淫魔の国と、こどもの日

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347 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:36:50.93 ID:yeC697wZ0

この、異界からの侵入者に対するに――――剣は持ってきていない。
雷を射掛ければあるいは通じるかもしれないが、相応の反撃があるはずだ。
いつまで経っても馬房から出ようとしない勇者を見て、段々とワルキューレは訝し気な表情へと移っていき、
槍の石突で木の床を穿つようにしながら手招きしていた。

ワルキューレ「どうしたというのだ……。よもや、淫魔に何かの魔術でも掛けられたか」

何よりまずい事に、この戦乙女は慮る声こそかけてきているが……その実、一瞬たりとも警戒を解いていない。
疑いをかけられている訳ではないだろうに――――それでもなお、不用意に動けばその槍がいつ閃くものか読めない。
声を出す、口笛を吹く、雷を一発鳴らす。
どう動いても制圧されるだろう。
何より今は、無力な子供の姿であるというのが――――最も大きい。

ワルキューレ「さぁ。……人間界に帰してやる。ここにいる事が君の本懐ではあるまい」

しびれを切らしたように、彼女に手を差し伸べられた。
その時――――勇者の脳裏を過るものがあった。

世界を跨ぐ選択を問われた、“勇者”の最後の日。

ワルキューレ「……いい加減にしろ、何をためらう?人間だろう、君は」

あの時、答えた言葉は。

勇者「……行かない。俺はここにいる」
348 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:38:46.56 ID:yeC697wZ0

ワルキューレ「……何と。いったい何を言っているか分かっているのか?それともよもや、他に人質を……」

勇者「違うよ。俺はこの国にいる。しなきゃならない事が――――まだ、ここにはあるから」

ワルキューレ「理解できん。君。……ここにいては吸い尽くされるだけだぞ」

勇者「そうだとしても。例え、それでも。しかしそれでも。俺は――――戻らない」

人間界には、戻らない。
今ならばきっと、人としての生を歩み直せると分かっていても。
故郷に戻り家族に会う事はできないとしても――――もう一度、“ヒト”としてやり直せるのに。

ワルキューレ「問うて何だが、やはりそうは行かぬ。こんな場所は、人の子のいるべき所ではない。力づくででも――――」

がしゃ、武装の音を立ててワルキューレが一歩、聞き分けのない子を叱るように馬房へ踏み入る。
勇者は身構え、後ずさりするが――――その時、彼女の肩越しに見えた影がある。

ワルキューレ「っ!?」

独楽のように目の前で白銀の乙女は翻り、右手に携えていた槍にて“影”の頭部を目掛けて突き出す。
が、その鋭い突きは仕草の最中、振り抜く事もできないまま不自然な体勢で止められていた。
見れば“影”が――――鏃のように尖った尾の先端で槍の穂先を突き合わせるように防ぎ止めていた。
散った火花に煌めいた、薄暗い厩の中でもはっきりと見て取れる妖しく揺らぐ紫水晶の瞳が勇者を見つめた。



サキュバスA「未成年誘拐は見過ごせませんわね。……“事案”と見てよろしいかしら?」
349 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:41:29.27 ID:yeC697wZ0

ワルキューレ「誘拐はどちらだ。そして貴様は……何者だ」

サキュバスA「お馬鹿さん」

ワルキューレ「何?」

サキュバスA「“ここ”がどこかはお分かりでしょう。闇に忍ぶ黒翼の美人。それでも名乗らなければ駄目かしら?……それにね」

押し合う槍と尾の尖端は拮抗したまま震える。
ぐん、とサキュバスAの身体が沈み込み――――穂先どうしを突き合わせ止めたまま、ゆらりとしなだれかかるように距離を詰める。
直後、すぐに――――

サキュバスA「“サキュバス”は誘拐などしない。ただ、いつだって――――“誘惑”するのみよ」

勇者の目で辛うじて終えたのは噴き上がる旋風のような、真上に向けての切り裂くような一蹴。
直前に防ぎはすれど衝撃は殺せず馬房の屋根を突き破り、蹴りを受けたワルキューレは夜の空へ打ち上げられた。

勇者「……!」

勇者は降り注ぐ梁の木片、屋根の破片と舞い散る埃から身を守る。
やがて、埃が落ち着いた頃にすぐ前を見れば、彼女が微笑みながら佇んでいた。

サキュバスA「陛下、ご無事ですわね?」

勇者「ああ……一体、何が?」

サキュバスA「説明でしたらあとでじっくり、ねっとりと。ともあれ、あの戦乙女をむざむざ逃す手はございませんわ。
         さて――――舐め擦り蕩かして差し上げましょうか」

勇者(……言葉はよく分からないが……とにかくすごい自信だ!)
350 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/19(火) 23:43:51.74 ID:yeC697wZ0
今夜終了、五レス分だが文字数は割と多いのでお許しを……。

ワルキューレは今回正式登場になりました
以前のあれは、剪定事象とかそういう感じで思っていただけると助かります

それでは、恐らくまた明日
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:15:32.67 ID:7NQvR26a0
よかった道に迷うようなうっかりワルキューレは夢だったんだね!!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:22:44.31 ID:p0xG95+lO
堕女神が幼女化してるから、ポチの出番になるのかな・・・。
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 00:43:14.59 ID:5nH3ivomO
あのワルキューレ見てから戦乙女=真面目だけどうっかりポンコツ娘って図式が脳内に乙乙
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 03:25:44.26 ID:gfqsIGRbo
戦乙女と触手はセットだよな?
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2018/06/21(木) 09:12:54.87 ID:2twO6dYX0

サキュバスAの安心感たるや
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 09:59:24.09 ID:KWTzNmwpO
何気にサキュバスAの戦闘描写は初だった気が。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/22(金) 18:07:52.27 ID:PB2qx1zk0
おいぃぃ
仕事サボりつつ読み耽ってたらまだ完結してないやんけ(ノシ 'ω')ノシ バンバン
続きは全裸待機するしかねーな
358 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/22(金) 23:50:37.34 ID:3dPT9Jgf0
こんばんは、誤字をちょっと見てから投下いたします

十分少々お待ちを
359 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:03:44.67 ID:TzAQuzSE0

追って厩舎の屋上へ飛び上がったサキュバスAの姿を追い、勇者は外へ脱出する。
ナイトメアの馬房の前を通りすぎる頃にはすでに裂かれる空気の獰猛な唸りと、戦乙女の気迫、
そして媚態を混じえて挑発するかのような息遣いが聴こえていた。
外に出て、改めて厩の屋上を見やると――――。

ワルキューレ「……あくまで邪魔立てするか、貴様」

サキュバスA「ええ。……あの可愛い坊やを連れて行かせる訳にはいかないの」

上弦の月が、対峙する白と黒を照らし出し見守っていた。
見上げて、右側には白鳥の羽衣を夜風にはためかせ、右半身に構え、その穂先をゆらりと向けて淫魔を射圧する戦乙女がいた。
微かな風を受けて栗色の髪が揺れ――――こぼれ落ちる白鳥の羽根が舞い、月光に煌めく。

左手側には、ワルキューレの槍を嘲るように無手のままで背筋を伸ばし、爪先まで揃えて正対する蒼肌と黒翼の魔。
その表情はあくまで涼やかであり、突きつけられた槍も、向けられる凄まじい殺気にも動じない。
しきりに手指の股や指先をねぶり、挑発的な仕草も忘れず――――臨戦態勢の戦乙女に、彼女はただ淫魔としての妖艶さを忘れず、対峙する。

サキュバスA「……ふふっ」

再び打ち合う時は、彼女が唾に光らせた指先をくいくいと曲げる、開戦の合図で始まった。
360 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:04:23.70 ID:TzAQuzSE0

*****

ワルキューレ「貴様ッ……!」

サキュバスA「ふふっ……そんなに太くてご立派な槍をお持ちですのに……貫けないのでは、ねぇ」

厩の屋根の上、白刃の交錯する残響が連なる。
離れている勇者にさえ聞こえる、空を破裂させる槍の唸りは生半な熟達によるものではない。
何百、何千年と鍛え続けた武技が到達する高みにあるものだ。

だが――――そんな、文字通りの神域の槍は、ひとりの淫魔に届かない。
常人には目で追う事さえできず、恐らくは貫かれてなお気付かないであろう一突きが――――ほんの一度たりとも、かすりもしない。
それも狭く、足を開いて立つ事さえできない幅の屋根の頂で。
サキュバスAは余裕の表情を崩さないまま、踊るように身を交わしていた。

ワルキューレ「貴、様……ただの、低級な淫魔では……!」

サキュバスA「いいえ。私はただの……一介の淫魔でしてよ。……その槍、納めてはいただけないかしら?私、手荒な事は嫌いよ」

ワルキューレ「我が槍を捌きながら、どの口で言うか?」

サキュバスA「……そうねぇ、哀しい事だけれど。……嫌いだけれど、苦手じゃないの」
361 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:05:54.26 ID:TzAQuzSE0

返答代わりに繰り出された渾身の突きをいなして、サキュバスAは空中へ躍り、
気まぐれな折れ線のような鋭角の方向転換とともに空中を飛翔し、ワルキューレの懐へ迫る。
胸甲に向けて突き出された貫手はしかし虚しく空を切り、後退したワルキューレも彼女に倣うように羽衣をはためかせ、飛翔する。

月夜を背追い、ふたつの翼は幾度も交錯して澄んだ残響音を立てた。
サキュバスAの爪が、翼爪が、尾が幾度も――――ワルキューレの槍と、胸甲を打ち、奏でる。
もはや高空に戦場は移り、その表情までは勇者にはもはや追えない。
ただひとつ、奇妙な違和感を覚えるのに精いっぱいでもあったから。
厩を破壊する音は、確かに聴こえたはずだ。
こうしている戦闘音も、聴こえていないはずがない。だが、堕女神ですらも出てはこない。

サキュバスA「……遅いのね。それに……軽い」

ワルキューレ「何を!」

サキュバスA「私がかつて看取った人類の兵士にも、貴女は及ばないと言ったのよ。貴女の槍は、何もかもが軽い」

重力の枷を振り切りながら、二人は高空で鳥の戯れのように刺し合う。
真上から直下へ向けて、見えない壁に“直立”するような姿勢の突き。
それを避けたサキュバスAは急降下して避けると翼を二打ちして更にワルキューレの背後を取る。
362 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:06:59.69 ID:TzAQuzSE0

サキュバスAはやがて、数合ほど翼を交わすと――――おもむろに、構えを解いた。

ワルキューレ「何のつもりだ、貴様……」

サキュバスA「貴女こそ何のつもりなの?こんな淫魔の地で長々と私を追って。何故乗ったのよ。私を殺して何になるの?
         ……ならないわよ。私なんて。サキュバス、なんて……いなくても、誰も困らないのだから」

ワルキューレ「……何?」

サキュバスA「だから私達は、せめて……“ヒト”に返したいモノがあったのかしら。“ヒト”に、私達を、認めてほしかったのかしらね」

中空を気まぐれに漂い、緩やかに舞うような仕草で宙を泳ぐサキュバスAに対し、ワルキューレは突きかからない。
その蠱惑的な仕草ひとつとっても、まるで隙が無いからだ。
背を向けたと思えば尾先はずっと喉へ狙いを定めて、翼は常にワルキューレの死角を作るように踊る。
不用意に近づけば、己が槍の穂先にも劣らぬ爪の一撃が胸甲ごと心臓を穿つと分かっていた。

ワルキューレ「……次で終わりだ。本意ではないが、貴様に我が光を見せてやろう」

サキュバスA「やる気充分なのは良いけれど。残念ね。……もう済んだのよ、私の仕込みは」

ワルキューレ「何を……ひんッ!?」
363 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:08:06.24 ID:TzAQuzSE0

瞬間、ワルキューレは大きく身震いし――――引いて構えた槍を保つ手を緩めてしまい、取り落としかけた。
空中でばたつくように内股へ閉じ、漏れたのは鼻にかかるような吐息。
それでも、彼女は体勢を立て直すと再び槍を握り……きっ、と視線をサキュバスAへ向けた。

ワルキューレ「き、さま……何を……した……!」

サキュバスA「ふふ……♪よくご覧なさいな」

サキュバスAがとんとん、と自らの下腹部を指し示す。
つられてワルキューレが自らの、胸甲に覆われたそこを見ると、“印”はあった。
その淫魔の瞳と同じ、深みを湛えた紫色に輝き脈打つ、魔の紋章形が……くっきりと、爪痕の代わりに刻まれている。

ワルキューレ「これは……!?」

サキュバスA「見ての通り。……素肌に刻む必要も無し。呪印は、その身に欠かさず身に着ける物へ施すもの」

ワルキューレ「な、に……くあ、ぁぁぁっ……ひ、ぃっ……!」

戦乙女は、その言葉の合間にも胸を掻き抱き、脚を閉じ、もじもじと堪えるように身を強張らせる。
その肉体を内側から灼く――――未知の炎へ。
彼女を襲うのは、局部へ、硬い胸甲に覆われた乳首へ、ちりちりと襲う昂ぶり。
364 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:09:37.29 ID:TzAQuzSE0

ワルキューレ「う、あ、あぁぁぁぁ……!き、きさ、ま……止め……!!ひぃぃあぁぁっ!!」

サキュバスA「もう一度言いましょう。肌ではなく物にだって刻んでしまえるのよ。……“淫紋”のお味はいかが?」

湛えた微笑みは、戦乙女の媚態が、痴態へと変わりゆくのを見届ける。
目論見の進んだ満足感と、仄暗い嗜虐心とで魔性の笑みを形作りながら、サキュバスAは言葉を続けた。

サキュバスA「貴女のあられもない悲鳴を聴きながらいたぶるのも悪くないけれど。……こう見えても私、目的をきちんと先にこなす主義なのよ」

ワルキューレ「何、を……ん、あぁぁっ!や、止め……止め、ろ……止め……!」

昂ぶった肌の感覚は、互いの翼の生み出す風ですらも受け取って、快感へと転換させていく。
もはや槍は指先で必死にもがき、絡め取るように保持する有り様で、
軒昂であった戦意は今、己の内に浸食する快感を食い止める事にだけ注がれていた。
間合いを保つ、という……本来なら身についていた、眠っていてさえこなせたはずの事までも彼女は失った。

やがて波を越え、息を整えようと顔を上げた彼女が見たのは、吐息のかかる距離にまで詰めてきた、淫魔の美貌だ。
既に槍の間合いではなく、剣の間でも、拳の間ですらもない。
その背へ回され、羽衣の内に差し入れるように背を撫でているのがその魔手であると気付き、戦乙女は戦慄する。

ワルキューレ「きさ、ま……卑劣、な……あ、くっ……んふぅぅ……!」

サキュバスA「……私の勝ち。それに」


サキュバスA「淫魔が淫らな真似をして、何がいけないのかしら?」
365 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/23(土) 00:11:07.86 ID:TzAQuzSE0
今夜投下終了です

ではまた
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 00:35:15.88 ID:EDMmG+pf0
平行世界の目隠し焼き拷問はほんとうによかった
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/23(土) 00:39:50.54 ID:8NCQlpXB0
初めてリアルタイムで読んでます!
サキュバスAかっこええ…
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 01:07:03.66 ID:E2c/zmRlO
ワルキューレに完全完勝て・・・。勇者より強くないか・・・?
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 02:20:58.99 ID:jRcL7lDTo
淫紋はさいこうですね!
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 02:37:27.76 ID:PMR4APKt0
乙!
昔の話で、サキュCがサキュAの戦闘能力の高さをちょびっと言っていたのを思い出したよ
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 04:04:15.09 ID:+NyvMerNO
淫魔の国もう何度読み直したか分からんけど何回読んでも見事すぎる
文章力の化け物

いつもありがとう>>1
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/23(土) 08:43:23.75 ID:pg/s7W/FO
焼き拷問が終わったあとのAがいいんだろうが(憤慨)
373 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 01:57:16.64 ID:w5q0kpwW0
こんばんは
クソったれな月曜の深夜に投下いたします
今日含め、たぶん三回?で本編終了といたします
374 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:00:23.51 ID:w5q0kpwW0

*****

堕女神「……まさか本当に“ワルキューレ”が、とは。それも、我らが領土へ」

勇者「そろそろ説明しろよ、サキュバスA」

サキュバスA「ええ。……元はと言えば、あの仔豚。かの天界にて勇士へ供する食材でしたわね。それが何の悪戯か、
         彼女らが英霊の魂を迎えに行った際の時空の綻びを抜け、人界へ。そして人界から今度はここ、淫魔の国へ。
         恐らくはこちらの淫魔が人界を見に入った際、空間の“閉じ”が不完全でしたのでしょう。……と考えましたが、真相は違いましたわ」

勇者「え……?」

勇者、堕女神、サキュバスAは捕縛したワルキューレをひとまず幽閉した地下牢の一室に集まり、横たわるその姿を見守りながら話し込んでいた。
その内容は、眼前の存在への驚愕から――――ようやく見つけ出した、風変わりな事態の真相へ迫るものへと。

サキュバスA「というのも。……城下の店の長、狐女将。よりによって彼女は人界へ赴き、風雅に月見酒を過ごしていると
         たいへん美味しそうで可愛い仔豚を見つけ――――連れ帰ったのです」

勇者「……あいつが犯人か!」

堕女神「……きつく申し渡しましょうか。外来の生物を持ち込むような真似はそもそも……」

勇者「元に戻れてからだ。この姿で厳重注意してもどうせ聞かないだろ」

溜め息は深く、眉間の皺も深く。
それでもワルキューレは未だ起きる気配がなく、槍だけは取り上げたものの、鎧も羽衣も剥いでいない。
375 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:01:47.01 ID:w5q0kpwW0

勇者「で。……彼女がここに現れた理由は、仔豚を回収しに……だろうが、何故ここが?」

サキュバスA「ああ、それ。……私が触れ回りましたのよ。“城の厩舎に、再生する仔豚がいる”と」

堕女神「何故……そのような事を?返答によっては……」

サキュバスA「先日見つけた白い羽根。それらは続けざまに何本も発見されましたわ。となればその持ち主はこの王都の中、
         あるいは周辺に身を隠していると。捜索するよりおびき寄せる方が確実でしたもので」

勇者「……どうして言わなかった?」

サキュバスA「それを申されるのなら、何故あそこにいらしたのです?用もないでしょうに」

勇者「いや、俺は…………いや、確かに、そう……か」

サキュバスA「ともあれ、まだ不透明な事ばかり。さて、どうしたものでしょう?噴乳絶頂の淫紋をちょっと描きましょうか?」

勇者「普通に起こせばいいだろ、普通に!」

サキュバスA「……ふむ。かしこまりました」
376 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:02:50.24 ID:w5q0kpwW0

答えると、サキュバスAはゆったりと、静かな足取りで、石造りの床へ身を横たえるワルキューレへ近づく。
続けて、這い、寄り添うようにその耳もとを隠すように流れる金髪をすくい取り、
あらわにさせた白い耳介へ口を寄せ――――ぼそぼそと、何事かを呟き始める。

サキュバスA「――――貴女は、これより…………カウント……しぶかせ……イって……力、抜けて……くったりと……身を任せ……」

ワルキューレ「……んっ……あ……っ。ふぅぅっ……!」

ぼそぼそ、ぼそぼそ、呟くごとに戦乙女の身体はふるふると打ち震えていく。
もじもじと内股を擦り合わせ、喉からは悩ましい声が。昨夜の凛としたものとは真逆のそれが漏れ出した。
しなやかに鍛えられた露わな太ももは桃色に染まっていき――――床にすり付けていた美貌もまた、同様。
薄く開いた目は未だ覚めず、隙間からは潤んだ涙が雫を形作る。

勇者「おい」

サキュバスA「……では……3……2……1…………ゼ、ロ」

ワルキューレ「ひ、きぃっ……!っ……はぁ、ぅぅぅ……っ!」

サキュバスAが数え下ろすと――――捕らわれの戦乙女は、身を震わせ、
眠ったまま達し――――彼女の詠唱をなぞるように脱力し、再び体を弛緩させた。

勇者「だから普通に起こせって言ってるだろうがっ!!」
377 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:03:52.32 ID:w5q0kpwW0

サキュバスA「サキュバスの普通と申しますと……指やお口で致しますか、殿方なら跨ってから揺すり起こすか。そのどちらかになってしまいますわね」

勇者「……なるほどそれでなのか。いつもいつも俺を起こしに来たと思えば……」

サキュバスA「ああいえ、違います。あれは面白がっているだけですもの。夢精させて起こして差し上げる事を」

勇者「面白がるな!」

堕女神「陛下。陛下。……ともかく、彼女は……目を覚ましたようですよ」

勇者「ん、あ……ああ、そうだった」

堕女神に止められ、床に倒れていた戦乙女を振り向くと――――彼女はもう目を覚まして身じろぎし、
寝そべった状態から片手をつき力無く体を起こそうと試みていた。
その眼は、サキュバスAと勇者、堕女神を交互に見比べ、やがて――――サキュバスAへ向いた。

ワルキューレ「貴、様……っ私に、何を……」

サキュバスA「何を、“した”でしょうか?……それとも、“するつもりだ”かしら?前者であれば答えられるけれど。後者は貴女次第ね」

ワルキューレ「……っ」
378 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:04:26.32 ID:w5q0kpwW0

彼女はその双眸に気迫を込め、サキュバスAを力強く睨むも……その当人は、涼やかに微笑みながら見つめるだけだ。
ぶるぶると震える手で体を起こそうと試みては、かくりと力が抜けて床へ頬を押し付ける事になった。

ワルキューレ「体、に……力が……」

サキュバスA「それはそうでしょう。貴女……もしかして、処女かしら」

ワルキューレ「ん、なっ……!?き、貴様、何を言って――――いや、それより……その子は……」

サキュバスA「ああ、こちら?貴女が連れ去ろうとした、大切な私達の……」

ワルキューレ「恥を知れ……!」

サキュバスA「そう仰られましても。たっぷりと貴女に“恥”を教えてあげる事ならできるのだけれど……」

ワルキューレ「貴様ら……幼気な子らを慰み者にするなど、許されるものかっ!」


サキュバスA「……?」

堕女神「……“ら”?」
379 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:05:26.68 ID:w5q0kpwW0

その時、牢獄の外に別の足音がぱたぱたと響く。
軽い足取りは、曲がり角で一度軽い悲鳴とともに途絶え――――やがて、その主は顔を見せる。

サキュバスB「失礼します。……な、何か……怒ってるんですか?誰か……」

サキュバスA「あら、貴女も来たの。……いや、待って頂戴。これじゃ……」

ワルキューレ「貴様ら……恥ずかしくないのか……!よってたかり、幼子らを……卑劣な……!」

勇者「いや、その……」

サキュバスB「えっと……何か、誤解して……?」

ワルキューレ「黙れ、何が違う!大方、何も知らぬ男児を手籠めにして、あられもない姿を弄び、精気を味わったのだろう!」

サキュバスB「うぅっ……!?ど、どうして……!」

勇者(当たり……)
380 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:06:57.22 ID:w5q0kpwW0

ワルキューレ「やはりか!くっ……貴様らは……!ここから出せ!さもなくば……」

サキュバスA「……ちょっと。ちょっと待って頂戴。あのね。……貴女、どうして私に言っているのよ?」

激する言葉も、刺すような視線も、彼女へ向けて放たれたものだ。
敗北を喫した相手に向けるのならそれは当然であるものの――――あまりに込められたそれは、異常だ。
眼前にある物、今自分をこうさせている物、全てを彼女へ詰問するような、剣呑な気迫だった。

勇者「あの。……お前は、多分最初から何か……」

ワルキューレ「君は、こいつらをかばうのか。……痛ましい……!」

堕女神「もしや……」

ワルキューレ「あなたも。我らが主に似た……しかし、澄み渡るような気配。いずこかの神の眷族と御見受けする」

サキュバスA「……それで、何なの。私を何だと思っているのかしら」

ワルキューレ「とぼけるな。貴様は――――」

サキュバスA「私は?」

ワルキューレ「貴様は、淫魔どもの女王なのだろう!?」


サキュバスA「…………え?」

サキュバスB「え?」

勇者「…………まぁ」

堕女神「……そう見えてしまいますね」
381 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/25(月) 02:07:39.27 ID:w5q0kpwW0
今日の分、投下終了いたします

ではでは
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 02:32:26.86 ID:72PufSLC0
仕事が終わってスマホを開くと新しい投下がある
今日も良い日だ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 07:15:35.20 ID:xBba705hO
やっぱりドジっ娘…?ワルキューレさん良いよね乙乙
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/26(火) 21:59:49.48 ID:nItXmK8P0
クソ真面目過ぎるが故のポンコツ・・・いい・・・
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/27(水) 13:32:18.03 ID:oreut8MV0
『おうちで大人しくしてろ、無料ミルクサーバー』wwwwww
386 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:33:09.02 ID:GTEJu7md0
こんばんは

投下しますー
387 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:33:38.86 ID:GTEJu7md0

*****

それから――――誤解を解くのに、更に昼過ぎまで説き続ける事となった。
サキュバスAはまず、淫魔の国の女王では無いという事をサキュバスBが必死に説得する。
ならば女王は誰か、という事になり――――今この国を治めているのは女王ではなく“王”だという事を必死に。
しかしその途上でもやはり、“人間の子供を無理やりさらって王にしようとしている”と誤解を受け、更に話は明後日の方向へこじれた。

そこから、更に説得は続き――――どうにか現状を説明しきる頃には日は傾いてしまい、
それでも彼女の疑念を晴らし切れてはいないようで、疑いの目は残っていた。

そこから勇者が堕女神とサキュバスAへ命じて、牢獄ではないワルキューレの部屋を用意してやり、ようやく彼女なりに納得した様子で、
不承不承ながら“豚”の特性を、語る。


*****
388 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:34:19.27 ID:GTEJu7md0

ワルキューレ「……要はあの豚。我らが英霊達へ供する豚の事だ。あの豚を食うと――――望んだ時点の自らの姿へ変わるのだ」

勇者「……“怪我が治る”んじゃなくてか?」

ワルキューレ「それは、望むからだ。我らが天界に至った勇士の目的は、自己を高める事。その為に日夜鍛錬を積み重ねる。
         ……彼らは、そこで鍛錬にて負傷する前の姿に戻る事だけを願っていた」

勇者「伝承のとおり、か」

話の場は、薄暗い地下牢獄ではなく――――城内に設けた議席へ移されていた。
もはやワルキューレを縛めておく事もなく、差し向かい、淹れた茶の湯気が互いの間をのぼり、暖めていた。
場へ立ち会うのは、堕女神とサキュバスA。
二人は勇者の隣席にそれぞれ座り、堕女神は耳目を傾ける一方――――サキュバスAは、片手の爪を眺めながら、話だけをつまらなそうに聞く。

堕女神「……つまり?元に戻るためには……」

ワルキューレ「もう一度、あの仔豚の肉を食えばいい。戻りたい姿を想いながら。それで解決するだろう」
389 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:35:30.62 ID:GTEJu7md0

勇者「……ひとつ、腑に落ちない。どうして俺と堕女神だけが?サキュバスAも食べたし、城下の酒場でも出されていただろう。
   なのに、同様の騒ぎがあった報告はない」

ワルキューレ「あの豚は、人類の勇士と神々をもてなし、供するもの。魔族や、我が眷族に効き目はないのだ。
         食う事自体はできるが、単なる肉に過ぎぬ」

サキュバスA「…………いえいえ。私は今の自分に満足しておりますもの。そのせいでしたのかと」

ワルキューレ「……他に、訊きたい事は?……今回の件は、我らにも落ち度がある。申し訳なかった」

勇者「……いや、特にない。戻る方法さえ分かれば。だが、念のため明日までいてくれるか?
    もし今夜から明朝で戻れなかった場合、別の方法が必要かもしれない」

ワルキューレ「……構わないが、良いのか?」

堕女神「はい。陛下の仰せのままに」

サキュバスA「では、私からよろしいでしょうか?」

勇者「サキュバスA?」

ワルキューレ「……何だ」

サキュバスA「これから……体で払っていただきましょうか」

ワルキューレ「え…………!?」
390 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:36:15.72 ID:GTEJu7md0

*****

ワルキューレ「ふ、ざ……何だ、これは……どうして、私が……!」

サキュバスA「ほぅら、この程度で休んではいられませんわ。自分のした事を何だと思っておいでなのかしら?情けない……」

ワルキューレ「嫌、だ……もう……やめ……っ!」

サキュバスA「アハハハハっ!せっかくの美体、活かしてもらわなくては困りますわね?」

ナイトメア「……さっさとしろ、やすむな、たて。どれい」

ワルキューレ「誰、が……っ!」

ナイトメア「おまえだ。じぶんのたちば、わかってるのか?からだでかえせ」

サキュバスA「ふふ、言うわね……貴女も」

ナイトメア「あのぶたのぶんも、おまえのからだでしはらってもらう。たすけ、は、こないぞ」

ワルキューレ「くっ……!」


*****
391 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:36:43.25 ID:GTEJu7md0

ワルキューレ「……いや、おかしいだろう!どうして私が……!」

ナイトメア「ひとのいえ、こわしたのだれだ」

仔豚のいた房の天井に空いた風穴を塞ぐべく、戦乙女は駆り出されていた。
初撃で蹴り上げられ、屋根まで打ち抜いてしまったのをサキュバスAは忘れなかった。
羽衣も鎧も脱がせ、木槌と釘をにこやかに手渡し、ただ一言。
“肉体で支払え”と――――。

サキュバスA「ほぅら。馬車馬のように働きなさい。手を休めないの」

屋根の上に優雅に腰を下ろし、野次を浴びせるのはサキュバスA。
厩舎の中からはナイトメアが、それぞれワルキューレを監視する。

ワルキューレ「貴様、誰のせいだと!?貴様が私を蹴り上げたのが発端だろう!?」

サキュバスA「お馬鹿さん。子供でも知っているルールでしてよ?」

ワルキューレ「何?」

サキュバスA「原因はどうあれ、最後に触ったのは貴女です」

ナイトメア「さいごにさわったひとがかたづける」

ワルキューレ「貴様ら……!」
392 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:38:15.48 ID:GTEJu7md0

サキュバスA「それとも、さっきみたいに抵抗してみるかしら?……淫紋は消えてない事を忘れていたようね。はしたない……」

ワルキューレ「……くっ……」

サキュバスA「“殺せ”、とは続けないのかしらね」

ワルキューレ「……それは、屈辱も苦痛も受け入れたくない故に慈悲を願う台詞だ。私は吐かん。
         辱めたければそうしろ。私の四肢を千切りたければそうするがいい」

サキュバスA「そんなに血生臭い女じゃないのよ、私。……それに。貴女……」

ワルキューレ「?」

サキュバスA「処女でしょう」

ワルキューレ「んなっ……!?」

ぽろ、と取り落とした釘が屋根に沿って滑り、軒下の石畳に跳ねて音を立てた。
硬直したワルキューレの肌が一瞬で燃えるように紅潮し、あわあわと唇を揺らしてサキュバスAへと向き直る。

サキュバスA「……あの高尚ぶった“吸血鬼”の殿方達と一緒よ。赤を好むも白を好むも、さしたる違いは無し。乙女は大切に扱わなければね」

ワルキューレ「そ、な……わた、し……が……しょ……とは、言って……」

サキュバスA「あら、違った?夜毎に殿方を誘っては肉欲の炎に焦がれていたの?いやらしい。私も一歩譲らなきゃいけないのかしら」

ワルキューレ「っ――――――貴様とは口を聞かん!!」

サキュバスA「結構。お仕事に集中していただけるのね」
393 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:39:38.04 ID:GTEJu7md0

――――傾く陽が夕暮れに変わっていく頃まで、間に合わせの木槌の音が響く。
戦乙女を働かせている間、ずっと淫魔は傍を離れず、きつくなり始めた陽射しを浴びても日陰にすら行かずにいた。
その頃には、どちらともなく――――ぽつりぽつりと言葉を交わすようにもなる。

サキュバスA「……どんな気分が、するものかしら」

ワルキューレ「……何がだ、淫魔」

サキュバスA「貴女達に召し上げられた人間達の事よ。……私は、貴女達が気に入らないのよね」

ワルキューレ「気に入る必要もないだろう。……訳があるなら、聞いておこうか」

サキュバスA「貴女の使命は、戦死した勇士の魂を天界へ導く事。死ななければ、貴女達には会えない。でも私達は違う。
         私達は……ヒトに、命がある内しか出会えないのよ」

ワルキューレ「……役目の違いだ」

サキュバスA「そこなのよ。……ねぇ、ワルキューレ。私達、サキュバスに……“存在している意味”なんて、あるのかしら」

ワルキューレ「何……?」
394 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:43:26.77 ID:GTEJu7md0

重い問いかけに、木槌はしばし休む。
ワルキューレが汗を滲ませた顔を上げると、サキュバスAは夕日に顔を向けたまま続ける。

サキュバスA「……私達は、吸血鬼のように人類を餌袋と捉える事もできなかった。……愛おしかったから。
         私達はあの生き物を踏みにじる事など、……できなかった」

ワルキューレ「……それを、罪だとでも?」

サキュバスA「少なくとも、尊いとは私は思えないのよ。……私達淫魔はかつて、ヒトに手を貸し魔王を討つ一助となった。
         ……同族を手にかけてまで、何故かしらね。私には分からないわ。……貴女達と違って、使命などない種族なのに」

ワルキューレ「……何故、そんなことを私に吐露する?」

サキュバスA「だぁれにも言えないからに決まっているじゃない。サキュバスにも。堕女神様にも。
         ……陛下になんて特に言えない。あの方はとても優しいから……きっと、困ってしまうわ」

何も、繋がりのない。
一度別れれば二度と会う事のない相手だからこそ――――割れる腹もある時がある。

――――“淫魔に、何の存在価値があるのか”。

ワルキューレ「……誓おう。今の言葉、私の胸に仕舞っておく事を。そして、答え……」

サキュバスA「ああ、いいの。答えなんていいのよ。……もう、とっくに辿りついてしまったから。だから……私の“自分探し”は、おしまい。
         ……汗をかいたわね、お疲れさま。お風呂でもどうかしら?……心配しなくても、何もしないわよ」

そして、日は沈む。

曙光の翼と、闇夜の翼の過ごした一時の対話は――――そうして、終わる。


395 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/28(木) 02:44:52.75 ID:GTEJu7md0
今夜分投下終了

さて堕女神はなんで子供に戻ってしまったやら


では、ラスト、遅くとも土曜日にお会いしましょう
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 02:50:59.74 ID:8LIVwIxSO
DIY系戦乙女
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 03:41:12.31 ID:2MDE2d7G0
yeah
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 04:07:24.86 ID:uMo2V04V0

夕暮れ時に、しんみりと語る姿がちょっぴり寂しく思えるのが好き
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 07:35:53.97 ID:Bs+kzVWKO
このワルキューレさんにちょくちょく遊びに来いよと言いたい乙乙
400 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/29(金) 21:11:30.17 ID:Ur3ZmS7Q0
帰宅

十一時まで待ってくれ
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 21:50:57.14 ID:+Vv+guQWO
ナイトメアちゃん愛でながらまt
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 23:44:15.30 ID:tYOhOMjq0
ナントメア「じゅういちじ、と、いった。どようび、とは、いってない」
403 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:12:48.27 ID:Au+5k+YW0
すまない寝落ちしかけた
本当にすまない
すまないorz


始めます、最後にちょこっと誤字だけ見てから
404 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:32:38.94 ID:Au+5k+YW0

*****


勇者「……これで、明日になれば本当に元通りになるのか?」

その日の夕食は、ワルキューレから教えられた通りにあの仔豚の肉を出された。
肉を切り分け、それでも――――翌朝には、仔豚は何事もなかったように蘇って元気に動き回るだろう。

変わらず美味な仔豚肉のローストに舌鼓を打ち終え、最後の一品、
細長いグラスに氷菓、焼き菓子、飴細工、果物、クリームを幾重もの層状に詰め込んだ菓子へと移る。
色鮮やかに積み重ねられた層が透き通る硝子の器越しに覗ける、宝石の詰め合わせのような菓子だった。

それを食べ進めるうち、もう一人の被害者……少女の姿へ変わった堕女神が、半減した歩幅でおずおずと近づいてくる。

堕女神「……お味はいかがでしょう、陛下」

勇者「ん……いつも通り。美味しかった」

堕女神「何よりです。……お体にお変わりは?」

勇者「いや、何も。寝て起きたら変わるんだろう。堕女神もそうだったんだろ」

堕女神「はい。……自室へ戻り、眠り、目が覚めると……」
405 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:33:21.38 ID:Au+5k+YW0

今や、この姿へ戻りたかった、“勇者の”理由は分かり切っていた。

勇者「“勇者”じゃない人生をしてみたかったんだな、俺は。……そうか。あの、魔王の……城でも、そうだったな」

堕女神「……ワルキューレから、打診を受けたとお聞きしております。よろしかったのですか?陛下は……人間、界へ……」

あの突然のワルキューレの来訪にも、答えはしなかった。
子供の姿へ戻り、人間界へ転移し、再び“やり直せる”機会を。
だが、それでも。
しかしそれでも――――首は、縦には動かなかった。

勇者「いいんだ。……気の迷いというか、“弱り”だったんだろうな。でも、俺はやっぱり。……あの姿になるまでの時間を。
    人間界を救うための戦いを。……堕女神と、淫魔達と出会えた姿を。なかった事になんて、したくないんだ。
    ……どれも、俺の大切な時間だったんだ」

田舎の農村の日々も、外へ憧れる青年の日々も、“勇者”の力に目覚めた日も、誰も起こさずひっそりと救世の旅に出立した朝も。
仲間達と過ごした戦いの日々も、“世界”の時を稼ぎ繋いだ人々達との邂逅も。

――――“魔王”と過ごした、ひと時の語らいですらも。

堕女神との、淫魔達との“再会”も。

どれも、無かった事になどしたくなかったから。
406 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:33:48.16 ID:Au+5k+YW0

勇者「……それと、不便も多かったな。今でも、あの朝にぶつけた脛が痛むぞ」

堕女神「あれは……痛ましい事でした」

勇者「堕女神は無かったのか?歩きづらかったとか、転びそうになったとか……」

堕女神「いえ、……逆、でしたら」

勇者「逆?」

堕女神「その……いつも足下が……見えなかったものですから……」

勇者「あぁ……なるほど」

堕女神「……何処をご覧に?」

勇者「何も」

すとん、と真っ直ぐに下りた平坦なボディラインを無意識に見回すと、拗ねたような口調で堕女神に釘を刺された。
そこには、下への視界を遮るほどの乳房がなく――――まっすぐに爪先を見られるだろう事が窺い知れたから。
だが、彼女のそんな姿も今日が見納めになる。
ぷりぷりと怒る背伸びする子供のような微笑ましさも、明日にはもう見られない。
407 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:34:20.20 ID:Au+5k+YW0

勇者「……それで、堕女神はどうして?」

堕女神「は……?」

勇者「どうしてその姿になったんだ。確か、子供だった時代なんてないって……」

堕女神「…………いざ考えてみると、思い当たりません。特にやり残しも、思い残しも。
     眼と髪の色が変わらなかったという事は、かつての神の座へ未練も……特に無かったのでしょう」

勇者「分からないか。……何か思い出せたら言ってくれ。俺に出来る事ならするよ」

堕女神「はい。……私の、やりたい事……ですか……」

そう呟き、それきり堕女神は思索に耽る。
小さな姿になってしまったからには何かがあったはずだ。
その姿にならなければ叶えられない、ふとした何かが。

寝収めになる、広く天蓋の高い寝台に潜り込んで考え込むも、勇者には考え付かなかった。
段々と遠くなり、深く落ちていく眠りに身を任せて――――落ちる一瞬だけ、何かに気付きかけた。
だがその気付きもまた、どろりと引きずり込むような眠りの中へ道連れになり、消えた。
408 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:34:47.40 ID:Au+5k+YW0

*****

そして翌朝、目が覚めると――――。

勇者「……戻った?」

子どもの姿にはきついはずの、厚い毛布が軽く持ち上げられた。
体を起こせば、見慣れたはずの懐かしい高さから室内の風景が望めた。
変化に備えて裸で眠ったから、自分の身体に刻まれたいくつもの傷がすぐに分かる。
旅のさなかに負った傷の数々は、礼服にかけられたいくつもの勲章のように朝の光に照らされていた。

呆気もなく、そして特に感動もなく。
あっさりと――――拍子抜けするように、元の姿へ戻れてしまった事は、むしろ物足りなささえ感じさせた。
もしや、この数週間の日々は長い夢だったのではないかとすら思えた。
しかし。

堕女神「失礼いたします。……あ……!へ、陛下、その御姿は……!?」

勇者「おはよう。どうやらあの肉、本当に効いたみた……堕女神?その……」

朝を告げるべく入室してきた堕女神の姿は――――子供の姿から、全く変わっていない。
着替えて立ち上がると、彼女の背丈の小ささがことさらに伝わった。
腰の高さに彼女の頭があり、さながら今の身長差――――父親と、娘。
409 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:36:03.40 ID:Au+5k+YW0

勇者「……もしかして、効かなかったのか!?」

堕女神「い、いえ……実は、私……昨夜は食さなかった、ので」

勇者「どうして!?」

堕女神「……っと、ともあれ……朝食にいたしましょう。私の事は今は……!」

珍しく歯切れの悪い調子で、すたすたと小さなままの堕女神は歩いて行く。
歩幅の小ささ故にすぐ追い付いてしまうため、また勇者は気を遣う。
立場も逆転して、あの朝、手を引いて歩いてくれた堕女神が今は頼りない足取りだ。

そして、途中で――――サキュバスAと出くわす。

サキュバスA「あら。……見慣れない殿方。もしかして、先日までいらした坊やの父君かしら?」

勇者「……ええ、息子がお世話になりましたね」

サキュバスA「“息子”様のお世話でしたらお手のものですわ。どうでしょう?ひとつ、これから……」

勇者「おい、乗りすぎだ」

堕女神「朝から止めてください、サキュバスA。……?ワルキューレ様は、どちらへ?」

サキュバスA「ああ、彼女でしたら……」
410 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:36:52.47 ID:Au+5k+YW0

がしゃがしゃと慌ただしく鳴り響く高い靴音と、防具の擦れ合う金属音が荒く近づいて一行へ迫る。
やがて廊下の奥から姿を見せたワルキューレは、矢のような勢いで三人へ迫り、その中――――サキュバスAへ掴みかかり、迫る。

ワルキューレ「ふざけるなよ貴様、ふざけるな!私に何をした!!言え!何だアレは!」

サキュバスA「あら、怖ぁい。暴力はいけないのよ?」

ワルキューレ「貴様っ……!」

サキュバスA「どうしたのかしら。落ち着きなさいと言っているの。……何かあった?」

ワルキューレ「……!」

寝乱れたのか金髪はあちこち跳ねて、汗の玉が光り、白い肌はぽうっと紅潮していた。
更に、サキュバスAに訊ねられると発火したように赤みは増す。

勇者「おい……落ち着け。何が……」

ワルキューレ「……あっ……ぅ……!うぅ……!」

勇者「?俺が、どうか……」

ワルキューレ「う、うるさい、何でも無い!元に戻れたのなら私は帰る!世話になった!」

勇者へ視線を向け、硬直したかと思えば――――更に、更に顔は染められていく。
そのまま、彼女はさっさと踵を返すと別れの挨拶もそこそこに立ち去ってしまった。
411 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:37:25.66 ID:Au+5k+YW0

勇者「……お前何した」

サキュバスA「さて、何の事でしょう……ふふっ」

堕女神「……よろしいのですか?彼女を帰して……」

勇者「いい。……何かされた訳でもないし、何かしに来た訳でもないだろう。……どうせ監視ならサキュバスAがしてくれてただろ」

サキュバスA「さて……何の事でしょう」

勇者「それに、あの女将が仔豚を勝手に連れ帰ったのも原因だ。……あまり強く出られる立場でもない気がしてさ」

堕女神「陛下を連れ去ろうとした事については……」

勇者「あれも誤解の末だ。……並べてみると、甘いかな」

サキュバスA「ですが……少し、嬉しそうにも見えますわね」

勇者「ああ。きっと、そうかもしれない。……それより彼女、帰れるのか?」

堕女神「来られたのですから、帰る事もできるでしょう。……陛下のご選択でしたら、御意のままに」

彼女を強く裁くつもりになれなかったのは――――きっと、嬉しかったからだ。
戦い、散って行った戦士達を迎えてもてなす天界の眷族が、本当にいてくれた事が。
かつて人間界で力を貸してくれた男達の魂の行き場所が、きちんと用意されていた事が。

勇者は、せめて次に彼女が来る事があれば、事前に伝えてくれるよう祈り、道中の無事をも祈る。
412 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:37:57.27 ID:Au+5k+YW0

*****

その日は、いつものように執務室に籠もり、窓辺のカーテンを揺らす風に暖かさを感じながら過ごした。
もう積み重ねた本を机がわりにする必要もなく、椅子と机の高さに苦戦する事も無い。
夕食の時にはかねてより望んでいた美酒が出され、その芳醇な飲み口にひとときの夢心地を覚えた。
野菜を噛んでも苦味が走る事もない。
数週間が夢であったかのように、あっさりと――――“いつも通り”だ。

そんな、懐かしい“いつも通り”の一日を終え、寝室片隅の椅子に掛けてあったマントを見ながら、
ようやくひと心地ついた時――――扉が叩かれる。

勇者「?……どうぞ」

堕女神「……夜分遅く、申し訳ございません」

勇者「いや、別に……いつもの事だろ。どうした?」

堕女神「その……先ほど、私も……あの仔豚の肉を食して参りました。明日には、元の身体に戻るでしょう」

勇者「そうか。……少し、残念な気もするけどさ」

堕女神「陛下。その……ですね」

純白の薄く透けるネグリジェに身を包み、少女の姿の堕女神は見上げる。
その赤黒の竜にも似た瞳を揺らし、おずおずとした可愛らしさを身へ委ね、望みの薄い“おねだり”をする時のような頼りなさとともに。

堕女神「……抱、抱い、て……いただけ、ないでしょうか……?」
413 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:38:46.29 ID:Au+5k+YW0

言葉によって起きたのは――――いつものままの、幾度もの夜の走馬燈。
この国で交わした夜の記憶達だ。
当然――――

勇者「……その。気持ちは、嬉しいんだけど……大丈夫、なの、か……?」

堕女神「?……い、いえ!違、違います!陛下、そうじゃ、なく、って……!」

慌てて取り繕う堕女神の様子に、勇者は感じ取り――――言葉を待つ。
彼女の今の体格は、隣女王よりも少し小さい。
無理をすれば、と心配したものの、彼女にはまだ先の言葉がありそうに思えたからだ。

堕女神「私、その……考えてみたのです。幼子の姿に戻った陛下と、共に眠った……あの日が、発端でした」

勇者「……あの日?」

勇者が子供の姿になってしまった夜の事。
堕女神の胸に抱かれ、脚を絡ませ合い、彼女の鼓動を子守唄としながら眠った夜のこと。

堕女神「私、には……された事が、無かったのです。なので、もしかすると……
     ふとしたそれをあの“仔豚”は感じ取ってしまったのかもしれない、……と」

胸の前で手を組み、堕女神は震えながら、勇気を唇へ込め、絞り出す。
今だからこそ、今だけ許される、“甘え”を。



堕女神「――――抱……抱っ、こ……抱っこ……して、ください…………」
414 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:39:25.46 ID:Au+5k+YW0

*****

一本だけ残した蝋燭の火が揺れる室内で、ひとりの少女の夢が叶う。
窓辺に立つ勇者にその身を託すように、正面から――――木登りでもするように、小さな尻を支えられながら。
抱えきれないほどに今は広い背中をぎゅっと抱きしめ、数週前の“禁断のひととき”のように、ぴったりと体を寄せ合い、
細い脚は勇者の腰を挟み、絶対に離れることのないように。
胸元へ顔を寄せて息を吸えば、その匂いが胸の中に満ちてぬくもりへ変わる。
見上げればそこには、この数週間会えなかった、優しく強い“彼”の精悍な顔が笑いかける。

堕女神「……もっと……甘えても、構いません……か……?」

それが、再び嬉しさとして満ちて――――更に深く求めるように、その胸元へ顔を埋める。

“抱かれた”事ならあった。
“抱いた”事もあった。
だが、こうして子として“包み込まれた”事は、なかった。

精一杯に腕を回しても抱えきれない“大好きな人”に身を預ける、子どもだけが持てる至福の時は。


こうして、静かに過ぎていった。








415 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/30(土) 02:40:22.32 ID:Au+5k+YW0
本編終了
ひとまず私は眠ります……

おまけを少し予定してはおりますが、起きてから……
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 02:43:03.48 ID:zpssdweR0
乙!
ギップリャァァァ
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 03:01:07.53 ID:PzVCRzo10
何という可愛らしい理由。
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 03:23:13.34 ID:A57qKWFDo
乙!とても良かった、おまけも楽しみにしとる
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 07:58:12.26 ID:QvLVAymSO
あらかわいい
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 11:22:11.81 ID:5l2dPgB7o
ロリとするんじゃないかと期待してすみませんでした
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/30(土) 11:53:21.86 ID:7KmVsIpG0
おねショタじゃなく、おにロリかと思ったゾ
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/30(土) 19:18:16.98 ID:zd0M3GrM0
可愛さのボルテージMAXこえてんじゃん
423 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/01(日) 06:39:55.11 ID:oyHifgiE0
おはようございます

調子良ければ、今夜あたりにおまけ編ひとつ目を投下いたします
三〜四個落としてHTML依頼、と予定しております
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 11:05:00.54 ID:8Q4YOZW4o
わーい
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/07/01(日) 14:46:00.65 ID:BBxd2KVlO
あのワルキューレ惚れ薬でも盛られたんだろうか
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 22:24:15.23 ID:qEwuW1Vwo
淫紋あるから
427 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:45:13.96 ID:MA+N9ZpW0
月曜の最悪な朝に投下開始します

サキュバスBのおまけ編になります
428 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:45:58.03 ID:MA+N9ZpW0

*****

あの若返りの騒動から数日経つと、頭が冷えてきた。
天界の仔豚を食べた事で思いのままの姿――――ほんの少し未練を抱いていた、子供の頃の姿へ変わったことに始まる。
歩幅に慣れず、子供の姿のために酒も供してもらえないあの切なさを越えられたと思えば、次は――――招かれざる客の登場だ。
天界の戦乙女“ワルキューレ”の侵入。
一時はどうなる事かと思えたものの、最終的に彼女の僅かばかりの信頼を得て、事情を話して元に戻る方法を教えてもらえた。

勇者「――――のは、いいが……」

その間――――ずっと、おちょくられてばかりだった。
堕女神は心配し寄り添っていてくれたし、サキュバスAには本音はどうあれ、ずっとからかわれ通しだった。
サキュバスCに至っては顔を合わせた瞬間に爆笑され、ナイトメアには鼻で笑われ。
そして城下町の狐女将は薄々分かっていながら勇者をかどわかし――――今でも夢に見るような、忘れられない毛並みの九尾で弄ばれた。

そして、何よりも。

勇者「……何してる、サキュバスB」

浴場でお姉さん風を吹かせながら、文字通りの“悪戯”を働いてきた彼女だ。
サキュバスBは、今――――――
429 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:46:34.90 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB「え。……っと……ですね……」

勇者「…………仕事中だ」

サキュバスB「あ、ははっ……ですよね……」

乾いた笑いとともに、サキュバスBはぽりぽりと頭を掻く。
数日前の勇者よりほんの少し背が高く、それでも十分に稚気に満ちた姿に似合わない実った肢体を持つ淫魔は、今。
執務室の机に向かう勇者の左手側にある補助机の上にぺたりと腰を下ろしていた。
そこから、短ズボンの裾からスラリと伸びた脚を見せつけるように何度も組み替え、
扇情するように開いて見せて――――“誘惑”の仕草を試みていた。

サキュバスB「い、いや……陛下、元に戻れてよかったですねーっ、て……えへっ……」

勇者「わざわざどうもありがとう。仕事中だ」

サキュバスB「…………」

勇者「もう一度言う。仕事中だ」

サキュバスB「あの、怒って――――」

勇者「仕事中」

サキュバスB「う……!」
430 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:47:11.25 ID:MA+N9ZpW0

数分前から、こうしたやり取りが続く。
堕女神が今は席を外し、そこへサキュバスBが入室してきてから、ずっと。
ちょろちょろと動き回り、気まずさを誤魔化すようにしながら機嫌を窺うのだ。

子供の姿へ変わってしまっていた時……勇者は著しく淫魔のフェロモンへの抵抗が弱くなってしまっていた。
大浴場で入浴していた折にサキュバスBが訪れ、その場で弄ばれ、たっぷりと搾り取られ、弱々しさを愉しむように、眼前の少年の正体を分かっていながら。

その一件はしばらく忘れられていたし、終えた直後に彼女へ“鉄拳制裁”も下した。
更にはその後のドタバタにより、風化しかけていたが――――今になって彼女に罪悪感が芽生えたのか、この調子なのだ。

勇者「……フー…………」

サキュバスB「っ……う、うぅ……」

わざとらしく溜め息をついて、サキュバスBへ視線を向けないよう努める。
実のところ、そこまで機嫌を損ねてなどいない。
ただ――――そっけない振りをして、彼女を困らせてやるだけのつもりだった。
ほんの少しだけ焦らしてから、“怒ってない”と、“気にしなくていい。少し休憩にしようか”と、声をかけてやる予定だった。

しかし。

――――突如、ぱさっ、と軽い布が床へ落ちる乾いた音が左耳へ入り込んできた。
431 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:47:38.68 ID:MA+N9ZpW0

勇者(…………え?)

サキュバスB「……ぅ……!」

ちらり、と眼だけを動かし、あくまで正面から顔をできるだけ逸らさずに物音の正体を確かめる。
見えたのは片膝を軽く立てて補助机へ腰かけ、蒼いほっそりとした脚線と、裸足の爪先。
机の真下へ落ちた、ふたつの衣類。
しかし上衣は着たままであり、床へ無造作に落ちていたのはサキュバスBがたった今まで穿いていたショートパンツと、その中身――――下着だ。

勇者(……何、して……)

サキュバスB「へ、陛下ー……こっち、見て……くださいよぅ」

勇者「…………っ」

呼びかけられ、思わず顔を向け……直視した。
机に腰かけて右膝を立てかすかに外側へ曲げ、左脚はぷらぷらと投げ出し、手は腰の後ろへついて体を支えていた。
蒼い肌は羞恥に染まってところどころ淡い紫へ浮き立ち、生まれたままの姿の下半身が、その秘部を差し出すようにほぼ顔の高さにあった。
そうしている彼女の顔は熱に浮かされたように恍惚として、かすかな期待を込めながら、口を閉じてにこりと笑っている。
432 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:48:34.53 ID:MA+N9ZpW0

*****

サキュバスB(ど、どうしようどうしようどうしよう……!ぬ、脱い、じゃった……!こんなところで……陛下、忙しい……のに……!)

挑むような姿で、横顔へ向けて机に腰かけながら股間を曝け出しながら――――彼女の思考は加速と過熱の一途を辿る。
そっけなさを恐れるあまり、突飛な行動へ出てしまい――――もはや取り返しがつかない事に踏み込んでしまった。

サキュバスB(……!?ちょ、どうして見ないんですか……!こ、こんなのって……ないですよ……!)

それなのに、彼は。勇者は、ほんの一瞥だけすると再び正面へ向き直る。
羽ペンを片手に書面へ目を落とし、手近にあった年鑑を開き――――まるで、そんな必死の淫魔など存在しないかのように振る舞う。

サキュバスB「陛下ー……ほ、ほら……み、見て……ください。わ、わたしの……サキュバスBの、お、おま○こ……ですよ〜……」

右膝を立て、左脚はぷらぷらと下げ、その姿勢のまま右手を秘部へ這わせると――――指先で、“そこ”を割り開いて見せつける。
にゅぱぁ、と開いた淡い桃色の秘裂と、密やかな興奮に糸を引く粘膜と、ひくひくと蠢く尿口を見せても――――彼は、無関心。

サキュバスB(……っや、やば……これ、恥ずかしい……っ!恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!死ん、じゃ、う……!!)

かっと頭に血が昇り、視界は熱く目の奥に涙の気配が昇ってきて、同時に心臓がきゅっと冷える感覚が襲う。
こうして誘いをかけているのに彼はまったく目もくれずに正面を向いたまま――――挙句の果てには、書類の束をとんとんと叩いて揃える始末だ。
433 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:49:29.20 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB「ほらぁ……み、見てくれないん、ですか……?お姉ちゃんの――――」

勇者「……」

視線は向けないまま、彼は目の前にある書面に睨めっこをしたままだ。
すぐ左手、手の届くところに詳らかにされている光景を無きものとしているように、羽ペンが走る。
その間にも――――じわりと滲んできた粘性の蜜が、指先でほころばせていた秘花から垂れ、
黒く沈んだ色合いの机の天板へ、さらに深く黒い沁みを創った。

ただ誘惑を試みているだけなのに、そうまでカラダが昂ぶっているのは、異常さからくるものだ。
普段なら、サキュバスBは生来の生真面目さの故に、彼の仕事を妨げる事はない。
今日に限っては、素っ気なくする彼への負い目があった故に、もう禊は済んでいるにも関わらず引きずってしまい――――こう、なった。

大人の姿に戻った彼に、サキュバスの淫気の誘惑は通じない。
まして“魔眼”が完全に退化し失われてしまったサキュバスBでは、情欲にせめて訴えかける以外の術はない。

それが拍車となってしまい、今――――彼女は引っ込みがつかなくなり、下半身を涼しくさせたまま、
机の上で脚をくねらせながらただ彼の横顔を見つめるしかなくなった。
434 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:50:02.40 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB(う、うぅぅ……いつ、まで……こんな事……は、恥ずかしいよ……!)

日はまだ鋭く差し込み、昼食の時間ですらない。
そんな、燦々と照りつける執務室で、サキュバスBは羞恥に耐えながら、自分の首を締め続けていく。
割り開いていた整った指先にもあふれた蜜が触れて、恥丘に擦れた指が、にちり、と粘性の音を響かせた。
その音を彼は確かに聞いたか、ぴくり、とこめかみと耳介が揺れる。
しかし、それでも――――視線だけは、ずっと、前だ。

サキュバスB「くぅんっ……!へ、陛下ぁ……っ!」

勇者「…………」

素っ気なく、しかし――――反応していない訳ではない彼の横顔へ向け、サキュバスBの指はいつしか、羞恥心を忘れないまま、それでも蠢く。
潤う指先は、寂しさの吐露。
身体の震えは、いつまで経っても“目”を合わせてくれない彼への哀願。
ぱくぱくと震え開く秘花と蕾は、溺れておぼつかない呼吸。

“そこ”を通して、訴えかける気持ちが折れかけ――――ちゅぷちゅぷとまさぐり、
開かせていた指を止め、真っ赤に粘膜を充血させた秘部を閉じようと。
邪魔をした事を詫びて、執務室を出よう、と腰を浮かせかけた時。

勇者「――――――続けろ」

先ほどまでずっと背けられていた顔が、息のかかる距離で。
頬杖を突きながら、サキュバスBの股座を見ていた。
435 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:50:44.91 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB「え、……え……」

勇者「……見ろ、と言ったのはお前じゃないか。続けろ」

サキュバスB「うっ……は、はい……いひぃっ……!」

再び、ぐっと脚を開き――――机の上に蛙のように両脚を立てる。
外側へ向けて膝を開く格好となり、もはや指で割り開くまでもなく内腿――――内転筋によって外へ引っ張られ
露に濡れた果肉が開き、曝け出された。

彼はそこを見つめたまま――――真顔を崩さず、左手で頬杖を突きながら動かない。
息がかかり、彼には生ぬるく立ち上る媚香が嗅ぎ取れる、口淫の間合い。

それなのに、どちらからも触れ合う事無く――――ただ、視線と微かな吐息だけがサキュバスBの差し出す秘部に突き刺さる。
その視線はどんな愛撫よりも今は敏感に感じ取れて――――ぴくり、と震えるたびに、
とろとろと花蜜がこぼれ、その様すらも赤裸々に覗き込まれる。

机の上に零れる蜜も、その度にほころび広がる、肉襞の底までも。
――――その下にひっそりとある、流れた蜜を受けて暗く光る桃色の蕾までも。

サキュバスB(や、だ……ぁ……どうして、黙ってるんですかぁ……!恥ずかしい、こんなの……恥ずかしいのにぃ……!)

勇者「……脚を閉じるな」

サキュバスB「は……い……」

勇者「どうしたいんだ」

サキュバスB「ふ、ぇ……?」
436 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:51:11.99 ID:MA+N9ZpW0

勇者「何を――――どうしたいんだ。どうして、こんな事をした?」

サキュバスB「えっ……と……」

そうあらためて訊ねられると――――サキュバスBは、答えに窮した。
もう、済んだ事なのに……何の贖罪のためか、どう償えばいいのかも、考えるほどに分からなくなったから。
いや、そもそも――――そんなものが、果たして動機だったのかすらも。

サキュバスB(…………あれ。おかしいな……何で、こんな事してたんだっけ……)

勇者「……脚、閉じるな」

サキュバスB「きゃっ!?……そ、そこに話しかけないでくださいよ!」

勇者「ああ、間違えた。ひくひくしてたから……こっちが、口かと」

サキュバスB(も、もう……!……あ、……そっ……か……)

思えば、数週間。
一度も――――。

サキュバスB「……へ、陛下。……えっと……ですね……お天気も、いいですし……じゃ、なくて……えと……」

単純な。
生真面目すぎて考え込み、考え込んだせいで忘れかけていた、種の欲求。


サキュバスB「……おさぼり、えっち……しちゃい、ません?」
437 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:51:50.38 ID:MA+N9ZpW0

*****

サキュバスB「あ、あのっ!?ほ、ホントにこんな、ところで……するん、ですか……!?あ、ぶっ……ひやぁぁっ!」

いくつも、場所はあったのに。
椅子に座った彼に跨り、向かい合い腰を動かす。あるいは背中を預ける。
正面にある大机に手をつき、腰を突き上げて背後から衝かれる。机に仰向けに寝そべり、向き合いながら貫かれる。
壁に押し付け、体を持ち上げられながら。あるいは――――床の上でか。

だが舞台はその、どれでもない。
サキュバスBがずっと腰を下ろし、扇情的に――――仕草だけを見れば淫魔そのもののように、扇情的に踊りかけていた左手の小さめの机の上。
その天板は奥行きが足りない。
サキュバスBが後ろへ身を倒せば尻と腰、そして背中の下部……肋骨に護られていない部分までしか、預けられない。
身体の小さい彼女ですら、とてもその身を横たえる事のできない、頼りない狭さの“寝台”へと変わる。

サキュバスB「うああぁっ!?お、落ちっ……落ちます、って……!」

勇者「分かってるよ。……掴まれ、ほら」

必死に背筋で踏ん張りながら、少しでも支えになる面を増やすべく――――天板の手前ギリギリまで
秘部を突き出していたサキュバスBへ両手が差し出される。
掻き泳ぐようにサキュバスBは彼の手を掴むと、彼もまた、サキュバスBの手を握る。

そこまでして、ようやく姿勢は安定した。

だが、離せば――――無論、真っ逆さまに机の向こう側へ落ちる。
438 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:52:19.82 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB「な、なんで……?危ないですって、こんな……」

勇者「離さなければいい」

サキュバスB「で、ですから……せめて、そっちの大きい机の方で……んぎっ!?」

必死に突き出していた秘部へ、久しく迎えていない逞しく反り返ったそれの、硬い亀頭の感触を覚える。
瞬間、洪水していた蜜はそれへまとわりつき、涎をまぶすようにぬめぬめと黒光る“槍”を光らせる。

サキュバスB「待っ、て……ほ、ほんとに……このまま……!?」

勇者「誘ったのは誰だ?……ほら、しっかり掴め。もっと上の方だ」

あと少し力を込めれば、間もなく肉棒はサキュバスBを貫く。
否、ただあてがう今でさえ、ゆっくりと沈められている最中だった。
ずぬ、ずぬ、と……傍目に見れば止まっているような。じっくりと開花していく様のように、こうしている間にも飲み込まれて行く。

だが、もし亀頭の“返し”を飲み込んでしまえば――――そこから先は、すぐだ。
一息で文字通り衝き抜かれ、真っ直ぐにサキュバスBを机の向こう側へと押し出すだろう。

サキュバスB「う、ぃっ……ちょ、入っ……入って、きてるじゃないですかぁ……!止まって……待って、待ってくださいってば……あふぅっ……!」

握っていた手をほどき、綱を引き寄せる動きでサキュバスBの手は上り、彼の上腕へ文字通り縋りつく。
その間にもこじ開けて侵入してくる肉の破城槌の熱にぴくぴくと体を揺すりながら、
シャツの袖ごと断崖絶壁の命綱を握るようにぎちりと握り締める。

――――亀頭が呑み込まれ、容赦ない突風のような突き上げがサキュバスBを襲ったのは、直後の事だ。
439 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:53:08.47 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB「うくっ……!お、ち○ちん……入って、きまし……たぁ……!」

背中のほとんどを空中へ投げ出したまま、何の支えもない状態で、
掴んだ上腕と踏ん張る脚、そして締め付ける“肉”で彼へ縋りつくしかない。

それなのに彼は手で支えてなどくれず――――そればかりか。
のけ反ってなお高く主張する乳房を包む上衣を、優しく解いていく。
気付けば、黄金の瞳は懇願に揺れて――――抗議の声を上げかけた。

サキュバスB「陛下、ちょっ、胸……むね、なんて……!」

勇者「ほら、慌てるな。緩むな。落ちるぞ」

サキュバスB「そんな、ふ、ふひぃっ……!やん、やめ……お、落ち……落ちるぅっ!落ちちゃいます、からぁっ!!」

ずん、ずん、と――――容赦のない動きで彼はサキュバスBの秘肉の洞を抉る。
みっちりと膣内が広げられる感触は、今日は特に鋭く感じられる。
じんじんと響く熱は痛みのようで――――それ故に、“サキュバス”の快感神経を喜ばせる。

サキュバスB「う、ひっ……そんな、思いきり動かないでぇ……!お願い、です、からぁっ……」

ずぷり、ずぷ、ぬちゅ、ぎちっ……。
頼りない“舞台”から上半身をほとんどはみ出させ、突かれるごとに力の抜けて離しかける腕のせいで
幾度もぞっとするような浮遊感を味わいながら――――送り込まれる熱と快楽を鋭敏に感じる。
440 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:53:38.93 ID:MA+N9ZpW0

ぎちぎちと締め付ける括約筋。
身体が浮きあがるたびに強張る内転筋。
浮遊感の恐怖で粟立つ肌の触覚。
必死で彼の腰、太腿を挟み込む脚。
それらすべてで縋りついているのに、彼が支えてくれているのは、自然と持ち上がってしまった乳首を摘まみとる指先だけ。
更にはその指まで蠢かされているせいで、幾度も身体が脱力して跳ねあがり――――そのたび、緩んでしまう。

サキュバスB「ひ、いぃっ……乳首、そんな転がさないでくださっ……だめ、力、抜け、ふひゃあぁぁぁっ……!」

勇者「大丈夫だ、離さなっ……く、ぐっ……そん、なに……締め、るな……っ!」

サキュバスB「し、しかたないじゃ……陛、下がぁ……そんな、深くっ……!」

勇者「っ、引っ、張る、な……っ!」

サキュバスB「んきゅぅぅっ……!ふ、深っ……お、奥にぃ、こんっ、って……ぇ……」

強く袖を引いた拍子に彼の体勢が崩れ、その勢いで亀頭がサキュバスBの奥の行き止まり――――子宮口へ軽くキスをした。
前方へ崩れかけた彼が机へ手をつき、慌てて離れようとすればそれは深く激しいストロークの抽挿へと変わり――――
再び縋るように、サキュバスBが袖を引き寄せ、肉の孔深くへ迎え入れる。

――――再び、つんのめりながら、サキュバスBの子宮口を叩いて。
441 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:54:26.61 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスB「きゃあんっ……!そん、な、深く、……う、動いちゃ……っ!!」

勇者「お前が引っ張るからだろうが! っ……ちょ、おい……くっ!!」

サキュバスB「あふぅ、ん……もっと、もっと……激しく、してぇ……」

勇者「待て、離せ、離、おい!待て、ってば……!」

サキュバスBは――――久しぶりの、奥まで深く貫く剛直に気をやり、浮かされたように腰をくねらせる。
その支えない背中を激しくえび反らせて、たぷん、たぷん、とその小さな肉体に見合わない豊乳を揺らし
――気付けばその手は彼の上腕から肩口、胸元、首の後ろにまで伸びて。

今身を置いている場所の不確かさを忘れるように、金色の目を深く潤ませて、
締まりを忘れた口もとからは重力に従って唾液がまっすぐに頬を垂れ落ち、床に沁みを作る。

サキュバスB「あ、あぁんっ……う、動いちゃうぅ……腰、勝手にぃ……き、もちいぃぃ……♪」

かくん、かくん、と腰を使い乱れる姿にもはや説得は応じない。
ごりごりと膣壁を抉られる鋭敏な感覚、駆動させた括約筋にそうされた快楽が、サキュバスBを蕩かせ、魔を目覚めさせた。

勇者「っ……あ、ぐっ……離、せ……出るっ……!」

サキュバスB「え……?ふふっ……いいですよー。わたしのおま○こに、お精子……ぜんぶ出しちゃってくださぁい。全部、ごくごく、しちゃいますから……」

勇者「そう、じゃなっ……う、っくっ……イ……っ!」

がくん、がくん、と引きずり込んでいくような抽挿の前後動は、終焉を迎えた。
頼りない机に釘付けにされたままだったサキュバスBの膣奥深くで白濁は炸裂し、数週間ぶりのそれが、彼女の子宮を精液袋へ変える。
ぴたりと突き合わせ合った亀頭と子宮口から、溢れんばかりのそれを注ぎ込まれる淫魔の至高の刻。
ずるり、と勢いを失った肉棒が抜け落ちる。
彼も、サキュバスBも虚脱し全身の力が抜け、心地良い疲労感を分け合い――――そして、“緩む”。

勇者「う、あああっ……」

サキュバスB「んふっ……きもちよかったですか?……わたしも、きもちよくしてくれて……ありが……っっ!?」

442 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:55:05.59 ID:MA+N9ZpW0

サキュバスBには、重力に引かれて宙を舞う浮遊感と、見つめていた彼の顔と天井がぐるんと一回りする光景。
彼にもまた、ぐんっ、と前方へでんぐり返しをさせられるような浮遊感と、サキュバスBの強張る恐怖の表情。

両者はそのまま、机を乗り越え一回転するようにもんどり打ち、机の奥側へ頭から投げ出されていった。

サキュバスB「っい、た……あれ、いた、く、ない…………?」

勇者「ぐっ……はっ……!」

サキュバスB「陛下!?」

本来ならば二人とも組み合いながら、頭を打つはずだったところ。
彼は。勇者は、サキュバスBを抱き、かばいながら受け身を取り――――背骨を軋ませながら床へ落ち、クッション代わりになったのだ。

勇者「大丈夫、か……。ケガ、して、ないか……?」

サキュバスB「ごっ……ごめんなさい、ごめんなさい陛下!私……」

勇者「お前が、謝る事じゃ……げほっ……」

サキュバスB「…………ごめんなさい……」


*****

勇者(……どうして、サキュバスBとしたら……いつも、オチがつくんだ?)

背中へ走る打撲の痛みに耐え、消えていくのを待つ間。
勇者はただ、白濁と蜜に汚れたズボンを上げながら、息を整えながら、そうして一人ごちた。




443 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/07/02(月) 05:57:09.93 ID:MA+N9ZpW0
おまけ短編、ひとつめ終了です。

予定はワルキューレのをひとつ。
ナイトメアのをひとつ。

サッカー日本戦の後のテンション次第であとひとつ書くかどうか……


では、また後ほど。
会社なんぞ燃えてしまえばいいんだ
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 06:52:50.01 ID:AWGftKPH0
朝からなんて素晴らしいものを…

さて、学校行くか。
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 07:14:27.24 ID:FddzG3Wwo
お疲れ様です
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/07/02(月) 07:31:30.71 ID:1oIEML0h0
Aをください…Aを…
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