見滝原に微笑む刹那(まど☆マギ×ネギま!)

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

12 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:08:20.23 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「どうしてここにいるのかしら?」

後輩にたった今言われた事を真正面から無視されては、
マミの声に怒りがこもるのも無理からぬ所だった。
さやかもまどかも、それはよく分かる。

「い、いや、その、あっちに敵がいた、と言いますか………」
「そう。じゃあ、ここを動かないで」

マミはすっぱり会話を切り上げ、正面を見る。

「見て、あれが魔女よ。
さっき、あなた達を襲っていたのは使い魔。
魔女を倒せば使い魔も消える」
「倒す、って………」

三人がいるのは、得体の知れない空間の中で、
ホールの中二階に繋がる通路、
そのホール入口周辺、の様な場所だった。
そして、そのホールのど真ん中に巨大な怪物がいる。
その形状は辛うじて蝶々と何か、と呼べる意味不明な代物で、
少なくとも一人の少女が「倒せる」相手には見えない。

「下がってて」

マスケット銃で床を突き、二人の後輩をバリアで守ったマミは、
そのまま人間離れした跳躍でホールの真ん中に降下した。

(いる………)


真正面に薔薇園の魔女、周囲に使い魔、それはいい。
問題は、
13 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:11:45.09 ID:9L/CZpKL0

(もう一人、いる)

マミは、その事を察知していた。
魔女や使い魔ではない、恐らく自分達と近い存在。
それがこの近く、このホール内にいる筈だが、
現時点では視界に入らない、敵か、味方か?

マミは少々の苛立ちを交えて小さな使い魔を踏み潰し、
憤激した魔女の椅子アタックを交わし砲火を交えて
戦いの火蓋は気って落とされた。
使い捨てのマスケットが次々と火を噴き、
マミにとっては順当に魔女を追い込んでいく。

「ああっ!!」

美樹さやかが叫び声を上げた。
状況的に言って自分達を助けてくれた、
そして、魔女と言うらしい化け物相手にも
不思議な技で丁々発止対抗していた謎の先輩。

そんな先輩に使い魔なるものが群がり、
その使い魔の群れはぶっとい蔓と化して先輩をぶうんと持ち上げ、
ホールの壁に叩き付けていた。

実の所、これもマミにとっては想定内の出来事だったが、
次の瞬間に異変は起きた。

「?」

自分を締め付ける力が緩み、マミは訝しむ。
見ると、蔓は根本から切断され、
そのままバラバラの使い魔の死体と化して消滅していった。
14 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:14:48.68 ID:9L/CZpKL0

(見つけた)

マミが、心の中でひとりごちる。

どちらかと言うと小柄な少女、
背負っている筈が背負われている様な馬鹿でかい刀、
見る人が見れば野太刀と分かる代物を携えている事が、
彼女をより小柄に見せる。

そんな少女が不意にマミの視界に現れ、魔女に一撃加えていた。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!」

距離を取った魔女に瞬時に追いつき、
野太刀の一撃で巨大な魔女を揺るがす。
少なくとも、人間業ではない。

「凄い………」

最初から想像の埒外とは言え、更なる展開に
まどかもさやかも見入っていた。
小柄な少女の背丈程もある巨大な刀。
その一振り一振りが又、
常識外れな衝撃を放って巨大な魔女をぶん殴っている。

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」

舞い散る桜華と共に、強烈な斬撃が魔女を押す。
そして、魔女がホール内の一点に追い込まれている事をマミは見逃さない。
果たして、野太刀少女が大きく飛び退いたそのすぐ後に、
魔女は地面から噴出したリボンによって雁字搦めに拘束されていた。
15 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:18:29.30 ID:9L/CZpKL0

ーーーーーーーー

「ティロ・フィナーレッ!!」
「やった………」

到底抱え切れていない巨大な抱え筒が魔女とやらに致命傷を与えるのを見て、
美樹さやかは脱力しながら呟いた。

「さやかちゃんっ」

そして、親友鹿目まどかの声に、さやかは我に返る。

通路にいるまどかとさやかに、ホール側からざしざしと接近して来る者がいる。
それは、たった今までホールにいた筈の、
背丈程もある野太刀を担いだ一人の少女。

さやかと同年代にも思える華奢な少女がそんな野太刀を正確に振るっていた、
その事からして尋常ではないのだが、
今、さやかが感じている彼女の佇まいは戦場の軍人か侍か。
ピン、と張り詰めたものがさやかを震わせる。
こうして見ると色白で端正な顔立ちである事が、
より鋭く、清冽なイメージをさやか達に突き付ける。

まどかとさやかが息を飲んでいる間に、
バリアの境界真ん前で足音は止まった。
16 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:22:10.91 ID:9L/CZpKL0

「………ケガはありませんか?」

さやかは、目をぱちくりさせてその問いを聞いていた。

「………あ、あのっ………
大丈夫です、有難うございましたっ!!」

ぱたん、と、体を折り、まどかは叫んでいた。

「………良かった………」

顔を上げたまどかは、優しい微笑みを見た。
まどかがそう思った時、小さく礼を返された。
真面目で、そして、少し寂し気な表情をまどかは見ていた。

「あ、えっと、はい大丈夫です、ありがとうございました」

さやかも慌てて頭を下げる。

「あなた、何者?」

背後からの詰問に対しても、
彼女は静かな微笑みと共に振り返った。
振り返りながら何かを摘み上げ、
マスケットの銃口を向けている相手に向けて放り出す。

「見つけておきました、差し上げます。
そちらの邪魔をするつもりはありませんので」
「有難う。他所の魔法少女なのかしら?」
「申し遅れました」

巴マミが真正面から見たその眼差しは、
自分が向けている銃口にも何に対しても余りにも静かで、
マミが息を飲む程に落ち着き払っていた。

「桜咲刹那、退魔師です。
そちらのあなたも、そろそろこちらに加わりますか?」
17 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/02(日) 03:25:23.94 ID:9L/CZpKL0
==============================

今回はここまでです>>1-1000

続きは折を見て。
18 :全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様 [二次元美少女達は金髪王子様の須賀京太郎様の嫁]:2017/04/02(日) 06:37:42.59 ID:zovpxJst0
まーた駄作うんこホモ実写と紐絶番朝鮮人実写版がクロスとか

シュタクソのダルしか得しねぇぞ白糸台創設者SS早よ建てろよ底辺婦女子提督艦これ動画バッドしてんじゃねぇぞ考え剥げ

30代以上の男性声優は松潤ギアス様以外全員禿か髭ボーボーの叔父さん
19 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:34:23.22 ID:bWoO1rCm0
それでは今回の投下、入ります。

>>17

==============================

「………あ………」

さやかが周囲を見回す。
得体の知れない空間は現実的な改築中のビルに姿を戻していた。
そして、桜咲刹那の言葉に応じる様に、暁美ほむらが姿を現す。

そして、まどかが気づいた事がある。
今日転校して来たほむらとはその朝のHRが初対面の筈で、
幾度か直接顔を合わせてもいるが、
まどかが知っていたほむらの表情は鉄面皮そのもの。
それ以外の表情は知らなかった。

だが、今のほむらは戸惑っている。それを隠し切れていない。

「まどかぁ」

そして、さやかが小さな声で危険を促す。

「あなた、この子、キュゥべえの事が見えるのね?」

マミは、ほむらを無視する様にまどかに声を掛ける。

「助けてくれてありがとう。この子は私の大切な友達なの」
「は、はい。私、呼ばれたんです。助けて、って、直接頭の中に」
「ふうん、そういう事」

そして、マミは改めてまどか、さやかとほむらを見比べる。

「生憎だったわね、魔女はもう片付いたわよ」
「私が用があるのは………」
「呑み込みが悪いのね、見逃してあげるって言ってるの」

マミが放った威嚇の言葉に、場の空気は再び張り詰めた。
20 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:39:47.43 ID:bWoO1rCm0

「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
「………後悔するわよ」
「次は、お友達になれそうなタイミングで会いたいわ。
お互いのためにも」

微笑みと共に告げたマミに、ほむらは無言のままで踵を返した。

「あなたは………タイマシ、って言ったわね。
魔法少女じゃないのかしら?」
「違うね。僕は彼女と契約した覚えは無いし、
魔法少女とは違う様だ」

マミの問いに答えたのはキュゥべえだった。

「はい、私は退魔師。
あなた達マギカ、魔法少女とは少々別の存在です。
そして、彼女達は救兵衛に見込まれた様ですが、
少し、話をすり合わせた方がいいのでは?」
「そうみたいね」

頭の回転が速い。
桜咲刹那と名乗った少女にその事を感じながら、
マミも最初からそのつもりだった提案に同意する。
そして、まどかに抱かれたキュゥべえに治癒の魔力を施術する。

「助かったよ、マミ」
「お礼はこの子たちに、私は通りがかっただけだから」
「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ」

キュゥべえはマミとの問答通り、まどかに礼を言った訳だが、
言われたまどかにして見ると、
ぬいぐるみの様な謎の生物が人語を喋っている時点で
その奇怪さに一歩退いてしまう。

「あなたが、私を呼んだの?」
「そうだよ。鹿目まどか、それと美樹さやか」
「何で、私達の名前を?」

名前を呼ばれ、怯みを見せながらさやかが尋ねる。
21 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:45:31.19 ID:bWoO1rCm0

「僕、君達にお願いがあって来たんだ」
「お、お願い?」

まどかがやや怖々と聞き返す。

「僕と契約して、魔法少女になってよ」

愛らしく頷き、告げるキュゥべえを
桜咲刹那は涼し気な眼差しで眺めていた。

ーーーーーーーー

「美味しい、マミさんこれ美味しいです」
「これめちゃうまっすよ」
「美味しいです」

マミが一人暮らしをしているマンションのフラットで、
彼女が差し出したシフォンケーキとハーブティーは
三人の訪問者から惜しみない賞賛を以て迎えられた。

キュゥべえに選ばれた以上他人事ではない、
と言う事で、マミはまどかとさやかに
魔法少女に関する基本的な知識を教える。

ソウルジェムから魔法少女、魔法少女から魔女、
願いの対価としてソウルジェムを得て結界に潜む魔女と戦う。
マミとキュゥべえの口から、
世界の秘密の一端がその様に語られる。
22 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:51:13.28 ID:bWoO1rCm0

「あの転校生も、えっと、その、魔法少女なの?
マミさんと同じ?」
「そうね、間違いないわ。かなり強い魔力を持っているみたい」

話は進むが、魔法少女同士、正確には魔法少女であるほむらが
契約を司るキュゥべえを襲撃した事に就いて、
まどかとさやかはなかなか理解が出来ない。

「これがグリーフシード、魔女の卵よ」
「た、卵………」
「運が良ければ魔女が何個か持ち歩いている事があるの」

マミが取り出したグリーフシードを、
まどかとさやかは怖々と眺める。

「大丈夫、その状態では安全だよ。
むしろ役に立つ貴重なモノだ」

キュゥべえがそういう中、
マミは再び自分のソウルジェムを取り出し、グリーフシードを近づける。

「見てて」
「あ、綺麗になった」

「こうやって、消耗した魔力を元通りにする。
それが、魔女退治の見返り。
だから、同じエリアに魔法少女が増え過ぎると、
魔女、グリーフシードの奪い合いなんて事も起こる。
それを避けるために、鹿目さんの契約を阻止しようとして………」

「それで、あんな風にキュゥべえを?」

ここまでの行きがかりで、
ほむらに対して余り虫が好かないさやかが非難を込めて言った。

「多分、そういう事でしょうね。ところで………」

その辺りまで黙って聞いていた刹那にマミが声を掛けた。
23 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 01:57:02.05 ID:bWoO1rCm0

「あなたは一体どういう人なのかしら?
助けてくれた事は感謝するけど、退魔師、って」

マミの問いに、刹那が向き直る。

「夕凪」の銘を持つ野太刀を前から肩に掛け、
目を閉じてじっと聞くだけの刹那は眠っている様にも見えたが、
それにしては独特の緊張感を漂わせていたのも確か。

制服と銃士の様な魔法少女スタイルを忙しく行き来していたマミに対して
刹那はカジュアルなパンツにシャツのスタイル。

ロングとまではいかなそうな綺麗な黒髪を
サイドポニーに束ねているのはやや個性的とも言えるが、
それだけに背丈に余りそうな夕凪の、
そしてその普通の格好で魔女を半ばぶちのめした行動の違和感は只事ではない。

「大きく言えば、魔法使いと言う事になります」
「………」

その言葉を聞いた三人が三人、反応に困っていた。

「救兵衛との契約で魔法の力を得るあなた達魔法少女、
こちらでは主にマギカと呼びますが、
そのマギカに対して、私達は言わば土着の存在です。

古今東西の物語に出て来る魔術師、魔法使い。
その伝承の中には過去に存在したマギカに就いて語ったものもある様ですが、
そうでないものもかなりの数に上る。

その、そうではないもの、
マギカとは別の所で科学とも違う力を発展させて来た。
それが我々であると理解して下さい」

「………」
「ええっと、その………」

マミとさやかが言葉を探している中、まどかが怖々口を開く。
24 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:03:09.93 ID:bWoO1rCm0

「その、絵本の中の魔法使いって事ですか?」
「そういう事になります」

真面目に答える刹那だったが、
ふっ、と、優しい先生の様な笑みを浮かべていた。

「もちろん大雑把な答えですが、
あなた達マギカと比較するならちょうどいい定義です」
「なるほど」

さやかも、なんとなく理解した様だった。

「魔法少女がいるなら魔法使いがいてもおかしくない、
そういう事ね?」
「そんな所ですね」

マミの理解に刹那が答える。

「中でも退魔師は、それもあなた達の魔女とは別の
土着の魔物、悪霊を退治する事が本来の仕事です」

「い、いるの、そういうの?」
「ええ。まあ、大概のものは
目立った害が出る前に我々が対処していますが」
「そうなんだ………」

質問したさやかが引きつった反応をする。
25 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:07:00.18 ID:bWoO1rCm0

「さっきも言ったけど、魔女の存在も普通の人には分からないわ。
結界の奥に潜んで普通の人には見えない。
そして、人を誘い込んで命を奪う。
一般には原因不明の自殺や行方不明として処理されてる」

マミの改めての説明に、
まどかもさやかも改めて先程の自分達の危険に息を飲む。

「そういう訳で、本来私達魔法使いとあなた達マギカは交わらない存在。
伝承上、両者が交わった事や技術的に交流した事もあった様ですが、
現状では我々はそちらには関わらない、原則としてそういう事になっています。

あなた達にはあなた達の利害がある。
只でさえ双方ともに世間に隠れた力のある存在。
それが、二つの別々の勢力が関わり合っても
トラブルの懸念の方が大きいですから」

「そうね。私達としては契約した以上、
妙な人達に邪魔されずに魔女を退治させてもらいたい所ね」

「それはこちらでも理解しています。
只、一方で我々、私達が属している組織ですが、
こちらは公益目的の活動も行っています。
ですから、最近この見滝原近辺の魔女の発生件数に就いて
懸念されるものがあるとして、実態調査のために私が派遣されました」

「組織?」
「現在は関東魔法協会と言う組織に所属しています」

マミの問いに刹那が答え、
急に、変に現実的になった事をさやかは感じ取る。
26 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:11:44.32 ID:bWoO1rCm0

「その、関東魔法協会?」

少々戸惑っているのはマミも同じらしい。

「はい。私達の管轄する裏側の秩序を司る魔法使いの組織です。
当面の所、直接あなた達と接触するのは私だけになると思いますが。
もちろん、あなた達の縄張りを荒らすつもりはありません。
そもそも、私がグリーフシードを得ても仕方がないですから。
そういう訳ですので、
当面はあなたと協力して活動したいのですが」

「話は分かりました」

刹那の説明に、紅茶を傾けていたマミが答えた。

「助けてもらった恩もある。こちらの邪魔はしない、
と、約束してくれるなら、むしろ歓迎よ」
「助かります」

マミの言葉に、刹那はふうっと息を吐く。

「そして、鹿目さん、美樹さん」

マミが二人に向き直った。

「キュゥべえに選ばれたあなた達には、
どんな願いでも叶えられるチャンスがある。
でもそれは死と隣り合わせなの」
「ううう………」
「うわぁ、悩むなぁ………」

そして、改めてマミの魔女退治に同行して魔女退治がどういうものか、
命懸けで叶えるべき願いはあるか、
それを見定めようと言うマミの提案、それを二人が受け容れるのを、
再び眠った様な桜咲刹那は片目を開いて聞いていた。
27 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:15:04.10 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「なんか、サムライって感じだったよねー」

とうに陽の沈んだ帰り道、さやかが隣を歩くまどかに言った。

「あの、桜咲刹那って人。
刀持ってたのもそうだけど、無口で礼儀正しくてとにかく固い感じで、
侍って言うか、用心棒の先生って感じ」
「ウェヒヒ………」

さやかの的確な例えにまどかは苦笑する。
しかし、まどかの印象は少々違っていた。
大体の所、一見した所は、
まどかもさやかと同じ印象は持っている。

「………でも………」
「ん?」
「桜咲さん、優しい人なんじゃないかな?」

「そうかな? うん、助けてくれた訳だし、
悪い人じゃないかも知れないけど。
悪い人って言ったら、あの転校生?
キュゥべえを襲ったりして、マミさんが追っ払ってくれたけど」

「悪い子、なのかなぁ?」
「じゃないの? それじゃあまどか、又明日」
「うん」
28 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:18:32.57 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「ただ今………」
「お帰り、まどか」

普段より随分遅い帰宅のまどかだったが、
それを迎えた知久はいつも通り穏やかだった。

「ママは?」
「ああ、まだかかるみたいだね」
「そう」

知久は、先輩からお呼ばれして遅くなると言う
電話連絡をまどかから受けていた。
話している内に用意が出来て、まどかは食器をテーブルに運ぶ。

「いただきます」

まどかは少し遅い、温かな夕食を口に運ぶ。

「ご馳走様」
「お粗末様でした」

いつも通り美味しい夕食、穏やかで優しい父。
現実に戻って来た感じ、と言うものをまどかは実感していた。
それと共に、どっと疲れを感じる。
とんでもなく非常識な事が色々あり過ぎて、疲れを忘れていた感じだ。

今夜はお風呂に入って早く休もう。
その誘惑が力一杯に今のまどかを引き寄せる。
もしかしたら、今日の非常識全部が夢オチになってるかも、
なんて事まで考えたくなる、まどかにとってはそんな一日だった。
29 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:28:16.13 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「………」

桜咲刹那の視線の先には、四角い一軒家が存在していた。
土地と金に余裕がある郊外の内に思い切って建てて買った、
と言う感じで細々としていない。
庭付き一戸建て二階建てとしては、
表向きガラス戸の多いどっしりとした建物に、畑の一つも出来そうな、
と言うか実際出来ている広々とした庭も魅力的だ。

「動かないで」

背後からの声に、刹那は素直に両手を上げる。

「桜咲刹那、退魔師とやらがここで何をしている?」
「暁美ほむらさん、と言いましたか?」
「質問に答えてくれるかしら?」
「帰宅する途中ですけど」
「死にたい訳?」
「そのつもりなら一つ忠告しておきましょう」
「!?」

ほむらが構えていたM9拳銃。その銃口の先が、ぶれた。
銃口の先が刹那の頭をとらえていた筈が、
とらえていたと言う事実が不意に、揺らいだ。
と、思った次の瞬間には、
刹那の肘を腹に叩き込まれたほむらの体が大々的に路上を滑っていた。

「か、はっ………」
「神鳴流に飛び道具は効きません………?」

びゅうっと風の様な勢いで移動した刹那は、
吹っ飛んだほむらを捕獲しようとした。
しようとしたその時には、
ほむらの姿は刹那の視界から消えていた。
30 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:32:20.33 ID:bWoO1rCm0

「だからと言って」

ほむらの振り下ろした
4番アイアンのヘッドの下にあった筈の刹那の頭部は、
すぐ近くの地点にすいっと移動し、
その時には、ほむらが水月に拳を叩き込まれて体をくの字に折っていた。

「こちらで私に挑むと言うのは、もっと無謀でしょうね」

いかにもつまらなそうな刹那の言動に、ほむらは戦慄を覚える。
元々特殊能力の一点を除けば直接戦闘向きではないほむらだが、
魔法少女単位で考えても桜咲刹那、生半可な相手ではない。

(つっ、痛覚遮断っ!)

刹那がほむらと少し距離をとった瞬間、
ほむらは消耗を覚悟しつつ刹那から離れる。。
そうしながら、刹那の手が光を帯びているのを歪む視界にとらえる。

「匕首・十六串」
「!?」

距離を取ったほむらに、何口もの匕首が飛翔して迫って来る。

(これはっ!?)

銃器を用意しようとするが、間に合わない。
それ以前に、そういう対処が出来る代物なのか、

「稲交尾籠………」

バシュウッ、と、周囲が一瞬強い光に包まれた。

「………」

刹那が正常な視界を取り戻し、
自らが展開した捕縛結界を確認する。
果たして、その中は空だった。
31 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:36:37.07 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「秘剣・百花繚乱っ!!!」

暁美ほむらを見失い、夜の住宅街で歩みを進めていた桜咲刹那は、
大きめの公園にざしざしと立ち入り、振り返り様に夕凪を振るっていた。
衝撃波が土煙を起こし、刹那は術の影響で舞い散る桜華に目を凝らす。

ぶうんっ、と、一見すると野太刀離れした非常識な勢いで、
刹那は夕凪を斬り上げる。
ギインッ、と、何か鉄棒とでも打ち合った様な手応えはあった。
刹那は夕凪の棟を肩に掛け、鋭い眼差しで気配を伺う。

「斬鉄閃っ!!」

夕凪の斬撃から強力な「気」を放った時には、
刹那は身を交わしていた。

「アデアット」

それでも執拗にまとわりつく鋭い斬撃を、
刹那は左手の「白い翼の剣」で辛うじて受け流す。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」

そして、刹那は力一杯の一撃を叩き込む、が、
やったか、とは思わない。
手応えが無いのは最初から分かっていた。
取り敢えず、脅威は去った様だ。
32 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/05(水) 02:40:25.14 ID:bWoO1rCm0

ーーーーーーーー

「どうだった?」

住宅街、夜の路上で問いが発せられる。

「強いね、並の魔法少女じゃ叶わないんじゃないかな?」
「キリカでも?」
「こちらの術で作ったズルを正攻法でぶち破りかねない、
それ程の実力だったよ。
だけど織莉子がやれと言うなら、それは些細な事さ」
「そう」

美国織莉子は、ひゅっ、と、小さな水晶球を二つ放った。
一つ目の球が空に消え、少し遅れて二つ目が飛翔する。

「折り紙?」

ひらひらと降って来たものを見て、呉キリカが言った。

「かみにんぎょう、かしらね?」

それを掴んだ美国織莉子が言い、ぽいと放り出す。
その折り目のついた紙片は、
空中で、ぼっ、と紅蓮の炎に包まれた。

==============================

今回はここまでです>>19-1000
続きは折を見て。
33 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:35:10.58 ID:GfExdfTJ0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>32

 ×     ×

「ええええっ!?」
「どうしましたのっ!?」
「い、いや、なんでもないなんでもないあはははは」

朝のHR終了後、最初の休み時間にガタンと立ち上がって絶叫した美樹さやかに
友人の志筑仁美が目を丸くして声を掛け、
さやかは頭を搔いてごまかしてみせる。

「そ、そうですの」
「ウェヒヒヒ」

その側で鹿目まどかも苦笑いしているが、
さやかとまどかは目と目で通じ合っていた。

魔女やら魔法少女やらの騒動に巻き込まれた翌日。
或は夢オチでは、と言うまどかの現実逃避は、
まどかの寝室でぬいぐるみに紛れて
朗らかに朝の挨拶を決めたキュゥべえが簡単に打ち破ってくれた。

魔法少女の素質が無ければ
キュゥべえの存在を認知する事は出来ないと言う事で、
見える者には得体の知れない、でも可愛らしい小動物であるキュゥべえは
登校するまどかにまとわりついてそれを見たさやかを驚かせたり、
そんな二人を見た仁美を驚かせたりもした訳だが、
その辺りの事は割愛としておく。
34 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:40:31.84 ID:GfExdfTJ0

実用的な面では、まどかとさやかはキュゥべえを介する形で
三年生の先輩である魔法少女巴マミと
テレパシーのチャンネルを繋ぐ事に成功した。

昨日キュゥべえを襲撃したと言う暁美ほむらも
まどか、さやかと同じ教室にいる訳だが、
学校で滅多な行動はとらないだろう、と言う予測で話を止めていた。

そして、今、もう一度マミとのテレパシーを繋いだ所、
伝わって来た話はなかなかの急展開だった。

「桜咲、さんが転校して来た、って」
「三年生だったんだ………」

ひそひそ話していたつもりのまどかとさやかは、ガタッ、
と言う物音に視線を走らせる。
そこでは、暁美ほむらが目を見開いて立ち尽くしていた。

ーーーーーーーー

昼休みに屋上で改めて鹿目まどかと美樹さやかに釘を刺したり、
その際に別の校舎の屋上から巴マミに無言の威嚇を受けたり
帰りのHRの後に同級生からのお茶のお誘いを丁重に断ったりしながら、
暁美ほむらの本日の学校生活は終わりを迎える。

(これって、本当は佐倉杏子辺りのやり方じゃないのかしら?)

そして、時間停止を使いながら
近隣の高層ポイントに移動して双眼鏡を覗く。
35 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:47:00.89 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

(ここは………)

地上に戻ったほむらがしばらく歩き続け、到着した先には
解体も先延ばしにされている廃墟と化したビルが存在していた。

「何か、御用でしょうか?」

屋内に入り、エントランスで周囲を見回していたほむらは、
不意に背後から声を掛けられる。
しかし、これはほむらのシミュレーションの一つでもあった。
ほむらが、振り返り様に大振りの軍用ナイフを振り抜く。

「!?」

しかし、次の瞬間、ほむらの表情を占めていたのは狼狽そのものだった。

「それが、時間停止の絡繰りですか」

桜咲刹那が左手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、
ほむらが左腕に装着した盾に突き立てられていた。
その盾で動き出した絡繰りが、
歯車に剣の切っ先を噛んで強制停止する。

歯車から刃が抜ける、が、ほむらはとっさに地面を転がる。
この様子では、刹那が発動を逃す事は絶対に無いだろう。

ほむらが腿に装着しておいたスローイングナイフを放った。
その瞬間、刹那がほむらの視界から消え、
ほむらはバッと振り返る。

(間に合わ………)

そもそも銃弾が効く相手なのかどうかはとにかく、
ぐわっと目の前に迫っていた刹那にM9拳銃を向けながら、
ほむらの頭はどの程度のダメージを許容すべきか、
と言う損切りを考えていた。
36 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 03:52:52.98 ID:GfExdfTJ0

その、刹那がぐいっと後退し、
飛んで来た一本の棒が二人の間を槍の様に突き抜ける。

「アベアット」

次の瞬間、「白き翼の剣」はカードに戻り、
振り返った刹那が
自分に打ち下ろされた一撃を鞘のままの夕凪で受け太刀する。
タンタンターンッとエントランス中央階段に足音が弾け、
踊り場でガン、ギン、ガンッ、と打撃が衝突する。

(銃剣術、我流ですね)

相手の流儀を冷静に把握しながら、
刹那が居合抜きを一閃する。

本来、野太刀である夕凪は居合には決定的に不向き、
と言うより物理法則そのものに抵触するものであるが、
その辺りは神鳴流剣士だから、と言う事になる。

刹那が回避している巴マミの攻撃は、
無から有、空中に次々とマスケット銃を発生させて
その神出鬼没な武器でぶん殴って来ると言うトリッキーさもあるが、
その殴り合いの技量自体、決して侮れるものではなかった。

刹那は再び跳躍して階段を下り、
その後をマミが放つ銃弾が追跡する。

(敷地も含めてそこそこ広い、
騒音も含めて多少の銃声も目立たない、か)

ババンッ、と、先回りする様にエントランスの床に銃弾が弾け、
ちょっと遅れて刹那が着地する。
普通であれば、上から狙い撃ちされる方が不利。
但し、刹那は神鳴流剣士。
但し、
37 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:00:35.68 ID:GfExdfTJ0

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!」

夕凪の一閃と共に、
床からぶわっと噴き出したリボンが散り散りに刻まれた。

「アデアット………?」

そして、刹那は振り返り様に仮契約カードから匕首を呼び出し、
ほんの一瞬、心の中で小首を傾げる。
そして、目の前に現れた巴マミの姿に向けて、
その胸の真ん中に手裏剣として匕首を打ち込む。

「斬鉄閃っ!!」

次の瞬間、前方からぶわっと迫っていたリボンの群れが
刹那の斬撃が巻き起こす「気」によって細切れに粉砕される。
エントランスから見下ろしていた巴マミが、
手にしたリボンを放り出して地面を蹴る。
そのリボンの先では、
絡め取られた二体のちびせつながもがいていた。

「神鳴流秘剣・百花繚乱っ!!」

渦巻く強風、衝撃波に、ほむらは思わず腕で目を抑えていた。

「続ける?」

恐らく頸動脈のすぐ上に夕凪の刃を向けられ、
つーっと汗を浮かべながら荒い息と共にマミが尋ねた。

「魔力の塊の零距離銃撃は、厳しいかも知れませんね」

胸の真ん中にマスケットの銃口を押し付けられ、
つーっと汗を浮かべながら荒い息と共に刹那が答える。
38 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:04:00.73 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

「一体、どういう事なのかしら?」

双方武器を引きながらマミが尋ねた。

「仮にも見滝原の魔法少女と事を構えると言うのなら、
昨日の協力の話どころか、私と戦う羽目になるわよ」
「私も、そのつもりは全くないのですが」
「じゃあ、私の体に残る記憶はなんなのかしらね?」

しれっと言う刹那に思わずほむらが口を挟む。

「昨日から背後から拳銃を向けられたり
つけ回されてナイフで斬り付けられたり
と言った事が続いていましたので、少々手荒な対処をしましたが」
「暁美さん?」
「否定する程間違ってはいないわ」

マミにじとっとした視線を向けられ、
ほむらはファサァと黒髪を払って答える。

「その点は、お互い裏で動いている者同士。
あなた方にとって得体の知れない私が
こちらをうろついている訳ですので、
私がそちらの立場でも分からないではありません」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 04:06:58.73 ID:BTwGveORO
書き方でと禁の糞クロスやってるやつだとわかった
糞スレ量産すんな
40 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:07:32.55 ID:GfExdfTJ0

「じゃあ、こちらが余計な事をしなければ
あなたもこちらの邪魔はしない、
これは再確認させてもらっていいのね?」

「はい」

「改めて言うわ、この人は桜咲刹那さん、
普段は魔女ではない魔物を退治する退魔師。

魔法少女とは違う、
キュゥべえの契約ではない魔法使いと言うカテゴリーに入る人で、
今は、こちらでの魔女発生に就いて調査をしているそうよ。

魔法使いだからグリーフシードも必要ない。
私はこの人に協力する事に決めた。
その意味は、分かるわね暁美さん」

じっ、と、マミとほむらが目と目で押し合う。

「マミさぁーんっ!!!」

その時、表から素っ頓狂な叫びが聞こえた。

「美樹さんっ!?」
「どういう事よっ!?」

意外な展開に、ほむらも又叫び声を上げる。

「元々、鹿目さんと美樹さんを連れて
魔法少女体験コースの最中だったのよっ」
(又、っ)ギリッ
41 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:11:02.24 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

三人が表に飛び出すと、
美樹さやかが斜め上に指さしてわわわわと声を上げていた。

「おおおおっ!!!」

刹那が夕凪を居合抜きし、
周辺の地上にいる一同が刹那を除き腕で目を抑える。
果たして、刹那の斬撃と共に巻き上がった強風が
屋上から落下して来たOL風の女性をとらえ、空中に巻き上げる。

「やった、っ」

鹿目まどかに縋りつかれながらさやかが声に出した。

「!?」

次の瞬間、自然の強風が空中のOLの軌道を大きく狂わせた。

「くっ!」

刹那が両腕を×字に組み、指をバキッと内側に折る。
そんな刹那を、マミが風の様に追い越した。
マミが放った大量のリボンが面積をとって
OLを下からとらえ、地面に軟着陸させる。

「巴さん、彼女を頼みます」
「分かったっ!」

刹那が建物の外周を回り始め、ほむらがその後を追う。

「気づいてる?」

ほむらが尋ねた。

「ええ。確かに、波長が普通の魔物とは少し違いますが」
(と、すると、他所の魔女が移動して来たのか)

二人が非常口の螺旋階段にたどり着く。
刹那が刀印を組み印を切って符を放つ。
そして、空間の歪みに飛び込んだ。
42 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:14:36.87 ID:GfExdfTJ0

ーーーーーーーー

結界の中は、抜ける様な青空だった。
青空のど真ん中に、大量の洗濯紐が縦横無尽に張られている。
本当はもう少し太い紐なのだが、
その紐が大量のセーラー服の袖から袖に貫通している図は
洗濯紐にしか見えない。

(こいつが来たの)
「秘剣・斬空閃っ!」

その、空中を走る紐の一つを踏みしめて暗い笑みを浮かべるほむらの側、
別の紐の上で刹那は早速に夕凪を一閃。
空から降って来た一見して教室用の机が刹那を避けて四散する。
広々とした屋外空間に騒音が響き、
結界でなければ通報殺到だろう、と刹那は思う。
かくして、機関銃の掃射を受けた使い魔が一掃される。

(天狗之隠蓑の類か)

ほむらが掃射したM249を目にして、刹那が見当を付ける。
一旦銃撃が止まったタイミングで刹那が動き出す。
降り注ぐ使い魔もざざざっと斬り伏せ、そのまま大きく跳躍する。

「(こいつが本体、魔女)斬岩剣っ!」

空中で遭遇した「委員長の魔女」、
黒いセーラー服から計六本の腕、四本の袖にスカートから二本、
を突き出した巨大で奇怪な怪物に刹那が一撃を加え、
近くの紐に着地するが致命傷とまではいかない。

「斬鉄閃っ!!」

委員長の魔女がスカートからばばはばっと吐き出した使い魔は
刹那が夕凪の斬撃から放った「気」に飲み込まれて一掃される。
43 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:17:50.61 ID:GfExdfTJ0

(この程度なら、多少時間をかければ)

そうしながら、刹那は目算していた。
多少面倒だが経験から言って無理な相手ではない。
取り敢えず、自分が直接「飛ぶ」までの事はないと。


その時、刹那はこれまで空中に張られていた洗濯紐とは
別のものが空中をよぎるのを見た。

洗濯紐を捉えて張られたのは、細長い黄色い絨毯だった。
はっきり言って穴だらけだが、元がリボンと考えると上等。
それに、どうも見た目は穴だらけでも簡単に踏み抜けない絨毯らしい。

「桜咲さんっ!」

絨毯の出所からマミが叫ぶ。
刹那がその絨毯に飛び乗り、
そのまま委員長の魔女の真下へと走る。

「………」

刹那の足が、「空を蹴った」。

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」

委員長の魔女を飛び越した刹那が、落下しながら放った一撃。
44 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:21:16.14 ID:GfExdfTJ0

「え?」

委員長の魔女は、弾き飛ばされる様にある方向に斜めに落下していた。

(くっ!)
「暁美さんっ!?」

マミが新たなリボンを撒き始めた頃には、
適当な紐の上に移動して時間停止を解除したほむらが
魔女のスカートの中めがけてRPG−7の引き金を引いていた。

ーーーーーーーー

「拾ったから使わせてもらったけど、受け取るわよね」

結界の解けた非常階段周辺で、
マミがほむらにグリーフシードを手渡す。

「ええ………有難う」
「どういたしまして」

二人が、些かぎこちなく言葉を交わすのを刹那は眺めている。
儀礼的と言えば儀礼的、
三人が戦闘に関わりグリーフシードが絡む以上、
「受け取らない」事を含めて筋を通さない事の許されない状況。

刹那は、少なくとも突っ張っているほむらの方が何処か気後れしている。
そんなほむらの一端を察していた。
45 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:24:44.59 ID:GfExdfTJ0

「巴マミ………巴さん」

じゃりっ、と、地を踏みしめてほむらが言葉を発した。

「何かしら?」
「今、協力した事にはお礼を言わせてもらう。
だけど、あの娘達を連れ回すのは反対よ。
私達の危険に付き合わせるべきではない、
それだけは言って、おきます」

「そう、あなたの考えは分かった」

ほむらの言葉にマミも真面目に応じ、
ほむらは一礼すると踵を返して裏側から敷地を離れた。

ーーーーーーーー

「ここは?」

廃ビルの入口側、待機していたさやかと交代で
マミの介抱を受けていたOLが意識を取り戻した。

「や、やだっ、私、どうしてあんなこと、っ!?」
「大丈夫、もう大丈夫です」

少しの間朦朧としていたが、その後でパニックを引き起こしたOLを
マミは優しく抱き締めていた。

「大丈夫、悪い夢を見ただけです」
「一件落着、って感じかな」

泣き崩れるOLを宥め、落ち着かせるマミ、
それを見てさやかが言う。
46 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/10(月) 04:28:27.70 ID:GfExdfTJ0

確かに、今回は申し分のないハッピーエンド。
そう思って、刹那はマミを見ていた。

弱っているとは言え年上の女性を相手に、
マミはそれなりに慣れているのだろう、とも思うが、
やはり、本当に優しく、責任感の強い娘。
刹那はマミの事をそう把握し、そして、好ましく思う。

「まどか?」
「………」

一見すると少し怖い感じで、話しかけ難い雰囲気もある。
あの、持っている日本刀みたいだ、とも思う。

だけど、もしかしたらこれが本当の顔の様な気もする。

今こうして無事解決した二人、
マミとOLの二人を見ている刹那の穏やかな、
優しくすら見える横顔を見て、
鹿目まどかはふと、そんな事を感じていた。

==============================

今回はここまでです>>33-1000
続きは折を見て。
47 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/16(日) 03:22:51.02 ID:oLGWECTk0
修正です

>>35
桜咲刹那が左手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、

桜咲刹那が右手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、

失礼しました。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>46

 ×     ×

学校が終わり、夕暮れ。
巴マミを先頭に鹿目まどか、美樹さやかが道を歩いていると、
前方に見知った顔が見えた。

「桜咲さん」

まどかか声を上げ、桜咲刹那が小さく頭を下げる。
マミがメールで刹那に通り道を知らせて、
都合が合えば合流する。そういう話だったが、
基本、ここ何日かの「体験ツアー」に刹那は黙って同行していた。

「マミさんも凄いけど桜咲さんも強いから、百人力ですよー」

さやかの言葉に刹那は小さく頭を下げ、
さやかはにししと笑うがまどかはちょっとした違和感を覚える。
こういう時、マミはたしなめる事はあってもくすぐったそうな感じを見せる。
だが、恐らく刹那は基本が真面目なのだろう、
この人相手に、余り調子に乗らない方がいい様にも感じていた。
48 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/16(日) 03:28:28.62 ID:oLGWECTk0


ーーーーーーーー

「いますね」

とっぷりと陽が暮れてから、刹那がぽつっと言った。

「自分で察知する事が出来るのね」

ソウルジェムを手にしたマミが言う。

「私達が扱うものとは似て非なるものですが、
多少の経験があれば応用が利きます」

刹那がさり気なくまどかとさやかの前に立つのを後目に、
マミがソウルジェムを掌に乗せて夜の公園にザシザシと前進する。

ーーーーーーーー

この日の「体験ツアー」の結果は使い魔一匹、
さやか曰くここ数日は外れ続け、と言う事になる。

結界によって異界化した公園の中で、
マミは人間大の大きさの、
銃身が人間の背丈に匹敵するアンティーク拳銃を発砲して
危なげなく使い魔を仕留めていた。

そのまま、帰り道の石橋を歩きながら、
巴マミの身の上話や美樹さやかの願いへの少々の苦言、等も交わされたが、
桜咲刹那は一行に影の様に寄り添い、黙って歩いている。

「それでは、私が送って行きますので」
「お願いするわ」

かくして、巴マミと別れて刹那とまどか、さやかが帰路に就く。
49 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/16(日) 03:33:57.22 ID:oLGWECTk0

ーーーーーーーー

「じゃ、まどか」
「うん」
「それでは」

無言の帰路。
さやかと別れ、まどかと刹那が二人並んで歩いている。

「鹿目さん」
「はい」
「先程、話に出た上条君、と言うのは?」

丁寧だが、まどかにとって意外な問いだった。

「………クラスメイトです。
私とは小学生の時から、さやかちゃんとは幼稚園の時からの幼馴染で」

「あの話の様子では、何かあったんですか?」

「はい。小さい頃からヴァイオリンを弾いてて、
詳しく知らない私が聞いても凄く綺麗で、何度も表彰されて。
でも、交通事故で左手に大怪我をして、それで………」

「そうですか。大怪我をして、見込み等は?」

真摯な刹那の問いに、まどかは首を横に振る。

「凄い大怪我だった、って事は分かってるけど、
それ以上の詳しい事は」
「その、ケガをしたと言うのは、何時の話ですか?」
50 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/16(日) 03:39:47.13 ID:oLGWECTk0

「×月×日です」


………………

…………そう、ですか…………

………………


答えた刹那は、天を仰いでいた。

「さやかちゃん、魔法少女になるのかな………」
「魔法少女の願い、救兵衛との契約でその上条君のケガを治す、
そういう事ですか?」

刹那の問いに、まどかが頷いた。

「上条………名前を伺えますか?」
「上条、恭介君です」
「上条恭介君ですか。
その様子ですと、美樹さやかさんは彼にそうした、
幼馴染と言う以上の想いがある様に聞こえましたが」

刹那の言葉に、まどかは小さく頷く。

「上条君の話をする時のさやかちゃん、
凄く綺麗で、いつもはあんな風なのに凄く女の子で、
それで………」
「少し、危険ですね」

今まで我関せずだった刹那の言葉に、まどかが刹那を見た。
相変わらず真面目な、やや険しい表情だった。

「巴さんも口を酸っぱくして言っていますが、
元来魔法少女の在り方は命に関わる危険なものです。
契約自体がそういうものとは言え、
私情で、特に彼女の様な性格で突っ走るのはかなりリスキーです。
巴さんも釘を刺していましたが、全否定はしませんが早まらない様に、
巴さんとも相談して少し目を配りましょう」

淡々と、だが真摯に言う刹那に、まどかは小さく頭を下げた。
51 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/16(日) 03:44:31.04 ID:oLGWECTk0

「有難うございます、桜、咲さん」
「呼び難いですか?」
「え、あ、ごめんなさい」
「いいですよ、刹那と呼んで下さっても。
平均的に呼び難い名字の様ですから」
「は、はい、刹那、さん」

まどかの呼びかけに、
刹那は静かな微笑みで応じていた。

「あの、刹那さん?」
「ああ、いえ」

その後で、ふっ、と斜め下を見た刹那にまどかが声をかけ、
刹那が向き直って応じた。

「そろそろですね。
それでは、お休みなさい」
「お休みなさい」

礼儀正しく応じるまどかを、
刹那は好ましい眼差しで見送った。

ーーーーーーーー

住宅街の無人の路上で、桜咲刹那は大きく、
魔法少女基準と言ってもいい大きさで大きく跳躍していた。

「あなたも、なかなか凝りませんね」

そして、気が付いた時には、
目を見開いた暁美ほむらの真ん前に立った桜咲刹那は
左手でほむらの右腕を掴みながら
匕首の切っ先を限りなく零距離に近い距離感でほむらの脇腹に向けていた。

「あれだけ凄まじい殺気を放っていては、素人でも気が付きます」

そう言って、刹那はほむらから手を離す。
52 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/16(日) 03:49:02.51 ID:oLGWECTk0

「あなたの目的は何?」

「先にも言いましたが、魔法協会の退魔師として、
最近増加傾向にある見滝原近辺の魔女の動向を
公益目的で調査しています。
そのために、魔法少女である巴マミさんに同行しているところです」

「………他の二人、
鹿目まどか、美樹さやかに就いては?」

「あの二人は巴マミさんに同行していますね」
「つまり、あなたとは関係ないと?」

「現時点では、私にとっては関わりを持った民間人と言う立場です。
その場合、私の目の届く範囲では人道上の対応はしますが、
基本的にはそちら側、マギカの側で対応すべき事でしょう」

「筋論ね」

「それで、あなたの目的はなんなのですか?」
「あの二人………特に、鹿目まどかの契約を阻止する事。
それが私の目的よ」
「そうですか。
それは、今の所そちら側の問題ですね」
「ええ。無駄に争うつもりはないわ」

双方、踵を返して歩き出す。

刹那の言う通り、現時点の大元である巴マミと話を付けるしかない。
しかし、余り上手く行った試しがないので気が重い。
心の中でその様に嘆息しながら、ほむらは目的地に歩みを進めていた。

==============================

今回はここまでです>>47-1000
続きは折を見て。
53 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/18(火) 03:25:35.50 ID:YV/+TrQr0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>52

見滝原市内、夜の住宅街。
コッコッと歩みを進めていた呉キリカは、
スマホを取り出して無限にして有限なる愛のメッセージを受け取る。
そして、掌にソウルジェムを乗せて少々黙考。

「ステッピング・ファングッ!」

変身早々、夜の路上で飛び道具を射出する。
次の瞬間には、月に届けとばかりに跳躍していた。
着地したキリカが、さささっと近くの曲がり角を曲がり、塀に張り付く。

(ヴァンパイア………)

ーーーーーーーー

暁美ほむらと分かれた桜咲刹那は、途中、ぴたりと足を止めた。
そして、指を額に当てて少し黙考すると、
迂回路を経ながら元来た方向へと猛スピードで移動を開始していた。
目立たぬ事を確認してタンターンッと跳躍で距離を縮め、
無人の歩道に着地する。

「………」

刹那の手は、真っ二つに切り裂かれた紙人形を拾い上げていた。
刹那はその場で片膝をつき、左手で夕凪の鯉口を切る。
刹那の耳がひくりと動き、
刹那は鯉口を戻してすっと立ち上がる。

ありふれたタクシーがロロロロと現れ、刹那を僅かに照らして通り過ぎる。
その時には、既に刹那の感知する所から脅威らしきものは消失していた。
背中に少々の喚き声を聞きながら、刹那は踵を返してその場を後にする。

「おぉーい、帰ったぞおぉーっ。
やぁーったれっかぁスダレハゲェェェ………」
54 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/18(火) 03:30:40.55 ID:YV/+TrQr0

ーーーーーーーー

「近いな」

風見野市内でパトロールを行っていた佐倉杏子は、
ソウルジェムの反応に薄い笑みを浮かべる。
そして、到着した先は一軒の廃屋だった。
杏子はその中をソウルジェムで照らし、結界の入口を暴き出す。

ーーーーーーーー

「シッ!」

まだ私服のまま、杏子は槍を払い使い魔を追い払う
最近、少々稼ぎが悪い。
燃費を考えなければならない。

「?」

そして、ソウルジェムを確かめながら杏子は首を傾げる。

(なんだ、この反応?
魔女が二匹? ってのも違うみたいだけど………)

結界の最深部が見えて来る。
杏子は、紅の魔法少女姿に変身してその入口へと歩みを進める。
55 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/18(火) 03:36:15.98 ID:YV/+TrQr0

ーーーーーーーー

「………」

相変わらず薄気味の悪い魔女結界の最深部。
佐倉杏子は、そこで、舞を見ていた。

白と紅の和装。
白い水干の広い袖がふわりふわりと宙を舞い、
紅袴の足さばきも不自由なく流れる。
それと共に、両手の白扇も開き、閉じ、
何かのメッセージを伝える。

素晴らしく長い黒髪が、
時にさああっと広がり時にゆらりと流れ二つに割れ三つに割れ、
それでも艶やかな美しさを損なわない。
艶やかな黒髪に色白な肌、墨絵に描いた様な目鼻立ちは、
お上品な日本人形を思わせる。

だが、時に激しい程に躍動する舞姫は、
お人形さんと言うには活動的に過ぎる。
活動的に過ぎる。
佐倉杏子の唇は、不敵に歪んだ。

==============================

今回はここまでです>>53-1000
続きは折を見て。
56 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:20:04.33 ID:6b1Zx9Kd0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>55

佐倉杏子から見て、舞姫の動きは馬鹿速い訳ではない。
だが、ふわりふわりと使い魔を交わし、
時には白扇が魔女の攻撃を反らし、受け流している。

(魔力、だよな)

それは、杏子も感じる。
だが、魔女を力押しで退けるタイプの動きではない。
パワーの量以上に、流れる様に優美な動きが
確実に魔女を翻弄している。

それは、計算し尽くされたものなのか、
或は、それ以上の何かか。
少なくとも、素人がこの速度で魔女と対したら五秒で終わる。

思わず見惚れていた、等と言う事を杏子本人は決して認めないだろうが、
そんな杏子が半歩前に出る。
舞姫が、とーん、と一息に魔女に向けて間合いを詰めていた。

「!?」

次の瞬間には、右手の白扇が化けたゆらめくビームの様なものが、
魔女をぶち抜き爆発させていた。
杏子が、不敵な笑みを浮かべる。

(隠して、やがった? この魔力の量………)
57 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:25:29.82 ID:6b1Zx9Kd0

ーーーーーーーー

「おいっ」

跳躍し、着地し振り返った杏子は、
改めて不敵に笑みを浮かべた。

真正面から見た舞姫は杏子と同年代だろう、
やはり色白の、素晴らしい黒髪ロングがよく似合う
日本人形の様に可愛らしい女の子だった。

それが、振り返り様に喉元に突き付けた筈の杏子の槍の穂先を、
その時にはすすすっと右にずれて交わしていた。
舞姫が、たーんっと後ろに跳躍する。
鼻で笑った杏子が、だっ、と距離を詰めながら槍を変化させた多節棍を放つ。

「もらっ、!?」

絡められたのは、杏子も同じだった。

(ビームはこれかっ)

多節棍に絡み付いていたのは、白扇が化けて伸ばされた南京玉簾だった。
僅かな魔力を帯びてほんのり光っている。
恐らく、杏子の力に合わせて魔力で強化しているのだろうが、
いざとなったら魔女を瞬殺する所まで魔力を乗せられる。
その魔力量自体只事ではない。
簾が白扇に戻り、双方後ろに跳躍して距離を取る。

(こいつ………)

杏子が前を見た瞬間、目にしたのは微笑みだった。
ふうわりと柔らかく、とろける様な笑顔。
欠片も見えない敵意、或はそれが底無しの何かを邪推させる。

「こっちで反応がありましたっ!!」

遠くから聞こえる声に、杏子が舌打ちをする。

「又、うぜぇのが来やがったっ!!」
58 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:31:32.77 ID:6b1Zx9Kd0

ーーーーーーーー

「あっ、あなたっ!」
「佐倉杏子っ!!」
「あばよっ!!」

魔女結界内を進む人見リナ一行。
そこに、奥から佐倉杏子が駆け付け、
リナ達の叫びを無視してすれ違い走り去って行く。

「反応が消えた」

リナの隣で、ソウルジェムを掌に乗せた佐木京が言った。

「先を越されたか………」

リナが後ろを振り返りながら応じる。

「人がいるぞっ!!」

それは、結界の奥へと先行した朱音麻衣の叫び声だった。
リナ達が魔女エリアらしき最深部に入ると、
そこには、髪の長い私服姿の少女が佇んでいた。

「見ない顔ですが、どうしてここに?」
「いつの間にかと言いますか」

リナの問いに、
同年代ぐらいの少女がはんなりした口調で応じた。

(魔女はいない、佐倉杏子に退治されたか………)
(あーあ、無駄足。
いい加減あいつと縄張り分けとかしない?)

リナチームがテレパシーで状況を確認する。

「それでは、この状況はもうすぐ収まりますから、
この辺りは物騒ですから早く帰る事です」
「おおきに」

いかにも育ちの良さそうな黒髪の少女から丁寧な一礼を受け、
リナチームも撤収の支度に入った。
59 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:36:57.92 ID:6b1Zx9Kd0

 ×     ×

「刹那さんっ!」

放課後の見滝原市立病院正門付近で、
病院から出て来たまどかが桜咲刹那と遭遇した。

「どうしました?」
「ま、ま、魔女っ」
「何ですって?」

まどかの言葉に、刹那の目が鋭くなる。

「魔女の卵が、駐輪場に。
今、さやかちゃんが見張ってて、わたしはマミさんを呼びに」
「分かりました。私が美樹さんの護衛につきますから
すぐに巴さんに連絡を」
「はいっ」

ーーーーーーーー

「桜咲さん?」
「何をしているんですか?」

結界内部で、振り返ったさやかは押し殺す様な刹那の声を聴いた。

「自分がどれだけ危険な事をしているか、分かっているんですか?
ここで卵が孵化したら命の危険があるんですよ」
「最悪、契約する事も………」

言いかけた所で、さやかは刹那に胸倉を掴まれていた。

「実戦経験も無しに安全を確保出来ると思っているんですか?」
「………ごめん」

さやかが言い、刹那が手を離す。
60 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:40:39.19 ID:6b1Zx9Kd0

「どうしても、放っておけなかったから。
この病院でグリーフシードが魔女になったら、
居場所が分からない内に弱ってる人が犠牲になる、って」

「そうですね、確かに、そういう事はあります」

ようやく、刹那が肯定的な事を言った。

「うん」
「何か、ここに特別な事情でもあるんですか?」
「………」

刹那の問いに、さやかが頷いた。

「まず、自分の身を守る事を考えて下さい。
魔女退治は命懸けです。
守る側が自分を守れないでは話になりません」
「うん………」
「………」

さやかが、刹那の言葉が途切れた事に気づく。
刹那は、鋭い眼差しであらぬ方向を見ている。

「………何をしているんですか………」
「ご、ごめんなさい」
「いえ、あなたの事ではありません」

押し殺す様に呟く刹那にさやかが頭を下げるが、
刹那ははっとした様にさやかに答える。
そして、刹那は夕凪の鯉口を切り、目を閉じて片膝をつく。
61 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:44:44.85 ID:6b1Zx9Kd0

「………動き出した、様ですね」
「う、うん」

「巴さん、近くまで来ていますね救兵衛」
「そうだね、孵化が確定して魔力をセーブする必要がなくなった。
僕がテレパシーで案内しているからすぐに到着する筈だよ」

「では、私は急用が出来ましたので失礼します」
「へ?」
「もうすぐ巴さんが到着しますが、
くれぐれも油断の無い様に。
救兵衛、巴さんにもそう伝えて下さい」

「分かった」

キュゥべえが答え、さやかが言葉の意味を理解した頃には、
刹那はばびゅうんっとばかりにその場から姿を消していた。

ーーーーーーーー

「な、何?」

キュゥべえからの事前連絡を受け、
猛スピードの刹那を見送りながら巴マミが目をぱちくりさせる。
刹那はそのまま、夕凪で使い魔を蹴散らし
マミとまどかが元来た方向へと吹っ飛ぶ様に姿を消す。
マミも又、魔力をセーブする必要がなくなった事で
魔法少女に変身して使い魔を一蹴しながら
まどかと共に最深部へと駆け抜ける。

「お待たせ」
「間に合ったぁ」

ドアを開き、結界の最深部に踏み込んだマミと
でっかいケーキの様な物陰に隠れたさやかが言葉を交わす。
62 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:48:05.11 ID:6b1Zx9Kd0

「桜咲さんは?」
「結界の入口の方に走って行ったけど」

さやかの問いに、マミが答える。

「まさか、逃げた?」
「まさか………」
「元々、魔女退治は魔法少女の仕事、そのための見返りもある。
今まで美樹さんを守ってもらっただけでも御の字よ」

さやかの言葉にまどかは疑問を覚えるが、
マミは筋論で話を進める。

「気を付けて、出て来るよ!」

キュゥべえの叫びと共に、グリーフシードが孵化して魔女が姿を現した。

「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」

一見するとちょこんと座った小さなぬいぐるみの様な魔女、シャルロッテを、
マミはマスケットでぶん殴り銃撃しリボンで浮上させて、

「ティロ・フィナーレッ!!」

一際でっかい設置型大砲の直撃弾を食らわせた。

「やったあっ!!」

見事な手際からの鮮やかな一撃に、
マミの展開したバリアで守られながらまどかとさやかが歓喜の声を上げる。

「おおおおお………」
「え?」

マミが一瞬戸惑ったのは、聞こえて来た雄叫びと自分を覆う黒い影。
63 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:51:48.57 ID:6b1Zx9Kd0

「神鳴流秘剣・百花繚乱っ!!!」
「え………えあららあっ!!!!!」
「マミ、さん?」

まどかとさやかが、
桜華と共に突き抜ける強烈な衝撃波に吹っ飛ばされるマミの様を、
動きに沿って首を動かし眺めている。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」

次の瞬間には、マミのいた辺りに立った刹那が
すぐ側に迫っていたぬいぐるみから空飛ぶ人食い怪物に変化した
シャルロッテに一撃を食らわせていた。

「匕首・十六串、稲交尾籠っ!!」

複数の匕首と共に封印術が発動し、
匕首と共に放たれた幾つもの封印の帯がシャルロッテを縛り上げる

「一体何をしているんですかっ!?」
「た、助かったわ。
それにしても、容赦なく吹っ飛ばしてくれたものね」

刹那の怒声に、ようやく立ち上がったマミが答えた。

「ええ、達人なら一日一発や二発程度では死なないと
師匠からも教わりましたから。
それぐらい危険な………」
「ティロ・フィナーレッ!!」

刹那が本格的に何かを言おうとした刹那、
その横を、マミが発砲した
大砲レベルのデリンジャーの砲弾が通り過ぎた。

「斬鉄閃っ!!」

そして、身近に迫っていたシャルロッテを刹那が一撃する。
64 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/19(水) 03:55:07.36 ID:6b1Zx9Kd0

「あの、捕縛結界を?」
「ええ、私もそれでやられかけた」

驚きを示した刹那にマミが言った。

「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!」
「ティロ・フィナーレッ!!!」

二弾攻撃の結果、刹那は分析を完了した。

「つまり………脱皮型の魔女で外側は想像以上に頑丈」
「そういう事、みたいね」

肩で息をする刹那とマミが見解を一致させている間にも、
シャルロッテは結界を飛び回り貪欲に獲物を狙う。
刹那が跳躍して一撃を加え、マミも砲撃に出るが決定打が出ない。

「何を、しているんですか?」
「えっ?」

刹那がぽつっと呟いた怒りの籠った言葉に、
マミが聞き返した。

「何をしていると聞いている。
何をしているんですかあなたはっ!?
あなたは、守るためにいるんでしょう、
今は、影ながらに拘る時ですか?
そこで指を咥えて見ている心算ですかっ!?」

==============================

今回はここまでです>>56-1000
続きは折を見て。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/19(水) 13:51:33.69 ID:bucnTAhbO
せっちゃんだけではつまらへんよ!ネギ君も是非出て来てほしいな!
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/22(土) 12:57:54.60 ID:TBHDj2tW0
懐かしいなおい
と言ってもUQアニメ化するんだったか
67 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:30:49.55 ID:iSeDpulU0
感想どうもです。

今の名探偵コナンの監督って、昔ネギま! も撮ってたんですなぁ

ほな、今回の投下、入ります。

==============================

>>64

「斬鉄閃っ!!」

叫ぶや否や、桜咲刹那はすぐ側に迫っていたシャルロッテに夕凪を振るう。
その時には、巨体に似合わぬ俊敏さで
「気」の衝撃波を交わしたシャルロッテが結界の空高く飛び上がっていた。

「ひっ!?」

ぐわっ、と、自分達に向かって来たシャルロッテを見て、
鹿目まどかと美樹さやかが抱き合い震え上がる。

「!?」

その爆発音に、巴マミは目を見張った。

「ほむら、ちゃん?」

バリアに囲まれたまどか、さやかの前方に立っていたのは、
魔法少女姿の暁美ほむら。
そして、素早く迫撃砲を構えたほむらが、
狙いをほむらに変えたシャルロッテを砲撃する。
見ると、ほむらの周囲、まどかとさやか、ほむらがいる
台地の様な一角には大量の迫撃砲が林立していた。

「どうしてあの娘が?」
「斬岩剣っ!!」

目を見張ったマミの前で、
刹那の夕凪がシャルロッテを一撃していた。
68 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:35:55.13 ID:iSeDpulU0

「詮索は後っ!
暁美さん、その二人の防御頼んでいいですねっ!?」
「そうさせてもらうわっ!」

刹那の問いにほむらが怒鳴り返した。

「巴さん、そろそろキメますよっ!」
「分かったっ!」
「神鳴流奥義、雷鳴剣っ!!」

同意が取れるが早いか、
刹那の夕凪がシャルロッテに雷撃を伴う強烈に一撃を繰り出す。
逃れようとして台地に向かったシャルロッテを、
ほむらが迫撃砲で迎え撃つ。

「巴さん、いいと言うまでそこを動かないで下さいいいですねっ!」
「え、ええ。ティロフィナーレッ!!!」

言ってる先から急接近して来たシャルロッテに
マミが抱え筒の一撃を食らわせるが、
やはり決定打にはならない。

「匕首・十六串………」
「その技はっ………!?」

刹那を援護しようとしたマミが、刹那に手で制せられて出遅れる。
台地のほむらも目を細めた。

(まさか、桜咲刹那………)

「攻略法」を知っているほむらの勘が働く。
69 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:41:41.96 ID:iSeDpulU0

「刹那さんっ!」
「さっ、さささささっ」

バリアの中の二人が卒倒寸前に陥る。
ばくんっ、と、シャルロッテの口が動いた時には、
刹那は目にも止まらぬ速さで横っ飛びしていた。

「稲交尾籠っ!!!」

次の瞬間、シャルロッテの全身がぴんっ、と、直立していた。
その口からは、本来封印に使う稲妻の帯が
大量にはみ出して稲光を帯びていた。

「やらせてもらうわよっ!!」

マミの叫びに刹那は小さく頷きマミは跳躍していた。
バンバンバンッ、と、側面を銃撃され、
封印帯をぶはっと吐き出したシャルロッテはそちらを向く。

「ティロ………」

マミは、シャルロッテがぐわっと大口を開くのを見据えていた、
リボンを手にしたマミが、後方に跳躍した。

「フィナーレッ!!」

魔砲弾が、真っ直ぐシャルロッテの大口の中へと吸い込まれる。
70 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:46:51.79 ID:iSeDpulU0

ーーーーーーーー

「助かったぁ………」

バリアが解除され、さやかは腰を抜かして荒い息を吐いた。

「どれだけ危険な事か、少しは骨身に染みたかしら?」

一瞥したほむらに、さやかは小さく頷いた。

「あ、あの、有難うほむらちゃん」

怖々と口を開いたまどかに、ほむらはふんっと背を向けた。

「………暁美さん、グリーフシード」

ほむらが、マミに差し出されたグリーフシードを奪い取った。

「大口叩いて私を拘束した割には随分な苦戦だったわね、
一般人二人連れ歩いておいて」
「このっ………」
「それに就いては言い訳の仕様も無いわ」

マミがさやかを制し、素直に応じた。

「桜咲さんがいなければ私の命はなかった」
「その場合、二人の命も無かった………
って、分かってるのかしら、巴マミ、っ」
「身に染みて」
「確かに、その点は考えた方がいいですね」

マミの背後から現れた刹那が付け加えた。

「私がいる時は最悪でも二人を逃がしますが、
それ以外の時は本気で考えた方がいいです」
「そうさせてもらうわ。
二人にも怖い思いをさせて、本当にごめんなさい」
「い、いえ」
「あたし達が付いて来たんですから」

頭を下げるマミを、まどかとさやかが取り成す様に言う。
71 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:50:12.80 ID:iSeDpulU0

「それはそれとして、どうやってあの拘束を?
まさか、そこまでの魔法を?」
「私が破壊しました」

マミの言葉に、刹那がしれっと言った。

「桜咲、さん?」

「先程引き返した時に、暁美さんを封じていた封印の鍵を一撃して、
それからこちらに戻って来ました。
かなり頑丈な術式でしたので、完全な破壊は無理でしたが、
あれだけ傷がつけばこじ開けるのは時間の問題で」

「どうしてそんな事を?」

「私がそれがいいと判断しました。
実際、今回も助力が得られた訳ですし、
彼女の行動パターンから見て無暗に敵対するのは得策ではない、
少なくとも魔女退治に於いて直接対立した事はない。
私はそう見ましたが」

刹那の言葉に、マミは顎を摘んで黙考する。

「私は帰らせてもらう」
「助かりました」

ファサァと黒髪を払って踵を返すほむらに、刹那は丁重に声をかける。

「分かったわね」

すれ違い様に、ほむらがまどかに声をかけた。

「桜咲刹那は元々よそ者、魔女と戦う魔法少女ですらない。
巴マミがどれだけ強くても何が起きるか分からないのが魔女との戦い。
次に何かあったら、今度こそ命は無いわよ。
それが分かったら、これ以上関わるのはやめなさい」

押し黙ってしまったまどかとさやかをしり目に、
ほむらはその場を後にしていた。
72 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:53:50.17 ID:iSeDpulU0

ーーーーーーーー

「お待ちどう様」

今日は何となく大人しいマミルームのリビングで、
マミが紅茶とケーキを用意して来た。

「いただきます」
「いただきまぁす。
なんか、ほっとしたらお腹すいちゃった」
「そうだねウェヒヒヒ………」

さやかの感想は、まどかの実感でもあった。

「………少し、浮かれすぎてたかも知れない。
もう、ひとりぼっちじゃないんだって。
だから鹿目さん、さっきの話は一度保留と言う事で、
お互い、少し頭を冷やして考えた方がいいわ」

「………分かりました」
「さっきの話?」

マミとまどかの会話に、刹那が反応を示した。

「………はい、私も魔法少女になろうかな、って思ったんですけど」
「願い事が決まったんですか?」
「いえ」
「よく、分かりませんね」
73 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 02:57:14.69 ID:iSeDpulU0

「私………昔から、得意な学科とか、人に自慢出来る才能とか、何にもなくて。
これから先、ずっと、人に迷惑をかけていくのかなって。
それが嫌でしようがなかったんです。
でも、マミさんと会って、誰かを助けるために戦っているのを見せてもらって、
同じ事が私にも出来るかも知れないって言われて、
何よりも嬉しかったのはその事で」

「………」

「だから私、魔法少女になれたら、それで願い事は叶っちゃうんです。
こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、
胸を張って生きて行けたら………それが一番の夢だから………」

「何を、焦っているんですか?」

まどかの話を聞き、紅茶を傾けた刹那が口を開いた。

「私達は、まだ中学生です。
魔法少女はかなり突発的な契約を行っていますが、
大部分の人間と言うものは、
人間としての力で努力して未来に向けて生きています。
そこで、地味でも派手でも大きくても小さくても某かを成し遂げています。

確かに、魔法少女の契約は期間限定。
そして大きな素質を持っているあなたであれば
大きく人間離れした一つの成果を上げる事が出来るかも知れません。

しかしです、率直に言います、
少なくとも今、あなたが命懸けの賭けをすると言う理由が、
理屈で言えば理解に苦しむ。
リスクとメリットのバランスが滅茶苦茶ですから。
感情としては分からないではありません」
74 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 03:01:40.92 ID:iSeDpulU0

「あたしもそう思う」

同意したのはさやかだった。

「うん、今のまどかがわざわざ命懸けの契約をする理由が分からない、
って、そう思うのが当たり前だと思う。
今日みたいなの見たら特に。

なんかその、もやもやするのって分からないでもないけどさ、
こないだも言ったでしょ、幸せ馬鹿で何が悪いって。

何て言うか、大した願いがないんだったらそれでいいじゃん、
それだけ幸せだって事だし、少なくとも死ぬよりはさ………
あ、マミさんには申し訳ないかも知れないけど」

「ううん、美樹さんの言う通りよ。
改めて実感した、これは命を懸けた契約だって。
それに見合うもの、その覚悟を求めるのはむしろ当然よ」

「大体、迷惑なんてあたしだってかけっぱなしよ。
まどかにだって色々無茶付き合わせたしさ。
でも、魔法少女じゃなくたって、
まどかはあたしの嫁になるのだー」

「ウェヒヒヒッ!?」
「だから、今回はこうやって、生きてて良かったって事で、
急ぐ事ないよまどか」
「う、うん」

さやかに抱きすくめられ、苦笑いを浮かべながらもまどかは頷いた。

「私もそう思います」
「正直ちょっと惜しい、けど、
私自身揺れてると先輩として責任持てないってのもあるし」
「はい、もう少し、考えてみます」

みんなが真摯なのが分かった。
自分でも幼いと思った思いを、決して馬鹿にしたり無碍にしたりはしなかった。
返答したまどかには、今はそれで十分だった。
75 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 03:05:01.04 ID:iSeDpulU0

ーーーーーーーー

「さて」

とうに陽も暮れた見滝原市内の路上で、
暁美ほむらは曲がり角の先にいた桜咲刹那に声をかけられた。

「今度はあなたが追いかけて来たのかしら?」
「そういう事になりますね」

ほむらの問いに、刹那が応じる。

「ここを通るであろう事も分かっていましたから」
「何故?」
「それが、あなたの行動パターンだからです」

ほむらは、落ち着き払った刹那と対峙していた。

「あなたは守るために行動している、そういう事ですね?」
「何の話かしら?」

刹那が年上だから、と言う事もあるのだろうか、
刹那の言葉、眼差しは丸で全てを見透かす様で、
ほむらは口先でとぼけながらも心は半ば以上圧倒される。

「あなたの行動パターンから、大体の推測は出来ます。
陰ながら見守る、そしていざとなったら手も出す。
それがここまでのあなたの行動パターンです。
あなたは、一貫して守るために行動している」
「あなたには関わりの無い事よ」

そう言いながらも、意思の力でじっ、と、刹那の目を見据えながらも、
ほむらの足は意思が無理に留めなければ後退しそうになる。

「あなたの推論が正しいかどうか、その返答も拒否する。
邪魔をすると言うのなら容赦はしない」
「あくまで私と争いますか?」
「あなたが割り込んで来ると言うのなら」
「そうですか」
「もういいかしら?」

返答も聞かず、ほむらは歩き出す。
76 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 03:08:18.38 ID:iSeDpulU0

「一つ、忠告します」

すれ違うほむらに刹那が声をかける。

「守る場合、距離感が大事だと言う事はあります。
しかし、陰ながらに拘り過ぎると、
却って見えなくなる事もあります」

ほむらが足を止める。

「………結界で助けてもらったお礼、言ってなかったわね。
………ありがとう」

振り返り、頭を下げるほむらの前で刹那も小さく礼を返す。
踵を返してほむらが立ち去るのを、刹那は黙って見送る。

ーーーーーーーー

見滝原市内、とあるビルの屋上で狙いを定めるレミントンM700。
そのスコープの中心には、
マンション建築現場側を歩く桜咲刹那がとらえられていた。

ーーーーーーーー

風見野市内、公園付近。
ソウルジェムを掌に乗せた佐倉杏子がニッと犬歯を見せる。
夜の公園に踏み込み、変身しながら結界に飛び込んだ。

「そらっ!」

槍を一閃、まずは使い魔を蹴散らす。

「昨日は妙な邪魔が入ったからな。
いい加減、狩らせてもらうぜっ」

「………アぁ…亜………イ…ぃ異………ウぅ右………
………エ…ぇ…餌………オ…ぉ於………」

==============================

今回はここまでです>>67-1000
続きは折を見て。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/29(土) 04:37:16.52 ID:0gUqyKimO
レジェンドソルジャーライダーズ・アギト 3大ライダー超決戦ビデオ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493147441/

よろしく!
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/29(土) 04:38:02.46 ID:0gUqyKimO
ベジータ「今年のGWは結成☆アイカツ8!2016だとーー!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493392866/

よろしく!
79 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 03:47:12.28 ID:yUE7Pls80
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>76

ーーーーーーーー

龍宮真名は、レミントンM700を置いて床ギリギリに横っ飛びしていた。

「!?」

美国織莉子は、自分と真名との間で空中に展開した水晶球が
次々とあらぬ方向に弾け飛ぶのを見ながら、
自らも横に跳躍し、新たな水晶球を飛ばす。

「?」

真名を狙って飛んだそれは、何かが弾けて微妙に軌道が反れる。
その時には、真名が向けた銃口が織莉子を捉えていた。

「オラクルレイッ!!」

ドドドッ、と、発砲された自称モデルガンデザートイーグルの弾丸を
魔法少女出力で跳躍した織莉子が交わし、
織莉子が放った水晶球が身を交わした真名の側を通り
今二人がいるビル屋上の鉄柵に抉り込まれた。

(特別速い訳ではない。こちらの攻撃をかなり際どく回避して
こちらに吸い付く様な攻撃。
勘がいい? いや、マギカであれば………)

デザートイーグルの銃口を上に向けた真名と
周囲に水晶球を浮遊させる織莉子がじりっ、じりっ、と油断なく向き合う。

「美国、織莉子か?」

口に出した瞬間、真名を伝う汗が、つーっと一筋追加された。
80 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 03:52:26.54 ID:yUE7Pls80

「私の事をご存じで?」
「一応、現地情勢は頭に入れる事にしている。
マギカ、魔法少女か?」
「あなたは魔法少女ではない。
しかし、一般人と言うには無理があり過ぎる」

すっ、と、一度両膝を曲げ伸ばし直した織莉子が言った。
ピン、と、織莉子が指を弾き、
返却のために飛来した五百円玉を真名が左手で受け取る。

「まして、ここからこちらの駒を狙い撃ちしよう等と言うのであれば、
それは、宣戦布告以外のなんなのですか?」
「お見通しか」

織莉子の言葉に、真名はふっと息を吐いて言った。

「そちらが仕掛けて来た事情は何だ?」
「魔法少女の事から手を引きなさい、
私達は救世を成し遂げる」
「後は剣と銃で語る所か?」
「この辺りにしておきましょう。
余りここに長居はしない方がいい。但し」

真顔で見据えられた瞬間、
真名は織莉子を撃ち抜こうとした我が手を心で制していた。

「警告は今回だけです」
81 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 03:58:28.51 ID:yUE7Pls80

ーーーーーーーー

「美国織莉子?」

見滝原市内のアパートの一室で、桜咲刹那はスマホに向けて問い直した。

「ああ、最近自殺した見滝原市議会議員の娘だ」
「それが、マギカだと?」

刹那が、再び問いを発する。

「お前が言っていた長爪のマギカの仲間、
彼女は駒だと言っていたがな」

「その、美国織莉子がそっちに行ったと言うのか?」

「ああ、その事実と彼女の戦闘スタイルから言って、
マギカとしての能力は恐らく予知の類、
程度は分からないが厄介だぞ」
「まあ、そうだろうな」

そう言いながら、刹那の口調は落ち着いていた。
82 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 04:01:51.71 ID:yUE7Pls80

「マギカは強い、
少なくとも力だけで言えば私達でも生半可に戦える相手ではない」

「その様子だと、他にもやり合ったのか?」

「ああ、流石に地元の主となると実力も相当なものだ。
しかも、今のこちらの魔法を超えたものも素質次第願い次第と言った所か。
長爪とその主人との衝突は不可避だろうが、
まあ、上手くやるさ。手伝い感謝する」

「何、その辺りの話はついてるからな。
只、気を付けろ」

「ああ」

「美国織莉子、あいつは強いぞ。
戦闘力も侮れないが、
人を引き付け、呑み込む何かを持っている。
何処か脆さが見えるが、だからこそ強い。
出会いによっては向こうに従っていたかも知れないな」

「覚えておこう」
83 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 04:05:27.63 ID:yUE7Pls80

ーーーーーーーー

「尾ッほ頬ぉー、肺ホー
蘭・卵・覧♪乱♪」

風見野市内の結界内で、
佐倉杏子は魔女退治の真っ最中だった。

そこそこヴェテランである杏子だったが、
今回は、彼女に言わせればなかなかにウザイ相手だった。

巨大な顔から手足や別の首が伸びるゾンビの様な外見だが、
倒された振りをして復活する、
伸びる首が多方向から噛みついて来る、と、実に鬱陶しい。

対して、杏子もヴェテランらしく、
相手に合わせて多節棍に変化させた槍を広く展開し、
多面展開する相手に範囲攻撃で反撃する。

「ウぐ虞、ヒ魏ぎぎ………」

かくして、魔女は目の前で赤い体液を垂れ流して呻いている。
杏子も少々疲れを感じる。
勝利は間近、後はこの働きに見合うグリーフシードが落ちるかどうか。
頭の片隅でそれを思いながら、
槍を構えた杏子はタッ、と、地を蹴った。

==============================

今回はここまでです>>79-1000
続きは折を見て。
84 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 01:43:49.89 ID:ghfpEpVF0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>83

「血?」

杏子は、魔女から流れ出した体液の奇妙な動きに気付く。

「目くらましか? しゃらくさいな」

杏子が、こちらに向かって来た液体を槍で払う。

「!?」

薙ぎ払った、そう思った血は一瞬で枝分かれして、
何本もの太い触手と化して杏子の両腕両脚に絡み付きながら
強力な溶解力を展開する。

(まいったな、これ死ぬじゃん………)

両腕両脚をまともに切断され、走馬燈も浮かばない。
シケた諦めが杏子の心をよぎったその時、
杏子に迫っていた魔女本体が、飛来した光る帯に巻き取られた。

(な、っ?)

バシイッ! と、高圧電流の様に強力な魔力が
光る帯から魔女を一撃する。
それと共に、何処からともなく澄んだ、独特の歌声が聞こえて来る。

杏子の場合育ちの関係から特に縁遠かった訳だが、
聞こえて来たのは御詠歌だった。
魔女を締め上げていた帯の光が強まり、
反比例する様に、魔女はぐずぐずと腐れ落ちて、消滅した。

「………いぶきどのおおはらへ………」
85 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 01:49:31.25 ID:ghfpEpVF0

ーーーーーーーー

「ん、んー………」

むずかっていた近衛木乃香が目を開く。

「気が付いたか?」
「ああ、あなた」

自分を見下ろす佐倉杏子の顔を確認し、
木乃香は杏子の腿の上に乗せていた頭を上げる。
そして、周囲を確認する。
廃屋、教会だろう。
教会の廃屋の長椅子に横たわって眠っていたらしい。

「ここは?」
「見ての通りの空き家だよ。
あたしの事を助けてくれたみたいだけど、
そのままぶっ倒れて寝込んじまったから、そのまま連れて来た」
「それはおおきに」
「いや、礼を言うのはこっちの方だよな………」

座り直してにっこり頭を下げる木乃香に、
ペースを崩された思いの杏子が応じる。

「で、あんた一体何なんだ?
どうも魔法少女じゃないみたいだけど、
普通の人間ってだけでもないよな」
「そやなぁ………敢えて言うなら魔法使い、やな」

「魔法使いだ? いや、まあ、確かにそう言われても否定は出来ないな。
取り敢えず、分かる様に説明してもらおうか?」

「んー、まあ、つまり、魔法使いはあなた達マギカ、魔法少女と比べるなら、
元々の才能と特殊な修行で魔法を身に着けて
影で活動している人達、とでも言うんかな。
うち、あんまり攻撃魔法は得意やないんですけど、
さっきは急ぎで全部終わらせなあかんて、少し無理してもうて」
86 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 01:54:47.13 ID:ghfpEpVF0


「いや、無理ってレベルじゃねーよ。
魔法使いがどれぐらいかは知らないけど、
見た感じ魔女を魔力のごり押しだけでぶっ潰して、
それであの大怪我治してくれたんだからさ。
それはホント感謝する」

「おおきに。ほんまやったらそちらさんとは余り関わる事はないんやけど、
少し事情がありまして」
「事情?」

「はいな。人を探すのに見滝原の魔法少女と接触するつもりやったけど、
電車乗り過ごしてしもて。
それで、この辺りでも少し情報を集めようと思ってな。
それで先日、公園で母子連れを狙っている使い魔を見かけて、
取り敢えずこっそり追い払って、
後は地元のマギカに任せよ思うて見張ってたんやけど、
途中で魔女に気付かれてもうて」

そう言って、木乃香はごそごそとポケットを探る。

「これ、その時のグリーフシード。
うちには必要ないものやし、地元の人が使うのが筋やから」
「ああ、それなら遠慮なく」
「それで、佐倉さんの事を探してたら魔女らしき魔力を感じて、
それで、さっきの現場に行き合わせた訳で」
「じゃあ、これ返すためにわざわざ」
「はいな。マギカの人達にとっては大事な事や聞いてますから」

「へっ、律儀だねぇ………人を探して見滝原に?」
「はいな、恐らくあちらの魔法少女に関わっているだろうと」
「そいつも、魔法使い?」
「うちの大切な仲間、友達です」
87 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 02:01:10.08 ID:ghfpEpVF0

「なるほどねぇ………
そう言や、あたしの名前知ってるのか?」
「あの時、後から来たマギカの人が言うてました、
佐倉杏子さん、で合ってます?」
「ああ」
「うちは近衛木乃香、言います」

「このか、ね。
なんか、妙な連中にうろつかれたくはないんだけど、
あたしの命の恩人ではあるからな。
見滝原の魔法少女、それならどの辺を当たればいいか、
大体見当もつく。後で教えるよ」

そう言って、杏子はごそごそと何かを探り始めた。

「くうかい?」
「おおきに」
88 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 02:04:45.25 ID:ghfpEpVF0

ーーーーーーーー

「きゅっぷい」
「少し、外してくれるかしら?」

美国邸で、
漆黒に近づいたグリーフシードを飲み込んだキュゥべえに織莉子が告げた。

「織莉子っ! 駄目だよ無理したら。
戦うんだったら私が………」
「ごめんなさい、今回はそれだと意味が無かったから」

「ああー、狙撃、だったっけ?」
「ええ、あの刀使いをあなたが狙う、
そこを狙ってスナイパーが狙撃する」
「それを先読みして織莉子が………で、そのスナイパーは?」

キリカの問いに、織莉子が首を横に振る。

「一流のスナイパーは戦うためのあらゆる能力を身に着けている、
これは本当みたいね。それとも、彼女が別格なのかしら?」
「女だったのかい?」
「ええ、一見凄く大人びても見えるけど、私達と同年代ね」

「そいつ、魔法少女?」
「魔法少女ではない、だけど、普通の人間でもない。
刀使いと同類と思っていい。
あの場では、警告して引かせるのがやっとだった」

「とにかくっ! 織莉子はもうこれ以上危ない事をしたら駄目だからねっ!!
刀使いだろうがスナイパーだろうが、織莉子がやれと言うなら私が刻むよ」
「ありがとう、キリカ。
今回も、グリーフシードを集めてくれただけでも」
「私は織莉子の矛であり盾なんだから」

==============================

今回はここまでです>>84-1000
続きは折を見て。
89 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:00:34.20 ID:CQn3FTMh0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>88

 ×     ×

「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」

放課後、帰宅した巴マミは、
自宅を訪れた後輩を快く迎えていた。

「あら、今日は一人?」
「はい、もしかしたら後で来るかも知れないって」
「そう」

玄関先で言葉を交わし、
鹿目まどかはリビングへと足を進める。

「刹那さん」

まどかに声をかけられ、
リビングで正座していた桜咲刹那が小さく頭を下げる。

「美樹さんは?」

マミが台所に立っている間に、刹那が尋ねる。

「上条君の所。
いいCDが手に入ったって言ってたから。
だから、一人で………」ウェヒヒヒ
「そうでしたか」

意味ありげな笑みと事情を話すまどかに、
刹那もふっと微笑みを返す。

「それじゃあ、そろそろ行きましょうか」
90 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:05:41.64 ID:CQn3FTMh0

ーーーーーーーー

「空振りだったわね」
「そういう日もあります」

逢魔が時の魔女探索で一通り歩き付くし、
繁華街近くの歩道でマミと刹那が言葉を交わした。

「昨日、あれだけの激戦でしたし」
「そうね、たまには早く帰って休ませてもらおうかしら」

刹那の言葉に、マミが応じる。

「鹿目さんは?」
「はい、ちょっと買い物を」
「そう、それじゃあ」

まどかの返答を聞いてマミがにっこり笑い、
刹那が小さく頭を下げて取り敢えず解散となった。

ーーーーーーーー

「?」

ちょっとした買い物を終え、
駅前通りから帰路に就こうとしていたまどかは、
そこで少々不思議な光景を目にしていた。

「仁美ちゃん」

目の前を歩いているのは志筑仁美。
まどかのクラスメイトで小学校時代から仲のいい友達。
だが、ここにいると言うのは、少々不思議な光景。
91 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:10:55.50 ID:CQn3FTMh0

「お稽古事は? ………」

地元でも名士の娘で立場も物腰もお嬢様そのもの。
こんな所にいる筈が無いぐらい多忙な筈ではあるのだが、
まどかは、たった今、思い当たる節を見つけてしまった。

「あぁら、鹿目さん、ご機嫌よぉ」

一見普通でも、長い付き合いのまどかには分かる。
微かに酔っている様な、覚束ない口調。
そして、首筋に「魔女の口づけ」。

「仁美ちゃん、何処に行くの?」
「とても素晴らしい所ですわ。
そうだ、鹿目さんもご一緒に」

そう見えるのか実際そうなのか、
動き出した仁美の動きは、ぎくしゃくと、
まどかには何処か人形染みたものにしか見えなかった。
進行方向を同じくする人が徐々に増加する。

ーーーーーーーー

仁美の後を追う内に、まどかは廃工場の中に入り込んでいた。
工場の作業場らしきスペースには、
仁美を含め相当な人数が集まっているが、
明らかに精気を欠き、それでいて、
得体の知れない希望にその目を輝かせている。

「俺は駄目なんだ………
こんな小さな町工場一つ切り盛りできなかった。
今の時代に俺の居場所なんて、あるわけねぇんだ」

この工場の経営者らしき中年男性が椅子に掛けたままぶつぶつと言い、
その妻らしき女性がバケツを用意する。
女性の行動が、塩素系洗剤と酸性洗剤の混合である事に気づいたまどかは、
本格的に意味不明な供述と共にまどかを制止する仁美を振り切り、
今正に殺人瓦斯を放とうとしていた
バケツを奪い取り、窓へと投げ捨てた。
92 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:14:07.55 ID:CQn3FTMh0

「ひっ!?」

肩で息をしながらほっとしたのもつかの間、
未だ以て正気を失い、ゾンビ的な挙動と化した志筑仁美以下の集団が
今正にまどかをどうにかしようと迫っていた。
とっさに、逃げ出せない程に足がすくんだまどかは、
もう一度、ガラスが割れる音を聞いた。

「失礼」

集団の先頭にいた志筑仁美が、当身を受けてくずおれた。
気付いた時には、まどかは、
下から太ももと背中を支えられる形で宙を舞っていた。

「刹那さんっ!?」
「ご無事でしたか」

まどかを抱きかかえたまま、
集団から離れた場所に着地した桜咲刹那が小さく頷いて言った。

「あ、ありがとうございます」
「これは、魔女ですか?」
「は、はい、魔女の口づけが」
「そうですか」
「刹那さんっ!」

野太刀夕凪の鯉口を切った刹那にまどかが叫ぶ。

「大丈夫、無傷は難しいかも知れませんが、
出来る限り無事に終わらせます。
秘剣・斬空閃っ!!!」

早速に、「気」の螺旋があらぬ方向へと吹き飛ぶ。
93 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:17:38.52 ID:CQn3FTMh0

「逃げて下さい、ここは私が」

「気」の一撃を受け、吹き飛ばされた入口シャッターを見て刹那が言った。

「えっ、あ、あのっ………」
「魔女は奥ですね。この程度の一般人、なんとでもなります。
………足手まといです」
「は、はいっ!」

刹那の言葉を聞き、まどかがたたたっと入口に向かう。

「斬岩剣っ!!」

早速に、集団が寄って来る前に刹那が「気」を一撃し、
精神的ゾンビ集団を牽制する。

ーーーーーーーー

「?」

昨日は激戦、
今日は割と埃っぽく探し回った割には空振り。
帰宅して、夕食後一風呂浴びた巴マミは、
リビングの鏡台に向かう途中でスマホの着信に気付いた。

「メール? 鹿目さん?」

==============================

今回はここまでです>>89-1000
続きは折を見て。
94 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 03:43:54.11 ID:pJ6Kx2c60
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>93

巴マミは一度鏡台前の椅子に掛け、
スマホのメールを確認する。
パチンと指を鳴らし、
後ろ髪に魔法少女カールを展開しながら立ち上がった。
そして、その場にバスタオルを打ち捨てたマミは、
ちょっと嘆息して明日の用意の制服他一式に手を伸ばす。

ーーーーーーーー

「暁美さんっ」

その瞬間の、暁美ほむらが見せた嫌そうな顔は、
先輩の度量として見なかった事にする。
取り敢えず、時間節約のために
途中途中屋根を飛び飛びショートカットしながら駅前近辺に到着した巴マミは、
そこで目についた暁美ほむらに向けて叫んでいた。

「何処に行くの?」
「関係ないわ」
「奇遇ね」

ダッと走り出したほむらと並走しながらマミが言った。

「鹿目さんからメールが入った。
魔女らしきものがこっちの方向に誘導してる、ってね」

「!? まどかはっ!?」

「魔女に口づけされた友達を放っておけないと、
こっちの方向に向かった。それ以上の事は分からない」
「………この先に、おあつらえ向きの廃工場があります」
「オッケー」
95 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 03:49:06.04 ID:pJ6Kx2c60

ーーーーーーーー

「これは………」

廃工場に入ったマミは、死屍累々の有様に目を凝らす。

「………全員、気を失ってるだけみたいね………」

次の瞬間、マミの背後から一続きの銃声が響く。

「使い魔」

頭上で撃ち抜かれたものを把握し、マミが呟く。

「発砲した以上長居は出来ない、速く片付けましょう」

マミがその言葉に頷いた頃には、
M16を抱えたほむらが壁沿いに走り出していた。

ーーーーーーーー




ほろ



ほろほろ



ソウルジェムで魔力を感知し、
ドアの一つを空けてその奥の魔女の結界に飛び込んだ暁美ほむらは、
一瞬、目の前の光景に立ち尽くした。
96 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 03:55:03.65 ID:pJ6Kx2c60

ほろ



ほろほろ



ブチッ


ブチッ ブチッ



「くっ!」

とにかく、ふわふわと降下して来る、
薄気味悪い天使ギミックの様な使い魔をM16で追い散らす。

「ティロ・フィナーレッ!!」

そんなほむらの背後から、
接近していた魔女を狙ってマミが砲撃をかけたが
魔女は間一髪、使い魔を巻き込みながらもその一撃を回避する。



ほろ



ほろほろ


ブチッ



ブチッ ブチッ


97 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:00:19.96 ID:pJ6Kx2c60

ドン、ドンドンッ、と、迫る使い魔を使い捨てマスケットで片づけながら、
マミはじろっと周囲を見回す。

「あっちねっ」
「気を付けてっ! この魔女は」

何処かサイケデリックで視界の良くない結界の中、
魔女本体の気配を察知してマミが飛び出す。

「このっ!」

一旦M16を放り出したほむらが、ゴルフ用アイアンを振るう。
ここの使い魔は案外面倒くさい。
浮遊しながらゆらゆらと接近していた魔女を一度牽制し、
さっと米軍仕様M9拳銃を抜いて使い魔を撃ち抜く。



ほろ



ほろほろ



ブチッ


ブチッ ブチッ


ほむらが少々使い魔のペースにはまっている間にも、
マミは空飛ぶモニターとでも言うべき魔女本体を追って
空中に次々と生じせしめたマスケットを拾っては撃ち拾っては撃ち、
ドン、ドンドンッ、と着実に追い込みをかけていた。

すとーんっ、と、体勢を整え、片手持ちしたマスケットを真正面に、
その射線に魔女を捕らえてタイミングオッケー。
ここでど真ん中撃ち抜いて、一気にティロ・フィナーレと、
マミの脳裏にはその道筋が一直線に描かれていた。
98 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:03:34.05 ID:pJ6Kx2c60

ほろ


ほろほろ


巴マミが、ぱちくりと瞬きをした。

「お父、さん」



ブチッ



ブチッ ブチッ



「お父、さん、お母さん………」

「私、一人だけ、願った………」

「あの子、助けられなかった………」



ほろ



ほろほろ



ブチッ



ブチッ ブチッ

99 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:06:39.44 ID:pJ6Kx2c60

「巴マミ、桜咲刹那、何を………」

苦り切った暁美ほむらが、
気配に気づいてハッとそちらを見る。
その時には、
魔女はほむらのド真ん前に存在していた。

ヤバイヨネー


シンジャエバ


イッテクルネ


ハンタイダワ


ミンナシヌシカ


バカナワタシヲ


「こ、のっ………」

ほむらが、意思の力を振り絞り拳銃を構え直す。


ウレシイ、ナ



「あああああーーーーーーーーーっっっっっ!!!」

ほむらが、絶叫と共に、斜め下の床?に向けて拳銃を発砲する。
その、無意味な行動と共に、すとん、と、両膝から力が抜けた。
ぶんぶんっ、と、ほむらが頭を振る。
だが、その時には、禍々しい気配は肌に感じそうな、
そんな所まで接近していた。
100 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:10:34.45 ID:pJ6Kx2c60

「!?」

光を、見た。
眩しいものを感じたほむらが顔を上げると、
小型のオーロラ、光る帯の様なものが、
獲物に迫っていた使い魔達を一掃していた。

「なぁ………何してるん?」

他人から言われる事もあって、最近の暁美ほむらは、
己の黒髪には少々自信を持っている。
しかし、ころころと穏やかな声に振り返ったほむらが
そちらに見たのも又、実に見事な長い黒髪だった。

「何してくれたんやろなぁ」

ひゅんっ、と、
巨大な槍の様に突き出された光る帯を魔女が辛うじて交わした時、
ほむらが聞いていたのは、のんびり、はんなりと、
トゲ一つ見えないからこそ底の見えない声だった。
そして、ほむらはもう一つの気配に気づく。

「佐倉、杏子?」
101 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:14:00.09 ID:pJ6Kx2c60

佐倉杏子は、それなりに百戦錬磨の魔法少女である。

実戦経験も豊富、魔女相手にも、
頭と能力のある魔法少女が相手であっても、
それなりの強者として通して来た。

何よりも魔女狩り、グリーフシードを欲する強欲な合理主義者。

その強欲な強者佐倉杏子は今、結界の入口近くで
コメカミに汗を伝わせて苦笑いを浮かべていた。



うちの

大事な大事な大事な大事な大事な(以下略

せっちゃんに、



してくれはったんやろなぁ?



==============================

今回はここまでです>>94-1000
続きは折を見て。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 10:15:50.06 ID:x11nPKrko

こ、このかお嬢様たくましくなりましたね…
103 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:09:14.63 ID:Jz5f4gbv0
コメントどうもです。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>101

水干紅袴の近衛木乃香が、するりと周囲を伺う。
伏せたその目は、墨絵に描いた様だった。
それと共に、ミニオーロラの様な光の帯が
しゅるるっと木乃香の手に引き戻される。

(魔力、そのものっ?)

引き戻された光る帯は、光を失い南京玉簾、そして扇へと姿を変える。
光る帯の正体を知ったほむらは戦慄した。

要は、これも非常識に巨大化出来る南京玉簾に魔力を乗せた
半・ビーム兵器みたいなもの。
魔法少女から見てそれ自体に不思議はない。

だが、光と化した魔力そのものの威力、出力が只事ではない。
そして、それを十分コントロールしていると言う技量も。
一差しの舞と共に、爽やかな南風が結界を吹き抜けた。

「くっ!」

頭の中を強制的にかき回していた悪夢が雲散霧消し、
それを感謝する暇もなくほむらは魔女に拳銃を向ける。
木乃香が南風を放ったその隙に、
モニター型のハコの魔女
H.N.Elly(Kirsten)がすうっと木乃香に接近する。

「………アデアット………いでよ、建御雷………」

ほむらの斜め後ろでバズーカ的なものを構えた巴マミは、
一瞬、その視線の先に「鬼」を見ていた。
104 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:14:51.73 ID:Jz5f4gbv0

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!
秘剣・百花繚乱っ!!!」

ほむらとマミと杏子と木乃香は、首を右から左に、
結界の端から端までハコの魔女の行き先を目で追っていた。



神鳴流奥義・斬岩剣!!

雷鳴剣っ!!!

極大・雷鳴剣っ!!!!

神鳴流決戦奥義っ、



雷光剣っっっっっ!!!!!



「えーっと、終わった?」

佐倉杏子がグリーフシードが物理的に存在しているかを懸念していた頃、
結界の入口近くで、
突入早々遠くに輝く汚ねぇ花火を眺めていたさやか☆マギカが呟いた。
105 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:21:24.42 ID:Jz5f4gbv0

ーーーーーーーー

人数だけでもカオスとしか言い様の無い状況を悪化させないために、
間違いなく警察沙汰になりそうな廃工場から撤収。
一同は夜の河川敷広場へと移動していた。

「どうしてここにっ!?」
「お知り合い?」

とにもかくにも叫び声を上げた桜咲刹那に巴マミが問いかけた。

「古くからの友人です」
「魔法使いね」

刹那の紹介と共にほむらが言った。

「どうも、近衛木乃香言います」
「ご丁寧に」

言葉通り、はんなり丁寧に頭を下げる木乃香にマミも礼を返す。

「とにかくお嬢様、どうしてこの様な場所に?」
「んー、それがなー」
106 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:26:30.94 ID:Jz5f4gbv0

ーーーーーーーー

「おーい近衛ーっ」
「はいな」

数日前の放課後、近衛木乃香は学校の廊下で
クラスメイトの朝倉和美に呼び止められていた。

「あんた、桜咲と一緒じゃなかったの?」
「んー、せっちゃんも最近色々忙しいみたいでなぁ」

ころころと笑って答える木乃香だったが、
何処か不思議そうな和美の表情が僅かな不安を呼んでいた。

ーーーーーーーー

「ちょっとこっちの情報網に引っ掛かったんだけど、
最近、見滝原に行ってるみたいなんだよね桜咲」
「見滝原?」

誘われるままに女子寮の和美の部屋を訪れた木乃香は、
そこで思わぬ情報を聞かされた。

「しかも、そっちの学校に転校してるし」
「てんこう?」

取り敢えず、意味が分からなかった。

「書類上は短期の国内留学かな?
取り敢えず、今ん所はあっちの学校に在籍してるって事なってるね」
「はやー、そんな事もあるんやな」
「驚いた?」

和美が、いつものキツネ目で言った。
107 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:30:14.77 ID:Jz5f4gbv0

「まあ、何か事情でもあるんやろ」
「まあー、そんなトコだろねー。
最近、連絡とかは?」
「それがなぁ、仕事関連で少し麻帆良を留守にする、
携帯も出られなくなると思うてそれっきりやから。
うちも邪魔したら悪いてそのままにしてたんやけど」

「んー、防犯関係のデータ、動画解析とかしてみても、
桜咲の行動範囲はその短期留学に合わせて
見滝原市内を割とあっちこっち動き回ってるみたいだね」

「物の怪でも出たんかなぁ、
ネギ君のプランとはちょっと関係無さそうやし」

小首を傾げる木乃香を、
キツネ目の和美は相変わらずおとぼけ可愛いと眺める。

「只、その辺りの事で、ちょっと気になる事があるんだわ」
「気になる事?」

口調もそうだが、木乃香に聞き返された和美は真面目な顔で頷いていた。

「マギカ、魔法少女、って知ってる?」
「サギタ・マギカ?」
「マギカだと、私らならそうなるか」

そう言って、和美はテーブルにコピー用紙を広げてペンを走らせ始める。

「いちおー私もだけど、私達魔法使い、
それとはちょっと違う魔法少女、ってカテゴリーがある訳。
その魔法少女の事を魔法使いと区別してマギカ、って呼ぶ呼び方があるって事」

「魔法少女なー」

「そ、魔法少女。どっちかってとフィクションならビブリオンとか、
そっちの方面が近いかな?
魔法使いとは別に、そういう娘らが実在してるってんだよねこれが」
108 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:33:49.33 ID:Jz5f4gbv0

「はー、そんなんほんまにいるんや」

「うん、私もこっちに関わって裏情報収集してる内に引っ掛かったんだけどね。
で、桜咲、そのマギカ、魔法少女に関わってる節があるんだな」

「せっちゃんが?」

「そ、この見滝原って所がさ、
どうもその魔法少女管轄の事件が増加してるんだわ。
本来、魔法使いはマギカ、魔法少女の事には関わらない筈なんだけど、
どうもこのタイミングが気になるんだよね」

「魔法少女管轄の事件?」

「魔法少女は魔法少女で、
彼女達が専門で退治するモンスターがいるみたいだね。
それがかなりヤバ目な怪物みたいでさ、
こっち側で関わる物の怪はある程度共存出来るけど、
魔法少女の方は、基本、人的被害、はっきり言って人を食う。
しかも市街地に発生するから放っておくとどんどん死人が出るって
物騒な連中らしいんだよねこれが」

「そんな事にせっちゃんが?」

「桜咲って人選に、この時期に長期に見滝原に出向いてるって、
可能性は低くないんじゃないかな。
近衛に伝わってないって事も含めてね」

「うちが? どういう事?」
109 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:37:31.99 ID:Jz5f4gbv0

「さっきも言ったけど、
私達魔法使いと魔法少女は基本、不干渉の立場を取ってる。
実際、今まで関わって来なかった。

なんか、色々利害関係があって、
迂闊に関わるとトラブルになるって事みたいだね。

だけど、見滝原関連の裏情報見てると、
本来魔法少女マターで対処する被害がちょっと洒落にならなくなってる。
だから、こっちから桜咲が派遣された。
仮説を立てるならこの辺りかな?」

「人を食うモンスター………せっちゃんなら………」

「まあ、桜咲なら大概大丈夫だとは思うけどね」
「当然や」
「だけど………」

話を続ける和美は、真面目な顔をしていた。

「魔法少女、って、相当なものらしいよ。
イメージだけど、実際ビブリオンとかそっち方面の魔法少女、
あれが本当にいたら現実的な戦闘力はどうなるかってね」

「んー、かわええ感じで結構わやな事になりそうやなぁ」

「そんなんが対処する怪物が相手だからね。
ま、桜咲なら問題ないとは思うけどさ。
只、見てる限り一人で行ってるのかな桜咲。
こっち側の業界関係者の情報にも引っ掛かりがないって事は」

「そやなぁ………ネギ君やアスナも最近はご無沙汰やし、
うちも聞いてへんかったさかい」
110 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:40:55.97 ID:Jz5f4gbv0

ーーーーーーーー

木乃香から経緯を聞いていた刹那は、手で額を抑えていた。

「それで、相談しようにもネギ君もアスナもいぃひんし、
何か危ない事になってへんかケガしてへんかて」
「そうでしたか。ご心配をおかけしましたお嬢様」

刹那は、嘆息してから深く頭を下げた。

「お嬢様?」

周囲から不審の声が上がった。

「はい、こちらにおわす近衛木乃香、
このかお嬢様は魔法協会トップであり京都の呪術世界を司って来た
近衛家の直系の御令嬢です。
私、桜咲刹那は近衛に仕える桜咲家、協会に属する神鳴流剣士として
このかお嬢様の側近くに仕えるものとしてもがもがもがっ!!!」

「だからー、お嬢様やなくてこのちゃん呼んでぇなて
言うてるんですけどなぁ」

ここの魔法少女達の中でも遜色ないどころか
普通にぶちのめしかねない桜咲刹那が、
口に指を突っ込まれて頬っぺたを広げられている前で、
刹那の頬っぺたを内側から広げる木乃香は京娘の微笑みで応じている。
取り敢えず、かなり「いい性格」のお嬢様であろう事は、
暁美ほむらも理解した。

「それで佐倉さん、あなたはどうして?」

「ああ、その、このかお嬢様にちょっと借りが出来ちまってな。
なんだかんだで、そっちの桜咲さんの所に案内する事になったって事。
見滝原の魔法少女と合流してるんじゃないかって言うからさ。
縄張り荒らすつもりはないから心配すんなよ」

「ええ、分かったわ」

マミと杏子が、適当な距離感で言葉を交わしていた。
111 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:44:49.17 ID:Jz5f4gbv0

「おおきに、有難うございます」

木乃香に丁寧に頭を下げられ、杏子も小さく頭を下げた。

「近衛さんの事情は呑み込めたけど、
美樹さん、あなた魔法少女の契約したの?」
「はい」

マミの質問にさやかが応じた。

「それで、早速魔女探してる内にまどかが走って来て、
魔女見つけたらマミさんにも連絡する予定だったんですけど、
もうマミさんには連絡して仁美も関わってるって言うから
放っておけなくて突入したらあんな感じで。
デビュー戦は又今度、って所ですなー」

「………」

後頭部で手を組んでカラカラ笑うさやかを、
言葉程ふざけてはいないとは分かりつつ刹那は静かに見ていた。

「美樹さん」
「はい」

刹那に声をかけられ、さやかも少々緊張する。

「では、ちょっと変身していただけますか?」
「ん? いいですよ」

さやかがソウルジェムを掌に乗せる。
杏子が怪訝な顔でマミを見る。
どうやら、マミも気付いているらしい。
刹那が左手の夕凪の鯉口を切った事に。

==============================

今回はここまでです>>103-1000
続きは折を見て。
867.37 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)