藤原少女の事件簿 料理合宿殺人事件

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27 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:26:17.65 ID:/8b9FcNf0
大変お待たせしていてすみません。
ただ今より続きを投下します。
28 : ◆P4gW9oKees [sage]:2018/05/18(金) 22:26:47.15 ID:/8b9FcNf0
2.


AM7:40

美優「佐久間、さん…」

肇「とにかく、警察に電話を!」

美優「わ、わかりました!」

美優は合宿所の中へ急いで戻っていった。

肇「…?これは?」

肇が佐久間まゆの頭の側に、1枚の紙が落ちているのを見つけた。

肇「ハンバーグのレシピ…?」

血で汚れているが、どうやらレシピ本のハンバーグのページを切り取ったもののようだ。

さらには、その行程の内「タマネギをみじん切りにする」という部分にしっかりと赤い線が入っていた。

肇「これは…どういうことなのでしょう?」
29 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:28:09.76 ID:/8b9FcNf0
AM7:45

肇が合宿所の中に戻ると、フロントの場所で瑞樹と美優が何かを話していた。

肇「どうしたんですか?」

瑞樹「それが、電話が繋がらないのよ!私がJAFに連絡しようとしたときにはもう…。モジュラーケーブルが抜き取られてるみたいで…」

肇「本当ですか!?それじゃあ携帯電話は…」

美優「ここは山奥ですから電波が…」

肇「それじゃあどうすれば…」

琴葉「何かあったんですか?」

騒ぎが聞こえたらしく、琴葉を始めとした生徒たちが食堂から出てきた。

肇「それは…今からみなさんにお話します。まずは食堂にいきましょう」

一行は食堂へ戻り、各々の席についた。
もちろん佐久間まゆの席だけは空いている。

かな子「あの…まゆちゃんがまだ来てないんですけど、もしかして体調不良とかですか?」

美優「それが……」

肇「…佐久間さんは亡くなりました」

「「「えっ!?」」」

肇の発言に、その場にいた全員が驚きの声を上げた。

響子「本当、なんですか?」

美優「ええ…私も見ましたから……。外にある倉庫の中に、佐久間さんの遺体があるのを…」

美奈子「倉庫の中って…?」

肇「佐久間さんは何者かに殺されたんだと思います」

有香「殺された!?」

千早「それって、この中にその犯人がいるっていうこと?」

肇「いいえ、それはまだわかりません。犯人が外部から侵入した不審者なのか、それとも、この中にいる誰かなのか」

智絵里「で、でも、もし本当にまゆちゃんが殺されちゃったんだとしたら、は、早く警察の人とか呼ばないと……」

瑞樹「それが、無理なのよ。合宿所の電話のケーブルが、予備も含めて盗まれてるみたいで。ここは山奥だから携帯電話の電波もダメ」

ゆかり「では、車で麓まで下りるというのは?」

瑞樹「それもダメ、ね。今朝みゆ、三船先生が車に忘れ物を取りに行ったら、タイヤがパンクさせられていたそうよ。ご丁寧に2台とも」

琴葉「そんな……」

有香「そ、それでは、少々危険ですが歩いて山を下るというのはどうでしょう?」
30 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:28:41.59 ID:/8b9FcNf0
美優「無理ですよ」

昨日までの美優からは想像もできない冷たい声に、一同は押し黙ってしまった。

有香「そ、それは、どういうことでしょうか?三船先生……」

美優「昨日も言いましたけど、この辺りは霧が濃くて徒歩では危険なんです。それに山道も複雑ですし、ひとつ道を間違えれば断崖絶壁の上に辿り着いてしまいますよ」

千早「そんな……」

美優「もう、私たちに逃げ場なんてないんです。助けも呼べず、私たちは…」

瑞樹「美優ちゃん!!」

ぶつぶつと不安を煽っていた美優を、瑞樹が叱責した。

美優「…すみません。体調が優れないので部屋で休ませてください……」

と言って、美優は食堂から出ていってしまった。

肇「とにかく、これからは出来るだけ1人で行動しないこと、部屋の鍵はしっかり施錠することを心がけたほうが良いと思います」

響子「あの…なんで藤原さんが仕切ってるんですか?」

肇「あ、いえ、私はそういうつもりは…」

肇が退こうとしたその時、琴葉が立ち上がって言った。

琴葉「この肇ちゃんは、あの有名な名探偵『藤原雄助』の孫で、これまでにいくつもの事件を解決してきたんです!」

琴葉の発言に、肇本人や琴葉、千早以外のほぼ全員が「信じられない」といった表情をしている。

瑞樹「藤原さん、それは本当なの?」

肇「え、ええ。はい……」

響子「そういうことなら…藤原さん、突っかかってごめんなさい」

肇「いえ、私は気にしていませんから…」

瑞樹「とにかく、藤原さんの言う通りだわ。あと料理の披露会は中止ね。改めて言うけれど、部屋にはしっかり鍵をかけること、1人では出来るだけ行動しないことを心がけてちょうだい」

瑞樹がそういうと、ひとまずその場は解散となった。
31 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:29:12.96 ID:/8b9FcNf0
AM10:40

肇は部屋で1人、考えていた。

なぜ佐久間まゆは殺されなければならなかったのか。
そしてなぜ犯人は、わざわざ佐久間まゆの身体をバラバラにしたのか。

肇「あ、そういえば…」

肇はふと思い出した。
今日の昼は、肇が料理を作る番であると。
披露会は中止となったが、さすがに先生たちだけで全員分の食事を用意するのは大変だろう。
しかも、美優は体調が優れないとも言っていた。
もしかすると、今瑞樹は1人で食事を作っているのではないか。
その考えに至った肇は、ベッドから起き上がると、貴重品を持って部屋を出た。

琴葉「あっ肇ちゃん」

肇が部屋を出ると、隣の部屋からちょうど琴葉も出てきたところだった。

琴葉「やっぱり肇ちゃんも行くんでしょ?食堂に」

肇「ええ。川島先生を手伝おうかと…」

琴葉「本当、変なところは真面目なんだから…。私も手伝うわ。肇ちゃん1人じゃ危なっかしいし」

肇「琴葉……」

こうして、肇と琴葉は2人で食堂へ向かった。
32 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:30:14.38 ID:/8b9FcNf0
AM10:50

瑞樹「あら、手伝ってくれるの?」

肇「ええ、はい」

琴葉「披露順も、私たちの番でしたし」

2人が食堂の調理室に入ると、既に瑞樹が準備を進めていた。
肇が予想していた通り、瑞樹は1人だった。

2人が手伝いはじめて少したった頃、肇が瑞樹に尋ねた。

肇「あの、三船先生は?」

瑞樹「…しばらく1人にしてくださいって。大丈夫かしら。あの子、その、佐久間さんの遺体を直接見たんでしょう?」

肇「はい…そうですね」

瑞樹「私はまだ見ていないんだけれど、どんな状態だったか聞いてもいいかしら?」

その質問に対し、肇は一瞬悩んだ。
言ってもいいか尋ねるように隣の琴葉に顔を向けた。

琴葉「私なら大丈夫よ。肇ちゃん」

その答えを聞き、肇は口を開いた。

肇「その…ひどい有様でした…。倉庫の中は血まみれで、佐久間さんの身体はバラバラに切断されていました…」

美奈子「バラバラって…まるであのウワサ話じゃないですか!」

琴葉「きゃあ!」

調理室にいきなり美奈子が入ってきたため、その場にいた3人は全員驚いた。

美奈子「あ、すみません。驚かせるつもりはなかったんですけど…」

瑞樹「佐竹さん、どうしてここに来たのかしら?」

美奈子「私、今日のお昼ご飯の当番だったのを思い出したんです。すっかり忘れてて」

琴葉「そういえば、そうでしたね」

瑞樹「じゃあ、佐竹さんも手伝ってちょうだい。料理のほうはもうすぐ終わるから、食器類の準備ね」

美奈子「はい、わかりました!」
33 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:31:19.27 ID:/8b9FcNf0
肇「そういえば、美奈子さん。昨日、実城高校の皆さんの雰囲気がよくないことについて、何か言いかけてましたけど、あれは何を言おうと?」

美奈子「あー、それですか。実は私もよく知らないんですけど、どうも私が料理部に入る前の去年、この料理部である『事故』があったらしくて…その結果、部員の1人が亡くなってしまったとか…」

肇「その『事故』というのは?」

美奈子「すみません。これ以上は知らないんです。他の部員の皆さん、特にあの4人は口が固くて…」

肇「そうですか。ありがとうございます」

美奈子「いえいえ、私にわかることだったら何でも聞いてください!今度、美味しい炒飯の作り方、教えましょうか?」

肇「あ、あはは……」

瑞樹「あの、2人で話してるところ悪いんだけれど、そのさっきの『ウワサ話』っていうの、私にも教えてくれないかしら?」

美奈子「あ、はい。えっとですね……」

美奈子は、昨日肇たちに話したのと同じ話を瑞樹にも話した。

瑞樹「うっ…。そんな話があったのね…」

美奈子「この事件も、『赤種美能』の呪いだったりするんでしょうか?」

肇「それは…恐らくないと思います」

琴葉「どうしてそう思うの?肇ちゃん」

肇「昨日の夜、寝る直前にとても強い眠気に襲われませんでしたか?」

瑞樹「そういえば…」
美奈子「私も…」

琴葉「みんなもだったの?」

肇「あれは、恐らく料理に睡眠薬が仕込まれていたんでしょう…。犯人が、犯行を邪魔されたさないために…」

美奈子「じゃあ、犯人は昨日料理を作っていた人の中に?」

肇「いえ、そうと決まったわけではありません。睡眠薬が料理に仕込まれていたとも限りません。例えばウォーターサーバーのところにある紙コップに仕込んでおく、という手もあります…」

琴葉「えっ?じゃああの紙コップは使わないほうがいいの?」

瑞樹「心配なら、新品のものに変えておくわよ」

肇「ええ。できれば、1人1人に手渡しで渡してください」

瑞樹「わかったわ」

美奈子「それで、昨日睡眠薬が使われたかもしれないっていうのはわかったんですけど、それが犯人にどう繋がるんですか?」

肇「犯人が睡眠薬を使ったということは、私たちの中に犯人がいるかもしれない、ということです。外部から侵入してきた人に、コップや料理の中に睡眠薬が仕込めるとは思いません…」

瑞樹「確かに、そうよね」

肇「そして、その根拠はもうひとつあります…。それは倉庫の鍵です」

琴葉「倉庫って、佐久間さんの遺体が入ってた?」

肇「そう…。あの倉庫にはダイヤル式の鍵がかかっていましたが、壊されていなかったんです…。つまり、犯人は普通に鍵を開けて中に遺体を入れ、そしてまた鍵を閉めたんです…」
34 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:31:49.59 ID:/8b9FcNf0
美奈子「な、何のために…?」

肇「そこまではわかりません…。川島先生、倉庫のダイヤルの番号を知っている人は?」

瑞樹「そうね…。まず美優先生はもちろん、私も教えてもらって知っているわ。何かあったときに私があの倉庫を開けられないと困るからって…。あと、実城高校のメンバーは知ってるんじゃないかしら?」

美奈子「はい、私も知ってます。あの倉庫、他の部活でも使う道具とかも入っているらしくて、このセミナーハウスで合宿をやるって決まった時に教えてもらいました」

瑞樹「あ!あと、中野さんと水本さんも知ってるわね」

琴葉「あの2人も?」

瑞樹「ええ。昨日、自由時間にバドミントンをやりたいからって道具を一式貸したんだけれど、ラケットがひとつ破損していてね。美優先生に聞いたら予備が倉庫にあるって言ってたんだけれど、その時私も美優先生も、書類をまとめていて手が話せなくて、仕方なく鍵の番号を教えたのよ」

肇「なるほど…。番号を知らなかったのは私と琴葉と千早だけ、ですか…」

瑞樹「あ、もしかすると、如月さんも知ってるかもしれないわ」

琴葉「えっ?」

瑞樹「私が中野さんと水本さんに番号を教えてる時、2人のそばを如月さんが通りがかったのよ。2人が一緒にやろうって声をかけてたから。大きな声で言ってたわけではないけれど、特に気を使ったわけでもないから、もしかしたら、如月さんにも番号は聞こえていたかも…」

肇「そうなんですか…」

琴葉「じゃあ私と肇ちゃん以外の全員が知ってたってことですね」

瑞樹「さあ!料理もできたことだし、あとは並べましょ。他の子たちもそろそろ来るころじゃないかしら」

美奈子「そうですね!まずはお腹いっぱいにならないと、何事もやる気が出ませんから!」


肇たちが料理を並べていると、不動高校のメンバーが集まってきた。
しかし、美奈子を除く実城高校のメンバーは、時間を過ぎても食堂に現れることはなかった。
もちろん、美優の姿もない。

瑞樹「…まぁあんなことがあった後だし、仕方がないわね。来てない子にはサンドイッチの残りでも持って行ってあげましょう」

琴葉「あ、私も手伝います。川島先生」

瑞樹「助かるわ。お願いするわね」
35 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:32:27.26 ID:/8b9FcNf0
PM1:30


食後、部屋に戻った肇は再び考え込んでいた。

肇「そういえば…」

そう呟くと、肇はズボンのポケットの中から、折りたたまれた紙を取り出した。

肇「ハンバーグのレシピ…ですね」

それは、まゆの遺体の上に置かれていた紙、ハンバーグのレシピの1ページであった。

肇「これには、一体何の意味が…?」

まゆがたまたま持っていたものが現場に落ちていただけなのか、もしくは犯人が何らかの意味を込めて残したものなのか、それすら今の肇にはまだわからなかった。

コンコン

肇が考え込んでいると、部屋のドアがノックされた。

琴葉「肇ちゃん、いる?」

肇「琴葉?いますよ」

肇は返事をすると、部屋の鍵を開けてドアを開いた。

肇「何かあったんですか?」

琴葉「さっき、実城高校の3人のところにお昼ご飯を持って行ったんだけど、その時に三村さんから話を聞いて…」

肇「三村さんから?」

琴葉「うん。三村さんたち、食堂を出た後に3人で集まって佐久間さんの遺体を確認しにいったみたいなの。それで3人とも体調を崩しちゃって、お昼は部屋から出てこなかったんだって…」

肇「そんなことがあったんですか……。恐らく、私の言う事が信じられずに、自分たちの目で確認しようとしたんでしょうね……。強く止めておくべきでした……」

琴葉「肇ちゃん……あまり自分を責めないで。もっと、いつもの肇ちゃんらしく、ね」

肇「そう、ですね。今は事件を解決することに集中します」

琴葉「うん。その方がいつもの肇ちゃんらしいわ」

その後、琴葉は自分の部屋に戻り、肇はまた1人で事件のことを考えていた。
36 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:33:00.07 ID:/8b9FcNf0
PM6:25


その後は何事もなく日が沈み、肇と琴葉は食堂に来ていた。

昼食時に欠席していた実城高校の生徒も揃っていたが、1人だけ、美優だけは夕食時も欠席していた。

肇「川島先生、三船先生は…?」

瑞樹「美優先生はもう少し1人にしてほしいみたい。自分が受け持ってる生徒が殺されてしまって、相当参ってるみたいね」

実城高校の生徒も、元気な様子とは言い難かった。
それは不動高校の生徒たちも察しており、夕食中は全体的に暗い雰囲気となっていた。

肇「そうだ、川島先生」

瑞樹「うん?何かしら?」

肇「あとで、遺体の入っている倉庫の鍵の番号を変えておいてくれませんか…?昼間に、実城高校の皆さんが佐久間さんの遺体を確認しにいって、見てしまったらしく…」

瑞樹「あー、それであの子たち昼食の時に姿を見せなかったのね。わかったわ、あとで変えておくわね」

肇「お願いします…」
37 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:33:48.78 ID:/8b9FcNf0
PM7:15


夕食を終え、肇が部屋に戻ろうとすると、廊下で声をかける者がいた。

智絵里「あ、あの…藤原さん…」

肇「緒方さん?どうしたんですか?」

智絵里「えっと…その…」

智絵里は何か言いたげだったが、迷っているようにも見えた。

智絵里「や、やっぱり、今はいいです…。あの…後で藤原さんのお部屋に行ってもいいですか?」

肇「ええ、構いませんよ。私の部屋は303号室ですので…」

智絵里「わ、わかりました……」
38 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:34:30.51 ID:/8b9FcNf0
PM9:00


夜。

肇は自分の部屋で智絵里を待っている、のだが

肇「来ませんね……」

部屋に戻ってから、肇は風呂にも入らずに智絵里が来るのを待っていたのだが、一向に来る気配がない。

肇「そういえば、何時ごろに来るか聞くのを忘れてましたね……」

己の失敗を後悔する肇だったが、携帯の電波が届かず、そもそも智絵里の連絡先を知らない肇は部屋で待っているしかなかった。

しかし、その後消灯時間を過ぎるまで智絵里が現れることはなかった。
39 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:35:02.42 ID:/8b9FcNf0
──────────

side???


「はぁ…はぁ…はぁ…」

私は、ここまで運んできた「それ」に土や葉っぱを塗れさせていく。

1人目は「みじん切り」

2人目は「こねる」

3人目は「成形」

…そして、4人目は「焼く」

目的の達成までは、もう少し。

私は一通り「それ」に土を塗れさせると、切り取ったハンバーグのレシピを「それ」の上に置いた。

「ふふふ……」

side??? end

──────────
40 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:35:39.20 ID:/8b9FcNf0
AM5:45


肇「ん…?」


翌朝、いつの間にか寝てしまっていた肇は早めに目覚めた。

肇「…シャワーでも浴びましょうか…」

肇は、眠気を振り払うためにシャワーを浴びて、服も着替えた。


AM6:15


肇が化粧台で髪を乾かしていると、突然部屋のドアがノックされた。


ドン!ドン!ドン!


??「藤原さん!起きてください!」

激しいノックと切羽詰まったような声に、肇はすぐにドアを開けた。

肇「五十嵐さん?」

響子「あっ、藤原さん!」

肇「どうかしたんですか?」

響子「それが、大変なんです!えっと、食堂に犯人からのメッセージで!みんなで手分けして探していて!」

相当に慌てているのか、響子が言っていることはめちゃくちゃで、肇にはほとんど伝わってこなかった。

肇「お、落ち着いてください、五十嵐さん!」

響子「と、とにかく、食堂に行ってください!私は他の人を起こしてきます!」

肇「わ、わかりました!」

響子はそう言うと、千早の部屋に向かっていった。

肇は響子の言葉通り急いで一階の食堂に向かおうと階段を降りていった。

肇が二階まで降りた時、そこで誰かとぶつかりそうになった。

琴葉「きゃっ!」

肇「あ、琴葉!」

琴葉「肇ちゃん!」

肇「何があったんですか?」

琴葉「大変なの!食堂のホワイトボードに犯人からのメッセージで『次の調理場はこの屋敷のどこか』って!」

肇「本当ですか!?」

琴葉「うん!私と五十嵐さんでみんなを起こしてたんだけど、緒方さんが起きて来ないの!」

肇「えっ!?」

琴葉「とりあえず他の人は起こしたけど、緒方さんの部屋に入るには先生が持ってる鍵が…」

肇「は、早く行きましょう!川島先生はどこに?」

琴葉「多分一階で三船先生と他の部屋を見てると思う」

肇「なら一階に行きます!」

琴葉「私も行くわ!」

肇と琴葉は瑞樹を探すため、一階に降りていった。
41 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:36:20.00 ID:/8b9FcNf0
AM6:20


一階に行くと、肇たちはすぐに瑞樹を発見した。

肇「川島先生!」

瑞樹「藤原さん!」

肇「今、琴葉と五十嵐さんから聞きました!先生も食堂に行ったんですか?」

瑞樹「ええ!だから今美優ちゃんと手分けして一階の部屋を探しているんだけれど」

琴葉「大変なんです!緒方さんがノックをしても起きて来なくて」

瑞樹「なんですって!?わかったわ。こっちは美優ちゃんに任せて二階に行きましょう!」

肇「お願いします!」


AM6:25


肇たちは再び二階に戻ってくると、肇たちに駆け寄ってくる者がいた。

かな子「あ!川島先生!智絵里ちゃんが!智絵里ちゃんがいないんです!」

瑞樹「わかってるわ、三村さん。今部屋の鍵を開けるわ」

かな子「はい!」

肇たちは、智絵里の部屋の前まで来た。

瑞樹「念のため、あなたたちはここにいて」

と、少し離れたところに肇たちを待機させる瑞樹。

瑞樹「緒方さーん、いるー?いるなら返事をしてちょうだーい!」

と言いながら部屋のドアをノックする瑞樹。

瑞樹「開けるわよー!」

一言かけてから、部屋のドアノブに鍵を差し込み鍵を開ける。

瑞樹「緒方さん!…えっ?」

部屋の中に入った瑞樹は、驚いたように声をあげた。

肇「どうしたんですか?」

それにつられて肇たちも中に入る。

瑞樹「緒方さんがいないわ!」

かな子「ええっ?」

琴葉「バスルームにもいないわ!」

肇「どこに行ったんでしょう」

瑞樹「とりあえず一階に戻りましょう。美優ちゃんとも相談しないと」
42 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:37:02.65 ID:/8b9FcNf0
AM6:35


部屋を出た肇たちはそのまま一階へと向かった。

瑞樹「美優ちゃん!見つかった?」

美優「いいえ、誰も…」

瑞樹「困ったわね…」

美優「そちらは何かあったんですか?」

瑞樹「ええ。緒方さんがどこにもいないわ」

美優「そんな…!」

瑞樹「一階には誰もいなかったのよね?」

美優「はい…。食堂や調理室まで見てみましたけど、誰も…」

瑞樹「となると、あとは三階かしら?」

響子「先生!」

肇たちが一階のエントランス付近で集まっていると、響子が合流した。

美優「五十嵐さん」

響子「見つかりました?」

瑞樹「ダメね。一階も二階も探したけれど緒方さんは見つからないわ」

響子「智絵里ちゃんが?」

かな子「そうなの。智絵里ちゃんがどこにもいなくて…あとはもう三階くらいしか…」

響子「でも、三階でも見つかってないみたいですし…」

その時、階段から降りてくる人物がいた。

千早「なんの騒ぎかしら?五十嵐さんに起こされたのだけど」

琴葉「千早!」

響子「あ、如月さん、無理矢理起こしてごめんなさい!今、みんなで緒方さんを探してて…」

響子たちが千早に事情を説明している間、肇と瑞樹、美優の3人は智絵里の居場所について話し合っていた。

瑞樹「三階でもないとなるとあとは…」

その時、館内見取り図を見ていた肇が気づいた。

肇「三船先生!地下は!?ここに階段があります!地下があるんでしょう!?」

美優「そ、そういえば、他の部活で地下のホールを使うことがあるって…」

瑞樹「間違いないわ!行きましょう!」

肇「千早、琴葉、二階と三階にいる人を呼んできてくれませんか?私たちは地下に行きます!」

千早「わかったわ!」

琴葉「じゃあ、私は三階を見てくるわ!」

肇「任せました!」
43 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:37:36.26 ID:/8b9FcNf0
AM6:45


肇たちは、一階の非常口側の突き当たりにある階段から地下に向かった。

そして、ホールの入り口と思われる扉の前に着いた。

肇「…開けます」

肇の言葉に、その場にいた全員が息を呑む。

キィィィという小さな音を立てて、扉が開かれた。

肇「…っ!緒方、さん…」

肇たちが見たものは、ホールの真ん中に横たえられた緒方智絵里の身体だった。

すぐさま肇が駆け寄り、脈を確認する、が

肇「ダメ、ですね。すでに亡くなっています」

響子「そんな…智絵里ちゃんまで…」

かな子「あ!あれを見てください!」

かな子の言葉とともに指差した右側の壁を全員が向いた。

美優「これって…」

その壁際にはホワイトボードが置かれていたが、そこには「メッセージ」が書かれていた。


"ワレハ シノ リョウリニン
ツギノ チョウリバハ ハヤシ"


瑞樹「これ、私たちが朝見たものとそっくりだわ!確かあの時も"シノ リョウリニン"って…」

響子「じゃ、じゃあこれは犯人のメッセージ…?」

肇「っ!次は林ですか…!」

肇が、降りてきた階段に向かって引き返した時、ちょうど琴葉たちが降りてきた。

琴葉「肇ちゃん!連れてきたわ!」

美奈子「智絵里ちゃんは!?」

肇「すでに亡くなっていました…それに犯人からのメッセージで"次は林だ"と」

千早「林って、合宿所の裏手にあるやつかしら」

有香「大変です!ゆかりちゃんがいません!」

瑞樹「なんですって!?」

肇「つまり彼女は林に…」

美奈子「探しに行きましょう!まだ間に合うかも!」

肇を先頭に、全員が階段を引き返し、非常口から外に出て林に向かった。

有香「ゆかりちゃーん!」

瑞樹「水本さーん!」

琴葉「は、肇ちゃん!あれ!」

琴葉が何かを発見し、肇を呼んだ。

肇「琴葉!…こ、これは…!」

琴葉の声で全員がそこに集まった。
その中には悲鳴を上げる者もいた。

肇たちが発見したもの。

それは山のように盛られた土の中に、顔を除いて埋められている水本ゆかりだった。

肇(私の前で、また2人も殺されてしまいました…)

肇が、拳をぎゅっと強く握る。

琴葉「肇ちゃん…?」

肇「この事件は、必ず私が解き明かしてみせます…!名探偵と言われた…おじいちゃんの名にかけて!!」
44 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/05/18(金) 22:40:06.80 ID:/8b9FcNf0
今回はここまでです。

次回の更新は、今回よりは時間が空かないように努めます。

必ず最後まで書き上げますので、どうかお付き合いの程、よろしくお願い致します。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 02:18:21.99 ID:2UG5RIySO
偽装死体トリック
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 16:55:20.58 ID:NWJ53omDO
あっちで答を知ってると……

ぐっすん
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/22(火) 18:49:54.43 ID:TuSEZJ520
> 主人公はデレマスの「はじめちゃん」にお願いしましたが、ヒロイン枠は見た目重視でミリオンのアイドルにしました。

ミユキ カアイソウ
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 22:14:14.19 ID:tifkVjTG0
面白いなこれ。
犯人は一体誰なんだ…。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 06:09:35.44 ID:uO13QFgBO
続ききになる
50 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/07/18(水) 23:56:58.04 ID:oz1FoMmC0
>>40 訂正

AM5:45


肇「ん…?」


翌朝、いつの間にか寝てしまっていた肇は早めに目覚めた。

肇「…シャワーでも浴びましょうか…」

肇は、眠気を振り払うためにシャワーを浴びて、服も着替えた。


AM6:15


肇が化粧台で髪を乾かしていると、突然部屋のドアがノックされた。


ドン!ドン!ドン!


??「藤原さん!起きてください!」

激しいノックと切羽詰まったような声に、肇はすぐにドアを開けた。

肇「五十嵐さん?」

響子「あっ、藤原さん!」

肇「どうかしたんですか?」

響子「それが、大変なんです!えっと、食堂に犯人からのメッセージで!みんなで手分けして探していて!」

相当に慌てているのか、響子が言っていることはめちゃくちゃで、肇にはほとんど伝わってこなかった。

肇「お、落ち着いてください、五十嵐さん!」

響子「と、とにかく、食堂に行ってください!私は他の人を起こしてきます!」

肇「わ、わかりました!」

響子はそう言うと、有香の部屋に向かっていった。

肇は響子の言葉通り急いで一階の食堂に向かおうと階段を降りていった。

肇が二階まで降りた時、そこで誰かとぶつかりそうになった。

琴葉「きゃっ!」

肇「あ、琴葉!」

琴葉「肇ちゃん!」

肇「何があったんですか?」

琴葉「大変なの!食堂のホワイトボードに犯人からのメッセージで『次の調理場はこの屋敷のどこか』って!」

肇「本当ですか!?」

琴葉「うん!私と五十嵐さんでみんなを起こしてたんだけど、緒方さんが起きて来ないの!」

肇「えっ!?」

琴葉「とりあえず他の人は起こしたけど、緒方さんの部屋に入るには先生が持ってる鍵が…」

肇「は、早く行きましょう!川島先生はどこに?」

琴葉「多分一階で三船先生と他の部屋を見てると思う」

肇「なら一階に行きます!」

琴葉「私も行くわ!」

肇と琴葉は瑞樹を探すため、一階に降りていった。
51 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/07/18(水) 23:59:26.69 ID:oz1FoMmC0
>>41 訂正

AM6:20


一階に行くと、肇たちはすぐに瑞樹を発見した。

肇「川島先生!」

瑞樹「藤原さん!」

肇「今、琴葉と五十嵐さんから聞きました!先生も食堂に行ったんですか?」

瑞樹「ええ!だから今美優ちゃんと手分けして一階の部屋を探しているんだけれど」

琴葉「大変なんです!緒方さんがノックをしても起きて来なくて」

瑞樹「なんですって!?わかったわ。こっちは美優ちゃんに任せて二階に行きましょう!」

肇「お願いします!」


AM6:25


肇たちは再び二階に戻ってくると、肇たちに駆け寄ってくる者がいた。

かな子「あ!川島先生!智絵里ちゃんが!智絵里ちゃんがいないんです!」

瑞樹「わかってるわ、三村さん。今部屋の鍵を開けるわ」

かな子「はい!」

肇たちは、智絵里の部屋の前まで来た。

瑞樹「念のため、あなたたちはここにいて」

と、少し離れたところに肇たちを待機させる瑞樹。

瑞樹「緒方さーん、いるー?いるなら返事をしてちょうだーい!」

と言いながら部屋のドアをノックする瑞樹。

瑞樹「開けるわよー!」

一言かけてから、部屋のドアノブに鍵を差し込み鍵を開ける。

瑞樹「緒方さん!…えっ?」

部屋の中に入った瑞樹は、驚いたように声をあげた。

肇「どうしたんですか?」

それにつられて肇たちも中に入る。

瑞樹「緒方さんがいないわ!」

琴葉「ええっ?」

かな子「バスルームにもいません!」

肇「どこに行ったんでしょう」

瑞樹「とりあえず一階に戻りましょう。美優ちゃんとも相談しないと」
52 : ◆P4gW9oKees [saga]:2018/07/19(木) 00:00:28.77 ID:xDdGl2bF0
本日の更新は保守ついでに訂正のみです
続きは近日中に投下します。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/19(木) 22:28:59.91 ID:RmPpErxm0
越境だしミステリーだしええやん
続きが楽しみだわ
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