都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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735 :次世代ーズ 37 「事前準備」 3/5 ◆John//PW6. [sage]:2023/11/15(水) 21:45:32.47 ID:/8cLRL+Ao
 



 そして話は現在に戻るのだが、上司から“メイプル”に振られたのは
 このまま遠倉千十を正式にPナンバー所属として本決定しデータベースへ登録するか判断せよ、というものだった

 頭痛の種はそれだけではない
 上司はこの話と同時に、Pナンバー内に蠢く不穏な影についても話を振ってきたのだ



 Pナンバーは歴史的経緯から「瑕疵ある穏健派」と呼ばれていた
 かつて過激派・強硬派が優位だった時代「ダークエイジ」の頃に、Pナンバー内の一部が独走した挙句
 過激派・強硬派の一部と結託して、「組織」に対する背任を働くという暴挙に及んでいたのだ

 当然、背任が発覚した当時の管理者とその関係者は厳重に処罰され
 穏健派が形勢を逆転しつつあった頃に、Pナンバー内一桁ナンバーを一新して新体制へ移行
 そのうえで信頼回復に向けて全力を傾けることになるのだが、現在に至るまで完全な回復には至っていない状況だ
 要するに「組織」上層部において、Pナンバーの地位と発言権は低くはないものの、決して高くもないのだ

 これがPナンバーが現在においても「瑕疵ある穏健派」と呼ばれている所以なのだが
 その現在においてもなお、Pナンバーの黒服のなかに未だ暗部と繋がりのある者が存在すること、そして
 近頃になってそうした黒服が不穏な動きを見せていることが、内部調査により明らかになったのだ

 穏健派が「組織」内で優位になっていくのと同時に、「組織」暗部はより地下へと潜伏していった
 この所為で暗部の凶行が過去に比して一段と陰湿化、隠匿化していると言われている
 尻尾が掴みにくくなった暗部を捕捉するため、現段階では暗部との繋がりが疑われる黒服を敢えて泳がせているようだが


(遠倉千十をPナンバー所属としたとすれば、暗部とパイプのある黒服が接触してくる恐れは十分にあるぞ)


 上司から告げられたその言葉は、もはや脅迫にしか聞こえなかった
 遠倉千十をPナンバー所属にしたとしても、そうした黒服により彼女が暗部へ引き込まれるリスクは払拭できない、というのだ


「じゃあどうしろってんだよ……」


 Pナンバー以外の部署に所属させる、という手もあったが
 そうするとどの部署が安全なのかという話になるし、穏健派内であっても暗部と繋がりのある黒服が接触してくるリスクは依然として存在する


 この時点で、メイプルの頭は既に茹で上がっていた
 回答の期限は刻一刻と迫っているものの、具体的な案がまとまらない


 しばらくの間メイプルは両手で顔を覆っていたが、焦りを振り切るように顔を上げるともう一つの書類を睨みつけた
 不貞腐れたような仏頂面にダブルピースを添えた、そんな女の顔写真の脇には「佐川久慈」と印字されている
 そう、コイツが頭痛の種その二、部下であり問題児でもある未だ新人の黒服だ





 佐川久慈、裏社会では名の知れた長野の「飯綱使い」、名家佐川家の令嬢
 ……令嬢と呼べば多少聞こえはいいが、この佐川久慈に関してはとんだ問題児だった
 いや個人的には自爆バカと呼びたい。正面から突っ込むのが大好きな戦闘スタイル、単純バカな性格、そして独断で独走する傾向
 未成年だった頃のメイプル自身に非常によく似ている、という点はもう棚に上げる

 佐川久慈が「組織」に加入したのはおよそ三年前
 件の遠倉千十が中学一年生として東区の中学に入学した――奇しくも「狐」が学校町で凶事を引き起こした、あの――年だ
 久慈自身も「飯綱使い」、つまり「管狐」と契約した能力者だったのだが、無謀にも高位霊格の「管狐」と追加契約を試みたことで黒服へと変貌したらしい
 現役の「飯綱使い」であり佐川家の当主である彼女の高祖母から「力に溺れるなどとは末代までの恥」、そして
 「己の自業自得で黒服と成り果てたのであれば、せめて『組織』で修行を積んで心身を戒めるべし」と言い渡され、佐川家から勘当されたのだ
 不幸中の幸いというべきか、本人の地力が高いためか悪運が強い故か、黒服に変貌する以外のペナルティは免れたようだ

 こうして「組織」へとやってきた久慈はPナンバー所属が決定した後、多くの新人黒服と同様に教育部門で新人研修を受講することになる
 根が単純っぽいのでまあまあ御しやすい、新人研修担当の黒服は当初そのように見ていた、のだが
 先輩黒服と組んで実施される現場研修の段階で、久慈の問題行動が次々に露呈することとなった

 元々久慈の「管狐」は占術や読心、呪詛、呪詛返しといった、どちらかというと支援向きの能力だ
 強いて戦闘に活用するとなると「管狐」を“飛ばす”遠距離戦向けの戦い方になるのだが
 あろうことか久慈は突撃することを好み、真正面からの殴り合いに持ち込もうとする傾向にあった

 それだけではない、久慈も現場で暴れに暴れたと思えば必ず重傷を負っては医療チーム行きとなった
 力こそパワーと言わんばかりの肉弾戦に終始するものの、別に久慈は体格に恵まれるわけでも殴り合いに優れるわけでもない
 「管狐」を使役する呪力を自身の体術向上に利用しているようだが、現場で害性の都市伝説や契約者と殴り合っては必ず自身も自爆負傷して帰って来たのだ
 しかもなんというべきか負傷の回復だけはやたら速く、医療チームにブチ込まれた翌日には何ともない顔で新人研修に混ざっている、というのはザラだった



 
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