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淫魔の国と、こどもの日
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30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/08(火) 20:10:31.82 ID:4mEVKeS30
まってた
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/08(火) 21:19:01.54 ID:YXdRs3uFo
>>29
Twitterでやれ
32 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:24:57.28 ID:7RScKd7G0
こんばんは
十分ほどしたら続きを落としていきます
33 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:39:11.75 ID:7RScKd7G0
*****
勇者「……あれ、かな?」
堕女神「陛下。安全かどうか確認のとれない物をお召し上がりになるのは……」
勇者「悪かった。でも考えにくいな。流石に木の実を食べたら子供の姿に変わる、なんて……」
堕女神「念のため調べておきましょう、後ほど使いの者を出します。ところで、御体に不調などございますか? どこかが痛むですとか」
勇者「いや、不調はない。むしろ……すごく、体が軽い」
堕女神「そうでしたか。……しかし、弱りましたね。その御姿を皆にどう告げたものやら……いやそもそも、告げて良いものかどうか……」
勇者「隠せるものでもないだろう。……それはそうと、どうして?」
堕女神「とは?」
34 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:40:20.59 ID:7RScKd7G0
勇者「いや、な。……どうして、俺だと? 寝室に、どこから入ったか分からない子供が一人きりいるだけで……俺だと分かったのか」
鏡に顔を映せば、面影は確かに残していても――――“勇者”の使命を果たした後の、昨日まで見ていた顔とはあまりに違う。
のどかな小村で農作業の手伝いをしては時折サボり、
近くにあった小さな木立ちを“迷いの森”と称して冒険ごっこに明け暮れていた、
無邪気な少年だった頃のこの顔とはあまりに、違うのに。
それでも堕女神は、誰何する事なく、戸惑いながらも恐る恐るに言い当てた。
勇者が不思議でならなかったのはそこだ。
35 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:41:48.70 ID:7RScKd7G0
堕女神「何故と申されましても……確かに不可思議には感じましたが、誰何するほどの事ではございませんでしたので……」
少なく見て十歳分ほどは若返っているのに、それでも彼女はそう答えた。
尋ねられた事そのものを戸惑いながら、さも当然かのようにあっさりと。
堕女神「私は、貴方がどのような姿と化しても――――必ず」
その竜にも似た瞳に映し出されていたのは――――真摯さではない。
忌まわしい仮定が真実となっても必ずそうすると誓う、“決意”だった。
勇者「……ところで……そろそろ……」
小さく細い腹部から、くぅ、と子犬の鳴くような“声”が響き、空気を壊してしまう。
間の悪さを勇者は苦笑するも腹の虫に言って聞かせる事もできず、更にもう一鳴きが加わる。
堕女神「……ですね。ひとまずこちらへ運んで参ります。どうです、普段と同量をお召し上がりになれそうでしょうか?」
勇者「多分大丈夫だろう。無理そうなら時間をかけて食べるよ」
堕女神「はい、それでは少々お待ちを。それと……朝食を終えるまでは、誰も御部屋に入れぬよう」
36 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:42:27.55 ID:7RScKd7G0
勇者「さっきも言ったけど……隠し通せないだろう、こんなの……アレが収まらなかっただけの事ですら、あんな騒ぎだったのに」
堕女神「……ええ。なので、とりあえず……今からの朝食だけは、ゆっくりとお摂りになってくださいませ。
心穏やかに。その後、改めて事態の把握と解決といたしましょう」
一礼して堕女神は部屋を去る。
穏やかに、ゆっくり――――と願われても、それは叶わない。
この、唐突で、懐かしく、始末の悪い、懐かしさをもたらす変化のせいで。
それと、堕女神の危惧に反して普段よりも増した食欲のせいで。
ただ何故か、葉野菜のサラダだけは普段よりも苦く感じて、完食までには時間を要してしまい。
堕女神へ慈悲を求める視線を向けても、微笑みかけられただけに終わるのだった。
37 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:43:23.55 ID:7RScKd7G0
*****
勇者「それで……どうすればいいんだ、これから」
堕女神「……ひとまずはいつも通りに。必要なものは私室へ運んで参ります。それにしても……どう、伝えれば良いものか……」
普段使う椅子に座っても、足が床につかない。
所在なくぶらつかせたまま、子供の姿に変わってしまった勇者は改めて、目前に立つ堕女神を見た。
必然視線は濃紺の布地に覆われ、ぴったりと張りつくように浮き上がらせる双丘のラインに引き寄せられた。
勇者(す、ご……っ! い、いや。いけない。堕女神は、真剣に……考えて、くれて……)
理性では利かせられない歯止めがある。
それもそのはず。
大人の姿で見て触れていた時も、なおその豊かさには並び立つもののない、堕女神の“それ”だ。
まして子供の目で見ればなおさらの、畏怖すら感じてしまうほどの重質量の肉の起伏。
今現在の勇者の顔を遥かに凌ぐ大きさに圧倒され、引力により――――いくら目を離そうとしても、離れない。
38 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:45:08.39 ID:7RScKd7G0
堕女神「陛下?」
勇者(駄目だ……視線が……逸らせない……)
それは、旅のさなかで初めて“竜”と出くわした時に似ていた。
場数もまだ踏まない時分、不運にも遭遇した時には身は強張り、目を逸らす事もできず、ただ、震えることすらできずに固まっていた。
おとぎ話に聞く“竜”の威容に、勇者は見惚れてしまい――――動く事すらできなかった、あの感覚と似ていたのだ。
堕女神「――――陛下」
勇者「え」
刹那、鼻先に上質な生地の触感があり――――やがて、暖かい柔肌のぬくもりが、顔を包み込んだ。
とっさに吸い込んだ息には良く知る“彼女”の匂いと、普段にまして鮮やかに薫る花の香りが漂う。
視界を奪われ、張り詰めた顔の触覚いっぱいに広がる暖かな柔肉とに包まれ、勇者は堕女神の胸に抱かれていた。
後頭に優しく添えられた手もまた、握り合っていた夜毎のそれとは違い、大きく感じる。
堕女神「どうか、ご心配なさらないで下さい。……私が、お傍におります」
双丘に抱かれる事、十数秒。
当の勇者にとっては数分にも感じていた頃――――厚く実った乳房の奥から、早鐘のように脈打つ鼓動が伝わる事に気付いた。
乳房の谷間を縫って吸う息に、熱い香りが混じり始める。
39 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:45:43.01 ID:7RScKd7G0
勇者(っ……な、に……? 堕女神……)
かぶりを振って微かに身じろぎし、離れかけたところで……優しく、引き戻される。
添えられていた手は後頭部を優しくさすり、背にまでもう片手が回されて抱きすくめられていた。
ほのかな淫気――――ともまた違う気配が勇者の六感をくすぐる。
勇者「堕女神……苦、し……っ」
堕女神「っ! も、申し訳ございません……つい……」
はっ、と我に返った堕女神が手を離すと同時に、顔に押しあてられていたドレス越しの重質量が離れ、とたんに新鮮な空気が帰ってきた。
呼吸しながら顔を上げると、今まで呼吸を妨げられていた勇者以上に上気した堕女神の細面が、許しを求めるようにしながら視線を泳がせる。
40 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:46:24.80 ID:7RScKd7G0
勇者「堕女神……?」
堕女神「申し訳ございません……」
勇者「……いや、いい。こっちこそすまない、何か……その、ええと。取り乱した」
その理由までは流石に言い澱み、彼女に与えた誤解のまま押し通すと決める。
わざとらしく視線を首ごと強引に逸らし、目を閉じ――――そのまま、言葉を続ける。
勇者「それより……くどいが隠してもしょうがないし、隠しようもない。急病だと言って伏せるにも、
城内のサキュバスの目に触れないなんて無理だ。……もう言おう。今日。今から」
堕女神「はい、かしこまりました……今、今ですか……?」
勇者「ああ。朝食を運んで来てもらっておいてだけど……今から部屋を出る。とりあえず執務室まで行こう」
41 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:47:16.20 ID:7RScKd7G0
堕女神「はい、お伴を……きゃっ!?」
椅子から下りると、足首とふくらはぎのベルトを限界まで締めても余りあるブーツのせいでつんのめってしまい、
慌てて目の前にいた堕女神の露わの脚に掴まり、体勢を保つ。
その瞬間、かっと顔に血が昇ってくる感覚が勇者を襲う。
思えば、堕女神の前でこんなに分かりやすい醜態を晒したのも初めてで――――それが、こんな変貌のせいとはいえ。
脚にしがみついてしまった事が急に気恥ずかしくなり……中身までも子供に戻ってしまったように、ひたすら赤面して言葉に窮する。
42 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:48:08.74 ID:7RScKd7G0
勇者「ご、ごめん……っ」
堕女神「……陛下、どうか焦らず。さぁ、御手を……お繋ぎいたします」
勇者「え」
堕女神「その靴では危ないかと存じます。流石に、その……おぶったり、抱いたりでは……権威に……関わりますので……」
差し出された手を見て、勇者は一人ごちる。
子供の姿になって、手を繋がれ引かれ、だぶだぶのズボンとまくりあげたシャツ、
ギュッと締め込んで無理やり履いたブーツで保てる権威などあるか、と。
だが、それでも。
勇者「……頼む。執務室まで、な」
その手を振り払う事など、できるはずもなく。
堕女神の握り返した手を取り、歩き慣れないブーツを引きずるように、大きすぎるドアをくぐってゆっくりと寝室を出た。
43 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/08(火) 23:50:44.35 ID:7RScKd7G0
ひとまずこれで今夜分終わりといたします
また明日
>>29
今はこれの事しか考えていないので何とも……
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/09(水) 14:09:18.79 ID:ax0g+cucO
今回はばぶみを感じる…
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/09(水) 15:16:59.60 ID:j2dwegSnO
オレは、世界で一番このSSを待ってた!!!!!!!!
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/09(水) 21:59:01.45 ID:UQzOaC730
生きがい
47 :
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]:2018/05/10(木) 00:02:49.78 ID:Qe86yV0R0
こんばんは、会社とは悪の組織であり圧制です
十分ぐらいしてから誤字サラっと見てから投下していきます
48 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:31:38.45 ID:Qe86yV0R0
手を引かれながら、ときおり振り向いてくる堕女神を“見上げ”て歩き慣れない心地で廊下を歩く。
だぶだぶのズボンとブーツのせいだけでなく、普段の半分近い歩幅は、ともかくよたよたとしたものになった。
それを知ってか堕女神も歩調を落とし、ゆっくり、ゆっくり、彼女もまた慣れない様子で手を引いて歩いてくれている。
勇者「くっ……! 靴、だけでも……早く、何とかしたい。裸足で歩いちゃダメかな」
堕女神「流石にそれは……。ともかく執務室まで。幸い、靴ならばすぐに調達して来られます。淫魔の国にも、子供はおりますし」
勇者「面目ない」
堕女神「いえ、陛下のせいでは……。しかし、その……何と、申しましょうか……」
勇者「?」
階段に差し掛かる寸前、堕女神が言い澱み、繋いでいた手指を緩めた。
堕女神「おかしな心地がいたしますね。……貴方の手が、こんなに小さく柔らかいのは」
49 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:32:45.10 ID:Qe86yV0R0
それは、勇者も胸に抱いていた気持ちと似ていた。
堕女神が、子供の姿に変わった勇者の手へそう感じたように。
子供の手だからこそ伝わる、堕女神の手の暖かみと――――絡めてくれるしなやかな指に伝えられる、“女神”の優しさ。
勇者「……子供扱いするな、って言ってるだろ」
堕女神「は……。ですが、今の陛下は……」
勇者「大丈夫だってば。ほら、階段だってきちっと昇り切れて――――あっ!?」
若干緩めた手を引かれながら階段を上がり――――そぞろになっていた気のせいで、歩幅を忘れていたせいで、
そして何より合わないブーツのせいで爪先が空を掻いて、上がるはずだった最後の段を踏み外し、体勢を前のめりに崩してしまい。
まくりあげていた裾から覗く、むき出しの白い脛が――――。
勇者「っっあ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっアぁぁ!」
薄い皮膚ごしの直下にある骨が体重を乗せ、階段の直角へ吸い込まれて行く。
その瞬間勇者はとっさに閉じた瞼の裏に、真昼の星が散るのを見た。
50 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:33:37.37 ID:Qe86yV0R0
堕女神「陛下!?」
勇者「ッ――――――!」
堕女神「陛下、しっかりなさってくださ――――あっ……」
廊下の奥にまで響き渡り反響する“少年の”叫び声に、銘々働いていた仕事を中断し、集まってきてしまう。
甲冑の埃を払っていたサキュバスが、洗濯場へ向かっていた水精が、城内へ出入りしていた獣人種の商人が。
「い、今の声……何? 誰ですか!?」
「えっ……なんで、人間の……子供?」
「堕女神様、その子……」
「産んだんですか?」
「誰か人界からさらってきた? まずいですよ、これ……早く帰してあげなきゃダメな案件ですよ」
「――――いや、待って。まさか――――」
口々に勝手な事を呟き合い寄り集まってきた淫魔達へ、脛を起点に背骨を走り抜け痺れさせるような痛みを堪えて、
“人間の子供”はゆっくり、告げる。
51 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:34:36.00 ID:Qe86yV0R0
*****
堕女神「……混乱を招きかねないタイミングでした」
勇者「あの場で芝居なんて打てるか。それに何人かはもう気付いていたしな……恐ろしい、淫魔の勘」
集まってきた使用人達には、ありのままに伝えて――――しかし、みだりに城外へ広めないよう言い含めた。
しかしそれも、かしましい淫魔達の事だから……もっても、二日が限度だろう。
鈍い痛みのまだ残る脛を椅子の上に立て膝に抱き、さすりながら勇者はそう一人ごちる。
桃の腐ったような青いアザが鮮烈に残ってしまい、子供に特有の鋭い感覚、
薄い皮膚、未発達な骨をしたたかに打ちつけた激痛は忘れられないのだ。
堕女神「陛下、大丈夫ですか?」
勇者「……死ぬほど痛かったけど、折れたりはしてない」
堕女神「よろしいのですか? 治癒を施しましょうか」
勇者「いや、いい。そう大げさにしなくていい」
堕女神「はい、仰せのままに」
52 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:35:03.01 ID:Qe86yV0R0
勇者「それはそうと……サキュバスA、サキュバスBの姿が見えない。真っ先に寄ってきそうなものだけど……」
堕女神「サキュバスBは明日まで。サキュバスAはさらにその次の日まで休暇を。サキュバスAがこう長い休みを取るのは珍しいのですが……」
勇者「理由は何か言っていたか?」
堕女神「いえ、どちらも特に。……いや、サキュバスAは……少しばかりの遠出をするとか」
勇者「ヘンな物捕まえてきたりしないだろうな。あいつ、この間……谷に棲む“媚薬ヒュドラ”の分泌液と臭腺がどうとか……」
堕女神「……留意するといたしましょうか」
勇者「もし連れ帰って来たら倒そうか」
堕女神「いえ、サキュバスAに責任を取って生息地に帰させましょう」
勇者「あぁ、そっちの方が良いか。……さて、俺は適当に始めるよ。堕女神は服を調達してくれ」
堕女神「はい、かしこまりました。それでは後ほど」
53 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:35:33.25 ID:Qe86yV0R0
*****
――――いつもの執務室で、いつものように書面に目を通していてもいくつもの不便が襲ってくる。
まず、ひとつ。
勇者(……机が、高い……)
椅子に座ったまま執務机に向かえば、肩口までの高さに天板があって……とても、その上で作業をする事などできない。
椅子の上に膝立ちの姿勢で向かおうとすれば、できてしまった“スネの傷”のせいで転げ落ちそうな痛みが走る。
苦心しながら紙束と羽ペン、インク壺を床へ下ろして、床に座りながらの仕事を余儀なくされた。
本を積み上げて即席の机を作りどうにかこうにか片付けていくと、ふたつめの問題。
54 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:37:00.27 ID:Qe86yV0R0
勇者(腹、減った……何でだ……)
朝食からいい時間も経っていないのに、早くも空腹が襲ってきてしまった。
窓の外を見れば、日はまだまだ低く、室内へ向けてまっすぐ突き刺さる陽射しが投げかけられているのに。
昼食まではまだあるにも関わらず、もう既に胃がカラッポになってしまったような空腹感がやって来てしまった。
勇者(我慢だ。これぐらい我慢。そうだ、こんなの、砂漠で遭難しかけたあの時に比べれば……!)
人間界での旅の苦境を思い出せば、それは耐えられた。
あらためて羽ペンを握るその手を見れば、見るほど――――その小ささに心細さが募る。
“聖剣”を振るっていた手、“魔王”の外殻を切り裂いた手と同じとはまるで思えない。
その手に握っていた魔を微かに震わせれば、青白く帯電させる事はできた。
雷の魔力は失われていない。
ただ――――姿だけが小さくなり、運動能力も子供の頃まで戻ってしまったようだ。
勇者「これ、戻るのかな……はぁ……」
ついた溜め息まで小さく、か細くなってしまっていたせいで、とうとう……紙の一枚も微動だにさせられなかった。
55 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:38:07.09 ID:Qe86yV0R0
*****
堕女神が揃えさせた服へ着替え、夕食を摂り、ようやく寝室へと辿りつく。
一日が異様なほどに長く感じるその時間感覚もまた、この異変の副産物だった。
勇者(どうなってる……俺の体)
体に反して、食欲はいつもの数倍にも増していた。
牛の粗挽き肉と香味野菜を練り合わせ、成形して焼いた肉料理を六皿。
普段の精妙な味付けとは異なり、単純にして明快な食べ応えが拍車をかけたのは間違いない。
ナイフを入れてさえこぼれず閉じ込められていた肉汁が、噛み締めたとたんに溢れて口内をほとばしる料理だった。
仕上げにかけたトマトソースと重なり合って――――気付けば、皿の上から消えていた。
朝食と昼食、たった二回の食事でぴったりと味覚の変化を探り当てて重ねてくる堕女神の技量に改めて舌を巻く。
ワインを出すように頼んでも頑として聞き入れてくれなかったのが、今日の唯一の心残りだった。
いくら「中身は大人だ」と主張しても徒労に終わってしまったのだ。
56 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:38:38.87 ID:Qe86yV0R0
そして今、就寝時間を大きく回ってしまっているのに、月が煌々と輝いているのに寝付けない理由は、大きく二つ。
ひとつは。
勇者(……いや、俺……言ったのに。一人で……寝られる、って)
堕女神「陛下? まだお眠りになられないのでしょうか?」
勇者「あ、ああ……眠気が起きないんだ」
堕女神「僭越ではありますが、寝物語など? それとも唄いましょうか」
勇者「だから……」
ベッドに潜り込んで、時にして数分の間、うとうとと寝入りかけた時の事だ。
扉の音にも気付けず――――気がつけば堕女神がベッド脇に腰かけ、じっと見つめていた。
そのままなし崩し的に添い寝をされる形となって、今……こうして間近から寝顔を見守られながら必死に眠ろうと務めていた。
57 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:40:16.09 ID:Qe86yV0R0
強引に振りほどいたくせに階段でケガをした以上、あまり偉そうな事は言えない。
執務室の窓を開けようとすれば落ちかけたし、机には届かなかったし、
いつもは腰に差していた剣も背が足りずに引きずってしまうためにそうできず、
思いきって丸腰で過ごした。
堕女神「――――貴方は、この姿でいた頃の事を覚えておいでですか?」
勇者「え……?」
高く遠くなった天蓋の下、向き合う堕女神からの問いは唐突だった。
暗闇の中で薄く開いた赤い瞳が、ゆっくりと動いたのが見える。
堕女神「今ではなく。陛下。貴方が、“勇者”の名を拝命する前の……本当に、小さかった時の事を」
58 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/10(木) 00:40:45.00 ID:Qe86yV0R0
今日ちょっと短いですがここまで
続きはまた今夜
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/10(木) 01:02:39.16 ID:WexSK2BD0
乙!
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/10(木) 01:06:01.88 ID:S4P10e4H0
ナイトメアちゃんの出番もしかして冒頭回想だけ・・・
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/10(木) 01:16:09.25 ID:3h+GsmIsO
>>60
ナイトメアです…出番が無いとめあです
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/10(木) 02:41:37.59 ID:zXr/Arwh0
乙です
堕女神から溢れ出す母性よ
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/10(木) 04:02:31.17 ID:ZE7KghQRO
乙
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/10(木) 07:56:56.86 ID:FMz9NE2no
駄女神えっちです
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/11(金) 04:27:23.06 ID:qkmpXmtwO
堕女神からの母性がハンパない
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/11(金) 17:40:58.84 ID:eFw/YXPb0
淫魔の国で過ごす日々
神居村
風邪をひくとこうなる
ここ
で合ってる?
67 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:06:19.54 ID:A81DMCj70
すまんです、昨日来れんでした
もうちょいしたら始めていきますー
>>66
書いた順番ならまぁそれで合ってますぞ
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/11(金) 23:11:35.21 ID:F76Gtjvh0
ttp://ss.vip2ch.com/ss/
勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
いちおうwikiもあるみたいやね
69 :
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]:2018/05/11(金) 23:32:03.01 ID:A81DMCj70
>>57
勇者「どうだかなぁ。あの頃はあの頃で、平和ではあったけれど……貧しい村だった。
……でも、そうだ。いつか叶えばいいと思う事ならあった」
堕女神「それは……?」
勇者「いつか。いつか旅を、したいって。村の外を見たい。一度は、田舎者は思うんだろうさ。
氷の島と炎の山、戦慄するような死の谷、湖と真っ白い城をこの目で見たかった」
それは、魔王のいなかった世界で。
何物にも脅かされていなかった穏やかな時代に想い描き、村の子供達と語り合った“自由”のひとときの欠片。
“勇者も魔王もいない世界”での。
だが、その平和な夢想は砕かれた。
代わりに叶ったのは――――誰もが寝床で聞かされる、“物語”。
70 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:32:36.02 ID:A81DMCj70
魂まで凍てつかせる氷雪の嵐吹きすさぶ、凍原を見た。
馬をも一飲みにする魔の巨狼の彷徨する、骨と腐肉の谷を見た。
解けゆくはずの氷が解けずに島の形をなし、頑強なはずの岩が溶けて燃え盛る世界の神秘を見た。
白鳥の泳ぐ水面と、そのほとりに立つ研がれた騎槍のような尖塔を連ならせる白亜の城を見た。
船体の横腹に食い付かれながら、それでも魔物に刃を立てる恐れ知らずの船乗り達を見た。
竜と鳥だけが知るはずの風景を、空を泳ぐ船の舷窓から見た。
――――闇の巨獣のように鳴動する、“魔王の城”を見た。
71 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:33:02.24 ID:A81DMCj70
勇者「……まぁ、結果的には叶ったよ。……ああ、あとひとつあった」
堕女神「と、申されますと……」
それは、数時間前に叶ったばかりの、貧農の倅のささやかな野望だった。
勇者「柔らかい、甘くて白いパンを腹いっぱいに。……そっか、今日も夢が叶ったんだ」
堕女神「陛下」
布団の中で、いつもは細く小さな――――そして今は自分よりも大きく、包み込むように柔らかい手が伸ばされ、勇者の手を取る。
その手が微かに震えていたのは、手と手が繋がるまでのこと。
子供の姿と変わっても、その魂は昨晩と変わらない。
戸惑いながらも、勇者は受け入れる。
ふだんよりも薄く、小鳥の嘴のように小さく、敏感になってしまった少年の唇へ。
――――女神の、それを。
72 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:33:29.20 ID:A81DMCj70
時にして、ほんの数秒。
ただおずおずと唇を触れ、擦れ合わせるだけのついばむようなキスだった。
そんな、罪のないひとときのキスが――――勇者の背骨を貫くように、甘く痺れさせた。
唇が舌の一部となってしまった、そのような錯覚すら抱いてしまう。
味を受容する器官ではないはずの唇に、確かに一瞬とはいえ感じたからだ。
勇者(っ……感、覚……が……!)
普段なら起こらない甘い電流にも似た感覚に、勇者はひとり驚く。
それは、少年の身ゆえに起こる、敏感すぎる触覚がそうさせたものだ。
繋いだままの手からもそれは伝わる。
普段なら気付けないような、堕女神の手に走る血管の脈動、整えた爪の艶、
さらには産毛ひとつない肌理細かい肌の細胞ひとつひとつまでなぞれるような鋭敏な触覚にようやく気付く。
痛覚だけではなく――触覚も。
少年の姿に変わってしまったからこそ、全てが鮮烈な刺激へ返ってしまっているのだと。
73 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:33:58.19 ID:A81DMCj70
勇者「はっ……くっ……!」
堕女神「陛下……?どう、なさって……」
勇者「なん、でも……ない……」
堕女神「御不調でしたか……?」
勇者「いや、その……びっくり、し……て……」
横臥し、向き合う姿から気付けばもう――――ゆっくりと抱き寄せられ、抱えられるように、再び唇を求められていた。
勇者「くっ……堕……」
堕女神「ん……貴方の、くち……こんなに、小さくな、って……」
突き離せば逃れられるのに……不思議、いや不気味なほどに力が入らない。
抵抗の意思それそのものが湧かず、抑えの利かない堕女神の、蝕むような口づけの渦から逃げられない。
74 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:34:58.24 ID:A81DMCj70
一度、二度、交わすごとに勇者の体に痺れるような快感が襲う。
引き押せられる必然で堕女神の胸が押し付けられる位置は普段のように胸板ではなく、腹部にやや近い。
上背の差が、並び横たわるベッドの上では枕の位置で揃う。
ベッドの中で足掻く爪先が、堕女神の柔らかな太股へ撫でるように触れた。
堕女神「っ……陛、下……くすぐったい、です……」
ひととき口づけを休めた堕女神が身じろぎする。
拇指で触れるだけで、滑らかに張り詰めた太ももの白肌が脳裏を過る。
勇者「あ……すまない、悪……」
堕女神「――――私の願いも、奇妙な形で叶いました」
勇者「?」
75 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:35:24.81 ID:A81DMCj70
堕女神「私は、取り残された女神。――――火矢が落ちるまでの束の間を人の世で過ごし、
燃え尽きた後の世界で目を覚ましたあの時の願いです」
勇者「…………」
堕女神「願わくば、もう一度。もう一度だけ――――この手で、ヒトに触れたいと。ヒトの子を、もう一度だけ……抱き締めたかったのです」
強まる抱擁の中、胸へ取り込まれるように、ずぶずぶと沈みながら更に言葉は続く。
堕女神「…………せめて、浸らせていただけますか?」
勇者「……ああ、勿論。でも……堕女神」
堕女神「はい……?」
勇者「ちょっと……苦しい。胸、がっ……息っ……!」
堕女神「も、申し訳ございません! か、加減が……」
76 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:35:51.77 ID:A81DMCj70
諫めても、緩んだ力はほんの少し。
勇者(……そう、か。俺も……久しぶりなんだ、こんなの。……もしか、して)
もしかすると――――勇者もまた、求めていた。
凡そ人類の成しうる最高の功績、その報いを。
本当なら、他の何においても。妃を娶るより、望みのままの報酬を得る事より、“勇者”ではなく“人”としての自由の時を過ごすことより。
ただ、撫でられたかった。
頭から抱き締められ安らぎの中で、誰かに褒めてほしかったのだと。
救世の英雄を称える言葉はいらず。
ただ――――抱き締めて、頭を撫でて、褒めてほしかった“子供”もまた、“勇者”の中にも確かにいたのだ。
77 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:36:17.82 ID:A81DMCj70
撫でられ、抱かれ、やがて堕女神の胸の中で聞く鼓動が生命の潮騒に代わる。
産声を上げる前に絶えず聴いていた、あの音と気付くまではゆるやかに時が過ぎ、
気付いてからは――――さらに、時が歩みを緩めた。
堕女神の呼吸音は涼やかな風となって、伝い流れるように吐息が頬を撫でる。
彼女の指が梳くように髪を撫でる感覚は、優しい海風の戯れに変わる。
いつしか堕女神の漏らす吐息は鼻唄へ変調し、やがて子守唄へと行き着いた。
勇者の知る世界の言葉ではなく、彼女のいた神代の調べが広い寝室へ響く。
言葉の意味は知らずとも、子守唄であるのなら籠める祈りはただ一つ。
深まった夜の闇の中、寝所で子へ聴かせる詩は変わらない。
――――今はただ眠りなさい、いとし子。
――――目が覚めた時はきっと、暖かい朝日が貴方を照らす。
不朽の祈りの中で勇者は微睡み、やがて――――蕩けるようにして、眠る。
78 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:36:44.18 ID:A81DMCj70
*****
不可解な少年化の一日目は、堕女神とほぼ過ごした故に気付けなかった事があった。
勇者は、それを身を以て知る事になる。
人の身では決して抗えない。
抗えないはずだった――――淫魔の国の洗礼を。
79 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/11(金) 23:38:28.44 ID:A81DMCj70
今夜分投下終了です、ではまた明日……と言いたいところですが、ちょっと明日はインシデントにより分からないです
では、また次回
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/12(土) 00:50:00.57 ID:yna2nXaSo
堕女神にバブみを感じる
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/12(土) 02:29:44.67 ID:IqlCifwV0
今回はおねショタですか良いですな
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/12(土) 07:00:01.04 ID:JMS7Pzf9O
遠き過去の、切なき願い、か・・・。元愛の女神だから、慈愛も母性も半端ないわな・・・。
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/12(土) 10:49:10.65 ID:Zenvsz7r0
サキュBとイチャラブ・・・無理だな(きっぱり
ドジ属性がどう出るやらわからんw
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/12(土) 11:39:24.16 ID:dvTZfAcbo
授乳ありますかありませんね
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/12(土) 18:15:13.20 ID:N5kplrpQ0
あったらちょっと引くわ・・・
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/13(日) 00:29:24.90 ID:/CM2FL990
以前隣女王がBの吸ってなかったっけ
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/13(日) 00:34:43.54 ID:VXSm7/rQ0
pixivの追加であったかな
88 :
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]:2018/05/14(月) 00:32:57.90 ID:DlfG3gWz0
こんばんは
スレを立てた直後になんて事だ……
再開します
89 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:33:26.06 ID:DlfG3gWz0
*****
翌日は、春先に似合わず酷く蒸す夜を迎えた。
その日は夕食を終えてなお湿気が収まらず、就寝前まで待てずに早々に勇者は大浴場へ向かった。
膝小僧まで届かない丈の黒絹のズボンはまだ穿き慣れず、
小さくなった足を包む革の短靴は微かにヒールが高いが、歩けぬほどではない。
ただ、子供の歩幅では移動のほとんどに倍の時間がかかってしまう事は、変えられるはずもなく不便だった。
衣類などの問題はどうにかできても、城の廊下を縮めることは無論できず、階段の高さを変える事もできはしない。
隣女王含め、隣国の淫魔たちがこの城へ訪れた時はかような不便を強いたのか――――と、勇者はひとりごちて歩く。
勇者「……広いのも考えもの、なんて。昔の俺は考えもしなかったろうな」
90 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:34:19.76 ID:DlfG3gWz0
故郷、土地だけは潤沢に使えたが家が広かったわけはない。
あの村は、曽祖父のひとつ上あたりの世代が必死で拓いた村だと父母からは聞いていた。
樹を切り、耕し、小屋を立て……買いつけた種を撒き、
芽吹いた作物を売って鳥を仕入れ、豚を仕入れ、涙ぐましく額に汗して開拓したのだと。
二階建ての、奥にある狭い部屋が自室だった。
一階で父が木槌を振りあげ工房仕事をすれば家そのものがびりびり震えて、
炊事をすれば怪しくきしむ床板のすき間からスープの匂いが上がってきた。
階段前の床板の一枚はうっかり踏むたびにヒヤヒヤするような不穏な触感があり、
いつもそこだけは誰も踏まないように務めていたほどだ。
とうとう、誰かが踏み抜くような場面を見る事はなかったものの……今その床板が無事なのか、急に気になり始める。
91 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:35:15.78 ID:DlfG3gWz0
いつもより豊富に使える思考の時間、郷愁に想いをめぐらすうちにやがて大浴場へ辿りついた。
脱衣場の時点ですでに広く把握しきれないものの、ひとまず誰かの気配は感じ取れない。
人目を避けていたわけではないものの、とりあえずの安堵とともにシャツのボタンを外していく。
さっさと浴場に入ってしまいたい。
そして、果たしてこの体で浸る浴槽はどれほどに感じるのかと――――かすかに期待しながら、
浴場へ続く扉を開き、もくもくと上がる湯煙へ挑む。
勇者「お、わっ……! 広い……!」
この姿だから、改めてしっかりと大浴場の広さを感じ取れた。
確実に、生家の母屋と納屋、庭の総床面積を合わせたよりも広い。
ちょっとした池ほどに見える湯船は対岸まで泳ぐ事すらおっくうなほど遠く、
魔物の頭をかたどった給湯口はまたがる事ができてしまいそうだ。
更には普段は頭一つ小さく見える淫魔像の装飾、その豊かに悩ましい肢体に感じる迫力も違う。
さながら、いや間違いなくそうなのだが――――“淫魔の国”に子供が力無く迷い込んだ、そんな錯覚も起きたほどだ。
92 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:35:46.16 ID:DlfG3gWz0
勇者「……深いんだろうなぁ、きっと」
いきなり湯船へ飛びこみたい衝動を必死で押し込めながら、冷静に勇者は分析した。
この背丈でそんな事をすれば目測が狂い、足がつかないという事も考えられる。
薄紅色に揺らぎ輝く水面は、そんな“少年”の衝動と自制を嘲笑いながら手招きするようにたゆたう。
遠回りになるが、勇者は湯船への入り方を考え――――正面から大きく回った場所にある、傾斜した入り口を目指す。
さながら海へ向かう砂浜のようになっているゆるやかな斜面、
そこで波打ち際で戯れるようにのんびりと沐浴する使用人のサキュバス達をよく見かけた。
幸いにして人影はなく、そこから一歩、また一歩と、海へ挑むようにゆっくりと足を踏み入れていく。
かすかに波打つ水面は、そのうねりを飲み込むように打ち消していった。
やがて、肩口まで浸かる具合のところを探り当てると、勇者は腰を下ろす。
それでようやく――――探り探りながらも“入浴”が叶った。
93 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:37:26.81 ID:DlfG3gWz0
勇者「はぁ……。何で、こんな事になってるんだ……」
ふだんとは勝手の違う、風呂に入る事ですら気を使う有り様にあらためて情けなさを覚えた。
湯から手を覗かせて見れば、いよいよ頼りなく細くて、短剣を握るのがせいぜいの大きさだった。
とはいえ――――見慣れない“手”でもあった。
この姿が当たり前だった頃は、いつも爪の間に土が挟まり、指の関節には砂埃が詰まり、青草の香りがしみついていた。
爪はでこぼこに変形して、割れて欠けていたのが常だった。
だが、今あらためて見る手は、違う。
整った爪と、砂などついていない指。そもそも花を浮かべ香油を溶かした熱い湯に身体をつけるという事などできるはずもない。
あるはずのなかった過去が、手の形を借りていた。
勇者「……そういえば、思い出した。もしかして……あれか……?」
退行現象の心当たりが、もうひとつだけ――――ふと、思い出された。
94 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:38:21.66 ID:DlfG3gWz0
*****
サキュバスA「陛下、あぶない! なぞの液が!!」
勇者「うぉ、わっ!?」
遡る事数日前。
サキュバスAを伴って城下へ出たある日の夕方近くの事だ。
路地裏からおもむろに姿を覗かせた、奇妙に脈打つ名状しがたい生き物が、
ぐぷっ、と吐き出した真っ白くベトベトとした液を頭からかぶってしまった。
彼女が身を呈してかばおうとした頃には遅かったのだ。
勇者「ぐっ……! 何だ、こりゃ……いったい何だコイツは」
サキュバスA「……ローパーの変種かしら……? こんな外観は初めて見ますわね。“ポチ”の同類ではなさそうだけれど……」
ローパーに大まかに似ているものの、目のような器官を各所に持ち、枯れた枝、あるいは翼のような触手が一対生えている。
加えてぐねぐねと蠢くイボつきの触手が醜悪そのものの見た目をしている。
95 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:40:09.77 ID:DlfG3gWz0
淫具店主「うわっちゃぁ……モロかぶりしましたね、陛下。大丈夫ですか?」
勇者「……まさかお前の所で?」
淫具店主「いやぁ、私は仕入れただけですよぅ。愛玩用淫獣店に連れて行くところで……」
遅まきに出てきた、淫具店を営むサキュバスがハンカチを差し出しながら呑気に告げる。
勇者「何なんだコイツ……この液?」
淫具店主「いや、それが……分からなくて。何か作用するモンだとは思うんですが……新種みたいで」
サキュバスA「あら、まぁ……何ですの、この啓蒙の高まりそうな外見。何処から連れて?ヤー○ムからでしょうか?発狂耐性が必要かしら」
淫具店主「いや、ここの近傍から……いや、申し訳ありません陛下。お詫びに……私が、カラダでお支払いいたします……」
96 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:41:50.51 ID:DlfG3gWz0
勇者「そういうのはいい。……?何書いてるおまえ」
淫具店主「ええ、まぁ。……“媚薬効果はナシ。繊維への溶解、金属腐食効果も無し……”と……」
勇者「何メモしてんだ!反省してないだろ、さては!?」
淫具店主「していますとも、ええ。次に活かす事こそが、起きてしまった事への真の償いではないでしょうか?」
勇者「……まぁいい。今のところ不調もない……としたらこの液は何の意味があるんだか」
サキュバスA「進化の過程で無毒化はしたものの、分泌腺だけが残った……ですとか?フフッ、何にせよ楽しいではありませんか」
勇者「全ッ然楽しくない。人がベタベタになってるの見て楽しいか」
サキュバスA「ええ、思いのほか」
*****
97 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/14(月) 00:44:19.75 ID:DlfG3gWz0
今夜分投下終了
次回からようやくアレ……
では、また明日
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/14(月) 00:58:09.46 ID:iyoHTWaL0
やはりリアルタイムは良いものですね。
楽しみにしております。
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/14(月) 01:01:03.78 ID:OZBQ0eLk0
上位者は即刻狩れ(ヤー◯ム並感)
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/14(月) 01:01:20.97 ID:MC5TrSQz0
エーブリエータスちゃんか。来たなヒロイン
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/14(月) 01:16:34.39 ID:GMsokBaio
風呂で溺れるのか
何cmぐらいに縮んだんだろうか
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/14(月) 02:30:40.20 ID:6kd2tBGE0
乙
陛下あぶなーい(棒)
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/15(火) 01:21:27.32 ID:ctQonDfN0
今日更新ないか?
104 :
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]:2018/05/15(火) 07:11:58.23 ID:L8XfZl3U0
朝っぱらからだが投下していくぜ
夜じゃなくてすまなんだ
それでは
105 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:12:57.78 ID:L8XfZl3U0
*****
勇者「……本当に……本当にあいつは……もう……」
べたべたの粘液をまとって城に帰りついた時の、堕女神の眼は忘れ得ない。
思い起こせば胃がきりりと痛むような心苦しさのまま浴場へ向かった、あの気まずさも。
ナイトメアと出掛けた際に食した果実。
サキュバスAと城下へ出掛けた際にかぶってしまった、奇怪な粘液。
今思い当たった、この状況の“理由”はこの二つだった。
城下で済ませた用事があと一つ二つはあるものの……どれも、身体が急に若返る理由とは思えない事ばかり。
勇者「……戻れるのかな」
ふと、心細さを覚えて――――まっさらで小さな手を、うんざりするような視線で見つめる。
傷一つなく、土埃も油染みもない手と、水面の下に見える頼りなく細い脚と、視界に垂れる細い前髪。
その時、水面に波紋が対面から投じられ、広がった。
106 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:13:29.26 ID:L8XfZl3U0
勇者(ん……誰かいるのか)
数日前の災難を思い起こす間に、何者かが浴場へ入っていた。
誰何しようとも考えたが――――若干、警戒する。
危害を加えられるような事はないとしても、本能がそうさせた。
漂ってくる、淫魔に独特の花の媚香と気配が……普段よりも、濃く感じられたからだ。
それはあまりにくっきりと嗅ぎ取れたせいで、誰のものなのか逆に掴めなかったのだ。
続けざまに湯煙の向こうからは戯れるような水音が響き、薄紅色の水面が揺れ、散らされた花びらが泳ぐ。
そして、やがて――――誰もいないと思っているのか、歌声が混じる。
調子はずれに、子供じみた節回し、時折忘れた箇所をごまかすように鼻唄に変わり。
勇者(……あいつ)
気の緩んだ拍子に勇者は身じろぎし、水音を立ててしまった。
???「えっ……?誰?」
107 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:14:03.31 ID:L8XfZl3U0
ぱしゃ、ぱしゃ、と水音とともに、声の主は湯船の中を物怖じせず近づいてくる。
その正体は、十中八九気付いている。
だからこそ――――勇者は、あえて悪戯心を起こした。
勇者「え、え……と……」
湯煙を掻き分け、姿を見せたのは――――予想に違わない姿だ。
胸から上までを水面上に惜しげもなく覗かせた、稚気を宿したままの姿のサキュバス。
くりくりと瞬く黄金の瞳に若干の怯えを宿し、子供のような姿に似合わない豊満な質量と桜に色づいた尖端が見え隠れする乳房。
警戒する猫のように広げ逆立たせた翼の産毛を逆立たせる、今の己と比べて尚もそう変わらない背丈。
彼女は、一度こちらの姿を認めると……ぎこちなく身を強張らせる。
勇者「……だ、誰……?」
分かりきっていたのに。
姿の見える前にすでに気付いていたのに。
白々しく、そんな言葉を口にする。
サキュバスB「え……」
戸惑いを隠せない彼女は、はっきりと勇者の――――人間の子供の姿を認め、身を強張らせる。
だが、それも一瞬の事。
サキュバスB「……きみ、人間だよね? 怖がらないで。わたしは……」
誰何する事無く、サキュバスBはゆっくりと、微笑みを絶やさずに近づいてきた。
108 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:14:44.97 ID:L8XfZl3U0
*****
勇者(……何も気付かないのか?)
湯船から上がり、今となってはもはや彼女と変わらなくなってしまった姿の背中を洗われながら、疑念は尽きない。
泡をたっぷりまとわせた生地で、痛くならないようにと気配りながらサキュバスBは上下に背中を擦ってくれる。
サキュバスB「ふふ、どう……かゆい所、ないかな?きみ、お肌綺麗だねー……こういう所はじめて?……なんちゃって、えへへ」
勇者「え、あ、ハイ……」
湯船の中で二、三言。
上がってからもそう言葉を交わしていないのに……気付けば、こうなっていた。
湯は熱くないか、喉は乾いていないか、のぼせてはいないか――――気遣われ、
今はサキュバスBに、いつかのように身体を洗う手伝いを申し出られた。
名乗るタイミングを見失い、起こした悪戯心を引きずるように。
何も知らない、人間の子供として……彼女に。“淫魔”に身を任せて。
勇者(なん、だか……悪い事、してる……ような……)
背中越しに漂う気配は、先ほどにまして濃い。
平素の彼女がまとっていた、甘酸っぱい花の薫りが――――いつにもまして、濃く嗅げた。
109 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:15:50.76 ID:L8XfZl3U0
勇者「あ、え、と……貴方……」
サキュバスB「んー……?言ったでしょ、わたしはサキュバスB。よろしくね。お姉ちゃん、って呼んでもいいよ?」
勇者「あ、うん……」
サキュバスB「それにしても、ほんと……お肌綺麗だねぇ、きみ。……こういう所はじめて?なーんちゃって……」
いつか、彼女が背中を洗ってくれた時の事を思い起こす。
その時、サキュバスBは背中まで貫通した刺し傷を撫でさすり、その痛みを偲ぶように言葉を失っていた。
失った言葉の代わりにいたわり、やがて……その掌は前の男心にまで伸びて、吐き出させてくれた事も。
勇者「あの……ここは……?」
サキュバスB「ここはね、淫魔の国。わたしみたいなサキュバスが暮らしてる魔界の一国。
……ここの王様はね……す、すごく……カッコいいんだよ。優しくて……え、えっち……も……ゴメン、なんでもない!」
勇者「……え、そ、そう……なんですか……?」
白々しい演技のさなか、唐突な言葉にしばし言葉を失い、照れが顔を染める。
背を預ける姿が幸運となったまま、気付かれぬように顔を覆う。
110 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:16:42.10 ID:L8XfZl3U0
サキュバスB「でも……たまにね。すっごく、寂しそうな顔も……するんだよね」
勇者「寂し、そう……?」
サキュバスB「王様はね。昔……でもないけど、人間界を救ったんだって。あんまりお話してくれないけど……」
勇者「…………」
サキュバスB「……わたしね、いつか、王様に訊いてみたい事があるんだ」
勇者「……なに?」
サキュバスB「えへへ、聞いてくれるの? 優しいね、きみ」
背を往復していた垢すりの布が、止まる。
サキュバスB「さみしく、なかったかな、って」
勇者「……?」
サキュバスB「“魔王”をやっつけて。もう人間の世界にいるのをやめよう、って思ったって。……やっぱり、さみしかったかな。
大切な人に、お別れをちゃんと言えたのかな。食べたいもの、あったのかな。憧れてたものをちゃんと味わえたのかな、って……」
111 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:17:09.71 ID:L8XfZl3U0
勇者「……きっと、さみしかったと思うよ」
サキュバスB「おっと、それじゃ、泡流すね。お目々つぶってー……いくよー」
相槌を待たず、サキュバスBが頭から流すように汲み溜めたお湯をかける。
二度、三度と繰り返すたびに細かな泡が足もとを流れ、排水口へ消えていく。
それはまるで、問いかけそのものを水に流すようで――――……。
サキュバスB「はい、おしまい。……それじゃ、次はきみの番だよ?」
勇者「え……俺……何が?」
サキュバスB「何が、じゃないよー。“お姉ちゃん”の背中、流してくれる?」
勇者「……え、うん……分かった……」
普段は絶対にされない頼み事だった。
今まで背を洗ってくれていたサキュバスBが入れ替わるように前に出てきて、ちんまりと座ってほっそりとした背中をさらけ出す。
水滴を弾き玉粒のように流す、やや白みの強い蒼肌の背。
背骨に沿って中ほどが柔らかく切れ込み、浮き立つ肩甲骨の薄さも際立つ目を奪われるばかりの後ろ姿だった。
112 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:17:49.59 ID:L8XfZl3U0
だが、美しくとも――――人とはかけ離れた特徴がやはりある。
後ろからでも見てとれる……小さなあどけない頭に存在を主張する、ねじれ尖った山羊の巻き角。
それは彼女の頭部と比較してみると、重心を大きく狂わされそうなほどに逞しい。
薄く張り出た肩甲骨のやや下部から生えていたはずの翼は影も形も無い。
己の意思で収納できるから、今は気遣い消しているのか――――。
そこから徐々に視線を下ろしていけば、やわらかな円みを帯びた尻、その切れ目の始まる頃の場所から“尾”が伸びている。
短いベルベット地にも似た体毛が湯で濡れて光り、深みを持つ紫色に輝いていた。
その先端は矢じりのように、あるいは――――心臓を、“心”を示す図案のような形を描く。
サキュバスBの後ろ姿は、今の自身と比べれば変わりないほどの背丈で――――可憐な少女の背中そのものだ。
全てが美しく均整がとれ、はなはだしく主張する凹凸もないのに弾けるような瑞々しさに溢れ、何より……見合わぬほどの色気を放っていた。
背筋の切れ込み、薄い肩甲骨、小さく丸い尻、細い鎖骨。
すべて、すべてが――――触れれば溶けてしまいそうな少女の姿のまま、男の情欲をくすぐるまでの色気を宿し、催すような香りを放っていた。
――――それを、勇者は受けた。
――――鋭敏になった、五感と――――その奥底にある、雄の本能そのもので。
113 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:18:37.14 ID:L8XfZl3U0
サキュバスB「どうしたの?」
勇者「い、いや……えっと……」
サキュバスB「あっはは、照れてる?かわいー……ほら、洗って?」
勇者「う、うん……」
先ほどそうされたように、彼女の背におずおずと触れ、泡をまとった布を施す。
指先が触れるたびに彼女は小さく喘ぎ、ぴくん、と小さな背を震わせた。
たちまちに泡立つ石鹸が彼女の蒼肌を覆い隠してしまい、もはや見えない。
湯船から立ち上り流れて来る湯煙と、泡とに隠されていながら……サキュバスBから漂う、石鹸とも湯の花とも違う香りに中てられる心地に震えた。
“匂い”から――――“色”を意識する。
サキュバスの翼の持つ深い紫。サキュバスの内側に宿る、美麗な桃色。
全てが、嗅ぐだけで脳裏を過るような……今の自身には過分なほどの劣情を催してしまった。
サキュバスB「んっ……こら。何か当たってるよ?」
勇者「うわっ!? ご、ごめ……」
自然、抑えられない“それ”が反り上がるようにしながら、座る彼女の尻へ、無意識のうちにすりつけられてしまっていた事に気付く。
だが、彼女はそれを言葉で制しはしても……咎めない。
サキュバスB「……ね、きみ」
勇者「……ん」
ほんの少しだけ振り返った、彼女の顔は。
サキュバスB「……お姉ちゃんと、したくなっちゃった?」
――――“魔性”だった。
114 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/15(火) 07:19:46.11 ID:L8XfZl3U0
それでは、また次
ではの
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/15(火) 08:09:28.58 ID:MvyiEeBSO
やっぱりBが一番だ
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/15(火) 13:52:21.43 ID:68X3ybUV0
最高なのはAだぞ?
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/15(火) 14:59:44.12 ID:ejZYTJTUO
いやいや堕女神が…
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[Sage]:2018/05/15(火) 15:31:50.82 ID:UBzGd74U0
いやCの良さがわからんとか...
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/15(火) 15:38:44.99 ID:iL51F/QSO
戦乙女「あ、あの!」
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/15(火) 16:08:41.39 ID:cx/0DDXtO
>>119
無かった事にされてて悲しい…
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/15(火) 19:04:12.68 ID:J+ZJPs+Po
皆最高
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/05/16(水) 03:19:49.06 ID:vUSyNwLo0
AのドMっぷりがたまらぬ
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/16(水) 22:55:21.94 ID:jX2gMyUsO
ナイトメアです…出番が無いとめあって身内ネタやってたら出番が来て大歓喜です…
ナイトメアです…待ってたよ…
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/16(水) 22:56:58.88 ID:i+5BnDqj0
出番が来た(開幕のみ
125 :
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]:2018/05/16(水) 23:25:58.00 ID:+btcL/IB0
一日開いて申し訳ない
飛び飛びだな、畜生何がなんだか
始めます
>>113
より
126 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/16(水) 23:26:28.04 ID:+btcL/IB0
*****
湯船に注がれる湯の音に混じり、ぬめる水音と――――ふたつの喘ぎが重なり、溶けていく。
忍び笑いを堪えるような、鼻にかかった甘い吐息は“淫魔”より。
漏れているという意識すらないまま、絞り出されるような必死の吐息は“少年”より。
くちゃ、くちゃ、ぬる、ぬちっ――――。
粘液をまぶし合わせるような“淫律”が、徐々に、徐々に速度を増す。
サキュバスB「ん、ふふふっ……すごく熱いね、きみの……硬くて……すごく立派……」
勇者「ふ、あっ……!」
にゅる、にゅる、と……淫魔の小さな手中から幾度も“それ”は頭を見せる。
床に膝を立てて広げて座る“少年”を後ろから支え、もたれかけさせながらの手淫だった。
つぶれたバストの危ういほどの柔らかさを背中に感じて。
耳もとからのサキュバスの囁きを脳髄を侵すように届けられて。
体が震えるたびに閉じそうになる脚は、そのたびに彼女の脚に絡め取られ、閉じられないようにより深く開脚させられた。
今、勇者は――――あられもなく脚を開かされたまま、サキュバスBに抱き留められて――――泡をまとう手で、“自身”をくどく、そして優しく扱かれていた。
127 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/16(水) 23:27:06.87 ID:+btcL/IB0
サキュバスB「ふふっ……お姉ちゃんのお尻に勝手にこすりつけちゃって。だめだよ?こんな事しちゃ……女のコに嫌われちゃうよ?」
勇者「あ、ぁ……ごめ……な……」
サキュバスB「あんな悪い事、どこで覚えたのかなぁ。……ほら? きもちいいね……お姉ちゃんの手で“しこしこ”されちゃって……ね?」
昂ぶり続けて、今にも果ててしまいそうなのに――――その瞬間が、いつになっても訪れない。
密着されて薫るサキュバスBの匂いそのものが、鼻から流し込まれたように鼻腔の奥に突き刺さり、
その度、思考が遠くへ連れ去られて行く。
いつもなら抗えたはずだ。
いつもなら、意識を保てたはずだ。
勇者「ハッ……あぁぁ……っ!」
それなのに、背中に押しつけられてぐにぐにと形を変える果実の感触が。
尖端にある乳首のしこった硬さが。
背中を愛撫するように蠢くたびに――――ぞくぞくと痺れが走り、股間に向かい、びきびきと震えさせている。
やがて、硬さを注がれて反り返っていくささやかな怒張の包皮が押し広げられて――――つつましいピンク色の亀頭が、顔を覗かせる。
サキュバスBはそれを見ると――嬉しそうに、喉奥にいたずらな笑いを潜める。
128 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/16(水) 23:27:43.38 ID:+btcL/IB0
サキュバスBの戯れるような魔手の導きはまだ止まない。
現れたピンク色の亀頭へまだ触れないよう、注意を指先に込めつつ、小さな茎を上下にしごき、
空いた片手が解きほぐすように伸びたのは――――湯の中で皺が伸び、
つるんとした薄皮に包まれた指先だけでつまめてしまうほどの二つの珠。
サキュバスB「ね。この中……分かる?今、きっと……いっぱい、お精液つくられてってるみたい。早く出したい?苦しい?」
柔らかく、猫の喉でも撫でるような繊細なタッチでふたつの珠を嬲られる。
細い指先が“嚢”の中にしまわれたそれを優しく捕まえ、その内に滾る白いスープを想うように――――じわり、じわりと。
刺激の度に陰嚢は脈打ち、どぷんっ、という音と脈動が体を駆け上り、沸き立つような感覚と共に体が跳ねた。
勇者「ぐ、っ……!」
だが、それでも……縛めから逃れる事はできない。
背後をとる“淫魔”に身体の中心の茎を文字通りに掌握され、あと少し力を込めれば――――薄皮の中の珠も、指先で弾けてしまうだろう。
否、もしそれらがなかったとしても。
この快楽の呪縛から逃れる事など、できはしなかった。
もはや視界には何も映らず。
ただ、ひたすら――――チカチカと明滅し、おぼろげに時折大浴場に上り揺らぐ湯煙が見えるのがやっとだった。
129 :
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]:2018/05/16(水) 23:28:30.79 ID:+btcL/IB0
小さな肉竿は、とめどなく作られていく若い精のスープで満ちていく。
それを淫魔の掌中で弄ばれ続け、もはや脚をふんばる事さえできないままにずるずるとだらしなく力が抜けていった。
泡と、先走りの吐液と、堪えられない顎の端から垂れ、薄い胸板の上を、筋肉の凹凸ない腹部を経て秘部まで流れ落ちる唾液。
ぐちゃぐちゃにそれらの混交液がサキュバスBの手で掻き混ぜられ、肉竿を蕩かせる潤滑液へと変わっていった。
サキュバスB「あっははは……すごいお顔。イきたい? ね、どぴゅ、どぴゅ、ってしたいでしょ?」
勇者「っ……は……っは……っ……っ!」
快楽は留まるところを知らず、そうしている間にも肉の竿は漲り続け――――
パンパンに張り裂けそうなまま、いつまでも作り出された快楽をせき止められ、決壊の寸前にあった。
サキュバスB「もう辛いよね?おねだり……は許してあげるね。
だって、もう喋れないみたいだし……それじゃ、ボク。初めてのお射精、してみよっか?」
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