勇者「魔王? 知らんよ俺は女とイチャイチャするんだ!」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 21:50:33.27 ID:iASEfC8lo
俺も思ってたけどバトル描写がかっこよくて忘れてました
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 22:09:17.34 ID:+v1XOgxr0
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 22:18:00.23 ID:ubDKw6gLO
ハーレム増やすの……?
増やしたい?
じゃあ今度安価するね
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 22:36:02.65 ID:I0ITBO3I0
でも増やしすぎると他の子の出番ががくんと減るから増えても2,3人がいいなぁ
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/01(土) 23:41:39.47 ID:ZxRWSgKJ0
個人的には盗賊がかわいくて好きだからいいけど、そういう展開もあるのかなと思っただけです。
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 02:45:18.24 ID:E5iWp6S10
3人に警戒されるようなポジションの子が一人いてもいいかもしれないけど3人とも可愛いしどちらでもいい
354 :saga :2017/04/02(日) 11:40:56.79 ID:VZ27GbXv0
355 :saga :2017/04/02(日) 11:41:34.11 ID:VZ27GbXv0
はよ
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 11:59:26.65 ID:5oIyEBFjo
>>354-355
sageられないんだったら書き込むんじゃねぇよks
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 14:03:13.41 ID:BVir/GZBO
鎧の中は美女みたいな展開かなぁと思っただけよ。実力が勇者と同じぐらいの騎士とかいいやんけと思った
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 23:51:31.79 ID:c6yVKJDhO
人は増やさないほうがいいな
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:29:14.20 ID:0pc8mJfuO

勇者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

魔法使い「……なに」

勇者「御者台の振動が傷に響くんだよなぁ」

賢者「ならもう少し治しますよ? 今から回復魔法かけてもきっとその胸の傷は跡として残りますし」

勇者「あ゛ー……いや、なんとなくいい」

盗賊「なんでー?」

勇者「しばらく忘れたくない気がするから」

魔法使い「……分かるような分からないような」

盗賊「つん」

勇者「ぐぉぉああああああっっ!!」

賢者「……盗賊、それはかわいそうですよ」

盗賊「こんな痛がるのに治さない気持ち本当に分かる?」

魔法使い「……やっぱり分からない」

勇者「てめぇ糞ガキ…… 覚えてろよ……」

360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:30:49.69 ID:0pc8mJfuO

魔法使い「……雨」

勇者「あー天気悪いとは思ってたがついに降ってきたか」

盗賊「濡れちゃうよー」

賢者「盗賊、風邪ひいちゃいますから荷台の中に入りますよ」

盗賊「うん、魔法使いは?」

魔法使い「……私は平気。 とんがり帽子あるから」

魔法使い「……それに雨の中、ここに勇者一人は寂しいと思うから」

勇者「健気だ…… よし、魔法使い! 俺と濡れて、濡れ濡れなことするか!」

魔法使い「……だめ」

盗賊「はぁ、サイテー」

賢者「……魔法使いは帽子ぎゅっと被って満更でもなさそうですけどね」

魔法使い「……そ、そんなことない!」

盗賊「うわっ、ほんとだ! 魔法使いが必死っぽくで逆にガチだ」

魔法使い「……うー」

勇者「顔真っ赤だな」

魔法使い「……見ちゃダメ」グイッ

勇者「ぶっ……やべ、半勃ち」

361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:31:31.05 ID:0pc8mJfuO

勇者「あーさみぃなー」

魔法使い「……火炎魔法使う?」

勇者「そりゃ熱いだろ」

魔法使い「……加減する」

勇者「それでも火傷必至だわ」

魔法使い「……うーん」

魔法使い「……ならくっつく」


ピト


勇者「お、やわらけえ」

魔法使い「……太ってないよ」

勇者「そうじゃなくて女の子の柔らかさだなって」

魔法使い「……んー?」

勇者「ふにふに」

魔法使い「……おっぱいない」

勇者「女の子はおっぱいだけじゃねえだろ」

勇者「柔らかい足」ツー

勇者「気持ちいいお腹」

魔法使い「……んっ」

勇者「おいしそうな二の腕」

勇者「もちもちの頬」

魔法使い「あっ…… ちょっと、触り方やらしいよ…?」

勇者「ぷっくりした唇」チュ

魔法使い「……んんっ」

魔法使い「んちゅ……あむ…ぁ……んっ……」

勇者「お、顔が蕩けてきたな」

魔法使い「……だめなの、今日は」

勇者「ありゃ、女の子の日?」

魔法使い「…………」コクコク

勇者「そっかー」

362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:32:58.22 ID:0pc8mJfuO

勇者「でもそれ、ムラムラするだろ? おっぱいだけでいかせてやるよ」

魔法使い「……!? やっ、あぁっん! だめっ、いやっ!」

勇者「嫌って言ってる割に体は拒否してねえぞ?」

魔法使い「……ひゃ……だって、勇者に……力で勝てない……!」

勇者「抵抗もしないくせに何言ってんだ。 お前はそうやって俺に無理やりやられたって思いたいだけだろ」

勇者「本当は自分もしてもらいたいのに、俺のせいにしてそれを認めたくないだけだ」

魔法使い「ち、ちが…… あっ……!」

勇者「でも、いいんだよそれで。 俺に任せて気持ちよくなるのにだけ集中しろ」

魔法使い「集中なんか……あぅっ…… そこ、だめっ…」

勇者「ほら、胸に意識しっかり向けろよ? 乳首がどんどん立ってきて気持ちよくなりたいって言ってるぞ?」

魔法使い「あっ…… らめっ、そこは気持ちよすぎ……」

勇者「コリコリってして、気持ちいいだろ? こんなにいやらしく立って、魔法使いはやっぱりいやらしい子だな」

勇者「本当は期待してたんだろ?」

魔法使い「……ぅー」

魔法使い「……うん…」

勇者「可愛いな」

魔法使い「ひゃぁん! だ、だめ! そんな乱暴に、あぁんっ!」

魔法使い「……だめだめ……待って、おかひくなっひゃう……」

魔法使い「〜〜っぁぁ! やぁぁ……!」

魔法使い「いく……ひゃっ…!」

魔法使い「あぅ……んん〜〜〜っ……!」

勇者「おー、えっろい顔」

魔法使い「……ばかぁ」

363 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:33:41.10 ID:0pc8mJfuO

魔法使い「……建物ある」

勇者「あぁ、ホントだな。 雨宿りさせてもらおうぜ」

魔法使い「……うん、そうしよ」

勇者「っつうかなんかさ」

勇者「雰囲気やばくね?」

魔法使い「……呪いの館?」

勇者「そんなんだったら除霊してやるわ」

魔法使い「……物理的なのは除霊とは言わない」

勇者「幽霊でもなんでもかかってきやがれ」

魔法使い「……ねぇやっぱりやめよ。 ここ嫌な気配がびんびん」

勇者「あれぇ? 魔法使いさん怖いんですかぁ?」

魔法使い「……こわい…… だからやめよ? ……ね?」

勇者「よし、いくぞー」

魔法使い「やだぁー…… いーやーだぁー…… 勇者のばかー」

364 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:34:12.09 ID:0pc8mJfuO
また後で昨日本当はここまで投下しようと思ったんだけど寝てしまったすまぬ
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 20:39:18.47 ID:0pc8mJfuO
ちなみになんだけど上地の文使わずにセリフだけで書いてみたんだけどどっちがよさげ?
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 21:03:59.42 ID:635kwvkdo
地の文ありの方が描写分かりやすいしエロいけど、台本形式でも全然読める
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 21:06:36.52 ID:dA2F2VBL0
どっちでも読めると思うけど、字の分があったほうがっていうのが上と同じ
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 21:09:19.70 ID:wS33e9TFo
日常パートとかのゆるいとこは無いほうがスイスイ読める
それ以外のパートに地の分つけてもらえると、「おっ来るな」と思いつつパンツ脱げるから助かる
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 22:42:22.83 ID:ZlfUG+1yO

暗雲が立ち込め、暗くなっているのにも関わらず、そこにある洋館に明かりはついていない

手入れがされていないのか草は生い茂っている。 正面の門は錆びつき、軋みながら開き、魔法使いがそれを忌まわしげな目で見る

荒廃したこの館からはみるからに不気味な雰囲気が漂う
魔力の感知に疎い一般人でさえ、この洋館をみれば肝を冷やすに違いない

だが魔法使いのように魔力を敏感に探知出来る者にとってはこの館は地獄そのものだと感じた


魔法使い「……ねぇ、やめよ? ここ呪われてる」

盗賊「呪い?」

魔法使い「邪悪な魔力がこれでもかってくらい漏れてくるよ……」

勇者「まぁまぁ、雨に濡れるの嫌だし行こうぜ」

魔法使い「……話聞いてよー…… 嫌だよここ入るの」

盗賊「……震えてるよ魔法使い、大丈夫?」

魔法使い「……大丈夫じゃにゃい。 ほんとに怖いのに……」

勇者「俺が守ってやるってー。 旅の中での雨よりやばいものなんてねえよ」

魔法使い「……絶対ある」

盗賊「じゃあ魔法使い、手繋いでようよー」

魔法使い「……うん」

盗賊「あれ賢者、どうしたの?」

賢者「いえ……大丈夫です」

盗賊「え、ほんとに?」

勇者「体調でも悪いのか?」

賢者「いえ…… 頭が少し痛むだけですから大丈夫です」

賢者「……なんだか、ここ見覚えがあるんです」

盗賊「えぇ? こんなボロっちい建物に?」

賢者「えぇ…… なぜだか既視感が……」

勇者「ま、いいよ。 早く探検しようぜ」

魔法使い「……探検っていった…… 自分が楽しみたいだけじゃん」


370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 22:45:01.76 ID:ZlfUG+1yO

触れるだけでビリビリと呪われそうになる玄関を開ける

これはマジでやばいところだと内心で思いながらもなんだか魔法使いを虐めたい一心でドアを開けきった

予想通り明かり一つ無い建物の中は暗く、不気味な呻き声が静かな建物の中に響き渡っていた


魔法使い「……うぅー。 やだぁ……」

盗賊「あ、あれ!? ねぇ、ドアが開かないよ!?」

魔法使い「……え?」

盗賊「と、閉じ込められちゃった……!」

魔法使い「うぅ…… もうやだ帰りたい…… お姉ちゃん……」

勇者「後ろがダメなら前行くしかねえだろ? ほらいくぞ」

魔法使い「……やだよぉ、なんでみんな平気なの?」

盗賊「魔法使いがビビリなんだよ!」

魔法使い「……うー」

賢者「いたた…… ここ、知ってる気がする」

賢者「どうして? どうして私はこんなにここが懐かしく感じるんでしょうか」
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 22:49:58.58 ID:ZlfUG+1yO

大きな玄関ホールを歩き、廊下を進む

するとそこには肉が削げ落ち、骨身だけとなった骸骨の剣士が多数闊歩していた

人間の盗賊団のようなものではなく、分かりやすく敵でいてくれる魔物に勇者は少し胸をなでおろした

後ろでわんわんと泣き出した魔法使いの声につられ、骸骨の剣士達は一斉にこちらへと向かってくる

廊下は狭く少し戦うには窮屈に感じるが、剣を振るうのには充分だった
カラカラと音を立てて走ってくる骸骨剣士を勇者はバッタバッタと切り伏せていく

最後の1匹の虚空の眼窩に剣を突き立てて、骨を砕き斬り、元人間達の魔物に二度目の死を味わわせたところで新たな魔物が出現した


魔法使い「……っ…!?」


魔法使いの真横の窓からレイスが壁をすり抜けて現れた
魔法使いしかそれに気付かず、彼女は恐怖のあまりに声も出せない


不吉で耳に残る嫌な笑い声をあげ、骸骨の顔面から覗く歯列がカチカチと歯音を立てる

生命力を吸い上げる魔物であるレイスがまさに魔法使いに触れようとしたところで、賢者が攻撃魔法を唱えてレイスを倒した


賢者「はぁ…… はぁ……」

魔法使い「……あ、ありがとぉ賢者ぁ〜〜……」

賢者「いえ、これくらいのことは…… はぁ、はぁっ」

盗賊「賢者、本当に大丈夫? すごい汗だよ?」

賢者「いえ…… 大丈夫ですよ……」

勇者「少し休んでくか?」

賢者「行かせてください…… なんだか私はこの先に行かなきゃいけない気がするんです」

賢者「私はここを知ってる…… 知ってるのに記憶にもやがかかったように思い出せないんですよ」

勇者「記憶操作の魔法でもあんのか……?」

魔法使い「……そんなの、聞いたことないよ、ぐすっ」

賢者「私はここのことを知りたい。 知らなきゃいけない気がするんです」

賢者「無くしたこの記憶を、取り戻したいんです」
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 22:53:38.26 ID:ZlfUG+1yO

木々や花々が枯れて見る影を失った庭には肉体を失ったゾンビ、グールが歩きまわる。 本館に入るとスケルトンの行進の影があった

脇の部屋に入ろうとドアに手を伸ばすとまるで脅かすかのようにレイスがすり抜けてきて、俺たちを嘲笑った

まさしくここは亡霊の館
人がかつてここに暮らし、そして忘れられた場所

今は死んだ者が魔物や幽霊へと成り果て、暮らす彼らの桃源郷

俺たちはそこにズカズカと入り込む
人間の命という暖かい光に引き寄せられるように魔物達が集まってくる
彼らに安息を与えるために斬り殺し、その度に賢者はなぜだか泣きそうな目をしていた

そして大きなドアの前に立つ
汚れて読めなくなったプレートのほこりをはらうと、そこには礼拝堂と書かれていた

373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 22:56:31.02 ID:Zpt2/XTeo
取り返しの付かないことになって勇者には痛い目にあってもらいたいな
なんかあまりにもクズすぎてイライラしてくる
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 22:58:36.50 ID:ZlfUG+1yO

……………………
………………
…………


ここは敬虔な修道院だった
神を信じる敬虔な信徒が数多くここに住んでおり、皆幸せな日々を過ごしていた


全員が食堂に集まり、手を胸の前で組む
この修道院の院長が眼鏡の奥の優しい瞳を瞑り、柔らかな声で食事前の祈りを捧げる


院長「大地の命と神の恵みに感謝します」

「「アーメン」」


少女は院長の祈りが大好きだった
他の聖職者のようにダラダラと長い祈りでないことも好きだったが、院長が本当に神の遣いなのではないかと感じるほどの深い愛情や慈しみが祈りに表れてくるから

修道院の院長という権力者であり、多忙を極めながらも私達1人1人を気にかけ、そして礼拝に来る人々を誰よりも暖かく迎えてくれるまさに聖人を体現した人
私は彼が大好きだった


院長「○○、祈りの句は読めるようになりましたか?」

少女「えぇっと…… いえ、院長みたいに上手なお祈りをしたいのですが……まだ上手く読めなくて……」

院長「そうですか、私のような祈りをしたいと…… そう言って頂けて私も嬉しいですよ」

院長「ですが形を気にしすぎてはいけませんよ。 祈りは神とのお話ですからね? 私達が伝えたい言葉を祈りに乗せるのです」

少女「伝えたい言葉?」

院長「ええ。 感謝の気持ち、愛情の気持ち、時には懺悔の気持ち。 それらを包み隠さず、神にお話するんです」

院長「それが例え不格好でも、神なら微笑みながら聞いてくださいますよ」


私にとっては院長こそが神のような存在だった
穏やかで澄み切った瞳は本当に邪な感情など見えず、その言葉一つ一つは神の代弁のようにも聞こえた

私はまた少し、院長が好きになったのだった

375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:03:23.17 ID:ZlfUG+1yO

修道院の朝は早い
日の出と共に目を覚まし、掃除を行い皆で食卓につく

しばらくすると民が祈りを捧げるために続々と修道院の中へ足を踏み入れる

玄関を入り、廊下を抜けると綺麗な庭があり、それを横目に見ながら礼拝堂に皆が入っていく

神父たちの説教を聞き、懺悔し、皆満ち満ちた顔で帰路につく

そんな民の様子を見ているのが好きだった

いつも庭を綺麗に手入れするのが私の仕事
皆が庭を見て綺麗ね、と声を漏らすのも好きだ
帰りに満たされた顔で帰っていく人達を見るのが好きだ
頭を下げると笑って撫でてくれる大人達の手が好きだ
私はこの修道院での生活が大好きだ

この毎日を過ごせることが、幸せでたまらなく天国よりもここにずっとここにいたいとすら思っていた

376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:06:08.17 ID:ZlfUG+1yO

だが今日はなぜだか夜、胸騒ぎがして眠れなかった
そわそわと落ち着きがなく、目を瞑るが眠りの中に入ることは出来ず、ついにはベッドを抜け出した

なんとなく散歩をしてると院長の部屋の明かりが付いていることに気がつく

そろーりそろーりと悪巧みをする子供のような笑みを浮かべながらドアの前に立つと、中から院長の優しい声がした


院長「その足音は、○○ですね?」


ぎくり


院長「どうぞお入りなさい」

少女「失礼します……」

院長「どうかしましたか? こんな夜遅くに」

少女「あ、いえ…… なんだか眠れなくて」

院長「なるほど、そういう夜もありますね。 今ホットココアを入れますのでそこに座ってください」

少女「ありがとうございます」

少女「院長はまだ寝ないんですか?」

院長「ふふ、そうですね。 もう少ししたら寝ましょうか」

院長「私が眠くなるまで少しお話につきあっていただけますか?」

少女「はいっ」


院長は優しい嘘つきだ
本当は昼にやらない仕事が残ってて、それを毎晩こうして片付けているのだろう
そして自分は寝る気などないのに、私が眠くなるまで話をしてくれるのだろう
その優しさが嬉しくて、彼の慈しみに溢れた笑顔がもっと見たかった

377 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:08:41.61 ID:ZlfUG+1yO

その後は院長の入れてくれたホットココアを飲みながらたわいもない話をした
私の近況、庭にコスモスの花が咲いたこと、最近読んだ本のこと

子供のつまらない話にも彼はうんうんと優しく頷きながら聞いてくれた

そして私はハッと思い出す


少女「院長、これ」

院長「これは?」

少女「ハンカチです、今日教えてもらいながら作ってみました」

院長「可愛いヒマワリの刺繍ですね」

少女「えへへ、ありがとうございます。 それ院長にあげる!」

院長「嬉しいです、ありがとうございます○○」

院長「どんな名画よりも子供の書く絵には叶わないとはよく言ったものです」

院長「優しい…… 暖かい出来ですね。 見ているだけで心が休まりますよ」

少女「えへへ」

院長「あぁ、そうだ。 ○○にこの本をあげましょう」

少女「……これは? さとりの、書?」

院長「えぇ、時が来たらこれを読みなさい」

院長「それまで大切に持っているのですよ? とても貴重な本ですからね」

少女「はいっ、分かりました!」

378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:16:08.30 ID:ZlfUG+1yO

先程までニッコリと笑っていた院長が突然ガタンっと音を立てて椅子から立ち上がった
その目はいつもの優しい瞳ではなく、真剣な眼差しそのもの


聖なる環境に身を置いていた聖職者だからこそ分かったそれは聖と対を成す魔の気配

死の鐘が鳴り響くのが聞こえる
それは確実な死が迫る死神の足音だ


逃げねば
そして逃がさねば……


慌てた様子で1人の若い神父が部屋のドアを開けて叫ぶ


「院長!!」

院長「何が起きたのです!」

「魔物の大軍が突然押し寄せてきて!! 皆逃げております!!」

院長「分かりました! あなたも早く逃げなさい! 私もゆきます!」


神父に逃げるよう促し、彼が逃げようと身を返したその時、死神はやって来た
大型の狼の魔物

それは赤い目をぎらりと光らせ、恐ろしいスピードで神父へと飛びかかった


院長「くっ……! 見てはいけません!!」

少女「あっ……あぁっ、神父様……!」


断末魔の叫び声と共に骨を砕くバキバキという音
そして肉を引きちぎる咀嚼音が小さな部屋に響いた


院長「こっちです○○! 早く!!」

少女「……っ!!」


院長に手を引かれ、部屋の窓から脱出する

外は、まさに本当の地獄絵図だった
修道院は殺戮の地獄となる


建物の窓には、助けを求めながら死んだのだろう血が付着しており、その下にはシスターの衣装と原型を留めないほどに切り刻まれていた肉塊があった

壁には顔面を剣で貫かれて無様な姿で貼り付けにされている者もいた

ある者は回復魔法を唱えている間に私たちの目の前で首をもがれて死んだ


美しい花々が咲き誇っていた私の大好きな庭は、血の薔薇が咲き乱れ私の心を絶望へと変えていく

修道院の白い壁は血で赤く塗り直され、大きな爪痕が残される

私の大好きな修道院はもう残っていない
全ては終わってしまったのだと確信した

379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:20:09.32 ID:ZlfUG+1yO

院長は私を連れて礼拝堂へと入る
内側から鍵をかけ、そして私の肩を掴んで言った


院長「良いですか○○よく聞きなさい」

院長「今日という日は人生の中で最も辛い日になるでしょう。 この日をしっかりと覚えていなさい」

院長「この日があなたの人生の底です。 あとは這い上がっていくだけです、これ以上に残酷で過酷な辛いことはもうありません」

少女「院長……?」

院長「この礼拝堂の裏口から外へ逃げなさい。 隣町まで走るのです!」

少女「院長は? 院長も逃げましょうよ!」

院長「いいえ…… 私はもうダメです」


見ると彼の足から多くの血が流れていた
私たちが逃げる間に怪我をしたのだろう。 それでも彼は私をここまで導いてくれたのだ


その時、ドアに何かがぶつかる大きな音がした
木製のドアとはいえ他のドアよりは分厚く強度もある。 それでも相手は魔物なのだ

もう、残された時は少ない


院長「私は神を呪います。 このような残虐な仕打ちがあるでしょうか」

院長「私は天に上るつもりはありません。 神の顔など見たくもない」

院長「ですからここを地獄へと変えましょう。 人間と等しく、魔物にも本物の地獄を見てもらわなければなりません」


いよいよドアが形を歪ませ、いまにも破られそうになってくる


院長「行きなさい○○! あなただけは、必ず逃して見せます!」

少女「い、いやです…… 院長……! 私1人だなんて!」


そしてドアがついに破られ魔物が多数ひしめき合いながら向かってくる


院長「神よ、私はあなたを許さない! 奴らに真の地獄を返して見せよう!」

380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:21:24.92 ID:ZlfUG+1yO

彼は呪詛を呟く
祈りとは真逆のまさに神を呪う言葉の羅列
聞いているだけでこちらまで呪われそうな悔恨や、怨み、妬みが伝わってくる

彼は十字架を胸に突き刺した

瞬く間に彼の肉体は透明なものとなり、そして再構築される

その姿がアンデットへと変わっていくのを私は見た

381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:28:33.66 ID:ZlfUG+1yO
……………………
………………
…………


賢者「院長……?」


礼拝堂の奥にはリッチが1匹佇んでいた
それが、院長の今の姿なのだと賢者は思い出した
いや、院長の姿だけではない。 さっきの記憶が私の小さい頃の記憶であることを、全て自分の記憶だということを思い出した


ギェアアアアアアアア!!!


彼の優しい声は聞く影もなく、死霊の甲高い声へと変わっている
優しかった瞳は抜け落ち、虚空の眼窩がこちらを覗く

肉体は半霊の体となり、肉体から青白い炎を放っている
その羽織る衣はかつて、彼が着ていた修道院服だ


人骨の杖を振り、業火魔法が放たれる
美しかった礼拝堂のこの惨状はまさに彼が魔物と戦い抜いた証
そして地獄と変わった日から止まってしまった彼の時間そのもの


勇者が剣で一振りすれば業火は消炎した
彼は剣を握り直して戦闘態勢に入るが、賢者は肩に手を置きその前に歩みでる


賢者「ごめんなさい院長、忘れるなと言われたのに私は自分の記憶を閉ざしてしまっていたようです」

賢者「ですが、今全て思い出しました」

賢者「あなたが救ってくれたおかげで…… 私はこうして生きています」

賢者「だから…… 次は今まで頑張ってくれているあなたを私が助ける番です……!」

382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:32:05.95 ID:ZlfUG+1yO

膨大な魔力を持つ上級モンスターであるリッチはその凶暴さも相まって恐れられる魔物の一角だ

だがリッチは…… 院長はその杖をもう振らない

まるで賢者に殺される時を静かに待つように


賢者「院長……ありがとうございます」

賢者「聖なる火柱よ立ち登れ! グランドクロス!」


リッチの足元が白い光に溢れる
瞬く間にそれは爆発的に広がり、光の柱が立ち上った
アンデットのリッチにとっては弱点の聖なる魔法は致命傷だ
彼は声を上げ、そして倒れた

その虚ろな瞳の先の説教台の上には、小さなヒマワリが縫われた可愛らしいハンカチがあった

383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/03(月) 23:32:34.67 ID:ZlfUG+1yO
今日はここまで
考えてた賢者の過去話消化
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 06:15:34.06 ID:0Znj5SniO
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/04(火) 18:39:06.83 ID:xswBvHWSO

賢者ではなくパラディンだったのか!?
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/05(水) 22:27:35.84 ID:ruQzrAxs0
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/08(土) 16:22:49.39 ID:PkPkTXMCO
続きはまだー?
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 22:23:05.13 ID:/djWyH6JO

勇者「ふぅ」


一息つく
アンデットはほぼ全て倒し雨が止むまでやっと体を落ち着かせられる

賢者は取り乱すこともなく、落ち着いている様子だった
彼女にとっては忘れていた思い出の地であり、そして命の恩人をアンデットの地獄から解放出来たことが嬉しいのかもしれない

女陣は各々体を休めているがもう一つ、やることが俺にはあった
アンデットとは違う嫌な何かがここにはある

俺はその気配に導かれるまま礼拝堂を出て、本館に入った
血が乾いて黒く塗りつぶされた壁を不気味に思いながら俺は廊下を進む

陽が沈み真っ暗な廊下を進み、そしてとある部屋のドアノブに手をかけた

この部屋に嫌な気配を放つ何かがいる


389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 22:23:32.43 ID:/djWyH6JO

ドアをあけると鼻を突き刺すような腐臭に部屋は満たされていた
胃から上がってくるものをぐっと堪え、務めて部屋の中に注意を向ける

そこには真っ黒ないわゆるロリータ服を着た、盗賊と同じくらいの年頃の女の子がいた
しかし異質なのはその子の両隣を挟むように鎮座された腐った二体の死体

死後数週間、いや数ヶ月は立っているのだろう。 その体は朽ち果て、目も当てられない姿になっている

生と死が混ざり合う異様な光景に自分の目すら疑ってしまう
にっこりと歳相応の笑顔を見せるその異様な女の子が声をかけてきた


暗殺者「こんばんはお兄さん、いい夜ね」


390 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 22:24:40.23 ID:/djWyH6JO

勇者「俺はたった今最悪の夜に変わったよ」

暗殺者「えーそんな事言わないでよ」

勇者「こんな所でなにしてる? そしてその隣の死体たちはなんなんだ」

暗殺者「ふふ、そんなにいっぺんに聞かれても困っちゃうなー」

暗殺者「これはパパとママだよ? 3人でここに逃げてきたの」

勇者「パパとママ……? 俺には死体にしか見え……


がきんっ!!


勇者「いきなりナイフ突き刺すかよおい」

暗殺者「あらら防がれちゃった。 お兄さん強いね」

勇者「お前こそ並の早さじゃなかったぞ? 何者だお前」

暗殺者「ちぇー、これはダメだなぁ私の手に終える相手じゃなかったかぁ」

勇者「質問に答えろ」

暗殺者「んもー、やめてよ怖いんだから」

暗殺者「私は暗殺者だよ。 闇の家業に身を置く一族」

勇者「ってことはさっきパパとママって言ってたそれも?」

暗殺者「うんっ! 私が殺したの!」

勇者「……そうか。 そりゃまたなんで」

暗殺者「えへへ、聞きたい?」

勇者「ま、夜は長いからな。 聞いてやるよ」

暗殺者「ふふ、やっぱりいい夜になるね」


391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 22:25:06.59 ID:/djWyH6JO

暗殺者「私ね、一族の例に漏れずアサシンなんだけど」

暗殺者「ちょっと私には才能がありすぎたみたい。 人を殺すのがすごく簡単だもの」

勇者「おっかねえ子供だな」

暗殺者「ふふ、お兄さんは殺せなかったけど。 パパとママは私の才能に嫉妬したのでしょうね」

暗殺者「優しいパパとママと一緒にいられてずっと幸せだったのに……あの日までは」

392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 22:25:33.97 ID:/djWyH6JO

暗殺者「私が仕事でいけすかない男を殺した日、それを早くパパに教えたくてね」

暗殺者「帰ってきたパパにその日殺したターゲットのことを話したの」

暗殺者「人混みの中を掻い潜って、喉をかっ捌いたら口をぱくぱくしながら死んでおもしろかったよーって言ったらいきなり殴られたの」

勇者「…………」

暗殺者「そのまま私の初めてを無理やり奪われちゃった。 許せないでしょ? でもね、それからそうやってパパに毎日殴られ蹴られ切られ犯され続けたの」

暗殺者「あんなに優しかったパパが怖くて怖くてたまらなかったなぁ」

勇者「ママは? 助けてくれなかったのか」

暗殺者「ママももちろんその事は知ってたよ。 見て見ぬ振りってやつ」

暗殺者「でもね、犯され続けるのが耐えきれなくなってママに助けを求めたらね酷いんだよママ」

暗殺者「あんたのせいで私はパパに愛されなくなった、だってさ」

暗殺者「もうダメだこいつって思ってママ殺しちゃった」

勇者「……そうか」

暗殺者「いとも簡単に殺せてびっくりしちゃった! ママってこんなに弱いんだー、って」

暗殺者「なんか私自信ついちゃってね! これならパパも簡単に殺せるんじゃないかなって思ってね!」

暗殺者「そしたら本当に簡単に殺せちゃったの!!」

勇者「お前……」

暗殺者「怖かったパパとママをそうやって殺したの」

暗殺者「ふふ、それで今はこうしてここで3人で静かに暮らしてるんだ」

暗殺者「怖かったパパとママは、前みたいに優しい2人に戻ってくれて私は嬉しいの!」

暗殺者「えへへ、パパもそう思うよねー」

勇者「……いかれてんな」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/10(月) 22:26:45.51 ID:/djWyH6JO
>>395 どうするか

@暗殺者を殺す

A暗殺者を説得して一緒に来るように言う

Bとりあえず犯す

C犯す
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 22:44:18.55 ID:dDiaLMaWo
2
怖いけどいい子そうだし…
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 22:55:06.61 ID:SfVim/+mo
3と4の違いは何ですかね・・・
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 00:33:20.02 ID:R/ZUs0An0
2と4の複合が良かったかな
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:39:01.56 ID:33aa7R58O

勇者「お前、それで幸せか?」

暗殺者「うん! パパとママと一緒にいられて幸せだよ!」

勇者「違う、分かってねえなお前」

勇者「それはただの死体だ。 お前のパパとママはもう死んでんだよ」

暗殺者「……どうして、そういうこと言うのかな?」

暗殺者「殺すよ?」

勇者「やってみろよ」


俺が言い切る前に目の前の少女はとてつもないスピードで肉薄する
右手に握られたナイフの軌道は俺の喉元を目掛けて振られており、それをスウェーしてかわすのと同時に体を無理矢理に捻って回し蹴りを見舞う

ただの冒険者程度であればそのカウンターで勝負が決まるのだが、この暗殺者相手にはそうはいかなかった

対人戦闘を極めれば極めるほど、体の軸や視線、ほんの僅かな腕や足の動きで次の行動が予測できるようになる
そしてその能力は人間相手の殺しを専門とする暗殺者は秀でていた

小さな体も相まって容易く蹴りをかわしたところで彼女はさらに距離をつめる
人類の中では暗殺者の強さは別格だろう
逃げても逃げられない急所を狙い続ける必殺の戦法
だが所詮、それは人類の中での話だ

人類最強の勇者の前では暗殺者ですら年相応の女の子の域は出ない
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:43:07.15 ID:33aa7R58O

暗殺者には何が起こったか見ることすらできなかった
不可視の早さから繰り出された勇者の投げ技は、気付けば暗殺者を地に伏せさせている

床に激しく叩きつけられた衝撃で暗殺者は息が詰まり、目がチカチカとして焦点が合わせることができない
喘ぐように酸素を求めながら圧倒的な強さの勇者をせめともと睨みつける


暗殺者「がっ…… あっ……い、いたい……」

勇者「お前はまだ生きている。 それはお前のパパとママとは違うことを認めろ」

勇者「セックスをして気持ちよくなれるのは生きている者の特権だぜ」

暗殺者「がはっ…… セックスなんて気持ちよくないよ」

暗殺者「パパと何回も何回もしたけど全く気持ちいいものなんて思ったことないよ」

勇者「それはお前がただ乱暴にされただけだからな」

勇者「俺が本当のセックスを教えてやる」


雷魔法を静かに唱える
魔力を極限まで抑えた攻撃ではない用途での雷撃
指を彼女の口にねじ込み、そしてその指先から微弱な雷撃魔法を放った


暗殺者「ひゃぁんっ!」


暗殺者はまさしく電気が走ったように体が跳ねる
そしてその体は脱力しきり、四肢は力なく投げ出された


暗殺者「あ、あれ……?」

勇者「動かねえだろ」

暗殺者「な、なにしたの」

勇者「雷魔法をちょっとアレンジして、麻痺魔法にしたのよ」

勇者「この麻痺ってやつがかなり癖になるんだぜ?」

勇者「さ、お楽しみの時間だ」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:45:13.87 ID:33aa7R58O

小さな暗殺者の体を持ち上げる
ひゃぁぁと頓狂な声を上げ抗議をしてくるが、それには答えず腐臭に満たされた部屋を出る

適当に空いた部屋に入り、埃だらけのベッドに彼女を横たわらせる

そして乱暴に彼女の服を引き裂き、その裸体を明らかにさせる


暗殺者「や、やだ…… お兄さんも乱暴するの?」

勇者「さぁな」


痺れのためか、恥辱のためか微かに歪んだ彼女の唇に口付けをする
ただそれだけの刺激でビクンと再び体が跳ねた


暗殺者「んぅ〜〜! あ、んっ!」

暗殺者「唇が、ぴりぴりする……!」


割れた唇に舌を這わせる
痺れてうまく動かせないのであろう舌を絡め取り、ちろちろと舐めながら吸い付く
通常よりも何倍にも強く感じる刺激が脳にダイレクトに届き、彼女の頭の中は真っ白になり、早くも弾けた


暗殺者「あっ、んぅ〜〜、あっ!!」

暗殺者「ひゃぁ、や、だめ! いくっ!」

勇者「へぇ、イクって感覚が分かるのか」

勇者「いいぞ? 我慢しないでキスだけでいっちゃえ?」

暗殺者「あぁん! ひっ、イクっ! いぃ、ああぁぁ〜〜っ!」


全身を雷が駆け抜けるように快感が走り彼女は達した
ただのキスだけでである


勇者「おいおい、キスだけでイクのか?」

暗殺者「あ、あぁ…… きもち、いい」

勇者「気持ちよくなるのはこれからだぞ?」

暗殺者「だ、だめ」

勇者「どうして?」

暗殺者「おかしく、なっちゃう……」

勇者「じゃあ止めるか?」


彼女の膨らみかけの胸をそっと撫でた
ビクンとしながら顔は再び蕩け、涎を垂らす
その涎を舐め取り、彼女を見つめると自分の方から舌をだらしなく垂らし俺の唇を誘った

400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:48:22.36 ID:33aa7R58O

その求めに応じるように彼女の口腔内蹂躙する
小さな唇を塞ぐようにし、息も絶え絶えに喘ぎながら必死に呼吸する彼女には構わず喉奥に舌を走らせる


暗殺者「ごほっ、はぁっ……げほっ…!」


呼吸苦のために顔を赤く染め、目尻に涙を浮かべながらも感じてしまう彼女
苦痛と快感を同時に感じ、その苦痛は快感を増強させるスパイスになってしまう
痺れと被虐に抗いながら彼女は必死に息を吸い続け、そして下の口から愛液を吐き出した

もう既にトロトロに熟された秘裂にペニスをあてがう
蜜をすくい亀頭に塗りつけるようにそそわせると暗殺者は反射的に体をビクンと跳ねさせる


暗殺者「だめっ! だめだめ!」

勇者「お前の体はこんなに欲しがってるのに?」


陰唇をわざとらしく広げ、膣口を顕にさせるとそれはヒクつき不規則にうねっていた
俺の意地悪にさらに顔を赤らめるが、そっぽを向いたり顔を手で覆うことすらできない
全ての抵抗行動を封じられた彼女はまさに俺の人形であり、快感を感じるだけのダルマだ

ずぶずぶとペニスを挿入する
熟れた腟内は抵抗などなく、容易く根元まで飲み込み、俺は子宮口をグリグリと突いた


暗殺者「あっあっ! ひゃぁああっ! 〜〜〜〜っ!!」


痺れによる何倍にも増強された快感に彼女は挿入の一突きで2度目の絶頂を迎えた

401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:49:52.90 ID:33aa7R58O

口の端からはだらしなく涎が垂れ流され、目が泳ぐ
下の秘裂から愛液が絶え間なく流れヒダがうねりながら更なる快感を求めてペニスをしごいてくる


勇者「おいおいすげえな」


率直に抱いた感想だった
ただペニスを1度入れただけで、狂うほどの絶頂なのだ
もしピストンをしたら? 奥深くまで本気で突き刺したら?
彼女はイキ狂って死んでしまうのではないだろうか

不安を感じながら彼女の余韻を邪魔しないようにじっとしていると彼女が俺の方をじっと見据えながら痺れる口で言葉を必死に紡ぐ


暗殺者「きもち、いい……」

暗殺者「もっと、いれて?」

勇者「どうなっても知らねえぞ?」

暗殺者「いい…… ほしいの」

暗殺者「おまんこがうずいておかしくなっちゃいそうなの」

暗殺者「パパとした時こんな事なかった」

暗殺者「おちんちんで奥をもっと突いて?」

暗殺者「おまんこの奥がうずうずして耐えられない……」

暗殺者「お願いします、私を犯して」

暗殺者「めちゃくちゃにして、ください」

勇者「…………」

暗殺者「早く、はやく私を狂わせてよぉ!!」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:51:54.50 ID:33aa7R58O

求めに応じられるまま固く反りたったペニスを奥深くへ突き刺す
腟内に満たされていた蜜がペニスによって押し出され、ヌルヌルと包み込んだ
まるで決壊したダムのように蜜は際限なく溢れ出て、彼女の叫び声と共に激しい水音をビチャビチャと響かせる


暗殺者「あああああぁぁぁぁああっ!!!」

暗殺者「はあぁっ! ひゃ、うあああうぅぅぅ!!」

暗殺者「ひぁっ、ああぁっ!! い、あああ……! あぐっ、き……!」


淫らな無数のヒダがまるで精液を絞り出そうとするようにうねりながら絡みつく
彼女はとまらない絶頂の波に叫び狂い、快感に全身を支配される

何度も腰を夢中で打ち付け、そして微弱な電気を時折放つ
それが子宮から全身を駆け巡り脳を震わせる
そうするだけで彼女は体を何度も跳ねさせて脈を打ち、獣じみた嬌声をあげ続けた


暗殺者「や……あぁんっ!! 気持ちいい!!」

暗殺者「びりびり、だめぇっ!! おかしくなっちゃうぅぅ!!」

勇者「お前が狂わせろって言ったんだぞ?」

暗殺者「だ、だめぇ……! ご主人様…… びりびり、ずるいよぉ…!!」


口でぱくぱくと酸素を求めて喘ぎ、肩で呼吸する彼女を抱きとめる
その刺激ですらも絶頂してしまうほどに彼女は壊れていた

あげる声すら枯れ、必死に息を吸いながら突かれる度にピンクの声色を吐き出すただの痴女の姿へと、暗殺者はいつの間にか変わっている
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:55:38.50 ID:33aa7R58O

既に何度出しただろうか
ぱちゅ、ぱちゅと小気味よいリズムで彼女へ腰を打ち付けながらぼんやりと考える
数度ピストンされるだけで絶頂し、気を失うもすぐにまた絶頂することで現実へ意識を引き戻させられる


暗殺者「あ、あひ……」

暗殺者「あ、ありがとう、ございましゅ……」

暗殺者「ごしゅしんさま……」


いつから俺はご主人様と呼ばれるようになった?
と思いながらもまた無心で精を吐き出す

腟内へ吐き出された熱いモノで彼女はもう数えるのが馬鹿らしくなるほどの、絶頂をまた迎える


暗殺者「ひっああぁぁぁ……!」

暗殺者「また、また熱いのきたぁ……!」

暗殺者「んんぅ〜〜〜っ……!」


ペニスを引き抜いても彼女の絶頂は止まらない
ガクガクと腰を震えさせながら、刺激に慣れすぎた彼女の身体は性交を止めても快楽を止めることが出来ない


暗殺者「あひっ…… はっ…… いくの、とまんな、い……」

暗殺者「ひっ、あぁ…… んっ……」


自分の意思とは無関係に動いてしまうほどに、走り抜ける性感によって体が作り替えられてしまった暗殺者
その小さな体を抱きしめてじっと彼女を落ち着かせる
浅く早かった呼吸は、静かに深いものへ、そして最後には小さな寝息へと変わる

永遠のように続く絶頂の責め苦ともいえる暴力的な快感からようやく意識を手放せた暗殺者と俺は折り重なるように眠りについた
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/12(水) 20:56:18.19 ID:33aa7R58O
また今度
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/12(水) 23:38:29.40 ID:+uDIfchLO

動けない幼女を犯すとは鬼畜の所業
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/13(木) 01:11:55.21 ID:enZACw3Xo
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 08:47:38.91 ID:MjyBWbSxo
この勇者幼女を犯す時イキイキとしてねえか
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/16(日) 00:57:53.40 ID:KfqmN1VTo
そりゃ今までの反動よね
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/26(水) 00:34:37.30 ID:BTHmOcRyO
続きまだかなー
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/27(木) 12:12:18.45 ID:8YNtfC0Ko
追い付いたぜ…
あ^〜現地妻作ろうぜ
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:24:40.58 ID:n7qqe+6bo

暗殺者「そういうことでご主人様に無理やり犯されたから、責任とってもらうの」

勇者「語弊ありすぎだろおい」

暗殺者「あら、本当のことよ?」

盗賊「ちょっとゆうしゃ!? どういうこと!?」

賢者「そ、そんな小さい子を…… あぁ神よ、この邪な心に満たされた勇者にご加護を忘れませんように」

魔法使い「……有罪」


暗殺者をみんなに紹介しようと思ったが、開幕早々に暗殺者がぶっ込んでくれたおかげで批判の目が半端じゃない

盗賊の時でさえかなり揉めたのに、見ず知らずの少女2号をいきなり連れてきたのだ
ましてそれがご主人様だの、犯されただの言われたら、そりゃもう俺はこのパーティで生きていけない


勇者「こいつは色々訳アリのやべえ奴なんだよ。 ほっとけねえし連れてく」

盗賊「話そらした!!」

魔法使い「……じー」

勇者「あぁもううるせぇ!! いいからいくぞ!!」

賢者「ちょ、ちょっとさすがにそんな話じゃ納得できませんよー?」

賢者「この子、まだまだ子供なんですよ? 街に戻って教会に保護をお願いしましょうよ」

暗殺者「あら、そんなの嫌よ」

暗殺者「私はやっと自由になれたんだもの。 パパもママもいなくなっちゃったし」

暗殺者「ご主人様には、責任を取ってもらわないと、ね?」

勇者「ヒッ」

盗賊「ゆうしゃ!? 責任ってなに!」

勇者「そんなもん知らん!!」

魔法使い「……大人しく白状する」

勇者「だぁぁぁぁうるせぇ!!」

勇者「俺は無罪だ潔白だ!」

盗賊「純潔を散らしまくってるやつがなんか言ってるよ」
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:28:28.89 ID:n7qqe+6bo

俺の権限でかなり強引にパーティにねじ込むことになったが、流石にうちの女性陣たちだ。 すぐに暗殺者もその輪の中に溶け込んでいた


魔法使い「……可愛い服」

賢者「ほんとほんと!」

暗殺者「ふふ、ありがと。 これはママが拵えてくれた服なの」

盗賊「へー! 似合うね!」

魔法使い「……私のローブを可愛くしたらこんな感じになる」

賢者「あはは……それ魔法使いのイメージ変わりすぎますね」

魔法使い「……ひらひらーって」

盗賊「似合うとは思うけど無口キャラには今のままの方がいいよね」

魔法使い「……ならこれでいく。 やっぱり正装が一番」

暗殺者「うん、魔法使いかわいい」


盗賊「ねぇねぇ、暗殺者は何歳なの?」

暗殺者「え? 私は今年で14歳になったわよ」

盗賊「あ、うちの2個上だ!」

魔法使い「……近いね」

賢者「本当! ふふ、盗賊といい友達になれそうね」

盗賊「わぁっ! なんか嬉しいー! 魔法使いと賢者とも仲いいけどやっぱりお姉さんだし」

盗賊「歳が近い同士、仲良くしてね暗殺者」

暗殺者「えぇ、こちらこそよろしくね」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 22:35:03.42 ID:rHsnzPd5O
読んでるからな
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:35:55.07 ID:n7qqe+6bo

微笑ましいやり取りが荷台から聞こえてこちらの気持ちもほっこりしていると、静かに迫ってきた死の気配に本能的に頭をずらす
ヒュンっと風を切る音が耳の側で聞こえ、思わず息を飲み込んだ


暗殺者「あ、やっぱり避けられちゃった」

勇者「お前……ねえわ……マジねえわ」

勇者「仮にも仲間になった俺を暗殺しようとする?」

暗殺者「ふふ、挨拶替わりよ」

暗殺者「だいたい、私とパパとママが仲良く暮らしてたのに無理やり連れてきたのはご主人様よ?」

暗殺者「殺されても文句は言えないんじゃない?」

勇者「いやそんな理由で殺されたら文句の一つでもあの世で言いたくなるだろ」

暗殺者「ふぅ、隣いい?」

勇者「話聞けよ…… いいけどナイフしまえよ」

暗殺者「じゃあ、お邪魔します」


御者台から体を右にずらし、一人分のスペースをあける
暗殺者は少し嬉しそうに微笑みながら俺のすぐ隣に綺麗な所作で腰掛けた

金髪の少し眺めの前髪から覗く水色の色素の薄い瞳がじっと俺を見据える
だが、なんというかこいつの瞳はひかれない。 というより直視をしてはいけない感覚があるのだ
魔法や魔眼の類ではなく、ただ彼女の雰囲気がそうさせているだけなのだろうが
あるいは俺の先入観か


勇者「なんだよそんなに見られると照れんだけど」

暗殺者「ふふ、どうやったらご主人様のこと殺せるのかしら」

勇者「こぇー…… まじやめて」

暗殺者「私は割と本気だけど」

勇者「尚更勘弁してくれよ」


分かった、俺はこの瞳がなんで苦手なのか
暗殺者は何を考えているのか全く分からないんだ

何も考えていないのか、頭にあるのは殺しのことだけなのか
しかし殺気が込められている訳ではない
本当にこの瞳が何を写そうとしているのか、全く読み取れない

微笑んでいる彼女が果たして心の中でも笑っているのか
分からない
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:38:12.78 ID:n7qqe+6bo

暗殺者「ねぇ? 女の人ばかり連れてなんの旅してるの?」

勇者「あー? 言わなかったっけ俺勇者なんだよ」

暗殺者「勇者って、え? あの魔王を倒すっていう勇者?」

勇者「そうだよおかしいか」

暗殺者「ぷふっ、だって私を無理やり犯しておいて実は勇者っておかしいわよ」

暗殺者「しかもパーティが女で固めてる時点で……本当に勝つ気あるのかしら? それにあの人たちはみんな勇者の慰み者でしょう?」

勇者「……ま、そういうことになるな」

暗殺者「最低なのね、ご主人様は」

勇者「あぁ、そう思う」

暗殺者「別に私はなんでもいいんだけれどね。 ご主人様は私にセックスの気持ちよさをもっと教えてくれるんでしょう?」

勇者「任せろよ。 勇者の勇者であんあんだぜ」

暗殺者「ぷっ、なにそれ」

勇者「言ったろ? 俺が本当のセックスを、生きる意味を教えてやるって」

勇者「お前が死に価値を見出すのが馬鹿らしくなるくらい、生きてることが素晴らしいって分からせてやるよ」

暗殺者「ふーん? 期待してるわ」

勇者「殺しなんかやってる暇があったらセックスしたくなるくらい調教してやるよ」

暗殺者「楽しみだわ、私の殺しの快感を超えるものが果たして本当にあるのかしらね」
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:42:01.91 ID:n7qqe+6bo

盗賊「ゆうしゃー? 何話してんのー?」


俺の首に抱きつくように体当たりをしてきた盗賊を受け止める
直後、いたずらっぽくにははと笑う盗賊の背後から、ぎらりと光るナイフが見えた

慌てて盗賊の身を引き寄せながらそのナイフを反対の手で受け止める
刀身を掴んだ手のひらから少なくない血が垂れ、赤い水たまりができる


盗賊「え……?」

勇者「てめぇ、何してんだ」

暗殺者「あら、私が話してるのにその子が割り込んできたのよ」

勇者「だからってナイフ使うことはねえだろ」

勇者「お前、今本気で殺す気だったな?」

暗殺者「さぁて、だとしたら?」

勇者「俺がお前を止める。 お前に俺の仲間は傷つけさせねえよ」

盗賊「え? え??」

暗殺者「なのにご主人様は私をこのパーティに置くと言うのかしら? 爆弾よりも危険な私を」

勇者「ごちゃごちゃうるせぇ、いい女は手元に置いておくんだよ」

勇者「分かったら2度と俺の仲間にナイフを向けんじゃねえ」

暗殺者「…………」

暗殺者「ふぅん。 ま、いいよ」


クルクルとナイフを回して弄んでから彼女はそのナイフをホルダーに収めた

殺気どころか感情の揺らぎすら感じさせない静かなアサシンの業
その、恐ろしさに盗賊は俺の腕の中で震えていた

盗賊を優しく抱きしめるように腕の力を入れ、目の前の問題児を見据える
彼女はニコニコと嫌な仮面のような笑顔を作りながら何ともなかったように佇まいを直したのだった


彼女が俺のいいつけを守るかは分からない
何か気に入らないことがあればすぐに殺そうとする奴だ、油断はならない

あまりにも人を殺すことに慣れすぎたこの少女を、俺は手懐ける事ができるのか
出来なければ俺か、はたまた大切な俺のパーティが傷ついたり死ぬことになる

しばらくはこの小さい悪魔から気が抜けない
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:44:12.83 ID:n7qqe+6bo

パーティに緊張が走ったまま街道を進む
誰も口を開かず、皆の顔に緊張の色が伺える中、騒動の中心の暗殺者は何処吹く風か俺の隣で鼻歌を歌っていた

馬車ががたんと揺れる度に、うっと小さく唸り鼻歌が荒い溜息へと変わる。 そうすると盗賊がビクッと体を震わせるのが何とも不憫だった

仲良くなれると思った矢先にあんなことされたんじゃな……
トラウマもんなのは確実だろう

あとでパーティメンバーにしっかりと事情を説明してアフターフォローしなきゃな

と思った矢先に魔物の群れが集まっていた

勇者「あぁ結構いるな」

暗殺者「数は10体は超えてる」

勇者「冒険者が囲まれるみたいだ、急ぐぞ」

暗殺者「ねぇ、ご主人様?」

勇者「あ?」

暗殺者「魔物なら、殺していいんだよね?」

暗殺者「この人間たちがダメならせめて魔物くらいはいいでしょう?」

勇者「……いいぞ」


聞くや否や彼女は御者台から飛び降り、一直線にとんでもない速さで魔物の群れへと向かっていく


勇者「待て! 一人で行くな!!」

盗賊「ゆうしゃ!」

勇者「俺達もいくぞ!」

魔法使い「……うん!」

賢者「サポートは任せてくださいね!」
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:49:44.92 ID:n7qqe+6bo

暗殺者「はぁぁっ!!」


ミニデーモンと呼ばれる子供の低級悪魔に暗殺者は音もなく肉薄する
この魔物は戦闘力自体は大したことがなく、自分では使えない上級魔法を使おうとして失敗するお茶目な魔物だ
しかしその魔力は舐められたものではなく、発動させられた中級魔法はかなりの威力を持ち、多くの冒険者を亡きものにしてきた凶悪な魔物だ

数いる魔物の中でも暗殺者が最も危険だと判断したのは納得できる

背後から忍び、口を左手で塞いでから喉を引き裂いた
こひゅーっと空気が漏れる音と大量の血の噴水を撒き散らしながら絶命していく。 崩れていくミニデーモンに気づいた魔物がやっと振り向くがそこにはもう暗殺者の姿はない

そばにいた首狩り族という魔物
石で出来た粗末なアックスと盾を持つ魔物の額を暗殺者はナイフで強引に突き刺す
それだけでは即死させられなかったのだろう、絶叫のままに振るわれたアックスをしゃがんで回避し、刃こぼれしたナイフを再度顔面へと叩きつけ、絶命させた

その間にも暗殺者は大目玉が視界に入らないように立ち回る
大目玉という魔物はまさに、大きな単眼が顔面の殆どを占める魔物であり、その眼を見てしまうとたちまち混乱にさせられてしまう厄介な生物だ
その上すばしっこく動き、攻撃力もなかなか馬鹿にならない

大目玉の飛びかかり攻撃を横に飛び避けて体勢をすぐに立て直す
体当たり攻撃をナイフでいなし、その反動を利用しての回転斬りが大きな目玉を斬り裂いた


「グギャァァォァオッ!!」


ドロっとした液体と血が溢れ、痛みのあまり大目玉は嫌な叫び声をあげる
真っ青だった体は怒りのために赤く変色し、ただでさえ早かった動きがさらに早くなる

これが大目玉が厄介とされる混乱とは別の二つ目の理由
一撃で倒せなかった場合、怒り状態となりスピードと攻撃力が上がってしまうのだ


「ギャオォォォァッ!!」

暗殺者「くっ、結構早いねっ!」


飛びかかりを交わしたと思った矢先の体当たりの連続攻撃

驚いて一瞬反応が遅れるが、なんとか交わしながら体当たりをしてくる魔物の下に潜り込む
ナイフを腹に突き刺し、体当たりの衝撃を利用してさらにナイフを深く突き立てた


暗殺者「ぐっ、ああっ!」


衝撃で体を引きずられた暗殺者もすぐに体を起こすが、二本目のナイフも刃元から折れてしまっていた
使い物にならなくなったなまくらを投げ捨て、最後の1本をクルクルっと器用に回しながら手に構える

痛みにのたうちまわる大目玉はやがて静かになった
目の前にいるのは彷徨う鎧が1体

419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:52:47.35 ID:n7qqe+6bo

彷徨う鎧は決してこちらには、積極的には攻め込んでこない
こちらの動きをじっと観察し、出方を見ている

対する暗殺者はすぐに仕掛けた

残像すら見えそうなスピードであっという間に迫り、兜へとナイフを差し込む

本来であれば人間の顔面を突き刺す必殺の一撃である
しかし相手は肉体を持たない鎧の魔物
何も無い空洞にナイフを運んだところでダメージにもなるはずがない

不可視の肉体があることに淡い期待をしたが、すぐにそんな考えは甘いものだったのだと悟る

ちっと舌打ちをしたところで甲の内側からナイフで切り傷をつける
がきんと硬いものを切る嫌な感触に奥歯を噛み締めながら、殴るように振られた盾をバックステップで避けた


ふわりと避けたところに彷徨う鎧の剣が振り下ろされる
特別早い刃ではないがなにしろ重さの乗った一撃だ。 直撃すれば暗殺者のような防具もろくに付けない人間であれば即死の威力だ
かすっただけでも大怪我は免れないだろう


血糊がこびりついた剣を最小限の身のこなしで回避してのナイフの斬撃

ただそれはやはり硬い鎧の表面に傷をつけるに留まった
威力が絶対的に足りないのである

彷徨う鎧の剣と盾を掻い潜りながら何度もナイフを振るう暗殺者
だがやはりそれは彷徨う鎧へ効果的なダメージには至っていない

420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:55:58.87 ID:n7qqe+6bo

暗殺者は確かに対人間であれば相当な強さを誇るだろう
ただしそれは急所がある人間だからこそだ
もしこれが彷徨う鎧のように、特筆すべき急所がない相手であれば彼女はたちまち不利なものになってしまう
身軽さを優先したナイフでは、文字通り刃の歯が立たないのである
そしてまた彼女の持つ特技も暗殺に特化したものであり、火力に特化したものは少なかった


暗殺者「あぁっ!!」


渾身の全体重を乗せた突き刺し攻撃は鎧に確かな傷をつけた
だがその衝撃にナイフは耐えきれずに折れてしまう


暗殺者「くっ……! あぁもうっ!!」

暗殺者「殺す! 殺すっ!! 絶対に殺すっ!!」

暗殺者「ああああああっっ!!!」


折れた刃で何度も鎧を打ち付ける暗殺者
刃はとうに砕け、もはや柄しか残っていない
だがそれでも彼女は殴るのをやめない
刃が折れたなら柄で殴る
柄が曲がれば手で殴る
手が砕ければ腕を叩きつける
腕が使えなければ蹴る

それほどまでの殺しへの執念が彼女にはあった
殺しは自分のすべて
殺しこそが自分が自分であることの意味なのだろう

事実、殴った柄が曲がり使い物にならなくなればそれを捨て、それでも立ち向かったのだ
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 22:59:51.66 ID:n7qqe+6bo

盗賊「あぶないよっ!!」

彷徨う鎧の重い剣を盗賊がなんとかいなす
衝撃をうまく逃がしながら、体を翻し暗殺者を抱き抱えて距離をとった


暗殺者「離してっ!!」

盗賊「だめだよ! 武器がないんじゃ戦えないでしょ!」

勇者「全く、無茶苦茶な戦い方をするなお前」

暗殺者「殺す……! あいつを殺すっ!」

勇者「お前には分が悪い。 いいから黙って見てなって」


駆け出した勇者に合わせて彷徨う鎧が剣と盾を構える
こちらの動きに合わせてタイミングよく振るわれた剣を交わしてからの回転斬り
それは鎧を両断し、鎧に彷徨う魂を成仏させた
彷徨う鎧の事実上の死


自分には出来なかったことを容易く行った勇者に、暗殺者は奥歯を噛み締めた
自分の中で勇者への敬愛と殺意の感情が膨れていくのがよく分かる

普通であれば相反する二つの感情
それは暗殺者にとっては表裏一体の感情であることを彼女以外は理解できないのだろう
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 23:04:39.31 ID:n7qqe+6bo

暗殺者「余計なことをしてくれるたね」

勇者「はぁ?」

暗殺者「あれは私の獲物よ。 私が殺さなきゃいけない相手なの」

勇者「バカいうんじゃねえよ。 あのままだったらお前死んでたぞ」

暗殺者「死なないわ。 死んでも必ず殺してみせる」

勇者「はぁ…… あほかお前がそんなことしてなんの意味がある」

勇者「いいか、俺達はパーティだ。 助け合うもんなんだ」

勇者「お前が倒せない相手は俺がやる。 俺が倒せない相手は魔法使いがやる」

勇者「俺らがやられたら賢者が助ける。 賢者がやられそうになったら盗賊が守る」

勇者「俺らにできない素早い殺しは暗殺者がやる」

勇者「そうやってみんなの強みを活かして戦うのがパーティだ。 弱みを補うのもパーティだ」

勇者「今みたいに一人で突っ走って危ない戦いをさせないようにするのがパーティだ」

暗殺者「……そんなの弱い奴がやることだよ」

勇者「バカいえ、お前より強い俺ですらまだまだ弱いと思ってる。 そう思って当たり前なんだよ」

勇者「弱いからこうしてパーティを組んで戦ってる」

勇者「弱い俺らでもパーティとして戦えば強くなれるんだよ」

暗殺者「…………」スッ

盗賊「だ、だめだよ暗殺者! 怪我してる」

暗殺者「これくらい平気よ」

盗賊「だめだよ、このままあんな戦い方してたら本当にいつか死んじゃう」

盗賊「そんなの……嫌だよ…… せっかく仲良くしようって言ったのに……」

暗殺者「…………」

魔法使い「……大丈夫?」

賢者「あぁ、怪我してる。 すぐに治しますね」

魔法使い「ごめんね助けるのが遅くなっちゃって」

暗殺者「なんで謝るの? 私が勝手にやったことじゃない」

魔法使い「……あなたはもう私たちのパーティ」

魔法使い「……暗殺者の怪我は暗殺者だけの責任じゃない。 私たちみんなの責任」

暗殺者「なにそれ、訳わかんない」

賢者「ごめんね…… 私たちが頼りないからだよね」

賢者「私たち、勇者や暗殺者みたいに強くないけど…… でも頑張るから」

賢者「あなただけに無理はさせないようにするから」ギュッ

賢者「死に急ごうとしないで?」

暗殺者「……そんなこと」
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 23:05:06.57 ID:n7qqe+6bo

囲まれていた冒険者たちの方もなんとか戦闘を終えたようだった
負傷者はいるがすぐに回復魔法をかけたため大したものではない

囲まれた上に大目玉の混乱効果で壊滅寸前だったがなんとか間に合ったようだ


「ありがとう、この礼はなんと言ったら良いか」

勇者「無事でよかったな」

「あぁ、実はそっちにダンジョンがあってな。 試しに入ったらとんでもないモンスターハウスに当たっちまって」

「命からがら逃げ出してきたはいいんですけど、ボロボロのまま囲まれてしまってもうだめかと思いました。 あいててて」


確かに装備はどこもかしこも傷んでいるようだ
腕も悪くは無いのだろう、しかしそれほどまでに苦戦するダンジョンがこの当たりにあった記憶はない


「つい最近発見されたダンジョンなんですよ。 調査とマッピング目的で入ったはいいんですけど手痛くやられちゃいました」

「いやほんと…… ちょっと私たちの手には追えないやあれ」

勇者「そんなやべえの? なら俺達が行くしかないでしょ」

盗賊「えー!」

魔法使い「……えー」

賢者「あはは……そういうと思いました」

勇者「何いってんの、ダンジョンからモンスターが溢れてきて街道を走る旅人を襲うことだってあるんだぞ?」

「そうだな、それもあってすぐに調査に来てたんだが…… なかなか厳しかったよ」

「よかったらあんたらに依頼をさせてくれないか? このままあのモンスターハウスの中の魔物が出てきたらと思うもゾッとするよ」

勇者「ダンジョン攻略か、いいじゃん」

勇者「やるよな!?」

盗賊「うぇーやだよー」

魔法使い「……諦めよ盗賊」

賢者「どうせ勇者が全部倒してくれますよきっと」

盗賊「うん……」

勇者「超人任せじゃねえか!! ま、いいか」

勇者「おっし、っていうことで出発!」

暗殺者「…………」

勇者「いくぞ、暗殺者!」

暗殺者「…………」

暗殺者「……認めない」

暗殺者「私は私のやり方で強くなる。 そんな生ぬるいことで強くなれるはずなんてない」

暗殺者「そしていつか必ずあなたを殺すわご主人様」

暗殺者「あなたの死に顔…… 考えただけでゾクゾクするもの」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/28(金) 23:05:43.10 ID:n7qqe+6bo
また今度
なるべく早く書きます
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:09:44.51 ID:JJvEDX240
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:11:36.17 ID:rHsnzPd5O
期待している
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/04/28(金) 23:16:13.43 ID:jHXuGsD8O
おつおつ!
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:16:36.93 ID:kHUvFjW4O
暗殺者ちゃん怖いぉ
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:19:40.20 ID:XGUhfbryO
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/28(金) 23:57:51.93 ID:clNsZ3aVo

や、ヤンデレ枠はいいな!()
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:06:57.10 ID:XG5wUQ7eo

魔法使い「ベギラマ」

賢者「ベギラマ!!」


2人の魔法が同時に炸裂し、ゴォッと大きな炎が2つ上がる。 道を塞ぐように蠢いていた魔物達を焼き尽くしていく
身を焼かれた魔物の激痛の叫びは、さながら不協和音のオーケストラだ

そしてその叫び声に釣られるように続々と魔物が集まってくるループに陥っていた


盗賊「ちょっと! 魔物多くない!?」

魔法使い「……ん」

賢者「まだダンジョンに入ってそう時間も経ってないのにこれは厳しいですね」


彼女らの言う通りだった
まだダンジョン内に侵入してから十数分しか経っていない
それほどダンジョンの浅い層にいるのにも関わらず、魔物の数が普通では考えられないほど多かった

通常であればダンジョンの奥深くに進むにつれて魔物と多くエンカウントするようになる
たとえ深層であったとしてもここまで魔物の大群に襲われることなど早々はないのだ

明らかにこのダンジョンは何かがおかしい


賢者「あ! 漏らした敵が来てます!」

盗賊「任せて!」


魔法使いと賢者の広範囲魔法をくぐり抜けてきた骸骨の剣士が、盗賊に剣を振るう


盗賊「たぁぁっ!!」


それを大きく上に飛んで回避、低い天井を盗賊は器用に蹴った
反動をつけた重たい一撃は剣士の頭蓋骨をかち割り、うまく倒しすことに成功する


勇者「ナイスだ盗賊!」


盗賊の攻撃はかなりオーバーアクションだった
もっとスムーズに敵を倒せたなら百点満点だろう
だが敵を1体確実に一撃で倒したことは素直に褒めるべきことでありチームに最も求められていたものだ

魔法使いたちの次の魔法の詠唱の間にも続々と魔物は迫ってきており、その魔法が完成するまでの時間稼ぎをする必要がある
盗賊の前をカバーするように俺は体を滑り込ませ、一閃

勇者「はぁっ!」


一振りで前にいた2体をまとめて倒し、直後大きく踏み込みながら返す刃で3体目を倒した


盗賊「カバーするよ!」

勇者「おっけー!」

432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:15:15.59 ID:XG5wUQ7eo

3体を倒した先にも敵はいた
だがそれはやや間合いとしては遠く、二歩を踏み込まなければいけないため、なんともやりづらい距離だった
それを盗賊はすぐに気付き、俺と変わるように最前衛へと走っていた


盗賊「ゆうしゃ直伝! 火炎斬り!」


短剣の刀身が炎を纏って明るく輝く
踊るように回転してからの一振りに応じてその小さな短剣から火炎が走った

炎に触れられた魔物には斬られた傷があり、その傷口は高熱のために炭化する
一拍遅れ、魔物の体内から豪炎があがり、体の内部から焼き尽くされた魔物は即死した


魔法使い「……下がって」

賢者「魔法行きます!」


その一言を待ってましたと言わんばかりに俺と盗賊は後ろへ飛ぶ
狭い洞窟の中での範囲魔法はまさに戦術兵器だ

唱えられた中級火炎魔法は魔物を瞬く間に燃やして道を開いてくれた
魔法様々である


勇者「さんきゅ」

魔法使い「……ん」

賢者「あー! 私も褒めてくださいよー」

勇者「おう? 賢者もナイスだったぞ」

賢者「えへへ〜」

盗賊「うちは!?」

勇者「おう! 盗賊もナイス! お前とのコンビもめっちゃやりやすくなってきたわー」

盗賊「ほんとー!? やった!」

暗殺者「…………」

暗殺者「……仲良しごっこをして楽しいのかしら」

433 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:19:47.11 ID:XG5wUQ7eo

魔物の群れをみんなの連携で切り崩しながら進んでいく
パーティの連携もなかなか様になってきており俺のワンマンパーティではなくなってきた。 この前の街以来ずっと続けている修行が身になってきているのを実感する

だがなんだか俺が頼られることも少なくなって寂しいのも事実

少しセンチメンタルな気持ちになっていると暗殺者が耐えきれなくなったようで一人で走り出した


暗殺者「…………」シュッ

勇者「おい、暗殺者!? 待てひとりで行くな!」

暗殺者「こうやって戦うことの何が悪いっていうの!!」


激情のままに振るわれたナイフ
しかしそれでも戦いは冷静に、そして素早く魔物の喉を搔き斬った
しなやかな体のバネを利用したひとっ飛びで次の魔物の顔面に飛び、勢いを利用したその刺突は魔物を即死させる

その間に魔物が振るった爪をかわし、またも器用に魔物に飛びかかった
首を両手で掴み、そして全体重をかけて体をひねる
その反動で魔物の首からゴギッ!と嫌な音が立て折れ、力なく魔物は倒れた


暗殺者「…………」

盗賊「暗殺者! 1人じゃ危ないってば!」

暗殺者「……うるさい」

勇者「おい、なに焦ってんだ?」

暗殺者「うるさいって言ってる」ビュッ!!

ガシッ


勇者「……まだチームワークってのが認められないか?」

暗殺者「当たり前でしょう。 手、離して」

勇者「…………」

暗殺者「私は私のやり方でやらせてもらうから」スタスタ

勇者「はぁ……」

盗賊「暗殺者……どうして……?」

盗賊「どうして一人でそんなに戦いたがるの?」
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:25:18.79 ID:XG5wUQ7eo

盗賊「ねぇ、暗殺者とうちらは仲良くできないのかな」

勇者「そんな事ねえよ」

魔法使い「……少し時間がかかる」

盗賊「時間?」

賢者「暗殺者ちゃんは一人でずっと戦ってきたんですもん。 それとは別の戦い方をする私たちのことはすぐには受け入れられないですよ」

勇者「あいつにとって戦いは生きることそのものなんだよ。 それまで一人で戦い抜いてきたのは生き方そのものってことだ。 それを否定される気持ちになりゃ、ああなるのも分かるだろ?」

盗賊「そうだね」

賢者「受け入れるのは簡単じゃないんですよ。 時間がかかります」

魔法使い「……だから、受け入れられるようになるまで精一杯サポートしてあげよ?」

盗賊「うんっ! 分かった!」

勇者「へこたれずに仲良くしてやれよ、盗賊」

盗賊「任せてっ!」

勇者「お前に任せるの不安だけどな」

盗賊「なんでよーバカゆうしゃ!」
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:28:03.16 ID:XG5wUQ7eo

それから不思議なことにダンジョンの奥に進むほど魔物の数が減っていった
最初は気のせいかとも思ったがついには口笛を吹きながら歩いても魔物が寄ってこないほどになった


魔法使い「……変」

賢者「なんで魔物がいないんでしょう? 普通は奥に進むほど魔物が多くなるものですけど」

勇者「さぁな? とりあえず魔物がいねえんなら休もうぜ」


周囲の安全に気を配りながら俺達は腰を下ろす
賢者が火魔法を使い、湯を沸かして茶を淹れてくれた


賢者「はい、どうぞ」スッ

暗殺者「…………」

賢者「あ! 毒なんて入ってませんよ?」

暗殺者「…………」

勇者「ったく…… ほら寄越せ」


賢者の手からマグカップを受け取り、口に含む
熱さのせいで吹き出しそうになりながらも飲み込み、火傷した痛みに涙を浮かべながら暗殺者にカップを手渡した


勇者「ほら毒なんてねえよ」

暗殺者「…………」

勇者「賢者ちゃん! あちぃよこれ! 火傷したっつうの!」

賢者「え!? 熱々の方が美味しいじゃないですか」

魔法使い「……熱いから気をつけて」

暗殺者「えぇそうする」

盗賊「暗殺者、これ」

暗殺者「これは?」

盗賊「干した果物。 保存食だよ」

盗賊「一緒に食べよ?」

暗殺者「じゃあ」

暗殺者「あむ…… 甘い、おいしいわ」

盗賊「ほんと? よかった!」

勇者「おーい、食べすぎると動けなくなるからな、食いすぎんなよ」

盗賊「分かってるようるさいなぁ」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:30:50.00 ID:XG5wUQ7eo

盗賊「ねぇ暗殺者」

暗殺者「うん? なにかしら」

盗賊「改めて仲良く、して欲しいなって言いたくて」

盗賊「だから…… 友達になってくれる?」

暗殺者「あら、友達っていうのは知らない内になっているものじゃない?」

盗賊「そうかもしれないけど、決意を言葉にしておきたくて」

暗殺者「……?」

盗賊「暗殺者がうちらのこと好きじゃないの分かってる」

盗賊「でも放っておけないの!」

盗賊「うちは暗殺者のこと諦めない。 どんなに素っ気なくされても、避けられても、嫌われても!」

盗賊「絶対友達になるから」

暗殺者「…………」

暗殺者「なにそれ、変なの」

盗賊「暗殺者は強くなりたいってダンジョンの前で言ってたよね」

盗賊「パーティってね、仲間で協力して強くなるのも勿論だけど、それだけじゃないんだ」

盗賊「弱い自分を支えてもらうの。 弱い仲間を支えるの」

盗賊「そうやってみんなで支えあって少しずつ強くなるんだ」

盗賊「私はそれが本当の仲間の意味だと思う」

暗殺者「…………」

盗賊「暗殺者が今すぐに自分を曝け出すのはきっと難しいと思うんだ」

盗賊「でも、もし助けて欲しい時はね」

盗賊「絶対に私が、ううん私たちが助けるから」

盗賊「だから……

暗殺者「やめて」

盗賊「……っ」

暗殺者「分かったから、もうやめて」

暗殺者「……黙って休みましょう?」

盗賊「そう、だね……」

勇者「…………」

魔法使い「…………」

賢者「…………」

暗殺者「でも…… ありがとう盗賊」

盗賊「……!」

盗賊「うんっ!!」
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 21:31:17.72 ID:XG5wUQ7eo
また今度
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 21:34:45.98 ID:CgUHkDOD0
これは勇者、盗賊、暗殺者の3Pも近いな
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 21:55:12.00 ID:RGYqJcweO
ヤンデレはよー
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 01:08:41.96 ID:h1lcTvuKo
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/02(火) 00:33:32.73 ID:i6BdFR0SO
イチャイチャ(物理)
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/03(水) 15:35:03.11 ID:Ce/SVYdVo
3Pの前に盗賊と暗殺者で
おつおつ
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 09:54:03.85 ID:1pnFF6Abo
イチャイチャはよ
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 12:20:54.35 ID:b1B0Ts9qo

書き溜めてたのにそれが全部消えたのでやる気出ませんでした
ボス戦頑張って書いたのに……もう書く元気ないごめんなさい久々に安価していきます
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 12:22:02.73 ID:b1B0Ts9qo

盗賊「ここがボス部屋?」

勇者「何が出るか分かんねえぞ。 気を付けろよ」


ドアを開けるとそこは石畳で出来た大きな部屋だった

その部屋の中央には圧倒的な魔力と存在感を垂れ流す成人した大人ほどの大きさの超巨大なハエがいた

無数の目でこちらを覗き込み人の腕ほどもある触角のような前足で顔を触る

そのハエから誰もが目を離すことが出来ない
対峙しているだけでその魔物の恐ろしさが肌を突き刺すような感覚に陥る

こいつがここにいたから魔物は大慌ててダンジョンに逃げ出してきたのだろう
たれ流される膨大な魔力だけで吐き気を覚え、手汗で濡れた剣の柄を握り直した


魔法使い「魔法姉……?」

魔法使い「……魔法姉なの?」


この魔物はかつて魔法使いが教えてくれた姉なのだろう
皆が動けない中、魔法使いはハエに近づいていく


魔法使い「ずっと……ずっと探してたよ魔法姉」

魔法姉「ごめんなさい…… 私が弱かったせいで」

ハエ「…………」


魔物の周りから魔法の輝きが溢れ、それに気がついた時には魔法使いが衝撃によって錐揉みしながら後方へと吹き飛ばされた

446 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 12:24:14.07 ID:b1B0Ts9qo

魔法使い「待って…… 魔法姉」

魔法使い「…ずっと言いたかったの」


全身を強く打ち、息も絶え絶えの中で必死に言葉を紡ぐ

気を失いそうになりながらなんとか意識の糸を保ち続ける彼女の願いは届かない

ハエは魔法を発動させる
魔法陣が全身を包み込み、ハエの体が魔法陣に吸い込まれるように姿を消した

魔法使いが必死に手を伸ばすがあまりにも二人の距離は遠すぎた

転移魔法の残滓である光の破片が美しく残酷に輝く


魔法使い「くぅ…… うっ…… 魔法姉……」

勇者「魔法使い……」


やっと出会えた姉
掴みかけたその姿はまたその手をするりと抜けてしまった

魔法使いはしばらくそのまま声を上げて泣いた
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 12:26:30.11 ID:b1B0Ts9qo

勇者「魔法使いは?」

賢者「部屋で一人にしてくれとの事です」

勇者「そうか」


急遽街に戻ってきた俺達は宿屋に入った
すっかり元気を無くしてしまった魔法使いを休めさせるために、来たが、俺達もすっかりと疲れてしまった


賢者と盗賊もそれぞれ休むようだ
皆の顔に疲労の色は濃く誰も一言も発することは無かった


ベッドに身を投げるとなぜかいきなり目が覚めてしまう
これでは眠れない

誰かの部屋に行こうか


>>448
313.96 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)