マリオ「最近、テニスやパーティーにゴルフばかりで…何かを忘れているような」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:43:01.84 ID:jgCSYo4N0
昼下がりの午後キノコ王国のカフェにて

マリオ「なんだろうな…ひどく大事なことだったと思うのに」


ルイージ「思い出せないならたいしたことじゃないんじゃあ無いかな?」

ルイージ「それより、さ? 早いとこ注文しようよ」

マリオ「あ、ああ」

マリオ(…本当に、そう…だったっけ?)


キノピオ「お客様、ご注文はお決まりですか?」


ルイージ「カメカメティーとカラカラパスタのスパゲッティで」

マリオ「俺もそれで」

キノピオ「お時間少々頂きますが宜しいですか?」

ルイージ「構いませんよ」

キノピオ「では…」

スタスタ…

ルイージ「この店は何が良いって品揃えの良さがウリなんだよね」

ルイージ「カラカラパスタやサムイサムイ村産のさむイモのグラタン」

ルイージ「果てはマメーリア王国の料理やドルピック島風サラダもある」

マリオ「ああ」

ルイージ「毎日テニスやゴルフにお呼ばれされてばかり…」



ルイージ「僕らも もうイイ齢なんだしさ

たまには なーーんにも無い日を のんびりしようじゃないか!」

マリオ(……思い出せない)
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:43:29.82 ID:jgCSYo4N0

マリオ「なぁ、ここの勘定は」

ルイージ「やだなぁ兄さん、来る時に言ったじゃん
     ここは僕持ちだって」


マリオ「…」






マリオ「払うのは構わないが…払えるのか?」

マリオ(俺達は"しがない配管工"…そんなに収入は無かっ…た?
    気がするんだが)


ルイージ「この前のゴルフ大会での賞金があるじゃないか!」

マリオ「ルイージ」


ルイージ「なんだい兄さん」






マリオ「前にも似たような事を言わなかったか? 三日前ぐらいに」


マリオ「この前はピーチ姫やヨッシーを誘っての登山だったが
    その時も代金はお前持ちだった、その前やもっと前だって…」


マリオ「俺はここ最近"配管工としての仕事"をしてない気がするんだ
    賞金があっても流石におかしいと思うんだ
    そんな収入どこにあったんだ?」


ルイージ「あー、実は兄さんには黙ってたんだけど前に宝くじが
     大当たりしちゃってそれでコインに困ってないんだよ」

マリオ「そうなのか?」

ルイージ「そうだよ」



コトっ


キノピオ「此方、ご注文のメニューになります」


ルイージ「さ、パスタも来たみたいだし、冷めないうちに頂こう」

マリオ(…)



―――
――




カランカラン

キノピオ「またのお越しを」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:43:57.26 ID:jgCSYo4N0
ルイージ「そうそう、兄さん!実はさぁ今度また新しいテニス大会が
     開かれるんだよ、しかも賞金はなんと500コイン!」

ルイージ「こりゃ出るっきゃないっしょ!」

マリオ「…ん?ああ」


ルイージ「…ふぅ、上の空だね?」

マリオ「すまんな、こうして暇人の俺を誘ってくれたのに」

ルイージ「イイってイイって、我等が英雄スーパーマリオ様を
     お連れして歩いてるんだぜ
     僕だって街の若いお嬢さん方からキャーキャー言われたいさ」

ルイージ「僕は兄さんを利用してる、だからこれでトントンだ
     悪く思う必要性なんて何処にもないね」



マリオ(…えい…ゆう?)



マリオ「なぁ、弟よ」

ルイージ「はいはい?」




マリオ「俺って、さ…いつから英雄になったんだっけ?」




ルイージ「うーん? そんなの決まってんじゃん
     テニスやゴルフで数々のメダルやトロフィーの獲得
     王国に蔓延したウイルスの感染者を治した名医
     あ、あと街で評判のクッキー屋さんも営んでたじゃあないか」


マリオ「…"それだけ"だったか?」


ルイージ「そだよ、そんだけだね!」


「マリオさーん」


マリオ「ん?」

ヨッシー「いやぁ、お久しぶりですねぇ!」

ルイージ「うおっヨッシー!ヨッシーじゃないか!」

ヨッシー「いやぁ、どうもどうも、久しぶりに実家からキノコ王国へ
     遊びに来ましてね、あっ、これお土産のクッキーです」

ルイージ「おぉ、タイムリー! そしてヨッシー、今更だけど僕だけ
     名前呼ばないとかひどいんでない?」

ヨッシー「あっすいません、その、茂みの色と似てて、なんていうか
     マリオさんの姿しか…」

ルイージ「へぇへぇ、僕は緑の人ですよ」

ヨッシー「そういえばルイージさん!新しいカートの発注「ヨッシー!」


マリオ「カートの発注?なんだソレは」

ルイージ「え? あ、あー、実はテニスとは別で
     レーシング大会があるんだよ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:44:38.10 ID:jgCSYo4N0

マリオ「それは参加自由なのか?」

ルイージ「まぁ、ね」チラ


ヨッシー「あ、はい…参加はできますよ」


マリオ「俺には黙ってたのか?」

ルイージ「ごめん、僕さ、ホラ、兄さんと比べると影も薄いしさ
     何やっても勝てないからね…たまには人気者になりたいって
     それで兄さんに黙ってたんだよ」

マリオ「お前にはお前でいい所もあるし、お前のファンだっているだろ」

ルイージ「うん、ごめん兄さん」

マリオ「構わんさ、ところで、そのレーシングなんだが


     その…俺も参加しちゃ駄目か?」


ヨッシー ルイージ「えっ!」


マリオ「いや、お前の考えも分からんでもない、嫌なら良いんだ」


マリオ(レーシング大会、それに"出てたような気がする"
    それはすごく刺激的でまるで**してた頃を…)




マリオ(…?
           "**"してた頃? 何をしてたんだ?)


ルイージ「…」

マリオ「駄目か?」


ルイージ「…いーよ、はぁー、僕のカッコいい姿でファンを獲得しよう
     作戦もオジャンか」


マリオ「さっき、カートの発注って言ってたが
    カートは各自で用意するのか?」

ルイージ「うん、手続きとかは城の方でやってるよ」

マリオ「行ってみても良いか?」

ルイージ「どうぞどうぞ!兄さんがやりたいなら僕は止めないからね」

マリオ「すまない」ダッ







ヨッシー「行っちゃいましたね」

ルイージ「ああ、行っちまったな…」


ヨッシー「ごめんなさいルイージさん、僕が軽率な発言したから」

ルイージ「いいさ、遅かれ早かれ、こうなったさ」



ルイージ「…たまには忘れさせてあげたかったなぁ」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:45:08.37 ID:jgCSYo4N0

キノコ王国城門前にて


キノじい「おお!これはこれはマリオ殿!

マリオ「どうもキノじい」

キノじい「本日はどのようなご用件で?」

マリオ「近々カートによるレーシングが行われるらしいじゃないか
    それの手続きが城でできると聞いてな」


キノじい「…左様ですか、ええ、承っております、案内いたしましょう」



コツコツ…

マリオ(…)

マリオ「なぁ、キノじい」

キノじい「はい?」


マリオ「この城って改装したりってしたか?」

キノじい「ほっほっほ、お分かりですか!」

マリオ「ああ、…なんだか前に来た時と内装が違う気がするんだ」

マリオ(それも"何度も変わった"ような気がする)


キノじい「この城も古くからある城ですからな
     人も建築物も同じですじゃ、時が経てば老いてやがては
     脆くなるのです」


マリオ「そうか」

キノじい「そうです」


ガチャ  ギィ…


キノじい「此方で手続きは行えます、ささ…どうぞ、机とペンを
     お使いくだされ」


マリオ「ああ」


ガチャ   バタン



キノじい「ふぅ…」


「じい…どうでしたか?」


キノじい「いえ、まだ思い出されてはいないようです姫」


ピーチ「そうですか…」

キノじい「また新しい大会やパーティーを企画しましょうか?」

ピーチ「お願いします」

ピーチ「あと、クッパ城にも使いの者を遣わせましょう」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:46:03.83 ID:jgCSYo4N0
―――
――



カラン…!カラン…!


ヨッシー「すいませんねぇ奢ってもらっちゃって」チュー

ルイージ「ん、構やしないさ」



ヨッシー「…あれから、もう随分長い時間が経ったものですよね」

ルイージ「ああ、そうだね」







ヨッシー「今でも信じられませんよ
     マリオさんが身体を鍛えるトレーニング中に事故で
     頭を打ったなんて…」


ルイージ「…」





ルイージ「なぁ、ヨッシー
            "僕達は人間だ"」



ルイージ「スーパードラゴンの君やキノピオ達は長生きするだろう?」

ヨッシー「…はい」

ルイージ「でもね? 僕達は違うんだ」

ルイージ「普通に生まれてきて、普通に生きて、そして、老いていく…」


ルイージ「僕達は周りの人よりも生まれつき才能があったさ
     それこそ金メダリストも吃驚なヤツがさ」

ルイージ「テニスやゴルフ、果てはカートが大破するような
     過酷なレースでも堂々トップで
     未知のウイルスを撃退できるカプセルを出せる名医にもなり」

ルイージ「誰からも賞賛されたさ」


ヨッシー「…」


ルイージ「でもね、…やっぱり"人はどこまで行っても人でしかない"
     老いには勝つことができないのさ」

ルイージ「現に兄さんは『俺は以前に比べて衰えた』そう言ってたんだ」

ヨッシー「ええ、それは聴いています、昔は水中に何時間潜水してても
     高い所から落ちても平気だったけど、最近は辛くなったって」


ルイージ「そうだね…確か、"ピーチ姫が絵の中に閉じ込められた時"かな
     あの時ぐらいから兄さんは身体能力が落ちたかもって…」

ルイージ「脳みそにせよ、身体の筋肉にせよ、人体は使わなければ
     廃れていく」





ルイージ「いつしか兄さんは四六時中にトレーニングに励むようになった
     それこそ、碌な食事も睡眠も一切取らないで…」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 03:46:54.34 ID:jgCSYo4N0

ルイージ「酷い時は地面に倒れててさ
     顔も蒼白で目の焦点も丸っきり合っちゃいない」

ルイージ「なんで、そこまでするのかも訊いた
     そしたらなんて答えたと思う?」


ヨッシー「『俺がいなくなったら誰が姫を救うんだ?』ですか?」


ルイージ「うん、正確には国民…いや困ってる人なら誰でもだね」




ルイージ「根っからの正義漢だよ、それも頭に馬鹿を幾つ付けたって
     足りっこない、真性の馬鹿だよ」

ヨッシー「オマケに冒険野郎?」


ルイージ「そー、そー、人助けもあるけど、過酷な冒険にチャレンジして
     己の限界を確かめたいor超えたいって考えもあるのさ
     ギネスブックも裸足で逃げ出すレベルの挑戦者だよ」




ルイージ「それでいて致命的なまでに"鈍感"な人だ」


ヨッシー「ええ、分かります」

ヨッシー「僕もルイージさんもキノじい、ピーチ姫…
     皆がマリオさんを心から心配しているというのに」

ルイージ「身近な人…好意を抱いてる人、同じ血を分けた身内
     誰もが英雄を心配してるのに気付かないで
     ひたすら無限の可能性を追い続ける……」

ルイージ「本当にどうしようもないくらい"鈍感"な人だよ」




ルイージ「僕はね、正直言って頭打った兄さんが
     冒険の事をケロッと忘れちゃった事を喜んでるのさ」

ヨッシー「それは、多分ピーチ姫も同じでしょうね」


ルイージ「きっと思い出せば、また無茶をする…
     だから僕に限らず皆が兄さんを休ませたいんだ」

ヨッシー「連日のように多額の賞金付きのスポーツ大会やパーティー
     すごい額の国家予算が使われているんですよね?」

ルイージ「ああ、ピーチ姫には頭が上がらないね、あっ、ウェイターさん
     スッキリドリンクとキノコケーキ追加で」


ルイージ「たった一人の人間の為だけに国家予算がガバガバ使われて
     でも市民は怒りさえしない」

ヨッシー「それだけマリオさんは皆に愛される英雄<ヒーロー>なんですよ」


ルイージ「…弟として鼻が高いよ」


ヨッシー「はっはっは、確かにルイージさん達は
     言葉通り鼻が高いですものね!」

ルイージ「ちょっ、うまいこと言ったつもりかい!?
     もうこれ以上、奢らないよ!?」
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