マリオ「最近、テニスやパーティーにゴルフばかりで…何かを忘れているような」

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108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:14:54.81 ID:PLxa+cbT0


キノピオ「うぐぅっ!?」


 撃ち出された卵には小さな少年、彼は数年前の出来事を思い出す
マリオブラザーズと姫…その護衛としてピクニックへ行き
見知らぬ洞窟の奥にある扉を開けた事


そして夢の世界"サブコン"へ誘われた日の事を…



キノピオ(…ははっ、そういえばあの時もこんな感じでしたっけね!)



背後からは激しい轟音と煙が絶え間なく上がり続ける…
あれはもう戦争と呼んでも差し支えない戦闘と化していた




キノピオ(…キャサリンさん、必ず王国に事の次第をお伝えしますっ
      どうかご無事で!)


風を切る音と大気の中を突っ切りながらも彼は振り返る
己を命掛けで逃してくれた恩人が居た地を‥っ!



もう…戦車の影すら豆粒のように見えてしまう程
              遠ざかっていくというのに









 さて、読者諸氏よッッッ!!

キノピオは…キャサリンの無事を強く祈った…っ!


先も述べた通り、彼は多くのキノコ王国国民の中で最も"戦闘"を経験した
住民であり、その初陣とも言うべき舞台が夢の国サブコンであり

そして初めて苦戦した相手もまたキャサリンであった…っ!


ゆえに彼女(オカマ?)の実力の程は嫌という程に理解している


 そう…


 あっけなく…あまりにもあっさり敗北するはずが無いと信じているのだ





「…ちと早いが…造ったブツを使うとするかのう」

「…まさか、アレがオリジナルとはなぁ…確かに見れば面影あるな…」




 だが…






  そんなキノピオの予感は…  あっさりと崩れ去る…

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:16:53.30 ID:PLxa+cbT0

キャサリン「ん、んん?」



ぱたり、と鳴り止んだ砲撃…
 未だ黒煙に覆われた視界はお互いの姿を認識させず
何がどうなっているのか理解させてはくれない

これにキャサリンは首を傾げた




キャサリン(…妙ね?砲撃が止んだ?)


キャサリン「もしかして私を狙うのを諦めちゃったのぉ?」


一人に構ってられないと判断し
戦闘の中断、本来の目的通り王都へ侵攻を再開したか、はたまた
闇雲に撃った卵が幸運にも命中し沈黙させたのか?



キャサリン「けほっ…けほっ…どっちにしても私も早いとこ
       此処から逃げた方が良いかしらね…」



キノピオの前で強がりはしたものの…状況は著しく良くない
長年平和という名のぬるま湯に浸かり鈍った身体
本調子とは言い難いコンディションで卵の連射を繰り出した身だ

 芝や地表の焼け焦げた匂い…チリチリと身を焦がす熱気と舞う火の粉
人より頑丈なドラゴンの身とはいえそれは厳しいモノであった







                        キュルキュル…







キャサリン「っ!」ピクッ



キャサリン(違うッ!まだ健在だわ!)バッ



直ぐに身構え機械音のする方角目掛けて渾身の一撃を放つ…だがっ!







      ゴ オオ オ オ ォォ ッ!


                      べしゃっ!!!!



キャサリン「な、に!?」



自分が撃ち出した卵は何かに衝突し砕ける音がした

 そして煙のベールを突き破り
自分に飛んでくるのは…【巨大な卵】であった
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:27:45.07 ID:PLxa+cbT0

   キュロキュロ…キュルキュル‥‥




 【巨大な卵】が煙のカーテンを突き破りできたのぞき穴から見えた
メタリックなボディー…まだ塗装はされていない肉体は地面でパチパチと
燃え盛る炎に照らされていて、"ソレ"の回りを踊るように火の粉が舞う


無機質な鉄の塊…そして命の光を灯さない不気味な信号を発する目玉
恐らくあの砲塔が二門の大型戦車の中にでも収納されてたのだろう

自分がドンパチしてた戦車よりかは一回り小さめな
だが大の大人の3〜4人分はある背丈…



 塗装されていない敵側のその"新兵器"とやらはキュルキュルと車輪を
動かしながらそのシルエットを露わにするのだ…っ!




キャサリン「…何の冗談かしら?笑えないわね」






 そいつの…全容が明らかになり、キャサリンはキノピオに言った
 【気になる事】が確信へ変わる事を悟る…





















       メカキャサリン「…ガガッ ――ピピッ」キュルキュル










自分の撃ち出した卵を粉みじんに粉砕したのは紛れも無くヤツだッッッ!!


無機質な目は命ある此方の姿を認識するや否や紅く輝く…
あたかも『お前の身体も自身の血で紅く染めてやろう』と言うように
 機械の瞳は狂気の紅を彩らせた……ッッ!!




      【 キャサリン  VS メカキャサリン !!!】



          戦  闘  開  始  !!

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:35:50.58 ID:PLxa+cbT0


 - かつて、夢の国サブコンを支配しようとしたモノが居た -


多くの配下を従え、次々と世界を侵攻していく悪夢の軍勢…
連中は文字通り夢の世界の住人で、夢の世界でしか活動はできなかった…



 が…



例外はあった、侵攻を受ける住人が現実の世界から4人の男女に救援を
求めたように侵略者達も現実世界から『儂と共に来い』と

所謂スカウトというモノだ…

その呼びかけに応じたのがキャサリン含めヘイホー達だった…





そして…









    メカキャサリン「… ――ピピッ」キュルキュル…





   メカキャサリン「… ギイイイイイイイイィィィ」ギュンッッッッ!!!!







キャサリン「来たッ!」





自分を模した鉄屑はその世界で創られたモノ
キャサリンが"気になっていた事"というのは……




    "火薬の匂い"だった…





人間ではなくドラゴン族である彼女(彼?)は鼻が人一倍利く
だから"懐かしい火薬の匂い"をずっと感じていた


あの戦車の撃ち出す砲弾が爆散する度に立ち込める焦げ臭さから


   
   メカキャサリン「… ッッッ」ボゥッ‼


今度はタマゴじゃない、真っ黒な砲弾それも
クッパ軍の【マグナムキラー】級のモノが撃ち出される
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:39:11.10 ID:PLxa+cbT0


キャサリン「ぅ、うわああああぁぁぁぁぁ!!」


"本来なら【マグナムキラー】級の火力を
     打ち出せる程の性能は備わっていない"兵器からの高火力


想定外の攻撃だ、当然それに対抗すべく全力で迎撃を図るモノの…




  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン






キャサリン「――――――ッ」




【キラー】砲の中でも【マグナムキラー】は元々拠点攻撃用として
開発された超弩級の火力を誇る、それをいともたやすく落せるのは精々
マリオブラザースくらいが良い所で…面白いくらいに当たる卵の弾雨で
 多少、速力は落ちたもの勢いを完全に殺す事はできなかった




結果はご覧のありさま…真っ赤なリボン諸共に黒コゲになったドラゴンが
一匹宙に舞う結果となった…



キャサリン「ぅぐッ――――かはっ!」



投げ出されるように宙を舞った身体は固い地面に打ち付けられ
バスケットボールのように2、3回バウンドする…






――眩暈がする、吐き気もする、脚に立ち上がれるだけの力が入らない



キャサリン(…っ、ったく身体中の骨にヒビでも入ったんじゃないのぉ‥
        もうちょっと筋トレでもしとくんだったかしらねぇ)




「よう、カマ野郎!久しぶりだな!」


キャサリン「…」


「んだよ、俺の顔忘れたのか?それとも何か?今のでお陀仏か?」


キャサリン「っさいわねぇ、クソ鼠」




瞼を開くのも正直しんどいわぁ…、っと内心で愚痴を零しながら
薄らと…今回のクーデター騒動に加担した男を

そして、メカキャサリンの製作に関わったソイツを見て
"気になっていた火薬の匂い"は揺るぎない確信になっていた


キャサリン「いつから、クッパ軍に就職したのよ
                 ドン・チュルゲ……!」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:55:40.08 ID:PLxa+cbT0


 サブコンの侵略者達がキャサリンやヘイホー達に呼びかけ
同じくして現実の世界より導かれし男


灰色の体毛と大きな丸い耳、ミミズの様にうねる尻尾
紫色のグローブをはめた手でサングラスをクイッと上に少しあげて
ソイツはキャサリンを見下ろす…



チュルゲ「別にクッパ軍に就職した訳じゃねーよ
      ここ数年、俺は一度も可愛い息子共を使ってねぇ」


チュルゲ「それがもう…退屈で退屈でよぉ
               死にそうなくらいだったんだぜ」チュッ



 手に持った可愛い可愛い"息子"に父親は真心を込めて唇を落す

爆弾魔として名高い彼奴の"息子"は日光に照らされて鈍い輝きを放つ

丸くて黒い鉄の塊に一本の長い導火線…実にシンプルなデザインだ




キャサリン「知ったこっちゃないわよ…で、その可愛い可愛いガラクタを
      世間様に自慢したいからテロ紛いな事でもやってんの?」



チュルゲ「だな、丁度暇してた時に面白い話を小耳に挟んだ
       んで俺は"指揮官さん"に雇ってもらったつー訳だ」



チュルゲ「良い経験だったぜ?クッパ軍の【キラー】とか
      設計図見せてもらったり、戦車砲に火薬つめたり…」


チュルゲ「俺の理想の生活って奴さ」


チュルゲ「それはそうとあのチビをよくも高跳びさせやがったなオイ」


チュルゲ「面倒な事させやがって…平和ボケした連中が
      驚く顔見れっと思ったのによォ、あ〜ちくしょう」グイッ



キャサリン「…レディーの肩掴んでどうする気よ変態」


チュルゲ「変態はテメェだ、テメェは此処に放置してても構わねぇが
     念の為に連れてくぜ、いざとなりゃ人質にゃあ使えっからな」



キャサリン「クソ鼠」ボソ

チュルゲ「うるせぇカマ野郎」






      【 キャサリン  VS メカキャサリン 】


 全く想定外かつ、キャサリン以上の火力を持つ武装での攻撃に屈し…

  キャサリンの敗北…






キャサリン(…キノちゃん…ヨッシーちゃん達に伝えて頂戴ね…)
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 02:03:45.59 ID:PLxa+cbT0
―――
――

【キノコ王国 〜国道〜】


ブロロロロロ…

…十数年前はコンクリートで舗装された車道と言う物は存在しなかった
 だが、時代が進むにつれて近代化は進み、キノコ王国でも
ガソリンエンジンを搭載した機械が道を走るようになった

 カートレースという催し、娯楽が世に広く出回った事もあり
比較的裕福な市民層は貯蓄をはたいて車を購入するようになった

さて、此処で実際に運転を試みた多くの国民が
『でこぼこだらけの砂砂利の上は走りにくい』と王国政府に要望を出した

 国の代表として何度かカートレースに参加した経験を持つピーチ姫は
国民の声を聴いて、確かに…と納得し



  道路の舗装工事、今までなかった"国道"という政策を実地した‥



市民の不満の声の解消もさることながら、流通や国営バスなどの運営面を
考えればやって損のある政策ではないと説き、政治家達を納得させた




こうして、誕生したのがこの国道である



ヨッシー「いやぁ〜、わざわざすいませんねぇワリオさん」

ワリオ「へっ!早い完売だったからな急ぎで原料を仕入れるだけだ」




レース会場として工事された道とは違う車道
中央分離帯には紫陽花が植えられていて、梅雨の時期にバスの窓から
それを見るのを楽しむ老人には人気であるそうな…


さて、そんな国道の右車線を一大のバイクが走り抜ける


イエローの塗装に全長2.7m、チタンレスのマフラーは豪快な音をたて
搭乗者はゴーグル付きのヘルメット着用でワイドハンドルを握り
お世辞にも長いと言えない脚をペダルに乗せて走るのであった


ヨッシー「今さらですけど僕達交通違反じゃないですかねー」


ワリオ「あぁん?良いんだよッ!
     どうせニケツなんざ誰だってやってんだろうしよォ」


ワリオ「それより事故らねぇように捕まってろよ!」

ヨッシー「はいはい」



フルーツジュースを販売していた彼らは
原料となる果実の買い出しに向かっていた、本日は雲一つ無い日本晴れ
降り注ぐ日光はさながら真夏日の酷暑に匹敵する暑さで思いのほか
バカ売れしたという訳だ


ヨッシー「しっかし、やっぱりワリオさんはツンデレですねぇ
     原料の買い出しと称して交通事故にあったキノピオ君の安否を
      確認しようとするんですもん」


ワリオ「うるせー!そんなじゃねぇっつってんだろォ!!!」

ヨッシー「はいはい…――おや?」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 02:12:32.27 ID:PLxa+cbT0


ワリオ「ったく…国道の途中から車線変更すりゃ近道になる…
     たまたまだ、偶然此処を通るから
        様子見ついでにからかってやろうとだな…」





ヨッシー「何か聴こえませんか?」






ワリオ「あぁ?」







―――――――ン







ヨッシー「何か…こう、風を切るような音…いや、これは…」










―――――――――ゥゥゥゥゥゥン…






      ヨッシー「これは…"落下音"ですかね?」






―――――ヒュウウウウウウウウウウゥゥゥゥン!





ワリオ「!?!?ななななな、なんだありゃあっ!?
                なんか落ちてくるぞオイ!?」
















キノピオ(onタマゴ)「ワリオさーーーん!!ヨッシーさぁぁぁん!!」
116 :>>95 "R" に別の意味を持たせたいと思ったからです [saga]:2017/05/20(土) 02:33:14.12 ID:PLxa+cbT0
*********************************


           今回は此処まで!





           [前にも書いた事]


どうでもいい補足:【ワリオバイク】

 メイドインワリオに出て来るあのバイク、スマブラでも乗ってたりする
 任天堂ホームページで調べて見ましたが製作者曰く
 ワリオは短足で腕も長くないから身体のサイズに合わせた
 バイクを創るのが非常に難しかったとかなんとか…




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117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 02:56:23.70 ID:VDrMXzsA0

前の時もだけどキノピオの卵移動、USAでキャサリンの卵に乗らないと進めないとこ思い出した
…最初キャサリン倒してしまって進めなくなったわ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 14:54:59.53 ID:3WPXyjdH0
このクリボー好きだわ、力を持たない雑魚キャラだからこそ言える台詞だよなぁ。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:12:36.58 ID:9rj2nJGi0


 僅かな…本当に僅かな"刻"が過ぎ去っていった
彼らが機体の心臓部に熱を灯し走り出しどれ程経っただろうか

 開幕当時は満タンだった化石燃料もその減り具合から
どれだけの排出量で走り続けたか、長距離運転手なら想像に難しくない





マリオ「…?きのせいか?」チラッ



岩、岩、岩…見渡す限りが全て無骨と言って世界
峠のトンネルから飛び出したトップの視界はずっと草木一本生えない
峡谷<キャニオン>を走り続けていた


人工的に拓かれた道、アスファルトの黒と中央に見える一本の白線
それ以外は焦げ茶色の無機質な岩、後は精々空の青さくらいが見えるモノ



 人工的な建物は全く無く、あえて言うなら
今彼らの走る道そのものが人工物と呼べる
それ以外は自然が創造した芸術的な岩の表面だ
 長い年月を雨風が砂塵の一粒一粒を削った至高の一品









マリオが視線を周囲にちらつかせたのは何も
        芸術を堪能したいと思ったからではない







"英雄"の…彼の潜在的に"眠りつづけている"超人的な身体能力が…っ!

彼の聴覚が遠くで"爆発音"のようなモノを感じ取ったからである!





マリオ「…いかんいかん、集中せねば!」グッ



つい先ほども慢心こそが最大の敵だと彼は思い出した
此処で如何に2位、3位と距離を離したとて顔を背けるのは
 今戦っている相手への不敬でもある、そう思いハンドルを強く握る








ワルイージ (ッん畜生がッ!!本当に何の仕掛けもねぇのかよ!!
          あのマシンはよォ!!!!!)



紫のイメージカラーは前方を走る、赤を見つめて心中で悪態つく
彼は虎の子である加速装置を使うタイミングを見計らっていたが‥


ワルイージ(…野郎、まるで隙を見せやがらねェ…!)
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:15:43.76 ID:9rj2nJGi0


先述した通り、ワルイージが特注でチェーンナップした加速装置は
【ダッシュキノコ】3つ分に相当する超加速を発揮する…ッ!


 だが…これは一時的にエンジンを暴走させる諸刃の剣

 この曲がりくねった道で後先も考えずに使おうモノなら
1位の横をぶち抜けるどころかガードレールをぶち抜けて谷底行きだ

如何に命知らずな彼とてそんなアホはやらかさない

彼の夢は対抗心を燃やすマリオブラザーズに自身の優位性を見せつける事




表彰台の天辺で自分より低い位置で悔しそうな顔する兄弟を見下しながら
金ぴかトロフィーに口づけをする事…



粉々になった機体の残骸に埋もれながら硬い地面とキスする事では無い…




ワルイージ(しかも、【ダッシュキノコ】を普通に使うよりも燃費が悪ぃ
       通常の4倍は燃料を消費しちまう…)



何度も連続して使用して、エンジンがお釈迦にならずとも
この一台だけが燃料切れでゴールテープを切れませんでした!なんて事も
有り得るのだ…




だからこそ、十二分に性能を発揮できるタイミングを計りたいのだが

目の前の"赤"は見事な走行テクニックでそれを阻止する…!



相手は此方の切り札が加速装置とは知らないだろうが
もしかしたら何処かで予測…あるいは直感的に感じ取っているのだろう

だから直線状の道に出られそうな時でさえ
ワルイージの加速が殺されるような走り方をするのだ…ッ!







日進月歩、そんなやり取りをする"赤"と"紫"を…"緑"は不快に思った



そのやり取りは正しく"真のライバル"と呼べる漢同士の戦い‥ッ



英雄…マリオとその位置で戦うべきは顎長男ではなく自分だっただろう!
そんな怒りを3位のルイージは思わされた



ルイージ「…くっ!僕じゃ足元にすら及ばないっていうのかッ!」


ご自慢の機体はマフラーからCO2と僅かな水を排出する…
まるで彼の悔恨の情を代弁し涙するようにも思えてくる



ルイージ「…情けないのはドライバーの腕そのもの、か…っ!」


オヤ・マー博士…が特別に造った機体を生かせぬまま、終わるのか?
それを想い、ネガティブな彼が口からポツリと出した言葉
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:19:35.48 ID:9rj2nJGi0






 オヤ・マー『フェッ、フェッ、フェッ!
         しかし君はいつだって謙虚じゃのう?』




  ルイージ『謙虚?僕がですか?』




 オヤ・マー『そうじゃ、君は自分を過少評価し過ぎ取る…』フム



 オヤ・マー『君はいつだって【永遠の2番手】【緑の日陰者】
        そう呼ばれても怒る事無く、それを甘んじておる』



  ルイージ『はははっ、まぁ事実ですよ…!
            実際僕ぁ兄さんと比べれば――』


























        オヤ・マー『それじゃよ…』









 オヤ・マー『何が "兄さんと比べれば" なんじゃ?ん?』




 オヤ・マー『…わしはのぅ、ご覧のとおり研究第一の学者馬鹿じゃ』


オヤ・マー『じゃから、君とあのお化け騒動で初めて出会うまで
      君ら"英雄兄弟"の活躍を知らんかったわい!』フェッフェッフェッ!


 オヤ・マー『新聞も読まずに日々研究じゃからなぁ!』



 オヤ・マー『…じゃからの、わしは
          "捕まった兄を助けに来た勇敢な君"しか知らん』
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:22:09.53 ID:9rj2nJGi0



 オヤ・マー『世間一般ではお兄さんの方が取り上げられとるよ』



 オヤ・マー『新聞の一面で写真に大きく映るのはいつも赤い帽子の彼』


 オヤ・マー『君はいつだってその隣で小さく映る、目立たんようにな』






 オヤ・マー『陰口のようで言いたくないが‥国民の評判も
         お兄さんと比べれば"頼りない"、"影が薄い"と言う』


 オヤ・マー『じゃから思うのじゃよ…皆
         本当に君を理解しとるか?とのぅ…』フェッフェッフェッ!





  ルイージ『…博士』




 オヤ・マー『マリオくんがキングテレサに捕まり
         絵の中に閉じ込められた、あの事件を知る人物は』

 オヤ・マー『わしと君、そして当のマリオくん…
          あ、後キノピオ君じゃな、あの女の子にモテとる』





 オヤ・マー『…"無敵の英雄"を救った、"それ以上の英雄"…
          新聞にもニュースでも報道されない
         わしが初めて出会った"英雄兄弟"は君じゃ』













 オヤ・マー『本当の君はお兄さんより劣った人間なんかじゃない』

 オヤ・マー『君は "強く勇敢で優しい人間" なんじゃよ』

 オヤ・マー『本当なら一対一で戦えば十分お兄さんと互角…
        いや、もしかしたらそれ以上かもしれんのじゃ』




  ルイージ『買いかぶりすぎですよ…』



 オヤ・マー『…君が、そういうのなら多くは言わん
         じゃが君は心の中で思うとるじゃろう?
        いつかは兄さんを越えたい、強くなりたい、と…』







 オヤ・マー『自信を持て、君は勝てる人間なんだ』
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:24:14.36 ID:9rj2nJGi0


BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



渓谷<キャニオン>に3台のエンジン音が響く…

ルイージは…今、自分が搭乗している機体を
手掛けてくれた老人の激励を思い出していた




ルイージ「…博士、僕は…」




――フェッフェッフェッ!
    君の機体にはあのバキューム同様の特別機能がある…!



―――バキューム…の事は君がよく知っとるじゃろう?
            じゃから、使い方はあえて言わん
                さぁ!今日はレース開催日じゃ!






―――存分に暴れて行け!









ルイージ「……ごめん」



ルイージ「どうも僕はネガティブで
      いつも悪い方悪い方に考えちゃうんだ」







ルイージ「こんなにも最高の機体に乗ってるのに…
      なのにドライバーの僕がこれじゃあ、悪いよな…っ!!」









 ルイージ「博士…僕は…あえて!あえて!
       あなたの特別機能は使いません!実力で倒しますッ!」







このレースでは…!この試合では決して兄に特別な何かでは勝たないッ!

本当の自分だけで勝負するんだ!!

ルイージは消えかけた闘志を再び燃やしだしたッ!


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:26:27.28 ID:9rj2nJGi0

















          ウィン…!  …ウィン!









――それは過去からの贈り物だった









マリオ(…ん?)

ワルイージ(あん?なんだぁ、突然空が暗くなりやがったぞ?)


ルイージ(?今日の天気予報じゃ雨は降らない筈…?)




走路が濡れているか乾いているか、それもドライバーとして
重要な判断基準だ

故に彼ら3人は当然テレビの前で降水確率は確認していた

全国的な晴れ模様…、多少外れることはあろうと
空気に湿った匂いも混じらず、雲の流れも悪くない

そんな天候だった





ワルイージ「!?!?!?!お、オイ!ありゃあ何の冗談だっ!?」




 日光を遮るのは白雲では無かった
人工物など一切無い、無骨な岩の芸術品しかない世界
 そこで見たメタリックな人工物が…青空を切り裂くように飛んでいたのだ











      ゲドンコ星人「「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ…ッ!」」」


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:00:22.27 ID:9rj2nJGi0


 それを見て真っ先に叫んだのはワルイージだった

"何の冗談だ?"まさしく言い得て妙である



既製の航空技術を何世紀分も飛び越した科学技術だ
プロペラ機だとかジェットエンジン、そんなレベルじゃない

レトロなSF映画でお決まりのように宇宙人が乗ってる"空飛ぶ円盤"
それに使われているような反重力装置と言っていいだろう



ルイージ「な、な…なっ!」パクパク




 思わずハンドルを握る手が震えた
唐突に飛来して来た"空飛ぶ円盤"

 これといって彼らは歴史のお勉強は大好きという訳ではない
あくまで世間一般レベルの常識さえ学べば良いだけであって
それ以上の知識を求むのは考古学者志望くらいのモノである


今、目にしてるものはそんな世間一般レベルで学べるモノだ
ハイスクールの教科書にそのシルエットはデカデカと記載されている

十数年前、過去のキノコ王国にやって来た"災厄達"であるッ!!




まるで理解が追い付かないッ!!とでも言ったようにワルイージは呆然と
そして…それ以上の衝撃を受けるルイージ!







ルイージ「ば、馬鹿な…!あり得ない!アイツ等は過去の世界で
                    僕達が倒した筈だっ!!!」








かつて…!【ゲドンコ姫】と【ゲドンコ姫の姉】が住みやすい惑星を求め
遠い宇宙の彼方からキノコ王国へとやって来たのだ

首都や近辺の村、非武装の民間施設、軍事施設問わずに侵攻を初め
一般市民を捕まえては生命力を奪い取り兵器群のエネルギーにするなど

言って見れば旧世紀の非人道的な植民地支配と似たような事を始めた訳だ


決して風化させてはならない恐怖の時代として義務教育で習う歴史の一頁
その象徴が目の前を我が物顔で飛んでいるのだ…冗談にしては度が過ぎる













        マリオ「ぅぁ…あ、頭が…ッ!?」ズキッ



126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:20:34.35 ID:9rj2nJGi0


ルイージ「ハッ!に、兄さんッ!」バッ!



まるで自分達を見下すかのように平行して
3人の頭上を飛ぶ忌々しいフォルムから視線を外す…!



あまりにも突飛した出来事…ッ!

故に反応が遅れた…ッ!





マリオ「あ」

















マリオ「うおあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ――」










ルイージ(っ!な、なんてこった!!)




今の今まで彼らはマリオには事実を隠し続けていた
直ぐに記憶を戻してやるべきだ、戻さない方が良い

これは賛否評論だ

元からルイージ等は命に関わる程の無理をしてほしくないという事も
確かにあった、それに記憶喪失には様々な種類がある

一例だが本人が自身を護る為、無意識に事故に遭った記憶に蓋をする
解離性健忘の場合など
無理に思い出させる事で脳に大きな負担が掛かる場合がある


戻してやるにしてもゆっくりと時間を掛けて戻すように便宜を図るのが
正しいのだ、あのクッパでさえ思い出して欲しいという本心を抑え
好敵手の完全復活の為、協定を結んでいたくらいだ…




だが、これで今までの苦労も水の泡…




キイイイイイイィィ―――ッ ギャギャギャッ!!


ワルイージ「オイオイ!!マリオの野郎…!
        ガードレールに擦りながら走ってやがんぞオイ!」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:21:36.52 ID:9rj2nJGi0


―――いつだったか誰かが言ってた気がする



悪い事というモノは一度起きてしまえば
     ドミノ倒しのように立て続けに起きる、と






ルイージ(…なんだよコレ)




刹那、ルイージの目には世界が白黒<モノクロ>に映った



友人のヨッシーと自宅のソファーに座って
世間話でもしながらプレイするゲームボーイの画面のように…


世界が白と黒だけで構築されたように思えた






時が長い







一分一秒が長い、永い




音が聴こえない








よく自分達兄弟をライバル視する顎長男が兄に向って何か叫んでる

でも内容が聴こえない




兄が…ハンドルから手を離して頭を抱えている
        目の前の道なんて一切見やしない、手放し運転





兄のカートが真っ白なガードレールに擦る度に火花が出ていく




音は聴こえない、でも"何か"が見ろと叫んでいる気がした


ゆっくりと上空の円盤に視線を向けようとする…

思考回路は通常の速度なのに、首…いや、身体の動きがスローだ


揺れ動く視界もスローだった
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:22:23.38 ID:9rj2nJGi0







































           ゲドンコ星人「…ゲヒャッ」ニタァ…


























 毒々しい紫色キノコに手足が生えたような
一度見たら、忘れたくても忘れられない気色悪い生物が
開かれたハッチから顔を覗かせていた


八重歯のような二本の歯と笑みを浮かべるように歪んだ赤紫色の目

奴は…枯れ木みたいな細長い腕に銃を構えていて…


その銃口は地上に向けられていた


射線の先は僕でも、顎長男でもない…ずっとずっとその先…


  今、一番狙いやすい標的と化した人だった

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:24:37.35 ID:9rj2nJGi0




       ルイージ「止めろおおおおおおおおおぉぉぉッ!!!」









――僕が声を発したと同時だったッ!



奴の手に持つ光線銃が地上目掛けて熱線を放ったのは…っ!





ジイィィィ――――ッ! ジュウウウウゥゥ…!



文字通り、光の速さで降り注いだレーザー光線はいともたやすく
                兄さんの機体の前半分を"溶断"した


熱線で溶断された機体の前半分はそのまま後方へ吹っ飛び
高温で真っ赤になった断面図を見せつけながら走行する僕らの後ろへ
ド派手な音を立てながらこの下り坂を豪快に転げ落ちていく








前輪が無くなった事で嫌な音を立てて前のめりになる機体と
むき出しになった動力部…











奴はそこに無慈悲にも2発目をぶち当てたッッ!














ワルイージ「……マリオの機体が…」

ルイージ「 」





ワルイージ「…粉々にぶっ飛んじまった」


その日、渓谷にガソリンエンジンの爆発による黒煙が立ち上った

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:29:29.19 ID:9rj2nJGi0



キキッーッ!




ルイージ「…」スタッ



ワルイージ「んなっ!?お、オイ!何、カートから降りてんだよォ!?」






ルイージ「」チラッ





【炎上したマリオの機体】ボォォォォォ…!




ブレーキを掛けて、機体を停めて彼は大地の上に降り立つ
逃げるように走行を続ける顎長男がルイージに向かって叫ぶ


が、無視する








ワルイージ「っ…!そ、そりゃあよォ!!

        【マリオが"ぶっ殺されんだ"!】

           動揺すんのはわかっけど逃げねぇと―!」









この時、彼は見た…ッ!



遠い向こうから…更に飛んでくる数機の円盤をッ!


さしずめ、"援軍"という奴なのだろう



ワルイージ「じょ、冗談じゃねぇぞ!流石の俺だって…こんなっ!
                  …死んじまったら元も子もねぇ…っ!」



 命知らずと評される彼でさえ慄く程の大群

 命とは勝算があってこそ賭ける価値がある
初めから犬死が確定している事ならばさしもの彼だって引け腰になる



ワルイージ「お、オイ!!言っとくが俺は警告したかんなっ!!!
          わりぃ事言わねぇからテメェも早く逃げやがれ!」


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:43:57.82 ID:9rj2nJGi0


 別に彼、ワルイージを非難するつもりはない
彼の行動は"人間"として正しい




『死んじまったら元も子もない』その通りである



彼は努力家にして慎重な男だ

 英雄兄弟よりも自分が優れた人間だと世間にアピールしたい
そういう願望を持ちながらも彼がマリオ達と競うのは
『テニス大会』や『サイコロを振るパーティ』…といった具合の
命知らずの癖に本気で命を賭けない闘いだ


必要最低限は賭ける、が

本当に"『常人』には渡れないヤバい橋を渡る"事だけは避けるのだ!


人間なら自分の命を誰よりも大切に想う、当たり前の感情だ

 此処で彼が逃げたとして誰も咎められないし
むしろ賢明な判断と評価できよう








もしも、此処で彼が逃げてなかったとしよう…








それならば彼は間違いなく…





          "叩きのめされた"だろう…ッッッ!














         ルイージ「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!





英雄兄弟<マリオブラザーズ>の片割れ…ッ!


その闘いはまさしく鬼神の如しッ!!

見てしまえば彼は叩きのめされた…ッ!


そう…決して努力だけでは勝てない…っ! 圧倒的才能…っ!


 英雄達を越えたいッ!そんな彼の夢、目標は粉々になっただろうッ!
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:45:23.71 ID:9rj2nJGi0



  ゲドンコ星人A「ゲーヒャヒャッwwww!」

  ゲドンコ星人B「ζ†ζΘ§ζ――!!」ゲラゲラ

  ゲドンコ星人C「ケケッ!!」ビシッ!



醜いエイリアン共が母星の語源で何かを言い合っている

 一匹は腹を抱えて大笑い、別の円盤から此方を見る奴も
同じように大口開けて嘲笑う

 そして、先程熱線を命中させた奴は恐らく上官と
思われる奴に何か言われてるのだろう…地上からでは見え辛いが
宇宙船内部に居る何者かに敬礼のポーズをしている


だがッ!そんな事はどうだって良い!!!




  ルイージ「ふぅ…いつだって勝てなかったなぁ」スタスタ

  ルイージ「永遠の2番手、日陰者…」スタスタ


  ルイージ「僕だって人間さ、そうだよ"欲望"はあった」スタスタ



  ルイージ「いつか"勝ちたい"、追い抜きたい目標だった」スクッ




  ルイージ「僕も…あの顎長男と同じで勝ちたいって夢があったさ」





  ルイージ「……僕の、いつか乗り越えてゆく真の目標でもあった」スッ




ルイージは上空に見える円盤目掛けてゆっくりと歩み出す手には今拾った
人間の拳程度の大きさの石ころを抱えて…



奴らが何を話そうがどうでも良い…っ!

連中が何を想おうとどうだって良い…っ!


何故ならばッ!



ゲドンコ星人D「ケヒャ?」ユビサシ


ゲドンコ星人「「「イーーーッ!!!」」」ゲラゲラ!



一匹の宇宙人が歩み寄るルイージに気が付き指を射す
多くの同胞がそれを見て大笑いだ

そして一匹が先ほど、マリオの機体を壊した銃口を向けてッ!





           ゲドンコ星人C「キイイィィツ!!!」ガチャ!


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2017/05/23(火) 22:46:04.66 ID:9rj2nJGi0























           ブ ン ッ ッ ッ ッ‼!!





                     ――――ゴスッ!!






















  ゲドンコ星人「「「「ケケケケケケケ!!………ケ ケッ…?」」」」







   ゲドンコ星人C「…ケ、ヒャ?」チラッ












134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:49:26.39 ID:9rj2nJGi0




ゲドンコ星人の宇宙船は地上に居るマリオ等を的確に撃つべく
可能な限りの低空飛行を試みていた






   円盤と地表との距離…高さにしておおよそ20m<メートル>ッッッ!!
           (※約マンション6〜7階建てに相当)







ゲドンコ星人が熱線を放つ事は無かった…

引鉄を引く前に自分の真横を何がすっ飛んできたからだ



渓谷のゴツゴツとした岩肌にもその音が反響するかのようだった

目にもとまらぬ速さですっ飛んできたそれは…











  ゲドンコ星人C「!!!!!キ、キイイイイイイイイ!?!?!?!?!」







彼らの宇宙船に大穴をブチ開けていたのだからなッ!!




高さ20m<メートル>も離れた地表からプロ野球選手が全力のストレートを
ブチ込んだ時と同じ態勢のルイージが宇宙船を睨みつけていた…ッッ!!




ルイージ「…うん、兄さんの【ハンマー ナゲール】だったら
               宇宙船の装甲を余裕で貫通してたなぁ」



開かれたハッチのすぐ横…にデカデカと開いた大穴からは
すぐさま火が噴き出す、その後は…簡単だ




 ゲドンコ星人「「「ΣζΠζΠ△▼Θ!!!!」」」



 制御不能となった機体はすぐさま、煙を巻き上げながらゴツゴツとした
岩肌にぶつかりながら谷底へ滑り落ちていく


煙をあげて墜落していく宇宙船
その様は…かつて【ゲドンコ姫の姉】との最終決戦で
                    見た光景を思い出させる

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:50:32.29 ID:9rj2nJGi0







――――奴らが何を話そうがどうでも良い…っ!



―――――連中が何を想おうとどうだって良い…っ!










――――――――何故ならばッ!









  ルイージ「さて…正直、自分で言うのもなんだけど
                 僕はあんま怒らないタチさ」




  ルイージ「…キミ達が一体どうして蘇っただとか
                  何を考えてるだとか」


  ルイージ「そんなモンはどうだって良いさ…重要な事は、そうだね」
















   ルイージ「キミ達は僕に"もう一度倒される"、ただそれだけだよ」










         ルイージ「掛かって来い…ッ!」








………数分後、数機の宇宙船の残骸とクレーターが渓谷にできたそうだ




136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:56:02.43 ID:9rj2nJGi0
―――――――――
――――――
――――

 ヒュウウウゥゥゥゥ…




 ― ……ッ!! うぉ…、身体…痛い、な… ―




           キョロキョロ…




 ― 俺…どう なったんだ? 死んだのか どこ見ても真っ暗だ ―



  ― 俺は たしか … … っ 頭 が 痛いっ …ぐっ ―




― た しか   空に 変なのが 飛んできて 光が 俺の機体 ―




 ― ……そう、だ  爆発して 俺の身体は 谷底に 落ちて行って―





 ― っ、身体中 あちこち 痛い  …? 『痛い』? ―


 ―痛み を感じる…? まだ 死んでない? ―




   『ヘイ!マリオ!そろそろ夢から目を覚ましたらどうだい?』


           ―…だ れだ? ―


   『やれやれ…僕達を忘れちゃったのかい?酷いなぁ…
        キミの取り柄は身体の頑丈さだけじゃないだろう?』


      ― 俺 が 知ってる 奴 な、のか?  …


 『そうさ! 僕、いや、僕だけじゃない…
           キミの中に居るたくさんの人さ!』



        ― "俺の中のたくさんの人?" ―



  『ああ!キミの思い出の中に居るよ、僕達はいつだって、ずっと』


   『……おっと、手は貸さないよ?
                 "自分の力"で思い出すんだ!』






『ずっと忘れられたまんまじゃ僕もフカフカ君も寂しいからね!』


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:22:10.01 ID:xz4SbWjD0





           声の主は誰かわからない

       懸命に記憶を辿ろうとするも顔が分からない



  頭の中に靄が掛かったようにその"誰か"を思い出す事ができない
















             だけど…





      ― 俺は…お前を知っている…気がする ―







   胸の奥で熱く、何かが込み上げ来る、何かが叫びをあげる




『焦る必要はないさ!キミは…そうだな少し頑張り過ぎただけなんだ』

『たまには落ち着いてよーく周りを見る事だって大切なんだぜ?』





  『だから焦らないで思い出すんだ…キミならできるさ』







 涙が出そうだった…年甲斐もなく

 いい歳した男が大粒の涙を流しそうになる…


 理由も何も分かりはしない…だが
    思い出してやれない事が無性に悔しく思えた




 遠い昔に忘れてきた大切な何か…


 平和を謳歌する世界の何処かで見失った"落とし物"…



138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:38:06.96 ID:xz4SbWjD0



[もう大丈夫です すみません う〜ん!泣いた後って すっきり!]



           − っ!  −



 靄が掛かった記憶の片隅に一瞬誰かの姿が見えた気がした…

 見慣れた王国で自分が一人の少年と出会っている






 [キミが助けてくれたのかい! ありがとう!助かったよ!]

 [キミの噂は天空まで届いているよ]



 深い森の奥で自分が一本の弓矢を叩き落とし誰かを救っている


   − …あ、あぁ…お、俺は…!!俺は…!! ―






 靄は次々と消え去り…彼は声の主達の顔を思い出していく…っ!










  − お、俺は…   お前たちを 知っているッ! −










 『…フフッ、やっと思い出してくれたのかい?やれやれだよ…』


 『ぼく達だけじゃないですよ…
   もっと もーっとたくさんの人が貴方の中に居るんです!』


 『キミの強さは…人と人との繋がりさ!
   キミが誰かを護ろうとする想い、そして
         皆が心からキミの事を覚えていようとする想い』



 『昔は小さな子供、今は大きくなってもう大人かもしれない』


 『けどね…"皆"は大人になった今も子供の頃に
    強く憧れたスーパーヒーローを今だって覚えてるんだぜ』


 『誰かを想うからこそ、キミ自身も誰かに強く想われている…』


 『それこそがキミ自身の"誰かの為に頑張ろう"っていう
              力強い意志の源…そうだろう?』

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:40:58.31 ID:xz4SbWjD0


『今は大人で、かつて子供だった…そんなたくさんの"誰か"達』



『キミと一緒に胸躍る大冒険を夢見た子供たちは
   …一緒に冒険した仲間は
     キミの勇姿を決して忘れてなんかいないんだよ』



 − …なのに、俺が忘れてたら、恰好つかないよな…すまん −



 『…さぁ、もう夢から醒める時間だ、行くんだっ!』


 『皆が貴方の帰りを待ってるんですよ!行きましょう!』




 − …! 待ってくれ!!!『−−−』『−−』! −





  記憶の奥に掛かっていた霧は今っ!散り散りになって消えたッ!

 それと同時に声の主は彼の見える所から消えていく…




 ようやく顔を思い出せたのに…



 『うふふ!あの二人だけじゃないわよ!英雄さん!』


           − !! −


 『くすっ!貴方…ちゃんと自分の名前を言えるかしら?』




      − ああ…言えるさ…俺は…っ! −





 マリオ「俺はマリオ…いやッ "スーパーマリオ"なんだ…!」



『…うふっ!安心したわよ?…マリオ、帰り道分かる?
 もしも分からなかったら私が杖で叩いて誘導してあげちゃうわよ♪』



マリオ「…大丈夫だ、昔みたいにバケツを頭から被ってないからな」ニィ



『そっ!安心したわ!なら早く帰りなさい、ルイージ君が一人寂しく
 ゴールで待ってるわよ?』


 真っ暗な世界…見渡す限り闇しかない空間で目の前の人物が
 指し示す方角は光り輝いていていた、そして…


『マリオ!』『マリオさん!』『頑張れ!マリオ』『マリオ、サン!』



 彼の思い出の中に居るたくさんの人が道を切り拓いていく…
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:42:46.57 ID:xz4SbWjD0


一歩、彼は歩み出す


白いグローブをはめた手で帽子の鍔を摘まむように持ち、少しだけ
深く被りなおす



 『たまには会いに来いよ!』
 『僕らのトコに時々で良いから顔を見せなよ!』



二歩目を踏み出す

焦げ茶色の年季の入ったブーツ、すり減った厚底が靴音を鳴らし
彼の身体を光の方へと進ませる



 『マリオサン!もし疲れたらまたバカンスにでも来てくだサイ!』
 『私の所にも遊びに来てよねっ!待ってるんだから!』



ゆったりと歩き出した初歩から少し早めの駆け足気味に

3歩目、4歩目…5歩、6歩、次々とペースを速めていく



 『おーい!オイラ達だっているんだぜ!』
 『ゴンザレス!また闘技場に来い!今度こそ俺が勝ってやるからな』



歩く速度から駆け足に、そして彼は走り出す


何物にも代えることのできない友人達の顔を見渡しながら…


 『アニキ!頑張れよ!』
 『マリオちん!がんばるでしゅ!』


 『マリオ!』
 『マリオさん!』
 『マリオ!!』
 『マリオくん!!』


 誰も彼もがその顔に微笑みを浮かべる


 長らく待ちわびた英雄の帰還を…っ!


 記憶の中の存在である彼等はマリオに次々と激励の言葉を掛け
 腕を伸ばし、勇気を分け与えるかの様に
 ハイタッチをしようとする者も居た


 思い出の彼等に触れる事はできない、その腕は全てすり抜けてしまう


 だが…




     マリオ「ああ、行ってくるさ…っ!」


 決して触れる事は叶わなくとも、"燃え上がるような熱き何か"が
 彼には伝わって来るような気がした




 それが…今は何よりも誇らしかった

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:49:48.37 ID:xz4SbWjD0
―――
――



【渓谷:奈落の底】



…パチッ




マリオ「……」ムクッ



彼は長い眠りから目を醒まし、ゆっくりと身体を起こす



マリオ「…いっ…あたた…落ちた時に腰を思いっ切り打ったか…?」

マリオ「…歳は取りたくないもんだなぁ…」チラッ




        ヒュウウウウゥゥ…




上を見上げる、光はほんの小さな一点のみ、それほどまでに空は遠く
如何に今居る場所が地上からほど遠い場所かを思い知らされる




マリオ「…ゲドンコ星人め…やれやれ
     なんでこの時代に連中が居るんだか…」フゥ…



自機の爆破で奈落の底へと投げ飛ばされ、高さにして
おおよそ高層ビル15階からの飛び降り自殺のようなモノだった

常人なら"腰が痛い"程度で済むレベルでは無い




マリオ「ふぅ…マントや尻尾で空飛んでた時は彼方上空から落下しても
    ビクともしなかったがな…足腰が弱るとコレだもんな」


さも何事でも無いかのように軽い屈伸運動を済ませ、数歩後ずさる




そしてそこから助走をつけて…っ!







  マリオ「…フンッ!」バッ!






  彼は…"飛んだ"


  もはや"跳んだ"ではない、"飛んだ"のだ…ッッッ!!

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:59:37.62 ID:xz4SbWjD0
―――
――


ワルイージ「ひ、ひぃぃぃ…!!!た、たすけてくれぇ!!!」


  ゲドンコ星人「「「ギィィィィ!!!」」」



ワルイージ「ち、ぢぐじょうううう!!なんで俺を追ってくんだよォ」


自慢の【ダッシュキノコ】3つ分相当の加速が可能なエンジンを
フル活用して彼は上空から今も執拗に追い続ける異星人から逃れようと
必死で車体を走らせていた


ワルイージ「クソ!クソ!クソォ!!俺が何したってんだよ!!」


ただカートレースに出てただけなのにこの理不尽なアクシデント
どうこうなる訳でも無いのに叫ばずには居られなかった



ジイィィィ――――ッ! ジュウウウウゥゥ…!


ワルイージ「う、うわぁっ!…あ、あぶねぇ…ッ!」


すぐ真横でアスファルトが煙を発し液状化する…
上空の空飛ぶ円盤から放たれる凶悪な熱線がいつ己の身を焼き滅ぼすか

彼はそれを想像するだけで今にも泣き出してしまいそうだった…


ワルイージ「あぁ!神様でも悪魔でも何でも
           良いから誰か助けてくれぇぃ!!」


マリオ「よっ!ワルイージ、随分困ってそうだな?」シュタッ


ワルイージ「はぁああん!?………っ!?で、でたァ!?」


マリオ「わっ!…っとと、前見て運転しろよ」グラッ


ワルイージ「ま、マリオのお化けがががが…!」ガクガクガク

マリオ「…あー、気持ちは分かるが俺は死んでない
       ほら見ろ、脚だってちゃんとあるだろ?」


ワルイージ「ほ、ほほほ、本当にマリオか!?生きてんのかよォ!?」

マリオ「ああ…壁キックなんて久しぶりにやったよ」


今しがたほぼ垂直な絶壁と言っても差し支えない岩肌を昇り切り
丁度目の前を走ってた彼のマシンへと飛び乗った自慢の剛脚を指さす


マリオ「なぁ、ワルイージ…お前はまだ死にたかないよな?」

ワルイージ「んなモンあたりめーだろボケッ!」



マリオ「…ならこの機体を俺に預けてみないか?
     それで俺が後ろのアレ潰して来てやるぜ」ニィ

久しく忘れていた闘志が彼の中を血液のように廻っていく…


 最近、テニスやゴルフにパーティばかりで忘れていた彼の生きがい…




         冒険の始まりだ…っ!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 02:29:25.22 ID:xz4SbWjD0
*********************************


           今回は此処まで!


           マリオついに覚醒ッ!!


           [前にも書いた事]

 ※普通の人間なら高層ビル15階程度の高さから落ちたら死にます

  が……しっぽマリオやらマントやら風船やらで普通に
  雲より上ぐらいまで飛んで落下しても死なないのがマリオですね



 しかし3D系からはちょっとライフが減るようになってしまった(死ぬとは言ってない)




 【渓谷:奈落の底】からの帰還
 ※プロのロッククライマーでも匙を投げる断崖絶壁から壁キックで登ってきました

*********************************
>>117 >>118 ありがとうございます!
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 03:21:17.57 ID:LZaBQCbMo
着地の直前にヒップドロップで何故かノーダメージの64マリオさんすき
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 05:06:17.29 ID:p9pFDgIMo
移動前もそうだったけどRPGの彼は本当に涙腺にくる…
乙です
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 07:30:46.26 ID:agqJ1GrJo
マリオオールスターで感動した
ペイントを出してくるとか...
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 10:06:55.79 ID:C+lqcoIaO
前のスレでも思ったけど、マリオ復活のシーン読むとマリオやりたくなってくる
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 17:58:52.97 ID:ZumxGm4AO
>>144
当時あらゆる壁を貫通して跳ね回っていた尻が落下程度でダメージを受けるわけが無いんだなあ

149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 21:11:47.00 ID:Zhw0TPmI0
ペイントとはなんぞやと読み返したがマリオとワリオか
マリオペイントといったらハエ叩きの断末魔やら犬が吠えて一手前のことを全てなかったことにする機能やらが出てきたのかと
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:21:13.98 ID:Ofd+FNnE0


ワルイージ「ハァ!?俺のマシンを寄越せだとォ!?」

マリオ「ああ、頼む」





ワルイージ「ぐっ…こ、この野郎…こいつは特注製なんだぞ
            滅多糞に金が掛かったってのにィ〜!」

マリオ「金じゃ命は買えないだろう?」ニィ


ワルイージ「そ、そりゃあ、そうだが…」




"金じゃ命は買えない"

 全くのド正論だが、この男がそう言うと何故か
説得力が欠けるように思えるので不思議である
 命知らずの冒険野郎がッ!と自分は棚に上げて彼は内心で悪態を吐いた



ワルイージ「良いかッ!"貸すだけ"だからな!!壊すんじゃねぇぞ!」

マリオ「ああ、十分さ!」




―――
――






ゲドンコ星人D「ギッ?」





一匹の異星人は奇妙なモノを見た

彼等が乗り込んだ機体は未だ"狩り"の真っ最中だった



空想物語によくありがちなシンプルな形状の飛行物体は
依然変わらず高度20m<メートル>を維持、速度は地表を走る自動車に合せる

 航空機特有の翼に掛かる揚力もプロペラも何もあったもんじゃない
現代航空工学を完全に無視したソレに乗り込んでいたパイロット達も
その奇妙なモノに首を傾げた



ゲドンコ星人E「ギギィ?」

ゲドンコ星人F「ウケキャ!!」


 空飛ぶ円盤内部は人間が見れば思わず目を背けたくなるような
毒々しい色合いの電子光で彩られていた


我々、人類が…脳が生理的に嫌悪する、否定したくなるような心理の色

異星人たる彼等には心落ち着くような色合いなのだろうが…


さて、そんな異色な色彩を放つ計器達
【高度計】から【磁気コンパス】…etc、その中で人類が未だ見る事の
叶わないだろう未知の測定器もある

そして…その一つ、テレビ画面のような小さな画面を彼等は凝視する
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:22:27.47 ID:Ofd+FNnE0

 小さな窓枠のような正方形のモニタリング
そこから溢れだす色合いだけは人類にとって救いであり
彼等にとっては"ゲドンコ流のテラフォーミング"したくて堪らない光景


愛すべきこの惑星の景色が映し出されていた…



ゲドンコ星人F「ギィィ?」チラッ

ゲドンコ星人E「!…!ケヒャッ!」


ゲドンコ星人F「!!…キヒャヒャッ」ニタァ



モニターに映し出されたのは母なる大地
そして先程まで彼等が執拗に追い回していた一台の"原始的な乗り物"


技術の発達した彼等から見て、あの乗り物は"原始的"なモノだ
そう結論付け、見下していた

その様を象徴するかのように上空から…!



そうッ!まるで…!無邪気な子供が道端で蟻の巣を見つけ
   "お遊び感覚"で潰してやろうとでも言うかのようにッッ!!





 追い回す円盤とそれに乗り込む仲間達と通信機で話していた
誰が一番にアレを壊せるか遊ぼうぜ、っと…



もう一度言う、彼等は正しく"狩り"の真っ最中だった





"狩り"の対象は車輪を停め、その場に留まった

それを画面越しに見て彼らは仲間の顔を見やり笑った




  『ああ、ついにコイツは観念したんだな』っと






ゲドンコ星人F「キッキッ!」ゲラゲラ

ゲドンコ星人E「キャキャキャ!」ゲラゲラ





ゲドンコ星人たちは高らかに笑い、そして獲物を嗤った
低速飛行ゆえに風圧を物ともせず開いたハッチから顔を覗かせていた
同胞に戻って来いと合図を送り…、そして



 ゲドンコ星人D「キーッ!キキキッ!」

 ゲドンコ星人「「「キキッー!」」」


 絶望し、諦めたのであろう相手を完膚無きまでに蹂躙し尽くしてやる
そう考えた残虐な異星人共はあえて破壊力の高い機体に備え付けらえた
熱線銃の方を使い盛大な花火にしてやろうとコンソールを弄る
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:23:39.11 ID:Ofd+FNnE0














    読者諸氏よッッッ!!!あえてもう一度言おうッッ!!



 彼等、ゲドンコ星人は……まさしく"狩り"の真っ最中だったッ!








  そう…! "狩り"の真っ最中…『だった』…ッ!























           バシュンッ!ジイィィィ――――ッ!


           ギュィイィィィ――――ッ!










―――指先に掛けられた引鉄は引かれた

―――破滅への光は放たれた



―――フットペダルは強く踏みつけられた

―――急停止からの急加速、エンジンの魂は勢いよく燃え始めた




  ―――――光は放たれ、熱線は砂利をガラス状にするほどに焼き
              地表は爆炎と赤黒い煙を天へと昇らせる


破滅への光は放たれた、そして今ッ!
       "彼等"を殲滅せんとする序章の狼煙が上がったのだッ!
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:24:54.63 ID:Ofd+FNnE0

ワルイージ「ぎにゃああああああああああああ!?!?!?」ガクンッ!


【ダッシュキノコ】3つ分相当の超加速に加え背後で起きた爆風を
推力にした常識外れな機動


言葉通り"爆発的な"加速を見せたそれは一気に彼等との距離を稼いだ



元より円盤とワルイージのカートは相当距離を詰められており
遅かれ早かれ、あの状態ではいつ追いつかれてもおかしくなかった

 いくらドライバーの運転テクニックが良かろうと機体性能に差が
有り過ぎるのだ、向こうは障害物もコーナーサイトも無視した
航空機、こっちはそれらを無視できない四輪車









 そこで運転を変わった英雄は特注製のエンジンを最大限に
生かす方法を瞬時に察したのだ

機体性能の特徴を簡潔に言われた彼は考えた

エンジンを意図的に暴走させる急加速も一度使えば暫くの間
クールタイムが必要となる

更に先述の通り、敵は障害物も何も関係なく飛んでくるのだ


このままいけばジリ貧なのは分かり切っていた





だから"一度の加速"で数回分の差を開くことにしたのだッ!




 GYUROOOOOOOOoooooooo―――−!!!!!


どの道追いつかれる程に詰められた距離を逆に利用する

 マリオはワザと機体を停車させ、相手が打ち込んでくる事を狙った
何度も戦い抜いた相手ゆえ諦めた素振りを見せればタチの悪い彼等は
最大火力で殺しにかかって来ると分かっていた


彼等をギリギリの位置まで引きつけ、打ち込んでくる武装の火力による
爆風すらも推進剤の代わりにしてぶっ飛ばすッ!


・停車した事で慢心した敵方は的中させるべく減速する

・宇宙船の主砲を避ける為の急加速で距離を開く

・それに付け加え、背後で起きるであろう爆風でぶっ飛ぶ


通常の【ダッシュキノコ】一回では不可能な距離の取り方が完成である




……当たり前の事だが、ビーム砲は"光の速さ"で跳んでくるのだ
      ちょっとでも加速のタイミングが遅れれば機体は爆散

コンマ0.1秒の遅れも許さない機械のような精密性が必要とされる作業



この赤い帽子の男……ブランクがあるだろうに平然とやってのけた…!

154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:29:16.24 ID:Ofd+FNnE0

ワルイージ「ヒッ、ヒィィィィ!!ばっきゃろォ!!!
       こんなとこでそんなん使ったらァぁぁあああ!!!!」


曲がりくねった道の多い渓谷の車道

ワルイージも逃れる為とはいえ、ほぼ直進しかない場面でしか
加速装置を使用しなかったのだが…






ワルイージ「あばばばばばば!ぶつかるゥゥゥ!?」

マリオ「大丈夫だ、人間この程度じゃ死なんさ!」ギュィィン!!


そう言って更にペダルを踏みしめ速度を上げる命知らず馬鹿
 ハナっからぶつかる事が前提の発言である


ワルイージは…、今にも失神しそうな彼は薄れゆく意識の中で思った



   ‐ワルイージ『あぁ!神様でも悪魔でも何でも
              良いから誰か助けてくれぇぃ!!』‐



 …確かに神様でも悪魔でも何でも良いから助けろと叫びはしたが

 何故よりによって自分以上の命知らずな冒険馬鹿野郎に縋ったのか…

 過去に戻れるなら数刻前の自分をぶん殴ってやりたい、と思った

















  マリオ「…すまんな、壊しはせんが傷は付きそうだ
            心配するな、修理費は俺持ちだから、な?」




 申し訳なさそうに言う英雄の言葉が耳から入り

 集中線が見えるような気のする視界が前方に白いガードレール

 そして…その先に広がる青空とゴツゴツの岩肌、谷底の奈落




  ワルイージは思った


 「あっ、オレ、これ死んだわ」



 ズバッ、ベキャッ、ゴシャバキィィィ―――ッ!



 赤い帽子の英雄は大空を飛ぶ鳥の気持ちになった

 顎長男は目を剥いて精神が大空を飛んでいった
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:38:04.01 ID:Ofd+FNnE0



ゲドンコ星人はその有様を見て硬直した




彼等は残虐非道な宇宙生物である




が、…同時に彼等にも【感情】と呼べるモノはある


指導者の名の元に結託し合い、同胞が倒されれば怒り狂う事もあるし

余りにも強大な敵を前にすれば怯える事も無くは無い




今、彼等が抱いた感情は呆れとも、驚愕とも言えない



四輪車が空を飛んだのだ、しかも…










ダンッ‼! ダダンッ!! ―――ズドンッ!ギャギャギャッ!ギュルッ!


BUROOOOOOOOoooooooo…!!



子供がよく河原で遊ぶ際に水切りと呼ばれる遊びがある

 拾った小石を水面に回転を掛けながら投げる遊びで
小石が遠心力によって如何に遠く、何回飛んでいけるかを競うお遊戯



 ガードレールをぶち破った鉄の塊はそのまま奈落の底から
突き出るように生えたタケノコ岩を踏み台にしてバウンド…




かつて…英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>達が【レインボーロード】で
幾度となく魅せ続けてきた大ジャンプであった…




ズドンッ!と一際大きな音を渓谷中に響かせ、"向こう側"の車道に着地

着地と同時横滑りしながらスピンした機体を何処にもぶつけることなく
平然とした大道芸をやってのけたマシンは走り出した





   ゲドンコ星人F「ヽ§ヽΘζ…」



   ――――冗談だろ…おい‥


語源は誰にも理解できないが、恐らくそう言ったのだろうな…

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:39:51.50 ID:Ofd+FNnE0


マリオ「ふぅ…!いやぁ…!久しぶりにやったなぁ!」ハッハッハ!


マリオ「…あー、やっぱり機体に傷ついちまったか…
     すまんな、…事が終わったらちゃんと修理費は―」クルッ









ワルイージ「」ブクブクブクブク




マリオ「……」


マリオ「……これからはもうちょい安全運転をすべきか…」ポリポリ



口から泡を吹いて気絶している彼を見て
後ろ頭をポリポリとかくマリオ…





  ズドォォォォン!!!




マリオ「むっ!」バッ!



遠くで爆発音、そして黒煙が上がるを見て何事かと身構えた
だが、その正体がなんであるか彼は察した



マリオ「……そうか、あっち側には確かルイージが居たんだったな」


 ズドォォォン!!  ドガシャァァァァン!!  ゴォォォォ…!



岩肌が赤い閃光に照らされ、一瞬、焦げ茶色に見えてる

 鳴り止まない破壊音、上がる黒煙
遠目にチラッと見える火を噴きながらどうにか逃げようとジグザグに
飛行し…あと一歩の所で最終的に地表からすっ飛んできた投石で
撃沈される宇宙船の影


今頃、向こう側はクレーターと残骸だらけなんだろうな…




マリオ「…さて、コイツも此処まで避難させとけば安全だろう」


目を醒ます様子が一向に見受けられない気絶者に背を向け

マリオはサンセット色に染まる向こう側へと歩き出した



彼は…『完全に記憶を取り戻した』のだッ!


―――
――

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:55:57.58 ID:Ofd+FNnE0


ボコンッ!!


革靴の底が叩き出したのは金属がめり込んだ音

立ち昇るのは黒煙と聴きなれない言語と金切声

天へ昇る悲鳴と煙、対を成すのは地の底へ堕ち征く歪んだ円盤だ







―――チュドオオオオオオオォォォン!



墜落と同時それらから噴き出していた焔は更に勢いをあげ
終いには機体そのモノが一つの火球と化す



     「ギィィィイイイイイii」「アギィィィャァァaa――」ボジュゥ…



 パチパチと焚き木が出す音のようなソレと金属製の塊が崩れ落ちる音
そしてド派手な爆発音のハーモニーの中に紛れる生き物のような声は
炎に包まれかき消される…




一匹のゲドンコ星人が機体の窓からソレを見て2頭身を震わせる


異星人の目には空を駆ける一人の悪魔…否ッ!死神の姿が目に映るッ!








   ルイージ「ッらああああぁぁぁ!!」メシャァアアアアッッ!





猛々しく咆えた漢はまたひとつ…!またひとつ!と強靭な足腰で
外来の科学技術を鉄屑へと変えていくッ!

鼯鼠<ムササビ>が木から木へと飛び移るように彼は跳ぶのだ


文字通り鉄骨並み…いや、それ以上の規格外骨格と
超人の域である筋力が円盤のウイング部に当たる部分を踏み抜く





…脆い

なんと脆いものか…っ!


それを比喩するならば正しく
『冬の初め頃にできたちっぽけな
 凍った水溜りを長靴の子供がお遊び感覚で踏んで砕く』それに等しい




外宇宙からやって来た金属は薄い氷の膜のようにぶち割られる…


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:58:56.08 ID:Ofd+FNnE0


"普段、温和な人間ほどキレた時の恐ろしさは破格である"




現代人なら誰しもが一度は小耳に挟むこの思想を説いた人物は
どのような実体験からそう言い広めたのやら…



頼りない髭、永遠の2番手、気苦労の絶えない凡夫…




前線で戦う彼の姿を見ぬ一般人の率直な感想だ



今の姿を見ればその認識は上書きされるだろう…


次々と鉄屑に変わる宇宙船と業火の渦に悲鳴諸共飲まれ炭化する同胞
窓から空と地獄絵図に変わる地を交互に見て居た1匹のゲドンコは…
思わず悲鳴を上げた



…? 何故悲鳴をあげたかって? 理由は至って単純だ…















           "次は自分達の番だから"









シュタッ! ボコンッッッ




飛来してきた"人間兵器"

直後、安定性抜群の機体が大きく傾き
異常を知らせるアラームのけたたましさが彼等の命運を物語る


幼子を護る揺り籠のような優しい揺れは嵐に遭い転覆寸前の船を…
けたたましさは搭乗員の命のリミットを…

それぞれよく表現していた…



【窓ガラスの向こうに映るルイージ】「…」ギロッ


ゲドンコ星人「キ キィィィィ!!!!!!! ! ! ! ! 」ビクッ


兄を殺された

その感情を持って飛来してきた漢と目が逢った…
異星人はその瞳に確かに鎌を持った髑髏が映るように錯覚する
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:01:13.76 ID:Ofd+FNnE0

ゲドンコ星人の宇宙船は実に頑丈な創りであった

窓ガラスはクッパ軍の【キラー】砲ですら傷一つつかない程の物質で
出来ている…この星の強化硝子なんぞとは強度が段違いだ


彼等の星の光線銃でさえ、防ぎきる



【窓ガラスの向こうに映るルイージ】「…」グググッ!


握り拳を創った白いグローブを彼はこれ見よがしに見せつける
腕を思いっ切り引き延ばし、一発の右ストレートを繰り出す




瞬間ッッッ!拳は音速を超えたッ!!



強化硝子をぶち抜き、金縛りにあったゲドンコの鼻先で
寸止めされた握り拳と割れた硝子の音に搭乗員は一斉に見る




ゆっくりと…



ゆっくりと……



ゆっくりと………っ




ゆっくりと……………ッッッ!




ビデオテープに録画された植物の蕾が花を咲かせるまでを
早送り再生で見せるように…握り拳は開かれる…




――――――――ポゥ…




 パーの状態になった掌中心部に緑色の粒子のような何かが集まる!




 目と鼻の先で開かれた白いグローブ付きの手に集まる美しい緑の輝き

それは…翡翠<ヒスイ>の如し美しさ…彼は畏怖の念さえ忘れ、思わず見惚れ






          ルイージ「【ファイアボール】」




―――ジュウゥゥゥ!!!!



           彼は世を去った

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:05:54.13 ID:Ofd+FNnE0



後方へと仰向けになるように倒れ込む姿は実にスローモーションだった


倒れ込む同胞の顔が見え始めて彼等は絶句する


焼け爛れた顔、眼球も唇も2本だけの歯も何もかも…紫色の肌も
こんがりウェルダン状態だ


キノコステーキの芳ばしい香りが船室に漂う




…ドサッ!



1、2回床にバウンドした時彼等は漸く我に返る





何を呆けているのだッッッッ!!!



次は誰の番だ!?次は"自分"なのだぞッッ!!




「「「―――――――――ッッッ!!」」」



恐怖の波は彼等の心のダムを決壊させる

完全に恐慌状態に陥り、反撃も動くことも忘れ竦みあがる


次は誰だ…ッ!

自分なのか…ッ!それとも隣の仲間か!?後ろの仲間なのか!?


緑の悪魔が次に指先を向けるのは"誰"なのか、僅かな寿命と
隙さえあらば逃れられるか、という淡い希望を抱く
彼等の予測はどれでも外れだ





ジュボォォォオオオ!!


生命活動を終え、大の字で倒れた仲間の身体全身が二度目の火球で
完全に燃え上がり炎の塊と化す



ルイージ「たあああああぁぁ―――ッ」ゲシャッッ‼



彼は力の限り右脚を使って緑炎の塊を蹴り飛ばした

燃える塊からゲシャッ!と骨が砕け散る音が聴こえたが
 そんなことはどうだって良い、何ら躊躇いの無い死体蹴り

 ボウリング場でストライクを取った時のような爽快感だった
燃える焼死体は"残りのピン"を巻き込んで
宇宙船内のメインコンピューターに突っ込む


誰が次に死ぬか、ではない、彼等の予測は全て大外れ


正解は全員が同時に命を落とす、である
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:16:28.26 ID:Ofd+FNnE0



―――チュドオオオオオオオォォォン!



…こうして、また一機、黒煙を上げて墜落していく

墜落の間際に鼯鼠<ムササビ>のように他の機体に飛び移る姿が
また別の誰かの目に止まっていく




―――ドオオオオオオオォォォン!

――――――ドゴシャアアアアァァァン!!


<ギッ! ギィィィ―――!
<アギャアアアアアァァ!!



―――バッグオォォォォン!!

―――――ズガシャァァァン!!



 ズドォォォン!!  ドガシャァァァァン!!  ゴォォォォ…!







渓谷にクレーターと宇宙船の残骸が幾つも積み重なる
大穴が空いた地面、それを埋め尽くし新たな山を築く鋼鉄製のガラクタ





ルイージ「もう終わりかい…?」シュタッ





 ゴゴゴゴゴゴゴ…!


  ドドドドドドド…!






ルイージ「キミ達は僕の兄さん、越えるべき壁を壊した"強敵"だ」


ルイージ「誰もが認める英雄を倒した強者なんだ」





ルイージ「そんな強敵が"僕如き"に
           あっさり負けるのかい?」ゴゴゴ…!


ルイージ「そんなんじゃあ、僕の気が収まらないよ」ゴゴゴ…!

ルイージ「その程度じゃないだろうッ!
        掛かって来いッッッッ!!!!!!」ゴゴゴ…!




       「…その辺にしとけよ、ルイージ」シュタッ!
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 03:21:57.08 ID:Ofd+FNnE0
*********************************


           今回は此処まで!



    もうすぐ、前スレ分は全て此方にもって来れそうですね

*********************************
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 14:48:44.91 ID:7aMyv1tqO
留慰ー次声ぇぇぇ!
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 08:04:43.64 ID:uR2yMxzko
乙ですよー
前スレの時からこのルイージ無双のところほんと好きだわ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:09:47.21 ID:sckCzWUw0


ルイージは思わず息を飲んだ


 まだ目前には浮遊する異星の兵器達がある、が…そんなことさえも
忘れてしまう程に彼は眼を見開いて、背後を振り返る



「らしくないぞ、お前がそんなに青筋立ててキレるなんて」



ルイージ「…っ!…!」パクパク



金魚の物真似か?と目の前の男は声も出せない彼を見て肩を竦める


トレードマークの赤い帽子にオーバーオールと白いグローブ…
年季の入った革靴で砂埃舞う渓谷の地を踏みしめる姿







ルイージ「にい…さん…!」

マリオ「おっと、ワルイージにも言ったが俺は幽霊じゃあないぞ?
    この通り脚だってある」ポンポン



ほら、見て見ろよ?と右手で片足を叩くリアクションを見せる




ルイージ「っ…な、なんだよ…心配、させやがって!!」

ルイージ「本気で死んだかと…思ったじゃんかよっ!」



――生きていた、"生きててくれた"

―――声は震えてたし、涙は無意識に流れる


かつて、キングテレサに囚われていたマリオを救い出した時と
同じように彼は身内の無事に心から涙した…!



マリオ「ははっ!まさか!俺の不死身さはお前が一番知ってるだろう」

マリオ「ルイージ…」フッ…



彼は此方に歩み寄り、小さく握り拳を創る、そして…





  マリオ「オラァッ!」バキィィ

 ルイージ「ぶべらっ!?」ベキョッ




思いっ切り弟の顔面をぶん殴った



ルイージ「ぐ…あ、あがが…な、なにふふんだひょ!!」
   訳(ぐ…あ、あがが…な、何するんだよ!!」

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:14:50.38 ID:sckCzWUw0


マリオ「ふぅーっ」コキコキ!


手首を鳴らして、彼は一呼吸、そして弟に言い放つ


マリオ「今、なんで俺がぶん殴ったか分かるか?ルイージ」


ルイージ「いっつぅ〜…なんでだよ」ヒリヒリ






マリオ「…この一年近くお前は
      俺に記憶の事を黙ってた今の一発はソレな」



記憶喪失のマリオに要らんお節介を焼いた事での一撃



ルイージ「そ、それは…!」


マリオ「で、だ!」グッ


再び拳を創る英雄……その強靭たる肉体の鉄拳は…ッ!



              バキィィ!!!



ルイージ「に、兄さん!?」

マリオ「っ…ったた…結構痛いもんだな、コレ」





今、弟の顔面を殴りつけた拳はそれ以上の強さで
マリオ自身を殴りつけた…


これには弟も困惑した、兄は何を考えたのか?やはり頭か何処か
後遺症でも残っているのでは!?と


マリオ「おう…今、失礼な事でも考えなかったか?」


ルイージ「(ギクッ)ま、まっさかぁ〜…」




マリオ「…」

マリオ「今の一発は……」




マリオ「お前やヨッシー…姫…それに国の色んな人達に
      心配ばっか掛けた自分勝手な修行馬鹿への怒りだ」



マリオ「今の今まで…お前たちの僅かな気遣いや、何が何でも
    俺に過度なトレーニングをさせないために色々してきた事…」

マリオ「色々と、な…思い出すと
      同時に客観的にも視えるようになったからな」

マリオ「…すまん、今までお前にも迷惑を掛けた」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 21:22:24.41 ID:g/NpJ/aSO
He's one gigantic motherfucker.
168 :>>167 いえーす、むきむきまっちょめーん [saga]:2017/05/30(火) 21:24:50.98 ID:sckCzWUw0






――――…渓谷は静まり返っていた、ただただ…そこには静寂があった





いや、厳密に言えば廃材と化した宇宙船が燃える音や未だ浮かぶ
ゲドンコ星人の機体の浮遊音もあっただろう




だが…この兄弟の周囲には入り込める音など無かった…



片や、思いっ切り腫れた頬を抑え
片や血が滲み出ている口元なんて気にせず頭<コウベ>を垂れる







…今、ルイージの目の前にはマリオが居る…


そう…かつて、幾多モノ"冒険"を経験した真の英雄が帰って来た






 -今、実に1年振りに"本当の意味で"この兄弟は…邂逅できたのだ-




 悟られぬ為に…そんな想いからの真の意味で本心を語らず、明かさず
血の繋がった兄弟だというにも関わらずどことなく余所余所しい


見ようによっては上辺っ面だけの家族関係
そんな冷めた見方にもなり得るモノとは違う…


おおよそ365日近く間の開いた本音の同士の語り合い…ッ!それが!
目の前に在るのだッ!





マリオ「…本当に大事なモノを俺は見失ってたさ」





『焦る必要はないさ!キミは…そうだな少し頑張り過ぎただけなんだ』

『たまには落ち着いてよーく周りを見る事だって大切なんだぜ?』





マリオ「夢ん中で…友達に教えられたよ」


マリオ「…英雄<ヒーロー>たるモノが
      こんな大事なモン見落としてたんだ、笑っちまうぜ」


ルイージ「…兄さん…」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:27:04.52 ID:sckCzWUw0

 マリオは天を仰ぐように…そして遠い何処かに居る友人の姿を視る
かつて【カジオー軍団】との闘いで、共に在りし日を駆け抜けた友を…




 マリオ(今ならお前たちの名前を呼んでも良いだろう…?
                 なぁ、"ジーノ"…"マロ"…)






 マリオ「俺を殴れ、ルイージ、今まで姫や国民…そして―――」



 ―――そして…俺の好敵手<ライバル>達に





マリオ「―――…色んな人に迷惑を掛けたこの俺をッ!!」

マリオ「童話の走れメロスのラストシーンみたいに思いっ切り
     音が出るくらいぶん殴れッ!」






ルイージ「…っぷ!」

ルイージ「ぷっはははははははっ!」



ルイージ「ようやく記憶が戻ったと思えば…くっく…!」

ルイージ「弟を思いっ切りぶん殴ってしまいにゃ
      次に自分も殴れ、か…やっぱり変わらないな…」



ああ、これだ

これでこそ、あの"英雄"なんだ
自分が憧れ、そしていつの日にか追い抜くべき高み…っ!





ルイージ「オーケーだ!歯ぁ食いしばりなよッ!
      さっきの仕返し込みで喝を入れるからさッ!」グッ!



―――――ベキィィ!!



マリオ「おごッ!?…」ヨロッ


マリオ「…なんだよ、俺が筋トレを怠けてた間に鍛えてたのか?」


ルイージ「ふふんっ!これがスーパールイージさんの実力さ!」





マリオ・ルイージ「「…」」


     「「…っぷ! あっはっはっは!!!!」」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 22:50:17.82 ID:sckCzWUw0


マリオ「は、はは…あっ!、久しぶりに大笑いしたから
                   くく!腹が痛いな」



ルイージ「本当だよね、…僕等がどんだけ兄さんを遊びに連れてっても
      此処まで笑ってくんなかったのにさ〜」




マリオ「俺には…やはりこの生き方が性に合ってるようなんでな」スッ

ルイージ「そっか…それが兄さんにとって
             幸せな人生なら…仕方ない、か」スッ




邂逅の末に大笑いした英雄兄弟は…ゆっくりと同じ方角を見据えて
目つきを細めた



マリオ「なぁ、久しぶりに勝負しないか?」


ルイージ「勝負だって?奇遇だね、僕も記憶が戻った記念で
      ちょいとばかし兄さんと競いたい事があったんだよ」



マリオ「そりゃ奇遇だ…なら勝負事の内容はこんなのでどうだ?」



マリオ「今、現在進行形でキノコ王国内に現れたゲドンコの宇宙船を
     どっちが多くぶっ潰すか?」






2人は同じ方角を見る、同じ空の同じ空間の同じ機体共を



ルイージ「なら、この事態の引鉄は何か?黒幕は居るのか?何者か?
      それも調べ上げて事件を解決したらボーナス得点付きに
      しようぜ、その方が燃えるだろ?」





マリオ「よく分かってるじゃないか」ニヤリ

ルイージ「伊達にアンタの弟やってないからね」ニィ!





マリオ「…ド派手に…」

ルイージ「ああ、やってやろうぜ…!」











    -  英雄兄弟<マリオブラザーズ>の復活だッ!   -


171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 23:24:21.67 ID:sckCzWUw0
―――
――



渓谷にて紅と碧が天を駈け始めるとほぼ同時刻…




         【キノコ王国 〜城下町〜】




「うわああぁぁ!!!テロだァ!!テロリストが攻めて来るぞッ!」

「は、早く逃がして!!!」

「うぇ〜ん!ママ〜!」



        ワー! ワー! キャー! キャー!



ヨッシー「はいはい!そこの人!ちゃんと避難指示を出してる方に
      従ってくださいね〜!」

ワリオ「おうコラ!!そこのテメェ!列を乱してじゃんあねぇぞ!」



キノピオ「こっちです!皆さん!指示に従って避難施設へ!」







ワリオ「チッ!こいつぁ不味ぃぞ!
         …どいつもこいつもパニックってらぁ」

ヨッシー「そりゃそうですよ、此処長い事平和が続いてたって時に
      突然『戦車に搭乗した武装テロリストが攻めて来た』!
      なんて報告が来れば国内大騒ぎですよ」



キノピオ「すいませんっ!お二人共、お手伝い頂いて」


ワリオ「へっ!とんだゴタゴタに巻き込まれたモンだがよォ〜!」

ワリオ「ちゃんとお国から
    お手伝いの恩賞金っつーモンが貰えんだろォ!」


ワリオ「期待しとくからな!…おい!そこの老夫婦!
        早く避難所へ…あぁん!?孫が居ねぇだァ!?」





<クソガ!ショーガネー オレガサガシテキテヤルゼ!





ヨッシー「それにしても"旧クッパ軍"…ですか」


ヨッシー「やれやれ、平和なご時世とやらが
        よっぽどお嫌いなんでしょうかねぇ」



キノピオ「はい…この目で見たんです!間違いありません!」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:44:58.68 ID:MRuYfKl50


ヨッシー(ふむ…クッパ軍団の人員が今回のお祭り屋台に
                全員出払ってたわけでない)

ヨッシー(…クリボーくん言ってましたねぇ…なるほど…
         クッパ軍全員ではなく…一部の人員ですか)

ヨッシー(ノコノコさんとはよく文通してましたし…大体
      キナ臭い話も小耳に挟みはするんですよね、私)




ヨッシー「もうそろそろ、この辺りの避難は
        完了と言ったところでしょうね」


キノピオ「はいっ!」







ヨッシー「…ワリオさんが戻って来次第、私は
      この非常識なお客様方を見てきますね」


キノピオ「そ、それって…」



ヨッシー「折角のお祭りで、マリオさんとルイージさんの一騎打ちが
     見れそうだったのに、それが台無しですよ?」


ヨッシー「この有事が臨時ニュースで国内に報道
      おかげでレース中継も屋台のご馳走もおじゃんです」


ヨッシー「怒ってますよ?私」



ペロン…っ!と舌を出す仕草を見せる緑の友達に
キノピオは何と声を掛けていいか分からない


あえて言うなら…





キノピオ「あのぅ…できれば穏便に…」



ヨッシー「…まぁ、手加減はしますよ?多分ですけど」トテトテ…





そういう彼の手にはタマゴがしっかりと抱えられていた…






その昔、コウノトリが落とした双子の赤子を守り抜いたという
伝説的な卵の狙撃手の腕は未だ健在である…



ズルズル…


トテトテと靴を履いたトカゲが歩いて征く、その背を5個の卵が
追いかけて行く…ッ!
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 03:20:15.68 ID:MRuYfKl50
*********************************


           今回は此処まで!


*********************************
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 22:43:41.02 ID:IZaMupHco
あら、こっちに引っ越してたのか
久しぶりに読むね

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:38:21.81 ID:bN8df6pu0

 キノコ王国はピーチ姫の代から急速な発展を遂げた国家である
特筆すべきは先述の通りガソリンエンジン式の乗用車と国道関連だ


それ以前の交通機関と言えば、先々代の時代より建設されたキノコ鉄道
港にある昔ながらの帆船であった


 国内南部に位置する港も時代の変化に伴い変わっていく
かつて大海原へ風力と潮、漢達の直感だけを頼りに航海した船は
機械的なモノへと姿を変え、名残のあるモノは今や少ない





そんな港湾はすぐ近場に飛行場<エアポート>も備わっており
諸外国へ旅立つ者ならば誰しもが訪れるであろう場所となった














  王国でテロが起きた時ッ!友好国からの援軍が来ると
           すれば間違いなく此処に到達するのだ…ッ!






彼奴等が此処を放置しておくはずがないッ!








キュルキュル…!

ドドドドドドド…ッ!




港にそびえ立つ古ぼけた灯台にて羽を休めていた鴎は異常を察し
飛び立った、それは憩いの場が戦火に包まれると本能で察したが故か

 設立記念公園の中央にある日時計周辺のパンジーは不安げに揺れ
威風堂々とした佇まいで正午過ぎを示していた晷針もまた
招かれざる客人の行進曲にその身を震わす




ノコノコ達を素通りし、幾つかの部隊に別れた戦車隊

その一端が我が物顔で地響きをあげる、我、此処に行進ス…!





「あーあー、聴こえっか?
  これから予定通り俺らは空港を占拠すっぞ」




先頭の車両から後続へと指示が飛ぶ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 01:56:38.71 ID:bN8df6pu0


「あぁ〜、青い海、白い雲
    んでもって清々しい波音…くぅ!良いねぇ」





一両の戦車が向きを変える
波止場から少し右方面…そびえ立つは真っ白な灯台



「こう天気が良くて思わず欠伸が出ちまいそうな
             ポカポカした日にゃあよォ〜」






















  ドン・チュルゲ「打ち上げ花火<センカ>が
             無性に見たくなるよなァ〜!」チュウッ!










そしてッ!一発の凶弾は放たれるッ!


グローブを嵌めた手はサングラスをほんの少しだけ上げて
 破壊衝動を秘めた眼光を覗かせる、fireの合図と共に火を噴く砲身

チュルゲ自慢の火薬を詰め込んだ鉛玉は大気を震わせ
時化の日も船乗りを救ってきた白い灯台に着弾する



まだ夕暮れには早すぎる時刻、時間にして1秒にも満たない僅かな合間

港はセピア色に包まれる…それは一日の終わりを振り返る色とは違う
かつての美しい光景に"さよなら"を告げる始まりの色なのだろう





光に遅れて耳を劈くような爆音が港全体を震撼させた

それは古き時代から憩いの場であった港の悲鳴なのかもしれない


立ち昇る黒煙、炎上しながら灯台"だったモノ"は黒ずんだ瓦礫を落す

 吹っ飛ばされた灯台の破片は爆発と同時に流星の如く流れ
近場の船乗りご用達のバーから倉庫、記念公園の建物に落ち…

それは新たな火種となる…


チュルゲ「ンン〜!良いねぇ!スカッとするぜ!」チュッ!
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 02:12:11.25 ID:bN8df6pu0



"耳を劈くような音"…当然ながら搭乗員の多くは眉を顰め
一部の者は耳を塞いだ




―――チュドオオオオオオオォォォン!


――ドゴォォォン!




一発の砲撃から生まれた二次災害、灯台の破片が落ちた倉庫群の中には
火気厳禁の物資が保管されていたコンテナもあったし

船乗りが酒を煽るバーに至っては酒蔵目掛けてピンポイントだ


このネズミ男がそこまで計算してやったかどうかは乗り組み員の誰にも
識別できないでいた、ただ…


 優雅なクラッシック音楽でも聴いているかのように
悦に浸った顔の爆弾魔が末恐ろしき人物であるという認識だけは増した





キャサリン「……アンタって本当、サイっっテー…」


チュルゲ「あ゙?なんか言ったかカマ野郎」





キャサリン「言ったわよクソネズミ、こっちはロープで
       身体グルグル巻きなのよ?おかげで騒音が耳を直撃よ」



あー、やだやだ、と悪態つく元同僚にネズミ男は振り向きもせずに
「おー、そうかい、そうかい、堪能できてよかったじゃねーか」と告げ



チュルゲ「うっし!おめーらのボスも言ってたろ?此処の現場担当は
      全部俺に一任するってよ!
       俺の言う通りバリバリ働いてもらうぜ!」



と、爽快に笑う…今のドン・チュルゲは頗る機嫌が良い
後ろでキャサリンがどれだけ罵倒しようがどこ吹く風と言った所なのだ




チュルゲ「海面にぷかぷか浮いてるお舟も飛行場の航空機も動く奴ぁ
      全部まとめてボン!だ」

チュルゲ「船着き場も滑走路さえも跡形もなく吹っ飛ばす」









チュルゲ「何者もこの国から逃げられねぇ、誰もこの国に来させねぇ」

チュルゲ「平和ボケした、餓鬼どもによォ…
             戦争ってのを教えてやるのさ」ニタァ

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 02:57:26.69 ID:bN8df6pu0


心底喜びに打ち震えていた

心底嫌悪の念に駆られていた




チュルゲと旧クッパ軍の認識の違いだった





武人として、強敵と闘える事を誰よりも誇りに思い、戦地にて
持てる技術・技巧の限りを尽す




 彩るは華、咲き乱れ、枯れ果てるまでの僅かな時の中で懸命に輝く
灯火のような儚さ…閃光のように鮮烈で鮮明に脳裏に焼き付く気高さ





確かに彼等も街の占領や、各国の行政を司る城や軍務担当の砦の占拠は
過去幾度となくやって来ただろう













だが、――それでも、"無差別な破壊だけは嬉々として遂行しなかった"




戦略上、必要と判断した破壊行為こそしても…



破壊活動そのものに悦びを覚える



そんな気狂いの男と英雄と拳を交える日々を夢見た戦士達では
違いすぎるのだ…




闘いを求めてクーデターに賛同した者

平和をただ「つまらない」と一蹴しテロ活動を起こす者


同じようで似通らない思想





彼等からして見れば、必要な事とは言えチュルゲのような男は
下劣な輩でしかないのだ、…溝鼠よりも汚らしい、品性の無い気狂い


179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 03:41:49.96 ID:bN8df6pu0

チュルゲ「なぁんだぁ?随分としけた面じゃねーかよ?」


チュルゲ「折角の花火大会だぜ、もっとパーッと盛り上がろうぜ」チュッ!





「…自分達はまだ作戦の遂行中であります」
「予期せぬ事態はいついかなる時も起こり得ますので」
「気を緩めすぎては全体の士気にも悪影響ですから、ハイ」



チュルゲ「ケッ!そうかい、そうかい、おー!ヤダヤダ
      これだから軍人さんってのは、つれねーの何の…」




両手を大袈裟に広げ、おちゃらけたように悪態をつく…彼奴の眼光は
相変らず黒レンズの向こう側に隠されている

だが、その口元がサングラスの向こう側がどのような眼つきをしているか
その程をよく窺わせた





チュルゲ「んじゃま!ちょっくら作戦を完了させちまうとすっか
      全車両に通達だ!港地区ニ於ケル我カ作戦ヲ遂行ス!
      ちったぁ!格好つけた分にして送ってやんな!ははっ!」








本格的な破壊行動の電報が送られんとする、今まさにその時であった























 ――――プロロロロロロロ…





無線手の役割を担う搭乗員は通信機器から思わず手を離した

彼は空の彼方から此方へ向かってくる"プロペラ音"を聴いたからだ




行き場を失った手は宙に、双眼は焦点が合わず、唇はパクパクとさせ

顔の色は蒼白を通り越して血気の失せた死人色だったと後に隣に居た
無線手の友人は語る
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 03:52:14.83 ID:bN8df6pu0


「――ぁまだ」


「は?」



掠れた声に眉を顰め、なんだ一体?と尋ねた





すぐにわかる事になる、何故隣に居たこの戦友がこのような顔をしたのか








         「そ!空に機影を確認ッ!こちらに接近中ですっ」





チュルゲ「あぁん?ゲドンコ共…もう終わったのか?
     おう!おめーら早いトコやっちまわねぇと手柄持ってかれんぞ」



  「…違います、"プロペラ"の音がするんです…
         そんなのゲドンコ星人の機体に使われてません」


死人色の彼はどうにか声を絞り出す、だが声は身体と同じで震えていた





チュルゲ「あ"?んじゃ何か?
      もうどっかの国からか軍がスクランブルしてきたってのか」




 「違うんです……」





 「……ぁ」

 「…う、ぅぁあ、ああぁ…っ!」








彼等は気がついた…その"聞きなれたプロペラ音"が何であるか


空の彼方に映る機影が徐々にハッキリとしてくる…



 そう…道化師<ピエロ>を模したその空飛ぶ物体の輪郭が
              それに乗っている人物が誰かわかったのだ

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 04:01:46.43 ID:bN8df6pu0


      -『――ぁまだ』-


先程の無線手の掠れた声が脳内でリピートされる


今なら分かる、あれは『―――様だ』とそう言葉を漏らしたのだ、と





























ノコノコ「おお!見えてきましたね!」

クリボー「ッスね!飛べるテレサを先にキノコ王国に向かわせて
      俺らが城に戻るっ!なんとか間に合ったってトコか!」














―――プロロロロロ!…シュバッッ!!!   ヒュゥゥゥゥゥン



門番を務めるノコノコとクリボーはあの御仁をお連れ致したのだ

プロペラ式の小型飛行船から彼は飛び降りた



 けたたましい落下音、舞う粉塵と降り立った彼の地点を中心に
大地すら揺るがす振動の波が広がる

吹き飛ぶ火煙衝撃で崩れ落ちる家屋…そう










            "大魔王"が空からやって来た



182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/04(日) 04:03:32.84 ID:bN8df6pu0
*********************************


           今回は此処まで!


            引っ越し完了


*********************************
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 11:55:42.69 ID:IJPsW7pVo
おつおつ
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/04(日) 14:19:42.37 ID:EaSfskXi0
食っちゃ寝様だ?
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/05(月) 08:00:22.69 ID:XQQWbs8UO
ついに登場か…
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 22:12:19.88 ID:X4P2p47R0


 静寂、不気味なまでに辺りは静まり返った
先刻まで駆動音を響かせた戦車にもし心があるのだとすれば人で言う所の
畏怖の念があったかもしれない


火を噴いた砲身は未だ熱が篭り続け
発煙は降ってきた"彼"から逃げる様に天へと舞い上がる…



爬虫類特有の尻尾と甲羅、それは"彼"の部下の多くと同じであった

ただ、彼の場合は象牙や牛の角のようにトゲ状に骨が変質した骨棘を尾に
有していて、背中の甲羅にも10本の棘が生えており
 更には燃えるような真っ赤な鬣の両脇にも雄雄しい角を携えていた


 その様は亀というよりもジュラ紀に君臨した
肉食獣の帝王達に近しいモノがあった



 鍛え抜かれたその逞しい筋肉はどこぞの王朝時代の彫刻に匹敵する
ある種の美を感じさせ、その両腕に黒鉄製の腕輪
そして首元に同じ材質の首輪をつけており、これまた彼の存在を
象徴するかの如くトゲがついていた






「あ、あぁぁ…」ガタガタ
「く、く・・・く…!!」ブルブル











 「クッパ様だ…!クッパ様が…っ!自ら御出陣なされたのだ…!」






誰かが口を開いた



 これがかつての自分達がキノコ王国へ攻め入る時ならば彼等の士気は
爆発的に上がっただろう、在る者は熱狂的なまでに雄たけびを挙げ
在る者は攻める前から勝利さえも確信した


在る者は鬼神の如き強さに敬意と恐怖を交え声をあげて、身を震わせた




が、今はまるで状況が違う




自分達を"常勝"へと導いてきた軍神は…今ッ!まさにこの瞬間に!


 自分達を処罰すべく此処にはせ参じたのだッッッ!!





彼等は悪い意味で身を震わせるだろう
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:00:16.14 ID:X4P2p47R0


チュルゲ(…チッ、タマのちいせぇ野郎共が)



鼠男は覇王の出現と共に縮こまりだしたし乗り組み員達に内心、舌を打つ


黄色く堅い皮膚、何物をも容易く切り刻む鋭い爪
口元から覗かせる凶悪な牙を持つ怪物の顎は巨岩さえも嚙み砕く




一言で表すなら言葉通りの"怪獣"


それも怪獣の王である




未だ舞い上がった粉塵のベールに包まれた彼はその全身を
鮮明に見ることは叶わない


だがらこそ、表情の分からない窺えないシルエットがより一層
威圧感を出していた


心なしか大魔王の殺気すら放たれているように思えるのだから
彼等が縮こまるのは致し方ない



余りにも巨大な存在の前で「嗚呼、自分達は所詮雑兵に過ぎないのだ」と
取るに足らない矮小な…ちっぽけな存在でしかない、と








 その恐ろしさを誰よりも知る彼等は脳裏にその楔を叩き込まれる



圧倒的なまでの実力差…ッ!

圧倒的なまでの戦闘能力…ッ!








目の前に広がる絶望の滝………ッッ!

勝てる道理など万が一…否、億が一にも存在しないという事実を改めて
脳細胞の奥深くに突き立てられるのだッ!






チュルゲ「なぁ〜にビビってんだぁオイ?
        おしっこ漏れちゃったのか軍人さんよォ」チュッ


チュルゲ「ケッ!…マジで糞野郎だな」チュッ!


「なな、な、なんだと‥!」



チュルゲ「相手はなんだ?年老いた時代遅れの糞爺<ロートル>だ
                   何を恐れてやがるんでい」チュッ
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:53:48.31 ID:X4P2p47R0



チュルゲ「てめー達はなんで今此処に居やがる?
       こうやって一つのお国相手に喧嘩ふっかけんのはなんでだ
      それどころかあの大将の考えに背いてんのはなんだ?」





チュルゲ「今のてめーらの大将はあのロートル大王じゃねぇ
     "指揮官さん"だろうがッ!億んでんじゃあねぇぞ軍人共ッ!」





  「!?」「うっ!」「…っっ!」「それは―――」





チュルゲ「てめーらの指揮官さんは雪山で
       そりゃ大層ご立派な演説をしただろーが」



チュルゲ「俺もちょいと聞いたがありゃ目からウロコだぜ、うん」


チュルゲ「諳んじやろうか?え"っ?いってやらぁ!
     『闘いこそが全て勝利の余韻、戦士を称える名声こそが
               ワシ等の人生そのものと呼べた!』」




 「…ゴクッ」「俺達の…全ては!!」「勝利、戦士の名声」






チュルゲは失意の眼に野心を灯していくモノたちを見て
 これだから単純な馬鹿は扱いやすい、とほくそ笑む


チュルゲ「『ワシ等の主君クッパ様にはかつての覇気は
          無く、ただ堕ちたとしか言いようが無い!』」


チュルゲ「『故にこれは決して主君への謀反に非ず!
    クッパ軍団の輝かしき黄金時代を取り戻す為の行為!』』






そこまで言い、間を置く、呼吸を一つ、そして最後の一押しとばかりに








チュルゲ「『我等が主にあるべき姿に戻っていただく為の行為である』」




チュルゲ「違うか?」ニィ




「そ、そうだ…俺達のしてる事は!」「裏切りなんかじゃない‥!」
「クッパ様に正気に戻って頂くための…ッ!」

189 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:35:55.62 ID:u3QymEy90


兵士は立ち上がるッッ!

己が内に巣食う【恐怖】という名の怪物に打ち勝つためにッ!


笑う膝に握り拳を叩き付け、音を鳴らす奥歯を噛みしめ自身を奮起すべく
猛々しく吼えるッ!


脳に打ち込まれた恐怖と言う名の楔を吹き飛ばすように喝を入れるッ!



チュルゲは彼等をただ"利用する為だけに"聞こえの良い言葉を口にした

それだけに過ぎない





だが、彼奴の言葉は指揮官の熱弁を思い出させる

闘志がその眼に宿り彼等は意を決したッ!






そうっ!!相手が我らが主君、クッパ様であろうと死力を尽くそうッ!


































…っというのが一部の勇気の意味と蛮行を履き違えた愚か者の思想だった


冷静なモノだけはちゃんと無謀と勇気を理解していたという




 「メカキャサリン!!出撃準備完了!」
「こちら砲撃手!いつでも行ける!装填急げ!」

「「「おうっ!!」」」


「え、ええーい!!クソッタレ!こうなりゃヤケだ、やるしかない!!」


冷静に理解はしてても既に退路など無い、すべきは一つである
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:37:42.23 ID:u3QymEy90
*********************************


              今回は此処まで!







             次回予告ッ!



           (敵が)圧倒的絶望


*********************************
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 03:00:02.32 ID:3yfHUmiW0
オラワクワクすっぞ!!!
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 18:40:26.87 ID:CNqhFG6DO
悲しいなぁ(敵が)
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 19:36:49.72 ID:1pmVoHLRo
不抜けたからと言ってもいつでもマリオとの再戦に向けて鍛えてるやろ
つまりモブは死ぬ
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 22:04:25.42 ID:5I8XQaTLo
クッパ様に勝てると本気で思ってるのかい?
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 00:38:52.91 ID:XkJe0Pqo0
もうだめだぁ・・・おしまいだぁ(敵が)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/13(火) 21:55:31.08 ID:FPgEIYWe0


心拍数は2倍速でリズムを刻み、手にはべったりと手脂が滲む程だった

 それは怖れであり、畏怖であり…戦士として"強敵を相手にする悦び"に
打ち震えていた証拠でもあった





キュロキュロ…キュルキュル‥‥!

       ギュルルルル…!!!





旧クッパ軍が修繕した車両の中で最大規模を持つ機体から
オリジナルを容易く打ち破った鋼の蜥蜴が駆動音を轟かせて飛び出す


 陸上巡洋艦の名を冠する程に大掛かりなソレは全60t近い重量を持つ
機械仕掛けのドラゴンを格納し走行できる馬力すらも持ち合わせていた


 ゆえに彼等は自分達こそが今作戦の戦略の上で要となる存在だと
そう信じていたし、港ならびに空港の占拠・破壊命令という大役を
授かるだけの戦力を有していた



だから、その"心許ない武装"でクッパが倒せると過信したのだ



「【キラー砲】装填完了!いつでも撃てます!」

「出し惜しみはするなッ!全弾放てぇぇっっ!!」





  ズドォォォン!!

           ドドンッ!!





人の背丈を優に2回りも超える巨獣は何も言わず一歩片足を前に出す

発砲音と重なり、それが恰も彼の大魔王の出陣を盛り上げる伴奏のようで
遠巻きに見ているノコノコとクリボーには滑稽に見えた



クリボー「なぁ、俺らは行かなくて良いんスかね?…いやクッパ様が
       そうご命令なされたんスけど」

ノコノコ「良いんです、足手まといにしかなりませんから」




クリボー「……手加減、してくれっかなぁ」

ノコノコ「…灸を据えるだけだ、と申しましたから
         死人は出ないでしょうな、たぶん」








メカキャサリンの背後から垂直に飛んでくるキラー砲の援護射撃が
クッパの身体に命中するのを見て彼等は呟いた

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/13(火) 22:11:23.07 ID:FPgEIYWe0


「!? …っ、あ、当たったぞ…」

「ど、どういうことだ!?」

「た、確かにクッパ様は協定の日以来、御体を鍛えては―――」



ザワザワ…!

      ガヤガヤ!



年老いた帝王、時代遅れのロートル、チュルゲの言葉が彼等の心に
染みのように広がっていく






 「…やれる」ボソ





 誰が口火を切ったか分からなかったが、その一言が上がれば後は
小石を投じた水溜りの波紋の如く周囲は口を揃えだす






 「やれるぞッッ!!あれだけの砲撃を受けたんだ!!!
    如何にあの御方といえど無傷で済むはずが無い!!」


 「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉー―−――っっ!!!」



 「クッパ様も、と、年老いたのだ!!!我らでも勝機があるぞォ!!」












 肉眼でも分かる、派手な爆炎にその巨体が包まれていったのが
一発の砲弾で地を抉り、焦土とする自慢の火薬の塊

それがゲリラ屋にして爆破のプロの手で更に強化されていた
 湧き上がり浮足立つ乗員は次の瞬間、凍り付く









ヒュゥゥゥゥ――――





          クッパ「…」




両腕を組んだ全く以って傷一つ無い帝王の姿に戦慄する
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/13(火) 22:53:35.21 ID:FPgEIYWe0

クッパ「…」ハァ


眼を細め、君主は紅色のため息を吐く…


生ある者を瞬時に焼き殺すであろう高温の吐息は大気の温度と混じり消え

 黄土色の鱗に付着した煤をまるで
お気に入りの一帳羅についた汚れを払う様に煩わし気に片腕で叩き落とす

 雄雄しく唄っていた砲塔のコーラスはピタリと鳴り止み
ソレが車両内の様子を物語る…意気消沈と戦意が失せた兵士

恐怖の楔が倍になって突き刺さり奥歯で心境を詩にした雑な合唱を
演奏し始める戦士の顔ぶれが…




クッパ「嘆かわしいことだ、もう止めたのか
         それで吾輩の部下を名乗るだと…?」








      クッパ「半端者共が、恥を知れ」




声は届かずとも視線は届く『どうせやるのならば捨て身で来い』と
『勝てぬと分かっていても死力を尽くすのが我が軍の誇りであろう』と

謀反を起こした者への叱咤を含めた一瞥をくれてやった




 キュラキュラと機械仕掛けの爬虫類の方がまだ可愛いものだと
心底、帝王は質の落ちた自軍に落胆した


こんな玩具<ガラクタ>でさえ進軍して来るというのに
 なんだその程度の志で戦<イクサ>をする気だったのかと




ズシンッ、ズシンッ!

キュララララ…!




味方の援護射撃で舞う爆炎、火薬の匂い…煤の霧雨の中を鋼鉄の竜が

年老いた、されどその肉体は覇王たる風格を漂わせる大怪獣が



戦地に立つ、猛る者は吼え、怖れ慄く者は泣き叫び
体裁も形振りさえも構わずに哭く





 優に一年ッッッ!!365日に渡り魔王が律してきた
             その剛腕を振るう時がやってきたのだッッッ!





     【クッパ VS メカキャサリン&戦車隊】

           戦闘開始ッッッ!
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 23:40:08.43 ID:gQ1ng7RiO
パナイ
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 00:53:35.06 ID:kn7634gs0

チュルゲ「オイ!糞共何してやがる!!さっさっと撃ちやがれねぇか!!」


「だ、駄目だ…勝てる訳が」ガタガタ
「と、取り返しのつかない事をしちまったんだ…」ガクガク
「逃げよう!!!い、今ならまだ、まま、間に合う!」


戦場の軍神を…っ!

傷一つ付かぬ化け物を目の当たりにして彼等は…っ!クッパを見た兵は!



      『 クッパ を みて どうよう している !』



 その狼狽えぶりは【カジオー軍団】の力に屈服し、やむを得ず君主に
反旗を翻さずを得なかったあの日を彷彿させた

違いがあるとすれば、それは圧倒的な武力を前に君主も居らずで
支配下に置かれる事を強請られた事

そして、今回は誰かの意志ではなく自らの意志で背いたという違いだ



 つまり弁明も何もあったもんじゃあない
屠られたとしても文句の言える立場に非ず




チュルゲ「…」ツカツカ…



ドン・チュルゲは蚯蚓のような尻尾をうねらせ、1人の搭乗員の前まで
歩いてきた、そして…


――――ブンッッッ!


「…ぇ」



紫色のパンチグローブを嵌めた右腕でアッパーカットを下顎に喰らわせた





            ボッッッッ!ゴォォォォォォン!!!




「「「「!?!?」」」」



          「…カ"ッ…ひぇっ、ふ?」プスプス…パタッ




チュルゲ「俺ぁ爆破のプロでなァ、俺のグローブは
             ちょいとした特注品なんだわ」

チュルゲ「此処ンとこ、よぉ〜く見てみ?
      ナックルの部分が盛り上がってんだろう、殴ると火を噴く
      チュルゲ製の魔法の薬莢が組み込んであんだわ」


耐火性能抜群、自身の拳だけは爆破の熱からも衝撃からも護り抜く
 そのグローブで一人の下顎を打ち砕いた鼠男は底冷えする程に
極めて冷徹に言い放った


チュルゲ「臆むな、戦って死ね、さもなくば此処で今すぐ死ね」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 03:12:40.81 ID:kn7634gs0

黒光りのレンズの奥に沸々と苛立ちを募らせた


炎のように粗暴で狂的で、ソレで居て極めて冷静で残酷な冷血漢は
 敵前逃亡を図るなら此処で自害しろ、と言うのだ


前門は大魔王、後門は狂人である




車両内は嫌に寒かった、氷点下の世界に投げ込まれたんじゃないかと
錯覚するほどに底冷えしていた

 目の前にはプスプスと煙を上げ、肉の焼け爛れる悪臭を熱と共に
立ち込めさせる同志が倒れ伏せる


熱が漂うのに、背筋には氷を突っ込まれた気分だ




「か、顔の肉が…うっ…お、おえぇぇぇっっ!!」ビチャビチャ

「っ!…ぜ、全員!持ち場に戻れ!衛生!衛生ッ!応急処置を!早く!」




 見事に皮膚が焼け剥がれた同胞を見て
前門よりもすぐ間近にある後門から逃れるという選択を彼等は下した


―――
――


メシャッ!!ベチャッ!!!

 メカキャサリンの口部型砲塔より吐き出される巨大卵を正拳突きで
打ち砕く、破片が鋼鉄のボディーに突き刺さるが
痛みを感じぬは痛覚を持たぬ機械の利点である

 卵による物量弾が通用しないとAIが判断するや否やキャサリンを倒した
【マグナムキラー】級の火薬弾の発射、そしてサブで
備え付けられた火炎放射の筒管が人で言うところの喉の部分に出始めた



拠点破壊用の主砲、回避行動を取られた際に逃げ場を無くすよう
満遍なく周囲一帯を火の海に帰る、そういう攻撃パターンを組まれているのだ





  ボウッッッ!!!




クッパ「そんなモノッッ!!!」ガシィィィ!!!ズザザザザザ−z__!!



両の腕でそれを掴み、脚に力を入れ、爪を地に立て踏ん張る
それだけで城の城壁を倒壊させる兵器は止まったのだ





クッパ「ハアアアアアアアアア ア アァ ァ ッ ッ!!」ブンッ!



−―――ヒュゥゥゥ!! ドボンッッ!


腕を振り上げ、巴投げのように振り飛ばされた砲弾は風を切る音と共に
大海に沈む、そのまま浮かび上がることは無いであろう
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 03:42:06.62 ID:kn7634gs0


メカキャサリン「キュピピ!ピーーーーッ!」ガコッ


 眼をチカチカと点滅させ、がこんっ!と口部のシャッターを開く
喉元まで上がっていた火炎放射の機関が顔を覗かせた

オリジナルのキャサリンもドラゴン族、故に火を吐く事ができ
多機能性を持たせるべくチュルゲはそこに目をつけ設計図に組み込んだ



本来のモデルに似せた性能、しかし本来のモデルを上回る強さをと!


殺戮マシーンの口部が鈍い輝きを見せる

 鋼鉄の口内で炎色反応を起こす可燃性の高い化学液が
花火の美しさと火の恐ろしさを瞳へ焼き付かせるべく
前準備を完了させた合図だった




メカキャサリン「ジュゴォォォォォォォォォ」ボワッッッ!!!




赤、青、緑、黄と彩艶やかな、これから火葬される者への手向け




それは帝王の身を包み、焼かんとする











  クッパ「なんだ、こんな時に花火とはお目出度いヤツだな」






目を薄らと細め、春の暖かな日差しの中で日向ぼっこを
楽しむ無邪気な子供のような顔で大魔王は笑った、いや…"嘲笑った"


煉獄に焼かれ苦しむどころか、大きく息を吸い、噴き出された猛火を
喰らい始めたではないか…っ!



クッパ「ガッハッハ!愉快な奴め…!余興の礼をしてやろう…」スゥゥゥ…!



顎を、大口を、牙の門を開き…!

深い…深い…っ とてつもなく深い深呼吸……っっッ!!


火炎と共に燃え続ける酸素を大きく吸い込んで、そして―――!





     - 灼熱の吐息<ブレス>とはこうするのだ…ッ! -




 大魔王は"地獄"を吐き出した…!
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 04:07:00.63 ID:3XZAwkMH0
あのマリオですら入れないほどの高温の風呂に親子で浸かってるんだからな倒したきゃ最低でも溶岩ぶつけなきゃ
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 05:39:57.39 ID:kn7634gs0


鋼鉄の蜥蜴が噴き出したソレを打ち上げ花火と喩えるならば

怪物王の吐き出した"地獄"は活火山の噴火口から噴き出す獄炎である



 渦を巻き周囲の炎さえもそれに惹かれ渦に飛び入ったかのように巻かれ
大火事が一つのうねりをあげる大蛇となりて機械の頭部があった場所を
通り過ぎ、後にはドロリと表面が溶鋼状となり地表に零れ出した鉄屑が…






(首なし)メカキャサリン『ぎ ぎぎぎ ギイイイ』バチ! バチチチ…





―――ボタッ! ボトッ! ジュゥゥ!!




溶鉱炉から溢れだした液状金属のようになった頭部

8割が融け出し、バチバチと剥き出しの回路が火花をスパークさせる


直後トチ狂ったように全速前進を初め、クッパ目掛けての突撃を開始した
殺戮目的の機体に感情などはない



 然るに、この機体が顔を溶かされ、醜悪な容姿に変えられた事に
怒りを露わにして駄々を捏ねる聞き分けの無い子供が大人に衝動的に
八つ当たりをするソレと見紛うような行動に出たと思えても
それは気のせいである







メカキャサリン『ぎ ぎぎぎ ギイイイ ギギイギギイギイイイイイイイ』バチバチッ!




塗装も焼け剥がれ、痛々しいとさえ思う程に変わり果てた機械は
渾身の力を以てしてクッパ大王に挑む……が





  ガシッ!







クッパ「ほう、今度は相撲か?それともなんだプロレスか?
        良いぞ、好きなだけ来るが良いワガハイが遊んでやる」





メカキャサリン「ぎ、ぎぎぎ…!?」メキッ メキメキ バキィッ




 60t…s<キログラム>に換算する事、重さ60000sに及ぶ鉄の塊を
受け止めた剛腕は枯れ木の小枝へし折るより簡単にその鉄腕をへし折った
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 05:48:16.80 ID:kn7634gs0
*********************************


           今回は此処まで!



>>198


『訂正』

クッパ「嘆かわしいことだ、もう止めたのか
         それで吾輩の部下を名乗るだと…?」



クッパ「嘆かわしいことだ、もう止めたのか
         それで ワガハイ の部下を名乗るだと…?」





ごめんなさい、クッパならワガハイを漢字で言わないですね…







           次回予告ッ!


      (敵が)圧倒的絶望編part2



*********************************
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 10:08:26.71 ID:033jtNR4O
乙。
強すぎかっこいい
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 20:22:57.32 ID:1HlmFIx5O
マジパナイ
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