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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】

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79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/29(火) 22:07:19.34 ID:HT+lE5s/0
ニート、一体何者なんだ(棒)
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 00:29:57.89 ID:m2WBEQKN0
【時刻:22時14分】





アニー「[飛天の鎧]だ!」チャリッ!



軽快な足取りで自然洞窟へ脚を踏み入れた彼女を絶好のカモと勘違いし戦いを挑んだモンスター、野盗が返り討ちにされて
そこら中に転がる中、彼女は頬を綻ばせた


そんじゃそこらの出店では早々見つからない希少価値のある宝が湯水の如く湧いていたと言うべきであろうか
上機嫌で値打ちのある手土産を収穫し、もはやオマケと目当てが逆になりつつある保護のルーンを彼女は目指す




「くそ…!此処にも無い!」




アニー「ん?」スタスタ









ブルー「…考えられるとすれば、やはりあの粗虫共の所か…っ!」


アニー(あいつ…裏通りから出て来た奴か)コソッ





男性二人の悲鳴が上がった路地裏の方から何食わぬ顔で歩いてきた珍しい法衣の人物の顔はよく覚えていた
 妙に苛立った様子で辺りを散策する様子に眉を顰め、岩陰に身を隠す

術士の周りにはなんとも惨ったらしい死体が複数転がっており、それがアニーを警戒させる一因でもあった


妙な気配を感じるから戦闘の準備を、とヌサカーンに言われ、ルーンの地脈がある空洞へ入り込む前に[術酒]の瓶を開けた
 酒瓶を取り出す為に鞄を一度開けたが、あの時に何らかの形で彼の命の次に大切な国家からの大事な支給品を落とした


宿を飛び出てすぐにそう考えて再び最奥の此処まで彼は戻って来たのだ





 裏組織グラディウス、常に命の綱渡りを繰り返す組織に属するアニーは…いや、組織に属する前から厳しい環境で
育った彼女は人一倍、自己保存と自己防衛の本能に研ぎ澄まされている



だからこそ不用意にブルーには近づかない



下手な真似をすればすぐさま自分もあそこに転がる死骸の仲間入りを果たしかねないからだ


後退ろうと一歩脚を退いた、不味かった




                  ―――コツッ



ブルー「!? 誰だ!!」

アニー(っ!…アタシとした事が、しくっちまった…)チッ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 02:52:36.95 ID:m2WBEQKN0



アニー「あたしはこの奥にあるルーンを探しに来たんだ…そしたらアンタの姿が見えてね」ザッザッザッ…

アニー「先に言っとくけどその辺の野盗共と一緒にしないどくれよ…この通りだ」



両手を上げながら、ゆっくりとアニーは術士の前に出る

 隠れてやり過ごすことは不可能、逃げれば後ろから術を撃たれる可能性も無きにしも非ず…
ならば両手を上げて敵対の意志が無い事を示した方が良いと考えたのだ



ブルー「…証拠はあるのか?」ジトッ



アニー「あたしの鞄の中に[ドゥヴァン]で貰ったルーンの小石がある、それが証拠さ」
ブルー「出してみろ、ゆっくりとだ、妙な動きは見せるな」



ゆっくりと、その言葉に従うように鞄から小石を取り出す…


アニー「ほら、これさ…アンタその恰好からして術士だろ?術士がこんなとこに居るんだなら、同じ石を持ってるはずだ」



ブルー「…!("活力"、それに"解放"まで…)確かにそのようだな…」



ブルー「女、貴様も資質集めをしているようだな?」


アニー「…ああ、それとあたしはアニーって言うんだ、女なんて名前じゃないね」ムッ!




目の前の術士のやけに尊大な態度に内心怒りを覚える
上から目線で他者を見下したような眼差し、…ハッキリ言ってアニーにとって苦手なタイプの人種だ


ブルー「ならば訊くが、この付近でこれぐらいの大きさの宝石を見なかったか?」


アニー「…いや、見てないね」




 正直に言えば仮に見ていたとしてもシラを切ってやりたいと思ったが、相手の機嫌を損ねたくない
見ていたと言えば、案内しろと言われかねないし、もし道中拾っていたとして知らないと言えば「ならば鞄を見せろ」と
そう言われる可能性もある



ブルー「鞄の中身を見せろ」



ほれ、言わんこっちゃない

アニーは内心で愚痴る





アニー「…ほら?嘘はついてないだろう」


ブルー「…疑ってすまなかったな、どうにも気が立っているようでな」


アニー「…ふぅん?」


これは意外だ、偉そうな態度が鼻につく奴だと思っていたが、謝るとは…
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 03:37:38.87 ID:m2WBEQKN0


ブルー「こちらに非があるならば謝罪の一つでもいれるのが筋だ、…顔に出てるぞ貴様」ジロッ


アニー「そ、そう…」ギクッ




ブルー「それにしても、そうなるとやはり…」ブツブツ

アニー「…あのさぁ、アンタ落し物ってことはこの奥まで行ったの?」


その宝石とやらをこの自然洞窟で落としたというからには一度ここに脚を踏み入れたという事、それが意味するところは
この術士もルーンを求め此処へ来たばかりか、事を為し終えた後のどちらかである


ブルー「ああ、そうだが」


アニー「だったらさ、あたしを保護のルーンのある所まで案内してくれない?その代わりアンタの探し物を手伝う」


アニー「あたしは保護のルーンに触れられるし、アンタは探す目が増える、悪くないと思うけど?」



ブルー「ふむ?」



 道中、野盗やモンスターの群れを剣の錆にしてきたアニーではある、だが予想を超えて広がる大自然の地下迷宮と
敵意を以て襲い来る者達の数の多さに少しだけ疲れの色が出ていた


突破できるかできないで言えば目的を果たしてライザの元へ帰る事はできる

しかし、1人だと威勢よく此処へ来たものの流石に疲弊の色が滲んでくるのだ



見る限りこの術士は相当の手練れ、ならば戦力として申し分ないし、それはこの術士ブルーにとっても同じ事が言えた





            露出度の高い女…見るからに頭の悪そうな女


アニーは世の男が見れば放っておかない容姿だ、女としての魅力があるのだが…

如何せん、目の前の男は例外中の例外、世の全ては知性で決まると判断する男で外見的な容姿には目もくれない




 この場にもし、リージョン界を魅了した元スーパーモデルの金髪美女が居たとしても『頭の悪そうな女だ…』と
鼻で笑うような男である




上記の通り、ショートパンツに上半身はブラジャーにジャケットという肌の露出の多い姿はブルーにとって最悪な第一印象
しかも、岩陰に隠れて此方を窺っていたのだから尚更である




…当然ながらブルーとしては、「こんな女と行動なんぞ共にしたくない」というのが本音なのだが




ブルー「…いいだろう」



[術酒]はヌサカーンと来た時に使った、宿から此処まで全速力で悪鬼の如く駆け抜けて立ちふさがる者を術力の限り屠った
術力が底を尽きればブルーは戦力を失い窮地に立たされることになりかねないのだ

不本意ながら、剣を手に此処まで来たであろう女を利用する他ない
83 : ◆u5jU/0ZJi2 [saga]:2017/08/30(水) 05:03:11.37 ID:m2WBEQKN0


それに、この徹底した合理主義者にはもう一つだけ目論見があった




アニーの持っている"活力"と"解放"のルーンだ





 リージョン界の何処かにある巨石探しの旅路で、ブルーは初日で残り3つの内2つの在処を知る事が出来るのだ
双子の弟が今、どれだけ資質集めの旅を進めているのかは知らないが



 自分の名を告げ、[マジックキングダム]から資質集めの修行の旅をしている事を語り、他愛の無い会話をすること早数分
彼が"活力"や"解放"に関する情報を聞き出そうとしたところで―――






ブルー「所で、訊きたいのだがその小石――」

アニー「おっ!こんなとこにクレジットが落ちてるなんて使ってくださいねっていってるようなもんじゃん!」チャリッ









ブルー「…先程は言いそびれたが貴様の集めているルーン―――」


アニー「500クレジットだわ!」ダッッ! チャリッ!










ブルー「……見たところ既に"活りょ―――」イライラ

アニー「[術酒]だわ!…飲めるのかしらねコレ」チャリッ!









ブルー「………貴様の持っている"解ほ"―――」イライライライライラ…!

アニー「[星屑のマント]じゃん!!これで軍資金もかなり財布の中に貯めとける!」チャリッ!

アニー「ふふっ、これで大儲けね」ニィ








   ブルー 「 い い 加 減 に しろ ! !!さっきから金、金、金!と守銭奴か貴様はッ!!」




キレました。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 06:11:32.18 ID:m2WBEQKN0



アニー「〜っ!んな大声出さなくったって聞こえるっての!!」キーン


 両手で耳を押さえる女をしり目に肩で息を切る術士、フラストレーションを一気に解き放つ
その怒声は薄汚れた都会の地下に存在する大迷宮に響き渡り反響させる






ブルー(…っく、これだから薄汚い街の女はッ)ギリッ





アニーに背を向け、見えない様にブルーは端麗な顔を歪める…顔は見えずとも歯軋りは聴こえているかもしれない



表の街並みで見かける売春婦を汚物でも見る様に彼は見ていた、金の為に身体を売る女
そんなにまでするのか、と





冷ややかな眼差しは背後の女を見ない、見ないが「どうせこいつも薄汚い下賤な者だろう」とアニーを見下していた



"この時までは"





アニー「っ!」チャキッ

ブルー「!」バッ!




「きぃぃぃーー!!」キコキコ…!




アニー「…チッ、アンタがバカでかい声出すから余計なモンが来たじゃない」

ブルー「ふん…!悪かったな」プイッ







一言でいうとソレ


真っ白な体毛、長くうねうねと動く尻尾、それは紛れもなく白猿そのものであった
奇妙な点を挙げるとすれば、その猿は人類に利器(?)に跨っている事だ…


頭に[ヨークランド]の民族衣装を連想させる帽子を被り、一輪車を乗りこなす猿…[モンキーライダー]だ



アニー「2匹か、お互い一匹ずつ片づけるわよ」


ブルー「ああ、そっちは任せた」



アニーが[サムライソード]を手に地を蹴り、それを皮切りにブルーも術を口ずさむ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 07:03:03.04 ID:m2WBEQKN0


「ウキャキャ!」


大道芸の荒業か、ペダルを漕ぎながら突撃してくる白猿は一輪車に跨ったまま跳ぶ、でこぼこ状の石床を器用に走りながら
ペダルに両脚を乗せたまま猿は人の背丈を優に二回りを越える大ジャンプを果たす


「キッキィィ〜っ!!」



高く飛び上がるライダーはそのまま鍾乳洞に在りがちなつらら状に垂れ下がった鍾乳石にしがみつき
公園のブランコで子供が遊ぶ様を再現するように猿は動きをつける、後退、前進、それを生かし

ニタニタと笑いながら猿はアニーを車輪で踏みつけようと勢いをつけて強襲を仕掛ける――――ッ!





             ジュバッッッ




「キッ きゃ?」ブシャアアアアアアアアアアアアァァァ




[モンキーライダー]の網膜に映った映像は…



アニーが[サムライソード]で何も無い空間を切った光景



[モンキーライダー]の鼓膜に飛び込んだ音声は…



見えない真空の刃が自分目掛けて飛ぶ音





気がつけば白猿の視界は180℃反転していた、地表に居るはずのアニーを見つめていた二つの眼は天上を見つめていた


 黄金色のショートヘアーを揺らしながら彼女が放った[<飛燕剣>]は…剣気によって生じた真空の刃は
猿の首をスッパリと切断した、天井の洞窟生成物に

べちゃり、と音を立てて何かが突き刺さるが見るまでも無い

 頭部の無い遺体がアニーの数p先に落下し、紅い水溜りを創る
そして主を亡くした一輪車はカラカラと音をたてながら何処へなりと駆けた



…派手な音がアニーの後方から鳴り響いた、きっと壁にでも衝突したのだろう




アニー「ふぅ…掃除完了っと…」クルッ



ブルー「…先を急ぐぞ」



プスプスと煙を上げる焼死体を背にブルーが声を掛ける



アニー「ちぇっ、先に仕留められる自信あったのに」

ブルー「誰も競争なんぞしてはおらんだろうが…」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 07:20:55.54 ID:m2WBEQKN0



ブルー「」スタスタ…

アニー「」テクテク…








アニー「…アンタ、は……さ…その、"家族"とか居るの?」テクテク…


ブルー「なんだ藪から棒に」スタスタ…


アニー「良いから、答えなよ、別に減るもんじゃないしいいだろ?」




ブルー「……」







ブルー「居る、」






――――――物心ついた時から…施設暮らしだった、祖国の学院で…自分は育った


―――――――祖国は自分の親代わりだ、自分を育ててくれた父親であり、母親である


――――――――― 子供は…子供は大恩ある親に尽くす義務がある…
              だから俺は…祖国の誇りの為に尽くし、国家の為に身を粉にする、それが俺の誇りでもある






             だから俺は…――――−






ブルー「たった"1人だけ"…居る」









             ― 名前しか知らない、顔も見た事無い双子の弟<ルージュ>を殺す ―





      ―――弟を殺して、自分こそが優れた人間である証明を掴む、そして祖国に求められる完璧な魔術師となる





87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 07:43:16.36 ID:m2WBEQKN0


後ろを歩く女は目の前を歩く男の顔を見ることはできない

もし見たのならどれだけ険しい顔だったかを知れただろう






アニー「たった"1人"…?」



アニー「…そう」


アニー「…」





アニー「あたしさ、どうしてもお金が欲しいのよね」テクテク…


ブルー「なんだ突然、話の前後が繋がらない――」スタスタ…














     アニー「あたしには弟と妹が居る…あたしが稼いで養わなきゃいけないのよ、あたし達、親いないから」




                      ブルー「…」ピタッ







"弟"という言葉に反応するように、男は足を止めた




アニー「二人共施設に預けててさ、こんな街だから費用も馬鹿にならない」

アニー「身体の弱い妹は[ヨークランド]の裕福な家庭に養子になったから一安心なんだけどね」

アニー「弟の方はまだ小さくて、そんでもって手が掛かる悪ガキで」



アニー「こんな街で女が小遣いを稼ぐなんて殆ど決まってる…男に身体を売るか荒っぽい事をするかの二つ」


アニー「あたしだってこれでも女だからね……腕っぷしでヤバい橋を渡る方を選んだわ」



アニー「アンタの言う通りあたしはお金にうるさいの、気分を悪くして悪かったわね」




アニー「…」

アニー「ああ!!やめやめ!こんな湿っぽい話、らしくない!」

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/08/30(水) 07:56:32.81 ID:m2WBEQKN0


数分前、アニーはこの不遜極まりない男に驚かされた


今度はブルーが目の前を通り過ぎて行った女に驚かされた



「薄汚い街の女」「どうせ肌の露出の多いその恰好…表に居た醜い売春婦共と同じだろう」と見下していたが…




その考えは改めざるを得ない、人は外見に寄らない、目に見える物、言動だけが全てではない




ブルーにとって今日一番の外界で驚かされた事、一番の衝撃との出会い、ファーストコンタクトだ










ブルー(…露出度の多い女には違いないがな)














  この世に かみ が居るとするならば、なんと数奇な巡り合わせを用意したのだろうか…




  奇しくも此処に居る者は…【弟を自らの手で殺す為に戦う男】と『弟たちが生きれるよう食わせていくために戦う女』









    これほど奇妙な組み合わせがあるだろうか…














2名は自然洞窟の奥、[クエイカーワーム]が巣食っていた空洞内へと到達する


ブルー「!! 【リージョン移動】…此処にあったのか!」ダッ!



89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/30(水) 12:25:51.92 ID:7X8P3L88O

やっぱアニー良いな
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 13:18:42.16 ID:Eggdf3fJ0




          「ギュィィイイイイイイイ イ   イ イ "ィイ "ぃ 」シュバッ


             ブルー「 ?!ぐ、がっ ぁ!?」ド ゴ ッ





地下空洞の最深部に落し物はあった

彼は敬愛する祖国からの支給品という命の次に大切なそれをここに至るまでに術を乱発し文字通り血眼になって探し求めた








だから、気が抜けた、有り体に言えば完全に"油断していた"




 妖魔医師と一度ここに来た時、ブルーは自身の唱えられる最高位の攻撃術を放った…目に見える物全てを巻き込み
広範囲に渡る灼熱の宝玉の嵐、熱を帯びた鉱物の破片は蟲の群れを物言わぬ亡骸へと確かに変えた


辛うじて生きていた粗虫もヌサカーン医師の一太刀で生命線を断ち切りそれを締めに殲滅したと思った





 先入観や思い込み、これほど恐ろしいモノは他にあるまい…入口から一直線に入って来たブルーの鳩尾目掛けて
突進してきた巨蟲のモンスターは何処に潜んでいたのか、はたまた彼等が一度地上へ帰還していた合間に余所から来たのか




アニー「!!―――っくぉぉっっらぁぁ」シュパッ!ザシュッ!


「ギッッ!」ガシュッ!ジュブッ



アニー「おい!しっかりしろ!生きてるのか…おい!返事をしろって!」



 目の前を歩いていた蒼の術士が猪を裕に上回る大型の昆虫モンスターの突撃で跳ね飛ばされると同時に
彼の後ろをついて来ていた彼女は脊髄反射で[サムライソード]を鞘から引き抜き蟲の前脚を切り飛ばした



 大胆不敵に思い切った踏込、そして股下から頭部目掛けた切りつけ、剣術における"逆風"という名称のそれを放つ


前脚を切り飛ばされ血飛沫を上げる蟲を見据え牽制しつつも彼女…アニーは後方の術士に声を掛ける


ブルー「…ぅ、粗蟲共…まだ居たのか…っ」ヨロ…


アニー「…生きてるんだね、良かった」ホッ



腹部を抑えながらも返事を帰してくれた男の顔はまだ見れない、だが生きている事が確認でき安堵した



アニー「目の前で死なれたりされちゃ、流石にあたしも夢見が悪いからね」チャキッ


91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 13:59:51.21 ID:Eggdf3fJ0



「ギィィ…」ギチギチ
「ギュゥゥィイイイ」カサカサ…





 刺々しい触覚のような手足、牙をギチギチと鳴らし威嚇をする[ワームブルード]の群れ
前方に2体、右斜め後ろに前脚を切り飛ばした1体…羽音を響かせながら降りて来るのが1体…計4匹の巨蟲がお出ましだ




ブルー「…おい、ゴホ…女」


アニー「…あたしは女なんて名前じゃないね、なんだよ」


ブルー「さ、っきので、上手く声を――うぐっ…だ、せん  ゲホッ」ビチャ…


アニー(コイツ血ぃ吐いてんのか…)




 目を離せば彼奴等はなだれ込む様に襲ってくる、後ろの魔術師は察する所、術を唱えようにもそれが儘ならないときた







ブルー「整うま、で…ッ 時間が居る、時間を稼げ」

アニー「言ってくれるじゃん、難しい注文をさぁ…!」ダッ!





 要点は確かに聴いた、女手一人で馬鹿デカイ蟲の化け物を4匹相手にしろと言っている
術の使えん魔術師など恰好の餌食でしかない、ならばこそアニーが猛進し後方のブルーに近づけさせない、それしかない




<うらぁぁぁ!! ガキィィン ザシュッ!
<キイイイィィ ィ ィ ィ ィィ ィ!!







ブルー「ゼェ…ゼェ、くっ…」スッ!バッ!



ブルー([ドゥヴァン]で買った術書が功を成すようだな…!)シュッ!サッサッサッ!





 シップに乗っていた合間に術書を開き、内容を頭に叩き込んだ彼は両手を動かす
幼子のあやとりを初めとする手遊びや手話のように忙しなく動かし、"印"を表す


それはかのリージョンでは"九字護身法"などと呼ばれる式の築き方だ




ブルー(印を構築した…あとはこのまま印を切りれば…)ゴホッ



永い詠唱はできない、短く、それでいて今の自身を癒す方法…!
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 14:23:02.72 ID:Eggdf3fJ0





           ブルー「…生命を繋げ…っ [活力のルーン]!!」






 素早く印を切り、短く喉の奥から捻り出すように声を捻出する

基本術の一つにして自身の細胞を活性化させ身体の損傷を癒す印術[活力のルーン]目の前に出現するライトグリーンの光は
ルーンの文字を宙に描き、ブルーの身を包む…すぐさま自身の身にせいの力が漲って来るのを感じ取る




―――
――




    キィン…!



                 パァァン…!







     アニー「あうっ!」ドサッ


 アニー「〜っ、こいつ…他の奴よりも強い…どうして…」ハッ!?










  「ギッ〜ギイギイィ…!」バタタタタッ![アシスト]!


  「ギイイイイイイイイイイイイイ――――ッィイ!」"STR UP!"."QUI UP!"."INT UP…










アニー「くそっ!こいつら仲間同士で互いに強化させてるからか!」




「キシャアアアアアアアアアアアァァァァァアアアアア!!」バタタタタタッ!ガリッ



アニー「なっ!―――きゃあああっ!!」ガシュッ



猛スピードで突っ込んできた1匹に肩を喰われる

鍛え抜いた反射神経で掠る程度には留めたものの羽織っていた緑のジャケットが裂け、露出した肩肌からは血が滲みだす


93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 14:56:36.94 ID:Eggdf3fJ0



アニー「い"っ‥‥、こ、こんのぉ!クソ蛆虫ぃぃ!あたしのお気に入りだったってのに!!」






肩の痛みを気に入りの服を破かれた怒りで紛らわす、目尻に浮き出た涙を振り払うように渾身の一撃を打ち込む






        アニー「喰らええぇぇぇぇ!!![稲妻突き]ぃぃぃ!!」ダンッッ――ギュンッッ!!



             「ビギィィッ!?―ギッ」ブチュンッッッ!!グシャ!




雷光一閃


刺突技を十八番とする彼女が可能な限りの瞬発力を発揮し稲妻の如く突っ込む






 [仲間の体術使い]と[銃火器を巧みに扱うスーパーモデル]等と共に

"多くの剣術を閃き"[達人]の域に到達した彼女の剣先には闘気が渦を巻き、稲妻が迸る突きの一撃は滞空する虫の胴体を
ものの見事に吹っ飛ばす、頭部、腹、なんやようわからん昆虫系モンスターの臓器が散乱する



同胞の贓物と血飛沫の雨に臆んだか、後に続いて追い打ちをかける予定だった1匹の動きはやや鈍いモノとなる


勢いを落とした突撃など多くの修羅場を潜り抜けて来た彼女からすればスローモーションで―――






         アニー「ふっ!!―――」サッ




くるり、踊るような足さばきで回避行動を取ると同時に手早くジャケットの内ポケットから[レーザーナイフ]を取り出し
グリップを握り締めてボタンを押す


このご時世何処にでもあるビーム兵器の大して珍しくない駆動音と同時にナイフの柄から先に光り輝く刃先が伸びる








 ――――――クルッ…ザシュッ! ガシュッ!





           アニー「…[かすみ青眼]っと!」ボソッ





遠心力を上乗せした両手の得物で害虫を一匹スライスする
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 15:24:38.09 ID:Eggdf3fJ0



アニー「これで2匹、あとは―――」キッ!




害虫を2体駆除し、すぐさま[<アシスト>]で肉体を強化された粗虫共を睨みつける


アニーが振り返ると同時に虫の一匹(最初にブルーに突撃して彼女に脚を切り飛ばされた奴)が強化された奴の頭上を
忙しなく飛び回っていた



すると何ということだろうか、強化済みの[ワームブルード]の身体についた切り傷が癒えていくではないか…っ!!






アニー「…[<マジカルヒール>]回復までできんのね、随分と多芸な事で」チッ!



最初に仕留めとけば良かったと舌を打つ、芸達者の蟲は凝りもせずアニー目掛けてその巨体で体当たりを仕掛ける


当然ながら彼女もそれに対して迎撃すべく剣を構え地を蹴る…










…が!











          ヒュンッ! ヒュンッ―――!






             アニー「!!」






強化された蟲の背後から飛んでくる力の塊、それはモンスター特有の技[エルフショット]であった―――ッ




 飛んできたエネルギー弾の直撃はもはや免れようがない、それでも抵抗すべく刀身で2発叩き落としたが残りは全弾被弾
後方から放たれた援護射撃に遅れて強化済みの蟲がアニーの身体を撥ね飛ばす


血を吐いて仰け反る様な恰好で吹き飛ぶ彼女に[エルフショット]を放った蟲が牙を突き立てるべくアニー目掛けて羽ばたく




 余程、片足を切り飛ばされた事でも根に持っているのか
その執念の赴くままに接近し柔らかな人間の女性の肌に[毒液]滴るその牙を…!

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 15:45:22.74 ID:Eggdf3fJ0







            ブルー「爆ぜろ、[インプロージョン]!」キュィイイイン!






「アギッ!」ボンッッボジュッ





…粘り気の強い[毒液]が滴るその牙は彼女の身体に突き刺さらなかった




短い断末魔、一瞬の焦げ臭さを残し、この世から消え失せた


片脚を切り取ばされた恨みよりも、不意打ちで鳩尾に一撃喰らわされた魔術師の方が根に持つタイプだった、それだけの話






ブルー「ふぅーっ…このクソゴミ蟲共が…此処に保護のルーンがなければこの場所諸共消し飛ばしてやりたい所だ」




見るからに青筋を立てて、惜しみなく不機嫌を表現する術士は目だけで人が殺せそうな視線を残りの害虫に向ける




アニー「なぁ…こいつはあたしにヤらせてくんない?」




腹部を片手で抑え、同じく怒りで肩をわなわなと震わせる黄金色の髪をした女がゆっくりとブルーの背後に近づいてくる

ブルーは呆れた、この女の耐久性に





自分でさえああなったというのに、強化された彼奴の突撃を直に受け止めてその程度で済んでるのか、と







                      ブルー「勝手にしろ」

                      アニー「ん、わかった」



                      「ギッ!?ギイイイィィ!?」









元より、お宝さがしに加えて鬱憤晴らしの為に来たのだ
蟲如きにコケにされては財宝の他に苛立ちまでお土産にしてしまう、怒りの一撃をお見舞いせねば
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 16:13:11.45 ID:Eggdf3fJ0


不穏な空気を感じ取ったのか、モンスターは脇目も振らずに一目散に逃げ出そうとする



アニー「逃がすかぁぁぁぁ!!」



 剣を構える、達人の域に到達した彼女が閃いた一つの到達点
無駄なく敵の急所のみを狙い、生命活動の源となる部位を確実に寸断する手法








       アニー「だあああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」シュバッ!















                   [デッドエンド]ッッッッ!!











 地下空洞内全域に轟くような音、天井すれすれまでに跳躍した彼女の身体は逃走を試みる小蟲の一生に幕を下ろした



―――
――


https://www.youtube.com/watch?v=L-oSUIEn218
[BGM:クーロン]



【クーロン:発着場前】



ブルー「まさかあんなところに抜け道があるとはな」

アニー「大昔の地下鉄だからね、こうやってシップ発着場に繋がってる場所もあんのよ」



 お互いに目的を果たした男女は[クーロン]の街へと戻って来ていた、アニーは同僚のライザから教わった道を使い
蒼の術士と共に帰って来たのだ


アニー「あのデカイ蟲が保護のルーンになんかしてるから、街の治安が悪くなるんでしょ?」

アニー「なら、これで安心して暮らせる奴もちょっとは増える、良い事ね」




自分の後ろについてくる術士から聴いた話からそんなことを考える、お宝は手に入るし運動にもなった
挙句にはこの街で暮らす人々の平穏にもつながる良い事じゃないか、と
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 16:29:27.52 ID:Eggdf3fJ0



ブルー「…」スタスタ


ブルー「おい、おん………アニー」






「おい、女」と言いかけて改める、初めて目の前を歩く女の名前を尊大な態度の術士は口にした





アニー「な、なにさ?」




この無礼極まりない男が急に改まったので内心驚きを隠せない、とりあえず返事を返してみれば








ブルー「癪だが、貴様には一つ借りができたな…」

ブルー「粗虫の最初の不意打ちからあれだけの数に囲まれれば俺も命を落としたやもしれん」




ブルー「礼を言わせてもらう」




アニー「お、おう……気にすることないっての…」



偉そうな態度が鼻につく男ではある、が最初の邂逅の時もそうだったが自分に非がある時は素直に謝るのが筋だと述べたり
この男は変なところで真面目だ



ブルー「この借りはいつか何らかの形で貴様に返させてもらう」

アニー「そ、そう?(なんか調子狂うわね)」




借りを返す、かぁ…しかし、返してもらうにしたってどうする
どうせな貰うのなら満足のいくものが良いと思うのが人の常





アニー「……!ねぇ!アンタさ!その恩返しだけどなんでも良いの?」

ブルー「? ああ、可能な事であるならばな」



命を救う、これに匹敵する恩ならば返してやってもいいと思うし、何よりこの女は"[解放]のルーン"、"[活力]のルーン"

ブルーが喉から手が出る程欲しいモノの情報を彼女は二つも有しているのだっ!






…要するに、純粋に恩義に報いてやるのが半分、もう半分は貴重な情報源の機嫌を損ねたくないという利己的な考えなのだ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/19(火) 16:49:15.15 ID:Eggdf3fJ0







アニー「ふっふっふ…なんでも良いのね♪」ニシシ




―――この時ッ!アニーの頭上に豆電球が灯るッ!



アニー「じゃあ、あたし含めてあたしの仲間達をディナーに連れてって欲しいのよ!アンタの出費で」


ブルー「晩飯を奢る程度で良いというのか?その程度なら構わんが」




アニー「OK!契約成立ね!取り消しは無し!」つ【紙切れ】




ブルー「? なんだこ―――」





ブルーが手渡されたのは一枚のチラシだった…先程のリージョンシップ発着場で誰でも気軽に貰えるチラシ







アニー「すっっっごくお金の掛かる豪華客船での食べ放題バイキングディナー」

アニー「いやー、一度で良いから皆で行きたかったのよねぇ〜♪」





ブルー「  」





そのチラシにはこう書いてありました






                         【チラシ】

  〜『美しき白鳥のフォルム、展望台から一望できるリージョンの空!満点のサービスに豪華三ツ星ビュッフェ』〜


     〜『 [マンハッタン]発の宇宙船<リージョン・シップ>  《キグナス号》で優雅な一時を! 』 〜
            ※三ツ星ビュッフェは別料金となり、クレジットはお一人様――――




アニー(…エミリアが帰って来た時に、詫びの一つは要るだろうとは思ってたし…)

アニー(グラディウス皆でちょっとした旅行みたいで良いわよね!)ニシシ♪


アニー(不本意だけどルーファスの奴もこのキグナスって船に乗せてやって、皆でご馳走ね)



99 :今回は此処まで [saga]:2017/09/19(火) 17:10:22.15 ID:Eggdf3fJ0

───────===========ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三

      【解説:アニーの閃き率】

どの主人公を選んでも印術の資質入手EVで仲間に出来る子、ラッキースケベの主人公曰く「う〜ん、でかい。」

仲間キャラそれぞれに閃きやすい系統というモノが存在する、"体術" "剣技" "銃技"…その中で彼女は剣

とくに[突き]系の剣術を閃きやすいというが…



   実 は そ ん な こ と は な く 寧ろ 全仲間キャラの中で閃きが一番悪い

 というのも彼女だけが閃きの系統が異質、剣とか銃とかそういうレベルじゃなくて

 彼女は 『[名前がカタカナ]系の技』 を閃きやすいという 何故か独特の系統が設定されてるらしい


 だから漢字の刀技や剣技も新技が覚えにくいらしく
       代わりに[ディフレクト]とか[ロザリオインペール]等の名前がカタカナは閃きやすいという噂



           , _,r '' ´ ̄ ̄ ̄`ヽ、
          //               \
         _//                  ヽ---イ
        /            \ \\  \ヽ
      / /        / |     ヽ ヽ ヽ   l l
      l//      / |  ト 、 ヽ  |l  |ハ | | |
      | |   /  / /| |  | `、 || | |イ} リ | | |
      | |   |   | ハ |⊥|-- | || / ,ィ〒| /| リ
      | |   |   | { l八,⊥= l /|/ ヒj_ K |/
      | |      |川 リィlトイ:} リ/〃   、 "VV
      リ} l     ||ト|ヽ ゞ='´     ′ ハ ト==‐
      〃|| |    ヽ \`ヽ、""   ー一  /| | |
        |j/ /  ヽ\ヾミ        /| | |/
        // / │ | | hヽ ‐- ..__, イ {/イ
       //// ∧ | | lTリ____」 │  | {〃
      |/|/ / /川川/ナ人____| ̄`Y | ヽ、_
      |l | / ///レ┴┴‐tュ_r‐┬r)〉  ト|ヽ、_ノ
      l! | / //      \┴┴'⌒ヽト、
          | { ケ/>====t \   \ \
          〈rイノイ´ ̄ ̄ ̄|L -ヘ ___>‐、ヽ、
           〈 〈 |       └┬⌒〉      ヽ `ヽ、
            ヽ| |  , ---- 、|  |       }     ヽ、_
            ヽV , ---- 、)  |        /     /フ二入
             |Y      |   |     ∧   // 〃    `丶、
             | |      |  |二>--イ ヽ` '‐|レ/_          `>- 、
            /│       |   |-──┤   \//″ ` ''‐ 、 __/    ``ヽ.
            /   |      |    lニニニl  /// |    ,、‐ ''´     `ヽ、    ヽ
            \  |     |    l     レ'  | || | ,  '´             /       |
              ヽ_|       l    \  /|   ノノ/      /      |_i    |
              |     |一''´ ̄ ̄ _l |ァ-イ/         | {        | |l、__/ lハ
             / ̄ ̄ ̄ヽ---─ ''´ |」k/|==ァ     V       し1 / 丁7
             〉‐───く __r─ニロテ7 /|) 〃      /        / 〃 / /
             L -──‐、_)テ }} // |// ∨ ̄了    /         しl |_/‐'
              レ── 、|〉   }}厶//レ'   ヽ 〃    /          /
              |       ん〜┬〒イ  |    ヽ-─┐/         /`丶、
               |      /   / |  | |   |       \ //           /    `ヽ、
                |     /   / |  | |  |      ヽ/           /        \
             j     ハ  / │ l |  ヽ      /,'          /    /      ヽ
            ∧   / `、   |  | ヽ   \   / !           / __/ノ      |
           / ヽ二二ソ  \      \   `ニン |       /´              |
        rr '´       |     \         __ノ   |       /            /
        //ヽ__人   ノ      `ー‐ '´ ̄ ̄    /|      /            /
       / / /  , `'"            ____,.  '´  │     /               _/
      (_/    ̄       rァ⌒ト-‐''´  /     j       /        ,  '"´
                 _,ノ /    /      / /    /_...  --‐ ''´
               , イ   //    /      r'´ ̄ ̄`ヽ、/
            //  / |「レ== 、_ ヽ、___, イ       ヽ
            厶/ |< M Lト=ッ7/7| _.. -'´ /         /个L
            | ∧//ヽ|ラ‐イ//|し1´    〈 ┬‐ 、  (( イ/| 〉〉
            レ冖\__/Jl」 ̄      /   ト|`Tヒ// |しノ
            `ヽ⊥ -‐'´           |__  \\//大」
                            ├  ``ヽ、 ̄|/ ⌒⌒ヽ、_
                            | r─、    ̄ ̄二二ー‐ヽ
                            ヽ三三 r─‐ 、` ー----ハ
                                  ``<┬三三三ヽ/
                                     ` ーニニソ

───────===========ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 17:53:01.66 ID:xEXM+K6SO
そんな特殊な閃き条件ついてたのかこの子……
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 18:13:14.39 ID:z1+jwyCk0
はへ〜知らんかったわ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 19:06:25.87 ID:HaVOXXHnO
乙乙
でもカタカナ技ってあんまり強いの無いのよね……それでもスタメンだけど
オチはレッド編に繋がるフラグかな?
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 19:33:04.68 ID:uHsU3M6UO
今回も乙

「貴様の名前が気に食わん」をどう料理するかが楽しみだ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2017/09/26(火) 21:37:30.93 ID:tFbJF3ye0
















    …うぐっ!? 痛い…? 僕はどうなったんだ…?確か[ドゥヴァン]の神社でアセルスの身の上話を…














痛みで覚醒した僕はゆっくりと瞼を開いた、紅葉の香りが鼻をくすぐったあの神社の前とは全く違う光景だった


無骨な鋼鉄の部屋、まるで僕が本で読んだ牢屋みたいな何も無い部屋で


  [マジックキングダム]の寮部屋みたいな二段ベッドが幾つかあって…僕はその寝具の梯子部分に縛られてたんだ





目の前には知らない男の人が数人いて、なんだか困ったような顔で僕を見てる…




105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/26(火) 22:03:22.92 ID:tFbJF3ye0
*******************************************************
―――
――



【双子が旅立ってから…2日目、夜明け間際 4時27分… トリニティの軍事施設があるリージョン [ラムダ基地] 内部】




「やっと目ぇ覚ましたぞ…」ハァ

「…で、こいつどうすんだよ……つーか誰だよコレが女とか言った奴」




ルージュ「???」キョロキョロ




 ラムダ基地…赤焦茶色の岩肌だらけのその土地に築かれた前線基地には
この広いリージョン界を束ねる政治機関"トリニティ"の執政官が着任している…現状この基地に居る執政官は…まぁ、その









…実に評判がよろしくない




その理由は…










「どうするよ、あの変態になんて言い訳すんだ?」

「どうったて…なぁ…」


「さっきの妖魔の女たちはヤルート閣下のハーレムに送ったが…この男は…」ウムム…





…税金で創られた軍事基地に美女を集めハーレムを築いているという悪評が出回っているからだ
 物的証拠が無い為、誰も検挙できないでいるが噂自体は広まっている、これで変態執政官と名高い彼のハーレムから
半ば拉致監禁に近い形で連れられた女性が基地内から脱走し証言でもすればお巡りさんが手錠を持って動くだろうが…



ルージュ「!妖魔の―――アセルスと白薔薇さん!!彼女達を何処へやったんだ!」ギッ!ギッ!




 縄で両手両足を拘束された彼は華奢な身体を精一杯動かし、反抗的な態度を露わにする
穏やかな眼つきを鋭いモノへ変えて目の前の男衆を睨み恫喝するのだが…



「あー、ったくうるせなぁ!あの女共ならこの基地のお偉いさんトコに連れてったよ」

「女好きのドスケベ野郎だ」



特に臆することも無く、縛られた男一人、術さえ使われなければどうとでもなるだろうといった風である
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 22:55:20.48 ID:RQuFY+1SO
う〜ん、でかァァァァァァい。説明不要!
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 00:43:01.63 ID:ToaxGTU40



ルージュ「…あなた達はこんなことをして…恥ずべきだと思わないのかっ!!」



 男達の口から飛び出す内容を整理して凡そ分かった事、それはこの男衆は所謂人攫いのようなモノで
自分達はその"ヤルート閣下"とやらの基地に連れて来られたということ


そしてその閣下とやらが無類の女好きということもハーレムという単語からよくわかる、手癖の悪い男だ




「思わんね、正義感なんぞじゃ腹は膨れん、おまんまの食いっぱぐれだけはお断りだ」

「そんなことよりもこいつの処遇をどうするかだ…」ハァ



ルージュ「くっ…なんて奴らだ!」ジタバタ




「…」ジーッ


「あん?どうしたんだ…」


「いやさ、この男…本当に女みてーな顔してんなぁって……思ったんだけどさ」













「こいつ女の恰好させてヤルート閣下に引き渡せば良くね?」





「…」ピタッ
「…」ピタッ


ルージュ「…」ジタバタ…ピタッ








 刹那、凍り付いた…
威勢よく暴れていたルージュもまるで[停滞のルーン]でも使われたんじゃないかと見間違う程に微動だにしない




ルージュ「」ダラダラ…



「いやさ?だって…あのヤルート閣下だぜ?妖魔狩りにハマるような変態度だぞ?なんかもう男の娘です!とか言ったら」



ルージュ「」ダラダラダラダラ…


滝のように汗が噴き出る、止まらない…
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 11:07:11.93 ID:Pk8gK3KB0
寝落ち?
109 : ◆u5jU/0ZJi2 [saga]:2017/09/27(水) 12:37:25.87 ID:ToaxGTU40

―――
――





「出ろ」




アセルス「…」テクテク






アセルス(意識を失ってあの後、目が覚めたら此処に連れて来られた…)


アセルス(白薔薇の安全を確認して助け出すまでおとなしくしなきゃ…っ)ギリッ


アセルス(…あいつら、ルージュを女の人と間違えて連れて来たって言ってたから此処にルージュも居るはずだし、まず)















           トリニティ軍人?「こんな連中に捕まってしまうなんて…まだまだだね君は」フゥー










アセルス「?」


 俯き気味だった半妖の少女はその声に顔を上げた、声の主は深々と帽子を被り軍服をピシッと着込んだ少し色黒の男性で
妙に親しげに話し掛けるこの男性が何者であったか記憶の引き出しを漁り答えを探そうとしていた



少考、一呼吸の間を開けて結局誰だか分らなかった彼にアセルスは



アセルス「誰?」



そのまま抱いた疑問を言葉にして投げかけるしかなかった



色黒の男は「ふふっ」と…そう、まるで悪戯が成功して喜ぶ無邪気なお子様染みた含み笑いを浮かべ帽子を取る

 アセルスはこの時、漸く声の主が誰であったか思い出した、逆立った赤紫色の髪、悪戯小僧と名付けたくなる笑い…
一度見たらそれはもう忘れられない衝撃的な恰好のアイツだ


…今はその衝撃的過ぎる恰好じゃないからこそ、規則遵守を体現したような出で立ちだから思い至らなかったのやもしれん

110 :〜 アセルス編没イベント集より 囚われのアセルス 〜 [saga]:2017/09/27(水) 12:59:28.61 ID:ToaxGTU40










     乳首にお星さまを付けた上級妖魔「この程度の縛めなんて、ちょっと力を入れるだけで破れるのに」ヤレヤレ



      アセルス「ゾズマっ!!!此処で何をしてるんだ!!」






帽子を取り、逆立った赤紫の髪を、そして「ふぅー、この堅っ苦しい服は嫌だねー」と服を脱ぎだす上級妖魔



アセルスが[ファシナトゥール]で出会った男性型の妖魔

 彼曰く「自分は此処のナンバー2で自分を止められるのは妖魔の君だけ」との事、自由を誰よりも愛し
自分を束縛する者を嫌う、興味がある事にはとことん首を突っ込むスタイルで俗にいう美男子という顔立ちであり
上半身裸で乳首にお星さまをつけるという一度見たら誰もが通報したくなるようなスタイルを進む自由人である





 ゾズマ「別にアルバイトとかそんなんじゃないよ…よいしょっと」ドサッ


 アセルス(!私達の荷物…)


 ゾズマ「妖魔を弄んだ連中に、火遊びが過ぎるとどうなるか思い知らせてやるのさ」


 ゾズマ「もう数人侵入して手筈を整えているところだ」フフッ



 アセルス「…ふぅん、随分と仲"魔"思いだな」



何考えてるんだか正直よう分らん露出狂くらいにしか見てなかったがちょっとだけこの自由人の評価が彼女の中で上がった



 ゾズマ「さぁ〜どうかな♪とにかく楽しい宴になりそうだよ」ニヤニヤ







 アセルス「…」





 アセルス(こいつめ、何やらかす気だ…?)





決して長い付き合いとは言えないがある程度この上級妖魔の事で分かった事がある


コイツがこういった悪戯を思いついたような悪ガキめいた笑みを浮かべる時は大抵ロクでもない事を起こす時だと

先程上がった評価がまた元の位置に戻りそうだ


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 13:40:56.27 ID:ToaxGTU40



アセルス「君、この先に白薔薇が居るのかい?」スタスタ…


「はい、ゾズマ様がご確認なさっております、白薔薇姫様の他、お連れの方もいらっしゃいますよ」


アセルス「そうか、ありがとう、此処から先は私一人で行けるから君はゾズマの所に戻ると良い」


「畏まりました」スゥ…


アセルス「…消えた、アイツ何人この基地に妖魔を潜入させたんだ…」スタスタ…



扉を潜ればそこは……





アセルス「 」







アセルス(う、うわぁ……)ヒキッ




 如何にも成金趣味の部屋だった、いや下手するとそれより酷い、天井にキラキラ光るカラーボール
一昔前に流行ったディスコかと見紛うような内装で女の子が1人の肥え太った醜夫を満足させる為にいやらしく踊っている



醜夫「そらそら〜もっと踊らんか!生皮剥いで釜茹でにしてしまうぞ〜」


「いやぁ〜ん、ヤルート様ってば〜そんなことしないでぇ」



 軽口のように飛び出た恐ろしい拷問に掛けられまいと媚びを売った声色でバニーガール衣装の女が
扇子を仰ぐ東洋風の礼装に身を包んだ女が愛想笑いを浮かべご機嫌取りと来たものだ




ヤルート「ぐへへ…そういわれちゃぁなぁ」デヘヘ

道化師のような仮面をつけた男「……ヤルート閣下、そろそろ取引を」



ヤルート「まぁ待たれよジョーカー殿、もう少し余興をお楽しみくだされ…ぐへっ」ゲヘゲヘ!



 歯磨きなんて生まれてこの方一度たりともしてないんじゃないかと思うような粘りっ気の強い唾液が
前歯にこびり付いているのを見てアセルスは嫌悪感を露わにする

脂ぎった手で近くにいた10代半ばの少女を抱き寄せ頬ずりする様はなんともまぁ……


アセルス(あからさまに嫌そうな顔してるよ…)


ヤルート「ゲへへ、最近身体の発育がよくなったんじゃないのか〜」


「や、ヤルート様に美味しいご飯を頂いているからです…」


ヤルート「おお!そうか!そうか!うむ!そっちの女子も近くに寄れ」

「は、はいぃ…」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/09/27(水) 13:59:41.80 ID:ToaxGTU40


アセルス(…あ、あまり目を合せない様にしよう)ゾーッ


中央で椅子に踏ん反り返りハーレムを楽しむ醜夫、仮面の所為で表情は窺えないが呆れの色が見て取れる男性
そんな二人を余所にアセルスは白薔薇を探す…



アセルス(…!居た、あんな隅っこに!…でもルージュは何処に居るんだろう)キョロキョロ



バニーガール、民族衣装の少女、ヤルートの趣味でランドセルを背負い腿が良く見えるスカートの女子大生程の人
誰も彼もが拉致同然に連れられたのだ…


そこにはアセルスが嫌悪感を拭えない理由がもう一つある





それは、自分の今の境遇の元凶たる魅惑の君と通ずる所があるからだ





 先程ゾズマに荷物を返してもらった、当然[幻魔]だって手元にあるし
あそこのドスケベ魔人に対して峰内でも叩き込んでやりたいのが率直な感想だ鞘から引き抜かなければ
妖刀に引き摺られることもないだろうし…

ただ、軍事基地のお偉いさんにそれをやれば周りの連れて来られた人に危害が無いとは言えない、だから堪えるしかない



アセルス「ごめん、そこを通して…!」



半妖の少女は水着姿で踊る少女等に道を譲ってもらい漸く辿り着いた

白薔薇姫はベリーダンスを隣に居たセーラー服の銀髪美女と踊っていた



アセルス「白薔薇!私だよ…!」ヒソヒソ

白薔薇「!…アセルス様!ご無事で何よりです!」ヒソヒソ


白薔薇「此処に連れられた方々はこの戯れが終われば自分達に与えられた部屋へ戻されるそうです」

白薔薇「ですのでその時が来るのを待ち、隙を見て逃げ出しましょう」ヒソヒソ

アセルス「うんっ!」ヒソヒソ


 逃げ出せる好機を怪しまれぬよう他の者に混ざり踊りながら待つ白薔薇のすぐ横でアセルスも彼女の真似をする
舞などこれといってできるモノは無いが、白薔薇の動きを真似るぐらいならばなんとかなると考えた


アセルス「……ねぇ、ルージュは何処にいるの?この基地の何処かに捕まってるんでしょ」ヒソヒソ


白薔薇「…ルージュさん、ですか…」


アセルス「…? 白薔薇?」

何故か苦笑する白薔薇に首を傾げた、白薔薇の視線の先がある一点へ向けられる、その先を目で追えば−――



セーラー服を着た女子大生くらいの年頃の銀髪美女「……///」プイッ




アセルス「……」

アセルス「あっ(察し)」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 19:22:39.47 ID:+YHdLQ5VO
ルージュとんだ災難だなww
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 22:40:58.73 ID:fhMMCxNSO
>男性型の妖魔

男性器の妖魔に空目した
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 05:13:00.58 ID:vrwrZIxv0
乙乙
白薔薇のベリーダンスは開発2部ネタかな?
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 18:50:03.44 ID:S0wkO+cY0


"それ"に気がついて間抜けな声が出た

緑髪の少女はさっきから白薔薇姫の隣で舞っていた銀髪美人が誰なのか、漸く悟った




アセルス「……」


アセルス「えーっと、そのぉ…なんていうか、うん、似合うよ、うん」



白薔薇(アセルス様、フォローになっておりませんよ…)



 さて、読者諸氏は既にお気づきの事だろう、この麗しの銀髪美女が何処の誰なのか…
彼女、否、"彼"は顔を赤らめていた、名は体を表すとよく言ったものだが赤色を冠する名を持つ彼は若干半泣きだった


なにゆえ自分はこんな所でこんなワケのわからない恰好をさせられているのか?


理不尽だ、と彼…ルージュは心底そう思った





ルージュ「…素敵なフォローをありがとう」ズーン

アセルス「あっ、そ、その…なんかごめん」アセアセ




どんよりとした顔で力無く笑う彼を見てアセルスは強引に話題を変える、変な気まずさに耐え切れない、空気を変えねば!



アセルス「ル、ルージュ…私!荷物を取り戻したんだ!あの[ゲート]って術を使う為の道具も入ってる!」ボソボソ

ルージュ「!…どうやって?」ボソボソ


アセルス「此処に知り合いが居て、そいつが持って来てくれたんだ」

アセルス「詳しくは私も知らないけどもうじき何かを起こすらしい、その隙がチャンスかも」



この場で直ぐにでも別のリージョンへ移動するのは容易い、が…




アセルス「…相談があるんだ」






アセルス「此処に捕まってる女の人達…皆を連れて移動ってできる?」


ルージュ「此処に居る全員を…」


此処に居る女性は皆が、アセルスやルージュ達と同じだ






何の前触れも無く人攫いに捕まり、此処に監禁された謂わば被害者なのだ、同じ女として、そして…

魅惑の君、オルロワージュの居城に軟禁されて十数年…家族との繋がりを断たれたアセルスだからこそ救いたいと願った

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 19:11:39.51 ID:S0wkO+cY0


アセルスの境遇は知っている、だから彼女の心情は紅き術士にも妖魔の貴婦人にも当然汲み取れる
白薔薇はアセルスの望みを叶えてあげたいし、ルージュもこのような状況を見過ごせない



ルージュ「…できないこともない、けど全員を一か所に集めなければならない」チラッ



 気持ちとしては彼女の頼みに快くYESと言いたい、しかし重々しく開かれた口から出た言葉はこの無駄に広い娯楽室で
両手で数えきれない人数の女性を一切、不審に思われる事無く集めて術を発動させるという到底不可能である事を
VIP席に座る執政官と傍らの仮面の男を見ながら言った




最悪、あの醜夫はどうとでもなる…問題はそこじゃない





ルージュは…いや、白薔薇姫もアセルスも奇妙な仮面をつけた男を警戒していた、確か"[ジョーカー]"と呼ばれていた


被り物の下がどのような表情を浮かべているか分からない、だが…妖魔の二人も、魔法大国出身の青年も分かるのだ
 あの仮面男の前で妙な動きをすれば命取りになる






 ウィーン!



アセルス/白薔薇/ルージュ「「「!」」」



3人がどうすべきか思い悩んでいた最中、事態は好転することになる

アセルスが入って来た入口の扉が開かれたのだ…そこにブロンドの髪を結った幸運の女神様をお通しするかのようにッ!













   元スーパーモデルの金髪美女(うわー、悪趣味な所…あの怪物がトリニティの執政官??)スタスタ…












 童話で喩えよう、雑踏といっそ耳障りなくらいにい煩いオーケストラ賑わう舞踏会にシンデレラが舞い降りた
伴奏を奏でる音楽家も政略結婚を狙う口煩い政治家の話術もハイヒールの雑踏さえもピタリと止まる



瞬き程の僅かな合間、ルージュ等も拉致監禁された沢山の女性も、ヤルート執政官も



……そして、ジョーカー、もその姿に目を奪われた…

118 :今回は此処まで [saga]:2017/10/05(木) 19:43:01.55 ID:S0wkO+cY0


ヤルート「―――ハッ!」


ヤルート「如何ですかな?私のコレクションは?」



 入って来た女性にヤルートは惚けた、艶のあるブロンドの髪を結わせたポニーテールが歩くたびに揺れ
しなやかな身体のラインがくっきりと強調された煽情的な踊り子の装束
透けて見える空色の薄布は腰回りをより色っぽく、くびれも上半身に実ったたわわな果実も魅せる露出度で―――



――いや、一番は"女"の部位を前面的に押し出した美貌じゃない、雰囲気だ




例えば同じ美人美女でも歩き方一つで感じる印象が違う



同じ顔立ちでも前を見て朗らかに微笑みながら歩く女と、鬱蒼とした顔でオドオド歩く神経質な女じゃあ抱く感情が違う


舞台役者が一つの劇、芝居でその役を完璧に演じるように、そのものに為り切っているように…目の前の美女は歩く



心の底から『美しい』『綺麗だ』そう感じ取らせるオーラがあったのだ…!





アセルス(うわぁ…綺麗なヒトだなぁ…//)ポーッ

白薔薇「…アセルス様、舞わねば不審に思われますよ」ボソ

アセルス「ぁ、う、うん…!」


相手方に気付かれないように脇腹を小突く白薔薇とアセルス、ルージュもハッと我に返り止めていた動きを再開する

それは水溜りに投じた一石から生まれ出る波紋のように広がり、止まっていた全ての女性等の動きを、執政官達を動かす






ジョーカー「…流石はトリニティ第三執政官のヤルート閣下、良いモノを飼っておいでです」




 被り物に隠された顔は相変わらず読み取れない…筈だが、心なしか仮面の男の声がほんの少しだけ感情を持った
そんな風にルージュは感じた



ヤルート「それでは今日は特別に1匹、お持ち帰りになるとよろしい!ジョーカー殿!」ゲヘ!ゲヘ!


気分を良くした醜夫は来客のジョーカーに揉み手をしながら愛想笑い、対照的に入って来た女は心を波立たせる







元スーパーモデルの金髪美女(ジョーカー…っ!!)






波立った心を落ち着けようと彼女は演技に全意識を集中させる、でもなければ歯軋りが聴こえてしまうだろうし
 今にも自分の婚約者を殺害した憎き仮面男をこの手で縊り殺さん勢いで飛び掛かってしまいそうだったから…

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/15(日) 05:00:47.16 ID:Xn7nVrpQ0


ヤルート「いやぁ…丁度鮮度の良いのが入荷したようですな、おい、お前何かやってみせろ!」


鮮度の良い入荷品の出来をまずは知ろうとヤルートは命じる、その声に彼女はハッとする



ヤルート「んん〜?どうした?早くしないと生皮を剥いで釜茹でだぞ!」



元スーパーモデルの金髪美女(やっぱりヒドイ所だぁ〜!ルーファスの奴…帰ったら覚えてなさいよ!)


 彼女の頭の中には常にサングラスを外さないロン毛男が浮かび上がる、帰ったら真っ先にグラサンを叩き割ってやろう
そう決意を固めながら「舞わせて頂きます」と初々しくお辞儀をする


今は上司への恨み言は後回し、最優先は役を演じ切ることだ





そうこうしてればグラサンの上司と、気の合う仲間…[ライザ]そして[アニー]が助けに来てくれると信じて…




 軽やかな足取りで中央のダンスステージに飛び乗り金髪美女は舞う、この人の邪魔をしてはいけない
舞い込んだ白鳥に魅了された女性たちは彼女の為に十分なスペースを開けようと静かにその場を離れていく…




これはなんだ?

踊りか?

それとも劇か?



ゆったりと降り立った女性は明るく、この世の幸せは此処に在る、とでも言いたな表情で舞うのだ



まるで女が求める最大の幸せ、愛おしい男との結婚を控える女が魅せるような顔



幸せの絶頂に居る、しかしその後の舞は一変、至福の丘から絶望と哀しみの奈落への転落
エキゾチックな衣装の彼女は天を仰ぐように…どうかこれは悪い夢で目が醒めれば幸せに戻れるますようにと

乞い願う女性を演じた、満ち足りていた表情も今は演技なのか本当に泣きそうなのか分からない顔立ちであった









 結婚を控えた幸福な女、突然の悲劇、絶望に打ちひしがれ、一筋の光が差す…女がゆっくりと再生に向かって立ち上がる





踊りというよりも寧ろオペラ座や歌劇に近かった


それも迫真の演技だ、特に何かを決意した女がゆっくりと再生に向かっていく様は鬼気迫る物すら感じる


起承転結、物語性のある舞いだった…疑問なのは『起』『承』『転』こそあれど『結』の部分が無いことだ


120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/15(日) 05:23:50.34 ID:Xn7nVrpQ0


ジョーカー「…美しい」ボソ

ジョーカー「見事な舞い、これを頂きたいですな」




ヤルート「い、いや、ま、待ってくれ!これはワシも気に入った、中々に食欲をそそられるぞ!」

ヤルート「代わりにアレなんてどうだ!?[ファシナトゥール]から命からがら盗み出して来た女だ!」

ヤルート「妖魔に血を抜かれて体質が変化しているのだ、中々興味深いぞ」



 想像以上に見栄えの良い女が手に入った
執政官は思わぬお宝を客人に横取りされては堪らんと上擦った声でアセルス等を指差す、『特別に1匹持って帰ると良い』
そう言った手前、この仮面をつけた上客に前言を撤回する訳にいかない

 雇った男衆がその辺のリージョンから偶然見つけて来た妖魔の女を
妖魔の総本山[ファシナトゥール]から命懸けで盗んできました!とちょっとでも箔がつくように嘘を付け加える

それだけ手放したくないのだ



そんなこんなで指差され夏祭りの出店で売りに出される兎や雛鳥か何かの如く指定されたアセルス等はギョッとした


これはマズイ


そう感じた次の瞬間…っ!







    ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン







基地全体が揺れた、電気系統に異常が出たのか次々と天井の照明が切れていく




ヤルート「な、何事だ!?」

元スーパーモデルの金髪美女(グラディウスだわ!!)パァァ…!

アセルス(…ゾズマか)ハァ…



狼狽える執政官

仲間達が来てくれたと勘違いし、花が咲いたように喜ぶ金髪美女

「ああ、これか…アイツめ、無茶苦茶な」とため息を吐くアセルス




ジョーカー「トリニティの基地で非常事態とは、世も末ですな」

ジョーカー「ヤルート閣下の足元も意外と脆いのやもしれませんな」クルッ




仮面の男が呟くと同時に全ての照明が切れ、室内は闇に包まれる

121 : ◆u5jU/0ZJi2 [saga]:2017/10/18(水) 20:39:25.88 ID:ncNr6e5B0


 悪趣味な娯楽室が闇に包まれる、静寂を破ったのは誰の甲高い悲鳴だったか
それはルージュ等にもヤルート達も金髪美人にも分からない、唯一つ理解できたことはそれを切っ掛けに拉致された女性が
一斉に非常灯目掛けて駆け出したという事だけだった


 川の流れを塞き止めていたダムというのは一度決壊すれば後は濁流が止め処なく溢れるモノで狭い出入口からは
女達が凄まじい勢いで飛び出していった


その中には騒ぎに紛れて部屋を脱するルージュ、アセルス、白薔薇の3人

次に遅れてヤルート執政官、ジョーカーの姿もあった、3人とは別の方角へ逃げていく姿は人の波に紛れ目撃できなかった





ルージュ「おわっとと…」ヨロッ


ルージュ「ふぅ…なんとか逃げられたけど…これじゃ」チラッ




あちらこちらと逃げ惑う人影を見て彼はバツの悪そうな顔をする、これでは到底[ゲート]の術で全員を逃がすなどできない


アセルス「…」

白薔薇「アセルス様…時には妥協も必要に迫れるときもございます」




アセルス「分かってるよ…、理解はできる、理解だけなら」




 これ以上は此処に留まる訳にはいかない、この騒ぎで基地全体は臨戦態勢に入る…モタモタしてればそれだけ逃げ遅れる
奥歯を噛み締めその場を去ろうとした時、彼女等は声を掛けられた







    元スーパーモデルの金髪美女(…!人が3人、留まってるわ)タッタッタ…!



    元スーパーモデルの金髪美女「早く逃げて!」ハァハァ…!








息を切らして金髪の美女は駆けて来る、その手には何処に隠しもっていたのか黒光りする厳つい銃火器が握られていた
3人を逃げ遅れた人と判断したのか、軍人たちがやってくる前に逃げろと促す

基地内部に居る以上それはあまり意味を成さない忠告なのだが…




ルージュ(この人…さっきの…)

アセルス「貴女は逃げないの?」




元スーパーモデルの金髪美女「私…ふぅ…私は、ね――――」



一呼吸置いて、金髪の美女は悪戯を好む年上の女性の様な笑みを浮かべて告げる
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/18(水) 20:44:30.00 ID:ncNr6e5B0


https://www.youtube.com/watch?v=4TJsob5IMSo&list=PL33021FE67F7DCC92&index=8
[BGM:主人公エミリアのテーマ]


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         / ,'/チ/l !シ l      |! __ヤ l!ヾ、,.ク   l ヘ
.        / .l//イ l .l ゞ、     サ _,,,.._l! !イ癶ゝ  l!
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       / !/l,'ノ、.!、 ィ=、      ーメリイイイ入 !ヽ.\
.          | , ,イヤ!.ヘ    ノ      'ノイoイ  ヘリ ゝ         『私はこれから、お仕事♪それじゃ!』
            !,イ .! l!ヤ゚ヤ、  ` 、   ,  イ.ll l !    ヘ、
         メ,.イサ」ヘl:l:Y>    ̄ イ,イ.サイ:l     ヘ \
          ィ  ィリ_ 〉ヘl:lヘリl:l:o><  ,.イリzl.',       ヽ、
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   rーイ、   ,.孑チ:.:.:.:.:.:./イ ,.ィ!ー‐゜゚´ .ム:.:.:.リ\      ∧
  」∧_ \_入<:.:.:.:.:.:.:/_  .〈_/   / リ:.:.,イ!:.:.:.キ      .リ
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 リ:.:.:.:.:.:.:.:.:.l ;: : : : : : :ヽヾ<><´ヘ:.ソ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧.:.:.:.:.Y  イ,イ
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123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/18(水) 21:20:51.39 ID:ncNr6e5B0



ぱからっ…!ぱからっ…!


金髪の美人が片手に拳銃…[アグニCP1]を持ちながらその場を去ろうとした時だった、その蹄音が耳に入ったのは

 目と耳に悪いハイテクな機械仕掛けの灯りとけたたましいアラーム音が鳴り響く軍事基地にミスマッチした足音に
彼女は首を傾げた、幻聴か?とゆっくりと音のする方へ視線を動かせば






「ヒヒィィィィー―――z_______________ンンッ!!」パカラッ!パカラッ!





元スーパーモデルの金髪美女「ぇ、えええぇぇっ!?!?」





馬だ。


いや、こんな所に馬が走って来たというだけでも驚きなのだが何よりもその額には一本の角が生えている

それはモンスター種族の中でもそれなりに高位の存在として知られる有名な獣…一角獣[ユニコーン]そのものだった!




この基地で軍が飼育しているだとかそういう情報は一切無い、人間を襲う意志に満ちている血走った目
 どうみても人間社会で暮らす種とは違う、野生のソレだ


剛脚と言っても過言ではない2本の前脚を振り上げ目の前に居る金髪美女の頭部に蹄を振り下ろさんと動く[ユニコーン]
 あれが直撃すれば美女の脳天は憐れ、柘榴のようにパックリかち割られてしまうであろう






                ―――ズドンッッ!


「ギュゥゥグゥゥゥ―――ッ!?」ブシャァァ



突然の事でルージュは無論、白薔薇姫も対応に遅れた、アセルスでさえ[ディフレクト]することが間に合わない…!
その一瞬誰もが目を覆う悲劇が到来すると皆の脳裏に過り掛けた…


が、それは一発の銃声と共に打ち砕かれる


右眼を寸分違わず、針に糸を通すような[精密射撃]で撃ち抜いたのだ、金髪美女が



 誰も彼もが反応に遅れた中、敵に一番近い位置に居た彼女が脊髄反射で射抜く、一角獣の眼球が付いていた部位からは
血飛沫が噴出し、痛みと奪われた視力で大きく目測を誤った蹄の一撃は彼女の真横―――何も無い地面を叩き割る




元スーパーモデルの金髪美女「―――全く、潜入捜査だからってこんな拳銃しか渡されなかったっていうのに!」



"いつもの彼女なら"今手にしている[アグニCP1]なんて威力の低い安物とは雲泥の差がある高火力の銃を両手に構え
お得意の[二丁拳銃]捌きを披露した事だろうが…生憎と彼女の手によく馴染んだ愛銃はサングラスを掛けた上司が
薬で眠らせてこの基地へ送り込む前に没収したという…


不満を口にしながらも彼女――エミリアは持ち前の気丈さと共に後ろの3人にコイツを片付けるの手伝って!と声を掛けた
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/10/18(水) 21:26:23.98 ID:ncNr6e5B0
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           \   今 回 此 処 ま で !  /

           lヽ     ,_
           ヽ\゛⌒::て     _
            {`´::ノ ⌒i::}   /::::::`ヽ
            シ゛    }シ⌒` ̄ヽ:::::::|
            /  ● , '      }::::::::し
             /   /      .|´⌒´
           ヽ、/{     ___,、 l
                    | i`‐´| | {  } {
                   } {  } {_{  }_{
                  }_{  }_{;;} {;;;;}
               {;;;;}. {;;;;}
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125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 22:01:46.03 ID:/lU5MQnCO
乙乙
やっぱエミリアは銃持ちか
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 23:57:09.41 ID:l7qYqyLHO

ユニコーンには気の毒だがまあ前に出てくるのが悪いよね
127 : ◆MQKemQ7EZz9R [saga]:2017/11/14(火) 22:09:56.72 ID:TIjgsdFU0





                「フゥーッッ…!フゥーッッッ!」ギリッ






本来ならば眼球が"あった"部位からは止めどなく、油のようにどろりとした粘度の高い血液が、

そしてボタッ、という音と共に腐れて腐汁が溢れ潰れたトマトを思わせる眼球だったモノが落ちる








目の前の4本脚が息を荒げ熱り立ち発砲した女を睨むのも当然と言えた。






エミリア「…」チャキッ!




それに対し彼女、エミリアは臆することなく無言で銃を構え続ける


エミリア「貴女達、得意な分野は何?…見たところ術士の人もいるみたいだけど」

アセルス「…一応剣を、後ろの二人は術がメインだ」バッ



[幻魔]をいつでも鞘から引き抜けるように半妖の少女も抜刀の姿勢に入り、後ろの人間と妖魔も術を発動させる態勢へ移る



エミリア「…分かったアイツの足止めをする、貴女はあいつに一太刀浴びせて頂戴!後ろの二人も術で彼女を援護して!」





言うが早いか、それを合図に一角獣は額に生えた雄雄しい[角]の先端を戦槍の如く憎き相手の銅目掛けて突っ込む…ッ!


  「ギィヒィィィィィン!!」ダンッ

  エミリア「遅いっ!」ズダダダダダッ!!




 槍と銃、近接武器と飛び道具…ただの馬ではない4本足の瞬発力を以てすれば銃弾に勝ることすら可能であったが
相手はそれ以上の反射神経の持ち主であることは先の眼球を撃ち抜いた件でもハッキリとしていた



場数が違う、この女相当の修羅場を潜り抜けているのだ…レベルに差があり過ぎる




片手銃で[早撃ち]からの[地上掃射]という荒業を実践するエミリアの真横をアセルスが駆け抜ける!
 地団駄を踏む様に忙しなく四股を動かし、被弾しないように努める[ユニコーン]の喉元目掛け横凪に一閃
紅い劔の軌道上にワンテンポ遅れて一角獣の鮮血が後を追うように迸る


白薔薇「光熱よ降り注げ…っ!―――『<太陽光線>』」

128 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/11/14(火) 23:56:28.12 ID:TIjgsdFU0


 白薔薇姫が手を天に翳す、掲げた右手は太陽へ手を伸ばす女神の絵画を連想させ――掌は小さな淡い光に包まれ
その輝きから直径20p相当の光球が生み出される

風船が浮力を持って地を離れるように彼女の手から浮かびあがり…っ!






         ドジュウウウウウウウウゥゥゥゥ!!



「ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいじぃぃじゅぅぅいいいいいいーーーっ」




熱線を放つッッ!アセルスが切りつけた剣傷をなぞっていく光線は肉の焼ける音と血の蒸発する異臭を漂わせる
『<太陽光線>』が照射されるタイミングに合わせて飛び退いたアセルスお嬢は生き物が焼ける匂いに顔を顰めたが
幸いにも他の3人は後方支援に徹している為、敵の最前線にいる彼女の顔を見る者はいなかった


陽術の神秘が純白の毛並みを黒く焦がし、肌を焼き、皮膚の裏側を―――傷口から焦熱が入り込む



外と内、両方への攻めに悶え苦しみ奇声を上げる[ユニコーン]は首を狂ったように振り回す
 苦し紛れの挙動、出鱈目に振り回す角の先端は宛ら執拗に肌を焼く光を薙ぎ払おうとしているようにも思えた




ルージュ「…これで、眠ってくれ!!『<インプロージョン>』」キュィィィン!!



 人に仇なす野生のモンスターとは言え、その有様にはさしものルージュも憐れみを覚えたのか、最後にそう言ってから
爆裂魔法を発動させる、二十二面体の光の檻が一角獣の棺となり―――獣を一瞬でこの世から消し去った







  せめて、痛みも苦しみも感じる間も無く、逝けるように彼がそんな念を込めて放った即死の魔術である







エミリア「」ポカーン


エミリア「貴女…、すごいじゃないの!なぁんだ!一撃でそれができるなら早く言ってよね!」


ルージュ「えっ、あ…はい」



"貴女"…金髪の女性の自分を見る目とニュアンスから…『ああ、またか…』と彼はうんざりした顔をした



エミリア「? ああ、自己紹介が遅れたわね!私はエミリアよ!貴女達は?」

アセルス「私はアセルス!そして」クルッ


白薔薇「白薔薇と申します」


エミリア「そう!(白薔薇…凄いあだ名ね)」


アセルス「そっちの銀髪の人はルージュっていうんだけど…その人は…その男の人なんだ」

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:02:32.04 ID:6/TbcSGm0




エミリア「へぇ!アセルスに白薔薇ちゃん!そしてルージュ…」










エミリア「…」













エミリア「ごめん、もっかい言って?」



ルージュ「僕は男なんです…今、こんな格好だけど、無理矢理着せられたんです…」





今度はアセルスではなくルージュ本人が答えた














エミリア「ええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」









仰天、そりゃそーだ、こんなセーラー服の似合う銀髪女子大生としか思えない人間が男とか誰も信じない


エミリアは色んな意味で叫んだ


『なにそれ!?似合い過ぎでしょ!』とか…『えっ、あの怪物<ヤルート>ってそういう趣味もあったの?』とか…




とにかく驚いた、目を白黒させた
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 00:42:20.62 ID:6/TbcSGm0


ハハハ、と乾いた笑みを出し始めたルージュを見て、ハッと我に返り彼女は
『それにしてもなんであんなのが基地に居るのかしら?』と目をそらしながら口にした



感情豊かな人なのだろう、表情をコロコロと変えるエミリアを見て率直な感情を胸にアセルスが回答を述べる


アセルス「きっとゾズマ―――私の知り合いの妖魔なんだけどね、そいつがこの基地を大騒ぎにしてやるって言ってた」


アセルス「さっきの[ユニコーン]もたぶん、アイツが連れ込んだんだ」




エミリア「えぇ!?グラディウス関係無いの!?」ガーン

エミリア「…ルーファス達はなにやってるのよぉ…」ハァ…



がっくり肩を落としてグラディウス…後に説明されたが、彼女エミリアが所属する組織らしい…そのグラディウスとやらが
自分を助けに来なかったことに落胆した


エミリア「…あぁっ!もうっ!良いわ!」キッ!

エミリア「貴女達、此処から出たいんでしょう?
      私はこれからあのヤルートの奴をとっ捕まえて色々聞き出さないといけないの!」


エミリア「荒っぽいことになるから、何処かに隠れるなり避難した方が良いわ」






アセルス「ヤルートを捕まえるの…?」

アセルス「ルージュ!白薔薇!」バッ!






振り返ったアセルスの眼を二人は見つめ返す

分かってる、手伝いたいのだろう…






白薔薇「アセルス様のご随意に」ペコリ
ルージュ「まぁ、見過ごせないよね!」ニコッ


アセルス「…ふたりとも、ありがとう」




  アセルス「エミリア!ヤルートを捕まえるなら私達も手伝うよ!……あんな奴は許しておけない!」



"あんな奴は許しておけない"その一言にはアセルスの個人的な感情も含まれていた



かくして、旅のトラブルはまだまだ続くのであった…

―――
――

131 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/11/15(水) 02:13:09.19 ID:6/TbcSGm0






           ※ - 第2章 - ※



        〜 交叉するキグナス号の紅蒼 〜





132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2017/11/15(水) 02:56:45.86 ID:6/TbcSGm0















            [活力のルーン]を手に入れた!














…まさか、このような事になろうとはな


塞翁が馬、とでも言えばよいのか?






 今なら、この不快な空間に居る事すら笑って許してやれる程だった
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 03:13:41.10 ID:6/TbcSGm0






















     弦楽器を背負ったニート「いやぁ〜良かったじゃんか!探してたルーンが手に入ったんだろう?」











                       ブルー「…」





今なら、この不快な空間に居る事すら笑って許してやれる程だった

彼は今現在、自分がこんな気色の悪い生物の体内に居る原因の一人を不問にしてやろう、と考えた







なぜこんなことになったのか?そう…あれは時を遡る事数時間前、まだ[クーロン]に居た頃だ…














【双子が旅立ってから…2日目、早朝 朝6時27分  [クーロン:安宿]】
*******************************************************
134 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/11/15(水) 03:56:44.43 ID:6/TbcSGm0


 
 7時前に蒼き術士は起床し、気怠そうにラウンジへ脚を運んだ…薄っぺらい食パンにキツネ色の焦げ目がついていて
その上に溶けだしたバターの乗ったトーストが一枚、レタスとミニトマトだけのサラダが注文<オーダー>した朝食だった




昨晩は…疲れた、術力を使い果たす程には戦闘を重ね、肉体にもダメージを負い…ついでに悩みの種が出来た



ブルー「…不味い」モグモグ



味気ない、値段の割にカロリーが全くない薄いトーストと酸味の無いドレッシングの掛かったサラダという最低な朝飯だ
 淵が少し欠けたカップに注がれた苦みを喉に流し込む…角砂糖もミルクもついてこない100%のブラックは否応なしに
ブルーの瞼の裏に残る微睡を吹き飛ばす


 この安宿は食事等のオプションは別料金制になっている、それは以前書き記したことだろう
サービス自体は決して良い店舗とは言えないがそれでも物足りなそうな顔で頬杖をついている彼が
文句を言わずとも済む献立くらいは用意できた、金さえ払えば




ブルー「世の中、金か…チッ」ゴクゴク




肉体、精神ついでに悩みの種を作って来た一夜、その悩みの種というのが…





   - アニー『ん?"[解放]のルーン"と"[活力]のルーン"について教えて欲しいって?』 -


   - アニー『…ふっふっふ…良いわ、教えたげる、あっちの方に"イタ飯屋"はあるでしょ?そこ行ってみな』 -


   - アニー『そこに[解放]のルーンに詳しい女が居るのよ、…ついでに[活力]にも』 -


   - アニー『案内料は高くつくけど、その女にしか案内できないから、んじゃ!そういうことで〜♪』 -











  ブルー「 お 前 じ ゃ な い か !!ふざけるな!!!」机ダンッ!!



空になったコップを半ば叩き付けるように怒りと共に机を叩く



早速そのイタ飯屋に脚を運んでみればどうだ?シップ発着場で別れた女が何喰わん顔で店前で壁に寄りかかって
彼が来るのを待っていた、別れ15分も経たない再会であった

しかも開口一番にこう言ったのだ



   - アニー『よく来たわね、待ってたわよ?解放のルーンは刑務所のリージョン[ディスペア]にあるわ』 -

   - アニー『そ!アタシがその案内人の女ってワケ!んで案内にはとーぜんお金が要るわ、これも商売なんで♪』 -


ちろっと舌を出して、監獄に潜入するには定期的に行われる電気系統の修理点検や配管工に扮して入る他ない事

それをやるには彼女…アニーの協力が必要不可避という事を知らされたのであった
135 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/11/15(水) 04:41:16.48 ID:6/TbcSGm0


 ぴしっ、叩きつけた衝撃で元から欠けてたが安っぽい瀬戸物に罅が入る…

ブルーは額に手をやり深くため息を吐いた、これはいけないカルシムと糖分が絶望的に足りない


旅立ちから僅か2日で資金難に陥るなど誰に想像できようモノか



 無駄な出費が出そうになった所で冷静になろうと努める、如何せん彼は冷静さを象徴する色を名に持ちながら
直情的な一面がある……というよりも神経質な所があるのだ


今まで国家の誇る優等生として学院に大事に育てられた温室育ちのお坊ちゃんだったのも加味しているのだろうな




豪華客船のチケット代とバイキングディナーの料金…それに加えて[ディスペア]への潜入費用
 家族を養うべくお金が必要なアニーへの支払金は今のブルーの手持ちでは…"ギリギリ足りない"


いや、頑張ればどうにかできそうではあるが、その日から路上ホームレス生活まっしぐらである














           ブルー「…金を稼ぐ方法…そんなの俺は知らんぞ…どうすりゃいいんだ…」











そうなのだ、ブルーは"温室育ち"なのだ


両親がいない、物心ついたころから国家の保護施設に居て、『親』である御国の為に奉仕する、それがブルーだった

周りの学友の中には街でアルバイトというモノをやっていたのをブルーは聞いた事があった


自分でお小遣いを溜めて欲しいモノを買ったり、友達と遊んだり……だがブルーにはそれが無い

 欲しいモノなど無いし、特別仲の良い友人と呼べる間柄の人物も居なかった、青春の大半は術士としての学に励んだ
修行の日々、魔術の学問を追い求める、それだけ



ある意味で欲の無い男だった。



そして、『普通の人』とは明らかにズレていた、世間を全く知らない、善くも悪くも俗世に疎かった






  天才であると同時に努力家でもあった、…だが融通が利かない

   なんでも知ってるようで、本当はなんにもわかっちゃいない…"世間の一般的な事"を何一つ分かっちゃいない


  22歳になって金銭を稼ぐ方法をまったく分からない…そんな現実に天才は打ちのめされた

136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 05:32:27.81 ID:6/TbcSGm0


途方に暮れる、と言った所だ

頭抱えて少しの間一考するも、濁り模様の思惑に光明が射すことはなかった




ブルー(…考えても仕方あるまい、今できる事をせねば)




今できること、修得可能な術の資質を手にすること…即ち陰陽のどちらかの資質を取得することだった




太陽の力、光を司る"陽術"

影を、闇の力を操る"陰術"



どちらを取得するかブルーは既に決めていた…宿でチェックアウトを済ませ『<ゲート>』で[ルミナス]へと飛ぶ










もう一度言おう、ブルーはあらかじめ取るべき資質を決めていた

そこまでは良かったのだ…








悪い事や不都合というのはどういうワケか一度起きるとドミノ倒しのように連動するようで…

[ルミナス]に到着したばかりのブルーは…







        ブルー「封鎖中だと!?おい!どういうことだ!!!」


  「お、落ち着いてください!…コホン、お客さん見たところ術士の御方ですよね…なんとも間が悪い」

  「いえ…昨日、このリージョンでちょっとした事件があったらしんですよ」

        ブルー「事件だと?一体なんだというのだ!」





  「それが…昨日の19時近く吊り橋の先、分岐路付近で戦闘行為があったらしいんですよ」

        ブルー「なっ!?修行者の聖地[ルミナス]で戦闘行為だと!?どこの馬鹿だ!」




おずおずと答える職員の口から告げられた事実にブルーは激昂する
 術士にとっての聖地と言っても過言でないこの地は…ルミナパレスとオーンブル以外は非戦闘区域と指定されている
にも関わらず戦闘を行うなどよっぽど非常識な輩に違いない、もし会おうものなら殴りつけてやりたいと思った



…ちなみ、その非常識な輩は今、緑髪の半妖少女、頭に花飾り乗っけた妖魔、金髪美女と軍事基地に居る
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 05:53:20.66 ID:6/TbcSGm0


「詳しい詳細は不明ですが…妖魔が関わっているとかで…今、IRPOの方にも捜査してもらっているのですが…」



そこまで言って職員は首を横の振る…



「誠に申し訳ございませんが、お客様の安全の為です…テロの可能性もありますので…当面の間は陰術も陽術も…」



ブルー「〜っ!くそっ!!」






術さえ使えば[ルミナス]にはいつだって飛べる、それは分かるがこれは何とも間が悪い話だ…


結局ブルーは[クーロン]に戻って銭を稼ぐ方法を調べるか、他のルーンを探す旅に出るかしかない訳だ









クレイジーなIRPO隊員「はぁ〜…ったく、なーんもわかんねぇ、か」

無口な妖魔のIRPO隊員「………」

クレイジーなIRPO隊員「あぁん?なんだって……マジか、妖魔の君絡みか…めんどくせぇ」

クレイジーなIRPO隊員「お前は引き続きこっちの調査やっといてくれ、俺?俺は別件でこれから[マンハッタン]だよ」

クレイジーなIRPO隊員「前々から話に挙がってたろ?ミス・キャンベルの件だ…ちょっくら行ってくるわ」






遠目にIRPOの捜査官と思わしき人物が何やら話し合っているのが見えた、だがそれはブルーには関係の無い出来事である

しばらくしてから来るしかない、ブルーはすぐに『<ゲート>』の術で飛び去った



―――
――


【双子が旅立ってから…2日目 朝7時14分】



弦楽器を背負ったニート「あ"ぁ"〜…」ヨロッ

弦楽器を背負ったニート「飲み過ぎたぁ……」



弦楽器を背負ったニート(酒には自信あったんだけどなぁ…ライザ飲み比べ強すぎるぜ)



 [クーロン]の屋台が立ち並ぶ通りで空がぼんやりと明るみだした頃…

 如何にも二日酔いです、といった風の男が1人歩いていた、ぼさぼさの長く伸びた髪に田舎者丸だしな服装
民族風の帽子を頭から落とさないように抑えながら彼は電柱やら建物の壁やらに無許可に張られた広告や求人のチラシに
視線を泳がせていた


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/11/15(水) 06:11:18.21 ID:6/TbcSGm0




弦楽器を背負ったニート(なぁんかエミリアは仕事で今は居ないっていうしなぁ、近場に寄ったから顔見せに来たけど)


弦楽器を背負ったニート(こりゃクーン達についてくべきだったかな…)ポリポリ




弦楽器を背負ったニート(…んと、何々?頭を取り外して笑える人大歓迎…ヌサカーン院…なんのバイトだよ…)チラッ



弦楽器を背負ったニート「…面白そうな事ねぇかな…」スタスタ













弦楽器を背負ったニート「…やっぱ、艦長さんトコにでも行ってみるべきかね」スタスタ













何処か不思議な男だった、飄々としていて、不思議と目を向けたくなる…そんな気にさせる男が歩いていた

 田舎から就職の為に上京してきたが、未だ職にありつけないでいる彼は
ひょんなことから出逢ったとあるリージョンシップの艦長の事を思い出した


自分の父親の知り合いらしい女性、そしてあまりにも無唐無稽な話を語り出した反トリニティの旗を掲げるリージョンの人






―――そこまで考えて彼は首を振った







弦楽器を背負ったニート「これからどーすっかなぁ…―――」




両腕を組んで後頭部に当てながらブラブラと街中を歩いていた彼は妙な気配を感じた

妙な、としか言いようがない、風も何も無い室内で木の葉が風に舞っている、そんな矛盾した感覚

彼はその方角へ目を向けるすると…




   ブルー「…いっそのこと先に[勝利]のルーンを探すべきか…」ブツブツ



何も無い空間から1人の人間が音も無く現れた、それをみて彼は思った『面白いモノを見つけた』と
139 :今回は一旦此処まで [saga]:2017/11/15(水) 06:25:58.05 ID:6/TbcSGm0



弦楽器を背負ったニート「なぁ!!!そこのアンタ!!」キラキラ!


ブルー「!?!?」ビクゥ!!




 朝っぱらから大音量の音声がブルーの鼓膜に直撃する、考え事をして足元を見ながら歩いていたのも相まって
その大声は効果抜群だった、術士が無駄に肺活量の高い人物の方を振り向くと




弦楽器を背負ったニート「今のスゲーな!どんな手品だ!?あっ!その恰好…はは〜ん分かったぞ術士だろ〜!」ニヤニヤ


ブルー「…」










ブルー(なんなんだこの男は)



変なの目をつけられた、瞬時に悟った彼は『すいません、先を急ぐ身なので』と逃げる様に立ち去ろうとするが…





弦楽器を背負ったニート「〜♪」テクテク

ブルー「…」テクテク





ブルー( な ぜ つ い て く る !! )



ブルー「あの、僕に何か用ですか?」クルッ

弦楽器を背負ったニート「ん?別に俺はあっちの方角に用事があるだけだぜ」




ブルー「そうですか…」

弦楽器を背負ったニート「おう!ところでアンタさ!」





1つ、失敗を犯した

此処で振り返ってこの男に声を掛けた、そのまま無視して相手が諦めるまで歩けば良いものの…

ブルーはこの男に『会話を切り出させる機会を与えてしまった』のだ




      成績優秀で融通が利かない世間知らずの天才

      田舎からやってきた無職<ニート>…なのだが、世間を巧く乗れる男



アニーに続く後の腐れ縁その2との出会いだった
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 22:55:03.57 ID:2QrfuOapo

いい根性してんなアニーww
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 11:30:00.66 ID:LmV+rv+aO
乙乙
ボれるとこからはボっておく精神
そしてここでリュートか、続き楽しみ
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 17:01:43.09 ID:QXh9rXoy0
続き来てた

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/06(水) 00:19:01.93 ID:1MyQWKN50




弦楽器を背負ったニート「その法衣、[マジックキングダム]の人だろ?俺、前に観光に行ったからよくわかるんだ〜」


ブルー「…そうですが何か?」



好奇の目に晒されるのは好かない、見世物小屋の珍獣じゃないんだぞ、と苛立ちが滲みだしそうなブルーは
さっさと会話を切り上げてしまいたかった





この返答はミステイクだった





弦楽器を背負ったニート「ふぅん…やっぱそうか〜[ルミナス]とも[ドゥヴァン]とも違うからそう思ったんだよな〜」

























弦楽器を背負ったニート「あの国ってさ、国民は他所のリージョンへ外出が禁止されてんだろう?アンタ何者なんだい?」

                    ブルー「!」ハッ!





[マジックキングダム]は国の最高機関である"学院"が定めた者以外、リージョン界の外遊を許可されない
ブルーの返答はこの男の興味心を更に掻き立てる返答だったのだ







ブルー「…貴様」ジロッ




空気が変わった、眉間に皺を寄せ不機嫌を露わにするブルーに動じない男は呑気な声調で
「おいおい、そんな怖い顔しなさんなって、単なる興味本位さ」と笑うのだ




怖いモノを知らないのか、それともこの男が大物なのか、その態度が彼は気に喰わなかった


144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/06(水) 00:43:33.17 ID:1MyQWKN50


だから…ちょっと脅してやろう、と彼は考えた、無論この鬱陶しい男を遠ざけたいのもあった


ブルー「…故郷のちょっとした風習でな、俺は外界でより高度な術を学ぶために資質を得る旅をしている」


弦楽器を背負ったニート「へぇ〜、それにしても『俺』かぁ、なんとなく思ったけどやっぱ猫被りだったんだなアンタ!」


ブルー「」イラッ


へらへらと笑いながら横を歩く男にムッとしながらも話しを続ける

ブルー「己の術を磨き、どこまでも洗練しそして…」




弦楽器を背負ったニート「そして?」ワクワク










          ブルー「故郷の慣例に従って、自分の身内を殺す」









御伽噺に出て来る魔女か何かだ、口元を歪めて悪い魔女が魅せる様な笑みを浮かべる

彼の予想通りとでも言うべきか、目の前のボサボサ髪の男は面食らったような顔で立ち尽くした




ブルー「国の習わしで、双子が生まれた場合…片割れがもう片方を殺すという風習なんだ」

ブルー「分かったか?血が繋がった相手を殺すという宿命なんだお前に構ってる暇なん「アンタ双子なのか!すげー!」





ブルー「……は?」




弦楽器を背負ったニート「いやぁ〜俺んトコの地元にも双子が居るんだけどさぁ、双子って珍しいからなァ」

弦楽器を背負ったニート「それにしても双子同士で争うって物騒だな、もっと平和的に解すりゃいいのに」






ブルー(…な、なんなんだこの男は!!)




頭痛がしてきた、自分からこの話題を振っといてなんだが、このノリは何だ!?


弦楽器を背負ったニート「宿命の対決かぁ…あっ、そういや俺まだ名前言ってなかったな俺、リュートってんだ!」

リュート「兄ちゃんアンタは」


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/06(水) 01:21:46.60 ID:1MyQWKN50



ブルー「……なんでお前に名乗らねばならんのだ」


ペースが乱される、艶やかな金髪を鷲掴むように頭を抑え、この―――…鋭いんだか天然ボケなんだかよく分からん男に
目線も合わせずに答える




リュート「えぇー、別に良いだろう減るもんじゃねーしよぉ……なら、そうだな…」ジーッ




ブルー「…」アタマ、イタイ




リュート「よしっ!」グッ



リュート「アンタ蒼い服着てるから、ブルーな! Mr.ブルー!」ニカッ!



ブルー「っ!?」ドッ!




すっ転びかけた、本当にペースが乱される


リュート「んん?どうしたんだ?」


ブルー「…いや何でもない」


―――
――




リュート「って訳で俺は故郷から就職できる場所を探して旅してるってワケさ!」

ブルー「朝っぱらから酒臭い匂いを漂わせてる奴が言う台詞じゃないがな」




二日酔いのリュートに指摘する、終始調子を狂わされっぱなしの彼は、追い払うことを諦めた…



リュート「それにしてもアンタも銭稼ぐのに困ってんだなぁ」

ブルー「ふん…」



観念したブルーは口数の多い男を話しながら歩いていた、昨日のがめつい女に関する愚痴や[ルミナス]に行ったのに
無駄足だった事…

誰でも良いから胸の内を吐きたかった、追っ払えないなら精々コイツを話し相手ぐらいにしてやろうと開き直ったとも言う




リュート「しっかし、アンタ聞けばとんでもない女にふっかけられたんだな、そんな簡単に用意できないぜ?」

ブルー「ああ、まったくだ…」ハァ…


146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/06(水) 01:36:27.90 ID:1MyQWKN50


リュート「俺の知り合いにもお金が好きな女が居るけど…」


ブルー「はっ!そんな奴がこの世に何人も居るなんぞ考えたくも無いことだがな!」




鼻で嗤う金髪の術士は知らない、実は今隣を歩いている男の知り合いの金に目が無い女が同一人物であることを


リュート「…お金、金…カネ…」










リュート「!」(豆電球)ピコンッ!




リュート「なぁ!!さっきの術![ゲート]だっけ?あれって一度行った事ある場所ならどこでも行けるのか?」ガシッ


ブルー「なんだ突然藪から棒に…」



肩を強く掴まれ訝し気に眉を顰めるがそんなの知った事かとリュートは続ける








      リュート「俺とコンビ組まないか?今日一日でアンタを大金持ちにしてやれるぜ!」ニィ!!


                ブルー「…どういうことだ?」







リュート「へっへっへ!なぁに!真面目に働くのも良いことだけどさぁ〜、こういうのは財テクってのがあるんだ」


リュート「良いか!兄ちゃんよォ、まずアレを見な」びしっ



ブルー「?」チラッ





         金券ショップ:クーロン店『 金、銀、プラチナ…なんでも買います! 』ドンッ☆






ブルー「…あれがどうかしたか?」


リュート「移動しながら話す!まずはシップ発着場だ!そこから[ネルソン]へ行くんだよ!」ダッ

ブルー「お、おい!待て!まだ俺はお前と組むなんて一言も言ってないぞ!説明しろ!!」ダッ!


147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 01:54:39.75 ID:3xGmg1wE0
金転がしか、俺はジャンク屋で稼いでたなあ
148 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/12/06(水) 03:06:44.07 ID:1MyQWKN50


―――
――




…これ弦楽器を背負ったニートことリュートとの出会いであり、今現在巨大生物[タンザー]に飲み込まれた発端である

割愛するが、リュートと名乗る青年の提案はこうだった




[ネルソン]というリージョンがあり、そこでは金塊を一つ500クレジットで購入できる…

世界を統括する政治機関…トリニティに属さないリージョンの為、グローバル通貨であるクレジットが手に入らない
つまり他所のリージョンから輸入ができない

そこで観光客に地元の品とクレジットの交換を求めるケースが多いのだ




金塊、金のインゴットが1つ辺り500という価値に対し、此処[クーロン]街における金相場は1000…

早い話が安い所から仕入れて物価の高い土地で売り払う、単純な転売という事だ


[ネルソン]は今説明した通り、少々特殊なリージョンで片道だけでも船の乗り継ぎが必要という手間の掛かる土地だ



船賃と時間、人件費を考えるなら大抵の人は素通りしていく、資産家が一気に買い占めて一気に売り払う
極力、安くないだろう船賃を払って何度も行ったり来たりしない、という前提で漸く利益を取れる




そう…"何度も船賃を払って往復するから収支差益があまり良いモノと呼べない"のだ






なら交通費用が無料<タダ>だったら?余計な経費が無ければその分黒字が増えるのは当然と言えよう


この案に術士は目を丸くした、このちゃらんぽらんなニート…中々面白いことを考えるじゃないか
ブルーはこれに承諾、さっそく船に乗り込み一攫千金目指して船内で身を休める事にした

















 世の中、甘くない

 乗った船が童話のピノキオに登場するオバケ鯨よろしく船を飲み込む怪獣[タンザー]に飲み込まれるアクシデントと遭遇







  ブルー「 ど う し て こ う な っ た !!」

  リュート「いや〜、ついてないなぁ!」ハッハッハ!


149 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/12/06(水) 04:13:41.48 ID:1MyQWKN50


 巨大生物[タンザー]…あらゆる生物が生存不可能な混沌の海に唯一耐性がある生物であり
その体内は一つのリージョンとも呼ばれていた


がっくりと膝をついて項垂れる金髪術士の隣で何が可笑しいのかお気楽に笑う男、その少し先には他の乗客達が
困惑の色を浮かべ、思い思いに不安を口にしていた


「ここは何処だ!」
「ひょっとして[タンザー]とか言うのに飲み込まれちゃったの!?」

「嘘だろ…俺は船乗りたちのホラ話だと…」









緑の獣っ子「あれ〜?…ねぇメイレン、僕達[ヨークランド]に行く予定じゃなかったの?ここが[ヨークランド]?」

チャイナドレスの美女「違うわ…此処は[タンザー]よ…予定と違ったけど此処にも"指輪"があるわ」







リュート「ん?あれは―――…」

ブルー「…いや、こういう時こそ[ゲート]で脱出すれば」ブツブツ…







   「おらおら!!全員動くんじゃあねぇぞ!船から積み荷を降ろせぇ!」
   「へっへっへ…久々のシップだぜ…酒や食料はたーんとあるだろうなァ」



見るからに柄の悪い…ヨレヨレの服を着た男達、恐らく"不幸にもタンザー]の先住民となってしまった輩"なのだろう


   「このバケモンに飲み込まれてから俺達の食糧も底をつきかけてたんだ…天は俺達を見捨ててねぇぜ!」へへっ

   「オラァ!ハチの巣にされたくなけれりゃ全員荷物を寄こしなァ!ついでに金目のモンもだーーーっ!」ズドドド




リュート「おい、ブルー、いつまでもそうやってぶつくさ言ってる場合じゃないぜ?」ポンポン

<ヤメロー
<逆らう気か!?この獣!


ブルー「そうだ、此処にはアニーから聴いた話だと[活力のルーン]があるはずだ、ならば不運なんかじゃ――」ガバッ!

ブルー「…?なんだあの連中は」


<ほー、アンタら強いね


リュート「此処の先住民じゃないか、…ってかお前今アニ「ちょっと待ったぁ!」



     ザワザワ…

              …誰?


弁髪の男「その女についていってはならん!」

150 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/12/06(水) 05:14:55.97 ID:1MyQWKN50


弁髪の男「その女は悪名高いリージョン強盗団のノーマッドだ!」


「強盗!?」
「マジ!?」
「いい女だ…」ポーッ


ノーマッド「ああ、そうさ、あたしゃ外じゃそれなりに悪さしまくったさ」

ノーマッド「言い訳する気はさらさらないけど、どうすんだい?ちんたらしてたら[タンザー]の奥まで飲まれちまう」

ノーマッド「あたしについてくも良し、そのハゲ頭についてくのも良しさね」





弁髪の男「ハゲではないッ!!」




ノーマッド「ふんっ!」シュタッ!



ざわざわ…がやがや…



リュート「ほへ〜…なんか俺らが喋ってる間に色んな事が起きてんな〜…ってブルー?」チラッ











ブルー「…」スタスタ




リュート「あっ!?おい!勝手に独りで何処行く気だよ」トテトテ…!




ブルー「ふん、外野共が何をしようが知ったことか、俺は此処でルーンを見つけてあとは[ゲート]で出て行く」スタスタ



先の喧騒…弁髪の男と此処に呑まれたらしい強盗の女首領との小競り合いだの、なんだのは微塵も興味が無い
 自分の目的をとっとと達成して此処を出て行くだけである…[ネルソン]の金塊の売買に関しては何でもリュートに
コネの効く人物がいるらしい、リュートくらいは連れてってやろう、彼はそう言いて他の群衆とは違う道を―――


2人で[タンザー]奥へと歩いていくのであった





そして―――今現在




         リュート「いやぁ〜良かったじゃんか!探してたルーンが手に入ったんだろう?」






                       ブルー「…」

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 08:49:22.05 ID:vyhsoMPdO

金転がしの利益を思えばこの程度苦労でもなんでもないどころかルーンまで手に入るとかいいことづくめであるんだよなぁ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 12:07:19.61 ID:FNLOgK98O
乙乙
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 16:11:38.73 ID:1o+2dcah0
ブルー編だとそのまま本当にリージョン移動でフェイオン見捨てるから仲間にできないんだよなぁ
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/10(日) 04:18:41.27 ID:eD7lB2/00



   リュート「しっかし凄かったなぁ!…あの術、[ヴァーミリオンサンズ]だっけ?」


 時折…足元にある無数の網目模様じみた緑色の血管が脈を打っていた
それは偏にこの巨大生物[タンザー]がちゃんと生きている証拠であり、ぶよぶよとした毒々しい肉の壁も
天井から垂れ下がった人間<ヒューマン>の肝臓に似た何かも規則的に動いていた


生物の体内に居るというのは本能的に居心地が悪い



今居る所が身体の部位で言うところの胃、消化器官にあたるのならば尚更であった




術士ブルー、放浪の詩人…もとい就活中の男リュートは[タンザー]内部の最深部へと脚を踏み入れた

磯巾着のような触手蠢く入口に自ら飛び込み別の区画に移動する事もあった、胃液の様な粘液で滑る下り坂も降りて行った
そうして、到達したのが通称"スライムプール"と呼ばれる場所だ


…尤も、この二人は此処に詳しかった先程の弁髪の男…フェイオンという名なのだが、その男を無視して手探りで来たから
そのような名称で呼ばれている事など露知らずなのだが



胃の消化液の代わりをしているのかどうかは分からない、だが此処に誤って入り込んだ者は
無尽蔵に湧いてくるゲル状モンスター[スライム]の群れに囲まれ四方八方から[溶解液]を噴きかけられて溶かされるだろう






 - アニー『―――ってわけよ、ヤバかったわマジで…全体攻撃無いとキツイわよ[活力のルーン]…』ハァ -





 ブルー(…早速情報が役に立ったか)





ブルーは予め此処に一度来た経験のある人物から覚えている限りの道順と対策を聞いていた
だから、弁髪の男達を無視して勝手に此処まで来れたのだ

そうでなければ、何の手がかりも無しでルーンを探すなどと言う無策には走らない


以前、此処に来たというアニーは自身含めた3人組で、剣、銃、拳で無限湧きの[大スライム]に苦戦したそうな





 複数の[大スライム]とその後ろに更に一際大きい[特大スライム]…それ等は
自分達に生を与えてくれる大事な物を護っていた

キラキラと輝く結晶体、水晶玉にも見えるその中に刻まれた"活力"を意味するルーン文字を




リュート「真っ赤なデケェ宝石が出てきて、バーン!って割れて皆ぶっ飛ばしちまうんだもんなぁ〜」

リュート「俺も覚えらんないか?あれが出来たらスゲーだろうしよぉ」



ブルー「貴様には無理だ、あれは【魔術の"資質"】を持った者だけが扱える高位の術だ」

ブルー「魔術の"資質"は[マジックキングダム]で生まれた人間にしか授かる事ができん、諦めろ」


155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/10(日) 04:40:09.04 ID:eD7lB2/00


 単細胞生物の群れを昨日の粗蟲共と同じく、自身が使える最大火力で消し飛ばし
粘液のプールから新たな生命を持って再誕する前に手早くルーンが刻まれた結晶体に[触れる]…これで手持ちの小石に
2つ目のルーンが刻まれた[保護]と[活力]…



 後は[解放]と[勝利]だけだ…それでブルーは【印術の"資質"】を会得できる…っ!
祖国の勅令に、育ての親への奉公がまた一歩出来る訳だ




ブルー「ふん…、用が済んだならこんなとこに長居は無用だ、リュート掴まれ、此処を出るぞ」つ【リージョン移動】




ブルー(身体中がベトベトだ……くそっ!一度シャワーを浴びたいくらいだ)チッ



リュート「おう、今行く…ぜ?」


ブルー「どうした!さっさとしろ!」

リュート「…なぁ、ブルー、アンタ「なんだ歯切れが悪い、さっさと言え」



リュート「んー、まぁいいや、アンタ早く出たそうだし後で言うよ」スタスタ



コイツは何を言ってるんだ?身体中、粘液塗れでどろどろのぬとぬと状態の術士が少しだけムッとした顔になる
彼は目の前のお気楽者が何を言いたがったのかすぐには察せなかった


舌打ちするくらい、早く帰って湯浴みをしたいと考えていたのも相まったのだろう










リュートが蒼いの術士の足元を凝視していた理由……水溜り(?)を踏みつけたブルーの脚に"そいつ"が這っていた事に






   [タンザー]帰りのお土産「…(´・ω・`)ぶくぶくぶくぶー。」ピトッ ヨジヨジ…







…こうして[ゲート]の術で 2 人 と "1 匹"  が[タンザー]から脱出したのであった











【双子が旅立ってから2日目 朝 10時25分  ブルー[タンザー]脱出】


―――
――

*******************************************************
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/10(日) 04:43:06.02 ID:eD7lB2/00
*******************************************************




                オマケ【術士が去った後の[タンザー]】


 【双子が旅立ってから2日目 朝 10時 26分】


*******************************************************
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/10(日) 05:02:10.93 ID:eD7lB2/00



弁髪の男「ハイーーーーッ!!」ヒュッ!ゲシィッ


「ウゲェ!?」ドゴッ

「野郎!―――おぼげぇ!!」ドシャッ!




緑の獣っ子「…ふぅ、フェイオン!大丈夫?」



 [あびせ蹴り]を強盗団の一人にお見舞いした男は背後を狙われていた、凶器を振り下ろされるよりも先に
緑色の影が弁髪の男―――フェイオンを救うべく背後から不意打ちを仕掛けようとした相手の鳩尾目掛けて飛び出した




フェイオン「すまない、クーン助かったよ」


クーン「えへへ!褒められちゃったぁ!」



チャイナドレスの美女「クーン!フェイオン!まだ終わってないわ!和むのは後よ、後!」ジャキッ



ケモ耳と尻尾の生えた緑の子供とフェイオンに声を張り上げながら前方に[アグニCP1]を構え直す
3人は今現在リージョン強盗団の女首領ノーマッドを追っていた

ノーマッドが所有する"指輪"を手に入れる為だ



フェイオン「くっ、しかし…数が多すぎるメイレン!」


メイレン「ええ、雑魚に一々構っている時間は無いわ、そうこうしてる内に彼女は更に奥に逃げてしまう…っ」ギリィ




チャイナドレスを着た紫色の髪を結った美女が儘ならないこの状況に奥歯を噛み締める
このままでは"指輪"に逃げられてしまう、と




               グラッ…!





その矢先だった、突然、[タンザー]が苦しみ出すかのように暴れ出したのだ!


体内に居る彼等彼女等、皆に聴こえる程の唸り声を、…身体全体の細胞が地震災害に遭ったかのように揺れ動き
その場で交戦していたあらゆる者達が思わず、蹲る程の揺れ…






それもその筈だ



[タンザー]の体内、奥部で広範囲に渡る、とんでもない火力の全体魔術をどっかの金髪の蒼法衣の男がぶっ放したのだから





158 :今回此処まで [saga]:2017/12/10(日) 05:15:40.46 ID:eD7lB2/00



「な、なんだってんだ!今のは!!」

「う、うるせー!俺が知るかよ、んなことより野郎共を」










「てっ、てぇへんだ!てぇへんだぁぁァーーーーーーーーーーーーー!!」ハァハァ…!







「おお!丁度いい所に!お前!加勢し「ばっきゃろぉ!!それどころじゃねぇ!!フェイオンの旦那ァ!後生だ!」バッ






フェイオン「な、なんだ…一体?」

メイレン「気を付けて、私達を油断させる罠かも」ジャコッ!チャキッ!


フェイオン「ま、待ってくれ…相手はあの通り土下座までしてるんだ話くらい聞くんだメイレン」ガシッ

クーン「そうだよ、メイレン!鉄砲を下ろしてあげて」



メイレン「…引鉄は引かないわ、でも牽制の役目はさせてもらうから」



フェイオン「…昔からそうだった、こうなると君は梃子でも動かないからな、分かった」




フェイオン「すまない、そのままの状態で話してくれ!何があった!」





「い、今の揺れで…お頭が!お頭が[タンザー]に喰われちまったんだ!」

「な、なんだってーーー!?」
「お頭がァ!?」


フェイオン「何!?ノーマッドの奴が!?」

メイレン「!?!?!?"指輪"がっ!?」


クーン「??? 何言ってるの?ボク達は[タンザー]に飲まれてるでしょ?」



「い、いやそういう意味じゃなくてよぉ…なんか[タンザー]の器官だか何だか、にウチのお頭が喰われかけてて…」

「あぁ!!んなこたぁどうでもいい!頼む!フェイオンの旦那ぁ、俺達じゃどうにもできねぇ!お頭を!!」


フェイオン「うむ!例え悪党だろうと善人だろうと関係ない!あんな奴でも助けねば!」

メイレン「ええっ!指輪を手に入れなくちゃ!」

クーン「ああ!待ってよぉ〜!」

〜 オマケ1 完〜 
*******************************************************
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/10(日) 14:10:27.27 ID:pUf27zNZo
おみやげはブルーが持っていったからクーンはもらわずにすむな
やったねクーン餌の取り合いにならずにすむよ!
ブルーさんは御愁傷様です
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 09:16:53.61 ID:RpCcFrYsO
そういえばスライムついてきてたなww
乙です
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 14:21:42.89 ID:7YoFnztT0
このメイレンさんの執着心・・・例のアレに冒されるの早すぎませんかねぇ(困惑)
乙乙
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 18:44:01.92 ID:IWh+TUR40
メイレンは許さない(半ギレ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2017/12/12(火) 22:27:19.59 ID:oBhf20Wx0


 その日は、一際暑い一日だった


 東風が熱を帯びた身で忙しなく巡る人々の肌を焼く、日傘をさして歩く者も在らば麦わら帽子を被る者
 露店で売られている飲料を透き通るグラスに一杯注ぎ氷をひとつまみ入れる
 額に浮き出る玉汗をハンカチで拭いながらも聖堂へ脚を運び、修士として勤行に励む者のあらば
 快晴からのさして嬉しくも無い贈り物に根をあげ、ポプラ並木の木陰で涼を取る住民…



 暑い中、二人のよく似た少年…整った顔立ちと長く伸びた髪から少女にも見えたかもしれない





 蒼を身に纏った金髪と、紅を身に纏った銀髪が石畳の広場を歩く







    【わぁ!見てよ!広場に青いシートが敷いてあるよ!キミの服と同じ色だね!!】
    『…何の変哲も無いブルーシートだろ、大袈裟な…』


    【えへへ〜!僕はお外で遊ぶ事ってあんまりないから色んな物が珍しいんだ】
    『そうか、…どうやらアレは露店のようだな、縁日にはまだ早いが他所のリージョンから来たようだ』


    【他所のリージョン!?凄い凄い!見てみよう!】
    『お、おい!引っ張るな!』



    「いらっしゃい!色んな品があるよ!」



    【わぁ…これ何ですか!】

    「それはおもちゃのピストルだよ、空気しか出せないけど恰好良いだろ?」

    『…ふむ、[ワカツ]剣道?…面白い本だな』

    「ほー、キミ[ワカツ]流の剣術に興味があるのかい?いやー[シュライク]書店から買った甲斐があったね」



    【? 露店のおじさん、この本は?】ペラペラ


    「あー、それは―――!?」





    【…?なんでこの女の人達みんな服脱いでるんだろう?】キョトン


    【ねぇキミ、なんでこの人暑いの?】スッ


    『……なんだ、この本、文字が全く書かれていない上に下品な女達の絵だけ…』ペラペラ


    『無意味な本だな』ポイッ




    「あ、あー、キミたちこれは見なかったことにしてくれ!なっ!」アセアセ

          【『???』】


―――
――

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/12(火) 22:35:31.15 ID:oBhf20Wx0
*******************************************************







―――って、ってば、ねぇ!ルージュ! 起きて!!そろそろ到着するよ!!























              ルージュ「…むにゃ?」パチッ













アセルス「はぁ〜、漸く起きた…確かに[ラムダ基地]でのドタバタで疲れたけど、油断し過ぎだよ」

アセルス「また荷物盗まれるよ?」



ルージュ「…あー、ごめん、なんか小さい頃の夢見てた…」ゴシゴシ


白薔薇「夢ですか?」



ルージュ「うん、夢だから顔がぼんやりとしか思い出せないけど…昔、仲の良い友達と遊んだ夢…」ふわぁ…







エミリア「3人とも![クーロン]行きのチケットどうにか手に入ったわ!」タッタッタ…!










【双子が旅立ってから2日目 朝 11時17分  [マンハッタン]:ショッピングモール】
165 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga]:2017/12/13(水) 00:26:24.66 ID:hwTtdp/P0



 都市型リージョン[マンハッタン]…リージョン界を統括する政治機関"トリニティ"の御膝元であり
また最先端科学の髄は此処に在りとさえ言わしめる程に発展している


貿易センタービルが立ち並ぶ大都会の中央にはトリニティの"セントラルゲート"が聳えている
 今現在、彼等はショッピングモールの真ん中で別行動を取ったエミリアを待っていた



白薔薇(人がたくさん居ますわね…)キョロキョロ



[ファシナトゥール]から数百年余りは他所のリージョンに出た事が無い妖魔の姫君は現代の発展に目を丸くしていた

 何処もかしこもも、人、人、人…居眠りをしていたルージュとアセルス等と共に待つ傍ら、摩天楼を一頻りに眺めては
ある一点に目を向けた





白薔薇(…?あの塔、…いえ、"ビル"というのでしたね、妖魔の気配がしますが…)





妖魔は機械音痴の種族、それもあってこのリージョンでは妖魔は特に珍しい
…従って、"何故か大勢の妖魔が集まっている"場所が嫌でも目に付くのだ






後に、とある出来事が切欠で昇る事になるビル…"キャンベル貿易ビル"である




ルージュ「すいません、僕達の分のチケットまで確保して頂いて」


エミリア「いいーの!いいの!ヤルートの件を手伝ってくれたお礼も兼ねてるから」


 パチッとウインク一つ、金髪美女は朗らかな笑みで返してくれる…あの後、結局ヤルートには逃げられ
エミリアも追っていた仮面の男ジョーカーに関する情報は得られず終いに終わった


唯一の救い、とでも言えば良いのか…捜査中にアセルスの知り合い…ゾズマに出逢い
『モンスターを侵入させて基地を混乱させたんだから責任ぐらい取ってよね!!』と強気に出たアセルスが
拉致監禁された女性たちの身柄保護、そして基地から脱走の手助けをゾズマ率いる部下の妖魔達に手伝わせた事ぐらいだ






…どうでもいい話だが、最初ゾズマの恰好を見たエミリアは黄色い悲鳴をあげて銃をフルオート射撃しそうになったそうな


女装男子に続き、上半身裸で乳首に星型ニップレスという色黒イケメンという時代を先取りしたファッションの妖魔と遭遇



なんというか、その後もどっと疲れた様子で「ばかやろー…」と力無く嘆く姿が物悲しかった





ルージュ「ほんっとうにすいません!!」ペコッ ペコッ

アセルス「私からも本当にごめん!私のトコの変態が!」ペコッ ペコッ



エミリア「い、いや!良いから!二人共顔上げて!周りの人の目線が痛い!?」

166 :このレスは判定に含めない [saga]:2017/12/13(水) 01:46:42.60 ID:hwTtdp/P0




      エミリア「白薔薇ちゃん!この二人をどうにか…ってあれ?白薔薇ちゃんは?」








ピタッ、助けを求めだしたエミリアのその一言が"皮肉"にも目の前の二人を止めた




周りはこれでもかと言わんがばかりの人混み、その雑踏溢れる賑わいの中に花飾りの貴婦人の姿は―――無い





アセルス「し、しろばらぁぁぁぁぁ!!!」

ルージュ「白薔薇さんがいなくなったぁ!」ガーン!?






…妖魔は機械音痴の種族である、そして浮世離れした妖魔の姫君は絶賛、機械仕掛けの摩天楼で迷子となっていた


―――
――





白薔薇「」ポツーン


白薔薇「こ、此処は一体どこなのでしょうか…」オロオロ







Tシャツに鉢巻姿の酔っ払い「…んで、次は何処行くんだ?」テクテク



記憶喪失のロボット「レオナルド博士にメモリを増やして頂きました」

記憶喪失のロボット「その点を踏まえ次は[シュライク]、その次に[シンロウ]へ行く事を推奨します」


Tシャツに鉢巻姿の酔っ払い「なら次は[シュライク]だな…っと」

記憶喪失のロボット「どうされましたか?」


Tシャツに鉢巻姿の酔っ払い「…いや、派手な格好だなって、あんまジロジロ見るのも悪ぃな、行くぜ!」

記憶喪失のロボット「はい」




白薔薇姫の姿はこの通り傍から見て目立つ、おとなしくしていればすぐに3人に見つかるのだが
 見慣れぬ環境…[ファシナトゥール]ではまずお目に掛かれないメカの存在が彼女を"じっと"はさせなかった

人は自分にとって慣れぬ物、理解できない物を見ると興味を示すか、訳も無く畏れてそれから遠ざかろうとする心理が働く


彼女が前者か後者か、どちらの心理が働いたのかは分からないが、その場でとどまるという事はさせなかった
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/13(水) 02:13:57.68 ID:+OjESLO60
ワカツの剣豪!ワカツの剣豪じゃないか!
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/13(水) 08:06:15.86 ID:TlvmAdiUO
ちょいちょいサブキャラが出てくるのが楽しいな
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/13(水) 14:15:37.96 ID:mc53ejAqO
乙乙
ゲンさんはカードと小石両方取って先にスタメン入りだったわ
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/14(木) 23:37:55.77 ID:LuywdMZLo
物語が交差してる感じがすごくいい
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/19(火) 15:45:37.81 ID:8tJ19dmT0







クレイジーなIRPO隊員「さぁ〜て…キャンベル社長のトコに行く前にちと早いがちょっくら昼飯にでも―――」スタスタ












白薔薇「」オロオロ



クレイジーなIRPO隊員(なんだぁ?ありゃぁ…映画の撮影か何かか?)




 近未来都市の摩天楼に一人の貴婦人が居る、通りがかりの男はその麗しの美人をマジマジと見つめていた
ブロードウェイのミュージカルシアターから舞台衣装のまま女優さんが逃げ出して来たのか、と通行人なら皆が思う

 男は全身黒づくめ、靴もジーンズもダークカラーで統一していて襟元に毛皮が付いた革ジャケットを羽織り
裾口から先の手首もこれまた真っ黒なグローブという服装だった

唯一、暖色が見えるとすれば、襟元の毛皮と紅いネクタイ…そして外側が少しはねたショートヘアのくすんだ金髪だ



ポケットに手を突っ込み、先程まで煙草をふかしながら歩いていた彼は遠目に見える"問題の企業"を目指していた

職業柄、いつも手帳と何処のリージョンでも使用可能なタブレット端末…そして、腰ベルトの背には銃が備わっている






彼は[IRPO]隊員だ



I…inter<インター>

R…region<リージョン>

P…patrol<パトロール>

O…organization<オーガニゼーション>






即ち…混沌の海に浮かぶ無数の惑星<リージョン>を跨いで、日々犯罪者を追い続けるリージョン警察である


 今日、彼は[IRPO]本部から[ルミナス]で起きた戦闘騒動の調査後
すぐに此処[マンハッタン]にある、とある企業を捜査する手筈だった、吸い殻をポイ捨てしたいトコだったが
 仮にも市民のみなさんを護るお巡りさんがそれをやると苦情が来るから面倒臭がりの性格である彼は渋々と
最寄りのコンビニによって煙草の吸殻を捨て、仕事前にお気に入りのファーストフード店にでも入ろうかとした矢先だった



クレイジーなIRPO隊員「…あー、そこの麗しいお嬢さん、何かお困りですかな?」ニッコリ


白薔薇「?」キョトン



紳士スタイルで美女に接する下心丸出しな隊員Hさん
172 :ちょっと席を外します [saga]:2017/12/19(火) 16:14:23.14 ID:8tJ19dmT0


クレイジーなIRPO隊員「あぁ、失礼、私はこういう者でしてね」ピラッ


黒ジャケットの男はそういうと腕に[IRPO]の正式隊員であることを証明する腕章を見せる、これに白薔薇はしばし戸惑った




彼女は外界を、世間一般の常識を知らない

無知という訳ではない、数百年あまりの悠久の時を鎖国状態のリージョンで過ごしたからだ



稀に[ファシナトゥール]にIRPO隊員が来る事があってもその腕章が何を意味するのか、知らぬのだ



白薔薇(…!そうですわ!アセルス様が教えてくださいましたわ、これは確かパトロールの御方の!)ハッ!


白薔薇「刑事さん、でよろしいのですね?」


クレイジーなIRPO隊員「ええ!そうです!見たところお困りのようですが、何かありましたか?」



男は大袈裟に両腕を広げておどけてみせる、芝居じみたその仕草に緊張が解けたのか白薔薇も小さく笑い
仲間とはぐれてしまった事を告げた



クレイジーなIRPO隊員「なるほど、…お仲間さんのお名前は?」スッ



情報端末を取り出す、全パトロール隊員に配布されたタブレットは各リージョンの住人は無論、シップ発着場から
下船したお客の情報も問い合わすこともできる

パスポートの偽装、違法シップの運用を想定してだ

パトロール隊員はあらゆる権限を持たされており、隊員1人の権限で企業、店舗の営業停止から突然の立ち入り捜査まで
許可されている……簡単に言えば、この広いリージョン界でほぼ何でもできる権力を持っている


 それゆえに権限の悪用や、"収拾がつかない状態"にならぬようにと、隊員は増やし過ぎず…それでいて
人格面、能力全てが厳選されている





余談だが隊員は全部で な ん と "6 名" …いや、1人殺害された、とのことで5名である


数多の惑星<リージョン>に対してたった5〜6名ほどしか任命されない、逆に言えばそれだけ権限を持った者達なのだ





白薔薇「…その機械は?」


クレイジーなIRPO隊員「ん?ああ、これは発着場から来た人達を調べる機械でしてね」

クレイジーなIRPO隊員「あぁ…妖魔の方ですか、通りでお美しいと思いましたよ」ピッピッ


人助けの為であって悪用する訳じゃないのでご安心を、と笑う男に白薔薇はどう答えるべきか困った








[ラムダ基地]から船を奪ってなんとか逃げ出して来た自分達をどう説明する?

もっと言ったら、12年前に行方不明となったアセルスの名前なんて出せるかッ!面倒な事になるに決まってるッッ!
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 16:50:06.40 ID:v3eHFheI0
エミリア、ゲンさん、ヒューズ、あぁそうか ブルーが印術√だからか
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 18:41:50.71 ID:qtK1GM2/O
なんか誰の名前出しても面倒くさそうww
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 20:08:34.96 ID:jCosaYnU0
エミリアなんて無実なのにヒューズに刑務所送りにされたもんなw
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 21:13:43.90 ID:0fm3HvFEO
>>173
何言ってるか分かんなかったけど秘術イベントで仲間に出来るキャラって今気がついた
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/20(水) 00:48:58.49 ID:/NaxgDC30


 しばしの戸惑い、その一考に革ジャケットの男は少しだけ眉を顰めた、名前を言うのに何を躊躇う必要がある?
腐っても厳選される程には有能な刑事さんのようだ







   白薔薇「私のお連れの方なのですが…その"ルージュ"という殿方なのです」


クレイジーなIRPO隊員「ほー、ルージュ…フランス語で赤ですか」ピッピッ





クレイジーなIRPO隊員「………」ピッピッ




クレイジーなIRPO隊員「お嬢さん、お間違いはありませんかね…?ウチの機械に、"ルージュって名前が出ない"ですがね」







空気が変わった。









白薔薇「それもその筈ですわ」

クレイジーなIRPO隊員「はぃ?」



白薔薇「その御方は術士の方なのです、昨日[ルミナス]で出会い術の修行の旅にお付き合いすることになりまして」

白薔薇「ルージュさんは[ゲート]という術でリージョン間を移動できるのでして」

白薔薇「私達はシップに乗ってきたわけではないのです…だからどうご説明すればよいのか迷いました」



クレイジーなIRPO隊員「…」



男は下顎に手を当て考えた、なるほど、それなら入国…もといリージョン入りしても記録に残らない訳だ
術による移動事態はトリニティの制定した法律上、違法でも何でもない

名前を端末で検索しても情報が無いから徒労に終わる、彼女が名前を出すのに躊躇ったのも全て辻褄が合う









   クレイジーなIRPO隊員(俺の勘が告げてやがる…どうもそれだけじゃねぇな…それに[ルミナス]から来ただと?)


   クレイジーなIRPO隊員「なら此処は一つ、元来た道を戻ってみるってのはどうかな?」


   クレイジーなIRPO隊員「お連れさんとはぐれたんなら、向こうも探してるだろうし…可能性が高いと思うぜ?」



178 : ◆zJZqNVVhtuCN [saga 15分ルール適用 安価採用可能]:2017/12/20(水) 01:19:24.77 ID:/NaxgDC30



クレイジーなIRPO隊員「自己紹介が遅れたが、俺はヒューズって言うんだ、麗しのお嬢さんお名前をお伺いしましょうか」



ニィ、と男は…ヒューズは笑う、…コードネーム、一度キレたら手の付けられない男<クレイジー・ヒューズ>

本名ロスター捜査官の通称だ



白薔薇「白薔薇と申します」ペコリ



ヒューズ「白薔薇さん…う〜ん、なんとも可憐なお名前だ、おっと途中から敬語じゃなくなってるがすいませんね」

ヒューズ「俺はどうにも敬語って奴ぁ苦手でしてね、教養の無さは多めに見てくださいよ、っと」



へへっ、と笑うヒューズ、ふふっと笑う白薔薇…



 掴みは上々、綺麗な女性に良い男アピールができたヒューズは此処でもう一押し
紳士的にエスコートして差し上げようと手を差し伸べる




うんうん、これも警察として当たり前の事だ、なーーんにも下心なんて無いモンねー、と内心で呟きながら




































   アセルス「この痴漢めぇぇ!!白薔薇から離れろおぉぉぉぉ!!」ゴスッ!!!!

   ヒューズ「へっぶぁぁぁぁっ!?」ボキャァ!!





鼻の下が思いっ切り伸びまくっていたお巡りさんに清々しい程に右ストレートが決まった


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