アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ5

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1 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 01:52:05.04 ID:oPVR1UW+0
「アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1506749807/
「アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ2」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1508996136/
「アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ3」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1511252798/
「アライさんのような害獣が生きたいと思うこと自体罪なのだ4」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514296947/
の続きです。

このSSは残酷な描写があります。
けものフレンズが好きな方は勿論、アライさんが苦手な方もご不快に感じる方がいらっしゃるかと思われます。
そのような方は無理をせず、プラウザバックを何卒お願いします。
また、所謂R18G描写が苦手な方にも閲覧をお勧めいたしません。

SS初心者の自分には「力加減」が分かりかねるところがありますので転載や拡散はご配慮お願いします。

世界観・設定は原作アニメや他の名作SSを参考にしながら、自分でも埋め合わせ、調整、推測、創作等を行っています。

また、「書き物」の常として自分の主観等が混じり「こんなのけもフレじゃない」と怒られてしまわないかビクビクしています。


どうか不出来な二次創作をご宥恕頂ければ幸いです。


2 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 01:53:35.80 ID:oPVR1UW+0
これまでの簡単なあらすじ

サンドスター大噴出現象をきっかけとした人類衰退期。それを打ち破った世界再建戦争から30年が経過した。
人類はフレンズとの『共存・共栄』を基本理念としながら、文明の復興を推し進めている。

日本のとある地方にある蛇張村も40年にわたった避難対象区域指定が解除され、
官民一体となった帰還運動がようやく実現しようとしていた。


しかし、住民が避難している間に蛇張村とその周辺の山林地帯は、
特定有害フレンズ『アライさん』の住処となってしまっていた。


アライさんの追い出しと住民の安全生活圏奪取のため、県兵出動がついに実施され、
ようやく村民の為の『安全生活エリア』が蛇張村村落部の一部に築かれた。

旧村復興を望む村民達の小さな一歩がまさに踏み出されようとしている。

他方でアライさんに厳しい態度をとるTTT会等の『アラ虐』と、保護・共存の道を探ろうとする『アラ信』の対立、
さらにアライさん以外のフレンズと人類中心文明の齟齬もあり、『フレンズが存在する世界』の実情は複雑である。

(なお、『アラ虐』、『アラ信』はどちらかと言うと非難のニュアンスがある他称に近い使われ方をしている。
勿論、自称する場合もある)


3 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 01:55:33.59 ID:oPVR1UW+0
(あらすじの続き)

そんななか、当初はアライさんに厳しい態度を取っていた蛇張村青年団長達は、
『ある出来事』をきっかけに態度を徐々に変化させ、あくまで『郷土復興』を優先させながらも、
アライさん達や野生動物・野生フレンズの痛みにも思いをはせるようになる。

他方、セルリアンとの戦争から月日が経つにつれ、生活習慣や文化、身体能力・発達傾向の違いなどから
人間・フレンズ間の軋轢も徐々に表面化しつつあった。

フレンズの生殖能力の安定化やその基礎能力を不安視する者。
人間とそれ以外の生物の境目が揺らぐことに憂慮の念を抱く者。
かつての『戦争』の置き土産である社会の不条理。

日本政府によるフレンズの分断統治政策により、中間支配階層と位置づけられている『ジャパリ組』、
及びそれが指導管理している『公益社団法人日本フレンズ協会』。
彼女らもまた、人間側の思惑とは別に彼女たち自身の『理』により、その身の行方を定めつつある―様でもある。


人間からの根滅圧力・帰還運動によるプレッシャーを背景に、かつて『廃墟アライさん』と呼ばれたアライさんは、
自身を『大母アライさん』、幹部を『姉アライさん』とする『擬制的母系・母権家族集団』を形成。
その上で親衛隊兼家政機関兼幹部養成機関である『恩寵組(『恩寵を有するアライさん』)をお供に『家族』の支配権を固める。


付近のアライさんを配下に地盤固めをしつつ、村落部居住アライさんの疎開を成功させ、
複数の県境にまたがる地帯に版図を拡大、半野生化した家畜・家禽をも捕獲し、
『家族』の船出はまずまず順調に思われたのだが…。

勢力圏境界付近の放置林に分住していたアライさんと手入れに来た人間(TTT会)間の衝突を契機に
事態は再び緊張の色を増していく。

4 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 01:56:54.42 ID:oPVR1UW+0
ピーポーピーポー

何処からか響く救急車の音―

民家からほど近い里山にアライさんが出た!!!



地元猟友会長「どっこら!」

社員A「社長!!!」

地元猟友会長「すまんな…。お呼びがかかった。暫く留守にする」

社員A「ごく…。お気を付けて!」

うっかり目上の方に『ご苦労様です!』と言いそうになる社員A。日本語って難しい。

地元猟友会長「ああ…。迷惑をかけてすまんな」

『社長』と呼ばれる地元猟友会長。

何も偉ぶっているわけではない。この人は現に社長なのである。
蛇張村に近接する自治体の猟友会会長であり…、本業は建設会社の経営者。
そして町の『有害鳥獣駆除隊』隊長でもある。

地元猟友会長「(もう昼過ぎだ…。今から夜までどのくらい行けるだろうか…)」

基本夜間は発砲禁止だ。
追い切れるだろうか―少し仕事が詰まっていたのに―よその皆さんは大事な休日だと言うのに―
そんな取り留めのない感情が泡沫の様にご老体の脳内に浮かんでは消える。
しかし―『お役目だ』―隊員の人達に召集を掛ける。
『行政から委託が来たぞ』
5 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 01:58:41.26 ID:oPVR1UW+0
『こちらは防災隣町です。
農政課からお知らせします。
現在、隣町全域において、銃によるアライグマのフレンズの駆除を実施しています。
危険ですので、山林には近づかないようお願いいたします』

町中に響くように工夫され、配置されたスピーカーが唸りを上げる!

地元猟友会長「すごい音だのぉ〜」
鳥獣駆除隊員1「万が一にも住民の方が巻き込まれたら大変なので…」

若手―と言ってもすでに中年を過ぎている―隊員1の何気ない言葉に、会長はコクリと頷く。

『繰り返しお知らせします!こちらは防災隣町です。
農政課からお知らせします。
現在、隣町全域において、銃によるアライグマのフレンズの駆除を実施しています。
危険ですので、山林には近づかないようお願いいたします』

行政が地元猟友会等に委託して有害駆除を行う際は、原則、前日の決まった時間に防災行政無線で
『有害鳥獣駆除実施のお知らせ』が放送される。ただし、緊急的な場合は放送を流せない場合もあるが…。

鳥獣駆除隊員2「今回は間に合ったようですね」
鳥獣駆除隊員3「誤射・誤殺が問題視されているからな。里山教室のちびっ子たちは避難済みと聞くが…。
山菜取りのお婆さんとか大丈夫かな?」
鳥獣駆除隊員4「緊急時だ!止むを得ん。あの娘さんの怪我を見ただろう!!!」

やや不安げな顔で隊員たちは言葉を交わす。
人数は6人。
やや『お年を召した』方が多い。
6 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:00:01.88 ID:oPVR1UW+0
地元猟友会長「(本当はこういう時こそ、若者の出番なのだろうが…。困ったものだ)」

会長は内心そう思うが口には出さない。
きっと若者は若者で大変なんだ…。自分は老害扱いされたくない。
男は黙って背中で語るものだ。きっと誰かが見てくれている。

地元猟友会長「…」ペタペタ
そんなことを考えながら、ここまで急いで乗ってきた軽トラに『狩猟中』のプレートを張り、
近くの住民に注意を促す。

鳥獣駆除隊員達「「「………」」」ペタペタペタペタ

他の隊員たちも各々の軽トラにプレートを張り付ける。

因みにここにTTT会の姿はない。
彼らの気質上、是非とも参加したかっただろうが―
『身バレ』を避けるため、彼らは鳥獣駆除隊には参加していないのだ。
まあ、召集されるルートと云うか性質が異なる以上仕方がない。


さて―

地元猟友会長「ほいじゃあの。現場を見に行くかの。隊員5、6は無線を入れたら犬を頼む」

鳥獣駆除隊員5、6「「はい!」」

鳥獣駆除隊員1〜4「「「………」」」コクリ!!
7 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:01:47.54 ID:oPVR1UW+0
ガサッ!ガサガサッ!

隊員達は件の里山に足を踏み入れていく。
鳥獣(今回はアライさん)による人的被害に対する緊急対応と並んで、
被害発生地区の調査も鳥獣駆除隊のお役目だ。

勿論、今回は前者の方が優先度は高いが…、まずは現場を見ないと!
役場や警察から話を聞いただけでは今一つ状況が読めん!!

カサカサカサカサ…

落ち葉と小枝を踏み分ける音が周囲に響く。

きちんと間伐がされていない薄暗い森。
ヒョロヒョロした樹木。茎をのばす竹林。

鳥獣駆除隊員1「こちらから―あそこまで、地元の有志の方が里山教室をしていたそうです」

油断なく銃を握りながら、隊員1は話し出す。
一応、付近の安全は警察が確認済みであるが―

鳥獣駆除隊員2「ここ!ここから、あそこら辺をヨチヨチしていたアライちゃんに子供が石を投げつけて…。
アライちゃんに直撃!
その直後にパニックを起こした子が走り出したら、母親らしきアライさんが石を投げつけて来たらしいです」

地元猟友会長「ふむふむ」

警察から事前に話は聞いていたが…。
悪条件が重なったのだな。
それにしても…、中々投擲距離が長い―

地元猟友会長「…」

会長は血に染まった地面を見つめる。
TTT会員Dとアライさんが激しく争った跡だ。
微かに糞尿の臭いもする―倒されたアライさんは保健所職員が既に回収したようだ―

8 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:03:52.15 ID:oPVR1UW+0
地元猟友会長「本当に、あと二匹居たんだな!?」

鳥獣駆除隊員3「目撃証言によれば、確かに直接助けに来たアライさん以外に二手から石飛礫が飛んできたと。
『恐らく血縁個体群であろう』と里山教室の方はお話されていたそうですが…」

コリコリコリ…

会長は少し頭を掻く。
血縁個体群―まあ、そういうこともあり得るか―

地元猟友会長「それにしても困ったぞ…」

アライさんの正確な足の速さを会長は知らないが―
元種のアライグマはあんな見た目でも、地上で時速24qは走ると言う。
きっとフレンズ化した後も、他のフレンズや人間と比べて極端に鈍足という事は無いだろう。
イメージとしては、身のこなしが軽そうだし…きっと、もう森の奥だ。

帰り道の時間も考えなくてはいけない―

地元猟友会長「とは言え、まあ犬を入れて追わせよう!あーあ〜。隊員5、6、犬を頼む」

隊員5、6「「はい!今、そちらに向かっています」」

無線越しに隊員達に呼び掛ける。

ガサゴソゴソッ!
ワサワサワサッ!

間も無く聞こえてくる元気なワンコの息遣いが隊員たちの心を勇気づける。
2頭の白い犬。
イノシシキラーとして名高い紀州犬が薄暗い森の中に浮き上がる様に会長達の下に向かってくる。

9 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:07:11.54 ID:oPVR1UW+0
フガフガフガ…
フガフガフガ…

樹々の間から微かに洩れる猟犬の呼気。

各隊員はそれぞれアライさんの逆襲に注意しながら、受け持った『マチバ(待ち伏せポイント)』に伏せる。

会長は後から駆けつけて来た隊員6と共にゆっくりと犬の後を追う。

地元猟友会長「今日中は難しいの…」
隊員6「ええ…」

会長がつぶやいた言葉に隊員6は控えめながら同意する。

鳥獣駆除は期間を定めて、自治体が、地域を担当する各駆除班に依頼する。
そして、捕獲する種類や頭数、捕獲方法などが具体的に指示される。
例えば『イノシシ・カラスを銃器および箱罠で捕獲する』等。

隊員6「(今回ならば―成獣アライさん2頭を指定エリア内で本日日没までに銃器で捕殺)」

件の個体群のものと推測される巣を猟犬が嗅ぎ当て、食べかす・糞などの生活痕跡を次々と発見できた時は
もしや、とも思ったのだが―
そこから先、ある地点から痕跡が上手く追えない。消えた―と言う訳ではなく、散らばった?掻き回された?

隊員6「役場に事情をお伝えし、銃器から箱罠に猟法を切り替えることも検討しましょう。
アライさんは元々、夜行性に近い生態。昼間に狩るのは容易ではありません」

初夏とは言え、悪路を進み続けるうちに背中は、じっとり汗ばんで来る。

日頃の疲れと共に明日以降の仕事を思い出し、鳥獣駆除隊員達は少しげんなりする。

勘違いされる場合も多いが、猟友会・鳥獣駆除隊員は、別に駆除を生業にしている人達ではない。
会長やこの隊員の様にそれぞれ別個に職などを持っている。
有害駆除は自分の仕事やプライベートな時間を割いて出動するボランティアなのだ。
それも平日でも急遽動員がかかることもよくある過酷な…。

隊員6「会長!そろそろ…」

隊員6は地面に屈んでいる会長に声を掛ける。
―どうやら、巣から集団で逃げ出したアライさんが道中でした糞を確認しているらしい―
10 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:10:27.20 ID:oPVR1UW+0
地元猟友会長「はぁ〜。日没までまだ間がある。もうちょっとだでぇ…」

隊員6は少しうんざりした顔をする。
せっかくの休日が…、明日も早くから仕事なのに。
殺処分の―それも空振りで空費するなんて!

じ〜〜

不満げな顔を浮かべる隊員に諭す様に会長は言葉を続ける。

地元猟友会長「日当貰っとるからの…。お役目だで…」

猟友会は出動すると自治体からお金が支払われる。
活動報奨金として一人当たりイノシシなら一日2,000円、カラスは2,300円と言った具合に。
この日当、ガソリン代や弾代すべて込みの値段である。
下手をしたら死ぬかもしれないのに!
マックのバイトの何分の一なのだろう!
彼らにとって有害鳥獣駆除は、実質、趣味のハンティングとは別の社会貢献なのだ。

そして、これ以外に『獲物(イノシシ・クマ・サル等)』をしとめたときは、
一頭当たり2万〜3万(自治体・年度により上下あり)が捕獲報奨金として支払われる。支払われるが…。
もし犬が怪我などしたら、それも治療費などに消えてしまう。加えて銃の所持や資格維持の手続き等々…。

『アライさん3000円』などと言っている場合ではない!
アライさんが『値下がり』すればするだけ、人間の側にダメージがボディーブローの様に打ち込まれて行く。
これがもし、ワンコインにでもなろうものなら冗談抜きでお手上げだ。
『命の値段』の値引きはこと『戦い』において、人間側にのみ一方的に不利に働くのだ。

この世界の住民にとって幸運なことは、アライさんは―アライグマより大きい体であることを考慮して―
概ね、ツキノワグマやイノシシ、自治体によってはニホンザルと同額になるよう値段が設定されていることだ。

地元猟友会長「(それでも皆、地元の為に貧乏籤を引いてくれたで…)」
地元猟友会長「頼むで。堪忍な…」

会長がそう呟いたとき―

パン!

地元猟友会長・隊員6「「!!!」」

パン!!パン!!!

黄昏が迫る暗い森に、乾いた銃声が三発響いた―
11 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:12:29.28 ID:oPVR1UW+0
ブ〜ン…ブ〜ン…

隊員3「……」

チクタクチクタク…
チクタクチクタク…

元から陰り気味だった森の明かりが最後の輝きを放ちながらゆっくり引いていく。

ヒトの―昼を生ける者等の―時が終わり、夜に生きるけものの時間が迫っているのだ。

ブ〜ン…ブ〜ン…

隊員3の担当するマチバは一応、本星!
うんこをブリブリしながら、這う這うの体で逃げ出したアライさん達の新路上に位置する―はずである。

途中で臭いや痕跡が分け分からなくなってしまったが―

犬も行ったり来たりグルグルしたり…―

ブ〜ン…ブ〜ン…

初夏とは言え、もう虫が湧き出している。

これが7月8月なら酷かったな。
夏場は林業者用の蚊取り線香が必須アイテムになるが…、厄介なことに獣は大抵鼻が良い。

隊員3「……」ジ〜〜!

マチバで待機し始めて、早一時間以上。油断なく樹々の間から獲物を窺い続けた目を少し休ませる。

12 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:14:24.01 ID:oPVR1UW+0
隊員3「…」ホッ!
―良かった!気の乗らない殺生を重ねずに済んだ!―
もうじき、今日の狩りは終わる。

そんな隊員3の心理を世人が知れば奇妙に思うことだろう。

実際、自治体や駆除を依頼する住民は、
『猟友会の人はもともと動物を殺しているから平気なんだろう』と安易に考えているケースがままある。

しかし、彼らにとって狩猟と有害駆除は別物なのだ。

例えば、狩猟の場合なら、キジやイノシシは捕るが、サルはまず撃たない。アライさんなら猶更だ。
しかし、駆除の要請が出たら殺さなくてはいけない。そこには依頼者からは見えない心の葛藤が存在する。

まず『殺す』が先にあること。
『食べる』でも『狩猟を楽しむ』でもなく、ただ『殺すために殺す』こと。
自分の時間を割き、怪我・命のリスクを負ってまで、生き物を殺して、殺した後の処分も任されて…。

それが心に―体に―どれだけ負担なのか、引き金に手を掛けない人たちは知らない。
『だって、お金貰ってるんでしょ?けものを殺すのが好きなんでしょ?』
13 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:19:07.87 ID:oPVR1UW+0
猟友会・鳥獣駆除隊は、害獣駆除用の罠にかかった獣の処理も頼まれることが多い。
これに至っては、もう本当に楽しくない作業だ!!!最悪な気分だ!!!

狩猟と―駆除は―違う。
分かってもらおうとは思わないが…。

それでも地域のためを思えばこそ出動するのだが…、時代は変わった。
『荒ぶる獣を倒し、里救った英雄』そんなふうに感謝されることなどまずない。
獣が神の座を追われたとき、神と向き合っていた立場の人達もまた、知らぬ間に聖性を剥ぎ取られ、
席を追われていたのだ。

残ったのは、命あるものを殺すことへの世間の白い目。
―神の座から追われた畜生と万物の霊長の自称者の醜い相克だけ―

隊員3「(タバコ吸いたいな…)」

勿論、吸わない。
森は火気厳禁だ!

もうじき、日も落ちる。アライさんはもう、逃げ去ったのだろう。
ある日森の中、人間とアライさんが出会って、どっちも正当防衛をして、結果、人間側に死人はなく、
アライさんは一匹死んだ…。

隊員3「(それで、帳尻は十分取れているだろう…。奴らも好んではヒトを襲わない)」

それに何より―ハンターはイノシシと戦ってこそだ!
アライ狩りなど邪道、ハンターはイノシシを狩ってなんぼの…

ガサッ!

隊員3「!!!」

隊員3は休めていた視線をゆっくり、銃身の遥か向こう―50メートル先に戻す。

ガサッ!ガサッ!ガサガサッ!

アライさん「…」クンカクンカ

アライさんだ!!!
例の群れの逃げそこないか!?

クンクンクン

ピクピクピク…キョロキョロ…
14 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:21:01.79 ID:oPVR1UW+0
隊員3「……」スゥゥゥゥゥゥゥ―

隊員3は大きく息を吸い始める。全身の感覚が息と共にドンドン深まっていく。
世界が自分と銃身の先のアライさんのみに集約されて行く―――

アライさん「チビ!出てきてだい…」

パン!

プシャッ!!!

アライさん「ビギィィ!!!へぇっ!?」

アライさんは自分の体に不思議な振動を感じ―視線を少し下げる。

ドクドクドクドクドク……

真っ赤な―アライさんは色覚が異なるが―はっきり『死』を想起させるそれが自分の体から吹きこぼれる!!!

アライさん「あ…あ…あぁぁぁぁ…」ガクッ!

アライちゃん1「おかーしゃん?とつぜんおひざをついてどうしたのりゃ?」ヨチヨチヨチ
アライちゃん2「おかーしゃん?!!!まっかっかがながれてるのりゃ!!??」ヨチヨチヨチ

パン!

プシャッ!!!

アライちゃん1「ゲピィィ!!!」ビクビクビッタンビクビクブリブリブリ!

アライちゃん1の頭部が打ち砕かれたスイカのように弾け飛ぶ!!!

アライちゃん2「ひぃぃぃぃ!?おかーしゃーーん!!!」

アライちゃん3「おかーしゃーん!おねーしゃーん!どうちたのりゃーー?」ヨチヨチヨチヨチ

15 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:22:45.59 ID:oPVR1UW+0
アライさん「あぁぁ…。チ…」パクパクゴブッ!

胸を撃たれたアライさんは残り少ない命を燃やしながら、我が子に『何か』を話す。
せり上がる血の塊で声にさえならなかった何かを…。

パンッ!!!

アライちゃん2「…」ビクビクビッタンビクビクブリブリブリ!

次は声さえ上げることは叶わない。

アライさん「……」パクパクパク
アライちゃん3「…」ハッ!

母アライさんが最後に伝えようとした何か―それを受け取ることに唯一成功したアライちゃん3は、
未練を断ち切る様にクルリと方向を変える。

アライちゃん3「みんな…。ごめんなさいなのりゃぁぁぁ。あらいしゃんだけでも…」ヨチヨチヨチ

ガサゴソガサッ!

最後に残ったアライちゃんが茂みに逃げ込む。

アライさん「…」クラッ!

バタン!ビックビクバッタンビクビク…

それを見送る様に母アライさんは白目を剥いて地に崩れ落ちる。

きっと最後まで、我が子のことを案じていたのだろう…。

16 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:27:37.65 ID:oPVR1UW+0
隊員3「…」

隊員3はゆっくり立ち上がる。

そして、妙に強張った指で4発目の弾を詰めたい銃身に込める。

ガサゴソガサゴソ…


ハァァァァァ―

肺腑を満たしていた空気を一気に吐き出す。

もう良いじゃないか!!!

幼獣アライさんだけで生き抜けるほど、野生は甘くないかも知れないが…。

もう今日は十分だ。

隊員3「……」プラプラ

外れることを見越して、適当に茂みに狙いを付けて―

ワンワンワン!!!
ワンワンワン!!!

隊員3「…」

剛毅な吠え声が、隊員3に現実を思い出させる。
目の前に叩き付ける!
この世界には自分とアライさん以外が存在したことを!!

アライちゃん3「ひぃぃぃ!」ヨチヨチヨチヨチ

せっかく逃げ込んだ茂みから、アライちゃんが大慌てで飛び出してくる。

―そうか。この一家は犬に追われてこのマチバに―

そんな当たり前なことすら―
17 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:29:42.75 ID:oPVR1UW+0
パン

次の瞬間に息が有る者の贅沢だ。

アライちゃん3「」ビクンビクンビッタンビクビク!

隊員3「…」

4発目の銃声。
死に絶えた4匹のけもの。

確か、幼獣2匹で成獣一匹半程度の換算だったはずだから―これで、計算は合う。
注文以上だ…。

隊員3「何の計算何だろうな…」

ぼそりと呟くと、そっと両手を合わせる。

ハアハアハア
ハアハアハア…

頑張ってお役目を果たした犬はご褒美を今か今かと待っている。
18 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:39:26.44 ID:oPVR1UW+0
今日はここまでです。

また、二三日以内に書き込む予定です。

pixiv行きを親身に勧めて下さった方、新しいスレをこうして立てたことをお許しください。

そっちも真剣に考えていますが、こちらのスレだからこそ発信できることもあろうかとも思って…。

猟友会・鳥獣駆除隊関係は調べられる限り調べて、SSを書いていますが、もし制度・運用に誤解が有れば、
申し訳ありません。その時は脳内補完をお願いします。

大変な中、有志で活動をして下さっていることを知った時、安易に『駆除・駆除』言っていた自分が申し訳なく、
何としてもSSに反映させねばと、このエピソードをねじ込みました。

このSSはヒトとけものの相克をアライさんと言う『擬人化キャラ』で描く場合もありますが、
それは現実の世界で我が身を危険に晒し、第一線でお役目をはたしている方達を誹謗中傷する意図が
ないことを特に明記しておきます。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 02:54:10.13 ID:d3cFIF89O
            >>1
             ↓                _人
      ∩    ∧_∧            ノ⌒ 丿
       \ヽ_(    )         _/   ::(
         \_   ノ        /     :::::::\
 ∩_   _/    /         (     :::::::;;;;;;;)
 L_ `ー / /   /           \_―― ̄ ̄::::::::::\
     ヽ  | |__/ |           ノ ̄     ::::::::::::::::::::::)
  | ̄ ̄ ̄\     ノ こんな     (     ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
  | | ̄「~| ̄( 、 A , )クソスレ   / ̄――――― ̄ ̄::::::::\
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  し'  し'                \__::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ



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      たてんじゃねー!      Y人, ' ',人⌒ヽ、, '
                      Y⌒ヽ)⌒ヽ、 人,ヽ)人'、, '
        へ, --- 、         ノ ̄     ::::::::::::::::::::::)
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   し'   し' と∨ ̄∨       \__::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ

前スレ1000は>>1か?「コジキチ最後にうんこ狙ってそうだし埋めとくか」なんて書いたら
ウンコAA貼られるのが嫌だって言っているようなものだぞ
20 : ◆8qmuaCjNUw [saga]:2018/01/31(水) 02:54:25.95 ID:oPVR1UW+0
すみません。

>>16

✖そして、妙に強張った指で4発目の弾を詰めたい銃身に込める。

〇そして、妙に強張った指で4発目の弾を冷たい銃身に込める。

です。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 07:08:15.57 ID:o3usNhxs0
乙。アライさん共の死を見れて楽しかった
大家族に見つからなかった野良家族も少なからずいるんやね
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 14:42:36.61 ID:AwODKg9MO
相変わらず文章がくどいな……
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 15:19:03.40 ID:w5v57oE3o
続き来てほっとした
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