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アライちゃんのいる日常5
- 528 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 11:06:49.41 ID:Vk1GnTprO
- アラキレスとアラ助ってキャラかぶりしてる気がする。
作者さんキャラ増やしすぎて収拾つかなくなってきてない?
- 529 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 12:40:24.75 ID:litwm4zz0
- 乙
前にペットショップの店員が規制される前にアライグマを売りさばきたいとか
最後まで責任取って飼える人がオススメとか言ってたから今はアライさんの楽園だけでアライグマの楽園の方は無くなってるのかな?
- 530 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 00:04:22.16 ID:FxSTFveu0
- 野生のアライさんとペットアライちゃん。
野生のインターンシップとペットの楽園システムのせいで完全にベクトルが分かれてる。
ほとんど進化で枝分かれする瞬間のような状態なんだな。
続きが気になる。
- 531 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 01:16:43.67 ID:ADN6Kz+R0
- アラ助は過去のキャラでおそらくもういないから大丈夫やぞ。ペットアライちゃんに個性も糞もないし
- 532 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 06:30:36.15 ID:ExK+Zoct0
- ペットアライちゃんは規格品だからな
ある程度想定された範疇の性格に育たなきゃ殺処分されるわけで、キャラかぶりは当たり前
粗末に扱って死んだところで新しく買えば同じようなもんなnだし効率がいいと思うわ
- 533 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 09:31:33.83 ID:LFBDveQAO
- 虐待不足で面白くない
- 534 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 09:54:25.51 ID:7ABHqT8Ko
- >>532
値段は工場によって違うみたいだから欲しいアライちゃんの性格に合わせて買えるってのも良いよね
- 535 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 10:10:12.04 ID:ywFztrJSo
- しっかり手間かけて躾てるところは高いんだったな
- 536 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 10:53:36.77 ID:s4lOrpoGo
- >>533
前スレ見てこい
- 537 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 11:23:15.93 ID:EtzfkQVso
- >>533
>>1-3を読むこと
- 538 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:21:00.04 ID:I4fI14lDo
- …
〜ある休日〜
絹男「なあ飼い主男、うちの蚕小屋に害獣が住み着いてるみたいなんだ…。いい業者知らねえか?」
飼い主男「害獣…やっぱりアライちゃんか」
絹男「そーなんだよ!あークソ!」
飼い主男「うーん…ネットで探してみたか?」
絹男「ああ…でも高いんだな、ああいう業者に頼むと」
飼い主男「ケチってても仕方ないだろ…」
絹男「うー…!…とにかく見に来てくれよ!」
飼い主男「ふむ…そうだ。うちのペット連れてっていいか?何かの役に立つかも」
絹男「ああいいぞ、害にならないならな…」
飼い主男は一旦家に戻ると、アラ助を車に乗せて、絹男の蚕小屋へ向かった。
- 539 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:26:46.85 ID:I4fI14lDo
- 〜蚕小屋〜
アラ助「おおー!はじめてかいだにおいなのりゃー!ここなんなのりゃ?」シッポフリフリ
飼い主男「ここは蚕小屋。虫を育ててるんだ」
アラ助「むししゃん?」シッポフリフリ
絹男「うわ、見ろよ!糞が落ちてやがる!どこだ…?やっぱ住み着いてんだ…」
アラ助「なのりゃー」ヨチヨチ
アラ助は、蚕小屋の柱を登ろうとするが…
アラ助「う〜」コスリコスリ
ヨチライフ手術済みのペットアライちゃんであるアラ助に、木登りはできない。
飼い主男「見るか?よっと」ヒョイ
アラ助「おおー!」
アラ助の目の前には…
蚕たち「むしゃむしゃ…」ウゾウゾ
…大量の蚕が、桑の葉を貪っているのが見えた。
- 540 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:30:45.09 ID:I4fI14lDo
- アラ助「むしいーっぱいいゆのりゃあ!」
アラ助は興味津々なようだ。
アラ助「かいぬししゃん!あのむしどーしゅゆのりゃ?たべゆのか?」シッポフリフリ
絹男「チッ(舌打ち)」
飼い主男「違う違う。食べ物じゃない。こいつらは成長すると、繭を張って蛹になるんだ」
アラ助「さなぎ…」
散歩中に、芋虫や蛹を見たことがあるアラ助。
アラ助「これちょーちょになゆのりゃ!?きれーにぱたぱたとぶのりゃ〜!≧∀≦」シッポフリフリ
飼い主男「…」
絹男「…いいや、飛べねえよ。こいつらは」
アラ助「うゆ?なんでなのりゃ?」クビカシゲ
- 541 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:42:10.42 ID:I4fI14lDo
- 絹男「見ろ、これが繭だ。この繭を取って、糸にするんだ」スッ
繭「」
絹男は、窓際で天日干しにされ乾燥させられている蚕の繭をいくつか見せた。
どうやら今は、蚕の終齢幼虫が繭になりはじめる時期らしい。
アラ助「おおー!きれーなのりゃ!これをぶちやぶっておとなのちょーちょでてくゆのりゃ!」シッポフリフリ
アラ助は繭から蚕の幼虫達へと視線を移した。
アラ助「あれはあかちゃんなのりゃ!あらしゅけとおんなじなのりゃ〜!いっぱいごはんたべておーきくなって、りっぱなおとなになゆのりゃー!≧∀≦」ワクワク
絹男「いやいや。こいつらが立派な大人になったら…繭が破れちまうだろ」
アラ助「うゆぅ」コクコク
絹男「そうしたら糸は取れない。せっかく今まで育ててきたのが水の泡だ。だから…」
絹男「…殺すんだよ、こんな風に」パッ
繭たち「」ボチャンボチャンボチャン
繭は、お湯を張ったタライに落とされた。
アラ助「ぴっ…!?」ビクゥ
蚕に自己投影していたアラ助は、突然の出来事にビビった。
- 542 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:51:16.76 ID:I4fI14lDo
- 繭「」プカプカ
これらの繭は、10日目あたりに冷凍され、その後乾燥させられていたものである。
つまり、お湯に沈められる前からとっくに死んでいた。
アラ助「うゆうぅ!?なんで!?なんでこよちたのりゃあ!?おとなになゆとこだったのにぃい!?」
アラ助は、自分の姿を重ねていた蚕が目の前で殺された(ように見えた)ためか、ひどく狼狽えている。
アライさんは、人間に比べて共感能力が低い生き物である。
だがそれでも、幼い頃は育ての親に可愛がってもらうために、それなりに顔色を伺う力はある。
すなわち、幼い頃は、成体よりも共感能力が強いといえる。
絹男「さっき言っただろ。こいつらは大人になっちまったらもう価値がなくなるんだ。そうなる前に…価値があるうちに殺すんだ。糸をとるために」
アラ助「で、でも、でも!そのいもむしは!おとなになゆためにごはんくっておーきくなったのりゃ!そのまゆも、うぅ、おとなになりたいからつくったんじゃないのりゃ…?」コスリコスリ
飼い主男「…アライちゃんもいろいろ考えるんだな…意外だ」
- 543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 22:52:00.98 ID:CNZ+0mwJo
- どんな虫かと調べたけど蚕って成体になっても飲み食いしないで交尾した後ぐ死んじゃうのか…
- 544 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 22:57:19.08 ID:mWN5hfXno
- 蚕はゆりかごから墓場まで人間の助けなしでは生きることができないからね
ペットアライちゃんも一緒だね
- 545 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:58:24.06 ID:I4fI14lDo
- 絹男「…そうかもな。こいつらは、大人になりたいのかもな」
アラ助「な、なら…!」
絹男「さっきから何度も言ってるが…だからといって、こいつらが大人になりたいからといって…大人になられると、困るんだ」ホグシホグシ
絹男は、繭をほぐして絹糸をとっている。
ほどけた繭から、ミイラのようになった蛹がぼろりとこぼれ、お湯にぷかぷかと浮いた。
絹男「確かにこいつらが葉っぱを食い、繭を作るのは、大人になるためだろう」
絹男「俺たちは、それを利用する。こいつらが大人になろうとするために作る『副産物』である繭…。それだけが欲しい。その『副産物』をとるためだけに、こいつらを育てている」
- 546 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 22:59:50.68 ID:I4fI14lDo
- アラ助「う、うゆうぅ…わかんないのりゃあ…」ピヨピヨ
アラ助はそろそろ話についてこれなくなっている。
しょせんは幼獣、赤ちゃんの頭である。
あまり難しい話をされるとついてこれないようだ。
- 547 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:08:17.66 ID:I4fI14lDo
- 飼い主男「…絹男、あんまりそういう話は…」
絹男「おっと、まずいか?」
飼い主男「…もし蚕たちが自分が育てられている理由を知ったら、みんな一目散に逃げていくかもな」
絹男「はは、違いないな。自分が殺されると分かっていたら、こんなとこいられないだろ」
飼い主男「だが、こいつらにそんなことは気付けはしない。餌を与えられ、大事に育てられているのは、立派な大人に育てて貰うためだと信じて疑わない」
絹男「虫にそんなこと考える頭はねえだろうけど…まあ、そういうことだな。だからこそ、逃げ出さずに小屋の中で大人しくしているわけだ」
絹男「…もっとも、逃げようにも逃げられないだろうけどな。きちんと囲って、脱走防止はしてるから…。ま、逃げないだろうけど」
- 548 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:16:35.32 ID:I4fI14lDo
- アラ助「うゆぅ…かいぬししゃん…」ヨチヨチ ギューッ
アラ助はなんだか怖くなり、飼い主男の足にしがみついた。
飼い主男「おーよしよし」ヒョイッ
飼い主男は、ハムスターよりちょっと大きい程度のサイズであるアラ助を拾い、優しく胸に抱いた。
アラ助「な〜のりゃ〜♪かいぬししゃん、しゅきしゅきなのりゃあ〜♪」スリスリ
飼い主男「おーよしよし。可愛いなぁ」ナデナデ
アラ助は、大好きな飼い主にたくさん甘えた。
どんなに不安でも、どんなに怖いことがあっても。
飼い主は自分を守ってくれる。
己が非力で、一人では生きられない、脆弱な存在だと自覚しているアラ助。
自分を育ててくれている飼い主男が、本当に本当に大好きなようだ。
もっと飼い主に愛されたい。
もっと飼い主に可愛がられたい。
だからアラ助は、芸を覚えたり、飼い主の機嫌を取って、気を引く。
飼い主に好かれるために。
いや…
…自分が、生きていくために。
- 549 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:19:19.66 ID:CNZ+0mwJo
- 種の繁栄じゃないってのがペットアライちゃんらしい
- 550 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:20:51.72 ID:I4fI14lDo
- 飼い主男「えーと、で…」
絹男「ああそうだ。アラ助…だっけ?お前鼻いいんだろ。これと同じニオイ、どっかからしてこないか?」スッ
絹男は、床に落ちている糞を指差した。
飼い主男「どうだ?」スッ
飼い主男は、アラ助を床に置いた。
アラ助「ん?くんくん…」クンクン
アラ助は、大便のにおいを嗅いでいる。
アラ助「うぅ〜…?こっち、なのりゃ…?」ヨチヨチヨチヨチ
アラ助は、小屋から出ようとしている。
絹男「んん…?」ノソリノソリ
飼い主男「…」ソソクサ
二人は、足音を立てないようにしてアラ助のうしろをついていく。
- 551 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:25:37.08 ID:I4fI14lDo
- アラ助「のりゃ!のりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ
アラ助は、小屋の裏…納屋の方へ向かって這っている。
やがて、納屋の壁のとこで急に止まった。
アラ助「きゅるるるる!おともだちなのりゃ?」コスリコスリ
アラ助は、小屋の壁に向かって喋りかけた。
すると…
野良アライちゃん「うぅ?だれなのりゃ?はぐはぐ…」モゾモゾ
…壁の下の地面に空いた穴から、蚕の幼虫を咀嚼しているアライちゃんが、ぬっと顔を出した。
- 552 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/25(木) 23:26:08.39 ID:I4fI14lDo
- つづく
- 553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:30:32.34 ID:CNZ+0mwJo
- 乙一
自分達が生き残る為に媚びているのが結果として
アライちゃん喫茶とか工場が幾つも出来る位のブームになっているのがある意味凄い
- 554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:44:10.42 ID:FJ1Ar/zDo
- 乙
アラ助ちゃんお友達ができてよかったね!
- 555 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 01:45:49.22 ID:TcFLy0QP0
- 乙でしゅ
蚕の幼虫は宇宙食ってイメージが個人的にあります
そんな食材を食い荒らすとは許せません。他にも野良がいないかも気になりますね
- 556 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 01:50:57.35 ID:TcFLy0QP0
- 乙でしゅ
蚕の幼虫は宇宙食ってイメージが個人的にあります
そんな食材を食い荒らすとは許せません。他にも野良がいないかも気になりますね
- 557 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 01:52:22.97 ID:TcFLy0QP0
- 二重投稿してしまいました、申し訳ございません。次回も楽しみにしてます
- 558 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 02:03:09.37 ID:uakZau32o
- でしゅ君はなぜ半コテなんていう茨の道を選んだのか
- 559 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 05:46:24.40 ID:z1TuAcL40
- これは久しぶりの虐シーン到来かな?(◯ l v l ◯)
- 560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 10:10:59.55 ID:HJqSsR190
- アライちゃんの声録音して流すだけでも巣穴から出てくるかな?
- 561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 17:56:25.58 ID:q1ySAMR20
- 虎は死して皮を残す
蚕は死して繭を残す
さて、野良アライちゃんは何を残すのだろうか
- 562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 22:37:56.16 ID:ks/1nI6H0
- >>561
愉悦と精神的充実感(ただしほぼほぼマッチポンプ)
- 563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/26(金) 23:30:03.96 ID:Uzb79nf9o
- つまり使い勝手がいい使い捨てのおもちゃですね
- 564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 01:37:12.13 ID:XmG1Lnrl0
- 家畜を食べるけものは昔から虐殺殲滅根絶と相場が決まっている。
かつてニホンオオカミがそうだったように。
アメリカの狼もまた滅んだように。
いま再びツキノワグマが狩られるように。
それがどんなに必死に生きていたとしても。
絹男の怒りの行き場と今後の展開が気になる。
- 565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 16:52:49.35 ID:L2gbVGqOO
- アライちゃん使ったアライちゃん狩り
- 566 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 19:45:12.43 ID:w9CPwb5KO
- アラ助「のりゃー!ありゃしゅけとおんなじかおなのりゃ!」シッポフリフリ
野良アライちゃん「うぅ〜、かわったにおいなのりゃ」クンクン
野良アライちゃんは、巣穴から這い出てきた。
アラ助「いっしょにあそぶのりゃー!≧∀≦」シッポフリフリ
野良アライちゃん「うぅ?あそぶのか?あそぶのりゃー!くちゃくちゃ、ごっくん!」ゴクン
野良アライちゃんは、食ってる途中の蚕の幼虫を飲み込んだ。
アライちゃんは、野良もペットも遊ぶことが大好きである。
なぜなら、子供は遊ぶものだ…
…というアレではなく。
遊びとは、高度な知能を有する生き物にとって、知能の発達に必要不可欠な行為といわれている。
好奇心を充足させ、探求心を満足させ、新たな運動行動を身に付けたいという欲求。
それは即ち、『学習』を本能的に行うための習性といえよう。
野良アライちゃん「みんなー!でてくゆのりゃあ!おねーしゃん!いもーとぉー!」シッポフリフリ
野良アライちゃんは、穴の中へ向かって叫んだ。
野良アライちゃん2〜4「なのりゃー!」モゾモゾモゾモゾモゾモゾ
穴から、3匹のアライちゃんがぞろぞろと這い出てきた。
- 567 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 19:56:47.78 ID:w9CPwb5KO
- …飼い主男と絹男の二人はその様子を、遠くからこっそり見ている。
絹男「な…!くそ、地面にいたのか…!天井裏や木の穴ばっか探してて、盲点だった…!」ヒソヒソ
飼い主男「…」
絹男は、アライちゃんが人間より耳のいい生き物であることを知っている。
自分が潜んでいることに気づかれまいと、小声でひそひそと呟いている。
…怒っているようだが、己を冷静に保っているようだ。
絹男「ぞろぞろぞろぞろと…!よくもうちの蚕たちを…!全員皆殺しに…」ヒソヒソ
飼い主男「…なあ」
絹男「なんだよ?」
飼い主男「…駆除するのはもう少しだけ、待ってくれないか?」ヒソヒソ
絹男「あ?なんで…」ヒソヒソ
飼い主男「…もちろん、あの野良どもがアラ助を虐めようとしたり、あの場から去ろうとしたら、すぐに駆除すればいい」
- 568 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 20:00:53.81 ID:w9CPwb5KO
- 飼い主男「だけど…」
絹男「…」
野良アライちゃん「おにごっこしゅゆのりゃー!おまえおになー!」ヨチヨチヨチヨチ
アラ助「まてー!まつのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
野良アライちゃん2〜4「ここまでおいでなのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ
飼い主男「…あんなに楽しそうなアラ助の顔は、初めて見たよ…」
絹男「…」
飼い主男「…あいつは、仕事から帰って来た俺に、甘えて、じゃれついて、癒してくれる。どんなに職場の愚痴を吐いても、俺を全面肯定してくれる」
絹男「…話を理解してないからとりあえず頷いて媚を売ってるだけじゃねえか?」
飼い主男「『だとしても』。だとしても…。…いや、『だからこそ』か。…そんな風に、俺を何でも肯定してくれる者なんて、親も前の彼女にもいなかった」
絹男「…」
飼い主男「…俺は救われているんだ、あのペットに」
絹男「…」
飼い主男「だから、今だけは。アラ助への恩返しとして…。遊ばせてやることを許してはくれないか」
絹男「…」
飼い主男は、アラキレスの飼い主であるバイトのようなサディストではない。
ペ虐動画を投稿し続ける狂人卍のような、動物(?)虐待愛好者でもない。
この日本に生きるごく当たり前の感性を持った男性だ。
そんな彼には、たとえ相手が害獣であっても…。
自分のペットが楽しそうに一緒に遊んでいる『お友達』を、この場で即殺処分するという非情な判断はできなかった。
- 569 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 20:10:02.44 ID:w9CPwb5KO
- 絹男「…ちょっと道具持ってくる。見張っててくれ」スタスタ
飼い主男「…ありがとう」
飼い主男は、野良アライちゃんを見張った。
いや…
ペットのアラ助を見守った。
もしも虐められるようなことがあったら、即座に駆け付けるつもりだ。
野良アライちゃん2「おまえあしおそいのりゃ!おにごっこよわいのりゃー」シッポフリフリ
野良アライちゃん3「おしゅもーもよわいのりゃ」シッポフリフリ
アラ助「うぅ〜、だったら、しっぽのてにすしゅゆのりゃ!たあ〜!」ペチッ コロコロ
アラ助は地面に転がっている松ぼっくりを尻尾で弾いた。
野良アライちゃん2「たあ〜!たのちーのりゃあ!」ペチッ コロコロ
野良アライちゃん4「おぉ〜!こんなおもちよいあそびはじめてなのりゃ!おかーしゃんもしらなかったのりゃ!」ペチッ コロコロ
野良アライちゃん3「いーおともだちができてうれしーのりゃあ!たあ〜!」ペチッ コロコロ
アラ助&野良アライちゃん2〜4「「たのちーのりゃあ〜!≧∀≦」」
飼い主男「…」
アラ助の屈託のない笑顔。
それを見た飼い主は、やはり普段アラ助を退屈させてしまっているのだということを、嫌でも実感できてしまった。
- 570 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 21:05:15.54 ID:w9CPwb5KO
- 野良アライちゃん3「おぉ〜!このあそび、きのこしまいもよんでやゆのりゃあ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
野良アライちゃん3は、倉庫の壁の方へ向かった。
アラ助「きのこしまい?」
野良アライちゃん「しらないのか?このへんには、あらいしゃんたちのほかにも、もーひとりしまいがすんでゆのりゃ。それがきのこしまいなのりゃ!」
野良アライちゃん3「おーい、きのこしま…うゆ!?」ヨチヨチヨチヨチ
茸取りアライちゃん1「きゅるるる!おまえたち、さっきからおもしろそーなあそびしてゆのりゃ!」モゾモゾ
ヨチヨチヨチヨチ
倉庫の壁の下の地面に空いた巣穴から、アライちゃんがぴょこっと顔を出した。
どうやら先ほどから、アラ助たちの様子を伺っていたようだ。
茸取りアライちゃん2「ありゃいしゃんたちもまぜてなのりゃ〜!」ガサガサッ ヨチヨチヨチヨチ
野良アライちゃん「うゆ!きのこしまいきたのりゃー!」
茸取りアライちゃん1「いもむししまい、それありゃいしゃんたちにもやらせゆのりゃあ!」シッポフリフリ
茸取りアライちゃん2「あっそび♪あっそび♪たのちーあそび♪」ヨチヨチシッポフリフリ
アラ助「すごいのりゃ、おともだちいーっぱいなのりゃあ!よーし、じゃあちっぽのさっかーやゆのりゃ!ずっとやってみたかったのりゃ!」
野良アライちゃん達「なにー!?もっとたのちーあそびあゆのかあ!?」キラキラ
野良アライちゃん達はキラキラと目を輝かせている。
- 571 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 21:30:27.66 ID:w9CPwb5KO
- 1匹のペットと6匹の野良は、わいわいと無邪気に、楽しそうに遊んでいる。
絹男「…もうすぐ40分だ。もういいだろ。…ほら、パンくずだ」スッ
飼い主男「…ああ」ガシィ
絹男は、右手に持っているパンくずの入った袋を、飼い主男へ手渡した。
その左手には、なにかの道具を持っていた。
絹男「大丈夫か?虐められたり、共食いされたりしなかったか?野良アライちゃん達って共食いするんだろ」
飼い主男「…大丈夫だったよ」
絹男「…今日は助かった。いつかまたアラ助連れてきてくれ」
飼い主男「ああ」スタスタ
飼い主男は、パンくずを持って、アライちゃん達の方へ向かった。
野良アライちゃん「ぴぃ!?ひとしゃんなのりゃ!」ビクゥ
茸取りアライちゃん1「に、にげゆのりゃあ!」ビクゥ
野良アライちゃん達は、飼い主男が来たのに気づいた。
警戒し、逃げようとしている。
アラ助「うゆ、かいぬししゃん!だいじょーぶなのりゃ、かいぬししゃんはやさしくていだいなんだぞぉ!」ヨチヨチ
アラ助「かいぬししゃーん!のりゃっ!のりゃっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
アラ助は嬉しそうに飼い主男のほうへ這い寄ってくる。
- 572 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/27(土) 21:57:40.78 ID:w9CPwb5KO
- つづく
- 573 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 22:05:43.80 ID:RwV2d5XUo
- 乙乙
寂しさ対策でアライちゃんなら多頭飼いでも躾次第でいけそう
- 574 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 22:13:59.01 ID:PIwO2jm20
- >>573 ヨチライフ手術は忘れずにね?
アライちゃん「やめるのりゃ!あらいしゃんのあしとらないでほしいのりゃ!」ジタバタ
???「君に最初から主導権があるとでも思っていたのかい?(○??v??○)
- 575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/28(日) 00:42:43.27 ID:7+Q275hB0
- アライちゃんは野生・ペット問わず、基本的に社会性はないんだよな・・・・。
こんなに楽しそうに遊んでいるけど、鉄火場に送り込まれるとすぐに算盤弾いて自分の命を最優先にしてしまう。
命がかかっていなくても、相手の命がかかっていても自分のわずかな損失を避けることを優先してしまう。
ペットショップのアライちゃんはちょっと違ったけど。
言葉は喋るし、コミュニケーションも取れるが薄皮一枚はがせば、ただのケダモノ。
そんなアライちゃんをうまく書いているのがこの作者さんの魅力なんだと思いながら見てます。
- 576 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/28(日) 22:59:37.44 ID:mMXTEjXI0
- 更新きてた乙でしゅ。どんな駆除をするのか楽しみですね
- 577 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:32:00.15 ID:2w7BuSI6o
- 飼い主男「お〜よしよし、パン食うか」スッ
飼い主男はパンくずを差し出した。
アラ助「いただきましゅなのりゃあ〜!はぐ!はぐ!あむあむあむあむっ!んん〜!おいちいのりゃあ〜っ!(≧'ω(≦ )」ムシャムシャモグモグ
アラ助はいつも通り口を閉じ、クチャクチャ音を鳴らさずに食べた。
ペットアライちゃん工場の職員が厳しく躾した成果の賜物である。
野良アライちゃん「うぅ…」グーギュルルー
茸取りアライちゃん1「きのこよりおいちそーなのりゃあ…」グーギュルルー
飼い主男「君たちも食べるかい?」スッ
野良アライちゃん2「い…いいのかあ!?」
飼い主男「よいしょ」ポイッ
飼い主男は、パンくずを入れた袋を投げた。
袋は地面に落ちた。
野良アライちゃん達「「「なのりゃああああ〜〜〜〜〜〜っ!!!!≧∀≦」」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
野良アライちゃん達は、パンくずの入った袋へ猪突猛進した。
野良アライちゃん「はぐっ!はぐっ!」ムシャムシャモグモグ
野良アライちゃん2「おいちーのりゃあ!いもむしよりおいっちーのりゃああ!」クッチャクッチャ
野良アライちゃん3「あぐあぐ、むふぅ、クチャクチャクチャクチャ」
野良アライちゃん4「あむあむあむあむあむあむっ!あむあむあむあむっ!」ムシャムシャモグモグ
一方の野良アライちゃん達は、パンくずを一心不乱にクチャクチャとむさぼっている。
別に野良アライさんの全てがクチャラーというわけではない。
だが、アライさん自身は他人のクチャラー音を全く気にしないため、この汚い咀嚼音を立てていることが良くないということにすら気付くことができない。
- 578 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:44:50.62 ID:2w7BuSI6o
- 茸取りアライちゃん1「ありゃいしゃんのなのりゃあ!はぐがぶ!」クッチャクッチャ
茸取りアライちゃん2「ありゃいしゃんももっとたべゆのりゃあ!あむあむ!」クッチャクッチャ
飼い主男「…アラ助、帰るぞ」ガシィ ヒョイッ
アラ助「うゆぅ!?」
飼い主男「っ…」タタタタタタタ
飼い主男は走って自家用車のところへ向かう。
アラ助「うゆぅ…!」チラッチラッ
アラ助は、本当はまだまだ野良アライちゃん達と遊びたかった。
だが、わがままを言わないように、徹底的に教育…いや、『調教』…
…否、『洗脳』されている。
アラ助「…またここつれてきてほちーのりゃ」ギューッ
飼い主男「ああ。また連れてくるよ。またお友達を探すといい」スタスタ
飼い主男は、アラ助を助手席へ乗せ、車を走らせて蚕小屋から去っていった。
- 579 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:49:48.69 ID:2w7BuSI6o
- 野良アライちゃん「げぷぅ、たべたのりゃ〜」シッポフリフリ
野良アライちゃん2「そろそろおうちかえっておねむしゅゆのりゃ…」クルッ
野良アライちゃん2は、巣穴がある壁の方を向いた。
野良アライちゃん2「ぴぃ!?」ビクゥ
野良アライちゃん3「どーちたのりゃ?」
野良アライちゃん2「あ、ありいしゃんたちの、おうちが…」ユビサシ
アライちゃん達の棲み家である、壁の巣穴は…
https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg
…いつの間にか、コンクリートブロックが置かれて塞がれていた。
- 580 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/28(日) 23:52:48.09 ID:2w7BuSI6o
- つづく
- 581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 00:05:29.43 ID:RWSWyNZoo
- 乙
野良アライちゃん達の末路が楽しみです
- 582 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 05:00:09.21 ID:o+Yj6XCZ0
- 乙でしゅ。狩り開始ですね
- 583 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sagem]:2018/10/29(月) 06:08:17.16 ID:3sO+jbvg0
- さて次回の虐シーンに期待(○IvI○)
- 584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 08:15:45.14 ID:9NOWpQ0e0
- アライちゃん風情が安住の地を得てはならない(戒め)
- 585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 11:17:39.93 ID:OUeHvWVrO
- そんな塞ぎかたで大丈夫か?
- 586 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 20:27:59.91 ID:ik7hEZK8o
- 野良アライちゃん1「な…なんで…」
その時。
???「ヴィィイイイイインィイイイインインインィイイイイインヴィイイイイイインッ!!!!」ギュィイイイイイイイ
突如、野良アライちゃん1の近くで機械の高速駆動音が鳴った。
野良アライちゃん1「ぴぃ!?」クルッ
振り返った野良アライちゃん1の目の前にあったのは、高速で回転する円盤だ。
それは…
https://i.imgur.com/IR9CXmr.jpg
- 587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 20:34:22.84 ID:6E/jomU80
- 草刈機ならぬアライ刈機
- 588 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 20:43:39.56 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「だらぁ!」ヴィイイイン
それは、レインコートを着てバイク用ヘルメットを装着した絹男が持つ草刈機の刃であった。
ヘルメットはこんな↓感じで、目は透明なシールドで保護されている。
https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg
野良アライちゃん1「じびぎゅ!」ブヂャアアアグシャアアッ
野良アライちゃん1は、草刈機で一瞬のうちに首を切断された。
野良アライちゃん1の頭「」ドチャッ ゴロン
野良アライちゃん1の体「」ドサァ ビグンッビグググッジタバタジタバタビビグンビッタンバッタンシッポフリフリフリフリフリフリビビグンジタバタ
首を刎ねられた野良アライちゃん1の体は、小便を漏らしながら手足と尻尾をばたつかせ、魚のように地面を跳ねた。
野良アライちゃん2「≦∀≧」!?
野良アライちゃん3「≦∀≧」!?
野良アライちゃん4「≦∀≧」!?
茸取りアライちゃん1「≦∀≧」!?
茸取りアライちゃん2「≦∀≧」!?
野良アライちゃん達は、何が起こったのか理解できていないようだ。
だが、徐々に顔が青ざめ始め、仲間の死を理解したようだ。
- 589 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 20:50:21.70 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「ッ…!」タタタッ ヴィイイイン
絹男は死体には目もくれず、生きた野良アライちゃん達の方へ駆け寄る。
野良アライちゃん達「「「ぴ…ぴぃいいいい〜〜〜〜っ!!!にげゆのりゃああああ〜〜〜っ!!」」」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
インターンシップを始めて間もない野良アライちゃんの中には、自分は最強であり何でもやっつけられると勘違いする個体もいるらしい。
だが、そんな自信過剰な自惚れ屋は、1ヶ月以内に野良猫やカラスに戦いを挑み、捕食され命を落とす。
そんな無惨な姉妹の姿を見た生き残り達は、日々の厳しい生活の中で、自分達が貧弱極まりない生き物だと嫌でも実感する。
敵から生き残るために必要なのは、闘争でなく逃走なのだと心底理解する。
この野良アライちゃん達も同じだ。
仲間の首を一瞬で切断するような相手に、戦いを挑む者などいなかった。
野良アライちゃん2「やなああああああ!やああなああああああああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
野良アライちゃん3「ごああいいいいいいいーーーっ!こっちくゆなああああーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
野良アライちゃん4「おがーーしゃああああーーーんっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
茸取りアライちゃん1「ぴいぃいいい〜〜〜っ!ぴぃいいいーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
茸取りアライちゃん2「きちがいなのりゃああああっ!こっちくゆなああああーーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
突然現れた敵から生き残るために、小さな命達は必死に逃げた。
尻尾を振り、短い手足をヨチヨチと動かし、四つん這いで必死に逃げた。
- 590 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:03:18.36 ID:ik7hEZK8o
- 野良アライちゃん2「たかいとこにげゆのりゃあああっ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ
野良アライちゃん3「きのぼりしゅゆにりゃああ〜っ!わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ
野良アライちゃん2&3「「わっちぇ!わっちぇ!」」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ…
野良アライちゃん2と3は、木の幹をすいすいと登った。
流石アライちゃん、木登りは大得意だ。
高いところへ逃げ切れば、猫はともかく犬やドブネズミ、素手の人間に殺されることはなくなる。
…時に、アライちゃんはなぜ四足歩行をするのだろうか。
骨格や筋肉が、四足歩行に適しているから…
…ではない。
アライちゃんの骨格や筋肉の付き方は、人間の赤ちゃんと同じ。
つまり、むしろ四足歩行は苦手なのである。
アライちゃんが四足歩行をする理由、それは単純な筋力不足である。
赤ちゃんであるが故に、重くてデカい頭を支えて二本足で立ちバランスをとるだけの筋力がないのである。
だが、これは科学的に矛盾している。
人間と同じ骨格であれば、どう考えても、二足歩行をするより木登りをする方が必要とする筋力は多いはずだ。
だが、二足歩行ができないほど筋力の弱いアライちゃんは、当たり前のようにスイスイと木登りをやってのけるのである。
一体なぜアライちゃんにこんな芸当ができるのか…
研究者達が解明のために頭をひねっているが、全く解明は進まず、頭を抱えるばかりだという。
- 591 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:17:18.05 ID:ik7hEZK8o
- だがまあ…
そんなことは、今この状況では至極どうでもいい。
絹男「よっと」グイイッ
なぜなら、長い棒の先端についている高速回転する刃は、木登りしているアライちゃんへ容易に届くのだから。
野良アライちゃん2「もーすこしでてっぺ…」ヨジヨジヨジヨジ
刃「ギュゥィイイイイイイイイイインッ」
野良アライちゃん2「びぎゅぅうう!!」ヨジヨジグシャアアブシャブヂャグチャアアア
野良アライちゃん3「≦∀≧」!?
絹男「二匹目…」ベチャベチャ
飛び散った野良アライちゃん2の血と肉片と臓物が、絹男のレインコートにへばりついた。
絹男が、草刈機を持ち出した理由。
それは草刈機が、高いところまで届き…
何より、DPS(ダメージ効率)が凄まじく優れているからである。
バットや刃物でアライちゃんを仕留める場合、それらを1匹へ振りかざし、当てる必要がある。
致命傷にならなかった場合、何度も何度も繰り返し攻撃しなければならない。
その間に、他のアライちゃんに物陰に隠れられたら、多くの取り逃がしをしてしまうことになる。
だが草刈機は、刃をアライちゃんにあてがうだけで即死級のダメージ、致命傷を与えることができる。
脳のつまった頭。
頭と胴をつなげる首。
脊椎の通った背中。
内臓のつまった腹。
一本でも欠けたら移動不可能になる手足。
ヨチヨチ歩きのバランサーとして必要不可欠な尻尾。
草刈機の前では、アライちゃんの身体中すべての部位が急所となるのである。
絹男「よいしょ」ヴィイイイン
野良アライちゃん3「う…うゆ…!」
絹男はそのまま、刃を縦に動かし、野良アライちゃん3も続けて仕留めようとした。
- 592 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:24:41.84 ID:ik7hEZK8o
- 野良アライちゃん3「おまえがしぬのりゃああああ〜〜っ!たああ〜っ!」ピョーン
絹男「むっ!?」
なんと野良アライちゃん3は、木からジャンプして絹男の頭上へと飛びかかった。
野良アライちゃん達はインターンシップの掟により、自分から人間を攻撃することを固く禁じられている。
だが、自衛のためなら攻撃が許される、と教わっている。
中には拡大解釈によって、自分の縄張りに足を踏み入れた人間なら殺してよいと思っている野良アライちゃんもいるらしいが…。
ともかく、野良アライちゃん3は今、逃走よりも闘争を選んだ。
野良アライちゃん3「たああ〜〜っ!」ガバァ
野良アライちゃん3は果敢にも、絹男の急所である頭へとボディプレスを仕掛けたのである。
絹男「ッ…!」ヴィィイイン
草刈機は、縦に伸び縮みするものではない。
刃の先端以外に攻撃力はないのである。
完全に不意を突かれた絹男は、もはや野良アライちゃん3のダイビングプレスをかわすことは不可能である。
- 593 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:29:38.97 ID:ik7hEZK8o
- だが…
https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg
ヘルメット「」ガァン
野良アライちゃん3「ごぶうぅぅ!」ビタァーーーンッ
…絹男が被っているフルフェイスタイプの硬いヘルメットに、野良アライちゃん3の柔らかい腹が打ち付けられた。
野良アライちゃん3「ぐぶぇえええ!」ドサァ
絹男の頭の上でゴム毬のようび弾んだ野良アライちゃん3は、そのまま地面にぼとりと落ちた。
野良アライちゃん3「ごほっげほっ!ぴぎゅるるぅ!ぴぎいいいい!おながいぢゃああいいいーーーっ!いっぢゃああああーーいいいーーーっ!おがああああしゃあああーーんっ!」ピギイイイシッポブンブン
不意を突かれたからどうだというのだ。
あらかじめ不意打ちに備えた装備をすればいいだけのことである。
腹を打った野良アライちゃんは、苦しそうに絶叫して地面の上でごろごろと悶絶した。
- 594 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:36:09.16 ID:ik7hEZK8o
- 野良アライちゃん3「のぉぁああーーーんっ!の゛ぉ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ーーーーーぁ゛あ゛ん゛っ!」ピギイイイ
絹男「3匹目」グシャア
野良アライちゃん3「ぐぶふぅぅーーっ!」グチャボギメシャブヂャア
移動しない野良アライちゃん相手には、もはや間合いをとって草刈機を使う必要さえない。
絹男は70キロの体重を踵に集中させ、野良アライちゃん3の腹を踏み潰した。
野良アライちゃん3の口からは、水鉄砲のように血が吹き出し、絹男のレインコートを赤く染めた。
野良アライちゃん3「ご…びゅ…」ビグッ
絹男「次」タタタタタタタ
瀕死の状態で弱々しく痙攣する野良アライちゃん3に、絹男は興味すら示さず、次の敵へ駆け寄った。
- 595 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:48:59.01 ID:ik7hEZK8o
- 茸取りアライちゃん1「ひぃ、ひぃぃ!ぜったいにげていきのびゆのりゃあ、いもーとぉ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
茸取りアライちゃん2「ぜーはー、ぜーはーっ!おねーしゃ!おねーしゃぁあっ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
必死に逃げる茸取りアライちゃん1&2。
どうやらこの二匹は姉妹のようだ。
きっと以前はもっと姉妹がいたのだろう。
だが、猫に食われたか、罠にでもかかったか、毒物でも食べたか…
減りに減って、かけがえのない血を分けた姉妹の生き残りはこの二匹となったようだ。
茸取りアライちゃん1「ふぅーふぅー!いもーとがんばゆのりゃあああーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
茸取りアライちゃん2「おねーしゃもがんばゆのりゃああーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
先を進む茸取りアライちゃん1と、その2メートル程後ろに続いてヨチる茸取りアライちゃん2は、互いを励ましあっている。
絹男「逃がすか」タタタタタタタ ギュィイイイイイイイ
茸取りアライちゃん1「ぴいいぃ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
茸取りアライちゃん2「は、はやいのりゃああ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
だが、距離はすぐに詰められていく。
茸取りアライちゃん1「ぴぃい!」ヨチヨチヨチポテッ
茸取りアライちゃん2「おねーしゃ!」ヨチヨチヨチヨチ
だが、姉の茸取りアライちゃん1は地面の小石につまづき、転んでしまった。
- 596 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 21:57:57.70 ID:ik7hEZK8o
- 茸取りアライちゃん1の足首「」ボギィ
茸取りアライちゃん1「ふぎゅうぅ!?」ズキン
転んだせいで、茸取りアライちゃん1の足首は捻挫してしまったようだ。
茸取りアライちゃん1「ひぃ、ひぃ、にげ、れな、いぃ…!」ズキズキ
絹男「ッ…!」タタタタタタタ
絹男との距離はぐんぐん縮まっていく。
もはや自分が草刈機の刃から逃げられないことを悟ったようだ。
茸取りアライちゃん2「おねーしゃ!はやくよちよちしてにげゆのりゃあ!えっほ、えっほ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ
姉を追い抜き逃げようとする茸取りアライちゃん2。
- 597 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:00:39.29 ID:ik7hEZK8o
- だが、そのすれ違い様に…
茸取りアライちゃん1「たあ〜!」ガシィイッ
茸取りアライちゃん2「ぴいぃい!?」ビターン
なんと姉は、妹に後ろから飛びかかって捕まえた。
茸取りアライちゃん2「な、なにしゅゆのりゃおねーしゃ!?」ジタバタ
茸取りアライちゃん1「ふぅーっ!ふぅーっ!くゆな!くゆなあああーーっ!」グイグイ
なんと茸取りアライちゃん1は、妹を羽交い締めにして、絹男の方へ向けている。
血を分けた妹を盾にして、刃を防ごうというのである。
茸取りアライちゃん2「はなちて!はんちてえええっ!ふぎゅるるるうる!ぴぎゅるるるるぅっ!はなぜえええええ!」ピギイイイジタバタシッポブンブンシッポブンブン
姉に羽交い締めにされている茸取りアライちゃん2は、脱出しようとして必死にもがき暴れている。
- 598 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:10:16.94 ID:ik7hEZK8o
- 茸取りアライちゃん1「ふぅーふぅー!きたらぶっこよすぞぉお!ふぅーっ!」ガクガクブルブルグイグイ
足首を捻挫し逃げられなくなった茸取りアライちゃん1は、妹を盾にして、ついに草刈機の刃に立ち向かう。
果たして、茸取りアライちゃん1は、無事に刃を防ぐことが…
絹男「だらぁ!」ズガアァア
茸取りアライちゃん2「じびゅぅうう!」ズパァァアアッ
茸取りアライちゃん1「びぎゃあああああっ!」ズブグシャアアアアッ
…なんて言っている間に、姉妹は仲良く上半身と下半身を真っ二つにされた。
刃の回転で吹っ飛んだ上半身は、地面の上で重なりあった。
茸取りアライちゃん1「ッ…」ビグッビグッ
茸取りアライちゃん2「ッ…」パクパク
横隔膜が切断され、喋ることのできない姉妹は、互いを見つめあったままぱくぱくと口を動かしている。
果たして死にゆく二匹の血を分けた姉妹は、相方に何を伝えようとしているのか…
絹男「次で最後だ」タタタッ
…だが絹男は、そんな事にはまるで興味を示さず、最後の一匹を仕留めに向かった。
- 599 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:19:00.48 ID:ik7hEZK8o
- 野良アライちゃん4「おうちににげゆのりゃあああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
野良アライちゃん4は、巣穴の前へ到達した。
まあ、巣穴は今…
野良アライちゃん4「う、うゆうぅ!」
https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg
コンクリートブロックで塞がっているのだが。
野良アライちゃん4「これじゃまなのりゃああっ!ふんぬぐぐぐぐう!ふんぐぐぐぐぅ!」グイグイ
野良アライちゃん4は、コンクリートブロックを必死にどかそうとしている。
だが、自分よりはるかにでかくて重いコンクリートブロックをどかす筋力などないようだ。
絹男「…」ザッザッ ヴィィイイン
絹男が近寄ってくる。
野良アライちゃん4「ぴいいぃい!」ヨチヨチヨチヨチ
野良アライちゃん4は、必死に壁に沿って逃げたが…
塀「」
野良アライちゃん4「うゆぅ!?」ヨチヨチヨチヨチ ピタッ
建物の壁と高い塀の角へ追い込まれた。
潜り込めそうな隙はなく、塀には登るために掴まれそうな突起もない。
絹男「…」ザッザッ
野良アライちゃん4「…ぴぃ…ぴいぃいい…!しにだぐないぃ…!こないでええぇ…!」ウルウルポロポロガクガクブルブル
…もはや、逃げ場はない。
追い詰められた野良アライちゃん4は、壁の角で震えながら泣いた。
- 600 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:24:38.42 ID:ik7hEZK8o
- >>599
※訂正
野良アライちゃん4「おうちににげゆのりゃあああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ
野良アライちゃん4は、巣穴の前へ到達した。
まあ、巣穴は今…
野良アライちゃん4「う、うゆうぅ!」
https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg
コンクリートブロックで塞がっているのだが。
野良アライちゃん4「これじゃまなのりゃああっ!ふんぬぐぐぐぐう!ふんぐぐぐぐぅ!」グイグイ
野良アライちゃん4は、コンクリートブロックを必死にどかそうとしている。
だが、自分よりはるかにでかくて重いコンクリートブロックをどかす筋力などないようだ。
野良アライちゃん4「おねーしゃたち!いっしょにこれどかしゅのりゃあ!おねーしゃたちぃ!」キョロキョロ
野良アライちゃん4は、声を張り上げて姉達を呼ぶが…
野良アライちゃん1の頭「」シーン
野良アライちゃん2「」シーン
野良アライちゃん3「」シーン
遠くに横たわっている死骸は何も答えない。
絹男「…」ザッザッ ヴィィイイン
絹男が近寄ってくる。
野良アライちゃん4「ぴいいぃい!」ヨチヨチヨチヨチ
野良アライちゃん4は、必死に壁に沿って逃げたが…
塀「」
野良アライちゃん4「うゆぅ!?」ヨチヨチヨチヨチ ピタッ
建物の壁と高い塀の角へ追い込まれた。
潜り込めそうな隙はなく、塀には登るために掴まれそうな突起もない。
絹男「…」ザッザッ
野良アライちゃん4「…ぴぃ…ぴいぃいい…!しにだぐないぃ…!こないでええぇ…!」ウルウルポロポロガクガクブルブル
…もはや、逃げ場はない。
追い詰められた野良アライちゃん4は、壁の角で震えながら泣いた。
- 601 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:29:30.39 ID:ik7hEZK8o
- 野良アライちゃん4「そ、そーだ、と、とりひき、しゅゆのりゃ、ひとしゃんっ」ゴソゴソ スッ
野良アライちゃん4は、服の中から何かを取り出した。
蚕の幼虫「」ウニウニ
…それは蚕の幼虫であった。
野良アライちゃん4「あ、ありゃいしゃんは、かしこいのりゃ、きのこしまいにゆーこときかせゆために、い、いつも、いっこたべものもってゆのりゃ」ガクガクブルブル
絹男「…」ザッザッザッザッ ヴィィイイン
絹男は足を止めずに向かってくる。
野良アライちゃん4「あ、ありゃいしゃんを、みのがしてくれたら、こ、これ、おまえにやゆぞぉ!」ガクガクブルブル
絹男「…」ザッザッ ギュィイイイイイイイ
野良アライちゃん4「き、きのこしまいも、おねーしゃんたちも!みんなおいちーっていってゆぞぉ!お、おまえもたべてみろぉ!おいちぃぞぉ…!」ガクガクブルブル
野良アライちゃん4「これあげゆ!あげゆからあああ!たべていいからああ!ありゃいしゃんころさないでえええ!ぴいいいいい!ぴぃいいいいーーっ!」ガクガクブルブルチョロチョロ
追い詰められた野良アライちゃん4は、恐怖のあまり失禁した。
- 602 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:38:57.41 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「ラストだ」ズガァアッ
野良アライちゃん4「だがらだぢゅげぐびぶぐうぐぐぐぐぐぐぐ!」ドジュバズバグドバガガガガガ
野良アライちゃん4の顔面に、草刈機の刃が叩き込まれた。
野良アライちゃん4の頭「」ズパァアッ
下顎が吹き飛び、野良アライちゃん4の顔は上下に引き裂かれて吹き飛んだ。
だが…
野良アライちゃん4の歯「」ビュンッ
なんと、刃の回転によって勢いのついた一本の牙が、凄まじいスピードで絹男の顔面へ向かって飛んだ。
絹男「ッ…」
このスピードでは、絹男とて反応できない。
牙はまるで復讐の怨念が詰まった弾丸のように、絹男の右目へと真っ直ぐに飛んだ。
- 603 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:40:43.16 ID:ik7hEZK8o
- だが…
https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg
ヘルメットのシールド「」カキィン
絹男「うぉ!?あぶねえ!」ビクゥ
フルフェイスヘルメットのシールドが、牙をかきんと跳ね返した。
- 604 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:47:14.47 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「あぶねえ…。ヘルメットがなけりゃ失明してたな今の…」アセアセ
野良アライちゃんを駆除する上で、最も重要なこと。
それは『安全第一』である。
野良アライちゃんは、農作物への食害を出し、ゴミを荒らし、家屋へ侵入する、紛れもない害獣である。
だが、アライしゃんに成長しても、一匹が食う量は鹿や猪などの大型動物よりはずっと少ない。
加えて野良アライちゃんは、人間を襲って食ったりすることもない。
農作物は、農家にとってはそれこそ生命線ではあるものの、実際に直接命が奪われるわけではない。
そう。
野良アライちゃんは、命を危険に晒して、怪我を負ってまで駆除しなくてはならないほどの危険性はないのである。
その程度の相手を駆除するために怪我を負う必要などない。
十分な安全性が確保できる場合にのみ、怪我を負わない範疇で駆除すればいいのである。
- 605 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 22:54:01.67 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「…全員片付いたか…」ガシィ ヒョイッ
蚕の幼虫「」ワキワキ
絹男は、野良アライちゃん4から奪い返した蚕の幼虫を、優しく手に乗せた。
絹男「…」スタスタ
絹男はフルフェイスヘルメットの奥で心底不愉快そうな表情を浮かべ、蚕小屋へ向かった。
確かに蚕の幼虫達は、成虫になる前に、飼い主である絹男の手によって皆殺される。
だが、だとしても。
絹男は蚕達の飼い主である。
毎日一匹一匹様子を見て、病気になっていないのを確認し、ほっと胸を撫で下ろす。
病死した幼虫がいれば、ごく僅かではあるが胸を痛める。
手塩にかけて育てている蚕達の命を、虫のように軽んじているはずがない。
ましてやその命を奪うことに、楽しさなど雀の涙程も無い。
蚕の繭を殺すという行為は、絹男にとって、『やりたくないが、やらねばならない』行為なのである。
- 606 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 23:00:28.94 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「……片付けるか」スタスタ ガシッヒョイッ ガシッヒョイッ
トングで野良アライちゃん達の死骸をつまみ、ビニール袋へ詰める絹男。
絹男「…気分わりい…」ガシッヒョイッ ガシッヒョイッ
そう、絹男にとっては。
野良アライちゃんの駆除もまた、『やりたくないが、やらねばならない』行為なのである。
ジェノサアライドの狂人卍や、サディストのバイトであれば、野良アライちゃんを殺すことに楽しさを感じることだろう。
だが、そんな感性を持つ者は、この世界ではごくごく少数派である。
大多数の人物は、大きなドブネズミを殺すのに強い抵抗感を抱くのと同様に、野良アライちゃんを殺すことにも強い抵抗感を抱く。
蚊やゴキブリにように殺すべき命ではあっても、それなりに大きく、小人のような外見をして、人の言葉を喋る。
そんな生き物を殺すという行為は、大多数の人にとって、不愉快でありストレスが溜まる、『やりたくない』行為なのである。
- 607 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 23:10:14.16 ID:ik7hEZK8o
- 絹男「…袋を縛って、と」ギュッギュッ
だが、やりたくないからといって、やらないわけにはいかない。
幸いにして、野良アライちゃん達はまだ人間の赤ちゃんよりも小さいが故に、『人間でない生き物』としてはっきり認識される。
人間でないとはっきり認識した生き物相手なら、不快感を我慢して殺せる人もいるだろう。
この絹男のように。
絹男「…なんでこんなに弱っちくてノロマな生き物が、大繁殖なんてできるんだか…不思議で仕方ねえ」スタスタ
絹男はビニール袋を背負って冷凍庫へ向かう。
燃えるゴミの火まで凍らせておくつもりだ。
絹男「…寄生虫や病原体が効かねえんだっけ?確か……」スタスタ
絹男は、死骸を肉片の一欠片も残さずに回収した。
アライちゃんは病原体が効かないため、腐り始めの肉ならば問題なく食える。
むしろ柔らかくなって食べやすい頃合いのため、腐り始めの死臭なら、『美味しそうな匂い』と感じるのである。
もっとも腐敗が著しく進むと、細菌が毒素を出し始める。
病原体は平気でも毒素を口にすると腹を壊すため、あまり腐りすぎた肉は食えないようだが。
- 608 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 23:23:56.89 ID:ik7hEZK8o
- 絹男が死骸を片付け終わった後…
木「」ガサガサッ
10メートル程遠くの木のてっぺんで、何かが動いた。
野良アライしゃん「…」ジーッ
それは野良アライしゃんであった。
成長して二足歩行ができるようになり、アライちゃんよりも格段に運動能力と食べる量が増した、悪知恵のはたらく害獣である。
木登りのスピードも速くなり、体長1メートルを越す頃には成体のアライグマと同じか若干遅いくらいの猛スピードで走行できるようになるともいわれる、脅威的な生き物だ。
だが体が大きくなった代償として、アライちゃんほど狭い隙間に潜り込んだり、外敵から隠れることはできなくなっている。
野良アライしゃん「…」ジーッ
野良アライしゃんは、一連の殺戮現場を見ていたようだ。
この野良アライしゃんは、何を考えているのだろうか?
まさか、蚕の幼虫を狙うつもりだろうか。
あるいは、ここは危険だと思い、近付かない方がいいと思っているのだろうか。
野良アライしゃん「…かえるのだ」ザッ ザッ
野良アライしゃんは、木から木へと跳び移り、遠くへ去っていった。
果たしてこの野良アライしゃんが、この後絹男の敷地に入ってくることはあるのか…
…それは、語られない物語となることであろう。
- 609 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 23:27:18.68 ID:ik7hEZK8o
- …
〜車内〜
飼い主男「…」ブゥーン
アラ助「しゅぴ〜…しゅぴ〜…」zzz
アラ助は遊び疲れたのか、助手席のシートに寝転がって寝ていた。
飼い主男「…」ブゥーン
飼い主男は、車を走らせて自宅の方へと向かっている。
アラ助「むにゃ…えへへへ…おともだち…あそぶの…たのちーのりゃ…しゅぴ〜…」zzz
飼い主男「…」キキッ
飼い主男は自宅のガレージへ車を停め、アラ助を抱いて帰宅した。
- 610 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/10/29(月) 23:27:47.05 ID:ik7hEZK8o
- つづく
- 611 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 23:34:38.08 ID:6E/jomU80
- 乙
いくら人を襲わないって言っても
人型で喋るよく分からない生き物が山や森に住んでるって気持ち悪いですよね
- 612 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 23:56:43.40 ID:rFDSznO+o
- 乙
死を悟って泣いてるアライちゃんほんと好き
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 23:59:58.47 ID:kxMLb/AVo
- 乙ー
野良アライしゃんが不穏な雰囲気
- 614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 00:44:46.85 ID:+diJZtFn0
- 乙でしゅ。見つからないだけでアライしゃんサイズの個体は多く潜んでいるのかもしれませんね
- 615 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 01:29:25.45 ID:zp6wWXm8o
- ゴブリンスレイヤーさんかな?
- 616 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 01:40:22.81 ID:f6pfaZeC0
- なに目的で見てたんやろなぁ
アライちゃんの逃げ方
絹男の駆除方法
道具の使い方
はて
- 617 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 02:12:25.84 ID:iHVJdKhu0
- 作者さんは草刈機を扱ったこともなければ、動いてるところすら見たことないんだろうな。
まあ、そんな事はおいといて、久々の爽快感のあるアラ虐シーンはよかったと思います。
- 618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 03:50:19.48 ID:kcXW8mXdO
- 乙
アライちゃんを[ピーーー]のに抵抗があるのに、
草刈機を用途外に使用する危険行為には何とも思わないとか、
この男の倫理観どうなってるんだろうな。
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 06:02:01.91 ID:O0uyitkL0
- >>618
足をもいだ状態で飼ったり、泣き叫ぶのを動物園で楽しそうに餌にしている世界だから多少はね
- 620 : ◆19vndrf8Aw [sage]:2018/10/30(火) 12:52:33.25 ID:h85DXv6gO
- ※『殺したくない』っていう言葉の意味について、若干表現に語弊がありました
※近々、その辺作中でもうちょい掘り下げます
- 621 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 15:07:10.04 ID:PouMq/prO
- 草刈り機で木登りしてるアライちゃん叩くのは危なすぎる
低い位置でも木などの硬いものに当てると、刃が刺さってからどんな動きするのか分からなくて危険すぎてヤバい、小石弾くのもどこにどんな速度で飛ぶやらで怖い、
そういう道具を頭の高さより上で扱うってのは命懸けすぎる
- 622 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 15:40:55.93 ID:O0uyitkL0
- >>621
最初は餌食べてるうちに草を刈るみたいにして駆除するつもりだったとか?
思ったよりもアライちゃんの逃げ足が速くて止む無く正規以外の使い方をしたのかも
- 623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 16:03:10.20 ID:PouMq/prO
- >>622
実習で草刈り機触った身から意見を言うなら
地表スレスレで駆除に使うのならまあ、若干ファンタジーと思うが可能だとしていいかと
木にぶつかりそうになる使い方がとにかくNG
木に刃が食い込む→本体が回ろうとしてor回転した刃が弾かれてor刃が破損して予測不能の動き→大怪我の危険
が予想される行為だから、絹男のきちんとヘルメットで防御するほどの安全意識と矛盾して感じるのよ
個人的には、アラスコの頃からリアリティーが面白味の作品だと感じてるからこそ、推定作者の知識不足のところは気になるのだ
- 624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 17:03:27.84 ID:69mY5rB7o
- アラ虐SSにおける凶器は、電気や灯油の性質なんかも含めて人間に都合よくできてるもんだろ
サンドスターが明らかに人間の意思を反映した形で動物をフレンズにしているように、対フレンズ用の道具にも人間の意思が反映されてるのと思えばいい
- 625 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 17:36:21.68 ID:L7LE+NAT0
- 自演してんじゃねえよ
- 626 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 18:06:43.02 ID:kcXW8mXdO
- 刈る位置が高い低い云々の問題以前に、草刈機で骨肉を切り裂く事が想定外の使い方で、
故障や重大な事故の原因に繋がるんだよ。
それと、アラ虐世界だから電気や火気の性質が人間に都合よく出来てる訳じゃない、
作者の知識不足でリアリティーなく描かれてるだけだと思うけどね。
作者でもないのに、設定を捏造して勝手に解釈するとか、作者にも迷惑だし、
何よりもその捏造したり勝手に解釈するとかって思考、何かに似てるよね?
そう、頭アライさんと同じ思考だよね。
まあ、この作者って指摘した事をさも最初から想定してた風に、
しれっとそのまま作中で使ったりしてるから、
今回の指摘でもまた何やらつじつま合わせの内容を考えているみたいだけどね。
だから、あえて指摘しない方がリアリティーのない矛盾を多分に含んだ、
ある意味ファンタジーの様な面白い作品が読めるかもだけどね。
- 627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 18:35:10.42 ID:O0uyitkL0
- リアル志向かファンタジー志向かみたいに意見や感想、楽しみ方は人それぞれあるしね
結局のところ作者さんのやりたいようにやって後は各々が楽しめばいいと思う
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