マリオ「最近、テニスやパーティーにゴルフばかりで…何かを忘れているような」

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44 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/12(金) 22:35:08.55 ID:W+IczPcH0



ワリオ「という訳で、この日にパーティーあるからな
    おたくらに来て貰いたいって訳だ」

ワリオ「『ボンゴ』『エレキギター』『サキソホン』『トロンボーン』
    それに『トライアングル』…おたくらのバンドなら最高に舞台を
    盛り上げられるだろ?」

ワリオ「んん?報酬?心配すんなってちゃんと
    良質なバナナ用意しとくから、じゃあな!」



    こうしてパーティーの準備は着々と進んでいくのでした


 誰もが笑い合える世界、魔法の時間が始まるのはもうすぐの事でした





           そしてパーティーの前日…
       つまり、カートレースが開催される一日前



クッパ「全軍!明日一日お前達に暇を出す、城の事は良い
    存分に明日と言う日を楽しめ!」

ノコノコ「ほっ、有給を使わずにパーティーに行けそうですね」

テレサ「…♪」フフーン
   (こっちのリボンをつけて行こうかなぁ)




ワリオ「さぁて、出店はどうすっかなぁ…」

ヨッシー「食べれるお店なら何でもいいですよ!」




ルイージ「兄さん」

マリオ「ああ、エンジンの調整に行くとしようか」

ルイージ(…明日…全部、明日なんだな)




ピーチ(………マリオ)

キノじい「姫様、夜風にあまり当たるの…」


   皆がそれぞれの想いを持ち明日を迎えようとしていたのでした

  夢のような時間…もしかしたら最後かもしれない夢になるかも、と


「…明日だ、ワシ等の悲願達成の為に…!」

「ゲヒャ…」






ゲドンコ星人「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ…ッ!」


    …願わくば、最後に見る夢は悪夢でない事を祈りましょう
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:13:00.24 ID:NHasEHyQ0
*   *  *  *  *  *  *  *  *  *   *

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

*   *  *  *  *  *  *  *  *  *   *



ジュゲム「さぁ皆様!ついにレース大会の日がやって参りましたぁ!」


ジュゲム「実況は私、カメラマン兼司会進行を勤めさせていただく
     ジュゲムでございます!いやぁ、久々のレース実況で
     なにやら気分が高潮する次第です!」


ジュゲム「レース会場周辺の観客席はほぼ満席外には着々と出店の屋台が
     立っていきます!」




カメック「おーい!そっちの機材はこっちだ!」

ハンマーブロスs「「「「うぃーっす!」」」」


   ワッセ ホイサ   ワッセ ホイサ


            エッサ  ホイサ   エッサ ホイサ


       ヘイホー  ヘイホー




ジュゲム「いやぁ、活気に満ちていますねぇ〜
     さて、もうじき選手達が来る頃です!
     インタビューの方へ移りましょう!」


―――
――




   「――さて、もうじき選手達が来る頃です!
     インタビューの方へ移りましょう!」




「ねぇねぇ、もうすぐ始まるってよ?」

「僕達も会場の方に行かないの?」

「慌てる出ないわ!…バンドメンバーは最後と決まっておろう!」



「もう…頑固だなぁ、クランキーは」


クランキー・コング「フン、おぬし等若いもんはまるで分かっとらん!」

クランキー「良いか!昔から締めの"おおとり"は
      遅れてやってくるもんじゃ」


「うわぁ、クランキーの長そうな話が始まるよ」ボソボソ

「に、逃げよっか?」ボソボソ



クランキー「これッ!聴いとるのか!馬鹿ザル共!」


「うへっ!やっべぇ…オイラ、こんなトコまで来てお説教は嫌だよ」

「クランキー!ほら、バナナ食べようよ…!船旅で疲れたしさ!」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:24:50.09 ID:NHasEHyQ0

クランキー「誤魔化すでないわ!…と言いたい所じゃが
      確かに、我々は長旅で疲れとる」


クランキー「今日のライブの為、英気を存分に養うのも良かろう!」



「イエーーーーーイ!」
「やったね!」



クランキー「今夜はこの国の住人をモンキーラップの虜に
      してやろうではないか」


「あっ、クランキー、テレビの音量上げてよ、選手入場が始まるみたい」

クランキー「年寄りにやらせるでないわ!」ピッ

「そう言いつつ、やってくれるクランキー優しいぃっ!」





ジュゲム「えー、画面をご覧の皆様、選手入場です!」


ジュゲム「まず一番手は、クッパ軍団よりドッスン選手です!
     自分の重みに耐えられる専用マシンを使用しており――」

―――
――




【ふるぅつ じゅぅす 屋さん】


ヨッシー「ん〜!トロピカルですねぇ」

ワリオ「おい!味わうのは良いけどよ!ちゃんとジュースにしろよ!」

ヨッシー「分かってますよ〜もぅっ!」


ワリオ「ったく…」


ヨッシー「ワリオさんは出場しないんですか?」

ワリオ「あぁん?」


ヨッシー「賞金でるんですよ!賞金!」

ワリオ「…けっ!あぁ〜んな端金なんぞより、ここでフルーツジュースを
    売った方がコイン稼げると思ったんだよォ!」

ワリオ「最近、暑ぃしよォ、現に客の入りだって良い方だろ」



ヨッシー「この戦いに水を差したくないとかですかね?」



ワリオ「ハァ?」

ヨッシー「今日は、あのルイージを初め
     多くの人がマリオさんに真実を教えようとしている」

ヨッシー「今日くらいは無粋な事せず、純粋に見守りたいとか?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:29:06.14 ID:NHasEHyQ0

ワリオ「…」


ワリオ「…ケッ」


ワリオ「マリオの野郎共がどうなろうと俺の知ったこっちゃあねぇよ!」

ワリオ「…」


ワリオ「ただ、周りの人間が一人の野郎中心にアレやこれや
    理由つけて、依存したり…自堕落的だったりよォ」

ワリオ「そういうのは好かねぇんだよ俺は…」

ワリオ「この国の頭、お花畑な住人がどんだけ意識改革できんのか
    見てやろうって気もあんのよ」



ヨッシー「…ふぅ、不っ器用ですねぇ」



ワリオ「あぁ!?」

ヨッシー「ワリオさん、そういうの巷で"つんでれ"って言うんですよ」


ワリオ「ケッ!てめーは食えねぇ野郎だぜ!」


ヨッシー「はっはっは!確かに僕は食べれませんよ!
     むしろ、僕は食べる側ですからねぇ!!」


ワリオ「うるせえ!上手い事言ったつもりか!」



「すいませーん、ドルピック島風トロピカルジュースくださーい!」


ワリオ「あっ、はい!ただいま」ニコニコ


ヨッシー「商売人の鑑だなぁ…」ジュース ジャー



―――
――



【クッパ城…の玉座】


     シーン…


クッパ「…」



クッパ「この城、誰もいないと静かなモノだな…」


 部下は全員、今日のお祭り事へ行かせるため
 門番から…自分のちょっとしたお世話係、小間使い、経理担当から
 次期クッパ軍の長になるであろうクッパJrもカメックババに頼み
 祭りへ行かせた…

 今、誰一人いない城内でクッパは座りなれた椅子に座り

 テレビ中継を通しレース大会の中継を見ていた…


クッパ「…フン、偶には独りも良きもの、か」

 誇り高き城主はただ独り…好敵手<トモ>の姿を見るだけであった…
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:31:08.06 ID:NHasEHyQ0

ジュゲム「――以上を持ちまして開会式を終了とします」


ジュゲム「それでは選手の皆様行きますよ!!!!!」





               3






「ねぇ、クランキーはやっぱり、マリオが勝つと思う?」

クランキー「そうじゃのう、断言はできんが有力候補じゃろうて」

「TVで見るのも良いけど、オイラは会場に直接行って見たかったなぁ
 …ディクシーを誘ってデートみたいな感じでさ」ボソ








               2






ヨッシー「お、走り出しますねぇ!」

ワリオ「…」


ヨッシー「ワリオさ「ラジオの音量デカくしたけりゃ勝手にしな!」


ヨッシー「なんだかんだで、ワリオさんも興味あるんじゃないですかー」

ワリオ「ケッ!」







              1








クッパ「…」




クッパ「どんな事であろうとお前を倒すのは我輩だ
             ……敗北は許さんぞ、マリオ!」




             GO!!
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:32:24.74 ID:NHasEHyQ0

轟音…っ!


ランプから発せられる光がグリーンからレッドへと移り変わる


           刹那の瞬間ッ!


各選手は各々の愛機に火を点す!
ある者は勝利の栄冠を獲るために、ある者は己の生き様の為
そして、ある者は超えるべき目標を超すために…エンジンに火を点す!

胸の内にある情熱と変わらぬ熱を…っ!

執念の炎を…っ!


乗り手の熱意をそのまま注ぎ込むように選手達は機体のフットペダルと
強く踏み込み、ハンドルを切る

その刻から"唯の無機質な鉄塊"であるマシン達は
"無機質な鉄塊"ではなくなるのだ、情熱と言う名の火は

          愛機へと燃え移るのだから…っ!





 ワアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!


ジュゲム「スタートです!
         各選手、一斉にスタートいたしましたァ―ー!」


彼らの熱が会場に伝染する
観客は無論、司会兼進行係であるジュゲムでさえも熱に浮かされるのだ




  BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !

―表向きキノコ王国とクッパ軍の協定を記念したレースキノカメ杯…―
―今大会は国が用意したレースを3週した者が栄冠を掴むという到って―
 ―シンプルな大会、道中に選手の行く手を阻む障害があるものの―
―そのどれもが、過去に行われたレースのように機体が大破するような―
―過酷な物ではない、従って【選手の安全は絶対に保障された大会】だ―



ルイージ(なんとか、スタートダッシュは切れたけど…)


ルイージ(…"やっぱり"としか言いようがないね!)キッ!



―サイドミラーを見てルイージは思う、後続には数十台の車両の群れ…―
 ―スタートダッシュ時に一気に群れから飛び出せなかった集団だ―
―レース用の車道故にそれなりに横幅はあるものの、流石に何十台と―
―機体があれば、我先に我先にと道の奪い合い、先に行かせないように―
  ―ワザと後続車両の道を塞ぐような蛇行運転を図る者など…―

―ハッキリ言って、醜い争いの渦中であり、初めの一歩で如何にして―
 ―この集団を抜けられるか…この時点でも勝敗が大きく別れるのだ―





マリオ「…」



  ―サイドミラーではなく、前方を見据える、"やっぱり"居た…―



―ある意味で予想通り、"壁"は…"超えるべき者"は
               ルイージの前を独走するッ!―
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:33:51.33 ID:NHasEHyQ0

ジュゲム「会場の皆様、モニターをご覧ください!」


ピッ!


ジュゲム「えー、現在の上位5位ですがトップは…
     マリオ選手!マリオ選手です!続いてキャサリン選手の機体と
     ワルイージ選手の機体です、丁度並行して走行しておりますが
     僅かにキャサリン選手がリードしております!」


ジュゲム「そして4位は何と以外ッ!!キノピオ選手だァー!」




クリボー「おおぅ!やるじゃねーッスか!」

ノコノコ「ふむ、彼の機体は確か、極限まで邪魔なパーツを取っ払って
     加速性を高めた物でしたね…」

クリボー「あーでも、それって結構ヤバイんじゃね?
      重量が無い分、カーブとか減速しなきゃ事故っちまうかも
     それに、カロンみたいにスッカスッカな骨マシーンなんて
     他の選手に追突でもされたら…なぁ?」







テレサ「フッ!音速の貴公子を極める為には必要な犠牲よ!奴もそれを
    承知した上で奔るのだからな!
    我等は奴の生還を黙って見届ける、ただソレだけよッ!」

   (はわわわ、!た、確かに加速性を高める為には多少の危険は
    あるってキノピオさんも言ってましたけど…
    『僕は絶対に大丈夫だ』っていってました!
    信じましょう!…私達にできるのはそれだけです!)




クリボー「おめぇは一体、何処の味方なんだよ…」(リア充もげろ!)


ノコノコ「愛の力ですなぁ」しみじみ



ジュゲム「上位5名は依然変わらず速度を上げており、後続の集団から
     ますます距離を離して行きます!
     まるでキノコによるブーストでも掛かっているかの如し
     驚きの速度です!」





ピーチ「…」ギュッ

キノじい「…姫、不安なお気持ちは分かりますが今大会は
     マシンが大破するような障害物は無く
     万が一の為にも各地に医療スタッフが派遣されております」

キノじい「ご安心くだされ…」


ピーチ「はい…」


ピーチ(…)





ピーチ(キノじいはこう言っているのに…この胸騒ぎは一体?)ギュッ
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 01:44:15.66 ID:NHasEHyQ0

―レース開幕から5分が過ぎようとしていた、僅か5分、しかし…
  時速100キロ越えで走る彼らは相当な距離を走行している事になる―



ルイージ「ん?あれは…」



―今大会は障害物がある、選手にはただそれだけを教え、具体的な内容は
一切知らせない、無いようによってはソレを逆手に取られかねないからだ
     


 ―周囲に建築物は一切無く、平坦な道が延々と続くかと思われた―



―しかし! 変化は訪れる…!

―それは【穴】だッ!


―道のど真ん中から、端っこまで幾つもの【穴】が無数に空いている―



   ―こういう時、経験が物を言うとは良く言った物だ…―
―ルイージは【穴】を見てすぐにピンと来た、大きさ、造り…それらが―
    ―あれは【何の穴】であるかすぐに悟らせたのである…―




ルイージ「やれやれ、鬼が出るか蛇が出るか…それとも土竜かな?」


   ―土竜<モグラ>…記憶を失う前の兄と何度も冒険をした…―
―そして、幾度と無く見てきた存在の内の一匹なんだろうとルイージは―
―予見する、穴の大きさ的に車輪を取られ、身動きが取れない事態は―
  ―ない筈である、唯一の心配事はただそれぐらいであった…―







マリオ(…なんだ、この【穴】は…?)


   ―弟と違い、"冒険の記憶"が無いマリオには分からない…―

―それが、何の【穴】であるか、…此処が勝負の分かれ目になるだろう―


マリオ「…単にデコボコで走行し辛い道という訳ではなさそうだな」


―そう言いつつも、速度は決して緩めない…っ!
 警戒はすれど、後ろのライバル達を前に行かせるつもりは微塵も無い―



そして…っ!

            トップは"穴の直前"までたどり着く!




ボコンッ!!




マリオ「!!」


チョロプー「ピィーーーーーー!!」

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 03:08:52.96 ID:NHasEHyQ0
*********************************


           今回は此処まで!


  ※またしてもミス

 >>46でヨッシーがルイージをさん付けじゃなく呼び捨てにしてますが

   前回同様さんをつけ忘れただけです

   決してヨッシーがルイージを舐めてるわけじゃないです、はい

*********************************
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 09:09:37.25 ID:0JILbNWx0

R板にあるっていうことはグロまたはエロがあるっていうこと?
このマリオは擦れているからピーチ姫とアンアンを期待
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/13(土) 13:33:59.72 ID:Dj4ufkXpO
キノコでよがる幽霊のイチャラブっくすに決まってるだろ言わせんな
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 00:10:36.83 ID:Lr13U2H40

       ―跳びだしたのはチョロプーだった…っ!―


マリオ「ぐっ!」ギュルルルル!


 ―咄嗟の判断、ハンドルを全力で切り、車体は勢いよくスピンする―

―それによりチョロプーはマリオの顔に跳びつけず
 車体に取り付く事となるのだが…車体全体に掛かる強烈なGと遠心力―


  ―それによって、彼はすぐさま、跳ね飛ばされる結果となる―





ブウウウウゥゥゥンン!!

               ギュウウウウンンン!!!

マリオ「ちぃッ抜かされたかっ!」





―直線上に向かっていた車体の運動エネルギーは回転と共に乱れ…
    結果として後方のライバル達に機会を与えてしまったのだ!―




減速…っ! この僅かな出来事でトップは順位を2つ落とす…っ!

 キャサリン、ワルイージの順にマリオを追い抜きそして…っ!



キノピオ「…!マリオさん」

ルイージ「勝たせてもらうぜ…兄さんっ!」


 加速特化型の機体が英雄の隣に並ぶ!背後にはもう一人の英雄

キノピオ&ルイージ「「うおおおおおお!!」」


―二人は思う、英雄<マリオ>が、決して勝てないと思えた敵が…!
  最大の対戦相手が今!何の幸運か自分達の前に"堕ちて"きたと―



マリオ「…ふぅ」

マリオ「どうも勘違いしてたな
    最大のライバルはお前達四人じゃなかった」

             ―しかし…―








マリオ「俺にとってのライバルとは他でもない"俺"だったな…

            俺の…俺の"慢心"こそが最大の敵だ…っ!」





これは断じて幸運などでは無い…眠れる獅子が目覚める瞬間だったのだ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 00:11:58.55 ID:U7LWXsGg0
>マリオ「俺にとってのライバルとは他でもない"俺"だったな…

            俺の…俺の"慢心"こそが最大の敵だ…っ!」




急にジョジョぽい台詞言い出したぞ。この配管工野郎
57 :ゲリラ再開 [saga]:2017/05/15(月) 00:18:22.35 ID:Lr13U2H40

―穴だらけの道、当然だが先ほどのように穴にはチョロプーが潜む
  ただし、全ての穴という訳ではない、当然ながらダミーの穴もある―


マリオ「フンッ」ガッ


     ―フットペダルを踏み込み速度を上げるマリオ―
―同じくマリオに並び走行していたキノピオもフットペダルを踏み込み―
    ―両者共に機体を加速させるッ!…ルイージを除き―


マリオ「…」
キノピオ「…っ!」



―結果は…

      キノピオの圧勝であった!


 元より彼の機体は不要なパーツを全て抜き取り加速性に特化させた機
 この手のパワー比べならば彼が勝利するのは白明の理であった










…そう、これが"ただの相手"ならば、だ!―



ルイージ(キノピオ、勝ちを焦ったね…)


―遠ざかっていく二人の背を見つめるルイージはキノピオの敗北を思う―


―――
――


キノピオ「…うっ!」グンッ

マリオ「…」


  ―両者は機体の出せる可能な限りの最大加速で道を突っ切る―
―マリオとの差は一向に開いていく、キノピオが前へ、そして段々と―
―豆粒みたいな見えたトップと2位の背が大きくなってくる…しかし!―



キノピオ(…ま、まだだ!相手はマリオさんだぞ!
      此処で速度を緩めれば…きっと抜かれる!!)




 彼は知っている、"スーパーマリオ"という人物が今までどれ程の奇跡を
起こしてきたのかを…

 かつて、幾度と無く自国の姫を攫った大王と戦い生還してみせた男

 かつて、"武器世界"より訪れた侵略者達を倒した男

 宇宙人タタンガの撃破、怪力ワリオからマリオランドの奪還
 ドルピック島での事件解決、ゴロツキタウンの地下に眠る"女王"討伐
 マメーリア王国の件、過去から帰れなくなった姫の救出
 …そしてダークスターの事

 例を挙げたら限りが無い…それ程の男なのだ
 "そんな男だと分かっている"だからこそキノピオは速度を緩めない

 否ッッ!緩めなかったのだ!それが敗北に繋がると気付かずに!
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 00:21:56.94 ID:Lr13U2H40




     ガコンッ!





キノピオ「!?」


      ―…一瞬、彼は自分の状況が飲み込めなかった―

―身体に衝撃が走り、視界がぶれる、そして感じるのは奇妙な浮遊感―

―それもその筈だ…何せ




       彼の機体は横軸に一回転しながら宙を舞ったのだから…




キノピオ「ぅぁ……
        うわああああああぁぁぁぁぁっっ!!!!」



  ―彼の機体の加速性は余分な重量を取り払った事にもよる―
 ―しかし、その分、操作性の悪い物となっており、カーブの際にも―
     ―早目にハンドルを切る必要があったのだ…―

無論、彼だってこのピーキーな機体に慣れるため練習はしていた
 だが彼は"マリオ"というあまりにも大きな存在のプレッシャーに負けた
速度を緩める事なく、突き進み彼の車輪、車体は"穴の上"を通過した


キノピオもマリオもチョロプーの事を危惧し、可能な限り穴を避けていた

もう一度言うが、キノピオの機体はかなりピーキーな性能
 加速すればするほど、ハンドルを切るタイミングはズレる…
穴の真上を通過していると気付かなくなるほどに…


英雄は素人にはまず不可能な加速をしつつ、穴を見事に避け続け
同じくキノピオもそれを実行してはいた、だが…焦りのあまり彼は
操縦ミスを犯し、よりにもよってチョロプーの潜む穴の上を通った

もしも、これが並みの速度で走る機体ならば、飛び跳ねたチョロプーは
キノピオの顔にでも張り付く程度だっただろう…


だが、チョロプーが地表から飛び出すよりも速く
 通過しようとする加速性だ…堅い地層の岩盤を掘りながら飛び出す程の
彼等の力はそのままキノピオの車体を下から突き上げる形になり…!



キノピオ「―ああああああぁぁぁぁぁ!!」



   ガ シ ャ ァ ア ア ア  ア ア ン !



最低限の重さがあれば、宙を舞うことも無かったろうに…


そのまま横軸回転をしながらスッ飛ぶ時速数百キロの弾丸と化した機体は
トップと2位の付近に墜落、爆散…まるでトゲゾーの甲羅でも投げた様だ

キノピオは幸運にも席から跳ね飛ばされて茂みへ…


ルイージ「…さて、行くか」


遠くで起きた爆発、立ち上る黒煙を確認し、ようやくルイージは
フットペダルを踏み込み加速する…
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 00:25:26.15 ID:Lr13U2H40

【会場・観客席】






     ガ シ ャ ァ ア ア ア  ア ア ン !





ピーチ「じい!早く救護班を!」ガタッ

キノじい「ひ、姫!落ち着いてください」

ピーチ「あのような光景を見たのです、落ち着いてなどいられません!」

キノじい「ただいま、救護班が向かっておられますじゃ!」



ピーチ「…っ」

キノじい「…お気持ちは痛いほど分かります
     今大会は参加者の安全を考えておりました…
     ですが、あれは我々の予想を上回る異例の事態だったのです」


ピーチ「…ごめんなさい」


キノじい「…謝るのはこのじいの方です…」

ピーチ「…」

ピーチ(マリオ…どうかご無事で…)








ジュゲム「あーっと!?キノピオ選手の機体が大破、炎上したァーッ!」



テレサ「隣国の遣い!?」
   (キノピオさん!?)


クリボー「うおぉっ!?リア充爆発しろとは思ってたけど
     こんなんアリかよ!?」オロオロ

ノコノコ「二人とも落ち着きなさい、キノピオ君なら茂みに落ちただろう
     死んではいませんよ」

クリボー「いや、そうだけどよ!気の合うダチ公が
     あんな事になってんスよ!落ち着けってのは無理だってっ!」




  ノコノコ「此処で私達が慌てた所で何か事態が変わりますか?」



クリボー「ぐっ、それ言われちゃ、ぐぅの音も出ないッス…」





テレサ「約束されし時の運は…自らの手で掴み、変え行く物なり」
   (…だったら"行きましょう"、私達が事態を変える為に…)
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 00:42:07.57 ID:Lr13U2H40


クリボー「へっ?」
ノコノコ「テレサ君?」







テレサ「此処で大いなる時を無駄にして何となる?
    口論に時を欠くなら、戦友の下へ駆けつけるのが道理だろう?」

  訳(ノコノコ先輩の言う通り、此処で慌ててても何も変わりません
    なら助けに行きましょうよっ!
    クリボー先輩だってなんだかんだでキノピオさんとお友達でしょ
    お喋りしてる暇があるなら、私達がどうにかしましょうよっ!)





ノコノコ「…やれやれ、テレサ君、君は強い女性ですね」

クリボー「確かにそりゃあ、そうだけどよォ
     どうすりゃ良いんだよ…
     こっからかなり距離あんぞ?車でもあれば話は変わっけど…」




















       ヨッシー「お困りのようですねぇ?」ヌッ









クリボー「ギャアアアアアアア!?!?出たああああぁ!?」

テレサ「しょ!?食人蜥蜴ッ!?」
   (ヨ、ヨッシーさん!?いやああぁぁぁっ!卵投げないでぇ!?)




ノコノコ「あっ、どうもヨッシーさん」ペコリッ

ヨッシー「やぁ、ノコノコさん
     この間はカメカメハーブティーのギフトを送ってもらって
     ありがとうございますね」





クリボー「ゼェ…ゼェ… と、突然出てこないでくださいよォ〜
     心臓に悪いッスから…」


テレサ「わ、我等を驚愕させようとは新緑の鱗を持つ竜よ…」
   (そ、そうですよヨッシーさぁん…)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 00:47:39.87 ID:Lr13U2H40


クリボー「つーか、あんた等なんか妙に親しげじゃないッスか?」





ノコノコ「ああ、私達はよく文通してますからね」

ヨッシー「ええ、ノコノコさんからはクッキーに合う茶葉を
     頂いてますね、代わりに此方からお菓子や果物を送りますが」




クリボー「えっ?なにその、裏話的な話、初耳なんスけど?」



ノコノコ「まぁ、仕事と関係ないプライベートな話ですし」


テレサ「貴公ッ!何の目論見あって我等に接触したッ!」
   (あのう…私達に何か御用でしょうか?)オドオド



ヨッシー「移動手段が欲しいと言ってましたね?
           よければ私のカートをお貸ししますよ?」


クリボー「えっ、マジで!?」

ヨッシー「はいっ!…本当は私も参加して1位は無理としても
     ベスト4までに入れば賞金で世界食べ歩き旅行に
     行けると思ってましたが」


ヨッシー「この大会は大事な大会ですからね…地味なルイージさん含め
     その他の人に華を持たせようと辞退したんですよ」


ノコノコ「つまり、調整したカートがあるものの、それは手持ち沙汰に
     なっているということですかな?」

ヨッシー「ええ、クリボー君達に特別に貸してあげます!
      ただ、その代わり…」







    ワリオ「オイ、どうだ!売り上げは上がったか?」







ヨッシー「…ウチの商品を大量に買ってくれませんかね?」ハァ…

ノコノコ「…あー、そういう事ですか」


ヨッシー「フルーツジュースの売り上げが良すぎるもので
     こうして屋台から観客席まで立ち歩きで販売に来てるんですよ
     私のカートをお貸しするので売り上げ向上にご協力を」



クリボー「どんだけ買えばいいんスか?」



ヨッシー「えー、ざっと100名様分買っていただければ…」



クリボー「ちょっ…!」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 01:02:40.49 ID:Lr13U2H40


ヨッシー「確かにアレな交渉だとは思いますよ?
     でも、それだけ払えば私のカートは"無期限"、しかも壊しても
     修理費その他の請求は一切しません」


ヨッシー「まぁ…新車を購入するような物と思っていただければ…」




 -どうせ私のお古をチェーンナップしただけの物ですし、と-
  -スーパードラゴンのヨッシーは車体のキーを見せます-


ノコノコ「…はぁ、分かりました」


ノコノコ「ただし、今現金での持ち合わせはありません」


ノコノコ「ですのでクレジットでお願いしますよ?」


ヨッシー「…私が言うのも何ですが、良いんですね?」





ノコノコ「私も、キノピオ君…友達の安否が心配ですからね」ニコ



テレサ「同士よ!」
   (ノコノコ先輩…)

クリボー「…あんた、漢だよ」



―――
――




ヨッシー「此方になります」



  -ヨッシーに案内されついて来たテレサ、クリボー、ノコノコは-
    -友達の下へ行こうとヨッシーのカートを受け取ります…-
 -本来、レース大会に参加する予定だった為、それは会場に納車され-
      -いつでも発進可能な状態になっていました…-


-ヨッシーの卵を連想させる白と緑の水玉模様…ガッチリとした
  やや大型の機体、四輪駆動で見るからにパワー重視といったカート-


-キノピオのカートが加速性に優れた機体なら、これは急斜面の山道
  車輪を取られやすい湿地帯や浜辺の走行に特化したタイプだろう-



クリボー「おおっ!?かっけー!!」


テレサ&ノコノコ「「えっ?」」



-緑と白の水玉模様…お世辞にもお洒落なデザインとは言えない
            どちらかといえばお茶目なデザインである-


ヨッシー「さっすが、クリボー君、センスが分かりますね〜」




ノコノコ「…あー、とりあえず行きましょうか?」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 01:24:13.18 ID:Lr13U2H40


ノコノコ「では私が運転しますので」


- 一人乗りというより、二人乗りが可能な大型車にノコノコ
              後ろにクリボー、テレサがしがみ付く-



- 迷わずノコノコが運転席に乗り込んだがこれには理由がある -

  まず、このカートはヨッシー専用に調整されており、当然ながら
 シートの位置、ハンドルの高さ、フットペダルの場所もヨッシー専用…





要は、短身のクリボーではアクセル、ブレーキが踏めても
 ハンドルを操作できないわけだ…



テレサに至っては論外、ハンドルは持てても
       脚が無いからアクセルが踏めない

 (念力で動かせる【キングテレサ】という例外はあるが…)


これ等の理由で二人は運転免許が取れない
 体格的にも条件を満たすのはノコノコだけであった…




ノコノコ「行きますよ?」





 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !





 - 今ッ!三匹のクッパ城門番隊が親友の為に会場を飛び立った…!-






―――
――




救護班A「ぅぐ…」ドサッ


救護班B「こ、此方、キノコ王国医療スタッフ…き、緊急じた―」


ゴスッ!     ドサッ…



「おっと…通信はやめてくれよワシ等も事を起こす前に
  面倒な事になるのは嫌じゃからのう?」




ゲドンコ星人「ゲヒャヒャ・・・」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/15(月) 01:40:10.18 ID:Lr13U2H40
*********************************


           今回は此処まで!



            [前にも書いた事]

―そのどれもが、過去に行われたレースのように機体が大破するような―
―過酷な物ではない、従って【選手の安全は絶対に保障された大会】だ―

>安全な大会とは一体なんだったのか…



マリオ世界の物価は作品によって違うので

ノコノコがクレジット払いで購入したジュース1杯1コインとは限らない


※100人分は飲み切れないのでクッパ城宛で
 郵送してもらう事にしました


  …関係ないけどあの世界の食べ物はマジで美味しそうだから困る
 【ふっかつドリンク】とか【ヨッシーのクッキー】とか味が気になる

*********************************
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 07:19:00.64 ID:PUTArFv4o
マメーリアと物価違うとかの設定あったしね
絶対安全なんて振りだよ振り!
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 08:56:32.39 ID:aQK1yhOyO
おつ
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:27:58.92 ID:ibXpSCDs0



ワルイージ「へっ、ようやくチョロプー群を抜けたか!」




熱烈なトップ争いで1位の地位についたのは意外にもワルイージだった


彼とキャサリンはマリオを追い抜いた後、1位の座を賭けて競っていたが
突如、後方より飛んできた来た機体の爆発に巻き込まれた


ワルイージ(まさか、こんな早くに使うとは思わなかったぜ・・・)



彼専用にチェーンアップされた機体の動力部には特注製の仕掛けがある

"一時的にエンジンを暴走寸前までフル稼働させ爆発的な加速力を生む"
そのようなギミックがあるのだ!
 その速さは【ダッシュキノコ】三つ分に相当するっ!



ワルイージ「…チッ、意図的にエンジンを暴走させるから
      あまり使いたくはねぇが無かったが
      アレはしゃーねぇぜ…」


博打好きのワルイージだからこそこんな無理のある装置がつけられている
もっとも・・・今回ばかりは彼の命知らずな性格がつけた機能が
結果的に彼を救ったのだが…



現在トップ争いをするのは3機のマシン・・・



すなわち


1位のワルイージ
2位のマリオ

そして…まだ薄らとしか見えていない緑の影…



キャサリンの機体はキノピオ機の爆発に巻き込まれ炎上
咄嗟の判断で機から降りてリタイアの形となった



マリオ「…次は山道か」


マリオ(…ッ!)ズキッ

マリオ(くそっ!さっきのモグラを見てからまた頭痛がしやがる…)


何処かでアレを見た気がする、だが何処でかが思い出せない

平坦な道から進む度に傾度の増す山道の急カーブも寸分違わない
完璧なコーナーリングで曲がりきる


無駄の無い、僅かな動作で大幅に曲がるでもなく、着実に1位との距離を
埋めていく英雄

彼の機体はキノピオやワルイージ達と違い何の改造も施されていない


つまりッッ!

完全にドライバーの素の技量だけで1位争いの場に居たのだっ!

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:33:29.69 ID:ibXpSCDs0

なだらかな斜面から徐々に傾度は増加していく
 風に揺れる芝生の小波が見えなくなる頃には目に映る世界は…


マリオ「ガードレールがあるから転落の恐れは無いが…
    ここでの障害物は勘弁してほしいな」チラッ



レース用という事もあり少し広めの車道

ガードレールの先は奈落の底である



マリオ「…こんな谷底、マントやしっぽが無けりゃお陀仏…っ!」


不意に声に出した"単語"…




          【マント】?


          【しっぽ】?




自分は何を言っているのだ?


"しっぽ"とは何のことだ?何の動物の尻尾だ?

"マント"だと…?あのヒラヒラした布きれの"マント"?



なぜ、それが無ければお陀仏だというのだ?




マリオ「っ!くそ!俺は一体どうしたって言うんだっ!!」




【最近、テニスやゴルフにパーティーばかりで何かを忘れている】
その忘れている事柄はすごく大事な事だった

そして、時々頭の中に浮かんでは消えるおぼろげな映像<ヴィジョン>…

喉まで出かかって、もう少しで記憶に掛っている霧が晴れるという所で
消えていくソレ等にマリオは苛立ちを隠し切れないのだ


マリオ「…今は、目の前に集中する、ただそれだけだ」


頭痛と胃の中にあるモヤモヤとした感情と戦いながらも
目の前を走る男を見据える



まだ戦いは終わってなどいないのだからッッ!!






―――
――



ルイージ「見えてきたぞ、兄さんと!…顎長男」

超えるべき目標…と
事あるごとに喧嘩を売って来るうっとおしい男にルイ―ジが声を漏らす
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:46:59.48 ID:ibXpSCDs0

以前からワルイージはルイージ…というよりもマリオブラザーズに対して
対抗心を燃やす男であった

テニス大会G・C杯においても彼は優勝の際、トロフィー片手に
わざわざルイージに自慢しに来たのだ
当のルイージは心底どうでも良いと言った顔で軽くあしらったが…
(マリオもクッパも出場しなかったのだからある意味勝って当然である)



ただ…長い顎と悪人面であることを除けば意外とマメな一面もある男

そんな努力家でもある


ルイージ「あの男の事だ、機体に仕掛けの一つや二つはあっても良い筈」

何にしてもルイージにとってこれは好機だった
1位と2位の差は最初こそ開いていたがドライバーの腕によって
その差はほぼ無いものとされていた

マリオはすぐにワルイージの後ろにつく

だがワルイージも簡単に抜かされる程の間抜けではない



マリオ「もらった!」

ワルイージ「させっかよ!」ギャギャッ!


マリオ(チッ!進路妨害め…!)


英雄は加速させて紫の機を追い抜こうとする

だが相手はそれを見逃さない


相手はハンドルを切り、左右へ動く


マリオの進路を塞ぐようにであるッ!





ハンドルを右へ切って走れば前方の機体も追い抜かれまいと右へ移動
逆に左へ向かえば奴もまた進路を妨害する

牽制…ッ!

フェイントを掛けてもそれを見抜き巧みにマリオをトップへは行かせない


マリオ「やってくれるな!」



仮にマリオが追い抜けたとしてもワルイージには"加速装置"がある
抜かれれば、また抜き返し、道を阻む…!

イタチごっこも良いところである


そんな小競り合いが続けば、トップと2位の速度も落ち
ルイージが彼らに近づけるのもまた必然



ルイージ「利用させてもらうぜ!」


段々と姿が大きく見えてくる2機の機体にルイージは追い上げを掛ける!
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:49:40.24 ID:ibXpSCDs0

三機の距離差もほぼ無いに等しい状態となった頃、変化は訪れる

マリオ「むっ!」

ワルイージ「あぁん?」

ルイージ「トンネルだね・・・」


暗いトンネルの中へと差し掛かる…!



中はまるで夜中の森のように暗く、明かりはせいぜい頼りなく輝く
非常灯の明かりだけである

元々、誰も使わなかった廃止予定の山道を急遽、改装したような物
今、3人は自機に備え付けられたライトのみが頼るべき"目"である


マリオ(ぬぅ…これでは!)

ワルイージ(チィ・・・!おとなしく安全運転を心がけるか!)


ライトで多少前方が見えはするが、それでも不安定な道先に変わりはなく
マリオも先頭の男を追い抜こうと思えば追い抜ける

…追突が原因で機体が大破する可能性を完全に無視すればの話だが

ワルイージもワルイージで後方よりマリオが追い抜きを掛ける可能性を
考えざるを得ない

後ろからのライトで相手の位置はおぼろげにわかるが…

向こうがライトを消せばどうだ?

完全に位置は解らなくなり

左右どちらから抜けるか分からなくなる



ワルイージにせよ、マリオにせよライト一つ消すか否かで
相手から自分の位置を悟らせにくい状況は作れる






 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !


 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !


 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !


三機のエンジン音が暗闇の中で喚く

依然として動かない順位!

停滞するそれぞれの関係・・・!


ルイージ「…!出口か!」


微かに暗いトンネル内に光が入り込む

ルイージの目先の光景は…
トップを走るワルイージ、そして彼から少し右後方にマリオ…


ルイージ「…!賭けに出るか!」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:51:43.71 ID:ibXpSCDs0



一か八かの賭け・・・それは…!




ルイージ「はぁあ!」


一気にフットペダルを踏み込み追い上げの加速を行う!


マリオ「なっ!」
ワルイージ「あんだとぉ!?」


ワルイージとマリオ・・・この二人が今やっていることは
"追い抜かれぬように進路を阻む" "前方の相手を追い抜く"この二つ

先程も言ったようにマリオが右側へ寄って走ればワルイージも
追い抜きを阻止すべく右へ

逆に左に行けば奴もまた左側へと沿って走行する





ルイージ(…"察して"くれよ…兄さんっ!)





…ならば"両側から攻めれば良いのだ"


ワルイージから見て右側にマリオ!
そして左側からルイージが急加速で追い抜きを仕掛けるッッ!


右か左か進路妨害をしてやれるのは当然一人であり
必然的にマリオかルイージのどちらかはトップへと躍り出る

そしてどちらか一方が前へ出てしまえばいつまでもイタチごっこなど
している場合ではなくなる、何が何でも1位に戻るため
ワルイージはあれやこれやと苦労する事になる

残った双子の片割れを妨害してる暇など無いほどに、だ…



マリオ「…そういうことか!ルイージ!!」


これは一種の賭け、どちらか一人しか進めないなら当然マリオをトップに
戻し、ルイージは3位のままで終わるという
兄に打ち勝とうとする弟にとって皮肉な結末にもなり得る…ッ!


全ては…



ルイージ「奴<ワルイージ>次第だッ!」



ワルイージ「ぐぅっ…っそぉ…」



ワルイージ「くそぉ!くそぉぉ!クソクソぉ!ドクソ野郎がァ!」



ルイージの思惑に気が付きワルイージは吼える

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:56:29.92 ID:ibXpSCDs0

ワルイージ(畜生!どうすりゃあイイってんだ!)

記憶があろうと無かろうと決して変わらないモノは存在する…




        ―双子の英雄<マリオブラザーズ>―



彼らの警戒すべき点はそのコンビネーションにある・・・!

長年の付き合いだからこそ、お互いの思惑が理解できる


かつて大魔王クッパを…!

マメ―リアで暗躍するゲラゲモーナ一味を…!

宇宙から舞い降りてきたゲドンコを打倒した時だってそうだ!



"この二人だからできる事"



人はこれを次のように呼んだ・・・ッ!




  【ブラザーアタック】と…ッ!





ルイージ「うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

マリオ「っっつああああああああああぁぁ!!!」


左から猛接近の弟
右は隙あらばワルイージを追い抜く姿勢の兄!


そこには記憶の有無など関係ないッ!


マクラノ島での【ジェットボード】やクッパの体内を冒険した時の
【はね〜るメット】や【ぶんしんタルたいほう】さらに言えば
幾多もの敵を蹴散らした【あちこちウィンドウ】…


今、ここに歴戦の兄弟が牙を向くッ!!



ワルイージ(っざけんな、記憶喪失野郎め!
      こんな時だけ息ピッタリの連携してんじゃねぇよ!!)


 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



ワルイージ(チィ!どうするよ!?マリオかルイージか…!)

抜かれるのは最早確定的…ならばどちらがトップへ行く事を許すかだ


ルイージ「貰ったァぁぁぁぁぁ!!」

ワルイージ「やらせるわきゃねぇえだろうがぁ!!!」


ギュゥウウウウンン



ワルイージはハンドルを大きく切る
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:58:26.12 ID:ibXpSCDs0










        マリオ「…前へは俺が行かせてもらう・・・」





栄光の1位へ舞い戻ったのは兄であった


ワルイージは(苦肉の策だか)記憶喪失であるマリオを前へ行かせた
本調子でない英雄など恐るるに足らない

いざとなれば加速装置で横に並ぶことはできる…


そこで彼は警戒すべき相手をルイージ一人と定める



ワルイージ「残念だったなァ!緑の弟よォ!!」


ルイージ「ぐっ・・・」


ルイージ(僕は……
        賭けに負けたのか…!)


奴はマリオの先行を許し、ルイージの行く手を阻む…

ルイージにとって皮肉な結末で終わったのだ…





マリオ「むっ!トンネルを抜けるか!」


暗いトンネルを抜け、初めに拝むのは日の光だ…
時間にして7〜8分だったのかもしれない
それでも闇に目を慣らしていた彼らの目を眩ませるには十分すぎる

マリオ「…今なら地中から飛び出すモグラが
        サングラスを掛ける理由も頷けるな」


穴だらけの地点で飛び出してきた"チョロプー"達の出で立ちを思い出す
彼らがサングラスを掛ける真の理由が何かは知らないが
マリオはそんな皮肉めいた事を呟き、機体の速度を上げる


此処から先は下り道だ…


―――
――



マリオ等が白熱とした戦いを繰り広げる頃、所変わってチョロプー群…


「あいたた…」ヨロ…


「…僕のマシーン、壊れちゃったなぁ…」


真っ白な頭に赤い斑点模様…機体が爆散する前に投げ飛ばされた
キノピオその人だった…

キノピオ「はぁ〜これで、僕もリタイアかぁ…」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 22:26:47.75 ID:ibXpSCDs0



      「あらぁ…でも、恰好良かったわよん♪」



キノピオ「えへへ、そう言ってもらえるとすごく嬉しい…って!?」



がさっ・・・


茂みの奥から姿を現す声の主

頭に特徴的な大き目のリボン
トカゲ等の爬虫類に見られるような長い尻尾
ピンク…というよりかは小豆色に近い体色に真っ白なお腹
大き目な瞳と大きな口

そして長い睫にアイシャドーを塗った目元がチャームポイント


そう…彼女(?)は!



キノピオ「キャサリンさん!」


キャサリン「あらぁん、キャ・ッ・シ・ーって呼んで♪」


キノピオの機体の爆発に自機を巻き込まれワルイージとのトップ争いから
惜しくも身を引く事を余儀なくされた彼女(・・・彼?)であった


キャサリン「キノちゃんも中々恰好良かったわよ?
       ヨッシーちゃんには劣るけどね」


パチンっ、とウインクをしながらキノピオの健闘ぶりを讃える
キャサリンにキノピオは照れる


キノピオ「あはは…ありがとうございます!」

キャサリン「機体は壊れちゃったけど…お迎えって来るのかしら?」

キノピオ「ええ、こんな事になっちゃったし…たぶん医療スタッフの方も
     一緒に来てくれるとは思うんですけどね…」


ガス欠やタイヤのパンク等でリタイアするしかない参加者が出た時に備え
ある程度、国のスタッフが動けるようにはしている
 機体が爆発するというのは想定外だっただろうが…

まぁ、なんにしても迎えが来るまで二人は此処で
暇を持て余す事になるだろう


キノピオ「そういえばキャサリンさんは
      どうして大会に参加なさったんです?」

キャサリン「いやぁ〜ん、それを乙女に訊いちゃう?」クネクネ

彼女(オカマ…?)は体をくねらせて照れくさそうに語ってくれた
優勝は無理でも入賞入りを果たし
その賞金でヨッシーとデートに行こうとしていた、と…

キャサリン「ほらぁ、ヨッシーちゃんってモリモリ食べるじゃない?
      だからお金がたくさん欲しくて…」

キノピオ「はぁ…そうですねぇ」


つまるところ、この恐竜族は思い人(?)とのデートの資金稼ぎの為に
参加していたらしい、そして惚気(?)話を延々と暫く聴かされた後…



キャサリン「・・・あらん?何か聴こえるわね…エンジン音?」ピクッ

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 22:41:19.23 ID:ibXpSCDs0


      roooo……


   キノピオ「…!キノコ王国の救護班ですかね!」





        rooooooo………!





   キャサリン「…いえ、ちょっと待ちなさい…これ…」







   キャサリン「普通の車のエンジン音じゃないわよ…」



  恐竜族のキャサリンは自慢の耳で音を聞き分ける

   キャサリンの口調は気づけばゆったりとした物では無くなっていた




    ROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !





    遠い向こうから近づいてくる"車体"が見える…


    そして…その"車体"に掲げられている"旗"をキノピオは見るッ!





   キノピオ「あっ!? あの旗は…! あの"国旗"は…!」



   キャサリン「あれは…!車じゃないわ!あれは…!!」



GOROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !




 キャサリン「あれは…! "戦車" だわッッ!!!」




通常のカートの何倍もの出力を持つエンジンが高らかに轟音を響かせ
【戦争の為の兵器】が地を走って行くッ!


 その機体は…!







          "旧"クッパ帝国軍の国旗を掲げて…ッッ!!


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/16(火) 22:52:28.98 ID:TUv+xrOS0
キャサリンのあれは意識していたものかよwwwww
77 :>>76 YES [saga]:2017/05/17(水) 00:38:55.36 ID:ScQ5jS2d0




            キノピオ「せ!?せせせ、戦車!?」





立ち上る土煙、辺りに唸る轟音…遠目に見えていたシルエットは徐々に
近く、大きく、より鮮明に見えてくる

鋼鉄製の車輪…ゴム製の履帯

しかし、装甲の殆どは木材…ベニヤ板のようなモノ
丸太を縄で括りつけて縛ったかのようなモノを使用しており
金属の光沢が目立つのは車両の先端に設備された砲塔を初め
上層部のハッチ等の一部の部分であった





 それは、まるで…"敗戦し大破した戦車"を乏しい資材で辛うじて
走行できるように応急処置をしたかのような…
 言ってしまえば急ごしらえな見てくれであった




キャサリン「な、なによ!なんなのよアレッ!」



肉眼で捉えられるだけでも10両…小型の戦車が6
残りは砲が2門以上の大型だ



キノピオ「わ、分かりません!!あ、いや、分かりますけど…
     でも理解できません!!」

キャサリン「キノちゃん、どういう事…!」


キノピオ「え、えっと…まず、あの戦車なんですが僕はアレが
     何処の軍のモノなのか分かるんです
        でも、それはありえない事で…」


突然の兵器の登場に驚きを隠せず、同様するキノピオ
彼にキャサリンは落ち着いて説明するように諭す


キノピオ「は、はい…まず、あれは"旧"クッパ軍のモノなんです」

キャサリン「クッパ軍…? じゃあアレってクッパ大王の戦車?
      協定条約はどうなってるのよぉ?」


キノピオ「…  "旧" クッパ軍です…」





 "旧"

 わざわざ、【旧】という所を強調するキノピオは話を続ける


キノピオ「あの武装…あれは今から【10年以上前の武装】なんですよ!」

キャサリン「?…??」

キノピオ「昔…ピーチ姫がクッパに攫われて、マリオさんが
     ルイージさんと共に姫を救出しに向かった時に使われた…

      今はもう、全て廃棄された筈の兵器なんです!」


キノピオ「ありえないんですよ!
     とっくの昔に全部スクラップになった筈なのに…!!」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 01:45:03.57 ID:ScQ5jS2d0

             …そうです


         これは【過去からの忘れ物】…





「前方に人影を確認ッ!キノコ王国の住人と…?恐竜族でしょうか?
 ピンク色のスーパードラゴンと思わしき者がッ!!」


「……ワシ等の前に現れるとは運がないのう」ハァ…




       かつて、戦う事を誰よりも生きがいとし

      闘争本能を誰よりも誇りとした者達が居た…




「如何いたしますか…?」


「…」



          そう、"彼ら"は帰って来た…




「…」


「ふむ、景気付けにはよいかもしれんのう…」











            「構わん、撃て」












  【過去からの贈り物】は…災厄"達"はキノコ王国に帰って来た…!









  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 01:46:32.47 ID:ScQ5jS2d0

―――
――



 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



クリボー「な、なぁ、…もうちょい詰められないッスかねぇ?」

ノコノコ「無茶言わないでください、これでも詰めている方です」


キノコ王国の城門を抜ける事、数分…
機体から投げ出されたキノピオの元へ向かう3匹は
レースの実況モニターでも見た平坦な道を走っていた…


道中、此処からトップへ躍り出るのは無理だと悟り
リタイアする選手をちらほらと見かける…


最早、他に走る者が居ない車道はただっ広く、それでいて空いている
高速道路となんら変わらない


ノコノコ「元々、2人乗りの機体に無理矢理3人乗ってるんですよ?
     …それにレディに窮屈な思いをさせるのですか?」


テレサ「同士よ…我に気を遣う必要は無いぞ?」
   (あのぅ…私は別に大丈夫ですよ?)


クリボー「ぐっ…それを言われちゃあなぁ…男が廃るっつーか…」


ノコノコ「なら、我慢ですな」


クリボー「…ハァ、そうッスね」








 roooo……




クリボー「あん?」




 rooooooo………!




クリボー「なんか聴こえるような?」


ノコノコ「…?そうですか?私は何も…っ!?」



       キキィィー―――−ッ!!



クリボー「おわああぁぁぁぁー―――っ!?」
テレサ「!?何事!?」


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 01:56:42.41 ID:ScQ5jS2d0


 急ブレーキを掛けられた事で慣性の法則に従い乗っていた三匹は身体が
前のめりになり、シートベルトをしていたノコノコはともかく
 彼に捕まっていたクリボー、そしてテレサは
危うく車体から跳ね飛ばされそうになった



クリボー「なにすんスか!?あぶっねぇなぁ・・・」





ノコノコ「・・・」





ノコノコ「クリボー君、私は疲れているのかな?」


クリボー「ハァ?いきなり何を訳わかんない・・・―――」






青ざめた瞳、見つめる先には彼らクッパ軍にとって懐かしいモノがある





クリボー「・・・マジかよオイ」


テレサ「・・・戦車」





【7匹の子クッパ達】


その昔、クッパ帝国軍はピーチ姫を攫った後、子クッパ七人衆
すなわち【ラリー】【モートン】【ウェンディ】【イギー】【ロイ】
【レミー 】【ルドウィッグ】等が世界各国の国王から魔法の杖を奪い
王達の姿を動物に変え政府の動きを止めるなど本格的な世界侵攻を図った


もっともソレはマリオブラザーズの活躍により失敗に終わったのだが…




今、ノコノコ達の眼差しの先にはその時代の産物があるッッ!!



木製の装甲、スパナを投げる【プー】達の潜む鉄製のハッチ
コストパフォーマンスと生産性のみを重視し、旋回しない砲塔を用いた
自走砲に近い創りの戦車等は確かに過去のクッパ軍のモノであった!



クリボー「ど、どどどどいうことッスかぁ〜!?」




突如、目の前に現れた過去からの贈り物


さぞ混乱した事だろう、大戦時代の旧式戦車が平和な時代に出現する

戦車がタイムスリップでもしてきたかのようである

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 02:02:08.72 ID:ScQ5jS2d0


キリキリッ  ガシャンッ!


テレサ「! 砲が我等を狙っているぞ!」
    (せ、先輩!!砲門が私達に…っ!)


ノコノコ「ッ!」グッ



GYUROOOOOOOOoooooooo…!!!!!



予測不可能な事態に陥り、呆けていた彼は後輩の声でハッと我に返り
アクセルを強く踏み込む

刹那…! 機体のマフラーは排気ガスを噴出し
車輪は土埃を上げてその場から発つ



クリボー「のわあああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

ノコノコ「くっ!振り落とされないようにしっかり掴まってください!」

クリボー「む、無茶言うなああああぁぁぁあああぎゃあああああ!?」


テレサ「うっ…」グッ



彼らがその場から直ぐに発った後だった…







 先程までノコノコ達が居た場に砲弾が着弾し
       黒煙立ち上るクレーターを築き上げたのは…



クリボー「うううううう撃ってキタアァァァァ!?」


一発目の砲弾が放たれ、それを合図としたかのように二発目、三発目と
矢継ぎ早に戦車の群れは砲弾を打ち始める



クリボー「何!何!なんなの!なんなワケ!?何で俺等狙われてんの!」

ノコノコ「そんな事、私だって知りませんよ!!」


跳んでくる火薬の塊を避ける為にブレーキ、アクセルを交互に踏み分け
ハンドルを大航海時代の船長が面舵、取り舵と舵を取るように
命一杯に動かしていく…

故に彼らはジェットコースターの比ではない強力なGに晒される



       ズドオオオオオォォォォン!!



クリボー「ぎにゃああああああああぁぁぁぁぁ!? 今当たりかけた!
     死ぬ死ぬ!誰かヘルプウウウウウウゥゥ!?」


ノコノコ「煩いですよ!!黙ってください!」

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 02:08:45.96 ID:ScQ5jS2d0
*********************************


           今回は此処まで!



            [前にも書いた事]



 今回出た【戦車】


>木製の装甲、スパナを投げる【プー】達の潜む鉄製のハッチ
>コストパフォーマンスと生産性のみを重視し、旋回しない砲塔を用いた
>自走砲に近い創りの戦車等は確かに過去のクッパ軍のモノであった!



    SFC時代のゲーム【マリオ3】のworld8

    つまり暗黒の国に登場した戦車ですね…



 砲から火が出るタイプや砲弾、キラー、ボム兵など
 バリュエーション豊富(?)な戦車が多く出てきますね

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83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 04:07:43.83 ID:AV5ENM1A0

前のにも書いたけどSFのマリオカートとかマリオコレクションぐらいしかマリオをやったことないのでこの戦車は本当にストライク
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 17:56:42.14 ID:qRNGb5B5o
こっちに引っ越してたのね乙
85 :>>83 ありがとうございます [saga]:2017/05/17(水) 21:09:03.42 ID:ScQ5jS2d0




     ズドオオオオオォォォォン!!



                ズドオオオオオォォォォン!!




轟音唸り、黒煙が立ち上る大地

自分達目掛けて向こうに敵意があるのは明らかだった




クリボー「どうすんの!?どうするんよコレ!?
      このまんまじゃ俺達いつか吹っ飛ばされるっスよ!!」

ノコノコ「くっ…それは分かりますがっ!」グッ



フットペダルを交互に踏み分けハンドルを切る
この動作のみで飛んでくる砲弾を避け続けるノコノコは友人の言葉に
"この後をどうするか"答えを返せずにいる


向こうは戦闘を想定して創られた兵器

対して此方は非武装の競技用の車両…避ける以外に何ができようか?
こういう時に「ジリ貧」という言葉が浮ぶのだろう



ノコノコ「…相手は事もあろうに旧クッパ軍の戦車を使っています」

ノコノコ「問題は…アレを使っている連中が何者かです」



可能性として考えられるのは3点

・自分達は知らされていないが上層部の判断



 クッパが協定で「お互い仲良くしましょうね」と油断させ
その間にキノコ王国を攻め落とすという策を練っていた


個人的にこれはありえないと彼は考える

まず、ピーチ姫を攫っていない…
彼女を捕らえる前に行動を起こすのはクッパらしくない

マリオブラザーズを頼みの綱とし、国防能力があまり高くは無いとはいえ
そんな事をすれば国が警戒態勢を敷く筈だ

攫う前に姫は厳重警備体制の中へ避難させる
(屈強な兵隊揃いのクッパ軍団ならわけなく蹴散らせるが)そこまで
何も考えない程、彼等の使える主君は無能ではない


クッパは内政はともかく戦<イクサ>に関しては頭が回る御仁だ


それにクッパ軍である自分達を攻撃する意図が掴めない…


とすれば消去法で残り2点である可能性がある

すなわち…
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:16:43.49 ID:ScQ5jS2d0




   ノコノコ「…テロリスト、ですかねっ!」キッ!




キノコ王国でもクッパ軍団でも無い全くの第3勢力
それが何処で拾ったかしらないが戦車の残骸を回収して
戦闘行為を行っている…



そう考えたッ!




…いや、…本当は"そう思いたかっただけ"

2点の内、ノコノコは可能性の低い方を選びたかった



―――信じたくなかったんだ…




お互い信頼しあっていたと思っていた同じクッパ軍団の仲間が
謀反を起こし、あまつさえ苦楽を共にした仲間の自分達を
吹っ飛ばそうとしているなどと考えたくなかったのだ…



…テロリストである可能性が低い事には当然理由がある

戦車の残骸はマリオ達と闘争を繰り広げた古戦場にあった残骸
ゴミ捨て場の瓦礫を10年分掘り起こしていくなどすれば幾つかは見つかる



それだけならまだ第3勢力の存在と決め付けられるが
あれを修復したとなれば、"旧クッパ軍"時代から所属している技術士
もしくは設計図等のどちらかが必要だ


少なくとも、あの現役時代から現代までのそのままの状態で来たような
復元を見る限りには…




そして如何に簡単な創りとは言え、運用方法を熟知するとなれば
それなりに訓練期間も要する

戦車等が何年前に復元されたか、はたまた昨日今日で直されたかは
知らないが、砲弾を数発撃てるぐらいには
乗りなれた乗員が乗っているのは間違いない


クリボー「…な、なぁ…テロリストって…言うけどよ…ありゃあ…」


テレサ「…同士よ、我等は思考を止めるべきにあらず
    我等の前に立ちはだかる者は何人たりても敵である筈なのだが」
    (ノコノコ先輩…考えたくはありませんが
      あの戦車に乗っている人達は…クッパ軍の人なのでは?)


ノコノコ「…」



ノコノコ(分かっていますよ…、分かってはいるんですよ)


 可能性の低い方とは別の可能性…この協定中に
我らが仕える主君の意に背き、あまつさえ苦楽を共にした同志さえも討つ

 どのような事情か何がどうしてそうなったかさえ分からない
だが、襲ってきたのは紛れも無い"仲間"達…一番否定したい可能性だった
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:24:33.95 ID:ScQ5jS2d0


ノコノコ「…クリボー君、君とは長い付き合いだから訊いて置きたい」



ノコノコ「私達は今、旧クッパ軍の兵器を使いクッパ様の名誉を
      貶めようとしている"テロリスト"達に狙われています」


ノコノコ「私達の取れる選択は2つ」




―――"テロリスト"
       半ば家族同然のような同胞達が襲ってきたとは言わない




ノコノコ「このまま、砲弾をどうにか避け続け
             この場から撤退…もしくは」






   ドドドドドドドドド…!

             ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!











   ノコノコ「私達とクッパ様の名誉の為…っ!
                アレを大破する事ですっ!」







クリボー「た、戦うっていうのかよ…ッ!相手は戦車だぜオイ!」


ノコノコ「…君が嫌だというなら私は全力で君達を安全地帯まで逃がす」




ノコノコ「そして、再び戻ってアレを止めます」



クリボー「…ノコノコ」



後輩のテレサ、そして自分と違いサボることなく門番として勤務した
旧知の友を見る…


   ――目には決意の色が見えた

   一度、この目をすると相手がマリオだろうとルイージだろうと
   問題無く吶喊していくのは彼がよく知っていた…







クリボー「…汚ねぇッスよ」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 21:25:59.22 ID:mDCUrmtw0
かっこいいけど、見た目を想像すると……
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:26:23.08 ID:ScQ5jS2d0


クリボー「あんたぁ、マジに汚ねぇ…」



クリボー「マジで卑怯過ぎッス」



ノコノコ「…」

テレサ「……っ!」オロオロ



クリボー「仲間を逃がして、自分だけ戻って突撃とか…」

クリボー「そんなんモン
      ベタな少年漫画ならそいつぁ死亡フラグじゃねーッスか」




クリボー「俺、自分でも酷いヘタレだって自覚はあるッス」

クリボー「けどよ、そんな事言われて『はい、逃げます』って
      なんつーか、"男が廃る"っつーか…」










クリボー「俺はヘタレッスよ…でもね、ダチ公見捨てて尻尾巻く程
      糞野郎じゃねーッスよ!!!」












ノコノコ「そう言ってくれると思ってました」ニッコリ


クリボー「うわぁ…最高に汚ねぇ…」


ノコノコ「それで、テレサ君、君はどうする?
      レディーは逃げても良いと思いますよ?」



テレサ「わ、我とて誇り高き軍の一員!それに隣国の遣いを見ずに
     帰るなど片腹痛いわ!」
    (わ、私もお手伝いしますっ!キ、キノピオさんだって
      見つけていませんしっ!)




ノコノコ「ふふ、では行きましょうか…!」



 ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン !



戦車の発砲音を背景に彼等はお互いの顔を見る


ああ、自分達は良い友人に恵まれた…

久しく忘れていた感覚、共に力を合わせ共通の強敵へと立ち向かう感触
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:43:26.23 ID:ScQ5jS2d0



    【クッパ軍門番3人衆 VS "旧"クッパ軍】・・・ッ!




ノコノコ「ふんっ!」グッッ!


GYUROOOOOOOOoooooooo…!!!!!



クリボー「ぬおおおおぉぉぉぉっ!?」ガクンッ!


勢いよく踏みつけるアクセル
もう何度体験したか…急加速で身体が後ろへと仰け反りそうになるのを
堪え、3匹の門番を乗せた機体が突っ込んでいく






―ノコノコ『良いですか?作戦は大まかに言ってしまえば
       一台でも構いませんので戦車の無力化、奪取です』


―クリボー『簡単に言ってくれますねぇオイ!?』


―テレサ『…どうするのだ?』


―ノコノコ『知っての通り、あの戦車は【プー】がマリオさんを
       迎撃する為のハッチがついています』


―ノコノコ『あそこから内部へ入り込み一台奪う
       その為にはクリボー君、君が要となります』


―クリボー『のわっ!?あっぶねぇ…!また砲弾が真横に落ちたっ…って
      俺ッスかぁ〜!?』


―ノコノコ『ある条件が揃ったらあの戦車のすぐ傍まで接近します
       そしたらこの中で身軽な君が戦車へ飛び乗る事』


―ノコノコ『浮遊が可能なテレサ君が適任では?と
       考えるかもしれませんが
       君でなければ駄目な理由がある、それは――』







クリボー「マジにこんなん巧くやれるんですかねぇ…」



自他認めるヘタレ筆頭の彼…ノコノコにああは言ったモノの
やはり怖いモノは怖い…


自然と身体は震えだす…


クリボー(今、相当な速度で走ってるよな…)


クリボー(こんで飛び乗るのに失敗したら俺…)…ゴクッ!


母なる大地にその身を打ち、全身打撲程度では
済まない怪我を負うのは間違いない

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:15:57.00 ID:ScQ5jS2d0


クリボー「ええいっ!ままよ!!」


涙を堪え、唾を飲み込み覚悟を決める
  腐っても彼はクッパ軍の一員だ…っ!


―――
――


「戦車長!向こう側が此方に突っ込んできます!」

「なんだと…!? おい、指揮官殿はなんと!?」

「少々お待ちください…!……電報が届きました!
  『ワシ等は本隊と合流しキノコ城へ向かう、1両残してはいく
     おぬし等で確実に仕留めよ』との伝令であります!」


「そうか!ならば撃てぃっ!」


「「「「了解<サー! イエッサー!>」」」」


―――
――


  GOROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



ノコノコ(…! 2両残して殆どが…っ!)


丁度、自分達が目掛けている車両とそのすぐ傍の1両を残し
散開するように道をそれてこの場を離れる戦車部隊

ノコノコ等を無視し、そのまま整備の行き届いた道から王国への突撃
そしてあえて迂回させ、反対側やまた別の方面から国へ攻め込む進み方


一点から攻めるではなく、東西南北あらゆる方面から攻める事で
国民ならびピーチ姫の脱出ルート防ぎつつ四方八方から侵攻するにより
相手国家を混乱させる一種の心理戦である…



キリキリッ  ガシャンッ!


テレサ「せ、先輩!!ノコノコ先輩!砲が!!」


距離を詰め、その状態で砲門が此方を向く
これにはテレサが素を出してしまう程だ




ノコノコ「まだです!まだ!距離を詰めて…っ!」



ノコノコ(後少し…っ!)

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:21:07.47 ID:ScQ5jS2d0


小型戦車6両の内の2両が残るハイウェイ…

自軍の兵器だったからこそ欠点は分かる、あの砲門は旋回しない砲塔を
用いた 自走砲に近い創り…

故に戦車には攻撃パターンが2、3点しかない
敵に接近し、そのまま相手を轢殺…
上部ハッチから【プー】がスパナを投げる、砲塔による発砲…


欠点とはすなわち、機体の懐に潜り込む事である…!

履帯で踏み潰される事さえ注意していれば、真正面でなく真横に居れば
然程、脅威でもないし
 その位置でなら砲に狙い撃ちされる事はなく、車両のすぐ下では
【プー】達にとっても死角となり、仮に気付かれていても
スパナを当てづらいのだ


それに…





―――
――


「せ、戦車長殿!奴等、此方に接近してきます!」

「うろたえるな!非武装の機体に何ができる!」

「で、ですがこれ以上接近されては同士も援護ができなくなります!」

「ぐ、ならば早く撃て!この距離では外すまい!」

―――
――





それに…

    懐に接近すればもう1両の戦車に撃たれる事もなくなる
 同士討ちで戦車を破壊してしまう事になりえるからだ




  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン !








   ノコノコ「来たッ!今です!テレサ君!」



     テレサ「…っ!はぁあっ!!!」




 放たれた砲弾は真っ直ぐノコノコたちへと向かっていく、そう!
この至近距離では外しようが無い!直撃は確実であったァ!!!


  だが…!






   スウゥゥゥゥ…・ ・ ―― ‐
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:25:37.70 ID:ScQ5jS2d0



「せ、戦車長!あ、相手が…!」

「ば、馬鹿な…!」

「き、き、き…」パクパク…











  「 消 え た だ と お お おお オォ ォォ!?!?」











【アイテム:テレサ】

 一定時間、ライバルに姿を認識できなくさせ、なおかつ
 緑甲羅、赤甲羅、バナナの皮、その他の攻撃を受け付けない









  ドオオオオオオオォォォォォン!!

放たれた砲弾は門番3人衆に直撃する筈だった…ッ!!


しかし、直撃の寸前で3人は姿を消す…否ッッッ!




  テレサの念力により彼等に当たる筈だった砲弾は透過したのだッ!

後方で黒煙を上げ地にクレーターを創る!しかし門番3人衆は生きている

 姿は見えずともエンジン音が聞こえるのだッ!



「お、落ち着け!テレサだ!テレサの力を使っているだけに過ぎん!
  砲弾を用意しろ!奴等が現れたらぶち込め!」

「せ、戦車長!砲弾が1つ無くなってます!」

「な、なにィ!?」



【アイテム:テレサ】

 追加効果としてライバルの持っているアイテムを奪う効果がある



テレサ「…ぁ、ぅ」グッタリ
ノコノコ「…お疲れ様です、後は彼に任せましょう…」



ノコノコは友人を見据える、今、敵から奪った
     火薬の塊を持ち飛び移らんとする勇姿を…ッ!
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:27:19.87 ID:ScQ5jS2d0
*********************************


           今回は此処まで!



           [前にも書いた事]



>懐に入れば大丈夫

戦車は実際車輪に触れててもダメージを受けませんからね…

横スクロールのステージだから放置してればゲームオーバー(轢殺)
それを注意すれば真っ直ぐにしか飛ばない砲弾や【プー】は脅威じゃない

精々、たまに戦車から飛び出すボム兵くらいですね…あのステージ





  マリオカートで赤甲羅3つをテレサに奪われた時の悔しさは異常

*********************************
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/05/19(金) 08:42:38.55 ID:h6ok4AZjO
お疲れ
どういう意図があってこっちに移ったかは分からんが(グロ描写?)これからも応援してる
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:21:53.13 ID:vVU7xdY70


 徐々に3人の乗った機体は戦車へと近づく

この時、既にノコノコの策通り戦車からの砲撃は無くなっていた!



唯でさえ姿を認識できなくなった3人(仮に位置を特定できても透過…)
姿を現した頃には相手の懐に飛び込んだ状態、同士討ちを恐れ
もう1両からの援護射撃は来ないだろう






   クリボー「…つ、ついに来ちまった…」ゴクッ




生唾を飲み込む

武者震いが止らない

冷汗が滝のように流れ出す





ノコノコ「クリボー君!飛び移るんだ!」

テレサ「せ、せんぱい…」コホッ



クリボー「…っ! う、うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ダッ!



かつてクッパ軍団がある男に乗っ取られた事があった
【マメーリア王国】で暗躍し、後に姿を眩ませていた人物
自称天才科学者【ゲラコビッツ】の手によって…


その時に彼も捕らえられ【エクボンの森】の牢へ幽閉された



クリボー(や、やってやる!俺だってクッパ軍なんだ!)



半ば野ざらし、誰の目にも止らぬ森の奥深くで救いを待った時に
主君が解放してくれた事、共に戦った日々は今だって忘れない…そう!




     あの時のように!彼は奮い立ち跳んだッ!




クリボー「うああああああぁぁぁぁ!やっぱ怖えええぇぇぇぇぇ!!」



以前ならば主君が発破をかける為に背中に火炎を吹きかけた事だろう
あの時は本当によく跳んだものだ…



       ヒュウウゥゥゥ…


            ガ ン  ッッ  !!




クリボー「あでっ!?」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:26:11.55 ID:vVU7xdY70


クリボー「いっつ〜…でも、なんとか飛び乗れたッス」


 敵から奪った火薬の塊も落としてはいない
彼の姿はテレサの効力でまだ敵には見えない…きっと戦車内部では
見えない何かが降ってきたと騒いでいるだろう




―――
――


「なんだ!今の音は!」

「て、敵です!敵が飛び乗ってきました!」


「総員!武器を持――」



戦車長が乗組員に指示を出した頃にはもう遅い
上部ハッチが開かれクリボーが突入する!

ご丁重に火気厳禁の砲弾まで抱え込んで――




クリボー「動くんじゃねーッスよ!!
      動いたらコイツをブン投げる!っしたらドカンだぞ!」





「ぐっ…!」



クリボー「っ…あんた…!」



乗員を彼は当然見た、どれも全て見知った顔だった…
予測はしていたが"やはりそうだった"、と認識し
彼は内心で落胆する



そして彼等を指揮する【戦車長】の顔を見る



クリボー「どういうことだよ?なんでこんな事すんだよ!」



クリボー「【ブーメランブロス】…!」



ブーメランブロス「…」


クリボー「おい!黙んなよ!なんだってこんなワケわかんねぇ事…!」



ブーメランブロス「栄光のクッパ軍を再興するためだ!」

クリボー「ハァ!?再興!?お前何言ってんだよ!」



ブーメランブロス「我々は覇気を失くしてしまわれた
          クッパ様の目を覚ます為に"指揮官殿"に従った!」


ブーメランブロス「全ては栄光を取り戻す為だ!」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:38:33.93 ID:vVU7xdY70

 【戦車長】こと、ブーメランブロスは沈黙を破り、語り出す
徐々に語気を荒げ、雄々しく…息巻くように言葉を紡ぐのだ



ブーメランブロス「なぁ!お前だって同じクッパ軍団なら分かるだろ!」


ブーメランブロス「かつてマリオ達と戦っていた俺達は輝いていた!」


ブーメランブロス「なのにッ!…なのに、だ…ッ!」




彼は…『過ぎ去った栄光』を思い出しながら唇を噛み締める
そしてクリボーへ言うのだった


ブーメランブロス「時が経つにつれて、俺達は…戦場へ出なくなった」


ブーメランブロス「俺だけじゃないッ!俺の仲間も!みんな、みんな!
          戦いを誇りに想い、日々闘争していた俺達がだ!」


ある時は雪と氷に覆われた地で
  ある時は照り付く太陽の下、砂漠のど真ん中でだって戦った


互いに傷つけあい、痛み、苦しみもした



だが…そんなモノは後になって「良い思い出だった」と笑い飛ばせる程
その"瞬間が誇らしかった"…


 自分達は尊敬すべき漢の為に戦い、好敵手と呼べる強者と戦った

そんな"誇り"を持っていた…




ブーメランブロス「俺が最後に戦ったのが何時だか分かるか?」


ブーメランブロス「ルドウィック様達と共に各国を攻めた時を最後に
          俺は戦場から姿を消した…」



ブーメランブロス「兵舎の隅で新人達に在りし日の武勇伝を語り
          またいつかクッパ様の為に戦える、そう信じて
          長い月日を待ち続けて!」








ブーメランブロス「気付けば俺はいい歳したジジイだ…
           自慢の武器はカビ臭い武器庫で埃にまみれ…」







ブーメランブロス「俺は!俺達は"埃"にまみれたかったんじゃない!
           "誇り"の中で生きて居たかったんだ!」

ブーメランブロス「お前なら分かるだろ!?なぁ!?」




クリボー「…わかんねぇッスよ」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:42:05.75 ID:vVU7xdY70

 初めてクリボーが戦場に出た時は青臭い小僧と周りに言われた
中でも目の前のブーメランブロスは自分の何倍も生きてた年長者で
自分が馬鹿やるたびに自分を叱ってくれた


ある種の親心みたいなモノだったのかもしれない…


他の兵もいい歳したオッサンばっかで
 青二才だった彼は同僚のノコノコとくだらない話をしてよく笑っていた


クリボー「俺よォ、いつも説教ばっかのあんた等は好きじゃなかったッス
     けど…"いつかはこうなりてぇ"って思える男だと思ってた」


クリボー「矛盾してんのはわぁってる
      先輩面して、聴く側にしちゃ迷惑な…でもちゃんと後輩の事
      考えてくれるオッサンになりてぇって…」



クリボー「それが…なんでこんなテロ紛いな事すんだよ…」




クリボー「栄光? 誇り? そりゃ確かに良いもんだよ…
     けど、こんな風に今の平和をぶっ壊してまで欲しいのかよ…」





      ブーメランブロス「…俺にとっては今の世界は生き辛いんだ」





ブーメランブロス「毎日、テニスやゴルフにパーティばかり…          
         ああ、そうさ!誰もが手を繋いで平和を謳歌する!」


ブーメランブロス「そりゃ、最高に幸せだろうよ、誰一人傷つかないんだ
          でも…そんな世界がやって来て
          暗い物陰の隅に押しやられる奴等はどうだ?」



ブーメランブロス「初めは【アイツは強かった】と敵の心に
         印象を残せる程、華々しく戦った
         だが、時代が流れてしだいに誰からも忘れ去られて」




ブーメランブロス「俺は…そんなの嫌だ、誰だって良いから
          俺達が居た事を記録して欲しいんだ
          俺達の名前を覚えていて欲しいんだよ!」





なんとも言えない気持ちだった…


目の前の口うるさい年上は、クリボーの憧れだ

…確かに気持ちは分からなくなかった、時が経つにつれて彼等が
前線に立たされなくなって、落ちぶれていく姿

もし自分がそんな立場なら認められただろうか?


ブーメランブロス達の"指揮官殿"とやらが
何を考えて行動しているかは分からない…その指揮官も同じなのだろうか

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:45:26.28 ID:vVU7xdY70


クリボー「おっさん…もうやめようぜ、な?」



ブーメランブロス「…」



クリボー「こいつぁ…この戦車はまだ何処も襲ってないわけじゃん?
      いや、確かに俺らに向かって発砲はしたけどよォ」


クリボー「でもよ? まだキノコ王国には侵攻してねぇじゃんか!
      まだ引き返せるッスよ!!」




彼が目の前の元上司…そしてどれもこれも見知った顔ばかりの乗組員を
見渡しながら言う




クリボー「今なら!今ならまだ引き返せる!俺らだって
      此処であった事を黙ってっから!
       無かった事にすっから!だからさァ!」






 「クリボー君、それは流石に厳しいかと思いますよ」カンカン…





クリボー「…ノコノコ」




ノコノコ「…っと、ご無沙汰しておりますブーメランブロス教官殿」



戦車のハッチが開き、鉄梯子を降りてくる友人は次のように口を開く



ノコノコ「…仮に我々が口を閉じていても
      "指揮官殿"とやらが教官殿達が今作戦に参加していたと
      口を開けば懲罰は免れません…」


ブーメランブロス「あぁ…わかってるよ」


ノコノコ「このままでは、どうあがいても何かしらの罰は免れません」



ノコノコ「…そこで私からある提案、いえ交渉をしたいのです」

ブーメランブロス「言ってみろ」










ノコノコ「今作戦の最大責任者たる"指揮官殿"とやらが
      どのような人物なのか」


ノコノコ「私たちに"その情報を売って"いただけませんか?」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:51:54.42 ID:vVU7xdY70

クリボー「おいおい…」
ブーメランブロス「…ほう?」


  ザワザワ…
               オイオイ…



ノコノコ「先も申し上げたように…どの道、教官殿
     ひいてはこの車両の乗組員皆さんの罰は免れません…」


ノコノコ「ですが、此処で起死回生の策です」




ノコノコ「簡単に言ってしまえば…」



・ クッパ軍内部に元から怪しい動きを働く一派が居た

・ "クッパに誰よりも誠実な忠臣"であるブーメランブロス等が気付く

・ 反クッパ勢力のテロリストに"加入するフリ"をして情報を探っていた


と、言う筋書きを作ってしまえば良いとの事だった




初めからクーデターなど起こす気は更々無く、むしろ阻止すべく動いた
という事にして自分達はそれを裏付ける証人になれば良いと

 相手が何か喚きだしたり証拠を突きつけようとも
全ては欺く為の発言でした!とでも言い後は知らぬ存ぜぬを通す



ノコノコ「悪くない提案だと思いますが?
       元より、軍内部の不審な動きは噂されてましたし
      その一派を見破ったと言っても多少は信憑性もあるかと」



クッパ軍内部に不審な動きがあるという噂は以前からあった
 事実としてクッパがノコヤン等、信頼の置ける腹心達に動きを探らせ
疑わしきを見張るように指示を出していた程だ

 尤も…時代が進むに連れ、人員の増加に伴い
最古参から新人兵までの生活の保障など

気がつけばクッパ一個人だけでは
手に余る程の軍勢に"なり過ぎて"しまったが故に
全員の動きまでは把握しきれなかった

(今でこそエリート3人組と呼ばれる親衛隊も
   過去にゲラコビッツに寝返る事態があった程だ…)




ブーメランブロス「…俺に"指揮官殿"を
         今の俺たちを導いてくれた御方を売れと言うか?」



ノコノコ「…教官殿自身は良いかもしれません、ですが」




ノコノコ「この車両の乗組員はどうなさるおつもりで?」チラッ



「せ、戦車長」
「…ぅ、うぁ…」
「っ!」
「…お、俺たちの処遇…!!」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 22:10:40.59 ID:vVU7xdY70

 それは半ば脅迫に近い強請りだ
この武人然とした壮年の男は情に厚い

だからこそ効果的な言霊をノコノコは選んだ



ノコノコ「人質を取るような形で卑怯とは分っていますが
               その上で言わせていただきます」


ノコノコ「教官殿の個人的なご意見で部下を危険に晒しますか?」






ノコノコ「貴方の仰る【"栄光"のクッパ軍団】とは
              このような軍隊でしたか?」



ノコノコ「それが貴方の"誇り"だと言いますか…!」




ブーメランブロス「…ぐっ」











クリボー「おっさん…俺からも頼む」


クリボー「おっさん達はまだ誰も傷つけてねーじゃん
            だからよォ…まだやり直せるッス」





クリボー「頼むから…こんなこと、もう止めよ?頼むわ本当…」


それは心からの訴えだった


人一倍ヘタレと自負し、戦<イクサ>になることを嫌って
マリオの記憶が戻らなければ良いとさえ言うクリボーの本心







クリボー「俺よ、アンタみてーに誇りとかねぇし
       ノコノコみてーに頭も良くねぇ…
      なんかテレサみたいにスゲェ力もねぇ弱いやつだから」



クリボー「だから戦いなんかやってるより、皆でワイワイ集まって
     パーティーやってるような今が良いって思うのかもしんねぇ」


クリボー「でも、こんだけは言える
      誰も傷つかねーなら、それが一番良い事だ」





クリボー「俺のこの考え、これだけは絶っ対に間違ってないッス」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 22:17:12.63 ID:vVU7xdY70

ノコノコ「…教官殿、お願い致します」ペコッ
クリボー「おっさん!マジ頼む」



ブーメランブロス「俺の先の主張は聴いただろ、二度も言わせるのか」

ブーメランブロス「埃にまみれ、いつしか大事な誇りさえも忘れ
                     抜け殻のように生きる」


ブーメランブロス「生き地獄から救済の手を
             伸べてくださった大恩ある御方を…」



ブーメランブロス「…」




【戦車長は】周りを見た…

再びあの戦地へ…

まるで長年夢にまで見た愛人に逢いに行くが如く恋焦がれた輝かしい戦場



その地を今一度、踏みしめたい、手に汗を握らざるを得ないあの熱を
もう一度だけ掴みたい…ッ!


そんな個人的な感情で動いた自分に
黙ってついてきてくれた【愛すべき乗組員達を】彼は見た






     ブーメランブロス「…お前達の要求は呑めん」






クリボー「…っ、んでだよ!」

ノコノコ「左様ですか…」



 ブーメランブロス「お前達に指揮官殿を売ることはできんっ!
            そして!貴様等に言うことがある!」









 ブーメランブロス「…此処に居る、搭乗員は…
          こいつ等は全員【俺に脅されて仕方なくやった】」






「せ、戦車長!!」「まっ、待ってくだせぇ!!」「違う!俺達は!」






 ブーメランブロス「こいつ等は俺に脅されて強制的に働かされた!
                  罰を受けるのは俺だけだッ!!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 22:36:38.83 ID:vVU7xdY70


俺がやった…ッ!そう主張する戦車長

その一方で真逆の証言を矢継ぎ早に口にしていく乗組員達…



どちらの言い分が事実かは最早言うまい



ノコノコ「…分りました、この件はそう報告させていただきます」



ブーメランブロス「…恩に着る」



一人の兵として、一人の"漢"として導いてくれた人は売りたくなかった
そして、忠義を誓うべきクッパへの謀反でもあると心のどこかで
理解し切っている…だから罰も甘んじて受ける



だが…ッ!



部下だけは…ッ! 部下だけは巻き込まない…ッ!


彼の心はそのような結論へとたどり着いた




クリボー「…こっからどうすんだよ」


ノコノコ「まずは…キノコ王国とクッパ様…
         そしてマリオ殿に事を伝えます」


ノコノコ「このような事態ではレース大会も何も
            あったもんじゃありませんからね」



 身柄を拘束させて貰いますと…ノコノコが戦車長の身動きを
取れぬようにする、同じように他の乗組員も…


ノコノコ「さ、もう一両の車両も動きを封じましょう?
      外で見張って貰ってるテレサさんにも悪いですしお早めに」




彼等にとって優に10年以上前の懐かしの車両
当時自分達も乗り組んだ戦車の動力キーを外し、完全に無力化した車両を
二人は後にしようとする…




ブーメランブロス「おい」



そして、呼び止められる


ブーメランブロス「ちょっと見ない内に成長したなお前ら」


ノコノコ「お褒めの言葉として頂きます」

クリボー「おっさん…部下想いな所とか変わってなくてよォ
     やっぱアンタかっけぇって思ったわ」


ブーメランブロス「…ふん」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 00:34:43.37 ID:PLxa+cbT0

クッパ城の門番3人衆が戦車部隊と戦う少し前に時間は戻る…









  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン






キノピオ「う、うわあああああぁぁぁ!?」




突如として現れた10年も昔の兵器そして、放たれた弾頭
後、数刻もしない内に自分は爆炎に巻き込まれ焼けてしまうかと覚悟した




 しかし…ッ!!






キャサリン「ふんっっ!」ボンッッ






 キノピオのすぐ近くで【何か】が風を切る音がした


そしてその【何か】は…っ!
 戦車隊とキノピオ等を結ぶ中心線上で弾頭と衝突し
大気を震わせて爆散したッッ!!




キャサリン「…ったく、どこの誰だか知んないけど
           ちょぉっと物騒なんじゃあな〜い?」




キノコ王国の住人はほとんどが戦いを経験した事がない


が…


このキノピオは別である…

彼はかつてマリオ、ルイージ、そして自国の姫と共に
【夢の世界】を冒険した事があった



そして今のはその時の冒険で幾度となく目にしたもの…
キャサリンの【タマゴ】砲撃である!!



キャサリン「キノちゃん、立てる?」

キノピオ「は、はい…なんとか」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 00:38:37.94 ID:PLxa+cbT0


キャサリン「それじゃあさ、ちょっと悪いんだけどお願いがあるのよね」



キャサリンは空を…目を細め、遠い向こうの先にある場所を見据える



キャサリン「なぁ〜んか緊急事態みたいだし、ヨッシーちゃん達に
       この事を知らせてほしいのよ」


キノピオ「知らせる…どうやってですか?」





目の前の軍機は明らかに攻撃の意志を持っている
向こうは乗り物、此方は徒歩…

亀とチーターを同時によーいどん!で走らせたらどちらが早いかは明確で
まだ多少距離があろうとも逃げ切れるか否かと言えば…それは…



キャサリン「んもぅ!やぁね!忘れちゃったの?」


キャサリンがそんなキノピオの考えに気が付いたのか次のように言うのだ





キャサリン「思い出して?彼方達が私と戦った時の事を…」



キノピオ「…!!まさか!」


キャサリン「そっ!その、ま・さ・か!彼方くらいの子なら小さいから
      よーく飛んでいくわよ?」クスッ




キノピオ「で、でもそしたらキャサリンさ――」



キャサリン「良いから、行きなさい、ちょっと気になる事があるのよ」チラッ


 鮮やかな体色を持つ竜人は火を噴いた戦車を見据えて口にした
その時だけ、声のトーンが落ちていた事にキノピオは気づかなかった


キノピオ「……わかりました、でも無事で居てくださいね?」


―――
――


「?なんじゃ、あいつ等はなにをしとるんじゃ?」

「…!? ま、まずいぜ!おい指揮官さんよォ!早いとこアイツ等
  ふっ飛ばしちまわないと不味いぜ!キノコ王国まで高跳びされちまう!」

「なにぃ?それはどういう事じゃ?」

―――
――



キャサリン「風よおーし、距離よおーし、方向よおーし
       キノちゃん!準備良いわね?」

キノピオ「はいっ!」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:12:01.51 ID:PLxa+cbT0

キャサリンの頭部の上にキノピオが乗っていた…

戦車に搭乗していた"旧"クッパ軍の指揮官はそれを見て
何が狙いかと訝しむ


そして、指揮官に協力する一人の男が相手の思惑に気が付くのだ!



キャサリン「ふんッッッッッ!!!」




大きく息を吸い込んだ後に吐き出すブレスのように
筒状の大きな口から複数の卵を吐き出す!

瞬きすら惜しい一瞬の間に打ち出された卵<ダンガン>の数は優に7つ!
戦車砲と同等の威力を持つソレは放たれたァ…ッ!!



―――
――


「彼奴等がなにを企んでおるかは知らぬだが
  数の上ではワシ等が有利じゃ、撃ち落とせぃ!」

「はっ!!」

―――
――



  戦争が始まった!

まるでそうとしか言いようの無い光景
方や飛ばすものはタマゴ、もう片方は無機質な火薬の塊

 それはSF映画のように全弾空中で衝突しあい
辺り一面を爆炎と薬莢の匂いに包ませる
赤黒い煙がお互いの姿を見せなくさせ、狙いも次第に定まらなくなる




それこそがキャサリンの狙いだった!!



キャサリン「げほっ…あー、久しぶりにやったから結構キツイわねコレ」

キャサリン「タマゴ連射撃ちなんて…これ以上できないかも」

キノピオ「キャサリンさん…」

キャサリン「大丈夫よぉ、ちゃーんと最後の一発分は残してるから」



キャサリン「しっかり頼むわよ!」

キノピオ「…ご無事で!」



煙でお互いの姿が見えにくいこの状況で最後に打ち出すタマゴ
それは…!!





   キャサリン「キノコ王国上空行〜発射しまぁす!!」




キノピオをタマゴの上に乗せての砲撃!
【確実】にこの事態を報告できる人物を逃す最後の一手であった!!
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:14:54.81 ID:PLxa+cbT0


キノピオ「うぐぅっ!?」


 撃ち出された卵には小さな少年、彼は数年前の出来事を思い出す
マリオブラザーズと姫…その護衛としてピクニックへ行き
見知らぬ洞窟の奥にある扉を開けた事


そして夢の世界"サブコン"へ誘われた日の事を…



キノピオ(…ははっ、そういえばあの時もこんな感じでしたっけね!)



背後からは激しい轟音と煙が絶え間なく上がり続ける…
あれはもう戦争と呼んでも差し支えない戦闘と化していた




キノピオ(…キャサリンさん、必ず王国に事の次第をお伝えしますっ
      どうかご無事で!)


風を切る音と大気の中を突っ切りながらも彼は振り返る
己を命掛けで逃してくれた恩人が居た地を‥っ!



もう…戦車の影すら豆粒のように見えてしまう程
              遠ざかっていくというのに









 さて、読者諸氏よッッッ!!

キノピオは…キャサリンの無事を強く祈った…っ!


先も述べた通り、彼は多くのキノコ王国国民の中で最も"戦闘"を経験した
住民であり、その初陣とも言うべき舞台が夢の国サブコンであり

そして初めて苦戦した相手もまたキャサリンであった…っ!


ゆえに彼女(オカマ?)の実力の程は嫌という程に理解している


 そう…


 あっけなく…あまりにもあっさり敗北するはずが無いと信じているのだ





「…ちと早いが…造ったブツを使うとするかのう」

「…まさか、アレがオリジナルとはなぁ…確かに見れば面影あるな…」




 だが…






  そんなキノピオの予感は…  あっさりと崩れ去る…

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:16:53.30 ID:PLxa+cbT0

キャサリン「ん、んん?」



ぱたり、と鳴り止んだ砲撃…
 未だ黒煙に覆われた視界はお互いの姿を認識させず
何がどうなっているのか理解させてはくれない

これにキャサリンは首を傾げた




キャサリン(…妙ね?砲撃が止んだ?)


キャサリン「もしかして私を狙うのを諦めちゃったのぉ?」


一人に構ってられないと判断し
戦闘の中断、本来の目的通り王都へ侵攻を再開したか、はたまた
闇雲に撃った卵が幸運にも命中し沈黙させたのか?



キャサリン「けほっ…けほっ…どっちにしても私も早いとこ
       此処から逃げた方が良いかしらね…」



キノピオの前で強がりはしたものの…状況は著しく良くない
長年平和という名のぬるま湯に浸かり鈍った身体
本調子とは言い難いコンディションで卵の連射を繰り出した身だ

 芝や地表の焼け焦げた匂い…チリチリと身を焦がす熱気と舞う火の粉
人より頑丈なドラゴンの身とはいえそれは厳しいモノであった







                        キュルキュル…







キャサリン「っ!」ピクッ



キャサリン(違うッ!まだ健在だわ!)バッ



直ぐに身構え機械音のする方角目掛けて渾身の一撃を放つ…だがっ!







      ゴ オオ オ オ ォォ ッ!


                      べしゃっ!!!!



キャサリン「な、に!?」



自分が撃ち出した卵は何かに衝突し砕ける音がした

 そして煙のベールを突き破り
自分に飛んでくるのは…【巨大な卵】であった
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:27:45.07 ID:PLxa+cbT0

   キュロキュロ…キュルキュル‥‥




 【巨大な卵】が煙のカーテンを突き破りできたのぞき穴から見えた
メタリックなボディー…まだ塗装はされていない肉体は地面でパチパチと
燃え盛る炎に照らされていて、"ソレ"の回りを踊るように火の粉が舞う


無機質な鉄の塊…そして命の光を灯さない不気味な信号を発する目玉
恐らくあの砲塔が二門の大型戦車の中にでも収納されてたのだろう

自分がドンパチしてた戦車よりかは一回り小さめな
だが大の大人の3〜4人分はある背丈…



 塗装されていない敵側のその"新兵器"とやらはキュルキュルと車輪を
動かしながらそのシルエットを露わにするのだ…っ!




キャサリン「…何の冗談かしら?笑えないわね」






 そいつの…全容が明らかになり、キャサリンはキノピオに言った
 【気になる事】が確信へ変わる事を悟る…





















       メカキャサリン「…ガガッ ――ピピッ」キュルキュル










自分の撃ち出した卵を粉みじんに粉砕したのは紛れも無くヤツだッッッ!!


無機質な目は命ある此方の姿を認識するや否や紅く輝く…
あたかも『お前の身体も自身の血で紅く染めてやろう』と言うように
 機械の瞳は狂気の紅を彩らせた……ッッ!!




      【 キャサリン  VS メカキャサリン !!!】



          戦  闘  開  始  !!

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:35:50.58 ID:PLxa+cbT0


 - かつて、夢の国サブコンを支配しようとしたモノが居た -


多くの配下を従え、次々と世界を侵攻していく悪夢の軍勢…
連中は文字通り夢の世界の住人で、夢の世界でしか活動はできなかった…



 が…



例外はあった、侵攻を受ける住人が現実の世界から4人の男女に救援を
求めたように侵略者達も現実世界から『儂と共に来い』と

所謂スカウトというモノだ…

その呼びかけに応じたのがキャサリン含めヘイホー達だった…





そして…









    メカキャサリン「… ――ピピッ」キュルキュル…





   メカキャサリン「… ギイイイイイイイイィィィ」ギュンッッッッ!!!!







キャサリン「来たッ!」





自分を模した鉄屑はその世界で創られたモノ
キャサリンが"気になっていた事"というのは……




    "火薬の匂い"だった…





人間ではなくドラゴン族である彼女(彼?)は鼻が人一倍利く
だから"懐かしい火薬の匂い"をずっと感じていた


あの戦車の撃ち出す砲弾が爆散する度に立ち込める焦げ臭さから


   
   メカキャサリン「… ッッッ」ボゥッ‼


今度はタマゴじゃない、真っ黒な砲弾それも
クッパ軍の【マグナムキラー】級のモノが撃ち出される
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:39:11.10 ID:PLxa+cbT0


キャサリン「ぅ、うわああああぁぁぁぁぁ!!」


"本来なら【マグナムキラー】級の火力を
     打ち出せる程の性能は備わっていない"兵器からの高火力


想定外の攻撃だ、当然それに対抗すべく全力で迎撃を図るモノの…




  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン






キャサリン「――――――ッ」




【キラー】砲の中でも【マグナムキラー】は元々拠点攻撃用として
開発された超弩級の火力を誇る、それをいともたやすく落せるのは精々
マリオブラザースくらいが良い所で…面白いくらいに当たる卵の弾雨で
 多少、速力は落ちたもの勢いを完全に殺す事はできなかった




結果はご覧のありさま…真っ赤なリボン諸共に黒コゲになったドラゴンが
一匹宙に舞う結果となった…



キャサリン「ぅぐッ――――かはっ!」



投げ出されるように宙を舞った身体は固い地面に打ち付けられ
バスケットボールのように2、3回バウンドする…






――眩暈がする、吐き気もする、脚に立ち上がれるだけの力が入らない



キャサリン(…っ、ったく身体中の骨にヒビでも入ったんじゃないのぉ‥
        もうちょっと筋トレでもしとくんだったかしらねぇ)




「よう、カマ野郎!久しぶりだな!」


キャサリン「…」


「んだよ、俺の顔忘れたのか?それとも何か?今のでお陀仏か?」


キャサリン「っさいわねぇ、クソ鼠」




瞼を開くのも正直しんどいわぁ…、っと内心で愚痴を零しながら
薄らと…今回のクーデター騒動に加担した男を

そして、メカキャサリンの製作に関わったソイツを見て
"気になっていた火薬の匂い"は揺るぎない確信になっていた


キャサリン「いつから、クッパ軍に就職したのよ
                 ドン・チュルゲ……!」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:55:40.08 ID:PLxa+cbT0


 サブコンの侵略者達がキャサリンやヘイホー達に呼びかけ
同じくして現実の世界より導かれし男


灰色の体毛と大きな丸い耳、ミミズの様にうねる尻尾
紫色のグローブをはめた手でサングラスをクイッと上に少しあげて
ソイツはキャサリンを見下ろす…



チュルゲ「別にクッパ軍に就職した訳じゃねーよ
      ここ数年、俺は一度も可愛い息子共を使ってねぇ」


チュルゲ「それがもう…退屈で退屈でよぉ
               死にそうなくらいだったんだぜ」チュッ



 手に持った可愛い可愛い"息子"に父親は真心を込めて唇を落す

爆弾魔として名高い彼奴の"息子"は日光に照らされて鈍い輝きを放つ

丸くて黒い鉄の塊に一本の長い導火線…実にシンプルなデザインだ




キャサリン「知ったこっちゃないわよ…で、その可愛い可愛いガラクタを
      世間様に自慢したいからテロ紛いな事でもやってんの?」



チュルゲ「だな、丁度暇してた時に面白い話を小耳に挟んだ
       んで俺は"指揮官さん"に雇ってもらったつー訳だ」



チュルゲ「良い経験だったぜ?クッパ軍の【キラー】とか
      設計図見せてもらったり、戦車砲に火薬つめたり…」


チュルゲ「俺の理想の生活って奴さ」


チュルゲ「それはそうとあのチビをよくも高跳びさせやがったなオイ」


チュルゲ「面倒な事させやがって…平和ボケした連中が
      驚く顔見れっと思ったのによォ、あ〜ちくしょう」グイッ



キャサリン「…レディーの肩掴んでどうする気よ変態」


チュルゲ「変態はテメェだ、テメェは此処に放置してても構わねぇが
     念の為に連れてくぜ、いざとなりゃ人質にゃあ使えっからな」



キャサリン「クソ鼠」ボソ

チュルゲ「うるせぇカマ野郎」






      【 キャサリン  VS メカキャサリン 】


 全く想定外かつ、キャサリン以上の火力を持つ武装での攻撃に屈し…

  キャサリンの敗北…






キャサリン(…キノちゃん…ヨッシーちゃん達に伝えて頂戴ね…)
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 02:03:45.59 ID:PLxa+cbT0
―――
――

【キノコ王国 〜国道〜】


ブロロロロロ…

…十数年前はコンクリートで舗装された車道と言う物は存在しなかった
 だが、時代が進むにつれて近代化は進み、キノコ王国でも
ガソリンエンジンを搭載した機械が道を走るようになった

 カートレースという催し、娯楽が世に広く出回った事もあり
比較的裕福な市民層は貯蓄をはたいて車を購入するようになった

さて、此処で実際に運転を試みた多くの国民が
『でこぼこだらけの砂砂利の上は走りにくい』と王国政府に要望を出した

 国の代表として何度かカートレースに参加した経験を持つピーチ姫は
国民の声を聴いて、確かに…と納得し



  道路の舗装工事、今までなかった"国道"という政策を実地した‥



市民の不満の声の解消もさることながら、流通や国営バスなどの運営面を
考えればやって損のある政策ではないと説き、政治家達を納得させた




こうして、誕生したのがこの国道である



ヨッシー「いやぁ〜、わざわざすいませんねぇワリオさん」

ワリオ「へっ!早い完売だったからな急ぎで原料を仕入れるだけだ」




レース会場として工事された道とは違う車道
中央分離帯には紫陽花が植えられていて、梅雨の時期にバスの窓から
それを見るのを楽しむ老人には人気であるそうな…


さて、そんな国道の右車線を一大のバイクが走り抜ける


イエローの塗装に全長2.7m、チタンレスのマフラーは豪快な音をたて
搭乗者はゴーグル付きのヘルメット着用でワイドハンドルを握り
お世辞にも長いと言えない脚をペダルに乗せて走るのであった


ヨッシー「今さらですけど僕達交通違反じゃないですかねー」


ワリオ「あぁん?良いんだよッ!
     どうせニケツなんざ誰だってやってんだろうしよォ」


ワリオ「それより事故らねぇように捕まってろよ!」

ヨッシー「はいはい」



フルーツジュースを販売していた彼らは
原料となる果実の買い出しに向かっていた、本日は雲一つ無い日本晴れ
降り注ぐ日光はさながら真夏日の酷暑に匹敵する暑さで思いのほか
バカ売れしたという訳だ


ヨッシー「しっかし、やっぱりワリオさんはツンデレですねぇ
     原料の買い出しと称して交通事故にあったキノピオ君の安否を
      確認しようとするんですもん」


ワリオ「うるせー!そんなじゃねぇっつってんだろォ!!!」

ヨッシー「はいはい…――おや?」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 02:12:32.27 ID:PLxa+cbT0


ワリオ「ったく…国道の途中から車線変更すりゃ近道になる…
     たまたまだ、偶然此処を通るから
        様子見ついでにからかってやろうとだな…」





ヨッシー「何か聴こえませんか?」






ワリオ「あぁ?」







―――――――ン







ヨッシー「何か…こう、風を切るような音…いや、これは…」










―――――――――ゥゥゥゥゥゥン…






      ヨッシー「これは…"落下音"ですかね?」






―――――ヒュウウウウウウウウウウゥゥゥゥン!





ワリオ「!?!?ななななな、なんだありゃあっ!?
                なんか落ちてくるぞオイ!?」
















キノピオ(onタマゴ)「ワリオさーーーん!!ヨッシーさぁぁぁん!!」
116 :>>95 "R" に別の意味を持たせたいと思ったからです [saga]:2017/05/20(土) 02:33:14.12 ID:PLxa+cbT0
*********************************


           今回は此処まで!





           [前にも書いた事]


どうでもいい補足:【ワリオバイク】

 メイドインワリオに出て来るあのバイク、スマブラでも乗ってたりする
 任天堂ホームページで調べて見ましたが製作者曰く
 ワリオは短足で腕も長くないから身体のサイズに合わせた
 バイクを創るのが非常に難しかったとかなんとか…




*********************************
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 02:56:23.70 ID:VDrMXzsA0

前の時もだけどキノピオの卵移動、USAでキャサリンの卵に乗らないと進めないとこ思い出した
…最初キャサリン倒してしまって進めなくなったわ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 14:54:59.53 ID:3WPXyjdH0
このクリボー好きだわ、力を持たない雑魚キャラだからこそ言える台詞だよなぁ。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:12:36.58 ID:9rj2nJGi0


 僅かな…本当に僅かな"刻"が過ぎ去っていった
彼らが機体の心臓部に熱を灯し走り出しどれ程経っただろうか

 開幕当時は満タンだった化石燃料もその減り具合から
どれだけの排出量で走り続けたか、長距離運転手なら想像に難しくない





マリオ「…?きのせいか?」チラッ



岩、岩、岩…見渡す限りが全て無骨と言って世界
峠のトンネルから飛び出したトップの視界はずっと草木一本生えない
峡谷<キャニオン>を走り続けていた


人工的に拓かれた道、アスファルトの黒と中央に見える一本の白線
それ以外は焦げ茶色の無機質な岩、後は精々空の青さくらいが見えるモノ



 人工的な建物は全く無く、あえて言うなら
今彼らの走る道そのものが人工物と呼べる
それ以外は自然が創造した芸術的な岩の表面だ
 長い年月を雨風が砂塵の一粒一粒を削った至高の一品









マリオが視線を周囲にちらつかせたのは何も
        芸術を堪能したいと思ったからではない







"英雄"の…彼の潜在的に"眠りつづけている"超人的な身体能力が…っ!

彼の聴覚が遠くで"爆発音"のようなモノを感じ取ったからである!





マリオ「…いかんいかん、集中せねば!」グッ



つい先ほども慢心こそが最大の敵だと彼は思い出した
此処で如何に2位、3位と距離を離したとて顔を背けるのは
 今戦っている相手への不敬でもある、そう思いハンドルを強く握る








ワルイージ (ッん畜生がッ!!本当に何の仕掛けもねぇのかよ!!
          あのマシンはよォ!!!!!)



紫のイメージカラーは前方を走る、赤を見つめて心中で悪態つく
彼は虎の子である加速装置を使うタイミングを見計らっていたが‥


ワルイージ(…野郎、まるで隙を見せやがらねェ…!)
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:15:43.76 ID:9rj2nJGi0


先述した通り、ワルイージが特注でチェーンナップした加速装置は
【ダッシュキノコ】3つ分に相当する超加速を発揮する…ッ!


 だが…これは一時的にエンジンを暴走させる諸刃の剣

 この曲がりくねった道で後先も考えずに使おうモノなら
1位の横をぶち抜けるどころかガードレールをぶち抜けて谷底行きだ

如何に命知らずな彼とてそんなアホはやらかさない

彼の夢は対抗心を燃やすマリオブラザーズに自身の優位性を見せつける事




表彰台の天辺で自分より低い位置で悔しそうな顔する兄弟を見下しながら
金ぴかトロフィーに口づけをする事…



粉々になった機体の残骸に埋もれながら硬い地面とキスする事では無い…




ワルイージ(しかも、【ダッシュキノコ】を普通に使うよりも燃費が悪ぃ
       通常の4倍は燃料を消費しちまう…)



何度も連続して使用して、エンジンがお釈迦にならずとも
この一台だけが燃料切れでゴールテープを切れませんでした!なんて事も
有り得るのだ…




だからこそ、十二分に性能を発揮できるタイミングを計りたいのだが

目の前の"赤"は見事な走行テクニックでそれを阻止する…!



相手は此方の切り札が加速装置とは知らないだろうが
もしかしたら何処かで予測…あるいは直感的に感じ取っているのだろう

だから直線状の道に出られそうな時でさえ
ワルイージの加速が殺されるような走り方をするのだ…ッ!







日進月歩、そんなやり取りをする"赤"と"紫"を…"緑"は不快に思った



そのやり取りは正しく"真のライバル"と呼べる漢同士の戦い‥ッ



英雄…マリオとその位置で戦うべきは顎長男ではなく自分だっただろう!
そんな怒りを3位のルイージは思わされた



ルイージ「…くっ!僕じゃ足元にすら及ばないっていうのかッ!」


ご自慢の機体はマフラーからCO2と僅かな水を排出する…
まるで彼の悔恨の情を代弁し涙するようにも思えてくる



ルイージ「…情けないのはドライバーの腕そのもの、か…っ!」


オヤ・マー博士…が特別に造った機体を生かせぬまま、終わるのか?
それを想い、ネガティブな彼が口からポツリと出した言葉
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:19:35.48 ID:9rj2nJGi0






 オヤ・マー『フェッ、フェッ、フェッ!
         しかし君はいつだって謙虚じゃのう?』




  ルイージ『謙虚?僕がですか?』




 オヤ・マー『そうじゃ、君は自分を過少評価し過ぎ取る…』フム



 オヤ・マー『君はいつだって【永遠の2番手】【緑の日陰者】
        そう呼ばれても怒る事無く、それを甘んじておる』



  ルイージ『はははっ、まぁ事実ですよ…!
            実際僕ぁ兄さんと比べれば――』


























        オヤ・マー『それじゃよ…』









 オヤ・マー『何が "兄さんと比べれば" なんじゃ?ん?』




 オヤ・マー『…わしはのぅ、ご覧のとおり研究第一の学者馬鹿じゃ』


オヤ・マー『じゃから、君とあのお化け騒動で初めて出会うまで
      君ら"英雄兄弟"の活躍を知らんかったわい!』フェッフェッフェッ!


 オヤ・マー『新聞も読まずに日々研究じゃからなぁ!』



 オヤ・マー『…じゃからの、わしは
          "捕まった兄を助けに来た勇敢な君"しか知らん』
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:22:09.53 ID:9rj2nJGi0



 オヤ・マー『世間一般ではお兄さんの方が取り上げられとるよ』



 オヤ・マー『新聞の一面で写真に大きく映るのはいつも赤い帽子の彼』


 オヤ・マー『君はいつだってその隣で小さく映る、目立たんようにな』






 オヤ・マー『陰口のようで言いたくないが‥国民の評判も
         お兄さんと比べれば"頼りない"、"影が薄い"と言う』


 オヤ・マー『じゃから思うのじゃよ…皆
         本当に君を理解しとるか?とのぅ…』フェッフェッフェッ!





  ルイージ『…博士』




 オヤ・マー『マリオくんがキングテレサに捕まり
         絵の中に閉じ込められた、あの事件を知る人物は』

 オヤ・マー『わしと君、そして当のマリオくん…
          あ、後キノピオ君じゃな、あの女の子にモテとる』





 オヤ・マー『…"無敵の英雄"を救った、"それ以上の英雄"…
          新聞にもニュースでも報道されない
         わしが初めて出会った"英雄兄弟"は君じゃ』













 オヤ・マー『本当の君はお兄さんより劣った人間なんかじゃない』

 オヤ・マー『君は "強く勇敢で優しい人間" なんじゃよ』

 オヤ・マー『本当なら一対一で戦えば十分お兄さんと互角…
        いや、もしかしたらそれ以上かもしれんのじゃ』




  ルイージ『買いかぶりすぎですよ…』



 オヤ・マー『…君が、そういうのなら多くは言わん
         じゃが君は心の中で思うとるじゃろう?
        いつかは兄さんを越えたい、強くなりたい、と…』







 オヤ・マー『自信を持て、君は勝てる人間なんだ』
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:24:14.36 ID:9rj2nJGi0


BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



渓谷<キャニオン>に3台のエンジン音が響く…

ルイージは…今、自分が搭乗している機体を
手掛けてくれた老人の激励を思い出していた




ルイージ「…博士、僕は…」




――フェッフェッフェッ!
    君の機体にはあのバキューム同様の特別機能がある…!



―――バキューム…の事は君がよく知っとるじゃろう?
            じゃから、使い方はあえて言わん
                さぁ!今日はレース開催日じゃ!






―――存分に暴れて行け!









ルイージ「……ごめん」



ルイージ「どうも僕はネガティブで
      いつも悪い方悪い方に考えちゃうんだ」







ルイージ「こんなにも最高の機体に乗ってるのに…
      なのにドライバーの僕がこれじゃあ、悪いよな…っ!!」









 ルイージ「博士…僕は…あえて!あえて!
       あなたの特別機能は使いません!実力で倒しますッ!」







このレースでは…!この試合では決して兄に特別な何かでは勝たないッ!

本当の自分だけで勝負するんだ!!

ルイージは消えかけた闘志を再び燃やしだしたッ!


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:26:27.28 ID:9rj2nJGi0

















          ウィン…!  …ウィン!









――それは過去からの贈り物だった









マリオ(…ん?)

ワルイージ(あん?なんだぁ、突然空が暗くなりやがったぞ?)


ルイージ(?今日の天気予報じゃ雨は降らない筈…?)




走路が濡れているか乾いているか、それもドライバーとして
重要な判断基準だ

故に彼ら3人は当然テレビの前で降水確率は確認していた

全国的な晴れ模様…、多少外れることはあろうと
空気に湿った匂いも混じらず、雲の流れも悪くない

そんな天候だった





ワルイージ「!?!?!?!お、オイ!ありゃあ何の冗談だっ!?」




 日光を遮るのは白雲では無かった
人工物など一切無い、無骨な岩の芸術品しかない世界
 そこで見たメタリックな人工物が…青空を切り裂くように飛んでいたのだ











      ゲドンコ星人「「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ…ッ!」」」


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:00:22.27 ID:9rj2nJGi0


 それを見て真っ先に叫んだのはワルイージだった

"何の冗談だ?"まさしく言い得て妙である



既製の航空技術を何世紀分も飛び越した科学技術だ
プロペラ機だとかジェットエンジン、そんなレベルじゃない

レトロなSF映画でお決まりのように宇宙人が乗ってる"空飛ぶ円盤"
それに使われているような反重力装置と言っていいだろう



ルイージ「な、な…なっ!」パクパク




 思わずハンドルを握る手が震えた
唐突に飛来して来た"空飛ぶ円盤"

 これといって彼らは歴史のお勉強は大好きという訳ではない
あくまで世間一般レベルの常識さえ学べば良いだけであって
それ以上の知識を求むのは考古学者志望くらいのモノである


今、目にしてるものはそんな世間一般レベルで学べるモノだ
ハイスクールの教科書にそのシルエットはデカデカと記載されている

十数年前、過去のキノコ王国にやって来た"災厄達"であるッ!!




まるで理解が追い付かないッ!!とでも言ったようにワルイージは呆然と
そして…それ以上の衝撃を受けるルイージ!







ルイージ「ば、馬鹿な…!あり得ない!アイツ等は過去の世界で
                    僕達が倒した筈だっ!!!」








かつて…!【ゲドンコ姫】と【ゲドンコ姫の姉】が住みやすい惑星を求め
遠い宇宙の彼方からキノコ王国へとやって来たのだ

首都や近辺の村、非武装の民間施設、軍事施設問わずに侵攻を初め
一般市民を捕まえては生命力を奪い取り兵器群のエネルギーにするなど

言って見れば旧世紀の非人道的な植民地支配と似たような事を始めた訳だ


決して風化させてはならない恐怖の時代として義務教育で習う歴史の一頁
その象徴が目の前を我が物顔で飛んでいるのだ…冗談にしては度が過ぎる













        マリオ「ぅぁ…あ、頭が…ッ!?」ズキッ



126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:20:34.35 ID:9rj2nJGi0


ルイージ「ハッ!に、兄さんッ!」バッ!



まるで自分達を見下すかのように平行して
3人の頭上を飛ぶ忌々しいフォルムから視線を外す…!



あまりにも突飛した出来事…ッ!

故に反応が遅れた…ッ!





マリオ「あ」

















マリオ「うおあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ――」










ルイージ(っ!な、なんてこった!!)




今の今まで彼らはマリオには事実を隠し続けていた
直ぐに記憶を戻してやるべきだ、戻さない方が良い

これは賛否評論だ

元からルイージ等は命に関わる程の無理をしてほしくないという事も
確かにあった、それに記憶喪失には様々な種類がある

一例だが本人が自身を護る為、無意識に事故に遭った記憶に蓋をする
解離性健忘の場合など
無理に思い出させる事で脳に大きな負担が掛かる場合がある


戻してやるにしてもゆっくりと時間を掛けて戻すように便宜を図るのが
正しいのだ、あのクッパでさえ思い出して欲しいという本心を抑え
好敵手の完全復活の為、協定を結んでいたくらいだ…




だが、これで今までの苦労も水の泡…




キイイイイイイィィ―――ッ ギャギャギャッ!!


ワルイージ「オイオイ!!マリオの野郎…!
        ガードレールに擦りながら走ってやがんぞオイ!」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:21:36.52 ID:9rj2nJGi0


―――いつだったか誰かが言ってた気がする



悪い事というモノは一度起きてしまえば
     ドミノ倒しのように立て続けに起きる、と






ルイージ(…なんだよコレ)




刹那、ルイージの目には世界が白黒<モノクロ>に映った



友人のヨッシーと自宅のソファーに座って
世間話でもしながらプレイするゲームボーイの画面のように…


世界が白と黒だけで構築されたように思えた






時が長い







一分一秒が長い、永い




音が聴こえない








よく自分達兄弟をライバル視する顎長男が兄に向って何か叫んでる

でも内容が聴こえない




兄が…ハンドルから手を離して頭を抱えている
        目の前の道なんて一切見やしない、手放し運転





兄のカートが真っ白なガードレールに擦る度に火花が出ていく




音は聴こえない、でも"何か"が見ろと叫んでいる気がした


ゆっくりと上空の円盤に視線を向けようとする…

思考回路は通常の速度なのに、首…いや、身体の動きがスローだ


揺れ動く視界もスローだった
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:22:23.38 ID:9rj2nJGi0







































           ゲドンコ星人「…ゲヒャッ」ニタァ…


























 毒々しい紫色キノコに手足が生えたような
一度見たら、忘れたくても忘れられない気色悪い生物が
開かれたハッチから顔を覗かせていた


八重歯のような二本の歯と笑みを浮かべるように歪んだ赤紫色の目

奴は…枯れ木みたいな細長い腕に銃を構えていて…


その銃口は地上に向けられていた


射線の先は僕でも、顎長男でもない…ずっとずっとその先…


  今、一番狙いやすい標的と化した人だった

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:24:37.35 ID:9rj2nJGi0




       ルイージ「止めろおおおおおおおおおぉぉぉッ!!!」









――僕が声を発したと同時だったッ!



奴の手に持つ光線銃が地上目掛けて熱線を放ったのは…っ!





ジイィィィ――――ッ! ジュウウウウゥゥ…!



文字通り、光の速さで降り注いだレーザー光線はいともたやすく
                兄さんの機体の前半分を"溶断"した


熱線で溶断された機体の前半分はそのまま後方へ吹っ飛び
高温で真っ赤になった断面図を見せつけながら走行する僕らの後ろへ
ド派手な音を立てながらこの下り坂を豪快に転げ落ちていく








前輪が無くなった事で嫌な音を立てて前のめりになる機体と
むき出しになった動力部…











奴はそこに無慈悲にも2発目をぶち当てたッッ!














ワルイージ「……マリオの機体が…」

ルイージ「 」





ワルイージ「…粉々にぶっ飛んじまった」


その日、渓谷にガソリンエンジンの爆発による黒煙が立ち上った

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:29:29.19 ID:9rj2nJGi0



キキッーッ!




ルイージ「…」スタッ



ワルイージ「んなっ!?お、オイ!何、カートから降りてんだよォ!?」






ルイージ「」チラッ





【炎上したマリオの機体】ボォォォォォ…!




ブレーキを掛けて、機体を停めて彼は大地の上に降り立つ
逃げるように走行を続ける顎長男がルイージに向かって叫ぶ


が、無視する








ワルイージ「っ…!そ、そりゃあよォ!!

        【マリオが"ぶっ殺されんだ"!】

           動揺すんのはわかっけど逃げねぇと―!」









この時、彼は見た…ッ!



遠い向こうから…更に飛んでくる数機の円盤をッ!


さしずめ、"援軍"という奴なのだろう



ワルイージ「じょ、冗談じゃねぇぞ!流石の俺だって…こんなっ!
                  …死んじまったら元も子もねぇ…っ!」



 命知らずと評される彼でさえ慄く程の大群

 命とは勝算があってこそ賭ける価値がある
初めから犬死が確定している事ならばさしもの彼だって引け腰になる



ワルイージ「お、オイ!!言っとくが俺は警告したかんなっ!!!
          わりぃ事言わねぇからテメェも早く逃げやがれ!」


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:43:57.82 ID:9rj2nJGi0


 別に彼、ワルイージを非難するつもりはない
彼の行動は"人間"として正しい




『死んじまったら元も子もない』その通りである



彼は努力家にして慎重な男だ

 英雄兄弟よりも自分が優れた人間だと世間にアピールしたい
そういう願望を持ちながらも彼がマリオ達と競うのは
『テニス大会』や『サイコロを振るパーティ』…といった具合の
命知らずの癖に本気で命を賭けない闘いだ


必要最低限は賭ける、が

本当に"『常人』には渡れないヤバい橋を渡る"事だけは避けるのだ!


人間なら自分の命を誰よりも大切に想う、当たり前の感情だ

 此処で彼が逃げたとして誰も咎められないし
むしろ賢明な判断と評価できよう








もしも、此処で彼が逃げてなかったとしよう…








それならば彼は間違いなく…





          "叩きのめされた"だろう…ッッッ!














         ルイージ「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!





英雄兄弟<マリオブラザーズ>の片割れ…ッ!


その闘いはまさしく鬼神の如しッ!!

見てしまえば彼は叩きのめされた…ッ!


そう…決して努力だけでは勝てない…っ! 圧倒的才能…っ!


 英雄達を越えたいッ!そんな彼の夢、目標は粉々になっただろうッ!
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:45:23.71 ID:9rj2nJGi0



  ゲドンコ星人A「ゲーヒャヒャッwwww!」

  ゲドンコ星人B「ζ†ζΘ§ζ――!!」ゲラゲラ

  ゲドンコ星人C「ケケッ!!」ビシッ!



醜いエイリアン共が母星の語源で何かを言い合っている

 一匹は腹を抱えて大笑い、別の円盤から此方を見る奴も
同じように大口開けて嘲笑う

 そして、先程熱線を命中させた奴は恐らく上官と
思われる奴に何か言われてるのだろう…地上からでは見え辛いが
宇宙船内部に居る何者かに敬礼のポーズをしている


だがッ!そんな事はどうだって良い!!!




  ルイージ「ふぅ…いつだって勝てなかったなぁ」スタスタ

  ルイージ「永遠の2番手、日陰者…」スタスタ


  ルイージ「僕だって人間さ、そうだよ"欲望"はあった」スタスタ



  ルイージ「いつか"勝ちたい"、追い抜きたい目標だった」スクッ




  ルイージ「僕も…あの顎長男と同じで勝ちたいって夢があったさ」





  ルイージ「……僕の、いつか乗り越えてゆく真の目標でもあった」スッ




ルイージは上空に見える円盤目掛けてゆっくりと歩み出す手には今拾った
人間の拳程度の大きさの石ころを抱えて…



奴らが何を話そうがどうでも良い…っ!

連中が何を想おうとどうだって良い…っ!


何故ならばッ!



ゲドンコ星人D「ケヒャ?」ユビサシ


ゲドンコ星人「「「イーーーッ!!!」」」ゲラゲラ!



一匹の宇宙人が歩み寄るルイージに気が付き指を射す
多くの同胞がそれを見て大笑いだ

そして一匹が先ほど、マリオの機体を壊した銃口を向けてッ!





           ゲドンコ星人C「キイイィィツ!!!」ガチャ!


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2017/05/23(火) 22:46:04.66 ID:9rj2nJGi0























           ブ ン ッ ッ ッ ッ‼!!





                     ――――ゴスッ!!






















  ゲドンコ星人「「「「ケケケケケケケ!!………ケ ケッ…?」」」」







   ゲドンコ星人C「…ケ、ヒャ?」チラッ












134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:49:26.39 ID:9rj2nJGi0




ゲドンコ星人の宇宙船は地上に居るマリオ等を的確に撃つべく
可能な限りの低空飛行を試みていた






   円盤と地表との距離…高さにしておおよそ20m<メートル>ッッッ!!
           (※約マンション6〜7階建てに相当)







ゲドンコ星人が熱線を放つ事は無かった…

引鉄を引く前に自分の真横を何がすっ飛んできたからだ



渓谷のゴツゴツとした岩肌にもその音が反響するかのようだった

目にもとまらぬ速さですっ飛んできたそれは…











  ゲドンコ星人C「!!!!!キ、キイイイイイイイイ!?!?!?!?!」







彼らの宇宙船に大穴をブチ開けていたのだからなッ!!




高さ20m<メートル>も離れた地表からプロ野球選手が全力のストレートを
ブチ込んだ時と同じ態勢のルイージが宇宙船を睨みつけていた…ッッ!!




ルイージ「…うん、兄さんの【ハンマー ナゲール】だったら
               宇宙船の装甲を余裕で貫通してたなぁ」



開かれたハッチのすぐ横…にデカデカと開いた大穴からは
すぐさま火が噴き出す、その後は…簡単だ




 ゲドンコ星人「「「ΣζΠζΠ△▼Θ!!!!」」」



 制御不能となった機体はすぐさま、煙を巻き上げながらゴツゴツとした
岩肌にぶつかりながら谷底へ滑り落ちていく


煙をあげて墜落していく宇宙船
その様は…かつて【ゲドンコ姫の姉】との最終決戦で
                    見た光景を思い出させる

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:50:32.29 ID:9rj2nJGi0







――――奴らが何を話そうがどうでも良い…っ!



―――――連中が何を想おうとどうだって良い…っ!










――――――――何故ならばッ!









  ルイージ「さて…正直、自分で言うのもなんだけど
                 僕はあんま怒らないタチさ」




  ルイージ「…キミ達が一体どうして蘇っただとか
                  何を考えてるだとか」


  ルイージ「そんなモンはどうだって良いさ…重要な事は、そうだね」
















   ルイージ「キミ達は僕に"もう一度倒される"、ただそれだけだよ」










         ルイージ「掛かって来い…ッ!」








………数分後、数機の宇宙船の残骸とクレーターが渓谷にできたそうだ




136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:56:02.43 ID:9rj2nJGi0
―――――――――
――――――
――――

 ヒュウウウゥゥゥゥ…




 ― ……ッ!! うぉ…、身体…痛い、な… ―




           キョロキョロ…




 ― 俺…どう なったんだ? 死んだのか どこ見ても真っ暗だ ―



  ― 俺は たしか … … っ 頭 が 痛いっ …ぐっ ―




― た しか   空に 変なのが 飛んできて 光が 俺の機体 ―




 ― ……そう、だ  爆発して 俺の身体は 谷底に 落ちて行って―





 ― っ、身体中 あちこち 痛い  …? 『痛い』? ―


 ―痛み を感じる…? まだ 死んでない? ―




   『ヘイ!マリオ!そろそろ夢から目を覚ましたらどうだい?』


           ―…だ れだ? ―


   『やれやれ…僕達を忘れちゃったのかい?酷いなぁ…
        キミの取り柄は身体の頑丈さだけじゃないだろう?』


      ― 俺 が 知ってる 奴 な、のか?  …


 『そうさ! 僕、いや、僕だけじゃない…
           キミの中に居るたくさんの人さ!』



        ― "俺の中のたくさんの人?" ―



  『ああ!キミの思い出の中に居るよ、僕達はいつだって、ずっと』


   『……おっと、手は貸さないよ?
                 "自分の力"で思い出すんだ!』






『ずっと忘れられたまんまじゃ僕もフカフカ君も寂しいからね!』


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:22:10.01 ID:xz4SbWjD0





           声の主は誰かわからない

       懸命に記憶を辿ろうとするも顔が分からない



  頭の中に靄が掛かったようにその"誰か"を思い出す事ができない
















             だけど…





      ― 俺は…お前を知っている…気がする ―







   胸の奥で熱く、何かが込み上げ来る、何かが叫びをあげる




『焦る必要はないさ!キミは…そうだな少し頑張り過ぎただけなんだ』

『たまには落ち着いてよーく周りを見る事だって大切なんだぜ?』





  『だから焦らないで思い出すんだ…キミならできるさ』







 涙が出そうだった…年甲斐もなく

 いい歳した男が大粒の涙を流しそうになる…


 理由も何も分かりはしない…だが
    思い出してやれない事が無性に悔しく思えた




 遠い昔に忘れてきた大切な何か…


 平和を謳歌する世界の何処かで見失った"落とし物"…



138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:38:06.96 ID:xz4SbWjD0



[もう大丈夫です すみません う〜ん!泣いた後って すっきり!]



           − っ!  −



 靄が掛かった記憶の片隅に一瞬誰かの姿が見えた気がした…

 見慣れた王国で自分が一人の少年と出会っている






 [キミが助けてくれたのかい! ありがとう!助かったよ!]

 [キミの噂は天空まで届いているよ]



 深い森の奥で自分が一本の弓矢を叩き落とし誰かを救っている


   − …あ、あぁ…お、俺は…!!俺は…!! ―






 靄は次々と消え去り…彼は声の主達の顔を思い出していく…っ!










  − お、俺は…   お前たちを 知っているッ! −










 『…フフッ、やっと思い出してくれたのかい?やれやれだよ…』


 『ぼく達だけじゃないですよ…
   もっと もーっとたくさんの人が貴方の中に居るんです!』


 『キミの強さは…人と人との繋がりさ!
   キミが誰かを護ろうとする想い、そして
         皆が心からキミの事を覚えていようとする想い』



 『昔は小さな子供、今は大きくなってもう大人かもしれない』


 『けどね…"皆"は大人になった今も子供の頃に
    強く憧れたスーパーヒーローを今だって覚えてるんだぜ』


 『誰かを想うからこそ、キミ自身も誰かに強く想われている…』


 『それこそがキミ自身の"誰かの為に頑張ろう"っていう
              力強い意志の源…そうだろう?』

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:40:58.31 ID:xz4SbWjD0


『今は大人で、かつて子供だった…そんなたくさんの"誰か"達』



『キミと一緒に胸躍る大冒険を夢見た子供たちは
   …一緒に冒険した仲間は
     キミの勇姿を決して忘れてなんかいないんだよ』



 − …なのに、俺が忘れてたら、恰好つかないよな…すまん −



 『…さぁ、もう夢から醒める時間だ、行くんだっ!』


 『皆が貴方の帰りを待ってるんですよ!行きましょう!』




 − …! 待ってくれ!!!『−−−』『−−』! −





  記憶の奥に掛かっていた霧は今っ!散り散りになって消えたッ!

 それと同時に声の主は彼の見える所から消えていく…




 ようやく顔を思い出せたのに…



 『うふふ!あの二人だけじゃないわよ!英雄さん!』


           − !! −


 『くすっ!貴方…ちゃんと自分の名前を言えるかしら?』




      − ああ…言えるさ…俺は…っ! −





 マリオ「俺はマリオ…いやッ "スーパーマリオ"なんだ…!」



『…うふっ!安心したわよ?…マリオ、帰り道分かる?
 もしも分からなかったら私が杖で叩いて誘導してあげちゃうわよ♪』



マリオ「…大丈夫だ、昔みたいにバケツを頭から被ってないからな」ニィ



『そっ!安心したわ!なら早く帰りなさい、ルイージ君が一人寂しく
 ゴールで待ってるわよ?』


 真っ暗な世界…見渡す限り闇しかない空間で目の前の人物が
 指し示す方角は光り輝いていていた、そして…


『マリオ!』『マリオさん!』『頑張れ!マリオ』『マリオ、サン!』



 彼の思い出の中に居るたくさんの人が道を切り拓いていく…
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:42:46.57 ID:xz4SbWjD0


一歩、彼は歩み出す


白いグローブをはめた手で帽子の鍔を摘まむように持ち、少しだけ
深く被りなおす



 『たまには会いに来いよ!』
 『僕らのトコに時々で良いから顔を見せなよ!』



二歩目を踏み出す

焦げ茶色の年季の入ったブーツ、すり減った厚底が靴音を鳴らし
彼の身体を光の方へと進ませる



 『マリオサン!もし疲れたらまたバカンスにでも来てくだサイ!』
 『私の所にも遊びに来てよねっ!待ってるんだから!』



ゆったりと歩き出した初歩から少し早めの駆け足気味に

3歩目、4歩目…5歩、6歩、次々とペースを速めていく



 『おーい!オイラ達だっているんだぜ!』
 『ゴンザレス!また闘技場に来い!今度こそ俺が勝ってやるからな』



歩く速度から駆け足に、そして彼は走り出す


何物にも代えることのできない友人達の顔を見渡しながら…


 『アニキ!頑張れよ!』
 『マリオちん!がんばるでしゅ!』


 『マリオ!』
 『マリオさん!』
 『マリオ!!』
 『マリオくん!!』


 誰も彼もがその顔に微笑みを浮かべる


 長らく待ちわびた英雄の帰還を…っ!


 記憶の中の存在である彼等はマリオに次々と激励の言葉を掛け
 腕を伸ばし、勇気を分け与えるかの様に
 ハイタッチをしようとする者も居た


 思い出の彼等に触れる事はできない、その腕は全てすり抜けてしまう


 だが…




     マリオ「ああ、行ってくるさ…っ!」


 決して触れる事は叶わなくとも、"燃え上がるような熱き何か"が
 彼には伝わって来るような気がした




 それが…今は何よりも誇らしかった

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:49:48.37 ID:xz4SbWjD0
―――
――



【渓谷:奈落の底】



…パチッ




マリオ「……」ムクッ



彼は長い眠りから目を醒まし、ゆっくりと身体を起こす



マリオ「…いっ…あたた…落ちた時に腰を思いっ切り打ったか…?」

マリオ「…歳は取りたくないもんだなぁ…」チラッ




        ヒュウウウウゥゥ…




上を見上げる、光はほんの小さな一点のみ、それほどまでに空は遠く
如何に今居る場所が地上からほど遠い場所かを思い知らされる




マリオ「…ゲドンコ星人め…やれやれ
     なんでこの時代に連中が居るんだか…」フゥ…



自機の爆破で奈落の底へと投げ飛ばされ、高さにして
おおよそ高層ビル15階からの飛び降り自殺のようなモノだった

常人なら"腰が痛い"程度で済むレベルでは無い




マリオ「ふぅ…マントや尻尾で空飛んでた時は彼方上空から落下しても
    ビクともしなかったがな…足腰が弱るとコレだもんな」


さも何事でも無いかのように軽い屈伸運動を済ませ、数歩後ずさる




そしてそこから助走をつけて…っ!







  マリオ「…フンッ!」バッ!






  彼は…"飛んだ"


  もはや"跳んだ"ではない、"飛んだ"のだ…ッッッ!!

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:59:37.62 ID:xz4SbWjD0
―――
――


ワルイージ「ひ、ひぃぃぃ…!!!た、たすけてくれぇ!!!」


  ゲドンコ星人「「「ギィィィィ!!!」」」



ワルイージ「ち、ぢぐじょうううう!!なんで俺を追ってくんだよォ」


自慢の【ダッシュキノコ】3つ分相当の加速が可能なエンジンを
フル活用して彼は上空から今も執拗に追い続ける異星人から逃れようと
必死で車体を走らせていた


ワルイージ「クソ!クソ!クソォ!!俺が何したってんだよ!!」


ただカートレースに出てただけなのにこの理不尽なアクシデント
どうこうなる訳でも無いのに叫ばずには居られなかった



ジイィィィ――――ッ! ジュウウウウゥゥ…!


ワルイージ「う、うわぁっ!…あ、あぶねぇ…ッ!」


すぐ真横でアスファルトが煙を発し液状化する…
上空の空飛ぶ円盤から放たれる凶悪な熱線がいつ己の身を焼き滅ぼすか

彼はそれを想像するだけで今にも泣き出してしまいそうだった…


ワルイージ「あぁ!神様でも悪魔でも何でも
           良いから誰か助けてくれぇぃ!!」


マリオ「よっ!ワルイージ、随分困ってそうだな?」シュタッ


ワルイージ「はぁああん!?………っ!?で、でたァ!?」


マリオ「わっ!…っとと、前見て運転しろよ」グラッ


ワルイージ「ま、マリオのお化けがががが…!」ガクガクガク

マリオ「…あー、気持ちは分かるが俺は死んでない
       ほら見ろ、脚だってちゃんとあるだろ?」


ワルイージ「ほ、ほほほ、本当にマリオか!?生きてんのかよォ!?」

マリオ「ああ…壁キックなんて久しぶりにやったよ」


今しがたほぼ垂直な絶壁と言っても差し支えない岩肌を昇り切り
丁度目の前を走ってた彼のマシンへと飛び乗った自慢の剛脚を指さす


マリオ「なぁ、ワルイージ…お前はまだ死にたかないよな?」

ワルイージ「んなモンあたりめーだろボケッ!」



マリオ「…ならこの機体を俺に預けてみないか?
     それで俺が後ろのアレ潰して来てやるぜ」ニィ

久しく忘れていた闘志が彼の中を血液のように廻っていく…


 最近、テニスやゴルフにパーティばかりで忘れていた彼の生きがい…




         冒険の始まりだ…っ!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 02:29:25.22 ID:xz4SbWjD0
*********************************


           今回は此処まで!


           マリオついに覚醒ッ!!


           [前にも書いた事]

 ※普通の人間なら高層ビル15階程度の高さから落ちたら死にます

  が……しっぽマリオやらマントやら風船やらで普通に
  雲より上ぐらいまで飛んで落下しても死なないのがマリオですね



 しかし3D系からはちょっとライフが減るようになってしまった(死ぬとは言ってない)




 【渓谷:奈落の底】からの帰還
 ※プロのロッククライマーでも匙を投げる断崖絶壁から壁キックで登ってきました

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>>117 >>118 ありがとうございます!
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