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魔剣士「やはりフキノトウは最高だ」武闘家「えっ?」
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380 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:51:17.71 ID:z+NwFDT5o
魔剣士♀「あらそこのあなたぁ、随分お疲れのようじゃない」
魔剣士♀「痛みのという名の癒しが欲しくはないかしらぁ?」
聖騎士「わ、私にそのような趣味はない」
魔剣士♀「そういう子ほど自分の欲求を押さえ込んじゃうものなのよねぇ」
魔剣士♀「さあ、自分を曝け出しなさぁい!」
ビシィ!
聖騎士「ああっ! 痛っ! やめっ!」
魔導槍師「では、十一個目の試練は『彼女のムチを受けても尚己を保つこと』にしましょう」
重斧士「えっ……俺も打たれなきゃなんねえのか?」
聖騎士「しかし……程よい痛みがなんだか……ああっ! く、クセになってしまうっ!」
重斧士「いてっ! いてっ! くっ、俺は奴隷にはならんぞっ!」
魔剣士♀「もっと強いのがお好みかしらぁっ!?」
重斧士「あぁぁっ!」
魔剣士♀「あたくしのムチのエサにしてさしあげますわっ!」
武闘家「なんなのよもぉぉぉぉぉ!!」
381 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:53:49.08 ID:z+NwFDT5o
魔導槍師「この隙に……」
魔導槍師「カナリア、よく聞きなさい」
武闘家「何よ!!!!」
魔導槍師「私達の家系は優秀な血統です。異常者の血を混ぜるわけにはいきません」
武闘家「はあ!?」
魔導槍師「ですから、あなたには相応しい男性を」
武闘家「お兄ちゃんの馬鹿ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
人体を激しく損傷させる音が轟き、俺はムチを打つ腕を止めた。
アーさんが吹っ飛んだ。
それはもう華麗に。凄まじく。
五十メートルは飛んだのではないだろうか。
武闘家「もういやあああああ!!」
戦闘時以外は決して暴力を振るわないカナリアが人をぶん殴るなんてよっぽどだ。
どんな会話してたんだ。
魔剣士♀「お、落ち着け」
カナリアは何処かに走り去ろうとした。
武闘家「来ないで! 追いかけるなら女装といてからにして!!」
武闘家「あたしが女装にトラウマあるの知ってるでしょ!?」
382 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:55:17.33 ID:z+NwFDT5o
魔剣士「あいつどこ?」
重斧士「あっちだ」
聖騎士「本当に……あの美女はおまえだったんだな……」
魔剣士「あら、驚いた?」
魔剣士「不満そうね。あたくしのムチで感じちゃったことがそんなに屈辱かしら」
聖騎士「おまえのムチじゃなくとも一生の恥だ!!!! 私は聖職者なのだぞ!?!?」
魔剣士「お堅く振舞っている殿方ほど……ねえ」
重斧士「さっさと行けよ……」
魔剣士「おいカナリアー……機嫌直せよ……」
あいつは木の枝に腰を掛けていた。
武闘家「…………」
魔剣士「みんな心配してっぞ」
武闘家「聞く耳持たない連中だらけのところになんて戻りたくないわ」
383 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:56:18.12 ID:z+NwFDT5o
魔剣士「そりゃまあ……俺は生まれつきこの性格だけど……」
魔剣士「他の二人は頭冷やしてるからさ。さっきよりはおまえの言うこと聞くだろうよ」
武闘家「お兄ちゃんは」
魔剣士「まだのびてる」
武闘家「そう」
魔剣士「…………」
武闘家「…………」
魔剣士「ええと……好かれて気まずいかもしんねえけど、あいつらなら普通に話せるだろ」
他人の気持ちなんてわかんねえから何を言えばいいのかさっぱりだ。
てかなんで俺がこいつを迎えに来てるんだ。他の奴等でいいだろ。
武闘家「ねえ、エリウス」
武闘家「あたし、あなたのこと好きなのよね」
魔剣士「え……ええ?」
384 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:56:54.43 ID:z+NwFDT5o
突然何を言い出すんだ。頭の処理が追いつかない。
魔剣士「あ…………ぇ……っと…………まじで?」
武闘家「ええ」
魔剣士「おまえ……そんなそぶり…………」
魔剣士「…………あんまりなかったじゃん」
武闘家「ガウィがいるのにあからさまにアピールできるわけないでしょ」
それもそうだ。
魔剣士「っ…………」
あいつはこっちに振り向いた。
武闘家「好き」
魔剣士「……………………」
魔剣士「その、俺……ごめん……」
武闘家「だよね」
武闘家「困らせてごめんね。吐き出してすっきりしたかったの」
385 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:58:07.72 ID:z+NwFDT5o
魔剣士「…………」
武闘家「いいの。叶わないって最初からわかってたし」
魔剣士「…………」
武闘家「行きましょうか」
魔剣士「あ、ちょっと……訊いてもいいか」
武闘家「何?」
魔剣士「なんで……俺のこと、好きになったんだ」
魔剣士「俺、自己中だし、頭おかしいし、何処が良かったんだよ」
武闘家「…………」
武闘家「あなた、あたしと似たような境遇なのに、」
武闘家「英雄の子供であることなんて微塵も気にしてなくて……」
武闘家「だから、あなたと一緒にいると、すごく気が楽になったの」
武闘家「それで、ずっと一緒にいられたらなって……」
386 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:59:25.86 ID:z+NwFDT5o
魔剣士「……そっ、か」
武闘家「……でも、多分、あなたがあたしに興味ないからこそ、」
武闘家「あたしはあなたのことを好きでいられたのかもしれないわ」
武闘家「それに、この気持ちは長続きしないだろうなって……そんな感じがするから」
武闘家「どんなに遅くても、来年には忘れてるわ」
魔剣士「…………」
魔剣士「えっと…………」
魔剣士「俺の中身を見た上で好きでいてくれた奴なんて、初めてだし……」
魔剣士「告られて嫌だと思わなかったのも……生まれて初めてなんだ」
魔剣士「……だから、上手く言えねえんだけど……」
魔剣士「その……あり、がとな」
緊張で胸がバクバクする。
武闘家「……ねえ、あたし達…………」
武闘家「これからも、友達でいられるよね?」
魔剣士「……ああ」
涙を堪えた作り笑顔が夕日に照らされた。
387 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/11(木) 17:59:59.42 ID:z+NwFDT5o
kokomade
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2016/08/11(木) 18:08:10.11 ID:pWNenKueO
乙
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/12(金) 19:59:49.28 ID:KO/KkTxV0
乙!
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/15(月) 13:51:07.80 ID:vK5COQlO0
魔導槍師が子安ってかジェイドで再生されてつらい
391 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:10:39.02 ID:JW6mXUhYo
第十四株 華の道
重斧士「勝負つけらんなくなっちまったな」
聖騎士「……まさかあのアークイラが大怪我を負うとはな」
重斧士「やっぱつええのかあいつ」
聖騎士「魔導の腕は世界最高クラスだ。槍使いとしてもあいつに勝てる人間はまずいないだろう」
聖騎士「……これまでは力勝負だったな。知恵比べをしないか」
重斧士「頭使う気力残ってんのか?」
聖騎士「……疲労困憊だ」
武闘家「ただいま。……休みましょうか」
魔剣士「…………」
聖騎士「おいエリウス、顔が赤いぞ。熱があるのではないか」
魔剣士「夕日が当たってるだけだろ」
392 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:11:12.45 ID:JW6mXUhYo
聖騎士「来い。法術師である私が診療してやる」
魔剣士「いらねえよ俺医療系魔術使えるし」
重斧士「法術と魔術ってどう違うんだ?」
魔剣士「発動するまでの過程が違うだけで似たようなもん」
聖騎士「貴様それでも魔導学生か!? いいか、法術というのは……」
魔剣士「…………」
聖騎士「…………貴様まさか」
聖騎士「か、彼女となななななにかあったわけでは」
魔剣士「ねえよ!!!! それ以上俺に話しかけたらまたムチで打つぞ!!」
聖騎士「ひっ」
重斧士「……やれやれだぜ」
393 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:12:07.65 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「…………」
重斧士「脱いだらすげえイイ体してんだな」
武闘家「お兄ちゃん……このまま永眠するなんてことないよね?」
聖騎士「私が治療を施したんだ。じきに目を覚ます」
魔剣士「……なあ、なんでこの二人と同部屋なんだ」
重斧士「部屋数の都合だそうだ。節約になっていいだろ」
魔剣士「…………」
大勢でいるのは苦手なんだ。正直、特にアーさんがいると休めない。
俺はスケッチブックを開いた。ユキぃ……会いたいよ……。
旅館の主人「華道家が来れなくなっただと?」
従業員「船が故障したそうで……」
旅館の主人「参ったな……明後日の大事な来客のために、」
旅館の主人「とびきり美しい生け花を飾りたかったのだが」
受付嬢「旦那様、実は…………」
旅館の主人「エリウス・レグホニアが泊まっているだと!?」
魔剣士「廊下から俺の名前が聞こえた気がしたんだが」
重斧士「気のせいではないぞ」
394 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:12:34.81 ID:JW6mXUhYo
魔剣士「呼びました?」
旅館の主人「お……ぉぉおおおおお!!」
旅館の主人「ヒュペリオン氏の孫であり天才華道少年であるエリウスが我が旅館に!!」
(ヒュペリオン?)
青い石「君の!! 父方のおじいちゃんの名前!!」
難しいから覚えてなかった。同居じゃないしあんまり名前を聞く機会がない。
旅館の主人「運命だ……ああ、なんと運命的なのだ!!」
重斧士「華道って生け花だろ? おまえ植物好きだもんな」
魔剣士「免状持ってるけどやってたの何年も前だぞ……」
魔剣士「華道家としての俺のことを覚えてる人間がいまだにいるなんてな」
聖騎士「え、エリウスが生け花……? 貴様に花を生けることができるほどの情操があったとは」
魔剣士「失礼な奴だな……」
魔剣士「俺の感受性の乏しさを心配した母さんに無理矢理習わされてたのは事実だけどさ」
聖騎士「ほう……」
重斧士「おまえ悪い奴じゃねえみたいだけどよ、あいつのこと見下し過ぎだと思うぞ」
聖騎士「それは悪かったな」
旅館の主人「ど、どうか花を生けていただきたい」
魔剣士「俺で良ければやりますけど……感覚鈍ってると思いますよ」
395 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:16:43.52 ID:JW6mXUhYo
出された夕食は妙に豪華だった。まだ生けてないってのに。
魔導槍師「いや〜エリウス君のおかげでそこそこの食事にありつくことができましたね」
魔剣士「…………」
魔剣士「俺今晩はそこの木の上で寝るから!!」
武闘家「ちょっ……」
俺は外に飛び出した。
武闘家「ねえ、待って」
魔剣士「…………」
武闘家「……ど、うして? やっぱり……気まずい?」
魔剣士「そうじゃないんだ」
魔剣士「……俺、どうしてもアーさん苦手なんだよ」
魔剣士「妹のおまえにこんなこと言うのは申し訳ねえんだけどさ」
武闘家「…………」
396 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:17:09.27 ID:JW6mXUhYo
魔剣士「あの目……無理なんだ。俺、他人の感情読んだりするのへたくそなんだけど、」
魔剣士「俺の自尊心を傷つけてくる奴の雰囲気にだけはやたら敏感で……」
普段は他人からどう思われようが知ったこっちゃない。気にせずにいられる。
でも、何故だかアーさんの、内に秘めた侮蔑の感情だけは……跳ね返せない。
魔剣士「怖いんだ」
武闘家「…………そう」
武闘家「落ちないようにね」
魔剣士「木の上で寝るのには慣れてる。大丈夫だよ」
仲間が泊まっている部屋のすぐ傍の木に登った。
聖騎士「全く、協調性のない奴だ。あんな奴と旅をしても危険なだけだろう」
聞こえてんだよクソ。
武闘家「ちゃんと守ってくれてるわよ。……ガウィ任せにされることも多いけど」
武闘家「それに、彼がいてくれたからあたしは旅を続けることができてる」
武闘家「そのおかげであたし自身の実力だって随分上がったんだから」
魔導槍師「はは……確かに、強くなりましたね」
397 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:17:36.31 ID:JW6mXUhYo
武闘家「……父さん、この頃どうなの。戦えてるの」
魔導槍師「ええ、どうにか。軍の士気も回復しましたね」
聖騎士「軍の士気など、アキレス殿の息子であるお前が上げればよいではないか」
魔導槍師「生憎私はこの性格ですからね〜。人を引き付ける力を持った父さんとは違うのです」
魔導槍師「恐怖で軍を支配するのなら可能でしょうけれど」
聖騎士「訊いた私が愚かだったようだ」
魔導槍師「……ところで、エリウス君のことなのですが」
また悪口言われんのかな。一瞬心臓が強く脈打った。
魔導槍師「彼、人ならざる者の力を取り込んでいますね」
重斧士「わかるのか?」
魔導槍師「ええ。人より魔感力が優れていましてね」
魔導槍師「最近では、私のような人間を魔透眼持ちと呼ぶそうですがまあそれは置いておいて」
398 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:18:04.01 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「あれは異常ですね。超古代技術と生命の力が掛け合わさってできた物のようですが」
魔導槍師「いずれ、彼はこの世の理から外れた存在となるでしょう」
聖騎士「創造神への冒涜ではないか」
魔導槍師「あの力が人間の身体・魔力とどのような魔学反応を起こすかは未知数です」
魔導槍師「人類にとって非常に危険な存在に成りうると判断できるでしょう」
魔導槍師「……一刻も早く処分してしまいたいほどに」
武闘家「なっ……何を言うのよ!」
武闘家「大体、人間が植物に酷いことをするから、彼は仕方なく……」
魔導槍師「まあ悪いことばかりではありませんね」
魔導槍師「もしあの力を『あなたを守る』方向に使ってもらえさえすれば、」
魔導槍師「あなたを下手に連れ戻すより、彼と共に旅をしてもらう方が安全です」
武闘家「…………!」
聖騎士「それは本当か」
399 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:19:02.87 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「非常に残念ですが、国で保護しても安全の保障はできないのですよ」
魔導槍師「この辺りよりも奴等の活動が活発な上、」
魔導槍師「奴等の組織には厄介な術師が約一名いるようですからね」
聖騎士「おまえでも手に負えないというのか」
魔導槍師「可能性は0ではありませんねえ」
魔導槍師「私がずっとカナリアの傍にいられるのならばよかったのですが、」
魔導槍師「国王の守護などというニート同前の仕事に縛られていまして」
聖騎士「最も名誉のある仕事をニート同前とは……」
魔導槍師「更に、少ない空き時間を研究に充てているとなると……」
魔導槍師「正直言って一ヶ所に留まっている方が危険性が上がります」
重斧士「他に優秀な奴いねえのかよ」
魔導槍師「平和ボケのおかげで、使い物になる戦士の人数は極めて限られています」
魔導槍師「となると、戦う力を持った者が傍にいさえすれば、」
魔導槍師「隠れて逃げ回っていた方が比較的マシというわけですね」
400 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:20:19.32 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「まー兄としてはあまり彼と共にはいてほしくはないのですが」
重斧士「カナリアはまだ帰らなくていいんだな!?」
魔導槍師「エリウス君次第ですね。彼無責任ですし」
あーイライラする。事実だけど。
聖騎士「私は反対だぞ」
聖騎士「プティア国で保護しないのならば我がアモル教聖騎士団がカナリアを守る」
魔導槍師「ほう、人手不足の騎士団で護りきることができるのですか」
聖騎士「うぐ……」
重斧士「人手不足なのにおまえこんなところにいていいのか?」
聖騎士「……すぐにでも戻らなければならない」
魔導槍師「お互い無理矢理休暇をもぎ取ったようなものですからねー」
武闘家「……心配してくれるのは嬉しいけど」
魔導槍師「あなたは自分の立場を理解していません」
魔導槍師「我が軍の脆さが露呈した際はどうなるかと思いましたよ」
聖騎士「英雄一人が引き籠ったくらいで士気を落としてしまう軍など、いつ壊滅してもおかしくないな」
魔導槍師「体勢を見直すいい機会ではありましたねー」
魔導槍師「そうそう、オディウム教徒が英雄の子供達を狙っている理由なのですがね」
401 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:20:45.44 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「……なんでも、聖玉の結界を決壊させるため……という情報があるのです」
武闘家「……!」
重斧士「今の駄洒落か?」
魔導槍師「嫌ですねーたまたまですよ」
武闘家「そんなことしたら魔族が復活しちゃうじゃない」
武闘家「あいつらに何の得があるっていうのよ」
魔導槍師「不明です。しかし、」
魔導槍師「調査したところ、オディウム教徒は魔族の襲撃を受けなかったそうです」
武闘家「そんなの、あいつらの妄言じゃ……」
魔導槍師「それが、事実なのですよ」
魔導槍師「襲撃を受けなかった理由も不明ですが、」
魔導槍師「少なくとも、彼等は魔族が存在することで何らかの利益を得ていたのでしょう」
魔導槍師「八十五年前に魔族を復活させたのも彼等である可能性が高いと思われます」
魔導槍師「一体どうやったのかは謎ですがね」
402 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:21:27.10 ID:JW6mXUhYo
武闘家「どうして結界を壊すのに私達が必要なの?」
魔導槍師「不明です。……が、おおよその推測は可能です」
魔導槍師「オディウム神は実在している可能性があります」
魔導槍師「超古代時代以前の資料にその名が記されていました」
魔導槍師「実際に、人々の憎しみを吸収して世に破滅をもたらしたと伝えられています」
ふーん。
魔導槍師「あなた方を利用し、人々の持つ憎しみの感情を操作することで、」
魔導槍師「オディウム神を復活させ、聖玉の結界を壊そうとしている」
魔導槍師「……と、考えられなくもありません」
魔導槍師「もちろんあくまで推測です」
武闘家「……お兄ちゃんは狙われてないの?」
403 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:30:30.36 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「刺客なんてものは全く寄ってきてくれませんねえ。私が強すぎて」
重斧士「おまえのところはどうなんだ」
聖騎士「時折面倒なのが来るな」
魔導槍師「そして、もう一つ推論をお教えしましょう」
魔導槍師「聖玉の結界はそう簡単に破れるものではないことは知っているでしょう」
武闘家「神様でもなきゃ無理よ」
魔導槍師「それが、そうでもないようなんですよ」
魔導槍師「聖玉は全て揃ってこそ強力な浄化封印の力を発揮します」
魔導槍師「七つより少なくても……そして、多くてもバランスが崩壊します」
魔導槍師「そして、六英雄の内三人は聖玉の波動を己の魔力に編み込んでいます」
魔導槍師「この意味がわかりますか」
武闘家「……父さん達か、その子供であるあたし達が結界に干渉することで、」
武闘家「結界のバランスが壊れるかもしれないってこと!?」
魔導槍師「ええ」
武闘家「でも、聖玉の波動を持っている人なら他にもたくさんいるじゃない」
武闘家「あたし達である必要ってあるの?」
魔導槍師「常人よりも魔力容量が大きくて丈夫ですからね」
魔導槍師「一般人よりも魔力の輝きが遥かに強いのですよ」
聖騎士「私は聖玉の波動を有していないのだが」
魔導槍師「そのため、あなたとあなたの兄弟は『優先順位が低い』そうですよ」
魔導槍師「おそらく前者の理由で狙われているのでしょう」
404 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:31:10.05 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「ですので、決してあなた方は彼等に捕まるわけにはいきません」
重斧士「……カナリアを保護する話ばっかりしてたが、」
重斧士「ほんとはエリウスの奴も守らなきゃいけねえんじゃねえか?」
魔導槍師「その通りですとも」
魔導槍師「しかし、先程言った通り彼は人智を超えた謎の力を得たようですからね」
魔導槍師「彼一人でしたら、植物の存在しない場所にでも行かない限りは大丈夫でしょう」
俺に何かあったら植物達が困ることになる。
おそらく精霊達が力を貸してくれるだろう。
魔導槍師「カナリア」
武闘家「何?」
魔導槍師「このお兄ちゃんマークのお守りを片時も離さずに持っていてください」
魔導槍師「やっぱり心配ですからねー、色々な意味で」
武闘家「…………」
魔導槍師「それと……」
アーさんは窓際にカナリアを引き寄せて、他の奴等に声が届かないように話した。
つっても俺には聞こえてるんだが。……わざと聞こえるようにしてんのか?
アーさんは魔感力がとんでもなく冴えている。俺の母さんと同じくらいかそれ以上だ。
俺が聞いていることくらい感づいているかもしれない。
405 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:32:14.82 ID:JW6mXUhYo
魔導槍師「嫁入り前の大切な体なのですから、決して間違いを犯してはなりません」
武闘家「…………」
少なくとも俺とは起こしようがねえよ。ガウェインはどうか知らんが。
魔導槍師「何度も言いますが、彼にはあまり深入りしないように」
魔導槍師「……彼の脳機能の偏りさえなければ、静観することもできたのですけどね」
魔導槍師「昔よりはだいぶ会話ができるようになったようですが……」
武闘家「妹の心配するより先に自分の将来の心配しなさいよ!」
アーさんは再びカナリアに殴られて意識を失った。
魔剣士「もしもし、アウロラ」
長女『どうしたの、兄さん』
魔剣士「彼氏と……上手くいってるか?」
長女『いつも通りよ』
魔剣士「……向こうの親御さんから、何か言われたりしてないか?」
長女『? いいえ。時々彼の実家に遊びに行くけど、普通に仲良く喋ってるわ』
長女『どうしたの?』
魔剣士「いいや……それならいいんだ。ぐーてなはと」
406 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:32:43.99 ID:JW6mXUhYo
携帯の電源を落としたところで、白い月明かりの中からユキが現れた。
魔剣士「……!」
白緑の少女「お久しぶりです、エリウスさん」
彼女の名前を呼ぼうとしたところで、俺は口をつぐんだ。
自分に自信を持てない。
俺の嫌いな考え方だが、
どうしても「俺なんかが、この子と会っていいのだろうか」と思ってしまった。
白緑の少女「……どうされました?」
彼女の顔を見たくて仕方がないのに、直視できない。
好きな子の前でくらいかっこつけたいのにな。
白緑の少女「……何か、心配なことがあるのですね」
実体化した彼女の手が、俺の左手を覆った。
以前よりもはっきりと彼女の存在を感じ取れた。
鏡を見なくたってわかる。俺の顔は今真っ赤になっている。
407 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:33:09.73 ID:JW6mXUhYo
魔剣士「……ねえ、俺と喋ってて、違和感ない?」
魔剣士「ズレてるとか、会話が噛み合ってないとか、はっきりモノを言い過ぎとか……」
白緑の少女「?」
魔剣士「俺っ、普通の人間と……頭の作りが違っててさっ……」
魔剣士「そ、それでも、百人に一人くらいはいるらしいんだけどっ」
魔剣士「あ、これはデンドロフィリアであることとはまた別の話で、その……」
白緑の少女「……私は人間ですらありません。大丈夫ですよ」
そりゃそうだ。彼女は樹の精霊なんだ。
俺何言ってんだろ。だめだもう。
白緑の少女「あなたが心根の優しい人だということはよくわかっていますよ」
白緑の少女「細かいことは気にしません」
魔剣士「……俺、わがままだよ」
白緑の少女「いいえ。ただ、ちょっと不器用なだけ」
408 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:33:35.62 ID:JW6mXUhYo
ユキは、俺のことを肯定してくれる。父さんみたいに。
それが嬉しくて、苦しかった。
――
――――――――
『なあ、エリウス。モニカちゃんを泣かせたってのは本当か』
父さんが屈みこんで俺に問いかけた。
『……とろいから、みんなに置いてかれるんだって、言っただけ』
悪いことをした自覚はなかった。でも、俺は父さんの顔を見れなくて、俯いていた。
『置いてけぼりにされたくないなら、すばやく行動すればいいじゃん』
『あのなあ。人には、それぞれスピードがあるんだ。おまえにだって不得意なことくらいあるだろう』
父さんは、俺を厳しい口調では叱らなかった。
『ゆっくりな子がいたら、おまえが助けてやればいい。それが優しさだ』
409 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:34:55.31 ID:JW6mXUhYo
『エリウス、その鉢植えのこと、大事だろ』
花屋に行った時、俺が欲しがっているのを察して父さんが買ってくれた鉢植えだった。
『その苗のことを他人から馬鹿にされたりしたら、絶対嫌だろ。仮に言われたことが本当のことだったとしても』
俺は頷いた。
『本当のことでも、あんまりはっきり言われると、心は傷つくんだよ』
そう言われて、俺は漸く自分が酷いことをしたことに気がついた。
『そうやって泣けるなら、おまえは大丈夫だ。ちゃんと人の心を持ってる』
父さんは、笑って俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
『今度モニカちゃんに会った時は、ちゃんと謝れるな?』
他人の立場に立って考える能力が欠けている俺に対し、
父さんは俺にもわかるように諭してくれた。他の大人は頭ごなしに叱るばかりだった。
「そんなことしちゃだめだ」「どうしてできないんだ」
飽きるほど聞いた叱り文句だ。そんなこと言われたって、俺には理解できない。
好きでこんな頭に生まれてきたわけじゃない。
――――――――
――
410 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:35:49.16 ID:JW6mXUhYo
魔剣士「……人と共感できない、他人の気持ちがわからない、」
魔剣士「わがままな子だって、俺、小さい頃から、ずっと……」
具体的に説明されるまでは、他人の気持ちを理解できないことはたくさんあった。
経験を積むごとにマシにはなっても、いまだに治りきらない。
白緑の少女「あなたは、共感性がないわけではありません」
白緑の少女「人も、精霊も、自分と似ていない相手に共感するのは難しいのです」
白緑の少女「きっと、あなたは、たまたま自分と似ている人が近くにいなかっただけ」
魔剣士「…………」
白緑の少女「……エリウスさん!」
彼女に名前を呼ばれて、俺はやっと彼女を見つめ返した。
――――――――
武闘家「……エリウス」
武闘家「あ……」
武闘家「……………………」
――――――――
411 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:36:52.01 ID:JW6mXUhYo
浅緑の瞳が優しく微笑んでいる。
このまま時間が止まってしまえばいいのに。
白緑の少女「……あら、この、琥珀は…………」
魔剣士「あ、ああ……しばらく前に手に入れたんだ」
魔剣士「不思議なほど俺の魔力と相性がよくて……」
白緑の少女「…………嘘」
彼女はひどく困惑しているようだった。
白緑の少女「……少しだけ、あなたの胸に手を触れさせてもらえませんか」
魔剣士「い……い、けど」
ユキの右手が俺の胸の中央に触れた。
そして、服と体表をすり抜け、俺の心臓部に……魂のすぐ傍に這入りこんでくる。
魔剣士「ん……」
好きな子の精神体が俺の中に這入っている。
その手から漏れる彼女の魔力が、僅かに俺の魔力と反応を起こしている。
ちょっと苦しい。でも、嬉しい。喜んでいいことなのかどうかもわからないけれど。
412 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:37:21.71 ID:JW6mXUhYo
魔剣士「はあ、は……はぁ……」
ゆっくりと彼女の手が引き抜かれた。
白緑の少女「……そんな」
ユキの目から大粒の涙が溢れた。
俺はあっけにとられて何も言えなかった。
白緑の少女「ああ…………」
彼女はすがりつくように俺の胸へ飛び込んだ。
魔剣士「…………!?」
嗚咽を漏らす彼女の背を、俺はおそるおそる撫でる。
一体どうしたのだろう。
しばらくすると、彼女は顔を上げ、悲しみに溢れた表情で俺を見つめた。
魔剣士「……ユキ?」
最後に、彼女は俺の首に腕を回すと、月明かりに融けて消えていった。
413 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:38:07.58 ID:JW6mXUhYo
――――――――
――
旅館の主人「この壺に合うよう、豪華ながら気品のあるデザインを手掛けて頂きたい」
じいちゃんが作った歪な壺じゃねえか。
そういえば、この旅館の雰囲気は、じいちゃんの取引先の民族のものとよく似ている。
旅館の主人「魔王が倒される前あたりから『侘び・寂び』文化がじわじわと人気を高めていったのですが、」
旅館の主人「私はそれ以前からこの文化が好きでして」
旅館の主人「この壺に出会った時はもう運命だと」
魔剣士「……けっこうお高かったんじゃあ」
旅館の主人「はっはっは。妻にちょこっと叱られた程度のお値段ですよ」
旅館の主人や従業員と一緒に町に出向いて花を仕入れた。
一本一本生けていく。
じいちゃんの作品にはガキの頃から何度も花を生けてるんだ。
どんな花や葉と組み合わせたら出来のいい作品が作れるのかは感覚が覚えている。
414 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:38:44.09 ID:JW6mXUhYo
違う種類の花と葉、枝を組み合わせることで、
ありのままの姿とはまた違った魅力を生み出すことができるんだ。
料理と似ているかもしれない。
旅館の主人「……お孫さんに花を生けていただけるなんてもうほんと運命です」
緊張で手が震える。最後の一本を挿す瞬間がなんとも気持ちがいい。
魔剣士「……こんなもんで、どうですかね」
旅館の主人「素晴らしいです、本当に。ありがとうございます」
旅館の主人「これで気持ち良くお客様をおもてなしすることができます」
泣いて喜ばれた。
俺なんかでも、人の役に立てるんだな。
喜んでもらえたことが嬉しかった。
415 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/15(月) 18:39:28.61 ID:JW6mXUhYo
kokomade
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/15(月) 18:42:11.65 ID:F6Je/ygko
乙っ
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/15(月) 19:42:18.65 ID:vK5COQlO0
アスペ?
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/15(月) 23:54:27.06 ID:6VxWHCJAo
>>417
それお前じゃね?
よく読めよ
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/16(火) 00:49:45.59 ID:J6Z+t5r90
いや読んだからエリウスはアスペなのかなって
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/16(火) 00:51:09.56 ID:GEDbnQADO
乙
421 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/08/16(火) 18:51:54.10 ID:il8m+4Q4o
書いてる人間が発達障害に詳しいわけじゃないので、作中では病名出してませんが
自閉症スペクトラム障害です
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/19(金) 00:26:25.63 ID:5eas+Xi40
コミュ障感あるもんな
意図せず相手を不快にさせること言ったり無神経だったり
423 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/08/21(日) 16:56:04.50 ID:omgcFjbnO
ハブだかルーターだかの不具合でネット繋がらないので投下遅れます……
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/21(日) 20:03:07.09 ID:d4HsZSgq0
わかった
425 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:33:25.42 ID:oJgvoud0o
第十五株 奇跡の力は人を狂わせる
聖騎士「誓え! 絶対に彼女を守ると!」
魔剣士「え……仲間でいてくれる限りはできるだけ守るよそりゃ」
魔剣士「どうしても敵わない奴が出てきたらどうしようもねえけど……」
魔剣士「それはそっちも同じなんだっけ」
武闘家「……エリウス」
魔剣士「ん。何?」
武闘家「ううん。なんでもない」
微妙に気まずいけど、気にしてない体を装った。
426 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:34:19.07 ID:oJgvoud0o
魔剣士「……全員片付いたか」
オディウム教徒に襲われる頻度は減ったものの、
強い奴にばかり襲撃されるようになった。
重斧士「最近はその石使って戦ってんだな」
魔剣士「これで術を強化して魔力を節約しねえとやってらんねえからな」
武闘家「石に頼る気はないって言ってたけど、そうも言ってられなくなったものね」
魔剣士「琥珀は魔鉱石と同様の扱いをされることもあるが鉱物じゃなくて樹脂だし」
武闘家「あ、それもそうね」
魔剣士「まあ、これがなかったらそろそろ石買いに行ってたかもしれないのは確かだ」
重斧士「おまえいつまで旅するつもりなんだ?」
魔剣士「適当に気が済むまで……と思ってたんだが、」
魔剣士「植物に助けを求められている限りは終わんねえだろうな」
427 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:35:24.94 ID:oJgvoud0o
【森から天然の魔力を採取 精霊の怒りを買う】
【西の大剣豪 道場運営を再開】
【旭光の勇者ヘリオス 男爵位を授爵】
魔剣士「……ん?」
重斧士「どうした?」
魔剣士「ネットでニュース読んでたんだが……」
ネットの反応[もっと早くてよかっただろーのんびりしてんなぁあの国]
ネットの反応[目ぇ怖っ!]
青い石「魔王倒した時点で貴族になれてたら結婚する時身分差婚の手続き要らなかったのに」
重斧士「てことはおまえも貴族になんのか?」
魔剣士「俺は平民のままだよ。こういう時授爵されるのは一代貴族だし……って、あれ?」
[尚、一代貴族ではなく、世襲貴族である。
南の大陸において、新たな世襲貴族が増やされるのは実に二百年ぶりのことである]
魔剣士「マジかよ」
428 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:36:07.92 ID:oJgvoud0o
魔剣士「まあどちらにしろ俺は平民同然なんだけどな」
重斧士「長男だろ? 家督継ぐもんじゃねえの」
魔剣士「俺の地元、末子相続の風潮が強いんだよ」
魔剣士「絶対に末の男が継がなきゃいけないってわけではないけど」
魔剣士「もしもし父さん?」
戦士『どうした』
魔剣士「おめでとうロード・レグホニア」
戦士『祝ってくれるのは嬉しいがその呼び方はやめてくれ。恥ずかしいんだよ』
魔剣士「だーんしゃくぅー!」
戦士『やめんか! 俺は貴族なんてガラじゃない!!』
魔剣士「イエェスマイロォォォォドォ!!」
戦士『切るからな!』
魔剣士「あひゃひゃ。ちょっと待って」
魔剣士「世襲貴族ってデマじゃなくてマジ?」
429 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:37:01.41 ID:oJgvoud0o
戦士『……はあ』
戦士『子孫に『家を存続させなきゃいけない』ってプレッシャーがかかるから、』
戦士『正直世襲貴族になんてなりたくなかったんだがな……』
戦士『うちは代々平民オブ平民で、家が絶えたって誰も困らないってのに』
魔剣士「英雄の家系は残したいんじゃねえの、国的に」
戦士『かもしれんな……っと、上司に呼ばれた。じゃ、あんまり無理すんなよ』
プツッ
武闘家「よかったじゃない。特権で楽できるわよ」
魔剣士「俺の国はもう貴族の特権とかないんだよ」
武闘家「え? 上流階級の人間しか入れないようなスクールとか……」
魔剣士「ないよ。平民でも金と学力さえあればお上品な学校には入れる」
武闘家「あら……そうなの」
魔剣士「嫉妬で面倒なことになるだけだ」
430 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:38:15.79 ID:oJgvoud0o
魔剣士「ああ、そうだ」
魔剣士「わりいけど、ルルディブルクに行くの遅くなりそうだ」
魔剣士「あちこちの困ってる精霊を助けて回らなくちゃいけなくてさ」
武闘家「あたしが勝手にあなたについてきてるだけなんだから、謝らなくていいのよ」
武闘家「のんびり行きましょ」
――とある村
白旅人「通してくださーい……あのー……宿取りに行きたいんです……」
「どうか助けてください!」
「水道が詰まってしまいまして」
「電話が繋がらないのです!」
白旅人「申し訳ありませんが、業者さんに頼めば解決する頼み事はお断りさせていただいてるんです」
白旅人「お仕事を奪ってしまうわけにはいかないものですから……」
武闘家「人だかりができてるわね」
重斧士「あいつ、俺よりずっと若ぇだろうに頭真っ白だな」
重斧士「目に包帯巻いてるが前見えてんのか?」
魔剣士「あ? ああ、あれ多分魔適体質者だ」
魔剣士「普通の白髪じゃなくて、牛乳塗ったくったような色してるだろ」
431 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:39:20.59 ID:oJgvoud0o
白旅人「急いでますので……」
「愛用の鋏が見つからないんです!」
「夫が脱毛石鹸で頭を洗って悲惨なことになったのですが」
武闘家「困ってるみたいね。行ってくるわ」
武闘家「彼困ってるじゃないですかー!」
白旅人「ありがとうございます、助かりました」
武闘家「いえ」
武闘家「…………」
白旅人「あ、目のことはご心配なさらず。包帯越しに見えてますから」
重斧士「なんで巻いてんだ?」
白旅人「はは……虹彩が真っ白なので、不気味がられてしまうんですよ」
重斧士「目に色付けられねえのか?」
白旅人「染めるだけならば容易です」
白旅人「しかし、常に意識していないと色が抜けてしまうんです」
白旅人「僕の魔術はイメージ頼りの不安定なものなので」
432 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:44:08.02 ID:oJgvoud0o
白旅人「おや、あなたは……もしかしてエリウス・レグホニアでは」
魔剣士「そうだけど」
白旅人「申し遅れました。僕はメルク。旅人です」
白旅人「なんでも、あなたは植物を自在に操れるそうですね」
魔剣士「ああ。体内に入れた植物はな」
白旅人「……不思議ですね。あなたの魔適傾向は15ほど」
白旅人「それほど高度な術をイメージで使用できるとはとても考えられません」
魔剣士「調子のいい時でも20マジカルくらいだ」
魔剣士「特殊体質なんだと思って大して気にしたことはなかったが」
白旅人「どう考えても、最低でも80マジカルは必要なはず」
白旅人「ううむ……」
魔剣士「……あー、そういや、この能力は前世が関係しているのかもって」
魔剣士「昔母さんが言ってたような気がする」
433 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:45:55.47 ID:oJgvoud0o
魔剣士「魂がうんたらかんたら」
白旅人「種族は……普通の人間ですから、そう考えるのが妥当でしょうね」
魔剣士「そういやあんた、従者は?」
魔剣士「魔適体質者が一人で旅できるわけないだろ」
熟練度次第だが、魔適体質者は通常の魔術師では起こせない奇跡を実現させることができる。
故に、道を踏み外したり、力を悪用されたりしないよう、
自国の武官が護衛を務めることとなっている。
白旅人「それが……少し前に、オディウム教と名乗る怪しい宗教に引き込まれてしまいまして」
魔剣士「難儀な……」
魔剣士「壁になってくれる奴がいなかったら頼られ過ぎて大変だろ」
白旅人「ええ……本当に」
白旅人「それに、それ以来オディウム教の方々に入信するよう脅されることが続いてまして」
魔剣士「!」
白旅人「この頃は武器を向けられることもありますね。この体質の人間が欲しいようです」
魔剣士「実は俺達も別の理由で狙われてんだ」
434 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:46:23.53 ID:oJgvoud0o
宿を確保して村をうろついた。
婆「爺さんや、スズランは強心剤になるそうじゃ」
爺「煎じてみるかの……」
魔剣士「ちょ、ストップストップ!」
魔剣士「強心剤ってのは心臓毒同然なんだ。使い方を間違えたら死んじまう」
魔剣士「もし心臓が悪いのなら病院行ってくれ!!」
魔剣士「危なかった……」
流石に冷や汗が出た。ああいうのは事故の元なんだ。
素人が下手に草を利用しようとすると取り返しのつかないことになりかねない。
武闘家「可愛い見た目なのに怖いのね、スズランって」
魔剣士「身近な植物も意外と強力な毒草だったりすんだよ」
魔剣士「だが、扱いようによっては薬にもなる」
魔剣士「毒と薬は紙一重なんだ」
435 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:46:54.03 ID:oJgvoud0o
おっさん「あ、あの……もしや、あなたは魔適体質者のメルク様では」
白旅人「ええ」
おっさん「実は、愛娘が不治の病にかかってしまったのです」
おっさん「どうか、どうか治療していただけないでしょうか……!」
白旅人「いいですよ」
おっさん「これが私の愛娘です」
金魚「……ぷくぷく」
重斧士「金魚じゃねえか」
武闘家「金魚だわ」
魔剣士「こりゃ見事な転覆病だな」
白旅人「すぐに治療できますよ」
ぽわわ
436 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:47:35.64 ID:oJgvoud0o
金魚「!」
金魚「〜〜〜♪」
武闘家「わあ! すごい!」
魔剣士「科学的に治療法が確立されてない病気は、普通の魔術じゃあ手の施しようがないからな」
魔剣士「これはすげえ」
おっさん「ありがとうございます、ありがとうございます!」
おっさん「流石、どんな難病でも治す奇跡の力を持った魔適体質者様です!」
おっさん「ぜひお礼をさせてください」
白旅人「お礼なんて、いいですよ。お役に立ててよかったです」
白旅人「……どんな難病でも……か」
437 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:48:14.39 ID:oJgvoud0o
武闘家「ねえねえ、他人の魔適傾向を上げることってできるの?」
白旅人「それはとても特殊な術ですからね」
白旅人「そのようなことができる魔適体質者は長いこと生まれていないそうですし、」
白旅人「可能だったとしても、今は国際法で禁じられています」
白旅人「この世界のバランスを壊してしまう行為ですからね」
武闘家「ふうん。確かに問題の元にはなっちゃうかもしれないわ」
重斧士「それができる奴とできねえ奴って、どう違うんだろうな」
438 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:50:50.49 ID:oJgvoud0o
魔剣士「おまえの頭見てたら牛乳飲みたくなってきた」
白旅人「はは、よく言われます」
魔剣士「半ば冗談だったんだが……そうか、よく言われるのか」
武闘家「……珍しいわね。あなたが初対面の人とこんなに早く打ち解けるなんて」
魔剣士「すぐに親しくなっても大丈夫な奴はなんか本能でわかるんだ」
――夜、宿
魔剣士「……頼られ過ぎる人生は、やっぱ生きづらいか?」
白旅人「そうですね。だから各地を転々としているんです」
白旅人「一箇所に留まっていると、どうしても人々の人間性が変わってしまうんです」
魔剣士「他力本願になるんだろ」
白旅人「はい。よくおわかりで」
白旅人「僕は人の笑顔が好きです。人の役に立つことが生きがいです」
白旅人「僕のような魔適体質者でなければ助けられない人がいたら、」
白旅人「自ら進んで助けたいと思います」
白旅人「しかし、僕の存在によって、人々の心が歪んていくことが悲しくて仕方がありません」
白旅人「だから、彼女は僕を救おうと……」
白旅人「あなたこそ、苦労してきたんじゃないですか」
439 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:53:54.56 ID:oJgvoud0o
魔剣士「俺は自分の好きなように生きることしか考えてねえからな」
魔剣士「植物関係の頼み事をされることは多いが、そう苦に思ったことはないんだ」
魔剣士「ただ……末の妹が心配でさ」
魔剣士「魔適傾向が80くらいあって、目の色が魔力に染まってるんだ」
白旅人「ほう。どんな色なんです?」
魔剣士「柔らかいラベンダーだ」
白旅人「いいですね。思慮深き慈愛の色です」
魔剣士「見る人によっちゃあ、目の色が魔力の影響受けてるってわかっちまうみたいでさ」
魔剣士「母さんもそのくらい魔適傾向が高くて、面倒な頼み事をされることが時々あるし」
魔適傾向が100マジカルを越している魔適体質者でなくとも、
80もあれば虹彩が魔力の色に染まり、常人よりはイメージで発動できる魔術の種類が増え、
威力も大きくなる。
50ほどだと、魔力容量次第ではそこそこ強力な術を扱えるようになるが、
属性や威力は限定される。父さんがそうだ。
魔剣士「周囲と違うところがあるせいで、寂しい思いをしちまったら可哀想だなって」
白旅人「妹思いの、優しいお兄さんなんですね」
魔剣士「えっ……あ、んー……どうだろうな」
青い石「すーなーおーじゃーなーいー」
(黙ってろ!)
440 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:54:27.59 ID:oJgvoud0o
白旅人「どんな人であれ、誰もが悩みを抱えるものです」
白旅人「そして、悩むからこそ、答えを見つけた時に強くなれるんです」
白旅人「あなたのようなお兄さんがいるなら、きっと大丈夫ですよ」
魔剣士「う……」
なんか調子狂うな……。
魔剣士「えっと……ありがとな」
白旅人「いえ」
白旅人「悩んでいる時、人の心には弱みができます」
白旅人「自分で悩みを解決したり、誰かの助けを得られたりできればいいのですが、」
白旅人「時に、その弱さを利用して、思いのままに人を操ろうとする者が現れます」
白旅人「僕の従者は、心を弱らせていたために悪人の手を取ってしまいました」
魔剣士「…………」
白旅人「……オディウム教に限った話ではありませんが、」
白旅人「新興宗教や自己啓発セミナーの中には、何かしらの悩みを抱えて弱っている人や、」
白旅人「社会的弱者ばかりを狙って悪事を働こうとしているものが少なくありません」
白旅人「もちろん全てが悪いとは言いません」
白旅人「真に人を導きうるものも存在するでしょう」
441 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:54:55.30 ID:oJgvoud0o
白旅人「救いを求めている人の前に立つ、救世主の仮面を被った悪人を僕は許すことができません」
白旅人「ああ、すみません、僕ばかり喋ってしまって」
白旅人「いつもは聞き役に回っているのですが」
魔剣士「聞き上手な奴ほど、自分の欲求抑え込みがちだからな」
魔剣士「吐き出せるだけ吐き出しとけ」
白旅人「あはは……ありがとうございます」
白旅人「不思議ですね。あなたにとても親近感が沸くんです」
魔剣士「……お互い、孤独を感じて生きている時間が長かったんじゃないか」
白旅人「そうですね。その通りなのでしょう」
魔剣士「……なあ、俺達と一緒に来ないか」
白旅人「ありがたいお申し出ですが……今回はお断りさせていただきます」
魔剣士「え……」
白旅人「あまり大人数で行動するのに慣れていないものでして」
魔剣士「ああ……そっか」
442 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:55:42.80 ID:oJgvoud0o
翌日。
白旅人「では、僕はこれで」
魔剣士「気をつけてな」
武闘家「あら……あれ、何かしら?」
村の近くの岩壁に巨大な扉があった。
司祭「……困りました」
村民「どうしましょう、これでは祭りができません」
巫女「うう……ごめんなさいごめんなさい」
武闘家「どうしたんですか?」
司祭「この洞窟の中は神殿になっていて、祭りを行うための神具が収められているのですが……」
巫女「私が五回扉を開くための言霊を間違えてしまったので、ロックがかかってしまったんです……」
ああ……パスワードを間違えすぎてログインできなくなったのと同じ状態か。
443 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:56:56.69 ID:oJgvoud0o
司祭「ロックを解除するための条件はそこに彫られているのですが、」
司祭「特殊な暗号なものですから……」
村民「昔は解読法を記した本があったのですが、」
村民「魔族の襲撃を受けた際に失われてしまったそうなんです」
武闘家「そうなんですか……困りましたね」
村民「祭りを行い、野菜や草花の精霊に感謝を伝えなければ、」
村民「この村は実りを失ってしまいます……」
精霊に気持ちを伝える手段が失われるのはまずい。
武闘家「……メルク君ならどうにかできそうだけれど」
重斧士「もう行っちまったしな。追いかけるか?」
魔剣士「魔適体質者に頼る癖がつくのはよくない。他の方法を考えないか」
重斧士「力づくで扉を破壊するか?」
司祭「なりません! この扉も歴史的な文化遺産なのです」
武闘家「横からトンネルを掘るとか……」
司祭「内部も芸術的な装飾が施されていますので……」
魔剣士「……こういうの得意な知り合いがいるんだ」
魔剣士「そいつならこれを解読できるかもしれねえ」
444 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:57:52.65 ID:oJgvoud0o
ただ、あまり頼りたくない相手である。
歌姫『連絡してくるなんて珍しいじゃなぁい』
魔剣士「解読してほしい古代遺跡の暗号があるんだが」
歌姫『まあ! あなたがあたくしを頼るなんて!』
歌姫『天地がひっくり返ったかと思いましたわ』
魔剣士「うっせ。メッセンジャーに画像送るからな」
歌姫『普段なら依頼料を要求するところですけれど、』
歌姫『幼馴染のよしみで特別にタダでやってさしあげますわ!』
魔剣士「と言いつつどうせ恩着せがましくしてくるんだろ」
魔剣士「礼をさせてくれた方がありがてえんだがな」
歌姫『では、今度会った時お買い物に付き合ってくださいます?』
魔剣士「あーあー男避けになりゃいんだろ。わかったよ」
ピッ
武闘家「男避け?」
魔剣士「あの女見た目だけはいいからな」
魔剣士「男の付き添いなしで外出するとナンパされ過ぎて大変だそうだ」
性格は凄まじく面倒なんだがな。プライドの高い高慢ちきだ。
ちなみに幼馴染と言えるほど親しいわけじゃないし仲も悪い。
445 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:59:16.14 ID:oJgvoud0o
翌日。
歌姫「わざわざ出向いて差し上げましたわ!」
魔剣士「いやいやいやなんでここにいるんだよ」
普段は俺と同じ大学の文学部に通っている。
俺と同い年だが、こいつも飛び級しており、今は学部四年だったか修士一年だったか……。
考古学専攻の歴史オタクだ。
歌姫「たまたまこの国の城下町の大学に寄る用事があって、近くまで来ていましたの」
魔剣士「はあ……」
歌姫「相変わらずヒョロいくせに背ばかり高くてキモいですわね」
歌姫「アンバランスですわー」
魔剣士「うるせえしばくぞ」
歌姫「まあ! うら若き乙女に対してなんて乱暴なのでしょう」
重斧士「すげえ美女だな……」
武闘家「あの子、見たことあるわ」
武闘家「確か、インテリ系カリスマ歌姫の……」
446 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 01:00:06.07 ID:oJgvoud0o
歌姫「お初にお目にかかります。あたくし、クレイオーと申します」
歌姫「またの名を、麗しき彗星☆ハルモニアですわ!」
歌手としての芸名らしい。
歌姫「さあ、早く案内なさいヒョロガリウス!」
魔剣士「誰がヒョロガリウスだこの高飛車女」
腕を引っ張られた。強引な奴め。
重斧士「あいつら仲良いな」
武闘家「…………」
歌姫「このあたくしが解読して差し上げたのだからありがたく思いなさぁい!」
魔剣士「あーはいはいありがとうございますう!」
文学部のアポロン先生と同じ黄金色の髪が風になびいた。
447 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 01:02:05.98 ID:oJgvoud0o
kokomade
不具合は意外とすぐ直りました
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 01:37:22.82 ID:SH7G+V12o
アポロン君、結婚したのか
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 01:38:39.88 ID:7Vw4A8Zq0
ガラハドさんがさりげなくフサフサになってるぞ
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 03:33:36.58 ID:0I81zj5XO
乙
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 12:48:48.75 ID:ZxPorYqs0
アポロン結婚出来たのか(困惑
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 12:59:03.81 ID:K0G1IGTrO
>>451
君つけないと般若顔で睨まれるぞ
453 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:39:43.76 ID:2eCgujgHo
第十六株 マジナイ―呪い―ノロイ
歌姫「これは二千年程昔にこの地方の魔術師の間で流行していた暗号ですのよぉ」
歌姫「少々製作者のオリジナリティが入っているようですけれど、」
歌姫「解読に大した時間は要しませんでしたわぁ! ぉおーっほっほっほっほっ!」
いちいち上がる語尾がなんとも耳障りだ。
司祭「助かりました……ありがとうございます」
巫女「よかったです……ふぇぇぇ……」
司祭「こちらは村で採れた野菜です。どうぞ」
歌姫「エリウス! 久々にあなたの料理を頂いて差し上げますわ!」
魔剣士「言われなくても作るっての……」
454 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:40:42.11 ID:2eCgujgHo
武闘家「……首を突っ込んだのはあたしだったのに、また何も手伝えなかった」
重斧士「まああいつ色々できるし、なんだかんだで人脈あるみてえだからな」
武闘家「なんだか情けないわ」
歌姫「ふう。美味ですわ」
魔剣士「そりゃどうも」
歌姫「あなたから料理の腕を取ったら顔と学力と地位と名誉と財力と謎の能力しか残りませんものね」
重斧士「充分じゃねえか……?」
武闘家「…………」
歌姫「ご馳走様でした。ヴォイストレーニングをして参りますわ」
歌姫「あ・あ・あぁ〜〜」
重斧士「なあ、女装してた時のおまえとあの子の話し方、そっくりじゃねえか?」
魔剣士「そりゃあいつをモデルにしたからな」
魔剣士「あいつみたいに高慢に振る舞うことでストレスを発散したかったんだ」
重斧士「なるほど」
武闘家「ふうん……」
455 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:41:28.71 ID:2eCgujgHo
魔剣士「……別にあいつとは何もないからな」
魔剣士「あいつの親父さんと俺の母さんが仲良くて、顔を合わせる機会が多かっただけだ」
歌姫「ああ、そうですわ」
歌姫「城下町まで送ってくださります?」
魔剣士「元々行くつもりだったからいいけど、俺達と一緒だとあぶねえよ」
魔剣士「オディウム教の連中にたまによく襲われてっから」
歌姫「それならお役に立てると思いますわよ」
歌姫「しばらく前、古代の文献に記された不思議な術を発見しましたの」
歌姫「音楽と魔導が融合した“魔奏術”」
歌姫「己の魔力により、音楽の持つ“心を動かす力”を大幅に増幅することができますわ」
歌姫「音を楽しむ感受性がある者の心はあたくしの思うがまま! おおーっほっほ」
歌姫「敵の戦意なんて地の底に沈めて差し上げますわぁ!」
魔剣士「下手な洗脳術より恐ろしいな」
歌姫「あなたには効かなさそうですわね」
魔剣士「うっせ」
魔剣士「つかおまえ、事務所のボディガード連れてこなかったのか?」
456 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:42:02.68 ID:2eCgujgHo
歌姫「事務所とは喧嘩いたしました」
魔剣士「え、なんで?」
歌姫「魔奏術を芸能活動に使えと言われましたの」
魔剣士「使えば人気上げ放題だろうな」
歌姫「あたくし、歌には誇りを持ってますのよ」
歌姫「枕営業などは一切行わず、実力で輝いてきました」
歌姫「特殊な術を用いたインチキなんてプライドが許しませんわ」
歌姫「これからはフリーランスで活躍してみせます」
高慢ちきの酷い性格の女ではあるが、実力はあるし努力家であることは確かだ。
――森の中
物騒な恰好をした連中が現れた。
歌姫「鎮静の旋律<クワイエット・メロディ>」
歌姫「〜〜〜〜〜〜♪」
クレイオーは術を発動した状態で歌った。
457 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:42:35.42 ID:2eCgujgHo
「何故俺は武器なんて持ってるんだろう……?」
「なんか……眠いな……」
「襲おうとしてごめんなさい……!」
武闘家「綺麗な歌声……」
大男「何攻撃やめてんだゴルァアアアア!」
歌姫「まあ」
魔剣士「はっ!」
近くの木に魔力を与え、枝で大男を殴ってもらった。
歌姫「やっぱり音楽を嗜まない粗暴な人間には効きませんのね。残念ですわ」
重斧士「敵の数を大幅に削ってくれるだけでもありがてえよ」
歌姫「エリウス、あなた食べたわけでもない植物も操れるようになりましたのね」
魔剣士「操ってるわけじゃない。お願いを聞いてもらってるだけだ」
458 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:44:54.87 ID:2eCgujgHo
生命の結晶との融合率が上がり、精霊に与えることのできる力の種類が随分増えた。
精霊が俺の代わりに魔術を発動してくれるおかげで攻撃範囲が大幅に広くなったし、
植物本体を動かしてもらうこともできる。
ただし魔力の消費量は多い。
――城下町
歌姫「では約束通りお買い物に付き合っていただきます」
魔剣士「こいつらも一緒でいいか?」
魔剣士「二人きりだとそれはそれで面倒なんだよ」
歌姫「あら。せえっかくこのあたくしとでぇとする好機ですのにぃ?」
魔剣士「冗談もほどほどにしろよおまえ」
459 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:45:46.36 ID:2eCgujgHo
魔剣士「おまえと一緒に歩いたせいであらぬ噂を立てられたり」
魔剣士「パパラッチに写真取られたりゴシップ誌にとんでもねえこと書かれたり」
魔剣士「俺が散々な目に遭わされてきたのを忘れたか」
歌姫「あなたこそ女避けができて好都合でしたでしょ」
魔剣士「それもそうだが……」
歌姫「仕方ありませんわね」
魔剣士「俺が非力なの知っててこんだけ荷物持たせるとはおまえほんと鬼畜だよな」
歌姫「鍛えて差し上げてますのよ。感謝なさい……って」
歌姫「あらあらあら?」
歌姫「以前よりは逞しくなったようですわね?」
ぺたぺた体を触られた。
歌姫「……あら? 女性化乳房なら病院に行くことをお勧めいたしますわよ……」
魔剣士「ほっとけ!!」
歌姫「ヤバい病気だったらどうしますの」
歌姫「肝機能の低下か乳がんか精巣腫瘍が原因かもしれなくてよ」
魔剣士「ホルモンバランスが崩れてるだけだから!!」
距離感が近過ぎて嫌になるが、あまり拒絶し過ぎて怒らせても面倒なことになる。
武闘家「……いくら幼馴染でも、付き合っていないのにこんなに触るものかしら」
重斧士「ま、まあ、兄妹みたいな感覚なんじゃねえか?」
460 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:46:55.47 ID:2eCgujgHo
歌姫「胸筋かと思ったら脂肪だったなんてとんだ詐欺ですわー」
テストステロンを増やすために筋トレは欠かさず行っているが、
鍛えられた胸筋によって脂肪が底上げされてしまった。
筋トレしたところで胸の脂肪が落ちるわけではなかったのだ。
完全にミスった。当分腕立て伏せはやらんぞ。
一応服を着ていれば目立たない程度ではある。
歌姫「次のお店に行きますわよおっぱい男」
魔剣士「て、てめえ……」
殴りてえ……。
おもしろキャラとして愛されているアポロン先生とは違い、
こいつはただただ性格が悪い。
「おい……あれハルモニアじゃないか?」
「ち、近くで見るとほんと美人だな……」
「すげえぼんっきゅっぼんだぞ」
「くそっ、声かけたいのにでけえ男が二人も傍に……」
記者「すみませ〜ん、わたくし、月刊ファッション誌FUNFUNの記者なんですけど、」
記者「今、美男美女カップルにインタビューをお願いしてまして〜」
461 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:47:24.66 ID:2eCgujgHo
歌姫「あら」
記者「お二人はいつからお付き合いなさってるんです?」
魔剣士「付き合ってねえよ」
歌姫「この男はただの召使いでしてよ! おぉ〜っほっほっほ」
武闘家「……ちょっと、あなたエリウスのこと馬鹿にしすぎじゃない!?」
武闘家「それに、周囲の人から誤解されないようにもうちょっと離れて歩いたら!?」
歌姫「んっふ……あなた、もしかして……こいつに気がありますの?」
武闘家「なっ……」
魔剣士「ちょっ」
記者「あ、いいですね〜この修羅場……記事にはできませんけど……」
クレイオーに腕を組まれた。
こいつ、カナリアを挑発してやがる。
歌姫「やめときなさいなぁ、こんなド変態」
歌姫「大学では毎年残念なイケメンランキング一位に輝いているような男なんですのよ?」
462 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:48:02.27 ID:2eCgujgHo
武闘家「べ、べ、別にあたしはっ……」
歌姫「あら……もしかして本当に?」
武闘家「……エリウスは、いいところだって、いっぱいあるしっ……」
歌姫「知ってますわよ? お・さ・な・な・じ・みですもの」
歌姫「他人との意思の疎通が極端に下手なせいで捻くれちゃってますけれど、」
歌姫「根は優しいですわ、この男」
歌姫「で・もぉ」
歌姫「昔馴染みでもないとぉ、エリウスは操縦しきれませんわぁ!」
魔剣士「いい加減にしろクレイオー! おふざけが過ぎるぞ」
武闘家「操縦って……人を乗り物みたいに……!」
歌姫「『夫を操縦する』って、言いますでしょ? おぉ〜っほっほ」
魔剣士「っだーもう! ほら、さっさと行くぞ!」
こんなことを言っているが、クレイオーは決して俺に気があるわけではない。
カナリアを嫉妬させて楽しんでいるだけだ。
それはとんでもない地雷だってのに。
重斧士「……やれやれだな、まったく」
463 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:48:54.96 ID:2eCgujgHo
歌姫「この服、似合いますかしら」
魔剣士「あーうんそのくらい派手なのがおまえには似合ってるよ」
店員「彼氏さんはこちらの服いかがです?」
魔剣士「だから彼氏じゃねえって。それに俺そういうV系の服着ねえから……」
店員「似合いそうですのに」
歌姫「試着するだけしてみなさい」
めんどくせえ……。
魔剣士「おらどうだ」
店員「まあ! メイクまでバッチリ!」
V系メイクを携帯で検索し、短時間で仕上げた。
目元から頬にかけてはヴィンテージなアートメイクを施してある。
歌姫「ふっ……ふふっ……」
歌姫「似合いすぎて笑ってしまいますわ……あははは……!」
魔剣士「どうだガウェイン。いつにも増して美しいだろう」
重斧士「デビューしちまえよもう」
武闘家「……ノリノリじゃない」
464 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:49:31.73 ID:2eCgujgHo
結局V系の服は着たまま購入した。
歌姫「この街には、自由にストリートライブを行っていい区画がありますの」
歌姫「久々にやりますわよ」
魔剣士「買い物に付き合ったんだからもういいだろ……」
魔剣士「つうかこの恰好で俺にオカリナを吹けと」
V系のスタイルでオカリナは……アリなのだろうか? ミスマッチすぎないか?
歌姫「……ギターか何かできませんの?」
魔剣士「俺がオカリナとリコーダーしかできねえのは知ってんだろ」
歌姫「…………」
魔剣士「どうしても俺に伴奏やらせてえなら女装してきていいか?」
魔剣士「やっぱ男女二人組の状態で目立ちたくねえし」
歌姫「……いいですわよ。精々あたくしの引き立て役になってくださいな」
465 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:50:14.36 ID:2eCgujgHo
濃いものの静かそうな印象を与えるメイクに変え、長髪のウィッグを被った。
ドレスは清楚な青系だ。
クレイオーが高飛車系お嬢様だからキャラを分けた方がいいだろう。
そう思っておしとやか系お嬢様キャラになってみることにしたのだ。
魔剣士♀「どうかしら」
歌姫「!?」
歌姫「……ヒョロガリウスのくせに生意気ですわ」
何故俺がオカリナを吹けるか?
生け花と同じ理由で母さんに習わさせられていたからだ。
最初は真面目にやるつもりが全くなかったのだが、
父さんが木製のオカリナを買ってくれてからは練習するようになった。
魔剣士♀「学際の時に演奏した曲でいいかしら?」
歌姫「ええ」
歌姫「さあ皆様! 注目なさぁい! 麗しき彗星☆ハルモニアの歌が響きますわよ!」
「なんだなんだ?」
「うっわすごい美女二人組だぞ」
「ハルモニアたんは知ってるけど後ろの子は何者だ?」
466 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:52:31.50 ID:2eCgujgHo
感受性はどうか知らんがテクニックだけは身についた。
上手いけど気持ちが籠ってないのよねえと先生には言われたっけな。
流石に伴奏がオカリナだけじゃ弱いから、ピアノの録音を再生する。
歌姫「あさーつーゆーに映えーる閃光〜♪」
魔剣士「……〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
重斧士「あいつのオカリナテクすげえな」
武闘家「息、ぴったりだわ」
重斧士「ええと…………」
武闘家「……あたし、そこのお店見てくるわね」
重斧士「俺も一緒に行くぞ!」
重斧士「カナリア…………!」
重斧士「…………おかしいな。一瞬で見失っちまった」
――――――――
あれ? ここ、何処……?
人混みに押されて、気づかない内に変なところに迷い込んじゃったのかしら。
武闘家「…………はあ」
わかってる。あの二人は別に好きあってるわけじゃない。
でも、嫉妬心は抑えようがなかった。
467 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:53:39.03 ID:2eCgujgHo
あの子はあたしよりもずっと美人だ。スタイルもいい。
筋肉で引き締まった硬いこの体と違って、女の子らしい柔らかさがある。
気まずくなっちゃったあたしと違って、あいつに好きなだけ近づいて好きなだけ会話してる。
あたしの知らないあいつのことをたくさん知ってる。
あたしとあいつが過ごした時間よりも、
あの子とあいつが過ごした時間の方が、ずっと長い。
……はっきり振られている以上、あたしにはもう何もできることなんてないのに。
振られても、それでも一緒にいたかった。
だから、ついてきた。
でも、この頃なかなか会話が噛み合わないし、
話しかけても、まともに話せる自信がなくて引いてしまうことも多い。
告白してすっきりするはずだったのに、おかしいな。
苦しいよ。
占い師「そこのあなた」
武闘家「……あたし?」
468 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:54:35.96 ID:2eCgujgHo
占い師「恋の悩みを抱えているようですね」
武闘家「…………」
占い師「失恋の色が出ています」
占い師「状況を好転させたくはありませんか?」
武闘家「そりゃ、そうだけれど……」
あたしはあまり占いなんかには頼らない方だ。
でも今は、なんの確実性もないものに対しても縋りたくて堪らない。そんな気分だ。
気休めが欲しい。
占い師「深呼吸をして、気持ちを落ち着けてください」
占い師「あなたの好きな方は、どんな方ですか」
武闘家「……器用なのに不器用で、あたしに異性としての興味は全くなくて、」
武闘家「でも、友達としては大事にしてくれる人」
占い師「あなたは、彼を振り向かせるために、どのような努力をしてきましたか?」
武闘家「っ……」
武闘家「努力したって、無駄だもの」
武闘家「あいつのために料理したり、あいつのしたいことを手伝ったりはしたけど……」
469 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:55:10.36 ID:2eCgujgHo
占い師「ふむ」
占い師「恋愛は駆け引きです。“押し”と“引き”の加減が重要なのですよ」
武闘家「もう何やったって駄目よ。告白して振られてるんだもの」
占い師「告白してからが勝負ですよ!」
占い師「気持ちを伝えられたら、相手はあなたのことを意識せずにはいられなくなるものです」
占い師「これからのあなたの行動次第で、彼はあなたに好意を寄せるようになります」
武闘家「そう……かしら」
占い師「これから、あなたにまじないをかけましょう」
占い師「まじないが、“押すべき時”と“引くべき時”をあなたに教えてくれるのです」
武闘家「でも、あたし、この気持ち……早く忘れたいの」
武闘家「ただ、友達としてあいつと付き合っていけたら、って……」
占い師「でも、まだ好きなのでしょう?」
占い師「このまじないは、“引くべき時”に完全に気持ちを抑えてくれます」
占い師「普段は恋の苦しみを感じずに済むようになるのですよ」
武闘家「本当に……?」
470 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:56:29.06 ID:2eCgujgHo
占い師「目を閉じて。魔力を解放し、心を無にしてください」
武闘家「…………」
占い師「そうです。儀式が終わるまで、その目を開けてはなりませんよ」
占い師「くくく……」
占い師「もう大丈夫ですよ。あなたに、この愛の箱をお渡しします」
占い師「“押すべき時”に、あなたは自ずとこの箱を開けるでしょう」
重斧士「カナリア! ここにいたのか」
重斧士「こんなに近くにいたのになんで気づかなかったんだろうな……まあいいか」
武闘家「…………」
重斧士「……大丈夫か?」
武闘家「ごめんなさい。ちょっとぼうっとしちゃって。平気よ」
471 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:57:13.14 ID:2eCgujgHo
――――――――
魔剣士♀「大丈夫ですか?」
占い師「う……」
占い師「あれ……私は一体……」
魔剣士♀「ここで気を失っていたのですよ」
魔剣士♀「病院までお送りしましょうか?」
占い師「い、いえ! だだだ大丈夫です!」
占い師「こんなに美しい女性のお手を煩わせるわけには参りません!!」
魔剣士♀「まあ」
歌姫「キモいですわ」
歌姫「では、あたくしはここで」
魔剣士「じゃあな。……疲れた」
472 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:57:50.22 ID:2eCgujgHo
武闘家「エリウス!」
重斧士「おーいたいた」
魔剣士「何処行ってたんだよおまえら。心配したじゃねえか」
カナリアがガウェインとくっついてくれたら気が楽になるんだけどな。
歌姫「あ、カナリアさん。ちょっといいかしら」
武闘家「なあに?」
歌姫「さっきは意地悪なことをたくさん言ってしまってごめんなさいね」
歌姫「あんまりにもあなたがウブくて可愛らしかったから、」
歌姫「ついついいじめたくなってしまいましたの」
武闘家「いいのよ。もう気にしてないから」
歌姫「!? ず、随分さばさばしてますのね」
歌姫「これはお詫びの品ですわ」
歌姫「運命の相手を引き寄せてくれる、魔法のブレスレットですのよ」
武闘家「ありがとう。あたし、絶対に幸せになるわ」
歌姫「素直な子ですこと……」
473 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:58:16.56 ID:2eCgujgHo
魔剣士「おまえ、なんか魔力に違和感あんだけど……」
武闘家「そう? うふふ。不思議な魔法にでもかかっちゃったのかしら」
微妙だけどなんか混じってるような……まあ気のせいか。
しかし妙に機嫌がいいな。
魔剣士「カナリアと何やってたんだ?」
重斧士「ちょっとこの辺歩いてただけだぞ」
魔剣士「ふうん」
携帯にメールが届いた。
プライベート用のでも仕事用のでもなく、大学のアドレス宛だ。
474 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 18:01:13.52 ID:2eCgujgHo
送信者:アポロン教授 “apollon.classic@uni-sunrise.ac.south”
うちの長女の婿になる気はないかね?
冗談じゃねえ。つか大学のメールで変なもん送ってくんなっての。
「非常に申し訳ございませんが俺好きな子いるんでお断りさせていただきます」
と送って携帯をスリープ状態にした。
武闘家「ねえエリウス」
魔剣士「ん?」
武闘家「んふ。なんでもないわ」
475 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 18:01:43.82 ID:2eCgujgHo
kokomade
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/24(水) 22:43:52.19 ID:lCHMviqbO
乙
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/24(水) 22:49:12.79 ID:r5LlNh2jo
丸太とか馬鹿にされてるけど木の枝で殴ったら大質量攻撃だからかなり強いよね
478 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 00:01:26.93 ID:/w0d41Fa0
アポロン先生の嫁どんな人なんだろうな
てか嫌な予感しかしない
479 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 18:59:03.72 ID:u00JsKfPO
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