エンド・オブ・オオアライのようです

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226 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 22:47:40.40 ID:hEif7d7Q0
連合空軍による波状攻撃は止まらない。五波、六波、七波と入れ替わり立ち替わり戦闘機が肉薄し、ミサイルを船体殻に叩き込んでいく。

多少の撃墜が出たとはいえ、残存機数は優に700を超える。攻撃の手数には困らない。

《Red-01, FOX-3!!》

《Lightning-09, FOX-3 FOX-3》

《War Dog-11 FOX……No!?》

無論、攻撃手段と攻撃ポイントを切り替えたからといってロミス達の側に損害が出ていないわけではない。最大仰角で放たれる船体側面の対空砲群と怪物の背中から生える多数の機銃座による弾幕に捉えられた機体が、火を噴きながら落ちていく様子も時折見られる。

しかしながら、船体からの砲火は濃密でこそあれ構造上の問題で取れる仰角が浅い。そのため、7割近い弾幕が現在の連合空軍の高度には届かず結果としてロミス達の攻撃を許す大きな隙を生んでいた。

『ウォオオオオオッ!!!』

《Tiger-01より各機、目標は現在海上で完全に停止した。奴さんどうやら俺たちを本格的に迎え撃つ腹づもりらしい》

£#°ゞ°)《臨むところだヨ!全機怯むな!攻撃を続行せよ!!》

それに、ロミス達の練度の高さは尋常ではない。深海棲艦と長らく───それこそ艦娘実装前から戦い抜いてきた精鋭揃いである彼らは、700機での連携戦闘という途方もない行為をスムーズにこなしながら巧みに弾幕を擦り抜け攻撃を当てていく。
227 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/02(金) 23:27:43.95 ID:hEif7d7Q0
最初に【学園艦棲姫】を目にしたときに航空隊を押し潰しかけていた恐怖や威圧感は、いつの間にか消え去っている。

損害は出てこそいるが極めて軽微に抑え、目標の第一段階である敵の“停止”も果たした。加えて、本当に少しずつではあるが敵はダメージを受けている───これらの事実が、ロミス達に自信を与えた。

だがその一方で、誰も油断や慢心はしていない。翻弄できているとはいえ敵の攻撃の威力は此方を一撃で粉砕し得るものだし、正直ここにある700機分のミサイルを全て撃ち尽くしても船体殻すら破れないかも知れない。

恐怖や緊張はないが、さりとて油断も慢心もない。自然体でありながら、集中力は途切れていない。ほぼ全員が、現状パイロットとしては理想的な状態になったといえる。

《Hammer-01, 位置に着いた》

《Hammer-06, ターゲットを捕捉》

《Viper Team、Hammerに後続。これを掩護する》

延べにして何十度目かの航空攻撃。ロミスとは別のF/A-18Fの編隊に護衛されて棲姫に接近するのは、Mig-21と共にベトナム空軍が投入したSu-30の4機編隊三つ。

彼らが腹に抱えるのは、旧ソ連が開発した空対艦ミサイルKH-35だ。海自のXASM-3には性能も威力もやや劣るが、それでもやはり空対空ミサイルの何倍も破壊力は大きい。命中すれば相応のダメージにはなる。

そして、目標は何せ3200mだ。電子妨害や対空砲による撃墜を避けるため肉薄する関係もあって、外しようはない。

『ヴォオオオオオオッ!!!!』

怪物が接近してくるSu-30に気づき、背中の機銃群の弾幕を其方に向ける。が、射線の隙間を巧みに擦り抜けて、航空隊はミサイルが確実に当たる距離まで更に近づいていく。

《Hammer-12, FOX-3────ウアッ!?》

そしてミサイルが放たれる直前、編隊の内1機が突然下から伸びてきた“何か”に貫かれて砕け散った。
228 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/03(土) 00:00:23.67 ID:tQ9g1u1X0
音速に近い速度で飛行していた機体が、突然の衝撃によってバラバラになる。当然破片は、物理法則に従って凄まじい速度と勢いで周囲に飛び散った。

《………What??No───》

《Damn………I'm?hit!!》

粉砕されたHammer-12の尾翼が、後方を飛んでいた機体のコックピットに突き刺さる。隣の機体は千切れたエンジンが右翼に直撃し、バランスを崩すとそのまま海面に叩きつけられる。

《攻撃中断、離脱しろ!Griffinの二の舞になるぞ!》

《クソッ、何が────うわっ!?》

隊長機の判断は早く、HammerもViperも攻撃経路から外れて離脱を謀る。だがその後ろから追いすがってきた“何か”が、最後尾のF/A-18Fを捕らえ、巻き取った。

《Ahhhhhhh!!!?》

《Fuck───》

《No no no……uh》

真っ二つにへし折られたF/A-18Fの残骸を投げつけられ、回避しきれなかったSu-30が巻き込まれて1機爆散する。これを逃れようとした別のスホーイは、急な旋回軌道をとった結果棲姫の船体殻に激突して爆炎の花を空に咲かせる。

分散して各方面に脱出を計った残りの機もまた、学園艦棲姫の対空砲火に捕まって次々と撃墜されていく。

ただそれは、甲板上の怪物が背中から放った機銃掃射ではない。船体側面から“伸びた”それらに、彼らは為す術が無かった。

《…………Viper and Hammer, All Lost. I repeat─────》

やがてロミス達の耳に届く、空中管制機からの冷酷な報告。

そんな彼らの心情を嘲笑うかのように。










『─────キァアアアアアアアッ!!!』

船体側面から伸びた────白い胴を伸ばし鎌首をもたげた“連装高角砲”が、ガラスを引っ掻いたような甲高い鳴き声を上げた。
229 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/03(土) 00:09:29.46 ID:tQ9g1u1X0
一度切ります
明日(2/3)にマッ鎮登場予定
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 01:22:52.53 ID:fb34gLVA0
おつおつ、エグ過ぎワロタ
人類側の優位がある内は…な展望だったのに計り知れないなw
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 12:38:02.17 ID:Sx4qd5nY0
つまらなさが加速するな
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 17:30:19.92 ID:2smGJZYto
お疲れ様
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 00:52:29.58 ID:bRFg68U50
もうやんなくていいよ
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 03:36:08.03 ID:bVjCUCbC0
マダー?
235 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/05(月) 23:01:23.62 ID:mjJD5y2K0
波状攻撃という戦術の特性上、“棲姫”にある程度接近していたのは殲滅された2チームだけではない。連装高角砲がそのおぞましい姿を露わにした時点で、既に80機を越える機影が次の攻撃に繋げるため突貫を開始してしまっている。

(,,;゚ ゚)《嘘でしょ………!?》

その中には、ギャシャーが率いるWyvern編隊も含まれる。

《敵艦、“艤装”を周囲に展開!!》

(,,;゚ ゚)《急旋回、退避しろ!Break, Break!!》

車は急に止まれないというが、マッハで飛び回る戦闘機はなおのこと。凄まじいGに身体を押し潰されそうになりながら、攻撃軌道から離脱しようと必死に操縦桿を左に倒す。

結果論でいってしまうなら、ギャシャーのこの動きは最悪に近い。旋回運動のため減速しつつ無防備な横腹を見せる彼女の編隊を、“それら”は────次々と砲門から這い出してくる、無数の対空兵装群は見逃してくれなかった。

『『『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』』』

癇癪を起こした赤ん坊の金切り声を思い起こさせる鳴き声を合唱させながら、単装砲が、機関砲が、高射砲が、三連装砲が、蛇の如く身体をうねらせて迫ってきた。速度それ自体は戦闘機に遠く及ばないが、向こうには何せ全長3700mの船体を隙間無く埋め尽くすほどの“数”がある。

《た、隊長……!》

(,,;゚ ゚)《畜生!!》

四方八方から迫り来るそれらの射線から逃れようと、更に無茶な旋回運動を強いられるWyvern編隊。堪えきれず失速した1機が隊伍から脱落し、たちまち真上から単装砲が吐き出した砲弾を受けて爆散する。
236 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/05(月) 23:18:58.57 ID:mjJD5y2K0
《Wyvern-10 Lost!!》

《敵艤装群、一斉に起動!クソッタレ、撃ってくるぞ!》

(,,;゚ ゚)《回避に全神経を集中しろ、反撃しても意味は無い!なんとかしてコイツから離れるんだ!!》

《ダメだ、弾幕に退避軌道が塞がれている!!》

ギャシャーも、マレーシア空軍への志願入隊以来5年に渡って深海棲艦と戦ってきた人間だ。まだ年若い身ながら歴戦のパイロットと言って差し支えなく、数多くの修羅場をくぐってきた。当然深海棲艦が物量に飽かせて展開してくる圧倒的な弾幕に相対したことも一度や二度ではないし、或いは火線それ自体の量という面では18隻もの姫級が集った【第二次マレー沖海戦】の方が強烈だったかも知れない。

《右翼に被弾、失速する……ダメd》

《Wyvern-05がやられました!!》

(,,;゚ ゚)《……っ!!》

しかしそんな彼女でも、“三次元的に展開された対空砲火”の直中を飛行したことは一度も無い。

(,,;゚ ゚)(そこら中から攻撃が飛んでくる、目の前が火線で真っ赤になって退避経路もまともに探せない……!)

200m程度には達そうかという長い胴を巧みに伸ばし、ギャシャーらを周囲から包み込むようにして銃口を向けてくる“艤装”の群れ。右から、左から、前から、後ろから、そして上からも下からも。本来“対空砲火”としては有り得ない角度からでも容赦なく飛来する攻撃は、歴戦のパイロット達と言えど完全に躱しきることは不可能だ。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 23:58:57.97 ID:bRFg68U50
はいクソ
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/06(火) 00:34:07.42 ID:aOfDMcbiO
粘着質過ぎて怖いわ
リアルで出会ったら顔引きつる感じの人
239 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:00:27.14 ID:cRnAItAF0
猛烈な十字砲火の中で、ギャシャー達は必死に棲姫から距離を取る。だが、蠢く“艤装”とそれらが放つ弾幕の前に編隊飛行の維持すら困難になり、1機また1機と部下が脱落していく。

《Wyvern-07、高角砲に後ろに着かれた!振り切れな────》

《Wyvern-06、被弾!エンジンがやられた!》

《Wyvern-15、墜落する!》

(,,;゚ ゚)《クソッ……!》

彼女達が艤装群の火線から逃れた時点で、開戦時16機あった編隊はたったの7気に減っていた。寧ろ最初に対空砲火を受けたGriffinチームよりも厳しい攻撃に対して損害を同程度に留められたのは、彼女たちの腕前の表れと言っていい。

(,,;゚ ゚)《Wyvern-01より航空隊各位、敵艤装の動きはかなり柔軟だ!下手に突入すると容易く包囲されるぞ!》

《管制機よりKnight-01、艤装群と交戦した部隊がたった1分間で70%ロストした。

敵の対空火力は我々の予想を大きく上回る、気をつけろ》

£;°ゞ°)《あぁ、見てたから知ってるヨ!》

昼に食べたサンドウィッチが酸素マスクの中にペースト状でぶちまけられるのを必死に堪えつつ、ロミスは無線機に向かって怒鳴る。

そういう役割だから仕方ない面もあるのだろうが、たった今自身が目にしていた絶望的な光景をわざわざ言葉にされると苛立ちが無駄に募る。奴等はパイロット達が眼球の代わりにガラス玉を顔にくっつけているとでも思っているのだろうか。

£#°ゞ°)《まずは敵の対空火力を奪うヨ!

Unit, Follow me!!》

《Arrow Team、Knightを掩護する!》

《Red Team, Attack!!》

《Gamma Team、後続する》
240 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:05:54.60 ID:cRnAItAF0
ロミス達のF/A-18Fが先陣を切り、鏃のような隊形を取って“棲姫”めがけて突撃。これに、在韓米軍の航空隊と【いせ】のF-14J 12機、更に航空自衛隊のF-4EJ改も呼応する。

『ボォオオオッ!!!』

『『『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』』』

【学園艦棲姫】の対応も、早い。右舷側で動きを見せたロミス達の方に“怪物”が身体を捩りながら吠えると、それがまるで何らかの命令だったかのように組織だった動きで艤装群が一斉に頭部を持ち上げ航空隊の方をにらみ据える。

《Enemy shoot in───ぐぁっ!?》

針山の如くあらゆる方向へ伸びる火線。機銃掃射に撃ち抜かれ、F-4が1機錐揉み状態となり海面に叩きつけられる。

《なんて弾幕だ……!》

£;°ゞ°)《怯むな!とにかく突っ込むヨ!》

眼が眩むような弾幕だが、とりあえず「正面」という常識的な方角から飛来してくれる分マシだ。少なくとも先程Wyvernらが受けた全方位射撃に比べれば、遙かに対処しやすい。

£#°ゞ°)《Knight-01, Target insight!! Fire, Fire!!》

《Knight-02, Fire》

《Knight-04, Gun gun gun》

砲火を擦り抜けながらギリギリまで肉薄し、蠢く艤装群を照準に収めて操縦桿のボタンを押す。M61バルカンが唸りを上げ、吐き出された弾丸が腐乱した水死体を思わせる青白くぶよぶよとした胴体に突き刺さる。

『『ギィイイイイイッ!!!?』』

掃射を受けた幾つかの“艤装”が、耳障りな悲鳴と共に砲火を中断して仰け反った。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 13:20:18.70 ID:w8I6TZw20
否定意見は全部同一人物かよこっわ……
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 13:20:59.78 ID:w8I6TZw20
すまん、勘違いさせる言い方だった。全部同一人物と思うやつの方が怖いってことな
243 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:23:40.63 ID:cRnAItAF0

《Arrow-01 Shoot!!》

《Red-06, Gun Gun Gun》

《Gamma-02, Enemy lock. Fire!!》

『ギアアッ!!!?』

『ゴァッ!?』

間髪を入れず、他の編隊も機銃掃射を艤装群に向かって放つ。弾丸を受けた個体は次々と苦悶の声を上げ、深海棲艦特有の青い体液を傷口から吹き出して火線を途切れさせた。

『グァッ……アァ……』

《Enemy down》

F-14Jの内一機は、直接艤装部分を狙って射撃を加える。12.7mm単装機銃と思わしき漆黒の艤装が砕け散り、胴からぐたりと力が抜ける。

海面に水飛沫を上げて倒れ込んだ後、その個体が再び動き出す様子は無い。

£#°ゞ°)《Yes!!》

その様子を風防ガラス越しに目にして、ロミスはコックピット内で拳を握る。殲滅されたViperの内一機が艤装に“捕まれて”撃墜された光景から思いついた“博打”だったが、結果は見事なジャックポットだ。

£#°ゞ°)《思った通りだヨ!Knight-01より航空隊各位、敵の船体殻は艤装一つ一つには及んでいない!範囲外に出ている対空艤装を個別に狙え、敵の火力を減らす!》

《Arrow-09より付け足しだが、頭部の艤装部分は急所だ、狙えば恐らく即死も期待できる。また、一般的な深海棲艦の装甲や艦娘の艤装と比べて脆い。

胴であれ頭であれ機銃掃射で十分だ》

《Sky-Eyeより全航空隊、損耗が激しい部隊や残弾・残燃料が怪しい機体以外は艤装に攻撃を集中。Knight並びにArrowの報告にしたがってミサイルは温存しろ》

《Shark-01, Roger》

(●゚ ゚●)《Swallow-01, Roger》

《Tiger-01, Roger!! Attack, Attack!!》

『『『キィアアアアアアアアアアッ!!!!』』』

目まぐるしく入れ替わる攻守。ロミス達の報告と管制機の指示を受け、航空隊がまたも波状攻撃に転じる。迎え撃つ艤装群の火線を巧みに擦り抜けながら放たれる機銃掃射に、両弦のあちこちで青い血が空中に迸る。
244 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 13:55:45.47 ID:cRnAItAF0
尤も、突破口を見出したとはいえ棲姫が展開した対空艤装の数は膨大だ。左右両弦併せて、少なくとも数千門。それが、胴が伸ばせる範囲内ではあるものの自在に蠢き、弾幕を放ってくる。

加えて、ミサイルによる攻撃は弾数が圧倒的に不足する上効率も悪い。自然、航空隊はバルカン射撃のため前にも増して肉薄しなければならない。

『『『キィイイアアアアアッ!!!』』』

《Shit, I'm hit!!》

《Purple-07 Lost!!》

《Going down, Going down───》

次々と敵の“艤装群”が動きを止めていく一方で、友軍機の被弾・撃墜報告が入る頻度も決して少なくない。また燃料や機銃弾を使い切り、補給を受けるために一時離脱せざるを得なくなる編隊もそろそろ増え始めている。

連合空軍は攻勢に出ているものの、それが“優勢”であるとは到底言い難かった。

(;●゚ ゚●)《クソッ、八岐大蛇と戦ってる気分だ!!》

£;°ゞ°)《お言葉だけど三等空佐、ミーとしてはオロチよりメドゥーサの方が適切な比喩だと思うヨ!》

高角砲の連続砲撃に追い回されながら毒づく築辺に、15.5cm砲を模したと思わしき形状の艤装を照準に収めながらロミスが軽口を叩く。

『ギュオアッ!!?』

撃ち抜かれた際に散った火花が内蔵弾薬にでも誘爆したか、その個体は派手な爆発音と共に木っ端微塵になった。

£;°ゞ°)《メドゥーサの頭髪は一本一本が毒蛇、おまけに海神ポセイドンの愛人ときた!“深海”棲艦のボスを表すにゃうってつけだヨ!!》

(#●゚ ゚●)《なら今すぐ誰かペルセウスを連れてこい!!どのみち人間が戦っていい相手じゃねえぞこいつぁ!!》
245 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 14:25:35.52 ID:cRnAItAF0
いよいよ持って怒りに満ちた叫び声と裏腹に、築辺は果敢に学園艦棲姫を攻め続ける。彼の率いる【Swallow】編隊は、ロミスの【Knight】共々連合空軍の中でも飛び抜けて多くの攻撃運動をこなしていた。

『ギィッ、アアアッ………!!?』

(#●゚ ゚●)《Enemy down!!》

散々自分をつつき回した高角砲に向かって一瞬の隙をついて切り返し、銃火を首元にぶち込む。20×102mm弾が胴体の肉を裂き、引き千切られた艤装部分が驚いたような鳴き声を上げて海中に落下する。

(#●゚ ゚●)《全機一度距離を取った後反転、今度は船尾側から行くぞ!!》

《《《了解!!》》》

平成の零戦とも呼ばれる、F-2支援戦闘機。その軽やかな攻撃機動は、鍛え抜かれた空自パイロット達の腕前も相まって二つ名に恥じぬ機体性能を見せつける。






『ボォオオオオ………』

そんな築辺達に眼のない顔を向けながら、甲板上の“怪物”は低く忌々しげな唸り声を上げた。
246 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 14:26:18.11 ID:cRnAItAF0
昨日はバッチリ寝落ちしました、申し訳ありません。
取り急ぎ一次更新、第二次投下は23:00から改めてです
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 17:43:54.24 ID:KgotTMzA0
おつおつ
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/06(火) 18:36:52.69 ID:JkdHlenbO
ニートか中学生?
249 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/06(火) 22:00:33.40 ID:Kh4VhO680
胃腸が大変なことになってるので朝更新に延期しますorz
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 00:48:24.76 ID:UmzP/2lA0
ドンマイです…悪化させないよう気をつけてw
251 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/07(水) 09:32:17.63 ID:3ZaPvqmrO
漆黒の装甲に包まれた甲板が数カ所、側面から“艤装”が展開された時同様にスライドする。口を開けた正方形の穴から丸っこい“影”が数個、凄まじい速度で飛び出す。

《“棲姫”が何かを発射しました!》

《……何だありゃ。砲弾か?》

直径5m前後の、黒く塗り固められた球体。ライフリング技術が発達する以前の、大航海時代辺りに使われていた砲弾を思わせる形状のそれらは、爆発することも減速することもなく航空隊と同高度まで舞い上がる。

『『『────……』』』

£;°ゞ°)《─────ヤバいヨ》

一瞬空中で制止した“それら”から、黒い翼と猛禽類の足を思わせる突起物が生える。

瞬間、ロミスの全身から音を立てて血の気が引いていった。

£;°ゞ°)《【Black Bird】 in the air!!!》

『『『──────!!!』』』

無線への叫びは、一歩遅い。漆黒の敵機は速やかに編隊を組み終えると、風を巻いて戦闘空域へと飛び込んできた。

《Fuck……!》

黒鳥達の獲物は決まっているらしく、付近にいたロミス達には眼もくれない。不幸にも軌道を遮ってしまったF/A-18F一機を撃墜した以外は、一切の迷いを見せず一つの編隊へと突進していく。

£;°ゞ°)《Knight-01よりSwallow、敵機が其方に向かっている!注意しろ!》
252 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/07(水) 10:34:44.37 ID:Rk0DcCYD0
(;●゚ ゚●)《マジかクソッタレ……!》

自分たちの方に突っ込んできた、“球形”という常識では有り得ない機影に思わず眼を剥く。折しも反復攻撃に移っていた築辺の編隊は、恐らくは最高速で肉薄する【Black?Bird】4機を正面から迎え撃つ形となった。

(;●゚ ゚●)《Swallow-01,?Fire!!》

《Gun,?gun!!》

《Engage,?Fire!!》

16機のF-2の機首から、一斉に銃火が迸る。横一列に広がった射線、目標は直線軌道上に位置し、しかも互いに高速で接近しながらの先制射撃。常識的に考えれば、回避は非常に困難だ。

あくまで、“人間の常識”に当てはめた場合だが。

『『『──────』』』

《Miss,?Miss!!》

(;●゚ ゚●)《野郎っ……!!》

弾丸に貫かれる寸前、4羽の黒鳥が旋回する。減速を全くしない、殆ど直角に近い高速旋回の前に弾幕は虚しく空を切る。

その航空力学を無視した回避軌道は、築辺達から見れば機影が突然消失したも同然だ。

《敵機、編隊後方から来ます!》

《速すぎるだろ……!!》

(;●゚ ゚●)《散開して奴等の射線から外れろ!Break,?Break!!!》

そしてその消えたはずの敵機が、一秒と経たずに今度は自分たちの背後から風切り音と共に迫ってきている。

悪い夢なら醒めてくれ───そんな、似つかわしくない願望が築辺の胸の内を満たす。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/07(水) 10:46:40.38 ID:QnHwZYNr0
読みにくいなこれ
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 11:21:30.66 ID:qfG5ZA/q0
早く大洗パートをよみたいと思ってる
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:17:45.07 ID:cm1buroS0
最高の材料を使ってゴミを作りました感
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 21:15:35.39 ID:HK9FmSrLo
ぶっちゃけAAしか出てこないパートしんどいわ 長過ぎるし
257 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/08(木) 22:27:46.49 ID:LypmybcT0
明日に午前のみの休日出勤ぶっ込まれてる状態なので更新明日の昼に遅らせて下さい。度々申し訳ありません
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 01:12:49.94 ID:16ltenhA0
おつおつ、ドンマイですw
寒さもだいぶ厳しいし、あまり無理せずに…
259 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 15:01:38.24 ID:Wfw+ZZyrO
だが、“悪夢”は終わらない。4機の【Black Bird】は射線から外れようと旋回する築辺達の後ろにピタリと着き、瞬く間に距離を詰める。

『────』

先陣を切った一機が機関砲を放つ。燃料タンクにでも直撃したのか、火線を食らった最後尾のF-2が爆散した。

『────!!!』

《ぐぁっ!?》

そのまま、氷の上を横に滑っているかのように滑らかな動きで真横へスライド。パイロットが反応する間もなく火線が空を走り、更に一機が翼をもがれ黒煙を噴く。

《Mayday Mayday Mayday, I've been hit!! Eje─……》

《Swallow-14、被弾墜落!私も後ろに着かr》

《Swallow-12もやられました!》

(;●゚ ゚●)《こちらSwallow-01、一方的に撃たれている!全滅も時間の問題だ、掩護を求む!!》

£;°ゞ°)《Knight-01よりSwallow、掩護に───》

《敵機、多数発艦!!!!》

棲姫への攻撃を中断して反転したところで、管制機から飛び込んできたのは悲鳴にも等しいトーンの通信。

コックピットの中で反射的に振り返れば、新たに空に撃ち上げられた黒い球体が視界に映る。

『『『───────』』』

£°ゞ°)《Damn it》

優に数十を越える球体が一斉に翼を生やした瞬間、ロミスの胸の内は絶望で真っ黒に塗りつぶされた。
260 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 15:32:13.56 ID:Wfw+ZZyrO
一方的な蹂躙と言う他ない。

物理法則をせせら笑うような軌道で飛び回る【Black Bird】の前に、連合空軍は為す術がなかった。後方に占位しても全く減速せぬままの急旋回で視界から消え、逆に後ろを取られれば逃れようがなく一瞬で射程圏に捕捉され撃ち落とされる。数の差で連携して迎撃しようにも、【学園艦棲姫】からの分厚い対空弾幕に寸断されまともな編隊飛行すらままならない。

《Enemy coming!! Break!!》

《Mayday, Mayday───》

《Tiger-01 down!!》

《Shit……Ahaaaaa!!!?》

《Yellow Team, all down!! I repeat, Yellow Team all down!!》

悲鳴、絶叫、悪態、断末魔、そして寮機或いは自機の被弾・撃墜報告………無線で飛び交う内容はそんなものばかりで、【Black Bird】に関しては撃墜どころか攻撃命中の報すら皆無。

F/A-18Fが、F-15Jが、F-2が、F-KC-1が、歴戦のパイロット達共々次々と火を噴き、墜ち、砕け散る。

(,,;゚ ゚)《Wyvern-01よりSky-Eye、指示を、指示を早く…………っ!》

必死に無線に向かって叫んでいたギャシャーの目の前で、早期警戒機E-3が機首部分を火炎に包まれながら落下していく。

広域警戒レーダーからのリンクが切れる。これによって連合空軍は、圧倒的な機動力を持ち対空砲火の援護射撃がある敵機を相手に有視界戦を強いられることとなった。
261 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:30:10.79 ID:Wfw+ZZyrO
戦闘開始から1時間と経たずに、既に200近い機体とパイロットを失った。残っている各機体の燃料や残弾も乏しく、ただでさえ難敵の【Black?Bird】との空戦は管制機のロストによっていよいよ覆しがたい状況になっている。そしてこれほどの犠牲を払ってなお、【学園艦棲姫】は未だ本体に傷一つ着けられていない。

だが、パイロット達はそんな状況に絶望し、恐怖し、それでも懸命に戦いながら────微かな希望も見出していた。

最初から解っていたことだ。急造とはいえ米軍の原潜まで投入された防衛ラインを無傷で突破した化け物に、どれほど通常兵器が束になったところで適うものではないと。

出撃の時から知っていたことだ。自分たちは将棋で言えば“たたきの歩”みたいなもので、相手の足を止めることは期待されていてもヒーローになることは期待されていないと。

光の巨人が出てくるまで大怪獣に立ち向かい、足を遅らせつついいように撃墜されてその恐ろしさを見せつける────自分たちの役回りなんてそんなもの。

無論、下馬評を覆して自分たちが英雄になってやろうと思っていなかったわけじゃない。だが、其方が仮に叶わなかったとしても、本来の仕事としては申し分がない。

『ゴァアアアアアアッ!!!』

学園艦棲姫の足は、止まっている。防衛線では見せなかった形態変化を見せ、第4世代戦闘機と真っ向勝負をした上で蹂躙できる貴重な航空戦力をもう一度引きずり出した上で、この途方もない化け物の足を日本から遙か遠く離れた海原で止めてやった。

自分たちの“役割”は、十分に果たした。ならば、後は────
262 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:37:17.48 ID:Wfw+ZZyrO








《【青ヶ島鎮守府】第一・第二連合艦隊、旗艦龍驤!間もなく戦闘海域に到達するで!》

《【横須賀総司令府】所属、第零艦隊旗艦日向より連合空軍各位に伝達。到着まであと60秒、持ち堪えろ》

《此方は【地獄の血みどろマッスル鎮守府】所属、第一艦隊旗艦青葉です!

────大物狩りも、青葉にお任せッ!》

後は、海の上を行く我らが【英雄】達に、全てを託す。
263 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:37:51.07 ID:Wfw+ZZyrO
23:00から第二波
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 17:12:36.35 ID:16ltenhA0
おつおつ
間に合わせたとは言え、空軍主力もかなりきついな…
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 18:39:44.68 ID:oQeltKHm0
もうやんなくていいよ^^
266 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:03:59.24 ID:pUkVk1LW0
《“新型”に関する続報です。

茂名官房長官は先程記者会見で、航空自衛隊・在日米軍・中華民国空軍を主力とした連合空軍が“新型”深海棲艦に対して攻撃を開始したと発表。太平洋上において“新型”の足止めに成功している模様です》

《アメリカ国防省はCNNの取材に対し、国連の常任理事国と艦娘保有国が密かに結成した“国連特殊海軍”の投入を決定したとコメント。フォックス=カーペンター国防長官は、既に“新型”に対し一部戦力が急行中であるとインタビューに回答しました》

《中華人民共和国はそんな話は聞いていないと反発、外交部を通じて強い抗議をしていく方針を示しています》

《ロシア連邦政府はアメリカと日本の迅速な決定を高く評価、ニュック=バリシニコフ大統領は日本のミナミ首相に全面協力の用意があると伝えました》

《アラビア海での戦況についてインド政府は詳細の言及を避けましたが、自衛隊の保有する赤城・加賀両空母艦娘の奮戦もあり敵に大打撃を与えているとの発表がありました》

《アラビア海防衛線の戦況推移にはアナトリア半島、アフリカ大陸東海岸の諸国も強い関心を示しています。既にサウジアラビアとエジプトは連合艦隊から支援要請があった場合速やかに増援を出す用意があると………えー、少々お待ち下さい。ただ今、新しい情報が─────》





《…………………。アルジャジーラより緊急ニュースをお伝え致します。

深海棲艦の大規模艦隊が、南アフリカ共和国のケープタウンに上陸を開始。現在国防軍が迎撃作戦を行っていますが、戦況は絶望的とのことです》
267 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/09(金) 23:11:24.28 ID:pUkVk1LW0
《SBSからの緊急放送です。オーストラリア国民の皆様、良く聞いて下さい。

タスマン海に新たな深海棲艦の大艦隊が浮上、グレート・オーストラリア湾に向かっている模様です。政府は上陸予想地点近隣の全国民に避難を命じています、軍と警察の誘導に従って落ち着いて避難を開始して下さい》

《ベーリング海に浮上した新たな艦隊の規模についてロシア政府から言及はありませんでしたが、既にカムチャッカ半島各都市には戒厳令が発令されています》

《チュクチ海にも同時に艦隊が出現、哨戒中だったロシア海軍部隊が遅滞戦闘に入った模様です》

《この二海域の艦隊は千島列島・北方四島・北海道方面にも進撃する可能性があり、日本政府も米露と連携して対処すると見られます》

《国営放送北海道支局から道民の皆様にお知らせします。今後お住まいの地域でJ-ALERTが鳴った場合、それは避難訓練ではありません。J-ALERTが鳴ったときに備えて、指定避難場所の確認や避難時の荷物整理をよろしくお願い致します》

《青瓦台はマスコミ各社に対して韓国国内の全軍に臨戦態勢を取るよう通達した旨を公表しましたが、一方でアメリカや日本との具体的な連携策については全く触れられないまま会見は終了しました》

《日本の迅速な対応について、一部専門家は南内閣が深海棲艦の大規模攻勢を事前に把握しながらそれを国民に隠していた可能性を指摘。日ノ出テレビでは引き続き大洗女子学園についてのニュースをお伝えする一方で、南内閣による情報の隠蔽・言論統制を厳しく追及していく方針です》

《ブラジル共和国連邦政府は南大西洋方面では未だ深海棲艦の出現は確認されていないとし、国民に冷静な対応を求めました》

《東欧連合軍総司令部は、各戦線で深海棲艦の動きが活発化しつつある事実を認めました。また、未確認ながらフランス西部、北欧でも深海棲艦の大規模な陸路攻勢の兆候が見られるとの情報も併せて開示しています》

《深海棲艦の進路上にある地域ではパニックが拡大し多くの人々が避難先を求めていますが、現在世界中の全ての地域が危険区域と言っても過言ではありません》

《全世界が戦時下にある………ベルリン陥落の折にトソン=カーヴィル大統領が口にした言葉が、今、現実のものとなりつつあります》
268 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:41:48.14 ID:pUkVk1LW0







横須賀市。

古くから海運の要衝として知られるこの地は、1853年のマシュー=ペリー来日以来本格的に“日本の玄関口”として発展していった。日本では初となる学園艦【咸臨丸】の進水、横須賀造船所の設立、洋式灯台の点灯、そして───横須賀鎮守府の設立。

19世紀以降の日本が急速な“近代化”に邁進していく過程で、玄関口である横須賀は大きな役割を担い続けてきた。

その重要度は、150年以上経った今でも変わらない。在日米軍と海上自衛隊の本拠地として、また【世界最大の鎮守府】横須賀総司令府が置かれる場所として、日本の国防と海運業の隆盛を担う“第二の首都”だ。

「…………」

ことに、横須賀総司令府は878隻という途方もなく膨大な艦娘戦力を保有する。呉、佐世保、舞鶴など司令府規模は同種の艦娘が複数艦所属など日常茶飯事だが、大和、武蔵、長門を各6隻ずつ駐屯させる鎮守府など世界中を探してもこの鎮守府ぐらいしかない。そしてここに、海上自衛隊と在日米軍の戦力が加わる。

通常戦力だけで、横須賀を陥落させる存在は恐らく無い───在日米軍総司令官の言葉は、決して誇張ではない。

深海棲艦の脅威に世界中が怯える中、その心配が殆ど無い“安全な国”。その玄関口として最も強固な守りを誇る横須賀が発展するのは、当然といえた。
269 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:06:28.20 ID:tuhNfgCQ0
(……それでも、やっぱり今日は静かなものだ)

閑散とした商店街を歩きながら、その少女は胸の内で呟いた。

イロイロと理由があって彼女個人としてはあまり寄りつきたくない街なので、それほどじっくり市内を練り歩いたことはない。しかしながらニュースなどで取り上げられる市の光景を想起する限り、そろそろ夕方に差し掛かるか否かというこの時間帯はまだまだ人が道に溢れている頃の筈だ。

あらゆる意味で“世界一安全な旅行”を堪能するために、或いは艦娘の存在を一目見るために、国内外の旅行者がこの街でとぎれることはない。彼らの存在は間違いなく、横須賀市の人口密度が戦前の三倍強に脹れあがった最大の原因だろう。

だが、今商店街を歩いている人影はせいぜい10人いるかどうか。しかもその内半分は、制服姿で見回りをする警官ときた。

店自体も、殆どが下ろしたシャッターに“臨時休業”の貼り紙をひっつけた状態で開いている店は一握り。そしてその一握りも、店の中を覗けば店主や店員は備え付けのテレビや引っぱり出したラジオに釘付けで此方に気づきもしない。

(まだ逃げるほどじゃないけど、ニュースが気になって商売が手に着かない、そんな感じザマスね)

いかに盤石な防衛拠点とはいえ、この市はあくまで“海沿い”だ。それに最大戦力を保有するということは、それだけ敵にとっては優先して潰したい場所にもなる。

自衛隊や艦娘が守ってくれると思いつつも、一抹の不安が拭いきれない───そんなところだろうか。
270 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:41:49.17 ID:tuhNfgCQ0
いやまぁしかし、それが自然な反応だろう。少女は歩きながら、改めて思う。

目と鼻の先の茨城県沖じゃ学園艦の上に深海棲艦が現れ、さらに全方位から人類の皆殺しを狙う化け物の群れが押し寄せてきている現状。おまけに南から来る奴は、今までに確認された事がない新型と来た。

これで一般市民に“怯えるな”という方が無理難題だ。商売だって手に着くまい。寧ろ、他の海沿いの街のようにパニックに陥って我先にと逃げ出さない事を賞賛してもいいぐらいだ。

(明らかに、アイツが、オカシイ、だけザマス!!)

次第に胸の内にこみ上げてくる怒りを抑えるため、意図して足を力強く踏み鳴らしながら歩く。周りから幾らか滑稽に見えるだろうけど構うものか。

「────こんな言葉をご存じかしら?

ひとつの幸せのドアが閉じる時、もうひとつのドアが開く。しかし、よく私たちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気付かない」

「………ヘレン=ケラーザマスね、知っているとも。今使われる言葉として正しいかどうかは別として」

指定の喫茶店に辿り着き、粗い動きでドアを開ける。ほぼ同時にカウンター席から投げかけられた“格言”に、少女の────元BC自由学園戦車隊長の顔が盛大に歪む。





「……で、こんなときに何の用ザマスかダージリン」

「落ち着きなさい、アスパラガス。駆けつけ一杯の紅茶は如何?このお店のオススよ?」

視線の先では、「横須賀に来たくない最大の原因」が笑顔でダージリンティーが入ったカップを掲げていた。
271 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:42:52.24 ID:tuhNfgCQ0
本日分ここまで。明日はまた同じぐらいの時間帯に
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 07:01:55.09 ID:cjCcIC4A0
世界全体が詰みかけているのに、お花畑組が平壌運転過ぎるなw
それにこれまた意外な所が…
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 13:06:55.41 ID:OT2zTlGf0


>>1はリトルアーミーだけじゃなくてリボンも詳しいのね
政治的においしい役目だといいな
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 16:14:46.97 ID:f73lJbhQ0
う、うーんこれは^^;
275 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 23:17:37.61 ID:tuhNfgCQ0
これまで見てきた商店街の様子からある程度察していたことだが、店内もまたがらんどうだった。

客は今し方入ってきたアスパラガス自身とカウンター席の中程に座るダージリンの二人だけ。後は店員と思わしき初老の女性が厨房にいて、フライパンを揺すって何かを焼いている。

「そんな入り口に立っていないで座りなさいな。安心して頂戴、店内にはジェームズ=ボンドもゲイリー=アンウィンも潜んでないわ」

「私としてはそこにトーマス=E=ロレンスも付け加えて欲しいザマスね」

「あら、“アラビアのロレンス”をご存じだなんて通なのね」

クスクスと笑うダージリンを無視して、アスパラガスは胡乱げな目付きで店内を改めて眺める。スパイ云々も聖グロリアーナならやりかねないため幾らか警戒はしているが、それ以上に店の内装が彼女の眉を顰めさせていた。

「……………ここ、本当に私達が使っていても平気ザマスか?」

「いやぁねぇ、ランチタイムは普通のレストランを営んでる酒場なんて国内外問わず腐るほどあるでしょうに」

カウンターの上や壁際の棚は勿論のこと、窓際や天井の収納スペース、挙げ句の果てには本来客が座るためのスペースと思われるテーブルの上にまで所狭しと並べられた………というよりは店そのものを入れ物として乱雑に詰め込まれたかのような、凄まじい数の酒瓶。微かに漂うアルコール臭も相まって不安の色を浮かべるアスパラガスの様子を見て、再びダージリンは笑みを漏らす。

「この店も同じよ。これらのお酒は未成年には振る舞われないわ。

────それと、私が耳に挟んだ話では貴女たちタンカスロンの試合中にアンツィオの“大人のブドウジュース”を」

「あれはボルドー達ザマス!!私は飲んでない!!」

ドンッとカウンターに拳を叩きつけつつ、早速アスパラガスは来たことを後悔していた。

大英帝国をそのまま擬人化したような言動と性格のこの女を相手にすると、いつも戦車道試合の20倍ほど体力を使うハメになる。
276 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 00:01:38.64 ID:eEG3zdFy0
江戸時代末期からの近代化に伴い国が西洋の事物・文化・技術を取り入れていく過程で、その媒体となった数多の【学園艦】もまた強い影響を受けていった。カナダとの交流を盛んに行っている苫小牧メイプル学園、トルコとの親交が深いケバブハイスクール、ソヴィエト・ロシアの国風をそのまま校風に反映させたプラウダ高校、不要なところまでフランスに似てしまったマジノ女学院にBC自由学園───確かにそれぞれの学園艦が、繋がりが強い国家の“縮図”やステレオタイプ・サンプルのようになっている節はある。

(だからといってこうも本家英国に似なくてもよかろうに………っ!)

やたらと勿体ぶった言い回しを好む風潮に、所構わず開かれるお茶会、タンカスロン関連では“本家”の悪名高い三枚舌外交を彷彿とさせる謀略の数々も幾度か目の当たりにした。

アスパラガスが知る限り、これほど「聖グロリアーナの戦車隊長」として相応しい存在は見たことが無い(無論褒めていない)。序でにいえば徹頭徹尾、彼女が苦手なタイプの人間でもある。

「顔色が悪いわよ、最近眠れているかしら?

今の貴女にぴったりな格言はこれね、『休息とは回復であり、何もしないことではない』」

「ダニエル=W=ジョセリンザマスね。とりあえず私が言いたいのは“お前が言うな”の一言ザマス…………ハァ」

盛大にため息を吐いて、火照った脳を落ち着ける。

ダージリンとの会話は主導権が全くといっていいほど握れないので激しく疲労するが、少なくとも継続高校の戦車隊長よりは幾らか会話になっている分マシだ。それに此方もいい加減慣れてきた面はある。

何より、これほどの事態の中でただ雑談のために他人を呼び出すほどこの女は脳天気でも愚かでもないはずだ。
277 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 08:26:47.08 ID:eEG3zdFy0
「いい加減用件に入るザマスダージリン。この無駄な問答が続くようなら私は帰る」

「あら、お口と頭の運動は大事だと思わない?」

「貴女にとっては準備運動でも着いていく私からすれば42.195kmのフルマラソンと同じザマス」

「仕方ないわね。でも、最後にお茶のおかわりだけいただくわ」

アスパラガスがカウンター席に座ると、ダージリンがぱちりと指を鳴らす。よく磨かれたテーブルの上を、ティーカップが二つ滑ってきて、二人の手元でピタリと停止した。

「むっ」

更にアスパラガスの目の前には、もう一つ料理が乗った皿も流れてくる。焼けたソーセージがジューシーな光沢を放ち、上にかかるグレービィソースの濃厚な香りと下に引かれたマッシュポテトのふんわりとした見た目も併せて激しく食欲が刺激される。

「……バンガーズ&マッシュはそれこそティータイムよりビールジョッキの隣にある方が似合うと思うザマスが」

「空腹であろう貴女への店主の心遣いね」

「空腹なのは貴女の急な呼び出しが最大の原因ザマスがね」

諸々の作業を終えてようやく遅い昼飯にありつけると思った矢先に、突然の“お誘い”でそれをほっぽり出して急行電車に飛び乗る羽目になった側としては釈然としない。とはいえ胃が空っぽに近い状態なのは事実だし、店の好意も十分にありがたい。

「………………いただくザマス」

更に喉の奥から飛び出しかけた文句をひとまず飲み込み、フォークで突き刺しソーセージにかぶりつく。

「んん……」

悔しいが、空腹という調味料を差し引いても最高に美味しい。後は歯止めが利かず、熱々のソーセージがみるみるうちに消えていく。

「それで本題だけれど、大洗で新しい動きがあるみたいなの」

「ふごっふふふ!?」

最後の一口を思い切り頬張ったところで“本題”を突然切り出され、喉を塞いだマッシュポテトを流し込むため慌ててティーカップに手を伸ばす。

「っ……」

ジャガイモで窒息死という不名誉極まりない最期を回避し、アスパラガスは横目でダージリンの澄まし顔を睨み付ける。

コイツ、今間違いなくわざとやりやがった。
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 13:44:25.30 ID:cIBClsrA0
おつおつ
それにしてもこんな情勢なのにノリノリだなw
279 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 23:04:13.27 ID:eEG3zdFy0
「大洗町に展開している自衛隊が戦力の増強を始めたわ」

「…………」

こっちの視線に気づいているだろうに、隣の紅茶女は手元のティーカップを一度傾けた後淡々と話を続ける。鼻っ柱に一発お見舞いしてやりたくなるが、ぐっと堪えて無言で続きを促す。

また本題からズレた話に戻っても仕方ないし、アスパラガス自身も大洗の現状については少しでも多く情報が欲しかった。

「10式戦車を主力とする機甲部隊が新たに市街地に展開して避難が完了した区域から順次封鎖、迫撃砲やバリケードの設置も各所で進行中みたいね」

「艦娘戦力は?」

「県外からは首都圏の内陸警備府で選抜された部隊が水戸市とひたちなか市に予備防衛線を構築。大洗、相馬、浦安各鎮守府並びに沿岸の警備府は全て厳戒態勢に移行済。

日本海側でも戦力抽出が可能とみられた区域からは続々と自衛隊や艦娘の移動が始まっているわ」

「動きが早いザマスね」

大洗女子学園の一件で日本中の200隻近い学園艦が警戒対象となり、おまけに全世界で深海棲艦の同時大規模侵攻が始まる中でこの迅速な対応。一昔前の日本なら考えられない姿だ。

「さるアメリカ大統領は、こんな言葉を残したわ。

『大抵の人は災難は乗り越えられる。

本当に人を試したかったら、権力を与えてみることだ』とね」

「エイブラハム=リンカーンザマスね」

「あと、『40歳を過ぎた人間は、自分の顔に責任を持たなくてはならない』とも」

「やめて差し上げるザマス」

まぁ顔はともかくとして、“あの”首相の行政・外交手腕が大方の国民の予想を大きく上回るものだったことは間違いない。実際に戦力を動かしているのが横須賀や市ヶ谷だとしても、その身軽な挙動を可能としているのは南内閣の法整備によるところが大きい。

「それと、宇都宮駐屯地にも動きがあったようよ」

「宇都宮………CRRザマスか?!」

ダージリンの言葉に、アスパラガスの眼が驚きで大きく見開かれる。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/11(日) 23:39:41.57 ID:eEG3zdFy0
Central Readiness Regiment ────【中央即応連隊】。陸上自衛隊の中では最も深海棲艦との戦闘経験が豊富な、国内屈指の精鋭部隊だ。

元々は首都圏での対テロ戦闘や国外派兵を見越して設立された部隊だったが、東南アジア戦線での反攻作戦において数々の戦果を上げたため正式に対深海棲艦特殊部隊として再編されたという経緯を持つ。高い練度を誇る一方で規模はあくまで700人という少数精鋭のため、戦況が安定傾向にあった近年は【第二次マレー沖海戦】のような大規模作戦でない限り基本的に宇都宮駐屯地で温存されてきた。

その部隊を、他の方面からも深海棲艦が日本本土に押し寄せてきている状況下で大洗の戦線に率先して割くという。それも、艦娘戦力もまだまだ動員できるにも関わらず。

(無論、ダージリンはあくまでも“動きがあった”と言っただけなので確定ではないザマス。だが……)

関東地方の自衛隊拠点に動きがあるのは当然のことだ。その中でわざわざ宇都宮駐屯地の存在を強調した辺り、彼女の手元には“CCRが動いた”事を示す相当確度が高い情報があるのだろう。

「しかし、学園艦同士の諜報活動ならいざ知らず国の………それも自衛隊や鎮守府の動きをここまで把握できるって聖グロリアーナはどうなってるザマスか?」

「クラウゼヴィッツはこう言ったわ。『情報が多ければ判断が楽というものではない』と。

だけど、取捨選択するだけの情報を集められなければ、そもそも判断自体を下せないと思わない?」

問いかけに対する直接の答えではないが、言わんとすることは解る。設立当初より“謀略と諜報の国”であるイギリスから多くを学んできた聖グロリアーナが、情報収集の手段をあらゆる場所に持っているのは当然だと言いたいのだろう。

それに戦車道履修者は、高校・大学の卒業後進路に陸上自衛隊を選ぶ者が全体の3割を占める。名門聖グロの戦車乗りとなればそれこそ陸自の方から諸手を挙げて歓迎するだろうし、其方方面へのパイプはなおのこと豊富というわけか。

「……さて、ダージリン。大洗町がどういう状況か、というのは解ったザマス。

それで、貴女はこの情報を元手に何を“やらかす”つもりザマスか?」
281 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/12(月) 00:40:17.49 ID:OCWv7WkR0
クスクスクス。アスパラガスの刺すような視線を受けて、ダージリンは心底おかしそうに肩を震わせる。

「“やらかす”って………それじゃあまるで私が何か悪巧みをしているような言い草ね」

「日頃の行いの報いザマス。オオカミ少年が何故全ての羊を食われる羽目になったかよく考えた方がいい」

「あら、それじゃあ私は最期に怒り狂った村人たちに打ち殺されてしまうのかしら?」

そういってまた笑いながらも、ダージリンの眼の奥に宿る光は真剣そのものだ。

この店にアスパラガスが入ったときから、そこだけはずっと変わらない。

「別に、悪巧みなんてしちゃいないわ。私はただ、一人の友人として、戦車乗りとして、大洗のあの子たちを助けたいだけなの。

あぁ、勿論ハリウッド大作の真似事をしようってワケじゃないわ。“これは映画ではない”のだから」

映画【キングスマン】の台詞と共に片手で制され、アスパラガスは一瞬上げかけた腰を椅子に戻す。

権謀術数に長け常日頃から掴み所のない言動を繰り返す一方で、ダージリンが根っこの部分では非常に熱くなりやすい人間であることもアスパラガスは付き合いの中で知っている。大洗女子学園の廃校の危機の際には各学園の連合を率先して主導したし、例のサムライガールの熱に当てられてタンカスロンにも介入している。

彼女が仮に“義勇軍を編成して自衛隊より先に大洗女子学園を救いに行く”等と言い出してもアスパラガスは驚かなかっただろうし、寧ろ初めからそう言い出すことを前提にどう止めるべきかを考えていた。

「そこまで血迷ってなくて何よりザマス」

「もしも私にそれだけの力があったなら、迷わずそうしていたのは事実だけれどね。

でも、流石に身の程は弁えているわ。情報を集めていたのは、あくまでもみほさんたちの為に“私が力になれること”を少しでも見いだせないかと思ったから」

「本当に、凄い入れ込みようザマスね」

尤も、気持ち自体はアスパラガスも理解する。

黒森峰という絶対強者の存在や硬直化した競技形式によって緩やかな死を迎えつつあった戦車道に、突然新風を吹き込んで数々の奇跡を巻き起こした“軍神”西住みほ。直接砲を交えることができなかったアスパラガスでも強く感化された程だ、実際に彼女の“奇跡”を目の当たりにした者達がどれほどの衝撃は想像に難くない。
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 18:57:44.77 ID:hJ3C1KtBO
こんなにも読みにくくて面白くない話も珍しい
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 21:49:45.84 ID:pA1Ix5c/o
乙です。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 02:46:20.36 ID:oLtzPSI0O
自演乙
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 19:12:46.80 ID:8jn/ahFq0
かなり楽しみにしてる。頑張って
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 15:45:31.91 ID:rbhcbs9t0
くっそつまんねぇ
287 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/15(木) 20:34:34.13 ID:N8TNLwGU0
ただ、それにしてもダージリンと聖グロリアーナの大洗女子学園に対する肩入れ具合には少々面食らうものがある。

(事態発生から2時間と経っていないのに、よくもまぁあれだけの内容を集められたザマス)

内地の艦娘動員やその戦力編成、自衛隊による市街地封鎖の詳細な状況、そして【C.R.R】の投入………何れも、本来なら一介の女子学生が政府の公式発表を待たず事前に知り得るような情報ではない。特にC.R.Rの件は、特定秘密保護法に余裕で引っかかる“軍事機密”だ。

聖グロリアーナの諜報部は確かに高校生離れした優秀さだが、これほどの情報を手に入れるとなれば払うリスクと労力は並大抵ではあるまい。大学選抜戦の時など比較にならないその無理筋を、聖グロリアーナが“他人”の為に押し通すとは。

(しかも聖グロリアーナも当然強制一時避難の対象だったザマスから、なおのこと情報は─────ん?)

そこまで考えて、ふとアスパラガスは違和感に首を傾げる。

確かに、2時間足らずで集められた情報としては量も質も上々だろう。ダージリンたちでなければ、この1/10も調べられないに違いない。

だが故に、“最も肝心な情報”がないことに気づいてしまう。ダージリンが、聖グロリアーナの他の戦車道選手達が、そして“彼女”を知る人々が最も知りたいもの。

そして聖グロリアーナが、その優先順位を間違えるはずがない。

「…………“大洗女子学園”の現状は、貴女たちでも調べられなかったザマスか」

「ええ」

シンプルな、短い返事。

彼女にしては珍しく、声に焦燥と苛立ちが滲み出ている。
288 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/15(木) 21:34:24.68 ID:N8TNLwGU0
深海棲艦が甲板上に、それも複数体出現するという前代未聞の異常事態。更に外洋から“新型”や別艦隊が接近している点も併せて考えれば、政府や自衛隊が此方の情報も隠すことは自然ではある。

問題は、それがC.R.Rの投入や艦娘の動員状況以上に重要視されているという点だ。

「まだ、情報収集の開始からたったの2時間しか経っていないという面は確かにあるわ。でも、逆に言うとこの2時間大洗女子学園艦内に関する情報にはアッサム達がノンストップでアプローチを続けている。

それなのに、テレビ局が報道している以上の内容が全く手に入らない」

語尾に近づくに従って、感情の昂ぶりを抑えきれずダージリンの声が震える。無理やりそれを押さえようとしてか、彼女は残りの紅茶を一息で飲み干す。

聖グロ生がカップ鷲掴みで紅茶をがぶ飲みする姿など、OG会の人間が見ればおそらく卒倒ものだろう。

「情報秘匿の度合いで言えば、フィリピン海方面から迫る“新型”の関連情報と同程度よ。

自衛隊に勤めているOGを筆頭に、外務省、警視庁、公安、さらには近隣の鎮守府、あらゆる伝手を辿っているけれど一向に学園艦内の現状が判明しない。辛うじて、“暴徒が発生している”とか“通信が全く繋がらない”とか、そういった断片的な情報を拾えただけ」

「………西住さんの安否は?」

「それも、解らない。

………いえ、きっと、無事でいる筈よ。彼女は、西住みほは簡単に死ぬような人間じゃない。生きているに決まっているわ」

自分に言い聞かせるように繰り返される、「生きている」という言葉。だが、やはり回を重ねるごとにそれはか細くなっていき、やがて弱々しい嗚咽と共にそれは途切れた。

「うぇっ………ひぅっ………」

「………今までの軽口は空元気ザマスか」

どんなに言葉で否定しても脳裏から追い払えない“最悪の想像”に、とうとう机に突っ伏し泣きじゃくり始めたダージリンから努めて視線を外しつつため息をつく。

全く、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。

……自分自身も含めて。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 12:12:16.94 ID:2ZulyxrA0
おつおつ
それにしてもデタラメな諜報力だなw
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 14:25:01.06 ID:wK5HGJzs0
ゴミ
291 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 22:01:38.92 ID:jlHLK4dm0
「ダージリン……貴女の、貴女たちの努力は認める。それにもしこの呼び出しの目的が協力要請なら、BC自由学園としても応えることは吝かじゃない。

でも、私の見立てでは報われる可能性は極めて低いザマス」

万年弱小とはいえ、1学園艦の戦車道チーム隊長を務めていた身。アスパラガスも状況判断能力や分析能力は人並み以上に備わっている。

そして彼女が見る限りでは、現在の状況は疾うの昔に自分たちが対応し得るものではなくなった。

「私達は所詮、一介の学生。戦車道を通じて多少戦略や戦術、謀略を囓っているとしても、そんなものは本物の“戦争”からすれば子供のお飯事に過ぎない。

私達が踏み入っても、力になれないどころか足手まといになる可能性の方が遙かに高いザマス」

「解っているわ、そんなことは!!!」

カウンターテーブルに、勢いよく叩きつけられる拳。よほど力を込めているのかワナワナと震え、関節が白く浮き出ている。

これほど取り乱したダージリンを見るのはきっと私が日本初だろうな……そんな、場違いな感想がアスパラガスの脳裏に浮かんだ。

「特殊カーボンで守られた安全な玩具の中で戦争ごっこをしているだけの女が、本物の“有事”でできることなんてたかが知れている!本当は自衛隊や艦娘や政府に全てを託して、彼らが任務をこなし西住さんたちを無事助け出してくれるの願って安全な地域で待つのが分相応だって解っているのよ!!

それでも、私たちはただ“待つ”ことに耐えられない!………っ」

再び微かに震える語尾。漏れかけた嗚咽を無理やり呑み込んで、ダージリンは潤んだ───だけど、奥に強い決意の光を讃えた瞳でアスパラガスを正面から見つめ返す。

「私達だけで助けようなんて烏滸がましいことは考えないわ。でも、例え少しでも大洗救援の助けになる“何か”があるなら………私は、諦めずにそれを探したいの………!」
292 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 22:51:48.44 ID:jlHLK4dm0
英国人は、恋愛と戦争には手段を選ばない───元より格言好きなダージリンが、特に気に入って繰り返し口にしてきた言葉。

アスパラガスも彼女との交流の中で何度も(内心うんざりしながら)聞かされたが、今のダージリンはまさに、全てを擲って思い人を助けようとしている恋する乙女の姿そのままだ。

(…………やれやれ、ザマス)

正直、“政治的”に考えればアスパラガス達にとってこの案件に首を突っ込むことはあまり得策とは言い難い。西住みほを助けたいという思いはダージリン達ほど切実ではないにしろあるものの、既に一度統合を経験している学校としてはあまり“国”に睨まれるような動きは避けたいという思いもある。

況してや戦車道でも毎回のように一回戦敗退し学園艦としての取り組みもマジノ女学院の二番煎じに過ぎないBC自由学園は、聖グロリアーナと違って実績にも乏しい。仮に廃艦論などが出れば抗うのは当時の大洗女子学園並みに難しいだろう。

(………まっ、とはいえ既に“協力は吝かではない”って明言してしまったザマスしね。

それに、ここで協力を蹴ったらボルドー達に何言われるかも解ったもんじゃないザマス)

本当に、つくづく、自分も含めて、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。

目の前で、プライドも保身も捨てて他人を助けようとしている同い年の少女がいる。だというのに自分がそれらに縛られて動けないなど────それこそ、私たちのプライドが許すものか。
293 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:06:59.11 ID:jlHLK4dm0
「『簡単ではないかもしれない。

でもそれは”できない”
という理由にはならないんだ』」

「…………え?」

「おや、ベーブ=ルースをご存じないザマスか?」

「………っ、しっ、知っているわ。ただ、何故ここで使ったのかって思っただけで」

格言で後れを取ったことが悔しかったのか、少し頬を染めながらごにょごにょと弁明するダージリン。それをしてやったりの笑顔で眺めながら、アスパラガスは懐からスマートフォンを取り出す。

電話帳を開いてある番号の欄を押す時、脳裏には“野球の神様”が残したもう一つの言葉が浮かんでいた。

「あぁ、ボルドーザマスか?忙しいところすまないザマス」

───あきらめない奴には、誰も勝てない。








「“BC学園譲渡”のカードを使うときが来た。

力を、貸して欲しいザマス」
294 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:39:54.73 ID:jlHLK4dm0






「出撃命令、ですか」

ミ ゚Д゚彡「……あぁ。ただし大洗じゃない。太平洋上の“新型”を俺たちで攻撃する」

「……そう、ですか」

ミ ゚Д゚彡「かつてない、手強い相手になる。お前ほどのパイロットを営倉にぶち込んでいる余裕は俺たちにはない、CDCは拘束の解除とお前さんの抗命行為を不問にする旨を決定した」

「…………」

ミ -Д-彡「だが、逆に言うと錯乱したパイロットを無理やり乗せたところで勝てる相手じゃない。どころか編隊自体がそのせいで危うくなる恐れすらある。

もしもお前がまだ腑抜けているようなら、俺はお前を出撃させるわけには───」

「大丈夫です」

ミ ゚Д゚彡「………食い気味に即答しやがったな。本当に大丈夫なのか?」

「曲がりなりにも、航空自衛隊の最精鋭部隊に身を置いてますから。そう長く私情に揺れるほど、弱い女じゃありません。

……それに要は、その学園ハンサムを」

ミ;゚Д゚彡「やめろ一気に弱そうに思えるだろうが。なんか顎尖ってそうだろうが」

「失敬。学園艦棲姫を、とっととぶっ倒してとって返せばいい。そして、今度は大洗にのさばってる化け物を叩き潰してあいつに会えばいい。

それだけの、話です」

ミ ゚Д゚彡「………ブーン、だっけか?無神経な言い方になるが、そいつはまだ生きてるのか?」

「生きてますよ。生きているに決まってる」





|w´‐ _‐ノv「……根拠も証拠もないけれど、あいつは私が信じているのに死ぬような勝手な奴じゃないです。だから私が信じる限り、ブーンは死なない。

そして私も、あいつが生きている限り絶対に死にません」
295 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:56:06.45 ID:jlHLK4dm0
《防空指揮艦【かが】CDCより全乗組員に伝達。

我々はこれより、横須賀総司令府からの指示に従い全ての艦載機を【学園艦棲姫】攻撃作戦に投入する》

《かつてない強敵だ。先んじて攻撃を開始した連合空軍は既に甚大な損害を受けており、足止めが精一杯となっている。青ヶ島鎮守府の艦隊に加えて国連が組織した対深海棲艦特殊部隊も投入されるが、それでもなお予断は許されない》

《だが、我々に怯え、竦み、逃げることは許されない。

何故なら我々は自衛隊であり、本土に住まう一億の国民の盾であるからだ》

《我々の肩には、国民の生命がかかっている。その事を決して忘れるな。

────各員の奮闘に期待する!!》

《CDCよりカタパルト、状態良好!全機、アガレ!アガレ!アガレ!!》

ミ?゚ ゚彡《了解。

Spear-01,?Take-Off!!》

《Spear-02,?Take-Off!!》




|w´‐? ‐ノv《────Spear-03, Take-Off》?
296 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:57:35.03 ID:jlHLK4dm0
最近ノロッノロで申し訳ありませぬ、本日分終了です。
明日からは安定して更新できると思われます(3日ぶり34度目の宣言)
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 01:00:45.10 ID:MQT72ZCA0
おつおつ、シュール頑張れw
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 08:28:58.64 ID:9EXzl4Hjo
おつ
299 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 12:58:07.81 ID:ukQp6ETJO








目を覚ますと同時に、近くでその音は鳴った。

或いは、僕が目を覚ました理由こそ“その音”だったのかも知れない。何せ並々と水が注がれた巨大な風船を勢いよく叩きつけて破裂させたかのような“その音”は、魔女に囚われたオーロラ姫だって王子様のキスを待たず目を覚ましてしまうのではないかと心配になるほど大きなものだったから。

(メメ; ω )「………〜〜〜〜〜ッ!!!?」

意識が光と五感を取り戻すや否や、とてつもない激痛を知覚して視界に星が飛ぶ。血液を通して痛みが直接全身を駆け巡っているとでも表現すれば良いだろうか。悲鳴や苦悶の声を上げる余裕すらなく、ただ浅い呼吸だけが口から漏れる。

(メメ;^ω )「………お?」

身体を苛む苦痛を少しでも緩和できないかと身動ぎしたところで、ようやく僕は自分が誰かに負ぶさっている状態であることに気づいた。
300 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 12:59:20.28 ID:ukQp6ETJO
(メメ;゚ω゚)「……おおおっ!?」

「わっ、暴れんじゃねえ馬鹿野郎!」

状況が飲み込めず、動揺し、更に大きく身動ぎ。途端、僕を背負う人物がバランスを崩しかけて叱責の声を上げる。

女性の声。頭の上に乗る船舶科の帽子から察するに、恐らく学園の生徒なのだろう。西住さんや角谷さんと同世代と考えるとやや低い印象の────所謂、“ハスキーボイス”に該当する声質だ。背もそれなりに高いようで、目線から逆算する限りは170に届くかどうか。

(メメ;゚ω゚)(………そうだ、僕は爆発に巻き込まれて)

停滞していた脳の回転が戻るに従って、記憶も徐々に再生される。学園艦の中を暴れまわる怪物、逃げ惑う生徒達、取り乱す秋山さん、宇津木さんの上に落下してくる報道ヘリ…………脳裏に、次々と僕の意識がブラックアウトする前に見ていた光景が蘇ってくる。

(メメ;゚ω゚)(角谷さん達は無事に逃げ切れたのか?自衛隊の救助はいつ?それにここは一体どこだお?)

同時に、動揺と混乱も加速していく。

記憶が幾らあろうが、気を失っている間我が身に起きた出来事は当然ながら感知していない。視界がブラックアウトする直前に甲板の裂け目に転落したことは覚えているので大洗女子学園の“下層”であることは大方予想が付くが、そこからどうなれば見ず知らずの船舶科女生徒に担がれた状態に辿り着くのか想像できない。

(メメ;^ω^)(……そもそも、良く生きてるおね僕は)

「根賀さん!後ろからまだ奴等は追ってきてるのか!?」

(;●▲●)「あぁ、まだバッチリ来てる!!」
301 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 13:00:07.07 ID:ukQp6ETJO
迷走する思考の果てにそんな身も蓋もない感想を浮かべた僕を尻目に、女生徒は直ぐ隣を走っていた別の人影に問いかける。根賀、と呼ばれたその人物は、一瞬だけ視線を後方にやると大きな眼を僅かに眇めいかにもうんざりした風で舌を出してみせる。

熊手のように大きな右手に握られているのは、拳銃───SIG SAUER P226。

(;●▲●)「数は20〜30ってところか、息切れ一つしてる様子がねえぞ……クソが!」

野暮ったい作業服にややデップリした体格からは想像も付かない機敏さで、その男性はくるりと反転。背後の薄暗がり………何十もの足音が重なって聞こえる方向に向き直りながら、膝を床に着けてSIGを両手で構える。

(メメ;゚ω゚)そ「ぉおっ!?」

立て続けに三度、9mm口径から吹き出した銃火が微かに辺りを照らす。僕の上げた素っ頓狂な声と共に銃声が通路を反響し、間髪を入れず“何か”が倒れる音がそこに重なった。

此方に向かってくる“何か”の集団は、その内の一体が転倒したことによって多少鈍ったようで足音が微かに乱れた。だが、その混乱は長くは続かずすぐに僕らの追走を再開する。

(#●▲●)「リロードする!日屋根、援護を!!」

( ・∀・)「はいはいさー」

すかさず、もう一つ女生徒の隣を走る人影が踵を返す。取られるのは、根賀さんと呼ばれる男性と同じ膝射姿勢。

ただし、構えられた銃のシルエットは、SIGに比べて明らかに大きく、長い。

( ・∀・)「全く、とんだ出張もあったもんだねぇ」

僕の記憶が正しければ、アレは海上保安庁でも正式採用されているショットガン────モスバーグM500だ。

( ・∀・)「フゥウウウオオオオオオオオオオオウッ!!!!」

奇声と共に、もう一人の男性が引き金を引く。

僕を叩き起こしたあの音が、暗い廊下に木霊した。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 14:11:12.21 ID:LytXoJpN0
時間かけるならもうちょっとマシなものを書けよヘタクソ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 20:31:27.72 ID:+wWWpvmA0
おつおつ
先生どんな状況に巻き込まれてんだw
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 20:16:05.81 ID:WPvd4aJb0
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 21:27:13.31 ID:+aM41ZDq0
本読んで勉強した方が良いよ
306 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:01:28.81 ID:BsS8N4hC0
散弾銃という日本式の名称が示すとおり、ショットガンの弾丸は前方の空間へ拡散発射される。射程距離が概ね50m前後と極端に短い代わりに、近接戦闘での殺傷能力と空間制圧能力はとても高い。故にその性能は、市街地や閉所での接近戦で特に遺憾なく発揮される。

そう、例えば今僕らがいる、人が四、五人も横に並ぶと隙間がなくなるような狭い廊下とか。

『キィイイアアアアアアアアアッ!!!?』

(メメ;゚ω゚)「ヒッ……!?」

僕らを追ってくる“何か”からすれば、弾幕なんて生易しい存在じゃない。突如出現した「銃弾の壁」にまっ正面から突っ込む形となった“何か”の肉が裂ける湿った音と、それを掻き消すおぞましい断末魔が冷え切った廊下の空気を震わせる。

(●▲●)「おうムラカミさん、そのあんちゃん眼ェ覚ましたんか!」

「あぁ、たった今な!」

此方に駆け戻ってきた小太りの男性……根賀さんが、“何か”の声に身体を強張らせる僕を見て微かに眉根を上げた。どうやら、僕を背負う女生徒の名はムラカミというらしい。

「さっきから他人様の背中でうるっさくて仕方ない!怪我人じゃなかったら床に放り出してるっつの!」

「ま〜ま〜、そーいーなさんなってムラカミや。こんだけ苦労して連れてきた挙げ句“屍体でした”ってんじゃ、それこそ骨折り損のくたびれもうけだしねぇ〜」

前方から聞こえてくる、この修羅場に似つかわしいとは言い難い間延びした女の子の声。

ここで初めて、僕はこの一行を先導する四人目の存在に気づいた。
307 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/21(水) 23:05:19.22 ID:BsS8N4hC0
ムラカミさんの走りを邪魔しないよう、僅かに首だけ動かして前を覗き込む。

眼に映るのは、3メートルから4メートル先でぴょこぴょこと上下に揺れる赤い毛玉。一瞬面食らったが、よく眼を懲らせばそれはパーマをかけられた頭髪だ。

やはり船舶科の服を身につけていて、邪魔だったのか帽子は右手に握られている。背は160cm前後、此方もこの年代の女性として低いわけではないのだが、僕が“ムラカミさん”の上から見ているせいもあってかどうしても小柄に感じてしまう。

「根賀のおっさんと日屋根の兄貴は武器持ってるしさぁ、あたしじゃ体格的に役者不足だからムラカミぐらいしか運べるのがいないんだってぇ。我慢してよね〜」

「言われなくてもわあってるっつの!!それよりラム、後どれぐらいで着くんだ!?」

「後6ブロックってところだねぇ、ファイトファイト〜」

ラム、とは恐らく先導する生徒の呼び名か。日本人としては聞き慣れない名前なので、或いは鈴木さんたちや某紅茶学園のようなソウルネームなのかも知れない。

そして、その“ラム”さんと荒い呼吸の中から慣れた様子でやりとりするムラカミさん。

(メメ;^ω^)(能島村上家、厳島の戦い、毛利元就………もしかして“ムラカミ”もソウルネームかお?)

村上水軍。公式記録では南北朝時代にその名が登場する瀬戸内海の勢力で、水軍と名が付いているがその実態は今で言うところの“海賊”だ。来島、因幡、能島の三家が存在し、特に能島村上家は毛利元就が陶晴賢を撃ち破った【厳島の戦い】で重要な役割を担ったことも手伝って一般でもそれなりの知名度がある。

そしてラム酒と言えば、“海賊のお酒”の代名詞。

(メメ;^ω^)(この子たちがどういう集団に属してるのかちょっと見えてきたお)

まぁ、自分が何故この子達に運ばれているのか、“根賀さん”や“日屋根さん”は何故この子達と行動を共にしているのか、この二人はどこから武器を調達したのか等まだまだ疑問も多数残りはするが。

今僕たちが何に追われているのか、という点も含めて。
308 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/21(水) 23:09:35.68 ID:BsS8N4hC0
無論、深海棲艦がらみだというのは僕でもある程度予想は着く。学園艦の現状を考えれば、人間を好き好んで追い回す存在なんて奴等関連ぐらいしかいない……と思いたい。

問題は、この地形。こんな狭い廊下の中を甲板上にいるあのデカ物が動こうとすれば、それこそ艦を内部から破壊しつつ進むことになる。だが背後から迫る気配は、足音から察するに明らかに人間サイズだ。

(メメ;^ω^)(まさか“ヒト型”種……いや、だとしたらショットガンや拳銃如きで食い止められる相手じゃないお)

ル級やリ級といったヒト型種は大きさこそ僕ら人間と変わらないが、通常兵器は殆ど効果が無く艦娘でなければ有効な対応ができないというのは僕でも知っている。実際携行銃火器で迎撃できるような相手なら、幾ら奇襲を受けたとはいえ出現当初あれだけ甚大な被害が出るはずがない。

( ・∀・)「フィイイイイッ!!!!」

( ・∀・)「ヒッヒィイイイイイ!!!!」

( ・∀・)「イーディーエェエエエエフ!!!!」

(メメ;^ω^)(……あいつうるせえな!?)

……で、それとはまるで関係ないのだが、しんがりでショットガンを撃ち続けている男の声がべらぼうに五月蠅い。モスバーグM500の銃声もそれを食らう“何か”の苦悶の声も、彼が上げる甲高い雄叫びにあっさりと掻き消されてしまう。しかも定期的に振り向いて発砲する度にその声を発するので、なんか……その奇声が脳に刷り込まれていくような感覚に陥って倍付けで不快だ。

( ・∀・)「チョギップルィイイイイイイイッ!!!!!」

いや本当にうるせぇ。あいつ肺活量どうなってんの?

(メメ^ω^)「………え?」
309 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:13:30.00 ID:BsS8N4hC0
約1名が織りなす背後の喧噪に生暖かい視線を送っていた眼を、思わず微かに見開く。

火を噴くモスバーグ。銃口から弾丸が吐き出される刹那、マズルフラッシュによって照らし出された廊下。そこに見えたモノが俄に信じられず、僕は後方に眼を凝らし続けた。

そんな事、あり得るはずがない。後ろから追いかけてくる“何か”が、船舶科の制服を着た人影だなんて。

そしてその人影めがけて、しんがりの男が平然とショットガンをぶっ放していたなんてこと、あり得てなるものか。

(メメ;^ω^)(きっと、見間違i)

『ア゛ア゛ァ゛ッ!!!」

必死に縋ろうとした希望的観測は、脳裏に浮かべた傍から目の前で繰り広げられる“現実”によって容赦なく否定された。

「ウ゛ァアアアアっ!!!』

( ・∀・)「*おおっと*」

男性が弾薬の装填動作を取った一瞬の隙を突き、彼に飛びかかった人影。手負いの肉食獣のような、声量も響きもとても人間のものとは思えない唸り声を発しながら組み付いたそれは、ムラカミさんやラムさんと同じ白を基調としたセーラー服を身につけている。

「ガァアアッ、アアアッ────ガッ!?』

( ・∀・)「男女平等キーーーック!!」

動きに、躊躇も遠慮もありはしなかった。男は組み付いてきた女生徒の顎を銃床で殴りつけ、腹を蹴って強引に距離を空ける。

その手に構えられるのは、蹌踉めき離れたその子の頭部にしっかりと照準を据えるモスバーグM500。

(メメ;゚ω゚)「───待っ」

(#・∀・)「Wassoy!!」

止める間もなく響く、銃声。

「アギッ』

その子の頭が、針で風船を突いた時みたいに乾いた音を立てて破裂した。
310 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:20:44.95 ID:BsS8N4hC0
あまりの出来事に、悲鳴も怒声も上げられない。脳の機能は覚醒直後からすればかなり回復しているはずなのに、背後の光景を現実として受け入れてくれない。

そして、状況の変化は受け入れるだけの時間も与えてくれなかった。

「「ウ゛ァアアアアッ!!!』』

『『ガァッ!!」」

( ・∀・)「やだ……幼稚園以来のモテ期……」

銃火が途切れるや否や、暗がりからドッと此方に向かって押し寄せてくる人の群れ。大半は船舶科中等部や高等部の制服を着た女生徒達だが、中には整備士の作業着に身を包んだ男性や船舶科の教員と思わしきスーツ姿の人影も混じっている。

「『「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』」』

( ・∀・)「Show timeだ………」

ネジが外れた玩具の人形のようなどこかぎこちない動きで───しかしながら凄まじい速度で周囲に群がろうとする彼女達に対し、日屋根………さんは満面の笑みを浮かべてモスバーグM500を構え直してみせた。

( ・∀・)「WRYYYYYYYYYYY!!!!!」

『ギィイッ!?」

「アカ゛ァ……』

後退りながらも、容赦なく引かれる引き金。散弾が銃口から吐き出され、射線上の人影を次々と薙ぎ倒していく。

頭をトマトのように潰された作業着の男が、肩口から腹の辺りにかけてまでを抉られた小柄な女の子が、上半身をぐちゃぐちゃの肉塊にされて性別すら解らなくなった保安官服の誰かが、床に転がって血溜まりと屍体の山を形成する。

そして、背後の惨状に誰も………根賀さんはともかく、ムラカミさんとラムさんも視線すら向けず走り続ける。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 09:23:47.69 ID:vXs/V1X80

まだサメさんチームになる前の出来事だったのか・・・
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 12:17:31.52 ID:Y5iztrOA0
おつおつ
こんな時でも輝けてるのは凄いなw
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 20:21:27.39 ID:BVbAyXb70
自演してるってマ!?!?!?!?!?!?
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 20:37:43.96 ID:Hr59C89z0
source
315 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/22(木) 23:23:24.71 ID:CSRI4Ade0
(メメ;゚ω゚)「なっ……なっ……」

(;●▲●)「面食らうのも無理はねえが説明は後回しにさせてくれやあんちゃん!!」

あまりにも異様な状況に言葉が出ず、僕は酸欠の金魚よろしく口をぱくぱくと開閉させる。根賀さんは有無を言わせぬ口調で僕に向かって釘を刺しながら、再びSIGを抜き放つ。

『ウ゛ア゛ッ……」

反転し、2連射。日屋根さんの横を抜けてこようとしたスーツ姿の男が一人、胸と頭を撃ち抜かれて衝撃で転倒した。

(●▲●;)「俺たち自身もそんな余裕はないし、何よりあんちゃんの安全のためでもあるんだ!今は逃げることに専念を────」

ガシャン。頭上で、そんな金属音が鳴る。

『ギィイイイッ!!!」

(;◎▲◎)そ「ぅおおおおおぁああああっ!!?」

(メメ;゚ω゚)「っ!!!?」

ダクトにはめ込まれていた金網が外れ、中から降ってきたのは新たな“人影”。船舶科中等部の制服を着た、一人の小柄な少女だった。

身長は角谷さんと同じぐらいかそれ以下で、或いは今年入学したばかりの一年生だったのかも知れない。少し下がり気味の眉尻とおっとりした印象を与える顔だちが、その女生徒が本来優しい性格の持ち主だったことを窺わせる。

「アアァッ、アアアアアッ!!!!』

(●▲●;)「このっ……!」

そんな彼女が、今は唾を撒き散らし、獰猛に唸り、自分の倍は体重があるであろう成人男性を組み伏せて、その首元に向かって顔を突き出しながら歯をカチカチと鳴らしている。

まるで、映画に出てくる“ゾンビ”のように。
316 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/23(金) 10:40:43.81 ID:JWwMSKGgO
「この……っ、野郎!!」

「ギギッ!?』

根賀さんにのしかかり彼ともみ合う少女(の形をした何か)に向かって、踵を返したムラカミさんがそのまま足を突き出す。刹那の戸惑いこそあったものの、それでも放たれた蹴りは140cm程度の小さな身体を吹っ飛ばすには十分な威力を持っていた。

「シィイイイイッ!!!』

( ・∀・)「BAN!!」

「ア゛ア゛ッ!?』

数メートル後方へ吹き飛ばされて床に四つ足で着地した“少女”に、横合いからモスバーグM500の12ゲージ弾が叩き込まれる。砕けた頭部が壁に叩きつけられ、ズルズルと血の跡を残しながら倒れ込む。

「根賀さん、怪我は!?」

(●▲●;)「お陰様で五体満足だ……日屋根さんもすまん、助かったよ」

( ・∀・)「礼は後ほど受け取るとして、早いとこ立った方がいいですよ」

足下に転がった空薬莢を蹴って退かしながら、日屋根さんは再び背後に向き直る。

お面を被っているみたいな無機質な笑みはそのままだけど、目元からさっきまでの(明らかに場違いだった)おちゃらけた雰囲気が消えていた。

さながら自分を狙う天敵に気づいた草食動物のように全身を緊張させて、彼は背後を───屍の山の向こう側に横たわる闇をにらみ据える。

( ・∀・)「そろそろ、来ますよ」






『『『キャハハ、キャハハ、キャハハハハハハハハ!!!!』』』
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/23(金) 18:07:16.92 ID:BeXlzV2G0
一気読みしたいんで応援しかできないけど応援してます(ボキャ貧)
318 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/24(土) 23:44:22.23 ID:8A9iV12l0
笑い声。そう、これは笑い声だ。それも生後数カ月の赤ん坊が上げるような無邪気で明るいやつが何十と重なり、足音と共に僕たちの方へ凄まじい速度で近づいてくる。

学園艦下層で、しかもこんな状況下では聞こえることが絶対に有り得ない“それ”を耳にして、全身の肌が粟立つのを感じた。

(#・∀・)「Go!!!」

(●▲●;)「っ!」

「ああクソッ!」

「やっばいねぇ……っ!」

腰だめでの射撃姿勢とった日屋根さんの叫び声に圧され、3人は弾かれたように走り出す。数秒と経たず、後ろから聞こえてくる断続的な銃声。

『『『キヒヒヒヒッ、キハハッ、キャハハハハハッ!!!』』』

だけど、今度は止まらない。幾ら12ゲージ弾がばらまかれようとも、笑い声は減らないし足音も多少鈍ってはいるものの止まる気配がない。

『───イヒヒヒヒヒッ!!!』

(メメ;゚ω゚)「おおっ!?」

突然、追跡者達が上げる笑い声の内の一つが一気に近づいてくる“気配”がした。何故かは知らないけれどそうした方がいいような気がして、頭を僅かに低くする。

ガチン。そんな、錆び付いたハサミを力一杯占めたような音が頭上数センチで鳴った。

(#●▲●)「化けものめ!!」

『キィッ、キィッ、キハハハハッ!!!』

根賀さんの怒声と共に、SIGの弾丸が放たれる音が隣から聞こえてくる。束の間僕の頭上に止まっていた“何か”が上げる、からかうようなはしゃぐような声が瞬く間に遠ざかっていく。

(●▲●;)「あんちゃん、無事か!?」

(メメ;^ω^)「な、なんとか……あの、今のは」

「やべー奴だよやべー奴!」

疑問の声はムラカミさんの怒声に遮られる。息が荒くなっているが、それは疲労というよりは恐怖から来る乱れのように思えた。

「とりあえず、今後ろを振り返るのはオススメできねえぞ!振り向くのは勝手だけどどんだけトラウマになろうがアタシの知ったこっちゃないからな!!」
319 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/26(月) 23:17:39.14 ID:vbxnl7x50
「────ムラカミさん、ラムさん、こっちですこっち!!奴等直ぐ後ろまできてますよ!!」

「根賀のおっさんも早く!!おい、ムラカミさんたち回収したらすぐ閉められるようにしろよ!入られたらこの区画は丸ごと終わりだ!」

銃声とおぞましい笑い声の下で続く、命懸けの鬼ごっこ。それに終止符を打ったのは、前方に姿を現した巨大な隔壁だった。

「クソッ、あいつら思った以上に速ええし多いな!?」

「最悪しんがりの変態野郎は見捨てるぞ!閉鎖速度上げろ!」

「よいっ、ととと!」

「────っぶぁはっ!!」

少しずつ下がってくる、特殊カーボン製の強固で分厚い壁。手前に立つ生徒二人の間を駆け抜けて、ラムさんとムラカミさんがその向こう側へと文字通りの意味で転がり込む。

(メメ; ω )「おおおおおぉ……」

「……っつ、大の男がその程度でピーピー喚くんじゃないっての……!」

当然の帰結としてその身は空中に投げ出され、固く冷たいコンクリート製の床に激突した。悶絶する僕はワイシャツの襟首を子猫のようにふん捕まえられて、腰の辺りをさすり苦悶の表情を浮かべるムラカミさんに引き摺られていく。

(;●▲●)「日屋根、足止めはもう十分だ!隔壁が下がりきる前にこっちに来い!」

( ・∀・)「いえっさー!!」

隔壁の手前では根賀さんが停止してシグの引き金を引き、援護射撃を受けながら日屋根さんはこちらへ駆けてくる。

そして、二人を追う“それら”の姿を僕は見た。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/26(月) 23:18:37.83 ID:YLukWnYQ0
続きお待ちしております。
最近冷えるので体調にはお気を付け下さい。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 00:14:33.19 ID:Qa32/CGl0
つまんね
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 13:10:44.22 ID:FOPpuxcyo
更新遅かろうがなんだっていいけど未完失踪は辞めてくれよ
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 20:29:38.09 ID:eOVkzW+A0
>>322
更新頻度からすれば気になるのも分かるけど、失踪扱いはせめて数週間は待ってからでもw
月一更新な作品だってざらにあるんだし
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 03:42:27.42 ID:Ly37r+GxO
本当に失踪しちゃったじゃん
325 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/03(土) 22:30:51.07 ID:sUJQuCNI0
日屋根さんが最後っ屁の12ゲージ弾を放って内側に転がり込んだ直後、隔壁の降下が一気に速まる。そこから通路が遮断されるまでにほんの数秒とかからなかったため、「見た」とは言っても僕が“それ”を視界に収められたのはほんの一瞬のことでしかない。

だけど、その一瞬で十分だ。あんなものを長々と見せられていたら、僕のSAN値はきっと1d100のロールを免れなかったに違いない。

あんな、おぞましいモノ。

『『『アアアアアアアアアアッ!!!!!』』』

傷口に湧いた蛆の如く、寄り合い絡み合いながら迫ってくる白く長いナニカ。錆び付いた扉の蝶番が軋む音を何百倍にも増幅させたような叫び声を口々に上げて、それらの群れが眼前で閉じた隔壁に殺到する。

『『アァアアアアアッ!!!』』

『『ギィッ、ギィッ!!!!!』』

「総員構え!億が一破られたらとにかく撃ちまくって食い止めろ!!」

壁を破ろうとしているのだろうか。硬い打撃音が、隔壁の向こう側からそれらの鳴き声と共に聞こえてくる。指揮官と思われる保安官の号令に従い、隔壁の内側に待機していた人員が一斉に武器を構えた。

40人ほどが集まっているようだが、保安官の制服を着ている人間は全体の半分程度。他の服装は様々で、ムラカミさんたちを先程迎え入れた二人も含めて船舶科生徒の姿もちらほら見える。

装備も日屋根さんのモスバーグM500と一部の機動保安隊員が構えているM&K MP5数挺が目立つ程度で、あとは全て小口径の拳銃。それとて所持しているのは全体の1/4に過ぎず、残りの人員が構えているのは────警棒やバット、上等なものでせいぜい不審者取り押さえ用のさすまた。

あの化け物の大群を抑えるには、役者不足どころの話じゃない。かといって、僕の方で力になれることがあるかと言えばそれもNOだ。

ただ、隔壁の強度が奴等の力を上回っていることを全力で祈る他なかった。
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