提督「臆病で愚図」

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173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/12(月) 02:58:30.56 ID:6dkXSTGSO
背筋が寒くなりますねェ……、
乙ゥ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [ssge]:2015/10/12(月) 09:08:20.53 ID:vxtZGzAC0
うっひょー、おつ
いっちの妙高型が素晴らしすぎてつい姉妹艦で進めるものかと思ってたけど、これはこれでいいね
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/12(月) 09:09:11.17 ID:vxtZGzAC0
え、はっず
下げられてなくてスマソ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/19(月) 21:11:09.26 ID:XaB3Wpen0

愛宕「ねえ、提督、それはなに? なんなの? なんでそんなものが提督にくっついているの? ねえ?」

愛宕は目を見開き、夕立を指で差しながら、私に詰め寄ってくる。

金剛「……テートクぅ」

金剛は泥と油を混ぜたような眼をしている。

夕立は私に抱きついたまま、金剛たちから顔を背けている。

提督「夕立が体調を崩したから保護した。それだけだ」

実際は違うが、敢えてそう返す。

二人を押しのけ、那智と共に正面の執務机に向かう。

「明石はどうしたんだよ?」

「医務室にいらっしゃらなかったのですか?」

提督「そんなところだ……それとおはよう、摩耶、榛名」

部屋の右側に置かれている応接用のソファー、その近くに立っていた摩耶と榛名に返答する。

榛名「はい、おはようございます」

榛名は挨拶を終えると共に会釈をする。

摩耶「っす」

摩耶は左手を上げて、大雑把に挨拶を返す。お前はもう少し真面目に挨拶しなさい。

執務机の椅子の前に着く。しかし両手が塞がっているため、椅子を引くことができない。

足で椅子を引こうとしたところで、榛名が椅子を引いてくれた。

榛名「どうぞ、提督」

提督「ありがとう」

榛名「いえ……」

椅子に座り、夕立を膝の上に座らせる。

夕立から両手を離した瞬間、金剛が机を叩いた。

金剛「納得できないネ」

愛宕「そうよ。今日は私たちが秘書艦でしょ? なんでそんなものに構うのよ」

眉間に皺を寄せた二人から再び詰め寄られる。

秘書艦であることと、病人、ということにしている夕立、の世話をすることは関係ないはずだが、こいつらには同じことらしい。

夕立「……」

提督「放っておけないからだ」

金剛と愛宕を生返事であしらい、妙高たちに視線を向ける。

妙高、足柄、羽黒は引き継ぎに必要な資料を整理している。
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/19(月) 21:11:43.07 ID:XaB3Wpen0

提督「妙高、準備は?」

妙高「私は可能です」

足柄「私も出来たわ」

羽黒「私もできました」

金剛と愛宕に視線を戻す。

提督「だそうだ。早く引き継ぎを済ませろ」

金剛は歯ぎしりをすると、両手で再び机を叩く。

机が軋む。

金剛「My Lord! Please explain to me!」

その呼び方はやめろ。

榛名「お姉さま……」

提督「先ほど説明した以上のことはない。病人を保護し、預かり、連れてきた」

愛宕「でも、提督がお世話する必要はないですよね?」

愛宕は眼を細め、両手を合わせて右頬に添える。

愛宕「貸して? それ、私がヤっておきますから、ね?」

提督「……」

愛宕「ね?」

提督「……預かったのは私だ、最後まで私が面倒を見る」

次の瞬間、目の前の机が消えたかと思うと、天井に突き刺さった。

凹んだ天井から、剥がれた石膏が砂となり、机があったところに落ちてくる。

榛名が私ごと椅子を引いてくれたおかげで、頭に砂が掛からずに済んだ。

眼前に、前蹴上げの姿勢になった愛宕がいる。足が綺麗に180度開いており、黒いストッキングが艶めかしい。

愛宕はゆっくり足を降ろすと、再び両手を合わせて頬に添え、眼を細め、笑顔を私に向ける。

愛宕「ね?」

那智、金剛、妙高、羽黒から砲口を向けられながら、愛宕は笑顔を私に向ける。

提督(……)

厄介な娘だ……
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/19(月) 21:13:39.14 ID:XaB3Wpen0
・本日 ここまで

・キャラが プロットから ズレる orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/19(月) 21:37:00.76 ID:9jLOZOl1o
こんな暴力的なアタゴン初めて見たわ。これは期待。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/20(火) 08:20:20.39 ID:nnGxIFrMO
Lord(絶対服従だが絶対服従とは言っていない)
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/20(火) 08:51:46.05 ID:DSIhC8/lo
どのキャラも重くてすばらしいでち
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/23(金) 01:39:20.63 ID:wHRJLT9Z0

摩耶「姉貴、やりすぎ」

私から見て左側、榛名と金剛の間にいつの間にか摩耶と足柄がいた。

摩耶「ほれ、提督、摩耶様がお前の書類、避難しといてやったぜ」

そういって摩耶は得意顔で、左手にある書類と右手にある業務用電話を軽く上げて見せつける。

足柄も、執務机にあった業務用電算機 ――と言うよりパソコンと呼ぶべきもの―― と、摩耶が持ち切れなかったのであろうスタンドライトと羽ペンを持っている。

提督「助かる」

よくもまあ、あの一瞬で確保できたものだ。

足柄「これ、どこに置いておけばいいかしら?」

足柄が電算機を団扇のように軽く振る。もう少し丁寧に扱ってくれ。

提督「適当に置いといてくれ」

摩耶「おうよ」

そう返事をすると、摩耶と足柄は金剛の後ろを周り、妙高と羽黒の射線上を横切ると、入口から見て左側にある秘書艦用の机にそれぞれの手に持っていたものを置く。

その際、足柄が電算機を机に置いたとき、硬いものがぶつかり合う音がした。

頼むから丁寧に扱ってくれ。お前の時代にも電算機があっただろ……あったよな?

足柄「ここに置いておくわね」

提督「ああ」

摩耶と足柄が机に物をちょうど置き終わったとき、それを見計らってか、愛宕が振り向き摩耶を睨む。

愛宕「なによ摩耶〜、その言い方、私が悪いみたいじゃない」

愛宕は自分に向けられている砲口を歯牙にも掛けず、両手を握り、両腕をペンギンのように少し広げ、頬を膨らませて、子供のように駄々をこねる。

摩耶「だからやりすぎだって、そいつ、今日仕事できねえじゃねえか」

摩耶は左手を腰に当て、顎を使って私を差す。そういう仕草はやめなさい。

愛宕「ん〜」

愛宕はそれを聞くと、右手人差指を唇に当て、目線を上にあげて唸る。

愛宕「あっ、それならこれを使えばいいんじゃない?」

そう言うと愛宕は、頭部と心臓部に砲口を向けている金剛の艤装、その艤装の盾のような部分を指で差す。余裕だなお前。

その愛宕の行動に対し、今まで指一本視線一つ動かさず、ただ艤装を展開し、その砲口だけを向けていた金剛が口を開いた。

金剛「Heeey、愛宕、そんなにこれが気になるなら、試しマスカ?」

金剛は首を傾げながらゆっくりと愛宕に顔を向ける。

金剛「Come on, pig」

榛名「お姉さま、お止めください」

摩耶「姉貴、ふざけすぎ」

まったくだ。本当にもう、どうしてこうなった。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/23(金) 01:40:04.44 ID:wHRJLT9Z0

愛宕「む〜」

摩耶の言葉で脹れっ面になった愛宕は、私に顔を向ける。

愛宕「提督、どう思います?」

知るかよ。

提督「……」

夕立を除く全員が私を見る。

金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」

提督「……」

金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」

提督「……」

胃が痛い。

金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」

提督「……愛宕」

愛宕に右手で手招きをする。

愛宕「は〜い♪」

執務机があったところにまで、愛宕が弾むように近づく。

提督「帽子を取れ」

そう言うとともに、手で愛宕にしゃがむ様に指示する。

愛宕は両手で帽子を掴み、しゃがんで頭を私に差しだす。

撫でる。

愛宕「♪」

提督「構ってあげられなくて、すまない。あとで埋め合わせするから、もう少しだけ待っていてくれるか?」

愛宕は帽子で口元を隠すと、上目遣いに私を見る。

愛宕「絶対ですよ?」

提督「ああ、約束する」

愛宕はニコリと微笑む。

愛宕「なら、少しだけ我慢してあげます」

愛宕の言葉を聞き、妙高と羽黒が艤装を格納する。

しかし、眉間に皺を寄せた金剛は、未だ艤装を展開したまま、私に詰め寄る。

金剛「テートクー! そういうのはよくないデース! Judge her!」

提督「本音は?」

金剛「ワタシも提督にお姫様抱っこされて、イチャラブしたいデース!」

金剛は両手をバタつかせてごねる。正直でよろしい。

提督「わかった。少し後になるが、二人きりで過ごそうか」

金剛「Really!?」

私の言葉で動きを止めた金剛は、驚いたように眼を開く。

提督「本当だ。何か問題でもあるのか?」

私の言葉で一転、艤装を格納した金剛は破顔し、腰に手を当て、胸を張る。

金剛「No problem! テートクの眼を釘付けにしてあげマース!」

そこは眼じゃなくて視線だろ。眼球に釘でも刺すつもりか。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/23(金) 01:40:40.92 ID:wHRJLT9Z0

榛名「……」

提督「榛名、希望があればお前の時間も作るぞ」

榛名「……えっ」

私と金剛の会話を少し俯いて聞いていた榛名に声をかける。

なんだか寂しそうな表情をしていた気がしたが、気のせいだったか?

榛名「いえ……榛名は……」

金剛「榛名、自分を抑え込む必要はありまセーン。そうでしょ、テートクぅ?」

提督「まあな」

夕立の背中をさすりながら答える。

榛名「本当に……よろしいのでしょうか?」

顔に影を落としたまま、榛名は自分に言い聞かせるように呟く。

榛名の美しさは、顔に陰りが見えても、変わらない。

提督「私は一向に構わない。金剛の後にはなるが、それでもいいか?」

榛名「はい……榛名は大丈夫です」

榛名は恥じらうように微笑んだ。

愛宕「じゃあ、摩耶は榛名ちゃんの後ね」

摩耶「は? ……はぁ!? あたしもかよっ!?」

妙高、足柄、羽黒と共に、ソファーで引き継ぎを行っていた摩耶が、口を半開きに驚いた表情を向ける。

提督「希望があれば、だ。嫌ならべ「嫌とは言ってね―し!!」

左様か。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/23(金) 01:41:23.77 ID:wHRJLT9Z0

提督「……さて、引き継ぎをいい加減始めてくれ」

愛宕「はーい」

金剛「All right」

金剛、愛宕、摩耶、妙高、足柄、羽黒がソファーに集まる。

榛名「……」

提督「どうした、榛名?」

榛名「……机、どう致しましょうか……」

榛名はソファーに行かず、天井に突き刺さった机を見上げている。

提督「……明石に頼むさ」

すまん、明石。

まあ、みかん箱でもいいけど。



榛名は「かしこまりました」というと、ソファーへと向かった。































那智「……」

仏頂面の那智は、未だ艤装を展開したまま腕を組み、山の如く聳え立っている。

提督「……那智」

那智「……なんだ」

提督「お前にもしようか?」

那智「いらん」

提督「そうか」

那智は艤装を納めた。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/23(金) 01:45:42.83 ID:wHRJLT9Z0
・本日 ここまで

・英語が きつい orz

・キャラが 多いと 影が薄くなるキャラが どうしても 出てしまう orz

・地の文 もう少し 削ったほうが いいですか?

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/23(金) 03:12:39.57 ID:3BYB1bCyo
乙!
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/23(金) 05:23:45.94 ID:5rkNBcDIO
ある意味この提督が一番のバケモンだな。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/23(金) 06:14:21.13 ID:K4dVWCO6o
おつでち
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/23(金) 22:46:49.74 ID:wHRJLT9Z0

提督「夕立、気分はどうだ?」

夕立「ん」

妙高たちが引き継ぎをしている間、夕立に調子を聞く。

夕立は私の首元左側で顔を少し擦ると、眠た眼で欠伸をした。

夕立「……眠いっぽい」

口をぼんやりと開き、目を擦りながら、薄らと開いた眼を私に向ける。

さっきからやけに静かだと思ったら、寝ていたのか。

提督「朝礼台のところまで一人で行けるか?」

そろそろ離れて欲しいところだ。このまま点呼に出るわけにもいかないだろうし。

夕立はジッと私を見つめた後、再び私の首元に顔をくっつける。

子供特有の暖かい体温とスベスベプルプルな肌の感触が心地よい。

それなりの手入れは恐らくしているのだろうが、艦娘の肌はなぜいつも新鮮な果実のように瑞々しいのだろう、少し羨ましい。綾波や足柄の肌なんてプニプニだぞプニプニ。寝ぼけて足柄のおっぱいをお餅と間違えて噛み付いたこともあるんだぞ。足柄はなぜか喜んでいたけど。

夕立「もう少し、寝込むっぽい」

夕立の言葉で脱線した思考が戻る。

提督「そうか」

どうやらこのまま点呼に出る以外ないようだ。諦めよう。

提督(……それにしても)

天井に突き刺さった机を見る。

提督(愛宕、手加減したな)

以前だったら、天井は突き抜けて穴が開き、机は粉々になり、執務室は跡形も無くなっていただろうに。

ソファーに座っている愛宕に視線を移す。

溢れる黄金の大河のような髪、宝石のサファイアを埋め込んだような瞳、大海原を写したような服。

そのような広大さを感じさせる容姿をしながら、それでいて、個人的印象ではあるが、雪原の白兎を彷彿させるその雰囲気は、美しいというより可愛らしいという言葉が相応しかった。

今、愛宕はその可愛らしい顔を小難しくしかめて、妙高たちから話を聞いている。

愛宕が私の視線に気づいた。

愛宕は朗らかな顔で、小さく手を振ってくる。

私も右手で小さく手を振って返す。愛宕、仕事しなさい。

かつて私を縊り殺そうとした娘が、今は私に微笑を向ける。なんだか嬉しいような恐ろしいような、複雑な気分になる。

愛宕の様子に気づいたのか、金剛をはじめとした周りの娘が愛宕の視線の先に顔を向ける。

視線の先が私だと気づいた瞬間、娘たちの顔つきが険しくなる。

娘たちから顔を背ける。

背けた先にいた那智が、冷たい目線で私を見下ろしていた。

那智「……」

左に顔を背ける。

背けた先にいた夕立が、恨みがましい目つきで私を見上げていた。

夕立「……ありえないんだけど」

夕立、鈴谷の口調が移っているぞ。

提督(……)

天井を見上げる。

見せしめのように突き刺さっている机に、なぜか親近感を覚えた。
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 00:53:02.92 ID:0aad5Qtfo
さらっと縊り[ピーーー]とか何あったねん・・・・
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/24(土) 13:35:20.23 ID:dfECvkVm0

引継ぎを終えた妙高たちが私の前まで移動し、那智も含め横列縦隊で並ぶ。

私から見て左から、妙高、足柄、那智、羽黒で並ぶ。

その後ろに、同様に左から、摩耶、愛宕、金剛、榛名の順で並んでいる。

……気のせいかもしれないが、金剛たちの並び方、おかしくないか?

妙高「提督」

妙高が私に呼びかける。

提督「始めろ」

妙高の合図と共に、私と夕立を除く全員が、気をつけ、敬礼、直れ、をする。

本来なら私も立ってやるべきなのだが、夕立がいるので省略だ。

妙高「妙高以下4名、摩耶以下4名への引継ぎ、完了致しました、以上」

引継ぎ程度で堅苦しい気もするが、規律遵守というやつだ。

まあ、ここら辺は緩いし、適当だが。

提督「引継ぎ完了の旨、了解した。只今を以って、妙高以下4名を秘書艦の任から解く、以上」

妙高「はい、妙高以下4名、只今を以て秘書艦の任を終えます」

妙高、足柄、那智、羽黒が敬礼し、直る。

提督「よろしい、退室せよ」

妙高「はい、退室致します」

妙高たちの秘書艦の任はここまでだ。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/24(土) 13:35:50.69 ID:dfECvkVm0

妙高「では提督、また後日」

提督「ああ」

後ほど、妙高との予定を調整しないとな。

妙高が退室する。



那智「軽率な行動は慎め、いいな?」

提督「肝に銘じておく」

那智「……ふん」

那智が退室する。



足柄「寂しくなったら、いつでも来て頂戴♡」

提督「……」

足柄「ちょっと、その目はなによ」

足柄が退室する。



羽黒「あの……司令官さん」

提督「ん、どうした?」

羽黒は胸の前で両手を組み、不安そうな表情を見せる。

羽黒「少し、耳をお貸しいただいてもよろしいですか?」

提督「? 構わないが」

引継ぎで何かあったか?

羽黒は私の右耳側によると、腰を曲げて耳に顔を近づける。

羽黒「……失礼します」

提督「ああ」

次の瞬間、







チュッ





金剛「Nooooooooooo!!!」

金剛の絶叫が響く。やかましい。

羽黒「し、失礼しました!」

羽黒は退室した。

私の頬に柔らかい感触を残したまま。



榛名・愛宕・摩耶・夕立「「「「……」」」」

扉を睨む金剛を除き、他の娘たちが私を睨む。

提督「……」

金剛「テートクゥ……」

……私にどうしろと。
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/24(土) 13:36:33.13 ID:dfECvkVm0

金剛・榛名・愛宕・摩耶・夕立「「「「「……」」」」」

そんなに厳つい表情で睨まれると、さすがに怖い。

提督「……後でいくらでもしてやるから、早く始めてくれ」

私の言葉に全員が呆れたと言わんばかりの溜息をついた。何なんだよ、ほんと。

摩耶「あー、とりあえず始めるぜ」

摩耶が後頭部を左手で掻きながら、引き継ぎ開始を告げる。

提督「……お前か?」

摩耶「あ? んだよ、悪ぃかよ」

提督「いや、そういう訳ではないが」

てっきり榛名がやるかと思ったが。

提督「……始めてくれ」

摩耶「おう」

摩耶の合図で、摩耶、愛宕、金剛、榛名が敬礼、気をつけ、直れをする。

先ほどとほぼ同様の応答を行い、金剛たちは秘書艦の任に就く。

摩耶「━━━━━はい、摩耶以下4名、只今を以て秘書艦の任に就きます」

提督「よろしい。行動を開始せよ」

摩耶「了解」

摩耶の言葉で応答を終え、各々の楽な姿勢に戻る。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/24(土) 13:37:00.24 ID:dfECvkVm0

秘書艦にはそれぞれ役割分担があるので、それを確認することにしよう。

……正直、秘書艦が4人もいるのは人材の無駄使いだと思う。

実際、要員を圧迫しているせいで、毎月加賀がウンウン唸っているし。

提督「で、だ。今日の補佐は……」

この顔ぶれなら、いつもは榛名だが。

摩耶「あたし」

摩耶が左手を挙げる。

薄々感じていたが、やはりか。

提督「……珍しいな、出来るのか?」

いつもなら指導だろうに。

摩耶が私にガンを飛ばす。

摩耶「あっ? お前、あたしを舐めてんのか、それぐらい出来るっつーの」

提督「そうか……指導は?」

愛宕「はーい、私でーす♪」

愛宕が元気よく右手を挙げる。本気か。

提督「……出来るのか?」

私の言葉で、愛宕は口を窄める。

愛宕「む〜、できますよ〜」

不安だ。

思わず摩耶を見てしまう。

摩耶は私の視線に対して、首を左に傾げて、右手で左肩を揉む。

摩耶「あ〜、まあ、あたしから助言はしてるから」

提督「……頼む」

愛宕「もー、提督も摩耶も失礼よー」

提督「悪かったよ……護衛は?」

金剛「ワタシデース! I am your shield!」

金剛は左手をまっすぐ前に出し、美しい手のひらを見せてくる。

提督「心強い。頼りにしているぞ、金剛」

金剛「Yes! ワタシの実力、見せてあげるネー!」

提督「ああ……と、なると」

榛名を見る。

榛名は左を向いて、私と目を合わせようとしない。

榛名「……」

提督「……」

榛名「……」

提督「……」

榛名「……」

提督「……福祉か」

榛名「……はい」

榛名は顔を真っ赤にすると、両手で顔を覆った。

頑張ったんだな。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/24(土) 13:41:23.16 ID:dfECvkVm0
・本日 ここまで

・寝落ち してました orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 16:03:02.40 ID:iS5j8LLf0
福祉って何やるんや……
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 17:12:38.71 ID:3cWrvutwo
乙!
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 20:55:55.76 ID:fHSpKelJ0
福祉 (意味深)
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 21:46:39.19 ID:j+v853Z6o
この四人組もいいなぁ
期待
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 00:56:40.20 ID:E6d/W01Z0

秘書艦の分担を確認し終わった後、夕立の背中に左手を回して抱き寄せる。

摩耶「お前、そのままで出るのかよ?」

膝窩に右手を回そうとしたところで、摩耶から声が飛んだ。

顔を上げると、摩耶が訝むような目つきを私に向けている。

提督「駄目か」

摩耶「当たり前だろ、女抱えて点呼に出るなんて、馬鹿にしてるとしか思えねえぞ」

正論だ。

榛名「仮眠室で休ませておくのは如何ですか?」

提督「……ふむ」

左に目線を向け、入り口から見て右奥にある扉を見る。

扉を少し眺めた後、夕立に目線を移す。

夕立は俯いたまま、右手で私の裾を弄っている。

提督「いや、点呼には夕立と一緒に出る」

摩耶「はあ?」

愛宕「提督、摩耶の言葉聞いてなかったの? それ邪魔なのよ?」

聞いていたよ。

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 00:57:12.06 ID:E6d/W01Z0

摩耶の言う通り、抱きかかえたままなのは駄目だろが、放って置く訳にはいかない。

提督「夕立、一緒に歩こうか」

夕立に点呼場所まで行けるか尋ねる。

夕立が顔を上げる。先ほどと打って変わって、弱々しく口を結んだ顔が見える。

提督「行けるか?」

夕立の髪を梳く。

先端の桜色の髪が、舞うように揺れる。

夕立「もう少し、このままが良いっぽい」

金剛「夕立ィ、Don't be selfish、テートクが困っているネー」

金剛が腕を組んで夕立を見下ろす。

夕立「提督さん、夕立、迷惑っぽい?」

提督「いや、別に」

何かを訴えるような目つきの夕立に、さっさと返答する。

金剛、摩耶、顔をしかめないでくれるか。

夕立「じゃあ……」

提督「ただ、夕立と一緒におさんぽが出来たら、と思ったんだがな」

夕立の首元を右手で撫でる。

夕立「あ♡」

鎖骨の上から頚動脈の真横をなぞり、顎の下を舐めるように指を這わせる。

ゆっくりと、優しく。

何度も。

夕立の頬が上気し、水飴が垂れるように口が開く。愛宕、目が怖い。

提督「なあ、夕立」

視線が虚空をさ迷い始めた頃、夕立に声を掛ける。

提督「おさんぽ、するか?」

焦点が合わない瞳が、私に照準を定めた。

夕立「……する」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 00:58:02.68 ID:E6d/W01Z0

提督「そうか、ならまず、膝から降りないとな」

夕立「うん」

夕立が私の膝から降り、床に足をつける。

床に足をつけた途端、前のめりにふらついた。

榛名が反射的に手を出したのとほぼ同時に、私は椅子から立ち上がり、夕立の肩を掴んでその身体を支える。

夕立をそのまま抱き寄せる。

夕立は私にくっつくと、服の裾を引っ掴んで姿勢を保つ。

愛宕「あら、本当に体調が悪かったのね」

夕立に目を据えていた愛宕が、意外だといわんばかりに呟く。

摩耶「……マジで休ませといたほうがいんじゃねえか」

私もなんだか不安になってきた。

提督「……夕立」

夕立は服の裾を更に強く掴む。

夕立「おさんぽ……する」

金剛「夕立ぃ、無理はよくないデース、Have a rest」

夕立は首を振る。

夕立「おさんぽ、する」

夕立の言葉に全員が口を閉じる。

摩耶、愛宕、金剛、榛名が視線を私に送る。

私は夕立以外の全員に視線を送り返す。

提督「……すまん」

溜息が部屋に満ちた。本当にすまん。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/01(日) 01:02:15.64 ID:E6d/W01Z0
・深夜は ここまで

・ワンパターン…… orz

・もっと バリエーションを 増やさないと

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 01:45:56.81 ID:iBcH5K7A0
相変わらず続きが気になる書き方をしよる
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 09:13:46.44 ID:E3pybbZ9o
夕立とお○んぽしたい
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 14:04:55.12 ID:ZdEIZRGO0

金剛たちと共に、夕立に抱きつかれたまま執務室を出る。

本館を出て、しばらく歩くと営庭と朝礼台が見えてきた。

朝礼台の前には、時間が迫っていることもあって、既に娘たちが整列していた。

提督「少ないな」

榛名「遠征や哨戒、明けの娘が今日は多いので」

そういやそうだったか。

朝礼台に向かって歩いていくと、こちらに気づいたのか、何人かの娘たちが視線を向けてくる。

娘たちの視線が、私から夕立に移る。

刹那、強烈な寒気が肌を刺した。

夕立「……」

摩耶「……どうすんだよ、かなりキてるぞ、これ」

提督「さあな」

私が聞きたい。

というより、娘っ子一人抱きついているだけで、よくこれだけ威圧感が放てるものだ。

提督「それと金剛、収めろ」

摩耶の小言に素っ気無く返し、金剛が艤装を展開しようとするのを止める。

寒気を感じながら歩みを進め、朝礼台に向かう。



朝礼台近くに到着し、私は娘たちと対面した状態で、朝礼台の右横に二人分空けて控える。

その後、金剛が私の左後ろに立ち、更に左に榛名、朝礼台の真後ろに摩耶、朝礼台の左側に愛宕と並ぶ。

私は点呼に立ち会うだけなので、進行や挨拶は補佐である摩耶が進めることになる。

摩耶が朝礼台に上がる。

摩耶「あー、始めていいか?」

摩耶の声が響く。

それにも関わらず、娘たちの視線は私と、私の左腕に抱きついている夕立に向かっている。

摩耶が私に、訴えるような視線を向ける。

提督「摩耶、始め「待ちなさいよ」

怒気を含んだ声が飛ぶ。

提督「……どうした、霞」

満潮の後ろに並んでいた霞に視線を向ける。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 15:36:15.49 ID:366hWI8/0
よりにもよって駆逐艦では一番口煩そうな霞か
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 19:42:30.37 ID:ZdEIZRGO0

霞「どうしたじゃないわよ、女侍らせて出てくるとか、馬鹿にしてんの?」

提督「馬鹿にしたわけではない……色々とあったんだ」

霞「へえ、色々、ねえ、ならその色々とやらをご高説願えるかしら?」

提督「ご高説ってほどではないが……夕立が体調を崩したようなんでな。私が預かって面倒を見ているんだ」

霞「はあ!? このクズ、馬鹿じゃないの!? 半病人を連れ回すとか何考えてんのよ!?」

提督「……夕立も出たがっていたんだ。無碍には出来ないだろう」

霞「ああっ!? そういう時は意地でも休ませるべきでしょうが!? そんな常識もないわけ?」

提督「休ませるといっても、な。医務室も開いて無かったし、なにより一人にはしておけなかったんでな」

霞「一人にしておけない? なにあんた、医者にでもなったつもりなの? だったら今すぐその帽子を捨てて医学校にでも行ったらどう?」

提督(……)

霞の言葉で、満潮の左隣に並んでいる、陽炎、不知火、黒潮を横目で見る。

提督「……」

医者にでもなったらどう、ね。

不知火の前で、それを言うのか、糞餓鬼。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 23:46:10.69 ID:OJ892sI50

誰かの押し殺すような笑い声が聞こえた。

誰のだ?

夕立「提督さん……?」

夕立が不安な顔つきで私を見ていた。他の娘たちも同様の顔つきをしている。

……ああ、笑っていたのは私か。

霞「何よ、いきなり……気持ち悪い」

霞の顔が蜚蠊でも見たかのように嫌悪に染まる。まあ、いきなり笑いだしたらそういう顔にもなる。

提督「霞」

笑い声を殺して、霞に呼び掛ける。

霞「何よ」

提督「お前、部下を見捨てるような上官が欲しいのか?」

霞は一瞬呆気に取られると、服に百足が入り込んだような顔になる。

霞「はあっ!? 何をどうしたら、そう受け取れるのよ!?」

提督「そうか、違うのか」

霞「当り前でしょ! 何考えてんのよ!?」

提督「悪いな、お前が何を言いたいのかさっぱりわからないんだ。私はお前たちの命を預かる身として、大事な部下を保護しているだけに過ぎない」

夕立の頭を優しく撫でる。

提督「明石が医務室に居ない以上、万一何か遭った時のために傍に置いておくのが最善だろう……そう考えたんだが、なにがいけないんだろうな」

霞から夕立に目線を移す。擽ったそうにする夕立の顔が見える。

提督「霞、そのあたり、私にご教授願えないか?」

言葉だけを霞に送る。

霞「用があるなら、目を、見て、言いなさいよ」

提督「目を見て話して貰える立場だと思っているのか、お前は」

野外とは思えないほど、営庭が静かになった。

霞「人としての、当り前の礼儀を言っているのよ、あたしは」

提督「人に恐喝まがいの怒号を飛ばし、暴言とも取れる言葉を吐く娘に、礼儀を問われているのか、私は?」

勘違いを装い、正論を理不尽で返し、揚げ足を取る。

霞、もうお前とまともに話をするつもりは、ない。

霞「なによ、つまらないことに意地張って、恥ずかしくないの?」

提督「礼儀や部下への配慮を『つまらない』扱いか、酷いもんだな。お前がそういう奴だとは思わなかったよ、霞」

霞に視線を向ける。

霞は顔をしかめ、私を鋭く睨んでいる。

霞「なによその言い方、もしかしてこの程度のことで逆ギレしてるわけ?」

提督「お前は私が怒っているように見えるのか。存外怖がりなんだな、霞」

霞「……」

提督(おや?)

霞が、初めて黙った。

もしかして図星だったか? いや、霞に限ってそれはないか。

だとしても、これは好都合だ。こんな下らん押し問答はさっさと終わらせよう。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 23:50:26.64 ID:OJ892sI50

提督「さて」

娘たち全員に聞こえるように、声を上げる。

提督「お前たちも言いたいことは色々あるのだろうが、私は私なりに判断してこういう行動をしている」

全員の視線が私に集まる。

提督「意見があるなら、後ほど個別に受けよう」

寒気は既に無くなっている。

提督「もちろん、二人きりでな」

愛宕から殺気が飛んできた。

朝礼台が愛宕の殺意で軋む。

すまん愛宕、ちゃんと埋め合わせするから、その殺気を抑えてくれ。間にいる摩耶と榛名がとばっちり喰らって痛そうな顔してるぞ。

霞「……」

霞が口を開こうとする。

提督「霞」

霞「何よ」

提督「悪いがもう時間だ……摩耶、始めろ」

摩耶「あ? ああ」

摩耶が、今目が覚めたかのように反応し、号令を掛ける。

朝の点呼が始まる。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/02(月) 00:09:18.81 ID:X0pmNDPMo
おお!きてたのか
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/02(月) 01:42:20.55 ID:emWvBf6t0

摩耶の号令と共に点呼が開始し、娘たちが伝達事項を述べていく。

その間に、私は細くゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着かせる。

霞の言葉で一瞬頭に血が上ったが、なんとか抑えることができた。

妙高との一件が無ければ、もっと酷いことを言っていたかもしれない……恥ずかしい限りだ。

提督(……それに)

夕立に目線を降ろす。

私と霞が問答を繰り返している間、夕立はずっと私を抱き締めていてくれた。

それによるものかどうかは不明だが、娘たちに手を出さずに済んだ。それだけは本当によかった。

霞に視線を移す。

提督(助かったよ、霞)

霞が、全員を代表して、不満を私にぶつけてくれたおかげで、営庭に充満していた寒気が和らいだ。

霞のような、主張が強く、口煩い娘は、往々にして厄介なものだが、時折そのように、所謂ガス抜き役になってくれることもある。

本人が気づいているかどうかは不明だが。まあ、便利な娘ということだ。

提督(さてと)

他の娘に目線を移し、気に掛かる娘たちを探す。

不知火は先ほど確認した。姿勢が綺麗だ。

加賀もいる。相変わらず無表情だな、顔だけは。

夕張も……いるな。

那珂もいる……………敬礼に独創性を混ぜるのはやめなさい。

熊野は……鈴谷はいるが、後ろが空いている。出ているんだったか。

伊58たちは……いないな。確か非番だったか?

提督(……ふむ)

不知火と那珂の件は後日に回そう、まずは熊野に話を聞きたい。

妙高との予定は加賀がいれば何とかなるな。可能であれば今日中に終わらせたい。

夕張も同様だが、できれば個別に話したい。金剛と榛名が許してくれればいいが。

伊58たちは……あとで大鯨のところに行って様子を聞くか。

提督(こんなところか?)

まあ、まずは夕立からだ。その後は愛宕たちとの予定を済ませなければ。

点呼が終わる。

摩耶「━━━━━以上! 別れて爾後の行動、別れ!」

さあ、今日も一日を始めよう。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 01:43:00.48 ID:emWvBf6t0
・本日は ここまで

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/02(月) 01:54:52.78 ID:e8Y9m4tX0
乙です

夕立に抱きつかれるのは嬉しいが抱きつかれた状態でみんなの前に出るとか怖すぎてできねえよww
だが、その状況で上手く捌くとかこの提督はとことんすげえww
そして霞の言動はまさか確信犯的なのかどうか…
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/02(月) 20:14:56.41 ID:X0pmNDPMo

楽しみにまってるわ
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 20:23:30.58 ID:bgEZOM5Ao
乙!
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/05(木) 20:18:34.66 ID:xPCuTptz0
スレタイに違わぬ性格してんなー
この提督
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/06(金) 14:09:32.00 ID:EnjmFErDo
おつでち
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/10(火) 09:09:31.21 ID:LZvRkDKi0

娘たちが営庭からいなくなり、一息つく。

夕立「ていとくさん、おさんぽ、おさんぽ」

しかし一息つくや否や、夕立が左腕の裾を引っ張りながら、私を急かし始めた。

私は夕立に体の正面を向ける。

私は左腕を上に動かして、夕立から腕を離す。

それと共に夕立は腕から手を離し、私の左半身に寄りかかる。

左手で夕立の頭を撫で始める。

耳の部分をくすぐってやると、夕立は眼を瞑り、身体全体から力が抜け、私の手の感触を味わう。

愛宕「提督、先程のはどういうことですか」

肌を差すような空気を放つ愛宕が、腕一本分の距離まで近づいてきた。

目尻が釣り上がり、顔が怒りを表現している。

私の後ろに付いた金剛が、異な気配を携える。

榛名と摩耶は、二歩ほど離れた場所から遠巻きに見ている。

提督「先程というと?」

愛宕「惚けないで」

愛宕が半歩詰め寄る。

詰め寄った瞬間、愛宕の腰に右手を回し抱き寄せる。

眼前に驚いた愛宕の顔が現れる。

胸板に張りのある二つの膨らみが触れ、腹部の柔らかな……

……愛宕、お前、太ったか?

提督「すまない愛宕、先程のはああするしかなかったんだ」

愛宕の目を真直ぐに見る。

すると愛宕は頬を染めて、丸めた右手で唇を隠しながら、目を細めて顔を反らす。なんだその反応は。

……私の口が臭いとかじゃないよな? 歯磨きはしてきたし。

提督「お前とのことを蔑にしたわけではないんだ」

そう言って愛宕を見つめていると、愛宕は顔を反らしたまま、私に目線を送る。

提督「ちゃんと、埋め合わせはするから」

しばらくそうやって見つめていると、愛宕が再び目線を反らす。

愛宕「こんなことじゃ、誤魔化されないんだから……」

提督「そんなことはしない」

そう言って愛宕の言葉を否定すると、愛宕は顔を私に向け、胸元の服を掴み、顎を引いて上目遣いに見てくる。

豊満な二つの膨らみが、私と愛宕の間に挟まれる。

またブラジャーを着けてないのか、こいつは。

愛宕「ほんとですか?」

提督「本当だ」

愛宕「なら、今ここで、証明して貰えますね?」

提督「証明?」

愛宕「こういうことよ」

そう言うと、愛宕は顔を挙げ、瞼を閉じ、唇を軽く窄める。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/10(火) 09:10:11.01 ID:LZvRkDKi0

それを見て、一旦榛名に目線を送る。

榛名「……」

榛名は何も言わず、ただ此方を見ている。

能面を張り付けたような顔で、ただ此方を。

提督(すまん、榛名)

愛宕に口づけを交わす。

交わした直後、夕立が服に噛みつき、引き摺り降ろすように服を掻き毟ってきた。

夕立を宥めるために、左手を夕立の耳の部分から左頬に移動させる。

左手親指の根元、第1中手骨部に硬い痛み。

夕立の歯が、喰い込む。

夕立からの痛みに耐えながら、愛宕と唇を押しつけ合う。

愛宕が私の唇を押しのけ、舌を入れてきた。

愛宕の舌が、私の閉じた歯の表面をなぞり、品定めをするかのように歯茎一本一本を舐め取っていく。

前歯から犬歯、小臼歯から大臼歯、そして親知らずまで、一本も残さず。

右上の歯を舐め終わると、愛宕は一度唇を離す。

愛宕は口を開き、舌を突き出し、犬のように息継ぎをする。

私の上唇から糸が引き、愛宕の舌の先に繋がる。

再び唇を交わす。次は左上。また同様に。

上が終われば、次は下。

愛宕の舌乳頭が私の歯のエナメル質に粘りつくように這う。

愛宕の舌尖が私の歯肉を味見するかのように蹂躙していく。

五度目の口付けで、愛宕の舌が上歯と下歯の隙間を抉じ開けようとする。

歯を少し開いて招き入れる。

愛宕の舌が、蛇の如く私の舌に絡みつく。

ヌルヌルとした硬いゼラチンの塊が、生温かい蜜を纏いながら、口内で融け合う。

愛宕の執拗な舌を、舌先で押し返す。

舌の粘膜と粘膜が舌の表面で乱れながら交り合い、互いの粘液が混ざり合う。

押しては交わり、粘りついては離れ、口と口が一つなったような錯覚。

ぷはぁ、という呼吸音と共に、互いの唇が離れる。

粘液の混合物が、互いの唇の間に残滓を煌めかす。

愛宕がその残滓を啜る。

愛宕は眼を瞑り、口の中で残滓を味わうと、私の鎖骨部に顔を寄せる。

寄せた瞬間、驚愕の顔で私から顔を離した。

私の鎖骨部をじっと見つめる。

提督「愛宕?」

愛宕「ねえ、提督」

愛宕が顔を挙げる。

愛宕「あなたから、雌の匂いがするわ」

濁った瞳が、私を捕捉した。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/10(火) 09:37:52.75 ID:HzSBkpuko
鎮守府にはメスしかおらんやろ!

乙です
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/10(火) 20:37:13.83 ID:LZvRkDKi0

提督「お前たちと過ごしているんだ。女性の匂いぐらい一人やふ「違うわ」

愛宕「女の匂いじゃないわ。雌の臭いよ」

愛宕は鼻を、私の鎖骨部から首筋へとひくつかせながら移動させる。

愛宕「こびり付いてる」

愛宕は私の襟のフックと第一ボタンを外し、胸元に鼻を当てる。

愛宕「濃さからいって、朝食前ね。それに潮の香りもする。外でヤッたのかしら……ああ、臭い臭い」

朝食前、外、シャワーを浴びた時間、なおかつ、ヤッた娘。

愛宕「私の提督にこんな臭いをつけるなんて、一体どこの雌豚かしら。ねえ、提督」

妙高だな。

提督「気のせいだ」

朝食後にシャワーを浴びなかったのは失策だったか。

服も着替えて、消臭剤まで使ったのにこの様か。

提督「そもそも毎日お前たちと触れ合っているんだ。どんな匂いがついたって不思議じゃあない」

愛宕の腰に回した手を離す。

夕立も既に左手から牙を離して、こちらを睨みつけている。

愛宕は胸元から鼻を離すと、顔を動かさず、濁った眼球をグルンッと動かし、私を視界に捉える。

愛宕「飽くまで知らないふりをするのね」

提督「振りも何も、身に覚えがないんだから当然だろう」

正直に話して私にだけ被害が行くのならばまだしも、妙高になにかあってはいけない。

愛宕「白々しい……」

しばらく愛宕と睨み合いになる。

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/10(火) 20:37:40.33 ID:LZvRkDKi0

突如、左襟を掴まれ、体が少し前のめりになる。

耳全体に、濡れた生温かい感触。

摩耶が私の左耳をしゃぶっていた。

摩耶が口を耳から離す。

摩耶「提督、体温が高くなってるぜ。それに……」

再び襟を引っ張られ、今度は頸動脈を舌全体でじっとりと舐められる。

摩耶「脈拍が速くなってるな。おまけにこの汗の塩気……」

鼻先寸前まで、口を歪めた摩耶の顔が近づく。

摩耶「この味は……嘘をついてる味だぜ、提督」

なんでわかるんだよ。

愛宕「へえ……やっぱり嘘を吐いているのね、提督」

愛宕が目を見開いて私を覗き込む。

まるで心の奥底まで見透かされているような気分だ。

榛名「そういえば」

左後ろから榛名の声。いつの間に移動したんだ。

榛名「瞬きの回数が増えておりますね、提督。2秒に一回ほどでしょうか」

榛名が私の左肩に手を載せる。

榛名「呼吸は2.7秒に一回……提督の平均の呼吸数は3.3秒に一回ですから、少々増えておりますね」

榛名の左手が、私の左横腹から左腰をなぞる。

榛名「そういえば、本日は腰部がお疲れのようでしたね」

榛名が私の体に身を寄せたのか、背中に柔らかい感触。

榛名「昨晩の睡眠時間を考えますと、いささか疲労が大きいように思われます」

榛名の左手が腰から左足の太ももをなぞる。

榛名「歩幅のほうも、4 cm狭まっておりましたし、今朝、何かしていらっしゃったのではないですか?」

榛名の息が、首の左後ろに掛かる。

榛名「提督」



榛名「誰と、ナニを、しておられたのですか?」


225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/10(火) 20:38:50.29 ID:LZvRkDKi0
・本日は ここまで

・矛盾点が 多い orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/11(水) 00:37:35.95 ID:KM0znmJco

ドキドキするわ
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/11(水) 02:25:49.12 ID:tULg8ITqo
乙!
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/11(水) 10:12:31.30 ID:AXdMJpz2o
つかもう事あるごとに濃厚な修羅場とか・・・
おっそろしくテンポ悪いのがナンだけど面白いので良し
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/11(水) 10:27:13.10 ID:J/mP/vhUo
こんな剃刀の刃の上を歩くようなハーレム嫌だ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/11(水) 23:23:07.57 ID:HMQbgJDQO

愛は何でも可能にするな
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/12(木) 10:12:07.49 ID:Iq0slHvGo
おつでち
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/15(日) 10:24:06.45 ID:0b/rnpf80

提督「もう一度言うが、気のせいだ」

溜息をつく。

提督「さっきから匂いだの、汗だの、歩幅だの……只のこじつけだろう」

愛宕と摩耶に睨み返す。

提督「お前らの戯言には付き合えん。さっさと執務室に戻「妙高さん」

左腕から、声。

夕立「妙高さんの臭い、提督さんに混ざってるっぽい」

逃がさないと言わんばかりに、睨みつけられる。

夕立「さっき嗅いだからわかるっぽい」

廊下でのことか。

夕立「だから、夕立、提督さんに一杯いっぱいイっぱいイッぱいイッパいイッパイ匂い付けしたっぽい」

夕立「でも、全然消えない」

真っ赤な双眸からの、焦げ付くような視線。

夕立「この臭い、嫌い」

愛宕「そう……妙高さんと」

愛宕が値踏みするように目を細める。

愛宕「ああ……『後日』ってそういう……へえ」

榛名「提督」

冷たい声。

榛名「以前、榛名は提督にこう申し上げました」

榛名「『女性に会う時に、他の女性の匂いが付いているのはマナー違反です』と」

榛名の右手が、私の右肩に乗る。

榛名「ですが、私たちと過ごす以上は仕方ありません。だから、こうも申し上げました」

榛名「『せめて、雌の臭いは洗い流して欲しいです』と」

榛名の左手が、私の左肩に乗る。

榛名「そのとき、提督から『わかった』とお答え頂けました」

榛名の右手が、私の右首筋を覆う。

榛名「榛名は『きれい』な提督が好きです」

榛名の左手が、私の左首筋を覆う。

榛名「ですが、提督は今、とても、とてもとてもとてもとてもとてもとてもとても とても」

榛名の両手が、私の首を覆う。

榛名「とても『汚い』です」

少しでも力が入れば、首を絞められるように、覆う。

榛名「『キレイ』ナ テイトク ハ ドコ?」



これは、あれだな。詰みというやつだ。

漣ならこう言うだろう。

「おおごじゅじんさま、しんでしまうとはなさけない」と。
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/15(日) 10:26:56.65 ID:0b/rnpf80
・本日は ここまで

・テンポを もっと よくしたい orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/15(日) 10:29:54.76 ID:rAFKu/WU0
乙です

ああ、これはもうだめだわww
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 01:11:33.00 ID:QTkx50vco

どう見ても絶望やん…
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 06:48:41.91 ID:x3WC++Qfo
あ、これ知ってる。どうあがいても絶望ってやつだ。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 11:43:19.87 ID:T4mLbVcXo
むしろよくここまでもったもんだ
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/16(月) 21:30:32.33 ID:+f4+SMTC0

提督「すまん」

これ以上は何も言えなかった。

言えば言うだけ、墓穴を掘るだけだ。

榛名「……どうしてですか」

少しだけ、首の手が緩む。

榛名「いつもの提督なら、決して榛名たちを裏切ることはしないのに」

一度はお前たちの元を去った者に、それを言うのか、榛名。

榛名「どうして」

しばし、沈黙。

鳥の鳴き声。

目線を空に向ける。

そういえば、今日は晴だったな。

金剛「これ、榛名があげたものネ」

右後ろから、金剛の声。

うなじに息が掛かる。

榛名「……本当です」

榛名の手が首元に下がる。

榛名「榛名が差し上げた物を、使っていただけたのですか?」

詰みから一転、逃げの一手。

自己保身。

吐き気がする。

提督「榛名がくれたものなら大丈夫だと、そう思ってな」

実際は、着替えていたときに、足柄が渡してきたものを使っただけなのだが。

今、それを言うのは得策ではない。

嘘つきめ。

提督「すまない、本当ならば洗い流すべきだったのだが、時間が無くてな」

こうは言うが、匂いも、時間も、妙高との交接がなければ問題にはならなかったことだ。

更に元を辿るなら、私が一人で散策に出ようとしたことに起因する。

陽炎、那智、羽黒、皆を不安にさせてばかりだ。馬鹿者め。

自分の行為に後悔していると、すすり泣く声が聞こえた。
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/16(月) 21:32:17.23 ID:+f4+SMTC0

榛名「ごめんなさい、ごめんなさい」

悲痛な声。

逃げの一手は成功。

何が成功だ。大事な娘を泣かせておいて。

榛名「榛名が、榛名が粗末なものをお渡ししたばかりに……」

後ろを見ると、榛名が顔を露で濡らしていた。

榛名「提督は、榛名たちに気を遣ってくださったのに」

榛名は両手で涙を拭う。

榛名「榛名は、提督を、疑うような、ことを」

金剛「榛名……」

すすり泣く榛名を金剛が寄り添う。

愛宕「妙高さんとは、本当に、したのですね」

棘が取れた声。

顔を愛宕に向ける。

提督「ああ」

愛宕「それならそうと、言ってくれればいいのに」

裾を弄りながら、冷めた珈琲のような視線を向けられる。

愛宕「別に提督が誰を抱こうが構いません。でも、臭いを残したままなのはエチケットに反します」

抱くのは良いのか。

いや、それが秘書艦の特権だからか。

その特権を否定することは、今の愛宕にはできないだろう。

提督「臭いは消したつもりだったんだがな」

逃げの一手を、さらに進める。

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/16(月) 21:33:00.59 ID:+f4+SMTC0

愛宕の後ろ髪に触れ、指先で弄る。

触れられるのは好きだろう? 愛宕。

提督「そもそも、どうしてそこまで匂いを気にするんだ」

匂いについて、少し踏み込む。

要因がわかれば、後々対策もしやすいというものだ。

触れている間は、愛宕は暴力を振ってこないしな。

摩耶が、愛宕と同様の視線を送ってくる。

愛宕の視線が更に冷める。

愛宕「臭いっていうのは『なわばり』なんです」

まるで獣だな。

愛宕「だから、臭いを受け入れることは『なわばり』を認めること……ここまで言えばわかりますよね」

私は誰のものでもない。

匂い程度で誰かのものになるなど、ありえない。

そんな当たり前のことですら、お前たちにとっては不安の種なのか。

提督「善処する」

愛宕「善処では困ります」

鋭く、強い言葉。

鋭く、強い視線。

提督「約束する」

愛宕「絶対に、ですよ」

その強さは、不安と恐怖の裏返しに見える。

優しく、あやすように髪を撫でてやる。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/16(月) 21:33:33.29 ID:+f4+SMTC0

提督「榛名、もう泣くな」

後ろを振り向く。

罪悪感に苛まれる榛名に優しく声をかける。

榛名は、まだ泣いている。

榛名「ですけど、榛名は……榛名は」

提督「元はと言えば、私が中途半端なことをしたのがいけなかったんだ」

罪悪感の共有。

敢えて責めずに、非を詫びる。

提督「だから、もう泣かないでくれ」

優しく甘く。

提督「それに、お前がくれたもの、良いものだぞ」

堕として、上げる。

いや、上げてさえいない。

今の言葉を言い換えれば「もっと良いものをくれれば、こうはならなかった」と責めているようなものだ。

罪悪感を深めるだけ。

だからこそ、榛名には効く。

最低だな。

榛名「ありがとう、ございます」

榛名は嗚咽に耐えて、答える。

提督「部屋に戻ったら、すぐにシャワーで洗い流す」

全員に、宣言する。

提督「もう少し、待っていてくれ」

反論はなかった。

































夕立「……臭い」




242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/16(月) 21:36:21.07 ID:+f4+SMTC0
・本日は ここまで

・今回だけ 心理描写を 少し深めに したつもり

・エディタが 壊れてた orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 22:12:13.86 ID:QTkx50vco

まるで綱渡りやなぁ
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/17(火) 21:51:26.43 ID:FjN7ieynO
ドキドキとキリキリが一緒に来るような面白さ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/22(日) 13:20:07.56 ID:OZiTINjo0

榛名を金剛と共に慰めながら、夕立と愛宕に腕を引かれて本館へ戻る。

道中、摩耶から小言が何度も飛ぶが、適当にはぐらかしたりしながら、しばらく歩く。



摩耶「だから、何度も言うけどよ。体を洗うぐらいならそんなに時間は掛からねえだろ」

何度目かわからない摩耶の小言。

大体言っていることは同じで、要約すると「体を洗い忘れたのは提督の怠慢、しっかりしろ」だ。

提督「わかったわかった、今度から体を洗ってから出てくるから、その話はもう良いだろう」

投げやりに返答する。

摩耶「ぜってーわかってねーし」

拗ねた顔をする摩耶が一睨みする。

愛宕「まあまあ、いいじゃない。次は忘れないって約束したわけだし」

私の右腕に抱きついている愛宕が、朗らかな表情で摩耶を宥める。

愛宕「それに私、寝取られって嫌いじゃないわよ?」

先ほど営庭であれだけ殺気を出しておきながらこの発言である。

摩耶「寝取られって……」

摩耶もさすがにあきれた表情をする。

愛宕は私の腕を抱き寄せ、左手の指を私の手に絡ませる。

柔らかな微笑みを湛えながら、含みのある目線を摩耶に向ける。

愛宕「だって奪い返す楽しみがあるでしょ?」

摩耶「それは姉貴だけだ」

やだ、この娘怖い。



そうこうしているうちに本館へ戻ってきた。

玄関をくぐり、まず執務室へ向かう。

補佐は執務室に常在し、事務手続きや資料整理などの業務を遂行することになっている。

そのため、摩耶は執務室に居てもらわなければいけない。

執務室がある階まで上り、廊下を渡っていく。



執務室の前に、人影。

「遅かったわね」

提督「まあな」

そりゃ危うく殺され掛けたからな。

足柄から渡された消臭剤を使っていなければ、どうなっていたことやら。

提督「それよりどうした、加賀」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/22(日) 13:20:37.06 ID:OZiTINjo0

加賀は私に引っ付いている愛宕に一瞥をくれた後、夕立に視線を向ける。

夕立を視界に映すと、路傍の石でも見るかのような目つきになる。

数秒、夕立に視線を向けた後、私に目線を戻す。

加賀「両手に花、と言ったところかしら」

無表情な顔からの抑揚のない声。

不知火と似て、感情が読みにくい。

提督「皮肉か?」

加賀「さあ、どうかしら?」

煙に巻かれる。

金剛「加賀ァ〜、用がないなら自分の仕事に戻るネ」

金剛が加賀の傍まで近づくと、腰を曲げて下から覗き込む。

金剛「I was wondering if you could do your job」

加賀「書類を一枚、お願いしたいのだけれど」

金剛を無視して、加賀は書類が入ったクリアファイルを掲げる。

計画書か?

だとすれば、補佐の承認が取れれば実施可能になる。

提督「わかった。署名は部屋で行おう、今鍵を開ける」

出ていくときに執務室の鍵を閉めていったので、ポケットから鍵を取り出さなければいけない。

加賀「鍵なら開いていたわよ?」

提督「なに?」

執務室の扉を見る。

提督「お前が開けたのか?」

確かに加賀も鍵は持っているが、補佐か代理でないときは、原則、執務室への出入りは禁じている。

書類の紛失など、万一のことも考えてのことだ。

加賀「私ではないわね」

提督「中は?」

加賀「音で三人いることは確認したわ。ただ、ノックしても返答がなかったので、入らなかったけど」

放置せずに対応して欲しかったのだが、それは後で聞こう。

提督「金剛」

加賀の言葉を聞き、金剛に警戒態勢を取らせる。

大仰かもしれないが、相手がわからない以上、これが最善だろう。

金剛は背を壁に付け、扉をノックする。

反応なし。

金剛がドアノブに手を掛け、私に視線を送る。

ゴーサインを送る。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/22(日) 13:21:16.15 ID:OZiTINjo0


強烈な殴打音とともに、金剛が部屋に突入する。

金剛は即座に艤装を展開、侵入者三名に砲口を向ける。

「きゃっ!」

「えっ!? なに、なんです!?」

「ん〜?」

三名全員の動きが止まったところで、部屋に入る。

提督「……なにやっているんだ、大鯨」

部屋の窓際、私の執務机のあったところに、ビニールシートが敷かれ、その上に脚立が置かれている。

脚立の上では、明石が天井に突き刺さった机の脚を掴んでおり、その脚立を北上が倒れないよう支えている。

そしてその傍に大鯨が見守るように佇んでいた。

三人とも、いや、北上を除いて二人、明石と大鯨が驚愕の表情を顔に浮かべていた。

加賀「随分大げさな入室ね」

加賀が寸劇を批評するかのような台詞を吐く。無論、無表情で。

加賀、お前、わかっていたな。
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/22(日) 13:22:14.98 ID:OZiTINjo0
・本日は ここまで

・感想 要望 改善 矛盾点等 あれば どうぞ
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/22(日) 14:23:44.27 ID:5789N1uvo

蹴り上げた机か
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/01(火) 11:39:30.30 ID:JO7E3ZcH0

提督「加賀、中の様子がわかっていたなら、言ってくれ」

金剛が艤装を収める間、横にいる加賀に顔を向け、苦言を呈する。

加賀「明石さんの声が聞こえたから、あなたが何か指示をしたのかと思ったので」

加賀も、身体を正面に向けたまま、顔を私に向ける。

加賀「それに、私がいたら邪魔になるわ」

確かに、室内に明石がいるとわかれば、何か修理していると考えるだろうし、明石の仕事に加賀が手伝えることはない。

明石が勝手に執務室に入るとは考えづらいから、私が指示したものだと考えるのが普通か。

ノックをしても反応がなかったという事実も、室内が忙しなかったという判断をする材料になってしまったのだろう。

加賀は日頃の態度に反して繊細な部分があるから、今回はそれが裏目に出たということか。

加賀の眼を見ながら、そう勝手に結論付ける。

提督「そうか、すまない。もう少し話を聞くべきだったな」

加賀は私の顔を静かにみつめると、

加賀「いえ」

と染み入るような声音で答え、顔を正面に戻す。

よくよく考えれば、加賀が不審者を放置するわけがないのだ。

加賀から情報を十分に引き出さず、先走った私の落ち度だな。

大鯨「提督、これは一体何事ですか?」

声がした方に振り向くと、怒り顔の大鯨が、腕を組んで構えていた。

提督「すまん、不審者と勘違いした」

大鯨の眉間にさらに皺がよる。

大鯨「そんなことで砲を向けられたら、修復材がいくつあっても足りませんよ」

提督「悪かったよ。だが、なんの断りもなく部屋に入ったお前たちもお前たちだぞ」

大鯨が顔をキョトンとさせる。

大鯨「あれぇ? わたし、妙高さんから『天井を見てほしい』って言われてここに来たんですが、提督が伝言を頼んだんじゃないんですか?」

提督「……そういうことか」

引き継ぎ時に私が言った「明石に頼む」というのを、妙高が代わりに実行したといったところか。

大鯨はマスターキーを持っているから、明石と北上を部屋に入れるには大鯨に鍵を開けてもらわなければいけない。

しかし、変だな。妙高も鍵は持っているから、直接明石に頼めばよかったのに。なぜ大鯨に頼んだんだ?

大鯨「提督、一人で勝手に納得されても困るんですが」

大鯨が、再び眉間に皺を寄せる。

提督「ああ、いや、私と妙高とで思い違いがあったようでな。ところで妙高は? 一緒に立ち会ってないのか?」

部屋を見渡すが、妙高の姿は見えない。

大鯨「妙高さんは本日非番ですから、お休みしていただいていますよ」

それで代わりに大鯨が立ち会った、ということか。

提督「そうか、朝から悪いな」

大鯨「構いませんよ、もう慣れましたから。次から注意してくださいね?」

提督「ああ」

私と大鯨の話に一区切りついたのを見て、北上は視線を天井に戻す。
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/01(火) 11:40:02.12 ID:JO7E3ZcH0

大鯨「ところで、提督、先ほどのダイナミック入室は提督のヘマということで納得しましたが、もう一つ聞いてもいいですか?」

提督「どうした」

大鯨「これ、何があったんですか?」

大鯨は未だに天井に突き刺さっている机を指差す。どう説明したものか。

愛宕が癇癪を起こして、机を蹴り上げたと正直に言うべきか?

天井に突き刺さった机を見上げる。

机が刺さっている穴の周囲には粘着テープが貼られ、机を抜いたときにほかの天井板が剥がれないように養生されている。

机から少し下に視線を移動する。

明石は先ほどまで掴んでいた机の脚から手を放し、ただ私たちを見ている。

感情なく私たちを見ている。

まるで録画中のビデオカメラのように、微動だにしない。

その明石を北上は不思議そうに見ていた。

提督「私もよくわからん」

明石から視線を逸らし、大鯨に返答する。

大鯨「はぁ」

大鯨は不思議そうな顔で首を傾げる。

大鯨は榛名、金剛、摩耶と視線を移し、愛宕に一瞥をくれた後、私に視線を戻す。

大鯨「じゃあ、これも提督のヘマということで」

提督「そうしてくれ」

腑に落ちないが、そうした方が処理も楽か。

大鯨「それと」

言葉を綴りながら、大鯨は夕立に視線を移す。

大鯨「今日って夕立ちゃん、秘書艦でしたっけ?」

提督「いや、違うが。妙高から聞いてないか?」

大鯨「特に何も」

提督「そうか」

そうなると、この三人は朝の点呼には参加してないから、事情を知らないことになるか

提督「夕立が体調を崩したようなんでな、預かっていたんだ」

明石の視線がきついものになる。

大鯨「体調が、ですか? 熱があるんですか?」

大鯨は夕立の傍まで寄ると、右手を夕立の額に当てようと伸ばす。

夕立「やっ!」

夕立は頭を振って、大鯨の手を拒む。

大鯨が驚いた顔をして、伸ばした手を引っ込める。

提督「夕立」

語気を強めて諌めると、夕立は私の左手を強く掴む。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/01(火) 11:40:36.12 ID:JO7E3ZcH0

大鯨に視線を移すと、困り顔が見えた。

提督「すまん、さっきからこんな調子でな」

大鯨「それはいいですけど、どの辺が悪いとかは……」

提督「熱はない。歩くときにふらつくぐらいだ」

大鯨「重症じゃないですか。なんで明石さんを呼ばなかったんですか」

強い語気で問い詰められる。

提督「医務室に居なかったものでな」

大鯨「それなら、わたしに電話一本くれればよかったのに。そのための寮監室なんですから」

提督「……すまん、そこまで思い至らなかった」

大鯨が溜息をつく。

大鯨「わかりました。取り敢えず仮眠室で休ませましょう」

提督「いや、それなんだが」

明石「北上さん、机をお願いします」

北上「えっ、え〜、できっかなぁ」

明石が脚立から降り、北上が代わりに昇る。

明石「提督、お手数お掛けしました。あとは私にお任せください」

明石は夕立に近づき、右腕を伸ばす。

派手な音を立てて、夕立が明石の腕を払い落とした。

明石「……なんだ、元気そうじゃないですか」

右手を左手でさすりながら、腹まで冷え込みそうな声が部屋に響く。

明石「それだけ元気なら、提督のお世話になる必要はもうありませんよね?」

明石の、夕立を見るその視線は、靴の裏についたガムを見るのと同様の視線だった。

脚立に昇った北上が、机の脚を掴む。

夕立「おさんぽするの」

明石「はぁ?」

夕立の呟きに、明石が唾を吐くような声を上げる。

夕立「提督さんと、おさんぽ、するの」

夕立が私の腕に顔をこすりつける。

明石が、見下すような目つきになる。

明石「提督も大変ですね、こんなものに貴重な時間を割かなければいけないんですから」

夕立が顔をゆっくりと明石に向ける。

明石「お散歩に逝きたいなら、私がいってあげますよ。ついでにその手癖の悪さも修理しておきましょうか」

夕立「油臭い女が何か言っているっぽい」

夕立の視線に湿り気が混じる。

夕立「夕立のお散歩は激しいから、そんなに油臭いと引火しちゃうっぽい?」

明石の眼が見開き、口が嗤うように歪んだ。

北上が「う〜ん」と唸る。

うまく抜けないのだろう、右へ左へ試行錯誤しながら机の脚を引っ張っている。

その度に、嫌な軋み音が鳴って耳の奥を揺さぶる。なるほど、これではノックの音も聞こえないだろう。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/01(火) 11:41:11.02 ID:JO7E3ZcH0

明石「その減らず口、ネジ留めすれば少しはマシになりますかね?」

夕立「ネジの足りない工作艦なんて、笑い話にもならないっぽい?」

明石「大丈夫ですよ」

明石の艤装が展開される。

明石「足りなければ、補充すればいいんですから」

艤装に設置されたクレーンが駆動音をあげる。

明石「ちょうどいいところに、目の前にいい素材があるじゃないですか、ねえ?」

ワイヤーが伸び、クレーン先端のフックが夕立に狙いを定める。

北上「よっ、と」

北上の掛け声とともに、ガコッと低く乾いた音が響き、ひしゃげた机が姿を現す。

明石と夕立を除き、全員の視線が机に集まる。

姿を現したスチール製の両袖机は、中心部分を境にへの字に曲がっており、天板部分は塗装が剥がれて傷だらけになっている。

もう使い物にはならないだろう。引出しの中身が無事だと良いが。

北上「明石、これよろしく〜」

四本の脚の内、二本の脚を掴んで支えていた北上は、身体を捻り、空いている別の二本の脚を明石に向ける。

100 kg 近くある机を軽々持ち上げているあたり、艦娘の膂力はやはり人とは違うのだろう。

明石は、未だ夕立を睨んでいる。

北上「明石〜」

提督「明石、呼んでるぞ」

明石「……わかってますよ」

明石は踵を返し、北上が降ろした机まで近づく。

そして空いている二本の脚を掴むと、ビニールシートの上に机をゆっくりと置いた。

加賀「買い替え、かしら」

誰に向けるでもなく、加賀が呟いた。

提督「だろうな」

机の買い替え、天井の修理、その他諸々の後始末。

大鯨「提督」

提督「なんだ」

掠れるような声。

大鯨「わたし、なぜか胃が痛くなってきたんですが」

提督「奇遇だな、私もだ」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 19:10:49.63 ID:eNiFcbbOO
何、私もさ
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 20:26:46.70 ID:sieOTtTDo
予算で降りるのだろうか
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/01(火) 23:57:12.43 ID:W829nTtj0

北上「ん〜……おおっ……ほぉ……あ〜」

突き刺さった机によってできた穴から頭を突っ込み、天井裏を見ていた北上が感動するような、悩むような、よくわからない声を上げる。

提督「北上、天井の様子はどうだ?」

北上「んぉー?」

北上は穴の縁を掴んで身体を曲げ、頭を出して私の方を向く。

北上「あ、提督、おはよ〜」

まずそこから始まるのか。

提督「ああ、おはよう。それで、様子はどうだ?」

北上「ん〜、そうねぇ、結構やられちゃってるかな?」

提督「どれくらい掛かりそうだ?」

北上「んと、これの予備ってあるんだっけ?」

明石の方を向いて、部材の確認をする。

明石「見せてもらえますか?」

空かなくなった引出しとマイナスドライバーで格闘していた明石は、工具を床に置き、北上と交替して天井裏を確認する。

提督「明石、どうだ?」

天井裏を確認している明石に尋ねる。

明石「これだと部材を取り寄せる必要がありますね」

提督「そうか、部屋は使っていても大丈夫か?」

脚立から降りた明石は、再び天井を見上げる。

明石「すぐに何かあるわけではないのですが、お勧めはしませんね。しばらく部屋を替えていただいたほうがいいかと」

提督「部屋を替えるのはさすがにな……しばらくは大丈夫なのだろう?」

明石「そうですけど、万一崩落が起きたら危険ですし……」

加賀「私も、替えた方がいいと思うわ」

金剛「ワタシも、ここに提督を置くのは Not good だと思うネ」

明石の心配そうな顔に加え、加賀と金剛の援護射撃をくらう。

提督「しかしだな……」

急に部屋を替えたら他の娘が困るだろうし、貴重な資料を部屋の外に持ち出すと紛失の恐れもある。

他にも鎮守府内全施設への電話回線や本土とのホットラインなど、重要な通信回線もここに引いてあるのだ。

部屋を替えるとは簡単に言うが、現実的にはかなり大掛かりな作業になる。

北上「提督、ちょっといいー?」

提督「北上、悪いが後に……」

北上「妖精たちがさ、ここ、一時間あれば元通りにできるって言ってんだけど」

提督「なに?」

部屋にいた全員が一斉に北上の方を見る。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/02(水) 00:01:15.45 ID:84hLyqzJ0

摩耶「一時間? 一週間とか一箇月の間違いじゃなくてか?」

聞き間違えじゃないかどうか、摩耶が北上に確認する。

私も、部材の取り寄せを含めるとそれぐらい時間が掛かると踏んでいたんだが。

北上「そだよ。あ、机も完璧に直すってさ」

摩耶「マジか」

北上「マジマジ」

摩耶に返答しながら、北上は明石の隣まで近づいてくる。

提督「本当か?」

明石が北上の右肩をじっと見つめる。

明石に合わせて北上の肩を目を凝らして見てみると、確かに蜃気楼のような二頭身の人影が見える。

漣の艤装に輸血してから一時期は見えていたのだが、改造を受けて以降はほぼ見えなくなってしまった。

おまけに、漣曰く「ご主人様がいると、なぜかみんな怯えちゃうんですよねー」と言われる始末。

見えていた時期も言葉で話すことはなかったものの、表情や仕草で意思疎通を図ったものだ。

可能であれば、昔のように、金平糖を美味しそうに頬張る彼女たちを見てみたいものだ。

明石「本当みたいですね」

提督「そうか」

明石「ただ、修復材をいくつか使用したいとのことですけど」

修復材か。

提督「摩耶、資材管理表を出してくれるか」

摩耶「えっと」

榛名「左の棚の真ん中の段のところですよ」

摩耶「これか」

摩耶が私の左隣りまで近づいてくる。

摩耶「ほれよ」

摩耶が私に手渡しする。

夕立「……」

愛宕「……」

だが残念だったな、今両腕が塞がっているんだ。いい加減離れてくれないか。

加賀「借りるわね」

加賀が代わりに摩耶から受け取り、私の前に管理表を広げる。

最新の年月日のページを開くと、燃料や弾薬などの備蓄量が数字として羅列している。

提督「加賀、金剛、どれくらい使えそうだ?」

金剛と加賀が前から表を覗く。

加賀「三つぐらいかしら」

金剛「そのぐらいですネー」

顔を上げ、北上に向く。

提督「だそうだが」

北上が右肩に視線を送る。

北上「十分だってさ」

提督「そうか」

スゴいね、妖精。
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/02(水) 00:29:35.45 ID:pigK6vBR0
さらっと重要なこと言ってる気が
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/02(水) 01:32:39.68 ID:84hLyqzJ0

提督「部屋の修理は妖精に任せる。摩耶、立ち会ってやれ」

摩耶「りょーかい」

摩耶は妖精を預かるため、北上、明石と打ち合わせを行う。

提督「大鯨、待たせてすまなかったな。後は摩耶と妖精に任せるから、お前は戻っていいぞ」

大鯨「わかりました」

提督「愛宕、ついでにお前も仕事に行け」

指導は寮監と共に、寮の環境や寮生の健康状態を確認する仕事がある。

寮監の大鯨が来ているので、一緒に寮に向かわせることにする。

愛宕「えー、もうちょっと後でもいいですよね?」

駄目に決まっているだろう。

提督「心配しなくも、約束は守る」

その言葉で、愛宕の視線が一時下がり、少し暗い表情になる。

視線が戻る。

愛宕「わかりました。私が戻ってくるまでに、ちゃんとニオイを取っておいてくださいね?」

提督「ああ、わかっている。一度部屋に戻るから、掃除はそれからにしておいてくれるか?」

愛宕はにこりと微笑む。

愛宕「はい。それじゃ、提督」

提督「ん?」

右頬に柔らかい感触と吸着音。それと加賀と金剛からの鋭い視線。

なんか引き継ぎの時もこんなことがあったな。

愛宕「ふふ♡ じゃ、行ってきます♡」

右腕から手を放した愛宕は、大鯨と共に部屋を出ていった。

加賀「すけこまし」

言うな。

提督「それより、加賀、お前も待たせてしまったな。今摩耶に……」

加賀「それだけど、あなたのサインも必要なものなの」

私の署名が必要なもの?

提督「内容は?」

加賀「計画書よ。ただ、実施日は今日だけど」

……緊急案件は先に言ってくれ。

金剛「Hey、加賀ァ、計画書の申請期限、何日前に出さなきゃいけないか、わかっていますカー?」

金剛が目を細め、唇を歪めて加賀に絡む。

加賀「知っているわ。でも、秘書艦一名と提督の承認があれば当日実施は可能なはずよ」

淡々と言いながら、書類を私に差し出す。

金剛「Humph!!」

その書類を金剛が横から奪い取る。

金剛「まったく、一体どんな Mission の……」

金剛が書類をまじまじと眺める。

最初は眉間に寄っていた皺が、段々と無くなっていく。

金剛「Wow! Congratulations! さすが加賀ネー!」

最後にはなぜか笑顔になった。一体どんな計画書なんだ。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/02(水) 01:33:25.16 ID:84hLyqzJ0

金剛は秘書艦用の机にあるペンを取ると、書類に署名をしてしまった。

一応金剛も秘書艦なので問題はないが、こういった書類は通常補佐が署名するものなのだが。

金剛「Hey! あとはテートクのサインだけネー!」

榛名「提督、こちらを」

榛名がペンと私の印鑑を持ってくる。

机を見ると、引出しの前板が破壊されていた。おそらく、そこから出したのだろう。

提督「ああ、ありがとう、ソファーに置いておいてくれ」

榛名「はい」

金剛から書類を受け取り、応接用のソファーに夕立と共に座る。

加賀「すぐ実施できるようにしてあるから、サインだけでいいわ」

右隣に座った加賀から補足説明を受ける。

提督「そうか」

根回しは既に済んでいるということか。

とはいえ、書類には一応目を通しておかなければ。

まあ、加賀は仕事に私情を挟んだりしないから、実際署名だけで十分だとは思うが。

提督(ふむ)

書類を読む。

『_____内容:解体

_______理由:素行不良、協定違反、上官へのわいせつ行為、存在そのもの、その他雑多な事象の原因

_______以上の理由により、以下の艦艇を解体に処する。

_______対象:白露型 四番艦 駆逐艦 『夕立』

____________』

提督「……」

私情混ぜ混ぜじゃねーか。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/12/02(水) 01:35:23.92 ID:84hLyqzJ0
・本日は ここまで

・書類は テキトーです

・ご都合主義ぇ

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/02(水) 01:39:45.39 ID:kXqtHwP/o

解体ワロタ
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/02(水) 03:12:09.48 ID:8HtqIlf1o
乙!
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/05(土) 13:16:12.32 ID:4GxMrW4u0

私が書類を睨みつけていると、加賀が声を掛けてきた。

加賀「どうしたの? 書類に不備はないはずだけど」

不備があるのはお前の頭だ。

提督「榛名」

榛名「どうぞ」

榛名が別の印を私に手渡す。まだ用を言ってないんだが。

提督「ありがとう」

榛名から否認用の印鑑を受け取り、書類の中心に押印する。

提督「ほれ」

押印した書類を加賀に手渡す。

加賀が手渡された書類を凝視していると、横から金剛が書類を覗く。

金剛「テートクゥ、Seal が間違っていませんカー?」

提督「くだらんものを出すなということだ。言っておくが、それは否認通知だからな」

感情のこもっていない加賀の瞳が私に向く。

提督「異議申立てがあるなら、もっとましな理由をつけて出すことだ」

加賀は再び書類に目を落とす。

加賀「そう」

まるで、否認されることがわかっていたかのような口ぶりだな。

提督「書類はそれだけか?」

加賀「ええ」

提督「なら、自分の仕事に戻ることだ」

加賀「あなたは?」

顔を上げて、私の予定を聞いてくる。

提督「用が出来たんでな、午前中は執務室には戻らないかもしれん」

夕立を一瞥して、そう答えた。

加賀「そう……わかったわ」

そう言ってソファーから腰を上げた際、ふと加賀へ用があるのを思い出した。

提督「あっ、と、加賀、すまん、少しいいか? 相談があるんだが」

加賀は腰を上げた中途半端な姿勢で立ち止まる。

加賀「何かしら? 仕事に戻りたいのだけど」

提督「あーと、休みについてなんだが……」

加賀「付添いのことかしら?」

提督「ああ」

付添いというのは、非番や休日の護衛のことだ。娘によっては呼び方がまちまちなので、加賀のように別の呼び方をする娘もいる。鈴谷は「でぇと」とか呼ぶし。

加賀は娘たちの勤務予定を管理しているため、予定の調整はまず彼女に聞くのが手っ取り早い。

加賀「誰とかしら?」

加賀が再びソファーに座り、護衛の相手を尋ねてくる。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 03:28:55.44 ID:XuFongkr0
もっとクレヨン
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 11:06:32.86 ID:kj+SMtMW0

提督「ああ、みょ……」

妙高、と言おうとした途端、背筋に悪寒が走った。

左手に触れている夕立の肌がひどく冷たく感じる。

加賀「みょ……?」

提督「いや、なんでもない。それより加賀、今度の補佐はいつだ」

加賀「来週だけれど?」

提督「そうか、相手についてはその時話す。一応、そういう話がある、とだけ知っておいてくれ」

加賀「別に今でもいいはずだけど……あなたがそう言うのなら」

腑に落ちない顔をしながら、加賀はそう答えた。

加賀「それだけかしら? 相談になっていないような気がするけど」

悪寒は、未だ消えない。何か別の話に逸らさないと。

提督「あー、いや、本題はここからでな。数日休みを貰って、本土に」



部屋が軋んだ。



鉄が歪に曲がるような音が聞こえる。

音源は六つ。左腕に一つ、対面のソファーに一つ、眼前から二つ、執務椅子の近くに二つ。

口が、重圧で、動かない。


加賀「本土に、なに?」

眼前にいる、青いたすきをかけた娘が、瞳を灼熱色に輝かせながら、凍えるような声を発した。

加賀「よく、聞こえなかったわ。もう一度、言ってもらえるかしら?」

提督「……」

口をやっとの思いで動かしたが、今度は声が出ない。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 11:07:11.28 ID:kj+SMtMW0

榛名「提督」

対面のソファーにいた榛名が、私の後ろに移動し、声を掛ける。

榛名「どうやら、提督はお疲れのようですね。少しお休みになられてはいかがですか?」

榛名が両手で優しく肩を掴む。

掴んだ手が、ひどく冷たい。

榛名「榛名がお世話をいたしますので、どうぞ、仮眠室へ」

提督「がっ……!」

瞬間、肩が潰れそうなほどの力が入り、痛みで呻き声が出る。

金剛「榛名、力を入れすぎネー。提督が痛がっているヨー」

榛名「あっ」

加賀の後ろにいた金剛が榛名に忠告をする。

それに呼応して、肩に掛かっていた力が消え、腰がソファーに沈む。

榛名「て、提督! 申し訳ありません! お怪我は……」

提督「き、ずを……」

やっとのことで言葉を発する。まず、三文字分だけ。

私に視線が集まる。

提督「傷を、なおし、たいん、だ」

加賀「傷? どこの?」

提督「銃創、をだ」

部屋が軋む音が、さらにうるさくなった。

夕立「なんで?」

左腕に指が食い込む。

夕立「なんで、それ、消しちゃうの?」

悲痛な声が耳に響く。

夕立「提督さんが、守ってくれた証なのに、なんで?」





提督「お前たちが……悲しい顔を、するから、だ」





重圧が、消えた。
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 11:07:38.80 ID:kj+SMtMW0

部屋が、静かだ。

左腕の冷たい感触がなくなっている。

加賀「ここでは、治せないの?」

ひどく落ち着いた声が向けられる。

肺にゆっくりと酸素を取り込み、言葉を発する準備をする。

提督「ここだと、色々足りない」

執務椅子近くにいた明石が、悲しそうな笑顔を浮かべる。

明石はどちらかというと軍医というより看護兵に近い。

施術ができないわけではないが、人間の治療となると本土の専門医には劣る。

加賀は目線を下げて、熟考する。

夕立「やだ」

夕立が腕を離し、体を強く抱きしめてくる。

夕立「提督さん、いっちゃ、やだ」

肩を抱き寄せて、耳の上の髪を梳いてやる。

加賀に目線を戻す。

加賀の黒い瞳には強い光が宿っている。

加賀「悪いけど、駄目よ。あなたをここから出すわけにはいかないわ」

危険なほど、強い光が宿っている。

加賀「『あんなところ』に、あなたをまた行かせるわけにはいかないの」

金剛も。

榛名も。

摩耶も。

明石も。

夕立も。

『知らない』北上を除き、全員が同じ光を宿している。



























提督「……わかったよ」

そう答えるしかなかった。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 12:15:44.67 ID:QJKfWSSn0
過去になんかあって今の状況になったんだろうなあ
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 12:16:10.52 ID:QRCl9H04o
北上は正常枠なのか
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 12:20:53.70 ID:Dh4QgqHRo
多分北上様は二代目、じゃないかな……
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/07(月) 00:41:29.82 ID:tcYGIkZU0

その後、加賀は「くれぐれも余計なことをしないように」と釘を刺して自分の仕事に戻っていった。

摩耶、明石、北上も打ち合わせに戻る。

自業自得とはいえ、猛獣に囲まれるような空気がなくなり、思わず溜息が漏れる。

榛名「提督、お疲れのようでしたら、少し休んでいかれてはいかがですか?」

と思ったら猛獣の一匹、ではなく榛名が私の右隣に座り、身体を摺り寄せてくる。

右腕に絡まり、胸に実るたわわな果実が「収穫期を迎えたぞ、もげよ」と言わんばかりにその存在を主張してくる。

榛名は顔を寄せ、目を瞑り、私の首回りでくんくんと鼻を可愛らしく動かす。

榛名「においも強くなっておりますね、悪い汗が出てしまっているようです」

榛名は私の右手を掴み、左の太ももに手を招く。

太ももからスカートの内部に連れて行かれると、太ももと鼠蹊部の境がしっとりと湿っているのが感じられた。

榛名「この後シャワーを浴びるのでしたら、良い汗を流してからではいかがでしょうか? は、榛名は、すでに準備、が……」

突然言い淀んだ榛名は、右手で真っ赤になった顔を隠し、顔をそむける。

榛名「すいません……ちょっと待っていただけますか」

ここまでやっておいて、恥ずかしさで中断するとか、何がしたいんだこいつは。というか、なぜこの状況で実行した。

金剛がさっきから、ニコニコ笑顔だぞ。何も話さないのが怖いくらいのニコニコ笑顔だぞ。

夕立はどうしたかって? 悪夢を見そうなので振り向けません。左腕痛い。

明石「提督、お待たせいたしました」

右腕を速攻で引っ込める。

どうやら部屋と机の修理について、明石、北上、摩耶の打ち合わせが終わったらしい。

摩耶と明石が一瞬、養豚場の豚を見るような目をしていた気がするが、気のせいだろう……気のせいだろう。

提督「ああ、いつから始められそうだ?」

摩耶「今すぐにでも可能だってよ。修復材は妖精が持ってくるから、特にやることはねえな。立会いもあたしだけでいいみたいだ」

提督「そうか、了解した」
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