【安価】 ガンダムビルドファイターズトライ・アズールU【艦これ×GBF-T】

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474 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/22(日) 22:12:48.51 ID:E7RnjH+i0
第17話『神話の獣と天使と』

《2年前 函館港》


「さ、寒い…!」ガクガク

「東北民ならこの程度…!」ガクガク

「滅茶苦茶震えてるじゃないですか…! と言うか何で函館なんですか!?」

「北海道新幹線特集だからですよ…!」

「でも誰も居ないし大雪で市場すらやってないじゃないですか!」

「仕方ありません… 明日には止むそうなので今日は本来明日の予定だったジンギスカンでも…」


コォォォォォォォ…


「っ…!榛名さん、見てください!」

榛名「海の上に、光…? 青葉さん、行きましょう!」

青葉「了解です! ってどうやって?」

榛名「出来るだけ近いところまでです!」



「う… ぁ…」

「もうちょっとで港だから…!」

「糞っ…!何なんだよあの光!」

「私が知るか! 南方に居たと思ったらこんな大雪の海だなんて…!」

「おーい! 誰かー! 電探には近くに船の一隻も居ないから、無理か…!」


青葉「声…! 人…?」

榛名「青葉さん、読み取れますか?」

青葉「ちょっと待ってください…! 3、感情は… 一人は無反応、多分意識がありません。二人は焦りと困惑…?

海の上に居る、と言う事は確実に『艦娘』ですね…」

榛名「転移者… 青葉さん、今から榛名の感応波を全力で周囲に飛ばします。青葉さんはスマートフォンを信号代わりに振ってください」

青葉「前に使ったアプリがそれ用のアプリがありました…! お願いします!」


『聞こ… すか…!』

「な、何!?」

「声! 通信機じゃ…」

『赤… 誘導…!』

「見て! 赤い光よ!」

「誘導してるのか…? だが、どうして…」

「助けるには行くしかないわ!」
475 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/22(日) 23:00:45.05 ID:E7RnjH+i0
榛名「来た…!」

青葉「艦種、恐らく駆逐でしょうか」

「お願い、助けて! 私達庇って怪我をして…!」

「頼む!何でもするから!だから…」

青葉「これは酷い… よく生きてましたね、これ」

榛名「容態は… 脈拍が薄い、止血しないと…! 救急車を呼んで下さい!榛名が応急処置をします!

そこの二人も手伝ってください! そこのバッグに肌着があるのでそれで止血します!」

青葉「もしもし、けが人です!救急車お願いします! 場所は函館港の…」

「あった、この肌着ですか!?」

榛名「ええ。 あと二人はこの人の艤装と貴女達の艤装を外して隠すか投棄してきてください。

『艦娘』なんてものはこの世界には居ません。余計な混乱を招くことになります」

「え…?」

榛名「事情は後で! 早く!」


《数時間後 病院》


「治療は終わりました。応急処置が間に合わなければ危ないところでしたよ」

榛名「そうでしたか」

「…しかしあの怪我は普通じゃない。 体の側で花火が暴発したような傷付き方でしたよ」

榛名「ではそうなのでしょうね」

「…何かあったのか、我々医師は知らなければなりません。場合によっては警察に通報する義務があります」

榛名「…それを言われると少々困るんですよね。こちらも事情はほぼ知らないものでして」

「なら尚更…」

榛名「ではこれで」ドサッ

「は?」

榛名「入院費です。動けるようになるまで束の二つもあれば充分でしょう」

「そ、それは足りてますが…」

青葉「大人しくしていてくださいね〜。眉間撃っちゃいますよ〜」

榛名「選択肢は二つです。受け取って何も見なかったことにするか、鉛玉を受け取るか」

「よ、よろこんで!」



榛名「はぁ… どっと疲れました…」

青葉「小心者なのに無茶するからです」

榛名「主にその言い草は酷いです… 大鯨さんに言われた対処法を実践しただけなのに」

青葉「第一普通ははったりだって分かりますよね。これそこで買ってきた3000円のエアガンですし、普通銃なんか持ってるわけないじゃないですか」

榛名「まぁいきなり背後から音も無く忍び寄られれば誰でも思い込みますよ」

青葉「しかし大鯨さんもちょっとお願いしたらお金出してくれるなんて」

榛名「後が怖いんですよね… あくまでも事情が事情による『貸し』ですから。あとで何させられるやら…」

青葉「1ヶ月はタダ働き覚悟ですね…」
476 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 01:36:54.98 ID:h6npTpVE0
《病室》


榛名「危ない状況らしかったですけど今は命に別状はないそうです。傷跡も残る可能性は少ないと」

「そう… 重巡『青葉』、ソロモンの狼… アンタに助けられるとは思わなかったわ」

青葉「狼の名は返上しましたよ。それに隣にもっと『狼』の名前に相応しい人が居ますし」

「助かった… 本当に、ありがとう…!」

榛名「どんな命も生きたいでしょうし、当然のことをしただけです」

青葉「確かお二人は… 呉所属の陽炎型1番艦『陽炎』と横須賀所属の夕雲型4番艦『長波』、そして今眠ってるのが『幌筵の鬼神』こと阿武隈ですね」

陽炎「…その情報、古いわよ。私達は半年前に幌筵に転属したわ」

青葉「ありゃ。1年も経てば情報も腐りますかぁ」

長波「1年…?」

青葉「青葉がこちら側に来たのが去年だからですよ」

陽炎「要領を得ない…」

榛名「ここは貴女達が本来居た世界ではありません。 異世界の一つですよ」

長波「い、異世界だって…!?」

青葉「ええ。異世界で、この榛名さんが今の青葉の主ですよ」

陽炎「あの青葉を手懐けた…?」

榛名「誤解を招く言い方はやめてください。ビジネスライクな関係でしょう」

青葉「まぁ上司と部下の関係ですね。『今の所』は」

榛名「で、仕事の都合で青葉さんと一緒に食べ歩きをしようとしたところで貴女達を発見した次第です。

恐らくあの光は次元の裂け目のようなもの、それに呑まれた可能性が高いかと」

陽炎「次元の裂け目…」

青葉「実はこの世界は色んな平行世界につながる穴ぼこだらけでして、しかも閉じたり開いたりが忙しくて調査が間に合わず観測放置してるんですよ。

恐らく通った裂け目も突発的に出来た代物… 艤装が機能してる状態で転移したのは幸いじゃないですか」

長波「アンタはどんな状況だったんだよ」

青葉「気が付いたらフィッシングです。比喩じゃなくて、マジで」

榛名「あれはウォースパイトが原因なので… いや釣り上げたの榛名ですけど」

陽炎「訳が分からない…」

榛名「ともかく、二人も少し怪我をしているようなので手当をしておきましょう。 青葉さん、ホテルの手配を」

青葉「了解です!」
477 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 01:53:19.84 ID:h6npTpVE0
《現在・全日本選手権会場》


『準決勝第一試合、宮城県代表天山学園『ホワイトクリーン』対静岡代表・ガンプラ学園チーム『ソルスタル・スフィア』』


阿武隈「どうやら、覚悟を決めなきゃね」

長波「ああ。決着、つけなきゃいけないもんな」

陽炎「どんなヤツでも倒す。私達の改RX-0で…!」


榛名「…満潮」

満潮「何、出番?」

榛名「スタンバイだけしてください。出すかどうかはあの子達が決めることです」

天城「ソレスタル・スフィアのデータは纏めてあります」

榛名「ではブリーフィングを行いましょう」


阿武隈(ここまで来たんだ… あの時から…!)

陽炎「さて、私達はお先に失礼するわ」

長波「榛名姉からブリーフィングの召集がかかりそうだしな」

神通「どうか武運を」

阿武隈「言われるまでもないよ。私達の敵は倒す、それだけだから」

長波「今は自分達の心配しとけ。 無事に決勝にいけるかどうかのな」

陽炎「ま、決勝で待ってるわよ」


天津風「流石に気合入ってるわね…」

朝雲「今、背筋がゾクッってなったわ」

萩風「気負いすぎてるような気がしますが… 放たれるプレッシャーは尋常ではありません」

霞「今のは、何…?」

海風「霞…?」

霞「執念だけじゃない、何か別の感情…」

神通「執念以外の感情、ですか」

霞「あれは『恩』…?」
478 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 02:24:01.39 ID:h6npTpVE0
《ガンプラ学園用の部屋》


能代「敵は3機の『HGUC ユニコーンガンダム』系統をベースにした改造機『改RX-0』を使ってるわ」

ウィルフリッド「監督、あの『改RX-0』については何か知っているのですか?」

能代「嫌と言う程ね。ガンプラ塾当時、現メイジンですら勝てなかったわ」

アドウ「メイジン相手にかよ!?」

能代「あのシリーズは一つの系統、そして『ガンダムシリーズ』と言う枠組みから外れてる。ガンプラとしては異色過ぎるの。

正直、馬鹿げてるとしか言いようがない。 そもそも全機の共通の特徴の、完全変形機能だけでも狂ってるとしか…」

シア「敵の機体は?」

能代「まずはリーダー機『RX-0[M] マーナガルム』から。 あの機体は『本来の意味のフルアーマー・ユニコーン』ね。

各部に装甲を追加、さらにIFジェネレーターによる高い防御力を持ってる。武器はホーミング・ビームキャノンを脚部に複数、遠隔ドリルユニット『スコール』『ハティ』、それとクローアームとバルカンかしら」

アドウ「アイツ、スピードもパワーも尋常じゃねぇぞ。下手にクローに捕まれば俺達の機体もミンチだ」

能代「そして高い加速能力も持ってる。旋回性能が若干低いのが救いだわ…

アレに真正面から対峙は無理、絶対に正面から単機で戦わないことね」

シア「この翼を持った機体は?」

能代「『RX-0[V] ヴェズルフェルニル』、スピード特化の機体よ。ビームマシンガンと実体剣、そして背中に装備されたMドライブユニットによる光の翼が武器。

この機体の特徴は高い運動性・機動性よ。…正直、スローカメラを使わないと撮影すら難しいわ」

ウィルフリッド「尋常じゃ無いスピード… 私でも完全に捉えるのは難しいな…」

能代「それにファイターも反応が早い。 組み合わせは最悪ね…」

アドウ「そしてラストはステルスか」

能代「『RX-0[G] ガルム』。武器はクローシールドを両腕に、両肩にはビームキャノン… そして最悪の武器、弓装の『グシスナウタル』。

『グシスナウタル』のビームは威力はそこまでではないけど『絶対に直撃する』か『絶対に貫く』かの二つの特性を切り替えられるの。どれだけ逃げても、どんな防御策を練ろうとも無力化される」

ウィルフリッド「さらにステルス特性持ち、中々やりにくい…」

シア「なんて恐ろしいガンプラなの…」

能代「しかも全ての機体が『フリューゲル・ヴェント』の主力の『ウイングガンダム・アズライト』や『シームルグ』に匹敵、もしくは上回ってる。

ファイターも強豪、能力も折り紙つき。油断してもしなくても、足元を掬われかねないわ」
479 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/23(月) 22:28:13.82 ID:h6npTpVE0
《天山学園・控え室》


榛名「今回相対するのはガンプラ学園です。 敵のファイター、機体情報を再確認しておきましょう」

天城「まず1機目はアドウ・サガの操る『ガンダムジエンド』、太陽炉搭載機ですが各シリーズの意匠が見られるますね。

戦法は先手にファング、その後は大型のビーム砲と『デッドエンドフィンガー』、ハンドガンを用いた戦いが主です」

阿武隈「近づくのが厄介だけど…」

榛名「だけど弱点はあります。あの首、『フィストジエンド』に武装を依存していることです。しかもアレは首が伸びる機能のせいで操作入力の伝達が遅いんです。

その隙に本体から切断すればほぼ無力、脅威にはなりにくいかと。さらに言えば腹部に注目してください」

長波「裂け目だな…」

榛名「あれは『口』です。 敵機を食み砕き、ビームを呑み込むための。 個人的にはもう一つくらい隠し玉がありそうと踏んでますが…

『口』など、無駄なものを設置したせいで構造上脆弱になっています。例えパワーの劣る『ヴェズルフェルニル』でもNT-Dを使えば上半身と下半身を引きちぎれます」

陽炎「つまり私向けの相手、って訳ね」

榛名「ええ。『ヴェズルフェルニル』の運動性を以ってすればファングなど容易く避けられるでしょう。パワーと、口に注意しておいてください」

天城「次はキジマ・シアの駆る『G-ポータント』です。 武装はオーソドックスにライフル、それとウィップになる剣です。

また強力な粒子フィールドを持ち、華奢な見た目とは裏腹に高い堅牢性を持っています」

榛名「この機体は弱点は少ないですね。 攻略方法は機体各部に装備されたグラビカルアンテナを潰すことです。

グラビカルアンテナは粒子制御の役割を担っています。弱点を露出している以上、破壊し易いでしょう。1個でも壊せば防御能力は半減する筈です」

長波「じゃあ最適なのは私か」

榛名「ええ。ガルムの能力、そして『グシスナウタル』ならば戦えるでしょう」

阿武隈「そして最後は… 『トランジェントガンダム』だね」

天城「武器はランス、と言うかパルチザンですね。 攻防・近距離遠距離全てに対応しています」

榛名「だけど武器に依存し過ぎているのも問題ですね。パルチザンさえ壊せばサーベルくらいしか武器はなくなりますから」

陽炎「簡単に言うよ…」

榛名「しかもクリアパーツを使っている以上あまり強度も高くないかと。しかもパワーはこちらの平均値と同程度…

厄介なのは機体性能をブ−ストする『トランジェントバースト』、トランザムに相当する能力です」

長波「どう攻略するよ」

榛名「使えば敵は突撃一辺倒になるでしょう。そこを突ければ、いけるはずです。 彼の相手は阿武隈が適任ですね」

阿武隈「わかった」

榛名「問題は… 満潮」

満潮「何よ」

榛名「満潮と『フレスヴェルグ』なら3機どの相手にも引けを取りません。貴女の能力ならばガンプラ学園すら確実に倒せるでしょう」

満潮「そのために私を、対・ガンプラ学園の戦力としてチームに編入させたのよね」

榛名「阿武隈。 決めてください。 誰が抜け、代わりに満潮を入れるか。もしくはこのままで戦うか」


阿武隈の選択 直下
1.阿武隈が抜ける
2.陽炎を抜く
3.長波を抜く
4.満潮を編入しない
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 12:00:27.40 ID:/kbyg2mUO
4
481 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/24(火) 23:34:53.26 ID:WJ/PXQWK0
阿武隈「…大丈夫。助けは要らない」

満潮「そう」

榛名「良いんですか?」

阿武隈「これは『私達』三人の戦いだから。姉さんに貰った『改RX-0』があれば充分。

それに… あの三人と戦うための戦いでもある。そこに誰かの手を借りるなんて出来ないよ」

陽炎「去年負けた鬱憤も晴らしたいしね」

長波「そう言うこと。これだけは… 譲れないんだ」

満潮「あっそ。私は自由時間が増えるから結構よ」

榛名「…分かりました。3機の整備は万全、『例のもの』も用意できています」

陽炎「服は?」

天城「ちゃんとありますよ」

長波「じゃあ私達着替えるから、また後で」



榛名「どうしてあそこまで頑ななんでしょう、妹達は」

天城「きっと誰かの妹だからかと」

榛名「…榛名ってそこまで頑なでしたか?」

天城「まずRX-0に拘ってるのに、頑なではないと?」

榛名「うっ…」

天城「それに… 阿武隈達の気持ち、分からなくはありません」

榛名「え…?」

天城「…鈍感なところも直したほうが良いと思いますよ。阿武隈達の気持ち、分かってないんですから」

榛名「気持ち、って?」

天城「教えません」

榛名「感応波で…」

天城「『有事以外の感応波の使用は禁止』、そう定めたのは姉さんですよ」

榛名「うぐっ…!」

天城「第一天城が感応波を遮断してる状態で姉さんが感応波を天城相手に使って読み取るには最大の力を使う必要があります。

ハッキリ自殺行為です。 ここは人が多すぎる、全力で使えば無差別に人の頭を読み取って精神を破裂させますよ」

榛名「そうでした… 自分の能力、全力にすると自分じゃ制御できなくなるの忘れてました…」
482 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/25(水) 00:26:45.37 ID:LLZom0kH0
長波「あれ、この前直したのにまた胸が…」

陽炎「なに、またアンタデカくなったの!?」

長波「おっかしいなぁ… 陽炎より食ってない筈なんだけど…」

阿武隈「良いなぁ… 半分分けてよ」

長波「私に言うなって。んなこと言ったら陽炎だってちょっと成長しただろ」

陽炎「そりゃあれから2年経ってるし。まだまだ成長するのよ」

阿武隈「」グサッ

長波「おい、今地雷踏んづけたぞ」

阿武隈「いいよ… どうせ私は… 胸なんかなくても良いもん…」

陽炎「…面倒なことになった」

長波「自虐モード、長いんだぞ。試合前に自虐モードにしちゃ駄目だろ」

陽炎「胸がデカい長波が悪い」

長波「私のせいかよ!?」

陽炎「アンタが胸キツイとか言うからよ」

阿武隈「良いよ、もう… 諦めてるから…」

陽炎「ほら、拗ねたじゃない」

長波「お前が余計なこと言うからだろうが!?」

陽炎(だけどこんな日常も、二年前の私達には想像できない代物だった…)



《二年前 仙台市内・模型店『エンガノ』1号店※》 ※瑞鳳店は2号、1号店は仙台市内と言う設定です(KBFより)


大鯨「で、この子達がそうなのね?」

榛名「ええ。 阿武隈さん、陽炎さん、長波さんと言うそうです」

阿武隈「…」

陽炎「あの、ここは…」

長波「なんか速い電車に揺られてたと思ったら、こんな所に…」

青葉「向こう側は新幹線なんてないですからね。整備・維持する技術も費用も今の向こう側にはありませんし」

大鯨「当面の間に入用になりそうなものはこっちで用意しておいたわ。後必要なものがあれば…」

阿武隈「…向こうに、帰れないんですか」

榛名「…無理でしょうね。 貴女の艤装は既に使い物にならなかった、それにこの世界と向こうの世界に確実に帰れる裂け目は…」

阿武隈「っ…!じゃあどうしてあのまま死なせてくれなかったの…!」

陽炎「阿武隈さん…!」

長波「帰る方法は後で探せば良い、だから今は身体を…」

阿武隈「戦えなくなった私に、なんの価値があるの!? 『そう』なるくらいなら、いっそ死んだ方が…!」

榛名「じゃあ今すぐ殺してあげましょうか」ジャキッ

阿武隈「ひっ…」

大鯨「ウチでトマホークを出さないで。この子はきっと…」

青葉(軍部の常套手段、青葉たち艦娘は『戦う以外に価値はない』そう刷り込まれて戦わされた。

精神的にも未熟な子供に刷り込んで価値観を固定化させる。戦争時は有効な手段ですが、平和な世界においては無意味どころか悪質過ぎるやり方でしょう)

大鯨「…カウンセリング、青葉ちゃんに任せて良いかしら?」

青葉「この前資格取ったばかりですがやれることはりますよ。それと娘さんを数名お借りしても?」

大鯨「ええ。 そこは一任します」

榛名「では榛名はここで。帰ったら仕事があるので。 …それと阿武隈さん。死ぬ、なんてことは榛名の前で二度と言わないでください。次は容赦しません」
483 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/25(水) 01:22:19.88 ID:LLZom0kH0
陽炎「何なのよ、あの人…!」

青葉「…二人共、あと阿武隈さんも。 榛名さんの前で軽々しく死ぬ、とは言わないでください」

長波「…何かあったのか?」

青葉「過去に親しかった友人を自殺で亡くしているんです」

陽炎「え…?」

青葉「『ある夢』に破れて、目指す目標に成れなくて、10年近くの努力がふいになって… 榛名さんが駆けつけた時には首を吊っていたそうです」

陽炎「だから、阿武隈さんを…」

青葉「まぁ殺す、なんて言ったのは言い過ぎですけども… だけどあの人は誰かが自ら死のうとするのを見たくない、って人なんですよ」

阿武隈「なんで、私を…」

青葉「この世界は、少なくとも今この国は戦争なんて起きてません。そんな世界で生まれた人間だからこそ命を軽々しく扱う人を許せなかった、のだと思います」



榛名「…やってしまいました。またこうですよ…」

榛名(許せ無い事があるとトマホークを取り出すのは駄目な癖です… 言葉で諭せばよかったのに…)

榛名「だけど…」


榛名『…久し振りですね。どうかしましたか?』

『アハハ… 負けちゃった。メイジンに、なれなかったよ…』

榛名『そう、ですか… で、今後は…』

『これで全部台無し。私の人生、意味なくなっちゃった』

榛名『そんな事はありませんよ。 夢破れても…』

『榛名… 貴女はどうして捨てられたの? メイジンとしての道を、そんな簡単にさ…! 私より強いくせに、私なんかより才能があったのに!』

榛名『…』

『…榛名、ごめん。私もう、疲れちゃった…』

榛名『っ…! 待ってください! 今何処ですか!』

『寮だよ。明日には出て行かなくちゃ… でも、出たくないから…』

榛名『今から行きます!大好きな間宮さんの羊羹持って行きますから、早まった事は!』

『じゃあね。 今までありがと』


榛名(あの時榛名が仙台から駆けつけた時にはもう亡くなっていた… もし榛名が向こうに残っていたら彼女を、あの子を救えたのでしょうか…)

榛名「答えて、『フェンリル』… 無理ですよね。口なんてありませんもの」

榛名(人よりプラモを作れても、人より強くても、人と変わった力を持っていても、誰も何も救えなかった。それが榛名なんですから…)

コンコン

天城「姉さん、夕飯の… 何かあったのですか?」

榛名「何でもありませんよ。感傷に浸ってただけです。 メニューは?」

天城「間宮さん特製の…」
484 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/28(土) 01:49:47.17 ID:Z1kViqi00
《現在・天山学園控え室》


阿武隈「行くよ、二人共」

陽炎「了解。準備も終わってる」

長波「いっちょ、蹴散らしに行って来ますか」

阿武隈「機体は… うん、仕上がってる」

陽炎「『例の力』も使えそうね」

長波「今回はコード・ブレイヴを使うのは避けられないよなぁ…」

陽炎「当たり前でしょ。そう簡単にいく相手なら去年負けてないわよ」

阿武隈「…二人共、最初からトばすよ」

陽炎「何、最初からNT-D?」

長波「機体負荷ヤバそうだぞ…」

阿武隈「そんな事に躊躇してたらガンプラ学園は倒せない」

長波「わかってるよ。 だけど私は最初からは使えない」

陽炎「『ガルム』はステルスとの兼ね合いのせいでNT-Dはステルス機能を切ってるときにしか使えない、でしょ?」

長波「ああ。ま、最初の方は隠れて『グシスナウタル』で援護に徹する」

阿武隈「別に切り込んで貰っても構わないんだけど、その役目は陽炎ちゃんに譲るか…

さて二人共、作戦会議は終わり。 いつも通り、そしていつも以上の力を出して戦いなさい」

陽炎・長波「了解!」

阿武隈(こんな所で負けられない… 私達にはやらなきゃいけない事が、あの子達との決着と『それ以上』のことがあるんだから…!)



《小沢学園控え室》


瑞鳳「どう見る、この試合?」

神通「激戦は避けられないでしょうね…」

萩風「しかし僥倖でもあるかと。大会当初からの優勝候補のうち私達の最大脅威とされていた2つが潰し合ってくれるのは」

海風「それはそうですが…」

霞「ちょっと複雑、よね… ガンプラ学園、シアたちとは戦ってみたかったけど宮城の連中とも決着は付けたかったし…」

朝雲「まぁ、私達から見ればどっちでも良いやって感じなんだけど…」

天津風「私はガンプラ学園を潰せればそれで良いわ」

愛宕「貴女達は練習試合の時は入部してなかったから仕方無いわね」

海風「この際なので個人的な感傷は置いておいて… この試合、五分と言いたいですが… どちらかと優勢なのは『ホワイトクリーン』でしょう」

瑞鳳「理由は?」

海風「まずファイタースキルは恐らく五分、連携や作戦次第と言った所です。次に機体性能は『ホワイトクリーン』が勝っているのは明確ですね」

天津風「確かにガンプラ学園の機体データと比較すると性能は『ホワイトクリーン』が上、ただし一部がピーキー過ぎてるけども」

朝雲「『改RX-0』自体、この大会に出すにはオーバースペックなのよ。グリプス戦役にF91突っ込んだみたいなもんだから」

萩風「『Zガンダム』みたいに一部の機体がF91を上回る推力を持っている場合もあるけど基本的には性能で勝る相手はいない、と言う意味では正しい例えでしょう」

愛宕「もしくはTR-6系統とか、ね。あれもオーバースペック過ぎてあの時代の代物とは言えないし…」

海風「話を戻しますと、あとの違いは指導者の質の問題でしょうか」

霞「確か向こうはPPSEのメイジン専任ビルダーが担当してるんだったかしら?」

神通「ワークスチーム、ガンプラ造りの最高峰の専門家が集まり最高の機材を持ったチームの主任、ですね。榛名さんの後輩にあたり、お母様には幾度も煮え湯を飲まされているとか」

瑞鳳「いくら作っても片っ端からこっちが勝っちゃうからね、仕方無い」

海風「しかし『ホワイトクリーン』は朝雲さんにガン=カタを仕込んだ元メイジンの筆頭候補生である榛名さん、それに意外に面倒見がよく霞曰く『丁度良い感じに鍛えてくれる』らしい天城さんです。

製作畑の人間と、『指標』となるべく育てられたファイターと面倒見が良い妹、果たしてどちらが上となるでしょうか?」
485 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/28(土) 03:10:55.57 ID:Z1kViqi00
《会場》


『これより全日本ガンプラバトル選手権・中高生の部、準決勝第一試合。宮城代表・天山学園『ホワイトクリーン』対静岡代表・ガンプラ学園『ソレスタルスフィア』の試合を開始します』


阿武隈「…勝つよ」

陽炎「言われなくても」

長波「そのつもりだ…!」


ウィルフリッド「ここで立ち止まっては居られん…!」

アドウ「全員ぶっ潰してやるよ…!」

シア「勝つのは、私達よ」




榛名「…お母さん達、観てるでしょうか?」

天城「録画してある、とは言ってましたが…」

榛名「多分大丈夫でしょう… リアルタイムで観ろと言っておいたのですが…」



天津風「…わざわざこっちに移動する必要あった?」

朝雲「生で観たいでしょやっぱり」

萩風「ええ。テレビでは戦うガンプラは映しますがファイターはほぼ映しませんから」

瑞鳳「録画してきたし、私達の試合は明日だし平気平気」

愛宕「何があっても後で確認できるようにしてあるわ」

神通「始まります、静かに」

霞(見える、ホワイトクリーンから発する『何か』が… 半端じゃないわよ、あのプレッシャー…!)

海風(キジマさんとの約束が果たされるか、それともホワイトクリーンとの決着か… どちらにしろ、海風にはまだ未来を予測できません。どちらも、全力を尽くして欲しいですね)



Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field to "Speace"

Please set your GUNPLA

BATTLE START!


長波「『ガルム』、長波…」

陽炎「陽炎、『ヴェズルフルニル』…!」

阿武隈「『マーナガルム』、阿武隈! チームホワイトクリーン!」


長波「行くぞ!」

陽炎「出るわよ!」

阿武隈「行きます!」



阿武隈「フィールドは宇宙… コロニーの周辺宙域みたい」

長波「資源衛星付きだな… 『ヘリオポリス』か?」

陽炎「違うみたい。だけど、内部でも戦闘が出来るくらいには大きいわ」

阿武隈「侵入して重力下で戦うか、そのまま宇宙で戦うか…」


行動安価 直下
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 22:14:48.71 ID:MWXt0QzgO
阿武隈が単身でコロニー内部に進入、陽炎と長波は進入すると見せかけて外に隠れておく
487 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/29(日) 01:53:32.18 ID:tJO4NgZp0
阿武隈「私はコロニー内に先行する。二人は港の外に隠れて待機、その時に侵入したフリをして」

陽炎「こっちがコロニー内に全機が入った、と見せかけて相手をコロニーにおびき出す作戦ってことね」

長波「確か港は二つ、対岸にある。片方から3機入ったと思わせれば港での待ち伏せを考えて別の方向から入らざるを得ないからな」

阿武隈「それに陽炎ちゃんを外に置いておくと、もし外部からの攻撃が起きた場合即応出来るから」

陽炎「ヴェズルフェルニルのスピードならこんなフィールド、2分くらいで横断してやれるからね」

長波「それに私が外に居ても気付かれずに移動できるから、もう片方の港に回りこんで背中も狙える」

阿武隈「相手が上手くノればだけどね。 じゃあ作戦開始!」


シア「敵、コロニー内への侵入を確認」

ウィルフリッド「『ホワイトクリーン』はコロニー内での戦いを選んだか…」

アドウ「どうするよ、キジマ?」

ウィルフリッド「小細工はしないさ。私達のそれぞれのスタイルで正面から行く」

シア「それって、好きにしろってことじゃ…」

アドウ「ハハッ、面白れぇ!」

ウィルフリッド(私には彼女、海風さんのような戦い方は出来ん… だが私達のスタイルを貫き、この手で勝利を掴んで見せよう!)



瑞鳳「コロニー内での戦闘を選んだ… この状況、どう見る?」

海風「…どう出るか、次第です。『ホワイトクリーン』側はまだ2機、コロニー外に機体を隠していますから…

この戦い、アドウ・サガがどう動くかで勝敗が決まります」

天津風「アイツが?」

海風「はい。もし今外からコロニーへと攻撃しようとしているアドウ・サガが伏兵に気付けば一気に『ソレスタルスフィア』へと勝利の比重が傾く、しかし伏兵に気付けず奇襲を受けた場合彼に勝ち目はなく負けるでしょう。

そうなった場合戦力比を覆すことはほぼ不可能、シアとキジマさんは『余程』の隠し玉が無い限りは勝てません」

朝雲「チャージ中で無防備になってる今なら『ヴェズルフェルニル』の超スピードか、『グシスナウタル』を持った『ガルム』なら倒すことも出来るし…」

萩風「動き次第で今後が決まる、と言う訳ですね」

霞「だけどあの二人は戦場馴れしてる… あれだけあった殺気も今は全く押さえ込まれて気配すら知覚は難しいわ」

神通「ええ。鍛え上げた私や霞さんですら知覚が難しいとなると…」

愛宕「私も、うっすらと感じるくらいで…」

海風「この勝負… 決着まで長くはありません。決まるのは15分未満になるでしょう」


《コロニー内》


阿武隈「…『トランジェントガンダム』!」

ウィルフリッド「『マーナガルム』、1機だけか…? 隠れているのならば!」


パルチザンを掲げて頭上でクロスさせるトランジェントガンダム、そして粒子ビームが雷のように放出されコロニー内の街を焼く。

阿武隈は両肩に内蔵された『スコール』と『ハティ』を射出しクローアームで掴んで放つ!


阿武隈「リモート、ドリルバーストッ!」

ウィルフリッド「クッ! あれに当たればトランジェントと言えども…」

阿武隈「まだ!どこに逃げようと追い詰める!」


脚部からスフィア・フォーカス・ビームキャノンの屈折するビームが放たれ、ドリルユニットから逃げるトランジェントへと襲い掛かる。

トランジェントは辛うじて回避するが追撃してきた『スコール』『ハティ』が掠め、さらにマーナガルム本体が加速の勢いで右腕で打撃を放ち直撃したトランジェントを地面へと叩き付けた。


ウィルフリッド「やはりパワーが桁違いか…!」

阿武隈「ちょっと凹んだだけ… でも『マーナガルム』の攻撃、どれだけ耐えられるかな?」
488 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/29(日) 02:52:31.31 ID:tJO4NgZp0
シア「兄さん!」

阿武隈「G-ポータントまで来た…! 狙い通りだね!」


阿武隈はスマッシュライフルによる射撃をIフィールドで防ぎ脚部からビームキャノンを放つ。しかしシアはその攻撃をフィールドによって防いだ。

それこそ阿武隈の狙い、そして足を止めたG-ポータントの背後から一条のビームが走り左肩を貫く。


シア「後ろっ!?」

長波「警戒が甘いんだよ!追え『グシスナウタル』ッ!」


放たれたビームを右への回避機動で避けようとするG-ポータント、しかしグシスナウタルの一撃はポータントを追って曲がり直撃する。

収束が甘く威力は低い為かダメージこそ軽微だが墜落して建物に落下するG-ポータント。そこに今度は長波が『貫く』一撃を放つがポータントは飛び上がってビームをかわす。


長波「やっぱり真正面からは当たらないか…!」

シア「あの一撃、こっちの装甲を一撃で貫いた… 直撃は避けなきゃ…!」

ウィルフリッド「下がれシア!態勢を…」

阿武隈「余所見する隙なんてあると思わないで!」


一瞬の隙も逃さずトランジェントへとビームキャノンを放つ阿武隈。パルチザンを使ってビームを防御するが長くは保たないだろう。

射撃による攻撃を受けないためには近付く必要がある。だが不用意に近付けばマーナガルムのパワーの餌食になるのは必然だ。


ウィルフリッド(一旦態勢を整えなおさなければ、負ける…!)

ウィルフリッド「くっ、アドウ!」


コロニー外部からバイフィストの銃口へとエネルギーを溜め込んでいたアドウにウィルフリッドからの通信が入った。

その通信を受けて一撃を放ち、コロニー外壁を破って内部に侵入しようとしていたアドウだが…


アドウ「避けろよ、デカイのが…」

陽炎「行かないわよ」


そこにNT-Dを発動しながら『スキーズブラズニル』の光の翼を展開した『ヴェズルフェルニル』が超高速で迫り、反応が遅れたジエンドのフィストジエンドの顔に『グラム』で斬撃を加える。

そして溜めていたエネルギーが暴発して、フィストにあった顔が吹き飛び完全に『デッドエンドフィンガー』銃口が破壊された。


アドウ「テメェ、よくも! ファング!」

陽炎「ネージュエール! 手数はこっちが上よ!」


距離を取ったヴェズルフェルニルへとジエンドがファングを10発放つが、スキーズブラズニルの光の翼から放出されたエネルギーが無数の刃となって襲い掛かる。

手動でファングを操り刃を躱そうとするが数が多すぎる故に完全に回避できず全てのファングが撃ち落された。


アドウ「やる…!だが…」

陽炎「反撃? させないわよ!」


ビーム・マシンガンをジエンドへと放つ陽炎、陽炎の射撃はフィストの甲部によって防がれるが陽炎はその隙を狙って機体を急加速させて距離を詰める。

そして『グラム』による斬撃を放ち右側のフィストのアームを切り落として光の翼で八つ裂きにしてしまう。


アドウ「何だと!?」

陽炎「行くわよ。ガンプラ学園の不敗、今日で終わらせてあげるから」


視点選択 直下
1.阿武隈『VSウィルフリッド』
2.長波『VSシア』
3.陽炎『VSアドウ』
4.榛名『独白』
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 09:41:37.44 ID:GF55OZrW0
490 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/30(月) 00:07:31.47 ID:3tMFy5qE0
side-陽炎-


アドウ「ちょこまかと!ファング!」

陽炎「もうその手は分かってる!ネージュエール!」


襲い掛かるファングへと光の翼から無数の刃を放ちその全てを切り裂く。その隙にアドウは銃であるショットジエンドを右手にマウントさせてヴェズルフェルニルへと数発放つ。

だが常軌を逸した速度で機動を行うヴェズルフェルニルを捉える事は出来ずに周囲に浮いていたデブリに当たる。アドウの狙いはデブリ帯に陽炎を追い込み機動力を削ぐことであり、狙い通りに陽炎はヴェズルフェルニルをデブリ帯に突入させた。


アドウ「バカが!まんまとかか…」

陽炎「甘く見られたものね… この程度で私が止まるかっての!」

アドウ「コイツ、デブリでも速度が落ちないのかよ!?」


だが目論みは全て外れヴェズルフェルニルの機動力は落ちない。デブリ一つ一つを小刻みな機動で掻い潜る姿は『ガンダムUC』のシナンジュの映像を彷彿とさせる程だった。

陽炎にはデブリ全てが見えている。そして反射的に回避機動を行いデブリを掻い潜るなど彼女にとってはお菓子の袋を開けるのと同じレベルだ。寧ろたまに暴発させて零したりする分お菓子の袋の方が難易度が高いかもしれない。


陽炎「でもいい加減鬱陶しいしキモイわね、その潰れた顔。こっちも切っちゃうか」

アドウ「させるかよ!」


機体を反転させジエンドへとヴェズルフェルニルは直進する。その間もアドウは迎撃のためのファングを放つが全て右腕のマシンガンで撃墜され距離を詰められてしまう。

そして左腕の実体剣『グラム』で真正面からの斬撃を行うがジエンドの右の5本指に内蔵されたサーベルで防がれ鍔競り合いとなる。


アドウ「俺にサーベルを使わせやがったな…!」

陽炎(これが隠し玉? 違う、『口』に何かあるかもしれない。ならここは…)

アドウ「コイツも、喰らえってんだよ!」


ジエンドの腹部にある口が裂け中から飛び出す内蔵の小型MSの角。『イッカク』と呼ばれるその機体がヴェズルフェルニルを串刺しにしようと回転しながら放たれる。

この間合いでは反射的に対応するのは普通は不可能、故に必殺を確信するアドウ。しかし次の瞬間、目の前からヴェズルフェルニルの姿は消えていた。


アドウ「何っ!?」

陽炎「『コード・ブレイヴ』… 一瞬遅れてたらヤられてたかも」


咄嗟に発動したリミッター解除システム『コード・ブレイヴ』、そして陽炎は機体を上昇させることで『イッカク』による一撃を避けていたのだ。

そして陽炎はマシンガンを投棄しグラムを両腕で構えて加速しジエンドとの距離を再度、瞬時に詰めて『イッカク』を両断する。


陽炎「切り札は、もう無いわよ」

アドウ「ふざけやがってぇぇぇぇぇっ!」


ここまで追い詰められたのはどれぐらい前だろう、とアドウは逡巡した。互角の戦いではなく一方的過ぎる戦いに血が滾るどころか全身の熱が恐怖で冷めていく感覚を覚える。

それはかつて自分自身が他人にやってきた事、しかし彼はそれに気付きもしない。気付けないほど思考に余裕が無いのだ。そして彼は怒りのまま右の五指のサーベルをヴェズルフェルニルへと繰り出す。


アドウ「これでぇぇぇぇっ!」

陽炎「そんな感情任せで、やれると思うな!」


『グラム』とサーベルが鍔競り合いとなった瞬間、陽炎はグラムを僅かにずらすことでジエンドの指から展開されたサーベルを逸らす。

そして腹部の『口』にグラムを押し当てる。それに気付いたアドウはグラムを噛み砕こうと腹部の牙でグラムに噛み付こうとするが、グラムの刃が結晶化しそのままジエンドを両断した。


アドウ「俺が…!負ける、だと…!」

陽炎「マテリアライゼーション… 勝ちは、貰ったわ」


背後で爆散するジエンドを見届けた陽炎はNT-Dを解除し先程投棄したマシンガンを探す。その目や頭の中には『倒した相手』の事など微塵も残っていない。

そしてマシンガンを発見すると再びコロニーの方へと機体を飛翔させる。ただ敵対する者を全て屠るために…
491 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/04/30(月) 01:14:40.36 ID:3tMFy5qE0
天城「姉さん!陽炎が1機倒しました!」

榛名「去年より腕を上げましたからね。しかしまだ1機、油断は出来ません」

榛名(正直満潮を編入しなかったのは不安でしたが、この調子なら心配ありませんね)



天津風「あのアドウが…?」

朝雲「私達が5人がかりで倒せなかったのよ!?」

海風「ですが陽炎さんは単機で倒してしまった… その事実は覆しようがありません」

愛宕「あの子達、やっぱり強敵になりそうね…」

瑞鳳「でもこれでこの勝負、一気に傾いた…」

萩風「戦力比は2:3、ヴェズルフェルニルのスピードならばコロニーまで1分もかかりません」

霞「そうなった場合はガンプラ学園、シア達に勝ち目は無い…」

神通(もし次に戦う時は私が、彼女と戦わなければならない… あのスピードを相手に…)

天津風「…」

朝雲「どうしたのよ天津風?」

天津風「…ごめん、ちょっと一人にさせて」

萩風「どうかなさったのですか?」

瑞鳳「一人にしてあげましょ。きっと感情が納得できてないのよ」



天津風「何でよ…! 私がアイツを倒したかったのに…!」

天津風(私の復讐が… ガンプラバトルを続けて、ここまで来た意味が…!)

「そんな邪な感情を持って戦うならガンプラバトルなんかしない方が良いよ」

天津風「確か貴女、時雨さん…」

時雨「かつて僕は言われたんだ。『ガンプラバトルは所詮遊び』、ってね。遊びだからこそ本気になれるのに…

復讐なんて考えを、私怨を持ち込まれたらそれこそ他のメンバーの迷惑でしか無い。しかもガンプラ学園と戦いたい、ってことは今戦ってる彼女達にも『負けろ』って言ってるようなものだ」

天津風「貴女に、何が分かるんですか…!」

時雨「分からないね。だけど僕もある人に負けて、勝ちたいって思ってガンプラバトルを続けた… 強くなりたいって思ったさ」

天津風「じゃあ私とどこに違いがあるんです!」

時雨「楽しいか、楽しくないかの差だよ。 僕は彼女に辿り着くまで色んな人と出会って戦って、楽しかった。

でもキミは相手を対戦相手じゃなくて『ただの踏み台』としか見てない。 そんな敬意も何も持ってないなら戦う資格は無いね」

天津風「っ…!」

時雨「厳しい事を言っちゃったかもしれないのは謝るよ。 だけどこの先何も目標も何も持ってないようじゃ、漠然と戦うだけなら皆に迷惑をかけることになる。

それとも僕の言う事が納得できない、認められないって言うなら… 僕が相手になるよ」
492 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/01(火) 02:34:00.23 ID:x+Pk5MP90
シア「兄さん!アドウさんが…!」

ウィルフリッド「分かっている!」

ウィルフリッド(だが退路は無い… それに今ここで退いたとしても『ヴェズルフェルニル』が合流すれば形成の逆転は難しくなる。

どうにかして1機だけでも戦闘不能に追い込みたいものだが…!)

阿武隈「このまま攻めきるよ!」

長波「おう! コイツを喰らえ!」


『ガルム』の肩部のビームキャノンと『マーナガルム』のスフィア・フォーカス・ビームキャノンが一斉にポータントへと襲い掛かる。

シアはコロニー内のビルを盾にすることでその攻撃を躱すが盾にしたビルは崩れ逃げ場を失う。


シア「何なの、この強さ…!」

ウィルフリッド「機体もそうだが、去年よりファイターの能力が上がっている…!」

阿武隈「一年間、何もしてないと思わないで!リモートドリルッ、バースト!」


シアのフォローをしようとトランジェントが割って入ろうとするが阿武隈の放った『スコール』『ハティ』がトランジェントへと一直線に加速する。

そして『ハティ』のドリルの先端がトランジェントの右肩を掠めてアーマーを吹き飛ばし、態勢を崩した隙に『スコール』が左脚を貫いた。


シア「兄さん!?」

ウィルフリッド「くっ… だが!」


パルチザンを振るい『スコール』を切り裂き、そして旋回する『ハティ』をパルチザンの先端を展開した放ったビームにより撃墜するウィルフリッド。

だがそれに気を取られた瞬間、マーナガルムの超加速を利用した体当たりが炸裂しコロニーの壁面へと吹き飛ばされる。


シア「兄さんの機体を軽々と…!」

長波「余所見してるとやっちまうぞ!」

シア「きゃあっ!?」


ガルムがクロー・シールドを展開して右腕のシールドで斬撃を放つ。咄嗟に防いだシアだが出力差と機体の体格差で押し負け地面に叩きつけられた。

シアと長波は何度も打ち合ったがシアの方が最初から押され気味だ。


シア「私とあの人、どこが違うの…!」


年齢だってほぼ同じなのに彼女から見えるオーラが同年代のソレとは全く異なっていた。海風や霞のような雰囲気とは違う独特の雰囲気、それに気圧される。

一方で長波は空気でシアを一方的に呑み込む。戦場では気圧されたら死ぬ、兵士として戦ってきた者なら本能的に覚えること。そして長波は自分のペースに持ち込み彼女を追い詰めていく。


長波(怯えるのも無理ないか… だって私達みたいな『兵士』じゃないから)
493 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/01(火) 03:34:35.92 ID:x+Pk5MP90
《2年前・仙台 『模型店エンガノ1号店』》


陽炎「不知火、アンタこんな所で暮らしてて良いの?」

不知火「別に。こちら側の方が色々スキルの習得には役に立ちますし」

陽炎「そりゃアンタみたいに秘書艦やってて、今は会長秘書だかやってんならそうだろうけどさ…

艦娘として、とか兵士として、とかそう言う誇りは無いわけ?」

不知火「そんなもの、当の昔に犬に喰わせましたよ。 今の不景気でそんなもの残してたら自分が食べれません」

陽炎「…こんな金持ちの家の癖に?」

不知火「大黒柱が毎回毎回変なグループ企業を設立したり変な風に貯蓄を使い、その旦那は大学教授の仕事を放って武者修行をしてきたり…

姉さんくらいですよ、土地運用やらで堅実な資金運用をしているのは」

陽炎「まぁ、そうでも無かったら見返りも無しにこんなに艦娘引き取ったりしないか…」

不知火「…陽炎の言う通り、少し前までは艦娘がどう、とか言っていた時期もありました。

だけど不知火は、不知火と野分、秋月と朝潮は『見捨てられた』んです」

陽炎「…」

不知火「見捨てられたのにおめおめ生き残って帰っても次に出撃する時は今度こそ『確実な死』が待っている可能性の方が高いでしょう。

特攻より酷いことをさせられる可能性も、青葉さんの言うように実験体にだって…」

陽炎「…もう良い。旧知だったアンタに聞いた私が間違いだった」

不知火「陽炎…」

陽炎「そんなに命が大事? 私達の前でいっぱい人が死んだのに、自分はこんな世界でのうのうと生きる訳?」

不知火「…あちら側に、戦場に戻って何がしたいんですか?」

陽炎「決まってる。奴等を皆殺しにする、死ぬまで戦ってやる」



野分「で、陽炎は?」

不知火「駄目です。聞く耳すら持ってません」

松風「こっちもだ。阿武隈さん、全く話し通じない」

初月「ここまで凝り固まってるとは思ってなかった…」

秋月「初月、それは貴女もでしたよ」

初月「うっ…」

如月「でもこの状況、流石によくないわね… このままだと『こっち側』で何をしでかすか分からないもの」

照月「幸いなのは長波ちゃんは多少なりとも聞く耳を持ってるってことかな…」

弥生「二人に比べたら、だけど…」

青葉「やっぱり芳しくないですかぁ…」

舞風「ちょっと、何処行ってたの?」

青葉「残務処理ですよ。取材旅行前に受けた仕事の書類で先方から問い合わせがあったんです」

朝潮「そんな雑な仕事してるから…」

青葉「いや、ちゃんとやりましたよ? ほぼ言いがかりでしたからね。 これ、差し入れの間宮さん特製羊羹です」

松風「…毒とか入れてないだろうね」

青葉「そんな勿体無いことしたら後で榛名さんに首を削がれて、天城さんに串刺しにされて、間宮さんには解体されますから…

そもそも盛る必要ないじゃないですか。別に敵対してる訳でもあるまいし」

初月「おい、カウンセラ−だろ。 あの三人の心を開く方法は無いのか」

青葉「今は時に任せるしかありません。 無理矢理心を開けるのは向こう側の『洗脳』と一緒ですよ」

野分「いっそ間宮さんを連れて来れば…」

青葉「無駄ですよ。真実を説いても心変わりが無かった、それなら間宮さんを投入したところで無意味にしかなりません」
494 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/02(水) 00:53:38.05 ID:U31J+I6o0
《仙台市内・大鯨のオフィス》


榛名「ではこちら、報告書となっています」

大鯨「分かったわ。…やっぱり動いてたのね」

榛名「ええ。現状は脅威とは言い難いですがこのままグループ内部の情報流出が起きれば痛手は受けるでしょう」

大鯨「なら早めに芽は摘まないと… 痛手を受けていっぱい従業員を手放すより、裏切り者を2,3人切り捨てるほうが良心は痛まないし」

榛名「会長の仕事と言うのも大変ですね… こんな、まだ大学の卒業式も迎えていない学生を企業に潜入させるなんて」

大鯨「ええ。私はこのグループの会長、だから企業の経営者としての視点は持っていても労働者としての視点は持ってない。

恥ずかしい話、末端の人が考えてる事は末端の人にしか分からないの。だからこうやって貴女に依頼をしたのよ」

榛名「両親の顔を立てて、ですか」

大鯨「違うわ。能力を見込んで、よ。 学生で変な商売を始めた、ってご両親から聞いたからお試し感覚で利用させて貰ったけど。

私が想像した以上に二人は働いてくれた。それどころかウチのグループの影を暴いてくれちゃったじゃない。だからこそ…」

榛名「その話はお断りしました。 専属契約は承ることは出来ません」

大鯨「ちぇっ… ま、たまにはウチのグループ企業から依頼を出すかもしれないから、その時はよろしくね」

榛名「ええ。依頼であれば法律に触れたりしない限りは承ります。 …ところであの3人は?」

大鯨「駄目ね。不知火ちゃんすら匙を投げちゃった」

榛名「旧知だから大丈夫、かと思いましたが…」

大鯨「…瑞鳳連れて来ようかしら?」

榛名「お聞きになった限り、そう言う根深いものがある人には瑞鳳さんは不向きかと…」

大鯨「そうよねぇ… 瑞鳳の場合、姿勢で誰かを救う事はできても対話で救うことには向いてないから」

榛名「どうしましょうね、本当…」

大鯨「試しに榛名ちゃん、行ってみる?」

榛名「いえ、多分榛名には向いてないと思います」

大鯨「それは、『助けられなかった』から?」

榛名「…」

大鯨「貴女の話は前に聞いてる。 お友達の自殺を止められなかったことも」

榛名「榛名には誰も助ける事は出来ませんよ。そんな力は…」

大鯨「出来るわよ。 貴女は誰かを救う『力』がある、他の人にはない特別なものが」

榛名「感応波、ですか」

大鯨「そう。そして救えなかった後悔がある、だからこそ真摯に命と向き合うことが出来るんじゃないかって私は思ってる。

誰かを助け、救って抱き締めてあげられる… 貴女にならきっと出来るわよ。青葉ちゃんと向き合えた貴女になら」
495 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/02(水) 01:56:45.53 ID:U31J+I6o0
コンコン


榛名「失礼します…」

阿武隈「確か貴女は…」

榛名「様子見に来ただけですよ。別に取って食おうなどと…」

陽炎「よく言うわ。阿武隈さんに斧突きつけた癖に」

榛名「いや、それは… まぁ別に言い訳はしませんが」

長波「で、何しに来たんだ。用がないなら…」

榛名「ちょっと戦いましょうか」

阿武隈・陽炎・長波「は?」



妖しくモノアイが輝き、白いMSが立ち上がる。榛名の操縦する『ザクV改』、通常のマシュマー機とは異なり形状的には無印に近い機体、が腰のショートバレル・ビームライフル二丁を抜く。

目の前に立つのは『ヘイズル・ラー』『アマクサ』『ガンダムデスサイズヘル』の3機。店のディスプレイから選ばれた機体であり、外観だけならザクVより作りこまれている。


榛名「操縦は先程レクチャーした通り、もし榛名を倒すことが出来れば元の世界への帰還の術を探す手伝いをしましょう」

陽炎「所詮はたかがゲームでしょ? おもちゃを使った」

榛名「ええ。たかがゲーム、されど… これで貴女達の『運命』が決まると考えてください」

陽炎「なら、ちゃっちゃと片付け… え…?」


ライフルの銃口を向けた瞬間、陽炎の視界から消えるザクV。陽炎は気付く、ザクVが既に跳躍して目の前に落下しつつある事に。

しかし動作が一手遅れる。次の瞬間、着地と同時にザクVがライフルの引き金を引いてアマクサの腹部を貫いた。


榛名「…1機撃破。たかがゲーム、などと大口を叩いた割にはそれ程脅威ではありませんね」

長波「陽炎! 阿武隈さん!」

阿武隈「わ、分かってる!」

榛名「初動は悪くありませんが… だけど、遅いですよ!」


数分、それどころか数十秒のうちに勝敗は決した。無傷のままフィールドに立つザクV、そして他の機体は正確に腹部を一発で打ち抜かれて機能を喪失している。

榛名は多少苦笑いを浮かべる。これでも加減、あえて動作を鈍くしたり意図的に性能の低いガンプラを持ち込んだりハンデを与えたが3人は成す術もなくやられていたのだった。


陽炎「たかがゲームで、こんな…!」

榛名「ええ、たかがゲームです。 それでも貴女達は私を倒すどころか、傷一つつけられなかった。

もしこれが本物の『戦争』だったら、死んでいましたね」

長波「ふざけんな…! 私達が死ぬ、って言いたいのかよ!」

榛名「ええ。格上相手に成す術も無く、傷一つ与えられず、何も残せず無様に」

阿武隈「ふざけないで…! 貴女に、ただの人間に何が分かるの!」
496 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/04(金) 04:04:07.18 ID:uy/8mXXk0
榛名「何も残せず死んだ人間を知っているから、ですよ」

長波「青葉が言ってたやつか…?」

榛名「聞いていましたか… この『ガンプラバトル』に命を賭けて頂を目指した少女が居ました。だけどその子は頂に到る資格を失った。たった一度のバトルで負けただけでその資格を無惨に奪われたんです。

先程『たかがゲーム』と言いましたが、こんなたかがゲームにすら人生を、命を狂わされた人間が居るんです。これはただ戦争を模しただけのゲームなのに、そのゲームで命を断った人間が居ました」

陽炎「それと私達に何の関係があるのよ!」

榛名「…関係はないでしょうね」

陽炎「…は?」

榛名「だけど命の重さを知っているから、すぐ側に居た筈の人間が居なくなるのはとっても悲しいことだから…」

阿武隈「…どうして? 私は、貴女達に関わりなんて…」

榛名「榛名が助けた命です。 助けた命に死なれたくないと思うことは当たり前でしょう」

「こうなったら何を言っても無駄ですよ。この人、頑固ですから」

陽炎「青葉…!」

青葉「でも、だからこそ… そんな人だからこそ青葉に進むべき道をくれました。数多の命を奪ってきた贖いに、それより多くの人を生きてる限り救い続けろと」

榛名「人は誰にでも生きなければならない責務があります。 敵を倒し命を護る『兵士』、『戦士』であるならなおの事人より生き抜く責任があるんです…!」

阿武隈「生き抜く、責任…」

榛名「『戦士』である事の否定はしません。だけど命を、助かった命を決して無駄にだけはしないでください」



長波「…アイツ、なんなんだよ」

陽炎「どうして、見ず知らずの他人に…」

青葉「あの人は『突然変異』の人間、一種の超能力者なんです」

阿武隈「超能力…?」

青葉「人と感応する力、声を頭に直接伝えたりする力が発達して、人の感情もある程度読みとることだって出来ます」

長波「あの時の声か…」

青葉「読み取る力は青葉の方が数段上ですが、それでも感じてしまったんでしょうね… 貴女達の死への恐怖を」

陽炎「死の恐怖って… アンタ、これ以上言ったら…!」

青葉「だったらどうしてあの時震えてたんです?」

陽炎「っ…!?」

青葉「確かにあの時、大寒波で滅茶苦茶寒かったです。だけどそれ以上に、阿武隈さんを失う事、そして自らの死に対して震えていたんじゃないんですか?」

長波「それ、は…」

青葉「それに青葉は数多の闇を垣間見てきました。 あんな連中に付き従うなんて、青葉にはもう到底不可能です」

阿武隈「じゃあ不知火ちゃん達の話は…」

青葉「全部事実でしょう。こちら側にもその生き証人が居ますから」

長波「どうすれば…」

青葉「折角拾った命を無駄にしないでください。 きっと、見ず知らずの他人であっても、あの人は泣いてしまいますから」
497 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/05(土) 03:25:34.03 ID:a2T23Csq0
《現代・観客席》

榛名(あの時から2年、色々あって榛名の家で三人を引き取って、バトルを始めることになって…)

天城「まさかガンプラ学園をここまで追い詰めるとは…」

榛名「いいえ、もう勝ちは見えています」

天城「姉さん…?」

榛名「既に勝敗は決しました。ガンプラの性能やファイタースキルに差があった訳ではありません。

圧倒的な戦闘経験と勝利への執念の差、覆せないこの差が勝敗を分けました」

天城「ですがキジマ・シアさんはまだしもキジマ・ウィルフリッドさんの方は負けていませんよ」

榛名「ええ。勝利への執念は負けていないしトランジェントはまだ『切り札』を残しています。

だけど『切り札』を残しているのは同じで状況はイーブン、ここから顕著な差が出るのは戦闘経験値です…!」



左腕で保持していたパルチザンをマーナガルムへと突き立てようとするがマーナガルムがトランジェントの左腕をクローアームで粉砕する。

その隙に右腕のパルチザンで斬撃を放つトランジェント、しかし斬撃をマーナガルムが結晶の防御フィールドで防ぐ。


ウィルフリッド「こんな隠し玉を…!」

阿武隈「『スフィア・クレイドル』、使うつもりは無かったよ…!」

ウィルフリッド「高濃度の粒子を結晶化させてフィールドを形成するなど…!」


一度距離を離すウィルフリッドだが阿武隈は逃さない。マーナガルムの脚部に内蔵されたスフィア・フォーカス・ビームキャノンが他方向からトランジェントを襲う。

残るパルチザンを振るいビームを打ち払うウィルフリッド、阿武隈は機体のSPスロットへとカーソルを合わせる。


阿武隈「NT-D!」

ウィルフリッド「何っ!?」

阿武隈「ここのフィールド、ちょっと狭いよね」


頭部の角が割れ『ガンダム』となるマーナガルム。阿武隈はマーナガルムの右腕にありったけのエネルギーを収束させていく。

そして全力の一撃をコロニーの地面へと叩きつけ、その一撃がコロニー全体に亀裂を生じさせた。


ウィルフリッド「コロニーが…!」

阿武隈「行こうか、宇宙に」


次の瞬間、コロニーの隔壁が全て砕けて重力が消え、空気が漏れていきそこから吸い出されるようにマーナガルムとトランジェントは放り出される。

コロニー内で戦っていた長波とシアもまたそれに巻き込まれて宇宙へと吸い込まれた。


シア「コロニーを破壊した…!?」

長波「いや、やるなら予告してくれよ!? 焦るわ!」


態勢を整えなおすガルムとポータント。宇宙に出たことでの戦闘における優位性はお互いに変わりは無いがシアはデブリに紛れて逃走を図ろうとする。

しかしそこに『光の翼』から放たれる無数の羽の刃が殺到して周囲のデブリを砕いていく。


シア「『ヴェズルフェルニル』まで…!」

陽炎「逃がすと思う?」

長波「遅いぞ陽炎! ってかその機体ならコロニー入ってこっちの援護できただろ!?」

陽炎「え、だって狭いコロニー入る理由ないじゃん。戦いに水差したら悪いし」

長波「あのなぁ…」

陽炎「ま、でも… 宇宙に出れば私も『全力』で加勢できる。 ちゃっちゃと片付けて、援護にまわるわよ!」
498 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/05(土) 04:44:29.31 ID:a2T23Csq0
シア「そう易々と!」

長波「来るぞ!」

陽炎「分かってるわよ!」


陽炎は再度NT-Dを発動しピアスソードから放たれる鞭状の攻撃を刃を結晶化させた『グラム』で受け流す。

その隙に長波が肩部のビームキャノンでポータントを攻撃して左脚の膝関節から下を撃ち抜き破壊する。


シア「数に、押されて…!」

陽炎「今よ長波!決めなさい!」

長波「コード・ブレイヴ! クロー、マテリアライゼーション!」


機体の燐光が強くなり、振りかざした左腕のクロー・シールドの爪に収束した粒子が結晶化していく。

そして爪を振り下ろすと同時に結晶の刃が放たれる。咄嗟にフィールドで防いだシアだが刃はフィールドを切り裂き本体に到達してダメージを与えた。


シア「なんて、威力… しまっ…!?」

長波「終わりだ!」


気が付くと目の前に『ガルム』の姿があり、シアは唖然となるがそれすら意に介さず長波は右腕の結晶を纏ったクロー・シールドの爪を突き立てる。

胸部を貫かれたポータントは機能を喪失し、それを見届けた長波はクローの結晶を炸裂させて内部からポータントを破壊しその場から離脱した。


シア「ごめん海風、霞…」

長波「こっちにも、負けられない理由があるんだよ」

陽炎「大丈夫、アイツ等も私達が倒すから」




霞「シアがやられた…」

神通「これで勝敗は決しましたね」

萩風「ええ。この数の差は覆せません」

朝雲「あれ、天津風遅いわね…」

愛宕「ちょっと探してくるわね」

瑞鳳「海風ちゃん?」

海風「コード・ブレイヴに『グシスナウタル』を使わなかった…?」

瑞鳳「『グシスナウタル』は元々ガルム用の武器じゃないからだよ。あれはフェンリル用だった武器、そしてガルムは系統が違うから。

あの機体がコード・ブレイヴを発動して使える武器は同系統機用の、多分天城さんと間宮さんの『レーヴァテイン』『レーヴァテインU』だけ」

海風「ではあの榛名さんの必殺、『エクサブレイヴシュート』は榛名さんだけの…」

瑞鳳「シームルグと朝雲ちゃんの妹に贈られた機体を解析して判ったんだけど、系統によってコード・ブレイヴで使える必殺が違うの。

例えばシームルグじゃ『レーヴァテイン』を使えてもコード・ブレイヴ時に必殺は使えない、逆にスレイプニルに『プラフスキー・ステラ・ストレイターレット』は撃てない」

霞「中々面倒な仕様で…」

瑞鳳「だから数少ない弱点、と言うか付け入る隙になるね。武器に対して互換性がないのは致命的だよ」

萩風「装甲の脆さと武器の互換性、そして粒子消費の多さくらいしか弱点はないんですけどね」

朝雲「それ以外が一定水準の性能超えてるし… 装甲脆いって言っても瑞鳳さん製に比較したらってだけで世間から見れば強度は充分だし…」

神通「なんともやり辛い相手です…」


イベント 直下
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 22:56:10.87 ID:qXqG2VWyO
阿武隈、切り札を切る
500 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/07(月) 02:23:12.45 ID:YqshdZdB0
ウィルフリッド「シアもやられるとは…!だがこれ以上は!」

阿武隈「追い込まれてる身で!」


スフィア・フォーカス・ビームキャノンを連射しトランジェントの機動を追い込む阿武隈。

このままでは勝てない、そう踏んだウィルフリッドが最後の手札を切り機体が蒼く輝きスタビライザーからは光の翼が放出される。


ウィルフリッド「トランジェントバースト!」

阿武隈「使ってきたね、ようやく…!」


NT-Dを使用している『マーナガルム』なら対応は出来る。しかし『対応』まででありあくまでも倒すのは少しばかり困難であろう。

そう踏んだ阿武隈は通信を外部に送る。1コール置いたあとに外部との音声が繋がり、送った人物が応答した。


榛名『どうかしましたか、阿武隈?』

阿武隈「…切り札を、『UC-D』を使わせて」

榛名『良いですよ。 好きに使いなさい、阿武隈!』

阿武隈「わかった…! コード・ブレイヴ!」


マーナガルムのリミッターを解き放ち機体から放たれる燐光が増していく。それだけならば他の2機、『ガルム』『ヴェズルフェルニル』も使っている。

しかし阿武隈は『その先の力』を使う為にコード・ブレイヴを発動していた。


阿武隈「行くよ、マーナガルム…」

ウィルフリッド「くっ… どんな力かは知らないが、使わせる訳には…!」


一直線に加速し『システム』の発動前にマーナガルムを倒しそうとするトランジェントが一気に距離を詰めてパルチザンによる刺突を放つ。

その一撃はマーナガルムに到達する直前に発生した粒子の奔流により弾かれ、トランジェントは吹き飛ばされてしまう。そして…


阿武隈「唸れ! アンチェインドドライヴッ!」


マーナガルムの機体を覆う『ヤールングレイヴル』の一部が変形し展開形態へと移行、頭部のメインセンサーの左右が展開してサイコフレームが露出された。

ウィルフリッドは唖然となる。本来HGではオミットされていた筈の機能であり、RGやMGでもその再現はされておらずPGにのみ備わっていた筈の能力が目の前の機体、しかもベースはHGが平然と行使しているのだから。


ウィルフリッド「『アンチェインド形態』をHGでここまで造り込むだと…!?」

阿武隈「ただのアンチェインドだと思ってもらったら困るよ。この機体の、全力だから!」


マーナガルムが右腕で掴んだのは先ほど粉砕した筈のコロニーの外壁だ。その外壁の残骸はマーナガルムより巨大でありそのサイズはマーナガルム5機あっても足りないほどの大きさである。

それでもマーナガルムは右腕だけで残骸を掴み上げてトランジェントへと高速で投擲した。


ウィルフリッド「何と言うパワー、しかも先ほどより上がっているだと…!?」


辛うじて迫る残骸をパルチザンで切り裂き破壊するトランジェントだが切り裂いた残骸の向こう側から目にも止まらぬスピードでマーナガルムが迫り、左腕による打撃が放たれた。

その攻撃も機体を左側に逸らすことで回避したウィルフリッド。しかし打撃の衝撃波だけでトランジェントの機体装甲が砕けて右腕のアーマーが崩壊する。


ウィルフリッド「この力… 『彼女』と同じ…!?」

阿武隈「機体が軋む…! 早く勝負をつけるよ!」
501 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/07(月) 03:56:10.76 ID:YqshdZdB0
朝雲「何あれ… 私のシームルグには、あんな力は…」

萩風「『デストロイ・アンチェインド』、PGユニコーンの発売時に追加された能力です。能力としてはNT-Dの完全上位互換扱いでしたが…」

神通「しかしあそこまで爆発的に能力が上昇する訳では無い筈です。あのパワー、掠めるどころか振るった衝撃波だけで機体装甲を粉砕していますから」

瑞鳳「最悪だ… パクられてる…」

海風「パクられた?」

瑞鳳「あのアンチェインドは多分『アズライトバースト』、『モード・アズール』と同質の力…」

海風「フレスヴェルグの時のシステムと一緒!?」

霞「確か溜め込んだ粒子の分に比例して性能が上昇する…」

瑞鳳「そうだよ。 理論は厳密に言えば違うけど能力としてなら同質の力、機体内部の粒子の分だけ性能がブーストしてる」

朝雲「つまりガンダムで言えば普通のトランザムと『スサノオ』のトランザムみたいな関係、ってこと…?」

瑞鳳「例えで言うならそれに近いね。差は本体に蓄積した粒子か、周囲の粒子を取り込んでるかの差だから」

神通「周囲の粒子を…?」

萩風「アンチェインド形態へと移行時に一部装甲を展開、そこから周囲の粒子を吸収して性能をブーストさせているんです。

アレは恐らく時間経過に比例してパワーが上昇していく仕組みでしょう。だけどそんな事をすれば…」

霞「フレスヴェルグだってパワーに負けて腕が砕けた、だから性能が上昇すればする程…」

瑞鳳「自壊の危険性が高くなる。諸刃の剣だよ」


榛名「だから短時間で勝敗を決する必要がある、長期戦には向かない力です。我ながらこうも矛盾の生じるシステムを生み出してしまうとは…」

天城「しかしこれが唯一『ウイングガンダム・アズライト』を始めとする3機に対抗出来る方法…」

榛名「あと整備負担が… 全力行使で3分しか使えないのに…」

天城「まぁ過負荷をかける訳ですから仕方無いことだと割り切ってください」




マーナガルムの圧倒的な力に押されていくウィルフリッド、だがその顔から歓喜の笑みは消える事は無かった。

自分が圧倒される感覚などどれくらいぶりだろうか、自分と互角以上の戦いを行ってくれる数少ない相手が目の前に居ることに彼は喜びを隠せない。


ウィルフリッド「面白い!私が望んでいたのは、こんなバトルだ!」

阿武隈「勝てる、これなら! マーナガルム、フルドライヴッ!」

ウィルフリッド「ならばこちらも! トランジェント!」


マーナガルムが粒子結晶フィールドである『スフィア・クレイドル』を展開し肩部のブースターで一気に加速して距離を詰める。同時にトランジェントもパルチザンを構えて突撃を敢行する。

互いに距離が詰まって激突する2機。ぶつかり合うパルチザンとフィールドが火花を散らし、そして決着の時が訪れた。


阿武隈「行って、マーナガルム!」


パルチザンが砕け散り、そのままトランジェントに激突するマーナガルム。そしてそのままデブリへと突っ込みトランジェントを叩き付ける。

抵抗を試みようとするトランジェントだがマーナガルムはクローアームでトランジェントを持ち上げてしまう。


ウィルフリッド「まさか、私に…!」

阿武隈「砕け、散れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


そのままクローアームでトランジェントを粉砕し、トランジェントは爆散する。 そこに残っていたのは機体の残骸と、マーナガルム1機だけだった。


BATTLE ENDED

Winner"White Clean"


『全日本ガンプラバトル選手権、準決勝第一試合。勝者、宮城代表・『ホワイトクリーン』!』
502 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/08(火) 01:29:00.34 ID:T98kleyp0
ザワザワザワ

「あのガンプラ学園が…?」

「たった2回目の大会で…」


萩風「…これで優勝候補の最大手が消えました」

霞「でもガンプラ学園が手も足も出無いなんて…」

朝雲「勝てるのかしら…」

瑞鳳「勝てるよ。積み重ねたこれまでをこれからの力に変えて、それをぶつければ」

神通「積み重ねたこれまでを…」

海風「これからの力に…」


榛名「これで手札を全て晒しました…」

天城「如月さんからの『アズライトバースト』のデータと2回戦時の『フルブルームバースト』のデータ…

これがあれば、海風さん達にも対抗は出来る筈です」

榛名「まだ霞さん、『ブラストアクロスZZ』のデータは未知数です。油断は出来ません」

榛名(恐らく決勝に上がるのは『フリューゲル・ヴェント』、その時こそ決着をつけなければ…)


阿武隈「ふぅ… 二人共、お疲れ様」

陽炎「まさか阿武隈姉さんがアンチェインドまで使うなんてね」

阿武隈「必要があったから使っただけだよ」

長波「だけどこれで、お膳立ては整った」

阿武隈「うん。私達が『倒さなきゃいけない相手』と戦うための…!」



第17話『神話の獣と天使と』終
503 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/08(火) 01:42:33.49 ID:T98kleyp0
次話選択 ↓3票先取


1.朝雲編『もう一人の蒼いツバサ』…朝雲VSルーカス・ネメシス。 会場からの帰り道、海風と朝雲はある人物と遭遇する。その相手は対ガンプラ学園の為に国外から招聘されたルーカス・ネメシスだった…
2.天津風編『復讐の終わり』…天津風VS霧島。 案の定時雨にフルボッコにされた天津風。そこに『同じ目標』、ガンプラ学園への復讐を考えていた霧島が現れる…
3.萩風編『TwinBird』…萩風VSカリマ・ケイ。朝雲とその家族と一緒に出かけた萩風。だがその隙に部屋に空き巣が入りエクシアが破壊されてしまう。落ち込む萩風に渡されたものは…
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 09:03:54.61 ID:y7t1NxZF0
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 09:47:48.02 ID:EAnMuqb30
1で
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 09:58:30.76 ID:iUhq7zt7O
3
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 16:30:47.67 ID:aG6n0c0TO
3
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/10(木) 05:18:21.70 ID:JqwkG2nmO
3
509 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/12(土) 04:08:54.47 ID:0rZgvxBT0
第18話『TwinBird』

《選手控え室》


瑞鳳「次の対戦相手は『グレートK』、神奈川の本牧だね」

海風「あのワカメですか…」

霞「よく生き残って来れたわね、アイツ」

天津風「…元々実力自体はそれなりにはあった筈よ」

朝雲「どうしたの?テンション低いけど」

天津風「別に…」

愛宕「ちょっと時雨ちゃんとね…」

神通「時雨さんが?」

瑞鳳「あの子には後でちょっと言っておくよ。思うところがあったにしてもやり過ぎだし」

萩風「これが本牧の資料です」

霞「『サイコMK-U』に『ノイエ・ジール』、それに『アプサラスV』ってものの見事にMAばかりね…」

神通「毎回機体を変えているのも… 一体どれ程の労力が…」

朝雲「対モビルアーマーなら編成は私と天津風と海風が最適だけど…」

海風「今回アズライトは使用不可能です。なので強襲に向いた能力を持った機体は… エクシアが最適解ですね。 萩風さん、機体の方は?」

萩風「コピー体との戦闘での機体疲労がありますが、今夜中には整備も終わらせられる見通しです」

海風「瑞鳳さん、『シームルグ』の整備状況は?」

瑞鳳「アズライトの調整の合間に終わらせられる程度だよ。ストライクの方も万全」

海風「では天津風さん」

天津風「ハルートは… 予備パーツもあるし、部品交換でなんとかなる。間に合わないなら間に合わないでシューティングスター弄ったからそっち引っ張り出せるけど」

海風「分かりました。では編成はこれで確定、と言う事で届出を出してきます」


「…」




朝雲「萩風、ちょっと良い?」

萩風「どうかしましたか?」

朝雲「もうちょっとしたら五月雨達、ここに着くんだって。だから萩風も一緒に食事でもどう、って」

萩風「私が行ってもご迷惑になるだけでは…」

朝雲「別に迷惑なんかじゃないわよ。両親が気に入ってるし、何より五月雨も懐いてる」

萩風「しかし… 折角の団欒が…」

朝雲「良いのよ。 アンタ居た方がウチの一家喜ぶから」
510 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/14(月) 04:42:43.33 ID:vAdtGzu80
《神通・萩風の部屋》


萩風「なのでちょっと夜は居ません。夕食には不参加です」

神通「分かりました。 機体の方は?」

萩風「やるべき事は分かっているので帰ったらやります」

神通「そうですか… ジャスティスと一緒に私がお母様の所に持っていっても良いんですよ?」

萩風「フルブルームみたいに何仕込まれるか分からないので遠慮です」

神通「アレ一晩でやりましたからね…」

萩風「私も『明鏡止水』自体は使えますが姉さんより体力の劣る私では機体からのフィードバックに耐えられる保障はありませんから」

神通「ではエクシアは置いていく、と言う事で… 戸締りは私がやっておきます」

萩風「オートロックと固定窓ですからその必要はないと思いますけど。 鍵はフロントに預けておきましょう」

神通「ええ。その方が安全ですから」

萩風「では私は… …なんでそんなにニヤついて?」

神通「だって珍しいんですもの。貴女がこうして友達と出かけることが」

萩風「別に良いじゃないですか… 出不精が出かけたって。友達殆ど居ない癖に」

神通「そ、それ言われると… って何で知ってるんですか…!」

萩風「スマホのロックは指紋認証にしておいた方が良いですよ」

神通「ひ、人のスマホを見たんですか!?」

萩風「そもそもパス設定すらしてないのはどうかと思いますが」

神通「だって一々面倒で…」

萩風「そんなガバガバセキュリティだから盗み見られるんです」
511 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/14(月) 04:42:43.11 ID:vAdtGzu80
《神通・萩風の部屋》


萩風「なのでちょっと夜は居ません。夕食には不参加です」

神通「分かりました。 機体の方は?」

萩風「やるべき事は分かっているので帰ったらやります」

神通「そうですか… ジャスティスと一緒に私がお母様の所に持っていっても良いんですよ?」

萩風「フルブルームみたいに何仕込まれるか分からないので遠慮です」

神通「アレ一晩でやりましたからね…」

萩風「私も『明鏡止水』自体は使えますが姉さんより体力の劣る私では機体からのフィードバックに耐えられる保障はありませんから」

神通「ではエクシアは置いていく、と言う事で… 戸締りは私がやっておきます」

萩風「オートロックと固定窓ですからその必要はないと思いますけど。 鍵はフロントに預けておきましょう」

神通「ええ。その方が安全ですから」

萩風「では私は… …なんでそんなにニヤついて?」

神通「だって珍しいんですもの。貴女がこうして友達と出かけることが」

萩風「別に良いじゃないですか… 出不精が出かけたって。友達殆ど居ない癖に」

神通「そ、それ言われると… って何で知ってるんですか…!」

萩風「スマホのロックは指紋認証にしておいた方が良いですよ」

神通「ひ、人のスマホを見たんですか!?」

萩風「そもそもパス設定すらしてないのはどうかと思いますが」

神通「だって一々面倒で…」

萩風「そんなガバガバセキュリティだから盗み見られるんです」
512 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/14(月) 05:21:03.79 ID:vAdtGzu80
神通「こんななら、これから萩風と付き合うことになる人は苦労するでしょうね…」

萩風「失敬な。私だって姉さん以外のスマホは盗み見たりはしません」

神通「じゃあ私の見るのもやめてください」

萩風「一度見てつまらない、って思ったんでやりませんよ」

神通「人のスマホ勝手に見ておいてそれですか!?」

萩風「だってやり取りなんて海風さんと霞さんぐらいでクラスメイトのアドレスなんて…」

神通「それ以上言わないで下さい…!」

萩風「あとは…」

神通「っ!」ブォン

萩風「きゃっ!? こんな所で刀振るうの止めてください! 危ないじゃないですか!」バッ

神通「貴女こそトンファーなんか持ち出して…!」

萩風「いきなり日本刀を振るわれたら応戦するのが当然でしょう…! 姉さんが刀振るった余波その辺斬って修理費請求されると困るんです!」

神通「その程度なら制御出来ます!」

萩風「そもそも日本刀で斬りかかる自体が…」

神通「即座にトンファーで応戦しようとした癖に…!」

萩風「こちらはあくまで対人制圧用です」

神通「ならこっちも素手で…」

萩風「そんな事したら私が吹っ飛んで壁に穴開くだけですよ」

神通「くっ… はぁ… 二度と見ないで下さい。次見たら容赦しません」

萩風「分かってますよ。まだ死にたくないんで」

神通(後でスマホはロックしておきましょう…)



《ショッピングモール》


朝雲「あんまり隣部屋で喧嘩しないでよね。余波が来ると困るのこっちだから」

萩風「あ、あははは…」

朝雲「で、まだちょっと時間あるのよ。到着が7時半って言ってたし」

萩風「今高速混んでますからね… それまで何しましょうか?」


イベント 直下
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/15(火) 15:40:35.26 ID:rGk2MXYBO
ガンプラを見に行く
514 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/19(土) 23:35:50.57 ID:EqXD1fF50
《模型ショップ》


朝雲「ねぇ、この『RG ユニコーンガンダム』って作り易いかしら?」

萩風「個人的にはフレームのパーツが硬くてはめ込み難かったり装甲が可動のせいか脆い、頭部アンテナがデカールだったりで…」

朝雲「え、頭部デカールなの!?」

萩風「はい。可動するアンテナと差し替えでユニコーンモード・デストロイモード用のが各1ずつ、可動用とデストロイ用にはデカールが付属しています※」※本当です

朝雲「他のデカールは?」

萩風「あとはセンサーアイと細かいモールド、あとはマーキングデカールくらいだったと思いますが… 正直、HGしか経験が無いならオススメは出来ません」

朝雲「じゃあこれは? 『HGUC ガンダムAN-01 トリスタン』」

萩風「悪い事は言いませんので捨てて来て下さい」

朝雲「悪い事言ってるじゃない!?」

萩風「アレックスの金型を流用、武装もモナカ割、肩の関節構造はポールジョイントですらない、腕部内蔵のビームガンは付属してない、その他色々…」

朝雲「聞いただけでちょっとアレなのが分かるわ」

萩風「これならアレックスの簡易量産型扱いされてるジム・カスタムの金型をベースにした方が… 実際ミキシングではジム・カスタムが使われることが多いです」

朝雲「ミキシング前提はちょっと勘弁して…」

萩風「逆に最近ので作り易いのはHGならバーザムやイフリート・ナハト、あとはダンダリオンなどの鉄血系…

MGならオリジンガンダムやプロヴィデンス、REのハンマ・ハンマなんかも良いかもしれません」

朝雲「ふぅん… …聞きたいんだけどさ、未来のガンプラってどうなってるの?」

萩風「…昏睡病の大規模パンデミックの際、ガンプラバトルが原因とされたのでテロからおおよそ1年後に発売が中止されました」

朝雲「そうなんだ…」

萩風「最後のガンプラは… MGのジェガンです」

朝雲「じぇ、ジェガン!?」

萩風「あとは同時期に出たクアンタフルセイバーとREヤクト・ドーガ、と言ったところでしょう」

朝雲「なんとも突っ込み難いラインナップ…」

萩風「HGは新機軸のリーオーなんかも出たのに… ですがもしテロを止める事ができればその先が見れるかもしれません」

朝雲「え、リーオー出るの!?」

萩風「シッ…!あまり大きな声を出さないで下さい…!」

朝雲「わ、分かった。 で、リーオーって本当…?」

萩風「はい。簡易構造を採用して値段も安価になった結果家電量販店なんかでは2割〜3割引きで販売されたりしたので万札払えばダースで買えたらしいです」

朝雲「おおよそ800円くらいよね、それって…」

萩風「しかも簡易構造のおかげで初心者でも一時間あれば組める、色分け完璧デカールなし、関節の後ハメ加工不要など末恐ろしい何かが…

難点としては頭部が全く動かないのと保持力が少し弱いくらいです※」※個人(>>1)の感想です

朝雲「それでも充分良キットよね、それ…」
515 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/24(木) 02:13:28.37 ID:fV+opWMR0
《その後》


五月雨「あ、姉さん!」

朝雲「こらっ。走ったら危ないわよ」

五月雨「ごめんなさい…」

朝雲「人も多いし、まだ激しい運動は駄目って言われてるでしょ。気を付けなさい」

五月雨「はーい…」

萩風「御無沙汰しています、お二人共」

「こんばんは、萩風ちゃん。いつも娘の面倒見てくれてありがとう」

「元気で悪戯好きだから、困ったりはしていないかい?」

萩風「いいえ、寧ろ私が助けられてますから。日常でもバトルでも」

朝雲「そうよ。萩風から目を逸らさせたり、やりすい状況に持って行ってるのは私なんだから」

「でも朝雲、貴女遠くから撃ってるだけじゃない」

朝雲「いやいや… 三回戦はちゃんと近接戦闘だってやったわよ!しかもドッグファイトで!」

「でもやっぱり接近戦で戦う方が華があるんじゃないか?」

萩風「それは違いますよ。華があるのは『魅せる』動きが出来る人だけ、例えば私達の先生や部長の様な格闘戦のエキスパートでないと」

朝雲「じゃあ萩風も充分じゃない」

朝雲(エキスパートどころの話じゃないけども)

萩風「ところがネットだと『やり方がえげつない』とか『戦闘マシーンみたい』とか結構叩かれてるんですよね…

お世辞にも正々堂々とは言えない戦い方ですから」

五月雨「でもとっても強くて、格好良いですよ!」

萩風「くすっ… ありがとうございます」

朝雲「でも私まだ一回も切り札使って無いし… どデカイ大砲撃の方がエフェクト的には格好良いし…」

萩風「朝雲さんの場合はガン=カタもあるじゃないですか」

朝雲「使える状況がね… やっぱ適度に重力ないと動き難いし、高機動戦闘だと使えないし…」

「やっぱりお手本になるのはあの子、確かあの青い…」

朝雲「海風?」

「確かあの子も剣で戦ってたな。しかもそれで指揮も執ってるんだろう?」

五月雨「あの人、そんなに凄いんだ…」

萩風(海風さんの素養は群を抜いている… 姉さんや霞さんの様に突出している訳ではないものの全体的にも優秀、それに指揮能力は浜風さんにも匹敵しつつある…

同じ血族の遺伝子を持ってるのに、ちょっとこの差は悔しいかな…)
516 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/27(日) 02:05:41.50 ID:+9womFWc0
《レストラン》


萩風「ではもう完治しているのですか?」

「ええ。でもあまり無理は出来ないから暫くは自宅療養ね」

五月雨「だからその間にいっぱい勉強して姉さん達の学校に通いたいんです!」

朝雲「…ウチの学校、レベル高いわよ?」

萩風「寧ろなんで朝雲さんが合格したんですか。曲がりなりにも名門ですよ」

朝雲「死に物狂いよ」

「受験勉強を試験日の5日前に始めて寧ろどうやって合格したのかこっちが聞きたいよ…」

「しかも補欠合格じゃなくて普通に掲示板に番号貼りだされてたものね…」

朝雲「いやぁ、アレは死ぬかと思ったわ。受験の次の日から2日くらい寝続けたもの」

萩風「そうなる前に常日頃の勉強はしておかないといけませんね」

朝雲「…私、アンタが勉強してるところ見た事ないんだけど」

萩風「ちゃんとやってますよ。ランニングマシンで走りながらとか料理の合間にとか」

朝雲「それ、身に入る?」

萩風「入らないなら入るまでやるだけです」

朝雲「海風と霞の勉強法の方が参考になるわ…」

萩風「何かしらの合間や並行してやらないと時間が足りませんから。やる事が多いので」

萩風(ハッキングとか株とか情報収集とか張り込みとか)

「やっぱり大変なのね、一人暮らしは…」

「そう言えば前に話していた件はどうするかい?」

萩風「…申し訳ありません。折角の申し出ですが、ご迷惑をおかけすることになるので…

養子の件、お断りさせて頂きます。ご好意だけ受け取らせてください」

朝雲「…」

「そうかい… でも困った事があったら頼って欲しいな。娘の友達だからね、何かあったら手伝うよ」

「残念ね… 折角良い子なのに」

萩風「ありがとうございます」
517 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/28(月) 02:41:20.63 ID:aHFCEB0t0
《帰り道》


朝雲「…その、良かったの?」

萩風「はい。だって、私のこの手はとっくに血に塗れてるんです。多くの人を、仕方ないとは言え傷つけてきました。

そんな罪を抱えた人間が『普通の幸せ』を手にするなんておこがましいことです」

朝雲「だけどそれは仕方のないことで…」

萩風「仕方のないことだとしても、どれだけ取り繕ったとしても罪は消えないんです。

人の人生を奪ってしまったことは例え誰もが私を咎めなくとも私自身にとっては背負うべきもので生涯向き合うべき罪だから」

朝雲「萩風…」

萩風「それに『私の家族』はお母様と姉さんだけです。 お母様を救いにこの時代に来たと言うのに『新しい家族』を手にするなんて私には出来ません」

朝雲「そう、よね… その、ごめん。萩風の事、何も考えてなかった」

萩風「御両親はきっと善意で言ってくれているんです。責める必要も、理由も何もありませんよ。

それに今の私はもう一人じゃないから。 貴女と言うパートナーが隣に居てくれる、それだけで私は…」

朝雲「…変わったわね、アンタも」

萩風「変わりますよ、人は。 色々な人に出会って、一緒に戦ってきて、お母様の過去を知って…

だからこそ私は止まれないんです。今歩んでいるこの時を未来に繋げるためにEXAMのパンデミックを止めなくちゃいけないんです」

萩風(お母様だけ救えば良いんじゃない、EXAMを止めて人々の未来を取り戻す… あの時、この時代に来ると決断した時の私からは想像も出来ない考えです)

朝雲「ま、私も変わったから人の事言えないわ。私だって戦う理由が最初は妹の為だけだったし。

だけど今は違う。 私は未来が欲しいから、皆とガンプラバトルを続けられるような未来が。未来じゃガンプラが無くなるなんて、絶対に嫌だから」

萩風「…そこまでガンプラ好きでしたっけ?」

朝雲「まぁ最初はあんまり、五月雨より知識も愛情も無かったし。だけど今は違う。ずっと戦ってきて、楽しいって思ったから。

人の作った機体でしか戦った事はないけどそこらの人間よりはガンプラに対する情熱は負けてないはずよ」

萩風「今度自分のガンプラ作ってみます?」

朝雲「そうね。 そろそろ私も、自分の手で作ったガンプラに…」

プルルルルル…

萩風「姉さんから…?」

朝雲「何かあったのかしら?」

萩風「はい、どうかしま…」

神通『緊急事態です! すぐに戻ってください二人共!』

萩風「…何かあったんですか?」

神通『…空き巣です』

萩風「…はい?」

朝雲「どうかした?」

萩風「え、今空き巣って言いました?」

神通『だから、早く戻ってください!』
518 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/28(月) 03:12:34.43 ID:aHFCEB0t0
《神通・萩風達の部屋》


警察A「では盗まれたのは下着が数点と… プラモデルの予備パーツですか?」

萩風「はい…」

警察B「それにキミのプラモデルも壊されちゃってるね。まぁ間違えて壊して…」

瑞鳳「…鑑識さん、ちょっと見せてもらっても?」

鑑識「ええ、どうぞ」

瑞鳳「違うね。この壊れ方は明らかに質量のあるもの、例えば金槌とかで思いっきりで叩き壊してる」

神通「…意図的、と言う訳ですか」

瑞鳳「うん。多分下着なんかはカモフラージュかオマケ、本当の目的は『ガンプラの破壊』ね」

警察B「どうしてそんな事が? 第一なんでそんな事を…」

瑞鳳「そうとしか言えないからですよ。 普通にぶつかっただけならこんな壊れ方はしない、これはガンプラバトルで金属製のハンマー系武器で壊されたような壊れ方と似ています」

警察B「だからどうしてそんな事が…!」

鑑識「えっと、この人は…」

瑞鳳「私は世界選手権出場のビルドファイターです。壊され方なんて、見れば普通に分かります」

警察A「まぁそこは鑑識に出せば…」

萩風「あの、返却までどれくらい時間が…」

鑑識「事件の捜査終了まで、ですから… 犯人が捕まって、判決が出無いと…」

萩風「…」



《朝雲・天津風の部屋》

海風「…困りましたね」

霞「嫌がらせ、しかも悪質だわ」

天津風「悪質なんてレベルじゃない。多分殺されても文句は言えないわよ」

瑞鳳「しかもあの警察『間違って壊れた』って過失扱いで済まそうとしてたもん。捜査する気無さそうだし」

神通「所詮はプラモ、と言う認識なのでしょう。彼等にとってはどうでも良いもの、ですから」

萩風「…」

朝雲「海風、アンタが前に模型部にやったみたいに…」

海風「そうしたいのは山々ですけど本物の鑑識が出張ってますからね…」

霞「だけど今回、容疑者は固まってるわ」

神通「萩風が出れなくなって喜ぶのは『次の対戦相手』…」

天津風「あの陰湿ワカメね…!とっ捕まえて…」

瑞鳳「駄目だよ。まだ確定してないのに手を出しちゃ。 それに今回、『EXAM』絡みの人間が犯人の可能性がある」

霞「EXAM絡みの…?」

瑞鳳「昨日、見回りをしてた時雨ちゃんが怪しい人間を確保したの。その人盗聴器を持ってた、しかも仕掛けてあったのが旅館の私の部屋と別のホテルの榛名さんの部屋だった」

天津風「じゃあ本当にEXAMの可能性も…」
519 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/29(火) 02:24:43.01 ID:N2eldOvm0
海風「ですが最大の問題は…」

萩風「…」

瑞鳳「エクシアは予備パーツまで盗まれてる… 投入出来る機体が無い」

天津風「先輩達の機体は?」

瑞鳳「ウイングはまだ機体のコアの調整が終わってない。ZZとジャスティスもオーバーホールしておかないと決勝に投入するのは難しいから…」

朝雲「投入出来るのは私の予備機の『ストライク・エインヘリヤル』と天津風のお蔵入り『シューティングスターガンダム』だけ…」

天津風「別にお蔵入りはしてないわよ!ちゃんと改修して全国大会用にしてるってば!」

霞「だけど二人は私と同じ射撃メインの戦闘スタイルじゃない」

天津風「必然的に射撃武器が多くなってるのは確かだけど…」

朝雲「元々私のは支援機だし」

瑞鳳「戦闘スタイルが機体と致命的に噛み合ってないね。萩風ちゃんは狙撃も出来るけど、必然的に近接戦闘がメインになる」

萩風「それにお二人の機体はファイターに合わせてフィッティング済みですから…」

瑞鳳「一度染み付いた癖は人間もガンプラも取るのは難しい。だから二人の機体を使うのは現実的じゃない」

神通「ではどうするんですか…!」

瑞鳳「1機だけ、使える機体があるかもしれないよ」

海風「他に機体が?」

瑞鳳「浜風ちゃんが『ウイングガンダムゼロクロイツ』に機体を変えて、それにあわせて夕雲ちゃんも機体を変えたの。

だから壊れてないし、戦闘スタイルの噛み合った『アストレイミラージュフレーム・クロイツリバイ』が現状浮いてる」

神通「確かに、ミラージュなら…」

萩風「しかし夕雲さんがそれを承諾していただけるか…」

瑞鳳「まぁ私が言えばなんとかなるよ。ただし調整が要るから一晩で間に合うかどうか…

それに世界大会ももう終わりも近いし機体の方も限界に近付いてる。確実に使える保障は…」

海風「実質無理と同義じゃないですか」

瑞鳳「あくまでも可能性、できるかもって話だし。…確実性があるなら瑞鶴からゲルググかっぱらってくるしかないね」

神通「さ、流石にそれは…」

コンコン

瑞鳳「…皆、私と神通ちゃんの後ろに」

神通「一体こんな時間に誰が…!」

霞「この感覚、知ってる…?」

陽炎『あのー、ここに全員居るって聞いたんだけどー』

天津風「宮城のスピード狂ね」

神通「その言い方はやめてあげてください」
520 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/05/29(火) 02:57:03.08 ID:N2eldOvm0
霞「で、こんな時間に何の用よ」

陽炎「ガンプラ壊された、って聞いたから被害確認」

瑞鳳「壊れたのは萩風ちゃんのエクシアだけだよ」

陽炎「エクシアね… 実はさっき、こんなもん拾ったのよ」

萩風「っ…!?」

陽炎「やっぱり、それアンタの機体の部品よね」

萩風「これをどこで!?」

陽炎「ロビーのゴミ箱。お菓子の袋を捨てようとしたらプラゴミに混じってた」

萩風「そんな…」

陽炎「一応拾える限りは拾っておいたけど… 細かい部品しかなかった。ごめん、もっと探せば…」

瑞鳳「よし決めた。ぶっ殺す」

全員「!?」

瑞鳳「私の可愛い娘のガンプラを壊して、挙句パーツを盗み出してプラゴミ扱いなんて良い度胸だよねまったく。

決めたよ。見つけ次第私が死より酷い目にあわせて地獄に落としてやる」

神通(こ、この殺気は…)

霞(体中に悪寒が…!?)

海風(こ、呼吸が苦しい…)

天津風(マジギレしてる…!)

朝雲(ヤバイヤバイヤバイヤバイ)

陽炎「え、えと… 今青葉が押収されたロビーの監視カメラの映像を警察から盗み出してくれてるからちょっと待ってて」

瑞鳳「…分かった。それまでは機体の調整に全力を尽くす」

陽炎(ヤバイ… この空気から早く脱したい!)

陽炎「皆、コンビニ行くわよ!」




海風「窒息で死ぬかと思いました」

霞「気持ちはわからなくもないけど…」

神通「お母様を本気で怒らせるなんて… 命知らずと言うか…」

朝雲「私達が怒られた時より凄い殺気だったわ…」

天津風「しかも殺す宣言まで…」

萩風「…」

陽炎「ほら、アンタもいつまでも落ち込んでんじゃ無いの。アイス買ってあげるから」

萩風「ごめんなさい、甘いの苦手なんです…」

陽炎「そ、そう…」

神通(相当ショックみたいです… いつもならアイスを全否定して暴れるのに…)
521 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/05/30(水) 03:18:49.02 ID:bL/2tksI0
陽炎「でも心配してくれて、怒ってくれる人が居るならまだ良いじゃない。頼れる人間も何も居ないのは悲惨だもの」

天津風「頼れる人間、か…」

陽炎「そうよ。そう言う人が居るだけまだ貴女は幸せ」

萩風「…」

陽炎「ショックが大きいのは分かる。だけどもっとしっかりなさい。犯人探しは私も手伝うし、姉さん達も全面的に協力するって」

朝雲「榛名さん達も?」

陽炎「前に私達がこっちの世界に来る前、姉さん達が巻き込まれたパーツハンター事件ってのがあったの。

誰かにガンプラを奪われて、壊されてきたのを姉さん達は見てきた。だからこそそう言う類の人間は許せないんだって。事件の当事者だった天城姉さんと明日こっちに来る予定の間宮さんも手伝うから」

海風「あれ、間宮さんって艦娘ですよね? どうしてあの人が…」

陽炎「あの人が転移してきたのは5年近く前よ。年齢的には天城姉さんと同年代だけど、こっち側に居た時間は飛龍さん達より長いの」

霞「だから満潮?だったかに伝説扱いされてたのね」

朝雲「でもパーツハンター事件って、そんな事もあったのね…」

陽炎「そうよ。ガンプラ学園の前身の旧ガンプラ塾、その元塾生が狙われ何人も被害に遭った。当時一線を退いてた姉さんも襲おうとして…

だけど天城姉さんにブチのめした。当時新造されたばっかの『スレイプニル』でね。で、逃げてもう一度襲い掛かったのを間宮さんが『スヴァジルファリ』でボコって…」

天津風「二度も襲撃されたの!?」

陽炎「三度よ。『改RX-0』は元塾生の機体の中でも一級品、だからこそ是が非でも手に入れたかったんでしょ。

そして三度目、しかも相手はメイジンの機体の『カテドラルガンダム』を預けられてたらしいの。でも姉さんが直接復帰して戦って、一方的に倒しちゃったんだってさ」

海風「『カテドラルガンダム』を…」

陽炎「だからこそ姉さん達、そして私達は許せないの。ガンプラバトルで壊れるのは分かるけど、それ以外で壊すのはファイターとして間違ってる。

例え相手がファイターじゃなくても、嫌がらせが目的だとしても、正々堂々と戦わないのは間違ってるから」

神通「そうですね… 萩風、いざとなれば…」

「あら、朝雲じゃない」

五月雨「姉さん? それに萩風さんも…」

「どうしたんだい、そんなに落ち込んで?」

神通「朝雲さん、この方達は?」

朝雲「私の家族です。 どうしたの、コンビニに」

「ホテルで飲む飲み物とかを買いにね。この子達はチームメンバー?」

陽炎「あ、私は違います。私は宮城です」

五月雨「宮城って… あ!」

陽炎「妹、ってことは… ああ、この子か。もう1機の『改RX-0』持ってるの」

五月雨「貴女があの機体を?」

陽炎「違うわよ。アレ作ったのは私の姉の榛名、って人」

「それよりどうしたんだい。萩風ちゃん、何かあったの?」

朝雲「それは、ちょっとね…」
522 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/02(土) 02:36:44.74 ID:xJKYVvPL0
五月雨「ガンプラが壊されたんですか!?」

「しかも空き巣って…」

神通「鍵はかけてロビーに預けていたのですが…」

萩風「私のエクシアが…」

陽炎「それで落ち込んでるこの子を励ますのと、あとブチギレしてるこの子達の先生の放つ空気から逃げるためにコンビニに…」

「そんなに怖い人なのかい? 聞いた話じゃ女性だって…」

霞「怖いと言うかキレたら多分自衛隊の全部隊でも勝てないんじゃないかしら…」

海風「その母曰く一家揃えば世界を敵にまわせるとか」

「じょ、冗談よね…?」

天津風「冗談ならどれ程良かったのかしらね…」

神通(侵攻してきた深海棲艦を単身で全滅させた人間ですからね…)

「朝雲、貴女怒らせたりしてないわよね…?」

朝雲「あ、あははは… 何度か正座させられました…」

神通「あのお説教で済むなら良い方です… あと結果オーライな事ばかりだったのでまだ甘くしてくれているかと…」

海風「だけど今回ばかりは… 特に明日出場予定のファイターの機体を壊されましたから」

萩風「…」

霞「天津風、アンタ機体は?」

天津風「持って来てる。流石に危ないし」

海風「あとは全員先生に機体を預けているので問題はありませんが…」

「それで、どうするんだい?」

神通「先生が代替の機体を見繕ってくれるそうですが、まだ機体が間に合うかどうかすら危うくて…」

五月雨「それなら…!」ガサゴソ

朝雲「五月雨?」

五月雨「あの、これ使ってください!」

霞「これ、もう1機の…!?」

天津風「妹さんに渡された『改RX-0』…!」

萩風「しかし、それは貴女に渡された機体では…!」

陽炎「大丈夫よ。姉さんなら多分、何も文句は言わない。ファイターが余程の最低な人間じゃない限りは。

それに貴女みたいにガンプラに愛情を持って接してくれる人間なら多分許してくれるわよ」

神通「確かにこの機体は恐らくフィッティングを済ませていないまっさらな機体です。恐らく現実的な手段の中では最良…」

海風「ここで朝雲さん、どうぞ」

朝雲「…萩風、私は無理にとは言わない。だけど私は萩風と一緒に戦いたい。チームメイトとして、パートナーとして、一緒に」

萩風「私は…」
523 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/02(土) 03:04:07.91 ID:xJKYVvPL0
《神通・萩風の部屋》


瑞鳳「…で、この機体を使うのね?」

萩風「はい。お借りしたこの『改RX-0』を」

瑞鳳「確かに性能も申し分ないし、ファイタースキルと機体も噛み合ってる。それにまっさらな機体だから調整もできる。

だけどステルス能力は無いし戦う時は一発本番になる。それでも大丈夫?」

萩風「大丈夫です。私なら」

瑞鳳「よし、なら調整作業に入るとしましょうか」

神通「間に合いますか?」

瑞鳳「リペイントまで間に合わせるよ」

萩風「しかしそれは…」

瑞鳳「許可は貰ってるんでしょ? なら大丈夫よ。最悪塗料の配合は見れば分かるから元に戻せるし。

それに貴女が使うんだから、貴女にあわせた色にしないと」

萩風「それとお願いが… これ、使って貰えませんか?」

瑞鳳「エクシアの部品を?」

萩風「壊れてしまって、今は警察に持って行かれてしまったけどあの子は私の大事な愛機です。

だからその意思を宿したこのパーツを、できれば使いたいんです」

瑞鳳「分かった。だけど時間は大丈夫かな…」

コンコン

榛名『夜分遅くに失礼します。宮城でおなじみ早い・安い・丁寧がモットーの狼印の『ウルフサービス』でございます。

ガンプラ絡みのことならお任せ、専任のスタッフが本日限り無料でガンプラの調整を承ります』

神通「凄いタイミングで… きっと陽炎さんが…」

瑞鳳「これで手は足りる… よし、この子を弄り倒すとしましょう」

神通「確か機体の名前は…」



萩風の代替機 ↓2
1.『RX-0[Cl]カラドリウス』 モチーフ機:『ディス・アストラナガン』
2.『RX-0[Fk]フリカムイ』 モチーフ機:『ガリルナガン』
3.『RX-0[Hr]ハルピュイア』 モチーフ機:『ファービュラリス』
4.その他(内容は下記明記)

条件
・ベース機:『RX-0 フェネクス』(固定)
・改造内容:スパロボOGシリーズの機体がモチーフであること(モチーフ元を明記)
・名前:北欧神話を除く『神話・伝承に登場する鳥の名前』
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 09:32:55.66 ID:jzh7tVO60
踏み台
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 09:58:50.26 ID:FXkwNogpO
1
526 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/03(日) 02:10:22.07 ID:GlO9Khnj0
瑞鳳「『RX-0[Cl] カラドリウス』。多分モチーフはスパロボの『ディス・アストラナガン』。名前はヨーロッパの伝承、病を治したり不老長寿を齎したりするって言う鳥だね。

性能は… 改RX-0の中でもヤバイ方だと思う。その分エネルギー配分の問題とかもあるけど…」


RX-0[Cl]カラドリウス
武装
・60mmバルカン×2
・ビームサーベル×2
・ライフル内蔵サイズ『ハルパー』
・肩部バインダー展開式ビーム・キャノン×2
・ミノフスキー・ドライブユニット『イーカルス』
・スレイヴ・ファンネル×6

概要
改RX-0の1機であり本来は朝雲の妹である五月雨の機体の筈だったが一時的に萩風に貸与、改修・調整を施されることに。
原型と比較し女性的なフォルムの機体で改修後のシームルグに匹敵する高い運動性を有した強襲型の機体。因みにビームは何故か緑色。
特殊装備はライフルを内蔵する実体サイズ『ハルパー』。そしてミノフスキー・ドライブユニット『イーカルス』。
『ハルパー』は実体の鎌だが状況に応じてビームを刀身に展開できる。そしてライフルモードではビーム・実弾の両方を放つ事が可能。
背部のバックパックは換装されミノフスキー・ドライブユニット『イーカルス』を装備。『イーカルス』は『スキーズブラズニル』のプロトタイプに相当し、性能は劣り『ネージュエール』による攻撃手段などがオミットされているが高い加速・機動性能を発揮できる。
またイーカルスには『スレイヴ・ファンネル』を内蔵、全6基存在しマシンガンのようにビームを連射出来るが見た目は『羽の生えた銃』のようで相当キモイ。小回りはかなり利く。
コード・ブレイヴ発動時には胸部装甲を展開、そこからエネルギー塊を打ち出す『ブレイヴ・インフィニティ・シリンダー』。威力は凄まじく直撃すれば瑞鳳製の機体すらも塵と化す。ただしエネルギー効率は劣悪であり、シームルグ同様の欠点を抱える。
塗装は本来はシームルグよりも薄い青に近いカラーリング。



神通「流石に機体完成度が…」

萩風「スペックだけならシームルグに匹敵、本当にエネルギー絡みだけですね問題は」

瑞鳳「それはこれから弄るよ。ルベルムのパーツも使って、専用に調整するから」

瑞鳳(これやっぱ元に戻した後でコピー機作って、萩風ちゃんに渡しておこ…)

萩風「と言う事で姉さん、姉さんはどうするんです?」

神通「どうする、とは?」

萩風「私はお母様のところで作業しますが、この部屋にまた警察が来ますから部屋では眠れないかと」

神通「私の製作能力では足手纏いですから… 海風さんと霞さんの部屋にでも行きます」


イベント選択 直下
1.神通『妹への』
2.天津風『ファイター』
3.榛名『託す意味』
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 09:19:17.64 ID:SuaWioQc0
3で
528 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/04(月) 03:22:21.90 ID:hGBt5Wx40
side-榛名-『託す意味』


《旅館・瑞鳳の部屋》

瑞鳳「塗料の調色、これくらいで大丈夫?」

萩風「はい。あとは粒子変容塗料と調合して本体を脱色させて塗れば良いだけです」

瑞鳳「よし、じゃあ後は私達がやっておくから寝てて良いよ」

萩風「そう言う訳には…」

榛名「大丈夫ですよ。それに萩風さんはまだ子供ですから、あまり夜更かしは厳禁です」

瑞鳳「私達も適当に作業切り上げるから大丈夫。だから先に寝てて」

萩風「ではお言葉に甘えて… おやすみなさい」



榛名「あとはエクシアの部品を加工して組み込んで… 新しい武器なんかも必要でしょうか?」

瑞鳳「その辺はファイターの癖を一番知ってる私がやっておきます。それより、ちょっと聞きたい事が」

榛名「なんです?」

瑞鳳「何で私達に手を貸すんですか? 『シームルグ』と『カラドリウス』を私達の側に提供しなければ『ウイングガンダム・アズライト』は完成しなかった。

それどころか『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『ブラストアクロスZZ』も生まれなかった。 これらが無ければ全国大会でここまで来れたかすら危うかったのに」

榛名「ギブアンドテイクです。『アンチェインドドライヴ』には『モード・アズール』のデータが役に立ちました。ビルダーが新しい技術を貰ったらお返しをする、当然のことでしょう。

だから『改RX-0』の粒子制御技術を提供したんです。技術だけじゃなくて実機を提供したのは… 個人的に朝雲さんの姿勢が気に入ったからですよ」

瑞鳳「朝雲ちゃんが、ですか?」

榛名「誰かのために戦う、その為なら例え敵だろうと教えを請うて、昇華し強くなろうとする。そんなに直向な人だからこそ気に入ったんです。

そんな人はガンプラ塾でも見た事が無かった、だから新鮮で、そして眩しく見えたのかもしれません」

瑞鳳「だからこそ『シームルグ』と『カラドリウス』を朝雲ちゃんとその妹さんに託した… だけど『カラドリウス』を萩風ちゃんが使うことに抵抗はないんですか?」

榛名「ええ。彼女ならば『カラドリウス』を使う資格はあると思いますよ。 それに『カラドリウス』が無ければこちらから1機、余剰機を提供していたかもしれません」

瑞鳳「あの子に機体を託しても良いと思えるだけの『何か』がある、と?」

榛名「朝雲さんと同じ『誰かの為に戦う』人、と言うのも理由ですけど彼女の場合は戦い方に好意がもてるんです」

瑞鳳「戦い方?」

榛名「一見すればステルスを使って奇襲を行うの容赦のない戦い方、ですが彼女の場合はあまりガンプラを壊そうとしていないんです。

部品の交換が容易な部分を狙ったりマガノイクタチでエネルギー切れを起こさせたり、後でちゃんと直し易いように戦っているんですよ」

瑞鳳「確かに、そう言う節は多少ありますが…」

榛名「その必要が無い限り積極的にガンプラを壊そうとしない、それは相手のガンプラやビルダーに対しても敬意を抱いているということです。

それに自分のガンプラにきちんと愛情を持って接し、壊れたらその部品を一部でも、どれだけ手間であろうとも別の機体に使おうとする。 ガンプラ想いの人でもここまでするのは珍しいじゃないですか」

瑞鳳「だから萩風ちゃんにも『カラドリウス』、『改RX-0』を使う資格がある、ですか」

榛名「はい。 それに朝雲さんのパートナーは萩風さん唯一人、『番の鳥』も必要ですから」



イベント選択 直下
1.神通『妹への』
2.天津風『ファイター』
3.陽炎『悪意の矛先』
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 05:45:34.82 ID:RwrIgXhSO
1
530 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/05(火) 03:21:47.20 ID:kP6TyPd30
side-神通-『妹への』

《宿舎・外》

神通「窓伝いで入った、訳ではないようですね」

海風「痕跡も見当たりませんし、3階の部屋に入るのは下からだと目立ちすぎます」

霞「侵入経路はやっぱり普通に入り口か…」

神通「萩風のように通気口を使った可能性もありますが、現実的な手段ではありませんし…」

海風「だけど鍵はどうしたんです? カードキーですよ、宿舎は」

霞「カードキーは2枚しかない筈ですし、神通さん達が出かけた時には預けてたんですよね?」

神通「はい。ロビーのほうにきちんと」

海風「…あと可能性はマスターキー、ですね」

霞「じゃあ宿舎側が手引きした、ってこと…?」

海風「その可能性もありますが… 最も高いのは…」

神通「マスターキーを借りて部屋に入った、ですか」

海風「はい。マスターキーを借りた人を調べれば自ずと犯人へと辿り着くということです。ですがマスターキーなんて早々貸して貰えるわけでは…」

霞「インキーを偽って、とかは?」

海風「それなら多分ロビーの人が一緒に行くはずですよ」

神通「マスターキーを盗み出した、というのは?」

海風「ロビーの映像を調べないとわかりませんね」

霞「結局、振り出しか…」

神通「すみません、二人共。私の我がままに付き合ってもらって」

海風「いえ、先輩の頼みなら。それにチームメイトの一大事ですし」

霞「私も、こんな卑怯なやつは絶対に許せないから」

神通「良かった、あの子もチームに馴染めて…」

海風「良くも悪くも『普通じゃない』チームですから」

神通「それでも、あの子を受け入れてくれただけでも充分です。あの子、人付合いが苦手で…」

霞「ウチ、そう言う連中ばっかりだから馴染み易いんじゃないんですか?」

海風「霞も友達居ませんでしたしね」

霞「アンタなんて無愛想マシーンだった癖に」

神通(萩風、犯人はこちらで絶対見つけます。 貴女は貴女の戦いに集中をしてください)
531 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/05(火) 03:53:49.70 ID:kP6TyPd30
《翌朝》


榛名「フレームパーツは調整終了、外装パーツと武器は?」

瑞鳳「こちらも改造・調整は完了して…」

萩風「今塗料を乾かしてるところです」

瑞鳳「でも発光って調整出来るんですか?」

榛名「はい。『改RX-0』のフレームパーツは無色、ですがNT-D発動時に発光エフェクトが変化するように調整可能なんです。

現に『マーナガルム』ら3機もフレームは以前のまま、エフェクトを変化させただけですから」

萩風「すみません、発光まで変えて頂いて」

榛名「良客にはアフターサービスはきっちりする、それがモットーです」

瑞鳳「で、機体の登録名はどうする? 『カラドリウス』のまま?」

萩風「そうですね…」


機体改造 

ベース機『RX-0[Cl]カラドリウス』
武装
・60mmバルカン×2
・ビームサーベル×2
・ライフル内蔵サイズ『ハルパー』
・肩部バインダー展開式ビーム・キャノン×2
・ミノフスキー・ドライブユニット『イーカルス』
・スレイヴ・ファンネル×6


改造内容 直下

機体名 下3


条件
・改造内容:大幅な変化をさせないこと、塗装カラーは固定(薄紫)
・機体名:『カラドリウス』の名前は固定、追加(例:カラドリウス改など)はOK
532 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/06(水) 00:32:04.99 ID:cNGlSg1w0
来なさそうなので選択肢


機体改造 直下
1.機動強化・ステルス能力付与
2.武装強化・同調能力付与
3.その他(内容も)


機体名 下2
1.『カラドリウスルベルム』
2.『カラドリウスtype-H』
3.その他(内容も)
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 10:13:44.22 ID:Gsfg7hGB0
1で
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 05:46:10.37 ID:BFjxQW1NO
踏み台
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 13:31:11.15 ID:W3ODUoaeO
1
536 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/08(金) 02:39:37.85 ID:VA1m+bpL0
萩風「エクシアの名前を頂いて、『カラドリウスルベルム』として登録させて頂きます。構いませんか?」

榛名「ええ、そこはファイターにお任せします」


新機体(一時?)

RX-0[Cl-R]カラドリウスルベルム
武装
・60mmバルカン×2
・ビームサーベル×2
・ライフル内蔵サイズ『ハルパー』
・肩部ハイパージャマーユニット
・ビーム・ダガー×2
・ミノフスキー・ドライブユニット『イーカルスR』
・スレイヴ・ファンネル×6

概要
『RX-0[Cl] カラドリウス』を萩風用に調整しつつ破壊された『ガンダムエクシアルベルム』の部品を使って改修した機体。
外観はエクシアのパーツの使用とそれにあわせたことにより一層女性的なフォルムが強調されている。
主な変更点は腰びビームダガーを装備し肩部に装備されていたバインダーを外し、代わりに肩部を換装する形でハイパージャマーユニットを搭載したことと背中に装備された『イーカルスR』。
『イーカルスR』は『イーカルス』に改修を加えて出力を強化したもの。NT-D発動時には有機的なエネルギーの翼を形成、まるで天使のような姿となる。
この状態では普通の人間は目視すら難しいほどの速度を発揮、さらにハイパージャマーも強化されてまともに捉えることは叶わない。
相対的な火力こそ落ちているものの萩風に合ったカスタマイズを施されており高い性能をフルで発揮可能。
塗装は薄紫をベースに、NT-D時はピンクの発光をする。
朝雲の駆る『シームルグ』と共に『カラドリウス』は飛翔する。たった『一輪の花』としてではなく二人の『TwinBird』として、戦場と敵をその鎌で切り裂く。


瑞鳳「問題は… 鎌って使った事ある?」

萩風「その辺は問題なく。私は元々大鯨さん、鯨流の後継者です」

瑞鳳「確かに特徴的な武器の使い方は一通り習ったけど、私も。鎌までもうやってたなんて…」

萩風「ナイフは使い易いし持ち歩きも容易だから使ってるだけです。トンファーでも刀でも、鞭でも鎌でもなんでも大丈夫です」

榛名(それでも神通さんの方が強いって…)

神通「失礼します、お母様」

瑞鳳「あれ、どうしたの?」

神通「青葉さんからの報告が。 きな臭いことになってきました」

萩風「きな臭い?」

神通「陽炎さんが昨日、あの後青葉さん達を動員してゴミ捨て場を探したそうです。その結果、注射器が…」

榛名「…!」

瑞鳳「まだキャリアーが居ると断定するのは早いけど… 昨日の時点で宿舎には3チームしか居ない筈だよね」

萩風「うち2チームは身内…」

瑞鳳「…グレートKに薬の使用者が居るかもしれない、ってことになる」

榛名「運営側に報告を…」

神通「実は海風さんが先走って阿武隈さん達とカリマ・ケイを捕縛して…」

三人「!?」

神通「カリマ・ケイ本人を問い質したところ本当に何も知らなかったそうです。空き巣の件も薬の件も」

瑞鳳「あとで海風ちゃんにお説教だね」

萩風「い、一応情報を手に入れているので不問にしておいてください」

榛名「確か私達が得ている情報の限り、キャリアーはメインファイター以外がなっても特に意味がない筈でしたから…」

瑞鳳「…警戒は厳に。全員を動員して事態の対処を行います」
537 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/10(日) 02:46:11.85 ID:+1+pndQi0
カリマ「だから、本当に知らねぇつってんだろうが!」

陽炎「物証はあがってんのよ。まだシラを切るつもり?」

カリマ「俺じゃねぇよ!注射の跡なんてあったら半袖なんか着ねぇっつの!

大体俺は昨日の夕方はトイレに篭ってたしから空き巣なんて出来ねぇし、出来てもそんな卑怯な真似するかよ!」

阿武隈「どの口が言うんだか…」

海風「これ程説得力がない台詞は… ウチじゃ割りと多いですけど、まぁ珍しいでしょう。

島での一件、あれを卑怯と言わず何を卑怯と言うのでしょうね。このコウモリワカメ」

カリマ「テメェ、煽りのセンスだけは相変らず一流だな…!」

海風「では貴方でないのなら貴方のお仲間がこの薬を使った可能性が高い、と」

カリマ「いい加減にしろよ、お前…!俺の仲間まで疑うのかよ!」

海風「推論を述べたまでです。 こちらにはあの薬、昏睡病の原因の薬を使うような人間は居ません。

全員、嫌と言う程使った人間の末路や巻き込まれた人を見てきてますから」

カリマ「末路だぁ?」

長波「ロクな目に遭ってないんだよ。使った当事者も、巻き込まれた私達も。

だからこそ止めたいって、もう二度とゴメンだって思うのは当然のことだろうが」

海風「被害が出る前に止めたいんです。例え誰であっても犠牲は出したくないから」

カリマ「正義の味方気取りかよ」

海風「違います。ただやりたい事をやって、望んだ未来を創りたいだけです。

もし仲間内で肌を隠したりおかしな挙動の人が居れば教えてください。あとその事は可能な限り伏せておいて貰えると」

カリマ「ケッ… 気が向いたらな」




阿武隈「残りの二人も捕まえる?」

海風「いえ。牽制になれば良い、と思ってあのワカメに注意しただけです」

陽炎「だけどもう薬を使ったやつキャリアー化してる可能性が高いわ。もう手遅れよ」

海風「それも分かっています。だとしても、もし誰かが犠牲になる前に止めることが出来れば、穏便に済ませられれば御の字じゃないですか」

長波「無用な騒ぎは起こしたくない、ってことか」

海風「はい。 全日本選手権と言う場で、そして世界大会が近隣で行われているところで、ガンプラを汚す真似はさせたくないんです。

市内でのビル崩落は… まぁもう少し穏便に出来ればよかったのですが」
538 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/11(月) 02:12:26.32 ID:odDvpTXk0
《数時間後 大会会場・控え室》


海風「では今回のバトルの編成・戦術の再確認を行います。 ファイターは萩風さんを主体に朝雲さん、天津風さんに出て貰います」

霞「機体は間に合ったみたいだけど… 改RX-0の操作性は劣悪よ。正直調整を施してても朝雲が使えてるのがやっとの状態レベルだし」

萩風「戦ってる最中に慣らします。 それにお母様と榛名さんが手伝ってくれたので調整に時間を割くこともできましたから足手纏いにはなりません」

海風「戦術は対MA戦術パターンの中から状況に応じて選択を。使う機種が不明な以上、固定させるのは危険です」

瑞鳳「今までのパターンだと大型が多いから… アニメ本編のだと『αアジール』とか『ラフレシア』、『デストロイ』あたりかな…」

天津風「…新し目だと『コンキュテベネス』や『アーマーザガン』、『ハシュマル』なんて可能性もあるわね」

神通「大穴中の大穴で『ゲルズゲー』『ダハック』なんて可能性も…」

海風「談義は程ほどに。 ともかく、敵はMAと過去の戦闘データからほぼ確定しているようなものですが、もしMS3機の場合は臨機応変に対応を」

朝雲「無茶言ってくれるわね…」

海風「その無茶を成し遂げてきたのがウチのチームですから」

朝雲「分かってるわよ。 これまでやってきたように、やってやれば良いんでしょ」

海風「はい。 敵はこれまで以上の強敵かもしれませんが、やれると信じています」

天津風(信じてる、か… 私は私の目的の為に利用してただけなのに…)

霞「天津風?」

天津風「なんでもない」

朝雲「そう言えば機体、どっちにするの?」

瑞鳳「それによって渡す装備も変わるんだけど」

天津風「機体は…」


機体選択 直下
1.ガンダムハルート・ボーライド
2.シュティングスターガンダム(改)


追加武装(機体がシューティングスターの場合、改造内容・機体名も併記) 下3
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 05:31:36.13 ID:lVIrl+G+O
1
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 09:20:47.17 ID:B3GY5xZT0
踏み台
541 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/14(木) 01:57:13.69 ID:MMNgTCtl0
来なさそうなので…

選択肢(装備) 直下
1.ウエポンコンテナ&ブースター『GNHW/B』
2.火力・運動性強化用ブースター『ライジングブースター』
3.その他(内容)
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 16:20:25.75 ID:kFCFh96rO
2
543 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/16(土) 03:31:44.86 ID:bHINyln80
天津風「ハルートを使います」

瑞鳳「OK。ならこっちね」

神通「ブースター…?」

瑞鳳「『ライジングブースター』。実際の航空機を参考にして作った専用のブースターで、装備時に可変機構をオミットする代わりに加速性を高めたの。

そして補助の偏向ノズルで運動性も高めて、ビームキャノンが2門と翼そのものにビームサーベルを纏わせる機能で戦闘能力も上がってる」

天津風「『ライジングブースター』… これって、Su-47の?」

瑞鳳「正しくはSu-47と57の合体。47はハルートが元々前進翼だからそれに合わせる形で翼部と機首を、57は推力偏向ノズルと尾翼を参考にしてる。

これでも私、工業系で航空専攻だもの。中々大変だったけど、なんとかモノにできた」

天津風「ありがとうございます、私のために…」

瑞鳳「…時雨ちゃんとの戦いで、何か気付けた?」

天津風「それは…」

瑞鳳「良いんだよ。今はまだ気付けなくても。 だけど貴女が思っている以上に皆が天津風ちゃんを信頼してる。 その事だけを忘れないでね」


『これより準決勝第二試合を開始します。参加選手の方は…』


瑞鳳「時間か… さて、行って来なさい。これが貴女達の正念場だよ」

朝雲・萩風・天津風「はい!」



『全日本ガンプラバトル選手権・中高生の部。全国大会準決勝第二試合、東京代表・私立小沢学園チーム『フリューゲル・ヴェント』対神奈川代表本牧学園チーム『グレートK』の試合を開始します』

阿武隈「…やっぱりZZは出して来ないか」

陽炎「どうする? 『ブラストアクロスZZ』のデータだけないけど」

榛名「問題はありません。基幹技術はこちらの応用、瑞鳳さんのシステムと組み合わせたとしても対処はできます」

長波「じゃ、今回は純粋な応援で良いのか?」

天城「ええ。 しかし戦闘待機もしておいてください。キャリアーが出る可能性もあります」



チームメイトA「お、おい… あ、アイツの機体は…」

カリマ「どうした?」

チームメイトB「な、なんでもねぇよ…!良いから行くぞ…!」

カリマ「ああ、サポートは任せる…!」

カリマ(なんだ、コイツら… 普段と雰囲気が…)


Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field to "MOON"

Please set your GUNPLA

BATTLE START!


天津風「ガンダムハルート・ボーライド、天津風!」

萩風「カラドリウスルベルム、萩風!」

朝雲「シームルグ! 朝雲、チーム・フリューゲル・ヴェント!」


天津風「行くわよ!」

萩風「行きます!」

朝雲「出撃する!」
544 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/16(土) 04:25:40.97 ID:bHINyln80
天津風「フィールドは月面ね。敵は…」

朝雲「目視で確認できてるわよ…!あの機体、AGEの…!」

萩風「『ヴェイガンギア・シド』の改造機ですか… 金色とは悪趣味な」

カリマ「うるせー! この『ヴェイガンギアK』に対抗しようなど、お前達もここで終わりだ!」

朝雲「来るわよ! 各機、戦闘開始!」

萩風・天津風「了解!」


大量のミサイルがヴェイガンギアから放たれ朝雲たちは各個に散開し、ミサイルをそれぞれに迎撃する。

さらなるミサイルが3機へと襲い掛かるがシームルグが自機と同等の粒子結晶の刃を展開し、射出して残存するミサイルを切り裂いた。


カリマ「これでぇ、どうだぁぁぁぁぁっ!」

天津風「曲射のビームが来るわよ!」

朝雲「萩風!」

萩風「はい!」


偏向するビームを相手に囮となって突出するカラドリウス、萩風はビームが全て自分に集中したのを確認し『ハルパー』をサイズモードに切り替えた。

萩風が一閃を振るった次の瞬間、ビームは『ハルパー』によって切り裂かれて霧散してしまう。


カリマ「なにっ!?」

萩風「ビームだとしても、この『ハルパー』なら!」

朝雲「いける!次はこっちのターンよ!」

天津風「これを受けなさい!」


シームルグの『シェーバティール』とハルートのブースターに内蔵されたキャノンから放たれたビームがヴェイガンギアの背中に合体している『シド』の翼を撃ち抜く。

そして誘爆が起こり両翼が千切れるヴェイガンギア、だがカリマは諦めず改造した『デルタゲイザー』をチャージする。


天津風「デルタゲイザー、しかもゲーム版…!」

朝雲「収束率は流石、って言いたいけど!」

萩風「一手遅い!」


ステルス機能を用いてレーダーから逃れていたカラドリウスが『イーカルス』の光の翼を展開して一気に距離を詰める。

鎌の一閃を振るいヴェイガンギアの両腕を切断して萩風は『デルタゲイザー』のチャージを止めてしまう。


カリマ「馬鹿な…!?」

朝雲「よし、これで…」

萩風「次の一手で終わらせ… っ!?」


不意の殺気を感じ取り萩風は機体を下がらせる。 そして次の瞬間起きたことに萩風は唖然となってしまった。

ヴェイガンギアの機体が勝手に修復されていき千切れた筈の翼さえも生えて、傷一つない姿を取り戻す。


萩風「再生…! やはり貴方は『薬』を!」

カリマ「ち、ちがう! 機体が操縦を受け付けないんだ!」



海風「薬を、ナノマシンを投与したのはカリマ・ケイじゃなくて…」

瑞鳳「サブファイターのチームメイトが…!」
545 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/17(日) 04:38:46.76 ID:iPTdNpd60
カリマ「ど、どうなってやがる!? 操縦も、降参すら出来ねぇ!」

萩風「キャリアーにメインの操縦権を強奪されたみたいです…!」

朝雲「一体どっちがキャリアーなのよ…!」

チームメイトA「た、助けてくれ!まだ死にたくねぇよ!」

チームメイトB「…」

萩風「どうやら3番目のファイターがノーマルタイプ、『使い捨て』の薬を使って…!」

朝雲「あのスドウとは違うタイプってことね!」

天津風「なら対処のしようはある! さっさとカタをつけるわよ!」

萩風「ですがこのまま倒せば残る二人にも感染する可能性が…」

カリマ「ど、どういうことだよ!?」

チームメイトA「頼む!ガンプラ壊した事は謝るから…」

朝雲・萩風・天津風「…は?」

チームメイトA「あ…」

萩風「決めました。速攻で倒して『始末』します」

朝雲「…まぁ、そうよねぇ」

天津風「長引かせて状況悪化させるよりは… それにビルダーとして気持ちは分かるし。あと下着盗まれてるし」

朝雲「仕方無いわ、自業自得ね。 各機、これより『全力』を以ってキャリアーを撃破するわよ!」

天津風・萩風「了解!」


ハルート、そして二機の『改RX-0』がそれぞれに散開してヴェイガンギアへと攻撃を開始する。

真っ先にカラドリウスが突撃し、それをフォローする形でハルートとシームルグが射撃を加えていく。


萩風「薬を使ったところで!」

チームメイトB「…」

萩風「所詮単機では!」


ヴェイガンギアがヒートサーベルを展開してカラドリウスを右腕で攻撃しようと腕を振りかざす。

萩風はその右腕を『ハルパー』で切り裂き至近距離で実弾を数発ヴェイガンギアへと叩き込み、ヴェイガンギアはバランスを崩した。


天津風「退いて!ミサイル、一斉発射!」


天津風のハル−トがミサイルを全て放ち、ヴェイガンギアもビームキャノンで迎撃を行うが間に合わずに多数のミサイルが直撃する。

しかしヴェイガンギアの損傷は即座に再生しすべてが無かったことになってしまう。


天津風「今よ!」

朝雲「再生したとしても、コピー体までは生成できないなら!」

萩風「こちらの方が上手です!」


2機の『改RX-0』、シームルグとカラドリウスが同時にNT-Dを発動し、燐光を纏った。

そして朝雲と萩風の二人は互いに顔を見合わせ頷き、突撃を敢行する。もう既に二人に言葉は要らない、互いの考えくらい分かっているのだから。
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/17(日) 09:00:03.23 ID:7AvEEnMtO
加奈「ダストンの掃除法をメモしておきますね!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529105813/
547 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/18(月) 02:58:48.37 ID:EjB9Kz8z0
朝雲「行くわよ! 例のヤツ、やれるわね!」

萩風「勿論です! やってください!」


高速で2機がヴェイガンギアへと真正面から一直線で迫り、ヴェイガンギアが尾のデルタゲイザーを放つとそれを回避するように左右に分かれる。

シームルグがシェーバティールから実弾を放ってヴェイガンギアに直撃させることで目を萩風から逸らす。その背後から『ハルパー』のビーム刃を形成したカラドリウスが迫り、シドの右翼を切り落とす。


萩風「私達、『二人』なら!」

朝雲「どんな敵とだって戦える!」


シームルグとカラドリウスがそれぞれに粒子結晶の刃を武器から形成して放ち、残る左翼を切り刻む。

だがヴェイガンギアも黙っておらずヒートブレードで二機を攻撃しようと両腕を振り下ろす。しかしそれすら2機相手には一手遅かった。


萩風「動きが止まって!」

朝雲「見えてんのよ!」


斬撃を容易く躱した朝雲と萩風、ヒートブレードを持った両腕をカラドリウスの『ハルパー』が形成したビーム刃が切り落とす。

形勢の不利を悟り後退し再生しようとするヴェイガンギア。だが背後からハルートのビームが直撃して推進器を破壊された。


天津風「この私にフォロー役させたのよ!決めなさい!」

萩風「朝雲さん!」

朝雲「コード・ブレイヴ!」


シームルグの燐光が輝きを増し、正面にシェーバティールを両腕で構えて銃身が展開される。

そして足が止まったヴェイガンギアをカラドリウスが光の翼と『ハルパー』を使って高速で切り刻み、四肢を、頭をバラバラに解体していく。


萩風「今!」

朝雲「塵一つ残さず、消えろ! プラフスキー・ステラ・ストレイターレット!」


解き放たれる超大出力の極大ビーム、その一撃が逃げる事のできなくなったヴェイガンギアを呑み込み圧倒的な熱量で消し飛ばす。

ビームの放射が終わると射線上には何も残らず、ヴェイガンギアの存在は跡形もなく消えていたのだった。


朝雲「ふぅ… 敵機の消滅、確認」

萩風「バトルシステム強制終了、戦闘終了します」


BATTLE ENDED

Winner"Flügel Vento"


『全日本ガンプラバトル選手権中高生の部、準決勝第二試合。勝者、東京代表・『フリューゲル・ヴェント』!』



海風「凄い…」

霞「息がピッタリ、まさかあそこまで…」

愛宕「流石、やるわね」

神通「萩風、立派になって…」

瑞鳳「よし、行って来るか」
548 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/19(火) 01:05:45.17 ID:bKlCdP+m0
カリマ「お、おい… 起きろ、起きろよ!?」

天津風「無駄よ。もう二度と目覚めないから」

朝雲「ちょっと退きなさい。 …やっぱり、注射痕がある」

萩風「もう入手ルートは8月に入った時点で9割がた潰されてる筈… 恐らく前から持っていたか、新しい経路が生まれていたか…

天津風さんと朝雲さんは運営に伝達と、あと彼を医務室へ。私は…」ギロッ

チームメイトA「ひっ…!?」

天津風「ブチのめしてきなさい」

朝雲「事後処理はやっておくから」

チームメイトA「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇっ!」ピューン

萩風「逃がすとでも…?」



チームメイトA「はぁ、はぁっ…!」

チームメイトA(な、なんで俺が…!)

ブォン スパァン!

チームメイトA(パン1)「え、あ…」

榛名「また、つまらないものを斬ってしまいましたか」

チームメイトA「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

榛名(トマホーク装備)「貴方の様な卑怯な輩、榛名は大嫌いなんですよ」

天城(槍装備)「姉さん、やってしまいましょうか。今なら目撃者は居ません」

間宮(鉈装備)「証拠なら青葉さんたちが消せますから。血痕も、死んだ痕跡すら残りませんよ?」

チームメイトA「お、俺が何したって言うんだよ!?」

榛名「通信が聞こえてないとでも? それにもう証拠のビデオはあがりました」

天城「窃盗と器物損壊で逮捕されても未成年だから罪には問われない。ですが私刑は別です」

間宮「ビルダーにとって決して許されないことをしたんです、貴方は」

瑞鳳「先越されちゃってたかぁ…」ズルズル

榛名「なんです、それ?」

瑞鳳「何ってクレーン用の鉄球ですよ。用意できたのは1tのですけど、これなら充分でしょう」

天城「片手で1t引き摺ってきたんですか…」

瑞鳳「貴方には私の教え子のガンプラと同じ痛みを味わって貰おうかな?」

チームメイトA「や、やめ… 謝りますから!土下座でもなんでも…!」

瑞鳳「土下座っていうのはね、価値がある人間がするから価値があって、貴方みたいなただの屑がやっても価値はないんだよ?」

間宮(ひ、酷い言い草… それだけ瑞鳳さんもキレているのでしょう…)
549 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/19(火) 02:33:00.13 ID:bKlCdP+m0
萩風「その鉄球だと肉片で足つきますよ」

チームメイトA「ひぃっ!?」

瑞鳳「あっちゃー、本人来ちゃったか… 一番エグイことやりそう」

萩風「失敬な… 確かに天城さんの言った通り恐らく少年法でそこまでの罪にはなりません。

だから、こうして『社会的に破滅』していただきましょう」ブォン

チームメイトA「がっ…」ドサッ

萩風「人の下着を盗んだ輩に、こんな下着は不要です」スパァン

榛名「最後の一線を…」

萩風「お母様、塗料とこの鉄球ください。縄は用意できてますので」

瑞鳳「何時の間に… まぁ良いけど。 人目が多くなりそうなとこに運ぶね、これ」



《その後 会場外》

海風「うわぁ、これは…」

霞「エグイ真似するわね、本当」

萩風「さて、なんのことでしょう?」

朝雲「ひん剥いてボコボコにした後『私は下着泥棒の変態です』ってプラカード作って鉄球に括りつけるヤツなんて居ないわよ」

萩風「ええ、そんな人間は居ません」

天津風「白々しい…」

萩風「あと間違えても当人の○witterやFace○ook、イ○スタに投稿や色んなアカウントから拡散なんてしてませんから」

霞「そこまでしたら人生御終いじゃない」

海風「どちらにしろ衆人観衆の前に晒されてますからね、もう。同情もする気はありませんがやり過ぎかと」

萩風「ひっそりと闇に葬られたり鉄球でグシャっとされるより良いんじゃないんですかね?」

神通「お母様、さっき電話してると思ったら鉄球なんて調達してたんですか…」

ウー ウー

朝雲「あ、警察だ」

萩風「帰りましょうか。イザコザに巻き込まれたくはありませんし」
550 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/19(火) 04:04:27.35 ID:bKlCdP+m0
瑞鳳「さて、まずは準決勝突破おめでとう。って言いたいけど…」

天津風「まり、気持ちの良いものじゃなかったわね」

瑞鳳「昏睡病のナノマシンが未だに流出してる。それに会場周辺じゃまだまだ怪しい動きが見られてる。

気を抜けない状況だよ。 もしかしたら『決戦』も近いかも」

神通「EXAMと私達の決戦…」

瑞鳳「今ある限りの戦力をこっちも集めてる。 だから貴女達が気にすることじゃない。子供を護るのが私達大人の役目なんだから。

じゃあ決戦前の英気を養うために、夜は焼肉でも行きますか!」

霞「え、良いんですか?」

瑞鳳「今回はお母さんが、別荘でおもてなし出来なかったお詫びだって」

海風「瑞鳳さんの懐が何一つ痛んでないじゃないですか」

瑞鳳「まぁ私も出資はするよ。先生としてはね」

朝雲「萩風、大丈夫?」

萩風「仕方ありません… 今日だけは特別です」

神通「珍しい…」

萩風「珍しくもなんともないじゃないですか。前にも間宮さんのお店で似たような件やってましたよね?」

神通「だって元の時代に居た時には言わないような発言ばっかりで…」

朝雲「それだけ変わった、って言う事ですよ」

萩風「そうです。前の私とはもう違うんです」

愛宕「よし、今日は飲んで…」

瑞鳳「いや駄目に決まってるでしょ。引率の先生がお酒飲むとか。と言うか部屋で飲んでるの知ってるし、飲み過ぎだからこれから飲酒禁止」

愛宕「あ゛ー…」



神通(こうして過ごす他愛のない時間、それは恐ろしい程早く進んでいく。『決戦』に向かって止まる事なく、無慈悲なまでに…)

霞(それでも私達は時間を巻き戻すことも止める事も出来ない。 辿ってきた時間は元に戻すことはできなくても、それでも…)

海風(明日の先は変えられる、例え定められた未来も壊して新しく創ることはできる。 そう信じて突き進むしか出来ないのだから)


第18話『TwinBird』 終
551 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/19(火) 04:24:51.23 ID:bKlCdP+m0
次話選択 ↓3票先取


1.霞編『エヴォリューション』…大鯨に誘われ再度滝行へと赴く霞。だが再度ニムバス一味の強襲を受けてしまい…

2.神通編『明日に期待して』…決勝戦の前々日、瑞鳳と共に修練を重ねる神通。しかし『本来起こりえない』筈の事件が発生し…

3.海風編『決戦への道』…海風は浜風に世界大会決勝の前夜祭に誘われ出向く。そして浜風の提案で世界選手権出場者とバトルすることに…
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 09:33:25.30 ID:Kl+VSDdI0
3で
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/19(火) 13:15:09.32 ID:vMaYSyfPO
1
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 05:06:34.14 ID:C0/FJ+38O
3
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 16:23:06.05 ID:O5j1nDrRO
3
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 01:13:58.18 ID:6XTzJKJIo
3
557 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/21(木) 03:42:06.76 ID:ODfD5e7k0
第20話『決戦への道』


海風「前夜祭?」

浜風「ええ。明後日まで、世界選手権決勝に向けての前夜祭が行われるので来ませんか?」

霞「私は… 大鯨さんと滝行しなおしに行くから無理ね」

神通「私も、お母様と修業に行って参ります」

萩風「私はそれに同行します」

朝雲「家族とちょっと出かけてくる」

天津風「こっちに居る友達と遊んでくるから… そっちにも行きたいけど」

海風「ものの見事にぼっちになりました…」



海風「はぁ…」

夕雲「海風さん、どうかなさったのですか?」

海風「戦術の練り直ししようとした矢先に引き摺り出されましたからね」

浜風「あまり根詰めても良い戦術は思い浮かびませんよ」

海風「第一ですね…」


「あれって… 今年の決勝の…」

「2年連続かぁ… それに妹も全日本の優勝候補で…」

「凄いな、姉妹揃ってかよ」


海風「ここまで注目されて息抜きが出来るとでも?」

夕雲「もう3回目なので慣れました」

浜風「それに大会参加選手はタダで飲食し放題ですからね」

海風「海風関係無いですよね」

夕雲「そこはまぁ、こちらでご馳走しますから」

海風「はぁ… 夕雲さんが居なければ貴女をど突き倒していたのに…」

浜風(それが分かってて夕雲も呼んでるんですけどね)

時雨「それに見回りも兼ねてるんだ。 キミの手だって借りたいくらい人手不足だからね」

春雨「EXAMとの戦闘経験がある海風さんの力も頼りにさせていただいてます、はい」

海風「なんか増えてる…」

浜風「私が呼びました」


イベント 直下
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 17:42:22.11 ID:pw4KBvdcO
ガンプラ製作コーナーへ
559 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/22(金) 03:06:52.96 ID:THVl1Nd10
《製作コーナー》


海風「…なんでガンプラ製作コーナーに?」

浜風「機体が要りますから。瑞鳳さんにアズライトが預けたままでしょうし」

海風「だからと言ってここで作らなくとも… それに時間だって勿体無いでしょう」

時雨「春雨が居るからそこは大丈夫だよ」

春雨「HGなら30分で組んでみせます、はい!」

海風「人外だ…」

夕雲「それに私達が言えた立場ではありませんが自分の機体を自分で組んでみるというのもファイターとしての経験には役立ちますよ」

海風「仕方ありません… これも経験の内と考えましょう」



海風(工具の類なら貸して貰えるらしいから… あとはキットと、あとオプションセットとか…

塗料は… 乾燥機があるから一応塗れるみたいですけど、どうしましょう?)

海風「とは言ってもガンダム知識は多少身につけましたがガンプラキットの知識は初歩中の初歩しか無いんですよね…」

海風(プレミアムバンダイの商品とかもあって潤沢ですから、かなり見分けが… とりあえずHGの00とAGEとIBOにオリジン、レコンギスタと一部UCにAGP規格品が良いと聞きましたが…

ただ瑞鳳さん曰く『Gガン系はやめておけ』って話ですけど… RGは海風の技量ではキツそうですから…)

春雨「海風さん、ウイングゼロ以外で使ったことのある機体は覚えてますか?」

海風「確か… ウイングとスクランブルを除けば『トーラス』と『グレイズリッター』くらいかと」

時雨「トーラスなんてキットにあったっけ?」

夕雲「LM(リミテッドモデル)シリーズでしょう。再販がほぼ無いのでかなり稀少な品ですけど」

春雨「プラモの皮を被ったガレキですからね」

海風「道理で少し動きが鈍いと…」

夕雲「ではこれはいかがですか? 『AGE-1フルグランサ』、キットとして凄く優秀ですよ」

海風「これは霞向けかと…」

時雨「なら『カバカーリー』なんかはどうだい? 近接重視だから使い易いかも」

春雨「『クロスボーンガンダムX1改・改』なんて良いと思いますよ? 上半身と下半身がすっぽ抜け易いのを補強すれば全体的に優秀で…」

海風「え、えと…」

浜風「いえ、ここは『ガンダムバエル』です。海風向けで翼もあって…」

海風「人の機体を勝手に選ばないで下さい!」


ベース機体選択 直下
1.浜風案『ガンダムバエル』 
2.時雨案『カバカーリー』
3.春雨案『クロスボーンガンダムX1改・改』
4.夕雲案『ガンダムAGE-1フルグランサ』
5.海風が決める(機体自由選択・機体併記)


選択可能条件
・HGシリーズ(ただしHGダブルオー2ndシーズン以降のもの)
・BB戦士(レジェンドBB以降のもの)
・現在までにリアルで発売しているもののみ
・『ビルドファイターズ』『ビルドダイバーズ』系は選択不可
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 09:58:43.43 ID:lt+q+KdL0
1で
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 10:40:17.22 ID:ChahlElDO
蘭子「混沌電波第173幕!(ちゃおラジ第173回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529353171/
562 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/23(土) 02:44:59.48 ID:mKDTy0hP0
時雨「で、結局…」

浜風「ほら、やっぱりバエルじゃないですか!」

海風「なんかそのドヤ顔ムカつきますね…!」

春雨「確かに浜風のチョイスは適性を踏まえても良いチョイスです。

鉄血のガンダムフレーム機である以上他のキットとの互換性や拡張性なんかも優れていますし製作のし易さなんかも優秀です、はい。そのまま組む分には」

海風「そのまま組む?」

夕雲「海風さんはアニメのバエルを見た事は?」

海風「確かヴィーンゴールヴのシーンとか宇宙での演説とかありましたが…」

時雨「パッケージの完成作例とそのシーンの画像を見比べてみて」

海風「…少し野暮ったい、ような…?」

夕雲「通称・バリ作画。 元のデザインと劇中での外観が大きくズレて、スタイリッシュに見えることが多々あるんです」

春雨「昔のロボットアニメなんかでも劇中やOPでスタイリッシュな見た目だったのにプラモ化すると野暮ったくなったり、逆にその作画を再現したフィギュアが通常仕様と別で販売されたり、なんてこともあったそうです。

つまりバエルはアニメ作画を再現するのであれば非常に大変なんです、はい。普通の人なら工作にかなりかかりますし」

夕雲「それにガンプラの対象年齢を下げるために採用されてる通称・バンダイエッジなんかも工作の手間に拍車をかけていますね。

コト○キヤみたいに刺さるくらいのエッジも問題はありますが、角ばってる筈のところに丸みがあるのも問題と言えるかと」

時雨「あと鉄血系はフレーム構造を採用している分、パーツの脱落率も高いのが難点の一つかな。これは外装パーツを接着すれば良いんだけど、それやっちゃうと整備でパーツ破損なんかあったら部位丸ごと交換になるし」

海風「成るほど…」

浜風「…なんですか、全員揃って。私のチョイスになにか問題でも!?」

春雨「いえ、寧ろ私達の選んだキットも基本全部曲者まみれなので。カバカーリーは合わせ目消しと武器の問題、クロスボーンは腰がすっぽ抜け易い、AGE-1は拡張性の問題…

まぁ取りあえず作っていきましょう。 時雨、工具ありますか?」

時雨「あるよ。あとプラ板にアクリル板、各種サンドペーパーと速乾パテ、あとレジン液も」

海風「うわ、ガチ道具…」

春雨「あとは適当なオプションパーツの類なんかも用意して… あ、海風さんはバエル作り始めちゃってください。

ただパーツは少しゲートを残した状態で切り出していただけると。 あとはこちらで加工しますから」

海風「は、はい!」

春雨「夕雲と浜風は飲み物とおやつをお願いします。大会参加者パスで」

夕雲「確かに適材適所ですが…」

浜風「まぁ実質タダですからね…」
563 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/23(土) 04:02:43.74 ID:mKDTy0hP0
2時間後…


春雨「ふぅ… これであとは塗料の乾燥を待つだけです」

海風「最早何をやってるかすら分からなかった…」

夕雲「後ハメ加工に作画に近付ける為の高速やすりがけ、合わせ目消しにスジ彫りその他… あとオプションパーツの加工までやってのけましたね」

時雨「前から春雨のガンプラ製作技術はヤバかったのに、瑞鳳に弟子入りして人間辞めたからね」

春雨「失敬な、技術が向上したと言って下さい」

浜風「見回りもしてきましたが現状特に問題はないようです」

時雨「まぁそこは大丈夫だろう。僕ら以外にも一部の世界大会参加選手が見回りにも加わってくれてるし。

だけどそれでも人は足りない。飛龍達が着くのは今日の夜だから」

夕雲「あの人達はまた一体何を…」



飛龍「あのさぁ… 儲けてるよね、私達」

蒼龍「売り上げは前年度の20%増し、利益は右肩上がりね」

飛龍「ちゃんと仕事はしてるよね、私達」

蒼龍「今月の売り上げはちゃんと先月より倍くらいになってる」

飛龍「で、なんでまた青春18きっぷで鈍行なのよ…!」

蒼龍「新幹線より安いし…」



時雨「大方いつも通り鈍行だろうさ」

海風「鈍行って…」

春雨「いつも通りですね、はい」

夕雲「さて… 一応もう一度見回りに行きますけど、どうします?」

時雨「それなら僕らが行くよ。二人はここでガンプラ見てて」

春雨「少しばかり運動がしたい気分ですし」

海風「では行ってきます」
564 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/25(月) 02:14:23.32 ID:T3c/b1iJ0
時雨「ねぇ、キミは良かったのかい?」

海風「良かった、とは?」

時雨「今の状況だよ。 こうして本当ならしなくて良い戦いに身を投じて、色んな悲劇をその目で見て…

キミには幾つもの選択肢があった。初めて昏睡病を目撃した時にガンプラを辞めていれば戦わずに済んだ、キャリアーに襲われて怪我をした時は遠くへ逃げて身を隠せた、戦わなければ虐殺だって見る事は無かった」

海風「…」

時雨「正直このキミが置かれている状況、僕が見ても酷いと思う。 キミだけじゃない、霞って娘もさ…

瑞鳳が関わらなければニュータイプに変革することも、襲われることも無かったのに」

春雨「時雨…」

時雨「僕は記憶が無いけど戦ってたらしくて多分死を見るのは慣れてると思う。春雨も世界中の悲惨なところを見て、僕程じゃないにせよそう言うものに耐性を持ってる。

でもキミは違う。 キミは戦う必要もないし『普通』の娘の筈だったんだ。だけどキミは戦いに巻き込まれ、身を投じてしまった…」

海風「…時間と言うものは不変です。『過去』があるから『今』があって、『今』があるからこそ『未来』がある。

振り返って後悔したところで『今』は絶対に変わらない。だからこそ海風は『未来』を創るために戦っているんです。それに…」

時雨「それに?」

海風「例え未来の分岐を知っていてもきっと海風はこの道を歩んできたと思います。そうじゃないと歩んできた道が嘘になってしまう、それが嫌だから。

あの時『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』を見つけて、先輩や霞達と一緒に戦ってきた時間を嘘にしたくないんです」

春雨「歩んだ時間を嘘にしたくない、ですか」

海風「寧ろ知っているとしたら過程を変えて『最良』へと変えてしまっているかもしれません。誰かが傷付くのを二度見るのは気持ちの良いものではありませんから」

時雨「キミは…」

海風「海風は決めています。 皆が心から笑えるバトルが出来るようになるまで、絶対に止まりません。

皆が『今の海風』を創ってくれたように、今度は皆の未来を海風が創る番です」

時雨「そう… ごめん、僕はキミを少し疑ってたようだ」

海風「え…?」

時雨「本当にキミに『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』、『ウイングガンダム・アズライト』を託しても良い人間なのかを図りかねていたんだ。

僕はあの機体のテストファイターで、改修前と改修後のテストを務めたのが僕だったんだよ」

海風「時雨さんが…?」

時雨「あれは一歩間違えればきっと酷いことを起こす機体になる、そんな機体を『普通の娘』に渡していいものかって。

それを考えたり決めるのは僕じゃ無いって分かってる。 だけど自分が携わった機体だしそこだけが心配だった」

春雨「で、時雨の判断は?」

時雨「キミに渡して、結果的に良かったと思ってる。 大事に使ってくれてるし使いこなせてる…

それにキミなら決して『間違えない』、話して知ってようやく理解できた。 きっとキミとあの機体の出会いは間違いなんかじゃない、正しく使ってくれる筈だと思う」

海風「時雨さん…」

時雨「見回りはこれで終わり、僕達も戻るとしよう」

春雨「そうですね。 そろそろバエルの方も塗装が乾いてる筈ですから丁度良いでしょう」
565 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/25(月) 03:58:24.09 ID:T3c/b1iJ0
春雨「見回り、終わりました」

浜風「了解です」

春雨「バエルの塗装は… よし、終わってますね。ムラもありませんし、これなら大丈夫かと」

海風「あとは組み上げるだけですね」

時雨「フィッティングは… しなくても大丈夫か。本人いるし」

夕雲「当人のデータより生の方が効率は良いですからね」

春雨「いえ、もうやりましたよ?」

海風・浜風・夕雲・時雨「…は?」

春雨「もう操縦の癖はこれまでのバトルで見てきました。作ってる最中にその程度は弄れます」

時雨「…ビルダーって怖いね」

夕雲「どんどん瑞鳳さんに影響されて人外に…」

「お、春雨じゃねぇか。久し振りだな!」

春雨「あ、フェリーニさん。お久し振りです、はい」

フェリーニ「それにいつもの面子で雁首揃えやがって。お前さんは、確か…」

海風「えっと、この方は?」

フェリーニ「俺はリカルド・フェリーニ。イタリア代表のガンプラファイターだ。

お前さんは瑞鳳の教え子の一人、確かウイングゼロ使いの海風って言ったか?」

海風「どうして海風を…」

フェリーニ「知ってるさ。全日本の決勝進出チームの中でも特にお前さんは有名だ」

海風「…!」ギロッ

浜風「な、何か…?」

海風「なんかまた余計なことしてませんか?」

浜風「い、いいえ!?」

フェリーニ「まぁ浜風のせい、でもあるがな。だがそれだけじゃない、お前さんの戦いに興味を抱く奴等も居るんだよ。

お前さんは現状、全日本の中でもトップの指揮能力を持ってる。それに指揮官でありながら切り込み役を担い、動きだって並の奴等以上に立ち回ってやがる」

海風「そこまで言われる程では…」

フェリーニ「第一、空中戦で戦闘機動中の可変機相手に剣を投げ付けて直撃させられる人間なんてそんな居ねぇよ。

確かに単体の技量じゃお前さんはジャスティスとZZのファイターには及んでない。だが指揮能力と戦闘センスは上、下手すりゃ接近戦の立ち回りは浜風以上に上手い」

海風「あ、ありがとうございます」

浜風(まぁ私が接近戦苦手なだけなんですけど)

フェリーニ「その機体は… お前さんのガンプラか?」

海風「はい。春雨さんに手伝って頂き作った…」



海風の製作した機体
・ベース機:『ガンダム・バエル』
・改造内容 直下
・機体名 下3

566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 07:02:45.47 ID:Jf7q+DUn0
両腕にシュヴァルべグレイズのワイヤーアンカー、脚にヴィダールのハンターエッジを追加
バックパックは稼働の邪魔にならないようにプロペラントを追加
それ以外の全身にも機動力強化のためにサブスラスターを増設
それ以外は原型機そのままだが、全体的にアニメ作画寄りとなっている
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 09:10:59.15 ID:b8UtWMH/0
踏み台
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 10:25:53.28 ID:8k4A8mMjO
ガンダム・バエルセレスタイト
可能なら武器にオプションセット09のライフル2丁追加で
569 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/26(火) 03:47:20.46 ID:kViKAEbw0
海風「『ガンダム・バエルセレスタイト』、この機体の名前です」



新機体?(海風)

ガンダム・バエルセレスタイト
武装
・電磁砲×2
・バエル・ソード×2
・ワイヤークロー×2
・足部ハンターエッジ×2
・120mmロングレンジライフル×2

概要
海風が春雨の助力(と言っても海風はパーツの切り出しと塗料の選択、仮組くらいしかしてない)を得て製作した機体。以前適当に作ったカプルより真面目に作られている。
こちらは『藍銅鉱』ではなく『天青石』である『セレスタイト』を冠する機体であり、『宝石』の名を与えられたことで海風の『二番目』の機体として認められた。
改造点は脚部に『ガンダム・ヴィダール』のハンターエッジを移植、そしてプロペラントタンクを増設し全身にサブスラスターを増設していること。
武器は原型機同様のものと『シュヴァルベグレイズ』のアンカークローを両腕に装着、オプションセット09に入っているライフル二丁を装備。
塗装は青みを帯びた白。バエルソードは金色からメタリックブルーに塗り替えられている。
また全身が設定画や素よりアニメ作中に近くなっており、かなりバリっているのが特徴。
完成度こそ高いが海風は『バスターソードがない』と不満げ。因みに無いのは丁度良いデザインのものと、一からスクラッチする時間も無かったとの理由。



夕雲「セレスタイト、天青石ですね」

春雨「だから白をベースにした塗装に…」

フェリーニ「バエルベースか。中々センスは良いじゃねぇか」

海風「本当ならバスターソードが欲しかったところですが…」

浜風「なんでバスターソードを…」

海風「だって振るうのにパワーがあれば余計な剣の技術も必要なくて質量で叩き割れるんですよ?それに慣れ親しんだ愛武器ですし」

時雨「やっぱりハードポイントに装備しておく初期武装はバスターソードじゃない方が良いって言ったじゃないか」

春雨「ウイングの翼っぽくて格好良いと思ったんですが…」

海風「では早速テストをしてみるとしましょう」
570 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/27(水) 02:44:16.28 ID:qEYCJfXF0
海風「機体の動作良好、武装も完璧… 良い仕上がりです」

浜風「流石に自分で製作しただけあって馴染みも早い。もうここまで使いこなせるとは」

夕雲「これなら微調整も必要ないでしょう」

春雨「しかし普段使う機体と立ち回りが全然違う筈ですけどそれに対応するとは…」

時雨「確か前に『グレイズリッター』の使用経験がある、って言ってたからその影響もあるんだろうね」

浜風(しかし戦闘スキルが以前より格段に上がってる… 射撃も格闘も街中での戦いよりも上手くなった…?)

海風(別荘周辺での戦い以来、多少腕が上がったのが自分でも分かる… 理由は分からないけど、覚悟が決まったから…?)

フェリーニ「それだけの腕なら、アレも狙えるな」

海風「アレ?」

フェリーニ「何だ、お前さんアレの出場のために機体作ってたんじゃ無いのか」


『乱入ありのフリーバトル大会! チャレンジャーが誰も居なくなればなんと、景品としてガンプラ1年分が貰えます!』


夕雲「毎年恒例のやつですね」

時雨「ガンプラ365個も要らないんだけど… しかも全部HGだし」

春雨「MGとかPGを出してくれれば参加する気にもなるのですが、はい」

浜風「それに貰ったところで置き場にも困るし…」

海風「HGの箱だけでも結構かさばるのが…」

フェリーニ「折角だから参加してみたらどうだ? お前達の腕試しにもなるだろうよ」

夕雲「チャンプの夕雲達が参加しても顰蹙を買うだけですよ。ご自分で参加なさっては?」

フェリーニ「俺は一度アレで優勝してるから出禁だ」

時雨「つまり此処に居る中でこの娘しか参加出来るファイターが居ない訳だ」

海風「確かに戦闘経験を積めるという意味では価値はありますが… 瑞鳳さんに野良バトルは厳禁されているもので」

フェリーニ「大丈夫だろ。こんな所まで薬やってるヤツは居ねぇだろうよ」

海風「大会中も居たのに?」

浜風「最悪我々でフォロー出来ますから」

海風「そうやって面白がって出場させようとしないでください」


『な、なんと!全日本選手権・中高生の部決勝進出チームのファイター海風選手がこのチャレンジに参戦だ!』


海風「どうしていつもこうなるんですか…!」

春雨「流石に面白がって勝手に参加させるのはどうかと思いますよ、はい」

夕雲「バトルもせずに燻っているのは勿体無いでしょう?」

海風「これだから馬鹿姉貴が関わる人はロクでも無い…!」

浜風「何で私が流れ弾を食らう必要が!?」

時雨「と言うよりキミ達エンガノ生活勢がロクでも無いんだよ」

海風「理由があるとは言え人を巻き添えにして撃ったり天津風さんを容赦なくフルボッコにした人が言う台詞じゃありませんよ!」

時雨「そう言えば僕そんな事してたね」

海風「後で瑞鳳さんに何か言われたら全員生贄に差し出してやる…!」
571 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/29(金) 03:08:08.91 ID:LCnx5wdy0
海風「これで、14!」


白く塗装されたアッシマーの頭部を右脚のハンター・エッジで蹴り壊しその回転の勢いを乗せて左腕のバエル・ソードで胴体を両断する。

呼吸を整え次の相手に備える海風。既に多数の敵を倒してきた疲労はあるがまだ戦える、と海風は自分の状況を判断した。



フェリーニ「やるねぇ… 出れたなら戦ってみたかったんだがなぁ…」

時雨「能力は間違いなく前より上がってるね。 正面きっての戦闘なら浜風に並べるんじゃないかな」

浜風「寧ろ私の近接戦が不得手な分海風の方が優位かもしれません。それに戦闘経験を重ねて指揮能力もこちらに並びつつある…」

夕雲「ただ間合いさえ詰めさせなければ浜風さんの優位は覆りません」

春雨「問題は『予測』の力… どんな攻撃もあの娘は容易に予測して躱せてしまいます、はい」

フェリーニ「予測でも限界はあるだろ」

浜風「それが海風の場合、無いんです。どんな戦況でも動作でも瞬時に予測して最適解通りに動ける、それが海風がチームでも神通さんと霞さんと言うエース級に並べる理由の一つでもある…

予測自体は誰でも出来ること、ですが海風の場合にはそれが並のコンピュータをも凌いでいるんで限りなく事象に近い予測を打ち立てることが出来るんです」

時雨「簡単に言えば人の思い通りに操れるゼロシステムが頭の中にある状態と同じなんだよ、彼女の場合」

フェリーニ「すげぇな、それは…」

春雨「疑わしいですが、本当のことなんです。はい」

夕雲「それに精神力だけで言えば夕雲達すら軽く凌げますから…」



海風「はぁ… 一体あと何人来るのやら…」

『海風選手、順当に14人を軽く撃破! 次の挑戦者が中々現れません! これは彼女の優勝か!?』

海風「むしろそっちの方が良いんですけど。いい加減疲れました」

『そうは言わずに… おっと、15人目が来たぞ! これで勝ち抜けば、優勝だぞ!』

海風「ラストバトル… 景品はちょっと要りませんが、勝たせていただきます…!」



対戦相手 直下
1.ミスター・ブシドー
2.フリオ・レナート
3.その他(名前も)
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 04:47:15.90 ID:0GcU1OvkO
2
573 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/06/30(土) 06:42:35.48 ID:2wPwbqi/0
「ケッ… どんなヤツが戦ってるのかと思えば、まさかあのクソガキの妹とはな…!」

海風「あの機体、どこかで…?」

海風(ジェガンの改修機、それにミリタリー色が強い… 確か世界大会出場ファイターにそんなタイプのファイターが居た筈ですが…)


夕雲「あの機体… 『ゴーストジェガンF』…!」

時雨「レナート兄弟の…」

浜風「フリオ・レナート、それに兄のマリオ・レナートもサブで…!」

春雨「流石に世界選手権のファイター相手は分が…」

フェリーニ「アイツ、子供相手に何ムキになってやがる…!」


マリオ『フリオ、所詮は子供だ。叩き潰せ』

フリオ「了解だぜ兄貴!」

『おーっと! ここで登場したのはアルゼンチン代表・レナート兄弟! 浜風選手に煮え湯を幾度と無く飲まされた恨みを晴らすつもりだろうか!?』

海風「うわ、ちいさ…」

フリオ「うるせぇ! テメェみてぇなガキに、本物のバトルってやつを教えてやるよ!」

海風(行動予測開始。敵の武装から機体特性を狙撃型と断定、ただし過去データから何らかの『仕込み』を行っている可能性を考慮。

フィールドは宇宙、その場合のこちらの最適行動を推定、この場合は… 隙を与える暇なく、近接戦を仕掛ける事!)

海風「そのガキに倒される屈辱、味わって貰います!」


ライフルを投棄し両手でバエル・ソードを抜き放ちつつ加速し距離を詰め、狙撃による迎撃も海風は瞬時に射線を予測し掻い潜る。

ここまでが海風が導き出した『勝利への最低限の道筋』、まず自分が有利なフィールドに持ち込むことが最低条件なのだ。


フリオ「コイツ、俺の狙撃を…!」

海風「間合いは詰めた、あとは!」


翼に内蔵されたレールガンを連射しジェガンの逃げ道を塞ぐ海風、そしてソードの間合いに入ると海風は右腕のソードで斬撃を放ち狙撃用のライフルを破壊する。

フリオも左腕でバックパックからヒート・ナイフを抜きバエルに突き立てようとするがバエルの左脚部に装備されたハンターエッジで防ぎ、ナイフを蹴り飛ばす。


フェリーニ「おぉ、アイツもう二つも武器を封じやがった!」

時雨「師匠、と言うか先生があの瑞鳳だからね。近接戦は得意分野なんだろうさ」

春雨「予測も使った状態でイーブンに持ち込んでいますが…」

夕雲「あの機体、ゴーストジェガンFには…」

浜風「…どうやらフォローに入る必要性があるかもしれません」
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