絡が取れなくなった」

「それで、私に連絡して来たのね?」
「ええ、私が見た光景を覚えている限り伝えたんだけど………」
「彼女も、手がかりも見つからなかったわね」

割と大量の魔法少女が出動しての捜索結果をほむらが告げた。

「まだ、連絡はつかないの?」

亜里紗の言葉に、織莉子が頷く。

「こんな事、今までなかった」
「ああ。あいつ、織莉子にべったりだったからな」

この中では織莉子と割と古い知り合いである杏子が言った。
97 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 13:01:17.74 ID:6BO///6e0

「きな臭いわ」

ほむらが言う。

「今、その事で話し合っていたんだけど、
最近、魔法少女が相次いで失踪してる」
「なんですって?」

ほむらの言葉に、織莉子も硬い口調で聞き返す。

「こちらの美樹さやかもいなくなった。
その事で、こちらのホオズキの魔法少女も合流していた所」

千里と亜里紗が頷き、ほむらが概略を説明した。

「それじゃあ、魔法少女が相次いで姿を消していて、キリカも」
「状況から言って、十分考えられる」

織莉子の言葉にほむらが応じた。
織莉子の元々の性格から動揺は少ない様にも見えるが、
内心の動揺は想像以上だろうと、その事は周囲の者からも見えていた。

「でも、正直手詰まりね」

マミが言った。

「探し回っても手がかりは見つからなかった。
今までの失踪は警察にも届けが出ている。
取り敢えず、織莉子さんは連絡を待って、
今夜は一度、それぞれの狩りに行きましょう。
決して単独行動はとらない様に。
明日、又ここで話し合うと言う事で」
98 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 13:07:16.23 ID:6BO///6e0

 ×     ×

翌日放課後、マミルームのリビングに、
一人の少女が疾風の如く飛び込んできた。

「魔法少女失踪事件の事、詳しく聞かせて」
「………この娘は?」

飛び込んで来た少女が、周囲をじろりと見回して叩き付ける様に言った。
その有様に、余りの勢いに戦闘態勢を取りながらほむらが尋ねる。

「日向カガリ、私達のチームメイト」

追い付いた千里が質問に答えた。

「天乃スズネ………」
「日向マツリです。ほら、カガリ」

千里らと一緒に現れた鈴音がミリ単位で頭を下げ、
華々莉との関係が一目で推測できる日向茉莉が頭を下げながら華々莉に促す。

「只事ではなさそうね」

そんな様子を見ていた織莉子が口を挟んだ。

「ツバキが、いなくなった」

ぼそっと言ったのは鈴音だった。

「ツバキ?」
「私達のリーダーよ」

聞き返すほむらに千里が言った。
99 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 13:12:33.00 ID:6BO///6e0

「じゃあ、そっちはリーダー、
サブリーダーがいなくなったって言うの?」
「そういう事っ」

少し驚いた口調で言うマミに、亜里紗が苛立ちを隠さずに言った。

「前にも言ったけど、うちは実質的に二つのチームの合同に近い。
副長のハルカ先輩の下に私とアリサ、
リーダーのツバキの下にカガリとスズネ、両方に属しているマツリ」

「対立とか派閥とかじゃないけど、
元々の人間関係とかもあってやり易い様に組んでる」

千里の説明を亜里紗が補足する。

「ツバキはマツリ達の家の家政婦でもあるんだけど、
私達が学校にいる間にいなくなってた、連絡もつかない。
携帯の電源もずっと切られてるし、まさかと思って………」

「今まで、こんな事は無かった。しかも、魔法少女失踪事件の真っ最中。
チサト達がそっちに向かっている間も
私達は私達でハルカを探してはいたけど、他に考えられないっ」

泣き出しそうな茉莉に続いて、
吐き出す様に言った華々莉がギリッと歯噛みしていた。

「それじゃあ、一度分かっている事をまとめましょう」

マミが提案し、報告会が始まる。
それぞれに分かっている事を報告するが、
ほむらの聞く限り目新しい話は出て来ない。
100 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 13:17:07.48 ID:6BO///6e0

「車に乗った?」

華々莉が織莉子を見て言った。

「呉キリカは、自分で車に乗ったと言う事でいいの?」
「ええ、私が見た映像はそうだった」
「魔法少女を力ずくで車に乗せるとか、
それも何人も、そっちの方が無理だろうな」

織莉子の言葉に杏子が続いた。

「それで、何か他に見えた事は?」

マミの質問に織莉子は首を横に振る。

「車に乗った時の映像は辛うじて見えたんだけど、
それ以上の事は何も見えない。
キリカの事を見ようとして集中しても形になる映像が全然出て来ない。
多分………意図的にジャミングされてる」
「なんですって?」

織莉子の言葉に、ほむらが聞き返した。

「いくつもグリーフシードを消費して全力で集中して、
それでも、一つの事に就いてここまで何も見えないなんて
そんな事は今までになかった」
「完全に、こっち側の人間か」

織莉子の説明を聞き、杏子が天を仰ぐ。
その側で、華々莉がすくっと立ち上がった。

「カガリ?」
「ツバキを、探す」

声を掛ける茉莉に華々莉が告げた。
101 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/03(木) 13:21:16.93 ID:6BO///6e0

「ちょっと………」

マミが声を掛けるのにも構わず、華々莉はそのまま出て行った

「どういう娘なの?」
「ちょっと、難しい娘だから」

ほむらの質問に千里が応じた。

「あの娘を本当に抑えられるのは、ツバキだけでしょうね」
「あいつの前にツバキと犯人探し出さないと、犯人の方が危ないな」

千里がぽつっと言い、亜里紗がバリバリと頭を搔いて続けた。

「教えて………」

呟いた鈴音は、胸の中できゅっと手を握っていた。

「誰が、こんな事をしたのか………」
「もう一人いた………」

呟いた亜里紗がごくりと息を飲む。

==============================

今回はここまでです>>96-1000

コメントどうもです。
続きは折を見て。
102 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/07(月) 02:38:56.20 ID:DBnCgKGX0
それでは今回の投下、入ります。

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>>101

ーーーーーーーー

「大漁だな」
「ええ」

夜更けの見滝原、高台の公園で
魔獣狩りを終えた杏子とマミが余り嬉しくなさそうな会話を交わしていた。

「怪しそうな所を重点的に回ったから、魔獣には遭遇したけど」
「さやかちゃんは、見つからなかった」

ほむらの言葉に、まどかが悲し気に続いた。

「失踪しているのは魔法少女、何か手がかりだけでも、
とは思ったんだけど」

マミも無念の思いを隠さない。

「ったく、何処行きやがったあいつら………」
「さやかちゃんにハルカさん、他にも何人も、
あの、ツバキさんも………」
「そう考えるべきね」

まどかの言葉を、ほむらが肯定する。

「日向マツリに色々確認したけど、予定や約束を完全にすっぽかしてる。
何より今まで発見されたと言う連絡が無い」

そのまま、話が続いても実りも無く、
その夜は重苦しさを残した解散となった。
103 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/07(月) 02:44:35.88 ID:DBnCgKGX0

 ×     ×

「日向カガリは?」
「連絡はしておいたんだけど、家にも戻ってない。
返事は返って来るから失踪はしていないと思うけど」

放課後のマミルームリビングで、ほむらの質問に茉莉が答える。

「それ、本人の返事なんだろうな?」
「うん、そう言われると思ったのか折り返しの電話はくれるから」

杏子の問いに茉莉が答えた。
失踪した者を別にすると、
マミチームと椿・遥香チームのほとんどの者がこの部屋に顔を揃えていた。

「来たみたいね」

インターホンに応対したマミが言う。

ーーーーーーーー

「カガリっ」
「ちょっと遅れたけど、一応それだけのものは持って来た」

口調が強くなる茉莉に、
華々莉が答えて自分のノートPCをテーブルに置く。

「警察関係の情報を収集してきた」
「警察?」

華々莉の発言に、ほむらが聞き返した。

「ええ、その辺のお巡りさんから始まって、
上から下から横から手繰れるだけ手繰ってね。
警察自体の動きは鈍いから外れかとも思ったんだけど、
あすなろ警察署にこれを一連の事件と疑って独自に動いてる刑事がいた」

PCのディスプレイに、一覧表が表示される。
104 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/07(月) 02:51:55.68 ID:DBnCgKGX0

「奏ハルカ、美樹さやか、人見リナ、他にも、
この近隣で発生した条件の似ている失踪事件がかなり詳しくリストアップされてる」
「さやかちゃん………」
「思った以上にいるわね」

リストを見ながらマミが言った。

「あすなろ警察署………確かに、あすなろにも該当者がいるのね」

リストを見て、千里が呟く。

「事件扱いのケースだと、
失踪直前の携帯電話の位置情報や聞き込みの結果も入ってるわね」
「ええ。車に乗った、と言う証言も出て来てる。
状況から言って、頭の方をどうにかする能力が絡んでる」

ほむらの言葉に華々莉が続く。

「このリストを参考に、失踪した魔法少女のテリトリーを洗ってみましょう」
「当面、それしかないかなぁ」

マミの提案に亜里紗が応じた。

「私はあすなろに行く」

ほむらが言う。

「杏里あいりは私の古い友人、
あいりの友人の飛鳥ユウリとも面識がある」

「それじゃあ、私となぎさちゃんはここに残るから、
安否確認のメールはさっき言った通りのルールでお願い」

マミの言葉に、一同が小さく頷いた。
105 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/07(月) 02:57:19.37 ID:DBnCgKGX0

ーーーーーーーー

「よう」
「佐倉杏子」

あすなろ駅周辺で、遭遇した相手にほむらが言った。

「当てはあるのか?」
「取り敢えず、さっきのリストから
あの二人とあすなろの魔法少女の関係先を調べるつもり」

「じゃあ、一緒に行くか。こっちの魔法少女にちょっと当てがあるんだ」
「そうなの?」
「ああ」

「さっきはそんな事言ってなかったけど」
「日向カガリ」

ほむらの問いに、杏子がぽつっと言った。

「今、敵対するつもりはないけどあいつはちょっとヤバイ。
今、あいつに手がかりがあるって言ったら何やらかすか分からない、
そういうタイプだ」
「同感ね」

ーーーーーーーー

「よう」
「杏子ちゃん、に………」
「暁美ほむらです」
「あたしの知り合い、見滝原の魔法少女だ」
「見滝原の………」

あすなろ市内のビストロで、
取り敢えず三人の少女が一つのテーブルに就く。

「こちらが?」
「ああ、和紗ミチル、こっちの魔法少女」
「和紗ミチル、よろしく」

杏子に紹介され、ミチルが頭を下げる。
106 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/07(月) 03:01:51.93 ID:DBnCgKGX0

「それで、今日はどうしたの? 急に連絡とって来たけど」
「飛鳥ユウリ」
「杏里あいり」

それぞれ杏子とほむらが、ほぼ同時に言った。

「覚えてるよな」
「うん、二人がもめてる所をわたしが間に入ったんだから」
「そうだったの」

「うん。それから杏子ちゃんと約束してたんだけど」
「ああ、悪かったな。仲間と引き合わせるとか言われてたけど、
ちょっとこっちで色々あってな。なんとなく流しちまった」

「その、飛鳥ユウリの友人が杏里あいり、杏里あいりは私の友人。
そして、総合すると二人とも魔法少女と言う事になる」
「うん、知ってる。地元が同じだから」

ほむらの言葉にミチルが応じた。

「二人とも、姿を消してる」
「え?」

ほむらの言葉に、ミチルが聞き返した。

「飛鳥ユウリと杏里あいりが失踪した。
他にも、何人も魔法少女が姿を消してる」
「ちょっと待って、姿を消した、って、
それって魔獣退治で………」

ミチルの言葉に、説明していた杏子が首を横に振る。

「こっちの仲間や知り合いの知り合いも姿を消してるが、
魔獣絡みにしては色々不自然な事がある。
あすなろでもユウリとあいり、それに双樹って奴も姿を消してるらしいが、
何か聞いてる事無いか?」
「………」

杏子の問いに、ミチルは首を横に振る。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/07(月) 03:05:44.36 ID:DBnCgKGX0

「ごめん、最近ちょっとあの二人とも連絡とってなかったし、
そういう事は知らなかった」
「そう………さっき、仲間って言ったけど、
あなたのお仲間で不自然に姿を消した人とかは?」
「いない」

ほむらの問いにミチルが答えた。

「あなたのお仲間ともお話しがしたいわね。
広範囲に魔法少女が失踪しているから、少しでも情報が欲しい」
「うん、わたしから話しとく。
只、忙しい娘もいるから今すぐってのは無理だけど」

ーーーーーーーー

「なかなかウエストに厳しい一日になりそうね」

日が沈み、風見野のラーメン屋で相席した杏子にほむらが言った。

「ま、今日も狩りに行くし、体が資本ってな」

ニカッと笑う杏子に、ほむらが嘆息する。
かくして、美味しいラーメンと共に話が進む。

「あそこのパスタ、
美味しかったしボリュームも一杯だったわね。彼女も………」
「………ああ、今のあいつには少し多すぎたらしいな」

ほむらの言葉に、杏子はつと横を見て言った。
ふとした無言の中、本棚に視線の向いたほむらの目が見開かれる。

「?」
「思い出した」
「何?」
「和紗ミチル、どこかで見たと思ったら」
「なんだ、知ってたのか?」
「一方的にね」
108 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/07(月) 03:09:21.24 ID:DBnCgKGX0

ーーーーーーーー

食後、ほむらと杏子の姿はネットカフェのブースにあった。
今時スマホでもいいのだが、
そんな時代から取り残された様なラーメン屋では気が引けた。

「ワルプルギスの時に来てたから、
元々魔法少女としても見た事のある面子ではあったんだけど」

言いながら、ほむらがパソコンの操作を続ける。

「御崎海香、中学生小説家か」
「ええ、それから牧カオル。
中学レベルだけど、そのつもりで探せば見つかる女子サッカー選手」
「この二人がミチルの仲間だって?」

「ええ、多分。
少なくともあの店で彼女達とつるんでいるのを見た事がある。
それから、和紗ミチルには双子の姉妹がいる筈よ。
何か、彼女に不審を覚えたんでしょう?」

「ああ………まあな」
「どっちにしろ彼女のグループには接触する必要がある。
みんなにどこまで情報を共有して協力を求めるか、考えましょう」

==============================

今回はここまでです>>102-1000
続きは折を見て。
109 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [sage saga]:2016/11/09(水) 02:44:14.78 ID:B3RAv/ZC0
すいません、差し替え入ります。

該当箇所を、以下の通り差し替えになります。

>>107

==============================
ニカッと笑う杏子に、ほむらが嘆息する。
かくして、美味しいラーメンと共に話が進む。

「私達はデザートだったけど、パスタも美味しそうだったわね。
ボリューム一杯だったから彼女も………」
「………ああ、今のあいつには少し多すぎたらしいな」

ほむらの言葉に、杏子はつと横を見て言った。
ふとした無言の中、本棚に視線の向いたほむらの目が見開かれる。
==============================

差し替えは以上です、失礼しました。
110 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 01:36:05.68 ID:t3CPdH3c0
それでは今回の投下、入ります。

>>108

==============================

ーーーーーーーー

佐倉杏子、暁美ほむらが
あすなろ市で和紗ミチルと接触していたその夕方のお話。
百江なぎさは仲のいい親戚のお姉さんである巴マミの家を出て、
一人、見慣れた帰路に就いていた。

しかし、この日は、少々いつものルートを外れつつある。
その理由は明らかだった。

「フォンデュー、フォンデュー、
あっつあつのフォンデュはいかがっすかぁー」

百江なぎさは、涎を垂らしそうになりながら、
一台の手押し屋台の後をふらふらと追跡していた。

「お嬢ちゃん」

ぴたりと止まった屋台の側で、
屋台を押していたショートボブのお姉さんがなぎさに声を掛けた。

「お嬢ちゃん、フォンデュ好きかな?
お子様用のノンアルコールのもあるけど」

風邪マスク姿のショートボブが、なぎさににっこり笑いかける。

「大好きなのですっ!」
「だって」

その言葉に、調理台にいたもう一人のお姉さんがにっこり笑う。

「じゃあ、開店祝いに一本サービス、バゲットでいい?」
「はいですっ」

ショートボブの誘いになぎさが易々と応じて、
調理台で調理が始まる。
111 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 01:41:44.73 ID:t3CPdH3c0

「はーい、お待たせー」

ふわふわ髪を三角巾に包んだお姉さんが調理台から出て来て、
わくわくと舌なめずりするなぎさにフォンデュを差し出した。

「熱いから気を付けて食べてねー………」
「有難うなのですーっ」

エプロンをたゆんと揺らしてなぎさの前にしゃがみ込んだお姉さんが、
なぎさに囁きかけながらフォンデュを渡した。

「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」

明るく挨拶を交わし、なぎさと屋台は別方向へと別れて行った。

ーーーーーーーー

屋台と別れた後、ひょこひょこ歩いていたなぎさは、
塀による人通りの死角となった一角にたどり着いていた。
そして、そのまま停車したワンボックスカーに近づいた所で、
なぎさの体が秘かに装着されていたリボンに引っ張られ、ガクンッ、と、停止した。

「ぐ、ぐっ………」

次の瞬間、空から斜めに撃ち込まれた光弾がなぎさを直撃し、
なぎさの動きが止まる。

「なぎさちゃん逃げてっ!」

聞き覚えのある叫び声を聞き、体の自由を取り戻したなぎさが
自分の体から延びるリボンを頼りに元来た道を一目散に駆け戻る。
ワンボックスカーから、黒スーツの集団がバイザーを装着してばらばら降車する。
その内の一人が、飛来した光弾を浴びてぶっ倒れ、残りの者が一斉に拳銃を抜く。

(本物の拳銃っ)

近くの低いビルの屋上から、
黒スーツと撃ち合いになった詩音千里がささっと身を伏せる。
112 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 01:46:58.29 ID:t3CPdH3c0

「何やってんだこの野郎っ!!」

怒声と共に、黒スーツの一人が吹っ飛ばされる。
辛うじて軍用ナイフを抜いた者もいたが、
ブーストで飛び込んで来た成見亜里紗の敵ではなかった。

「さあて、きっちり吐いてもらおう、かっ!?」

亜里紗がグロッキーの黒スーツの一人の胸倉を掴んでいたが、
それをどんと突き放して飛びのいた。

(電撃っ!?)

と、思った次の瞬間、びゅんと振った亜里紗の鎌が鞭を弾き飛ばす。

「逃げろっ!」

そして、亜里紗との間に割って入った浅海サキの言葉に、
黒スーツ達は這う這うの体で車に飛び乗った。

「じゃあ、あんたが話してくれるってーのっ?」

鼻から下にマスクを巻いたサキを、亜里紗が鎌を振って威嚇する。
バババッ、と、両者が交錯した。

((速さ、の能力はお互い様かっ))

荒い息を吐きながら、双方が心の中で呟く。

「ちっ!」

長さの変わった鞭を亜里紗が寸手で交わし、
続いて亜里紗が大鎌の刃と柄をぶん回してラッシュする。

「くっ、この、っ………」

鎌の柄に鞭が巻き付き、力ずくで弾ける。
サキの頬の辺りを柄が掠める。
113 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 01:52:30.97 ID:t3CPdH3c0

「な、に、やってんだぁ………
こんのっやろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!!!」
「!?」
「落ち着けっ!!」

助けられる筈のサキが叫び声を上げる。
次の瞬間には、雪崩れ込んで来たクマーの大群は、
その大半が一掃されていた。

「!?」

チリ、ン………

「教えて………」

振り返ったサキの大剣が、負けじと振るわれた豪剣と衝突する。

「あなたの名前を、何故こんな事をしているのか………
ツバキはどこに行ったのかっ!?」

刃が弾け、若葉みらいと天乃鈴音がじりっと対峙した。

ーーーーーーーー

路地裏をすすすっと移動していた宇佐木里美は、すっと足を止めた。

「操る能力はあなたのものね?」

里美の前方から現れた巴マミが、マスケットの銃口を向けて里美に問う。

「話してもらいましょうか?
何故こんな事をするのか、失踪した魔法少女はどこにいるのか?」

里美は、ふっ、と昏い笑みを浮かべて小さく両手を上げた。
114 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 01:56:47.32 ID:t3CPdH3c0

「分かりました、今、詳しくお話しします」

マミは、そう言って静々と接近して来る里美をじっと警戒する。
すぐそこまで接近していた里美とマミの距離が、
ふいっ、と急接近していた。

「!?」
「そう、そのまま銃を床に置いて両手を上げて、動かないでちょうだい」

里美は、里美の指示に従うマミからじりじりと距離を取る。

「!?」

里美が、ざっ、と飛び退いたが、
近くの曲がり角から飛び込んで来た光弾は、巴マミを直撃していた。

「!?」
「チェックメイト」

里美がハッとその意味に気付いた時には、
懐に飛び込んで来たマミが里美の顎の下にアンティーク拳銃の銃口を差し込んでいた。

「喋らないで下さい、喋ったら容赦なく撃ちます」

曲がり角から現れた詩音千里が銃口を向けて言う。

「巴さん、ここでの尋問は危険です。この手の能力には心当たりがある。
喋らせないでカガリに引き渡して口を割らせるべきです」
「分かった、わっ!」

その時、ざっ、と振り返ったマミの召喚した大量マスケットの銃弾と
飛来したミサイルが衝突、爆発した。

「えっ、えほっ!!」

周囲が煙に包まれ、気が付いた時には里美の姿は消失していた。
115 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 02:00:40.47 ID:t3CPdH3c0

ーーーーーーーー

「!?」

鈴音、亜里紗は、近くでの爆発と発煙にぴりっと反応した。

「くっ!」

そして、ドドドッと飛来した幾つもの光球から身を交わす。

「双方引き揚げよっ!!」
「何勝手言ってやがるっ!?」

他の面々同様巻覆面を装着して
牧カオルと共に現れた御崎海香の言葉に、亜里紗が激昂した。

「これ以上は警察沙汰になるって分からないかしら!?」
「スズネっ!」

海香が叫んだ時は鈴音が大跳躍で海香に斬りかかり、
亜里紗の叫びと共に、
カオルの硬化した両腕でガキインッと受け太刀された鈴音が後ろに吹っ飛ぶ。

「つーっ」
「こ、のっ………」

痛そうにぶんぶん腕を振るカオルを前に、
益々激昂する亜里紗の肩を掴んだのは鈴音だった。

「言う通り、これ以上はまずい………」

普段低体温系な後輩が目を吊り上げて言う言葉を前にしては、
亜里紗も従わざるを得ない。
116 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/10(木) 02:08:24.70 ID:t3CPdH3c0

ーーーーーーーー

「動きがあった」

風見野で、メールの着信を確認したほむらが鋭く言った。

「来やがったか誘拐犯っ!」
「戻りましょう、見滝原に」

吐き捨てる様に言う杏子に、ほむらが促した。

==============================

今回はここまでです>>110-1000
続きは折を見て。
117 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 02:37:59.98 ID:TB46B0gp0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>116

ーーーーーーーー

「つまり、なぎさを囮に使った、って事か?」

マミルームで、大まかな説明を聞いた杏子が言った。

「結果としてはそうなるわね。

出来る事なら失踪事件が解明されるまで、少なくとも事件の集中時間帯は
なぎさちゃんは私の手元で保護しておきたかったんだけど、
急に事情が変わって一度親元に帰さざるを得なくなった。

だから、本当は念のためと言う事で、
追跡用のリボンを付けて近場にいたホオズキの娘達にも
協力を要請してたんだけど………」

「そうしたら、本当に本命が食い付いて来た、って言う事?」

ほむらの言葉に、マミが頷いた。

「今までの例から帰宅後は大丈夫だと思うけど、
念のため後から合流した鹿目さんと織莉子さんにお願いして
なぎさちゃんを家まで送って周辺警備をしてもらってる」

「これで色々はっきりしたな」
「ええ、敵は魔法少女と武装した人間のグループ。
そして、狙われているのも魔法少女と見ていい」

杏子の言葉にほむらが続けた。
118 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 02:43:29.41 ID:TB46B0gp0

「で? 結局捕虜の一人も確保出来なかった訳?」

腕組みして聞いていた日向華々莉が片目を開いて言った。

「向こうも集団、かなりの手練れでもあったわ。
かなり派手に暴れたから、あれから本当に警察も出動してた」
「ああーっ、もうっ。
そんなの私がいたらいっくらでもごまかし効かせたのにっ」
「仕方ないよ、間に合う場所じゃなかったんだから」

マミの言葉に華々莉が吐き捨てる様に言い、茉莉が宥めた。

「せめて一人でもとっ捕まえてたら
アジトでもなんでも吐かせられたのに、これじゃあ手がかりなし?」
「気になる事がある」

苛立ちを隠さない華々莉にほむらが言った。

「もしかしたら、あすなろに何かがあるのかも知れない」
「あすなろ市? 今日あなた達が行ってた?」

マミの質問にほむらが頷いた。

「証拠、って程でもないんだけどな。
あすなろの魔法少女で和紗ミチル、
今日そいつと接触したんだけど、どうも様子がおかしかった」

杏子が説明する。
119 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 02:48:59.08 ID:TB46B0gp0

「オーケー、その和紗ミチルをとっ捕まえて吐かせる、居場所どこ?」
「分からん」

杏子の言葉と共に、
チャクラムを振り上げた華々莉を茉莉がドウドウドウと押さえる。

「だけど、手がかりはあるから、
少し穏便に話をしていただけないかしら?」

腕組みをして見ていたほむらが、ファサァと黒髪を掻き上げて片目を開いた。

ーーーーーーーー

会合は、マミルームからほおずき市内の夜のファミレスに移っていた。

「御崎海香、牧カオル、ね」

既に為されたほむらの説明に、マミが呟く。

「似てる………」
「うん、顔隠してたから確定とは言えないけど」

スマホに映し出された海香、カオルの顔に鈴音と亜里紗が言う。

「いらっしゃいませ」

ほむらが、聞こえて来た店員の声にちろりと視線を向ける。

「当たりっぽいね」

店に入ってほむら達と相席し、注文を終えた日向華々莉が言った。

「ほむらの言った通り、御崎海香御殿はちょっと調べればすぐ分かる」
「中学生でもあんな豪邸に住んでる人気小説家、当然目立つわよね」

華々莉の言葉にマミが言った。
120 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 02:54:55.23 ID:TB46B0gp0

「取り敢えず交番押さえて、
適当な理由つけてご近所の事情通から情報聞き出した。

御殿に住んでるのは御崎海香、牧カオル、和紗ミチル、昴かずみ。
ミチルとかずみは、家庭の事情はあるみたいだけど恐らくは一卵性の双生児。
この四人は親の海外勤務だかで中学生だけで共同生活送ってる。

直接住んでるのはこの四人だけだけど、
その友人含めて十人ぐらいが常時たむろってるって話、
みんな中学生ぐらい、男っ気なしでね」

日向華々莉がメモを確認して説明する。

「それが、魔法少女のグループ?」
「ミチル本人の発言とも符合しそうね」

マミの言葉をほむらが肯定する。

「それで、そのお屋敷だけど、もぬけの殻だった」
「なんですって?」

華々莉の言葉にマミが反応した。

「一人で確認したの?」
「警察使ってね。盗聴器つけたお巡りさんにお屋敷に行ってもらって、
適当な理由つけて聞き込みしてもらったんだけど、結果は留守。
出て来たらやり様もあったんだけどね」

「正直、留守で助かったわ。
相手の実力は相当なものよ、人数もいる。
あなたの能力があったとしても、
いつだって相手より優位な立場にいると思いこむのは禁物よ」
「………へーへー」
「逃げたか」

華々莉の報告とマミのお説教を聞きながら、杏子がぎりっと歯噛みする。
121 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 02:58:22.62 ID:TB46B0gp0

「それに、セキュリティが厳しいのも確か。
留守宅への侵入となるとちょっと骨よ。
窓ガラス一枚割れても警備会社に連絡が行く」
「私ならブービートラップを仕掛ける」

華々莉の言葉にほむらが続けた。

「爆弾を仕掛けるまでもない。
ウェブカメラ一つでも、不法侵入で通報されたら言い訳が効かない」
「そういう事」

ほむらの言葉に華々莉が天を仰ぐ。

「それだけのお屋敷だと………
相手も中学生、張り込んでたら何れ戻って来ないかしら?」
「根競べね」

言葉を交わすマミとほむらに、杏子が鋭い視線を向けた。

「忘れてないか? さやかの事。
向こうの意図はさっぱり分からない、十人じゃ効かない魔法少女が行方不明、
悠長な事言ってらんねぇぞ」
「一人でも戻って来たら、洗いざらい吐かせてやるんだけど、
ツバキをどうしたのか、返答次第では………」

杏子の言葉に、華々莉がぎりっと歯噛みした。

「戻りました」

そんな中、美国織莉子と鹿目まどかが玄関からリビングへと姿を現す。

「ご苦労様。何か変わった事は?」
「いえ、特には」
「今までのパターンや分かった手口から言って、夜の自宅が狙われる可能性は低いわね。
むしろ自宅警備の帰りの方が危ないから二人で戻って来てもらったけど」

マミと織莉子が言葉を交わし、
顔を見合わせたまどかと織莉子がふふっウェヒヒと小さく笑みを交わすのを
ほむらは涼やかな眼差しで眺めていた。
122 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 03:01:40.39 ID:TB46B0gp0

「日向カガリ」

言葉を続けたのはほむらだった。

「あなたの能力の事、詳しく聞かせて欲しい」
「ん?」
「私に少し、考えがある。
リスキーなやり方になるけど、当たれば大きい」

「勿体ぶらないでくれる?
確実にツバキを取り戻せる方法がある、って言うんだったら、
別に魔法少女でも警察でもガチバトルしたってかまわない」
「カガリッ」
「………若干、近いわね」

華々莉を制する茉莉の前で、ほむらはそう口にした。

「織莉子さん、あなたにも知恵を借りたい」
「私に出来る事なら。私も、一刻も早くキリカを取り戻したい」

ーーーーーーーー

「美国織莉子、まどかがあの人とコンビで行動ってちょっと珍しかったわね」

マミルームからの帰路、ほむらがまどかに話しかけた。

「うん。なぎさちゃんが襲われて、そこにいたマミさんやホオズキの娘達が
犯人を捜索するって事で、ちょうど間に合って手が空いたのがわたしたちだったから」
「そう」

「うん。だから、最初ちょっと近づき難かったけど、
織莉子さんの方から気を使ってくれたり、優しい人だと思う。
間近で見ると、改めて綺麗で素敵な人だったし」
「そう」

「………でも、やっぱり寂しそうだった。キリカさんがいなくて。
わたしも、もう何日もさやかちゃんがいなくて、
さやかちゃん、どうしてるんだろう? 大丈夫、だよね」
「分からない」

泣かせたくない、と、思いながらもほむらの理性は安直を拒んでいた。
123 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/15(火) 03:05:27.46 ID:TB46B0gp0

「魔法少女とそれ以外のグループが何人もの魔法少女を生け捕りにしておいて、
それで何をやりたいのかがさっぱり分からない。

………少しだけ、時間を頂戴。今回の襲撃で敵は尻尾を出した、
それを手繰る策を考えた。何としてでも引っ張り出して、
美樹さやか、他の魔法少女達の事も解明してみせる」

「うん、ほむらちゃんがそう言うんなら」

痛々しい、それでも精一杯の笑みが、ほむらの胸に響く。

「それじゃあ、まどか」
「うん、ほむらちゃんも気を付けて」

挨拶を交わし、まどかが自宅に入るのを見届けてほむらは歩き出す。
当面の対策としては、帰宅まで何人たりとも物理的に近づけない、
それしかなさそうだ。

==============================

今回はここまでです>>117-1000
続きは折を見て。
124 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 02:58:54.24 ID:gLShNy640
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>123

ーーーーーーーー

「それで、百江なぎさの確保には失敗か」

「ホテル・ニューアスナロ」スイートルームで、
レディリー=タンクルロードが確認する。

「見滝原、ホオズキの魔法少女が本格的に動き出してる。
ミチルにも接触して来たってなると、聖団の仕業だと割れるのも時間の問題だ」
「ミチルに接近して来たのは風見野の佐倉杏子か?」

浅海サキの言葉に、レディリーが聞き返す。

「うん、佐倉杏子ちゃんに、それから見滝原の暁美ほむら。
杏子ちゃんとは前に会った事があるから」

ミチルが応じた。

「元々、佐倉杏子は暁美ほむら初め巴マミのチームと親しい関係にある。
それは調べがついている」

レディリーが言う。

「今、時間の問題と言ったけど、もう既に確定しているでしょうね」
「あたし達がこうやって夜逃げして来てる時点でな」

御崎海香の言葉に、牧カオルが続いた。

「巴マミ、詩音千里のチームと交戦、百江なぎさの確保に失敗して、
そしてミチルに接触して来た事が繋がったから、
即座にデータを持ってこっちに移動して来たけど」
「賢明な判断ね」

海香の言葉に、連絡を受けて受け容れを即断したレディリーが応じる。
125 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:04:15.25 ID:gLShNy640

「根本的な事を確認したい」

浅海サキが言う。

「当たり前だが、私達がやっている事は犯罪だ、
法に触れている、相手にも家族もいる、
魔法少女の仁義で言っても袋叩きにされても文句は言えない」
「そんな事、させる訳ないだろっ」

サキの言葉に若葉みらいが割り込む。

「本当に、それだけの価値はあるのか?」
「それを確答出来るなら、こんな手段はとっていない」

サキの質問に応じたのは、同じ聖団仲間の聖カンナだった。

「根拠と言えるのはレディリーの占星術と私のコネクト、
しかも、その技術でもはっきり結果が出ている訳じゃない、
むしろ、理論的には異常なし、と結論付けるのが当たり前の勘頼み」
「それでも、何かがある、んだよね?」

カンナの言葉に、和紗ミチルが応じる。

「ああ、私はそれを感じる。特に、かずみのジェムからだ。
かずみにコネクトする反応には何か、違和感とも言えない違和感がある。
胸騒ぎ、とでも言うべきか」

要領を得ない説明に、集結した聖団のメンバーも言葉が見つからない。

「私の占星術でも同じ反応よ。理論的には異常なし、むしろ良好。
だけど、私に告げる何かがある。その鍵になるのが昴かずみのソウルジェム。
実力者揃いのマギカ集団が本格的に動き出したとなると、猶予はないわね」
「後、どれぐらい必要なのかしら?」

レディリーの言葉に海香が質問した。
126 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:10:04.16 ID:gLShNy640

「本来ならあの四人、百江なぎさに加えて日向カガリ、暁美ほむら、鹿目まどか。
この四人はぜひとも確保したかった。

だけど、日向カガリは美琴ツバキ、日向マツリとのセットが多くて手出しが難しい上に、
カンナとこちらの調べでは、聖団の乙女の力をもってしても面倒な相手。

暁美ほむらと鹿目まどかは対の存在、引き離す事は危険過ぎると私の占いが告げている。
現実的にも、仲間との行動が多い上に、
暁美ほむらの能力も手出しが難しい類のものらしい」

「じゃあ、無理なのか?」
「いや」

サキの言葉をレディリーが否定する。

「元々、欲を言えば切りがない事でもあるわ。
リストアップした中からピックアップした対象者となる魔法少女。
範囲を広げて調べればまだまだ幾らでも出て来る筈よ。

鹿目まどかは、対象者とはむしろ正反対の資質の反応だけど、
だからこそ、本来は要として確保したかった。

だけど、これだけ集まれば、決行の見込みは立った。
何より向こうの動きに猶予が無い。取り掛かる」

「そういう事だ」

レディリーの言葉に、カンナが続いた。

「とにかく、計画を実行する。話はそれからだ。
それでどんな結果が出るか。
その結果次第では、総員で土下座する事になるが」
「あの様子だと、それで生きて帰れるかね」

カオルがややおどけた口調で言うが、懸念は真面目なものだった。

「元々こちらで持ち込んだ話、お金で片が付く事なら幾らでも
ジュラルミンケースで往復ビンタしてあげる」
「いいだろう」

レディリーの言葉にサキが続く。
127 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:16:12.44 ID:gLShNy640

「かずみに対する懸念がある、カンナがそういうのなら私は信じる」

若葉みらいがすっと視線を向ける中、サキが言った。

「他に方法が無いならその方法で最善を尽くす。それだけだ。
それが世の中の罪に当たると言うなら、私はそれを背負う」
「ボクも背負うよ、サキ」
「そういう事ね」

同調したみらいの後で、海香が言う。

「現実問題として、もう後戻りは出来ない。
巴マミ、美琴ツバキのグループはすぐにでも私達を狙って来るでしょう。
その時に手土産が出来るか土下座するか。
何よりも、かずみへの懸念が一欠片でもあると言うなら、
私達は誰を敵に回しても払拭する」

「当然だ」

海香の言葉に、カオルが力強く頷いた。

「ありがとう、みんな」

かずみが上ずった声で言い、顔を上げたかずみの頭を
ミチルがポンとぽんと撫でた。
128 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:19:49.94 ID:gLShNy640

 ×     ×

「暁美さん、今日もお休みですわね」

学校のお昼休み、
まどかとお弁当を共にしていた志筑仁美が言った。

「うん、お家の都合で何日か留守にするって」
「早乙女先生もそうおっしゃっていましたけど」

まどかが説明するが、仁美はどこか不安げだ。

「暁美さんもお休み………寂しい、ですわ」

ストレートには口に出さない。それだけに精神的に厳しい。
一番明るいムードメーカーの物言わぬ失踪は、
それだけの空白を齎していた。

ーーーーーーーー

放課後、まどかは学校の玄関でマミと合流していた。
事態が見えて来た今、なりふり構ってはいられない。
まどかにとってマミは優しい先輩だが、
珍しく一緒に下校しているとさやかとほむらの不在が身に染みる。

「メール、届いたわよね?」
「はい、ほむらちゃん今からマミさんのお部屋で合流したいって」
「何か、分かったのね」
129 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:23:27.12 ID:gLShNy640

ーーーーーーーー

マミルームには、マミ、織莉子、椿・遥香チームの全員、
失踪が確認された者以外の全員が集結していた。
ほむらが、マミのチームと織莉子、ホオズキの面々に資料を配る。

「御崎海香、牧カオル、和紗ミチル、昴かずみ。
この四人の最近の携帯電話の位置情報よ」

ほむらの説明を聞きながら、一同は地図資料に目を通した。

「百江なぎさちゃんが襲撃されたその日の位置情報、
四人が集まっていたセルのメイン施設ホテルニューアスナロ。
そこで聞き込みをかけたらビンゴだったよ」

日向華々莉が説明を続けた。

「四人とその仲間はホテルのスイートに泊まり込んでる。
当日の部屋の借主はレディリー=タンクルロード。
科学の学園都市の大物経営者。
彼女も随分前から借りてたこの部屋を次の日に引き払ってる」
「………げっ、何これ?」

華々莉の説明と共に、レディリーの資料を見た成見亜里紗が言った。

「科学の学園都市、何でもありね………」
「表向きだけでもこれよ、まだまだなんか出て来るんじゃないの?」

詩音千里の言葉に、華々莉が言った。
130 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:27:27.33 ID:gLShNy640

「こんなもの、どうやって手に入れたのよ」
「ハッキングが出来たら一番簡単だったけど、
それが無理だったから、人間の方をハッキングさせてもらったわ。
日向カガリの能力で警察を動かして、関係する情報を引き出してもらった」

マミの疑問にほむらが応じる。

ーーーーーーーー

(回想)

「何だね、君達は? ………」

京都府警管内のとある警察署署長室で、部屋の主が不意の訪問者に声を掛ける。
フードを被ったままのジャンパー姿の人物とスーツ姿の女性。
それが、面会予定もノックも無しに堂々と立ち入って来たのだから、
署長から見て不審人物以外の何物でもない。

「お静かに」

日向華々莉がジャンパーのフードを少しずらして声を発すると、
署長がデスクの上のスイッチに伸ばした手が止まる。

「これより警察庁長官及び京都府警察本部本部長からの極秘指令を伝えます。
従って、他の者の出入りは禁止していただきたい」

華々莉の言葉に、署長が姿勢を正した。

「改めまして、わたくし内閣総理大臣特別秘密補佐官秘書を務める加賀爪、と申します。
これより、わたくしの上司の話を聞いていただきます。
彼女の話には一片の嘘も間違いも無い、と言う事を最初にご理解下さい」

華々莉の言葉と共に、彼女に手で示されたスーツ姿の女が動き出す。
署長の前に移動した彼女が身に着けたリクルート風のスーツは全体に半サイズ程小さいらしい。
ブラウスのボタンを上から三つ開放しながら、
膝上四捨五入二十センチのタイトスカートを合わせたスーツをきりっと着こなしている。
131 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:31:07.70 ID:gLShNy640

「初めまして。わたくし、
内閣総理大臣特別秘密補佐官を務めます織田みくり、と申します。
京都府警察本部長は警察庁長官及び内閣総理大臣の承認を得て、
貴方に対して私の指示には絶対に従うべし、
全ての責任は本部長、引いては総理大臣が負う、との命令を下しました。
その事をまずご理解下さい」

髪をアップに纏め、赤縁眼鏡を装着した
スーツ姿の美国織莉子が宣告と共に優美に一礼する。

「あなたには、この警察署に設置された廃ビル爆破事件捜査本部、
その中からあなたを班長、
警部一名を主任とした捜査班を一つ編成して引き抜いていただきます。
捜査班は、口が堅く手堅い人間を揃えていただきたい」
「お言葉ですが補佐官」

織莉子の唐突過ぎる指示に、署長は真面目に応じる。

「私にその様な権限はありません」
「しかし、経験と人望はあります。
京都府警に於いてノンキャリアの刑事人脈を実質的に掌握しているのはあなた、
その事を把握した上での指示です」

そう言って、織莉子はデスクに一台の携帯電話を置く。

「この電話に一番最初に登録された番号、アドレスは府警本部長に直結していると考えて下さい。
あなたからの要請があれば、
府警本部長以下が必要な体裁を整え、指示命令を下す体裁になっています。
あなたが選んだ捜査班のメンバーを伝えたならば、
そのメンバーには名古屋のここ、このホテルの部屋に極秘に集合する様に出張命令が下ります。
もちろん、あなたも含めてです」

織莉子が、携帯電話を操作し画面を示しながら告げる。
132 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:34:53.87 ID:gLShNy640

「名古屋、ですか」

「ええ、そこであなた達には、
私の指示に従って独自の捜査、と言うより調査を行っていただきます。
はっきり言って爆破事件の捜査とは全く関係はありません。
公式には、上が独自に仕入れたネタの裏取りが空振りで終わった、と言う結果になりますが、
人事評価の上では十分な配慮が為される様に取り計らいます。
元々この事件の捜査は公安主導で刑事警察は初動の足場固めに限定されるものです。
公安にも、警備局を通じて念のため無駄足を踏んでもらっているだけだと根回しをしておきます」

「………補佐官」
「何でしょうか?」
「そもそも、爆破事件自体が………」
「元々完全に廃墟だった廃ビルが死傷者を出す事も無く
軍用火薬を用いて綺麗に瓦礫の山になりましたね」

赤縁眼鏡を通した織莉子の笑みは、実に魅力的な女性の微笑みだった。

「テロリストやシンジケートと言った枠では収まらない、
世界存亡の危機が迫っています。
今は、と言うより恐らく永久に詳しい説明すらできませんが、
今回の事はそれを回避するための超法規的措置です。

そのために私が絶対的な権限を行使すると言う事に就いては、
日本はもちろんアメリカ、イギリス、EU、中国ロシアに至る迄、
各国の政府代表が承認している。

こういう事は言いたくありませんが、
少なくともあなたと府警本部長は完全にCIA、DIAに掌握されている。
私の一言であなた達の免職はもちろん刑務所、その上すらあり得る、
もちろん真実が何であれ関係なく、です。
それだけの事態である事をご理解下さい」

「………了解しました」

「敢えて言います、極秘捜査班の仕事は、
私の指示に従い必要な情報を収集する、それだけです。
まともな説明も何も期待しないで下さい。
知る事それ自体に大変な危険の伴う事です」
133 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:38:43.88 ID:gLShNy640

「厳しい、ですな」

「はい。そのために、
府警本部長と裁判所は完全にこちらの、貴方の支配下に入ります。

適当な名目で主任警部が令状請求を行えば、
裁判官がそれをフリーパスで通す様に手配します。
同じく、京都府警本部の鑑識も科学捜査研究所も、
あなたがこの携帯を通じて要請を出せば、
適当な名目での依頼でもただちに通る様に手配が行われます。

有体に言いましょう、形さえ整っていれば申請書、報告書は
落書きでもでっち上げでも構わない。
形式上は完全に犯罪ですが、これは超法規的措置です。
最悪でも全責任は総理が負う、あなた達が罪に問われる事は無い事を保障します」

そう言って、織莉子は膨らんだ茶封筒をデスクに置く。

「捜査費用の一部です。名古屋で追加をお渡しします。
金で買える時間と情報には糸目をつけないで下さい。
経費に関しては書類も領収書も不要、完全に自由裁量です。
調査が終わり次第、全員に相応の特別手当が支給されます。
これも、書類には残らない現金です。
もう少し詳しい事は、名古屋で集合した時点でお話しします」

ーーーーーーーー

(回想修了)

「何故に京都?」
「彼女、カガリさんの能力で全てをカバーするのは難しいと言う事よ。
だからある程度はトップダウンの極秘捜査と言う形式をとったけど、
上からの命令でやらされてるだけだと、
地元で対象者が知り合いだと変に勘ぐられるリスクが大きくなる。
それはなるべく避けたかったと言う事」

ほむらの説明を受けて、杏子の当然の疑問に織莉子が付け加えた。
134 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:42:37.34 ID:gLShNy640

「その、捜査のための費用はどこから?」
「少なくとも紛失して良心が痛む類のお金でない事だけは保障するわ」
「警察関係を押さえていく内に、
帳簿上は既に支出されてて幹部の手元で自由裁量な現金が結構あったからね、
その辺もまとめて使わせてもらったけど」

詩音千里の問いにほむらがファサァと黒髪をかき上げ、華々莉が補足するのを
成見亜里紗は笑みを引きつらせながら聞いていた。

「それで、四人組の携帯の位置情報を突破口にホテルを割り出して、
ホテルと御崎海香邸、その周辺の防犯カメラの録画データを集めるだけ集めた」
「それも京都府警に?」

詩音千里の問いに、説明していたほむらが頷いた。

「こっちの警察にも私が根回ししたけどね。
所轄の生活安全課の課長押さえて、特に公共の防犯カメラのデータは誰が持ってるか、
関係する情報を出させて、スムーズに押収出来る様に根回しもしてもらった。
それも、署長と県警本部の本部長と生活安全部長からの重要極秘命令って事にしてね」

華々莉が自分達の動かした経緯を報告する。

「押収した録画データは、京都府警察本部の科学捜査研究所に解析させた」
「それって、あのぼやけた画像をはっきりさせる技術?」
「そう。それに、別々の映像の中のどれが同じ人物であるかも可能な限り特定した」

千里の問いに、説明を続けていたほむらが応じる。

「それで、四人組と常時つるんでいる残りのメンバーのおおよその顔写真も作成出来た。
その写真を使ってあすなろ市内の中学校の職員室を片っ端から当たって、
メンバーを直接撮影した顔写真と個人情報を引き出したから、
その残りのメンバーに関しても携帯電話の位置情報を押収出来た」

「その辺の事は、本人らに連絡がいかない様に
私達が直接学校と掛け合った上で忘れていただいたけどね。
で、身元が割れた所で、全員分の携帯電話の位置情報もgetって事で」

「やりたい放題だな」
「もう、いっそ世界征服でもしちゃえば?」

ほむらと華々莉の説明に、杏子と亜里紗が呆れ返った様に言った。
135 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/11/21(月) 03:46:38.44 ID:gLShNy640

「それじゃあ、その携帯電話の位置情報から
彼女達の立ち回り先を?」
「大体合ってる」

マミの言葉にほむらが言った。

「だけど、普通の立ち回り先じゃない。
彼女達は百江なぎさの事件以降自宅や学校からは姿を消している。
そしてこれ」

ほむらが示したのは、携帯電話の位置情報だった。

「旧あすなろ工業団地の一角。
ニューアスナロを出た後、グループの位置情報がここに集中してる。
それ以前からもしょっちゅうこの辺りに位置情報が記録されてる」
「立ち寄ってる、ってレベルじゃないわね」

資料を読み返したマミが言う。

「位置情報の集中箇所、他はまだしも、これだけは理由が本当によく分からない。
場所柄魔獣退治なのかも知れないけど、
それにしては訪れている頻度が以前からおかしい」

華々莉が補足した。

「この地域のコンビニ、スーパー、ドラッグストアの防犯カメラの記録からも、
メンバーがごく最近立ち寄った映像が幾つも発見されてる。
美樹さやかも他の魔法少女も、失踪してから時間が経過している。
手段や手がかりを躊躇している余裕はないわ」

ほむらの宣言に、他の面々も強く頷いた。

==============================

今回はここまでです>>124-1000
続きは折を見て。
136 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/12/07(水) 03:28:40.83 ID:z1Lpz1fr0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>135

ーーーーーーーー

巴マミ
暁美ほむら
鹿目まどか
美国織莉子
佐倉杏子
詩音千里
成見亜里紗
日向茉莉
日向華々莉

以上のチームが、旧あすなろ工業団地の一角を訪れていた。

「この辺りね」

掌にソウルジェムを乗せた暁美ほむらが言う。

「ええ、確かに何か反応してる。魔獣ではないけど、何かがある」

同様に、掌のソウルジェムを見つめてマミが言った。
頷き合い、めいめい魔法少女に変身して、詩音千里がざっと前に出た。
千里は、一見すると無人の廃工場の敷地に魔法拳銃を向け、発砲する。
発砲された魔法弾が、途中でオーロラと化して目の前に広がった。
137 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/12/07(水) 03:35:27.44 ID:z1Lpz1fr0

「建物………」

目の前に現れた物体を見て、マミが呟く様に言う。

「何か、こっちの認識をごまかしてたか」
「それとも、異次元空間に存在していたか………」

華々莉とほむらが、めいめい推測を述べる。
一同は、周囲に注意を払いながら、
目の前に現れた結構な大きさの洋館風の建物に接近する。

「どう?」
「ドアは開いてる」

背後でティロ・フィナーレを抱えて尋ねるマミに
玄関ドアを確認していたほむらが応じた。

ーーーーーーーー

「薄暗いなぁ」

成見亜里紗が呟く。

洋館に足を踏み入れた面々は、
そのまま、洋館の中のだだっ広いホールをうろついていた。
壁には燭台が並び、蝋燭が点灯されている。

「蝋燭って古風だけど、誰かが火をつけたって事よね?」
「誰かを待っているのか、歓迎されたのか」

ほむらの言葉に、マミが真剣な表情で応じた。

「あれ?」
「どうしたのまどか?」

ほむらが問い返す。まどかの視線は、前方の床に向けられていた。
138 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/12/07(水) 03:40:50.98 ID:z1Lpz1fr0

「これって………」
「待って、まどか」

言って、ほむらが盾から検知器を取り出す。

「………特に反応は無いわね。
ブービートラップとしてはポピュラーな手法だけど」
「じゃあ、大丈夫なの?」
「恐らく」

ほむらとまどかが言葉を交わし、まどかが床から持ち上げたのは、
ミニチュアの座椅子に鎮座した小さな熊のぬいぐるみだった。

「可愛い」
「テディベアね」
「あれ? これ」

こんな状況にも関わらず、
椅子ごと持ち上げたぬいぐるみに目線を合わせるまどかの顔が綻ぶ。
ほむらがその笑顔を堪能している間、
マミがぬいぐるみの素性に当たりを付け、杏子が何かに気付いた。

「鬘に、リボン?」

確かに、ぬいぐるみは人間、それも女の子らしきものを模した鬘を被っており、
その鬘には赤いリボンが結ばれていた。

「あら?」

そして、巴マミが視線を別に向ける。

「あっちにもあるみたい」

マミの言葉に、少し離れた場所に移動すると、
確かにそこにも同様のぬいぐるみが置かれていた。
ほむらがふとそのぬいぐるみを持ち上げる。
基本、今現在もまどかが愛でているぬいぐるみと同じものだが、
黒髪ロングの鬘を被っていた。
139 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/12/07(水) 03:46:05.33 ID:z1Lpz1fr0

「おい」

亜里紗が言った。

「なんか、結構あっちこっちにあるぞ」
「ええ、あっちにも」

亜里紗の言葉に、マミは一番近い別のぬいぐるみに移動する。
そして、巻髪の鬘を被ったぬいぐるみを持ち上げる。

「これ、なんかあんのか?」
「確かめてみましょう」

杏子の言葉に千里が応じて、
一同は幾つもおかれているぬいぐるみを確認するためホールに散る。

「えっ?」

ぬいぐるみの一つを持ち上げていた千里が何かに気付く。

「!?離れてっ!!」

マミが叫んだ時には、床がカッと光を放っていた。
それも、全面的にではなく、何かの模様に合わせるかの様に発光している。
それと共に、天井にもぼっ、ぼっと光が点灯し始めた。

「「やばっ!」」
「まどかっ!!」

亜里紗、杏子が叫び、ほむらがまどかを目で追う。
とにかく、一同ぬいぐるみを放り出して壁際へと走る。

「なん、だこりゃ?」
「なんだか分からないけど………」

亜里紗が呻き、杏子が呟きながら槍を手にすっと前に出る。

「スズネちゃん」

茉莉の声を背に、鈴音も光る床に向けて剣を構える。
140 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/12/07(水) 03:49:51.22 ID:z1Lpz1fr0

「どう、マツリ?」
「聞こえる、嫌な、まがまがしいものが」
「そうね、それに、これは………魔力だわ、それも巨大で邪悪な」

華々莉の言葉に茉莉が答え、マミが続いた。

「ティロ・フィナーレッ!!」

まず、床から巨大な噴煙が上がり、
その中心に向けてマミが一撃を加えた。

「よけてっ!!」

マミの叫びと共に一同が左右に分かれ、
一同がいた場所に何かが飛び込んできた。

「ひっ!」
「くっ!!」

ほむらが、すくみ上ったまどかの前に立った。

「なん、だこりゃ?」
「地獄の番犬ケルベロス」

杏子の問いに応じたのは、マミだった。

「こうやってみると、普通にグロテスクね………」

目の前の、巨大な三頭犬を見据えてほむらが言う。

「こ、のおっ!!」
「危ないっ!!」

ぶうんっ、と振るった亜里紗の鎌はケルベロスにひらりと交わされ、
大ジャンプから亜里紗の背後に回った大犬に
千里がドンドンドンッと発砲する。

「デカイ癖に身軽ですばしっこいのかよっ!!」

千里の発砲が交わさるのを見て亜里紗が叫んだ。
141 :幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc [saga]:2016/12/07(水) 03:53:28.10 ID:z1Lpz1fr0

「ほむ、らちゃん………」
「!?チッ!!」

まどかの呻きにほむらが反応し、
光る床の中心にほむらがマグナムライフルを連射するが、
床から響く不気味な音はやまない。

「魔法陣、体系的に魔術を使える人間が絡んでる」

その床を見ていた織莉子が言った。
黒い、悪臭の噴煙が上がった。

「おおおおおっ!!!」

茉莉の側で、鈴音が豪剣を振るい急接近していた巨大な蛇をぶった斬る。

「どけ、馬鹿っ!!!」

そこに華々莉が割り込んでバリアを張り、
噴射された毒液をバリアが防御する。

「嘘っ!?」

茉莉が言葉に出し、鈴音の表情にも驚きが浮かぶ。
空中で、幾つもの水晶球が音を立てて激突する。

「ヒュドラよっ」

美国織莉子が叫ぶ。

「ギリシャ神話に出て来る沼蛇の怪物。
あの首は、斬った切り口から一本が二本に分裂するっ」
「ああ、見ての通りだねっ」

織莉子の言葉に華々莉が応じる。

そして、華々莉が蛇と睨み合いになり、
蛇が別の蛇の胴体に噛み付いた。
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