エンド・オブ・オオアライのようです

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1 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/12/28(木) 23:21:33.56 ID:Pmfv7QUi0
前作
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512862935/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514470893
2 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:23:25.69 ID:Pmfv7QUi0



AM 4:20

《第8駐在所より艦橋保安室、応答願う》

《此方艦橋保安室、どうぞ》

《船舶科生徒より通報あり、緊急で設備点検の依頼が入った。整備班から出せる人員はあるか?》

《根賀班が夜勤で詰めてるからすぐにも回せるが………この時間に生徒から通報?》

《“ヨハネスブルク”からな。何でも、金属が擦れるような異音と人の………それも赤ん坊の笑い声のようなものが断続的に聞こえるらしい》

《金属音はともかく赤ん坊?幽霊にしちゃ季節外れだな、いたずらじゃないのか?》

《あくまで此方が聞いた限りだが、通報した生徒の声は真剣に不気味がってはいた。いたずらだとは思えない。

ヨハネスブルクの生徒はそもそも甲板上の人間と交流すること自体嫌がってるだろ》

《………確かにな。

それに、艦底で異音というのが機器の異常からくるものなら一大事だ。根賀班を急行させる》

《了解。通報があったのは第6層W-7区になる》

《確認した。通信を終了する》
3 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:24:30.85 ID:Pmfv7QUi0
AM 4:45

《第10駐在所より艦橋保安室、応答願う》

《此方艦橋保安室、どうぞ》

《当所駐在員の萩本巡査が警邏終了時刻になっても戻らない。其方に何か連絡は着ていないか?どうぞ》

《今交信記録を確認したが、連絡はきていない》

《確認を感謝する。………どこほっつき歩いてんだあの野郎》

《保安室より10駐、もしトラブルに巻き込まれている可能性があるなら応援を出すか?》

《………いや、必要ない。警邏先は第2商業区だ、“ヨハネスブルク”ならいざ知らず夜のあそこで何か起こるとは思えん》

《それもそうか》

《萩本はまだこの学園艦に赴任して間もないからな、大方道に迷ってるんだろう。

地理を覚えて貰うための警邏だったんだが、それで迷われたら世話無いな》
4 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:25:32.25 ID:Pmfv7QUi0
AM 5:18

《16駐の小沼巡査より艦橋保安室、聞こえますか?》

《此方艦橋保安室、どうぞ》

《居住区警邏中に、路上に倒れている女性を保護。身につけているものから水産科の生徒と思われ───きゃっ!?》

《小沼巡査、何かあったのか?》

《す、すみません!垣田さん、この娘抑えておいて下さい………っヶほ、申し訳ありません》

《保安室より小沼巡査、何が起きた?》

《保護した生徒が意識を取り戻したのですが、私の首を突然絞めようとして………今同行している垣田巡査が取り押さえました。

その、酷く身体が冷たかったのでもしかしたら何か病気のせいで倒れて錯乱しているのかも知れません》

《………人一人が錯乱するほどの病状となると危険なウィルスや伝染病の可能性もあり得る。

小沼巡査、垣田巡査と共にその生徒を最寄りの医療院まで移送し二人もそこで検査を受けるように。16駐には此方から連絡しておく》

《了解しました》
5 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:26:41.38 ID:Pmfv7QUi0
AM 6:30

《保安室より8駐、応答せよ》

《此方第8駐在所、どうぞ》

《整備科より、根賀班から点検作業開始の報告後定時連絡が無いと申告があった。其方に何か連絡はきていないか?》

《8駐より保安室、現状連絡はない。作業が難航しているのでは?》

《だとしても定時連絡もないのはおかしい。8駐、場合によっては捜索依頼を出すかも知れない、待機しておいてくれ》

《了解。………そうだ、第5駐在所の方で何かあったのか?》

《そのような報告は受けていない。何故だ?》

《あぁいや、すこし用事があって無線で呼びかけたんだが応答がなくてな。急ぎの用事じゃないし、後で改めて声をかけてみるよ》

《了解した。通信を終了する》
6 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:29:16.03 ID:Pmfv7QUi0
AM 8:00

《【Good Morning Japan】の時間がやって参りました、皆さんおはようございます!

まずは、今日のお天気ですが───》

《保安室より第19駐在所、第19駐在所、すまないが無線の調子が悪いようだ、もう少し大きな声で頼む》

「それじゃ、行ってきまーす!!」

「ちょっと優花里!お弁当忘れてるわよ!!」

《第2駐在所より医療院、居住区で急病人を1名保護したので其方に移送する。年齢は60代前半の男性、病状は体温の低下───》

「今日、仲子来てないの?」

「なんか具合悪そうでさぁ、朝から水産科寮の医務室で寝てるよ」

《為替と株の値動きです。ヨーロッパの危機的な状況にユーロの暴落が止まらない中、ドル・円はそれぞれ安定した値動きを見せ────》

《東欧連合軍司令部は、昨夜行われた深海棲艦への奇襲攻撃は成功したと発表。この戦闘の結果凡そ20kmに渡って戦線を押し上げた模様です》

「ええ、申し訳ありません。本日は体調が悪いため欠勤とさせていただければ………あれ?もしもし?部長、聞こえますか?」

《【艦娘自己自衛権】法案の設立に対する一部市民団体の抗議行動は激しさを増しており、国会だけでなく警察署前や鎮守府前でデモを行う人々も増えている現状が───》
7 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:30:13.32 ID:Pmfv7QUi0
AM 9:23
「んじゃ、次のページを………磯部さん、読んでくれおー」

「んえっ!?ね、寝てないです!!?」

「ぉK、寝てたんだな」

《此方第3駐在所、第1商業区で観光客同士の諍いが発生したと通報あり。これより確保に向かう》

《根賀班からの連絡はまだないのか?作業開始からもう四時間は経ってるんだぞ?》

《プロリーグ発足に伴う戦車道チームの選考は最終段階に入り、東京ウォーリアズ、茨城ボコクマーズなど候補30チームから12チームに絞られる見込みで───》

「ア゛ー……マジ社会人辛い。アンコウチーム見られると思ったのに………」

「美瀬君、口を動かす前に手を動かすべきだと思うがね私は」

《続いては北朝鮮の核実験問題に関するニュースです。先日核開発再開宣言とも取れる発表をした北朝鮮に対して日本政府とアメリカ合衆国政府、そしてロシア政府は圧力を強めていく方向性で意見を一致させています。しかしながらこれについて北朝鮮側の反発は極めて強いものになると予想され────》
8 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:31:16.46 ID:Pmfv7QUi0
AM 10:28
「第1商業区より通報あり。飲食店の従業員が酔った客に“噛まれた”らしい。取り押さえたので連行して欲しいとのことだ」

「か、噛まれた……ですか?」

「飲んだくれは何をしでかすか解らんな全く。二田巡査、すまんが学区警備の方には一人で向かってくれ。私は商業区の騒ぎを収めて後から行く」

「了解ですニダ!」

《此方は茨城県警察署前の様子です!えー、先日鎮守府への抗議行動中に逮捕されたデモメンバーの解放を求めているようで、数百人がシュプレヒコールを上げています!》

「………何よこの白い納豆って。安いし美味しいじゃない。司令官へのお土産はこれ一袋で十分ね」

《水産科寮医務室より医療院、生徒複数人の容態が悪化していて此方では対処しきれません!収容をお願いします!》

「No, No, No………Help, Help!!」

「あの外人さんどうしたんだろう、もの凄い形相で駆けていったけど……」

「えぇ、まるで出満部長が腹痛を我慢しているときのような酷い顔つきでした」

「失礼だな君……」
9 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:32:50.32 ID:Pmfv7QUi0
AM 11:48
《ムルマンスク襲撃事件から二週間が経ち、クレムリンはヨーロッパ戦線への本格的な介入を示唆する声明を発表。この件についてロシア連邦国内では賛否がくっきりと分かれている状況で───》

「アレ?ボンドと両面テープが切れてるだーよ。予備もない、困ったねー」

「あっ、じゃあ僕がお昼休みに買ってきますお白根先生」

「本当かい?助かるんだーよ」

《見てくださいこの新鮮なサンマ!実はこれ、艦娘の皆さんとヴァイキング水産高校が共同で漁を───》

《───wWwが──■■をけて──死──ww──》

《保安室より8駐、電波状況が悪すぎるぞ。聞こえない、繰り返せ》

「今日、普通科の子たちもお休み多いですね……」

「風邪でも流行ってるのかな?華も気をつけなよ、生徒会長ってなんだかんだ忙しいんだしさ」

《此方第17駐在所、駐在員が一人急病。医療院に向かわせるため1名欠員となる》

《保安室より17駐、確認した。待機人員から代替を1名送る》
10 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:33:42.98 ID:Pmfv7QUi0
PM 12:17
「ねぇ、そこの貴方?」

「おっおー、僕ですか─────お?」

「そうよ。他に、誰かいるかしら?」

《だから何度も言ってるだろう、突然女に噛みつかれたんだよ!しかも他にも何人も俺に飛びかかってきたんだ!警察は何をやってるんだよ!》

「ぶーんせ・ん・せぇ♪」

「これは拡散ですねぇ〜〜〜♪」

「」

《保安室より各駐在所に通達。どうも今日は観光客や住人同士のトラブルが頻発している。警邏を強化、諍いを発見したら治安維持の観点から積極的に介入するよう心がけてくれ》
11 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:37:41.44 ID:Pmfv7QUi0
PM 12:31
《電撃的に東欧連合軍への支援を表明したイギリスのショボン=ウィリアムズ首相は、本日レイクンヒース空軍基地を視察しました。

リスボン沖事変以来独自路線を歩んできたイギリスの孤立主義的な姿勢を覆す動きに、専門家の間では様々な意見が出ており───》

「諜報活動ご苦労様ですお、アリサさん」

「………ゲ」

《全国戦車道大会での優勝効果から、大洗町や大洗女子学園商業区への観光客は例年の2倍を超え───》

「いってぇ、いってぇ!?」

「このアマんなもん振り回すんじゃねーよ!」

《第4商業区にて新たに4件通報あり。付近駐在員は至急現場にむかえ》

《此方第2商業区、10人以上の集団が騒いでいる!第22駐在所で対応しているが人数が足りない、付近で手伝える奴はいるか?!》

《居住区の方でも幾つか通報がありました。第一、第二、第六で───》












《8駐より保安室、8駐より保安室!……何で繋がらないんだ畜生!》

《発砲を許可、全責任は俺が取る!!“彼女”らを甲板上に出すな、ここで食い止めろ!!》
12 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:38:20.93 ID:Pmfv7QUi0










PM 12:43
「…………ねぇ、なんか向こうで煙上がってない?」

「えー?梓の見間違いじゃない?学園艦内で火事とか起きたら放送出るでしょ」

「そう、だね……見間違いだよね、うん」
13 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:40:57.64 ID:Pmfv7QUi0





PM 1:31

《駐在所の半分以上から応答がない、何が起きている!》   《学園校舎とも連絡が付きません!携帯も無線も有線電話もダメです!》
「今なんか揺れなかった?」
「怖い怖い怖い」    「えっ、何?地震?海の上で?」
《保安室、保安室、応答を願う!第2商業区にて暴動が発生、被害拡大中!》 「逃げろ、殺される殺される!!」

「やだぁ、噛まないで、噛まないでぇ………」「来た来た来た逃げろ逃げろ!」
  《発砲許可も増援も無いのにどうやって食い止めればいいんだ!?》
  「なんだよあいつらヤバいって!!」
《未確認ですが、大洗女子学園甲板上で火災を確認したとの通報が複数警察に届いている模様です》
   「おい、なんかあいつらの頭から飛び出してきたぞ!」
「化け物いる化け物いる!向こうダメだ、逃げろ!」
《商業区の封鎖が困難!暴徒の人数が増える一方です!》

















『─────ァアアアア……………』






.
14 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:41:32.18 ID:Pmfv7QUi0
.





     PM 1:51





.
15 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:42:14.71 ID:Pmfv7QUi0
「……ああ、そっちには今叢雲が……警備府があったろ。そこの戦力だけじゃ対処できねえのか?

いや、動ける。大丈夫だ。直ぐに急行する。わかった、じゃあな」

「叢雲さんがどうかしたんですか?」

「……」

「司令官……司令官!!」

「青葉、今から言う連中に緊急招集をかけろ」

「先に事情を説明してよ。何を焦っているのさ?」

「学園艦だ……」

「え、待ってよ、まさか……」


「連中に目を付けられた。


大洗が……戦場になるぞ」
16 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2017/12/28(木) 23:42:48.22 ID:Pmfv7QUi0




〜エンド・オブ・オオアライのようです〜



.
17 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/28(木) 23:44:15.05 ID:Pmfv7QUi0
本日分投下完了です。明日の同じくらいの時間帯で続き投下します。

マッ鎮コラボ第三段、ご静聴いただき、またお楽しみいただけるなら望外の喜びです
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 00:25:27.98 ID:kuVJJxxAo
乙であります!
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 02:21:29.98 ID:RBG/zpTA0
超待ってました!
てかバイオハザードヤバすぎる…
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 18:02:15.69 ID:Wes8Ik2Z0
おっ乙
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 01:09:34.16 ID:KMd4aD2h0
つまんね
22 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/30(土) 17:23:41.25 ID:/c6p2HyV0
仕事納め終わってるのに風邪っぴきワロス

申し訳ありません、大晦日より更新再開します
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 18:57:15.52 ID:pwUlzFCA0
あららドンマイです…体調には気をつけて
24 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:22:45.42 ID:5+6NfdaHO






ふと、幼馴染みとの思い出が脳裏を過ぎる。

女の子でありながら大の怪獣好きというシュールな趣味を持っていたその幼馴染みに、視聴を半ば強要された某怪獣王映画のビデオシリーズ。ジャンプ漫画よりも司馬遼太郎作の【坂の上の雲】が好きといういけ好かないガキだった僕でも、日本映画界が世界に誇る特撮シリーズの出来の良さには目を奪われたのをよく覚えている。




『─────アァアアアアアアアアアアッ!!!!』


そして“それ”は、まさに映画の怪獣のように僕たちの前に現れた。
25 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2017/12/31(日) 23:52:56.59 ID:5+6NfdaHO
厚さ数メートルにも及ぶ、鋼鉄の甲板と、その上に敷かれたコンクリートの道路が捲れ上がる。居住区に立ち並ぶ家々が、土煙と轟音を伴って崩れ落ちていく。錆びた鉄の板を満身の力を込めて摺り合わせているような、おぞましい叫び声が防音ガラスを突き抜けて耳朶を震わす。

ヌラヌラとした光沢を放っていることが遠目にも解る青白い胴は、まるで樹齢数百年の大木のように太くたくましい。頭部は対比するかの如く深い黒色をきていて、位置的に眼と思われる亀裂の奥からは金色の光が覗く。

全長は大凡20Mといったところだろうか。怪獣王には初代にさえ遠く及ばないが、あまり高い建造物が多くない大洗女子学園の甲板上にあってそれは十分に異質な存在感を放っていた。

そして────何より異質なのは、左目に当たる箇所から生えた“砲門”と、頭頂に備わる4門の“魚雷発射管”だ。

(;゚ω゚)「……………」

「あれが、深海棲艦………なのか?」

『───キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

冷泉さんのか細い呟きに応えるように、“それ”はもう一度あの鳴き声を上げる。先程よりも僅かに音程が高く長い咆哮は、まるで歓喜の雄叫びのようにも感じられた。

《たった今入ったニュースです。大洗女子学園の甲板上に、深海棲艦と思われる全長20M程の巨大な生命体g─────》

「きゃあっ!?」

テレビから流れていたアナウンサーの声が不自然に途切れ、画面がブラックアウトする。直後、商業区と思われる方角で灰色の煙が爆発音とオレンジ色の炎を伴って吹き出す。

ここでようやく、指一本すら動かすことが出来なかった僕は恐怖による金縛りから解放された。
26 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/01(月) 00:58:33.76 ID:jDuEGwJ2O
(;゚ω゚)「外に出るんだ!早く!!」

「玄関、玄関に向かって!!すぐに河嶋達が放送を流すから外での避難先はソレに従うよ!」

「一つの出口に集まらないで!後ろ半分の席の人達は後ろから、前半分の席の人達は前から出て下さい!!」

僕の叫び声に、角谷さんと西住さんが的確な指示で続く。他の面々も弾かれたように動き出し、西住さんの指示通りに混乱を避けながら教室の外へと走り出て行く。

(;^ω^)「そうだ、アリサさん───」

簀巻きにされている彼女の拘束を解こうと振り向いた瞬間、斬鉄剣が抜き打たれた時のような金属音が鳴る。そこに居たのは生け花剪定用のハサミを振りきった体勢の五十鈴さんと、両断されたロープを見て呆然とした表情のアリサさん。

「こ、これがジャパニーズ・イアイ………」

(;^ω^)「多分違うかな!」

「先生、アリサさんの拘束は解きました!行きましょう!」

(;^ω^)「何で生け花用のハサミ持ち歩いて……ええいツッコミは後だ!!」

五十鈴さんを先に行かせ、アリサさんを助け起こして駆け出す。入り口で待っていた角谷さんが教室内を一瞥し、残っている者がいないことを確認して僕等のしんがりを勤める形で続く。

(;^ω^)「っおお!?」

「っととと!?」

「きゃああ?!」

ぐらり。

直後に足下を襲う、大きな揺れ。まるで大波を打ち付けられた船のようだが、僕等が乗っているのは全長7.6kmの【学園艦】だ。神話に出てくるクラスの大波でもなければここまで揺れるはずがないし、実際この艦内ではこれほどの揺れは経験したことがない。

………いや、これは正確な言い方じゃない。

“ついさっき”までは、一度も経験したことがなかったといった方が正しいか。

『『ギィアアアアアアアアアアアアッ!!!!』』

「ひぁっ!?」

二つに増えた咆哮。耳にした澤さんの肩がびくりと大きく震える。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 18:47:45.30 ID:0HehjtpE0
投下乙
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 19:58:22.05 ID:irmZtu4I0
は?つまんねーな
29 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/05(金) 23:11:40.35 ID:dCQGlBda0
間髪を入れず、再び響く爆発音。廊下から窓の外を見れば、商業区の方でもう一つ大きな火柱が上がっていた。

西住さんたちが操る戦車のものに酷似した───だけど、より大きく重い「砲声」を直前に挟んだ上で。

「………何今の。ひ、火ィ噴いたよアイツ!!」

「向こうの方燃えてない?」

「じゃああれ……本当に深海棲艦なの……?」

「ねぇ、こっち見たよ!」

「逃げて、早く逃げてぇ!!!」

他の教室からぽつりぽつりと廊下に漏れる、授業中だった他の生徒達のざわめき。それらは瞬く間に校舎全体に波及し、やがて爆発的な悲鳴へと変わっていった。

「おわっ!?」

「Shit!!」

「っ、皆さん落ち着いて下さい!すぐに広報から指示があるので一度それを聞いてから避難を!」

(;^ω^)「闇雲に逃げるなお!かえって避難が遅くなる!」

この4階にも、他の教室から生徒達が溢れ出す。僕や生徒会長である五十鈴さんが呼びかけても、狂乱状態の生徒達は聞く耳を持たず僕たち戦車道履修者一行を飲み込みながら我先にと階段や非常口へ殺到する。

《放送室、生徒会広報より全生徒へ!さっきのJ-ALERTは訓練ではありません、速やかに指定避難場所まで移動して下さい!

避難経路は風紀委員や先生方の誘導に従って!冷静に対応するようにして!》

「早く行って早く!」

「ちょっ、押さないでよ!」

「落ち着いて!まずは外に、今の生徒会からの放送に従って避難を!」

「校舎の中に止まるな!正面玄関からの避難者と非常口からの避難者に別れろ、一つの入り口から出ようとすると混雑するぞ!!」

疾うの昔に止まっていたJ-ALERTに変わって武部さんの声が聞こえても、納まる気配は無い。他の教員や風紀委員も懸命に誘導しようとしているが、狂乱する群衆の濁流に組織的な活動を殆ど出来ないまま僕等同様押し流されていく。
30 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/05(金) 23:25:36.65 ID:dCQGlBda0
「痛っ、痛い!?やだ、押さないでよぉ!!」

「……“人海”とはよく言ったものだ、溺れそうになる……!」

「麻子さん、優花里さん、大丈夫ですか!?」

「ご心配なく、私達はなんとか!」

「こ、コミケ並みの人込みは筋力つけてもつらい……」

「バレー部、アリクイさんチームとウサギさんチームを守れ!!根性だ!!」

「「「了解!!」」」

西住さんたち戦車道履修組は、やはりこの中では一番組織的に「避難」ができている。だが、いかんせん校舎内が丸ごと狂乱状態という現状に翻弄されていて、ともすればバラバラになりかねない隊列をかろうじて維持している。

(;^ω^)「指定避難場所は第2グラウンドだお!皆、そっちに向かえお!!」

「……ダメだねブーン先生、これ、私ら意外で話聞ける余裕持ってる生徒いないや」

「桃ちゃん、放送はいいから早く武部さん連れて下に───もう、なんで通じてくれないの………!」

いつもの飄々とした様子は吹き飛び、険しい声色で呟く角谷さん。その横では、スマートフォンを操作していた小山さんが真っ青な表情で肩を落とす。

二度目の廃校宣告が突きつけられた時ですら、二人がこんな表情を見せたことはなかった。そしてそれは、きっと今の僕にも共通する表情の筈だ。

(;^ω^)(………学園艦に深海棲艦が現れたってのもマズいけど、それ以上に不安なのが「J-ALERT」は“別の個体”の出現に対するものだって事だお)

届かないと知りながらそれでも喉をからして叫びつつ、僕の脳裏に過ぎるのはJ-ALERT直後に流れていたニュース速報。

フィリピン海に現れたという新型の深海棲艦。航空戦力を保持するとはいえ、日本本州到達まであとほぼ一日分の猶予があるにも関わらず出された大々的な緊急避難勧告。それは当然、学園艦に対して極めて深刻な脅威になる。

混乱の渦中にある大洗女子学園は、尚更に。

(;^ω^)(蝶野教官が、それが無理でもせめて交代人員が居てくれれば……っ!)

無い物ねだりが無駄と解っていても、そう思わずにはいられない。

粗野な言動ながら自衛官として確かな規律と腕を持っていた蝶野一等陸尉は、インド派兵こそ部隊再編の流れで先送りとなったが原隊復帰に伴って退艦済。代わりの教官となる二等陸尉は、明後日の赴任予定はずだった。

現役の自衛官による避難誘導があれば、どれほど混乱を避けることが出来ただろうか。

教師として生徒を守らなければいけない立場にありながら、混乱を一向に収拾できず他人に頼るしかない自分の無力さがひどくもどかしい。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 23:45:38.19 ID:lpmGg2Ck0
つまんないし読みにくい出直して
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/05(金) 23:55:36.08 ID:dCQGlBda0
《緊急車両が通ります!道を空けて、道を空けて下さい!!》

幾らかの時間を経て、僕の身体は校舎の正面玄関から西住さんたちや他の多くの生徒・教員と共に外へ転がり出る。同時に、正門から赤ランプを回転させけたたましくサイレンをかき鳴らしつつ数台の車両が飛び込んできた。

《一号車、二号車、もう少し車間詰めろ!しっかり入り口を塞げ!》

《車両はまだ来ます、進路に入らないで!》

学園艦の甲板上では、生徒・居住者の安全という観点から自動車の所持には厳しい制限が設けられている。陸付け時の遠出用に民間車両も詰まれてはいるが、大半は第三層の立体駐車場区画に収納されていて“上”を走ることがない。

ただし、それでも7.6kmという大きさを考慮すると徒歩のみでの移動は様々な事態に対応できなくなるため、例えば商業区を走るバスなど一部に例外が存在する。

今僕たちの目の前で次々と停車していくそれらも、“例外”の一角を担っている。

公共に属し、緊急時の機動力を必要とする組織。

《総員降車、総員降車!!展開、射線形成急げ!!》

「生徒の皆さんは早く指定避難場所に向かって!大丈夫、すぐに県警と自衛隊から救助が来ます!」

警察庁管轄下にあり、学園艦において唯一乗船が許可されている武装集団。

「我々保安隊も現在艦内各所で事態の収拾に動いています、どうか安心してください!!」

学園艦保安隊の、装甲車だ。
33 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 00:25:38.82 ID:Gd5bPsEi0
ローカルバスほどもある大きな車体に赤い回転灯を光らせた装甲車が、合計6台正門をくぐって停車する。

学園の外に側面を向けてさながらバリケードのような陣形を組んだそれらから降りてきたのは、紺色の制服に身を包んだ70人前後の集団。全員が防弾仕様のヘルメットを被り、サブマシンガン───H&K MP5を構えている。

「………マジかよ」

彼らが展開を完了すると、様子を見ていた同僚の教員の一人が目を丸くした。

「艦橋保安室の直属部隊動かすって、相当ヤバいじゃねーか……」

各学園艦で編成されている保安隊は、大まかに2種類の保安官で構成されている。

一つは、陸でいうところの交番に相当する“駐在所”に赴任した保安官。これは働き場が学園艦の上というだけで内容も交番勤務とほぼ変わらず、装備もニューナンブM60と警棒という一般的なものだ。

もう一つが、司令部に当たる“艦橋保安室”直下の保安官部隊。此方は主に学園艦上でテロや重大犯罪が発生した場合の備えという立ち位置のため、国際条約で許されるギリギリのラインで────具体的にいえば、銃器対策部隊とほぼ同様の装備が支給される。

無論、このため直属部隊の運用には非常に多くの制限があるのだが、これほどの緊急事態となれば動くのは当然といえば当然だ。寧ろ、指揮系統も混乱しているであろうこの状況下でこれだけ素早く展開に踏み切れた艦橋保安室の判断はかなり迅速な方だと思う。

『ォオオアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

………ただし、今回の場合あまりにも相手が悪い。

『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』

声高に吠える2体の“生ける軍艦”の20m近い巨体に、たかが70挺のH&K MP5の火線が通用するとはとても思えない。
34 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 01:00:29.26 ID:Gd5bPsEi0
生徒達の多くも、やはり保安隊と深海棲艦の間に横たわる力の差は解っているのだろう。幾らか恐慌は治まったように見えるが、それでも一刻も早くこの場から離れようと大半の生徒は第2グラウンドの方へ駆けていく。

だが、その行動を“全員”が取ったわけではなかった。

「………!お父さん、お母さんが!!」

「優花里さんダメ!!」

「こっちは通れない、戻りなさい!死にたいのか!」

「だって、だって妹が居住区に!」

「お願いです、おばあちゃんの無事を確認させて下さい!」

「通して、通してよぉ!ママ、ママぁ!!」

真っ青になって学園の外に向かって走り出した秋山さんを、背後から西住さんが抱き留める。他のあちこちでも、警官や教員に制止されながらも正門から出ようとする生徒が何人も居た。

深海棲艦の内1体が現れたのは“居住区のど真ん中”───相当数の生徒の家族が住まい、生活を送っている場所だ。秋山さんの両親が経営している理髪店もここにある。

街の惨状を、更にいえば深海棲艦の背後で燃え盛る商業区の有様を目にし、自分たちだけではなく“自分たちの家族”が置かれた危機に気づき、彼女達の理性は跡形も無く吹き飛ばされていた。

「西住殿、離して下さい!家に、私の家族のところに行かせて下さい!!!」

「お願い………落ち着いて優花里さん!」

(;^ω^)「秋山さん、気を確かに持てお!」

「グデーリアン、冷静になれ!頼むから行くな!!」

装填手としての怪力を遺憾なく発揮して今まさに西住さんの手を振り切ろうとしていた秋山さんを、僕と松本さんも加わって何とか押さえる。

「離して、離して……お父さん……お母さん………っ!やだっ、やだぁ!!」

3vs1、しかも内1名成人男性という状況でも、秋山さんは抜け出そうと更に激しくもがき続ける。

『オァアアアアアアアアアッ!!!!!』

潤む彼女の視線の先で、深海棲艦はみたび咆哮し────そして、家々を突き崩しつつゆっくりと此方へ進撃を開始した。
35 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 01:01:44.59 ID:Gd5bPsEi0
短いのですが仕事の兼ね合いのため復活更新ここまでで一度切ります。明日(今日)から投稿ペース上げたいと思います、お待たせして申し訳ありませんでした。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 01:25:06.84 ID:cCMQXamq0
きっついなぁ、つまんなくて
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 01:37:26.53 ID:NcVYYHZA0
おつおつ
目と鼻の先でこんな事態が起きれば、そりゃまともじゃいられないはな…
おまけにまだ開幕に過ぎないとか恐ろしい
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/06(土) 05:53:33.79 ID:bJZv84qhO
つまんないならわざわざ見に来なきゃ良いのに気持ち悪い暇人だね^^
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 10:50:03.25 ID:gheLiOvGO
この手の返しするやつって読む前から面白いつまらないの判断できるエスパーなのかなって思うよね。頭悪いんだろうな
読んだ上でつまらないってことでしょ
作者が悔しくて自演しちゃったなら、気持ちは分かるけど我慢しなよ
つまらないのは本当のことだし。勿論、面白いと思う人もいるかもだけどね
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 13:11:33.34 ID:5VHwcqyyO
今回も期待大です。楽しみに更新を待ってます。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 15:13:10.95 ID:3lnPnLZ6o
暴言単発アンチが湧くのは人気の証拠
楽しみに待ってる
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 20:47:17.61 ID:cCMQXamq0
気持ち悪いは確かにひどいよな
43 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/06(土) 23:05:01.77 ID:Gd5bPsEi0
「対象A、移動開始!接近してきます!!」

「前衛各班に通達!射撃開始、繰り返す、射撃開始!

住民の避難誘導と平行して対象Aを牽制しろ!!」

指揮官と思わしき保安官が手元の無線機に向かって叫び、居住区の方から響くは連続した銃声。躙り寄ってくる深海棲艦めがけて周囲から幾十本の火線が延び、銃弾が胴や頭部で次々と炸裂した。

『ォオオオォオオ………』

「………クソッ!!」

だが、その火花は相対する敵の巨躯に比してあまりにも小さく儚い。素人目に見ても、毛ほどのダメージにもなっていないのがよく解る。

「対象A、依然進行中!移動速度に変化無し!」

「前衛班より通達、付近市民の避難は区画の混乱と人員の不足により遅延!“暴徒”の鎮圧も難航中とのこと!」

「艦橋保安室に部隊の増強を要請!それと商業区との連絡回復も────うおっ!?」

『ギィアアアアアアアアアアッ!!!!』

深海棲艦が、その図太い胴で周囲を薙ぎ払った。

家屋や、電柱や───遠目故断定はできないが、“人の形”をした小さな点が勢いよく宙に舞う。

「おい、アレ……」

「退避、退避ィ!!」

(;゚ω゚)「伏せろ!!」

「きゃああっ!?」

長方形の巨大な何かが激しく回転しながら飛来し、突風を残して僕等の頭上を飛び過ぎた。

振り向けば、後方50M程の位置に酷く拉げた装甲車が転がっている。
44 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 23:18:18.32 ID:Gd5bPsEi0
数秒の間を経て、爆発的な悲鳴が辺りを包み込んだ。

保安隊の到着によって一時沈静化していたパニックが、改めて目の前に突きつけられた“脅威”によって再び激しく燃え上がる。居住区に向かおうとまでは行かずとも、半ば興味本位、半ば楽観的に玄関や校門付近にたむろしていた多くの生徒達が再び津波のような勢いをもって第2グラウンドの方へ逃げ散っていく。

「あぁ……ああぁっ……!!」

ただし、これも“全員”に共通した動きではない。秋山さんを筆頭に、元々居住区の方面に行こうとしていた生徒達は寧ろますます激しく抑え付けようとする人間に対して抵抗を始める。

「行かせて、行かせて……行かせてよぉ!!私が行かなきゃ………お父さん、お母さぁん!!」

「優花里さんっ……!」

(# ω )「────秋山ァ!!!」

こめかみの辺りでプツリと音が鳴り、気がついたら僕は勢いよく平手を振りかぶっていた。

「ひぐっ………」

人を殴った感触がビニール袋を破裂させたような音と共に僕の掌に伝わり、秋山さんが後ろに蹈鞴を踏む。倒れかけたその身体を、両肩口を掴んで引き起こす。

PTAに見付かれば懲戒免職待ったなしだろうが、構うものか。今更自分の職歴に頓着していられるような状況じゃないのだから。

(# ω )「いい加減にしろよお前!!てめえは何だ!?ウルトラマンか?魔法少女か?それとも艦娘か!?

陸なら10式戦車数台束にして迎撃しなきゃいけない化け物に、素手で立ち向かえるようなスーパーパワーをいつの間に身につけたんだ!?」

「……内藤教諭、行かせてください、お願いです、教諭………

お父さんも、お母さんも、あそこに……あそこに……っ」

「っ、先生!」

「落ち着けブーン先生!」

もう一度、秋山さんの頬を打つ。先程まで彼女を押さえていた西住さんと松本さんの手が、今度は僕の腕や肩に添えられていた。

(#^ω^)「家族が心配なのはよく解る!特に君は人一倍両親想いなのを教師として知ってるからな!行かせられるならそうしてる!

でもお前さっきの保安隊の会話聞こえていたよな!?学園艦上の最重武装部隊が避難誘導に尽力してて、それでもなお進捗は芳しくないって!

ただでさえ混乱状態のところに、戦車から降りたら何の技能も持たない───せいぜいクラブ活動で使えるサバイバル技術程度しかない一般人が飛び込むことが………どれだけその避難誘導に対して“妨げ”になるかって考えてるか!?」

「────えっ」

a暴れなくなったものの虚ろな表情で解放を懇願していた秋山さんの目が、はっと見開かれた。

(#^ω^)「しっかりと思い出させてやるけどな、お前はなんら怪物を倒せる力を持ってないただの2年C組の秋山優花里なんだよ!僕がただの無力で無能な現国教師であることと同じで!!

その無力なお前があそこに飛び込んで、負担が増えた保安隊はどうなるだろうな!?それこそ、巡り巡ってお前の両親さえ危険に晒しかねないって事を理解しろよ!!!」
45 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/06(土) 23:54:19.53 ID:Gd5bPsEi0
学園艦保安隊の人数は、決して潤沢とは言い難い。この未曾有の大混乱の中にあっては、例え一人分であっても守らなければいけない対象が増えることは大きな負担だ。

ましてや居住区は、今まさに混乱の“元凶”が暴れくるっている場所なのだ。たった一人分でも負担が増せば、防衛線全体に影響する綻びになり得る。

そもそも本来なら、今この瞬間彼女の説得に割いている時間さえ生死を分けかねない程の異常事態なのだから。

(#^ω^)「………本気で両親の事が心配なら、それこそ学園艦の外に一刻も早く避難してやれお。せっかく保安隊に救助された君の両親が、避難生徒名簿の中に“秋山優花里”の名前がなかったらどれほど悲しむか解るかお?

両親だけじゃない。この状況でも先に逃げず、君が落ち着くのを待ってくれてる西住さんたちだって悲しむお」

「……アリサさんはどうか知らないが」

「強制徴用され巻き込まれた挙げ句この仕打ち、実にFuckね」

「………」

麻子さんが低い声で茶々を入れ、アリサさんがわざとらしく眉を顰めて肩を竦める。少しだけ周りの空気が弛緩したが、秋山さんは僕が手を離した後も俯いたままだ。

とはいえ、先程の狂気じみた雰囲気は消えたし居住区に向かおうとするような素振りも見せてはいない。ひとまずはこれでよしとする。

(#^ω^)「他の奴等、聞こえたか!?お前らがやろうとしてる事も同じだ!!

自分が死にたいだけじゃなくて、実は積極的に家族を殺したい生徒だけ居住区に行け!!それが嫌なら、速やかに第2グラウンドまで走れ!!」

暴れくるう深海棲艦の騒音に負けぬよう、精一杯声を張り上げる。秋山さん同様居住区を目指そうとしていた生徒達も、徐々に抵抗をやめて同級生や風紀委員、教員達に連れられて正門から離れていく。
46 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 00:12:50.17 ID:dUa8vtWv0
( ^ω^)「小山さん、河嶋さんと武部さんは?!」

「それが、まだ連絡が……あっ、今二人とも玄関から出てきました!」

( ^ω^)「二人をこっちに誘導してくれお!西住さんと松本さん、秋山さんに肩を貸して!」

「じゃあ皆、駆け足で行くよーー!!戦車道でしっかり鍛えたんだ、たかが第2グラウンドまで走るのにばてちゃダメだからね!!」

『ギィアアアアアアアアアアッ!!!!』

角谷さんの号令に従って、僕等も校内生徒のしんがりを担う形で避難を再開した。背後からは相変わらず深海棲艦による暴虐の音が聞こえてくるが、幸いまた此方にモノがとんできたり進撃する速度が速まったりといった事態は起きていない。

「………ダメだ、ボクのスマホ、うんともすんとも言わない」

「猫田にゃーさんもか〜、実は私も、なんだよね。麻子は?」

「……お婆から着信が入っていたから折り返そうとしたが、繋がらない。何も起きずに切れる」

(;^ω^)「……避難中に私語はやめなさいお私語は」

怯えるときは怯えるが、彼女達は修羅場慣れしているせいかイヤに立ち直りが早い。まだ深海棲艦の鳴き声やら何やらが余裕で聞こえてきているというのに、小走りで避難場所へ向かいつつ早くも情報交換が始まっている。

「みぽりんのスマホはどう?」

「ごめん、私のも無理みたい。……あれ、でもメールは送れる」

「あ、本当だ。今隊長のメールが私の所に来ました」

「えっ!それ本当梓ちゃん!じゃあ私も家族に───送れなーーーい!!やだもーーーーー!!!!」

武部さんが、走りながら肩を落として落胆するというなかなか器用なアクションを見せた。ややオーバーな動きながら家族に連絡が出来なかったというのはわりかし本当にダメージを受ける内容だったらしく、眼にはうっすらと涙が浮かぶ。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 00:13:43.38 ID:5MI42vUe0
何か読んでて恥ずかしくなった
48 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 00:46:57.93 ID:dUa8vtWv0
「………余所者な上についさっきレイゼンにノって巫山戯たばっかりの私がいうのも何だけど、まだあの化け物からろくに距離を取ってすらいないのに大したリラックスぶりね」

( ^ω^)「HAHAHA」

漫画学科で使う教科書に載せてもいいレベルの典型的な「ジト眼」を見せるアリサさん。僕としても些か反論に困るため、乾いた笑いで誤魔化しておく。

( ^ω^)「ま、足でも止めるならともかく避難とに支障が出ないなら多少はね。

……それに、これは多分彼女達なりの思いやりでもあるんだお」

「………あぁ」

アリサさんはちらりと秋山さんの方に視線を向け、合点がいったとでも言いたげに頷く。

秋山さんの表情は相変わらず暗く、5歩10歩という短いスパンで頻繁に後ろを振り向いている。西住さんと松本さんが横で併走しつつ様子を窺っているが、仲のいいこの二人に対してもろくに反応を返していない。

秋山さんは本来、角谷さんから直々に副会長への立候補を依頼される程度には聡い生徒だ。自分が居住区に無理やり行くことの“愚”は、十分に理解していると思う。

ただし、それでも“家族があの災禍の只中にいる”という事実は変わらない。不安に思うな、心配するなと言う方が無理な話だろう。

「他にも居住区に家族がいる奴等もいるでしょうに、それでもオッドボールの事心配してやれるのね」

( ^ω^)「大洗女子学園の戦車道チームは、そういう子たちの集まりだお」

有事の中にあっても、他人を思いやる気持ちを忘れない────口で言うのは感嘆でも、それを自然に出来る人間は極稀だ。そして彼女達は、西住さんを筆頭に全員がそれを出来てしまう。

戦車道は座学部分にしか携わっていないただの現国教師が言うのも烏滸がましいが……本当に、彼女達は素晴らしい「チーム」だ。
49 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 01:25:52.37 ID:dUa8vtWv0
(;^ω^)「しかし、真面目な話こんなことに巻き込んでしまって申し訳ないお。アリサさんはここの生徒じゃないわけだし」

「ええ全くね───と言いたいところだけど、私は私でオッドボールの真似事してなきゃ今更こんなことにはなってないしね。学区から追い出されたとしても幾らかは遊んでから退艦する予定でもあったし、どのみち巻き込まれてたわ」

そう言ってやれやれと肩を竦めるアリサさんのアクションは、非常に様になっていた。流石はサンダース大附属の生徒と言ったところか。

「で、そこの一年生がなんでこっちを睨んでるのかって貴方心当たりは?」

(;^ω^)「えーと、宇津木さん?何かあったかお?」

「…………いーえー?特には?」

意味ありげな視線に気づき問いかけるが、宇津木さんはぷいとそっぽを向く。

「ただ、生徒に私語を注意しておいて自分はアリサさんと喋りすぎなんじゃないかなーって、思っただけよ〜?」

(B´ω`)「…………言われてみればその通りだおね。気をつけるお」

おさない、かけない、しゃべらない。小学校の避難訓練でさえやるような初歩の初歩を教師が自ら破っていては世話がないし、ましてや秋山さんを怒る資格などない。自分の愚かさに、自己嫌悪が胸の内を満たし顔に縦線が降りる。

「ヘイ一年?boonの奴割と本気でヘコんでるわよ」

「えっ、へっ!?せ、先生〜?軽い冗談だからそこまで気にしなくてもいいんじゃない〜?」

「………あー、ブーン先生?第2グラウンドってそこまで遠くないし着くまでに気を確かに持って貰った方がいいんだけど」

「内藤教諭、私は気にしてませんし寧ろ感謝しておりますので元気をお出しください!!」

(B ω )「おぉーん………」

「ダメだこりゃ。皆ー、ブーン先生一時的に沈んじゃったけど第2グラウンドまであと少しだから頑張って────」
50 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 01:44:11.42 ID:dUa8vtWv0
更新ペース上げる(+1P)
明日というか今日というかもまた同じ時間帯で投稿します。ご静聴ありがとうございました。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 02:20:05.08 ID:+u1jOlRA0
おつおつ、先生よく頑張った…
ベルリンの時に比べれば今後対応できる戦力は桁違いでも、現場での対応力がなきゃ無理ゲーだしなあ
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 15:53:22.36 ID:iStEIucI0
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 16:00:36.50 ID:b2hh+Oh9O
これはひどい
54 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/07(日) 23:17:08.00 ID:dUa8vtWv0
三度目の揺れ。角谷さんの言葉が、途切れる。

三度目の轟音。僕の意識が、現実に引き戻される。

僕も、角谷さんたちも、周りの生徒や教員も、誰もが足を止めて後ろを振り返る。それが“避難”として正しい行動ではないと知りつつも、足を止めずには居られない。

正門に展開する保安隊の眼前で道路が隆起する。砕けたコンクリートの下から、二本の腕を使って“それ”はゆっくりと這い出てきた。

『─────』

二本の腕に二本の足、股と腰、胸部の三つのパーツで構成された胴。オタマジャクシの出来損ないのような形状をした先の2体に比べると、それは───15m近い巨体と蝋のように白く血の気のない体色を除けば、幾らか僕たち「人間」に近い形をしているように見える。

故に、肩から上の異様さが尚のこと際立った。

「ひっ……………」

先の2体とはまた別種の“異形”を目の当たりにして、大野さんが微かに悲鳴を上げる。

胴に対して明らかに大きすぎる、楕円球形の頭部。「それ」の艤装と思われる砲塔や銃座が、実用的とは到底言えない無秩序さでそこかしこから伸びる。左目に当たる位置は無造作に刃物を入れられたような歪な“切れ目”となっているのに対し、右眼に当たる位置からは単装砲が生えている。

人を2、3人纏めて飲み込めそうな顎には唇がついておらず、剥き出しにされた白い歯が無機質な輝きを放っていた。

“人間を作ってごらん”と言われた年端もいかぬ子供が、無造作に粘土を捏ねくり回した挙げ句に出来たようなおぞましい姿。

パブロ=ピカソが描いた【ゲルニカ】の中にコイツの模写が混じっていたってきっと気づけやしない────そんな化け物が今、学園艦の甲板上に佇んでいる。
55 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 23:29:15.20 ID:dUa8vtWv0

「…………何なの、あれ」

「……………決まっているだろ沙織、アレも深海棲艦だ」

「言われなくても解って───ぴぃっ!?」

『──────ゲア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…………』

武部さんのヒステリックな叫びを遮る形で、“3体目”が唸る。

『グガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』

先の2体が上げる咆哮よりも遙かに低い響きの、例えるなら蒸気船の汽笛を幾つも重ねたような鳴き声。それを耳にして、全身の肌がブワリと泡立つ。

2匹のバカでかく不細工なオタマジャクシに関しては、僕は“深海棲艦”であることしか解らない。後は、見た限りの形状から駆逐艦種と推測できる程度だ。

だが3体目の個体については、僕は“別の呼び名”を知っている。

( ゚ω゚)「…………いしろ」

「……内藤教諭?今何と────」

(;゚ω゚)「皆、散開しろ!教員も生徒もとにかくばらけて、できることなら木の下や建物の影に逃げ込め!!」

2011年10月27日。同月に重巡リ級との交戦で確認された“ヒト型種出現”の衝撃から2週間と経たぬ内に発生した、タイ海軍と深海棲艦の海戦。

タイ王国が保有する唯一の空母【チャクリ・ナルエベト】が海の藻屑と化すことになるこの戦いで、人類は初めて“艦載機を運用”する個体と─────








「“空襲”が始まるお!!!」

─────“軽空母ヌ級”と、遭遇した。
56 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/07(日) 23:59:51.56 ID:dUa8vtWv0
唸り声はいつの間にか止まっている。にもかかわらず、ヌ級の顎は閉じられない。身体を折り曲げ、四つん這いになりながら奴は寧ろ口をますます大きく、普通の人間なら間違いなく顎関節が外れるほど目一杯に開けた。

「一体、」

何をするつもりなのか。言葉を発した女生徒の一人がその台詞を最期まで言い切る前に、その答えを示す形でヌ級の口から黒く小さな点が群れを成して飛び出した。

(;゚ω゚)「っ、もう一度言うけど皆急いでここから離れろ!とにかく頭上を遮れる場所に移動を急げ!!」

「皆さん、内藤教諭の指示に従って下さい!!お友達同士で固まってる方達はばらけて、開けた場所を避けるように!」

「幸い300M先に自然観察用の樹木園がある、そこまで遮蔽物になるべく身を隠しながら走れ!!」

「こっちの屋根の下に行こう!高さも広さもある!」

「ゴミ箱の影………き、汚いけど我慢!」

僕の剣幕に何かを感じ取ってくれたのか、秋山さんが続けて指示を飛ばしたのを皮切りに一斉に周囲の皆が動き出す。同僚達も避難誘導に加わってくれ、西住さんたち以外の生徒も多少の「慣れ」が出てきたのか素早く行動に移し始める。

だが、如何せんあまりにも時間が足りなさすぎた。

「────っ、───!!」

「────!!?」

「───っ、…………」

風に乗って聞こえてきた、入り乱れる銃声と叫び声。保安隊の人達が上げているものと思われるそれらは、十秒と経たぬ内により別の騒音に掻き消され、徐々に小さくなっていきやがて完全に聞こえなくなった。

そして、その代わりに僕等を背後から追いかけてくる「音」がある。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 00:21:52.47 ID:oslAuK/oO
絶望的なのはつまらなさ
58 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 00:29:41.21 ID:ZkbNveRG0
飛び回るハチドリの羽音のような、或いは獰猛な肉食獣の威嚇音のような、連続的な音色。風切り音を伴ったそれは、僕たちに近づくにつれて高く大きくなっていく。

「何、何?何この音ぉ!?」

「う、上から、何か近づいて来て………」

降ってくる音────最早現代の空からは駆逐されたはずの、レシプロエンジンの駆動音。何十機分もが重なって上空で鳴り響く中、突出してきたらしき一際大きな音の主が僕の頭上に差し掛かった。

(;^ω^)「────やっべぇっ!!!」

「きゃんっ!?」

「Ou!?」

背筋に走った、氷柱を直接突っ込まれたかのような強い悪寒。咄嗟の判断で、僕のすぐ前を走っていた宇津木さんの腕を掴み横に居たアリサさんを肩で突き飛ばす。

二人ごと宙を浮いた身体は、通路を飛び越えて道脇の自転車置き場の中に転がり込む。直後、僕等が居た位置をアスファルトを削り取り機銃掃射が駆け抜けた。

悲鳴があちらこちらで上がるけれど、他の誰かが犠牲になった様子もない。樹木園への避難を開始する前に予め全員を散開させたのは幸い功を奏してくれたようだ。

「いたたたた………や、やだもぅ〜、先生ったらだいたーん」

「Damn………Hey boon!!タカシに振り向いて貰う前に傷物になったらどうしてくれるのよ!!」

(;^ω^)「まだいつものノリを出せるのは賞賛に値するけど自重してくんねえかな!?」

まぁ元気そうなのは何よりと言えば何よりだが、この状況下で脱力させにかかるのはやめてほしい。
59 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 01:03:51.06 ID:ZkbNveRG0
「っ、ブーン先生!宇津木さん、アリサさん、怪我は!?」

(;゚ω゚)「園さん、戻っちゃダメだお!!」

「そど子、上だ!!!」

「────へ?」

僕たちの安否を気遣い、逃避行を中断して踵を返す園さん。そこに、直上から急降下する“機影”が一つ。

「園さん、危ない!!」

「ひゃっ!?」

火線が放たれるのと園さんに西住さんが飛びついたのはほぼ同時だった。間一髪、弾丸は西住さんの靴底を掠めて地面に突き刺さり、敵機はそのままボールが跳ね返るような軌道を描いて空へと戻っていく。

「「きゃああああああっ!!!?」」

何十メートルか向こうでは、更に別の機影が生徒二人を追い回す。彼女達が鉄製ゴミ箱の影に飛び込むと、そのまま放たれた掃射が表面で火花を散らし無数の穴を開けた。

その様子に、ぞわりと全身の毛が逆立つ。あんなもの、一発食らっただけでも手足の一本や二本は確実に引き千切られる。

(;^ω^)「西住さん、園さん、怪我は無いかお!?」

「こっちは大丈夫です!」

「私も!西住さんのお陰で傷一つ無いわ!」

(;^ω^)「ゴミ箱の所の二人は!?」

「こっちも大丈夫です!」

「すぐに動けます!」

(;^ω^)「あいつらがまた来る前に避難再開!

とにかくエンジン音の接近に注意するお!!」
60 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 01:21:29.02 ID:ZkbNveRG0
加速どころか寧ろ更新ページ数が減ってしまった……申し訳ございません。

明日は18:00以降フリーなので大盛り更新頑張らせていただきます
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 01:44:57.04 ID:LnUCpndSO
そど子・デア=フォーゲルヴァイデ
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 01:46:07.31 ID:MCfQLJAA0
おつおつ
まったりペースでも構わないのにw
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 09:18:11.21 ID:oslAuK/oO
更新ペースよりも内容と文章を読み返したら?きついわ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 10:44:12.95 ID:MCfQLJAA0
年末年で熱心に始張り付くその姿勢は認めるけど、いい加減もう少しマシな事にその労力使えばいいのに…
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 11:32:05.00 ID:y/gB/ajD0
お、ブーメランかな?
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 21:16:08.52 ID:i+bVVDkMo
あまりボッチをいじめないでやってくれ
67 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/08(月) 22:00:14.89 ID:4Tt2hLBIO
単純に書きためが間に合わなかったので更新明日お昼にずらさせていただきます。申し訳ございません。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 01:23:25.42 ID:2JzqNIWxo
>>67
気にすんな。頑張れ
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/09(火) 08:57:14.12 ID:+Jgp1YMPO
単発あらし君はいつも夜の12時くらいに書き込んでるけど底辺社畜かな
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 09:12:02.21 ID:8zXxVDGJ0
↑ここまで自演
↓ここからも自演
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 12:00:47.14 ID:ymQYnkowO
自演はみんなやってるから良いだろ
72 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/09(火) 20:08:35.36 ID:mMdsrWauO
新年の忙しさ嘗めてた……お昼どころか今日の更新自体が難しいです、お待たせしてすみません。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 20:30:36.75 ID:87CCs8AA0
ドンマイですw
気長に待ちますよ〜
74 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/11(木) 23:04:11.47 ID:XQqGvl4N0
三人同時に路上に飛び出し、走る。視界の端に、他の四人も駆け出す様子がちらりと映った。

たちまち、十数機が奏でる独特の風切り音が頭上から僕等に迫る。

「やっ……」

(;^ω^)「止まるな!」

何条かの火線が上から降り注ぎ、僕等の周りで機銃弾がコンクリートを砕き白い煙を上げる。身を竦めかけた宇津木さんの腕を取って強引に併走させていると、すぐさま新手の編隊が追ってきた。

「Fuck、速いわね!」

(;^ω^)「そりゃ二次大戦時のとはいえ戦闘機の性能持ってるからな!!」

樹木園まではあと250m程だろうか。軽いランニングでも一分かからないような距離だが、何せ追いかけっこ相手の最高時速が600km/hだ。

今の僕たちにとって、この逃走距離は42.195kmのフルマラソンより険しく長い。

「敵機来ます、皆伏せて!!」

(;^ω^)「おぉおっ!?」

西住さんの叫び声に、全員が身体を投げ出すようにして地面に突っ伏す。

銃火が頭上を過ぎ去り、ほんの数メートル先のアスファルトが無数の弾痕に覆われた。
75 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/11(木) 23:21:44.84 ID:XQqGvl4N0
「内藤教諭、西住殿、皆さん此方へ!!」

「他の子たちはもうだいたい指定避難場所に向かってるよ、安心して!」

「後は西住隊長と先生達だけです、早く!!」

僕達七人が意図せずして囮のような役割を果たし深海棲艦機の攻撃が集中したことによって、他の生徒・教員の大半は既に空襲から退避した。樹木園の入り口には秋山さんと角谷さん、澤さんが待機しこっちに向かって必死に呼びかけている。

「其方の二人はまだ走れますか!?」

「は、はい!大丈夫です!」

「私も佳奈も走れる!西住さん、心配しないで!」

(;^ω^)「あと少しだお、次の空襲が来る前に辿り着ける!!」

「は、はぃ……」

「おぇっ……」

少々息が荒いアリサさんと宇津木さんを引き起こしながら励ましの言葉を掛けるが、あと150m程の距離を奴らが来るまでに0に出来るだろうかと僅かに不安が過ぎる。現に、もう次の“波”が突っ込んでくる音が────

( ^ω^)(…………あれ?)

ふと、違和感。奴等が奏でるエンジン音は確かに相変わらず頭上で鳴り響いていたが、それが徐々に遠ざかっているように感じられた。

だが、それが何故なのかを考察する必要性はすぐになくなる。








(;゚ω゚)「おっ─────」

オレンジ色の炎を吹き出し、此方へ向かって猛烈な速度で落下してくる“何か”を目にした瞬間に。
76 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/11(木) 23:58:05.43 ID:XQqGvl4N0
「─────西住ちゃん、先生、早く逃げて!!!」

「What, what, what!!!?」

「な、な、何よアレぇ!!?」

「とにかく今は前だけ見て!!走れ、走れェ!!」

「────痛っ!?」

未だかつて聞いたことがないほどの焦りを含んだ角谷さんの叫び声と、西住さんの鬼気迫る檄。全員が弾かれたようにその場から走り出すが………一秒と経たぬ内に、一人が小さく悲鳴を上げる。

「うっ……」

「優季ちゃん!!?」

(;^ω^)「っええい!!」

深海棲艦機の空襲によってひび割れたアスファルトに足を取られ、宇津木さんが転倒する。痛めたのか膝のあたりを押さえ蹲る彼女のもとへとって返すが、“落下物”はもう既にあと数秒と経たずに地面に到達するだろう。……しかもよりによって、落下地点は宇津木さんの直上ときている。

(;^ω^)「────宇津木さん、痛くなるけどすまんお!!!」

「えっ………ひゃああっ!!?」

考考えるより前に、身体が自然に動いた。宇津木さんを抱え上げると、反動をつけて後ろへと放り投げる。同時に、僕自身はその勢いを駆って物体の落下地点の向こう側へと身を躍らせる。

「…………ッ!!」

「きゃっ!?」

投擲先には、僕と同時に踵を返していた西住さんが居る。彼女は持ち前の身体能力で宇津木さんをお姫様抱っこの要領でキャッチしつつ、後ろに自分から倒れ込むことで衝撃を逃がしていた。

(;゚ω゚)「うぉうっ!?」

流石西住さんと感心する間もなく、目の前に火達磨になって拉げた“落下物”が眼前に突き刺さる。腹を下から突き上げるような、“ズンッ”という震動が視界を揺らす。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 00:15:34.33 ID:AqBPqhNZ0
どんな顔してこんなもの書いてんだ
78 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 00:34:18.90 ID:zkSUgY8K0
────落下物の側面、拉げ穴だらけになった扉に【日ノ出テレビ】の文字を見つけ、それが深海棲艦機に撃墜された報道ヘリだと気づいたときには、僕にはもう時間は残されていなかった。

(; ω )「うあっ………」

バチバチととんでいた火花が燃料にでも引火したのか、機体が一際大きなオレンジ色の炎を吹き出した後に爆散する。幸い3m程の距離があったため巻き込まれて木っ端微塵になることは避けられたが、爆風に吹き飛ばされた僕の身体は5メートルほど後ろで花壇に叩きつけられた。

(メ; ω )「ゲホッ………」

肺から酸素が逃げていき、体中を苛む激痛と併せて意識を朦朧とさせる。著しく機能低下した耳が、何かがひび割れていくような音が近づいてくるのを捉える。

「ブーン先生!!!」

音の正体が、ヘリが爆発炎上した場所から伸びるひび割れが僕のもとまで到達したのと、宇津木さんの叫び声が響いたのはほぼ同時。

アスファルトが砕け、甲板が崩落し、身体の下から地面が消失する。ぽっかりと口を開けた暗い裂け目に、為す術無く落ちていく。








(メメ ω )(………シュー)

死の間際の走馬燈の代わりに、脳裏に浮かんだのはシュールな幼馴染みと最後に飲んだときの光景。

それを噛みしめる間すらなく、僕は意識を手放した。
79 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 00:59:23.38 ID:zkSUgY8K0



《ご覧いただけますでしょうか!?これは【テレビ日ノ出】の独占スクープ映像です!大洗女子学園の至る所が炎上し、甲板上に………おい、なんか上がってくるぞ!回避しろ、回h》

《…………………え、えー、ただ今、映像に乱れがありましたことをお詫び申し上げます。テレビ日ノ出では、引き続き番組の予定を変更して深海棲艦関連ニュースを放送致します》

《現在大洗港近辺には陸上自衛隊が展開、交通を制限。また百里基地にも自衛隊車両が複数入ったとの情報が───》

《大洗女子学園上空を飛んでいたテレビ局の報道ヘリが、何らかの攻撃を受けて墜落し甲板上で爆発が起きたとのことです。繰り返します、現在真偽は確認中ですが、大洗女子学園上空で───》

《フィリピン沖から日本本州へ向けて北上中の“新型”に関する情報はまだ公開されていませんが、既に関東・中部・近畿沿岸部には緊急避難警報・空襲警報が発令され、付近警察・消防による避難誘導が───》

《大洗港に停泊中だった船舶はプラウダ学園を初め民間・公共問わず全隻が緊急出港。また、海上自衛隊の防空指揮艦【かが】並びに艦載機部隊も一時洋上退避し───》

《茂名官房長官は先程緊急記者会見を開き、大洗女子学園の混乱の収拾と新型深海棲艦の撃滅を両方約束すると宣言。国民に落ち着いた行動を取るよう呼びかけ───》

《たった今入ったニュースです。政府は先程、太平洋海上において新たに極めて大規模な深海棲艦艦隊の浮上を確認したと発表。この艦隊は戦力を二手に分け、ハワイ方面と………南鳥島方面へ向かっているとのことです》

《政府は自衛隊・艦娘による領海の死守を約束する一方、東北沿岸の一部にも空襲注意報を発令しました。

該当区域の皆様はテレビ・ラジオを注視し、避難指示があった場合すぐに動けるようにして下さい。

また、今後鳴らされるJ-ALERTは全て訓練ではありません。J-ALERTが鳴った場合、必ず内容を確認し、適切で冷静な行動を心がけて下さい》
80 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 01:02:58.61 ID:zkSUgY8K0
ここまで二日ぐらいで来たかったのに2週間って………明日から改めて加速できるようガンバリマス。
本日はひとまずここまでです
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 10:44:34.08 ID:XjXQebbA0
おつおつ
主役補正(丸腰の一般男性・女子高生)じゃ為す術無いとは言え、先生も頑張ってたが…
82 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 15:01:53.39 ID:zkSUgY8K0







【学園艦棲姫】の出現と、フィリピン海防衛線における交戦開始───この報告が入った時点で、南は既に横須賀司令府の地下総司令室に近習数人と一部閣僚を伴って移動を完了していた。

別にこれは、自ら艦娘の主力や海上自衛隊を指揮しようという勇ましい意図の表れではない。【学園艦棲姫】が強力かつ膨大な航空戦力を持っている可能性が指摘された段階で、空襲のターゲットとなり得る永田町から退避し現状最も強固な防御力を持ち避難手段も豊富な横須賀司令府が移動先に相応しいという判断からのものだ。

見ようによっては“臆病風に吹かれた”と取れなくもないし、実際南自身自分を勇敢な人間だと思ったことは一度も無い。何より、この事が外に知れれば「国民が危機に晒されているときに安全圏に一人で逃げた首相」と見る人間は少なからず居るだろう。

そして、南は「そうなるならそれでしょうがない」と割り切っている。

彡(゚)(゚)(ワイが空襲やら何やらで死んで、有事のど真ん中でクソ無能が指揮取るハメになるより億倍マシや)
83 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 15:07:00.76 ID:zkSUgY8K0
南は自身の能力を過不足無くある程度正確に推し量った上で、今の情勢で日本をとりまとめられる人間は自分しかないと結論づける。

彡(゚)(゚)(強いて言うなら茂名の爺さんやが、あの人は貫禄が不足しとるから野党がうざったくなる。他の有象無象は概ね空中分解待ったなし)

南が深海棲艦の出現前より自衛隊関連法案の整備に取りかかっていたとき、彼の改革に反対する(自称)平和主義者からよくぶつけられた質問がある。

曰く、戦争になったとき、首相は前線に立って戦うのか。

彡(゚)(゚)(これ言い出したの、どこのバカやろなぁ)

どうも彼らは南に効果的な文句だと勘違いしている節があり、遊説中やら講演時やら記者会見やら、あらゆる場所でこの失笑モノの質問をぶつけてきた。政治討論系のテレビ番組で知識派で売っているはずのコメンテーターが口に出してきたときには、堪えきれず腹を抱えてたっぷり一分間は爆笑してしまったのを覚えている。

彼らの脳内では、何故か常に戦争は日本が起こす側であり外国から宣戦布告を受ける事は絶対に有り得ないと決め付けている節がある。すぐ近くにある半島の北側に、核ミサイルを研究し常に「日本列島を破壊し尽くしてやる」と脅しをかけてくる軍事独裁国家が現存するにもかかわらず、だ。
84 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 15:32:43.40 ID:zkSUgY8K0
彡(゚)(゚)(戦国時代とか中世ヨーロッパから脳の進化が止まったのかな?)

或いは映画【インディペンデンス・デイ】のトーマス=J=ホイットモア大統領でも意識したか。いずれにせよ、“日本側が宣戦布告する”と決め付け、“日本への宣戦布告は有り得ない”と思い込んでいる人間の的外れな指摘であることは変わらない。

日本が“有事”をふっかけられた際の備えには手を抜かない、一方で“有事”を着地させられる力がある人間は、出しゃばらずに安全な場所で自分の義務を着実に果たす────それが日本と、その国に住まう人々の生活を護るために最も適した形として現状南が辿り着いた考え方だ。

まぁ、打算が皆無かといえばそうではない。横須賀は避難警報が出されている区画の一つであり、これを母港とする学園艦【聖グロリアーナ】の乗員・居住者・生徒も保安隊の誘導で退艦を開始した。

仮に横須賀司令府に行ったことがリークされても、本州での陸戦が始まった場合の最前線となる場所に首相が自ら赴いているとなればマスコミや反政権側としては叩きにくい………そんな算盤も、胸の内では弾かれた。また実務的な面でも、本来秘匿されている“海軍”の投入や他国との連携、迎撃作戦が領海外に拡大した場合など政治的な判断を現場に即座に下ろすことが出来るという大きなメリットが存在する。

メリットとデメリット、理想と現実を正確に推し量り、有事でも果断に行動できる───南が“異生物による世界規模での侵略”という前代未聞の“有事”にあって日本をこれまで守り抜いてこられたのも、飄々とした言動の裏に隠されたこの柔軟な対応力があればこそだろう。
85 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 16:56:50.56 ID:86iPh8W7O
………だが今起きている事態は、南の、否、日本全体の対処能力をさえ既に超えつつある。

「大洗女子学園、甲板上に報道局の回転翼機が墜落!火災も発生!」

「何故飛行制限がかかって……っ!過ぎたことは仕方ない、報道各局に大洗港付近全域での飛行禁止令を通達しろ!許されるギリギリのラインまで締め上げて構わない!」

「ヌ級flagshipの動向には特に注意しろ、空母艦娘並びに各鎮守府・警備府の基地航空隊は厳戒態勢を維持!」

「ミャンマー、マレーシア、タイなどASEAN各国の空軍は学園艦棲姫への攻撃準備を完了、しかしながら自衛隊と艦娘の支援がなければ攻撃を掛けることは不可能と通知あり!」

「中部や沖縄から一部でいいから機体は上げられないのか、もたもたしていると棲姫の航空戦力の発艦を許すぞ!」

「各学園艦の状況確認が済まないと無理です、戦力を動かしてから大洗と同じことが起きれば被害は際限なく拡大します!」

「各警備府から艦娘を動員、それと陸自と警視庁にも要請を入れろ!最長一時間、できるならその半分で全艦の安全確認を終わらせるよう伝えるのも忘れずにな!」

「アメリカ国防省より情報共有あり、南鳥島に向かう深海棲艦は凡そ300隻超。艦種詳細不明も、少なくとも装甲空母姫4、戦艦棲姫2は確認されているとのことです」

「南鳥島鎮守府提督より迎撃部隊抜錨の報あり。時刻ヒトヨンニーイチ、全八個艦隊48隻による迎撃です」

「第5防空機動艦隊に艦載機全機発艦を指示。南鳥島の艦娘部隊を支援させろ」

彡;(-)(-)「………」

照明やディスプレイが放つ、人工の光のみに照らされた司令室の中。最上段の席に腰掛けながら、南は周囲の喧噪を耳にしつつ瞑目する。

即断即決を信条とし、国内外問わずその果敢迅速な行動力によって国内外問わず多くの政治屋を翻弄してきた男が、眉間に皺を寄せ心底から苦悶していた。
86 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/12(金) 18:03:48.68 ID:86iPh8W7O
「首相……」

呼びかけらた声に反応し、眼を開き顔を上げる。すぐ横に、いつの間にか一人の男が直立不動で佇んでいた。

彡(゚)(゚)「………お前さんの接近に気づけんとはボケすぎやな、ワイも」

(☆...●)「…………どういう意味ですか、それは」

男はそう言って不満げな様子を見せるが、正直なところ南の指摘は的を射ている。

身長209cm、体重135kg。180cmで十分高身長と言われる日本の成人男性において、この体躯は時代が時代なら人外扱いの一つも受けていたであろう。体格は“あの提督”程ではないにしろ筋骨隆々と言って差し支えなく、身長に至っては向こうよりも10センチ以上高い。顔は右眼がざっくりと縦横に走る大きな傷で潰れ、左眼のギョロリと剥かれた眼孔の迫力を助長している。引き結ばれた口元にも無数の傷が走り、顔だけ切り取ってホーン●ッドマンション辺りで飾っておけばいい案配に迫力を増してくれることだろう。

そんな、巨漢の────海上自衛隊三将にして艦娘部隊【元帥】、王嶋清人(おうじま・きよひと)の接近に気づかない鈍感な人間が、この世にどれだけいるかは疑問符が付く。

彡(゚)(゚)「そのまんまの意味や。ジェイソンが白昼堂々街中練り歩いてて気にならん人間なんて滅多におらんやろ」

(;☆...●)「………少しは気を遣っていただいてもバチは当たらないと思いますが」

思ったままの事を言ってやると、王嶋は今度は酷く傷ついた表情で頭を掻く。

全くこの男は、図体はデカいくせに昔から繊細だ。

彡(゚)(゚)「ほんま、ナリはデカいのに神経ほっそいよなぁ」

(☆...●)「首相、貴方の言葉はとりわけ強烈な武器になることをもう少し自覚すべきです」
87 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 18:39:08.25 ID:fHC45+5tO
いよいよ声を荒げる王嶋だったが、南の顔つきを見て諦めたように一度ため息をついた。

(☆...●)「………まぁ、首相も連日連夜の外交や党内調整、【艦娘自己自衛権】関連の詰めで出突っ張りだったところにこの事態です。気を抜きたいのは解りますが、せめて“いじり”はもう少しマイルドにしていただけるとありがたい」

彡(゚)(゚)「善処するわ」

口ではそう軽く返しながら、南は視線で自身の意図を汲んでくれた王嶋に感謝の意を示す。

気心の知れた人間との口さがないやりとりは、疲弊した脳を休ませてくれる貴重な存在だ。思考の柔軟性を維持するにあたって、今のような会話も南にとっては仕事の一環に他ならない。

彡(゚)(゚)「さて、聞かせて貰おか。大洗女子学園艦内の状況はどうなっとる?」

(☆...●)「はっ。先ず商業区ですが────」

彡(゚)(゚)「待った。時間も短縮できるし、どうせここは勝手知ったる横鎮や。

“いつも通り”にいこうや、キヨやん」

(☆...●)「………OKだ、ヨシ」

南の提案に頷くと同時に、王嶋の口調と態度から堅さが消える。彼は横の椅子を引いて腰掛けると、手元の紙束をバサリと此方の前に放り出した。

(☆...●)「単刀直入に結論を言うが、状況は40分前と同じ。新しいことは何一つ解っていない。

真新しい報せと言えばお前も今聞いてただろうが、せいぜいスクープを焦ったテレビ局のバカがヘリで学園艦上空に差し掛かった瞬間【Helm】に撃墜されたってことだけだ」

彡(゚)(゚)「……因みに、その馬鹿テレビ局はどこや」

(☆...●)「各局報道番組の内容を見るに日ノ出テレビで間違いない」

彡(゚)(゚)「ほーん」

近々国会に提出する予定の新放送法案で真っ先に潰すべきテレビ局が決まったな………南は胸中で決意を固める。
88 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 18:56:05.92 ID:fHC45+5tO
王嶋は長い付き合いの中で南が何を考えているか察したが、特に何も言わず話を続ける。

話の脱線は望ましくなかったし、正直王嶋自身南の考えには諸手を挙げて賛成だったため口を挟む必要が無い。

(☆...●)「学園艦内は艦橋保安室から各駐在所まで悉く沈黙、あらゆる方面から様々な手段で通信を試みたがきこえてくるのは波の音だけ………ロマンチックだね、貝殻を耳に当てていた無邪気な子供時代を思い出すよ」

彡(゚)(゚)「お前に子供時代なんかあったんか………無論、“暴徒”に関する続報も無しって事やな?」

(☆...●)「あったに決まってるだろ俺はいったい何なんだよ……無しだ。学園艦後部の商業区4箇所で大火災が発生している点、最初の【駆逐ナ級】が出現する前から火災に関して陸の住民より通報が入っている点から考えてここら辺が中心地だとは思うが推測の域を出んな。

なお、商業区の火災は現在も延焼中………俺たちの方で確認できたのは以上だ」

王嶋の言葉を受け、南の眉間に再び皺が刻まれる。なるほど、“進捗無し”は比喩皆無の正直な報告か。

彡;(-)(-)「で、ナ級が出たということはかなり高い確率で【寄生体】が暴動に関わっている、と……頭痛いわ」

(☆...●)「………あのビデオ映像の光景が日本で、しかも学園艦の上で起きることになるとはね。夢のようだよ全く。勿論悪夢という意味でな」

元帥の王嶋を初め横須賀鎮守府の首脳部には“海軍”に関する情報は相当深いところまで共有されており、勿論【ムルマンスクの戦い】に関する真相も彼は知っている。

戦闘の記録映像を見せられた時のことを思い出し、王嶋の表情が露骨に歪んだ。
89 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 20:02:16.86 ID:fHC45+5tO
(☆...●)「クソッ、アレのせいで俺はしばらく肉も魚もダメになったんだ……。

とにかく情報が足りないが、それでも学園艦奪還作戦を強行するなら突入箇所はほぼ確実に艦橋になる。装備や部隊練度を鑑みて直属保安隊なら艦橋の陥落を防げている可能性が高い」

彡(゚)(゚)「艦橋保安室がぱっと見は“ただの生徒や住人”である存在に発砲を許可する勇気があれば、やがな」

(☆...●)「ああ、最大の問題はまさしくそこになる」

南の指摘に、王嶋が頷く。その口調の平坦さから、彼も自身の“希望的観測”が通るとは微塵も思っていないようだ。

(☆...●)「俺もこの鎮守府の全員も、市ヶ谷だってはっきり言って期待していない。“陥落を免れた可能性”についても、他の駐在所や区画が0%なのに対して艦橋なら5%ぐらいはありそうってだけの話だ。それでも“皆無”じゃないだけマシだし、奪還の優先度としても設備や貯蓄武装、指揮系統回復などの観点から艦橋が最も高くなる……そもそも、“突入できるなら”というのが前提条件だが」

彡(゚)(゚)「やっぱ、アカンか」

(☆...●)「どうやって沸いたのかはともかく、軽空母ヌ級flagshipの出現が痛すぎる。ただでさえナ級の対空火力が未知数の中で、艦載機っつー解りやすい脅威が加わったらおいそれとヘリ単体での空挺には踏み切れねえ。まずは制空権の確保、だがその制空権を確保できる戦闘機すら出せない有様だ」

彡(゚)(゚)「………確か、軽空母とはいえヌ級flagshipの艦載機数は90近くやっけ」

(☆...●)「あぁ、flagshipの名を冠するだけあって機動力も高い。数で圧せばそれでも十二分に航空優勢は取れるだろうが…………学園艦は大洗だけじゃない。

残り197隻で“同じことが起こる”可能性がある限り、どこの航空戦力も動かせんし消耗も許可できない」

彡(-)(-)「………」

王嶋の重苦しい宣告に、南は再び瞑目する。彼の右手は、懐から煙草を取り出そうとする衝動と激しく戦い痙攣していた。
90 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 21:58:35.96 ID:wr0KNd1a0
世界屈指の艦娘先進国であると同時に、世界有数の学園艦大国でもある日本。深海棲艦が大洗女子学園に侵入した経路が掴めない以上、原因究明までは日本の学園艦は全て潜在的な深海棲艦の拠点として見なければならない。

ここまででも十二分に厄介だが、フィリピン海に浮上した【学園艦棲姫】の存在それ自体が自衛隊の軍事行動に決定的な楔を打ち込んだ。

即ち、大洗女子学園を初めとする学園艦に“深海棲艦化”の心配は無いのかという懸念。

(☆...●)「下半身がバイクになった雷巡が時速百キロで欧州を駆け回り、生身の人間が深海棲艦に変態し、今また学園艦の中から駆逐艦と軽空母が生えて来やがった。そして極めつけが、“学園艦型の棲姫”だ。

最早何が起きてもおかしくない………まぁこの件について取れる効果的な対策なんざ、はっきり言って存在するなら俺が教えて欲しいぐらいだがな」

学園艦としては小さい方とされる大洗女子学園で7.6km、生徒3000人と最小クラスに位置するベルウォール学園でも4.8km。そんなものが200近くも一気に深海棲艦化した場合、王嶋の言うとおり例え自衛隊と艦娘部隊が文字通りの総力を注ぎ込んだとしても勝ち目はないだろう。

現にたった1隻を相手に、アメリカも含めて3カ国分の空海軍部隊と“海軍”所属の精鋭艦娘を20隻以上ぶつけてあの様だ。

それでも………自衛隊も艦娘も、日本に住まう国民を護るためにある。軽んずることも、特定の場所を取捨選択することも究極的な状況になるまでは許されない。

逆に言うとそれは、大洗女子学園に取り残されているであろう人々にも言える。彼女達の安全を優先するあまり、他の地域での“危機”に目をつむり戦力を摩耗することはできない。

(☆...●)「………横須賀司令府元帥として、提言できる策は二つだ。

先ず一つは、乗員の」

彡(゚)(゚)「却下や」

(;☆...●)「早いな」

彡(゚)(゚)「………無論ワイかて、“それ”を最終的には選択せなアカン可能性もあることは理解しとる。

せやけど、それは“まだ”や。手が残っている限り、ワイらはその選択だけはしたらアカン」
91 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 22:35:52.01 ID:G84HfYJhO
(;☆...●)「……まぁ、お前ならそう言うと思った。口に出しておいてなんだが、俺自身お前が犠牲ありきの“第一案”にあっさり乗ってきたらぶん殴っていたかも知れん。

しかし、だ」

王嶋は腕を組み、低く唸る。

(;☆...●)「第二案もまた、別ベクトルでリスキーだぞ。日本の国際的な信用、お前自身が積み上げてきた実績、そして何より、せっかく流れが変わり始めた艦娘の在り方。その全てを賭けのテーブルに乗せる事になる」

彡(゚)(゚)「まだ助けられるかも知れん国民吹っ飛ばすより万倍マシやボケ。

………それに、ワイも何の準備も無しに賭けのテーブルに着くわけやない」

南はそう言って、胸ポケットから取り出した自身のスマートフォンを掲げてみせる。

その口元には、不適な笑みが浮かんでいた。

彡(^)(^)「特に最後の奴はワイ自身も苦労したし何よりそこないがしろにしたらせっかく出来た筋肉モリモリマッチョマンのライン友がブチ切れてまうんでな。

ノーリスクハイリターンでギャンブルを………それが、南慈英のモットーや」






(☆...●)「笑顔キモッ」

彡(゚)(゚)「死ね」

(☆...●)「てめえが死ね」
92 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/12(金) 22:41:06.61 ID:G84HfYJhO
本日の更新ここまで。書きためてまた明日投稿します。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 23:10:38.92 ID:fokMncrCo
乙です
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 23:27:06.40 ID:p96O65EJ0
乙っす
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/13(土) 00:10:10.90 ID:mrV0aZ2PO
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 00:20:17.10 ID:hzpzTMtG0
>>95
自演もここまでひどいと笑えないからやめたら?
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/13(土) 00:26:08.25 ID:KuyNGQyPO
逆に荒し認定されちゃうから触れない方がいいよ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 00:49:05.91 ID:4xlW5HyA0
おつです
ここの首脳陣優秀過ぎるw
それと初手本土決戦はやっぱ無理ゲーだよなあ…
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 18:34:43.68 ID:VXDQCWjrO
叩かれるあまり悔しくて自演しちゃったかー
100 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/13(土) 23:01:17.91 ID:Q+RJLMSmO





私が小学生の頃、「戦争」が始まった。深海棲艦と名付けられた世にもおぞましい怪物達によって世界中の国々が侵略され、多くの犠牲者が出た………らしい。

何故不確定的な語尾になるのかと言えば、私は実際にその光景を眼にしたわけではないからだ。テレビでは連日深刻な表情をしたアナウンサーが苦境に立たされる人類の有様を報じていたけれど、6年目も後半に差し掛かったとはいえまだ小学生だった私から見れば「テレビ画面の向こう側」は全く関係の無い隔絶された世界。幾ら数字や現状を並べ立てられたところで、実感も興味も持てやしなかった。

ゴジラやガメラ、或いは貞子やペニーワイズと同列の“テレビの中の出来事”───当時の私にとって、【深海棲艦】とはせいぜいその程度の認識。

他に覚えている印象を無理やり付け加えるなら、“お小遣い減額の元凶”だろうか。

深海棲艦の襲撃によりシーレーンが壊滅し、輸入大国である日本の物価は当時軒並み跳ね上がった。多くの一般家庭同様貧しくもないが決して裕福でもなかった私の両親は節制に迫られ、真っ先に削減対象となったのが私の小遣いというわけだ。

毎月の第一日曜日に手渡される一枚の1000円札が一枚の五百円硬貨に変わったときの絶望と悲哀は、今でも夢に見るほど克明に覚えている。
101 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/13(土) 23:05:34.14 ID:Q+RJLMSmO
ともあれ、あれから六年が経ち高校の卒業を間近に控えた今まで、幸運なことにその認識を変える必要はないまま過ごせた。

勿論深海棲艦がどれほど恐ろしい犠牲を出したのかはニュースや資料で知っているし、【学園艦】という洋上の教育施設で過ごす以上不安が皆無だったと言えば嘘になる。ニュースで度々流れる犠牲者数や深刻な影響の意味を読み取れるようになってからは、深海棲艦の恐ろしさというものも十分に理解できる。

だが一方で、日本は出現当初の攻勢を凌ぎきり【艦娘】の実装によってその脅威を近海からは完全に駆逐した。自衛隊は戦訓を積み、太平洋側の離島には強力な防護施設が幾つも建設され、何より二万人を越える艦娘が居る───そうした実情から、深海棲艦の恐ろしさ自体は理解しても私は相変わらずそれをどこか他人事のように捉えていた。

勿論、原隊復帰になった蝶野教官やヨーロッパで義勇軍に参加していた西住ちゃんの友達、或いは陸の大洗町の方で時折見かけるようになった反戦・反艦娘デモなど全く影響が皆無というわけではない。それでも、他の国のように街に爆弾が降ってくるわけでも海岸に駆逐艦の群れが上陸してくるわけでもない。

自分から海外に、それも艦娘の守りが手薄な場所にでも行かない限り、戦争も深海棲艦の侵略も相変わらずテレビの中の出来事。私がよく知るこの学校での日々は、この先もずっと続いていく。

そう、思っていた。









ずっとそうなるように、願っていた。
102 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/13(土) 23:10:36.68 ID:Q+RJLMSmO


だと言うのに、だ。

私がよく知る街並みが、燃えている。

私がよく知る青空を、爆弾を抱えた戦闘機が飛び回っている。

そして私がよく知る人は、たった今目の前で居なくなった。

嗚呼畜生、神様ってのが居たらきっと性根の腐りきったクソ野郎に違いない。いたいけな少女があれだけ必死に祈ったってのに、全く真逆の結果を鼻先に突きつけやがって。

「西住ちゃん!宇津木ちゃん!!」

いつか地獄に落ちた暁には、必ず神様のケツを渾身の力で蹴り飛ばしてやる───そう決意しつつ、私は樹木園から飛び出して我らが隊長の元へと駆け寄る。

秋山ちゃんも澤ちゃんも、樹に縋り付くようにして立つのがやっと。足が生まれたての子鹿のようにがくがく震えて動ける有様じゃない以上、私が行くしかない。

「二人とも大丈夫!?怪我は無い!?」

「私は大丈夫です、宇津木さんも見た限りでは……っ、宇津木さん、ダメッ!!」

「だって……せんせ、今落ちて……私のこと庇って……やだ、やだ……」

抱き留める西住ちゃんの腕の中で、宇津木ちゃんの視線はぽっかりと口を開け黒煙を吹き出す穴に固定されている。直下に浄水パイプでもあったのか、流れる水の音が轟々と聞こえてくる。

身を捩って西住ちゃんの拘束から逃れようとしつつ、宇津木ちゃんの両手は何かを掴もうとするように難度も空を掻いていた。

「っ、宇津木ちゃん落ち着いて!大丈夫、大丈夫だから!」

私自身眼にしているのが辛く、半ば私情混じりで強引にその動きを手首を掴んで終わらせる。何が大丈夫なのかなんて、言っている私にも解りゃしない。

ただ、今が大きなチャンスであることだけは間違いなかった。

吹き出す黒煙が煙幕の役割でもしてくれているのか、深海棲艦機は上空を飛び回りながらもまだ次の攻撃に移る様子は無い。今のうちに樹木園まで辿り着けば、後は指定避難場所まで突っ走るだけだ。
103 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/13(土) 23:15:39.56 ID:Q+RJLMSmO
脳裏を過ぎる「肝心の救助はくるのか」と言う疑問に背筋が冷えるが、頭を振って追い出す。

実際来なかったとしても、自分達だけでこの状況を打破できる代案を出せる程私は英知に優れちゃいない。出来るのは、ただ助けが来ることを祈るだけ。

……尤も、祈る先は神なんかじゃない。私が神に祈ることは金輪際ないだろう。

「宇津木ちゃん、いこっか!」

「でも……せんせ……ブーン先生が……」

「だから大丈夫だよ!!!

西住ちゃん、悪いけど宇津木ちゃん背負って!私が乗せるの手伝う!」

「はい!

そう言えば、他の人達は───」

「生徒会長の五十鈴ちゃんが先導して避難場所に向かった!私達も急ごう!!」

宇津木ちゃんの視線は相変わらず穴の方を見てはいたけれど、幸いもう暴れる気力すら無いのか大人しい。だらりと弛緩した彼女の身体を、西住ちゃんがしっかりと背負えるよう押し上げる。

本当なら上級生の私が背負う役をやるのが様になるのだろうけど、生憎映画館で中学生料金を取られそうになるこのちんちくりんな体格では荷が重い。ここはかっこつけるよりも効率重視、餅は餅屋だ。

「っし、固定も完了!西住ちゃん、走って!」

「了解です────あれ?」

「ん?」

駆け出しながら、西住ちゃんは正面の樹木園ではなく横を見ていた。

つられて、私も其方に視線を向ける。
104 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/13(土) 23:32:26.77 ID:Q+RJLMSmO

<ヽ;`∀´>

「………二田巡査?」

先ず、見覚えのある顔が此方に向かって駆けてくるのが見えた。野球のホームベースを思わせる角張った顔と、ピンセットでつり上げたみたいな両眉が特徴の大洗女子学園に在籍する保安官の一人………二田瓜生(にった・うりゅう)巡査だ。

彼に先導される形で、その直ぐ後ろにも同じく保安官の制服を着た幾つかの人影。そして更にその後ろからは何十………何百人という人の波が続く。多くが船舶科や水産科の制服を着ていたけれど、コック服や白衣、清掃業者の制服に身を包んだ人もおり統一感はあまりない。

普通に考えれば、二田さんたち保安隊が避難民を保護して引き連れてきたと考えるのが自然だ。学園内に続く正門こそ新手の───ブーン先生が【ヌ級】と呼んだ空母型深海棲艦に塞がれているけれど、大洗女子学園の全幅は1.1kmにも及ぶ。他にも学区や学園内に入れる入り口はあるので、其方から逃げてきたと思えばおかしな事ではない。服装・年齢層の多様さについても、居住区の人達も一緒に逃げてきたのだと考えれば辻褄が合う。

だけど私は、何故かその集団に奇妙な違和感を覚えた。
105 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/13(土) 23:57:16.15 ID:Q+RJLMSmO
「前会長、西住殿、ご無事で!」

「お陰様で!」

樹木園に飛び込むと、秋山ちゃんが出迎えてくれた。まだ顔面蒼白ながら、何とか最低限立ち直ってはくれたらしい(澤ちゃんの方は子鹿状態を継続していたけれど)。

「……前会長、二田巡査達は一体どうしたのですか?」

「私達と同じ方角に向かってますよね。深海棲艦から逃げるのなら当然なんだけど……」

流石と言うべきか、西住ちゃんと秋山ちゃんも二田さんたちの様子がおかしいことに気づいたようだ。本来なら私達も一目散に指定避難場所まで走るべきだけど、集団の異様さが一択である筈の選択肢を素直に選べなくしていた。

(………あれ?)

ふと、違和感の正体を理解する。

避難民と思われる集団が、二つの層に分かれていた。二田さんや他の保安官の人達に背中を押され、手を引かれ、転びそうになるところを支えられながら逃げてくる4、50人前後の集団と、その後ろを追う形で走る何百という群衆。前者の層が例えばお年寄りや子供の集団なのかとも思ったけれど、ざっと顔ぶれを見る限りそんな様子はない。

なにより────後方の“群衆”を構成する人々は、何故か手にバットや鉄の棒等を持っている比率が高いような気がした。

「………角谷さん?」

「なんか」

ヤバい気がする。そう口にする直前、保安官の一人が反転する。





「────え?」

乾いた銃声が、私達のところまで届いた。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 00:01:20.12 ID:WO5MW5TL0
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
107 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/14(日) 00:20:53.95 ID:SlbyUNX4O
眼前で起きた信じがたい光景を脳が受け止める前に、その保安官は更に二度引き金を引いた。ニューナンブM60が弾丸を吐き出し、群衆の先頭を駆けていた中年の女の人の割烹着が真っ赤に染まる。

だけど、目の前で一人射殺されたというのに“群衆”は止まらない。前のめりに倒れ込んだ女の人の身体を踏み越えて、船舶科中等部のセーラー服に身を包んだ人影がその前に躍り出る。

「──────っ!!!』

彼女は、何事かを叫びながら思い切り振りかぶった鉄パイプを何の躊躇もなく保安官めがけて振り下ろした。

グシャリ。

反応が遅れた保安官の頭が、真っ赤な液を撒き散らしながら潰れた。膝から力が抜けて倒れ込んだ彼の周囲に、後続してきた人々が群れ集う。

グシャリ、グシャリ、グシャリ。

鉄パイプが、ゴルフクラブが、トンカチが、シャベルが、ポリバケツが。形も種類も雑多な獲物が、だけど同じ“殺意”を込めて振り下ろされていく。

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。

「ひぁっ………あぁ………」

遠目でもはっきりと解るほど大量の血が、人々の足の隙間から流れ出てアスファルトに赤い放射状の模様を描く。

間の抜けた悲鳴を上げて、澤ちゃんが今度こそ膝から崩れ落ちる。
108 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/14(日) 00:23:28.14 ID:SlbyUNX4O
時間的に寝ないとなので一旦切ります。明日も同時間帯に更新予定です
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 00:27:45.46 ID:ZzecuYKuO
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 08:06:59.03 ID:vZcPE8aA0
おつおつ
いよいよ狂乱化が止まらんが、介入はどうなるやら…
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 20:00:33.35 ID:N9uAqfBP0
112 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/14(日) 23:49:06.88 ID:/5QyWZpb0
本日更新厳しいので明日の昼と夜で2更新とします
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 07:04:49.31 ID:qhkM5P7G0
しなくていいです
114 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/15(月) 14:40:11.46 ID:lwd7GqTtO
まんま、ゾンビ映画の一場面を切り取ったかのような光景だった。

燃え盛る街、逃げ惑う民間人、それを守る警官隊、おまけにここは【学園艦】という隔絶された空間。立ち向かおうとした警官の一人が数の暴力に呑み込まれるところまで、誰かが脚本でも書いたみたいにお誂え向きだ。二田さんたちを追う“暴徒”は走ってきてきているけど、【ワールドウォーZ】や【新感染】で走るゾンビもわりかし知名度を得つつある昨今ならそんなに大きな問題じゃない。

……ただ、映画のゾンビが多くの場合疫病やらウィルスやら呪いやらで理性を失った死者であるのに対し、

「待てオラァ!!』

『殺せ、殺セ!!」

「逃げないでよ、痛くしないカラさぁあああ!!』

保安官を一人殺し、なおも二田さんたちを追って樹木園に向かってくる“暴徒”は……言葉を発し、武器を構え、明確な意志を持っている。

抱く感情が一様に“殺意”であるという点を除けば、私には彼らが普通の人間にしか見えなかった。
115 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/15(月) 15:42:05.19 ID:lwd7GqTtO
いつの間にか、叫び声が意味を持つ「言葉」として耳に届くような近さまで距離が詰まっている。逃げなければいけないのに、私の足は地面に根でも生えたみたい動かせない。

「会ち、角谷先輩、逃げましょう!ここに居ると危険です!!」

「あっ………」

西住ちゃんが私の腕を引くが、まるで筋肉が全部綿になっちゃったみたいに下半身に力が入らない。引かれるままに私の身体は腰から崩れ落ち、お尻が冷たい地面を踏みしめる。

「逃がすかクソがぁっ!!』

「早く回りこめ!!あいつら女子供も連れてるから逃げ足遅いぞ!!』

「このままだと追いつかれます!!」

「クソッ、機動保安隊は総員反転しろ!!」

互いに指示を出し合いながら、二田さんたちを囲い込もうと広がっていく“暴徒”たち。それに対して、今度は五、六人の保安官がいっせいに振り向いてその進路に立ち塞がる。

他の区画の担当だったのか正門での空襲から生き延びた部隊がいたのか、全員がH&K MP5を構えていた。

「撃ち方ぁ、始め!!」

放たれた弾雨が“暴徒”に殺到する。頭を、胸を、腹を鉄の弾丸が撃ち抜く湿った音が私達の下まで届く。

噎せ返るような血の臭いが、辺りに充満した。
116 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/15(月) 17:21:22.88 ID:lwd7GqTtO
「イギッ……』

『あぁあああああっ!!!?いでぇっ、いでぇええええっ!!!?」

「ぎぃっ、がっ………』

サブマシンガンが奏でる、リズミカルで軽快な音。そしてそれを塗りつぶすようにして、銃弾を受けた“暴徒”達が上げる断末魔の大合唱。

トラウマものの協奏曲に彩りを添えるのは、飛び散った臓物や脳漿、そして全身に鉄の弾丸を埋め込まれて転がる何十という屍体の山。

「ウブッ、おぼっ、うぉええええええええ………」

秋山ちゃんが近くの木に腕をつき、身体を折り曲げて吐瀉物を撒き散らす。私も、生まれて初めて嗅いだ“屍臭”という奴に喉元まで強い酸味を伴った何かがこみ上げてくる。

宇津木ちゃんと澤ちゃんが既に意識を手放していたのは、不幸中の幸いだった。

「先輩、優花里さん、大丈夫ですか!?二人とも気をしっかり持って、今のうちに避難場所まで向かわないと!」

西住ちゃんも顔面蒼白だったけれど、彼女はそれでも気丈に私と秋山ちゃんの安否を気遣ってくれた。私も何とか立ち上がろうとしてみるが、力が全く入らない。

「ごめん、西住ちゃん……私も、腰が……抜けて……」

「っ、優花里さん!澤さんをお願い!会……角谷先輩と宇津木さんはこのまま私が!」

「うえぇ……ふぐっ……り、了解です!」

「先輩、失礼します!!」

制服の肩口を掴み、西住ちゃんは私の身体を樹木園の奥へと運んでいく。

「────っ!───っ!!」

「────、────!!!」

<ヽ;`∀´>「……っ!」

引き摺られながら再び後方を見やれば、しんがりの機動保安隊は牽制射撃によって完全に暴徒の突出を抑え込んでいた。指揮官に何事か言われて頷いた二田さんが歩を早め、“暴徒”との距離を引き離し始める。

(………逃げられそう、かな)

私と宇津木ちゃん、小柄とはいえ女子校生二人を運んでいるため西住ちゃんと言えど歩みは遅い。けれど、しんがりの保安隊が“暴徒”を完全に足止めしてくれているお陰で、距離は開く一方だ。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/16(火) 23:00:10.21 ID:BO37H/1UO
面白くないね
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 00:37:48.75 ID:5McSEgOe0
ダイジョブ?
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/17(水) 02:55:59.12 ID:6yauoJU/O
日本語が怪しいところそこそこあるけど、中学生?
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 06:47:36.10 ID:Ao4EQnwk0
留学生かもしれないからあんまりなこと言うもんじゃないよ
121 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/17(水) 23:03:25.41 ID:R09KI/sf0
ただでさえ銃の所持が厳しく規制される日本、そこに学園艦という条件も重なれば手に入る武器はたかが知れている。サブマシンガンとはいえ弾幕展開が可能な銃火器を装備した人員がある程度集えば、バールやらバット如きでは数を頼みにしても容易には突破できない。

『う……ぁ………」

「ひぃいいいいっ!?』

それに、“暴徒”の勢いそれ自体も明らかに鈍っている。仲間が目の前でバタバタ薙ぎ倒されりゃ当然の反応だし、武装の使用にかなりの制約が掛けられている日本の警察組織がシカゴ警察も真っ青な弾丸の大盤振る舞いで反撃してきたのは向こうとしてもアテが外れたに違いない。実際、私も保安隊の積極果敢な反撃には少し驚いている。

(……………)

そう、“少し”驚いただけだ。

挨拶すら交わしたこともない顔触れが殆どとはいえ、それでもこの学園艦に───西住ちゃん達と一緒に必死に守った大洗女子学園に住んでいた人達が、目の前でドンドン死んでいる。その異様な光景に相対しているのに、恐怖を多少抱いただけで悲しみも怒りも沸きやしない。

相変わらず腰が抜けた状態でトロイア戦争のヘクトールみたいに地面を引き摺られていきながら、頭の中の妙に冷めた部分が現状を呆れ返るほど冷静に受け止め、分析していた。

(こんな冷たい性根だったんだねぇ、角谷杏って人間は)

自嘲の笑みが、無意識に口元を歪ませる。山ほど人が死んでいく様子を目の前にして笑うとは、他人から見たらきっとサイコパスにしか見えないに違いない。
122 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/17(水) 23:22:18.46 ID:R09KI/sf0
(別に、自分が立派な人間だと思ったこともないけどね)

西住ちゃんを無理やり戦車道に引きずり込んだり、彼女を強引な勧誘から救うため生徒会室まで一緒に乗り込んできた武部ちゃんと五十鈴ちゃんを脅したり、どんな批難をされてもおかしくないことには何度も手を染めてきた。二度目の廃校の危機に際しては、正直法的にグレーゾーンで止まっているのかすら怪しい搦め手も幾つか使った。

どれも褒められた行為じゃないけれど、この学園艦を、そしてその上の人達を守るために必要なことだと信じてやったことだ。その想いは今でも変わってないし、後悔もしていない。

だというのに、そうまでして守ろうとしたものがこれだけ無惨に蹂躙されても、そうまでして守ろうとした人達が目の前で殺し合いをやっていても、私の眼からは涙一滴零れやしない。怒りのあまり歯が砕けるぐらい食いしばられてもいい口は、締まりのない苦笑いを浮かべたままだ。

(…………私自身だって助かったとまだ決まったわけでもないのに、暢気なもんだ)

だいたい私達や先に避難した学園内の人間が全員助かったとしても、それは艦内に居た人間の1/3にもなりはしない。残りの二万を越える人達は取り残されることになる。そしてその人達を見捨てて、私はこの艦から逃げようとしている。

「角谷先輩?」

「ははっ、うん、なんでもないよ西住ちゃん」

それこそ“今やるべき事ではない”と頭では解っていても、一度ハマった「ドツボ」からはなかなか抜け出せない。

気遣ってくれる西住ちゃんに生返事しながら、私は底なし沼に足を踏み入れたかのように物思いに沈んでいく。
123 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/17(水) 23:26:32.10 ID:R09KI/sf0












─────そして。

<ヽ;`∀´>「ニダ!?」

「ヒッ………」

樹木園の向こう側で……指定避難場所がある方向で沸き上がった爆発的な悲鳴によって、私は思考の坩堝から強制的に現実へと引き戻された。
124 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/18(木) 00:15:20.18 ID:pWIW7eUO0
何百という人間が全力で走る、地鳴りのような足音。統一感が皆無に等しいそれは、足音の主達が酷く錯乱している様子を私達に伝えながら猛烈な勢いで近づいてくる。

それに伴って叫び声の内容も当然聞き取れるようになっていくんだけど────その内容は、到底私には理解しかねるものだった。

「いや、いやぁあああああ!!!やだ、噛まないで、噛まないでよぉおお!!」

「いだぃ、いだぃいいいいいいっ!!?」

「足が、俺の足が食われ………いぎいっ!!?」

「逃げて逃げて逃げて!!無理、あんなの無理!!」

「食べないで、食べないで下さい!!助けて、誰か助けてぇ!!!」

耳を覆いたくなるような、甲高い悲鳴の数々。それこそ、まるでゾンビ映画やゾンビアニメ──昨今流行の萌え路線じゃなくて正統派の方──から切り取って大音声で流しているような有様に、じわりと全身から汗が噴き出す。

確かに樹木園の入り口の方でも現代日本とは到底思えない殺し合いの真っ最中だが、機動保安隊と交戦している“暴徒”の群れにカニバリズムのケがあったようには見えない。とはいえ、既に深海棲艦が学園艦で暴れ回っているという“現実”の前では人食い部族の襲撃やゾンビの出現は十分あり得てもおかしくない出来事の範疇だ。

生い茂る木々の向こう側でどんな惨状が起きているのか、ぞっとしない想像に背筋が震える。

そして、それに追い打ちを掛けるようにして。

『─────キャハハハハハハハハハハハハ!!!!!』

今度は、“笑い声”が辺りに響き渡る。
125 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/18(木) 00:42:52.03 ID:pWIW7eUO0
数百人が上げる悲鳴や断末魔の中にあって、それはまるで直接頭の中で響かせたみたいにはっきりとここまで届いた。

生後数カ月の赤ん坊が上げたような………それでいて、酷く嗄れて耳障りな笑い。声自体のおぞましさとそれがこの場で響くという不自然さが、私の身体を芯から冷やす。

「に、西住殿……今のは……」

「……五十鈴さんたちが心配だけど、今は一旦様子を見ます。秋山さんも動かないように。角谷先輩、動けますか?」

「あ、はは………少し力は入るようになったかな」

すっかり怯えきって縮こまった秋山ちゃんに的確な指示を出しながら、西住ちゃんが腰を屈めて私の顔色を覗き込んでくる。

……心底から私や秋山ちゃん、それに宇津木ちゃんや澤ちゃんを心配してくれている表情だ。この期に及んで自然とそういう態度が取れるこの子は天使か何かだろうか。

「とはいえ、まだ立てそうもないけど。西住ちゃん、最悪私は置いて逃げていいからね?」

「そんなことは絶対にしません。力がある程度入るなら、移動速度を上げるため私が肩を貸すので」

「────後ろです西住殿ォ!!!」

「西住ちゃん、危ない!!」

「──────!!!』

彼女の後ろで鉄パイプを振りかぶる人影。

私と秋山ちゃんが、同時に悲鳴に似た叫び声を上げる。




鈍い打撃音が、私の耳朶を打った。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 01:19:39.57 ID:y4jvC6gb0
西住殿ォwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwし、し、し、し、死なないでぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 08:33:54.03 ID:adeupEY7O
クソワロwwwwwwwwwwww
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 10:10:48.76 ID:XbG8xJpA0
おつおつ
何が怖いってこんな惨状が、世界中同時多発的に起きれば人類の詰みっていう…
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/18(木) 16:17:50.53 ID:oqxyPqgN0
いつまで粘着荒らし君は居座るのかな?
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 17:09:46.81 ID:XbG8xJpA0
>>129
一番律儀で熱心なんだし、もう気にしなくていいのではw
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 17:13:41.81 ID:adeupEY7O
顔真っ赤だけどどうした?
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 21:40:36.34 ID:tLdLwgpSO
>>1、よくやったな。
それじゃ、リセットボタンを
押しながら電源を
OFFにしなさい。
わかったね。
ガチャン ツーツーツー
133 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/18(木) 23:04:08.54 ID:pWIW7eUO0
人体は、案外脆い。脳という極めて重要な器官を守るためにとりわけ丈夫に発達したのが頭蓋骨だが、それだってやろうと思えば人間の力でも簡単に破壊できる。ついさっき、保安官の頭が潰されたように。

男が西住ちゃんに向かって鉄パイプを振り下ろしたとき、同じ光景が繰り広げられると思った。だから、私は咄嗟に眼を瞑ってしまった。

(────あれ?)

でも、すぐに違和感に気づく。

打撃音は確かに響いたけれど、それは保安官が殺されたときとは似ても似つかない随分と乾いたもの。それに、西住ちゃんが倒れる音もしなければ私に対する追撃も一向にない。

「に、西住ちゃん……?」

震えそうになった声を辛うじて抑え、恐る恐る眼を開ける。

真っ先に眼に入ったのは、眼前で木の幹にめり込んだ鉄パイプ。相当な力で振りかぶられていたらしく、幹の陥没は軽く1cmに達するだろうか。

「…………Shit!!』

そして、そのパイプを必死に窪みから引き抜こうとする大男。おそらく、学園外どころか国外からの観光客なのだろう。顔つきも身長も横幅も何もかもが日本人離れしている。

「Damn……!』

───最後に、その外国人が巨体を揺すり、金髪を振り乱し、口髭を震わせて引き抜こうとしている鉄パイプは。

「……………」

“大洗の軍神”なんて大層な渾名で呼ばれる細身の高校二年生が、困ったような表情を浮かべながら右足一本で完全に抑え込んでいた。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 23:11:28.66 ID:y4jvC6gb0
お、満喫行ってまで自演か。ご苦労!
135 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/18(木) 23:12:57.26 ID:pWIW7eUO0
「あの、ごめんなさい!!」

「わわっ!?」

「きゅうっ!?」

西住ちゃんが発した謝罪は、彼女が手を離したことで仰向けに倒れた私に対するものだろうか。地面に投げ出された宇津木ちゃんに対するものだろうか。

「────What!?』

或いは、眼前の外人に対するものだったのだろうか。

とにかく、彼女はその言葉と同時に、木の幹に置いた片足を起点に跳躍した。

「ガッ………!?』

空中で身を捩り、足を振り上げ、全体重を乗せて叩き込まれる踵落とし。幾ら華の女子校生の体重とはいえ、跳躍による勢いもある。

当たり所次第では簡単に人を殺せただろう威力だけど、それを肩口に落としたのは西住ちゃんの優しさだろう。

「Fuck!! Kill you!!』

だけど、その好意を目の前の外人は──“暴徒”の一人は理解しなかった。鉄パイプは手放してしまったけれど、今度は巨大な拳を西住ちゃんめがけて突き出す。

「っ」

「ゴァッ………!?』

早業。彼女のソレはまさに、この言葉がぴったりと当てはまる動きだった。

肘打ちで拳の軌道を反らし、ボディに掌底を打ち込んで身体を折らせ、返しの裏拳で顎を打ち脳を揺らす。私は別に格闘技に詳しくないし実技の喧嘩はからっきしだけど、それでも西住ちゃんの動きが格段に洗練されているものであることは解る。

「グゥッ………』

外人は最後の顎打ちで一瞬動きを止めた後、ぐるんと眼球を回転させて動きを止め前のめりに倒れ込んだ。死んでいる感じはしないけど起き上がる様子もない。

西住ちゃんの最後の一撃から予測するに、軽い脳しんとうによって意識を失ったのだろう。
136 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/18(木) 23:38:43.08 ID:pWIW7eUO0
ただ、襲来した新手の“暴徒”は外人だけではなかった。

『ひぃああっ!!!」

「おらぁっ!』

更に二人が、武器を構え向かってくる。ガリッガリの………肉体改造する前の猫田ちゃんみたいな体格の男がプラスチックのバットを、そしてランニングウエアを身につけた筋肉質な女の人が鉄製のスコップをそれぞれ西住ちゃんめがけて振りかぶった。

「ふっ!」

「イッテぇ……!?』

『ギュッフ」

西住ちゃんも、動く。鋭い呼気と共に上段蹴りを繰り出してスコップの方の軌道を反らすと、そのまま男の方に踏み込んで肘打ちを腹に。男は、まるで潰れた蛙のような声を上げて沈黙する。

「てめぇ……わぶっ!?』

「やっ!」

体勢を立て直したところに蹴り上げられる土。視界を奪われたスコップ女の懐に跳び込み、西住ちゃんが可愛らしいかけ声とは裏腹にエッグい勢いで膝を入れる。

「ゴボォエエエエエ……』

スコップ女はビシャビシャと吐瀉物を撒き散らしなが地面に横たわり、しばらく痙攣した後動かなくなる。

………あれ死んでないよね?大丈夫だよね?
137 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/19(金) 00:07:50.39 ID:QNL4JPRg0
「角谷先輩、宇津木さん、どちらか動けますか!?」

「ええと、ちょっと動けるようになってきた、かな?!」

「………あれ?私、なにがどうなってるの……?」

「でもまだ宇津木ちゃんはダメっぽいや!」

「では、申し訳ないですけど宇津木さんを連れてもう少し下がってくださ……いっ!」

「ぶぉっ……』

回し蹴りを顔面に浴びて、カッターナイフを振りかざして突進してきた男が薙ぎ倒される。

「優花里さんも先輩と一緒に退いて私の後ろに!向こうからも暴徒がドンドン来てる!」

「で、でも……」

「早く!!」

「ぎぁっ!?』

「ひぇっ!?わ、解りましたぁ!!」

西住ちゃんを置いて下がることを躊躇した秋山ちゃんも、直ぐ近くまで迫っていた暴徒が西住ちゃんの投げた鉄パイプで気絶する様を見て慌てて私と宇津木ちゃんの方へ駆けてくる。その間にも、まだ疎らながらそれでも着実に数を増やす“暴徒”を西住ちゃんは次々と地に沈めていった。

魔女っ子アニメのヒロインがプリントされたシャツを着た、でっぷりした体躯の男の人を掌底で顎に一撃加え眠らせる。

口元を×印が書かれたマスクで覆い竹刀を構えた、一昔前の不良みたいなファッションの船舶科生徒にボディーブローを打ち込む。

最初の外人より更にガタイがいいタンクトップを着た黒人の意識を、跳び蹴りで刈り取る。

明らかに、高校生の動きじゃない。さっきまでの光景がゾンビ映画なら、今度のこれはさながらジャッキー=チェンのカンフー映画だ。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 00:42:32.04 ID:0F226JGJ0
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな
そろそろ底辺社畜単発あらし君が沸く時間やな






  そ  ろ  そ  ろ  底  辺 社  畜  単  発  あ  ら  し  君  が  沸  く  時  間  や  な
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 01:44:20.95 ID:tFEjihQA0
おつおつ
ヒロインが自分で切り開くのか…w
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 13:04:07.16 ID:XTzI0O3n0
これが西住流…
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 21:15:57.28 ID:rCTPONzg0
オツ
142 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/19(金) 23:01:19.05 ID:waLrkwuYO
ふと、ブーン先生の授業を思い出した。“戦車道史”の一回目で習った、日本戦車道の礎となった人物の逸話が脳裏に蘇る。

「……女性の身たりと雖も、百発百中の芸殆ど父兄に越ゆるなり。人挙て奇特を謂う。この合戦の日殊に兵略を施す」

口を突いて自然に出てくる、『吾妻鏡』の一節。目の前には、懸命に、鮮やかに、そして雄々しく、私達を守るために技を振るう西住ちゃんの後ろ姿。

実物なんて知りもしないが、そこに思わず800年前の女傑の姿を幻視する。

「童形の如く上髪せしめ腹巻を着し矢倉の上に居て、襲い到るの輩を射る。 中たるの者死なずと云うこと莫し」

撃てば必中守りは固く、進む姿は乱れ無し。

鉄の掟、鋼の心。

「……これが、西住流」

彼女に面と向かってそれを言えば、きっと複雑な気持ちにさせてしまうだろう。困ったような笑みを浮かべるその裏で、彼女がとても傷つくことになってしまうかも知れない。

それでも、私には。

例え戦車に乗っていなくても、例え「勝利」のために振るわれるものでなくても。

今の西住ちゃんの姿はまさしく────“西住流”の体現であるような気がした。
143 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/19(金) 23:17:49.51 ID:waLrkwuYO
既に、西住ちゃんの周囲では優に10を越える“暴徒”が気を失った状態で転がっている。彼女の動きは洗練されていて、更に“暴徒”の殆どは武装しているにも関わらず踏み込みに微塵の躊躇も見せない。

結果、間合いを詰められて得物を思うように使えなくなった“暴徒”達は的確に急所を突く西住ちゃんの打撃であっという間に沈んでいく。

「はぁっ……はぁっ……!」

だからといって、西住ちゃんに消耗がないわけではない。攻撃を受けなければ体力を失わないのは一昔前の格闘ゲームでの話だ。

急所を狙ってくるのは向こうも同じ、それに次の暴徒が此方に辿り着く間隔がドンドン短くなっている。私達の方に一人たりともそいつらを向かわせないために、危険を顧みず懐に“跳び込みざるを得ない”面が西住ちゃんにはある。

「はぁっ、はぁっ……コホッ、コホッ……」

「に、西住殿……」

「隊長……」

14人目の暴徒を倒して素早く次に備えて構えを取ったけど、肩で息をしていて足下も少し揺らいでいる。一人から二人に増えるだけでも彼女の負担を大きく減らせるだろうけれど、気絶している澤ちゃんを含めて私達の中に格闘技経験者はいない。加勢したところで、逆に西住ちゃんの足手まといになっておしまい。

「…………ッ!」

噛みしめた歯からミシリと音が鳴る。太腿に右手の指が食い込み、皮膚を裂いて血を滲ませる。

この学園艦も、私達の“英雄”も、危機に陥っているのに何も出来ることがない。

私は、無力だ。
144 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/19(金) 23:47:15.71 ID:waLrkwuYO
15人目、チェーンバーガーショップの制服に身を包んだ男の人がフライパンを振りかざして突っ込んでくる。足払いを掛け、喉に肘打ちを入れて黙らせる。

16人目、灰色のスーツを着たサラリーマンが大きなコウモリ傘を顔に向かって突き出す。西住ちゃんは手刀で軌道を変えて、みぞおちと首に連続で拳を打ち込み眠らせた。

17人目、工業科のツナギを着た女生徒がスパナを投げつける。さっき倒したサラリーマンのコウモリ傘で西住ちゃんが打ち返すと、「カインッ」と音が鳴って額を抑えた彼女がそのままもんどり打って倒れる。

そして───18人目と19人目が同時に襲いかかってきたところで西住ちゃんに限界が訪れた。

「ヴぁああああああっ!!!!』

「っく……!」

暴徒達が口にする聞くに堪えない雄叫びや罵詈雑言とは一線を画した、正真正銘“咆哮”とでも言うべき大音声を上げながら現れた国技館に居ても違和感がない体格の大男。確実に体重0.1t越えのそいつの全力体当たりを受けて西住ちゃんの足が地面から浮き上がるけれど、それでも彼女はすぐに拘束を振り払って軌道上から飛び退いた。

「どらぁあっ!!』

「うぁっ……!?」

そこに態勢を立て直す間もなく伸びる追撃。建設現場の親方さんか何かだったのだろうか、頭にタオルを鉢巻きのように巻いて作業服を着込んだ男の振るった角材が西住ちゃんの胴を打ち据える。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 23:59:02.28 ID:0F226JGJ0
原作愛のかけらもねぇな
146 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/20(土) 00:13:56.99 ID:zIm45igVO
「うっ………あうっ!?」

「逃げんなクソガキがぁっ!!』

そのまま地面を転がって逃れようとした西住ちゃんのお腹を踏みしめる足。土方風の“暴徒”は、雑巾でも扱うように彼女の身体を引き寄せ角材を振り上げる。

「西住どn「ウボォオオオオオオオオオッ!!!!』

最早耐えられず、澤ちゃんを地面に置いて──というより投げ捨てて──走り出そうとした秋山ちゃん。だけど、待ったを掛ける声を押し潰す咆哮と共に、さっきのデカ物が今度は私達めがけて突進してくる。

「…………グァ?』

だけどその足は、銃声と共に肩口に開いた風穴によって止まった。

<ヽ;`∀´>「────三人とも、伏せるニダ!!」

「秋山ちゃん!宇津木ちゃん!!」

「わわっ!?」

「ひゃっ」

二田さんの叫び声に従い、三人揃って地面に伏せる。彼が構えたニューナンブM60が二度火を噴き、私達の上を弾丸が駆け抜ける。

「ヴォッ』

一発目を眉間に食らい、デカ物が膝から崩れ落ちる。

『カッ」 

「きゃっ!?」

土方風暴徒は側頭部を二発目に貫かれ、殴り飛ばされたような勢いで地面に倒れる。

傷口から吹き出した脳漿と血液が、紅い放物線を空中に描いた。
147 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/20(土) 00:51:08.91 ID:zIm45igVO
「まだ“暴徒”が来るぞ!正面から三名、左手から二名!」

<ヽ;`∀´>「本官が正面をやるニダ、本多先輩は左手の奴等を!宮野巡査は本官の掩護と西住さんの救出、北方巡査はこの四人を保護するニダ!」

「「了解!」」

(*‘ω‘ *;)「任せるっぽ!!」

私達が足止めを受けている間に、後続集団が追いついたらしい。私達の周りに展開した保安官達が各々拳銃を構えて事態の対処に動き出し、10Mばかり後ろでは残りの保安隊に守られた何十人かの人々が疲れと不安をない交ぜにした表情で辺りを見回している。

(;*‘ω‘ *)「それにしても角谷ちゃん、よー生き残っとったっぽ」

その人達の顔ぶれをよく見ようと目を懲らしていると、近くに立つ知り合いの保安官───北方蜜柑(きたかた・みかん)巡査が私に声を掛けてきた。

彼女もまた後ろの避難民達に負けず劣らず疲れ切った顔色だけれど、口元には嬉しそうな笑みがこぼれている。

(*‘ω‘ *;)「正直、あの【空母型】が学園本校舎の方角に現れたとき申し訳ないけど半ば諦めてたっぽ」

「いやいや気にしないでよ。ここだけの話、私だってこの学園艦で生きてるの私達だけかも知れないなんて思ってたし」

それに、西住ちゃんやブーン先生が居なかったらどのみち私だって死んでいた。私と北方さんが生きて再会できたことが奇跡に等しいのは間違いないだろう。

「……あのさ、北方さん達はこの騒動について何か詳しい事知ってる?」
148 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/20(土) 00:54:18.98 ID:LOZkUa2G0
ちょっと中途半端ですが仕事の関係で寝ます。明日(本日)か明後日迄には学園艦棲姫の本格的な出現まで書ければと
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/20(土) 01:02:28.07 ID:GV/WQXVkO
おつおつ
楽しみ過ぎて筋トレ止められない
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 01:34:51.45 ID:AsbLqLgA0
おつです
土壇場で仲間のための殿を果たせるって強すぎるw
ただまだまだ前座で大ボスもいるからなあ…
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 03:18:38.04 ID:T5MewpKMO
他の学園艦の様子も気になるところだ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 08:49:03.78 ID:Bm5L2tQ90
西住流≪自作自演≫
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 21:38:19.97 ID:4oFw+rx40
154 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/20(土) 23:00:50.82 ID:LOZkUa2G0
(*‘ω‘ *)「何一つ知らんっぽ」

即答。

少しだけ和らいでいた北方さんの表情が、再び固くなる。

(*‘ω‘ *)「情報を得ようにも艦外への通信が全く繋がらねえ。防衛省、警視庁、茨城県警、大洗鎮守府、どこに連絡飛ばしても砂嵐。艦内ですら艦橋保安室からの連絡が途絶えて久しいっぽ」

二田さんたちが正面から迫り来る“暴徒”達に対して発砲を開始する。其方に視線を向けながら、北方さんの眼はどこも見ていない。

(* ω  *)「駐在所も半分以上は無反応、辛うじて繋がったところも助けを叫ぶばかりで話が通じない、商業区は至る所で大火災が起きてオマケに学園艦の底からは深海棲艦。生存者を保護したくても、暴動の拡大が治まらずその生存者同士で殺し合いを始めてる………っ!」

語尾が震え、口調が捲し立てるような勢いに変わっていく。満身の力で握りしめられたニューナンブM60の銃床が、微かに軋む。

(#* ω *)「畜生が!!」

やり場のない怒りを、北方さんは近くの木にぶつける。蹴り飛ばされた衝撃でばさばさと枝が揺れ、宇津木ちゃんが怯えて首を竦める。

(#*゚ω゚ *)「何が起きてるかなんて私が知りてえっぽ!!つい2時間前までいつも通り平和だった学園艦が、何が何だか解らねえ間にこの有様だ!!

あの深海棲艦はどっから出てきたんだよ!なんで本土は誰も助けに来ねえんだよ!なんであちこちでこんな暴動が起きてんだよ!!」

「北方さん!やめて下さい!保安官としての矜持を……きゃっ!?」

(#*゚ω゚*)「うるせぇ!!」

西住ちゃんを抱えて連れてきてくれた、宮野巡査と呼ばれた女性の保安官が制止する。だけど、北方さんはそれを乱暴に撥ねのける。

(#*゚ω゚ *)「そうだっぽ、保安官だっぽ私は!ここの生徒や居住者を守るためにここに来てんだっぽ!!

なのになんで、なんでその居住者や生徒を撃ち殺すハメになってるのか教えろよ!!誰か教えろぉ!!」
155 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/20(土) 23:13:17.04 ID:LOZkUa2G0
それは、私がよく知る北方蜜柑巡査の姿とはかけ離れたものだった。

少しぽっちゃりした体躯を揺すって学園艦内を一所懸命走り回り、生徒や居住者がトラブルに巻き込まれればどれだけ忙しくてもすぐに飛んでいく優しく頼もしい保安官。

まだ未婚で、歳も若いに「肝っ玉かーちゃん」なんて渾名を着けられて、それでもその名を呼ばれると楽しそうに笑う────そんな人が今眼を血走らせて、喚き、錯乱している。

彼女の姿こそが、大洗女子学園の“現状”の表れだ。

誰もが憔悴し、誰もが状況を理解できず、何をすればいいのか、どうすればいいのか解らずに惑い悶えている。

この学園艦に居る誰も彼もが、平凡な日常が突然粉々に砕け散ってしまったという現実を受け入れられずにいる。










そして、そんな私達の憔悴など知ったこっちゃないとせせら笑うようにして。

「前方、人影アリ!」

状況は、なおも刻々と悪い方へ変わり続ける。

「指定避難区域の方角から此方に向けて民間人多数が接近!後方に“暴徒”と思われる集団も確認!

避難民の大半は大洗女子学園の生徒・教員と思われます!」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/21(日) 21:57:07.10 ID:lQCst9200
157 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/01/21(日) 23:12:04.56 ID:VyopJgoK0
それ自体は、容易く予想できた「展開」だった。

指定避難場所の方角で悲鳴が上がり、指定避難場所の方角から新手の“暴徒”は押し寄せてくる……そんな状況で“避難場所が襲撃を受けている”という事象が思い浮かばないほど、私の想像力は貧困では無い。

だから、その方向から必死の形相で逃げてくる人の群れを目にした時も、私はまだ動揺していない。寧ろ先生達や風紀委員メンバーと共に懸命に避難誘導に励む桃や柚子、五十鈴ちゃん達の姿を見つけて、他の戦車道履修者の皆もまだ無事だったことに一瞬安堵の息を漏らしたほどだ。

「────ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』

『ヴォオオオッ、グァアアアアアッ!!!」

<ヽ;`∀゚>「………なん、だ、アレ」

…問題は、その後ろから追ってくるもう一つの集団。“それら”を目にした二田さんが振り絞るような声で呻くけれど、その反応は無理もない。

さっき別の保安官の人は、アレを“暴徒”と表現した。だけどあんなものが“暴徒”なんていう生易しいものであるはずがない。

“人間”の枠組みに、入れていい存在であるはずがない。

「「ァアアアアアアッ!!』』

五十鈴ちゃん達を追い立てる【群れ】を構成する“それら”は、確かに一見すると人の形をしていた。四肢があるし、声を発しているし、二本足で立っているし。

だけど“それら”の、

ある個体は顎の下半分がなく、
ある個体はあらぬ方向に曲がった左足を引き摺りながら前進を続け、
ある個体は右腕が神経一本で繋がりぶら下がった状態で、
ある個体は頭の右半分が潰れて、
ある個体は腹のど真ん中に鉄骨のようなものが突き刺さり、
ある個体は頭の鼻から上がなくなっている。

“それら”がどうしてそんな有様になったのか、どうして殆どが致命的に損壊しているのにまだ動けるのか、何故“暴徒”たち同様五十鈴ちゃん達を追ってきたのか、幾つもの疑問に答える術を私は持たない。

『『オ゛オ゛、ウ゛ア゛ア゛!!」」

ただ、“それら”が既に人間ではないことだけは確実だ。
158 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/21(日) 23:20:43.82 ID:VyopJgoK0
【群れ】の速度は、“暴徒”と比較すると明らかに劣る。とはいえこれは、【群れ】の中に身体のパーツが欠損している個体が多い事が原因であり奴等が愚鈍というわけじゃない。

“劣る”というだけで、決して遅くない。五十鈴ちゃん達が少しでも気を抜けば瞬く間にその背を奴等の手が掴むことになる。

「やだ、来ないで!来ないでぇえええ!!」

「誰か助けて………きゃあっ!!」

「っ、大丈夫?!」

追い立てられ、互いに押し合い、恐慌状態になっている大人数が逃げ惑うには木々が生い茂る樹木園の足下はあまりにも悪い。生徒の一人が根にでも躓いたかすっ転び、それを見た磯部ちゃんが急停止から反転して彼女の下へ向かおうとした。

『『『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ」」」

「やっ────」

だけど伸ばされた手を磯部ちゃんが掴む前に、追いついた何体もの“それら”が転んだ女生徒に覆い被さる。

「助け、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!?」

「いっ……!? や、やめろぉ!!」

「キャプテンダメ!!」

生の肉が食いちぎられ、血が飛び散る湿った音がここまで届く。食われている生徒の助けを呼ぶ声は一瞬で断末魔に代わり、それもすぐに聞こえなった。

磯部ちゃんはそんな状況になってもなおその子に手を差し伸べようとしたけど、河西ちゃんが肩を掴んで無理やり押しとどめる。

「もうあの子は手遅れです!早く逃げないとキャプテンまで追いつかれます!」

「………っ、ごめん!」

「磯部さん、早く下がるモモぉーーー!!」

ももがーちゃんが、足下に落ちていた大きめの木片を………というよりは、朽ちて倒れたらしき細木の幹を持ち上げ放り投げる。

「ヴアッ!?』

磯部ちゃん達の直ぐ後ろまで迫っていた“奴等”の内の一体が、直撃を受けて後ろに吹っ飛んでいく。
159 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/21(日) 23:55:45.21 ID:VyopJgoK0
普通の人間なら、例え細いとはいえ木を丸まる一本あの勢いで投げつけられたら受けるダメージは尋常じゃない。死んだっておかしくないし、少なくともしばらくは動けなくて当然だ。

「………ヴォオオオオオッ!!!』

「……うっそー」

だけど、ももがーちゃんに吹っ飛ばされた個体はすぐに起き上がりこっちに向かってくる。

(;*‘ω‘ *)「瓜生、あたしらであの化け物共に射撃するっぽ!!」

<ヽ;`∀´>「バカな、生徒に当たるニダ!!」

(;*‘ω‘ *)「当てねえように撃つんだっぽ!このままだとあの子ら後ろの方はどんどん追いつかれて片っ端から餌にされるぞ!!」

<ヽ;`∀´>「……畜生!

各位撃ち方始め!!避難民を巻き添えにしないよう射撃は正確性を重視しろ!」

「んな無茶な……!」

(;*‘ω‘ *)「無茶でもやるんだよ!撃て、撃てェ!!」

「皆さん、保安官の方達から支援射撃が来ます!身を低くして、射線に入らないように!!」

北方さんたちがニューナンブを構えた瞬間、五十鈴ちゃんが日頃のお淑やかな言動からは考えられないような大音声で叫ぶ。全員ではないけれど、それでもその声に相当数の生徒が反応して腰を折り身を屈める。

「グァアッ!?』

『ギッ、ガッ……」

開いた射線を的確に縫って、二田さんたちの放った弾丸が飛ぶ。“暴徒”と違ってはっきり化け物と確定しているためか照準に容赦はなく、狙われた個体は悉く頭を弾丸で射抜かれた。

────だけど。

「ア゛ア゛ア゛……』

『オ゛オ゛ッ、オ゛オ゛オ゛!!!」

(;*‘ω‘ *)「マジかっぽ」

それでも、“奴等”は倒れない。
160 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 00:21:33.84 ID:0WyQqsPm0
「た、た、対象の動きに変化ありません!なおも向かってきます!」

(;*‘ω‘ *)「んなもん目の前で同じ光景見てんだから言われねえでも解るっぽ!!」

「ガッ───グゥアアアッ!!』

「うわぁっ!!?」

宮野巡査が震える声で報告し、北方さんが彼女を怒鳴りつけながら更に一発別の個体の心臓付近に撃ち込む。食らった個体はもんどり打って倒れたが、すぐに起き上がって逃げようとしていた教師の一人に飛びかかる。

「やめろ離せ……いぎぃいいいいいいっ!!?」

腹に齧りつき、まるでスペアリブでも食べるみたいに柔らかい肉を歯で裂く。激痛のあまり海老反りになったところに更に何体かが押し寄せ、彼の身体はすぐにバラバラにされた。

『ヴァアアアッ!!!」

「ひっ……」

「……Shit!!」

見知った人が“食われる”という異様な光景を見てしまったことで、中等部の制服を着た子が悲鳴を上げて固まる。突進してきた何体かの“奴等”がその身体を掴む前に、アリサちゃんが横っ飛びで彼女のことをかっさらう。

「腹空かせた化け物にその身を捧げる博愛精神は評価するけどね!それアタシの前でやらないで頂戴!」

「す、すみません……」

「謝罪はノーサンキュー、後でバーベキュー奢りなさい!!」

『ヴァッ……」

別の方向から走ってきた個体は足払いを食らって転倒する。その間にアリサちゃんは、中等部の子をお姫様抱っこの要領で抱えて距離を取る。







『────オギィアアアアアアアアッ!!!!』

その後ろで、転倒した個体の頭部が唐突に“破裂”した。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 00:42:49.95 ID:rQqPPYkso
そろそろ話進んだかなと思ったら全然状況動いてないのね
160レス使ってこれだと終わるまでスレ跨ぎそう
162 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 01:05:48.37 ID:0WyQqsPm0
二田さんや、北方さんの射撃によって破壊されたわけではない。元々上半分が空気が抜けたボールのようにヘコんでいたその個体の頭は、ぐしゃりと鈍く湿った音を立てて内側から砕け散る。

そして、“それ”は姿を現した。

『オギァアアアアアアアアッ!!!』

金切り声を上げるソレを“化け物”以外の何と呼べばいいのか、私の知識と語彙では解らない。ただ、ウミヘビとミミズを掛け合わせたような形状の、白くぶよぶよとした細長い胴に黒く固い光沢を放つ頭部を持ったそいつの姿は、一目見ただけで私達人間を害する存在だと本能的に理解できた。

『『『ギィアアアアアアアアッ!!!!』』』

その出現が皮切りとなったかのように、【群れ】が一斉に動きを止めて咆哮する。生々しい破裂音が幾つも幾つも重なり、胴から、頭部から、様々な箇所を食い破って同じ様な形状をした“化け物”達が這い出てくる。

(;*‘ω‘ *)「ほんっっとに冗談じゃねえっぽ…!」

群れを成し、胴をくねらせ、鎌首をもたげる怪物達の姿を前に、レボルバーに新たな弾薬を装填しながら北方さんが呻いた。

(;*‘ω‘ *)「ゾンビに怪獣、今度はエイリアン!大盤振る舞いにも程があるっぽ!」
163 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 01:52:59.65 ID:0WyQqsPm0
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』

「来るぞ!撃t」

怪物の内一体が、予備動作も無しに首を伸ばしてくる。バグンッと音が鳴り、拳銃を構えようとした保安官の首が掻き消える。

この瞬間、狩りは機械的な殺戮に変わった。

「うわっ、うわっ、うぉあああああっ!!!?」

「ひっ……!?」

まるで、鳥が足下の虫を啄むみたいに。

化け物達は首を伸ばし、獲物を───つまり樹木園の中を逃げ惑う私達を、追い立て、絡め取り、食らって行く。二田さんたちが必死に射撃を加えようとするけど、凄まじい速度で自由自在に動き回る怪物に翻弄されて照準をろくに合わせることすらできない。

「く、くそ、当たらない────ぁあああああああっ!!!?」

化け物を捕捉しようとしていた保安官が、後ろから噛みつかれて高々と持ち上げられる。咀嚼音が頭上で聞こえると同時に断末魔はなくなり、ぼとりと彼の下半身が地面に落下してきた。

“暴徒”を殲滅したか撃退したらしい機動保安隊も追いついてきたけど、彼らも二田さんたち同様まともな迎撃はできていない。早々に一人が、牽制射撃を加えようとして襲撃してきた化け物に攫われた。

「正門だ、正門の方に向かえ!樹木園の中だとまともに逃げられない!」

「自殺行為です!正門にも深海棲艦がいるんですよ!」

「逃げ道がない……救助は……」

「どうしたらいいのよ……どうしたら……」

悲鳴と怒号が飛び交い、誰も彼もが逃げることも戦うことも許されずに理不尽に殺されていく。

私自身も、最早どうすればいいか解らない。目の前の惨状を、ただ呆然と眺めている。

(ああ、そっか)

ぐるぐると纏まらない思考の中で、混乱する脳の奥で、妙に冷静な部分がぽつりと呟く。

皆、ここで死ぬんだ。






「アリサさん!発煙筒を使って!!」
164 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 02:19:40.53 ID:0WyQqsPm0
「Roger!!」

その声にすぐ反応できたのは、或いはアリサちゃんも生きることをまだ諦めていなかったのかも知れない。引き続き中等部の子を抱えながら“化け物”と追いかけっこをしていた彼女は、腰元から指示されたそれを───恐らくスパイ活動用の道具として用意していた発煙筒を抜き放ち点火する。

「私の方にも何本か寄越して下さい!とにかくありったけの本数に火をつけて!」

「OK!! ニシズミ、そっちに投げるわよ!!」

まるで手品のように、そこかしこから次々と取り出される発煙筒。どこにどうやってそれだけしまっていたのやら、西住ちゃんに投げ渡された分も含めて優に30本を越えるそれらが、点火されて色取り取りの煙を吐き出し樹木園をたちまち覆い尽くす。

『……ギ?』

『ア゛ア゛……』

そして………視界を奪われ獲物を見失った化け物達の動きが、止まった。

「はっ、諜報活動用に煙幕としても使える特注品よ!!ざまぁないわねファッキンモンスター!」

「煙幕は長く持ちません!保安官の人達も含めて、皆全速力で東へ向かってください!煙を吸い込まないよう姿勢は低くすることを忘れずに!」

煙る樹木園で、中指を突きたてた姿勢を取っていることが目に浮かぶようなアリサちゃんの台詞が響き渡る。そして、その後すぐに西住ちゃんの─────常に私達を導いてきた、“軍神”の声が続く。
165 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 02:20:13.56 ID:0WyQqsPm0


「【真・モクモク作戦】を開始します!

目標は────戦車格納庫です!!」

.
166 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 02:42:19.30 ID:mWaQtlnBO




秋山好子は、その光景を未だに現実のものとして受け入れることが出来ずにいた。

突如としてテレビで流れた、深海棲艦の襲来を報ずる緊急ニュースと街中に響き渡ったJ-ALERT。そして居住区の“下”から、甲板を突き破って現れた巨大な怪物───本物の深海棲艦。

既に、“信じがたい光景”については夫共々一生涯分見尽くした。ついさっきだって、“これ以上信じられないことは起きないだろう”と思った矢先にゾンビとエイリアンを掛け合わせたような怪物の群れに襲われたのだ。

今度こそもうこの先、何が起きても驚かない───そもそも“この先”とやらが存在しない可能性も大いにあったことはさておき、好子が抱いた確信は、たった五分でひっくり返された。







「………これが例の“寄生体”かしら。

確かに、司令官の言うとおりこいつらだけならものすごく弱いわね」

100体は優に超える化け物の群れをただ一人で殲滅した、目の前に立つ銀髪の美少女によって。
167 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 03:26:42.28 ID:0WyQqsPm0
「とりあえず、このエリアは概ね殲滅した……とはいえ、問題はヌ級をどうするかよね。流石に艤装無しで軽空母と正面切って戦うのはキツいし……あ、ねぇちょっと」

「ふぁいっ!?」

「ひゃいっ!?」

大洗女子学園の方を睨みブツブツと一人呟いていた少女が、突然好子達の方を向き声を掛ける。夫婦揃ってびくりと身体を震わせ全く同時に奇声を発してしまったが、向こうはまるで気に掛ける素振りを見せない。

「貴方たち、さっきも言ったけどとっとと避難所に戻りなさい。第5指定避難所ならたまたま“寄り道”したからしばらくは安全よ。

子供が心配なら尚更、ね」

「はい……」

「本当にすみません……」

少しきつめの語尾で釘を刺され、今度は二人揃って悄気返る。

一人娘が危ない───その事を理解した瞬間、淳五郎も好子も他の事柄について冷静に考えることが出来なくなっていた。着の身着のまま店を飛び出し、避難民の流れに逆流して学園に向かい、そしてその途上さっきの化け物の群れに襲われた。

目の前の少女に諭されるまで、二人の頭からは様々なことが抜け落ちていた。自分たちだけで学園に向かったところで、それで何が出来るのか。自分たちが死んだら、それこそ娘はどうなるのか。どころか、自分たちのような素人が保安隊の避難誘導や遅滞戦を邪魔したせいで、娘の避難に影響が出たらどうするのか………

顔から火が出るどころではない。その指摘を化け物の殲滅を終えた直後の少女から受けたとき、二人の背筋は氷を直接突っ込まれたかのように冷たくなっていた。
168 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 03:40:04.25 ID:0WyQqsPm0
「じゃあ私はこのまま学園に向かうから、ここでお別れね。

念を入れてもう一回言うけど、ちゃんと避難場所に向かうのよ」

「はい。このたびは本当にご迷惑を────」

「あの!」

「………なぁに?正直、ちょっと急いでるんだけど?」

深々と頭を下げる淳五郎の横で、好子は踵を返した少女の背に声を掛ける。冷たい眼で睨まれて少し怯んだが、それでも好子の矜持としてこれだけは聞かずにはいられない。

「貴女の名前を、教えてくれませんか?

言葉だけじゃなくて、いつかしっかりとした形のお礼をしたいんです」

「………お気持ちは嬉しいけれど、ごめんなさい。私、名乗れるような大層な者じゃないのよ」

少女は束の間眼を丸くした後、手元に拳を当ててクスクスと笑みを漏らした。






「ただの“追っかけ”だもの、大洗女子学園戦車道チームの、ね」
169 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 03:44:36.57 ID:0WyQqsPm0
今更新ここまで。大変だ2時間しか寝られない。
>>160の点は私としても課題・反省点だと思っておりました。ご指摘いただきありがとうございます。

また23:00頃に再更新できればと思います。
170 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/22(月) 03:45:37.29 ID:0WyQqsPm0
返信先修正
>>160×→>>161
失礼致しました。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 06:01:04.78 ID:uBHoYMTF0
つまんね
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 08:31:11.47 ID:vPFTGTXA0
おつです
叢雲は叢雲で対処しながらだったのか
…というか目の前の惨状に怯まないヒロインの方がやべえw

>169 これだけの密度と更新頻度で書いてくれる人の方が稀なので気にしなくても…そもそも書き手に注文付ける方がアレなんだし
てか数えたら40レス近く話の中身と関係無い無駄話が続いてるだけだから、そこまで気にしなくていいかと
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 11:22:15.37 ID:AxRoM7fWo
お疲れ様です
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 11:22:44.38 ID:AxRoM7fWo
お疲れ様です
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 12:09:16.64 ID:J8WQk23q0

アリサの活躍が嬉しい
そして西住流が半端ない
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 18:00:16.39 ID:bXVZMii5o
おつ
177 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/23(火) 23:23:04.56 ID:Ks7nPssD0


《番組の予定を変更して、引き続きニュースをお送りします。大洗女子学園甲板上に深海棲艦が出現してから1時間が経過しましたが事態収拾の目処は未だに立っておらず、生徒・教員・居住者の安否が気遣われます》

《大洗町は引き続き県警、自衛隊、艦娘による全住民の避難誘導が行われています!沖合いには激しく炎を噴き上げる大洗女子学園の艦影があり、町の人達が避難しながら心配そうに振り返る様子が見られます!》

《警視庁、並びに各県警はパニックの拡大を防ぐため主要地域に機動隊を配備。また、各学園艦における生徒・居住者の退艦誘導と学園艦保安隊による艦内の安全確認も急ピッチで進められていますが、進捗は芳しくありません》

《政府は先程、南鳥島方面から本土に接近する敵艦隊と自衛隊・艦娘部隊が 交戦状態に入ったと正式に発表しました。詳細な戦闘経過は開示されませんでしたが、戦況は優勢であるとのことです》

《在日米軍のポージー=ハメルス司令官は、全戦力を上げて自衛隊・艦娘部隊に協力する用意があると表明。既に三沢基地からは、南鳥島方面の深海棲艦攻撃に向けて第35航空団全機が離陸した事を明らかにしています》

《中華人民共和国の外交部は、“友好な隣国である日本の危機は、我々の危機も同然である”と声明を発表。

また、“軍事的な支援は惜しまない”と迎撃作戦への参加の意思があることを示唆しました》

《専門家、並びに各人権団体からは、深海棲艦に“意志”がある以上対話による解決を試みるべきではないのかという声が上がっています》

《マレーシア、インドネシア、タイ、台湾など東南アジア各国は既に日本・アメリカと全面的に連携する旨を発表》

《“新型”深海棲艦攻撃作戦に投入される戦力は、【第二次マレー沖海戦】に匹敵する史上最大規模のものになると予想されます》





《24x7より、衝撃のニュースをインド国民の皆様にお伝え致します。

政府は先程、アラビア海において深海棲艦の大規模な浮上を確認したという情報を開示。欧州派遣のため近隣海域に停泊していたインド・アメリカ・日本3ヵ国連合艦隊が襲撃を受け、現在交戦状態にある模様です》
178 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/24(水) 00:11:25.61 ID:tuxLkFI50





「────で、結局あれから状況はどうなってんだよクソ眼鏡」

「誰がクソ眼鏡だ。

……何一つとして変わっておらん。状況は常に、“最悪”を更新し続けているのである」

「大洗女子学園は全域で完全に通信が途絶、他の学園艦や沿岸部の避難は人員の不足から遅々として進まず混乱に対する備えから戦力抽出も滞っている。

防空機動艦隊も再編や洋上退避、“支援の用意”と表して領海沿いに武装漁船を並べ始めた中国に対する備えなどで対応に回せるのは【いせ】と【もがみ】だけだ。

第2防空機動艦隊の【かが】じゃあパイロットの一人が暴力沙汰を起こして営倉行きになった」

「第2っていったら、空自の最精鋭集めた花形ではありませんでしたか?」

「流石の取材力であるなパパラッチ重巡。何でも、大洗女子学園に深海棲艦が現れたと聞いた途端半狂乱で無断出撃しようとして取り押さえられたらしい」

「最精鋭がそれとは大分末期だな、名は変われど日本の軍人だというのに肝が据わっていないのはいただけん」

「ええ、【かが】の乗組員はダメダメね、【 か が 】の乗組員は……いだだだだだだっ!!?」

「頭にきました」

「いやマジで頭にキテるから!ちょっ、ツインテールの片方に全体重かけるのやめろ!!」

「たまご」

「いやどっから出したその卵焼き」

「如何なる時でも貴様ら変わらんな本当に」
179 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/24(水) 01:04:54.13 ID:tuxLkFI50
「まぁまぁイボ痔マン、いい加減慣れなよ。そして禿げろ」

「我が輩の遺伝子に賭けてぜってえ禿げねえ。あと後ろ手に隠し持ってる練り辛子しまえクソガキ。

……深海棲艦側の攻勢は、恐らく開戦最初期のものすら凌ぐ過去最大規模のものだ。今確認されているのは南鳥島、フィリピン海、そして今さっき情報が入ってきたアラビア海の3ヶ所だが、今後攻勢地点は加速度的に増えていくことになる」

「間違いなく、此方は手数が足りませんね」

「察しがいいな。他国や他地域の“海軍”からの増援は期待できん。否、来ないことが確定しているといって差し支えはないのである。

……特に、オーストラリアとニュージーランドは致命的な損害を受けておりそもそも増援を出せるような余力がない」

「……天下のアメリカ軍に“海軍”の艦娘部隊まで参加して、しかも指揮はてめえが取ったのに足止めすら出来なかった相手、か」

「いやぁ楽しみですね!!今からわくわくが止まりませんよ!!!」

「えっ、なんで満面の笑みなの怖い」
180 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/24(水) 01:53:27.08 ID:tuxLkFI50
「………頼もしい反応であるが、今回は少し本気で忠告させて欲しい。

奴は────【学園艦棲姫】は、今までの深海棲艦とは比べものにならん重大な脅威だ。“格”や“ケタ”ではなく、“次元”が違う。

それに大洗女子学園の件も、未だかつて前例がない事象だ。どのような事態が発生するのか、我が輩にも全く予想が付かない」

「……ロマさんでも、ですか」

「正直、貴様らを投入するかどうかも最後まで迷った。だが、3ヶ国分の戦力を叩き潰した化け物を倒せる可能性がある艦隊も、これほどの災禍を乗り切れる猛者も、我が輩には貴様らしか知らん」

「“最も強い駒を、最も厄介な場所に”ってか」

「下策中の下策だ。そして………我が輩には、その“下策”以上の策がどうしても思いつかなかった」

「あぁ確かにな。脳筋の俺でも解るクソ策だ」

「っ、すまn」

「───だが、俺は乗る」

「………」

「てめえはクソ眼鏡だし、ロリコンだし、キングダムの49巻俺より先に読んだ挙げ句その事をわざわざ電話で自慢してきたし、冷血非道のロマさんだが」

「お前それホントやめろ」

「テメェは少なくとも、思考停止して無謀な策に飛びつくようなオツムの人間じゃない。

杉浦六真がそれしかないと踏んだなら、策は本当に“それしかない”んだろうよ」

「……………」

「さぁ、准将殿。いつも通り、俺たちに命じろ。

とっとと俺たちを、解き放て」

「……………………全く、貴様と話していると頭痛が治まらんな」






( ФωФ)「“海軍”准将杉浦六真より、【地獄の血みどろマッスル鎮守府】全艦に命ずる。

いつもの如く、敵を殺し尽くせ」

( T)「承った、『准将』殿」
181 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/24(水) 01:55:18.06 ID:tuxLkFI50
盛大な修正入れざるを得ずKONOZAMA.
明日(今日)からようやく学園艦棲姫と殴り合います
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 03:39:31.56 ID:LNPzFPjEo
しょうがないことなんだろうけど、こういうのって主要な登場人物とかは結局死なないんだろうなぁってご都合主義に思えてしまう
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 10:16:58.22 ID:BRJ2gAvA0
キングダムの新刊もコンビニに置かれるようになって嬉しい

破滅が目の前に迫っても、お花畑とお隣さんのブレなさにワロタ
…てか総力戦とは言え瑞鳳も出るのかw
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 10:21:25.87 ID:BRJ2gAvA0
>>182
手法というべきなんだろうけど、「化け物の暴走を凌げずに全滅しました、バッドエンド」じゃ文字通りお話にならないし。
諸々あるけどそこをどう描くかが腕な訳で。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 11:24:05.67 ID:C4tWa+pz0
だが面白くないのが致命的
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 20:29:16.46 ID:u6ue/bknO
拗ねるからあんま言うな
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 21:49:04.89 ID:h+U5N2UZ0
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 07:24:31.56 ID:fVCmGkwnO
自演してしまうから中々書き込めないんやろなぁ
189 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/25(木) 10:01:06.61 ID:WlNx4HUP0
大幅な書きためタイムに入るためしばらく更新止まります。
ご了承下さい。
1/26からの更新再開を予定しております
190 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/25(木) 10:01:34.25 ID:WlNx4HUP0
28日のミスですorz
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 11:08:38.97 ID:AiqnzzCXo
お疲れ様です

気にすんな
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 12:07:28.69 ID:jSd4mgfv0
こりゃ嫌われるわけだ
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 19:05:24.78 ID:5P3ZArel0
構わん
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 21:32:54.16 ID:+YM5pjmA0
おつおつ、待ってますよ〜
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/26(金) 17:31:51.40 ID:xkEv6TjkO
面白くなるのこれ?
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/27(土) 20:45:26.91 ID:t5PaRYJuO
なるとでも?
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 20:36:21.07 ID:P6+LOOVt0
どうせ自演するさ
198 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/28(日) 23:07:41.88 ID:JMvyrWZc0









日米と東南アジア諸国連合────所謂【ASEAN】が、深海棲艦との戦争が始まる以前より中華人民共和国という仮想敵国を共有していたことはある種の幸運といえるかも知れない。

対中協調外交の下で行われた日本とアメリカによる大規模な“投資”を受け、ASEAN加盟各国は空軍・海軍を中心に戦力の増強と最新鋭兵器の導入を促進した。タイ王国の航空母艦【チャクリ・ナルエベト】の竣工──空母ヌ級に早々に沈められたが──や、マレーシア空軍のF/A-18D保有数増大などがその成果の表れだ。

もしもこの時の急速な軍備増強がなければ、開戦当初行われた深海棲艦による苛烈極まる攻勢をこれらの国々が耐え抜くのは不可能だったに違いない。また【艦娘】の実装に伴い行われた大規模反攻作戦において、ASEAN各国と日本が見せた強固かつ迅速な連携も「対中協調外交」が下地にあったからという面は確かに存在する。

ただ背景はどうあれ、東南アジアは日米の、特に日本の経済支援によって陥落を免れた。そして、艦娘実装後は日本の軍事支援によって制海権の奪回に成功した。

大打撃を受けた深海棲艦がアジア方面での活動を沈静化させて以降も、両者は相互防共協定を正式に締結するなど関係を強めていった。今やASEANは、アメリカやドイツ、ロシアと並ぶ日本の重要な同盟勢力の一つとなっている。
199 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/28(日) 23:12:45.67 ID:JMvyrWZc0
尤も、両者の歩み寄りはあくまでも外交的な判断の結果に過ぎない。

ASEAN加盟国にとって、日本は艦娘という強力な【兵器】を多数保有する「アジアの盾」である。同時に未だに同じ人類への牙も隠そうとしない中華人民共和国への抑えにもなり、自国の安全保障の観点から見てその存在は何者にも替えがたい。

日本にとって、ASEANほど都合のよい“友好的な周辺国”は存在しない。ドイツほど遠くなく、韓国と違って価値観の共有ができ、アメリカのように艦娘の利権を水面下で激しく奪い合う必要もない。素直に此方の庇護を受けてくれる一方で共闘に値するそれなりの軍事力も有し、しかも潤沢な市場を提供してくれる存在は、日本からすればこの上なく都合がよかった。

そこに、世間が夢見る「国家間の有情」や「人類の共和」といった美しい思想は介在しない。あるのはただ、「互いの国益に見合うかどうか」、ギブとテイクは見合っているのかという政治的判断の世界のみ。

だが、友情だの理念だのの不確定な要素がないからこそ、両者が結んだ“防共協定”の効力は絶大だった。互いが互いにとって“有益な存在”である以上、失わえば著しく“国益”が損なわれる。故に日本と東南アジア諸国連合は、互いの危機を看過することができない。

実際【第二次マレー沖海戦】では、日本は東南アジアの防衛に文字通り死力を尽くした。極秘裏に“海軍”を動かしてまで守りざるを得ないほど、【絶対優位が確立された市場】が失われることは日本としては避けねばならなかった為だ。

フィリピン海防衛線を突破し日本領海へと北上を続ける“新型”深海棲艦の存在は、ASEANにとって日本の【マレー沖】と同等………否、“それ以上”に重大な事象だった。
200 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/28(日) 23:54:22.33 ID:JMvyrWZc0
日本の失陥とは即ち、アジアにおける艦娘戦力の完全喪失とほぼ同義だ。もしもこれが現実になれば、いかに戦力増強を進めてきたとはいえ独自に保有している艦娘が皆無で深海棲艦への有用な迎撃手段を持たない東南アジアは──のみならず、本来なら中国や韓国、北朝鮮も──誇張抜きに国家存亡の危機に直面する。

フィリピン海防衛線崩壊と、“新型”の日本本土への北上は、詰まるところASEANにとっても全く他人事ではない。

そのため、彼らは日本の要請に──────






─────【学園艦棲姫】攻撃作戦に、文字通り総力を挙げての参加を余儀なくされた。
201 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/28(日) 23:55:47.51 ID:JMvyrWZc0
復帰更新体調の関係もありましてたった3Pですが一旦終了です、明日から本格復帰させていただきます

第一次更新は昼頃を予定しております
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 01:18:13.73 ID:MXT9+GUNo
お疲れ様です
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 01:42:24.61 ID:wknXyXSA0
おつおつ
日本のおかげで友邦以外の余計な部分まで守られるってのも皮肉過ぎるなw
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 10:36:32.27 ID:cL4m4hmkO
働けニート
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/29(月) 17:31:32.90 ID:MBaCdNhro
>>204
お前モナー
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 11:17:00.31 ID:43zTCo6g0
>>205
顔赤くしないで働けニート
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 13:58:17.66 ID:2NfYnN+bo
ゆっくりでもいいからちゃんと完結させておくれ
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 19:46:44.71 ID:0ZiRSFXd0
↑ここまで自演
↓ここからも自演
209 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/30(火) 23:01:34.64 ID:LBS9mjJd0
軍事学者のフレデリック=フラーが提唱した【戦いの原則】の1つに、“物量の原則”がある。軍事行動の際には戦闘力を決定的な地点と時点に集中させるべきとする、所謂【戦力の集中運用】の重要性を説いたものだ。

太平洋上に集結した連合空軍の規模は、この原則を十二分に満たしたといえる。

9カ国、764機。在日・在韓米軍のF/A-18Fスーパーホーネットを主力として、これに航空自衛隊のF-15J並びにF-2支援戦闘機、更に本来退役間近のF-4EJ改と防空指揮艦【いせ】より飛び立ったF-14J 16機が加わる。日本政府の要請に応え、中華民国空軍────台湾空軍からもF-KC-1、F-16が合流している。

そしてASEANは、マレーシア、フィリピン、カンボジア、インドネシア、タイ、ベトナムがそれぞれ保有する戦闘機の7割を出撃させた。特にマレーシア空軍は、虎の子のF/A-18D全機を投入という大盤振る舞いだ。

この時点で、数的な面だけでいっても一年前に行われた【第二次マレー沖海戦】の実に1.5倍に相当する。これにグアム島から離陸したB-2爆撃機と護衛のF-22及びF-35を加えれば、最終的な機体数は900に迫る。

最早現実味に欠けるほどのこの大編隊が、1隻の深海棲艦を迎撃するために差し向けられた。全く事情を知らない人間が見れば、例え相手が【棲姫】だとしても首を傾げるに違いない。

深海棲艦はあくまで近代兵器が相手取るには“相性が悪い”というだけであり、よくあるファンタジーもののようにダメージを与えられないというわけではない。仮に深海棲艦が連合艦隊規模だったとしても、これほどの航空兵力からの攻撃となれば最初の一撃で塵芥すら残らず全滅する。

ましてや相手は、【棲姫】とはいえたった1隻。常識的に考えれば、連合空軍に負ける要素はない。
210 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/30(火) 23:13:05.13 ID:LBS9mjJd0
だが、参加したパイロット達の中には、勝利を確信している者も、状況を楽観視している者も、一人としていなかった。

たった、1隻。

その1隻に、フィリピン海の防衛線は崩壊した。オーストラリア空軍、ニュージーランド海軍、そしてアメリカ海軍の原子力潜水艦に、数十名の艦娘までが迎撃したにもかかわらず、その悉くを退けて“棲姫”は………【学園艦棲姫】は日本への進撃を続けている。しかも交戦した部隊から入ってくる断片的な情報によれば、敵に損害らしい損害は全く見られないという。

歴戦のパイロット達は、誰もが険しい表情で自分たちが進む方向を見つめる。

今から自分たちが立ち向かう敵は、今までの深海棲艦と“何か”が決定的に違う────そんな漠然とした“予感”が、彼らの胸の内には渦巻いていた。
211 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/30(火) 23:59:30.68 ID:LBS9mjJd0
尤も、彼らが自分たちにとって都合が良い事態が起きることを全く想定………というよりは、“期待”していなかったわけではない。

オーストラリア、ニュージーランド、そしてアメリカ。3ヶ国の海軍・空軍に艦娘まで加わっての攻撃を受けて、本当に「損傷無し」という状況はあり得るのか。

或いは防衛線の部隊がうまく確認できなかっただけで、本当は敵に大きな損害が発生しているのではないか。

可能性が低いことは解っている。それでも、もしかしたらが起きているのではないか───願望だけなら、恐らく航空隊のほぼ全員が微かながら抱いていただろう。


そして。








《─────Engage》

そのささやかな希望的観測は、“それ”を目にした瞬間に掻き消える。
212 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/31(水) 00:39:52.11 ID:ojDau+AZ0
(;●゚ ゚●)《………》

日本航空自衛隊の築辺三等空佐の脳内では、世界的な怪獣王のテーマソングが流れ出していた。

£;°ゞ°)《…………Oh my god》

在日米空軍のロミス=J=ノートン中佐は、【インディペンデンス・デイ】でシティ・デストロイヤーと遭遇したときにスティーブン=ヒラー大尉がどのような心境だったかを正確に理解した。

(,,;゚ ゚) 《…………》

マレーシア空軍のギャシャー=アブー=バクル中尉は、故郷のラヤンラヤン島の海でダイビングの最中にサメに遭遇したときの事を思い出していた。

彼ら三人を含め、連合空軍のパイロット達が思い浮かべた情景や事柄は様々だ。クトゥルフ神話の生物を真っ先に連想した者もいれば、子供の頃に読んだセイレーン伝説が脳裏を過ぎった者もいる。築辺のように昔見た怪獣映画の記憶が蘇った者、自分が猛獣に襲われる様を想起した者、溺れて深い海の底に沈んでいくような気分に陥った者………本当に多種多様だが、ただ一つ、“恐怖”の感情が併せてわき上がるという点だけは共通している。

そう、恐怖。

【学園艦棲姫】のその姿を目にした瞬間から、幾度となく深海棲艦と戦ってきた歴戦のパイロット達が恐怖していた。
213 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/31(水) 23:27:21.07 ID:ojDau+AZ0
アマニェセル号。かつてブラジル共和国連邦が保有していた学園艦だ。ポルトガル語で“夜明け”を意味する艦名を授かり、世界で唯一の“帆船型”として知られていた。

六年前、深海棲艦の空襲によって3700人の生徒・乗員と共に海の底に沈むまでは。

£;°ゞ°)《……間違いない、確かに沈んだはずの【アマニェセル号】だ。クソッ、事前情報通りか》

(;●゚ ゚●)《確かに、形状はそうだが……しかし、あれじゃまるで》

まるで、幽霊船じゃないか。そう続けそうになった言葉を、築辺は無理やり呑み込む。

全長3200m、全幅870mなんて大きさの“帆船”など、過去の歴史を紐解いても他に存在しないのは確かだ。ジェイムズ=クックの乗船として名高い【エンデバー号】に意図的に似せてある少しずんぐりとした船体の輪郭や、船尾に翻る水平線から顔を出す太陽を模した学園旗も併せて、目の前のコレが学園艦アマニェセル号であることは疑いようがない。

だが、“世界で最も美しい学園艦”と謳われた面影は微塵も残っていない。

太陽の光をイメージしてオレンジ色に塗装されていた船体は、中ほどから上が漆黒の装甲に覆われ鈍い光沢を放っている。喫水線付近の塗装と木板は剥がれ落ち、その下からは錆び付いた鉄の船体が剥き出しになっていた。舳先の下部に備え付けられた人魚の像は腕と頭がもげ、緑色のこけと海藻に纏わり付かれた上此方も赤黒い錆に浸食されている。

そして何よりも異様なのは、甲板上に鎮座する巨大な影だ。

(,,;゚ ゚)《アレは、一体何なんですかね……》

£;°ゞ°)《わからないが碌なものじゃないのは確かだ》

本来メインマストがそびえているはずの位置────丁度船体の中央部に当たる場所で“それ”は頭を垂れている。

全長200mはあるだろうか。背面は甲板同様漆黒の甲殻に覆われる一方で、胴体の前面部分はぬらぬらと湿った青白い身体が剥き出しになっている。腰から下には足のような部位が見られないどころか、完全に船体部分と融合しているようだ。
214 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/01/31(水) 23:49:49.90 ID:ojDau+AZ0
顔と思われる部位には眼がなく、代わりに左眼にあたる位置からは船の錨を連想させる形の物体が垂れ下がり、右眼からは中世に使われていた大砲のようなものが突き出す。樹齢うん百年の大樹のように太い腕は、両方とも手首の部分に腕時計のように2連装砲が括り付けられていた。

『─────』

連合空軍は更に接近するが、“それ”は相変わらず甲板の真ん中で両手を着き、頭を下に向け続けている。攻撃をしてくる様子も、艦載機などを繰り出す素振りも見られない。

ただ喫水線の辺りで泡立つ波が、“それ”が尚も前進していることを示していた。

(,,;゚ ゚)《これが“棲姫”なら、あの真ん中の奴は特殊随伴個体って事ですかね。動かないけど、眠ってる、のかな……》

£;°ゞ°)《だとしたら大層ありがたいが、ミーが記憶する限り深海棲艦が戦闘の真っ最中に寝るなんて聞いたことないね。

それに、コイツの姿はどっちかというと────》

(;●゚ ゚●)《────まるで、騎士が主からの命令を待って膝を突いてるように見えるな》

ロミスの台詞の後半を受けて築辺が答えた、その時。

『───────ゴォアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』

おもむろに顔を上げた怪物が、咆哮した。

(;●> <●)《………ッ!!!》

700機分の戦闘機が奏でるジェットエンジンの音を容易く掻き消し、そもそも防音性能が極めて高い風防ガラスを突き抜けて、帆船のような形のくせに蒸気船の汽笛を思わせる怪物の吠え声が築辺の鼓膜を揺らす。機体全体がびりびりと震動しているような錯覚を受け、思わず操縦桿を握る手に力がこもる。

一瞬朦朧とした視界の端に、何機かの友軍機が揺らぐ様が映る。

(;●゚ ゚●)《っ、とんでもねえバカ声出しやがって!!》
215 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/01(木) 00:13:20.44 ID:yfYfLkIn0
じわりと、掌に汗が噴き出る。

深海棲艦の鳴き声は基本的に聞くに堪えない騒音である上音量も尋常じゃないため、しばしばあれもまた立派な攻撃の一つだと揶揄されることがある。築辺も知識として元々その事は知っていたが、今の咆哮は比喩表現ではなく明らかに物理的な衝撃が襲ってきた。

仮に今の声のせいで墜落機が出たと言われても、築辺は───のみならず、航空隊のパイロット達は納得するだろう。

『ボォオオオオアアアアアッ!!』

もう一度、怪物は咆哮する。今度のものも十分に大音声ではあるが、それでも最初のものに比べれば声量は落ちている。

………ただそれは、“口内から単装砲が突き出たため”という物理的な要因も影響している筈だ。更に両腕も甲板から離れ、手首の連装砲が鈍い駆動音と共にゆっくりと仰角を調整し始めた。

《空中管制機【Sky-Eye】より航空隊各機、敵が“お目覚め”だ。攻撃を開始しろ!》

£;°ゞ°)《言われるまでもないさ、あぁ!!》

管制機からの指示が飛ぶと同時に、ロミスが先陣を切る形で航空隊から一部の機体が突出する。

一部、と言っても規模が規模だ。実に200に迫る戦闘機が、第1波攻撃をかけるべく一斉に眼前の巨大船を照準に収めた。

£#°ゞ°)《Weapon Free!!

USFJ-AF-Knight-01, FOX-3!!》

(●゚ ゚●)《JASDF-Swallow-01, FOX-3 FOX-3》

(,,#゚ ゚)《RMAF-Wyvern-01, FOX-3!!》

凄まじい数の対地・対艦ミサイルが、無線で飛び交う発射符号と共に船体或いはその上の怪物めがけて殺到する。

鳴り響く轟音。オレンジ色の炎が海面を照らす。
216 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/01(木) 00:43:17.47 ID:yfYfLkIn0
だが、それらは怪物にも船体にも届いていない。

200発近いミサイルは、悉くが【学園艦棲姫】の手前や上空で炸裂してしまっていた。まるで、“見えない壁”にでもぶち当たったかのように。

《Negative, Enemy have no damage》

£;°ゞ°)《Jesus!!》

管制機からの無情な報告を無線越しに耳にしながら、ロミスが機首を反転させつつコックピット内で毒づく。

£;°ゞ°)《これまた事前情報通りだ!

Knight-01より各機、学園艦棲姫には“船体殻”がある!注意しろ!》

船体殻。主に艦娘と、ヒト型の深海棲艦が身体の周囲に展開する不可視の防壁の総称だ。

非ヒト型種の甲殻や艦娘の艤装装甲をそのままバリア化したようなものと言えなくもないのだが、此方は全身を完全に覆い尽くす上に出力が落ちるまでは攻撃を“絶対に”通さないという特性がある。

特筆すべきはその高い耐久力で、既存の陸上兵器の場合相当な集中運用が為されない限り短時間で破ることは難しい。例えば第4世代戦車一両で破ろうとするなら、睦月型駆逐艦の船体殻さえ六時間ほど砲撃を続けてようやく中破に持ち込めるかどうか。

この尋常ならざ高耐久について研究者の一人がある仮説を提唱し、現在ではそれが主流となっている。

即ち、艦娘やヒト型深海棲艦の船体殻とは、“軍艦そのもの”が人間大の防壁として圧縮された存在ではないかというもの。

もしもこの論に基づき、かつ学園艦棲姫が展開しているものも同じであると仮定するなら………それは、棲姫の周囲にもう一隻分“不可視の学園艦”が防壁として展開しているのと同義となる。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 01:41:03.27 ID:gDAMGdxA0
おつおつ…てかでけえww
この化け物ですら無理ゲーなのに、各方面で更に戦禍が膨れ上がるのか…
218 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/01(木) 01:47:13.34 ID:yfYfLkIn0
(;●゚ ゚●)《実質的には学園艦を2隻沈めにゃならんのかよ、後続部隊含めてもミサイルが足りるかどうか解らんぞ!》

(,,#゚ ゚)《それでもやるきかありません!Wyvern、反転し再度攻撃に移ります!》

《Tiger、Wyvernの突入を支援する!》

ギャシャーが率いるF/A-18Dの編隊が翼を翻してもう一度棲姫に機種を向け、これに台湾空軍のF-CK-1が続く。より低空域から突入し、更に至近距離からミサイルを撃ち込もうと32機の戦闘機が肉薄する。

(,,#゚ ゚)《Wyvern-01, FOX-3!!》

《Wyvern-04, Fox-3》

《Tiger-01, FOX-3 FOX-3》

《Tiger-15, FOX-3!!》

《Bingo, Bingo》

32発のミサイルが空を駆け、舳先で障壁に衝突し爆炎を撒き散らす。

無論、近距離から撃ち込んだとはいえ200発近いミサイルで効果がなかった障壁がたかが30発で揺らぐはずもない。管制機からは弾着が報告されるが、現段階ではあくまで“正常に起爆した”程度の意味合いだ。

(,,;゚ ゚)《っ、これも効果無し……》

£;°ゞ°)《当たり前だ、先走るな!全機一度隊列を再編、文字通りの一斉射撃で────Wyvern、避けろ!!!》

(,,;゚ ゚)《えっ………うわぁああっ!!!?》

『ボアアッ!!』

右舷側の船体殻に沿う形で飛行していたギャシャーのコックピットに、黒い影が降りる。慌てて操縦桿を左に倒した動きは、怪物の右腕が振り下ろされるよりもコンマ一秒だけ早かった。

凄まじい炸裂音と共に舞い上がる水飛沫。その中を切り裂いて、ギャシャー達Wyvern編隊が這々の体でロミス達の元へ退却してくる。

(,,;゚ ゚)《死ぬかと思った!死ぬかと思った!!》

£;°ゞ°)《フィリピン海防衛線を一方的に粉砕した個体だぞ、不用意が過ぎる!航空隊全機、全火力を一斉に投射し………》

怪物の背中に、いつの間にか瘤のような黒い塊が幾つも隆起している。

その正体が連装式の機銃でしかも自分たちに銃口を向けていると気づいたとき、ロミスの口から自然と舌打ちが漏れた。
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 21:43:31.17 ID:0INaXDE40
乙す
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 22:05:33.76 ID:khdJyFNXo
乙です
221 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/01(木) 23:21:29.57 ID:yfYfLkIn0
£;°ゞ°)《Break Break Break!!!!》

(;●゚ ゚●)《クソッタレ!!》

『ゴォアアアアッ!!!!』

怪物が前傾姿勢を取り、ロミスの絶叫が響く。散開運動に移った連合空軍を、“弾幕”と呼ぶに相応しい膨大な量の銃火が襲う。

《I'm hit!!》

《Oh my god……I'm going down》

《Shit, Hornet-02 Lost!!》

ロミスの判断と指示が功を奏し、航空隊の散開は迅速に行われた。だがそれでも、怪物の放つ凄まじい対空射撃の前に幾つもの機体が黒煙を噴き上げながら眼下の海へと落ちていく。

£;°ゞ°)《Sky-Eye、無事か!?》

《Sky-EyeよりKnight-01、我々は無事だ。しかし10機近い味方が撃墜された、敵は尚も攻撃を続けている!》

£;°ゞ°)《見れば解る状況を丁寧にご説明いただき感謝するよ!!》

怪物の背に現れた機銃群は、弾丸を吐き出しながら射線を扇のように両側に広げつつある。まさに薙ぎ払われる形で追い立てられる連合空軍の中から、更に数機が機銃掃射の火線に追いつかれて火達磨と化した。

£;°ゞ°)《半端に纏まるな!一度陣形を完全に崩して火線の軌道上から確実に逃れろ!》

《我々が奴の気を引く、その間に主力部隊は戦力の損耗を抑え態を立て直せ!》

連合空軍の後方に位置していたため射線からいち早く離脱できていたベトナム人民空軍のMig-21が、棲姫の右舷側から大きく回りこむようにして突撃する。

《Griffin-01, FO》

(,,;゚ ゚)《なっ……》

船体の右側面で光が瞬いた。

先頭を切っていたMig-21が、火の玉と化して海面に叩きつけられる。
222 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 00:01:40.95 ID:hS0zNcy70
Griffin-01を撃墜した攻撃は、船体右舷側面に開いた5m四方の“砲門”から飛来したものだ。

さながら19世紀頃の戦列艦を思わせるそれが、一つ二つどころではなく何百、何千。それこそ全長3200mの船体の側面全域に満遍なく口を開けている。

突き出している兵器が時代遅れのカノン砲辺りなら、或いはまだ希望があったかも知れない。だが実際に砲門から顔を覗かせるのは、六連装式のガトリングガンや高角砲、単装砲、連装対空機銃など。

早々に指揮官機が消失して束の間呆気にとられていたGriffinチームに向かって、無数の兵器群が無慈悲に砲火を浴びせかける。

《どっから射撃を────ぐぁっ!?》

《Griffin-05もやられた!!》

《此方Griffin-02、隊長機ロストに伴い指揮を引き継ぐ!Griffin全機に通達、攻撃を中断して上方に離脱せよ!》

《Griffin-11、右翼に被弾!高度を保てなi》

《ダメだ、落ちます!》

一方的な虐殺に等しかった。

無線機越しに聞こえてくる阿鼻叫喚。通信が次々と砂嵐に変わった後途切れていき、火線に貫かれた機体が彼方此方で錐揉みしながら墜落する。

ようやくGriffinが重厚な弾幕を切り抜けたとき、機体は突貫時の半分以下まで減っていた。

《当編隊損害大!再編のため一時後退する!》

《管制機より航空隊全機、隊列再編が完了次第各自反撃に移れ!攻撃の手を緩めるな、とにかく奴の進軍を止めろ!》

£;°ゞ°)(簡単に言ってくれるネ!!)

ロミスはコックピットの中で再び舌打ちした。手を緩めるななどと言われても、既に200発を越えるミサイルを撃ち込んでけろりとしている相手にどんな工夫をしようというのか。

そもそも向こうにとって本当に“攻撃”になっているのかさえ怪しいところだ。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 00:17:50.31 ID:fxdeHtvt0
ゴミやね
224 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 06:49:00.87 ID:hS0zNcy70
だが、他の選択肢が用意されていないのも事実だ。【学園艦棲姫】の戦闘能力が未だ健在である以上、奴が日本本土に近づくほど住まう国民が危険に晒される。

確かに自分はアメリカ人だが、所属は“在日”米軍だ。第二の故郷に、あのクソッタレた化け物の毒牙を届かせるわけにはいかない。

£;°ゞ°)《Knight-01よりGriffin-02、棲姫の側面武装はどの辺りまであった?!》

《舳先からケツまでびっしりだ!弾幕は突破不可能、おそらくミサイルも途中で撃墜される!》

£;°ゞ°)《ならば喫水線付近への攻撃は無理だネ!

Knight-01より全機に伝達、攻撃は船体の上部に集中!》

怪物がなおも放ち続ける弾幕から逃れるべく一度距離を大きく取りつつも、ロミスの乗るF/A-18Fは旋回してもう一度機首を学園艦棲姫に向ける。彼の部下と、連合空軍の他の機体も次々とその動きに習った。

£#°ゞ°)《一斉に突入すればかえって弾幕による迎撃を容易にする、全方位からの波状攻撃で迎撃を飽和させるヨ!

All unit, Follow me!!》

(●゚ ゚●)《Swallow-01, Roger》

(,,#゚ ゚)《Wyvern-01, Roger!!》

各編隊隊長からの──それぞれ訛りたっぷりのやや聞き取りづらい──英語での返答を耳にしつつ、“波状攻撃”の先陣を切るべくロミスと在日米空軍機が【学園艦棲姫】へ再び突撃。また、ロミス達を支援するためインドネシア空軍のSu-30 8機が後続する。
225 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 22:30:48.72 ID:hEif7d7Q0
£#°ゞ°)《Knight-01, FOX-3!!》

《Knight-02, FOX-3》

《Pegasus-01, FOX-3》

『オォオオオオッ!!!』

放たれたミサイルはたったの24発。当然船体殻を破れる火力ではない。それでも挑発としては十分なようで、怪物は咆哮をあげてロミス達に火線を集中させてくる。

《Arrow-01, FOX-3》

《Arrow-04, FOX-3》

そこへ、すかさず別方向から【いせ】のF-14Jによる射撃が着弾。コールサインに準えて放たれた音速の「矢」が12発、左舷側から殺到した。

《Bingo!! Bingo!!》

『ゴァアッ!?』

効いたというよりは面食らった様子で、怪物が攻撃を受けた方向に顔を向ける。だが、この時点で既に更なる追撃が迫っていた。

(,,#゚ ゚)《Wyvern-01, FOX-3!!》

(●゚ ゚●)《Swallow-01, FOX-3》

『グォオオオオッ!!?』

今度は右舷側。空自とマレーシア空軍による連携射撃が炸裂する。

F-2戦闘機が腹に抱えているのはXASM-3。自衛隊が開発した最新鋭の空対艦ミサイルで、弾頭重量だけで900kgを越える大物だ。F/A-18Dが抱えているような、本来空対空として使われるミサイルとはワケが違う。

着弾点を中心に広がる、巨大な火の玉。

『ボゥアアアアッ!!!』

甲板上の怪物は呻き声のようなものをあげ、船体殻に阻まれてその表面を焦がす炎から逃れようとするかのように身を捩る。

まだ大ダメージには程遠いだろうが、やはり最初の攻撃も含めて“全く効いていない”というわけではなさそうだ。

【学園艦棲姫】は、明らかに攻撃を受けることを嫌がっている。
226 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 22:47:40.40 ID:hEif7d7Q0
連合空軍による波状攻撃は止まらない。五波、六波、七波と入れ替わり立ち替わり戦闘機が肉薄し、ミサイルを船体殻に叩き込んでいく。

多少の撃墜が出たとはいえ、残存機数は優に700を超える。攻撃の手数には困らない。

《Red-01, FOX-3!!》

《Lightning-09, FOX-3 FOX-3》

《War Dog-11 FOX……No!?》

無論、攻撃手段と攻撃ポイントを切り替えたからといってロミス達の側に損害が出ていないわけではない。最大仰角で放たれる船体側面の対空砲群と怪物の背中から生える多数の機銃座による弾幕に捉えられた機体が、火を噴きながら落ちていく様子も時折見られる。

しかしながら、船体からの砲火は濃密でこそあれ構造上の問題で取れる仰角が浅い。そのため、7割近い弾幕が現在の連合空軍の高度には届かず結果としてロミス達の攻撃を許す大きな隙を生んでいた。

『ウォオオオオオッ!!!』

《Tiger-01より各機、目標は現在海上で完全に停止した。奴さんどうやら俺たちを本格的に迎え撃つ腹づもりらしい》

£#°ゞ°)《臨むところだヨ!全機怯むな!攻撃を続行せよ!!》

それに、ロミス達の練度の高さは尋常ではない。深海棲艦と長らく───それこそ艦娘実装前から戦い抜いてきた精鋭揃いである彼らは、700機での連携戦闘という途方もない行為をスムーズにこなしながら巧みに弾幕を擦り抜け攻撃を当てていく。
227 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 23:27:43.95 ID:hEif7d7Q0
最初に【学園艦棲姫】を目にしたときに航空隊を押し潰しかけていた恐怖や威圧感は、いつの間にか消え去っている。

損害は出てこそいるが極めて軽微に抑え、目標の第一段階である敵の“停止”も果たした。加えて、本当に少しずつではあるが敵はダメージを受けている───これらの事実が、ロミス達に自信を与えた。

だがその一方で、誰も油断や慢心はしていない。翻弄できているとはいえ敵の攻撃の威力は此方を一撃で粉砕し得るものだし、正直ここにある700機分のミサイルを全て撃ち尽くしても船体殻すら破れないかも知れない。

恐怖や緊張はないが、さりとて油断も慢心もない。自然体でありながら、集中力は途切れていない。ほぼ全員が、現状パイロットとしては理想的な状態になったといえる。

《Hammer-01, 位置に着いた》

《Hammer-06, ターゲットを捕捉》

《Viper Team、Hammerに後続。これを掩護する》

延べにして何十度目かの航空攻撃。ロミスとは別のF/A-18Fの編隊に護衛されて棲姫に接近するのは、Mig-21と共にベトナム空軍が投入したSu-30の4機編隊三つ。

彼らが腹に抱えるのは、旧ソ連が開発した空対艦ミサイルKH-35だ。海自のXASM-3には性能も威力もやや劣るが、それでもやはり空対空ミサイルの何倍も破壊力は大きい。命中すれば相応のダメージにはなる。

そして、目標は何せ3200mだ。電子妨害や対空砲による撃墜を避けるため肉薄する関係もあって、外しようはない。

『ヴォオオオオオオッ!!!!』

怪物が接近してくるSu-30に気づき、背中の機銃群の弾幕を其方に向ける。が、射線の隙間を巧みに擦り抜けて、航空隊はミサイルが確実に当たる距離まで更に近づいていく。

《Hammer-12, FOX-3────ウアッ!?》

そしてミサイルが放たれる直前、編隊の内1機が突然下から伸びてきた“何か”に貫かれて砕け散った。
228 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/03(土) 00:00:23.67 ID:tQ9g1u1X0
音速に近い速度で飛行していた機体が、突然の衝撃によってバラバラになる。当然破片は、物理法則に従って凄まじい速度と勢いで周囲に飛び散った。

《………What??No───》

《Damn………I'm?hit!!》

粉砕されたHammer-12の尾翼が、後方を飛んでいた機体のコックピットに突き刺さる。隣の機体は千切れたエンジンが右翼に直撃し、バランスを崩すとそのまま海面に叩きつけられる。

《攻撃中断、離脱しろ!Griffinの二の舞になるぞ!》

《クソッ、何が────うわっ!?》

隊長機の判断は早く、HammerもViperも攻撃経路から外れて離脱を謀る。だがその後ろから追いすがってきた“何か”が、最後尾のF/A-18Fを捕らえ、巻き取った。

《Ahhhhhhh!!!?》

《Fuck───》

《No no no……uh》

真っ二つにへし折られたF/A-18Fの残骸を投げつけられ、回避しきれなかったSu-30が巻き込まれて1機爆散する。これを逃れようとした別のスホーイは、急な旋回軌道をとった結果棲姫の船体殻に激突して爆炎の花を空に咲かせる。

分散して各方面に脱出を計った残りの機もまた、学園艦棲姫の対空砲火に捕まって次々と撃墜されていく。

ただそれは、甲板上の怪物が背中から放った機銃掃射ではない。船体側面から“伸びた”それらに、彼らは為す術が無かった。

《…………Viper and Hammer, All Lost. I repeat─────》

やがてロミス達の耳に届く、空中管制機からの冷酷な報告。

そんな彼らの心情を嘲笑うかのように。










『─────キァアアアアアアアッ!!!』

船体側面から伸びた────白い胴を伸ばし鎌首をもたげた“連装高角砲”が、ガラスを引っ掻いたような甲高い鳴き声を上げた。
229 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/03(土) 00:09:29.46 ID:tQ9g1u1X0
一度切ります
明日(2/3)にマッ鎮登場予定
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 01:22:52.53 ID:fb34gLVA0
おつおつ、エグ過ぎワロタ
人類側の優位がある内は…な展望だったのに計り知れないなw
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 12:38:02.17 ID:Sx4qd5nY0
つまらなさが加速するな
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 17:30:19.92 ID:2smGJZYto
お疲れ様
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 00:52:29.58 ID:bRFg68U50
もうやんなくていいよ
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 03:36:08.03 ID:bVjCUCbC0
マダー?
235 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/05(月) 23:01:23.62 ID:mjJD5y2K0
波状攻撃という戦術の特性上、“棲姫”にある程度接近していたのは殲滅された2チームだけではない。連装高角砲がそのおぞましい姿を露わにした時点で、既に80機を越える機影が次の攻撃に繋げるため突貫を開始してしまっている。

(,,;゚ ゚)《嘘でしょ………!?》

その中には、ギャシャーが率いるWyvern編隊も含まれる。

《敵艦、“艤装”を周囲に展開!!》

(,,;゚ ゚)《急旋回、退避しろ!Break, Break!!》

車は急に止まれないというが、マッハで飛び回る戦闘機はなおのこと。凄まじいGに身体を押し潰されそうになりながら、攻撃軌道から離脱しようと必死に操縦桿を左に倒す。

結果論でいってしまうなら、ギャシャーのこの動きは最悪に近い。旋回運動のため減速しつつ無防備な横腹を見せる彼女の編隊を、“それら”は────次々と砲門から這い出してくる、無数の対空兵装群は見逃してくれなかった。

『『『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』』』

癇癪を起こした赤ん坊の金切り声を思い起こさせる鳴き声を合唱させながら、単装砲が、機関砲が、高射砲が、三連装砲が、蛇の如く身体をうねらせて迫ってきた。速度それ自体は戦闘機に遠く及ばないが、向こうには何せ全長3700mの船体を隙間無く埋め尽くすほどの“数”がある。

《た、隊長……!》

(,,;゚ ゚)《畜生!!》

四方八方から迫り来るそれらの射線から逃れようと、更に無茶な旋回運動を強いられるWyvern編隊。堪えきれず失速した1機が隊伍から脱落し、たちまち真上から単装砲が吐き出した砲弾を受けて爆散する。
236 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/05(月) 23:18:58.57 ID:mjJD5y2K0
《Wyvern-10 Lost!!》

《敵艤装群、一斉に起動!クソッタレ、撃ってくるぞ!》

(,,;゚ ゚)《回避に全神経を集中しろ、反撃しても意味は無い!なんとかしてコイツから離れるんだ!!》

《ダメだ、弾幕に退避軌道が塞がれている!!》

ギャシャーも、マレーシア空軍への志願入隊以来5年に渡って深海棲艦と戦ってきた人間だ。まだ年若い身ながら歴戦のパイロットと言って差し支えなく、数多くの修羅場をくぐってきた。当然深海棲艦が物量に飽かせて展開してくる圧倒的な弾幕に相対したことも一度や二度ではないし、或いは火線それ自体の量という面では18隻もの姫級が集った【第二次マレー沖海戦】の方が強烈だったかも知れない。

《右翼に被弾、失速する……ダメd》

《Wyvern-05がやられました!!》

(,,;゚ ゚)《……っ!!》

しかしそんな彼女でも、“三次元的に展開された対空砲火”の直中を飛行したことは一度も無い。

(,,;゚ ゚)(そこら中から攻撃が飛んでくる、目の前が火線で真っ赤になって退避経路もまともに探せない……!)

200m程度には達そうかという長い胴を巧みに伸ばし、ギャシャーらを周囲から包み込むようにして銃口を向けてくる“艤装”の群れ。右から、左から、前から、後ろから、そして上からも下からも。本来“対空砲火”としては有り得ない角度からでも容赦なく飛来する攻撃は、歴戦のパイロット達と言えど完全に躱しきることは不可能だ。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 23:58:57.97 ID:bRFg68U50
はいクソ
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/06(火) 00:34:07.42 ID:aOfDMcbiO
粘着質過ぎて怖いわ
リアルで出会ったら顔引きつる感じの人
239 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:00:27.14 ID:cRnAItAF0
猛烈な十字砲火の中で、ギャシャー達は必死に棲姫から距離を取る。だが、蠢く“艤装”とそれらが放つ弾幕の前に編隊飛行の維持すら困難になり、1機また1機と部下が脱落していく。

《Wyvern-07、高角砲に後ろに着かれた!振り切れな────》

《Wyvern-06、被弾!エンジンがやられた!》

《Wyvern-15、墜落する!》

(,,;゚ ゚)《クソッ……!》

彼女達が艤装群の火線から逃れた時点で、開戦時16機あった編隊はたったの7気に減っていた。寧ろ最初に対空砲火を受けたGriffinチームよりも厳しい攻撃に対して損害を同程度に留められたのは、彼女たちの腕前の表れと言っていい。

(,,;゚ ゚)《Wyvern-01より航空隊各位、敵艤装の動きはかなり柔軟だ!下手に突入すると容易く包囲されるぞ!》

《管制機よりKnight-01、艤装群と交戦した部隊がたった1分間で70%ロストした。

敵の対空火力は我々の予想を大きく上回る、気をつけろ》

£;°ゞ°)《あぁ、見てたから知ってるヨ!》

昼に食べたサンドウィッチが酸素マスクの中にペースト状でぶちまけられるのを必死に堪えつつ、ロミスは無線機に向かって怒鳴る。

そういう役割だから仕方ない面もあるのだろうが、たった今自身が目にしていた絶望的な光景をわざわざ言葉にされると苛立ちが無駄に募る。奴等はパイロット達が眼球の代わりにガラス玉を顔にくっつけているとでも思っているのだろうか。

£#°ゞ°)《まずは敵の対空火力を奪うヨ!

Unit, Follow me!!》

《Arrow Team、Knightを掩護する!》

《Red Team, Attack!!》

《Gamma Team、後続する》
240 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:05:54.60 ID:cRnAItAF0
ロミス達のF/A-18Fが先陣を切り、鏃のような隊形を取って“棲姫”めがけて突撃。これに、在韓米軍の航空隊と【いせ】のF-14J 12機、更に航空自衛隊のF-4EJ改も呼応する。

『ボォオオオッ!!!』

『『『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』』』

【学園艦棲姫】の対応も、早い。右舷側で動きを見せたロミス達の方に“怪物”が身体を捩りながら吠えると、それがまるで何らかの命令だったかのように組織だった動きで艤装群が一斉に頭部を持ち上げ航空隊の方をにらみ据える。

《Enemy shoot in───ぐぁっ!?》

針山の如くあらゆる方向へ伸びる火線。機銃掃射に撃ち抜かれ、F-4が1機錐揉み状態となり海面に叩きつけられる。

《なんて弾幕だ……!》

£;°ゞ°)《怯むな!とにかく突っ込むヨ!》

眼が眩むような弾幕だが、とりあえず「正面」という常識的な方角から飛来してくれる分マシだ。少なくとも先程Wyvernらが受けた全方位射撃に比べれば、遙かに対処しやすい。

£#°ゞ°)《Knight-01, Target insight!! Fire, Fire!!》

《Knight-02, Fire》

《Knight-04, Gun gun gun》

砲火を擦り抜けながらギリギリまで肉薄し、蠢く艤装群を照準に収めて操縦桿のボタンを押す。M61バルカンが唸りを上げ、吐き出された弾丸が腐乱した水死体を思わせる青白くぶよぶよとした胴体に突き刺さる。

『『ギィイイイイイッ!!!?』』

掃射を受けた幾つかの“艤装”が、耳障りな悲鳴と共に砲火を中断して仰け反った。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 13:20:18.70 ID:w8I6TZw20
否定意見は全部同一人物かよこっわ……
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 13:20:59.78 ID:w8I6TZw20
すまん、勘違いさせる言い方だった。全部同一人物と思うやつの方が怖いってことな
243 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:23:40.63 ID:cRnAItAF0

《Arrow-01 Shoot!!》

《Red-06, Gun Gun Gun》

《Gamma-02, Enemy lock. Fire!!》

『ギアアッ!!!?』

『ゴァッ!?』

間髪を入れず、他の編隊も機銃掃射を艤装群に向かって放つ。弾丸を受けた個体は次々と苦悶の声を上げ、深海棲艦特有の青い体液を傷口から吹き出して火線を途切れさせた。

『グァッ……アァ……』

《Enemy down》

F-14Jの内一機は、直接艤装部分を狙って射撃を加える。12.7mm単装機銃と思わしき漆黒の艤装が砕け散り、胴からぐたりと力が抜ける。

海面に水飛沫を上げて倒れ込んだ後、その個体が再び動き出す様子は無い。

£#°ゞ°)《Yes!!》

その様子を風防ガラス越しに目にして、ロミスはコックピット内で拳を握る。殲滅されたViperの内一機が艤装に“捕まれて”撃墜された光景から思いついた“博打”だったが、結果は見事なジャックポットだ。

£#°ゞ°)《思った通りだヨ!Knight-01より航空隊各位、敵の船体殻は艤装一つ一つには及んでいない!範囲外に出ている対空艤装を個別に狙え、敵の火力を減らす!》

《Arrow-09より付け足しだが、頭部の艤装部分は急所だ、狙えば恐らく即死も期待できる。また、一般的な深海棲艦の装甲や艦娘の艤装と比べて脆い。

胴であれ頭であれ機銃掃射で十分だ》

《Sky-Eyeより全航空隊、損耗が激しい部隊や残弾・残燃料が怪しい機体以外は艤装に攻撃を集中。Knight並びにArrowの報告にしたがってミサイルは温存しろ》

《Shark-01, Roger》

(●゚ ゚●)《Swallow-01, Roger》

《Tiger-01, Roger!! Attack, Attack!!》

『『『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』』』

目まぐるしく入れ替わる攻守。ロミス達の報告と管制機の指示を受け、航空隊がまたも波状攻撃に転じる。迎え撃つ艤装群の火線を巧みに擦り抜けながら放たれる機銃掃射に、両弦のあちこちで青い血が空中に迸る。
244 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:55:45.47 ID:cRnAItAF0
尤も、突破口を見出したとはいえ棲姫が展開した対空艤装の数は膨大だ。左右両弦併せて、少なくとも数千門。それが、胴が伸ばせる範囲内ではあるものの自在に蠢き、弾幕を放ってくる。

加えて、ミサイルによる攻撃は弾数が圧倒的に不足する上効率も悪い。自然、航空隊はバルカン射撃のため前にも増して肉薄しなければならない。

『『『キィイイアアアアアッ!!!』』』

《Shit, I'm hit!!》

《Purple-07 Lost!!》

《Going down, Going down───》

次々と敵の“艤装群”が動きを止めていく一方で、友軍機の被弾・撃墜報告が入る頻度も決して少なくない。また燃料や機銃弾を使い切り、補給を受けるために一時離脱せざるを得なくなる編隊もそろそろ増え始めている。

連合空軍は攻勢に出ているものの、それが“優勢”であるとは到底言い難かった。

(;●゚ ゚●)《クソッ、八岐大蛇と戦ってる気分だ!!》

£;°ゞ°)《お言葉だけど三等空佐、ミーとしてはオロチよりメドゥーサの方が適切な比喩だと思うヨ!》

高角砲の連続砲撃に追い回されながら毒づく築辺に、15.5cm砲を模したと思わしき形状の艤装を照準に収めながらロミスが軽口を叩く。

『ギュオアッ!!?』

撃ち抜かれた際に散った火花が内蔵弾薬にでも誘爆したか、その個体は派手な爆発音と共に木っ端微塵になった。

£;°ゞ°)《メドゥーサの頭髪は一本一本が毒蛇、おまけに海神ポセイドンの愛人ときた!“深海”棲艦のボスを表すにゃうってつけだヨ!!》

(#●゚ ゚●)《なら今すぐ誰かペルセウスを連れてこい!!どのみち人間が戦っていい相手じゃねえぞこいつぁ!!》
245 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 14:25:35.52 ID:cRnAItAF0
いよいよ持って怒りに満ちた叫び声と裏腹に、築辺は果敢に学園艦棲姫を攻め続ける。彼の率いる【Swallow】編隊は、ロミスの【Knight】共々連合空軍の中でも飛び抜けて多くの攻撃運動をこなしていた。

『ギィッ、アアアッ………!!?』

(#●゚ ゚●)《Enemy down!!》

散々自分をつつき回した高角砲に向かって一瞬の隙をついて切り返し、銃火を首元にぶち込む。20×102mm弾が胴体の肉を裂き、引き千切られた艤装部分が驚いたような鳴き声を上げて海中に落下する。

(#●゚ ゚●)《全機一度距離を取った後反転、今度は船尾側から行くぞ!!》

《《《了解!!》》》

平成の零戦とも呼ばれる、F-2支援戦闘機。その軽やかな攻撃機動は、鍛え抜かれた空自パイロット達の腕前も相まって二つ名に恥じぬ機体性能を見せつける。






『ボォオオオオ………』

そんな築辺達に眼のない顔を向けながら、甲板上の“怪物”は低く忌々しげな唸り声を上げた。
246 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 14:26:18.11 ID:cRnAItAF0
昨日はバッチリ寝落ちしました、申し訳ありません。
取り急ぎ一次更新、第二次投下は23:00から改めてです
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 17:43:54.24 ID:KgotTMzA0
おつおつ
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 18:36:52.69 ID:JkdHlenbO
ニートか中学生?
249 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 22:00:33.40 ID:Kh4VhO680
胃腸が大変なことになってるので朝更新に延期しますorz
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 00:48:24.76 ID:UmzP/2lA0
ドンマイです…悪化させないよう気をつけてw
251 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/07(水) 09:32:17.63 ID:3ZaPvqmrO
漆黒の装甲に包まれた甲板が数カ所、側面から“艤装”が展開された時同様にスライドする。口を開けた正方形の穴から丸っこい“影”が数個、凄まじい速度で飛び出す。

《“棲姫”が何かを発射しました!》

《……何だありゃ。砲弾か?》

直径5m前後の、黒く塗り固められた球体。ライフリング技術が発達する以前の、大航海時代辺りに使われていた砲弾を思わせる形状のそれらは、爆発することも減速することもなく航空隊と同高度まで舞い上がる。

『『『────……』』』

£;°ゞ°)《─────ヤバいヨ》

一瞬空中で制止した“それら”から、黒い翼と猛禽類の足を思わせる突起物が生える。

瞬間、ロミスの全身から音を立てて血の気が引いていった。

£;°ゞ°)《【Black Bird】 in the air!!!》

『『『──────!!!』』』

無線への叫びは、一歩遅い。漆黒の敵機は速やかに編隊を組み終えると、風を巻いて戦闘空域へと飛び込んできた。

《Fuck……!》

黒鳥達の獲物は決まっているらしく、付近にいたロミス達には眼もくれない。不幸にも軌道を遮ってしまったF/A-18F一機を撃墜した以外は、一切の迷いを見せず一つの編隊へと突進していく。

£;°ゞ°)《Knight-01よりSwallow、敵機が其方に向かっている!注意しろ!》
252 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/07(水) 10:34:44.37 ID:Rk0DcCYD0
(;●゚ ゚●)《マジかクソッタレ……!》

自分たちの方に突っ込んできた、“球形”という常識では有り得ない機影に思わず眼を剥く。折しも反復攻撃に移っていた築辺の編隊は、恐らくは最高速で肉薄する【Black?Bird】4機を正面から迎え撃つ形となった。

(;●゚ ゚●)《Swallow-01,?Fire!!》

《Gun,?gun!!》

《Engage,?Fire!!》

16機のF-2の機首から、一斉に銃火が迸る。横一列に広がった射線、目標は直線軌道上に位置し、しかも互いに高速で接近しながらの先制射撃。常識的に考えれば、回避は非常に困難だ。

あくまで、“人間の常識”に当てはめた場合だが。

『『『──────』』』

《Miss,?Miss!!》

(;●゚ ゚●)《野郎っ……!!》

弾丸に貫かれる寸前、4羽の黒鳥が旋回する。減速を全くしない、殆ど直角に近い高速旋回の前に弾幕は虚しく空を切る。

その航空力学を無視した回避軌道は、築辺達から見れば機影が突然消失したも同然だ。

《敵機、編隊後方から来ます!》

《速すぎるだろ……!!》

(;●゚ ゚●)《散開して奴等の射線から外れろ!Break,?Break!!!》

そしてその消えたはずの敵機が、一秒と経たずに今度は自分たちの背後から風切り音と共に迫ってきている。

悪い夢なら醒めてくれ───そんな、似つかわしくない願望が築辺の胸の内を満たす。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 10:46:40.38 ID:QnHwZYNr0
読みにくいなこれ
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 11:21:30.66 ID:qfG5ZA/q0
早く大洗パートをよみたいと思ってる
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:17:45.07 ID:cm1buroS0
最高の材料を使ってゴミを作りました感
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 21:15:35.39 ID:HK9FmSrLo
ぶっちゃけAAしか出てこないパートしんどいわ 長過ぎるし
257 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/08(木) 22:27:46.49 ID:LypmybcT0
明日に午前のみの休日出勤ぶっ込まれてる状態なので更新明日の昼に遅らせて下さい。度々申し訳ありません
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 01:12:49.94 ID:16ltenhA0
おつおつ、ドンマイですw
寒さもだいぶ厳しいし、あまり無理せずに…
259 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 15:01:38.24 ID:Wfw+ZZyrO
だが、“悪夢”は終わらない。4機の【Black Bird】は射線から外れようと旋回する築辺達の後ろにピタリと着き、瞬く間に距離を詰める。

『────』

先陣を切った一機が機関砲を放つ。燃料タンクにでも直撃したのか、火線を食らった最後尾のF-2が爆散した。

『────!!!』

《ぐぁっ!?》

そのまま、氷の上を横に滑っているかのように滑らかな動きで真横へスライド。パイロットが反応する間もなく火線が空を走り、更に一機が翼をもがれ黒煙を噴く。

《Mayday Mayday Mayday, I've been hit!! Eje─……》

《Swallow-14、被弾墜落!私も後ろに着かr》

《Swallow-12もやられました!》

(;●゚ ゚●)《こちらSwallow-01、一方的に撃たれている!全滅も時間の問題だ、掩護を求む!!》

£;°ゞ°)《Knight-01よりSwallow、掩護に───》

《敵機、多数発艦!!!!》

棲姫への攻撃を中断して反転したところで、管制機から飛び込んできたのは悲鳴にも等しいトーンの通信。

コックピットの中で反射的に振り返れば、新たに空に撃ち上げられた黒い球体が視界に映る。

『『『───────』』』

£°ゞ°)《Damn it》

優に数十を越える球体が一斉に翼を生やした瞬間、ロミスの胸の内は絶望で真っ黒に塗りつぶされた。
260 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 15:32:13.56 ID:Wfw+ZZyrO
一方的な蹂躙と言う他ない。

物理法則をせせら笑うような軌道で飛び回る【Black Bird】の前に、連合空軍は為す術がなかった。後方に占位しても全く減速せぬままの急旋回で視界から消え、逆に後ろを取られれば逃れようがなく一瞬で射程圏に捕捉され撃ち落とされる。数の差で連携して迎撃しようにも、【学園艦棲姫】からの分厚い対空弾幕に寸断されまともな編隊飛行すらままならない。

《Enemy coming!! Break!!》

《Mayday, Mayday───》

《Tiger-01 down!!》

《Shit……Ahaaaaa!!!?》

《Yellow Team, all down!! I repeat, Yellow Team all down!!》

悲鳴、絶叫、悪態、断末魔、そして寮機或いは自機の被弾・撃墜報告………無線で飛び交う内容はそんなものばかりで、【Black Bird】に関しては撃墜どころか攻撃命中の報すら皆無。

F/A-18Fが、F-15Jが、F-2が、F-KC-1が、歴戦のパイロット達共々次々と火を噴き、墜ち、砕け散る。

(,,;゚ ゚)《Wyvern-01よりSky-Eye、指示を、指示を早く…………っ!》

必死に無線に向かって叫んでいたギャシャーの目の前で、早期警戒機E-3が機首部分を火炎に包まれながら落下していく。

広域警戒レーダーからのリンクが切れる。これによって連合空軍は、圧倒的な機動力を持ち対空砲火の援護射撃がある敵機を相手に有視界戦を強いられることとなった。
261 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:30:10.79 ID:Wfw+ZZyrO
戦闘開始から1時間と経たずに、既に200近い機体とパイロットを失った。残っている各機体の燃料や残弾も乏しく、ただでさえ難敵の【Black?Bird】との空戦は管制機のロストによっていよいよ覆しがたい状況になっている。そしてこれほどの犠牲を払ってなお、【学園艦棲姫】は未だ本体に傷一つ着けられていない。

だが、パイロット達はそんな状況に絶望し、恐怖し、それでも懸命に戦いながら────微かな希望も見出していた。

最初から解っていたことだ。急造とはいえ米軍の原潜まで投入された防衛ラインを無傷で突破した化け物に、どれほど通常兵器が束になったところで適うものではないと。

出撃の時から知っていたことだ。自分たちは将棋で言えば“たたきの歩”みたいなもので、相手の足を止めることは期待されていてもヒーローになることは期待されていないと。

光の巨人が出てくるまで大怪獣に立ち向かい、足を遅らせつついいように撃墜されてその恐ろしさを見せつける────自分たちの役回りなんてそんなもの。

無論、下馬評を覆して自分たちが英雄になってやろうと思っていなかったわけじゃない。だが、其方が仮に叶わなかったとしても、本来の仕事としては申し分がない。

『ゴァアアアアアアッ!!!』

学園艦棲姫の足は、止まっている。防衛線では見せなかった形態変化を見せ、第4世代戦闘機と真っ向勝負をした上で蹂躙できる貴重な航空戦力をもう一度引きずり出した上で、この途方もない化け物の足を日本から遙か遠く離れた海原で止めてやった。

自分たちの“役割”は、十分に果たした。ならば、後は────
262 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:37:17.48 ID:Wfw+ZZyrO








《【青ヶ島鎮守府】第一・第二連合艦隊、旗艦龍驤!間もなく戦闘海域に到達するで!》

《【横須賀総司令府】所属、第零艦隊旗艦日向より連合空軍各位に伝達。到着まであと60秒、持ち堪えろ》

《此方は【地獄の血みどろマッスル鎮守府】所属、第一艦隊旗艦青葉です!

────大物狩りも、青葉にお任せッ!》

後は、海の上を行く我らが【英雄】達に、全てを託す。
263 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:37:51.07 ID:Wfw+ZZyrO
23:00から第二波
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 17:12:36.35 ID:16ltenhA0
おつおつ
間に合わせたとは言え、空軍主力もかなりきついな…
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 18:39:44.68 ID:oQeltKHm0
もうやんなくていいよ^^
266 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:03:59.24 ID:pUkVk1LW0
《“新型”に関する続報です。

茂名官房長官は先程記者会見で、航空自衛隊・在日米軍・中華民国空軍を主力とした連合空軍が“新型”深海棲艦に対して攻撃を開始したと発表。太平洋上において“新型”の足止めに成功している模様です》

《アメリカ国防省はCNNの取材に対し、国連の常任理事国と艦娘保有国が密かに結成した“国連特殊海軍”の投入を決定したとコメント。フォックス=カーペンター国防長官は、既に“新型”に対し一部戦力が急行中であるとインタビューに回答しました》

《中華人民共和国はそんな話は聞いていないと反発、外交部を通じて強い抗議をしていく方針を示しています》

《ロシア連邦政府はアメリカと日本の迅速な決定を高く評価、ニュック=バリシニコフ大統領は日本のミナミ首相に全面協力の用意があると伝えました》

《アラビア海での戦況についてインド政府は詳細の言及を避けましたが、自衛隊の保有する赤城・加賀両空母艦娘の奮戦もあり敵に大打撃を与えているとの発表がありました》

《アラビア海防衛線の戦況推移にはアナトリア半島、アフリカ大陸東海岸の諸国も強い関心を示しています。既にサウジアラビアとエジプトは連合艦隊から支援要請があった場合速やかに増援を出す用意があると………えー、少々お待ち下さい。ただ今、新しい情報が─────》





《…………………。アルジャジーラより緊急ニュースをお伝え致します。

深海棲艦の大規模艦隊が、南アフリカ共和国のケープタウンに上陸を開始。現在国防軍が迎撃作戦を行っていますが、戦況は絶望的とのことです》
267 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/09(金) 23:11:24.28 ID:pUkVk1LW0
《SBSからの緊急放送です。オーストラリア国民の皆様、良く聞いて下さい。

タスマン海に新たな深海棲艦の大艦隊が浮上、グレート・オーストラリア湾に向かっている模様です。政府は上陸予想地点近隣の全国民に避難を命じています、軍と警察の誘導に従って落ち着いて避難を開始して下さい》

《ベーリング海に浮上した新たな艦隊の規模についてロシア政府から言及はありませんでしたが、既にカムチャッカ半島各都市には戒厳令が発令されています》

《チュクチ海にも同時に艦隊が出現、哨戒中だったロシア海軍部隊が遅滞戦闘に入った模様です》

《この二海域の艦隊は千島列島・北方四島・北海道方面にも進撃する可能性があり、日本政府も米露と連携して対処すると見られます》

《国営放送北海道支局から道民の皆様にお知らせします。今後お住まいの地域でJ-ALERTが鳴った場合、それは避難訓練ではありません。J-ALERTが鳴ったときに備えて、指定避難場所の確認や避難時の荷物整理をよろしくお願い致します》

《青瓦台はマスコミ各社に対して韓国国内の全軍に臨戦態勢を取るよう通達した旨を公表しましたが、一方でアメリカや日本との具体的な連携策については全く触れられないまま会見は終了しました》

《日本の迅速な対応について、一部専門家は南内閣が深海棲艦の大規模攻勢を事前に把握しながらそれを国民に隠していた可能性を指摘。日ノ出テレビでは引き続き大洗女子学園についてのニュースをお伝えする一方で、南内閣による情報の隠蔽・言論統制を厳しく追及していく方針です》

《ブラジル共和国連邦政府は南大西洋方面では未だ深海棲艦の出現は確認されていないとし、国民に冷静な対応を求めました》

《東欧連合軍総司令部は、各戦線で深海棲艦の動きが活発化しつつある事実を認めました。また、未確認ながらフランス西部、北欧でも深海棲艦の大規模な陸路攻勢の兆候が見られるとの情報も併せて開示しています》

《深海棲艦の進路上にある地域ではパニックが拡大し多くの人々が避難先を求めていますが、現在世界中の全ての地域が危険区域と言っても過言ではありません》

《全世界が戦時下にある………ベルリン陥落の折にトソン=カーヴィル大統領が口にした言葉が、今、現実のものとなりつつあります》
268 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:41:48.14 ID:pUkVk1LW0







横須賀市。

古くから海運の要衝として知られるこの地は、1853年のマシュー=ペリー来日以来本格的に“日本の玄関口”として発展していった。日本では初となる学園艦【咸臨丸】の進水、横須賀造船所の設立、洋式灯台の点灯、そして───横須賀鎮守府の設立。

19世紀以降の日本が急速な“近代化”に邁進していく過程で、玄関口である横須賀は大きな役割を担い続けてきた。

その重要度は、150年以上経った今でも変わらない。在日米軍と海上自衛隊の本拠地として、また【世界最大の鎮守府】横須賀総司令府が置かれる場所として、日本の国防と海運業の隆盛を担う“第二の首都”だ。

「…………」

ことに、横須賀総司令府は878隻という途方もなく膨大な艦娘戦力を保有する。呉、佐世保、舞鶴など司令府規模は同種の艦娘が複数艦所属など日常茶飯事だが、大和、武蔵、長門を各6隻ずつ駐屯させる鎮守府など世界中を探してもこの鎮守府ぐらいしかない。そしてここに、海上自衛隊と在日米軍の戦力が加わる。

通常戦力だけで、横須賀を陥落させる存在は恐らく無い───在日米軍総司令官の言葉は、決して誇張ではない。

深海棲艦の脅威に世界中が怯える中、その心配が殆ど無い“安全な国”。その玄関口として最も強固な守りを誇る横須賀が発展するのは、当然といえた。
269 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:06:28.20 ID:tuhNfgCQ0
(……それでも、やっぱり今日は静かなものだ)

閑散とした商店街を歩きながら、その少女は胸の内で呟いた。

イロイロと理由があって彼女個人としてはあまり寄りつきたくない街なので、それほどじっくり市内を練り歩いたことはない。しかしながらニュースなどで取り上げられる市の光景を想起する限り、そろそろ夕方に差し掛かるか否かというこの時間帯はまだまだ人が道に溢れている頃の筈だ。

あらゆる意味で“世界一安全な旅行”を堪能するために、或いは艦娘の存在を一目見るために、国内外の旅行者がこの街でとぎれることはない。彼らの存在は間違いなく、横須賀市の人口密度が戦前の三倍強に脹れあがった最大の原因だろう。

だが、今商店街を歩いている人影はせいぜい10人いるかどうか。しかもその内半分は、制服姿で見回りをする警官ときた。

店自体も、殆どが下ろしたシャッターに“臨時休業”の貼り紙をひっつけた状態で開いている店は一握り。そしてその一握りも、店の中を覗けば店主や店員は備え付けのテレビや引っぱり出したラジオに釘付けで此方に気づきもしない。

(まだ逃げるほどじゃないけど、ニュースが気になって商売が手に着かない、そんな感じザマスね)

いかに盤石な防衛拠点とはいえ、この市はあくまで“海沿い”だ。それに最大戦力を保有するということは、それだけ敵にとっては優先して潰したい場所にもなる。

自衛隊や艦娘が守ってくれると思いつつも、一抹の不安が拭いきれない───そんなところだろうか。
270 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:41:49.17 ID:tuhNfgCQ0
いやまぁしかし、それが自然な反応だろう。少女は歩きながら、改めて思う。

目と鼻の先の茨城県沖じゃ学園艦の上に深海棲艦が現れ、さらに全方位から人類の皆殺しを狙う化け物の群れが押し寄せてきている現状。おまけに南から来る奴は、今までに確認された事がない新型と来た。

これで一般市民に“怯えるな”という方が無理難題だ。商売だって手に着くまい。寧ろ、他の海沿いの街のようにパニックに陥って我先にと逃げ出さない事を賞賛してもいいぐらいだ。

(明らかに、アイツが、オカシイ、だけザマス!!)

次第に胸の内にこみ上げてくる怒りを抑えるため、意図して足を力強く踏み鳴らしながら歩く。周りから幾らか滑稽に見えるだろうけど構うものか。

「────こんな言葉をご存じかしら?

ひとつの幸せのドアが閉じる時、もうひとつのドアが開く。しかし、よく私たちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気付かない」

「………ヘレン=ケラーザマスね、知っているとも。今使われる言葉として正しいかどうかは別として」

指定の喫茶店に辿り着き、粗い動きでドアを開ける。ほぼ同時にカウンター席から投げかけられた“格言”に、少女の────元BC自由学園戦車隊長の顔が盛大に歪む。





「……で、こんなときに何の用ザマスかダージリン」

「落ち着きなさい、アスパラガス。駆けつけ一杯の紅茶は如何?このお店のオススよ?」

視線の先では、「横須賀に来たくない最大の原因」が笑顔でダージリンティーが入ったカップを掲げていた。
271 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:42:52.24 ID:tuhNfgCQ0
本日分ここまで。明日はまた同じぐらいの時間帯に
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 07:01:55.09 ID:cjCcIC4A0
世界全体が詰みかけているのに、お花畑組が平壌運転過ぎるなw
それにこれまた意外な所が…
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 13:06:55.41 ID:OT2zTlGf0


>>1はリトルアーミーだけじゃなくてリボンも詳しいのね
政治的においしい役目だといいな
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 16:14:46.97 ID:f73lJbhQ0
う、うーんこれは^^;
275 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 23:17:37.61 ID:tuhNfgCQ0
これまで見てきた商店街の様子からある程度察していたことだが、店内もまたがらんどうだった。

客は今し方入ってきたアスパラガス自身とカウンター席の中程に座るダージリンの二人だけ。後は店員と思わしき初老の女性が厨房にいて、フライパンを揺すって何かを焼いている。

「そんな入り口に立っていないで座りなさいな。安心して頂戴、店内にはジェームズ=ボンドもゲイリー=アンウィンも潜んでないわ」

「私としてはそこにトーマス=E=ロレンスも付け加えて欲しいザマスね」

「あら、“アラビアのロレンス”をご存じだなんて通なのね」

クスクスと笑うダージリンを無視して、アスパラガスは胡乱げな目付きで店内を改めて眺める。スパイ云々も聖グロリアーナならやりかねないため幾らか警戒はしているが、それ以上に店の内装が彼女の眉を顰めさせていた。

「……………ここ、本当に私達が使っていても平気ザマスか?」

「いやぁねぇ、ランチタイムは普通のレストランを営んでる酒場なんて国内外問わず腐るほどあるでしょうに」

カウンターの上や壁際の棚は勿論のこと、窓際や天井の収納スペース、挙げ句の果てには本来客が座るためのスペースと思われるテーブルの上にまで所狭しと並べられた………というよりは店そのものを入れ物として乱雑に詰め込まれたかのような、凄まじい数の酒瓶。微かに漂うアルコール臭も相まって不安の色を浮かべるアスパラガスの様子を見て、再びダージリンは笑みを漏らす。

「この店も同じよ。これらのお酒は未成年には振る舞われないわ。

────それと、私が耳に挟んだ話では貴女たちタンカスロンの試合中にアンツィオの“大人のブドウジュース”を」

「あれはボルドー達ザマス!!私は飲んでない!!」

ドンッとカウンターに拳を叩きつけつつ、早速アスパラガスは来たことを後悔していた。

大英帝国をそのまま擬人化したような言動と性格のこの女を相手にすると、いつも戦車道試合の20倍ほど体力を使うハメになる。
276 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 00:01:38.64 ID:eEG3zdFy0
江戸時代末期からの近代化に伴い国が西洋の事物・文化・技術を取り入れていく過程で、その媒体となった数多の【学園艦】もまた強い影響を受けていった。カナダとの交流を盛んに行っている苫小牧メイプル学園、トルコとの親交が深いケバブハイスクール、ソヴィエト・ロシアの国風をそのまま校風に反映させたプラウダ高校、不要なところまでフランスに似てしまったマジノ女学院にBC自由学園───確かにそれぞれの学園艦が、繋がりが強い国家の“縮図”やステレオタイプ・サンプルのようになっている節はある。

(だからといってこうも本家英国に似なくてもよかろうに………っ!)

やたらと勿体ぶった言い回しを好む風潮に、所構わず開かれるお茶会、タンカスロン関連では“本家”の悪名高い三枚舌外交を彷彿とさせる謀略の数々も幾度か目の当たりにした。

アスパラガスが知る限り、これほど「聖グロリアーナの戦車隊長」として相応しい存在は見たことが無い(無論褒めていない)。序でにいえば徹頭徹尾、彼女が苦手なタイプの人間でもある。

「顔色が悪いわよ、最近眠れているかしら?

今の貴女にぴったりな格言はこれね、『休息とは回復であり、何もしないことではない』」

「ダニエル=W=ジョセリンザマスね。とりあえず私が言いたいのは“お前が言うな”の一言ザマス…………ハァ」

盛大にため息を吐いて、火照った脳を落ち着ける。

ダージリンとの会話は主導権が全くといっていいほど握れないので激しく疲労するが、少なくとも継続高校の戦車隊長よりは幾らか会話になっている分マシだ。それに此方もいい加減慣れてきた面はある。

何より、これほどの事態の中でただ雑談のために他人を呼び出すほどこの女は脳天気でも愚かでもないはずだ。
277 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 08:26:47.08 ID:eEG3zdFy0
「いい加減用件に入るザマスダージリン。この無駄な問答が続くようなら私は帰る」

「あら、お口と頭の運動は大事だと思わない?」

「貴女にとっては準備運動でも着いていく私からすれば42.195kmのフルマラソンと同じザマス」

「仕方ないわね。でも、最後にお茶のおかわりだけいただくわ」

アスパラガスがカウンター席に座ると、ダージリンがぱちりと指を鳴らす。よく磨かれたテーブルの上を、ティーカップが二つ滑ってきて、二人の手元でピタリと停止した。

「むっ」

更にアスパラガスの目の前には、もう一つ料理が乗った皿も流れてくる。焼けたソーセージがジューシーな光沢を放ち、上にかかるグレービィソースの濃厚な香りと下に引かれたマッシュポテトのふんわりとした見た目も併せて激しく食欲が刺激される。

「……バンガーズ&マッシュはそれこそティータイムよりビールジョッキの隣にある方が似合うと思うザマスが」

「空腹であろう貴女への店主の心遣いね」

「空腹なのは貴女の急な呼び出しが最大の原因ザマスがね」

諸々の作業を終えてようやく遅い昼飯にありつけると思った矢先に、突然の“お誘い”でそれをほっぽり出して急行電車に飛び乗る羽目になった側としては釈然としない。とはいえ胃が空っぽに近い状態なのは事実だし、店の好意も十分にありがたい。

「………………いただくザマス」

更に喉の奥から飛び出しかけた文句をひとまず飲み込み、フォークで突き刺しソーセージにかぶりつく。

「んん……」

悔しいが、空腹という調味料を差し引いても最高に美味しい。後は歯止めが利かず、熱々のソーセージがみるみるうちに消えていく。

「それで本題だけれど、大洗で新しい動きがあるみたいなの」

「ふごっふふふ!?」

最後の一口を思い切り頬張ったところで“本題”を突然切り出され、喉を塞いだマッシュポテトを流し込むため慌ててティーカップに手を伸ばす。

「っ……」

ジャガイモで窒息死という不名誉極まりない最期を回避し、アスパラガスは横目でダージリンの澄まし顔を睨み付ける。

コイツ、今間違いなくわざとやりやがった。
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 13:44:25.30 ID:cIBClsrA0
おつおつ
それにしてもこんな情勢なのにノリノリだなw
279 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 23:04:13.27 ID:eEG3zdFy0
「大洗町に展開している自衛隊が戦力の増強を始めたわ」

「…………」

こっちの視線に気づいているだろうに、隣の紅茶女は手元のティーカップを一度傾けた後淡々と話を続ける。鼻っ柱に一発お見舞いしてやりたくなるが、ぐっと堪えて無言で続きを促す。

また本題からズレた話に戻っても仕方ないし、アスパラガス自身も大洗の現状については少しでも多く情報が欲しかった。

「10式戦車を主力とする機甲部隊が新たに市街地に展開して避難が完了した区域から順次封鎖、迫撃砲やバリケードの設置も各所で進行中みたいね」

「艦娘戦力は?」

「県外からは首都圏の内陸警備府で選抜された部隊が水戸市とひたちなか市に予備防衛線を構築。大洗、相馬、浦安各鎮守府並びに沿岸の警備府は全て厳戒態勢に移行済。

日本海側でも戦力抽出が可能とみられた区域からは続々と自衛隊や艦娘の移動が始まっているわ」

「動きが早いザマスね」

大洗女子学園の一件で日本中の200隻近い学園艦が警戒対象となり、おまけに全世界で深海棲艦の同時大規模侵攻が始まる中でこの迅速な対応。一昔前の日本なら考えられない姿だ。

「さるアメリカ大統領は、こんな言葉を残したわ。

『大抵の人は災難は乗り越えられる。

本当に人を試したかったら、権力を与えてみることだ』とね」

「エイブラハム=リンカーンザマスね」

「あと、『40歳を過ぎた人間は、自分の顔に責任を持たなくてはならない』とも」

「やめて差し上げるザマス」

まぁ顔はともかくとして、“あの”首相の行政・外交手腕が大方の国民の予想を大きく上回るものだったことは間違いない。実際に戦力を動かしているのが横須賀や市ヶ谷だとしても、その身軽な挙動を可能としているのは南内閣の法整備によるところが大きい。

「それと、宇都宮駐屯地にも動きがあったようよ」

「宇都宮………CRRザマスか?!」

ダージリンの言葉に、アスパラガスの眼が驚きで大きく見開かれる。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/11(日) 23:39:41.57 ID:eEG3zdFy0
Central Readiness Regiment ────【中央即応連隊】。陸上自衛隊の中では最も深海棲艦との戦闘経験が豊富な、国内屈指の精鋭部隊だ。

元々は首都圏での対テロ戦闘や国外派兵を見越して設立された部隊だったが、東南アジア戦線での反攻作戦において数々の戦果を上げたため正式に対深海棲艦特殊部隊として再編されたという経緯を持つ。高い練度を誇る一方で規模はあくまで700人という少数精鋭のため、戦況が安定傾向にあった近年は【第二次マレー沖海戦】のような大規模作戦でない限り基本的に宇都宮駐屯地で温存されてきた。

その部隊を、他の方面からも深海棲艦が日本本土に押し寄せてきている状況下で大洗の戦線に率先して割くという。それも、艦娘戦力もまだまだ動員できるにも関わらず。

(無論、ダージリンはあくまでも“動きがあった”と言っただけなので確定ではないザマス。だが……)

関東地方の自衛隊拠点に動きがあるのは当然のことだ。その中でわざわざ宇都宮駐屯地の存在を強調した辺り、彼女の手元には“CCRが動いた”事を示す相当確度が高い情報があるのだろう。

「しかし、学園艦同士の諜報活動ならいざ知らず国の………それも自衛隊や鎮守府の動きをここまで把握できるって聖グロリアーナはどうなってるザマスか?」

「クラウゼヴィッツはこう言ったわ。『情報が多ければ判断が楽というものではない』と。

だけど、取捨選択するだけの情報を集められなければ、そもそも判断自体を下せないと思わない?」

問いかけに対する直接の答えではないが、言わんとすることは解る。設立当初より“謀略と諜報の国”であるイギリスから多くを学んできた聖グロリアーナが、情報収集の手段をあらゆる場所に持っているのは当然だと言いたいのだろう。

それに戦車道履修者は、高校・大学の卒業後進路に陸上自衛隊を選ぶ者が全体の3割を占める。名門聖グロの戦車乗りとなればそれこそ陸自の方から諸手を挙げて歓迎するだろうし、其方方面へのパイプはなおのこと豊富というわけか。

「……さて、ダージリン。大洗町がどういう状況か、というのは解ったザマス。

それで、貴女はこの情報を元手に何を“やらかす”つもりザマスか?」
281 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/12(月) 00:40:17.49 ID:OCWv7WkR0
クスクスクス。アスパラガスの刺すような視線を受けて、ダージリンは心底おかしそうに肩を震わせる。

「“やらかす”って………それじゃあまるで私が何か悪巧みをしているような言い草ね」

「日頃の行いの報いザマス。オオカミ少年が何故全ての羊を食われる羽目になったかよく考えた方がいい」

「あら、それじゃあ私は最期に怒り狂った村人たちに打ち殺されてしまうのかしら?」

そういってまた笑いながらも、ダージリンの眼の奥に宿る光は真剣そのものだ。

この店にアスパラガスが入ったときから、そこだけはずっと変わらない。

「別に、悪巧みなんてしちゃいないわ。私はただ、一人の友人として、戦車乗りとして、大洗のあの子たちを助けたいだけなの。

あぁ、勿論ハリウッド大作の真似事をしようってワケじゃないわ。“これは映画ではない”のだから」

映画【キングスマン】の台詞と共に片手で制され、アスパラガスは一瞬上げかけた腰を椅子に戻す。

権謀術数に長け常日頃から掴み所のない言動を繰り返す一方で、ダージリンが根っこの部分では非常に熱くなりやすい人間であることもアスパラガスは付き合いの中で知っている。大洗女子学園の廃校の危機の際には各学園の連合を率先して主導したし、例のサムライガールの熱に当てられてタンカスロンにも介入している。

彼女が仮に“義勇軍を編成して自衛隊より先に大洗女子学園を救いに行く”等と言い出してもアスパラガスは驚かなかっただろうし、寧ろ初めからそう言い出すことを前提にどう止めるべきかを考えていた。

「そこまで血迷ってなくて何よりザマス」

「もしも私にそれだけの力があったなら、迷わずそうしていたのは事実だけれどね。

でも、流石に身の程は弁えているわ。情報を集めていたのは、あくまでもみほさんたちの為に“私が力になれること”を少しでも見いだせないかと思ったから」

「本当に、凄い入れ込みようザマスね」

尤も、気持ち自体はアスパラガスも理解する。

黒森峰という絶対強者の存在や硬直化した競技形式によって緩やかな死を迎えつつあった戦車道に、突然新風を吹き込んで数々の奇跡を巻き起こした“軍神”西住みほ。直接砲を交えることができなかったアスパラガスでも強く感化された程だ、実際に彼女の“奇跡”を目の当たりにした者達がどれほどの衝撃は想像に難くない。
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 18:57:44.77 ID:hJ3C1KtBO
こんなにも読みにくくて面白くない話も珍しい
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 21:49:45.84 ID:pA1Ix5c/o
乙です。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 02:46:20.36 ID:oLtzPSI0O
自演乙
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 19:12:46.80 ID:8jn/ahFq0
かなり楽しみにしてる。頑張って
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 15:45:31.91 ID:rbhcbs9t0
くっそつまんねぇ
287 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/15(木) 20:34:34.13 ID:N8TNLwGU0
ただ、それにしてもダージリンと聖グロリアーナの大洗女子学園に対する肩入れ具合には少々面食らうものがある。

(事態発生から2時間と経っていないのに、よくもまぁあれだけの内容を集められたザマス)

内地の艦娘動員やその戦力編成、自衛隊による市街地封鎖の詳細な状況、そして【C.R.R】の投入………何れも、本来なら一介の女子学生が政府の公式発表を待たず事前に知り得るような情報ではない。特にC.R.Rの件は、特定秘密保護法に余裕で引っかかる“軍事機密”だ。

聖グロリアーナの諜報部は確かに高校生離れした優秀さだが、これほどの情報を手に入れるとなれば払うリスクと労力は並大抵ではあるまい。大学選抜戦の時など比較にならないその無理筋を、聖グロリアーナが“他人”の為に押し通すとは。

(しかも聖グロリアーナも当然強制一時避難の対象だったザマスから、なおのこと情報は─────ん?)

そこまで考えて、ふとアスパラガスは違和感に首を傾げる。

確かに、2時間足らずで集められた情報としては量も質も上々だろう。ダージリンたちでなければ、この1/10も調べられないに違いない。

だが故に、“最も肝心な情報”がないことに気づいてしまう。ダージリンが、聖グロリアーナの他の戦車道選手達が、そして“彼女”を知る人々が最も知りたいもの。

そして聖グロリアーナが、その優先順位を間違えるはずがない。

「…………“大洗女子学園”の現状は、貴女たちでも調べられなかったザマスか」

「ええ」

シンプルな、短い返事。

彼女にしては珍しく、声に焦燥と苛立ちが滲み出ている。
288 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/15(木) 21:34:24.68 ID:N8TNLwGU0
深海棲艦が甲板上に、それも複数体出現するという前代未聞の異常事態。更に外洋から“新型”や別艦隊が接近している点も併せて考えれば、政府や自衛隊が此方の情報も隠すことは自然ではある。

問題は、それがC.R.Rの投入や艦娘の動員状況以上に重要視されているという点だ。

「まだ、情報収集の開始からたったの2時間しか経っていないという面は確かにあるわ。でも、逆に言うとこの2時間大洗女子学園艦内に関する情報にはアッサム達がノンストップでアプローチを続けている。

それなのに、テレビ局が報道している以上の内容が全く手に入らない」

語尾に近づくに従って、感情の昂ぶりを抑えきれずダージリンの声が震える。無理やりそれを押さえようとしてか、彼女は残りの紅茶を一息で飲み干す。

聖グロ生がカップ鷲掴みで紅茶をがぶ飲みする姿など、OG会の人間が見ればおそらく卒倒ものだろう。

「情報秘匿の度合いで言えば、フィリピン海方面から迫る“新型”の関連情報と同程度よ。

自衛隊に勤めているOGを筆頭に、外務省、警視庁、公安、さらには近隣の鎮守府、あらゆる伝手を辿っているけれど一向に学園艦内の現状が判明しない。辛うじて、“暴徒が発生している”とか“通信が全く繋がらない”とか、そういった断片的な情報を拾えただけ」

「………西住さんの安否は?」

「それも、解らない。

………いえ、きっと、無事でいる筈よ。彼女は、西住みほは簡単に死ぬような人間じゃない。生きているに決まっているわ」

自分に言い聞かせるように繰り返される、「生きている」という言葉。だが、やはり回を重ねるごとにそれはか細くなっていき、やがて弱々しい嗚咽と共にそれは途切れた。

「うぇっ………ひぅっ………」

「………今までの軽口は空元気ザマスか」

どんなに言葉で否定しても脳裏から追い払えない“最悪の想像”に、とうとう机に突っ伏し泣きじゃくり始めたダージリンから努めて視線を外しつつため息をつく。

全く、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。

……自分自身も含めて。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 12:12:16.94 ID:2ZulyxrA0
おつおつ
それにしてもデタラメな諜報力だなw
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 14:25:01.06 ID:wK5HGJzs0
ゴミ
291 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 22:01:38.92 ID:jlHLK4dm0
「ダージリン……貴女の、貴女たちの努力は認める。それにもしこの呼び出しの目的が協力要請なら、BC自由学園としても応えることは吝かじゃない。

でも、私の見立てでは報われる可能性は極めて低いザマス」

万年弱小とはいえ、1学園艦の戦車道チーム隊長を務めていた身。アスパラガスも状況判断能力や分析能力は人並み以上に備わっている。

そして彼女が見る限りでは、現在の状況は疾うの昔に自分たちが対応し得るものではなくなった。

「私達は所詮、一介の学生。戦車道を通じて多少戦略や戦術、謀略を囓っているとしても、そんなものは本物の“戦争”からすれば子供のお飯事に過ぎない。

私達が踏み入っても、力になれないどころか足手まといになる可能性の方が遙かに高いザマス」

「解っているわ、そんなことは!!!」

カウンターテーブルに、勢いよく叩きつけられる拳。よほど力を込めているのかワナワナと震え、関節が白く浮き出ている。

これほど取り乱したダージリンを見るのはきっと私が日本初だろうな……そんな、場違いな感想がアスパラガスの脳裏に浮かんだ。

「特殊カーボンで守られた安全な玩具の中で戦争ごっこをしているだけの女が、本物の“有事”でできることなんてたかが知れている!本当は自衛隊や艦娘や政府に全てを託して、彼らが任務をこなし西住さんたちを無事助け出してくれるの願って安全な地域で待つのが分相応だって解っているのよ!!

それでも、私たちはただ“待つ”ことに耐えられない!………っ」

再び微かに震える語尾。漏れかけた嗚咽を無理やり呑み込んで、ダージリンは潤んだ───だけど、奥に強い決意の光を讃えた瞳でアスパラガスを正面から見つめ返す。

「私達だけで助けようなんて烏滸がましいことは考えないわ。でも、例え少しでも大洗救援の助けになる“何か”があるなら………私は、諦めずにそれを探したいの………!」
292 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 22:51:48.44 ID:jlHLK4dm0
英国人は、恋愛と戦争には手段を選ばない───元より格言好きなダージリンが、特に気に入って繰り返し口にしてきた言葉。

アスパラガスも彼女との交流の中で何度も(内心うんざりしながら)聞かされたが、今のダージリンはまさに、全てを擲って思い人を助けようとしている恋する乙女の姿そのままだ。

(…………やれやれ、ザマス)

正直、“政治的”に考えればアスパラガス達にとってこの案件に首を突っ込むことはあまり得策とは言い難い。西住みほを助けたいという思いはダージリン達ほど切実ではないにしろあるものの、既に一度統合を経験している学校としてはあまり“国”に睨まれるような動きは避けたいという思いもある。

況してや戦車道でも毎回のように一回戦敗退し学園艦としての取り組みもマジノ女学院の二番煎じに過ぎないBC自由学園は、聖グロリアーナと違って実績にも乏しい。仮に廃艦論などが出れば抗うのは当時の大洗女子学園並みに難しいだろう。

(………まっ、とはいえ既に“協力は吝かではない”って明言してしまったザマスしね。

それに、ここで協力を蹴ったらボルドー達に何言われるかも解ったもんじゃないザマス)

本当に、つくづく、自分も含めて、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。

目の前で、プライドも保身も捨てて他人を助けようとしている同い年の少女がいる。だというのに自分がそれらに縛られて動けないなど────それこそ、私たちのプライドが許すものか。
293 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:06:59.11 ID:jlHLK4dm0
「『簡単ではないかもしれない。

でもそれは”できない”
という理由にはならないんだ』」

「…………え?」

「おや、ベーブ=ルースをご存じないザマスか?」

「………っ、しっ、知っているわ。ただ、何故ここで使ったのかって思っただけで」

格言で後れを取ったことが悔しかったのか、少し頬を染めながらごにょごにょと弁明するダージリン。それをしてやったりの笑顔で眺めながら、アスパラガスは懐からスマートフォンを取り出す。

電話帳を開いてある番号の欄を押す時、脳裏には“野球の神様”が残したもう一つの言葉が浮かんでいた。

「あぁ、ボルドーザマスか?忙しいところすまないザマス」

───あきらめない奴には、誰も勝てない。








「“BC学園譲渡”のカードを使うときが来た。

力を、貸して欲しいザマス」
294 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:39:54.73 ID:jlHLK4dm0






「出撃命令、ですか」

ミ ゚Д゚彡「……あぁ。ただし大洗じゃない。太平洋上の“新型”を俺たちで攻撃する」

「……そう、ですか」

ミ ゚Д゚彡「かつてない、手強い相手になる。お前ほどのパイロットを営倉にぶち込んでいる余裕は俺たちにはない、CDCは拘束の解除とお前さんの抗命行為を不問にする旨を決定した」

「…………」

ミ -Д-彡「だが、逆に言うと錯乱したパイロットを無理やり乗せたところで勝てる相手じゃない。どころか編隊自体がそのせいで危うくなる恐れすらある。

もしもお前がまだ腑抜けているようなら、俺はお前を出撃させるわけには───」

「大丈夫です」

ミ ゚Д゚彡「………食い気味に即答しやがったな。本当に大丈夫なのか?」

「曲がりなりにも、航空自衛隊の最精鋭部隊に身を置いてますから。そう長く私情に揺れるほど、弱い女じゃありません。

……それに要は、その学園ハンサムを」

ミ;゚Д゚彡「やめろ一気に弱そうに思えるだろうが。なんか顎尖ってそうだろうが」

「失敬。学園艦棲姫を、とっととぶっ倒してとって返せばいい。そして、今度は大洗にのさばってる化け物を叩き潰してあいつに会えばいい。

それだけの、話です」

ミ ゚Д゚彡「………ブーン、だっけか?無神経な言い方になるが、そいつはまだ生きてるのか?」

「生きてますよ。生きているに決まってる」





|w´‐ _‐ノv「……根拠も証拠もないけれど、あいつは私が信じているのに死ぬような勝手な奴じゃないです。だから私が信じる限り、ブーンは死なない。

そして私も、あいつが生きている限り絶対に死にません」
295 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:56:06.45 ID:jlHLK4dm0
《防空指揮艦【かが】CDCより全乗組員に伝達。

我々はこれより、横須賀総司令府からの指示に従い全ての艦載機を【学園艦棲姫】攻撃作戦に投入する》

《かつてない強敵だ。先んじて攻撃を開始した連合空軍は既に甚大な損害を受けており、足止めが精一杯となっている。青ヶ島鎮守府の艦隊に加えて国連が組織した対深海棲艦特殊部隊も投入されるが、それでもなお予断は許されない》

《だが、我々に怯え、竦み、逃げることは許されない。

何故なら我々は自衛隊であり、本土に住まう一億の国民の盾であるからだ》

《我々の肩には、国民の生命がかかっている。その事を決して忘れるな。

────各員の奮闘に期待する!!》

《CDCよりカタパルト、状態良好!全機、アガレ!アガレ!アガレ!!》

ミ?゚ ゚彡《了解。

Spear-01,?Take-Off!!》

《Spear-02,?Take-Off!!》




|w´‐? ‐ノv《────Spear-03, Take-Off》?
296 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:57:35.03 ID:jlHLK4dm0
最近ノロッノロで申し訳ありませぬ、本日分終了です。
明日からは安定して更新できると思われます(3日ぶり34度目の宣言)
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 01:00:45.10 ID:MQT72ZCA0
おつおつ、シュール頑張れw
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 08:28:58.64 ID:9EXzl4Hjo
おつ
299 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 12:58:07.81 ID:ukQp6ETJO








目を覚ますと同時に、近くでその音は鳴った。

或いは、僕が目を覚ました理由こそ“その音”だったのかも知れない。何せ並々と水が注がれた巨大な風船を勢いよく叩きつけて破裂させたかのような“その音”は、魔女に囚われたオーロラ姫だって王子様のキスを待たず目を覚ましてしまうのではないかと心配になるほど大きなものだったから。

(メメ; ω )「………〜〜〜〜〜ッ!!!?」

意識が光と五感を取り戻すや否や、とてつもない激痛を知覚して視界に星が飛ぶ。血液を通して痛みが直接全身を駆け巡っているとでも表現すれば良いだろうか。悲鳴や苦悶の声を上げる余裕すらなく、ただ浅い呼吸だけが口から漏れる。

(メメ;^ω )「………お?」

身体を苛む苦痛を少しでも緩和できないかと身動ぎしたところで、ようやく僕は自分が誰かに負ぶさっている状態であることに気づいた。
300 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 12:59:20.28 ID:ukQp6ETJO
(メメ;゚ω゚)「……おおおっ!?」

「わっ、暴れんじゃねえ馬鹿野郎!」

状況が飲み込めず、動揺し、更に大きく身動ぎ。途端、僕を背負う人物がバランスを崩しかけて叱責の声を上げる。

女性の声。頭の上に乗る船舶科の帽子から察するに、恐らく学園の生徒なのだろう。西住さんや角谷さんと同世代と考えるとやや低い印象の────所謂、“ハスキーボイス”に該当する声質だ。背もそれなりに高いようで、目線から逆算する限りは170に届くかどうか。

(メメ;゚ω゚)(………そうだ、僕は爆発に巻き込まれて)

停滞していた脳の回転が戻るに従って、記憶も徐々に再生される。学園艦の中を暴れまわる怪物、逃げ惑う生徒達、取り乱す秋山さん、宇津木さんの上に落下してくる報道ヘリ…………脳裏に、次々と僕の意識がブラックアウトする前に見ていた光景が蘇ってくる。

(メメ;゚ω゚)(角谷さん達は無事に逃げ切れたのか?自衛隊の救助はいつ?それにここは一体どこだお?)

同時に、動揺と混乱も加速していく。

記憶が幾らあろうが、気を失っている間我が身に起きた出来事は当然ながら感知していない。視界がブラックアウトする直前に甲板の裂け目に転落したことは覚えているので大洗女子学園の“下層”であることは大方予想が付くが、そこからどうなれば見ず知らずの船舶科女生徒に担がれた状態に辿り着くのか想像できない。

(メメ;^ω^)(……そもそも、良く生きてるおね僕は)

「根賀さん!後ろからまだ奴等は追ってきてるのか!?」

(;●▲●)「あぁ、まだバッチリ来てる!!」
301 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 13:00:07.07 ID:ukQp6ETJO
迷走する思考の果てにそんな身も蓋もない感想を浮かべた僕を尻目に、女生徒は直ぐ隣を走っていた別の人影に問いかける。根賀、と呼ばれたその人物は、一瞬だけ視線を後方にやると大きな眼を僅かに眇めいかにもうんざりした風で舌を出してみせる。

熊手のように大きな右手に握られているのは、拳銃───SIG SAUER P226。

(;●▲●)「数は20〜30ってところか、息切れ一つしてる様子がねえぞ……クソが!」

野暮ったい作業服にややデップリした体格からは想像も付かない機敏さで、その男性はくるりと反転。背後の薄暗がり………何十もの足音が重なって聞こえる方向に向き直りながら、膝を床に着けてSIGを両手で構える。

(メメ;゚ω゚)そ「ぉおっ!?」

立て続けに三度、9mm口径から吹き出した銃火が微かに辺りを照らす。僕の上げた素っ頓狂な声と共に銃声が通路を反響し、間髪を入れず“何か”が倒れる音がそこに重なった。

此方に向かってくる“何か”の集団は、その内の一体が転倒したことによって多少鈍ったようで足音が微かに乱れた。だが、その混乱は長くは続かずすぐに僕らの追走を再開する。

(#●▲●)「リロードする!日屋根、援護を!!」

( ・∀・)「はいはいさー」

すかさず、もう一つ女生徒の隣を走る人影が踵を返す。取られるのは、根賀さんと呼ばれる男性と同じ膝射姿勢。

ただし、構えられた銃のシルエットは、SIGに比べて明らかに大きく、長い。

( ・∀・)「全く、とんだ出張もあったもんだねぇ」

僕の記憶が正しければ、アレは海上保安庁でも正式採用されているショットガン────モスバーグM500だ。

( ・∀・)「フゥウウウオオオオオオオオオオオウッ!!!!」

奇声と共に、もう一人の男性が引き金を引く。

僕を叩き起こしたあの音が、暗い廊下に木霊した。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 14:11:12.21 ID:LytXoJpN0
時間かけるならもうちょっとマシなものを書けよヘタクソ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 20:31:27.72 ID:+wWWpvmA0
おつおつ
先生どんな状況に巻き込まれてんだw
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 20:16:05.81 ID:WPvd4aJb0
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 21:27:13.31 ID:+aM41ZDq0
本読んで勉強した方が良いよ
306 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:01:28.81 ID:BsS8N4hC0
散弾銃という日本式の名称が示すとおり、ショットガンの弾丸は前方の空間へ拡散発射される。射程距離が概ね50m前後と極端に短い代わりに、近接戦闘での殺傷能力と空間制圧能力はとても高い。故にその性能は、市街地や閉所での接近戦で特に遺憾なく発揮される。

そう、例えば今僕らがいる、人が四、五人も横に並ぶと隙間がなくなるような狭い廊下とか。

『キィイイアアアアアアアアアッ!!!?』

(メメ;゚ω゚)「ヒッ……!?」

僕らを追ってくる“何か”からすれば、弾幕なんて生易しい存在じゃない。突如出現した「銃弾の壁」にまっ正面から突っ込む形となった“何か”の肉が裂ける湿った音と、それを掻き消すおぞましい断末魔が冷え切った廊下の空気を震わせる。

(●▲●)「おうムラカミさん、そのあんちゃん眼ェ覚ましたんか!」

「あぁ、たった今な!」

此方に駆け戻ってきた小太りの男性……根賀さんが、“何か”の声に身体を強張らせる僕を見て微かに眉根を上げた。どうやら、僕を背負う女生徒の名はムラカミというらしい。

「さっきから他人様の背中でうるっさくて仕方ない!怪我人じゃなかったら床に放り出してるっつの!」

「ま〜ま〜、そーいーなさんなってムラカミや。こんだけ苦労して連れてきた挙げ句“屍体でした”ってんじゃ、それこそ骨折り損のくたびれもうけだしねぇ〜」

前方から聞こえてくる、この修羅場に似つかわしいとは言い難い間延びした女の子の声。

ここで初めて、僕はこの一行を先導する四人目の存在に気づいた。
307 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/21(水) 23:05:19.22 ID:BsS8N4hC0
ムラカミさんの走りを邪魔しないよう、僅かに首だけ動かして前を覗き込む。

眼に映るのは、3メートルから4メートル先でぴょこぴょこと上下に揺れる赤い毛玉。一瞬面食らったが、よく眼を懲らせばそれはパーマをかけられた頭髪だ。

やはり船舶科の服を身につけていて、邪魔だったのか帽子は右手に握られている。背は160cm前後、此方もこの年代の女性として低いわけではないのだが、僕が“ムラカミさん”の上から見ているせいもあってかどうしても小柄に感じてしまう。

「根賀のおっさんと日屋根の兄貴は武器持ってるしさぁ、あたしじゃ体格的に役者不足だからムラカミぐらいしか運べるのがいないんだってぇ。我慢してよね〜」

「言われなくてもわあってるっつの!!それよりラム、後どれぐらいで着くんだ!?」

「後6ブロックってところだねぇ、ファイトファイト〜」

ラム、とは恐らく先導する生徒の呼び名か。日本人としては聞き慣れない名前なので、或いは鈴木さんたちや某紅茶学園のようなソウルネームなのかも知れない。

そして、その“ラム”さんと荒い呼吸の中から慣れた様子でやりとりするムラカミさん。

(メメ;^ω^)(能島村上家、厳島の戦い、毛利元就………もしかして“ムラカミ”もソウルネームかお?)

村上水軍。公式記録では南北朝時代にその名が登場する瀬戸内海の勢力で、水軍と名が付いているがその実態は今で言うところの“海賊”だ。来島、因幡、能島の三家が存在し、特に能島村上家は毛利元就が陶晴賢を撃ち破った【厳島の戦い】で重要な役割を担ったことも手伝って一般でもそれなりの知名度がある。

そしてラム酒と言えば、“海賊のお酒”の代名詞。

(メメ;^ω^)(この子たちがどういう集団に属してるのかちょっと見えてきたお)

まぁ、自分が何故この子達に運ばれているのか、“根賀さん”や“日屋根さん”は何故この子達と行動を共にしているのか、この二人はどこから武器を調達したのか等まだまだ疑問も多数残りはするが。

今僕たちが何に追われているのか、という点も含めて。
308 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/21(水) 23:09:35.68 ID:BsS8N4hC0
無論、深海棲艦がらみだというのは僕でもある程度予想は着く。学園艦の現状を考えれば、人間を好き好んで追い回す存在なんて奴等関連ぐらいしかいない……と思いたい。

問題は、この地形。こんな狭い廊下の中を甲板上にいるあのデカ物が動こうとすれば、それこそ艦を内部から破壊しつつ進むことになる。だが背後から迫る気配は、足音から察するに明らかに人間サイズだ。

(メメ;^ω^)(まさか“ヒト型”種……いや、だとしたらショットガンや拳銃如きで食い止められる相手じゃないお)

ル級やリ級といったヒト型種は大きさこそ僕ら人間と変わらないが、通常兵器は殆ど効果が無く艦娘でなければ有効な対応ができないというのは僕でも知っている。実際携行銃火器で迎撃できるような相手なら、幾ら奇襲を受けたとはいえ出現当初あれだけ甚大な被害が出るはずがない。

( ・∀・)「フィイイイイッ!!!!」

( ・∀・)「ヒッヒィイイイイイ!!!!」

( ・∀・)「イーディーエェエエエエフ!!!!」

(メメ;^ω^)(……あいつうるせえな!?)

……で、それとはまるで関係ないのだが、しんがりでショットガンを撃ち続けている男の声がべらぼうに五月蠅い。モスバーグM500の銃声もそれを食らう“何か”の苦悶の声も、彼が上げる甲高い雄叫びにあっさりと掻き消されてしまう。しかも定期的に振り向いて発砲する度にその声を発するので、なんか……その奇声が脳に刷り込まれていくような感覚に陥って倍付けで不快だ。

( ・∀・)「チョギップルィイイイイイイイッ!!!!!」

いや本当にうるせぇ。あいつ肺活量どうなってんの?

(メメ^ω^)「………え?」
309 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:13:30.00 ID:BsS8N4hC0
約1名が織りなす背後の喧噪に生暖かい視線を送っていた眼を、思わず微かに見開く。

火を噴くモスバーグ。銃口から弾丸が吐き出される刹那、マズルフラッシュによって照らし出された廊下。そこに見えたモノが俄に信じられず、僕は後方に眼を凝らし続けた。

そんな事、あり得るはずがない。後ろから追いかけてくる“何か”が、船舶科の制服を着た人影だなんて。

そしてその人影めがけて、しんがりの男が平然とショットガンをぶっ放していたなんてこと、あり得てなるものか。

(メメ;^ω^)(きっと、見間違i)

『ア゛ア゛ァ゛ッ!!!」

必死に縋ろうとした希望的観測は、脳裏に浮かべた傍から目の前で繰り広げられる“現実”によって容赦なく否定された。

「ウ゛ァアアアアっ!!!』

( ・∀・)「*おおっと*」

男性が弾薬の装填動作を取った一瞬の隙を突き、彼に飛びかかった人影。手負いの肉食獣のような、声量も響きもとても人間のものとは思えない唸り声を発しながら組み付いたそれは、ムラカミさんやラムさんと同じ白を基調としたセーラー服を身につけている。

「ガァアアッ、アアアッ────ガッ!?』

( ・∀・)「男女平等キーーーック!!」

動きに、躊躇も遠慮もありはしなかった。男は組み付いてきた女生徒の顎を銃床で殴りつけ、腹を蹴って強引に距離を空ける。

その手に構えられるのは、蹌踉めき離れたその子の頭部にしっかりと照準を据えるモスバーグM500。

(メメ;゚ω゚)「───待っ」

(#・∀・)「Wassoy!!」

止める間もなく響く、銃声。

「アギッ』

その子の頭が、針で風船を突いた時みたいに乾いた音を立てて破裂した。
310 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:20:44.95 ID:BsS8N4hC0
あまりの出来事に、悲鳴も怒声も上げられない。脳の機能は覚醒直後からすればかなり回復しているはずなのに、背後の光景を現実として受け入れてくれない。

そして、状況の変化は受け入れるだけの時間も与えてくれなかった。

「「ウ゛ァアアアアッ!!!』』

『『ガァッ!!」」

( ・∀・)「やだ……幼稚園以来のモテ期……」

銃火が途切れるや否や、暗がりからドッと此方に向かって押し寄せてくる人の群れ。大半は船舶科中等部や高等部の制服を着た女生徒達だが、中には整備士の作業着に身を包んだ男性や船舶科の教員と思わしきスーツ姿の人影も混じっている。

「『「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』」』

( ・∀・)「Show timeだ………」

ネジが外れた玩具の人形のようなどこかぎこちない動きで───しかしながら凄まじい速度で周囲に群がろうとする彼女達に対し、日屋根………さんは満面の笑みを浮かべてモスバーグM500を構え直してみせた。

( ・∀・)「WRYYYYYYYYYYY!!!!!」

『ギィイッ!?」

「アカ゛ァ……』

後退りながらも、容赦なく引かれる引き金。散弾が銃口から吐き出され、射線上の人影を次々と薙ぎ倒していく。

頭をトマトのように潰された作業着の男が、肩口から腹の辺りにかけてまでを抉られた小柄な女の子が、上半身をぐちゃぐちゃの肉塊にされて性別すら解らなくなった保安官服の誰かが、床に転がって血溜まりと屍体の山を形成する。

そして、背後の惨状に誰も………根賀さんはともかく、ムラカミさんとラムさんも視線すら向けず走り続ける。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 09:23:47.69 ID:vXs/V1X80

まだサメさんチームになる前の出来事だったのか・・・
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 12:17:31.52 ID:Y5iztrOA0
おつおつ
こんな時でも輝けてるのは凄いなw
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 20:21:27.39 ID:BVbAyXb70
自演してるってマ!?!?!?!?!?!?
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 20:37:43.96 ID:Hr59C89z0
source
315 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/22(木) 23:23:24.71 ID:CSRI4Ade0
(メメ;゚ω゚)「なっ……なっ……」

(;●▲●)「面食らうのも無理はねえが説明は後回しにさせてくれやあんちゃん!!」

あまりにも異様な状況に言葉が出ず、僕は酸欠の金魚よろしく口をぱくぱくと開閉させる。根賀さんは有無を言わせぬ口調で僕に向かって釘を刺しながら、再びSIGを抜き放つ。

『ウ゛ア゛ッ……」

反転し、2連射。日屋根さんの横を抜けてこようとしたスーツ姿の男が一人、胸と頭を撃ち抜かれて衝撃で転倒した。

(●▲●;)「俺たち自身もそんな余裕はないし、何よりあんちゃんの安全のためでもあるんだ!今は逃げることに専念を────」

ガシャン。頭上で、そんな金属音が鳴る。

『ギィイイイッ!!!」

(;◎▲◎)そ「ぅおおおおおぁああああっ!!?」

(メメ;゚ω゚)「っ!!!?」

ダクトにはめ込まれていた金網が外れ、中から降ってきたのは新たな“人影”。船舶科中等部の制服を着た、一人の小柄な少女だった。

身長は角谷さんと同じぐらいかそれ以下で、或いは今年入学したばかりの一年生だったのかも知れない。少し下がり気味の眉尻とおっとりした印象を与える顔だちが、その女生徒が本来優しい性格の持ち主だったことを窺わせる。

「アアァッ、アアアアアッ!!!!』

(●▲●;)「このっ……!」

そんな彼女が、今は唾を撒き散らし、獰猛に唸り、自分の倍は体重があるであろう成人男性を組み伏せて、その首元に向かって顔を突き出しながら歯をカチカチと鳴らしている。

まるで、映画に出てくる“ゾンビ”のように。
316 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/23(金) 10:40:43.81 ID:JWwMSKGgO
「この……っ、野郎!!」

「ギギッ!?』

根賀さんにのしかかり彼ともみ合う少女(の形をした何か)に向かって、踵を返したムラカミさんがそのまま足を突き出す。刹那の戸惑いこそあったものの、それでも放たれた蹴りは140cm程度の小さな身体を吹っ飛ばすには十分な威力を持っていた。

「シィイイイイッ!!!』

( ・∀・)「BAN!!」

「ア゛ア゛ッ!?』

数メートル後方へ吹き飛ばされて床に四つ足で着地した“少女”に、横合いからモスバーグM500の12ゲージ弾が叩き込まれる。砕けた頭部が壁に叩きつけられ、ズルズルと血の跡を残しながら倒れ込む。

「根賀さん、怪我は!?」

(●▲●;)「お陰様で五体満足だ……日屋根さんもすまん、助かったよ」

( ・∀・)「礼は後ほど受け取るとして、早いとこ立った方がいいですよ」

足下に転がった空薬莢を蹴って退かしながら、日屋根さんは再び背後に向き直る。

お面を被っているみたいな無機質な笑みはそのままだけど、目元からさっきまでの(明らかに場違いだった)おちゃらけた雰囲気が消えていた。

さながら自分を狙う天敵に気づいた草食動物のように全身を緊張させて、彼は背後を───屍の山の向こう側に横たわる闇をにらみ据える。

( ・∀・)「そろそろ、来ますよ」






『『『キャハハ、キャハハ、キャハハハハハハハハ!!!!』』』
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/23(金) 18:07:16.92 ID:BeXlzV2G0
一気読みしたいんで応援しかできないけど応援してます(ボキャ貧)
318 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/24(土) 23:44:22.23 ID:8A9iV12l0
笑い声。そう、これは笑い声だ。それも生後数カ月の赤ん坊が上げるような無邪気で明るいやつが何十と重なり、足音と共に僕たちの方へ凄まじい速度で近づいてくる。

学園艦下層で、しかもこんな状況下では聞こえることが絶対に有り得ない“それ”を耳にして、全身の肌が粟立つのを感じた。

(#・∀・)「Go!!!」

(●▲●;)「っ!」

「ああクソッ!」

「やっばいねぇ……っ!」

腰だめでの射撃姿勢とった日屋根さんの叫び声に圧され、3人は弾かれたように走り出す。数秒と経たず、後ろから聞こえてくる断続的な銃声。

『『『キヒヒヒヒッ、キハハッ、キャハハハハハッ!!!』』』

だけど、今度は止まらない。幾ら12ゲージ弾がばらまかれようとも、笑い声は減らないし足音も多少鈍ってはいるものの止まる気配がない。

『───イヒヒヒヒヒッ!!!』

(メメ;゚ω゚)「おおっ!?」

突然、追跡者達が上げる笑い声の内の一つが一気に近づいてくる“気配”がした。何故かは知らないけれどそうした方がいいような気がして、頭を僅かに低くする。

ガチン。そんな、錆び付いたハサミを力一杯占めたような音が頭上数センチで鳴った。

(#●▲●)「化けものめ!!」

『キィッ、キィッ、キハハハハッ!!!』

根賀さんの怒声と共に、SIGの弾丸が放たれる音が隣から聞こえてくる。束の間僕の頭上に止まっていた“何か”が上げる、からかうようなはしゃぐような声が瞬く間に遠ざかっていく。

(●▲●;)「あんちゃん、無事か!?」

(メメ;^ω^)「な、なんとか……あの、今のは」

「やべー奴だよやべー奴!」

疑問の声はムラカミさんの怒声に遮られる。息が荒くなっているが、それは疲労というよりは恐怖から来る乱れのように思えた。

「とりあえず、今後ろを振り返るのはオススメできねえぞ!振り向くのは勝手だけどどんだけトラウマになろうがアタシの知ったこっちゃないからな!!」
319 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/26(月) 23:17:39.14 ID:vbxnl7x50
「────ムラカミさん、ラムさん、こっちですこっち!!奴等直ぐ後ろまできてますよ!!」

「根賀のおっさんも早く!!おい、ムラカミさんたち回収したらすぐ閉められるようにしろよ!入られたらこの区画は丸ごと終わりだ!」

銃声とおぞましい笑い声の下で続く、命懸けの鬼ごっこ。それに終止符を打ったのは、前方に姿を現した巨大な隔壁だった。

「クソッ、あいつら思った以上に速ええし多いな!?」

「最悪しんがりの変態野郎は見捨てるぞ!閉鎖速度上げろ!」

「よいっ、ととと!」

「────っぶぁはっ!!」

少しずつ下がってくる、特殊カーボン製の強固で分厚い壁。手前に立つ生徒二人の間を駆け抜けて、ラムさんとムラカミさんがその向こう側へと文字通りの意味で転がり込む。

(メメ; ω )「おおおおおぉ……」

「……っつ、大の男がその程度でピーピー喚くんじゃないっての……!」

当然の帰結としてその身は空中に投げ出され、固く冷たいコンクリート製の床に激突した。悶絶する僕はワイシャツの襟首を子猫のようにふん捕まえられて、腰の辺りをさすり苦悶の表情を浮かべるムラカミさんに引き摺られていく。

(;●▲●)「日屋根、足止めはもう十分だ!隔壁が下がりきる前にこっちに来い!」

( ・∀・)「いえっさー!!」

隔壁の手前では根賀さんが停止してシグの引き金を引き、援護射撃を受けながら日屋根さんはこちらへ駆けてくる。

そして、二人を追う“それら”の姿を僕は見た。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/26(月) 23:18:37.83 ID:YLukWnYQ0
続きお待ちしております。
最近冷えるので体調にはお気を付け下さい。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 00:14:33.19 ID:Qa32/CGl0
つまんね
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 13:10:44.22 ID:FOPpuxcyo
更新遅かろうがなんだっていいけど未完失踪は辞めてくれよ
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 20:29:38.09 ID:eOVkzW+A0
>>322
更新頻度からすれば気になるのも分かるけど、失踪扱いはせめて数週間は待ってからでもw
月一更新な作品だってざらにあるんだし
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 03:42:27.42 ID:Ly37r+GxO
本当に失踪しちゃったじゃん
325 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/03(土) 22:30:51.07 ID:sUJQuCNI0
日屋根さんが最後っ屁の12ゲージ弾を放って内側に転がり込んだ直後、隔壁の降下が一気に速まる。そこから通路が遮断されるまでにほんの数秒とかからなかったため、「見た」とは言っても僕が“それ”を視界に収められたのはほんの一瞬のことでしかない。

だけど、その一瞬で十分だ。あんなものを長々と見せられていたら、僕のSAN値はきっと1d100のロールを免れなかったに違いない。

あんな、おぞましいモノ。

『『『アアアアアアアアアアッ!!!!!』』』

傷口に湧いた蛆の如く、寄り合い絡み合いながら迫ってくる白く長いナニカ。錆び付いた扉の蝶番が軋む音を何百倍にも増幅させたような叫び声を口々に上げて、それらの群れが眼前で閉じた隔壁に殺到する。

『『アァアアアアアッ!!!』』

『『ギィッ、ギィッ!!!!!』』

「総員構え!億が一破られたらとにかく撃ちまくって食い止めろ!!」

壁を破ろうとしているのだろうか。硬い打撃音が、隔壁の向こう側からそれらの鳴き声と共に聞こえてくる。指揮官と思われる保安官の号令に従い、隔壁の内側に待機していた人員が一斉に武器を構えた。

40人ほどが集まっているようだが、保安官の制服を着ている人間は全体の半分程度。他の服装は様々で、ムラカミさんたちを先程迎え入れた二人も含めて船舶科生徒の姿もちらほら見える。

装備も日屋根さんのモスバーグM500と一部の機動保安隊員が構えているM&K MP5数挺が目立つ程度で、あとは全て小口径の拳銃。それとて所持しているのは全体の1/4に過ぎず、残りの人員が構えているのは────警棒やバット、上等なものでせいぜい不審者取り押さえ用のさすまた。

あの化け物の大群を抑えるには、役者不足どころの話じゃない。かといって、僕の方で力になれることがあるかと言えばそれもNOだ。

ただ、隔壁の強度が奴等の力を上回っていることを全力で祈る他なかった。
326 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/03(土) 22:37:15.90 ID:sUJQuCNI0
時間が、まるで溶かした鉛のように重くゆっくりと流れる。その場にいる誰もが、隔壁を見つめたまま微動だにしない。

時間にして、恐らく数秒。だがその数秒が、僕には何百倍も長く感じられた。

『ギィッ……キィイィッ……』

『アァアアアア………』

隔壁を殴打する音が時が経つにつれて少しずつ弱まり、それに伴い奴等の鳴き声も勢いを失っていく。変わって壁の向こうで響き始めた足音は、明らかにこの場から、隔壁から遠ざかるものだった。

更に十秒ほど息詰まる時間が続いた後、場には耳が痛くなるような静寂が降りた。

「────敵群体の後退を確認!!」

(;●▲●)「ブハッ!!」

( ・∀・)「………フゥ」

隔壁のすぐ傍に据えられた端末機を睨んでいた保安官が叫び、その言葉にようやく空気が弛緩する。根賀さんは激しく息を吐いて座り込み、日屋根さんは肩の力を抜いて額の汗を拭き、他の人々も思い思いの方法で安堵の感情を露わにしている。

「………っはぁ〜」

「ぶへぇ………」

ムラカミさんとラムさんも、盛大に空気を吐き出しながら脱力して同時に尻餅をついた。………再び投げ出された僕は今度は後頭部をしたたか打ち付ける羽目になったけれど。

「ムラカミ、ムラカミ、おにーさんがメッチャ唸ってるよ」

「………あ、スマン」

(メメ; ω )「おおおおお………い、いや、おかまいなくだお………」

新たな痛みで悶絶しながらも、何とか言葉を絞り出す。

実際、多少体格がいいとはいえ一介の女子高生が成人男性を負ぶって走るのは相当な体力を消費するはずだ。疲労困憊は当然のことで、気絶した状態で運んできて貰った僕がこの程度で文句を言う権利はない。寧ろ、心底からの感謝を伝えなければ僕の気が済まない。

まぁ今言うと、間違いなく要らない誤解を招くことになるけれど。
327 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/03(土) 22:45:30.29 ID:sUJQuCNI0
「お構いなくってそういうわけにもいかないだろうよ……ここで死なれたら何のために苦労して助けたのかわかんねーし」

「けっこー強めにぶつけたもんねぇ〜。衛生兵でも呼ぶかい?」

「いないだろんなもん」

(メメ;^ω^)「いやいや、本当に気にしなくて大丈夫ですお。……っと」

壁に縋り付きながら、少しずつ立ち上がる。身体の節々に未だ痛みが走るものの、幸い少なくとも骨折などで完全に動かないパーツはなさそうだ。

(メメ^ω^)「こう見えて僕も戦車道講師の一人ですお。特殊カーボンほどじゃないけど、それなりに頑丈なので」

まぁ、あくまでも座学の講師だけど……と、胸の内で付け足す。別に日頃から身体を鍛えていたわけでもないので、やっぱりヘリの爆発に巻き込まれながらこの程度の怪我で済んだのは運が良かったという他ない。

「戦車………道?」

「………なんだっけそれ」

(メメ;^ω^)「……………えーと」

ムラカミさんとラムさんは、揃って怪訝な顔つきで首を傾げる。最初はやはり男の戦車道関係者は驚かれるよなと思ったが、表情を窺うに疑問ポイントはそこではない。

どうもこの二人、戦車道そのものを本当に知らないらしい。

(メメ;^ω^)(………いやいやいやいやいや)

冗談がキツい。戦車道という競技が近年比較的マイナーな立ち位置だったのは事実だが、それを一躍人気スポーツの地位に押し上げたのが他ならぬ西住さんたち大洗戦車道チームなのである。戦車道連盟の広報部による映画化の影響もあって、大洗町どころか茨城県内でも大洗戦車道チームの存在や西住さんの顔を知らない人間は相当なレアケースに属する筈だ。

況してや、学園艦内の人間が戦車道を知らないなど世事に疎いではすまない。本格的に記憶喪失を疑う案件になってくる。
328 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/03(土) 23:06:50.91 ID:sUJQuCNI0

困惑する僕の前で、ムラカミさんとラムさんは首を傾げたままだ。悩ましげに眉を顰めてブツブツと何事か呟いていたラムさんが、突然「あぁ〜〜」と間延びした声と共に顔を上げた。

「戦車ってアレじゃん。ほら、陸の鈍間な鉄の亀」

「………あったなそんなもん。

なんだい、アレの関係者なのかい?」

(メメ;^ω^)「……まぁ関係者と言えばそうですおね、直接動かしたりってワケじゃないけど」

にしても鉄の亀って。戦国自衛隊辺りで戦車を初めて見た足軽が使いそうな表現をアンタ。

「そういや夏休みの終わり頃に学園艦から退去するようにとか寝言ほざきながら変な奴等が何人か乗り込んできてたな。なんか、もんかしょーのうんたらかんたらとか名乗ってたけど」

「あぁ〜、ぶん殴って追っ払ったアレね。また乗り込んできたら全力でボコボコにする予定だったけど結局もう来なかったねぇ〜」

(メメ;^ω^)「ぶん殴ったの!?一応国の正式な役人を!?」

いやまぁあの横暴さは僕も腹立たしかったけど!ざまぁとかグッジョブとかメッチャ思うけど!!………ただ、冷静な第三者目線で見ればやはり大問題行動だと言わざるを得ない。

あのクソ役人がカール持ち出してまで全力で潰しに来たのってそれも原因だったのかね。今となってはどうでもいい事だが。

「んで、その陸の鈍亀がアンタと何の関係があるんだい?」

(メメ;^ω^)「あー……まぁ、それを……戦車を用いた選択授業があって、その講師を僕はやっているんですお。本職は普通科の現国だけど」

「ってことぁ、“上”の先生ってわけだぁ」

ラムさんが親指で天井を指さし、視線を頭上に向ける。まるで計ったようなタイミングで、ズンッと小さな揺れが走りぱらぱらと埃が墜ちてきた。

「………なぁ、上は今どんな状態なんだ?あたしらは朝から下に閉じ込められててね、全く今の状況が解らなくて困ってんだよ」
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/04(日) 08:31:52.48 ID:JRkw071A0
おつおつ
先生も本当に災難だけど、ようやく一段落かw
330 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/04(日) 23:03:12.32 ID:KbjPGJCl0
(メメ^ω^)「………僕も、全容が把握できてるわけではないけど」

険しい顔つきになったムラカミさんの問いにそう前置きして、僕は見てきた光景を───気を失う直前までの記憶を辿りながら語っていく。

幾ら逞しく見えても一介の生徒、頭上の絶望的な状況を伝えるのは多少の抵抗があった。だが、どうやら彼女達に対してその憂慮は不要だったらしい。

ラムさんもムラカミさんも、益々苦い表情になりながらも表立って動揺する素振りは見せない。僕の説明を冷静に、取り乱さず聞いている。

「そんな…………」

「学園が…………畜生!!」

「何やってんだよ日ノ出テレビ………」

寧ろ、僕らの周囲で話に聞き耳を立てていた保安官達の方が意外なことに反応は顕著だ。毒づく人、項垂れる人、顔を覆って座り込んでしまう人、八つ当たり気味に壁を殴りつける人……誰もが思い思いの方法や言葉で絶望に打ちひしがれる様を、僕は意外の感を持って眺めた。

(メメ^ω^)(正直、僕以上に甲板上の現状を把握している人の方が多いと思うけど……)

まぁ、学区内には駐在所が配置されていないため常駐している保安官がいない。そのため、学園の敷地内にも軽空母ヌ級が現れて空襲が行われたという事実まではまだ広まっていなかった可能性はある。

商業区と居住区は言わずもがな、下層もあんな化け物が彷徨く有様。無事なところ、安全なところが学園艦内には全くないと知れば、保安官達の落胆も頷ける話だ。

まぁそうなると今度は、尚のことムラカミさんとラムさんの冷静さに舌を巻きざるを得ないわけだが。
331 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/04(日) 23:32:37.66 ID:KbjPGJCl0
更に言えば二人以外のこの場にいる船舶科生徒達も動揺や恐慌を殆ど露わにしていない。僕の話に多少の緊張は見せつつも、冷静にそれらを受け止めて互いに意見を交換し合っている。

(メメ;^ω^)「………」

感心を通り越して、少し不気味ですらある。

別段冷静なことは悪いことではない。このような閉所でパニックが起これば収拾が付かなくなるため、今の全員が落ち着いている状況は有事下にあって理想的と言っても過言じゃないだろう。

ただ、そんな状況をまだ年若い女子高生の集団が───それも、無礼を承知で言えば見るからにアウトロー寄りの、規律とは無縁そうな集団が保てているというのが異様なのだ。

(メメ;^ω^)(状況が異常かつ絶望的すぎて受け入れられていないのかお?いや、生徒たちの様子を見る限りそんな感じじゃない)

「学区って事はまさしくあたしらの真上だよねぇ〜……そういやでっかく揺れたよね、ついさっき」

「第三層に繋がる階段とかが崩れたアレな。しっかしヒコーキ飛ばせる奴が陣取ったってなると益々助けが遅れそうだな」

「食料とか飲み水ってどうだったっけ」

「さっきカトラスに確認したら相応の備蓄はあるらしい。幸いこの区画の非常食料庫や貯水タンクは破損を免れてたからな。電池とラジオ、懐中電灯も1、2週間なら余裕で保つ。……さっき試したとおりラジオは使い物にならねえけど」

「それに、籠もれるからってのんびり救助を待てる状態でも無いしねぇ〜。映画とかじゃ、こういう時船ごとミサイルとか爆弾で沈めちまうって相場が決まってるわけで」

「銃器の類いは流石にあたしらも貯めてないから保安官の人等の持ってた分しかないしな、あとで三月さんにどれぐらい弾薬があるか聞いとかねえと……」

僕があれこれと考察を重ねる間にも、ラムさんとムラカミさんは話し合いを続ける。しばらくウンウンと額を付き合わせて唸っていた二人だが、やがてラムさんが顔を上げ僕の方に────正確には、僕の背後に視線を向けた。

「親分、どうしますか〜?」
332 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/05(月) 00:06:34.31 ID:Ave6MMQi0
「今はまだ、場の流れに身を任せるしかない。嵐の中で波に逆らっても、船は沈んでしまうから。

………嵐の中を航海した経験なんかないけどね」

(メメ;゚ω゚)そ「どわぁっ!!?」

その人影がいつ頃から背後に立っていたのか定かではない。とにかく急に耳元で聞こえた声に、僕は仰天の叫びと共に跳び上がった。

「アンタ、ちょっと驚きすぎじゃないか?“上”の先生ってのは、随分と肝っ玉が小さいんだね」

僕の醜態に、背後の人物はクスクスと控えめに笑い声を上げる。着地の衝撃で痛む足を押さえながらえっちらおっちら振り向くと、そこに立つのは一人の少女。

「どうしたんだい?悪魔でも見たような顔をして。まっ、悪魔を見たときに人がどんな顔をするのか知らないんだけどさ」

(メメ;^ω^)「…………おっ」

悪魔を見たような、かどうかは知らないが、まぁ、異様な物を見たときの表情になっていたことは否定しない。何せ、実際その女の子の立ち姿は“異様”極まりなかったのだから。

身長の頃はムラカミさんより僅かに低く、170cmにやや届かない程度といったところだろうか。あえてワンサイズ小さいものでも着ているのかセーラー服の裾からは顔や足同様健康的な小麦色に焼き上がった腹部が顔を出し、やはり同年代の女子に比べて高い背も相まって大人びた雰囲気を醸し出す。背後でくくられた黒い髪はやや癖毛のようで波打っており、伸ばされた前髪は右眼の前に垂れ下がってそれを隠している。

何と言っても目を引くのは、羽織った黒のロングコートと阿弥陀被りの帽子に結わえ付けられた赤い羽根。

もしも右手に持たれた警棒がサーベルだったなら………彼女のその姿は、まんまお伽話に出てくるような“女海賊”のそれだ。
333 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/05(月) 00:42:54.77 ID:Ave6MMQi0
ふと、周囲から刺さる視線に気づく。主に船舶科生徒から送られてくるそれは、目の前の少女と僕に集中した。

ほぼ全員が、少女に対しては尊敬と畏怖の念を────序でにそのすぐ近くにいる僕に対しては、あからさまな敵意を込めている。保安官達も、どこかこの海賊少女に対して遠慮というか気を遣っているような様子が感じられる。

僕はそれらを以て明確に理解した。この少女こそ、ムラカミさんたちの精神的支柱なのだと。

「“上”の情報、感謝するよ先生。

それにしても、いよいよこの学園艦は地獄のようになってきたね。まっ、本物の地獄なんて見たこと無いけれどさ」

(メメ;^ω^)「………」

それともう一つ、この短い会話の中で彼女の言動から解ったことがある。

この子、歴女チームやダージリンさんと同じ人種だ。

「より詳しい話は奥でするよ、もう少し掘り下げたい情報もあるしね。それに、ここで共に過ごすからにはアンタにも根賀さんや日屋根さんみたく色々働いて貰わなきゃならない。

あぁ、アンタ、名前はなんだい?」

(メメ^ω^)「……内藤。内藤芳頼、普通科の国語担当教師ですお」

「そう、じゃあ、ブーン先生」

(メメ^ω^)「いやそのりくつはおかしい」

僕の抗議に耳を貸すこと無く、彼女はポケットからパイプを取り出して口に咥えて右手を差し出す。

パイプからは、妙に甘い匂いが漂っていた。








「アタシは【竜巻のお銀】。よろしく、先生。

大洗のヨハネスブルグへ─────そのまた“どん底”へようこそ」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 11:43:44.89 ID:HrccZLfA0
おつおつ
これまた強烈なw
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 21:44:11.45 ID:9/Vr8Y6S0
乙乙
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 20:20:53.34 ID:hvmTGovd0
時間はかかるくせに面白くならんね全然
337 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/06(火) 23:52:33.31 ID:8QyfBxg70









古来より、私利私欲に駆られた佞臣・奸臣が国家の衰退や滅亡に関与した事例は数多く存在する。ローマのセイヤヌス、趙の郭開、秦の趙高、蜀漢の黄皓、ロシアのラスプーチン、フィンランドのヴィドクン=クヴィスリング………歴史上、“売国奴”と呼ばれ蔑まれる人物は枚挙に暇がない。

宝木蕗也は、間違いなくこれらと同じ類いの人間だ。大義も愛国心もなく、私益のためなら利敵行為も平然とやってのける正真正銘の売国奴。政治家としては、おおよそ最底辺に分類されるだろう。

(;^Д^)「…………そ、それは…………できかね、ます」

故にその否定の言葉についても、別に彼は良心や義憤から口に出したわけでは無い。あるのは一にも二にも自己保身のために過ぎず、利よりも安全の方に天秤が傾いたというだけの話だ。

そして、逆説的に言えば、

《何故そんな冷たい事を言う、同志。私は君の友情を見込んで頼んでいるというのに》

(;^Д^)「お気持ちは、お気持ちは解ります、信頼はありがたいです!しかし、しかしこればかりはどうか!!」

宝木が私益を捨てて保身に走りざるを得ないほど、その“申し出”は常軌を逸していた。
338 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/07(水) 08:10:52.12 ID:qRyBPv2k0
(;^Д^)「わ、私にも立場というものがございます!その依頼は受け入れかねます同志!」

《同志タカラギ、貴方はどウも勘違いヲしているようだ》

受話器の向こうから聞こえてくる、猫なで声という形容詞がぴったり当てはまる優しい口調。だが、声質の低さや不慣れな日本語故の独特のイントネーションも手伝い、そのゆったりとした物言いはかえって息苦しくなるような圧迫感を宝木に感じさせた。

《貴方は、どウも我々が貴方ヲ捨て駒にするつもりだと思っておられる節がアル。非常に心外なことダよ、我々は志ヲ同じくする者ヲ見捨てルヨうな真似はシナい。

日本の軍国化ヲ進める奸賊・ミナミと“これから”戦おうという貴方ノ義挙ヲ、我々は全力デ支援する用意がアル》

宝木の顔から、音を立てて血の気が引いていく。電話の相手の中では、既に彼が“義挙”に立ち上がることが決定事項となりつつあるようだ。

(;^Д^)「ど、同志!私も軍国主義者の南慈英と戦う気構えはあります!しかしながら今はまだその機では無いかとおm」

《………ソレとモう一つ、正さなければイケナい点ガアルな、同志》

一転して、有無を言わせぬ迫力に満ちた声が弁明を遮る。ぱくぱくと口を空回りさせる宝木の耳に、まるで一言一言ねじ込まれるようにして、相手の台詞が入り込んでくる。









( `ハ´)《我々は君にミナミを倒して下さいと“依頼している”のではない。同志タカラギ、ミナミを倒せと貴様に“命じている”のだよ、私は》
339 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/07(水) 09:13:39.84 ID:dsmdGUciO
必死に、脳をフル回転させて宝木は反論の言葉を探す。このままでは、どう転ぼうとも破滅する道を歩かされると直感で理解していた。

(;^Д^)「……し、しかし……しかし同志劉志那………」

( `ハ´)《我知道了。貴様に許されている返事はこれだけアル、同志タカラギ》

相手は怒鳴り声を上げたわけではない。特別強烈な脅し文句を盛り込んだわけでもない。

だが、その平坦で事務的な口調が、かえって宝木に逃げ道が用意されていないことを実感させる。

( `ハ´)《既に同志金と我が国が潜ませた義士達は貴様の“義挙”に応じるべく準備を終えているアル。貴様はただ、流れに身を任せるだけでいい。

せいぜい我々を失望させてくれるなよ、同志タカラギ。【艦娘自己自衛権】の時のようにな》

(  Д )「…………解り、まし………た」

( `ハ´)《良い返事を聞けて安心したアル。

あぁそうだ………貴殿の武運長久を祈る》

(  Д )「…………」

取って付けたような労いの言葉を最後に、単調な電子音だけを吐き出すようになった受話器を元の位置に戻す。虚ろな眼はどこも見てはおらず、血の気が失せて真っ白な両手はアルコール中毒者のようにブルブルと震えている。

(; Д )「……どうして、俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ………っ!!」

高価な調度品が並んだ自室に響く、絞り出すような呟き。

その問いに答えてくれる者は、誰もいなかった。
340 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/07(水) 10:39:45.33 ID:POkvHJCj0

【悲報】大洗女子学園、ガチのマジで終わる

1: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:21:16.05 ID:MvHOb0Gf5
もう(救助は)間に合わん模様

2: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:21:28.11 ID:MvHOb0Gf5
ttps://i.imgur.com/xxxxx.jpg

3: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:02.14 ID:CfDogg505
>>2
ヒェッ…

4: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:16.81 ID:NiCNi5fgc
>>2
なんやこれ……

5: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:32.47 ID:MvHOb0Gf5
>>3,>>4
大洗女子学園の現在の外観。ツイで大洗町の避難中の奴が上げた模様

6: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:59.81 ID:Bay6Str12
燃えすぎィ!!

7: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:08.80 ID:56marmvps
>>2
この黒い影なんやねん……

8: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:19.14 ID:MvHOb0Gf5
>>7
深海棲艦やて。ミリ板と鎮守府板覗いてきたけど新型っぽい

9: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:41.03 ID:25caRpakHr
>>2
西武の中継ぎやんけ!

10: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:30.40 ID:56marmvps
>>8ほげっ……

11: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:32.66 ID:syUhy03th
>>9

12: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:33.12 ID:deNapog1i
>>9不謹慎すぎるけど草

13: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:33.16 ID:kyzi25kdb
>>9
不謹慎すぎるわ死ね

14: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:34.91 ID:55mtigozi
>>2なんでこんな燃えてんねん……

15: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:36.25 ID:ichhom52
>>9申し訳ないがあからさまな絶許はNG,
341 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/07(水) 11:13:58.91 ID:POkvHJCj0
16: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:41.18 ID:ksuchi22
>>14
そら(学園艦の上に深海棲艦なんて現れたら)そう(大火災なんて起きる)よ

17: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:42.01 ID:hosyntuy49
戦車道板エラい騒ぎになってて草。
「一刻も早く大洗を救援しろ」派と「国民の安全のために大洗を核で吹き飛ばせ」派が壮絶なレズバトルを繰り広げてる模様

18: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:42.26 ID:nanj51stg
写真なんて撮ってないではよ逃げろや

19: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:42.90 ID:fait1hom1
そもそももう2時間近く経ってんのに何でまだ鎮圧できてへんねん

20: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:44.18 ID:orx3i3res
>>17
あら^〜

21: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:50.12 ID:MvHOb0Gf5
>>17
戦車道は乙女のスポーツやししゃーない(すっとぼけ)

22: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:52.16 ID:dDkK64Dkg
>>1
大洗どころか日本が終わるかも知れないんだよなぁ……

23: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:59.22 ID:ksuchi22
>>17
レズはホモ

24: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:59.23 ID:thycupA72
>>17
レズはホモ(錯乱)

25: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:02.39 ID:NiCNi5fgc
>>22
それどころか世界が終わりかねない模様

26: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:06.33 ID:MvHOb0Gf5
>>23>>24
二人はどういう関係なんだっけ?

27: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:10.30 ID:wabcc53Df
>>19
深海棲艦の侵攻がガチのマジで世界規模やからしゃーない。あのクソ国連が動くぐらいや

28: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:14.00 ID:itsm2wani
自衛隊と艦娘は早く大洗を助けなさい。手が足りないならわt西住流家元も参戦する用意があるわ

29: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:26.13 ID:dk0utd44
>>25
やったぜ
ちな陰キャ

>>28
突然しぽりん湧いてて草

30: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:30.25 ID:MvHOb0Gf5
>>28
しぽりん実は軍神溺愛説はいろVでも適用されるのか(困惑)
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/07(水) 13:14:29.82 ID:gXwBusdA0
おつおつ
裏切り者の末路の悲惨さを認識出来ない連中が多いよなあ…沖縄とか特にw
それと日本の危機なのにあっちの世界でも相変わらずな空気にワロタ
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/07(水) 13:25:06.24 ID:6juAGECnO
逸見ェ…
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/07(水) 20:22:17.64 ID:EcbuYqfb0
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/10(土) 00:41:18.90 ID:7PJLDLDh0
これはひどい駄作ですね
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/10(土) 05:38:32.81 ID:G5dG67tyo
更新頑張れ頑張れ
347 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/13(火) 23:04:45.06 ID:H80nMxzq0








大洗港に身を横たえる、全長7600mの艦影。改めてその全容を目の当たりにすると、あまりの大きさにため息が漏れそうになる。

ほんの一キロ程しか離れていない距離に空爆や艦砲射撃を受ける危険を冒して停泊するのは、海上保安庁の巡視艇【あきつしま】。哨戒ヘリ二機を搭載できる此方の艦も決して小さくは無いけれど、【大洗女子学園】と比べればまるで箸の横に並べた米粒だ。

軍艦だった頃の“私”が30隻並んでも届かない規格外の巨船。二万人に迫る学生達が過ごす広大な学び舎の艦。

それが今、私の────正確には私に視界を共有してくれている【彩雲】の妖精さんの眼下で黒い煙を幾筋も立ち上らせている。

あの中で、日ノ本の明日を担う若人が何人命を散らしたのか。その事に思いを巡らせると、胸の奥から自然と怒りや悔しさが滲み出てくる。

「…………頭にきました」

思わず漏れた呟き。気づくと、私の手は無意識の内に矢筒に伸びて99式艦爆の矢を取り出そうとしていた。

いけない。

上昇した体温を下げるため、一度大きく息をつく。

私の悪い癖。いつも提督や鈴谷達を窘めているくせに、誰よりも自分が激情に駆られやすい性質をしている。少しでも気を抜けばすぐ頭に血が上って周りが見えなくなってしまう。

私は、誇り高き大日本帝国の一航戦。私情と任務を切り離せ。

あの船には今なお、多くの民間人・生徒が取り残されている可能性が高い。今そこへ爆弾を落とすという行為は、深海棲艦の撃沈に人々も巻き込む危険性と隣り合わせだ。
348 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/13(火) 23:05:39.45 ID:H80nMxzq0
……尤も、眼下で学園艦が蹂躙されているという事実は変わらない。理性ではそうだと解っていても、黒煙の隙間から垣間見える火柱や甲板上を我が物顔で闊歩する新型───市ヶ谷によって【ナ級】と名付けられた敵駆逐艦の姿を見ている内に、せっかく下がった血が再び頭部に集まり始めた。

「落ち着きなさい、私。任務は偵察、攻撃ではない。任務は偵察、攻撃ではない」

《………加賀、大丈夫か?》

冷静さを保とうと小声で何度か自分に言い聞かせていると、耳元のインカムで心配そうな声が上がった。途端、怒りに寄るものとは別種の血の気が頬に差し込む。

「………聞こえていたかしら、提督」

《そりゃお前自衛隊の通信機器だぞ、感度抜群に決まってる。どんなに小声でもこのマイクなら拾えるさ》

「……………それは何よりね」

嗚呼、何という不覚。よりによって提督に聞かれるなんて。穴があったら入りたいとはまさにこんな気持ちに違いない。

《気にするなよ、誰だって緊張もするしこの現状には怒りを覚えている。加賀の反応は自然なことで、俺も全く同じ気持ちだ》

「そう言って貰えて救われるわ。……心の底から」

最後に付け加えた言葉は、半分嘘。気持ちを汲んで貰えたことは嬉しい反面、他人に気を遣われてしまった事への気恥ずかしさも増す。

相手が提督なら、尚更。

「でも、できれば今の私の言動は速やかに忘れて頂戴。やはり、一航戦としてあまりに恥ずべき内容だから」

《あー………いや、俺は構わないんだが………》

どうにも歯切れの悪い返事を訝しく思い眉を顰める。………だが、その理由はすぐに判明した。

《ぉK、安心しろ加賀さん。提督の直ぐ後ろにいた俺たちは何も聞いていないし、七警最強の一航戦殿が珍しく照れている様なんかこれっぽっちも知りはしない》

《この口の堅さ、流石だよな俺ら》
349 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/13(火) 23:07:47.03 ID:H80nMxzq0
もう一つ……否、もう二つ、聞き慣れた声が私の耳朶を打つ。途端、私は自分の迂闊さに痛む眉間を押さえて瞑目した。

「いたのね……流石両一曹」

( ´_ゝ`)《そいつぁご挨拶と言うものだな加賀さん。提督がこの場にいるのにその護衛である俺たちがいないわけがなかろう》

(´<_` )《全くだ。何せ俺たちは職務に忠実なことこの上ない自衛官の鑑だからな》

全面的に否定するつもりはない。実際二人ともふざけた言動が多い一方で、守衛としても自衛官としても優秀だ。

ただ、それを自分で言うか。

「はぁ…………」

深い深いため息が口から漏れる。

本当に不覚。この双子にわざわざ向こう三年は使えそうなからかいのネタを提供するなんて。

「提督、一連の事態が終息したらお二人との模擬戦闘訓練の許可をお願いします」

《解った、殺すなよ》

(´<_`;)《ぉk、時に落ち着け加賀さん》

(;´_ゝ`)《生身の人間が艦娘に勝てるわけないだろいい加減にしろ!提督もあっさり許可を出すんじゃない!!》

《いやいや、お前らなら行けるだろ。なんか爆撃とか食らってもアフロヘアになるだけで助かりそうだし》

(;´_ゝ`)《ギャグ補正が働くのは漫画やアニメの世界だけだぞ》

(´<_`;)《とにかくまず平和的な話し合いをしようじゃないか、俺たちは加賀さんの気持ちを解そうとしただけで悪気は無くてだな………》

「ふふっ」

珍しく取り乱した双子が必死に言い訳を募らせる様子に、今度は口元が緩む。必死に堪えようとした笑い声も、抵抗虚しくあっさりと最終防衛線の唇を突破した。

明らかに詭弁でしか無いはずの「気持ちを解すため」という二人の言葉だが、大変遺憾ながら効果については認めざるを得ない。

( ´_ゝ`)《うむ、狙い通りだな》

(´<_` )《流石だよな俺ら》

………で、彼らはといえば私が含み笑いを零した途端この勝ち誇りよう。先程の狼狽はどこにいったのだろう。

(或いは、本当にあの二人の掌で踊らされたのかしら)

だとしたら、この上なく悔しい。やはり一発模擬戦闘訓練をぶち込んでやろうか。
350 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/13(火) 23:19:57.20 ID:H80nMxzq0
────いや、その事については後で考えよう。

《……加賀》

「ええ、そうね」

そろそろ、時間だ。

提督の呼びかけに頷きながら、ちらりと軍用の腕時計を見やる。

指し示されている時刻は、現在15:29:55。

あと5秒………3、2、1─────0。

長針が、ピタリと「6」の真上に重なる。同時に、提督とは別の、より低い男性の声が私の耳元で響く。

《時刻ヒトゴーマルマルを確認。

CPより各艦に通達。突入開始、繰り返す、突入開始、オクレ》

《大洗第四警備府・翔鶴、了解しました!》

《同警備府那珂ちゃん、水偵さんいっきまーす!!》

《第11警備府、千代田了解!》

《第二警備府羽黒、り、了解です!!》

《大洗鎮守府第3艦隊・“航空母艦”葛城、準備は万全よ!!》

《同第2艦隊由良、水偵に降下指示出します!》

《U.S.?Japan?Force?Navy,?Saratoga-25.?Joint?operation!!》

「大洗第七警備府、空母加賀。これより大洗女子学園への威力偵察を開始します。

────ここは、譲れません」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 10:47:30.75 ID:Zheo8taA0
おつおつ
文字通り反撃の狼煙か…
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 18:06:07.18 ID:gRmCy+uv0
おつです
353 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/14(水) 23:08:31.81 ID:QLq1vrF90
号令一過。

CP───前線指揮所からの指示が届くと同時に、学園艦の上空で旋回を繰り返していた麾下の【彩雲】達に降下突入の指示を出す。六機分の【誉】が唸りを上げ、共有する視界の中で風景が流れていく速度が跳ね上がる。

私の【彩雲】達だけではない。周りでは、60を越える機影が身を翻し、雲を切り裂き、エンジンの回転を最大にして眼下の巨艦めがけて駆けていく。

翔鶴の零戦、千代田の96式、葛城の烈風、そして在日米軍から派遣されたサラトガが指揮するF6F【ヘルキャット】。雷撃機も爆装機も姿は無く、機種も機数もバラバラで一部に至っては国籍すら一致しない。更には、本来こういった編隊行動での作戦には参加しない由良や羽黒、那珂ちゃんの“下駄履き”まで投入しての作戦発動。

いかにも急場凌ぎでかき集めた事が解る、歪な戦力編成。それは、今私達が置かれている苦境を何よりも雄弁に物語る。

まぁ、その事が作戦失敗の言い訳はならない。そもそも、失敗させる気も毛頭無いけれど。

《目標まで距離3800───っ、甲板上より敵の応射!砲火多数を視認!!》

千代田の叫び声。先頭を飛んでいた彼女麾下の96式が何機か立て続けに火を噴き、くるくると回転しながら墜落していく。息継ぐ間もなく今度は私の(正確には妖精さんの)眼前で爆炎が弾け、右翼をもぎ取られた烈風が隊列から外れて錐揉み状態に陥った。

《此方葛城、二番機が高角砲弾の直撃を受けた!》

《千代田隊は六番機、七番機を損失!九番機も舵が利かないみたい!》

《All unit, Break!! Break!!》

《サラちゃん英語で話すのやめてーー!!那珂ちゃん達日本語しか喋れないよー!!》

「これぐらいは仮に解らなくても雰囲気で察しなさいな」

人一倍騒ぎ立てる那珂ちゃんを窘めつつ、その焦りが仕方の無いことだとも思う。

反撃を予想していなかったわけじゃない。軽空母ヌ級が展開しているという情報から、寧ろかなり激しい抵抗になるとは全員が覚悟していた。

ただ、それはあくまでも艦載機によるもの。私達の中でこれほど濃密な対空砲火が来ることを事前に予測できていた者は、サラトガも含めて一人も居なかったに違いない。
354 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/15(木) 23:18:26.20 ID:3Lds9F6v0
《各母艦、サラトガの言うとおり散開運動指示を指揮下艦載機に!》

《あ、あの……散開予定高度よりまだ遙かに手前ですけど………》

《敵の砲火量が予想を遙かに超えてる、このまま密集突入すれば接敵前に全滅しちゃうよ!

任務遂行のために散開を繰り上げる、指示の変更は無し!》

《那珂ちゃん、りょうかーい!!》

「七警加賀、了解しました」

この作戦で事実上の旗艦である葛城からの指示に従って、妖精さんたちに思念を通じて散開運動を命じる。

機体性能の高さに加えて、この娘達は皆優秀な戦闘機乗りだ。六機の彩雲は地上から殺到する何百条という火線の合間を巧みに擦り抜け、速度を殆ど落とすこと無く降下していく。

《加賀さん、ご一緒させていただきます!》

「ええ、どうぞ」

彩雲隊の直ぐ後ろには、由良の艦載機である零式水偵11乙型が続いた。

数合わせの緊急動員とはいえ、流石にフロート付きながら偵察部隊に選抜されるだけのことはある。此方も巧みな操縦で弾雨をくぐり抜け、私の編隊にやや遅れながらもしっかりとついてきている。

《CPより旗艦葛城、被害状況を報告せよ》

《葛城よりCP、敵対空砲火により投入63機中6機を喪失!なお、敵火力は予想より遙かに強大!》

《CPより葛城、損失6なら作戦続行に支障無しと認む。威力偵察を続行せよ、オーバー》

《葛城よりCP、了解!ま、防空砲台やらされるよりはマシってね!!》

「……使命感に燃えているところに水を差すようで悪いけど、指揮に集中した方が良いわよ」

事務的な自衛官の指示にも、どこか華やいだ声で返答する葛城を窘める。彼女の“生前”を考えれば正規空母としての役割を果たせることがいかに嬉しいかは想像に難くないが、敵はそんな事情に忖度してくれるほど甘くない。

「下方より今度は敵機、数は15〜20。各母艦、警戒を厳とせよ」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/16(金) 12:06:38.78 ID:lAV0JgyH0
水偵バンザイ
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/16(金) 17:21:52.43 ID:JnTJ3CE+0
357 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/16(金) 23:01:50.98 ID:Dpgy6EUU0
満天の星空の如く眼下で煌めく無数の砲火。次々と伸びてくるオレンジ色の火線に混じって現れた、黒く小さな点。

妖精さんの並外れた視力が無ければ気づくことさえ不可能なそれらは、見る間に私達の艦載機に肉薄し、すれ違う形で後方へと飛び過ぎていく。

《由良より各艦、敵機種を確認!全て【カブトガニ】!》

由良からの報告に、私は思わず表情を曇らせた。

カブトガニ………欧州や米国では“Helm”と呼ばれる、深海棲艦側の汎用戦闘機。性能は零戦21型に極めて近く、旋回能力が高い反面防弾と急降下時の運動能力に弱点を持つという特徴も共通している。

そう、向こうも急降下運動は決して得意じゃない。そして学園艦上の敵艦が(確認されている限りは)軽空母ヌ級のみという点から、編成が【カブトガニ】に偏っていることもある程度読めていた。

だからこそ私達は、此方も編成に零戦を擁しながらも上空からの突入という戦術を採ったのだ。

(敵に先手で上方を取られないよう私達の方から降下攻撃を仕掛け、【カブトガニ】の迎撃を正面からに限定する………それが前線指揮所と私達の狙い目でしたが)

もしも正面からの格闘戦になれば、実戦経験が豊富で防弾性能と火力に優れるサラトガのグラマン部隊が迎撃・足止め。その間に小回りの利く零戦、烈風を護衛として私達偵察部隊が学園艦直上まで降下する……指揮所の海上自衛隊佐官が立案した一連の作戦は、敵機の性能も鑑みられており十分理に適っていたように思う。

『『『────』』』

《カブトガニ……【Helm】、全機当編隊後方にて反転!

敵編隊、後方に占位!向かってきます!!》

だけど、その思惑はたった今外れた。
358 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/18(日) 23:02:19.67 ID:dGcshbyk0
ヘルム、カブトガニと一口に言っても、零戦が21型だけではないのと同じで派生型が存在する。99式やドイツの“スツーカ”のように急降下運動を寧ろ得意とする型、防盾性能が高い型、火力や旋回性能に強化が加えられている型など種類は多く、極めて広い用途で使われているのは確かだが全てが全くの同一機種というわけではない。

そして、それらは一見同じ形状に見えてその実エンジン音や挙動、機体の細かい構造などに微かにではあるものの差異が見られる。私達艦娘は、その差異を一目で見分けられるよう幾度となく訓練を重ね各型の特徴も徹底的に頭に叩き込んできた。

視認できたのは一瞬だが間違いない、あれは絶対に“零戦系”だ。

(そう……解っていたからこそ、私達は奴等が上方を取りに行くとは思わず反応が遅れた)

敵の動きに躊躇は全くなかった。減速も射撃の予備動作もなく、私達に一瞥すらくれずにその横を駆け抜けていった。つまり敵は、恐らく私達が零戦系の迎撃を予測していたこともその対処法も計算尽くであの編成の部隊を投入してきた可能性が高い。

《……敵の動き、頭が良すぎますね》

由良の呟きに、私も胸の内で同意を示す。

軽空母ヌ級と軽巡ナ級、どちらもelite或いはflagshipであるとは聞いたが所詮は“非ヒト型”の筈だ。奴等だけで、こんなに戦略的な動きが取れるとは思えない。
359 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/18(日) 23:07:12.46 ID:dGcshbyk0
私達の後方に占位した敵機は、動きが戦略的なだけではなく高い練度を誇っていた。迫る飛翔音は規則正しく、本来不向きな急降下運動であるにも関わらず遅れる機体が現れる様子は見られない。

思わぬ動きに私達の編隊が混乱していたこともあり、距離を見る間に詰められる。

『『『──────!!!』』』

《きゃあっ!?》

背後から伸びてくる機銃掃射の火線。ニ警の羽黒が悲鳴を上げ、水偵が下部のフロートと右翼を引き千切られ黒い煙を噴き出しながら落下していく。

《ご、ごめんなさい!やられました!》

《っ!此方千代田、所属の96式が更に一機被弾!損傷大、離脱させます!》

《予定変更!旗艦葛城より翔鶴さん、零戦部隊を全機反転させて敵航空隊の迎撃戦闘に移って!サラトガさん、F6F全機を加速、編隊に先行させて!》

《了解しました!》

《Roger!!》

無論、此方も無抵抗でやられるわけにはいかない。翔鶴が零戦部隊一斉に反転させ、背後の敵編隊を迎え撃つ。

急降下能力に優れるヘルキャットを当初の予定とは逆に更に先行させ、低速域での旋回格闘能力に優れる零戦で足止めを計る───咄嗟の判断としては、きっと最上の部類。

《加賀さん、彩雲隊を加速させてサラトガ隊と離れないように!由良さん、那珂ちゃんも大変かも知れないけど妖精さんに頑張って貰って!》

《了解しました!》

《りょっうかーい!》

「承ったわ」

《此方翔鶴、迎撃戦闘を開始────っ!!》

だが、なにぶん予想外の形で上方を取られた私達の態勢が悪すぎる。翔鶴隊はその悪条件の中でも十二分に機敏な動きは見せたけれど、急造にも程がある防衛線で全機をくい止めろなど無理難題だ。

気配でわかる。数機が此方に抜けてきた。

《翔鶴より先行部隊、四機が突破!!》

『─────!!』

〈ウオッ?!〉

翔鶴からの報告が届くのと、私が意識共有をしている妖精さんが操縦桿を右に倒したのは、ほぼ同時。視界がぐるりと一回転して、僅か1p横を弾丸が風切り音を残して駆け抜ける。
360 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/18(日) 23:11:23.26 ID:dGcshbyk0
僅か四機。幾らかの撃墜機を出しているとはいえ、私達は編隊規模において敵を圧倒的に上回る。積極的な撃墜はとある事情からできないが、正面切っての戦闘なら容易に振り払えるだろう。

『『────!!』』

《敵影、尚も追撃》

《やっぱ簡単には振り切れないか……!》

だが、私達の任務はあくまでも偵察である以上、あまり本格的に乱戦となって燃料や弾薬を使い切るわけにも行かない。加えて、ヌ級がelite以上の個体である以上艦載機がたかが20機前後で撃ち止めである可能性も皆無。さりとてこの僅かな時間で垣間見える敵機の練度から考えて、中途半端に少数部隊を割いての迎撃など愚の骨頂だ。

結論、この最悪に不利な状況を耐え抜いて任務を果たした後逃げきるしかない。

それも、幾らか収まったとはいえなお十分な密度を誇る対空砲火を躱しながら。

《目標高度まで後2500!!》

《まだそんな位置……加賀さん、彩雲で牽制射撃を!当てる必要はありません、敵機の足並みだけでも乱して!》

「了解」

『『────!!』』

3番機、4番機の速度をあえてやや落とさせ、同時に4番機後部座席の妖精さんに視界を移す。刹那の暗転を挟み、次の瞬間私の眼は妖精さんを通して背後から迫り来る四機のカブトガニをまっ正面から見据えていた。

〈キョリ、400!!〉

「射撃開始。撃墜してはダメよ」

〈オマカセダゼィ!!ダンヤクソウテン、カンリョウ!!〉

よく勘違いされがちなことだけど、彩雲は全くの非武装機というわけではない。敵機に捕捉された際の自衛用として胴や後部座席に機銃を備えた物もあるし、大東亜戦争の末期には夜間戦闘用に斜銃を装備した物や大口径機銃を備えた物、爆装を試みられた機体も存在する。……私はそもそも彩雲実装前に沈んだ為それを直接見たわけでは無いけれど。

ともあれ、今私が指揮する彩雲隊の機体もそうした“量産型”の内の一つだ。

〈ウチカタ、ハジメ!!〉

『────ッ!!』

後部座席に備え付けられた一式旋回機銃が震動と共に火を噴く。殺到してきた7.92mm弾(を模した超小型の機銃弾)に行く手を遮られ、敵影の内一つが忌々しげに回避軌道を取った。
361 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/18(日) 23:21:12.70 ID:dGcshbyk0
「撃墜の必要はない……というよりは、してはダメ。狙う場所に気をつけて」

〈リョーカイ!!〉

〈ワカッテイルデアリマス!!〉

学園艦の中には、今なお生徒や民間人が数多く取り残されている。その真上に弾薬を満載した敵機を落とすようなことがあれば、いかに小型とはいえ誘爆によって更に被害を広げる可能性が出てきてしまう。

私達が空に上げた機体も、墜落による被害を最小限に抑えるため燃料と弾薬の積載量はかなり抑えられている。そもそもこの威力偵察自体、上層部からすれば相当な苦渋の決断だ。

故に、“事前準備”を仕込める機会はそう何度もない。………多分、この一度きり。

この後の“本攻め”に繋げるためにも、少しでも多くの「敵情」を持ち帰らなければならない。

「……3番機、4番機、敵機体下部の機銃に照準。破壊して戦闘力を奪って。貴女たちならできるわ」

〈カシコマリィ!!〉

〈リョウカイシマシタ!!〉

『─────!』

功を焦ったかやや突出した1機に狙いを定め、4番機が弾丸を放つ。咄嗟に宙返りで火線を避けた瞬間、機体の腹に備わる機銃が剥き出しになった。

〈イタダキィ!!〉

『────!!?』

一航戦は隙を逃さない。横合いから飛来した3番機の弾丸がその根本を撃ち抜き、機銃を吹き飛ばされた敵機は一瞬失速して20mほど墜落した後何とか態勢を立て直し離脱していく。

〈テッキ、リダツ!!〉

〈マダマダ、モウイッチョウ!!〉

『ッ!!?!?』

息継ぐ間もなく、3番機が更にもう一連射。右後方から突入を図った別の個体が、自ら射線に突っ込む形で直撃を受ける。

『……ッッッ!!』

此方は機銃の脱落こそ避けたようだけど、遠目にも解るほどはっきりとあらぬ方向に曲がってしまった銃身はどう見ても使い物にならない。飛行速度もみるみる低下していったその機体は、やがてゆっくりと追撃戦から外れていった。

「よし………っ!?」

〈グァッ!?〉

立て続けに2機の敵を黙らせることに成功し、“慢心”が或いはあったのかも知れない。左側から大きく回りこむ形で襲いかかってきた三機目の【カブトガニ】の機銃掃射が、4番機を貫いた。
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 07:43:52.08 ID:0T0gNrZA0
おつおつ
避難・保護が最優先とは本当に大変だな…
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 21:57:40.88 ID:6ib2LpGB0
364 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/22(木) 12:22:29.03 ID:gNRjXRdj0
鉛弾に撃ち抜かれ、右尾翼が千切れて後方へと吹き飛んでいく。穴だらけになった左翼も、機内に鈍い音を残してへし折れる。

〈クソッ、シセイセイギョフノウ!!〉

〈ダメダ、オチル!!〉

グルングルングルン。妖精さんの眼を通して、私の世界が文字通り激しく回転する。乗組員である三人の妖精さんたちは必死に機体の状況を改善しようとしていたが、それが物にならない努力であることは明白だった。

………墜落地点を学園艦上から反らせる事が出来る程度にはまだ舵が効きそうなことだけは、不幸中の幸いね。

「……ごめんなさい、お願い」

〈〈〈リョーカイ!!〉〉〉

少ない言葉の中から、優秀なこの子達はその意味を汲み取る。機銃手の妖精さんが、私が見えるようにあえて目の前で親指を立ててみせる。きっとこの子の背後では、他の二人も同じ姿勢を取っているのだろう。

〈ボカンドノ、ゴブウンヲ!!〉

「ええ」

操縦手妖精のその言葉を最後に、私の意識は3番機機銃手へと飛んだ。直後に、視界の端を4番機が煤けた飛行機雲を残して通り過ぎていく。

尋常ならざる速度で回転する彩雲を、妖精さんたちが懸命に制御しているのだろう。バラバラと空中に部品を撒き散らしながら墜落していく機体は、それでも確実に学園艦の上から逸れている。あの軌道ならほぼ確実に海に墜ちてくれるはずだ。

……私が艦娘として再び生をこの世に受けてから、二年と少しが経つ。だが、未だに意識を共有している機体が撃墜されるときの感覚になれることはできずにいる。

尤も、今はその気持ちを引き摺るわけにはいかない。残余2機も4番機撃墜後は動きが鈍っている今が好機だ。

「加賀より各機、彩雲4番機喪失も追跡中のカブトガニ2機を武装破壊によって撃退」

《加賀ちゃん、ナーイス!!》

《これだけ乱してくれれば十分!加賀さん、殿機体を隊列に戻して!

目標高度まであと1800!!全編隊、広域索敵陣形展開用意───》

《Saratoga-25ヨリ各位、新手ノ敵航空隊!!総数、目算不能!!》

《あぁ、もう!!》

葛城の悪態が無線越しに響く。それに続いた打撃音と破砕音から察するに、彼女のそばにある何らかの備品が悲惨な最期を迎えたらしい。
365 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/22(木) 12:27:56.53 ID:gNRjXRdj0
《葛城ちゃん、どーすんの!?》

《ここまで来たら突っ込むのみ!全機、陣形展開継続!》

「敵編隊の迎撃は?」

《私がやるよ!こちら千代田、残余の96式全機行かせます!》

《由良より各編隊、船尾商業区方面に事前報告にない“艦影”を視認!恐らくヌ級、eliteです!!》

《Saratoga for All Squad, Enemy Aircraft-Carrier One more!!

N-Class【elite】, 11 o'clock!!》

《だから英語だと解んないって!!》

凄まじい勢いで飛び交う無線を耳にしながら、私は更に意識共有先を一番機の観測手に移す。ちょうど千代田指揮下の96式が、編隊を離れ蚊柱のごとく甲板から湧き出したカブトガニの大群体へと突っ込んでいく姿が目に入った。

それにしても、合計三隻のヌ級とは。どうやってこれほどの戦力を気づかれることなく学園艦の上に……否、考察は上層部に任せよう。

今の私たちは、甲板上の情報を出来うる限り前線指揮所に届けることだけを考えるべきだ。

《目標高度に到達、全機機首上げろ!》

《こちら那珂ちゃん、ごめん!当たっちゃった!!制御困難、離脱させまーす!!》

「……っ、こちら加賀、彩雲二番機がやられたわ。五番機も機関部に被弾、退避させます」

《This is Saratoga、Ribbon-03、Ribbon-14ガDownしマしタ!Ribbon-15も被弾!!》

《千代田より旗艦葛城、何機か其方に抜けたから気をつけて!》

次々と水平飛行に移る艦載機に、敵の対空弾幕が密度を増して殺到する。機体の腹を見せると言うことは被弾面積の拡大に他ならず、加えて急激な制御運動は最も無防備な隙が発生する瞬間。私の彩雲隊も含め、損害が瞬く間に拡大していく。

『『『─────!!!』』』

乱れた陣形を整える間もなく、その横腹に黒い矢が深々と突き刺さる。
366 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/22(木) 12:30:26.57 ID:gNRjXRdj0
生存者の安全性という観点から反撃の手が大きく限られる私達に対し、敵には殆ど“枷”が存在しない。そして深海棲艦共は彼我の物量差に圧倒的な自信があるようで、自軍の損害に関してもまるで頓着しなかった。

《うわぁっ!?》

《Shit!!》

千代田の編隊を突破してきた敵機群は、文字通りの意味で私達に“直撃”する。機銃を高らかに撃ち鳴らしながら微塵も減速することなく隊列に斬り込んできた敵機と衝突した友軍機が、空で次々と爆炎の華を咲かせた。

《由良より旗艦葛城、当方の損耗率3割を突破!》

《作戦は続行、目標地点まで最大戦速で突っ切って!》

《千代田よりSaratoga、彩雲隊と由良っちの水偵護衛をお願い!》

《Roger that!!》

「加賀よりサラトガ、護衛を感謝するわ。空母加賀、対地広域索敵開始」

《軽巡由良、索敵開始します!》

周囲をグラマンの編隊に固められながら、全神経を集中し妖精さんを通して四方八方に視線を巡らせる 。由良も同じような動きを見せているのか、無線越しに微かな吐息が漏れ聴こえてくる。

艦上機妖精さん……分けても、偵察機に乗る子たちの“眼”は、単に遠くの物が見えるだけではなく動体視力も飛び抜けていて、普通の人間は愚か私たち艦娘すら凌駕する。高速で飛翔する戦闘機の機内からでも、観測手の眼ははっきりと、甲板上に広がる惨状を捉える事が出来た。

「………っ」

思わず、言葉を失う。

崩れ落ちた家屋、燃え盛る町並み、横倒しになった警察車両、ひび割れた道路。何より、濛々と吹き出す煙の中に垣間見える、折り重なった屍の山。

“地獄のような”という表現が、これほど当てはまる光景もなかなかないだろう。しかも、この光景が日本の……世界随一の対深海棲艦戦力を誇る国の学園艦で起きているという事実は未だに心の何処かで信じられずにいる。

けれど、私が………私と由良が絶句した理由は、別にあった。
367 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/22(木) 12:43:05.63 ID:gNRjXRdj0
まるでそうあることが当たり前のように、甲板上の至る所で“彼女”達は佇んでいた。

崩落し、瓦礫の山と化した家屋の上に。

原形を留めぬほどに激しく損壊した屍が無数に転がる十字路の真ん中に。

地面から吹き出す火炎の向こう側に。

暴れくるい、此方に向かって弾幕を放つ駆逐ナ級のすぐ傍に。

それらの姿を目に出来たのは一瞬だ。だが見間違い等ではない。見間違えるわけがない。

“奴等”の艦載機である【カブトガニ】に酷似した、深く日の射さない海の底から切り出して形作ったかのような服や艤装。

共通する特徴である、陶磁器のように無機質で蝋のように白い肌。

そして、私達艦娘や人間に対する、隠しようもないほど激しく膨大な憎悪と殺意。

あぁ、それにしても何故。

それこそ何故、貴女たちはそこにいるのか。

どうやって、貴女たちはこの場に来たのか。

「………空母加賀より艦載機隊各位並びに前線指揮所、大洗女子学園甲板上各所にて、新たに敵艦影を多数視認」










「ヒト型の深海棲艦、多数が大洗女子学園に展開を完了している模様。

現時点で把握できた艦種としては、左舷側に戦艦ル級2、タ級1、空母ヲ級1………そして、艦橋施設付近に重巡棲姫と思われる個体も視認しました」
368 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/22(木) 23:03:43.78 ID:gNRjXRdj0
《軽巡由良より旗艦、右舷側にも“ヒト型”を多数確認!リ級、ル級各2隻、軽巡ツ級3隻、空母ヲ級2隻!この内、ル級は片方がflagshipと思われます!》

《うっそでしょ……》

私のすぐ後に続いた、由良の殆ど絶叫に近い報告の声。それを聞いた葛城が小さく呻き、私も全身から血の気が引いていくのを感じた。

左舷側5隻、右舷側9隻、棲姫を含んだ計14隻のヒト型が甲板上にいるという事実。しかもこれはあくまで“視認できた限り”の戦力であり、より多くのヒト型が大洗女子学園に展開している可能性は十分にあり得る。

敵戦力の最終的な総規模次第では、大洗女子学園の奪還と居住者・生徒の救出どころじゃない。それこそ、学園を起点とした“内陸浸透”の危険性が現実味を帯びる。

「なんてこと……」

確かに、何となくイヤな雰囲気を感じていたこと自体は否定しない。だが、こうも寸分違わずあの男の……国連から派遣されてきたとかいう、“あの提督”の言ったとおりになるなんて。

《千代田より旗艦葛城、96式は半数を損失!もう支えきれないよ!》

《此方翔鶴、甲板各所から更なる編隊戦力の増強を確認!》

《SaratogaヨリFlagship-KATHURAGI!! どうシマスか!?Orderヲ!!》

《全編隊、三時方向に旋回!翔鶴隊、千代田隊も敵機を牽制しつつ離脱を!

葛城よりCP、作戦を中断し学園艦上空から艦載機を離脱させます!》

《CPより旗艦葛城、許可する!速やかに撤退させろ!》

学園艦上空を縦断し、特に被害が大きい商業区の敵艦に機銃掃射を敢行して迎撃能力を測る───最早、当初の計画をその通りに実行することは不可能に近い。寧ろ、敵艦隊のより詳細な情報を味方と共有するためには彩雲隊と由良の水偵妖精を生還させることが先決。葛城の判断は、間違いなく正しい。

《────敵機、直上!!》

ただ、それが遅きに失したというだけの話で。
369 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/22(木) 23:39:50.90 ID:gNRjXRdj0
操縦席の中を、戦闘機としては異質な丸い影が一瞬通過する。直後、彩雲隊の左手を飛んでいたグラマンが両翼から炎を吹き出した。

《Oh?my?god!!?Ribbon-06?down!!》

《由良より旗艦、敵機種は全て【オニビ】!数は20弱、なおも追撃してきます!!》

『『『────……』』』

オニビ。世界的には“Ball”と呼称される、深海棲艦の艦載機。その名が示すとおり白色の球形というカブトガニ以上に独特の形状で、主にヲ級や空母棲姫、或いはヌ級のflagshipといった旗艦級の艦隊の直掩に着いている姿が多く見られ。

速力と防弾能力において非常に高い水準にある反面、【カブトガニ】に比べて性能が空対空格闘に特化していて汎用性は非常に低い。だが、逆説的には“本来の用途”における戦闘能力は極めて高い、と言い換えることもできる。

急造部隊である上に既に大きな損害を被っている私達がまともに戦っていい相手ではないし、容易く振り切れるような甘い相手でもない。

「彩雲三番機、被弾……!」

《Ribbon-10, Ribbon-20, Ribbon-07 Lost!!》

《此方由良、水偵が被弾!飛行態勢維持していますが燃料漏れを確認!!》

《頑張って!あと少し───っ、旗艦葛城よりCP、烈風隊投入16機の内10機を損失!損害甚大!!》

端から見れば、その光景はきっと肉食の猛禽に小鳥の群れが嬲られているかの如く映るだろう。【オニビ】達による執拗な反復攻撃で此方の航空隊はいいように撃ち抜かれ、次々と赤い炎と黒い煙を吐き出しながら学園艦の上に叩きつけられていく。
370 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/23(金) 00:38:43.48 ID:VUcUYjAI0
不幸中の幸いは、私達の離脱運動が学園艦に対して“横断”の動きであることだ。

当たり前の話だが、船は“全長”に対して“全幅”は圧倒的に短い。大洗女子学園の全幅なら、対空砲火を回避しながらの飛行であることを踏まえても10秒に満たない時間で横断しきれる。

《5時方向から更に【オニビ】の編隊!此方も数は20前後!》

《対応の必要無し!このまま振り切る!》

無論その間、私達の編隊は殆ど回避運動もままならない。一方的に撃たれ続けた結果、学園艦の端に到達したときには編隊の残余機数は10を切っていた。

だけど、喩え僅かでも“生き残り”がいる時点で私達の任は十分に果たせる。

《葛城より千代田隊並びに翔鶴隊、偵察航空隊は離脱に成功!足留めは十分、残余戦力を速やかに後退させられたし!!》

「加賀より【あきつしま】、当編隊大洗女子学園上空より離脱もなお敵編隊の追撃を受けている。援護を求む」

《【あきつしま】より空母加賀、要請を受諾。これより対空砲火を開始する》

『『────!!!?』』

次の瞬間、編隊とすれ違うようにして弾丸が空を駆ける。【あきつしま】の艦首に備え付けられていた機関砲が火を噴き、私達をしつこく付け狙っていた【オニビ】の先鋒数機が直撃を食らって爆散した。

《敵編隊への着弾を確認、撃墜数機。効果を認む》

《由良より【あきつしま】、貴艦の支援射撃により敵航空隊の鈍化を確認!》

《【あきつしま】より各艦、続けて航空隊による迎撃を開始する。貴隊の護衛にも一個編隊を割くので合流されたし》

その通信が終わるか終わらないかといったところで、彩雲の妖精さんの眼は【あきつしま】の艦尾から飛び立つ“機影”を捉えていた。

《【あきつしま】よりCP、強行偵察隊の支援を開始した。三式戦“飛燕”を全機投入する、オクレ》
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 17:15:14.06 ID:bYqhjimA0
おつおつ
厳しいってレベルじゃねえw
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 19:36:00.71 ID:d8S6/hjB0
おつー
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/25(日) 02:09:51.68 ID:N0lEUyGK0
海保まで投入か…
今の学園艦の状況で南首相はどう判断するのか見ものだな
374 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/25(日) 23:02:49.07 ID:4jDDjcF+0
私達艦娘が使う艦載機は、深海棲艦のものと同程度───基本は80cm未満、大型機でも1m20cm程度と非常に小さい。

日本はこの“小型”という利点に着目し、特に陸軍機を集めて本来なら艦載機の搭載が不可能な通常兵器の水上艦にそれらが整備できる簡易施設を備え付けた。要は、海上移動を可能とする小規模な基地航空隊を設立したようなもの。

たった今【あきつしま】から発艦した、三式戦の編隊もそれにあたる。

《【あきつしま】よりCP、当艦艦載機隊は敵航空隊と交戦開始。戦況は互角も敵に後続戦力の気配アリ》

《CPより【あきつしま】、大洗鎮守府と第9警備府の基地航空隊が出撃準備を終えている。一五四一に現着予定》

《【あきつしま】よりCP、了解した。引き続き迎撃する》

無論、運用できる絶対数は決して多くはない。ただしその分、この【移動航空基地】部隊は基本的に鍛え抜かれた精鋭妖精達を優先的に配備させる事が多い。特に海上保安庁巡視船は、元の装備が貧弱故に自衛隊側の配慮によってかなり強力な部隊を配備する傾向がある。

そして、【あきつしま】に搭載されている部隊もその例に漏れることはなかった。

『『────!?!?!?』』

白を基調とし、翼の付け根部分に黄色いラインを入れた単発機が【オニビ】の編隊を正面から迎え撃つ。ハ40エンジンを唸らせ敵機の背後を次々と取り、銃火を容赦なく浴びせ叩き落としていく。

“飛燕”の名に恥じぬ、美しさすら感じさせる軌道に、今度は【オニビ】達が狩られる側に追いやられる。ツバメの如く空を舞うその姿を捕捉できず、交戦開始から僅か十秒足らずで多数の損失を出した敵編隊は陣形を保てず、総崩れ状態に陥った。
375 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/25(日) 23:16:31.80 ID:4jDDjcF+0
(敵機は60機近くいるはずだけど……それを、不意打ちに近い部分があったとはいえたった20機強でこうまで圧倒するなんてね)

大東亜戦争の折には私や赤城さんや2航戦の子たちが沈んだ後に採用されたというこの陸軍機が、整備性の悪さから南方戦線で散々悪名を轟かせ米軍からは“鈍重な鴨”扱いされていたとは俄に信じがたい。

本来の実力が当時の皇国の物資不足故発揮できていなかったのか、はたまた【あきつしま】の妖精さんたちの腕前が機体の悪条件を克服しているのか。いずれにせよ、当時を知る日米両国の人間がこの光景を見たらどんな感想を抱くかは少し興味がある。

《【あきつしま】よりCP、護衛部隊が葛城指揮下の偵察隊と合流した》

惚れ惚れするほど圧倒的な制空戦闘を眺めていると、私達の前後を挟み込む形で更に機影が現れた。前後衛に各8機ずつ、新たな“飛燕”の編隊が一糸乱れぬ飛行で偵察部隊の周りを固める。

《なお、当方航空隊は敵追撃部隊と交戦中。既に多数を撃墜し戦況は優勢に推移》

《CPより【あきつしま】、確認した。そのまま各母艦の元へ送り届けさせてくれ》

《【あきつしま】艦橋よりCP、了解》

《葛城より【あきつしま】、護衛を感謝します!》

《此方千代田、96式の残余部隊は大洗鎮守府基地航空隊と合流。これより帰還させます》

《翔鶴よりCP並びに旗艦葛城、零戦部隊は半数を損失しましたが退却に成功。収容致します》

無線から聞こえてくる状況報告の声は、修羅場を越えてようやく落ち着いたものに変わっていた。とはいえ、安堵をしている者は私を含めて誰一人としてこの場にはいない。

寧ろ全員が、声色にどこか暗鬱な感情を込めて言葉を交わしている。
376 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/25(日) 23:48:00.00 ID:4jDDjcF+0
無理もない。少なくとも威力偵察に参加した艦娘達は、大洗女子学園の甲板上で今現在引き起こされている惨状を実際に目にした。そしてその原因たる深海棲艦は、何をどうやったのか私達の予想を遙かに上回る巨大な戦力の展開を終えている。

しかも、敵が迫っているのはここだけではない。太平洋側のあらゆる方角で、次々と新手の艦隊が現れて日本領海に向かってきている。フィリピンの方から接近する敵艦に至っては、ベルリンを含めて過去に一度も確認されていない“新型”個体だという。

今のところどの戦線も持ち堪えてはいるようだが、いつまで持つかという保証や目処は一切ない。何せ敵の物量は桁外れ、青ヶ島や南鳥島、八丈島の精鋭達でも数的劣勢下での波状攻撃を受け続ければいつかは突破される。喉元にあれほど凶悪な刃が突きつけられている現状では、国内から出せる増援戦力も大幅に制限せざるを得ない。

それに、よしんば日本が何とか全ての攻勢を押し返せたとして………日本“だけ”が耐え抜くのでは意味がない。この世界規模の大攻勢によって制空権・制海権を失陥して海上輸送路が封鎖されれば、兵力に劣る私達は相互の連携も補給も技術提供もままならず各個にすり潰されて終わりだ。

「………」

勝てるのだろうか、私達は。

また負けるのだろうか、私達は。

〈ボカンドノ?〉

「……ええ、大丈夫。少し考え事をしていたの」

視界を同期していた妖精さんが、小さく首を傾げ脳内で問いかけてくる。どうやら、全く指示を出さなくなってしまった私を心配して声をかけたらしい。

(いけないわ。一航戦ともあろうものが、こんな情けない思考をするなんて)

「勝てるのだろうか」ではない。「勝つ」のだから。

「負けるのだろうか」ではない。「負けるわけにはいかない」のだから。

私は、大日本帝国海軍の誇り高き第一航空戦隊、空母加賀だ。

国の名は変われど、住まう人は変われど、ここが私が守るべき祖国。

ならば、今度こそ全てを賭してでも守り抜かなければならない。

「心配をかけてごめんなさい。【あきつしま】の艦載機隊と離れないようにして巡航速度で帰還を────」
377 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/26(月) 00:58:29.30 ID:NX1T+Hip0
─────爆発音が空気を震わせ、海面が隆起し、水柱が天に向かって伸びる。恐らく数百トンはあろうかという膨大な量の海水が辺りに撒き散らされ、傾きつつある太陽の橙色の光を反射して輝きを放つ。

その幻想的な光景のすぐ下で、1隻の船が────海上保安庁巡視船、【あきつしま】が炎に包まれていた。

《CPより【あきつしま】、今の音は何だ!?状況を報告しろ、おい!!》

《千代田よりCP、【あきつしま】の船体が激しく傾斜!右舷側で大規模な火災発生………か、艦橋にも延焼している模様!》

《軽巡由良よりCP、甲板上に生存者数名を確認!当方に救援を要請しています!》

《CPより各警備府並びに沿岸防衛線各所に通達!救護ヘリか艦娘を港湾に回せるところはあるか!?【あきつしま】被弾、繰り返す、【あきつしま】被弾!!》

「【あきつしま】右舷より、雷跡が接近!!!」

無線通信で飛び交う声が恐慌と混乱に塗り潰される中、その一際大きな叫び声は私の口から飛び出したもの。

波を蹴立てて突き進む、白い軌跡。数は二本。寸分違わぬ狙いで、今なお炎を吹き出している被弾箇所へ向かっている。

《ふざけないでよ……!!》

「くっ……!!」

葛城の烈風と、私の彩雲、そして“飛燕”の内何機かが機首を翻し急降下する。

幾ら戦闘機が速いとはいっても、この高度から突っ込んだとて体当たりも機銃掃射も間に合わない。それでも、眼下で助けを求める海保の隊員達の姿を見て、何もしないという選択肢は選べない。

……だけど現実には、時を止める魔法が使える美少女も、時を止める時計を持ってる機械仕掛けの青猫も存在しない。

必死に後を追う私達の目の前で、2発の魚雷は吸い込まれるようにして被弾箇所に突き刺さる。

「うぁっ……」

〈ウォオオッ!?〉

凄まじい閃光で視界を覆われ、思わず眼をつぶる。爆風に煽られた機体を、妖精さんが辛うじて建て直す。

中央から完全に船体をへし折られた【あきつしま】の艦首が持ち上がり、甲板上にいた人影をぱらぱらと海に放り出す。そしてそれらも、三度目の大爆発と船体が横倒しになった影響で逆巻く海に一瞬で呑み込まれる。

後に残ったのは、一握りの残骸と黒い油……そして、その油から激しく立ち上る火柱だけ。
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 19:37:36.47 ID:uN5Y42vx0
otu
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/26(月) 20:29:10.24 ID:0BcMcnIA0
おつおつ
出血を強いるような消耗戦って言っても、失った物を取り返すためには人類側が破綻しかねないという…
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/27(火) 16:14:47.81 ID:RR7LFzqE0

海上保安庁最大の巡視船があっという間に退場してしまうとは…
381 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/27(火) 23:01:25.60 ID:lWu08we60
《じ、巡視艇【あきつしま】、敵の雷撃により轟沈しました……生存者、確認できません……》

誰もが言葉を失い沈黙する中、由良の絞り出すような報告の声が無線機越しに耳朶を打つ。……まるで初陣したばかりの駆逐艦のように語尾が震えていたけれど、現状を受け止め声を発せられただけでも彼女は十分賞賛に値する。

少なくとも、眼下の光景を受け入れられずにただ立ち尽くすことしか出来なかった私とは比べるべくもない。

《魚雷だなんて……雷撃機の機影は近くになかったのに………一体、どこから……》

か細く虚ろな葛城の問いかけは、誰かに答えを求めていない。乱れる自身の精神を何とか落ち着けようという、独り言にちかいもの。

だけど、それに対する“回答”は、思いの外あっさりとそこに姿を現した。

『────……』

「…………そんな」

喉奥から、呻き声が漏れる。

マッコウクジラに駆逐イ級を掛け合わせたような、黒く角張った形状の随伴個体。青白い眼から冷たい光を放ち、大顎に生える獰猛な犬歯を剥き出しにして、獲物を待ち望んでいるかのようにガチガチと撃ち鳴らしているその化け物の背に、“彼女”は悠然と腰掛けていた。
382 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/27(火) 23:27:19.24 ID:lWu08we60
膝下まで届くほど長く、太陽に当て続ければ溶け出してしまいそうな白い髪。更に輪をかけて白く、“奴等”の大半と同様に水死体のように生気が感じられず蝋のように滑らかな肌。

そして、“彼女”を一際特徴付ける、フリルスカートを思わせる端がひらひらとした艤装服。

《空母葛城よりCP、大洗港にて【潜水棲姫】の浮上を視認!!繰り返す、大洗港に【潜水棲姫】浮上!!》

《【あきつしま】撃沈は潜水棲姫の攻撃によるものと思われます!千代田よりCP、対潜装備機で速やかに総攻撃を!》

《駆逐艦、軽巡で出せる子はいないのか!?放置すれば港湾が封鎖されかねんぞ!!》

『─────……』

狼狽する私達を嘲笑うが如く、棲姫の口元が微かに歪む。その細い右手の指先が、すうっと伸びて陸を指し示す。

その瞬間─────まるで耳元で囁かれたかのように、私には“彼女”の声がはっきりと聞こえたような気がした。









『沈メテ、アゲル………』

次の瞬間、学園艦の甲板上から、先程までとは比べものにならない量の【カブトガニ】と【オニビ】が空に舞い上がった。
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/28(水) 19:36:21.67 ID:yLIcNY/w0
384 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/30(金) 23:16:21.45 ID:YcUNbNs80
今から80年ほど前、第二次世界大戦の折の話。ソヴィエト赤軍の戦車乗り達に深刻なトラウマを刻みつけ、世界の戦車道史にもその名を残した“音”がある。

Su-87【スツーカ】。ナチス・ドイツが開発したこの傑作爆撃機は、極端かつ特徴的な逆ガル翼構造によって急降下時にサイレンのような独特の高音を出す。ドイツ軍の精鋭パイロット達が───特に、不屈の闘志で世界一多くの戦車をスクラップに変えた空の魔王が奏でるサイレンは、ソヴィエト赤軍の陸軍兵士達にとって死刑宣告に等しいものだったという。

この風切り音───俗に言う“ジェリコのラッパ”が欧州の大地で再び鳴り響くようになったのは、つい6年前の事だ。

ハワイ諸島でのアメリカ合衆国に対する攻撃から僅か一週間後、東南アジア海域とほぼ同時に始まった大西洋方面における深海棲艦の大規模浮上。圧倒的な物量差と相性の問題からEU連合艦隊は徐々に防衛線を押し込まれていき、ポルトガルやフランス、オランダ、ドイツなど主要国への小規模な上陸・空襲が繰り返されるようになる。

そんな中、水際に防衛線を展開し必死に深海棲艦の浸透を防ぐEU各国陸軍に襲いかかったのが、急降下爆撃に特化した性能を持つ型のHelm……日本で言うところの【カブトガニ】だった。
385 :修正 ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/30(金) 23:17:43.56 ID:YcUNbNs80
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今から80年ほど前、第二次世界大戦の折の話。ソヴィエト赤軍の戦車乗り達に深刻なトラウマを刻みつけ、世界の戦車道史にもその名を残した“音”がある。

Su-87【スツーカ】。ナチス・ドイツが開発したこの傑作爆撃機は、極端かつ特徴的な逆ガル翼構造によって急降下時にサイレンのような独特の高音を出す。ドイツ軍の精鋭パイロット達が───特に、不屈の闘志で世界一多くの戦車をスクラップに変えた空の魔王が奏でるサイレンは、ソヴィエト赤軍の陸軍兵士達にとって死刑宣告に等しいものだったという。

この風切り音───俗に言う“ジェリコのラッパ”が欧州の大地で再び鳴り響くようになったのは、つい6年前の事だ。

ハワイ諸島でのアメリカ合衆国に対する攻撃から僅か一週間後、東南アジア海域とほぼ同時に始まった大西洋方面における深海棲艦の大規模浮上。圧倒的な物量差と相性の問題からEU連合艦隊は徐々に防衛線を押し込まれていき、ポルトガルやフランス、オランダ、ドイツなど主要国への小規模な上陸・空襲が繰り返されるようになる。

そんな中、水際に防衛線を展開し必死に深海棲艦の浸透を防ぐEU各国陸軍に襲いかかったのが、急降下爆撃に特化した性能を持つ型のHelm……日本で言うところの【カブトガニ】だった。
386 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/31(土) 07:26:25.24 ID:XM6QXyzC0
奴等の爆弾は小さく軽いけれど、威力は250kg爆弾とほぼ同等。当然直撃を受ければ第四世代戦車の強力な装甲でも耐えられない。

フランスのルクレール、イギリスのチャレンジャー2、ドイツやポルトガルのレオパルド2、ポーランドのPT-91【トファルディ】………艦娘が欧州方面でも配備され対空迎撃網が確立するまでの半年ほどの間に、各国の戦車は次々と破壊されていった。伝わってくる話によるとEU連合陸軍はその半年間で欧州全土に配備されていた内の1/3にあたる戦車を損失し、生き残った戦車乗り達もその2割近い人数が度重なる爆撃とそのたびに鳴り響く“ジェリコのラッパ”によって精神に失調を来して退役したという。

PTSDによる退役云々の話については正直半信半疑な面がある。あの時は世界中が──今現在と同じぐらい──大混乱に陥っていたので、信憑性の高いものからお笑いぐさなものまで様々な種類の噂話が流れていたから。

……ただ、ドイツを筆頭にEU諸国が“制空権の失陥による空路・海路の安全性の喪失”を理由に国内の外国人達の出国を妨げ、分けても戦車道の関係者・経験者は騒動が沈静化してからしばらくも半ば拉致監禁に近い形で国内に留めさせていたことは事実だが。もしもあの噂が本当で、EUで戦車に乗れる人材が枯渇していたとすれば、アレほど強引で国際的な非難を免れない手に各国が打って出た理由も頷ける。

まぁどのみち、今の欧州───特に多大な犠牲を出して国土を大幅に失陥したフランスとドイツは、外国人どころか“義勇兵”の名目で学徒動員に手を染めなきゃ戦線が維持できないほどの窮状だけど。

この間のテレビで画面に映った、赤毛の日系人と思わしき女の子の姿を思い出す。彼女のような、西住さんたちと同じぐらいの年代の子供もまた“ジェリコのラッパ”が鳴り響く欧州の戦場で戦っているのだと思うと胸が痛む。
387 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/31(土) 08:39:47.75 ID:XM6QXyzC0
尤も、私はその音をあくまでも“知識として”しか知らない。

急降下爆撃型のカブトガニがどのような特徴を持つのかは自衛隊のミーティングで散々に叩き込まれてきたし、実際に欧州戦線で録音された風切り音も繰り返し聞かされた。確かにこんな音を戦車という閉所の中で、しかも爆弾を抱えて自分たちにそれをぶつけに来ている敵機が奏でていると知った上で聞けばかなりの恐怖だろうなとは、同じ戦車乗りとして朧気ながらイメージできる。

だが、あくまでもそれは想像だ。実際に戦場で聞かない限り、その恐怖を真に理解することはできない。

そして私は、戦争が始まった当初はまだある戦車道流派の門下生で、自衛隊に入隊したときには艦娘の量産方法によって近隣の制海権・制空権は掌握されていた。東南アジアでの反攻作戦に伴う海外派兵はあったけれど、それだって入隊直後の未熟な小娘が選ばれるほど日本の戦力は逼迫していない。

幸か不幸か、私が最前線というものを知る前に対深海棲艦戦争は安定期に入った。今後私が“ジェリコのラッパ”を聞く機会はないんだなと、ホッとしたような気持ちと(誠に不謹慎ながら)少し残念な気持ちとがない交ぜになった複雑な心境を抱きつつ、私は今まで自衛官としての日々を過ごしてきた。




《四警那珂よりCP、当警備府に激しい空爆!同警備府由良が敵投弾により中破、護衛部隊にも損害大!》

《11警千代田応答せよ!CPより11警千代田、応答しろ、おい!!》

《敵航空隊の一部は那珂川河川敷を突破、春日香取神社の防御陣地が爆撃を受けた!》

《学園艦甲板より深海棲艦による艦砲射撃を確認!大洗マリンタワーが直撃を受け倒壊した!》

《東光台の防御陣地複数からの通信が途絶!敵の空襲範囲、尚も拡大!》

《大洗駅にも敵の艦砲射撃着弾!待機中だった小隊と艦娘【初霜】からの通信が途絶えました!》

今後もずっと、そうで有り続けると思っていた。
388 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/31(土) 09:40:07.35 ID:f3m0p1nyO
《敵機の数は一体どれだけなんだ!?空が真っ黒だ!!》

《此方磯道防衛線、負傷者多数!キューマルも爆撃により破壊された!畜生、畜生!!》

《CPより大洗鎮守府、其方の空母艦載機か基地航空隊を出せないのか!?》

《無理だ、当鎮守府上空にも敵機多数飛来!戦力を割くと我々も一方的な爆撃に晒される!》

《此方七警加賀、数的不利により迎撃困難!沿岸部より後退します!》

百聞は一見にしかずとは、よく言ったものだ。電子の不健康な光だけが照らす仄暗いヒトマルの車内で、私はつくづく先人の残した言葉に感心した。




《────蝶野一尉、来ます!》

制空権を失陥した前線において、まともな対空兵装がない戦車に乗りながら耳にする“ラッパ”の音は……この世に類がないほど、恐ろしい。

《敵機直上、急降下!!!!》

「各車全速後退!!」

……正直一生しなくてもよかった、ベリーバッドな体験ではあるけれど。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 13:31:59.89 ID:5WXXUbHA0
おつおつ
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 03:38:38.77 ID:k3kNWpKTo
391 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/04/01(日) 23:01:13.65 ID:1XLt3tx50
カツン、カツン。【カブトガニ】が投擲した爆弾が2発、アスファルトの上で弾み炸裂する。轟音を伴って押し寄せてきた爆発の衝撃に、ヒトマルの車体がビリビリと震えた。

「車体の損傷を確認!」

「履帯、左右とも異常なし!火器管制システム、オールグリーン!駆動系統、機器動作問題なし!」

「O.K、ならまだやれるわね!

1号車蝶野よりヒトマル各車、無事!?」

《此方2号車、オールグリーン!》

《3号車より1号車、幸いな事に生きてます────ヒッ!?》

操縦士の子が上げた報告の声、そして寮車からの無線越しの返答にホッと胸を撫で下ろす間すらない。上空で高らかに吹き鳴らされる新たな“ラッパ”の音に、3号車の車長が小さく悲鳴を上げた。

《観測班が敵機第二波の接近・急降下を確認!!町内各所の防衛拠点、指揮系統の混乱により対空砲火網が機能せず次々と突破されています!!》

《回避運動今からでは間に合いません!!》

「機銃、最大仰角にて掃射!!弾幕で敵機を振り払って!!」

言うが早いか、私自身もキューポラから身を乗り出して12.7m重機関銃に取り付く。度重なる爆撃で舞い上がった砂埃に軽く咳き込みつつ、銃口をギリギリまで上に────あの耳障りな風切り音が聞こえてくる方向に向ける。
392 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/04/01(日) 23:42:41.40 ID:1XLt3tx50
時刻は三時半を過ぎ、少しずつ夕闇が迫りつつある大洗。爆弾や砲弾に焼かれた家々から、オレンジ色の夕陽を遮る用にして濛々と黒煙が立ち上っている。

『『『────……』』』

そして、その中に紛れるようにして迫る幾つもの小さな影があった。

「敵影視認!」

まだ遙か上空なので、形は朧気にしか解らない。それでも、黒い煙の中を飛んでいてなお解る程色濃く無機質な光沢を放つ漆黒の塊の存在はしっかりと認識できた。

『『『───────!!!!』』』

近づいてくる。あの甲高い飛翔音が、私達を死路へと誘うラッパの音色が、ぐんぐんと空から地上へと迫ってくる。

「ヒトマル1号車、対空射撃を開始する!」

《2号車、撃ち方始め!!》

《3号車、仰角調整ヨシ!射撃開始、射撃開始!!》

カブトガニ共を迎え撃つべく、空へと駆け上がる火線。三挺の重機関銃が唸りを上げ、12.7×99mm NATO弾が黒煙を切り裂いて敵機の降下進路上にばらまかれる。

『『『─────』』』

《敵機、散開回避!》

《撃墜機無し、なおも降下中!!》

「くっ……!」

………だけど、当たらない。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 18:50:20.13 ID:QU6Bbm2E0
乙津
394 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/04/05(木) 23:01:47.84 ID:+56SXZBW0
迎撃の火線を放っているのは、私達だけではない。

対空改装が施された96式やLAVの車載機関銃、随伴歩兵部隊の89式小銃にMINIMI、M240……ありとあらゆる銃火器が唸りを上げ、百を遙かに超える火線を空に張り巡らす。

そして何より───“本職”であるM42ダスター自走高射砲2両による猛烈な対空射撃。深海棲艦との戦争開始に伴って陸自の戦力不足を補うために35mm2連装高射機関砲【L-90】と共に現役復帰した“骨董品”は、そのブランクを感じさせぬ勢いで弾丸を上空で炸裂させる。

港湾部の目と鼻の先に据え置かれながら、編成の遅れからこの拠点にはまだ艦娘が到着していない。それでも、私達の弾幕の密度は、敵編隊の迎撃に十分な密度を保っていると断言しよう。

《【カブトガニ】、高度2000ラインを突破!撃墜未だ無し!!》

《高層観測班より各位、先鋒数機が投弾態勢に入ったぞ!!》

《畜生!撃て、撃て、撃て!!もっと撃ち続けろ、ばらまけるものは全てばらまけ!!》

なのに、高らかに吹き鳴らされる“ラッパ”の音色は止まらない。黒煙に紛れ、爆炎を突っ切り、弾雨の合間を縫い、砲撃を躱し、漆黒の群れは速度を緩めることなく殆ど垂直に近い角度で地上に……私達の真上に迫る。
395 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/04/05(木) 23:49:55.86 ID:+56SXZBW0
つい十数秒前までは、形状の判別どころかただの黒点に過ぎなかった機影。それが今や、某SF大作映画の宇宙戦闘機として出てきても違和感がない先鋭的な機体のフォルムが微かながら判別できるほどの距離まで踏み込まれている。

それも、ほぼ…というより、全くの無傷で。

『『『────……』』』

周囲を満たす銃声と──強ち比喩表現ではなく──空を覆い尽くす【カブトガニ】の飛翔音に紛れ、小さく、だが間違いなく聞こえてきた何かが外れるような金属音。私は、全身の血が大波が来る直前の潮の如く引いていくのを感じた。

「敵機投弾!!」

ほんの数百メートルまで肉薄していた敵の先鋒部隊が、次々と空に向かって機首を返す。同時に、響くのは“ジェリコのラッパ”とはまた質が異なる甲高い風切り音。

「衝撃に備えて!!」

咄嗟に叫ぶが、意味のない注意喚起であることは私自身がよく知っている。直撃弾を受ければどうしようが木っ端微塵になるしかないのに、何に備えろというのか。

カツンッ。さっきと同様に乾いた音を残して、落下してきた何十発もの小さな爆弾が路上に跳ねる。次の瞬間そこかしこで光が脹れあがり、轟音と共に炸裂した。

乗っていたヒトマルの車体が一瞬宙に浮き、頭上からぱらぱらとコンクリートの破片が降り注ぐ。吹き付けてきた爆風の熱が、ちりちりと顔や手の甲の皮膚を炙る。

「……っ、損害を────」

爆光が収まり、ようやく顔を上げる。無線への叫びは、左手に視界が移ったところで途切れる。

そこには、業火に焼かれ酷く拉げたヒトマルの3号車が横倒しになっていた。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 10:32:28.53 ID:JUzIg4pA0
おつおつ
本当に絶望的だけど、状況は違ってももっと酷い戦場で耐え凌いだ欧州組みの例もあるからなあ…
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 21:37:00.87 ID:IcWYEvjM0
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 23:15:22.14 ID:tF8bL6P/O
余計な描写が細過ぎるし長いのに更新頻度遅くてまとめて読めない
完結したら教えてくれ
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 02:15:26.86 ID:keFXzTYNo
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 18:27:13.22 ID:K+e3fNCDo
黒鳥が強すぎて投入された戦線から順次崩壊する未来しか見えない
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/09(月) 12:51:00.25 ID:7GlfV4eT0
辛い展開だとまとめて読みたくなる気持ちはわかる
とにかく更新乙
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 12:02:56.55 ID:zDmaQH/C0

追いついた
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/15(日) 22:33:29.72 ID:lh5jxpo90
乙、続き期待
404 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/04/17(火) 23:39:29.76 ID:VBYc6z7/0
《ヒトマル三号車、乗組員からの応答なし!完全に沈黙!》

応答の有無なんて確認するまでもない。ゴジラに踏みつぶされたと言われても信じられるぐらい完全に破壊されたあの有様で、乗組員が生存できるはずないのだから。

だけど、その解りきった事実が言葉として耳に入ることで、目の前で自衛隊の仲間が死んだ───“戦死”したという事実を、否応なしに突きつけられる。

《敵編隊、第二波来ます!》

私達の今いる場所が戦場だと、改めて認識させられる。

《直上より急降下、機影は30程です!》

《射撃の手を止めるな!》

やられたのは、三号車だけじゃない。さっきの爆撃でLAVが二両火達磨になり、96式も足回りをやられて動きが大きく制限され、随伴歩兵の損害も甚大だ。

何より、虎の子の対空火器であるM42の内片方が直撃弾を受けて完全に破壊された。

敵はさっきと同程度の戦力で押し寄せてくるのに対し、私達の火力は半減に近い打撃を受けた状態。こんなもの、止められるはずがない。

《敵機投弾!!》

「全車両全速後退!歩兵部隊も散開急げ!!」

キャタピラーが軋み、周囲の光景が前へと流れていく。程なくして、またあの甲高い落下音が周囲から聞こえてきた。

《きゃあああっ!!?》

ラムネ瓶と同程度の大きさの物体が放っているとは俄に信じられないような熱エネルギーを伴った轟音と衝撃の嵐に、私の車の操縦士が悲鳴を上げる。地を跳ねた爆弾に真下に潜り込まれた不幸なLAVが、爆風に撃ち上げられ一流ゴルファーのショットのような勢いでバラバラに砕け散りながら私の頭上を飛びすぎていく。

「うぁ────」

必死に爆心地からの離脱を計った若い陸士のほんの一メートル後方で、また一つ巨大な火柱が吹き上がる。彼と彼の周囲にいた同僚十数人が業火に呑み込まれて人間松明と化し、走り出した姿勢そのままに数歩進んだ後地面に倒れ込んだ。

「……んぶっ」

鼻孔を擽る、形容しがたい悪臭に胸の奥から酸っぱい何かがこみ上げる。嘔吐の隙はそのまま死に直結しかねないため飲み下して無理やり押し返すが、指揮官という立場がなければ間違いなく醜態をさらしていたに違いない。

何事も体験だと人は言う。だが、世の中にはそもそも体験する必要自体ない事象も少なからず存在する。

“焼ける人体の臭いを嗅ぐ”という行為も、間違いなくそれに分類されるだろう。

少なくとも私は、一生体験したくなかった。
405 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/04/17(火) 23:42:58.28 ID:VBYc6z7/0
【カブトガニ】や【オニビ】の爆弾搭載量は、大抵は一発から多くても二発程度。特に急降下型はその攻撃手段の特性上弾数の搭載制限が厳しいようで、基本的には一度の爆撃で直ぐに離脱する傾向が強い………というのが、奴等に対する私の“知識”。そして実際、波状攻撃によって間断なく爆撃を受けているもののさっきまで敵編隊の動きはその事前知識通りのものだった。

『『『─────!!!』』』

《敵編隊、反転!再度急降下!!》

だが、今度の奴等はさっきまでのニ波と比較して大分仕事熱心な部隊らしい。

《編隊は三時方向と四時方向に分散、同時に来ます!》

「【ダスター】は三時方向の編隊に全火力集中!随伴歩兵隊、速やかに戦車の影か屋内に退避!

LAV並びにヒトマル、対空射撃開始!てぇっ!!」

『『────!!?』』

『『『!!?!?!?』』』

《Bingo! Bingo!!》

【カブトガニ】共は爆弾を捨てて身軽になったが、数度の交戦でこっちもいい加減奴等の軌道に目が慣れてくる。

私の放った火線が立て続けに3機を刺し貫き、2号車の射線にも1機が動きを捉えられて黒煙を噴く。M42【ダスター】が放った40x311mmR弾に至っては、編隊のど真ん中で炸裂し7、8機ほどを一撃で粉砕した。

それでも、20機近い機影が火線を縫って肉薄し、怒れるスズメバチの大群の如く羽音を響かせて私達に襲いかかる。

「車内退避!!」

2号車車長に向かって叫びながら、私自身も機銃から手を離し上部ハッチを勢いよく閉める。……強かに指を挟んで涙目になったけれど、幸い操縦士の子も砲手の子も外の気配に全神経を集中して気づかれなかったのは幸いね。

「ぴぃっ!?」

間を置かず外で鳴り響く、機銃の射撃音。現代戦闘機のそれに比べて音量が大きく発射スパンが間延びした、第二次大戦期のメイン兵装である20mm機銃にとてもよく似た銃声に操縦士の子が生まれたての雛鳥のような悲鳴を上げて首を竦める。降り注いだ無数の弾丸が、ヒトマルの装甲で弾けて車体を震わせる。

でも、それだけだ。

「落ち着きなさい、爆弾じゃなきゃ大丈夫よ!」

ヒトマルに限らず、最新鋭戦車は複合装甲が主流。想定される攻撃はAPFSDS弾やHEAT弾といった戦車砲或いはそれに準ずる威力を持つ攻撃であり、それらに耐えて搭乗員が生存できるように設計されている。

幾ら旧式とはいえ対艦戦闘にも用いられた爆弾の直撃ならいざ知らず、たかが機銃に貫かれるような柔な代物ではない。

《敵編隊、上空を通過!》

《追撃しろ!対空射用意!》

無線の報告を耳にして私がキューポラから顔を出したのと、物影やヒトマルの後ろに隠れていた随伴歩兵が一斉に立ち上がったのはほぼ同時。

何十という銃口で光が瞬き、弾丸が空へと駆け上がる。
406 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga sage]:2018/04/17(火) 23:47:16.33 ID:VBYc6z7/0
当たらなければどうということはないという名(迷)言があるけれど、それは裏返せば「当たってしまえばどうしようもない」と言い換えられる。

ヨーロッパやアメリカで一式陸攻と同じ(不名誉極まりない)渾名をつけられた、深海棲艦の主力戦闘機もその点は同じだった。

『『『!!??!?』』』

《弾着、弾着!》

《よし、当たったぞ!》

《1機でも多く削れ、仲間の仇を取れ!!》

7.62x51mm NATO弾を諸に浴びて、【カブトガニ】達は編隊最後尾の機体から順に次々と火を噴き墜ちていく。奴等が完全に射程圏外へ退避したときには、更にもう10機ほどその数は減っていた。流石に2/3の機体を失ったとあっては労働意欲も大いに減退したようで、第三次攻撃は行われずそのまま敵編隊は海の方へと戻っていく。

元々脆い脆いと聞いてはいたが、実際に目の当たりにするとやはり驚かずにはいられない。ベルリンの戦闘ではドイツ連邦陸軍が歩兵の携行火器のみで500を越える敵機を撃墜したなんて眉唾物の記録も残っていたけれど、あの光景を見る限り強ち全てが嘘ではないようね。

《敵第四波、突入の気配は今のところありません!》

「とはいえ上空の敵航空戦力は未だ膨大よ!対空警戒は絶対に怠らないで!

ヒトマル1号車より各位、被害状況を改めて報告して頂戴!」

……それでも、相当な“尾鰭”が着いていることは間違いないだろう。

何せ実際には、たった20機ほどを撃墜したのとひき替えに、この損害なのだから。

《96式、走行不能!砲塔と機銃は動きますが機動戦は不可能です!》

《LAV、最終的に六両が破壊されました!残余四両も半数が損傷有り!》

《此方高層観測班、機銃掃射により4名が死亡!2名が重篤です!》

《負傷者の後送を急げ!救援なんか待つな、この状態で助けなんか来るものか!》

《此方M42 2号車、先程の機銃掃射で集中砲火を受け副兵装のM1919に異常有り。また、右履帯も“利き”が鈍い》

《蝶野一尉、大洗海浜公園の防護拠点と通信が途絶しました!恐らく、空襲で壊滅したと思われます!》

「………ホント、ベリーバッドにも程があるわね」

失われた戦力は、どれほど少なく見積もっても4割は下らない。しかもそれは私達の拠点に限った話ではなく、大洗町の防衛ライン全体が同様の状態───どころか、無線で飛び交う様々な情報から推察するに、私達の被害状況は“まだマシ”ですらあるかも知れない。

奴等の本格的な攻勢が始まってから、ほんの10分と経っていないにもかかわらず、だ。
407 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/04/18(水) 00:10:24.53 ID:T8AYFd4O0
《各拠点に通達、戦線の維持を────》

CPからの指示の声は、高らかに響き渡った“砲声”によって掻き消される。

キューマルやヒトマルが奏でるそれよりも遙かに重く、巨大なそれ。だけど私には、聞き覚えがあった。

海自並びに横須賀鎮守府第一艦隊との合同沿岸防衛訓練で艦娘・榛名が使用した、35.6cm連装砲のものに響きがよく似ている。

《大洗女子学園甲板上で発砲煙を複数確認!!》

《衝撃に備えろ!!》

────ただしあの時の彼女のそれは、あくまでも空砲だったけれど。

《来るz》

頭上で、大気が粉砕される。巨大な運動エネルギーを伴った鉄の塊が幾つか、凄まじい速度で空を通過する。

瞬き一つ分の間を置いて、後方で次々とわき起こる轟音。着弾地点は何キロも後方の筈なのに、ヒトマル戦車を介して地面の揺れが私の足下にまで伝わってくる。

或いは、私が恐怖に身を震わせているだけなのだろうか。

《此方軽巡洋艦・神通!敵艦砲射撃、島田町北交差点に着弾!同地対空陣地との通信が途絶!》

《涸沼橋、砲撃により崩落しました!》

《平戸町方面への砲撃が激化!同区域展開部隊に損害発生!》

《大洗鎮守府、敷地内に砲弾複数飛来!負傷者多数の他重巡洋艦・加古が小破!》

《CP、此方那珂川河川敷【ダスター】第2中隊!先程の艦砲射撃により損害甚大!状況としては撃破4、大破・中破各2、オクレ!》

《此方涸沼駅、艦砲射撃は我々の元まで届いた!反撃に移らないとじり貧になるぞ!》

反撃────口で言う分には簡単だし、実際大洗鎮守府辺りの残余艦娘戦力を総動員すれば互角の砲撃戦に持ち込むことも十分できるだろう。

だけど、私達にはできない。できるはずがない。

《CPより各位、大洗女子学園には今なお多数の民間人が取り残されていると思われる。学園艦への直接的な攻撃・反撃は許可できない、オクレ》
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 08:50:50.02 ID:Aanq9DSA0
おつおつ、待ってました!
それにしても敵の嫌らしさが、欧州・ロシアを経てここまで来るのかってレベル…
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 09:39:03.07 ID:m1x/d30UO
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 21:16:03.93 ID:pja4rQjh0
乙る
411 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga sage]:2018/04/19(木) 23:07:31.19 ID:aECTx4Rn0
CPが言うとおり、大洗女子学園への反撃は未だ取り残されているであろう多数の人々を巻き添えにしてしまう。況してや甲板上の敵主力は、威力偵察部隊の報告から高い火力と装甲を有する“ヒト型”だ。

対抗できる艦娘戦力を運用しての砲撃戦となれば、学園艦自体を沈めかねないほどの激しい戦闘になる。某怪獣映画の総理大臣じゃないけれど、私達の銃口を国民に向けるわけにはいかない。

最も卑劣で最も強力な【盾】の存在によって、大洗女子学園は今や戦艦十数隻分の火力を有する無敵の固定砲台と化していた。

《大洗マリンタワー、艦砲射撃により崩落!》

《平戸町、島田町方面への空襲も本格化!戦力増強の要あり!》

《敵航空隊の一部は涸沼を突破し茨城町上空に侵入、爆撃により市街地複数箇所で火災発生!》

《国道50号線以西への侵入は何としても許すな!それと百里基地方面への敵の動向にも注意しろ!》

《県警と消防に避難勧告区域の拡大を伝えるんだ!急げ!》

艦砲射撃は時を追うごとに激しさを増し、空襲の勢いも止まるところを知らない。海空緊密な相互連携の下で行われる攻勢の前に、絶望的な報告だけが増えていく。

序盤の奇襲で主導権を握り、戦力の集中運用で優勢を確固たるものにし、地の利を生かして一方的に敵戦力を打撃する───見事な戦略の組み立てに、怒りと屈辱を通り越していっそ感心してしまいそうだ。

《【カブトガニ】、新手が来ます!!機影多数、直上より急降下開始!!》

「対空射撃用意!!」

そうこうする内に、私達の頭上でも再び響く“ラッパ”の音色。先の“波”からどう少なく見積もっても五倍程度には数を増した漆黒の機影が、群れを成し私達に向かって押し寄せる。

「敵を近づけるな、何としてもこの拠点は固守するわよ!!」

無線に向かって叫びつつ、引き金を押し込む。重厚な弾幕を吐き出しながら激しく震動するM2重機関銃を、渾身の力で抑え付け射線を安定させる。
1機1機に狙いをつけるのではなく、敵群体自体を大きな塊として捉えるような感覚で。何度かの襲撃で眼に焼き付けた奴等の軌道を思い描き、そのイメージに合わせて照準を動かす。

『『『!?!?!?』』』

刃物で切れ込みを入れるようにして、M2の火線が群体を薙いだ。10を越える機影が、弾丸に貫かれ火や黒煙を噴きながら墜落した。
412 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga sage]:2018/04/20(金) 00:34:44.62 ID:uNk0GEdi0
攻撃隊の機体数が増えたとは言っても、私達を含め大洗町や近隣市街に展開する自衛隊・艦娘部隊は何も町を埋め尽くすようにして布陣しているわけではない。各所に構築された防護拠点への攻撃となれば、どうしても編隊の突入軌道は集約してしまう。

加えて、幾度かの襲撃を経て私達も奴等の速度や軌道を身体で覚えた。特に戦果に欲を出した第三波へ痛撃を与えることに成功し、少なくとも私達の拠点はある程度の落ち着きを取り戻しつつある。

結果、この第四波で私達はようやく奴等をまともに迎撃できるようになっていた。

《此方2号車、敵編隊新手を9時方向に視認!火線其方に向けます!》

《第4班、2号車の後方をカバーしろ!引きつけて撃てよ、89式でも十分落とせる!》

《狙撃班とLAVはとにかく【ダスター】に突っ込んでくる敵を狙え!対空砲を失ったら今度こそ物量に押し潰されるぞ!!》

私や2号車の操るM2機関銃だけではない。M42の40x311mmR弾を中心に大小様々な火線が空に撃ち上がり、被弾した機体は殺虫剤の煙に巻かれた羽虫のようにボトボトと力のない軌道で墜落する。

《敵機複数が投弾、爆撃来ます!!》

《非爆装機、一個編隊が低空飛行で突っ込んでくる!機銃掃射だ!!》

「歩兵は再度退避!総員、衝撃に備えて!!」

尤も、“まともな迎撃”ってのは別段私達の戦況の好転を表す言葉ではない。あくまで敵航空隊にもそれなりの出血を強いれるようになったというだけの話で、依然置かれた状況は厳しい。

「くぅっ……!」

何発かの爆弾が、拠点の近くに落下して炸裂する。逆巻く爆炎を切り裂いて機銃の火線が数条地面を撫で、アスファルトを弾丸が削り土煙を上げる。

「ぐぁっ……!?」

機銃掃射から逃れようとした歩兵の一人が撃たれる。背中から袈裟懸けに弾丸を受けたその陸士は勢いよく地面に転がり、2、3度痙攣した後血溜まりの中で動かなくなった。

「……野郎!!」

『!!?』

顔見知りだったのだろうか、その光景を見た別の陸士が彼を射殺した【カブトガニ】に向かって89式小銃を放つ。3点バーストの弾丸を全て食らった機体はど真ん中に風穴が空き、一瞬錐揉み状態になった後空中で火を噴きながらバラバラに砕け散った。

やり返せてはいる。だけど、撃ちつ撃たれつの消耗戦で不利なのは戦力に限りがある私達だ。一刻も早く状況を打破する必要がある。

(防衛線全体の混乱も少しずつ収束しつつある。けれど、通信が途絶した部隊や拠点もこの短時間でかなりの数に昇るわ)

艦娘戦力も中大破が報告された艦が相当数に昇り、状況的に後衛の戦力を前に繰り出す余裕も今はないだろう。

さりとて、増援が送れるだけの態勢をCPや大洗鎮守府が整えるまで待っている暇もない。深海棲艦が“次の手”に出る前に、こちらから動く必要がある。
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/20(金) 10:14:04.39 ID:hy236J+h0
おつ
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 13:33:26.07 ID:FgJwUeSH0
千鳥みたいな自動迎撃装置がないとジリ貧だな
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 20:38:22.35 ID:lojaqmYQ0
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 23:30:21.68 ID:ibe2Oq1xO
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 10:57:25.14 ID:Akc2zWlOO
つまらないわ
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/24(火) 22:57:52.45 ID:I6yZ/cXA0
乙です
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