見滝原に微笑む刹那(まど☆マギ×ネギま!)

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76 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/04/29(土) 03:08:18.38 ID:iSeDpulU0

「一つ、忠告します」

すれ違うほむらに刹那が声をかける。

「守る場合、距離感が大事だと言う事はあります。
しかし、陰ながらに拘り過ぎると、
却って見えなくなる事もあります」

ほむらが足を止める。

「………結界で助けてもらったお礼、言ってなかったわね。
………ありがとう」

振り返り、頭を下げるほむらの前で刹那も小さく礼を返す。
踵を返してほむらが立ち去るのを、刹那は黙って見送る。

ーーーーーーーー

見滝原市内、とあるビルの屋上で狙いを定めるレミントンM700。
そのスコープの中心には、
マンション建築現場側を歩く桜咲刹那がとらえられていた。

ーーーーーーーー

風見野市内、公園付近。
ソウルジェムを掌に乗せた佐倉杏子がニッと犬歯を見せる。
夜の公園に踏み込み、変身しながら結界に飛び込んだ。

「そらっ!」

槍を一閃、まずは使い魔を蹴散らす。

「昨日は妙な邪魔が入ったからな。
いい加減、狩らせてもらうぜっ」

「………アぁ…亜………イ…ぃ異………ウぅ右………
………エ…ぇ…餌………オ…ぉ於………」

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今回はここまでです>>67-1000
続きは折を見て。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/29(土) 04:37:16.52 ID:0gUqyKimO
レジェンドソルジャーライダーズ・アギト 3大ライダー超決戦ビデオ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493147441/

よろしく!
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/29(土) 04:38:02.46 ID:0gUqyKimO
ベジータ「今年のGWは結成☆アイカツ8!2016だとーー!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493392866/

よろしく!
79 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 03:47:12.28 ID:yUE7Pls80
それでは今回の投下、入ります。

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>>76

ーーーーーーーー

龍宮真名は、レミントンM700を置いて床ギリギリに横っ飛びしていた。

「!?」

美国織莉子は、自分と真名との間で空中に展開した水晶球が
次々とあらぬ方向に弾け飛ぶのを見ながら、
自らも横に跳躍し、新たな水晶球を飛ばす。

「?」

真名を狙って飛んだそれは、何かが弾けて微妙に軌道が反れる。
その時には、真名が向けた銃口が織莉子を捉えていた。

「オラクルレイッ!!」

ドドドッ、と、発砲された自称モデルガンデザートイーグルの弾丸を
魔法少女出力で跳躍した織莉子が交わし、
織莉子が放った水晶球が身を交わした真名の側を通り
今二人がいるビル屋上の鉄柵に抉り込まれた。

(特別速い訳ではない。こちらの攻撃をかなり際どく回避して
こちらに吸い付く様な攻撃。
勘がいい? いや、マギカであれば………)

デザートイーグルの銃口を上に向けた真名と
周囲に水晶球を浮遊させる織莉子がじりっ、じりっ、と油断なく向き合う。

「美国、織莉子か?」

口に出した瞬間、真名を伝う汗が、つーっと一筋追加された。
80 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 03:52:26.54 ID:yUE7Pls80

「私の事をご存じで?」
「一応、現地情勢は頭に入れる事にしている。
マギカ、魔法少女か?」
「あなたは魔法少女ではない。
しかし、一般人と言うには無理があり過ぎる」

すっ、と、一度両膝を曲げ伸ばし直した織莉子が言った。
ピン、と、織莉子が指を弾き、
返却のために飛来した五百円玉を真名が左手で受け取る。

「まして、ここからこちらの駒を狙い撃ちしよう等と言うのであれば、
それは、宣戦布告以外のなんなのですか?」
「お見通しか」

織莉子の言葉に、真名はふっと息を吐いて言った。

「そちらが仕掛けて来た事情は何だ?」
「魔法少女の事から手を引きなさい、
私達は救世を成し遂げる」
「後は剣と銃で語る所か?」
「この辺りにしておきましょう。
余りここに長居はしない方がいい。但し」

真顔で見据えられた瞬間、
真名は織莉子を撃ち抜こうとした我が手を心で制していた。

「警告は今回だけです」
81 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 03:58:28.51 ID:yUE7Pls80

ーーーーーーーー

「美国織莉子?」

見滝原市内のアパートの一室で、桜咲刹那はスマホに向けて問い直した。

「ああ、最近自殺した見滝原市議会議員の娘だ」
「それが、マギカだと?」

刹那が、再び問いを発する。

「お前が言っていた長爪のマギカの仲間、
彼女は駒だと言っていたがな」

「その、美国織莉子がそっちに行ったと言うのか?」

「ああ、その事実と彼女の戦闘スタイルから言って、
マギカとしての能力は恐らく予知の類、
程度は分からないが厄介だぞ」
「まあ、そうだろうな」

そう言いながら、刹那の口調は落ち着いていた。
82 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 04:01:51.71 ID:yUE7Pls80

「マギカは強い、
少なくとも力だけで言えば私達でも生半可に戦える相手ではない」

「その様子だと、他にもやり合ったのか?」

「ああ、流石に地元の主となると実力も相当なものだ。
しかも、今のこちらの魔法を超えたものも素質次第願い次第と言った所か。
長爪とその主人との衝突は不可避だろうが、
まあ、上手くやるさ。手伝い感謝する」

「何、その辺りの話はついてるからな。
只、気を付けろ」

「ああ」

「美国織莉子、あいつは強いぞ。
戦闘力も侮れないが、
人を引き付け、呑み込む何かを持っている。
何処か脆さが見えるが、だからこそ強い。
出会いによっては向こうに従っていたかも知れないな」

「覚えておこう」
83 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/14(日) 04:05:27.63 ID:yUE7Pls80

ーーーーーーーー

「尾ッほ頬ぉー、肺ホー
蘭・卵・覧♪乱♪」

風見野市内の結界内で、
佐倉杏子は魔女退治の真っ最中だった。

そこそこヴェテランである杏子だったが、
今回は、彼女に言わせればなかなかにウザイ相手だった。

巨大な顔から手足や別の首が伸びるゾンビの様な外見だが、
倒された振りをして復活する、
伸びる首が多方向から噛みついて来る、と、実に鬱陶しい。

対して、杏子もヴェテランらしく、
相手に合わせて多節棍に変化させた槍を広く展開し、
多面展開する相手に範囲攻撃で反撃する。

「ウぐ虞、ヒ魏ぎぎ………」

かくして、魔女は目の前で赤い体液を垂れ流して呻いている。
杏子も少々疲れを感じる。
勝利は間近、後はこの働きに見合うグリーフシードが落ちるかどうか。
頭の片隅でそれを思いながら、
槍を構えた杏子はタッ、と、地を蹴った。

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今回はここまでです>>79-1000
続きは折を見て。
84 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 01:43:49.89 ID:ghfpEpVF0
それでは今回の投下、入ります。

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>>83

「血?」

杏子は、魔女から流れ出した体液の奇妙な動きに気付く。

「目くらましか? しゃらくさいな」

杏子が、こちらに向かって来た液体を槍で払う。

「!?」

薙ぎ払った、そう思った血は一瞬で枝分かれして、
何本もの太い触手と化して杏子の両腕両脚に絡み付きながら
強力な溶解力を展開する。

(まいったな、これ死ぬじゃん………)

両腕両脚をまともに切断され、走馬燈も浮かばない。
シケた諦めが杏子の心をよぎったその時、
杏子に迫っていた魔女本体が、飛来した光る帯に巻き取られた。

(な、っ?)

バシイッ! と、高圧電流の様に強力な魔力が
光る帯から魔女を一撃する。
それと共に、何処からともなく澄んだ、独特の歌声が聞こえて来る。

杏子の場合育ちの関係から特に縁遠かった訳だが、
聞こえて来たのは御詠歌だった。
魔女を締め上げていた帯の光が強まり、
反比例する様に、魔女はぐずぐずと腐れ落ちて、消滅した。

「………いぶきどのおおはらへ………」
85 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 01:49:31.25 ID:ghfpEpVF0

ーーーーーーーー

「ん、んー………」

むずかっていた近衛木乃香が目を開く。

「気が付いたか?」
「ああ、あなた」

自分を見下ろす佐倉杏子の顔を確認し、
木乃香は杏子の腿の上に乗せていた頭を上げる。
そして、周囲を確認する。
廃屋、教会だろう。
教会の廃屋の長椅子に横たわって眠っていたらしい。

「ここは?」
「見ての通りの空き家だよ。
あたしの事を助けてくれたみたいだけど、
そのままぶっ倒れて寝込んじまったから、そのまま連れて来た」
「それはおおきに」
「いや、礼を言うのはこっちの方だよな………」

座り直してにっこり頭を下げる木乃香に、
ペースを崩された思いの杏子が応じる。

「で、あんた一体何なんだ?
どうも魔法少女じゃないみたいだけど、
普通の人間ってだけでもないよな」
「そやなぁ………敢えて言うなら魔法使い、やな」

「魔法使いだ? いや、まあ、確かにそう言われても否定は出来ないな。
取り敢えず、分かる様に説明してもらおうか?」

「んー、まあ、つまり、魔法使いはあなた達マギカ、魔法少女と比べるなら、
元々の才能と特殊な修行で魔法を身に着けて
影で活動している人達、とでも言うんかな。
うち、あんまり攻撃魔法は得意やないんですけど、
さっきは急ぎで全部終わらせなあかんて、少し無理してもうて」
86 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 01:54:47.13 ID:ghfpEpVF0


「いや、無理ってレベルじゃねーよ。
魔法使いがどれぐらいかは知らないけど、
見た感じ魔女を魔力のごり押しだけでぶっ潰して、
それであの大怪我治してくれたんだからさ。
それはホント感謝する」

「おおきに。ほんまやったらそちらさんとは余り関わる事はないんやけど、
少し事情がありまして」
「事情?」

「はいな。人を探すのに見滝原の魔法少女と接触するつもりやったけど、
電車乗り過ごしてしもて。
それで、この辺りでも少し情報を集めようと思ってな。
それで先日、公園で母子連れを狙っている使い魔を見かけて、
取り敢えずこっそり追い払って、
後は地元のマギカに任せよ思うて見張ってたんやけど、
途中で魔女に気付かれてもうて」

そう言って、木乃香はごそごそとポケットを探る。

「これ、その時のグリーフシード。
うちには必要ないものやし、地元の人が使うのが筋やから」
「ああ、それなら遠慮なく」
「それで、佐倉さんの事を探してたら魔女らしき魔力を感じて、
それで、さっきの現場に行き合わせた訳で」
「じゃあ、これ返すためにわざわざ」
「はいな。マギカの人達にとっては大事な事や聞いてますから」

「へっ、律儀だねぇ………人を探して見滝原に?」
「はいな、恐らくあちらの魔法少女に関わっているだろうと」
「そいつも、魔法使い?」
「うちの大切な仲間、友達です」
87 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 02:01:10.08 ID:ghfpEpVF0

「なるほどねぇ………
そう言や、あたしの名前知ってるのか?」
「あの時、後から来たマギカの人が言うてました、
佐倉杏子さん、で合ってます?」
「ああ」
「うちは近衛木乃香、言います」

「このか、ね。
なんか、妙な連中にうろつかれたくはないんだけど、
あたしの命の恩人ではあるからな。
見滝原の魔法少女、それならどの辺を当たればいいか、
大体見当もつく。後で教えるよ」

そう言って、杏子はごそごそと何かを探り始めた。

「くうかい?」
「おおきに」
88 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/05/22(月) 02:04:45.25 ID:ghfpEpVF0

ーーーーーーーー

「きゅっぷい」
「少し、外してくれるかしら?」

美国邸で、
漆黒に近づいたグリーフシードを飲み込んだキュゥべえに織莉子が告げた。

「織莉子っ! 駄目だよ無理したら。
戦うんだったら私が………」
「ごめんなさい、今回はそれだと意味が無かったから」

「ああー、狙撃、だったっけ?」
「ええ、あの刀使いをあなたが狙う、
そこを狙ってスナイパーが狙撃する」
「それを先読みして織莉子が………で、そのスナイパーは?」

キリカの問いに、織莉子が首を横に振る。

「一流のスナイパーは戦うためのあらゆる能力を身に着けている、
これは本当みたいね。それとも、彼女が別格なのかしら?」
「女だったのかい?」
「ええ、一見凄く大人びても見えるけど、私達と同年代ね」

「そいつ、魔法少女?」
「魔法少女ではない、だけど、普通の人間でもない。
刀使いと同類と思っていい。
あの場では、警告して引かせるのがやっとだった」

「とにかくっ! 織莉子はもうこれ以上危ない事をしたら駄目だからねっ!!
刀使いだろうがスナイパーだろうが、織莉子がやれと言うなら私が刻むよ」
「ありがとう、キリカ。
今回も、グリーフシードを集めてくれただけでも」
「私は織莉子の矛であり盾なんだから」

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今回はここまでです>>84-1000
続きは折を見て。
89 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:00:34.20 ID:CQn3FTMh0
それでは今回の投下、入ります。

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>>88

 ×     ×

「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」

放課後、帰宅した巴マミは、
自宅を訪れた後輩を快く迎えていた。

「あら、今日は一人?」
「はい、もしかしたら後で来るかも知れないって」
「そう」

玄関先で言葉を交わし、
鹿目まどかはリビングへと足を進める。

「刹那さん」

まどかに声をかけられ、
リビングで正座していた桜咲刹那が小さく頭を下げる。

「美樹さんは?」

マミが台所に立っている間に、刹那が尋ねる。

「上条君の所。
いいCDが手に入ったって言ってたから。
だから、一人で………」ウェヒヒヒ
「そうでしたか」

意味ありげな笑みと事情を話すまどかに、
刹那もふっと微笑みを返す。

「それじゃあ、そろそろ行きましょうか」
90 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:05:41.64 ID:CQn3FTMh0

ーーーーーーーー

「空振りだったわね」
「そういう日もあります」

逢魔が時の魔女探索で一通り歩き付くし、
繁華街近くの歩道でマミと刹那が言葉を交わした。

「昨日、あれだけの激戦でしたし」
「そうね、たまには早く帰って休ませてもらおうかしら」

刹那の言葉に、マミが応じる。

「鹿目さんは?」
「はい、ちょっと買い物を」
「そう、それじゃあ」

まどかの返答を聞いてマミがにっこり笑い、
刹那が小さく頭を下げて取り敢えず解散となった。

ーーーーーーーー

「?」

ちょっとした買い物を終え、
駅前通りから帰路に就こうとしていたまどかは、
そこで少々不思議な光景を目にしていた。

「仁美ちゃん」

目の前を歩いているのは志筑仁美。
まどかのクラスメイトで小学校時代から仲のいい友達。
だが、ここにいると言うのは、少々不思議な光景。
91 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:10:55.50 ID:CQn3FTMh0

「お稽古事は? ………」

地元でも名士の娘で立場も物腰もお嬢様そのもの。
こんな所にいる筈が無いぐらい多忙な筈ではあるのだが、
まどかは、たった今、思い当たる節を見つけてしまった。

「あぁら、鹿目さん、ご機嫌よぉ」

一見普通でも、長い付き合いのまどかには分かる。
微かに酔っている様な、覚束ない口調。
そして、首筋に「魔女の口づけ」。

「仁美ちゃん、何処に行くの?」
「とても素晴らしい所ですわ。
そうだ、鹿目さんもご一緒に」

そう見えるのか実際そうなのか、
動き出した仁美の動きは、ぎくしゃくと、
まどかには何処か人形染みたものにしか見えなかった。
進行方向を同じくする人が徐々に増加する。

ーーーーーーーー

仁美の後を追う内に、まどかは廃工場の中に入り込んでいた。
工場の作業場らしきスペースには、
仁美を含め相当な人数が集まっているが、
明らかに精気を欠き、それでいて、
得体の知れない希望にその目を輝かせている。

「俺は駄目なんだ………
こんな小さな町工場一つ切り盛りできなかった。
今の時代に俺の居場所なんて、あるわけねぇんだ」

この工場の経営者らしき中年男性が椅子に掛けたままぶつぶつと言い、
その妻らしき女性がバケツを用意する。
女性の行動が、塩素系洗剤と酸性洗剤の混合である事に気づいたまどかは、
本格的に意味不明な供述と共にまどかを制止する仁美を振り切り、
今正に殺人瓦斯を放とうとしていた
バケツを奪い取り、窓へと投げ捨てた。
92 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:14:07.55 ID:CQn3FTMh0

「ひっ!?」

肩で息をしながらほっとしたのもつかの間、
未だ以て正気を失い、ゾンビ的な挙動と化した志筑仁美以下の集団が
今正にまどかをどうにかしようと迫っていた。
とっさに、逃げ出せない程に足がすくんだまどかは、
もう一度、ガラスが割れる音を聞いた。

「失礼」

集団の先頭にいた志筑仁美が、当身を受けてくずおれた。
気付いた時には、まどかは、
下から太ももと背中を支えられる形で宙を舞っていた。

「刹那さんっ!?」
「ご無事でしたか」

まどかを抱きかかえたまま、
集団から離れた場所に着地した桜咲刹那が小さく頷いて言った。

「あ、ありがとうございます」
「これは、魔女ですか?」
「は、はい、魔女の口づけが」
「そうですか」
「刹那さんっ!」

野太刀夕凪の鯉口を切った刹那にまどかが叫ぶ。

「大丈夫、無傷は難しいかも知れませんが、
出来る限り無事に終わらせます。
秘剣・斬空閃っ!!!」

早速に、「気」の螺旋があらぬ方向へと吹き飛ぶ。
93 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/14(水) 02:17:38.52 ID:CQn3FTMh0

「逃げて下さい、ここは私が」

「気」の一撃を受け、吹き飛ばされた入口シャッターを見て刹那が言った。

「えっ、あ、あのっ………」
「魔女は奥ですね。この程度の一般人、なんとでもなります。
………足手まといです」
「は、はいっ!」

刹那の言葉を聞き、まどかがたたたっと入口に向かう。

「斬岩剣っ!!」

早速に、集団が寄って来る前に刹那が「気」を一撃し、
精神的ゾンビ集団を牽制する。

ーーーーーーーー

「?」

昨日は激戦、
今日は割と埃っぽく探し回った割には空振り。
帰宅して、夕食後一風呂浴びた巴マミは、
リビングの鏡台に向かう途中でスマホの着信に気付いた。

「メール? 鹿目さん?」

==============================

今回はここまでです>>89-1000
続きは折を見て。
94 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 03:43:54.11 ID:pJ6Kx2c60
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>93

巴マミは一度鏡台前の椅子に掛け、
スマホのメールを確認する。
パチンと指を鳴らし、
後ろ髪に魔法少女カールを展開しながら立ち上がった。
そして、その場にバスタオルを打ち捨てたマミは、
ちょっと嘆息して明日の用意の制服他一式に手を伸ばす。

ーーーーーーーー

「暁美さんっ」

その瞬間の、暁美ほむらが見せた嫌そうな顔は、
先輩の度量として見なかった事にする。
取り敢えず、時間節約のために
途中途中屋根を飛び飛びショートカットしながら駅前近辺に到着した巴マミは、
そこで目についた暁美ほむらに向けて叫んでいた。

「何処に行くの?」
「関係ないわ」
「奇遇ね」

ダッと走り出したほむらと並走しながらマミが言った。

「鹿目さんからメールが入った。
魔女らしきものがこっちの方向に誘導してる、ってね」

「!? まどかはっ!?」

「魔女に口づけされた友達を放っておけないと、
こっちの方向に向かった。それ以上の事は分からない」
「………この先に、おあつらえ向きの廃工場があります」
「オッケー」
95 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 03:49:06.04 ID:pJ6Kx2c60

ーーーーーーーー

「これは………」

廃工場に入ったマミは、死屍累々の有様に目を凝らす。

「………全員、気を失ってるだけみたいね………」

次の瞬間、マミの背後から一続きの銃声が響く。

「使い魔」

頭上で撃ち抜かれたものを把握し、マミが呟く。

「発砲した以上長居は出来ない、速く片付けましょう」

マミがその言葉に頷いた頃には、
M16を抱えたほむらが壁沿いに走り出していた。

ーーーーーーーー




ほろ



ほろほろ



ソウルジェムで魔力を感知し、
ドアの一つを空けてその奥の魔女の結界に飛び込んだ暁美ほむらは、
一瞬、目の前の光景に立ち尽くした。
96 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 03:55:03.65 ID:pJ6Kx2c60

ほろ



ほろほろ



ブチッ


ブチッ ブチッ



「くっ!」

とにかく、ふわふわと降下して来る、
薄気味悪い天使ギミックの様な使い魔をM16で追い散らす。

「ティロ・フィナーレッ!!」

そんなほむらの背後から、
接近していた魔女を狙ってマミが砲撃をかけたが
魔女は間一髪、使い魔を巻き込みながらもその一撃を回避する。



ほろ



ほろほろ


ブチッ



ブチッ ブチッ


97 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:00:19.96 ID:pJ6Kx2c60

ドン、ドンドンッ、と、迫る使い魔を使い捨てマスケットで片づけながら、
マミはじろっと周囲を見回す。

「あっちねっ」
「気を付けてっ! この魔女は」

何処かサイケデリックで視界の良くない結界の中、
魔女本体の気配を察知してマミが飛び出す。

「このっ!」

一旦M16を放り出したほむらが、ゴルフ用アイアンを振るう。
ここの使い魔は案外面倒くさい。
浮遊しながらゆらゆらと接近していた魔女を一度牽制し、
さっと米軍仕様M9拳銃を抜いて使い魔を撃ち抜く。



ほろ



ほろほろ



ブチッ


ブチッ ブチッ


ほむらが少々使い魔のペースにはまっている間にも、
マミは空飛ぶモニターとでも言うべき魔女本体を追って
空中に次々と生じせしめたマスケットを拾っては撃ち拾っては撃ち、
ドン、ドンドンッ、と着実に追い込みをかけていた。

すとーんっ、と、体勢を整え、片手持ちしたマスケットを真正面に、
その射線に魔女を捕らえてタイミングオッケー。
ここでど真ん中撃ち抜いて、一気にティロ・フィナーレと、
マミの脳裏にはその道筋が一直線に描かれていた。
98 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:03:34.05 ID:pJ6Kx2c60

ほろ


ほろほろ


巴マミが、ぱちくりと瞬きをした。

「お父、さん」



ブチッ



ブチッ ブチッ



「お父、さん、お母さん………」

「私、一人だけ、願った………」

「あの子、助けられなかった………」



ほろ



ほろほろ



ブチッ



ブチッ ブチッ

99 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:06:39.44 ID:pJ6Kx2c60

「巴マミ、桜咲刹那、何を………」

苦り切った暁美ほむらが、
気配に気づいてハッとそちらを見る。
その時には、
魔女はほむらのド真ん前に存在していた。

ヤバイヨネー


シンジャエバ


イッテクルネ


ハンタイダワ


ミンナシヌシカ


バカナワタシヲ


「こ、のっ………」

ほむらが、意思の力を振り絞り拳銃を構え直す。


ウレシイ、ナ



「あああああーーーーーーーーーっっっっっ!!!」

ほむらが、絶叫と共に、斜め下の床?に向けて拳銃を発砲する。
その、無意味な行動と共に、すとん、と、両膝から力が抜けた。
ぶんぶんっ、と、ほむらが頭を振る。
だが、その時には、禍々しい気配は肌に感じそうな、
そんな所まで接近していた。
100 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:10:34.45 ID:pJ6Kx2c60

「!?」

光を、見た。
眩しいものを感じたほむらが顔を上げると、
小型のオーロラ、光る帯の様なものが、
獲物に迫っていた使い魔達を一掃していた。

「なぁ………何してるん?」

他人から言われる事もあって、最近の暁美ほむらは、
己の黒髪には少々自信を持っている。
しかし、ころころと穏やかな声に振り返ったほむらが
そちらに見たのも又、実に見事な長い黒髪だった。

「何してくれたんやろなぁ」

ひゅんっ、と、
巨大な槍の様に突き出された光る帯を魔女が辛うじて交わした時、
ほむらが聞いていたのは、のんびり、はんなりと、
トゲ一つ見えないからこそ底の見えない声だった。
そして、ほむらはもう一つの気配に気づく。

「佐倉、杏子?」
101 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/18(日) 04:14:00.09 ID:pJ6Kx2c60

佐倉杏子は、それなりに百戦錬磨の魔法少女である。

実戦経験も豊富、魔女相手にも、
頭と能力のある魔法少女が相手であっても、
それなりの強者として通して来た。

何よりも魔女狩り、グリーフシードを欲する強欲な合理主義者。

その強欲な強者佐倉杏子は今、結界の入口近くで
コメカミに汗を伝わせて苦笑いを浮かべていた。



うちの

大事な大事な大事な大事な大事な(以下略

せっちゃんに、



してくれはったんやろなぁ?



==============================

今回はここまでです>>94-1000
続きは折を見て。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 10:15:50.06 ID:x11nPKrko

こ、このかお嬢様たくましくなりましたね…
103 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:09:14.63 ID:Jz5f4gbv0
コメントどうもです。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>101

水干紅袴の近衛木乃香が、するりと周囲を伺う。
伏せたその目は、墨絵に描いた様だった。
それと共に、ミニオーロラの様な光の帯が
しゅるるっと木乃香の手に引き戻される。

(魔力、そのものっ?)

引き戻された光る帯は、光を失い南京玉簾、そして扇へと姿を変える。
光る帯の正体を知ったほむらは戦慄した。

要は、これも非常識に巨大化出来る南京玉簾に魔力を乗せた
半・ビーム兵器みたいなもの。
魔法少女から見てそれ自体に不思議はない。

だが、光と化した魔力そのものの威力、出力が只事ではない。
そして、それを十分コントロールしていると言う技量も。
一差しの舞と共に、爽やかな南風が結界を吹き抜けた。

「くっ!」

頭の中を強制的にかき回していた悪夢が雲散霧消し、
それを感謝する暇もなくほむらは魔女に拳銃を向ける。
木乃香が南風を放ったその隙に、
モニター型のハコの魔女
H.N.Elly(Kirsten)がすうっと木乃香に接近する。

「………アデアット………いでよ、建御雷………」

ほむらの斜め後ろでバズーカ的なものを構えた巴マミは、
一瞬、その視線の先に「鬼」を見ていた。
104 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:14:51.73 ID:Jz5f4gbv0

「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!
秘剣・百花繚乱っ!!!」

ほむらとマミと杏子と木乃香は、首を右から左に、
結界の端から端までハコの魔女の行き先を目で追っていた。



神鳴流奥義・斬岩剣!!

雷鳴剣っ!!!

極大・雷鳴剣っ!!!!

神鳴流決戦奥義っ、



雷光剣っっっっっ!!!!!



「えーっと、終わった?」

佐倉杏子がグリーフシードが物理的に存在しているかを懸念していた頃、
結界の入口近くで、
突入早々遠くに輝く汚ねぇ花火を眺めていたさやか☆マギカが呟いた。
105 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:21:24.42 ID:Jz5f4gbv0

ーーーーーーーー

人数だけでもカオスとしか言い様の無い状況を悪化させないために、
間違いなく警察沙汰になりそうな廃工場から撤収。
一同は夜の河川敷広場へと移動していた。

「どうしてここにっ!?」
「お知り合い?」

とにもかくにも叫び声を上げた桜咲刹那に巴マミが問いかけた。

「古くからの友人です」
「魔法使いね」

刹那の紹介と共にほむらが言った。

「どうも、近衛木乃香言います」
「ご丁寧に」

言葉通り、はんなり丁寧に頭を下げる木乃香にマミも礼を返す。

「とにかくお嬢様、どうしてこの様な場所に?」
「んー、それがなー」
106 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:26:30.94 ID:Jz5f4gbv0

ーーーーーーーー

「おーい近衛ーっ」
「はいな」

数日前の放課後、近衛木乃香は学校の廊下で
クラスメイトの朝倉和美に呼び止められていた。

「あんた、桜咲と一緒じゃなかったの?」
「んー、せっちゃんも最近色々忙しいみたいでなぁ」

ころころと笑って答える木乃香だったが、
何処か不思議そうな和美の表情が僅かな不安を呼んでいた。

ーーーーーーーー

「ちょっとこっちの情報網に引っ掛かったんだけど、
最近、見滝原に行ってるみたいなんだよね桜咲」
「見滝原?」

誘われるままに女子寮の和美の部屋を訪れた木乃香は、
そこで思わぬ情報を聞かされた。

「しかも、そっちの学校に転校してるし」
「てんこう?」

取り敢えず、意味が分からなかった。

「書類上は短期の国内留学かな?
取り敢えず、今ん所はあっちの学校に在籍してるって事なってるね」
「はやー、そんな事もあるんやな」
「驚いた?」

和美が、いつものキツネ目で言った。
107 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:30:14.77 ID:Jz5f4gbv0

「まあ、何か事情でもあるんやろ」
「まあー、そんなトコだろねー。
最近、連絡とかは?」
「それがなぁ、仕事関連で少し麻帆良を留守にする、
携帯も出られなくなると思うてそれっきりやから。
うちも邪魔したら悪いてそのままにしてたんやけど」

「んー、防犯関係のデータ、動画解析とかしてみても、
桜咲の行動範囲はその短期留学に合わせて
見滝原市内を割とあっちこっち動き回ってるみたいだね」

「物の怪でも出たんかなぁ、
ネギ君のプランとはちょっと関係無さそうやし」

小首を傾げる木乃香を、
キツネ目の和美は相変わらずおとぼけ可愛いと眺める。

「只、その辺りの事で、ちょっと気になる事があるんだわ」
「気になる事?」

口調もそうだが、木乃香に聞き返された和美は真面目な顔で頷いていた。

「マギカ、魔法少女、って知ってる?」
「サギタ・マギカ?」
「マギカだと、私らならそうなるか」

そう言って、和美はテーブルにコピー用紙を広げてペンを走らせ始める。

「いちおー私もだけど、私達魔法使い、
それとはちょっと違う魔法少女、ってカテゴリーがある訳。
その魔法少女の事を魔法使いと区別してマギカ、って呼ぶ呼び方があるって事」

「魔法少女なー」

「そ、魔法少女。どっちかってとフィクションならビブリオンとか、
そっちの方面が近いかな?
魔法使いとは別に、そういう娘らが実在してるってんだよねこれが」
108 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:33:49.33 ID:Jz5f4gbv0

「はー、そんなんほんまにいるんや」

「うん、私もこっちに関わって裏情報収集してる内に引っ掛かったんだけどね。
で、桜咲、そのマギカ、魔法少女に関わってる節があるんだな」

「せっちゃんが?」

「そ、この見滝原って所がさ、
どうもその魔法少女管轄の事件が増加してるんだわ。
本来、魔法使いはマギカ、魔法少女の事には関わらない筈なんだけど、
どうもこのタイミングが気になるんだよね」

「魔法少女管轄の事件?」

「魔法少女は魔法少女で、
彼女達が専門で退治するモンスターがいるみたいだね。
それがかなりヤバ目な怪物みたいでさ、
こっち側で関わる物の怪はある程度共存出来るけど、
魔法少女の方は、基本、人的被害、はっきり言って人を食う。
しかも市街地に発生するから放っておくとどんどん死人が出るって
物騒な連中らしいんだよねこれが」

「そんな事にせっちゃんが?」

「桜咲って人選に、この時期に長期に見滝原に出向いてるって、
可能性は低くないんじゃないかな。
近衛に伝わってないって事も含めてね」

「うちが? どういう事?」
109 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:37:31.99 ID:Jz5f4gbv0

「さっきも言ったけど、
私達魔法使いと魔法少女は基本、不干渉の立場を取ってる。
実際、今まで関わって来なかった。

なんか、色々利害関係があって、
迂闊に関わるとトラブルになるって事みたいだね。

だけど、見滝原関連の裏情報見てると、
本来魔法少女マターで対処する被害がちょっと洒落にならなくなってる。
だから、こっちから桜咲が派遣された。
仮説を立てるならこの辺りかな?」

「人を食うモンスター………せっちゃんなら………」

「まあ、桜咲なら大概大丈夫だとは思うけどね」
「当然や」
「だけど………」

話を続ける和美は、真面目な顔をしていた。

「魔法少女、って、相当なものらしいよ。
イメージだけど、実際ビブリオンとかそっち方面の魔法少女、
あれが本当にいたら現実的な戦闘力はどうなるかってね」

「んー、かわええ感じで結構わやな事になりそうやなぁ」

「そんなんが対処する怪物が相手だからね。
ま、桜咲なら問題ないとは思うけどさ。
只、見てる限り一人で行ってるのかな桜咲。
こっち側の業界関係者の情報にも引っ掛かりがないって事は」

「そやなぁ………ネギ君やアスナも最近はご無沙汰やし、
うちも聞いてへんかったさかい」
110 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:40:55.97 ID:Jz5f4gbv0

ーーーーーーーー

木乃香から経緯を聞いていた刹那は、手で額を抑えていた。

「それで、相談しようにもネギ君もアスナもいぃひんし、
何か危ない事になってへんかケガしてへんかて」
「そうでしたか。ご心配をおかけしましたお嬢様」

刹那は、嘆息してから深く頭を下げた。

「お嬢様?」

周囲から不審の声が上がった。

「はい、こちらにおわす近衛木乃香、
このかお嬢様は魔法協会トップであり京都の呪術世界を司って来た
近衛家の直系の御令嬢です。
私、桜咲刹那は近衛に仕える桜咲家、協会に属する神鳴流剣士として
このかお嬢様の側近くに仕えるものとしてもがもがもがっ!!!」

「だからー、お嬢様やなくてこのちゃん呼んでぇなて
言うてるんですけどなぁ」

ここの魔法少女達の中でも遜色ないどころか
普通にぶちのめしかねない桜咲刹那が、
口に指を突っ込まれて頬っぺたを広げられている前で、
刹那の頬っぺたを内側から広げる木乃香は京娘の微笑みで応じている。
取り敢えず、かなり「いい性格」のお嬢様であろう事は、
暁美ほむらも理解した。

「それで佐倉さん、あなたはどうして?」

「ああ、その、このかお嬢様にちょっと借りが出来ちまってな。
なんだかんだで、そっちの桜咲さんの所に案内する事になったって事。
見滝原の魔法少女と合流してるんじゃないかって言うからさ。
縄張り荒らすつもりはないから心配すんなよ」

「ええ、分かったわ」

マミと杏子が、適当な距離感で言葉を交わしていた。
111 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/06/22(木) 03:44:49.17 ID:Jz5f4gbv0

「おおきに、有難うございます」

木乃香に丁寧に頭を下げられ、杏子も小さく頭を下げた。

「近衛さんの事情は呑み込めたけど、
美樹さん、あなた魔法少女の契約したの?」
「はい」

マミの質問にさやかが応じた。

「それで、早速魔女探してる内にまどかが走って来て、
魔女見つけたらマミさんにも連絡する予定だったんですけど、
もうマミさんには連絡して仁美も関わってるって言うから
放っておけなくて突入したらあんな感じで。
デビュー戦は又今度、って所ですなー」

「………」

後頭部で手を組んでカラカラ笑うさやかを、
言葉程ふざけてはいないとは分かりつつ刹那は静かに見ていた。

「美樹さん」
「はい」

刹那に声をかけられ、さやかも少々緊張する。

「では、ちょっと変身していただけますか?」
「ん? いいですよ」

さやかがソウルジェムを掌に乗せる。
杏子が怪訝な顔でマミを見る。
どうやら、マミも気付いているらしい。
刹那が左手の夕凪の鯉口を切った事に。

==============================

今回はここまでです>>103-1000
続きは折を見て。
112 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 02:37:05.72 ID:TgFRLh/20
それでは今回の投下、入ります。

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>>111

美樹さやかの体が光に包まれ、
その姿、衣服は魔法少女と呼ぶに相応しいものへと変化する。
胸元の青を基調とした肩出しビスチェタイプのトップスと
白いミニスカートのボトムは、
実用性と言うよりもゲームの女剣士を思わせる。

「美樹さん」

変身したさやかに桜咲刹那が声をかけ、
さやかがそちらを見ると、
刹那は左手に握った野太刀「夕凪」をすうっと持ち上げていた。

「美樹さやかっ!」

暁美ほむらが叫んだ、その時には、
刹那はさやかの前方ですらりと夕凪を抜き、
さやかの目には八双に構える刹那の姿が映っていた。

(あたしっ!?)

さやかはとっさに飛び退き、
振り下ろされた夕凪がごうっと唸る勢いで空を切る。
その刃が誰に向けられたか?
その、さやかにとって些か非常識な結論は、
刹那の二刀目で確信に変わる。

「さやかちゃんっ! 刹那さんっ!?」
「近づかないでっ!」

その事態に悲鳴を上げたまどかの腕を、
叫び声と共に暁美ほむらが掴み巴マミがまどかの前に立つ。
113 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 02:42:17.60 ID:TgFRLh/20

「何すんだ、よっ!?」

胴突きからの薙ぎを交わしたさやかは、
魔法で生み出した刀の様なサーベルと言うかサーベルの様な刀の様な剣で
刹那の袈裟斬りをギリギリと受け太刀していた。

横目を使ったまどかはぎょっとした。
まどかが視線を向けた佐倉と言う少女は、
そんな「真剣勝負」を不敵な笑みと共に眺めていた。
ガン、ギン、ガンッ、と、夕凪と剣が打ち合い
さやかが荒い息を吐いて飛び退く。

「なっ!?」

さやかは、驚愕した。
少なくともダースに近い剣が一斉にミサイル化して襲撃する。
流石に刹那なら死にはしないだろうが、
と、思ってその攻撃を仕掛けた。

さやかがその攻撃を放った、と、思った時には、
刹那の姿はもうさやかの目の前にあった。

まどかから見て、さやかはぎゅん、ぎゅん、ぎゅんっ、と、
白い独楽の様にマントに身を包んで回転しながら
河川敷のあっちこっちへと瞬間移動している。

それは、佐倉杏子から見たら、
刹那の一撃一撃を辛うじて交わして
這う這うの体で逃げ回っている様にしか見えない。

「ああああっ!!」

刹那に向けて跳躍したさやかの両手に、剣が握られていた。
振り下ろした右手の剣が、夕凪に受け流される。

「く、っ!」

さやかが突き出した左手の剣の突きがぎゃりぎゃりぎゃりっと反らされる。
114 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 02:47:41.25 ID:TgFRLh/20

「かはっ!」
「さやかちゃんっ!」

左の剣に何が当たった? と、さやかが思った時には、
その剣を反らしていた夕凪の鞘の先がさやかの腹に叩き込まれていた。
さやかの体が魔法少女単位で大きく吹き飛ぶ。
ずしゃあっと全身で河川敷に着地したさやかに刹那はすぐに追いついていた。

「こ、のっ!」

立ち上がったさやかの前で、刹那は右手と左手を持ち換えていた。
さやかの顔面を狙った横殴りの鞘を、さやかは瞬時にしゃがんで交わす。
刹那の背面宙返りと共に、さやかが振り抜いた剣が空を切る。
刹那が着地した時、夕凪の刀身は鞘の内にあった。

「斬鉄閃っ!」
「くっ!」

刹那が居合抜きと共に放った「気」を
さやかは横っ飛びに交わす。
体勢を立て直したさやかの目の前で、
刹那は左手にカードが握っていた。

「アデアット」

刹那がぼそっと呟いた時には跳躍したさやかが二刀を振り下ろし、
その斬撃は虚空を切っていた。

「匕首・十六串」
「ああっ!?」

気が付いた時には、
さやかの周囲には匕首に結ばれた捕縛魔法が展開していた。
115 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 02:53:11.46 ID:TgFRLh/20

「くっ、この………」
「稲交尾籠」
「あああああっ!!!!!」
「さやかちゃんっ!!」

封印の帯に縛り上げられ、足掻いていたさやかだったが
帯を走る雷の一撃に悲鳴を上げてばったり倒れた。
封印が解かれる。立ち上がろうとするが、体が言う事を聞かない。
そして、目の前に夕凪の切っ先が向けられていた。

「何、を………」
「あなたは、私の術を見た事がある筈です」

地を這いながら殺意すら籠った眼差しを向けるさやかを、
刹那は冷ややかに見下ろしていた。

「魔女は戦闘力が高い上に悪知恵がある、
人を食うために恐ろしく狡猾に魔術を用います。
その様では、死にますよ」
「だよなー」

淡々と言う刹那に、頭の後ろで両手を組んだ佐倉杏子が続いた。

「わざわざ声かけて刀見せつけてから斬り付ける
アホな殺し屋がいるかっつーの」

「な、何?
じゃあ、あたしに教えてくれた、って言うの刹那、さん?」

「そこのマミ先輩、甘いトコあるからなー」
「その辺りの事は保留にしておきましょう。
今の桜咲さんが正しいかどうかはとにかく、
桜咲さんの言葉は否定出来ないわ」
「………じょーだんっ、今まで味方ヅラして不意打ちだよ」

拘束を解かれたさやかは、荒い息を吐いて座り込む。
116 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 02:56:42.57 ID:TgFRLh/20

「では、改めて真剣勝負をしたら私に勝てると?」
「………ごめん、無理」
「それに、チーム戦では善意悪意に関わらず、
特にあなたでは味方の射線に立って共倒れしかねない。
実戦とはそういうものです」
「………そう………」

「全体的には丸っ切り素人ですが、体はよく動かしている様ですね、
恐らく女子にしては拳の喧嘩も心得ている。目と勘は悪くない。
なってしまったものは仕方がありません、
あなたの性格です、あなたとしては大真面目に考えた結果なのでしょう。
あなたを心配している友のためにも、死にたくなければ精進する事です」

「魔法少女の事を教えた私にも責任はある。
出来るだけの事はするから」
「ありがとう、マミさん」

手を引こうとするマミを制する様に、さやかが一人で立ち上がった。

「つつつ………」
「さやかちゃん、大丈夫?」
「結構、大丈夫じゃねーって………ちょっと待って」

立ち上がったさやかは、一度光に包まれてから変身を解除した。

「さやかさん、言いました?」

そんなさやかに声をかけたのは木乃香だった。

「さやかさん、回復の魔法使うんやなぁ」
「ああ、うん、願い事もそうだったからかな?
ケガとかなら結構治せるみたい」
「良かったぁ」
「だってさ、出番なしだな」
「せやな」

口を挟んで来た杏子に、木乃香は邪気の無い笑顔で応じる。
117 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 03:00:53.21 ID:TgFRLh/20

「?」
「近衛さん、もしかして回復魔法を?」

尋ねたマミに、木乃香がにっこり応じる。

「いやー、すげぇすげぇって、
このお嬢様の回復魔法、今みたいにちゃっちいのじゃねーっつーか、
魔法少女でもあんだけ出来るのはいないんじゃねーの?」
「魔法使いの中でも例外です」

杏子の言葉に、刹那が続く。

「そもそも、このかお嬢様の本来の魔法は治癒、
それも体質的な素質が桁違いです。
だから、攻撃魔法は技術的には中ぐらいも知っているかどうか、なのですが」
「ああー、物理、魔力の多さでごり押しの力押しだったよな。
それで通っちまうぐらい圧倒的って事かよ」

杏子の言葉に、刹那が頷いた。

「えーと、桜咲さんって近衛さんの友達なの?」

さやかが、改めて尋ねる。

「はいな、どうもせっちゃんが無茶してもうて」
「いや、いいっすよ。
あの人とかから見たらあたしの方が無茶だってのはその通りなんだろうし。
あんな強い人でもやられそうになるんだから、
本当にこのザマのあたしなんか幸せバカの甘ちゃんなんだろうね」

「さやかちゃん………」
「でもさまどか、なっちゃったもんは仕方がないってのも本当だから、
精々頑張る、頑張って強くなって、死んだりなんかしないから」
「うん………」
「その意気や」
「ありがとうございます」

そして、ぺこりと頭を下げたさやかから一度離れて、
木乃香は刹那に合流する。
118 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 03:04:45.87 ID:TgFRLh/20

「厳しいなぁせっちゃんは」
「今後は本当に命のやり取りになりますから」
「せやな。それでせっちゃん、
せっちゃんはどうしてここに?」

「およその所は朝倉さんが推察した通りです。
協会からの要請で、見滝原を中心に
魔女発生率が妙に上がっている地域の調査に。
只、本来魔女は魔法少女と言う独自勢力が対処しています。
通常不干渉である魔法使いと魔法少女が大っぴらに関わり合いになるのは
色々不都合がありますので、内部的にも秘密裡の調査で、
お嬢様にはご心配をおかけしました」

「そう。うちも勝手に追いかけて来てごめんなぁ」
「いえ、私が至らぬばかりで。
そういう訳で、私はもう少しこちらに留まります。
今のケースが落ち着いたら連絡します」
「ん、きっとやで」

刹那と木乃香はお互いぺこぺこ頭を下げていたが、
最終的には生真面目に答える刹那に木乃香がにっこり微笑んでいた。

「んじゃー、あたしもこれで帰るわ。
他所の縄張りでマミ先輩に加えてこんな凄腕でおっかねーのがいるんじゃ
獲物掠めるどころじゃねーって」
「あらそう」

やれやれな態度の杏子にマミが素っ気なく言い、
杏子が不敵な笑みを返す。
どうも、ほわほわな木乃香と背筋が冷たくなる「本物」の刹那に当てられ、
杏子からも毒気が抜けた所があるらしい。

「それでは、私も今日は少し仕事がありますから」
「あたしも、ホントは話したい事もあるけど、
今日は休みたい」

刹那に続き、さやかも離脱を告げた。

「そう、お茶をしながら今後の事も、って思ったんだけど」
「はい、それは明日から、って事にしてくれたら」
「ええ、待ってる」
119 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 03:09:17.26 ID:TgFRLh/20


ーーーーーーーー

「つ、っ………」
「ほらぁ」

夜道で膝をついた刹那に、
前から現れた木乃香が呆れた様に声をかけた。

「お嬢様っ?」
「だからこのちゃん言うてぇな。
大丈夫、せっちゃん?」
「ええ、ちょっと、脚に来ましたね」

そう言って、刹那は僅かに自嘲の笑みを浮かべる。
素人にいきなりテレポート紛いの移動を連発されて勘が狂った。
本気であれば瞬動で容易に対応出来る程度のスピードではあったが、
その、モードの切り替え時を僅かながら見誤った。

「ほらぁ、お腹から血ぃ出てる。
無理に血止めしてたやろ」

「皮一枚かすめただけです。
先輩ヅラして、私の方が調子に乗り過ぎましたかね?
どうでしょうか? 暁美ほむらさん?」

「あの青魚にはあれぐらいでちょうどいい。
幸い、あなたは実力も人間的にも彼女から信頼され、認められている。
あなたは正しいわ桜咲刹那」
「そうですか、それはどうも」

木乃香がくるくる舞っている側で、
すいっと現れたほむらと刹那が互いに小さく頭を下げる。
120 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/06(木) 03:12:55.98 ID:TgFRLh/20

「………近衛木乃香、さん」
「はいな」
「もしかして、桜咲刹那はあなたのボディーガード?」
「大切な友達」

刹那が何かを言う前に、
木乃香はにっこりと、きっぱりと答えた。

「だから、せっちゃんに何かあるなら、
うちはせっちゃんを守りたい」

真っ直ぐと、真摯に。
そんな木乃香の言葉にほむらは何も言えない。
刹那は目を閉じ、ふっと、静かに微笑んでいた。

==============================

今回はここまでです>>112-1000
続きは折を見て。
121 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 02:56:00.85 ID:Z3g3Pefz0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>120

 ×     ×

「………時にお嬢様」
「はいな」

マミルームのリビングで、桜咲刹那は近衛木乃香に尋ねた。
刹那が木乃香と再会したり美樹さやかが魔法少女の契約を交わしたり、
前の日の夜にそんなこんながあったため、
その時に積み残した話題も含めて、
放課後に改めてこうしてマミの部屋に集まっている訳ではあるが、

「何故お嬢様がここにおられるのでしょうか?」
「マミさんがお茶に誘ってくれてなぁ」
「………巴さん?」
「近衛さんと意気投合して連絡先交換してたの」
「美味しいお菓子ご馳走してくれる言うさかい。
お愛想言うてるみたいにも聞こえなかったし、
せっちゃんとも知らない仲やないみたいやし」
「そうですか」

そう言って、刹那は小さく息を吐く。

「でも、ほんまに美味しそうな匂い………」
「それは期待していいっすよ」

口を挟んだのは美樹さやかだった。

「マミさんのケーキ、めちゃうまっすから。
それに、このかさんの言う通り、
マミさんお菓子作りすっごく楽しんでますから」
「それは楽しみやなぁ」

さやかの言葉に、木乃香はころころと笑って応じた。
122 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:01:15.42 ID:Z3g3Pefz0

ーーーーーーーー

「美味しい」
「有難う」

紅茶を傾け、素直に賞賛する木乃香にマミも喜びを露にする。

「こんな美味しいお紅茶、久しぶりや」
「ホントに、紅茶の味とか、
このダージリンの香りなんてホントにあるんだなあって
ここで初めて知った感じで。
やっぱりお嬢様? こんな美味しい紅茶飲んでたの?」
「せやなぁ」

這い寄りそうなさやかの言葉を、
木乃香はふわりと微笑んで交わしていた。

「アッサムもええ塩梅で」
「有難う」

ストレートティーを楽しんでいた木乃香が
つつ、と、カップにミルクを加えながら言う言葉を聞きながら、
マカロンを並べていたマミが目を細めて応じた。

「それで、昨日からの話が色々と………」

皆が程よくお菓子を楽しんだ頃合いを見てマミが言いかけるが、
そんなマミを刹那は掌で制していた。

「?」

皆が不思議そうな視線を向ける中、
スマホを手にした刹那の表情は鋭かった。
123 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:06:38.29 ID:Z3g3Pefz0

ーーーーーーーー

「このお店、潰れてたのね」

マミのマンションから歩いて十五分以内の所で、
廃墟を見上げたマミが言った。

「中、なのかな?」

ソウルジェムを手にしたさやかが言う。

「一時的に人払いをかけました、突入出来ます」
「助かるわ」

近くの道から戻って来た刹那が言い、
マミが真面目な口調で応じた。

「刹那さん、でいいかな?」
「ええ」

建物に侵入しながら刹那とさやかが言葉を交わしていた。

「刹那さんの仲間が見つけたっての?」
「はい、たまたま奇妙な魔力を察知したと」
「見つけた」

マミのソウルジェムの光が廃墟の空間に扉を映し出し、
変身したマミを先頭に
刹那、木乃香、さやか、まどかが結界の中に侵入する。
124 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:12:03.98 ID:Z3g3Pefz0

ーーーーーーーー

「ま、ざっとこんなモンだぁね」
「そうですね」

夕暮れの路上で、そっくり返るさやかに刹那があっさりと応じた。

「あ、はは………」
「人数から言ってもオーバーキルに近い状態でしたから。
実質的なデビュー戦には丁度良かったのでは」
「うん、手ごたえはあったよ、
思い切り手伝ってもらったけど、
あたしがこの手で魔女を狩ったんだ、って」

乾いた愛想笑いを浮かべたさやかだったが、
刹那の真面目な言葉にさやかも真面目に応じていた。

「桜咲さんも言ってたけど、今日のを見たら筋はいいと思う。
だけど、今日はちょっと上手く行き過ぎだから。
明日はお休みだし、これから色々教えるわよ」
「お願いします、マミ先輩」

マミの言葉に、さやかがぺこりと頭を下げた。

ーーーーーーーー

「わぁー、かわええなぁ」
「お気に入りなんです。
この歳でちょっと恥ずかしいけど」
「そんなんあらへんて」

なんとなくノルマ達成気分の解散の後、
夜闇が迫る前の時間、
鹿目まどかの寝室はちょっとばかり盛り上がっていた。

河童のぬいぐるみを抱いてご満悦の木乃香の後ろで、
桜咲刹那は優しく微笑んでいる。

何故にこういう事になっているのかと言えば、
先程のお茶会のちょっとした話題で、
さやかがからかったまどかのぬいぐるみ、
その話題に木乃香が食い付いた結果だった。
125 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:17:43.90 ID:Z3g3Pefz0

ーーーーーーーー

「お帰りかい?」
「お邪魔しました」

一階リビングで、訪問時にも出会った鹿目知久に
木乃香と刹那も礼儀正しく一礼する。

「………そこにお庭で?」
「そう、父が作ってるんです」
「いっぱいや、それによう熟れてるなあ」
「でしょう」

今度は知久が運んで来た笊に木乃香の目は引き付けられ、
まどかも誇らし気に後に続く。

「赤いトマトに、胡瓜も瑞々しゅうて。
これサラダもええけどお漬物なんか………」
「そう、ぬか漬けもピクルスも美味しいんですよ」
「?」

刹那は、ちょっとしたズレを察知していた。
まどかの言葉をよそに、つと床に座った木乃香は、
少し考えてにんまり微笑んでいた。
そして、木乃香は立ち上がりスマホを使う。

「もしもしマミさん? うち、うん、明日の事やけど………」
「お嬢様?」

通話を終えた木乃香は向き直り、
微笑んで知久を見る。

「あのー、すいませんけど………」
126 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:21:24.96 ID:Z3g3Pefz0

ーーーーーーーー

「で、一体あなた方は何をしているんですか?」

一旦麻帆良に戻る木乃香を送って駅に向かっていた筈が、
きな臭い気配を追跡して路地裏に入った結果、
刹那の右手の夕凪と左手の白き翼の剣は
さやかの剣と佐倉杏子の槍をギリギリと反らしていた。

「この馬鹿が使い魔を狩るって言うからちょっと教育してやってたんだよ」
「んだとぉ………」

杏子が吐き捨てる様に言い、
ぐわっ、と、戦闘を再開しようとしたさやかは、
目の前に夕凪の切っ先を見ていた。

「使い魔だって人を襲うんでしょ、放っとけないでしょ」
「卵産む前の鶏絞めてどうすんの?
人を何人か食ったら魔女になってグリーフシード孕むんだからさ。
悪りぃけど、あたしってそういう奴だからお嬢様」

「魔女を狩ってくれる分、いないよりはマシやなぁ」
「おっ、お嬢様の方が話が分かるってか」

「魔法少女は、グリーフシードが無ければ現実問題として困るのでしょう。
魔法少女であれなんであれ、出来る事と出来ない事があります。
己の技量を弁えて出来る事をするしかありません。
その上で佐倉さん、ここはまだ見滝原です。
ここで狼藉を続けると言うのであれば、
巴さんの友人、協力者として私が一仕事する事になりますが」

「ああー、そうだな。
なんか見かけちまったんで手ぇ出しちまったけど、
今日ん所は帰らせてもらうわ」
「こんの………」

夕凪の棟で脛を払われ、宙を飛んで突っ込んで来た美樹さやかを、
佐倉杏子は振り返りもせずすいっと交わしていた。
そして、そのままトントーンッと建物の屋根に跳躍して姿を消す。
127 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:25:33.49 ID:Z3g3Pefz0

「刹那さん、っ………」
「もう一度聞きますが、
自殺願望でもあるのですかあなたは?」

白き翼の剣の切っ先を見ながら、
さやかはゆっくり立ち上がる。

「魔法少女と言えど綺麗事だけではない、
自分の利益を考えなければならない、と言う事ぐらいは聞いている筈です。
それに、魔女を狩っている以上、
ヴェテランの魔法少女にあなたが勝てる道理が無い。
それぞれに自分と使命の間を命懸けで生き抜いている相手に、
昨日今日で安易に何かが出来ると思いますか ?」

「ん………このかさんはどう思うのよ?」

「せやなぁ、難しいけど、
魔法の世界で色々難しい事見て来たさかい。
分かるのは、あんまり他人様に無理は言えへん言う事や」

「分かった、分かりました。
正直、ちょっと納得いかないけど、
何て言うか、理屈でもなんでも、勝てると思える要素ないし」

「勘違いしないで下さい。
世の中は強ければ正義、と言う事はありません。
それに、あなたの義憤は、自分が銃を持っていて
目の前の市街地を猛獣が歩いている以上当たり前の感情です。
只、つい先日まで一般人だったあなたと
魔法少女の常識は必ずしも一致しない、
そこを見誤ると結局何も守れない、そういう事です」

「少し、考えてみる。面倒かけてすいません」
128 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:29:09.19 ID:Z3g3Pefz0

ーーーーーーーー

木乃香を見送り、
一度見滝原市内のアパートに帰宅した桜咲刹那は、
夜道を進み再度外出していた。

「又、会いましたね」
「そうね」

テクテクと遅い帰路についていた暁美ほむらは、
正面から登場した桜咲刹那と淡々とした挨拶を交わしていた。

「昨日は、なかなか手強い魔女でした」

ほむらの歩みに合わせながら、刹那が言った。

「あなたの言う通り、魔女の能力は単純な力押しだけじゃない。
特殊な魔術を使うし悪知恵も働く。
そこを読み違えると、あなたや巴マミでも面倒な事になる」
「おっしゃる通りです」

ほむらの言葉に、刹那が素直に応じた。

「まして、美樹さやか」
「心配ですか?」

ギリッと歯噛みするほむらに刹那が尋ねた。

「厄介事は面倒なだけよ」
「そうですか」

ファサァと黒髪を払うほむらに刹那が応じた。

「嫌なものを見ました」
「昨日の魔女の事?」
「ええ、そういう能力の魔女なんでしょうね」
「ええ、嫌な能力よ」

ほむらが言い、ふと言葉が途切れる。
129 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/07/17(月) 03:32:49.27 ID:Z3g3Pefz0

「桜咲刹那」
「はい」

「正直、私にはよく分からなかった。
只、誰しも自分の中に蓋をして自分でも見たくないもの、
隠しておきたい事の一つや二つはある。
それは理解している」

「………助かります………
受け容れてくれた人がいる」
「?」
「このかお嬢様もそうです」
「改めて聞くけど、守るべき人なのかしら?」
「ええ、その事だけは、決して譲れません」

そう言った刹那は、
半ば無意識に左手で夕凪を持ち上げていた。

「今日もなかなか疲れました。
そろそろ明日に備えるとしましょう」
「そうね」

二人は、静かに言葉を交わし、分かれた。

==============================

今回はここまでです>>121-1000
続きは折を見て。
130 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 02:41:31.52 ID:iMwdCcsG0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>129

 ×     ×

「こんにちはー」
「お邪魔します」

休日の昼下がり、新米魔法少女美樹さやかとその親友鹿目まどかは、
予定通り学校と魔法少女の先輩である巴マミの自宅を訪れていた。

「ああ、いらっしゃい」
「あ、このかさん」

フラットの玄関で出迎えたのは近衛木乃香、
マミと同じ学年のこの先輩との間では、
ごく最近の会話の中で名前呼びに馴染んでいる。
たおやかな木乃香にはそういう柔らかさがあった。

「あれ? マミさんお風呂?
って言うかこのかさんも洗い髪」

部屋に入りながら、水音を耳にしたさやかが尋ねた。

「うん。台所で手伝どうてくれてたんやけど、
ちょっとドジ踏んでもうてなぁ、
二人で粉の入れ物爆発させてもうた」
「あははは………」
「ウェヒヒヒ………」

木乃香の語る武勇伝に乾いた笑いを漏らしながら、
まどかはリビングに視線を向ける。
そこでは、やはりマミと同学年、最近転校して来た桜咲刹那が
相変わらず用心棒の先生よろしく夕凪を抱えて座っている。
双方目が合って、ぺこりと頭を下げた。
131 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 02:46:38.21 ID:iMwdCcsG0

「お待ちどうさん」

文字通りお手並み拝見していたさやかは、
あの魔法装束に黒髪の大和撫子京女だからもしかしたら日本茶?
とも思ったが、木乃香が運んで来たのはまごう事無き紅茶、
それも薫り高い逸品だった。

さやかが知っているのはマミの手並みぐらいだが、
沸いた瞬間の熱湯をティーポットに注ぎ、
さらりとタイミングを見極める木乃香の手際は
確かにマミに通じるものがあり、
そして、素人目にも手馴れていた。

「いただきます」

唱和と共に始まるお茶会。

「美味しいです」
「うん、美味しい」
「ありがとう」

まどかとさやかが声を上げ、木乃香がにっこりそれに応じる。

「いい香り」

さやかが改めて香りを味わう。
マミのものとは微妙に違う、それぐらいは分かる。
だが、どちらが上とか下とかはさやかには分からない、
つまり、どちらも美味しい。

「ダージリンのオレンジペコ、
バランスのいいディンブラにキームン。
香り高さとアフタヌーン向けのパンチが絶妙。
私の手持ちと近衛さんが用意したものをブレンドしたものだけど、
塩梅、って本当に深い意味がある言葉ね」
「おおきに、マミさんにそう言うてもらえたら」

ミルクを足した紅茶を傾けてからころころと鈴を転がす様に言い、
ぺこりと頭を下げた木乃香はそのまま台所に向かう。
確かに、そう言われると、くっきり見える個性を上手くまとめた木乃香に対し、
マミの紅茶は全体に柔らかく包み込む様な、それがさやかにも解りかけていた。
132 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 02:51:42.21 ID:iMwdCcsG0

「サンドイッチ」

木乃香が運んで来たそのものの名前を、さやかが告げる。

「お昼にお腹空けておいて、って言われてはいたけど、
なんか、可愛いサンドイッチですね、
お茶会にぴったり、って言うか」
「ええ、お茶会用のフィンガーサンドイッチね」
「いただきます」

さやかとマミが言葉を交わす側でまどかが手を合わせ、
他の者もそれに倣った。

「美味しい。ビーフとかサーモンとか、
こんな美味しくって可愛いサンドイッチになるんだ」
「おおきに」

さやかの賞賛に木乃香がにっこり応じる。

「これって、胡瓜?」
「そうなの」

さやかの言葉にまどかが言った。

「このかさん、家の朝もぎ胡瓜を分けてくれって」
「へえー、まどかパパの、美味しいもんねー。
そりゃ楽しみ。美味しいっ。この味付けって」

「少ししっとり時間を置いた薄切りパンのサンドイッチ。
スモークサーモン、ローストビーフと胡瓜のサンドが三種類。
スタンダードにワインビネガーの胡瓜サンド、
チェダーチーズに胡瓜のサンド、これって………」

「塩麹ですか?」
「当たりや」

まどかの答えに、木乃香がにっこり応じた。
133 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 02:57:14.04 ID:iMwdCcsG0

「色々よく合うとは聞いてたけど、こういう使い方もあるのね。
味付けも組み合わせも、絶妙のバランスでとても美味しい」

最近の流行りではあるが、
バランスの取れた和洋折衷をマミも素直に賞賛する。

「おおきに、有難うございます。
まどかさんのお庭の胡瓜が見事でしたから
無理言うて分けてもらいまして」
「パ、父も喜んでいました」
「こんな美味しいお野菜、本当にありがとう」

まどかの言葉に、木乃香が改めて礼を述べた。

ーーーーーーーー

「どれぐらいがいいん?」
「それじゃあ、このぐらい」

サンドイッチ、スコーンに続き、
ヴィクトリア・サンドを木乃香が切り分けて回る。

「美味しかったです、ご馳走様でした」

一通りのメニューが終わり、まどかが丁寧に礼を述べた。

「おおきに」
「すっごいなーこのかさん」

割りとボリュームのあるティーメニューに、
ふーっと満足の息を吐いてさやかが続く。
134 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 03:01:06.40 ID:iMwdCcsG0

「見た目すっごい大和撫子なのに、
前に見たあの魔法の衣装、あれ、白拍子ですよね?」
「そういう事になるなぁ」

さやかの問いに木乃香が応じる。

「ちょっとネットとかで調べたけど、本当にあんな感じなんですね。
昔のお姫様なんかは十二単だったけど」

「あれ、ちょっと動けへんから少なくとも戦いには不向きみたいやな」

「あー、なんか歌番組でも階段下りられないとか言ってたっけ。
その大和撫子の木乃香さんが、
こんなティータイムまで仕切っちゃうんだから」

「ええ、見事なものよ。
どなたかジェントルマンから教わったのかしら?」

「そやなぁ」

ふふっと笑って口を挟むマミに、
木乃香も柔らかく笑って応じる。

「お茶って、このかさんもしかして日本のお茶も出来るんですか?」
「んー、少しは出来るかな」
「ひゃー、仁美もそうだけどいるもんだ」

木乃香の答えに、さやかが如何にも大袈裟な態度で笑いを誘う。
135 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 03:04:34.16 ID:iMwdCcsG0

「………」
「?」

先程まで、後で考えるなら
やや不自然なぐらいに朗らかに振舞っていたさやかが、
その勢いをふと途切れさせて、刹那と目が合った。

「刹那さん」
「はい」

刹那の返事と共に、さやかが座ったまま深々と頭を下げた。

「刹那さん、あたしに剣を教えて、下さい」
「………」

さやかの願いに、刹那は沈黙で応じた。

「あたしも魔法少女になって、剣が武器で、
刹那さん強いし、それに、凄く厳しいけど、
それだけ正しい事言って、あたしの事心配してくれた。
だから、これからも刹那さんに………」

「………私に、その資格はありません」

途中で静かに遮る刹那の返答を聞き、さやかは顔を上げる。
ふっ、と、微笑む刹那の顔を見た。

「買い被りにも思える私への評価、嬉しく思います。

しかし、私自身も修行中の身。
神鳴流は一朝一夕に習得出来る剣ではありません。
まして、あなたは魔法少女としての力を持ち、これから魔女と戦う。
だからこそ、中途半端な技術を与える訳にはいきません。

私は、何時までここにいる事が出来るか分からない。
出来る事なら、巴さんにお願いしたい。
何よりも魔女退治に習熟していて、
飛び道具も、近接戦闘の能力も極めて高いですから」
136 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/02(水) 03:07:43.86 ID:iMwdCcsG0

「ええ、元々私が勧めた事でもあるから、
美樹さんの事は私が引き受ける。私では不足かしら?」
「い、いえ、とんでもないです。
マミさんに教えてもらえるなら」

「あなたの誠実な申し出に応じる事が出来ず、申し訳ない」
「いえ、こちらこそ、
色々面倒かけて、無理言ってすいませんでした」

「ほな、もう一杯如何?」
「ええ、いただくわ」

固い話が一段落したのを見計らい、
木乃香の誘いにマミが応じた。

==============================

今回はここまでです>>130-1000
続きは折を見て。
137 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 21:59:11.68 ID:3ml88oDw0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>136

ーーーーーーーー

「蜂の魔女、って感じかな?」

和やかなティータイムも終わった夕方、
パトロール先で発見した魔女結界の中で、
ぶんぶん飛び交って襲い掛かって来る蜂の様な使い魔を斬り伏せながら
美樹さやかが言った。

「ええ、あれが本体みたいね」

確かに、巨大な蜂を思わせる浮遊体を目で示し、巴マミが言う。
蜂の巣を思わせる結界の中には、ハニカム状の空洞が空いた大きな壁があり、
その空洞の一つに鹿目まどかと近衛木乃香が待機している。
その側で、何匹もの使い魔が一刀両断され、
その時には、桜咲刹那が野太刀夕凪を鞘に納めていた。

「数が減らない………」

マミが、うじゃうじゃと襲い掛かる使い魔を撃ち落としながら呟く。

「………大本を叩かなくちゃ駄目ね。
美樹さん、使い魔より魔女の方を集中して狙いましょう。
相手の動きを止めるの手伝ってもらえる?」
「うん」

マミの求めに応じて、さやかが跳躍した。
マミのリボンが空中の一際大きい蜂型魔女を縛り上げ、
さやかが投擲した剣が更に魔女を釘付けする。

「美樹さん、こっちに戻って下さい!
巴さんはそのまま魔女をっ!」
「えっ?」
「え? 分かったっ!!」
138 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:04:15.36 ID:3ml88oDw0

突然の刹那の言葉に、
二人とも若干戸惑いながらも言う事を聞いていた。

「美樹さん、巴さんを、そして周囲をよく見ていて下さい。
その上で、必要な事を行って下さい」
「分かりました」

さやかの理解力から言って抽象的過ぎる刹那の指示だったが、
それでも、さやかはそれに従う姿勢を見せる。

「…よし! 見掛け倒しのトロイ子ね」

一方のマミは、不可解と言うべき突然の介入に
ヴェテラン魔法少女として引っかかるものを覚えたものの、
凄腕の退魔師である刹那の手並みと誠意はここまで見せて貰っている。
それに、勝利の手ごたえがマミを些か鷹揚にしていた。

「ティロ………!?」

かくして、リボンで拘束した魔女に向けて、
マミが巨大マスケットを向けた。
その瞬間、マミは体勢を崩していた。

「百烈桜華斬っ!」
「!?」

地面が波打ち体が投げ出された、マミがそう思った次の瞬間には、
急接近していた刹那が豪剣を振るっていた。
生々しい植物質の破片が飛び散り、マミは何かに気付く。
139 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:09:32.67 ID:3ml88oDw0

「マミさんっ!!」

一瞬遅れて接近して来たさやかも、二刀を振るって、
マミに向かっていた巨大な蔓を切り刻む。
そのバックアップを受けて、
体勢を立て直したマミも再び砲口を上空の魔女に向け直した。

「こいつかあっ!!!」

マジカルな火薬の轟音が響く中、
蜂型魔女の結界の一部、と思わせながら潜伏していた植物型の魔女。
その中心部と思われる花に、さやかの一刀が振り抜かれる。

(浅いっ!)

刹那が心の中で舌打ちして、一度鞘に納めた夕凪の鯉口を切る。
瀕死の植物魔女の巨大な蔓が、頭上からさやかを狙う。

「神鳴流………」
「ティロ・フィナーレッ!!!」

その攻撃が振り下ろされる前に、
花の中心をマミの破壊的な一撃が貫いていた。
140 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:15:02.93 ID:3ml88oDw0

ーーーーーーーー

「分かってたの?」

魔女結界を出た後で、マミが刹那に尋ねた。

「結界内で放たれていた魔力の波長、
基本が同一特徴の筈の魔女と結界に奇妙なズレを感じました。
魔女退治に慣れている魔法少女では却って分からないかも知れません」
「ええ、一つの結界に二体の魔女、私も初めて経験したわ」

「あっぶなかったー。
あたしなんて、刹那さんにヒント貰っても出遅れてたから、
これで戦ってたの二人だけだったら………」
「確かに、危なかったわね。
貴重な体験だったわ。美樹さんにとっても」

「ああやって、マミさんに見えない所を助けなきゃいけない、
それが一緒に戦う事なんだって」
「魔女と言うのは想像以上にトリッキーな存在です。
だからこそ、パートナーがいるなら、
一人では守り切れない所を補う重要な役割になります」
「はい」

むしろ進んで刹那の言う事を聞く、そんなさやかをまどかは見ていた。
さやかは、思い込みが強い所がある一方で勘はいい。
喧嘩っ早い所がある一方で信義に厚い清々しさも持ち合わせている。
厳しいが、圧倒的な程の強さと戦いの現実を
目の当たりに見せて筋を通す刹那の言葉は、さやかにも届いている様だ。
141 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:19:04.87 ID:3ml88oDw0

ーーーーーーーー

「ほな、うちはこれで」
「はい」
「ご馳走様でしたー」

魔女退治も終わり、
見滝原の仮の自宅に戻る刹那と木乃香が分かれる。

「こんにちはー」
「よう」

そんな日暮れ過ぎの路上で、ひょいと目の前に現れた木乃香に、
佐倉杏子が些か不機嫌そうに応答する。
そして、二人は近くの公園のベンチに座っていた。

「さっきも魔女結界で見かけましたなぁ」

「偵察だよてーさつ、風見野も魔法少女が増えてるからなぁ。
けど、マミとあのヒヨッコ、
それにサムライ女まで一緒じゃ出る幕ねーよ」

「さいですか」

「しかし、あの桜咲刹那、おっそろしく強いな。
強いってだけじゃない、とにかく実戦を知ってる。
ヴェテランのマミよりも上かもな。
あいつも、誰かに教えてたのか?」

「んー、そう見えますか?」

「ああ、あいつ、目配りも教え方も、
まあ、素人じゃねーよ」
「それはどうも」

そう言って、木乃香が差し出したのはバスケットだった。
142 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:22:15.60 ID:3ml88oDw0

「昼間、マミさん達とお茶会だったんですけど、
元々、アフタヌーンティーは余る程作る、て習慣がありましてなぁ」

「いけすかねぇ」
「要らへんかった?」
「食い物を粗末にする訳ねーだろ。
………旨い」

「おおきに」
「?」

木乃香が、つと、近くの木陰に視線を向ける。

「あら、あなた」
「ゆまっ!」

そこから現れた人影を見て、木乃香の呟きと共に杏子が声を上げる。

「あたしんトコには来るなっつっただろ」
「きょーこ………」

姿を現した幼女、千歳ゆまを杏子が睨みつけ、
ゆまはそれでも杏子を見つめている。

「………食うかい?」

杏子が諦めた様に差し出したサンドイッチに、
ゆまががぶりと食らい付いた。

「美味しい」
「有難う」

ゆまの言葉に木乃香が応じて、二人はにっこり笑い合う。
木乃香の見る所、本当は杏子も満更ではないらしい。
143 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:25:27.59 ID:3ml88oDw0

杏子が自販機に立ち、言葉こそ少なくても充実した短いティータイムが終わる。

「ありがとー」

その場を離れるゆまに、木乃香も手を振り返す。

「………知り合いか?」

ゆまの姿が消えるのを待つ様に、杏子が口を開いた。

「最初にこっちに来た時、使い魔に尾行されててなぁ、
知らない内に追い払ろうたからうちの事は知らんと思うけど」
「ああ、あたしもあいつの事を魔女から助けてさ、
それで懐かれたんだ。ウザイったらねーよ」
「そう」

横を向く杏子に、木乃香はにっこり微笑みかけた。

「………あいつ、千歳ゆまって言うんだけど、親に痛めつけられてる」
「何?」

「勝手言うけどさ、お嬢様。
あたしはこんなだ、警察なんかに出入りはし難い。
もし、ちょっとお人好しをしたいって思うなら、
あいつの事、役所にでも伝えてくれないか?」

「………覚えておく」
「サンキュー。飯、旨かったぜ」
「おおきに」
144 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:28:33.31 ID:3ml88oDw0

ーーーーーーーー

「遅うなった………」

途中での買い物が意外と長引き、
小走りに駅に向かう木乃香の耳に会話が引っかかった。

「大変大変」
「どうしたんだい?」
「あっちの公園で、小さい女の子が大怪我してるの」
「なんだって?」
「私、スマホ忘れちゃって、あなた持ってない?」
「ごめん、私も忘れたんだ」

恐らく二人共自分と同年代だろうと、木乃香は見て取る。
背が高くスタイルのいい、何処かふわっと上品な少女と、
対照的にボーイッシュで
ちょっと気取った感じにも見える少女の会話を小耳に挟み、
木乃香は駆け出していた。
145 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:31:53.57 ID:3ml88oDw0

ーーーーーーーー

「ゆま、ちゃん」
「………」

木乃香が到着した時、
公園の一角に倒れていた千歳ゆまは明らかに危険な状態だった。

「ゆまちゃん、しっかりしてゆまちゃん」
「ん、ん………」
「ケガしてるな、待っててな、すぐに………」
「だめ、なの、おいしゃ………」
「え? ………(この傷)」

ゆまの話を聞きながら、
木乃香は学んだ手順で大怪我をしているゆまの傷を確認する。

「おいしゃさん行くと………
「民生委員」てひとがうちにくるの
ママ…すごくおこるの…だからおいしゃ………」

「分かった、もう少し我慢してな。
ごめんなぁ………」

(これ、すぐに治したらあかんのや。
生命維持確保しながら警察から救急車と児童相談所に………)

蹲る様にゆまを診ていた木乃香が、
スマホを取り出そうとしたその時、後ろ首に衝撃を感じていた。
146 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/03(木) 22:35:16.38 ID:3ml88oDw0

ーーーーーーーー

見滝原市内、夜の住宅街。

街灯の照らす夜の生活道路で暁美ほむらと桜咲刹那がすれ違い、
刹那が小さく一礼するのに合わせてほむらも小さく頭を下げる。

刹那がぴたりと足を止め、スマホを取り出した。
それに気づいたほむらが振り返り、ぎくりとする。

刹那が一瞬浮かべた壊れた笑みは、
それを見たほむらの心中でほむらの血を凍らせた。

刹那が目を通したメールの本文には、

このスマホの持ち主を預かっています。
………駐車場跡地でお待ちしています

と、書かれていた。

==============================

今回はここまでです>>137-1000
続きは折を見て。
147 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/21(月) 01:50:42.45 ID:cd/dnoMs0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>146

ーーーーーーーー

「119番に繋がって放置された電話ボックスの側に倒れていました」
「診察の結果、可能性は高いと」
「既に児童委員も接触を始めています、病院から通告を入れてもらえれば」
「一時保護は措置出来ますか? それまで入院の説得はしますが強制力は」
「………お願いします………先生」

見滝原市立病院救命病棟の一角で関係者が協議を続ける中、
観察室のベッドで、幼い急患はぱちりと目を覚ます。

「きょー、こ………」

ーーーーーーーー

「美国織莉子、呉キリカ、近衛木乃香」

麻帆良大学工学部で自分に任された研究室で、
葉加瀬聡美はPCを操作しながらスマホで通話する。

「この三名の携帯位置情報がその工場跡に集まっています。
もっと言うと、………の公園からほぼ一緒です」

ーーーーーーーー

「と、言う事だ。
あからさまに過ぎる、とも言える訳だが」

聡美からの情報と共に、龍宮真名はそうスマホに告げた。

「だが、接点である事に違いはない。
今、他に接点はない」

相変わらずの生真面目な声、返答だった。
148 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/21(月) 01:54:20.03 ID:cd/dnoMs0

ーーーーーーーー

真名との通話を終えた桜咲刹那は、
夜の見滝原の街を猛スピードで動いていた。
それも、街の裏から裏へ。
街の闇に潜む魔を秘かに狩る、
それは退魔師である刹那の元々の在り方。
故に、その闇の内に潜む者あらば………

チリ、ン………

刹那は路地裏で足を止め、野太刀「夕凪」の鯉口を切った。

「貴方の…」

刹那が振り返り様に振るった一刀は、
大振りの刃に受け太刀されていた。

「名前、教えて…」
「京都神鳴流、桜咲刹那」

刃が弾け、双方飛び退く。

「後は、司命神にでも尋ねる事だ」

ーーーーーーーー

呉キリカは、美国織莉子の矛にして盾として、
織莉子の側に控えていた。

織莉子は、駐車場跡地の中心近くに目を閉じて立っている。
キリカはその周辺を警戒する。

全くの空き地である。加えて、近辺に設定したキリカの魔法もある。
今までのあの女のパターンから言っても、
それだけなら初動で不利は無い、キリカはそう踏んでいた。

キリカがそんな、僅かな余裕を思い浮かべた瞬間、織莉子が目を見開く。
そして、織莉子はバッと腕を動かし、
キリカから見て全く明後日の方向に水晶球の群れを放っていた。
149 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/21(月) 01:58:14.25 ID:cd/dnoMs0

(へっ?)

ほんの一瞬、自分の間が抜けた事をキリカは否めなかった。

織莉子が放った水晶球は、何かの力の塊、
漫画的に言えば「気」の様なものの直撃を受けて砕け散り、
そして、水晶球が向かっていた方向から、突如現れた黒い影が跳躍していた。

「こ、のっ!」

しかし、そこはキリカ、即座に自分の存在意義を思い出し、跳躍する。
ずしゃあっ、と、着地したキリカが脇腹を抑える。
受けた一撃がもう少し深ければ、肋骨は確実だっただろう。

「やるやんか」

黒い影は、そのまま黒い学ランだった。
鋭く裂けた学ランの袖に視線を走らせ、ニット帽の小僧が不敵な笑みを見せる。
その時には、織莉子は更に水晶球を放っていた。

(なんで?)

一瞬キリカがそう思う、無の空間に放たれた筈の水晶球は、
直径が広げた腕程もある馬鹿でかく平べったい鉄の塊の飛来で砕け散る。


「!?」

織莉子がザッと飛び退く。
織莉子のいた辺りに、
上空からじゃららっと鎖が降り注ぎ、虚空を拘束する。

「な、に、を、しているっ!!」

ターンッと跳んだキリカの怒号と共に、
織莉子の側でキリカの鈎爪と二刀流の苦無が激突する。
150 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/21(月) 02:02:05.67 ID:cd/dnoMs0

(こんなデカイの、どこにっ!?)

ギリギリと押し合いながら、キリカの心中に混乱が生ずる。

今のキリカの相手は恐らく女だが、それにしてはバレー選手向きの大柄。
それが、たった今まであの学ラン小僧共々影も形も見えなかった。

女、それも多分同年代、
しかも一見してコスプレ忍者と言う格好と今現在の強さから言って
「同業者」と言う目もある、その特殊能力かも知れないが、
テレポートなのかなんなのか、
そこが分からないと、ちょっとまずいかも知れないと、
僅かばかりの焦りがキリカの頭をよぎる。

ギインッと、キリカの爪が苦無を力で押し退け、
更にびゅうんっと一振りされて接近していた学ラン小僧を牽制する。
学ラン小僧は、不敵に笑い身軽に後退する。

(キリカ)

キリカの頭に愛する織莉子の声が響く。

(ステッピング・ファング、全方位に)
(分かった)

キリカがざっと身構え、その目が狙いをつける。

「させるかあっ!!」

=============================

今回はここまでです>>147-1000
続きは折を見て。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/21(月) 06:20:05.54 ID:e9GAopuIO
そろそろキモいから首吊ってくれない?
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/22(火) 04:31:29.35 ID:HPhRCvH0o

ええーっすずねまで絡むの!?
小太郎楓とネギま側も多く参戦してきて混迷としてきたな
153 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/25(金) 03:02:47.80 ID:oXP+mCo20
感想どうもです。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>150

ーーーーーーーー

「炎舞っ!」
「斬岩剣っ!!」

見滝原の路地裏で、
大量に飛来する炎の剣を「夕凪」の一閃が放つ気が弾き飛ばす。
その時には、桜咲刹那の振るう野太刀「夕凪」は
襲い来る大剣を受け太刀し、弾き返していた。

「剣術は自己流。しかし、斬る事には慣れていますね。
魔女も、人も」
「………人間を斬った事は一度も無い。
恐らく今回が………」

ぼそっ、と、漏れた一言に刹那の唇が微かに緩み、
目にも止まらぬ勢いで距離が詰められる。

ふわっ、と、セーラー服状の上着が翻り、
相変わらず野太刀の物理的限界を無視した刹那の居合抜きが交わされる。
すとんっ、と、刹那の前方に敵が着地する。

一瞬ショートカットにも見える様に長い髪の毛を首の辺りで束ね、
見たまま似たもので例えるなら、黒いショートパンツ・セパレーツ水着の上に
前の開く改造セーラー服の上着の袖だけ通して
カッターナイフ状の大剣を構えている。と言う時点でもちろん非常識な存在。

そして、そのセーラー剣士天乃鈴音は、
もう一つの武器を発動すべくその手を差し出す。
154 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/25(金) 03:06:10.14 ID:oXP+mCo20

「桜火!」
「秘剣、百花繚乱っ!!」

流石にこの場では、交わすだけでは騒ぎが大きくなり過ぎる。
瞬時に判断した刹那は、
自分に向かって来る猛火を更に大きな「気」で一息に飲み込んだ。

「!?」

一瞬爆発に眩んだ視界の中で、刹那は鈴音に斬り付ける。

「アデアット!」

そして、次の瞬間には、
左逆手に握った匕首で鈴音の大剣の刃を辛うじて滑らせていた。
たんっ、と、刹那が距離を取る。

「匕首・十六串………」

刹那の呪文と共に幾つもの匕首が飛び、
匕首が尾を引く捕縛結界が鈴音を捕らえた、筈だった。
その時には、中に誰もいない捕縛結界を無視した刹那が
振り返り様に夕凪を振り下ろし、その兜割りの一刀を鈴音が受け太刀していた。
ぎいんっ、と、鈴音が弾き返し、後ろに跳ぶ。
そして、刹那の視界からふっと姿を消した。

(やはり視覚効果の魔法を使う、か。
何とか気配は追っているが………!?)

そこに、乱入して来た「もの」があった。
乱入して来たものは複数、それは炎の塊。
よく見ると、箒にまたがった魔法使いの形の炎が
何処からともなく飛来して二人の戦場に割り込んでいた。

(これは、西洋魔法の精霊術っ?)

そして、炎の精霊が四散した戦場に、
額を腕で押した天乃鈴音が僅かばかり苦い顔で照らし出された。
155 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/25(金) 03:09:32.22 ID:oXP+mCo20

「!?炎舞っ!!」

鈴音が放った大量の炎の剣が飛来する大量の火炎弾と激突し、
火炎弾をすり抜けた剣は炎の壁に遮断される。

「チッ!」

自分に向けて飛来した紐を思わせる炎を、
鈴音が大剣で弾き飛ばす。
そして、自分の側に着地していた新たな敵に向けて駆け出していた。

「!?」

相手は、ゴシック調の黒衣に身を包み、
後ろ髪を一度両サイドにアップで巻いて垂らした同年代の少女。
それを一刀両断しようとした刹那、
鈴音の視界の中で相手の像が揺らいだ。

「炎楯」

そして、振り下ろした刃は相手の掌から現れた炎の壁に妨げられていた。

「陽炎を、炎を扱えるのは貴方だけじゃない」

飛び退いた鈴音がざっと振り返る。

「桜火っ!!」

そして、鈴音の火炎砲が鈴音に迫っていた水の戒矢と激突し、
周囲が即席の霧に包まれた。
その時には、鈴音は、二体、三体、と、
鈴音に迫っていた得体の知れない黒マントの敵を斬り伏せていた。

(………この手応え、魔力で作られた使い魔?)
156 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/25(金) 03:12:41.86 ID:oXP+mCo20

ーーーーーーーー

「ヴァンパイア・ファングッ!!」
「とっ!」

工場跡の駐車場跡地では、呉キリカが鈎爪を更に連結された長爪を振るい、
キリカに迫っていた学ラン小僧犬上小太郎が危うく飛び退く。
その時には、ぎゅるると迫っていた
巨大手裏剣の軌道をキリカの長爪が何とか反らす。

(キリカッ!)

美国織莉子がキリカにテレパシーを飛ばし、キリカが織莉子の側に戻る。
そこに迫ろうとした小太郎が危うく足を止める。
その時には、織莉子の周囲にはいくつもの水晶球が発生していた。
小太郎と、長身忍者長瀬楓が身構えた時には、
水晶球は織莉子の周囲で一斉に爆発していた。

「通さないよっ!」
「チッ!」

周囲が白煙に包まれ、
織莉子が窓から背後の建物に逃げ込んだと察知した小太郎が後を追うが、
キリカの爪が危うく小太郎の体をかすめる。

「えっ? つっ!」
「相手は俺やろ、姉ちゃんっ!」

キリカが驚いた僅かな隙に、
小太郎の手からいきなり叩きつけて来た強風に煽られて
キリカの背中が建物の壁に激突した。
157 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/25(金) 03:16:22.66 ID:oXP+mCo20

(消え、た? 気配も無しに?)

キリカは未だ驚きを禁じ得なかった。
この辺にいた筈の長瀬楓がかき消す様に姿を消して気配も感じられない。

確かに、キリカともまともに戦える程に素早い相手ではあったが、
それでもバスケかバレーでもやって欲しいタイプの、
見た目の忍者とは不釣り合いな程のタッパの持ち主。

まだ白煙の残る中とは言え、
キリカが全神経を尖らせていた建物側に突っ込んだなら
幾らなんでも分からない筈が無い。

「続けるんか、姉ちゃん?」
「………とーぜんっ!!」

キリカの優先順位ははっきりしていた。
そんな奴が建物に入ったのなら、一刻も早く後を追う必要がある。

ーーーーーーーー

美国織莉子は、工場の事務所棟の階段を上り、
廊下を走りながら心の中で舌打ちした。

「あんたの用はこのお嬢さんか?」

軽口の様だが、全然笑っていない。
織莉子の視線の先では、
槍を小脇に抱えた佐倉杏子が近衛木乃香を連れて織莉子に殺意を示していた。

「このか殿」

そして、織莉子の背後から現れた楓が木乃香を呼ぶ。
158 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/25(金) 03:20:26.72 ID:oXP+mCo20

「お仲間か?」

杏子の問いに木乃香が頷く。

「あなたは?」

織莉子の質問には、厳かさすら感じられた。

「ああー、あたしは佐倉杏子。
今は風見野だけど、この辺の鼠の穴にはちょっと土地勘があるからな。
なんでかなー、ゆまと言いお嬢と言い、
どうして、あたしの知り合いばっか手ぇ出してくれたかね?」

ようやく、笑みを見せた杏子は穂先を前に向けた。
次の瞬間、ふわっ、と、織莉子の周囲に水晶球が浮遊した。

「くっ!」

廊下が白煙に包まれ、側の窓ガラスが割れる。
割れた窓から一つだけ水晶球が飛び込んできた。

「逃げやがったか」

窓から下を見て、杏子が吐き捨てる。
楓は、水晶球に潰された紙人形を拾っていた。

=============================

今回はここまでです>>153-1000
続きは折を見て。
159 :キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい [sage]:2017/08/25(金) 05:38:20.37 ID:IQbUyj1bO
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
160 :キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい [sage]:2017/08/25(金) 05:38:54.33 ID:IQbUyj1bO
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
161 :キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい [sage]:2017/08/25(金) 05:40:56.79 ID:IQbUyj1bO
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
162 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/26(土) 14:08:02.72 ID:hOe04APA0
それでは今回の投下、入ります。

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>>158

ーーーーーーーー

時計の針を少々巻き戻す。

「………」

がらんとした事務室跡の一角で、
近衛木乃香は小さく嘆息していた。
足首近くに巻かれた鎖は二つの鉄アレイと繋がれ、
連結部を南京錠で止められている。
そして、パクティオーカードは鍵と一緒に部屋の隅の机に置かれていた。

「カードも、って事は知ってるんかなぁ………」

ガンッ、と、不穏な音と共に、入口のドアが開く。

「わざわざ外付けで鍵つけてるんだからなー」
「杏子ちゃん?」
「よっ」

そちらを見た木乃香に、杏子は気さくに声をかけた。

「どうしてここに?」
「ああ、ゆまの奴が報せに来てさ。
ここらの裏道にはちょっとばかし土地勘もある」
「ゆまちゃんが?」
「ああ、助けようとしてくれたんだって? ありがとな」

言いながら、杏子はいとも簡単に鎖を破壊する。
163 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/26(土) 14:15:08.26 ID:hOe04APA0

「立てるか?」
「大丈夫」
「食うかい?」
(なんか食べてばかりやなぁ)

杏子の問いに、木乃香は微笑みを張り付かせて応じる。

「あんたさらったの、どういう奴だった?」
「すぐに意識飛ばされてもうてなぁ、何となく覚えてるのは白と黒」
「間違いない、おりことキリカ、ゆまはそう言ってた。
格好から言っても、そっちの人間じゃなきゃ魔法少女だろうよ」
「今、うちに手出してる以上、魔法使いは無いと思う」
「じゃあ魔法少女か」

杏子の問いに木乃香は小さく頷いた。

「これから、ケジメつけるんどすか?」

「ああ、あんたと前の件は貸し借り無しっつっても、
ゆまといいあんたと言い、
あたしの知り合いばっか絡んでるのは魔法少女としてちょっとな。
只魔女を狩ってるだけならとにかく、
近所で薄気味悪い動きされるのも気に食わねぇ」

「ほな、行きますか」
「乗り気だな」

カードを回収し、しゃきっと動き出した木乃香に杏子が言う。

「出来ればそちらさん、マギカで片を付けて欲しい話ですので」
「いいのか?」
「急がないと、血の雨降るかも知れません」
「あー………」

耳障りだけは軽やかに聞こえる木乃香の言葉に、
杏子は記憶を辿り天を仰ぐ。
164 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/08/26(土) 14:19:03.72 ID:hOe04APA0

==============================

今回はここまでです>>162-1000

タイミング的に勝手な縁でお祝い即興してみました。
おめでとうございます。

続きは折を見て。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/26(土) 20:09:39.28 ID:HF/6Mug4O
どすかwwwwどすかってwwwwそんなこといわねえよwwww4んでこいよ
166 :mita刹 ◆JEc8QismHg [sage]:2017/08/26(土) 20:23:12.68 ID:hOe04APA0
>>165
自分もそう思う、多分木乃香の台詞には無いなと。

原作にあんまりない人間関係で京都弁書こうとしたら
どの辺を標準にしようか迷走しましたですはい
167 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/01(金) 02:01:50.71 ID:SxJkVmpp0
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>164

ーーーーーーーー

しゅるるっ、と、自分に接近していた黒い触手を斬り払い、
天乃鈴音はその源へと跳躍した。

「!?」

霧の残る中、標的を見定め、隙だらけ、と踏んで斬り付ける。
次の瞬間、鈴音の手に硬い手ごたえが響く。

「かはっ!」

腹にいいパンチの感触を覚え、鈴音の足がずしゃあっと後ろに滑る。
前方にいるのは、ゴシック調の黒衣に身を固めた
金髪のお姉さん系美少女。

どうも鈴音が知る魔法少女と言うにはおかしいが、
だからと言って「普通」の範疇ではない。
取り敢えず、触手でパンチされた事は理解出来た。

「陽、ろ………」

とにかく視覚をごまかさなければまずい、何時もやっている事だ、
そう思って実行した鈴音だが、何時も通りにならない。
感覚で察したのだが、
術の基となる炎と水分のバランスが意図的に狂わされている。
168 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/01(金) 02:05:13.86 ID:SxJkVmpp0

「ちっ!」

斜め後方に気配を感じ、鈴音は跳躍する。
やはり黒衣姿の三つ編み黒髪に眼鏡の少女が、
鈴音に向けて拘束性の水魔法を放っていた。

そして、跳躍した鈴音の目の前では、桜咲刹那が
野太刀「夕凪」を八双に構えていた。
鈴音の剣と刹那の夕凪が衝突し、弾け、鈴音は着地する。

「おおおおっ!!!」

迫っていた触手の群れを斬り払った鈴音は、
そのまま一挙に距離を詰め、
触手の源である金髪少女の黒衣の隙間、
その白い肌に魔法で精製した短剣を突き立てた。
その時には、鈴音の右腕には鈍い痺れた痛みと共に触手が這い上っていた。

「これは一体どういう事ですか?」

何本もの触手で鈴音を縛り上げた金髪美少女
高音・D・グッドマンが、首を傾げて刹那に尋ねる。

「キリサキさん」
「何ですって?」

刹那の答えに高音が聞き返す。

「ホオズキ市を中心に何人もの少女を惨殺している連続殺害事件です」
「その犯人が彼女だと?」
「武器、太刀筋から言ってまず間違いないと」
「そうですか。まだよく分かりませんけど放置も出来ませんね。
拘束の上で協会の指示を仰ぎます………」
169 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/01(金) 02:08:50.25 ID:SxJkVmpp0

「!?」

高音が言いかけた時、刹那が手から気弾を放つ。
次の瞬間、飛び込んで来た円盤の様なものが
鈴音を拘束していた触手を切断していた。

「!? 神鳴流奥義、斬岩剣っ!!」

刹那が、自分に迫っていた触手を斬り払い、
間に合わないと見るや触手の群れに向けて奥義を放った。

「きゃああっ!!」

爆発音と共に、もう二人の黒衣の少女、
巻き髪の佐倉愛衣と三つ編み眼鏡の夏目萌が引っ繰り返っている。

(今、一瞬見えたのは、水蒸気爆発?)

「おおおぉーっ!!!」
「何をしているんですかっ!?」

高音の叫びが響き、刹那が気が付いた時には、
刹那が振るった夕凪は高音の黒衣から生じた影のヒレによって
ギリギリと防御されていた。

「いない。メイ、ナツメグッ、キリサキさんの探索をっ!」
「敵はもう一人、恐らく幻術使いです。
深追いは避けて下さい!!」
「分かりましたっ!」

愛衣と夏目萌がそれぞれの魔法で飛翔する。
170 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/01(金) 02:12:28.82 ID:SxJkVmpp0

「高音さん、麻帆良の学園警備が何故ここに?」
「とぼけているのですか? 3Aです」

「3A?」

「ええ、そちらの3年A組が妙な動きを見せたから追跡して来たんです。
この見滝原に入った事は確かなのですが、それ以降は不明。
学園祭、魔法世界………あのクラスが裏で動いている時は、
往々にしてとんでもない事が起きていますから。
それで、あなたは?」

「私は協会の内密の命令で、この辺の不可解事件に就いて
こちらで関わるべきものか予備調査を行っていた所ですが」

「それで、出て来たのがキリサキさんですか」

「キリサキさん一人ならとにかく、
バックアップを考えると追跡した二人が気がかりです。
私は別行動をとりますので高音さんはあの二人を追って下さい」
「分かりました。後でもっと詳しい話を」

ーーーーーーーー

「しっ!」
「とっ!!」

犬上小太郎が呉キリカの剣とも言えるサイズの鈎爪を交わし、
その次の瞬間全身を地面スレスレにした小太郎の足払いをキリカが交わす。
たんっ、と、小太郎が後方に跳躍して距離を取り、
地面から沸いた何頭もの黒狗をキリカが手も無く斬り伏せる。

「この感触、使い魔かい?」
「まあー、そんなモンやなっ!」

そう言った時には、
小太郎は猛スピードで迫っていたキリカの爪を間一髪で交わしていた。
171 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/01(金) 02:16:18.47 ID:SxJkVmpp0

「幾らなんでも速すぎや、
この妙な感触、なんぞズルしてるな」

学ランの首筋に新たな隙間を感じ、
つーっと汗を感じながら小太郎が呻く。
どうも、そのトリック、種が割れない事には、
獣化モードを使う事も躊躇された。

「おっ………」
「神鳴流奥義・雷鳴剣っ!!」

小太郎が到着を察するや否や、駐車場跡地が大爆発した。

「斬岩剣っ! 百烈桜華斬っ!!!」
「いきなり全開やな………」

小太郎がつーっと汗を流して呟いた通り、
キリカは早速にドカンドカンと叩き込まれる壮絶な斬撃を
ガンギンガンッと辛うじて受け流し後退していた。

「ヴァンパイア・ファングッ!!」

キリカが後ろに跳びながら放った、
長く連結された大量の爪が重い一撃を地面に穿ち、
二人がそれを交わした隙にキリカは屋根へと跳躍する。
その追跡に動いた小太郎を、刹那が左腕で制した。
172 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/01(金) 02:19:58.27 ID:SxJkVmpp0

「お嬢様は楓が保護しました」
「おう、そうか」

刹那の言葉に、小太郎がふうっと息を吐く。

「それで、どうしてここに?」
「朝倉さんや」
「朝倉さん、ですか」

又、と言う言葉を飲み込み刹那が応じる。

「ああ、なんか刹那姉ちゃんが色々調べてる関係で、
コノカ姉ちゃんもマギカやらの絡んでるこの街に
ちょっと出入りしてるて聞いてな。

それで、一応俺らもこっちに来てたんやけど、
そしたら、朝倉さんから遅うなっても
コノカ姉ちゃんと連絡がとれんて言うて来て。

それで匂いを辿ったりなんだりかんだりで
あの白黒コンビが最後に絡んでたのは確実て事で」

「ああ、それで合ってる。
そういう事だから楓と合流して麻帆良に戻ってくれ。
お嬢様には、当分こちらに出入りしない様に。
それから、間違っても、

「白き翼」や3Aで秘密部隊を編成してこちらに乗り込んで来る、
等と言う事が行われない様に楓に釘を刺しておいて下さい」

「それで、刹那姉ちゃんは?」

「もう一仕事残っているからな。折を見て連絡する」

過去には割と色々修羅場をくぐって来た犬上小太郎は、
その事務的な言葉を、奥歯ガタガタ言い出しそうな心地で聞いていた。

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今回はここまでです>>167-1000
続きは折を見て。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 04:29:19.70 ID:FlEE/TrLo

うーむ 基本的に個人な魔法少女が対抗するには
3-Aは組織として強すぎるなww
とはいえ刹那以外は撤退か
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 07:43:48.59 ID:2dYv93nLO
自演乙
175 :mita刹 ◆JEc8QismHg [saga]:2017/09/09(土) 02:24:34.30 ID:TKRTkcPQ0
感想どうもです。

やらかした………

ここまで何度も使った「シーカ・シシクシロ」の漢字
「匕首・十六串呂」の「呂」が全部抜けてた………
完全に私のミスです、すいません。

それでは今回の投下、入ります。

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>>172

ーーーーーーーー

薔薇の花咲く夜の庭園。
麻帆良学園の夏服制服姿で無言で歩みを進める桜咲刹那は、
今、彼女が手にしている野太刀「夕凪」の
鞘の内にも等しく隠し切れぬ冷たい切れ味を漂わせる。
そんな刹那の周囲で、景色が急変する。

(これは………魔女の結界か)

「神鳴流秘剣・百花繚乱っ! 奥義・斬岩剣っ!!」

刹那が夕凪の鯉口を切ってから、
再び鞘に納め周囲に薔薇の花を見るまで。
刹那にとっても客観的にも、
それはするりと通り過ぎた一つの流れにしか見えないものだった。
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