千歌「カタストロフィ…か」

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214 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:52:01.74 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜



――ここは深い深い闇の中
目を瞑っていても開いても一面黒一色

どっちが上でどっちが下か
右も左も分からない
それどころか自分が立っているのか、倒れているかも分からない

何も無い空間に私という意識だけが存在していた。


理由は分かっている
外から入ってきた悪者に、私の体を乗っ取られたせいだ。

必死に抵抗した

何度も抵抗した

何度も何度も何度も何度も……


――でもダメだった。その結果がこれだ。

もう二度とここから出られない


曜ちゃんに会いたい

梨子ちゃんに会いたい

善子ちゃんに会いたい

ルビィちゃんに会いたい

花丸ちゃんに会いたい

ダイヤさんに会いたい

果南ちゃんに会いたい

鞠莉さんに会いたい



でも…それは無理なお願いみたい。
ならいっその事今すぐにでも死にたい、誰でもいいから私を殺して欲しいと願い続けた

とにかく早く楽になりたかった…



『――やめな―! 絶――やめ―――か!!』



――声が聞こえた
誰かは分からないけど、確かに聞こえたんだ。
馴染み深いというか…いつも聞いている声だった

それから次第に胸元に痛みを感じ始めた
今まで断片的に外の情報が意識に流れ込む事はあったけど
声が聞こえたり、痛みを感じる事は無かった



『――ろ…起き――!! 目を覚ませばそれでいいんだよ!!』



何も無かった空間に小さな光が差し込んだ
その光が大きくなるにつれて声も痛みもハッキリと感じるようになった


この空間で最後に感じたものは
私そっくりの声で泣き叫ぶ声と
胸骨が折れたんじゃないかと思うほどの激痛だった――


215 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:52:42.70 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ダイヤの目の前には奇妙な光景が映っていた

敵との間に立ちはだかるように現れた三人

一人は曜
問題は残りの二人だ

背丈や雰囲気は全く同じ
違うのは髪の長さと着ている制服

片方は東京チームから応援できたもう一人の千歌

では…浦女の制服を着たアホ毛を生やしたこの子は一体誰なのか。



ダイヤ「……千歌さん? あなたは千歌さんなんですか!!?」

チカ「……」

千歌「…色々話したい事はあると思いますが、少しだけ待っててください」

曜「チカちゃん! どうやってあの敵の腕を斬ったの!? 今までこっちの武器は全く通用しなかったのに…」


チカ「肩と膝の関節部分と首の後ろの一点に弱点がある! そこを正確に攻撃すれば倒せる!!」

曜「…了解!」


チカ「正確に攻撃しないと効かないからね。…二人とも出来る?」

曜「ふふ、とーぜんでしょ?」ニッ

千歌「さっきあなたに出来た事が私に出来ないと思う?」

チカ「……へへ、要らない心配だったね」

曜「二人とも、行くよ!!」

216 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:53:15.52 ID:J7Obj3h10


星人の数は果南が引き付けてきた二体
骨格は人間そっくりだが
3メートル以上の大きさ
皮膚や肉は無く、骨だけの姿をしている。

一目見ただけでは簡単に倒せると思ってしまうだろう
だが、この敵にはXガンやZガンといった銃系統の武器は効果が無い
ガンツソードも当たり所が悪ければ刃こぼれしてしまう程の強度。

攻撃を受けたり、ガンツソードで防御したりしようものなら
その部位をスーツごと引き千切られる。

そんな敵でも弱点はあった
一撃必殺の攻撃を掻い潜りながら、弱点目がけて斬りかかる。


曜と千歌は余裕をもって攻撃を回避しているが、蘇生してから余り時間が経過してないチカは動きにぎこちなさがあった。



チカ(息が苦しいっ…! これ、肋骨ヒビ入ってるんじゃない?)ハァ…ハァ



そんなチカに敵の手刀が振り下ろされる



チカ(ヤバッ!? これ避けられな――)



後ろから首根っこを掴まれ、強引に引き寄せられる
助けたのは千歌だった
217 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:54:35.53 ID:J7Obj3h10



チカ「ぐへぇ!!?」

千歌「ったく…世話のかかる“本物”だなぁ」ハァ

チカ「な、なにさ! ちょっと自分の方が動けるからってバカにして!!」

千歌「変だな〜少し前のあなたはもうちょっとマシな動きだったのにね」

チカ「きいいぃぃ!! 自分に馬鹿にされるって滅茶苦茶腹立つ!!!」

千歌「へへーんだ、悔しかった私より――」



そんなやり取りをしている二人の頭を曜は地面に叩きつける
ギリギリのタイミングで敵の薙ぎ払い攻撃が三人の頭上を掠めた



千歌・チカ「「ぶへぇ!!?」」ドガッ

曜「二人ともバカなの!!? どっちも大して変わらないから。大差ないから!!」

千歌・チカ「「ご、ごめんなさい……」」



二人を助けた直後
曜は敵の股下をスライディングで潜り抜け背後に回る

そして素早くジャンプして、弱点である首の後ろを斬り付ける

すると、今までびくともしなかった敵の部位が
豆腐のようにあっさりと斬り落とされたのだ。



曜「よし! 倒せる!!!」




千歌「…私達もやるよ!」

チカ「うん、分かってる!!!」


218 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:55:58.90 ID:J7Obj3h10

〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ダイヤ「信じられない…本当に千歌さんが帰ってきたの?」

果南「良かった…千歌が……元に戻って…さ」



果南の声が一段と弱々しくなっていた
背中にできた大きな傷からは今もどんどん血が流れ出ている



果南「……ねぇ、二人…とも」

鞠莉「…なに?」


果南「…手を握って欲しいな」



二人は果南の右手を包み込む



鞠莉「…これでいい?」

果南「…へへ、温かいなぁ……」


果南「私…さ、ちょっと……疲れちゃって…こんな時……なのに眠いん…だ」

ダイヤ「……っ」

鞠莉「……」

果南「このまま……寝ても、大丈夫…かな?」

鞠莉「…ええ、果南だって言っていたでしょ? こんなの大したケガじゃないって。眠いのは疲れが溜まっただけよ」

鞠莉「目が覚める頃には…きっと全部終わってる。必ず…起こしてあげるわ」

果南「……そっか、なら安心だよ」

ダイヤ「嫌よ……眠っちゃいけませんわ!!」ポロポロ

果南「ダイヤ…大丈夫だって……少し寝る…だけだから」ニッ

果南「だから……寝るまでは…このまま手を握ってて?」


果南「絶対に…起こしてね? 約束……だ………よ…………」

鞠莉「……おやすみなさい、果南」

ダイヤ「……グスッ! か…なん……さん!!」

果南「……」



果南が眠りについたのとほぼ同じタイミングで戦闘を終えた三人が戻って来た
二人の様子から果南がどうなったかはすぐに判断できた。



曜「――果南ちゃん…」

チカ「……」

千歌「辛いのは分かっているけど…今すぐ移動しないと危険です。いつまた転送されてくるか……」


鞠莉「ええ、そうね……でも、もう少し…だけ……待って…」

千歌「…分かりました」


鞠莉「穏やかな顔ね…本当に……眠って…いる……みたい」ポロポロ

鞠莉「うあぁぁ……ああああああああああああああああ!!!!!」
219 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:57:12.19 ID:J7Obj3h10

〜〜〜〜〜〜〜〜〜




善子「――はぁ…はぁ……はぁ」



善子の目の前にはおびただしい数の死体が倒れていた

倒しても倒しても増え続けた敵

その増援もようやく収まったのだ


壁に背中を預け、ずずずと引きずりながら座り込む
その壁には善子の血痕がベットリと付いていた

体には無数の銃傷や刺創、熱傷を負っていたのだ



善子「や…やった……やったわ。私は……生き残った……!」



先の戦闘で塞いでいたシャッターは破壊されている
この先を進めば出口に行ける



善子「二人とも、待って……なさい…今……戻る………か…ら」グググ



善子は立ち上がり、歩き出そうとするが……



――ドサッ



善子「あ……れ……?」


うつ伏せに倒れ込む
善子を中心に円形状に血が広がっていった


善子(うわぁ…これ全部私の血かぁ。この量はやばいわ)

善子(死ぬの…? こんな場所で、たった一人で……?)ゾッ



善子「……あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! い、いやだあ゛あ゛あ゛」



善子(死にたくない…独りで……逝きたく……ない)

善子(お願い…誰か……助けてよぉ……)ジワッ



――グイッ



善子の体を引き上げ、肩を抱えられた
220 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:58:18.37 ID:J7Obj3h10



善子「…り、リリー? はな……まる…?」


理亞「……残念だったわね。私よ」

善子「ああ…理亞……か……どうして…ここに?」

理亞「…助けに来たのよ。梨子さんと花丸はお姉さまと合流しているから安心しなさい」

善子「そう……無事なの…ね」


理亞「……ごめん。もっと早く駆けつけられれば――」

善子「本当…よ……お陰で…この……ザマ…よ」

理亞「…ごめん」

善子「…なに…よ……妙に……素直…じゃない……?」

理亞「……うるさい。そんな事はどうでもいいから、一緒に戻るわよ」

善子「……あり……が………」ガクンッ

理亞「…善子?」

善子「…」


理亞「………」

理亞「善子…あなたをこんな場所に絶対に置いて行かないわ」

理亞「みんなの所に…帰りましょう……」ポロポロ




善子の意識は暗い闇の中に沈んでいった
こうして一人の少女の人生にピリオドが打たれる

ただ、その表情は、まるで幸福な夢でも見ているような…そんな穏やかなものだった。





――ジジジジジ





221 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 00:59:20.68 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜ガンツの部屋(名古屋)〜


曜「――ッ!!? ここは…どこ!?」キョロキョロ

チカ「あれ…? ここって、どこかの部屋じゃない?」

千歌「帰ってきた…の?」



転送された場所は見覚えのあるマンションの一室
ただ、窓から見える風景は見たことが無かった

正面に置かれているガンツからは転送用のレーザーが絶え間なく照射され
続々とメンバーが帰還している



ルビィ「み、みんなぁ!!! やった…私、やったんだよ!!」ウルルウル

曜「ルビィちゃん!!? 無事だったんだね!!」

鞠莉「…腕輪の指示がキチンと伝わっていたみたいね?」

ルビィ「はい! 鞠莉さんからのメッセージが無かったら本当に打つ手なしでした…」


ダイヤ「――…ルビィ!!」ガバッ



ルビィの姿を確認したダイヤは一目散に抱き着いた



ルビィ「ピギャア!? お、お姉ちゃん…?」

ダイヤ「良かった……生きていてくれて本当に…良かった…!」ポロポロ

ルビィ「お姉ちゃん……私も怖かった…もう二度と会えないかと思ったら……う、うええぇぇえん」ポロポロ

鞠莉「ありがとう…ルビィ」


ルビィ「グスンッ……ねぇ、善子ちゃんと果南さんはどうして眠っているの? それにエマさんも見当たらないけど……」

ダイヤ「……っ!」

222 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:00:46.28 ID:J7Obj3h10
梨子と花丸は善子の頬を優しく撫でる
その肌からは体温を感じ取る事は出来ず、まるで氷のように冷たかった



花丸「…綺麗な顔だね。本当にただ眠っているだけみたいずら」

梨子「酷いケガ…そんなになるまで戦っていたんだ……痛かったよね? …辛かったよね? ……怖かった…よね?」

梨子「ごめんね……本当に…ごめんね……!」ポロポロ

花丸「うぅ……善子ちゃん!! よ゛し゛こ゛ち゛ゃん!!!」

聖良「……私達は…間に合わなかったんですね……」

理亞「…うん」ポロポロ


ルビィ「善子ちゃんが……死んだ…? じ、じゃあ…果南さんとエマさんも…」

ダイヤ「…ええ、全員で帰ってくる事は出来ませんでした……」

ルビィ「そんな…私がこの部屋に来るのが遅かったせいで……!」ジワッ

曜「ルビィちゃんのせいじゃない!! 誰のせいでも…無いよ」



鞠莉「梨子、今はその足を治療しないと。少し見せて?」

梨子「お願いします」

鞠莉「んー…太ももをマチェットが完全に貫いているわ。止血は問題無いけれど、抜くのは危険ね…場所が場所だから最悪、後遺症が残るかもしれない」

梨子「そう…ですか……」



聖良「あの、さっきから気になっているのですが……」

聖良「どうして千歌さんが二人いるのですか??」

花丸「…そう言えば」

ルビィ「そ、そうだよ! どういう事なの!?」

曜「あー、それはね――」



――ブウゥゥン…



チカ「あれ? ガンツに何か映った…よ!?」

ダイヤ「こ、これって…」

千歌「――みんなっ……!?」ゾッ

223 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:03:20.49 ID:J7Obj3h10

――

――――

――――――


〜数分前 宇宙船内 大広場〜



にこ「――にしても、終わってみれば呆気ない戦争だったわね?」

絵里「事前の備えと国境を越えた協力があってこその勝利だと思うわよ?」

にこ「そうだとしても、異文明との戦争が数日で終わるものなの? てっきり年単位で続くものだと覚悟していたわ」

希「早く終わるに越した事ないやん」

にこ「そうね。ガンツが乗っ取られた時はどうなる事かと思ったけど」


ことり「あっちでアメリカチームと中国チームが戦っているけど…ほっといていいの?」

真姫「問題無いでしょう? 向こうの残りの兵力はあそこにいる数人だけ。戦っているのは穂乃果並の化け物が揃ったトンデモチームなんだし」

花陽「た、確かに…あの人たち強いよね。敵の方も私じゃ絶対に勝てないくらい強いのに、それをわざわざ一対一で相手しているんだもん」

凛「でも真姫ちゃん、穂乃果ちゃんを化け物って言うのはどうかと思うよー」

真姫「でも事実でしょ?」

海未「凛の言う通りです。穂乃果が化け物ですって? それでは化け物が余りにも可哀想です!」

穂乃果「……海未ちゃん? それって擁護したの? それとも馬鹿にしたの??」




絵里「結構長い事並んでいるけれど、中々順番が回って来ないわね」

真姫「動いているガンツがアメリカチームが持ってきた一台だけだからね。そりゃ時間もかかるでしょ」

凛「もうすぐ家に帰れるのか〜」

海未「全員で無事に帰る事が出来るのは幸いですね」

花陽「危ない場面もたくさんあったから良かったよ…」フゥ

希「にこっちなんて何度も死にかけたやん?」ニシシ

にこ「はぁ!? そんなわけ無いでしょう!!」

真姫「…少なくとも私は3回助けたわよ?」

凛「私は2回!!」

花陽「わ、私も……」

にこ「ウソでしょ…私が気付かなかった内にどんだけ死んでいるのよ……」

ことり「ま、まあ…その為の仲間なんだし」アハハ


凛「危ない場面が多かったのは、やっぱり千歌ちゃんがいなかったからかな?」

絵里「うーん…確かに、千歌がいたらもっと楽に倒せた場面も多かったかも」

穂乃果「でも、千歌ちゃんには……」

絵里「あ、別に穂乃果を責めているわけじゃ無いわ。千歌をあっちに向かわせる事は全員納得の上だったんですもの」

希「それでも千歌っちが抜けた穴は大きかったね」

真姫「絵里の次位に強いんじゃない?」

絵里「海未とずっと訓練していたら嫌でも強くなるでしょ……」
224 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:06:06.28 ID:J7Obj3h10
海未「ふふ、千歌は私が育てました!」

花陽「むむむぅ…最初の師匠は私なのにぃ……」

凛「仕方ないよ。私達は仕事で忙しかったんだからさ」




――ガヤガヤ…




穂乃果「……ねえ、やけに騒がしくない?」

ことり「言われてみれば…」

真姫「色々な言語が混じっているからよく聞き取れないけれど、焦っている感じがする」

海未「一体どうしたって言うので――」



その瞬間、向こうで戦闘していた方角から断末魔のような叫び声が聞こえてきた

その方向を向くと
一人の星人が立っていたのだ。

身長は2メートル強の人間そっくりな見た目の姿
その星人の手には男性の頭部が握られていた。

周辺にはさっきまで戦っていたと思われるアメリカチームと中国チームの無残な死体が転がっている。

手足にプロテクターのような装備をしている以外、武器らしい武器を身に着けていないので全員を素手で倒したのは明白。

その場にいる全員は知らない
彼がこの文明において最も強い事
彼が軍神の異名を持つイヴァ・グーンドである事を。

そんなイヴァと穂乃果は目が合ってしまった。

そしてイヴァの強さを直感する――




穂乃果「――うあああああああああああ!!!!!!」



体が、本能が死を直感していたにも関わらず
穂乃果はガンツソードを展開し、イヴァのもとへ走り出す



イヴァ「ほう…いい眼だ」ニヤッ



穂乃果の斬撃を腕のプロテクターで防ぐ
その後に繰り出される怒涛の攻撃も巧みに捌き続けるイヴァ



イヴァ「……その程度か?」

穂乃果「…ッッ!!!?」ゾワッ



イヴァから放たれる強烈な殺意を感じ取った穂乃果はとっさに防御の姿勢を取る。
だが、防御をした上半身ではなく、右脛を狙ったローキックが炸裂し骨は粉々に砕ける

叫ぶ間も与えずに穂乃果の頭部を掴み取り、地面に叩きつけた

225 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:07:17.99 ID:J7Obj3h10



穂乃果「がっっ!!!!?」

イヴァ「――次は…お前だ!!」ダッ

花陽「……え?」



イヴァの足の筋肉が瞬間的に二倍に膨れ上がると
次のターゲットにした花陽へ亜音速で急接近する。

何が起こっているかまだ理解し切れていない花陽
いや、分かっていてもこの速度では回避も防御は出来ない



凛「――かよちん!!!!!!!」



星人が接近するコンマ数秒前
凛の体は反射的に花陽を守る為に、正面に割り込んだ

腕を体の前でクロスして防御の姿勢を取った。



イヴァ「無駄だああああ!!!!!!」



――ボキボキボキッ!!!!!



凛「ッッッッ!!!!!!!?」

花陽「ガッ!!!!?」ザクッ



イヴァの拳は凛と花陽をまとめて吹き飛ばす
直撃を受けた凛の両腕は勿論、庇われた花陽も大ダメージを受けている事は明らか

そのまま近くの建物の壁を突き破り、消えていった



真姫「凛!! 花陽おおお!!!!」
226 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:08:53.24 ID:J7Obj3h10

イヴァ「さあ! 次はどいつに………痛っ!?」ズキンッ

イヴァ(足に刀が突き刺さっているだと? 俺の攻撃を直接受けたあの女は両腕でガードしていた……つまり、後ろで庇われた方の女の攻撃か)

イヴァ「フハハ!! 大した女だ!! ただでは死なないかぁ!!!」



足の痛みで怯んだ隙を、絵里と希は見逃さない

希は素早く背後に回り込んで後頭部をガンツソードで
絵里は正面から顔面へ飛び膝蹴りを繰り出す



――パキンッ!!!



希「んな!? 折れた!!!?」

イヴァ「死角の防御は最大の強度を誇るアーマーを使うさ。当然だろう?」ガシッ

絵里(完全に不意を突いたのに…これを掴み取るの!?)



絵里の足を掴み取ったイヴァはそのまま振り回して背後にいる希へぶつける

体勢を崩した希のこめかみに拳を打ち込んでノックアウトした後
掴んでいた絵里を2、3度地面に叩きつけて放り投げた。

地面に倒れた二人は立ち上がる様子は無い


次のターゲットは海未



花陽のおかげで速度は大幅に減速したとは言え
まだ人間の反応速度でギリギリ対応できるスピードだ

流石の海未もイヴァの攻撃を回避は出来ず、二刀でいなすしか無かった



海未「う、うおおおおおおおおおお!!!!!!」ギギギギッ

海未(お、重い!! 常にフルパワーじゃなきゃ…やられる!!)


イヴァ「お前は二刀流か! 面白い!!」

海未「それはどうも!!!!」



イヴァと海未による打ち合いが始まる。

渾身の力で刀を振るう海未
実力は互角のように思えた。
だが、装備の強度がこの戦いに付いてくることが出来なかった

度重なる戦闘で片方のガンツソードが壊れかかっていたのだ。
運悪く、その故障寸前のガンツソードで防御してしまった為
攻撃を受けきれずに直撃する



海未「がはっ!!?」
227 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:09:54.90 ID:J7Obj3h10
ヴァ「次ぃぃ!!!」



イヴァが叫んだ直後、頭上から大きな力で押し付けられた
全身の力を込めてこの攻撃に耐える。

にこ、ことり、真姫によるZガンの連射だ。



真姫「よし! このまま押し潰す!!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!

にこ「このっ! このっ! このっ!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!

ことり「お願い……倒れて!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!



イヴァ「はっ!! ぬるいぞ!!!」



集中砲火を受けていたイヴァの姿が消えた

気が付くと、ことり がいた場所にイヴァの姿があったのだ
反撃するチャンスも与えてもらえず、にこと真姫は他のメンバー同様
頭から地面に叩きつけられる。



真姫「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!?」キュウゥゥゥン…

にこ「ッ!!!!」ザクッ



攻撃を受けた瞬間、にこはホルスターに入れていたガンツソードを花陽が刺した方とは逆の足へ突き刺した。



イヴァ「ああ!? やりやがったな!!!」ドゴッ

にこ「ごほあぁ!!!?」キュウゥゥゥン…



トドメの一撃を腹部に受け、そのまま にこ は動かなくなった。

戦闘時間は一分弱
たったそれだけの時間で世界でもトップクラスの実力を誇る東京チームも全滅してしまったのだ。



穂乃果「み、みんな……みんな!!!」

イヴァ「生きていたか…まあいい」
228 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:11:10.10 ID:J7Obj3h10

穂乃果を無視し、イヴァは手元の通信機器を操作する



イヴァ「聞こえるか? 今、この声と様子は地上にある全モニターに表示されているはずだ」

イヴァ「私はイヴァ・グーンド。この宇宙船では最高司令官の地位についている」

イヴァ「我々は貴様ら原住民を征服し、この星を乗っ取るつもりだった」

イヴァ「…だが、我々の予想を遥かに上回る貴様らの兵力に圧倒され、それも叶わなくなった」

イヴァ「――認めよう、この戦争は我々の敗北だ。敗者は潔くこの星から出て行こう」


イヴァ「……と言いたいところだが、私にはまだやる事が残っている」

イヴァ「私にはオートラという弟がいた。その弟もこの戦争に参加していたが、とある原住民に殺された。その敵討ちをしなければならない」

イヴァ「…5分待とう。もし時間内に奴が現れなかったり、私に敗北するような事があれば…この宇宙船を爆破して貴様らも道ずれにしてやる」



そう言うと、イヴァもう一度装置を操作して一枚の画像を表示させた。
それは彼が探しているその人物の顔写真だった

その人物は女性だった

その人物は綺麗な赤色の髪で髪形はツインテールだった

その人物は穂乃果も顔を知っている人物だった

そして、人物の名は――



イヴァ「――クロサワ ルビィ…今すぐこの場に来て俺と戦え!!」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜
229 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:12:41.19 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜





ルビィ「…ぁあ……わ、私……? え……はっ……ええ?」

千歌「…う、ウソ……しょ?」

曜「いつ…いつそんな敵を倒したの!?」

ルビィ「……わ、分からないよ……覚えてる訳ないよ……」


理亞「……行くのよね?」

ルビィ「……え?」

理亞「だって…このまま行かなかったら宇宙船が爆破されるのよ!?」

鞠莉「生き残った人類のほとんどが死ぬ……でしょうね」

ルビィ「……ぅぁ、はぁ、はぁ、はぁ」



ルビィの呼吸はどんどん早くなる
過呼吸寸前だ



ルビィ(行かなきゃみんなが死んじゃう…でもルビィじゃ絶対に勝てない……勝てなくてもみんな死ぬ……どうしようどうしようどうしようどうしよう)ガクガクガク



ダイヤ「――ダメですわ……絶対に行かせません!!!」

ルビィ「お、ねぇ……ちゃん……?」

鞠莉「ダイヤ……」


ダイヤ「だって……無理に決まっているでしょ!? μ’sのメンバーでも勝てなかったのですよ!!?」

理亞「無視すればみんな死ぬのよ! それでいいの!!?」

ダイヤ「ルビィが負けても結果が同じならばいいじゃない!」

理亞「でも、もしかしたら勝てるかも――」

ダイヤ「本気で言ってますの? ルビィの実力で勝てるわけないでしょ!!!!」



ダイヤの言う通り、ルビィではどんな奇跡が起こったとしても100%勝つことは不可能だ

ルビィに限った話ではない
この場にいるメンバーで勝算のある人物は……

230 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:14:08.67 ID:J7Obj3h10



ルビィ「――行くよ」

ダイヤ「………は? る、ルビィ……?」

ルビィ「わ、私が行かきゃみんなが死んじゃうなら……行かなきゃいけない…よね」

ダイヤ「ダメよ! 行く必要は無いと言っているでしょ? お姉ちゃんの言う事を聞きなさい!!」

ルビィ「お姉ちゃん、私だって成長しているんだよ? どうするかは自分で決められる」


ダイヤ「……嫌よ」

ルビィ「ルビィを……信じてよ。例え100回戦って1回しか勝てない相手だとしてもさ、もしかしたら今回は勝てる1回かもしれないでしょ?」

ダイヤ「………嫌です」

ルビィ「だから……お姉ちゃんに笑顔で見送って欲しいな」ニコッ


ダイヤ「嫌っ! お願いだから行かないで!!! ルビィが死ぬなんて絶対に嫌なのよぉ!!!」ポロポロ

ルビィ「……」

ダイヤ「今までワガママは言わないように努めてきました!! でも……でも今回ばかりは無理です!!! 果南さんや善子さんだけでなくルビィまで失いたくないんです……!!」

ダイヤ「みんな一緒に死ぬのなら…それでいいじゃないですかぁ……!」



ルビィに抱き着き、泣き崩れるダイヤ

ダイヤの気持ちは全員が理解できた
結果が変わらないならば、このまま運命を共にするのもいいかもしれない
そんな事を考え始めるメンバーも出始めたが…



ルビィ「…あはは、こんなお姉ちゃん初めてだよ。さっきまで怖くてどうしようもなかったのに、逆に落ち着いちゃったよ」

ダイヤ「ぅう……嫌よ………嫌…ですわ…」

ルビィ「…ごめんお姉ちゃん、それでも私は行くよ」


ダイヤ「っ!? ルビィ……」



ルビィはダイヤの腕を優しく解いた
妹の覚悟を悟ったダイヤはもう抗う事はしなかった

ガンツの目の前まで歩み寄るルビィ
後はあの場所へ転送するように命令するだけだ

大きく息を吸い込み、気持ちを落ち着かせる

そして――



ルビィ「ガンツ、私を――――」



231 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 01:15:04.99 ID:J7Obj3h10
今回はここまで。
恐らく次の更新で完結…かな?
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/12(土) 02:15:59.22 ID:pIIId5pG0

まだ死んだとは言ってない()
233 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:16:20.97 ID:J7Obj3h10

〜〜〜〜〜〜〜〜〜



イヴァ「…遅い」

穂乃果「……まだ時間はあるでしょ?」

イヴァ「黙れ、貴様が生きているのは私の気まぐれだという事を忘れるな」

穂乃果「……っ」



――ジジジジジ



イヴァ「やっと来たか。……ん?」



イヴァの目の前には二人の人間が転送されてきた

一人は赤髪ツインテールの女の子
イヴァの求める人間に似ているようだが、うつ伏せに倒れていて動かない

もう一人はアホ毛の生えた、高校生くらいの少女
この人間は全く見覚えが無い



イヴァ「……クロサワ ルビィはどうした?」

「…ここにいるでしょ?」


少女は倒れている女の子を指さす


イヴァ「どういう意味だ…?」

「分からない? あなたが探しているルビィちゃんはもう死んでるの」

イヴァ「何?」

「あなたの復讐相手はもうこの世にはいない。でも、それで納得はしないよね?」

イヴァ「当然だ。……まさか、貴様が代わりになるとでも言うのか?」



「……話が早くて助かるよ」ニヤッ


イヴァ「…正気か?」

「じゃなきゃ、この場所にいないよ。このまま、あなたに宇宙船を爆破されるわけにはいかないからね」


イヴァ「…いいだろう。代わりに貴様を殺してやる」

「…ふふ、そう簡単には負けない。仮にも人類代表だからね」

イヴァ「……一応聞いておこう、名は何という」

「……私は」




高坂「――私は千歌、“高坂 千歌”だ!!!」





234 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:18:45.82 ID:J7Obj3h10
――――――



ルビィ「――ガンツ、私をてりゅ…………ぁぅ」

花丸「ルビィちゃん?」

ルビィ「わ、わた………きゅぅっ!? てん……こひゅっ!?」
(こ、声が出ない!? 呼吸も上手く出来な………くる……しい)ヒューヒュー



再び震えだす体
乱れる呼吸

…行けば必ず死ぬ
この恐怖がルビィの体を蝕んでいた



ルビィ「あ……れ? おかしい…なぁ……どう…して」ガクガクガク



――ポン



ルビィ「…え?」

チカ「…もう、怖いなら無理しないでよね?」ナデナデ


チカは震えるルビィの頭を優しく撫でた


チカ「100回戦って1回勝てるって? ルビィちゃんじゃ一万回やっても全敗するに決まってるじゃん」

ルビィ「…うりゅぅ」ズーン

チカ「……だから、代役を立てよう」

梨子「…代役?」

チカ「そう、ルビィちゃんが戦える状況じゃない事を分かってもらって、別の誰かが戦えばいい」


曜「どうやって説得するのさ?」

チカ「怖くて無理ですって説明しても聞き入れて貰えないのは明白だよね…なら、納得する理由を示せばいい」

曜「?」



チカ「……ルビィちゃんの死体を見せつければいいんだよ。仇の相手が既に死んでいたら、嫌でも納得するでしょ?」
235 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:21:19.54 ID:J7Obj3h10

ルビィ「え!!?」ゾワッ

ダイヤ「このっ!!」



チカに殴りかかろうとするダイヤ
千歌はその腕を掴み、制止させる



千歌「待って下さい、チカの話を最後まで聞いて下さい」

ダイヤ「はあ!?」



そんなダイヤを無視し、話を続けるチカ



チカ「ガンツ、ルビィちゃんの身体データは記録しているでしょ? だったら体だけでも複製出来るんじゃない? 出来るなら今すぐ作って」



すると、ガンツから複数のレーザー光線が照射された
それはみるみる人体を形成し、あっという間にチカの要望通りの死体が現れたのだ



理亞「ウソ…ガンツってこんな事も出来たの?」

聖良「チカさんはこの機能があった事を知っていたのですか?」

チカ「い、いや……まさか出来るとはね……」

聖良「…へ?」

鞠莉「ちょっ…もし出来なかったらどうするつもりだったの!?」

チカ「その時は、どっかからルビィちゃんに似ている死体を転送してもらって変装させるつもりだった。正直それしかないと思っていたし」

梨子「なんて罰当たりな……」


花丸「でも、これで次は誰が代わりに戦うか決められるね」

曜「…僅かでも可能性があるメンバーとなると、限られてくるよね……」

梨子「……ええ、そうね」

鞠莉「どうする…の?」

チカ「あぁ、大丈夫大丈夫。誰が行くかは決まってるからさ」


梨子「…は?」

チカ「わた――」
千歌「私が行くよ」

曜「千歌ちゃん!?」

236 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:25:23.49 ID:J7Obj3h10

チカ「!? 何言ってんのさ!? どうしてあなたが!!」

千歌「だって、このメンバーで一番強いのは私でしょ?」

チカ「そうじゃない! どうして“千歌”がいく必要があるの!? 私でいいじゃない、私が適任でしょ!!」

千歌「どうして、そう思うの?」


チカ「……そんなの」

千歌「どーせ、刺し違えてでも勝つつもりなんでしょ? って言うか、そもそも生きて帰る気ゼロみたいだし」ヤレヤレ

チカ「だったら…だったら何だって言うのさ! 私は…生きていちゃいけない人間なんだよ!」

千歌「…どうして?」

チカ「だって……だって私は、あの時たくさんの人を殺してしまった! 操られていたなんて言い訳出来ない!! 私は…みんなを……病院にいた罪のない人を……殺したんだよ!!」

チカ「どこかでその償いはしないと……ダメなんだよ!!」


千歌「……そういう理由なら、尚更行かせられないな」

チカ「どうして!?」

千歌「ここであなたに死なれたらさ、私が連れ戻した意味が無くなっちゃうじゃん?」

千歌「私は罪を償わせる為に連れ戻したわけじゃない。ここにいる曜ちゃんやみんなの為に連れ戻したんだ」


千歌「ここに私の…“高坂 千歌”の居場所は無い。みんなにはあなたが必要なんだよ」


チカ「…でも」

千歌「それでも罰を受けなきゃ気が済まないって言うなら、私が代わりに与えるよ」

チカ「?」


千歌「あなたはこれからの人生の全てをかけて、殺めてしまった人々の何十倍の人を笑顔に、そして幸せにするの」

チカ「みんなを…笑顔にする……?」

千歌「途中でやめる事は絶対に許さない。もし、やめたら……今度は死よりも苦しい罰を与えてやるから覚悟して」

チカ「……はは、それは遠慮したいな」



千歌「――うん、分かった。約束するよ」

高坂「よろしい♪ 頑張ってね、千歌」ニコッ
237 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:26:26.77 ID:J7Obj3h10



曜「……本当に行っちゃうの?」

高坂「…うん、仲間のピンチでもあるからね」

曜「また…会えるよね?」

高坂「それは……」


曜「いや、違うよね。また会いに行くから! 千歌ちゃんもいつでも会いに来ていいからね!!」

曜「……待ってるからっ!」

高坂「…ありがとう、曜ちゃん」


ルビィ「ち、千歌さん……ごめんなさい」

高坂「ルビィさんは悪くないですよ。私はただ帰るだけですから」

高坂「後、ダイヤさんも罪悪感とか持たなくていいんですからね!」

ダイヤ「!」ドキッ

高坂「大切な妹が危険な場所に行こうとしているのを止めるのは当たり前の事ですよ。ダイヤさんは間違っていないです」ニコッ

ダイヤ「千歌さん……申し訳…ありません……」ジワッ



高坂「みんな…短い間だったけど、私を受け入れてくれて本当にありがとう。とっても幸せでした!!」ニッ



梨子「無事に…帰ってきてね!」

鞠莉「頼んだわよ!!」

花丸「千歌さんならきっと…勝てる!」

聖良「…ご武運を!」

理亞「サクッと倒しちゃってよね?」

曜「……いってらっしゃい」



高坂「…うん、みんなありがとう。行ってきます!!」


高坂「――ガンツ、私を転送して!!」





――ジジジジジ



238 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:27:28.62 ID:J7Obj3h10

〜〜〜〜〜〜〜〜〜



穂乃果「千歌ちゃん…どうして戻ってきたの……?」

高坂「どうしてって…仲間がピンチなんだから、駆け付けるに決まってるじゃないですか」

穂乃果「…怖くないの? 人類の運命を背負うんだよ……分かってるの?」


高坂「…別にそんな大層な事は考えてないです」

穂乃果「……?」



高坂「人類を守るとか、世界の運命とか、そんな事はどーーっでもいいの」

高坂「私の戦う理由は一つだけ……身近にいる大切な人を守る。その為ならどんな敵にだって立ち向かう。軍神だろうが、文明だろうが関係ない!」


穂乃果「……死ぬ気?」

高坂「まさか、死ぬ気なんて全くありませんよ。だって……」


高坂「だって、約束しましたから……もう曜ちゃんや…みんなを悲しませるような事はしない。――必ず、勝ちます!!」

穂乃果「…そっか」



イヴァ「そろそろいいか? もう待てないぞ」

高坂「…うん、待たせたね。準備は出来たよ」




両者はゆっくりと歩み寄る

千歌はガンツソードを展開し、イヴァは拳を強く握りしめる


そして二人は激突する

――みんなを……みんなとの明日を守る為の戦いが、始まった



239 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:28:58.52 ID:J7Obj3h10
――――――

――――

――



高坂「――はぁっ、はぁっ!! くっ!!!?」ガキンッ!



イヴァは高速で動き回り、千歌へ襲い掛かる

先の戦闘でスピードやパワーは大幅にダウンしているとは言え
ギリギリの戦いが続く

千歌は辛うじて防いでいるが、少しでも気を抜けば終わりだ



イヴァ「どうした!! その程度か!!!」ブンッ!

高坂「っっっ!!!!?」ギンッ!!!



刀の防御がギリギリで間に合う
千歌自身、どうして防ぎ続ける事が出来るのか分からなかった



高坂「調子に…乗るなああ!!!!」ブンッ!



攻撃に転じるも、空振り



高坂「っ!! 速過ぎるんだよ!!!」

イヴァ「はっ!! 貴様が遅いんだ!!!」



イヴァの攻撃が続く


――勝てるビジョンが全く見えない

第三者から見れば、千歌が殺されるのは時間の問題だった
その場にいるガンツチームや地球でこの戦いを観ている人類は死を覚悟し始めていた……



240 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:30:02.09 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜UTX スクリーン前〜


「だ、誰だよあれ!? 画像の女とは別人だぞ!!?」

「あの制服は音の木坂の生徒だよね!?」

「ふざけんなよ……あんな、見るからに子どもの女の子に任せられるかよ!」

「折角生き残ったのに…あんまりだ……」



千歌とイヴァの戦いは全世界で中継されている

現時点で、千歌は全ガンツチームの中でもトップクラスの実力者に成長していた
一対一でイヴァに勝てる可能性があるのは千歌を含めて五人はいないだろう

だが当然、人類の多くはその事実を知らない

見た目はただの女子高校生

さらに常に劣勢の戦況

絶望するなというのが無理な話である

怒号や嘆きが響き渡る


千歌を応援する者は誰も――



こころ「千歌ちゃん頑張れえええええ!!!!!!」

「っ!?」ビクッ

「……嬢ちゃん」


こころ「お願い…お願いだから死なないで!! 帰って来てよ!!!!!」ポロポロ

こころ「負けないで……負けるなあああああ!!!!!」




――イヴァの頬を刀が掠めた

それだけではない。素人目から見ても防御の面でも徐々に安定感が出始めていた

押されている状況は変わらない

しかし、かすり傷程度ではあるものの、攻撃が通る



「…おい! 今、傷がっ!?」

「あの子の攻撃が…当たり始めてる……」

こころ「千歌ちゃん!!」





241 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:30:46.87 ID:J7Obj3h10
〜内浦 小原家シェルター内〜


美渡「…ちょっ、千歌!? どうしてあの子があんな場所にいるの!!?」

志満「…生きていた……千歌ちゃんは、生きていた……っ!!」

美渡「で、でも…あんな化け物に勝てるわけないじゃん!? あの千歌だよ!!?」

志満「……っ」



千歌母「――全く、今までどこに行ってるかと思ったら……あれから三年くらい経ったと思うけど、あんまり変わってないのね」

美渡「何でそんなに冷静なの!? 今まさに千歌が殺されそうになっているんだよ!!」

千歌母「…私達がここで騒いでも、仕方ないでしょ? 大丈夫よ、あの子は死なないわ」


美渡「…何で…何で言い切れるの?」

千歌母「……愚問ね。自分の娘を信じない母親がいると思う?」

美渡「……うぅ」

千歌母「あの子だって馬鹿じゃない、勝ち目があるから立ち向かったのよ」

志満「…信じよう、きっと無事に帰ってくる」


美渡「……このバカ千歌っ!! 散々心配させやがって…絶対にぶん殴ってやるから、さっさとそんな奴ぶっ倒して帰ってこい!!!!」

千歌母(……千歌っ!!)





圧倒的な実力差で勝負は一瞬で決まると、誰もが思っていた

しかし、千歌の必死に食らいつく姿を目の当たりにした彼らの心境は変化し始めた



――あの子…意外と強いのかも?


――当たる……攻撃が当たってるよ!


――ひょっとしたら……いける!?


――勝って!

――頑張れ!!

――頑張れ!!!!!


242 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:31:22.09 ID:J7Obj3h10


奇跡を信じて祈る者

声を枯らしながら声援を送る者


千歌の勝利を願い、人々は一つになり始めていた




――グシャ




――現実は甘くない
ルビィや梨子達の実力では何度挑んでも勝つことは不可能だ

それに比べれば、確かに千歌はイヴァに勝つ可能性がある

可能性がある“だけ“なのだ


あらゆる状況が重なり合い、かつ最高のコンディションで挑んだ場合だとしても、千歌が一対一で勝利する可能性は10%未満だろう

そんな都合のいい状況が、このたった一度の戦闘に訪れるハズが無かった


世界中のスクリーンにはイヴァの渾身の一撃が千歌の腹部に炸裂した映像が流れる――



243 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:32:21.27 ID:J7Obj3h10

〜〜〜〜〜〜〜〜〜



高坂「〜〜〜〜〜っっっ!!!!」



後方に吹き飛ばされ、地面に転がる

直後、腹の中で爆弾が爆発したような痛みが襲い掛かった



高坂「ゴホッ……オエェェッ!! あがあぁあッ!!?」ボトボト




口元から大量の血液が溢れ出す

内臓に致命的なダメージを負ったのは明らかだった


その様子は、曜達の部屋でも映し出されていた



梨子「う…そ……」ゾワッ

ルビィ「ち、千歌さんが……千歌さんが……」ガクガク

ダイヤ「あ……ああぁ………」


鞠莉「曜! 今ならまだ間に合うわ!!」

曜「っ!! ガンツ!!! 今すぐ私を転送して!!!」



このままでは千歌が殺される

イヴァの言う決闘はこれで勝敗がついた

ここから先は部外者が乱入しても文句は無いハズだ

急いで助けに行こうとするが……



曜「……何で転送が始まらないの!? 早くしてよ、ねえ!!!!」ドンッ!

曜「このままじゃ……千歌ちゃんが…お願いだから、転送してよ………ガンツ!!!!」ポロポロ




千歌「何やってるんだよ!!!!!!」



千歌の一喝が部屋中に響き渡る



千歌「勝てる自信があったんでしょ……また会うって約束したじゃん…!! だったら、ちゃんと守ってよ! ……守れよ!!」ポロポロ


曜「千歌…ちゃん?」


千歌「立て……立ち上がってよ………立てええええええええ!!!!!」



244 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:33:23.61 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜



イヴァ「……手応えアリだ。即死しなかったのは奇跡的だったな」

イヴァ「待っていろ、今楽にしてやる」


高坂「がっ……まだ……だ……っ!!」ググググ
(お願い…頑張ってよ! ここで負けるわけにはいかないんだよ!!!)



必死に立ち上がろうとする千歌だが、受けたダメージは深刻だ
激痛で力が入らない



高坂「ゴフッ!? ごほっ!!」ビシャビシャ
(や、ヤバイ……痛みで意識…が………飛ぶ……)




イヴァはもう目の前まで迫っていた

拳を固め、大きく振り上げる



高坂(動け…動け動け動け動け、動けえええええ!!!!)ググググ



イヴァ「――死ね!!!」シュッ!







――ガキンッ!






高坂・イヴァ「「!!!?」」



イヴァの振り下ろした拳が弾かれた

千歌が防いだのではない


千歌とイヴァの間に割って入ってきた人物がいたのだ


突然の事態に、思わず距離を取るイヴァ

この絶体絶命のピンチに駆け付けたのは――




花陽「……ゼェ 大…丈夫? ゼェ……千歌ちゃん……!」

高坂「……は、花陽……さんっ!!」
245 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:34:25.76 ID:J7Obj3h10


イヴァ「貴様…よく生きていたな?」

花陽「凛ちゃんが…庇ってくれた……から…ね」ゼェゼェ



千歌(頭からの出血がひどい……花陽さんはもう戦える体じゃないのに、どうして!?)


花陽「ち…か……ちゃんは……わた…し……たち……が………ま……」ドサッ



花陽は力尽き、膝から崩れ落ちた

千歌の思った通り、花陽は既に戦える状態では無かった

頭を強く打ち、意識は朦朧
全身もボロボロで何故今まで動けたのか不思議なくらいだ



高坂「花陽さん……花陽さん!!!」

花陽「……」


イヴァ「…死んだか。こいつのおかげで無駄に生き延びたな」


高坂(大丈夫…花陽さんの息はまだある!! でも…せっかく助けてもらったのに……このままじゃ無意味になっちゃう)





海未「――よくやりましたね…花陽!!!」ビュン!

イヴァ「!!?」ガキン



海未が斬りかかる

先ほどの攻撃で両手を負傷し、武器は握られなくなっていたハズなのだが
右手にガンツソードを布で固定して無理やり握っている

目に見えるケガは少ないが、骨折やヒビといった外傷を負っていた



海未「絵里!! 援護をお願いします!!!!」

絵里「任せなさい!!!」



高坂「海未さん…絵里さん……!!」



――プシュ…



背後から首筋に注射をされる
振り返るとそこには、希の姿があった

頭からは大量の血が流れ出ており、目の焦点も合っていない

246 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:35:29.00 ID:J7Obj3h10


高坂「の…ぞみ……さん?」

希「へへ……痛覚を消す薬を打った。これでもう少しだけ無理できるやん?」

希「でも…一本しか無かったこれを海未ちゃんと えりち にも使ったから、効き始めと持続時間は極端に短い……すぐに決めてね?」


高坂「……他のメンバーは…どうなったんですか?」

希「大…丈夫や。真姫ちゃん曰く、瀕死の重傷の子もいるけど……まだ間に合う」

希「今はスーツが壊れてないあの二人が戦っているけど…海未ちゃんは握れない右手にガンツソードを巻き付けて戦っているし、えりちに関してはほとんど目が見えて無い……」

高坂「んな!?」

希「だから…二人は命懸けで時間稼ぎをしてるんや……千歌っちの為にね?」

高坂「……」

希「でも……気張らなくてええ…よ。死ぬ時も…生きる時も……みん…な……一緒………や………」ガクッ

高坂「希さん!! ……くっ」



希が気を失うと同時に
穂乃果が近くまで移動してきた



穂乃果「動けるようになった?」

高坂「穂乃果さん……もうすぐ動けそうです」

穂乃果「よし……私が何とかして奴に大きな隙を作る。この足だから作れても一瞬だけしか無理だと思う……チャンスは一度だけ」

穂乃果「……千歌ちゃん、行ける?」



高坂「――…一瞬あれば十分です。必ず決めます……!!」
247 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:36:29.35 ID:J7Obj3h10




イヴァ「この……死にぞこないがああああ!!!!」グシャ

海未「ギャアッ!!!!?」キュウゥゥゥン…

絵里「ブグッッ!!!!!!」キュウゥゥゥン…



イヴァの拳で今度こそ戦闘不能となった絵里と海未
流石の彼も連戦続きで体力をかなり消耗していた



イヴァ「はぁ……はぁ、手こずらせやがって」



再度、千歌にトドメを刺しに行こうとする



穂乃果「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」ドゴッ!!

イヴァ「何いい!!!!?」ゴホッ



穂乃果はスーツのパワーを最大に溜め、体当たり攻撃をしたのだ。
イヴァが回避出来なかったのは穂乃果がステルスモードを使用していたせいだ

イヴァほどの強敵となると、例えステルスモードを使用しても
攻撃の際に本人から発せられる殺気でバレてしまうので、有効な手段にはならない。

だが、今回は違う
この体当たり攻撃には殺気の類は一切なかった
だから回避出来なかったのだ

穂乃果の狙いはただ一つ
イヴァの態勢を大きく崩すこと



穂乃果「――…千歌!!!!!!!」

高坂「いっけえええええええええええええええええええ!!!!」



248 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:37:40.01 ID:J7Obj3h10
――――――


どんな人間でも大なり小なり他人とは優れた特技がある

曜で言えば飛び込み
梨子で言えばピアノ
花陽で言えば折り紙
ことりで言えば衣装作り

他には計算が速かったり、大食いだったり、スポーツが得意だったり
何かしら特技がある。

自らを普通怪獣と名乗る千歌にも勿論、特技はあった

沼津港戦、秋葉原戦、自身との戦い

その特技によって何度も窮地を脱したのだ


――千歌の特技はソフトボール
投擲に関しては他の人より優れている自信があった



249 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:38:32.10 ID:J7Obj3h10
――――――


イヴァ「――ゴホオッ!!!?」



千歌が放ったガンツソードはイヴァの喉を貫いた
即死とまではいかないが、間違いなく致命傷だ



高坂「はぁ…はぁ……くっ、ごほっ!!?」ベチャベチャ
(もう薬の効果が切れかかってる……)

イヴァ「き、貴様……よくも…!!!」



――ガシッ



イヴァ「!?」



立ち上がった穂乃果は、イヴァに突き刺さったガンツソードの柄を握る
そして、勢いよく引き抜いた。

傷口からは噴水ように血が噴き出し、そのままイヴァは動かなくなった。 



穂乃果「……終わった…みんな、終わったよ……」

穂乃果「千歌ちゃんが世界を……みんなを救ったんだ!! 千歌ちゃん!!!」

穂乃果「………………千歌ちゃん?」






250 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:39:39.03 ID:J7Obj3h10

――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――


「………すぅ、……すぅ、……すぅ」

「――い、お――よ! ――ゃん!!」

「……ん、……すぅ」



「――…千歌ちゃん!! そろそろ起きてよ!!」

千歌「……ほぇ? なぁーに…曜ちゃん……」ポケー

曜「ほら、もうすぐ着くから降りる準備して?」

千歌「……え!? もう着いちゃうの!?」

曜「そうだよ。千歌ちゃん爆睡だったもんね」

千歌「あはは…昨日の夜は緊張して眠れなかったからさ」

曜「しっかりしてよね? ほら、スカーフ直すからこっち向いて」

千歌「えへへ、ありがとう」


曜「よし出来た! ……この緑色のスカーフを付けていられるのももう少しで終わりなんだよね」

千歌「うん…私ももうすぐ卒業だもん」




251 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:40:42.98 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


曜「――…じゃあ、私はちょっと用事があるから会場で合流ね?」

千歌「うん! また後でね〜」ヒラヒラ



千歌「……さて、確かアキバドームはこの道沿いに進めばいいんだよね?」



曜と別れた千歌が目的地に向かおうと歩き出すが…



――ドン!



千歌「うわ!! ごめんなさ――」ガシャン!

「…あ」

千歌「……え? 腕が落ち……え゛え゛!!!?」

「い、いや…気にしないでくれ。最近義手の調子が悪くて外れやすくなっているんだ。驚かしてしまって申し訳ない」

千歌「ああー…義手なんですね」ホッ



「………」ジーッ

千歌「……な、何ですか?」

「…なぁ、私達って前にどこかで会わなかったか?」

千歌「へ? うーーーん……会いました??」

「気のせい…か。すまん、忘れてくれ」ピピピ

千歌「電話鳴ってますよ?」

「ん? ああ、ありがとう。引き留めてしまって悪いな。これで失礼するよ」

千歌「?」キョトン




「……もしもし? 待ち合わせ時間に遅れるとはどういうことだ?」

「何? 電車の遅延だって? ……なら仕方ないな」

「なら適当に近くをふらふらして待っているよ。着いたらまた連絡をくれ」

「――じゃあな、ルビィ」




252 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:42:59.83 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


千歌(さっきの人…誰だったんだろう? 義手の女性なんて絶対に忘れないと思うんだけどなぁ)



サングラスの女性「あ、あれれ? どこに落としちゃったのかしら?」アセアセ

千歌「…どうかされましたか?」

サングラスの女性「!」

千歌「ん?」

サングラスの女性「あ、ああ……この辺りに携帯を落としたんだけれど、それが見つからなくてね」

千歌「携帯ですか? それならすぐそこにあるじゃないですか……はい、どうぞ」

サングラスの女性「おお、ハラショー! 助かったわ♪」

千歌「いえいえ……あの、目が見えないんですか?」

サングラスの女性「…ええ、ちょっと前にケガをてしまってね。完全に真っ暗って訳じゃないけど、ぼやけて何も判断出来ないの」

千歌「そうですか……」


サングラスの女性「…あなた、スクールアイドルの高海千歌さんでしょ?」

千歌「えっ……私の事知っているんですか!!?」

サングラスの女性「勿論♪ 今日だってライブを見る為に来たんだから!」

サングラスの女性「こんな目だから衣装とかダンスは見る事は出来ないけれど…その素敵な歌声にいつも元気を貰っているわ」

サングラスの女性「ライブ…楽しみにしている。頑張ってね♪」ニコッ

千歌「っ!! ありがとうございます!!! 精一杯頑張ります!!」ジワッ




サングラスの女性「――…ふふ、流石に声だけじゃ分からないか」

「おーい えりち、待った?」

サングラスの女性「…いいえ? 丁度今来たところ」

「あれ? なんだかご機嫌やん! いい事でもあったん?」

サングラスの女性「まあね? 可愛いスクールアイドルと会えたからね♪」




253 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:44:22.54 ID:J7Obj3h10
〜〜〜〜〜〜〜〜〜


千歌「ほえ〜〜…これがアキバドームか。おっきいなぁ」


曜「千歌ちゃ〜ん!! こっちこっち!」

千歌「曜ちゃん! それに梨子ちゃんも!!」

梨子「ふふ、久しぶりね?」

千歌「わざわざ来てくれたんだね! 嬉しいよ!!」

梨子「だって今日は決勝大会でしょ? 見に行かないわけないじゃない」

曜「他のみんなも来るってさ! 全員で応援しちゃうよ〜〜!」


梨子「それにしても…ラブライブ初出場でいきなり決勝まで進めるとはね」

千歌「えへへ…でも私一人の力じゃない」

千歌「花丸ちゃんに作詞を手伝ってもらって、梨子ちゃんが作曲してくれて、曜ちゃんとルビィちゃんが衣装を作ってくれて、ダイヤさん、理亞さん、聖良さんにダンスを指導してもらって、鞠莉さんが学校全体で応援してくれたおかげだよ」

曜「まあ、現役のトップアイドルに指導してもらうっていうのは若干反則だったと思うけど」アハハ

梨子「あの二人って、今回の大会の特別審査員なんだよね?」

千歌「そうだよ。あとは同じくトップアイドルグループの“にこりんぱな”とピアニストの西木野さんが審査員だった」

曜「審査員といいスポンサーといい…知ってる人が多いね」

梨子「スポンサーにはオハラグループが加わっているんだったよね。後は最近人気急上昇のファッションブランドの“リトル・バード”のオーナーがそうだったハズ」

曜「この二社がいなかったらこんなに早くラブライブが開催されることは無かったんだよね…」

千歌「うん…鞠莉さん達や大会を運営してくれる人たちには本当に感謝してる」




曜「あーあ、私も千歌ちゃんと一緒にスクールアイドルやりたかったなぁ……」

千歌「曜ちゃん…」

梨子「多分、他のみんなも同じ気持ちだったと思うわよ?」

梨子「あの後色々大変だったけど…千歌ちゃんがスクールアイドルを始めるって聞いて、それのお手伝いを引き受けて……まるで高校時代に戻った感じだった」

曜「もし…あの部屋での戦いが無い世界で私達が出会っていたら、多分私達は内浦でスクールアイドルをしていた……うんん、きっとやっていたよ!!」

千歌「……うん」


梨子「でも、この世界に生まれたことは後悔してないんだ」

曜「そうだね」ウンウン

千歌「なんで?」

梨子「だって、ガンツが無かったら…私達は出会う前に死んじゃっているんだもん」

千歌「…確かに。それは困るね」フフ


曜「千歌ちゃんには私達の分までスクールアイドルを楽しんで欲しい。例え優勝できなくても、それで満足だからさ!!」

梨子「楽しんで来てね!!」

千歌「うん! 行ってくるね!!」


254 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:48:43.12 ID:J7Obj3h10
――――――

――――

――


「――…5分前でーす。準備お願いしまーす」


千歌「……そろそろだね」



控室で待機していた千歌
スタッフからの指示を受けて、すっと立ち上がる
曜とルビィに作って貰った衣装は当人達曰くこれまでの中で最高傑作
歌詞も曲もダンスも完成度は非常に高い
舞台は整った
あとはベストを尽くすだけだ



千歌(プレッシャーには強い方だけど……命がかかった時とは全く別の感覚なんだよね。こういう時、グループが羨ましいと思うよ)トホホ



「――…ひっどい顔。本当にアイドルなの?」

千歌「……何さ、あなただって同じ顔でしょ? っていうか、どうやって入って来たの?」

「関係者の出入り口から普通には入れたよ? 正しく顔パスだったね」

千歌「…もう体の方は大丈夫なの?」

「うん、もうすっかり治った。元気にやってるよ」

「あの……ありがとうね?」

千歌「何が?」

「あの時、あなたが血とか臓器を提供してくれなかったら間違いなく死んでた……ねえ、どうして本物のあなたが偽物の私にそんな事したの? そのせいであなたは体に傷まで残っちゃったんだよ?」

千歌「人を助けるのに理由がいる? 助けたいから助けたの。ただ、まぁ……」

「?」

千歌「……あなたには見届ける義務があるでしょ? 勝手に死なれたら私が困るんだよ」プィッ

「……」

千歌「…私の歌で、この会場にいるみんなを今日一番の笑顔にしてみせる」

千歌「――だから、観ててね?」

「……うん、分かった。しっかり見届ける」ニッ

「あー、ある人から伝言を預かっているんだ」

千歌「伝言?」


「あーあ、ごほんっ……『千歌ちゃん、ファイトだよっ!!!』」

千歌「…ふふ、あははははは!! 似てないね!!」ケラケラ

「だぁもう!! 早く行ってよ!!///」

千歌「――…うん、行ってきます」ニコッ







「――…続いては、決勝大会最後の出場選手。大会では珍しいソロでのエントリーにも関わらず、その圧倒的な歌唱力とダンスで初出場ながらも見事ラブライブ本戦まで勝ち残りました!」

「では登場して頂きましょう!! 浦の星女学院スクールアイドル部3年、高海 千歌さんです!!!」




――END
255 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:53:24.66 ID:J7Obj3h10




鞠莉「――…久しぶりね、果南、善子」


鞠莉「学校の再建とか色々忙しくってね…中々来られなくてごめんね」


鞠莉「あの戦争が終わって……果南が死んでからもう二年も経つのよ? 時間の流れってホントあっという間よね」


鞠莉「街もすっかり元通りになったわ。戦争が行われていた期間が極端に短かったのが幸いして、案外復興も早かった」


鞠莉「千歌っちはもう一度浦女の二年生として再入学して、この春に卒業するの。何だか不思議な感覚だわ」


鞠莉「そうそう、千歌っちスクールアイドルを始めたのよ! しかもその大会であるラブライブの決勝まで勝ち残ってね…今日がその日なのよ」


鞠莉「みんなそれぞれの道に進んでいってね…内浦に残っているのは私とダイヤと千歌っちしかいないわ」


鞠莉「……」



鞠莉「……そろそろ、約束を果たそうと思うの」


鞠莉「苦労したのよ? 伊波が沼津にあったバラバラになったガンツを全部回収して、そこからメモリーとか諸々修復して……それでも足りない外部パーツは一から自作したんだから!!」


鞠莉「名古屋にあったガンツが使えれば楽だったんだけれど…戦争が終わった直後に全世界のガンツが使用不可になってね。その前に壊れていたあれだけが無事だったって訳」


鞠莉「その修理もついさっき終わった。もうすぐ…会えるわ」


鞠莉「二年間も待たせてごめんね……」


鞠莉「起きたら急いで会場に向かうわよ! みんなで一緒に千歌っちを応援しなくっちゃ♪」


鞠莉「……じゃあ、起こすわね?」




鞠莉「――コール、ガンツ…松浦 果南と津島善子を……生き返らせて」




――ジジジジジ






――True End
256 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2017/08/12(土) 17:58:57.59 ID:J7Obj3h10
GANTZ×ラブライブの作品は以上で完結です!

本来書く予定の無かった原作最終章にあたるこのカタストロフィ編
前作でちょこちょこ書いていた展開とは異なる所もあったと思いますがいかがだったでしょうか?

これまで読んでくれた方、コメントで感想や批評をしてくれた方
本当にありがとうございました!
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/12(土) 21:56:31.42 ID:Rq1mAini0
ほんと最高のシリーズだったよ、ありがとう
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/12(土) 22:25:05.50 ID:Boj92qOcO

神作品をありがとうございました!
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/12(土) 23:02:32.25 ID:hJZH1nm/O

これは名作として後に残すべきssの1つ
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/13(日) 02:47:36.46 ID:ARykt+3Bo
どっちよりに見ても粗が目立つな
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/17(木) 00:24:09.60 ID:53WGExod0

ついに完結か……
いつもドキドキしながら更新を楽しみにしていました。
名作をありがとう!
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/18(金) 02:55:37.10 ID:U7mabN5Fo
乙!
すごく面白かったよ!
ありがとう!
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/09(土) 20:53:32.31 ID:OWOeEkjq0
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