その剣士、サキュバス憑きにつき。

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207 :誇り→埃 [saga]:2016/01/14(木) 11:53:10.54 ID:b/QoVJomO

?「はぁん、強そうジャン」

正装で固めてはいるが、前は大きくはだけ、胸元が覗いている。その雰囲気はどうにも締まらない。
俺は、この男に何か覚えのあるような感覚……あるいは、悪寒を覚えていた。

剣士「少女。こいつと会うのは初めてか」

少女「ん。たぶんボス」





夢魔「待って、この男……」

知っているのか、夢魔。

夢魔「知らないけど、でも、これ……」



?「そいじゃ、遊ぼうぜ」



男の瞳が赤く光る、その一瞬前。
何度も経験したおかげもあって、何とか目を逸らした!


剣士「少女!」

少女「う、ぐぁ……頭が……いてえ……!」

?「はぁ? おい、オマエ縛術避けるとか何様なワケ?」



やはりか。
夢魔「ええ、犯罪組織の元締めは……」



剣士「人間様だよ。悪魔」

?「……くっくっく、コイツは面白え。テメエ何もんだよ」

剣士「金が欲しくて、ここを壊しに来た。それだけの者だ」




少女「っく、やめろ、頭に、入るなよぉ……!」

夢魔、これは大丈夫なのか?

夢魔「良くないわ。精神が覗かれて、蝕まれてる……」

どうにか出来るか?

夢魔「超遠方からの夢干渉と、支配してからの精神侵食では……ごめんなさい。勝ち目は、ない……」
208 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 14:09:02.70 ID:r0oIDtguO
こらどういうこっちゃ
209 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/14(木) 14:31:19.57 ID:b/QoVJomO

俺に乗り移っても、少女に成り代わっても駄目なのか?

夢魔「……私の術は、あくまで被術者の精神に私が入り込むもの。あれは術者の制御を離れ、被術者の精神を攻撃し崩壊させるもの……先に倒すわよ。」

了解した。



相手は悪魔。
竜より身体能力は劣るとはいえ、人間より優れた力と狡い魔術を有する種族。
扉を割った時にこちらの力量も割れているだろう……時間はかけられない。



剣士「……行くぞ」

ひとまず、深く斬るように剣を振り抜く。
それなりに素早く詰めたつもりではあったが、かすってはいない。

悪魔「っと、あぶねえ」

剣士「ふっ!」

悪魔「ほっ!」

剣士「たっ」

悪魔「ヒューッ」

剣士「穿て……!」

悪魔「おっとっと!」



身のこなしが軽い。こちらの力量を測られているか。



悪魔「オシマイ?」


不愉快な奴だ。

夢魔「……同感よ」



悪魔「じゃ、悪魔らしいことでもしてみるかなァ? クラァ!!」

悪魔の指先に光が奔る。
魔力は稲光を伴い、動けない少女を襲う!




少女「に、げろ……!」


剣士「!」
夢魔「!」
210 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/14(木) 14:33:30.08 ID:b/QoVJomO



バリバリバリ!!



夢魔「く、卑怯な……!!」
剣士「今さら逃げるか!!」


痺れより、熱い……!
稲妻が肌を焼け付く!


少女「! ば、かっ」

剣士「……う、ぐ」

悪魔「へへ、バッカでー。オラオラオラオラ!!」


バリバリバリバリバリバリ!!!




剣士「ぐ、あああっ!!」




夢魔!
力を貸してくれ!

夢魔「Yes, my master……!」





 
211 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 17:46:20.14 ID:/yYf2VY7O
アツイ
212 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/15(金) 10:39:20.86 ID:0VEKPgznO


少女「あ、あああ……」


少女は、強く生きてきた。
しかし、強い子供ではなかった。

剣士「……」

傷付けられれば弱り、何かを失えば泣いた。
人にそれを悟られないよう、付け入られないよう、ひとりで。
そして今もまた、大切なものを、目の前で。


バリバリバリバリ……




……。

雷が、剣士の手のひらで止まっている。
まるで吸い込まれるように。
たくましく足腰を踏ん張り、冷たく敵を睨む。

少女「え……」
悪魔「何だ?」



剣士「その辺に」
魔剣士「しておきなさい」



剣士のごとき、鋭い闘気。
魔術士のごとき、聡い眼差し。


悪魔「テメェ、憑き物がいやがったか……!」


左手を頼む。
ええ、踏ん張ってね。

バリバリバリバリ……!

剣士「く、う」

左手に灯された光が、剣士の意思や思考を離れ、紋様を描く。
反動に押される体躯は、夢魔の意思や思考とは関係なく、力強く踏み止まる。


少女「え、どっち……?」


共感、とは共通の「感情」なのか。
共通の「感覚」なのか。
あるいは共通の「感応」なのか。
あるいはそのすべてで、絆と呼ぶのだろうか。

芽生え始めた小さな繋がりは、両者の身体と心を分かち合い、前代未聞の力を育む。





悪魔「チッ」

雷が退いた。
213 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/15(金) 10:46:58.03 ID:tzbiiLK5O
良い展開だ...!
214 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/15(金) 11:33:14.15 ID:0VEKPgznO

少女「ぐ、へへ……心配、させんなよ……」

剣士「少女、もう少し待っていろ」
魔剣士「すぐ終わらせてくるわ」



悪魔「アタマが2つに増えたところでよォ!」

剣士「変わるさ」


悪魔は直接戦闘に持ち込もうと、長く伸ばした爪を振り下ろす。
右の剣を返して追い返したところに、左手が静かに牙を剥いた。

魔剣士「燃え上がりなさい!」

悪魔「ぐわっち!! んのヤロウ……!」


放たれた火の玉が直撃する!
体勢を崩したまま雷をこちらに差し向けるが、しかし俺を守るように左手が立ち塞がる。

魔剣士「三流ね」

悪魔「テメッ」

剣士「俺を忘れるな」


ズバン!


悪魔「アギャア!」

胴を狙った一閃が、ついに悪魔を捉えた。
大きく血が溢れ、悪魔はたたらを踏む。



仕上げだ。
ええ。



何も言わずとも、両の手で剣が握られる。
強い殺意と魔力が、ふたりの剣に炎を上げる!

剣士「……暴れていいか」
魔剣士「構わないわ、殺すわよ」

赤熱する光が、この町の悪魔を切り裂く!



剣士&魔剣士「「死ねえええええええ!!!」」
悪魔「あ、アグオオオオオ!!」



どちらが果たして本当の悪魔なのかは分からず、しかしてどちらが本当に強いのかは明白となった。
215 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/15(金) 11:53:16.92 ID:0VEKPgznO


ズシャッ!


身体に刻んだ焼け跡は、血の跡も残さない。
すべてが丸く収まるわけではないだろうが、これで良いのだろう。

少女「っ、く」

魔剣士「少女ちゃん!」

代わるか?
いえ、大丈夫なんだけれど……。



魔剣士「大丈夫? 私が分かる?」

少女「……へへ。そんな声で聞かれても、カマホモにしか見えねえよ」

ペチンッ。

少女「あだっ」

剣士「聞こえてるぞ。さ、盗るものがあるならさっさとしろ。済んだら逃げるぞ」

少女「そうだった! おお、これ宝石っ」



治療はいるかしら? ひりついて痛いでしょう。
ああ。

ただ、今は何を憎む気にも、妬む気にもなれないな……。

ふふ、そう。分かったわ。なら……。


剣士「っ?」


全身の感覚が薄くなる。雷で受けた痛みも同様に。


半分こよ♪ ね、ご主人様。
……。


この状態なら、心の声にあげなければ思案はバレないのだろうか。助かった。
何故かと言えば、無性に彼女を撫で回したくなっていることを、悟られないで済んだからだ。
216 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 18:19:09.31 ID:AwF054xyo
仕方ない、自分を撫で回そう
217 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/18(月) 10:53:46.02 ID:d2XP+GmcO


……………………
…………
……



夢魔「こんばんは、マスター」

剣士「……ああ」



その夜。
夢で待つ夢魔はいつもの悪魔らしいボンテージではなく、町娘のような、柔らかい印象の普段着を身にまとっていた。
呼び出された場所も、整った石畳の印象的な街道。いつか呼び出された場所である。

総じて、佇む彼女は可愛らしかった。



剣士「初めて見る服装だ」

彼女を照らす街灯に入ると、夢の世界で俺たちだけがスポットされたかのように感じる。
コツコツと刻む足音も、ふたりを急かすことはない。

夢魔「その、似合う? ……私のイメージと違うかな」

剣士「似合っている」

夢魔「ふふ、お世辞でも嬉しいわ」

剣士「いや。その姿も、愛らしい」

夢魔「――。」

剣士「どうした、目を見開いて」

夢魔「いえ、あの、貴方がそんなこと言うなんて、思ってなくて……」


見上げていた、ガーネット色の瞳を伏した。
尻尾は服の中に隠れているようだが、背中の羽はピコピコと動いている。


夢魔「……///」

小ぶりな耳が赤い。


くしゃり、と。

俺はガサついた掌を、そっと夢魔の頭に乗せた。

夢魔「えっ」

剣士「今日は、世話になった。ご苦労様」

夢魔「……うふふ。身構えて損したわ」



しばらく、夢魔はされるがままに身を寄せていた。
218 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 07:39:21.55 ID:GDy/bA7MO
剣士のデレが止まらないな
219 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 09:53:26.28 ID:/mEdVXjAO


夢魔「少し、歩きましょう?」

剣士「……構わないが」

歩き出した夢魔に、半歩遅れて進む。
彼女はこちらを向かず、静かに遠くを見ていた。


夢魔「ふふっ」

剣士「?」

夢魔「闇夜の逢瀬ってところかしら」

剣士「……さあな」



少し足を早め、横に並ぶと目が合った。
隠す様子もなく彼女は上機嫌で、何も言わず眼を細める。



剣士「この町は、お前にとって大事なところなのか?」

夢魔「ええ。大事というか、私の住んでいるところよ」

剣士「逃げてきた夜、悪魔に拾ってもらった……」

夢魔「そう、その町。そうね、今の私にとって一番大切な場所だわ」





ポツポツとした明かりに導かれ、やがて小さな石橋にたどり着く。
そこだけは街灯も小さく、転落を防ぐためだけの間接光が灯っていた。


夢魔「ここ、何だか分かるかしら」

剣士「川に架かる橋だな。日ごろ息抜きに来ている場所か?」

夢魔「あら、当てられちゃった……んだけど、それは日中の話なの」


夢魔「ねえ、ご主人様。分からないかな」


夢魔の瞳が、次第に赤い光を帯びてゆく。
魔性を伴うものというよりは……どこか、本能的に熱を込めたような瞳。

気付けば、胸板が触れ合うまでの距離にまで近付いていた。



剣士「分かるさ。これは逢瀬なのだろう?」

夢魔「ふふ、本当に分かってる……? じゃあ、答え合わせを、シて」


合わせたのは唇だった。
220 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 10:34:25.38 ID:/mEdVXjAO

無骨で不器用で、そして愛を注ぐ男。
可憐で蠱惑的で、そして彼を欲する少女。

如何にその生が歪であろうと、今のこの時は街角で語らう男女と変わらない。




剣士「ん……」
夢魔「ん、ん……」


ふたりはひたむきに唇を合わせたまま、胸に抱き、抱かれる。


夢魔「ん、ふ、んぅ……」


可愛い。愛らしい。愛おしい。

憧れだった。普通の恋人みたいな、キスがしたかった。


ついに、唇から伝わる想いは相互のものとなり、伝わるたびに強くなる。
精は主従関係のままに流れているが、性に流される事はなく、舌を挿れないキスが続く。







剣士「……ふ」
夢魔「んは……っ」

頭がおかしくなる前に、ふたりは唇を離す。

剣士「夢魔……」
夢魔「うん……」




「んんっ……!」

やっぱりおかしくなってしまいたかった。
221 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 10:50:25.53 ID:9tkjeNBkO
イイ...
222 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/19(火) 11:22:56.78 ID:/mEdVXjAO

…………。

剣士「さて、路銀というには足りすぎているし、明日からどうするか……」

夢魔「金も身体も狙われないとは言えないし、発つなら早い方が良いと思うわ」


熱に浮かされるような、そんな甘い口付けはいつしか終わっていて、俺たちはすぐ横にあるベンチで休んでいた。
何となく、今夜はお互いに満足してる感はある。これ以上じゃれあって空気を壊したくなかったのもあって、今度の会話はさっぱりとしていた。


……

少女『おい、マスター! 言われた通り、壊してきたぜ!』

マスター『……マジみてえだな、嬢ちゃん』

少女『これ、これとこれ宝石だしっ、これ札束に、金貨! にししっ、改めて見るとすんげー!』



あれから、その日のうちに運び込まれた盗品は大した量になった。
トップを失い瓦解した組織からは、自壊するかのように構成員が抜け出ていった。
示し合わせたように飛び込んでいく火事場泥棒と相まって、むしろ脱出する時の方が混沌としていた。


少女『んで、これ……あちこちの店の権利書。全部取り返せなかったけど、悪い奴に取られる前にさ、泣いてた奴に返してやってくれ』

マスター『……良いのかい。俺だって善人じゃねえぞ』

少女『アタシなんて大悪人さ。今日も何人殺ったか覚えてねえ! ははは』

マスター『一丁前ぶりやがって。分かったよ、責任を持って俺が預かる……よくやったな』


そこに子供らしい健やかな成長があったとは言い切れないが、俺と夢魔は口元を緩めていた。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/21(木) 11:41:32.20 ID:8PY6O9OaO

マスター『じゃ、報酬はキッチリ渡さんとな』

少女『金貨10枚だっけ?』

マスター『まあ、本当にやってくれちゃったからなぁ……約束は守るさ。んで、2人で山分けするのか?』

少女『そうだな……』



少女は盗品の入った袋の中から、宝石類やその他価値のありそうなものを取り出し、むしろ主人に叩きつけた。



少女『アタシは要らねえ! 金貨10枚、全部こいつにくれてやんな!』

剣士『おい、少女。お前にこそ金は必要なものだろう』

マスター『へえ、何企んでんだか知らねえが』

少女が大声を出したせいで、酒場の視線が一点に集まり、あちこちでどよめき始める。
金貨10枚もあれば……例えば、あの母娘が居た村であれば3年も暮らせるだろう。

少女『アタシは、この札束でもあれば充分さ』

剣士『だからと言って、こんなに貰っても俺が困る。マスター、俺は1枚もあれば良い』

少女『だってよ。マスター、貰っときな』

マスター『……はあ。その宝石、全部寄越せ』



マスター『……すぅ』

マスター『野郎ども、聞いてんだろう!! 今晩は、ウチの店全部タダだァ!!!』



・・・。

ワァァァァァ!!!



マスター『俺は生まれてこの方、あぶく銭の使い方なんざこれ以外に知らなくてな』

少女『へへっ、ちげえねえ』

一番良い酒!
俺もだ!!
マスター肉喰いてえ!!

マスター『っと、わーったよ!! ……おい。忙しくなる前に取っとけ』

剣士『……。多いぞ』

マスター『旅にアクシデントは付き物さ、多くて悪い事はねえ。さあ野郎ども、この町の勇者様のご退店だァ!!!』



汚い喝采が、万雷の如く降り注ぐ。
それがこの町での、最大の賛辞であるらしかった。



勇者、か……。

夢魔『そうよ、勇者様。』



少女『さ、今日は帰ろうぜ。相棒!』

剣士『……誰が相棒だ』
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/21(木) 17:16:35.62 ID:8PY6O9OaO

……

夢魔「あの時、正直言って気分良かったでしょう?」

剣士「……紛れもない悪業だがな」

夢魔「でも、ちょっと嬉しそうにしてたの、分かるわ。貴方と繋がってたんだもの」


翌朝目覚めた時には、懐に3枚の金貨が眠っているだろう。
やはり、人に認められる事は俺にとっても小さな救いになるものだ。




夢魔「さて、今日はもうお休みする?」

剣士「そうだな……」

夢魔が俺の肩に頭を寄り添わせる。
こないだのベンチとは逆だ。

夢魔「名残惜しい?」




夢魔「私は、名残惜しいな」

剣士「……なんだその甘えた声は」

夢魔「きのう、気取るなって言ったじゃない……」

今度は俺の腕を取り、さらに身を寄せてくる。
温かい。




すがりつき、そっと囁く声。



夢魔「私のご主人様は、意外と深い愛情を持ってるのね」

剣士「……知らん」

夢魔「私も、どれくらいが普通かなんて知らない……でも、私が思っていたよりは、ずっと」

夢魔が俺の胸板を軽くつつくと、町の明かりがスッと消えていく。
それに合わせて目を閉じる。今日はいささか疲れた。





夢魔「お休み。また明日逢いましょう」


身体の温かさと、心の安息を感じながら、俺の意識は闇に沈んでいった。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 00:45:15.62 ID:s2Fx1qzEO
いい…
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/23(土) 18:42:22.93 ID:T//MDvUvO
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 18:47:58.71 ID:k+sGRh7Co
>>226
いちいちageんなks
228 :更新遅くてごめんなさいね [saga]:2016/01/24(日) 12:12:01.49 ID:NDZqBQAZO

……………………
…………
……



ほい次はこっちの肉だァ!
150から、200!?
出るか出るか〜?
うー210!
215!220!……
ッターン!


チュンチュンチュン……。

少女「っと。朝這いは失敗か」

ソファの綿が沈む感触で目が覚める。
静かに目を開けると、小さな身体がのしかかっていた。

剣士「……もっと修業を積んでから出直せ」

少女「ははは、修業かぁ、そりゃいい。花嫁修業で良いか?」

剣士「気配の消せる嫁は勘弁願う。ほら、どいてくれ」



夢魔「ふふ、結局懐かれちゃったわね」

同じ女からは、そう見えるか。

夢魔「あら、女と乙女は別の生き物よ? とにかくおはよう、ご主人様」

おはよう。



少女「さ、飯食いに行こうぜ、相棒!」



……これは、乙女なのか?

夢魔「ふふ、乙女の目よ。可愛いじゃない」


少女「へへっ、早くしろよー!」

剣士「行くから、引っ張るな」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/24(日) 13:28:20.84 ID:+YDEetOeO

……

剣士「ご馳走様。しかし、良いのか」

少女「食い物屋で金貨出すバカがどこにいるんだよ。奢られとけ」

剣士「恩に着る」



今日は砦を目指す為の旅支度を整える事にしていた。
幸いにしてここは貿易街であり、食糧の他にちょっとした装備なども物色できそうである。

剣士「ところで、頼んだものは作れそうか」

少女「アタシを誰だと思ってんだよ。手先は器用だって知ってるだろう?」



手で筒を作って上下に動かしている。……。



夢魔「思い出したら、分かってるわよね?」

怖気がした。
思い出すな。思い出すな、俺。

少女「にしし、指に食べカス付いてたわ。れろ……」

そのまま親指を立て、ねぶるようにしゃぶり始める。柔らかかったあの舌が、れろんれろんと爪をなぞっている。
俺はもう見ないように下を向いた。

少女「ひっひっひ、ウブだなぁ」

剣士「……外でやるな」

少女「へへへへ」




夢魔「うん、マイナス10点ね」

思い出してはいない、はずだ。勘弁してくれ。

夢魔「貴方の視線は私の視界にも映るのよ? 変態さん」

あれを忘れたいのは、俺も一緒なんだ……やめてくれ……。

夢魔「まあでも、今の点数は加点法だから。おべっかでもしてみる?」

……いや、加点法がどうやったらマイナスに行くんだ。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 10:17:06.55 ID:kOvUMfR0O

……

剣士「武具の揃う店はあるか」

少女「あー、こっちの通りに……」

…………

剣士「こっちの砥石と、これは、柄の手入れ用……」

少女「ま、ゆっくり見なよ。アタシも自分のもの買ってくるよ」

……………………

剣士「じゃあ、これで」

結局小さな砥石とナイフだけを購入する。
金貨を差し出すと、サッサッサッと手早く釣りが出てきた。

店主「お、噂の兄ちゃんだな。これ、釣りだ」

店主が釣りと一緒に俺の手を握る。
心底嬉しそうにその手をブンブンと振った。

店主「あのいけすかねえヤツらをぶっ飛ばしてくれてありがとうよ。アンタはこの町の恩人だ」


お釣りを握らせるように店主は俺の手を離し、



少女「待ちな。ジジイ」



そして買い出しから戻ってきた少女が店主の前に出た。


店主「あん、なんだい嬢ちゃん」

少女「釣りを取る音が足りねえ。あと2枚銀貨が出てくるはずなんだがなぁ」

剣士「っ、そのようだ」

手の中を見ると、明らかに金が足りていない!
よく聞いていたな……危なかった。

店主「ケッ……ほれ、満足かよ」

少女「小遣い稼ぎなんかするんじゃねえよジジイ。ねーちゃんと遊ぶ金稼ぐより、店先の掃除でもしたらどうだ」

店主「この、クソガキ! 出てけ!」



バタン!!



少女「ったく、腑抜けてんなよ」

剣士「すまない、気が付かなかった」

少女「へへ、カッコよかったろ? 小金持ちなのは割れてんだから、気を付けろよ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 12:20:14.36 ID:kOvUMfR0O

迂闊に人を信用するのも、考えものか……。

夢魔「キチンと自衛する事は人を信じるためにも必要な事よ。まあ、少女ちゃんに感謝しましょう」



少女「あと、頼まれたものは買っといたぜ。飯やらなんやらは自分で調達してくれや」

剣士「ありがとう」



この町に生きる少女は、活き活きしてるように見えるな。

夢魔「貴方が横にいるからじゃない? ふふ、得意そうよ」

少女「今日の夕飯どうすっか? せっかくだし美味いもんでも」

剣士「美味しいものは嬉しいが、落ち着いて食べたい」

少女「あいよ、そしたら市行って美味い肉でも探すかぁ!」





夢魔「良い居場所が出来たわね。」

居場所……。

夢魔「ええ。貴方が帰る事の出来る場所」

翌朝には、もう発ってしまうだろうがな。

夢魔「あら。貴方は娘ちゃんの村には帰らないつもりなの?」

いや。いつか。

夢魔「なら、それと同じよ。少女ちゃんもきっと、どれだけ時間が経っても貴方を受け入れてくれるわ」



……。

夢魔「捨てるには惜しい世じゃない、ねえ?」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 12:41:07.65 ID:lBd8Apxgo
少女はなんか途中で死にそう
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 17:23:34.61 ID:B/E3qnpM0

…………


剣士「ご馳走様」

少女「おう、ごちそうさま」

上等な厚切りの肉に、麦の粉と香辛料をまぶして焼いただけのご馳走。玉ねぎと一緒にパンに挟み、冷まさないままかじる。
少女が一番良いと言うのなら、これが最高の夕餉なのだろう。



少女「あとは寝るだけなんだけど、湯でも浴びに行くか? そういう店あるぜ」

剣士「やめておく。気が進まない訳ではないが、落ち着いて休みたい」

少女「そうだよな。明日、行っちまうんだもんな……」



ベッドの上の少女は既に身体を拭き終わり、こちらに背を向けている。
俺も裸になった上半身と服の中、局部の周りを良く拭き、硬い布地を洗った。

剣士「干させてくれ、翌朝持っていく」

少女「……どーぞ」

鈍感な俺にも分かるくらい、彼女の背中は寂しい。



少女「あのさ」

剣士「どうした」

少女「この町に居てくれないかって、思ったんだよ」

剣士「……」

少女「でも、アンタはするべき事があって旅してんだろ? アタシには分かる」

剣士「するべき事……」

少女「ああ。腰据える場所を探してる感じでもねえし、何となくだけど」



少女「だから、アタシが旅に着いてっちゃいけねえかなって、思ったんだけどな……」

剣士「それは」

少女「あーあーあー、みなまで言うな。分かってんだよ足手まといって事も足手まといとは思わないで居てくれるって事も!」

少女「それに、アタシが着いて行くべき事じゃないって事も」





少女「あーあ……良い奴だよな、お前」

少女は布団に倒れ込み、小さな電灯を見上げる。
焦点が定まっていないようで、ここではない、どこか遠い場所を見ているようにも見えた。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/25(月) 18:32:02.65 ID:B/E3qnpM0

何も言えない。

夢魔「……マスター」

これは、贖罪の旅だ。
慰みの旅とはいかない。

夢魔「貴方が連れて行きたいのなら、構わないのよ」



いや。
……この子を死なせたくない。

夢魔「うん。分かったわ」





剣士「少女よ」

少女「……おう。どしたい、改まって」

剣士「その気持ちだけで、俺は」

声を、声を絞り出せ。
照れを堪え、恥ずかしさを捨て。
負の感情とは反対の。
謝罪とも感謝とも違う、俺に足りないものを。





剣士「俺は、……嬉しい」





とても、大きいとは言えない吐露だった。
それでも俺の心は叫ぶつもりで、伝えようとした。
自分にとって大切な事だった。

少女「……へへ。嬉しいか」

剣士「ああ。必ず、またこの町に戻る」

言い切れた。必ずと。
その時俺は、笑顔になれた。

少女「へへへへ。頼むよ、あいぼー……」





顔を拭う幼い少女を、そっと撫でた。
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 18:35:31.71 ID:dX0kXHwAO
かわいい
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/01/25(月) 21:27:33.02 ID:zBAJtjReO
素直な感情の出し方をしらない剣士が可愛いと同時に辛い
でも段々と言えるようになってきてる剣士はかっこいい
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 22:55:31.65 ID:xCiXFUNJ0
キリコ?
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/26(火) 10:35:03.77 ID:Fn6GgyuyO

……



少女「ここを……こうして……」

縫い物なんか、ほとんどしない。
ボタンは付けたことないし、ほつれた毛布もそのままだ。

剣士「……zzz」

小さなランプを頼りに、小さな糸を手繰る。





夢魔「こんばんは、少女ちゃん」

少女「!」

夢魔「あら、ごめんなさい。ビックリさせちゃった?」

い、いや。なんだ、アイツのところに居なくていいのか?

夢魔「ええ、今日はちょっとね。少女ちゃんは夜なべかしら?」

ああ。

夢魔「じゃあ、見ててもいいかしら」



……うーん。
内緒だぞ?

夢魔「うふふ、約束するわ」




チクチクチク……




少女「いでっ」

夢魔「あら大丈夫?」

難しいな、けっこう。

夢魔「ふふ、頑張って」

おう……!



チクチクチクチクチクチク…………





……………………
…………
……
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/26(火) 10:58:03.87 ID:eyd2KgxUO
健気
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/26(火) 11:51:54.62 ID:Fn6GgyuyO


剣士「んん、ん……?」


ここは、夢、いや、朝?
昨日寝たままと同じ光景に、日が差し込んでいる。

昨日は夢を見なかったのか……夢魔、いるか?


夢魔「んん、おはよう……ご主人様……」


お前も寝起きか。
眠いなら、もう少し寝ていても構わないんだぞ。

夢魔「うう、仮眠よ……さっきまで起きてたんだから」

先ほどまで……?
俺の夢に現れなかったのは、寝ていたからではなかったのか?

夢魔「私用よ。ごめんなさいね」

いや、お前も生活があるだろう。構わん。



少女「…………zzz」

よく寝ているな。
起こすのは忍びないが、そろそろ……。

夢魔「ちょ、それはダメよ。許さない」

そ、それほどの事か。分かった、朝食でも作って待とう。



少女「んゃ……もう食えないよぉ、んへへへぇ……」

241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/26(火) 11:55:15.24 ID:/RLFjrkv0
ダンジョン×プリンセス終了〜他衰退 併 婦女子シネ ツイート荒し 課金要素邪魔 課金厨【運営】死にたい
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/26(火) 12:16:34.46 ID:Fn6GgyuyO

少女「ふわ、ぁ、いい匂い……?」




剣士「……起きたか、台所を借りたぞ。朝食だ」

少女「え、アンタ料理できんの……?」

剣士「もとは旅人だ」

……

少女「じゃ、これ食べたら行くんだな」

剣士「ああ。砦の方まで」

少女「けっこう長くなるだろうから、気を付けろよ」

剣士「地図はある。問題ない」

…………

剣士「ところで、指先に血の痕があるが。いつ怪我をした?」

少女「あっ? ああー、ちょっとな! 気にすんな!」

剣士「腹の銃痕もそうだが、あまり痕を残すなよ。花の盛りに差し障る」

少女「花のサカリ……?」

剣士「……気にするな。早く治せ」

……………………





少女「ごちそうさん。美味かったぜ」
剣士「……お粗末様」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/27(水) 01:07:31.67 ID:Z0VuCvZDO
おつおつ
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/29(金) 11:16:15.18 ID:Y/veV+shO


……




町の入り口に立つ。
日は高く、空は青い。

少女「行くんだな」

剣士「ああ」



別れの時だ。



少女「これ、頼まれてた奴な」

剣士「ありがとう」

少女から白い塊をいくつか受け取る。

少女「これが煙幕、これが火薬、これが睡眠薬。一応、どれがどれかは書いてある」

剣士「分かった」



少女「なあ、1分だけ、悪魔の姉ちゃんに外してもらってても良いか?」

剣士「ん?」

夢魔「あら? 良いわよ、ちょっと抜けてるわね」

剣士「構わないそうだ」



少女「ありがとな……」

少女は一度、息を大きく吸い込んだ。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/29(金) 12:17:33.84 ID:Y/veV+shO


少女「頑張れよ」

剣士「……ああ」

少女「死ぬなよ」

剣士「ああ」


少女の息が詰まった。
もう一度息を吸う。


少女「あんま、無理するなよっ」

剣士「ああ」

少女「っ、嫌になったら、いつでも帰ってこいよ!」

剣士「ああ」

少女「っく、う……」


思いごと、むせた。
彼女の目から光が流れる。


少女「っう、こ、これ」

固く握った掌から、紐のついた小さい包みを渡される。

剣士「これは?」

少女「……お守り」


中に、粉状のものが入っている。


少女「ぐしっ……アンタ、竜とやり合うってんだろ! 竜が嫌いだっていう実を、探してきて、砕いて入れた!」

少女「もし、本当にダメになりそうになって、終わりだって時」

少女「諦めるなら、自分より先にアタシとの事を諦めろ!」



少女「アンタにも、大事に思ってくれてる人がいるって事……肝心なときに忘れたら怒るからな」

剣士「――。」



少女「だから、アタシとの事なんていい。竜に食わしたっていい」

少女「でも、無事でいて欲しいから……お守り。」


曲がって見える景色を直そうと、何度も何度も瞬きをする。
ポロポロと溢れる光が、俺にはとても尊いもののように見えた。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/29(金) 12:41:01.15 ID:Y/veV+shO

少女「アタシは……この町が好きなんだ」

少女「いつ産まれたのか分かんねーし、ロクでもねえ奴しかいねえけど」

少女「それでも愛着があって、居心地が良くて」

少女「金も大事で、モノも大事で……でも、アンタからもっと大事なものをもらった」

少女「だからここがアタシの世界なんだ。だから残る」

少女「心配すんなよ。アタシもちゃんと、生きてくから」







少女「……ずずっ。さ、行け!」

呼吸を落ち着かせると俺を振り向かせ、町から飛ばすように背中を強く押す。
そのまま、背中に体重をかけてきた。




夢魔「ご主人様、終わっ……」

少女「――帰ってきたら、今度はクチでしてやるから」




剣士「! ちょ、ま、待て」

少女「はははは、しーらね!! へへへ、行ってこーい!!」

剣士「ぐっ……!?」

そのまま思い切り突き飛ばされると、仕方なく歩き始める。
ふたりとも知る事はなかったが、ふたりとも振り向く事はなかった。



夢魔「……さて。何の話をしていたのかしらねえ。」

剣士「弁解の余地は。」

夢魔「ないわよ。」



うな垂れてみせて、笑った。
もっと早く、こう生きてみたかったものだ。





「虚飾の町 おわり」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 12:43:10.93 ID:SL8LN7tHO
(´;ω;`)ブワッ泣いた
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 12:50:05.32 ID:xUAybq6e0
もう既にいい女だけど帰って来たらもっといい女になってるだろうなぁ
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 14:53:55.52 ID:yfZ+f47AO
綺麗だなあ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/29(金) 19:04:42.06 ID:f8mMXhWJO
素晴らしい
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/30(土) 13:41:52.74 ID:/MVd30ccO



……閑話休題……



【その後】


少女「あぁーあ、行っちまったかぁ」

剣士たちを見送ったのち、少女はあてもなく路地裏をふらついていた。
途方に暮れているわけでもなく、悲しみを紛らわしているわけでもなく、ただ今日やる事が思い付いていなかっただけの事である。

このまま今日はゆっくりして、あとの暮らしは明日考えよう。



そんな矢先の事である。



少女「あ」

黒服「お?」
黒服「あれ」


曲がり角の先に、剣士と出会った日、足を洗った組織の人間がいた。
ふたりでアイスクリームを食っていた。


少女「……」

黒服「……」
黒服「……」



少女「えーと、あれだ。お邪魔しました」

タッタッタ……!

黒服「ま、待てやゴラァ!」
黒服「誤解じゃオラァ!」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 14:55:58.94 ID:CrwUWcFMo

よく間違って使われるけど、閑話休題って逸れた話(余談など)を本筋に戻すときに使う言葉だよ
253 :その通りみたいだ 閑話そのものという事にしてください [saga]:2016/01/30(土) 15:11:40.83 ID:cfqeItD6O

少女「チッ……!」

アタシは必死で走りながら懐をまさぐる。
ナイフが1本、拳銃が……あ、家に忘れた。
あとは、ない。何もない。
こないだと違い備えがない……!




黒服「チッ、またこの道か!」
黒服「今度こそ手篭めにしてやんよォ」


少女(もし捕まったら……死ぬか?)



指先の傷に、もう片方の手で触れる。
チクリとした。確かに、甘くはない。
それでも、アタシはこの町で生き抜くんだ、必ず。



歩幅の差を埋めるべく必死に足を回転させる。格子状の路地を駆け回り、策を練りながら角を何度も曲がり時間を稼ぐ。





少女「はっ、はっ、はぁ……!」

黒服「っし、行き止まりだァ!」
黒服「捕まえたぞクラァ!」

「追い付かれる前に」行き止まりに到着した。
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 10:56:13.86 ID:ifwfyxroO

…………

昨夜、お守りを縫っていた時の事である。



夢魔『あ、そういえば』

どうした?

夢魔『体術の話をご主人様としていたと思ってね』

ああ、そんな話があったな。
あれって姉ちゃんの技だよな、教えてくれるのか?

夢魔『一朝一夕に身につくものじゃないけれど、明日行っちゃうしねぇ。簡単な事なら教えられるわよ』

いっちょ、いっせき? まあいいや、頼む。


チクチク、チクチク……


夢魔『そうねえ、身のこなしはもともと軽いみたいだし。例えば、人が飛んで壁を蹴った時、人はその後どこに落ちると思う?』

そりゃ、跳ね返って下に落ちるんじゃねえのか?

夢魔『ええ。じゃあ、後ろに引っ張られながら床を歩こうとした時に、貴女は前に進めるかしら?』

……引っ張る強さによるだろ、そりゃ。



夢魔『そういう事なのよ。頭の中を、横に半分回して頂戴。下に引っ張る身体の重さより、思い切り壁を歩く事が出来れば』

……確かに、なるほどな! それで登れるのか?

夢魔『本当はそこまで上手くいかないんだけどね。そんなイメージで身体を動かせば、いずれは。じゃあ、具体的な方法を教えるわね。……』

……



夢魔『まず、慣れない内は壁の角に向かって駆け上がりなさい。歩く床も、くぼんでた方が踏ん張りやすいでしょう?』


タッタッタ……!


黒服「なんだぁ?」
黒服「へへへ、そっちは壁だぞ〜」

夢魔『足よりも、つま先に思い切り力を入れて。壁に突き刺すみたいに、全力で身体を上に』

少女「ぐっ」


ガッ!


少女「くぅぅ……!」
夢魔『その時、カカトを付けたらダメよ。身体をぶつけるくらいの勢いで、壁から離れないように、離れないように』

ガッ! ガッ……!

少女「たぁ!!」
夢魔『もう無理だと思ったら、思い切り蹴って、後ろを向いて。飛び降りたい場所を見ながら、身体のバランスを直すの』


黒服「なに!」
黒服「高っ……」


少女(ここに、確かメシ屋のダクトが……!)
夢魔『慣れない内は、掴まれるものを探して飛んだ方が良いわ。思い切り捕まるのは怖いけど、思ったより壊れないものよ』


ギシッ!



夢魔『……そうしたら、上から飛び掛かりなさい。身体が小さいから、頭か首がベストね』

少女「っし、だああっ!!」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 11:12:40.55 ID:ifwfyxroO

少女(やっべ、飛びすぎた……でも)



慣性の支配するままに、曲げた膝が下を向く。
逆光を味方に、小さな体躯の全体重をぶつける!



少女(高え!! 気持ち良いッ!!)

黒服「うおっ!?」
黒服「あっ!?」



ゴキャア!!
ミシッ。



少女「あ、クビいった」

首の後ろに、高空からの飛び膝が突き刺さる。
たぶん即死はしていないだろうが、嫌な感触があった。



反応をなくした男の背中をクッションに、見事着地する。
綺麗に胸からいったな、あばら大丈夫かな。

黒服「お前っ、首折れっ……! てめええええ!!」

少女「っと、もう一人居たんだった!」


飛びかかる大男に、しゃがんだままナイフの柄を突き出す!


ずにゅっ。


少女「あ。」

黒服「!!! ――ぁふっ」

少女「わ、わりい……」

思ったより柔らかい。少女はそんな感想を抱いた。
……両手を太ももに差し込んだまま、男は倒れ伏した。




黒服「」
黒服「ん、ぁ、う……」

少女「じゃ、じゃーな。なんかすまんな……」

食べかけのアイスクリーム2つを残し、路地裏を後にしたのだった。
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 11:27:03.78 ID:ifwfyxroO


…………



少女(てんけー、ってのは分からないけど。アタシもちっとは良い子にして、マトモに生きてみるか……)

少女(そしたら、本当に壁を登って、この町を越えて、いつか空に飛んでいける。そんな気もすんだよ)




店主「ほい、アイスクリーム3つ! 嬢ちゃん、持てるか?」


少女「あー、1個アタシの口に突っ込んでくれ」

店主「ははは! ほい、アーン」

少女「ふもっふ。……んふふふ」

店主「毎度あり! 落とすなよー!」




少女(ちゃんと謝る時って、なんて言うんだっけな。申し訳ございませ……ございます? えーと、ありがとうございますはございますだから、あれ?)

少女(ま、いっか)


舌を甘やかす甘味に、ご機嫌な調子で路地裏に戻ってゆく。

いつの日か、この見上げる空の狭い町を飛び立つのか。
それはまだ、知る由もない。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/01/31(日) 11:48:20.92 ID:ifwfyxroO

【その後2】



お得意様を失ったあとの宿屋は、どうにも寂しいものであった。

娘(剣士さん、元気にしてるかな……)

母「しけた面すんじゃないよ。ほら、食いな」

娘「あ、うん」





しかし、父の死を境にどこかねじれていた家庭も、少しずつかつての姿を取り戻しつつある。
その手始めとして、使用頻度の低い空き部屋に診療所を引っ越したのがきっかけであった。

住まいを同じにするというのは、大きな意味がある。



しゅぽん。

母「ふいぃ……」

娘「ご馳走様。あんまり飲んじゃダメだよ」

母「あいよ。洗っとくから、先に休みな」



サー……。



娘「あ。雨だ」

娘(窓は閉めた、夜干しはしてない、戸締りも……したかな?)

ガチャ。

娘(やっぱり開いてた。危ない危ない)

バタン……ガチャリ。

娘(そういえば)

剣士と出会った日も、今日のような雨が降っていた。

……………………
…………
……
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 07:27:24.99 ID:HBBosIeDO
乙!!
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/02/13(土) 00:10:34.39 ID:4ySljQ+iO
まってるぞ
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/16(火) 07:42:42.74 ID:lzx/LqFhO
生存報告
少し待ってね
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/16(火) 22:30:16.64 ID:vnzpSYnDO
はあく
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/26(金) 11:20:53.51 ID:N1zsjgbrO
一気に読んだが、かなり面白いしエロい
ゆっくりなのは全く気にしないがエタらせるのだけは勘弁な
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/01(火) 19:50:58.12 ID:6FWCGz+EO
待ってるぞー
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/05(土) 10:17:47.51 ID:LzAbheD+0


サー……


娘「……雨」

雨の日は、好きじゃない。
この、ひとりしかいない宿の中で、さらに村からも隔たれてしまったようで。

向かいの建屋には、お母さんの診療所があるけど……ああ、まだ明かりが点いてる。
まだ起きているのかな。




サー……




娘「あっ、戸締り忘れてた……」

雨の日は、嫌い。






娘「外、誰もいないよね……?」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/05(土) 10:36:39.86 ID:LzAbheD+0



……

ガンガンガン!!
ガンガンガン!!



母「……んだよ、うるさいねぇ」



診療所の戸が激しく叩かれていた。
こんな夜長に……。

すっかり酒に耽っていた村の女医は、心底不愉快そうに腰を上げる。



母「今日は終いだよ。帰んな」

ガンガンガン!!

娘「お母さん! お母さん、いるの!? 助けて、外に人が!!」

母「あァ!? あんたかい……」



母「雨の中、なにやってんだい。野垂れてる奴なんかほっといて寝な、そいつが悪いんだ。風邪引いても、あたしは看ないよ」

娘「だって、動かなくて」

母「……諦めな。どうせ、死んでるだろう」


自分の言葉が、胸に刺さる。
かつて、愛する者に何ひとつしてやれなかった医者に、誰かを助く熱があるものか。


娘「お母さん!!」


ああ。昔もあたしは、あんな純真な気持ちで命を見ていた……。
つまんないところばかり、あたしに似ちまったんだね。


母「あたしは、看ないよ。金持ってるかも分からないんだ、助ける義理はないね」

娘「――ダメ、放っておけない!!」




母(……。外の物音が止んだ?)

ズル、ズル、ズル。

母(引きずってんのかい。正しい運び方なんか知らないくせに)

ジャキン……。

母(頑固で、人の事になると見境がなくなるのは……あの人に似たのかね……)




バッキャアアン!!!




母「うわああっ!?」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/05(土) 10:59:03.94 ID:LzAbheD+0


診療所のドアが、正面から粉々に破られた!


娘「はあっ、はあっ、はあっ……」

大きな剣を、振り回されるように持ち、戸に覗いた隙間からあたしを見据える。

母「なんだってんだい」




娘「どうしても……助けてほしいの」




……………………


根負けしたあたしは、ひとまずその浮浪人を運び入れた。

剣士「……」

四肢に外傷がややあり、衰弱が激しい、体温は低く、脈が弱い、出血は多少見られ、菌や病の類いに侵された形跡は……

なんで、冷静に見ちまうんだい。



娘「どう……? 助かりそう……?」

母「黙ってろ!! 気が散るんだよ!!」

娘「ひッ」



違う……こんな事を言いたいんじゃない。あたしは、医者で、母で……。
処置は早い方がいい、時間が経てば経つほど助かる可能性は、この診療所にどれだけ道具が、薬が、ない、体力の低下に効く薬草、体温の低下を抑え体力を保たせ、

ええい!!!


母「くそったれ……」ブンブンブン


様々な思考が頭の中をグチャグチャにし、頭を振り回しても出て行かない嫌なストレスで掻き乱される。



娘「――ごめんね。集中してるだろうけど、聞いて。」

娘「この人、うつ伏せで、右腕を押さえたまま倒れてたの。お父さんが見つかった時と、同じ」

母「!!」

娘「お母さん言ってた。医者なのに、何も出来なかったって! でも、助けられるかもしれない人ですら、私は今、何も出来なくて、やっぱりお母さんに頼るしかないの!!」

娘「お願い。私はお母さんが人をもう一度助けるところを……見たい。」



……だらしないね、娘に、こんな。
なあ、あたしよ。絶対助けるとここで誓え。
あたしが、あの人を確かに愛していたと知っている……ただ一人の証人にかけて。

母「緊急手術だ。始めるよ!!」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/03/05(土) 11:26:41.82 ID:LzAbheD+0


……………………
…………
……




ガチャ。

娘「お母さん」

母「外傷の処置は終わって、どっか他に悪いところがあるようには見えない。ただ、体力が弱りつつある」

娘「……」

母「やるだけは、やったよ。今日は、あっちにあたしのベッドがあるから寝てな……あとはあたしに任せるんだよ」

娘「ありがとう、お母さん」






ガチャ、バタン。


母(未知の病変があるとは、言えないよねえ。あたしも初めて見るけど、助けると決めた手前は、必ず)

母「開くか、右腕」
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/05(土) 15:40:10.71 ID:e3I6SNwd0
母ちゃん好きだ
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/22(火) 14:51:26.40 ID:Sj8JIuXb0
待ってるぞ
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/03(日) 17:16:40.91 ID:5vx3zdI4O

母(何だい、このドス黒いのは、壊死?)

母(違うね、脈打ってるし神経も通ってる……炭化するなんて事もありえない)


ビクンッ!!


母(ただ、触れると全身に反応がある。おかしい、何かがおかしい。痛覚も反射も麻酔で切ってるはずなのに、どうして)

母(この部位がむしろ、身体に巣食っているというか、神経を支配しているというか……)



母「ええい、くそ……分からん!!」



それなりに勉強した時期があったのだ。
それでも抜けがあったのか、忘れてしまったのか、病魔の進化に勝てなかったのか。
医者の世界で「知らない」という事は治癒への絶望を意味する。



母(今からでも文献を……くそ、ダメだ腕開いてる最中じゃものを触れない。助手が居た昔じゃないんだ)

ただ絶望を前にして、折れるか折れないかは別の話である。

母(くそ、最悪だ。脈が弱くなってきてる……処置できるようにこのまま観察するか、体力の減少を防ぐために閉創すべきか)

母(結局、何も出来ないのか?)


……。




母(分からん、分からんが、これが原因だってなら切除する)




母(この患者の体力で、切除なんて無謀に決まってる……それでも。)


ブチ、ブチ……


剣士「!! ――ッ、うッ」

母(止めになるか、快方に行くか知らんが、やるならやり遂げる。それだけだ!)



ブチ、ブチブチ、ブチ……
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/03(日) 17:30:34.40 ID:2fR9s2cRO
待ってた
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/03(日) 20:07:03.31 ID:DpUyy0Gv0
キター!!
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/04(月) 19:05:19.41 ID:tI12HvU5O

……

…………

……………………




剣士「ここ、は」

母「すー……すー……」

娘「!!」


ドタドタドタ!


娘「目、覚めたんですか!?」

母「んぅ……安静にしやがれ……ん?」



剣士「俺は……」



娘「お母さん! お母さん起きたよ、治ったよ!!」

母「――おはよう。話せるかい」

剣士「死んだん、じゃ?」




娘(雨が止んだあの日、お母さんの顔にも少しだけ日が差したような気がして、ならなかった)

娘(それが、剣士さんとの出会いだっけ)
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 00:37:40.79 ID:Cs7q5zYDO
乙!!
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 09:10:20.46 ID:BFzwhy20O
おつおつ
続き待ってた
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/21(木) 19:54:43.30 ID:c3gIQf6jo
277 :スレッドムーバー [sage]:2016/05/13(金) 22:55:36.57 ID:???

このスレッドは一週間以内に次の板へ移動されます。
(移動後は自動的に移転先へジャンプします)

SS速報R
http://ex14.vip2ch.com/news4ssr/

詳しいワケは下記のスレッドを参照してください。。

■【重要】エロいSSは新天地に移転します
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462456514/

■ SS速報R 移転作業所
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463139262/

移動に不服などがある場合、>>1がトリップ記載の上、上記スレまでレスをください。
移転完了まで、スレは引き続き進行して問題ないです。

よろしくおねがいします。。
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/13(金) 23:25:30.00 ID:ffPm3QtpO
え?え?
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/13(金) 23:32:28.60 ID:WcxTkMJ7o
そういう話出てたから、今更驚く話でもあるまいに
まぁ移転のスレを板トップに貼り付けておいて欲しいと思わないでもないが
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2016/05/22(日) 09:04:40.24 ID:dT9g5UmAO
保守
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 09:16:52.47 ID:rgi2eSqVo
一週間以内…って、まだここ普通のSS速報だよね?
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 11:28:59.01 ID:C9+VYeVpO
しっかり1週間経ってるね
283 :真真真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/26(木) 21:17:45.25 ID:0SReqXIQO
移すのはかまわないんだがこれ飛んだことを認識できない人が大半なんじゃ...
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/31(火) 21:02:10.01 ID:hQjFXtW30
エタってしまうのか・・・
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/31(火) 23:02:26.28 ID:cWXKJVo10
これどうなんだろ、移転から2ヶ月だといいけどそんな都合よくないよなあ
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/02(木) 21:55:33.54 ID:Pr5rGxCy0
最悪気づいてないまであるからな
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/03(金) 18:07:23.11 ID:7kHiSOcKO
気づいてなさそうだな、移転
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 20:57:59.49 ID:7p4ss0Qto
あっちで落ちたと思って書く気なくしてるパターンだなこりゃ
99%エタるわ
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/04(月) 13:59:31.73 ID:Vc+bGEkiO
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 14:45:42.88 ID:FXn19RkDO
荒巻は処理する気ないからいつまでも落ちないしセーフ
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 22:48:15.12 ID:zfLCak19o
移転から2ヶ月で落ちるんじゃないの?
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/02(火) 16:44:08.41 ID:SVvmnVw5O
はよ
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 17:36:35.89 ID:mqGdjsygO
保守
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 21:01:20.87 ID:NBewk6WJ0
はよ
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/05(水) 10:34:54.24 ID:CorfUTxOo
ほしゅ
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/08(火) 18:18:51.06 ID:1qyem+Qf0
はよ
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/15(火) 13:58:18.92 ID:S95aVrHZO
追いついて保守
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/12/20(火) 12:00:45.98 ID:ZgCN5YfAO
保守&保守
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/29(木) 15:20:20.58 ID:/fvC5XsTO
正月前に支援保守
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/05(木) 12:15:48.04 ID:9hDGMZ5hO
あけおめ保守
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/31(火) 16:14:08.41 ID:ylM4056uo
保守
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/02/14(火) 13:39:54.40 ID:eJESsD9PO
一応保守
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 09:05:34.28 ID:4LCfSrN8O
支援
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/24(月) 15:21:18.28 ID:OY8BOP2O0
はよ
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2017/09/17(日) 14:17:42.07 ID:NLuLGFJP0
保守
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